もはや敵ではない。Uberがインドネシア第2位のタクシー会社とパートナー契約

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Uberは世界中のタクシー運転手の厄病神だが、時として同じ方向に進むこともある。例えば今日(米国時間12/19)インドネシアでは、Uberが同国第2位のタクシー会社、Express Groupと契約を結び、同社のドライバーがUberのサービスを使って収入を上げることを可能にした。

なお、これは3ヵ月間のトライアルではあるが、Uberとタクシー会社が相互の利益のために手を組むという興味深く稀な事例だ。Expressドライバーの一部(両社とも人数は明らかにしていない)は、ジャカルタのUberXサービスに参加が許される。こうしてドライバーが収入を増やす機会を得ると同時に、Uberは非常に競争の激しい市場で運行台数を増やせる。

数ヵ月前と比べて実に大きな変化だ。当時インドネシアのタクシードライバー集団が、自分たちの客を奪うUberを始めとするサービスの禁止を求める抗議活動を起こし、数千人ものExpressドライバーが参加した。

このタクシー会社と組むことによって、Uberはインドネシアのライバル2社と直接競合することになる。東南アジアは2020年までにインターネット経済が年間2000億ドルに達すると予想されており、インドネシアはその主戦場として競争が激化している。東南アジア最大の経済規模をもつインドネシアの首都ジャカルタは、人口1000万人を超える巨大都市であり交通の需要も渋滞も大きい。

Uberの東南アジア最大のライバルであるGrabは、自家用四輪車・二輪車のオンデマンドサービスを始める前に、認可タクシー向けの予約プラットフォームとしてスタートした。新たな挑戦者で最近時価総楽10億ドルに達したGo-Jekは、オートバイのオンデマンドサービスだが、インドネシア最大のタクシー会社 ― Blue Bird ― とパートナー契約を結びアプリを通じて4輪タクシーも提供している。

Uberは韓国でも認可タクシーの配車を行っているが、こちらは現地の規制によるものだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ライドシェアリングで新たなユニコーンが誕生:Careemが楽天などから3億5000万ドルを調達

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2016年も残すところあと少しだが、ライドシェアリング業界に誕生したもう1つのユニコーン企業を紹介する時間はまだ残されている。エマージング市場におけるUberのライバル企業Careemは、楽天とSaudi Telecom Company(STC)がリードするラウンドで3億5000万ドルを調達したことを発表し、世界中の脚光をあびることとなった。

今回の資金調達により、ドバイを拠点とするCareemのバリュエーションは10億ドルとなる。STCが発表したところによれば、同社はCareemの発行済株式数の10%を1億ドルで取得するという。

4年前に創業したCareemは現在、11カ国47都市でビジネスを展開しており、そのほとんどがトルコ、パキスタン、北アフリカ諸国など中東の国々だ。同社が「Captains」と呼ぶドライバーの数は15万人にものぼり、すでに600万人のユーザーを獲得している。Crunchbaseによれば、Careemがこれまでに調達した合計金額は7200万ドルであり、今回の調達ラウンド(シーリズD)は同社にとって大きなステップアップだったと言えるだろう。

今回調達した資金は、主にマーケット拡大のための費用に充てられるようだ。先日Careemはトルコへの進出を発表したばかりであるが、その他にも、12月中にパキスタン、サウジアラビア、エジプトの15都市にもビジネスを拡大すると発表している。これにより100万人の雇用を創出することを目指すだけでなく、R&Dにも一定の資金を投下していくとのこと。今年の夏、Careemは中東地域における「交通関連のテクノロジー・インフラストラクチャーを加速する」ための1億ドル規模の研究計画を発表している。

Careemの共同創業者兼CEOであるMudassir Sheikhaは、プレスリリースのなかで「楽天やSTCのような世界クラスの戦略的パートナーをもつことができ、身の引き締まる思いです」とコメントしている。「彼らとのパートナーシップは新しいCareemを支える大きな力となるだけでなく、彼らがもつグローバル・テクノロジー業界におけるリーダーシップとローカルマーケットにおける豊かな経験によって、この地域に住むすべての人々の生活を改善するという私たちの目標にさらに一歩近づくことができました」。

Careemに投下される資金はこの3億5000万ドルだけではない。同社によれば、今回の調達金額はCareemが現在交渉中の5億ドル規模の資金調達の一部でしかない。この資金調達が完了するまでの具体的なタイムフレームは公表されていない。

本調達ラウンドには、UberのライバルであるLyftと南アフリカのCabifyにも出資する楽天と、中東最大の通信企業であるSTCの他にも、Abraaj Group、Al Tayyar Group、Beco Capital、El Sewedy Investments、Endure Capital、Lumia Capital、SQM Frontier、Wamda Capitalなどが参加している。

STCはこれまでにも、STC Ventures(同ファンドはSTCとは独立して運営されており、STCも主要LPの1つとして参加している)を通してCareemの株式をすでに取得している。しかし今回の調達ラウンドは、STC本体が「イノベーティブなデジタル企業への投資戦略」の一環として直接Careemの株式を取得するというものだ。

Uberがビジネスを展開する都市には中東諸国の都市も含まれているが、それだけではなく、同社とこの地域には財政的なつながりもある。Uberは今年6月、サウジアラビア政府が出資するPublic Investment Fund(PIF)から約620億ドルのバリュエーションで35億ドルを調達したと発表している。その当時、中東地域におけるUberドライバーは39万5000人だった。女性による運転が禁止されているサウジアラビアでは、Uberを利用する乗客の約8割が女性だという。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Uberはサンフランシスコにおける自動運転車のオペレーションを停止せず:陸運局への反抗

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Uberはサンフランシスコでの自動運転車のオペレーションをやめるつもりはない。カリフォルニア州のDepartment of Motor Vehicles(DMV、陸運局)からオペレーションの停止命令を受けたのにもかかわらずだ。

DMVは、Uberが自動運転車のテストドライブを行う際にはあらかじめ許可を取る必要があると主張する一方で、Uberはそれに対し、問題となっているクルマは「真の自動運転車」とはまったく別物であるため、許可を取るは必要ないと反論している。

Uberの自動運転車チームを率いるAnthony Levandowskiは、「自動運転車の規制に対するカルフォルニア州陸運局の法的な解釈の仕方に、私たちは謹んで反対いたします。特に、Uberがサンフランシスコで自動運転車のテストをする際には許可が必要だという点には同意できません」とコメントしている

Levandowskiは、9月中旬からピッツバーグで、そして今週からサンフランシスコでオペレーションを開始したUberの自動運転車を、Teslaの自動運転テクノロジーと比較して説明する。彼の主張とは、Teslaの自動運転車が公道を走るときには許可が必要ないのにもかかわらず、運転席にエンジニアを座らせているUberの自動運転車で公道を走る際に、なぜ許可が必要なのかというものだ。

「真の自動運転車」とは、人間による干渉や監視なしで走行できるクルマのことを指すとLevandowskiは主張しているのだ。「私たちはTeslaによる自動運転車の定義は正しいと思っています。そして、Uberの自動運転車はTeslaのクルマと変わりありません。私たちのクルマは人間のオペレーター抜きでは走行することができないのです。そうである以上、このクルマを自動運転車とは呼べないのです」と彼は語る。

もちろん、DMVはこの主張に同意していない。Uberの自動運転車が赤信号で停止しなかった様子がドライブレコーダーによって目撃されたことを受けて、当局はUberにオペレージョンの停止命令を出している。DMVはUberに宛てた手紙の中で、オペレーションを停止しなければ「差止請求を含む法的措置を取る」と忠告している。

DMVが考えるTaslaとUberの違いとは?Teslaのオートパイロット・モードでは、運転手はハンドルに手を置いておく必要がある一方で、Uberのエンジニアは自動運転車のハンドルから数インチ離れたところに手を浮かせている。また、Teslaのクルマを運転している最中にハンドルから手を話すと、音声と文字による警告が発せられるようになっている。警告を無視したまま走行を続けると、クルマは自動的にスピードを落とし、ハザードランプが点灯する仕組みだ。

今年の夏、Uberは自動運転車のテストドライブにジャーナリストを招待しているが、その際にはオペレーターがハンドルに手を置いておく必要はなかった。

Teslaは今後も完全な自動運転車の開発を目指すと発表してはいるものの、同社のクルマはまだテスト段階である ― さらに、同社はDMVからの許可も取得済みだ。

Levandowskiによれば、このDMVに対する反抗は「どの段階において自動運転車によるオペレーションが許可されるのかという原則に関わる問題、そして、非常に似たタイプのテクノロジーに対してルールが不規則に適用されているという重要な問題を」提起するものだという。

自動運転車に対する規制は州によってバラバラなのにもかかわらず、なぜUberは明らかに同社を受け入れていないカリフォルニア州でのオペレーションにこだわるのか。それに対するLevandowskiの回答は、Uberのエンジニアは、自分たちの成果を自分たちが住む街で見るという功労に値する人々だからである、というものだった。

「私たちが創りあげたテクノロジーが、自分たちが住む街、そして自分たちが働く街で動いているところを見たいのです」と彼はいう。

Levandowskiによれば、DMVから停止命令を受けたUberの自動運転車は、これからも乗客をのせてサンフランシスコの道を走り続ける。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

UberはBeaconが光るのが目印―フロントウィンドウのLEDデバイスで乗客が車を判別しやすくなる

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Uberは今日(米国時間12/15)、Uber Beaconという新しいデバイスを一部の都市で使用し始めると発表した。

新しいハードウェアは小さなBluetoothデバイスで、Uberのロゴの形状でさまざまなカラーでに光らせることができるLEDが組み込まれている。ドライバーがBeaconをフロントウィンドウの下部に貼り付けておけば乗客は遠くからでもどれが自分が呼んだUber車か見分けやすくなるというアイディアだ。最初にBeaconが導入されるのはアメリカのマイアミ、デンバー、ナッシュビル、イギリスのニューキャッスルだ。

もっとも完全に独創的なアイディアというわけではない。ライバルのLyftはすでにAmpという多色ディスプレイを採用している。Lyftのデバイスは裏側がドット文字のデザインで、車内の乗客にメッセージを伝えることができる。

UberのBeaconはそこまで凝っていないが、サイズは十分大きく、外側を向いたLEDは十分な光量があって雨や雪など悪天候下でも判別しやすそうだ。それにLyftのアイディアをそっくり頂いたというわけでもない。Uberはシアトルで1年前の12月からさまざまなカラーディスプレイのテストを続けていた。

最終的に採用されたバージョンは、上記のとおり、乗客にとって判別しやすいUberのロゴのデザインとなった。乗客はスマートフォンのUberアプリからカラーホイールを開いてBeaconの色彩を決められる。つまり同じ場所、同じ時間に別々の乗客がまったく同じ色を選んでUberを呼ぶというような可能性はごく小さい。

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Beaconはバッテリーを内蔵しており、Uberによれば「数日もつ」ということだ。また表面の色彩がプログラム可能なので、お祝い、特別な記念日、イベントなどのためにカスタム・カラーで光らせることもできるという。今回のBeaconのロールアウトは今年のニューイヤーイブをターゲットにしている。いつにも増してUberの需要が高まる季節だが、Beaconはドライバーと乗客双方の仕事を少し楽にしてくれそうだ。

Uberでは乗客が正しいUber車を見つけるプロセスを非常に重視している。乗客のピックアップの過程における行き違いや誤解は業務全体の効率を大きく低下させるおそれがあるためUberでは改善に大きな努力を払っているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uber曰く、自動運転車の信号無視は「人的ミス」

アップデート(7 PM ET)Uber広報は、上記ビデオの事象は人間ドライバーの責任であることが明らかだと話した。全文は以下の通り。

この事故の原因は人的ミスである。Uberを自動運転化することで道路は安全になる、と当社が強く信じている理由はここにある。この車はパイロットテストには参加しておらず顧客も乗せていなかった。問題のドライバーは、継続調査する間営業を停止している。

Uberは上のビデオに写っている事象を認識しており、自動運転テスト中のSUVがサンフランシスコで赤信号を無視しているように見える。この日Uberは当地で自動運転車の路上パイロットテストを開始していた。同社は現在正確な状況を調査中であるとTechCrunchに話した。San Francisco Examinerが公開したこのビデオは、サンフランシスコの認可タクシー会社であるLuxor Cabが運行する車に設置された車載カメラが捕えた。

タクシーのカメラに撮られたこの事象について詳しい情報を問われたUber広報担当者は、以下の声明を発表した。

安全は当社の最優先事項だ。この事象は認識しており、現在何が起きたかを調査している。

サンフランシスコでのUberの自動運転テスト車には、運転席に人間ドライバーが座り、助手席にも補助技術者が乗って運転中の測定や観測を行う。人間ドライバーは何か問題が起きた場合に、代って車を制御するために乗っており、交差点で完全停止に致らなかった今回の例も該当するはずだ。

ビデオの事象が起きた当時に人間ドライバーが制御していた可能性もあるが、その場合は別の問題が浮上する。以前ピッツバーグで行われたテストでは、同社が使用していたFord Fusionの自動運転テスト車による複数の事故が報告され、逆走運転の事例もあった。

自動運転車が無人では走行できないという事実は、カリフォルニア州の路上でテストを行うのに州DMV(車両管理局)の認可を受ける必要はないとする、Uberの理由の一つになっている(DMVはこの主張に異議を唱えている)。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Uber、サンフランシスコで自動運転タクシーの実験開始―〔アップデート〕州当局が中止命令

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Uberは今週火曜、サンフランシスコで 自動運転車に実際に乗客を乗せるタクシー営業の小規模な実験を開始した。Uberが自動運転による実車営業の実験を行うのはサンフランシスコが2都市目だが、カリフォルニア州の規制当局は快く思っていないようだ。州の運輸車両局(DMV=Department of Motor Vehicles)は自動運転車を州道で走らせる際にテストを行い、合格した相手に許可を出している。

DMVの自動運転実験テストに合格した車種のリストには20社が掲載されているが、Uberはその中に入っていない。DMVは「申請してテストを受けるべきだ」としているが、Uber側は「実験の内容に照らしてその必要はない」と主張している。

カリフォルニア州DMVの声明は「 〔自動運転車の走行実験にあたって〕実施各社の責任ある態度を要望してきたが、実験者が常に責任ある態度を取ると想定することは不十分であるかもしれない」と述べ、Uberがテスト手続きを行うよう強い態度で要求している。【声明は原文参照】

これに対してUber側は、実験の本質からみてDMVの許可を得る義務はないという立場を崩していない。つまり「自動運転車」といっても運転席にはドライバーが乗っており、ハンドル付近に手を置いて、不調があればただちに運転を取って代われる体制であるため、本質的には「人力による通常のタクシー営業である」という立場だ。

UberはTechCrunchの取材に対して今回の実験でDMVの許可を受ける考えがないことを確認した。またブログ記事に掲載された同社のAdvanced Technology Groupの責任者、Anthony Levandowskiのコメントの一部を以下のように引用した。

しかし根本的な問題はこうだ。いつ、またどのようにして企業は自動運転車テクノロジーを実際に運用すべきか? われわれにはこの点に関して独自のアプローチがある。多くの州ではこのテクノロジーに交通安全を大きく改善する可能性を見ている。またいくつかの州や都市は複雑な規制がイノベーションを不当に遅らせる状況に気づいている。ピッツバーグ市、アリゾナ州、ネバダ州、フロリダ州はこの面で特にリーダーの役割を果たし、プロ・テクノロジーであることを明らかにしている。われわれは当社の本拠であり世界経済に果たす役割も大きいカリフォルニア州が同様の見解に立つことを希望している。

Uberが運営地の規制当局と衝突するのはこれが初めてではない。これまではアメリカ国内でも国外でも規制との戦いで勝利を収めることが多かった。ただし今回の紛争の結果がどうなるかはもちろんまだ不明だ。

〔日本版〕カリフォルニア州はUberの自動運転タクシーの実験に対して中止命令を出したという。TechCrunchの続報

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トランプ次期大統領の戦略政策フォーラムにUberのカラニック、TeslaとSpaceXのマスクも参加

SARASOTA, FL - NOVEMBER 07:  Republican presidential nominee Donald Trump holds up a rubber mask of himself during a campaign rally in the Robarts Arena at the Sarasota Fairgrounds November 7, 2016 in Sarasota, Florida. With less than 24 hours until Election Day in the United States, Trump and his opponent, Democratic presidential nominee Hillary Clinton, are campaigning in key battleground states that each must win to take the White House.  (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

ドナルド・ J・トランプ次期大統領が設置する戦略政策フォーラム(Strategic and Policy Forum)が2人のスーパー経営者を選んだことが判明した。もっとも高い能力と成功への強い意思を持つ経営者のリストにテクノロジー界からトラビス・カラニックとイーロン・マスクが加わった。

今日(米国時間12/14)の発表によれば、カラニックとマスクの2人は非上場の巨大投資ファンドThe Blackstone Groupの創立者スティーブン・シュワルツマンが議長を務めるフォーラムに参加する。なお今回の発表ではPepsiCoのCEO、会長のインドラ・ヌーイもメンバーに加わっている。

今月初め、トランプ次期大統領のが設置を決めたこのフォーラムのメンバーにはアメリカ・ビジネスのビッグネームが並ぶ。 GMのトップ、メアリー・バラ、 JP Morgan ChaseのCEO、会長のジェイミー・ダイモン、資産運用会社BlackRockのCEO、会長ラリー・フィンク、Walt Disney Companのボブ・アイガー、Boston Consulting GroupのCEO、リッチ・レッサー、 IBMの会長、ジニ・ロメッティなどに加え、現役を退いていたGEの元CEO、ジャック・ウェルチ、ボーイングの元会長、ジム・マクナニーの名前もみえる。

フォーラムがどの程度ひんぱんに開かれるのかは明らかではないが、最初の会合は2月に予定されているという。

カラニックは声明で「このフォーラムのメンバーとなり、次期大統領にUberの乗客、ドライバー、運営している450以上の都市に影響を与えることがらについて意見を述べられることを楽しみにしている」と述べた。

SpaceXはマスクに任命を確認したがそれ以上のコメントは避けた。

マスクとカラニックの任命は、今日この後ニューヨークのトランプ・タワーで予定されているテクノロジー業界のトップとの会談の直前に発表されたことが興味深い。この会談にはOracleのサフラ・カッツ、Appleのティム・クック、Alphabetのラリー・ペイジ、Facebookのシェリル・サンドバーグ、Microsoftのサティヤ・ナデラらが参加する。

Kalanickが参加を決めたのはUberが株式上場を控えてそのプロセスをできるだけ円滑に進めたいという戦略的狙いがあったかもしれない。Twitterを活用し株式市場を操れるトランプとの衝突は避けたかったに違いない。一方、Muskの動機についてははっきりしない。

SpaceXとTesla Motors(7年前のクリーンテック・ブームの際のベンチャーキャピタルの投資先で生き残ったほぼ唯一のスター企業)の創業者でトップであるマスクは選挙期間中はトランプの激しい批判者だった。

マスク以外にも、特に地球温暖化に関して、トランプと見解を異にする参加者は多い。

エネルギーの専門家、ダニエル・ヤーギンは『石油の世紀―支配者たちの興亡』(The Prize)で ピューリッツァー賞を受賞しており、『探求――エネルギーの世紀』(The Quest)もベストセラーとなったが、代替エネルギーに関して詳しく述べている。Wal-MartのCEO、ダグ・ミロンはオバマ大統領の政策を支持する活動を行ってきた。またフィンクとアイガーは民主党の選挙運動への献金者だ。

現実を見れば、この委員会はビジネスの世界に向けた超党派的な飾り窓だろう。シリコンバレーが重視する課題についてのトランプ政権の態度は閣僚級人事をみれば明らかだが、テクノロジー系の任命はまったくない。

次期政権の閣僚は、たとえばエネルギー省長官の候補、リック・ペリー・テキサス州知事は以前その解体を主張していた(本人は忘れているのかもしれないが)。教育省長官候補のベッツィ・デヴォスは公立学校が非効率的だと主張してきた。国務長官候補のレックス・ティラーソンは非常に親露的人物だ(ロシア政府はハッキングによって統領選挙に影響を与えたことを疑われている)。

気候変動、教育、インターネットのセキュリティーはいずれもシリコンバレーが重視する課題だが、トランプ政権の閣僚候補はいずれも戦略政策フォーラムのメンバーの多くとは政策的にも倫理的にも反対の立場を取っている。

このような事実からすると、戦略政策フォーラムの提言がさほどの重みを持つとは考えにくい。

今月初めにこのフォーラムの設置を発表した大統領政権移行チームは、「重要な課題に関して…官僚主義を排し、率直かつ超党派的な意見を大統領にインプットする」ことが目的だと述べている

画像: Chip Somodevilla/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Jay-Zも出資する「プライベートジェットのUber」、JetSmarterが1億500万ドルを調達

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プライベートジェットのマーケットプレイスを展開するJetSmarterは現地時間12日、シリーズCで1億500万ドルを調達したと発表した。JetSmarter CEOのSergey Petrossovによれば、プレマネー・バリュエーションは15億ドルだったという。

今回の大型ラウンドで調達した資金を使用して、同社はアジアとラテンアメリカ地域へのビジネス拡大を目指す。同時に、アメリカ国内のフライト数とルート数の拡大も予定している。

先日TechCrunchでも紹介したJetSmarterのアプリでは、同社のマーケットプレイス上にあるプライベートジェットの予約をすることができる。ユーザーに付き添う人の数が多ければ、ジェットを貸し切りで利用することも可能だ。

アプリのダウンロード自体は誰でもできるが、実際にJetSmarterのサービスを利用する前には、軽いバックグラウンドチェックと、「コア・メンバーシップ」として初年度に1万5000ドルを支払う必要がある。メンバーシップに加入したユーザーは以後、さまざまな経路を飛行するプライベートジェットを「無料で」予約することができるが、メンバー以外の人が同乗する場合には同乗者用の運賃を支払う必要がある。ジェットを貸し切る場合にも料金が発生する。

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JetSmarterのアーリーステージから出資をするサウジアラビアの王族メンバーと、ヒップ・ホップ界のスターであるShawn “Jay-Z” Carterは、今回のラウンドで出資比率をさらに高めている。

本ラウンドから資本参加している新規投資家は、アブダビを拠点とするエクイティファンドのJetEdge、ロンドンのKZ Capital、そして、名称非公開のカタールのプライベート・エクイティファンドと戦略的投資家たちだ。

現在、JetSmarterのサービスはビジネス旅行や観光旅行のハブであるニューヨーク、シカゴ、フォートローダーデール、ラスベガス、アトランタ、ロンドン、パリ、モスクワ、ドバイ、ミラノなど、50の地域で利用することができる。Petrossovによれば、同社は2017年の終わりまでに80から100の地域でサービスを展開することを目指している。

また、JetSmarterはアメリカ国内におけるフライト数の拡大も目指しており、フロリダ-ボストン間、ニューヨーク-ワシントンD.C.間、サンフランシスコ-シアトル間のルートなどを今後追加していく予定だ。

今回の資金調達の発表にあわせて、XOJETのプレジデント兼CEOであり、プライベート・エクイティファンドのTPGでシニアアドバイザーを務めるBradley Stewartが、JetSmarterの取締役に就任したことも発表されている。JetSmarterは以前からXOJETと業務提携しており、このパートナーシップによって同社は北米地域のフライト数を拡大することができた。

JetSmarterと競合関係にあるのは、定額制の「飛び放題」サービスを提供するSurAir、JetSmarterと同じくメンバーシップ制を採用しているWheelsUpStrataJetなどがある。

Jay-Zも出資していたBlackJetやBeaconなどの同業他社が失敗していくなか、JetSmarterはプライベートジェット業界で急速に成長を続けている。

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JetSmarter CEOのSergey Petrossov

「私たちは同業他社とは違います。JetSmarterでは予測アルゴリズムを利用して需要を予測し、それを地域ごとに把握しています。これにより、各マーケットが供給過剰の状態になるのを防ぎ、そこにある需要にちょうど見合った分だけフライトを供給することができるのです。他社はフライトを過剰に供給してしまう場合もあり、座席利用率が20%ということもあります。私たちはジェットを回送させることはありません。そして、フライトの座席利用率は90%です」とPetrossovは語る。

JetSmarterは自社でジェットを所有していない。その代わりに、自社でパイロットを雇い、ジェットのオーナー、オペレーター、キャリアと共同でジェットの管理と整備を行うことで、規制の多い航空業界のコンプライアンスに対応している。

Petrossovや投資家は、ソフトウェアを活用して固定資産をできるだけ減らしたJetSmarterのビジネスモデルを「空のUber」と比喩することが多い。

同社はUberと同じく、サービスの「オンデマンド性」を強化していきたいと考えている。メンバーシップに加入していないユーザーでも数種類のフライトを利用できるような仕組みだ。可能性として、メンバー以外のユーザーが1マイルあたり1ドルの運賃でボストン-ニューヨーク間のプライベート・フライトを利用できるようなサービスが考えられるだろう。

Petrossovは、「私たちがやろうとしているのは、空の旅の楽しさを復活させることなのです」と語る。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Uberのライバル「Zoox」のバリュエーションは15億ドル

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自動運転車の競争が激化している。いまだ秘密の多いスタートアップであるZooxは、まだ最初のプロダクトを発表する前にもかかわらず、15億ドルの価値があると判断されたようだ。

TechCrunchは、先日Zooxが香港のヘッジファンドであるComposite Capitalから5000万ドルを調達したという情報の裏付けを取ることに成功した。この資金調達の情報を最初に報じたのはThe Wall Street Journalだった。この資金調達は、10億ドルのバリュエーションで2億ドルを調達した前回の資金調達から1ヶ月も経たないうちに行われている。

Zooxはクルマそのものを消費者に販売するのではなく、Uberのライバルとなるようなサービスを創りあげようとしている。私たちが聞いたところによると、このサービスのベータ版は来年にもローンチされる予定だという。どのマーケットでローンチするかはまだ未定だ。

同社を立ち上げたのは、スタンフォード大学で自動運転車の研究グループを指揮するJesse Levinsonと、オーストラリア人起業家のTim Kentley-Klayだ。Menlo Parkを拠点とするZooxが設立されてからまだ2年といったところだ。それにもかかわらず、同社はすでに100人以上の従業員を抱えており、その中にはTeslaやAlphabet、Apple出身の者もいる。

今年初めにGeneral Motorsが自動運転のCruise Automationを10億ドルで買収したことで、自動運転車に関連するスタートアップのバリュエーションが引き上がっている。今回の情報の提供者によれば、自動車企業は今もこういったスタートアップの買収を検討しているという。

すでにUberは自動運転車による配車サービスのテストをピッツバーグで開始している。さらにはOttoの買収も完了し、彼らの自動運転車の開発チームはさらに強化されることとなった。

しかし、いまだに自動運転車に対する規制は多い。Comma.aiがそういった規制の多さに白旗をあげたばかりであり、失意の真っただ中といったところだ。

Zooxは以前にもDFJ、Lux Capital、Blackbird Venturesなどから資金を調達している。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

UberのOtto自動運転トラックの最初の積み荷はビール5万本

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近い将来、人間のドライバーに混じって自動運転車が路上を走るようになることを疑っている向きは上の写真をよくご覧いただきたい。

Uberの子会社Ottoは自動運転トラックによる最初の配送を行った。このセミトレーラーは高速道路を長時間走行したが、写真のドライバーは実際に運転席を離れている。最初の配送ではコロラド州フォート・コリンズからコロラド・スプリングスまでバドワイザー5万本が無事に運ばれた。

初の配送では熟練したプロのドライバーが市街地を運転し、交通信号、複雑な交差点、犬を散歩させる歩行者といった困難な障害を避けた。その後トラックがインターステート25号に乗ると、道路状況ははるかに簡単にになり、この高速道路部分120マイル(約190キロ)はOttoのトラック自身が運転した。その間、人間のドライバーは運転席を離れることがあった。このトラックはLevel 4自動運転基準を完全に満たしているので、高速道路では自律運転が可能だった。トラックは前車との間隔を十分に取って走行し、システムがやむを得ないと判断したときを除いて、ほとんどレーンチェンジをしなかった。

Ottoのテクノロジーには3万ドル相当の後付けハードウェアが含まれる。このハードウェアは自動運転対応の各種大型トラックに取り付け可能だという。サンフランシスコ地域には6台のテスト車両が配置され、ソフトウェアをさらに改良するための実験走向が繰り返されている。運送業界は深刻な問題に直面している。最新の推計によれば、適切な資格のあるトラック・ドライバーの数は実際の需要と比較して5万人近く不足しており、しかもこのギャップは拡大しつつあるという。Uberの試みはこの問題の解決を目指すものだ。

UberがOttoを買収したのはこの8月のことで、「Ottoは(Uberとは別の)独自ブランドとして運営される」と発表された。一般の乗用車に比べてトラックの自動運転化はずっと早いだろう。近くわれわれは自動運転トラックを路上で頻繁に見ることになるはずだ。

Wiredから

〔日本版〕 Wiredの記事には独自取材のビデオがエンベットされている。Ottoの自動運転トラックはアメリカで標準的な18輪セミトレーラーで、運転者は高速道路部分では実際に運転席を離れてキャビン後部のスペースで休憩している。フォート・コリンズはコロラド州デンバーの北100km、コロラド・スプリングスはデンバーを挟んで南側。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Uberが買収したOttoが自動運転トラックによる長距離輸送業を2017年に開始予定

Yellow truck on the road. Santa Barbara county, California

Uberはこの夏、自動運転トラックを使って運送業を営むOttoを6億800万ドルで買収し、その実稼働を来年と予定している。

Ottoの協同ファウンダーLior Ronがロイター通信に、同社が2017年に長距離運送業を開始する、と述べている。以前の本誌記事にも書かれているように、Ottoは既存のトラックを自動運転車に改造し、アメリカのハイウェイを走れるようにする。ただし完全自動運転ではなく、同乗する人間ドライバーがときおり手を出す必要がある。しかし将来的には、人間ドライバーはますますひまになり、また配送の速度は向上するだろう。

それはまだ開発途上の技術だが、今後はUberの強力な支援のもとに、倉庫業や商店などの輸送業務に同社の部分的自動運転技術を提供し、輸送の効率化に寄与していくつもりだ。

Ronはロイターにこう語っている: “Uberでは、ボタンを押せば3分で車が来る。しかし運送業界では、あっちこっち電話をして空いてる車を見つけるのに5時間かかるのが普通だ。今のトラック運送業界の効率なんて、そんなものさ”。

Uberは今、その輸送ビジネスを多様化しようとしている。たとえば食べ物を配達するUber Eatsは、今後少なくとも22か国で展開して、グローバルな成長を目指すつもりだ。でもロイターが意見を聞いた専門家たちは、Uberの運送業進出に関しては懐疑的だ。しかし、今やLiorと彼のチームは、積極的に将来のパートナーと話を進めている。最初は6台のトラックでスタートするが、早期に倍増したい意向だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

タクシーの次は出前——フードデリバリーの「UberEATS」、150店舗超のレストランと組んで東京でサービス開始

会見の様子。右から3人目がUber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏

会見の様子。右から3人目がUber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏

このひと月ほど、僕のFacebook上には「Uberでお仕事をしませんか?」なんて広告が回っていたのでそろそろスタートするのではないかと思っていたが、CtoC・シェアリングエコノミーモデルの配車サービスなどを展開するUber、その日本法人であるUber Japanが9月28日、フードデリバリーサービスの「UberEATS」の提供を開始すると発表した。注文の受付は9月29日11時から。

UberEATSはUberが提供するフードデリバリーサービス。ユーザーとレストランを結ぶのは、Uber同様、事前登録したパートナー配達員だ。これまで世界7カ国33都市でサービスを展開。今回スタートする東京(当初は渋谷区および港区:渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木・麻布、順次対象エリアを拡大する予定)が34都市めとなる(世界8カ国め)。

専用のスマートフォンアプリを立ち上げて新規登録(もしくはUberアカウントでログイン)すれば、すぐにサービスを利用できる。ユーザーはログイン後にアプリ上で配達したい位置、デリバリーして欲しいレストランと食事を選ぶだけ。

注文は即座にレストランの専用アプリに通知されるので、レストランは混雑状況や調理時間を考慮して配達予定時間をユーザーに通知。これに合わせて同時に最適なロケーションにいる配達員に配達リクエストが届くため、配達員は調理が終わる頃にレストランに行き、そのままユーザーに食事を配達する。支払いはUber同様にあらかじめ登録したクレジットカードで行うため、現金を用意する必要もない。

UberEATSのしくみ

UberEATSのしくみ

なおローンチ時点での東京の配達員は1000人以上が登録。またユーザーにかかる配達料は当初無料としている。Uber側は店舗の売り上げの一部を徴収(店舗ごとに条件を設定しており、詳細は非公開としている)しており、配達員にはさらにその一部を支払う(こちらも詳細非公開)としている。

Uber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏は出前、宅配といった文化自体が日本では決して新しい者ではないとする一方、「従来は何かしらの制約があった」と語る。出前を受け付けている飲食店に電話し、その中出前可能なメニューから選ばなければいけないということだ。UberEATSではさまざまなレストランのメニューをオーダーできることから、制約のない、食を起点にしたさまざまなライフスタイルを提案できると語った。例えばピクニック先に人気レストランのメニューをそのまま持ってくるなんてこともできるということだ。加えて高橋氏はまたレストラン店舗、パートナー配達員、ユーザーそれぞれのメリットについて次のように説明した。

店舗のメリット
初期投資なしにデリバリーを開始できる(提携レストランの6割が初めてデリバリーに参入。タブレットの貸与も)
固定費を変えずに売上を向上できる
新規顧客の獲得が可能

パートナー配達員のメリット
一般的なパート、アルバイトとは異なり決まったシフトがない
勤務場所の指定がない
支払いは週単位に行う
サポートも用意

ユーザーのメリット
店舗と同じ価格で商品を受け取ることができる(価格は店舗と同様に設定する必要がある)
配達状況や配達予定時間もアプリで確認できる
クレジットカードを登録すれば現金のやり取りが必要ない
アプリは世界で共通なので、訪日外国人や海外旅行中で注文できう
トラブルへのサポートも用意

Uberは2014年3月に日本でのUberBLACK(いわゆるハイヤーの配車サービス)からサービスを開始。その後もエリアを限定してライドシェアなどのサービスを試験提供してきたが規制の壁もあり中止せざるを得ない状況だった。一方でデリバリーといえば最近ではLINEが撤退し、スタートアップなどが苦戦している領域。海外で先行してサービスを展開するUberの勝算はいかほどのものだろうか。

  1. UberEATSの配達用バッグ

    UberEATSの配達用バッグ。ほかにもリュックタイプのものもある
  2. 発表会ではハンバーガーやパスタ、まぜそばなどが用意されていた

    発表会ではハンバーガーやパスタ、まぜそばなどが用意されていた
  3. Uberが提供するランチボックス

    Uberが提供するランチボックス。店舗は自前の容器も使用できる

中国のタクシー配車サービス大手Didi、今度は自転車シェアリングに出資

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中国最大の自動車配車サービス会社Didi Chuxing(滴滴出行)が、自転車分野にも進出するかもしれない。正確にいえば、自転車シェアリングだ。Uberの中国ビジネス部門を買収締結中の同社は、米国時間9月26日、自転車の貸出サービスを提供する新手のスタートアップOfoに出資したと発表した。

今回の出資規模は何億ドル規模ともいわれているが、Didiの持分がどれだけかは不明だ。Ofoは今月すでに400万ドルの出資を受けたと伝えられているが、Didiの資金がそのラウンドの一部であったのか、あるいはその追加分であったのかは定かではない。

実際のところ、両社とも多くは語っておらず、Didiによる発表も1段落のみにとどまった。しかしどちらも今回の出資を「多層的なパートナーシップ」の一部であると呼んでいる。我々はこの言葉の真意について、またOfoとの提携プランについて追加情報の提供を依頼したが、Didiからの回答はなかった。

しかし行間を読むならば、Didiはこのタイアップによって、Ofoを自社アプリのオプションとして提供することで自転車業界へ進出する機会を得られる可能性がある。Didiの提供サービスは認可済みドライバーによるプライベートなタクシーサービスにとどまらず、運転代行、テストドライブ、コミュニティーバスサービスなどにも対応している。Uberなどの同業他社がすでに提供しているサービスにも同様に着手することになれば、学生軍団が漕ぐ自転車によるフードデリバリーや荷物の宅配のようなサービスが街中に広がるかもしれない。

Ofoは2年前に、北京大学のスタートアッププログラムの一環として設立された。中国の20都市に自転車7万台を保有し、150万人の登録ユーザーによって毎日50万回の利用があるという。中国における自転車の人気は絶大だ。北京のみでも900万台あるといわれ、それに着想を得たポップソングすら存在している。自転車の利用者は特に学生層が多い。

Didiによるその他の投資先をたどれば、さらに明確な戦略が「線」となって浮かび上がってくる。同社にはUberのライバルであるLyft(米国)Ola(インド)Grab (東南アジア) に、「成功事例」の共有や、各国を旅行するユーザーに各サービスの利用を促進するなどの連帯的連携の一部として出資した過去がある。しかし、DidiによるUberの中国部門の買収は、この提携関係を不確実性へと投げ入れた。 今回の取引によってこの中国企業はUberの投資者となり、代わりにUberがDidiの株主となるからだ。

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(翻訳:Ayako Teranishi / website

Uberがドライバーの本人確認のため自撮りチェックを導入予定

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Uberは新たに自撮りセキュリティチェックを導入予定で、今後同チェックをアメリカ全土に拡大していく計画だ。これはドライバー向けのチェックで、ドライバー詐称への対策とされており、今後は、ユーザーをピックアップするドライバーが、アプリに表示されている写真の人物と同一であることの信用性が高まる。

このシステムは、Real-Time ID Checkと呼ばれており、Microsoftの機械学習テクノロジーを利用し、その場で撮影された自撮り写真と登録写真を比較することができる。Uberは、このシステムをドライバー・ユーザー両者のためのセキュリティ対策だと話している。ドライバーは、”定期的に”料金を受け取る前に、Uberのドライバー用アプリを使って自撮りするように促され、もしもその写真が登録写真とマッチしない場合、Uberがさらなる調査を行うため、そのドライバーのアカウントは凍結されるようになっている。

ユーザー側の利点は明白で、少なくとも自分のドライバーが、他のドライバーの携帯電話やアカウントを使った人ではなく、Uberの(バックグラウンドチェックを含む)採用プロセスを経た人だと信用することができる。もちろん、これは完璧な安全策ではないが(そもそもそんなものは存在しないが)、ドライバーの身元を確認することで、ユーザーが危険にさらされるような、極端なケースを防ぐことには間違いなくつながるだろう。さらに、中国で発生している”ゴーストドライバー”のような事象も防ぐことができると考えられる。

real_time_id_check_frame_1080-1一方Uberは、このシステムがドライバー側の利点も考慮して作られた安全策だと語る。ログインごとに追加の確認作業が発生することで、ドライバー詐称を防ぎ、ドライバーをなりすまし犯罪から守ることができると同社は考えているのだ。どうやらUberは、銀行口座のセキュリティのようなものを想起させようとしているのだろう。TechCrunchは、登録写真との比較目的に撮影された自撮り写真の、データ保管に関するポリシーについてUberに尋ねたが、この記事の公開時点では回答を得られていない。

自撮りチェックシステムは、パイロットテストがはじまってから数ヶ月が経過しており、Uberによれば、報告されたミスマッチのほとんどが、そもそも登録写真が鮮明でないことによるものだった。さらにUberは、テストに参加したドライバーの99%は問題なく照合されたと話しており、システムが照合に失敗したうち、ほんの数%だけのケースで、実際のドライバーが登録者とマッチしていなかったことになる。

Real-Time ID CheckはUberがオペレーションを行っているアメリカの都市で導入される予定だ。海外市場でも導入予定なのか(また、導入されるならいつ頃を予定しているのか)についてUberに確認したが、こちらについても未だ回答を得られていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Flywheel、タクシー用のUberライクなシステムをニューヨークに拡大

taxi

タクシー用アプリのスタートアップ、Flywheelが正式にニューヨーク進出した。従来型タクシーがUberやLyftに対抗するための基盤を作る。最近Flywheelは、ニューヨークのタクシー・リムジン委員会から同社のスマートフォン用タクシーメーター、TaxiOSを利用するための承認を得た。TaxiOSには、配車、支払い、ナビ、およびGPSベースのメーター等の機能がある。

Creative Mobile TechnologiesのArroや、VerifoneのWay2Ride等のライバルも、UberやLyftに代わるシステムとして、独自のデジタル配車・支払いアプリを提供している。

「これまでは典型的な二社による寡占だった」とBhambaniは言った。「この10年近く、この2社だけが認可を受けていた。われわれが破壊したいのはこの複占状態だ」。

昨年12月、FlywheelはTaxiOSのサンフランシスコでのパイロットテスト成功を経てカリフォルニア州から利用許可を得た。現在サンフランシスコを走るタクシー約1800台のうち、400台がTaxiOSを使用している、とFlywheelのCOO、Oneal Bhambaniが私に話した。ニューヨークでは、今年末までに従来型タクシーメーター1000台を置き換えることを目標にしている。

その過程でFlywheelは、Samsungのタブレットを後部座席に置いて乗客がWi-Fiスポットやエンターテイメントを利用できるようにしたいと考えている。過去2年間FlywheelはEコマース会社のライストマイル配送も行っている。Bhambaniは請負っている会社の数も名前も明らかにしていないが、ウォール街の噂によると、Amazonがその中の一社だという。

現在Flywheelは、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトル、今回のニュークを含め7都市で運用されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロボットが居る、今そこにある未来

TO GO WITH STORY BY KATHY KATAYI AND JUNIOR KANNAH
This picture taken on January 22, 2014 shows a traffic robot cop on Triomphal boulevard of Kinshasa at the crossing of Asosa, Huileries and Patrice Lubumba streets. Two human-like robots were recently installed here to help tackle the hectic traffic usually experienced in the area. The prototypes are equipped with four cameras that allow them to record traffic flow, the information is then transmitted to a center where traffic infractions can be analyzed. The team behind the new robots are a group of Congolese engineers based at the Kinshasa Higher Institute of Applied Technique, known by its French acronym, ISTA. AFP PHOTO / JUNIOR D. KANNAH        (Photo credit should read Junior D. Kannah/AFP/Getty Images)

【編集部注】著者のAllan Martison氏はStarship TechnologiesのCOOである。

Walmartは、自律ショッピングカートの実験を行っている。Domino、Uber、そしてAuroは自動運転に多額の投資を行っている。ロボットは、警備員として働き、手術を行い、食料品店の在庫をチェックし、倉庫作業を支援し、ルームサービスを届け、海底の宝物を探してくれさえする。

ロボット工学が制御された環境を離れて、人間の側の実世界に関わるようになるとき、疑問が残される:私たちがロボットとお互いにやりとりを行い、働き、語りかけるやりかたにどのような影響を与えるのだろうか?

マシンとの相互作用

すでに操縦者がオートパイロットを使って、ドローン、調査ロボット、そして自動運転車を操作しているところを見ることは当たり前になってきている。これらは、単なるサイエンスフィクションの中の壮大なビジョンではない;それはいまや現実なのだ。そして、私たちの日常生活におけるロボット利用の最も驚くべき成果の1つは、ほとんどの人が、それにまったく気づいていないようだということだ。

例えば、自動配達のために使用されるロボットが、より普及するにつれ、あなたの通勤の足が、そこにいる誰か他の人によって提供されるだけでなく、他の人々の流れに違和感なく混ざった異なる形状や大きさのロボットによって提供されることも考えられる。

あなたが食料品の買い物をしているときに、頭上をドローンが飛んで在庫のチェックを行う一方で、自動ショッピングカートが後をついてくる。その一方、裏の倉庫ではロボットたちが忙しくアイテムを選び出し、オーダーに応えるために商品をある箇所から別の箇所へと動かしていく。

これは、すでにサンフランシスコのStanford Shopping CenterとUserの自動車検査場で見ることができる。私たちのオフィス、ショッピングモール、そして小売店は、人間の警備員が伴ったマシン警備員によって保護される。

OceanOneのようなロボットも登場するだろう。深海作業でダイバーと一緒に働き、ダイバーが到達できない深度から宝物のようなアイテムとデータを回収する人魚のようなロボットだ。実際、人類がこれまで敢えて行こうとしていなかった場所で私たちと一緒に働いてくれる、様々なロボットがこの先生み出されることだろう。

ロボットの存在で、法律や規制はどのように変わるのだろう?

ロボットは、誰と何が公共の場所を移動することを許されるのかについての、新たな先例を設定する。現在、歩道上を走る自律車両に関する規制は、市ごとそして国ごとに異なっている。しかし、一つだけ確かなことがある。ロボットが日常的なものになるにつれ、議会はより注意を払わなければならなくなり、ロボットとそれを使う企業に対する規制と保護を決めていく必要がある。

欧州議会が今年5月に起草し、欧州委員会に考慮を促した動きは、以下のようなものだった「少なくとも、最も洗練された自律ロボットは、特定の権利と義務を有する『電子人間』(electronic persons)のステータスを持つものとして扱うことが可能である」。これは、人間の労働者に対する場合と同じように、ロボットに対する社会保障を支払う責任を企業に負わせるものだ。

すでに操縦者がオートパイロットを使って、ドローン、調査ロボット、そして自動運転車を操作しているところを見ることは当たり前になってきている。

法案はまた、自律ロボットと法的責任をカバーする基金の設定を同時に行う登録制度を提案したり、組織が人間の代わりにロボットを使うことによって可能になった社会保障の節約額を税収のために宣言させることを提案したりしている。この動きにはドイツのVDMA(エンジニアリング協会)などの組織からの強烈な反対が起きていて、議会を通過するには多大な政治的バックアップを必要とするだろう。結果はどうであれ、この動きはロボットの権利とそれらに対する人間の責任に関する重要な疑問に光を当てることになった。

米国内には、既にロボットが特定の作業をすることが許された場所が沢山ある一方で、多くの州ではまだ具体的な規制の検討が必要とされていない。ワシントンD.C.が最近、「Personal Delivery Device Act of 2016(パーソナル配送デバイス法2016)」という法律を制定して米国におけるロボット規制に先鞭をつけた。この法律は配送ロボットに関する規則と規制を概説し、そして、この種のロボットが今後国の首都内で稼働することを許諾したものだ。この法律は、より多くの市や州が、こうした新しいテクノロジーに対処する重要性に気づかせるための1つの例となるだろう。

連邦航空局(FAA)は、メーカーや政治家からの多大な圧力を受けた後、6月に55ポンド以下の小型ドローンの商用利用に関する運用規則を発表した。規則は、多くの者が望んでいたものよりも厳しいものだった。パイロットは有資格者でなければならず、ドローンは常に視界の中に留まっている必要がある。パイロットはまた、移動する車両に乗っていることはできず、またTSA(運行安全局)による審査を受ける必要がある。

規制によれば、ドローンは最高で400フィート(約121メートル)の高さまでしか飛ぶことができない。伝えられる限り、規則への反応は好意的なものが多かったが、その影響で、Amazonはドローン配送のテストをより田舎や郊外の地域で行うために英国政府とパートナーを組むことになった。英国民間航空局はAmazonに、FAAの規制では拒否された配送テストの許可を与えた。

自律型ロボットの登場が、多くの日常タスクに対する私たちの理解を変えてしまうことは間違いない。それはサービス提供者や配送業者との対話のやりかたを変えてしまう。私たちのロボットに対する認識は、道路上、ショッピングセンター、そして家庭でありふれたものになるにつれ、進化を続ける。毎日の通勤で、仕事の場で、そして余暇の時間で、ロボットと人間のやりとりは普通のものとなって行くだろう。

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(翻訳:Sako)

Squireは理髪店にUberの利便性をもたらす

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先週Y CombinatorのSummer ’16 Demo Dayでお披露目されたSquireは、理髪店のためのソフトウェアを提供している。サロンでもなければビューティーパーラーでもなく、他のどんな場所でもなくて…ただの理髪店向けなのだ。

それでは、その独自のソフトウェアプラットフォームに存在理由を与えられるほどに、理髪店のどんな点がユニークなのだろうか?いくつかの点が挙げられる。

まず、ほとんどの顧客は、理髪店の予約は髪を切る当日に行う。サロンのように何週間も前にではない。さらに、多くの理髪店はその席を、独立した事業主としての理髪師に貸している ‐ これが典型的なサロンに比べて、バックエンドの仕組みを少し変わったものにしている。

さらに理髪業界は、正確に言えばニッチではない。メンズ整髪業界は今年、全体で200億ドル以上の規模になる、そして世界の理髪店は明らかにその巨大な一角を占めているのだ。

したがって、これらのユニークなユースケースをサポートし、その顧客が使う200億ドルの一部を掴むため、Squireは顧客と理髪店所有者のためのプラットフォームを構築したのだ。

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Squireの顧客向けアプリ

顧客対応プラットフォームは、ユーザーが近くの理髪店を見つけて、電話またはSMSの必要なしに予約をすることができるモバイルアプリとウェブサイトだ。それに加えて、キャッシュレスで理髪師に料金とチップを支払うことができる。ヘアカットの予約(とその支払い)を、まるでUberのように簡単にできるので、顧客はそれを喜ぶし、普通は立ち寄らないような新しいお客さんを連れて来てくれるので、店側も嬉しいのだ。

理髪店管理のためのバックエンドのプラットフォームは、もう少し複雑だ。これは、顧客リレーションシップ、支払い、スケジュールなどを扱う – Squireによれば「どんなお店でも必要とされる全てのテクノロジーを」提供するのだ。

理髪店のような伝統的な産業にハイテクソリューションを持ち込むことは、通常は典型的な失敗のレシピである ‐ レストラン業界が辿ってきた10年に及ぶオーダーとデリバリーテクノロジーの適合の痛みを見るだけでそれはわかる。しかしSquireの共同創業者であるSonge LaRonとDave Salvantによれば、理髪店オーナーからの反応は、そうしたものとは全く逆のものであるそうだ。

2人はすぐに、理髪店オーナーたちはすでにテクノロジーが彼らの業界の利益向上を手助けしてくれることを理解していて、この全体テクノロジーに乗る準備ができていることを発見した。

さらに、オーナーたちは明らかに、顧客が望むものを与える必要があることを理解していた、そして間違いなく顧客はモバイルで予約や支払いができるようになることを望んでいたのだ。

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Squireの理髪店向け管理画面

Squireは現在、ニューヨークとサンフランシスコの100あまりの理髪店で採用されていて、来年には1000店舗を目指している。同社はまた、まだ現金やカードで支払いたい人々にも満足して貰えるように、POSシステムを展開することを計画しいている。

興味深いことに、サービスは現在それを利用したい理髪店には無償で提供されている ‐ 要するに同社はなるべく多くの理髪店を巻き込みたいと考えているのだ、そしてその上で会計やマーケティングにチャージすることで収益を挙げようと考えている。顧客は現在1取引当たり1ドルを支払っているが、それはほとんど収益源としては機能していない。Squireの収入はできるだけ多くの理髪店に参加して貰い、徐々に新しいサービスを提供することによってもたらされるのだ。

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(翻訳:Sako)

サンフランシスコでの相乗りサービスで、Uberの足元を脅かすGoogle

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Googleがサンフランシスコで独自の相乗りサービスを実施していることを、 ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。この動きはGoogleをUberの直接的な競合にするもので、Alphabet幹部であるDavid DrummondがUberの取締役会を辞任した、という最近のニュースとも整合する。WSJによれば、Googleの新製品は5月にパイロットプロジェクトが開始され、Googleが所有するWazeアプリを使用して相乗り希望の通勤者をつないでいる。

この計画はおそらくこの秋には全サンフランシスコ居住者に対してオープンになると言われている、その先に見込まれる拡張を見越してのことだ。そしてUberとは違い、これは同じ方向に向かうドライバーと乗客を一緒にするための、マッチングサービスの性格が強いものである。料金もまた安くなる ‐ WSJのレポートでは、このピアツーピアの共同運行アレンジをGoogleは意図的に安くしていると述べている。UberやLyftのように専用の資格を持つプロのドライバーが参加したくなるようなものとは対照的だ。

これまでのWazeの運用モデルは、クラウドソーシングナビゲーション情報を経由してドライバ同士をつなぐことに焦点を当てていた。ユーザーは、事故、沿道障害物、嵐や交通渋滞のようなものをレポートし、それらは他のドライバー間ですぐに共有されている。Googleは、2013年にWazeを買収した直後に、そのクラウドソーシングナビゲーションデータを主にGoogle Mapsの中で使い始めた。

パイロットプロジェクトでは元々Googleを含む、サンフランシスコに拠点を置く2万5000の大規模なハイテク企業の従業員に乗客を制限しており、1日の乗車数は2回までとされていた。WSJによれば、新しい拡大により、ドライバーも乗客も等しく「Wazeアプリの利用者なら誰でも」利用できるようになる。

UberとGoogleが採用するドライバーのモデルは異なっているが、その究極の目標はおそらく同じである:無人タクシーだ。Googleは、相乗りモデルの中に自動運転車を投入することを考えていると言われている。そして、WSJも触れているが、Googleの最近のビジネス組織変更は、自動運転車を最高の状態で市場に投入するにはどうすればよいかをGoogleが真剣に考えていることを示唆している。

かつてGoogleとUberは、非常に密接な関係を持っているように見えた、その中にはGoogleからオンデマンド乗車会社への相当額の投資や、Google Maps公式アプリの中に、Uberを移動オプションの追加モードとして取り込むようなアレンジなども含まれていた。

最近ではしかし、この関係は変容した。信頼できる情報源によれば、内部的にはUberはGoogleの地図製品への依存度を完全になくそうと真剣に努力している最中だそうである。これはフィナンシャル・タイムズが7月下旬に報告した内容とも一致する。

より詳細な情報を求めてGoogleに問い合わせを行ったが、彼らは私たちの要請に対して反応していない。

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(翻訳:Sako)

API至上主義の愚

Colorful ceramic cube texture and background

【編集部注】著者のDavid Lee氏は、RingCentral社のプラットフォーム製品担当副社長である。

すべての重要な技術は、ハイプサイクルを通過する。

おそらくガートナーによるハイプサイクル図を見たことがあるだろう:期待が膨らみ、それが失望へと転じて、やがてテクノロジーの価値に対する実際の理解が訪れる。

もしジェットコースターから完全に落ちてしまわなければ、「世界を変革する」という約束はやがてありふれた現実に姿を変えていく。

ハイプ・サイクルガートナーハイプサイクル

クラウドAPIはこのサイクルをかなり奥まで進んできた。その中の優れたものたちは日々重要なビジネスサービスに力を与えている。それでも「APIエコノミー」は、定期的に誇大宣伝で翻弄されている。私が気にしているAPI愛好家によるレトリックは、「組み立て可能エンタープライズ」である。企業全体のソリューションを縫い合わせて作り上げる、日曜大工的アプローチだ。

大きなアプリケーションの一部としてプラグイン可能な、個別APIサービスの販売を通して成功したビジネスを構築した企業は、これからの企業はソフトウェアソリューションを買うのではなく、無数のAPIやマイクロサービスを通して自分たちのアプリケーションを組み立てるのだという、信じがたい極端な夢を見がちである。その見返りは、究極の無限のカスタマイズの形で与えられると語られている。

現実を見よう:そうしたことが起きることはない。少なくとも、多数の企業を横断して当たり前になることはないだろう。技術採用側のほとんどは、イノベーターも含んで、他に選択肢がないと考えたときに自家製のITを採用する。彼らが必要としているのは、あまりにも困難な仕事をしなくてもよいように、穴を塞ぎギャップを埋めてくれるようなAPIだ。期待する結果を得るための最も簡単なパスを彼らは求めている。

ほとんどの企業は、ただ1つのビジネスだけをしているわけではない。そしてソフトウェアを作成するのではなく、適合する傾向がある。

例外もある。Uberはそのモバイルアプリに、あなたの場所を検索し、ドライバーにあなたをピックアップするように通知し、支払いを受け付ける、といった厳選されたプレミアムAPIを取り込んでいることで有名でだ。サードパーティ製のソフトウェア機能にアラカルトでアクセスする能力は、必要な技術群を維持するためにリスクとコストをかけずに、誰もやったことがない機能を組み合わせて提供することが必要な、革新的なビジネスに最適である。別の言葉で言えば、サービスの組み合わせそのものが、キラーアプリをキラーアプリにしているものの大部分であることも可能だということだ。

一部の企業は、独自にUberのような革新を育もうとがむしゃらに進んでいるが、ソフトウェアの製作に特化していないビジネスのニーズは常に異なっている。ゼロから出発して、企業はその正確なニーズに合ったカスタムコールセンターやCRMを組み上げることができる。企業の規模でみると、それは、車輪の再発明のように見みられるだろう。

ほとんどの企業は、ただ1つのビジネスだけをしているわけではない。そしてソフトウェアを作成するのではなく、適合する傾向がある。どのように顧客サービスコールを捌くべきか、どのように顧客の記録を整理するかといった問題は、広範なビジネスニーズにアプローチする製品を作るソフトウェア会社によって、これまで何度も何度も解決されてきた。一般的な企業の購買戦略は、彼らの要件の中で1番旨味のある部分に最適である技術プラットフォーム上で、標準化を行うことだ。

これはAPIがソフトウェアの適合には無関係ということを意味しているのではない。ただコアエンタープライズシステムをゼロから作ることには、あなたの車をナット、ボルトそしてボールベアリングを用いて組み立てる以上の意味はないということだ。賢い技術採用者たちには、「最適」と「完璧」の間を埋めてくれる強力なAPIをもつクラウドプラットフォームへの選択バイアスがかかっている。

クラウドベースのコミュニケーションプラットフォームのためのAPIを扱う私の仕事で、私が見る最も一般的な例は、私たちの管理ダッシュボードを介してできるものとは異なる形でデータにアクセスしたいという顧客の需要だ。どんなに私たちがレポートをカスタマイズ可能にしても、データをさらに異なる形式でグラフ化したかったり、それを他のシステムから持ってきた自身の記録と組み合わせたいという顧客たちが必ず存在する。あるいは彼らは、出荷通知などの自動化されたSMSテキストメッセージを送信し、そして受信者がテキストメッセージまたは電話で返事することを可能にすることができるようにしたいかもしれない。

ソフトウェア作成者は個別のAPIサービスを必要とする可能性が高いのに対して、ソフトウェア適合者(大部分の企業だ)はAPIによって補われた全体的ソフトウェアソリューションを必要とする可能性が高い。Uberのようなデジタル変革を狙う企業は複数のAPIとマイクロサービスを拾い上げてカスタムアプリケーションを作りたい誘惑にかられるかもしれない。しかしながら、よく行われることは、最高レベルのビジネスソフトウェアと高度なアクセス性をもつAPIを縫い合わせることだ。

いつかどこかで、この原則を破るものを出てくる者が出てくることは間違いない ‐ APIの福袋から重要なアプリケーションを組み上げ、偉大な仕事を成し遂げる企業が出現するだろう。しかし、そうであっても、その営みが日常化しない限り、彼らは「組み立て可能エンタープライズ」にはならないだろう。

私たちはこうした妄想をとりこむことなく、APIエコノミーを受け容れていくことができる。もしソフトウェアが、マーク・アンドリーセンの言ったように、「世界を食べていく」のなら、クラウドAPIは最後のスナック菓子だ。ただ全体の食事ではないということだ。

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(翻訳:Sako)

子供たちのためのUberを目指すHopSkipDrive

先日TechCrunchはロサンゼルスを目指して南に向かった、目的は私たちのミニミートアップのため、そして急成長する同地域発のハイテクシーンに追いつくためだ。

私たちの注意を惹いたスタートアップの一つがHopSkipDriveだ。子供送迎のためのUberを目指している。Uberに1人で乗るためには乗客は少なくとも18歳である必要があるので、それに代わってHopSkipDriveは忙しい両親のための送迎問題を解決したいと考えている。

「一般的な相乗り市場にはないニッチを本当に埋めているんですよ」と、CEOのJoanna McFarlandは上のビデオの中でTechCrunchに語っている。3人の共同設立者全員が母親であり、子供たちを必要な場所に送り届けるために「もっと良い方法があるべきだ」と感じていたチームなのだ。

ダウンタウン・ロスアンジェルスに拠点をおくこのスタートアップ企業は、1400万ドルの資本金Upfront Ventures、FirstMark Capital、その他から調達し、子供たちのための安全な相乗り手段を提供したいと考えている。安全性に焦点を当て、同社は保育者を兼ねたドライバーを探しているという。

「私たちの自慢は、項目が15点にも及ぶ安全認証プロセスです」と、共同創設者兼運営方針責任者のCarolyn Yashari BecherはTechCrunchに語った。彼女はHopSkipDriveの背景調査と指紋照合について熱く説明した。彼女はまた、従事するドライバーたちが、過去に子供を相手に働いた経験(乳母から教師に至るまで)を持っていることを強調した。

Uberと異なり、アプリはオンデマンドではない。ユーザーは事前に時間をえらび、送迎のためのドライバーを予約する。

正しいドライバがピックアップすることを確かにするために、子供たちには秘密のパスワードが伝えられ、両親はGPS追跡アプリを介して移動を追うことができる。

多くの親が、そのようなサービスの必要性に共感しながらも、少し前には「Uber型子供送迎サービスShuddleが、資金調達難から突然の事業停止」というニュースも伝えられた。このスタートアップは最近、残った事業の一部をHopSkipDriveが引き継ぐ形で、事業停止された。

しかしMcFarlandは「ブランドへの信頼性と、私たちのような者が創業者であること」が、サービスの背後で情熱を支えてくれるので、HopSkipDriveは広く受け容れられることを信じている、と語った。

HopSkipDriveはロサンゼルスとサンフランシスコで現在利用可能である。近い将来における、他の地域への拡大も希望している。

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(翻訳:Sako)