プライベートジェットのマーケットプレイスを展開するJetSmarterは現地時間12日、シリーズCで1億500万ドルを調達したと発表した。JetSmarter CEOのSergey Petrossovによれば、プレマネー・バリュエーションは15億ドルだったという。
今回の大型ラウンドで調達した資金を使用して、同社はアジアとラテンアメリカ地域へのビジネス拡大を目指す。同時に、アメリカ国内のフライト数とルート数の拡大も予定している。
先日TechCrunchでも紹介したJetSmarterのアプリでは、同社のマーケットプレイス上にあるプライベートジェットの予約をすることができる。ユーザーに付き添う人の数が多ければ、ジェットを貸し切りで利用することも可能だ。
アプリのダウンロード自体は誰でもできるが、実際にJetSmarterのサービスを利用する前には、軽いバックグラウンドチェックと、「コア・メンバーシップ」として初年度に1万5000ドルを支払う必要がある。メンバーシップに加入したユーザーは以後、さまざまな経路を飛行するプライベートジェットを「無料で」予約することができるが、メンバー以外の人が同乗する場合には同乗者用の運賃を支払う必要がある。ジェットを貸し切る場合にも料金が発生する。
JetSmarterのアーリーステージから出資をするサウジアラビアの王族メンバーと、ヒップ・ホップ界のスターであるShawn “Jay-Z” Carterは、今回のラウンドで出資比率をさらに高めている。
本ラウンドから資本参加している新規投資家は、アブダビを拠点とするエクイティファンドのJetEdge、ロンドンのKZ Capital、そして、名称非公開のカタールのプライベート・エクイティファンドと戦略的投資家たちだ。
現在、JetSmarterのサービスはビジネス旅行や観光旅行のハブであるニューヨーク、シカゴ、フォートローダーデール、ラスベガス、アトランタ、ロンドン、パリ、モスクワ、ドバイ、ミラノなど、50の地域で利用することができる。Petrossovによれば、同社は2017年の終わりまでに80から100の地域でサービスを展開することを目指している。
また、JetSmarterはアメリカ国内におけるフライト数の拡大も目指しており、フロリダ-ボストン間、ニューヨーク-ワシントンD.C.間、サンフランシスコ-シアトル間のルートなどを今後追加していく予定だ。
今回の資金調達の発表にあわせて、XOJETのプレジデント兼CEOであり、プライベート・エクイティファンドのTPGでシニアアドバイザーを務めるBradley Stewartが、JetSmarterの取締役に就任したことも発表されている。JetSmarterは以前からXOJETと業務提携しており、このパートナーシップによって同社は北米地域のフライト数を拡大することができた。
JetSmarterと競合関係にあるのは、定額制の「飛び放題」サービスを提供するSurAir、JetSmarterと同じくメンバーシップ制を採用しているWheelsUpやStrataJetなどがある。
Jay-Zも出資していたBlackJetやBeaconなどの同業他社が失敗していくなか、JetSmarterはプライベートジェット業界で急速に成長を続けている。
JetSmarter CEOのSergey Petrossov
「私たちは同業他社とは違います。JetSmarterでは予測アルゴリズムを利用して需要を予測し、それを地域ごとに把握しています。これにより、各マーケットが供給過剰の状態になるのを防ぎ、そこにある需要にちょうど見合った分だけフライトを供給することができるのです。他社はフライトを過剰に供給してしまう場合もあり、座席利用率が20%ということもあります。私たちはジェットを回送させることはありません。そして、フライトの座席利用率は90%です」とPetrossovは語る。
JetSmarterは自社でジェットを所有していない。その代わりに、自社でパイロットを雇い、ジェットのオーナー、オペレーター、キャリアと共同でジェットの管理と整備を行うことで、規制の多い航空業界のコンプライアンスに対応している。
Petrossovや投資家は、ソフトウェアを活用して固定資産をできるだけ減らしたJetSmarterのビジネスモデルを「空のUber」と比喩することが多い。
同社はUberと同じく、サービスの「オンデマンド性」を強化していきたいと考えている。メンバーシップに加入していないユーザーでも数種類のフライトを利用できるような仕組みだ。可能性として、メンバー以外のユーザーが1マイルあたり1ドルの運賃でボストン-ニューヨーク間のプライベート・フライトを利用できるようなサービスが考えられるだろう。
Petrossovは、「私たちがやろうとしているのは、空の旅の楽しさを復活させることなのです」と語る。
[原文]
(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter)