イオンおよびイオンスタイル全店舗・約360店でVR従業員教育を導入、140カ国5万社が採用するInstaVRを活用

イオンおよびイオンスタイル全店舗・約360店でVR従業員教育を導入、140カ国5万社が採用するInstaVRを活用

イオンリテールは3月31日、新人および既存従業員教育にInstaVR提供のVRプラットフォーム「InstaVR」(インスタブイアール)を導入すると発表した。対象は、イオンおよびイオンスタイル全店舗(約360店舗。運営する北陸信越、関東、東海、近畿、中四国エリアの店舗)。全店舗にVRを従業員教育に導入する取り組みは国内小売業で初という。

同社は、顧客視点と現場を基盤とする全員経営を重視するとともに、業務プロセスの標準化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による生産性改善に取り組む構造改革を加速させているという。

そううした中、さらなる「お客さま満足」の実現に向けて、従業員の教育機会拡大と習得レベルの標準化を目的に、人材育成においてもDXを推進する。今後も、VR学習コンテンツの拡充を進めることで現場力を強化し、顧客満足度の向上に取り組むとしている。

2015年12月設立のInstaVRは、VRの事業活用を推進するVRコンテンツ制作・配信・分析プラットフォーム「InstaVR」の製品開発・導入支援を行う、日本発のVRスタートアップ。世界140カ国5万社に採用されているという。

イオンリテールは、VR導入のポイントとして「『やり方がわかる』だけでなく『できるようになる』OJT教育へ」「多様な業務に対応する1000以上の研修コンテンツを共同制作」「入社時の導入教育における教育時間を約40時間削減(1店舗/1カ月あたり)」の3点を挙げている。

「やり方がわかる」だけでなく「できるようになる」OJT教育へ

VR従業員教育では、場所の制約や教育担当者の数にとらわれず、これまでのEラーニング動画では対応しきれなかった実務トレーニングが可能になることで、従業員の教育機会拡大と習得レベルの標準化につながるという。また、多くの業務手順が「わかる」だけでなく実際に手を動かしながら「できる」ようになるための実習を1人でも行えるため、教育担当者の負担も減らしながら、実務レベルの向上が期待できるとしている。

同社は、2020年12月から一部店舗において、約5000名の従業員を対象にレジ操作や接客基本応対などの入社教育をVRで行う実証実験を実施。一般的に、VR活用の効果として、実際の機器がなくてもVR上でレジ操作をしたり、顧客がいなくてもVR上で応対をしたりなど現場で「体験」している感覚で学習ができることや、没入感が高く集中して学習でき、学習定着率が非常に高くなるとされる。体験後のアンケートにおいても、約9割が「テキストや動画での学習より作業手順の理解が深まった」「事前に体験できることで自信を持って売場に立てる」「何より楽しく学習できた」との回答があったという。イオンおよびイオンスタイル全店舗・約360店でVR従業員教育を導入、140カ国5万社が採用するInstaVRを活用

多様な業務に対応する1000以上の研修コンテンツを共同制作

InstaVRが提供する高速VR化システム「100倍速VR化」を活用し、レジ業務や接客などの顧客対応、売場作り、防災・防犯など、多様な業務に対応する1000を超えるイオンリテールのオリジナル学習コンテンツを、企画からシナリオ作成・撮影に至るまで共同で制作。同夜がすべての工程に入り込み、ともに制作を行うことで実務に即した効果的なVRによるOJT教育を実現した。

入社時の導入教育における教育時間を約40時間削減(1店舗/1カ月あたり)

VRを入社時の導入教育プログラムに組み込むことで、1人でも学習が可能になったこと、また入社日時に関わらず随時個別に導入学習が可能になったことから、指導者側の業務時間を平均約40時間(1店舗/1カ月あたり)削減することにつながったという。今後配属後の教育もVR化することで、さらなる業務の効率化も進めるとしている。

日本でも販売されているスマートグラスのNrealが1年間で約244.2億円を調達

中国のARスタートアップ「Nreal」(エンリアル)が好調だ。軽量で明るいスマートグラスを作ってARの普及を目指す同社はシリーズC拡張ラウンドで6000万ドル(約73億2600万円)を調達し、この1年間で2億ドル(約244億2000万円)の大型調達を果たした。

今回のラウンドを主導したのはAlibaba(アリババ)だ。Alibabaは投資に関しては最大のライバルであるTencent(テンセント)よりも、これまでずっと実用性を重視しつつTencentほど積極的ではなかった。Alibabaは、その巨大な小売エコシステムを補完するピースになり得るスタートアップの経営権に関わる持分を獲得すると言われている。

しかしNrealに対するAlibabaの投資は純粋に資金面でのことだ。理論的には、両者が戦略的なシナジーを生み出す可能性はある。Alibabaが自社のゲームやビデオのストリーミング部門とNrealの協業に乗り出したり、最近音声コントロール付きヘルメットを着用するようになった膨大な数のフードデリバリーのライダー向けにスマートグラスをNrealに開発してもらうことは容易に想像できる。しかし中国では独占禁止法の取り締まりが厳しくなり、中国のテック大手が不公正な競争を助長すると受け取られかねない投資に注意を払うようになっていることは間違いない。

それに、Magic Leap(マジックリープ)の従業員だったChi Xu(徐驰、カイ・シュイ)氏が創業したNrealには、すでに注目すべきパートナーたちがいる。Nrealの戦略的投資家には、中国の新興EV企業のNio(ニーオ)、TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるショートビデオアプリのKuaishou(快手)、Baidu(百度)が支援するビデオストリーミングプラットフォームのiQIYI(爱奇艺)などがある。Qualcomm(クアルコム)は投資はしていないが最先端のSnapdragonプロセッサを供給し、開発者エコシステムの構築に関して緊密に連携している。著名な機関投資家であるSequoia Capital China(セコイアキャピタルチャイナ)、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYunfeng Capital(雲鋒基金)、Xiaomi(シャオミ)の創業者Lei Jun(レイ・ジュン)氏のShunwei Capital(順為資本)の他、プライベートエクイティ大手のHillhouse(高瓴資本)、CPE(CPE源峰)、CICC Capital(中金資本)もNrealを支援している。

Nrealは中国を拠点としているが、中国市場をターゲットにするのではなく、消費者の購入意欲を日本や米国など海外の6カ国で最初にテストした。同社はデバイスの販売に関して各国の通信事業者の協力を得ている。例えば米国ではVerizon(ベライゾン)がNrealの複合現実グラスであるNrealLightの販売に協力している。NrealLightは600ドル(約7万3000円、日本ではauオンラインショップで6万9799円)と比較的手頃な価格で、5G対応のAndroidデバイスに接続できる。

Nrealは今回調達した資金で、ついに2022年に中国での事業に乗り出す。また今回の資金は研究開発や、ユーザー獲得に欠かせないコンテンツやアプリのエコシステムの成長にも使われる。

画像クレジット:Nreal

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

山手線31番目の駅「シン・秋葉原駅」が3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

JR東日本(東日本旅客鉄道)、ジェイアール東日本企画HIKKYは、オリジナルの共同運営バーチャル空間「Virtual AKIBA World」(VAW。バーチャル アキバ ワールド)を3月25日11時よりオープンし、「バーチャル秋葉原駅」を開業する。これに向け、VAWで展開するコラボレーションやコンテンツを3月23日に発表した。

Virtual AKIBA World(VAW。バーチャル アキバ ワールド)概要

  • 開業日時:3月25日11時(開業まではティザーサイトとなっており、VAWWにアクセスできない)
  • サイトURL:https://jrakiba.vketcloud.com/VAW/
  • メンテナンス:隔週木曜10~15時
  • 利用料:無料

また山手線31番目の駅であるバーチャル秋葉原駅開業記念として、「入場記念NFT」(1枚予定)を無料配布する。従来より駅が新規開業する際に発行している記念入場券を、史上初の「デジタル上の駅開業」であることからNFTのデジタル入場券で発行する。この受け取りには、「LINE」および「LINE BITMAX Wallet」への登録が必要となっている。配布時期は、5月中旬頃予定。記念グッズであるため実在するJR秋葉原駅への入場には使用できないほか、LINEが提供しているNFTマーケットプレイスや、その他のNFTマーケットプレイスを通じた出品は不可。参加方法は、3月25日より公式サイトと公式Twitterで公開する。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

コラボレーションするのは、「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「シン・ウルトラマン」「シン・仮面ライダー」の4作品によって構成されたプロジェクト「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」。コラボ期間中は「バーチャル秋葉原駅」から「シン・秋葉原駅」と呼称を変更。さらに、バーチャル空間では各キャラクターが描かれたVAWオリジナルデザインのグラフィックで来場者を迎える。また5月13日公開予定のシン・ウルトラマンより、ウルトラマンの3D立像をVAWに設置。来場者同士で集まり記念撮影を行なえる。

セレクトショップ「BEAMS」とのコラボでは、シン・秋葉原をテーマとした期間限定の店舗装飾やVAWオリジナルTシャツの受注販売、オリジナルノベルティを配布。対象店舗は新宿駅新南口NEWoMan2Fの「ビームスニューズ」「ビームス大宮」「ビームス立川」。期間は3月25日~4月7日。VAW内のシン・ウルトラマン3D立像を撮影し対象店舗のスタッフに提示すると、先着順でオリジナルノベルティをプレゼントするそうだ。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

アトレ秋葉原でもコラボ展開を行なう。VAWオリジナルコラボビジュアルで館内装飾の実施するほか、キャンペーン期間中に商品を500円(税込)以上購入するごとにシン・秋葉原駅オリジナルキャラクターカードをランダムでプレゼント。このカードはシン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバースの4作品からなり、1種ずつすべて揃えるとVAWオリジナルデザインのグラフィックが現われる。配布期間は4月1日~15日。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布

ラジオ局「文化放送」のA&Gゾーンとも連携する。VAW内に文化放送ブースを展開するほか、A&G番組のパーソナリティーやスタッフ、リスナーがVAWの特徴である「オフ会ルーム」を使用してのVR交流を行なう予定。

JR東日本がバーチャル空間「シン・秋葉原駅」3月25日11時開業、新規駅開業時の記念入場券を「入場記念NFT」として無料配布


©TTITk
© TOHO CO., LTD. ©カラー ©2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 ©円谷プロ ©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

メタバースの内と外で生まれるビジネスは「インターネット」の進化をなぞる?

今、国内ではメタバースが熱い。「Oculus」(現在は、ブランド名が「Meta」に変更されている)が2018年から販売しているスタンドアロンVRゴーグルのおかげで、高価なPCや接続に関する複雑な知識なしに、メタバースの世界に入れるようになったからだ。また、マスメディアで報道されるようになったことも要因だろう。

早くからメタバース(当初はVRと呼ばれていたが)に着目し、今やメタバースに住んでいると言っても過言ではないShiftallのCEO岩佐琢磨氏は、自社でメタバース関連のアイテムを開発している。

そんなメタバース界の当事者である岩佐氏には、メタバースの楽しさや、他国との温度感の差、メタバース内での生活を快適にするアイテムなどについて聞いてきた。3回目となる今回は、メタバースとそれにまつわる今後のビジネスなどについて話を伺った。

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メタバースでの滞在時間が長くなることで生まれる新ビジネス

人は実生活において、住まいの居心地を良くしたり、人に会うときには好印象を持ってもらうためきれいな身なりをするように心がけるものだ。そのために、より快適な家を求めたり、家具を買ったりするし、美容院に行く、流行の服を買うといった消費が発生する。

同様に、メタバース内で生活する人が増えれば、その空間(ワールド)や自分(アバター)をより良いものにしたいというニーズが生まれ、そこにビジネスも生まれる発生する。

「すでに、経済活動が行われています」と岩佐氏はいう。「例えばアバター作家といった職業も誕生しています。しかもそのビジネスは国境を超えたものです。現在、日本のメタバースシーンで人気を博しているアバターは、日本だけでなく韓国のクリエイターによるものも多いです。現在のところ、まだメタバースに足を踏み入れている人の数は決して多くはありませんが、今後、その人数は増えていくでしょう。自分を表現するアバターはとても大切なものです。そこで1つ5000円のアバターでも購入されることは十分に考えられます。それを全世界規模で、例えば100万人が買うようになったらかなりの経済規模になります」。

また、ワールドにはもっとビジネスチャンスがありそうだ。

「今後、ホームページを持つように企業はそれぞれワールドを持つようになるかもしれません。またイベントを開催するときなどに特設ページを用意するように、企業がメタバースでイベントを行う際、そのイベントごとにコンセプトや雰囲気が違うワールドが必要になると思います」と岩佐氏はいう。

それはたとえば人気コミックを販売している出版社が、昔の日本を舞台にした作品と海を舞台にした作品でそれぞれイベントを行いたいと考えた場合、それぞれのイメージに合った会場を用意するのと似ている。

「今後、ホームページ以上に多様なワールドが必要とされ、作られていくのではないかと思います。そのため、ワールドを作ることができる人へのニーズが高まり、経済が回っていく日は遠くないでしょう」と岩佐氏は語る。

このようにメタバース内でのビジネスで暮らして人たちが登場する時期はまったくわからないというが、すでにアバタービジネスをグループで行っている人たちが出始めていることから「数万人から数十万人規模の人が、メタバースの世界の中で作ったもので生活できるようになるのには、そう長い時間がかからないのではないか」と岩佐氏は予測している。

NFTがメタバース内のビジネスとして成り立たない理由

また「メタバース」と同じく新しい技術としてNFTも注目を集めている。ブロックチェーン技術を使ったNFTなどのサービスは、デジタルで作られたもう1つの世界であるメタバースと親和性が高いのではないかと漠然と考えていた。

しかし、岩佐氏は「NFT×メタバースは現時点ではあまり相性が良くない」とバッサリ否定する。それぞれのユーザーと事業者がお互いに異質な存在になっているというのがその理由だ。

「NFTで売買したデータ、それ自体はいくらでもコピーできます。ただ、NFTであればその正当な所有権が誰にあるのか、というトランザクションの履歴をチェーンの上に保存でき、それを改ざんできないという特性があるだけです」という。

つまり、NFTアートを購入した場合、買った本人は権利を持っているということで自尊心が満たされ、さらにその権利を売って儲けることもできるだけだともいえる。

「メタバースの中で大切なことは、絵の所有権ではなく絵そのもの。ワールドにそれを飾ることに価値があるのです。すばらしい絵が飾られているすばらしい空間があることに意味があります」と岩佐氏は語る。飾る絵を選び、用意することが重要なのだ。NFTアートである必要はないのだ。

また、現在のところVRChatを提供しているプラットフォームSteamは、暗号資産やNFTを全面的に禁止している。これは余計なトラブルを避けるためのルールでもあるのだろうが、暗号資産、NFTがメタバースで現状、その成長に必要なものではない、ユーザーに強く求められているものではないということでもあるだろう。

求められるであろうガジェット

メタバースを巡るビジネスは、その中だけのものにとどまらない。

例えば前回の記事で紹介した、メタバース内での生活をより快適にするためのガジェットとしてShiftallはヘッドマウントディスプレイ「MeganeX」や、自分の動きを自在にトラッキングしてくれる「HaritoraX」、また仮想空間の温度をリアルに感じられるようにするウェアラブルデバイス「Pebble Feel」を開発、提供する。

メタバースを楽しむために開発されたアイテム。左上から時計回りに「MeganeX」、音漏れを防ぐBluetoothマイク「mutalk」「Pebble Feel』

「ヘッドマウントディスプレイ、コントローラー、トラッキングデバイスが、現時点でのハードウェア3大デバイスでしょう」と岩佐氏。「ただ、今後はもっとさまざまな分野のものが増えてくると考えている」と語る。

「CES 2022 では、メタバース内で触れられたときに、その触覚を感じるスーツのようなものが発表されていました。そうしたハプティクススーツとHaritraXのようなトラッキングデバイスがセットになったようなものが出てくるかもしれません。

現時点では、ヘッドセットの下に表情をセンシングするフェイシャルトラッカーデバイスを装着して現実の表情とアバターの表情を同期させている人もいます。デバイスの形状や種類は、どんどん変化していくのではないでしょうか」(岩佐氏)

そのような中で、VRChatがOpenSound Control(以下、OSC)という新しいプロトコルに対応したことが発表された。OSCは、オーディオ機器と音楽パフォーマンス向けのコントローラーを接続するためのプロトコルだが、その他の機器との接続にも利用可能でアイデア次第でこれまでなかった機器をメタバースの世界につなげることができる。

「例えば、脈波センサーを付けて、脈拍が上がったら、アバターの顔を赤くする、現実世界の室温が25℃を超えたらアバターが上着を脱ぐ。逆に、アバターが靴を脱ぐ操作をしたら、エアコンの温度を2℃下げるなど現実世界側を操作することも可能になります」と岩佐氏。

VRChatがOSCに対応したことで、脈波センサーを付けて、脈拍が上がったらアバターの顔を赤くするといったことも可能になる

また、コミニケーションをとる上で壁となる言語についても、OSCを使ってText to Speachで話す、外部ツールに話す内容をいったん投げて翻訳させるといったこともすでにできるようになる。とはいえ「まだまだ翻訳ツールには改善の余地があるため、言語ごとに人が集まっているのが現状。時間の経過とともに解決されるのではと期待している」とのこと。

電子工作が得意な人たちが、すでにさまざま操作を個人的にテストしているが、今後、それらのアイデアが製品化することも十分考えられる。

Metaをはじめとするテック企業が新しいビジネスのフィールドとして新サービスをスタートさせることも多いが、まだまだ始まったばかりの「メタバース」。今後、その体験を現実のものに近づける(もしくは現実では不可能なことを可能にする)新たなガジェットや新サービスが発表されていくだろう。

現在、私たちの周りに当たり前のように存在するインターネットと同様に、メタバースももっと身近なものになり生活の一部になる可能性は大きい。特にコロナ禍で人と人との距離感が変わった今、遠く離れていても目の前にいるかのように他人とコミュニケーションがとれるメタバースは加速度的に進化していくかもしれない。

そしてそれにともなって、そこで生きる、生活の糧を得る人も生まれてくる。インターネット黎明期、まずそこにアクセスしホームページで情報を公開したり得たりすることだけで興奮していたが、現在そこは、eコマースをはじめとしたビジネスの舞台にもなっている。メタバースでもまた同様のことが起こることが予想される。新しい世界は、また新しい可能性に満ちている。

NICT、カメラ1台で動作や表情も再現可能な自分のデジタルツイン・3Dアバターを構築する技術「REXR」開発

NICT、カメラ1台で動作や表情も再現可能な自分のデジタルツイン・3Dアバターを構築する技術「REXR」開発

細やかな表情の変化を様々な方向から再現した3Dアバター

情報通信研究機構(NICT)は3月14日、たった1台のカメラの画像から自分のデジタルツインとなる3Dアバターをモデリングし、細かい表情や動作も三次元的にリアルに表現できる技術「REXR」(レクサー。Realistic and Expressive 3D avatar)を開発したと発表した。メタバースなどでのコミュニケーションで、アバター同士の深い相互理解が実現する可能性がある。同研究は、NICT ユニバーサルコミュニケーション研究所 先進的リアリティ技術総合研究室のMichal Joachimczak氏、劉珠允氏、安藤広志氏によるもの。

メタバースやMR(複合現実)で自分の分身となる3Dアバターは、現状ではあらかじめ用意されたCGキャラクターを使用することが多く、微妙な表情や動作の表現は難しい。自分自身のリアルな3Dモデルを作ろうとすれば、何台ものカメラやセンサーを使って体中をキャプチャーするといった大がかりなシステムが必要となる。NICTは、複数のAIモジュールを組み合わせることで、それをたった1台のカメラで可能にした。

まずは、カメラの前で1回転した画像からリアルな全身モデルを構築する。モデルができれば、後はカメラの前で動くことで、その表情や姿勢が推定されてモデルに反映される。時間ごとに変化する動作や表情が、3Dアバターに三次元的に再現され、どの方向からでも見られるようになる。

コミュニケーションの最中にわずかに顔に生じる表情の変化「微表情」(micro-expressions)や動作を忠実に再現できるため、アバターを通しての「深い信頼関係の構築やシビアなビジネス交渉」もリモートで可能になるとNICTは話す。今後は3Dアバターの三次元形状の正確さや動きの滑らかさといった精度の向上と、リアルタイム対応を可能にする技術開発を進めてゆくとのことだ。この技術の活用、実証実験、普及の際の倫理的、法的、社会的課題については、超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム(URCF)のXR遠隔コミュニケーションWGなどと連携して取り組むとしている。

マイクロソフトの「PeopleLens」プロジェクトは視覚に障がいをもつ子どもが社交的ヒントを学ぶ手助けをする

視覚障がいがある成人にとって困難なことの1つに、目が見える人たちの社交、会話に使われるボディランゲージを理解して参加することがある。PeopleLens(ピープルレンズ)はMicrosoft(マイクロソフト)の研究プロジェクトで、ユーザーに周囲にいる人たちの位置と名前を知らせて、会話をより豊かで自然なものにすることが目的だ。

晴眼者は部屋で周囲を見渡すだけで、どこに誰がいて誰が誰と話しているかなど、社交的な手がかりや行動に役立つ数多くの基本的情報を瞬時に得ることができる。しかし視覚障がい者は、現在、誰が部屋に入ってきたのか、誰かがその人を見て会話を促したのかどうか、必ずしも知ることができない。これは、集団への参加を避けるなど孤立や非社交的行動につながる。

Microsoftの研究者たちは、視覚障がいをもって生まれた子どもがその情報を得て有効に活用するために、テクノロジーをどう役立てられるかを知りたかった。そして作ったのがPeopleLens、ARメガネで動作する高度なソフトウェア群だ。

メガネに内蔵されたセンサーを使って、ソフトウェアは知っている顔を認識し、その人のいる場所と距離を音声によるヒントで示す。クリック、チャイム、名前の読み上げなどだ。例えばユーザーの頭が誰かに向くと小さなぶつかる音が鳴り、その人が3メートル以内にいれば続けて名前が読まれる。その後高くなっていく音によってユーザーがその人物の顔に注意を向ける手助けをする。他にも、近くにいる誰かがユーザーを見たときにも通知音が鳴るなどの機能がある。

PeopleLensソフトウェアとその3D表示(画像クレジット:Microsoft Research)

これは、この種のデバイスを一生身につけるということではなく、さまざまなヒントに気づき、社交的な反応を見せる能力を向上するための支援ツールとして使うことが目的だ。他の子どもたちが視覚を利用して学習する非言語的スキルを身につけるためにも役立つ。

現在のPeopleLensはまだまだ実験に過ぎないが、これまでに研究チームはかなりの年月を費やしてきている。次のステップは、英国内で5~11歳の長期間デバイスをテストできる子どもたちを集め、同世代分析を行うことだ。自分の子どもがあてはまると思う人は、MicrosoftのパートナーであるUniversity of Bristol(ブリストル大学)の研究ページで申し込みができる。

画像クレジット:Microsoft Research

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Meta、Horizon Worldsでアバターがお互いに約1.2m近づけない機能をオンオフ切り替え可能に

Meta(メタ)の新しいVR空間であるHorizon Worlds(ホライゾンワールド)とVenues(ヴェニュー)で、すでに女性が体を触られたりセクハラを受けたりしているという報告を受け、Facebook(フェイスブック)として知られていた会社は2022年2月、各アバターの周りに半径約60cmの泡を作る新しい「Personal Boundary(パーソナルバウンダリー)」機能を展開した。この機能により、アバターが互いに約1.2m以内に近づくことができなくなった。米国時間3月14日、Metaはこの機能をカスタマイズし、ユーザーがオプションでこの設定をオフにしたり、有効にするタイミングを制御できるようにした。

Horizon Worldsのすべての体験でバウンダリーをデフォルトでオンにする代わりに、すべてのインタラクションでこの設定を有効にするかどうかをユーザーが選択できるようにすると、Metaは発表した。これにより、VRユーザーは、この機能が開始される前の標準的な設定であったように、約1.2mのパーソナルバウンダリーをオフにすることができるようになる。望まないインタラクションを防ぐための小さなパーソナルバウンダリーはまだ存在すると、同社は言っているが、それは、過去にMetaの仮想世界で悪質な業者がレイプのシミュレーションを行うのを防ぐには、十分ではなかったことに注意するべきだ。

またユーザーは、友達以外に対してパーソナルバウンダリーを有効にすることができる。この場合、初対面の人と一緒にいるときは安全機能を有効にし、フレンドリストに載っている人とバーチャルに遊んでいるときはオフにすることができる。また、これまでと同じように、すべての体験でパーソナルバウンダリーを有効にすることもできる。

しかし、Metaによると、友達以外にだけパーソナルバウンダリーをオンにするよう初期設定を調整しており、このことは安全機能を少し後退させていることになる。Horizon Worldsが新しいソーシャルネットワークであることを考えると、人々は、仮想空間で出会った後、現実には知らない他のユーザーと友達になるかもしれない。つまり、ユーザーの友達リストは、そのユーザーが明確に信頼する人のリストとはまったく違うかもしれないのだ。というわけで、ここでも多少の注意が必要だ。

画像クレジット:Meta

Metaは、2月にパーソナルバウンダリー機能を展開した後、コミュニティからのフィードバックに基づいてこの変更を行ったと主張している。同社は、この新しいオプションにより、Horizon Worldsで他のアバターとハイタッチ、ガッツポーズ、自撮りをより簡単に行えるようになると考えている。

また、Metaによると、パーソナルバウンダリーは、2人が初めて会ったときに、より制限の多い設定にデフォルトで変更される。例えば、1人のパーソナルバウンダリーがオフで、もう1人のパーソナルバウンダリーがオンに設定されている場合、プラットフォームは2人の間に1.2mの空間を設定する。そして、ライブイベントのVR体験「Horizon Venues」に参加するすべての人のパーソナルバウンダリーは、およそ1.2mでデフォルトがオンになるようになったという。

この変更についての発表の中で、Metaは、VRのための開発が「もはや固定視点と従来のフラットスクリーンデバイスに制限されない今、我々がコンピューティングの世代で取り組んだ最も難しい挑戦の一部である」ことを代表していると認めている。

この声明は、同社のVR空間における女性を守ることができなかった以前の失敗の責任を、VR世界のための構築は新しいものであり、したがって、いくつかの試行錯誤が含まれるという事に責任逃れしているだけのようにみえる。そもそもMetaがより多くの女性エンジニアやゲーマーの意見を求めていれば、この話題が出なかったとは考えにくい。結局のところ、仮想空間における性的暴行は、他の仮想現実ゲームや、Second Life(セカンドライフ)のようなVRの先駆け、さらにはRoblox(ロブロックス)の子ども向け仮想ゲームでも繰り返し起こっていることなのだ。Metaが新しいVR環境を設計する際に、ビルトインの保護機能を考慮しなかったとは信じられない。また、成長や規模を第一に考え、ユーザーの安全を第二に考えるというFacebookの傾向は、Horizon Worldsのような新しいプロジェクトにも受け継がれていることがわかる。

同社は、パーソナルバウンダリーがVR体験に与える影響についてより多くのことを学びながら、改善を続けていくとしている。

画像クレジット:Meta

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

今夏、いよいよアウディのセダンとSUVにHolorideのVR技術が搭載

この夏、Audi(アウディ)のセダンとSUVを皮切りに、バーチャルリアリティが量産車に導入されようとしている。

Holoride(ホロライド)は米国時間3月12日、オースティンで開催されたテック・音楽・映画のカンファレンス「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で、同社のヘッドセットを使ったバーチャルリアリティエンターテインメントシステムが、最新のMIB 3ソフトウェアを搭載したAudiの一部モデルで6月にデビューすると発表した。この発表は、数年前にAudiから独立した同社にとって画期的だ。消費者の注目を集める新しい方法を見つけようと、自動車メーカーの関心が高まっていることを示すものでもある。

Holorideは、後部座席に乗る人の物理的な世界を拡張現実と結びつけ、クルマの動きと連動した乗車体験を実現するシステムだ。このシステムはブランドに依存しないため、他の自動車メーカーもサポートすることができる。

Holorideは、スウェーデンのADASソフトウェア開発企業であるTerranet(テラネット)と提携した。提携により、VRシステムのセンサーとソフトウェアスタックの力で、環境を迅速かつ正確に捉え、解釈することが可能になった。TerranetのVoxelFlowシステムが、クルマから受け取ったデータポイントに基づきVRの動きを計算する。

車載用バーチャルリアリティコンテンツを構築するためのソフトウェアもオープンソース化されており、開発者がコンテンツを作成し、いずれはマネタイズできるようになっている。

今のところ、VRシステムの利用に必要な追加費用はヘッドセットだけだが、自動車メーカーや開発者がサブスクリプションサービスを販売したり、特定の機能に課金することで、クルマの所有者から収益を上げる可能性は無限にある。Allied Market Research(アライドマーケットリサーチ)のレポートによると、世界の自動車用AR・VR市場は2025年までに6億7400万ドル(約789億円)に達すると予測されている。

VRエンターテインメントを量産車に導入することは、ドライバーレスカーが登場した後にクルマの中で利用されるようなコンテンツを開発する最初のステップでもある。ミュンヘンに拠点を置くVR企業のHolorideと、同社の一部を所有するAudiは、自動運転車の技術スタックに早くから着手し、短期的には、人間が運転するクルマからより多くの収益を得たいと考えている。

ドライバーレスカーが普及すれば、誰もが乗るだけになるため、車内コンテンツとエンターテインメントの将来の市場機会は膨大だとHolorideは主張する。

また、一番乗りすることでHolorideが「Elastic Content」と呼ぶ新しいメディアカテゴリーを確立する機会にもなる。ヘッドセットを装着して空飛ぶ円盤や潜水艦を操作している間にも、VRシステムはクルマの動きに適応し、その人のVR体験はクルマの加速、旋回、停止といった動きを取り入れる。

HolorideとAudiによれば、その可能性は無限大だ。クルマに乗っている人は、仮想世界でElrondのブロックチェーンがサポートするNFTを購入・収集できるようになる。位置情報ゲームは、ポケモンGOのように、仮想世界を物理世界の場所やイベントと結びつけることができるだろう。

もちろん、VRでは乗り物酔いが気になるところだ。Holorideは、クルマの動きと同期させることで症状を軽減させるという。

2021年1200万ドル(約14億円)を3000万ドル(約35億円)の評価額で調達したミュンヘンの同社は、2019年のCESでVRシステムのプロトタイプをデビューさせ、ラスベガスモータースピードウェイで記者らをドライブに連れ出した。カラフルな仮想現実の世界は、Disney(ディズニー)などのパートナーとともに作られた。めまいを感じた記者もいれば、いい感じだという記者もいた。

画像クレジット:Holoride

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(文:Jaclyn Trop、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポケモンGOのNianticがWebAR開発プラットフォーム「8th Wall」を買収

ポケモンGOを運営する拡張現実(AR)プラットフォームのNiantic(ナイアンティック)は、WebAR開発プラットフォームの8th Wall(エイス・ウォール)を買収したことを、米国時間3月10日に発表した。Nianticにとって過去最大の買収だという。この買収は同社の開発プラットフォームを強化し、デベロッパーがARのビジョンを作るのに役立つとのことだ。

2016年に設立された8th Wallは、iOS、Androidのスマートフォン50億台、パソコン、AR / VRヘッドセットなど現在世界で数十億台のデバイスに対応しているとNianticは話した。8th Wallのプラットフォームは、Netflix(ネットフリックス)、Microsoft(マイクロソフト)、Universal Pictures(ユニバーサル・ピクチャーズ)をはじめとする数多くの企業でAR開発に使用にされている。

「Nianticは設立当初から、現実の世界で人々が繋がり、探索して新しいものと出会い、いっしょに楽しむ機会をもたらす AR 技術の提供を目指してきました」とNianticは買収を発表したブログで語った。「これを実現するため、世界で最も精密な地球の3Dマップを作成し、現実とデジタルの世界を融合しています。2021年11月にご案内した Lightshipプラットフォームとともに、すべての開発者の方々に向け、没入感のある世界最大のキャンバスを提供することで開発者の方々の創作活動をサポートしています。Niantic にとってはこれまでで最大の合併となる 8th Wall は Niantic の Lightship のビジョンを補完し、その実績のある Web AR 技術によって Lightship プラットフォームを拡充していきます」。

8th WallのファウンダーでCEOのErik Murphy-Chutorian(エリック・マーフィー=チュートリアン)氏は買収に関する自社ブログで、Nianticといっしょになることで、8th Wallはさらにツールを開発し、人々が新しい場所を発見するための魅力あるAR体験を作れるようになると語った。

「私たちが8th Wallを設立したのは、どこででもシームレスに動くことのできるARアプリケーションをデベロッパーが作るための、強力なコンピュータービジョン技術を開発するためでした」とマーフィー=チュートリアン氏は語る。「私たちはWebARを作るための完全なツール群でこれを実現しました。ウェブベースの拡張現実の可能性は非常に大きいので、これからもNianticの現実AR世界のレンズを通じて拡充を続けていきます。Nianticとともに最高の惑星規模テクノロジーを作り、今以上に魅惑的な共有体験を育てていくことを楽しみにしています」。

この買収の数カ月前、Nianticは3億ドル(約344億円)の資金調達をCoatue(コートゥー)のリードで実施し、会社価値は90億ドル(約1兆328億円)に達した。同社はこの資金を元に「現実世界のメタバース」と呼ぶものを作る計画だ。

ポケモンGOは、間違いなくNianticで最大人気のプロジェクトであり、今も成功を続け、アプリ調査会社のSensor Tower(センサータワー)によると、2020年の売上は10億ドル(約1160億円)を超えている。ただしNianticのゲームがすべて成功しているわけではない。同社は最近、「Harry Potter:Wizards Unite(ハリー・ポッター:魔法同盟)」のサービス終了を発表した。同アプリの全世界でのアプリ内購入と新規新規インストールはいずれも前年比57%減だった。

画像クレジット:Niantic

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Meta「Quest 2」VRヘッドセットのフィットネストラッキングがついにApple「ヘルスケア」と連携

FacebookのMeta(メタ)のOculus Quest 2ヘッドセットは、「Beat Saber」や「Supernatural」のようなソフトウェアを使ってカーディオエクササイズをする人々がいるため、ハイテクエクササイズ機器として驚くほど大きなニッチを切り開くことに成功した。しかし、VRヘッドセットのスタンドアローンという特性上、その体験には限界があった。

米国時間3月10日、Metaは、Oculus Moveのワークアウトデータを新しくAppleの「ヘルスケア」と同期させること、さらにOculusモバイルアプリでヘルス統計へのアクセスを提供すると発表した。以前は、活動時間、消費カロリー、ゴール / プログレスを含むヘルスデータは、ヘッドセット内でのみ閲覧可能だった。

Metaは、長年にわたってプライバシーに関する問題で必ずしも好意的に思われていないため、ヘッドセットから電話や「ヘルスケア」アプリへの動作データのエクスポートは厳密にオプトインによるものであり、このデータは広告推奨には使用されないと明記している。

これは同ヘッドセットにとってかなり控えめな(そして長い間待ち望まれていた)アップデートだが、頻繁に使用するユーザーの多くにとっては、ついに自分のデバイスにやってきたことを喜ぶ機能だろう。

最近のConnect基調講演で、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは、ワークアウトデバイスとしてのQuestの人気を特に強調した。

ザッカーバーグ氏はその際こう述べていた。「みなさんの多くは、すでにQuestを使って健康維持をしていますが、まったく新しい方法でワークアウトをすることができます。Peloton(ペロトン)のようなものですが、自転車の代わりに必要なのはVRヘッドセットだけで、ボクシングのレッスンから剣の戦い、ダンスまで何でもできるのです」。

関連記事:ザッカーバーグ氏がフィットネス機器としての「Quest 2」を紹介、「Pelotonのようなものだ」

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(文:Lucas Matney、翻訳:Den Nakano)

JR秋葉原駅を再現した世界初のメタバース・ステーション「Virtual AKIBA World」が3月25日11時頃オープン

世界初のメタバース・ステーションとなる「Virtual AKIBA World」が3月25日にオープン、スマホから体験可能

「Virtual AKIBA World」外観(画像は開発中のもの)

VRイベント「バーチャルマーケット」など、VRサービスの開発ソリューションを提供するHIKKYは3月8日、業務提携を結んでいる東日本旅客鉄道(JR東日本)、ジェイアール東日本企画(jeki)とともにオリジナルのバーチャル空間「Virtual AKIBA World」(VAW。バーチャルアキバワールド)を発表した。開業日時は3月25日11時頃(メンテナンスは隔週木曜10時~15時)。利用料は無料。PC・スマートフォンで体験可能。

VAW(バウ)は、世界的なコンテンツ集積地である秋葉原駅とその周辺をバーチャル上に再現した、オリジナルの空間。改札を通過したり電車に乗ったり秋葉原駅周辺を歩いたりなどを体験できる。来訪者同士のコミュニケーションも楽しめるという。

またVAWは、HIKKYが独自開発した技術「Vket Cloud」により、アプリなどのダウンロードを行うことなく、URLリンクをクリックするだけでスマホから手軽にアクセスできる。JR東日本の強みである駅や車両というリアルの場から、QRコードなどを介してバーチャル空間にシームレスに遷移でき、リアルとバーチャルが融合したかのような感覚が得られるとしている。

JR秋葉原駅を再現した世界初のメタバース・ステーション「Virtual AKIBA World」が3月25日開業

バーチャル空間でのホーム、車両と広告イメージ。「共創」の第一歩として、NTTドコモとVAW内での連携を開始する。さらに、今後のXR領域の発展に向けた取り組みを推進

JR東日本との連携により、リアルの駅空間でXRの世界観を体験できるスペースを造成することも予定している。リアルとバーチャルの融合を加速させ、両方のユーザーの往来を活性化しクライアントにバーチャル上での広告展開と販売機会の提供を行っていく。例えば、リアル空間に出稿した駅広告がバーチャル空間ではよりダイナミックに表現されたり、バーチャル空間で購入した商品がリアル空間でシームレスに受け取れたりと、JR東日本だからこそ実現できる新しい日常の創造を目指す。

VAW開業時には、ほかにも以下のような様々な展開を予定している。

山手線31番目の駅「シン・秋葉原駅」

日本を代表する「ヒーロー」4作品によって構成された企画「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」(SJHU)とコラボレーションし、コラボ期間中はバーチャル秋葉原を「シン・秋葉原駅」と呼称。バーチャル空間上にVAWオリジナルデザインのグラフィックと各キャラクターが登場し、来場者を出迎える。

秋葉原駅(リアル)に、バーチャル空間への「ゲートウェイ」設置

秋葉原駅改札内の1F改札内イベントスペースに、「VAWゲートウェイ」を期間限定で設置。中央のLEDパネルにはVAWの期待感を高める動画が流れ、横に設置されたQRコードからVAWへアクセス可能となる。設置期間は3月25~31日。

利用者同士のコミュニケーションスペース 「オフ会ルーム」

VAWの機能として、入場者同士がコミュニケーションを取れる空間「オフ会ルーム」を実装する。仲間とルームを作成したり、オンラインの飲み会の代わりとしてVAWで集合したりと、リアルで集まっているかのような感覚が味わえる。

VAW内の機能拡充とともに、限定入場券をNFTで配布する計画も

VAWは、機能を拡充し、限定入場券をNFTで配布するほか、来訪者同士の交流の深度化やイベントの活性化を図るという。将来的にはバーチャル空間内でのお買い物体験や、購入した商品を駅で受け取れるなど、リアルのサービスとの連動によるこれまでにない体験の実現を目指すとしている。

画像クレジット:
©TTITk「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」コラボ VAWオリジナルキービジュアル

TikTokと連携、タカラトミーが電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイ「MUGENYOYO」発売

TikTokと連携、タカラトミーが電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイ「MUGENYOYO」発売

タカラトミーは3月8日、電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚のトイエンターテイメント「MUGENYOYO」(ムゲンヨーヨー)を5月26日に発売すると発表した。価格は5940円(税込)。また、CAMPFIREクラウドファンディングを3月8日に開始し、4月からタカラトミーの公式ショッピングサイト「タカラトミーモール」で予約を受け付ける。

ヨーヨー本体には電動モーターが内蔵され、初心者でもさまざまなトリックが楽しめるようになっている。スマートフォンに専用アプリ(Android版iOS版)をインストールしてヨーヨーにかざすと、ヨーヨーの動きに合わせて「グラフィックス」と呼ばれるAR効果が映像の上にオーバーレイされ、保存した映像はTikTokに直接投稿できる。専用アプリでTikTokと連携する玩具は、日本ではこれが初めてとのこと。TikTokと連携、タカラトミーが電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイ「MUGENYOYO」発売TikTokと連携、タカラトミーが電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイ「MUGENYOYO」発売

ヨーヨーのスキルが上がると「ケイデンス値」と呼ばれる経験値が貯まる。これは、アプリで撮影したときに出たARエフェクトの表示時間、移動スピード、移動距離などから算出されるポイントだ。ケイデンス値が増えると、新しい「グラフィックス」が解放されて使えるようになる。こうして、レベルが上がるほど多彩な動画表現が楽しめるようになるとうわけだ。ケイデンス値はアプリ内でランキング表示されるので、他の人たちとスコアを競いながら腕を磨くことができる。TikTokと連携、タカラトミーが電動ヨーヨーとARエフェクトを組み合わせた新感覚トイ「MUGENYOYO」発売

 

「MUGENYOYO」概要

  • 商品サイズ:57×57×45mm
  • 商品内容:ムゲンヨーヨー、交換用ストリング、USBケーブル、取扱説明書
  • 対象年齢:8歳以上
  • 希望小売価格:5940円(税込)

画像クレジット:© TOMY

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

ゲームエンジン「Unity」を用いた専用アプリで、骨格運動と筋活動の3次元データを可視化

東京大学は3月3日、複数のカメラで撮影したビデオ映像から人体のポーズをコンピューター上に3次元再構成し、運動解析、筋活動解析の後、ただちにデータベース化して可視化するまでを完全自動化するサービスを開発したと発表した。スポーツ、介護、医療など幅広い分野での運動データの利用が可能になるという。アバターやロボットの全身運動のデータ取得にも使えるとしている。

同研究は、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 社会連携講座「ヒューマンモーション・データサイエンス」の中村仁彦上席研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 池上洋介助教、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター HERNANDEZ Cesar特任研究員、東京大学大学院情報理工学系研究科 櫻井彬光氏ら研究グループによるもの。人の体のデジタルツイン(コンピューター上に再現された「双子」)を作成しデータベース化するためのビデオ映像入力から筋活動出力までの工程を、完全自動化することに成功した。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

カメラ4台を用いたモーションキャプチャーの様子

研究グループはこれまでに、モーションキャプチャーで得られた骨格の運動から関節に働く力や筋活動を推定する技術、骨格モデルを対象者の体型に合わせる骨格スケーリング、複数カメラで撮影した映像から骨格運動を3次元に再構成し筋活動解析を行う技術などを開発してきた。また、モーションキャプチャーにおいては、体にマーカーを装着することなく行える効率的な方法も編み出している。

今回の研究では、映像入力から筋活動の出力までを支える一連のアルゴリズムを統合し、全体の計算をパッケージ化してAmazon Web Services(AWS)上に実装することに成功した。また、計算を完了しデータベースに記録されたデータは直後から検索が可能になり、可視化システムによりグラフ表示も行えるようになる。さらに、ゲームエンジン「Unity」を用いた専用アプリで運動を3D表示することも可能となった。

東京大学が人体のデジタルツイン作成を完全自動化、ビデオ映像入力から運動解析・筋活動解析・データベース化まで

グラフ化された運動解析データ

以前は、計算段階で人手による例外処理を必要とするなど、生産性に限界があったため、特定のアスリートに限った運動解析しか行えなかったが、この全自動化されたシステムを用いれば、多くの人の運動解析が可能となる。研究グループは、「青少年スポーツ選手、競技スポーツの選手からスポーツ愛好家、リハビリや健康ために運動を行う高齢者まで、広い世代の多くの方々に運動解析や筋活動解析を使ってもらえるようになった」と話す。今後は「チーム競技のデジタイズとチームプレイの解析、計算の効率化・高速化、スポーツ・データサイエンティストの養成」などの研究に取り組み、東大発スタートアップでの商用実施を目指すとのことだ。

ヘビーユーザーだからこそ生まれたメタバースでの時間をリッチにするShiftallの新製品

ShiftallのCEOの岩佐琢磨氏は、多い日は6時間以上メタバースに滞在し、VRゴーグルを装着したまま眠ってしまうことがあるほどのヘビーユーザーだ。

そんな岩佐氏は、メタバース内で時間をより快適なものにするプロダクトを同社で開発している。

先に開催されたCESではVR、メタバースの展示は日本での盛り上がりを考えると少なめだったというが、現状、それでも仮想現実に入っていくにはVRゴーグルをはじめとしたガジェットが必要だ。

「ヘッドマウントディスプレイが重いから装着が面倒くさい、家族がいる環境でしゃべりづらいから無言にならざるを得ないといったような課題をなくしたい、もっと快適にメタバース内で生活したい」と岩佐氏はいう。そんなユーザー視点をもとに、Shiftallはメタバースでの生活を快適にする製品を生み出している。

関連記事:自らもメタバースの住人で専用デバイスも開発、Shiftall岩佐氏に聞く「メタバース周りの現状」

メガネなしでもOKで軽量なMeganeX

VRを一気に身近なものにした「Oculus」ブランドのVRゴーグル製品群。最新モデルはOculus Quest 2(現在はOculusではなくMeta。以下、Meta Quest 2)となる。

Meta Quest 2は前モデルと比べて解像度がアップ、30gほど軽くなっているが503gと500mlのペットボトル1本分の重量だ。下を向く、うなずくといった動作で、ズルリとヘッドバンドが外れてしまうこともある。また、決して「軽い」とはいえない重量であるため、長時間使っていると疲れてしまう。

そんな悩みを解決するのが、販売予定価格10万円未満(税込)の『MeganeX』(メガーヌエックス)だ。

MeganeXは「年間2000時間(約5時間半 / 日)以上をメタバース内で過ごすといわれるヘビーユーザー」が快適な体験を得られるようにした、超高解像度、超軽量のメガネ型(ゴーグル型ではない)のVRヘッドセット。折りたたんで持ち運ぶのもラクラクだ。

Meta Quest 2と比べるとその大きさの違いがわかる

両目5.2K(5120×2560)/10bit HDRと高解像度なので、ドット感のないリアルな体験をユーザーに与える。実際にかぶってみたが、(メタバース内の)部屋から見える景色が、本物のそれを見ているような錯覚が生じるほど。約250gと軽いので装着感がない……というのは言いすぎだが、Meta Quest 2に比べると、やはり軽く「ゴーグルをかぶってこの景色が見えている」という感じはしない。

個人的にありがたかったのは、視力0.XXの私がメガネなしで装着できること。Meta Quest 2では、公式で度付きレンズが販売されているが、コンタクトレンズを使うこともある筆者は、ゴーグルのレンズを取り替える手間を考え、購入していない。しかし、メガネをかけたままゴーグルを装着すると、かぶり方によってはお互いに干渉したり、メガネがずれたりして、プチストレスになっていたのだ。

MeganeXでは、レンズの瞳孔間距離を変えられるだけでなく、レンズの下に度数調整を行うノブがあり、かなりの近視でも、メガネなしでくっきり見えるよう調節できる。これなら、年齢とともに視力が変化しても対応可能。メガネを買い換える必要のある現実世界より、メタバースの世界に、どっぷりハマってしまいそうだ。

メタバース内の温度を感じることができるPebble Feel

Pebble Feel(ペブルフィール)は、小石(Pebble)のようなサイズ感のウェアラブルデバイスで、販売予定価格は2万円(税込)前後。肌側(専用ベルトで装着するため、実際に肌に直接触れるような使い方はしない)にあるプレートが、ペルチェ素子により暖かくなったり、冷たくなったりすることで、メタバース内の環境をリアルに持ち込むことができる。

手のひらサイズのPebble Feel

肌側のプレート。ここが冷却されたり加熱されたりする

実際は、このように専用ジャケットを着用する

ペルチェ素子とは、通電することで一端の熱を他端に移動させる特性があるため、その方向を入れ替えることで、プレートを熱したり冷却したりすることが可能。ネッククーラーなどにも採用されているが、Pebble Feelでは、その中でも高性能タイプのものを搭載しているため、わずかな時間で温冷が入れ替わり、移動先のワールドが熱帯でも雪国でも瞬時にその場に合った体験が得られるようになっている。

デモでは、橋を隔てて雪だるまのある雪の降るワールドとストーブのあるワールドを往復させてもらうことができた。セーターなどを着込んでおり、専用ベルトを装着できなかったため、首筋に直接当てて試したのだが、橋の中央では熱くも冷たくもなかったPebble Feelが、ストーブのそばでは熱を帯び、雪だるまの前ではキンキンに冷える、という体験をすることができた。見えているものとのミスマッチがないので、高い没入感を得られるだろう。

家族が寝静まったあとでもメタバースに浸れるmutalk

せっかくメタバースの世界にいるのに、まったくしゃべらない人がいる。「無言勢」と呼ばれる人たちだ。なぜしゃべらないのか。一緒にいる家族に気を使うため、というのが理由の1つにあるという。

それを解決するのが「mutalk」だ。これは、一種のBluetoothマイクで、楕円柱状をしており、口元を覆うことで音漏れを防ぐことができる。

マイクは顔から最も離れた位置に設置されているため、息継ぎの音や、不快な破裂音などが相手に伝わることはない。

実際に、Shiftall 広報 深谷友彦氏を話者として試してもらったところ、通常のボリュームだけでなく、ささやくような声でもクリアに伝わってきた。これなら家族が寝静まったあとでもメタバースの世界に浸れるし、音声チャットを楽しむこともできる。

Windows、macOS、iOS、iPadOS、Androidなどさまざまなデバイスに対応しているので、メタバース内のチャットだけでなく、オフィスの自席、カフェなど、周りに人がいる状況でも会話内容の秘匿性を保ったまま、オンラインミーティングや通話を行える。もちろん、周りに迷惑をかけることもないだろう。

専用バンドで顔に固定できるので、両手にコントローラーを持っていても心配なし。もちろん、外出先では、手に持った状態で、必要なときだけ口元に当てる使い方のほうがスマートだろう。mutalkの販売予定価格は2万円(税込)前後となっている。

バンドで顔に固定。手が自由になる

売り切れ状態が続くほど大人気なフルトラッカー『HaritoraX』も

2020年5月に発売し、予約開始とともに予定数を販売しきってしまうほど人気を博しているアイテムが『HaritoraX』だ。

Meta Quest 2では、ヘッドセットを装着している頭と、コントローラーを持つ両手の計3点をトラッキングするが、HaritoraXを追加で装着することでは腰や足の動きまでトラッキングできる。

地磁気センサー、加速度センサーを搭載したバンドを腰、太もも、ふくらはぎ(または足首)に装着するからだ。まさに「メタバース内にいるのに、布団で寝てしまうこともある」岩佐氏ならではの発想だろう。

「メタバース内でラジオ体操のために集まることがあるけれど、手や頭だけでなく、腰の動きや足の動きもトラッキングできるから、屈伸や、上体そらしなども“やってる感”がある。正座、お辞儀、ヤンキー座りなど、日本人ではおなじみの姿勢をメタバース内で再現できるので、『欲しい!』という人が増えたのだろう」と深谷氏はいう。

Windows PCが必要だが、SteamVRに対応したヘッドセットであれば利用可能。内蔵バッテリーで駆動し、4時間半の充電で約10時間動作する。

半導体不足などにより、製品出荷をした2021年7月からながらく売り切れ状態が続いているが、岩佐氏によれば「数万台単位で作れるだけの部品を発注した」とのこと。販売再開が待ち遠しい製品だ。

今回紹介した製品は以下のものだ(カッコ内は販売予定価格または販売価格。いずれも税込

  • MeganeX (10万円未満)
  • Pebble Feel (2万円前後)
  • mutalk (2万円前後)
  • HaritoraX (2万7900円)

最終回は、岩佐氏が考える、メタバースで生まれると予測されるビジネスや今後求められるガジェット、加熱するNFTとの関連についてお届けする。

ボクシングフィットネスLiteboxerがVRに参入、Quest 2用アプリを発表

バーチャルリアリティの社交場が苦手だという人を責めるつもりはない。しかし、没入型ヘッドセットを装着して物を殴るというのは、なんだか楽しそうな感じがすることを否定できない。

2017年の創業以来、Liteboxer(ライトボクサー)はPeloton(ペロトン)のボクシング版のようものだった。自宅で専用の機器を使い、コーチの助けを借りながら音楽に合わせてユニークなワークアウトを行う。ただし、価格は1495ドル(約17万円)からと、決して安くはない。しかし、Liteboxerは今回発表された「Liteboxer VR(ライトボクサーVR)」で、その製品をより手頃なものにしようとしている。このVR版Liteboxerは、VRヘッドセット「Meta Quest 2(メタ・クエスト2)」用アプリとして、まずは米国、カナダ、メキシコ、英国のユーザーに向けて発売される。

「当社では2年以上前からVR製品に取り組んできました。だから『Facebook(フェイスブック)がMeta(メタ)に社名を変えたから飛び込んでみようか』というようなことではありません」と、CEO兼共同設立者のJeff Morin(ジェフ・モーリン)氏は語っている。「VRを使えば、本当に新しいことを試し、新しいユーザーにリーチできるようになると思います」。

画像クレジット:Liteboxer

サブスクリプション形式で展開されるLiteboxer VR(ライトボクサーVR)の月額料金は、18.99ドル(約2200円)だ(まだ持っていなければVRヘッドセット代としてさら数万円ほど必要だが)。それでも一部の消費者にとっては金額的な壁となるかもしれない。だが、1495ドル(約17万円)のマシンを購入したり、あるいは自宅でフィットネスする代わりにジムの会員になるのに比べたら、簡単に踏み出せることは間違いない。初めてログインすると、すぐにコーチの1人から安全にボクシングする方法について概要が説明される。数分の間に教われることは限られているが、10分から45分までのトレーナー主導のクラスでは、コーチが適切に技術を披露するのを見ながら、一緒にボクシングすることができる。

インターフェイスは物理フィットネスマシンのLiteboxerに似ている。つまり、6つの異なるターゲットに移動する光に合わせて、パンチを繰り出すという形だ。今のところ、Liteboxer VRには500以上のワークアウトが用意されており、その中にはトレーナー主導のクラスが400と、100種類のPunch Track(パンチトラック)と呼ばれる、Universal Music(ユニバーサルミュージック)のカタログから、ビートに合わせてパンチするためのパターンがあらかじめプログラムされたオンデマンドの楽曲が含まれる。Olivia Rodrigo(オリビア・ロドリゴ)の「Brutal」に合わせてボクシングをするのは、何か特別な感じがする。そしてオリビア・ロドリゴのトラックに興奮しているのは、明らかに我々だけではなかった。ある Liteboxerユーザーは「Good for You」に合わせてパンチし、TikTok(ティックトック)で注目を集めた。Liteboxerによると、ユーザーが作成した3つのLiteboxer動画が同じ週に注目された時には、同社の売上が209%増加したという。現在、Liteboxerには24万5000人のTikTokフォロワーがいて、これが40%の売上増と20倍のサイトトラフィック増につながったと、同社はTechCrunchに語った。Liteboxerは1年近く前にシリーズAラウンドで2000万ドル(約23億円)の資金を調達しているが、具体的な売上高は公表していない。

「サーバー側、音楽側、Punch Trackのプログラミング…これらはすべて、VR版とフィットネスマシンとで共有しています」と、モーリン氏は述べている。「ですから、私たちは、そこですべての努力を重複させる必要がなく、良いやり方で設定することができたという意味では幸運でした」。

VRフィットネスは成長市場である。2021年10月にはMetaが、VRフィットネスアプリ「Supernatural(スーパーナチュラル)」を開発したWithin(ウィズイン)を4億ドル(約460億円)以上で買収した(ただし、まだ米連邦取引委員会が反トラスト法違反の可能性を調査中)。SupernaturalはMeta Quest 2の代表的なVRフィットネスアプリの1つで、月額料金は19.99ドル(約2300円)と、Liteboxer VRとほぼ同じ。Supernaturalでは、ダンスのような「フロー」ワークアウト、ストレッチ、瞑想などと一緒に、ボクシングのワークアウトも提供されているが、ボクシング愛好家にとっては、Liteboxer VRの方がさまざまなボクシングのワークアウトが楽しめるので長く楽しめるだろう。

画像クレジット:Liteboxer

Liteboxer VRとSupernaturalの小さな、しかし重要な違いの1つは、Liteboxer VRでは消費したカロリーが表示されることだ。このデータを追跡したいと思う消費者もいるかもしれないが、減量が暗に強調されることによって、楽しみが削がれてしまうと感じる人もいるだろう(そして本当に、2分間のオリビア・ロドリゴの曲に合わせてボクシングしながら消費したカロリーを知る必要があるだろうか?)。

すでにLiteboxer VRは、新機能の追加を計画しており、競合他社との差別化をさらに促進させる予定だ。

「フィットネスマシンの方には、ヘッド・トゥ・ヘッドのチャレンジがあるので、ユーザーを探して直接対戦することができます。それがVRにも追加される予定です」と、モーリン氏はTechCrunchに明かした。さらにLiteboxer VRでは、トレーナーと一緒にグリーンバックのコンテンツを録画しており、トレーナーがあなたと一緒にボクシングをしているように見えるようになると、同氏は付け加えた。「トレーナーと一緒に立っているように見えます。目の前に立っているトレーナーの掛け声に合わせて、パンチを繰り出すのです」。

モーリン氏によると、これらの機能は今後数週間のうちにLiteboxer VRに搭載される予定だという。

ボストンを拠点とするLiteboxerは現在、約40人の正社員に加え、15~20人の契約社員が、主にLiteboxerの映像制作に取り組んでいる。モーリン氏は、同社を「ぜい肉を落とした競争力のあるチーム」と呼んでいるが、シリーズBを調達した後はスタッフを増やしたいと考えているという。

画像クレジット:Liteboxer

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

すみっコぐらしがメタバース化、エンタメ特化型メタバースVARKがすみっコ世界に飛び込めるイベントを3月23日から開催

すみっコぐらしがメタバース化、エンタメ特化型メタバースVARKがすみっコ世界に飛び込めるイベントを3月23日から開催VARKは3月1日、エンターテインメント特化型メタバース「VARK」において、イベント「すみっコぐらし~いっしょにすごそうまほうの島~」を開催すると発表した。サンエックスよりライセンス許諾を受け、イマジニアと共同で実施する。開催期間は、3月23日11時から9月30日17時まで(予定)。VRチケットは、VARKアプリ内で購入できる。

同イベントでは、VARKアプリ内に出現する「まほうのとびら」をくぐることで、ユーザーの姿が「ほこり」のキャラクターになり、「すみっコぐらし島」に遊びに行くことができる。キャラクターたちが住む世界に飛び込む感覚を得ながら、各エリアではすみっコたちと触れ合える様々なイベントが展開される。

VR空間内にアクセスするためには、VR用デバイスMeta Quest2が必要。またVARKアプリ(Android版iOS版)を利用することで、VRヘッドセットがなくてもすみっコぐらし島を体験可能。各施設への入場は有料だが、無料で楽しめる体験エリアも用意されている。

すみっコぐらし島。VARKの広場から「まほうのとびら」をくぐるとすみっコぐらしの世界に入ることができる

すみっコぐらし島。VARKの広場から「まほうのとびら」をくぐるとすみっコぐらしの世界に入ることができる

喫茶すみっコ。BGMが流れる店内で食事を注文。すみっコたちと喫茶空間を楽しめる

喫茶すみっコ。BGMが流れる店内で食事を注文。すみっコたちと喫茶空間を楽しめる

キャンプ。キャンプファイヤーを囲んで「ぺんぎん?」が奏でるアコーティスティックギターの音色を楽しんだり、特別なイベントに参加できる。

キャンプ。キャンプファイヤーを囲んで「ぺんぎん?」が奏でるアコーティスティックギターの音色を楽しんだり、特別なイベントに参加できる

バーチャル空間のイメージは、公式サイトおよびVARK公式Twitterにて順次公開予定。

ByteDance傘下のVRスタートアップ「Pico」がQualcommとの関係を強化

中国のVRスタートアップで2021年8月にTikTokの親会社であるByteDanceに買収されたPicoが、エクステンデッド・リアリティ(XR)分野への取り組みをさらに推進するためにQualcomm(クアルコム)と大型提携を結んだ。

PicoのXRプロダクトには今後QualcommのSnapdragon Spacesが活用される。Snapdragon SpacesはXR対応アプリを作る開発者向けにQualcommが提供しているプラットフォームだ。Snapdragon Spacesプラットフォームは、利用者をVRヘッドセットの中でデジタルの世界に没入させるのではなく、開発者がARグラスのエクスペリエンスを構築して既存のスマートフォンで利用できるようにし、ARをユーザーにとっての「2つめの画面」にすることを狙っている。

PicoとQualcommがこれまで近い関係であったことを考えれば、この提携はうなずける。すでにPicoの最新VRヘッドセットであるNeo 3はSnapdragon XR2チップセットを採用している。

QualcommのCEOであるCristiano Amon(クリスティアーノ・アモン)氏はバルセロナで開催されている毎年恒例の大規模モバイル関連展示会のMWCで「これはすばらしいチャンスです。おそらく今後10年間で(XRは)スマートフォンと同等の規模にまで成長し、特にARグラスはすべてのスマートフォンを拡張するものとなるでしょう」と述べた

ByteDanceのCEOであるRubo Liang(梁汝波)氏はリモートのビデオで「人々のエコシステムを作るハードウェア、ソフトウェア、テクノロジーのロードマップに関して協業できることをたいへん喜んでいます」と述べた

Picoは中国ではVRブランドをリードしているが、Oculusのユーザーへのリーチやクリエイターエコシステムの規模には遠く及ばない。Steamの調査によると、2022年1月にグローバルで使われているVRヘッドセットのシェアはPicoの主要2製品を合わせてもわずか0.3%だ。この市場ではOculus Quest 2とRift Sの2つで60%を占めている。

業界関係者は、資金力のあるByteDanceが親会社であることがPicoのシェア獲得に役立つかどうかに注目している。さしあたり中国では、Picoは中国版TikTokと呼ばれるDouyinに大量の広告を出している。

Qualcommとの提携によってPicoのコンテンツのエコシステムが成長し、開発者の目が中国のXR市場に向くかもしれない。中国では急速に5Gが展開されていることから、XR市場が大きく成長すると予測されている。Qualcommによれば、Snapdragon Spacesは「OpenXRランタイム対応スマートフォンに接続するARグラスに最適化された、顔に装着する初のARプラットフォーム」であるという。Snapdragon SpacesにはUnityやEpic GamesのUnrealなど主力3Dエンジンをサポートする使いやすい開発者向けキットも用意されている。

画像クレジット:Pico

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

ザッカーバーグ氏、音声コマンドでバーチャルワールドを作るデモを披露

Meta(メタ、旧Facebook)は、音声コマンドだけでバーチャルワールドでモノをつくったり、持ち込んだりできるAIシステムのプロトタイプを披露した。同社は「Builder Bot(ビルダー・ボット)」と呼ばれるそのツールを、メタバースの中で新しい世界を作るAIの可能性を見せるための「実験的コンセプト」だと考えている。MetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、米国時間2月23日に行われたイベント「Meta AI:Inside the Lab(メタ・エーアイ:インサイド・ザ・ラボ)」で、事前録画されたデモを通じてそのプロトタイプを紹介した。

動画内でザッカーバーグ氏は、バーチャルワールドのパーツを組み立てるプロセスを、実際にやりながら説明した。彼は「let’s go to a park(公園へ行こう)」というプロンプトから始めた。するとボットが、緑の草原と樹木のある公園の3D風景を作る。ザッカーバーグが「actually, let’s go to the beach(では、砂浜に行ってみよう)」というと、ボットは現在の風景を砂と水からなる新しい風景に置き換える。次に同氏は雲を追加したいと述べ、すべてAIが生成していると説明した。そしてザッカーバーグ氏は、ひつじ雲のほうがいい、と言って風景を変えた。これはボイスコマンドが具体的な指示を出せることを示すためだ。

 

彼が海の上の特定の場所を指して「あそこに島を作ろう」というとボットが島を作った。続いてザッカーバーグ氏は、木々とレジャーシートを追加するなどいくつかのコマンドを発した。さらにカモメとクジラの音も加えた。ある時彼は、水中翼船まで追加した(彼のお気に入りのホビーの1つで、流行語にもなった)。

ビデオ全体を通じて、Builder Botはボイスコマンドを使って3Dオブジェクトを作り、風景に配置しているように見えた。Metaはプロトタイプを発表したブログ投稿で、このツールは「メタバースの創造性を加速します」というが、技術の詳細は明らかにしていない。

画像クレジット:Meta

この技術が成功すれば、他のVRワールドやプラットフォームにも影響を与える可能性がある。例えばゲームプラットフォームのRoblox(ロブロックス)は、 最近音声機能のテストを開始し、独自の開発プラットフォームを提供している。いつかこうした会社が、Metaのプロトタイプで見られたようなテクノロジーを導入して、世界を創造する同じような体験を実現すればおもしろい。

しかし現段階は、Builder Botの作る世界は、外観も機能もかなりシンプルだ。また、コマンドを声に出してオブジェクトを呼び出すのは最初は楽しいかもしれないが、もっと複雑な3D環境を作る方法としてスケーラブルな方法とはいえない。どちらかといえば、子どもがバーチャルワールドを作る入門レベルの練習場所として楽しいかもしれない(しかし、残念ながらMetaはすでに、同社のバーチャル環境が子どもにとって安全な場所ではないかもしれないことを証明している)。

Metaによるこのプロトタイプの発表は、同社がメタバースに数十億ドル(数千億円)を投資している中の出来事だ。2022年2月初め、MetaはReality Labs(リアリティー・ラボ)部門の財務状況を初めて発表し、2021年100億ドル(約1兆1500億円)以上の赤字だったことを明かした。2022年も損失は増えるばかりと予測していると同社が述べているところを見ると、Metaにはメタバースを作るためにつぎ込む無限の資金があるようで、他の小さな会社より先に成功する時間は十分あるに違いない。同社のメタバースへの莫大な投資は、今後も我々はメタバースを宣伝するためのプロトタイプをたくさん見るであろうことも示唆している。

真の「メタバース」は未だに存在していないが、このバズワードはザッカーバーグ氏とMetaによってこの1年間数多く使われ、2021年の企業ブランド変更のきっかけにもなった。ザッカーバーグ氏は以前、メタバースについて投資家に次のように説明した。「デジタル空間で人々とともにいられるバーチャル環境です。それは見ているだけではなく自分がその中にいる、一種の具現化されたインターネットのようなものです」。

Metaは同日のイベントで他にもいくつか発表を行った。AIを利用したチャットボットAIシステムカードツール、および and a 万能音声翻訳機だ。この翻訳機は話し言葉が主のものを含むあらゆる言語の同時通訳を行うもので、既存の翻訳システムを超えるだろうと同社は言っている。Metaによると、世界人口の20%は、既存の翻訳ツールが対応していない言語を話しており、同社は新しい機械学習技術を駆使してこれを解決する計画だ。

画像クレジット:Meta

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

これがオーブ型の新ヘッドセット「PlayStation VR2」だ

Sony(ソニー)はCESで、近日発売予定のバーチャルリアリティヘッドセットについて簡単に言及した。これは、Sonyが例年この展示会で行っていることで、詳細についてはあまり説明せず、今後の製品についての耳よりな情報を提供する。そして、もし何かエキサイティングなものを隠し持っているのなら、それを少し見せればいいのだ。

米国時間2月22日、PlayStationの公式ブログは次のステップに進み、この製品についてもう少し明らかにした。それは、丸みを帯びた角の通気口や、どのようにしてこのようなデザイン上の決断を下すことになったのかについて企業が語るハードウェアの公開の一種だ。しかし、肝心なのは、私たちがついにそのモノを目の当たりにしたことだ。

Sonyは、そのデザイン言語を、ひと言で「オーブ型」と表現している。これは、VR2 Senseのコントローラーのオーブ型とマッチするためにデザインされたオーブだ。そう、ずっとオーブ型だ。理に適っている。人間の手や頭の形は丸いものが落ち着く。Sonyはこう付け加えた。「円形のオーブの形は、プレイヤーがバーチャルリアリティの世界に入ったときに感じる360度の視界を表現しています」。

長時間装着するものだからこそ、快適な装着感が重要だ。そのため、新たに通気孔を設け、調整ダイヤルに手を加え、焦点距離の選択肢を増やした。また、触覚フィードバック用の新しいモーターを搭載し、全体的にスリムになった。重量バランスと調整可能なヘッドバンドは、PSVR第1世代のユーザーには馴染み深いものだ。ヘッドホンジャックの配置も同様だ。

画像クレジット:Sony

「PlayStation VR2のヘッドセットのデザインに取り組み始めたとき、まず注力したかったのが、PS5本体にある通気口のように、ヘッドセットに空気を逃がす通気口を作るというアイデアでした」と、Sonyデザイナーの​​森澤有人氏は話す。「VRゲームに没頭している間にレンズが曇ってしまうことを防ぎ、通気性を確保するための良い方法として、当社のエンジニアがこのアイデアを思いつきました。いろいろなデザインコンセプトに取り組みましたが、最終的には、スコープの上面と前面の間に小さな空間を設け、そこに換気口が内蔵されています。このような形になったこと、そしてこれまでに得られたポジティブなフィードバックに、私は本当に誇りを感じています。プレイステーションのファンの方々にもそう思っていただけると思いますし、早く試していただきたいですね」。

Sonyは、白と黒のデザイン言語について、次のように述べている。

私たちの目標は、リビングルームの魅力的なインテリアの一部になるだけでなく、ヘッドセットやコントローラーを使っていることを忘れてしまうほど、ゲームの世界に没頭できるヘッドセットを作ることです。そのため、ヘッドセットの人間工学に細心の注意を払い、さまざまな頭のサイズに対応した快適な使用感を実現するために、徹底したテストを行いました。

この製品は、(デス・スターに住んでいない限り)家の家具に溶け込むことはないだろうが、お客さんが来るたびにそれを隠しておく必要を感じなくなるかもしれない。

最初のPSVRシステムは、2016年にPlayStation 4向けに登場した。2019年末には、このヘッドセットの販売台数が全世界で500万台に達したと発表した。後続機は、VR/メタバース全般への注目が高まっていた時期にPS5向けに登場し、必然性を感じさせた。

画像クレジット:Sony

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(文:Brian Heater、翻訳:Yuta Kaminishi)

ウェルネスとデジタルサイケデリックのXRプラットフォームTrippが世界最大のVR瞑想コミュニティEvolVRを買収

カリフォルニアに拠点を置く「ウェルネスとデジタルサイケデリックのXRプラットフォーム」、Tripp(トリップ)は買収による成長路線を継続し、世界最大のVR瞑想コミュニティであるEvolVR(エボルVR)を買収した。これは2021年のPsyAssist(サイアシスト)の獲得に続くものだ。PsyAssistは、サイケデリック体験を続けるために使うモバイルアプリである。今回の買収によって同社は、ポケモンGOメーカー、Niantic(ナイアンティック)の新しいツールキットであるNiantic Lightship(ナイアンティックライトシップ)の立ち上げパートナーの一員として、拡張現実(AR)体験に取り組んでいることが明らかになった。

EvolVR(創設者はユニテリアンユニバーサリストの牧師および瞑想インストラクター)は、VRで活動する世界初・世界最大の瞑想コミュニティであると主張しており、4万人を超える人がVRマスクを着けて瞑想に入っているとのことだ。Trippも負けてはいない。同社は、350万を超えるウェルネスセッションを行ってきたと主張している。「瞑想術、フロー誘発ゲーム、バイノーラル音声と呼吸のエクササイズ」を組み合わせて、不可思議な感覚を吹き込み、ユーザーの感じ方を変えるのだ。こうしたセッションは、リラックスと調和に役立つように考案されているが、サイケデリック体験の促進に使用することもできる。

コミュニティを重視する組織を買収して支持者の規模を拡大すれば成長を大きく促進できるが、当然ながら、すべてのコミュニティが「買われる」ことに賛成であるとは限らない。特に、買い手が移行期間に荒っぽいことをすればそうである。TrippのCEO兼創業者であるNanea Reeves(ナネア・リーブス)氏と話して、買収の背景が少しわかった。また、高揚感を得られるVR・瞑想・スピリチュアリティ・サイケデリックのマッシュアップとして次に来るものを知ることもできた。

Trippという名前について尋ねないわけには行かなかった。名前の由来は?サイケデリックとの関係は?

「体験としては、サイケデリックというよりVRです。Oculusの開発キットが初期段階の頃、誰もが四六時中VR体験をしていました。ヘッドセットを外して、『すごい、まさにTrippだ!』と言ってました。ある現実があってそれに気づくという体験をして、それから別の現実も体験することには、何かがあります。もちろん、薬物を使ってもそういう体験はできますが、VRにはそれ自体にそういうメカニズムがあります。そこから名前がひらめきました」とリーブス氏は説明している。

TrippのCEO兼創業者ナネア・リーブス氏(画像クレジット:Tripp)

「先方が当社のサイケデリックな面について知ったのは、当社が消費者向け製品を発売した後でした。私たちがしていることにサイケデリックコミュニティから大きな関心が寄せられ、ケタミンを使うクリニックなどでは当社の消費者向け製品がオーガニックな方法で採用されていることがわかりました。私たちは、それを臨床分野への進出の機会と見ることにしました。(苦痛緩和ケアやサイケデリック療法において)臨床展開に取り組む方法はいくつかあると思います。不安を和らげる治療に備える方法や治療後のサポート方法に大いに力を入れていきたいと思います」。

「当社には、別の取り組みと、サイケデリックなメンタルヘルスの手順を対象としたPsyAssistというアプリケーションバンドルがあります。当社はこれらの分野で支援を行うことができます。2022年の前半に、現時点ではケタミン限定のパイロット試験をいくつか行う予定です」。

「私たちと消費者の最も意味深い関わり合いのいくつかは、人生の終わりに臨んで当社の製品を使用する人との関わり合いであることがわかりました。そうした人にメリットがあった、つまり自分が身体的に経験していることから気持ちを紛らすことができたというだけではありません。家族や世話をする人も、Trippの体験を通してストレスを解消できました。当社のツールキットやアプリがさまざまな点でどのように役立ったか報告してくれるユーザーのフィードバックを見ると、起業家としてそれ以上求めるものはありません。努力によって実際に人々の状況が良くなっていることがわかるからです」。

EvolVRの買収

同社はMayfield(メイフィールド)が取りまとめたラウンドで400万ドル(約4億6200万円)を調達し、その後2021年6月にサイケデリックライフサイエンスを重視する投資会社Vine Ventures(バインベンチャーズ)とMayfieldが取りまとめたラウンドで1100万ドル(約12億7000万円)を調達した。同社は、変革的な体験を実現するために臨床分野とコミュニティ構築を並行して追求することを計画している。EvolVRの買収は明らかに、その課題の中のコミュニティ分野である。

Trippは、2022年の終わり頃にAR製品を発売するために、ナイアンティックライトシップのプラットフォームに取り組んでいる(画像クレジット:Tripp)

「私は、EvolVRのコミュニティについていくつか気づいたことがあります。私はよくVRで人に会っていましたが、彼らはJeremy(ジェレミー)[Nickel(ニッケル)氏、EvolVRの創設者]の話をずっとしていることがよくありました。それがアバターのグループでの瞑想を強制することになるとは思いませんでしたが、私は続けて、特にパンデミックの時期に彼らの瞑想をいくつか試してみました。彼らが案内付きの瞑想体験をしているのが気に入りました。私と一緒に瞑想体験をしている別の人がいるのを感じました」とリーブス氏は説明している。「Electronic Arts(エレクトロニックアーツ)にいたとき、私はゲーム中毒のコミュニティの状況や、彼らが女性に優しくないことがわかりました。EvolVRでは、瞑想グループのリーダーが安心できる場を作っているのがわかりました。彼らは、私が良い印象を受けるようにグループをリードする方法を心得ていました。誰かが煽っても、効果はありませんでした。メタバースが拡大するときも、嫌がらせを無視できる場があることは大切です。私たちは、そうした配慮の行き届いた落ち着ける場を作って、自分自身と他の人とのつながりを深めるお手伝いができます」。

「ジェレミーと私は(買収を)内密にしてきました。彼は、コミュニティの人たちは買収を喜ぶだろうと思っています。私たちは、ジェレミーの14人の瞑想リーダーと意思の疎通を図る必要があります。彼らも私たちの傘下に入るからです。私たちは、配慮の行き届いたメタバースとはどのようなものか、考える努力をしています」。

買収の結果、EvolVRはどう変わるか?

「私はこの買収を記念したいと思っています。2つのコミュニティが一緒になって、アンビエント音楽のDJイベントとローンチパーティーを開くことを考えていました。私たちは、本当にクールなことをしようと思ってわくわくしています」とリーブス氏は語る。「プログラミングの観点からは、単なるグループ瞑想の枠を超えたいと思っています。サウンド入浴を手がけたいと考えています。呼吸法も手がける予定です。アンビエント音楽の『エクスタティックダンス』で体を動かすイベントを行う方法についてアイデアがいくつかあります。VRの抽象的な概念を使ってコミュニティとの調和をサポートするすばらしい機会があります。VRの申し分のない使用事例です。不名誉なことは避けて、自分の家でこっそりできます。きまりの悪い思いをすることはあまりなく、それでいてメリットがあります」。

Trippのプラットフォームを試してみた。慣れるのに少しかかりますが、とてもリラックスできる。写真は私ではない(画像クレジット:Tripp)

「(Trippの)支持者の幅広さにとても満足しています。私たちの支持者の大多数はミレニアル世代で、X世代がとても大きな2番目の世代です。支持者の約8パーセントは65歳以上です。VRはまだ共有のデバイスで、家族全体で使われています。例えば宿題をする前に集中力を高めるのに役立つよう子どもにTrippを使わせているという声もあります。ゆくゆくは、ほとんどの人がデータに対応したヘッドマウントディスプレイを使うようになることを期待しています。理想では、感情的な健全性を管理するお手伝いをしたいと思っています。そこから、依存症ケアや苦痛緩和ケアのような使用事例を対象にすることができます。実際のところ、主なメリットは、その時その時の感じ方に力を作用させるのに役立つということです」。

「音声だけの現行世代の瞑想アプリで、人々はますます快適に解決策を探していると思います。それを次のレベルに持っていくお手伝いができると思います。そうすれば、そのレベルのあり方を体験できます。私の目標を挙げるとすれば、必要な時に利用できるセルフケアの決まったツールキットを継続的に提供することです」。

今回の買収は現金と株式の組み合わせだったが、Trippは取引の詳細を開示していない。

画像クレジット:Tripp

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)