Googleが開発を中止した自律動作する運搬用電動6輪車ロボ、スピンオフのCartkenから復活へ

短命に終わったGoogle Bookbot(グーグル・ブックボット)を開発したチームが、後継ロボットを復活させようとしている。BookbotはGoogleのインキュベーター制度であるArea 120(エリア120)で開発されていた実験的プロダクトだった。Googleはグループの収益性を改善するため赤字のプロジェクトを多数閉鎖した。このため開発を行っていたエンジニアはスピンオフして独自に宅配ロボットの開発を始めた。

2019年創立のステルススタートアップであるCartken(カートケン)が開発したのは歩道を進む宅配ロボットだ。同社共同創業者にはBookbotを開発したエンジニアに加えて、現在Googleショッピングとして提供されているサービスの運営責任者だったロジスティックス専門家も加わった。

Area 120は有名なGoogle Xプログラムなど、ムーンショットと呼ばれる野心的事業に比べれば地味だったが、小人数のチームが短期間で新しいプロダクトを開発する場所として作られた。2016年からArea 120ではクラウドソースの乗り換えアプリ、教育向けビデオプラットフォーム、スモールビジネス向けバーチャル顧客サポート、絵文字利用ゲームなど10数件のアプリやサービスが生まれている

BookbotはArea120から最初に生まれたプロダクトで、2018年に自立的に作動する電動6輪車の開発を始めた。2018年後半、地元のマウンテンビューではGoogleと協力して配送プログラムの実験を開始することとした。Area120のBookbotは2019年の2月から週1回マウンテンビュー市図書館で書籍の処理を行った。

書籍運搬に加えてBookbotはAmazon(アマゾン)やStarship Technologiesなどの同様の各種配送業務ができた。下の写真がこのGoogle Bookbotだが、高さ82センチで各種のセンセーを備え、自立作動に加えて必要な場合は人間による遠隔操縦も可能だった。積載重量は22キロ、歩道を最大時速7.2キロ程度で進むことができた。

Bookbot image from website

Google Bookbot(写真:Google)

ユーザーが図書館のウェブサイトから本を返却したいと知らせるとBookbotはユーザーの家まで自立走行し、家に到着するとチャットで着いたと知らせることができた。ユーザーがBookbotの荷物棚の蓋を開き、本を入れるとロボットは図書館に戻りそこで図書館の職員が内容をチェックした。

Googleの開発チームのリーダー、Christian Bersch(クリスチャン・バーシュ)氏が、当時、SilconValley.comの語ったところによると、パイロットプログラムは9カ月続くはずだった。「我々はこのロボットが現実の環境でどのように動くのか確かめているところだ。どんな問題があるるかをチェックした」ということだった。

マウンテンビュー市の図書館システムの責任者、Tracy Gray(トレイシー・グレイ)氏がTechCrunch に語ったところによると、Bookbotが歩道に姿を現したとき人々は大喜びしたと言う 。「(Bookbotを)見た人はみんなクールだと思ってカメラを取り出して写し始めた。これという事故もなかったし、技術的な問題もなければいたずらで壊されるというようなこともなかった」という。

最大の問題はユーザーの反応でもなく技術的な課題でもなく、Googleそのものだった。Bookbotの実験は当初の9カ月の予定を大幅に下回った。パイロットプログラムは6月の終わりにあっけなく幕を閉じた。4カ月も経っていなかった。Bookbotロボットがマウンテンビュー市で実際に稼働したのはわずか12日に過ぎなかった。ロボットは100回近く走行し、36人のユーザーにサービスを提供したという。

Bookbotは図書館システムにとってもユーザーにとっても大変役に立っていにも関わらず、グレイ氏はArea 120がなぜBookbotプロジェクトを中止したのか、まったく理由を告げられなかった。今もGoogleこの件についてコメントしようとしない。

しかしBookbotプロジェクトが葬られたたのはGoogleの戦略変更の時期と一致していた。Bookbotが放棄される1月前、Googleはオンライン・マーケットプレイスと宅配サービスのGoogle ExpressをGoogle Shoppingに統合した。つまりリテール分野ではAmazonやWalmart(ウォルマート)のような巨人に対抗できないことを認めたわけだ。リテール分野への熱意が薄れるにつれ、Googleはロボット配送システムに対する興味も失った。

しかしこれがBookbotの最期ではなかった。 Linkedinの記録をチェックすると、Bookbotプロジェクトが棚上げされた翌月の7月にバーシュ氏はJake Stelman(ジェイク・ステルマン)氏をはじめとするArea 120でロボットを開発していたエンジニアとともにGoogleを去ったことがわかる。10月にははCartkenが創立された。チームには、Amazon、Google Expressでリテールビジネスのマネージャーを務めていたRyan Quinlan(ライアン・クィンラン)氏も加わった。

Cartkenの運営は現在でもステルスモードであり、Googleと同様に同社はこの記事へのコメントは避けている。しかし同社は韓国のシリコンバレー視察団に対し「AI利用により自動走行可能な宅配ロボットを開発した」と語っている

Cartkenのサイトには「自動走行宅配ロボットを低価格で提供できる」とあり、初期バージョンは商品の戸口ヘの配送、いわゆる「ラストワンマイル」をターゲットにしたものだ。ステルス企業らしく、一部しか写っていないが、マットブラックのBookbotタイプの車輪移動ロボットには蓋があり前後にライトが装備されているようだ。

今のところGoogle、CartkenともにGoogleがスタートアップを支援しているのか、Area 120由来のテクノロジーが利用されているのかなどについて明らかにしていない。

GoogleはWaymo(ウェイモ)のように自動走行車メーカーをグループ内の企業として独立させている一方、Googleの自動走行プロジェクトの元責任者Chris Urmson(クリス・アー、ムソン)氏らがGoogleを離れて立ち上げたAurora(オーロラ)は今や25億ドル(約2746億円)に評価される企業となっている。ソフトバンクが支援する宅配ロボットのNuroは先週、公道を走行することを許可されて注目を集めているが、これもGoogleのエンジニア2人が創立した会社だ。

ただしGoogleから独立したチームがすべて順調というわけではない。2016年にGoogleを離れて独自の自動走行ロボットによるロジスティクスの改革を目指したAnthony Levandowski(アンソニー・レバンドフスキー)氏は創立したOttoをUberに買収させたものの、企業秘密をめぐる歴史的な法律紛争に巻き込まれ現在も訴訟が続いている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Virgin Galacticが商用飛行に向け準備を開始。、宇宙船VSS Unityを宇宙港へ移動

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は商業宇宙飛行に向けて、重要なステップを踏み出した。宇宙旅行を計画する同社は、SpaceShipTwoの2号機「VSS Unity」を米国カリフォルニア州モハベにある同社の製造施設から、ニューメキシコ州のSpaceport Americaに移動させた。同社は、創業者のRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏が70歳の誕生日を迎える年内に、彼を宇宙へと打ち上げることを目標にしている。

VSS Unityは飛行機「VMS Eve」により係留され上空へと移動し、切り離され宇宙へと上昇する。そしてピーク高度の宇宙空間に到達するとエンジンを停止し、数分間のほぼゼロGとなる微重力状態を乗客へと提供する。

この90分の体験に、最初の旅行者はチケット1枚につき約25万ドル(約2700万円)を支払うことになる。これは高く思えるが、これまでの宇宙旅行の中では最も廉価な方法でもある。しかしチケットの保有者は、数年待ち望んでいた宇宙旅行を楽しむまでまだしばらく待つことになる。今回の再配置には宇宙船とその運搬用の飛行機の最終テストがともない、完了までにはまだ時間がかかる。

今回の準備では、宇宙船と輸送機を互いに接続して周囲の空域を飛行させる「キャプティブ・キャリー」フライトを何度か実施するとともに、VSS Unityによるロケットのフライトテストも行う。最終的に、Virgin Galacticは宇宙船の客室と、25万ドルを支払った旅行者が遭遇するであろう全体的な体験を評価し、最後の決定をする。

実際の運行に先立つ重要なテストの項目を考慮すると、VSS Unityの最初の商用飛行はまだ少し先になるだろう。前述したように、同社は70歳を迎えるブランソン氏のための飛行を優先していると伝えているが、状況次第では今年の終わりまでにほかの商用飛行も実施できるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

人気の写真印刷アプリ[PhotoSquaredアプリからユーザー写真と出荷情報が流出

人気の写真印刷アプリのPhotoSquaredから、何千もの顧客の写真や住所、その他のの詳細が流出した。今回のデータ流出では、少なくとも1万件の出荷情報がAmazon Web Services(AWS)のパブリックストレージに格納されていた。ストレージのバケットにはパスワードが利用されておらず、簡単に推測できるウェブアドレスを知っている人なら、誰でも顧客データにアクセスできた。これらのAWSストレージのバケットは設定が間違っており、「プライベート」ではなく「パブリック」に設定されていることがあまりにも多い。

流出したデータには、ユーザーがアップロードした高解像度写真と、2016年以降に作成された出荷ラベルが含まれており、流出の発覚日までデータは更新されていた。Google Playのランキングによると、同アプリのユーザーは10万人を超えるという。

どれだけの期間、ストレージのバケットが公開されていたのかは不明だ。

公開されていたユーザーの写真と出荷情報の一例。公開されていたストレージのバケットには数千の出荷情報が収納されていた。

セキュリティ研究者らは、公開されたバケットの名前をTechCrunchに提供した。我々はいくつかの出荷ラベルを既存の公開データと照合し、米国時間2月12日にPhotoSquaredに連絡し、データ流出について警告した。

PhotoSquaredを所有するStrategic Factoryの最高経営責任者(CEO)であるKeith Miller(キース・ミラー)氏は、データがすでに非公開にされたことを認めた。しかしMiller氏は、データ侵害通知法に基づいて、顧客や規制当局に通知するかどうかについての明言を避けた。

この記事の執筆時点では、PhotoSquaredは同社のウェブサイトやソーシャルメディアアカウントにて、セキュリティ上の不備について言及していない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

クラウドロボティクスプラットフォーム開発のRapyuta Roboticsは“物流ロボのサブスク化”を目指す

Rapyuta開発の倉庫用の“協働型”ピッキングロボット

クラウドロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」を提供するRapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス、以下Rapyuta)は2月17日、物流倉庫大手の日本GLPのグループ会社で配車支援サービス「配車プラス」提供のモノフル、ならびに産業用ロボットなどの製造を行う安川電機と資本業務提携を締結したことを発表した。リードインベスターはモノフル。また、Rapyuta Roboticsは同日、物流施設の自動化に向けた「RaaS(Robot as a Service)」提供のプラスオートメーションとのパートナーシップ構築についても併せて発表している。

Rapyutaはチューリッヒ工科大学からスピンオフした大学発ベンチャー。2014年7月設立の同社はEU出資の研究プロジェクト「RoboEarth」出身チームにより日本で創業された。

もともとはドローンのプラットフォームを開発していたが、市場が未成熟だったため、ピボット。現在の主軸は物流だ。Rapyutaの代表取締COO、クリシナムルティ・アルドチェルワン氏は、EC市場が急成長、物流の仕組みが複雑化、そして慢性的な人手不足から、「ロボットによるオートメーションのニーズが非常に高まってきている」と話す。「だが、現場のニーズにオートメーションの技術が追いついていないというのが現状」(アルドチェルワン氏)

同氏いわく、既存のソリューションは、「スケーラビリティ」と「柔軟性」が欠けている。そのような課題の解決のためにRapyutaが開発しているのが、rapyuta.ioだ。

rapyuta.ioを使えば、自律移動ロボットや自動フォークリフト、ロボットアームなど、多種多様、かつ複数のロボットを、クラウドから一括管理し、協調制御や、ロボットナビゲーションなどを行うことができる。その他、ロボットソリューションの効果計測シミュレーションや、ソフトウェア・アップデートを含めたリモートメンテナンス機能もある。

rapyuta.ioの最大の利点は、インフラ構築の手間が省けることにより、すぐにロボティクスソリューションの開発を始められること。そして、サービスやデバイスのカタログが用意されていることにより、オープンエコシステムによるソリューション開発が可能で、「ユーザーが得意とする技術分野の開発に集中出来る」ことも強みだ。その件に関して、アルドチェルワン氏は「今後はエコシステム構築に注力していきたい」と言う。

「ロボットは、様々なハードウェアやソフトウェアの組み合わせでできる塊。1社で全て作ることは難しい。だから、色々な人が参加して、交換できるようなエコシステムは大事。ハードウェアの開発者やソフトウェアの開発者が、自分のハードウェアやアプリを入れる。それをエンドユーザーが使えるようにしていきたい」(アルドチェルワン氏)

Rapyutaでは倉庫用の“協働型”ピッキングロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)の開発も行い、商用化を進めている。同社いわく、既存倉庫に何も手を加えなくても導入できる点が特徴だ。

本日発表されたモノフルとの提携、そしてプラスオートメーションとのパートナーシップ構築の狙いは、大きな初期投資が必要とするため大企業しか利用することが出来なかったロボティクスによるオートメーションを、サブスク化し、提供すること。「将来的にはAMRのみならず、フォークリフト、アーム、AGV(無人搬送車:Automated Guided Vehicle)などの幅広いタイプのロボットを扱うレンタルサービスを提供することを視野に入れています」(Rapyuta)

また、安川電機の提携では、プラットフォームに接続されるロボットの種類を増やし、「複数ロボットの連携ソリューションなどの新たな付加価値を生み出すこと」を目指す。加えて「両社の提携により、柔軟性が高く優れたソリューションを人的資源及び財務的な余力が限られている中小企業も含めた幅広いお客様に利用されることを期待しています」(Rapyuta)

Rapyutaは2015年1月にCYBERDYNE、フジクリエイティブコーポレーション、ブイキューブ、そしてSBIインベストメントを引受先とするシードラウンドで3.51億円、2016年9月にSBIインベストメントと社名非公表の事業会社1社を引受先とするシリーズAラウンドで10億円を調達したことを明かしている。

NvidiaのQ4売上高は前年同期比41%増、粗利率が改善するも通期の不調は挽回できず

人工知能向け、およびグラフィック向け の大手半導体チップメーカーであるNvidia(エヌビディア)は2月13日、2020年1月26日を期末とする2020年度の第4四半期決算(2019年11月〜2020年1月)を発表した。同四半期の売上高は31億1000万ドル(約3420億円)となり、前年同期から41%の増加、第3四半期からはわずかな増加となった。

重要なのは粗利率の改善で、前期の54.7%から64.9%へ著しく改善した。同四半期の純利益は9億5000万ドル(約1050億円)だった。決算発表後、時間外取引を行うトレーダーが同社株に殺到し、Yahoo ファイナンスによると株価は約6.32%上昇した。

良いニュースだが通期の財務数値の悪さを挽回するには至らず、全体的にはやや複雑になった。2020年度の売上高は2019年度と比べてわずかに減少し、営業費用、営業利益、純利益、希薄化考慮後利益はすべて想定外の結果となり、数値によっては30%以上減少した。

エヌビディアの2019年の苦戦はチップメーカーに限ったことではない。昨年は半導体業界全体が苦しんだ。業界の売上高総額が最後にこれほど急激に減少したのは10年以上前だ。要因は複数あるが、市場の一部における需要減退や供給過剰が価格低下、つまり売上減少を招いたほか、進行中の米国、中国、韓国、日本の間の貿易摩擦などだ。

同社自体は近年、数多くの浮き沈みを経験した。仮想通貨の波に乗って同社の株価は急騰した。これは仮想通貨のマイナー(採掘者)がGPUを求めたからだ。GPUは、仮想通貨プロトコルで行われる多くの確認作業で中核となるハッシュ関数を処理するツールとして有利な立ち位置にいた。だが、仮想通貨の冬が同社の株価を暴落させ、2018年の終わりには50%という激しい下落に見舞われた。

ただし過去1年間で潮目が変わった。今年約150ドル(約1万6500円)で始まった株価は、今日約271ドル(約2万9800円)で終え、上げ幅は80%以上となった。その背景には、半導体業界の他の分野もそうだが、シリコンが新しい業務分野でより必要とされているという感覚がある。自動車、高性能コンピューティング、IoT、さらには5Gなどだ。ちなみに同社は、チップメーカーのMellanoxを昨年初めに69億ドル(約7600億円)で買収している。

大企業の世界のそうした熱狂がベンチャーの世界にも現れている。新しい業務分野をターゲットにしているCerebras(せレブラス)、Nuvia(ニュービア)、Graphcore(グラフコア)などのスタートアップの動きが、エヌビディア、Intel(インテル)などの既存企業に対しスタートアップを上回る業績を出すプレッシャーとなっている。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

消えた自動運転、都市OS覇権へ向けてのアプローチ、CES2020を振り返る

編集部注:本稿はDNXベンチャーズでインダストリーパートナーを務める山本康正氏による寄稿記事だ。

年初にテクノロジーの潮流を確認するイベント「CES」では、今年も様々な企業が新しい構想を発表した。

そんなCESで注目すべきは、「何が出展されたか」ではなく、「何が消えたか」。「昨年までは展示されていたのに、今年はない」、それは方針の変更を意味している。

全体の潮流として、今年は昨年に比べ、自動運転の展示が減った。これは「自動運転の開発が想定通りに進んでいない」ということを意味している可能性がある。(一方でホンダなどが出資する自動運転開発ベンチャーのGMクルーズはライドシェア用の無人運転車をCESではなく後日の1月21日に発表しており、評価が分かれている)

代わりに目立ったのは、地に足のついた電気自動車内のエンタメシステムや、自動運転の先を行くスマートシティの整備などについての発表だ。構想が自動運転の手前と周辺に二分したのは興味深い。

電気自動車というカテゴリでは、ソニーが発表した試作車、「Vision-S」が特に注目を集めた。

「ソニーがもし車を作ったらどうなるのか」。期待感、そして「非自動車メーカー」からの発表という意外性から、多くの参加者がVision-Sに熱いまなざしを向けていた。Vision-Sは今年のCESで一番注目された車だ。

Vision-Sの左後部座席の下には「Sony Design」という文字が刻まれている。「誰が作ったか」ということで期待感が高まる製造企業は、アップルやソニーなど、限られたブランドのみだろう。

ここ数年間、CESでは「未来の車の形」を示すようなコンセプトカーが数多く展示された。しかし、それらは、発売されるまでに10年もの歳月を要しそうな奇をてらったデザインのものだったり、実際の走行はできない模型だったりすることが多く、「現実性」と「驚き」のバランスがとれていなかった。だが、Vision-Sは、今にも走り出しそうな「現実的な車」であることから、来場者の注目を集めた。

車体自体はマグナ、ボッシュ、コンチネンタルなどが作っているため、そもそも「これをソニーが作った車と言っていいのか」、という疑問は残る。なぜ、他のパートナー企業の展示エリアではなく、ソニーのブースを選んだのか。そこは推測せざるを得ないが、消費者に驚きを与えるブランドとしては、ソニーが一番適していたのだと考えられる。 

ソニーが実際に提供しているのは、CMOSなど、安全性に使える高性能のセンサーや、ビデオ、音楽などのエンタメシステム。同様のコンセプカーは他社も作っているが、あくまで展示に留めており、プレゼンの目玉としての扱いではない。プレゼンの中でもあくまで「試作車」と強調しているものの、メディアによっては「ソニーが車を作る」と断定した書き方をしている。いずれにせよ、「驚き」による報道の広がりというプラスの効果は大きそうだ。

あくまで「試作車」であり発売すると明言していないことは、既存他社への配慮が伺える。しかし、中国で充電池を開発していた企業が電気自動車を発売し、一気に世界でも有数な電気自動車を販売する規模に成長したように、ガソリンエンジンからモーターに変わったときに、大きなチャンスはある。車内インテリアはバイトンやテスラと似ているところもあるため、どう差別化し、どうパートナーシップを作っていくかは注目だ。

CESにおけるもう一つの大きな潮流の変化を象徴しているのは、トヨタが発表した「Woven City(ウーブン・シティ)」という、スマートシティの実験場だ。トヨタは2018年のCESで、「モビリティ企業になる」と宣言し、「e-Palette(イーパレット)」というコンセプトカーを発表。しかし、そのコンセプトカーは実際に動くものではなく、2019年、実物の展示はなかった。本年、e-Paletteは展示はされていたものの、主役ではなかった。トヨタのコンセプトが「都市そのものをスマート化したい」というものに変化していたからだ。 

静岡の工場跡に建てる(2000人規模、2021年着工)予定とのことで、社員が強制的に転勤させられるのかが少し心配だが、要するに、物理的な実験場を建設するというものだ。しかし、同様の実験は既にトロントでグーグルが、北京近郊でアリババが進めている。これらと何が違うのかを、いかに示すかが、これからの課題の様に見える。

スマートシティではデータのやりとりが必須になる。その際に、「どの企業がOSを提供するか」で覇権が決まる。パソコンメーカーとウィンドウズの関係と似ている、と考える。

今回の構想は、パソコンメーカーに似ているところがある。プレゼンの最後で、「パートナー募集」という言葉があった。肝心なOSのところを外注すると、足元をすくわれかねず、バランスを考えなければならない開発になりそうだ。

その他の潮流について。日本でいうbodygram(ボディグラム)のような採寸アプリが当たり前となり、フードテックも増えてきた。人工栽培の展示も増加し、植物性由来の代替肉を開発するImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)も出展した。

米国との貿易戦争の関係もあり、中国のブースは昨年同様に、非常に小規模であった。ファーウェイも単に携帯電話などを展示するのみで、ヨーロッパのバルセロナで行われるMWCでの世界を制覇しそうな勢い(画像下)とのコントラストは興味深い。

展示自体は近年同様だが、サムソンは「世界感」をうまく表現しているように見える。あらゆるデバイスにアプリが入っており、それは家の中だけでなく、外までもを制するというメッセージ。これに関しては、アマゾンも、ガソリンスタンドとアレクサをつなげるという展示を、控えめながらもしていた。「家の中から外までを制する」というスマートシティのお手本の様なやり方だと思う。

結局は消費者が選ぶので、家の中からまず制したほうが、スマートシティも制しやすいということだと思われる。加えて、サムソンは独自の5Gアンテナ、チップもあるので、ファーウェイの5Gアンテナが米国同盟国では使いにくい状況では有利な立場にある。

CESでは、「どのような世界になるか」、また、そのためには「どの様な製品が役に立つか」、というメッセージが必要で、既存の技術を単に展示する旧来の方式からとは変わってきている。

国別で、特に「スタートアップの振興」という意味では、フランスが「フレンチテック」というキーワードを掲げ、相変わらず大きなブースを構えていた。今年は特にオランダも力を増していた印象だ。他国ではイギリスも力を入れていたが、「ヨーロッパ全体の一体感の無さ」はもったいなく感じられた。

アジアは中国が米国との貿易戦争により息を潜め、韓国が勢いを増しており、日本は相対的にもっと拡大をしていかなければ「良い取り組みが埋もれてしまう危険性がある」と感じた次第だ。

山本康正(やまもと・やすまさ):DNXベンチャーズ、インダストリーパートナー。ベンチャーキャピタリストとして日本と海外のベンチャー企業のビジネスモデルを精査し投資している。ハーバード大学客員研究員。1月15日、著書「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」発売。

「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」 (講談社現代新書)

著:山本康正

【内容紹介】

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  • 近未来の企業・世界はどのような形となるのか
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これらの大枠を2時間で知ることのできる、近未来のテクノロジーを知るための入門書。

SpaceXのCrew Dragonが最初の有人飛行に備えてフロリダへ移動

SpaceXが、宇宙飛行士が乗る商用の有人宇宙船Crew Dragon(クルー・ドラゴン)をフロリダに移した。すべてが計画通りに行けば、2〜3か月後にはここからの打ち上げが行われる。Crew Dragonのカプセルは今、打ち上げ前の最後の試験と点検がフロリダで行われている。それはFalcon 9ロケットの上部に装着され、NASAの宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏を乗せて、フロリダのケープカナベラル空軍基地から打ち上げられる。

ベンケン氏とハーリー氏はCrew Dragonに乗って国際宇宙ステーション(International Space Station、ISS)へ向かう。それはSpaceXとNASAが「Demo-2」というコードネームで呼ぶデモンストレーションミッションの一環で、ISSまでの有人往復定期便の可能性を検証する試験の重要な一部でもある。SpaceXのCrew DragonとBoeing(ボーイング)の有人宇宙船Starliner CST-100の2つが、 NASAのためにその運用ステータスを達成すべき宇宙船とされている。なおボーイングの機は、目下開発と試験中である。

NASAの宇宙飛行士を乗せた宇宙ステーションへの往復飛行を前にしてCrew Dragonはフロリダへ移った。

ボーイングの宇宙船は最近何らかの問題に遭遇して試験の締め切りを延ばし、宇宙飛行士を乗せた最初の飛行を行うという目標に遅れが生じた。Starlinerは12月に行われた無人のデモンストレーションミッションで、深刻と思われる2つのソフトウェアの問題に遭遇した。今NASAと同社は修正活動を行なっており、それにはボーイングとそのソフトウェア開発および試験工程の安全性の見直しが含まれている。

一方SpaceXは1月に飛行中のアボートテストを行い、有人のデモミッションへ向かう前に必要とされる最後の重要なデモンストレーションを終えた。そのテストはあらゆる点で成功であり、Crew Dragonが予期せざるエラー時には自分を打ち上げ機から分離して離れ、乗客である宇宙飛行士の安全を確保することを示した。

SpaceXは、有人飛行の商用運用の前の、最後の段階で計画されているデモの、準備過程の詳細を共有してきた。たとえば今週初めのツイートでは、同社の宇宙船が超音波試験を行っていることを報告した。現在、Demo-2ミッションは暫定的に5月2日に行われるとされているが、ミッションのニーズや残る準備の進捗によっては早まることも延期されることもありえる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

テクノロジーを正しく機能させるにはユーザーの理解が必要

先週、民主党のアイオワ党員集会で起こったことは、公共部門の仕事にテクノロジーを使う場合、正しく機能させようとしても必ずしもうまくいかないことがあるという教科書的な例だ。

ここからアイオワ州での教訓として、政府関連の手続きにテクノロジーを使うべきではないと結論付けることもできる。だがこれは間違った結論であって、起こったことと起こらなかったことを混同している。テクノロジーは失敗に終わった手続き変更を修復するものではない。重要なのはそれが何に役立つのかを理解することだ。

公共分野の問題解決にテクノロジーを正しく活用したらどうなるだろうか。公益に資するテクノロジーを効果的に構築するための3つの基本原則がある。実際の問題を解決すること、ユーザーの生の姿を念頭に置いて設計すること、小さく始める(テスト、改善、テスト)ことだ。

アプリを開発したり、新しいテクノロジーを政治的手続きの中に投入する前に、次のように問う価値はある。アプリで何が達成したいのか。アプリが既存の手続きを改善する役に立つのか。

実際の問題解決にアプリやテクノロジーを正しく適用する第一歩は、それを使う人間を理解することだ。彼らが実際に必要としているのは何か。アイオワ州のケースでは、地元のベテランの選挙主催者に投票結果集計で何が役立つかを聞いておく必要があった。また、地区のリーダーや党員集会の参加者と直接話をしたり、不成功に終わった候補者の支持者に対し、学校の体育館の別の隅に移動するよう隣の人が説得するという独特のプロセスを観察しておく必要もあった。ウェブアプリの構想について質問するだけでなく、実際の環境とユーザーでアプリをテストし、その動作を確認して改善することも重要だ。

この手の当日一発勝負のアプリを開発する際には、操作手順や使いやすさを現実世界にかなり近い環境でテストする必要がある。アプリ開発担当企業のShadow(シャドー)はユーザーを用いた「軽量級の」テストを実施したが、アプリ設計時に想定した利用者からフィードバックを得たり利用者向けに微調整したりする、いわば助走期間がなかった。アプリが正しく機能しても、誰も使わなかったりダウンロードできなかったりすれば意味がない。

これがどのように機能するか参考になるモデルの1つとして、初めて母親になる低所得者を支援する社会福祉非営利団体であるNurse Family Partnership(ナースファミリーパートナーシップ)がある。

同団体は、メールやテキストメッセージで母親や看護師からフィードバックを受け取る仕組みを備えた。フルタイムで働く担当者が「直接的、間接的な顧客のみならず内部関係者の意見にも耳を傾けた上で学習し、極めて良質の体験を提供するために何ができるか考え、団体の計画を拡大するビジョンを支えて」る体制も整えた。

直接会って母親を支援するプログラムのために同団体は、ソーシャルイノベーションラボであるHopelab(ホープラボ)と、同ラボが提携する行動科学に基づくソフトウェアを開発するAyogo(アヤゴ)とアプリを共同で設計した。「Goal Mama」は看護師と母親の関係をベースにしたアプリだ。調査の結果、プログラムを利用する大多数の母親がスマートフォンを広範囲に使用していることが判明したため、そうしたクライアント像を念頭に置いて開発された。テクノロジーとデータを使用して従業員とクライアントのニーズに対応するこのアプローチにより、633の郡と41の州で30万9787人の母親にサービスを提供している。

もう1つの例は、80の都市と郡でホームレスをゼロにするという野心的な目標を掲げるBuilt for Zero(ビルドフォーゼロ)の取り組みだ。コミュニティの主催者は、住む場所を持たない人が個人的に直面している問題から始める。彼らは、人間とそのニーズを理解しなければ、たとえ介入してもその人に住む家を提供する試みは成功しないことを知っている。彼らは、人間中心の方法論とスマートデータサイエンスを組み合わせて、継続的に自らの進め方を評価・改善している。Built for ZeroはTableau財団と協力して、新しい基準でデータを収集し、ホームレスゼロの目標に向けて進捗を管理し、コミュニティを構築・育成している。

優れた技術は常に小さく始め、実際のユーザーを使ってテスト、学習、改善を重ねる。政党、政府、非営利団体は、The Lean StartupでEric Reis(エリック・ライス)氏が提唱したテックスタートアップも使う学習方法を用いて拡大すべきだ。小規模なテストから始めて迅速に学習することにより、公益に資するテクノロジーには民主主義を改善する重要な役割があるということがわかってくる。実際に多くの人の人生がかかっているのだ。公平性、正義、正当性、誠実性を念頭に置きながら、小規模から始めることで、重要な変更を加えたりねじれを解決したりするために必要な助走期間を確保することができる。

Alia(アリア)の仕事を例にとってみたい。Aliaは全米家事労働者同盟(NDWA)が立ち上げたハウスクリーナー向けの初の福利厚生ポータルだ。家事労働者は通常、会社の従業員が享受できるような福利厚生がないため、病気で仕事を休んだり医師にかかったりするとその分賃金を失わざるを得ない。

使いやすいインターフェイスのおかげで、ハウスクリーナーの雇い主は直接掛け金を拠出でき、労働者側は有給休暇、傷害保険、生命保険を受け取ることができる。Aliaのエンジニアはハウスクリーナーのネットワークに入り込み、そこでユーザー視点の深い洞察を得ることができた。拡大するギグエコノミーにおいてAliaモデルは、地方、州、連邦レベルのさまざまな働き手にとって良い先例になるかもしれない。オバマ陣営の主催者らは2008年、ウェブサイトでの呼びかけのフレーズに使用する単語と色をA/Bテストしただけで、ボランティア活動を劇的に(最大18%)増加させることができた。

ユーザー向け(だけではないが)のデザインに力を入れた公益に資するテクノロジーが数多くある。例えば、市民と政府の間で容易でシームレスなやり取りを可能にするCenter for Civic Design(シビックデザインセンター)や、「ユーザーに寄り添うデザイン」を第一の原則としているThe Principles for Digital Development(デジタル開発の原則)などの市民社会での仕事だ。英国のGovernment Digital Service(政府デジタルサービス)から、オバマ政権で始まったUnited States Digital Service(米国デジタルサービス)など、政府内部で行われている仕事もある。

最後に、テクノロジーが使用される環境を深く理解することも役に立つ。ツールのユーザーが実際に体験するのはどんなことか。デザイナーは党員集会に足を運んで、ジム、カフェ、VFW(対外戦争退役軍人会)のホールで、参加者の身体や心の動きをしっかり観察したか。

アイオワ州のケースでは、党員集会の原則、規則、文化を理解する必要があった。党員集会は一種独特の状況だからだ。

言うまでもなく、今年のアイオワ州党員集会では透明性を高めるためにいくつかの手続きを変更したが、それは複雑さを増すことにもなった。テクノロジーによるソリューションを展開する前に、そうした背景を考慮に入れる必要があった。テクノロジーが展開される環境を理解するには、手続きそのもの、人間のふるまい、また手続きの変更がアプリの設計にどのように影響するか細部に至るまで理解しなければならない。

ユーザーが本当に必要としているものを確認する調査を行わずに、テクノロジーを使ったソリューションを構築すれば、信頼性を低下させたり損なうリスクを負うことになる。多くの場合、テクノロジーの構築自体は単純な部分だ。複雑なのは相互作用がある部分だ。対応するには十分な関与、トレーニング、テスト、これらを反復する体制構築への投資が必要となる。

我々は私生活や社会生活で即日配信や瞬時のストリーミングに慣れているため、公共部門への期待値も同じように高い。合理化が進み無駄が省かれていくと、アプリで何でも解決できると信じてしまいがちだ。だが、民主主義のための次のキラーアプリを構築するには、派手なツールをプロトタイピングするだけでは不十分だ。

公益に資するテクノロジー技術を構築することは、民主主義への信頼を再構築する広範で困難な課題に取り組むことだ。様々な手続きを合理化するためにテクノロジーを使うなら、究極のゴールを見据えて、正しく適用する必要がある。

【編集部注】筆者のHollie Russon Gilman(ホリー・ラッソン・ギルマン)氏は、New America’s Political Reform Programフェロー、コロンビア大学講師、Georgetown’s Beeck Center for Social Impact + Innovationのノンレジデントフェローであり、「Civic Power: Rebuilding American Democracy in an Era of Crisis」の共著者。同じく筆者のTara Dawson McGuinness(タラ・ドーソン・マクギネス)氏はオバマ大統領の元上級顧問であり、現在はNew America’s Political Reform ProgramのシニアフェローとしてMcCourt School at Georgetown Universityで公共政策を教えている。

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(翻訳:Mizoguchi

Uber初のダイバーシティ責任者が退社、給与支払いスタートアップのGustoへ

TechCrunchが確認したところでは、Uberの初代ダイバーシティ責任者、Bernard Coleman(バーナード・コールマン)氏が社を去った。最終日は1月17日だった。

「過去数年にわたるバーナードの貢献により、Uberはより包括的で多様な会社になった。彼の成功を祈る」とUberの広報はTechCrunchに話した。

コールマン氏の次の活躍の場は、給与支払い業務を始めとするクラウドベースの人事サービスを提供するスタートアップのGustoだ。コールマン氏はそこで人事部内の従業員エンゲージメントチームを率いる。コールマン氏は次の仕事を探していたわけではなかったが、Gustoでの機会が純粋に到来したと同氏は語った。

「未知の、やってみたかったと思う分野だ」と話した。コールマン氏がGustoに関心を持ったのは、サービス中心の企業だからだ。Gustoは零細企業の給与支払いから福利厚生、人事、労働時間追跡ツールに至るまでのすべてをサポートする。

「Gustoでの挑戦は、サービスを十分に受けられていない人に奉仕するキャンペーン中の日々に結びついている」とコールマン氏は話した。同氏はヒラリー・クリントン陣営でダイバーシティと人事イニシアチブ部門を率いた。「サービスを十分に受けられていない人のための仕事をし、そしてそれを正しく行う機会を得たことは個人的に感じるところがある」。

コールマン氏はいい会社を選んだようだ。Gustoには、Googleの前ダイバーシティ責任者Danielle Brown(ダニエル・ブラウン)氏が2019年4月に加わった。「ダニエルの存在はかなり魅力的だった。私はいつも彼女と一緒に働きたいと思っていたし、その機会を得たことに興奮している」とコールマン氏は話した。

同氏は2017年1月からUberで働き始めた。同社のエンジニアSusan Fowler(スーザン・ファウラー)氏がセクハラ問題や他の職場問題を詳細につづったブログ投稿を公開する1カ月前のことだ。コールマン氏が加わって数カ月して、Uberは初のダイバーシティレポートを発表した。

同社の直近のレポートによると、他のテック大企業と同様、Uberも白人が44.7%の圧倒的多数で、ついで33%のアジア人がくる。2018年にUberの黒人の割合は8.1%で、ラテンアメリカ系は6.1%だったが、2019年には黒人9.3%、ラテンアメリカ系8.3%になった。一方、Gustoはダイバーシティレポートを公表していない。

Uberがダイバーシティ責任者としてBo Young Lee(ボヨン・リー)氏を雇ったのはちょっとしたサプライズだった。というのも、前司法長官Eric Holder(エリック・ホルダー)氏と彼の法律事務所が、セクハラ問題の調査の観点からコールマン氏をCDOに昇進させるようUberに勧めていたからだ。コールマン氏はこの件に関してコメントは避けたが、Uberから学びGustoで生かせることがある、と話した。

「すべての物事が、自分がこれからやろうとしていることのためになると考えている。UberとGustoを比較すると、Gustoはかなり小さい。どこから取り組み、グロースステージにおいてどの部分でより影響力を持たせるべきかを考えることができる。テック業界でこれまで見られなかった手法で実行する環境にある」とコールマン氏は語った。

一方のUberは、ダイバーシティ・インクルージョン部門がなくなったわけではない。リー氏がまだ在籍しており、また最近Diane Krieman(ダイアン・クリーマン)氏を引っ張ってきてダイバーシティとインクルージョンの戦略プラニング責任者に据えた。

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(翻訳:Mizoguchi

マイクロモビリティの駐車、充電用ドックのSwiftmileが広告も展開開始

マイクロモビリティにおけるガソリンスタンドを目指すスタートアップのSwiftmileが、広告事業を始める。同社はすでに都市や民間事業者に、電動スクーターとバイクの駐車と充電ができるドックを提供している。今度は充電ステーションに取り付けたデジタルディスプレイを統合して、公共交通機関の情報、交通の注意情報、そして広告を表示する。

SwiftmileのCEOのColin Roche(コリン・ロシェ)氏はTechCrunchに対して「巨大な市場があるので、とてつもない付加価値がある。マイクロモビリティ利用者に対してマーケティングを仕掛けたい企業は山ほどあるが、スクーターに広告を表示するわけにはいかないし、表示してはいけない。マイクロモビリティ利用者だけでなく都市にも売り込みたいオーディエンスはたくさんいる。我々は混沌に秩序をもたらすからだ」と語った。

ライダーがステーションに乗り物を駐めると、TransitScreenとの提携により55インチのスクリーンに近隣の乗り換え案内を表示して、ライダーに公共交通機関の利用を促す。

TransitScreenのエンタープライズソリューション担当バイスプレジテンドのTony Hudgins(トニー・ハドギンス)氏はTechCrunchに対する文書の中で「TransitScreenはSwiftmileと提携して移動の選択肢に関するリアルタイムの情報をより広く提供できることをたいへんうれしく思っている。Swiftmileのようなモビリティのハブは、未来の通勤、通学を変えつつある。ファーストマイル、ラストマイルのソリューションが増えつつある中、我々はその一部になれることを楽しみにしている」と述べた。

Swiftmileはスクリーン付きのステーションを3月から設置する計画だ。2020年末までにデジタルスクリーン付きのステーションは1000台になると同社は予測している。これにより、年間の広告収入は8000万ドル(約87億8000万円)になると見込まれる。Verizon Mediaグループ(TechCrunchの親会社)はSwiftmileの顧客である。

Swiftmileはオースティンやベルリンなどの都市にすでに140台の充電ステーションを設置しており、2020年末までには1000台になる計画だ。将来的には自動車メーカーと提携し、スクーターだけでなく自動車も充電できるようにする構想がある。

Swiftmileはこれまでにおよそ600万ドル(約6億6000万円)を調達し、Verizonも資金の支援をしている。同社は今後数週間以内にシリーズAを正式に発表する準備を進めている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Teslaは新株を767ドルで発行と発表

Tesla(テスラ)は、第二次普通株の価格を767ドル(約8万4210円)にした。米国時間2月14日にSECに提出された文書によると、それは前日の終値より4.6%安い。

Teslaは文書の中で、そのディスカウント価格で265万株を売り、20億ドル(約2196億円)あまりを調達する、と述べている。引受をリードするGoldman SachsとMorgan Stanleyには、追加で39万7500株を買えるオプションがある。

2月13日にTeslaの株は804ドル(約8万8272円)で終わった。2月14日はその価格で始まり、812.97ドル(約8万9257円)まで上がったが、その後802ドル(約8万8052円)前後に安定した。

新たな普通株の発行で20億(約2196億円)ドルあまりを調達するという同社の計画は、ウォール街を驚かせた。2週間前には、キャッシュはこれ以上調達しない、と言っていたためだ。

SECの文書によると、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は最大1000万ドル(約10億9800万円)までの株を購入し、Oracleの共同創業者でTeslaの取締役Larry Ellison(ラリー・エリソン)氏は100万ドル(約1億1000万円)相当までのTesla株を購入する。

Teslaによると、新たな資金の用途はバランスシートの強化と一般的な企業目的だ。2月13日の株の提供とは別の文書で、2020年の資本支出が35億ドル(約3843億円)とTeslaは言っている。

1月の第四四半期決算報告でマスク氏とCFOのZach Kirkhorn(ザック・カークホーン)氏は、Teslaは資金を賢く使っていて、無理やり節約をしているわけではないから増資の必要性はない、と某機関投資家からの質問に答えていた。今回の新株発行はそれと矛盾している。

2月13日の発表でTeslaの株は1月29日の決算報告時より35%以上も上がった。投資家にとって無視できないほど、魅力的な機会だろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

xRスタートアップのバルスがVTuberとARを組み合わせた謎解きイベントをラゾーナ川崎で開催中、好評につき期間延長へ

VRやARなどのxRテックのサービスを開発・提供するバルスは、神奈川県川崎市にある大型ショッピングモール「ラゾーナ川崎プラザ」で、AR空間に出現するバーチャルアーティスト(VTuber)からヒントをもらい、謎を解いていくという期間限定イベントを開催中だ。「ナゾトキバレンタイン」というタイトルで当初は2月16日までの開催予定だったが、好評につき3月1日までの延長が決まった。

バルスは、2018年1月設立のスタートアップ。池袋の映画館や渋谷のライブハウスなどで、バーチャルタレントの公開ラジオやライブを開催するなど人気を博している。バーチャルタレントはライブを開催する際、同社所有のスタジオで高精度なカメラを利用したモーションキャプチャーによってダンスや歌をパフォーマンスする。そのほか、小型カメラとPCだけで身体の動きを捕捉してバーチャルアーティストと連動させることが可能な「どこでもVTuber」、東京・銀座でバーチャルタレントが「ママ」として接客する会員制スナック「バーチャルスナック」をオープンするなど、xRを活用したさまざまなサービスを展開している。

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ナゾトキバレンタインをプレイするには、謎解きキットとAR対応のスマートフォン、スマートフォンに接続するイヤフォン、同社が無償配布している「SPWN AR」アプリが必要だ。

謎解きキットは、SPWN公式サイトで事前購入、もしくはポップアップストアの「SPWN Store」で当日購入する必要がある。価格は2800円。

ポップアップストアは、2月16日まではラゾーナ川崎プラザの2FのPLAZA East、2月17日〜3月1日までは同じくラゾーナ川崎プラザの5Fにある109シネマズ川崎に設置される。謎解きに登場するのは、バルスに所属するバーチャルアーティストである、風宮 祭、夜子・バーバンク、銀河アリス、MonsterZ MATEのコーサカとアンジョーの4組。

キットには、暗号(ナゾ)を解くためのキーワードを書き込む用紙などが入っており、暗号がわかったらバルスが無償配布している「SPWN AR」アプリにそのキーワードを入力すると、次の暗号の手がかりとなる動画を見られる。キーワードがわからない場合に備えて、ヒント動画も用意されている。

暗号を解く手がかりは、ラゾーナ川崎プラザ内のほか、VTuberの知識を動画で理解、SPWN AR内の動画を見るといった3つ方法がある。暗号は全部で5つあり、すべてを解き明かすっとエンディングのキーワードをわかるようになっている。なお、クリア画面をポップアップストアのスタッフに見せると、クリア特典として特別なARマーカーがもらえるほか、特典動画を見られるようになる。

このイベントは2月7日から開催されていたが、初日から謎解きキットを買い求める来場者が列を作るなど大好評を得ていた。謎解きイベント自体はショッピングモールや街中など各地で開催されているが、ARとバーチャルアーティストを使った新しい謎解き体験ということで、来場者の興味を引いたようだ。バルス所属のバーチャルアーティストのファンだけでなく、一般来場者も謎解きに参加していた。

 

Blue Originの新ロケットエンジン生産施設が2月17日に開所

Blue Origin(ブルー・オリジン)は米国時間2月17日の月曜日に、ロケットエンジン生産施設をアラバマ州ハンツビルに開所すると、14日にツイッターで明らかにした。新施設ではロケットエンジンを現在よりも早く生産できる見込みだ。同社は開発中のBE-4エンジンを自社のNew Glennロケットに採用する予定で、エンジンの生産スピードアップは有用だ。新ロケットVulcanの開発を進めるUnited Launch Alliance(ULA)への供給にも貢献する。

Blue Originは2011年にBE-4の開発を始めた。当初は自社のNew Glennロケット向けにデザインされていた。New GlennロケットはBlue Originの初の軌道打ち上げ機となる。2014年、ULAは次世代VulcanのエンジンとしてもBE-4を採用すると発表。BE-4は、燃料として液化天然ガスと酸素を使い、推力は55万ポンド(約25万キロ)で、重量貨物を打ち上げられるようにデザインされている。

Blue Originは生産するBE-4エンジンのうち最初の2つを2020年にULAへ納入する、と話している。ULAは初の静的点火試験を行うべくBE-4エンジンをVulcanに搭載する。Blue Originはまた、このエンジンを積んだNew Glennロケットの初テストフライトを2021年に行うことを目指している。これはエンジンの性能を証明するために長期にわたって行われるテストのプロセスで、ライフサイクルテストを通じて品質を保証するのが目的だ。ライフサイクルテストは、ハードウェアが実際に使用期間中に受けるであろうストレスや動作条件を模して行われる。

Blue Originのテストプロセスには新部品の追加導入と、NASAマーシャル宇宙飛行センターにあるTest Stand 4670のアップグレードが含まれる。アップグレードによりBlue Originは片側でBE-3エンジンを、別の側でBE-4エンジンをテストできる。

Blue OriginとBE-4にとってはエキサイティングな時期であり、このエンジンがマーケットに出回ってしばらく経つ。自社の打ち上げ機の計画が進捗にかかわらず、今後BE-4は米国の宇宙打ち上げプログラムを前進させる中心的なものとして位置付けられるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi

Rocket LabがNASAゲートウェイ計画の試験衛星を月軌道に打ち上げる

ロケット打ち上げスタートアップRocket Lab(ロケット・ラブ)は、NASACAPSTONE(キャプストン)実験のためのCubeSatを、同局の委託で打ち上げる契約を勝ち取った。最終目標は、CAPSTONE CubeSatをシスルナ(地球と月の間の)軌道に載せることにある。この軌道には、NASAが月を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」が載る計画になっている。2021年の打ち上げが予定されている。

CAPSTONEは、バージニア州ワロップス飛行施設にあるRocket Labの新しい発射台Launch Complex 2(LC2)から打ち上げられる。Rocket Labは、この発射台を2019年12月に正式オープンし、同社のElectronロケットを使った最初のミッションを2020年の後半からスタートさせる。

この打ち上げは、バージニアの飛行施設から打ち上げられる2つめの月ミッションであることを含め、いくつもの意味で重要性が高い。これにはRocket LabのPhoton(フォトン)プラットフォームが使われる。自社で開発製造を行った人工衛星で、幅広いペイロードに対応できる。今回、Photonは、重量わずか25kg程度のCAPSTONE CubeSatを地球軌道から月まで運ぶことになる。目的地に到達すると、CAPSTONEは搭載されている小型エンジンに点火して、目標のシスルナ軌道に自らを載せる。

Rocket LabはPhotonを2019年に発表したが、当時はその目的のひとつに、小型衛星を長距離運搬することを挙げていた。それには月も含まれる。この能力は、2024年までに再び人類を月面に送り込み、月面とその軌道に恒久的な有人拠点を建設し、有人火星ミッションへの足がかりにつなげるというアルテミス計画に着手するNASAに売り込みをかける上で、きわめて重要なものだ。

CAPSTONEは、この計画でNASAが建設と運用を目指す月軌道ゲートウェイのための「先駆者」として大切な役割を果たす。

「CAPSTONEは、ゲートウェイの軌道として計画されている7日間で周回する独特なシスルナ軌道を調査するための、迅速でリスク許容度の高い実証実験です」と、NASAの有人月探査計画ディレクターMarshall Smith(マーシャル・スミス)氏は広報資料の中で述べている。今回のニュースに関しては「私たちはこの先行データにのみ依存するわけではありませんが、同じ月軌道を利用する目前のミッションでの、ナビゲーションの不確実性を低減できると考えています」と説明している。

Rocket Labによる打ち上げは、トータルで995万ドル(約10億9000万円)という固定料金になっているとNASAは話している。NASAでは、契約を交わしているAdvanced SpaceとTyvak Nano-Satellite Systemsにも、2021年に予定されている打ち上げの前までに、CAPSTONE宇宙船の建造を始めてもらいたいと考えている。

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(翻訳:金井哲夫)

衛星コンステレーションによる夜空の光汚染を天文学者たちが懸念

国際天文学連合(International Astronomical Union, IAU)がこのほど、StarLinkなどが製造している何千もの人工衛星からなる衛星コンステレーションの影響の可能性に関する初期的調査報告書を発表した。報告書は、地球からの天体観測に深刻な悪影響が及ぶ恐れがあるため、衛星の削減とルール作りが早急に必要だとしている。

同団体は2019年の夏に懸念を表明し、その後、衛星コンステレーションの影響に関する大規模な調査研究を、各地の天文台や組織の協力を求めて実施した。その一般的な感触は「最善を望み最悪に備える」というものだ。

IAUの推計によると、低地球軌道に数万の衛星があれば、地平線上には常時1500ほどの衛星が存在することになる。ただし、通常の天体観測の対象となる30度以上の上空にあるものは、250から300と少ない。

関連記事: Astronomers fret over ‘debilitating threat’ of thousands of satellites cluttering the sky…天文学者たちが空に散乱する何千もの人工衛星に懸念(未訳)

その圧倒的多数は、まだ空が暗い早朝など、太陽の光が人工衛星の表面から反射する特定の時間帯以外は、肉眼で見えないだろう。しかし、これら膨大な数の人工衛星の可視性と反射性を下げる方策はすでに採られているが、実際の効果は未知数であり、今からでは何をするにも遅すぎる、という状況になることもありえる。

IAUがそれ以上に心配を指摘するのは、ルービン天文台から改名した大型シノプティック・サーベイ望遠鏡(Large Synoptic Survey Telescope、LSST)のような広域的観測に対する影響だ。そのような望遠鏡が行うおよそ30秒の露出のほぼ1/3は、頭上の衛星の影響を受けるだろう。そして高感度の機器が作る像への影響は、肉眼よりも鮮明だろう。

それを避ける方法はあるだろうが、IAUの声明から同団体のフラストレーションが伝わってくる。

理論的には軌道を正確に予測して、その通過時に必要に応じて観測を中断することで、新たな衛星の影響は軽減できるだろう。データ処理によって結果の画像をより鮮明にすることもできる。しかしながら大量の衛星による大量の飛跡は、天体観測のスケジュールと運用を損なう複雑で無視できないオーバヘッドを作り出すだろう。

言い換えると、衛星コンステレーションの事業者たちが何もしなければ、我々に対策をしなければならない。そしてそれには費用と欠陥が伴う、ということだ。

問題はすべて可視光線に関連している。衛星コンステレーションからの電波や、その他の目に見えない放射による観測の妨害は未知数である。

関連記事: SpaceX successfully launches 60 more satellites for its Starlink broadband internet constellation…SpaceXがStarlinkコンステレーション用の衛星をさらに60基打ち上げ(未訳)

結局のところ、IAUの声明は中立を装ってはいるものの、明らかにその本音では怒っている。

「暗い場所で見える美しい夜空を保護したい、という人々の意識はとても強い。それは捨ててはならない世界遺産と見なすべきだ。軌道を周回する人工物の輝度について、国際的に合意された規則や指針がない。今日までそれは、優先度の高い話題として取り上げられることすらなかったが、現在、ますます重要になりつつある。したがってIAUは今後、国連の外宇宙平和利用委員会の会議で常時その所見を述べ、世界の政府代表者たちの注意を、新たな宇宙計画が天文学と科学全般にもたらす脅威に向けていきたい」

ひと握りの企業が夜空を散らかすことを、彼らは天文台にじっと座ったまま黙認したくないのだ。

画像クレジット: IAU

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アリババクラウドのQ4売上高は62%増の約1650億円でシェア4位に

Alibaba(アリババ)は2月13日、直近の四半期(2019年10〜12月期)決算を発表し、それによるとクラウドの売上高が62%増の15億ドル(約1650億円)となり、現地通貨で初めて100億人民元を超えた。

Alibabaはまた、パブリッククラウドへの自らの移行を完了したことも明らかにした。これはマイルストーンとなる。というのも、同社は潜在的な顧客に参考として自前のオペレーションを示すことができるからだ。この点は、同社の会長とCEOを兼務するDaniel Zhang(ダニエル・チャン)氏がアナリストとの決算会見で指摘した。

「Alibabaの主幹事業であるeコマースシステムのパブリッククラウドへの移行は、一大イベントだと確信している。我々自身が作業効率アップというメリットを享受できるだけでなく、我々のパブリッククラウドインフラを他の企業に勧めることもできる」とチャン氏は会見で述べた。

同社がまた中国で問題になっている新型コロナウイルスが2020年の小売事業に影響を及ぼすかもしれない、と指摘したのは記すに値するだろう。しかしクラウドが影響を受けるかどうかについては特に言及しなかった。

13日に発表した決算で同社はランレートを60億ドル(約6590億円)とし、クラウドインフラマーケットシェアにおいて4位を見込む。だが、上位企業との差は大きい。直近の四半期決算で、Googleの売上高は25億ドル(約2740億円)、Microsoftはソフトウェアとインフラの売上高を合わせて125億ドル(約1兆3700億円)、そしてマーケットリーダーのAWSの売上高は100億ドル(約1兆1000億円)を若干下回るものだった。

Synergy Researchの最新マーケットシェアが示すように、Googleと同様、Alibabaも上位2社との差がかなりあり、その他の企業と似たような位置につけている。

AlibabaはAmazonと多くの共通点を持つ。両社ともeコマース大企業だ。そしてどちらもクラウドコンピューティング部門を持つ。しかしクラウドコンピューティングへの参入はAlibabaの方がずいぶん遅い。2009年に立ち上げたが、本腰を入れ始めたのは2015年からだ。

当時のクラウド部門トップのSimon Hu(サイモン・フー)氏は、Alibabaが4年以内にクラウドマーケットでAmazonを追い抜くだろう、とロイターに誇らしげに語った。「我々の最終目標は、顧客数、テクノロジー、世界展開どの点においても4年以内にAmazonを追い抜くことだ」

もちろん、AlibabaとAmazonではだいぶ開きがある。しかし両社ともホットな分野であるクラウドインフラマーケットにおいて着実に成長している。Synergy Researchのアジア地域に関する最新データによると、アジア全体でのマーケットシェアはAWSが最も大きいが、Alibabaは中国におけるトップのクラウドベンダーだ。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

社員向けメッセージングアプリで急成長を狙うドイツのFlipが4.3億円を調達

私たちは複数の人とのグループメッセージに慣れている。自分がWhatsAppTelegram、Facebook Messengerでいくつのグループに参加しているか、もうわからなくなってしまった。Threemaなどのアプリはビジネスの現場で使われ始めているし、Staffbaseなどのスタートアップは本格的な「社員向けメッセージング」プラットフォームになろうとしている。投資家たちは、メッセージングはあらゆる分野で爆発的に伸びつつあり、大きなチャンスがあると考えている。

こうした状況の中、ドイツのシュツットガルトを拠点とする社員向けメッセージングアプリのFlipが、360万ユーロ(約4億3000万円)を調達した。投資したのはLEA PartnersとCavalry Venturesで、Plug and Play Venturesも参加した。また、BASFの監査役会会長であるJürgen Hambrecht(ユルゲン・ハンブレヒト)氏、Magna Internationalの監査役会会長であるKurt Lauk(クルト・ラウク)博士、Starface創業者のFlorian Buzin(フロリアン・ブジン)氏、HRビジネスエンジェルのAndreas Burike(アンドレアス・ブリケ)氏などのビジネスエンジェルも投資した。この資金でチームの拡大とさらなる市場の開拓を加速させる。

Flipは2018年に創業し、あらゆるレベルの社員を結んで情報を知らせるプラットフォームを法律に準拠したかたちで提供している。

「法律に準拠したかたちで」というところが重要だ。同社のアプリはGDPRに準拠したデータおよび従業員保護の概念に基づいている。この概念は、専門家やドイツの株価の主要30銘柄の数社で構成された協議会で認められたものだ。また、既存の多くの企業ITインフラとも統合されている。

Flipは、ポルシェ(自動車)、バウハウス(教育機関)、エデカ(スーパーマーケット)、ユンゲIGメタル(金属系労組)、ヴュステンロート&ヴュルテンベルギッシュ(金融グループ)などの顧客をすでに獲得している。金融機関では、シュパーカッセ銀行やフォルクスバンク銀行で一部利用している。通信大手のドイツテレコムもFlipのパートナーだ。

Flipの創業者でCEOのBenedikt Ilg(ベネディクト・イルク)氏は発表の中で「Flipはあらゆる規模の企業で社内コミュニケーションをとるための最も簡単なソリューションだ」と述べている。

LEA PartnersのBernhard Janke(ベルンハルト・ヤンケ)氏は次のように述べている。「Flipは創業したばかりだが、すでに一流のクライアントを獲得している。リーンなソリューションで、大きな組織でも既存のITシステムやコミュニケーションのプロセスと統合できる。我々は今回の資金調達でチームとプロダクトをさらに拡大してほしいと考えており、あらゆる企業の従業員がデジタルを利用できるようにするというビジョンを持つ創業者を支援している」。

Cavalry VenturesのClaude Ritter(クロード・リッター)氏は次のように述べている。「Flipはこの若い市場において安全で軽量で驚くほどパワフルな製品を提供し、新しいスタンダードを確立しつつあると、我々は確信している」。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Made In Spaceは周回軌道上でのソーラーパネル建造にBlue Canyon Technologiesの協力を取り付ける

周回軌道上での装置建造を手掛けるスタートアップであるMade In Spaceは、NASAとの契約によるArchinaut One(アーキノート・ワン)のデモミッションに協力してくれる企業として、米国コロラド州にあるBlue Canyon Technologies(BCT)に白羽の矢を立てた。同ミッションは今のところ2022年に実行されることになっている。Made In Spaceが、軌道上で2つの10m大のソーラーパネルを組み立るというもの。組み立てられたパネルは、その後ESPAクラスの衛星に電源を供給するために、実際に使用される。軌道上での組み立てをしない場合に比べて最大5倍の電力を供給できるとされる。

BCTは、ノースロップ・グラマンと共同で宇宙船プラットフォームを開発する。Made In Spaceは、それを使ってArchinaut Oneの製造プラットフォームを輸送する。同プラットフォームでは、軌道上で構造物を建造できるよう、積層造形とロボットアセンブリを組み合わせて採用している。BCTは、2008年にコロラドで設立された会社で、すでにさまざまなプロジェクトのために宇宙船を開発してきた実績がある。例えば、JPLが初めて実運用に成功したCubeSatプロジェクトであるAsteria(アステリア)宇宙望遠鏡などもその1つだ。

筆者は、Made in Spaceのプロジェクトについて、BCTのシステムエンジニアであるBrian Crum(ブライアン・クラム)氏に話を聞いた。同氏によれば、これまでの同社の仕事を代表するようなものになるという。同社は主に、興味深いデモミッションや画期的な宇宙技術の初めて運用に集中してきた。それは、宇宙での作業方法について途方もない可能性を開くことになったというのだ。

「私たちが専門的に開発している宇宙船の大きさと、価格帯を考えると、そうしたデモンストレーションのミッションは、実際に運用可能なコンセプトにつながるものとして、本当に役立ちます」と、クラム氏は述べた。「私たちは、コンセプトを実証するための優れたソリューションの一部であり、それに真剣に取り組んでいます。私たちは、いろいろなことを試してみたいという人々から、多くの興味深いアイデアを受け取ります。これも、間違いなくその1つです」。

BCTは現在、60機以上の宇宙船を実際に建造中であり、この1年間で規模が2倍に拡大した。さらに同社は、本社機能と生産設備を合わせて8万エーカー(約324平方km)以上にもなる新しい施設を開設する計画を持っていて、今年後半にも運用を開始する予定となっている。このような成長は、もちろんビジネスの伸展によるもの。クラム氏によれば、政府や民間産業を問わず、さまざまな方面で実験と技術デモがブームのようになっている結果だという。

「間違いなく、リスクを追い求めているような人が増えています」と、同氏は言う。「簡単に言えば、宇宙船への需要が高まっているため、私たちは成長しているのです。こうしたプログラムをサポートするため、優れた人材を採用し続けています。それによって、プログラムの数も大幅に増加しています。また、私たちの規模が大きくなるにつれて、宇宙船のサイズも大きくなり、より複雑になっています。つまり、少し難度が増しています。エンジニアリングにもさらに力を入れていく必要があるのです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

株価上昇を受けてテスラが公募増資で最大2500億円調達へ

Tesla(テスラ)は2週間前にさらなる資金調達は行わないとしていたが、米国時間2月13日に公募増資で20億ドル(約2200億円)を調達してバランスシートの強化と一般的な事業目的にあてる計画を明らかにした。

同社のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏が最大1000万ドル(約11億円)ぶんを購入し、 Oracle(オラクル)の共同創業者でテスラの役員を務めるLarry Ellison(ラリー・エリソン)氏が最大100万ドル(約1億円)ぶんを購入する見込みだ。

Teslaはまた、引受幹事に最大3億ドル(約330億円)ぶんの追加普通株を購入する30日オプションを提供する。引受幹事がオプションを行使すると、同社は最大23億ドル(約2500億円)を調達することになる。

今回の増資発表は、先月あった四半期決算発表時のマスク氏、そしてCFOのZach Kirkhorn(ザック・カークホーン)氏の発言内容とは矛盾する。機関投資家が「最近の株価水準からしてなぜいま資金調達して生産を加速させないのか」と尋ねた。その際、マスク氏は同社が分別を持って資金を使っており、意図的に経費を抑制してもいないと述べた。

「我々は効率的に資金を使っていて、意図的に発展を制限していない」と1月29日に開かれた四半期決算発表でマスク氏は語った。「それにもまして我々は現金を生み出している。そうした意味で、この成長レベルで今後も現金を生み出すことができると見込まれ、資金調達するのは理にかなっていない」。カークホーン氏は「テスラが良い基礎を築き、成長を抑制していない」とマスク氏のコメントに付け加えた。

「我々は現在2つのプロダクトを抱えている。まさにいま立ち上げようとしている2つの車両で、それらを軌道に乗せるために年内は社の資源の多くをそれらに注ぐことになる」とカークホーン氏は語った。「また、来年に目を向けると、我々はさらにプロダクトや工場を立ち上る。なので我々は賢く資金を活用し、持続可能な方法で成長したい。我々はこの1年半ほど失敗でつまずいてはいない」。

しかしテスラの株価は1月29日の決算発表以来35%超上昇していて、利用しない手はないと思わせるほど魅力的だったのだろう。直近の株価上昇は、テスラの数々のプロジェクトにとって重要なものになるかもしれない。増資発表に先駆けて当局に提出した書類には、テスラの資本支出は今年、最大35億ドル(約3800億円)に達する可能性があるとある。

米国時間2月13日に掲示された同社のフォーム10-K(年次報告書)には「今後予想される我々のプロダクトの生産ペース、工場の建設・拡張、すでに発表された進行中の開発プロジェクト、バッテリー製造のためのパートナー活用という現在の戦略、そして他のインフラの増加などを考えたとき、2020年、そしてその後の会計年度2年間の平均年間資本支出は25億〜35億ドル(約2700〜3800億円)を予想している、と書かれている。

画像クレジット:Tesla

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(翻訳:Mizoguchi

Uberが電話での配車に対応、まずアリゾナ州からローンチ

Uber(ウーバー)は高齢者向けに、1-800から始まる番号をユーザーがダイヤルして実際の人間と対話し、配車する新機能を試験運用する。この動きは単なるアプリからの脱却ではない。これは、同社がより多くの顧客にサービスを提供する配車会社に変わろうとしていることを示す兆候だ。

UberのDial-an-Uber機能は「高齢者を念頭に置いて設計されている」が、同時に会話でのサポートを好む人もこの試験運用の恩恵を受けるだろうと同社は述べている。Uberによると、この機能は「実際の会話や経験が配車ニーズに影響を与える」という、高齢者からのフィードバックに基づいて開発されたという。

実際に1-833-USE-UBERにダイヤルすると、人間のオペレーターが対応し、ルートを確認して前払い価格を提示する。ただしこの機能はいくつかの重要な理由により、携帯電話を持っていないと事実上利用することはできない。

ユーザーは乗車予定時刻、運転免許証の詳細、運転手の名前などの重要なメッセージを受信するために、SMSを受信できる携帯電話を所有している必要がある。ユーザーは乗車前と移動中も引き続きメッセージを受信する。それが終わると乗車の領収書が送られてくる。

Uberはまず、1-833-USE-UBERという電話番号をアリゾナにてローンチする。このサービスを利用するための追加料金はないが、携帯キャリアによるメッセージとデータの料金が適用される可能性がある。そして、同州内なら誰でもこの電話番号に電話し、サービスが利用可能な都市にてUberを呼ぶことができる。またユーザーは、UberX、Uber Comfort、Uber Black、Black SUV、Uber Assist、WAVなどの特定のオプションを要求できる。

Uberは今後数カ月のうちに、Dial-an-Uberのサービスをさらに多くの州に拡大する予定だと述べた。同社はまた、1-800から始まる番号は一般的なカスタマーサポート用のものではないが、将来的にはその目的のために使われるだろうと伝えた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter