HP買収を諦めないゼロックスが提示額を1株24ドルに引き上げ

Xerox(ゼロックス)が2019年11月にHPの買収に乗り出してから、両社の間では攻防が繰り広げられてきた。ゼロックスは、ずっと大きなHPを買収することを強く望んでいるが、プリンターメーカーとして大企業のHPは、これまでゼロックスの進捗を妨げてきた。米国時間の2月10日、ゼロックスは条件を魅力的なものにすることを決定し、1株あたりのオファーを、これまでの22ドル(約2418円)から24ドル(約2638円)に引き上げ、総額で約340億ドル(約3兆7350億円)を提示することにした。

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ゼロックスによれば、3月2日頃に正式に株式公開買付けを行う予定だという。株主を説得するための時間を確保するためだろう。ただしゼロックスは、すでにHPの大株主と話し合っていて、その大多数はこの買収を成立させる方向に動くと信じているという。以前、HPが乗り気でなかったことを考えれば、それがどうなるか、予断を許さない。

「ゼロックスは、HPの大手株主の多くと何度か会合を持つ機会もありました。そうした株主は、XeroxとHPの組み合わせによって、収益の向上、成長の見通しの改善、その分野で最高の人的資本の獲得を望んでいると、こぞって表明しています。本日発表した株式公開買い付けによって、いくらHPが頑なに拒否しようと、そうした株主はゼロックスの魅力的な条件を受け入れることになるでしょう」と、同社は今回の声明に記している。

両社間のやり取りは、2019年の秋に始まった。両社はうまく合体してプリンターの巨人になれるはずと、ゼロックスが考えたことに端を発する。ただし、HPの取締役会は満場一致で、その申し出を却下していた。

2019年11月の拒絶通知で、HPはゼロックスの提案を快く思わないし、歓迎もしないと表明した。

「ゼロックスはHPを大幅に過小評価しており、その提案を拒否します」。

「さらに、付帯条件がかなり多く不確実性の高いものです。特に提案された対価のうち、現金部分を引き上げるためのゼロックスの能力は、不確かなものだと考えられます。また、仮に資金調達が可能だとしても、それによって生じる負債が、合併後の株式の価値に対して大き過ぎるのではないかという懸念も拭えません」

2019年11月末、ゼロックスは株主に直接提案すると発表した。また最近には、以前の提案を拒否したすべてのHP取締役会のメンバーを、より友好的な指名候補者に入れ替えることを画策する可能性があると述べている。これについては、2020年4月のHPの株主総会で採決されることになっている。

HPは、この最新の申し出に反応していない。驚いたことに、HPの株価は前場で1株あたり0.12ドル(約13.2円)、つまり0.81%減少した。

編集部注:TechCrunchは、HPに対してコメントを求めたが、この記事の公開時点では、まだ返答を受け取っていない。今後状況の変化があれば、記事を更新する予定だ。

関連記事:ゼロックスが買収提案を拒否したHP取締役会の刷新を計画

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ギグワーカーの活動家たちが仲間を支援する非営利団体を立ち上げる

著名な活動家ギグワーカーであるVanessa Bain氏(ヴァネッサ・ベイン)と、活動家仲間のSarah Clarke氏(サラ・クラーク、仮名)が作ったGig Workers Collectiveは目下、公益法人の登記を申請しているが、その望みは大きい。

「ギグワーカーが賃金カットなどの問題に遭遇したときの最初の相談窓口になりたい。ここに来れば安心という場所にしたい」とクラーク氏は本誌にそう語った。

同団体の計画は、ギグワーカーの公正な賃金と待遇改善を目指して戦い続けることだ。Instacartのショッパーでも、UberやLyftのドライバーあるいはPostmatesやDoorDashの配達員であっても、ギグワーカーが自分たちを効果的に組織化でき、苦情を申し立て、そして自分たちの権利代表者であれるようにしたい。

クラーク氏は「ヴァネッサと私はこれまで4年間、ギグワーカーのための団体を作ろうと努力してきた。週に40時間、ギグワーカーとして働きながらそのために活動してきた。団体活動に専念できたら、もっといろんなことができるだろう」と語る。

ベインとクラーク氏は数年間、いくつかのキャンペーンを主導してきた。最近のものは、Instacartに抗議する6日間の全国キャンペーンだ。2019年はチップや謝礼の扱いの改善を求める72時間のストライキを敢行した。

現在、同団体は5名のギグワーカーの役員と、同じく6名のギグワーカーの協力者で構成されている。

さらにクラーク氏は「資金があれば、お金がかかることもできる。今は何もかも、私たちのポケットマネーでまかなっている。適切な資金を得て、キャンペーンのワーカーたちに給与を払いたい」と話す。

というわけで、この若い団体の次のステップは資金の獲得だ。ただし紐付きの資金は困るため相手を選ぶのが難しい、という。

彼女によると、ワーカーファーストで考えないと何ごともうまく行かないそうだ。

関連記事: The year of the gig worker uprising…2019年はギグワーカーが起ち上がった年だ(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

CartaがCVC設立、自社プラットフォームに取り込むスタートアップに投資

未公開企業のエクイティ管理を支援するスタートアップCarta(カルタ)は2月7日、投資ビークルとしてCarta Venturesを設立したと発表した。 資金豊富なユニコーンである同社は、若いスタートアップに投資して、未公開企業の世界でデータ主導の視点を改めて構築し、自社の中核製品とサービスを中心としたエコシステムの育成を促したいと考えている。

TechCrunchが報告したように、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の世界ではプレイヤーの数が大幅に増加しており、さまざまな規模のキャッシュ潤沢なCVCがベンチャーキャピタルマーケットやその周辺で情報収集の手段としてキャッシュを使い、おそらくはそのキャッシュから多少のリターンも狙っている。Slackのような企業も、未公開の時代に投資ビークルを立ち上げ、同社のプラットフォームにプラグインする企業に資金を投じた。

あまたのCVCの中で、なぜCarta Venturesに注目するのか? それは主に、Carta本体がその重要性を増している未公開企業の世界で存在感を高めており、同社が投資する具体的な対象も複数あるためだ。

なぜ未公開企業が重要なのか

Cartaは未公開企業の各種バリュエーション、キャップテーブル、レポート作成を支援している。ベンチャーキャピタル向けのツールやサービスも提供している。これらにより、同社は長く堅調を保つ未公開市場の中心に位置している。

未公開企業への投資は増加している公開企業の数は減少しており、未公開企業の公開には時間がかかる。未公開のまま留まる企業は全部で数千億ドル(数十兆円)の価値がある。The Economist(エコノミスト)でさえ、未公開企業のブームについて特集し、「機関投資家は、未公開市場、特にベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、私募債に殺到している」と指摘した。

また、Cartaはプレイヤー(スタートアップなどの未公開企業)とその燃料補給役(あらゆる種類の投資家)の両方に後方からプレイヤーと組織を提供する。これまで本業で支援してきた企業を、今度はベンチャーファンドを通じて支え、スタートアップの世界で影響力を拡大する。

Cartaは、自社のプラットフォームに加わるように企業を促し、誘い出したいと考えている。未公開市場への参入と投資がより透明でシンプルになるためだ。未公開資本市場の世界とその構成員に欠けていたのが、この透明性とシンプルさだ。

誰のための資金か

Cartaがどの企業にどういう理由で資金を提供したいのかを把握するために、TechCrunchは同社の戦略を統括するJames McGillicuddy(ジェイムズ・マギルカディ)氏に話を聞いた。まず基本的な点から始めると、Carta Venturesの投資資金にはCartaの自己資金を使う。マギルカディ氏は同社が「外部のビークルを使わずに、貸借対照表上の資金」を投資すると述べた。これは「ほぼCVCのセオリー通り」に組成することを意味する。

ここまでは標準的だ。次に、Carta Venturesが市場に参入する際に集めるゼネラルパートナーの数を聞いた。マギルカディ氏はその質問には直接答えずに、多くの既存の内部スタッフや「投資委員会を構成する古典的な意味ですばらしい人たち」について言及した。「彼らなら起業家を支援できるし、当社が市場へのアクセスを始めつつある今、世の中に存在すべきと当社が考える事業へ導くことができる」

TechCrunchに共有されたブログ投稿のプレリリース版によると、Carta Venturesはシード投資に小切手を切るつもりだ。マギルカディ氏は、Carta Venturesの「最優先事項は、当社には専門知識がないが、今世の中に存在してしかるべき何かを、どうすれば当社のプラットフォームを利用して構築できるのか考えてもらうことだ」という。

マギルカディ氏の最後の2つの答えからわかるように、Carta Venturesでは、構築したいものに関して意図が明確だ。

CartaのCEOであるHenry Ward(ヘンリー・ワード)氏によるブログ投稿では3種類の企業に言及している。現金と株式の両方を含む「総報酬」を従業員に対して公正で市場に合った形で提供する手助けをするスタートアップ。「アセットクラスの1つとしてのベンチャー投資のための分析ツール開発」を行うスタートアップ。そして未公開企業に関するリサーチを行うスタートアップだ。

筆者は、Cartaがそれらをなぜ自社で開発しないのか興味があった。なぜなら開発して欲しいものに対する予測が正確だと思ったからだ。マギルカディ氏は、Cartaが実現したいことに携わるような最高の人材が必ずしも社内にいるとは限らず、いたとしても、同社には「優先すべき事項が他にたくさんあるし、開発すべきものも多くある」と述べた。

それはそうだろう。だが、CartaがCVCを用意するのは単に取り込む企業を探し、資金を投入し、取り込んだ企業が食べていけるようにするためだけではない。資金を活用して企業の成長を支援するのは、Cartaのリーチを拡大するためでもある。

他には?

Cartaのベンチャーファンドは、同社がおもしろいと思えることに取り組んでいるアイデア段階の企業を取り込むために、資金を投じたいと考えている。それだけでなく、同社のオフィスで一緒に働いてもらいたい。求めに応じて支援の手も差し伸べるはずだ。

なぜCartaは、こうした動きができているのか。それは、Cartaは公開企業ではなく、おそらく利益も計上していないためだ。また、なぜ自社でベンチャー投資部門を持つ余裕があるのか。その理由は次のとおり

Cartaが17億ドル(約1900億円)のバリュエーションで3億ドル(約330億円)を調達したのは、2019年半ばのことだった。

未公開資本市場から巨額の資金を喜んで投入するといわれ、さらに自社の未公開企業のプラットフォームに取り込んだら利益が出そうな小規模企業があれば、その資金を提供しない手はないだろう 1.。

1.「未公開会社」と早口で4回言ったら、Carta Venturesからの小切手を受け取らなければならない。それがルールだ。

画像クレジット:Somyot Techapuwapat / EyeEm / Getty Images

参考:スタートアップの資本構成を管理するCartaが創業6年でシリーズD $80Mを調達

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(翻訳:Mizoguchi

米国のスマートスピーカー利用者の約7割がAmazon Echoを使っている

アナリスト会社eMarketer(イーマーケター)が2月11日に発表によると、米国のスマートスピーカー市場は、Amazon Echoのシェアに対してライバルのGoogleとAppleは伸び悩み、2020年、2021年もAmazonが独占的な地位を維持するという。eMarketerは、Amazonは2021年末までそのトップの座を悠々と維持し、米国のスマートスピーカー・ユーザー全体の70%近い人たちが、今後もAmazon Echoを使い続けると予測している。

正確にいえば、米国のスマートスピーカー・ユーザーの69.7%が2020年を通してEchoを利用するということとなる。2019年の72.9%からわずかに減少した。2021年にはさらに微減し、その時点で米国のスマートスピーカー・ユーザーの68.2%がEchoを使っていると予測される。一方、2020年には、スマートスピーカー・ユーザーの31.7%はGoogleブランドの機器を使い、他のブランドの製品、例えばApple HomePod、Sonos One、Harman Kardonなどを使う人はわずか18.4%に留まる(合計が100%を超えるのは、別ブランドの製品を同時に所有している人も含まれるからだと報告書は説明している)。

ブランド別2017年から2021年の米国のスマートスピーカー・ユーザー数(ユーザーの割合)
赤:Amazon、黒:Google、グレー:その他
1カ月にスマートスピーカーを少なくとも1回利用したすべての年齢層の個人を対象とする。別ブランドの製品を同時に所有している場合を含む
eMarketer 2019年12月

この数字は、米国のスマートスピーカー市場で大きなシェアを狙うApple HomePodやGoogle Home、その他の製品の目前に立ちはだかる高い壁を表している。

つまり消費者は一度、機器を購入すると、次に買うときに別ブランドへの乗り換えを滅多にしないということだ。最初に買った製品は、その企業(例えばAmazon)が、スマートスピーカーの便利さを証明する足がかりとなる。ユーザーが、寝室やキッチンにもスマートスピーカーを増設したいと考えたとき、通常は、家中で整合がとれるよう同じブランドの製品を買う。

必ずとは言えないが、そうすることのほうが多い。

Amazonはこのユーザー傾向を鋭く見抜き、エントリーレベルの製品を無料に近い価格で提供した。それがEcho Dotだ。このローエンドの製品は、小売りサイトでは29.99ドル(約3300円)で販売され、さらに値引きされていることもある。Amazonのプライムデーでは、Alexa製品はさらに安く販売される。そのおかげでここ数年、Echo Dotはプライムデーのベストセラーになっている

その一方で、Amazon Echoが米国以外では同等の躍進を遂げていないこともあると報告書は述べている。

Google Homeなどの強力なライバルに比べて英語以外の言語への対応が弱いEchoは、一部の市場では競争力が低下する。

とはいえ、スマートスピーカーの普及にとって米国は依然として重要な市場であるため、米国でのAmazonの力をあなどってはいけない。

「Amazonが初めてEchoを発売したとき、米国で確実な主導権を握りました。それ以来、迫る競合他社を突き放し続けてきています」と、eMarketerの主任アナリストのVictoria Petrock(ビクトリア・ペトロック)氏は話す。「当初私たちは、GoogleとAppleがこの市場にもっと食い込んでくるだろうと予測していました。しかし、Amazonの積極性は衰えませんでした。安価な製品を提供し、大量のAlexaスキルを作り、AmazonはEchoの魅力を維持してきたのです」と彼女は言い足した。

米国のスマートスピーカー・ユーザーの数は、今後数年間は増え続けるが、その伸び率は下がるとeMarketerは予想している。現在は28.9%のインターネットユーザーがスマートスピーカーを利用しているが、2021年には、その数は30.5%に達すると見られる。

2020年に米国のスマートスピーカーのユーザー数は13.7%伸びて8310万人に達する。しかし、2021年には伸び率は一桁に落ちるとeMarketerは予測している。

しかしこれは、残りのインターネットユーザーが音声アシスタントを使わないことを意味するものではない。スマートスピーカーは、音声でテクノロジーを利用するための手段のひとつに過ぎない。いずれ人々は、自動車や家電製品や他のスマートホーム機器など、他のデバイスに組み込まれた音声アシスタントも使うようになる。それに、GoogleもAppleもスマートフォンで音声アシスタントを提供していることを忘れずにおくべきだ。GoogleアシスタントとSiriを使っている人の数はEchoの比ではない。

Siri対応デバイスは5億台ほど普及している。Googleアシスタントのユーザーも5億人いる。つまり今日、音声アシスタントを使っている人は、Alexaよりも、iOSやAndroidのスマートフォンに話しかけている人のほうが多い可能性があるとも言うことができる。裏を返せば、音声アシスタントでライバルに大きく差をつけられた中で、AmazonがEchoスピーカーの市場を切り拓いたことは大変な偉業だ。

Amazonがスマートスピーカー市場で70%のシェアを獲得したことを伝えたのは、eMarketerが初めてではない。2019年のCIRP(国際生産工学アカデミー)の報告書にも同様の内容が書かれていた。

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(翻訳:金井哲夫)

誤報でSlackの株価が一時急騰

米国時間2月10日午後のTwitterはSlackの話でもちきりだった。一体何が起きたのか。忙しい読者のために、かいつまんでご紹介しよう。

Slackとその株価をめぐる騒動は、Business Insiderの記事に端を発している。

Slackが最大の顧客を獲得した。IBMは35万人の社員全員を、このチャットアプリへ移行させた

Slack vs Teamsというバトルが注目を集めているため、Slackが新たに大きな契約を勝ち取ったことはニュースになる。Slackの株価は上がり、今見ると少し愚かな見出しがメディアに溢れていていた。

例えばこんな見出しがあった。

Slackは結局生き延びるかもしれない。IBMが35万人の社員専用アプリに指定

Slackの株価は終日急上昇した。前日と比べて15.4%上がり、そして突然、天気の良い本日2月11日の午後、Slackの株の売買は突如停止して、新材料待ちとなった。

関連記事: SaaS kicks off 2020 with an extra billion in VC funding as round count halves…SaaSの2020年はラウンドの件数が減り投資額は大幅アップ(未訳)

混乱が生じ、みんな何が起きたのかを知ろうとした。GoogleがSlackを買収したのか? Slackが小さなスタートアップを買ったのか? IBMはSlackの顧客ではなかったのか? それは誰もわからない。

株取引の停止は、確かに重大な事件だ。各メディアはいっせいにSlackに注目した。突出した話題がないかぎり、上場企業はニュースにならない。決算報告が取引終了後に出てくるのは、そのためだ。

その後SlackはSECの提出文書を公表した。そこには、IBMは以前からの顧客だとある。つまりIBMは、今日新たな顧客になったのではない。またSlackの発表のどこにも、35万人の社員という言葉はない。

そして同社は自らの言葉で、市場の熱狂を鎮めようとした。

IBMは数年前からSlackにとって最大の顧客であり、同社におけるSlackの利用者も年々増えている。Slackは2020年1月31日に終わる会計年度と、その第4四半期の財務見通しを修正しない。

これで、一件見落着だ。

取引は再開したが、しかし今日起きたことは結局、何の意味もなかった。

Slackがやっと、時間外取引で浮上してきたときには、その日の稼ぎの約半分を返上した。Slack株は現在、時間外で24.56ドル(約2699円)だ。2月11日は約23ドル(約2527円)で始まり、27ドル(約2967円)台の半ばまで上がった。

そして今は、落ち着いている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Facebookが英国のAIスタートアップを密かに買収

ここ数年、FacebookはAI機能の開発に注力しており、コンピュータービジョン、自然言語処理(NLP)、「ディープラーニング」などの分野で将来有望なスタートアップの買収も行ってきた。

米国のソーシャルネットワーク巨人がAI人材を求めて英国に目を向けたのは当然であり、NLPスタートアップのBloosbury AIを2018年に人材とともに買収、最近ではコンピュータービジョンを利用して拡張現実向けに正確な位置情報を提供する英国企業、Scape Technologiesを買収した。

今回TechCrunchは、2019年12月に3回目の英国企業買収が密かに行われたという情報を得た。Facebookが買収したDeeptide Ltd.はAtlas MLを運営する企業で、機械学習の論文とコードの無料オープンソースである「Papers With Code」の管理人でもある。

Deeptideの公式申請書類によると、Facebookは2019年12月13日に同社の過半数株主になっている。同日、Atlas MLの共同ファウンダー、Robert Stojnic(ロバート・ストイニック)氏はPapers with CodeはFacebook AIに合流するという投稿をMediumにポストしたが、機械学習研究コミュニティー以外で気づいた人はほとんどいなかった。

買収条件、いや、そもそも実際に買収があったかどうかすらも、その当時、ストイニック氏の投稿以上の情報は、Facebookから出ていなかった。しかし、ロンドンIT業界の情報筋によると、買収金額は4000万ドル(約44億円)程度だったと考えられている。

2018年にストイニック氏とRos Tayler(ロス・テイラー)氏が設立したAtlas MLの目標は、「ディープラーニング研究の発見と適用を簡単にする」ことだ。若きスタートアップはEntrepreneur First(EF)の卒業生で、その後Episode1およびKindred Capitalからシード資金を調達した。

Facebookに問い合わせをしている。返答があり次第本稿を更新する予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Equifax情報流出で米司法省が中国軍ハッカー4人を起訴

2017年のEquifax(エクイファックス)サイバー攻撃をめぐり、米司法省は中国軍ハッカー4人を起訴した。サイバー攻撃では1億4700万件超の信用情報が流出した。

9つの罪を記した起訴状はWu Zhiyong、Wang Qian、Xu KeそしてLiu Leiの4人に対するものだ。4人は中国人民解放軍に所属している、と司法省は話している。ハッカーらは、中国政府が後ろ盾となっている悪名高いハッキンググループAPT10のメンバーとされている。このグループは以前にもHPE、IBM、NASAのジェット推進研究所など何十もの米国の主要企業や政府のシステムにハッキングして非難された。William Barr(ウィリアム・バー)司法長官は、Equifaxの件は中国によるいくつものサイバー攻撃の最新事案だと語った。これまであったサイバー攻撃には健康保険大手のAnthem(アンセム)をターゲットにしたものや、Marriott Starwood(マリオット・スターウッド)ホテルの情報流出米国人事管理局へのハッキングなどが含まれる。

「(Equifaxへのサイバー攻撃は)国が支援するハッカーが個人を特定できる重要な情報を盗んだものとして、これまでで最大の窃盗事案だ」とFBIのDavid Bowdich(デイビット・ボウディック)副所長はワシントンD.C.で行われた記者会見で述べた。

「本日、(中国軍の)ハッカーを刑事起訴する。我々が匿名というインターネットの覆いを取り除き、中国が我々に繰り返し仕向けてきたハッカーを見つけることができることを中国政府に思い出させる」とバー司法長官は言う。

2017年にEquifaxにハッキングしたとして起訴された中国軍ハッカー4人(Image: Justice Dept./handout)

Equifaxは、ハッカーたちが自社システムに侵入したことを認識してから数カ月後の2017年9月に情報流出を公表した。

その後の調べで、EquifaxはWebサーバーが攻撃されやすいと数週間もの間認識しておきながらパッチを適用しなかったことが明らかになった。これにより、ハッカーたちはサーバーをクラッシュさせ、膨大な量の個人情報を盗むことができた。名前、住所、社会保障番号そして何百万もの運転免許証やクレジットカードの情報が盗まれた。この情報流出は英国人とカナダ人にも影響を及ぼした。

当時のEquifaxのCEO、Richard Smith(リチャード・スミス)氏は情報流出後に辞任したが、批判から逃れられなかった。上院議員のChuck Schumer(チャック・シューマー)氏は、情報流出とEquifaxの対応を「Enron(エンロン)事件以来、企業による最もひどい不正行為だ」と話した。

Equifaxはのちに、少なくとも5億7500万ドル(約630億円)の罰金を払うことで連邦取引委員会と和解した。

Equifaxの現CEOであるMark Begor(マーク・ベガー)氏は、この起訴を可能にしたFBIと司法省の働きに「感謝する」と述べた。

在ニューヨークの中国領事館の広報は、コメント要求に応じなかった。

画像クレジット: Smith Collection / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

NASAの2021年予算要求は有人月面着陸に約3625億円、月面資源開発に約472億円

米国時間2月10日、トランプ政権は2021年度予算要求を発表し、NASAの申請は予想通り12%増加した。これでNASAの総予算額は252億ドル(約2兆7677億円)となり、その半分近い123億ドル(約1兆3510億円)は、月面着陸の復活と最終目標である火星の有人探査に充てられる。

行政予算管理局が米国時間2月10日月曜日に発表した本予算要求の中で、33億ドル(約3625億円)が宇宙飛行士を月の公転軌道から月面に送るために使用される有人月面着陸システムの開発目的に使われる。これは、一連の計画が「維持可能な探求」の安全で信頼性の高いシステムを開発するために、「競争、産業革新、および堅牢な政府見通し」に依存していることを表している。

予算には、Space Launch System(SLS、宇宙打ち上げシステム)および宇宙船オリオンを継続開発するための40億ドル(約4393億円)も追加されている。この組み合わせは宇宙飛行士の地球から月への移動手段になる。予算案は、NASAがこの資金を使って「システムを完成し定期飛行計画を確立」することを具体的に求めている。

他には、1.75億ドル(約192億円)が月面で宇宙飛行士が使用する宇宙服に、2.12億ドル(約233億円)が移動に利用されるローバー(月面探査車)に充てられる。2.54億ドル(約280億円)が割り当てられている商用月面着陸サービス(CLPS)では、NASAが民間パートナーの要求を受けて、2024年の有人月面着陸に先立ち実験器具や貨物を月面に送り込む。

「月面イノベーション計画」には4.3億ドル(約472億円)の資金が用意されており、月面資源を活用した発電、宇宙飛行士の住居、探査ツールなどを利用したテクノロジー開発および実演に使われる。これらの技術はロボット、有人両方の月面探査に使用され、最終的に火星探査でも同様の利用に生かされることが提案書にかかれている。

5.29億ドル(約581億円)の「火星ロボット探査」予算には、火星の土壌を地球に持ち帰る初めてのミッションや、火星表面近くの氷をマッピングし最終的に有人探査に利用するミッションが計画されている。

他に本予算要求は、低地球軌道における米国の存在感を引き続き確立するとともに宇宙飛行士の訓練にも利用される「新宇宙ステーション」の開発支援も含まれている。本予算は超音速機X-59の飛行デモにも資金提供する。NASAが2022年の初飛行を目指して開発している同機は、将来の商用超音速旅客機の青写真となることが期待されている。

予算の削減が提案されている科学ミッションもあり、学校現場のSTEM教育を支援するOffice of STEM Engagementもそのひとつだ。STEM事業が窮地に追い込まれたのこれが初めてではないが、これまでのところ削減措置は免れている。

NASAは今回の予算要求および政権の計画における意味について米国時間2月11日の午後に概略説明を行う。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

女性向けキャリアスクール「SHElikes」銀座に新拠点、助産師に24時間オンライン相談「じょさんしonline」、など

【1/27〜2/2 Weekly FemTech & BeatyTech】

1月27日から2月2日の1週間に発表された、FemTechやBeatyTechを中心とした領域における、特に注目すべきニュースをまとめて紹介する。

SHEがキャリアスクール「SHElikes」の新拠点「SHE Ginza」をオープン、名古屋を皮切りに全国展開を開始

女性向けのキャリア・ライフスタイルスクール事業などを展開するSHEは2月1日、キャリア&ライフコーチングスクール「SHElikes」の新拠点「SHE Ginza」を銀座にオープンした。青山にある「SHE Aoyama」につぐ2拠点目となる。

SHElikesでは、Webデザインやマーケティング、ライティングなどのレッスンなどを提供し、身につけたスキルを仕事に変えるまでをサポートする。これまでに1万名以上の卒業生を輩出してきた。

同社は2019年11月より、「SHE Ginza」オープンに向けてクラウドファンディンスサービス「makuake」でプロジェクト「世界が認めた定額制キャリアスクール『SHE』新拠点の第1期会員&サポーター募集」を実施。目標額200万円を大幅に超えた1566万円を調達している。

さらに、SHE Ginzaのオープン記念イベントでは、SHElikesの全国展開を発表。第一弾として5月、名古屋に「SHE Nagoya」を設立する。拠点拡大により各地のコミュニティの熱度を高め、より多くの女性の自己実現をサポートしていく予定だ。

助産師に24時間オンラインで相談できる「じょさんしonline」のサービスがスタート

1月30日、じょさんしonlineはオンラインで助産師に24時間相談できるサービス「じょさんしonline」の開始を発表した。

国立成育医療研究センターなどのチームは2018年9月、2015から2016年に102人の女性が妊娠中から産後にかけて自殺しており、妊産婦死亡の原因の中で最も多いとの調査結果を発表した。調査では人口動態調査票のデータを分析した。自殺の原因は産後うつの影響が大きいと考えられている。

じょさんしonlineは代表の杉浦加菜子氏が夫の勤務する海外で出産した際、知り合いのいない環境に不安や孤独を経験したことが原体験となり、設立された。いつ、どこにいても助産師のサポートが受けられる社会をつくりたいと思い、サービス提供を開始。ビデオ会議ツールZOOMを利用し、24時間、オンラインで助産師に相談ができる。時差のある海外在住の方や夜間の相談にも対応できるよう、海外に在住している日本人の助産師も所属している。

さらに、相談内容に応じて直接的なケアが必要な場合は、自宅近くの助産院の紹介や自宅への出張訪問も提供。妊娠している女性へのメンタルヘルスケアサービスは年々注目されており、2018年には妊娠や産後の悩みをLINEで相談できる「産婦人科オンライン」が誕生している。

エムティーアイ、独自の女性社員向け福利厚生制度「ルナルナ オンライン診療」を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬支援を開始

ヘルスケア事業やフィンテック事業を展開するエムティーアイは生理痛PMS(月経前症候群)などに悩む女性社員を対象に、2020年2月から福利厚生制度「オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬の支援プログラム」を開始する。

このプログラムでは女性の健康情報サービス「ルナルナ」と同社のグループ会社であるカラダメディカが提供する産婦人科向けオンライン診療システム「ルナルナ オンライン診療」を通じて、診療から薬の処方までオンラインで受けることができる。

オンライン診療を活用することで、生理痛やPMSなどの症状に対して気軽に婦人科に相談できる環境づくりと通院にかかる負担の軽減が可能に。全社員向けに産婦人科医による「女性のカラダの知識講座」も実施し、男性社員の理解と意識向上も促していく予定だ。

同社は母子健康手帳のバックアップや出産・子育てに必要な情報を提供するアプリ「母子モ」も運営。ルナルナの利用者が妊娠後に母子モへ移行するケースも多く、今後も女性のライフステージに合わせた切れ目のない支援を目指していく。

フェムテック専門ファンド「フェルマータ ファンド」が始動

fermata(フェルマータ)とMistletoe Japan(ミスルトウ・ジャパン)は2月3日、国内外のフェムテック関連企業の支援を目的として、fermata Fund(フェルマータ・ファンド)を共同出資で設立した。2020年秋をめどに、25億円規模の1号ファンド「fermata Fund」を始動させる予定だ。アドバイザーには、連続起業家でMistletoe創業者の孫 泰蔵氏、The 15th Rock Ventures、白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長の海老根真由美氏が名を連ねる。

1号ファンドとなるfermata Fundの出資予定企業として、妊活デバイスを開発するLady Technologies、衛生用品の開発・販売を手掛けるCome&goneが決まっている。

(文・橋本岬)

2019年のWebはモバイル化がさらに進展、トップ100サイトの月間訪問は2230億回

モバイル化の進展が、世界のWebトラフィックに大きな影響を与えていることが統計で裏付けられた。2月11日にWebマーケティングのコンサルティング会社であるSimilarWebが発表したレポートによると、2019年のモバイルのWebトラフィックは2017年以降30.6%増加したのに対し、同期間のデスクトップのWebトラフィックは3.3%下落していた。

変化はこうした数字だけではなかったようだ。モバイルユーザーの行動はデスクトップとはかなり違うことがわかった。モバイルユーザーのページ滞在時間はデスクトップよりかなり短い。これはWebサイト運営者が参考にする統計数字の意味に影響を与える。

レポートによると、2019年のWebのトラフィックは2018年から8%アップ、2017年から18.8%アップ、月平均2230億回のトラフィックがあった。2019年のWebトラフィックで最大のアップは4月と6月で、トラフィックは2018年と比較してそれぞれ10%以上アップした。

ただしレポートによると、モバイル化は訪問回数の増大の主因であるものの、モバイルユーザーがサイトに滞在する時間は短いため、プラットフォームを通算してWebサイトにおける滞在時間は2017年から2019年にかけて49秒ダウンしている。

またあるカテゴリーでは、モバイルがデスクトップを抑えて主要なアクセス経路となっている。デスクトップに比べてモバイルが圧倒的に好まれているカテゴリーはアダルト、ギャンブル、料理と飲み物、ペットと動物、ヘルス、コミュニティとソーシャル、スポーツ、ライフスタイルだ。さらにこの数年、ニュース、自動車、トラベル、調べ物、ファイナンスなど他のカテゴリーでもデスクトップからモバイルへのシフトが顕著だ。

しかしながら、こうしたモバイル化によってすべてのサイトがメリットを得ているわけではない。

例えばニュースサイトのトラフィックは減っている。レポートによれば、メディアサイトのトップ100は2018年から2019年にかけて5.3%のトラフィックを失っている。訪問者数にすれば40億回だ2017年からの減少は7%にのぼる。

こうしたトラフィックの減少はすべてのニュースカテゴリーに及んでいる。特にエンターテインメント関連、地域関連などのニュースは25%以上減少している。ビジネスとファイナンス、女性の権利に関するニュースだけがトラフィックが増加した。

モバイルへのトラフィックのシフトはまた大手パブリッシャーに有利に働いており、巨大サイトはさらに地位を固めた。トップ10サイトの月間訪問回数はトータルは1675億回で、2018年から2019年にかけて10.7%アップしている。これに対し、11位から100位までの90サイトでは同一期間で2.3%の増加にとどまっている。

GoogleはトラフィックをメインのサイトであるGoogle.comに集めようと努力し、効果を上げている。同時にYouTubeも成長もしている。一方、トラブルが続くFacebookでは、トラフィックの数字にもそれが現れており、2019年だけでトラフィックを8.6%失った。レポートはFacebookが失ったトラフィックの多くがYouTubeに流れたとみており、Facebookが最近ビデオに力を入れているのはこれが原因だろう。とはいえ、Facebookがモバイルに力を入れていることはビデオ以外では効果を上げており、例えばInstagram、WhatsAppへのトラフィックは対前年比で74%もアップしている。

Facebookと並ぶ減少組の代表はアメリカのYahooで、2017年以来トラフィックは33.6%ダウンした。Tumblrは2018年にアダルトコンテンツを禁止したことにより1年で33%のトラフィックを失った。

FacebookはWebトラフィックの減少を補おうとして2019年にアプリの再構築行った。これは効果を上げており、アプリのセッション数は増加した。Facebook同様、YouTubeもユーザーを惹きつけるためにデザイン変更を行っており、両者はビデオ視聴回数でほとんどタイとなった。

このレポートが扱っているデータは2017年1月から2019年12月までのもので、デスクトップとモバイルのWebトラフィックに加えてAndroidアプリの利用状況を調査している。

レポートの全文はこちらで読める。レポートはショッピング、トラベル、ファイナンス、メッセージなど重要なカテゴリーについて掘り下げた分析も行っている。

画像:Towfiqu Photography / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

モトローラが低価格スマホ2機種発表、1機種はスタイラスペン付き

レノボの子会社であるモトローラは、モバイルシーンでずっと地味に活動してきた。例外的にMoto ZやRazrのような派手な製品があるが、ほとんどは低価格の端末だ。おそらくGシリーズがその最もいい例だろう。モトローラのデバイスには華やかさはなく、スペックは1年か2年遅れだったりするが、300ドル(約3万3000円)を切る価格帯なら、それは問題にならない。

しかしモトローラはその堅実な仕事ぶりで、価格を抑えつつ魅力的な機能を盛り込んだスマートフォンを開発した。米国時間2月7日、シカゴで開催されたイベントで同社はGシリーズの新製品として250ドル(約2万7500円)のMoto G Powerと、300ドル(約3万3000円)のMoto G Stylusという2機種を発表した。

この2機種は共通点が多い。例えば2019年に発売されたMotorola One Macroと同じく、マクロレンズが搭載されている。これは他の多くのスマートフォンが採用しているマルチカメラシステムとは異なる、不思議な方向性だ。もちろん、スマートフォンのマクロレンズがどう役に立つのかは別の問題だが、モトローラはユーザーがマクロレンズを高く評価すると考えているようだ。

ユーザーは混乱し、ありがちな人物や風景を撮っていた人が花や食べ物を撮るようになるのかもしれない。

2機種ともバッテリーがパワフルで長時間駆動する点は、モトローラ製デバイスのお約束でありありがたい。Stylusのバッテリーは4000mAh、Powerはさらにそれを上回る5000mAhだ。バッテリー駆動時間はそれぞれ19時間、27時間と発表されている。どちらもプロセッサがSnapdragon 665というのは魅力に欠けるが、価格を抑えるためだろう。

結局、スマートフォンを安価に抑えるためのトレードオフだ。Snapdragon 765を5G対応にするというQualcommの決定が、低価格デバイスメーカーにとって打撃であることは間違いない。しかし、ヘッドフォンジャックが引き続き搭載されるという利点もある。

2機種の最も大きな違いは、名前に表れている。世界は(少なくともその一部は)今もスタイラスを求めているとサムスンが証明してから10年近く経つが、スタイラスは主流にはならなかった。確かに多くの企業が挑戦したが、スタイラスペンは成功しなかった。

モトローラはスタイラスとMoto Noteアプリを標準搭載にして、慎重な一歩を踏み出した(既存の製品とかなり似ているように見えるが、法的なハードルはすべてクリアしたようだ)。おそらく低価格帯ならスタイラスが受け入れられる余地はあるだろう。

さらに注目すべきもうひとつの特徴は、Motorola Oneシリーズから受け継がれているもので、賢いアクションカメラが搭載されており、スマートフォンを縦向きに持ったまま横長の動画を撮影できる点だ。これにより、片手でスマートフォンを持ってアクションシーンを撮影することも可能だ。

2機種とも、2020年の春から出荷される。

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(翻訳:Kaori Koyama)

ソニーも新型コロナウイルス感染拡大懸念でMWC出展取り止め

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、Mobile World Congress(モバイルワールドコングレス、MWC)への出展を取りやめる企業が相次ぐ中、Sony(ソニー)が同様の措置を取ることになった。

「お客様、ビジネスパートナー、メディアのみなさまそして社員の安全を最優先し、スペイン・バルセロナで開催されるMWC Barcelona 2020の出展と参加の取り止めるを決定しました」というプレスリリースをソニーは出した。

MWCは2月24日から27日にバルセロナで開催されることになっている。

予定していたプレスカンファレンスは2月24日午前8時30分(中央ヨーロッパ時間)にYouTubeのXperia公式チャネルを通じてリモートで開催する、とソニーは発表している。

「この困難な時期、みなさまのご理解とサポートに感謝しております」とも付け加えた。

ここ数日、Amazon、Ericsson、LG、NVIDIA、ZTEといった多くの企業が新型コロナウイルス感染拡大の懸念からMWC出展・参加を取り止めると発表した。

世界保健機関(WHO)は2020年1月、国際的に新型コロナウイルス感染拡大が懸念されるとして公衆衛生上の緊急事態を宣言した。

この記事執筆時点で、ウイルス感染と死亡のほとんどは、ウイルスが最初に確認された中国国内でおこっている。湖北省武漢市で最初に症例が報告された。

ZTEXiaomi(シャオミ)を含むいくつかの中国テック企業は、新型コロナウイルス感染の懸念からMWC参加に際して、中国からの社員移動を制限し、参加前の一定期間、社員が自己隔離を実施するといった変更を加える、と明らかにしていた。

2月9日、MWC主催者のGSMAもまた出席者を守るために厳しいルールを発表した。湖北省からの参加は禁止し、中国からの参加者はMWCの14日前に中国外に滞在していたことを証明する必要がある、というものだ。

また、参加者は新型コロナウイルスの影響を受けた人と接触していないことを自己証明する必要がある、とGSMAは述べた。

2019年のMWCには198カ国から11万人が参加した。

GSMAは「さらなる対策も検討中で、我々は今後も状況を注視し、場合によっては追加措置もあり得る。我々はすばやい対応が求められる、刻一刻と変わる状況と戦っている」とも語った。

MWC参加者数はここ数年10万人を超えていたが、2020年のMWCではこれまで参加してきた企業が移動を再考せざるを得ない状況に直面しており、参加者数の減少が予想されている。

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(翻訳:Mizoguchi

低価格ながら柔軟に使える移動ルート最適化のOptimoRouteが7.1億円を調達

移動ルートの計画というと、AmazonやFedEx、UPSといった物流大手の問題だと思うかもしれない。しかし実際は、動き回っている従業員が数人いる小さい会社はどこもこの問題を抱えている。米国時間2月6日、まさにこの問題に取り組んでいるOptimoRouteが、シリーズAで650万ドル(約7億1000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのは、Prelude Ventures。ルート計画のサービスを構築しているのはGoogleやYelpにいたエンジニアたちで、条件を設定すると配達やプールの清掃などのためにクルマで回る1日のルートが自動で作成される。

画像:Alan Thornton / Getty Images

OptimiRouteが競合となる同様のサービスと異なる点は、大幅に低価格でありながらドライバーと顧客にライブ追跡や到着時刻の予想、さらに必要に応じてリアルタイムでルートを変更する機能といったモバイルエクスペリエンスを提供しているところだ。OptimoRouteを利用する企業は、特定の曜日の計画を立てたり、最大5週間前に計画を立てたりできる。さらに同社は現在、人とモノの両方のピックアップと移動、そして2日以上にまたがる長距離ルートのサポートもテストしている。

OptimoRouteの共同創業者でCEOのMarin Šarić(マリン・サリッチ氏)は筆者に対し、ルートの最適化はよくとりあげられる学術的問題だと述べた。「ルートの最適化はきわめて実証的でミニマリズム的な学術テーマだ。しかしその一方で、商用では前世紀によく知られていたアルゴリズムを使ったソフトウェアが今も動いている。文字通り、1980年代のアルゴリズムも使われている。OptimoRouteは、効率の良いスケジュールを立てる上での現実的な制限を真剣に考えている」

OptimoRouteは多くの変数(クルマに積める道具の量、時給、特定の修理に必要なスキルなど)を考慮し、ルートを最適化する際に企業が優先順位を選べるようにしている。

サリッチ氏は「我々はこのテクノロジーを誰もが利用できるようにしようとしている。この取り組みは、経験豊富な物流管理者にも高く評価されている。管理者はソフトウェアトラブルの回避ではなく、解決しようとしている問題に集中できるからだ」と説明する。

OptimoRouteは現在、中小企業からSouthern Star Central Gas Pipelineのような大手エネルギー企業まで約800社の顧客を獲得している。Southern Star Central Gas Pipelineは、300人以上のメンテナンス技術者のルートをOptimoRouteのサービスを利用して管理している。従業員が運転する移動距離を減らせば、生産性が上がるだけでなく、サリッチ氏が指摘するように全体の二酸化炭素排出量も減らせる。

OptimoRouteは時間をかけてサービスのための基本的なアルゴリズムを開発してきた。同社は、サービスの利用者は高度な物流の管理者と想定していたが、実際には中小企業からも大きな需要があった。

Prelude Venturesのパートナー、Victoria Beasley(ビクトリア・ビーズリー)氏は「Preludeは、OptimoRouteが事業を拡大し、また多数の従業員の移動もサポートできるようにさらに開発を進めるための力になれることをとても喜んでいる。さまざまなクライアントが時間と費用とリソースを節約し、さらに二酸化炭素排出量も減少することで、OptimoRouteはルート最適化の市場にきわめて大きな影響を与える、と我々は確信している」と語った。

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(翻訳:Kaori Koyama)

マスク氏が「#DeleteFacebook」とツイート、「役立たずだ」と付け加える

Facebook(フェイスブック)は政治的発言への規制を拒否したこと、果てしなく続くように思えるプライバシーの侵害、そして最近のトランプ政権との明らかな癒着など、多くの方面から厳しい批判を受けている。

Facebookへの最も著名な批評家の1人は、コメディアンかつ作家、俳優のSacha Baron Cohen(サシャ・バロン・コーエン)氏となった。Facebookを「史上最大のプロパガンダ機関だ」と評した、Cohen氏の11月の名誉毀損防止同盟での力強いスピーチは、瞬く間に広まった。(ここで再掲載されている)

しかし、Cohen男爵はZuckerberg(ザッカーバーグ)氏への非難を終えていない。米国時間2月9日、彼は次のようにツイートした、 「25億人分の水を1人に管理させるわけにはいかず、また25億人分の電気を1人に管理させることはできない。なぜ25億人が見る情報を、1人の人間が操作するのだ? Facebookは皇帝によってではなく、政府によって統制される必要がある!」

その直後にTesla(テスラ)の創設者ことElon Musk(イーロン・マスク)氏は、この演説に応え、自身も「#DeleteFacebook(フェイスブックを削除しろ)、あれは役たたずだ」とツイートした。

短いが的確で、要点を突いたツイートだ(おそらく、コーエン氏を勇気づけたことだろう)。

esla(テスラ)の株価が急上昇したおかげで、いつも自分の考えを口にしてきたマスク氏が大胆になったと想像する人もいるだろう。しかし同氏は長らくFacebookを批判しており、2018年に自身の会社のFacebookページを削除した後、「Facebookにはゾッとさせられるよ、すまないが」とツイートしている。

マスク氏とザッカーバーグ氏は過去にも、人工知能(AI)の将来について鋭く対立しており、2017年にはマスク氏はザッカーバーグ氏のAIの将来についての理解を「限定的だ」と形容した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXはStarlinkをスピンアウトさせてIPOを目指す

SpaceXは、急成長を続ける衛星インターネットサービスのプロジェクト、Starlink(スターリンク)の事業をスピンアウトさせ、IPOによって株式を公開することを目論んでいるようだ。ブルームバーグによると、SpaceXのCOO兼任社長のGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が、JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)の投資家会議で明らかにしたという。

SpaceXは、これまでに多くの衛星を打ち上げて、Starlinkクコンステレーションに追加してきた。最終的な目標は、全世界から接続可能な低コストで高バンド幅のインターネット接続を実現すること。Starlinkは、低地球軌道を回る小さな衛星をネットワーク化することで、これを実現しようとしている。そのためにSpaceXは、現在の申請内容によれば、最終的に2万5000基もの衛星を打ち上げることを目標にしている。

現在、約240のStarlink衛星が周回軌道上にある。また、2月中に予定されている5回目のStarlink打ち上げによって、さらに60の衛星が加わる計画となっている。今後もSpaceXは、2020年の間に頻繁な打ち上げを続け、最終的に年末までには顧客へのサービス提供を開始できるよう目指している。さらに2021年の間にコンステレーションを充実させ、サービスを提供可能な領域を拡張する計画だ。

ショットウェル氏はブルームバーグに「SpaceXは今のところプライベートな企業だが、のStarlinkは今後も成長し、株式を公開するのにふさわしいビジネスなのです」と語った。それも道理というものだろう。のStarlinkの運営がいったん軌道に乗れば、他のネットワーク事業者と同様、会員となった顧客から継続的に収益を得ることが可能な、伝統的な構造のサービス事業となる可能性が高いのだから。今のところSpaceXは、スピンアウトの具体的なスケジュールを定めていないという。これはまだ初期の検討段階の話であり、実際にスターリンクの株式が公開されるのは、数年先になりそうだ。

一方SpaceXは、当面の間は収益性はさほど重視していないように見える。これまでに、打ち上げに対して多額の現金を喜んで支払う顧客のために、Falcon9やFalcon Heavyのような繰り返し使える輸送ロケットを開発し、実証してきた。もちろん、再利用可能にすることで、打ち上げにかかるコストは低減し続けてきたが、同時にSpaceXは、Starshipと呼ばれる完全に再利用可能な、まったく新しい打ち上げシステムも開発してきた。その中には新たなSuper Heavy(スーパー・ヘビー)ブースターも含まれていて、開発プログラムには、かなり多額の継続的な出費が見込まれる。しかもその出費は、今後減るどころか、ますます増えることが予想される。

最終的にStarshipは、Falcon 9とFalcon Heavyの両方に取って代わって、SpaceXとして唯一の打上げ機となるだろう。それによって毎回の打上げコストを大幅に削減し、収益性の高い運用が確保できる。とはいえ、まだStarshipは開発の初期段階にある。またSpaceXのCEO兼創立者のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、火星に到達して植民地化するという野心的な計画も持っている。その実現には、それなりの資本支出が必要だが、それは必ずしも株式市場の要望に沿うものではない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Amazon、コロナウイルス関連懸念でMWCから撤退

Amazon(アマゾン)はコロナウイルス関連の懸念を理由に、今月バルセロナで開催されるMobile World Congress(MWC、モバイル・ワールド・コングレス)での計画をキャンセルした。

Amazonの広報担当者はTechCrunchに送った声明の中で、「コロナウイルスの拡散と継続的な懸念を理由に、Amazonはスペインのバルセロナで2月24日〜27日まで開催される、Mobile World Congress 2020への出展と参加を取りやめる」と述べた。

コロナウイルスの流行の影響でMWCでの計画を中止、または縮小した企業には、LGやNvidia(エヌビディア)、Ericsson(エリクソン)などがある。イベントの主催者であるGSMAは最近、ウイルスの流行が始まったと考えられている湖北省からの訪問者の禁止を含む、予防策についての新しい声明を発表した。

この記事の掲載時点では、コロナウイルスの感染者の大多数は中国国内で、同国では908人が死亡し、4万171人の感染が確認されている。この流行は同時に、世界中でアジア人種差別と外国人嫌悪の影響を引き起こした。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

米国土安全保障省が不法移民の特定にアプリの位置情報を利用、自由人権協会が反発

商業的に利用可能な携帯電話の位置情報を、不法移民容疑者の新しい捜査方法として米国国土安全保障省(DHS)が利用していることに対して、米国自由人権協会(ACLU)は抗議する計画を立てている。

「国土安全保障省は、有償、無償の区別なく、令状なくして私たちの位置情報にアクセスするべきではありません。令状を取らないということは、最も機密性の高い個人情報、特に携帯電話の位置情報の履歴などを取得する際、政府は相当の理由を裁判所に示す必要があるという最高裁判所の判例を軽視するものです」と、自由人権協会の言論、プライバシー、テクノロジー・プロジェクト専属弁護士であるNathan Freed Wessler(ネイサン・フリード・ウェスラー)氏は言う。

米国時間2月7日早朝、ウォール・ストリート・ジャーナルは、国土安全保障省が配下の移民税関捜査局と税関国境警備局を通じて、民間企業から地理的位置情報を購入し、移民法違反が疑われる人物の捜査に利用していると報じた。

コンテンツ収集サイトが、ゲーム、天気、買い物、検索などの携帯電話アプリから集めた位置情報が、国土安全保障省による不法滞在中の移民や米国に不法入国した人物のあぶり出しに使われていると、同紙は伝えている。

ウォール・ストリート・ジャーナルがインタビューしたプライバシーの専門家によれば、位置情報は一般に購入可能であるため、米政府が国民から収集したデータで史上最大の包囲網を張るとしても、政府の行為は法律違反には見えないと指摘している。

民主的な国で民間企業が構築した商用の監視システムが、同様の監視ネットワークを構築するために合法的にアクセスされ、中国やインドやロシアといった権威主義的な国で使われるという例もある。

「民間セクターにひっそり導入された商用の監視システムが、いつの間にか政府に直接入り込んでいるというのは古典的な話です」と、強力なプライバシー法を求めるシンクタンクであるElectronic Privacy Information Center(電子プライバシー情報センター)で法務顧問を務めるAlan Butler(アラン・バトラー)氏はウォール・ストリート・ジャーナルに話していた。

政府による商用データ使用の背景には、Venntel(ベンテル)という企業の存在がある。バージニア州ハーンドンに本社を置く同社は、政府請負業者として活動し、同じ幹部スタッフがモバイル広告マーケティング分析企業であるGravy Analytics(グレイビー・アナリティクス)にも在籍している。移民税関捜査局と税関国境警備局は、携帯電話の位置情報を抽出できるソフトウェアのライセンス料として、合計で130万ドル(約1億4300万円)近くを支出している。国土安全保障省は、それらの商用的に利用可能な記録から得たデータを、越境や人身売買の捜査のための一般的な手がかりとして利用されると話している。

自由人権協会のウェスラー氏は、こうした訴訟で過去に勝訴した経験を持つ。カーペンター氏と米政府との裁判では、携帯電話の地理的な位置情報は保護されるべき情報であり、法執行機関は令状なしに取得できないと彼は最高裁判所で主張し、認められた。

税関国境警備局は、Venntelから収集した携帯電話基地局の情報は明示的に除外していると、同局広報担当者はウォール・ストリート・ジャーナルに伝えた。法律に触れることが理由のひとつだ。同局はまた、限られた位置情報にのみアクセスしており、そのデータは匿名化されていると話している。

だが、暗号化されたデータは、その匿名の携帯電話情報と特定の人物の現実社会での移動状況とを関連付けることで、特定個人に結びつけることができる。また、他のタイプの公的記録と一般に開放されているソーシャルメディアを使えば、推論や特定も簡単にできてしまう。

移民税関捜査局は、すでに自由人権協会から別のプライバシー侵害の疑いで訴訟を起こされている。昨年末、自由人権協会は、国土安全保障省の業務が、携帯電話基地局になりすまして個人の位置を特定する、いわゆる「スティングレイ」技術を使ったことで米政府を法廷に引き出そうと考えた。

関連記事:スティングレイでの携帯通信傍受で人権団体ACLUが米当局を提訴

そのとき、自由人権協会は、2016年の政府監視報告書が、移民税関捜査局と税関国境警備局が合わせて1300万ドル(約14億3000万円)でスティングレイを大量に購入し「逮捕および起訴のために人々の位置の特定」に使用したことを示していると指摘している。

画像クレジット:Getty Images under a John Moore license

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(翻訳:金井哲夫)

ロサンゼルス拠点のSureSaleは独立の中古車査定サービス

中古車査定サービス、SureSaleの共同創業者でCEOのDonny Hall(ドニー・ホール)氏は、中古車を知っている。連続起業家でもある同氏は、以前は自動車保険と修理の会社のCarSureを立ち上げ、売却している。

2017年にCarSureをInnovative Aftermarket Systemsに売ったあと、ホール氏は次なる冒険は中古車市場における自動車履歴情報の主要な情報源であるCarfaxと戦うことだと決心した。

同氏がカリフォルニア州サンタモニカに設立したSureSaleは、ロサンゼルスの投資会社であるUpfront Venturesから700万ドル(7億6871万円)の資金を調達し、全米の購入者が中古車とその問題について偏りのない評価情報を知ることのできる全国レベルの中古車査定サービスを作った。

「車を買いたい消費者の66%は査定を受けた車を買いたがっているが、実際に受けているのはわずか7%だ」と同氏は言う。「独立の中古車販売業者にもディーラーにも全国レベルの査定プログラムはない」。この会社は素性調査と保険を統合し、同社のプログラムが査定した車に限定保証と5日以内の交換オプションを提供している。

会社を立ち上げるあたって同氏は、中古車マーケットプレイス・レビュープラットフォームのAutobytelの共同創業者のJeffrey Schwartz(ジェフリー・シュワルツ)氏と手を組んだ。

中古車ディーラーはeコマース時代に苦戦を強いられている。ほかの小売業者と同じだ。SureSaleは、同社の付加価値サービスと高度な査定基準によって、Carmaxなどのオンラインサービスにはない競争優位性をディーラーに与えられると信じている。ディーラーは料金を払ってサービスを利用し、その見返りにディーラーの顧客は全面点検、査定証明書、素性調査のほか5カ月保証を受けられる。

最近この分野では、時価総額130億ドルのCarvanaや同160億ドルのCarmaxなどの大規模なイグジットがいくつも生まれているが、どの会社も市場シェアは2%以下であることを踏まえると、このような巨大市場には効率性向上の機会が常に存在していることがわかる」とUpFront VenturesのパートナーでSureSaleの取締役であるKobie Fuller(コビー・フラー)氏がブログ記事に書いた。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンク出資のFairがUberドライバーへの週単位での車貸し出しを終了へ

昨年10月にFair(フェア)が従業員の40%を解雇したとき、CEOのScott Painter(スコット・ペインター)氏はオンデマンド車両へのリースサービスはやめないと約束した。しかしその1週間後、ペインター氏はCEO職を解かれ、Fairに投資しているソフトバンクのAdam Hieber(アダム・ヒーバー)氏がCEOに就任した。そして2月6日、2つの情報筋によると、Fairは全員会議をアナウンスした。そこではUberのドライバーが短期間(週単位で)車を借りられるFair Goプログラムを終了させ、収益性を追求することが発表される見込みだ。Fair Goプログラムは4月に終了する。UberはTechCrunchにこの情報を認め、Fairもまた同様に認めた。

Fairのライドシェアドライバー向けの価格を大幅に上げることが余儀なくされる予期せぬ保険料増額のため、数カ月内に週単位のサービスを終了させる、と広報は語った。数週間以内に顧客にサブスクの状況を知らせるなど、混乱を最小限に抑えられるよう取り組む。Uberと緊密に連携をとっており、顧客がシームレスに他のオプションを利用できるよう、またUberへの車両供給を継続できるよう、サードパーティーによる選択肢も検討している。Fairを利用してくれていたライドシェアドライバーに感謝しており、費用対効果が高い方法でこれ以上事業を継続できないことを残念に思っている。

Fairでは、Uberドライバーが1カ月またはそれ以上の期間、車を借りることはまだできる。現在展開されていて今後なくなるプログラムでは、Uberドライバーは車両を週単位で借りることができた。我々が把握している限りでは、ピーク時にこのプログラムはFairのUberとの事業の半分ほどを占めた。

エクイティファイナンスとデットファイナンスでソフトバンクとLightspeedから20億ドル(約2195億円)超を調達し、バリュエーションは12億ドル(約1320億円)だったFairは昨年10月に従業員の40%を解雇した。同社は2018年にUberのXChangeリースプログラムを買い取った。このプログラムは、ドライバーがUber乗車サービスを提供するために車両を借りられるというもので、スタート料金500ドル(約5万5000円)を払えば、ロードアシスタンスや維持費込みで週130ドル(約1万4000円)という低料金だった。

しかしこのリースプログラムは利益が上がらず、損失が膨らんだためにUberはこのプログラムを売却した。Fairは料金をいくらか上げたが、それでも運営はさほど改善しなかった。

「Fair Goは収益を上げていた」と情報筋は語る。サブスクサービスを普通のドライバー向けに一新したのは同社にとって重要な取り組みだった。別の情報筋は、Fairが一時期1日あたりリースを250〜300台増やし、何千台も貸し出していた、と話した。

しかしFair Goは保険料の増額に直面していた。Uberドライバーが普通の車オーナーよりもかなり長距離を走ることを考えると、保険料アップは当然のことだ。

多くのドライバーが資金不足で、そうしたドライバーに保険料をそのまま回すのではなく、FairはUberドライバーへのリースを終了させると従業員に伝えた。トータルコストがいくらになるのかUberドライバーが完全に理解しなければ借金を抱えることになっていたかもしれないことを考えると、Fairの決断は妥当なものだ。

Fairのコメントを得ようと試みたが、事はやや複雑だった。というのも同社の広報チームの多くがすでに会社を辞めていたからだ。代理店の代表が遅くになって上記の声明文を出した。

Uberの広報はTechCrunchに対し、「ドライバーがUberで稼げるよう、車両を利用できるようオプションを提供し続けるのは優先事項だ。我々はFairの協力、そして我々の車両レンタルプログラムへの貢献に感謝している。Uberはレンタルパートナーシップ、そして現在利用できる月単位のサービスに加えて時間単位や週単位といったより柔軟なプログラムの構築に引き続き投資している」と話し、Fair Goサービスを停止することを認めた。

Uberはまだ赤字経営で、レンタルやリースの事業を引き受けようとはしていない。HertzやAvis、ZipCar、Getaroundなどとのパートナーシップを通じてドライバーにレンタルの選択肢を提供しようと試みていて、こうしたパートナーシップはこれまでFairから車を借りていたUberドライバーが利用できるものになるかもしれない、とUberは語った。

「長期リースを望む人には、継続しているUberとのパートナーシップに基づきFairが車両を提供できる」とペインター氏は話した。「収益化につながる持続可能な成長を優先するという証拠として、週単位のレンタルの事業をやめる」と同氏は述べた。「FairはUberとのパートナーシップを継続し、従来の月単位のプロダクトを通じてフレキシブルな選択肢を提供する。月単位のプロダクトはうまくいっていて、事業の大半を占めている」。

Georg Bauer(ジョージ・バウアー)氏やその他何人かと共同でFairを創業したペインター氏は昨年10月末にCEOを辞めたとき、Fair.comの代表取締役会長という役割を引き受けた。一方でヒーバー氏がCEOを暫定的に担う。

昨年10月のレイオフ時にペインター氏は、従業員の解雇はソフトバンクのプレッシャーによるものではない、とした。

「ソフトバンクは大株主で、私がフォーカスしていることをサポートしている。それは今でもそうだ」とペインター氏は当時語った。ソフトバンクがそうした変更を行うようにプレッシャーをかけたのか、という質問に対し、「我々をたたいている、という言葉は適さない」と答えた。「彼らは我々をサポートしている。そこには大きな差がある」と強調した。

1週間後の驚きの社長交代、そしてきょうのFair Goについてのニュースはそれぞれ、ソフトバンクそのものが受けているプレッシャーを示している。

Fairの件は、ソフトバンクのポートフォリオにおいて「WeWork爆発」後に続いている悪いニュースの最新版となる。ソフトバンクの巨大なビジョンファンドが財布の紐を固く締め、他のレイターステージ投資家が持続可能なユニットエコノミクスにフォーカスすることにつながるかもしれない。

バーンレート(資金燃焼率)を慌てて抑制することを余儀なくされた、資金を十分に調達した成熟したスタートアップは、往々にしてレイオフを行い、利益を追求してビジネスモデルをシフトする。

巨額の資金に支えられてバリュエーションが膨らみ、その後良好な関係構築に問題を抱えるかもしれないソフトバンクのポートフォリオは大きな打撃を受けている。今週、TechCrunchはFlexportが全従業員の3%にあたる50人を解雇することを報じた。

そのほかにも、ソフトバンク出資のレイオフを行った企業としては全従業員の80%を解雇したZume Pizza、同じく80%を解雇したWag 、25%を解雇したGetaround、6%を解雇したRappi 、そして5%を解雇したOyoがある。

こうした企業はまだ増えるかもしれない。25億ドル(約2800億円)でソフトバンク株を取得した物言う株主である投資管理会社のElliott Management(エリオット・マネジメント)は、より良い企業ガバナンス、投資にかかるさらなる透明性とマネジメントを含め、さまざまな問題に関してソフトバンクと協議を始めたと報じられている

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(翻訳:Mizoguchi

転換社債で資金調達するスタートアップが増加した理由とJuulの場合

転換社債は今やアーリーステージのスタートアップに限られる資金調達方法ではなくなった。転換社債は借用証書の一種であり、企業が所定の金額を借り入れたこと、その負債は期日、株価などある条件で株式に転換可能であることを示す。最近、ベンチャーキャピタルから多額の投資を受けた会社が追加の資金を転換社債で調達することが増えている。

以前はスタートアップが転換社債を発行するのは創業者が会社表額を決定できないときに採用されることが多かった。まだ十分なユーザーを得ていないスタートアップがベンチャーキャピタルに対して投資と引き換えに固定したパーセンテージの株式を与えるなら、会社の持ち分の大きな部分を不当に低い金額で売却することになる可能性がある。こうした場合に適切な会社評価額を決定するまでの時間を稼ぐくために転換社債による資金借り入れが行われることがあった。

しかしこの数カ月、成長が後期の段階に達しているスタートアップが転換社債による借り入れを行う例が増えている。Wall Street Journalによれば米国の電子タバコのメーカーであるJuulが転換社債による7億ドルの借り入れを行っている。SEC(証券取引委員会)への申請書によれば、 創立9年目になるニューヨークのクリエーター向けオフィス賃貸のNeueHouseは1500万ドルの転換社債の発行を準備中だ。暗号通貨取引所のLedgerXは380万ドルをこうした借り入れによって調達したところだ。

なぜ創立後時間を経た企業が転換社債発行を好むようになったのだろうか?ごく簡単にいえば、スタートアップはいわゆる「ダウン・ラウンド」を避けようとするからだ。ダウン・ラウンドというのは前回のラウンドよりも会社評価額が下がることで、スタートアップのイメージを低下させる。

ベンチャーキャピタリストもダウン・ラウンドを嫌う。これはファンドの出資者向けの財務報告に会社評価額の減価として明記しなければならないからだ。市場はスタートアップの成長が減速していることを知るし、なによりベンチャーキャピタリストが前回のラウンドでスタートアップを買いかぶっていたと自認することになる。

転換社債はこうした傷の応急処置に便利なバンドエイドだ。スタートアップはプロダクトを修正・改良して再度成長を軌道に乗せる余裕ができる。また会社の売却先を探したり、場合によっては現在のプロダクトに見切りをつけて事業をピボットさせることもできる。

外から見たかぎり、波乱の電子タバコ業界にいるJuulには事業見直しの時間が必要と思われる。電子タバコに対する規制は急激に強まっており、カリフォルニア州のモデスト学校区、ペンシルバニア州のバックス郡など、学校区や自治体からの訴訟も多発している。資金調達もそれだけ困難さを増している。

Juulは一時は成長確実な投資先とみられ、フィリップ・モリス、クラフト、ナビスコなどの著名ブランドを持つAltriaが株式の35%を128億ドルで買ったほどだった。しかし現在は同社は予断を許さない状況に置かれている。今年1月30日にAltriaはJuulの会社評価額を120億ドルと修正し、持株の価値を41億ドルと68%減価した。

Wall Street Journalの報道によれば、7億ドルが株式に転換されるのは次回のラウンドでJuulが100億ドルから250億ドルの会社評価額を得たときに限られる。つまり100億ドル未満、あるいは250億ドルを超えた場合、7億ドルは負債のまま据え置かれる。

会社評価額が低かった場合、投資家は株式より債券を好むことはわかりやすいが高かったときも転換が行われない理由は、新しい投資家が不当に高い評価額で投資を行うことにより既存投資家の持株が希薄化されないようにするためだという。万事うまく運べば、既存の投資家は次回新しい投資家が得るよりも良い条件で株式を得ることができるわけだ。

一般論としては転換社債の発行は会社にとって良いサインだ。もし破綻確実ならどんな名目であろうと新たに資金を調達できるわけがない。しかしJuulは2018年には「市場で最も有望な企業」と見られていたのだから現在の状況はかなり深刻だ。

転換社債で資金を調達したことは、将来の見通しが不透明で株式でベンチャー資金を調達することが困難であることを意味する。株式の売却でラウンドを実施するためにはスタートアップ側は売上高、キャッシュフローなどの財務指標が予め定められた目標に達し、また所定の手元現金を保有していることも求められる。

画像:JUSTIN TALLIS/AFP / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook