米国証券取引委員会が中小企業のクラウドファンディングによる資金調達の規制を一時緩和

米国の労働者たちが自らの命を守る医療の支払いにクラウドファンディングを使い始めたのと同じように、証券取引委員会(SEC)は中小企業に対して、米国政府の代わりに一般市民が彼らの命をつないでくれるかもしれないと語りかけている。

2度にわたる数十億ドル(数千億円)規模の経済刺激策が、表向きは支援の対象だったはずの中小企業にほとんど渡っていないことを受け、SECは報告義務に関する制限を撤廃し、クラウドファンディング登録の承認を加速すると発表した。これで大企業にも中小企業にも、キャッシュを手持ちにしている投機的投資家から資金を集める機会が生まれる。

クラウドファンディングを行うために、企業は投資家に対して、集まった資金を自社の存続と新型コロナウイルス(COVID-19)関連の支払いに使うことを明確に告知する義務があるとSECの発表文に書かれている。

「現在の環境下で、多くの歴史ある中小企業が必要な資金を必要な時に効率よく入手できない困難に直面している」とSECのJay Clayton(ジェイ・クレイトン)委員長が声明で語った。「今日の決定は、当委員会の中小企業資本形成諮問委員会などから受けたフィードバックに答えるものであり、差し迫った必要資金を時間内に提供しつつ、投資家にも適切な保護を与えることができる」。

声明によると、この暫定規則によって資金調達希望者は、クウラドァンディングを実施して10万7000ドル(約1140万円)から25万ドル(約2670万円)の資金を調達する際、財務諸表の監査が免除されるなどの特典を受けることができる。規約の一時緩和措置は2020年8月末に終了する。

画像クレジット:BRENDAN SMIALOWSKI / Staff / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ハードウェアスタートアップがクラファンで音楽制作に新鮮な息吹を吹き込む

私は音楽が大好きだ。真面目な話、それはこの寒々しく孤独な世界に慰めをもたらす、数少ないものの一つなのだ。ジョニ・ミッチェル、ウィリアム・オニーバー、それともパブロ・カザルスについてもっと詳しく知りたくならないだろうか?私は本気だ。なにしろ、TechCrunchに来る前には、何年も複数のレコード店で働いていたのだ。その意味で、私はいつもそちら側の人間だ。しかし、私はこの先、ミュージシャンやその他のプロフェッショナルの類になろうとは決して思わない。

現時点で私は、そのように人生の決断を下している。私がプロ野球選手になることが決してないのと同様に、ロックスターになることも決してない。どちらも私の中ではケリのついた事柄だ。トロンボーンを吹いていた中学の2年間や、ギターを習得しようとしていた15年間に戻る必要はないのだ。まあ要するに、私はどちらにもまったく適性がなかったのだと思ってほしい。

音楽を作りたいという欲求がないからというわけではない。それは率直に言えば単なる才能の欠如なのだ。そしてまさにこの理由で、私は新しい音楽機器に興味津々なのだ。音楽の基本的なスキルに欠ける人たち向けに、音楽制作の真の可能性を開くことができるスタートアップには、膨大なお金を稼ぐ機会が待っている。

こうした理由から、私はずっとRoli(ロリ)に興味を持ってきた。数年前にSeaboardがSXSWでデビューしたときには、私は真っ先にそれを取り上げた1人だ。それは魅力的な楽器で、柔らかい素材のおかげでスラーを自然に行うことができる。だがそれをマスターするためには、実際にはどのような音楽をやる場合でも、ある程度ピアノの演奏力が必要とされているのだ。数年前に発表された同社のモジュラーブロックシステムはさらに魅力的だったが、(そうした楽器を弾けない層の)かゆいところに手が届くというわけにはいかなかった。

さて先週のCESでKickstarterの素敵な人たちが、私の希望をある程度叶えてくれそうな3社のクラウドファンディング企業の創業者を紹介してくれた。フランスのスタートアップJoué(ジョウエ)は、会社名と同じモジュラーMIDIコントローラーで、今年のCESピッチオフの最優秀賞を獲得した。

このデバイスは以前取り上げたことのあるSensel Morphと同様の原理で動作し、タッチサーフェスの上にシリコンスキンを重ねて、さまざまなコントローラーを提供する。Jouéの取り組みは、これまでのSenselよりもさらに音楽を中心としたものだ。ところで、ショーにおけるSenselとの会話から想像すると、どうやら同社はこれまでのデバイスへの注力をやめて、サードパーティのデバイスに組み込むための魅力的なタッチコンポーネントへと舵を切ったようだ。

簡単なデモからもわかるように、彼らのKickstarterプロジェクトは印象的なものだ。これは非常に汎用的で、システムに全く異なる聴覚特性を与えるためには、単に新しいスキンとサウンドパックを用意すれば良いだけだ。また、カスタマイズされたサウンドパックの可能性についても同社は口にしていた。JouéはNWAの創設者であるArabian Prince(アラビアン・プリンス)氏によるパフォーマンスを、期間中ずっとブースで見せ続けていた。CESには奇妙な取り合わせだが、このような製品が引き寄せることができるかもしれないアーティストの興味深いサンプルになっている。 当然ミュージシャンたちは、カスタマイズされたパッドに興味を示しているようだ。

Rhythmo

しかし、同社はこの製品を初心者向けに最適なものとして位置付けているようだが、ここにはそれなりに急な学習曲線が待ち構えていると私個人は感じている。この学習曲線は、Rhythmoの場合にはある程度軽減されているようだ。オースティンに拠点を置くこのスタートアップのプロジェクトは、音楽制作とメイカーワールド(DIY)へのガイドを組み合わせたものだ。

これは、段ボール箱を使って作成するMIDIコントローラードラムキットである。すべての部品が含まれており、それらを組み合わせることが楽器製作作業にうまくつながっている。創業者のEthan Jin(イーサン・ジン)氏は、CESフロアでの実演用に組み立てられたモデルを私に触らせてくれた。このデモはさまざまな理由で多少不具合があったものの、楽しむことができた。キットには、さまざまなサウンドにマッピングできる大きなアーケードゲーム用のボタンが含まれてる。Rhythmoアプリを使用したり、iPadやデスクトップ上で選択した音楽ソフトウェアとインターフェイスさせたりすることができる。それはこの世界への楽しい入門となる。

Orba

さて、そうした中で、おそらくArtiphonが、私のわがままな要求を満たしてくれるものに最も近いと思われた。同社は大成功を収めたKickstarterプロジェクトであるInstrument 1でよく知られている。ギター、バイオリン、ピアノ、そしてドラムマシンのすべてを1台のデバイスで提供することを約束して、130万ドル(約1億4000万円)という途方もない金額を調達した。

しかし、今回の新製品のOrbaは、本当に私の目を釘付けにした。アイスホッケーのパック型をしたデバイスは、立ち上げて使う際に音楽的知識をほとんど必要としない、ポケットシンセサイザー、ルーパー、MIDIコントローラーだ。創業者のMike Butera(マイク・ブテラ)氏と話した後、私はそれを、非常に基本的なレベルでは一種の音楽的ハンドスピナーだと思うようになった。ちなみに今回は140万ドル(約1億5000万円)を調達している。

Instrument 1

言い換えれば、アパートの部屋を歩き周りつつ、執筆中のCESのクラウドファンディング音楽プロジェクト記事の見出しを考えながら、ぼんやりと音楽を作れる位単純なものだということだ。なお、決してわたしの日頃の行動を反映していない。純粋に仮定的な例だが。

3つのうちで、私の音楽的「かゆみ」に手を伸ばすには、これがもっともふさわしいものだった。

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(翻訳:sako)

Artiphonが新しい音楽デバイス「Orba」のクラウドファンディングを開始

以前に「Instrument 1」というギターのネックのような形の音楽デバイスで100万ドル(約1億900万円)以上をKickstarterで調達したスタートアップのArtiphonが、最新のデバイス「Orba」のクラウドファンディングを開始した。

画像:Artiphon

共同創業者でCEOのMike Butera(マイク・ブテーラ)氏は、Instrument 1とOrbaは同じDNAを持っていると語る。そのDNAとは、トレーニングや経験にかかわらず、誰もがもっと簡単に音楽を作れるようにしたいという考えだ。

ブテーラ氏は筆者に対し「初心者に自分はまるでプロになったようだと感じてほしいが、同時にプロに自分はまるで初心者に戻ったようだとも感じてほしい。これは、私たちがそれを実現するための次の一歩だ」と述べた。

OrbaはInstrument 1(この製品も引き続きサポートされる予定だ)よりも小さく、価格も手頃だ。そしてソフトウェアなしで楽しめることが増えている。ブテーラ氏は「楽器にできることを徹底的にシンプルにした」と表現する。

Orbaは手のひらにおさまる丸いデバイスだ。Artiphonのチームは、ゲームコントローラ、そしてグレープフルーツや味噌汁のお椀をイメージしたという。

デバイスの上面はわずか8つのタッチパッドに分かれていて、操作はシンプルだ。しかしOrbaにはドラム、ベース、コード、リードのモードがあり、その上、さまざまな触れ方やモーションセンサーを利用できるため、タップしたり手のひらでたたいたり振ったりしてバラエティ豊かなサウンドを作り出せる。

Orbaに内蔵のシンセで演奏するだけでなく、Orbaアプリや、GarageBandなどの音楽ソフトと接続することもできる。

Artiphonは来年4月に最初のOrbaデバイスを出荷する計画だ。価格は最終的には99ドル(約1万800円)の予定で、Kickstarterのアーリーバードで設定された79ドル(約8630円)の分はすでに終了した。この日本語版記事公開時点では、Kickstarterの支援に対するディスカウント価格として89ドル(約9720円)が設定されている。同社はこのクラウドファンディングで5万ドル(約550万円)の調達を目指している。

Artiphonは今年3月にシードラウンドで資金を調達したが、それにもかかわらずクラウドファンディングを利用している理由について、ブテーラ氏は「このクラウドファンディングは我々に合う投資家を見つけるためではなく、我々に合う顧客を見つけるためのものだ」と説明している。

同氏はさらに「プロダクトデザイナーが顧客に対して直接責任を持つことにもなると思う」と述べた。

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(翻訳:Kaori Koyama)

京セラがソニーと組んでオープンイノベーションを加速させる理由

ソニーは7月3日に「Sony Open Innovation Day 2019」を開催した。このイベントは、スタートアップの創出と事業運営を支援する取り組みだ。そして、ここから誕生した子育て世帯向け「仕上げみがき専用歯ブラシ」の「Possi」(ポッシ)が、同社のクラウドファンディングサイト「First Flight」で公開され、事業化に向けた支援募集を開始している。

京セラとライオンのコラボレーションによって生まれた仕上げみがき専用歯ブラシ「Possi(ポッシ)」

Possiは子供が自分で歯みがきをした後に、みがき残しがないように親が行う「仕上げみがき」をスムーズに行えるようにするというグッズだ。スマートフォンやデジタルオーディオプレーヤーなどとオーディオケーブルで接続し、歯ブラシを歯に当てると音楽が鳴る仕組みになっている。歯ブラシ自体は音波振動などの仕組みはなく、シンプルな手みがき用歯ブラシだが、イヤイヤをする子供が仕上げみがきを大人しく受けられるように、楽しみながら仕上げみがきができるように工夫している。

京セラの研究開発本部メディカル開発センターの稲垣智裕氏はPossiについて「京セラのセラミック要素技術とライオンのオーラルケア製品に有するノウハウを融合した上で、ソニーのエンタテインメント性を加えて実現しました」と語る。

開発に携わった京セラ 研究開発本部 メディカル開発センターの稲垣智裕氏

Possiの構成。子供が歯ブラシを噛むなどして邪魔した場合には、ミュートボタンを押して音楽を止められるようになっている

「歯ブラシのヘッドサイズに合わせて形状や構造をカスタム開発した圧電セラミック素子がヘッドに内蔵されており、ボディに搭載した新開発のデジタル駆動アンプと圧電素子によって小型・軽量・省電力で十分な振動パワーを持つアクチュエーターを実現しました。歯ブラシの基本性能である汚れを落とす力という当たり前の品質を確保しつつ、ブラシに高い振動伝達効果を持たせてオーディオデバイスにしました」(稲垣氏)。

Possiを実現した京セラのテクノロジーとライオンのノウハウ

ソニーはPossiのものづくりを伴走してサポートするだけでなく、キャラクター作りやPV(プロモーションビデオ)作りなどにも参画した。

「子供に楽しく歯みがきしてほしいということから、ソニーのデザイナーによる生き物のような優しい形の歯ブラシや、愛着のわくキャラクター、さらにPVにも出てくる『ポッシといーあー』という曲もわざわざPossiのために作りました」(稲垣氏)。

ソニーグループによるエンタテインメント性の演出

しっぽが歯ブラシになっているキャラクターも新たに作った

製品作りに携わるソニー社内のデザイナーだけでなく、ソニーミュージック所属のアーティストによる曲作りまでできるというのは、エンタテインメント業界で大きな力を持つソニーグループならではの部分と言えるだろう。

「子供の仕上げみがきに悪戦苦闘する日々をテクノロジーでなんとかしたいという気持ちでスタートしたこの企画ですが、思いに共感を得られてライオン、京セラ、ソニーと、多くのメンバーに企業の垣根を越えてかかわっていただくことができた。同じ悩みを持つお父さん、お母さんに届けて、少しでも楽にしてあげたいです」(稲垣氏)。

クラウドファンディングで募集を開始したPossiのラインアップ

今後もSSAPの仕組みを生かしてあらたなものづくりを加速

京セラは2018年12月にSSAPへの参画を表明しており、PossiはSSAPの社外向け案件第1号として、ソニー本社内に設けられた社外の新規事業プロジェクト用の専用スペースに入居し、製品開発に取り組んできた。

京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ所長の横山敦氏は2019年7月3日に開催された「Sony Open Innovation Day 2019」のクロストークセッションで、SSAPへの参画を決めた経緯について次のように語った。

京セラ 研究開発本部 フューチャーデザインラボ所長の横山敦氏

「SSAPに駆け込み、ぜひとも協力体制を敷いてほしいとお願いしました。京セラの中でも、オープンイノベーションや新規事業創出にかけた意気込みや熱い思いはたくさん持っていましたが、京セラは我々が持つ技術や製品をお客様に届けるB2Cビジネスがやり方も含めて豊富にあるわけではありませんでした。ソニーが培ってきたB2Cのデザインや知見、技術、知識などでサポートしていただき、協業しながら新しいものを出せたらいいなと考えました」(横山氏)。

横山氏はSSAPの仕組みについて「一言で言うと化学の実験工場のようなもの」と語る。

「熱い思いや創業者精神を持っている人が、ロジカルなプロセスやプロフェッショナルなサービスを得てものにしていく。我々の夢を叶えて企業の価値を世の中に出してくれるというものだと考えています。SSAPは足し算やかけ算に加えて、化学反応が行われている気がします。当初はどうなるか分からなかったアイデアが光り輝いて変化するし、色も形もどんどん変わります。求心力を持って(プロジェクトを)回す中で仲間がどんどん増えて、商品も非常に魅力的になり、協業していただくメーカーも入ってくれて、全く新しいのを生み出すような化学工場のように感じています。化学反応は1回だけではなく2回、3回と続きます。そこには触媒も必要ですし、いろいろな広がりを見せる仕組みだと思います」(横山氏)。

今回の発表によってPossiという製品が生み出されたが、今後もSSAPを通じてものづくりにチャレンジしていきたいと横山氏は語る。

「本日発表した新商品を1人でも多くのお客様の手に届けて、多くのお客様に楽しんで満足していただきたい。今回のプロジェクトで企業同士の連携ができるということがよく分かったので、社内でもトライしてみたいという人が出てきています。内部で前向きにブラッシュアップし、成長を続けているSSAPに組み入れて進めていきたいと考えています。(京セラが)みなとみらいに作った共創スペースという場もあるので、さらに有機的に仲間を引き入れ、新しいチャレンジをしていければと思います」(横山氏)。

京セラは横浜市のみなとみらい地区に「みなとみらいリサーチセンター」を設立し、オープンイノベーションを推進する場として活用している

“1000部読み手がいれば本が出せる”出版クラウドファンディング「EXODUS」始動

CAMPFIREと幻冬舎の共同出資により、「クラウドパブリッシング」事業を提供しようと2018年3月に立ち上げられたエクソダス。2017年12月の設立発表から1年以上動きがなかったエクソダスだが、5月13日、ついにクラウドファンディングを使った出版プログラム「EXODUS(エクソダス)」が始動した。

満を持してスタートしたEXODUS。記念すべき第1号プロジェクトでは、駐車場シェアリングの「akippa(アキッパ)」を運営するakippaの代表取締役社長、金谷元気氏がプロジェクトオーナーとなり、営業会社からITスタートアップに転身した、金谷氏自身の起業ストーリー出版を目指す。

エクソダスは、出版不況の背景にあるのは若者の活字離れではなく、「本の情報が的確に届かない、欲しい本があってもすぐ買えない」ことにあると考えている。「1万部売れることが見込めないと本が出せない」と言われる出版界。クラウドファンディングの活用により、1000部読み手がいれば出版できる仕組みを構築し、本を最適な読者に届けようというのが、エクソダスの狙いだ。

EXODUSは一般ユーザーから、フリーライターや出版社、編集プロダクションなどの業界に属する企業までを対象とした出版プラットフォームを目指している。CAMPFIREはクラウドファンディングのノウハウを、幻冬舎は企画力や編集力、宣伝力をそれぞれ提供し、持ち込まれた出版アイデアを「本」にする支援を行っていく。

CAMPFIREは2011年のクラウドファンディングサービス開始以来、現在までに2万1000件以上のプロジェクトを掲載、支援者は述べ121万人以上、流通金額115億円に達している。クラウドファンディングの「CAMPFIRE」「polca」といったサービスのほか、金融サービス「CAMPFIRE Bank」、コミュニティウォレット「Gojo」、プロジェクトメンバー集めのプラットフォーム「tomoshibi」などを運営する。5月6日にはシリーズCラウンドで総額22億円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

基礎研究を企業と支援するクラウドファンディング、アカデミストが第1弾を公開

学術系クラウドファンディングサービス「academist(アカデミスト)」を運営するアカデミストは4月15日、アクセラレーターのBeyond Next Venturesと共同で募集していた「<Beyond Next Ventures × academist> マッチングファンド」第1弾の審査を通過した研究プロジェクト2件のクラウドファンディングをスタートした。

2件のプロジェクトが研究費支援を募るクラウドファンディングの実施期間は6月17日19時まで。目標金額50万円を達成し、ファンディングが成立したプロジェクトには、Beyond Next Venturesから50万円の追加支援が行われる。

研究の発信の場として始まったacademist

アカデミストは、研究費獲得のためのクラウドファンディングサービスacademist、そして学術系メディア「academist Journal(アカデミストジャーナル)」を運営し、研究者を支援する事業を行っている。

両事業に共通するのは「研究者が発信する環境を提供すること」と、アカデミスト代表取締役CEOの柴藤亮介は語る。

柴藤氏は首都大学東京大学院に在学中、理論物理学を専攻していたのだが、隣にいる研究者とやり取りすることもなく、1人で論文を読んだり研究を進めたりする日々を過ごしていたという。

「同じ部屋にいる院生同士でも、研究分野が少し変わるだけで接点もなくなる。まわりの研究者が何を研究しているのか、知る機会が欲しい」と考えた柴藤氏は、分野を超えて、研究者が自身の研究について発表する場をセッティングしてみることにした。

初めは専門が異なれば、説明も分からないのではないかと思ったそうだが、実際に聞いてみると、「研究者が自分のリサーチクエスチョン(課題)を一生懸命説明するので、意外と分かる」ものだったという。そこで他人が進めている研究の大枠が分かることの面白さに触れた柴藤氏は、アカデミア以外の社会や企業に向けて研究を発信することも面白いコンテンツになるはずと考えた。この経験が、アカデミスト設立につながっている。

研究者が情報発信する場として、メディアだけでなくクラウドファンディングのプラットフォームを立てた理由は何か。柴藤氏は「メディアを運営するのは、発信の場としては直球だが、情報をまとめる研究者にとっては、研究を進めながら寄稿をするにはエネルギーも要るし、直接のメリットがない。それならば、研究費が得られるというメリットが見えた方が参加してもらいやすいと考えた」と話している。

2014年、学術系に特化したクラウドファンディングサービスとして公開されたacademist。これまでに、約100名の研究者がプロジェクトに挑戦し、研究費の獲得に成功した総額は約1億円に上るそうだ。

最初は理学系の研究プロジェクトが多かったが、最近では工学系や医学・薬学、それに人文・社会科学系の研究でもプロジェクトを公開するようになっているという。

これまでに公開され、成立したプロジェクトは「無人探査ロボットで東京ドーム1万個分の海底地図を描きたい!」「宇宙における星形成史を辿ってみたい!」といった研究としては王道らしいものから、「カラスと対話するドローンを作りたい!」といった“確かに科研費は取りにくいだろうけれども、何となく面白そう”なものまで、ジャンルも規模もさまざまだ。

筆者は個人的には「南米先史社会『シカン』の発展と衰退の謎を解明したい」という考古学調査のプロジェクトで、リターンに「発掘調査参加」権があるプロジェクトに興味がそそられた(この案件は既に募集を終了している)。

企業とのタッグでさらに研究者の課題解決へ

アカデミストでは研究者の課題解決をさらに進めるため、「企業マッチング型クラウドファンディング」を1月からスタートした。その第1弾として立ち上がったのが、大学発・技術系スタートアップの育成投資を手がけるアクセラレーターのBeyond Next Venturesと研究者を募ったマッチングファンドだ。

このマッチングファンドではBeyond Next Venturesが基礎研究に対し、短期的な成果を目的としない支援を行う。academistのプラットフォームで研究をプロジェクト化し、プロジェクトが目標金額を達成して成立した暁には、クラウドファンディングによる支援金額に加えて、研究原資の一部をBeyond Next Venturesからも追加支援する。

第1弾では基礎研究に「情熱」を持つ研究者を募集した。応募分野は幅広く、医学、生物情報学、社会学、化学、神経科学など多様なジャンルから熱意ある研究テーマが寄せられたそうだ。

今回はその中から、2件の研究プロジェクトが審査を通過し、4月15日から70日間のクラウドファンディングを開始することになった。

今回公開されたプロジェクトの1つは有機合成化学の分野で、従来の方法によらない有機合成の手法を研究したいというもの。「有機化学の発展には、新しい分子の合成ルート開発が求められる。そのためには、今までに知られている手法だけでなく、新たな分子変換の方法を開発することも重要」と考える学習院大学理学部助教の諸藤達也氏が、ケイ素と電子移動を利用する新しい有機分子変換法の開発を目指す

もう1つは神経科学の分野で、他の個体の「意識内容」を細胞移植で再現できるか、という研究だ。リンゴを見て「赤い」と感じたり、食べて「おいしい」と感じたりするとき、その「赤さ」「おいしさ」は意識内容と呼ばれる。非物質である意識内容は、物質である脳からどのように生み出されるのか。東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科助教の田中大介氏が、「細胞移植により、特定の意識内容を生み出している神経基盤を複数の個体間で再現する」というコンセプトを実証するための基礎研究に対して支援を募る。

企業マッチング型クラウドファンディング開始のきっかけについて、柴藤氏は「ひとつはクラウドファンディング達成総額を上げるため、法人の力を借りたかったから」と述べる。またアカデミアの外でヒアリングを進めると、企業の側にも解決したい課題が見つかったという。

「大企業で新規事業を立ち上げる際には、研究者を探しているというケースが多い。それならば、クラウドファンディングを通じて研究者を支援していく中で、そうした人を見つける場をacademistで用意できるのではないかと考えた」(柴藤氏)

アカデミストでは、Beyond Next Venturesに続き、今後他社にも企業マッチング型クラウドファンディングに参加してもらい、研究資金の支援を得たい考えだ。

「ノーベル賞を受賞するような研究は、成果が出るまでに20年、30年かかる。だが大隅良典氏のようなノーベル賞を受賞した研究者が若い頃やっていたような基礎研究が、今はできなくなっている。今、手がけようとしても『それが何の役に立つのか』という扱いを受けているような研究を、もっとacademistでピックアップしたい」(柴藤氏)

アカデミストとBeyond Next Venturesでは、今日の第1弾のプロジェクト開始と同時に、第2弾のマッチングファンドで新たな研究者募集をスタートさせた。第2弾の研究プロジェクト募集は2019年7月26日まで行われる。

「第1弾では『情熱』が審査のポイントだったが、第2弾では『異端』がテーマ」と柴藤氏。「最近話題の量子コンピュータも、最初は異端と思われていた研究から始まっている。なかなか認めてもらえないけれど、必ず世の中のためになるはず、という研究をジャンルを問わず、広く募集する」と研究者支援への思いを語った。

READYFORが4.2億円を調達、新たな資金流通インフラ確立目指す——8年でプロジェクト数は1万件を突破

写真右からREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏、Salesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏

クラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFORは3月29日、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Venturesを引受先とした第三者割当増資と、みずほ銀行を含む金融機関からの融資(当座貸越契約の極度額を含む)を合わせて約4.2億円を調達したことを明らかにした。

今回は2018年10月に実施したシリーズAラウンドの追加調達という位置付け。10月時点ではグロービス・キャピタル・パートナーズなどから約5.3億円を調達していた。

またREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏が「シリーズAは次の事業を作ることに向けて、経営力をあげるのが大きな目的のひとつ」と話すように、前回に続き同社に強力な助っ人が加わった。

具体的にはアドバイザーにSalesforce Ventures日本代表の浅田慎二氏、技術アドバイザーにディー・エヌ・エー執行役員の小林篤氏、ソーシャルプロデューサーにGOの砥川直大氏が就任している。

READYFORでは「社会を持続可能にする新たな資金流通メカニズムの確立」に向けて経営体制を整えつつ、クラウドファンディング事業のシステム強化やSaaS事業の立ち上げを進めていく計画だ。

お金が流れにくい領域に、資金が行き渡る仕組みを作る

Readyforは「CAMPFIRE」などと共に、日本のクラウドファンディング市場を黎明期から支えてきたサービスと言えるだろう。ローンチは2011年の3月29日。今日でちょうど8周年を迎えたことになる。

これまでのReadyforの変遷については、10月の記事で詳しく紹介したのでそちらを参照頂ければと思うが、マーケットの拡大と共に同サービスもまた、様々なアップデートを行ってきた。

特に近年、資金調達の方法が多様化し国内でもプレイヤーが増加する中で、Readyforでは「社会的な意義はあるが、既存の金融サービスではなかなかお金が流れにくい領域」に注力。具体的には地域や医療、大学、裁判などの分野にクラウドファンディングを通じてお金を流通させる仕組みを作ってきた。

たとえば地域との取り組みについては、2016年に自治体向けの「Readyfor ふるさと納税」をローンチ。返礼品合戦が問題視されていた旧来のふるさと納税に、新しい仕組みを持ち込んだ。直近ではこの仕組みを活用して広島県呉市と起業家支援プロジェクトにも取り組んでいる。

医療領域では前回も紹介した国立がん研究センターがん研有明病院など、医療施設がクラウドファンディングを活用して資金を集める事例が増加。大学関連では2017年1月に立ち上げた「Readyfor College」を通じて、複数の大学と包括提携を結んだ。

これらは今まで補助金や助成金といった形で国がサポートしてきた領域。そこを補完するような形で、Readyforが使われることもここ1〜2年で増えてきているのだという。先日紹介した名古屋大学医学部附属病院のプロジェクトや、すでに1000万円以上の資金が集まっているエボラ出血熱の新薬開発に向けたプロジェクトはまさにその一例だ。

今後もパブリックセクターの支援強化へ

サービスローンチから8年間でReadyfor上に掲載されたプロジェクトは1万件を突破。57万人から80億円以上の資金が集まった。提携パートナー数も新聞社や金融機関、自治体など約250機関に及ぶ。

READYFORが8周年記念に公開している特設ページに詳しい記載があるが、ジャンル別では病院や医療施設への寄付が累計で約1億円、大学や研究が約1.5億円、ガバメントクラウドファンディングが約1億円、裁判や社会的活動の費用が約1500万円ほど集まっている。

まだまだ全体に占める割合は大きくないものの、こういった領域にお金を流通させる仕組みとしてクラウドファンディングが機能し始めているとは言えそうだ。米良氏も「(ここ数年の間に)パブリックセクターにおいてもお金が必要になった際に、1つの選択肢として検討されるようになったのは大きな変化」だという。

「(補助金などでは)カバーできない部分を補うということに加え、補助金の対象にはならないような“ちょっとチャレンジングな取り組み”のために資金を集めたいという新たな需要が生まれている。クラウドファンディングが社会に広がってきた中で『数百万円でもあれば何かしら新しいことが始められる』というプロジェクトに対して、以前よりもお金が集まりやすくなってきている」(米良氏)

READYFORとしては、今後もパブリックセクターの支援を強めていく方針。その一環として3月には裁判費用やアドボカシー、社会実験、政治活動などを目的としたプロジェクトを応援する「Readyfor VOICE」をスタートした。

過去にもこういった形でクラウドファンディングが利用されるケースはあったが、たとえば裁判費用を調達する場合、弁護士法などに照らした法的整理が必要となることもある。Readyfor VOICEではそのような専門的な知識が求められる領域を、弁護士資格を持つ法務担当者らがしっかりとサポートするのが特徴。すでに1件目のプロジェクトも始まっている。

「自分たちの特徴は『これまでお金が流れにくかった領域』に対して、民間の人たちの応援金を通じてお金が流れる世界を作っていること。これからも医療や大学の研究費、裁判費用などこれまでは国が支援していた公的な分野を中心に、必要な資金が行き渡る仕組みを開発していきたい」(米良氏)

CAMPFIREがJR東と共同で地域商品開発を支援、日本酒やいちごチョコなど

CAMPFIREは3月13日、地域商品開発を目的としたプロジェクト5件を同社のプラットフォーム上に公開、支援をスタートした。

この支援は、2018年11月に東日本旅客鉄道(以下JR東日本)とJR東日本スタートアップが主催する「JR東日本スタートアッププログラム2018」にCAMPFIREが採択され、共同で地域振興を図る「地域にチカラを!プロジェクト」の一環として行われるもの。

2社共同プロジェクトでは、「地域商品開発」「無人駅の活用」の2つのテーマで新規事業案を募集し、CAMPFIREはクラウドファンディングのプロジェクト立ち上げをサポートし、JR東日本はPR・販路をサポートする。

2018年12月から約1カ月間、事業案を公募したところ、50件を超える応募があったという。その中から2社が選んだ地域商品開発部門の5件のプロジェクトを対象に、先行してクラウドファンディングが始まった。

今回選出されたプロジェクトは以下の通り。いずれも地域の食文化や素材を反映したユニーク(でおいしそう)な商品だ。

1)こだわり農園の果汁はじける 青森県産”完熟”りんごジュレを全国へ発信したい!

りんごの名産地、青森県で採れた完熟ストレート果汁を原料比70%使用した夢のりんごジュレ。人工キャビアの製造ノウハウを生かし、口当たりが抜群なジュレはまさに「飲む果実」です。

2)絶景が一望できる海の街・銚子 体にやさしいお煎餅「素米ruコーン」で笑顔を増やそう!
“醤油の街”としても知られる千葉県・銚子で、ぬれ煎餅やおかきを製造販売する創業69年の米菓専門店が、お客様の声に耳を傾けて開発したグルテン・アレルゲン・添加物フリーのとうもろこしパウダーを使った、体にやさしい煎餅「素米ruコーン」です。
3)岩手県宮古湾産「牡蠣の佃煮」を日本全国で、そして海外でも売れる商品にしたい!
岩手県宮古湾産の、厳選した大粒の牡蠣だけを100%使い、シンプルな味つけでコトコト炊きあげた佃煮。牡蠣本来の旨味が味わえる、この佃煮はお酒の肴としてはもちろんのこと、研いだお米に混ぜれば炊き込みご飯としてもおいしく召し上がれます。
4)【北海道産夏いちごのしみチョコ】北海道の新しい定番のおみやげを作る!!
北海道産夏いちごをフリーズドライにし、ホワイトチョコレートを染みこませた「しみチョコ」。特許を取得した製造機を使用することで、夏いちごは収縮しないまま、色彩・香り・風味を損なわずにサクサクとした新鮮な食感が楽しめます。
5)180ml→90mlへ。これで日本酒がもっと楽しめる、日本酒ハーフカップ。
酒造数全国一を誇る“日本酒王国・新潟”にある、越後のお酒ミュージアム「ぽんしゅ館」からお届けする飲みきりサイズのハーフカップの日本酒。「越後魚沼のドラマを食で語る」をコンセプトに、生産者の思いとともにお客様へお届けします。

目標金額を達成したプロジェクトには、JR東日本からのサポートのもと、デザイナーが商品のパッケージデザインを手がけ、リブランディングが行われる。また、対象商品はJR東日本の地産品ショップや駅構内での販売も予定されている。ファンディング募集期間は4月29日まで。

「Readyfor」で「小児医療」プロジェクトのクラウドファンディングが始動

READYFORは、同社が運営しているクラウドファンディングサービス「Readyfor」で、名古屋大学医学部附属病院が立ち上げたクラウドファンディングプロジェクトの支援者募集を開始した。プロジェクト名は「小さな身体で闘う命。新生児・小児医療、最前線の現場に光を」。

名古屋大学医学部附属病院は、2013年に国が国内15拠点を指定した「小児がん拠点病院」の1つ。小児科や小児外科をはじめとする35の診療科と、総合周産期母子医療センターや小児がん治療センターなど28の診療施設が連携して治療にあたっている。しかし、国からの補助金や公的研究費用の削減で資金不足が問題なっているそうだ。

Readyforで過去に7つの医療機関のプロジェクトで総額1000万円の支援を取り付けた実績があるほか、名古屋大学とは2018年3月から業務提携をしていることから、今回のプロジェクトの実施に至った。

実行者は、名古屋大学医学部附属病院で病院長を務める石黒直樹氏、目標金額は2500万円、支援募集期間は5月31日23時までとなっている。支援者から募った資金は、新生児や小児用の搬送用ドクターカー購入の費用、小児用医療器具の購入の費用、CT・MRI室の子ども向け装飾の費用にあてられる。

READYFORと広島県呉市が「Readyfor ふるさと納税」にて起業家支援プロジェクトを開始

READYFORは2月4日、自治体向けクラウドファンディング「Readyfor ふるさと納税」にて、広島県呉市の3件のプロジェクトを開始することを発表した。今回のプロジェクトはすべて「ふるさと起業家支援プロジェクト」となる。これは2018年4月1日に総務省が立ち上げたプロジェクトで、自治体が地域の起業家を支援するとともに、地域外から資金を調達することによって、それぞれの地域の産業を持続的に振興させ、経済循環を促すことを目的とするもの。

広島県では「さとやまよ、甦れ!広島に眠る廃校をみんなの居場所に再生しよう」というプロジェクトが3800万円以上の資金を集めるなど、これまで97件のプロジェクトがクラウドファンディングを活用している。READYFORは今回のプロジェクト開始を通じて、広島県での「想いの乗ったお金の流れを増やす」取り組みをさらに進めて行くという。

クラウドファンディングで支援できるプロジェクトの概要は以下のとおり。3件ともAll-in/寄附型の投資となる。

1.広島県呉市で、竹チップを活用した新たな事業を生み出したい!
実行者:中原佑介(TEGO代表)
目標金額:300万円
公開期間:2019年3月22日(金)23時まで
資金使途:竹粉砕機購入費用
概要:放置竹林や牡蠣筏の竹を使って竹チップを作り、レモン農家の方々に除草剤の代替として竹チップを活用いただくことで、広島県の2大産業である「牡蠣」「レモン」産業を繋げる役割となる

2.地元の呉にUターン。高齢者・障がい者も住み良い街に!
実行者:長谷信行(えん代表)
目標金額:100万円
公開期間:2019年3月22日(金)23時まで
資金使途:事務所改装費
概要:介護タクシー事業に加えて新たに訪問介護事業を開始するために事務所を改装し、スタッフも増やすことで呉市の福祉事業に貢献する

3.呉を創業で溢れる街に!賑わいをつくるチャレンジ応援拠点を!
実行者:下野隆司(NPO法人SYL理事長)
目標金額:300万円
公開期間:2019年2月6日(水)〜3月22日(金)23時
資金使途:空調機器・厨房機器購入費、大工・電気工事費
概要:呉市に誰もが気軽に短期間でも使えるイベントスペース兼創業者向けのレンタルスペースをつくる

トランプの国境の壁を支援する民間人によるクラウドファンディングは何が問題なのか?

フロリダの人間は、大蛇ワニレストランの珍事件など、奇妙な事件に遭遇することが多いようだ。 それは、2013年、Twitterのパロディーアカウント「フロリダマン」が登場してからのことで、たちまち大人気になった。

だが、5日前にクラウドファンディング・プラットフォームGoFundMeでフロリダマンが開始した、ドナルド・トランプが推進するメキシコ国境の壁の建設資金を集めるためのキャンペーンは、どうもジョークにしか思えない。10億ドル(約111億円)という強気な目標を立てて先週の日曜日にローンチしてばかりだが、すでに20万人以上の個人から1300万ドル(約14億5000万円)もの資金を調達した。GoFundMeのキャンペーンには締切がない。

その増え続ける巨額の現金の山がどこへ行くのか、そこに疑問がわく。このキャンペーンを立ち上げたBrain Kolfageという男性は、以前、10月にFacebookによって削除されたRight Wing News(右翼ニュース)というFacebookページと共に、陰謀説を唱えるウェブサイトを運営していた。

イラクに派遣されて両足と片腕を失ったアメリカ退役軍人のKolfageは、GoFundMeのページで自身の行動の公共性について長々と話している。また彼は、Fox Newsに「何度も登場している。(だから)自分が信頼できる実在の人物であることがわかる」だろうと言っている。その一方で彼は、寄付しようと思っている人の気持ちを「邪魔したくない」と昨日(現地時間21日)のNBC Newsで語り、これまでのメディアでの問題発言については言及しなかった。

それより心配なのが、寄付の100パーセントが「トランプ・ウォール」に使われるとKolfageはGoFundMeのページに書いているが、今の時点では、その資金を政府に提供できる制度がない。それを実現するためには、そのための法案が議会を通過しなければならない。Kolfageはこう言っている。「この資金を、適切な場所にどのように届けるか? 私たちはトランプ政権と連絡をとり、調達が完了した時点で資金を送る先について確認をしています。この情報が確定し次第、お知らせします。すでに私たちは、非常に高度なレベルで複数のコンタクトをとり、支援を得ています」

このページでは、また、Carlyle Groupの共同創設者David Rubensteinが750万ドル(約8億3400万円)をワシントン記念塔のてっぺん近くにできたひび割れの修繕費用として寄付した2012年の話を例にあげて、アメリカ政府が過去に個人の投資家から巨額の寄付を受け取っている事実を伝えている。しかし、彼のGoFundMeキャンペーンでは、米国議会がその活動の背後にあり、750万ドルの寄付が、それに同額を上乗せする条件(マッチングギフト)で修繕に使用されたのかどうかは明らかにしていない。

たしかに、National Endowment for the Humanities(全米人文科学基金)などのいくつもの政府機関が、マッチングギフト制度のもとで個人の寄付を受け取っている。しかしこの考え方は、寄付金で政府主導の活動に大きな力を与えるものであり、自分たちには決定権のない寄付を募ることになる。バージニア州選出の共和党下院議員で下院司法委員会の議長を務めるBob Goodlatteは、昨日、New York Postにこう述べている。「市民が資金を集めて『政府がこういう目的で私の金を使う』と宣言することなど、とうてい許されない」

アメリカ人有権者のおよそ3分の1が共和党支持者で、その3分の2がトランプが推し進める国境の壁の建設を支持していると考えると、Kolfageの10億ドルの目標が突拍子もない額だとは言い切れない。キャンペーンにはすでに、5万ドル(約560万円)を寄付した人が1人現れている。さらに勢いがつけば、他の人たちも、これが財政的政治的な力を動かす単純で直接的な方法だと思うようになる。

このまま勢いが高まれば、ある時点でこのキャンペーンには、Kolfageに寄付することが賢い方法なのか否かという疑問とは別に、いろいろな問題が浮かび上がってくる。なかでも、紐付きの寄付を政府が受け取ることは法律に反するわけだが、アメリカの一般市民がGoFundMeなどの資金調達プラットフォームを通して団結すれば、ロビイスト・グループのような大きな力を振るうようになるかも知れないという心配がある。KolfageのGoFundMeキャンペーンにどれだけ金が集まっても、政府は壁を作る責任を負うわけではないが、共和党議員たちはすでに、壁の建設のための寄付を財務省が国民から受け取れるようにする法案の準備を進めている。来月、民主党が下院の過半数を占めるようになれば、この法案が通る見通しは消えるが、将来の政権に筋道を付ける可能性は残る。

では、Kolfageが集めた数百万ドルの資金はどこへ行くのか。それを見るのは興味深い。昨日のNew York Postの記事にも書かれているが、GoFundMeでは、「明記された用途以外に資金を使ってはいけない」という規定がある。そのため、政府がKolfageと協力する道が絶たれれば、Kolfageは寄付者に寄付金を返金しなければならなくなる。または、少くともGoFundMeは(我々の質問への返答はないが)、そうする責任を負うことになるだろう。

GoFundMeは、以前にも寄付者に返金をしたことがある。

つい先月のことだ。ニュージャージーの夫婦と1人のホームレスの男性が、GoFundMeを使って作り話で40万ドル(約4450万円)以上を集めた罪で告発された。彼らはその金を、車や旅行や高級ハンドバッグやカジノなどに使っていた。その夫婦と男性は、不正行為による窃盗を犯したことから、詐欺と共謀による第二級窃盗罪に問われている。GoFundMeは、キャンペーンに寄付をした1万4000人の寄付者に全額を返金すると話している。

おかしなことに、GoFundMeは、自社がどれだけの資金を調達しているかは公表していない。同社に投資をしているのは、Iconiq、Stripes Group、Accel、TCV、Greylock、Meritech Capitalなどだ。GoFundMeが最初に外部からのラウンド投資を受けたのは4年前。同社は2010年に設立されている。

上の写真:コロラド州キャッスルロックにある小規模ショッピングセンター。ここでKolfageのGoFundMeキャンペーンへの寄付が呼びかけられていた。

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(翻訳:金井哲夫)

利回り平均値5%の貸付型クラウドファンディング運営、クラウドクレジットが7.5億調達

貸付型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)を運営するクラウドクレジットは11月30日、マネックスベンチャーズ、YJキャピタル、ソニーフィナンシャルベンチャーズ、グローバル・ブレイン、SBIインベストメントなどを引受先とする第三者割当増資により7億5000万円を調達した。同社は2018年9月にも資金調達を発表しており、それと合わせた調達金額は8億8000万円となる。

クラウドクレジットは、日本の一般ユーザーから資金を募り、その資金を海外の事業者に貸し付ける貸付型クラウドファンディングを運営するスタートアップだ。クラウドクレジットは「シンガポール広告代理店ベンチャー企業支援ファンド」、「メキシコ女性起業家支援ファンド」などのミニファンドを企画し、そこに資金を拠出する投資家を日本の個人ユーザーから募集。投資家は1口1万円からファンドに応募でき、事業者への貸付けによって得られる金利分をリターンとして受け取る。

クラウドクレジットのファンドはロシアルーブル、メキシコペソ、ブラジルレアルなどの新興国通貨で運用されることが多く(為替ヘッジ付きのコースもある)、ユーザーは比較的高い為替リスクを負う分、高い利回りを見込むことができる。クラウドクレジットが発表している統計によれば、2014年6月から2018年8月までに運用したファンドの利回りの平均値は5%程度だったという。

クラウドクレジットはこれまでに3万1000人のユーザーを獲得し、累計出資金額は148億円以上、運用残高は106億円にのぼるという。同社は今回調達した資金を利用して、マーケティング施策、システムセキュリティ、コーポレートガバナンスの強化を図り、新機能の開発にも取り組む。また、今回のラウンドに参加したマネックスグループを始めとする投資家との協業の可能性についても検討する。

甲虫の幼虫を高濃度タンパク源として収穫する体験で科学を学習するHive Explorer

Livin Farmsのオフィスの中は、体の向きを変えるのも難しい。でも香港の都心ではこれが普通で、スペースは常日変らず貴重だ。そこは、深圳のハードウェアアクセラレーターHAXが支えるこのスタートアップの、ささやかな拠点だ。デスクをいくつか置くと、もう残りのスペースはない。このスタートアップの最新のプロダクトHiveがドアの横にある。それは一見何の特徴もないトレイが、いくつか重なっているだけのものだ。

でも、ぼくがここに来たのはHive Explorerを見るためだ。その小さなトレイは、部屋の中央に置かれている。上部は開(あ)いている。ドアを開けて入ったときから、その小さな明るい色のプラスチック製品が目を引く。その中身が、奇妙なランダムなリズムでぴくぴく動いている。近づいてよく見ると、茶色く見えたのは実は白で、黒いのは生きている。ミールワームたちが小さなベッドの中で互いに上になったり下になったりしながらうごめいている。チームが置いたカラスムギの残りを、がつがつ食べている。

それらの上には、ネオンイエローのトレイの中に完全に成長した甲虫たちと、2ダースほどの蛹(さなぎ)がいる。成虫はたえず動きまわり、互いにぶつかり合い、ときにはライフサイクルの継続のためにそれ以上のこともする。蛹は横たわり、生きていないように見えるが、ときどきピクッと動いて、中に生命があることを思い出させる。

ExplorerでLivin Farmsはその地平を、STEM教育の世界へ広げようとしている。前のプロダクトはスケーラブルな持続可能性にフォーカスしていたが、この新しいKickstarterプロジェクトは若者や子どもに狙いを定めている。そしてバケツ一杯の甲虫には、学ぶことが山ほどある。たとえば、死だ。ファウンダーのKatharina Ungerは近くの瓶をつかみ、蓋をねじった。

瓶には、乾燥したミルワームがいっぱい詰まっている。彼女はその一つをつまみ、自分の口に放り込んだ。期待を込めて、ぼくの手にも渡した。ぼくも彼女の真似をした。カリッとしている。味がないことはないが、はっきりしない。たぶん、ちょっと塩気がある。でも最大の感触は、気味の悪さだ。下を見ると、今ぼくが食べているものの兄弟である小さな幼虫が、数インチ先で餌を食べ続けている。

The Mountain Goatsの歌詞を引用するなら、それは今や未来のタンパク源だ。Livin Farmsは、幼虫の無味無臭の粉末も作っている。そしてその、持続可能な高濃度タンパク質食品の、ある種の概念実証として、意外にもおいしいグラノーラを作っている。この、世界でもっとも人口密度の高い場所で、同社のミッションは家庭にも浸透している。


[彼女は少しおみやげにくれた。おなかをすかせている誰かのために。]

Explorerには、若者たちに未来の持続可能な農業を見せる意味もある。ただし食品メーカーは、昆虫を食べることに伴う消費者の嫌悪感を打破しなければならない。Explorerのユーザーである子どもたちは、過密を防ぐために幼虫の収穫を奨励される。幼虫は、唐揚げではなく乾煎り(からいり)して食べる。ボックスは、比較的臭気の少ない堆肥作り容器になる。虫たちへの給餌は、人間の食べ残しを投げ込むだけだ。小さな虫たちは、それを噛み砕いていく。下のトレイに、彼らの粉状の廃棄物がたまる。

虫たちの暖房のためのヒーターや、湿度を調節するためのファンもある。それらにより、虫たちが仕事をするための最適の環境が作られる。Livin FarmsはシステムのコントロールをSwiftのコードで公開して、プログラミングという要素も加えようとしている。

ExplorerがKickstarterに出たのは今週だ。初期の出資者はそのボックスを、113ドルで入手できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

カナダ発:カーボンフレームで軽量な折りたたみ式電動自転車「CARBO」日本向けも

現在IndieGoGoでクラウドファンディングを実施している電動自転車「CARBO」。開発したカナダのモントリオールに拠点を置くCARBO Electric BikeはCARBOを「世界一軽量な折りたたみ式電動自転車」だと説明しているので、スペックが気になった。

CARBOはフレームにカーボンを採用しており、重さは一番軽いモデルで12.9kg。一目見ただけだと電動自転車っぽくはないかもしれないが、シートポストにはバッテリーが内蔵されている。このバッテリーからスマホなどを充電することも可能だ。

最高時速はU.S.向けは32km、ヨーロッパ向けは25km。距離はペダルアシストで60km、電動のみで45kmまで走行可能。モデルは三種類あって、「model C」はチェーン、「model S」は変速機付き、「model X」はベルトドライブ。

ハンドルに搭載されているLEDスクリーンではスピードやバッテリーの残量などを確認でき、Bluetooth接続でスマホのSMSなども見られる。

CARBO Electric Bike共同創業者のLyne Berro氏いわく、クラウドファンディングの支援者の多くは日本人。日本向けに最大時速24kmでモーターのみでは走行できない仕様のものもある。

同プロジェクトはすでに目標金額の5万ドルに到達しており、2019年4月に発送される予定だ。今後は日本でのビジネス展開も期待できるのではないか。

自律飛行するカメラ付きドローンHover 2がKickstarterで快調

最初のHoverから二年後に、Zero Zero Roboticsがその続編を持って帰ってきた。2016年にはシリーズAで2500万ドルを調達したが、今回はKickstarterのクラウドファンディングで、その自律飛行ドローンの最新バージョンは10万ドルを目指している〔日本時間11/15 17時現在ですでに37万ドル近く集まっている〕。

そのHover 2の発売は2019年4月発売を目指しており、障害物回避や視覚追跡機能、および内部機構の一部がアップデートされている。プロセッサーは、新しいSnapdragonが載っている。

二軸ジンバルにより画像の安定を図り、スムーズな撮影を目指している。カメラは4Kビデオと12mpの写真を撮れる。いろんな撮影モデルをオンボードで用意し、映画にヒントを得たフィルターや音楽もある。電池は一回の充電で23分の撮影が可能だ。

もちろん、Hoverの第一の競合機種DJIのMavic系列は、2016年のProのローンチ以来、さまざまなカテゴリーで大きくリードしている。つまり、競走は相当厳しい。Parrotですら、ビデオ撮影に特化したAmafi系列を本気で売ろうとしている。

初期の出資者の手に399ドルで渡るHover 2は、ハンドヘルドのDJI Sparkとほぼ同じ価格だ。価格には、小さなハンドヘルド(手持ち)のリモコンが含まれている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

1口1万円から不動産投資ができるクラウドファンディング 「FANTAS funding」リリース、空き家への投資も促進

不動産×テクノロジーを軸に複数のサービスを展開するFANTAS technology。同社は10月29日、少額から不動産投資を始められる不動産投資型のクラウドファンディングサービス「FANTAS funding」をリリースした。

FANTAS fundingは1口1万円からオンライン上で不動産に投資できるサービス。ユーザーは賃貸または売却からの収益に基づいて配当を受けられる。

FANTAS technologyがプロジェクト全体の20%分を出資することで、価格が下落した場合にも20%までであればユーザーの元本が守られる仕組みを構築。クラウドファンディングのスタイルを採用することで少額から利用でき、契約にかかる書面の手続きも不要にした。

特徴は空き家となっていた戸建ての再生プロジェクトを主な対象にしていること。現在空き家は増え続けている状況で、2033年には3戸に1戸が空き家になるいう予想もあるほど。同社では以前より空き家を再生し投資用不動産として活用する事業に取り組んできたこともあり、蓄積してきたノウハウが活かせる分野だ。

従来はハイリスク・ハイリターンで投資初心者には手が出しづらい商品だったけれど、再生した空き家をファンド化することで、リスクを抑えながら空き家の再生プロジェクトへ投資できる環境を構築した。

また空き家だけでなく、新築物件の開発や同社が運営するワンルーム価格査定サイト「FANTAS check」にて買い取った中古ワンルームマンションのファンド化なども検討しているという。

各ファンドの想定運用期間は4〜7ヶ月で想定の利回りは8~10%。手数料は無料だ。本日よりオンラインでの会員登録受付をスタートし、11月12日より募集を開始する。

FANTAS technologyでは今後、物件ごとにファンドを立ち上げ、複数案件のファンド受け付けを予定。年間120ファンド以上の組成を目指す。

オープンオフィスの流行はパナソニックに人間のための遮眼帯を開発させた

私たちが、未来を予測する小説が警告してきたディストピアの悪夢の中に住んでいることを、素直に認めるのはいつだろうか。おそらくテリー・ギリアムの映画からそのまま抜け出してきたようにみえる、この馬の遮眼帯を見た時に違いない。

これをデザインしたのは、パナソニックのデザインスタジオであるFuture Life Factoryである。しかしオープンスペースオフィスは基本的に最悪な代物だ。 スタートアップから始まったキュービクルの暴虐からの世界の解放運動は、どうやら私たちの顔の周りにキュービクルを作り出そうとしている。しかも自分たちの正体が警官にわかりにくくなるというボーナス付きだ(キュービクルというのは衝立で囲まれた個人作業スペースのこと)。

このWear Space(Office Faceとはまだ呼ばれていない)は、着用者の周辺視界を遮るとともに、真に仕事に集中させるためにノイズキャンセリングヘッドホンも組み込まれている。

「オープンオフィスとデジタルノマドが増えているため、作業者にとって集中できる個人スペースの確保がますます重要になっています」と同社はDezeenに語った。「Wear Spaceは、この種の個人空間を即座に生み出します。服を着るのと同じくらい簡単ですよ」。

今年の初めのSXSWで、プロトタイプとしてデビューしたこのデバイスはクラウドファンディングキャンペーンの対象になった。アーリーバードなら260ドルであるが、私たちは遠慮しておく。

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(翻訳:sako)

サービス開始から7年、READYFORが初の外部調達で目指すのは“資金流通メカニズムのアップデート”

READYFORの経営陣および投資家陣。前列中央が代表取締役CEOの米良はるか氏

「今は変化するタイミングだと思っている。小規模な団体から国の機関まで、さまざまな資金調達のニーズが生まれていて、毎月何千件という相談が来るようになった。そこに対してどのようにお金を流していくのか。新たなチャレンジをするためにも資金調達をした」——そう話すのはクラウドファンディングサービス「Readyfor」を展開するREADYFOR代表取締役CEOの米良はるか氏だ。

これまでもCAMPFIREMakuakeといった日本発のクラウドファンディングサービスを紹介してきたけれど、Readyforのローンチはもっとも早い2011年の3月。今年で7周年を迎えた同サービスは、日本のクラウドファンディング領域におけるパイオニア的な存在とも言えるだろう。

そんなReadyforを運営するREADYFORは10月17日、同社にとって初となる外部からの資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はグロービス・キャピタル・パートナーズ、Mistletoe、石川康晴氏(ストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEO)、小泉文明氏(メルカリ取締役社長兼COO)。調達額は約5.3億円だ。

また今回の資金調達に伴い今年7月に参画した弁護士の草原敦夫氏が執行役員CLOに、グロービス・キャピタル・パートナーズの今野穣氏が社外取締役に就任。石川氏、小泉氏、Mistletoeの孫泰蔵氏、東京大学の松尾豊氏がアドバイザーとして、電通の菅野薫氏がクリエーティブアドバイザーとして加わったことも明かしている。

READYFORでは調達した資金も活用しながら、既存事業の強化に向けた人材採用やシステム強化を進める方針。また同社が取り組んできた「既存の金融サービスではお金が流れにくかった分野へ、お金を流通させるための仕組みづくり」をさらに加速させるべく、新規事業にも着手するという。

ここ数年で変わってきた日本のクラウドファンディング市場

Readyforはもともと東大発ベンチャーであるオーマの1事業として2011年3月にスタートしたサービスだ。

約3年後の2014年7月に会社化する形でREADYFORを創業。同年11月にオーマから事業を譲受し、それ以来READYFORが母体となって運営してきた。現在はサービスローンチから7年半が経過、会社としても5期目を迎えている。

初期のReadyfor

ローンチ当初は日本に同様のサービスがなかっただけでなく、そもそもクラウドファンディングという概念がほとんど知られていなかったこともあり「サービスのマーケティングというよりも、クラウドファンディング自体の世界観や認知を広げる感覚だった」(米良氏)という。

それから代表的なサービスが着々と実績を積み上げるとともに、国内で同種のサービスが次々と立ち上がったことも重なって、クラウドファンディングへの注目度も上昇。特に直近1〜2年ほどで状況が大きく変わってきたようだ。

「自社のデータではクラウドファングの認知率が60%くらいに上がってきている。実際、創業期の事業者や社会的な事業に取り組む団体など、“お金が必要だけど、金融機関から借り入れるのが簡単ではない人たち”にとっては、クラウドファンディングが1つの選択肢として検討されるようになってきた」(米良氏)

この仕組みが徐々に浸透してきたことは、いろいろなメディアで「クラウドファンディング」という言葉が詳しい説明書きもなく、さらっと使われるようになってきたことからも感じられるだろう。

また認知度の拡大と合わせて、クラウドファンディングを含むテクノロジーを使った資金調達手段の幅も広がった。たとえば国内のスタートアップが投資型クラウドファンディングを使って数千万規模の調達をするニュースも見かけるようになったし、賛否両論あるICOのような仕組みも生まれている。

そのような状況の中で、主要なクラウドファンディング事業者はそれぞれの強みや特色が際立つようになってきた。READYFORにとってのそれは、冒頭でも触れた「既存の金融サービスではお金が流れにくい領域」にお金を流すことだ。

「担保がなくてお金がなかなか借りられない創業期の事業者、ビジネスモデル的には難しいけれど社会にとって必要な事業に取り組む団体、あるいは公的な資金だけではサポートが十分ではない公共のニーズ。そこに対して民間のお金が直接流れるテクノロジーが生まれることで、しっかりお金が行き届いていく。Readyforではそういった世界観を作っていきたい」(米良氏)

ローンチから数年間がマーケット自体の認知を広げる期間だったとすれば、ここ2年ほどは今後作っていきたい世界の下地を作るための期間だったと言えるのかもしれない。

READYFORはNPOや医療機関、大学、自治体や地域の事業者など約200件のパートナーと連携し、お金を流通させる仕組みを広げてきた。

9000件超えの案件を掲載、約50万人から70億円以上が集まる

たとえば2016年12月には自治体向けの「Readyfor ふるさと納税」をローンチ。県や新聞社、地銀とタッグを組んだ「山形サポート」のような特定の地域にフォーカスした事業も始めた。

2017年1月に立ち上げた「Readyfor Colledge」は大学や研究室がプロジェクト実行者となる大学向けのサービスだ。筑波大学准教授の落合陽一氏のプロジェクトが話題になったが、同大学を含む国立6大学との包括提携を実施している。

これらに加えて、米良氏によると最近では国立がん研究センター国立成育医療研究センターのような国の研究機関からの問い合わせが増えているそう。イノベーションの種となる研究や、長期的に人々の生活を支えるような機関をバックアップするシステムとして、クラウドファンディングが使われるようになってきたというのは面白い流れだ。

このように少しずつ対象を広げていった結果、Readyforには7年で9000件を超えるプロジェクトが掲載。約50万人から70億円以上の資金が集まるプラットフォームへと成長した。

実行者と支援者双方に良いユーザー体験を提供するため、初期から重視していたという達成率は約75%ほど。全てのプロジェクトにキュレーターがついて伴走する仕組みを整えることで、規模が拡大しても高い達成率をキープしてきた。

それが良いサイクルに繋がったのか、支援金の約40%を既存支援者によるリピート支援が占める。個人的にもすごく驚いたのだけど、もっとも多い人は1人で800回以上もプロジェクトを支援しているそう。

支援回数が500回を超えるようなユーザーは他にも複数いるようで、一部の人にとってはクラウドファンディングサイトが日常的に訪れるコミュニティのような位置付けになってきているのかもしれない。

7月からは料金プランをリニューアルし、12%という手数料率の低さが特徴の「シンプルプラン」とキュレーターが伴走する「フルサポートプラン」の2タイプに分ける試みも実施した。

「これまで膨大なプロジェクトをサポートしてきた中で、どうやったら成功するかといったデータやノウハウが蓄積されてきた。その中には(ずっとキュレーターが伴走せずとも)サービスレベルでサポートできる部分もある。2つのプランを展開することで、より多くのチャレンジを支援していきたい」(米良氏)

これからREADYFORはどこへ向かうのか

1期目から4期目までは自己資金で経営を続けてきたREADYFOR。プロジェクトの数も規模も拡大してきているタイミングであえて資金調達を実施したのは、一層ギアを上げるためだ。

では具体的にはどこに力を入れていくのか。米良氏は「パートナーシッププログラムの強化を中心とした既存事業の強化と、これまで培ってきたリソースやナレッジを活用した法人向けの新規事業の2つが軸になる」という。

既存事業についてはシステム強化やプロモーション強化に加え、ローカルパートナーシップをさらに加速させる。

これまでもREADYFORは地域金融機関65行との提携を始め、自治体や新聞社といった地域を支えるプレイヤーとタッグを組んできた。この取り組みを進めることで、地域の活動に流れるお金の量を増加させるのが目標だ。

山形新聞社や山形銀行、山形県などと一緒に取り組む「山形サポート」

新規事業に関しては、現時点で2つの事業を見据えているそう。1つはプロジェクト実行者がより継続的に支援者を獲得できるSaaSの開発だ。こちらはまだ具体的な内容を明かせる段階ではないが、実行者と支援者が継続的な関係性を築けるような「ファンリレーションマネジメント」ツールを検討しているという。

そしてもう1つの新規事業としてSDGs(持続可能な開発のための2030アジェンダ)に関する事業も始める。READYFORではすでに社会性の高いプロジェクトを実施する団体と企業のCSR支援金をマッチングする「マッチングギフトプログラム」を整備。アサヒグループやJ-COMなどと連携を図ってきた。

今後社内で「ソーシャルインパクト事業部」を立ち上げ、企業とSDGs達成に寄与する活動を行う団体やビジネスとのマッチングなど、Readyforのデータを活用した事業に取り組む計画だ。

同社の言葉をそのまま借りると、READYFORのこれからのテーマは「社会を持続可能にする新たな資金流通メカニズム」を確立すること。既存の仕組みでは富が偏ってしまうがゆえに、本当に何かを実現したい人たちに対して十分なお金が流れていないので、その仕組みをアップデートしていこうというスタンスだ。

「今は自分たちのことを『本当に必要なところにお金が流れる仕組み』をいろいろな形で実装する会社と考えているので、クラウドファンディングというものを広義に捉えていきたい。お金を流すという役割を果たすべく、新しいやり方にもチャレンジしていく」(米良氏)

何千もの暗号通貨プロジェクトがすでに死んだ、そして詐欺も多い

失敗した暗号通貨プロジェクトの目録を熱心に作り続けているCoinopsyDeadCoinsによると、2018年に失敗したプロジェクトは現時点(6月)で1000を超える。それらのプロジェクトは、本物のabandonware(アバンダンウェア)から単なる詐欺にいたるまでさまざまで、その中には、二人の“自称兄弟”Jack/Jay Brigによる詐欺BRIGや、SECによる捜査で終わったTitaniumなどもある。

どんな分野でも新人は自分たち独自のルールを作って新機軸を志向するが、ブロックチェーンの世界でもまさにそれが起きている。しかし彼らが相手にしているのは、トークン(私的代用通貨)による資金調達という、大きな可能性の世界だから、発生する諸問題も大きい。スタートアップに失敗はつきものでも、これらのプロジェクトを洪水のように押し流す膨大なキャッシュの量が、大きな問題だ。スタートアップが、あまりにも多くの燃料をあまりにも短期間で入手すると、それによって起きる大火災は会社とファウンダーの両方を焼きつくし、そのあとに、投資家の救いになるものは何もない。

そんな大火災は至るところで発生し、今やグローバルな現象だ。2017年には、詐欺と死んだICOの調達総額は10億ドルに達し、その中には、いかがわしいスタートアップが297社もいる

破綻したICOを“修復する”と称する、ケープタウンのCoinJanitorのような怪しげな企業もいるが、そんな、明日になったら夜逃げして行方不明のような企業が多いことは、この業界にとって良い前兆ではない。

ICOで資金調達をしたスタートアップは現在、結果的/実質的に、マルチ商法(multi-level marketing, MLM)のような策略で事業を構築している。そうではなくて彼らは、KickstarterやIndiegogoにページを持つべきだ。これらのクラウドファンディングプラットホームは、信頼をアートにした。お金を出した支援者たちは一種のチームであり、それがプロジェクトとリスクとアイデアの未来を定義する。多くの資金がなくても、容易にビジネスを構築できる。残念なことに、合理的な思考よりもむしろ貪欲を教唆するために現在のICO市場が使っているロックアップ(監禁、封じ込め)と詐欺的な価格設定は、業界を支えるのではなく、傷つけている。

ではどうすべきか? 失ってもよい額だけを投資し、どんなトークンにも失敗がありえることを覚悟しよう。そして究極の望みは、万一失敗しなかったときの嬉しい意外性だ。それ以外では、あなたは失望の世界へ向かって踏み出すのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

「服作りをもっと自由に軽やかに」CAMPFIREとワールドが新たなファッションの仕組み作りへタッグ

写真左からCAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏、ワールド代表取締役 社長執行役員の上山健二氏

「イメージとしてはファッション業界版のインキュベーションのような仕組みに近い。もっと自由に、軽やかに、ファッションやブランド作りに挑戦できる環境を作りたい」――CAMPFIRE代表取締役社長の家入一真氏は、これから老舗アパレル企業と始める取り組みについて、そのように話す。

このアパレル企業とは、約60年に渡ってさまざまなファッションブランドを世の中に展開してきたワールドのこと。CAMPFIREは6月1日、ファッションの領域で新たなチャレンジをしたい個人やクリエイター、企業、自治体を支援するべく、ワールドと資本業務提携を締結したことを明らかにした。

双方のノウハウをクリエイターに還元、ブランド作りの支援を

CAMPFIREではこれまで資金集めの民主化をテーマに掲げ、クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」を軸に複数のプロダクトを運営してきた。特にクラウドファンディングと相性がいい分野については領域ごとに特化型のサービスを展開。たとえば社会貢献分野の「GoodMorning」や地域に関する「CAMPFIRE×LOCAL」がそうだ。

同じようにファッションに特化したプラットフォームとして2016年10月に「CLOSS(クロス)」をスタート。コンテスト型のFashion Forwardも実施し、選ばれたブランドにはPRや流通面なども含め、ブランドを育てていくために必要なサポートも行ってきた。

「(ファッションに限らず)それぞれのジャンルにおいて僕らにできることは何かを突き詰めていくと、すでに各業界で事業を展開されている大手企業と組むという選択肢もでてきた。ワールドの上山社長と話をしていく中で『一緒にできそうなことがいろいろありそうだよね』となり、ファッションの領域で共に仕組み作りをしていくことになった」(家入氏)

具体的な取り組みについては今後詰めていく部分も多いそうだが、軸となるのはクラウドファンディングを始めとするCAMPFIREの資金調達ノウハウと、ワールドの持つファッションのアイデアを形にしていくノウハウやアセット。これらを掛け合わせてクリエイターや企業に提供し、ファッション産業全体の活性化を目指していくという。

「ファッションは受注から製造、販売までのサイクルが長いビジネス。若手のデザイナーに話を聞くと入金までの期間がながいことがネックで、資金繰りでつまずくことも多い。その点クラウドファンディングは先にお金を集められる仕組みなので、クリエイターにとって助かる部分もある。ワールドがブランド立ち上げのノウハウ面で強みを持っている一方で、僕たちはレンディングなど他の手段も含めた資金調達の仕組みを使ってクリエイターを支えたい」(家入氏)

ファッションをもっと自由で軽やかに

家入氏によると、ワールドではパターンを作るノウハウや流通、PRに至る知見まで、自社の保有する資産をオープン化し、ファッションプラットフォームの構築を進めているそう。今後はこのような双方が持つナレッジに加えて、ワールドが青山に持つスペースの提供など、リアルな場も絡めた支援を進めていく方針。この点で冒頭でも触れたように、ITスタートアップのインキュベーションに近い側面もあるという。

「さまざまな業界において、産業構造や市場、経済状況が変化する中で、高度経済成長時に作られたモデルが成り立たなくなってきている。そこで1番大変な思いをしているのは、末端にいる個人のクリエイターやアーティスト達。(彼ら彼女らが)それでも声を上げたいと思った時に、どんな支援をできるのかということが、ずっと取り組んできたテーマでもある」(家入氏)

フレンドファンディングサービスの「polca」もこのような文脈で生まれたサービスであり、幻冬舎と取り組む新しい出版のモデル作りについても同様だ。

実はCAMPFIREでもすでに新しいファッションの形が生まれてきているそう。一例として家入氏があげるのが、隔月で新たなクラウドランディングプロジェクトを立ち上げ続けているブランド「ALL YOURS」。同ブランドでは小さなコミュニティの中で熱量を高め、その中で自分たちの思いやアイデアを発信し、実現している。

家入氏は「オンラインサロンなどのファンコミュニティとも共通するような、今っぽい感じの服の作り方」と表現するが、このようなモデルがこれからどんどん広がっていくのかもしれない。

「ITスタートアップのように、少人数で作りたいものをぱっと作って、ファンに直接届けるという形がもっと増えるとおもしろいと考えている。近年、起業のイメージがだいぶライトになって、それこそバンドを組むようにスタートアップをする人たちも増えてきた。ファッションやブランド作りも同じように、もっと自由で軽やかなものにしていきたい」(家入氏)