オンラインダイエットプログラムを展開するFiNC、数億円の資金調達を実施

左から元ミクシィ代表取締役の朝倉祐介氏、FiNC取締役副社長 CFOの乗松文夫氏氏、FiNC代表取締役CEOの溝口勇児氏、元オプト代表取締役CEOの海老根智仁氏

オンラインを中心にしたダイエットプログラム「FiNCオンラインダイエット家庭教師」を提供するFiNCが9月12日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グリーベンチャーズ、リンクアンドモチベーション、MIDベンチャーキャピタル、元ミクシィ代表取締役の朝倉祐介氏、元オプト代表取締役CEOの海老根智仁氏を割当先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。あわせてみずほ銀行などからの融資も実施している。調達額およびバリュエーションは非公開だが、数億円になるという。またこれにあわせて朝倉氏と海老根氏が同社の戦略顧問に就任する。

FiNCのサービスやビジネスモデルについては、以前に紹介したとおりだが、遺伝子検査や血液検査、アンケートに基づいて、管理栄養士によるダイエット指導が受けられるというもの。

ユーザーがサイト上に毎日の食事と体重を写真と共にアップロードすると、60日間のプログラム期間中、栄養士からの評価や指導が受けられる。もちろんスマートフォンでの利用が可能。このほか、東京・永田町と銀座にある同社のスポーツジムや、提携するジムの利用などが可能になる。また、遺伝子検査の結果に応じて独自に組み合わせたサプリメントも提供している。このサプリメントは、プログラム終了後も約50%のユーザーが継続購入しているそうだ。

前回の記事で僕もこのプログラムを利用させてもらっていると紹介したが、その後厳しい指導のおかげで7.5kgのダイエットに成功している(とりあえず終了して2週間ほどでのリバウンドも無いようだ)。

元みずほ銀行常務も参画

話を調達の内容に戻そう。今回の調達では、人材採用による体制強化、本社移転(すでに8月に実施済み)、プロモーションの実施を行うという。

人材採用に関しては、元みずほ銀行常務の乗松文夫氏が取締役副社長 CFOとして同社に参画したことが8月に発表されている。今回の資金調達に関しても、特に融資の面で尽力したという。金額こそ非公開だが融資額も小さくない金額だそうで、シリーズAでの億単位での調達において、あまり株式を希薄化することなく調達に成功しているという。

また、栄養士やトレーナーといった専門職のネットワーク構築を進める。前回の記事でも紹介したとおりだが、クラウドソーシングの仕組みを利用したり、提携スポーツジムを増やすなどして、1000人規模まで拡大する見込みだそうだ。

実は現在プログラム自体は「宣伝もしていないし大きな数字ではないが、満員御礼な状況」(FiNC取締役COOの岡野求氏)だそうで、専門職の人材不足がボトルネックになっているそう。今後は人材や会社の基盤を年内にも確立し、年明けに向けて、プロモーションを強化していくそうだ。「意識的に営業を抑えているが、法人も含めて正直売り込んでいける先はあると思っている。ここ数カ月は内部の業務フロー確立を進める」(乗松氏)

またFiNCでは、料理関係の新事業なども予定。そのほか、時期こそ明らかにされなかったが、海外進出も検討しているという。

ところでこのFiNC、プログラム自体は60日で終了するのだが、ユーザーのLTV(ライフタイムバリュー:継続的な取引でユーザーが企業にもたらす価値)を上げる施策などは考えているのだろうか? 岡野氏は「ビジネスモデルは一時的なプログラムではない。極論だが、最終的にはダイエットだけは無料でもよいと思っている。属性に基づいた宅配やキュレーション、広告などいくらでも検討できる」と将来について語ってくれた。


STORES.jpが高機能をアドオン形式で提供開始–大企業・中堅企業向け市場をねらう

ブラケットが提供するオンラインストア構築サービス「STORES.jp」。これまで利用の手軽さを武器に、個人や小規模企業を中心にサービスを展開してきた同サービスだが、今後は機能を強化し、大企業や中堅企業での利用をねらう。9月10日には月額980円のプレミアムユーザー(有料会員)向けに「アドオン機能」の提供を開始した。

STORES.jpは、「新規登録から開業までに要する時間は最短2分で、世界でひとつだけのオンラインストアをオープンできる」とうたっているとおり、簡単さを1つのウリにしたサービスだった。サービス開始から2年経った現在、ストアの数は12万店舗以上となっているほか、流通額(実際に決済されている金額)は非公開ながらリリース当初の100倍以上、ページビューやユニークユーザー数は20倍以上になっているという。

競合サービスのBASEとともに、ECの裾野を広げつつあるSTORES.jp。だが、15.9兆円(MM総研調べ。2013年4月〜2014年3月、BtoCとCtoCの合算)ともいわれる国内ネット通販市場の多くを占めるのは大企業や中堅企業によるBtoCの取引だ。そこで同社はその市場をターゲットとすべく、これまでより高度な機能を開発してきたのだという。

大企業向けのネットショップ構築といえば、GMOメイクショップやEストアーの提供するサービスが代表的。たとえばGMOメイクショップの「MakeShop」は、2013年の年間総流通額が1108億円と大きい規模を持っていることが分かる。

アドオン機能では、ダウンロード販売や送料の詳細設定から、年齢制限やギフトフォーム、再入荷のお知らせといった機能を提供するほか、直近にはトップページの作成(これまでSTORES.jpでは、トップページが商品一覧ページになっていた)、HTMLの編集といった機能も導入する予定だ。ちなみにSTORES.jpのプレミアムユーザーの数は非公開だったが、「一般的なフリーミアムモデルでの課金ユーザーの割合より多いと思う」(ブラケット代表取締役の光本勇介氏)とのこと。

ブラケットではこの機能の導入に先駆けて、ZOZOTOWNの出展企業に限定してブランドオリジナルのネットショップを構築できる「STORES.jp PRO」を提供しており、そこで年商数億円から数十億円規模の企業を相手に、大規模ネットショップのノウハウを蓄積していたという。光本氏は5月に「夏にも予想できない新機能を提供する」と語ってくれていたが、これがその第1弾となる。直近にもまた新たな取り組みを発表する予定だそうだ。


サンフランシスコでTechCrunch Disrupt開幕―スタートアップバトルフィールドには日本チームも参加

〔この記事の筆者はSam O’Keefe

今日(米国時間9/8)、サンフランシスコでTechCrunch Disruptが開幕した。恒例のスタートアップ・バトルフィールドでは、もっとも有望な初期段階のスタートアップがデモを行う。今年のグループも皆さんを失望させないはずだ。

内容はモノのインターネット、エンタープライズ・ソフトウェア、医療診断、バーチャル・リアリティー、共有経済、セキュリティーツールと多様な分野をカバーしている。

参加チームはベイエリアの出身が多いが、アトランタ、ブルックリン、ダラス、デンバー、サンディエゴ、ブリン・モー、さらにはモンタナ州ボーズマンからも来ている。さらに5チームは日本〔FOVE〕、ドイツ、イスラエル、インド、ナイジェリアから海をわたってサンフランシコにやってきた。10チームは女性がファウンダーに加わっているし、そのうち6チームは女性がCEOを務めている。

彼らの努力の結晶は本日、月曜日と明日、火曜日の午後にステージで発表される。その後、最終候補チームが選ばれ、水曜日に最優秀チームが5万ドルの賞金とDisrupt杯を授与される。

バトルフィールド参加チームは3日間、スタートアップ・アレー会場でデモを継続する。参加チームは以下のとおり。

AlfredClub, Allre, Athla, Beartooth, Disease Diagnostic Group, DynoSense, FOVE, Gem, IsItYou, MailTime, Palate Home, Partpic, PatternEQ, QuickFire Networks, RallyTeam, Sciencebite, Self Lender, Shipstr, Stack, SOP Notify, StudyRoom, TableGrabber, Tailor, Valor Water Analytics, Vin.li, Xen.do.

〔日本版〕サンフランシスコDisruptカンファレンスの模様は、こちらでライブ中継されている。全日程はこちら。下の写真はFOVE。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


高級ホテル予約のrelux、創業者の古巣リクルートから3.3億円調達–10言語対応でインバウンド需要狙う

高級旅館・ホテルの宿泊予約サイト「relux」を運営するLoco Partnersは9月5日、リクルートホールディングスなどを割当先とした第三者割当増資を実施した。調達額は3億3000万円、バリュエーションは非公開となっている。調達した資金をもとに事業開発担当者やエンジニアの採用を進める。Loco Partners代表取締役の篠塚孝哉氏はリクルートの出身。古巣からの調達となる。

また今回の増資の発表とあわせてグローバル対応を強化する。同日より10カ国語対応に加えて、12種類の通貨での予約決済サービスを開始する。

reluxは2013年9月にサービスを開始した宿泊予約サイト。同社の社員が現地を訪れ、100項目におよぶ独自の審査基準を満たした高級旅館や高級ホテルのみ厳選して掲載している。現在国内200件の宿泊施設の予約に対応している。

ユーザーは30代から40代が中心。客単価は9万円前後で、会員数は7万人。これまでは月1000〜2000人程度の会員増があったが、直近数カ月でその勢いは加速しているそうだ。会員は毎月30%ほど増加。売上高は非公開ながら、毎月30%増となっているそうだ。

ちなみに同社では、宿泊施設に満足しなかったユーザーに対する返金保証制度を用意したのだけれども、それを8月に終了している。その理由は「サービスを開始して1年半、1件も返金が発生しなかった」(篠塚氏)からだそうだ。また最低価格保証をしており、他の予約サイトなどより価格が高い場合は差額返金に対応するとしている。

古巣からの資金調達

前述のとおりだが今回の調達は、篠塚氏の古巣(篠塚氏のキャリアについてはこちらを参照)であるリクルートグループからの出資となる。篠塚氏は宿泊予約サイトの「じゃらんnet」に携わっており、既存事業と競合するため(reluxは同社がキュレーションした宿泊施設のみに厳選した予約サイト。一方でじゃらんは2〜3万件の宿泊施設を集めている)、リクルート社内では挑戦できないビジネスだからこそ起業して自らreluxを立ち上げた同社がなぜここでリクルートからの出資を受け入れたのか。

これについて篠塚氏は、「リクルートやじゃらんのアセットをうまく活用していいと言われている。通常のベンチャーキャピタルであれば人や事業会社の紹介はしてもらえるが、事業会社ではないのでそこまでで終わってしまう」と説明する。またアセットを借りられる一方で、ブランド的には独立したサービスを展開するという。またリクルートへのバイアウトについては「考えていない」(篠塚氏)とのことだが、リクルートとしては、まさにイノベーションのジレンマで実現できないreluxと近い距離に置いておきたいという狙いはあるだろう。

海外旅行代理店と組みインバウンド需要を狙う

また今回、英語、スペイン語、中国語(繁体字)、中国語(筒体字)、タイ語、韓国語、ベトナム語、アラビア語、インドネシア語、フランス語に対応。さらに円のほか、USドル、ポンド、カナダドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、ユーロ、元、バーツ、ウォン、ドン、ルピアでの決済にも対応する。

これはもちろん海外からのインバウンド(訪日旅行)需要を狙ったものだが、ロコパートナーズでは今後訪日旅行専門の代理店に管理画面を提供し、代理店経由でreluxの予約ができるようにしていくそうだ。すでにシンガポールのほかアジア圏の旅行代理店との交渉を開始している。

「東京オリンピックも控えているが、訪日旅行はホットになっている。それを加速したい。日本の旅館やホテルはサービスレベルが高いのに、まだまだ観光後進国。そのギャップを埋められるようなサービスにしていきたい」(篠塚氏)


今こそ立ち上がれ、東南アジアのスタートアップよ

日本から東南アジアのスタートアップへの投資がブームになっている最近ですが、欧米の企業やVCもネクスト・フロンティアとばかりに続々と東南アジアに進出中。今回はそんな東南アジアのスタートアップシーンを巡る最新の状況を解説した記事をThe Next Webから。 — SEO Japan


southeast asia

Dropifiは、顧客のフィードバックを整備するサービスを提供する。ガーナ生まれのこのスタートアップは、問い合わせフォームに代わって、大半の消費者が、ウェブサイトで提供しそこなっている見解を、企業に伝えるウィジェットを開発した。

2011年にDropifiは設立された。設立後2年も経過しないうちに、アフリカで初めて500 Startupsから投資を受けるまで成長した。さらに、2013年の時点では、Dropifiは、30ヶ国に散らばる6000社を超えるクライアントを抱えていた。このサービスは、世界中の企業が持つ問題を解決する。たまたま、設立された場所がインターネットの浸透率が40%程度のガーナであっただけだ。

Dropifiの生い立ちを調べていた私は、500 Startupsを設立したデイブ・マクルーアと一緒に、先日、同社が敢行したGeeks On A Planeツアー訪れた東南アジア諸国を思い出した。この旅で、私達は大勢の地元の起業家に出会い、多くのイベントに参加し、議論に明け暮れた。

議論を通じて、私は訪問した全ての国々に共通するトレンドを見出した: それは、シリコンバレー以外の地域で、スタートアップを運営すると、不利に働くのではないかと言う懸念だ。

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とりわけ、東南アジアで作られていても、アプリをダウンロードしてもらえるのか、と言う問いには面食らった。

この考え方は根本的に間違えている。

場所は関係ない

製品と会社を構築するのは、とても大変だ。四六時中、創設者は、ただでさえ、多くの事柄を心配している。それにも関わらず、場所に関する懸念を加えてしまうと、失敗する確率は大幅に高くなってしまう。そもそも、ユーザーがダウンロードする価値のある製品を提供している自信がないなら、エンジェルインベスターやVCが資金を調達するはずがない。

2014年においては、場所は関係ない。そもそも、アメリカがオンライン世界を牽引していたのは、2012年までである。

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ビジターが多いサイト Top 10(Google、Facebook、Yahoo!等)を利用するインターネットユーザーの87%は、海外(米国以外)のユーザーであり、また、ウェブ分析サービスのcomScoreは、アジア太平洋地域のインターネット成長率を、27%のヨーロッパを上回る42%と見積もっている。

オーディエンスの規模だけでなく、投資にも変化が現れている。先日、Ernst & Youngは、世界のテクノロジー企業の重役を対象とした調査を行い、M&Aの取り組みに来年力を入れるかどうか尋ねていた。その結果、参加者の3分の2が買収の予算を、台頭するマーケットに割り当てると答えていた — このトレンドは、最近、このサイトでも報じたように、東南アジアのテクノロジースタートアップに狙いを定めた投資額の増加にも反映されている。

シリコンバレー以外の場所で成功したスタートアップ

まずは、シリコンバレー以外の地域で構築され、世界的に有名になったスタートアップを挙げていこう。

欧州発のSkype、Spotify、Soundcloudに、WeChat、LINE、Kakao、Viberall等のメッセージ送受信アプリ、ゲームメーカーのGreeとDeNA、そして、複合ウェブサイトのRocket Internet、Alibaba、Tencent、Baidu、Naver等々。

こういったスタートアップは例外だ、と反論する方もいるかもしれない。確かに、ヨーロッパ、中国、日本、そして、韓国には、豊富なリソースがあり、経済の規模も大きい。しかし、地域全体にサービスを拡大しつつある東南アジアの企業も存在する。

例えば、シンガポール発のEコマースのスタートアップ、Carousellは、他国に進出している。Uberのライバルと目されるGrabtaxiは、東南アジア諸国への拡大を試みている。

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自分の「縄張り」に世界で有名な企業が存在するからと言って、スタートアップを作ることが出来ないわけではない。地域特有のソリューションを求める需要は多い。

例えば、Amazonは、東南アジア諸国では積極的に活動しているわけではない。そのため、RdemartやLuxoa等のEコマースが台頭している。また、Flipkart は、Amazonが進出する前に、インドのEコマース産業に参入していた。

170億ドルの価値を持つUberは、東南アジアで順調に業績を伸ばしていると主張している — しかし、バンコク、シンガポール、そして、マニラでタクシーに乗ると、ほぼ毎回、メーターの近くの電話にはGrabtaxiのスクリーンが掲載されており、存在感を示していた。先日投稿されたThe Next Webの記事でも指摘されていたように、東南アジア諸国では、Uberは独り勝ちしているわけではないようだ。

東南アジア諸国のスタートアップへの投資

投資がシンガポールに集中する点も大勢のスタートアップの設立者が指摘していた。

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確かにシンガポールは、金融の中心地であり、当初、大勢の投資家の注目を集めていた。しかし、状況は変化した。例えば、この記事には、インドネシアで積極的に活動している10社のVCが紹介されている。また、Geeks on a Planeツアーの最中に米国の500 Startupsは2社のスタートアップに投資を行い、また、日本のIMJ Investment Partnersは、フィリピンのスタートアップと契約を結んでいる。この他にも様々な事例がある。

このような事例に対して、エンジェル投資の資金が十分ではない点が指摘されることもある。

確かに、米国や欧州と比べると、東南アジアにはエンジェルインベスターが少ないが、米国や欧州であっても、投資を受けられるスタートアップは限られている。例えば、アメリカのスタートアップでさえ、資金調達に苦戦している – 先日、Y Combinatorのサム・アルトマンは、シードラウンドが募集額に届かなくても、「心配する必要はない」と指摘している。

しかし、東南アジア諸国にもエンジェルインベスターは存在する。例えば、マレーシアを拠点に活動するカイリー・ヌグは、1000万ドルの資金を東南アジアで運営している。ヌグは、定期的にアジアを移動し、「資金を提供する会社」を探している。マレーシアの家にいるのは、月に5日程度のようだ。

東南アジアの国々を四六時中駆け回っている。資金調達を望むなら、この機会を活かし、カイリー・ヌグを見つけると良い。探し出し、スタートアップの宣伝を徹底的に行おう。タイのTaamkruは、実際にこの試みを行い、500 Startupsが参加したシード資金の調達に最近成功した。

シリコンバレーにこだわるな

シリコンバレーは、主に移住者で構成されている — スタートアップの創設者はシリコンバレーに移り、会社を作って、資金の調達を行う。近代的なシリコンバレーが生まれるまで、30年間かかった。しかし、インドネシア、日本、そして、シンガポールにも豊富な資金が集まっているにも関わらず、東南アジアのスタートアップの創設者が、わざわざ海を渡ってシリコンバレーに向かう必要はあるのだろうか?スタートアップを成功に導くためには、シリコンバレーにいる必要があると闇雲に信じているなら、この指摘は受け入れてもらえないだろう。しかし、現在、マニラにいようが、ジャカルタにいようが、あるいは、ブータンにいようが関係ない。インターネットベースの会社を作っているなら、場所が成功を左右するわけではない。インターネットを介して、世界とつながりを持つことが出来るからだ。

マクルーアは: 「シリコンバレーのすごいところは、誰かが成功することを誰もが信じている点だ。この伝統を今後も続けるべきだ。」

この言葉を常に頭の片隅に置いておこう。印刷し、Tシャツにしても構わない。手の甲にタトゥーとして刻み込む手もある。どんなことをしても、自分自身、そして、スタートアップを立ち上げる場所を信じるべきだ。その後、製品を作ろう。自信を持って、作る必要がある。スタートアップに着手する上で、今ほど相応しい時代はない。

とは言ったものの、解決する必要のある問題がないわけではない — とりわけ、会社を拡大するためのリソース(安価で、安定したインターネットの接続環境、デバイス、エンジニア、その他の人材)へのアクセスは、東南アジアのスタートアップにとって大きな障害となる。次回の投稿で、このトピックを取り上げる予定だ。


この記事は、The Next Webに掲載された「Startup founders in Southeast Asia, it’s time to step up」を翻訳した内容です。

インターネットというかテクノロジーシーンを牛耳っている会社の大半が米国発ですが、よくよく考えるとその大半が90年代以降というか多くが2000年代以降だったりするんですよね。しかも今日のネット人口においては、米国はたったの14%、アジアが42%と圧倒的にユーザー数で勝っているわけですし。最も、中国が下駄になっているので、そのまま評価することはできないかもしれませんが、少なくともユーザー数では米国に何の臆する必要もない今日のネット状況。日本でもStartUp Asiaが開催中のようですし、日本やアジア各国から世界のネットシーンで存在感を持つようなスタートアップが登場してくることを期待したいですね。 — SEO Japan

グノシー木村氏が代表退任、真相は「任期満了」ではなくグリーとの訴訟リスク回避か

木村新司氏

ニュースキュレーションアプリを提供するスタートアップの大型調達が続き話題になっているが、「Gunosy」を提供するグノシー代表取締役で共同最高経営責任者の木村新司氏が、8月28日付で退任した。弁護士ドットコムトピックスが報じ、TechCrunchでも事実を確認した。今後は創業者であり、代表取締役の福島良典氏が引き続き経営にあたる。

木村氏は起業家としても投資家としても知られる人物。グノシー創業期のエンジェル投資家でもある。2013年11月にはグノシーの代表に就任し、福島氏ととも事業をけん引してきた。グノシーでは木村氏の代表就任と時を同じくして広告販売を開始しており、マネタイズの基盤を作ってきた。またKDDIなどから合計24億円の資金を調達しているが、ここにも木村氏の経験やノウハウが大きく寄与したと言われている。

グノシー取締役CFOの伊藤光茂氏は木村氏の退任について、「もともと予定していたもの。任期満了に伴って8月28日の株主総会で決定した」と説明する。木村氏は今後、株主という立場でグノシーを支援していく。

同社は8月29日の官報で2015年5月期第2四半期決算を発表している。売上高は3億5905万円と、広告事業の立ち上がりは見えている一方、純損失が13億9367万円の赤字となっている。

この赤字決算と退任の関連性を考える人もいるかも知れないが、この赤字はあくまでテレビCMをはじめとした「勝負をかけたプロモーション戦略」の結果と見るべきだろう。同社も調達時に「広告宣伝目的」と語っていたし、それは同社に出資する投資家も想定していたはずだ。実際テレビCMが奏功したGunosyは現在500万ダウンロードを達成しているという。伊藤氏も赤字決算と木村氏の退任は「関係ない」と断言する。

競業避止義務をめぐる訴訟の可能性

伊藤氏は「赤字と結びつけて考えられるので、なおさら唐突な感じもするかもしれない。だが人材もそろい始めたタイミング。退任はポジティブな決断だ」と続ける。赤字ながらも広告ビジネスの基盤ができたため、木村氏は創業メンバーをはじめとした若い起業家にその道を託したということになる。

そう思って業界関係者への取材を続ける中で、「実はこのタイミングでの退任発表には、グリーとの競業避止義務でのトラブルを回避する目的があるのではないか」という話を何度か聞くことになった。

木村氏はかつてスマートフォン向けアドネットワーク事業を手がけるアトランティスを立ち上げ、2011年1月にグリーに売却した経験を持つ。木村氏は2013年9月に同社を離れ、同年11月にグノシーの共同代表となった。だがそれから1年も経たない2014年7月、グノシーもスマートフォン向けに(ネイティブ広告の)アドネットワークを展開していると日経デジタルマーケティングが報じた。前職を離れて、また同様のビジネスを展開するという報道があったわけだ。だが通常、取締役が退任する際は、競業避止義務(競業に就いてノウハウや顧客を奪うような行為を禁止すること)を2〜3年負うことがほとんどだ。

これは何を意味するのだろうか。もちろん複数の業界関係者から話を聞いた上ではあるが、あくまで可能性として考えるのであればこういうことだ。広告事業の基盤もでき、IPOへの道が見えたグノシー。しかし木村氏が代表となっていることで「競業を手がけている」としてグリーから訴訟を起こされるかもしれない。つまり、IPOを考えた際のリスクになりえてしまう。しかもグリーはグノシーの競合であるスマートニュースへ出資しているという関係なわけだ。

そう考えれば、グノシーの言う「(木村氏の退任は)もともと予定していたもの」という言葉の意味が、単純に「体制や広告ビジネスの基盤ができたことから若き起業家に道を託す」というものではなくなってくるのではないだろうか。この可能性についてグノシー側にも尋ねたところ、「(木村氏の競業避止義務に関する契約といった)個人のことについては分からないこともある」としつつも、「そういった話は聞いていない」(伊藤氏)という回答を得た。

いずれにせよグノシーが短期間で広告ビジネスの基盤を作り、大型調達を実現し、その資金を元にしたプロモーション施策でユーザーを拡大させたことは間違いない。木村氏はとあるイベントに登壇した際、「当初スマートニュースに遅れをとっていた」と語っていたが、現在公開されているダウンロード数では、同社を追い抜いている(Gunosyは500万ダウンロード、スマートニュースは450万ダウンロード)状況だ。今回の木村氏の退任はグノシーにどういう意味をもたらすのか。今後も引き続きその動向に注目していきたい。


日本発のパーソナルモビリティ「WHILL Model A」がいよいよ発売、量産に向け1100万ドルの資金調達も

CEOの杉江理氏(後列中央)ほかWHILLのメンバー

パーソナルモビリティを手がけるWHILLが、いよいよ製品の販売を開始する。オンラインでの先行予約分となる数十台を国内で製造。10月にも予約者の元に届ける予定。今後は台湾で製品を量産し、先行予約分とあわせて今年度250台を日米で販売する予定。先行予約での販売価格は95万円。

またあわせて、総額1100万ドルの資金調達を実施したことを発表している。今回同社に出資するのは産業革新機構、NTTドコモ・ベンチャーズ、500Startups、東京センチュリーリース、三菱UFJキャピタル、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)、YJキャピタルのほか、台湾のJochu、米Sunbridge Startup LLP、サン・マイクロシステムズ共同創業者のScott McNealy氏などとなっている。ITVおよびSunbridgeは前回のラウンドからの追加投資となる。

WHILLはTechCrunch Tokyo 2012のスタートアップバトルにも登壇し、見事優勝を果たしている。日産自動車出身の杉江理CEOをはじめとして、ソニーやトヨタグループ、オリンパスなどメーカー出身エンジニアが中心となって2010年にチームを立ち上げた。その後1年をかけてプロトタイプを開発。東京モーターショーなどにも出展したのち、2012年には正式に法人化。販売に向けて製品のブラッシュアップを進めてきた。

杉江氏によると、同社のパーソナルモビリティ「WHILL Type A」の特徴は大きく3つ——24個の小さなタイヤを組み合わせることで、その場での回転、方向転換を実現した前輪や、四輪駆動による走破性といった「機能」、見た目だけでなく利用者の動きやすさを意識した「デザイン」、スマホアプリ経由で操作のカスタマイズが可能な「ソフトウェア」——となっている。

小さなタイヤが連なって構成された前輪

実は僕も5月時点でプロトタイプに試乗しているのだけれども、その場で方向転換できることは狭い通路などでも便利に感じたし、多少の段差なら不自由なく乗り越えれそうなくらいパワフルな駆動だった。そして思っていた以上にスピードが出る(このあたりはソフトウェアでコントロールできるようになるそうだ)。

なおtype Aは各国の法規制には準拠しているほか、米国における工業規格であるRESNAに準拠。日本のJIS企画への準拠に向けた準備も始めているとのこと。

冒頭でも書いたとおりだが、今後はJochuと共に台湾でプロダクトの生産を進める。来年度には2000台程度の量産体制を整える予定だ。日米(現在米国はカリフォルニア州のみでの販売となっている)に加えて、アジア圏での販売を検討している。また直販のほか、パートナー経由での販売も予定する。ただし杉江氏によると、メンテナンスやサポートの体制を整えつつの展開になるとのことだった。ちなみに生産は台湾だが、R&D拠点は日本(東京)、ビジネス拠点は米国という位置づけにしていく。

百貨店での運用実験も

今回の発表は、東京・日本橋の三越百貨店で9月3日の朝に行われた。三越では同日より、イベント「未来の歩き方」を開催。Type Aのほか、クラモトの「Luggie(ラギー)」、片山工業の「walking bicycle club」の展示、試乗を行っている。

ちなみに現場で三越やWHILLの関係者に話を聞いたところ、三越では富裕層の高齢者をカード会員や顧客として多く抱えているそう。その層にリーチできる商品への関心も高いということもあって、今後パーソナルモビリティの販売や店内での運用実験なども進めるという。


スタートアップ経営のほとんど辛い9つの現実

10年以上スタートアップのコンサルティングに関わってきた筆者がついに自ら起業した経験を元に、改めて自分自身でスタートアップ経営を当事者として体感した上での苦しみを告白してくれた貴重な記事を今回はご紹介。最近、スタートアップに関して考える機会が多くあった私ですが、色々と共感できる部分が多くありました。 — SEO Japan

私は2012年の秋にFoundersuiteの設立に取り掛かり、2013年の早い段階で、MVP(Minimally Viable Product: 最低限の利用可能な製品)をリリースした。このMVPを立ち上げる前に、私は最高財務責任者/取締役/事業開発担当者として、スタートアップのコンサルティングに10年間に渡って携わってきた。そのため、初めてのスタートアップのCEOが、どのようなものになるのか、ある程度、理解しているつもりであった。

しかし、実際には何も分かっていなかった。以下に、私が思い描いていた期待と大きくかけ離れていた8つの現実を挙げていく。car bump

1. 顧客のニーズの特定は、製品とマーケットをフィットさせる闘いのほんの一部である

私はリーンスタートアップモデルを好み、我が社は、「人々が求めるものを作る」ことに力を入れている。しかし、顧客のニーズを特定し、ニーズに対するソリューションを作り出す取り組みは、スタートアップの仕事のほんの一部に過ぎない。その他にも、利用への大量の小さな抵抗と障害を排除する作業が存在し、この作業自体、果てしなく続く。

例えば、Foundersuiteでは、Investor CRMを、投資家の会話を記録するツールとしてリリースした — これは、事実上、資金調達の「混沌とした状況に秩序」をもたらすツールと言える。Investor CRMは、AngelList、LinkedIn、Google Calendar等のAPIを用いて構築された良質なツールであり、ユーザーが初めに登録した際は、多数の前向きなフィードバックが寄せられた。しかし、継続的な利用に関しては、沈滞気味であった。

1-1の電話調査を行うまで、多数の利用の「障害」に私達は気づかなかった — 例えば、大勢のユーザーは、エクセルでターゲットのインベスターを既にリストアップしていた。そのため、インポート機能が必要であった。また、CRMは空の状態であり、何をすればいいのか分からない、と言う声もあった。そこで、間もなく、CRMを投資家の「スターターパック」で事前に埋める予定である。これは継続的な取り組みではあるが、幸いにも、大きなハードルや抵抗を排除する度に、利用が大幅に増える。すぐに満足感を得られる点は大きい。

2. (少なくとも最初は)誰にも注目してもらえない

「優れた製品は市場を作り出す」と言う偏った考えを持つ起業家は多い。これは嘘っぱちだ。MailboxやPebbleのような、生まれながらにして既にバイラル化した製品は幾つか存在する。しかし、これは極端な例外であり、標準から大きくかけ離れている。大半のスタートアップは、たとえ優れた製品であっても、注目してもらうために、必死でアピールしなければならない。数年前、Xobniの設立者達が、この点を巧みに表現していた: 「誰もその浅はかなスタートアップのことなんか気にしていない。」

もちろん、自分達は特別だと考えていた。すぐにバイラル化させることが出来ると信じていた。Foundersuiteは、スタートアップ用のソフトウェアを作る会社だ — 注目に値するはずである。リリースした瞬間に、爆発的な勢いでユーザーを獲得していくはずだ

Launch.coでデビューを飾り、VentureBeatで取り上げられると、割と多くのスタートアップに利用してもらえた。しかし、急激な成長は一時的なものであり、大半のスタートアップと同様に、がむしゃらに仕事をこなさなければいけなくなった — 事業を徐々に拡大し、宣伝を強化し、ポール・グラハムが提唱する拡大することが出来ない取り組みに励む必要があった。

私達の場合、インキュベータ、シェアオフィス、ハッカソン等と配信提携を結ぶ必要があった。これは、人と人が触れ合う、長期的な販売関係を築く取り組みであるものの(平均で、契約を結ぶまでに、2-3ヶ月かかる)、今後の成長の強固な基盤になる取り組みだと私達は確信していた。

3. 初期のエバンジェリストは後のエバンジェリストよりも2倍– いや3倍の価値がある

Airbnbのブライアン・チェスキーCEOが、「100万人が割と好むモノよりも、100人が愛するモノを作る方が良い」と言う名言を残している。これは素晴らしいアドバイスである。しかし、私達は、早い段階で「支持者」を増やすことに、十分に時間と労力をつぎ込まず、代わりに、ページビュー等の価値のない基準ばかりに気を取られていた。

なぜ、このような初期の熱狂的なユーザーは、そこまで重要なのだろうか?理由の多くは明らかだ: 他の人達に紹介する傾向があり(タダで宣伝してくれる)、製品に関する有益なフィードバックを与えてくれるためだ。しかし、初期のファンの価値が3倍に値するの理由は、敗北を喫する度に(意外と頻繁に発生する)、その前向きな言葉によって、前に進み続けることが出来るためだ。きっと、この世には、フィードバックの妖精が存在し、前向きな、勇気を与える言葉を発するタイミングを教えているのだろう。

今度スタートアップを立ち上げる際は、業務時間の75%を初期のエバンジェリストとの交流に当て、知り合いになり、満足させる取り組みを本気で行う。現在、遅れを取り戻そうと必死でもがいている。

4. 興味を持たない人もいる

辛い現実に向き合う必要がある。自分自身/会社/製品を好きになってもらいたい人達の大半は、単純に好きにならない。 コンサルタントをしていた頃は、クライアントとの親密な関係を楽しみ、新たな問い合わせの75%以上を一貫して契約に結び付けていたため(恐らく、既に適格な会社が、推薦されていたことが要因)、この現実に私はショックを覚えた。

しかし、コンサルティングビジネスの売り込みと、SaaS製品の売り込みは、大きく異なり、失敗/拒否のレベルに慣れるまでに、割と時間がかかった。Foundersuiteでは、提携/事業開発の取り組みにおいて、25 – 30%の確率で成功させるのが、やっとである。もっと分かりやすく言うと、配信契約の締結を求める際、10回のうち7回が、失敗に終わる(全く反応がないことの方が多い)。

私は、契約を勝ち取ることに固執する傾向があるため、最初のうちは、慣れるのが大変だった。何度も挫けそうになった。事実、提携に関する話し合いを数ヵ月に渡って行ってきたパロアルト市のインキュベータがいた(しかも、前向きな話をしていた)が、突然反応がなくなり、奈落の底へと落とされたような気分を味わった。

粘り強さは、起業家にとって、重要な資質だと理解しているものの、ある時点で、契約が実現しないことを自覚しなければならない。要するに、「契約に固執する姿勢」が会社全体に害を与えることがないように注意する必要がある。

5. 満杯の販売ファンネルは万能薬

4番目の問題に対しては、販売、または、事業開発のファンネルの上部を、顧客候補で溢れる状態を維持することが最も効果があると私は学んだ。つまり、多ければ多いほど良い。事業開発の取り組みをデートのように考えるようになった。デートと同じように、顧客候補/パートナーはとても多く、一生のうちにアタックすることが可能な人数は限られている。つまり、興味を持ってもらえない相手を追いかけるのはやめて、すぐに次の相手の説得に取り掛かるべきである。踏ん切りをつけると、再び向こうの方からアプローチしてくることもある(嬉しいサプライズ)。

6. 製品を売るな — ユーザーが製品を使って出来ることを売れ

これは、スティーブ・ジョブズの受け売りであり、毎日、頭の中に叩き込んでいる教訓である。この名言には、様々な位置づけとニュアンスがある: 機能ではなく、メリットを売り込め、「何」や「どのように」ではなく、「なぜ」を売れ。

アシュトン・カッチャーが主演した映画、Jobsの意欲を引き出すセリフに全て集約されている:「誰でも優れた製品を作ることは出来るのかもしれません。しかし、自分が売っている製品の方がさらに優れていることを消費者に納得してもらう必要があります。我々はコンピュータを売っているのではありません。我々が売っているのは、コンピュータを使って出来ることを売っているのです。これは、心を動かすツールです。そして、紳士淑女の皆さん、このツールに限界はありません。なぜなら、人は、何かをさらに活用することが出来ると、そして、どんな夢だって実現することが出来ると、これからも信じていくからです。そこに到達するために、Macが皆さんの背中を押すのです。」これだけで十分だ。

7. 「ソートリーダー」はスーパーモデルのような存在 — 味方になってもらえれば百人力、しかし…

Foundersuiteの当初のマーケティング計画では、クリス・ディクソンが「ボーリング戦略」と呼ぶ戦略を少し変えたアプローチを基盤としていた — テクノロジー業界のインフルエンサーとソートリーダー(新たな考えを示すことが出来る人達)に製品を利用してもらえれば、多くのスタートアップが、先例に従う、と言うものだ。理論的には素晴らしい戦略だが、ポール・グラハム等の人物に製品を試してもらい、使ってもらい、そして、認めてもらうのは、本をオプラ・ウィンフリーに紹介してもらうほど成功する確率は低い。 要するに、実現する可能性はゼロに近い。確かに、私達は、TechStars、Launchrock、そして、Startup Weekend等の優れたサイトと提携を結ぶことに成功したが、それまでには、数ヶ月間に渡って、しつこく呼び掛け、お願いし、求め続けたプロセスがあった。ソートリーダーには、このような要請が大量に寄せられており、ホワイトノイズでしかない。

そのため、騒ぎに加わるのではなく、ノイズが遥かに少ないスタートアップのエコシステムの領域で、接触を始めることにした。私達は、アトランタ、ピッツバーグ、インディアナ、ハンガリー、そして、オーストラリア等の場所で、インキュベータ、ハッカソン、そして、シェアオフィスに声を掛け始めたのであった。数十、いや、数百もの地域で、スタートアップ用の生産性向上ツールを必要とする起業コミュニティが存在する。私達の製品を求めるニーズは本物であり、利用するスタートアップが右肩上がりに増えていった。「極上のパートナー」を追う取り組みは、スキップした方が良いことを私は学んだ — スーパーモデルとデートするようなものだ。お金も時間もかかり、実際にデートしてもらっても、苦労するだけである。その代わりに、実際に自分のことを求めている相手に狙いを絞るべきである。

8. 製品の開発は思っていた以上にスゴく楽しい

今後生まれ変わったら、プロダクトマネージャーになりたい。元々いたプロダクトマネージャーが自ら製品を立ち上げるために退社したため、強制的にプロダクトマネジャーの職務も兼任することになるまで、この仕事の面白さが分からなかった。

アイデア -> プロトタイプ -> フィードバック -> 繰り返し -> 利益の回収を行うプロセスを見事に完了させる取り組みには、やりがいがあり、満足感を得られることに気がついたのであった。病みつきになったと言っても過言ではない。スロットマシンで勝つのと同じような喜びを得られるのだ。

9. 嬉しいサプライズがある

ここまで読んで頂けたのなら、私が得た教訓のほとんどが、失敗を受け入れる、あるいは、障害や拒否を乗り越える点に関連していることに気づいたはずだ。しかし、嬉しい教訓もあった — (時折、赤の他人から)気持ちが晴れ晴れするようなサプライズを得られることがある。この記事を作成している最中に、Foundersuiteのユーザーから、Startup WeekendのOrganizerに対して、Facebookでべた褒めのレビュー/提案を行ったことを伝えるEメールが届いたばかりだ。

つまりは、自分の意思で、トータルで、数百、数千の起業家、そして、顧客候補に接触する力を持つ人達に売り込んでくれたのだ。感動した。しかし、それほど稀ではない…好奇心をそそる取り組みを、適切なモチベーションを抱いて実施していれば(私達の場合は、起業家の方々が成功するお手伝いをする)、ユーザーに支えてもらえる。この関係は、素晴らしいの一言に尽きる。

それでは、皆さんの幸運を祈りながら、ここでペンを置くことにする。最後まで読んで頂いたことに、感謝の意を表したい。

この記事は、FounderSuite.comのネイサン・ベコードによるゲスト投稿である。


この記事は、OnStartupsに掲載された「Expectations vs. Reality: 8 Lessons From The First Year As CEO」を翻訳した内容です。

私は15年以上前、コンサルも何もなしにいきなり起業の世界へ飛び込み現場で数々の失敗を重ねて学んできた人間ですが、どれも昔を思い出すというか、今でもリアリティを感じる内容ばかりでした。やはり自身の経験を元に語られる内容の重みは感じます。そんな中、「製品を売るな — ユーザーが製品を使って出来ることを売れ」という一言は衝撃的でした。今後の個人的名言として毎日思い出したいと思います。しかしここでもスティーブ・ジョブス。。。恐るべし。 — SEO Japan

Jony Iveもきっと満足のiPadスタンドがKickstarterに登場。名前は「Yohann」

これまで「iPad用スタンド」なるものに興味を持ったことは一度もない。しかしスイスの建築家であるBerend FrenzelがデザインしたYohannにはぐっときた。まず、ともかくデザインが美しい。シンプルでありながら、かつ機能的でもある。「こういうものが欲しかったのだ」と感じさせるものに仕上がっている。いろいろな角度でiPadを見ることができるようになり、「さすがのヨーロピアンデザイン」などと言ってみたくもなる。

2つのモデルが現在Kickstarterでキャンペーン中となっている。1つはグラスファイバーで強化したボディを、ハイエンドのピアノラッカーで塗装したもので、もうひとつは手作りの木製モデルだ。それぞれドイツおよびイタリアで製造されている。

まず注目すべきは、Frenzelのデザインがひとつのパーツでできたシンプルさを維持しつつ、それでいて3種類の角度でiPadを支えることができる点だ。ランドスケープにもポートレートにも対応していて、しかも膝の上やベッドの上といった不安定な場所でも利用できるのだ。

以前Jonathan “Jony” Iveは言ったように、「真のシンプルさというのは、無用なものを削ぎ落したとか、装飾を廃したというようなところから生まれるのではありません。複雑さの中に秩序をもたらしてこそ、シンプルさが実現されるのです」と言っていた。無駄を削ぎ落して「禅」的魅力を備えたYohannは、まさにその言葉を体現したものと言うことができよう。さらに言えば、言葉を発したIve自身、このプロダクトを見て「まさに言った通りだ」と言いたくなるのではあるまいか。

ちなみに、このデバイスは(Appleのプロダクトがいつもそうであるように)なかなかの高価格なデバイスだ。グラスファイバーを使った高品質ラッカー仕上げのものは、初期割引でも69ドルの値段がついている(最安値のオーダーについては既に売り切れとなっている)。木製バージョンは129ドルからとなっている。対応機種はiPad 2/3/4/Airで、木製版はiPad miniにも対応している。

価格が高めとなっているのは「欧州におけるエコロジー関連法に対応するため」というのも一因だ。また木製版については、さまざまな法律が求める「サステナビリティ」基準を満たすためでもある。安価なコピー製品を防ぐためにパテントもも取得申請中であるとのことだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


生化学テックを用いた本気の「出会い」サービス

いくつでもと言っては言い過ぎになるだろうが、「恋人」を探すためのサービスというのも多く提供されている。しかしその中で、2人のファウンダーの双方が女性であるというサービスは少ない。さらに「生物学的適合性」(biological compatibility)を恋人選びの基準として採用しているサービスというのはさらに少ないはずだ。

サービスは名前をSingld Outという。忙しくて積極的な恋活を展開できず、かといって写真だけを手がかりに人と会うのもどうかと考えている人々に向けたサービスだ。

確かに、写真は千もの言葉に値する情報を伝えてくれるかもしれない。しかしその言葉が「本当」のこととは限らないのだ。オンラインに掲載される写真やプロフィールと、直接見た時の印象があまりに違う人というのは多くいるものだ。そうしたところに着目して、Singld Outは相性の判断基準に、科学的な「適合性」を持ち込むこととしたのだ。利用を申し込むと、DNAテスト用の器具(簡単な唾液試料採取キットだ)が送られてくる。

Singld Outではアンケート形式の性格分析(こちらも「非常に精確」であるとのこと)と、Instant Chemistryと協力した生物学的な分析を併用する仕組みとなっている。遺伝子コードを分析し、HLA(ヒト白血球型抗原)やセロトニンについての情報を収集して、利用者の「相性」を分析するのだ。

Instant Chemistryによれば、とくにHLA内に存在する3つの遺伝子が生物学的適合性を判断するのに非常に重要なものであるそうだ。体外に分泌するフェロモンや、あるいは免疫システムに関係するものなのだそうだ。他の人に感じるフェロモン誘引的魅力というのは、実は自分とは(遺伝子レベルで)異なる免疫系を持っている人を伝えてくれる信号なのだとのこと。

またセロトニントランスポーター遺伝子は、外部からの刺激に対してポジティブな反応を示すのか、あるいはネガティブな反応を示すのかを決定するもので、これによりストレスレベルを測ることができるとのこと。

Singld Out曰く、人との関係においても生化学的な知識を活用することで、より良い人間関係を築くことができるのです、とのこと。

ウェブサイトの記述を引いておこう(サイトには参考情報へのリンクなども掲載されている)。

調査によると、異なる免疫系をもつカップルから生まれた子供は、より多くの感染症に対応することができるようになります。また、子供が強力な免疫システムを手に入れることができるというだけでなく、異なる免疫系を持つもの同士のカップルは充実した性体験を維持することができ、安定した結婚生活を送り、そして妊娠の確率もあがります。お互いをより魅力的な存在として感じることができるようになるのです。

なるほど。ではゲイカップルの場合についてはどうなのだろう。Singld Outとしては、生化学的な分析を通じてパートナーを選択することは、ゲイカップルについても有益であるはずだと考えているそうだ。但し、異性カップルの場合と同様の効果があるのかどうかについては、現在のところ調査中であるとのことだ。

Singld Outは自己資金で始められたサービスで、サンディエゴに拠点をおいている。拠点展開を視野に入れつつ、まずは利用者数の拡大を狙っている。

サービスは申し込み受付中で、申し込むとDNAキットが郵送されてくる。分析にはInstant Chemistryが試料を受け取ってから2日ほどかかる。

アンケート分析などについては、無料で試してみることもできるようになっている。DNA採取キットを使うには会員登録が必要だ。会費は3ヶ月で199ドルないし6ヶ月で299ドルとなっている(現在は期間限定割引中)。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


個人の特技を売買できる「ココナラ」、次の一手は1分100円の有料電話相談

個人間でスキルや知識を売買できるサイト「ココナラ」が29日、1分100円の有料電話相談サービスを開始した。ココナラは似顔絵の作成や恋愛相談、SEOのアドバイスなど、個人のスキルや知識が一律500円で売買されている。2012年7月にスタートし、登録ユーザーは10万人、取引成立数は約13万件。有料電話相談は、ココナラの出品者が相談者の悩みに答えるものだ。

相談者は、ココナラのスマートフォンサイトから相手を選び、希望の時間を予約する。予約時間になるか、待機中の出品者がいれば即座に、出品者と相談者の双方が登録した電話番号にココナラのシステムから電話を転送する。お互いは電話番号を伝えずに通話でき、匿名でのやりとりも可能だ。料金は1分100円で、出品者が受け取る報酬は50%。双方の通話料は当面、ココナラが負担する。

電話相談の内容とはどんなものなのか? サービスを運営するココナラ代表取締役の南章行は、女性のプライベートな悩み、起業や転職、マーケティングなどのビジネス系の相談が中心になると予想する。相談者からすると、ネット上のやりとりと比べて、スピーディーに対応してもらったり、じっくり相談に乗ってもらえるのがメリットだという。

有料電話相談を使う動機は?

ところで、ネット上にはタダで相談に応えてくれるサービスは山ほどある。それこそ、TwitterやFacebookでつながる友人や知人に相談すれば無料。個人が特定されるのが嫌であれば、匿名でQ&Aサイトに投稿することもできる。あえて有料電話相談サービスを利用する動機は何なのか? この点について、南は次のように説明する。

「無料だと、答える側も相談する側も本気度がぐっと減ってしまう。有料になったとたんに、それは500円だろうと1万円だろうと、相談する側は本気の相談をしますし、お金をもらう以上、答える側も本気で回答します。1対1のクローズドの場で、有料サービスならではの本気のやり取りが満足度を生むと思っています。」

電話相談で費やされる時間はユーザーによって振れ幅がありそうだが、南は平均45分と見込んでいる。従来のスキル売買が1件あたりの500円だったことを考えると、電話相談の単価は9倍の4500円となるわけだ。ココナラはまず、既存ユーザーに電話相談の利用を促し、1年後には既存ユーザー経由の売り上げだけで月額800万円を目標に掲げる。さらに、広告経由で外部ユーザーも取り込んでいく。

類似サービスとして最も知られているのは、Googleが手がける専門家とのビデオチャット「Helpouts」だろう。検索してもわからないことを専門家に教えてもらえるというもので、Google+のHangoutsとGoogle Walletを融合させたサービスだ。日本ではオールアバウトが2014年3月、専門家が電話相談に応じる「navitell(ナビテル)」を開始している。


HubSpot上場で考えるインバウンドマーケティングの実力

インバウンドマーケティングで有名なHubSpotがIPO申請を行ったようですね。当サイトでも創業者が運営するブログの記事を定期的に紹介していることもあり、その内容が気になったのですが、早速、SEO Japanでも別途翻訳紹介しているConvince & Convertの筆者がHubSpotの事業状況の分析、そして彼がインバウンドマーケティングについて思う所を記事にしてくれたので紹介します。 — SEO Japan

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どの時点で、HubSpotの財務パフォーマンスが、インバウンドマーケティングの有効性を証明すると考えられるのだろうか?

昨日、「インバウンドマーケティング」と言う用語を作ったサイト、HubSpotが、IPOの申請を行った

IPO(株式公開)を申請する際、会社は「S-1」と呼ばれる文書を提出し、投資家に財務情報を提供する。これは、初めて、HubSpotの金銭面の状態を詳しくチェックする機会であり、実際に同社のS-1に慎重に目を通した結果、挑発的な疑問を私は持つようになった。

この文書を読めば、誰でも同じ疑問を持つ可能性がある。

Hubspotは、2006年に開設され、S-1には2009年から2014年の第2四半期までの財務情報がこと細かく記載されている。今でもスタートアップに分類されるものの、開設から8年間を経過し、そして、数回の資金調達を受けているため、かなり成熟したスタートアップだと言うことが出来るだろう。そのため、HubSpotが、いまだに多額の収益を失っている事実は、少々意外であった — 昨年、HubSpotは、7700万ドルの売上があったが、3400万ドルの赤字だった

たとえ設立してから8年が経過していても、様々な理由で、企業が赤字が続けている可能性はある。Amazonの収益(待っているので、リンクをクリックして実際に確認してもらいたい)に、この現実が如実に表れている。HubSpotにとっての、競合者、そして、切磋琢磨する同業者に該当する会社においても、この矛盾が起きている。例えば、2012年、ExactTarget(註:メールマーケテイングで有名なB2B企業)の収益は、2億9200万ドルの売上に対し、2100万ドルの赤字だった(その後、Salesforce.comに買収された)。また、Marketo(註:マーケティングオートメーションで有名なB2B企業)の2013年の収益は、9400万の売上に対し、4600万ドルの赤字であった。

しかし、HubSpotは、インバウンドマーケティングの有効性を信条に掲げている。それでは、S-1から、同社が採用するアプローチの有効性について、どのような事実が見えてくるのだろうか?

HubSpotの財務情報から、インバウンドマーケティングの有効性について、何が分かるのか?

そこで、私は同社の粗利益(収益-サービスを提供するために必要なコスト)を販売コストおよびマーケティングコストと比較してみた。すると、次の点が明らかにになった:

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HubSpotの粗利益 vs 販売コスト & マーケティングコスト(100万ドル単位)

2012年においては、正しい方向に向かっているように見えるものの、2013年になると、販売とマーケティングのコストが再び上がり、この傾向は2014年の前半も続いている。

私の意見を取り入れる前に、次の点に注意してもらいたい:

  1. 私はMBAを持ち、投資家であるものの、株の専門家ではない。
  2. かつてスタートアップを1社経営したことがある。あまりうまくいかなかった。
  3. HubSpotには友人が務めており、これから投げ掛ける問いは、私の友人を非難するものではない。私にとっては、掛け替えのない仲間である。

それでは、私の意見を聞いてもらいたい:

  • HubSpotは、インバウンドマーケティングの原則を土台にしている。
  • HubSpotは、間違いなくインバウンドマーケティングを世界で一番巧みに実施している企業である。同社のコンテンツマーケティングの質とスピードは、圧倒的であり、右に出る者はいないと言っても過言ではない。
  • HubSpotは、また、大量のディスプレイ広告、動画広告を含む、その他のタイプの広告でインバウンドマーケティングを補っている。
  • インバウンドマーケティングは、顧客獲得コストを削減するはずである。しかし、アウトバウンドマーケティングを追加したとしても(あるいは、これが原因かもしれない)、HubSpotの販売コスト & マーケティングコストは、引き続き、粗利益を上回っている。

挑発的な問いを投げ掛ける前に、S-1が販売とマーケティングを区別していない点を指摘しておく。つまり、マーケティングコストが増加していると断言することは出来ない — ただ単に顧客の獲得と維持にかかるコストが増えているだけなのかもしれない。また、HubSpotは、今でもスタートアップに分類され、スタートアップにおいて、顧客の獲得と維持が利益を減らす減少は、異常ではなく、むしろ、日常茶飯事である。その上、IPO直前に販売 & マーケティングのコストを増やすアプローチ自体もよく見られる。

しかし、いずれこの傾向を変える必要がある。インバウンドマーケティングに焦点を絞る会社に携わっているなら、HubSpotのパフォーマンスから、すぐに利益を得られるわけではない点を見出すことが出来る。

最後に、インバウンドとアウトバウンドのROIの差のデータも提供されていない。ただし、アウトバウンドマーケティングが必要される事実が、インバウンドマーケティングの限界を物語っている。

それでは、私の脳裏に浮かんだ疑問を提示する:

どの時点で、HubSpotの財務パフォーマンスが、インバウンドマーケティングの有効性を証明すると考えられるのだろうか?

この問いは、顧客が買いたいと思い、進んで料金を支払う製品をHubSpotが持っていることが前提である — インバウンドマーケティングと言えども上辺だけではやっていけない。

(上辺だけではなく)中身があり、顧客数が継続的に増加しているため、しっかりとした製品を提供していると仮定すると、どのような結論が導き出されるのだろうか?HubSpot自身が発表したインバウンドマーケティングの現状レポート(2013年版)によって、インバウンドのマーケッターにとって、ROI(投資に対する利益)の証明が難しいことが明らかになっている中(調査の参加者の25%が言及)、このデータをどのように解釈すれば良いのだろうか?

皆さんの意見を聞かせてもらいたいが、この疑問を問う目的が、HubSpotを非難することでも、インバウンドマーケティング自体を中傷することでもない点を理解してもらいたい。この記事を読み、内容に納得し、私の力を借りたいと思ってもらえれば幸いだ。それが、インバウンドマーケティング(おまけにコンテンツマーケティング)である。

ここでは、インバウンドマーケティングの一般的に信じられている能力に疑問を投げ掛ける会話を始めたい — 友人のジェイ・ベーアが言うように、この際、効果の誇大な宣伝は不要だ。インバウンドマーケティングの役割、そして、効果を正確に評価することを私は望む。

(情報公開: Hubspotは、ジェイ・ベーアが執筆した書籍「Youtility」で取り上げられており、また、同社はこの本のために宣伝目的の資料を提供している。ExactTargetは、Convince & Convertのスポンサーである。ジェイ・ベーアは、Marketoの2つのイベントで講演を行った。また、Amazonの株主でもある)


この記事は、Convince & Convertに掲載された「Is Inbound Marketing Actually Profitable or Just a Slogan」を翻訳した内容です。

特にこの数年は急成長して勝負をかけてきたHubSpotですし、赤字の財務状況は上の他者の事例見ても、米国のB2B系のテック企業にはよくあるパターンですから珍しくもないとは思いますが、確かにインバウンドマーケティングをあれだけ推奨し、その投資対効果を謳っていてこの数字では「自社はどうなのよ?」「アウトバウンドに相当お金をかけているのでは?それともインバウンドマーケティングに費用対効果が悪いのでは?」という突っ込みをしたくなるのはわからなくもないですけどね。SEO会社も電話営業すると「SEO会社が電話営業してるなんて矛盾してるだろ!」と突っ込まれますし笑(一応、弊社は特に電話営業はしていませんが)

ちなみにこんな記事を紹介してしまいましたが、インバウンドマーケティングにしてもコンテンツマーケティングにしてもその重要性と効果は誰以上に信じている私ですので誤解なきようお願いいたします。それより個人的には、この手のB2B企業のパターンとしてはIPOするにしろしないにしろ、最終的には大手企業の参加に収まることが一般的とは思いますが、HubSpotの場合、独特の企業文化を売りにしている点もありますから、求められる会社の持続的な成長、買収へのプレッシャー含め、IPO後のHubSpotの企業文化がどう変化していくのかが気になる点ではあります。 — SEO Japan [G+]

スタートアップ起業家育成施設Google Campusが今度はソウルにオープン

Googleの今日(米国時間8/26)の発表によると、同社は起業家のためのスペースをソウルにオープンする。Campusと呼ばれるそのスペースというか施設は、共同で作業するためのスペースや、Campus for MomsCampusEDUのような催し、それにGoogleの社員たちと過ごす時間、などのプログラムから成る。ソウルはGoogleが初めてCampusをアジアで開く都市となる。

Googleはこれまで同様のスペースをテルアビブとロンドンで開き、次はワルシャワとサンパウロを計画している。ロンドンは、オープンから20か月後の2013年12月に本誌TechCrunchも取り上げた。そのとき本誌ライターのMike Butcherは、Google Campusは同社の派手なマーケティングだ、と指摘した(当時Googleはイギリス政府からテクノロジ方面の起業家を育てろと圧力をかけられていた)。でも今のところロンドンは、成功しているようだ。Butcherは、2年目で会員数22000、ロンドンのスタートアップのための“センター”として大いに役に立っている、と書いた。

ソウルのスタートアップのエコシステムは、アクセラレータSparkLabsKStartupなどの尽力で成長しているが、まだまだとても若い。そのほかの生まれたてのエコシステム同様、ソウルもメンターや資金やイグジット(出口)機会がまだ足りない。だからソウルのGoogle Campusがより多くの機会創出につながることを、期待したい。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


bento.jpは単なる弁当デリバリー屋にとどまるつもりはない

「単なる弁当デリバリー屋にとどまるつもりはない」。bento.jpを運営するベントー・ドット・ジェーピー社長の小林篤昌は創業当初、こう語っていた。その言葉通り、いよいよ弁当以外の商材を扱うこととなった。オイシックスと協業し、主菜と副菜が20分で作れるレシピと食材の献立セットを期間限定で配送する。ランチタイムに自転車で弁当を届ける配送網を、16時以降の「空き時間」に有効活用する狙いだ。売り上げは両社でシェアする。

サービス名称は「KitOisix by bento.jp」。8月25日から29日までの16時以降、bento.jpのアプリ内から2人分の主菜と副菜のセットを注文できる。メニューは日替わり。初日となる25日は、主菜が「豚肉のこっくり照り焼き」、副菜が「ほくほく!ツナポテト」となっている。価格は配送料込みで1400円、配送エリアは弁当と同じで渋谷区と港区の一部エリア。注文から40分以内に届く。

bento.jpはスマートフォンで注文してから20分以内に弁当が届くサービスとして、2014年4月にサービスを開始。iPhoneアプリで住所や電話番号、メールアドレスなどを事前に登録した上で注文すれば、20分以内に自転車で指定の場所に弁当を届けてくれる。現在は常時10人以上のスタッフで配送する体制を整えている。

今後は自転車の配送網を有効活用すべく、食以外の商材も扱っていきたいという。ちなみに小林は、7月に福岡で開催されたイベント「B Dash Camp 2014」において、弁当以外の商材として「医薬品」を候補に挙げている。薬が欲しいタイミングでは家から外に出るのが困難なためだといい、実現すればニーズはありそうだ。

消費者が必要なモノやサービスを必要な分だけ即座に購入できる「即日配達ビジネス」は、GoogleやAmazon、eBayといったアメリカのIT業界の巨人が続々と参入している分野だ(関連記事:GoogleやAmazonも参入、熾烈を極める米国の即日配達ビジネス、日本の可能性は?)。

日本ではヤフーも参入。東京・豊洲地区の実店舗と提携し、Yahoo!ショッピングで注文してから2時間以内で商品を届ける「すぐつく」の実証実験を5月に開始した。同社執行役員の小澤隆生は5月、札幌で開催されたイベント「IVS 2014 Spring」で「大赤字」と赤裸々に語りつつ、その狙いを明かしている。(関連記事:ヤフーが大赤字でも「2時間配送」にこだわる理由)。ベントー・ドット・ジェイピーも「数時間配送」のネットワークを強化していくようだ。

photo by
David Rader II


日本のスタートアップはRubyがお好き? PHPと人気ほぼ互角に

ソーシャルリクルーティングサイト「Wantedly」を運営するウォンテッドリーが25日、スタートアップ企業に人気のプログラミング言語に関する調査結果を発表した。それによれば、2009年に創業した企業の間ではPHPが最も人気だったが、2011年以降に創業しているスタートアップ企業の使用言語はPHPとRubyがほぼ半々であることが分かったという。

詳しくグラフを見ると、2009年創業の企業のうち、PHPを使用していたのは38%、Rubyは15%と倍近くの差があったが、2011年に創業した企業ではPHPとRubyが24%で同率。2013年創業の企業ではPHPが32%、Rubyが27%と再び差が広がったが、2014年に創業した企業ではPHPが22%、Rubyが25%と、初めてRubyがPHPを上回っている。

調査は、Wantedlyの登録企業で使用言語を記載している企業390社の中から、各社の創業年度別にサーバーサイドで使用している言語を集計したもの。JavaScriptはフロントエンドの使用が多いため除外した。JavaはAndroidでの使用とサーバーサイドでの使用の両方をカウントしている。

プログラミング言語は時代とともに人気が移り変わるもの。PHPとRubyの人気が伸びている理由についてWantedly代表取締役の仲暁子は、「PHPはCakePHP、RubyはRuby on Railsなどの代表的なフレームワークが存在するため」と見ている。


卒業率わずか25%、シリコンバレー発の「マジでガチ」な起業家育成プログラムがすごい

FI関西の卒業生と運営スタッフ

シリコンバレー発の起業家育成プログラムを運営する「Founder Institute」(ファウンダーインスティテュート、以下FI)をご存じだろうか。2009年の創設から過去5年間で1116社の卒業企業を輩出し、このうち8社がエグジットを達成。そのポートフォリオの評価額は50億ドルを超えるという、40カ国66都市で展開するグローバルなインキュベーターだ。

FIの特徴のひとつとして挙げられるのが、会社を辞めずに参加できること。プログラムは毎週1回、4カ月にわたって夜間にコーチングとメンタリングが行われ、昼間の仕事と両立させながら起業の準備を進められる。こう聞くと、生ぬるく感じる人もいるかもしれないが、そんなことはない。というよりも、なかなかのスパルタ式プログラムだ。

それを物語っているのが卒業率の低さ。2014年4月、関西に日本初のFI支部が設置されたことはお伝えしたが、第1期生は大阪、京都、神戸、奈良から約50人が応募し、IQテストや志望動機などの審査に通過した20人が入学。このうち、実際に卒業できたのはわずか5人。入学者の25%にとどまっている。

起業志望者はテスト費用として50ドル、合格した場合はプログラム参加料として900ドルをFIに支払う。退学になっても返金されないが、来期の参加料が免除される仕組みとなっている。

FIの起業家育成プログラムとは

入学者にとって最初の関門は「メンターレビュー」だ。ビジネスアイデア策定、市場調査、収益モデルの決定を経て、メンターの前でプレゼンを実施する。メンターの評価が低ければ落とされるわけだが、FI関西では半数がドロップアウトさせられたのだという。

関西支部のメンターにはFI創業者のアデオ・レッシ、Google Japan元社長の村上憲郎、東証マザーズへの上場が承認されたロックオン代表取締役の岩田進らが参加。グローバルでは、EvernoteのCEOであるフィル・リービンや『リーン・スタートアップ』の著者として知られるエリック・リースら3000人が登録している。

メンターレビュー後も、スパルタ式の課題は毎週続く。

一例を挙げると、プロダクトのランディングページを1週間以内に作り、事前登録フォーム経由で翌週までに150人、翌々週までに200人のメールアドレスをゲットしろ、といった内容だ。期限内に課題を提出できなければ退学となり、毎週のようにふるいにかけられていく。

プログラミングをかじっていればランディングページを1週間で作るのは造作ないかもしれないが、起業志望者の中にはITとは無縁だった人もいる。昼間の仕事を続けながらページを作り、しかも、そこから実際に事前登録ユーザーを集めるのは、そんなに簡単なものではないだろう。

入学者のひとりで、スポーツ業界向けウェアラブル端末を手がける山田修平は、「(運営側が)とにかくプレッシャーをかけてくる」と4カ月間のプログラムを振り返る。最もきつかったと語るのは、プロダクト開発にあたって最低25人からお金を借りる「プライベートファンディング」の課題だ。

「お金を返さないといけない状況を作って自分を追い込むとともに、周りの人間を巻き込んでいけというもの。金額は1円でも1000円でも構わないのですが、25人というと気軽にお願いできる人ばかりではなく、心理的なハードルがめっちゃ高かったです」。

卒業の最終条件は「会社を登記すること」

FI関西の運営に携わる、みやこキャピタルの藤原健真によれば、課題の作業量は「毎週20時間分」に相当。最終的な卒業条件は「会社を登記すること」で、「座学だけで終わらないガチなプログラム」と説明する。プログラムは世界共通だ。

「本国からは『簡単に卒業させるな』と言われているので、いつも落とす理由を探している。ただ、これだけ厳しい基準を設けているからこそ、卒業企業の高い成功率がある」。FIによれば、卒業企業の生存率(現在も運営している会社)は89.5%。全体の42%は卒業後に資金調達を実施しているのだという。

FI関西を運営する藤原健真

そしてこのたび、第一期生のプログラムを終了したFI関西が8月7日、大阪で卒業式を兼ねたデモデイを開催した。4社5人が手がけたプロダクトはトラック輸送の価格比較サイト、高級コーヒー豆の定期購入サービス、ルームシェア向け家計簿アプリ、フットサルプレイヤー向けウェアラブルデバイスと多種多様。いずれもローンチ前ではあるが、関西にスタートアップを育成する拠点が根付くかどうかを占う意味でも、各社の今後に注目したい。

FI関西の第1期卒業生のプロダクト

トラック輸送の価格比較サイト「BestLogi」

出発地や到着地、貨物の大きさや重要といった条件を入力すると、運賃相場を検索できる。中小の輸送業者に登録してもらい、初回の発注のみ90%オフのお試し輸送サービスも設ける。中小の輸送業者をどれだけ集められるかが成功の鍵を握りそうだが、創業者の青山晋也はセミナーやイベントを通じて集めるという。

青山によれば、中小の輸送業者は日通やヤマトの下請けが大半。BestLogiでは大手を中抜きすることで、発注者はコストを削減でき、受注者は取り分を増やす仕組みを作るとしている。キャッチフレーズに「輸送業界の価格ドットコム」を掲げている。

高級コーヒー豆の定期購入サービス「CANVAS COFFEE」

毎月3000円で3種類のコーヒー豆を届けるサービス。翌月以降は、ユーザーがお気に入りのコーヒー豆に加えて、最低1種類はCANVAS COFFEEが選んだコーヒー豆を届ける。10月中旬にサービスを開始する予定で、事前ユーザー登録を受け付けている

バリスタとして10年のキャリアを持つ創業者の八木俊匡は、「コーヒーの美味しさは言語化するのが難しく、知識がなければ理想のコーヒーを選べない」と語る。FI関西に入学した当初は、バリスタを派遣して豆を届けるビジネスモデルを検討していたが、「それではスケールしない」というアドバイスに従い、現在のサービスにピボットした。

毎月定額料金を支払うことで商品が届くサブスクリプション型ECは2012年頃に日本やアメリカで急増したが、そのブームは沈静化した。日本での可能性について八木は、「飲み比べないとわからないコーヒーにはチャンスがある。ゆくゆくは顧客の嗜好データのノウハウをワインやチョコレートなど、他の業界でも応用したい」と話している。

ルームシェア向け家計簿サービス「Crewbase」

創業者の1人で京都大学に在学中の浦嶋優晃の試算によれば、日本のルームシェア人口は約140万人、ルームメイト間で支払う金額は255億円に上るという。また、ルームメイト間でのトラブルの多くは金銭問題と指摘。これを解決するために、FI関西で出会った元電機メーカーの中江敏貴とともに、ルームメイト間の支出を記録したり、差額の精算時に送金できる家計簿サービスを立ち上げることにした。

サービスは、支出の負担や清算方法を細かくルール付けできるのが特徴。例えば、食費はAさんが全額支払う、光熱費はBさんが3割、Cさんが7割負担する、といったルール設定が可能だという。収益はルームメイト間の差額資金を決済する際に徴収する手数料がメインとなる。

フットサルプレイヤー向けのウェアラブルデバイス「Up performa」

アマチュアのフットサルプレイヤーが、プレイ中の走行距離やスピード、ポジショニングを記録・分析するためのウェアラブルデバイス。位置情報はGPSを活用して取得する。2015年にクラウドファンディングに出品する予定。サッカー以外の屋外スポーツでも展開したいという。

アマチュアスポーツにデータ解析の需要があるのか、データを取得しても解析できる人がいるのかは定かではないが、実際に中学校のサッカー部で使ってもらったところ、「お前走ってないやん」というのが丸わかりだったりして、監督や選手の反応が良かったとのことだ。


PandoraおよびIndiegogoもダイバーシティー(従業員の多様性)レポートをリリース

PandoraおよびIndiegogoが、ダイバーシティーレポート(多様性レポート)をリリースした。これを見ると、双方ともにアフリカ系アメリカ人の割合が低くなっている。レポートのリリースは、同様のレポートを公開している他のテック系企業に追随するものとみて良いだろう。

まずPandoraについていえば、1300名の従業員中、3%がアフリカ系アメリカ人で、4%がヒスパニックとなっている。ちなみにPandoraが拠点をおくオークランドでは、人口の28%がアフリカ系アメリカ人であり、25%がヒスパニックとなっている。さらに幹部職および技術職については、アフリカ系アメリカ人の占める割合はさらに低くなり、それぞれ1.1%および2.8%となっている。尚、ヒスパニックは幹部職にてむしろ割合を増やし、6.3%を占めている。

Indiegogoの従業員は100名ほどだが、アフリカ系アメリカ人の割合は2%となっている。そして幹部職および技術職にはアフリカ系アメリカ人がいないのが現状だ。

アメリカ人口全体でみると、アフリカ系アメリカ人は12.9%を占めているが、従業員中での割合が、人口構成比程度になっているテック企業は多くないようだ。たとえばTwitterFacebook、あるいはGoogleなどでも、従業員中にアフリカ系アメリカ人が占める割合は2%に過ぎない。

このように、人種的な多様性については日常世界から大きく離れているようにみえるものの、今回取り上げている両社にては男女ギャップが小さいようだ。双方のレポートでも、そのことを強調しようとしている。

Pandoraでは、全従業員の約半数が女性であり、幹部職でも40%を女性が占める。Pandoraクラスの規模の会社としては非常に珍しい数字だと言うことができる。但し、技術職に占める女性の割合は低く、18%となっているようだ。

またIndiegogoの方は技術職にても33%を女性が占めるとしている。これは、他にダイバーシティーレポートを公開しているさまざまな企業よりも高い割合となっている。

比較のためにみておくと、Twitterの技術職中で女性が占める割合は10%となっている。この数字はSnapchat(15%程度)、Facebook(15%)、そしてGoogle(17%)など他社でもさほど上がっていない。PinterestおよびeBayでは技術職の20%以上が女性であるとしている。しかしIndiegogoの30%超にせまる数値を見つけることは難しい。

但し、こうしたデータを見る際には、Indiegogoの従業員数の少なさも意識しておくべきだろう。人数にすれば、女性技術職は30名ほどに過ぎないのだ。しかしIndiegogoとしては、企業規模を拡大しながらも男女に等しく門戸を開き、従業員の多様性を維持していきたい考えであるとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H


巨大スクリーンでのインタラクティブシステムの提供を目指すAudience Entertainment

映画館の楽しみ方が増えることになるかもしれない。踊ったり、跳ね上がったりして楽しむような時代がくるかもしれないのだ。劇場コンテンツと観客をインタラクティブに結ぶ仕組みを提供しようとしているAudience Entertainmentが、本格的な広がりを目指してSDKの提供を開始するとアナウンスしている。

このシステムを使えば、劇場内にいる他の人と一緒に、身体を動かしながら楽しむことができるようになる。主な利用用途としては広告キャンペーンを考えているようだ。全員で立ち上がり、そして腕を振ることでスクリーンに投影されるゲーム画面を操作することができるようになる。あるいは、Disney Cruise Linesのプロモーションで行ったように、ウォータースライダーを滑り降りるドナルドダックをコントロールしたりすることもできる。

ファウンダー兼CEOのBarry Grieff(National Lampoon Magazine、Rolling Stone、およびInterpublic Groupなどで広告関連業務を長く行なっていた人物)は、今の時代を「コンテンツ制作の大転換期」であるとする。リニア型からインタラクティブなものになってきているという話だ。世の中一般に見られるそうした流れを、劇場やアリーナ、コンサート会場などにも持ち込もうと発想したのがはじめなのだそうだ。動きや音をキャプチャーするためにカメラを設置し、それをインタラクティブ(interactive)な進行に役立てようとする。「3D」との対比で、Grieffはこの仕組みを「iD」と呼んでいる。

そしてこのiDがもたらす「集団エンタテインメント」的な要素を盛り込むために、開発者、広告主、そして映画製作者などに、広くシステムを使ってもらいたいと考えた。そこでソフトウェア開発キットを提供することになったようだ。

SDKは、9月29日のAdvertising Weekから提供を開始したいとのこと。但しこちらで早期ベータ版の申し込みを受け付けてもいる。コンテンツについてもAudience Entertainment側で管理を行うのかという問いに対して、チーフ・マーケティングオフィサーのAdam Casselsは「プラットフォームはオープンなものとして提供していきます」と語っている。「インタラクティブ機能を持たせるための仕組みとして使ってもらいたいと思っています。このシステムを使ってもらうことで、一定水準以上のものが簡単に提供できるようになります」とも述べている。

最初に話をきいたときは、失敗に終わった(と言っても良いと思う)「インタラクティブシネマ」の二番煎じかとも思った。しかし、話をきいたあと、実際にシステムを使ってみる機会をもらった。残念ながら大勢の人が集う劇場でのことではなく、Audience Entertainmentの会議室での体験となった。しかし使ってみると面白く、スクリーン上に現れるキューブにタッチしようと夢中になって(傍から見ると少々無様でもあったかもしれないが)飛び上がったりしてしまった。

数十人ないし数百人といった人の動きを感知するためのシステムなので、個々人の動きに細かく反応するといったタイプのものではない。しかしSDKが世に出てくれば、いろいろと面白い仕掛けが登場していくるかもしれない。また、主目的が広告であるのであれば、作るべきコンテンツも、細かな動きによって制御する本格的なゲームというわけではないはずだ。スクリーンに表示されるコンテンツで、観客を「ノセる」ことが重要な目的となってくるわけだ。映画開始前の数分、客がFacebookやTwitterをいじるのに使っている時間を、広告とのインタラクションに使ってもらえるようになれば大成功ということになる。

下にこのシステムを使ったサンプルが入ったビデオを掲載しておく。また実証用のサンプルも用意されている(周囲で身体を動かしながら自分の選択への支持を訴えかける観客の存在は、脳内で補完するしかない)。Audience Entertainmentは今年、デジタルシネマのBrcoとの業務提携をアナウンスしており、実際にシステムを稼働させるための準備を進めている。全世界で3000施設への導入を行う予定なのだそうだ。

Audience Entertainment 2014 Showreel from Audience Entertainment on Vimeo.

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(翻訳:Maeda, H


イベントに行きたい人をつなげる「vivit」、インキュベイトとユナイテッドが出資

アクティビティの予約サービスと言えば、ヤフーと連携するカタリズムの「あそびゅー」や、実は10周年を迎えたそとあそびの「そとあそび」のほか、ウェブ制作会社LIGの子会社が提供する「TRIP」などもスタートしている。

また一方では、旅行やイベントに行きたい人がサイト上に集まり、みんなでイベントを企画したり参加したりするというようなサービスもじわじわと人気を集めている。旅行を中心としたtrippieceの「trippiece」も好調なようだし、クラブイベントや音楽フェスに特化したsameの「BANANA」などもある。

今回紹介するvivitの「vivit」も、オンラインで仲間を集めて、実際にイベントに行くことを目的としたサービスだ。同社は8月21日、インキュベイトファンドとベンチャーユナイテッドを割当先とした約3000万円の第三者割当を実施したことを発表している。

vivitでは、運営側がアウトドアやスポーツ、BBQなど、日帰りで楽しめるやイベントを紹介。ユーザーは興味あるイベントに「いってみたい!」ボタンを押すことで、同じく「いってみたい!」ボタンを押したユーザーとチャットしたり、さらに友人を招待したりして、実際の予定を決めていく。アカウントはFacebookと連携しているため、Facebookの友人がどういったイベントに興味を持っているかも知ることができる。

現状はイベントの企画までの機能しか提供していないが、今後はイベントの運営者と提携し、予約や事前決済といった仕組みを導入していく。将来的にはカスターマーサポートを置く予定もあるそうだ。また現在はSEOとソーシャル経由での集客に注力しているそうで、たしかに「ビッグボード(水圧で空を飛ぶスポーツ)」「デカスラ(東京サマーランドの新アトラクション)」といったワードでも検索結果の上位に表示されている。

vivitはインキュベイトファンドが主催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp」第5期の出身。4月にvivitのクローズドベータ版を公開し、現在はオープンベータ版と位置づけている。

このサービス、機能だけでいうとTrippieceを思い浮かべたりしたのだけれども(ただしTrippieceはユーザーがイベントを企画する機能などがある)、vivit代表取締役の水谷寿美氏は想定するユーザー属性やイベントの種類がまったく異なると語る。「知らない人、仲良くないとも楽しめるように日帰りのイベントに限定する。ターゲットにするのは、『バリバリ旅行に行く人』『自分でFacebookのイベントを立ち上げる人』ではなく、『いろんなことに興味はあるけど自分から言えない人』。そんな人の背中を押すようなサービスにしたい」(水谷氏)


スマートフォンが手元にないとパニックになる人へ ― 満を持してnoPhone登場

ふと気づくとiPhoneのバッテリーが切れてしまっていることが多い。いつもいつも、こうしてバッテリーを切らしてしまうのだ。同じことをしている人も多いことと思う。ちょっと離れたところで充電しておくよりも、手元に置いておきたいと考えてしまうのだ。ほとんど「病気」の域だが、少なくとも私の場合はそうなのだ。

そんな人のためを思ってか、noPhoneなるものが登場した。

主要な目的は、とにかく身近にスマートフォンがないと落ち着かないという人への対処だ。そして実世界に集中すべき時、従来のスマートフォンに変えて手元においておくと便利だという狙いもある。

noPhoneならば、お客との会話中にスマートフォンばかりが気になってしまうということもない。手元に置いておけば、他の場所に置き忘れてしまったとパニックになることもない。また電波状況の悪いキャンプ場や、ハイキングのときなどでも全く問題ない。いつでも幸せを感じさせてくれる、世界とつながっていることを感じさせてくれるカタチをポケットにいれておくことができる。

代替機として活用する方法もあるだろう。すなわち充電中でもスマートフォン(のカタチ)を手放したくないという人は、充電中はこちらのnoPhoneの方を手元においておけば良い。

このnoPhoneはトイレに落としてしまっても大丈夫だ。万が一、日々が入ってしまっても動作には問題ない。防塵に気を配る必要もない。バッテリー無用で面倒なソフトウェアアップデートも永久に不要だ。

気になった方はサイトをチェックしてみて欲しい。

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(翻訳:Maeda, H