IBMはレイオフを認めたが、その詳細は明かさず

IBMは同社がレイオフを行なっているという報道をひと晩で認めたが、部門や関係する従業員の人数などに関する詳細は明らかにしていない。しかし同社はこの度のレイオフを、新CEOであるArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏の采配による必要性の高いスキルの導入と、それにともなう再配置だとしている。

IBMのスポークスパーソンはTechCrunchに対して「競争の激しい市場におけるIBMの業務には、より高い価値スキルにリミックスする柔軟性が必要であり、労働力に関する決定は、弊社のビジネスの長期的な利益のために行われている」と語っている。

Moor Insights & Strategyの主席アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏によると、レイオフは全社的に行われるという。「聞くところによると、それは事業部間のバランスをとるためのものだ。IBMは今、できるだけ多くのリソースをクラウドへ移行しようとしている。基本的には必要なスキルを持たず、再教育もできない者が解雇し、特定のスキルのある者を採用する。だからいわゆる人減らしではない」とムーアヘッド氏は語っている。

ちなみにIBMは、2015年にレイオフが報道されたときにも同じ理屈を述べた。公式の数字はないがBloombergによると、今回の数字は数千人単位だという。

Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミュラー)氏によると、現在、IBMは厳しい立場にいる。「過去の成果が利益を産んでない。IaaSとしてのIBM Cloudはなくなり、Watsonは期待はずれ、ブロックチェーンは遅すぎて、何千人もコンサルタントが仕事にならない」とミュラー氏は話す。

ミュラー氏によると、作業員が現場ではなく家にいることの影響もある。「企業は大規模のソフトウェアプロジェクトをリモートで行う方法を知らず、学んでもいない。現在のところ企業は計画の再開で忙しく、プロジェクトの進行が遅くなっている」という。

このニュースの背景には、大企業も中小企業もパンデミックのために大量の従業員を解雇しているという事情がある。IBMも現在のマクロの状況に関係なく、新CEOが建て直しを図ろうとしているように、人員削減が必要なのかもしれない。

同社はここ数年間、苦戦が続いており、2018年にRed Hatを340億ドル(約3兆6600億円)で買収したときには、もっとオープンなハイブリッドクラウドという選択肢を模索していた。今同社が必要としているのは、それを実現に導くスキルに焦点を当てたいようだ。

同社は2021年6月まで、レイオフした社員の医療費を補助するという。まあ、当然だろう。

関連記事: Incoming IBM CEO Arvind Krishna faces monumental challenges on multiple fronts…IBMの新CEO Arvind Krishnaを多方面からの難題が包囲(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Netflixがアクティブではないゾンビ顧客に対してサブスクの自動キャンセルを開始

Netflixは米国時間5月21日、同社のオンデマンドビデオストリーミングサービスを1年以上何も視聴していない顧客に対して、サブスクリプションを継続したいかどうかを尋ね、連絡がない場合はメンバーシップをキャンセルすることにしたと発表した。

同社によれば、加入者になってからの12カ月以内にプラットフォーム上で何も見ていない顧客に対して、メンバーシップを維持したいかどうかの確認の通知を開始したとのことだ。同社はまた、2年を超えて何もストリーミングしていない人々に対しても連絡していると言う。

「何かにサインアップしたのに、それを何年も使っていなかったことに気付いたときの、あのどんよりした気持ちは、だれでも知っていますよね?Netflixが最も望んでいないことは、使っていないものに対してお金を払っていただくことです」と同社は説明する。

このあまり例を見ない動きは、実のところNetflixが忠実な顧客ベースにどれだけ信頼を置いているかを示しているのだ。ほとんどの企業は、できる限り長期間に渡って会員の銀行口座またはクレジットカードから割り前を引き出すことに満足している。

Netflixによると、これらのアクティブではないアカウント(一般的には業界ではゾンビアカウントとして知られている)は数十万人、あるいはメンバーベース全体の1%の半分未満のユーザーにすぎない。なおこのことはすでに財務情報として報告済みの事実である。

3月31日の時点で1億8200万人以上の加入者を数えるNetflixは、アカウントがキャンセルされたユーザーが再びプラットフォームに戻って来たいときには、簡単に戻れるようにしたいと述べている。10カ月以内に再入会した場合には、退会した時点と同じ、お気に入り、プロフィール、表示設定、アカウントの詳細を継続して利用することができる。

「それまでの間、この新しいアプローチによって、皆さまが苦労して稼いだお金を節約できることを願っています」と声明で述べたのは、Netflixの製品イノベーション担当ディレクターであるEddy Wu(エディ・ウー)氏だ。

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(翻訳:sako)

今週の記事ランキング(2020.5.17〜5.22)

TechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週最も注目されたのは、5月15日に時価総額1億ドル(約107億円)での資金調達ラウンドを発表した次世代SNS「Clubhouse」についての記事だった。ランキング1位の「米国スタートアップ界で話題の次世代SNS『Clubhouse』になぜ100億円以上も時価総額がつくのか?」という記事では、サービス概要、利用シーン、実績、資金調達状況、Clubhouseに出ている批判の声などを網羅しているので、ぜひ読んでみて欲しい。

手のひらサイズのカード型PC「PI225」のレビュー記事もよく読まれた。この記事では、同デバイスのサイズ感はもちろん、使用感やベンチマークスコアなどを含めてレビューしているので、こちらも注目だ。それではまた来週!

  • 1位
    米国スタートアップ界で話題の次世代SNS「Clubhouse」になぜ100億円以上も時価総額がつくのか?

    米国スタートアップ界で話題の次世代SNS「Clubhouse」になぜ100億円以上も時価総額がつくのか?

    2020年4月にバズり初めて、米国時間5月15日に異例となる1億ドル(約107億円)時価総額の調達を発表した次世代SNS候補のClubhouse。前回のnote記事では現在人気なSNSのトレンドや軽くClubhouseなど次世代SNSを紹介しましたが、今回はClubhouseだけについて記事を書かせていただきました。一部重複する部分はあるかもしれませんが、Clubhouseのサービス概要、利用シーン、実績、資金調達状況、Clubhouseに出ている批判の声、そしてどのポイントが最も魅力的かを説明します 続きを読む

  • 2位
    ZOTACの手のひらサイズのカード型PC「PI225」の処理性能と発熱をチェック

    ZOTACの手のひらサイズのカード型PC「PI225」の処理性能と発熱をチェック

    ZOTACの手のひらサイズのカード型PC「PI225」の処理性能と発熱をチェック ZOTACは香港のPC Partner Group Limited傘下のコンピューター、周辺機器メーカー。もともとはグラフィックカード専門メーカーとして設立されたが、現在はゲーミング、オフィス向けのオリジナルPC、ミニPCなどを販売している。今回レビューする「ZBOX P」シリーズの「PI225」は、同社のミニPCの… 続きを読む

  • 3位
    人気C向けアプリはいかにして初期ユーザー1000人を獲得したのか?

    人気C向けアプリはいかにして初期ユーザー1000人を獲得したのか?

    元Airbnbのグロース担当のLenny Rachitskyさ(レニー・ラチツキー)さん「How the biggest consumer apps got their first 1,000 users」の記事を直接許可を頂き翻訳しました。C向けサービスがいかにして最初の1000人を獲得するかしっかりまとまってる記事は意外とありませんでした。レニーさんの記事は、実際に創業者のヒアリングを行い、過去インタビューを遡り、Twitterで質問したりした事実に基づく濃密なレポートです。UberやTikTok、Tinder、最近話題のSuperhumanなどの著名スタートアップの学びをシェアしたいと思います。続きを読む

  • 4位
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    歯列矯正装置のbyteが絶好調、2020年の売上高は108億円を予想 自己資金で創業した企業にみられる特徴の1つが、VCの支援を受けた競合相手より成長スピードが遅いことだ。外部から支援を受けずに行うマーケティングの費用は売上高に頼っていて、売上高は往々にしてマーケティングでの支出に頼っている。この2つの要素の微妙な関係は成長スピードを緩やかにする。それに比べ、VCの支援を受けた企業は売上をあげる前…続きを読む

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    アップルの再発明、新iPadOSマウスカーソル開発秘話

    アップルの再発明、新iPadOSマウスカーソル開発秘話

    Apple(アップル)はマウスポインタを発明したわけではないが、マウスポインタの存在を世に知らしめ、一般に使用されるまでにした会社であることは確かだ。Xerox Parc(ゼロックスパロアルト研究所)で開発され、その後アップルのSusan Kareによる伝説的なアイコンデザインによって身近な存在になったマウスポインタは、これまで約40年にわた… 続きを読む

会員数14万人の「MEDULLA」運営がスキンケア領域に進出、パーソナライズ×スマホUXで化粧品業界の変革へ

パーソナライズヘアケアブランド「MEDULLA」を手がけるSpartyは5月22日、スキンケア領域の新ブランド「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」の発売を開始した。

同サービスの特徴は肌診断の結果を軸に、約11万通りの中から自分に合った処方が提案されることだ。具体的には10個のオンラインアンケートに回答することで、自身の肌タイプや肌に関する悩みなどを特定していくところからスタート。その後カメラ撮影による肌状態の診断を実施すると、それらの結果を踏まえて自分用に最適化された化粧水と美容乳液が提案される。

価格は化粧水100mlと美容乳液80mlがセットで9200円、定期購入コースの場合は8280円(どちらも税抜)。商品が届いた後の定期カウンセリングも同サービスの1つのポイントで、診断結果をベースとしたスキンケアアドバイスを受けられるほか、フィードバックを通じて処方の内容をアップデートしていくこともできる。

商材の違いはあれど、サービスの構造や解決しようとしているユーザーのペインはSpartyがこれまで展開してきたMEDULLAと同様だ。MEDULLAでは日本国内に1万種類以上も存在すると言われるシャンプーの中から「自分に合ったものを探すのが大変」という悩みに対して、パーソナライズ×スマホUXの切り口から解決策を提案。この仕組みがユーザーから支持を集め、同サービスの会員数は累計14万人を超えた。

Spartyとしてはスキンケアにおいても同じような悩みが存在すると考えていて、今回スキンケア領域で新たなブランドをローンチすることを決めたという。

「パーソナライズスキンケアは米国で非常に熱い分野であり、日本国内でも資生堂の『Optune』など複数のサービスが生まれてきている状況だ。自分たちとしてはMEDULLAで培ってきた一連の購入体験に加えて、そこから得られたデータを基に全体のUXや処方ロジックを改善していく仕組みはスキンケア領域でも強みになると考えている。まずはその体験を軸にしっかりと市場を作り、パーソナルスキンケアの代表的なブランドを目指していく」(Sparty代表取締役社長の深山陽介氏)

深山氏の話では化粧水や美容乳液自体もこだわりの成分を活かして差別化できるようなものを開発しているとのことだが、そこにスマホを起点としたパーソナライズの体験を加えることで「顧客の課題を解決するサービスとして提供できる」点が1番のウリになるという。

新ブランドの肌診断ではオンラインの質問に加えて、カメラを使って肌状態を解析する仕組みも導入している(海外スタートアップの技術を活用しているとのこと)

また直近では新型コロナウイルスの影響で化粧品カウンターに出向いて商品を選ぶのが難しくなっていることもあり、オンライン完結で自分にあった製品を探せる手段としての需要もあるだろう。これに関しては実際にMEDULLAでもオンライン経由で新規顧客獲得数が増加傾向にあるとのことだった。

「(コロナが落ち着いていったとしても)化粧品カウンターで実際に肌に触れながら商品を選ぶというのは、しばらくは難しいのではないか。その環境において『スマホの中にある、あなたの美容院』のような形で、自宅にいながらスマホ上で簡単に肌状態を診断でき、パーソナライズされた最適なスキンケア製品が自宅まで届くという体験を提供していきたい」(深山氏)

深山氏によるとゆくゆくは今回の新ブランドとMEDULLAのサイトを統合して、さまざまなデータを基にユーザーに合った製品を提供していく計画なのだそう。1月の資金調達時にも「中長期的にいくつかのブランドを保有するD2Cホールディングスを目指している」という旨の話があったが、まずはパーソナライズ×デジタルを基軸として「化粧品メーカーや化粧品業界全体のあり方自体を変革していくようなチャレンジをしていきたい」という。

Facebookがインドの女性のために新しい安全機能をリリース、他者を簡単にロックアウト

Facebookはインド国内で新しい安全機能を導入した。これにより、ユーザーは自分のアカウントを簡単にロックすることができるため、プラットフォーム上で友達ではない人が投稿を見たり、プロフィール画像やカバー写真を拡大したりダウンロードしたりすることができなくなる。

同社によれば、この機能は特に女性を対象にしていて、Facebook体験をより細かく管理できるようにするものだという。「インドの人びと、特に女性たちがオンラインプロフィールの保護について懸念を抱いていることを、私たちは深く認識しています」と声明で述べたのは、Facebookインドの公共施策責任者のAnkhi Das(アンキ・ダス)氏だ。

同社によれば、プロファイルをロックするために、数回のタップを行うだけで、複数の既存のプライバシー設定といくつかの新しい対策が、ユーザーのFacebookプロファイルに適用されるという。ユーザーがアカウントをロックすると、友達(FBフレンド)ではないユーザーは、写真や投稿(過去のものも新しいものも)を表示できなくなり、プロフィール写真やカバー写真のズームイン、共有、ダウンロードができなくなる。

「私たちは若い女性たちから、オンラインで共有することをためらっていること、誰かが自分の情報を悪用しているという考えに怯えていることをよく耳にします。Facebookがそうした心配について学び、彼女たちが望む体験を与えることができる製品を構築する努力をしているのを知って、私はとても幸せです。この新しい安全機能は、女性、特に若い女性に対して、自分を自由に表現する機会を与えてくれるでしょう」と声明で語るのは、ニューデリーに拠点を置く女性擁護グループ、Centre for Social Research(社会調査センター)のRanjana(ランジャナ・クマリ)氏だ。

ユーザーは、自分の名前の下にある“…”をタップし、その中にあるLock Profile ボタンと、直後に表示される確認ボタンをタップすることで、アカウントをロックすることができる。

木曜日の発表に先立ち、この機能は既にバングラデシュのユーザーが利用できるようになっていた、とFacebookの広報担当者はTechCrunchに語った。

この新機能は、Facebookが2017年にインドで行った、なりすましとの闘いに対する取り組みの延長線上にあるようだ。そのとき導入されたProfile Picture Guard(プロフィールピクチャーガード)と呼ばれる機能は、ユーザーが自分のプロフィール写真を、友達や友達リストに含まれていない人が拡大したり、共有したりできないようにするものだった

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(翻訳:sako)

Mapboxとソフトバンクの合弁で日本のデベロッパーにマッピングのAPIやデータサービスを提供

SoftBank Corp.(ソフトバンク株式会社)と、GoogleやHereと競合する地図データの企業Mapboxが、合弁事業Mapbox Japanを立ち上げたと発表した。

このジョイントベンチャーは、MapboxのAPIやデータサービスを日本のデベロッパーに提供していく。6月1日から9月30日までMapboxは、感染者の分布や統計データなどCOVID-19関連の地図サービスを、感染の拡大を抑えるためにウイルスのクラスターの追跡に依存しているこの国のデベロッパーのために構築している企業や団体に、最大3か月の無料サポートを提供する。

Mapboxはデータを、政府や商用のデータベースなどのソースから集め、それらをカスタマイズ可能なAIベースのAPIやSDKなどのプロダクトに使用する。クライアントにはFacebookやSnap、The New York Times、連邦通信委員会(FCC)、そしてRoverやRimacなどの自動車企業もいる。

2010にEric Gunderson氏が創業したMapboxは現在、同社によると毎月のユーザーが6億を超えている。SoftBankのVision Fundは2017年に、Mapboxの1億6400万ドルのシリーズCをリードした。当時Gunderson氏はTechCrunchに、その資金の一部を利用してアジアに進出する、東南アジアや中国も含め当地域におけるSoftBankのプレゼンスに乗っかる形になる、と語った。

Mapboxは日本で、2019年の7月に営業を開始したが、それは、Yahoo! Japanと日本最大の地図ソフトウェア企業Zenrin(株式会社ゼンリン)とのパートナーシップによるものだった。ZenrinはGoogleともパートナーしているが、昨年の初めからGoogleはZenrinの地図データの使用量を減らし始め、日本では自前の地図データを構築していくつもりのようだ。

Zenrinとの密接な関係はMapbox in Japanに新たな商機を提供するだろう。昨年Gunderson氏はNikkei Asian Reviewに対し、「われわれは日本全体で第一位のマッピングデータプロバイダーになる。それは、Zenrinとのパートナーシップにより日本全体の最良のデータを得られるからだ」、と語っている。同社には、産業の自動化のためのマッピングサービスなど、日本市場向けのプロダクトを開発する計画もある。

SoftBank Corp.の事業開発のトップEric Gan氏は、声明でこう述べている: 「Mapboxの技術を日本に導入して企業の既存のマッピングサービスを高度化し、新たなカスタマイズ可能な位置ベースのサービスや経営のツールを創造して行けることは、きわめて喜ばしい。すでにMapboxのプロダクトには、リテールやライドシェア、ホテル、共有オフィス、決済、モビリティ、製造業などからの需要が大きく増え始めている」。

画像クレジット: Mapbox

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

巨大ミミズのように穴を掘るGEのソフトロボット

今朝ログインしたときには、巨大なミミズロボットを取材する予定は入っていなかった。しかし、それは今目の前にあり、私はそれのためにここにいる。問題のロボットはGE Researchのチームによって設計され、DARPAのUnderminer(掘削者)プログラムの一部として、250万ドル(約2億7000万円)の賞金を獲得した。このプログラムは、軍事環境での迅速なトンネル掘削を促進するために創設された。

ロボット工学における近年の流行にならって、GEチームはタスクを遂行するために、生物学的インスピレーションへと目を向けた。彼らが生み出したのは、セグメント化された巨大なソフトロボットで、巨大な機械式ミミズのように徐々に進んで行く。

ロボットの筋肉は、無脊椎動物に見られる、流体で満たされた構造の「水力学的骨格」(hydrostatic skeleton)を模倣してデザインされている。このロボットの場合、前進する際に大きな役割を果たすのがその人工筋肉であり、さまざまな地下環境に適応できるようにデザインされている。このデザインは、狭い空間に押し入る能力を伴いながら、さまざまな動作の自由を提供する。

成功へのもう1つの鍵は、地下で自律的に機能できる適切なセンサーを組み込むことだ。なにしろそのような状況下では、ロボットをリモートコントロールすることは難しい可能性があるからだ。

「これらのトンネルシステムは地下に置かれているため、ロボットが適切な場所で移動してトンネルを掘ることができるように、自律的に動きセンシングできる機能を組み込む必要があります」と、プロジェクトリーダーのDeepak Trivedi(ディーパック・トリべディ)氏はリリースで述べている。「幸いなことに、私たちは、ラボ全体から制御、AI、センシングの専門家たちを引き込んで、これらの新機能を統合することができます」。

プロジェクトは有望だが、完成はほど遠い。最終目標は、500メートルのトンネルを秒速10cmで掘り進むことができるロボットだ。なおGEのニューヨーク州ニスカユナで撮影された上記のラボビデオは、4倍に高速化されている。

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(翻訳:sako)

中小企業へ「はやい・やすい・巧いAI」の提供目指すフツパーが数千万円調達

中小企業向けのエッジAIソリューションを手がけるフツパーは5月21日、ANRIから数千万円規模の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社が現在取り組んでいるのは、中小企業の課題を解決するための画像認識AIサービスだ。主なユースケースは食品工場や部品工場における検品業務など、従来は人が目視で行なっていた作業の自動化。工場の現場にAIを組み込んだデバイスを設置し、そのデバイス上で画像認識処理を実行する。

これはエッジAI全般に言える話ではあるけれど、クラウド側ではなくエッジデバイス側で処理を行うことで通信コストを減らせるほか、高速なデータ処理を実現できる。またネットワークを整備するための初期工事なども必要ないため、導入までのスピードも早い。

フツパーでは既存のハードウェアやAIモデルなどを組み合わせ、こうしたエッジAIの恩恵を中小企業が享受できるような仕組みを開発している。たとえばハードウェアはNVIDIA製のもの、AIモデルについてはGoogleやFacebookが手がけるオープンソースのフレームワークを採用。すでに存在する高品質なものを取り入れながら顧客のニーズに合わせてカスタマイズしたモデルを生成し、それを自社の圧縮技術によって手の平サイズのデバイスに搭載して、すぐに使える形で顧客へ届ける。

コンセプトは“はやい・やすい・巧い”AIだ。

「通常、工場の現場などでAIを活用したプロジェクトを始めるとなると数ヶ月かかることも珍しくなかった。自分たちの場合は小型のデバイスを現場にポン付けで導入できるので、すぐにスタートできる。初期投資も少なく手軽に始められるほか、(全てをゼロから自分たちで開発するのではなく)質の高い技術を組み合わせることで安くてもいいものを実現できる」(フツパー代表取締役CEOの大西洋氏)

フツパーは2020年4月1日に広島大学出身の3人が立ち上げた。大西氏は大学卒業後に電子部品メーカーを経て、工場向けのSaaSを展開するAI/IoTベンチャーで営業やPMを経験。取締役兼COOの黒瀬康太氏は日本IBMで多数のAI導入案件に携わった。中小企業向けのAIソリューションをテーマに起業を決めたのは、前職時代に感じた課題感も大きく影響しているという。

「九州の拠点で働いていたので、現地の中小企業の課題を聞く機会が頻繁にあった。(人手不足などもあり)AIを用いた解決策に興味を示す人は多かったものの、大手企業向けのサービスではどうしても金額感がフィットせず、本当に必要としている人たちにサービスが届きづらい状況だった」(黒瀬氏)

特に地方の場合はAIの導入支援をサポートするパートナー企業が少ないため、実際に導入するまでの工程を伴走できるのは大手企業くらいしかいないそう。その結果「ミニマムで数千万円から」といったように料金がエンタープライズ向けの価格帯となってしまい、AIの導入を断念する中小企業も多い。

フツパーでは上述した通り既存のものを組み合わせることでデバイス、モデル作成、実装込みで数百万円前半から導入できる仕組みを構築。判定結果を通知するSaaS型のクラウドサービスも月額数万円から使えるようにした。

「モデルを作る技術などで勝負するというのではなく、導入までの手軽さで勝負をしていきたい。(判定結果を)見れる画面までを用意した上で、デバイスとセットでAIを1日程度で提供でき、なおかつ従来のものと比べて料金的にも安ければ十分にチャンスはあると考えている」(大西氏)

初期は食品系の製造業をメインターゲットとして事業を展開する計画。フツパーが大阪に本拠地を構えていることもあり、まずは関西エリアを中心に事業を広げていく予定で、現在は数社と現場への導入に向けた打ち合わせを進めている状況だ。

直近では新型コロナウイルスの影響も受けて、狭い空間に人員が密集するリスクを出来るだけ避けたいというニーズも工場では生まれているそう。そのような要望への対応策としてもAIソリューションの提供を進めていきたいとのことだった。

事業者がFacebookページとInstagramプロフィールから通販が可能に、Shopifyなどとも連携可能に

5月19日から、事業者のFacebookページとInstagramのプロフィールから直接プロダクトをブラウズしたり、購入したりできるようになる。

Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)どちらもすでにeコマースをある程度サポートしている。例えば、FacebookはMarketplace(マーケットプレイス)を展開していて、暗号通貨Libra(リブラ)を通じてさらにあと押しすることは大いにあり得る。一方で、Instagramではユーザーが投稿や広告で取り上げられたプロダクトを購入できる。しかし今回の新たなツールはその上をいき、事業者がひととおりの機能がそろったFacebook Shopを立ち上げることができる。

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックでは、これまで以上に消費者が地元のレストランや店の情報を調べるお気に入りのソースとしてFacebookとInstagramのプロフィールを活用することになった。もしお気に入りの店が営業時間を変えたり、オンラインデリバリーやカーブサイドピックアップにサービス提供方法を変更したら、その旨を店側はFacebookやInstagramに投稿する。だから、ページを訪れた人がFacebookやInstagramのアプリを離れることなく商品を購入できるようにしない手はない。

パンデミックによる経済停滞は、Facebookにページを持っていたり広告を出したりしていた多くの零細企業に打撃となり、倒産に至らせていることを心に留めておく必要もある。だからこそFacebookはできる限りの方法でそうした事業者が生き残れるようサポートしている。

5月19日のFacebook Liveセッションで、CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は今回の取り組みを、新型コロナウイルスによって苦しんでいる事業者サポートするためのものと表現した。ただ「すべての経済ダメージを帳消しにする」ことにはならないと認めた。

ザッカーバーグ氏はまた、この機能の利便性はパンデミック後も失われないとも指摘した。「オンラインに頼る生活が今後も続き、事業もこれまで以上にオンラインで行われるようになると確信している」。

一方、Instagramのプロダクト担当副社長のVishal Shah(ヴィシャール・シャー)氏は「100万社近くの事業者がすでにサインアップしている大規模でグローバルの機能テストとなる」と筆者に語った。

サインアップしている事業者は無料でFacebook Shopを開くことができる。カタログをアップロードし、取り上げたいプロダクトを選び、それからカバー画像や色のアクセントでカスタマイズする。するとビジターは、プロダクトのブラウズや保存、購入ができる。

Facebookで広告担当副社長務めるDan Levy(ダン・レビー)氏は、購入ごとに「小額の手数料」を徴収するが、主には広告で収益を上げると話した。例えば、ショップは広告やストーリーズで特集されるようにすることもできる。

レビー氏はこれを「ビルド&レンダーのソリューション」と表現し、シャー氏は「ショップはFacebookあるいはInstagramいずれでもしっかり機能する」と付け加えた。消費者がどのようにショップを発見するかだけの違いであり「Facebook Marketplace経由なのか、Instagram上の写真にタグ付けされたプロダクトなのか」ということになる。

同社はまた、Instagram Shopという別のサービスを今夏にも立ち上げる計画だ。Instagram ShopではユーザーはInstagram Exploreから直接プロダクトをブラウズできる。ゆくゆくはアプリのメーンのナビゲーションタブから買い物機能に飛べるようになる。小売業者はFacebook Storeのライブビデオプロダクトで特集したりリンクをはったりでき、消費者はロイヤルティ・プログラムをFacebookアカウントにつなげたりできるようになる。

Facebookは今回の発表で、Shopify、BigCommerce、Woo、Channel Advisor、CedCommerce、Cafe24、Tienda Nube、そしてFeedonomicsと提携することも明らかにされた。

小売業者はFacebook ShopやShopに紐づいている広告の管理でこれらサードパーティのプラットフォームを使うことができる。例えば「Shopifyの小売業者がプロダクトや在庫、注文、配送をShopifyから直接管理しつつ、Facebook Shopsを使ってFacebookとInstagramの中で店のカスタマイズや販売をコントロールできるようになる」とShopifyは説明した。

画像クレジット: Facebook

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(翻訳:Mizoguchi

iPhoneなどの分解で人気のiFixitが医療機器の修理マニュアルのデータベースを無料提供中

デバイスの分解で有名なiFixitが米国時間5月19日に、現在の緊急事態にさらに注力したい、と発表した。これまでの2カ月の間、同サイトはスタッフのおよそ半分を医療機器のマニュアルのデータベースの開発にあてた。この種のデータベースとしては「世界最大」だという。

そこには、数百社分の誰もが自由に使えるマニュアルが13000ほどもある。中にはiFixit自身が制作したものや、多くのエキスパートが寄与貢献したクラウドソーシングの文献もある。

iFixitのCEOであるKyle Wiens(カイル・ウィーンズ)氏は「とても大きな仕事だったが、幸いにも全国の200名を超える司書や文書発掘専門家の協力を得られた。文書官たちの出自は、大学や公立図書館、研究所、保険企業、ソフトウェア企業、それにもちろんバイオメディカルの企業など多岐にわたる。全員がボランティアとして活躍してくれた。彼らが山のようなドキュメントを整理して閲覧と検索が可能な形にまとめるために費やした人時は、数千時間に達するだろう」という。

同サイトは、ボランティアたちのリストも作っており、多数の大学や図書館はもちろんLinkedInのような企業からの参加もある。このようなプロジェクトの遂行は最近まで不可能と思われていたかもしれないが、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで医療の負荷があまりにも過重になっており、多くの人が自分にできることは何でもやろうという気になっているのだろう。

iFixitによると、このデータベースは新型コロナが収束した後も利用可だが、このようなリソースが最も必要なのは、まさに今だ。

画像クレジット:val lawless / Shutterstock

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

英国のエンジェル投資家はロックダウン中の今もアクティブだが、スタートアップたちよ急げ

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックの中での、英国のエンジェル投資家たちの投資戦略に関する調査によれば、エンジェル投資家の65%以上が、ロックダウン中でもスタートアップへの投資を続けていることがわかった、ただしその内容は新規取引が中心となっている。多くの投資家が取引数を増やし、投資額も18%ほど増加しているのだ。

しかし、パンデミックはエンジェル投資家たちが2020年に投資する総資金を61%減らし、投資家の60%弱は、COVID-19が2020年の残りの期間に投資する能力に悪影響を与えると考えている。 TechCrunchがその調査開始を独占的に記事にした後、2週間のうちに250人を超えるエンジェルがサーベイに答えた。

これらは、新しい英国組織であるActivate our Angels(AoA)によって行われた調査だ。この組織は、今週中に開始される予定であるスタートアップのための英国政府の「フューチャーファンド」(未来基金)と同時に立ち上がった(なおフューチャーファンドは、エンジェルやシードステージのスタートアップのニーズには不十分だと批判されてきた)。

AoAは、昨年買収されたGiveMeSportの元CEOで共同創業者のNick Thain(ニック・タイン)氏が立ち上げた組織で、さらに7percent Ventures、Forward Partners、Portfolio Ventures、ICE、Foundrs、Punk Money、Humanity、Culture Gene、Barndance、Bindi Karia、そしてStakeholderzの代表者たちが参加している。

AoAは、創業者たちが、ロックダウンの最中そしてロックダウン後に資金調達の意思決定を行う際に役立つ実用的なデータを提供することを目的に、2週間弱前にキャンペーンを開始した。

調査によれば、エンジェルたちは現在投資を継続しているものの、出資希望の創業者たちはこうした資金を素早く確保する必要があることが示された。なぜなら調査対象となったエンジェル投資家の59%が、ロックダウンが長引くことによって将来の投資が影響を受けると答えているからだ。

これは、スタートアップの調達額が25万ポンド(約3300万円)より少ない場合には、より重要になる。

さらに同調査は、エンジェルが1取引あたりこれまでより18%多く投資しており、取引の頻度も2019年の1か月の0.27取引から、ロックダウン中の過去3か月には1か月あたり0.6取引と122%以上に増えていると結論付けている。

エンジェルたちは、より長いランウェイ(長期資金余力)と収益力のあるビジネスを求めているが、目にしているのはバリュエーションの減少とより小規模なラウンドだ。

さらに、調査によればエンジェルたちが2020年に投資する資金額は2019年と比較して61%にとどまると伝えられている。これは、エンジェルたちが「ロックダウンもとで太陽がまだ輝いている間に、干し草を作ろうとしている」ことを示唆していると、調査は結んでいる。

その結果、エンジェルたちが2020年の残りの期間に投じる資金は大幅に少なくなる。

まだ調達を済ませていないスタートアップの場合には、最初のラウンドをできるだけ早く行うべきであることを調査結果は示唆している。

すでに資金を調達しているスタートアップにとっては、この差し迫ったエンジェル資金不足は、今後立ち上がる政府支援のフューチャーファンドなどの組織を、これまで以上に重要なものにするだろうと調査は述べている。

「ロックダウンの中で投資を行っていないエンジェルは、彼らは現金を握ったまま、COVID-19が終わったことを確信できるタイミングを待っている。彼らに接触するための最良の手段は、ソーシャルメディアではなく、紹介や推薦、電子メールもしくはLinkedIn経由だ」と調査は付け加えている。

調査の結果を以下に要約する。

● エンジェル投資家の66.7%はロックダウン中でもまだ投資している
○ そのうちの77%が新しい取引に投資している
○ 既存のポートフォリオへの投資は23%にとどまる

● エンジェルの33.3%はロックダウン中に投資を行っていない
○ 71%が取引のレビューを行っている
○ 29%まはったく投資していない

● ロックダウン中は各取引ごとに17.6%以上多く投資している
○ ロックダウン中の1取引あたりの投資金額は2万3071ポンド(約300万円)
○ 2019年は1取引あたりの投資金額は1万9620ポンド(約260万円)

● エンジェルはロックダウン中に平均1.81回の取引を完了したが、2019年全体では平均3.24回の取引を行っている
○ 2020年3月23日のロックダウン以降、おおよそ3〜4週間ごとに1取引
○ 過去1〜3か月間は約7〜8週間ごとごとに1取引
○ 過去4〜12か月間は3〜4か月ごとに1取引
○ 2019年は約3〜4か月ごとに1取引

● エンジェルのうち、Covid-19が2020年における自身投資能力にマイナスの影響を与えると考えているのは58.1%、変化なしは27.2%、そして14.7%はプラスの影響を与えると述べている

● 調査したエンジェルのうち、51.4%は2020年の投資額は少なくなるだろうと回答
○ その人たちは、2019年と比較した2020年の投資額は61%少なくなると回答

● エンジェルの33.3%はロックダウンの中で投資をしていない
○ そのうちの47.6%はCovid-19の危機が終わったと確信できるまで投資はしない
○ また28.6%は投資再開を計画していない

● エンジェルの64.9%は、対象とするビジネスセクターを変えている。対象となるのはヘルスケア、フィンテック、ゲームなどだ

● エンジェルの54.1%が投資要件を変更した。その中では、より長いランウェイ、収益力、定期的収益が最も重視されている
○ エンジェルの46.9%は投資要件を変更していない

● エンジェルの68%はCovid-19の結果、取引条件における評価額の減少を見ており、35%はより少額の投資ラウンドを見ている。

● エンジェルとの連絡に関しては、72%のエンジェルが推薦や紹介を通じて連絡を取りたいと考えている。
○ 54%が電子メールも受け入れ
○ 32.6%がLinkedIn
○ 30.9%がエンジェルネットワークも可としている
FacebookとTwitterはエンジェルに連絡する手段としては最も効果が薄く、この手段を受け入れるのは3%以下だった

● エンジェルの70%は、SEIS/EIS(英国のエンジェル投資向け優遇税制)が投資決定にとって重要、または非常に重要、もしくは決定的であると答え、そのうち58%は、SEISの上限額が現在の10万ポンド(約1300万円)から20万ポンド(約2600万円)に引き上げられても、これ以上投資しないと答えている。

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(翻訳:sako)

Uberが新型コロナ禍でさらに3000人解雇、一部オフィスも閉鎖

Uber(ウーバー)は従業員3000人を追加で解雇する。Wall Street Journalが最初に報じている。Uberは45カ所のオフィスを閉鎖し、貨物や自動運転車テクノロジーといった分野の取り組みも見直す。

「難しい決断をしなければならないことはわかっていた。公開会社だからではなく、あるいは株価を守ったり、役員会や株主を喜ばせたりするためではない」とUberのCEO Dara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は5月18日に従業員に送ったメモの中で述べている。TechCrunchはメモの内容を確認した。「世界中の都市にとって必要不可欠なサービスであるという我々の将来のために、何百万という人々や事業者が我々を頼っているという事実のために決断した。成長、拡大、イノベーションを続けるのに新たな資金や投資家に頼ることが今後はないよう、自立性を確立しなければならない」。

米証券取引委員会に提出された書類によると、レイオフの一環として同社は退職給付金やその他の福利給付で1億4500万ドル(約156億円)を従業員に支払い、オフィス閉鎖では最大8000万ドル(約86億円)がかかる見込みだ。

今回のレイオフの数週間前には、Uberはコスト10億ドル(約1074億円)を節約するために従業員3700人を解雇した。新型コロナウイルス( COVID-19)パンデミックの影響で、同社はこれまでに従業員のおおよそ25%を解雇した。

新型コロナで乗車事業はかなりの打撃を受けている。同社によると、具体的には乗車は80%減った。しかしフードデリバリーは絶好調だ。2020年第1四半期のプラットフォーム利用総額は46億8000万ドル(約5024億円)で、2019年同期比52%増と大きく成長した。

「Eatsの成長は加速しているが、社の経費をカバーできるほどではないことをはっきり伝えておきたい」とコスロシャヒ氏はメモの中に書いている。「Rides事業でそうだったように、我々が取っている行動はEatsの収益化につながると信じている。しかし一晩では無理だ」。

一方、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)とBloomberg(ブルームバーグ)によると、Uberはフードデリバリー事業UberEatsを増強するためにGrubHub買収を交渉中だ。WSJの報道では、Uberが2020年初めに買収の話を持ちかけたが、協議はまだ続いているとされている。Bloombergは買収交渉は2020年5月にもまとまる、と報じている。だが、コスロシャヒ氏はメモでは買収については触れなかった。

主要なサービスを整理するという取り組みの中で、Uberは立ち上げて1年も経たないIncubatorを閉じる。またAI Labsもなくし、シフト業務の労働者をマッチングするために2019年10月に立ち上げたサービスUber Worksの代替も探す。

今回の解雇ではドライバーは影響を受けない。ドライバーは現在、従業員ではなく独立請負業者として分類されている。それでも多くのドライバーが新型コロナ禍の中、手厚い保護と社会保障を求めて声を上げ続けている。先週ドライバーたちは、Uberに対し州の失業者保険基金に拠出するよう抗議活動を行った。ドライバーたちはまた、ギグワーカーを独立請負業者として今後も分類することができるようUberがLyftやDoorDashと共に提案した投票の取り組みを断念することも求めている。

画像クレジット: David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

米国の失業者数が3600万人を突破する中、テック企業では雇用増加も

先週米国では、過去2週間の失業申請が3600万件を超えた。パンデミックによる事業閉鎖は無数の業界に打撃を与え、多くの分野で再開の時期は定まっていない。求人大手のIndeed(インディード)は、2019年の同時期と比べて雇用は著しく低調であると最新の報告で伝えている。報道に注目している人にとってはなんら驚きではない。

大規模なレイオフが日常的に起きているように感じる。この数週間だけでもUber(ウーバー)、Lyft(リフト)、TripAdvisor(トリップアドバイザー)、Casper(キャスパー)、Juul(ジュール)の会社が大がかりの解雇を行っており、多くの人はこれを氷山の一角だと思っている。

しかし国が大恐慌以来最悪の失業率を経験している一方で、テック業界は前進を続けている。つまるところこの数カ月間、リモート会議や遠隔医療、フードデリバリーから個人保護具(PPE)製造まで、テクノロジーは一種のライフラインとして機能している。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響(都市封鎖など)に対応するために生まれた新たな職の多くが一時的なものであるのは間違いないが、パンデミックが多くの分野で重要なパラダイムシフトを起こしていると見るのも理にかなった考えだ。社会が新しい日常に適応するにつれ、テクノロジーがその変化を育む力になることは間違いない。

多くの場面で役割を担うのはギグエコノミーだ。DoorDash(ドアダッシュ)のようなフードデリバリーなら配達要員が必要になり、Amazon(アマゾン)なら配送センターの雇用が増大する。しかしこうした職は万人向けとはいえない。仕事によっては労働者の新型コロナウイルス感染リスクを高くする可能性があり、それは企業がウイルス蔓延を阻止するための努力をしていても完全には防ぎきれない。

Zoom(ズーム)のように増加する需要に答え、サービスの人気の高まりとともに露見した古い問題を修正するために、雇用を急増している会社もある。最近同社は、ソフトウェアエンジニア500人を採用する計画を発表した。Cloudflare(クラウドフレア)もテキサス州オースチンに雇用枠がある。一方Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Goolge(グーグル)といったテック巨人も揃って、ロックダウンにも関わらずエンジニアリング職の採用を順調に続けている。

スタートアップに入社することは、現時点では難しい選択だ。小さな会社は著しく不安定な未来に立ち向かっているからだ。新型コロナウイルスが、既に足元の揺らいでいるスタートアップの終結を早める可能性は非常に高い。一方で最近調達ラウンドを完了した企業は有望であり、嵐を乗り切るのに十分な資金を持っている。例えば資金豊富なBerkshire Grey(バークシャー・グレイ)も、ソーシャルディスタンス時代にロボティクスがますます魅力的なソリューションになっている今、拡大を計画している。

テック求人情報を検索可能な単独データベースにまとめているサイトやアプリが新旧取り混ぜたくさんある。新型コロナの流行によって職を失った人を支援するために作られているサイトを以下のリストに載せた。完全に網羅したリストではないが、良い出発点になるはずだ。

画像クレジット:Manuel Breva Colmeiro / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インドのジオ・プラットフォームズにジェネラルアトランティックが約930億円出資

Mukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏率いるJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)は、General Atlanticに対し1.34%の株式を発行することに合意した。インドの大手通信事業者であるJioがこの数週間で実行した一連の取引の中で最新のものとなる。

ニューヨークに本社を置くプライベートエクイティファンドのGeneral Atlantic(ジェネラルアトランティック)は米国時間5月10日、インドで最も企業価値の高いReliance Industries(リライアンスインダストリーズ)の子会社であるインドの通信会社に8億7000万ドル(約930億円)を出資した。創業3年半の同社に大金を賭けたFacebook(フェイスブック)、Silver Lake(シルバーレイク)、Vista Equity Partners(ビスタエクイティパートナーズ)などの米国の投資家に続く。

General Atlanticの出資ではJio Platformsを650億ドル(約6兆9820億円)と評価した。Jio Platformsによるとこの評価額は、Silver LakeとVista Equity Partnersの取引における評価と同じで、Facebookの取引に対しては12.5%のプレミアムが乗っているという。

さらに10日の発表で、Jio Platformsの魅力が高まっていることが明らかになった。同社は過去1カ月で14.7%の株式を売り出し88億5000万ドル(約9500億円)を調達した。急速に成長する世界第2位のインターネット市場に張っておきたいと考える外国人投資家が買い手だ。

General Atlanticは消費者向けテクノロジー分野で著名な投資会社でありAirbnb、Alibaba、Ant Financial、Box、 ByteDance、Facebook、Slack、Snapchat、Uberなど数十の企業に投資してきた。インドでも10年以上にわたり主要な投資会社として存在してきたが、同国での消費者向けテクノロジー分野の投資は避けてきた。

General Atlanticは、バンガロールを拠点とするスタートアップであるNoBrokerを含め、インドのスタートアップ数社に小切手を切っている。NoBrokerはアパートの賃借や購入を考えている人を不動産の所有者とつなぐ。General Atlanticはまた、エドテックの巨人であるUnacademyByju、決済処理のBillDesk、インド国立証券取引所にも小切手を切った。インドでこれまで約30億ドル(約3220億円)を投資したGeneral Atlanticは先週、インド企業に2021年までにさらに15億ドル(約1610億円)の投資を検討していると語った。今回は消費者向けテクノロジーの分野で活動するプレーヤーが対象だ。

Reliance Industriesの会長であるアンバニ氏はJio Platformsの立ち上げに300億ドル(約3兆2220億円)以上を注ぎ込んだ。「Jio Platformsは、General Atlanticが40年にわたるテクノロジー投資を通じて実証したグローバルな専門知識と戦略的洞察を活用する」と同氏は語った。

「General Atlanticはインドのデジタル社会のビジョンを共有し、13億のインド人の生活を豊かにするデジタル化の変革力を強く信じている」と同氏は付け加えた。

小売店で販売されているReliance JioのプリペイドSIMカード (画像クレジット:INDRANIL MUKHERJEE / AFP via Getty Images)

Reliance Jioは2016年後半の創業で、インドの通信業界を割安のデータプランと無料の音声通話で圧倒した。Reliance Industriesの子会社であるJio Platformsは、Jio Infocommという通信ベンチャーを運営しており、設立以来3億8800万人の加入者を集め、国内最大の通信事業者になった。

Reliance Jio Platformsは音楽ストリーミングサービスJioSaavn(公開予定)、スマートフォン、ブロードバンドビジネス、オンデマンドライブテレビサービス、決済サービスなども展開している。

「わずか3年半で、Jioはデータとデジタルサービスの民主化に変革をもたらし、インドを主要なグローバルデジタル経済に押し上げた」とGeneral Atlanticのマネージングディレクター兼インド・東南アジア地域ヘッドのSandeep Naik(サンディープ・ナイク)氏は声明で述べた。

新しい資金はインド最富裕であるアンバニ氏が投資家に約束したことを実現するために使う。同氏は2019年に、Relianceの約210億ドル(約2兆2260億円)の純負債を2021年初頭までにゼロにすることを目指すと述べた。同社の中核事業である石油精製と石油化学製品は、新型コロナウイルス感染拡大の中で甚大な影響を受けた。3月31日に終了した四半期の純利益は37%減少した。

アンバニ氏は2020年4月の同社決算説明会で、フェイスブックとの契約をきっかけに、数社がJio Platformsの株式購入に関心を示したと語った。Bloomberg(ブルームバーグ)は先週、Saudi Wealth Fund(サウジウェルスファンド)がアンバニ氏とJio Platformsの株式購入について交渉中だと報じた

フェイスブックは、Jio Platformsの9.99%の株式取得を通じた資金提供だけでなく、eコマースをはじめとする多くの分野でインドの巨人と協力するとしていた。出資の数日後、インドで最も企業価値の高いRelianceが経営するeコマースベンチャーであるJioMartが、インド最人気のスマートフォンアプリであり同国で4億人を超えるアクティブユーザーを抱えるWhatsAppで「注文システム」のテストを開始した。

ムケシュ・アンバニ氏の長男である29歳のAkash Ambani(アカシュ・アンバニ)氏は声明で「Jioはすべてのインド国民、特に才能のある若者に計り知れない機会を提供するデジタルの力でインクルーシブなインドを作っていく」と述べている。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナ後、スタートアップはどうやって職場復帰するかを米国で調査開始

世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの中で、スタートアップの働き方が将来どうなっていくかに関する総合的な調査を、英国の非営利団体であるFounders Forum(ファウンダーズ・フォーラム)が実施する。この研究は、多くの企業が長期にわたるオフィス閉鎖や「Work From Home(WFH、在宅勤務)」の方針を打ち出していることを受けて行われる。

同グループは、COVID-19 Workplace Survey(COVID-19職場調査)がスタートアップコミュニティーの今後の行動に役立つデータを提供することで、経営者は職場復帰戦略の重要な決定を下し、サービス提供者(アクセラレーター、コワーキングスペース、投資家など)は、「ポスト新型コロナ」世界のスタートアップを最大限支援できるために役立てることを期待している。

このプロジェクトはFounders Forum(ファウンダーズ・フォーラム)、Founders Factory(ファウンダーズ・ファクトリー)、およびfirstminute capital(ファーストミニット・キャピタル)の共同ファウンダー・エグゼクティブ・チェアマンであるBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏が設立した。

ホバーマン氏はTechCrunchのインタビューに対して「ファウンダーは職場復帰に関わる重要な決定を孤独に下さなくてはならない」と語っている。研究の目的は「早期ステージのスタートアップが、オフィススペースやリモートワークに関する戦略について現在実施している方策」を調査することだとホバーマン氏はいう。そしてこの調査結果は「ファウンダーと支援サービスを提供する人たちの両方に関して、スタートアップやその社員たちの置かれた状況を改善するために何ができるかを導いていく」と述べている。

COVID-19 Workplace Surveyでは、回答者が以下のような基本的質問に匿名で回答する。

  • スタートアップはオフィスを再開するのか?
  • しない場合は、いつ再開する予定か?
  • 英国政府が安全であることを通知したらすぐに?
  • 今年? 来年?
  • そのために講じる安全施策は?
  • それ以外に、COVID-19によってリモートワークポリシーに対する考え方がどう変わったか?

「ファウンダーには『他のファウンダーは職場戦略をどう変えているのか』の回答を知って欲しいと思っている」とホバーマン氏は説明した。

さらに同氏は、社員各個人のリモートワーク環境が今後のリモートワークポリシーに対する意見に影響を与えることをファウンダーは理解する必要がある、なぜなら万人向けのソリューションはないからだ、と付け加えた。「さまざまな層がどんなリモートワーク環境を望んでいるかを考えるべきだ」。

コワーキングスペースなどのサービス提供者も、ポストロックダウン環境でスタートアップがどんな作業場所を求めているか(フレキシブルなデスクスペース、共用ミーティングルームなど)を、研究結果から知ることができる

調査は10日間実施され、結果はTechCrunchで公表される。

画像クレジット:Amy Galbraith

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

現場で使える建設施工SaaS「ANDPAD」CFOに元ミクシィ荻野氏就任

写真左からアンドパッド代表取締役社長の稲田武夫氏、取締役CFOの荻野泰弘氏

建設プロジェクトSaaS「ANDPAD(アンドパッド)」を提供するアンドパッドは、ミクシィでCFOを務めた荻野泰弘氏を取締役CFOに迎えたことを5月19日に発表した。同社は5月13日、社名をオクトからアンドパッドに変更し、ロゴ、ブランドステートメントを刷新したことも明らかにしている。

ANDPADはクラウド型の建設・建築施工管理サービスだ。職人や監督など現場で働く人が使いやすいように、スマートフォンアプリも提供されており、写真や図面資料など現場で必要な情報を一覧可能。工程表の共有もできる。資料の確認だけでなく、関係者がやり取りを行うためのチャット機能、日報の共有も現場で対応可能だ。

2016年3月にリリースされたANDPADは、新築からリフォーム、商業建築など、さまざまな種類・規模の施工現場にわたって利用されており、現在の契約者数は2000社を突破、利用ユーザーも10万人を超えた。

アンドパッド代表取締役社長の稲田武夫氏は「この1年、創業者として業界やプロダクトと向き合う時間を重視したいと考え、経験ある経営チームを重視して構築してきた。執行メンバーが増えてきた今、さらに万全な体制で取り組むためには相応の経営力、財務能力が必要と考え、CFOの採用には1年こだわってきた」と荻野氏参画に至る背景について語った。

ANDPADに可能性感じ、もうやることはないと思っていたCFOに就任

荻野氏は、調査会社のマクロミル、モバイル系スタートアップのジェイマジックを経て、2009年12月にミクシィに入社。ずっと財務畑を歩んできた人物だ。

2012年6月、荻野氏がミクシィで取締役CFOに就任したのは、FacebookやTwitterの日本上陸、LINEの登場した頃。前任者で現メルカリ取締役会長の小泉文明氏からバトンを受け継いだが、「ミクシィは右肩下がりで一番厳しい状況にあった。社員500人を乗せた、両翼から煙が出ているジャンボジェットでコックピットに座ってくれと言われたような緊張感があった」と荻野氏は振り返る。

SNSやブラウザゲーム全盛期だった当時にビジネスモデルをフルチェンジし、ネイティブアプリの会社としてミクシィが生まれ変わったのは誰もが知るところだが、当時ネイティブアプリのエンジニアは1桁しかいなかったそうだ。1年で「モンスターストライク」というプロダクトが生まれ、荻野氏のCFO在任中には、営業利益で20億円規模から最大で950億円規模まで会社が成長した。

荻野氏は「ミクシィでのCFO在任中、海外の投資家と質の高い議論を繰り返す中で、海外の投資家が経営者に求めるものは結構シンプルだと気づいた」という。「彼らも株を売ったり買ったりしているだけではない。生涯自分たちが応援できるような会社を求めている。人類を救うような事業、生活を豊かにするような経営者、明日なくなったら困るとみんなに言われるようなサービスを生み出せる、それを大きくできる経営陣を投資家は求めている」(荻野氏)

「CFOはもう2度とやることはないと思っていた」と当時について話す荻野氏。だが「もしCFOとして再登板するなら、こうした世界の投資家から成長を支援してもらえるような企業と出会えたら、もう一度やってもいいと思っていた」と述べている。アンドパッドにその可能性を感じた荻野氏は、稲田氏に会い、CFOとしての参画を決めたそうだ。

稲田氏は「新型コロナウイルスの感染拡大など、外部環境の変化があったときに意思決定を柔軟に、スピーディーにしていくためには、(荻野氏のように)ベンチャー、上場企業での経験と実績のあるメンバーの参画は心強く、非常にいいタイミングだった」と話している。

「(初めは)バックボーンをあまり知らずに話したが、(荻野氏の)視点や着眼点、経験、行動など興味深く聞いた。アンドパッドには僕自身をはじめ、結果を出すことにこだわるメンバーが多いので、その点もフィットすると考えた」(稲田氏)

稲田氏は「彼が入り、僕が口で言っているビジョンを具体的にロードマップに落とし込むとどうなるか、何年かけて実現していくかという議論を、今は多く行っている。特にIPOスケジュールなどを意識しているわけではない」という。

荻野氏も「IPO自体はひとつのマイルストーンというか資本政策上のひとつのイベントでしかない。必要なタイミングで行えばいい。それよりは、この事業をどれだけ大きくできるのかをゴールとして、そこから逆算して何に今取り組むかが一番大事だと思っている」と話している。

建築・建設業界に寄り添う覚悟の表れとして社名を変更

新型コロナウイルス感染拡大の事業への影響について「多少はある」と稲田氏は述べている。「業界には中小企業も非常に多く、資金繰りに困っているという顧客企業も少なからずある。建築業界特有の話では、中国生産の建材が届かず、3月の引き渡し現場で施工が遅延したというようなことも結構聞いている」(稲田氏)

解約率が増えるなどといったことはないそうだが、稲田氏は「事業の業界における価値を見つめ直す時期になっていると強く感じている」と語る。実際、問い合わせは増えているそうだ。

「ゼネコンや屋内施工は中止になっているところが多いが、屋外の現場は、特に地方では、まだまだ稼働しているところが少なくない。ANDPADを使えば、直行直帰で現場を管理できることが評価されているほか、フリーの職人さんの不安を建築会社としてきちんとケアしたい、との思いを持つ企業もあって、施工管理における通年ニーズは上がっている。また(営業などで)外に出なくなったことで、建築業界の経営者が基幹システムの見直しに取り組みたいと検討していて、連絡も多い」(稲田氏)

こうした中、アンドパッドではオンラインで顧客と勉強会を実施しているという。「建築業界は働き方が新しくない。はんこ出社の議論があるが、この業界ではまだ、FAXを受け取ったり、送ったりするために会社に行かなければ、といった段階にある。これをどうIT化していくのかなど、知識の共有で貢献の幅を広げている」(稲田氏)

企業としては「ブランドステートメントは刷新したが、言っていることはずっと変わっていない」と稲田氏。「この業界の『働く』こと、働く人々をいかに幸せにできるかということをビジョンに、ロードマップも変えていない」という。

「専門性のある工事への要望も挙がってきている中、引き続き、粛々とプロダクトを磨き、サービスを向上し、サポートするということをやり続けようと考えている。SaaS事業では『お客さまにプロダクトを作ってもらっている』という感覚が非常に強い。オクトという社名でやっている間は『ほかの事業もやるのでは?』と言われることもあったが、ずっとこの業界に寄り添うという意味を込めて、覚悟の表れとして社名はアンドパッドに変えた」(稲田氏)

また荻野氏は「アンドパッドは建築業界でのカテゴリーリーダーになることを投資家から期待されている」と話す。「衣・食・住のベーシックニーズを支える領域のひとつが建築業だ。その中でオンリーワンとなる、リーダーシップをとる企業がまだないのであれば、自ら作ればよいと考えている」(荻野氏)

荻野氏はエンジニア界のプラットフォームとして、ノウハウやスキル、職歴、行動履歴の管理やソフトウェアのバージョン管理ができるGitHubになぞらえて、ANDPADが建築・建設業界のプラットフォームとして機能する世界観を目指すと語る。

「GitHubと同じように、職人の職歴や施工の履歴、物件のバージョン管理までできるようなデータベースを持つ、大きなプラットフォームを業界の中に築いていきたい。さまざまな業種・業界とも連携し、蓄積した情報を活用することで、業界の人がよりスムーズに仕事が進むようになればよいと考えている。潜在市場が総額1兆円を超える大きなニーズがあるマーケットに対し、この領域で圧倒的なカテゴリーリーダーになることが、我々の最初の目標だ」(荻野氏)

ただいま募集中:自律ロボットオペレーター

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は経済に急ブレーキをかけた、しかし新しく生まれたある仕事は、進み続けているどころか、その速度をさらに増している。

テレオペレーション(より正確に言うなら、自律配送ロボットのテレオペレーション)は、まだ商用化プールの奥深くに潜り込めていないこの業界内のニッチな仕事である。しかし、人間が自律ロボットをリモートで監視および誘導するこの仕事が、過去数か月間の非接触型配送へ需要の高まりとともに成長を遂げてきている。

そして、図らずもCOVID-19が労働力供給源を拡大したようだ ―― 少なくともPostmates(ポストメイツ)にとっては。

オンデマンド配送のスタートアップPostmatesは昨年、自動運転車テレオペレーション企業のPhantom Auto(ファントム・オート)と提携した。Postmatesは、Phantom Autoのソフトウェア開発キットを使用して、Serve(サーブ)という名で知られるクーラーボックス型の自律配送ロボットを、リモートで監視、誘導、または操作する。

このパートナーシップは、Phantom Autoにとっては自動運転ロボットタクシーアプリケーションを超えて、歩道、倉庫、貨物ヤードをターゲットとする物流ビジネスへ多様化しようとする取り組みの一環である。どの分野も現在、自律運用やテレオペレーションが導入されつつある分野だ。

配送ロボットの隆盛

自動運転トラック、ロボットタクシーサービス、ならびに自動運転車技術の他の応用を公道上に展開しようとする「競争」は、COVID-19が登場するずっと以前に鈍化していた。技術者たちが、自動運転車テクノロジーはハンドルを握る運転手がいなくても十分安全であるということを立証するという、予想よりもはるかに困難な課題に深入りするにつれて、実配備の予定はどんどん遅れていった。資本力の乏しい小さなスタートアップの中には方向転換を図ったものもあったが、失敗した企業もあった。

そしてCOVID-19は、1つの例外を除いて開発をさらに遅くした…その例外とは、道路上ではなく、歩道や自転車レーンを走行する自律配送ロボットたちだ。COVID-19が都市、郡、州に在宅命令の発行を促したため、Refraction AI、Starship Technologies、そしてPostmatesなどのスタートアップは、需要が増している。かつては新奇なものであると考えられていた自律型ロボットが、受け入れられ求められるようにさえなったのだ。たとえば、NuroのR2配送ロボットは、COVID-19治療センターに転用されたカリフォルニアの2つのスタジアム周辺へ、医薬品を配送するために使用されている。

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自動配送ロボットの1台を監視しているPostmatesの従業員 写真提供:Postmates

COVID-19が米国に流れ込んだとき、Postmatesの幹部たちは、これは長い試練になるという結論に達した。同社はすでに、エンジニアリングスタッフには在宅勤務を導入していたが、テレオペレーターたちは、まだ会社のオペレーションセンターに通ってきていた。

3月中旬までには、在宅命令がサンフランシスコとロサンゼルスで発令された。どちらの都市も、Postmatesが自律配送ロボットを運用している市場だ。ほどなくPostmatesは行動を起こし、テレオペレーター(彼らの名称に従うならフリートスーパーバイザー)たちを在宅勤務へとシフトした。

「これは2週間や3週間で終わるものではないという認識を、私たちは持っていました」と最近のインタビューで語ったのは、Postmatesの特別プロジェクト担当副社長であるAli Kashani(アリ・カシャニ)氏だ。「私たちは果たせる役割に気付いたのです ―― 実際に何かを成し遂げることができるのです」。

Postmatesは、そのServeロボットの配備を強化する決定を下した、その結果より多くのテレオペレーターが必要になったのだ。こうした自律ロボットオペレーターは、Serveボットが目的地との間を安全に行き来できるようにするために必要とされている。

Phantom Autoのソフトウェアを使用することで、Postmatesのフリートスーパーバイザーたちは、数千キロ離れた場所からロボットを監視することができる。スーパーバイザーは、レストランや受取り手の近くの最初と最後の15フィートでロボットを案内する場合や、混雑した道をロボットが横断するのに助けが必要な場合に介入を行なう。

これらのロボット案内人たちは、いくつかの方法を使って支援を行なう。人間のテレオペレーターは、ロボットが正しい選択をするのを助けるために、OKもしくはNGを伝えるといった形の単純なものを、システムに入力できる。また従業員は、ハンドヘルドのリモートコントローラーを使用して、リアルタイムでロボットの方向を変え、加速、減速することもできる。

オペレーションセンターに人を詰め込む代わりに、Postmatesは技術を従業員の家に持ち込んだ。同社は、Phantom Autoの支援を受けて、自宅のワークステーションをセットアップし、管理者が接続をより効率的にモニターできるように、インターネットをアップグレードし、新しい標準操作手順を開発した。

カシャニ氏によれば、3月中旬に最初の在宅命令が発令された数日後には、Postmatesはフリートスーパーバイザーたちが自宅から働けるようにしたと言う。

COVID-19がなければ、考えれてみれば明らかなこの動きは、決して起きなかったかもしれない。通常の運用状況では、フリートスーパーバイザーたちサンフランシスコとロサンゼルスにあるPostmatesの集中運用センター施設で働いていたのだ。

その仕事が従業員の家に移されたとき、Postmatesはこれまでよりはるかに大きな労働力供給源があることに気が付いた。Postmatesは、自社のオフィスから遠く離れた場所に住む労働者や、自宅からの移動が困難な障害を持つ人々を雇用できるようになったのだ。

3月17日のサンフランシスコでの在宅命令の発令以降、同社はフリートスーパーバイザーの数を30%増やしている。Postmatesは正確な従業員数を発表していない。

カシャニ氏は、ロボット配送への需要が不足したことはないと述べる。「この種のビジネスの制約は、どれだけ多くのロボットを製造して展開できるかだけですよ」 とカシャニは言った。そして、投入されるロボットの数が増えるほど、必要となるフリートスーパーバイザーの数も増えるのだ。

画像クレジット: Ouster

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(翻訳:sako)

締結済みの契約書を自動でデータベース化、LegalForceがクラウド契約書管理システムの事前登録受付を開始

AIを用いた契約書レビュー支援サービスを展開するLegalForceは5月18日、同社にとって新事業となるクラウド契約書管理システム「Marshall」の事前登録受付をスタートした。

Marshallでは「LegalForce」を通じて培ってきた自然言語処理技術と機械学習技術を活用。締結済み契約書のPDFデータをアップロードすれば、自動で契約書のデータベースが構築される。現在は社内やLegalForceの導入企業にてクローズドβ版を運用しながら機能をブラッシュアップしている状況で、今年の8月を目処にオープンβ版をローンチ予定する予定だ。

LegalForceでCOOを務める川戸崇志氏によると、これまで多くの企業では締結版の契約書を管理するためにエクセルなどで作成した台帳に必要情報を手作業で入力してきた。そのやり方では業務負担が大きい上に網羅性を担保するのが難しく、必要な情報へたどり着くまでに時間がかかるなどの課題があったという。

Marshallではテクノロジーを活用して契約書を自動で整理することによりその課題を解決する。特徴は「契約書のデータを取り込むだけで契約締結日や契約当事者名などの情報がテキストデータとして自動で抽出される」点だ。

要はデータベースを作るための膨大な入力業務が必要ないことに加え(ただし紙の契約書の場合にはスキャンしてPDF化する作業は必要)、情報がテキストデータ化されることで「ある契約書の中に特定の条文や文言が入っているかどうか」を調べたいと思った時などに、ピンポイントで検索できるようになる。

クラウド上で契約書を管理できるシステム自体はすでに存在するが、川戸氏の話では「自動でテキストデータ化する機能がついたものはほとんどない」ので、単にファイルをアップロードするだけではタイトルなど限られた情報しか検索できなかった。そのため欲しい情報を得るには結局全文をチェックする手間がかかり、それを避けるには人手をかけてデータを整備する必要があったという。

「法務部門はそんなに人も多くないので、通常の業務に加えて自分たちで細かいデータを手入力していくとなると大変だ。Marshallは後から検索しやすい形で、契約書の情報が自動ですっと入っていくのが特徴。(人力で対応するよりも)データ化の作業工数が減り、紙で管理する場合と比べれば必要な情報を探すのも簡単だ。紙の契約書を確認する必要もないので、在宅勤務にも対応できる」(川戸氏)

MarshallはLegalForce自身が社内で抱えていた課題を解決するために開発したプロダクトでもある。

同社でも細かい契約内容を確認するために締結版の契約書を見返すことがよくあったそうだが、その際に必要な情報がなかなか見つからないのが課題になっていたとのこと。また直近では新型コロナウイルスの影響で管理部門を在宅勤務に切り替えていることもあり、その環境下であってもスムーズに契約書をチェックできる仕組みが必要だったという。

現在クローズドβ版に搭載されている機能については上記の通りだが、今後はオープンβ版の公開に向けていくつかのアップデートを行っていく計画。契約書レビューサービスでは実装済みの仕組みを使って「締結版の契約書についても自動でリスクチェックをする機能」なども予定しているそうだ。

「契約書の中の情報を単に抜き出すだけでなく、テキストデータ化した後でいかに活用していけるかを追求していく。条項単位でリスクを細かく分析できる仕組みもその1つ。LegalForceを通じて締結前の契約書に対してやってきたことを、締結版の契約書に対してもできるようにしていきたいと考えている」(川戸氏)

Everlywellの在宅新型コロナ検査キットが米食品医薬品局の認可を取得

Everlywell(エヴァリーウェル)は、新型コロナウイルス(COVID-19)の在宅検査キットに取り組んでいると最初に発表したスタートアップの中の1社だ。当初、規制当局がガイドラインに沿っていないと判断を下す前にキットを出荷することを模索していた。後に同社は、消費者にキットを提供する前に、FDA(米食品医薬品局)の正規の緊急使用許可(EUA)を取得することにした。そうしたアプローチは報われ、FDAは5月16日に同社の技術に対しEUAを出した。

EverlywellのCOVID-19在宅検査キットではユーザーが自分で検体を採取できる。この手のものをFDAが認可するのは初めてだ。他のキットは医療従事者による検体採取が想定されている。また特定の検査所で調べられるものだったりする。そうした点で、今回の認可はユニークだ。Everlywellはあらゆるテストラボにサンプルキットを提供し、さまざまなラボと協力して検査体制を拡充させることができる。

Everlywellのテストキットは、別の新型コロナEUAが認可されている2つのラボのどちらかに送られる。このラボの数は近い将来さらに増えることが予想される。ただし、EUAを申請し、緊急許可を受けるにあたって必要なデータを提出しなければならない。綿棒を使って鼻からサンプルを採取するやり方で家庭で回収された検体がラボに搬送される間も安定した状態を保てることを示すために、Everlywellはビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援を受けた研究などから得られたデータを提出・開示したとFDAは言及している。

そうしたデータは同様のテストキット提供を考えている他社も閲覧できる、とFDAは述べている。これにより、競合する製品で認可を得ようとしている企業は証明にかかるかなりの負担を減らすことができる。これはひいては、さらなる検査実施につながる。多くの公衆衛生の専門家らは、新型コロナ抑え込みでは検査が鍵を握ると考えている。

「複数のラボで使え、複数のテストに使用できる在宅新型コロナ検査キットの認可では、患者がテストを受けやすくなるだけでなく、ウイルスとの接触から人々を守ることができる」とFDA機器・放射線医学センターのディレクター、Jeffrey Shuren(ジェフリー・シュレン)氏はTechCrunchへの声明文で述べた。「今日の決定は、私費研究のデータがEUA申請をサポートするために業界で使われるという公私提携の素晴らしい例であり、パンデミックに関する取り組みを続ける中で時間を節約することになる」。

画像クレジット: Sebastian Gollnow / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

アップルの上級副社長が新型コロナ対応サプライチェーンの安全性について説明

Apple(アップル)は米国時間5月14日、2020年のサプライヤー責任進捗報告書を公開した。Sabih Khan(サビ・カーン)オペレーション担当上級副社長は報告書中の書簡で、世界中のサプライチェーンにおける安全と保護に関する取り組み強化に向け同社が策定した計画の概要を詳述した。

カーン氏が2019年に現職に就任してから公に何かを発表するのは筆者が知る限りこれが初めてだ。この書簡ではアップルの従業員とサプライチェーンメンバーの「安全で健康的な職場に対する権利」を確保するためのアップルの取り組みについて説明している。

世界で最も優れた家電メーカーであり、ポールポジションに位置する企業として、アップルの取り組みと姿勢は明らかに、いわばつぶさに見られている。アップルの施策は世界中に展開する他の製造業者の手引きとなるだろう。

カーン氏はアップルのサプライヤーにまず感謝し、何千人もの従業員がサプライヤーと協力して事業を継続する計画を立てたと述べている。その計画は、各国の健康に関する推奨事項と新型コロナウイルス(COVID-19)の拡散緩和に関する普遍的なルールを考慮して策定された。

サプライヤーの工場で実施された施策は次のとおりだ。

  • 健康診断
  • 密度の制限とソーシャルディスタンス(社会的距離)の厳格な順守
  • 作業中および共有エリアの両方で個人防護具の使用を義務付け
  • ディープクリーニングプロトコルの実施
  • マスクと消毒剤の従業員への配布

アップルはまた、必要に応じてサプライヤーの工場のフロアプランを再設計・再構成した。社会的距離の確保のために時差勤務シフトなどの柔軟な労働時間も導入している。

アップルは自社のサプライヤーに対して実施したさまざまな安全保護の施策実行に加えて、業界全体のスタンダード確立に向け、NGOや他の組織に同社の計画を共有した。

「我々はあらゆるもののなかで人を第一に考える。そして我々と一緒に働くすべての人に同じことを求める。最高の基準を維持したいと考えるからだ」とカーン氏は書簡で述べている。「当社のサプライヤー行動規範は、あらゆる種類の差別やハラスメントを防ぎ、サプライヤーの従業員が匿名で声を上げられる通報手段を提供する。我々はサプライヤーと提携して教育と訓練の機会を創出している。大学の学位取得プログラム、職業訓練イニシアチブ、健康増進プログラムなどを提供し、従業員が新しいスキルを学び、目標の達成に向けて取り組めるようにしている」。

アップルのサプライヤー報告書は例年2~3月に公開されるが、報告書で新型コロナウイルス対応の詳細を発表する前に、まず保護対策の計画・実行に時間をかけたかったという。

「新型コロナは前例のない挑戦となったが、同僚、友人、隣人の健康を改めて大切に思う人間愛から希望とインスピレーションを得た。自分と他人の健康を思う気持ちは我々がいつも持てるものだ。人と地球を守る我々の取り組みに終わりはないかもしれないが、この先に最高に明るい未来が待っていると今ほど確信したことはない」。

2020年のサプライヤー報告書は、サプライチェーンの従業員5万2000人へのインタビューに基づいている。現在49カ国のサプライヤーを監査しており、2018年の30カ国から増加した。2019年の監査は合計1142件だった。アップルの廃棄物ゼロプログラムは、サプライチェーンからの炭素排出量と廃棄物を削減するために2015年に導入された。報告書によるとこのプログラムは現在、すべての主要製品の最終組み立て、検査、包装工程に統合されている。アップルは2019年に130万トンの廃棄物の埋め立て地行きを回避し、製造工程から出る水の40%(約94億ガロン=427億リットル)を再利用した。

カーン氏の書簡の全文は以下のとおり。

健康が第一です。 今も、いつでも。

世界中の人々が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに伴う多くの困難に直面する中、地球を守り、あらゆる人々に尊厳と尊敬をもって接することの重要性を再認識しました。これは我々の意思決定すべてに反映されている価値観です。

サプライヤー責任進捗報告書は、そうした理念をどの程度実行に移したのか、進捗状況を振り返っています。しかし、私はまず、グローバルサプライチェーンにおいて今、新型コロナという前例のない挑戦に対処し、人々が安全に仕事に戻れるよう、我々がどう行動しているかについて共有したいと思います。あらゆる人々に安全で健康的な職場に仕事に戻る権利があるからです。

パンデミックによって影響を受けなかった国はありません。新型コロナによる複雑かつ急速に変化する影響を乗り切るにあたり、世界中のすべてのサプライヤーのコミットメント、柔軟性、チームへの配慮に感謝したいと思います。我々は当初からサプライヤーと協力して、人々の健康を最優先する計画を策定し、実行してきました。何千人ものアップルの従業員が、世界中のサプライヤーと協力してその計画を実行するために精力的に取り組んできました。

これは何よりもまず、健康診断、密度の制限、工場における社会的距離の厳格な順守など、各国の状況に適したさまざまな保護策について世界中のサプライヤーと協力することを意味します。作業中およびすべての共用エリアの両方で個人保護具の使用を義務付け、ディープクリーニングプロトコルを実施しマスクと消毒剤を配布するためにサプライヤーと協力してきました。

また、当社のチームはサプライヤーと提携し、必要に応じて工場のフロアプランを再設計および再構成し、人間同士の距離を最大化するため、時差勤務シフトを含む柔軟な労働時間を設定しています。我々は、最先端の医療およびプライバシーの専門家と緊密に協力して、高度な安全衛生プロトコルを開発し続けます。

サプライチェーン全体でツールを開発しベストプラクティスを実行するにあたり、業界内外で得た知見を共有しています。我々が何者であるかを長く定義してきた価値が、新型コロナによって弱められることはありません。その価値は我々がお互いやこの惑星に対して負っている責任に根ざしています。

今年のサプライヤー責任進捗報告書では、こうしたことを実現するために2019年に取り組んだことについて説明しています。100%再生可能エネルギーへ移行することであっても、職場での権利について何百万人もの従業員に周知することであっても、事業のすべての側面に当社の価値観を適用します。そして毎年、サプライヤーも順守を求められる基準の水準を引き上げています。

我々はあらゆる事のなかで人を第一に考えます。そして我々と一緒に働くすべての人に同じことを求めます。当社のサプライヤー行動規範は、あらゆる種類の差別やハラスメントを防ぎ、サプライヤーの従業員が匿名で声を上げられる通報手段を提供します。我々はサプライヤーと提携して教育と訓練の機会を創出しています。大学の学位取得プログラム、職業訓練イニシアチブ、健康増進プログラムなどを提供し、従業員が新しいスキルを学び、目標の達成に向けて取り組めるようにしています。

我々は実現したこと、していないことに関して進捗状況を報告し、透明性の確保に努めています。この報告書は、サプライチェーンの5万人を超える従業員へのインタビューと、抜き打ち監査を含む49カ国1000以上のサプライヤー工場監査に基づいています。当社の製品に注ぐのと同様の細部と革新への注意が、この報告書だけでなく、我々の世界中のサプライヤーネットワークが確実に基準を維持するための作業にも反映されています。

我々全員が共有する環境は壊れやすいものです。気候変動との戦いや排出量の削減にこれまで以上に力を注いでいます。戦略的パートナーシップを通じて、当社のサプライヤーは二酸化炭素排出量を削減し、水やエネルギーなどの貴重な資源を節約に貢献しています。グリーンマニュファクチャリングはスマートマニュファクチャリングであり、より広く言えば、環境に良いものはビジネスにも良いことを理解しています。

新型コロナは前例のない挑戦となりましたが、同僚、友人、隣人の健康を改めて大切に思う人間愛から希望とインスピレーションを得ました。自分と他人の健康を思う気持ちは我々がいつも持てるものです。

人と地球を守る我々の取り組みに終わりはないかもしれませんが、この先に最高に明るい未来が待っていると今ほど確信したことはありません。

サビ・カーンはアップルのオペレーション担当上級副社長です。

サビは、サプライヤーに関する責任を含むアップルのグローバルサプライチェーンをリードしています。

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(翻訳:Mizoguchi