「スタートアップ上場支援は取締役会の多様性が条件」とゴールドマンサックスが表明

米国の大手銀行は、世界で最も強力な組織の1つだ。だが、すべての現役企業と同様に社会的意義を保つにはまだまだ努力の余地がある。例えばMorgan Stanley(モルガンスタンレー)は、もっと多くの直接上場が見たいと言う投資家を支援する機会が増えた。大きな影響力を持つ投資家もいるから、彼らに勝てないなら(そして競争で先頭を走りたいなら)協力したほうがいい。

さて、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)は自社に関して現代を象徴する発表を行った。CEOのDavid Solomon(デービッド・ソロモン)氏は1月23日、CNBCに対して今年からゴールドマンサックスは企業の取締役会に少なくとも1名、多様性(ダイバーシティ)をもたらす人物がいなければ、その企業の上場を支援しないと述べた。

「米国と欧州で7月1日から、少なくとも1人の多様性をもたらす取締役候補がいない限り、企業の上場を支援しない。特に女性を念頭に置いている」と、ソロモン氏はCNBCの番組「Squawk Box」で具体的に述べた。

当然のことながら、この発表をマーケティングにすぎないと見なす向きもあるだろう。取締役会に女性が1人もいない企業の公開は当然受け入れられないし、今やさらに「多様性」に富んでいることが望まれるというのが大方の見方になっている。例えばWeWork(ウィーワーク)は昨年、取締役会全員が男性のまま公開しようとしたが、その後すぐに上場前に「混合」の取締役会にすべきと認識した。ただご存知のとおり、同社がS-1を修正してハーバード大学の教授であるFrances Frei(フランシス・フレイ)氏を最初の取締役会女性メンバーに指名するまでに、上場の見込みはすでに崩れ始めた。

上場前に最初の女性取締役を加えることは、最近ではお決まりになっている。もっと興味深い点は、その発表の時期が上場申請ぎりぎりになって行われるかということだ。

2008年創業のAirbnb(エアビーアンドビー)は、2018年に最初の女性取締役を迎えた。IPOが2020年と仮定すると2年前だ。10年というのは取締役会にダイバーシティを欠いた期間としては長いが、異例ではない。Slack(スラック)の最初の女性取締役であるSarah Friar(サラ・フライヤー)氏は、2017年3月に入社した。昨年の直接上場のおよそ2年前ということになる(2年前の時点で創業8年だった)。同様に、現在創業8年のフィットネス会社Peloton(ペロトン)は、2018年春に初の女性取締役としてPamela Thomas-Graham(パメラ・トーマスグラハム)氏を迎えた。同社は昨年の9月に公開した。

その3社について注意する必要があるのは、従業員レベルで起こっていることだ。Slackは何年もの間、事業の中核に多様性を掲げてきた。Airbnbも、より多様な従業員を雇用するという点で成果を上げている。Pelotonは、最近の「性差別主義者」「ディストピア」広告で物議を醸したが、多様性に富む経営陣を擁している。

ソロモン氏を批判しているわけではない。多様性に関しては、わずかなことの積み重ねが大事だ。だが、もしゴールドマンサックスが銀行のヒエラルキーで本当にその地位を維持したいなら、IPO準備の一環で取締役会に女性や有色人種を加えるよりもはるかに大胆な施策は、従業員に多様性が見られる企業の上場のみを支援することになると思われる。

ここでもっと本質的なことに目を向けてみたい。公開会社の取締役が集まって四半期の数字を確認するのは通常年4回だけだ。確かに重要だし必要なことだ。ただ、戦略的目標が確実に達成され、企業に有益な紹介を行うことを保証するという本来の役割を超えて、業界の取り巻きは取締役に重きを置きすぎている(与えられた仕事からすればあり得ない金額がしばしば支払われる)。

1つのアイデアとして、将来の利益の1%をNAACP(全米有色人種地位向上協会)へ還元する企業のみゴールドマンサックスはその上場を支援すると宣言してはどうか。それだけでゴールドマンサックスは、真に進歩的であることを望んでいる創業者や投資家が見ている中でポールポジションを取ることができる。しばらくの間ゴールドマンサックスは多くのビジネスチャンスを逃すかもしれないが、時間が経てば報われるギャンブルになると推測する。

すでに顕在化しているが現実世界に十分な影響を与えていないプロセスを制度化することは、制度化しないよりは多少なりとも良い。ソロモン氏によれば、驚くべきことだが、米国と欧州で最近上場した約60社の取締役会の全員が白人男性だった。

TechCrunchは1月23日、大手銀行がIPO前の企業に関して独自の公約を行うかどうか確認するため、モルガンスタンレー、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)、JPMorgan(JPモルガン)に問い合わせた。いずれも多様性にコミットしていると公言しているが、問い合わせに対するコメントは避けた。

ソロモン氏は以前CNBCに対しこう述べた。「小さな一歩だと思うが、この一歩の方向性を言い換えればこういうことだ。『我々はこれが正しいと思うし、正しいアドバイスだと思っている。また我々は、クライアントが取締役会に女性を迎えるにあたり助けを求めてきたら、我々のネットワークのおかげで、支援できる立場にある』。これは我々がこう自問する1つの例だ。『どうすれば正しいと思うことを実行して、マーケットの進歩に貢献できるのか』」

画像クレジット:Denis Balibouse / Reuters

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(翻訳:Mizoguchi

女性とノンバイナリーの創業を支援するFFAが同じ目的と起源を持つMonarqを吸収し活動を強化

女性とノンバイナリーの起業家のためのアクセラレーター、Ready Set Raiseを運営するシアトルのFemale Founders Alliance(女性創業者同盟、FFA)が、同じ目標と起源を持つニューヨークのインキュベーター、Monarqを買収した。後者が前者に統合されるが、必要に迫られての合併ではなく、幸せなコラボレーションのようだ。

Monarqは3年前の2017年にIrene Ryabaya(アイリーン・リヤバヤ)氏とDiana Murakhovskaya(ダイアナ・ムラホフスカヤ)氏が創立し、これまで32社が卒業した。FFAはその半数を自分の事業の第2陣として受け入れてきたが、第3陣が2020年に始まる。TechCrunchは2019年11月に、同社が150万ドル(約1億6000万円)のシード資金を調達した際、卒業生のGive InKindを取材した。

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FFAのCEO、Leslie Feinzaig(レスリー・ファインザイグ)氏は「MonarqとFFAには共通のスポンサーがいて、数年前にお互いを紹介してくれた。それ以来ずっと関係を保ち、支え合っている。2020年はDianaとIrenaの副業が始まる。Dianaは2000万ドル(約22億円)のVC資金を調達し、Irenaのスタートアップ、WarmIntroは開始直後からかなりの顧客が会員登録している。それはFFAにとっても戦略的な意義があり、全国展開で連帯し、イーストコーストの投資家とメンターのネットワークを強化することができる」とTechCrunchに説明してくれた。

リヤバヤ氏とムラホフスカヤ氏の2人はそれぞれ、The Artemis FundとWarmIntroにフォーカスし、MonarqのアクセラレーターはReady Set Raiseブランドの一部になる。この併合で女性とノンバイナリーのための全国最大のネットワークができあがり、それは参加者の強みにもなる。

これをスタートアップ業界の特殊な部分の整理統合と捉えることもできるが、ファインザイグ氏によると、事業そのものは活況を呈している。

「女性のリーダーシップを求める市場は確実に成長しており、求人をはじめ多くの機会が作られている。最近、違ってきたのは、それが福祉や慈善のような理念ではなく、良好なビジネスであるという認識があることだ」と彼女はいう。

起業家や創業者におけるジェンダーの平等公平性という目標とスローガンは、そのリーチが伸びれば伸びるほど達成の可能性も大きい。規模が大きくなったことによって、すでに良質な両社のポートフォリオも、さらに良い結果を実現できるだろう。

画像クレジット: Li-Anne Diasのライセンスによる

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カナダ・トロントで集合住宅向けに本気のゴミのリサイクル試験が始まる

中国が世界中からのゴミの受け入れを停止してから約1年が経ち、各都市で廃棄物処理の取り組みが進む。かつて中国は世界の都市ゴミの70%を受け入れていた。中国による新しい政策は、ニューヨーク、ロンドン、パリなどの都市がゴミ処理の新しい方法を見つける必要があることを意味する。トロントは、埋め立てまたは廃棄されるリサイクル可能な物や有機物の量を、2026年までに70%削減する目標を掲げている。

とはいえ、都市に共通する1つの問題が目標達成を困難にしている。アパートやマンションなどの集合住宅では、廃棄物をリサイクル可能なものと埋め立てに回すものにしっかり分別するのが難しいのだ。

Sidewalk Labs(サイドウォークラボ)とその投資先であるAMP Robotics(AMPロボティクス)は、トロントで250戸が入るアパートの住民にリサイクル習慣に関する詳細情報を提供するパイロットプログラムに取り組んでいる。「集合住宅はごみの分別が非常に難しい」。Sidewalk Labsのサスティナビリティ担当アソシエイトディレクターであるEmily Kildow(エミリー・キルドー)氏は話す。

建物の所有者と廃棄物運搬業者と協力して、Sidewalk Labsは廃棄物をCanada Fibers(カナダファイバー)の繊維原料回収施設に送る。そこで、Canada Fibersの従業員とAMP Roboticsがゴミを分別する。Sidewalkは廃棄物をさらに細かく選別してデータを取り、アパートの住民に対しSidewalkがどんなリサイクルの取り組みをしているのか説明する。Sidewalkは、3カ月にわたり2週間ごとに、ゴミ分別のコツをアパート全体に対し電子メール、オンラインポータル、掲示板を通じて伝える予定だと話す。

住民にとってはリサイクルできるもの、できないものをより適切に扱うための機会であり、Sidewalk Labsはこの情報が住民の習慣改善に役立つと考えている。ゴミが監視・選別されることを望まない場合、プログラムをオプトアウト(拒否)できる。

Sidewalkの仮説が正しければ、同様の問題に直面している他の都市にも使える技術だ。同社はまた、AMPのゴミ監視に伴うプライバシーに関する懸念を理解している。そこで市と協力して「責任あるデータ使用評価プロセス」をすでに作成し、収集するデータを匿名化し、廃棄物の種類に関するデータのみを収集することを住民に保証する。

「原料回収施設とAMPが収集する個人情報を含まない廃棄物データは、Sidewalk Labs、アパートの住民、建物の所有者が共有する」と同社は述べた。「パイロットプログラム終了時に、Sidewalk Labsは個人を特定できない集計データに基づきレポートを公開する」。

画像クレジット:Ernesto r. Ageitos / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

炭素市場を通じて世界の森林再生を支援するPachama

世界中で、火災や違法伐採により森林の消滅が進行している。干ばつなどの気候変動の兆候に表れているような徐々に進む環境悪化の影響もある

温室効果ガスが大気中に蓄積するにつれ、こうした負の連鎖が気候変動を加速させているようだ。だが、あるスタートアップが、世界の森林に焦点を当てたカーボンオフセットを推進し、植林を促そうとしている。

Pachama(パチャマ)は、企業がカーボンオフセットプロジェクトに資金拠出できる市場を構築するために、410万ドル(約4億5000万円)を調達した。同社には、テクノロジー投資のビッグネームが投資している。自身の投資会社であるSaltwaterを通じて投資するUberの元幹部であるRyan Graves(ライアン・グレイブス)氏、Lowercase Capitalを通じて投資するUberの初期インベスターとして著名なChris Sacca(クリス・サッカ)氏などだ。

PachamaはシリアルアントレプレナーのDiego Saez-Gil(ディエゴ・サエズギル)氏が創業した。同氏がその前に創業した会社は「スマートスーツケース」を販売するスタートアップだった。Pachamaは植林プロジェクトを炭素市場に持ち込み、植林による排出量のオフセット(相殺)を独立の立場から同社のモニタリングソフトウェアで検証する。

「今はもう禁止されてしまったスマートコネクテッドスーツケースを作っていた」とサエズギル氏は語った。「その後、少し休みをとることに決めた。かなり燃え尽きていた。自分探しがしたくて、どんな事だったら頑張れるか見極めようとしていた」。

同氏は南米に行き、ペルーのアマゾンの熱帯雨林を旅行した。この惑星に多大なカーボンオフセットをもたらしている地域で、サエズギル氏は森林破壊の影響を目の当たりにした。「地球上には約10億ヘクタールの植林可能な土地がある」とサエズギル氏は言う。

世界中で炭素市場を独立検証し、その永続化に貢献するというアイデアが投資家を納得させた。Paul Graham(ポール・グラハム)氏、Justin Kan(ジャスティン・カン)氏、Daniel Kan(ダニエル・カン)氏、Gustaf Alströmer(グスタフ・アルストマー)氏、Peter Reinhardt(ピーター・ラインハルト)氏、Jason Jacobs(ジェイソン・ジェイコブス)氏、Lowercase Capitalである前述のクリス・サッカ氏などの個人投資家や、Social+CapitalGlobal Founders CapitalAtomicoなどのファンドが、410万ドル(約4億5000万円)の資金調達に貢献した。

これらの投資家が自由に使えるファンドの資金規模を考えると、少額の資金調達に対しコンソーシアムメンバーの数が非常に多いが、投資家には少し警戒する権利がある。

炭素市場は政策的に推進されている。政策立案者たちは、炭素市場が機能するために必要な高い価格を、排出された二酸化炭素に課すための法案作成に消極的だ。

Pachamaのカーボンクレジット(二酸化炭素排出枠)市場は、極めて重要な局面で立ち上げられようとしている。気候危機への意識はかつてないほど高くなり、企業はよりカーボンニュートラルになろうとしている」とPachamaのリードインベスターであり、新任ディレクターでもあるグレイブス氏は声明で述べた。「Pachamaに引かれたのは、業界に切実に必要とされている信頼をテクノロジーの力でもたらし、カーボンクレジットの購入者に検証可能な結果を提供できることだ」。

だが、意識することと政治的な見地から行動を起こすことは同じではない。Pachamaには、実行可能な炭素取引市場の創造に向けて物事を進めるために、政府と消費者の両方の政治的意志が必要だ。

Pachamaのビジネスは、二酸化炭素等の価格がオフセット1トンあたり15ドル(約1600円)を超えて初めて利益が出る。サエズギル氏によると、現在世界でそのハードルに達しているのは、カリフォルニアとヨーロッパの2つの市場しかない。

Pachamaの創業者にとって、森林の保全と植林のプロジェクトには大きなメリットがある。「認定された森林プロジェクトは現在わずか500件。数万件は必要だ」とサエズギル氏は述べる。「農業と競合することなく植林が可能な土地が地球上には10億ヘクタールある」

「原生林の回復は地球規模の生物多様性の構築に貢献し、産業用の森林育成よりも多くの炭素を回収できる。いずれにせよ、作物栽培や畜産のために森林を破壊するよりはいい」と同氏。

Pachamaは、既存の認証機関が承認したプロジェクトを引っ張ってくる。顧客には、森林再生地の排出量と炭素回収が把握できる衛星画像やセンサーでもってモニタリングと管理サービスを提供する。

ブラジルなど、森林破壊の問題を抱える国々で解決策になる可能性がある。「ブラジル政府は、国のために収入を生み出したいと考えている」とサエズギル氏は言う。 炭素市場が牧場経営と同じくらい儲かるなら、ブラジル、インドネシア、ペルーのような国々で畜産やプランテーション農業の必要性は減るはずだ」。

サエズギル氏によると、現在植林プロジェクトへの投資がほとんど仲介業者を通じてすすめられていることが、不透明性を増しているだけでなく、プロジェクトが二重にカウントされたり再度販売されたりする原因にもなっている。Pachamaには森林プロジェクトの開発者に連絡する担当者がいるため、独立の立場でプロジェクトをリストアップできる。その上で、同社は衛星画像システムでオフセットを検証する。

同社には現在、森林関する23件のプロジェクトがあり、そのうち3つはブラジルとペルーのアマゾンの熱帯雨林だ。米国では、カリフォルニア州、バーモント州、ニュージャージー州、コネチカット州およびメイン州にプロジェクトがある。

サエズギル氏は、新しい需要が見込まれるとして炭素市場の将来に大きな期待を寄せている。例えば航空業界に課されるような新しい規制から生まれる需要などだ。

「航空会社はCORSIA(国際民間航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム)に従い排出量をオフセットする必要がある」とサエズギル氏は言う。そのオフセット量は年間1億6000万トンだ。「さまざまな市場におけるオフセットへの需要が価格を押し上げる」。

画像クレジット:Dmytro Gilitukha / Shutterstock

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Amazonが本社の敷地に収容300名弱のホームレスシェルターを建設

巨大テクノロジー企業がますます大きくなるに伴い、ホームレスの人たちを助けろという業界の指導者たちの声も高まっている。高い給与水準に並行して生活費がかつてないほど高騰している地域では、とくにそうだ。例えば2019年1月には、Facebook(フェイスブック)とChan Zuckerberg Initiativeがそのほかの人びとと共に作ったグループであるPartnership for the Bay’s Future(ベイエリアの未来のための連携)は、数億ドルを投じて庶民に手の届く住宅を増やし、サンフランシスコ周辺の5つの主な郡で低所得居住者の保護を強化しようとしている。一方Microsoft(マイクロソフト)は昨年1月の発表で、高い家賃のために低所得や中所得の人びとが逃げ出しているシアトルとその郊外地区を再び多くの人びとが住める場所にするために5億ドルを拠出すると約束した。

Mary’s Placeのファミリーセンター(画像提供: Amazon)

Amazonも過去にCEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、ホームレス解消のために20億ドルを拠出し、同じ資金で教育などの行政サービスが行き届いていない地区にモンテッソーリ的な就学前教育施設を建設すると2018年の9月にTwitterで発表した。

しかし今回Amazonは、ホームレス救援事業のバーを他社に対して相当高く上げた。同社はシアトルの本社内のスペースにホームレスシェルターを作る。それは、ワシントン州で最大の家族向けシェルターになる。

Business Insiderが米国時間12月30日朝にこのニュースを報じている。そのシェルターのひと晩の収容人数は275名で、家族には個室が提供され、ペットを連れてきてもいい。業務用キッチンもあり、そこでは1年に60万食の食事を作れる。

その施設は新年の第1四半期にオープンし、長年Amazonとパートナーしている非営利団体Mary’s Placeとの提携事業の一環になる。同団体は2016年以降、Amazonのキャンパスにあるトラベロッジ・ホテルの外に、シェルターを運営している。Business Insiderの記事によると、その新しい施設には各年400家族向けのベッドと毛布が用意され、Amazonは施設のオーナーであるだけでなく、今後10年間、またはMary’s Placeが必要とする間、日常経費や修繕費、セキュリティ費用なども負担する。

ホームレスはシアトルのあるキング郡だけでも12500名と言われているが、Business InsiderによるとAmazonのシェルターは微々たる救いであるだけでなく重要な意義もある。それはAmazonが、自分の本社の敷地にシェルターを建設するからだ。

私たちの知るかぎり、ここまでやったテクノロジー企業はほかにない。この決定はまた、増加しているホームレス人口への支援策をめぐる他の都市の、あいまいな姿勢を際立たせる。記憶に残る1つの例は、3月にサンフランシスコ市長London Breed(ロンドン・ブリード)氏が、湾岸道路沿いの駐車場に市の7000名あまりのホームレス住民のうち最大200名を収容する案を述べたとき、周辺住民が反対の声を上げたことだ。その案は後日実現したが。

ニュースサイトのVoxによると、Microsoftの昨年の5億ドルの約束などの企業努力に対しては、賞賛と不満の2つの声がある。不満派は、そういう活動が受け取る無料のパブリシティを問題にしている。Amazonも、2018年の税前利益110億ドルに対して国税を一銭も払っていない。同社はまた2018年に、一般市民に手の届く住宅のために資金を調達しようとしている大企業に課税するなら、シアトルでの建設をやめると市を脅したことがある。

9150億ドルという世界最大の時価総額を誇るAmazonが、それにふさわしいことをしているか。これは確かに今後の探究を要するテーマだ。今や「世界を食べている」と称されるそのほかのテクノロジー企業にもれは言える。しかしそれでも、Amazonのような企業が会社の中心にホームレスシェルターを作ることは、肯定的に受け入れるべきだし見習ってもいいだろう。

Mary’s Placeの執行ディレクターであるMarty Hartman(マーティ・ハートマン)氏はBusiness Insiderに「1つの事業で解決する問題ではない。企業だけでは解決しない。団体でも政府でも解決できない。財団でもだ。全員が力を合わせる必要がある」と語る。

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ビル・ゲイツ、37kgのビックなギフトをシークレット・サンタでプレゼント

クリスマスにはすてきなプレゼントをもらった(贈った)読者も多いだろう。Microsoft(マイクロソフト)のファウンダー、 ビル・ゲイツ氏は2012年からRedditがクリスマスに開催するシークレット・サンタというプログラムに参加している。これはRedditのユーザーにびっくりなギフトが届くという仕組みだ。

ゲイツ氏はサンタ役を大いに楽しでいるようで、2017年にはネコがテーマのギフトパッケージを用意した。これはネコを愛する女性のもとに届けられたが、巨大なネコのぬいぐるみだけでなく、プレゼントを受け取った人には、好きな動物愛護団体に750ドル(約8万2000円)を寄付できる権利も贈られていた。2018年のゲイツのギフトは、自然繊維の織物やギフトカードを作っているミニチュア・ホースのオーナーに贈られた。プレゼントされたのは、ギフトを包むカラフルなテープ、自然繊維、鉛筆、はがき、ミニ・ホースのための毛布、それにハンク・グリーンの熱烈な愛読者だということで、彼のサイン本も入っていた。

2019年、重さ37kgもあるクリスマス・プレゼントを受け取った幸運なRedditユーザーは、デトロイト在住のマーケティングを担当する33歳の女性だった。MarketWatchに「ビル(・ゲイツ)とマッチされたらすてきだと思ってましたが、それが本当になるなんて思ってもみませんでした」と彼女は語った。

女性のRedditプロフィール写真は『スター・ウォーズ』のチューバッカを胸に抱きしめているものだ。『ハリー・ポッター』などファンタジーやゲームのファンでもあるということだった。そこでプレゼントにはハリー・ポッターのサンタ帽やホグワーツ城の模型、任天堂の『ゼルダの伝説』をモチーフにした手縫いのキルト、『ツインピークス』のスタッフが着用していたL.L. Beanのジャケットなどが入っていた。

ゲイツは読書家としても知られており、頻繁に書評や推薦文を書いているが、ギフトにはF.スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』の装丁された草稿のコピーが入っていた。デトロイトの女性は、この数行を2019年始めに結婚した際、ドレスに使っていたという。しかもギフトには、フィッツジェラルドが出版を前にして自筆で訂正を入れた部分のスキャンも含まれていた。

ゲイツがチャリティに力を入れ始めたてからかなりの時間が経つ。Chronicle of Philanthropyの資料によれば、ビル・ゲイツ、メリンダ・ゲイツ夫妻は2018年に推定47億8000万ドル(約5230億円)をチャリティに寄付した。これに夫妻の財団の基金は他の資産からの寄付も含めて455億ドル(約5兆円)に達した。

またゲイツは大富豪、ウォーレン・バフェット氏とともに財産をチャリティに寄付することを約束するギビング・プレッジを創立したことでも知られる。これはビリオネアが資産の大半をチャリティに寄付することを可能にするシステムだ。

Redditのシークレット・サンタに参加しているのはビル・ゲイツだけではない。.たとえばGoogleはPixel 4をプレゼントしている。また3Dプリンターを受けっ取ったRedditユーザーもいる。シークレット・サンタのギフトにはキャプテン・アメリカの盾もあり、手作りの小さな盾が愛犬用に添えられていた。

画像:Bill Gates

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滑川海彦@Facebook

サウジアラビア主催フェスに招待されたインフルエンサーと人権問題

ソーシャルメディアのインフルエンサーは、世界のイベントを適正な価格で宣伝してくれることで知られている。だが、ときどき判断が誤りでだったと判明することもある。米国人モデルでタレントのIsabella Khair Hadid(イザベラ・ヘアー・ハディド)は、あの悲惨な結果に終わったFyre Festival(ファイア・フェスティバル)の宣伝のために、他のモデルたちとバハマで休暇を過ごす様子を描いたチケット販促用の動画を撮影した。そして後に、彼女はそのイベントへの関与を謝罪することになった。

だが、インフルエンサー市場で新たな大失敗と広く認識されるようになったある問題では、謝罪しないインフルエンサーもいる。サウジアラビアのリアドで12月19日から3日間開催されたMDL Beast Festival(MDLビースト・フェスティバル)に、ギャラをもらって参加したセレブやソーシャルメディアのスターたちだ。

サウジアラビア政府が主催する、アートとカルチャーと音楽の大規模なフェスティバルという触れ込みのこのイベントには、モデルのAlessandra Ambrosio(アレッサンドラ・アンブロジオ)、Romee Strijd(ロミー・ストリド)、俳優のRyan Phillippe(ライアン・フィリップ)、Wilmer Valderrama(ウィルマー・バルデラマ)、Armie Hammer(アーミー・ハマー)、DJのSteve Aoki(スティーブ・アオキ)、ソーシャルメディアのスター、Sofia Richie(ソフィア・リッチー)とScott Disic(スコット・ディシック)らが参加した。彼らはみなイベント中に写真を撮られていた。なかには、ハッシュタグ#mdlbeastとともにInstagramなどのソーシャルメディアに写真を投稿し、その国を称賛する者もいた。

MDL Beast Festivalに参加した俳優のRyan Phillippe(画像クレジット: Daniele Venturelli / Getty Images)

このイベントはすべて、サウジアラビアの事実上の支配者であるMohammed bin Salman(ムハンマド・ビン・サルマーン)皇太子の改革努力を宣伝するためのものだ。この保守的な王国は、女性の権利、倫理、少数民族の人権の弾圧で悪名高く、大勢が飢えに苦しみ10万人以上が死亡するに至った長期化するイエメンでのサウジアラビア主導の内戦、ワシントンポスト紙のコラムニストでサウジアラビア人反体制派ジャーナーリストだったJamal Khashoggi(ジャマル・カショギ)氏を国家の命令で暗殺し遺体をノコギリで切断して捨てたとされるおぞましい疑惑、その他、体制に逆らう者を黙らせるための数々の国家的弾圧などといった悪いイメージの払拭に必死になっている。

王国がどこまで改革を進める気かを示すひとつの例として、ハロウィンにリアドで開かれたWWE女子プロレスの試合が挙げられる。アムネスティー・インターナショナル中東および北アフリカ権利擁護ディレクターはこれを「スポーツウォシュ」(スポーツによるごまかし)と呼んでいる。MDL Beast Festivalではさらに、サウジアラビアが建前ながらどれほど進歩的になったかを強調しようとしている。

王国の甘い誘いをはね除けた者もいる。ヒップポップのスターのNicki Minaj(ニキー・ミナージュ)は、7月にサウジアラビアで開かれた別の音楽祭の出演予定をキャンセルした。非営利団体Human Rights Foundation(ヒューマン・ライツ・ファンデーション)からの出演辞退の要請を受けてのことだ。そのときミナージュは、次のような声明を発表している。「私はただ、サウジアラビアのファンにショーを見てもらいたかった。(しかし)問題について勉強するうちに、私は女性の人権、LGBTコミュニティー、そして表現の自由を守る立場を明確にすることが大切だと思ったのです」。

モデルのEmily Ratajkowski(エミリー・ラタコウスキー)も、サウジアラビアの人権問題の記録を見て、MDL Beast Festivalの有償の招待を断っている。「女性の権利、LGBTQコミュニティー、言論の自由、そして報道の自由を擁護する姿勢を明らかにすることは、私にとって大変に重要です。今回のことで、あの国の権利侵害への関心が高まることを期待しています」。

ところがライアン・フィリップは、あの週末の豪華なショーへの招待を受け入れた決断について、Instagramで弁明している。彼は「素晴らしい人たちと、魔法のような日々を過ごした。旅行は大好きだ。異文化も大好きだ。ボクたち人類の調和を通じてつながる方法を探せることは素晴らしい。世界のどこであろうと、こうしたつながりによって、もっとポジティブな変化と進歩がもたらされると期待してる」と書いている。

その決断は、数日後にはフィリップ(やその他の有名人)の評判を貶める結果になってしまった。カショギ氏の事件に関する新たな発見に世界の注目が集まったからだ。

1年以上前に、CIA(米国中央情報局)はサルマン皇太子が暗殺を指示したと結論付けたが、王国は殺人へのあらゆる関与を否定し続け、サウジの工作員が土壇場の判断で行ったことだと主張してきた。なお、その言い分は「工作員は殺害を目的とし、そのための道具も持って訪れている」ことを示す十分な証拠と矛盾するとニューヨーク・タイムズは指摘している。

現在、サウジアラビアの法廷では、秘密のベールに包まれた裁判が行われ、カショギ氏殺害の罪で5人の男性に死刑が、3人に合計24年の懲役刑が言い渡された。サルマン皇太子の元顧問のトップと諜報部元副長官は、どちらも容疑者から除外されている。

ニューヨーク・タイムズ紙によれば、この判決には不服申し立てができるという。ただしサウジアラビアでは死刑は公開斬首になることもあると書かれている。いずれにせよこの判決は、これからの西側諸国の王国との関わり方をさらに複雑にするだろう。インフルエンサーをはじめとする、この国から金を受け取るか否かを判断しなければならない人たちにはなおさらだ。この判決は「ホワイトウォッシュ」(隠蔽工作)だと、アムネスティー・インターナショナルの中東調査ディレクターLynn Maalouf(リン・マルーフ)氏は、多くの人権擁護団体の懸念に応え、23日早朝に声明の中で述べた。

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(翻訳:金井哲夫)

Uberはセクシャルハラスメントと報復で有責となり被害者全員に最大4.3億円を払う

性差別と報復に関する2017年の合衆国雇用機会均等委員会からの告発に対しUberは、440万ドル(約4億円3800万円)の罰金を払うことに合意した。

調査により、Uberが「セクシャルハラスメントがある企業文化と、ハラスメントを訴えた個人に対する報復を許容していた」と信ずるに足る合理的な根拠が見つかったと委員会は米国時間12月18日のプレスリリースで表明している。同委員会は、同社のCEOがTravis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏だった時期に、Uberの職場環境に関する複数の報告に基づいて調査を開始した。

Uberの法務最高責任者であるTony West(トニー・ウェスト)氏は声明で「これまでの懸命の努力によって今ではUberの全社員が、公正と説明責任を重視することの人生における価値を明確に認識している。今後も雇用均等委と共に継続的にこの努力を強化していけることに、大きな喜びを感じている」も語る。

決着の一環としてUberは、最大で合計440万ドルを、2014年1月1日以降Uberでセクシャルハラスメントや報復を経験したと同委員会が認めた者に支払う。Uberはまた、ハラスメントの訴えを複数回行わねばならなかった者と、ハラスメントの懸念にきちんと対応しなかった管理職を見つけるシステムの確立に関しても同意した。

今後3年間Uberは、雇用均等委元委員のFred Alvarez「フレッド・アルヴァレズ)氏の監視下に置かれる。

委員のVictoria Lipnic(ヴィクトリア・リピニック)氏は声明で 「この合意はUberを有責とするものであり、今後はセクシャルハラスメントと報復に対する効果的な対策のモデルを形成することにより、同社が自己を刷新するとともに、テクノロジー業界に変化をもたらすことを、義務付けるものである」と述べている。

この裁定により、2014年1月1日から2019年6月30日までの間のいずれかの時点でUberで働いた女性社員全員にメモが送られる。そして、ハラスメントなどの被害者は、そのときの状況を申し立てることができる。それに対する罰金については、委員会が決定する。

画像クレジット:Anindito Mukherjee/Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

2020年はSTEM分野における女性の活躍の場をどう広げるべきか

職場における多様性と受容に対する高く野心的な目標を設定して2020年を迎えることで、私たちは来る年における私たちのゴールを再設定するチャンスを得ることができる。

画像クレジット:Thomas Barwick (opens in a new window)/ Getty Images

Girls in Techは、STEM分野における女性の活躍の場を整備することに真剣に取り組んでおり、毎年何万人もの個人に対して職業上の最大の可能性を達成するための支援を行っている。10年以上前に、シリコンバレーのスタートアップで働く、唯一の女性エグゼクティブとして私はこの組織を設立した。そのとき感じていた無力さが、他の女性たちがこの男性優位の業界を進んでいくための手助けをする情熱を育てたのだ。

多くの組織、特にMe Too運動とTime’s Up運動 の影響を強く受けたアートおよびエンターテイメント組織は、2020年までに50/50の男女平等を目指して努力しているが、残念な現実として、テクノロジー業界の場合はこの数字に近付くにはまだまだ道のりが遠い。 テクノロジー業界に関しては、2025年が近くなるまで男女平等へと近づくことはないと予測されている。

しかし、進歩は 起きつつある。多くの組織が現在、多様性と受容(D&I、Diversity and Inclusion)に焦点を当てたリーダーシップ役職を設定している。例えばHPのチーフ多様性オフィサー(CDO)であるLesley Slaton Brown(レスリー・スラトン・ブラウン)氏は、10年以上に渡ってHPをハイテク業界で最も多様で受容的な組織の1つとするために貢献してきた。この分野における、もう1人の優れたリーダーは、TwitterのD&I担当副社長であるCandi Castleberry Singleton(キャンディ・キャスルベリー・シングルトン)氏だ。変化を受け容れるD&I担当の幹部と企業によって、私たちは目標に到達することができる。

ペースを加速させるべき正当な理由がある。 BCGによる最近の研究によれば、「リーダーシップチームの多様性を高めることで、イノベーションがさらに改善され、財務パフォーマンスが向上する」ことが示唆されている。BCGは、さまざまな業界で規模もまちまちな企業を、8か国1700社にまたがって調査した。この研究は多様性の増加が収益に直接影響することを発見した。実際にこのレポートでは、より多様な管理チームを持つ企業はイノベーションのおかげで19%高い収益を得ていることが報告されている。

この発見は、イノベーションが成長の原動力であるハイテク企業、スタートアップ、および産業にとって重要なものだ。明らかに、D&Iは「やるべきこと」をリストアップするための単なる指標ではなく、収益性の高いビジネスにおける不可欠な部分なのだ。単純化して言えば、高い多様性がよい高い収益につながっているのだ。

それでは、個人としてどうやってそこに到達すればいいのだろうか?スタートアップエグゼクティブから創業者に至る道のりで、私は多くのことを学んできたが、私はここに挙げる知恵が、読者がキャリアに手をつけるための役に立つことを期待している。

  • あなたのための、メンター、セラピスト、そしてチアリーダーとして振る舞ってくれる、経験豊富な専門家である「パーソナルアドバイザリーボード」を任命しよう。そうした人たちは、重要な意思決定、複雑な課題、独特な職場関係に直面したときに、頼れる極めて貴重なガイドになる。アドバイザリーボードへの参加を検討できる人物には、元上司、業界内の仲間、経験を分け合える家族ぐるみの友人、そして協力的な大学教授さえも含まれる。定期的にそういう人たちと直接会ったり、電話またはビデオ会議で顔を合わせて、自分自身のキャリアの上手く行っている点とうまく行っていない点について話してみよう。あなたが目標にこだわとうとするときに、そうしたひとたちは現実を確認するための役に立つ。そしてそれらは少しだけガイダンスがなければ厄介な状況に陥る局面で、非常に有益なものとなり得るのだ。
  • 報酬の公平性、D&Iへの取り組み、トレーニング、そして福利厚生などに、高い「カルチャースコア」を持つ企業に雇用機会を求めよう。Comparablyなどのオンラインサイトを使用して、カルチャースコアを検索してほしい。障害者雇用に対応している組織を探している場合には障害者平等指数(Disability Equality Index)を使用してスコアを調べてみよう。 LinkedInなどのサイトを使用してネットワークをスキャンして、企業文化についてさらに調べる前に、事前に会話できる組織内への接続ポイントを見つけよう。また、現従業員および元従業員の企業の匿名レビューを提供するGlassdoorなどのオンラインリソースをなるべくたくさん確認することを検討してほしい。大事なインタビューに臨んだときには、こうした分野に関する詳細な質問で文化について問合せよう。どんな採用担当者も、自分の会社には「素晴らしい文化」があると言ってくるが、それが口先だけのことではないことを明らかにさせる厳しい質問を投げかけよう。
  • 重役の部屋または会議室でははっきりと発言しよう。あなたの考えが重要なのだ。それらを相手と共有して議論することを恐れないようにしよう。提示されている内容が理解できない場合には、質問をして明確化を求めてほしい。そうした疑問を抱くのはあなた1人ではない可能性は高い。また、机に向かった席を選ぼう。これは文字どおりの意味だ。私はこれまで、多くの女性が壁際の席を選び、自分が「たいしたことのない人物」だというメッセージを安易に送っている場面に遭遇してきた。
  • 職場のいじめには立ち向かおう。いじめは、男女を問わず、さまざまな形と規模でやってくる。いじめ側に対抗することは、あなたの職業生活において最も困難なことの1つ。感情に流されないことが重要だ。いじめを受けた場合には、深呼吸をして3つまで数え、考えをまとめて次の行動を決定しよう。「この件について、直接話し合うために今日の午後時間を割いて貰えますか?」と言うこともできる。これはいじめ側に注意を喚起し、そのふるまいにあなたがタイムリーに反応するという姿勢を明確にするし、あなた自身にも考えをまとめる時間を提供してくれる。誰かがあなたをいじめるためにメールを使用している場合には、すぐに応答してはいけない。その代わりに、数時間待ってから応答しよう。また、電子メールに対する応答には電話を使うか、直接相手の目の前に行き、会話を続けることを検討してみよう。いじめをする人間は電子メールの後ろに隠れていて、双方向の対話の場に引き出されると、攻撃する力を失ってしまいがちだということに気が付くことになるだろう。それでも問題が解決しない場合は、いじめ行為の日付、時刻、詳細とともに、攻撃的な行為を記録して文書化しよう。この情報を使って、人事チームに指導を求めてほしい。HRが問題の解決に役立たず、嫌がらせや差別が続く場合は、雇用問題専門弁護士の支援を求めて、あなたの権利を守るようにしよう。これは、理由もなく組織から解雇された場合に特に推奨される。そして、もしあなたがボスなら、チーム内のいじめを容認してはならない。チームと組織全体の改善のために、そうした行為をすぐに止めさせることが重要だ。
  • 真剣に考え、自信を持って意思決定をしよう。メール中の感嘆符やスマイリーフェイスはすべて考え直そう。もちろん特定の状況下では問題ないが、ぶりっ子でプロらしくないと見えることもあるからだ。特に女性は、こうした感情を表す文字表現によって、会話を「和らげよう」とする傾向がある。メッセージの受け手とその動機付けの方法を学ぼう。もし週末のソフトボールの試合の計画を任されているのなら、チームを発奮させるために感嘆符を使いたくなるだろう。しかしプロジェクトの状況を尋ねる際に感嘆符を使うことは意味がまったく違う。口頭でのコミュニケーションに関して言えば、「Just」(まあちょっとね〜)とか「uhm」(ふ〜ん)といった、リーダーシップを傷付ける可能性のある意味のない言葉に注意しよう。声の抑揚も、他人があなたの自信をどのように受け取るかに影響を与える。伝えたいことを疑問文のように表現してはならない。
  • 本当にそう思っているのでない限り、「it’s ok」(大丈夫)とか「no big deal」(大したことない)と言うことをデフォルトにしてはならない。例えば、誰かが遅刻したり、あなたが受け入れにくいことをしたりしたときには、「I understand that happens sometimes」(そんなときもあることは理解できる)と伝えることを考えてみよう。あるいは先方が率先して謝ってきたときには、「apology accepted」(お詫びは確かに受け取りました)と言ってみよう。このようにして、彼らの行動が自分に対して及ぼした影響を、軽微なものとして単に流してしまわないようにするのだ。そして、同じ行動が再び起きることを無意識に許してしまっているわけでもないということだ。

最後に。あなたが途中で学んだリソースと知見を共有することで、若い女性たちが高みに登るためのハシゴをあなたも下ろしてあげて手助けすることも忘れないでほしい。あなたが働いている会社のメンターとしてボランティアを申し出よう。正式なメンターシッププログラムがない場合には、まずその整備の支援を申し出よう。組織の外でほかの女性を助ける機会を探そう。あなたの助けになる非営利団体は無数にある。ガンジーが言ったように「あなたが世界で見たいと願う変化そのものに、あなた自身がなりなさい」ということだ。

【編集部注】著者のAdriana Gascoigne(エイドリアナ・ガスコイン)氏は、テクノロジー業界の女性たちに力を与え、教育し、指導することに専念している世界的非営利組織Girls in Techの創業者兼CEOだ。

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(翻訳:sako)

Googleがまたも活動家社員を解雇、特権的アクセスを乱用したという理由で

Google(グーグル)はまたも活動家の社員を解雇した。解雇されたKathryn Spiers(キャスリン・スピアーズ)氏は、プラットフォーム・セキュリティーチームで、ウェブサーフィン中の社員に会社のガイドラインやポリシーを自動的に通知するブラウザーツールのコードを主に書いていた。

ピアーズ氏によると、Googleは彼女が同僚に労働者の権利を教えるためにブラウザー通知を作ったために解雇したという。同氏がそのツールを作るきっかけは、Googleが組合つぶしの会社を雇ったというニュースや、Googleが組織化を試みた社員に報復措置をとったとの疑いからだった。通知には「Google社員には『保護された団結行動』に参加する権利がある」と書かれていた。

「Google在籍中、同社に全幅の信頼を寄せ、常に疑わしきを罰せずとして来た人たちが、Googleはあらゆる理由をつけて労働者を標的にしていると言うように変わるのを見てきた」とピアーズ氏はTechCrunchに話した。「会社は社員のそんな気持ちを裏切り、Googleに対する信頼を失わせるような行動を繰り返してきた。私がブログに書いたように『透明性のないGoogleは、信頼できないGoogleだ』」。

そのブラウザーツールを作ったことに対して、Googleは事前警告なくピアーズ氏を解雇したとされている。それはGoogleがサンクスギビング・フォーと呼ばれる4人組を解雇したのと同じ日の出来事だった。4人はGoogleは自分たちが組合を作ろうとしたために解雇されたと主張した。同氏によると、Googleは3回にわたって彼女を尋問し、組織運動や職場を混乱させる意図があったかどうかを追及した。

「取り調べは非常に攻撃的で違法なものだった」とピアーズ氏はMediumに書いた。「弁護士とも誰とも相談することは許されず、職場で権利を行使したことについて、私や同僚に罪を負わせようと執拗に圧力をかけた。そして12月13日の金曜日、Googleは会社のセキュリティーポリシーに違反したとして彼女を解雇した。

「特権的アクセスを乱用して社内セキュリティーツールを改変した社員1名を解雇した。これは重大な違反行為である」とGoogle広報はTechCrunchに話した。。Googleの技術基盤セキュリティー・プライバシー担当のバイスプレジデントであるRoyal Hansen(ロイヤル・ハンセン)氏は社員宛てに送ったメールで「ピアーズ氏はチームの許可なくビジネス的正当性もなくポップアップを作成した」と書いた。

「はっきりさせておきたい。この問題はメッセージがNLRB(全国労働関係委員会)の通告や労働者の権利に関係していたことが理由ではない」とハンセン氏は書いた。「この決定はポップアップがどんな内容であった場合でも同じだった」。

「周知の通り、我々は社員が当社の社内ツールやシステムに対する特権的アクセスを適切に遂行すると信じている。セキュリティー・エンジニアとして持っていたアクセス権を乱用したことは信頼責任に対する許されない違反行為である」と同氏は付け加えた。

現在ピアーズ氏は弁護士を立てて不当労働行為の訴訟を準備している。全国労働関係委員会に提出した訴状の中で同氏の弁護士は、Googleによる尋問および解雇は「ピアーズおよび他の社員が保護された団結行動の権利を行使することを阻止するために行われた」と主張している。

ピアーズ氏がMediumに書いた記事によると、Google社員の中には作業効率を上げるためや趣味や関心を共有するためにコードを改変している者もいるという。彼女は昨年のストライキの際に、何者かがデフォルトの壁紙をLinuxペンギンが抗議のプラカードを持っている画像に変えたことにも言及した。

「会社はこのような行動に対して攻撃的対応を行ったことはかつてなかった」とピアーズ氏は書いた。「常に称賛されている会社カルチャーの一部とされている」。

Kathryn Spiers氏

一連の出来事は、保護された行為である組織活動を理由にGoogleがサンクスギビング・フォーを解雇したことに対し、4人が全国労働関係委員会に不服申立てを行ったのに続くものだ。11月にGoogleは、Rebecca Rivers(レベッカ・リバーズ)氏とLaurence Berland(ローレンス・バーランド)氏を会社ポリシーに違反したとして休職にした。当時Googleは、一人は業務に関係のない機密文書を検索、共有し、一人は一部のスタッフの個人カレンダーを盗み見たと語った。二人を支援する抗議の後、リバーズ氏とバーランド氏は他の二人の社員とともに解雇された。

サンクスギビング・フォーは、臨時雇用、ベンダー、契約社員らに対するGoogleの扱い方や、組織活動した社員に対する報復措置、税関国境警備局と会社の関係などさまざまな話題を取り上げていた。

ピアーズ氏も同様にさまざまな問題について組織活動を行っていた。Googleに入社した最初の週に同氏は、軍用ドローン契約を更新しないよう会社に要求する書簡に署名した。Googleの税関国境警備局との関係についても活動を組織した。

「Googleは税関国境警備局が人種差別や外国人嫌悪の移民ポリシーを強制する手助けをすべきではない」とピアーズ氏は言った。「Googleの警備局との関係について社内で投稿したが、コミュニティーの管理チームに削除された」。

昨年のストライキ以来、何人もの社員が組織活動を理由にGoogleから報復を受けている。ストライキ主催の中心人物だったMeredith Whittaker(メレディス・ホイッテカー)氏とClaire Stapleton(クレア・ステイプルトン)氏は報復措置を報告した。その後ホイッテカー氏ステイプルトン氏はGoogleを辞めてそれぞれの生活を送っている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FBIが信用情報機関に大量の消費者情報を要求していたことが明らかに

最近公開された文書によると、FBI(米連邦捜査局)は長年にわたり、米国の複数の大手信用情報機関に膨大な量の米国人の消費者情報と財務情報を密かに要求していた。

FBIは常時この種の法的権限を行使している。国家安全保障書簡(FBIの命令書)を発行し、大手の信用情報機関に購買記録や場所など、政府が国家安全保障の調査に必要と判断する非内容情報(電話であれば通話内容が内容情報にあたり、電話番号は非内容情報)を提出するよう命じた。国家安全保証書簡には司法による監視がなく、通常、口外禁止命令を伴い、受領者は受け取った事実を明かすことはできない。

これまでFacebookGoogleMicrosoftなどの限られたテクノロジー企業のみが、国家安全保障書簡を受け取ったことを表明した。米国政府の監視活動の範囲に関するEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏の暴露を受けて2015年に法律が変更されて以来、受領者はFBIに対し口外禁止条項からの除外を申請すれば、一部墨消し(白抜き)で書簡を公表できる。

テクノロジー企業は「透明性レポート」を発行して、政府のデータ開示要求をユーザーに通知してきた。しかし、信用情報機関などの他のデータ収集者は、要求回数などの数字を公表してこなかった。

民主党の上院議員Ron Wyden(ロン・ワイデン)氏、Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)氏、共和党の上院議員Rand Paul(ランド・ポール)氏は、Equifax、Experian、TransUnionに書簡を送り、大手信用情報機関が受けた政府のデータ開示命令の回数をなぜ明らかにしなかったのか、と「警告」を表明した。

「貴社は米国人に関する大量の機密データを保有しており、個人から同意を得ずに情報を得ていることから、データの取り扱い方法について透明性を保つ責任がある」「残念ながら、貴社がFBIに開示した情報の種類や数について、政策立案者や一般の人々に情報を提供していない」。

Equifax、Experian、TransUnionの広報担当者は、営業時間外のコメントの要求に応じなかった。

2001年に法的権限が発効して以来、信用機関に発行された国家安全保障書簡の数は不明だ。ニューヨークタイムズは、信用情報機関への国家安全保障書簡は、これまでにFBIが発行した50万件の書簡のうちの「わずかだが重要な」一部だと報じた。

冒頭の文書によると、他の銀行、金融機関、大学、携帯電話会社、インターネットプロバイダーは、国家安全保障書簡の標的だった。上院議員は、各機関が受け取った政府からの要求の回数を12月27日までに開示するよう求めた。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

2020年1月10日に東京・原宿オープンするAllbirdsのコンセプトストアの場所はココ

既報のとおり、シリコンバレーで人気のスニーカーブランドであるAllbirdsは、2020年の1月10日に東京・原宿にコンセプトストアをオープンする。具体的な場所は、JR原宿駅の竹下口改札から出た場合、すぐ前の横断歩道を渡り、竹下メルペイ通りの手前を右に曲がればいい。

関連記事:Allbirdsが1月10日原宿に上陸、シリコンバレーの人気スニーカーブランドがついに日本に!
右に曲がるとすぐに目に入るサッカーショップKAMOの店舗の先(正確には2軒先)にある原宿神宮の森ビルの1FがAllbirdsだ。現在、Allbirdsの特徴的なロゴと、COMING SOONの文字、URLが記載された目隠し用のシートで覆われている。

同ビル1Fの床面積は63.82坪(約211平方m)。一般的なコンビニエンスストアの床面積が50〜60坪、ユニクロが駅ビルなどに展開する小型店の床面積が50坪程度なので、Allbirdsの店舗も数十人が一挙に入るとかなり混雑するだろう。なお店舗の営業時間は11時〜20時。ウェブサイトを確認するとオンラインストアも準備中のようなので、わざわざ店舗に出向かなくてもOKだ。なお、写真だとエントランス部分が非常に狭く感じるが、奥に行くにつれて広くなるレイアウトになっている。

原宿駅から徒歩1分の場所で、表参道口と竹下口の中間に位置する超好立地。おまけに人通りも多いので1月10日のオープン日には相当な混雑が予想される。ちなみに原宿駅のホーム上からもコンセプトストアの位置は確認でき、渋谷行きの2番線のホームドア6号車3番ドアあたり付近がちょうと正面になる。

スティングレイでの携帯通信傍受で人権団体ACLUが米当局を提訴

米国における最大の人権団体の1つが、物議を醸している携帯電話監視テクノロジーについて、国土安全保障省下の2機関を提訴した。公文書請求の一環で請求した同テクノロジーについての書類を2機関が提出しなかったと主張している。

米自由人権協会(ACLU)は12月11日、税関・国境警備局(CBP)と出入国管理および通関(ICE)を相手取って連邦裁判所に訴えを起こした。ACLUは2機関が基地局なりすましの「スティングレイ」に関連する記録を出さなかった、と非難していた。

スティングレイは携帯電話が接続されるよう携帯電話通信基地局を装う。これによりオペレーターはデバイスの固有識別子を集め、ロケーションを突き止めることができる。スティングレイは監視のために使われるが、レンジ内のすべてのデバイスも罠にかける。最新の高度なものは、レンジ内の全ての通話やテキストメッセージを傍受できるとされている。

2016年の政府監視レポートでは、CBPとICEが12基以上のスティングレイの購入にそれぞれ1300万ドル(約14億円)を支出したとされている。このスティングレイをCBPとICEは「逮捕・起訴された人の居場所把握」に使ったとACLUは指摘した。

しかしスティングレイの技術についてはほとんど知られていない。というのも携帯電話の通信傍受の技術は、デバイスメーカーとの厳しい機密保持契約のもとにほぼ警察当局や連邦機関に限定して販売されているからだ。

ACLUはテクノロジーそのものについて、そしてどのように使用されるのか調べるべく、2017年に情報公開法に基づいて請求を出したが、CBP、ICE共に書類を一切出さなかった、とACLUは話した。

ACLUは記録が残っていると思わせる証拠があると指摘したが、そうした書類を入手するための「万策が尽きた」。そしていま、2機関に対して記録を出すよう裁判所に強要してほしいと考えている。「政府による入国管理での強力な監視技術の使用に光をあてるためだけでなく、この技術の使用が合憲で法的必要条件をクリアしているかどうか評価するためであり、監視技術の使用は適切な監督とコントロールが条件となるものだ」と訴状に書いている。

ACLUは2機関のトレーニング材料とガイダンスの書類、そして米国のどこにいつスティングレイを設置したのかを示す記録を要求している。

CBP広報のNathan Peeters(ネイサン・ピータース)氏は、係争中の訴訟についてCBPは政策上コメントしない、と話した。ICEの広報はコメントしなかった。

画像クレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

ヘイトスピーチ、無言の脅迫、違反常習者に厳格に対応するYouTubeの反ハラスメントポリシー

YouTubeのCEOであるSusan Wojcicki(スーザン・ウォシッキー)氏は、先月発表した四半期書簡の中で、新たな反ハラスメントポリシーを検討中だと述べていた。米国時間12月11日、その努力の結果として、脅しや個人攻撃に対する毅然とした立場、有害コメント対策、違反常習者への厳しい対応を含む新しいポリシーが示された。

「ハラスメントは、意見を言いたい気持ち、他者とつながりたい気持ちを萎縮させ、私たちのコミュニティーに損害を与えます。私たちは、今回もまた、この改訂版ポリシーの策定の間に会ってくれたみなさんを含め、クリエイターたちから意見を聞いています」と、YouTubeの信頼グローバルヘッド副社長Matt Halprin(マット・ハルプリン)氏は発表の際に述べている。

YouTubeは、以前、ウォシッキー氏が表明していたように、今後もオープンプラットフォームであり続けると主張している。とは言え、ハラスメントは容認できない。そこで、YouTubeのクリエイターやコミュニティーをハラスメントから守るために、最善と思われるいくつかの対策を打ち出した。

今回のポリシー策定にあたり、YouTubeは、ネット上のいじめを研究する団体、ジャーナリストを代表する擁護団体、表現の自由を支持する団体、あらゆる政治的立場の組織など、幅広く専門家から意見を聞いた。

ポリシー改訂の第一段階は、無言の脅しに関するものだ。

今までYouTubeは、あからさまに人を脅す動画、知られたくない個人情報を晒す(ドキシング)動画、誰かをいじめるよう奨励する動画を禁じてきた。今回から、このポリシーに「無言の、または暗示的な脅し」も含まれるようになった。これには、個人に暴力を加えるふりをすること、物理的な暴力が発生すると示唆する言葉を使うことなどが含まれる。

YouTube Creators YouTubeのハラスメントを予防するようもっと努力せよと、大勢のみなさんから意見をいただいてきました。そこで、クリエイター、専門家、団体などから幅広く話を聞き、ハラスメントに関するポリシーの変更を検討し、本日、改訂となりました。詳しくは下のリンクを
YouTube Creators 人種、身体的特徴、性的指向、宗教、性別など、人の固有の特性を長期にわたり中傷する言葉の暴力には厳格に対応。ただしこれは、幅広い芸術表現や重要な課題に関する議論などに対する我々のオープンな姿勢には影響しません

新しいポリシーでは、保護された特性、つまり、人種、性別表現、性的指向、宗教、身体的特徴に関して人に「悪意をもって侮辱する」言葉も禁じている。

そこは、YouTubeが特に強く批判されてきた領域だ。最近では、Steven Crowder(スティーブン・クロウダー)論争がある。保守系コメンテーターであるクロウダー氏は、ジャーナリストのCarlos Maza(カルロス・マザ)氏のことを話すたびに、繰り返し、人種差別的、同姓愛者嫌悪的な言葉を使っていた。

YouTubeはそのチャンネルの広告による収益化を停止(デマネタイズ)したが、動画はポリシーに違反していないと主張していた。しかし後に、この件に関するポリシーの見直しを行うと宣言した。

YouTubeのオープンな性格は、今月も、ウォシッキー氏が米国の伝統的なニュース番組60 Minutes(シックスティー・ミニッツ)でこのYouTuberのためのプラットフォームのポリシーを擁護したことから問題視された。

記者のLesley Stahl(レスリー・ストール)氏が的確に指摘してように、YouTubeは民間事業であるため、表現の自由を保障した米国憲法修正第1条の法的な影響を受けない。すなわちYouTubeは、そのプラットフォームでは何が許され何が許されないかを独自のルールで規定できるということだ。しかし、YouTubeは長年にわたり、白人至上主義者が人々の教化に利用したり、陰謀論者が怪しい陰謀説を言い触らした結果、ピザゲートのように実際の暴力事件に発展することがあっても、憎悪に満ちたコンテンツや偽情報の拡散を許すプラットフォームのデザインを堅持してきた。

特にYouTubeは、このポリシーは、一般個人、YouTubeクリエイター、さらには“公務員”など、すべての人に適用されると話している。この件に関しては、Twitterのポリシーとは対照的だ。Twitterでは、ルールに反する公務員のツイートは削除されないが、わざわざクリックしなければ読めない場所に隠される。

もうひとつの大きな変化は、必ずしも一線を越えていなくても、規約に違反していなくても、反ハラスメントポリシーに何度も「かすってくる」ような動画には強い態度で臨むという点だ。

つまり、動画でもコメントでも、日常的に他人を侮辱するようなクリエイターは、YouTube パートナープログラム(YPP)の資格が停止される。これにより、態度が不適切であったり、広告主に対してブランドセーフティーではない動画のクリエイターにYouTubeが対処できるようになる。さらに、YouTubeはこの規則の解釈に応じて、個別に、折に触れて、聴取できるようになる可能性もある。

クリエイターのYPP資格の停止はひとつの段階だ。それでも他人へのハラスメントが止まらないときは、そのクリエイターには警告が発せられるようになり、やがてはチャンネルを削除することになるとYouTubeは話している。

もちろん、YouTubeはこれまでもチャンネルのデマネタイズという罰則を加えていたが、今回、正式なポリシーとしてこの対応がしっかりと明文化されたわけだ。

はっきりしないのは、どのようにしてYouTubeはボーダーライン上にあるチャンネルに対するルールを規定し実施するかだ。ゴシップのチャンネルは規制されるのか?反目し合うクリエイターたちには影響するのか?こうしたルールは自由に解釈できるため、今はまだ不明だ。

YouTubeでは、コメント欄で展開されるハラスメントへの対応も変更すると話している。

クリエイターも、動画を見る人も、コメント欄でハラスメントに遭遇すると、標的にされた人が嫌な思いをするだけでなく、会話が冷めてしまうとYouTubeは言う。

YouTube Creators ハラスメントが招く結果:ハラスメントはひとつの動画に留まりません。同じ人に対して複数の動画やコメントで悪意ある攻撃を続ければ、罰則、YYP資格停止、警告、削除につながります
YouTube Creators コメントのモデレーション:年末までに、ほとんどのチャンネルで、不適切と思われるコメントを自動的に審査に送るツールが適用されます。このオプションはいつでも無効にできますが、事前に利用した人たちは、チャンネル上のコメントのフラグが75%減少したと話していることに注目してください

先週、YouTubeの最大級のチャンネルで、有害と思しきコメントをデフォルトで自動的に審査に送る機能が新たに適用された。年末までに、この機能をすべてのチャンネルにデフォルトで適用する予定だ。クリエイターはこのオプションをいつでも解除できるが、有効にすれば、有害かどうかを自分で判断できない人でも、保留されたコメントをまとめて除外できる。

YouTubeによれば、この機能の開始早々の結果は良好だという。各チャンネルでは、ユーザーがフラグを付けたコメントが75パーセント減少した。

YouTubeは、この機能の判断が論争を招くことにもなりかねないと認識し、クリエイターたちに、誤った判断が下されたと感じた場合に再検討を申請できる制度の周知に努めている。

「これらの改訂を行っても、YouTubeが人々がさまざまな考えを表現し合う場所であり続けることは極めて重要です。公益に関する議論や芸術表現を今後も守っていきます」とハルプリン氏。「そしてそうした議論が、誰もが参加しやすく、誰であっても身の危険を感じることがない形で展開されることを信じています」。

このポリシーは紙の上では立派に見えるが、実施に関してはこれからのYouTubeの最大の課題となる。YouTubeには、問題のコンテンツを審査する人間が1万人いる。しかし、これまでは何が“有害”かの基準が非常に狭かった。今回のポリシーの強化により、YouTubeの口約束ではなく、現実の行動がどう変わるかはまだ不透明だ。

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(翻訳:金井哲夫)

Awayの失敗に学ぶいけ好かないCEOと成功について

特には目立たないが、実は大きな社会的分断を象徴しているのではないかと大問題になる話がよくある。最近では、Away(アウェイ)の不祥事の話がそれにあたる。その問題とは、前CEOのステフ・コリー氏が仕事熱心なあまり、社内Slackで失敗を犯した特定の社員を公的に罵倒したことが責められ辞任したことだ。ハイテク界は、これをあらゆる産業における断層線を見極める試薬だとして注目している。

この話は、聞く人によってどうとでも取れる。金持ちの家に生まれた特権階級の企業幹部が貧しい生活にあえぐ人たちから搾取する話、女性CEOが不公正でいわれのない中傷や冷たい視線に翻弄される話、常時監視に内在する文化的害毒の話(Awayでは、社内のあらゆる通信はオープンなSlackチャンネルで行うこととして、私的な電子メールやダイレクトメッセージを禁止していた)、技術系労働者には組合が必要だという話、若い従業員はときとしてクズのような上司のもとで働くという現実に慣れるために鍛えなければならないという話。

ちょっと段落を切ろう。でも、まだ終わらない。謝らないで済ませる話。これは、Awayが従業員に不当に厳しい扱いをしたことを公的に謝罪した同じ日に、決して真似をしないように従業員の個人的なSNSアカウントを厳しく管理したことを指す。さらに、スタートアップ企業を創設するときに必要となる犠牲の話、問題の本質は管理不行き届きと方向性の不一致であって他は雑音に過ぎないと言い切る話、いけ好かないが許せるボスの態度と昔なら思われたことが今ではまったく受け入れがたい悪質な虐待にされてしまう話。

要するに、これは現代の完璧なロールシャッハテストだ。ロールシャッハテストと同じく、人々の多様極まる反応のほうが、この事件の本編よりも面白い。特に、世間の反応と個人の考えに開きがあるとの思い、つまりAwayの幹部たちをそこまで糾弾すべきではないと感じても、人はその考えを表明したがらないという思いが広まったことで、なおのことそうなった。お察しのとおり、これはソーシャルメディア、さらし、仲間はずれの話でもある。まさに、このちょっとした道徳劇にすべてが込められているのだ。

そこで、彼らの不変の名誉のためにも、やや風刺を込めたVC Starter KitというTwittyerアカウントがある実験を行った。「ベンチャー投資家、企業創設者、ジャーナリストのみなさんは、アウェイの事件の感想を私にDMしてください。みなさんの意見を匿名でアップします」と持ちかけ、その反応の要約を(当然だけど)彼らのSubstackアカウントで公開した。

面白いことにその結果は、世間が思っているよりも文化的分断がずっと大きいことを示唆している。非常に特異なケースに思えるのだが、私には、これは次の2つの説に集約されるように見える。

  1. スタートアップは厳しい。そのため、スタートアップの成功か従業員の待遇かの選択を迫られる場面によく遭遇するが、成功の優先度がいつも高い。
  2. スタートアップは厳しい。しかし、スタートアップの成功か従業員の待遇かの選択に迫られたときは、もうとっくに終わってるので、成功を選択して、個人的に、そして公的にそれを恥じるしかない。

程度の差こそあれ、これは世代格差の問題だと私は思う。私のようなX世代の人間は「最低なヤツだが、ボスとはそんなもの。仕方ない」と考えるのに対して、Z世代は「まったく容認できない悪質な虐待だ。こんなことはあってはならない」と感じる。大筋ではまったくもって正論だ。それは、かつてはほとんどの企業がそうしていると主張する以上に、より直接的に空想上のよりよい世界を目指すことが大切だったが、他者の待遇をよくすることのほうが重要だという理念を広めるものだ。

一方で、複雑で微妙な問題をなんでも悪く解釈してしまう傾向が強い、社会の中の非常にセンシティブな1%の人たちに、何と何は許容すべきといった考えを強要するようになってしまったら、それ自体が許しがたい暴虐の奇妙な変形パターンとなる。誤解のないように言えば、私たちはみなそうしたリスクには一歩たりとも近づいていないと私は思う。むしろ私たちは、いじめ、女性憎悪、偏見などなどの犠牲者には、傷害事件の犠牲者に言うように「もっと強くなれ」という考え方が有効だと認識し始めている。だが、そのような締めくくり方は、歪んで受け取られた結果であったとしても、人々を不愉快にさせるものだと肝に銘じておくべきだ。

いずれにせよ、私は2つ目の説を支持することにした。スタートアップは厳しい。しかし、スタートアップの成功か従業員の待遇かの選択に迫られたときには、もうとっくに終わってる。スティーブ・ジョブズがいけ好かない人物だったからって、それがCEOの必要条件なのではない。それだけでは十分条件にもならない。その選択に迫られる厳しい状況に追い込まれたなら、そして会社を最優先させたいと考えたなら、まあ、そんな人はあなたが初めてではないし100万人目ですらないが、とにかく成功という言葉が意味する本当のところを、時間をかけて真剣に考えてほしい。

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(翻訳:金井哲夫)

T-MobileとSprintの合併阻止を求める訴訟がニューヨークで審理開始

約2兆8000億円の巨大企業を誕生させるT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併を阻止しようとする訴訟がら米国時間12月9日、マンハッタンの連邦地裁で審理される。原告は13州とコロンビア特別区の司法長官14名で、このグループは当初から合併に反対しており、数カ月前から訴訟を予告していた。

米国カリフォルニア州司法長官のXavier Becerra氏は次のようなコメントをTechchCrunchに寄せた。

「本日、我々は実質的競争と低価格を消費者にもたらすために立ち上がった。我々の電波帯域は公共のものであり、競争者の数を減らすのは間違いだ。この合併はもっとも弱い立場にある関係者、すなわち消費者の利益を損ねるものだ。競争者が減ることは高価格を意味する。われわれ14州の連合は法廷で消費者、米国人全員のために戦う。法は我々の味方であると確信している」。

司法長官グループの主張は「このような合併は米国における当該分野の競争者の数を3社に減らし、これは消費者の利益を損ねる」というものだ。他方、T-MobileとSprint側は「事実はその正反対であり、Verizon(ベライゾン)とAT&Tが5Gネットワーク建設に巨額の費用を投じている現在、合併することで両者と競争する体力が得られる」としている。

この夏、FCC(連邦通信委員会)は合併を承認し、アジット・パイ(Ajit Pai)委員長は8月に「提示された証拠はこの合併が5Gネットワークの構築を加速し、アメリカ人、ことにデジタル・デバイドと呼ばれるハンディキャップに苦しむ遠隔地の人々を助けることを明らかに示している」と述べた。

Wall Street Journalによれば、本日裁判の冒頭陳述があり、3週間程度続くという。SprintのMarcelo Claure(マルセロ・クラレ)会長と、近く退任が予定されているT-MobileのJohn Legere(ジョン・レジェール)CEOが司法長官連合に反駁する証言を行う予定だ。

【編集部注】TechCrunchはVerizonに属するメディアだと。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

女性CEOの失脚には理由がある

4年前に創業したWinnieは少し変わったスタートアップだった。私にとってビジネスの成功以上に重要だったのは、誰もが働きたいと思う文化を作り出すことだった。当時私は新米の母親として、従業員が深夜や週末に働かない会社にしようと心に決めた。従業員がプライベートとバランスを取れる柔軟性があり、母親であることがペナルティではなくボーナスであり、少数派であってもきちんと評価され、昇格の機会が与えられる。こういった取り組みのせいで会社が失敗するなら、それまでだと思っていた。

4年経った今、共同創業者のAnne Halsall(アン・ハルソール)と私が築いた文化に誇りを持っている。結局、従業員を適切に扱い、家族とのプライベートな時間を大切にし、チームを多様化することは、正しいだけでなく競争上の優位性にもなる。

それでも、私は女性でありながら共同創業者兼CEOの役割を引き受けたがために、攻撃の対象になってしまうのではないかと心配している。

アグレッシブ鈍感。怒りっぽい。Thinx、Cleo、Rent the Runway、ThirdLoveなどの著名企業の女性CEOの行動を批判する時に使われた言葉だ。同じく女性が経営するAwayは、12月5日のThe Vergeの記事で集中砲火を浴びた。

はっきりさせておきたいのは、有害な職場文化は決して受け入れられないということ。誰が会社を創業したのか、会社にまん延するストレスがどんなものかに関わらず、従業員に対するひどい扱いは決して許されない。憎むべき行為が明らかになることもある。セクシャルハラスメント、他人の実績について嘘をつくこと、少数派の居場所をなくすこと、従業員を酷使すること。経営者が女性であれ男性であれ、こういった行為はあらゆる企業で公に指摘し、排除する必要がある。Awayの件も例外ではない。

しかし、成長企業の女性創業者兼CEOとして私は尋ねたい。なぜ報道される多くの有害企業が女性によって創業され、経営されているように見えるのか。女性CEOが率いる主要な公開企業の数は5%未満であり、米国に拠点を置く134のユニコーンのうち、共同創業者の肩書きを持つ女性がいるのはわずか14社だ。

女性が経営する企業の数がかなり少ないことを考えれば、女性のCEOが受ける否定的な報道の量は著しく不釣り合いだ。理由はいくつかある。

まず、報道で明らかになる内容の多くは不愉快なものだが、女性リーダーを「ビッチ」と見るステレオタイプのせいでもある。女性CEOが罵り、叫び、怒りやいかがわしさをあらわにするときは、ショックが大きく、男性が同じ行動を取った時よりも記事で誇張されることが多い。女性リーダーには成功するだけでなく、女性らしく好意的であることが求められる。私自身も、暖かく友好的な態度を取らなかったり、あまりにも鈍いことを言ったりして批判された経験は数え切れない。

次に、倫理的な失敗に関しては、女性は「男性よりも厳しく判断される」ことが研究で明らかにされている。ThirdLoveの記事は、「女性による、女性のための会社である」ThirdLoveで、従業員が給与交渉する気を削ぐような企みがあったことにとりわけ失望したと述べている。CleoがカーテンとTaskRabbit(米国の家具設置サービス)を使って土壇場で授乳室を用意した様子を、従業員が創業者の「とんでもない」行動の例として描写した。私は授乳中の母親として、授乳室がきちんと用意されていない状況は好きになれない。男性経営者の会社では例外なく授乳施設がお粗末だ。

女性の創業者とCEOを標的にしたとしても、男女平等の促進には何の役にも立たない。男性よりも厳しい基準にさらされるプレッシャーの下、女性のCEOの数が減少していくのを目の当たりにするだけだ。では、公平かつ正確に物事を把握するために我々一人一人に何ができるのか。

記者は企業に説明責任を求め続けるべきだが、男性経営者の企業の数に応じて記事を書いてほしい。似たような話はそこら中にあふれているが、報じられるのはほんの少しの、際立ってひどい話だけだ。次のTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏やAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏を暴くならもっと迅速にやってほしい。

読者として自分自身の偏見を自覚することにも価値がある。こう自問するのも良い。女性の行為だから腹が立つのか。世間の厳しい目にさらされていない男性は本当にいないのか。成功した女性が一気に追い詰められるのを楽しんでいるのではないか(答えがノーであることを願う)。

私はWinnieで健康的な職場環境を実現し続けたい。私が作りたいのは、従業員がたくましく成長し、私自身も最高水準の行動規範を維持できる会社だ。だが、すでに巷に少ない女性CEOが一人ずつ倒れ続ける中で私にできるのは、私自身の試みが十分なものだと信じることだけだ。

【編集部注】筆者のSara Mauskopf(サラ・マスコフ)氏はデイケアと幼稚園のマーケットプレイスであるWinnieのCEO兼共同創業者。全米の400万人以上の父母らを支援する。Winnieの創業前は、Postmates、Twitter、YouTube、Googleでプロダクト担当の幹部を務めた。

画像クレジット:Roy Scott / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

今年のCO2排出量は過去最高に、まだ望みはある?

画像クレジット:Vibro1/Getty Images

異常気象や海面の上昇、さらには数百人の米国人を殺し、数十億ドルの損害をもたらした気候変動の主要な要因、二酸化炭素の排出量は、2019年に過去最高を記録することになる。

これは、グローバルカーボンプロジェクト(Global Carbon Project)のデータによる。同プロジェクトは、世界中の研究者のイニシアチブとして、スタンフォード大学の科学者であRob Jackson(ロブ・ジャクソン)教授が率いている。

グローバルカーボンプロジェクトによる予測は、「地球システム科学的データ」(Earth System Science Data)、「環境研究論文集」(Environmental Research Letters)、「自然の気候変動」(Nature Climate Change)と題された3つの論文や記事として発行されている。

これは良くない知らせだ。しかし、楽観的な見方を好む人に対しては、良い知らせもある。二酸化炭素の増加率は、過去2年に比べれば劇的に下がっているのだ。とはいえ、ジャクソン教授の声明によれば、地球上の国々が、エネルギー、輸送、産業に対するアプローチを変えるために大胆な行動を起こさない限り、排出量は今後の10年も増加し続ける可能性がある、と研究者たちが警告しているという。

「昨年よりも排出量の増加が鈍ったというのは確かに良い知らせですが、それで気を抜くわけにはいきません」と、スタンフォード大学の地球、エネルギーおよび環境科学研究所(Stanford Earth)の地球システム科学のジャクソン教授は声明の中で述べている。「排出量は、いつになったら減少し始めるのでしょうか?」とも。

世界的には、化石燃料からの二酸化炭素排出量(これが全排出量の90%以上を占める)については、今年は2018年の排出量より0.6%増加すると予想されている。2018年は、2017年から2.1%も増加していた。また2017は、2016年の排出量と比べて1.5%の増加だった。

研究者によると、石炭の使用量は世界中で劇的に減少しているのに対し、天然ガスと石油の使用は増加している。また豊かな国々での一人当たりの排出量が依然として高いことは、開発途上国からの排出量を相殺するのに十分な削減はできていないのを意味している。途上国では、エネルギーと輸送手段を、天然ガスとガソリンに頼っているのだ。

「豊かな国における排出量の削減幅は、依然としてエネルギーへの依存度が高い貧しい国における増加幅を上回らなければなりません」と、エクセター(Exeter)大学の数学教授であり、グローバルカーボンバジェット(Global Carbon Budget)の論文「地球システム科学的データ」の主筆、ピエール・フリードリンシュタイン(Pierre Friedlingstein)教授も声明で述べている。

進展が見られる国もある。英国とデンマークでは、ともに二酸化炭素排出量を削減しながら、経済成長を達成することができた。The Economistが引用した報告書によると、英国では史上初めて、今年の第3四半期に、国内の家庭や企業に供給された電力量で、再生可能エネルギーによるものが、化石燃料によるものを上回った。

データと画像はThe Economistによる

今年初めの国際通貨基金(IMF)の調査によると、風力と太陽光発電のコストが劇的に低下しているため、豊かな国でも天然ガスに対してコストで競合できるようになり、もはや石炭より安価になったという。

それでも、米国、EU諸国、および中国の合計で、二酸化炭素の全排出量の半分以上を占めている。米国における排出量は、前年比で減少し、1.7%減少すると予測されている。ただしそれだけでは、中国などの国々からの需要の増加を埋め合わせるには十分ではない。中国における排出量は、2.6%増加すると予想されているのだ。

そして米国は、安いガソリンや大型車への依存症を断ち切る方法をまだ見つけていない。米国が、気候変動の拡大を緩和できるはずの乗用車による排出規制を放棄したことも、悪い方に働いている。それはそうとして、米国の現在の自家用車の所有率が世界に与える影響を考えれば、交通手段を根本的に改革する必要に迫られている。

前出の報告によれば、米国の一人当たりの石油消費量はインドの16倍、中国の6倍となっている。また米国には、ほぼ一人あたり1台の車があるが、その数字はインドでは40人に1台、中国では6台に1台だ。どちらの国でも、もし所有率が米国と同様のレベルに上昇すると、いずれも10億台の車が走り回ることになる。

グローバルカーボンプロジェクトが報告したスタンフォード大学の声明によれば、世界の二酸化炭素排出量の約40%は石炭、34%が石油、20%が天然ガスによるもので、残りの6%はセメントの製造など、他の発生源に起因するものだという。

「米国やヨーロッパで、石炭の使用量を削減すれば、二酸化炭素の排出量を減らし、雇用を創出し、空気をきれいにすることで人命を救うことにもつながります」と、スタンフォード・ウッズ環境研究所(Stanford Woods Institute for the Environment)、およびプリコート・エネルギー研究所(Precourt Institute for Energy)の上級研究員でもあるジャクソン教授は、声明の中で述べている。「より多くの消費者が、太陽光や風力など、より安価な代替エネルギーを求めているのです」。

政策、技術、社会的習慣の変化などの組み合わせによって、まだ行程を逆戻りさせることができるという希望はある。新しい低排出車の導入、新たなエネルギー貯蔵技術の開発、新しい応用分野におけるエネルギー効率と再生可能電力の継続的な進歩には、それなりの明るい希望もある。そして、排出量の多い牧畜や作物栽培に対する代替手段への社会的な取り組みも有望だ。

「気候変動に対して、あらゆる対策を講じることが必要です」と、ジャクソン教授は声明で述べている。「そこには、より厳しい燃料効率基準、再生可能エネルギーに対するより強力な政策的インセンティブ、さらには食事の変革、炭素の回収と貯蔵技術、などが含まれます」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ストックフォトShutterstockの中国検閲問題はハイテク企業が対中関係を見直すべき契機

あまりに強烈な印象を残すために1枚の写真がその時代の象徴となることがある。1989年の天安門事件の際に無名の青年が戦車の隊列の前に立ちふさがっている写真がその1つだ。フォトグラファーの Jeff Widener(ジェフ・ワイドナー)氏はこの写真で軍隊によって強権的に自由を弾圧しようとする中国の支配体制とそれと戦う市民の姿を世界の目に焼き付けた。

この写真は「インターネットの万里の長城」と呼ばれる中国の巨大検閲システムの内側でほとんど見ることができない。「無名の反逆者」ないし「タンクマン」の写真がブラックホールに投げ込まれ、中国の十数億人の記憶から消されたのはジョージ・オーウェルの小説「一九八四年」そのままだ。

Baidu(百度)などの中国の検索エンジンが政治的検閲を受けていることは今ではよく知られている。売上の大半を国内で上げている中国企業が、中国共産党によって定められた法や規則に抵触しないよう細心の注意を払っていることは、賛否は別として十分理解できる。

しかし現在問題になっているのは検閲に従い、協力しているのが中国企業に限らないという点だ。検閲協力企業には西側のハイテク企業が多数含まれている。しかし自由主義国の企業の社員は中国の反自由主義的政策の強制を助けるような作業をすることに強い不快感を抱いている。

最近の例の1つはストック写真を提供するShutterstockだ。同社は中国の「グレート・ファイアーウォール」検閲システムに協力したことが暴露されて強い非難を浴びている。先月、ベテラン・ジャーナリストのSam Biddle(サム・ビドル)氏がThe Interceptに掲載した記事によれば、Shutterstockは自由主義的価値を守ろうとする従業員と上り坂の広大な中国市場でなんとしてもシェアを獲得したい経営陣の間で深刻な分裂に見舞われているという。

ビドル氏は「Shutterstockが検閲機能を実装したことは社員の間に即座に強い反発をもたらした。180人以上のShutterstock社員が検索ブラックリストを作製する機能に反対する請願に署名し、中国市場でシェアを獲得するために自由主義的価値を放棄するものとして会社の姿勢を批判した」と書いている。

Shuttersotckの方針はこの請願でもまったく変わらず、LinkedInのプロフィールによれば、同社にフロントエンドのデベロッパーとして10年近く勤務したというStefan Hayden(ステファン・ヘイデン)氏が辞職するだけに終わった。

今日は私のShuttersotock最後の日となる。ここで9年間働いてきたが、倫理上の見解の相違が解決しないため会社を離れることとした。

しかしこの問題が政治的時限爆弾であることはShutterstock自身も認めざるを得なかった。同社が最近、SECに提出した年間財務報告によれば、重要リスク要因として「検閲機能」と「中国市場へのアクセス」を挙げている。

【略】

つまりこれがカギだ。「市場アクセス」のためならShutterstockは同社がよって立つ基盤である映像コンテンツへの自由なアクセスを犠牲にしてもいいというわけだ。これはストック写真を提供するSutterstockだけに限った問題ではない。この数週間、中国に対する姿勢が激しく批判されているNBAもこうした状況に置かれているのだろう。

Shutterstockの社員が自由とデモクラシーのために立ち上がったのは素晴らしいことだ。たとえ社内で十分な支持を得られなくとも、そうした価値をもっと重視する会社に移ることはできるはずだ。

残念なことに、ドルと元を追求するのに夢中でそれが自身のビジネスの根本的な価値を蝕むことを考ない企業、特にハイテク企業が多すぎる。売上と倫理の間に矛盾が起きればをそのつど慎重に比較衡量することが企業の方針とならないかぎり、この腐食は蓄積する。そうしてShutterstockが直面しているような困難に行き当たるだろう。

中国経済の急成長によって倫理問題の困難も一層拡大された。自由主義経済の企業が中国大陸でビジネスをする際に求められる根本的価値に関する内省と敏感さは新たなレベルに高まったといえる。しかし多くの企業の経営陣はこうした価値とそれが社員、株主にもたらすすリスクに関してきわめて貧弱な知識しか持っていないようだ。

今年初め、Google(グーグル)に中国問題が起きたときに「インターネットが社会の他の要素と切り離されたテクノロジー分野だという考えは100%死んだ。シリコンバレーの企業、社員には倫理的にものを考えるという困難が挑戦が待ち受けている。我々の行動はすべてなんらかの意味で妥協だ。新しい価値を創造すること―これこそシリコンバレーのスタートアップの環境でもっとも重要とされることだが―この創造そのものが著しい不平等の源となっている」とコメントした。

私は中国から撤退したGoogleの決断に全面的に賛成したが、Googleの正しさも相対的なものだ。第一、現在決定を迫られたのであれば決定は違ったものになっていただろう。またGoogleの行動があらゆる面で非の打ち所がないというつもりもない。しかし追求すべき価値が何であるかについて考えてきた点では他の多くのハイテク企業をしのぐと思う。

米国企業はそのビジネスを可能にしている米国社会の自由主義的価値を守るために全力を挙げるべき時期だ。.妥協を重ねていけば最後には守るべき価値をすっかり失ってしまうだろう。

中国は無視するにはあまりに巨大な存在だろう。しかし、いかなる企業も自由かつ民主的な社会を守るという根本的な責任を無視してはならない。 「無名の反逆者」が戦車の隊列の前に立ちふさがることができたなら、米国企業の経営陣は社員ととも倫理的に正しい諸価値を守る隊列の先頭に立つことができるはずだ。

画像:: Ashley Pon/Bloomberg/ Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

神戸から世界へ、国連調達を目指すスタートアップ育成拠点が2020年夏に神戸上陸

兵庫県と神戸市は11月28日、国連の機関であるUNOPS(United Nations Office for Project Services、国連プロジェクトサービス機関)との間で、テクノロジーを活用してSDGs(持続可能な開発目標)上の課題解決を目指すグローバルイノベーションセンター(GIC)の開設に向け、基本合意書(MOU)を締結した。

写真に向かって左から、グレテ・ファレモ国連事務次長兼UNOPS事務局長、久元喜造神戸市長

GICの神戸拠点は2020年夏頃に神戸市内に開設される予定で、SDGs上の課題に基づき入居期間1年間の条件で入居者を公募する。一定の選考基準にて毎年約15社を選定。3か月ごとに目標を立てて達成度合いを評価し、年間5社程度を国連調達へ参加させることを目標とする。なおGICの拠点としては約300平方mのコワーキングスペースが必須となるそうで、神戸市では現在、既存の建物を前提に候補地を策定中とのこと。

UNOPSは、フィンランド・ヘルシンキで開始されたSlush Helsinki 2019で、今回の取り組みについて講演した

UNOPSは、デンマーク・コペンハーゲンに本部を置く、プロジェクトサービス(事業運営・実施)に特化した国連機関。世界80か国以上で毎年1000件以上の援助事業を実施している。通常資金(コア予算)に対して各国政府から資金提供を受けず、事業運営の実施のみですべての経費をまかなう完全独立採算の機関で、ほかの国連機関や国際開発金融機関、援助国および被援助国政府などからの依頼に基づき、援助事業のプロジェクト推進を進めている。具体的には、アフガニスタンでの道路舗装や太陽光発電を利用した街灯の敷設、ヨルダン北部では老朽化した配水管を修復して漏水を削減する事業などを進めた。

神戸市は、米国シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタルである500 Startupsと連携したアクセラレーションプログラム「500 KOBE ACCELERATOR」や、スタートアップと協働する行政のオープンイノベーション施策「Urban Innovation KOBE」、インキュベーション拠点として「起業プラザひょうご」の運営など、さまざまなスタートアップ支援策を実施してきた経緯がある。このような神戸の取り組みが評価されたほか、誘致に向けて神戸市が迅速に対応したことで、今回アジア初のGICの開設が決まったとのこと。

スウェーデンのGIC施設

なおGICは神戸が3拠点目となり、すでに2018年1月にカリブ海東部の小アンティル諸島にあるアンティグア・バブーダ、2019年10月に本部のデンマークに隣国であるスウェーデンに開設している。既存2施設については、現在入居するスタートアップに向けた課題策定を進めているそうだ。今後は発展途上国を中心にGICの設置を進めていく予定で、すでにモンテネグロ、チュニジアへの設置も決まっている。

前述したように、GICに入居できるのはSDGs上の課題解決を目指せるスタートアップ。つまり世界で通用するサービスやテクノロジーを開発している企業に限られる。となると、食料や物流、医療、教育、インフラ、通貨などの問題を解決するサービスやテクノロジーを有する企業にチャンスがありそうだ。

ちなみに関西には、食材表示の絵文字を開発するフードピクト、低コストでIoTシステムを構築できるPalette IoTを開発するMomo、衛星データと農業データを活用して農業を最適化するアプリケーションを開発するSagri、コオロギ由来のプロテインバーを開発するバグモ、遠隔集中治療支援システムを開発するT-ICUなどのスタートアップがある。神戸市としては、GICの開設によってこれらのスタートアップはもちろん、国内やアジアのスタートアップが神戸を拠点として国連調達を目指して活動することに大きな期待を寄せているようだ。

現在日本では、最初期のスタートアップを支援するエンジェル投資家やシード・アーリーのスタートアップを支援するベンチャーキャピタルが東京に集中しており、地方拠点のスタートアップがそのコミュニティに早期から参入するのは距離的な問題もありなかなか難しい。地方都市を拠点とする資金のある企業にとっても、スタートアップとの接点が東京に比べてまだまだ少ないのが現状だ。GICは開かれた施設になるとのことで、神戸市としては定期的なGICオープンファシリティDayの開催を通じて、地元企業への働きかけも進めていきたいとしている。