普通のサウンドバーに満足できないDevialetがハイエンドのサウンドバーを発売

ハイエンドスピーカーメーカー、フランスのDevialet(デビアレ)から登場した新しいスピーカーのDevialet Dioneを紹介しよう。この新製品で、同社は新しい市場であるホームシネマサウンドシステムに参入する。Devialet Dioneはオールインワンのドルビーアトモス5.1.2対応サウンドバーで、価格は2190ユーロ(約29万7400円、日本での販売価格は税込35万9000円)だ。

DevialetのCEOであるFranck Lebouchard(フランク・ルブシャール)氏は筆者に対し「当社はハイエンドのマーケットの企業ですが、オールインワンオーディオシステムの製品があります」と語った。その意味するところは、標準的なサウンドバーとDioneは比較の対象ではないということだ。

例えばSonos(ソノス)のラインナップでDioneと同等のデバイスを見つけるとするなら、Sonos ArcサウンドバーとSonos Oneを2台、そしてサブウーファーのSonos Subのセットになるだろうとルブシャール氏はいう。このセットの現在の価格は2000ドル(約24万3300円)を超える。

ルブシャール氏は「すべてを1つのデバイスに収めたことが技術的な成果です。つまり17基のスピーカーを組み込む必要があり、これは前代未聞です」と付け加えた。

同社はパリのオフィスに試聴室を設けており、筆者は大型テレビとともにDevialet Dioneを聴く機会を得た。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の冒頭の数シーンと音楽を数種類、このスピーカーで聴いてみた。

確かにこのスピーカーのサウンドはすばらしい。没入感のあるサウンドを生み出し、テレビの前ではなく映画館にいるように感じられる。

これはレビューとしては十分ではない。筆者はオーディオの専門家ではないので、現在のトップクラスのサウンドバーと比較した場合のDevialetのサウンドバーの音はわからない。購入前にご自身で試聴することをお勧めする。

ルブシャール氏は「Sennheiser(ゼンハイザー)のサウンドバーにはスピーカーが12基あります。我々は17基のスピーカーを組み込んでいます。完全に魔法のようだというわけではありませんが、スピーカーを5つ増やせば聴いて違いがわかります」と述べた。

画像クレジット:Devialet

中身がぎゅっと詰まったサウンドバーだ。重量は12キロ、そして1.2メートルの長さがある。大型の55インチテレビを持っているなら、このようなスピーカーの購入を検討するといいだろう。

デザインは、これまでのDevialetのスピーカーに比べると控えめだ。Devialetの特徴的なデザインである卵型から、エッジや角が直線的なよくある四角い形になっている。

目立つのはデバイスの中央部にある小さな球だけだ。この球の中にはスピーカーが1つあり、動かせるようになっている。このため、サウンドバーを壁に取り付ける場合は球を動かして自分に向けることができる。

デバイス内部には17基のスピーカーがある。フルレンジドライバーが9基、四角いサブウーファーが8基だ。このサブウーファーはサウンドバーの仕様に合わせて設計された。したがって、Devialet Dioneではサブウーファー(またはサテライトスピーカー)を別に用意する必要がない。

このデバイスには独自のD/Aコンバーターも組み込まれている。実はDevialet Dioneには同社のフラッグシップ製品であるPhantomシリーズと同じSoCが使われている。Devialetはこの専用チップに関して複数の特許を取得しており、バックグラウンドノイズなし、サチュレーションなし、ディストーションなしのサウンドを謳っている。

ドルビーアトモス対応でない映画を再生する場合は、Devialet Dioneでサウンド信号を5.1.2オーディオに「アップスケール」できる。会話を聞き取りやすくするライブバランス機能もある。

接続に関しては、Devialet DioneをeARCとCECに対応したHDMIケーブルでテレビにつなぐ。スタンドアローンのスピーカーとして音楽を聴くこともできる。

Devialet DioneをWi-FiかEthernetでローカルネットワークに接続する。Bluetooth 5.0にも対応し、Devialetアプリを使用する。Spotify ConnectやAirPlay 2も利用できるので、音楽を聴く際に必ずしもアプリを使わなくてもよい。

画像クレジット:Devialet

オーディオマニア専用ではない

同社はDevialet Dioneには勝機があると見ている。ストリーミングサービスが注目作の映画を早期に配信するようになっているからだ。ルブシャール氏は「市場は大きく成長しつつあると認識しています」という。

同氏はさらに「このサウンドバーの典型的なお客様は55インチ以上の高画質テレビを持っている方です。そのような方々は画質に引けを取らない優れた音質を求めます。音楽をたくさん聴くDevialetの典型的なお客様とは少し違います」と述べた。

もし事業の目標を達成をしようとするなら、Devialet Dioneは1年間で同社売上の20%を担わなくてはならない。同社は新製品を発売する際に販売拠点のきめ細かいネットワークの力を借りることができる。現在、Devialetの販売拠点は世界各地に1900カ所ある。

同社は2015年のシリーズA以降は資金調達ラウンドについて公表していないが、その後の2回のラウンドで7000万ユーロ(約95億円)を調達している。直近では2020年1月に既存の投資家から5000万ユーロ(約67億9000万円)を調達した。

Devialet Dioneは米国時間3月29日からフランス、ベルギー、ルクセンブルク、スイスで発売され、その他の国でも同日に予約注文が開始されている。

画像クレジット:Devialet

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

フリーランサーのマーケットプレイス「Malt」がコンサルタントのマーケットプレイス「Comatch」を買収

フリーランサーのマーケットプレイス業界に、統合の時期がきている。フランスのスタートアップ企業であるMalt(モルト)は、コンサルタントや業界の専門家に特化した競合マーケットプレイスのComatch(コマッチ)を買収すると発表した。Comatchはもともとドイツで始まった会社であるため、Maltはこの買収でドイツ市場も倍増させることになる。買収の条件は非公開だが、株式と現金の混合対価で行われる。

Maltは、フリーランスの開発者、デザイナーなどの技術者と、人材を求める企業をマッチングするマーケットプレイスとしてスタートした。これまでに同社はかなりの資金を調達し、欧州の複数の国々にわたり34万人のフリーランサーを集めている。

当初はフランス市場に限定されていたMaltだが、ここ数年でドイツ、スペイン、ベルギー、オランダ、スイスに拡大した。4万社の企業が1人または複数のフリーランサーを見つけるためにMaltを利用している。

同社のクライアントには、Unilever(ユニリーバ)、Lufthansa(ルフトハンザ)、Bosch(ボッシュ)、BlaBlaCar(ブラブラカー)、L’Oréal(ロレアル)、Allianz(アリアンツ)などが含まれる。このように、多くの大企業がMaltを利用したことがあるのだ。

Maltは、新しいプロジェクトが立ち上がった時に足りない分野を埋めることができる高スキルのフリーランスの仕事に特化している。現在では、開発者だけでなく、マーケティングやコミュニケーションの専門家、グラフィックデザイナーなどにも機会を提供するようになっている。

Maltのようなプラットフォームを使うことは、特にフリーランスとしてスタートしたばかりで、潜在的な顧客との大きなネットワークを持っていない場合に有益だ。また、Maltは経営上の事務処理にも役立つ。フリーランサーはMaltから直接クライアントに請求することができ、もちろん、Maltはわずかな手数料を受け取る。

Comatchもほぼ同じビジネスモデルを踏襲しているが、こちらは特に経営コンサルタントや業界の専門家に焦点を合わせている。Maltはこれまで、特に経営コンサルタントをターゲットにしていなかった。つまり、この買収によって同社は新しい業種に参入することになる。

「Comatchは、ビジネスコンサルティングのマーケットプレイスの分野におけるチャンピオンです。Maltの『コミュニティファースト』のアプローチを共有し、才能を製品やビジネスの中核に置いて、仕事の未来に対する我々のビジョンを実現する仲間として、両社の高いスキルを持ったフリーランサーの2つの世界を1つにすることを我々は熱望しており、そうなることに興奮しています」と、Maltの共同創設者でCEOを務めるVincent Huguet(ヴィンセント・ユゲー)氏は声明で述べている。

Maltは欧州で最も頼りになるフリーランサーのマーケットプレイスになりたいとも考えている。Comatchは9つの市場で1万5000人のフリーランサーを集めており、両社はCAC40とDAX40に選ばれる企業の80%と取引している。ComatchはMaltに興味深い外部成長の機会を提供することになる。

この買収後に関して、Maltはいくつかの野心的な目標を掲げている。2024年までに10億ユーロ(約1360億円)のビジネスボリュームを見込んでおり、2022年末までに150人の従業員を新たに雇用する予定だという。

画像クレジット:Malt

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)a

D2Cの注文処理サービスを代行する仏Bigblueが18.3億円調達

フランスのBigblueが、1500万ドル(約18億3000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施した。同社は、D2C(Direct to Consumer)ブランド向けのオーダーフルフィルメントプラットフォームを運営している。これによりD2Cブランドは、Bigblueに物流に関するあらゆることをアウトソースすることができ、製品やマーケティングに集中できるようになる。

ラウンドはRuna Capitalがリードし、LPVが「セカンダリーリーインベスター」になった。既存の投資家であるSamaipataも、再び投資に参加している。

現在、同社はフランス、スペイン、英国3カ国で事業を展開しており、6万平方メートル以上の保管スペースを持つ5つの倉庫と提携している。顧客は、これらの倉庫に直接製品を発送し、Bigblueが保管・管理する。

Bigblueの顧客である企業や店に注文が入ると、商品はBigblueの配送ネットワークから客に送られる。同社が契約している配送業者は20社ほどで、ヨーロッパ全域に配達できる。グローバルな発送もできるが、の他の市場ではそれぞれの国でD2Cのためのフルフィルメントパートナーを見つけるのが賢明だろう。

Bigblueでは、パッケージをカスタマイズしたり、パッケージ内にチラシを入れたりして、エンドユーザーの体験をパーソナライズすることもできます。また、何か問題があった場合、顧客はブランドの返品ポータルで返品リクエストを提出するよう促される。返金だけでなく、ストアクレジットにも対応している。

共同創業者でCEOのTim Dumain(ティム・デュメイン)氏は声明で「新しい資金で、ユーザーであるマーチャントの増加に合わせて、私たちのサービスも拡大したい。社員を増やすとともに、会社をD2Cのフルフィルメント分野のリーダーになりたい」と言っている。

結果は実に単純だ。BigblueはAmazonのような体験を提供したいが、しかしそれをサードパーティのロジスティクスの業態でやろうというのだ。そこでBigblueはShopifyやWooCommerce、PrestaShop、Wixなどさまざまな販売チャンネルと、CdiscountやFnac、そして、そうAmazonのような多様なマーケットプレイスとの統合を進めている。

そうすることによって、さまざまなマーケットプレイスが無料で同日または翌日の配達を提供できるようになる。しかも、オンラインのマーケットプレイスの商品ページで自分が真っ先に選ばれるためには、その点が鍵になる。そしてまた顧客は、そのブランドの追跡メールを受け取る。

D2Cのロジスティクスサービスで同社が競合しているのは、CubynHiveHubooなどとなる。全体としてBigblueは、From FutureUnbottledWe Are Joliesなどの顧客を惹きつけることに成功している。同社の2022年の目標出荷数は400万だ。そのためには同社は今後1年間で社員を100名増員し、西ヨーロッパ全域に拡張しなければならない。

画像クレジット:Bigblue

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

あらゆるウェブサイトを多言語化する仏WeglotがシリーズAで約60.6億円を調達

フランスを拠点とするスタートアップWeglotは、Partechを引受先とする4500万ユーロ(約60億5500万円)のシリーズA資金調達ラウンドをクローズした。同社は、ウェブサイト向けの翻訳ソリューションを構築している。この製品により、手間のかかる微調整をすることなく、また別のCMSやECプラットフォームに切り替えることなく、サイトに多くの言語を追加することができる。

そして、これがWeglotのポジショニングを理解する鍵になる。WordPress(ワードプレス)やShopify(ショッピファイ)の翻訳プラグインは、以前から存在していた。だがWeglotは、あらゆる種類のウェブ体験に対応するユニバーサルな製品を作りたいと考えている。

Weglotを活用するには、2通りの方法がある。1つ目の方法は、プラグインを使って既存のウェブサイトに追加するやり方だ。これはWordPress、Shopify、Wix、WooCommerceでWeglotが機能する方法だ。小規模の会社を経営していて、専任のウェブ開発者がいない場合は、コードを一行も書かずにWeglotをインストールすることができる。

もう1つの方法は、ウェブサイトのタグに数行のJavascriptを追加する方法だ。Weglotでは、Webflow、Squarespace、BigCommerceでこのアプローチを使用している。それに加えて、新しい言語用のサブドメインやサブディレクトリを作成するために、DNSレコードを調整する必要がある。

Weglotのサーバー上で、同社はサイトからコンテンツを自動的に検出し、取り込む。Weglotの顧客は、自動翻訳を利用して、新しい言語への対応を開始することができる。

また、同社が提供しているダッシュボードを利用することで、コンテンツを掘り下げ、よりよい翻訳を作成することもできる。プロの翻訳者にアクセスを許可し、そのインターフェースから翻訳を管理することができる。

これで、多言語サイトの完成だ。訪問者があなたのサイトをロードするときはいつでも、ウェブサイトはデフォルトでユーザーの優先言語でロードされる。また、複数のオプションを提供したい場合は、ウェブサイトの隅に言語スイッチャーを追加することができる。

翻訳はWeglotのサーバーに保存されるが、Weglotは各言語専用のサブディレクトリまたはサブドメインを作成する。こうすることで、Google(グーグル)やその他の検索エンジンは、顧客のウェブサイトの各言語版をインデックスすることができる。メタデータとキーワードも、Weglotで翻訳することができる。

このスタートアップは、必要な言語と単語の数に応じて、毎月のサブスクリプションを課金している。2021年、Weglotは年間経常収益1000万ユーロ(約13億4600万円)を達成した。2017年のシードラウンド以来、外部資本を調達していなかったスタートアップとしては悪くない。

画像クレジット:Joshua Fuller / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

フランスの航空宇宙企業Gamaが太陽帆宇宙船開発のために約2.4億円を調達

地球の洋上で海風がヨットを推進するように、太陽放射が宇宙船を星から星まで推進する日が来るかもしれない。少なくとも、フランスのスタートアップ企業であるGama(ガマ)はそう期待している。

2020年にLouis de Gouyon Matignon(ルイ・ド・グヨン・マティニョン)氏、Thibaud Elziere(ティボー・エルジエール)氏、Andrew Nutter(アンドリュー・ナッター)氏が設立したこの航空宇宙企業は、宇宙船の推進手段として光を利用した低コストのソーラーセイル(太陽帆)を開発することを目標としている。同社はフランス公共投資銀行(BPI)、フランス宇宙庁(CNES)、エンジェル投資家から200万ドル(約2億4000万円)の資金を集め、10月にその技術を宇宙で実証することになっている。このミッションでは、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットでキューブサット(小型人工衛星)を打ち上げ、高度550キロメートルで73.3平方メートルのソーラーセイルを展開する予定だ。

「地上でも多くのことをテストできますが、このような大きさの展開テストは、宇宙の無重力の中でしかできません」と、ナッター氏はTechCrunchに語った(このソーラーセイルは1辺が10メートル近い大きさになるはずだ)。

ソーラーセイルは決して新しい発明ではない。1608年に天文学者Johannes Kepler(ヨハネス・ケプラー)が、天文学者仲間のGalileo Galilei(ガリレオ・ガリレイ)に宛てた手紙の中で、初めて理論化した。しかし、ソーラーセイルの展開に初めて成功したのは、2010年になってからのこと。日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した宇宙ヨット「IKAROS(イカロス)」がそれだ。同年、NASAが「NanoSail-D(ナノセイルD)」を打ち上げ、2019年には非営利宇宙支援団体のPlanetary Society(惑星協会)が「LightSail 2(ライトセイル2号)」の試験を成功させた。

現在はGama以外にも複数の組織が、新たなソーラーセイルミッションを開発している。NASAのAdvanced Composite Solar Sail System(ACS3、先進複合材料ソーラーセイルシステム)は、イリノイ州のNanoAvionics(ナノアビオニクス)が設計した宇宙機に800平方フィート(約74.3平方メートル)のソーラーセイルとして搭載される予定だ。

Breakthrough Initiatives(ブレイクスルー・イニシアチブ)のBreakthrough Starshot(ブレイクスルー・スターショット)プロジェクトでは、1億ドル(約120億円)の資金提供を受け、4.7光年の距離にあるケンタウルス座α星系に、小さなソーラーセイルを取り付けた超小型宇宙機群を送り込むことを計画している。

Gamaは、これら過去や現在のミッションと2つの点で異なっている。「第一に、Gamaのチームは反復と極めて迅速な展開に努め、多くのソーラーセイルを記録的な速さで打ち上げていく」と、ナッター氏はいう。「第二に、我々は衛星を静かに回転させ、その結果生じる遠心力を利用してセイルを花びら状に展開させます。これによって構造的な重量を軽減し、より大きな面積を展開することができます」。

最初の打ち上げに先立ち、同社はすでに2回目のミッションを構想している。それはより高い高度で展開し「セイルを操舵できることを実証して、従来の推進技術に代わる信頼性の高い低コストの技術を提供できることを示します」と、ナッター氏は語っている。

ソーラーセイルは、風を構成する空気分子ではなく、光子を推進力として利用することを除けば、従来の帆とほとんど同じように動作する。光子は質量を持たないが、宇宙空間を移動する時の勢いを、マイラーやポリアミドでできたソーラーセイルという反射面に伝えることで、宇宙船を推進させることができるという仕組みだ。その力はわずかなものだが、真空の宇宙空間ではすぐに累積する。時間はかかるものの、ソーラーセイルで宇宙船を光速の20%まで推進させることができる可能性がある。

そうすれば、宇宙船に積まなければならない推進剤が不要になり(あるいは、少なくとも量を減らすことができ)、その分の重量を他の用途に使えるようになる。また、ソーラーセイルを使えば、理論的には宇宙船を無限に推進させることができるので、宇宙船の飛行期間を延ばすこともできる。これは、長期の深宇宙ミッションに不可欠な技術であり、それがこの技術のさらなる開発に注目が集まる理由でもある。

画像クレジット:Gama

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

企業はノートPCを購入するかわりに数分の手続きでレンタルすべきだと考える「Fleet」

フランスのスタートアップFleet(フリート)は、ハードウェアをサービスとして管理することで、IT部門のベストフレンドになろうとしている。Fleetの顧客は、パソコンやスマートフォンを月々定額でレンタルできる。ハードウェアに問題が発生した場合は、返品や修理に対応する。

また、更新時期には、古いノートパソコンやスマートフォンを新しいものと交換することができる。顧客は、現在保有しているデバイスを1つの管理画面で確認することができる。

同社は、幅広い種類のデバイスを提供している。例えば、M1 Proチップと16GBのRAMを搭載した14インチのMacBook Proは、現在1台あたり月額99.90ユーロ(約1万2930円)だ。M1 MacBook Airは1デバイスあたり月額54.90ユーロ(約7100円)から。128GBのストレージを搭載したiPhone 13は、月額44.90ユーロ(約5810円)になる。

Microsoft(マイクロソフト)のノートパソコン(Surface Laptop Go、Surface Laptop 4、Surface Pro 7)、Dell(デル)のパソコン、そしてChromebookも数モデル用意されている。端末が寿命を迎えてFleetに送り返されると、同社はその端末を非営利団体に譲渡したり、再生業者に売却したり、リサイクルしたりする。

Fleetはブートストラップしたスタートアップで、VCからの資金調達はしていない。しかし、現在のランレートで1200万ユーロ(約15億5300万円)の年間売上高が見込まれるなど、順調に成長している。

同社は現在、Ankorstore、Ornikar、Sunday、Matera、Cubyn、Wemaintain、Shineなど、フランスの有名なスタートアップ数社を含む600社の顧客を有している。そして中央ヨーロッパ時間3月14日、同社はスペインでDaaS(Device as a Service)の提供を開始する。そしてバルセロナにもオフィスを開設する予定だ。

Fleetのサプライヤーの多くはすでに欧州全域に配送可能であるため、同社の欧州での展開はまだまだ続く。ポルトガル、イタリア、ドイツ、ベルギーを次の市場として考えている。

多くの企業は、従業員用のデバイスを直接購入することを選択する。しかしそれには大きな初期費用がかかるし、ハードウェアの問題が発生したときに助けてくれるサプライヤーがいないことになる。

企業は、こうした大きな資本支出を運用コストに転化する方法を模索してきた。例えば、企業はハードウェアを購入するために、銀行とクレジットラインを交渉することができる。

そして、これがFleetのビジネスモデルを理解する鍵になる。同社は、金融機関やリース会社と直接交渉しているため、顧客はアカウントを作成し、いくつかの書類を提出するだけでよい。数分もあれば、ノートパソコンを注文することができる。そしてFleetは、顧客に代わってやっかいな仕事をこなす、もう1つのサービスプロバイダーとなるわけだ。

画像クレジット:Jeremy Bezanger / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

Ubisoft「サイバーインシデント」後に従業員のパスワードをリセットした理由を明言せず

ゲーム業界大手のUbisoft(ユービーアイソフト)は、会社のパスワードが大量にリセットされたセキュリティインシデントを確認したが、実際の事件の内容については明言を避けた。

Ubisoftは簡単な声明の中でこう述べている。「先週、Ubisoftは当社のゲーム、システム、サービスの一部に一時的な混乱を引き起こすサイバーセキュリティインシデントを経験しました。当社のITチームは、外部の一流専門家と協力して、この問題を調査しています。予防措置として、全社的にパスワードのリセットを開始しました」。

「また、当社のすべてのゲームとサービスは正常に機能しており、現時点では、この事件の副産物としてプレイヤーの個人情報にアクセスまたは暴露された証拠はないことをお知らせします」と声明は述べている。

フランスに本社を置く同ゲーム会社は「Assassin’s Creed (アサシン クリード)」や「Far Cry(ファークライ)」シリーズで知られている。10月に発表された同社の最新の業績報告書によると、Ubisoftのアクティブプレイヤー数は1億1700万人とされる。

ユーザーのパスワードや従業員の認証情報が漏洩した恐れがある場合、企業がパスワードのリセットを開始するのは珍しいことではない。

TechCrunchは、Ubisoftにいくつかの質問を送った。その中で、ネットワークへの侵入かどうかなど、サイバーセキュリティインシデントの性質について説明するよう求め、不正なデータアクセスや流出の証拠を検出するためのログなどの手段を有しているかどうかを尋ねている。ログがあれば、データが流出したかどうかを、ログがなく証拠もない場合よりも高い確度で知ることができる。

Ubisoftの広報担当者は、このインシデントに関して「これ以上共有する情報は何もない」と述べている。

画像クレジット:Frederic J. Brown / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Den Nakano)

フランスのFinaryは新たな創業理念でプライベートバンクの構築を目指す

フランスのスタートアップ企業であるFinary(フィナリー)が、800万ユーロ(約10億300万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施した。この会社は、富裕層が資産をトラッキングする際に全体像を把握できる包括的なアグリゲータを構築している。そしてそれは、Finaryが銀行口座に限定されないことを意味する。つまり、不動産から暗号資産や株式まで、多くの資産をトラッキングすることができるということだ。

そして、このスタートアップのビジョンは、筆者が初めてこの会社について記事を書いたときからあまり変わっていない。データの集約は、同社にとって最初の一歩に過ぎない。Finaryは、これまでと異なる創業理念でゼロからプライベートバンクを作りたいと考えている。

現在のプライベートバンキング業界について考えてみると、顧客と銀行の間にズレがあることがわかる。銀行は顧客から直接収益を得るのではなく、金融商品を販売し、その商品から収益を得ようとする。彼らはファイナンシャルアドバイスと称しているが、それは単なる胡散臭いセールスだ。

「当社は独立企業だから、何でも話せます。既存の業者は、自分たちに手数料が発生するようなソリューションしか提案しません」と、共同創業者でCEOのMounir Laggoune(ムーニエ・ラグーン)氏は筆者に語った。

次世代の富裕層はこれまでとは異なる体験を求めると、Finaryは確信している。彼らは情報を直接見て、自分自身で十分な知識を得た上で意思決定をしたいと思うだろう。つまり、もはや家族に送金するために銀行員に電話しなくても済むようになったように、Finaryは富裕層に適切なツールと情報を提供したいと考えているのだ。

Finaryの今回の資金調達ラウンドは、既存投資家のSpeedinvest(スピードインベスト)とY Combinator(Yコンビネーター)が主導した。また、Qonto(コント)の創業者であるSteve Anavi(スティーヴ・アナヴィ)氏や、Alexandre Prot(アレクサンドル・プロット)氏、Bitpanda(ビットパンダ)のEric Demuth(エリック・デムス)氏などのエンジェル投資家も参加した。

しかし、それですべてではない。Finaryは、新しいプライベートバンクを作るということは、最も活動的な顧客が同社の株式を所有できるようにすることだとも考えている。このスタートアップ企業は、まもなく株式のクラウドファンディングキャンペーンを開始する予定だ。

具体的には、フランスで近々立ち上げられるエクイティクラウドファンディング(株式投資型クラウドファンディング)プラットフォームを通じて、人々は10ユーロ(約1300円)から投資して株式や端株を購入することができるようになる予定だ。

「私たちは50万ユーロ(約6400万円)を割り当てましたが、多少のオーバーファンディングはOKです」と、ラグーン氏は言っている。

筆者が前回の記事を書いた以降、FinaryはiOSとAndroidの両方でモバイルアプリの提供を開始した。このアプリは現在、同社のサービスにアクセスするための一般的な方法となっており、ユーザーは平均して週に9回、つまり1日に1回以上、Finaryの口座をチェックする傾向があるという。

その後も同社はさらに統合機能を追加し、フランス、米国、カナダ、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグで1万種類の資産をトラッキングできるようになった。例えば、ユーザーは複数の銀行口座、株式取引口座を接続し、不動産、金、暗号資産ウォレットの公開アドレスなどを追加することができる。

Finaryは、Plaid(プレイド)やBudget Insight(バジェット・インサイト)など、いくつかのAPIベースのアグリゲータを使って口座をトラッキングしており、また、bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)のノードを動かしてウォレットアドレスをトラッキングしている。

このスタートアップ企業は、全体で3万人のユーザーを集め、100億ユーロ(1兆3000億円)相当の資産をトラッキングしている。つまり、同社のユーザーは平均するとそれぞれが30万ユーロ(約3900万円)以上の資産をトラッキングしていることになる。同社は現在、月額10ユーロ(約1300円)のサブスクリプション料金で収益を上げている。

そして、これがこの製品の興味深いところなのだが、Finaryはデータを集約するだけでなく、レコメンデーション(推薦)もできる。例えば、投資信託の隠れた手数料を明らかにしたりする。ユーザーはパフォーマンスレポートを生成し、異なる地理的配分、セクター、リスクプロファイルなど、どのように投資を分散させることができるかを学べる。

今回調達した資金を使って、同社は英国、ドイツ、スイスの金融機関を完全にカバーすることを計画している。同社は他に、新たな追加機能の開発にも取り組んでいる。今後はファミリーモードや、より効率よくRSU(譲渡制限付株式ユニット、フランスではBSPCE)をトラッキングする方法、個人資産と職業資産を分離する機能などが加わる見込みだ。

Finaryはさらに25人の新規雇用も予定している。この先、多くの製品拡張も計画されており、例えばこのプラットフォームから、暗号資産を直接購入できるようになることもあり得るだろう。税務申告を支援するサービスも考えられる。Finaryは2022年末までにユーザーベースを10倍に拡大し、30万人のユーザーに到達することを目指している。

画像クレジット:Finary

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「人材と資金」がEUのスタートアップ政策に対するフランスの戦略のカギ

現在、欧州連合理事会議長国となっているフランス。同政府はこの機会を利用して、テクノロジースタートアップ政策において進展を図ろうと目論んでいる。フランスのデジタル大臣であるCédric O(セドリック・オ)氏はTechCrunchとのインタビューの中で、欧州のテクノロジーエコシステムに関するニュースをいくつか紹介してくれた。

その前に少しだけ振り返ってみよう。ここ数年、EUでは税制や人材確保、投資などに関する法律を見直し、調和させようという取り組みが盛んに行われている。

2021年、欧州委員会と加盟国は「Startup Nations Standard」を発表した。その名が示すように、この新制度は欧州各地のスタートアップ政策の基準を確立することを目的としており、言い換えると、加盟国間で共有できるベストプラクティスのようなものである。

ポルトガルが欧州連合理事会議長国になった際、ポルトガルはさらに一歩進んで「European Startup Nations Alliance(ESNA)」を創設すると発表した。ESNAは「Startup Nations Standard」を担う新たな組織であり、ベストプラクティスをまとめるだけでなく、技術的なサポートや進捗状況のモニタリングも行うというものである。

同じ頃、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が「Scale-Up Europe」という別のグループを立ち上げている。テック企業や投資家、団体がマニフェストに署名し、2030年までに1000億ユーロ(約13兆2100億円)以上の価値を持つテック企業を10社にすることを目標に掲げている。

大規模なVCファンドを10~20作るための新たな金融インセンティブ

フランス政府は2日間の会議の中で、人材の魅力を高めるためにESNAに新たな責務を課すこと、運用額10億ユーロ(約1321億円)以上のレイターステージの投資ファンドを10~20個設立すること、ディープテック分野への投資を強化することなどを発表している。

レイターステージの資金提供から見てみよう。EUの加盟国のいくつかは、European Investment Fund(欧州投資基金、EIF)に出資して新たなファンド・オブ・ファンズを設立すると発表している。

「ヨーロッパの強力なエコシステムを構築するためには、資金調達が重要です。世界中から投資を集めたいとは思っていますが、欧州の資金、欧州の知識、欧州のチームによる欧州のベンチャーキャピタルを実現したいと考えています」とオ氏は話している。

「我々の目標は10億ユーロ以上のファンドを10~20作ることです。現在米国では10億ユーロ以上のファンドが40あるのに対し、欧州では2つとなっています。Eurazeo(ユーラゼオ)とEQTの2つで、フランスのファンドとスウェーデンのファンドです」。

この新たなファンド・オブ・ファンズは、欧州の大規模なレイターステージのファンドにリミテッドパートナーとして投資する計画である。この新しい仕組みにより、ファンドマネージャーはより簡単に新しいファンドを調達できるようになり、例えばEIFがあるファンドに1億ユーロや2億ユーロの投資をすると言えば、この新しいファンドにはより多くの機関投資家が集まるだろうという考えである。

また、Bpifrance(公的投資銀行)のような一部の国立投資銀行は自国のファンドに対しても支援を行っている。フランスでは、民間の保険会社や公的な投資家もTibi(ティビ)氏の取り組みに倣ってレイターステージのファンドに参加しているのである。

今回の発表はヨーロッパ全土に関するもので、加盟国の予算の一部を欧州におけるレイターステージのテック分野への投資に充てることを主な内容としている。

オーストリア、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデンの18カ国がこのEIFのファンド・オブ・ファンズに貢献するという拘束力のない誓約書にすでに署名しており、近日中にさらに多くの国が加わる予定だという。

具体的には、フランスは「フランス2030」の投資計画のうち10億ユーロを振り向けると言い、ドイツは10億ユーロを投資、さらにEuropean Investment Bank(欧州投資銀行)はこのファンド・オブ・ファンズに5億ユーロ(約660億円)を特別に割り当てる他、別途でレイターステージのファンドに直接投資を行うと伝えている。

その他いくつかの国立投資銀行も、大規模なレイターステージファンドに直接資金を投資すると発表している。フランスとデンマークの投資銀行は欧州のレイターステージファンドにそれぞれ5億ユーロを割り当てる計画で、またギリシャも近々計画を発表する予定だという。

10年前に米国の経済を大きく変えたように、デジタルト・ランスフォーメーションがヨーロッパの経済に大きな影響を与えるだろうとオ氏は考えている。

「今、欧州は転換期にあると考えています。そして問題は、その変化を誰が利用していくのかということです。米国の企業なのか、ヨーロッパの企業なのか。それがヨーロッパの企業になるように、できる限りのことをしたいと思っています」。

そして、ヨーロッパ内で大規模な成長資金を調達できるようになることが、この先大規模なテック企業を生み出すことにつながると同氏は強く信じている。「プライベート投資による欧州の大規模なファンドが増えれば、クロスオーバー投資でも、公共投資でも、近いうちにヨーロッパのNASDAQの上昇につながるでしょう」。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

技術者向けビザの改善

ヨーロッパの多くの国では、すでに技術系人材のための特別なビザプログラムを設けている。例えばフランスには「French tech visa」があり、またスペインではスタートアップビザを含む法的パッケージの立ち上げに取り組んでいる。

しかしそれぞれのプログラムの違いは、近い将来ほぼなくなることになるかもしれない。ESNAは、加盟国がそれぞれの規制が欧州の基準と比べてどうなのかを確認できるよう、ベストプラクティスを共有する計画だからだ。

フランスはさらに一歩進み、専門のチームを持つ「European Tech Talent」サービスデスクを作りたいと考えている。ESNAは各加盟国の移民局に取って代わるものではないものの、将来の移住者がビザを比較できる単一の情報源ができることになるため、外国人の人材を雇用しようとしている技術系のCEOにとっても、特に有用なものとなるだろう。

「こういったプログラムによって何れすべてがつながっていくことを期待しています」とオ氏はいう。

また、ESNAのサービスデスクは、問い合わせを適切な行政機関の適切な担当者に転送してくれるという。オーストリア、ベルギー、キプロス、チェコ、エストニア、フィンランド、ポーランド、フランス、ギリシャ、アイルランド、イタリア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポルトガル、スペインの少なくとも16カ国がこの誓約に署名することに合意している。

技術者に対するこの新たな取り組みは、言わばプロモーションのためのものである。真新しいサイトとどんな質問にも答えてくれるチームがあれば、優秀なエンジニアにとってヨーロッパへの移住はこれまでになく魅力的なものになるかもしれない(一部の国では極右の候補者がかなりの人気を博しているという事実が、この取り組みにダメージを与えているかもしれないが)。

「米国のテクノロジーが成功しているのは、優秀なフランス人、ナイジェリア人、インド人を集める能力に関係しています。ヨーロッパはこのテーマでは遅れをとっています。我々はEUブランドを作っていない。しかし、コロナ後の世界には歴史的なチャンスが広がっています。欧州の福祉モデルと欧州の生活の質は極めて重要な資産となっています」と同氏は話している。

ディープテックへの投資上限解除へ

European Innovation Council(欧州イノベーション会議、EIC)には100億ユーロ(約1兆3251億円)の予算があり、これはかなりの額の資金管理である。EICはヘルスケア、エネルギー、グリーン・イノベーションなど、さまざまな戦略的産業における画期的な技術を支援することになっている。

これまでEICファンドは、ディープテック企業への直接的な株式投資に1500万ユーロ(約20億円)までしか投資できなかった。EUの革新・研究・文化・教育・青年担当委員のMariya Gabriel(マリヤ・ガブリエル)氏は、EICが従来の1500万ユーロの上限を超えてより大きな投資を行えるようになると発表している。

また「EIC Scale Up 100」と呼ばれる欧州のランキングが発表される予定だ。このランキングを活用してEUがあらゆるサービスや経営上の支援を行い、最も有望なディープテックベンチャー企業を支援しようという計画だ。

今回の発表で、フランスとEUはスタートアップ政策における競争促進のビジョンを打ち出している。オ氏は欧州のスタートアップと米国のスタートアップをよく比較するが、ビッグテックに対抗する最善の方法は、ヨーロッパ独自のビッグテック企業を作ることだと同氏は考えている。

「私たちは米国人よりも上手くできると信じています。Back Market(バックマーケット)Ynsect(インセクト)のように、米国企業よりも優れた企業が出てきていますし、それを目指すべきだと感じています。本能的な個人的意見としては、閉ざされた市場ではなく、もっと野心的で競争的なものを支持したいと思います」と同氏は話している。

画像クレジット:Ministère de l’Économie, des Finances et de la Relance

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(文:Romain Dillet、翻訳:Dragonfly)

EC・SaaS企業に収益ベース融資で資金を提供する仏SilvrがシリーズAで約171.5円調達

フランスのスタートアップ「Silvr」は、シリーズAラウンドで1800万ユーロ(約23億7500万円)の資金を調達するとともに、同社の活動のために1億1200万ユーロ(約147億8000万円)のデット調達も実施した。Silvrは、eコマース企業やSaaS企業に新たなクレジット機会を提供したいと考えている。基本的にSilvrが目指しているのは、米国のPipe(パイプ)やカナダのClearco(クリアコ)のような経験をヨーロッパに導入することだ。

中央ヨーロッパ時間2月8日の資金調達ラウンドには、XAnge、Otium、Bpifrance、Eurazeo、ISAIが参加した。また、Alexandre Prot(アレクサンドル・プロット)氏、Steve Anavi(スティーブ・アナビ)氏、Raphaël Vullierme(ラファエル・ヴァルリエム)氏、Louis Chatriot(ルイ・シャトリオ)氏、Pierre Dutaret(ピエール・デュタレ)氏などのビジネスエンジェルも出資している。

2020年にスタートしたSilvrは、Cuure、French Bandit、Almé Paris、Emma&Chloéなど、すでに100社に出資している。VCファンドとは異なり、Silvrは資本を提供するが、株式は取得しない。また、従来の銀行とは異なり、Silvrは資産を持たないリスクの高いビジネスにも融資することができる。

企業がSilvrにクレジットを申請すると、企業は銀行口座、Google Analytics、Shopify(ショッピファイ)などのECプラットフォーム、Stripeなどの決済に使用しているプラットフォームなど、さまざまなデータソースへのアクセスを許可する。

Silvrは独自のスコアリングアルゴリズムを開発しており、これらのデータに基づいて意思決定を行う。同社は今のところ、主にeコマース企業とSaaSスタートアップに焦点を当てている。そうすることで、過去の売上をもとに将来の収益を予測しやすくなるからだ。

平均して、クライアントはSilvrから何らかの融資を受けた2カ月後には、収益が64%増加している。また、Silvrのクライアントの35%がVCファンドから資金を調達していることからわかるように、Silvrは必ずしもVC資金に取って代わるものではない。

Silvrは、さまざまな資金の受け取り方を提供している。従来の電信送金に加えて、このスタートアップはバーチャルカードを提供したり、パートナーに直接支払うこともできる。たとえば、新しい広告キャンペーンのためにSilvrを利用したい場合、Silvrが直接請求書を支払うことも可能だ。

返済に関しては、クライアントは従来の月払いプランで返済することもできれば、収益の一部を返済に充てることもできる。

欧州でCapital-as-a-Service(CaaS、キャピタル・アズ・ア・サービス)に取り組んでいるのはSirvrだけではない。Karmenはフランスで、Uncappedは英国で、それぞれ同様の製品に取り組んでいる。

画像クレジット:Image Source / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

マッチングアプリBumbleの初買収はZ世代向けの同アプリFruitz、あらかじめ目的を明らかしておける点が人気

マッチングアプリ企業のBumble, Inc.(バンブル)は、米国時間2月7日、初の買収を行い、急成長中のフランスのマッチングアプリ「Fruitz(フルーツ)」を自社アプリのファミリーに加えるというニュースを発表した。Bumble, Inc.は、欧州で特に人気のあるBadooの親会社としてすでに国際的な事業展開をしているが、Fruitzを傘下に加えることで、より若いZ世代の利用者の間で勢いを増すことができると考えている。

取引条件は公開されていない。

Fruitzは、ユーザーのマッチングを支援するために、型にはまらないアプローチをとっている。同アプリでは、長期的な関係を望む人から一夜限りの関係を求める人まで、特定の関係タイプごとにフルーツが割り当てられている。これにより、ユーザーは自分と同じ考えを持っていない人を除外することができる。また、マッチングされた相手にメッセージを送る前に、アイスブレーカーとして機能する質問に答えるよう促される。

Fruitzは、CEOのJulian Kabab(ジュリアン・カバブ)氏、CTOのFabrice Bascoulergue(ファブリス・バスクーラーグ)氏、CFOのArnaud Ruols(アルノー・ルオール)氏によって共同設立され、最初は2017年2月1日にフランスでサービスを開始した。カバブ氏は、このアプリのアイデアは、自身がマッチングアプリを利用しようとした際に、その体験に何を求めているかという点で意図が異なる相手とマッチングしたことがきっかけだと語っている。

「自分が求めているものを表現することは、批判されることを恐れているので容易ではありません。その結果、誰もが自分の意図に正直にならず、お互いに時間を無駄にしていたのです」と同氏は語る。「人々が自分の意図に関して正直になれるようにすることが、私たちの最初のミッションでした」。

画像クレジット:Fruitz

Sensor Towerのデータによると、現在までにFruitzは、App StoreとGoogle Playで全世界で560万回ダウンロードされている。2022年2月3日現在、ホームマーケットであるフランスでは、iPhoneのトップ無料アプリチャートの「ライフスタイル」カテゴリーで4位にランクインしている。

現代の多くのマッチングアプリと同様に、Fruitzはスワイプベースのインターフェースとフリーミアム体験を提供している。

だがBumbleにとっての魅力は、このアプリのユニークな機能ではなく、その利用者層にある。Bumbleは、Fruitzがマッチングアプリ市場で成長しているZ世代に特にリーチしていることに着目した。またフランス、ベルギー、オランダ、スイス、スペインなど、西ヨーロッパの主要国でも人気を博しており、カナダでも急成長を遂げていた。

Bumbleの創業者兼CEOであるWhitney Wolfe Herd(ホイットニー・ウォルフ・ヘルド)氏は、声明の中でこう述べている。「Fruitzは、私が何年も動向を追ってきたブランドであり、リーダーシップチームです。ジュリアン(・カバブCEO)、ファブリス(・バスクーラーグCTO)、アルノー(・ルオールCFO)は3人ともダイナミックですばらしいリーダーであり、フランスをはじめとするヨーロッパ全域の消費者の共感を強く得るユニークな製品を作り上げました。このアプリを当社の技術プラットフォーム、コミュニティサポート、ブランドおよび成長マーケティングと組み合わせることで、Fruitzの成長を加速させることができます。Fruitzの買収により、当社が重視する人間関係のエンパワーメントに沿って、消費者向けの製品提供を拡大することができます」。

Bumbleは、Fruitzを同社の一連のマッチングアプリに組み込むとともに、機械学習(ML)技術、マーケティング、ローカリゼーション、安全性プラットフォームなどのリソースを提供する。なお、Fruitzのブランド変更や運営終了の予定はない。その代わり、共同創業者全員を含む9人のチームが、母国フランスでアプリの運営を継続する。現在、Fruitz、Badoo、Bumbleを擁するBumble, Inc.を合わせると900人以上の従業員がおり、オースティン、ロンドン、バルセロナ、パリ、モスクワにオフィスを構えている。

画像クレジット:Bumble

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

「デスクを持たない労働力」管理HRプラットフォームのSnapshift、市場拡大に向け約51.9億円調達

このいわゆる「大量自主退職時代」には、多くの現場作業員(看護師、トラック運転手など)が新型コロナウイルス感染流行をきっかけに自分の生活を見直しており、その一方で旧来の企業はこの新しい世界秩序に苦心している。従業員はまた、より良いコミュニケーションも求めているため、このようなコミュニケーションをアプリ化することは理に適っている。

フランスを拠点とするSnapshift(スナップシフト)は、レストラン向けのスタッフ管理ウェブソリューションとしてスタートし、Bpifrance(ビーピーアイフランス、フランスの政府系投資銀行)とFemmes Business Angels(フェム・ビジネス・エンジェルズ)から390万ユーロ(約5億1000万円)の資金を調達した。しかし、この会社は明らかに賢いアイデアを思い付いていた。そしてそれは、私たちが今、生きている時代に合わせて作られたようなものだ。

今やこのHR(人的資源)プラットフォームは、いわゆる「デスクレスワークフォース(デスクを持たない労働力)」を管理するためのプラットフォームとして生まれ変わった。これは、かつてブルーカラーやフロントラインワーカーと呼ばれていた人々のことを指す今風の言葉である。

Snapshiftは今回、4500万ドル(約51億9000万円)のシリーズAグロースエクイティ資金を調達した。このラウンドはHighland Europe(ハイランド・ヨーロッパ)が主導し、既存投資家であるBpifranceとUL Invest(ULインベスト)も参加した。

Snapshiftは、2021年に同社のサービスに対する「大きな需要」があったことを受け、現在はSubway(サブウェイ)、Pizza Hut(ピザハット)、Spar(スパー)、Amorino(アモリーノ)、Biocoop(ビオコープ)、Fitness Park(フィットネスパーク)、Columbus Cafe(コロンブス・カフェ)、Carrefour(カルフール)など、6000社以上の顧客を抱えているという。

今回の資金調達は、欧州のレストラン、ホテル、小売業など、すべての中小企業にサービスを拡大するために使用される予定で、スペインが最初の国際ターゲット市場となる。

Snapshiftのオリジナル製品は、スタートアップ企業やレストランの起業家であるOlivier Severyns(オリヴィエ・セヴェリンス)氏が、自身のスタッフ当番表を管理するために作ったものだった。その後、同氏は他の企業向けにSnapshiftを起ち上げることを決めた。現在では70名以上の従業員を抱えているが、2022年には150名に増員することを目指している。

セヴェリンス氏は、次のように述べている。「私たちの使命は、中小企業が人事関連のあらゆる事柄を理解し、最適化するための支援をすることです。給与管理やスタッフのスケジュール管理を簡素化し、刻々と変化する社会法や雇用法などの複雑な問題についてガイダンスを提供します。Snapshiftの顧客の多くは、新型コロナウイルスが招いた持続的な人材確保の問題から影響を受けています。Snapshiftの製品によって、顧客は管理システムを近代化し、信頼と透明性を促進することで、従業員にとって『働きがいのある会社』にすることができるのです」。

Highland EuropeのパートナーであるJean Tardy-Joubert(ジャン・タルディ・ジュベール)氏は、次のように述べている。「私たちは、広範なホスピタリティおよびサービス業界で、Snapshiftが解決しているまさにそのようなペインポイントに悩む無数の企業と話をしました。多くの業界が、ますます深刻さを増している人材不足の問題に直面している今、Snapshiftのミッションクリティカルなプラットフォームを他の業界に導入する大きなチャンスがあると、私たちは確信しています。オリヴィエと彼のチームが、このような短期間で成し遂げたことに非常に感銘を受けています」。

セヴェリンス氏は「当社の最大のライバルはExcel(エクセル)です。当社の顧客の80~90%は、Excelから初めてのデジタルスケジューリングソリューションに移行しています」と付け加えた。

しかし、SnapshiftにはSkello(スケロ)とPlanday(プランデイ)というSaaSの競合企業が存在する。

同じくフランスを拠点とするSkelloは、これまでに5440万ドル(約62億7000万円)を調達しており、デンマークのPlandayは、7310万ドル(約84億2000万円)を調達している。このように、HR機能をシンプルなアプリにするための競争が繰り広げられているのだ……。

画像クレジット:Snapshift founder Olivier Severyns

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

銀行口座のマイクロサービス化を目指すフランスのフィンテックNumeral

企業の銀行口座のアップグレードを目指すフランスのスタートアップ、Numeral(ニューメラル)を紹介する。クライアントが最新のアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を使ってNumeralとデータをやり取りする一方で、このスタートアップは銀行のサーバーに直接接続して決済ファイルをアップロードし、時代遅れの情報システムとデータをやり取りする。その複雑なレイヤーを抽象化することで、銀行口座をアーキテクチャの中の別のマイクロサービスのように扱うことができる。

Numeralは1月にBalderton Capitalがリードする1300万ユーロ(約17億円)の資金調達ラウンドを発表した。Alexandre Prot(アレクサンドル・プロット)氏、Tom Blomfield(トム・ブロムフィールド)氏、Guillaume Princenn(ギヨーム・プリンセン)氏、Kima Venturesも参加した。Numeralのチームはもともと、eFoundersが創設したスタートアップスタジオ「Logic Founders」内でプロジェクトに取り組み始めた。

Numeralを説明する最も良い方法は、同社が何でないかを説明することだ。Numeralは、消費者向けアプリのためのオープン・バンキング・アグリゲーターではない。TinkTrueLayerYapilyとは競合しない。

また「banking-as-a-service(バンキング・アズ・ア・サービス)のプロバイダーでもない。同社は銀行口座を提供せず、IBAN(国際銀行口座番号)を生成せず、カードも発行しない。

「我々は、テック企業のための決済自動化プラットフォームです」と共同創業者でCEOのÉdouard Mandon(エドゥアール・マンドン)氏は話す。「テック企業が銀行口座に接続し、決済業務を自動化できるようにします」。

リテールバンクはAPIを提供し始めたばかりだが、コーポレートバンクは何年も前から銀行プラットフォームをオープンにしている。しかし、ドキュメント・ページがあるREST APIだと思わないで欲しい。多くの銀行は、ユーザーがSFTPサーバーにテキストファイルをアップロードすることを想定している。そのファイルは、非常に特殊な方法でフォーマットされることになっている。

Numeralは、銀行送金に大きく依存しているフィンテック、インシュアテック、不動産会社などに製品を販売している。例えば、同社の最初の顧客はSpendeskSwileだ。Numeralは、同社の最初の顧客となったSpendeskとSwileのために統合機能を作成し、2社がAPIを使って銀行口座とデータをやり取りできるようにした。

2022年末までに、Numeralは12の銀行に対しサービスを提供する予定だ。「今のところ、私たちの顧客の半分は、フランスの銀行を通じて私たちのサービスを発見しています。その銀行はNumeralのことを、彼らが提供していないAPIだと説明しています」とマンドン氏は話す。

統合が完了すると、Numeralの顧客は決済機能やアプリの機能を統合できる。同社は、技術者でないスタッフ向けにウェブアプリも提供している。この方法では、銀行が提供するレガシーなウェブアプリを使わずに、決済と口座を照合できる。

Numeralでは、APIの上にいくつかの機能を追加できる。例えば、承認ワークフローや通知システムなどの設定を想像して欲しい。

このスタートアップは、オーケストレーション機能についても考えている。顧客が複数の銀行口座を持っている場合、いくつかのルールに従って、適切な口座に決済を回すことができる。また、Numeralは、複数の口座の現金残高を積極的に管理する目的でも利用可能だ。

複数の国に口座を持つグローバルな顧客には、特に有効だろう。マンドン氏は、Numeralを立ち上げる前にiBanFirstに勤務していたため、複数の国にまたがる複数の提携銀行を持つことについては、よく理解している。

今回の資金調達で、Numeralは30〜40人のチームに成長する予定だ。フランスの銀行との新たな提携に加え、ドイツ、英国、スペイン、イタリアなど、他のヨーロッパ諸国にもサービスと顧客基盤を拡大する。

画像クレジット:Luke Shaffer / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

Circular、約3万円のスマートリングで人気のOuraに挑戦

Ouraは、最初に市場に出たスマートリングではないが。その製品寿命が尽きるまで、驚くほどライバルは少なかった。これは、一般に消費者向けハードウェア企業が手首以外の場所にその足場を築くことは難しいという証明だ。しかし、同ブランドが比較的成功したことで、フィットネスバンドやスマートウォッチが必ずしもこのカテゴリーのすべてではないという希望が生まれたのは間違いないだろう。

CESはこれまでウェアラブルデバイスの展示会ではなかったが、初めてスマートリングを見ることができたこのイベントでは、2022年、さらに2つのスマートリングが発表された。2021年末に紹介したMovanoは、下半期に発売予定だという。また、Circularも注目すべき製品だ。しかしこのフランスのスタートアップは、展示会でスニークプレビューを行ったがそれ以上のことは行わなかった。

関連記事:CES 2022大注目カテゴリーのフィットネスリング、医療機器Movanoが女性向けを発表

米国時間2月4日、そんなCircularは、社名と同じ名前のリングを2月27日から259ドル(約2万9800円)で予約販売すると発表した。それは最新のOura Ring(第3世代)と比べて50ドル(約5800円)も安く、Circularは「単なる生のデータだけでなく、個人的なインサイト」を約束する月間サブスクリプションプランについてはまだ何も述べていないが、率直にいって最近はどの企業もその方向性にあるようだ。

実際の発売日は、4月から6月にかけてと相当な幅がある。しかしそれは、若くて小さな企業ではようくあることだし、しかも現在は半導体のサプライチェーンに問題がある。

このリングには、心拍数や呼吸数、体温など、さまざまなセンサーが搭載されている。この点では、少なくとも一般的なOuraのテリトリーで動作しており、マーケティング資料によると、「パーソナルヘルスの民主化」を目指して、多くのバイタルに基づいた実用的なインサイトを生み出している。また、アプリには「パーソナルアシスタント」がある。バッテリーは最大4日間持ち、充電は45分程度で完了する。

聞くところによると、まだ小さなハードウェアのスタートアップにとって、「消費者向け」は最初のステップだ保険やヘルスケアの企業と組んでB2Cへの進出を視野に入れている。このような製品でお金を稼ぐには、その方が良いと思うが、しかし規制も厳しくなるだろう。

このリングはヨーロッパ(フランス、ドイツ、イタリア、英国)と米国、香港、シンガポール、オーストラリアで販売される予定だ。。

画像クレジット:Circular/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

大手メーカーがコンテンツ重視のアプローチを強化する中、ヘルスケアウェアラブルWithingsがワークアウトアプリ8fitを買収

現地時間2月2日、フランスのヘルスケアウェアラブル企業であるWithingsが、ワークアウトと食事プランアプリの8fitを買収したと発表した。AppleやSamsung、Peloton、Mirrorといったハードウェアメーカーがフィットネス分野でコンテンツ重視のアプローチを強化する中での今回の買収だ。

ベルリンを拠点とする8fitは2014年に創業し、HIITやボクシングなどのワークアウト、ヨガ、瞑想、そしてレシピに至るまで、フィットネスに関するあらゆることを提供するサービスにまで成長してきた。同社は2017年の700万ドル(約8億円)のシリーズAなど、これまでに合計1000万ドル(約11億4500万円)を調達した。シリーズAの際に我々が取材してお伝えした通り、その時点でサブスクリプションプランによってすでに毎月100万ドル(約1億1500万円)を超える収益を上げていた。

スマートウォッチ、体重計、フィットネストラッカーといったさまざまなヘルスケアハードウェアを開発してきたWithingsとしては、今回の買収はかなりわかりやすいものだ。8fitを買収することで、Withingsはコンテンツの重要なレイヤーを提供できるようになり、しかもこれまでのようにまずハードウェアを売り、その後でさらに収入を得ることにもつながる。

WithingsのCEOであるMathieu Letombe(マチュー・レトンベ)氏は発表の中で次のように述べている。「我々は現在、『プロダクト – サービス – データ』の時代へ進んでいくことが重要であると感じています。個人のヘルスケアデータとその人に合わせたウェルネスのプランを組み合わせて、誰もが長期的に見てもっと健康になれるように支援するという我々のミッションをさらに実行していきます。8fitの買収により、エレガントにデザインされたヘルスケアデバイス、幅広いヘルスケアのデータ、シンプルで受け入れやすく我々のお客様に特化した経験豊かなアドバイスを組み合わせた戦略をお届けできるようになります」。

この買収によってWithingsは同社の既存ソフトウェアに8fitのサービスを統合し、Withingsのデバイスから収集された豊富なデータに基づいて、実行に移せる知見を提供するものと見られる。Withingsはコネクテッドフィットネスのサービス構築にさらに3000万ドル(約34億3500万円)を投資する計画であるとしている。

8fitのCEOであるLisette Fabian(リゼット・ファビアン)氏は「我々が提供しているサービスからすると、ユーザーが健康のゴールを達成するための支援をするというWithingsと8fitの方向性は一致しています。正確で質の高いデータを収集するコネクテッドヘルスケアデバイスにおけるWithingsの専門性と、我々のフィットネスや食事プランを組み合わせることに期待しています。両社は協力してユーザーに対し包括的なヘルスケアサービスを提供し、ユーザーがさらに健康で幸せな生活を送れるよう支援します」と述べた。

近年、フィットネスウェアラブルメーカー各社はコンテンツ分野への投資を増やしている。コロナ禍のためジムに行かずにワークアウトをしたいユーザーが増える中、Appleは2021年にFitness+を開始した。Googleに買収されたFitbitは月額10ドル(約1150円)のプレミアムサービスを提供し、ワークアウトと詳しいデータを連携できるようにしている。8fitが現在提供しているサービスはそれよりも高価で、月額25ドル(約2860円)または年額80ドル(約9160円)だ。

価格について8fitは次のように説明している。

我々は無料のアプリではありません。無料のアプリなどというものは存在しないからです。アプリに登場する人は8fitで働いていますし、登場こそしませんがアプリの向こう側にはもっとたくさんの人がいます。そして我々はその人たちの働きに対して公正に報酬を支払うという信念を持っています。毎月20〜30種類の新しいワークアウトを作成し、20〜30本の新しい記事を公開し、これらをすべてアプリに組み込むプログラミングには、たいへんな労力がかかっています。

画像クレジット:Withings

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

仏政府が発表したフランス最大のスタートアップ企業リスト

毎年、フランス政府と政府が支援するイニシアチブのLa French Techは「Next40」と「French Tech 120」という2つのスタートアップランキングを発表している。これらのリストに載っているスタートアップは、それぞれフランスに拠点を置く業績の良いトップ40とトップ120のスタートアップであるとされている。

フランス政府がこれらのリストを作成するのは今回で3回目である。French Tech 120に含まれる120のスタートアップのうち、84社が2022年もこのインデックスに残っている。そのうち36社は初めてリストに登場することとなった。

そのうち2社は2021年のNext40に入っていたが、2022年は株式公開のため登場しない。OVHcloud(OVHクラウド)Believe(ビリーブ)だ。

以下が2022年のFrench Tech 120となる。赤いロゴはNext40の一部だ。

画像クレジット:La French Tech

Next40に選ばれるには、2つの方法がある。

  • 過去3年間に1億ユーロ(約129億2500万円)以上の資金を調達している、または会社の評価額が10億ドル(約1146億5800万円)以上に達しているユニコーン企業であること。
  • 過去3年間の売上高が500万ユーロ(約6億4600万円)以上で、前年比成長率が30%以上であること。

French Tech 120の残りの80社のスタートアップについては以下だ。

  • うち40社は、過去3年間の資金調達ラウンドで2000万ユーロ(約25億8400万円)以上を調達している。
  • うち40社は、年間売上高と成長率に基づき選出されている。

もちろん、これらのインデックスは、イノベーション分野で活躍するフランスの民間企業に限定されている。French Tech 120については、行政区ごとに最低でも2社のスタートアップが選出されている。

2021年は、世界中で技術資金調達の超大型年となったが、それはフランスでも同様だ。「今日、Next40に入るには少なくとも5000万ユーロ(約64億5900万円)を調達しなければならない」と、フランスのデジタル担当大臣Cédric O(セドリック・オ)氏は記者会見で述べた。2017年、フランスのスタートアップは合わせて25億ユーロ(約3229億2400万円)を調達した。2021年には120億ユーロ(約1兆5500億円)近くを調達している。

資金調達ラウンドに加え、彼はフランスのテックエコシステムにおける他の面の功績も挙げた。例えば、2021年には10億ユーロ(約1291億8500万円)を超えるIPOが2件あり、これは過去25年間と同数の10億ユーロ(約1291億8500万円)を超えるIPOがあったことになる。

また、統合も行われている。ここ数週間では、Doctolib(ドクトリーブ)がTanker(タンカー)を買収し、Luko(ルコ)もドイツの競合Coya(コヤ)を買収したが、Frichti(フリッチ)はベルリンのスタートアップGorillas(ゴリラズ)に買収された

「Next40とFrench Tech 120が何であるか、みなさんに思い出していただきたかったのです。多くの人が、これはランキングだと考えています。もちろん、ランキングであり、その一員であることを誇りに思ってください」と、La French Techのディレクター、Clara Chappaz(クララ・チャパズ)氏はいう。

「しかし、ランキングの要素に加え、サポートプログラムでもあるのです。今日のフレンチテックのミッションには、スタートアップのマネージャーとして活動しているメンバーが数名います。彼らは、Back Market(バック・マーケット)のようなスタートアップや、ここにあるすべての企業をサポートし、あらゆる種類の問題に関して行政とのやり取りを円滑にしてくれます」とも述べている。

60もの行政機関にフレンチテックの担当者がいるのだ。彼らは外国人従業員のビザ取得、認証や特許の取得、行政への製品売り込みなど、スタートアップを支援してくれる。

しかし、1つだけ目立つことがある。過去の年と同様、フランス政府は、多様性と包括性(ダイバーシティ&インクルージョン)に関して、テック系スタートアップはもっと努力すべきと考えているということだ。

French Tech 120の女性創業者は7名から14名になったが「エコシステムにおける女性の登用に関しては、もっとやらなければならない」とセドリック・オ氏は述べている。

また、大統領選挙が近いこともあり、セドリック・オ氏は、過去5年間にスタートアップを手助けした政策変更をいくつか挙げている。

「富裕税(ISF)改革、フラットタックス、労働市場改革、Tibiイニシアチブ、ストックオプション(BSPCE)改革、フレンチテックビザがなければ、今日のフレンチテックはありません」と同氏は述べている。

2021年フランス政府は「Green20」というグリーンテック分野のスタートアップに特化したプログラムも発表した。グリーンテックスタートアップにとって、多くの資金を調達し、多くの収益を上げるには通常より時間がかかることが多いからだ。フランス政府は、今回の記者会見でこのプログラムについて言及しなかった。

26社のスタートアップがユニコーンの地位を獲得し、フランスのテック・エコシステムは最近特に好調だ。しかし、一歩引いて考えてみると、2021年、世界中のユニコーンの数は569から959に急増した。

この2つの指標は、テック産業が経済全体においてますます重要性を増していること、そしてそれがグローバルな競争になっていることを証明している。フランスのスタートアップの中には、それぞれの垂直方向で欧州や世界のリーダーになるための正しい道のりを歩んでいる企業もある。そして、誰がローカルな成功をグローバルな成功に変えていくのか、興味深いところだ。

画像クレジット:経済産業省・財務省・復興庁

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

レガシーな会計技術スタックを一新するために仏Pennylaneが約65.7億円を調達

フランスのスタートアップ企業Pennylane(ペニーレイン)は、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、Partech(パーテック)などの既存投資家から5700万ドル(約65億7800万円)のシリーズBラウンドを調達した。このスタートアップは、フランスで、そしてヨーロッパで、レガシーな会計ソリューションに取って代わりたいと考えている。

会計士であれば、CegidやSageのようなツールに馴染みがあるかもしれない。基本的に、Pennylaneはこれらのツールを全面的に見直し、会計事務所の技術スタックを現代化したいと考えている。

Pennylaneは、貴重な情報を保持しているサードパーティサービスと直接接続する。例えば、Pennylaneのインターフェースで銀行の明細を取得したり、Dropboxから領収書をインポートしたり、Stripeから請求情報を取得したりすることができるのだ。

また、オンラインプラットフォームであるため、会計事務所が共同でPennylaneを使用することも可能だ。クライアントもこのプラットフォームにアクセスし、領収書の一元管理、請求書の作成、一部のタスクの自動化などを行うことができる。表計算ソフトや写真の添付で情報をやり取りする代わりに、クライアントと会計事務所の双方がプラットフォーム上で直接やり取りできる。

現在、300の会計事務所がPennylaneを利用している。その中には、数人のクライアントと一緒に使い始めた事務所もあれば、完全に新しいツールに切り替えた事務所もある。興味深いことに、Pennylaneのクライアントは、このプラットフォームをもっと使いたいと思っており、つまり、彼らが新しいクライアントを連れてきているのである。

「9カ月前、90%のクライアントが直接私たちにコンタクトを取り、そのうち10%が会計事務所経由でクライアントになっていました。9カ月後、その傾向は変わりました。私たちのクライアントの81%が会計事務所からなのです」と共同創業者兼CEOのArthur Waller(アーサー・ウォーラー)氏は教えてくれた。

同社は収益の数字を共有したがらなかったが、ウォーラー氏は、この夏以降、毎月20%ずつ成長していることを教えてくれた。2020年以降、Pennylaneは9600万ドル(約110億8300万円)を調達している。

一歩後ろに下がって眺めてみると、Pennylaneには大きな市場機会が待っているということがわかる。英国や米国など、より成熟した市場では、企業はQuickBooksやXeroなどのSaaS型ソリューションを利用してきた。しかし、会計業界は断片的で、各国が独自のソフトウェアソリューションを使用している。フランスのように、会計のための決定的なSaaSソリューションが存在しない国もある。

「フランスには、約1万2000の会計事務所があります。現在では300の会計事務所と取引しています。4、5年後には150万社の中小企業と取引することが目標です」とウォーラー氏はいう。

この先、地理的な拡大だけでなく、製品チャンスもある。Pennylaneは、財務管理に関連するあらゆるものの中心的なハブとなる可能性があるのだ。

例えば、Swan(スワン)と共同で社用カードのベータテストを開始し、決済の円滑化を図っている。社用カードから発生する交換手数料を、会計事務所とレベニューシェアするようなイメージだ。同社は、フランス市場にだけでもまだやるべきことがたくさんあるため、今回の資金調達で、製品のイテレーションができるようになると考えている。

同社は、年内に従業員500人を計画している。同社は、技術と製品がこのスタートアップにとって最も重要な分野であると考えており、ほとんどの採用はこれらのカテゴリーで行われる予定である。基本的に、Pennylaneは、新しく始める会計士が何も考えなくてもよいような製品を作りたいと考えているのだ。

画像クレジット:Pennylane

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

患者と医師、両方からデータを得てがん治療をよりパーソナライズする仏Resilience、約51.6億円調達

フランスのスタートアップであるResilience(レジリエンス)は、中央ヨーロッパ時間1月25日、Cathay Innovationが主導するシリーズAラウンドで4000万ユーロ(約51億6000万円)を調達したと発表した。同社は、がんと診断されたときの治療の道のりを改善し、より健康で長い人生を送れるように支援することを目指している。

このラウンドには、Cathay Innovationに加え、既存投資家であるSingularも参加した。Exor Seeds、Picus Capital、Seaya Venturesなどのファンドもこのラウンドに参加している。さらに、Fondation Santé Service、MACSF、Ramsay Santé、Vivalto Venturesといったヘルスケア分野の投資家も参加している。

Resilienceについては2021年3月にすでに紹介しているので、ぜひ前回の記事を読んで、この会社のことをもっと知っていただきたい。同社は、シリアルアントレプレナーであるCéline Lazorthes(セリーヌ・ラゾルテス)氏とJonathan Benhamou(ジョナサン・ベンハモウ)氏が共同設立した会社で、がん治療において患者と医療提供者の両方を支援したいと考えている。

関連記事:ITでがん治療を支援するフランスの意欲的なスタートアップ「Resilience」

患者側では、Resilienceはがんやがん治療の影響や副作用を測定し、理解し対処するのに役立つ。ユーザーはアプリ内でさまざまなデータポイントを追跡し、自分の病気に関するコンテンツや情報を見つけることができる。

だが、Resilienceは自宅で使用するアプリだけではない。病院が治療をよりパーソナライズするための、病院向けのSaaSソリューションでもあるのだ。Resilienceは、世界有数のがん研究機関であるGustave Roussy(ギュスターヴ・ルシー研究所)とのパートナーシップにより設立された。

医療関係者は、患者がアプリを使って集めたすべてのデータを活用できるようになる。これにより、がん治療施設は患者をよりよく理解し、より迅速にケアを適応させることができる。ResilienceはBetteriseを買収することで、データ駆動型のがん治療に関して先陣を切ることができた。

長期的なビジョンは、それよりもさらに野心的だ。がん治療施設で働く医療提供者に話を聞くと必ず、時間がいくらあっても足りない、という。

しかも、ますます専門化していく新しい治療法を把握するのはさらに困難だ。Resilienceは、医師に取って代わるものではない。しかし、医師が盲点を克服する手助けをしたいと考えている。

その結果、患者はより良い治療を受けることができ、Resilienceアプリによって追加サポートを受けられるようになるはずだ。がんの治療は長く苦しいものなので、プロセスを改善することができれば、それは良いことに違いない。

画像クレジット:Resilience

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

車いすユーザーや運動障害を持つ人々の自立歩行を支援する外骨格ロボットメーカー「Wandercraft」

Wandercraft(ワンダークラフト)は2012年、車いすユーザーのモビリティを向上させることを目指して設立された。同社のソリューションは、ロボットエクソスケルトン(外骨格)によってもたらされ、着用者にロボットの助けを借りて歩く能力を提供できる。2019年、パリに拠点をおく同社は、12の自由度を持ち、歩行アルゴリズムに依存してユーザーの足取りを決定する自己バランス外骨格「Atalante」を発表した。

米国時間1月19日、同社は、これまでに調達した3050万ドル(約34億8000万円)の倍以上となる4500万ドル(約51億3500万円)のシリーズCをクローズしたと発表した。今回のラウンドは、既存の投資家であるBpifranceに加え、米国を拠点とするQuadrant Managementが主導した。特にQuadrantの参加は、WandercraftがAtalanteを欧州だけでなく、米国にも展開することになるという点で注目される。

同社のMatthieu Masselin(マチュー・マセリン)CEOは、リリースの中で次のように述べている。「当社の開発プログラムを進めるために、米国と欧州から世界トップクラスの投資家を引きつけることができ、非常に興奮しています。患者、医療関係者、ディープテックコミュニティの支援を得て、Wandercraftのチームは、リハビリケアを向上させる独自の技術を生み出しました。近い将来、車いすに乗っている人々が自立性を取り戻し、日々の健康を向上させることを可能にするでしょう」。

米国には、ReWalk Robotics、Ekso、SuitX、Sarcosなど、名の知れた外骨格企業で市場が混雑しており、これらの企業はこれまでに多額の資金を調達し、注目度の高いパートナーシップを発表している。しかし、Wandercraftが他と異なる点のひとつは、競合他社の多くが力仕事をする労働者や軍事用途を対象としているのに対し、ユーザーのモビリティーを重視していることだ。

この場合それは、病院やその他の医療機関との提携の可能性を意味する。

画像クレジット:Wandercraft

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

フランスでは1月だけで5社のユニコーン誕生、その5社目は企業支出管理プラットフォームSpendesk

フィンテックのスタートアップSpendeskがシリーズCラウンドのエクステンションを発表した。Tiger Globalが1億1400万ドル(約130億8800万円)を投資する。今回の資金調達ラウンドを受けて、同社は評価額が11億4000万ドル(約1308億7200万円)に達したと述べた。

つまり、Spendeskはフランスのテックエコシステムにおけるユニコーンの仲間入りをしたわけだ。フランスではここ数カ月、資金調達のニュースが加速している。2022年1月だけで、スタートアップ5社がユニコーンのステータスに到達したと発表した。PayFitAnkorstoreQontoExotec、そしてこのSpendeskだ。

整備品のスマートフォンや電子機器を販売するeコマースマーケットプレイスのBack Marketも大型の資金調達ラウンドを実施し、評価額は57億ドル(約6540億円)となった。

Spendeskに話を戻そう。同社はオールインワンの企業支出管理プラットフォームをヨーロッパの中規模企業向けに提供している。もともとはオンライン決済用のバーチャルカードを手がけていたが、企業の支出に関するあらゆる事柄を扱えるようにプロダクトを拡張した。

Spendeskを利用している顧客は従業員用の物理カードを注文できる。従業員はこのプラットフォームで未処理の請求書の支払い、経費報告書の提出、予算管理、支出報告書の作成ができる。Spendeskは1つのサービスであらゆることをできるようにすることで、会計や承認全般をシンプルにし、自由にお金を動かせるようにしたいと考えている。

Spendeskは同社プラットフォームを「7in1の支出管理ソリューション」と定義している。つまりSpendeskは従業員用のデビットカードを注文するだけのプロダクトではないということだ。

共同創業者でCEOのRodolphe Ardant(ロドルフ・アルダン)氏は筆者に対し「我々は最初からこのゴールを考えていました。このプラットフォーム、この運用システムで、支出を管理できるようにしたかったのです。プロダクトに取り組み始めた時点で、それぞれのユースケースを考えてそれに合うワークフローを設計しました」と述べた。

特に、Spendeskはきちんとした社内プロセスの確立に役立つ。チームの予算を決め、高額支出の際の複雑な承認ワークフローを構築し、VAT差し引きのような面倒なタスクを自動化できる。

「我々は中規模のクライアントをターゲットにしています。従業員数が50〜1000人の企業です。これより大規模な企業も小規模な企業も、少数ながらクライアントになっています」とアルダン氏はいう。

現在、同社には3500社のクライアントがいる。そのおよそ半数はフランスの企業で、それ以外の大半はドイツと英国の企業だ。2021年だけで、クライアントはSpendeskを通じて30億ユーロ(約3930億円)の支払いを処理した。

Spendeskは財務スタックの中心となる位置づけであるため、一方では銀行、もう一方ではERPプロダクトというように、他の財務ツールと完全に連携する必要がある。

同社は現在、XeroやDatevなどヨーロッパの企業でよく使われている会計ツールの多くに対応している。取引のバッチを書き出して、SageやCegidなどの会計ソフトウェアソリューションに読み込むこともできる。

Spendeskは銀行口座との統合の自動化にも取り組んでいる。これは複数の銀行口座がある企業には特に便利だ。例えばドイツの業者に支払いをする際に、ドイツの銀行口座とSpendeskアカウントの間の振替を自動で実行するルールを設定するといったことが考えられる。

画像クレジット:Spendesk

ヨーロッパにおける支出管理

ヨーロッパにおける支出管理ソリューションはSpendeskだけではない。最近47億ドル(約5381億5000万円)の評価額に達したPleoや、2021年に1億8000万ドル(約206億1000万円)を調達して豊富な資金を有するSoldoなどの競合がある、

米国でも同様に、BrexRampなどの企業が高い評価額に達している。ただしSpendeskは自社が米国のスタートアップと同じ位置づけであるとは考えていない。

アルダン氏は筆者に対し「米国市場では支出管理業界と呼ぶようなものではありません。コーポレートカード業界です。BrexやRampなどのプレイヤーは自社を決済手段と位置づけています。ヨーロッパの企業文化はクレジットではなく引き落としの文化です。我々は決済手段ではなくプロセスを提供しています」と述べた。

プロダクトの位置づけに若干の違いがあるため、ヨーロッパの支出管理スアートアップが米国に進出して成功するか、その逆はどうか、興味を持って見ていきたい。

ビジネスモデルについても、Spendeskは自社を継続サブスクリプションのSaaS企業であると考えている。同社は売上の具体的な数字を共有していない。アルダン氏はSpendeskの売上について「毎年、2倍以上になっている」とだけ述べた。

今回の資金調達ラウンドで、Spendeskは今後2年間で従業員数を3倍にする計画だ。2023年末までに従業員数を1000人にすることを予定している。

画像クレジット:Spendesk

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)