複数のブロックチェーン間の通信を支えるNucoのAionネットワーク、最終的スタンダードになるか?

ブロックチェーンの普及と並行して、複数のブロックチェーンが互いに通信できる仕組みの必要性が顕在化している。トロントのNucoは、今日(米国時間8/30)リリースしたブロックチェーンネットワークAionで、そんな通信のために必要なネットワーキングインフラストラクチャを提供しようとしている。

NucoのCEO Matthew Spokeによると、個々のブロックチェーンの中での、それにふさわしいレベルの信頼性を築くのは各ネットワークの究極の責任だが、いったん、プライベートなブロックチェーンの外の領域に出るようになると、全体的な信頼性を確保するためのシステムが必要になる。銀行でも、政府機関でも、ヘルスケアのプロバイダーでも、必然的にそういう、外にも行く性質のデータを扱っている。NucoがAionを作ったのは、そのための仕組みを提供するためだ。

彼によると、Aionの中核的機能は、データをあちこち移送するための配管系になることだ。Aionが提供するミドルウェアにより、ブロックチェーンは互いに通信し、メッセージを渡しあうことができる。

Spokeと彼の協同ファウンダーたちはDeloitteのブロックチェーンチームにいたが、昨年Nucoを創ってエンタープライズのためのブロックチェーンインフラストラクチャを作り始めた。が、しかし、彼らは気が付き始めた: 多くの大企業がプライベートなブロックチェーンを構築しているが、それとともに、パブリックなメカニズムのニーズも拡大している。ブロックチェーンというコンセプトがスケールし始め、経済システムの不可欠な部分になっていくに伴い、情報を移送するためのジェネリックな〔nonプロプライエタリな〕方法が必要になる。

このようなシステムの構築と利用に対しては、大きなハードルが二つある。ひとつは、情報を複数のブロックチェーン間でパブリックに移送することを、企業が承知することだ。第二は、情報の移送にはネットワーキングプロトコルのような単一の方法が必要なこと。前者に合意が得られたら、その次は後者が、避けて通れない要件になる。

Aionのトークンを一種のデジタル通貨と見なして課金し、ある種のデータをチェーン間ブリッジにまたがって移送するようにすれば、企業のNucoのネットワークへの参加を収益源にすることもできる〔Aionの利用を課金する〕。それにより、Aionのネットワークをサポートする企業も増えるだろう、とSpokeは説明する。

とは言え、彼によるとAionのようなものは、市場がどうしても必要とするインフラの一部だから、直接的に商用化を目指すべきではない。将来、ブロックチェーンがメインストリームになれば、成熟したインフラストラクチャが必要になり、同社や他社はそれを成功の源泉にすればよい。Spokeによると、同社の現状は、市場の成長を助けるためのコントリビューションが主体だ、という。

この問題に取り組んでいるのはNucoだけではないが、Spokeはこのようなプロセスが必要であることを確信しており、他の技術の場合と同様に、スタンダードになる勝者を決めるのは市場だ、と考えている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Nayutaがジャフコらから1.4億円を調達、ブロックチェーン上のレイヤー2技術開発へ

福岡市に本拠を置きIoTとブロックチェーン分野に取り組むスタートアップ企業Nayutaが、ジャフコおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1億4000万円の資金を調達したことを明らかにした。調達実施日はこの2017年7月28日、出資比率は非開示。同社が外部から資本を調達するのはこれが最初である。

調達した資金は主に研究開発に振り向ける。現時点では同社のフルタイムスタッフは2名だが、Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は「人員を増やしエンジニアを5〜6名にしたい。Biz Devの人材も採りたい」と話している。また、同社の取り組みにはハードウェア開発が関係することもあり大きめの資本が必要と判断したとのことだ。

同社が注力するのは、ビットコインを筆頭とするブロックチェーンの上に構築するレイヤー2(あるいは2nd Layer)技術だ。ブロックチェーンの上に「ペイメント専用のレイヤー(層)」を構築する試みである(下の図を参照)。現状のビットコインでは難しい「単位時間あたり取引能力の拡大」、「リアルタイムな取引」、「マイクロペイメント」を可能とする技術群を開発していく。

今までのNayutaの取り組みとしては、ビットコインのブロックチェーン上のOpen Asset Protocolを応用したスマートコンセント(発表資料(PDF))や、BLE(Bluetooth Low Energy)に基づく人流解析システム、大型放射光施設「SPring-8」の測定データの有効活用を図るためブロックチェーンを応用して構築したデータ流通インフラシステムのプロトタイプ(発表資料)などがある。この7月28日に開催した「MUFG Digital アクセラレータ」第2期のDemo Dayでは「準グランプリ」を受賞している。

レイヤー2で世界の最先端と実装を競う

レイヤー2に関連しては、ビットコインのLightning Networkが知名度も高く注目されている。Nayutaは、このLightning Networkと同様の機能を実現する層と、その上のアプリケーション層の両方を開発していく。同社が開発したビットコインの「レイヤー2」を用いる決済技術については以前TechCrunch Japanで報じている。同社はこの時点で、Lightning Networkの既存実装とは独立に、自社による実装に基づくマイクロペイメントを実現している

ブロックチェーンとレイヤー2は、どちらも必要とされる技術だ。この2017年8月には、レイヤー2プロトコル実装に必要となるSegWit仕様がビットコインのブロックチェーンでアクティベートされることが決定した。最近、いわゆる「ビットコイン分裂」の懸念が盛んに報道されたが、この騒動の実態はSegWit有効化をめぐる動きだった。SegWit仕様が使えるようになれば、レイヤー2技術の実装と応用が加速することは間違いない。

このように聞くと「すでに登場しているLightning Networkの実装を使ってその上のレイヤーを開発した方が効率的ではないか」との疑問を持つ人もいるかもしれない。この疑問に対して、同社では「レイヤー2はどの実装が標準になるのか、まだ分からない段階。Lightning Networkだけではなく、様々なパターンの技術が出てくるだろう。IoT分野に取り組む上で、自分たちで作ることでレイヤー2の技術を身につけておくことは大事だ」(栗元氏)と話す。特に大事な部分はリアルタイム性に関連する部分だ。

「IoT分野では、ほとんどのものにリアルタイム性が要求される。レイヤー2がうまく構築できれば、(リアルタイム性に欠ける)パブリックブロックチェーンでもIoT分野で新しいソリューション、ガバナンスを作っていける可能性がある」(栗本氏)。

Nayutaが狙うのは特にIoTと関連するレイヤー2分野だ。リアルタイム性を筆頭にIoT分野(あるいは組み込みシステム分野)では、技術をブラックボックスとして利用するだけでなく「中身」を把握していることが競争力につながる場合が多い。同社が自社による独自実装にこだわっている理由はそこにある。

ブロックチェーン、レイヤー2、IoTの組み合わせは世界的に見ても最先端の取り組みだ。その最先端のソフトウェアテクノロジー分野で日本のスタートアップが正面から世界との技術競争に挑む形となる。資金調達のタイミングと同時にSegWit仕様の有効化が重なったことは幸運でもあるが、競争も激しくなるだろう。今後の同社の取り組みは要注目といえる。

シンガポールがアメリカに続いてICO規制に乗り出しか

米証券取引委員会(SEC)のICO規制に関する発表から1週間も経たないうちに、シンガポール当局も証券として考えられるトークンの規制を始めると発表した。

世界的な金融ハブとして知られているシンガポールは、TenX(調達額:8000万ドル)、Golem(860万ドル)、Qtum(1560万ドル)などの資金調達を経て、ICOのメッカのような存在になった。ICOという、これまでになかった資金調達方法について各国当局の対応に注目が集まる中、シンガポール金融管理局(MAS)は自国通貨の電子化に努めており、仮想通貨業界からはポジティブな声が集まっていた。

中にはシンガポールを「ICOヘイブン」のように考えている人もおり、3月のWiredの記事では、シンガポール当局は「このような電子トークンを証券とは考えていない」とまで書かれていた。

どうやらそれは違ったようで、本日(現地時間7/31)MASは、一部の(どうやら全てではないようだ)ICOを規制する旨の書簡を公開した。

6つのポイント沿ってまとめられた書簡の内容を要約すると、MASは今後シンガポールの証券先物法の対象になりそうな(つまり株式のような証券に近い)トークンの販売を規制していくということだ。さらにMASは、取引所をはじめとするICO後のトークン売買を可能にするサービスも規制対象になると記している。

シンプルな内容のようにも見えるが、何を「証券」とみなすかはMASの判断であり、その条件については現時点では明らかになっていない。

MASは妥当なアドバイスとして、シンガポールが関連したICOを考えている企業・個人は「関連法に照らして第三者機関からの法的なアドバイスを受け、必要に応じてMASとも相談するよう」促している。

ICOを行うシンガポール法人以外にも、シンガポール人やシンガポールに拠点を置く個人・法人からの出資を受けるICOも規制対象になる可能性がある。

だからといって悲観する必要はない。シンガポール当局は同国でICO人気が高まっているのを認め、規制をもってこの新たな資金調達方法に漂う法的な不透明さを払拭しようとしたのだ。今後はどのICOが証券取引として考えられるのか(そもそもそんなものが存在するのかを含め)、そして当局がそれにどう対応するかということに注目が集まる。

業界団体のACCESS(シンガポールの仮想通貨・ブロックチェーン企業から構成されている)は、既にMASの書簡を歓迎している。

「本日MASが公開した書簡の内容を喜ばしく感じています。当局は仮想通貨の多様さと共に、証券先物法の対象にならない通貨の存在も認めているのです。明確化された規制対象や仮想通貨に対するMASの新たな意見について知ることができありがたく思っています」とACCESSの広報担当者は語った。

MASは以前にも、ICOで使われることのあるビットコインやイーサリアムといった仮想通貨に関する勧告を発表したが、資金調達の手段として仮想通貨が利用され始めたことを受けて、今回の書簡を公開するに至った。

「海外の規制当局と同じように、MASも仮想通貨を規制しないというポジションをとっています。しかし最近では、ただの仮想通貨を超えたトークンの使い方が散見します。トークンが発行者の資産や所有物の所有権や担保権を表章するものとして使われている場合がその一例です」と書簡には記してある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

仮想通貨急騰の背景に中国と日本の影――動き始めた政府と大手企業

【編集部注】執筆者のHugh Harsonoは元金融アナリストのアメリカ陸軍将校。

仮想通貨の価格がここ最近急上昇しており、特に過去数か月間はその傾向が市場全体に見られた。

主要通貨のビットコイン、リップル、イーサリアムは全て値上がりし、ビットコインは2588ドルの高値をつけたほか、リップルとイーサリアムの時価総額はそれぞれ100億ドル、200億ドル前後まで上昇した。

日本と中国は仮想通貨の需要・供給量が桁違いに多く、この価格上昇にも大きく関係している。

出金規制で揺れる中国

ハードウェアと電気料金の安さから、中国はマイニングのメッカとなった。BTCCをはじめとする取引所が運営する巨大なマイニングプールの力もあり、ビットコインネットワークの合計ハッシュレート(採掘速度)の60%は中国によるものだ。

しかし、今年はじめの中国当局による取り締まりの結果、投資家は各取引所から資金を引き出せなくなってしまった。中国は世界でも有数のビットコイン取引量を誇っているため、この影響は市場全体にまで及んだ。

先月には引き出しに関する規制緩和の話が浮上し、中国の経済紙CaixinはOKcoinHuobiBTCCで出金が再開される可能性があると報じていた。この報道を受けて、中国の消費者の間には仮想通貨に対する安心感が再度広がり、価格上昇に繋がった。

中国の穴を埋める日本

中国で仮想通貨の流動性が下がったことにより、日本のビットコイン市場は大きな盛り上がりを見せ、需要が膨れ上がった。

それまでビットコインの取引量全体における日本の割合は1%前後だったにもかかわらず、最近ではこの数字が6%近くまで伸び、日によっては全体取引の約55%が日本で行われていることもある。中国での規制を背景に日本での取引量が増加したことで、グローバル仮想通貨市場も勢いづいた。

Distributed ledger technology , bitcoin icon with hexagonal symbol blue background , cryptocurrencies or bitcoin concept , flare light , 3D illustration

規制対策としての仮想通貨

人民元が中国政府によって厳しく管理されているのも、空前の価格上昇と関係している。中国政府は中国元の価値を完全にコントロールしており、以前から必要に応じて通貨の切り下げを行い国際的な競争力を保ってきた。

しかし、中国で個人資産が増加するうちに、代替資産としての仮想通貨の側面に注目が集まり始めた。つまり、仮想通貨はアクセスがしやすい上にボラティリティが低く、安定性も増してきたと中国の人々は考えており、その結果が価格に反映されているのだ。

一方日本では、日本銀行の量的緩和政策による金利低下(さらにはマイナス金利)も仮想通貨の価格高騰に繋がったと考えられている。

もともと量的緩和は経済成長を促すための政策だったが、日本円の価値は大きく下がり、投資家も日本円への投資を控えるようになった。出口の見えないこの金融政策を背景に、仮想通貨は代替資産として注目を集め、価格が上昇したのだ。

現地の投資家も予想がつかない政府の介入を危惧し、仮想通貨に逃げ道を見出している。

大手機関による仮想通貨の受け入れ

関係機関が仮想通貨を受け入れ始めたということも、価格上昇と大きく関係している。中国の杭州市で最近行われたGlobal Blockchain Financial Summitには、北京大学をはじめとする大学や金融機関などが大きな興味を寄せていた。なお、北京大学は現在イーサリアム研究所を発足しようとしており、そこでは同通貨のプロトコルの改善やアプリケーションへの応用に関する研究が行われる予定だ。

中国人民銀行(PBoC)の下部組織で、金融システムの電子化をミッションとしているRoyal Chinese Mintは、積極的にブロックチェーン技術の採用を提唱しており、予算と人員を一部を割いて人民元の電子化にまで取り組んでいる。

日本でも大手機関が仮想通貨を決済手段として認め始めており、日本全体での利用に耐えうるか調査が行われている。民間レベルで言えば、日本最大の取引所であるbitFlyerには、三大メガバンクの三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行が出資している。

消費者/小売レベルでいえば、ビックカメラがbitFlyerとパートナーシップを結び、一部店頭での決済手段としてビットコインの導入を決めた。さらにリクルートホールディングス傘下のリクルートライフスタイルも、コインチェックと呼ばれる取引所と共同で、モバイルペイメントサービスをローンチすると発表した。このように大手企業での採用が進むことで、仮想通貨は日常的な決済手段としてだんだん日本国民にも受け入れられつつあるようだ。

上記のような中国と日本の大手機関による仮想通貨の受け入れも、仮想通貨全体の価格上昇につながっている。

政府による仮想通貨の受け入れ

中国政府が仮想通貨の規制に乗り出したことで、数か月前にはビットコインの価格が1000ドル前後まで落ち込んでしまった。

しかし、PBoCによる規制の動きは、決済手段としての同テクノロジーの力を物語っているとも言える。さらに中国政府は独自の電子通貨さえ作ろうとしているのだ。

ビットコインの出金規制緩和の可能性に関する発表以外にも、PBoCは最近ブロックチェーンを利用した独自の仮想通貨の実験を終えた。この実験には中国初のオンラインバンクであるWeBankのほかにも、中国銀行や中国工商銀行など大手金融機関が参加していた。

日本政府も今年の4月1日からビットコインを正式な決済手段として認め、入札手続きへの仮想通貨導入に向けて動き出した。

さらに日本は中国に先駆けて取引所の登録制度を導入し、仮想通貨を金融庁の監視下におくことを決定した。bitFlyerをはじめとする大手取引所は既に申請済みのようで、制度面が整備されたことを受け、今後さらに日本国内外の仮想通貨取引が加速することになるかもしれない。

また、新しい資金決済法のもとでは仮想通貨に消費税が適用されないため、ビットコインの投資対象としての魅力がさらに増すことになる。

中国では独自通貨の開発が進められ、日本ではビットコインが正式な決済手段として管理されるようになるなど、両国で仮想通貨が受け入れられはじめたことで、市場は今後さらに盛り上がっていくだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

仮想通貨市場で今何が起きているのか?――時価総額1000億ドルはバブルを意味するのか

仮想通貨の時価総額合計が最近1000億ドルを突破した。しかも、価格が急上昇したのはここ数か月のことで、4月1日時点の時価総額合計が250億ドルだったことを考えると、たった60日間で仮想通貨の価値が300%も上がったことになる。

その一部はビットコイン(上記期間の値上げ幅が160%)によるものだが、Ethereum(439%の値上げ幅)をはじめとする他の仮想通貨も時価総額の上昇に貢献している。

多様化が進む仮想通貨市場の様子を確認するには、ビットコインの”支配度”を見るのが1番だ。つまり、全仮想通貨の時価総額合計に占めるビットコインの割合をチェックすれば良いということだ。しばらくの間、ビットコインの支配率は80%を超えていたが、この2、3ヶ月でEthereumやRippleといった新興通貨が台頭しはじめたこともあり、その割合は50%以下まで下がってきた。

出典: coinmarketcap.com

これはバブルなのか?

経験豊富なプロの投資家であれ、別の仕事を持つパートタイムの投資家であれ、数か月のうちに400%も時価総額が上昇した資産を見れば、ものすごいバブルだと考えるのが普通だろう。歴史を振り返ってもそれは明らかで、これだけ急激に価格が上昇していれば、ほぼ確実にそのうち値崩れする。結局のところ市場はそこまで合理的ではないのだ。

そのため、何らかの補正が今後起きても驚かないでほしい。実は数週間前に、既に価格補正は起きており、ビットコインの価格は最高値の2700ドルから約2000ドルまで下がった。しかし、その後値段を戻し、本日(米国時間6/7)の時点では史上最高額の2850ドル前後で取引されている。

とは言っても、1年というスパンで仮想通貨市場を見てみると、ここ数か月の異常とも言える価格上昇は、バブルというより仮想通貨全体の復活なのではないかと気づく。

ビットコイン以外の通貨が全体の価格上昇に貢献していたというのも、これがバブルではなく仮想通貨一般への興味が再燃したことを意味している良いサインだ。さらに、Ethereumがその先頭を走っているというのにも納得がいく。技術的な面ではビットコインをも凌駕するこの通貨では、ブロックチェーン内に直接スマートコントラクトを埋め込めるようになっているため、全く新しいトークンを発行したりICO(イニシャル・コイン・オファリング)を開催したりできる。

仮想通貨ほど大きな可能性を持っていながら成長過程にあるテクノロジーに、一般の人々が直接投資できる機会はこれまで全くなかった。

同様に、銀行間の決済を主なユースケースとするRippleは、既に世界中の100社以上の金融機関で採用されている。たとえ実装までに時間がかかったとしても(金融機関で働いたことがある人であればよくわかるはずだ)、この具体的なニュースに心躍らせる人がいるのもよくわかる。

その一方で、上記のような仮想通貨の進化をもってしても、60日間で400%という価格上昇を説明することはできない。EthereumもRippleもリリースからしばらく経っており、これらの通貨を公開企業として考えると、株価が劇的に上昇する理由が(ほぼ)ないのだ。しかし、仮想通貨自体が新しい概念であり、EthereumやRippleなどはもちろんのこと、ほとんどの人がビットコインが何であるかさえもよくわかっていないというのもまた事実だ。

仮想通貨ほど大きな可能性を持っていながら成長過程にあるテクノロジーに、一般の人々が直接投資できる機会はこれまで全くなかった。

例えば1990年代であれば、インターネットが今後発展していくと予想していた人もいたかもしれないが、彼らは直接インターネットに投資することなどできなかった。また、保管・送受信されるデータを暗号化するというのも比較的新しい考え方だ。つまり、暗号技術によって守られた上記のようなブロックチェーンを支える仮想通貨を誰でも直接購入できるということは、黎明期のインターネットに投資するチャンスを掴んだようなものなのだ。

値付けの難しさ

もしも本当であれば、主要仮想通貨の急騰を説明できるような考え方がある。それは、もしかしたらこれらの仮想通貨には本当に時価総額分の価値があり、今後さらに何倍にも価格が上昇していくのではないかというものだ。

しかし、この考え方の問題は、仮想通貨の価値を割り出す方法がないということだ。企業と違い、仮想通貨には売上やコスト、一株当たり当期純利益といった価格の根拠となるものがない。Appleを例に考えてみると、彼らの会計報告をもとに簿価(会社を清算したときの価値)を算出することができる。そして、Appleの業績が今後も上がっていき、簿価も上昇すると考えている人がいるので、もちろん株価にはプレミアムが含まれる。

このような考え方は仮想通貨には当てはまらない。できることと言えば、通貨流通高や金の供給量との比較からその価値を推測するくらいだ。もしあなたが、仮想通貨を価値の貯蔵手段として考えているのであれば、世界中にある金の時価総額8兆ドル強というのが目安になるだろう。つまり、もしも将来的にビットコインが金に取って代わるとすれば、現在の時価総額はまだかなり低いと言える。

仮想通貨を本当の通貨のように考えている人であれば、M2と比較してみるといい。M2とはアメリカの通貨流通高のことで、ここには現金や当座預金のほか、貯蓄口座、投資信託、短期金融資産など”現金に近い”資産も含まれている。M2の総額は約13.5兆ドルにのぼり、この場合も上記と状況は同じだ。

仮想通貨のことをよく理解した”投資家”であれ

私は、仮想通貨の価値が上昇してくのを見て楽して儲けようと考えている読者(そして友人)に対し、仮想通貨の購入を控えるよう伝えてきた。過去数か月の価格急騰により、仮想通貨に興味を持つ人の数は一気に増え、CNBCやCNNといった主要メディアもビットコインをはじめとする通貨に”投資”する方法について説明するほどだ。

しかし、私は正しい理由で仮想通貨を購入してほしいのだ。仮想通貨自体について学ぶためや、仮想通貨を決済手段と見ている場合は全く問題ない。さらに、このテクノロジーが下記のような変化をもたらし、世界を変えていくと考えている人にも仮想通貨の購入は適しているだろう。

  • 価値の貯蔵手段として金を代替するような存在になる
  • 銀行間決済を変える
  • 海外送金にかかる費用を下げる
  • 資金調達やIPOのプロセスに革命を起こす

上記の変化は全体の一部に過ぎず、仮想通貨の動向を追っている人であれば無限大の可能性に気づいているだろう。そのため、何もしなくても価値が上がっていき、”投資”に対する十分なリターンが得られそうという理由ではなく、長期的な展開(もちろん表面上は金銭的なメリットを享受できる可能性もある)が望めるからこそ仮想通貨を購入するようになってほしいのだ。

注:筆者はビットコインやEthereum、さらに小規模な仮想通貨を複数保有している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Mozilla前CEOが設立したBraveが30秒で3500万ドル調達――テック界に広がるICOの可能性

暗号通貨の売却を通じて資金を調達するイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関しては、さまざまなニュースを目にするが、昨日の出来事ほど衝撃的なものはなかった。Mozilla前CEOのBrendan Eichが立ち上げたブラウザ開発企業Braveが、ICOで3500万ドルを調達したのだ。しかも、30秒以内に。

ICOでは投資に対して暗号通貨が配布されるようになっており、投資家は従来の株式よりも多様な形で資産を保有することができる。Braveは資金調達にあたり、独自の通貨Basic Attention Token(BAT)を10億枚売却した。その総額は15万6250ETH(=3500万ドル強)。同社によれば、さらに5億万枚のBATがユーザー獲得や「BATの開発」のために発行されたが、将来的な追加販売は考えていないという。

BraveのICOは過去最高額にあたり、彼らのビジネスはブロックチェーン技術のユースケースとしてはかなり興味深い。JavaScriptの考案者で2014年の疑惑のあとにMozillaを去ったEichは、Founders Fundをはじめとする投資家からこれまで700万ドルをBraveのために調達してきた。現状のネット広告のシステムに本質的な問題があると考えている彼は、ブロックチェーン技術を使って広告システムを効率化し、広告主や出版社、ユーザーという全ての関係者がメリットを享受できるような仕組みを提唱している

北米の若者に人気のメッセージングサービスKikも、モノやサービスの購入に使える”Kin”と呼ばれる仮想通貨の構想を最近発表し、Braveの後に続こうとしている。BraveはBATを広告システム内で流通させようとしており、同社によればBATの導入によって、広告詐欺を抑制できるとともに、出版社や広告主の効率性も向上するという。さらに彼らは、将来的にマイクロペイメントや電子商品の購入にもBATが使えるよう研究を重ねている。

また、Braveは同社のブラウザのメリットとして、短い読み込み時間、強固なプライバシー管理機能を挙げているほか、ユーザーはBraveのブラウザ上でコンテンツを読むだけでお金を稼ぐことができるようになるかもしれない。

直近では、ICOで調達した資金を使って広告プラットフォームの開発を進める予定だ。

ところで、BraveのICOで気になったのは参加者の少なさだ。Coindeskによれば、実際にBATを購入した人は130人しかおらず、中にはひとりで460万ドル(=2万ETH)分のBATを購入した人もいた。全体で見ると、投資総額の約半分がたった5人の投資家によるもので、投資額上位20人が発行されたBATの3分の2を手にしたとCoindeskは報じている。

この状況は、暗号通貨を使った資金調達によって、日常的に使っているサービスの開発元や気になっている企業の所有権を誰でも得ることができるという、Ethereumの哲学に反しているように映る。もちろん、何億ドルという金額の仮想通貨を販売するためには、冒険心溢れる企業や先見性のあるVCのように、多額の資金を運用している投資家も必要だが、個人投資家が入り込める余地を残しておくというのは、ICOが一般化するにつれて重要な課題になってくるだろう。

ICOのスケジュールについては明かしていないKik以外にも、アジアのペイメント企業Omiseが2000万ドル弱規模のICOを今月行う予定で、暗号通貨を使った資金調達に規模の大きな(そしてVCからの投資を受けている)テック企業も興味を持ち始めているようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

著作権管理ブロックチェーンのBindedが、朝日新聞などから95万ドルを資金調達

Bindedは、ブロックチェーンを使う公開データベース上に著作権の恒久的な記録を作ることによって、写真家が自分の知財を容易に保護できるようにする。

それまでBlockaiという名前だった同社は、今日からBindedになる。テクノロジーっぽい名前から、ユーザーが得る利益、すなわち法的拘束力(binding)のある記録を作ること、を前面に打ち出した名前に変えたのだ。これなら、ビットコインやブロックチェーンを知らない人たちにもアピールするだろう。

ついでに同社は今日、新たな95万ドルの資金調達を発表した。その投資家は、Mistletoe, Asahi Shimbun, Vectr Ventures, M&Y Growth Partners, Tokyo Founders Fund, そしてSocial Startだ。Mistletoeを率いるTaizo Sonはゲーム企業GungHoの創業者で、SoftBankのMasayoshi Sonの弟、Asahi Shimbunは日本の新聞「朝日新聞」だ。これでBindedの資金総額は150万ドルになる。

BindedのCEO Nathan Landsは、日本の投資家が顔を揃えたことで、同社が著作権管理のグローバルスタンダードになる道が拓(ひら)けた、と示唆している。

なぜそんなスタンダードが必要なのか? さよう、たとえばアメリカの場合なら、作品は作られたときから著作権を有するが、それが法的効力を持つためには特許庁に権利を登録しなければならない。Landsが主張するBindedのメリットは、それが権利発生と法的有効化との中間に位置する点だ。登録に比べると時間もお金もかからないが、それでも第三者による記録として法的価値を持ちうる。

“著作権というものを簡易化し大衆化したいんだ”、と彼は述べる。

その主張に即してLandsは、Bindedのコアプロダクトを“つねに無料”、としている。そして今後加えていくさまざまなサービス…登録代行など…を有料化して、収益源にするつもりだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

暗号通貨を一般に普及させる方法について考えてみた

【編集部注】執筆者のNeil Haranは、エンジェル投資家で暗号通貨の提唱者。

投機筋がBitcoin市場やその他の代替通貨市場に早くから参入し、大きなリターンを狙っている一方で、一般の消費者に関しては、まだ暗号通貨を受け入れる準備が整っていない。

その理由はさまざまだが、暗号通貨の普及を妨げている大きな壁のひとつがボラティリティだ。

そもそもなぜ暗号通貨の価格はあんなに大きく変動するのだろうか?その究極的な理由は需要と供給に関係している。ほとんどの暗号通貨では流通量の上限が決まっているものの、投機的な動きのせいで需要が常に大きく変化しているのだ。

もちろん問題について語るのは簡単だが、重要なのはその解決策を模索することだ。

価格を安定させることの大切さ

価格の安定は、暗号通貨以外でも重要なことだ。どんな通貨であっても、等価交換を行う手段としての信頼を勝ち取るためには、その価値が安定していなければならない。価格の上下が大きいほど、普通の人が日常生活でその通貨を使う頻度は下がるのだ。

値上がりを期待して持っておくにしろ、値下がりを不安視して使わないようにするにしろ、そもそもまだ一般の人は暗号通貨を本当のお金として見ていない。

さらに価格の不安定さが、送金や為替、ATMの利用など通常の金融サービスにも悪影響をおよぼすため、暗号通貨を扱う企業は法外な手数料をとってリスクをヘッジしなければいけないのだ。

BitcoinのATMの中には、現金化に最大15%の手数料をとっているものさえある。これは、従来の決済手段よりも低コストで柔軟性のある通貨を作ろうという、暗号通貨の理念と矛盾してしまっている。公式通貨よりもメリットがなければ、一般の人は暗号通貨を使おうとさえ思わないだろう。

忍耐は美徳

価格のボラティリティは、Bitcoinの誕生直後から大きな問題だった。既にBitcoinの誕生から10年弱が経過しているにもかかわらず、なぜボラティリティへの対策が講じられていないのだろうか?

これには、他の分野でも往往にしてそうであるように、人間の性質が関わっている。市場を操り、出来るだけ高い金額で手持ちの通貨を売り抜こうとしている人がいる限り、価格を安定させるのは難しいのだ。新しい暗号通貨をリリースする前から価格の安定化について入念に計画していないと、いざ投機筋に目をつけられたときにどうしようもなくなってしまう。

出典: JaaakWorks/iStock/Getty Images

フェーズ1;安定したエコシステムの構築

ゼロから暗号通貨をつくるときは、まずしっかりとした土台を築かなければいけない。そうすれば後から手を加えなくても、その通貨は自ら軌道修正しながら成長していく。

需要測定

大きなパズルの1ピース目となるのが、確実な需要の測定だ。価格変動の主な原因は、需要の不透明さにある。他人の思いとは推し量るのが難しいものなのだ。自分がつくろうとしている通貨の実質的な需要を計測する手段があれば、問題解決にグッと近づくことができる。

その一方で、需要を測定する上で問題になってくるのが、投機筋のつくりだす人工的な需要だ。これこそ価格変化の問題の根本なのだ。投機的な動きが増えてくると、暗号通貨の価格に実需が反映されなくなってしまう。その結果、いつ破裂するかわからないバブルが生まれ、誰も汗水垂らして稼いだお金を暗号通貨につぎ込もうとは思わなくなる。

既存の通貨では、各地の中央銀行が価値の安定化に関わってきた。彼らは通貨の供給量を変化させることで、価格をコントロールしているのだ。しかし、暗号通貨は非中央集権的な性質こそが売りであるため、ボラティリティの問題を解決するためには、中央銀行に取って代わる全く新しいアプローチを取らなければいけない。インフレに頼らず、ユーザーの自由を損なうこともないような方法だ。

競争よりも協力:非中央集権的なコミュニティ

「団結すれば立ち、分裂すれば倒れる」

人々が協力し合うのを促すような通貨が存在すればどうなるだろうか?私欲ではなく、コミュニティの成長がインセンティブの根源にあるとすればどうだろうか?理想的なモデルでは、協力的な事業やサービスのネットワークが、ひとつの共同体としてお互いに作用し合い、通貨はこの協力関係によって形作られることになる(コントロールされるのではなく形作られるのだ)。そうすれば、人々はネットワーク全体が成長することにインセンティブを見出すようになり、さらにブロックチェーン技術を使えばそのプロセスを公平なものにできる。

また、各ユーザーはオンライン上での投機的な動きをとる代わりに、地元の取引所を訪れて通貨を売買するようになるだろう。そして通貨の価値を上げるかどうかはコミュニティ全体で決める。そうすれば、民主的なプロセスをとりながら、同時に通貨価値が急激に上下するのを防ぐことができるのだ。

公式取引所

取引の段階で、実際に人と会わなければいけないとなると、人間の心理には大きな変化が起きる。公式な場所での直接取引が必要となれば、自然と売買のボリュームが制限されるだけでなく、実需の計測も楽になる。”前線”にいる人たちが取引の様子を見てから、価格の引き上げに関する投票を行えばいいのだ。さらに、すぐには潰れないであろう取引所があれば、ユーザーはどこであれば通貨を売買できるのかと考えあぐねる必要がなくなり、ネットワーク全体に一貫性が生まれる。

経済的な側面以外にも、取引所の設立にはメリットがある。暗号通貨の評判は、悪意を持った人たちのせいもあり、一般的にあまりよくない。しかし取引のほとんどが対面で行われているコミュニティであれば、非倫理的または非合法の企業が自然と追い出されることになるため、通貨の信頼性自体も高まっていく。もちろん悪徳企業を立ち上げることは不可能ではないが、そのような企業がコミュニティに参加できる可能性はないだろう。

オンラインよりもオフライン

このようなアプローチがうまく機能するためには、実在する取引所の数がオンライン取引所よりもずっと多くなければなれない。そういう意味では、取引所が通貨の価値を決めているといっても過言ではない。

早期のマーケティングは控える

マーケティングは強力なツールだが、それゆえに慎重に扱わなければいけない。もちろんファウンダーは出来るだけ早い段階でお金を集めたいと考えている。お金が集まれば、暗号通貨の価格が上昇し、インフラコストをカバーでき、コミュニティの成長も加速する。その一方で、これまでの様子を見る限り、誕生間もない暗号通貨に投資している人たちの質は極めて低い。投機筋である彼らは、通貨の未来を潰し、一般ユーザーをその通貨から遠ざけてしまう。

投機的な動きに対抗して通貨を安定させるには、資本注入という手があるが、これはかなり大掛かりなものになる可能性がある。例えば、Bitcoinの時価総額は約200億ドルと言われており、価格を安定させるには膨大な量のお金が必要になる。

「慎重かつ確実に」こそが勝利の法則

暗号通貨というものが誕生してからまだそれほど時間が経っていないこともあり、主要な暗号通貨がどのような方向に進もうとしているのかはハッキリしない。彼らが目指す”ゴールライン”とは何なのだろうか?その先には何があるのだろうか? ほとんどの暗号通貨について、市場の気まぐれな動き以外には特にこれといった指針がないため、それぞれがどこを目指しているのかは知る由もない。しかし中には、いくつかの戦略をもとに、ある一定の方向へ進もうとしている通貨も存在する。

セントラルアプリ戦略

この戦略は、通貨に関連したユニークなサービスや製品を使って価値を生み出そうというものだ。つまり、通貨の価値は人々が実際に欲しがるモノで支えられることになる。

例えばMaidSafeは、暗号通貨を使ってユーザーがネットワーク全体にとって有益なモノ(=ストレージスペース)を提供するインセンティブを与えているほか、さまざまなアプリやサービスをユーザーに提供している。この仕組みのもとでは、自然とユーザー同士が協力するようになる。というのも、通貨の価値をあげるため、各ユーザーは自分たちのリソースや労力を投入し、通貨の価値に直結するサービスの価値を高めようとするからだ。

土台構築戦略

これはセントラルアプリ戦略とも似ているが、まずユーザベースを確立し、その後に通貨を導入するというやり方だ。Bitsharesやその関連企業が、この手法をとっている組織の好例と言える。SteemitのSTEEMやPeerplaysのトークンなど、複数のネットワークがそれぞれの通貨を持ち、徐々にユーザーを獲得しながら等価交換のシステムをこれまで築いてきた。現在彼らは、Bisharesと共に全てのネットワークを通して使える中心的な通貨をつくろうと計画している。この戦略をとれば、個々のネットワークでそれぞれの土台を作ってから、全体のリソースを統合することができるのだ。

草の根戦略

最後に、暗号通貨にとって極めて重要な真摯なユーザーが集う基盤を築くためには、自己資金でネットワークを創り上げるのが1番だ。そして通常のスタートアップのように、これを実現するためには共通のミッションを信じているユーザーベースが必要になる。ネットワーク内の全員がその通貨に固有の価値を見出し、通貨の価値が時間と共に高まっていくと思えなければいけないのだ。

FairCoinはそんな草の根運動を通して自分たちのネットワークを築いてきた通貨のひとつだ。この通貨をつくったFairCoopは、ユーザーが最大限のメリットを受けられるように、参加企業が協力し合うようなエコシステムをつくろうと考えていた。FairCoinはユーザーが短期的な欲望よりも長期的な利益を優先するのを促すような仕組みを念頭につくられた通貨だ。つまり、ユーザーは正しいから長期的な利益を優先するのではなく、自分にとって利益があるからそうしているのだ。

またFairCoinは、設立当初から一般ユーザーを想定してインフラを構築してきた。コミュニティに属するメンバー間の繋がりがとても強いからこそ、FairCoopは何千台というATMを設置でき、デビットカードや両替サービスを揃えることができた。このようなサービスが揃っていれば、一般の消費者も暗号通貨を利用しやすくなる。

この戦略をとれば、暗号通貨は投機筋の集中砲火を浴びることなく、ゆっくりとユーザーベースを拡大していくことができ、はじめから通貨の価値を安定させることができるのだ。ただしFairCoinがそうであるように、自己資本でネットワークを運営していくとなると、他の通貨に比べて少ない資本で戦っていかなければならない。そのため、(投機的な動きの結果)人工的に吊り上げられた価格をもってCoinMarketCap上で名を上げることはできない。

つまり、FairCoinはボラティリティや欲望によって巻き起こる盛り上がりの代わりに、先を見据えた静かな成長戦略をとったのだ。この戦略の唯一の問題点は、なかなか人の目に入りづらいということ。結局のところ、ドラマが人の注目を集めるのだ。

ハードフォーク

近い将来起こると言われている、Bitcoinのハードフォークについて考えてみよう。まるで複雑な事情など関係していないかのように、現在Bitcoinは競合し合うふたつの暗号通貨に分裂しようとしている。既にBitcoinは、一般に普及する上での障壁となる技術的な問題を抱えているにも関わらず、ここに新たな問題が加わろうとしているのだ。ハードフォークが先に見えていることで、Bitcoinのボラティリティがさらに高まり、状況を悪化させている。どんな通貨にとってもボラティリティは毒のような存在だ。

その一方で、強固なブロックチェーンと大規模で協力的なコミュニティが存在すれば、ハードフォークが発生する可能性は低くなる(そもそもハードフォークの必要性もない)。MaidSafeやBitshares、FairCoinのようなコミュニティでは、一攫千金を狙った動きよりも協力的な動きが促進されているため、各通貨はそれぞれのネットワーク内で、市場価格よりも実質的に高い価値がつく可能性がある。

このような状態にある通貨であれば、ユーザーにはコミュニティから抜け出すインセンティブがほぼなくなる。というのも、ハードフォークが起きるとユーザーが他者と協力し合うことで享受できていたさまざまなメリットが無くなってしまうため、彼らはその通貨のもともとのビジョンに忠実にあろうとするのだ。つまり、欲望ではない深い気持ちで繋がっているコミュニティでは、ハードフォークが発生する可能性は低くなるということだ。

まとめ

安定した通貨価値とは、偶然の産物でもなければ、市場で起きる奇跡でもなく、綿密な基盤づくりがあってこそ生まれるものなのだ。そして安定的な通貨には、エコシステムの安定が欠かせない。

十分な資金があれば、通貨にとって重要な初期段階にその価値を引き上げるられるため、なるべく早く自分たちの通貨を世に知って欲しいという気持ちもわかるが、そこはぐっとこらえた方が良い。広告を打つというのは、パンドラの箱の中身を世界中に披露するようなものだ。中には純粋にその通貨に興味を持つ人もいるだろうが、ただそのシステムに寄生しようとしているだけの投機筋もいる。さらに通貨価値を安定させるためには、少数の投資家だけでなく、”ほぼ全員”がその通貨を利用するようにならなければいけない。

通貨は人の前を通り過ぎるのではなく、人と共に成長していかなければならない。Bitcoinの現状とその膨れ上がった価格について考えてみてほしい。一般消費者は自分たちでBitcoinを採掘することができなければ、高い手数料やリスクなしには日常的な取引で同通貨を使うことさえできない。Bitcoinは投機筋によって支えられているネットワークなのだ。

逆に本当に安定している通貨であれば、ユーザーは両替や送金、ATMでの引き出しといった金融サービスを従来の通貨よりも安い手数料で利用することができる。つまり、暗号通貨が狙い通り(お金として)の機能を果たすことができるのだ。これこそが一般大衆の支持を獲得し、彼らが従来の通貨から暗号通貨に切り替えるのを促進するカギとなる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

コーヒー豆の等級分けロボットとブロックチェーンを使って生産農家に公正な支払いをするBext360

コーヒーは、石油に次いで世界で二番目に大きい貿易商品だ。Fairtrade Foundationの推計では、およそ1億2500万の人びとがコーヒーの栽培で生計を立てている。その多くが小農または農業労働者で、世界銀行の調査では家族が1日2ドル未満で生活している。そこで、デンバーのBext Holdings Inc.は、これらの農家が豆の公正な価格に見合う代金を容易にかつ迅速に得られるようにしたい、と考えた。

同社は、見たところ高級な秤(はかり)に見えるモバイルのロボットを作った。バイヤーはこのロボットを農家の農地で使ってコーヒー豆の品質を分析し、計量する。ロボットは一回分(30〜40ポンドの袋に詰める)の豆をサイズで選り分けて、良品の比率を計算する。そして優・良・可などのマークをつける。もちろんそのマークは、バイヤーと農家の両方に見える。そして彼らは、Bext360のモバイルアプリを使って公正価格を交渉する。

同社のアプリとクラウド上のソフトウェアは、Stellar.orgのブロックチェーン技術を使って、豆の生産者生産地、バイヤーと支払い金額、などを記録する。CEOのDaniel Jonesによると、コーヒーを飲む人も、カップ一杯ごとに、コーヒーの産地や、農家が公正な代金をもらったかどうかを、分かるべきだ、という。

“そうすれば、消費者はこれまでになく啓蒙される。そしてコーヒー業界の企業は、彼ら消費者の高いスタンダードを満たそうとする”、と彼は語る。“でも今日一般的には、フェアトレードを推進する人たちにとって、いろんな材料やデータを調べる仕事がたいへんすぎる。調べる方法も、原始的だ。だから精度も低い。そして産地の農民たちは、依然として搾取されている”。CEOの目標は、コーヒーのサプライチェーンに完全な透明性をもたらし、またカカオなどそのほかの産品にもそれを拡張することだ。

アグリテックを手掛ける前のJonesは、コンゴ民主共和国から金属をアメリカへ輸出する企業を創業した。その仕事を通じて、すべてのサプライチェーンの要件とトレーサビリティーを定めたDodd-Frank Act(ドッド-フランク法)の存在を知った。彼はまた国防情報局(Defense Intelligence Agency)でも働き、トップシークレットなネットワーク上で音声とビデオとデータを送信する通信システムを作った。というわけでJonesは、西側の顧客の利益のために途上国で事業をするやり方を、よく知っている。そして彼は、官僚主義との付き合いを恐れていない。

Bext360はローンチ時に、SKS Venture Partnersから120万ドルのシード資金を獲得している。SKSは主にフィンテックに投資している家族経営のVCだ。Bext360に投資したMark Spencerは曰く、“スマートフォンを利用して支払いを農家に直接行う。不当な中間搾取をする仲買がいない。この点に注目して投資をした”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IBMがクラウド上のブロックチェーンサービス、SaaSとしてのブロックチェーンプラットホームを立ち上げ

IBMが今日(米国時間3/20)、クラウド上の汎用ブロックチェーンプラットホーム、いわば“Blockchain as a Service”を、The Linux FoundationのオープンソースプロジェクトHyperledger Fabricバージョン1.0をベースに構築し、公開した。

IBMのBlockchainは一般公開されるクラウドサービスで、ユーザーはこれを利用して安全なブロックチェーンネットワークを構築できる。同社がその計画を発表したのは昨年だったが、このほど最初の実用実装の供用にこぎつけた。

ブロックチェーンは2008年ごろに、デジタル通貨Bitcoinの取引記録方法としてその名が知られ始めた。ブロックチェーンは本質的に、透明で改ざん不能なデジタル台帳だ。Bitcoinの取引を安全かつ透明に記録できることが示しているように、そのほかのタイプのデータもプライベートなブロックチェーンに安全に保存したり取り出したりできる。

民間企業や政府機関は、ブロックチェーンを使って信頼性の高いネットワークを構成できる。それによりメンバーは自由に情報を共有でき、それはメンバーだけが見ることができ、いったん入力された情報は書き換えられない。

IBMでブロックチェーンを担当しているVP Jerry Cuomoによると、顧客は同社のこのクラウドサービスを利用して、ブロックチェーンのネットワークを作成、展開、そして管理できる。これは、いろんな種類のクラウドサービスを顧客に提供していきたいとするIBMの基本戦略の、一環だ。

ブロックチェーンそのものはオープンソースのHyperledger Fabricプロジェクトがベースで、IBMもこのプロジェクトに参加しているが、これに独自のセキュリティサービスを加えることによって、エンタープライズの顧客でも安心して利用できるようにしている。また複雑な技術をシンプルなクラウドサービスでくるんでいるので、企業が自前でブロックチェーンを実装するよりもずっと楽である。

Cuomoはこう語る: “かなり前から、わが社を中心とするテクノロジー企業のグループが、企業のためにブロックチェーンとその関連技術(管理など)の一式を、サービスとして提供することを検討していた”。

そして2015年の終わりにHyperledger Fabricプロジェクトが登場して、それが可能になった。このプロジェクトには、State Street Bank, Accenture, Fujitsu, Intel などもメンバーとして参加している。

Hyperledger Fabricを利用すると、顧客側には安全なネットワークを構築するという外見があるだけで、ネットワークのセットアップやメンバーの招待、認証情報の暗号化などはすべて楽屋裏で行われる。またIBMのクラウドでは、IBM独自のセキュリティも盛り込まれるから、なお一層安全になる、と同社は考えている。

IBMのブロックチェーンサービスが絶対不可侵とまではCuomoも言わないが、独自の安全対策は施している、という。たとえば、その台帳はそのほかの一般的なクラウドコンピューティング環境からは隔離され、特製のセキュリティコンテナに台帳を収めることによって、無資格アクセスを防止している。また、セキュリティ耐性の強い、専用のハードウェアを使用している。たとえばそのハードウェアは、ハックを検出すると直ちに自分で自分をシャットダウンする。

同じくIBM独自のセキュリティ対策として、ネットワーク内で起きるあらゆるアクティビティを仔細に監査できるようにしている。アドミニストレーターは、異変時に監査記録をすぐに見ることができる。

IBMはこのブロックチェーンサービス本体に加えて、顧客のアイデンティティと属性を安全にシェアするブロックチェーンの実装SecureKey Technologiesを発表した。同社はこれまで、ブロックチェーンの応用技術として消費者のアイデンティティネットワークを、カナダの銀行でテストしてきたが、これはその派生システムでもある。

それがIBMの主張どおりなら、デジタル世界におけるアイデンティティのメンテナンスと共有が、大幅に単純化されると同時に、安全にもなるだろう。そして、毎回不必要な情報を入力することはなくなり、また共有化を途中で拒否することも、容易にできるようになるはずだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ブロックチェーン技術mijinを電子行政へ、ベルギー アントワープ市で適用実験

ベルギーのアントワープ市の電子行政システムに適用するためのPoC(Proof of Concept、適用実験)の対象として、プライベートブロックチェーン技術mijinが選ばれた。今後1年ほどかけてPoCを実施、評価レポートを発行する。レポートが公開されるかどうかは未定。選定のため開催されたハッカソンで在欧の開発者が成果を出したことがmijin選定の決め手になったとのことだ。人口50万人規模の自治体を対象にプライベートブロックチェーン技術を電子行政システムに適用するための本格的な実験が行われることになる。

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ベルギー アントワープ市の電子行政システムのコンセプト図。基幹システムにAPIを公開、スタートアップや開発者コミュニティによる外部のアプリケーションをプラグインしていく構想である。

ブロックチェーン技術の検証を実施するのは、ベルギーのアントワープ市とゲント市が出資する団体「Digipolis」である。同団体の目的は両自治体のためのITの評価で、240名のスタッフを抱える。市の電子行政システムの技術を機動的に評価検討するIT部隊といった位置づけだ。このDigipolisが立ち上げた「Blockchain Lab」がブロックチェーン技術の評価を担当する。

選定では各種ブロックチェーン技術をプレゼンとハッカソンにより評価し、結果としてmijinの開発効率と実用性が評価された。今後、1年ほどかけて検証を実施する。検証の内容は、(1)住民の出生・生存証明、(2)住民票の管理、転居の簡素化や情報開示先の管理、(3)生涯学習のサポート、(4)公共意思決定プロセスの透明化の4分野を予定している。各分野を担当する情報システムへのブロックチェーンの適用について詳しく評価していく形となる。

行政システムへの適用実験をするブロックチェーン技術をハッカソンで評価

mijinを推進するテックビューロによれば、2016年11月にDigipolisからmijinに関する問い合わせがあったことで、地方自治体へのブロックチェーン適用を検討していることを知ったとのこと。その後、2016年12月19日にDigipolisのBlockchain Labがミートアップが主催し、107名が参加した。

「ミートアップでは、ハッカソンでHyperledgerやEthereumなど10製品ほどが成果を競った。その中でmijinが選定された」(テックビューロ代表取締役 朝山貴生氏)。在欧のNEM/mijin開発者コミュニティのメンバーがミートアップに参加し、選定を勝ち取ったという経緯のようだ。

背景として、NEM/mijinの公式ウォレットソフトが最近実装した機能であるApostille(アポスティーユ)が有効だったとのことだ。これはブロックチェーンを文書の公証所や登記所のように利用する機能である。デジタル文書のハッシュ値、記録者の電子署名、タイムスタンプをブロックチェーンに記録することで「誰が、いつ、当該文書を登録した」ことを証明する。またマルチシグ(複数の電子署名の組み合わせ)の活用で所有権移転の仕組みを容易に構築できる。所有権管理のシステムに求められる機能の中核部分をmijinでは標準機能として提供する点が、開発効率に寄与すると評価された。

アントワープ市は「ACPaaS(Antwerp City Platform as a Service)」と呼ぶコンセプトを掲げ、行政サービスのAPIと、スタートアップを含む民間企業によるサービスを組み合わせる試みに取り組んでいる(上の図を参照)。また、新しいテクノロジーへのチャレンジを継続的に行う方針を取っている。別の国の例になるが、電子政府で有名なエストニアは技術の更新をIT戦略に組み込んでいる(ノーレガシー政策)。アントワープ市のIT戦略にも「新技術を常に取り入れる」との考え方があり、最新技術であるブロックチェーンも評価検討することになった訳だ。

プライベートブロックチェーンmijinに関しては、TechCrunch Japanで過去何回か取り上げてきた。特にベンチャー企業による実証実験の報告が多かった(関連記事)。最近はどうかというと「去年(2016年)の秋から大手企業からの問い合わせが多い。業種も幅広いが、公表できない案件が増えた」(朝山氏)。最近の例では日立ソリューションズと、会員数1億5000万人のポイント管理に適用する実証実験を行うとの発表がある(発表資料)。こうした検証や導入の事例は、案件の規模が大きくなるほど情報が外部に出にくくなり、また外部に出たとしても時間が必要になる傾向がある。

mijinに限らず、プライベートブロックチェーンの実像に関する情報は、率直にいってまだ乏しい。別の製品の例では、最近bitFlyerのプライベートブロックチェーン技術Miyabiに関して3大メガバンクでの評価が進んでいるとの情報が出てきたが(関連記事)、その詳細は守秘義務の壁の向こう側だ。壁の外側からはその実像はなかなか見えにくい。

今回のアントワープ市らのPoCは、プライベートブロックチェーンに関する本格的な検証であると同時に、検証結果の情報が開示される可能性があるという点でも興味深い例といえるだろう。

スウェーデンの現金使用率は2%―、キャッシュレス社会への賛否

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【編集部注】執筆者のChristoffer O. Hernæsは、チャレンジャーバンクかつノルウェイ初のオンライン専門銀行であるSkandiabankenのチーフデジタルオフィサー。

銀行取引や社会の電子化に関する話の中でも、キャッシュレス社会というアイディアは熱い議論を呼びがちだ。まず現金は、汚職や税金逃れ、マネーロンダリングといった違法行為と結びつけられることが多い。しかし、現金の匿名性が地下経済を支えている一方で、その匿名性が低下してしまうと、ジョージ・オーウェルの著書「1984年」のような監視管理社会が誕生し、個人の自由が制限されてしまうのでは、と懸念している人も多くいる。

キャッシュレス社会に向けた動きの最前線にいるスウェーデンでは、国家が電子決済に関する施策を推し進めるにつれて、国民の間には現金の利用頻度が減っていくことに対するネガティブな感情が広まっている。オーストリアやドイツといった国では、今でも現金が主要な決済手段として使われているものの、世界全体で見ると現金を使う機会は減ってきている。

消費者がモノやサービスを購入する際の決済手段として、現金が全体の3分の1を占めるアメリカでさえ、現金の使用頻度は減少傾向にある。しかし同時に、現金の発行額は増えてきている。40年前は約800億ドルだった現金の流通額が、今日ではおよそ20倍の約1兆5000億ドルにまで増えているのだ。また、1970年台半ばには25%だった全紙幣の発行額に占める100ドル紙幣の割合は、今では約80%に達している。

まずインフレの影響が頭に浮かぶが、発行額の増加率はインフレ率を大きく上回っている。経済学者のKenneth Rogoffは、世界中に現金が溢れているせいで貧困が広まり、生活上の安全も損なわれてしまっていると考えている。Rogoffは彼の著書「The Curse of Cash(邦題:現金の呪い)」の中で、先述の現象はアメリカだけでなく、世界で広く使われている通貨全てに関して言えることだと主張する。さらに彼は、現金が地下経済での決済手段として好まれているいることが、その主な原因だと説明しているのだ。それではどんな解決方法があるのかというと、彼は高額紙幣の廃止を提案している。

もしかしたらインドの首相は、Rogoffの提案内容を最後まで読まずに、高額紙幣の廃止は数年かけて行わなければいけないという箇所を飛ばしてしまったのかもしれない。昨年11月にインド政府は、500ルピーと1000ルピー紙幣を廃止すると発表し、その数時間後には両紙幣が使えなくなってしまったのだ。国内には混乱が広がったものの、この政策は「ショック療法」の一部として施行され、現金重視の地下経済を解体すると共に偽札をなくし、経済の電子化をさらに進めることで、もっと多くの国民を課税対象となる正規の経済に参加させることが目的だった。

突然かつ急速な高額紙幣の廃止のせいでインド国内には混乱が生じたが、他にも同じことを行おうとしている国は存在する。ECB(欧州中央銀行)は、2018年中に500ユーロ紙幣の発行を取りやめようとしており、スウェーデンもほぼ誰にも気付かれることなく段階的に高額紙幣を廃止した。そもそも、スカンディナビア半島の国々では、現金がほとんど使われていないのだ。スウェーデンの中央銀行によれば、2015年にスウェーデン国内で発生した全ての取引の決済手段に占める現金の割合(決済額ベース)は、2%しかなかった。さらにノルウェーでは、通貨の流通高における現金の割合は3%しかないと同国の中央銀行が発表している。さらにスカンディナビア半島の各国は、世界的にも汚職が少なく、透明性が高い社会だと評価されている。

彼らのような社会を目指すには、洗練されたデジタルインフラが不可欠だ。その証拠に、ノルウェーの決済インフラはGDP比で考えると世界でも指折りの費用対効果があり、消費者や商店、そして社会全体にとって利用金額の大小に関わらず、電子決済が最も経済的な支払方法となっている。

個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

電子決済にはさまざまな利点があるものの、現金を完全になくしてしまうには心配な点もある。今日の決済システムのまま現金が廃止されてしまうと、銀行や政府や決済業者が全ての取引内容を把握できるようになってしまうのだ。さらに現金には、マイナス金利に対抗して金融政策の効果を薄める力がある。中央銀行や政府の目からすれば、これは現金の短所として捉えられるが、逆に中央銀行や政府による支配への対抗手段として現金を見ている人も大勢いる。

現金がなくなったからといって、私たちの住む世界がジョージ・オーウェルの描くようなディストピア社会に一晩で変わってしまうことはないが、一旦完全なキャッシュレス社会に切り替わってしまうと、政府がこれまでにないほどの力で市民をコントロールできるようになる可能性がある、ということは心に留めておいた方が良いだろう。

個人の自由を脅かすことなくキャッシュレス社会を実現するため、各国の中央銀行の中には、ブロックチェーン・分散型台帳技術を電子マネーの発行に使えないか研究を進めているところもある。匿名性を保証する物理的な通貨を電子化する、というアイディアに反対する声も挙がっている一方で、ノルウェー中央銀行はこの可能性を模索している。

実際に物理的なお金を電子マネーに置き換えるとすれば、個人が必要に応じて自分のお金をコントロールできて匿名性も確保できるよう、ブロックチェーン技術を採用するのがベストな選択だろう。ブロックチェーンシステムの下では、ユーザーだけがアクセスできる口座にお金を保管することになるため、自分のお金を自分で管理できるようになる。

しかし実際にこれを実現するのはそう簡単なことではない。理論上ブロックチェーン技術には全体を管理する組織が必要ないとはいえ、実際には理想と現状の間くらいの制度に落ち着くことになるだろう。しかし市民が中央銀行の発行した電子マネーを受け入れるためには、ネットワークに参加している全員のプライバシーが保護されなければいけない。中には、ブロックチェーン技術を導入しても犯罪行為の解決にはつながらないと言う人もいるかもしれないが、ビットコインのような仮想通貨であっても、マネーロンダリングができる可能性は限られており、資金流に関する情報を完全に消すためには一旦現金を電子化して、さらにもう一度そこから現金化しなければならない。

物理的なお金を廃止するというのは、犯罪防止の観点からは名案のようにも見えるが、その先にある、まだハッキリとは見えていない可能性についてもしっかり考えていかなければならない。多数決の原則は守らなければいけないし、もはや「現金は王様」という言葉は通用しないのかもしれない。それでも、個人の自由を守る分散型の安全機能なしに現金を廃止するべきではない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Blockchain―昨年は「幻滅の谷間」に落ちたが2017年の展望は明るい

Bitcoin

編集部:この記事はCrunch Networkのメンバー、Peter Smithの執筆。SmithはBlockchainのCEO、共同ファウンダー。以前の記事は How bitcoin protects against geopolitical risk

2017年のデジタル資産、またそれを支えるブロックチェーン・テクノロジーの展望は?

これは重要な質問だ。ことにフィンテック・ビジネスにとっては最近気がかりなニュースがあった。Goldman SachsとSantanderがR3 CEVを脱退し、 ブロックチェーンををプロトコロルとして採用する唯一の現実的デジタル通貨であるbitcoinは終わったのではないかという観測が流れた。

懐疑論者は正しいのか? われわれが知るようなデジタル通貨は本当に終わりなのか?

エコシステムになにがしかの影響はあるだろう。だが答えははっきりとノーだ。

以下のことを考える必要がある。ポンドは安全な決済通貨の一つと思われていたが、今年始めに起きたBrexit(イギリスのEU離脱)は、一夜にしてポンドの下落を招いた。この時期にbitcoinの価値は急増した。アメリカの大統領選直後、株価は一時急落したが、bitcoinはアップした。

これは偶然の一致だろうか? 私にはそうは考えられない。 これらの事象は 安全でボーダーレスで手続きが簡単なデジタル資産への要求が非常に強いことを自ずから物語っている。このようなデジタル資産は国や中央銀行のような中心による統制を受けない。金融政策、資本政策からも自由だ。その結果グローバル・リスクからの避難場所として最適だ。

brexit

さらに重要な点はデジタル資産は現代、つまりデジタル情報が重要となった時代にこの上なく適合する。デジタル資産を可能にすyるブロックチェーン・テクノロジーは現行の金融システムを根底から揺るがす可能性がある。それはもっと透明性を高め、効率化され、誰にも利用できるものにならなければいけない。

この1年を振り返ると、第1四半期はblockchainをベースとするスタートアップへの投資の総額は10億ドルという巨額となった。しかしこの投資の勢いは後退した。

2016年の1月から9月まで、, blockchainスタートアップは4億2900万ドル92回の株式発行によって調達した。これを2015年の同期と比較すると件数で16%、金額で7%、それぞれマイナスとなっている。こうした低調さは、すでに市場に影響を与えている。たとえば、先週、Circleは同社のアプリ内でのbitcoinの売買から撤退した。

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これらはつまり「終わりの始まり」なのだろうか?

そうではない。こういう現象は画期的な新しいテクノロジーでは常に予期される。ことにそのテクノロジーが金融システムのような死活的に重要な分野を根本的に変革する可能性があるならなおさらだ。非常に有名になったGartnerのハイプ・サイクルの図で言えば、bitcoinは昨年「過度な期待」のピーク期を通り過ぎたところだといえる。Gartnerによればこの時期には「多数の成功事例が報じられるが、多くの失敗事例もある。この段階で一部の企業は行動を起こすが、静観している企業も多い」。

こうしてblockchainビジネスは「幻滅の谷間」の時期に入った。この時期は「興味が失われる」ことが特徴だとされる。 実験や導入が結果を出せないことが続くからだ。「この時期にこの段階で、ベンダーの多くは失敗して市場から退出する。生き残ったベンダーが製品を改善し、早期採用企業がそれに満足を示した場合にのみ投資が継続される」とされる。生き残った企業には逆に投資が集中することになり、本格的普及期に向かって進む道が開かれる。

これが私の見ている現状だが、来るべき2017年には市場にも変化が起きると予想している。

Gartnerのハイプ・サイクル理論によれば、一部の企業は段階的な改良を目指すが、一部の企業はすべてを自分でゼロから作らず、パートナーと提携するなどの戦略的な行動に出る。一部の企業は燃え尽きる。

しかしラディカルなイノベーションは現状を段階的な改良することによってもたらされることはない。本当のイノベーションはグローバル化という現代の状況に適合したまったく新しいシステムの構築を必要としている。blockchainに関していえば、2017年、またその後に来るのがこの時期だと私は考えている。

画像: Day Donaldson/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ブロックチェーンがサプライチェーンにもたらす変革

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編集部記:Ben DicksonはCrunch Networkのコントリビューターである。Ben DicksonはソフトウェアエンジニアでありTechTalksのファウンダーだ。

2世紀ほど前、サプライチェーンという画期的な概念が発明された。サプライチェーンはA地点からB地点までの商品やプロダクトの移動を可視化し、把握するための概念だ。しかし、現在の製造経路及びサプライサイクルには適さなくなってしまった。それらはあまりに細分化し、複雑になって、地理的に分散してしまっているからだ。

現在のサプライチェーンは不透明で不完全なプロセスであり、すべてを把握するのは非常に難しい。

このサプライチェーンの問題はブロックチェーンで解決できるだろう。ブロックチェーンはすでにいくつかの業界で透明化と効率化に寄与している新興テクノロジーだ。

サプライチェーンの問題

サプライチェーンは原材料からコンシューマーが手にする最終的な商品に至るまでの製造と物流のすべてのつながりを表す。現代のサプライチェーンは100以上の工程と数十以上の地理的に異なる拠点をつなぐ場合もある。これにより、サプライチェーンで起きたことを遡って確認したり、問題を調査したりすることがとても難しくなっている。

カスタマーやバイヤーは購入したプロダクトやサービスの本当の価値を確認したり、立証したりできる確実な手段はない。サプライチェーンの透明性が失われているためだ。それはつまり、私たちが商品に支払う金額は、製造における本当のコストを正確に反映していない状態であるとも言える。

サプライチェーンに影響を受ける、あるいは連動する物事はさらにトラックしづらい。例えば、商品を製造する時の環境へのダメージなどをトラックする方法は現状ほとんどないと言える。

また、サプライチェーン上で行われる違法な行為の調査や責任追求をすることも非常に難しい。例えば、プロダクトの偽造、強制労働、工場の劣悪な労働環境、あるいはプロダクトの利益が戦争犯罪や犯罪グループの資金源になるといった問題だ。モバイル端末を始めコンシューマー向け電化製品の蓄電器を製造するために使用するコルタンの事例もこれに当てはまる。

ブロックチェーンでサプライチェーンを変える

分散型台帳は透明性とセキュリティーの両方を担保していて、ブロックチェーンは既存のサプライチェーンの問題を解決できる可能性がある。サプライチェーンにブロックチェーンを単純に適応する方法を考えた時、品物の移動を台帳に登録する方法があるだろう。ブロックチェーンには品物に関わる事業者や価格、日付、位置情報、品質、プロダクトの状態を始めとするサプライチェーンの管理に必要な情報を登録することができる。

台帳は広く利用可能であるため、すべてのプロダクトはそれを作るのに使用された原材料の出発店まで辿ることが可能になる。分散化した台帳の構造により、1社が台帳を占有したり、誰かが自分にとって有利になるようにデータを書き換えることはできない。さらに暗号化され、トランザクションは不変であるという特徴により、台帳を改ざんすることも不可能に近い。専門家の中にはブロックチェーンはハック不可能だと考える人もいる。

サプライチェーンのより良い管理のためにブロックチェーンを用いようとする取り組みも複数始まっている。IBMはカスタマーがブロックチェーンを安全なクラウド上で走らせ、複雑なサプライチェーンを要す高価な商品をトラックするためのサービスを展開している。Everledgerはこのサービスを活用している。Everledgerはブロックチェーンを使ってサプライチェーンを透明化することで、強制労働が横行し、またアフリカの犯罪組織の資金源となっているダイアモンド市場を正そうとしている。

ロンドンに拠点を置くProvenance はビットコインやイーサリアムの基盤となるブロックチェーンを活用し、原材料からコンシューマーに届くまでのサプライチェーンの透明化で人々の信頼を得ようとしている。企業はサプライチェーンやプロダクトの製造方法に関して透明性を保つことができる。また環境への影響、プロダクトの製造場所、誰が製造したかまでのすべてを開示することも透明性の内容に含まれる。

ブロックチェーンにはサプライチェーンを変革し、既存の商品の製造、マーケティング、購入、消費のあり方をディスラプトする力があるだろう。

Provenanceの取り組みは、社会的に認められた運用方法を促進することにもつながる。例えば、プロダクトを製造する段階で奴隷を用いたり、搾取が発生したりしていないことを保証することになるからだ。

BlockVerifyはまた別の取り組みを行っている。彼らはブロックチェーンの透明性を用いて、プロダクトの偽造に対抗する。特に多大な経済的なダメージをもたらし、毎年何百何千もの人命を奪う医薬品の偽造に対抗することに注力している。

BlockVerifyは箱に印刷されたQRコードを読み取るのと同じくらいの簡単さで真正な医薬品の認証ができるようにしたい考えだ。各プロダクトはブロックチェーン上に個別の認証があり、所有者の変更の履歴が記録される。その情報には誰もが簡単に確認することができる。

透明性の他にもブロックチェーン技術とサプライチェーンを掛け合わせることにより生まれる明確な利便性がある。

フィンランドのスタートアップKuovola Innovationはサプライチェーンにおけるスマートな入札を可能とする ブロックチェーンのソリューションに取り組んでいる。RFIDタグのついた荷物を台帳にA地点からB地点に運ぶ必要があると登録する。運送業社は、その仕事を獲得するためにアプリケーションに入札する。RFIDは最も適切な条件を提示した入札者に渡り、ブロックチェーンにその取引が登録される。荷物の移動は、タグがサプライチェーンを進んでいる最中でも随時トラックすることが可能だ。

ConsenSysのRebecca Migirovは、「サプライサークル」の青写真について説明している。これはブロックチェーンに基づいたコミュニティーの製造と消費のシステムを表す。コミュニティーの協力関係とコラボレーションを促進し、また消費者が「プロシューマー」(消費者であるとともに各自が製造者でもある)となることを促すシステムだ。

ブロックチェーンとスマート・コントラクトのインフラが整うことで、地域の製造事業者は分散化プラットフォームによりサードパーティーに頼らず、それぞれのスキル、リソース、プロダクトを共有することが可能となる。

サプライチェーンの未来

ブロックチェーンにはサプライチェーンを変革し、既存の商品の製造、マーケティング、購入、消費のあり方をディスラプトする力があるだろう。サプライチェーンに透明性、トレーサビリティ、セキュリティーが加わることで私たちの経済の安全性は高まることが期待できる。信頼と誠実さを促進することでより信頼できるようになり、また不審な活動を未然に防ぐことにもつながるだろう。

Featured Image: Bryce Durbin

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

P2P送金のVerseがシリーズAで830万ドルを調達、ヨーロッパでのビジネス展開を加速

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既に多くのライバルがひしめき合っているP2P送金サービス界で、また新たな企業がシリーズAで830万ドルの資金を調達したと本日発表した。サンフランシスコとバルセロナに拠点を置くVerseは、ヨーロッパのVenmoになるべく、その動きを加速させている。そのVenmoはと言えば、未だアメリカ国外にモバイルソーシャルペイメントサービスを拡大しようとする動きを見せていない。

VerseのシリーズAでは、Greycroftがリードインベスターとなり、その他にもSpark CapitaleVenturesBoost VCがラウンドに参加した。また、以前同社はシードラウンドで、DFJ Dragonやアメリカ・ヨーロッパのエンジェル投資家から180万ドルを調達していた。

今回調達した資金は、製品開発チームの強化を含む増員や、Verseの成長を加速させるために使われることになると、共同ファウンダーのAlex Loperaは話す。

「私たちは決済サービスにおけるWhatsAppのような存在になろうとしています」と彼はTechCrunchの取材中に話していた。「何かの支払をするときや、友人に借りているお金を返そうとしたとき、インターネットバンキングはいまいちだし、うまく支払ができない時もあるから使いたくないと、とてもイライラします」

「その点、Verseだと簡単かつスムーズに送金を行えます。送金したい額を入力して、携帯電話の連絡先のリストから送金先を選んだ後に送金ボタンを押せば、もうお金は相手のもとに届いていることになります」

彼の話は、巷に溢れるモバイルソーシャルペイメントサービスの宣伝文句として、とても馴染みがある。しかもこの状況はアメリカだけでなく、ヨーロッパでもほんの数例を挙げれば、フランスのLydiaドイツのCookiesアメリカ発のCircleMoneyBeamの形で送金サービスを提供しているN26などが存在する。

しかし、私のTechCrunchの同僚であるRomain Dilletが簡潔に表現しているように、「ソーシャルペイメントはプロダクトではなく、一機能だ」。彼の発言は、上記のようなスタートアップの中で、どの企業がいち早くスケールしてヨーロッパ市場を独占するか、という競争が巻き起こっていると言い換えることもできる。そして競争が一段落した後に、勝者はその他の銀行サービスを利用してP2P送金をマネタイズすることができるのだ。中には本格的な銀行としてビジネスを展開する企業もでてくるだろう(その例として、N26は今年の夏に銀行のライセンスを取得している)。

LoperaはVerseのこれまでの成長について、競合他社との強みの違いがもたらしたものだと話す。同社は現在ヨーロッパの16ヶ国でオペレーションを行っており、ライバルと比較してより多くのユーザーにサービスを提供することができる。ほかの競争が激しい分野と同じく、ソーシャルペイメント業界でもヨーロッパの一国だけを考えるのではなく、もっと広い視点が必要なのだ。

実はVerseは当初サンフランシスコで登記され、地元のアクセラレータープログラムを経た後に、ほとんどのメンバーをバルセロナへと移し、今年の2月にアプリをソフトローンチした。Loperaによれば、Verseは現在AndroidとiOSを合わせて約55万人のユーザーを抱えており、現時点ではマーケティングにあまりお金をかけず、口コミの力に頼っている。

また、Verseのユーザー間でやりとりされる送金額の平均は25〜30ユーロだとLoperaは話す。

Verseは、複数のマーケットをカバーしながらも特定の銀行とはパートナーシップを結んでおらず、ユーザーのお金を各国の銀行口座におき、銀行口座を持っていない市場については、SEPA(単一ユーロ決済地域)を使ってユーロで決済している。そのため、Loperaはもちろんブレグジットが起きないことを願っている。

「私たちは、どの企業もまだヨーロッパ市場全体には入り込めていないと考えています」と彼は付け加える。「確かに一国の中でサービスをローンチしている企業は存在します。しかし、ヨーロッパの主要国全てでビジネスを展開し、国をまたいで問題なく機能するようなアプリを提供している企業はまだ見たことがありません」

「この分野に興味を持っている人の数は多く、競争も激しいですが、決済業界には変革が必要なところがたくさんあるため、私たちはとても大きなチャンスがあると感じています。ヨーロッパ中のミレニアル世代のソーシャルペイメントを掌握する勝者と呼べるような企業はまだ存在しません。そして、それこそ私たちが目指しているものなのです」

WhatsAppのような大手メッセージサービス企業が、P2P送金に参入して既存プレイヤーから顧客を奪ってしまうという心配はないのだろうか?例えば、WhatsAppの親会社であるFacebookは、アメリカ国内で既にMessenger内でのP2P送金サービスを提供している

これに関しLoperaは、「WhatsAppがVerseのようなサービスをリリースするにはとても時間がかかるでしょう。通話機能を追加するのにさえ、あれだけ時間がかかりましたからね…」と反論する。

しかし、P2P送金サービスを提供する規模の小さな企業が、将来的に大手メッセージサービス企業の買収先候補となる可能性は否定できない。

Verseは、P2P送金のほとんどのケースに関して手数料をとっていないが、送金が異なるヨーロッパ通貨間で行われる場合(ユーロとポンドなど)は、「通貨と国によって」1.5〜2%の手数料をとっている。

なお、Verseのメインとなる台帳システムにはブロックチェーン技術が用いられているが、送金時には使われていない(ビットコインウォレットとしてサービスをスタートさせたCircleなど、競合企業では送金にもブロックチェーン技術が使われている)。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ブロックチェーンをベースにしたツールでMediachainはアーティストの著作権管理を目指す

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インターネット上で言う「アグリゲーション」とは、実際は誰も賛美しない最上級の社交辞令となっている。

あらゆる形式のコンテンツは、デジタル時代において、徐々にコモディティーや通貨に変わりつつある。しかし、世界中どこでも瞬時にコミュニケーションができるスピードと簡便さ、そして無制限にコピーできるキャパシティーの実現により、クリエイターと彼らの作品が切り離されやすくなってしまった。

ブルックリンに拠点を置くMediachainはそれを変えたいと考えている。

ブロックチェーンに似た分散化メディア・ライブラリとコンテンツ認証テクノロジーを組み合わせることで、Mediachainのツールから誰でも作品を登録したり、クリエイティブ作品をインターネット上やアプリからトラックしたりすることができる。

「Mediachainは世界規模のメディア・ライブラリで、その構造はビットコインのブロックチェーンにヒントを得ています。また、ShazamやGoogle画像検索で活用されているのと似たコンテンツIDテクノロジーを利用しています」とMediachainの共同ファウンダーであるDenis Nazarovは言う。

アプリ開発者は、コンテンツのメタデータを使って自動で作品の帰属を設定し、コンテンツ利用などの履歴を保存する。また、コンテンツがどのように使用されているかというアナリティクスも提供する。

Mediachainは同社のサービスについて、ブログで次のように説明している。

フィードに流れてきたバイラルGIFのアーティストを知ることができる状況を想像してみてください。あるいは、どんな画像でも発祥や歴史を知ることができたり、あなたが音楽の再生ボタンを押す度にそのミュージシャンに自動で報酬が入ったりすることも可能です。世界の文化に関する情報を発見したり、再利用したりすることが可能なツールを使って、開発者はこのような仕組みを構築したり、さらに拡張的な仕組みを作ることもできます。

Mediachainは、同社のレポジトリにはすでに200万以上の画像があるという。同社のコンテンツライブラリには、The Museum of Modern Art(MoMA)、Getty Images、the Digital Public Library of America and Europeanaなどの団体のメタデータの記録もあるという。

「もしインターネット上にある全ての情報が共有されていたらどうでしょう。Mediachainを使うと、どこで使用されているメディアであっても、その作者を特定し、画像のストーリーを知ることができます」ともう一人の共同ファウンダーであるJesse Waldenは言う。

Waldenによると、最終的な目標はコンテンツ利用をスムーズで効率化することという。「現在、画像がバイラルに広がって何百万人がそれを見たとしても、その画像のクリエイターは真っ当な評価を受けることができないこともあります」とWaldenは言う。

そして、オンラインでは著作権の帰属という概念は浸透していない。著作権への帰属がなされていなかったり、盗作が相次いでいる。

いつまで経っても同じことが繰り返されている。

「希少性を主張するのは実りの少ない努力です」とWalden。「これは人為的な希少性をコントロールしたり、創作したりするのとは違います」。

Waldenによると、既存のコピーライト団体が取り組みが失敗している理由はそこにあると話す。

WaldenとNazarovのどちらも、ほぼ無料で全てのファイルを共有できる時代を過ごしてきた。NapsterもBitTorrentもTumblrは基本的に無料で、そして基本的に無秩序なファイルシェアリングのためのプラットフォームだ。

これらのプラットフォームはイノベーションには役立ったが、Mediachainの共同ファウンダーの両名は、クリエーターが自身の作品のオーディエンスと関わることができない形で、著作権が奪い取られていることに気がついたと話す。

一つの問題は、作者が作品のコントロールをオーディエンスに失っていること、そしてもう一つは作品を支持する人に、本来の作者が見えなくなってしまっていることだ。

Andreessen、Union Squareといった投資家やその他Digital Currency Group、LDV Capital、Alexis Ohanian、William Mougayar、Kanyi Maqubela、David Lee、Mathieu Drouin、Brian Messageらもファウンダーの考えに同意している。

「オンラインのエコノミーは、注目度が重要なエコノミーです」とWaldenは言う。「誰もがクリエイターです。InstagramやTumblrに何かを投稿し、他の誰かがライクしたり、フォロワーができたりします。プラットフォーム経由でマネタイズできますが、作品の所有権を渡すことでしかマネタイズできないのです」と言う。

Mediachainでは、作者がシステムに登録し、Mediachainのノードを作成することで所有権を示すことができる。開発者は、Mediachainのプロトコルを使用してコンテンツを登録する。ログインする開発者が増えるほど、Mediachainのデータセットを他のプラットフォームにも普及させていくことができる。

NazarovとWaldenのどちらにとっても、著作権の帰属の問題は学術的な意味にとどまらない。Nazarovはプログラマーの世界に入る前には、ファインアートの写真家だった。Waldenは、Solange Knowlesといった作曲家のマネジメント会社をローンチするのを手伝っていた。

「最終的な長期ビジョンは、配信先とは独立した形で、作品経由でクリエイターが認識されるようになれば、クリエイターは配信の全てのプロセスを保有し、最終的にこれまで不可能だった方法でマネタイズができようにすることです」とWaldenは言う。

「私たちはメディアがどのように配信されるか自由に選べる市場の世界で生きています」という。今のモデルは変わらなければならないとMediachainのファウンダーは考えている。配信先のプラットフォームではなく、クリエイター自身に権限があるモデルを目指している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

ブロックチェーンは政治も変える…未来本ベストセラーのDon Tapscottにインタビュー

[筆者: Andrew Keen](著書(3冊): Cult of the Amateur, Digital Vertigo, The Internet Is Not The Answer。 Futurecastをプロデュース。本誌インタビューシリーズKeen Onのホスト。)

テクノロジーの未来を語るカナダの評論家でライターのDon Tapscottはいつも、「次の大物」を嗅ぎ当てようとしている。たとえば彼が書いたベストセラーWikinomicsは、wiki(オープンな共同執筆)というラジカルな考え方を、多くの人びとに紹介した。

そして今回、Donと彼の息子のAlexは、ブロックチェーンを“新しいインターネット”として紹介する大著、Blockchain Revolutionを出版する。ブロックチェーンこそ、再びすべてを変える新しい技術だ、と言うのだ。

Tapscott親子の主張によると、ブロックチェーンは基本的に透明な技術なので、その変更不可能な公開台帳と併せて、政治家たちをこれまでのように曖昧な嘘つきであれないようにする。これからはすべての政治家が、自分と自分の意図に関して正直であることを強制される。ブロックチェーンは究極的に、アメリカの政治システムを消毒する。不誠実をあばき、政治的会話の説明責任を強化する。

ただし2016年の選挙については、それは間に合わない、とTapscott親子は述べる。2020年か2024年には変わるだろう、と。今年に関しては、ブロックチェーン革命はほとんど関与できないだろう。

いつものように、このインタビューの制作もCALinnovatesにしっかり助けていただいた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

コードで定義された“ほぼ”自律的で民主化されたベンチャーファンド、The DAOが1.3億ドルを集めて始動

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ブロックチェーンと仮想通貨という議論が多い分野で、巨額の資金と注目を集めて新しい実験が始まった。その名をThe DAOという。ドイツのスタートアップSlock.itが始めたこの取り組みは、プログラムコードで定義された“ほぼ”非集権的で自律的で民主的なベンチャーファンドとしての活動を開始しようとしている(どこが“ほぼ”かは後述する)。2016年5月28日までにTHe DAOは1億3232万ドル相当の資金を集めた。これはクラウドファンディングのプロジェクトとして現時点での史上最高額となる(Wikipediaによる)。

The DAOについてはUS版TechCrunchの記事(日本版では未訳)も出ているが、ここでは最新情報も入れて、日本の読者向けに最初から説明することにする。

DAOはコードで定義された非集権で自律型の組織

今回取り上げる「The DAO」の前に、定冠詞TheがつかないDAO(Decentralized Autonomous Organization)の話をしておきたい。これは、その略語から分かるように非集権で自律型の組織といった意味の造語だ。「ビットコインのエコシステムは最初のDAOである」という「ものの言い方」もある。例えばビットコインのエコシステムは、「マイニングによるビットコインネットワークの維持と、それに対する報酬(マイニングで得られるビットコイン)の受け取り」という仕組みで回っている。人間の経営者、管理者や明文化されたルールがなくても、ビットコインのプログラムコードに内在する決まり事と、そして人間を動かすための経済的インセンティブによって事業が進んでいる。このような事業の自律化、非集権化の枠組みを指す言葉がDAOだ。最近の文脈では、主にブロックチェーン技術Ethereumのスマートコントラクトを活用したDAOに関する議論が中心だ。

今回の記事で取り上げるのは定冠詞が付く “The DAO” は、定冠詞が付かないDAOとは違い、ドイツのスタートアップ企業Slock.itが作り上げた非集権的で“ほぼ”自律的に機能するベンチャーファンドを指す言葉だ。“ほぼ”が付くのは、後述するように人間のスタッフであるキュレーターが一部の管理を担うからだ。

The DAOの開発元であるSlock.itのもともとの事業は、Ethereumで制御するスマートロックによりシェアリングエコノミーを実現するというものだ。この事業は、今ではThe DAOの「プロポーザル」の一つだ。

Slock.itは、自社の事業資金を直接クラウドファンディングで集めることもできたが、そうではなくThe DAOを開発した。ベンチャーファンドを立ち上げて、そのベンチャーファンドの投資対象として自社の事業を提案する形をとった。風呂敷が大きい方が、より大きな資金を集めることに結びつくと考えたのかもしれない。

Slock.itが書いたThe DAOのコード “Standard DAO Framework” はGitHub上でLGPLライセンスにより公開されている。つまりオープンソースソフトウェアである。このコードを参考に新しいDAOのコードを書いて提案する可能性が誰にでも開かれている。ここは素晴らしい構想だと思う。

投資案件の提案が続々と集まる

記事執筆時点で “Under development” の段階のプロポーザルが13種類あった。その中でもっとも賛成意見が多いプロポーザルは、オライリーの書籍 Mastering Bitcoin の著者Andreas Antonopoulos氏が提案した “Decentralized Arbitration and Mediation Network” だ。最も反対意見が多いプロポーザルは、皮肉なことにThe DAO開発元であるSlock.it自身が提案した “Slock.it Universal Sharing Network / Ethereum Computer proposal v0.1” である。

この記事を書いている間にも、新しいプロポーザルがどんどんプロポーザルパイプラインに登録されつつある(ここを参照)。これは面白い見物だ。アイデア投票のソーシャルサービスのようでもあるが、過去のサービスとの大きな違いは総額1.3億ドル相当の資金をどのプロポーザルがどれだけ獲得するかという競争の要素があることだ。

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仮想通貨のテクノロジーでベンチャーファンドを小口化、証券化

The DAOの仕組みを説明するために、少しだけ「株式会社」の話をさせてほしい。株式会社は、事業を遂行する会社の資本金、リスクとリターン、ガバナンスを「株式」の形で証券化し、多くの人々に分割する仕組みだった。株主はマネーを払い込んで株式を受け取り、会社のガバナンスに関与する権利を得る。株式を売却してキャピタルゲインを得ることもでき、株式を持ち続けて配当を受け取ることもできる。そしてベンチャーファンドは複数のスタートアップの株式に分散投資するものだ。

株式会社が成立する根拠は、法と契約、つまり自然言語で書かれた人間のためのルールだ。一方、The DAOが成立する根拠は、Ethereumのブロックチェーン上で自動執行される改ざんできないプログラムコード──スマートコントラクトである。

The DAOは、Ethereumのスマートコントラクトで記述した「DAOトークン」としてマネー、リスク、リターン、ガバナンスを小口に分割した。ビットコインは採掘にコストがかかり発行量が限られるという点でよく「金貨」に例えられるが、DAOトークンは複数のスタートアップ企業に分散投資するベンチャーファンドを小口化した証券に例えることができるだろう。

この2016年4月30日から5月28日まで続いた「DAOクリエーション」と呼ぶプロセスにより、多くの人々がEthereumの仮想通貨Ether(ETH、関連記事)建てでマネーを振り込み、引き替えにDAOトークンが発行されている(私も参加してみた)。集めた金額はEther建てで1207万ETH、米ドルに換算すると1億3232万ドル(5月28日時点)となる。発行されたDAOトークンの総数は11億7278万となる。

DAOトークンホルダーは、投資案件の投票に参加する

誰もがDAOトークンホルダーになり、DAOの推進するプロジェクトに投票し、投資し、リターンを受け取ることができる。

DAOトークンホルダーは、新たなThe DAOに寄せられたプロジェクトの提案(プロポーザル)への投票権をもつ。投票により認められたプロジェクトには資金が集まり、そのリターンの一部はDAOトークン所有者に配分される。株式会社との大きな違いは、一連のプロセスに対する人間の関与を最小限に留めていることだ。The DAOではキュレーターと呼ばれる人々がプロポーザルの管理に関与する。キュレーターの役割は「DAOトークンの51%を買い占めて100%のトークンを引き出す攻撃を防ぐため」と説明されている。Ethereumの提唱者であるVitalik Buterinを筆頭に、Ethereum Foundationのメンバーらがキュレーターに名を連ねている。人間が関与することから、The DAOは“ほぼ”自律的なDAOだといえる。

日本からもいち早くDAOトークンを扱う取引所が

DAOトークンは、仮想通貨取引所で売買することができる。日本で活動している取引所としては、ビットコイン取引所のKrakenがDAOトークンの取引を開始し、そしてレジュプレスが運営するビットコイン取引所/販売所coincheckもDAOトークン売買ができるようにした(発表文)。DAOトークンの売買ができるようになった5月28日18:00(日本時間)から数時間で取引や売買の機能追加を施したスピード感はすばらしい。

記事を書くにあたり、手持ちのDAOトークンをそれぞれの取引所に送ってみた。使い勝手は仮想通貨Etherの送金とだいたい同じだ。Ethereumアドレスを指定して送金すると、10分間ほどで確認の手続きが終わる。ビットコインの送金では6回の確認を待つのに約1時間か要するが、それよりずっと短い時間で送金が終了する。

The DAOは不完全かもしれないが、ガバナンスに参加することは可能だ

前述したように、ビットコインが仮想通貨版の「金貨」だとすれば、DAOトークンはベンチャーファンドを小口化したものだ。値上がりを期待してホールドしてもよく、売却してお金に換えてもいい。これから名乗りを上げる「プロポーザル」への投票権を得ることができ、利益が上がるなら配当に預かることもできる。DAOトークンホルダーはプロポーザルへの投票により、The DAOのガバナンスに参加することができる。

The DAOは、見方によっては、新興の投資ファンドが、仮想通貨による資金調達により、IPOもM&Aもなしに1億3232万ドルを手にした事例といえる。ガバナンスという観点では、The DAOの運営はDAOトークンホルダーの総意を反映した民主的な枠組みに基づく(ここが素晴らしいと思う人もいれば、不安を覚える人もいるだろう)。The DAOが今後も成長を続けていくならば、ひょっとするとスタートアップやベンチャーキャピタルのエコシステムが様変わりするかもしれない。

The DAOのコードはオープンソースとして開示されてはいる。だが、The DAOの仕掛けになんらかの欠陥──例えば法的な不備や、キュレーターを含むプロセス上の不備など──があるのかないのか、ここは議論の余地があるし、部外者からはなかなか分からない部分だ。The DAOが自分の資金を託すに足りる相手なのかどうかという判断材料は、株式や投資信託のような慣れ親しんだ投資商品に比べると乏しい。新しい試みなので過去の実績から判断する訳にもいかない。

将来へのヒントとなりそうな話もある。The DAOへのプロポーザルの一覧には、セキュリティやガバナンスに関する提案がある。The DAOはベンチャーファンドである以前に、DAOトークンホルダーの合意形成およびThe DAO自身の完成度を高めるためのソフトウェア開発のための機関であることを求められているのかもしれない。

いろいろな議論はあるが、コードを根拠に1カ月で1.3億ドルを集めた頭がいい人々がいて、そこにアイデア(プロポーザル)を提案する人々も現れている。この連中が次に何をやらかしてくれるのか気になる。The DAOの運営が今後の仮想通貨やブロックチェーンの動向に大きな影響を与える可能性もある。注目しつつ見守りたい。

最後に大事な話を。今回の記事はDAOトークンへの投資を薦めるものではない。本文を読めばお分かりのように、非開示のリスクが存在する可能性もあるし、投資案件の情報もまだまだ不十分だ。現時点でのDAOトークンは、The DAOのビジョンに賛同し、投票によりガバナンスに参加したいと考える人にとって価値があるものだと考えている。

シェアリングエコノミーに欠かせない本人確認情報をブロックチェーンで共有、ガイアックスが実証実験

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スタートアップ企業がシェアリングエコノミーのアイデアを事業化しようとするとき、乗り越えないといけない壁がある。利用者の本人確認だ。利用者は「運転免許証のコピー」のような重要な個人情報を含む書類を事業者に預けることになる。手間もかかるし、信頼性も求められる。社会的な信頼を獲得する途上段階にあるスタートアップ企業にとっては大きなハードルとなる。ここで、利用者側から見ても信頼できる透明な個人情報共有の枠組みを低コストで作れるとしたら、そのメリットは計り知れない。

ガイアックスが発表したブロックチェーンの実証実験(プレスリリース、同社のブロックチェーン技術サイト)の狙いは、シェアリングエコノミーのスタートアップ企業が参加しやすいような、非集権化(decentralized)された個人情報管理の枠組みを低コストで作ることだ。「強大な1社が個人情報を管理する枠組みではうまくいかない。もっといい形で共同所有できるようにしたい」とガイアックスは説明する。

同社は「シェアリングエコノミー協会」の理事として立ち上げに参加しており(関連記事)、その参加企業の一部に呼びかけて、今回の実証実験を行う。今回の実証実験に協力あるいは賛同する企業およびサービス名は以下のようになる。

  • コギコギ スマートロック型シェアサイクルサービス『COGICOGI
  • MOSOMafia 美容のプロフェッショナルを出張でオンデマンド予約『careL(ケアエル)』
  • BUZZPORT 仲間を集めて海外旅行プランに参加『TRAVEL PLANET
  • DogHuggy 外出する飼い主と近くの犬好きホストをマッチングする『DogHuggy
  • Huber 訪日外国人旅行者と国際交流を望む人たちをガイドとしてマッチングする『TOMODACHI GUIDE
  • ココナラ 知識・スキル・経験をマッチングする個人間マーケットプレイス『ココナラ
  • notteco 長距離ライドシェアサービス『notteco
  • Tadaku 外国人宅での食のシェア(家庭料理教室マッチング)『Tadaku

本人証明をP2Pデータベースとパブリックブロックチェーンで

ガイアックスが現在考えている枠組みは、本人確認をある1社が行えば、複数の会社で「本人確認済み」であるとの情報を共有できるようにするものだ。構想では、本人確認書類(例えばパスポートや運転免許証など)そのもののデータは、最終的には特定の企業ではなく非集権化されたP2Pのデータベース(候補はIPFS)により管理する。本人確認を行った後、本人確認に利用したデータのハッシュ値を改ざんが事実上不可能なパブリックブロックチェーンに刻み込み、証明書を発行する。証明書のデジタル署名、ブロックチェーン、タイムスタンプを照合することで、本人確認データおよび証明書が改ざんされていないことを確認する。このような非集権化された枠組みを作り上げる構想である。

利用するブロックチェーン技術の候補だが、今のところ最も利用者数が多く実績があるビットコインのブロックチェーンが有力だ。「現段階の要件、つまりIDと本人確認ドキュメントを確認して証明書を発行するには、ビットコインの仕様で十分ではないかと思う」とガイアックスでは話している。ただ、最終的にどの技術を活用することになるかどうかは未定だ。「もし求められる要件にスマートコントラクトの要素が含まれるようなら、Ethereumを検討することもありえる」(同社)。

個人情報管理の「重たさ」(コスト、手間、リスク)は増す一方だ。しかも、複数の事業主体による個人情報の利用(第三者への提供)に対して世間の目は厳しくなる方向にある。

ブロックチェーン技術で本人確認の情報を共有する仕組みがうまく構築できれば、システム構築コストを押さえつつ、セキュアで透明な枠組みを作れるはずだ。この仕組みがうまく回れば、スタートアップ企業の側にとっても、個人情報を預ける利用者の側にとってもメリットは大きい。希望としては、個人情報を預ける利用者の側から見ても「大事な情報は自分でも管理できる」ような透明性を担保した仕組みにして欲しいと願っている。

バイクリメンツが新ビットコイン取引所——今夏にはビットコイン決済可能なデビットカードも提供

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bitFlyercoincheckなどをはじめとして国内でもビットコイン取引所が増えてきたが、最後発となるビットコイン取引所が誕生した。バイクリメンツは3月31日、ビットコイン取引所の「Lemuria」を公開した。

Lemuriaは、セキュリティ面で評価されているビットコインウォレットのBitGoを採用したビットコイン取引所だ。最短10分で取引開始可能で、取引は100円から。メールアドレスの登録のみでビットコイン建ての入金と売買ができる。

ビットコインといえばどうしても投機目的での取引が多く、一部ではFXのユーザー層などを取り込む動きもあるようだ。Lemuriaが目指すのはビットコインを使った経済圏を拡大することだという。

具体的には、海外のプレーヤーと提携して、ビットコインを取引所にデポジットしておけば、VISAデビットカード加盟店(国内約270万店舗)でそのまま決済可能なプラスチックカード「Lemuriaデビットカード」を7月にも提供する予定。また各取引所に預けているビットコインをそのまま利用できるペイメントプロセッサー「Lemuria Payment」も今夏提供する予定だ。さらにビットコインで購入すれば割引になるようなクーポンをはじめ、ビットコインを使った各種のサービスを検討中だという。国内ではビットコインを利用できる店舗はまだまだ少ない。デビットカードなどを提供することで、まずはその利用の窓口を広げようというのが同社の考えだ。

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バイクリメンツは2015年12月の設立。資本金は非公開だが数百万円。創業メンバーのほか、上野武史氏らエンジェル投資家数名および同社の顧問弁護士法人が株主となっている。

創業メンバーで代表取締役の柴田倫宏氏はSI系ソフトハウスからグリーを経たのち、電通のグループ企業でスマホアプリの開発を手がけた人物。その一方で個人でビットコイン取引所を試験的に運用するなどしてきた。また同じく操業メンバーで取締役の山村賢太郎氏はサミーネットワークからアドウェイズを経て、現在はブロックチェーンなどの情報を配信する「THE COINTELEGRAPH」日本版の編集長を務める。また、アドバイザーとして、大手ビットコインウォレットサービスのCOINBASEやビットコイン取引所のKRAKENでビジネス開発などを務めたJames MacWhyte氏が参画する。