アマゾン傘下Ringが警察に映像を取得されたユーザー数についての情報開示を拒否

Ring(リング)は、家庭用ビデオドアベルの大規模な監視ネットワークや、問題のあるプライバシーセキュリティ運用に対してだけではなく、ドアベルの映像を法執行機関に提供していることでも、多くの批判を受けている。同社は透明性を追求しようとしているものの、これまで何人のユーザーのデータが警察に提供されたかについては開示を拒否している。

2018年にAmazon(アマゾン)に買収されたビデオドアベルメーカーのRingは、少なくとも1800の米国警察部門と、警察がRingのドアベルからのカメラの映像を要求できる提携を行っている(その数は現在も拡大中だ)。今週行われた変更の前には、Ringが提携している警察署であれば、捜査のためにドアベルカメラの映像を、顧客には無断で要求することができていた。今回Ringは、提携先の警察警察が同社の「Neighbors」(ネイバーズ)アプリを通じて、顧客からのビデオ映像の提供を公に要求するように変更した

この変更は、表向きには、警察がドアベルの映像にアクセスできるタイミングをRingのユーザーがコントロールできるようにするものだが、警察が令状なしにユーザーの映像にアクセスできるというプライバシー上の懸念は無視されている。

市民の自由の擁護者や議員たちは、Ringのドアベルカメラの広大なネットワークは個人ユーザーが所有しているため、警察は合法的な裏口を使ってRingのユーザーのカメラ映像を入手できると長い間警告を行ってきた。いまでも警察は、犯罪の証拠がある場合には、基本的なユーザー情報の提出要求や、ビデオコンテンツに対する捜査令状や裁判所命令などの法的要求をRingに対して行うことができる。

Ringが2021年1月にひっそりと発表した透明性レポートによれば、2020年の間にRingが受けた法的要求は1800件を超え、その前年の倍以上となっている。Ringは販売台数を公表していないが、「数百万人」の顧客がいると述べている。しかし、この透明性レポートでは、Ringが法的要求を受けて映像を警察に提出したユーザー数やアカウント数などの、ほとんどの透明性レポートには含まれている内容が省かれている。

Ringに問い合わせたところ、何人のユーザーの映像が警察によって入手されたのかについては開示を拒まれた。

検索の対象となるユーザーやアカウントの数は、本来は秘密ではないが、政府がユーザーデータを要求したときに企業がそれをどのように開示のするか(もし開示するならばだが)、は曖昧な領域である。義務ではないものの、ほとんどのハイテク企業は、年に1、2回、ユーザーデータが政府に取得された頻度を示す透明性レポートを発表している。

透明性レポートは、データ要求を受ける企業が、政府による強制的な大規模監視疑惑に対して、政府の要求に応えているのは企業のユーザーのほんの一部であることを示して反論するための手段だった。

しかし、そこでは実際の対応が肝心だ。Facebook(フェイスブック)Apple(アップル)Microsoft(マイクロソフト)Google(グーグル)Twitter(ツイッター)の各社は、法的要求を受けた数を明らかにすると同時に、データが提供されたユーザーやアカウントの数も明示している。場合によっては、影響を受けるユーザーやアカウントの数が、受け取った要求数の2倍から3倍以上になることもある。

Ringの親会社であるAmazonは、大手ハイテク企業の中では珍しい例外で、情報が法執行機関に引き渡されたユーザーの具体的な数を公表していない。

電子フロンティア財団(EFF)の政策アナリストであるMatthew Guariglia(マシュー・ガリグリア)氏は、TechCrunchに対して「Ringは、表向きにはユーザーの家に設置できる機器を作る防犯カメラの会社ですが、犯罪捜査や監視を行う国家のツールとしての側面も強くなって来ています」とTechCrunchに対して語った。

ガリグリア氏は、Ringが法的要求の対象となったユーザー数だけでなく、過去に何人のユーザーがアプリを通じて警察の要請に応じたかについても公表できるだろうと付け加えた。

Ringユーザーは、オプトアウトを行い警察からの要請を受けないようにすることができるが、たとえこのオプションを選択しても、法執行機関が裁判官から法的命令を受けてユーザーのデータを入手することは止めることができない。ユーザーは、エンド・ツー・エンドの暗号化をオンにすることで、ユーザー以外がビデオにアクセスすることを防ぐことができる(Ringも例外ではない)。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:RingAmazonプライバシー個人情報警察アメリカ透明性監視

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(文:Zack Whittaker、翻訳:sako)

警察のDNAデータベースアクセスを制限する法律が米メリーランド州とモンタナ州で成立

メリーランド州とモンタナ州は、警察がDNAデータベースにアクセスするのを制限する法律を可決した米国初の州となった。

何百万人という米国人の遺伝に関するプライバシーを守るための新しい法律は、23andMeAncestryGEDmatch、FamilyTreeDNAといった消費者DNAデータベースにフォーカスしている。これらサービスでは人々に自分の遺伝子情報をアップロードさせ、遠い親戚とつなげたり家系図をたどっていくのに遺伝子情報を使っている。23andMeのユーザーは300万人超、GEDmatchは100万人超と人気がある一方で、多くの人はこうしたプラットフォームの一部が遺伝子データを製薬業界やサイエンティストから法執行機関に至るまでさまざまなサードパーティと共有していることを知らない。

法医学の遺伝子系図捜査(FGGS)として知られる手法を通じて警察によって使用されるとき、警察は容疑者についての手がかりを探すために犯罪現場で見つかったDNA証拠をアップロードできる。この手の捜査で最も知られている例は2018年のゴールデン・ステート・キラー(黄金州の殺人鬼)の特定だろう。この事件では、捜査チームは連続殺人犯につながる1980年の殺害現場で採取したDNAサンプルをGEDmatchにアップロードし、その後容疑者の遠い親戚を特定し、これが犯人Joseph James DeAngelo(ジョセフ・ジェームズ・ディアンジェロ)逮捕への重要な突破口となった。

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警察は犯罪捜査のために消費者DNAデータベース使うことで成功を収めてきたが、その一方でプライバシー擁護派は長い間こうしたプラットフォームの危険性を警告してきた。DNAプロフィールが遠い祖先をたどっていくのに使えるだけでなく、膨大な量の遺伝子データはその人の病気の傾向を暴いたり、中毒や薬物反応を予想したりでき、さらにはその人がどんな外観なのかイメージ図を作成するのに企業によって使われさえする。

Ancestryと23andMeは、令状を持たない警察には自社の遺伝子データベースを利用させていない。GEDmatch(2019年12月に犯罪現場DNA会社に買収された)とFamilyTreeDNAは以前、警察とデータベースを共有していた。

被告人と、その人の親戚の遺伝子プライバシーを確保するために、メリーランド州は10月1日から遺伝子系図を使う前に裁判官から令状を取得することを警察に課し、遺伝子系図の使用は殺人や誘拐、人身売買など重大な犯罪に限定する。また、ユーザーに情報が犯罪捜査に使われることがあるかもしれないとはっきりと伝えているデータベースのみを捜査当局は使用できる、としている。

新しい法律で使用をさらに限定するモンタナ州では、ユーザーがプライバシー権を放棄していなければ警察はDNAデータベースを使用する前に令状を取る必要がある

法律は「政治的立場の異なるさまざまな人々が、法執行機関による遺伝子データの使用が恐ろしく懸念されるものであり、そしてプライバシーを踏みにじるものだと気づいたことを示している」とメリーランド州の法律学教授Natalie Ram(ナタリー・ラム)氏は話した。「今後より多くの州が法執行機関のテクニックに関する堅牢な規制を擁するこを望みます」。

こうした法律の導入は、電子フロンティア財団(EFF)などのプライバシー擁護派には歓迎されている。EFFで監視訴訟ディレクターを務めるJennifer Lynch(ジェニファー・リンチ)氏は規制について「正しい方向へのステップ」と表現したが、より多くの州、さらには連邦政府がFGGSをさらに厳格に取り締まることを求めた。

「我々の遺伝子データは、保護を民間企業に任せたり、警察に自由に検索させたりするにはあまりにもセンシティブで重要なものです」とリンチ氏は述べた。

「GEDmatchやFamilyTreeDNAのような企業は警察の捜査を許し、促進さえしました。このため警察は米国中の犯罪捜査でますますこうしたデータベースにアクセスするようになっています」。

23andMeの広報担当はTechCrunchに次のように述べた。「消費者にさらに強固なプライバシー保護を提供する法律を当社は完全に支持します。実際、当社は消費者の遺伝子プライバシー保護を高めるために多くの州で法制化に取り組んでいます。顧客のプライバシーと透明性は、23andMeの法的要請対応と顧客の信頼維持へのアプローチをガイドする基本原則です。当社はすべての警察や当局の要請を綿密に調べ、裁判所の命令や召喚状、捜査令状、その他法的に有効だと判断した要請だけに対応します。これまで当社は警察に顧客の情報をまったく開示していません」。

Ancestryは「当社の顧客のプライバシーを守りながら公共政策の目標を達成している」法律をつくるのにメリーランド州の議員と協業したと述べた。

「顧客のプライバシーを守ること、顧客のデータの良き管理者となることはAncestryの最優先事項であり、当社は自ら進んで警察と協業しません。裁判所の命令や捜査令状など有効な法的プロセスでそうせざるを得ない限り、当社は警察といかなる情報も共有しません」とAncestryの広報担当は話した。

デフォルトでユーザーが警察の捜査の対象となるようにしているGEDmatchと FamilyTreeDNAはニューヨークタイムズ紙に対し、新しい法律への対応でユーザーの同意に関する既存の規則を変更する計画はないと語った。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:警察DNAアメリカメリーランドモンタナプライバシー個人情報電子フロンティア財団

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがようやく開発者向けにスクリーンタイムAPIを公開

2018年に公開されたiOS 12で、Apple(アップル)は独自の内蔵スクリーンタイム追跡ツールと制御機能を導入した。そして独自のスクリーンタイムシステムを実装したサードパーティアプリの取り締りを開始した。同社は彼らの方法がユーザーのプライバシーを危険に晒しているためだと説明した。当時なかったものは何か?デベロッパーがAppleのスクリーンタイムシステムを利用して、独自の体験を作り出すためのスクリーンタイムAPIだ。それがようやく変わった。

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米国時間6月7日に行われたAppleのWorldwide Developer Conferenceで、同社はスクリーンタイムAPIを発表した。デベロッパーがユーザープライバシーを守りながら、ペアレンタルコントロール体験を開発できるフレームワークだ。

iOS SDK(ソフトウェア開発キット)には新しいSwiftフレームワークが3種類追加され、デベロッパーは子どもがデバイス上でできることを親が管理して制限を加えるためのアプリを開発できるようになった。

このAPIを利用するアプリは、アカウントのロック、パスワード変更の禁止、ウェブトラフィックのフィルタリング、利用できるアプリの制限などさまざまな制約を設定できる。こうした設定はAppleのスクリーンタイムシステムですでに可能だが、デベロッパーは自社ブランドの元で独自の体験を提供できるようになり、Appleのシステムが提供する機能を拡張することもできる。

APIを利用するデベロッパーのアプリは、それ自身をロックして親の承諾なしにデバイスから削除できなくすることもできる。

アプリは親の本人認証を行い、そのユーザーが管理しようとしているデバイスが家族のものであることを確認できる。さらに、Appleによると、このシステムはユーザープライバシーを損なうことなく、親が制限したいアプリとウェブサイトを選ぶことができるという(システムはアプリの識別子やウェブサイトのURLの代わりに、解読不能なトークンだけを返すので、サードパーティはユーザーが使ったアプリやウェブ閲覧の詳細などの個人的データをアクセスできない、とAppleはデベロッパーに伝えている。このため、怪しげな会社がスクリーンタイムアプリを作りアプリ利用に関するユーザーデータを収集する、といったことはできない。

サードパーティアプリは、アプリごとあるいは行動のタイプごとに専用のタイムウィンドウを作り、まもなく時間切れになることを子どもに警告できる。時間になると、管理アプリはウェブサイトやアプリへのアクセスをロックし、子どもに宿題の時間であることを伝えたり、デベロッパーの考えるその他の体験を提供する。

一方で、アプリは子どもが宿題や読書や手伝いなどの仕事を終えたらスクリーンタイムをもらえるインセンティブを設定することもできる。

デベロッパーは、一連の機能を利用してAppleの基本的制御機能の上に独自のアイデアを載せることで、Apple自身のスクリーンタイムシステムにない新たな体験をデザインすることもできる。スクリーンタイムの管理がもっと簡単になりニーズに合わせてもっとカスタマイズできるようになるのなら、親は渋々財布の紐を緩めるだろう。

「ファミリー」環境以外にもスクリーンタイムを利用するアプリはある。例えばメンタルヘルスや幸せな生活などだ。

もちろん、デベロッパーたちはスクリーンタイム機能が公開された時からAPIの提供を求めてきたが、Appleは開発の優先順位を上げなかった。しかし、2020年の反トラスト公聴会でライバルのスクリーンタイムアプリを禁止した行為が取り上げられてから事態は変化した。当時Apple CEOのTim Cook(ティム・クック)氏は会社の決定を擁護し、アプリはMDM(モバイル・デバイス・マネージメント)技術を使用しており、それはホームユースではなく大企業の従業員向けデバイスを管理するために作られていると説明し、それがプライバシーリスクになる、と述べた。

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WWDCでAppleは同APIの仕組みを詳しく解説するセッションを用意しているので、その時のデベロッパー向け情報が公開されれば、詳しいことがわかるはずだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDC 2021WWDCiOSiOS 15APISDK子どもスクリーンタイムプライバシー独占禁止法

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルがiCloudをアップデート、プライバシー機能を追加した「iCloud+」発表

Apple(アップル)はiCloud+という名称のサービスでiCloudをアップデートする。同社のデベロッパー会議WWDCで発表した。既存の有料iCloudユーザーは同じサブスク価格でiCloud+を利用できる。

AppleはSafariでPrivate Relayという新しいプライバシー機能を導入する。同社がCloudflareと開発してきた新しいDNS機能とやや似ている。元々はOblivious DNS-over-HTTPSという名称で、DNS-over-HTTPとプロキシサーバーの組み合わせだが、かなりシンプルという点でPrivate Relayはずっといい名称かもしれない。

Private Relayがオンになると、あなたのブラウジング履歴を誰も追跡できない。あなたのデバイスと、情報をリクエストするサーバーの間に介在するインターネットサービスプロバイダーも追跡できない。実際、どのように機能するか詳細についてはもうしばらく待たなければならない。

iCloud+の2つめの機能は「Hide my email」だ。ニュースレター購読を申し込むとき、あるいはウェブサイトでアカウントを開くとき、ランダムな電子メールアドレスを作成できる。もしあなたがこれまでに「Sign in with Apple」を使ったことがあるなら、フェイクのiCloud電子メールアドレスを使うオプションをAppleが提供していることを知っているだろう。これも同様に機能するが、どのアプリでも使える。

最後に、AppleはHomeKit Secure Videoを改良する。iCloud+の導入で、無料の iCloudユーザーと有料のiCloudユーザーを分ける。基本的にユーザーはこれまでストレージのためにお金を払っていたが、今後はストレージとさらに多くの機能が利用できるようになる。サブスクリプションは50GB(とiCloud+機能)月0.99ドル(約108円)からだ。

一般的なものでは、Appleは待望の2つの機能をiCloudアカウントに追加する。まず、アカウントリカバリーでの友達の追加だ。これにより、あなたのデータへのアクセスを友達にリクエストできるようになる。しかしそれはiCloudにあるあなたのデータに友達がアクセスできることを意味するのではない。あなたのアカウントをリカバーするための方法にすぎない。

そして切望されていたアップデートはレガシー機能だ。1つあるいはいくつかのレガシーコンタクト(データを相続する人の連絡先)を間もなく加えることができるようになる。そうすることであなたが死んだとき、データは引き継がれる。身近な人が亡くなると多くの写真ライブラリーがアクセスできなくなるため、これはかなり待ち望まれていた機能だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleWWDC 2021WWDCプライバシーiCloudiCloud+Safariサブスクリプション

画像クレジット:Apple

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

EU諸機関によるAWSとマイクロソフトの各クラウドサービス利用について同プライバシー責任者が調査を開始

欧州の主要データ保護規制当局は、EU機関による米国クラウド大手Amazon(アマゾン)とMicrosoft(マイクロソフト)のそれぞれのクラウドサービス利用について、調査を開始した。欧州の団体、機関、官公庁は、AWSおよびMicrosoftの間でいわゆる「Cloud II」契約を締結している。

欧州データ保護監察機関(EDPS)によると、欧州委員会によるMicrosoftのOffice 365の使用についても、以前の勧告への準拠状況を評価するための独立した調査が開始されたという。

Wojciech Wiewiórowski(ヴォイチェフ・ヴィヴィオロフスキ)氏は、2020年10月に発表されたより広範なコンプライアンス戦略の一環として、EUのクラウドサービスの利用を調査している。当該戦略は、欧州司法裁判所(CJEU)による画期的な裁定(通称Schrems II)を受けたものだ。この裁定は、EU-米国間の「Privacy Shield」データ移転協定を無効にし、EUユーザーの個人データが大規模監視体制によって危険にさらされる可能性のある第三国に流出している場合の、代替的なデータ移転メカニズムの実行可能性に疑問を投げかけるものだった。

EUの最高プライバシー規制当局は去る2020年10月、EU加盟国以外の国への個人データの移転について報告するようEU加盟国の機関に要請した。EDPSが米国時間5月27日の発表したところによると、この分析によってデータが第三国に流れていることが確認されたという。また、特に米国への流入が顕著であり、その理由として、EU機関が大手クラウドサービスプロバイダ(その多くは米国を拠点としている)への依存を高めていることが挙げられる。

驚くことではない。しかしEDPSは、Schrems II判決以前に署名された2社との契約がCJEUの判断に沿っているかどうかを見極めたいと考えており、次のステップは非常に興味深いものになるだろう。

実際、EDPSはその準拠性について懸念を示しており、将来的にはEU諸機関に対して代替のクラウドサービスプロバイダ(法的な不確実性を回避するためにEU内に設置されている可能性が高い)を探すことを要請する可能性もある。今回の調査は、規制当局主導による、EUの米国クラウド大手からの移行の始まりとなるかもしれない。

ヴィヴィオロフスキ氏は声明で次のように述べている。「EUの機関や団体からの報告の結果を受けて、私たちは両社との契約が特別な注意を要するものであることを特定しました。それが今回の2つの調査を開始することにした理由です。『Cloud II契約』は『Schrems II』判決前の2020年初めに署名されたこと、そしてAmazon(アマゾン)とMicrosoftの両方がその判決に沿うことを目的とした新たな措置を発表したことを認識しています。しかし、これらの措置はEUのデータ保護法を完全に遵守するのに十分ではない可能性があり、適切に調査する必要があります」。

AmazonとMicrosoftは、EU機関とのCloud II 契約に適用した特別措置に関する問い合わせに応じているところだ。

【更新1】現在、Microsoftの広報担当者が次のような声明を出している。

当社は、欧州データ保護監督機関から提起された質問に答えるために、EU機関を積極的に支援し、いかなる懸念にも迅速に対応する自信があります。EUのデータ保護要件を確実に遵守し、それ以上の成果を上げるための当社のアプローチに変更はありません。当社の「Defending Your Data」イニシアチブの一環として、EUの公共部門または商業部門のお客様のデータを求める政府の要請に対し、我々に合法的な根拠がある場合はすべて異議を申し立てることを約束しています。また、適用される個人情報保護法に違反してデータを開示し、損害を与えた場合には、ユーザーに金銭的な補償を行います。当社は今後も規制当局の指導に対応し、顧客のプライバシー保護の強化を継続的に図っていきます。

【更新2】Amazonからも次の声明が届いている。

EUの機関は、Schrems IIの要件に準拠してAWSサービスを利用することができ、お客様が欧州データ保護監察機関(EDPS)にそのことを実証してくださることをうれしく思います。顧客データを保護するための当社の強化された契約上のコミットメントは、Schrems II判決で要求されている以上のものであり、法執行機関の要求に挑戦してきた当社の長年の実績に基づいています」と述べている。

EDPSは、EUの機関に模範的な主導を求めていると表明した。欧州データ保護委員会(EDPB)は2020年、Schrems IIの判決の意味するところを実行するための規制猶予期間はないと公に警鐘を鳴らしたが、未だにデータ移転に関する本格的な取り組みがなされていないことを考えると、今回の動きは重要に思える。

対応が遅れていた理由として最も可能性が高いのは、法的基準を満たすことを期待して契約に加えられた、かなりの量の向こう見ずな反応や表面的な変更だろう(ただし規制当局による審査はまだ行われていない)。

EDPBからの最終的なガイダンスも保留中だが、当委員会は2020年秋に詳細な勧告を提示している。

CJEUの判決は、当該領域のEU法は看過されるべきではないことを明確に示した。EUのデータ規制当局がEUのデータを外部へ持ち出している契約を精査し始めることで、必然的にこれらの取り決めのいくつかは不十分であると判断され、関連するデータフローは停止を命じられることになるだろう。

ちなみに、長期戦となっているFacebook(フェイスブック)によるEU-米国間データ移転をめぐる苦情申し立ては、まさにそのような可能性に向けての歩みを遅らせている。申し立ての発端は、EUのプライバシー活動家で弁護士でもあるMax Schrems(マックス・シュレムス)氏によって2013年に提起された訴えにある。

2020年秋のSchrems II判決を受けて、アイルランドの規制当局はFacebookに対し、欧州の人々のデータを海を越えて移動させることはできないとする仮命令を出していた。Facebookはアイルランドの裁判所でこれに異議を唱えたが、今月初めにはその手続きを阻止する試みに失敗した。そのため、数カ月以内に業務停止命令を受ける可能性がある。

Facebookがどう反応するかは誰もが予想しているところだが、シュレムス氏は2020年夏TechCrunchに対し、同社は最終的にEUユーザーのデータをEU内に保存し、サービスをフェデレートする必要があると示唆している。

Schrems IIの判決は、法的な不確実性の問題を解決するために自らを位置づけることができるEUベースのクラウドサービスプロバイダにとって、一般的には朗報になりそうだ(米国ベースのクラウド大手ほど競争力のある価格や拡張性がない場合であっても)。

一方、CJEUの裁判官が繰り返し指摘しているように、EUの人々のデータへの脅威とみなされないようにする目的において、米国の監視法を独立した監督下に置き、市民以外の人々が利用可能な救済メカニズムを確立するには「数カ月」よりもはるかに長い時間がかかる可能性が高いだろう。それも米国当局が自らのアプローチを改革する必要性を確信することができるのならではあるが。

それでも、EUの規制当局が最終的にSchrems IIに対して行動を起こすようになれば、米国の政策立案者の意識を監視改革に集中させるのに役立つかもしれない。そうでなければ、ローカルストレージが将来の新しい標準になることもあり得る。

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タグ:EUAWSAmazonMicrosoftMicrosoft Azureプライバシー欧州データ保護監察機関 / EDPS欧州司法裁判所 / CJEU

画像クレジット:Jason Alden / Bloomberg / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

今も米国の自治体は中国共産党に関連する監視技術を購入している

この記事は、映像監視ニュースサイトIPVMとの提携により発表された。

TechCrunchが入手した契約データから、米国の少なくとも100の郡や町、そして市が、米国政府が人権侵害と関連づけた中国製の監視システムを購入していることがわかった。

米国政府は、2019年にHikvision(ハイクビジョン)とDahua(ダーファ)という中国のテクノロジー企業2社を経済ブラックリストに追加したが、一部の自治体は、その後、数万ドル(数百万円)以上を投じて両社の監視装置を購入している。この2社は、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族に対する、中国の継続的な弾圧と関連している。議会はまた、中国政府によるスパイ活動を助長する恐れがあるとして、米国の連邦政府機関がハイクビジョンとダーファのテクノロジーを新たに購入したり、契約を更新したりすることを禁止した

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しかし、このような連邦政府の措置は、州や市のレベルにまでは適用されていない。連邦政府の資金が使われていない限り、地方自治体はビデオカメラや赤外線スキャナーをはじめ、そういった中国製の監視システムを特に制約なく購入できる。

この契約の詳細は、連邦政府や州政府の支出を追跡しているGovSpend(ガヴァスペンド)が、IPVM(アイ・ピー・ヴイ・エム)を通じてTechCrunchに提供したものだ。IPVMは、映像監視に関する主要なニュースサイトであり、ハイクビジョンとダーファの禁止令を注視している。

今回のデータ、およびIPVMが以前に報告したところによると、最大の支出はジョージア州Fayette(フェイエット)郡の教育委員会によるもので、2020年8月に公立学校での体温チェックに使用されるハイクビジョンのサーマルカメラ数十台を49万ドル(約5400万円)で購入している。

フェイエット郡公立学校の広報担当者Melinda Berry-Dreisbach(メリンダ・ベリードライスバッハ)氏の声明によると、カメラは、ハイクビジョンの正規販売店でもあり、以前から取引のあるセキュリティベンダーから購入したという。この声明では、教育委員会がハイクビジョンの人権侵害との関連性を認識していたかどうかについては触れられていない。また、ベリードライスバッハ氏は、フォローアップの質問には答えていない。

ハイクビジョンやダーファのモデルを含む多くのサーマルスキャナーについては、IPVMの調査により、測定値が不正確であることが判明し、誤った測定値による「深刻な公衆衛生上の潜在的リスク」があると、米国食品医薬品局(FDA)が、公衆衛生上の警告を発するに至っている。

人口9万5000人のノースカロライナ州Nash(ナッシュ)郡は、2020年9月から12月にかけて4万5000ドル(約490万円)以上を投じてダーファのサーマルカメラを購入した。郡長のZee Lamb(ジー・ラム)氏は、購入とその機材が郡内の公立学校に配備されたことを認めるメールを転送してきたが、それに対するコメントはなかった。

また、ニューオーリンズ市の一部を含むルイジアナ州のJefferson(ジェファーソン)郡は、2019年10月から2020年9月にかけて、ハイクビジョンの監視カメラとビデオストレージを3万5000ドル(約380万円)で購入したことがデータからわかっている。しかし、郡の広報担当者からのコメントはない。

連絡を取った自治体のうち、購入したテクノロジーと人権侵害との関連性について答えたのは1地区だけだった。カリフォルニア州のKern(カーン)郡は、2020年6月、保護観察局のオフィス用としてハイクビジョンの監視カメラとビデオ録画機器に1万5000ドル(約160万円)以上を支出した。契約のデータによると、地元の業者であるTel Tec Security(テル・テック・セキュリティ)がハイクビジョンの製品を同郡に販売していた。

カーン郡の最高行政責任者であるRyan Alsop(ライアン・アルソップ)氏は、ハイクビジョンと人権侵害との関連性について問われると「ハイクビジョンに関する問題についてはまったく知らない」という。

「繰り返すが、当郡はハイクビジョンと契約したのではなく、テル・テック・セキュリティと契約したのだ」とアルソップ氏は答えた。

カーン郡では、郡の保護観察所で使うハイクビジョンの機器購入に1万5000ドル(約160万円)以上を費やしている。(データ提供:GovSpend

フロリダ州Hollywood(ハリウッド)市では、ハイクビジョンのサーマルカメラに3万ドル(約330万円)近くを費やしたが、同市の広報担当者は、中国のこのテクノロジーメーカーが「すぐに納品可能で、規定のプロジェクトスコープに合致し、プロジェクト予算内でソリューションを提供する唯一の大手メーカーだった」と述べている。このカメラは、新型コロナウイルス感染症の拡散を抑制するために、従業員の体温の測定に使用された。広報担当者は、人権侵害との関連性については言及しなかったが。連邦政府の禁止令は同市には適用されないと述べている。

Human Rights Watch(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)のシニア研究員であるMaya Wang(マヤ・ワン)氏は、地方レベルでのプライバシー規制が不十分であることが、自治体がこのテクノロジーを購入する一因になっていると指摘する。

「問題の1つは、この種のカメラが、原産国や人権侵害に関連しているかどうか以前に、プライバシー基準に準拠しているかどうかを確認するための規制がないまま、国内のさまざまな地域、特に州や市のレベルで導入されていることだ」とワン氏は電話で語り、そして「また、企業の実績に基づいて、その企業が人権を侵害していないかどうかを厳密に調査し、より良い企業を選択することにより、プライバシー保護を重視する企業が勝ち残るような規制の枠組みもない」と付け加えた。

ウイグル族を抑圧する中国政府の継続的な措置の一環として、ウイグル族を監視するための監視テクノロジーの供給をハイクビジョン、ダーファなどに大きく依存していると米国政府は強く主張しているが、中国政府はこれを繰り返し否定している。

国連の監視機関によると、中国政府は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘留しており、これが米国における監視テクノロジーメーカー2社のブラックリスト入りにつながっている。

米国商務省は、政府の経済ブラックリストに両社を加える際、ハイクビジョンとダーファが「中国政府によるウイグル人、カザフ人、その他のイスラム系少数民族に対する弾圧、恣意的な大量拘束、ハイテクを駆使した監視などの活動が行われる上で、人権侵害や虐待に関与してきた」と述べている。Biden(バイデン)政権は、この人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼んだ。

この報道について、上院情報委員会の委員長を務めるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員は、TechCrunchに次のように述べている。「中華人民共和国の企業は、本当に『独立』しているわけではない。そのため、米国の団体が中国企業の機器を購入する際には、中国での民族抑圧を助長する企業を支援しているだけでなく、この監視機器を介して収集されたデータが中国共産党と共有される可能性があることを認識するべきだ。以前から、企業や大学を含むアメリカの団体が、新疆ウイグル自治区などに対する中国共産党の監視・検閲活動を助長していることに心を痛めていた」。

「しかし、これは問題の一部に過ぎない。米国人は、中国共産党がさまざまな手口でアメリカ市民のデータ収集に取り組んでいることにも関心を持つべきだ。このような機器を購入することのリスク、そして人権や安全保障との密接な関係について、地方自治体を含めアメリカ人を啓蒙する必要がある」とワーナー上院議員は述べる。

IPVMは、各社の監視技術がウイグル人の弾圧にどのように使われているかも大きく報じてきた。ダーファ製品には、警察に「リアルタイムのウイグル人警告」を提供するために人種検知のコードが含まれていることが判明した。

2021年初め、Thomson Reuters(トムソン・ロイター)財団は、ロンドンの議会の半数と英国の最大20都市が、ウイグル人の虐待に関連した技術を使用していることを明らかにした。また、Guardian(ガーディアン)紙は、英国の学校でハイクビジョンの監視技術が使用されていることを報じた

ダーファは、この報道を受けて、ブログに声明を掲載し「メディアでの一部報道とは異なり、当社は特定の民族をターゲットとするテクノロジーやソリューションを開発したことはない」と主張した。そして声明には「これに反する主張は単なる誤りであり、そのような主張を裏付ける証拠は、これまで確認されていないと認識している」と付け加えられている。

ハイクビジョンは、コメントの要請に応じていない。

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タグ:アメリカ中国プライバシー個人情報監視

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

EUの新型コロナワクチン「デジタルパス」が稼働、ドイツなど7カ国が先行導入

欧州連合(EU)の新型コロナウイルスのワクチン接種あるいは検査結果を域内で証明する汎EU「デジタルパス」を支えるシステムの運用が6月1日に始まった。いくつかのEU加盟国がゲートウェイにつながり、7月1日の完全始動までさらに多くの加盟国が加わることが予想されている。

EUの新型コロナデジタル証明は、EU市民の新型コロナステータス(ワクチンを接種したかどうか、最近の新型コロナ検査が陰性だったかどうか、あるいは新型コロナからの回復の証明)を確実に認証しようというもので、EU市民が域内で国境を越えるとき、その旅を安全なものにするのが狙いだ。

デジタルパスは、改ざんを防ぐのに公開鍵暗号方式を使って認証されたQRコードとデジタル署名に頼っている。デバイスへのアクセスを持たない人が使える紙ベースの認証もある。

テクニカルテストを終え、準備の整った加盟国は任意で認証の発行や検証を開始できる、と欧州委員会は6月1日に述べ、現時点で7カ国(ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、クロアチア、ポーランド)が開始する意向だ。

他の国は、すべての機能が国内全域で展開されてからEUデジタル新型コロナ認証を立ち上げることにしている、と欧州委員会は付け加えた。加盟国のシステムアクティベート状況はこちらのウェブページで確認できる。

欧州委員会によると、5月10日以来、EUの22カ国がゲートウェイのテストを成功させ、関連する規則が適用される7月1日までに最大のアップデートを行いたい考えだ。

しかしすべてをうまく接続させるのにさらに時間が必要な加盟国のために、認証発行に6週間の「段階的導入期間」が認められている。つまり、最も遅い実行は夏が終わるころになるかもしれないことを意味する(6月までに域内全域で実装するというEU議員らの初期の目標は常に野心的だったようだ)。

欧州委員会は、認証の署名キーは各国のサーバーに保存されると指摘し、新型コロナデジタル認証の検証プロセスではパーソナルデータが「交換されたり保持されたり」することはないと話す。こうしたキーはゲートウェイ経由で各国の承認アプリあるいはEU全域で使われるシステムによってアクセスできる。

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欧州委員会はまた、EU加盟国による展開をサポートすべく、証明の発行、ストレージ、検証のためのレファレンスソフトウェアとアプリも開発し、GitHubで公開した。同委員会によると、これまでに加盟国12カ国がこのコードを利用した。

EU各国の当局が新型コロナデジタル認証の個人への発行を担当する。市民が認証を取得するには、新型コロナ検査センターや地元の健康衛生当局、あるいは国家eHealthポータル経由など、さまざまなルートがある。

ゲートウェイの立ち上げに関する声明の中で、EUの健康・食品安全担当委員Stella Kyriakides(ステラ・キリヤキデス)氏は実行に取り掛かり、完了するよう加盟国に促した。

「EUデジタル新型コロナ認証は、市民のための効果的なeHealthソリューションに加わった価値です」と同氏は述べた。「システムが休暇シーズン前までに機能するよう、今後数週間で全加盟国が認証の発行、保存、検証を行う自国のシステムの準備を完了させることが重要です。EU市民は再び旅行することを楽しみにしており、安全に旅行したいと考えています。EU認証の取得はそれに向けた重要なステップです」。

新型コロナデジタル認証の立ち上げについては、欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏もコメントし、おそらくパンデミックが2022年夏までに終息すると仮定し、システムは1年間のみ活用されると述べた。

「EU認証は、我々の価値を示すデジタルツールの最たる例です」と2021デジタル会議でのスピーチで同氏は話した。「EUはプライバシーを尊重します。パーソナルデータは交換または保持されません。EUは包括的です。ワクチンを接種していない人は検査や回復のデジタル証明を取得できます。スマートフォンを持っていない人は紙の証明を入手できます。証明でもって我々はパンデミックの中にあっても人々が自由に行き来できるようにしたいと考えています。だからこそこのシステムは1年間のみの活用となっています。欧州はこの分野で先頭に立っており、グローバルレベルで基準を設定できます」。

スピーチの中で同氏はまた、別のデジタル提案についても予告した。別の案とは、信頼できるオンラインIDを欧州の人々に提供するというもので、このIDは厳密に必要なもの以上のデータを提供させられることなく域内の政府や企業とやり取りするのに使えるというものだ。

「欧州の人々に新しいデジタルIDを提供したいと考えています。信頼を保証し、オンライン上でユーザーを守るIDです。案をまさに提示しようとしているところです」と同氏は述べた。「誰もが自分のIDをオンラインで管理し、欧州中の政府や企業とやり取りすることができるようになります。手近な目的のために必要以上に多くのデータを開示することを強制されるべきではありません。オンラインでホテルの部屋を予約するのに、私がどこから来て、誰が私の友達なのかを誰も知る必要はありません。案では大手オンラインプラットフォームのモデルの代替となるものを提案しています。我々は人間中心のデジタルトランジションを信じています」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU新型コロナウイルスワクチンプライバシー個人情報

画像クレジット:Sebastian Gollnow / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがAndroidユーザーの位置情報取得に関しアリゾナで訴訟、設定項目を見つけにくくしたと報じられる

グーグルがAndroidユーザーの位置情報取得に関しアリゾナで訴訟、設定項目を見つけにくくしたと報じられる

Alex Tai/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

GoogleがAndroidユーザーの位置情報を違法に追跡ししようとしたとして、アリゾナ州がGoogleに対して起こした訴訟では、ユーザーが位置情報の追跡を完全に無効にするための手順をGoogleが意図的に複雑にしたため、オプトアウトしたつもりでもGoogleが情報を得られるようにしていたことが非難されています。

そして、新たにInsiderが報じたこの訴訟に関する開示文書によると、Googleは位置情報などの設定項目をユーザーにわかりやすく配置したAndroidをテストしたものの、多くのユーザーが位置情報の共有をオフしてしまうことがわかり、Googleはこれを「問題」と考えたとのこと。そして意図的に設定項目を設定メニューの奥深くに配置し、操作に不慣れなユーザーが到達できないようにしたとされます。

また、Googleはユーザーの位置情報収集のために多様な手段を講じており、たとえばWi-Fiや位置情報を使用する第三者のアプリについても、それを使うならば情報をGoogleに共有しなければならないようにし、場合によってはスマートフォンをWi-Fiに接続することさえ求めたとのこと。

さらに、アリゾナ州の弁護士によると、GoogleはLGなどの携帯電話メーカーに対し位置情報の設定がわかりやすすぎるとして、かんたんに目に触れない場所へ埋め込むよう「周到に圧力をかけた」とされます。

Andorid 12ではユーザーのプライバシー設定に改善が加えられ、「プライバシーダッシュボード」の設置や「位置情報サービスの精度」設定をユーザーが行えるようになりました。とはいえ、訴訟の主張が認められるならば、GoogleにはAndroidユーザーの意向に関係なくデータを収集する意図があったと考えられ、Googleには厳しい法廷闘争になるかもしれません。

(Source: InsiderEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Android(製品・サービス)位置情報(用語)Google / グーグル(企業)訴訟 / 裁判(用語)プライバシー(用語)

カメラではなくレーダーを使ったプライバシーが保護されたアクティビティ追跡の可能性をカーネギーメロン大学の研究者らが提示

部屋が最後に掃除されたのはいつか、ゴミ箱の中身がすでに捨てられたかをスマートスピーカーに問いかけることで、家庭内の争いを解決する(または蒸し返す)ことができる。そんな状況を想像してみて欲しい。

あるいは、健康関連の用途で、エクササイズ中にスピーカーにスクワットやベンチプレスの回数をカウントするように指示できたらどうだろう?または「パーソナルトレーナーモード」をオンにして、あなたが古いエクササイズバイクをこぐ際に、もっと早くこぎましょう、と気合を入れてくれるよう指示できたら(Pelotonなんて必要なし!)?

そして、あなたが食事をしているのをそのスピーカーが認識し、雰囲気にあった音楽を流してくれるほど賢かったらどうだろう?

そしてこうしたアクティビティの追跡を、インターネットに接続されたカメラを家の中に設置することなくできたら、と想像してみよう。

カーネギーメロン大学のフューチャーインターフェースグループの研究で、これらのことが実現できる可能性が浮上している。この研究ではセンシングツールとしてカメラを必要としない、アクティビティ追跡のための新しいアプローチを実証しているのだ。

家の中にインターネットに接続されたカメラを設置することは、プライバシーの観点から言えば、当然大きなリスクとなる。そのため、カーネギーメロン大学の研究者らは、人間のさまざまなアクティビティを検出するための媒体として、ミリ波(mmWave)ドップラーレーダーの調査に着手した。

彼らが解決すべきだった課題は、ミリ波が「マイクやカメラに近い信号の豊富さ」を提供する一方、さまざまな人間の活動をRFノイズとして認識するようAIモデルをトレーニングするためのデータセットを、簡単には入手できないという点である(この点他のタイプのAIモデルをトレーニングするための視覚データとは異なる)。

この問題の解決を目指し、彼らは、ドップラーデータを合成し、人間のアクティビティ追跡モデルにデータを供給することに着手した。プライバシーを保護することが可能なアクティビティ追跡AIモデルをトレーニングするためのソフトウェアパイプラインを考案したのだ。

その結果をワシントンD.C.こちらの動画で確認できる。この動画では、AIモデルがサイクリング、手を叩く、手を振る、スクワットをするといったさまざまなアクティビティを、動きから生成されるミリ波を解釈する能力を用いて正しく認識しているのが示されている。そしてこれは純粋に一般のビデオデータを用いたトレーニングの成果である。

「私たちは、一連の実験結果を通し、このクロスドメイントランスレーションがどのように達成されるかを提示しています」と彼らは書いている。「私たちは、このアプローチがヒューマンセンシングシステムなどのトレーニングの負担を大幅に低減する重要な足がかりであり、人間とコンピュータの相互作用におけるブートストラップ型使用に役立つものであると考えています」。

研究者であるChris Harrison(クリス・ハリソン)氏はワシントンD.C.、ミリ波によるドップラーレーダーベースのセンサーは「非常に微妙なもの(表情の違いなど)」は認識できないと認めている。しかし、食事をしたり本を読んだりといったそれほど活発でないアクティビティを検出するには十分な感度を備えているという。

またドップラーレーダーの持つ動きの検出能力は、対象とセンシングハードウェアの間のLOS(無線波の送受信が可能な範囲)にも制限を受ける(別の言い方をすれば「まだその段階に達していない」ということである。これは、将来ロボットが人検出能力を身につけることを懸念している人にとっては、ちょっとした安心感を得られる情報だろう)。

検出には、当然特殊なセンシングハードウェアが必要になる。しかし、物事はすでにその方向に向かって動き出している。例えば、GoogleはすでにPixel 4にレーダーセンサーを追加するというプロジェクトSoli に着手している。

GoogleのNest Hubにも、睡眠の質を追跡するために同じレーダーセンサーが組み込まれている。

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「レーダーセンサーがあまり携帯電話に採用されていない理由の1つは、説得力ある使用例がそれほどないためです(ニワトリが先かタマゴが先かということだが)」とハリス氏はTechCrunchに語った。「私たちのレーダーを用いたアクティビティ検出に関する研究により、より多くのアプリを使用できる可能性が浮上しています(例えば食事をしているとき、夕食を作っているとき、掃除をしているとき、運動しているときを認識できるよりスマートなSiriなど)」。

携帯用アプリと固定アプリでは、どちらにより大きな可能性があるかと聞かれ、ハリス氏はどちらにも興味深い使用事例があると答えた。

「携帯用アプリにも固定アプリにも使用事例はあります。Nest Hubに話を戻すと【略】センサーはすでに室内にあるため、それを使用して、Googleスマートスピーカーのより高度な機能をブートストラップすることができます(エクササイズで回数を数えるなど)」。

「建物には使用状況を検出するためにすでにレーダーセンサーが多数取り付けられています(しかし、今後は部屋の清掃が最後に行われたのはいつかなどを検出することが可能になる)」。

「これらのセンサーのコストはまもなく数ドルにまで落ちるでしょう(eBayで扱っているものの中にはすでに1ドルに近いものがある)。従って、あらゆるものにレーダーセンサーを組み込むことが可能です。そしてgoogleが寝室に設置される製品で示しているように「監視社会」の脅威は、レーダーが使用される場合、カメラセンサーを使った場合に比べはるかにリスクの少ないものになります」。

VergeSenseといったスタートアップは、すでにセンサーハードウェアとコンピュータビジョンテクノロジーを用いて、B2B市場向けの、屋内空間とアクティビティに対するリアルタイム分析(オフィスの使用状況を測定するなど)を強化している。

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しかし、解像度の低い画像データをローカルで処理したとしても、消費者環境では、視覚センサーを使用することでプライバシーのリスクが発生すると認識される可能性がある。

レーダーは「smart mirrors」のような、プライバシーをリスクにさらす危険のある、インタネットに接続された消費者向けのデバイスに、より適した視覚的監視の代替手段を提供する。

「ローカルに処理されたからといって、あなたはカメラを寝室や浴室に設置しますか?私が慎重なだけかもしれませんが、私なら設置しません」とハリス氏。

彼はまた、以前なされた研究に言及した。これはより多くの種類のセンシングハードウェアを組み込むことの価値を強調したものだ。「センサーが多いほど、サポートできる興味深いアプリケーションが増えます。カメラはすべてを捉えることができませんし、暗闇では機能しません。

最近はカメラもとても安価なため、レーダーが安いとはいっても、価格で勝負するのは困難です。レーダーの最大の強みは、プライバシーの保護だと思います」と彼は付け加えた。

もちろん、視覚的なものにしろ、そうでないものにしろ、センシングハードウェアを設置すれば、プライバシーがリスクにさらされる危険性は発生する。

例えば、子どもの寝室の使用状況を捉えるセンサーは、そのデータにアクセスするのが誰かによって、適切なものにも、不適切なものにもなるだろう。そして、あらゆる人間のアクティビティは、起こっている事柄によっては、安易に公開できない情報を生成するものだ。(つまり、セックスをしているのをスマートスピーカーに認識されてもかまわないか、という話である)

従って、レーダーを用いたアクティビティ追跡が他の種類のセンサーよりも非侵襲的だとはいっても、プライバシーの問題が生じないとは言い切れないのだ。

やはりそれはセンシングハードウェアがどのように使用されているかによる。とはいえ、レーダーが生成したデータはカメラなどが生成した視覚データに比べ、漏洩によってそれが人々の目にさらされた場合、比較的機密性が低いという点は間違いないだろう。

「いずれのセンサーにも、おのずとプライバシーの問題はつきまといます。プライバシーの問題があるか、ないか、ではなく、それは程度の問題です。レーダセンサーは詳細を捉えることができますが、カメラと違い匿名性が高いといえます。ドップラーレーダーデータがオンラインでリークされても、気まずい思いをすることはないでしょう。誰もそれがあなただとは認識できないからです。しかし、家の中に設置されたカメラからの情報がリークされた場合は、どうでしょうか……」。

ドップラーシグナルデータがすぐには入手できないことを前提とすると、トレーニングデータの合成にかかる計算コストは、どれ程だろうか?

「すぐに使えるというわけではありませんが、データを抽出するのに使用できる大規模なビデオコーパスは豊富にあります(Youtube-8Mのようなものを含め)」とハリス氏はいう。「動きのデータを収集するために人々をリクルートして研究室に来てもらうより、ビデオデータをダウンロードして合成レーダデータを作成するほうが、データ収集を桁違いに速く行うことができます」。

「実際の人物から質の高い1時間のデータを得ようとすると、どうしても1時間はかかります。しかし最近では、多くの良質のビデオデータベースから何百時間もの映像を簡単にダウンロードすることができます。ビデオ1時間を処理するのに2時間かかりますが、これは研究室にあるデスクトップ一台あたりの話です。重要なのは、Amazon AWSなどを使ってこれを並列化し一度に100本のビデオを処理できるということです。そのため、スループットは非常に高いものになります」。

また、無線周波数信号は、さまざまな表面からさまざまな程度で反射するが(「マルチパス干渉」としても知られる)、ハリス氏によると、ユーザーによって反射された信号は「圧倒的に優勢な信号」である。つまり、デモモデルを機能させるために、他の反射をモデル化する必要はない(しかしハリス氏は、機能をさらに磨くために「壁/天井/床/家具などの大きな表面をコンピュータービジョンで抽出し、それを合成段階に追加することができる」と述べた)。

「ワシントンD.C.(ドップラー)信号は実際に非常に高レベルで抽象的なため、リアルタイムで処理するのは特に困難ではありません(カメラよりはるかに少ない「ピクセル」のため)。車に組み込まれたプロセッサーは衝突被害軽減ブレーキシステムやブラインドスポットの監視などのためにレーダーデータを使用しています。そしてそれらはローエンドのCPUなのです(ディープラーニングなどを行わない)」。

この研究は、他のPose-on-the-Goと呼ばれる別のグループプロジェクトとあわせ、ACM CHIカンファレンスで発表されている。Pose-on-the-Goは、ウェアラブルセンサーを使わずに、スマートフォンのセンサーを使用してユーザーの全身のポーズの概要を捉えるものだ。

また、このグループのカーネギーメロン大学の研究者らは、安価に屋内「スマートホーム」センシングを実現する方法をワシントンD.C.以前実証しているワシントンD.C.(これもカメラを使わない)他、ワシントンD.C.2020年は、スマートフォンのカメラにより、デバイス上のAIアシスタントに詳細なコンテクストを供給する方法を示してもいる。

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近年彼らはワシントンD.C.レーザー振動計電磁雑音を使ってスマートデバイスにより適切に環境認識をさせ、コンテキスト機能を与える方法の研究も行っている。このグループによる他の研究には、伝導性のスプレーペイントを用いてワシントンD.C.あらゆるものをタッチスクリーンに変える研究や、ワシントンD.C.レーザーで仮想ボタンをデイバイスユーザーの腕に投影したり、別のウェアラブル(リング)ワシントンD.C.をミックスに組み入れるなどして、ウェアラブルのインタラクティブな可能性を広げるさまざまな方法の研究が含まれていて大変興味深い。

現在の「スマート」デバイスは基本的なことにつまづくなど、あまり賢くないように見えるかもしれないが、今後人とコンピューターのインタラクションが、はるかに詳細なコンテクストベースのものになるのは確かだろう。

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タグ:レーダープライバシー個人情報アクティビティカーネギーメロン大学

画像クレジット:CMU

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

エンド・ツー・エンド暗号化対応Googleドキュメント対抗テキストエディター「Skiff」が4.2億円調達

もしGoogleドキュメントがエンド・ツー・エンドで暗号化されて、Googleでさえ自分の文書をアクセスできないとしたらどうだろうか。Skiff(スキッフ)は、ひと言で表現すればそれをやっている。

SkiffはGoogleドキュメントと似たルック・アンド・フィールのテキストエディターで、文章の作成、編集、同僚とのリアルタイムの共同作業ができることに加えて、プライバシー第一で作られている。テキストエディターはエンド・ツー・エンド暗号化の基盤の上に作られているので、Skiff自身は誰の文章を見ることもできない。アクセスできるのはユーザー自身と共同作業に招待された人だけだ。

このアイデアはすでに投資家の注目を集めている。米国時間5月26日、Skiffの共同ファウンダーである、Andrew Milich(アンドリュー・ミリッチ)CEOとJason Ginsberg(ジェイソン・ギンズバーグ)CTOは、同社がベンチャーキャピタルのSequoia Capitalから370万ドル(約4億円)のシード資金を調達したことを発表した。2020年3月にSkiffが設立されてから1年と少しが過ぎたところだ。Alphabet(アルファベット)のチェアマンJohn Hennessy(ジョン・ヘネシー)氏、Yahoo(ヤフー)のCEOであるJerry Yang(ジェリー・ヤン)氏、Eventbrite(イベントブライト)の共同ファウンダーであるJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏とKevin Hartz(ケビン・ハーツ)もラウンドに参加した。

ミリッチ氏とギンズバーグ氏はTechCrunchに、シード資金はチームの増員とプラッフォーム拡大に使うつもりだと語った。

Skiffは、エンド・ツー・エンド暗号化という意味ではWhatsAppやSignalと大きくは変わらないが、その上でテキストエディターを動かしている。「多くの人へにメッセージを送るためにこれを使う代わりに、私たちはこれを使って文章を細かいピースに分けて送り、それらをつなぎ合わせて共同作業ワークスペースを作ります」とミリッチ氏は言った。

しかし共同ファウンダーの2人は、重要な文章をクラウドに置くためにはユーザーがスタートアップに大きな信頼を寄せる必要があることを認識している、生まれて間もない会社ならなおさらだ。Skiffが自社のテクノロジーの仕組みを詳しく説明した白書を公開し、コードの一部をオープンソース化して、プラットフォームの中身を誰でも見られるようにしたのはそれが理由だ。ミリッチ氏は、本格的なセキュリティ監査を1回以上実施しており、Signal Foundation(シグナル・ファウンデーション)やTrail of Bits(トレイル・オブ・ビッツ)のアドバイスも受けている、と語った。

どうやら順調にいっているようだ。Skiffが招待のみのプログラムで限定公開を開始して以来、ジャーナリスト、研究者、人権派弁護士などを含む数千人のユーザーが毎日Skiffを使用しており、8000人がその行列に並んでいる。

「最も喜んでいるのは、プライバシーに気を使っているごく普通の人たちです」とギンズバーグ氏はいう。「このタイプの製品の支持者で、プログラムがどのように作られたのかを真剣に考え、大会社への信頼を失いかけている、そんなプライバシーコミュニティや人々が世界にはたくさんいます」。

「彼らが私たちの製品を使っているのは、エンド・ツー・エンド暗号化の構想と将来に大きく期待しているからです」と彼は語った。

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タグ:SkiffGoogleドキュメントテキストエディタープライバシーエンド・ツー・エンド暗号化資金調達

画像クレジット:Skiff / supplied

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド政府がWhatsAppの新規制撤回を求める訴訟は「反抗行為」「無謀」と批判

インド政府は現地時間5月26日、WhatsApp(ワッツアップ)が同国の新しいIT規則に異議を唱えた訴訟は、新規制の発効を阻止しようとする「不穏当な土壇場の」試みであるとともに「明らかな反抗行為」だとし、Facebook(フェイスブック)傘下の同サービスは2018年10月以降、トレーサビリティーの要求について書面での具体的な異議申し立てを一度も行っていないと指摘した。

インドのRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサッド)電子IT大臣は、26日に期限が切れるガイドラインの遵守をWhatsAppが拒否したことは「その意図を疑いようがない、措置に対する明らかな反抗行為」であると述べた。

WhatsAppは26日未明にデリー高等裁判所でインド政府を提訴し、世界第2位のインターネット市場である同国の新しいIT規則により、当局が人々のプライベートなメッセージを「追跡可能」にし、集団監視を行うことが可能になると主張している。

電子IT省によると、政府は「特にインドの主権、一体性、安全に関連する犯罪、公共秩序・レイプに関わる犯罪の扇動、5年以上の禁固刑に値する性的表現物、児童性的虐待物の予防、調査、処罰などの目的」で、メッセージの最初の発信者を追跡する必要があるという。

「このような犯罪につながる悪事を始めた者を発見し、処罰することは公共の利益につながります。多くの集団リンチや暴動事件で、すでにパブリックドメインにあるWhatsAppメッセージの内容が繰り返し拡散されていることは否定できません。だからこそ、誰が発信したかということが非常に重要なのです」。

インドは2018年、メッセージの発信者を追跡可能にするためのソフトウェア変更を展開するよう、WhatsAppに初めて提案した。この提案は、デマの流通により現実に複数の死傷者が出ていた中、WhatsAppがインドでの偽情報の拡散防止に取り組んでいた時期に行われた。同提案は、2021年2月に新規則の一部となった。

一方WhatsAppは、ユーザーに提供しているエンド・ツー・エンド暗号化はセキュリティや政策の専門家が以前から高く評価していたもので、世界中で20億人以上のユーザーが利用している同社がユーザーを特定できる情報を見つけることは不可能だと主張してきた。

インドは、フェイスブック傘下の人気インスタントメッセージングサービスにとってユーザー数では最大の市場だ。政府の推計によると、WhatsAppはインドで5億3000万人以上のユーザーに利用されている。

電子IT省は、インドでの企業活動はいかなる会社でも「国法の対象」であるとし、他の市場でも類似の、あるいはより厳しい規制が施行されたり提案されていると主張している。

同省は「インドが求めているものは、他の国々が要求しているものよりもはるかに少ない」と述べ、新規則の目的を疑うことは「無謀」であると付け加えた。

同省はさらにこう述べた。「WhatsAppは一方で、マーケティングや広告を目的として、すべてのユーザーのデータを親会社であるFacebookと共有するというプライバシーポリシーを義務づけようとしています。そのまた一方で、法と秩序を維持し、フェイクニュースの脅威を抑制するために必要な情報仲介企業ガイドラインの制定を拒否しようとしています」。

TechCrunchが最初に報じたように、電子IT省は26日にソーシャルメディア企業各社に書簡を送り、新ルールを遵守しているかどうか最新情報を求めた。この書簡の中で同省は、現地での懸念に対応するために職員が地元に常駐することを義務付ける新規則のコンプライアンスの一環として、企業が任命した担当者の情報(氏名と連絡先)を求めている。

「WhatsAppはインドの仲介企業ガイドラインがプライバシー権に反するものであると主張していますが、これは見当違いです。【略】インド政府は『プライバシー権』が基本的な権利であることを認識しており、国民にその権利を保証することを約束します」と同省は声明で述べた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドWhatsAppプライバシーSNS

画像クレジット:INDRANIL MUKHERJEE / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

ドイツ当局がFacebookに対し物議を醸している「WhatsApp」の利用規約を適用しないよう命令

ハンブルグのデータ保護機関(DPA)はFacebookに対し、WhatsAppの利用規約の強制的な更新に基づいて同社が自らにアクセスを許可しようとしている、WhatsAppの追加的なユーザーデータに関する処理を禁止した。

物議を醸しているWhatsAppのプライバシーポリシーのアップデートは、公表されて以来、世界中で広範な混乱を引き起こしてきた。Facebookはユーザーから大きな反発を受け、競合のメッセージングアプリが憤慨するユーザーの流入で恩恵を享受することに直面した。同社はすでにその施行を数カ月延期している。

インド政府もまた、WhatAppの利用規約の変更を法廷で阻止しようとしており、同国の反トラスト当局が調査を進めている

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全世界のWhatsAppユーザーは、5月15日までに新しい規約に同意しなければならない(WhatsAppのFAQによると、その後も利用規約の更新への同意を求めるリマインダーは継続されるという)。

Facebookは、同規約を求められたユーザーの大多数はすでにこれに同意したとしているが、そのユーザーの割合は公表されていない。

しかし、ハンブルグのDPAの介入により、少なくともドイツ国内ではFacebookによる利用規約の施行がさらに遅れる可能性がある。当局は欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)で認められている緊急措置を採用し、同社に対し3カ月間データを共有しないよう命じた。

WhatsAppの広報担当者は、ハンブルグ当局の命令の法的有効性に異議を唱え、これを「WhatsAppのアップデートの目的と影響に対する根本的な誤解」だとし「したがって合法的な根拠はない」と主張した。

「今回のアップデートは、ユーザーがWhatsApp上の企業にメッセージを送る際のオプションを明白にして、私たちがデータをどのように収集し、利用しているかについての透明性をさらに高めるものです。ハンブルグのDPAの主張は誤りであり、その命令は今回のアップデートの継続的展開に影響を与えるものとはならないでしょう。私たちは引き続き、すべての人に安全でプライベートなコミュニケーションを提供することに注力していきます」と広報担当者は付け加え、Facebook傘下のWhatsAppがこの命令を黙殺することを意図している可能性を示唆した。

TechCrunchでは、Facebookがハンブルクの手続きを訴える選択肢を検討していると認識している。

ハンブルグが採用している緊急措置権限は3カ月を超えて延長することはできないが、当局は欧州データ保護評議会(EDPB)に対し介入を求め、27の加盟国ブロックに及ぶ「拘束力のある決定」を下すよう圧力をかけている。

TechCrunchはEDPBに連絡を取り、ハンブルグのDPAの要請に応えるためにどのような措置を取り得るかについて尋ねた。

EUのDPAは通常、特定の苦情に関連する拘束力を有するGDPRの決定には関与しない。ただし、国境を越えた案件を処理するためのワンストップショップ制度の下で、主任監督機関による審査のために提出されたGDPRの決定草案についてEUのDPAが合意できない場合は、この限りではない。

こうしたシナリオでは、EDPBが自ら拘束力のある判断を採択できるが、それが緊急性の高い手続きに適しているかどうかは不透明だ。

【更新】DPAが暫定措置を延長または最終的なものとすることを希望する場合のように、第66条に基づく暫定措置を採択する決定を通知した監督機関が、EDPBに対して緊急の意見あるいは緊急の拘束力のある決定を要請することをGDPRが認めていることについて、EDPBが確認した。

「第66条は、GDPRのワンストップショップ制度(第60条)および一貫性制度(第63条)の例外規定です」とEDPBの広報担当者はTechCrunchに語った。「これは、監督機関がその管轄内のデータ主体の権利および自由を保護するために行動する緊急の必要性があると考える場合に利用できる、補完的な手続きです」。

「ハンブルグ当局はEDPBに対し、暫定措置を採用する決定を通知済みです」と同担当者は言い添えた。

ドイツのDPAは、FacebookがEUのデータ保護規則を軽視しているとして同社を厳しく批判するだけでなく、同地域の統括データ監督機関であるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)に対しても、WhatsAppの新しい利用規約に付随する非常に広範な懸念を調査していないとして遺憾の意を表明した。

(「データ共有の事実上の慣行を調査する主任監督機関への我々の要請は、今のところ尊重されていない」というのが、ハンブルグのプレスリリースにおけるこの批判に関する丁寧な表現である)。

TechCrunchはDPCの所見を照会しており、入手次第、本記事を更新する。

【更新】DPCの広報担当者は次のように語った。「ハンブルグはワンストップショップの例外としてこのプロセスを開始しており、ハンブルグのDPAにとって、緊急手続きを開始するためのしきい値をどのように満たすかについて対応することが重要です。WhatsAppに関するアイルランドのDPA草案の決定は、DPA間の合意に達することができなかったため、GDPRの第65条紛争解決手続を通して処理されます。したがって、そのコンテキストにおいてハンブルグのDPAは、すでに進行中であるワンストップショップ手続きの例外としての第66条の下で、自らの行動を適格化する必要があります」。

アイルランドのデータ監視機関は、GDPRの施行に関して創造的な規制措置を怠っていると批判されている(批判者たちは、委員長のHelen Dixon[ヘレン・ディクソン]氏と同氏が率いるチームに対し、多くの苦情の調査を実施せず、調査を開始した場合にはその調査に数年を要したことについて非難している)。

DPCが大手テック企業に対してこれまでに下した唯一のGDPRの決定(Twitterに対するもので、データ漏えいに関連している)は、他のEUのDPAとの論争に発展した。DPA側は、最終的にアイルランドが科した55万ドル(約6000万円)の罰金よりもはるかに厳しい罰則を求めている。

FacebookとWhatsAppに対するGDPR関連の調査について、DPCは依然として積み残したままである。WhatsAppのデータ共有の透明性に関する決定書の草案が2021年1月に他のEUのDPAに送られて審査に入っているが、この規制が適用されてから3年近く経った今もなお決議案は日の目を見ていない。

つまり、最大の大手テック企業に対するGDPRの施行が欠如していることに対する不満が、他のEUのDPAの間でも高まっている。DPAの中には、アイルランドを通じて多くの苦情を集めるワンストップショップ(OSS)制度のボトルネックを回避するために、創造的な規制措置を取っているところもある。

イタリアのDPAも2021年1月にWhatsAppの利用規約の変更について警告を発しており、変更内容についての明確な情報が不足していることを懸念してEDPBに連絡したと述べている。

EDPBはその時点で、監督当局間の協力を促進することがEDPBの役割であることを強調した。さらに「その権限に従ってEU全体でデータ保護法の一貫した適用を確保するため」、DPA間の情報交換を引き続き促進すると付言した。しかし、EUのDPA間の合意は常に脆弱であり、執行上のボトルネックや、OSSのフォーラムショッピングにより規制が維持されていないという認識をめぐる懸念が広がっている。

このことは、行き詰まりを打開して広範な規制の崩壊を回避する何らかの解決策、すなわちより多くの加盟国機関が一方的な「緊急」措置に訴える場合の対処に向けた対策を講じるようEDPBに求める圧力を高めることになるだろう。

ハンブルグのDPAは、WhatsAppの規約が更新されたことで、WhatsAppのユーザーの位置情報をFacebookに渡したり、企業がFacebookのホスティングサービスを利用した場合にWhatsAppユーザーの通信データを第三者に譲渡できるようにするなど、WhatsApp自体の目的(広告やマーケティングを含む)のために「Facebookとデータを共有する広範囲な権限」がWhatsAppに与えられるとしている。

FacebookはEU法の下でデータ共有を拡大する法的基盤としての合法的な利益に依存することはできない、と同局は判断している。

また、大手テック企業がユーザーの同意に依存しようとしている場合、変更が明確に説明されていないことや、ユーザーが同意に関する自由な選択(これはGDPRで要求されている基準である)を提供されていないことから、基準を満たしていないことになる。

「新しい規約に関する調査により、FacebookがWhatsAppユーザーのデータをいつでも自分たちの目的のために利用できるようにするために、両社の密接な関係をさらに拡大しようとしていることが明らかになりました」とハンブルグ当局は続けた。「プロダクトの改善と広告の領域に関して、WhatsAppはデータ主体のさらなる同意を要求することなく、データをFacebook企業に渡す権利を留保しています。その他の領域については、現時点ですでにプライバシーポリシーに則った自社利用が想定されています」。

「WhatsAppとそのFAQによって提示されたプライバシーポリシーには、例えば、電話番号やデバイスIDなどのWhatsAppユーザーのデータが、ネットワークセキュリティやスパムの送信防止などの共同目的のために、すでに企業間で交換されていることが記述されています」。

ハンブルグをはじめとする各DPAは、当時TechCrunchが報じたように、EUの最高裁判所のアドバイザーによる最近の意見を参考にして、GDPRの施行に関する問題を自らの手で解決しようとしているのかもしれない。Bobek(ボベック)法務官は、EU法は「緊急措置」を採用するため、または「事案を処理しないことを決定した主要データ保護当局に従って」介入するためなど、特定の状況において各機関が独自の手続きを取ることを認めているとの見解を示した

この件に関するCJEU(欧州司法裁判所)の裁定はまだ係争中だが、法廷はアドバイザーの見解に同調する傾向が強くなっている。

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タグ:ドイツFacebookWhatsAppプライバシーGDPR

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

婚活アプリ「Omiai」のネットマーケティングがコーポレートサイト「お問い合わせフォーム」で個人情報を閲覧できる状態になっていたと報告

婚活アプリ「Omiai」のネットマーケティングがコーポレートサイト「お問い合わせフォーム」不具合により個人情報を閲覧できる状態になっていたと報告

ネットマーケティングは5月23日、同社コーポレートサイトの不具合により、「お問い合わせフォーム」内の個人情報が第三者から閲覧できた状況になっていたとして、お詫びと報告を発表した。

不具合が発生したのは、「株式会社ネットマーケティングHP(コーポレートサイト)」内の問い合わせフォームであり、同社が提供する恋活・婚活マッチングアプリ「Omiai」の問い合わせフォームではないとしている。また本件は、同社が5月21日に公表した「Omiai」への外部からの不正アクセスが原因ではなく、同社内でのシステム不具合によるものとしている。

ネットマーケティングの発表によると、コーポレートサイトのお問い合わせフォームにおいて、問い合わせを行った一部顧客より、他顧客の記載内容の一部が閲覧できる状況になっていると指摘を受け調査したところ、コーポレートサイトの管理システムの不具合により、当該事象の発生事実を確認した。

2021年5月19日11時~5月22日15時までの間に、同社コーポレートサイトのお問い合わせフォームに顧客が記載した内容が、後から利用した他の顧客から閲覧可能な状態となっていた。対象期間に同フォームを利用した者は37名。また閲覧可能であった個人情報項目は「会社名」「部署名」「会社URL」「お名前」「フリガナ」「電話番号」「メールアドレス」「お問合せ内容」の一部の計8項目。

同件が起こった原因は、サーバー増強を目的とするサーバープラットフォームの移行に伴うシステム設定の不備によって、同フォームに投稿したキャッシュが残ってしまうケースがあり、過去の記載内容を意図せず露出してしまう不具合が発生していたことによるもの。同件発覚後、キャッシュが残らないようシステムの修正措置を施し、併せて管理体制を強化した。また、個人情報の閲覧の対象となった顧客には、ネットマーケティングより個別にお詫びと経緯の説明を5月23日よりメールなどで行っているという。

またシステム対応を行った結果、同フォームにおいて現在顧客の個人情報が他顧客から閲覧されることはなく、対応以降の指摘もなく、問題なく利用できるとしている。

婚活アプリ「Omiai」のネットマーケティングがコーポレートサイト「お問い合わせフォーム」不具合により個人情報を閲覧できる状態になっていたと報告

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アップルがアプリ追跡の透明性をユーモラスに表現した「iPhoneのプライバシー|追跡」CMを公開

アップルがアプリ追跡の透明性をユーモラスに表現した「iPhoneのプライバシー | 追跡 」CMを公開

Apple

今年4月末に配信されたiOS 14.5ではアプリトラッキング透明性(App Tracking Transparency/ATT)が導入され、今後アプリが異なるWebやアプリをまたいでユーザーを追跡する際には、ユーザーの明示的な許可を得ることが義務づけられるようになりました。アプリがユーザーのIDFA(広告識別子)を取得する前には、プロンプトを表示してユーザーの許可をもらうことが必須となっています。

これを受けてアップルは、ATTをユーモラスに表現したテレビCM「iPhoneのプライバシー|追跡」の公開を開始しました。

アップルいわく、アプリのトラッキング透明性とは「あなたのデータを、あなた自身がコントロールできる新しい機能」とのこと。それを朝の一杯のコーヒーを買った人の一日を追うかたちで分かりやすく可視化しています。

その人がコーヒーを買ったり店で買い物するたびに後を付いてくる店員(勝手にプライバシーを追跡するアプリの擬人化)が続々と増えていき、気が付けば部屋は追跡者で満員に。そこでiPhoneに「アクティビティを追跡することを許可しますか?」というプロンプトが表示され、「Appにトラッキングしないように要求」をタップすると追跡者がドロンと消えてゆくという流れです。

アップルはプライバシーが基本的人権であり、ユーザーが自分の情報を自分でコントロールできるように製品を設計していると述べています。そうした信念は昨日今日のことではなく、共同創業者スティーブ・ジョブズ氏がCEOだった時代まで遡り長年にわたって追求されてきたものです。4月初めに公開されたプライバシー保護原則やATTに関するデジタルブックでも、ジョブズ氏の「彼らのデータで自分たちが何をしようとしているのか、正確に説明すべきです」との言葉が引用されていました。

かといってアップルは広告一般に反対しているわけではありません。ティム・クックCEOも人々がオンラインで費やす時間が長くなるなかで、デジタル広告が増えていくのは自然な成り行きであると認めていました。その上で「このような詳細なプロフィールの構築(追跡から得た情報に基づいて作ったユーザー属性)をお客様の同意なしに行うことが許されるかどうかです」として、広告関係者には事前にどんな情報を集めるかを知らせ、ユーザーが自らのデータを制御できる権利を尊重するよう呼びかけているしだいです。

iPhoneにATTが導入された直後、米国ユーザーの96%がアプリ追跡を無効にしたとの調査結果もありました。その一方でマーケティング業界団体は一時的にはiOS向けの広告費は減りながらも、いずれはユーザー追跡なしの広告が増えていくという楽観的な見通しも発表しています

無料でアプリやサービスが楽しめる対価として広告が表示されるビジネスモデルはテレビやラジオから引き継がれたものであり、もしも否定してしまえばあらゆるコンテンツが有料になりかねません。

ATTはあくまで異なるWebやアプリをまたいだユーザー追跡に同意を求めるにすぎず、自社アプリやサイト上でのデータ収集は今まで通り続けられるはず。今後はその会社の経済圏内に留まり続けるかぎり行動履歴に基づくパーソナライズド広告が表示され、一歩外に出ればテレビのスイッチを切るように追跡もオフにされる、という新たな行動様式が定着していくのかもしれません。

(Source:Apple(YouTube)Engadget日本版より転載)

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ユーザーをだます「ダークパターン」デザインを集めて企業の恥を晒す通報窓口ができた

「dark pattern(ダークパターン)」という言葉は聞き慣れないかもしれない。しかし、この操作的デザイン現象は我々が日常的に使っているアプリやサービスに蔓延している。

ダークパターンは、消費者が企業を儲けさせる選択をするよう誘導し、多くの場合出費がともなう。個人データをうっかり渡してしまう誤解を招く表現や、おそらくキャンセルしたいサブスクリプションを更新する結果になる隠しボタンなどだ。

これからは、不審なダークパターンデザインを見つけた時には、Darkpatternstipline.orgに通報できる。Consumer Reports(コンシューマー・レポート)が主催する専用サイトだ。この新しい通報窓口は、EFF(電子フロンティア財団)、PEN America(ペン・アメリカ)、Consumer Reports、Access Now(アクセス・ナウ)をはじめとするデジタル権利保護団体による共同プロジェクトだ。

ダークパターン報告を集めるこの取り組みは、操作的デザインを標的とする新しい法律のおかげで、実効力をともなうものになった。

2021年3月、カリフォルニア州は画期的なプライバシー法であるカリフォルニア消費者プライバシー法(CCPA)を改定し、 テック企業によるダークパターンを禁止した。「この改定は、データプライバシー権を行使する上で混乱したり欺かれたりすることがないよう消費者を保護するものです」とカリフォルニア州司法長官のXavier Becerra(ザビエル・べセラ)氏が新たな規則について語った。

議会もダークパターンに懸念を示している。2019年、DETOUR Actと呼ばれる超党派法案が提出され、1億人以上のユーザーを持つ大企業による「曖昧、破壊的、あるいはユーザーの自律を損なう」ユーザーインターフェイスを禁止しようと試みた。同法案はその後進展しなかったが、威圧的なデザイン選択は、大手テクノロジー企業に対する連邦規制を実施しようとしている立法府にとって、数多い懸念材料の1つとなっている。

どこかのメールリストに騙して登録させようとする、矛盾したチェックボックスを見たことがありませんか?それがダークパターンです。

(訳注:画像のチェックボックスは、オプトインする / オプトアウトしない/ オプトインしなくない。最後に薄く小さく「すべてオプトアウトする」が見える)

通報窓口を作った人たちにとって、テクノロジー政策を具現化する規制当局に対する懸念は優先順位だ。「インターネットやその先でダークパターンを止めさせるためには、まず、今起きていることを分析し、その結果を使って政策立案者と立法者に働きかける必要があります」とEFFのデザイナーであるShirin Mori(シリン・モリ)氏はいう。

「このダークパターン通報窓口が、テクノロジー製品やサービスを全員にとってより公正かつ公平で利用しやすくしようとする私たちの活動を後押ししてくれることを願っています」。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

TikTokが米国に続き欧州に「透明性」センターを設置、専門家に取り組みを開示

TikTok(ティックトック)は米国時間4月27日、コンテンツモデレーションやレコメンデーション、プラットフォームセキュリティ、ユーザープライバシーに同社がどのように取り組んでいるかを外部の専門家に示すセンターを欧州に設置すると発表した。

欧州Transparency and Accountability Centre(TAC、透明性・説明責任センター)は2020年の米国センター開所に続くもので、米国同様、同社の「透明性へのコミットメント」の一環と位置づけられている。

米国TACを発表してすぐにTikTokは米国でコンテンツ・アドバイザリー・カウンシルも設置した。そして2021年3月に異なる複数の専門家で構成される同様のアドバイザリー機関を欧州にも設けた。

関連記事:TikTokがコンテンツ管理改善のため欧州に安全諮問委員会を設置

そして今、欧州TACを設置することで米国におけるアプローチを完全に再現している。

これまでに専門家や議員など70人以上がバーチャルの米国ツアーに参加した、とTikTokは述べた。このツアーでは参加者はTikTokの業務の詳細を学び、安全性やセキュリティに関する慣行について質問することができる。

ショートビデオのソーシャルメディアサイトであるTikTokは近年、人気が高まるにつれ、コンテンツポリシーや所有構造をめぐって厳しい視線が注がれてきた。

TikTokが中国テック大企業の所有で、かつ中国共産党が定めるインターネットデータ法の対象となっていることから、米国における懸念は主に検閲のリスクとユーザーデータのセキュリティについてだった。

一方、欧州では議員や当局、市民社会が子どもの安全とデータプライバシーに関する問題などを含む幅広い懸念を提起してきた。

2021年初めに注目を集めたケースでは、TikTokでコンテンツチャレンジに参加していたとされているイタリアの少女の死を受けて、同国のデータ保護当局が緊急介入した。その結果、TikTokはイタリアのプラットフォームで全ユーザーの年齢を再度チェックすることに同意した

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同社は、現在も続く新型コロナウイルスパンデミックのために、欧州TACがバーチャルで取り組みを開始すると述べた。しかし同社が欧州本社を置くアイルランドに実際のセンターを2022年に開所する計画だ。

欧州の議員らは最近、コンテンツレコメンデーションエンジンなどを含むAIシステムのアカウンタビリティーをさらに強調するため、デジタル法案に一連のアップデートを提案した。

欧州委員会が先週提示したAI規制の草案は、有害となり得る方法で人々の行動を操作するためのAIテクノロジーにおける潜在意識の使用の全面禁止も提案している。例えば自殺賛成のコンテンツやリスクのある問題を暗示的に展開することで自傷するようユーザーをそそのかすコンテンツレコメンダーエンジンなどが禁止の対象となる(草案には、違反した場合の罰金はグローバルの年間売上高の最大6%と盛り込まれている)。

欧州TACはレコメンデーションテクノロジーに関する詳細な洞察を提供する、とTikTokが明示したのは非常に興味深い。

「TikTokのチームがコミュニティのためにプラットフォームをポジティブで安全なエクスペリエンスにしようとしている取り組みを専門家、研究者、議員が確認する機会をセンターは提供します」と同社はプレスリリースに書いている。そして専門家は、同社が「TikTokコミュニティを安全なものにし続ける」ためにどのようにテクノロジーを使っているか、訓練されたコンテンツレビューチームがコミュニティガイドラインに基づいてコンテンツに関しどのように決断を下しているか「モデレーションの取り組みを補完する人間のレビュワーが潜在的なポリシー違反を見つけるためにテクノロジーを使っている方法」について知見も得る、としている。

EUのAI規制草案にはまた、人工知能のハイリスクな適用を人間が監視するという要件が盛り込まれている。規制の草案にある一連の現在のカテゴリーを考えた時、ソーシャルメディアプラットフォームが特定の義務に従うかどうかは不透明だ。

しかしAI規制は、プラットフォームにフォーカスした欧州委員会の規則制定の1つのピースにすぎない。

欧州委員会は2020年末、プラットフォームにデューデリジェンスを義務づけるDSAとDMAのもと、デジタルサービス向けのルールに広範なアップデートを提案した。そしてアルゴリズムを使ったランキングやヒエラルキーを説明するよう大手プラットフォームに求めている。そしてTikTokはおそらく義務の対象となる。

ブレグジットで現在はEU外となっている英国もまた2021年中に提示することになっている独自のOnline Safety regulationに取り組んでいる。つまり、数年のうちにTikTokのようなプラットフォームが欧州で遵守すべき、コンテンツにフォーカスした複数の規則制度ができる。そして外部専門家にアルゴリズムをみせることは、ソフトなPRではなく厳しい法的要件となりそうだ。

関連記事:2021年提出予定の英国オンライン危害法案の注意義務違反への罰金は年間売上高10%

声明の中での欧州TACの立ち上げについてのコメントで、TikTokの信頼・安全責任者のCormac Keenan(コーマック・キーナン)氏は次のように述べた。「欧州中に1億人超のユーザーを抱え、当社はコミュニティと広く社会の信頼を得るための責任を認識しています。当社の透明性・説明責任センターは、TikTokを喜び、クリエイティビティ、楽しみのための場所にし続けるために当社が展開しているチームやプロセス、テクノロジーを人々が理解できるようにする過程において次のステップです。すべきことがたくさんあるのは理解していて、待ち受けている困難を積極的に解決していくことに前向きです。当社のシステムをさらに改善できるよう、欧州中から専門家を迎え、率直なフィードバックを聞くことを楽しみにしています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTokプライバシー個人情報ヨーロッパEU

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

Apple(アップル)のモバイルOSの最新バージョン「iOS 14.5」が、米国時間4月26日に配信開始となった。これに伴い、多くの議論を巻き起こした「App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性)」という新しいプライバシー保護機能が導入される。

この機能は約1年前に発表されたが、アップルはアプリ開発者に準備期間を与えるために導入を延期していた。以来、この機能への対応はすでにiOSで始まっており、いくつかのアプリがすでに採用している。例えば、Duolingo(デュオリンゴ)やVenmo(ベンモ)では、ユーザーにデータ追跡の許可を求めることが確認されている。だが、アップルは今回のアップデートから実際に新しい規定の施行を開始すると述べている。

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つまり、iPhoneユーザーは一般的なアプリケーションを使用していると、何度もプライバシーに関するプロンプトを目にするようになる。アプリごとに「他社のAppやウェブサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡する」許可を求めて来るのだ。追跡(トラッキング)許可を求めるすべてのアプリは、iOSの広範な「プライバシー」設定の中の「トラッキング」メニューに表示され、個々のアプリまたはすべてのアプリについて、トラッキングのオン / オフをいつでも切り替えることができる。

関連記事:アップルが導入間近のデータトラッキング規制「App Tracking Transparency」の詳細をさらに公開

トラッキングのオン / オフを切り替えると、実際にどのような効果があるのだろうか?トラッキングをオフにすると、そのアプリケーションは、アップルのIDFA識別子を使ってあなたの行動に関するデータをデータブローカーやその他の第三者と共有し、広告のターゲットにすることができなくなる。また、アプリが他の識別子(ハッシュ化されたメールアドレスなど)を使ってあなたを追跡することもできなくなるが、アップルにとって実際にポリシーのこの部分を施行することは、より困難になるかもしれない。

画像クレジット:Apple

App Tracking Transparencyについては、リリースに向けて激しい議論が交わされてきた。賛否両論あるものの、賛成派の説明は簡単だ。これまで膨大な量の個人情報や活動が、消費者の同意なしに収集されていた(アップルは「あなたのデータの1日」と名づけられた報告書でその概要を説明している)が、その共有を簡単に制御できるようになるということである。

しかし、Facebook(フェイスブック)は、この新ポリシーが広告ターゲティングに深刻な打撃を与えることから、手頃な費用で効果的な広告キャンペーンを行うためにターゲティングを利用している中小企業に損害を与えると主張している。

さらにFacebookは、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)、The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)、The Washington Post(ワシントン・ポスト)に「世界中の中小企業のためにAppleに立ち向かう」と宣言する広告まで掲載した(電子フロンティア財団は、このキャンペーンを「Facebookのビジネスに悪影響を与えるアップルのプライバシー保護強化に向けた変更を阻止しようとしつつ、自社の反競争的な行動やプライバシー問題に関する失態から人々の目を逸らさせようとする、Facebookの笑えない試み」と断じた)。

関連記事:Facebookがアプリ追跡と広告ターゲティング制限に対してアップル批判を強化

なお、このような変更は一部の開発者や広告主に「存亡の危機」をもたらす一方で、アップルには利益をもたらすことにもなるという意見もある。

これがどれほどの影響をもたらすかということは、どれだけ多くの人がトラッキングの拒否を選択するかにかかってくるだろう。アプリ開発者はトラッキングの有無に応じて何らかの機能を制限することができないため、このようなプロンプトが表示されたときに、一般的なiPhoneユーザーの多くが「許可」を選択するとは考えにくい。しかし、モバイルアトリビューション分析会社のAppsFlyer(アップスフライヤー)によると、初期の調査結果によれば、「許可」選択率は39%にも達する可能性があるという。

カテゴリー:ソフトウェア
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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EUデータ保護当局のトップ監督官が公共の場での顔認識の禁止を強く要請

欧州連合(EU)のデータ保護監督官は、次期AI関連法案の下で、公共の場での遠隔バイオメトリックサーベイランスを全面的に禁止するよう求めた。

欧州データ保護監察機関(EDPS)の介入は、欧州議会の議員らが中央ヨーロッパ時間4月21日に発表した、AI(人工知能)の適用先を規制するためのリスクベースアプローチに関する提案を受けたものだ。

欧州委員会の立法案には、法執行機関による公共の場での遠隔バイオメトリックサーベイランス技術(顔認識など)の使用を一部禁止することが含まれている。しかし、この文書には広範な例外規定が含まれており、デジタル権および人権団体は、EU市民の基本的権利の大幅な侵害につながると彼らが主張する抜け穴について、早くも警告を発している。そして先週、欧州議会の党派を超えたグループは、欧州委員会に対し、勇気を奮い起こしてこうした権利を侵害する技術を違法とするよう求めた。

欧州委員会のために勧告やガイダンスを発行する役割を担うEDPSは、これに同意する傾向にある。4月23日に発表されたプレスリリースでは、現在、EDPSの席を保持するWojciech Wiewiórowski(ヴォイチェフ・ヴィヴィオロフスキ)氏が再考を促している。

「EDPSは、顔認識を含む遠隔生体識別システムが公に利用可能なスペースで使用されることの一時停止を求める我々の以前の呼びかけが、欧州委員会によって対処されていないことを遺憾に思います」と同氏は書いている。

「EDPSは、商業や行政、あるいは法執行目的で使用されるかどうかにかかわらず、公共の場における人間の特徴(顔だけでなく歩行、指紋、DNA、声、キーストローク、その他の生体・行動信号)の自動認識について、より厳格なアプローチを提唱し続けていきます」。

「遠隔生体識別に関してはAIが前例のない発展をもたらす可能性がありますが、個人の私生活に深く非民主的に侵入するリスクが極めて高いことを考えると、より厳格なアプローチが必要です」とも。

ヴィヴィオロフスキ氏は、欧州委員会が提示した水平的アプローチと広範な範囲を歓迎すると述べ、この立法案に対してエールを送った。またAIの適用先を規制する際に、リスクベースアプローチをとることにも賛成している。

しかしEDPSは、EU議会が引いたレッドラインが、彼が期待していたよりもはるかにピンク色であることを明確にした。そして、欧州委員会が「信頼できる」「人間中心の」AIを確保するためのフレームワークを作成したという大々的な主張に応えていないという批判に、権威ある声を加えることになった。

今後、規制の最終的な形をめぐる議論では、欧州でのAIの一線をどこに引くべきかについて、多くの議論が交わされることになるだろう。最終的な文書の合意は、早くても来年になる見込みだ。

「EDPSは、個人および社会全体の保護を強化するためにEUの共同立法機関を支援するため、欧州委員会の提案を綿密かつ包括的に分析していきます。この観点から、EDPSは特に、データ保護やプライバシーに関する基本的権利にリスクをもたらす可能性のあるツールやシステムに的確な境界線を設定することに注力します」と、ヴィヴィオロフスキ氏は付け加えた。

関連記事:スウェーデンのデータ監視機関が警察によるClearview AI使用は違法と判断

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU顔認証欧州データ保護監察機関(EDPS)プライバシー個人情報

画像クレジット:Stegerphoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Aya Nakazato)

試験監督ソフトのProctorioを大学生が提訴「批判を抑えるために著作権法を乱用した」

米国のある大学生が、試験監督ソフトウェアをてがけるProctorio(プロクトリオ)を提訴した。同社が批判に対する「不愉快な活動」を鎮めるために、著作権法を乱用して同社製品に批判的なツイートを削除したと告発している。

電子フロンティア財団(EFF)は、このマイアミ大学の学生でセキュリティ研究も行っているErik Johnson(エリック・ジョンソン)氏の代理人として訴訟を起こし、Proctorioが「DMCAを不当利用してジョンソン氏のコメントを弱体化させた」と非難した。

Proctorioは、ジョンソン氏のツイート3件が同社の著作権を侵害しているとして、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づき削除要請を通知。これを受けてTwitter(ツイッター)はそれらのツイートを非表示にした。

新型コロナウイルス感染流行が拡大する中、学校や大学では学生の試験をリモートで行い、そのバーチャルな監督として試験監督ソフトウェアを用いるケースが増えている。学生は学校が選んだ試験監督ソフトウェアをインストールし、PCのマイクやウェブカメラへのアクセスを許可しなければならない。学校側は、この試験監督ソフトを通じて、学生の不正行為の可能性を発見することが可能になる。しかし、有色人種の学生からは、このソフトウェアが白人以外の顔をきちんと認識できないことについて不満が出ている。また、このソフトウェアには高速インターネットアクセスが必要だが、低所得者層の家庭にはそれがないことも多い。これらのチェックに失敗すると、その学生は試験に落ちてしまうこともある。

このようにソフトウェアが不正を防ぐための監視を行っているにもかかわらず、Viceは2021年3月、Proctorioが監視している試験で簡単に不正行為を行う学生がいると報じた。いくつかの学校では、プライバシーの問題を理由に、Proctorioやその他の試験監督ソフトウェアの使用を禁止または中止している。

Proctorioの試験監視ソフトウェアはChromeの拡張機能であり、一般的なデスクトップ用ソフトウェアとは違って、バグや欠陥がないか、簡単にダウンロードしてソースコードを調べることができる。ジョンソン氏は、このソフトが不正行為の兆候を検出した場合、どのような状況で学生のテストが終了するのか、疑わしい目の動きや異常なマウスクリックをどのように監視しているのかなど、コードを調査して発見した内容をツイートした。

これらのジョンソン氏のツイートには、このChrome拡張機能のソースコードの一部が公開されているPastebin(ペーストビン)へのリンクが含まれていた。

Proctorioは当時、ジョンソン氏が「Proctorioのソフトウェアコードの抜粋をコピーして自身のTwitterアカウントに投稿した」ことで、同社の権利を侵害したと、危機管理会社のEdelman(エデルマン)を通じて主張。しかし、Twitterは、Proctorioの削除要請が「不完全」であると判断し、ジョンソン氏のツイートを復活させた

「ソフトウェア企業は、自社に対する批判者を弱体化させるために著作権法を乱用することはできません」と、EFFのスタッフ弁護士であるCara Gagliano(カーラ・ガグリアーノ)氏は述べている。「自分の研究を説明したり、批判的なコメントを裏づけるためにコードの一部を使用することは、書評で本を引用することと何ら変わりません」。

訴状では、Proctorioの「根拠のないDMCA削除要請のパターン」が「自分の研究結果を報告することでさらなる嫌がらせを受けるのではないか」という不安を抱かせ、ジョンソン氏のセキュリティ研究活動に萎縮効果を与えたと主張している。

「著作権所有者は、批判者が著作権侵害をしていると虚偽の告発をした場合、特にその目的が脅迫や弱体化であることが明らかな場合には、責任を問われるべきです」と、ガグリアーノ氏は述べている。「私たちは、ジョンソン氏が自身のコメントを裏づけるためにコードの抜粋やスクリーンショットを使用したことに対する、さらなる法的脅迫や削除要請を防ぐため、侵害はないという宣言的判決を裁判所に求めています」。

EFFは、これが批判に対応するためにProctorioが広く用いている手法の1つであると主張している。2020年、ProctorioのCEOであるMike Olsen(マイク・オルセン)氏は、学生のプライベートなチャットログを許可なくRedditに掲載した。この事件の後、オルセン氏は自分のTwitterアカウントを非公開にしている。また、Proctorioはブリティッシュ・コロンビア大学の学習技術専門家であるIan Linkletter(イアン・リンクレター)氏が、同社の試験監督ソフトウェアを批判するツイートを投稿したとして提訴している。

今回の訴訟はProctorioの本社があるアリゾナ州で行われている。Proctorioのマイク・オルセンCEOは、コメントの要請に応じていない。

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タグ:Proctoriomデジタルミレニアム著作権法(DMCA)裁判Twitterプライバシー

画像クレジット:Alex Edelman / AFP / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モバイル関係者が震撼、AppleのATT導入でマーケティングはこう変わる

4月8日、モバイル広告効果測定プラットフォームを提供するAppsFlyerがメディア向けレクチャーを実施した。

AppsFlyer Japan Country Managerの大坪直哉氏

AppsFlyerでJapan Country Managerを務める大坪直哉氏は「現在のモバイル広告は、セキュリティ重視、プライバシー重視の流れにある」と指摘する。

iOS 14のリリースに伴い、ユーザーの個人情報保護を目的としたフレームワークATT(App Tracking Transparency)をApple(アップル)が導入しようとしているのがその例だ。ATTが導入されると、ユーザーは自分のIDFA(広告識別ID)を広告目的でアプリ開発者に共有するかどうかを明示的に問われるようになる。つまり、ユーザーが自身の判断で「IDFAを共有しない」と意思表示する可能性が今より高くなるかもしれないのだ。

また、Google(グーグル)は2022年までにChromeにおけるサードパーティーのクッキーのサポートを終了すると発表している。

大坪氏は、「IDFAが使えなくなり、クッキーも使えなくなると、マーケターの打つ手がなくなるのか。そうではありません。ユーザーとのエンゲージメントと、それを実現するためのマーケターの知識が究極的に重要になる時代が到来するのです。この難関を切り抜けるには、広告主、代理店、広告媒体、ソリューションそしてMMP(モバイルアプリ計測ツール)など、エコシステムすべての構成員の理解と協力が必要です」と語る。

では、こうした「セキュリティ重視、プライバシー重視の流れ」は日本市場に置いてどんな意味があるのか。

AppsFlyer Japan Director of Partner Developmentの渡辺エリナ氏

Japan Director of Partner Developmentの渡辺エリナ氏は「世界的にデジタル広告投資額が年々増加しています。その中でも、モバイル広告が占める割合が順調に成長しており、重要性が増しています。中でも日本は、アプリのダウンロード数の増加に対し、収益の増加が大きい。2019年から2020年の間では、34%もの成長を見せています。さらに、端末ではiPhoneユーザーが65%を占めます。したがって、アップル、グーグルが示すセキュリティ重視、プライバシー重視の流れにキャッチアップしていくことは、必要不可欠です」と解説する。

Japan Senior Partner Development Managerの早川俊太郎氏は、iOS 14はユーザーとマーケター、2つの立場から理解すべきだという。

AppsFlyer Japan Senior Partner Development Managerの早川俊太郎氏

「ユーザーは、アプリ開発者にIDFAへのアクセスやアプリ間での共有を許可するかどうか、またそのタイミングを選ぶことができます。そのため、データの透明性とプライバシーが向上し、プライベートな未来が待っています。一方、マーケターにとっては、ATTにより、大量のオプトアウトが発生し、事実上、IDFAを広告主が以前のようには利用できない状態になります。また、確定的なアトリビューションであるアップルのソリューションは、限定的で複雑であり、LTV、リテンションなどの計測が困難です。
ターゲティングデータの喪失は広告の価値を下げ、広告をベースとしたアプリ経済を圧迫します。リターゲティング広告は永続的な識別子が失われることで大きな影響を受け、これまで同様の精度での施策実施は不可能です。このように、モバイル測定やターゲット広告に大きな課題や制限が生じる複雑な未来が待っています」(早川氏)

こうした状況から、AppsFlyerでは、ユーザーがATTに同意すればIDFAを活用し、そうでなければ、取得するデータポイントを最小限に抑え、ユーザーを追跡するための固有の永続的または恒久的な識別子を作成できないように設計された「確率論的モデリング」を活用する。確率論的モデリングでは、精度90%以上で広告効果を測定することができる。

大坪氏は「IDFAが取得できなくなると、メールやプッシュ通知などのIDFAを使わないコミュニケーションの工夫・活用が重要になってくるでしょう。また、Web-to-Appの活用、個々のユーザーではなくユーザー属性にフォーカスしたマーケティングが重要になってくるかもしれません」と結論した。

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