CVはダイバーシティーとインクルージョンを諦めるのか

今週、Backstage CapitalのArlan Hamiltonに話を聞くために会いに行った。彼女の目覚ましい出世物語は、今ではすっかり有名になった。Backstageのサイトに書かれている人物紹介のページから引用すると、彼女は「ホームレスだったころに、ベンチャーキャピタルを一から立ち上げた」とある。いろいろと面白いことを話してくれたが、まずはここから始めよう。2019年、彼女はダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包含性)については語らなくなるだろうというものだ。

こう聞いて、おやっと思った人は多いはずだ。彼女は過小評価されてきたマイノリティーに的を絞って資金を提供してきたからだ。その理由を、私が要点を理解して言い換えるならばこうなる。ダイバーシティーとインクルージョンは、技術系企業において人的資源となってきたが、大企業にとっては現状を守るための隠れ蓑になっており、改善を目指してはいるわけではない。

これには同意せざるを得ない。企業は、ダイバーシティーとインクルージョン(D&I)イベントや講演を開催したり、D&I副社長を雇ったり、「ダイバーシティー訓練」(これには効果がないばかりか、裏目に出ることも少なくないと多くの証拠が示している)を行ったりしている。彼らはダイバーシティーについて語る。彼らはダイバーシティーをパワポのスライドの中に加える。しかし、実際に彼らは何をしているのか? 私はNassim Talebの有名な宣言を思い出した。「何を考えているかは言わなくていい。ただポートフォリオを見せなさい

ではポートフォリオを見てみよう。Fortuneが報じたPitchBookの調査結果によれば、2017年に女性ばかりのチームがVCを受けた割合は2.2パーセント。これは2013年と変わらず、2014年に比べると明らかに低い。男性ばかりのチームは79パーセントがVC投資を獲得している。企業が「ダイバーシティーとインクルージョン」について、前例のないほどの大量のリップサービスをしていた間のことだ。

投資金額ではなく、投資件数という面で見れば、女性が率いるチームへのVC投資は、わずかながら上昇傾向にある。2007には2.42パーセントだったものが、2017年には4.44パーセントになっている。しかし、このペースで行けば、10パーセントの大台に乗るのは……2045年だ。さあ祝おう! その他の少数派の仲間たちに関するデータを探し出すのは、大変に難しい。それは、彼らへの投資状況が、ある程度の速度をもって改善されている証拠がゼロであることを示しているように見える。

しかし、大企業のダイバーシティーに関する統計データはある。再び、2014年と2017年とを比べてみよう。前回と同じ、前代未聞のリップサービスの時代だ。Googleは「黒人2パーセント、ヒスパニック4パーセント、2つ以上の種族4パーセント」から、「黒人2パーセント、ヒスパニック4パーセント、2つ以上の人種4パーセント」に改善された。これは進歩と言える。Facebookはどうだろう。2014年の技術者の割合は、ヒスパニック3パーセント、2つ以上の人種2パーセント、黒人1パーセント」だったが、2017年には、この数字は、どうも言いにくいのだが、変わっていない。

いろいろな不平がある。それはパイプラインの問題であって、文化的な問題ではないということ(MeTooムーブメントは、パイプラインがその入口から大企業のCEOまでの間がすべて汚染されていると、もっと悲痛に訴えるべきだった)。技術業界では、性別や人種で人を選ぶことは、いわゆる理想郷的能力主義に違反するということ(能力主義は、ほとんど意識することなく、システムとして始まり、そういう人たちを選んできた)。他より秀でたいと考える企業には、敷居を下げる余裕がないこと(中でももっとも下劣な不平として「ダイバーシティーがクソなハードルを上げてる!」というCindy Gallopの言葉がある。技術業界は、他の業界と同じく。平凡な白人で満員なのだ)。

なんとも異常な世界だ。彼らのポートフォリオを見ても、ベンチャーキャピタルは、意識するしないに関わらず、悪意のあるなしに関わらず、冷酷で人を馬鹿にした賭に出ることがある。ときとして、いや頻繁に、(比較的)普通の白人に賭けるのだ。同じ投資を受けられたはずの、より才能があり能力も優れた少数派よりも、白人のほうがシステムとして優位だと思うからだ。

これは、民主主義よりも君主制を選ぶようなものだ。たしかにかつては、それが機能していた。個人としての支配者は、平凡で、理論に依存するが、生まれたときから人を支配することを教えられ、権力の使い方を心得ている。だから彼らは頭角を現しやすく、才能はあるかも知れないが、無知な大衆の意志によってその地位に就く。

おそらくVCも同じだろう。ある程度、たぶん無意識に、白人のほうが彼らが最重要視する文化システムからの恩恵を多く得ていて、社会的な自信(傲慢性)があり、ネットワークが広く、生まれたときから積み重ねてきたさまざまな優位性を持っていると、彼らは考えている。外から来た少数派は、たとえ根性があって、ヤル気があって、頭が切れたとしても、同じ優位性を持っていないため、白人に賭けることになる。

君主制ではそれがうまく作用しなかったとお気づきの人もるだろう。私も、たとえばスタンフォードを卒業した白人男性やハーバードを中退した白人男性などの「パターン認識」で同様の宿命を予測した(アメリカの一流大学の不平等について話を広げるつもりはない。社会的な階層構造を保つための「縁故入学」制度はじつにあからさまだが)。

しばらくの間、そうしたやり方はVCにとって都合がよかった。なぜなら、
a)技術業界全体は、インターネット革命とスマートフォン革命という2つの潮流によって盛り上がっているため、業界の支配者からの強力な支援を受けて、たとえば独占的なシェアを誇る写真共有アプリなどで大成功を収める人間が登場することが見えていたからであり、
b)新しい技術系企業を立ち上げた白人男性たちは、今でもアウトサイダーとして活動しているからだ。

何か新しいことをやろうとすれば、アウトサイダーでいるのがよい。オリジナリティーが発揮できる。立ち直りも早い。ほとんどの人間は群れたがるが、特別な才能のある人間は、なんらかの方法で主流の社会から離れている。信じるか信じないかは別として、かつて、技術系ナードはアウトサイダーだった。少なくとも、アウトサイダーでいることの恩恵を受けていた。

それは、控えめに言っても、もう通じない。今や、主流のビジネススクールを卒業し、体制に順応した人たちが群を作り、自らをギークと称し、技術系スタートアップを立ち上げようとしている。彼らもわかっているが、どこでも同じようなことをしている。ほとんどの人間が同じ形式に載っかっている。リーンスタートアップ、MVP、シードファンディング、アクセラレーターなどなど。皮肉なことに、彼らはみな、リーンスタートアップの時代が終わりかけているときに、これを行っている。私が以前問題提起したことだが、この2年間ばかりVCに資金を提供してきた世界的なハードウエア革命による豊かな鉱脈が、もうほとんど枯渇しているのだ。

すべての人が、同じ方式でもって、同じ消えゆく資金を追い求めているとすれば、本当の報酬は、明らかに別の場所にある。どこか他に、まだ掘られていない補助的な鉱脈がある。しかしそれは、別の方法を使わなければ掘ることができない。別の人生体験からの情報に基づく別の市場、別の価値、別のネットワーク、別の考え方だ。私の友人がこんな賢言を書いていた。「違うことが常により良いとは限らないが、より良いものは常に違うものだ」。これは、今すぐにでも、あの手この手を使ってVCが採り入れるべき教訓だ。

 

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(翻訳:Tetsuo Kanai)

Uberのファウンダー、トラビス・カラニック、ベンチャーファンドを立ち上げを発表

大きな物議を巻き起こしたことで一般メディアでも知られるようになったUberの共同ファウンダー、元CEOのトラビス・カラニックが10100 Fundと呼ばれる投資ファンドをスタートさせることを発表した。

カラニックのTwitterアカウントによれば、新ファンドは大規模な職の創造」に注力するという。

投資分野には不動産、コマース、中国やインドなどの新興市場におけるイノベーションなどが含まれる。

新ファンドはカラニックが取締役会やNPO、スタートアップへの投資など舞台裏で進めてきた努力を総合し、システム化する試みのようだ。

カラニックの投資先は、ファンドの名称から察するに、社員が10人から100人の会社らしい(このサイズのスタートアップは成功したときの成長率がもっとも高い)。

TechCrunchはカラニックにコメントを求めているので、回答があればアップデートする。

Twitterのユーザーの1人はカラニックはファンドの名称を再検討したほうがいいと勧めている。トラック・ドライバーがよく使うCB無線の世界では10-100は「トイレに行く」ことを意味しているのだそうだ。

名前はともあれ、カラニックには潤沢な投資資金があるはずだ。

報道が事実なら、カラニックはUberの持ち分の3分の1近くを売却する。SoftBank GroupのUberの評価額が480億ドル(それでも最後の資金調達ラウンドの際の会社評価額と比較すれば大幅に値下げされている)なので、もしカラニックが所有するUber株の29%を売却しようとしているなら、14億ドルの価値がある。

カラニックは昨年6月にUberのCEOを辞任したが、取締役会には留まっており、Uber株の10%を所有している。

この売却が計画どおり完了すればカラニックは大富豪となるが、2016年10のVanity Fair New Establishment Summitでは、「自分は家のローンを毎月返済しているが、Uber株は1株も売るつもりはない」と断言していた。

しかし2017年を通じてカラニックには数々の苦難が降りかかった。 Uberにはセクハラ知的所有権を盗んだされる訴訟司法省による捜査等々だ。またカラニックは個人的な悲劇にも見舞われた。

しかしカラニックは数々の失敗の後で低評価だったUberに奇跡的成長を遂げさせた。今回の投資ファンドではカラニックは誰もが異論なくプロだと認める分野に戻るのだろう―つまりスタートアップを成長させることだ。

画像; Wang K'aichicn/VCG/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SoftBank Vision Fund、すでに350億ドルを世界のテクノロジー・スタートアップに投資

昨年5月にSoftBankは1000億ドルを目標とするVision Fundになんと930億ドルもの出資を確保して組成を完了した。このニュースはテクノロジー界に大きな衝撃を与えた。しかも日本のテレコムの巨人は第2次の組成の準備を進めている。またSoftBankの発表(PDF)によれば、Vision Fundの総額の3分の1がすでに投資されている。

先月、この投資の大きな部分、77億ドルがライドシェアリングのUberに投じられた(SoftBankも12億ドルを直接投資している)。これに先立って2017年には、45.8億ドルを投資することで中国のDidi(滴滴)と合意している。ただし、この後者の投資はVision Fundの兄弟分でVision Fundの投資先と競合する可能性がある企業への投資を扱う総額60億ドルのDelta fundからとなる。

今朝発表された資料にはVision Fundが275億ドルを投資済みだとあるが、これは2017年12月31を終期とする9ヶ月におけるデータなので最近のUberへの投資は含まれていない。アメリカのライドシェアリングへの投資を加算すると、投資総額は350億ドルとなる。

Uber以外の企業への投資には、ARM、Nvidia、Flipkart、Paytmの親会社One97 Communication、OYO Rooms、Improbableなどが含まれる。最近の投資には犬の散歩アプリ、Wagへの3億ドルドイツの中古車マーケットプレイス、Auto1への5.6億ドルがある。どちらも今年に入ってからの投資であるためSoftBankが発表した資料には含まれていない。

Vision Fundは「 300年間成長し続ける会社」にするというSoftBankの戦略の一部だ。このため各カテゴリーごとに世界市場での勝者を発見し、支援するというコンセプトだ。SoftBankは投資先企業と協調しテレコムとAIに関連するサービスとテクノロジーの発展を目指す。Vision Fundの投資家はApple、Qualcomm、UAE〔アラブ首長国連邦〕のMubadala Investment Company、サウジアラビアのPID上場ファンド、Foxconn、Foxconn傘下のSharpなどだ。

Vision Fundという巨人が登場したことはアメリカにおける後期ステージのベンチャー投資の構図を大きく変えた。Sequoiaなどの有力ベンチャーキャピタルは急ぎ大型ファンドの組成を始め、Vision Fundに対抗しようとしている。

Vision Fundの影響はすでに各方面に感じられている。Wagへの投資の場合、Vision Fundは投資額を3億ドル以上にすべきだと強く主張したため、NEA(New Enterprise Associates)とKleiner Perkinsはラウンドへの参加を断念したという。両社とも当初Wagに強い関心を示していた。結局、Vision Fundは単独で投資を行ったが、他の投資案件でも同様の例が見られるという。

テクノロジー投資の分野では前代未聞の額のファンドだが、もちろん「先んずれば人を制する」ともいう。

Battery Venturesのジェネラル・パートナー、Roger LeeはTechCrunchのインタビューに対して、同社の最新の大型ファンドについて説明する中で、Vision Fundは「投資における優れたパートナーであり、あるカテゴリーのリーダーとなる可能性のある企業にとって(出資者として)重要な候補となる」と述べている。Battery VenturesはWagに当初から投資していた。

Leeはまた「SoftBankが投資しているジャンルには数多くのライバルが活動しており、それぞれ大きな価値を生んでいる。また〔出資者を探す場合も〕SoftBankが唯一のオプションというわけではない。上場を控えた後期ステージのスタートアップへの投資を専門としてきた投資家は多数いる」とも語っている。

SoftBankによれば、Vision Fundはすでに23億ドルの利益を上げているとしている。これは主としてNvidiaの株価上昇によるものだ。1000億ドルのファンド全体が目指すリターンはもちろんはるかに大きいものだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

CPGこそベンチャー投資の未来だ――消費者向けパッケージ商品スタートアップへの投資のポイント

この記事の執筆者はRyan Caldbeck(消費者向けパッケージ商品のスタートアップへの投資マーケットプレイス、CircleUpのCEO) 。TechCrunch投稿記事:消費財業界で起きようとしているM&Aの雪崩Unileverが10億ドルでDollar Shave Clubを買収した理由

6年前、われわれが創立したCircleUpのための資金集めをしていたとき、大勢の投資家が「消費者」という言葉を聞くと目をそらした。

われわれのプラットフォームは小規模なCPG(消費者向けパッケージ商品)の会社にのみ投資すると説明すると、投資家たちは居心地悪そうに身じろぎし、視線をあちこちにさまよわせたものだ。「エナジーバーなんか作っている会社はスケールするわけがない」、「ベビーフードではタカがしれている」といった懐疑的なコメントを何度も聞いた。傑作だったのは、「消費者向け商品を作っている会社の名前なんか一個も思い出せない」だった(あるベンチャーキャピタリストが本当にそう言った)。

今ではさすがに空気が変わっている。テクノロジー関連のニュースをブラウズすればGreylock PartnersがCPGスタートアップを賞賛している。Sequoiaのマイケル・モリッツは化粧品のCharlotte Tilburyの取締役に就任しているし、Lightspeed VenturesはVMG Paratnersと共同で中規模の消費者向け企業に投資している。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト間では、AI、ブロックチェーンと並んでテクノロジーを活用するCPGへの投資が確固としたトレンドになってきた。 CPG市場に流れ込むテクノロジー VCの投資額が急増している理由の一つは、VC間の競争が猛烈に激しいせいでもある。投資先が飽和ぎみのところにCPGには長年高い配当実績があり、中でも中小のメーカーが市場で好調なことに気づき、VCが殺到し始めたのだろう。

消費者向けプロダクトは市場が巨大だ。下のグラフを見てもわかるとおり、テクノロジー市場の3倍の規模がある。

市場の規模が大きいにもかかわらず、従来この分野へのアーリーステージの投資は低調だった。その原因はいくつもあるが、投資市場が非効率だったせいが大きい。 消費者向けブランドには地理的な偏りがあり、ブランドに関する組織的な情報提供システムの欠如している。消費者向け製品のシリコンバレーはないし、Crunchbaseのようなデータベースも今のところ整備されていない。

理論的には最近のVC投資はCPGにもVCにもwin-winの関係をもたらすはずだが、実際のVC投資は方向を間違えており、それどころか悪影響をもたらしている場合もある。投資家は金をを失うだけですむが、起業家は生涯をかけて築いてきた会社を失うことになる。

CPGスタートアップに投資する場合、投資家も起業家も共に益するような結果を求めるなら、留意すべき点がいくつかある。

この市場は「一人勝ち」にはならない

ベンチャーキャピタリストのCPG企業への投資における根本的な誤りは ある分野を1社が独占できると思いこんでいるところにある。これはテクノロジー市場の場合から類推しているわけだ。たしかにテクノロジーの場合、UberやAirbnbのように「一人勝ち」になることが多い。1社か2社がその市場のシェアの70%を占めることはよくある。しかしこれがCPG市場にもそのまま当てはまると思うなら、その推論には根本的な欠陥がある。

この5年から10年、ユニークで明確なターゲットを持ったプロダクトに消費者の好みは着実にシフトしてきた。現在はビールであれハンドローションであれ、消費者は嗜好を明確化するようになった。そのためブランドは特定のニッチ向けに細分化される傾向にある。したがってプロダクトの規模は以前より小さくなる。一方、巨大上場企業はニッチで成功を収めたスタートアップを急いで買収しようとする。PWCのレポートによれば、2017年におけるテクノロジー市場におけるM&Aは1700億ドルだったのに対し、消費者向けプロダクト市場とリテール市場におけるM&Aは$3000億ドルに上った。

マーケットのセグメント化が進み、小規模ないし中規模のブランドが多数生まれている中で、あるブランドのエナジーバーやベビーフードが市場の70%を獲得できるなどという幻想は捨てる必要がある。

企業価値の評価が高すぎたり、投資金額が大きすぎるのは有害

繰り返すが、CPGスタートアップに投資する際、「将来この市場を独占できる」と前提するのは非現実的なだけでなく、非生産的でもある。起業家はこの高すぎる評価額に追いつこうとして不自然かつ有害な行動に走りがちだ。おそらく次回の資金調達では評価額の引き下げを余儀なくされるだろうし、もっと悪いことに、素性怪しげな投資家でも構わず投資を募ろうとするかもしれない。起業家は会社の売却に必死になるが、はかばかしい結果は得られない…。現実のプロダクトが用意できていないスタートアップがインフレ評価額に押されて非現実的な成長を求めると、さらに苦境に陥るという悪循環に陥る。

UnileverがトレンディーなHonest Companyではなく、似たようなプロダクトを提供するSeventh Generationを買収した理由は関係者なら誰でも知っている。Honest Companyの会社評価額が高すぎたのが主な理由だ。ハリウッド・スターのジェシカ・アルバが創立したHonest Companyに投資したVCは会社の基本的な実績を無視して評価額をつけた。消費者向けパッケージ・プロダクトの会社はたとえ3000万ドルでも調達すべきではない。3億ドルなどもってのほかだ。その結果、Honest Companyは大企業による買収のチャンスを逃し、コスト削減を始めとするリストラを迫られるこになった。同社の将来に関して社員の間で不安が高まっているという。

一言でいって、CPG企業は成長のために巨額の資金を必要としない。そもそも、小資本で運営できるという点がCPGの美点だった。 消費者向けグッズのスタートアップが年間売上1000万ドルを目指すには400万ドルから800万ドル程度の資金で十分だ。これで十分利益を上げて会社を維持できる。テクノロジー企業が年間売上1000万ドルを達成するためには通常4000万ドルから5000万ドルの資金を必要とする。しかもそれだけの売上があっても利益を出せないことが始終だ。SkinnyPopRXBarSir Kensington’sNative Deodorantなどは着実に利益を出しているCGP企業の例だ。

優れたブランドを築くのは容易でない――しゃれたサイトを作ってD2Cを始めるよりはるかに複雑

昨年20人くらいののベンチャーキャピタリストが連絡してきて、「コンシューマー市場に投資したい。しかしテクノロジーを利用している企業でないとまずい。出資者にこのファンドはテクノロジー企業に投資する言ってあるのでね」という意味のことを言った。その結果が、VCはD2C〔Direct to Consumer = インターネット経由で消費者に直接販売する〕企業ばかりに高すぎる評価額で多すぎる金額を投資するようになった。

D2Cというのは一つの販売チャンネルではある。これはコンビニ( セブン・イレブンなどだ)や会員制販売(Costco)、スーパーマーケット((Walmart)、生鮮食品(Safeway)などがそれぞれ販売チャンネルであるのと同じことだ。当然D2Cにもメリット、デメリットがある。万能薬ではない。この分野に経験の浅いVCはよく「D2Cは流通コストが低い」というようなことを言う。しかし現実にはD2Cスタートアップは法外な会社評価額をベースにオフラインで同規模の営業をする会社と比較して10倍から30倍もの資金を集めている。D2C起業家にこのチャンネルはオフラインと比べて安上がりかどうか尋ねてみるとよい。この3年から5年、CAC(顧客獲得コスト)が急速に値上がりしたため、もはや安上がりではないという答えが返ってくるだろう。D2Cがそれほど安上がりなチャンネルなら、Bonobosが1.27億ドルDollar Shave Clubが1.64億ドルCaspeが2.4億ドルもの資金を集めねばならなかったのはなぜだろうか?

D2Cは一つのチャンネルだ。しかし消費者向けパッケージ製品(CPG)の販売で成功するために必要な基本が変わるわけではない。そのジャンルの利益率、チームの優秀さといった問題を別にすれば、ブランド価値、流通組織、プロダクトの差別化といった基本に戻ることになる。この中で差別化というのは必要な要素ではあるが、成功を保証するものではない。プロダクトはユニークであるだけでなく、それが消費者に利益をもたらすものでなければいけない。健康食品でいえば、Kind BarはClif Barより食べ物らしく見える。 エナジードリンクで長時間効果があるのは5 Hour Energy だ。低カロリー・アイスクリームなら「1箱食べても太らない」と主張するHalo Topがある。おかしなキャッチフレーズだと思うかもしれないが、どれも10億ドル企業であり、どれも同規模のテクノロジー・スタートアップにくらべて調達した資金額は非常に少ない。つまりシード投資家はその後のラウンドでの株式持ち分の希釈化を受けにくい。

これが将来の進路だと期待

消費者向けパッケージ製品は非常に大きな可能性を持った市場だ。巨大であり、無数のジャンルがある。投資家にとって有望なスタートアップを発見し、助ける可能性の宝庫だ。ベンチャー投資家がこの市場で成功したいなら、まず時間をかけて消費者市場の基本を理解しようと努める必要がある。そうした投資家が増えれば、優秀な起業家が適切な額とタイミングで資金を得ることができるようになるだろう。私は消費者市場でスタートアップの成功が相次ぐことを強く期待している。

画像:RAL Development Services/Davis Brody Bond

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Benchmark、Uberファウンダー、トラビス・カラニックへの訴訟を取り下げる

やっと終わった。BenchmarkはUberの元CEO、トラビス・カラニックに対する訴訟を取り下げた。これでベンチャーキャピタルとスタートアップのファウンダー間で起きた史上最大級の紛争は終結した。

SoftBankのUberへの投資が実現すれば訴訟は取り下げられることになっていた。その投資が完了し、Benchmark、カラニック共に相当数のUber株を売却することが可能になった。

BenchmarkとUberへの初期投資家の一部は、昨年カラニックが不祥事の発覚により辞任を余儀なくされた直後に訴訟を起こし、「取締役会がカラニックに2名の取締役の任命権を与えたのはカラニックが重要な事実について取締役会をミスリードしたためだ」として取り消しを求めた。

Benchmarkも取締役を出しており、当初はBill Gurleyが就いていたが、その後元FacebookのMatt Cohlerと交代している。この紛争中にカラニックは権限を行使してUrsula BurnsとJohn Thainの2名を取締役に任命した。

カラニックの広報担当はコメントを避けた。

ベンチャーキャピタルとファウンダーの関係はスタートアップのエコシステムでくわめて重要なため、この訴訟についてはシリコンバレー内で強い関心を読んだ。一部はBenchmarkの行動は行き過ぎだとしたが、企業文化に問題があったことについてカラニックには責任があるので当然だとするこ声もあった。

来年には上場が控えるとされるUberには新しいCEO、ダラ・コスロウシャヒの下でなすべき作業が多数あるだろう。

画像: Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

SoftBankのUberへの巨額投資、間もなく完了――株式公開買付の成功が報じられる

ここしばらく大きな話題になっていたSoftBankのUberへの投資がほぼ完了した。

Wall Street Journalによれば、 SoftBankがリードする投資グループがUber株式の15%前後を所有する手続きが、早ければ太平洋時間の今日(米国時間1/28)にも完了するという。

発行済株式を株主から買い上げる取引については、総額は480億ドルとなるもようだ。Uberが前回ベンチャーキャピタルから資金を調達した際の会社評価額をベースにした場合、株式の額は690億ドルだったはずで、SoftBankの取得価格は大幅な割引となった。これと別にSoftBankらはUberに直接10億ドルを投資するが、こちらは690億ドルの会社評価額をベースとしている。

Uber社員やBenchmark Capital、Menlo Venturesなど、初期から投資を行っていたベンチャーキャピタルはSoftBankに所有する株式を売却するものとみられる。これによって現在まで「ペーパーマネー」に過ぎなかったものがキャッシュに置き換わるわけだ。Uberは現在まで株主に株式の売却を原則として禁じていた。

UberとSoftBankはこの件に関するコメントを避けた。

SoftBankの投資が完了すればBenchmarkはUberの元CEO、トラビス・カラニックへの訴えを取り下げる。この訴訟はカラニックが取締役会の決議を経ずに取締役を任命する権限があるかどうかを巡って提起されていた。

カラニックはUberに対して社会的批判が高まったのをうけて6月にCEOから退いた。Uberは性的差別やハラスメントを容認する企業文化があったとして非難されてきた。また、Googleの親会社Alphabetグループが所有するWaymoから自動運転テクノロジーを盗んだとして巨額の特許訴訟を起こされている。

今回の株式公開買付ではSoftBankが唯一のメンバーというわけではなく、このグループにはDragoneer Investment Groupが含まれている。先月TechCrunchが報じたとおり、Sequoia Capital、Tencent、TPGなど他の投資家もUber株式の買い付けに興味を示していた。

画像:: ANTHONY WALLACE/Getty Images

〔日本版〕Reitersが報じたところによれば、Wall Street JournalはUberの株主は同社の20%程度を所有しているとしている。これが事実ならSoftBankグループは公開買付の成功でUberの20%を所有することになる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Sequoia、50億ドルの新ファンド組成を準備

Sequoia Capitalは50億円の投資ファンドの組成を計画している。

Sequoiaといえば、長年にわたって驚異的な利益を上げてきたことでシリコンバレーで伝説的なベンチャーキャピタルだが、今回準備しているのは世界を対象にしたアーリーステージの投資ファンドだ。

RecodeのKara Swisherが このニュースを最初に報じた。Swisherがつかんだ情報によれば、Sequoiaは50億ドルから60億ドルを目標としているという。現在TechCrunchが聞いたところではSequoiaの目標金額は50億ドルのようだ。資金集めは2018年の第一四半期を通じて実施される。

Sequoiaの前回のファンドは2015年組成のグロースファンドで、規模は20億ドルだった。このファンドが投資したレイトステージのスタートアップにはAirbnb、Stripe、23andMeなどが含まれる。Sequoiaはアーリーステージの投資にも熱心だ。

最近、われわれはSequoiaがUberに関心を抱いており、株式の公開買付に参加していることを報じた。この株式買い付けは既存株主を対象としたもので価格は時価をかなり下回る。日本の投資グループ、SoftBank Groupが公開買付をリードしている。

50億ドルというのは巨額だが、それも1000億ドルというSoftBankのVision Fundに比べると色あせてみえるのはやむを得ない。結局、レイトステージのスタートアップには巨額の資金を調達するチャンネルがいくつもあるということだ。10億ドルを超えるスタートアップ、いわゆるユニコーン企業につぎ込まれる資金は巨大で、このところのベンチャー投資は市場最高の水準となっている

Sequoiaは長年にわたって投資に成功しており、たとえば最近では、ポートフォリオ企業のWhatsAppをFacebookが190億ドルで買収している。SequoiaはAppleやGoogleの有力株主でもある。

画像: Blend Images/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

著名VC、スティーブ・ジャーベットソンがDFJのパートナーを辞任――セクハラ疑惑に関連か

TeslaとSpaceXの取締役でもある著名ベンチャーキャピタリスト、スティーブ・ジャーベットソンがこれまでパートナーを務めていたDraper Fisher Jurvetson(DFJ)を離れることとなったとRecodeが報じている

ジャーベットソンは名門ベンチャーキャピタル、DFJの創立パートナーだが、この8月にセクハラ疑惑で内部調査が開始されていた。Recodeによれば、DFJは今日(米国時間11/13)、同社のリミテッド・パートナー向けのメールでジャーベットソンの辞任を伝えた。

このメールはジャーベットソンの辞任の理由に触れていないが、Recodeは情報源の話として、調査の結果、ジャーベットソンには女性起業家に対して何度か「不適切な振る舞い」があったことを発見したとしている。

一方ジャーベットソンはRecodeに対し、「私に対する中傷に対しては法的手段に訴えるつもりだ」と述べている。

私はDFJとジャーベットソンに問い合わせて中だ。回答があればフォローする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スタートアップ・ファンドのAtomic、1億ドル調達へ――ティール、アンドリーセンらが前回出資

サンフランシスコのスタートアップ・スタジオ、Atomicはまだそれほど広く知られたファンドではない。しかしピーター・ティールとマーク・アンドリーセンはこのブランドについてよく知っているはずだ。4年前にAtomicがスタートしたとき、このビリオネア両名とベンチャーキャピタルのFelicis Venturesを含む投資家から2000万ドルの資金を調達している。

SEC(証券取引委員会)に提出された書類によれば、Atomicは今回はその5倍、1億ドルの資金を集めようとしている。

今日(米国時間10/12)、われわれ同社にインタビューを申し込んだが断られた。しかし諸般の情勢からみてあらたなラウンドは近日中に完了すると思われる。

まずAtomicがどういう会社かという点だが、LinkedInのエントリーから判断すると社員は15人で、独自の視点から有望なスタートアップのアイディアとアイディアを企業として展開できる人材を選ぶ。それが成功すれば伝統的なベンチャーキャピタルの力を借りてさらに大型の投資を組織し、永続性ある企業に成長させる。

Atomicはサンフランシスコの風光明媚なプレシディオ地区でPayPalマフィアのドン、ピーター・ティールのFounder Fundのすぐ近所にオフィスを構えており、マーケティング支社がアリゾナ州フェニックスに、エンジニアリングのための小さなオフィスがカナダのトロント近郊のウォータールーにある。同社のポートフォリオには10社が属しており、サイトには6社がリストアップされている。Crunchbaseの情報によれば、そのうちの4社は大型の投資ラウンドを実施している。

Atomicの各社の資金調達状況はこうだ。Wi-Fiを利用して顧客データを所得するマーケティングのZenreachは総額8000万ドルをFounders Fund、Formation 8、その他の投資家から調達。コンシューマー向け写真保存、共有サービスのEverは先月 Icon VenturesがリードするシリーズBで1600万ドルを調達。これにはFelicis Ventures、Khosla Venturesも加わっている(これまでの資金調達総額は2900万ドル)。音声認識でセールスを行うTalkIQは同じく先月、Scale Venture PartnersがリードするシリーズAで1400万ドルを調達している。Atomic自身はポートフォリオ企業に対し20万ドルから200万ドルを出資している。

ポートフォリオ企業の社員はトータルで450人だ。 今年に入って、Atomicの共同ファウンダー、Jack AbrahamはForbesのインタビューに答えて、Atomicのスタートアップ投資は年間ベースのIRR〔内部収益率〕で65%だ(つまり投資によって取得されたAtomicの持ち分の価値がそれだけ上昇した)と述べている。

ポートフォリオ企業は上記のように最近さらに大型の資金調達を行っているので会社評価額もアップしているはず(ただし非公開企業の会社評価額はあくまで理論上のもので、企業買収、上場などのエグジットによって現金化されるまで投資家の真の利益は確定しない)。【略】

Atomicには現在4人のパートナーがいる。 Jack AbrahamはMilo.comのファウンダーで、同社をeBayに売却している。Andrew DudumはEverアプリの共同開発者で TokBoxのプロダクト責任者を務めたことがある。 Chester Ngはアプリ開発会社のSweetLabsの共同ファウンダーでTrinity Venturesに短期間、客員起業家として在籍した。Andrew Salamonはヘッジファンド、Bridgewater Associatesの元社員で、現在はAtomicのパートナーであると同時にRestedの共同ファウンダー、CEOでもある。同社は睡眠トラッキングのスタートアップで、Atomicのポートフォリオ企業の一つだ。RestedはCherubic
Venturesを含む投資家から総額で740万ドルを調達している。

写真:Atomic

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

悟りもアプリで開ける時代?ーー拡大するマインドフルネスのスタートアップ企業

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerはCrunchbaseの記者。

 

インターネットに接続している生活が良いとは限らない。スマホを片手に時間を浪費し、人と接する機会を失い、即座に得られる満足感を求める悪しき習慣ができつつある。そう感じることがあまりにも多い。

この問題を解決できるアプリがあればいいのに。できれば1日中使えて、人間とのやりとりを必要としないのなら尚良い。数分でダウンロードできるのなら言うことなしだ。

ようこそ、マインドフルネスとウエルネスの世界に。ここ1年ほどで投資家が、マインドフルネスや幸福、理想的な精神状態の促進を目的としたアプリやツールの開発を行うスタートアップ企業を支援した数は20以上になる。Crunchbaseのデータによると、これらの企業は今日までで1億5000万ドル以上を調達。最も高額なラウンドのいくつかはここ数カ月で行われ、その資金のほとんどはカリフォルニア州に本拠を置くスタートアップ企業に投じられる。

瞑想マネー

深呼吸をしたら、その金がどこに注ぎ込まれているのかを説明しよう。

今のところ、資金調達において最高額なのはHeadspace。瞑想の技術を学ぶ人気アプリを開発した企業だ。サンタモニカに本拠を置く同社は、今年6月に3700万ドルの資金を調達し、現在までの調達額は7500万ドルとなった。ビジネスモデルは至って単純で、ユーザーは無料レッスンから使用開始して、継続したい場合はサブスクリプション費用を支払う。

Headspaceは自社のアプリを、1800万ダウンロード超えの世界で最も人気のある瞑想アプリと称している。だが、その会社のミッションはアプリのユーザー数より遥かに大きい。

「瞑想は序章に過ぎない」。Headspaceの最高執行責任者であるRoss Hoffmanはそう述べる。創業7年目のHeadspaceはこれから「生まれてから死ぬまでの健康と幸福に関する包括的なガイド」を作成したいと考えている。

Headspaceは事業拡大にも励み、幸せの輪を広げるためにも尽力している。人材募集のページには、ニット生地の布張りソファがある開放的なオフィスと、サラダとご飯を口にする幸せそうなスタッフが掲載されている。Headspaceの求職者には、世界の健康と幸福を向上するという企業理念に対し、応募する役職を通してどのように貢献できるかが問われる。

潤沢な資金を調達した健康促進に取り組むスタートアップ企業はまだ他にもある。「すべての感情的なニーズに対処するべく、ユーザーの意欲を引き出すようデザインされた」デジタルツールとプログラムを開発するHappify Healthは2500万ドルを調達。オンラインでヨガ、瞑想、フィットネスのレッスンを提供するGrokker2200万ドルを獲得している。

シードファンドや初期段階のファンドを調達している興味深い企業は他にも多くある。それにはHeadspaceの競合Calmや、モチベーションが高まるテキストメッセージを届けるShine、多忙な人の燃え尽き症候群を防ぐThrive Globalなどがある。

こうした動きは何を意味するのだろう?

冒頭の不機嫌さはさておき、よりバランスの取れた生活を送るために設計されたアプリは、インターネットで過剰に繋がった世界の隙間市場を埋めているようだ。また、過度なデジタルの刺激を電子機器で治すのは皮肉といえど、そこには論理性もある。

「テクノロジーは、この惑星にあるすべてのものに対する意識を広げてくれるかけ橋となった…しかし、テクノロジーは同時に我々をマルチタスカーにし、数千人の友達がいるのにもかかわらず、孤独にした」。社会的意識の高いマイクロVC、Mindful Investorsの共同設立者Stuart Rudickはそう語る。MIndfulのポートフォリオには、変化する気象音を使用して、ユーザーの瞑想をガイドする脳波計ヘッドバンドの開発企業Museも名を連ねる。

Rudickは、マインドフルネスと瞑想のツールに対する投資家の興味をより広域な健康的生活への関心と見ている。特に瞑想は十数年まえのヨガと似た成長をたどっており、より多くの人口に普及しつつある。

投資家の視点から見ると、ヨガやフィットネス、健康的な生活などへの投資は良いリターンと高評価の企業を生み出した。元々ベンチャー支援を受けて10年前に上場したヨガのアパレルメーカーLululemonは、現在80億ドル相当の評価額を誇る。ユニコーン企業を挙げると、屋内サイクリングブームの火付け役であるPelotonは、前回のラウンドで12億5000万ドルの評価額をつけた。(こちらにその他数社をまとめた)。

同様に失望もあった。最近の事例で言えば、未公開株式ファンドの支援を受けたヨガスタジオチェーンのYogaWorks。同社の株価は上場時すでに予想額を下回り、8月のIPOから3分の1まで落ち込んだ。

スターの力

 

だが、マインドフルネス界の投資家は単に金銭的リターンを求めている訳ではない。Rudickのようなダブルボトムライン・インベスターと呼ばれる投資家は、潜在的利益に加えて社会的利益をもたらす企業を探している。

瞑想やマインドフルネスはセレブからの人気も集めており、著名な支援者からスタートアップ企業が資金を確保するのに役立っているようだ。Headspaceの投資家にはRyan Seacrestジェシカ・アルバ、そしてJared Letoなどがいる。Museは支援者にアシュトン・カッチャーを持つ。一方Thriveは、有名なメディア起業家Arianna Huffingtonによって設立された。

とは言え、セレブからのサポートが活気のない企業をユニコーン企業に変えることはないだろう。しかし、セレブが勢ぞろいコンテンツを端末で眺め、我々がどれだけの時間を浪費しているかを考慮すれば、数分でも時間とって、気持ちをスッキリしようと提案するセレブに耳を傾ける方がおそらく利口だろう。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook

資金調達に良い季節はあるのか?――「夏は投資活動が停滞する」説を検証

【編集部注】執筆者のJason RowleyはベンチャーキャピタリストでCrunchbase Newsの記者。

いよいよ夏本番(英語で言うところのドッグ・デイズ)だ。夏と聞くと、ビーチや裏庭でのバーベキューを思い浮かべる人もたくさんいるだろうし、私たちのようにエアコンが効いた部屋で外の熱から逃げようとする人もいるだろう。

しかしスタートアップやベンチャーキャピタルの世界では、夏は少し違う意味合いを持つ。

この記事では、「夏に投資活動が停滞する」というについて検証したい。昨年も同様の記事を公開したが、今回は少しひねりを加え、ベンチャーキャピタリスト/ベンチャーキャピタル(VC)の投資活動の季節性だけでなく、VCにとっての投資家(リミテッド・パートナー=LPと呼ばれる人たち)の活動についても調査した。つまり、VCがいつ資金を調達し、いつその資金を企業に投資するのか、というのが今回のトピックだ。

資金調達を考えているファウンダーやVCのためにも、調査方法や結論に入る前に、まずは調査結果を以下に紹介する。

ファウンダーはいつでも資金調達できる

アメリカ国内のファウンダーは資金調達のタイミングを気にしなくてもよいので安心してほしい。少なくともここ数年の動向を考えると、夏に投資活動が停滞するとは言えないことがわかった。1年を通して見ると、月によって多少の上下はあるものの、資金調達ラウンドを開催する上で最適な月というのは存在しない(※脚注)。

つまり、常に資金を調達するにはいいタイミングということだ。

下のグラフは、過去6年間のアメリカ企業に対するVC投資を月別にプロットしたものだ。Y軸は全体に占める各月の割合を示しており、もしも各月の投資件数が同じであれば、全てのバーが8.33%(100%÷12か月)になる。

年のはじめと終わりには多少凹凸があるものの、全体としては6月辺りを頂点とする緩やかなアーチを描いている。この傾向は昨年の調査結果とも合致する。

しかし、一見綺麗にまとまっているように見えるこのグラフの裏で、実際のデータはかなりバラけていた。下のグラフには、平均をとる前の各年のデータを示している。

VCのファンドは年始に集まる傾向

スタートアップは1年を通して安定的に資金調達できることがわかったが、ベンチャーキャピタルの状況は異なる。VCがファンドのジェネラル・パートナー(=GP)として資金調達を行うタイミングには偏りが見られた。

彼らは『不思議の国のアリス』で言うところの「はじめから始めろ」という考えに従うかのごとく、第1四半期にファンドを設立する場合が多い。

下のグラフは、11年間におよぶアメリカのVCの資金調達活動をまとめたものだ。

グラフが示す通り、第1四半期にかなりの割合のファンドが設立されている。しかし、GPがLPから資金を調達するタイミングには季節性が見られる一方で、第2四半期以降に組成されるファンドの数もそれなりにあるのがわかる。

Crunchbaseの日付の扱い方に一部問題(後述の調査方法参照)があったため、一定数の企業は分析対象から外しているが、この調整はVCの資金調達について調べる上でかなり効果があった。というのも、VCは新しいファンドの情報を公にしないことが多く、さらに当局へ提出する資料も比較的簡単ものであることから、何月何日にファンドが設立されたという情報はなかなか手に入れるのが難しいのだ。多くの場合、設立年のみがわかっており、その際Crunchbaseではその年の1月1日が設立日として登録されてしまう(さらにクローズ日が別の日であっても、ファンドの申請書類上は設立日を1月1日とするVCがたくさん存在するという可能性もある)。

いずれにしろ、1月1日を設立日とする371ファンドと、各月の初日に設立されたとされる数百ファンドは対象から外されている。この調整は、VCの資金調達タイミングの分布へ統計的に有意な影響を及ぼすものではない。

季節性が存在する(あるいはしない)理由

上記の通り、VCの投資活動が夏に落ち着くという傾向は見受けられず、よく言われる”夏の停滞期”というのは存在しないことがわかった。確かに7月は若干投資件数が落ち込んでいるものの、全体を見ると8月以降も投資件数が落ち込んでいるわけではなく、7月の減少具合も他の月同士を比べたときの変化とそこまで大差ない。

しいていうならば、VCも一般的なアメリカ国民と同じように、家族の顔を見に帰省したり、サンクスギビングの残り物を消費したりするのに忙しいため、11月はスタートアップの資金調達件数が減る傾向にある。

しかし繰り返しになるが、その減少度合いも平均値(約8.33%)に比べてそこまで大きいとは言えず、投資件数は1年を通して比較的安定している。恐らくその理由は、少数の魅力的な案件をめぐる競争の激しさゆえに、VCは1年中活発的に投資先候補を探しており、季節性が出にくくなっているためだろう。

その一方で、VCの資金調達活動に見られる季節性の背景はよくわからない。多くのLPにとって、VCファンドはひとつのアセットクラスに過ぎず、ある投資家のポートフォリオに占めるベンチャー投資の割合は低いのが普通だ。政府系機関(大半が年金機構)や機関投資家(大学など)がLPの大多数を占めていることを考えると、投資時期などが規制によって定められているため、年初に投資活動が集中している可能性はある。しかしこれは憶測に過ぎないため、真相を究明するためにはもっと詳細な調査が必要だ。

最後に念のためもう一度言っておくと、少なくともアメリカを拠点とするスタートアップのファウンダーやVCは、1年のうちどのタイミングで資金調達を行うか気にする必要はない。ビジネス一般に関して言えば、タイミングはとても重要な要素であり、それは資金調達に関しても同じだ。ただ、ファウンダー(VCもある程度)は、誰かが勧める特定の日や迷信を信じなくてもよい。それよりもよっぼど大きな影響を及ぼす要素がある。

調査方法
全てのグラフは、Crunchbase上のアメリカに拠点を置く企業を対象とした、2011〜2016年の4万3600件におよぶVC投資のデータから構成されている。分野や企業の規模・ステージ、拠点による分類は行っていない。上述の通り、Crunchbaseのデータの扱い方を考慮し、発生日が各月の初日となっている案件は全て取り除いた。これにより、日にちが不明確なデータは対象から外されている。

※日付はCrunbaseの”Announced On”というデータを参照しているため、(投資ラウンドのクローズ日と発表日が異なることがあるように)実際の発生日に比べてデータ上の日付は後ろにズレている可能性がある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Y Combinatorが10億ドルのファンドを調達している

Axiosの今朝の記事(米国時間7/21)によると、シリコンバレーのスタートアップアクセラレーターY Combinatorが最大10億ドル規模のVCファンドを調達している。同社は2年足らず前にも、最初の大規模ファンドとして、Y Combinator Continuityファンドと名付けたグロウスファンド(成長段階向けファンド)7億ドルを調達し、その担当者としてAli Rowghaniを迎えた

RowghaniはそれまでTwitterのCOOで、さらにその前はPixarのCFOだった。

今YCに確認を求めているところだが、最近の同社の投資のペースや、一般的にベンチャー投資家のファンド形成サイクルが短期化している傾向から見ると、同社の動きは意外ではない。

Axiosが着目するのは: YCはもはや、成長段階の投資を特別扱いして別立てにすることを、やめるつもりだ。今回の新たなファンドは、サイズや段階を問わずあらゆるスタートアップへの投資に充てられる、という。また、YCが後期段階の企業に投資するときは、対象をもはや、前のようにYC出身企業に限定しない。

Axiosの言う第三の変化は: YCの投資委員会の規模を、これまでの数年間に比べてやや小さくする。YCの社長Sam Altman, Rowghani, そしてContinuity FundのパートナーAnu Hariharan, そしてそのほかのパートナー代表、という4名構成になるようだ。それは、意思決定過程を迅速化するため、と言われている。

YCの有限投資家、すなわち機関投資家や資本をスタートアップに投じたいと考えている個人投資家には、Stanford University(スタンフォード大学), Willett Advisors, TrueBridge Capital Partnersなどが含まれる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Toyotaが別会社としてVCを立ち上げ、AIスタートアップの育成をねらう

今やToyotaは、AIのためのVCファンドを立ち上げた最新のFortune 500社だ。初期のファンドの総額は1億ドルで、VC稼業はToyota Research Instituteの子会社という形になる。この自動車メーカーは自らの戦略的位置づけを、企業戦略としての戦略的投資を行うファンドではなく純粋にROI指向としており、つまりふつうのVCとして営利を追うよ、という意味だ。

ファンドのマネージングディレクターはJim Adler、彼はToyota ResearchのVPだったが、プロダクトを担当した経歴がある。AdlerをトップとするToyota AI Venturesは、すでに3つの投資をしている:

Nauto — 自動運転技術

SLAMcore — ヴィジュアルトラッキングとマッピングのアルゴリズム

Intuition Robotics — 高齢者のお相手をするコンパニオンロボット

彼らが主張するVCとしての優位性は、経営に関する実戦的なアドバイスもできる、という点。そしてもちろん、Toyota Research InstituteがAIに関する本格的なアシストをするから、スタートアップのコア技術を磨ける。

ぼくがこれまで会った業界上位のファウンダーたちの多くは、資金調達に何も問題はないから、コーポレートベンチャーはなるべく避けたい、と言う。コーポレートベンチャーは、戦略的投資家ではなくてROI追求型だと約束しても、なんとなく眉唾感がある。とりわけ、流動的なシード段階では、小さなIPや戦略的リスクをめぐってすら、コーポレートの関与には不安がある。

Adlerはしかし反論する: “この種の議論に関してはスタートアップに主導権を持たせる。これらの投資からIPを取り出すためにVCをやるのではない”。

Toyotaは、上記不安感不信感の源泉となる利益相反を避けるために、ファンドを自己のバランスシートに載せずに、独立の企業にする。独立のVC企業として、主にシード段階とシリーズAをねらう気だ。

大企業のベンチャー部門を効果的に経営するのは難しいし、しかもAIスタートアップが対象となると、さらに難しい。資本が満ち足りたAIスタートアップのエコシステムが必要とするのは、データであり、本格的な企業顧客であり、そしてプロダクトに関する経験と専門知識を持つアドバイザーだ。企業のベンチャー部門、という形のVCは全世界で4兆あると言われるが、誰もそのことを真剣に考えない。成功を夢見るToyotaは、今から自分がどんな世界に飛び込んでいくのか、よく知っているはずだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ベテラン女性VCから女性ファウンダーへのアドバイス

5月にニューヨークで行われたTechCrunchのイベントDisruptには、Harvard Business Reviewのリサーチャーが観客として参加し、イベントの様子をノートにとっていた。その際に気づいた事項と、VCとファウンダーが参加したQ&Aセッションの書き起こし内容の解析結果から、彼らは興味深くも気がかりな結論を導き出した。

イベントに参加した投資家(40%が女性)は、男性のファウンダーには成功の可能性について尋ねることが多かったのに対し、女性のファウンダーには失敗の可能性について尋ねることが多かったということが彼らの調査からわかったのだ。

ベテランVCのAileen Leeにとって、この結果は驚くほどのことではなかったようだ。彼女はKleinerやPerkins、Caufield & Byersで合計13年近い経験を積んでから、2012年にCowboy VenturesというシードVCを立ち上げた。これまでに女性のファウンダー(TextioBrit & Co.Accompany)だけでなく男性のファウンダー(AugustDollar Shave ClubPhilz Coffee)にも投資してきた彼女は、投資先企業へのアドバイスや、追加資金の調達に関する議論を男性VCに囲まれながら何度も行ってきた。

先週サンフランシスコで行われた、第四回目となるY CombinatorのFemale Founders Conferenceで、LeeはHBRの研究や彼女が毎日目にしているバイアスについて語った。さらに彼女は資金調達を考えている女性のファウンダーに向けて、以下のとても具体的なアドバイスを送った。

1)良い語り手であれ。そして、自分は話がうまくないと思っていても心配するな。「もしも現時点で話すのが下手でも、良い語り手になることはできる。必要なのはフィードバックと練習のみ」

2)どのプレゼンにも欠かせない、基本的だが重要な要素がある。以下を必ず盛り込むこと。

a)自分の会社のミッションとビジョン

b)狙っている市場の規模

c)解決しようとしている問題

d)チームメンバーの情報とその人たちを選んだ理由

e)プロダクトもしくはそのワイヤーフレーム

f)トラクションやユーザーからのフィードバック

g)ビジネスモデルの概要

h)調達資金の使途

3)これまでの自分の経歴や、なぜ自分が今そのビジネスを始める上で最適な人間なのかという情報を忘れずに入れておく。

4)自信を持ちつつも、背伸びはしない。「ちょっと横柄な態度を見せたり、何かを誇張したりすると、(男性投資家は)あなたのことを大げさな人だと考え攻撃的になる」

5)遠慮し”すぎない”。使い古された言葉に鳥肌が立つかもしれないが、この点について女性は微妙なバランスを維持しなければならない。「男性は(遠慮がちでも)『あぁ、彼は内気なんだな』で済む」が、残念ながら女性の場合、後々大きな問題につながる可能性がある。

6)数字をしっかりと把握する。いら立たしいことだが、女性が力を認めてもらうためには、男性の2倍働かなければいけない。「もしも誰かが『あなたの会社のCAGR(年平均成長率)は? LTV(顧客生涯価値)は? マージンは? 来年の売上収益額は?』と聞いてきたら、すぐに答えられなければいけない。これも練習あるのみ」

7)フォローアップをしっかり行う。「誰かが(プレゼン中に)質問したらノートをとって、翌日には『以下が昨日話し合った内容で、この点について追加でご連絡します』という内容のフォローアップメールを送り、きちんと自分のビジネスを管理できているということ、そして誠実さをアピールする」

8)コネクション作りに力を入れる。特に女性のファウンダーや投資家とのコネクションは重要。

参加者のほとんどが女性だったこのイベントで、Leeはどうすれば女性のファウンダーが、日常的に発生するマイクロアグレッションを乗り越えて、テック業界で前進していけるかというテーマを中心に話を組み立てていた(最近目にすることの多い、女性ファウンダーに対する男性VCの不適切な行為については「かなりいら立っている」とも語った)。

また、女性差別に対する建設的な解決策についても話していた彼女。そのうちのひとつは、男性ばかりがジェネラルパートナーの座についているVCへ警鐘を鳴らすことになるだろう。

前の週に、他のVCでパートナーを務める女性たちと朝食をとっていたLeeは、どうすればもっと女性のジェネラルパートナーを増やすことができるかについて彼女たちと議論していた。Lee曰く、その場にいた人たちが在籍するVC(Cowboy Venturesを含む)は、特に将来が期待されているポートフォリオ企業に対して「女性や有色人種の人たちが投資判断のできるポジションに就いている現代的なVC」から資金を調達するよう勧めているというのだ。

その背景には個人的な考えも関係していると彼女は認めたものの、Cowboy Venturesが投資している企業のCEOも同じような考えを持っており、「ポートフォリオ企業のファウンダーたちも、もし選べるのならば、現代的な考えを持つVCを選ぶだろう」と付け加えた。

その考え方は次の極めてシンプルな問いに詰まっている。「なぜ、ろくでなしのためにお金を稼がなければいけないのか?」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

無名のユニコーンたち:資金がない状態から始まった35の大企業ーーVCは起業に必須ではない

【編集部注】著者のJoe FlahertyはFounder CollectiveのContent & Communityディレクターである。

ベンチャーキャピタルは麻薬だ、そしてVCでクスリ漬けになる可能性もある。しかしほとんどの創業者たちにとってそれは贅沢な悩みだ。より頻繁に投資家たちが耳にする質問は「私のスタートアップを支えてくれるVCを見つけるにはどうすればいいですか?」というものだ。こうした創業者たちは、過剰資本が彼らのIPOをどれほど厄介なものにするのかを心配してはいない。とにかく彼らは最初の条件規定書(term sheet)に署名してくれる誰かを(誰でもいいから)得ようと躍起になっている。

世の中の創業者たちの間で広く信じられているものの1つに、ベンチャーキャピタルは成功の前兆だというものがある。VCは多くの成功したテクノロジーベンチャーに見られる共通点だが、必須の条件というわけではない。特に初期段階では。

起業家は、ほとんどまたはまったく資本のない状態で、かなりのことを成し遂げることができる。資本によって洞察に富んだ会社になるわけではない。創造的に1ドルを10ドルを変えられないのに、何故100万ドルを1000万ドルにできると思えるのか?

スタートアップが進むことのできる方法を説明するために、以下に数千ドルあるいは額の汗だけを資本に始まった35社の例を示す。これらはみな私が「効率的な起業家精神」と呼ぶもののお手本となったものたちだ。

これらの企業の多くは、その後10億ドルの評価額を得ている、その中には10億ドルの収益を上げているものもある。しかしいずれもシードラウンドとみなされるもの以外で始まった企業はない。これらのスタートアップのほとんどは後にVCから資金を調達したものの、それはもう投資家からの資金調達の有無に関わらず成功できるという事実を確立したあとに過ぎない。現在でも、彼らの多くは広くは知られていない。彼らは、ハイテク業界の目に見えないユニコーンなのだ。

なので、投資家たちとのミーティングを慌てて予定する前に、これらのストーリーを読んで欲しい。これらは多くの創業者たちが抱いているVC中心の見方に対する釣り合いを取らせるものであり、資金調達について考える際に別の方法を提供するものだ。

以下に続くのは、こうした企業たちの簡単で簡潔な説明(彼らがとったアプローチ別に分類されている)と、それらの詳細を読むことができるストーリーへのリンクだ。忘れないで欲しい。ベンチャーキャピタルを受け入れることは、強制ではなく選択でなければならないのだ。これらの会社は、その方法を見せてくれる。

何かを生み出し、その後お金を調達する

ほとんどの業界で、もし顧客の本当の問題を解決してその費用を求めることができるなら、始めるためにベンチャーキャピタルは必要ではない。これについて考える際には3つの方法がある:

ワークフローの自動化

有益なプロダクトを生み出す最も簡単な方法は、日々のワークフローの一部を自動化することだ。これにより、構築しているものへの需要が証明され、プロジェクトのための資金調達源が確実に得られる。

MailChimp :共同創業者/CEOのBen Chestnutが、2000年にデザインコンサルティング事業を経営していたときに、電子メールニュースレターを発行したいという顧客が連続してやって来た。唯一の問題は、彼がそれらをデザインすることを面倒だと思っていたことだった。そこで、チームを退屈させないために、彼はプロセスを合理化するツールを作ることにした。 年商4億ドルのビジネスMailChimpは、このようにして生まれた。

Lynda:Lynda Weinmanは、1990年代後半に、ウェブデザイナー向けのツールの教師としてスタートした。書店でのセミナーは退屈だったので、彼女はやがて生徒たちをより良く指導できるトレーニング動画の作成を始めた。次々に作られたチュートリアルによって、彼女の会社はソフトウェア開発者とデザイナーたちのスキル向上を手助けして来た。彼女はコンテンツライブラリの構築を20年続け、その技術資産の蓄積はLinkedInが15億ドルで買収するまでに成長することができた。

資本効率の高い製品から始める

多くの起業家は業界リーダーに真正面から挑み、通常は失敗に終わることになる。これは特にハードウェアの場合に当てはまる。Appleのような会社と競争しようとする代わりに、こうした向こう意気の強いスタートアップたちはRadioShackによって残されたギャップを埋め、敬意を受け見習われる価値のあるビジネスを生み出した。

AdaFruit Industries:Limor Friedは、MITの学生の時代に、既製の部品で構成されたDIYキットを提供することで、彼女のDIY eコーマス帝国を開始した。Friedはエレクトロニクス商店で見られるものと同じビルディングブロックを商品化したものの、同時にユニークなコンテンツも用意して、スペースインベーダー筐体のレプリカを、ハンダ付けしたくなるような気にさせた。現在、彼女は85人の従業員を抱え、年間3300万ドルを稼いでいる。

SparkFunAdaFruitと同様に、Nathan Seidleが大学寮の部屋で、エレクトロニクスキットや奇妙な部品を、エキゾチックな新しいセンサーやシステムを試したいエンジニア仲間向けに売り始めたのが、SparkFunの始まりだ。現在、彼のeコマース帝国は154人を雇用しており、年間収益は3200万ドルだ。

既存の問題を解決し、既存のビジネスモデルを活用する

スタートアップはビジネスモデルの面で特に革新的である必要はない。より現代的な技術プラットフォーム、またはUXレイヤーの上に優れた製品を構築すれば十分だ。ここで見る企業は、どれも車輪の再発明を行なってはおらず、全てが真のバリューを生み出している。

Braintree Payments :オンラインで詐欺師に騙されることなく、お金を交換することは、ウェブ上での最も古い問題の1つだ。取引に関わる全ての当事者たちは、素晴らしい体験のためなら、公平な「税金」を支払うことには喜んで同意する。Braintreeはより良い技術ソリューションを構築し、8億ドルの買収に先行する、2回のVCラウンドで6900万ドルを調達する前に、4年間に渡ってそうした取引からの収益で生き延びていた。

Shopify:Shopifyの創業者は、スノーボーダーのためのeコマースサイトを開始したときに、ショッピングカートのソリューションを探していた 。しかし適当なものを見つけることができなかった彼らは、自分たちの痒みは自分たちで掻くことを決め、当時ホットだったRuby on Railsフレームワーク上に特注ソリューションを構築した。これは、より多くの人々にとっても完璧な解決策であることが判明し、創業者たちはそれが生み出す収入によって、6年の間独立したビジネスを運営していた。彼らは最終的にVCから資金を調達し、その後IPOを行い10億ドルの評価を受けた。

自立ルール

多くの起業家は「CEOを務める」という時間を無駄にしながら、戦略を策定しビジネスがどのように成長するのかの夢の組織図を描きがちだ。それをしてはならない。その代わり、自分が持っているリソースだけを使って、持っているアイデアを前進させるために、今日できることを見つけよう。

Ipsy:一般女性向けに、化粧品の詰め合わせボックスを、毎月サブスクリプションベースで送るサービスは、Birchboxのような先駆者のおかげで成長産業となっている。YouTubeスターのMichelle Phanは、先行者としての優位性は持っていなかったが、オンライン有名人(800万人以上のYouTubeフォロワー)としての地位、化粧品ブランドとのコネ、そして50万ドル以下のシード資金を活用して、化粧品サブスクリプションスタートアップを開始した。その後VCから1億ドルを調達する前に売り上げは1億5000万ドルに達している。

資本によって洞察に富んだ会社になるわけではない。

ShutterStock:Jon Oringerはプロのソフトウェア開発者で、アマチュア写真家でもあった。彼はこのスキルを組み合わせて、個人フォトライブラリから3万枚写真を使いフォトストックサービスを開始した。現在の価値は20億ドルである。資本効率が報われて、ついには彼を本当に自力で辿り着いた億万長者に変えた。

SimpliSafe:人々はハードウェアビジネスをブートストラップしようとする考えを嘲笑するが、SimpliSafeのChad Lauransはそれを実行した。彼は友人や家族から少額の資金を調達し、その後8年間に渡って家庭用セキュリティビジネスを構築して来た。お金を節約するために、最初のプロトタイプは文字通り自分でハンダ付けを行った。8年後、ビジネスは数十万の顧客を獲得し、数億ドルの収入を上げ、Sequoiaから5700万ドルのVC資金を手に入れた

どこから集めてもお金はお金 … (誰のお金も緑色)

資金調達は、数百万ドルが一度にやってくるとは限らない。創業者たちは助成金、インキュベーター、エンジェル、あるいはプリセールスなどからお金をかき集めることが可能だ。もっともやり手の起業家たちは、プロダクトを提供する前から支払いを集めることのできるビジネスモデルをデザインし、顧客を成長資金の源泉にする。

Tough Mudder:陸上競技起業家のWill Deanは貯金の7000ドルを使って、年商1億ドル以上の会社を生み出した。その秘密は、レースへの事前登録を販売し、そこで集まった売上を運転資金として、Tough Mudderを有名にした電化障害物コースを建設したのだ。

CoolMiniOrNot:CoolMiniOrNotは、マニア同士がDungeons&Dragonsのフィギュアをペイントする能力を自慢し合うウェブサイトとして始まった。最終的にサイトの創設者たちは、Kickstarterをチャネルとして活用して、独自のゲームをデザインして配布することを決めた。彼らは27回のKickstarterキャンペーンを実施し、3594万3270ドルの非希釈的(non-dilutive)資金を調達した。ゲームは続く。

売れ!売れ!売れ!

通常、最良の資金源は顧客だ。売ることには2つの利点がある。まず、まず直ぐにキャッシュレジスタを鳴らすことができること。第2に、顧客と共感するものをすばやく学び、それらの洞察を使って商品を洗練することができることだ。

ScentsyDNVB(Digitally-Native Vertical Brands)は大流行りだが、そうしたものは妙に凝った紹介ビデオやFacebookでの広告に過度に依存して売上を上げている。Scentsyは広告を買う余裕がなかった時代には、不要物交換会でロウソクを売っていた。それは格好良いものではなかったが、創業者たちは買い手と共鳴するための確かなメッセージを受け取っていた。今では年間収入は5億4500万ドルを超えている。

CarGurus:このアプリは、データ分析を活用して、顧客が中古車に関する最良の取引を見つけるのに役立つものだ。しかし同社のCEOは、年間5000万ドルの収益と利益率の高さの理由を、同社がライフサイクルの早い段階で営業チームを雇用したからだと言う。同社の350人近くの従業員のほぼ半数が、ソフトウェアを作成するのではなく、セールス電話をかけている。

LootCrate:LootCrate(毎月ギーク商品詰め合わせが届く定期便サービス)は制度的な資金調達を行なう以前に、既に60万人以上の顧客と1億ドルの以上の収入があった。彼らが非常に効率的だった理由の一部は、同社が設立した最初の週末から、顧客に課金を開始したことだ。創業者たちはハッカソンでランディングページをセットアップし、注文を集め、その資金を使ってパッケージを埋めるギークな商品を購入した。

マーケティングをケチる

スタートアップのマーケティング担当者は、無計画なブランドマーケティングで時間を無駄にしたくないだろう。効率的な起業家たちは、即座に付加価値のあるキャンペーンを必要としている。

Wayfair:この家庭用品のeコマース会社は、ブランド広告をスキップし、一般的な検索用語に完全に一致する何百ものドメイン名を購入したおかげで、最初の営業月から利益を上げることができた。このモデルは、最終的には同社が公開直前にシリーズAで1億6500万ドルを調達し、40億ドルの時価総額となるまで、10年に渡る利益性の高い成長を支えた。

創造的に1ドルを10ドルを変えられないのに、何故100万ドルを1000万ドルにできると思えるのか?

Cards Against Humanity:Kickstarterからのわずか1万5700ドルの資金で、Cards Against Humanityチームは最初の年に合計1200万ドルとなるビジネスを作り上げた。彼らはまた、一連の抜け目ないマーケティング上の妙技を披露した。牛の糞ピカソ作品の断片トランプ後のアメリカの虚無感を表現する大きな穴、 そしてトランプからの「緊急避難」バッグを販売し、さらに何の見返りもなしにお金を送ることを募った。これらのプロモーションは安く実行することはできないが、支払ったコストに見合う収入を得ることができて、一方沢山のフリーメディアに掲載して貰うこともできる。

GoFundMe:バイラルマーケティングはビジネスモデルのおまけとして扱われる場合には、当然ながら真面目に取り扱われることはないが、ビジネスモデルにきちんと統合された場合には非常にパワフルな道具となる。超効率的なコンバージョン率最適化手法(CRO:conversion rate optimization)と組み合わせることで、それは無敵なものになる可能性がある。GoFundMeの創業者たちは、このペアの力を使って、ビジネスを約6億ドルで評価される時点までブートストラップすることができた。

効率 > 資金

スタートアップは、しばしば彼らが調達した資金によって評価される。しかし、もっと重要なことは、それらの企業がいかに効率的に資金を使用しているかを尋ねることだ。効率性とは、ひたすら倹約するという意味ではない。その代わり、本質的に資本を組み合わせることでより効率的になる、テクノロジーもしくはビジネスモデルを中心にしたビジネスを指向する起業家たちを見つけることだ。

PaintNite:画家のモネとメルローの赤ワインを組み合わせるという考えはしばらく存在していたが、PaintNiteの創始者はこのモデルをより費用対効果の高いものにしたいと考えた。他の競合相手が、動きが遅く高価なフランチャイズセールスモデルに頼っていたのに対して、PaintNiteはアート教師たちと平日にワインを売りたいと思っていたバーにペアを組ませて、ベンチャーキャピタルから調達を行なう前年には3000万ドルの収益を上げるビジネスを作り上げた。

Plenty of Fish:2003年に設立されたこの出会い系サイトは機能も見かけも10年間ほとんど変化しなかった。他のサイトには、より多くの機能、鮮やかなグラフィックス、豊富なベンチャー資金が注ぎ込まれていたが、Plenty of Fishは無料で、そのリソースの大部分をスパムアカウントとの戦いに費やしていた。Craigslistと共に、Plenty of Fishの最大の資産は、「良質の魚がいる池だ」という評判だ。同社は時間の経過とともにサイトを改良したが、大量の資本注入は必要としなかった。最終的に同社は、5億7500万ドルで売却された。

Mojang:Minecraftの背後にいるレンガ職人たちは決してベンチャーキャピタルの資金調達を行わなかった。たった50人の従業員で、Microsoftに買収される前には、利益で10億ドル近くを稼いでいた。このスウェーデンのスタジオは、Zyngaにインスパイアされたソーシャルスパミングや略奪的な小規模取引のような流行には決して巻き込まれることはなかった。Minecraftはユーザーに定額料金を請求することで成長し、その結果25億ドルの買収が行われた。

幸運は”退屈”を好む

退屈は価値判断ではない。資本なしでなんとか成長できた、最も印象的で成功した企業の多くが、差し迫ってはいるものの、ある意味つまらない問題を解決することで繁栄してきた。もし難しい問題を解決すれば、顧客はそれに喜んで資金を提供する。

  • SurveyMonkeyは90年代のドットコムバブルで設立されて、同類のKosmoのような破壊力は持っていないと思われていたが、会社としてはより耐久性があった。同社はドットコムのクラッシュを生きのび、着実に9桁のランレートになるまでに成長した。開始から11年経って、やっと1億ドルを調達しただけだ。
  • ProtolabsはVistaprintが名刺作成に使っている、プラスチック射出成形を行なっている。現在の評価額は12億ドルである。
  • 13億ドルの価値を持つCventは、イベント管理ツールを開発し、 建設管理を行うTexturaは、6億63300万ドルで買収された。どちらのマーケットもホットで流行っているものとは思われていない。
  • Grasshopperは、15万の顧客と3000万ドル以上の年間収入を持つ電話ネットワーク会社だが、VCに関わったことはなく、最終的にはCitrixに買収された。
  • EpicはJudith Faulknerによって1979年に設立された。ウィスコンシン州に拠点を置くこの電子カルテプロバイダは、おそらく今日稼働している自己資金だけで大きくなった最大のソフトウェア会社である可能性がある。
  • eClinicalWorksは、世の中が「速く成長しよう」と声を揃えていた1999年に設立された。同時代の企業の多くがクラッシュし燃え尽きている。臨床データを管理するという、退屈だが利益を生む作業に力を注ぐことで、会社は生き残り、現在は4000人以上の従業員を抱え、年に3億2000万ドルの収益を生み出している。
  • Unityは、ゲーム開発のなかの(クロスプラットフォームや「バンプマッピング」などの)あらゆる退屈な部分にフォーカスすることで、モバイルゲーム産業のバックボーンとなることができた。彼らは資金調達をすることなく、何年も過ごして来たが、現在は15億ドル以上の評価を与えられており、他の多くのブランドゲームよりも成功している。
  • GitHubは、バージョン管理から苦痛を取り除き、資金調達前に既に、ハイテクエコシステムの重要な一部となっていた。
  • Qualtricsは、学校や企業の調査を管理するためのツールとして、ユタ州の地下室でスタートし、今では1000人の従業員を抱え、年に1億ドルの利益を掻き集める。

ファウンディングを受けられないものは幸いである

資本調達がほとんど不可能なときもある。私たちは数千万ドルの収益を上げ、3桁の成長率を達成し、その他の利点を持ちながら、少額の資金調達にさえ苦労している企業を見てきている。幸いなことに、このようなスタートアップは、このような明らかな不利な条件にも関わらず、最終的には勝つ傾向がある。

Atlassian:シリコンバレー、ニューヨーク、ロスアンゼルス、ボストンの外でスタートアップを始める利点の1つは、VCがあまりないことだ。これは呪い言葉のように聞こえるかもしれない。だが結局のところ、資金のアクセスが得られないのなら、それが何の役に立つというのだろう。それは変装した祝福かもしれないのだ。

このような孤立は、調達した何百万ドルで何をしようかと考える空想からあなたを守り、あなたの目の前にいる、実際にお金を払ってくれる顧客を幸せにするように強制する。オーストラリアに拠点を置くAtlassianは、自力で40億ドルの時価総額へと上った。もし同社がより安易な資金調達を行なうことができていたら、低品質の成長を追いかけ、いかに効率的に成長するかを見出す前に沈んでいた可能性がある。

スタートアップを始めて規模を拡大するのに、資金提供者たちからの許可は必要ない。

Campaign Monitor:資本効率の高い企業の奇妙な特徴の1つは、資金調達の最初のラウンドが、IPOからの収益に近いような、目立った金額になる傾向があることだ。Campaign Monitorの場合、最初の資金調達ラウンドの金額は、2億5000万ドルだった。 シドニーに拠点を置くCampaign Monitorは、ベンチャーキャピタルへのアクセスが容易ではなかったため、ビジネスを自力で始めて、ユニークなテクノロジーを構築した。そのテクノロジーは、Disney、Coca-Cola、そしてBuzzfeedなどへ優れた電子メール解析機能を提供するのものだった。2億5000万ドルの資金調達が、会社を助けるのか傷つけるのかは、やがてはっきりすることだろう。しかしそれは彼らのこれまでの成長に対する確かな評価の1つなのだ。

The Trade Desk:創業者のJeff Greenはプログラム広告業界を発展させるために独自の見解を持っていたが、現代的なアドテックの資金調達サイクルの終盤になってThe Trade Deskを開始した。この市場の過剰資本化は、投資家が悪いパフォーマーによって燃え尽きることと相まって、企業がそのライフサイクルを通した資金調達のあらゆるラウンドで苦労することになった。Greenは、申し分のないスタートアップCEOであり、同社の最初の6年間でベンチャーキャピタルから2640万ドルだけを調達し、ナスダックで取引される10億ドルの事業へと転換した。でもどうやって?より少ない資金を持つという制約を受け入れることで、最高のリターン活動に焦点を当て、資金の注入よりもむしろアイデアで動くイノベーションの文化を構築したのだ(情報開示:Founder CollectiveはThe Trade Deskの投資者の1つである)。

VCは完璧ではないし、最善のVCでも確かに思えるアイデアを見逃してしまうこともある。創業者たちがかつて、投資家たちに対して、やがて10億ドルのビジネスに育ったビジネスを売り込むことができなかった話を耳にすることは驚くほど普通のことなのだ。AppLovinの創業者Adam Foroughiは、その事業を14億ドルで売却したが、収益が多くてもベンチャーキャピタルから資金調達をすることは困難だった。「合理的な評価額(おそらく400万から500万ドル)だと思った金額では投資家を見つけることができませんでした。1年目の終わりまでに、私たちは利益を上げるようになっていて、月の収益は100万ドルを超えていました」。残りは、彼らが言うように、歴史だ。

覚えておくこと:VCを中心としたビジネスのデザインは避ける

あまりにも多くの創業者たちが、創業1日目からその事業をベンチャーキャピタル中心に考えて始める。かつてスタートアップは、何かを形作ったあと、お金の調達を考えたものだ。しかし今日では、彼らは何かを形作るためにお金を調達しようとする。創薬や航空機開発をしようとしているのでなければ、これは通常間違った判断だ。実際、リソースを使わずに前進することは、VCがあなたの会社に関心を持つようにするための最良の方法だ。上記で述べた企業たちは長期間資金を調達しないことを選択したが、彼らがそうしたときには、投資家に対する選択肢が生まれ、条件を設定することができた。

私たちのアドバイスは、ビジネスを未来永劫、自己資金だけでブートストラップせよというものではない。ベンチャーキャピタルは、AppleからZapposに至るまで、ほぼすべての大手テック企業に資金を供給してきた。単に、始めるためにはお金はいらないのだ、ということだけを覚えていて欲しい。スタートアップを始めて規模を拡大するのに、資金提供者たちからの許可は必要ない。したがって、VCが次にあなたに「合格です」と言ったときには、次の3つの原則を覚えていて欲しい。

  • 最初に資金がなくても、テクノロジーを武器にしたビジネスを離陸させることは可能だ。
  • 僅かな資金でテクノロジービジネスを迅速に拡張することは可能だ。
  • 彼らが取る資本の量を制限することが、創業者の最大の関心事であることがよくある。

自己資金で並外れた成果を出しつつある企業をご存知なら、是非お知らせ願いたい。

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(翻訳:Sako)

95%のVCが目標未達――投資エコシステムの現在とこれから

【編集部注】執筆者のTomer Deanはテルアビブを拠点に活動する連続起業家で、Bllushの共同ファウンダー兼CEO。

最近、イスラエルの有名ベンチャー投資家と話す機会があった。最初はシード資金の調達を考えている私のスタートアップについて話していたが、そのうちベンチャーキャピタル(VC)についてのマクロな話や、いかにVCという仕組みが機能していないかということに話題が移っていった。

「95%のVCが儲かっていない」と彼は言い放ち、しばらく経ってからようやく、私はこの言葉の意味を理解した。

正確に言うと、95%のVCは、彼らにとっての投資家(リミテッドパートナー=LP)が負うリスクや手数料、非流動性に見合ったリターンをあげられていないのだ。

いったい誰が儲けているのか?

3倍のリターン(1億ドルのファンドであれば3億ドルのリターン)を生み出すVCファンドであれば、「ベンチャー投資のリターン」をあげている妥当な投資対象として認められる。下の円グラフは、どのくらいの割合のVCがこの基準に達しているかを示している。実際はグラフが示す通り、緑でハイライトされたほんのわずかな数のVCしか基準を満たせていないのだ。残りの95%は収支がとんとん、もしくは赤字を出している(インフレを考慮に入れるのもお忘れなく)。

出典: Money Talks, Gil Ben-Artzy

この事実はなかなか受け入れがたいが、実際に数字を確認してみると納得がいく。本記事では、ほかの業界にいる人からは理想化されがちなVCの世界で起きている、この理解しがたい現象を解き明かしていきたい。それでは、早速はじめよう。

前提条件

まずは、成功と失敗の定義と前提条件を確認してみよう。

成功=年率12%のリターン

VCの資金源であるLPは、銀行や政府系機関、年金ファンドをはじめとする従来の投資家であることが多い。彼らからすると、株式や不動産のように手数料が安く、流動性があって、年率7〜8%のリターンが”安全に”得られる他のオプションへの投資に比べ、5000万ドルをスタートアップファンドに投じるというのは”リスキー”に映る。リターンが12%であればリスクをとる価値も生まれてくるが、それ以下だと彼らはリスクに見合った投資だとは考えなくなる。

つまり…

運用期間が10年のファンドであれば、出資額の3倍のリターンが必要

VCには年率12%のリターンが必要というのは既に示した通りだ。そして、ほとんどのファンドに関し、積極的に投資を行うのは3〜5年間だが、運用期間は10年に設定されている。調査を見るかぎり、最近は12〜14年程度の運用期間が一般的なようだが、VCにチャンスをあげるためにも今回は10年のままにしておこう。年12%のリターンは、複利の力によってどんどん大きくなる。計算式は以下の通りだ。

パレートの法則も忘れないでほしい。リターンの80%は、全体の20%にあたるスタートアップから生まれる。

現実問題として、スタートアップの経営は難しく、損益分岐点に到達するのさえ大変なことだ。利益を生み出すのも難しいし、毎年利益を伸ばしていくとなるともっと大変だ。10社のスタートアップがあったとしても、後述の通り大成長してエグジットを果たし、VCにリターンをもたらすのは、そのうちたった1、2社だ(残りのスタートアップの中からも少額でエグジットを果たす企業が出るかもしれないが、全体のリターンに対する影響はあまりない)。

それでは計算に入っていこう

10社のスタートアップと運用期間10年で資金を3倍にしなければならないファンドを思い浮かべてみてほしい。ファンドの規模は1億ドルで、それぞれのスタートアップに合計1000万ドルずつ投資しながら、最終的には3億ドルのリターンを狙っているとする。さらに、VCはシリーズAから投資に加わりシリーズBにも参加したため、各企業の株式の25%を非参加型優先株で保有しているとしよう。

以下では、10社あるスタートアップの10年後の姿を変化させながら、それぞれの違いを見ていきたい。

全てのスタートアップが「そこそこ」うまくいって5000万ドルでエグジットした場合

緑色の棒がエグジットの規模、紫色の棒がVCの持つ25%分の株を売却したときの金額を表している。

10社全てが5000万ドルでエグジットした場合、VCのリターンは1社あたり1250万ドルで、総額は10×1250万ドル=1億2500万ドルとなる。目標は3億ドルだったのでこれでは足りない。もっとうまくいった場合を考えてみよう。

半分はそのままで、もう半分のエグジット額が上昇した場合

次の例では、5社が5000万ドルでエグジット(1社あたりのリターンは1250万ドル)し、残りの5社は1億ドルでエグジットを果たしたとしよう。ファウンダーたちは一夜にして百万長者になり、彼らの写真は新聞にも掲載されるだろう。しかしVCの状況は違う。この場合のリターンは、(5×1250万ドル)+(5×2500万ドル)=1億8750万ドルとなり、まだ3億ドルには届きそうもない。

おおかたは「平均的」な成績で、1社だけ大成功した場合

先程の例とほぼ同じ状況で、1社だけがスター企業になった場合を考えてみよう。上の例では1億ドルで売却されたこのスタートアップが、今回は5億ドルでエグジットしたとする。5社のエグジット額は依然として5000万ドルで、4社が1億ドル、最後の1社が5億ドルだ。するとVCのリターンは、(5×1250万ドル)+(4×2500万ドル)+(1×1億2500万ドル)=2億8750万ドルになる。もう少しで目標達成だ!

もう次は何がくるかおわかりだろう。ユニコーン企業の登場だ!

十分な利益をあげるには、爆発的な成長を遂げた企業が1社必要になる。10社のうち9社が5000万ドル、1社が10億ドルで売れればいい感じだ。(9×1250万ドル)+(1×2億5000万ドル)=3億6250万ドルでついに目標達成! これでみんながハッピーになれる。

しかし、このシナリオは本当に起こり得るのだろうか? 本当に10社全てが無事エグジットできるのか? 100%のエグジット率はさすがにありえないだろう。もっと現実的なシナリオは、10社中5社が完全な失敗に終わり、3社が小〜中規模のエグジットを果たし(上記の通り全体的なリターンへの影響は軽微)、1社か2社がユニコーン企業として10億ドル以上の規模でエグジットするくらいだろう。

現実的なケース

5社が潰れ、3社が2500万ドル、1社が2億ドル、そしてスーパースター的な存在の1社が10億ドルでエグジットしたとする。

そうするとリターンは、(5×0ドル)+(3×600万ドル)+(1×5000万ドル)+(1×2億5000万ドル)=3億1800万ドルとなる。

試行錯誤の結果、ようやく現実的なシナリオで目標を達成できた。しかし、各ファンドのポートフォリオに、少なくとも1社のユニコーン企業が含まれているという前提は妥当なのだろうか? 恐らく現実は異なるだろう。どうやらほとんどのVCの状況は、私たちが議論してきた「現実的なケース」よりも悪く、上位5%(4分の1にも達しない!)というほんの一握りの優れたVCだけが上記のような状況にあるようだ。さらに、もしもファンドの規模が時折見かけるような10億ドルといったスケールだとすると、さらに数字は悪化し、3倍のリターンを達成できる確率も低くなる。

では、どのVCもうまくやっているように見えるのは何故なのか?

「うまくやっている」の定義にもよるが、3倍のリターンを実現できないでいる残りの95%は、投資活動ではなく手数料で全てを賄っているのだ。ほとんどのVCは、投資家から受け取る手数料(ファンド額の2%)を主要な収入源としており、それだけで十分やっていける(1億ドル規模のファンドであれば、年間手数料は200万ドルになる)。

つまり、もしも投資成績が芳しくなくても(ほとんどの場合そうなのだが)、彼らの収入は手数料によって保証されているということだ。もし手数料だけでは十分じゃないとしても、投資先の企業が1社でもエグジットを果たせば、彼らには利益の20%がボーナスとして入ってくる。うまくいったときは全員がハッピーだが、うまくいかなくてもVCには最低ラインが保証されているのだ。起業家の私にもそんな保証があればいいのだが。

まだ望みはある

ファンドとして許容範囲のリターンを得るためには、次なるUber、Facebook、Airbnbを見つける以外に方法がないという事実を、私はまだ受け入れられないでいる。もしもこれが現実なのであれば、ユニコーンになれそうなスタートアップ以外には、VCが投資しなくなってしまう。5億ドル以下の水準でのエグジットを求めている「普通の」企業が入り込む余地はないということだ。少なくともVCにとっては。

数字だけを見ると、無謀なゴールを掲げているファウンダーしか成功をおさめられないような気がしてくる。VCも自分たちの生き残りに必死で、なんとか次のファンドに繋げようとしていることを考えるとなおさらだ。泣き目を見るだけのLPのことは、もはや触れるまでもない。彼らこそが、手数料を払って自分のお金をリスクに晒し、10年後(実際に現金化するには15年かかるが)の運用終了時に気が落ち込むようなリターンを受け取ることになる人たちなのだ。

これ以外に何か方法はないのだろうか? 前提について考え直してみれば、何かわかるかもしれない。前提は以下のように考え直すことができるし、むしろそうあるべきなのだ。

    • なぜ運用期間は10年なのか。6年ではダメなのか? 運用期間を10年から6年に短縮すれば、求められるリターンも3倍よりは現実的な2倍に下がる。VCも目標額が3億ドルから2億ドルに下がることで、プレッシャーがかなり軽減されるだろう。以前よりも短い期間でどうやっていけばいいのだろうか? シリーズA企業を10社探しだすのに1〜2年、投資先の成長に4〜5年にかけ、投資直後から常にM&Aを勧めるようにしてはどうだろうか。しかし、VCは投資先のエグジットを完全にコントロールできるわけではなく、(UberやAirbnbのように)ファウンダーが主導権を握っているため、この方法で現金化が早まるというのは考えづらい。
    • 従来の投資家のことは忘れて、”クラウド”に移行する。きっと、12%ものリターンを約束しなくても資金を調達できるはずだ。何百社ものスタートアップに分散投資して、年率8%のリターンを安定的に出している10億ドル超の規模のファンドがあったとしたら、興味を持つ投資家はいないのだろうか? 目標年率が12%から8%に下がれば、求められるリターンも3分の1減る。さらに、寛容な投資関連法(Jobs Act)によって、今後さらにP2Pネットワークやクラウドファンディングの仕組みを利用する投資家が増えてくるだろう。これが8%の年率と合わされば、投資家の顔ぶれにもきっと違いが出てくるはずだ。この程度のリターンであれば、株を購入して保管するだけでいいと言う人もいるかもしれない。しかし、普通の株式投資では、ベンチャー投資独特の「ディスラプションによる興奮」の瞬間を味わえないのだ。
    • もっと多くのスタートアップに少額投資する。今日の前提として、VCは全ラウンドを合計して20〜25%の株式と引き換えにスタートアップに投資するのだが、もちろんVCにはそれだけの資金力がある。そしてエグジットのことを考え、彼らは1社1社に大きく賭けるのだ。そこで、例えばシード投資の数を増やして、10社それぞれに1000万ドルずつ投資するのではなく、50社に100万ドルずつ投資してはどうだろうか。そして、その3分の1にシリーズAで300万ドルずつ投資し、約1億ドルの投資に対して各スタートアップの株式の10%を受け取るとする。シリーズAをクローズした企業の半分が1億ドルでエグジットすれば、VCのリターンは1億2000万ドル(8社x1億ドルx0.15%=1億2000万ドル)となるという計算だ。
    • 方向性を合わせる。VCとLPの利害関係は一致していない。現状のスタンダードだと、VCは「2%+20%」の原則に沿って報酬を受け取っている。つまりVCの収益は、ファンドの規模の2%に設定されている手数料(給与のようなもの)と、エグジット額の20%のボーナスから成り立っているのだ。そのため、VCが十分なリターンを生み出すのに”失敗”したとしても、彼らの給与は保証されている。その一方で、LPはVCが素晴らしい成績を残さないと(稀にしか起きないが)リターンを得られない。結果として、両者の方向性にズレが生じてきてしまうのだ。古くさい「2%+20%」ルールから脱却し、もっとVCとLPが一丸となれるような報酬体系を築いていかなければならない。VCにも自分たちの食い扶持を稼がせなければいけないということだ。
    • VCをもっと厳しく選ぶ。VCにとっては耳の痛い話かもしれないが、巷にいるVCの多くは廃業するべきだ。パフォーマンスの低いファンドには、追加資金が集まらないようにしなければならない。今の状態だと、その負担がLPにかかってしまっている。LPもLPで、単にリターン率(IRR)をチェックするだけでなく、パブリック・マーケット・エクイバレント(PME)から、各ファンドと市場全体のパフォーマンスを比較しなければいけない。例えば、あるファンドの2014年のIRRが13%だったとして、同じ年の市場全体のリターンが14%だったとすると、そのファンドは高パフォーマンスだったと言えるのか? もちろん言えない。LPはもっと頭を使って実際のリターンをチェックしながら、先が見込めないファンドに何度も追加投資するようなことがあってはならない。

以上をまとめると、ベンチャーキャピタルとは大変なビジネスだということだ。LPはベンチャー投資のリスクや手数料、流動性の低さに見合うだけのリターンを得られないでいる。また、起業家は高評価額でエグジットを果たすために、自分の会社をスケールさせるのに苦しんでいる。経験の浅いファウンダーが、事業をゼロから立ち上げ、10億ドル規模まで成長させるための方法を知っているわけがない。だからこそ、企業が成長する過程ではさまざまな変化があるのだろう。そしてVCも約束したリターンを生み出すのに苦戦しており、実際には一握りのVCしか投資家の期待に応えられていない。

しかし、VCだけがある種の保証で守られている。運用成績がパッとしなくても、彼らの給与は手数料でカバーされるのだ。さらにフィードバックサイクルが長いため、ネガティブな情報が業界全体に広がる前に、もう何個かファンドを組成できて(VCが収入源を獲得できて)しまう。

その一方で、LPと起業家にはセーフティネットが準備されていない。私たちの生死は投資のリターンにかかっている。つまり、VCではなくLPと起業家こそがリスクを背負っている主体なのだ。

参考情報:

以下の皆さまに感謝致します。

この記事を書き上げるにあたり、とてもためになるアドバイスやフィードバックをくれたGil Ben-Artzy。記事の校正をしてくれたDiane Mulcahy(Kauffman Foundationのプライベート・エクイティ部門ディレクター)。VC業界の基礎を網羅したZell Entrepreneurship Programで、何時間にもおよぶ授業を通じてVCについて教えてくださったLiat AaronsonとAyal Shenhav博士。そして、記事を形にするのを手伝ってくれたTechCrunchのJonathan Shieber。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

SoftBankのNvidia株は時価40億ドルと報道――Vision Fundのプレスリリースから推定

先週末、日本のソフトバンクはVision Fundの最初の資金調達をクローズしたことを発表した。今回の出資コミットメントの総額は930億ドル〔約1兆円〕で、出資者にはApple、Qualcomm、Foxconnらが並んでいる。同時にソフトバンクがすでにNvidiaの株式を所有していることも何気なく発表されていた。

今日(米国時間5/24)のBloombergの記事はソフトバンクが所有するNvidia株式は時価40億ドル相当と推測している。これは持ち分が4.9%とした場合の価格で、Nvidiaの第4位の株主となる。

土曜日に発表されたVision Fundのラウンドのクロージングに関するプレスリリースには、同ファンドが「SoftBank Groupが買収した(あるいは買収が承認された)投資対象を買収する権利がある」旨書かれている。

この一節には投資対象としてNvidiaに並んでARMの24.99%の株式(昨年ソフトバンクが310億ドルで買収している)、 OneWeb、SoFiなども記載されていた。

われわれの取材に対し、ソフトバンクの広報担当者はNvidiaへの投資あるいはBloombergの記事についてコメントすることを避けた。

TechCrunchが最近報じたとおり、NvidiaのGPUは機械学習の爆発的な発達を支えるハードウェアの重要な柱となっている。AIはソフトバンクのVision Fundがもっとも力を入れている分野の一つで、孫正義CEOは、今年初めに、「次の30年はスーパー・インテリジェントなAIの時代になる」という見解を明らかにしている。孫CEOによれば、このことが1000億ドルのファンドをこれほど大急ぎで組成する理由なのだという。そうであれば、Nvidiaに大口投資を行ったのもこのビジョンの一環なのだろう。

そうであるにせよ、ソフトバンクが近年、巨額の投資を行っていることは事実だ。インドのフィンテックのユニコーン企業、Paytmに14億ドルを投資したことが発表されている。ロンドンのVRスタートアップ、Improbableが5億200万ドルを調達したラウンドではリーダーを務めた。、また50億ドルを中国におけるUberである配車サービスのDidi Chuxingに、17億ドルをOneWeb,に追加投資している(ソフトバンクは衛星コミュニケーションのOneWebに10億ドルを昨年出資した)。

NvidiaやARMの持ち分を含めてソフトバンクの投資のかなりの部分は直ちにVision Fundに移管されるだろう。ファンドはまたWeWorkにも投資する可能性がある。

Vision Fundは巨大だが、孫CEOは「普通のファンドだ」と語っている。なるほど規模も前代未聞のサイズだが、ビジネスモデルも詳しく検討する価値があるだろう。孫氏は今年初め、Bloombergのインタビューに答えて 「これらの会社のに対するわれわれの投資の大部分は20%から40%の利益をもたらすと同時に、筆頭株主、取締役会メンバーとして会社のファウンダーたちと将来戦略について話合うチャンスを与えてくれる」と語っている。

どうやら孫氏は金で買える最上のスーパー・インテリジェントAIの能力を最初に試せる少数の人間の1人になりそうだ。

画像: David Becker/Getty Images/Getty Images

〔日本版〕上場企業の株式取得にあたって情報公開義務が生じるのは5%であるところ、ソフトバンクのプレスリリースにはNvidiaの株式を所有していると記載されていたものの、これまで詳細が公開されていなかったことからBloombergは4.9%と推定したもの。なおVison Fundに対する出資者はソフトバンク・グループ他、以下のとおり。 SoftBank Group Corp (“SBG”) 、Public Investment Fund of the Kingdom of Saudi Arabia (“PIF”)…Mubadala Investment Company of the United Arab Emirates (“Mubadala”)、Apple Inc. (“Apple”)、Foxconn Technology Group (“Foxconn”)、Qualcomm Incorporated (“Qualcomm”)、Sharp Corporation ("Sharp")。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

1億ドル企業は過小評価されている――身の丈にあった資金調達の重要性

【編集部注】本記事はFounder CollectiveのEric Paley(マネージング・パートナー)とJoe Flaherty(コンテンツ&コミュニティ担当ディレクター)によって共同執筆された。

ユニコーン企業中心の現在のスタートアップ界では、成功の定義が大きく変わった。10億ドル規模のエグジットがもてはやされる中、かつては成功と考えられていた数字の価値が下がってきてしまったのだ。実際、自分が設立した企業を1億ドルで売却出来る確率は、純粋な可能性としては極めて低い。しかし今日では、1億ドルという数字は成功と呼ぶには小さすぎると考えられてしまうことが多々ある。

もちろん全員がこんな歪んだ見方をしているわけではないが、驚くほど多くのVCや業界関係者が、数億ドルのエグジットでは騒がなくなった。

一方で、刺激を追い求める現代社会で上記のような変化が起きているのは、そこまで驚くべきことではないとも言える。政治記者が州政府よりも大統領や最高裁判所について書きたがるように、テック記者はミリオン企業ではなく、ビリオン企業を求めているのだ。10億ドル規模のファンドは、各スタートアップに5000万ドルをつぎ込むのもいとわず、1億ドル程度のエグジットは成功どころか残念賞くらいにしか考えていない。そう考えると、1億ドルちょっとのエグジットは大型のアクハイヤー(人材獲得を目的とした企業買収)のようにさえ見えてくる。

この考え方がどれだけ歪んでいるかを確かめるため、私たちはここ数十年間に成功をおさめたファウンダーの中でも、その後VCになった人たちにフォーカスした調査を行うことにした。さまざまな分野で活躍するVCから、起業経験を持つ63人の投資家をピックアップしたところ、10億ドルを超える金額のエグジットを経験した人の数はたった11人だった。

素晴らしいスタートアップを創設した著名投資家はたくさんいるが、今の歪んだ基準で見ると、彼らの経済的な成功度合いは”そこそこ”ということになる。例えばY CombinatorのPaul Grahamは、過去10年でもっとも影響力のあるVCの1人だが、彼が設立したViawebは”たった”4900万ドルで売却された。現実的な基準で考えると、Viawebは間違いなく成功したビジネスだったが、今日の派手なサクセスストリーや資金調達のニュースに照らすと、そうでもないように見えてくる。また、Viawebは買収されるまでに250万ドルしか調達していない。しかしGrahamはかなり大きなリターンを得ることができ、このエグジットはその後の彼の将来を左右するような出来事となった。どうやら”小規模な”エグジットでも大きなことに繋がる可能性はあるようだ。

注:このリストには抜けがあるかもしれないので、もしも漏れている人がいれば是非教えてほしい。ドットコムバブル期のエグジット額は正確に評価するのが難しいため、別途出典をまとめている。金額に関する情報が明らかになっていないケースについては、買収額が売却先のマテリアリティスレッシュホールドを下回るという仮定に基いている(出典:Founder Collective)。

過小評価されている1億ドルのサクセスストーリー

自分の会社を1億ドルで売却するというのは、VCだけでなくスタートアップコミュニティ全体からも冷笑されることがある。Mint.comのファウンダーとして有名になったAaron Patzerは、サイトの革新的なUXを評価したIntuitに同社を1億7000万ドルで売却した。彼は「大きく出るかやめるか」いう哲学を信じていなかったのだ。しかしMint.comの売却でひと財産を築いた彼は、その後批判を受けることになる。さらに、1億ドル規模の”小さな”エグジットに対する軽蔑心がスタートアップ界に蔓延するあまり、Urban Dictionaryには自分の企業を低すぎる価格で売却することを表す表現さえ登録されている。「Pulling a Patzer」というフレーズで調べてみてほしい。

私たちの投資先が大手テック企業に1億ドル強で買収されることが最近決まった。私たちは短期間で大きなリターンをあげることができ、共同ファウンダーたちは昨年のレブロン・ジェームズの年収を上回るほどの金額を手にした。現実的に見て、この売却は当該企業にとっては最善の結果であっただろうし、関係者全員にとっても大きな成功と言えるものだった。

ユニコーン企業の存在にとらわれている現代のスタートアップ関係者が、もしもこのエグジットを失敗と考えるのであれば、彼らのビジョンには問題があるし、最悪の場合は単に皮肉を言っているようにさえ映る。

「大きく出るかやめるか」という崩壊したロジック

私たちはなるべく早くエグジットを目指したほうが良いと言っているわけでもなければ、自分の会社の可能性を低く見積もれと言っているわけでもない。私たちは次なるUberやGoogleやFacebookに投資したいと考えている。しかし現実として、全ての企業が彼らのような規模になるべきだとは言えない。これほど多くの(元起業家の)VCが、ユニコーンのステータスには遠く届かないようなスタートアップで成功をおさめられたのは、早い段階でのエグジットという選択肢を残せるような評価額で、適切な額の資金を調達していたことが関係している。

シードステージで将来10億ドル規模のビジネスに成長するであろうと思えるようなアイディアも、その道中で予想外の障壁にぶつかることがある。身の丈にあった資金調達を行ってきたスタートアップにとって、この障壁が生死を分ける問題になることはほとんどない。しかし残念ながらほとんどのVCは、その規模のせいでポートフォリオ企業のいくつかを10億ドル以上でエグジットさせなければいけないのだ。そのためVCは必要以上の資金をスタートアップにつぎ込むものの、企業が思い通りに成長しなければ、現実的かつ実り多いエグジットの可能性が無くなってしまう。

例えばあなたの企業が、前年度に1000万ドルの売上を記録し、直近のラウンドで5000万の評価額がついたとしよう。人気の業界にいるこの企業は、売り上げを今年度中に倍増しようと考えているが、利益は薄く、なかなかユニットエコノミクスも成立させられないでいる。普通に考えると、この企業が次回のラウンドで達成できるのは、プレマネーの評価額が8000万ドル、そして調達額が2000万ドルといったところだろう。

”小規模な”エグジットでも大きなことに繋がる可能性があるのだ。

しかし今日のVCは、企業が成長している様子や市場の盛り上がりを見るやいなや、ファウンダーに「大きく出るかやめるか」と言い聞かせようとする。すぐにでも手元に残った2000万ドルを投資しようとしている(次なるファンドを組成するために手元資金を使いきろうとしている)このVCは、先述の現実的な数字の代わりに、2億6000万ドルの評価額で4000万ドル(うち半分を当該VCが出資)を調達するようファウンダーを説得するのだ。そうするとポストマネーの評価額は3億ドルになり、VCが求めるようなリターンを実現するには、この企業を10億ドルで売却しなければいけなくなってしまう。

1000万ドル程度の売上と薄い利益しかないにもかかわらず、この企業は5億ドルのエグジットというオプションを捨ててしまったのだ。もしも調達額が少なければ、5億ドルのエグジットでも関係者全員がハッピーになれていたはずだ。恐らくこの企業のバーンレートはその後上昇し、さらなる資金調達が必要になってくるだろう。もしもインフレした評価額を受け入れられるような売却先が見つからず、VCも輝きを失いつつあるこのビジネスへの投資をやめたとすると、かつては将来有望と考えられていた企業が倒産してしまう可能性もあるのだ。

ファンドの規模が全てを物語る

1億ドルのエグジットを実りあるものにするためには、過度な資金を調達しないように細心の注意を払わなければいけない。自由が欲しければ戦略的な資金調達を行わなければいけないのだ。これは自分の企業にあった投資家探しからはじまる。Founder Collective パートナーのDavid Frankelは「ファンドの規模が全てを教えてくれる」とよく言っている。かなり大雑把な目安として、スタートアップは少なくとも投資を受けるファンドの規模と同じくらいの金額でエグジットできるようにならなければいけない。例えば5000万ドル規模のファンドから資金を調達した場合は、1億ドルでのエグジットでなんら問題ない。しかし10億ドル規模のファンドから資金を調達したとすると、エグジット時の期待値も膨大な額になるため、投資家選びは慎重に行い、どんな契約を結ぼうとしているのかしっかり把握するようにしたい。

1億ドル規模のスタートアップは恥ずかしくない

テック企業の大半は1億ドル未満で売却されているし、実のところ、必要最低限の資金を調達し1億ドルで事業を売却できれば御の字だ。元起業家のVCの多くも、自分たちのスタートアップを売却したときはこれが成功だと考えていた。ファウンダーにとっては、数千万ドルでのエグジットの方が、数億ドル、はたまた数十億ドルのエグジットより儲かるケースさえある。

ある程度成功したスタートアップを売却すれば、ファウンダーは残りの人生を心地よく過ごせるくらいのお金を手にすることができる。中には新たな事業をはじめる人もいれば、後に世界的に有名になるアクセラレーターを設立する人もいる。実際に多くのファウンダーが、起業家の世界における”まぁまぁの”成功をおさめた後に、ベンチャーキャピタルの世界で素晴らしいキャリアを築いているのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

『20 under 20』書評:ピーター・ティールの若き起業家育成プログラムを実感的に描く

TechCrunch Japanの同僚、高橋信夫さんと共訳した『20 under 20』(Kindle版)(日経BP)がこの週末から書店に並び始めたのでご紹介したい。ピーター・ティール(Peter Thiel)からの奨学金10万ドルを資金としてシリコンバレーで苦闘する若い起業家たちを描いたノンフィクションだ。

著者のアレクサンドラ・ウルフはWall Street Journalのベテラン・ジャーナリストで、家族ぐるみでティールと親しかったことからフェローシップとシリコンバレーに強い興味を持ち、2011年から2016年まで足掛け6年にわたって若いフェローたちに密着して取材した。

大学なんか止めてしまえフェローシップ

TechCrunch読者にはピーター・ティールの名前はおなじみだと思う。PayPalの共同ファウンダー、CEOからベンチャーキャピタリストに転じ、Facebookの最初の大口投資家となった。現在でもFacebookの8人の取締役の1人だ。起業の重要性を力説した著書『ゼロ・トゥ・ワン 』(NHK出版)は日本でもベストセラーとなっている。

ピーター・ティールは2011年のTechCrunch Disruptで「大学をドロップアウトしてシリコンバレーで起業させるために20歳未満の優秀な若者20人に10万ドルずつ与える」というプログラムを発表した。20 under 20というのは「20歳未満の20人」という意味で、発足当時のプログラムの名前だった。現在では22歳未満に条件がやや緩められ、ティール・フェローシップと呼ばれている。

クレージーな若者たち

このプログラムには小惑星探鉱から不老不死の研究までありとあらゆるクレージーなアイディアを追う若者たちが登場する。そうしたアイディアには結実するものもあるが中断されたりピボットしたりして消えるもの多い。しかし「失敗などは気にするな。シリコンバレーで失敗は勲章だ」というのがティールの信念だ。

ティール・フェローにはTechCrunchで紹介された起業家も多数いる。睡眠の質を改善するヘルスモニター、Senseを開発したJames Proudもその一人だ。Kickstarterで製造資金を得るのに成功したことで注目された。

KickstarterでSense睡眠トラッカーを紹介するJames Proud(2014)

シリコンバレーの生活の空気感

『20 under 20』はスタンフォード大学にほど近いベンチャーキャピタリストの本社が並ぶサンドヒル・ロードに新築されたローズウッド・サンドヒルというホテルの中庭のプールの描写から始まる。ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの本社もこのホテルの隣だ。しかし創業パートナーの一人ベン・ホロウィッツが書いた『HARD THINGS』(日経BP)が起業や経営の困難と対処の実態を描いたのに比べて、『20 under 20』はむしろファッションから朝のコーヒーまで起業家たちとシリコンバレーで生活を共にしているような感覚を与える。

本書では政府・自治体による規制とスタートアップにも1章が割かれ、Uberなどがどのようにして規制と戦ったかが、敏腕ロビイーストの目を通じて描かれていたのも興味深かった。バイオテクノロジーにも重点が置かれている。下のビデオは『20 under 20』の主役の一人、不老長寿を研究するローラ・デミングのTEDプレゼンテーション。

TEDで不老長寿研究はビジネス化できると主張するLaura Demming(2013)

アレクサンドラは『ザ・ライト・スタッフ』(中央公論)や『虚栄の篝火』(文藝春秋 )などの作品で有名なトム・ウルフの娘だ。トム・ウルフは対象に密着して取材する「ニュージャーリズム」という手法の先駆者で、この言葉を作った本人でもある。アレクサンドラのシリコンバレーの描写はは父親ゆずりのニュージャーリズムの手法かもしれない。

10億ドル企業を作るのが目的ではない

ティールは信じることは即座に口にし、かつ実行してしまう性格のためとかく論議を巻き起こしているが、この「大学なんか止めてしまえ」というフェローシップ・プログラムにはことに激しい賛否の議論が起きた。反対派の急先鋒、ヴィヴェック・ワドワ(Vivek Wadhwa)はTechCrunchに大学教育の意義を主張するコラムを書いたので記憶している読者もいるかもしれない。この経緯も本書に詳しい。

アレクサンドラは起業家を一方的に賞賛するわけではなく、激烈な競争社会に疑問を感じて東部の大学に戻ったフェローも十分時間をかけて取材し、いわばシリコンバレーの光も闇も描いている。

またこの本にはTechCrunchも繰り返し登場する。アレクサンドラの言うことにすべて賛成だったわけではないが、シリコンバレーを中心としてテクノロジー・エコシステムをカバーするTechCrunchの影響力をあらためて感じた。

アレクサンドラ・ウルフはティール・フェローシップをこう要約している。

〔ティール・〕フェローシップはミレニアル世代の縮図なのだ。このフェローシップは「きみたちが本当に優秀ならここに来たまえ。きみたちの世代の『ベスト・アンド・ブライテスト』に何ができるか証明してもらおうではないか」という挑戦なのだ。そのうちの誰かが10億ドル企業を作れるかどうかは問題ではないのであろう。

ご覧のようになかなか目立つ装丁なので書店で見かけたら手に取っていただけるとうれしい。

滑川海彦@Facebook Google+

政治戦略家にしてVC、ブラッドリー・タスクがシリコンバレーで成功した理由を語る

2017-02-13-bradley-tusk

ブラッドリー・タスクは以前から政治の世界で著名だった。タスクはロッド・ブラゴジェヴィッチイリノイ元州知事(その後 オバマ上院議員の後継者を指名する際の汚職で有罪)の下で知事代理(deputy governor)を務めた後、選対幹部としてマイケル・ブルームバーグのニューヨーク市長3選を助けた。

実際このときブルームバーグから多額のボーナスを受け取ったおかげでタスクは2010年からコンサルタント会社をスタートさせることができた。タスクはFortune 500企業が特定の目的を達成するために政治キャンペーンを展開するのを助けた。1年後、タスクはUberの最初の社外コンサルタントとなる。ここでも
再び幸運に恵まれ、報酬を株式で受け取った。以降、タスクはTusk Venturesという別組織のファウンダーとなり、報酬を株式でのみ受け取ることとした。シリコンバレーのスタートアップだけでなくベンチャーキャピタルも規制当局に対して政治的影響力の行使が必要な場合はタスクを頼るようになった。タスクのクライアントはEaze,、AltSchoolLemonadeHandyなど26社を数える。

先週のStrictlyVCカンファレンスでタスクはシリコンバレーにおける自分のビジネスを説明した。私は噂のように公職に立候補するつもりがあるのかを尋ねた。またスタートアップがトランプ政権に何を要求すべきかも尋ねた。文字起こしは分かりやすくするために編集されているが、インタビューそのもののビデオを下にエンベッドしてある。

〔日本版〕イリノイ州では副知事(Leutenant Governor)は公選職。タスクが就いたDeputy Governorは知事は知事直属の補佐役。「知事代理」としたが定訳はないもよう。インタビュー文字起こしは原文参照。一部を要約すると以下のとおり。

  • 立候補について、「自分自身で公職を目指すつもりはない」と否定した。ニューヨークでPAC(政治活動委員会)を結成したのはデブラシオ市長に反対する活動のためだったという。前市長、マイケル・ブルームバーグが大統領選挙に出馬を検討したときはシェリル・サンドバーグを副大統領に推薦した。
  • タスクのもっとも重要な功績はUberが規制当局と戦うのを助けたこととされる。現ピッツバーグ市長はスマート化により都市の再生を図ろうとしているため、Uberや自動運転車に道を開くことに力を入れているという。
  • シリコンバレーの政治状況についてはテクノロジー系の人々が居住自治体での投票率が低いことを問題にしている。またトランプ大統領に関しては「感情的にならず、議会多数派である共和党幹部に働きかけるべきだ」とした。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+