「順調な上半期」という発表の裏でファーウェイが語らなかったのは「スマホの伸びゼロ」

米国時間7月30日、Huawei(ファーウェイ)は「順調さ」を強調した上半期報告を発表し、メディアはおおむね受け入れれたようだ。しかしここで語られていない大きな問題がある。第1四半期から第2四半期にかけて同社のスマートフォンの売上の伸びはゼロだったのだ。

テレコム機器とスマートフォンの有力メーカーであるファーウェイは2019年上半期の決算を発表し、米国の制裁措置にもかかわらず、上半期の売上が23.2%増加し、4013億元(583.1億ドル、約6.3兆円)に達したと発表した。 同社の上半期のスマートフォン出荷台数は1億1800万台となり、対前年比24%のアップだった。

なるほど好調な上半期だったといえようが、では四半期単位ではどうなっていたのだろう?ファーウェイは発表していないが、簡単な計算で語られなかった事実を知ることができる。同社は第1四半期に対前年比で収入を39%を伸ばしている。つまり上半期の成績が好調だったのは第1四半期のせいで、第2四半期は足を引っ張っていたことが分かる。

ファーウェイは上半期の売上が前年比23.2%アップしたと言っている。しかしQ1が39%アップだったことを考えれば Q2はそうとう悪かったに違いない。

ファーウェイは第1四半期にスマートフォンを5900万台出荷している。つまり上半期の出荷合計1億1800万台から5900万台を引けば第2四半期の出荷台数も5900万台だったとわかる。テクノロジージャーナリストのAlex Barredo(アレックス・バレード)氏が Twitterで指摘したように、 これまで同社の第2四半期のスマートフォン出荷台数は第1四半期を大きく上回ってきた。

ファーウェイのスマートフォン売上はこれまで第1四半期から第2四半期にかけて大きく伸びていた(平均(32.5%のアップ)。ところがトランプ大統領の制裁発動の後、今年は伸びゼロ。これはすごい効果だ。

中国国内ではファーウェイのスマートフォン売上は伸びている。市場調査会社、Canalysが調べた国内販売のデータでは、第1四半期(2990万台)に対して第2四半期( 3730万台)となっている。しかし国内販売の伸びは国際市場での落ち込みを帳消しにするほどの力がなかったわけだ。実際ファーウェイのファウンダーの任正非(Ren Zhengfei)氏自身、6月に同社の海外市場でのスマートフォン売上は最大40%程度下落する可能性があると予想していた

この打撃が生じた理由は複数ある。制裁によってファーウェイは米国の提携企業が開発したコアテクノロジーから締め出されることになった。例えば、Google(グーグル)はファーウェイに対しAndroidサービスの重要な部分を提供することを停止した。Android OSそのものはオープンソースであり引き続き利用できるが、米国の貿易規則はグーグルがファーウェイにソフトウェアアップデートを提供することを禁じている。

半導体メーカーのARMもファーウェイとの関係を断つことを余儀なくされた。米国による制裁措置の打撃を緩和するためめに、ファーウェイは独自の半導体やスマートフォンOSを開発しているというニュースも流れた(のちに同社はこのOSは産業向けのものだと主張している)。しかしこうした措置が効果を挙げるとしても、だいぶ時間がかかるだろう。

もちろんファーウェイという巨人にとってスマートフォンのような消費者向けプロダクトは事業の一部分に過ぎない。しかし同社のエンタープライズ向け事業もまた攻撃を受けている。米国では価格の安さから小規模な地域キャリアの多くがファーウェイを利用してきた。しかし制裁措置以来、関係を断つ会社が増加している。トランプ政権は西側諸国に対し5Gネットワーク構築にあたって同社の機器を採用しなよう強く働きかけている。

簡単にいえば、米国のブラックリストに載せられ、米企業とビジネス関係を持つことができなくなったことはファーウェイに対して非常な圧迫となっている。ワシントンは一定の猶予期間を設け、一部製品については同社との輸出入の再開を認めたが、すでに大きな打撃が与えられたことは明らかだ。ファウンダーの任氏は先月、「米国の制裁措置はひっくるめて300億ドルの収入の落ち込みをもたらすかもしれない」と述べている。

ファーウェイの会長、 梁華(Liang Hua、写真)氏は本日の声明で「我々は困難な時期を迎えている」と認めたが、同時に「前途が明るいものであることに確信がある。1200億元にのぼる今年のR&D関連投資を含め、我々は予定どおり投資を進める。いくつかの困難を克服し、最悪の時期を後にして、今後は新たな成長段階に入れることに自信を持っている」と述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Salesforceが中国でのローカライズと販売に向けてAlibabaと提携

20年の歴史があるCRMツールのリーダーSalesforce(セールスフォース)は、中国テック企業最大手のひとつ、Alibaba(アリババ)と提携してアジア進出を進める。

両社が7月25日に発表したところによると、Alibabaは中国本土、香港、マカオ、台湾の企業に対してSalesforceを独占的に提供し、SalesforceはAlibabaが販売する企業向けの独占的なCRMソフトウェアスイートになる。

中国のインターネットは、TencentのWeChatメッセンジャーやAlibabaのTaobaoマーケットプレイスなど、もっぱら消費者向けのものとして利用されてきた。しかし企業向けソフトウェアが企業や投資家から注目を集め始めている。例えばワークフローオートメーションのスタートアップのLaiyeは最近、Cathay Innovationの主導で3500万ドル(約38億円)の資金を調達した。成長段階のファンドであるCathay Innovationは、中国では「企業向けソフトウェアの急速な成長が始まった」と見ている。

このパートナーシップにはお互いに利点がある。Alibabaは、膨大な数の中小企業に対してeコマースのマーケットプレイスで販売したり、自社のクラウドコンピューティングサービスで提供したりすることのできる、Salesforceに相当する製品を持っていない。Salesforceのような大手と組めば、この欠落が埋まる。

一方のSalesforceは、Alibabaを通じて中国で売上を伸ばすことができる。Alibaba Cloud IntelligenceのKen Shen副社長は声明の中で、AlibabaのクラウドインフラとデータプラットフォームはSalesforceにとって「ソリューションをローカライズし、多国籍企業のお客様にとってよりよいサービスを提供できる」ものだと述べている。

Salesforceは声明で「多国籍企業のお客様から、世界中どこでも、事業を展開しているところでは対応してほしいという要望が増えている。このことが、今回Alibabaとの戦略的パートナーシップを発表した理由だ」と述べている。

430日までの3カ月間のSalesforceの売上は、20%がヨーロッパ、70%が米国で、アジアはわずか10%にすぎない。

Salesforceはこの提携により、顧客獲得のチャネルを得るだけでなく、中国ベースのデータをAlibaba Cloudに保存することもできるようになる。中国では、海外企業はすべて、中国のユーザーに由来するデータの処理と保存は中国国内の企業と連携しなくてはならない。

Alibabaの広報はTechCrunchに対し「この提携により、中華圏で事業を展開しているSalesforceのお客様はAlibaba CloudでローカルにホストされているSalesforceに独占的にアクセスできるようになる。Alibaba Cloudはローカルのビジネス、文化、規則を理解している」と述べた。

クラウドはAlibabaにとって垂直成長の重要な部分だ。大手の提携先の獲得は、中国最大のクラウドサービスプロバイダとしての基盤強化につながる。Salesforceは2018年12月に日本のスタートアップへの投資を目的とした1億ドル(約108億円)のファンドを設立して、アジア進出を前進させた。今回のAlibabaとのパートナーシップにより、いよいよアジアの顧客を獲得していくことになるだろう。

画像:Alibaba

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(翻訳:Kaori Koyama)

Nintendo Switchが中国でTencent経由で発売へ

数カ月前から期待されているNintendo Switchの中国での販売が近づいてきた。日本のゲーム最大手とTencent(テンセント)は、世界最大のゲーム機市場にSwitchを持ち込むべく「懸命の努力」を続けている、とWeibo(中国のTwitter相当サービス)で発表した。

両社は正式発売日を明らかにしていないが、これは政府の承認手続きに数カ月を要するからだそう。しかし、順調に進みそうな兆候はある。例えば、Tencentは「NewスーパーマリオブラザーズUデラックス」などいくつかの大ヒット作品のトライアルバージョンを中国で実行するための許可を得ている。

Tencentは両社がSwitchの共同記者会見(発売はまだ)を8月2日に上海で行うことをTechCrunchに正式に伝えた。中国最大のゲーム展示会であるChina Joyが同じ日に同市で始まることから、これは戦略的な行動と言えそうだ。

共同イベントにはTencentのSteven Ma上級副社長と任天堂の柴田聡取締役が出席する予定

中国でのSwitch発売がTencentとの販売契約によって可能になることで、任天堂は成長の鈍化に歯止めをかけられそうだ。これはTencentのゲーム事業の多様化にも貢献する可能性がある。昨年同社は、中国政府がオンラインエンターテイメントの取締を強化したことで痛手を受けている。

Switchは、ソニーのPS4やMicrosoft(マイクロソフト)のXboxとの厳しい競争の中、中国でも苦戦していた。理由は多岐にわたる。中国は未成年を有害コンテンツから守るために、2014年までゲーム機を禁止していた。さらに、ゲーム機はモバイルゲームと比べてずっと高価なことから、モバイルファーストの同国で社会的交流の手段となることは難しい。

画像クレジット:Tencent、 Nintendo Switch

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国が活気づく電子タバコ産業の規制を計画

電子タバコに対する健康上の懸念が近年増大しているため、中国はその開花しつつある市場を規制するための措置をとろうとしている。

中国の国家衛生健康委員会(国家卫生健康委员会)が、電子タバコの調査を開始し、業界に向けての法案を提出することを計画していることを、当局の責任者であるMao Qunan(マオ・クナン)氏が今週のプレス会議で発表した。この動きが起きたのは、中国の電子タバコスタートアップたちが、昨年世界最大の喫煙者市場の中で注目を争って莫大なVC資金を調達したことによる。

中国における電子タバコサプライヤーには、業界大手のJuulによる訴訟を受けているあまり知られていない小さな工場から、中国への進出を狙っているJuul自身、そして深圳の製造業ネットワークから生まれた、VCによってバックアップされているスタートアップまで様々なものがある。Crunchbaseが収集したデータによれば、少なくとも20社の中国の電子タバコ会社が2019年の初め以降資金を調達している。

これらの企業は実質的に、国家独占企業である「中国烟草」(China Tobacco)に対抗する勢力である。中国烟草は世界最大のタバコメーカーであると同時に、政府に巨額の税収をもたらしている。

成人が喫煙を止めるために、電子タバコが役立つという説を支持する研究者もいるが、一方では電子タバコは従来のものと変わらない習慣性を持っているという証拠を示す者もいる。 その他の大きな論争は、10代の若者の間で電子タバコの使用が増えていることであり、これがカリフォルニア州の電子タバコ製品販売禁止計画につながっている。

関連記事:San Francisco takes the final steps toward becoming the first U.S. city to ban vaping product sales

中国は、新しい喫煙技術にさらなる精査も行っている。その調査によれば、電子タバコを加熱することによって生成されるエアロゾルには、「大量の有害物質」が含まれ、電子タバコの添加物は「健康上のリスクをもたらす」可能性がある、とマオ氏は語った。彼はまた、ニコチンレベルのあいまいな表記は喫煙者をミスリードし、ずさんな機器の規格はバッテリーの暴発やその他の安全性の懸念があることを指摘した。

米国と同様に、中国でも若者の間で驚くほど高い電子タバコ率が観察されている。これもまた、北京政府が業界の調査に乗り出した理由の1つである。子供、10代、そして若者による電子タバコ利用は安全ではないことが証明されている。なぜなら習慣性の強いニコチンが、脳の発育に害を及ぼす可能性があるからだ。

5月に中国は、ニコチンのレベル、添加剤の種類、および電池式シガレット装置に許容される部品とデザインを規定する、電子タバコ用の一連の規格(中国語)を作成した。

画像クレジット:EVA HAMBACH/AFP / Getty Images

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(翻訳:sako)

脅しに出たFacebook、我々がやらなければ中国に乗っ取られる

Facebookは、中国が権威主義的な社会的価値観を輸出するという懸念を、事業の分割や抑制を求める圧力への反論の材料にし始めた。Facebookの幹部たちは口々に、もし米政府が企業規模の制限、企業買収の妨害、暗号通貨の禁止などに出れば、そうした制約のない中国企業が海外で勝利し、巨大な力と膨大なデータを中国政府にもたらすようになると主張している。CEOのマーク・ザッカーバーグ氏、COOのシェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)氏、コミュニケーション担当副社長のニック・クレッグ(Nick Clegg)氏はみな、この立場を表明している。

この論点は、米国時間7月16日と17日の米議会によるLibra(Facebookが主導し2020年前半に運用開始を目指しているデジタル通貨)に関する公聴会で改めて具体的に語られた。Facebookのブロックチェーンを扱う子会社Calibraのデイビッド・マーカス(David Marcus)氏は、米下院金融サービス委員会のために用意した意見書で、こう述べている。

「米国は、デジタル通貨と支払いの分野ではイノベーションを主導できず、他国がそれを行うようになると私は考えています。もし行動を起こせなければ、たちまち、まったく価値観が異なる別の者にデジタル通貨を支配されるようになるでしょう」。

2019年7月16日、ワシントンD.C.の連邦議会で開かれた上院銀行住宅都市委員会公聴会で証言するFacebookのCalibra代表デイビッド・マーカス氏。同委員会は「Facebookが提案するデジタル通貨とデータプライバシーに対する考察」に関する公聴会を開いた(写真: Alex Wong/Getty Images)

マーカス氏は、昨日開かれた上院銀行小委員会でも、こう話している。「このまま動かずにいれば、10年15年後、世界の半分はブロックチェーン技術に依存した社会となったときに、我々の国家安全保障の手段が及ばない事態になりかねません」。

この議論は、下院が検討している「巨大ハイテク企業の金融業参入を禁止する」法律に対抗するものだ。ロイターの報道によれば、この法案は、Facebookなどの年間収益が250億ドル(約2兆7000億円)を超える企業は「デジタル資産の設立、維持管理、運用を行うべきではない。これらは交換媒介物、勘定単位、価値の保存など同様の機能に広く使われることを想定している」とのことだ。

Facebookは、暗号通貨は避けて通れないとのメッセージを伝えようとしている。Libraの禁止は、良心を欠くいい加減な企業にこの技術を支配させるチャンスを与えるだけかも知れない。しかし、Facebookのこの主張は、暗号通貨のためだけではない。

関連記事:Libra上院公聴会まとめ(未訳)


この考えは、ちょうど1年前、ザッカーバーグ氏がRecorde誌のカーラ・スウィッシャー(Kara Swicher)氏のインタビューに応えたときに固まった。「この質問は政策的な観点からのものだと思います。つまり、米企業を世界に輸出したいか?」。

「私たちはこの国で育ち、ここでとても大切に感じている多くの価値観を共有していると思います。そうすることは、安全保障の面でも価値観の観点からしても、総じてとてもいいことだと思います。なぜなら、それとまったく異なるのが、率直に言って、中国企業だからです。もし私たちが、『オーケー、ボクたちは国家として、それらの企業の羽根を切って、他の場所での活動を難しくするよに決めよう。そこでは小さくなるからね』というスタンスを受け入れたとしましょう。すると、たくさんの企業が私たちがやている仕事に参入を望むようになり、またそれが可能になります」。

それはとくに中国企業のことを指しているのかと質問すると、ザッカーバーグ氏はこう強調した。

「そう。それに、彼らの価値観は我々のものとは違います。選挙妨害やテロリズムのことを政府が把握したとしても、中国企業は我々ほど協力的にはならず、その国の利益のために力を貸すなんてことは、絶対にないと思います」。

2018年4月10日、ワシントンD.C.キャピトルヒルにあるハート上院オフィスビルで開かれた上院司法および商業の合同委員会で証言するFacebook共同創設者、会長、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏。ザッカーバーグ氏(33歳)は、8700万人のFacebookユーザーの個人情報がイギリスの政治コンサルティング企業Cambridge Analyticaに渡った事件とトランプ氏の選挙キャンペーンとの関係が報道された後に証言を求められた

今年の4月、ザッカーバーグ氏は、人権に関する実績に乏しい国々でのデータローカライゼーション規制にFacebookが反対する理由を述べた際に、さらに一歩踏み込んでいる。彼は、外国にデータが保管されることの危険性を説いている。規制当局がFacebookの活動や、各地でのイノベーションの発生を阻止すれば、まさにそれが起きる。哲学者ユヴァル・ハラリ氏に、ザッカーバーグ氏はこう話した。

「将来を考えるとき、非常に不安になることに、私が示してきた価値観(インターネットとデータに関するもの)が、すべての国に共通する価値観ではないという問題があります。どこかのとても権威主義的な国で、ヨーロッパやその他の多くの地域で用いられている規制の枠組みからかけ離れたデータ政策が話題になり導入される。GDPRのような、人々の自由や権利を尊重する規制を各国が受け入れる、という形とは違うものとしてすぐに思い浮かぶのが、現在広まりつつある権威主義的なモデル、つまり各国が全員のデータをその国のデータセンターで管理するという方法です。もし私が政府の人間で、そこへ軍隊を送り込めば、監視や軍事のための欲しいデータにいくらでもアクセスできてしまうのです。

それは非常に暗い未来です。インターネットサービスを構築する人間として、または単に世界の市民として、進んで欲しくない方向です。もし、政府があなたのデータにアクセスできるようになれば、あなたが何者かを特定し、あなたとあなたの家族を捕らえ、傷つけ、本当に深い身体的危害を与えることが可能になります」。

Facebookがこのほど雇い入れたコミュニケーション部門の責任者ニック・クレッグ氏は、1月、記者団に対してこう話した

「これらはもちろん、道理に適った質問ですが、驚くほどの頭脳と、私たちが大西洋を挟んで要求しているプライバシーやデータ保護に関する法律や規制の制約を受けずに大規模にデータを処理できる能力を合体させた中国については、あまり語られていません。(そしてそのデータは)論議を呼んでいる中国政府の社会信用システムのような、さらに陰湿な監視に悪用されます」。

Facebookの共同創設者クリス・ヒューズ(Chris Hughes)氏の、Facebookは分割させるべきという主張に対して、クレッグ氏は5月にこう書いている。「Faebookは分割してはいけない。しかし、責任は果たさなければいけない。インターネットの世界で私たちが直面している難題を心配するのなら、成功している米企業を解体するのではなく、インターネットの権利に関するルールに従うことを考えるべきだ」。

その翌月ベルリンでのスピーチの中で、彼はこう力説した。

「もし、私たちヨーロッパと米国がホワイトノイズを切って協力を始めなければ、インターネットがもはやユニバーサルな空間ではなく、それぞれの国が独自のルールと権威主義的な体制で、市民の自由を制限する一方で吸い上げた市民のデータの貯蔵庫が立ち並ぶ世界となったとき、私たちは夢遊病者のように、そこをさまようことになります。私たち西側諸国が、ただちに、徹底的にこの問題に取り組まなければ、その答は、我々の手から離れてしまいます。地球上の私たちの側に共通のルールを作れば、それが好例となり、残りの世界も追従します」。

COOのシェリル・サンドバーグ氏は、5月に行われたCNBCのインタビューで、かなり直接的にこの問題点を突いている。

「分割は可能ですし、他のハイテク企業も分割できるでしょうが、人々が心配している根底の問題は解決されません。人々がハイテク企業の規模と権力を心配する一方で、米国では中国企業の規模と権力、そして中国企業は今後も分割されないことを知り、心配が持ち上がっています」。

2018年9月5日、ワシントンD.C.米連邦議会で開かれた外国による影響工作におけるソーシャルメディア・プラットフォームの使用に関する公聴会で証言するFacebook最高執行責任者シェリル・サンドバーグ氏。TwitterのCEOジャック・ドーシー氏とFacebookのCOOシェリル・サンドバーグ氏は、外国の工作員が、どのように彼らのプラットフォームを使い、世論に影響を与え操ろうとしているかという質問に晒された(写真:Drew Angerer/Getty Images)

脅しの戦法

事実、中国は個人の自由とプライバシーに関して、米国とは異なる価値観を持っている。そしてそう、Facebookを分割すれば、WhatsAppなどの製品が弱体化し、中国の巨大ハイテク企業TencentのWeChatなどの急速な増殖を招くだろう。

しかし、Facebookの問題を回避できたとしても、オープンで公正なインターネットにもたらされる中国の影響がなくなるわけではない。この問題を「規制強化は中国に利する」という枠にはめれば、誤った二元論を生む。ザッカーバーグ氏がウェブを通して自由を輸出しようと真剣に政府と協力する意志があれば、もっと建設的なアプローチが考えられる。さらに、適切な規制がない中で犯された過ちにより積み重ねられたFacebookへの不信感が、米国的な理想が米企業によって広められるという認識を、間違いなく大きく傷つけたということもある。

Facebookの分割は、特にそれが今後の不正を防ぐための理路整然とした理由ではなく、Facebookの不正行為に基づいて行われるなら、答えにはならないだろう。結局のところ有効なアプローチは、大規模に、または急速に成長するソーシャルネットワークの今後の買収を止めること、本当の意味でのデータのポータビリティーを保証させ、競合他社に乗り換える自由を現在のユーザーに与えること、プライバシーに関するポリシーの適切な監視を行うこと、そして、Libraの運用開始を、ユーザーを混乱させないよう、テロリストに悪用されないよう、世界経済を危機に陥れないよう、いろいろな段階でのテストを重ねる間、遅らせることだ。

脅しの戦法は、Facebook自身がそれを恐れていることの証でもある。長年、安全戦略で成長を続けてきた結果、ついにそこへ辿り着いてしまったのかも知れない。米連邦取引委員会による50億ドル(約5400億円)の制裁金が課されても、1四半期の収益がそれを超える企業にとっては、ちょっと手首を叩かれた程度のことでも、分割となればダメージは大きい。恐怖を振りまくことより、悪用を防ぐことに集中して規制当局と誠意をもって協力することが、Facebookの利益になる。中国の脅威を持ち出し、政府当局者の不安を煽るのが、政治的にはうまいやり方であって、もしかしたら有効なのかも知れない。しかし、それは間違っている。

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(翻訳:金井哲夫)

アップルが中国初のデザインと開発のアクセラレーターを開設

アップルは中国初のデザインと開発のアクセラレーターを上海に開設した。重要な海外市場のひとつである中国でサービスビジネスを拡大するために、地元の開発者が優れたアプリを作れるよう支援する。

アップルは、このアクセラレーターで開発者向けに定期的な講義、セミナー、ネットワーキングセッションを開始したと発表した。これは同社が2年前にインドのバンガロールに開設したのと同様のものだ。

インドにはアップル関連のアプリ開発者が約50万人いる。アクセラレータープログラムに参加した30人以上の開発者がTechCrunchに対し、このプログラムはきわめて有益だったと語っている。アクセラレーターへの参加は無料だ。

アップルは、台湾と香港を含む中華圏に250万人以上の開発者がいて、積極的にアップルのプラットフォームのアプリをさかんに開発していると述べている。中華圏の開発者はApp Storeの売上から290億ドル(約3兆円)以上を手にしている。公表されているところによると、アップルの売上の15%以上は中華圏が占めている。

アップルの中華圏のデベロッパリレーションズ責任者、Enwei Xie氏は声明で次のように述べている。「中華圏の開発者は世界をリードしている。App Storeで最も人気のあるアプリのいくつかは彼らが作ったものだ。我々は中華圏の開発者をこれまで以上にサポートできることをうれしく思う。教育から健康、エンターテインメントまで、我々が中華圏で目にする革新は素晴らしい。才能豊かな開発者たちが次に何を生み出すか、楽しみでならない」。

中国で(そしてほかの国でも)、iPadなど一部のデバイスは引き続き好調であるもののiPhoneの販売は成長が鈍っている。そのタイミングでデザインと開発のアクセラレーターが始まった。iPhoneの成長の鈍化は米中間で続く貿易摩擦から直接影響を受けている

アップルのティム・クックCEOは2019年第1四半期の収支報告に先立ち、投資家に向けて「私たちは中国の経済環境が貿易をめぐる米国との緊張の高まりによってさらに影響を受けたと考えています。不確実性が高まる風潮が金融市場に重しとなってのしかかる中、影響は消費者にも拡がる様相を見せており、中国では直営店やチャネルパートナー店への来客数が四半期終盤にかけて減少しました」と書いている。

中国での状況が好転してアップルの第3四半期はサービスの売上が急上昇するだろうと予想するアナリストもいる。

中国の大都市にデザインと開発のアクセラレーターを開設したことで、開発者がより質の高いアプリを作れるようになる。結果としてユーザーエクスペリエンスが向上し、アップルのサービスと製品のエコシステムとの関わりを深めることにつながるだろう。

インドの開発者アクセラレーターはアップルが初めて開設した開発者の拠点で、FlipkartやPaytmといった有力企業のスタッフがこのプログラムのセッションを通じて学び、各社のアプリを改良してきた。多くのアップルの社員や専門家がセッションで開発者をコーチしている。

アップルはここ数年、多くの市場でデザインとコーディングのプログラムを実施している。3月にはシンガポールの協力校でアプリ開発カリキュラムを拡大し、インドネシアには2つめの開発者アカデミーを開設すると発表した。イタリアでも同様のプログラムを継続している。今年の初めには、女性が設立した11のアプリ開発会社をアントレプレナーキャンプに受け入れた

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(翻訳:Kaori Koyama)

中国のゴミ分別はテックをフル活用、画像認識やQRコード、ミニアプリで

中国のゴミ問題についての取り組みは、国がそうであるようにデジタルをフル活用している。ゴミの入った袋がどこからきたのか、市の行政が追跡できるQRコードのついたゴミ袋がいい例だ。

7月1日、世界で最も人口密度の高い都市である上海市はゴミ分別を義務化するプログラムを開始した。新しい規則(中国語)では、家庭や企業はゴミを4種に分類し、決められた時間に決められた場所に捨てなければならない。遵守しなければ罰金が科せられる。そして、遵守しなかった企業やビルは信用レートが下げられる可能性がある。

この厳しいルール体制は、2400万人超の住民の間でプログラムの柔軟性のなさや、分別が分かりにくいと評判になった。しかしありがたいことに、中国のテックスタートアップが手助けする。

例えば、中国最大のインターネット企業は、どんなゴミが「ウェット(堆肥にできるもの)」「ドライ」「有毒」「リサイクルできるもの」になるのか特定できるよう、新たな検索機能の提供を始めた。たとえかなり環境問題に明るい人でも正しく分別できない。「イヌのフンを回収するのに使った新聞紙はどの分類のゴミ箱に捨てればいいのか」といった疑問などだ。WeChatやBaidu、Alipayのミニアプリを開いてキーワードを打ち込むといい。するとテック企業がその答えと理由を表示する。

Alibabaの電子支払い子会社であるAlipay(アリペイ)は、ゴミ分別ミニアプリを導入してわずか3日間でユーザー100万人を獲得した。ダウンロードしなくても10億人のユーザーを抱えるアプリの中で使えるこのライトバージョンのアプリは、これまでのところ4000タイプ以上のゴミの分類を案内する。データベースはまだ大きくなりつつあり、ゴミの写真を撮れば、分別を調べるのにタイプするのではなく画像認識を利用できるようになるだろう。AlexaのようなAlibabaのTmall Genieはすでに、「濡れたおしぼりはどのゴミに分類されるのか」などの質問に答えることができる(中国語)。

もし忙しすぎて、あるいは単に怠惰で回収日に間に合わせることができないようであれば、スタートアップが玄関先までゴミを回収に来るサービスを提供している。サードパーティのデベロッパーが手伝って、Alibabaはリサイクルミニアプリをつくった。そしていま、11市にある8000もの団地からゴミを回収している。これまでに200万人がこのプラットフォームを通じてリサイクル可能なものを売却した。

Alibabaのフードデリバリー部門であるEle.meは、展開車両が提供する「彼女への謝罪」「犬の散歩」といった御用聞きサービスのリストに「ゴミ回収」を加えた。

テック企業はまたビル管理者を手助けするためのソフトウェアも作っている。国営通信社・新華社の報道によると、上海の一部の住宅ビルはゴミの出元を追跡するためのQRコードの使用を開始した。各家庭はゴミ袋に識別QRコードの貼り付けが求められ、ゴミステーションに出されると分類のためにQRコードがスキャンされる。

こうすることでその地域の当局はどの家庭がそのゴミを出したのか正確に把握できる。しかし、上海市の現在の規則では個人の特定は求めていない。また新華社の別の報道(中国語)によると、正しく分別した人は少額の報奨金、1日あたり0.1元(1.45セント)をもらえる。

イメージクレジット: Photo by Wang Gang/VCG via Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

伝説的アナリストのネットトレンド2019の中国特集まとめ

先ごろ伝説的アナリストであるメアリー・ミーカー氏によるインターネットの全体像をまとめたInternet Trendsが発表された。今年はHillhouse Capital編集による中国特集がレポート末尾に付け加えられている。すでに目を通した読者も多いだろうが、相当のボリュームなので以下に特集の内容をまとめてみた。

インターネット全般

現在、世界のインターネット人口は38億人に達し、全人類の半分にまで普及した。これにともないネット人口の伸び率はダウンしている。これはスマートフォンの出荷台数の減少でも裏付けられる。中国は現在のインターネットの普及のトップを走っており、WeChat(微信)は中国国外にも拡大中だ。 WeChatのミニ・プログラムの数は100万を超え、App Storeの半分のサイズに成長した。

中国のインターネットのユーザー数は 8億人で世界のユーザーの21%を占める(2位はインド、続いて米国、インドネシア)。中国の企業は時価総額でネットのトップ企業30社中7社を占める。Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)、Meituan(メイチュアン)、Dianping(シャンピン)、JD.com、Baidu(バイドゥ)、NetEase、Xiaomi(シャオミ)だ。

2018のモバイルユーザーは前年比9%の成長で 8億1700万人となった。 モバイルデータ通信量は前年比で189%アップした。 これは2017の162%という成長をさらに上回る。

今年のレポートでは特に中国市場におけるショートビデオサービスの成長に注目している。2019年4月時点でのモバイルによるショートビデオの総利用時間は1日当たり6億時間だった。このサービスのリーダーはDouyin(抖音、国外ではTik Tok)、Kuaishou(快手)、Haokan(好看)が続く。

またコマース分野ではライブストリーミングも人気だ。Alibabaグループが投資して設立されたTaobao(淘宝)は2018年のライブストリーミングで商品取り扱い高総額140億ドルを記録している。アパレル系ではMoguが24%を占めている。【略】

スーパーアプリの登場

Meituan Dianping(美団点評)のスーパーアプリは次第に巨大化している。すでに30種類のサービスが含まれている(レストランレビューと予約、映画チケット購入、各種レンタル、ホテル・旅行予約、料理・生鮮食品宅配など)。ただしビジネスの主力はレストランと旅行関連関連で、売上の88%を占める。 ユーザー総数は対前年比で26%アップして4億1200万人に達した。

AlibabaのAlipayは単なる支払いアプリから20万種類のミニアプリをダウンロードできるアプリストアに進歩した。ユーザーはAlipayを通じてヘルスケア、投資、請求書、保険その他自動車関係の支払いなどを行うことができるユーザーは10億人、70%が金融関係のアプリ3種類以上を利用しているという。

こうした「なんでも屋」のアプリの登場はGrab、Rappi、Uberのような中国以外で生まれたサービスにも影響を与えている。例えば、Uberはアプリに食品宅配、電動自転車レンタル、セール情報などを載せるようになった。

オフラインとオンラインの融合

中国でもうひとつ注目すべきトレンドは生鮮食品の通販におけるビジネスモデルの多様化だ。これは中国以外の地域にも影響を与えていく可能性がある。

米国における生鮮食品の通販の大部分は2つのビジネスモデルに分類できる。1つは Instacartのように既存の小売業者と提携しアプリで注文を集めて自ら配送するサービスで、もうひとつはAmazon Prime NowやWhole Foodsにように独自に商品を用意し、フルフィルメントも自ら行うものだ。

これに対し中国では、生鮮食品の宅配アプリは4種類に分類できる。1つはAlibabaのが都市部で運営するHema(河馬)ストアから宅配するFreshippoやJD.comの7 Freshだ。これは独自に運営するスーパーを拠点とし、店舗付近のユーザーに短時間で商品を届ける。

Miss Fresh(每日优鲜)、Dindong Maicai(叮咚買菜)は、商品を独自に用意し、フルフィルメント・システムを運営するがストアは持たない。

3つ目のグループはXingsheng Youxuan(興盛優選)、Songshu Pinpin(松鼠拼拼)、Dailubo(呆蘿蔔)などで、地域の生鮮食品フランチャイズと提携し、WeChatなどのミニプログラムを利用して消費者に共同購入サービスを提供する。翌日のピックアップ、配送が可能。

4番目のグループはMeituan(美團)、Alibabaなど大企業と提携し、アプリで注文を集めるサービスでフルフィルメント、配送は提携企業が行う。

オフラインとオンラインの融合というトレンドのもう1つの例は教育分野だ。中国では従来対面で行われてきた教育をデジタル化する例が増えている。オンライン教育の最初のヒットはK-12(幼稚園から高校)の生徒の宿題を助けるホームワークアプリだった。同様に英語やプログラミングを早期に学ばせたいと考える3歳から10歳の子どもたちの両親がスマートフォンアプリを活用するようになった。

中国政府のデジタル化も急速だ。公共サービスがますます多数モバイル経由で提供されるようになった。これには独自に運営されるものに加えて、上で述べたWeChat、Alipayなどサードパーティーのスーパーアプリの1サービスとして提供されるものの双方がある。市民がスマートフォンから利用できるサービスとして、ビザ申請、公共料金支払、病院の順番待ち番号札取得、運転免許の更新など多様だ。こうしたデジタル化で人々は役所から別の役所へと移動しては行列に並ぶ必要がなくなり、非常に便利になった。

画像:Dong Wenjie / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中国初の自動運転ユニコーン企業Momentaは利益よりもデータを追う

Cao Xudong(曹旭東) は、ジーンズと彼のスタートアップ企業の名前である「Momenta」と書かれた黒いTシャツ姿で路肩に現れた。

昨年、企業価値10億ドル(約109億ドル)を記録し、中国初の自動運転系「ユニコーン」企業となったこの会社を立ち上げる以前から、彼は誰もが羨む生活を送っていたのだだが、自動運転は次なる大きな波だと自分に言い聞かせてきた。

曹は、完全な自動運転車で一発当てようと考えているわけではない。それは20年後の話だと彼は言う。むしろ彼は、半自動運転ソフトウエアを販売し、次世代の自動運転技術に投資するという、地に2本の足を着けたアプローチを取っている。

曹(中国語読みでツァオ)は、中国における人工知能研究者の第一世代のための「士官学校」と噂されるMicrosoftの基礎研究機関Research Asiaで働く機会を得たとき、まだ機械工学の博士課程にいた。彼は4年間以上Microsoftで辛抱した末、退職し、より現実的な仕事に手を付けた。スタートアップだ。

「その当時、学術的なAI研究はかなり成熟していました」と、現在33歳の曹は、Microsoftを去る決意をしたときを振り返り、TechCrunchのインタビューで語った。「しかし、AIを応用しようという業界の動きは始まったばかりでした。2012年から2015年までの学会での波よりも、業界で起きる波の方が大きくて強力なものになると私は信じていました」。

2015年、曹は、政府に納入している顔認証技術などによる高収益のお陰で今や世界で最も価値の高いAIスタートアップとなったSenseTimeに入社した。17カ月の在籍期間中、曹は研究部門をスタッフ0人からスタートして100人態勢の強力なチームに育て上げた。

間もなく曹は、またしても新たな冒険に惹かれるようになった。彼は、結果はあまり気にせず、「何かをやること」に重きを置いているという。その傾向は、名門精華大学の在籍中にすでに現れていた。彼はアウトドアクラブの部員だった。特別にハイキングが好きだったわけではないが、冒険のチャンスに恵まれ、彼と同様に粘り強く大胆不敵な仲間たちが大変に魅力的だったからだと彼は話している。

車ではなくコンピューターを作る

曹は、カメラやレーダーなど、自動運転車でよく目にする装置を取り付けた車に私を案内してくれた。トランクには、目に見えないコンピューターコードがインストールされている。我々は車に乗り込んだ。ドライバーは、Momentaが作成した高解像度のマップからルートを選択した。そして、ハイウェイに近づくなり、自動的に自動運転モードに切り替わった。複数のセンサーが、リアルタイムで周囲のデータをマップに送り始める。それをもとに、コンピューターは走行中の判断を下す。

試験車両にセンサーを取り付けるMomentaのスタッフ(写真:Momenta)

Momentaは車もハードウエアも作らないと、曹は念を押した。その代わりに、頭脳、つまり深層学習能力を作って自動車に自動運転機能を与えるのだという。これは事実上、いわゆるTire2のサプライヤーだ。IntelMobileyeと同じように、自動車部品を製造するTire1サプライヤーに製品を販売している。また、自動車を設計し、サプライイヤーに部品を注文して最終的な製品を製造するOEMとも、直接取り引きをしている。どちらの場合でも、Momentaはクライアントと協力しながら最終的なソフトウエアの仕様を決めている。

こうしたアセットライトなアプローチによって、最先端の運転技術が開発できるとMomentaは信じている。自動車や部品のメーカーにソフトウェアを販売することで、収益を得るだけでなく、たとえば、いつどのように人間が介入すべきかに関する大量のデータを収集でき、低コストでAIをトレーニングできる。

クライアントの企業名は公表しなかったが、中国内外の一流自動車メーカーとTire1のサプライヤーが含まれているとのことだ。数は多くない。なぜなら自動車業界での「パートナーシップ」は、深い資源集約的な協力を必要とするため、少ないほうが有利だと考えられているからだ。我々の認識では、後援者にDaimler AGが含まれている。またMomentaは、このメルセデス・ベンツの親会社が中国で投資した初めてのスタートアップでもある。しかし、Daimlerがクライアントかどうかは、曹は明かさなかった。

「1万台の自動運転車を動かしてデータを集めるとしましょう。その費用は、年間で軽く10億ドルに達します。10万台なら100億ドルです。巨大ハイテク企業であっても怖じ気づく額です」と曹は言う。「意味のあるデータの海を手に入れたければ、大量市場向けの製品を作ることです」。

自動車をコントロールする半自動運転ソリューションHighway Pilotは、Momentaの最初の大量市場向けソフトウェアだ。今後、さらに多くの製品が投入されるが、それには、完全自動駐車ソリューションや、都市部向けの自動運転ロボットタクシー・パッケージなどが含まれる。

長期的には、非効率的な中国の440億ドル(約48000億円)規模の物流市場に取り組みたいと同社は語っている。AlibabaJD.comが開発した倉庫向けのロボットのことはよく知られているが、全体的に中国の物流の効率は、まだ低水準にある。2018年、物流コストは中国のGDPの15%近くを占めていることが発表された。同じ年、世界銀行が発表した、世界の物流業界の効率を示した物流パフォーマンス指標ランキングでは、中国は26位だった。

MomentaのCEO曹旭東(写真:Momenta)

控えめなCEOである曹が語調を強めたのは、同社の地に2本の足を付けた戦略について説明したときだった。その2つセットのアプローチは「閉じた輪」を形成する。これは、同社の競争力について語るときに繰り返し登場した言葉だ。現在と未来の中間を拾うのではなく、Waymoがレベル4(基本的な状況下で人間の介入なしに自動運転できる車の区分)で行ったように、またはTeslaが半自動運転で行ったように、Momentaはその両方に取り組む。それには、収益がロボットタクシーのための研究費となり、現実のシナリオから収集されるセンサーのデータが研究室のモデルに投入されるHighway Pilotのような、利益を生むビジネスが利用される。そして、その研究室で得られた結果は、公道を走る車に供給する技術をパワーアップする。

人間かマシンか

昼間の公道での40分の試乗の間、我々が乗った車は、自動的に車線変更をし、合流し、乱暴なドライバーから距離を取るなどしていたが、ある一瞬だけ、ドライバーが操作を加えた。試乗の終わりごろ、ハイウェイの出口ランプの中央に停車していた危険な車を避けるために、ドライバーがレバーを引いて車線変更を行っている。Momentaはこれを、「インタラクティブな車線変更」と呼んでいる。同社は、これは自動運転システムの一部であり、厳格な定義によれば、人間の「介入」ではないと力説していた。

「人間による運転の介入は、これからも長きにわたって支配的な存在でいるでしょう。あと20年ほどは」と曹は指摘する。車は車内カメラでドライバーの動作を細かく把握しているため、この設定は安全性を一段階高くするとのことだ。

「たとえば、ドライバーが携帯電話に目を落としたとします。すると(Momentaの)システムは運転に集中するよう警告を発します」と彼は言う。

試乗中の撮影は許されなかったが、Momentaが公開している下の動画でハイウェイでの様子を少しだけ確認できる。

人間は、我々が思っている以上に、すでに自動化の範囲に組み込まれている。曹は、他の多くのAI研究者と同じく、最終的にはロボットがハンドルを握るようになると考えている。Alphabetが所有するWaymoは、すでに数カ月前からアリゾナでロボットタクシーを走らせている。Drive.aiのような比較的小規模なスタートアップですら、テキサスで同様のサービスを行っている。

業界にはさまざまな誇大宣伝や流行があるが、同乗者の安全、規制の概要、その他数多くの高速移動技術の問題など、厄介な疑問は残されたままだ。去年、自動運転車による死亡事故を起こしたUberでは、将来の計画が先送りされ、人々の批判を浴びることになった。上海に拠点を置くベンチャー投資会社は、先日、私にこう話した。「人類はまだ自動運転の準備ができていないのだと思う」

業界の最大の問題は、技術的なものではなく、社会的なものだと彼は言った。「自動運転は、社会の法体系、文化、倫理、正義に難題を投げかけている」。

曹も、この論争のことはよく知っている。未来の自動車を形作る企業であるMomentaは、「安全に対する大きな責任を負っている」と彼は認識している。そのため彼は、すべての幹部に、自動運転車で一定の距離を走り、システムに欠点がないかを確認するよう求めている。そうすれば、お客さんが遭遇する前に、社内の人間が欠点に遭遇する確率が上がる。

「この方針があれば、管理職はシステムの安全性を真剣に考えるようになります」と曹は主張した。

中国の蘇州に建つMomentaの新本社ビル(写真:Momenta)

信頼性を確保し、説明責任を明確にできるソフトウェアをデザインするために、Momentaは「システム研究開発のアーキテクト」を任命している。この人物は、基本的に、ブラックボックス化された自動運転アルゴリズムの解析の責任を負う。深層学習モデルは「説明可能」でなければならないと曹は言う。それは、何か不具合が起きたときに原因を突き止める重要な鍵となるからだ。故障箇所はセンサーなのか、コンピューターなのか、ナビゲーションアプリなのか?

さらに曹は、研究開発に多額の資金を投入してはいるが、利益を生もうと焦ってはいないと話している。ただし、ソフトウェア販売の利益が「大きい」ことも認めている。またこのスタートアップは、多額の資金に恵まれている。曹の経歴が投資を惹きつけているところが大きい。同じように、共同創設者であるRen Shaoqing(任少卿)とXia Yan(夏炎)もMicrosoft Researchの出身だ。

昨年10月の時点でMometaは、Daimler、Cathay Capital、GGV Capital、Kai-Fu LeeのSinovation Ventures、Lei JunのShunwei Capital、Blue Lake Capital、NIO Capital、それに蘇州政府を含めた著名な投資企業から少なくとも2億ドル(約217億円)を調達している。蘇州には、高速鉄道の駅のすぐ隣にMomentaの新本社ビルが建つ予定だ。

蘇州を高速鉄道が通過するとき、乗客はその車窓からMomentaの特徴的な新社屋を眺めることができる。数年もすれば、この中国東部の歴史ある街の新たなランドマークになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

Tesla M3の頭脳となる中国製部品への25%関税適用除外申請は却下

Tesla(テスラ)をはじめ、Uber他各社は中国製部品にかかる関税の適用除外を求めていたが、米政府はこれを認めないと決定した。これにより両者は規定どおりの25%関税の支払いを求められることになる。

TechCrunchは先月、対中国関税についてこの記事で報じ、同時にトランプ政権が関税の適用除外を認めなかった場合のTeslaへの悪影響についても検討している。USTR(米通商代表部)の今回の決定を最初に報じたのはReuters(ロイター)だった。

昨年、ホワイトハウスは対中貿易赤字の是正措置として電子部品を含む広汎な品目について25%の輸入関税を課すことを決定した。多くの米企業がこの措置の適用除外を申請したが、その中にTeslaとUberが含まれていた。

Teslaは 昨年12月末にModel 3のコンピュータについて適用除外を申請した。これには電気自動車の心臓部となるADAS(先進ドライバーアシスタンスシステム)、メディアコントローラー、インターネット接続ユニットなどが含まれている。Uberは中国製電動アシスタンス自転車に対する適用除外を申請していた。

5月29日付け書簡でUSTRはTeslaのオートパイロット用コンピューターについて適用除外を認めないことを伝え、中国製コンピューターとディスプレイは「戦略的に重要」ないし「中国製造2025ないし同種のプログラムに関連ある製品」だと述べた。

中国製造2025は中国の製造業の高付加価値化を目指す国家計画であり、特にAI、電気自動車、ロボティクス分野に力を入れている。ホワイトハウスは中国製造2025は米国が覇権を握っているテクノロジー分野において国内産業に対する直接の脅威だと述べていた。

Teslaは今回の決定についてコメントを避けた。

今年に入ってTeslaはFSD(完全自動運転)を実現するための新しいカスタムチップを発表、今後製造されるすべてのTesla車に搭載することを明らかにした。現在のTesla車にはまだ完全自動運転機能はない。

ただしFSDソフトウェアは既存のModel 3、 S、X車のハードウェアにインストール可能であり、顧客は6000ドルを支払ってFSDパッケージを購入することができる。FSDによる完全自動運転は既存のオートパイロットユニットを通じて自動車を制御する。同社によれば、このECU(エンジン制御ユニット)は「Tesla車の頭脳」だという。このユニットはクアンタ・コンピュータの上海工場で製造されている。

Teslaは「自動車の頭脳」に対する高関税は米経済に有害な結果をもたらすと主張していた。

適用除外の却下にはTeslaの部品供給者による申請も含まれる。例えばSAS Automotive USAはModel 3のセンターディスプレイを製造している。これは車両のメディアセンターの中心となる部分であり、17インチのタッチスクリーンパネルが含まれる。ここにはカーナビ、インターネット接続先サイト、オーディオ、エアコン、燃費などが表示され、車両のコントロールはすべてこのユニットで行われる。このスクリーンはまさにModel 3操作のハブだった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中国が外国企業ブラックリスト作成で米国のファーウェイ締め出しに対抗

米国と中国の間で繰り広げられている貿易戦争の沈静化はさらに遠のいた。世界最大の人口を抱える中国は「信頼できない」外国企業のリストを作成すると発表した。

中国商務省のGao Feng報道官は今日、中国企業との事業を停止・縮小した外国企業を含む「エンティティ・リスト」を作成すると述べた。

「市場のルールに従わず、契約の精神に反し、非商業目的で中国企業への供給を妨げたり停止したりし、さらに中国企業の正当な権利や利益を著しく損なう外国の企業や団体、個人が『信頼できないリスト』に載ることになる」とFeng報道官の発言を引用して国営メディアが報道した。

この報復は、米商務省がHuawei(ファーウェイ)と関連する68社を国家安全保障上の懸念からエンティティ・リスト入りさせ、これにより米企業がそうした中国企業と取引するには政府の許可を得なければならなくなったことを受けた措置だ。しかし、Googleのような企業にはファーウェイとの取引継続を90日間許可する猶予が与えられている。

政府の方針により、GoogleIntel(インテル)、Qualcom(クアルコム)を含むいくつかの米企業はファーウェイとの取引を縮小した。ファーウェイの幹部は同社に対するそうした措置は同社の事業に甚大な影響を与え、世界規模で名誉が損なわれる、と述べている。

現段階では詳細はまだはっきりしないが、シリコンバレーに拠点を構える多くの大企業は中国のブラックリスト掲載条件に当てはまるようだ。

米国が今月初めに2000億ドル分の中国製品への関税を引き上げたことへの報復措置として、中国は今週末にかけて600億ドルぶんの米国製品への関税を引き上げる。2国が解決に向けて歩み寄る兆しは全く見られない。

一方、ファーウェイは同社の製品を米国が禁止したのは「違憲」として法的措置を取っている。同社はまた、深センにある本部のR&D部門に配置していた米国人の従業員を帰国させた。そして中国人従業員に海外からの訪問者と話すことを控えるよう求め、米国の関係者と技術に関するミーティングを持つことを禁じている。

イメージクレジット: JOHANNES EISELE/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

中国がスマートスピーカー市場で米国を抜いた

米国もはやスマートスピーカー市場のリーダーではない。米国時間5月20日、Canalysが発表した最新データによると、中国のスマートスピーカー出荷台数は2019年Q1に500%成長し、米国を上回る市場シェア51%を占めた。

報告によると中国の出荷台数は1060万台で、それを支えているのは「お祭り騒ぎプロモーション」だという。

具体的には、Baidu(バイドゥ)は中国の旧正月前夜の新年番組で中国国営テレビのCCTVとスポンサー契約を結んだ。これは視聴者数最大のエンターテイメント番組だ。プロモーションではユーザーに「Baidu」アプリのダウンロードを促し、12億人の視聴者を対象にクーポン1億枚を配布して同社ブランドのスマートスピーカーの認知度を高めた。

バイドゥはQ1にスピーカー330万台を出荷し、Amazon(アマゾン)の460万台、Google(グーグル)の350万台に続いた。Alibaba(アリババ)とXiaomi(シャオミ)がいずれも320万台でこれに続き、これも中国の新年プロモーションの成果だ。

「中国の急速な成長は、メーカーがいち早くシェアを獲得するために大量の資金を注ぎ込んでいるからだ」とCanalysのモビリティー担当VPを務めるNicole Peng氏が声明で語った。「これは、バイドゥ、Alibabat(アルファベット)、Tencent(テンセント)などトラフィック獲得に数十億ドル費やすことをいとわず、インストール基盤の臨界点に到達する方法を知っているサービスプロバイダーたちが好んで用いる戦略だ」

その他のブランドの出荷台数を合わせると290万台になる。これにはApple(アップル)のHomePodも含まれているが、市場シェアが小さいため「その他」にまとめられている。

1060万台を出荷した中国は米国(500万台出荷)を上回り市場シェアを51%に伸ばした。一方米国の市場シェアは2018年Q4の44%から2019年Q1は24%に急落した。

全体では、Q1に世界のスマートスピーカー出荷台数は2070万台で年間成長率131%と3桁成長に戻った。2018年Q1はわずか900万台だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ファーウェイ排除で米国は貿易戦争には勝ったがネットワーク戦争に負ける

米国政府関係者は、低価格で高性能なネットワークを提供するファーウェイと、中国のその他のハードウェアメーカーとの戦争に勝利したことを祝っているに違いないが、より大きな世界規模の電気通信技術と顧客の獲得競争において、米国は大幅に遅れをとるリスクを背負ってしまった。

それは米国が敗北を認めたがっているレースかも知れないが、米国内での事業活動能力を完全に奪ったところで 、ファーウェイの影響範囲はますます広がっていることには注意しなければならない。

実際、ファーウェイのエグゼクティブディレクターであり、同社の投資審査委員会議長でもあるDavid Wang(デイビッド・ワン)氏はBloomberg(ブルームバーグ)にこう話している。「私たちの米国での事業はそれほど大きなものではありません。私たちはグローバルな事業を展開しています。今後も安定的に事業が行えるでしょう」。

ワン氏は正しい。ただし、ある1点においてはだ。年始に発表された2018年の会計報告によれば、ファーウェイの売り上げは、そのほとんどが国際市場からのものだが、同社の機器は、技術的に米国の半導体メーカーに大きく依存している。その供給が止まれば、ファーウェイはかなり厳しい状況に追い込まれるのは確かだ。

ファーウェイの年末会計報告によれば、現在の収益の柱は消費者向けデバイス事業であるが、その収益の大半は米国市場以外で上げられている。

そして米国には、ファーウェイが同社のネットワーク技術を普及させようとする努力を妨害しなければならない理由がある。それを投資家のAdam Townsend氏が、Twitterのスレッドで説得力をもって見事に言い表している。

https://platform.twitter.com/widgets.js

中国のファーウェイに関するスレッド。諜報活動と第5(g)世界大戦
あなたは中国諜報機関の長になる。権力者となり、あらゆる喧嘩に勝利するようになる。
では始めよう……

そもそも中国は、次世代の無線通信技術への支援として、基本的に無限の資本を投入し、次世代スタートアップやイノベーターを買収している。そのすべてが、米国が初期段階のリスクを背負って生み出したものだ。同時に、抵抗する恐れのある規制当局者や業界の専門家を、無限の資金を使って懐柔している。

ファーウェイは、中南米、東ヨーロッパ、東南アジア、アフリカといったネット接続の需要が高まる新興市場の国々への侵入を続けている。それらは、米国が多大な戦略的利害を持つ地域でありながら、強い動機や選択肢を提供できずにいるために、中国のネットワーク企業に対抗するよう世論を動かしたり政府を説得する力が大幅に制約されている。

米国の海外援助や投資を600億ドル(約6兆6000万円)のパッケージで活性化させるBUILD法が2018年10月に成立しているが、2018年に欧州だけで470億ドル(約5兆1700億円)近くを投資した中国の支出額の前では影が薄い。中国によるその他の直接投資の総額は、American Enterprise InstituteのデータをForeign Policy誌がまとめたところによると、アフリカと中東に494億5000万ドル(約5兆5400億円)、南米に180億ドル(1兆9800億円)となっている。

こうした投資により、本来強力な政治同盟で結ばれていたはずの国々は、米国の立場への支持を渋ったり、建前上いい顔を見せるだけになっている。たとえば、米国とブラジルの関係を見てみよう。長年にわたり強力な同盟関係にあるブラジルと米国は、どちらも超保守派リーダーの主導のもとで、ますます関係が深まるように見えていた。

しかし、Foreign Affairs誌によれば、米国と歩調を合わせて中国の経済的拡大阻止に協力して欲しいというトランプ大統領の要請に、ブラジルは難色を示しているという。

「ブラジルの経済団体は、すでに中国との密接な貿易関係を擁護する態勢に入っており、中国を封じ込め、米国を再びブラジルの最も重要な貿易相手にしようという望みは、もはや非現実的な郷愁に過ぎない」と、Foreign Affairs誌の特派員であるOliver Stuenkel(オリバー・スタンキル)氏は書いている。「強力な軍部同士が手をつないだこの事業連合は、この地域からファーウェイを追い払うことで生じる5G稼働の遅延を一切許さない方向に動いている」。

この記事は一読の価値があるが、要は、ファーウェイと中国経済の浸入は経済発展途上国にとって国家安全保障上の脅威だと吹聴する米国政府高官の声は耳に届いていないという内容だ。

これは単にネットワーク技術だけの問題ではない。中南米諸国と米国で投資を行っているあるベンチャー投資家は、TechCrunchに匿名でこう話した。「米国と中国の関係が中南米の今後にもたらす影響には興味があります。中国はすでに、金融面で非常に積極的になっています」。

中国の巨大ハイテク企業は、事業者として、また投資家として、南米大陸にも興味を示している。CrunchBaseの記事の中で、南米と中国に特化したベンチャー投資家Nathan Lustig(ネイサン・ラスティグ)氏は、その傾向を強調していた。実際には、こう書いている。

民間分野と公的分野の両方で、中国は中南米への支援を急速に増やしている。金融技術の専門知識を有する中国は、世界の発展途上市場への影響力と相まって、中南米のスタートアップや起業家の戦略的パートナーになりつつある。これまで、中国の対中南米投資の大半はブラジルに向けられていたが、にも関わらず、中国は投資家として中南米で手を広げ、地方の技術エコシステムとの親密さを増してゆく傾向にある。その可能性がもっとも高いのがメキシコだ。

1月にDidi Chuxingがブラジルの99を買収したのに続いて、中国企業はブラジルのフィンテック系スタートアップに対する巨額の投資を開始した。今年、特に目立つのがNubankStoneCoだ。

実際、中国には、安価なテクノロジーと、国有と民間の投資会社による経済支援策の総合カタログがあり、受け入れ国を援助すると同時に、新興市場での多方面にわたる技術的リーダーとしての中国の地位を固めようとしている。

米国がそれに対抗するならば、内向きな保護主義を脱して、より大きな海外の経済発展に真剣に寄与する覚悟が必要だ。税収は減少傾向にあり、見上げるほどの巨大な赤字の山が築かれると予測されるなかでは、ファーウェイに取って代わるものを世界に提供する余裕はない。それにより米国はますます孤立を深める。取り残されることで、さらに大きな問題が生じることになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)

スタバの後を追う中国Luckin Coffeeが米国でのIPOで660億円超の調達を目論む

Luckin Coffeeは、スターバックスの後を追う野心的な中国のスタートアップ。間近に迫った米国でのIPOで6億ドル(約660億円)近くを調達する可能性がある。この金額は、Luckin Coffeeが公表した株式公開時の価格帯から算出したもの。

Luckinの申請によれば、3000万株を15〜17ドルの価格帯で売り出す計画だという。これにより、4億5000万ドル(約495億円)から5億500万ドル(約605億円)の資金調達が可能になる計算だ。ただし、引受会社が450万株の追加割当を受けた場合には、この金額はさらに膨れ上がることになる。全株が提示された価格帯の最高値で買われたとすると、総計は5億8650万ドル(約645億円)に達する可能性もある。

Luckin Coffeeは、ナスダックに「LK」として登録されることになっている。

Luckinは、先月に株式公開を申請したばかり。ニューヨークの未公開株式投資会社Blackrockが率いる1億5000万ドル(約165億円)のシリーズB+の資金調達ラウンドを完了してからわずか数週間後のことだった。この取引ではLuckinの市場価値が29億ドル(約3190億円)と評価された。またその結果、Lukinは創業から3年で、投資家から合計5億5000万ドル(約605億円)を調達したことになる。

Luckinは、これまでに膨大な額の現金を費やして、スターバックスに匹敵するブランドを短期間で構築することを企て、スターバックスが過去20年間に中国で確立してきた存在感にも対抗しようとした。攻撃的なプロモーションとクーポン発行の費用がかさみ、Luckinは2018年に4億7500万ドル(約523億円)の損失を計上した。1年間フルに営業したのはまだ2018年だけだが、その1年の売上は1億2500万ドル(約138億円)となっている。2019年第1四半期について見れば、7100万ドル(約78億円)の売上に対して、損失は8500万ドル(約94億円)だった。

スターバックスのCEOであるKevin Johnson氏は、こうしたLuckinの戦略を「非常な大安売り」であるとして、その現実性を声高に否定している。

「私たちは資本を投資して、年間600店舗を新たに展開しています。投資した資本に対して、それに見合う利益を生み出しており、今後何年もこのペースで新たな店舗を追加し続けていくことが持続可能であると信じています」と、最近のCNBCのインタビューに答えて語っている。

スターバックスは全世界で3万店もの店舗を構えるとしている。中国でもすでに20年間営業していて、2022年までに中国内で6000店の開設を目指している。一方のLuckinは、ベンチャーキャピタルからの資金で活動していて、2年に満たない期間で急速に2370店舗を展開した。さらに今年中に2500店を追加する計画だ。そうなれば、スターバックスを追い抜くことにもなる。スターバックスは現状で中国の150都市で計3600店舗を持っている。ただし、こうした数字の比較は、偏った印象を与えることになる。というのも、Luckinはオンラインで注文を受けて、オンデマンドで配達することに注力しているのに対し、スターバックスはあくまで店頭で注文、販売するモデルを採用しているからだ。

画像クレジット:FRED DUFOUR/AFP/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

米連邦通信委員会が中国移動通信の通信インフラ参入申請を却下

FCC(連邦通信委員会)は中国移動通信(China Mobile)の米国市場参入の申請を却下する見込みだ。国営企業の中国移動は移動体通信プロバイダーとして世界最大であり、米国においてモバイルネットワークサービスの提供を申請していた。これに対し、FCC委員長は安全保障上のリスクを理由として認可に反対するという意見を公開した。米国のテレコムサービスにおいて重要なプレイヤーとなるという中国の試みはまた後退を余儀なくされそうだ。

中国移動は米国のモバイルインフラにおいて音声、データ通信事業を展開することを申請していた。FCCの広報担当者の電話記者会見によれば、米国のモバイルキャリアが中国にモバイルキャリアと通信を行う場合、そのインフラは現在中国側にある。

中国移動の申請を却下するというFCCの草案は明日公開され、5月に委員会で投票が行われる。申請は2011年に提出されていたが、今回アジット・パイFCC委員長はここれを正式に却下しようとしている。米国の安全保障上、決定的重要性9を持つインフラを外国組織が建設、運営しようとする場合、行政府の承認を必要とする。しかしトランプ政権は昨年この申請は認められるべきでないという見解を明らかにしていた。

ここ数ヶ月FCCの担当チームは中国移動のこれまでの活動を調査していた。アジット・パイ氏はその結果を次のように要約した。

中国移動の米国におけるテレコミュニケーションサービスを許可することは国家安全保障および法執行活動に深刻、重大なリスクを生じさせることが明白となった。このため中国移動の申請を認めることは公衆の利益に合致しないものと私は信じる。

外国勢力が重要な米国のインフラに参入を図るときに安全保障上の問題が伴うのは必然的だ。このような場合、リスクを軽減するための何らかの制限を課し、あるいは相手国政府との間で協定を結ぶことがある。たとえばドイツ企業がハード、ソフトで米国の通信インフラに参入する場合、こうした企業は米司法当局にデータへのアクセスを認め、ドイツの司法当局は捜査上の情報を米国に提供するなどの条件の下に認可される場合がある。

しかしこうした条件付き認可が行われるのは相手国との間に基本的な価値観の一致がある場合に限られる。問題の企業を(間接、直接に)所有している国家との間に信頼関係が存在シない場合は不可能だというのがFCCの見解だ。これはHuawei(ファーウェイ)が米国の5Gネットワーク構築に参加しようとしたのを退けたのとほぼ同様の理由だ。連邦政府は中国政府の強い影響下にある組織にはインフラ市場への参入の許可を与えないとしてきた。

「こうした理由による申請の却下は前例がないわけではないが、今回のケースでは行政府がFCCに対して安全保障上の理由により申請を却下すべきただと勧告した初めてのケースだという点に特に注意すべきだ」とパイ委員長は別の覚書で述べている。

すでに緊張している米中関係をさらに悪化させるかもしれないが、中国移動はこの結論を予期していたはずだ。申請がワシントンの官僚的手続きのブラックホールに吸い込まれた3年ないし4年たってもなんの回答もなかった時点で希望を捨てていたと思われる。

申請却下の決定の草稿は明日公開される。これには決定に至った理由と関連する証拠が含まれるはずだ。 FCCとしての賛否は5月9日に開催される公開の委員会における投票で決定される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中国はビットコインのマイニングを禁止か

仮想通貨のマイニングは中国政府の最新の標的となっている。自国の経済にとって障害となりそうなものを徐々に排除する政策の一環だ。

同国の国家発展改革委員会(NDRC)は、世界最大のビットコイン採掘市場である中国の経済を率いる計画機関だ。今週の月曜日に、促進、制限、あるいは排除を計画している分野のリストを発表した。仮想通貨の採掘とは、ビットコインやその他のデジタル通貨を、コンピューターの能力を利用して生成する活動のこと。今回、他の多くの分野とともに、当局が「排除」したいと考えているリストにノミネートされた。その理由は「安全な生産条件が欠如し、多大なリソースを浪費し、環境を汚染した」からとされている。

ビットコインの評価が2018年に急落したことはよく知られている。2017年12月の最高額2万ドルから、4000ドルを下回るまでに落ち込んだのだ。今回の中国発のニュースは、ビットコインへの楽観的な見方が回復している最中に届いた。先週には、Bitcoinの価値は、2018年の11月以降では初めて5000ドルを上回るまで急上昇していた。

今回の公式見解は、パブリックコメントを待つ改訂されたリスト、という体裁を取っていて、規制の強制力を持つものではない。当局は、仮想通貨採掘がいつまでに禁止されるのかという期限についても触れていない。このようなガイドラインは、通常は産業活動に対する中国政府の態度を反映している。このNDRCのリストは、数年ごとに改定されるものだが、規制したいとしている産業への実際の影響力は限られていると見る向きもある。

「2006年末までに排除すべきだとされたものが2011年にも存続していました。その2019年版でしょう」と、ブロックチェーンに注力するPrimitive Venturesの創立パートナーであるDovey Wan氏はツイートしている。

もしこの禁止令が実行に移されれば、採掘、生産用のツールを業界に提供することで仮想通貨の波に乗った一連の中国企業に大きな打撃を与えることになるだろう。特に、最近香港でのIPO申請が失効したばかりのBitmainは、禁止によって多大な影響を受けるはずだ。マイニング用に最適化されたハードウェアを供給するBitmainは、採掘用のハードウェアのトッププロバイダーとして広く知られている。2018年上半期の同社の収益のなんと94%が、同社の仮想通貨マイニング用ハードウェア「Antminers」によるものだった。

Bitmainの広報担当者は、このニュースに関するTechCrunchからの問い合わせに対し、コメントを拒んだ。

仮想通貨業界は、中国政府から厳しい査察を受けてきた。詐欺や投機に対する懸念のためだ。その結果、2017年には新規の仮想通貨公開が禁止されることになった。一方、環境保護主義者は、ビットコインの採掘にともなう無駄なエネルギー消費に抗議してきた。中国は昨年初めに、一部のビットコイン採掘者に対する電力供給を制限することを計画していたという話も、Bloombergの情報源から伝わっている。

中国が仮想通貨マイニングへの締め付けを検討したのは、今回が初めてではない。2018年1月、中国は地方政府に対して、ビットコインの採掘企業を廃業に追い込むよう依頼したとされる。中国の金融ニュースを出版するYicaiが入手した文書に記述されていることだ。しかし地方政府は、そのような指導に従うことに消極的だったのだろう。中国の仮想通貨マイニング活動の多くは、開発途上の内陸地域で散発的に行われている。そうした場所では、電力は余剰にあり、政府も生産活動の拡大に熱心に取り組んでいる。強大なNDRCからの新たな指令が、この業界を抑制することになるのかどうか、まだまだ予断を許さない。

画像クレジット:IvancoVlad/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

アップルが中国でiPhone XSを8000円強値下げ、需要低下のテコ入れか

Apple(アップル)は今週、中国で中核ハードウェア製品の価格を引き下げた。対象は、AirPods、Mac、iPad、そして何よりも重要なiPhone。このニュースを伝えたCNBCは、昨日同国が3%の減税を実施したのが理由だとしている。

しかし、多くの製品で値下げ幅はもっと大きく、iPhone XSでは500元(約8300円)と以前より6%近く安くなっている。おそらく値下げの理由は税の引き下げだけでなく、世界最大のスマートフォン市場でiPhoneなどの製品需要が停滞していることもあるに違いない。今年Appleは、予測に届かなかった利益の理由として、中国のiPhone需要低下を挙げていた。

同端末のQ1の売上は前年比15%減で、中国がその主役を演じた。さらにAppleは、Huawei(ファーウェイ)をはじめとする中国メーカーからの世界的競争にも直面している。HuaweiはiPhone、Samsung(サムスン)というトップライバルを相手に売上げランキングを急速に上げている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国のレズビアン向け出会い系アプリに脆弱性、プロフィール500万人ぶんが一時アクセス可能な状態に

レズビアンやクィアの女性たちに人気のある出会い系アプリRela(热拉)は、サーバーがパスワードで保護されていなかったために、何百万というユーザープロフィールと個人データが公開された状態だった。

かつて中国政府当局によって閉鎖されたと伝えられた直後の2017年5月に、Relaはアプリストアから姿を消した。だが政府がその関与を認めたことはない。しかしその1年後、アプリストアのリストを眺めてみると、アプリは別のクラウドプロバイダー上で復活を果たしていた。中国におけるLGBTQ+は、1997年に非犯罪化されたにもかかわらず、依然としてその権利はとても限られている。地域社会のなかではいまだに多くの人が差別と闘っており、態度の変化はゆっくりとしか進んでいない。

今週GDI財団のセキュリティ研究者であるVictor Gevers氏は、そのデータベースが公開されていることに気がついた。TechCrunchに対して語ったところによれば、そのデータベースには530万人分以上のアプリのユーザーデータが含まれていた。

Gevers氏によれば、アプリが復活してから1カ月後の2018年6月以来、データベースは公開され続けていただろうという。

データベースには、ユーザーのニックネーム、生年月日、身長と体重、民族、性的嗜好および興味が含まれていた。またユーザーが許可していた場合には、その正確な位置情報も含まれてた。またデータベースには、プライベートデータを含む、2000万件を超える「モーメンツ」、つまりステータス更新情報も含まれていた。

「500万人を超えるLGBTQ+の人々のプライバシーが、中国には彼らを差別から保護する法律がないため、多くの社会的課題に直面しています」とGevers氏は述べている。「何年にもわたってアクセス可能な状態だったこのデータ漏洩は、暴露された関係者にとってさらに有害なものになるでしょう」。

Relaの広報担当者は問い合わせに対して「データベースのセキュリティは確保された」と短い回答を返した。

いくつもの主要なアプリが閉鎖されるという法的な難しさにもかかわらず、中国の会社にとっても同性愛デートアプリは大きなビジネスであり続けている。同性愛者やバイセクシャルの男性が主に使用していた人気アプリのZankは、2017年4月に、ポルノコンテンツの公開に関する政府の規則を理由に閉鎖された

それでも、より評判の高いBluedのようなアプリは、中国内での人気を保っている。

中国の大手ゲーム企業は、2017年に米国を拠点とする同性愛デートアプリGrindrの60%の株式を購入し、その後会社全体を買収したが、米国の国家安全保障に対するリスクへの懸念から現在売却が検討されていると言われている。

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(翻訳:sako)

WHOがようやく乗り出すヒト遺伝子編集に関するルール作り

米国時間3月19日、WHO(世界保健機関)は新しい諮問委員会の最初の会議を閉会した。人間の遺伝子編集に対する世界的な統制と監督基準を作成するために設立されたものだ。

その委員会は、昨年12月に急遽招集された。昨年、中国の科学者が、CRISPR技術を使って2つの胚の遺伝子を組み換えたことを明らかにしたことを受けたものだ。その研究の目的は、さまざまな形状のHIV(AIDSを発症させる)ウイルスが細胞に感染する際に重大な役割を果たすCCR5遺伝子を除去することだった。

深圳に本拠を置く遺伝学者He Jiankui氏が、結果を公表するやいなや、その研究は中国の内外を問わず、世界中から非難された。

同氏は今、その研究を行った大学敷地内の複合施設内に軟禁されているという。中国政府は、彼の研究が違法であると宣言するために、遅ればせながら行動に出た形だ。

(関連記事:中国当局、世界初の遺伝子操作ベビーを違法と認定

そしてWHOも、ようやくその技術の使用を規制するための最初の一歩を踏み出した。

「遺伝子編集は、著しい治療効果を示すものですが、倫理的にも医学的にも、いくつかのリスクを抱えています」と、WHO事務局長のTedros Adhanom Ghebreyesus博士は、その声明の中で述べている。

WHOの専門家委員会は、ヒトの遺伝子編集に関する研究を統制するために取るべき最初のステップについて、2日間に渡って徹底的に討議した。そこには、臨床応用に取り組むのは無責任である、という基本合意が含まれている。

また委員会では、ヒトゲノムの編集に関して行われているすべての研究を一元的に登録する仕組みを作ることを、WHOに提言している。進行中のすべての研究を1つのデータベースで管理するというものだ。

「この委員会は、この新しい技術に取り組むすべての人々にとって不可欠なツールとガイダンスを策定し、人間の健康に対する最大の利益と最小のリスクを確実なものとします」と、WHOのチーフサイエンティストであるSoumya Swaminathan博士は、声明の中で述べた。

画像クレジット:VICTOR DE SCHWANBERG

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

自転車シェアの中国Mobike、海外市場からの後退を親会社Meituanが認めた

TechCrunchは3月8日に、自転車シェアリングサービスを提供しているMobikeがアジア太平洋地域全体での事業を解体したと報じた。それは、国際的な事業を縮小するための長期計画に向けた重要な一歩だ。3月11日にMobikeの親会社のMeituanは、この中国の自転車レンタル業界のパイオニアが、ほとんどの海外市場から手を引こうとしていることを認めた。

「Mobikeの国際ビジネスは再編中で、ほとんどの国際市場から撤退することになるでしょう」と、Meituanの最高財務責任者、Chen Shaohui氏は、月曜日の電話会議でアナリストに明かした。

しかし、その後にMobikeはChen氏の発言を「最終的にMeituanは、Mobikeの残っている海外資産を売却し、その部門を決算から除外する」という意味だったと説明した。

3月11日にTechCrunchがMobikeの国際的な計画について尋ねると、Meituanはなぜか直接その自転車部門に尋ねるよう差し向けた。そしてMobikeの広報担当者は、「一部の市場は、特にいくつかのアジア諸国では」閉鎖するものの「北東アジア、ラテンアメリカ、それにヨーロッパでは、国際的な事業を継続します」と明言した。

「今後を見据えて、潜在的な戦略的パートナーと議論を続け、持続可能な国際ビジネスを維持しようとしています」と、担当者は付け加えた。

(関連記事:自転車シェアリングのパイオニアMobikeが国際事業をすべて閉鎖し中国に退却

Mobikeを国際業務から撤退させるという決定は、自転車部門の営業損失を削減しようというMeituanの計画によってなされたものだと、前出の責任者も語っている。「サービスのためのAmazon」を標榜するアプリを提供するMeituanが、2018年の4月4日に買収して以来、Mobikeは45億5000万元(約6億8000万ドル)もの損失を出した。Meituanの最新の決算報告によれば、その自転車サービスが同じ期間に生み出した収益は、15億元(2億2000万ドル、約250億円)に過ぎない。

海外市場から手を引くことは、中国に焦点を合わせることを優先するというMeituanの長年の戦略と一致している。北京を本拠地とするこの会社は、収益の大部分を、自国内で展開する食料品の輸送と、旅行予約サービスから得ている。国際市場への進出は、ほとんど考えていないように見える。

フィナンシャルタイムズ紙のこれまでの調査によれば、「Meituanにはいかなる形、名目の国際部門もなく、おそらく欲しいとも思っていない。Mobikeの買収によって、初めて国際市場に手を出したのだ」という。

アジア太平洋地域からのMobikeの撤退について、われわれに情報をもたらしたTipstersは、彼らの声明は「あいまい」で、大衆をなだめるためのジェスチャーではないかと見ている。アジア太平洋地域は、実際に貸し出している自転車の数と、倉庫に保管してある数を合わせた事業規模からすれば、Mobokeにとって最大の市場なのに、そこから得られる収益はヨーロッパよりも少ない、ということに注目する必要がある。つまり、アジア太平洋地域からの撤退は、増え続けるMeituanの損失を削減することで、この経費ばかりかかる非中核事業の縮小に拍車がかかるのを防ごうという、自転車部門の壮大な計画の表れなのだ。

Meituanの第4四半期の収益は、198億元(約29.4億ドル、約3283億円)となり、ほぼ倍増したものの、純損失は前年の22億元から34億元(約5億1000万ドル、約563億円)に拡大している。自転車シェアリングや配車事業といった「新たな取り組み」への投資は、同社の収益力の上昇を「和らげた」ことになる。その一方で、その中核事業である食料品の配送、レストラン所有者向けソフトウェアのような店内サービス、および旅行予約は、2018年に営業利益を上昇させている。

(関連記事:Meituan, China’s ‘everything app,’ walks away from bike sharing and ride hailing

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(翻訳:Fumihiko Shibata)