APIをプラットフォーム化せよ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!この記事が読まれるころは、私は晴天のニューオリンズを後にし、北東部のいつもの場所に戻っているだろう。そうそう、これから1週間の文章は天気の関係で憂鬱なものになりそうだ。それはともかく、今日は2つの話題があるので、早速始めよう!

APIがプラットフォームへ進化するとき

先のThe Exchangeでは、Shippo(シッポー)の創業者でCEOのLaura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏に、Shopifyとの提携発表ついて話を聞いた。

Shippoは、販売店に対してSaaSを使った出荷サービスを提供している。出荷を一括して行うことで出荷料金も安くなる。2021年には、5億ドル(約595億9000万円)弱の評価額で4500万ドル(約53億6000万円)を調達している(なお、2019年に3000万ドル[約35億8000万円]を調達した当時、ベーレンス・ウー氏は、自社の粗利率はSaaS並みだと述べていた)。

同社は急速に成長し、2020年に出荷量を倍増させ (収益の増加も緩やかにそれを追っていた)、規模も倍増させた。

前回Shippoをチェックしたのは2021年初頭だが、当時その成長を維持するためのきちんとしたプランが控えていた(強調は筆者による)。

資本金も増えて、Shippoは次にどうするのだろうか?CEOによると、スタートアップはプラットフォーム化(Shippoが組み込まれるマーケットプレイスなど)や海外展開(Shippoは国際配送を「少し」しかしていないという)への投資を強化し、自社のコア顧客基盤と考えているものへの投資を倍増させたいと考えている。

ベーレンス・ウー氏は、プラットフォームとマーケットプレイスの両方にとって、配送を提供することは今や常識であって、個々の売り手は、デジタルストアが提供されるなら、支払いサポートとともに配送のオプションも与えられることも期待するという。Shippoは、各プラットフォームに組み込まれる発送ツールになりたいと考えている。

CEOによると、約18カ月前にマーケットプレイス側から興味が示されたことで、彼女のチームはShippoのサービスを各社のマーケットプレイスに組み込めるようにするためのAPIを作ることに取り組んだ。

ベーレンス・ウー氏によれば、この取引にはレベニューシェアが含まれるが、Shopify(ショッピファイ)やその他の潜在的なパートナーから膨大な収益を得ることで、Shippoにとって良い結果に結びつく可能性があるという。なぜなら、そのサービスは量をこなすほど良くなるからだ。多くの荷物の輸送をてがけるほど、世界中の運送会社との間でより良い取引ができるようになる。そして今回、その取引総量を劇的に拡大する方法を手に入れて、おそらくeコマース出荷の世界からより多くの金銭的価値を引き出す能力を身につけることができた。

数カ月後に様子を見る必要があるが、すべてが強気であるように感じられる。

ベーレンス・ウー氏は、APIを利用するスタートアップの成長に関する私たちのレポートに注目し、連絡を取ってきたのだ。そして今、同社は全体の成長軌道のカギを握っているAPI を手に入れた。私たちの信じる命題は、SaaSはすばらしいが、将来性があるのはAPIビジネスモデルだというものだ。

インシュアテックはまだ死んでいない!

年老いた馬に鞭打つわけではないが、インシュアテックはここ数年、浮き沈みが激しかった。ネオインシュアランススタートアップの巨額の資金調達から、インシュアテックマーケットプレイスの巨額の資金調達に至るまでまで、デビュー後に価値を維持できないIPOが相次いでいる。これは大変なことだ。

だがしかし、The Exchangeは2022年に入って、この業界で最も有名な企業たちについての否定的なニュースが相次いだにもかかわらず、2021年は実際にはインシュアテック向けベンチャーキャピタルの活動は活発だったと書いた。そもそも2020年初頭には「なぜVCが保険マーケットプレイスに資金を投下するのか」を解明しようとしたほど、かつて事態は熱を帯びていたのだ。

まあ、VCは今でも続けているのだが。先週、Policygenius(ポリシージーニアス)は1億2500万ドル(約149億円円)のラウンドを終了したと発表した。同社のソフトウェアは、基本的に消費者がオンラインでさまざまな保険商品を探し、購入することを可能にする。保険市場の規模を考えれば、顧客に適切な商品を提供することは大きなビジネスだ。言ってみれば、Credit Karma(個人ファイナンス管理ソフト)がいかに役に立ったかに少し似ている。

参考までに、Policygeniusの競合であるThe Zebra(ザ・ゼブラ)は、2021年4月に1億5千万ドル(約178億8000万円)を調達しているので、Policygeniusのラウンドはまったくの驚きではない。このニュースは、公開市場のニュースがスタートアップを加速させることはあっても、消滅させることはできないという事実を浮き彫りにしている。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Flipkart創業者の印フィンテック企業Navi Technologiesが518.5億円のIPOを申請

顧客に保険やローン商品を提供するフィンテックスタートアップのNavi Technologies(ナビ・テクノロジー)が、4億4000万ドル(約518億5000万円)のIPOを申請した。40歳の創業者Sachin Bansal(サチン・バンサル)氏は、かつてインド国内でeコマースの波を引き起こして財を成した人物だ。その彼が再び大胆な挑戦を始めた。

Navi Technologiesの新規株式公開はすべて新規株式で構成される予定であり、同社が土曜日(インド時間3月12日)に現地規制当局に提出した目論見書草案の中では、IPO前の募集を検討する可能性があると述べられている。

このIPOは、この数カ月ハイテク株あるいは他のほとんどの株が急落しているときに行われた。2021年上場したZomato(ゾマト)、Paytm(ペイティーエム)、Nykaa(ニーカ)、PolicyBazaar(ポリシーバザー)を含むすべてのハイテクスタートアップは、ここ数週間、最低株価で取引されている。

しかし、1年以上前から新規株式公開を視野に入れているNavi Technologiesにとっては、会社を公開することへの切迫感もある。この件に詳しい2人の情報筋によると、スタートアップが銀行になるためのライセンスを確保できなかったために、ソフトバンクや他の投資家から40億ドル(約4713億6000万円)以上の評価額で資金を調達しようとした直近の試みが失敗したのだという。

2018年に創業されたNaviは、融資の世界でデジタル個人ローン、住宅ローン、不動産担保融資を提供している。また医療保険とパッシブ・ファンドを中心としたデジタル資産管理を提供している。これまでのところ、このスタートアップへは、ほぼ全額をバンサル氏が出資している。

10年以上前にFlipkart(フリップカート)を共同創業し、Walmartへの売却前に同社を去った億万長者のバンサル氏とNaviは、これまでほとんど脚光を浴びることはなかった。目論見書(PDF)では、Naviのさまざまな事業や財務の健全性が初めて伝えられている。

画像クレジット:Navi

目論見書の中で同社は「社内にNBFC(非銀行金融機関)部門を持ち、AI/ML(人工知能/機械学習)ベースのアンダーライティングとデジタル限定のD2Cアプローチにより、Naviは融資商品の調達、アンダーライティングから回収までのコントロールを行い、顧客にスムーズな体験を提供することができています」と説明している。

Naviは、テクノロジーを使って、これまでサービスを提供できなかった顧客にサービスを提供しているという。スタートアップは「迅速な融資実行、低金利でのデジタル・ホーム・ローンの提供、不正およびクレジット・デフォルト・リスクの防止に対するテクノロジーの活用、データ・アナリティクスを使用して融資アルゴリズムをトレーニングして、魅力的な価格設定と優れたローン・アカウント管理を提供し、デジタルとフィールドの両者を活用する」ことを保証している。

Naviの提供する価値(画像クレジット:Navi)

21年度の連結利益が920万ドル(約10億8000万円)、売上は1780万ドル(約21億円)だったこのスタートアップは、個人向けローンと個人向け健康保険を、それぞれ4.5分以内と2.5分以内でサインアップできると述べている。

Naviの個人向けローン事業は、開始以来21カ月で、インドの郵便番号の84%に相当する地域で48万1000人以上の顧客にサービスを提供し、最長84カ月の期間で最大200万インドルピー(307万6000円)までを融資している。これらのローンの融資単位は665ドル(約7万8000円)だ。

「2021年12月31日現在、販売された健康保険契約の61.17%が、Navi Appで人間の介在なしに承認されています。さらに、チャットベースのインターフェースを開発し、お客様が購入なさるまでの間、シームレスにサービスを受けられるようにしています」とスタートアップは付け加えている。

「毎月一定額を保険料としてお支払いいただくEMI(均等月額割賦払い)方式を採用したことで、魅力的でお求めやすい価格帯の商品を提供することができました。2021年12月31日までの9カ月間における当社のGWPは、6億6700万インドルピー(約10億3000万円)で、そのうち6326万インドルピー(約9723万8000円)はリテール医療保険セグメントからのものでした。2021年12月31日までの9カ月間で、当社は合計22万491件の保険契約を発行し、そのうち2万7800件はリテール医療保険でした」。

画像クレジット:MONEY SHARMA / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:sako)

沿岸部などに住む人のために正確に住宅のリスクを予測する保険会社Kin Insuranceが約94億円調達

カリフォルニアの家とネブラスカの家では、保険のニーズが異なる。Kin Insurance(キンインシュアランス)は、データとテクノロジーによって、保険に加入しにくい家の最適な保険加入方法を判断できると考えている。

シカゴを拠点とする消費者直販の住宅保険会社Kin Insuranceが400万ドル(約4億6000万円)を調達してから数年が経つが、CEOのSean Harper(ショーン・ハーパー)氏はTechCrunchに、1100億ドル(約12兆6400億円)の住宅保険市場のうち、半分の住宅は異常気象や火災にさらされる地域にあると語った。

「そういう場所に移住する人が増えているため、大きな保険需要があります」とハーパー氏は付け加えた。「米国には、防波島やこれまで洪水が度々起こっている平野のような、住むべきでない場所があります。しかし、そこに住むことを選択すると、保険は高額になります。技術の特殊ソースを使うことで、郡は広大で、すべての家を同じ筆で描くべきでないということをうまく理解できます」。

Lucas Ward(ルーカス・ワード)氏、Jason Heidkamp(ジェイソン・ハイドカンプ)氏、Sebastian Villarreal(セバスチャン・ビラレアル)氏と共同で会社を設立したハーパー氏は、従来の保険会社は、どの家がリスクがあり、どの家がそうでないかを判断するのに必要なデータを持っていないため、往々にして大胆な価格設定になり、結果として引受額が高くなると説明する。

しかし、データを使ってリスクを正確に見積もることで、Kin Insuranceの引受額は常に最安値とは限らなくとも平均すると結果的に安くなる。これは、同社がリスクの細分化に優れており、代理店のようにテクノロジーを使ってコストの一部を排除しているためだ。代理店を通して保険を販売する場合、継続的に保険料総額の20%のコストがかかると同氏は推定する。

また、ハーパー氏は、50年前はローカルの代理店を持つことが理にかなっていたが、テクノロジーの進歩により、保険会社が消費者に直接アプローチすることができなくなり、電子メール、テキスト、チャット、電話などで同様の顧客サービスを提供することができるようになったとも話す。

2021年4月にシリーズCで8000万ドル(約92億円)の資金を調達したKin Insuranceは、特別目的買収会社Omnichannel Acquisition Corp.と合併して上場する予定だった。しかし1月、同社はこの取引を進めないことを決定したとハーパー氏は述べた。

「株式公開の市況が良くなかったことも理由としてあります。SEC(米証券取引委員会)の手続きを踏みましたが、テック企業にとって1年前のような市場ではありませんでした。将来、再びテック企業にとって良い市場になるときが来るでしょうし、Kinも上場するでしょう」と同氏は付け加えた。

同社が非公開にするかどうかを決定する間、非公開を選んだ場合に備えてベンチャーキャピタルは列をなしていた。

同社は3月1日、シリーズDラウンドで8200万ドル(約94億円)を調達したと発表したが、ハーパー氏は1億ドル(約115億円)で正式にクローズすると予想している。QED Investorsが同ラウンドをリードし、既存投資家のCommerce Ventures、Flourish Ventures、Hudson Structured Capital Management Ltd.(HSCM Bermuda)、Alpha Edison、Allegis NL Capital、Avanta Ventures、August Capital、そして新規投資家のGeodesic CapitalとPROOF.VCも参加した。ハーパー氏によると、Kin Insuranceはこれまで株式で1億3300万ドル(約152億円)、負債で5000万ドル(約57億円)を調達した。

同社は、急成長を遂げているインシュアテック企業の1社で、同社の保険料は2020年の2500万ドル(約28億円)から2021年には1億500万ドル(約120億円)に増加し、それに伴い新たな資本が集まっている。その成長軌道は2022年も続き、2022年の保険料は2億5000万ドル(約287億円)超に達するとハーパー氏は予想している。

この1年で保険料が増えたのに加え、同社は従業員数を2021年初頭の250人から450人にまで増やした。

同社はすでにフロリダ、ルイジアナ、カリフォルニアで事業を展開していて、ハーパー氏によれば、この3州だけで250億ドル(約2兆8700億円)近い保険市場となっている。今回の資金調達で、2022年さらに6州に進出できるという。同社はマーケティング、データサイエンス、テクノロジーへの投資にも注力する予定だ。

「保険金請求に関するデータが増えれば、引受額の精度が向上します」とハーパー氏は付け加えた。「それが、従来企業と当社の引受方法の大きな違いであり、その違いを広げたいのです」。

画像クレジット:Kin Insurance / Kin Insurance co-founders Lucas Ward and Sean Harper

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

インドの国営生命保険会社LICがIPOで約9200億円の資金調達を計画

インドの政府系保険会社であるLife Insurance Corporation of India(LIC、ライフ・インシュアランス・コーポレーション・オブ・インディア)は、現地時間2月13日、市場規制当局に目論見書の草案を提出。同国最大のIPOで約80億ドル(約9200億円)を調達するために株式の5%を売却する計画を発表した。

Narendra Modi(ナレンドラ・モディ)政権は、この国営生命保険会社の株式約3億1600万株を売却する予定であると、この目論見書の草案には記されている。同社のIPOは、拡張予算を捻出するためのモディ政権による民営化推進の最新の取り組みだ。保険会社にとって重要な指標の1つである、同社のいわゆる「エンベディッド・バリュー」は、715億6000万ドル(約8兆3000万円)とみなされている。保険会社の市場価値は、一般的にエンベディッド・バリューの3倍から5倍といわれている。今回の新規株式公開では、LICは新株の発行を計画していないという。

インドのAramco(アラムコ)の場合と比較されるLICの新規株式公開は、同国のベンチマーク株価指数であるSensex(センセックス)が最近の売り越しから回復を図ろうとしている時期に行われる。ここ数週間は、2021年22億ドル(約2500億円)のIPO(当時は国内最大)を申請したPaytm(ペイティーエム)や、Zomato(ゾマト)、Policybazaar(ポリシーバザー)、Nykaa(ナイカ)など、多くのテック企業が記録的な安値に落ち込んでいる。過去に大型のIPOを行った政府系企業3社が、上場後に市場価値の半分以上を失ったことも救いがない。

LICの総保険料の伸び率

しかし、インド政府は、LICブランドの高い知名度が、好調な上場につながると期待しているのかもしれない。65年の歴史を持ちムンバイに本社を置く同社の名前は、南アジア市場でよく知られている。提出書類に「インド政府財務省を通じてインド大統領」がプロモーターであると記載されているLICは、2000以上の支店を持ち、従業員数は10万5000人以上、5300億ドル(約61兆円)以上の資産を保有し、2億8600万件の保険契約を保有していると、目論見書草案には記載されている。2021年9月までの6カ月間の利益は、1億9100万ドル(約220億円)に上ったという。

「当社はインドで65年以上にわたり生命保険を提供しているインド最大の生命保険会社であり、2021年会計度の収入保険料(GWP)の市場シェアは64.1%、新契約保険料(NBP)の市場シェアは66.2%、個人保険の発行件数では74.6%、団体保険の発行件数では81.1%となっています。また、2021年3月31日時点で、個人代理店の数でもインドの全個人代理店の55%を占めています」と、目論見書には記載されている。

同社のIPOのブックランナーには、Kotak Investment Banking(コタック・インベストメント・バンキング)、Goldman Sachs Securities(ゴールドマン・サックス証券)、JP Morgan(JPモルガン)、Axis Capital(アクシス・キャピタル)、ICICI Securities(ICICI証券)、SBI Capital Markets(SBIキャピタル・マーケッツ)、Bank of America Securities(バンク・オブ・アメリカ証券)などが名を連ねている。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ビジネス向け保険の仲介を手助けするSayataがシリーズAで約39.8億円を追加調達

Sayataの創業者、アヴィシェイ・マヤ氏、アサフ・リフシッツ氏、イダン・ゴロン氏(画像クレジット:K Rifkind)

保険仲介業者であり、保険会社のマーケットプレイスであるSayata(サヤタ)は、2021年8月に1700万ドル(約19億3400万円)の資金調達を行った後、シリーズAに向けて3500万ドル(約39億8300万円)の追加資金を調達した。

今回のラウンド延長は、Pitango Growth(ピタンゴ・グロウス)とHanaco Ventures(ハナコ・ベンチャーズ)が共同主導し、これまでの投資家であるTeam8 Capital(チーム8・キャピタル)、Vertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)、Elron Ventures(エルロン・ベンチャーズ)、OurCrowd(アワークラウド)が参加した。

ボストンを拠点とする同社にとって、2021年の10倍を超える収益成長に続く新たな資金調達となる。2年前に設立された同社は、中小企業が保険を確保するための手段を提供している。

保険を確保するために、これら中小企業は通常、保険会社に直接行くのではなく、保険仲介業者を経由すると、Sayataの共同創業者兼CEOのAsaf Lifshitz(アサフ・リフシッツ)氏はメールで教えてくれた。

「上記のプロセスは、より時間がかかり手作業です」とリフシッツ氏はいう。「ビジネス保険の確保は、仲介業者の1日の大半を占めます。見積書を集め、顧客がそれを理解するのを助け、申請書を処理し、保険会社と何度もやり取りして補償を確定するのに何時間も費やされます」。

その代わりに、Sayataは、仲介業者が入力したビジネスに関するいくつかの情報に基づいて、主要な保険会社から複数の保険の見積もりを提供する、完全に自動化され、オンラインで行われるマーケットプレイスを開発した。これらの見積もりは、保険プランに関するカスタマイズされた参考資料とともに、保険の選択と確保をするために企業に転送される。

このアプローチにより、Sayataを利用する仲介業者は、より多くの、より良い補償オプションを顧客に提供することができ、リクエストに迅速に対応することができるようになる。リフシッツ氏によると、このような簡単なプロセスにより、顧客はSayataのパートナー仲介業者が提供する保険に加入することが多いとのことだ。

現在、Sayataは100以上の仲介業者や保険会社のパートナーから、1000人以上のユーザーを抱えている。同社はAxis(アクシス)、Brit(ブリット)、Hiscox(ヒスコックス)、Tokio Marine(東京海上)などの保険会社や、At-Bay(アットベイ)、Coalition(コーリション)、Cowbell(カウベル)、Corvus(コルヴス)の大手技術系総代理店と提携している。

同社は、リフシッツ氏、Avishay Maya(アヴィシェイ・マヤ)氏、Iddan Golomb(イダン・ゴロン)氏によって2017年に設立されて以来、合計6000万ドル(約68億3400万円)を調達している。今回の追加資本により、同社は2021年同時期の17名から47名へと人員を増強することができる。

また、リフシッツ氏が米国内だけで1000億ドル(約11兆3900億円)以上と推定している、中小企業向け保険市場をさらに開拓することも可能になる。

「中小企業向けの商業保険をより良い方法で確保したいという市場の要望は多いです。現在、同社は主にサイバー保険をプラットフォームで提供していますが、当社の顧客からは、Sayataのプラットフォームにもっと多くの保険種目を追加して欲しいという要望が特に寄せられています。今回のラウンド延長は、その需要に応えるために新しい保険種目をより早く拡大するためのすばらしい方法です」と同氏は述べている。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

気象データを駆使し気候変動リスク下にある小規模農家向けマイクロインシュランスを実現可能にするIBISA

農業マイクロインシュランスのスタートアップであるIBISAは、150万ユーロ(約1億9000万円)のシードラウンドを調達したと発表した。今ラウンドは、ロンドンのインシュアテック専門VCであるInsurtech Gatewayが主導し、RockstartのAgriFoodファンドなどが参加した。

マイクロインシュランス(Microinsurance)とは、一般的に、低所得者を対象に、特定クラスのリスクに対する補償を提供することを指す。IBISAの場合は、残念ながら増加傾向にある不利な気候変動によって生活に影響を受ける可能性のある小規模農家を対象としている。

ルクセンブルクを拠点とするIBISAは、新興市場に焦点を当て、パートナーシップに基づくアプローチを行っている。「当社は、相互会社、保険会社、マイクロファイナンス機関、研究機関、農家・育種家協会、政府などと協力しています」とサイトでは説明されている。

2019年に設立されて以来、同社はフィリピン、インド、ニジェールのパートナーと協力してきた。今回の資金調達により、既存市場および新規市場での雇用とプレゼンスの拡大を図る予定だという。

農作物が被害を受けたときに補償を受けることで、農業従事者が安心するのは容易に想像がつく。しかし、農業保険に加入しない理由も根強くあり、IBISAによると、ほとんどの農家が加入していないという。オプションはコストがかかりすぎるかもしれないし、保険金を請求するための事務手続きは大変そうで不可能に思えるかもしれない。

そこで登場するのがテクノロジーだ。IBISAの保険金支払いは、迅速で手間のかからないものになっている。個別に請求するのではなく、集合的なインデックスに依拠しているからだ。これはインデックスベースの保険で、パラメトリック保険とも呼ばれている。例えば壊滅的な気象現象の通知など、特定のパラメータによって支払いが発生するというものだ。

Insurtech Gatewayの共同設立者であるStephen Brittain(スティーブン・ブリテン)氏は、このアプローチは保険会社側の運営コストの削減にもつながり、より低い料金を実現すると述べている。

「これまでマイクロインシュランスは、低い保険料、高額なクレーム処理費用、困難な販売、信頼性の欠如など、多くの理由により商業的に成立していませんでした」。

何が変わったのか?繰り返しになるが、テクノロジーである。

IBISAなどの企業がインデックスに信頼を置くとしたら、それはデータに裏付けられているからだ。共同設立者でCEOのMaría Mateo Iborra(マリア・マテオ・イボラ)氏は、衛星産業で数年間働いた経験がある。このスタートアップのアプローチの重要な要素は、軌道画像を利用して被害状況を把握することだ。さらに、現地の「ウォッチャー」からのクラウドソースデータも活用している。

宇宙テックとクラウドソーシングはさておき、IBISAにはブロックチェーンの要素もあり、同社はそれをコストを低く抑えるための手段と考えている。会社の名前は実際には「Inclusive Blockchain Insurance Using Space Assets(宇宙資産を利用した包括的ブロックチェーン保険)」の略で、欧州連合のブロックチェーンに特化したプロジェクト「Block.IS」によって加速されている

同社は最近、RockstartのAgriFoodのデモデイでもプレゼンテーションを行った。2020年9月に同プログラムに参加した際、IBISAの共同設立者であるJean-Baptiste Pleynet(ジャン=バティスト・プレネ)氏は、IBISAの保険、衛星、ブロックチェーンのコンポーネントや、ポジティブなインパクトをもたらす可能性について言及した

プレネ氏は同時に、興味深いシナジー効果のポイントを強調していた。「当社のソリューションは、食品産業にとって、サプライチェーンにレジリエンスをもたらし、気候変動リスクを管理する上で大きな価値をもたらすと考えており、その観点からもこの道を加速させたいと考えました」と同氏は説明した。

画像クレジット:Santhosh Janardhanan / 500px / Getty Images

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(文:Anna Heim、翻訳:Aya Nakazato)

ネクイノがNTTコミュニケーションズおよびアーク・イノベーションとフェムテック事業で提携、2022年度内に新事業を展開

ネクイノがNTTコミュニケーションズおよびアーク・イノベーションとフェムテック事業で提携、2022年度内に新事業を展開

インターネットを用いた婦人科遠隔医療サービス「スマルナ」(Android版iOS版)を展開するネクイノは11月29日、NTTコミュニケーションズ、システム開発やコンサルティングを行うアーク・イノベーションと共同で、ヘルスケア業界向けプラットフォームを活用し、婦人科向けの高付加価値な事業展開を行うための業務提携を締結したことを発表した。「スマルナ」の利用者データを活用したフェムテック事業の拡大を検討する。

婦人科では定期検診を受ける人が少なく、女性特有の健康問題が顕著化しているという。そこでは、医療データに基づいた、個人に合わせた治療プランや予防医療が必要となるが、個人情報を含む医療データは病院間での提供が難しく、十分に活用されていない。そこでこの3社は、スマルナで取得したデータを安全に利活用することで、婦人科領域の新たな高付加価値サービスの提供を目指すことにした。

具体的には、ネクイノが利用者の同意の上で収集した問診データやオンライン診療データ、提携クリニックの治療データなどをNTTコミュニケーションズのヘルスケア業界向けプラットフォーム「Smart Data Platform for Healthcare」に蓄積し、加工・分析を行い、データの管理や匿名化などで個人情報を安全に活用し、高付加価値な事業モデルにつなげるとしている。Smart Data Platform for Healthcareでは、データの安全な保管や、本人同意の取得管理、匿名加工や秘密計算などにより、機微な個人情報の安心・安全な活用を推進する。

事業モデルの例としては、データの統計情報化による新しい保険商品の開発が挙げられている。医療関連の記録を基に、リスクの細分化や個人に合わせた商品設計が可能になるという。また、スマルナを通して医師から受診勧奨や健康アドバイスを行うことで、罹患リスクを低減し保険料の適正化が図れるとのことだ。

この提携では、3社は次のように役割分担をする。ネクイノはスマルナで取得したデータの活用、高付加価値なヘルスケアサービスの検討と提供。NTTコミュニケーションズはSmart Data Platform for Healthcareの提供。アーク・イノベーションは3社共同の事業モデルの構築と実装支援。それらを通じて、2022年度内に婦人科向け保険サービスなどの新たな事業を展開するとしている。

さまざまな保険を1つのアプリで簡単に管理、契約変更できる仏インシュアテックLeocareが大型資金調達を実施

フランスの保険会社Leocare(レオケア)は、Eight Roads(エイト・ロード)を中心としたシリーズBの資金調達を行った。全体で1億1600万ドル(約133億1300万円)を調達したことになる。このラウンドは、エクイティとデットのラウンドで、つまりこの金額の一部はキャッシュ・フォー・エクイティの取引で、残りはクレジットラインということになる。

同社は、シリーズAの調達から1年も経たないうちに、現地時間11月23日のシリーズBの調達を行っている。また、Felix Capital(フェリックス・キャピタル)、Ventech(ベンテック)、Daphni(ダフニ)などの既存の投資家は、今回のシリーズBでさらに資金を投入している。

Leocareは、顧客が必要とするすべての保険を1つの屋根の下で提供したいと考えている。このスタートアップ企業は、家、クルマ、バイク、スマートフォンに保険を提供しており、消費者がモバイルアプリを使って新しい保険商品に加入したいと考えていると踏んでいる。なぜなら、その方が便利だし、新しい機能が増えるからだ。

関連記事:モバイルアプリで保険を管理できる仏LeoCareが約19億円を調達

例えば、同社は「TakeCare」という新機能を開発中だ。共同創業者でCEOのChristophe Dandois (クリストフ・ダンドワ)氏は「これはWaze(ウェイズ)のようなもので、危険度の高い地域に入ったときに教えてくれるものです」と話してくれた。

しかし、TakeCareはスピード違反取り締まり区間を警告するものではない。その代わりに、Leocareアプリは、その地域でよく交通事故に遭う人がいるかどうかを教えてくれる。同社はこの機能のために、交通安全のオープンデータを活用している。同様に、もし隣人が週末に自分のクルマを使いたい場合、数回のタップで2人目のドライバーを追加し、月曜日には削除することができる。

また同社は、意味のあるところで、データを利用して価格を調整している。例えば、Leocareでは、ユーザーがどのチャンネルを利用して登録したかを追跡したり、ユーザーが使用しているスマートフォンのモデルを調べたり、セッションの時間をチェックしたりしている。つまり、動的な価格設定が可能なのだ。

また、保険に加入したいときも、やはりモバイルアプリを使えばいい。電話で連絡することもできるが、ほとんどの顧客がすでにアプリのほうを利用している。

長期的なビジョンは非常に明確で、Leocareは、私たちが所有するすべてのモノと、定期的に行うすべての事をカバーする単一の契約を作りたいと考えているのだ。利用者が必要なときにいつでも保険のオプションを微調整できるようにするべきだ。同社は、自転車保険のような商品も追加したいと考えている。旅行保険のような単発の保険商品でない限り、基本的にはすべてLeocareでカバーできるかもしれない。

また、多くの人たちが同じものに二重にお金を払ってしまっているため、すべてを集約することそのものに意味がある。例えば、家の保険は通常、盗難に備えるものだ。自宅での盗難はLeocareの家財保険でカバーされているので、自転車保険では家の外での盗難をカバーできるわけだ。

同社は現在、複数の保険会社と提携する総代理店として活動しており、保険商品を自社ブランドで販売している。

「今回の資金調達では、同じモデルを踏襲しつつ、独自のリスクキャリアを使用する機能を追加する予定です」とダンドワ氏は述べている。保険商品によっては、Leocareが最初から最後まで保険商品を管理することになるかもしれない。

新しい保険商品に加えて、同社は新しい市場にも進出したいと考えており、まずはスペインなどの南ヨーロッパに進出したいと考えている。現在、Leocareのアクティブな顧客数は6万5000人で、2022年は1億ユーロ(約129億円)の収益を目指している。

画像クレジット:Leocare

画像クレジット:Leocare

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】不安定化が進む気候環境における分散型保険の重要性

「一生に一度」のような気象現象が毎年発生するようになっている状況は、経済、政府、地域社会にとってどのような意味を持つだろうか。

世界中でまったく新しい規模の自然災害が見られるようになっている。これまでは、新興経済諸国が誘発的な気候災害の打撃にさらされてきたが、現在では地球のどの地域に住んでいても、気候変動による壊滅的な影響を無視することはできない。

カリフォルニアにおける山火事は、毎年数千人と報告されている大気汚染による死亡者数に拍車をかけている。一方、ドイツでは2021年、記録的な洪水のために数百人が命を失った。このような極端かつ危険な気象条件への準備は、今や私たちすべてにとっての優先事項である。

このような異常気象の増加により浮かび上がる多くの疑問の1つは、誰が費用を負担するのかということだ。AON(エーオン)の報告によると、2021年上半期の自然災害による経済的損失の総額は約930億ドル(約10兆6000億円)と推定されている。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、気候変動がもたらす経済的意味合いは、解決すべき多くの問題の中に重くのしかかっている。

気候変動は世界経済にとって最大のリスク要因であり、2050年までに経済価値全体が10%下落すると予測されている。これまでと同様、マレーシア、タイ、インド、フィリピン、インドネシアといった国々を含む新興経済圏が最も経済的にマイナスの影響を受けるとされており、2050年までに世界経済はGDPの18%を失うことになるという。

気候変動の影響を緩和するための代替アプローチを評価する時期にきている。新興経済国に住む何十億人もの経済的に疎外された人々は、これらの破壊的な影響にどのように対処しているのだろうか。

ブロックチェーンの善用

暗号資産と非代替性トークン(NFT)は、エネルギー消費に関して相応の精査を受けているものの、多くの未解決の領域が依然として注意と解決を必要としている。しかし、これらのユースケースの先に目を向けると、気候変動により不当に影響を受ける人々を保護するために特別に設計された、ブロックチェーンベースのソリューションが現れつつあることが見えてくる。

関連記事:【コラム】暗号資産とエネルギー消費をめぐる議論

ブロックチェーンは、環境再生型農業(リジェネラティブ農業)の促進から意識的な消費の促進まで、すでに建設的な役割を担っている。急成長を遂げている別の領域として、分散型パラメトリック保険が挙げられる。この保険は世界経済フォーラムでも注目されており、異常気象による混乱が一層深刻化している、伝統的にサービスが行き届いていない地域社会にライフラインを提供する手段として認識されている。

分散型パラメトリック保険の優れた点は、そのシンプルさにある。それは、スマート契約を通じて自動的に実行される「if/then(もし〜ならば〜する)」方程式として理解できる。例えば、ある地域で24時間以内に5インチ(127mm)の雨が降った場合、保険加入者である農業者は、合意済みの洪水関連損害賠償契約に従って直ちに支払いを受ける。実にシンプルである。

高額な保険評価プロセスを排除し、これを自動支払いプロセスにおける有意なイノベーションと組み合わせることで、パラメトリック保険は取引コストと請求サイクルを大幅に削減している。パラメトリック保険の請求はネットワーク接続された基本的なスマートフォンを介して行えるため、遠隔地にいる人や、おそらく意外なことに、基本的なテクノロジーにしかアクセスできない人でも、ブロックチェーン方式の保険を利用することができる。

世界的な食物連鎖の保護

気候変動が近い将来、食料価格を上昇させ、多くの人々の特定の食料を購入する能力を損なうことはほぼ確実である。天候リスクに対する作物保護のケースでは、パラメトリック保険により、通常は従来の保険商品にアクセスできない農家に対して追加の保護レイヤーが提供される。

農作物の収穫量の運命は、農家自身の過失ではなく、二酸化炭素排出量の増加と絡み合っている。これは、世界の食料安全保障と小規模農家の雇用保障に重大な脅威をもたらす。5ヘクタール(5万㎡)未満の土地を所有する小規模農家が世界の食料生産の平均50%を担っていることを考えると、世界の食料供給の観点から保護措置を講じることは必要不可欠である。

今日の新興経済諸国においては、2億7000万もの小規模農家が十分な保険に加入しておらず、農業保険を利用できるのはわずか20%である。この数字は、サハラ以南アフリカでは3%にも満たない。

世界の人口は2050年までに100億人近くに達すると予測され、新興経済国の農業者が直面する危機とも相まり、小自作農産業は保護強化に向けた新たなアイデアを切実に必要としている。分散型パラメトリック保険のような、ブロックチェーンを利用したデータ駆動型のイノベーションは、多方面にわたる解決策として機能する。厳しい気象条件に苦しむ人々を救済し、意識的な消費を奨励するとともに、大規模な資本を気候変動適応策に導き、小規模農家と世界規模の食糧生産に利益をもたらす。

ユースケースと投資家の拡大

地球の気候の不安定化が進む中、破壊的な事象を管理し、その影響の規模を縮小する取り組みにおいて、技術的なイノベーションが果たす役割は大きくなっている。

海面上昇により洪水の危険にさらされている人々の保護を強化する必要性については、英国をはじめとする複数の国がすでに報告書を委託している。洪水リスクの評価と保険料の計算方法を再考し、再構築するオポチュニティが生まれているのである。洪水の深さの報告と正確でタイムリーな支払いを行うための十分に根拠のあるデータが、パラメトリック契約を通じて保険会社に備わることになるだろう。

分散型保険は、保険適用の恩恵を受けている人々にとってより包括的であるだけではなく、リスク資本の定義を再定義し得るまったく新しいタイプの投資家にも保険に関するオポチュニティをもたらす。この形態の保険ははるかにオープンであり、従来の市場における高資本投資家の閉鎖的な場所に留まらず、より幅広い投資家グループの関与を可能にする。

さらに、ブロックチェーンはクラウドファンディングと保険の媒体として機能するポテンシャルを有しており、善意の社会的および環境的影響の名の下に交差する。CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)への投資意欲は高まっている。

ESGファンドは、2020年に500億ドル(約5兆7000億円)を超える新規資金を獲得した。これは前年の2倍以上である。加えて、米国のESGファンドの数は2020年400近くに増加しており、2019年から30%の伸びとなっている。

今すぐ行動し、後から話そう

世界のリーダーたちがCOP26に集結し、国内および国際レベルで気候変動に取り組むための長期的な戦略とアプローチを決定しようとする中で、世界中の何百万もの人々が、長年にわたる無行動と現実的な変化の遅れがもたらした結果に目下苦しんでいる。

現在、分散型パラメトリック保険などのブロックチェーンソリューションは、気候変動の影響を最も受ける人々への圧力を軽減する上で目に見える進歩を遂げている。結束したグローバルなアプローチへの政治的合意が待たれる一方で、ブロックチェーンは、最も必要としている人々を支援するための、容易に実装できるソリューションを提示しているのである。

編集部注:本記事の執筆者Michiel Berende(ミシエル・ベレンデ)氏はEtheriscのチーフ・インクルーシブ・オフィサー。インクルーシブ保険を通じて、最も金融サービスを必要としている人々に、より良い金融サービスへのアクセスを提供したいと考えている。

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

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(文:Michiel Berende、翻訳:Dragonfly)

暗号資産ゲームは短期的にどれだけの資金を吸収できるだろうか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!今回は、インシュアテック、SPAC、そしてダイレクトリスティングがIPOの価格問題をどれだけ解決できるかについてお話ししたい。だがその前に暗号資産について取り上げる。

先週の暗号資産周辺はにぎやかだった。Coinbase(コインベース)の業績報告からは、第3四半期の資産クラスの取引活動がいかに忙しかったかを知ることができた。Robinhoodの業績報告を思い出せば、Coinbaseが開示したものは驚きではないだろう。米国の株式投資プラットフォームの暗号資産収益が大幅に減少したために、Coinbaseも第2四半期と比較して、取引量と収益の両者が減少した。

これに関連して、暗号資産取引所FTXの米国事業所が自社のパフォーマンスデータの一部を公開した。これによると、2021年9月までの3カ月間は全体的に減少傾向にあるものの、暗号資産取引市場はまだ成長可能であることが示されている。

つまり、暗号市場は急速に進化(脱皮?)し続けているのだ。大規模ブロックチェーンと中小規模のコインのアクティビティは、四半期ごとに大きく変動する可能性がある。Coinbaseのような企業にとっては、これは収益や利益の変動を意味している。

しかし、Coinbaseは現金を豊富に持っているため、暗号活動の長期的な動きがポジティブなものである限り、短期的な浮き沈みはそれほど大きな問題ではない。

長期的な上昇トレンドに賭けるもう1つの企業集団は、暗号資産ゲーム会社たちだ。彼らはここ数カ月、非常に忙しい日々を送っている。例えば、Patron(パトロン)は暗号資産ベースのゲームに投資するために9000万ドル(約102億5000万円)のファンドを組成し、Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)は暗号資産ゲームを開発するために2021年の夏に7500万ドル(約85億4000万円)を調達、トレーディングゲームのParallelは評価額5億ドル(約569億3000万円)で調達を行い、Axie Infinity(アクシ・インフィニティは)2021年の年頭に資金調達を行っている

また先週、Forte(フォルテ)は、暗号資産ゲームのインフラのために7億2500万ドル(約825億4000万円)を調達した。このことから、私はブロックチェーンゲームが短期的にどれだけの資本を吸収できるのだろうかと考えている。これまでのところ、少なくとも伝統的なベンチャーキャピタルの考え方の中では、ゲームはベンチャーキャピタルの投資対象としては不適切であることが証明されてきた。それはなぜか?というのも、ゲームはどちらかというとヒットに左右される商品であり、発売後に好調でも収益が減少していくタイトルもあるからだ。

投資家は、予測可能で成長性のある強力な収入を求めている。そして投資家は、収益の不均一性や不確実性を嫌うものなのだ。新規タイトルは、失敗する可能性があるという不安要素を持っている。

それなのに、暗号資産に群がり、ゲーム企業がもてはやされているとは?ベンチャーの投資対象としての魅力を失わせていたゲーム会社の経済的・社会的リスクが、ブロックチェーンをバックボーンとして構築されることで改善されるというのだろうか?それがなぜそうなるのかを私は理解できない。しかし、投資家たちはあたかもそれが起きるとばかりに資金を投入している。さまざまな賭けがどのような損得に落ち着くのかを見ていきたいと思う。

インシュアテック、SPAC、そしてデータ

現在は決算期を迎えている最中だ。メジャーな企業はもちろんのこと、中小企業も多くの時間とエネルギーを費やしている。先週のいくつかの決算報告会から、以下のようなことがわかった。

インシュアテックは難しい:Metromile(メトロマイル)がLemonade(レモネード)に身売りしたというニュースの直後では、公開インシュアテック企業の運命に疑いが生じても仕方がない。とはいえ、先週発表されたRoot(ルート)の決算では、この自動車に特化した保険会社の業績が投資家に評価されて、株価が大きく上昇しや。

しかし、Rootにとっては、ライバルが新しい落ち着き先を見つけたからといって、すべてが順風満帆というわけではない。先週、RootのCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏にインタビューした結果、私たちは保険分野での成長のタイミングがいかに複雑であるかを知った。

現在、多くの自動車保険会社が直面している補償価格の設定に関する市場の不確実性(つまりRoot自身の問題ではない)を考慮し、Rootは短期的な成長目標を引き下げたとCEOは説明している。車両や人件費などのインフレ圧力により、保険料の決定が難しくなっており、市場の各プレイヤーが新規契約の獲得に慎重になっていることがわかった。

これは、Rootが長期的に問題を抱えていることを意味するものではないが、マクロ的な状況が、どのように技術や技術を応用したビジネスにとって厳しい状況をもたらしているかを示している。Rootは、データとスマートなソフトウェアが、時間とともに保険の価格を改善していくことに賭けている。しかし、上場直後の同社は、事実上前例のないビジネスの根本的な経済的変化に遭遇していると、ティム氏はいう。Metromileが上場後すぐに諦めて事業を売却したのは、このような複雑な事情があったからかもしれない。

SPACはおそらく大丈夫:先週、NextDoor(ネクストドア)が公開会社として取引を開始した(オリジナルのメモはこちら)。私たちは取引初日にCEOのSarah Friar(サラ・フライア)氏にインタビューを行い、彼女が選択した上場方法について話を聞いた。

彼女によれば、NextDoorは2020年後半に製品計画の一部を止めなくてはならなくなり、これによってより多くの資金を調達する必要性が生じたのだという。また、NextDoorは上場準備が整っており、SPACパートナーを通じて事前に決められた価格でまとまった資金を調達することができたため、この取引は彼女の会社にとって意味のあるものとなった。

これはある意味標準的な視点であり、SPACが2021年初頭に流行した理由を詳しく説明してくれるものだ。しかし、その後の状況は変わり、多くのSPAC主導の組み合わせでは、買収対象を発表して取引を完了させた後に、一部の支援者が資本を引き上げることも起きている。

NextDoorは、そうした資金引き上げ問題が必然的なものではないことを示した。最初のリリースでは、SPACパートナーが4億1600万ドル(約473億2000万円)の現金を事業に注入するとしていたが、最終的な集計では4億400万ドル(約460億円)となった。これは、失われた資本比率としては超低水準だ。そして、NextDoorの株価は、SPAC以降順調に推移している。このように、SPAC主導のデビューでも、場合によってはうまくいくこともあるようだ。

ダイレクトリスティングは価格の万能薬ではない:Amplitude(アンプリチュード)は、最近ダイレクトリスティング(直接上場)を行い、先週上場企業になって初めての収益を報告した。上場以来、同社の取引は好調で、今週の終値は1株当たり73.86ドル(約8409円)と、基準価格の35ドル(約3985円)を大きく上回っている。

Yahoo Finance(ヤフー・ファイナンス)によれば、同社の現在の価値は80億ドル(約9108億円)強だ。同社が不本意な価格付けを避けるために伝統的なIPOではなくダイレクトリスティングを選択したことに対して、私たちは、同社がダイレクトリスティングに先だって2021年初めの調達時の評価額が約40億ドル(約4554億円)だったことに苛立っていたのではないかと気になっていた。結局、彼らは価格の問題を避けるためにダイレクトリスティングを行い、Roblox(ロボロックス)が行ったように事前に個人投資家から資金を調達したのだ。

AmplitudeのCEOであるSpenser Skates(スペンサー・スケイツ)氏は、従来のIPOでは価格の歪みがさらに大きくなっていただろうと語り、ダイレクトリスティングに手応えを感じていると述べた。それに対して、私たちは「おそらくそうでしょうね」と答えるだけだ。しかし、非公開市場の投資家が自分の資金を一気に倍にしてしまう様子は、結局別の金持ちが儲けをさらっていくだけの間違った値付けのIPOが生み出す「儲け損ない」と似たものにみえる。

それではまた!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Airbnbはホスト保護を強化し、新型保険など多様な新機能を追加

Airbnb(エアビーアンドビー)のCEOであるBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)氏は、Twitter(ツイッター)で同社のデータから見えてきたことを伝えた。大まかな内容は、パンデミックの影響で仕事に柔軟性が出てきたことで、より多くの人が平日に旅行をしたり、さらには数カ月間旅行をしたりして、効果的にAirbnbで生活しているというものだった。

このような行動の変化に対応するため、Airbnbは米国時間11月9日、プラットフォームに多様な新機能をリリースする。

その内容を詳しくみてみよう。

旅行への新たな関心とともに、どこでもいいから長期間旅行したり住んだりしたいと思うようになったことの、おそらく最大の課題の1つは、供給が需要を満たさなければならないことだ。Airbnbは、カスタマーの需要の変化に対応できるだけの十分な数のホストを確保したいと考え、ホストの体験をより良いものにするための投資を行っている。ホストの保護を強化するために、AirbnbはAirCover(エアカバー)を導入する。

AirCoverは、家の上から下までをカバーするもので、現在、プラットフォーム上のすべてのホストに無料で提供されている。最大で100万ドル(約1億1290万円)の損害補償と100万ドル(約1億1290万円)の賠償責任補償がついている。また、所得損失保護、ペット損害保護、ディープクリーニング保護も含まれている。

この補償商品は、14日間の申請窓口を設けており、請求を行ったホストにはより迅速な払い戻しを約束し、スーパーホストにはさらに迅速な対応を行う。

Airbnbのホストプロテクションプランは、以前から、損害保護と賠償責任の両方で最大100万ドル(約1億1290万円)の補償を提供してきたが、その補償内容には多くのギャップがあった。例えば、プラットフォームを休む必要があるスーパーホストや、修理のために予約をキャンセルしたりする場合の収入減は補償されなかった。また、ペットによる損害も補償の対象外だった。

ペットによる損害の補償は、ホストにとってもゲストにとっても大きな変化になるだろう。パンデミックの影響で、多くの人々が毛で覆われた友人を手に入れ、今度はその人々が旅行をしたいと思うようになった。しかし、ホストは、ペットの持ち込みにはあまり積極的ではなく、需要と供給の間に大きなギャップが生じている。

ペットの損害補償は、自然とそのバランスが調整するはずだ。

AirCoverは、家の構造はカバーするが家の中の物はカバーしないというホストプロテクションを超えて、非常に大きな意味を持っている。AirCoverは、美術品、通貨、自動車、ボートやジェット機などの乗り物、武器、セキュリティカメラ、貴金属や宝石などのいくつかの除外項目を除き、家の中のほとんどの品物をカバーする。これらの除外項目があっても、家具の損傷や物品の盗難などをカバーしていなかったオリジナルの保険からは、大きな進歩が見られる。

除外項目の詳細はここで確認できる。

細かい詳細について言えば、AirbnbのAirCoverは、ほとんどの地域でZurich Insurance plc(チューリッヒ保険)が発行する保険で提供されている。Airbnbによると、規制により現地で発行された保険が必要な一部の地域では、Zurich Insurance plcのパートナー企業が補償を提供する場合がある。

画像クレジット:Airbnb

AirCoverに加えて、AirbnbはTranslation Engine(翻訳エンジン)を導入する。このエンジンは60以上の言語に対応しており、物件の説明やレビューをユーザーの選択した言語に自動的に翻訳することで「クリックして翻訳」ボタンを削除する。Translation Engineは、クリックして翻訳する必要性をなくすだけでなく、実際により良い翻訳をするとのことだ。

画像クレジット:Airbnb

Accessibility Review(アクセシビリティ・レビュー)とVerified Wifi(ヴェリファイドWiFi)は、正確さを追求した2つの新機能だ。リスティングでは、アクセシビリティの要件を満たしているや、超高速Wi-Fiを完備しているなどと書かれていても、実際には期待を裏切られることがよくある。

Accessibility Reviewでは、ホストがアクセシビリティ機能の写真を提出すると、実際の人間のチームが手動で審査する。このチームはこれまでに、世界中の2万5000軒の住宅で10万件のアクセシビリティ機能をレビューし、その正確性を確認してきた。

Verified Wifiでは、ホストがAirbnb自身から物件の接続をテストし、その速度を検証することができるため、そこで遊ぶだけでなく、仕事をするために訪れるゲストは、その接続を信頼することができる。

これらの新機能は、Airbnbが今回発表する最大のもののうちのいくつかだが、Airbnbはまた、非常に人気のあった製品をさらに強化している。

例えば「I’m Flexible(柔軟な検索)」は、2021年2月に公開されて以来、5億回以上も利用されている。柔軟な検索は、ゲストが行きたい場所や旅行の日程、さらには滞在したい住居のタイプなどを柔軟に選択することができる。

この柔軟な検索コンセプトに人々が惹かれたため、Airbnbは日付の範囲を拡大し、6カ月から12カ月先までの柔軟な検索を使用できるようになった。また、同社は「人里離れた暮らし」「スキーイン・スキーアウト」「Luxe」「風変わりな家」など、4つの独特なカテゴリーも追加した。

サービスの細かな調整に関しては、AirbnbはMy Tripsタブのデザインを一新し、予約のカウントダウンタイマー、チェックインの詳細、今後の予約リスト、パーソナライズされた経験の提案など、必要な情報を一か所にまとめた。

数時間後にチェスキー氏と話す機会があり、今回のニュースや、彼が見ている旅行分野のトレンドに基づいた会社の長期的なビジョンについて話を伺う予定だ。

画像クレジット:Phillip Faraone / Stringer / Getty Images

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(文:Jordan Crook、翻訳:Yuta Kaminishi)

保険会社と保険代理店間を結ぶ情報プラットフォーム「ソリシター君」を展開するSEIMEIが3億円のシード調達


保険会社と保険代理店間を結ぶ情報プラットフォーム「ソリシター君」を展開するSEIMEIは11月2日、シードラウンドにおいて第三者割当増資による総額3億円の資金調達を行なったと発表した。引受先はJAFCO。調達した資金はソリシター君の強化のほかInsurTech領域での新規事業開発へあてる。具体的には、保険会社が外部ベンダーに求めるセキュリティー基準をクリアーするための開発費および追加機能開発と、それに向けた人材採用としている。

ソリシター君では、保険代理店が複数の保険会社の業務情報を一括で検索できる機能を無料で提供。また保険会社には、保険代理店募集人にダイレクトにアプローチできる広告配信プラットフォームを提供している。電話コミュニケーションが主流となっている保険会社ソリシター(営業)と保険代理店募集人のコミュニケーションコストの削減と業務効率を改善し、保険会社・保険代理店双方の売り上げ向上に寄与するという。β版をリリースした2019年9月から約2年で、バイラルとオーガニック検索流入のみで保険代理店の導入企業数が200社を突破、保険代理店募集人の9100名超が活用している。

2017年5月設立のSEIMEIは、「テクノロジーを活用し、50兆円保険産業の礎となる」をミッションとして掲げ、ソリシター関連事業における業務非対面化とDXを進めている。今後は全保険会社の公認システムになることを目指し、保険業界にとって必須のインフラサービスを構築していくという。

テスラ車15万台が「フルセルフドライビング」へのアクセス権を求めその評価基準「セーフティスコア」ツールを利用中

Tesla(テスラ)の約15万台の車両が、2021年9月に発表された新しい「セーフティスコア」を利用していることが、第3四半期の決算説明会で明らかになった。これは、ドライバーが「フルセルフドライビング」ソフトウェアのベータ版にアクセスできるかどうかを判断するためのツールだ。

「フルセルフドライビング(FSD)」のベータ版登録プログラムには現在15万台のクルマが加入しているが、ソフトウェアへのアクセス権が与えられたドライバーはごく一部である。過去1年間でFSDプログラムを試すことができたドライバーは、わずか2000人だ。10月初め、Teslaはバージョン10.2を、セーフティスコアが満点の約1000人のオーナーに追加で展開した。

Teslaは、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOが何年も前から「いつか完全な自律走行機能を実現する」と約束してきたFSDソフトウェアを1万ドル(約114万円)で販売している。しかし、FSDを搭載したTesla車は、自律運転ではない。FSDは、駐車ツール「サモン」をはじめ、高速道路のオンランプからオフランプまで、インターチェンジや車線変更を含めてクルマをナビゲートするアクティブ支援システム「ナビゲート・オン・オートパイロット」など、多くの自動化機能を搭載した先進運転支援システムだ。

最新のFSDベータ版では、高速道路や市街地での運転を自動化することを想定している。このシステムはまだレベル2の運転支援システムであり、ドライバーは常に注意を払い、ハンドルから手を離さず、コントロールする必要がある。

ベータ版ソフトウェアにアクセスするためには100点満点でなければならないセーフティスコアが、FSDへのアクセスを計るために使用されているが、Teslaは他の用途も考えている。同社はこの機能を、10月初旬にテキサス州で販売を開始したばかりの、成長が著しいテレマティクス保険の情報に利用したいと考えている。セーフティスコアは、ブレーキ操作、旋回、尾行、前方衝突警告、オートパイロットの強制解除などを参考にして、衝突事故の可能性を予測するものだ。

関連記事:テスラ、「リアルタイムの運転行動」が価格を左右する自動車保険をテキサス州でスタート

Teslaの最高財務責任者(CFO)であるZachary Kirkhorn(ザカリー・カークホーン)氏は、これまでに同社が収集した1億マイル(約1億6000km)以上の走行データを分析した結果、セーフティスコアを使用している顧客の衝突の確率は、使用していない顧客より30%低いことがわかったと述べている。

「つまりこれは、製品が機能しており、顧客がそれに反応していることを意味しています」と同氏は語っている。

Teslaの車はコネクテッド・システムを採用しているため、同社は膨大な量のデータを使ってドライバーの属性を評価し、その属性が安全性と相関しているかどうかを判断することができる、とカークホーン氏はいう。Teslaでは、この運転履歴データを用いて、一定期間の衝突確率を予測するモデルを作成した。

「モデルは完璧なものではなく、利用可能なデータの関数です。データセットが増え続けるにつれ、我々は新しい変数を試し続けます。そして、そのモデルで衝突の頻度を予測することができれば、それを価格曲線に反映させることができるのです」。とカークホーン氏はいう。

これによりTeslaは「クルマに組み込まれ、アプリに組み込まれ、お客様の体験に組み込まれた」個別化された価格を提供することができる。また、運転のたびに、衝突の確率を減らすためにどのような運転調整が必要であるかをドライバーに伝えるフィードバックループも備えている。

Teslaが保険についてリサーチを始めたとき、従来の保険会社は、事故歴や配偶者の有無、年齢などの人口統計情報など、静的な既存データに基づいて保険料を算出していることがわかった。その結果、リスクの低い顧客は保険料を払いすぎてしまい、その払いすぎた保険料がリスクの高い顧客の補助に使われてしまうのだとカークホーン氏はいう。

「私たちは、このデータを見て、これは公平ではないと思いました」とカークホーン氏は話している。

Teslaは約2年前からカリフォルニア州で保険を提供しているが、セーフティスコアによって保険料が決定されるのはテキサス州が初めだ。同社は、規制当局の承認を得ながら、保険を提供する州を追加していくロードマップを作成しており、Tesla車が存在するすべての主要市場に参入することを目標としている、とカークホーン氏は語っている。

画像クレジット:Tesla

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

テスラ、「リアルタイムの運転行動」が価格を左右する自動車保険をテキサス州でスタート

Tesla(テスラ)は、カリフォルニア州での販売開始から数年を経て、新たな本拠地であるテキサス州で自動車保険提供をスタートした。Electrekによると、テキサス州で提供されている保険は、カリフォルニア州で提供されているものとはかなり異なっているという。この保険は、顧客のリアルタイムの運転行動をもとに保険料を算出する。他の保険会社が一般的に使用する、クレジット、年齢、性別などの情報は、Teslaにとってはどうでもいいことのようだ。Teslaによれば、顧客の保険金請求履歴や運転記録も考慮しないという。

その代わりにTeslaは、9月に同社がリリースした「フル セルフドライビング(FSD)」ベータ版で導入した機能である「セーフティスコア」を見ることにしている。そのため、ドライバーが道路上で遭遇する状況に応じて、支払う必要のある保険料が毎月変わる可能性があり、かなり複雑なことになるかもしれない。強いられた衝突警告やオートパイロット解除は、すべてスコアに影響する。また、危険な距離で他の車に追従したり、急ブレーキをかけたり、アグレッシブに角を曲がったりすると、スコアが下がる可能性がある。セーフティスコアは現時点ではまだベータ機能であり、Teslaは時間の経過とともに改善されるだろうと述べている。

現在、Teslaオーナーは見積もりを申し込むことができ、同社は90点のセーフティスコアを前提に保険契約を開始する。その後の価格は顧客のパフォーマンスに応じて決まり、従来のプロバイダーの料金よりも高くなることも低くなることもあり得る。Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、Teslaの株主総会で新たな本拠地が明らかにされた際に、カリフォルニア州で提供するサービスも、リアルタイムの運転行動に基づいてアップグレードする予定だと述べた。この変更を実装することはまだ許されていないが、現在、規制当局に許可を求めているという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Tesla

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

第一生命が欧州スタートアップとイノベーションを模索、その具体的な内容とは?

Dai-ichi Life International (Europe) Limited でHead of London Innovation Labを務める伊豆淳氏

少子高齢化が止まらない日本。あらゆる業界で国内マーケット縮小への対策が迫られている。生命保険事業を営む第一生命は2017年にイノベーション専門組織を設置、2018年に東京とシリコンバレーにラボ組織を設置するなど、テクノロジーの活用とグローバルなパートナーシップ構築に注力している。同社の取り組みをDai-ichi Life International (Europe) Limited でHead of London Innovation Labを務める伊豆淳氏、同London Innovation LabでInnovation Managerを努める米本兼也氏が語った。

本記事は、イントラリンク主催「第一生命がヨーロッパに目を向ける理由 〜現地スタッフが語る欧州スタートアップエコシステムの特徴とポテンシャル〜」のセッション内容を編集・再構成したものとなる。

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欧州という保険市場

伊豆氏によると、現在、保険業界はGDPの成長鈍化や人口減少などの外部環境踏まえて課題に対応すべき状況にあるという。また、スマートフォンユーザーが増え続けており、こうしたトレンドも取り込んでいく必要があるという。

「欧州と日本は似たような人口構成を持っていて、社会環境も類似しています。高齢化や、それにともなう医療費負担の増加など、日本と同じような課題を持っています」と伊豆氏。

ここで日本と世界の保険市場を見てみると、実は日本が米国、英国に次ぐ3番目の市場規模を持つ保険大国であることがわかる。しかし、欧州を1つの市場とみなすと、その市場規模は日本よりも大きい。

伊豆氏は「統計の取り方にはいろいろあり、こちらの統計では中国が含まれていないのですが、仮に中国が入ってきても日本が上位に入ってくることに変わりはありません」と補足する。

いずれにしても、欧州という市場は大きい。欧州の保険事業プレイヤーを見ても、ドイツのアリアンツ、フランスのアクサ、イギリスのアビバ、イタリアのゼネラリなど、大規模でグローバルな企業が目に入る。

欧州インシュアテック動向

こうした大規模保険事業プレイヤーはイノベーションにも注力している。

伊豆氏は「彼らはGAFAMと連携し、ラボを設立し、インキュベーター、アクセラレーターを立ち上げるなど、活発な活動を見せています」という。

大手はこのような動きを見せているが、スタートアップはどうだろうか。

伊豆氏は「欧州のインシュアテック企業は豊かな状況にあります」と話す。

欧州のインシュアテック企業の評価額は230億ユーロ(約3兆円)となっている。また、欧州インシュアテックへの投資額は右肩上がりで、2021年には42億ユーロ(約5409億円)の投資が見込まれる。一方の日本は、インシュアテックだけでないスタートアップ全般への投資額(2020年)が37億ユーロ(約4765億円)だ。インシュアテックに限定するとこれよりも投資額が低いことがわかる。

では、インシュアテックに関わるスタートアップと既存の保険会社は競合するのだろうか。

伊豆氏は「保険会社は保険の製造、販売、管理と、保険に関わるすべての機能を持っています。インシュアテックスタートアップでこうした『全機能』を備えているところは多くありません。彼らはむしろ、従業員の福利厚生、健康サポートや請求管理、自営業、中小企業向け保険など、保険会社のパーツの機能に特化して優位性を発揮しようとしています」と考えている。

最新欧州インシュアテック事例

こうした動向を受けて、保険の提供方法にも変化が訪れている。

例えば、パラメトリック保険。この形の保険では、気温、雨、風速などの潜在的な損失に関連するパラメータを契約書に明記し、保険会社が天気などのデータを監視し、データが損失発生の閾値に達したら自動的に保険が支払われる。

組み込み型保険というものもある。これは、例えばスキーを楽しみたい顧客が、スキー場のチケットをオンラインで購入する際、追加の保険の注文の有無をオンライン決済の中で顧客に確認することで、保険をプッシュするものだ。

また、AIの活用も見逃せない。自動請求サポート、カスタマーサポートのためのチャットボット、掛け金のダイナミック・プライシングなどを行うためのデータ分析、写真による請求処理など、保険のさまざまなプロセスの中でAIの活用が進んでいる。

その他にも、ブロックチェーンの活用や、テレメディシン(遠隔医療)など、インシュアテック企業のテクノロジー活用は枚挙にいとまがない。

伊豆氏は「当社は欧州で有望なスタートアップとのイノベーションを模索していますが、こういった状況で欧州のエコシステムにいきなり入るということは現実的ではありません。当社は現地のアクセラレーターにアプローチしたり、業界団体に参加したり、欧州のスタートアップと繋がりのあるコンサルティング企業のサポートを得たり、欧州スタートアップに投資するなどして、徐々にエコシステムに入るようにしています」と語る。

第一生命が欧州スタートアップとパートナーシップを構築する方法

米本氏は、保険事業で海外展開する難しさを指摘する。

Dai-ichi Life International (Europe) Limited London Innovation LabでInnovation Managerを務める米本兼也氏

「国が変われば商習慣が変わります。ですが、保険の場合、国の福利厚生とも関わるサービスですので、ある国で展開したサービスを他の国でそのまま横展開することができません。同じことは技術でも言えます。欧州で良い技術を持つスタートアップを見つけても、その技術が日本でそのまま活用できるかは別問題です。欧州のスタートアップを日本に紹介するときには、その技術が日本でどう役立つのか、勝ち筋を見据えてから紹介するようにしています。また、技術をサービスに反映するときにはできるだけスモールスタートして、撤退する必要が出てきたらすぐ撤退できるようにしておくことも大事です」と米本氏。

また同氏は欧州でコラボレーションするスタートアップを見つけ出し、日本の第一生命につなげる役割を果たしているが「ビジネス部門への気遣い」の重要性も訴える。

「私のいるイノベーション部門だけではイノベーションはできません。イノベーションを起こすためには、現業を持つビジネス部門の力が不可欠です。ですが、彼らには、今、この瞬間走らせているビジネスがあります。そのため、彼らに大きな負担をかけることは避けながら、新しい技術を導入することで得られる効果をアピールし、興味を持ってもらうように努めています」と米本氏は語る。

また、同氏は海外スタートアップとの連携で不可欠な英語に関しても言及した。

米本氏によると「問い合わせなどのコミュニケーションが英語だ」というところで日本側が構えてしまうこともあるという。

米本氏は「そういうときには、英語の翻訳や資料作りなども対応してくれるコンサルティング会社さんにプロジェクトの初期から入ってもらうなどして、日本側の負担や心の壁を小さくしていく工夫が必要ですね」と締めくくった。

サイバーセキュリティ保険のCoalitionがシリーズEで約230億円調達、評価額は約3900億円超に

サンフランシスコを拠点とするサイバーセキュリティ保険企業Coalition(コアリション)は、シリーズEラウンドで2億500万ドル(約229億円)を調達し、IPO前の同社の評価額は35億ドル(約3901億円)以上となった。このラウンドはDurable Capital、T. Rowe Price、Whale Rock Capitalが共同で主導し、同社の既存投資家も参加した。

Coalitionは、企業向けにサイバーセキュリティツールや保険を提供し、サイバーリスクの管理・軽減を支援している。同社の顧客数は5万社を超え、過去1年間で倍増した。また、Coalitionの総収入保険料は3億2500万ドル(約362億円)を超え、前年比で800%増加している。これは、Coalitionの保険引受に対する技術的なアプローチが、リスク管理のモデルとしてより成功していることを示していると、同社はTechCrunchに語っている。同社の契約者は、他のサイバー保険企業と比較して、保険金請求の頻度が3分の1以下であるという。

Coalitionの共同創業者兼CEOのJoshua Motta(ジョシュア・モッタ)氏は、TechCrunchの取材に対しこう語った。「これまでデータの活用が遅れていた業界に新たな基準をもたらした、これまでとは大きく異なるアプローチが功を奏しています。パンデミックは、サイバーリスクがもはや純粋なデジタルリスクではないことを示しています。企業の産業プロセスはますますコンピュータによってコントロールされるようになっており、これは攻撃されるリスクがあることを意味しています」。

「Coalitionの保険は、企業が被る可能性のある金銭的および無形の損害に加えて、サイバー攻撃によって生じる可能性のある、あらゆる物理的損害をカバーしている点が特徴です」と同氏は付け加えた。

また、パンデミックとそれに続いたサイバー攻撃の激増は、同社の大きな成長の原動力となっている。これがきっかけとなって、モッタ氏は最近ホワイトハウスで行われたサイバーセキュリティ政策に関する会議に招かれた。

今回の資金調達により、Coalitionの累計調達額は5億ドル(約557億円)以上となった。同社は今ラウンドを、新たな保険分野への拡大、新規市場への進出、人員の増加に使用するとのこと。Coalitionは現在265名の従業員を抱えており、年内に315名に増やす予定だ。

また、CoalitionはTechCrunchに対し、今回の資金調達が株式公開の準備をする前の最後の資金調達になる可能性があると語っている。

「これら(の投資家)はいずれも、公開市場で長期的な価値を生み出す企業に投資してきた素晴らしい実績を持っています」とモッタ氏はいう。「私たちは、Coalitionがそのような道を歩むことを確かに考えていますが、進化する市場環境の中で、お客様やパートナーにとって何がベストなのかを考えて、今後の決断を下していきます」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

建設保険市場でデジタル体験と契約決定の簡易化を図るShepherdが約6.8億円調達

建設市場に特化したインシュアテックのスタートアップであるShepherd(シェパード)は、Spark Capital(スパーク・キャピタル)が主導する615万ドル(約6億7500万円)のシードラウンドを獲得した。この資金調達イベントは、2月にSusa Ventures(スサ・ベンチャーズ)が主導してプレシードラウンドを実施した後に行われたもので、Susa VenturesはShepherdの最新の資金調達イベントにも参加している。

広い意味では、Shepherdは、消費者よりも他の企業に販売するネオ・インシュランス・プロバイダー(次世代保険会社)に該当する。消費者にサービスを提供するインシュアテックのスタートアップ企業は、株式公開のために何年にもわたってベンチャーキャピタルの支援を受けてきたが、初期の楽観的な見方に続き、公開後すぐに株価が下落してしまっていた。

しかし、Shepherdや9月初めに発表されたBlueprint Title(ブループリント・タイトル)のような企業は、保険業界の他の場所にもアプローチする余地があることに賭けている。Shepherdは、建設市場をターゲットにしており、過剰賠償責任保険から始めて、この業界を切り開こうとしている。

同社の共同設立者兼CEOであるJustin Levine(ジャスティン・レヴィン)氏は、TechCrunchの取材に対し、建設業界の契約者は、一般賠償責任や商用自動車保険など、多くの保険を必要としていると述べている。しかし、大掛かりな建設プロジェクトでは、さらに多くの賠償責任保険が必要となることが多く、それらは超過保険やアンブレラ保険として販売される。

Shepherdは、建設業界のミドルマーケット ─ 年間2500万ドル(約27億4600万円)から2億5000万ドル(約274億6400万円)規模のプロジェクトを行う企業─ をターゲットにしており、顧客との契約を支援する方法として、テクノロジーを活用したいと考えている。

レヴィン氏によると、同社が提供するサービスには2つの核となる部分があるという。1つ目は、お客様が期待しているもの、つまり、お客様のための完全なデジタル体験だ。CEOは、そのデジタルサービスを、インシュアテックの世界においてあって当たり前のものだととらえている。私たちも同じ考えだ。しかし、別の建設テックプロバイダーと提携して、保険契約決定を手助けするという、もう一方の部分を考慮すると、同社はさらに興味深いものになる。

例えば、このShepherdは、同社の事業に投資したProcore(プロコア)と提携している。

契約決定の判断を手助けするのを第三者のソフトウェア会社に委ねるというコンセプトは、ある意味では理に適っている。新しい技術や手法を採用するという点でテクノロジーに前向きな企業は、そうでない企業と比べて契約決定のプロファイルが同じではない。一般的に、データが多ければ多いほど契約決定の判断がしやすくなる。建設会社が機能するよう支援するソフトウェアにつなげることは、その観点からも理に適っていると言えるだろう。

初期の顧客が同社の製品のことを「建設管理ソフトウェアを装ったリスク管理ソリューション」と呼んでいたことに納得しているとProcoreのCEOは、TechCrunchの取材で語っている。リスクが効果的に管理されればされるほど、Shepherdの損失率は時間の経過とともに低下し、価格競争力が高まると考えられる。

価格に関して、現在建設保険市場は苦戦しているとレヴィン氏は考えている。決済コストの上昇により、この分野の手つかずの古い保険(レガシー保険)の中には、予想以上の損失を抱えているものもあり、一部の保険会社は価格の引き上げを余儀なくされている。レヴィン氏は、Shepherdがこのレガシー保険を持たずにこの市場に参入したことで、競争力のある価格を提供できるようになったと考えている。

過剰賠償責任保険は、Shepherdが建設保険市場に参入するための「くさび」であり、いずれ他の商品も販売する予定だという。同社のCEOによれば、超過賠償責任保険を最初に取り組むのは、このエリアが同市場において現在最も痛みを伴っている場所だからだという。

率直にいうと、TechCrunchはB2Bネオインシュアランスのスタートアップ市場に魅力を感じている。消費者に保険を販売するには、保険の種類によって異なる特定の売上原価(COGS)が必要であり、しばしば市場投入コストがかさむ。さらに、莫大な予算を持つナショナルブランドに対抗するには、顧客獲得コスト(CAC)が厄介なことになる。新興のテック企業にとっては、事業保険市場のほうが有利かもしれない。ベンチャー投資家は、きっとそのような賭けをすることを望んでいる。

Sparkの案件を担当したNatalie Sandman(ナタリー・サンドマン)氏は、最初にShepherdに出会ったときは別のプロジェクトに取り組んでいたのだが、注意を向けてみると、心に刺さったとTechCrunchに語った。この投資家は、建設保険の契約プロセスに新しいデータを導入するというアイデアが、同社がよりスマートな意思決定をするのに役立つ可能性があると述べている。保険の世界では、契約の選択肢が増えれば、より収益性の高い保険になる。つまり、将来のキャッシュフローが大きくなるということだ。そして、それが価値創造につながることは誰もが知っていることだ。

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画像クレジット:Dibyangshu SARKAR / AFP / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ソフトバンクGも出資するインドのオンライン保険アグリゲーターPolicybazaarがIPOを申請

インドのオンライン保険アグリゲーターであるPolicyBazaar(ポリシーバザール)は、8億900万ドル(約880億円)の資金調達を目指す新規株式公開を申請し、インド市場でこの2カ月の間に公開市場を開拓した4番目のスタートアップ企業となった。

PolicyBazaarは、インドの市場規制当局に提出した書類の中で、5億400万ドル(約550億円)を新株発行によって調達し、残りは既存の投資家による株式の売却によって調達したいと述べている。

SoftBank Group(ソフトバンクグループ)、Falcon Edge Capital(ファルコン・エッジ・キャピタル)、Tiger Global(タイガー・グローバル)、InfoEdge(インフォエッジ)から支援を受ける創業12年目のスタートアップは、IPO前のラウンドで約約1億ドル(約110億円)の調達を検討する可能性があるという。ソフトバンクは2億5000万ドル(約275億円)分の価値の株式を売却する予定で、PolicyBazaarの創業者たちは5270万ドル(約57億4000万円分)の価値の株式の売却を検討していると、書類には書かれている。

PolicyBazaarは、生命保険、健康保険、旅行保険、自動車保険、不動産保険などの保険契約を、従来の代理店を通さずにウェブサイト上で比較・購入できるアグリゲーターとしてサービスを提供している。同社はインドの他中東で事業を展開している。

画像クレジット:PolicyBazaar

インドでは現在、13億人の中で保険に加入している人はごく一部にすぎないものの、このようなサービスを大衆に提供するためには、デジタル企業が重要な役割を果たすとアナリストたちは分析している。格付け会社のICRAによると、2017年の時点で保険商品が行き渡っているのは、インドの人口の3%にも満たないという。

World Bank(世界銀行)によると、平均的なインド人の年収は約2100ドル(約23万円)。2017年に保険商品を購入したことのあるインド人が支払った金額は、平均50ドル(約5500円)に満たないと、ICRAは推定している。

「インドの生命保険市場は、良好なマクロ指標、金融商品やサービスに対する意識の高まり、商品やプロセスのデジタル化と簡素化、オンライン販売網、商品のイノベーションとカスタマイズ、政府の政策や規制による後押しが原動力となり、年率18.8%で成長し、2030年度には31.9兆ルピー(約46兆8000億円)に達すると予想される」と、PolicyBazaarはこの書類の中で述べている。

Bernstein(バーンスタイン)のアナリストは、2021年初めのレポートで、PolicyBazaarはインドのオンライン保険販売市場で90%のシェアを占めていると推定している。このプラットフォームは、インドではAcko(アコ)やAmazon(アマゾン)と競合しており、ローンやクレジットカード、投資信託も取り扱っている。同社によると、毎月100万件以上の保険を販売しているという。

「インドは保険市場が浸透していません。その中で、Policybazaarのようなウェブ・アグリゲーターを通したデジタル販売は、業界の1%未満です。これは大きな成長の余地があるということです」と、Bernsteinのアナリストは顧客に向けて書いている。

7月に上場して見事な成果を収めたZomato(ゾマト)をはじめ、フィンテック企業のPaytm(ペイティーエム)やMobiKwik(モビクイック)も、ここ数週間以内に株式公開を申請している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インド新規上場PolicyBazaar保険ソフトバンクグループ

画像クレジット:Arijit Sen / Hindustan Times / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インシュアテックの評価額を心配すべきだろうか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

皆さん、こんにちは!素敵な一週間を過ごせただろうか?私は眠りを覚ます胸焼けを感じながら32歳になった。ということで個人的には、ちょっとしたいいことも、悪いこともあった。だが、それでもマーケットは待ってくれない。全く、微塵も揺らぐことがない。つまり、インシュアテック関連株の下落や、この状況がスタートアップ企業にとってどのような意味を持つのか、また多数のIPOについてなどの話題は尽きないということだ。面白い!

さて新規上場企業であるKaltura(カルトゥーラ)、Couchbase(カウチベース)、Enovix(エノビックス)と行ったチャットの詳細に入る前に、まずインシュアテックについて話しておくことにしよう。

ここ1年ほどの間に、Root(ルート、自動車保険)Metromile(メトロマイル、自動車保険)、Lemonade(レモネード、レンタル保険)などの、インシュアテック系のスタートアップが続々と上場している。ここでは、現在の彼らのパフォーマンスがどのように見えるかを簡単なダイジェストでご紹介しよう。

  • Root:1株あたり7.72ドル(約853円)。IPO価格27ドル(約2985円)から71.4%ダウン。
  • Metromile:1株当たり7.26ドル(約803円)。合併後の高値から64.4%下落。
  • Lemonade:1株あたり86.97ドル(約9614円)。IPO価格の29ドル(約3206円)から199.9%上昇。

思い出して欲しいのは、RootとMetromileがLemonadeの後に取引を開始したことだ、つまりその下落は長い時間軸ではなく短い間隔で発生した。だからこそ、この状況が興味深いのだ。

何が起きているのだろうか?さて、(SPAC、IPOなどの)何らかの形で公開したインシュアテックの3社に2社は極めて厳しい状況にある。このことは、まもなく完了予定のSPAC主導の合併を進めているHippo(ヒッポ)にとって、良い兆候とはとても言えない。こうした大幅な下落は、インシュアテックスタートアップにとっては明るい材料ではない。彼らは、自分たちの価値に対する一般投資家からの疑問に答えなければならない。

LemonadeのIPO後の好調な業績は、懸念を払拭するものだろうか?難しい質問だ。同社は、自動車保険をはじめとする新しい市場への拡大に奔走している。最新の決算報告書によると、同社は今年初めにテキサス州の寒波により多少の打撃を受けたものの、その点を除くと、同社が他の2社がやっていないことをやっているのかどうかは明らかではない。ともあれ投資家が注目しているのは、RootやMetromileではなく、Lemonadeなのだ。IPOに向けてまだ規模を拡大している多くのインシュアテックスタートアップにとって、何故そうなるのかや、他の2社よりもLemonadeに近付くにはどうすればよいかを解明することは、重要な鍵となるだろう。

IPOの季節到来

この2週間、The Exchangeは上場する企業のCEOと電話で話し、彼らの最近の状況を学ぼうとしてきた。というわけで、以下に示したのはKaltura、Couchbase、Enovixの人たちとのチャットの電話メモだ。

Kaltura

  • メモ:オンラインビデオに特化したKalturaは、今年初めに株式公開を申請したものの、そのIPOを延期し、また別の資金調達イベントを行った
  • The Exchangeが、KalturaのCEOであるRon Yekutiel(ロン・イェクティエル)氏に話を聞いたところ、同社のIPOのタイミングは、2021年初頭の公開市場の混乱の影響を受けていたという。それは驚きではなかったが、確認できたことはよかった。
  • そしてその停滞の原因の一部は、Archegos(アルケゴス)の破綻によるものだったとイェクティエル氏はいう。それは理にかなった説明だが、私たちは初めて知るニュースだった。
  • イェクティエル氏は、株式公開が遅れたことを決して嬉しくは思っていないと述べた(公開は事前に公表できる唯一の資金調達だからだと彼はいう)。とはいえ初回に彼の会社が話をしていた投資家たちは、二度目のIPOに際しても変わらずKalturaを熱心に応援していると付け加えた。
  • CEOによれば、Kalturaの第2四半期の速報値は、年初に話していたことが実現していることを投資家に示すことになったという。また、継続的な成長のためには、新製品の取り込みが重要であるとも強調した。
  • イェクティエル氏は、20%の高値を記録した初日の値付けと取引結果に満足している。それ以上だと過剰で、それ以下だと不足だとも指摘している。
  • Kalturaの価格が3月のIPO時の価格帯に比べて低かったことについて、イェクティエル氏は「第一印象を与えるチャンスに3度目はない」と述べ、同社としては公開を完了させたかったのだと語った。そして、その通りにやりきった。自分の考えの中で迷子にならないためには重要なことだ。
  • 本記事執筆時点で、Kalturaは1株あたり10ドル(約1105円)のIPO価格から17.5%上昇している。

一つの逸話を紹介しよう。Kalturaはかつて、現在のTechCrunch Disruptカンファレンスシリーズの前身であるTechCrunch50イベントの、さらに前身であるTechCrunch40の初期において、物理的なトークンによる1票の差により優勝した。イェクティエル氏はそのトークンをまだ持っていて、チャットの最中に見せてくれた。素晴らしい!

Couchbase

  • The Exchangeは、NoSQLデータベース企業であるCouchbaseのCEO Matt Cain(マット・カイン)氏に話を聞いた。Couchbaseの価格は1株あたり24ドル(約2653円)で、IPO時の価格帯だった20(約2211円)ドルから23ドル(約2542円)を上回った。
  • この記事を書いている時点では、本日の取引で9.2%上昇し、33.20ドル(約3670円)となっている。
  • カイン氏は、かなり厳密な台本に基づいて受け答えをした。これは、失敗して刑務所に入ることを心配している上場したばかりのCEOとしては、ごく普通の状況だ。ということで求めていた詳細な回答は得られていない。しかしそれでも、Couchbaseもリモートでのロードショーが増加することによって、会議の密度を高めることができた企業だったことなどを知ることができた。
  • CEOは、Couchbaseの前にある機会の規模、すなわちオンライントランザクション処理データベースの世界についての議論に集中していた。彼は、世の中にこれ以上大きな市場を見つけるのは難しいと主張し、そのことが投資家たちに、彼の会社が何かを成し遂げられるかもしれないと期待させているのだ。データベースの世界の市場が、カイン氏が考えている位大きいのであれば、スタートアップ企業の活躍の場はたくさんあるだろうというのが私たちの解釈だ。
  • 私たちは、公開市場の投資家たちがオープンソース企業をどのように見ているのかを知りたかったのだが、彼からはあまり話を聞くことができなかった。それでも、この会社のIPOは非常に強力なものであり、OSSで作られていることは、イグジットを目指す会社にとって必ずしも不利ではないことを示唆している。

Enovix

  • The Exchangeは新しい公開企業Enovixの話を聞きたいと思っていた。同社がSPACで上場したばかりだからだ。なぜそれが重要なのか?なぜなら、SPACで上場を目指すバッテリーに特化した企業が他にもあるからだ。そのため、今回のチャットは後に続く仕事への良い地ならしとなった。
  • それに、公開企業と話すのは大好きだ。嫌いなひとがいるだろうか?
  • 「合併して新しいティッカーシンボルで取引を開始した」日は、彼の会社にとってIPOのようなものかとたずねたところ、創業者でCEOのHarrold Rust(ハロルド・ラスト)氏はそうだと答えた。もっともな答だ。
  • 私たちは、同社のSPAC合併日が第2四半期から第3四半期にずれ込んでいることに気づいた。それはなぜだろう?手短にいえば、会計に関するいくつかのSECの変更に起因している。チャットから受けた印象は大したことではなかったのだが、Enovixの合併日を少し遅らせる原因となった。
  • なぜSPACで株式公開を行うのか?現金だけでなく、その合併に関わるスポンサーも、業務知識という点で重要なリソースなのだとラスト氏は述べている。同社は、SPACスポンサーのネットワークからも採用を行っていて、これは注目に値すると感じられた(ほら、実際の投資家による付加価値だ!)。
  • まだ収益を上げていないもうひとつのバッテリー企業SES(SPAC間近)よりも自社の評価額が低い理由を聞かれたラスト氏は、SPAC取引における自社の評価額は交渉によるものであり、もし会社が成功するなら11億ドル(約1216億円)と評価されようが14億ドル(約1548億円)と評価されようが、実質重要ではないと答えた。
  • Enovixの 興味深い点は、 需要の高まるEV(電気自動車)向けの電池技術に着手していないことだ。 その代わりに、ハイエンドの電子機器をターゲットにしている。その理由は?バッテリーをハードウェアに搭載するためのサイクルが早く、価格競争力を持てるからだ。しかし、いずれはEVにも参入したいと考えている。
  • 同社の1株あたりの価値は17.33ドル(約1916円)で、Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)の評価では25億ドル(約2764億円)となっている。これは、予想されていたものよりも良い結果であり、SES自身の将来のデビューに向けての良い兆候だ。

盛りだくさんだった。ここまで私に付き合って、ささやかなThe Exchangeニュースレターを読んでいただき感謝している。世界のベンチャーキャピタル市場やエドテックなどに関する長文記事を読みたい方は、こちらからすべての記事がアクセス可能だ

ではまた、お元気で。

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画像クレジット:Nigel Sussman
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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

保険テック系スタートアップBackNineの過失で米大手保険会社の数十万件の申込書が流出

保険テクノロジーのスタートアップ企業であるBackNine(バックナイン)のセキュリティ上の過失により、同社のクラウドサーバーがインターネット上に無防備に放置され、数十万件の保険申込書が流出した。

BackNineという社名に聞き覚えはないかもしれないが、過去数年の間に保険を申し込んだことがあるなら、あなたの個人情報も処理していたかもしれない。カリフォルニアを拠点とする同社は、大手保険会社が生命保険や障害保険を販売・維持するためのバックオフィスソフトウェアを構築している。また、中小企業や独立系のファイナンシャルプランナーがウェブサイトで保険プランを販売する場合には、ホワイトレーベルの見積もりウェブフォームを提供している。

しかし、Amazon(アマゾン)のクラウド上でホストされていた同社のストレージサーバーの1つが、誤って設定されていたため、そこに保存されていた71万1000件のファイルに誰でもアクセスできる状態になっていた。その中には、本人とその家族の非常に機密性の高い個人情報や医療情報が含まれている作成済みの保険申込書もあった。さらに個人の署名の画像や、その他BackNineの社内ファイルも含まれていた。

TechCrunchは、調査した書類の中に、氏名、住所、電話番号などの連絡先情報の他、社会保障番号、医療診断、服用している薬、申込者の過去と現在の健康状態に関する詳細な記入済みアンケートなどがあることを発見した。血液検査や心電図などの検査結果も含まれていた。運転免許証の番号が記載されている申込書もあった。

無防備に放置されていた書類は、2015年にまで遡り、最近では今月に入ってから作成されたものもある。

バケットと呼ばれるアマゾンのストレージサーバーは、デフォルトでは非公開に設定されているので、バケットを管理している誰かがその権限を公開に変更したのだろう。データはいずれも暗号化されていなかった。

セキュリティ研究者のBob Diachenko(ボブ・ディアチェンコ)氏は、公開状態となっていたストレージバケットを発見し、2021年6月初旬に同社にメールでこの過失の詳細を伝えていたが、最初の返事を受け取った後、返信はなく、バケットは公開されたままだった。

TechCrunchは、ディアチェンコ氏が連絡して無視されたBackNineのバイスプレジデントであるReid Tattersall(レイド・タッターソル)氏と連絡を取ろうとしたが、TechCrunchも無視された。しかし、タッターソル氏に(同氏のみに)公開状態になっていたバケットの名前を伝えてから数分後に、それらのデータはロックされた。TechCrunchは、タッターソル氏からも、同氏の父親でBackNineの最高経営責任者であるMark(マーク)氏からも、まだ返事をもらっていない。

TechCrunchはタッターソル氏に、同社が州のデータ漏洩通知法に基づいて地元当局に通報したかどうか、データ漏洩の影響を受ける個人に通知する計画があるかどうかを尋ねたが、回答は得られなかった。サイバーセキュリティ事件の開示を怠った企業は、厳しい財政的・民事的な罰則を受ける可能性がある。

BackNineは、いくつかの米国の大手保険会社と取引をしている。今回公開されてしまったバケットには、AIG、TransAmerica(トランスアメリカ)、John Hancock(ジョン・ハンコック)、Lincoln Financial Group(リンカーン・フィナンシャル・グループ)、Prudential(プルデンシャル)の保険申込書が多く含まれていた。本記事掲載前に連絡を取ったこれらの保険会社の広報担当者はコメントを控えた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:データ漏洩個人情報保険アメリカAWS

画像クレジット:TechCrunch (composite) / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)