SmartNewsの“原型”になったニュースキュレーションサービス「Crowsnest」が終了

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スマートフォンユーザーならばアプリストアで一度は見たことがあるであろうニュースキュレーションサービス。4月に上場したGunosyの「グノシー」、スマートニュースの「SmartNews」をはじめとして、今では多くのユーザーが利用している。

そのSmartNewsの原型とも言えるウェブサービス「Crowsnest」が今月、ひっそりと終了していた。以前にTechCrunchでも紹介しているとおり、Crowsnestは現在スマートニュースの共同代表であり、SmartNewsの開発者である浜本階生氏が手がけたサービスだ。

このサービスは、ユーザーがフォローするTwitterアカウントで言及されているリンクや全体のツイートから集計したリンク、経過時間などをもとに、重要だと思われるニュースを紹介してくれるというもの。このロジックを発展させたものがSmartNewsの「Twitter」のタブだと言ってもいい。

初期のグノシーも配信する記事の“パーソナライズ”をうたっていたのだが、Crowsnestのユーザーのフォロワーが言及するリンクを重視するパーソナライズという方向性はそこまで多くのユーザーには受け入れられなかったそうだ。そこで全体のツイートで言及されているリンクに重きを置いてサービスを設計したのがSmartNewsなのだそう。

スマートニュースによると、5月頃からサービスに不具合が出ていたそうで(実際僕がアクセスしても、記事が1本も表示されないことが何度かあった)、結局開発リソースを割り当てることができなくなり、サービスが終了することになったそうだ。「こういう終わり方は心残りだが、その分SmartNewsでのプロダクト開発に集中して、良い結果を出せれば」(浜本氏)

女性特化転職サイト運営のLiBが2.7億円を調達、キャリア支援の新構想も発表

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キャリア女性特化の会員制転職サイト「LiBz CAREER(リブズキャリア)」を運営するLiBは7月30日、リンクアンドモチベーション、クラウドワークス、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)、日本ベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタルの計5社を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は2億7千万円。出資比率やバリュエーション等は非公開。

LiBは2014年4月の創業。「企業で活躍する女性を増やし、女性が活躍する社会を創る」をミッションに掲げて同年5月にLiBz CAREERを立ち上げた。同年7月にはCAVおよびEast Venturesから7千万円の資金調達を実施している。LiBz CAREERは2015年7月末時点で会員数約2万4000人に到達する見込みだという。

同社では今回の資金調達をもとにマーケティングを強化。さらに女性向けキャリア支援サービスの提供。機能拡充をするが、その一環として発表されたのが今回出資するリンクアンドモチベーション、クラウドワークスとともに展開する「キャリアパスポート構想」だ。

LiBではより広い領域で女性のキャリア支援を行うべく、今回出資を受けた事業会社との連携を進める。まずリンクアンドモチベーションと提携し、クライアント企業に対して女性が働く際のモチベーションの診断や、採用や研修、制度設計などの支援を行う。またクラウドワークスと連携ユーザーにリモートワーク可能な求人情報をの提供していく。

クラウドワークスは「職務の経歴を可視化することで、個人の与信を作っていく」といった話を常々しているが、LiBz CAREERでは同社と連携する形でそんな与信を作っていくことも考えているようだ。具体的な連携内容は明かされていないが、キャリア・評価などをサイト上のレジュメに蓄積して、「次のキャリアに移る際の『パスポート』となる経歴書を作ることが可能になる」(LiB)とうたっている。

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

コロプラが渋谷・道玄坂に開設したコワーキングスペース「the Roots」に学生起業家が集結

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ゲーム開発のコロプラ2015年3月にスタートした投資子会社の「コロプラネクスト」が渋谷にコワーキングスペース「the Roots」をオープンした。7月29日の夜にはオープニングパーティーを開催。学生起業家や投資家たちが集まった。東京の人であれば道玄坂の途中にあるFORUM 8の入ったビルと言えば分かるかもしれないが、ちょっと年季の入った雑居ビルの3階に、下の写真のような超オシャレな場が誕生した。

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見た目は超オシャレで、ともすればチャラチャラして見えるが、案外ルールは厳しい。コロプラの副社長で今回の学生起業家向け投資事業の中心人物の1人である千葉功太郎氏は「運用ルールは厳密に決めています」と胸を張る。24時間365日利用可能なスペースで学生向け。だから、ともすれば悪い意味での部室的なノリにもなりかねない。そんなこともあって、アルコールはイベント時以外は禁止だし、IDを持つ入居者以外は彼女・彼氏を含めて入室禁止にしているそうだ。オープニングパーティーで挨拶した千葉氏は学生起業家たちに向かって、超オシャレな場所で仕事をすることになったとしても、「オレたちイケてるなと勘違いしたりしないで謙虚な気持ちで取り組んで」と語りかけていた。

the Rootsが入る新大宗ビルは道玄坂中腹にある雑居ビルだが、実は多くのスタートアップが入居している。近隣には独立系VCの拠点もある。昨日のパーティーにはEast Ventures、インキュベイトファンド、IVP、B Dash Ventures、ANRI、Skyland Ventures、プライマルキャピタルなどVCから投資家が顔を出していたが、渋谷を中心に活動するキャピタリストも少なくない。六本木や神谷町を拠点にするVCたちからは、「やっぱり渋谷は人と会うコストがかからないよね」という感想も聞こえてきた。

コロプラネクストは学生起業家を資金や事業面で支援していくが、渋谷に拠点を作ることで、起業家同士の情報交換やチーム組成を促し、投資に繋がるような人的交流が生まれてくることを狙っているようだ。ちなみに、コロプラ自体は恵比寿のガーデンプレイスに入居している。

もともと渋谷はスタートアップの集積地の1つだが、今回のthe Rootsのようなコワーキングスペースとして、リクルートが運営する「TECH LAB PAAK」やEast VenturesとSkyland Venturesの「Hive Shibuya」、エンジニア向けなので毛色は少し違うがインテリジェンスが8月1日に開設予定の「dots.」、朝日新聞社の「Asahi Shimbun Accelerator Program」が入る朝日新聞メディアラボ渋谷オフィスなど続々と交流スペースが誕生しつつある。

5社がピッチ、平均年齢19.5歳のチームも

オープンパーティーには、学生起業家や投資家、関係者らが(ぼくの目視だと)50〜60人ほどが集まった。これまでコロプラネクストがウェブサイトからの応募や人的繋がりで面談してきた200人を超える学生の中から、起業家や起業志望の学生たち30人ほどが会場に来ていたようだ。

イベントでは若手起業家がプレゼンを行った。すでにコロプラネクストからの投資が決まっているか、投資を検討中という5社だ。簡単に紹介しよう。

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最初にプレゼンを行ったのは、メイクアップ関連情報をシェアするコミュニティ「Makey」(メイキー)を運営するMoobの中村秀樹氏。Makeyは、ずばり「クックパッドのメイク版」だ。アプリではメイクの「Before/After」や写真入りの手順が表示できる。中村氏によれば、Instagramでは30秒に1度はメイク・コスメ関連の投稿があり、Twitterではその30倍のペースでツイートがある。1日に10万以上のメイク関連情報の発信がある計算で、「メイク情報の発信、閲覧欲求は非常に高い。スマホとセルフィー文化が広まると、これはもっと爆発的に増える」と話す。今年1月末に正式リリースしたiOSアプリでは、所有コスメや肌質感、顔の形、メイクタイプごとに検索ができるほか、つくれぽライクな機能を追加するなど、「われわれはクックパッドを踏襲する」と先行していて成功しているCGMサービスを研究し、料理ではなくメイクに適用し、PCではなくモバイルに最適化するという。Makeyでは、すでに独自文化ができつつあって、Makey専用のツイッターアカウントを作るユーザーも出てきているそう。SEOを効かせた記事を量産するメディア運営も行うことで、モバイルメディアの新しいカタチを作るという。

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大阪大学の高橋慶治氏が創業したTraimmuでは、学生向けのメディアのCo-mediaと就活プラットフォームInfrAを展開している。高橋氏の見立てでは、現在の就活生の間には2つのトレンドがある。1つは優秀な学生がマイナビやリクナビといった大手ナビサイトに登録しなくなってきていること。もう1つはインターンシップが増加していること。その結果として優秀な学生が集まる媒体がない、インターンシップでの実績や経験を評価できてないといった課題が顕在化しているのだそう。企業による応募も、エンジニアとかマーケティングといった職種名による曖昧な応募の仕方が主流であるために、応募の集中が起こってマッチング精度が悪くなるという悪循環が起こっているという。そこでInfrAでは「レジュメ」と呼ぶ学生向け個人ページを用意して、これまでの表彰経験やインターンでの経験を可視化する方法を提供。一方、企業側は中途採用の求人のように、実績や実務経験、役職や給与、スキルなどの明確な基準で条件を提示するようにするのだという。

平均年齢が19.5歳で高校生メンバーもいる若いスタートアップ企業のINASE(いなせ)が提供するのは「Gocci」(ゴッチ)という動画による飲食店紹介のサービスだ。INASEの細川氏は「食べログやぐるなび、Rettyで、もう面白いことは全部できてると思ってませんか? 本当にそうでしょうか?」と語りかける。Gocciが取り組むのは、店舗外観で2秒、店の内部で2秒、料理で3秒などとした合計7秒の動画を基本として、お店の様子がひと通り分かるようにするというアイデアだ。「動画なら、その場の雰囲気がそのまま伝わる。実際に店舗に行ってみたら思ったより狭かったり、思ったよりうるさかったりしたことはありませんか? 写真は断片的すぎたり、キレイに見えすぎる。リアルさが低い」と言う。Gocciは9月末には英語圏版を出す予定で、「グルーバルなグルメアプリを出す。世界から日本を飲み込む形を目指す」と言う。クリップ動画というメディアで言語依存性が低いということもあるのだろうが、まずは日本市場で足場を固めるという発想ではないのが頼もしい。INASEのチームメンバーは全員がエンジニアで、これまで「東京の青梅で寝食を共にしながら開発してきた。これからはthe Rootsを拠点にやっていきたい」と話した。東京外の人ために念ために付け加えると青梅(おうめ)は都心から遠く隔たった東京都の西のはずれで、ツーリングとか梅の花を見に山に入るには良いところだとは思うけど、ふつうはスタートアップ企業が拠点を置くことを考える場所ではない。

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このほかプレゼンは、以前TechCrunch Japanでも紹介したことのあるカップルデートなどの写真を撮影するサービスの「ラブグラフ」と、10代向けファッション動画コミュニティー「Kollect」を提供するFastriが行った。プレゼン後にはthe Rootsに集まった学生起業家やその予備軍の学生、投資家たちが立食形式で事業アイデアや自己紹介をしていた。

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iPhoneとApple TVを使う新しい黒板「Kocri」、アプリをリリース—販売元はカヤックと業務提携

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5月に老舗黒板メーカーのサカワとカヤックが開発した“新しい黒板”「kocri」を紹介したが、そのiOSアプリが7月29日にリリースされた。App Storeで無料ダウンロードできる。価格は月額600円もしくは年額6000円。9月15日までは無料で利用できる。またこれに合わせて、両社は業務提携を発表した。これまで以上に強いタッグを組んでプロダクトの提供を進めるという。

kocriはiOSアプリ、Apple TV、プロジェクタを組み合わせることで、既存の黒板に図形などを映したりして、あたかも電子黒板のように利用できるプロダクトだ(サカワとカヤックではチョークも使えてプロジェクターや動画も使える「ハイブリッド黒板」という表現をしている)。

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以前にも紹介したとおりだが、政府は教育環境のIT化に向け、2019年をめどに電子黒板の導入を進めているところ。電子黒板の普及率については75.3%という数字もあるのだが、これは「学校に1台以上ある」割合。実際に全教室に設置しているというのはまだわずか4.6%と極めて少ない数字だ。

さらに、忙しい教師がその使い方をマスターしているかというとそうとも言い切れないそうで、サカワ常務取締役の坂和寿忠氏いわく、「昨年のデータになるが、6〜7割の電子黒板はうまく使い切れていないという調査結果もある」のだという。

電子黒板を手がけるメーカーにとっては補助金などもあって追い風の状況だという。しかし購入する自治体からすれば、電子黒板の価格も悩みの種となる。タッチパネル式の液晶を搭載した電子黒板となると、1台数十万円なんてモノはザラなのだ。

こういった背景もあってか、kocriは発表してすぐから想定を超える問い合わせがあったという。そこでサカワ側も「アップデートを続けて10年以上使える製品を提供したい」(坂和氏)となり、カヤックとの関係を強化。アプリも当初売り切りを予定していたが、月額課金で提供することを決めた。

今後サカワはKocriの販路拡大や教材の開発を進める。またカヤックは社内に専業チームを立ち上げて人材を募集。アプリおよびシステム開発を進める。両社は1年で2万教室への導入を目指すとしている。

予約台帳のトレタが3億2000万円の資金調達、登録店舗数は3200以上に

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予約台帳アプリ「トレタ」を提供するトレタは7月27日、日本政策金融公庫、アイスタイルキャピタル、WiL、フェムトグロースキャピタル投資事業有限責任組合から総額3億2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。詳細は公表していないが、第三者割当増資に加えて、新株予約権付き融資や資本性ローン等を組み合わせての資金調達となっている。

トレタは、飲食店向け予約台帳アプリを2013年12月に公開。登録店舗数は2015年7月時点で3200以上。この数字は前年同時期の約2.5倍の数字で、サービス利用継続率も98%以上だという。累計予約件数は約260万件、人数にして約1400万人分の予約が登録されており、「拡大を続ける予約台帳アプリ市場の中でも際立った成長を続けている」(トレタ)という。

VESPERも7月に2億円を調達、競合の動きも活発に

最近ではグルメサイトや予約台帳、決済サービスなど飲食店向けのサービスはオンラインで予約台帳を提供するスタートアップでは、同社の他にVESPERの「TableSolution」やエビソルの「ebica」などがいる。2社の直近の動きについても紹介しておく。

VESPERは7月にジャフコを引受先とした2億円の資金調達を発表。TableSolutionは8カ国語に対応した台帳サービス。クライアントにはホテル日航東京などもあるそう。現在の導入店舗数は非公開だが、5月時点では約1400件と聞いている。2015年1月から6月末までの平均導入件数は、前年比で約27倍に増加しているという。エビソルは5月に英語と中国語(繁体・簡体)に対応。6月にヤフーの「Yahoo!予約 飲食店」、7月にUSEN「ヒトサラ」のと連携(トレタは4月にYahoo!予約 飲食店と連携。7月にヒトサラと連携)している。5月時点の導入店舗数は導入見込みを含めて800件となっている。

Stroboはセンサー、クラウド、SDKでメーカーの“IoT化”を支援する

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ネットの情報はGoogleが押さえている。それならばハードウェア、IoTの領域でのGoogleを目指そう——そんな決意をして東京大学工学部在席時に1度目の起業を経験したと語るのは、現在Stroboの代表取締役を務める業天亮人氏だ。

同士は2010年にネット家電向けスタートアップのPlutoを設立。2013年には同社を離れることになるが、2014年11月に2度目の起業でStroboを立ち上げた。2015年2月には、East Venturesからシードマネーを調達している。金額は非公開だが数千万円程度。

Strobo代表取締役の業天亮人氏

Strobo代表取締役の業天亮人氏

“IoT化”のための製品群を提供

Stroboが手がけるのは、さまざまなメーカーのプロダクトを“IoT化”できるという製品群「Strobo IoT Suite」だ。Strobo IoT Suiteは、(1)インターネット連動のセンサーやアクチュエーター群、(2)IoTに最適化されたクラウドストレージやメッセージングサービス、(3)IoT製品とアプリを連動するSDK——の3点で構成されている。

メーカーがStrobo IoT Suiteを使って自社のプロダクトをIoT化する手順としては、まずプロダクトにセンサーを組み込み、連携するアプリに開発SDKを導入すればいい。センサーから送られてくるデータはストレージに蓄積され、アプリでそのデータを受け取ることができる。逆にアプリからアクチュエーターに何かしらのアクションを与えるということもできる。

と、仕組みを延々読んでもらうよりも、具体的にどういうことができるのかを知ってもらった方が早いだろう。今回Stroboが発表した試作プロダクトであるスマートクッションの「cuxino(クッシーノ)」とスマートフォン連動型ベッドの「mikazuki」を紹介しよう。

IoT化された「クッション」と「ベッド」を開発中

cuxinoはスマートフォンと連動する、センサー内蔵のスマートクッション。この製品をイスの上に置いて座れば、その姿勢をリアルタイムで評価。重心が偏ったりして悪い姿勢が続くと、アプリを通じてスマートフォンに通知が届く。この姿勢は日・週・月での振り返りが可能。また、離席も検知できるため、仕事中など、席から立つ自動的にパソコンにスクリーンロックをかけるといった使い方ができるのだそう。

その他にも、その日最初にクッションに座った際、Slackと連携して出勤を通知するなど、様々なウェブサービスとの連携も可能となっている。

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mikazukiはスマートフォン連動のベッド。目覚めに合わせて照明やエアコンなどのIoT製品の設定をオンにして、目覚めに最適な環境を用意するほか、睡眠時には眠りの深さや眠りに落ちた時間などを計測。データはアプリにて閲覧できる。さらにこのデータを元にして、「眠りの習慣」を分析。最適な睡眠について提案してくれるという。

業天氏にcuxinoの試作品を見せてもらったのだけれど、センサー類はシート状になっており、既存のクッションのカバーを開き、中にそのシートを入れるだけで利用できるという手軽なものだった。ちなみに写真を撮らせてもらおうと思ったのだが、「試作品のためNG」とのことだった。

メーカーとIoTの橋渡し

ではどうしてそんな既存のプロダクト(クッション)に入れるだけでIoT化できるような製品を作ったのか。その背景にはPlutoでの経験がある。Plutoが提供するのは、エアコンやテレビなど各種家電をスマートフォンで操作するためのデバイスとアプリだ。業天氏は「メーカーとしてやっていくというコンセプト自体を否定するわけではない」とは語るが、いざスタートアップが企画・設計から製造し、販路の確保までを行うということの大変さを痛感してたという。

しかし一方では、既存(かつ非IoT)のメーカーは自らのプロダクトを製造し、その販路も持っている。それであればそのメーカーの製品とIoTを橋渡しするような存在こそが必要ではないのかと考えてStroboの製品群を開発したのだそう。「ターゲットにするのはメーカー。初期導入がしやすいIoTのパッケージを作っている。もちろん製品の評価にはエンジニアが関わる必要があるだろうが、マーケティングや商品設計の担当者だけでも仕組みが理解頂けるようなものを提供していきたい」(業天氏)

同社では今秋をめどにcuxinoとmikazukiの製品モニターのプログラムを実施する予定。プログラムでは、両製品の試作版を実際に利用できるという。希望者は各プロダクトのページから応募可能だ。またStroboでは、プログラムと並行して、パートナーとなるメーカーとの提携などを進めるとしている。

DIYショップやECサイト運営をする“創業78年のベンチャー”大都、GCPなどから4.5億円の資金調達

体験型DIYショップ「DIY FACTORY」やDIY用品のECサイト「DIYツールドットコム」を運営する大都は7月27日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)およびみずほキャピタルを引受先とする総額約4億5000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。また今回の資金調達にあわせてGCPの仮屋園聡一氏が同社の社外取締役に就任する。

工具の卸問屋からスタート、創業78年のベンチャー

大都は1937年(昭和12年)にスタートとした、創業78年の会社だ。もともと工具の卸問屋として創業したという同社が、今回のように資金を調達し、ベンチャー的な事業展開をするきっかけとなったのは、3代目となる現・代表取締役の山田岳人氏が入社したことなのだという。

大都代表取締役の山田岳人氏

大都代表取締役の山田岳人氏

当初大阪のリクルートで勤務していた山田氏は2代目代表取締役の娘と結婚したことを契機に大都に入社。社員15人ほどの工具問屋だった同社で、自らトラックを運転し、問屋やメーカー、ホームセンターを自ら回っていたのだという。「その頃初めて決算書を見たが真っ赤な状態。問屋業だけでは売上は出るが収益も悪化する一方だった」(山田氏)

そこで2002年頃にオンラインで商品の販売を開始。楽天市場に出店するところからスタートして、山田氏が問屋業の合間に対応するというところから1年半でやっと年商100万円を達成。そこからは専任の担当者も採用した。

それでもECの売上で業績を変えられる状況ではなく、問屋業の収益悪化から2006年にはいよいよ廃業をするかどうかという状況になった。そこで先代の代表と話して「(潰れるくらいなら)好きにやっていい」ということになり、当時の社員を全員解雇するという苦渋の決断をする。そして問屋業を縮小させ、EC化を進めた。

商品点数の拡大が成長の契機に

EC事業は徐々に成長するが、2009年前半に売上が鈍化した。「それまでは商品数1万8000点で日本最大級のDIY用品のECサイトをうたっていたが、問屋として持っていた10万点の商品データベースへの対応を進めた。アイテム数が増えて価格と納期が明確であれば、商品は売れる」(山田氏)。現在では実に90万点という商品数を誇っている。

増える発注に対応すべく、メーカーへの発注のシステムも2010年に内製した。「DIY用品のメーカーだとPCすら持っていないというケースも多かったが、売上がついてくれば認めてくれる。現在では86%がオンライン化されている」(山田氏)

DIYの楽しさを伝えていくためのリアル店舗

商品数の増加によって売上は伸びたが、それでも2013年頃からまた鈍化した。山田氏がそこで考えたのは、「競合も出てくる中で、我々がやりたいことは何なのかと考えた。日本にはDIYの文化はそれほど根付いていない。そうであれば、工具の使い方や、作る楽しさを未来に向けて伝えないといけない」ということ。それを形にしたのがDIY用品を購入できるだけでなく、ワークショップを通じてDIYの体験ができるリアル店舗だ。同社は2014年、大阪・難波に体験型DIYショップのDIY FACTORY1号店をオープンした。

DIY FACTORY2号店の店内

DIY FACTORY2号店の店内

店舗には、メーカー向けに月額5万円の壁面展示スペースを25カ所用意した。「メーカー向けにショースペースを提供することで、メーカーは自分たちの好きな商品を出す場所を確保できる。実は日本一のペンチメーカー、ドライバーメーカーなどは(同社の本社がある)大阪にあるのだが、そんなものは多くの人に知られていない。そういうモノを紹介する場所を提供することでメーカーは認知を高め、ユーザーはいい工具と出会え、我々は売ろう売ろうとしなくても収益を担保できる、という三方よしになるように考えた」(山田氏)

メーカー向けに提供する展示スペース

メーカー向けに提供する展示スペース

実際、このスペースの収入もあって、店舗は初月から黒字運営を実現している。2015年には東京・二子玉川の二子玉ライズに2号店をオープン。休日には7000人以上が訪れることもあるそうだ。

店舗を運営してはじめて理解したことも少なくない。「『電気ドリルを下さい』なんていって店舗に来る人はいない。たとえば『洗濯機の上に棚が欲しい』とかみんなやりたいことがあって店舗にくる。だからそのために商品や使い方を説明しないといけない。これは店舗を出してやっと分かったことだ。ユーザーが欲しがっているのは『モノ(商品)』ではなく『コト(体験)』」(山田氏)。これを受けて、ECサイトでも「やりたいこと」を基準にした検索機能を実装した。

店舗運営、ECサイトに加えてハウツー動画サイトを展開

大都が今回の資金調達を契機に進めるのは、店舗の拡大、ECサイトの強化・改善、ハウツー動画サイト運営の3点だ。

まず店舗については、都心部を中心に複数店舗を出店。DIYやセルフリノベーション向けのワークショップを積極的に開催する予定。「ABCクッキングスタジオのDIY版といった立ち位置を取っていく」(山田氏)。次にECサイトについては、在庫商品を増やして即納体制を強化。さらにシステム面での機能強化を予定する。さらにDIYのハウツーを動画で紹介するサイト「MAKIT!」を展開する。以下はMAKIT!で実際に紹介されている動画の一部だ。

アプリ分析サービスや決済サービスを手がけるメタップス、8月28日にマザーズ上場

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アプリ分析サービスを中心に事業を展開するメタップスが7月24日、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場申請を実施し承認された。上場日は8月28日、証券コードは6172。

同社は上場にともない115万2000株を公募し、157万8000株を売出す。オーバーアロットメントによる売出しは27万3000株。主幹事証券会社はSMBC日興証券。価格の仮条件決定日は8月12日。ブックビルディング期間は8月13日〜8月19日まで。公開価格決定日は8月20日。

メタップスはアプリ分析・収益化サービス「metaps」を中心に、決済サービス「SPIKE」、ロボット開発者マネタイズ支援の「Metaps Robotics」などを提供する。

メタップスの創業は2007年9月(当時の社名はイーファクター)。当初はSEOや共同購入クーポンなどの事業を中心にしていたが、2011年からは前述のmetapsの事業を開始。社名もメタップスに変更。2011年以降はシンガポールやアジア圏、米国サンフランシスコにも進出している。2015年2月にはFenox Venture CapitalおよびFidelity Growth Partners Japanなどを引受先とした総額43億円の資金調達を実施。あわせて元金融担当・経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏をアドバイザーに迎えた。5月には、スクウェア・エニックス元社長の和田洋一氏を社外取締役に迎えている。

メタップスの連結業績は2013年8月期が売上高が13億167万円、経常利益は205万円の赤字、純利益は1226万円。2014年8月期は売上高22億6507万円、経常利益は5億1013万円の赤字、純利益は5億1081万円の赤字となっている。単体での業績は2013年8月期が売上高10億3617万円、経常利益は1979万円、純利益は3410万円。2014年8月期が売上高9億9679万円、経常利益は4億939万円の赤字、純利益は4億969万円の赤字となっている。

今回の上場承認を受けてか、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏は自身のTwitterで「時間だ、始めよう。」というツイートを残している。

 

華やかじゃない、すぐにお金にならない、でも支えたい——独立系VCを立ち上げた24歳の投資家

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「根が『サブキャラ』なんですよ。高校ではオーケストラをやっていたんですが、担当はコントラバス。華やかじゃないし、目立たない。でも、みんなを支えられるならそれでいいんです」——今月24歳を迎えたばかりの若き独立系ベンチャーキャピタリスト・TLMの木暮圭佑氏は、自分の性格についてこう語る。

23歳でファンドを立ち上げ

TLMの木暮圭佑氏

TLMジェネラルパートナーの木暮圭佑氏

国内で若手の独立系ベンチャーキャピタリストと言えば、ANRIの佐俣アンリ氏やSkyland Venturesの木下慶彦氏などの名前が挙がることが多い。

2人には2014年11月に東京・渋谷で僕らが開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2014」に登壇してもらったこともあるのだが、その際に印象的だったのは、「『若手』と言われる自分たちはもう30代前半。もっと若い人がベンチャーキャピタリストとして活躍して欲しい」という話だった。

別に年齢だけにこだわっても仕方ないのだけれども、学生起業家が生まれている中で、同年代の動きを同じ目線でキャッチアップし、支援できる投資家は実のところほとんどいないのは事実。

成功して財産を築いたエンジェル投資家はさておき、ベンチャーキャピタリストは自分のお金を出す以上に他人からお金を集めて預かり、投資をすることになる。そのためにはビジネス知識や実務経験、人脈、そしてなにより「この人にならお金を預けてもいい」と思わせる信頼が必要になるわけだ。

前述の佐俣氏も木下氏も学生の頃から投資家との関わりを持ち、それぞれ事業会社やベンチャーキャピタル(VC)で働く、いわば修行の時期を経て、20代後半でベンチャーキャピタリストとして独立している。必要な要素を考えれば、この年齢でのスタートだって早いほうだと思う。最近ではインキュベイトファンドのFoF(ファンドオブファンズ:ファンドが出資して作る「子ファンド」)としてプライマルキャピタル(佐々木浩史氏)やソラシード・スタートアップス(柴田泰成氏)なども立ち上がっているが、彼らも独立したのは30歳前後だったはずだ。その他にも最近では若手のキャピタリスト、インキュベーターなどが徐々に活躍しはじめていると聞く。

冒頭にあるように木暮氏は24歳になったばかり。僕が知る限りでは、国内で最年少の独立系ベンチャーキャピタリストだ。木暮氏は4月、23歳でベンチャー投資ファンド「TLM1号投資事業有限責任組合」を立ち上げたが、この夏からその投資活動を本格化させる。ファンドのサイズは現在約5000万円とまだ小さいが、年内には1億円規模を目指す。資金を提供するLP(有限責任組合員)の多くはエンジェル投資家。インターネット関連の事業でIPOやM&Aをした人物が中心だという。

きっかけは渋谷のコワーキングオフィス

木暮氏は1浪して早稲田大学国際教養学部に入学。そこで学生向けのビジネスコンテストを主催するサークルに入った。そしてサークル運営の作業場所として借りた東京・渋谷のコワーキングスペース「co-ba」で、paperboy&co.(現GMOペパボ)創業者の家入一真氏や、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏といった起業家たちとの交流が始まったのだという。

その後木暮氏は米国に留学。2013年に帰国したのちEast Ventures(EV)のインターンを務めた。「帰国した次の日からEVで働いていました。当時EVは六本木に引っ越して、シェアオフィスを始めたばかり。オフィス管理や雑務からなんでも担当しました」(木暮氏)。仕事に集中するため、大学もいったん休学した。

木暮氏はその後、EVのファンド組成や具体的な投資先支援に関わり始める。女性向けキュレーションメディア「MERY」を運営するペロリや決済サービス「Coiney」を運営するコイニーなどの実務支援をしたそうだ。「投資先でスタートアップの組織の作り方、資金調達をする際の悩み、マネジメントの仕方などを現場で学びました。複数の投資先に関われたので、『この会社は代表主導で事業に対してロジカルな判断をする』『この会社は現場の人間に事業を任せて数字を伸ばす』といった起業家ごとの姿勢を見ることもできたのは大きな経験」(木暮氏)

投資先や社内外の先輩キャピタリストらと関わる中で、ベンチャーキャピタリストとして独立することを考えるようになった。当時は起業という選択肢もあったそうだが冒頭の発言のとおりで、自ら会社を興すのではなく、周囲の起業家を支えたいと考えてVCになる道を選んだ。2014年に入って準備のためにいったんEVを離れ、大学にも復学。具体的な計画を立て始めた。EV投資先の会社から就職の誘いもあったがあくまで外からの「お手伝い」をしていたそうだが、先輩キャピタリストに「本当に独立する気はあるのか?このままでは(社外の支援者として)口だけしか出さない人間になる」と言われ奮起。卒業を前にしてファンドを立ち上げた。

投資対象はシードラウンド、すでに3社に実行

TLMが投資するのは基本的にはシードラウンドで、一部シリーズAのスタートアップを含む。投資額は500万〜1000万円程度だという。

投資領域はウェブサービスが中心で、「テーマは日常生活を豊かにするもの。例えば今まで5時間かかっていたことを5分で解決する、そんなサービスやモノに投資をしたい。『大きな市場』とか『未来を作る』ということはもちろん言っていきたいが、まずはそんな身近なところから始めたい」(木暮氏)

すでにスマホ中古売買サービスの「ヒカカク」運営のジラフなど3社への出資を実行している。いずれもEV時代から面識のある、同年代の起業家だという。今後もファンドサイズを拡大しつつ、積極的な投資をするとしている。

若手独立キャピタリストは食っていけるのか

佐俣氏、木下氏と昨年のイベントで話したテーマの1つでもあるのだが、24歳の木暮氏は、はたしてベンチャーキャピタリストとして食っていけるのだろうか。

何でこんなことを言うのかというと——もちろんVCごとに差異はあるが——独立系ベンチャーキャピタルでは通常、年間でファンド総額の2〜3%程度の管理報酬と、投資先のIPOや売却などで元本を超えた金額の10〜20%程度の成功報酬を得るケースが多いからだ(一方で銀行系VCやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)などはいわゆるサラリーマン的な給与体系であるケースが多い)。TLMは管理報酬を公開していない。しかし1億円のファンドで管理報酬2%という計算をすれば、投資先のイグジットがない限り、キャピタリストとしての稼ぎは年収200万円となるわけだ。

木暮氏にその点を聞くと「お金が目的であれば、初期のベンチャーキャピタルは難しい」と本音を漏らす。「投資先についてははっきり言って心配してません。そもそも伸びると信じているし、そのための支援もしていく。課題は自分自身。もちろん日銭を稼ぐ必要はあると思っています。ただそれでもチャレンジしたい世界がそこにありました」(木暮氏)。かつてはコンサルティングやイベント運営などで食いつないだという若いキャピタリストの話を聞いたこともあるが、独立系VCには起業家とはまた違う苦労があるわけだ。

ともかく、24歳の若きベンチャーキャピタリストの活動は始まったばかり。実績はこれからだが、まずは投資先のスタートアップ1社1社の支援を続けるという。そしてゆくゆくは海外スタートアップへの投資もやっていきたいのだそう。「上に上に、常に高い山に登り続けるような気持ちが必要。お金を預けてくれる人がいるというのは、そういうことを求められている証なのだと思う」(木暮氏)

山登りアプリ「YAMAP」が保険提供開始、今後目指すは「軌跡のあるトリップ・アドバイザー」

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この間、アウトドア派の友人に誘われて初めて山登りらしい山登りをやってみたら、いくつ意外な発見があった。2000メートルを超える雲取山という山に1泊2日で行ったのだけど、フルマラソンを3時間台で走るほど体力に自信がある男よりも、ふだんピーピー言ってる8歳女児たちのほうが急坂でも崖でも涼しい顔でヒョコヒョコと駆け上っていけるのだ、というのは楽しい発見だった。筋力と体重のバランスで小学生は有利らしい。

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それから、山道には想像以上に険しいところがあるのも発見だった。足元を見ていないと簡単に転ぶし、転ぶ場所と転び方によっては怪我や滑落死も結構あり得ることなんだというのは、登山初心者のぼくには、ちょっと背筋の寒くなる気付きだった。さらに言うと、山頂の山小屋には、急増する遭難事故を伝える新聞の切り抜きがたくさん貼りだされていて、山登り・アウトドアのためのアプリ「YAMAP」が解決しようとしている「道迷い」が頻発していることを、ぼくは現場でリアルに理解したのだった。

TechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルのファイナリストでもあるセフリが提供する「YAMAP」は、電波の届かないオフライン状態でも使えるGPS地図と、それに紐づくアウトドア愛好者のオンラインコミュニティーだ。

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ぼくは当然YAMAPをインストールして山登りに行ったのだけど、その効果は絶大だった。スマホのバッテリー切れや故障のリスクがあることから、紙の地図は変わらず必須だが、都市部で紙の地図を誰も使わなくなったのと同じ理由で、YAMAPがあれば紙の地図を見る理由はない。いま自分たちがどこにいて、どちらの道を進むべきなのか。どの進路だと斜度や所要時間はどの程度になるのか。休憩所まで今のペースだと何分かかるか、水場やトイレはあるか。この3時間で高低差はどのくらい登ったのか。そうしたことが、初心者でも一発で分かる。むしろ、登山に慣れているはずのリーダーが紙の地図を使うのよりも、ぼくのほうが正確に位置や距離感を把握していたのだった。まあ、宇宙からハイテク測位をしているのだから当然ではある。

単独登山者が増えて、遭難事故も急増

さて、そのYAMAPを提供するセフリだが、今日新たにネットから申し込める「YAMAPアウトドア保険」をリリースした。1カ月500円という短期間限定でも加入できるのが特徴で、遭難救助や怪我、死亡補償などを提供する。

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警察庁の「平成26年中における山岳遭難の概況」というデータによれば、2014年の遭難者数は2794人だ。このうち死者・行方不明は311人にのぼる。この発生件数と遭難者は統計が残っている昭和36年以降で最も高くなっていて、過去10年で遭難者数は6割以上も増えている。セフリ創業者の春山慶彦氏によれば、山岳遭難事故急増の背景には、単独登山者の増加があるそう。

「10年前にぼくが登山を始めた頃は、日本の登山といえば、社会人の山岳団体や大学のワンダーフォーゲル部に所属して、みんなで登るのが一般的でした。そこで技術や楽しみ方、天気の読み方、地図の読み方を教えてもらっていました。例えばぼくが穂高に1人で行きたいと言っても、まだお前はやめておけと言われるような、そういう情報共有ができていたんです。ところが、いまYAMAPのユーザーアンケートを取ると、山岳部に属する人は1割もいませんでした。ちょっと高尾山や丹沢に登ったという人が、2回目の登山にいきなりアルプスのような実力以上の登山に行ってしまっているんです」

いまは、若い女性がカラフルなテントを担いで1人で山に入るというようなこともあるが、これは10年前には考えられなかったことだそうだ。先ほどの警察庁の報告書によれば、単独登山者の遭難事故発生率は2人以上の登山グループの3倍以上となっている。

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遭難者の捜索費用は、これまで現地の自治体が負担してきた。しかし現在 遭難者急増を受けて自己負担とする条例を制定する動きが、長野県や富山県、岐阜県などで出てきているのだとか。春山氏は、「長野県だと遭難する人の7割は東京からの登山者です。これまでは観光客だからと(費用を)相殺する考えでしたが、なぜ地元の自分たちが支払わなければいけないのか、という思いがあるようです」という。

捜索コストは安くて30万円。ヘリを飛ばすと300万円程度となるそうで、今回のYAMAPアウトドア保険では、捜索費用は300万円まで補償する。これまでにも登山愛好者のための共済や山岳関連の保険はあったが、長期加入や加入者の職業やアクティビティの種類制限などの条件があり、分かりづらかったのだそう。セフリでは今回、外部保険会社と提携して生命保険をベースにした商品を開発することで、YAMAPユーザーであるアウトドア愛好者に合ったものを作ったのだという。保険販売の収益は手数料をのぞいた額を保険会社と折半する。500円の保険だと、80円が手数料で残り420円の半分の210円がセフリの収益となるイメージだそうだ。

点ではなく軌跡で地図情報を

YAMAPは2013年3月にローンチして、現在インストール数はiOSとAndroidを合わせて13万7000ほど。提供している地図は630点で、1地図あたり数地域をカバーすることから4000以上の山や地域を網羅しているという。

YAMAPは地図上に実際に歩いた軌跡を表示したり、写真や感想を投稿するオンラインコミュニティサービスも提供している。その会員数は現在10万人で、活動記録は11万7000件、投稿された写真は82万枚となっている。2014年5月に3740件だった活動記録の投稿数は、2015年5月には1万6750件と、前年比で約4.5倍に増えているというから、ニッチ領域ながらも順調にアクティブなコミュニティに成長しているようだ。YAMAPユーザーの8割は登山利用で、残りの2割は渓流釣りやスキー・スノボ・バックカントリー、自転車、パラグライダーなど。アプリには自分のアウトドア用品を登録する欄があり、これと連動するアウトドア用品の比較評価アプリをまもなくリリースする予定という7月上旬にiOS向けでリリース済みだ。

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YAMAPの利用は増えているが、登山人口自体は縮小傾向にあって、これが逆転することは考えづらい。2013年に860万人とされた登山人口は、2014年に760万人となった。「山に触れている人の約4割が60代以上の団塊の世代。山ブームを経験している人で、だんだんこの人たちが減る」(春山氏)。

ただ、春山氏自身は登山というより自然に触れる機会を増やしたいのだと強調する。

「若い人たちに山に触れる機会を増やしたい。自然に触れる人が減っているので、スマホでもネットでも、使えるものを何でも使って自然に触れる人を増やしたい。高い山に登るというよりも、身近に自然を感じてほしい。そういうことをしていなかった人に発見をしてもらいたい」

こうした思いから、YAMAPが今後進む方向性は、自然体験に軸足を置いて、観光地図にまで利用を広げていくというものだという。

「もともと観光地図は事業計画にあったもの。ただ、観光地図をいきなりやるのはリスクが高いので、ニッチな登山に特化してコミュニティーを作りました。今後は地図を観光に広げていくことで大きくしていきます」

YAMAPを使うと分かるけど、他のユーザーが公開している登山ルートやその感想、写真は、これからそこに行く人にはすごく参考になる。他のユーザーの軌跡データを自分の地図にプロットすることはすでにできるが、これは観光で威力を発揮するのではないかという。

「ハワイでの誰かの活動記録があったら、その軌跡データーをダウンロードする。すると、その翌週にハワイ旅行に行くと、たとえ旅行中にオフラインになっていても地図が見れて、参考にした人の情報が見れる。トリップ・アドバイザーのような旅行情報サービスは<点>の紹介だけです。きちんと線で紹介するための軌跡を押さえていません。YAMAPは軌跡のあるトリップ・アドバイザーを目指すという言い方をしています」

「京都には世界中から観光客が来ていますが、寺社仏閣を楽しんでるだけですよね。本当は北山のような自然も豊かなのに、これまで観光に自然が組み込まれてなかったんじゃないかと思います。自然体験も入れれば、1週間とか、1カ月とか、それくらの長期滞在に耐えられるポテンシャルは日本各地にある。京都なら北山の散策ルートのように。そういう観光形態を実現することで、地域に貢献できるのではないかと思っています」

インバウンド観光の需要には注目していて、英語版を来月中にもリリース。中国語、韓国語、スペイン語も来春までには提供予定という。アウトドア保険についても約款を翻訳すれば、観光客向け保険ともなるという。

「運営側や地域が宣伝するよりも、実際に体験したユーザーが情報を発信したほうがいい。実際の記録が何十種類もあるほうが、その地域の良さが分かるのではないかと思います。自然のもの、文化的なもの、その両方です」

セフリはこれまでサムライインキュベートや日本政策金融公庫からのシード資金で開発・運営してきたが、現在8月末をめどとしたシリーズAの資金調達に向けて準備中という。

名刺管理サービス「Eight」は日本版LinkedInを目指す——まずはニュースフィード機能から

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Sansanが提供する名刺管理サービス「Eight」がビジネスSNSの領域に進出する。第1弾の取り組みとして、7月22日から提供される最新版のアプリにニュースフィード機能を導入する。

Eightはスマートフォンのカメラやスキャナで撮影した名刺をアップロードすると、クラウドソーシングや専任のオペレーターがデータ化。スマートフォンアプリやウェブサイトからアクセスして閲覧できる名刺管理サービスだ。ユーザーが名刺情報をアップデートすると、名刺交換した相手にもその情報が反映されるため、常に最新の名刺を閲覧できる。Facebookとの連携も可能。

今回導入したニュースフィードでは、プロフィールの変更などのアップデート情報が配信される。各アップデート情報に対しては、Facebookのようにコメントや「いいね!」を付けられる。今秋をめどに、広告や独自コンテンツ、ニュースなども配信する予定だという。

名刺管理サービスでなくSNSとして使って欲しい

Sansan取締役でEight事業部長の塩見賢治氏

Sansan取締役でEight事業部長の塩見賢治氏によると、Eightのユーザー数は現在約100万人。50万人を超えた頃からユーザー数の伸びは加速しているそうで、2016年中には200万人を達成すると語る。

また現在は月800万枚、年間で1億枚の名刺を処理しているそうだ。塩見氏いわく1年で行われる名刺交換は約10億回。もちろん“かぶり”もあるが、すでに日本の5%(1回の名刺交換で2人が名刺を交換すると仮定して、「10億回の名刺交換×2人=20億枚」で計算)の名刺を処理している計算になるという。

そんな規模に成長してきたこともあって、Sansanとしては「単なる名刺管理でなく、ビジネス版のSNSとして使って欲しい」(塩見氏)となったそう。そこでまずニュースフィードを導入することになった。「そもそも(ビジネスSNSという)構想はあったが、ヤフーでも成功していないように、一朝一夕にはいかない。とは言え日本にもLinkedinのようなサービスは欲しいと思っていた」(塩見氏)。

SNS化以外のアップデートの予定もある。Bluetooth Low Energy(BLE)を利用して、紙の名刺を持つことなく名刺データを交換する仕組みを準備するほか、メッセージ機能の強化、独自IDの導入なども検討する。「名刺交換をするのは広くて浅い関係。Facebookではカバーできないところもあり、そこに価値があると思っている」(塩見氏)

顕在化していないニーズにチャレンジする

少し気になったのは、そもそもユーザーはEightにSNSとしての機能を求めているのかということだ。

EightではFacebookおよびGmailのアドレス帳と連携できる。ITリテラシーの高いユーザーであればすでにFacebookを利用しており、Eightと連携しているはずだ。そうなるとFacebookとEightの2つのタイムラインを見るのだろうか。これに対して塩見氏は「顕在化していないニーズに対するチャレンジ。例えば新入社員がEightで名刺を管理していれば、フィードでビジネスログを持つことができる。これはFacebookでは作ることができない」と説明する。

塩見氏は、フィードに「あなたの会った○○氏の会社の株価が上がっている」という情報を配信する、「こういうジャンルの人に会っているようなので、他にこういう人に合った方がいい」という提案を行うといった例を挙げ、タイムラインを通じてビジネスSNSとしての価値を提供できるのではないかと語る。

知らない人間からの名刺交換をどう考えるか

また、ここ最近、僕の周囲で何度か話題になったEightの機能についても聞いてみた。

Eightは今春のアップデート以降、Eightに登録するユーザーを氏名や所属企業で検索できる「Eightネットワーク」という機能を実装している。仕事上面識はあるけれどもFacebookでも繋がっていないなんてビジネス上の知人を探すのであれば、この機能は非常に便利なものだ。

だがこの機能に否定的な声もあるようだ。それはこの検索機能が、Eightユーザーであれば、名刺交換をしていない人物、すなわち全く知らない人間であっても氏名や企業名、部署名で検索し、名刺交換リクエストできるからだ。

もともとビジネスSNSとしてスタートしていたならば名前や所属で検索をするなんて当然の機能だろう。だがユーザーから見ればEightは名刺管理サービスとしてスタートしている。そのためか利用規約に書かれた利用方法であっても、「知らない人からの名刺交換リクエストが気持ち悪い」と思うユーザーもいるようだ。この機能については、「特定の会社、特定の部署の人間をピックアップできる。名簿屋は喜ぶのではないか」なんて語る人材ビジネスの関係者もいた。もちろん名刺交換リクエストを受け入れない限り連絡先は共有されない設計だが、部署と名前は表示されるため、利用価値のあるリストが作れるのではないかということだ。

これに対して塩見氏は、「Eightの使い方としては知り合いを探す、会いたい人にリクエストをする、という使い方を徹底して欲しいと思っている」と強調。また監視チームを立ち上げ、無差別な名刺交換リクエストを行うユーザーを排除するなど、運営体制を強化を図っているとした。

そんなわけで一部のユーザーには不安な点もあるようだが、フィードによってEightは広告ビジネスも始めることになる。2月にスタートした有料オプション(実数は非公開だが比較的悪くない数字、とのこと)とあわせて本格的なマネタイズの道が見えてきた状況だ。具体的なスケジュールに関しては非公開だったが、「できるだけ早い時期に黒字化を目指す」(塩見氏)としている。

「日本の決済ビジネスには3つのチャンス」 PayPalが今後の戦略を説明

PayPalジャパン・カントリー・マネージャーのエレナ・ワイズ氏

親会社であるeBayからスピンオフし、7月20日に独立企業として再びNASDAQに上場し、親会社を超える500億ドルという時価総額を付けたPayPal(2002年のeBayによる買収は15億ドルだったので、その33倍にもなるわけだ)。同社は今後の日本展開について説明すべく、7月21日に東京・赤坂で発表会を開催した。

「お金そのものが変わろうとしている。その最大の理由はデジタルウォレットが台頭してきたことだ」――イベントに登壇したPayPal東京支社 ジャパン・カントリー・マネージャーのエレナ・ワイズ氏はこのように切り出した。

17年以上にわたって決済サービスを提供してきたPayPalから見ても、金融システムはDisruption(創造的破壊)を起こしうる状況にあるのだそう。「物理的なお金はすべてデジタル化しつつある。それによってモバイルでお金を払うだけでなく、支払いを受け取ったり、クレジットを利用したり、将来的には財布を持ち歩く必要すらなくなるだろう」(ワイズ氏)。

このモバイルの成長を裏付けする数字としてワイズ氏が提示するのがPayPalの決済全体に対するモバイル決済の比率の増加だ。2014年度には決済全体の2割だったモバイル決済は、2015年度第1四半期時点で3割まで向上している。

そんなお金の「デジタル化」する世界では、企業はデータ分析の機能やサイバーセキュリティが求められていくという。また同時に各国政府の規制を知り、法令を遵守することも求められる。ワイズ氏はPayPalがこういった課題を解決し、金融システムのDisruptionを起こせるユニークな状況にあると語る。

アクティブユーザー1.69億人、取扱高2350億円の決済基盤に

PayPalは現在203の国と地域でサービスを展開。直近のアクティブユーザーは16900万人で、2014年度の新規アクティブユーザーは1900万人。取扱高は2350億ドル(28兆円)で前年比28%の成長。収益は80億ドル(1兆円)で同じく19%の成長となっている。取引件数は40億件で、こちらも前年比27%の成長だ。

またPayPalの強みとして、17年以上のサービス運営実績や不正利用の検知、トラブル時の消費者・店舗への全額保証、8000人24時間体制のサポート体制、法令遵守での運営体制などを挙げる。「決済ビジネスは簡単なモノではない。この実績と経験が競合と差別化のユニークな点だ」(ワイズ氏)

では再上場したペイパルはどこに向かうのか。ワイズ氏は「世界をリードするオープンデジタル決済プラットフォーム」を目指すと語る。v.zeroと呼ぶSDKでビットコインをはじめとした仮想通貨でも決済に対応するほか、ここ数年で刷新したユーザーインターフェースも日本で導入を進めている。「お金そのものをもっと自由に扱えるようにする。我々は自身をDisruptし続ける、また(他社に)Disruptされかねないという危機感を持ってビジネスを進めている」(ワイズ氏)

日本の決済ビジネスに3つのチャンス

続けてワイズ氏は、日本の決済市場について、3つのチャンスがあると説明した。

まず1つ目は中小企業やスタートアップの台頭だ。創業期から中小企業のネット決済の手段として利用されているPayPal。導入の手軽さや不正検知、決済から現金化まで最短3日という特徴は中小企業にとっても価値のあるものになっているという。また今後増えるであろうモバイルでの越境ECなど、より役立てる機会があるとした。

2つ目のチャンスはモバイルによる次世代のコマースだ。すでに世界の人口より多い72億台という端末が流通し、PayPalの決済でもモバイルの割合は上がるばかり。そんな状況で生まれるスタートアップは、モバイルアプリでサービスを提供するところが中心。PayPalではクレジットカードをカメラで撮影して読み取るSDKなども用意。ユーザーに対してたがるな決済手段を容易に提供できるとする。またヤマダ電機やネスカフェなどに対しては、オムニチャネル化に向けたモバイル決済の実験なども行っている。「オンライン、リアルにかかわらず、今後モバイル決済は『選択肢の1つ』ではなく『マストなもの』になる」(ワイズ氏)

3点目がインバウンド需要への対応だ。ワイズ氏によると、1~5月の訪日観光客は前年比45%、年間2500万人にも届く勢いだという。またこれにあわせて訪日観光客の国内支出も前年比43%増という状況だと説明。「ホテルや旅行代理店などにたいして、強い決済サービスが提供できることは多い」とした。またTokyo Otaku Mode(TOM)をはじめとした”クールジャパン”関連のECでもPayPalの導入が進んでいると説明。TOMでは、導入から数カ月後にはPayPalでの決済が全決済の半数を占めるようになったという。

再上場の影響「日本にはない」

ここからは質疑応答の内容などを少し紹介する。まず再上場による日本市場への影響については、「eBayのプラットフォームがないため、大きな影響がない。影響があるとすれば、日本や他の国において『eBayの関連会社』ということで(競合のため)付き合えない会社があったが、そこでのビジネスチャンスが生まれる」(ワイズ氏)という。

また日本市場におけるにおけるPayPalの立ち位置については、「個別の市場の数字については公開を控えている。言えるのはアクティブユーザーは国内、越境を含めて100万人以上。マーチャントも10万単位かそれ以上。決して少なくない数字」(ワイズ氏)とのことだった。

発表会後、日本と米国など海外の決済市場との違いについて聞いたのだけれども、「CtoCサービスでの利用は日本が多い」という点が特徴的なんだそう。一方で「越境コマース」への対応が弱いという課題もあるとした。「そこに関してはPayPalは強みを持っているので、サービスを提供していきたい」(ワイズ氏)

ワンモアとCCCグループが資本業務提携、映画制作やマーケティングでクラウドファンディングを活用

左からT-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏、ワンモア代表取締役の沼田健彦氏

左からT-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏、ワンモア代表取締役の沼田健彦氏

左からT-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏、ワンモア代表取締役の沼田健彦氏

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループのインターネット事業を統括するT-MEDIAホールディングス。同社が2015年1月に開催したスタートアップ向けの協業・支援プログラム「T-VENTURE PROGRAM(TVP)」。その成果が着々と出ているようだ。T-MEDIAホールディングスは7月21日、TVPで優秀賞を受賞したワンモアとの資本業務提携を実施したことを明らかにした。

ワンモアはクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」を手がけるほか、クラウドファンディングのシステムをASP形式で提供するスタートアップ。2011年の創業。IMJインベストメントパートナーズ(当時はIMJ FENOX)などが出資する。

当初は企業と共同でクラウドファンディングサイトを立ち上げてきたが、2013年4月以降は企業と展開してきたクラウドファンディングサイトをモール化している。これまで約230のプロジェクトを達成。これまでの流通金額は2億5000万円程度だという。

ワンモアはT-MEDIA ホールディングスの持分法適用会社に

資本提携の内容は非公開だが、ワンモアは今回の提携で合計1億5000万円程度の資金を調達したと見られる。T-MEDIAホールディングスがワンモア株式の約3割を取得。持分法適用会社とする。ワンモア代表取締役の沼田健彦氏以外の株主はこのタイミングで株式を売却している。

業務提携についてはまず、GREEN FUNDINGのサービス名称を「GREEN FUNDING by T-SITE」にリニューアル。T-MEDIAホールディングスが運営するポータルサイトの「T-SITE」をはじめとした各種サービスとの連携のほか、代官山T-SITE、湘南T-SITEやTSUTAYA直営店舗での商品販売イベントの実施など、「リアル店舗を活用することなど、付加価値的なところを含めたマーケソリューションを提供する」(沼田氏)としている。またCCCグループおよび取引先の出版社やレコード会社などに対してクラウドファンディングの提案を進める。

また、最大5000万円の制作費を支援するするクリエイター支援プログラム「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM」においても、クラウドファンディングを実施することが決まっている。11月12日に開催する最終審査で選出される優秀3作品について、T会員をはじめとした映画ファンから制作資金支援を募るという。

今回の資本業務提携にあわせて、T-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏がワンモアの社外取締役に就任する。「デジタルによってコンテンツは作り方、内容ともにどんどん変わっていると実感している。YouTuberが500万PVを集め、一方でプロのコンテンツは米国を中心に『ネット配信ファースト』になってきた。インフラとテクノロジーによってコンテンツの内容も作り方も変化しているならば、 資金調達のやり方も改めて考えてもいい。 そういう仕組みを一緒に作っていきたい」(根本氏)

今後はTポイント連携も視野に

また今後はシステム面での連携を強化。Tポイントを使ったクラウドファンディングの仕組みを導入することも視野に入れる。また今回の発表では「マーケティングツールとしてのクラウドファンディングの利用」に関する話が中心ではあったが、将来的にはCCCグループとして、例えばプライベートブランドだったり、オリジナルの商品を小ロットで生産するためのプラットフォームとして活用する…なんてこともあるかも知れない。

なお今回の資本業務提携のきっかけになったTVPは今後も年1回ペースで開催の予定。直近にも第2回のプログラムについて発表するとしている。

クローラー対応でインバウンド需要に手応え、サイト多言語化のWOVNが伸びてるらしい

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ちょうど1年ほど前、JavaScriptを1行追加するだけでサイトを多言語化できる「WOVN.io」(ウォーブン)について記事を書いたが、WOVNを提供する日本のスタートアップ、ミニマル・テクノロジーズが売上を伸ばしているようだ。有料プランを開始して2カ月で、すでに年商5000万円程度は見え始めているほか、今日リクルートと包括的業務提携も発表し、リクルートが持つ多くのメディアサイトへ順次WOVNを導入していくことが決まったという。

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伸びているのは月額1000ドル以上の上位プラン

WOVN.ioの何が良いのかというのは、詳しくは以前の記事を見てほしいが、これは簡単に言うと既存サイトを手軽に多言語化するクラウドサービスだ。オリジナルの日本語に加えて、英語や中国語、スペイン語、韓国語などと多言語でサイトを表示するのはコストがかかるし、変換(翻訳)や運用が複雑になりがちだ。

そこで「多言語切り替えボタン」を自サイトの右下などに表示できるようにするというのがWOVN.ioだ。企業はもちろん、自治体やECサイト、学校法人などが利用している。管理画面からボタンを押すことで指定ページを機械翻訳することができるほか、プロの翻訳者に依頼も可能だ。機械翻訳でなく人間を選んだとしても、翻訳に要する時間以外の面では管理画面の使い勝手が変わらないのがポイントだ。ミニマルテクノロジーズ創業者でCEOの林鷹治氏によれば、実際の翻訳者は翻訳プラットホームのGengoの契約者。英語だと1ワードあたり5円程度とか。これは別料金で、WOVNの売上の25パーセント程度が、このプロ翻訳の利用によるものだそうだ。

有料版の提供を開始して2カ月で、現在70クライアント程度の有料顧客がいる。WOVNの全ユーザーが4500クライアントというから、もう少し有料顧客がいて良さそうにも思えるが、これは途中から料金体系を変更したことによる結果。本来有料プランとなるユーザーにも、今のところ無料で提供し続けているそうだ。有料版と無料版の主な違いは、翻訳対象となるページ数の上限、翻訳言語数、それに電話サポートなどだ。

B向けのSaaSを提供しようというスタートアップにとって有用な知見かもしれないと思うのは、有料ユーザーの分布だ。

フリープラン(無料)をのぞく、スタートアッププラン(19ドル)、ビジネスプラン(120ドル)、エンタープライズプラン(1000ドル〜)という3つのプランは、現在だいたい同じくらいの契約数となっている。だからWOVNでは今後、「エンタープライズ」のみにフォーカスしていく方針という。フリーミアムモデルの常で、フリー版利用者の裾野を広げる必要がある。それなりにトラフィックのあるサイトで無料で導入してもらうことでWOVNボタンとデモを広く見せることができる。だから下位の有料プランの機会損失はマーケティング予算と割り切るほうが良いという判断だそうだ。B向けSaaSの価格体系トレンドとして、「Optimizelyの料金体系もFreeとEnterpriseしかなく、そういう流れに来てるのかなという気がしている」(林氏)のだといい、上位プランを使う層は「規模が小さいところよりも、もっと大きい需要があることに気付いた」ということだ。

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もう1つ、リクルート・コミュニケーションズと包括的業務提携を決めたこともWOVNにとって良いニュースだ。リクルート・コミュニケーションズは同グループが発行する媒体の制作会社なので、リクルートが持つ多数のWebサイトの他言語化にはWOVNを使われることになる。リクルートにはインバウンドの旅行客を抑えたいというような需要があり、この場合はデータベースはすでにリクルート側が持ってるものを使うことになる。たとえば、日本の旅館の住所の多言語データベースなんかをリクルートは持っている。

懸案のクローラー対応で中国語の検索エンジンにも対応

JavaScriptを1行書くだけでサイトを多言語化できるというのは手軽だったが、問題は検索エンジンのクローラーから「見えない」こと。つまり、せっかく多言語でページを用意できても、それはあくまで人間のユーザー向け。検索エンジンにインデックスされないという課題があった。

これは原理的に解決できない問題だと想像していたのだけど、意外な方向から解決策がでてきた。HTMLを1行書き換える代わりに、サーバ側のアプリケーションを5行ほど書き換えてしまうのだ。

WOVNでは「WOVN++」と名づけたPHPとRuby(Gem)のライブラリ提供を開始した。サーバ管理者やアプリ開発者がいる組織であれば、特に問題なく5行程度でWOVNを組み込める。つまり手軽さ優先で多言語化する小規模サイトならJavaScriptで、インバウンド需要を取り込むためにECサイトをまるっと多言語化したいというようなニーズならサーバ側を変更するという2つの方法になったのだ。サーバ側のライブラリはテンプレートエンジンの1種になっているので、HTML生成直前(ブラウザへの表示の直前)にWOVNのAPIが間に入るというシンプルな構成だ。

「GemとPHPのライブラリは重要な役割を持っています。実はGoogleだけにインデックスされても意味がないんです。(日本の)WOVNの利用者は中国人向けにサイトを中国語にすることが多い。ところが中国人や韓国人はGoogleを使っていないんです。WOVNではBaiduやNAVERのSEOも大事にしていて、ライブラリではここをサポートしています」

「Baiduはクローリングがすごく遅くて、更新に2、3カ月かかることもある。だから明示的にAPIを叩いてページを拾いに来てもらう必要があります。そういうことを皆さんご存じないのですね。知っていたとしても、中国語なのでインデックスの登録ができない。そこも含めてWOVNでサポートしていきます」

中国人の爆買いで、日本の免税店や量販店が賑わっているが、当面はWOVNでもインバウンド系の需要を取りに行くという。そして最近の気付きは、WOVNのような多言語化の強い需要は、海外への情報発信というよりも、その土地にすでに来ている外国人向けの翻訳にあるのでは、という興味深いもの。

「ウォンツ(wants)じゃなくて、ニーズ(needs)が高いのは飲食とか購買です。すでに、その土地に来ている人たちにモノを売るほうがニーズが高いからです。これは世界各国で同じことが言えます。アメリカ国内なら移民のニーズがある。英語が読めないけどアメリカにいる人たちに対して、アメリカのお店はモノを売りたいわけです。言葉の問題でサービスを提供できず、自分の横を販売チャンスが通りすぎているのを見ている人たちなので、ここの翻訳ニーズはとても強い。だから、今はWOVNにとって日本が一番良い市場じゃないかと感じています」

【追記】Wovn.ioは昨年秋のTechCrunch Tokyo 2014のスタータアップバトルの決勝戦に残り、PayPal賞、マイクロソフト賞を獲得している。今年秋もまたスタートアップバトルを開催するので、これからローンチする、あるいは最近ローンチしたばかりのプロダクトを持つスタートアップ企業には、ぜひご応募いただければと思う。

「品質重視」の医療情報サイトを運営するメディカルノート、ジャフコから2.5億円の資金調達

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医療情報サイト「メディカルノート」を運営するメディカルノートは7月20日、ジャフコを引受先とした2億5000万円の第三者割当増資を実施した。今後は人材を強化し、サービス開発およびコンテンツ制作大成を強化していく。

メディカルノートは病気の症状やその対策、治療法をはじめとした医療情報を掲載するサイト。記事は医師による寄稿のほか、医学生やライターによる取材記事が中心。それぞれの記事に対して、その分野に明るい医師がチェックを行うことで、信頼性の高い情報を提供するのが特徴だという。

サイトで公開されている記事数は現在約400件。寄稿や取材に協力する医師は100人以上だという。月間120件ほどの記事を掲載しているが、直近にも月間200件以上を公開できる体制を整えるとしている。

メディカルノートの設立は2014年10月。代表取締役の井上祥氏は横浜市立大学医学部を卒業し、同大学の大学院で医学教育学や消化器内科学を学んだ。そして在学中から医療書籍の編集・執筆に携わっていたが、オンラインで正しい医療情報を発信するべくメディカルノートを立ち上げた。井上氏は2015年春に大学院を卒業。そこからサービスを本格稼働させている。

「外来診療をやっているとカルテが文字通り山のように積み上がる。そうなると患者に対して1人1分の説明も難しくなることがあり、注意点を説明しても漏れてしまうということがある。またそもそも患者が知りたい情報があっても、(事前の)情報レベルが高くないと適切に質問できないということもある。そういう状況を変えたい」——井上氏は起業の経緯についてこう語る。

情報のスピードより品質を重視

先日資金調達を発表したメドレーのMEDLEYのほか、ディー・エヌ・エーのMedエッジ、サイバーバズのDoctors Me、Good Medicine JapanのcoFFee doctorsなど医療情報を提供する競合サービスは多い。これらに対してメディカルノートの強みは何なのか、井上氏は「記事と医師が結びついていること」だと説明する。

医療に関わる情報は、内容の誤りが文字通り命に関わる可能性だってあるため、正確さを求めるのは重要だ。メディカルノートでは、記事掲載のスピードを落としてでも医師によるチェックを徹底している。

ここまでなら競合サービスでも聞いた話なのだが(これすらできていない競合もあるようだが)、メディカルノートではチェックを行った医師の実名も記事に結び付けて掲載することで、記事の品質を高めようとしているという。現在は大学や病院のキーマンとなっている医師に協力を仰ぎ、より多様なコンテンツを発信できる体制作りを進めているという。

文末に掲載される医師のプロフィール

文末に掲載される医師のプロフィール

現状はマネタイズよりも「コンテンツ制作や協力者のネットワーク作りを優先する」(井上氏)という。具体的な話は聞けなかったが、井上氏は将来的な話として「今はどこにどんな症状の人がいるかも整理されておらず、患者も(症状を学ぶような)場所に困っている。患者に適切なソリューションをどう提供していくかは考えて行きたい」と語った。また資金調達を行う以上イグジット戦略も持っているが、「IPOは結局のところ手段でしかない。この事業を広げて社会に価値を出すことが重要」(井上氏)だという。

メディカルノートでは、今秋をめどに症状や地域に応じて医療機関を検索できる機能を提供する予定。「病気について検索してやってきた人が、最適な病院に行きつけるようなサービスにしたい」(井上氏)

無洗野菜や遠隔制御の「植物工場」も、農業ITのファームシップが1億円の資金調達

farmship農業におけるITを活用したサービスを展開するファームシップが7月20日、みやこキャピタルリバネスなどから総額約1億円の資金調達を実施した。ファームシップは2014年3月創業で、東京の本社と静岡県富士市にある研究所を拠点に2015年6月から本格始動。ともに明治大学農学部出身で、農家の家系に育った共同創業者の北島正裕氏と安田瑞希氏の2名でスタートした同社は現在15名に成長している。

ファームシップが同社が提供するのは、「植物工場」、「農産物流通」、「農業データサイエンス」の3つの事業だ。

植物工場事業は、植物工場の建設や工場栽培に適す農産物の研究。研究開発拠点の富士Labにおいて、洗わないで食べれるほうれん草、生で食べてもえぐみの少ないケールなどを研究・生産している。

農業物流通事業は、工場生産の農作物流通や、既存農家の流通支援を実施している。国内向けの流通支援だけでなく海外向け販売にも力を入れており、長野のわさびをニューヨークやロサンゼルスに輸出している。

農業データサイエンス事業は、生産と流通に関する管理をビックデータを使って実施。生産管理については、人が直接手をかける事なく照明や気温制御を行え、遠隔での制御を一括で実施できるという。生産者が畑に通って農作物の世話する農業のイメージが、スマホやPCでの操作に置き換わりそうだ。

今回の資金調達を契機に、工場センサーの開発や生産物の研究、流通サービスの開発に投資するとしている。また日本だけでなくインドネシアでの海外植物工場の施工を予定している。

第一次産業関連のスタートアップとしては、鮮魚販売の八面六臂がある。八面六臂はネットを活かして生産者や産地市場から直接購入可能なECサービスを提供している。一方、ファームシップでは直接取引ではなく、間接的な流通業者や末端の路面店なども活用できるサービスの提供を計画している。FAXやメールを使う受発注が一般的な商習慣となっている中でサービスが成長するかは、生産者に使いやすいシステムを作れるかにかかっていそうだ。

タクシー配車サービスのHAILO、ひっそりと国内サービスを終了

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hailo英国発のタクシー配車サービス「HAILO」。2013年9月に大阪へ進出し、2015年には東京での展開も予定していたが、それを前にして国内でのサービスを終了することが明らかになった。

HAILOでは今週、ユーザーあてに「日本国内での本格展開に先駆けて大阪でサービスを提供してきたが、8月10日を持ってサービスの提供をいったん終了する」という旨のメールを送信している。メールによると、8月10日23時59分を持ってアプリへのログインができなくなるという。

HAILOは日本交通の配車アプリやUber同様にアプリからタクシーを呼び出すことができるサービスだ。呼び出せるのは同社と提携するタクシー会社や個人タクシー。

同社は2010年の創業。2011年にはイギリス・ロンドンでサービスをスタートした。その後米国やヨーロッパの都市にサービスを広げてきた。ただし2014年10月には米国から撤退。2015年春にはレイオフの話題があったりと、海外でも厳しい局面を迎えているようだ。

冒頭にあるとおり日本でのサービスインは2013年9月。当初は日本法人のHailo Network Japanがサービスを展開していたが、2014年には運営母体を新会社のヘイロー株式会社に移し、経営体制も刷新した。さらに光通信からも資本を入れており、2015年には東京でもサービスを提供するとしていた。

「一発必中で作った」 物理演算ゲームのBrain Dotsが10日で100万ダウンロードを達成

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世界1300万ダウンロード、海外ユーザー比率95%と世界でプレイされている対戦型脳トレアプリ「Brain Wars」を開発したトランスリミット。同社の第2弾タイトルの物理演算パズルアプリ「Brain Dots」が7月6日のリリースから10日で100万ダウンロードを突破した。

Brain Dotsは物理演算を利用したパズルゲームだ。ステージごとに1つずつ用意される青と赤の2つ点をくっつけるために、画面に線をひいて道を作ったり、図形を描いて点にぶつけて移動させたりするというシンプルなルール。全部で300のステージを用意する。

トランスリミット代表取締役の高場大樹氏いわく、前作のBrain Warsでは100万ダウンロードまで2カ月半かかったが、「今回ははじめからゲームを作り込んでリリースを迎えた。そのためApp Storeのおすすめに取り上げられるのが早かった」とのこと。またBrain Warsからの送客などは行っているが、広告などを使った大々的なプロモーションは実施していない。またこのゲームも海外ユーザーの比率が高く、現在88.1%が日本以外のユーザーだという。

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既報のとおり、Brain Dotsはバナー広告を入れず、ゲーム内で使用するコインを入手するために動画広告を視聴してもらう(もしくは課金でアイテムを購入する)というモデルなのだが、「ユーザが視聴するかどうか選択できる動画広告は想定通りの数値で視聴されており、中には毎回必ず観てくれるユーザもいる」(高場氏)ということで、ユーザーにも受け入れられているのだという。

ちなみにすでに用意された300ステージをクリアしたというツイートも見かけるのだけれども、近日のアップデートでステージも追加する予定だそう。またこれも既報のとおりだが、イベント機能を実装し、「より継続して遊めるタイトルを目指す」(高場氏)としている。

Brain Warsは「成熟期」に

ちなみに最近高場氏にBrain Warsの状況についても聞いているので、ここで紹介しておく。1年前にリリースされたBrain Warsは、「サービス自体は成熟傾向にある」(高場氏)のだそう。売上自体は下がっておらず横ばいで、今後も引き続きユーザーを伸ばしたいということだった。ただしこの3カ月はBrain Dotsの開発に自社の全リソースを集中していたそうだ。

またちょっと早いかと思いつつ、今後のプロダクトについても聞いたのだが、当面はこの2タイトルに注力する予定だという。「現状は年1本が限界。踏み込んだら全力でやる。それがうまくいったのだと思う。リリースが多いに越したことはないが、“量産型”のゲームではないので一発必中で作っている」(高場氏)

足の写真から最適な靴を提案する「シンデレラシューズ」、KDDI ∞ labo第8期の最優秀賞に

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KDDIが手がけるインキュベーションプログラム「KDDI ∞ labo」。2015年3月〜6月に開催された第8期となるプログラムも終了し、7月14日にその成果発表会が開催された。最優秀チームとなったのは、足の写真を送るとそのデータを計測、自分にピッタリなサイズの靴をECサイトから探せる「シンデレラシューズ」(本日、1000人に限定してサービスをローンチ)を手がけるシンデレラだった。発表会でのプレゼンテーションをもとに参加者が投票する「オーディエンス賞」にもシンデレラが選ばれた。

KDDI ∞ laboは2011年から続くインキュベーションプログラム。第8期に採択されたチームはシンデレラシューズのほか、照明をヒントにしたIoTデバイスを手がける「LYNCUE(リンキュー)」、美容室予約サービスの「Oshareca(オシャレカ)」、IoTで養蜂業を支援する「Bee Sensing」ものづくりに関するハウツー動画を集めた「PU」の5チーム。サービスの概要は以下の通り。なお8期メンバー採択時の記事はこちら

OSHARECA「Oshareca」

いつも通う美容師に対してヘアケアなどの相談ができるコミュニケーションアプリ。相談した記録が蓄積されることで、ユーザー独自のヘアカルテになる。クローズドベータ版を同日リリースした。

Bee Sensing「Bee Sensing」

3万匹の中に1匹しかいない女王蜂の体調管理をはじめとして、実は重労働が伴う養蜂業。その養蜂のための巣箱にセンサーを付けることで、スマホでの蜂の健康管理を行う。データは遠隔地で閲覧できるほか、緊急時にはアラートを出すことが可能。さらにユーザーには、どこで取れた蜂蜜であるかを伝える、つまりトレーサビリティを確保できる。チーム代表の松原秀樹氏はIMBの出身。市場規模180万円の養蜂業をDisruptすべく2015年に起業した。現在クラウドファンディングサービス「READYFOR?」にてプロジェクトを掲載中だ。

SUPERSTUDIO「PU

ものづくりのハウツーを動画で学習できるサービス。サイトは本日オープンした。ただ動画で学習するだけでなく、同社では都内数カ所の倉庫でものづくりに関するリアルイベントを企画。今後は自らが作成した商品の売買ができるECプラットフォームも展開する予定。

TEAM LYNCUE「LYNCUE

照明を軸にしたIoTデバイス。照明にプロジェクターとカメラを組み込んでおり、
スイッチ1つで電源がつき、遠隔地に置いたLYNCUEのビデオやプロジェクターが起動。リアルタイムに映像を共有する。現在クラウドファンディングサービス「MAKUAKE」にもプロジェクトを掲載する。

シンデレラ代表の松本久美氏

シンデレラ代表の松本久美氏

シンデレラ「シンデレラシューズ

靴を買うときに相談できる専門家はシューフィッターや靴職人などがいるが、フィッティングとプライスが相反するのが靴の業界。それを画像解析によって最適化するのがこのサービス。本日先着1000人限定でサービスを提供開始した。具体的には足の写真を上から、横からの2枚、左右で計4枚撮影してサイトにアップロード。すると画像認識の結果と靴のデータベースによるマッチングを実施。ユーザー向けに診断書を発行するほか、シンデレラシューズのサイト上でさまざまな靴を「ピッタリ度」をとともに紹介する。

大企業連携、地方連携も強化

∞ laboでは第7期以降、KDDI以外の大手企業が採択チームへの支援を行う「パートナー連合プログラム」を展開。第8期では15社がプログラムに採択された各チームを支援した。

例えばOsharecaはクレディセゾンがガード会社へのリサーチで支援する、シンデレラシューズは三井不動産が足データの測定で支援するといった具合だ。第9期では、新たにグーグル、住友不動産、三菱UFJニコスがプログラムに参加する。「同業、異業の枠を超えてスタートアップを支援していく」(KDDI代表取締役執行役員専務の高橋誠氏)

地方と連携する「MeetUP!プログラム」

地方と連携する「MeetUP!プログラム」

また第8期から実施している地方創生の取り組みを強化する。第8期より実施している大阪市との連携に加えて、石巻市や広島県、福岡市と連携。各地スタートアップ向けに地方ピッチやDemoDayへの参加を促す「MeetUP!プログラム」を展開する。

6カ月の「ハードウェアプログラム」も開催

さらにハードウェアに特化したプログラムも実施。通常のプログラムは3カ月だが、こちらのプログラムは6カ月。応募条件としては試作品が外部公表前のプロダクトに限定されるが、事業化計画の支援から専門家によるメンタリングや講義の開催、さらに開発環境やツールを提供することで、クラウドファンディングによる試作から量産化の支援、販路の提供やビジネスマッチングまでをサポートする。

ハードウェアプログラムについて

ハードウェアプログラムについて

プログラムでは、ザクティやソフトフロント、ユカイ工学などのハードウェア企業やIoTコンサルタント、スマートデバイスメーカー社長などの専門家が支援を行う。「IoTはたくさん取り組んでいるが本当にマネタイズする仕組みが必要。持続的に回らないと『はやりワード』で終わってしまう。何とか支援していきたい」(高橋氏)。第9期の募集は本日から8月17日まで。応募および条件の詳細ついては∞ laboのサイトにて。

人工知能で入会審査する大学生限定SNS「Lemon」、ハイレベルな交流サロンは生まれるか?

人工知能による審査をクリアした大学生・大学院生のみが入会できるSNS、「Lemon」が今日から本格スタートして、ユーザーの受付を開始した。利用は無料。人工知能が「審査」とか、「メンバー同士のハイレベルな社交の場」という謳い文句が、ちょっぴりしゃらくさい感じがするのだけど、開発したLip Inc.に狙いを聞いてみた。

既存メンバーとの親和性で審査

入会審査は独自開発の人工知能エンジンが行い、「30%以上の既存メンバーとの親和性がある」と判定された場合にのみ入会可能となるという。すでに6月25日から招待制のβ版として運用を開始していて、今は学生起業家や海外留学生、モデル、ライターといった経歴を持つ大学生や、難関企業内定者の4年生、就活生、大学生活をもっと充実させてキャリアについて考えたい1、2年生など、新しいつながり作りに積極的な、厳選された大学生・院生からスタートさせた、という。

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現在、入会後に使える機能は2つ。

1つは「メンバー紹介機能」で、これは親和性が高い相手を人工知能で検出した上で、毎日相互に紹介して、興味を持ったらメッセージをやりとりするというもの。もう1つは「ボード機能」で、いわゆる掲示板だ。

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……と、ここまでは、ほとんどプレスリリースからの引き写しなのだけど、Lip共同創業者で代表取締役社長の松村有祐氏に話を聞いたので、以下にインタビューとして掲載する。

松村氏は2008年に北海道大学大学院情報科学研究科で人工知能・機械学習を専門とした博士号を取得した後に、米国のIBM TJ ワトソンリサーチセンターで複雑ネットワーク・トポロジー設計に関する研究に従事していたことがあるそうで、「人工知能」を便利なバズワードとして使っているわけではないようだ。

実際の審査はどんなものか?

松村:Lemonは人工知能が入会審査する社交サロンのようなコンセプトで、メンバー同士の信用が高いコミュニティーを形成することで、たくさんの交流、新しいつながりが生まれることを期待しています。βサービス時は、非常に尖っていて各方面ですでに活躍している優秀な大学生・院生を集めましたが、今後メンバーを公募審査するにあたり、サービス運営者が一定の基準でメンバーを選別するのではなく、既存ユーザーにとって親和性の高いユーザーを徐々に入れていくことを目的とした審査となります。結果的に厳選されたクオリティの高い集団が形成されることになるとみています。現在は大学生・院生限定としていますが、徐々に各業界に広げていくつもりです。

また、人工知能エンジンの開発という点では、ぼくのバックグラウンドだけでなく、トップレベルの人工知能研究者を巻き込んで進めています。実は東大の松尾先生とはドクターとったあと海外で研究したいと相談していた時にIBMワトソン研究所と繋いでくださった頃からご縁があり、今回のLemonについても相談させていただき、ソーシャルネットワーク解析の第一人者である東大の鳥海先生をご紹介いただき、早速ご協力いただいております。他にも大学に限らず産総研も含め、トップレベルの人工知能研究者を本プロジェクトにどんどん巻き込み、Lemonの世界の実現をスピードアップします。

TC:審査は質問の受け答えを見るとかですか? 通過率が1%?

松村:いえ、プロフィールとSNS情報を分析し、既存メンバーとの親和性を見ます。親和性は、ユーザーの内面性にフォーカスし、プロフィールと関心を軸に。また、応募のうちの1%を採るということではなく、最終的に大学生・院生の1%程度が集まるコミュニティーを形成することを想定しています。

TC:登録しようとすると、人工知能が合否を決めるんですよね? つまり何らかのクラシファイアを使うんですよね? それは動的に変化するんですか? それともすでに何らかの学習済みのものですか?

松村:そうです、人工知能が決めます。応募すると既存メンバーと総当りでの親和性チェックが走り、既存メンバーの30%以上と親和性があれば入会することに。ただし、まだまだ学習データを収集中で、微妙な判定が出た場合は、人手を介して正しい教師データを加えるという作業プロセスが入ります。具体的なアルゴリズムについては秘密なのですが、今のところは自然言語処理・協調フィルタリングを活用しています。従って、コミュニティーが拡大してユーザーが増えると、動的に審査基準が変化するような面白い仕組みになっています。

TC:協調フィルタリングということは形態素解析をして、SNSの発言から何らかの方法で単語を抜き出して、スポーツ、音楽、テレビ、本とか、そういう語句で巨大な疎行列を作ってマッチングする、というようなことですか?

松村:おっしゃるような協調フィルタリングの一般的活用に近いもので合っています。が、注目する要素に秘密がありまして、趣味特技だけにとらわれず、人間が「この人とこの人はあいそうだな」と判断する感覚をいかに再現できるかにトライしています。そういう意味で、いろんなやり方でアプローチしてきた研究者をもっともっと巻き込んで、精度をもっともっと上げていきたいですね。

TC:研究者から見たら、実験的な要素もあるんでしょうか? やってみないと分からない、というような。

松村:というよりは、いくつかのある特定の要素で判断すれば良さそうだというのはいくつか見つかっているので、それは現在の技術で実現できているわけですが、もっと違う要素も取り入れて、より人間らしい判断をさせるために、もっともっと多くの取り組みを重ねていく必要があります。が、ぼくらのサービスでの面白いのは、日々、ユーザーにおすすめユーザーをぶつけて、その選好データがたまっていくので、その選好は何なのかをバックトレースしていくことで、もっともっと人間らしい判断の実装に近づけると思っています。

松村:人は、意外と自分の選好を言語化して理解できていない、というのがぼくらがこれまでやってきた中でのインサイトです。ユーザーにどんな人とつながりたいかを尋ねても、なかなか表現できないんですよね。だから、そこにAIをしっかり噛ませて、ユーザーの潜在ニーズをいかに見つけていけるのか、という壮大なテーマになると思います。問題難易度でいうと商品の推薦とはわけが違いますね。難しいですが我々が人工知能研究者の叡智を集結させて頑張っていきます。

TC:なるほど、面白いですね。ただ直感的には、その先に有用なものが本当に出てくるのかっていう疑問はありそうです。単純なマッチング以上の価値が生まれるのか、という。単一グループになって、それが大きくなるだけなんですよね? 気の合いそうな人たちをクラスタリングして複数グループを作るのではなく?

松村:コミュニティーが大きくなってくると、いろんなクラスターが自律的に構成されていくと思っています。それも見据えて、実は初期のメンバーを多様にしています。同じ大学生でも、起業・テック系に寄せ過ぎない、というように。学生の1%を超えたら、その次は、いろんな業界にアプローチしていきます。それが恐らくクラスターになってくると想像していますが、クラスター間の交流こそ醍醐味なんじゃないかと期待しています。生まれつきの特権階級に限らない、オープンな思想のもとでの現代版交流サロンですね。

TC:と、考えると、Facebookというかリアル社会は良くできてますね。最初からほどよく異クラスタが混ざるようになっていますよね。と、考えると、ぐるっと回ってmixiグループでよくね? ということはないですか?

松村:いえ、ところがですね。異興味クラスタを単に混ぜるだけだと、新たなつながりはできにくいというのが見立てでして、例えばY Combinator卒業生同士なら信用してつながりやすい、TEDメンバー同士なら信用してつながりやすい、という現象があると思うのです。それを分野横断で互いを信用できることを前提しやすいコミュニティーを作り、新しいつながりがたくさんできる、という場を目指しています。ただし、なんか医者だけが集まるとか、イケメンだけが入れるとか、そういうのとかではなく、人の内面性をもっとうまく引き出して、人の魅力にフォーカスし、入会できるサロンづくりを大切にしていきます。

TC:男女を結ぶ何かではない?

松村:男女にかかわらずです。

かつてのmixiの招待制度や、最近だと通過率30%の入会審査ありのマッチングサービス「JOIN US」が「落ちた」「通った」と一部で話題になっていたけど、Lemonも話題性がありそうだし、何かが生まれてくるかもしれない。TechCrunch Japanを読んでる大学生、大学院生の諸君も、試しにアプライしてみては? たとえ人工知能に落とされても落胆することはない。どうせこの先、生の人間や組織に何度もリジェクトされるのだし、それが人生だ。

Lip Inc.は2014年11月創業のスタートアップ企業で、現在チームは創業者2名を含む5名。2015年1月にベンチャーユナイテッド、サイバーエージェント・ベンチャーズ、千葉功太郎氏、プライマルキャピタル、インキュベイトファンドから資金を調達していて、2014年6月には時限式マッチングアプリ「5pm」をサンフランシスコでローンチしたりもしている。