少量のデータから特徴を抽出する独自AI開発、ハカルスが1.7億円を調達

AIソリューションの開発を手掛けるハカルスは7月12日、エッセンシャルファーマ、大原薬品工業、キャピタルメディカ・ベンチャーズ、みやこキャピタル、メディフューチャーを引受先とした第三者割当増資により、総額1.7億円を調達したことを明らかにした。

同社は2014年の設立。過去にトータルで1億円を調達していて、今回のラウンドを含めると累計調達額は2.7億円となる。

前回の調達時にも紹介している通り、ハカルスはもともとヘルスケア分野のAIベンチャーとしてスタート。少量のデータからでも傾向や特徴を抽出できる「スパースモデリング」技術を機械学習に応用した、独自AIを開発している。

これによって一般的なディープラーニング技術が抱える「膨大な学習データが必要」「AIの意思決定の過程が人間には解釈できずブラックボックス化している」「大規模な計算資源が必要」などの課題を解決することを目指しているという。

ハカルスでは同社の技術をこれまで産業や医療分野に展開。たとえばドローンで空撮した建物の画像から補修が必要な箇所を特定するようなシーンで利用実績がある。

3月には医療・ヘルスケア分野での利用に特化した開発パッケージ「HACARUS Fit Platform」 を発表しているが、今回の調達資金は医療分野の課題解決を行うソリューションの開発体制をさらに強化するのが目的。

株主となった大原薬品やエッセンシャルファーマ、メディフューチャーとは共同で医療機関と医療従事者に向けた包括的なAIソリューションの開発、AIによる診断・治療支援の事業化などに取り組むという。

なお同社はTechCrunch Tokyo 2016スタートアップバトルのファイナリストのうちの1社だ

予約管理システム屋ではなくサービス版のAmazonへ、クービックが習い事の事業者向け新機能

近年、徐々にではあるけれど身の回りのサービスを手元のスマホから気軽に予約できるようになってきている。

わかりやすい例でいくとライドシェアアプリの「Uber」。もしくはタクシーの配車アプリでもいいけれど、アプリからわずか数タップで配車が完了。おまけに決済までアプリ上で完結するようになった。

他にも飲食店をはじめ様々なシーンでネット予約が広がりつつあるが、それはまだごく一部のこと。良いサービスを提供している事業者でも、いまだに電話予約にしか対応していないところも多い。

そんな予約にまつわる課題の解決策として、ビジネスオーナー向けにクラウド予約管理システム「Coubic(クービック)」を提供しているのがクービックだ。高度なウェブの知識がなくても、テンプレートを活用して自社サイトやブログにネット予約システムを導入できる上、会員管理機能や事前決済機能も搭載。現在の登録事業者数は6万を超えている。

そんなクービックは新たな機能として6月にエンドユーザー向けの会員アプリを、そして本日7月12日に習い事の事業者向けの「会員管理システム」をリリースした。

これらの機能も含めて同社が目指すのは、オーナーとユーザーが繋がる「サービスの流通プラットフォーム」だ。

登録事業者の35%を占める習い事領域の課題解決へ

クービックについてはTechCrunchでも過去に何度か紹介している。同社は2013年10月の創業。2017年5月には総額3億円の資金調達を実施した(累計の調達額は6億円を超える)。

もともとは創業者である倉岡寛氏がユーザーとして予約の体験に不満を感じ、プロダクトアウト的にリリースしたのが始まり。これまでは幅広い業種のオーナー向けに提供してきたが、約1年前の調達時あたりから、まずはどこかの業種に絞ってより深い機能を作り込むことを決めたそうだ。

結果的に的を絞ったのがスポーツスクールや塾など習い事の事業者だった。この層はCoubicの登録事業者の約35%を占めるだけでなく、受講料ベースの市場規模(お稽古・習い事市場)が約2兆円とマーケットも大きい。加えて巨人と言えるような大きな力を持つ競合がいないという事情もある。

「多くの事業者が抱えている課題として『集客』と『会員管理』の2つがある。習い事の事業者の場合は、特に予約の仕組みやレッスンの振替など特殊なオペレーションがあって、大きな負担となっていた。この問題を解決するべきだと考えた一方で、既存のCoubicでは対応できていない部分もあり、特化型のシステムをリリースすることを決めた」(倉岡氏)

塾や何らかのスクールに通ったことがある人はイメージしやすいかもしれないが、これらのサービスは「基本的に毎週月曜日の19時のクラス」のように、時間割が決まっているケースが多い。飲食店やサロンのようにその都度予約をするサービスとは少し仕組みが異なる。この場合に大変なのが体調不良などで予約の振替を行うときだ。

倉岡氏によると、予約の変更を電話で受付た後で「誰をどの曜日のどのクラスに振り替えるか」を模造紙などで整理し、膨大な時間を使いながら振替作業を行なっている事業者も少なくないそう。これはあくまで一例にすぎないが、このような業界特有の慣習やオペレーションを効率化することがクービックの会員管理システムの目的だ。

同サービスは細かい振替予約に対応する機能や、月謝や月会費の自動集金機能、先生や指導者ごとに操作権限を調整できる管理者権限機能などを搭載。急な中止連絡や急きょできた空き枠を案内するDM機能も備える。

合わせて6月にローンチしたユーザー向けのアプリと連動することで、生徒側のユーザーはモバイル端末から簡単に欠席や振替の手続きが完了。今までのように毎回電話で対応する手間もない。

このシステムはCoubicと自動連携していて、同サービスの「スタンダード」「プラチナ」「エンタープライズ」プランにて利用できるという。

あらゆるサービスが流通する「サービス版のAmazon」目指す

今回の会員管理システムは、従来のCoubicでは十分に解決できていなかったビジネスオーナーの課題を解決するものと言えるが、倉岡氏によると何も「事業者向けの予約管理システム屋さん」を目指しているわけではないそう。

究極的にはCoubicを使うオーナーが増えて行った結果として習い事やマッサージ、サロンなどさまざまなサービスが流通し、それらのサービスをユーザーがひとつのアプリから簡単に予約できるプラットフォームを作りたいのだという。

先月公開した会員アプリは同社にとって今後軸となるものだ

「予約管理も、決済管理もあくまでそのために必要となる個々のツールという位置付け。Amazonであらゆるものが買えるように、いろいろなローカルサービスがわかりやすい形で提示される『サービス版のAmazon』のようなプラットフォームを考えている」(倉岡氏)

クービックが2015年から運営しているサロンの当日予約サービス「Popcorn(ポップコーン)」もこの構想に繋がるもの。Popcornはあくまでサロンに特化したものだけど、オーナーとユーザーを直接繋ぐ場所として機能している。

「Popcornはオーナーとユーザーを一度に集めようとして少し苦戦した部分はあるが、Coubicの登録事業者数が拡大する中で、ようやくこの構想を目指すための基盤が整い始めてきた。現時点のアプリはすでに繋がりのあるオーナーとユーザー(リピーター)の関係性を密にするもの。次の段階ではそこにプラスして、新しい出会いや体験を探せるサービスにしていく」(倉岡氏)

2015年リリースの「Popcorn」

倉岡氏がひとつの参考としてあげるのが米国の「OpenTable」だ。最初は飲食店向けの予約管理システムとしてスタートして、徐々にユーザー向けに歩み寄り、今では様々な飲食店が見つかるメディアとしての機能が強くなってきている。

Coubicの場合も入り口はオーナー向けのツールとして始まっているが、今後少しずつユーザー向けの機能も強化していくことで、双方を繋ぐプラットフォームへの転換を進めていく。

ホテルの市場分析・料金設定を支援する「ホテル番付」の空が1.7億円を調達

ホテル・旅館向けに、AIを使った市場分析と料金設定支援サービスを提供する空(そら)は7月12日、約1.7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はベンチャーユナイテッドふくおかフィナンシャルグループのVCであるFFGベンチャービジネスパートナーズ、エースタートマネックスベンチャーズ、ほか数名のエンジェル投資家。

空は2015年の設立以来、2016年7月にシードラウンドで数千万円の調達2017年10月に8000万円の調達を行っており、今回の調達は3回目、シリーズAラウンドに当たる。

空が最初にリリースしたプロダクトは、ホテルや旅館などに自動で最適な宿泊料金を提示するBtoBサービス「MagicPrice」だ。MagicPriceはホテルが持つ過去の宿泊予約データと、公開されている旅行予約サイトなどから得たデータを分析し、適正な宿泊料金を提案。ホテル側は自社の方針に合わせて日ごとの料金ランクを決定し、サイトコントローラー経由で予約サイトに自動で反映することができる。

MagicPriceに続いて2017年8月にリリースされたホテルの経営分析サービス「ホテル番付」はTechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した。空 代表取締役の松村大貴氏は「今回投資に参加したマネックスベンチャーズについては、スタートアップバトルで審査員だった松本大氏(マネックスグループ 代表執行役社長CEO)と会話したことがきっかけとなった」と話している。

ホテル番付は当初、ホテル業界向けの効果測定・経営分析ツールとして登場したが、2018年4月からはエージェント型サービスにリニューアル。旧バージョンでも予約サイトに公開されている価格・室数情報を自動収集し、周辺ホテルの市場分析データをユーザーに届ける機能を備えていたが、新バージョンでは分析結果に基づく気づきや提案を、必要なタイミングでユーザーへ通知するスタイルに変わった。

リニューアルに伴い、基本無料で追加機能の使える有料版を月額1万円で提供してきた料金体系も変更。月額8000円の基本料金に、ホテルの規模に応じて部屋数で課金する形となっている。

2018年4月現在、ホテル番付とMagicPriceを合わせた利用ホテル数は1500件。松村氏は「利用が増えたことでフィードバックを得て、プロダクトの質も上がっている」と話す。

「料金体系の変更もよい決断だった。顧客の売上だけでなく単価もアップしており、我々もSaaS事業では重要なカスタマーサクセスに投資できるようになった。ひとつひとつ、相手に合わせたサポートプランを用意でき、満足度も向上し、ビジネスとしても成長している」(松村氏)

ホテル番付のリリースから1年弱、プロダクトの内容について模索してきたという松村氏。「今、いい型にはまったところで、サービスをよりスケールさせたい」と資金調達の意図について語る。

「調達資金はもっとチームを強くするために投資していく。プロダクトに自信が付いたところで、新しい顧客も集めたい。投資の半分はプロダクト強化のための技術開発へ、残りはセールスやマーケティングに使い、より顧客満足度を上げていきたい」(松村氏)

また、かねてから取材に対し松村氏が述べていることだが、価格決定に関わる技術を活用して、ホテル業界以外への事業展開も検討しているとのこと。

松村氏は「ホテル業界にビジネスモデルが近い業界、つまり価格決定がビジネスの成否に大きく影響し、かつプライシングのソリューションがない業界というのはいろいろある。実は他業界からも問い合わせがあり、1つ1つをプロジェクトとして検討し、見定めた上で進出したい」と話している。

「具体的にはホテル以外の旅行業界やイベントチケット、さらに飲食・小売業についても話があり、適用範囲は限りなく広いと考えている。各業界のすばらしい企業と組み、新規事業として展開することも狙っていく」(松村氏)

新生delyはこれから、モノを売り、1兆円企業をめざす

写真左より、ヤフー常務執行役員でコマースカンパニー長の小澤隆生氏、dely代表取締役の堀江裕介氏、ヤフー常務執行役員でメディアカンパニー長の宮澤弦氏

本日ヤフーの連結子会社となることを発表したばかりのdely。代表取締役の堀江裕介氏はTechCrunch Japanのインタビューに対し、「1000億円企業で終わるのではなく、1兆円企業をつくる」ための布石だと語った。ヤフーと手を組む新生delyはこれから、モノを売り、上場も目指す。

インフラになる、モノを売る

2016年2月にサービスを開始したレシピ動画サービスの「クラシル」。サービス開始から2年あまりで1200万ダウンロード、290万人のSNSフォロワー数を獲得するまでに成長した。約1週間前の7月5日には同業のスタートアウツを買収したことを発表したばかりだが、堀江氏はその際のインタビューのなかで「レシピ動画サービスのなかでダントツのナンバーワンになるための打ち手」と語っている。

レシピ動画のような領域では、トップのサービスに広告主が集中するため、いかにこの領域でナンバーワンを勝ち取るかが重要になる。そのために打ち出したのがスタートアウツの買収だった。

レシピ動画サービスというメディアビジネスをさらに強化することを考えれば、ヤフーの傘下入りすることも納得がいく。アプリであり、動画というコンテンツを扱うクラシルは、そのフォーマットに慣れた若い世代に受け入れられやすい。それ以外のユーザー層を取り込むには、30代以上のユーザーも豊富に抱えるヤフーとの連携が大いに効果的となる。

具体的には、ヤフーのトップページにあるタイムラインにクラシルのレシピ動画を差し込んだり、検索キーワードを使った連携などを考えているという。

しかし、堀江氏は一方で、レシピ動画というメディア事業だけで狙えるのは“1000億円企業”が関の山だとも話す。1兆円企業となるためには何が必要なのか。堀江氏にとってその答えは、モノを売るサービスを手がけ、人々の生活のインフラになることだった。つまり、食の領域におけるEC事業への参入だ。

「それが、ミールキットを売るのか、食材を売るのかという具体的な形はこれからテストして決める段階。巨大な資本を持ち、コマース事業でモノを売るという知見を持つヤフーと手を組むことで、1兆円企業になるために何か大きなことができると考えた」(堀江氏)

日本では2017年4月にAmazonが、そして昨日の7月10日には同じく料理レシピのクックパッドが参入を発表した食品ECビジネス。これからその領域でのサービス開発を目指すdelyには、同社ならではの強みがあるという。

既存のレシピサービスを利用するとき、ユーザーはいま手元にある食材で作れる料理を検索することが多い。冷蔵庫を見て、豆腐とひき肉が余っているから麻婆豆腐のレシピを検索するという具合だ。その一方で、クラシルを利用するユーザーを調べてみると、おいしそうな動画を通して自分が食べたいものを感覚的に見つけ、それから食材を買いに行くという人が多かったという。レシピを見るとき、ユーザーの手元に食材がないという状況は、これから食品ECを手がけるdelyにとっては大きなチャンスなのだ。

delyの創業は2014年2月。その当時に彼らが手がけていたのはフードデリバリー事業だった。しかし、結局この事業は上手くいかず2015年にメディア事業へピボット。2016年春からは料理動画に注力したが、ピボット時にはスタッフが全員会社を去る事態にも陥った。その苦い経験を忘れないため、当時のサービス名である「dely」を今でも社名として残している。そんなdelyにとって、モノを売るサービスを手がけるのは創業以来の悲願なのだ。

実際、2016年にYJキャピタルが初めてdelyに投資した際に代表取締役を務めていた小澤隆生氏は「当時delyを見たときから、これは“モノを売れる”サービス」だと感じたと話し、そのとき堀江氏が作成していたピッチ資料にも、モノを売るサービスへの展開は明記されていたのだという。

「クラシルは、料理をするユーザーの意思決定を楽にしてくれるサービス。でも、まだまだそれは完全ではない。今でもユーザーは週に2〜3回は買い物に行っている。ユーザーの意思決定を究極的に楽にしたい」(堀江氏)

引き続き上場も目指す

今回、ヤフーはdelyの株式を既存株主から買い取る形で出資比率を引き上げているが、堀江氏自身は1株も売却していない。ヤフーの連結子会社となってからも、引き続きdelyは上場を目指すと堀江氏は話す。

「このニュースを見て、でかいこと言っていたのに売っちゃったのかと勘違いする人もいるかもしれないけれど、僕はあくまで1兆円企業をつくる気でいるし、上場も目指している。キャッシュもまだ数十億単位で残っているから、(勘違いするのは)勘弁してください」と笑顔で堀江氏は話した。

「自分たちの財布の範囲内でできることを考えるのではなく、まずは勝つための意思決定とは何かを考え、それに必要なお金をどうやって調達するかを考える。今後1年間で見えてくる数字をもとに、上場を戦略の1つとして考えたい」(堀江氏)

2017年3月に行った30億円の資金調達、つづく2018年1月の33億5000万円の資金調達など、これまでも大幅にアクセルを踏み込んできたdely。今回のディールにより、delyはヤフーとの連携をさらに深め、新たなサービス開発への挑戦を始める。

ヤフー、レシピ動画「クラシル」のdelyを連結子会社化、株式取得総額は約93億円

7月11日、ヤフーはレシピ動画サービス「クラシル」の運営元であるdelyを連結子会社化すると発表した。同社は2016年より子会社であるYJ2号投資事業組合を通してdelyへの出資を行なっていたが、今回新たに約93億円を投じてgumi venturesや木村新司氏の投資会社であるPegasus Wings Groupなど既存株主が所有する株式を買い取り、議決権所有割合を45.6%にまで引き上げる(本出資以前の議決権所有割合は15.9%)。

delyは今回の出資について、「本取り組みにより、delyは企業価値を更に高め、事業面においてはヤフーが有するメディア・コマース事業等の多様なリソースを活用することが可能となる。具体的には、クラシルのコンテンツをヤフーのメディア・コマース関連サービス等の利用者に対して、利用しやすい形でお届けする取り組みをすすめていく」とコメントした

TechCrunch Japanでは、本日夕方にdely代表取締役の堀江裕介氏にインタビューを行い、続報を掲載予定だ。

“持たない自由”実現するレンタルプラットフォーム「Alice.style」開発が3.5億円を資金調達

高額家電など、機能は気になるけれども「買って失敗したらどうしよう」と手が出せなかった経験、誰でも一度はあるのではないだろうか。また、ママ、パパの皆さんなら、子どものためにできる限りハイスペックなベビーバギーを手に入れたい、と思えども「どうせすぐに使わなくなるからなあ」と諦めた経験を持つ人もいるかもしれない。

ピーステックラボが現在リリース準備を進めている「Alice.style(アリススタイル)」は、そうした商品をメルカリのようなフリーマーケットでなく、個人対個人、企業対個人の「レンタル」でシェアするためのプラットフォームだ。

ピーステックラボ代表取締役社長の村本理恵子氏によれば、Alice.styleがターゲットとするのは、20代から40代の女性。美容家電や生活家電、マタニティーウェアやグッズ、ベビー用品などを対象商品として想定しているそうだ。

CtoCでは週単位での貸し借りを、BtoCではトライアルで商品貸し出しを行い、「気に入ったら買う」というインターフェイスを設けることで、ECにつなぐという。

村本氏は前職のエイベックスグループで、dTVサービスを手がけていた人物だ。デジタルコンテンツを月額500円で“シェア”する、というビジネスを進めるうちに「デジタルだけでなく、リアルでも同じようなサービスができないか」と考えるようになり、ピーステックラボを2016年6月に創業した。

「持たない自由、シェアリングエコノミーをリアルなモノにも展開したい、と考え、そのためのインフラとしてAlice.styleの開発を始めた」(村本氏)

ピーステックラボでは、8月にAlice.styleの正式ローンチを予定している。そのサービス開始を前に、7月11日、リコーリースとアスクルを引受先とした第三者割当増資により、総額3.5億円の資金調達を実施したことを発表した。

今回の資金調達は、2017年9月に実施したエンジェル投資家からの6000万円の調達に続くもので、シードラウンドに当たる。同社は創業から累計で4.1億円を調達したことになる。

同社では、アスクルについては物流の、リコーリースとはリースに関するノウハウの共有を検討しており、資金調達とは別に業務提携契約の締結を予定している。調達資金は事業拡大、開発体制の強化とマーケティング活動への投資に充てるという。

Reproとグッドパッチがアプリ成長支援の新サービス、2つの側面からアプリのUXを最適化

モバイルアプリ向けの解析・マーケティングツール「Repro(リプロ)」を提供するReproと、UI/UXデザインを軸にクライアントワークや「Prott(プロット)」など自社プロダクトを展開するグッドパッチ

これまでTechCrunchでも何度か紹介してきたスタートアップ2社がタッグを組み、マーケティングとデザインの力でアプリの成長を支援するサービスを始めるようだ。

Reproは7月11日、グッドパッチと協業しアプリのプロダクト・マーケット・フィット支援サービス(PMFサービス)を開始することを明らかにした。

プロダクトとコミュニケーションの2側面からアプリのUXを最適化

「アプリのグロースハックで困っている企業が増えてきている中で、問い合わせを頂く機会も増えてきた。その一方でReproだけでは全てに対応できるわけではなく、歯がゆさを感じていた」—— Repro代表取締役の平田祐介氏は、今回の協業の背景についてそう話す。

Reproがこれまで手がけてきたマーケティングソリューションの特徴は、アプリに関するデータのIPO(インプット、プロセス、アウトプット)を一気通貫でサポートできること。

SDKを入れることでデータのインプットが始まり、リテンション分析やファネル分析を始めとした解析機能を用いてユーザーの行動を分析。生のデータを使いやすい形に加工することで、プッシュ通知やアプリ内のメッセージ表示などコミュニケーション施策を実行できるようにした。

2016年3月の資金調達時には世界18カ国・1400アプリで導入されているという話だったが、現在は59カ国・5000以上のアプリに導入されるまでに成長。2016年3月からはアプリの成長支援コンサルティングも提供することで、サポートの幅も広げてきた。

ただ平田氏によると、多くのアプリを支援する中で何度か課題を感じるシーンがあったそう。それがグッドパッチの得意とするUIに関するものだった。

「ReproはUIのスペシャリストというわけではない。データを分析することで『こうするともっとよくなる』と提案することはできるが、それをアプリのデザインに落とし込むことはできなかった」(平田氏)

今回新たに開始するアプリのPMFサービスは、アプリを成長期に導くことをゴールにUXを最適化するというもの。平田氏いわくアプリのUXはアプリが提供する機能やUIといった「プロダクト」と、プッシュ通知やポップアップなどを活用した「コミュニケーション」の2つの側面があり、両面を最適化することが必要なのだという。

PMFサービスではグッドパッチがプロダクト面を、Reproがコミュニケーション面を担当。両社の強みを掛け合わせることで、初期段階のアプリをスケールが見込める状態になるまで支援する。

プロダクトの最適化についてはまずReproの分析ツールを用いることで、継続率の高いユーザーに共通するアプリ内行動を抽出。それらの行動をしないユーザーがどこで離脱してしまっているかを特定し、要因を整理した上でグッドパッチが機能やUIを実装する。そして結果を定量的に評価するというサイクルを何度も繰り返していく。

コミュニケーションの最適化はこれまでReproが行ってきたもの。同社のツールやナレッジをフル活用して目標の設定からユーザー成長シナリオの作成、プランの実行、評価まで一連のプロセスをカバーする。

PMFサービスの導入第一弾は講談社の運営する「コミックDAYS」になる予定。まずはReproが単独で同アプリを支援するが、今後協業を進めていく方針だという。

世界の競合にようやく追いついてきた

Reproでは今回のPMFサービスに加えて、これから新サービスや新機能を出していく計画。会社としても5期目を迎えて新たなフェーズに入ってきているようだ。

「初期の顧客はIT企業が中心。そこからこの2年ほどで非IT系の企業も少しずつ増えてくる中で、各アプリのKPIを伸ばすお手伝いをするためにSaaSの提供だけでなく、専門チームによるサポート体制を強化してきた。プロダクトのアップデートも重ね、機能面では世界の競合にようやく追いついてきたという手応えもある」(平田氏)

現在同社が次のステップとして取り組み始めているのが、AIの活用による施策の自動化や効率化だ。

たとえば過去のデータを学習することで「もう少しで離脱してしまいそうなユーザー」を予測し、事前に防止策を実施するという実験をしたところ効果があったそう。このような予測機能のほか、各ユーザーごとにアプリの継続利用に繋がるコンテンツを自動でレコメンドする機能や、ユーザーごとにプッシュ通知の配信時間を最適化する機能なども開発中とのことだ。

並行して中国やシンガポールなどアジア圏を中心にさらなる海外展開を進める方針。プロダクトにおいても夏頃にWeb版の提供、その次のステージではIoTプロダクトの解析サービスも検討しているという。

「まずは世の中に流通しているアプリをどんどん改善したい。日本に限った話ではなく、外貨を獲得できるサービスとして世界で戦えるSaaSを引き続き目指していく。またReproが解決したいのはさまざまなデータのIPOに関する課題。自分たちが培ってきた強みはWebやIoTなどにも活用できるので、アプリマーケティングのみならず、デジタルマーケティングの領域でナンバーワンを狙っていく」(平田氏)

月額980円で毎日1杯ドリンク無料、乾杯アプリ「GUBIT」が公開

毎月980円を払えば、仕事終わりの1杯が毎日無料で楽しめる——GUBITが7月6日にリリースした定額制の乾杯アプリ「GUBIT(グビット)」は、お酒好きにはもってこいのサービスといえそうだ。

GUBITは会員登録をして月額980円(税抜)のプランを購入することで、掲載されている飲食店であればどこでも、毎日ドリンクが1杯無料になるというもの。

使い方はシンプルでアプリから行きたいお店を選び、あらかじめ登録されているドリンクの中から飲みたいドリンクを決定。あとはお店で画面を表示して店員にコードを入力してもらえれば、おまちかねのドリンクがやってくる。

提供されるドリンクについては写真付きで掲載され、ビールとハイボールに関してはブランドや銘柄まで事前にチェックできるという。

GUBIT代表取締役の正木武良氏によると、現在はアルコール飲料のみが対象。ビールやハイボールのほか、日本酒、焼酎、サワー類、ワイン、スパークリング、ホッピーセットなど、どの加盟店にも複数のドリンクを提供してもらっているそうだ。

リリース時は首都圏エリアを中心に約100店舗が掲載。新宿で何十年も続く大衆居酒屋から、練馬のカジュアルフレンチ、六本木のクラフトビールのお店まで、ジャンルは幅広い。

今後は首都圏だけでなく、関西や名古屋、福岡など新規エリアも含めて店舗を拡大する準備を進める予定。「基本的には毎日使っていただくサービスにしたいと考えているので、普段使いのお店を中心に拡大していきたい」(正木氏)という。

GUBITに加盟する店舗にとっては、比較的飲食店の利用頻度の高いユーザーにリーチできるのが魅力だ。いろいろとヒアリングを進める中で、「1来店で1ドリンクは店舗側の集客コストとしては成立しうる」(正木氏)という感触を得たためリリースに至ったのだという。

現時点では店舗側の初期費用や月額費用、ユーザー来店ごとの成果報酬などは無料。加盟後6ヶ月を経過した店舗を対象に、GUBITを通じて提供されたドリンク数に応じたインセンティブの提供も予定している。

GUBITを開発した背景は「年を重ねるごとに行くお店が決まってきた、新しいお店に入りにくい、結婚したり子供ができると飲み代が減る」といった、すごく個人的なものだという正木氏。

「家で飲むのもいいけど、やっぱりお店でも飲みたい。できれば少しでも安く、そしていろんなお店で飲めるといい」と考えリサーチをしている中で、海外の定額制サービスの存在を知り興味をもったそうだ。

「これなら毎日飲みに行けるからすごくいいなと。ただいろいろ検証してみると、日本の生活スタイルでは定額制をやるにしても工夫が必要だと感じた。特に店舗側にどうメリットを提供できるかは勉強が必要だった」(正木氏)

そこで上述したようにヒアリングを重ね、最終的に現在のGUBITのモデルに落ち着いたのだという。

「基本的には、自分を含め世の酒飲みのためのサービスを目指したい。オンラインでのサービスは他にもあるが、『お店に行って一杯飲んでいろんな人との出会いや語らいが生まれる』というような、どちらかというとオフラインでの密な関係が生まれるサービスにできたらいいなと考えている」(正木氏)

GUBITは2018年2月の設立。同年6月に複数の個人を引受先とする第三者割当増資により、総額3000万円の資金調達を実施した。

なおGUBITと近いコンセプトのサービスは日本でもいくつか公開されていて、TechCrunchでも過去に「Foobe」や「HIDEOUT CLUB」を紹介している。

クックパッドが食品ECビジネスに参入、街のお店の“こだわり食材”をアプリで買える「クックパッドマート」発表

料理レシピサービス「クックパッド」などを提供するクックパッドは7月10日、生鮮食品のECサービス「クックパッドマート」を発表した。同社はまず、2018年夏より東京の渋谷区、世田谷区、目黒区限定で同サービスをスタートする予定だ。

クックパッドマートを開発した”買物事業部”を率いるのは、2018年1月にクックパッドへ吸収合併されたコーチ・ユナイテッドでCEOを務めていた福崎康平氏だ。「ひとくちに食事と言っても、買い物、調理、後片付けなど、そこにはさまざまな過程がある。しかし、調理するときに見るレシピを手がけるクックパッドは“料理を作る瞬間”しか消費者の心を掴めていない。それを変えたかった」と、福崎氏はレシピサービスのクックパッドが食品EC事業に参入する意図を語った。

1品から食材を購入でき、送料は無料

クックパッドが本日発表したクックパッドマートは、アプリで必要な食材を選択するだけで生鮮食品が手に入るECサービスだ。街のパン屋さんや精肉店などの小規模店舗(パートナー)が提供するこだわりの食材をアプリで購入することができる。ユーザーにとって最大の特徴は、クックパッドマートでは1品から食材を注文することができ、送料も無料であるということだろう。また、レシピサービスのクックパッドならではの仕組みとして、食材のレシピに必要な食材をまとめて購入できる仕組みもある。

日本の食品ECサービスには、昔ながらの生活共同組合(生協)の食材配達サービスや、2017年4月より国内でサービス開始したAmazon Freshなどがあるが、クックパッドマートはそれらとはちょっと違う仕組みで運営される。

クックパッドはまず、ユーザーから指定された食材をパートナーである街の精肉店や精魚店で集荷する。そして、食材を集荷した当日中に“受け取り場所”と呼ばれるピックアップ地点まで配送し、ユーザーがその受け取り場所まで食材を取りにいくというモデルだ。福崎氏によれば、このモデルを選択することで、配送料を節約するための“ルート配送”を実現でき、ECサービスでよくある「〇〇円以上で配送料無料」という煩わしさを避けることができたのだとか。

その受け取り場所として想定されているのは、食材を提供する食品店、コンビニ、クリーニング店などの地域の店舗や、マンションの共有スペースなど。クックパッドは受け取り場所を提供してくれるパートナーを広く募集し、サービスの拡大を目指すという。

福崎氏によれば、クックパッドは今後、半径2kmのエリアごとに30〜50箇所の受け取り場所を用意し、「最寄り駅から自宅までの帰り道に受け取り場所が必ずあるだけでなく、職場の付近でのピックアップなど選択肢が複数あるような状態」していく予定だという。

こだわりの食材を、便利に

「各地域には長年お肉やお魚だけを扱ってきた名店がたくさんある。そういったお店が扱う、本当においしい食材をアプリで手軽に注文できるというのがクックパッドマートの特徴だ。そういった小規模店舗が参加でき、配送もこちらが一手に行うプラットフォームを作りたかった」と話す福崎氏。

その言葉の通り、クックパッドマートは他のECアプリとは少し変わった作りをしている。ユーザーは「鶏肉」など食品の種類ごとに食材を選択するのではなく、まずはパートナーのお店を選択し、その後にそのお店が扱う鶏肉を選択するというフローだ。このあたりからも、「街のお店のこだわり食材を手軽に購入できる」というクックパッドマートの特徴を大事にする様子が伺えるだろう。

上述したように、クックパッドマートのモデルではユーザーが受け取り地点までわざわざ食材を取りに行く必要がある。それだけ聞くと、「だったらスーパーまで買い物に行くのとあまり変わらないのでは」という意見もありそうだ。

でも、福崎氏の言葉の通り、クックパッドマートは地域に散らばる名店のこだわりの食材を一箇所で受け取れるサービスであると考えれば、このサービスを利用するメリットを理解しやすいのかもしれない。それに、クックパッドマートのような食品ECサービスを頻繁に利用するユーザーとして考えられるのは、共働きをする若い世代だ。そうしたユーザーは昼間に自宅にいないことも多く、好きな時間に職場からの帰り道にある受け取り場所でピックアップできるというモデルの方が逆に便利なのかもしれない。

クックパッドマートの当面の目標として、福崎氏は「年内に、利用可能エリアを複数のエリアに拡大し、受け取り場所も数十箇所設置する。そして、“クックパッドマートで生活する人”を作りたい。来年以降は、受け取り専門の店舗やクルマを設置することも考えている。来年度中にはこのビジネスモデルを確立したい」と語った。

クックパッドマートを手がける買物事業部のメンバー。写真中央が事業部長の福崎康平氏。

「すべてのLGBTが自分らしく働ける社会の創造」を目指すJobRainbowが5000万円を調達

後列一番左がJobRainbow代表取締役、星賢人氏

五反田駅から歩いて数分の場所にあるfreeeの本社は7月8日、日曜日なのにもかかわらずとても賑わっていた。日本最大の規模を誇るLGBTフレンドリー企業の合同説明会、「Real JobRainbow」が開催されていたからだ。

LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、それぞれの頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティの総称のひとつだ。

2016年創業のスタートアップJobRainbowが運営する同説明会ではスターバックス、LUSH、そしてfreeeを含む約10社の参加企業が名を連ね、訪れた約150名の就職・転職希望者たちに対し「自分らしく」「自然体」で働ける職場環境が整っていることを約束した。

2016年創業のJobRainbowは「すべてのLGBTが自分らしく働ける社会の創造」を目指し、合同説明会のReal JobRainbow、求人サイト「ichoose」、企業口コミサイト「JobRainbow」、研修・コンサルティング事業などを展開している。

そんな同社が7月10日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする、5000万円の第三者割当増資を実施したと発表した。今回の資金調達により、プロダクト開発・セールスチームの強化、及び企業向けコンサルティング事業の強化を実施し、年間約70万人存在すると言われているLGBTの就活生・転職希望者が自身のセクシュアリティに関わらず、「自分らしく働ける職場」に出会える社会を目指すという。

同社の代表取締役、星賢人氏は13人に1人(約7.6%)、日本の人口に換算するとおよそ950万人がLGBTに該当すると説明。

星氏は、東京大学大学院に在学中、起業し、孫正義育英財団正財団生として選抜されるとともに、Forbes 30 under 30 in Asiaに日本人唯一、社会起業家部門で選出されている。自身もゲイとしてこれまでいじめや差別を経験し、人生に絶望したこともあったという。

同氏は「求職時に、困難を感じていない人が6%なのに対して、LGBだと44%、トランスジェンダーの方だと70%の方が困難を感じていると答えている」と問題を指摘した。

「職場でカミングアウトしたいと思っている方は約半数いるが、実際にできている方は4%しかいないということが博報堂などによる調査によってわかっている。背景として、7割の方が職場で差別的言動を経験しているということがある」(星氏)

企業側には「人材不足の中、理解がないことで知らず知らずのうちにLGBTの方が離職してしまう」ことがあったり、「理解があるのにも関わらず、それを当事者に伝え切れていない。雇用がしたくても受け入れ方を知らない」といった課題があるのだと同氏は説明する。

そのソリューションとして、今では同社のメインサービスとなっており、当時は世界初であったというLGBTのための求人サイト、ichooseを2017年にリリース。性別関係なく働くことができ、かつ「服装髪型が自由」「トイレや更衣室に配慮」「福利厚生が同性パートナーにも適応される」など自分にあった求人に応募できるのが同サービスの特徴だ。エントリーシートに求職者が自由にセクシュアリティを記入できるほか、入社後の配慮項目を事前に登録することで、求職者と企業とのより良いマッチングをサポートする。同サービスのユーザー数は累計で約35万人、MAU(monthly active user)はおよそ7万5千人にも及ぶという。

星氏は「現在、年間で言うとLGBTの求職者は約67.5万人いることがわかっている」と市場規模に関して説明した。「人材の市場規模的に言うと、人材サービス産業はおよそ8兆円なので、だいたい7.6%と考えると6000億円。その中で我々が狙うべきなのは求人広告市場と人材紹介事業なので、そこで言うとおよそ1000億円が我々のビジネスのポテンシャルとして存在している部分だと考えている」と語った。

今後、出資をもとにプロダクトを磨くため、エンジニアやデザイナーを増員し、2025年までに認知度を100%近くまで高め、売上高は300億円規模を目指しているという。

また、星氏はTechCrunchで紹介しているようなベンチャーやスタートアップなど若い中・小規模の企業は「理解や柔軟性」があり、「特に受け入れ土壌がある」と述べた。

Real JobRainbowでブースを出し、ichooseにも求人を掲載しているfreeeでダイバーシティ推進室 室長を務める吉村美音氏は「freeeを含むスモールビジネスやスタートアップの会社は、様々な施策を行う上で小回りがきく。自由に働ける環境を整えることができるのはスモールビジネスやスタートアップの強みだと考えている」と語った。

写真右がfreeeダイバーシティ推進室 室長、吉村美音氏

人の創造性を定量化するイノベーションテックのVISITS Technologiesが5億円を調達

独自のアルゴリズムによって創造性を可視化する「ideagram」やOBOG訪問サービス「VISITS OB」を提供するVISITS Technologies。同社は7月9日、CAC CAPITAL、未来創生ファンド、FFGベンチャービジネスパートナーズ、みずほキャピタル、個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額約5億円を調達したことを明らかにした。

VISITS Technologiesは2014年の設立。2017年7月にパーソルホールディングス、ベクトル、三菱UFJキャピタル、グローブアドバイザーズなどから5.7億円を調達しているほか、それ以前にも代々木ゼミナールグループ、ウィルグループインキュベートファンドなどから資金調達を実施。

これまでの累計調達額は今回も含めて約14億円になるという。

共感を軸に人のつながりを生みだすOB・OG訪問プラットフォーム

VISITS Technologiesでは現在大きく2つのサービスを展開している。そのひとつが前回調達時にも紹介したVISITS OBだ。

VISITS OBは「ビジョンに共感し合える人のつながり」を生み出すことを特徴とした採用サービス。よくありがちな同種のサービスとは違い、OB・OGは会社の紹介などではなく、自分がこれまでどんなことをしてきたのか、これからどんな挑戦をしていきたいのかといった個人的なエピソードをプロフィールとして記入する。

社会人と学生双方のプロフィールをディープラーニングにかけることで「人が何に興味を持つのか、どんなことに共感するのか」を抽出。共感をベースにしたマッチングの実現や、企業のブランディング最適化のサポートを行う。

サービス開始から2年半でユーザー数は約10万人。掲載企業数も約2000社に上り、マッチング数は100万件を越えた。昨年からはユーザー専用のコミュニティスペース「HELLO,VISITS」を複数のエリアで設立するなど、新しい取り組みも始めている。

クリエイティビティを科学しイノベーションを創出する新サービス

VISITS Technologiesが展開するもうひとつのプラットフォームが、2017年10月に発表した「ideagram」だ。

このサービスはこれまで定義することが難しかった人の創造性や目利き力、アイデアの価値を定量化することで企業内の人材発掘や育成、イノベーションの創出を支援するというもの。具体的には「アイデア創造」と「アイデア評価」という2つの試験をオンラインで実施。参加者のデータを独自のアルゴリズムで分析する。

おもしろいのは単なる多数決などではないということだ。ideagramではアイデア創造の結果によって各メンバーの目利き力を予測し、アイデア評価の際に各々の目利き力を考慮する(ウエイトを加重する)。これによって「多くのメンバーがイマイチだと言っていたとしても、目利き力が高いとされるメンバーがおもしろいと言ったアイデア」が評価されるようになる。

つまり従来は多くのメンバーに理解されずに埋もれしてしまっていたような「破壊的イノベーションに繋がるようなアイデア」に、個々のクリエイティビティやアイデアの価値を可視化することで気づけるようになるかもしれないということだ。

もちろん社内で誰がクリエイティブか定量的にわかるようになれば、人員配置を考える際にも役に立つし、研修用のツールとしてクリエイティビティをトレーニングすることもできるという。

少し説明をはしょってしまったけど、厳密には上述したプロセスを経て「参加者全体として『どのような創造性と目利き力の確率分布に従っていれば、全体として最も納得性の高い合意形成が成立するか』という『説明力最大化問題』を数学で解き明かしている」とのこと。

この独自の合意形成アルゴリズムがideagramの特徴となっている。

AI時代に必要なクリエイティビティを数式で可視化する

VISITS Technologiesで代表取締役を務める松本勝氏は元ゴールドマンサックスのトレーダーであり、その後人工知能を用いた投資ファンドの設立にも携わってきた人物。AIに関わってきた歴も長いからこそ「AIは決して万能ではない」と話す。

基本的にAIは過去のデータから学習して判断を行うもの。つまり「教師データ」がある場合に、一層そのパワーを発揮する。

一方で破壊的イノベーションと呼ばれる類のものは、そのほとんどが前例のないアイデア。AIが生み出したり、見つけたりするのが苦手だけれど価値があるものだと言える。

「AIが進化することで、人に求められる能力や人がフォーカスする領域も変わる。そこで重要なのが(AIには難しい)クリエイティビティであり、その源泉となる共感。これこそが1番のフォーカスポイントだと以前から言われているのに、これまではそのスキルが定義されることもなく、育て方もわからないままだった。ideagramではこのクリエイティビティを科学する」(松本氏)

共感を科学するという点では、以前から運営してきたVISITS OBから一貫するテーマだ。

VISITS OBは共感という軸で、共に新しい社会価値を創造する仲間を見つけるためのサービス。ideagramは、社会価値に繋がるアイデアを見つけたり、必要なスキルを磨くためのサービスという位置付けだという。

松本氏によるとideagramはすでに大手企業を中心に約20社に導入が決まっていて(運用を開始している企業も含め)、今後も引き続き展開を加速させていく予定だ。

また企業向けのプロダクトだけでなく、同社のエンジンとブロックチェーンを組み合わせたオープンな社会課題解決プラットフォームを開発しているそう。登録された社会課題とさまざまな企業が持つ技術などのシーズの組み合わせから最適なものを自動抽出することで、社会課題の解決と同時に、新たなイノベーションの種を発掘するエコシステムの構築を目指しているようだ。

40万人が使うプログラミング学習サービス「Progate」、米国子会社を設立しグローバル展開を加速

「海外展開は思っていたより簡単じゃない、というのが正直なところ。プロダクトの基盤が一通りできてきた一方で、日本と海外でのニーズのズレなど課題も感じている。そこをどう乗り越えていくかが今後のチャレンジだ」——Progate(プロゲート)代表取締役の加藤將倫氏は同社の現状についてそう話す。

Progateが運営するプログラミング学習サービス「Progate」については、これまでTechCrunchでも何度か紹介してきた。

スライド教材を見て基礎を確認した後、ウェブブラウザ上で実際にコードを書きながら学べるスタイルを考案。初心者にとって難易度の高い環境設定などもなく、プログラミングを始めるまでのハードルが低い。

そんなProgateが力を入れているのが、英語圏を中心としたグローバル展開だ。同社では7月1日に初となる子会社Progate Globalを米国に設立。海外ユーザーの獲得をさらに加速させようとしている。

国内ユーザー数は約35万人、コンテンツ数も66レッスンまで拡充

Progateは2014年7月に、東京大学の学生だった加藤氏や取締役の村井謙太氏らが共同で創業。自分たち自身が苦労しながらプログラミングを学んだこともあり、初心者でも挫折しにくいサービスとしてProgateを立ち上げた。

特徴は初心者が最初につまずきやすいポイントを解消しつつ、実際に手を動かしながらプログラミングの楽しさに触れられること。

本や動画学習サービスを使って学習する場合、コードを書くためには自分で環境構築をしないといけないが、初心者にとってはこれが意外と面倒。その点Progateの場合はすぐにブラウザ上でコードを書くことができ、その結果をリアルタイムに確認できる。

2017年2月にはフリークアウトグループ、DeNA、エンジェル投資家から1億円の資金調達を実施(それ以前にもEast Ventures、ロンドンブーツの田村淳氏、メルカリ創業者の山田進太郎氏らから資金調達をしている)。調達した資金も活用しながら、英語版やアプリ版の開発、コンテンツの拡充などプロダクトの改善を着々と進めてきた。

特に国内ではアプリのリリース(1月にiOS版、4月にAndroid版)以降ユーザー登録のペースが以前の倍くらいになっているそう。国内のユーザー数は約35万人にまで増え、そのうちの5%ほどが有料会員だという。

Progateのキモとなるコンテンツについては、現在15コース・66レッスンを提供。直近ではメルカリ/メルペイの現役エンジニアと共同でGo言語のレッスンを開発するなど、外部のエキスパートと共同でコンテンツを作る新しい取り組みも始めテイル。

海外ユーザーのペインを解決できるプロダクトが必要

このような背景もあり、加藤氏は「ProgateのVer1が完成に近づいてきた状態」と話す。ただこれはクチコミである程度ユーザーが安定的に入るようになってきた日本での話。海外では少し事情が違うらしい。

「海外版を出せば日本と同じような層に広がっていくかと思っていたが、そもそもターゲットの抱える目的や課題も違うことがわかってきた。海外で戦えるプロダクト、海外ユーザーのペインを解決できるプロダクトとしてはまだ足りない」(加藤氏)

具体的には「コンテンツが圧倒的に足りない」という加藤氏。同社にとってコンテンツの増強が今後の大きなテーマになるようだ。

Progate代表取締役の加藤將倫氏

たとえばインドの場合。現地の学校を回ったり若者と情報交換をしたりなどヒアリングをしてみると、「データサイエンスやマシーンラーニングのコースがあるのかをどこに行っても聞かれる」のだという。ここは現状のProgateではまだカバーできていない領域だ。

「海外の方がニーズが進んでいるイメージ。インドの場合だと高校の授業でProgateのレッスンのような内容を学んでいたりもするので、日本と同じように大学生向けに同じようなコンテンツを提供していては上手くいかない」(加藤氏)

そのため国内と海外ではユーザー層にも違いが生まれているそう。現在海外ユーザーは約5万人。内訳としてはインドが3万人、米国が1万人、その他が1万人とのことで、インドについては日本よりも年齢層が低く、10代後半がボリュームとしては大きい。

海外では日本以上にプログラミング学習サービスの選択肢も多くなるため、他社と比べられる機会が増えるという事情もある。

実際、加藤氏が注目するサービスのひとつとして挙げるUdemyなどには膨大な量のコンテンツが並ぶ。ユーザー投稿型のためコンテンツの質にはバラツキがあるものの「(プログラミングに関するものだけで)1万レッスンないしそれ以上のコンテンツがあり、上位5%のクラスは質も高い」(加藤氏)という。

「Progateで提供しているコンテンツには自信を持っているけれど、たとえば現状でPythonのコースは5コースしかない。これだけのために課金をしてまで使うか、クチコミで広がっていくかというと難しい。他にも選択肢がある海外ではなおさらのことだ」(加藤氏)

コンテンツが充実すれば海外でも十分チャンスはある

Progateの英語版。2017年10月のβ版を経て、2018年5月に正式リリース

後発とも言えるProgateが、今後海外でどのくらい広がっていくのだろうか。加藤氏に手応えを聞いてみたところ「コンテンツを拡充させることができればやっていける感触はある」という答えが返ってきた。

「インドや中国など、十分にプログラミング教育が発展していない国には大きな可能性を感じている。ツール自体もあまり知られていないので、そこまで後発というわけでもない。そこでしっかりと盤石な立ち位置を確立できれば、他のエリアでもより多くの資金を使って取り組める」(加藤氏)

一方の米国は相当大変になってくると話すが、「この市場はウィナーテイクオール(1社がひとり勝ちするようなビジネス)ではない」ため、いいコンテンツを提供できればチャンスはあるというのが加藤氏の見解だ。

大まかなプランとしては、まず海外で既存のコンテンツが刺さる層のファンを増やす活動に注力。並行して世界で戦えるようなコンテンツを開発しながら、新たなユーザーも開拓し日本と同様にクチコミで広げていく方針だという。

今回設立した米国法人も「世界で1人でも多くのファンを作る」手段のひとつ。インドでも近く法人の設立が完了する予定で、これがProgateの海外展開を加速させるギアとなりそうだ。

「自分たちの強みは徹底的にユーザーに向き合ったコンテンツを作れること。(このスタイルは崩さず)アプリや機械学習など対応するコースも増やし、『どんなものを学びたいかに限らずProgateであれば安心できる』という環境を作っていきたい」(加藤氏)

生体認証システムのLIQUIDが33億円を調達、オンラインで完結する本人確認サービスも

LIQUID代表取締役の久田康弘氏

生体認証システムやそれを応用したさまざまなプロダクトを提供するLIQUID。7月6日、農林中央金庫、東京海上日動火災保険、森トラスト、大和証券グループ本社、上田八木短資株式会社、SBI AI & Blockchain投資事業有限責任組合、その他国内事業会社を引受先とする第三者割当増資等による総額33億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は今回の資金調達でエンジニアを確保し、新製品を視野に開発体制を強化するという。

LIQUIDでは生体情報にフォーカスした画像解析と機械学習を利用したビックデータ解析により、高速処理を可能にした認証アルゴリズムを独自に開発。パスポートやパスワード・暗証番号の代替手段まで、次世代の社会インフラを支える技術開発を進めてきた。

たとえば、3指センサーによる指紋スキャナー「LIQUID Sensor」は同社開発の生体認証エンジンを用いることで高精度な本人照合を実現。また、一般小売店舗向けに開発された「LIQUID Regi」は通常のレジ機能に同社の指紋センサーを追加することで、カードや現金不要の”手ぶら決済”を可能にした。

同社のプロダクトはハウステンボスなど多くの商業施設で利用されている。また、2017年11月にはイオン銀行にLIQUIDの本人確認サービスが導入された。指紋と静脈の2要素による生体認証により、ATMでの現金引出しや入金・住所変更等の手続きを高セキュリティが維持された状態で行うことができるという。

そして本日、同社は住信SBIネット銀行との間で、オンラインで本人確認を完結する「LIQUID KYC」の導入検討を開始したと発表した。

LIQUID KYCは同社がこれまで開発してきた画像解析・機械学習を用いた認証技術をベースとし、犯収法施行規則の改正案に準拠した、オンラインで完結する本人確認サービスだ。利用者が直ちに住信SBIネット銀行における銀行口座の開設・振込等のサービスを利用できるようになることを目指すという。

同社いわく、これまで、オンラインでの口座開設等における本人確認の方法として「顧客から身分証の送付を受け、顧客宅に転送不要郵便を送付する方法」が規定されており、口座開設をオンラインで申し込んだ場合、最終的には転送不要郵便を送付する必要があった。

しかし今回の改正により、「本人確認書類の画像の送信を受けるとともに、顧客の顔画像の送信を受ける方法」が導入され、オンラインのみで本人確認を完結することも可能に。時間とコストをかけることなくセキュアな本人確認が実現する見込みだ。

LIQUID KYCを用いて顔データを撮影するイメージ

久田氏によると、同サービスは利用者がアップロードした本人特定事項、顔写真付き本人確認書類、および本人の顔写真をクラウドサーバーで照合。本人確認を通過した場合はそのまま銀行口座が開設できるようになるのだという。

同サービスの導入により、たとえば「夜中にオンラインで事業者が銀行口座を開設し、その日から銀行口座を持って使っていける」ようになり「ユーザーの利便性が上がっていく」と同氏は説明した。

レシピ動画「クラシル」のdelyが同業「もぐー」運営を買収、ダントツのナンバーワン目指す

レシピ動画サービス「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyは7月5日、同じくレシピ動画サービス「mogoo(もぐー)」を手がけるスタートアウツの発行済全株式を取得し、完全子会社化することを明らかにした。取得金額については非公開だという。

今回delyの子会社となるスタートアウツは2013年の設立。いくつかのサービスを立ち上げたのちバイラル動画メディア「Whats」を開発。そこから方向性をシフトし、分散型の料理動画メディアとして始めたのが現在も運営しているもぐーだ。

もぐーやスタートアウツについては2016年7月にTechCrunchでも紹介している。その際は同社が環境エネルギー投資、アドウェイズ、みずほキャピタル、East Ventures、メルカリ創業者の山田進太郎氏から数億円規模と見られる資金調達を実施したことをお伝えした。

そこからサービスを拡大させ、SNSのフォロワー数に関しては7月3日15時の数値で約110万人(公式SNSカウントのフォロワー数を元にdelyが集計したもの)、レシピ動画数は6月29日時点で約3200本(Appliv調べ)ほどに成長しているという。

一方のdelyが運営するクラシルは2016年2月のスタート。開始から約2年でレシピ動画数は約1.7万本、SNSのフォロワー数は約290万人、アプリのダウンロード数も1200万DLにのぼる(動画数とアプリDL数は2018年6月、フォロワー数は同年7月のもの)。

dely代表取締役の堀江裕介氏は今回の買収について「レシピ動画サービスの中でダントツのナンバーワンになるための打ち手のひとつ」だという。

「(タイアップ広告がメインとなる)レシピ動画サービスのような領域では、トップのサービスに広告主が集中するため、いかにブランド力をつけていくかが大事になる。クラシルの力をさらに拡大する上で、他のメディアを買っていくという動きは必然的なものであり、もぐーにとってもメリットがある」(堀江氏)

買収の話自体は1ヶ月半ほど前から始まり、スピードを重視して進めてきたため、今後の細かい方向性についてはこれから詰めていくそう。現時点ではもぐーのリブランディングを実施するとともに、クラシルとのサービス統合を予定。その結果クラシルのレシピ動画数は2.1万本、SNSフォロワー数も400万人にまで拡大する。

「ポートフォリオを広げていくよりも、今はレシピ動画の軸で徹底的にやっていくフェーズ。現時点ではまだ完全なナンバーワンという状態には至っていない。まずは国内においてダントツのナンバーワンになるために、ここ1〜2年でやれることを全てやっていきたい」(堀江氏)

delyが2018年1月に33.5億円を調達した際に、堀江氏はレシピ動画以外の領域も含めて「新規事業の展開に加えて、スタートアップのM&Aや投資を検討していく」という話をしていた。

同社にとって発行済の株式を取得する買収に関しては今回のスタートアウツが初めてとなるが、今後もこのスタンスは変えず「自分たちの力以外の拡大方法」として、M&Aや投資にもチャレンジしていきたいという。

マネーフォワード、経営分析クラウド運営のナレッジラボをグループ会社化ーー約2億円を出資

左から、ナレッジラボ代表取締役の国見英嗣氏、マネーフォワード代表取締役社長の辻庸介氏

自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」やビジネス向けクラウドサービス「MFクラウドシリーズ」などを提供するマネーフォワードが7月5日、経営分析クラウド「Manageboard」を提供するナレッジラボに約2億円を出資し、グループ会社化することを発表した

「中小企業の業務効率化から収益向上まで、一貫したソリューションを提供」するのが同社のねらいだ。

Manageboardは会計ソフトのデータをインポートするだけのシンプルなプロセスで経営分析ができるクラウドサービスだ。目標売上高や前提条件を設定すると、会計データをもとに自動で予算実績分析やキャッシュフロー予測などの経営シミュレーションができる。2018年夏にはAI監査も行えるようになるという。

マネーフォワード代表取締役社長の辻庸介氏は同日の会見で、グループ会社化により「中小企業の収益向上実現を目的とした事業領域の拡大」や「会計事務所へのツールとノウハウの提供により、全国の中小企業の収益向上」を実現することができると説明した。

同氏いわく「日本の労働生産性は先進国で最低レベル」で「赤字企業が全体の64パーセント」。MFクラウドのユーザーや非効率な会計業務を行なっている中小企業にManageboardを提供し、収益向上につなげる、と意気込んだ。

具体的には、グループ会社化により以下が実現されるという。

(1)経営分析クラウドManageboardの提供

・MFクラウド会計とManageboardを連携

・クラウド会計データを元にした予算実績分析・キャッシュフロー予測・AI監査などの分析データを提供

(2)CFOアウトソーシング「財務戦略顧問」の提供

・Manageboardを活用し、対面コンサルティングを行うことで、企業の経営アクションを促進

クラウド会計サービスによる中小企業の経営支援としては、7月2日に「クラウド会計ソフト freee」を提供するfreee新たに「予算・実績管理機能」をリリースしたのが記憶に新しい。

だが、今回の発表では、辻氏はあくまでも強気に今後のプランについて語っていた。

「急成長するFintech・SaaS市場において、さらにナンバーワンの地位を確立していきたいと思っている。次のステージに行けるのではないかという期待感が我々にはある」(辻氏)

「ズボラ旅」が10万円までのコンビニ後払いに対応開始

必要なのは旅行に行きたいという気持ちだけ。それさえあればLINEのチャットを通じておすすめ旅行プランを提案し、予約代行までしてくれる「ズボラ旅 by こころから」。

TechCrunchでも何度か紹介してきた同サービスに、今までよりも多くのユーザーが旅行に行きやすくなる機能が追加されたようだ。

ズボラ旅を運営するHotspringは7月5日、同サービスの新たな決済手段として「コンビニ後払い」への対応を始めたことを明らかにした。

対象となるのは10万円までの旅行で、支払い期限は申し込み日の翌月末まで。ズボラ旅を利用して宿泊施設を予約した後に届くハガキから、コンビニで支払う仕組みだ。なお、この機能についてはフリークアウト・ホールディングスの子会社であるGardiaの後払いサービスと連携したものだ。

なおハガキを送るまでのコストや万一支払われない場合のリスクなどを考慮し、後払い利用時には540円の手数料が別途必要(上乗せされて請求)になるという。

Hotspring代表取締役の有川鴻哉氏によると、後払いについては創業当初(旅行領域をやろうと決めた時)から検討していたようだ。

同社が実現したいことはより多くの人に旅行を楽しんでもらうことであり、「みんなが旅行したいと思った時に障害になるものは片っ端から取り除いていきたい」という考えが前提にあるそう。そこで具体的な障害となりえるのが「時間がない」ということと「お金がない」ということだ。

「ズボラ旅は『時間がない』を一定解決するためのサービスだが、それだけ解決しても旅行にいけない人がいる。今回の取り組みはズボラ旅に足りなかった要素を付け足すという意図があって、『お金がない』という悩みをすべて解決できるワケではないが、少しでも旅行を楽しめる人を増やせたら良いなぁと考えている」(有川氏)

なお旅行代金の後払いといえば、つい先日「CASH」運営のバンクも「TRAVEL Now」をリリースしている。偶然にも同日にはLINEが「LINEトラベル」を発表するなど、旅行サービスの話題で界隈がざわついた1日となった。

TRAVEL Nowについて有川氏は「先にやられたー!というのが率直な感想です(笑)」と言うが、「競合が出現して焦るというよりは、それだけ旅行領域には解決すべき悩みがあって伸びしろがあるんだよなと、むしろ背中を押してもらったようなキモチ」とも話す。

確かに各プレイヤーが全く同じアプローチをしているわけでもないため、必ずしも直接的な競合というわけではなさそうだ。

「わたしたちは、わたしたちが信じる旅行のあり方を追求しながら、旅行を楽しむ人を増やしていきたいと考えている」(有川氏)

家のカギ、スマホで開け締めーー新Qrio Lockが7月19日発売

eng-logo-2015ソニーなどが出資するIoTベンチャーQrioは、スマートロック新商品「Qrio Lock」を7月19日に発売します。

レスポンスが大幅向上、軽量化で落下しづらく

Qrio Lockは、家のカギをスマホで開け締めできるIoT機器です。工事不要、既存の鍵に両面テープで設置できる簡易さが売りです。

前モデル「Qrio Smart Lock」からの進化は、対応する鍵の増加・本体の小型化など。また、スマホを操作してから鍵が動作するまでの反応時間を8分の1に短縮したほか、電波強度を見直し、より安定して通信できる環境を増やしたといいます。

新たにオートロックにも対応。これは、スマホのGPSを利用して、外出すると自動で施錠、帰宅すると自動で解錠する機能。鍵の開け締めでいちいちスマホを操作しなくていい利便性を訴求します。

なお前モデルでは、両面テープが剥がれて本体が落下し、家の鍵が空けられなくなる… というトラブルも聞きました。「Qrio Lock」ではその対策として、本体を40%軽量化。また両面テープを4分割し気泡を入りづらくしたことで、落下の可能性を低減しています。

その他、スマホから1度に2つのQrio Lockを操作できるため、上下に2つ鍵のある玄関ドアにも対応。合鍵もスマホ上の操作で簡単に発行できます。また、「Qrio Lock」を設置した鍵は手動・スマホ、いずれの方法で解錠・施錠しても履歴が残るため、セキュリティー面も安心だといいます。

「Qrio Lock」の本体価格は直販サイトで税別2万3000円。Amazonや家電量販店でも発売予定です。

家の鍵は紛失すると困る私物の代表格。これがスマホで代用できるのは大きな魅力と言えそうです。

Engadget 日本版からの転載。

「アートとブロックチェーンは相性がいい」美術家が創業したスタートバーン、UTECから1億円を調達

アート×テクノロジーを軸に複数の事業を展開するスタートバーン。同社は7月5日、UTECを引受先とする第三者割当増資により、約1億円を調達したことを明らかにした。

同社では今回の調達も踏まえ、以下の3つの事業に取り組む方針だ。

  • 文化・芸術品の管理に特化したアート×ブロックチェーンネットワークの構築
  • ネットワークと連動する自社サービス「Startbahn BCM(仮称)」の開発
  • アート領域以外の事業者も含めたブロックチェーン事業の共同開発

ブロックチェーンネットワークは9月末より試験運用を開始、Startbahn BCMも同様に9月末より提供を開始する予定だという。

油絵専攻の現代美術家が立ち上げたアートスタートアップ

スタートバーンが今後取り組む事業には、同社がこれまでやってきたことが大きく関わっている。ということで、まずは同社の成り立ちや手がけてきたプロダクトについて紹介したい。

スタートバーンは現代美術家として活動していた施井泰平氏が、東京大学大学院に在学していた2014年3月に立ち上げたスタートアップだ。施井氏は多摩美術大学の絵画科出身。大学で油絵を専攻した後、美術家として「インターネットの時代のアート」をテーマに制作活動を行ってきた。

ギャラリーや美術館での展示に加えて、複数のオンラインプロジェクトも発表。東京藝術大学では教鞭をとった経験もある。

そんな施井氏が起業するきっかけとなったのが、かねてから構想を進めていた「Startbahn」のアイデアだったという。

「テーマとしていたのは『アートの民主化』。インターネットの時代では、様々なジャンルで名もない多くの人たちが業界を盛り上げ、それが中心となって新たな市場を開拓してきたという背景がある。ただしアートに関しては限られたトッププレイヤーだけしか市場に関わっていなかった。結果的に一部の作品だけがやりとりされ、情報も広がっていかない。そんな状況を変えたいと思っていた」(施井氏)

たとえば毎年1万人以上が美術大学を卒業するのに、マーケットに流通するアーティストになるのはわずか1〜2人程度なのだそう。そう考えるとほんの一部の人だけがチャンスを掴めるシビアな市場だ。もちろんネットによる民主化が進まなかったのには、アート市場特有の理由もある。

「通常、多くのマーケットでは基本的に中古市場より新品市場の方が商品価値が高い。一方でアートは新品が最も値段が安いというケースがほとんど。アーティストのキャリアや、その作品がどんな人に買われたか、どんな展覧会に展示されたかによって価値が高まっていく。そのような情報を管理するのが困難だったため、簡単にネット上で自動化もできず、アートをやりたい多くの人たちの作品が流通してこなかった」(施井氏)

転売されるごとにアーティストへ還元金が分配

2015年12月にリリースした「Startbahn.org」は、これらの課題を解決するために作ったプロダクトだ。

同サービスはアート特化のSNSとオークション組み合わせたような仕組み。アーティストが自身の作品を掲載したり、レビュワーが作品のレビューを投稿するSNS機能に加え、アーティストとコレクター間だけでなくコレクター同士でも作品を売買できるオークション機能を備える。

特徴は再分配システムを搭載していること。Startbahn.orgでは作品の来歴がトレースされるほか、コレクター間で作品が売買されるごとに(n時販売時に)オリジナル作者へ還元金が支払われる仕組みになっている(日米間で特許を取得済み)。

これは上述した「トッププレイヤー以外の作品が流通しやすくなるための仕掛け」のひとつだ。

「まず作品の価格決定の仕組みを変える必要があった。従来の仕組みでは若手のアーティストの作品が高いと感じられがち。たとえば30日かけて作った作品が30万円で売られていても、多くの人は高いと思うはずだ。そこで初期の価格を落とす一方で、転売されるごとにアーティストに還元されるようにすれば、ひとつの作品から同じくらい、もしくはそれよりも多くの収益が得られるのではと考えた」(施井氏)

ブロックチェーンを活用すれば課題を解決できる

ところが実際にサービスの運用を続けていると、いくつかの課題が明確になった。特に頭を悩ませていたのが、外部サービスで作品が売買されてしまった場合、来歴のトレースも還元金の徴収もできなくなってしまうことだ。

どうすればこの問題を解決することができるのか。ずっと打開策を考え続けていた時に施井氏が出会った技術こそが、ブロックチェーンだったという。

還元金や証明書の情報はブロックチェーンに記録し、かつブロックチェーンネットワークを通じて外部サービスとも連携できる仕組みを作れば、サービスをまたいで来歴の管理や還元金の徴収も可能になる。

約2年に渡ってその考えを磨き続けた結果生まれたのが、現在開発を進めているアート×ブロックチェーンネットワーク構想であり、自社サービスのStartbahn BCMだ。

アート×ブロックチェーンネットワークでは、アートマーケットの発展のために共有すべき「作品のタイトルやサイズ、制作年度、作者情報、来歴情報」といったデータをブロックチェーン上でオープンにする。

一方で所有者の個人情報や販売管理者のための管理情報など、共有したくない情報については自社で管理できる仕組みを整備。双方のバランスをとりつつ、ネットワークを活用すれば参加機関が独自の作品証明書発行サービスを立ち上げたり、既存のプロダクトをアップデートできる環境を作る。

ネットワークの参加機関として想定しているのは、アーティストやクリエイター、ギャラリー、オークションハウス、管理業者など、文化や芸術作品に携わるあらゆるプレイヤー。まずは第一段階として9月末から一部のパートナー企業と共に試験運用を始め、2019年初には正式版を公開する予定だという。

同じく9月末の公開を予定しているStartbahn BCMは、アート×ブロックチェーンネットワークに参加するサービスのひとつという位置付け。Startbahn.orgのコンセプトや特徴を引き継ぎながら、従来抱えていた課題をブロックチェーンの活用で解決し大幅にアップデートしたものだ。

Startbahn BCMでは外部サービスとの連携だけでなく、独立性やカスタマイズ性を重視。作品や商品管理機能をバージョンアップし、ギャラリーやショップ、イベント、教育機関での利用も視野にいれている。

施井氏いわく「イメージとしてはBASEやSTORES.jpにも近い」部分があるそう。それぞれのユーザーが独自性のある作品サイトを作成でき、裏側では各サイトがStartbahn BCMに紐付く仕組みだ。

またスタートバーンではアート×ブロックチェーンネットワークの構築を通じて培った知見を、文化や芸術以外の領域にも応用していく方針。来歴管理や証明書発行、真贋鑑定技術などを必要とする事業者と共同で、オリジナルのブロックチェーンネットワークを開発していきたいという。

アート界隈でも注目度の高いブロックチェーン

海外ではすでにブロックチェーンをアート市場の課題解決に用いたスタートアップが増えてきた。特に作品の真贋鑑定や来歴管理はブロックチェーンと相性がよく、「Codex」や「Verisart」を始めとしたサービスが注目を集めている。

施井氏の話ではアート界隈の人と話していても「トレーサビリティだけでなく国際送金やエスクローの仕組みなど、ブロックチェーンへの関心度や期待値は高い」そう。特にアート業界は贋作が多いと言われていて、それが業界の透明性を下げてきた部分もあるからだ。

その一方でギャラリーやオークションハウスとしては自分たちの情報を守りたいという思いもあり、従来は双方のバランスをとりながら情報公開を進めることができていなかった。

スタートバーン代表取締役の施井泰平氏

「自分たちの強みがあるとすれば、このような問題をもう何年も前から現場で考えてきたこと。(各プレイヤーに)ヒアリングを重ねながら、どのようなインセンティブ設計や再分配の仕掛けがあればみんなが参加したくなるのか、どうすれば機関を横断して情報共有ができるかずっと模索してきた」(施井氏)

それだけにブロックチェーン技術が台頭してきたことは、スタートバーンにとっても大きな追い風だ。同社では今回調達した資金も活用して、アート×ブロックチェーンネットワークの構築、展開の加速を目指す。

荷物待ちや再配達のストレスから解放、“置き配”バッグ「OKIPPA」—— 東京海上と盗難保険も開発

「こんなにも多様な商品をネットで買える時代になっているのに、受け取る方法は未だに自宅、コンビニ、宅配ロッカーと少ないまま。もっと新しい選択肢があってもいいと思った」——そう話すのは、置き配バッグ「OKIPPA」を開発するYperの代表取締役、内山智晴氏だ。

置き配という言葉からもぼんやりとイメージできるかもしれないけれど、OKIPPAは専用のバッグを通じて不在時でも自宅の玄関前で荷物を受け取れるサービス。2018年4月からクラウドファンディングサイト「Makuake」で始めた先行販売プロジェクトには約1800人が参加(2000個以上売約済み)するなど、大きな反響を呼んだ。

8月下旬には一般販売も予定しているOKIPPA。それに向けて開発元のYperは7月5日、東京海上日動と共同でバッグ専用の盗難保険「置き配保険」を開発したことを明らかにした。合わせて7月7日より東京23区にて約1ヶ月間の実証実験を実施することも発表している。

不在時でも専用バッグで荷物受け取り、アプリとも連動

近年ECサイトやフリマサービスなどの普及に伴い、宅配物の取扱件数が年々増加している。その中で課題とされているのが再配達率の高さだ。6月25日に国土交通省が発表した資料では、宅配便の再配達率は約15.0%。特に全体を押し上げている都市部(16.4%)において、この数値を下げる方法が求められている。

自宅以外でもコンビニや宅配ロッカーで荷物を受け取ることができるものの、内閣府の世論調査などを見る限りではそこまで使われていないのが現状。これらを補完する新しい選択肢としてYperが提案しているのが、冒頭でも紹介したアプリ連動型の置き配バッグOKIPPAだ。

普段はバッグを玄関口などに吊り下げておき、荷物収納時に地面まで引き下げて使用する。耐荷重は13kgと容量の大きいものも収納できるが、使っていない際には手のひらサイズに折りたためるため余計なスペースをとらないのが特徴だ。

盗難対策として玄関口に固定する部分には専用のロック、内鍵に南京錠を付属。撥水加工の生地、止水ファスナーによって雨から荷物を守る(完全防水ではない)。一般販売では3980円(税抜)で提供する予定だ。

合わせてOKIPPAではバッグと連動するアプリを開発。OKIPPAに荷物が配送されると通知を受けとれるほか、Amazon、ZOZOTOWN、楽天で購入した商品の配送状況を管理することも可能。配送業者5社(ヤマト運輸、日本郵便、佐川急便、西濃運輸、Amazonデリバリープロバイダー各社)に対応し、もし再配達が必要になった場合もアプリから依頼できる。

OKIPPAを使う1番のメリットは、荷物を待つストレスから解放されることだろう。

通常荷物の受け取り時間は「14時から16時」など一定の範囲を指定する。この場合14時に届くのか16時に届くのかまではわからないから、その間ずっとそわそわし続けなければいけない。トイレに行くのでさえもなぜか緊張するし、たとえほんの数分だとしても家から出るとなればかなりの勇気がいる。

「いろいろな商品をネットで買えるのだから、商品に応じて受け取り方をもっと柔軟に選べてもいいはず。たとえばパソコンのように高価なものは、土日の午前中を使ってでも受け取りたいが、ちょっとした日用品を受け取るのに貴重な時間を使うのは無駄に感じてしまう。受け取りの選択肢が増えるだけでストレスも軽減される」(内山氏)

すでにMakuakeで初期に購入したユーザーを含めた50世帯以上で試験的に運用を始めていて、今のところは盗難などの被害も報告されていないそう。内山氏自身も以前は平日に受け取ることができず再配達の常連だったが、OKIPPAを使うことでその問題は解決。ユーザーからも同様の反響が多いという。

ちなみにOKIPPAのバッグ自体はIoT化していない完全にアナログなもの。その一方でアプリを作り込むことにより、少しでもIoTロッカーに近い機能を、なるべく安価かつ使いやすい形で実現することを目指している(荷物の受け取り通知も、配送員が行う配送管理処理をサーバー側で取得してアプリに通知する仕様)。

東京海上日動と共同で「置き配保険」開発

置き配サービス自体は何もOKIPPA固有のものではなく、FANCLやAmazon、アスクルを始め複数のECサイトが実践してきた。ただ内山氏の話ではダンボールをそのまま丸裸で置くのが一般的だそうで、ニーズはあるものの盗難や個人情報がさらされることを不安に思う人もいるようだ。

OKIPPAの場合は上述したバックと、新たに東京海上日動と開発した専用の置き配保険を通じて「置き配をインフラ化したい」(内山氏)という。

置き配保険は宅配物がバッグに預入された時点から一定時間(24時間の予定)を対象とし、盗難があった場合に補償してくれるというもの。もともとMakuakeの購入者にアンケートをとったところ、約半数が盗難保険を希望していたため開発に至ったそうだ。

一定金額以上に補償に関してはアプリのプレミアムプランとして提供することを予定していて、バッグが納品される8月末を目処に適用を開始する計画。なおOKIPPAバッグに預入後は、配送会社は輸送中に宅配物に付保する運送保険とは切り離すことができるという。

5000万円の資金調達も実施、インフラとなるサービス目指す

Yperは2017年8月の設立。代表の内山氏は伊藤忠商事の出身で、同社で航空機の販売や改修などに携わった後にYperを立ち上げた。

物流に関心をもったのは、前職でフランスに滞在した時。「フランスに比べて日本の物流はシステムもインフラも整備されていてすごいと感じた。その一方で物流が高度化されている日本ですら再配達など問題が発生している。これをスタートアップとして解決したらおもしろいのではと思った」(内山氏)ため、この領域でビジネスをすることに決めたそうだ。

当初はIoTロッカーを検討したものの、ヒアリングを重ねる中でコストや利用頻度、使い勝手(常に外に置いておくと雨ざらしになる上に、整備費用も発生。配置にはある程度のスペースも必要)などを考慮して方向性を転換。現在のOKIPPAのモデルに行き着いた。

2018年2月にはニッセイ・キャピタルのアクセラレーションプログラム「50M」に採択。5月には同社から5000万円の資金調達も実施している。

今後は一般販売に向けてプロダクトの改良を進めるほか、今年中にマネタイズのモデルを構築することが当面の目標。こちらはまさに進めている段階で「現時点で詳しい話まではできない」とのことだが、「独自の配送網から収益を得るモデルも検討している」(内山氏)という。

内山氏によると、MakuakeでOKIPPAを購入したユーザーの約6割が週に1回以上ECサイトを利用するヘビーユーザー。同じく約6割が半分以上の荷物で再配達を依頼している(そのうちの約4割はほぼすべての荷物で再配達を依頼)。まずはこういったユーザーを中心にOKIPPAを広げていく方針だ。

「再配達の利用率が高いECのヘビーユーザーから反響が大きいので、OKIPPAを普及させることができればB2Cの再配達率は効率的に下げていくことができると考えている。まずは日本でインフラとなるようなサービスを目指していきたい」(内山氏)