川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

川崎重工は11月29日、無人VTOL機「K-RACER」と配送ロボットを連携させた無人物資輸送の概念実証に成功したと発表した。無人VTOL機に配送ロボットを搭載して飛行して、着陸後に配送ロボットが目的地へ荷物を届ける一連の作業を実施し、人の手を介さない完全無人による荷物の配送を確認できた。

K-RACERは、2020年に飛行試験を行った機体を改修し、100kgのペイロードを実現したもの。カワサキモータース「Ninja H2R」のスーパーチャージャー付きエンジンを搭載している。無人VTOL機は今後、長野県伊那市から委託を受けて実施する「無人VTOL機による物資輸送プラットフォーム構築事業」でも使用する予定という。

配送ロボットは、無人VTOL機に搭載可能で、荒れた路面や段差のある道路でも走行できるように開発された電動車両。

概念実証は、以下の流れで行われた。川崎重工、無人VTOL機K-RACERと配送ロボットの連携による完全無人物資輸送の概念実証に成功

  1. 手動積み込み:有人での配送ロボットへの積み込み
  2. ロボ自動乗り込み:配送ロボットが自動走行で駐機中の無人VTOL機へ接近し、自動で乗り込む
  3. 自動離陸:無人VTOL機が配送ロボットの乗り込み後に自動で離陸
  4. 自動飛行:無人VTOL機があらかじめ定められた経路を自動で飛行
  5. 自動着陸:無人VTOL機があらかじめ定められた着陸地点に自動で着陸
  6. ロボ自動離脱:無人VTOL機が着陸後、配送ロボットが自動で無人VTOL機から離脱し、配送目的地へ自動走行
  7. 手動取り出し:配送ロボットが自動走行で配送目的地へ到達後、有人で荷物を取り出し

川崎重工では今後、物流業界の労働者不足、道路状況や地形に左右されない物資輸送、山小屋や離島などへの安定した物資輸送のためのシステム開発といった社会課題の解決に貢献したいと話している。

CO2排出量も抑えた自律走行ポッドとEVによる貨物輸送サービスのスウェーデンEinrideが米国進出

スウェーデンの運送テクノロジー企業Einride(アインライド)が米国での事業展開を開始すると発表した。同社は正式に、GE Appliances (GEアプライアンス)、ブリヂストン、Oatly(オートリー)などのパートナーと協力して、同社の輸送ソリューション(自律「ポッド」、電気トラック「Saga」オペレーティングシステムなど)のテストを開始する。

Einrideはまた、米国の道路事情と規制に対応した同社ポッドの米国版を導入することも発表した。さらには、造船所からのコンテナ輸送など、広範な運搬ニーズに対応するよう設計されたモジュール車両である平台型ポッドの導入も発表した。

Einrideは欧州で最大の電気トラック保有台数を誇る運送会社だ。運転席がなく、安全管理者用のスペースもない同社の自律走行ポッドも電気自動車だ。Kodiak Robotics(コディアクロボティクス)TuSimple(ツーシンプル)Waymo(ウェイモ)など、自律輸送分野の他の大手企業は、必ずしも電気自動車のみによるアプローチを追求していない。

「世界のCO2排出量の7~8%は陸上重量貨物輸送によるものです」とEinrideのCEO兼創業者のRobert Falck(ロバート・フラック)氏はいう。「Einrideを起業したのは、陸上貨物輸送の最適化と自律化をディーゼル車ベースで進めることで、却ってCO2排出量が増えるのではないかと心配したからです。ディーゼル車のほうがずっと安価に最適化と自律化を実現できますから」。

Einrideは、GEアプライアンスとの提携により、7台の自律走行電気トラックを配備し、ケンタッキー州ルーイビルにあるGEAの約3平方kmのキャンパス、およびテネシー州、ジョージア州にあるその他のロケーションを走行させる予定だ。これにより、GEAは今後5年以内にCO2排出量を870トン削減する予定だ。EinrideはGEAとの提携を今後数年で急速に拡大して電気トラックの配備台数を増やしていくという。

ブリヂストンとの提携はどちらかというと技術寄りの提携で、持続可能モビリティソリューションを共同開発し、クラス8の電気自律運転車両の実現を目指す。

「ブリヂストンとの協力により、Einrideは、ブリヂストンのスマートセンシングタイヤから安全性と効率性に関する新たなデータを収集できるようになります。ブリヂストン側も同社の先進のモビリティテクノロジーをEinrideに搭載されているオンボード車両プラットフォームに組み込むことができます」とEinrideの広報担当者はいう。「当社はブリヂストンとのサブスクリプション契約の下で、同社の米国輸送物流ネットワーク向けに、接続された電気トラックとデジタルサービスを提供することで、2025年までにブリヂストンの陸上輸送ニーズの大半を電化することを目指しています」。

オーツミルク企業であるOatly(オートリー)は、すでに欧州でEinrideと提携しており、その提携関係を米国にも拡大しようとしている。Einrideは米国への進出について詳細を明らかにしていないが、フラック氏によると、2020年からオートリーの欧州の輸送のデジタル化と電化を進めたのと同じような形で事業展開していくつもりだという。Einrideは欧州で、オートリーに電気トラックとSagaプラットフォームを提供することで、電化を迅速に推進し、特定経路におけるCO2排出量を87%削減したという。米国でも同様にしてオートリーの電化を進めていくことになるだろう。

Einrideの米国進出と同時に、Sagaプラットフォームのアップデートも実施される。Saga(ノルウェー語で「すべてを知っている」という意味)は、Einrideの電気トラックおよびポッド全体で稼働するIoTシステムだ。同社はこのシステムによって経路を最適化し、大規模電気トラック集団を稼働している。Einrideは、Sagaを、重量輸送産業に変革をもたらし、企業の保有車両の電化を推進する普遍的なオペレーティングシステムしたいと考えている。

「現在のトラック輸送産業は極度に分断化されていおり、連係が進んでいません」とフラック氏はいう。「電動化を進めるのは簡単ではありません。電動化の範囲とか実際の導入度といったことが目的ではないのです。当社のSagaプラットフォームとオペレーティングシステムを使えば、既存のテクノロジーを利用して、競争の激しいビジネスケースにおける米国の陸上貨物輸送システムの最大40%を電動化できます。どちらかというと、ハードウェアを改善するというよりも、新しい考え方を導入するといったほうが近いと思います」。

Einrideのポッドは安全管理責任者が同乗しないため、レベル4の自律性の達成方法について新しい考え方を取り入れている(米国自動車技術者協会によると、レベル4とは、車両が、特定の条件の下で人間の介入なしに運転のあらゆる側面を処理できることを意味する)。

Einrideの全システムは、安全管理ドライバーが存在しないため、異なる方法で構築する必要がある、とフラック氏はいう。他の運送会社は前の座席に人間のオペレーターを同乗させて距離を稼いでいるが、Einrideはフラック氏が「よちよち歩き式アプローチ」と呼ぶ方式を採用している。この方式では、ハイハイ、ゆっくり歩きという具合に車両に運転を教えていき、徐々に機能を高めていく。

「当社は従来のレベル4から開始し、自律運転とリモート運転機能を組み合わせてアプリケーションの使い勝手を向上させました。その結果、柔軟性、および自律運転、人間のアジリティ、意思決定の利点の両方を獲得できました」とフラック氏はいう。

Einrideは2019年から欧州で公道での自動運転システムの試験走行を開始しているが、米国での試験開始日はまだ決まっていない。

「車両に安全管理ドライバーを同乗させず、ドライバーの席もないため、規制を通過するには異なるアプローチを取る必要があります」とフラック氏はいう。「規制は国や州によって異なりますが、基本的には、アプリケーション自体の安全性が保証されているかどうかという問題です。当社も創業以来、ドライバーを同乗させずにすべてのアプリケーションで安全性を確認できるようにするというアプローチを取ってきました」。

リモートトラックドライバー、すなわち「ポッドオペレーター」は、Einrideのポッドを監視し、状況によっては運転を引き受ける。フラック氏によると、Einrideではレベル5の自律性(基本的に自動運転車のほうが人より運転能力も思考能力も優れているとするレベル)を信用しておらず、アジリティと意思決定能力を高められるように、いつでも人間がシステムに介入できるようにすることを目指しているという。

「マシンはまだ人のために働いています」とフラック氏はいう。「業界はレベル5の自律性を備えたAIを15年以上追求してきましたが、まだそのレベルには程遠い状態です。運送業界においては、自律運転の利点が活かされる場面も数多くありますが、人が介入することによる利点もあります。例えば別のゲートに戻ったり、周辺のドライバーとやり取りしたい場合などです。人間の意思決定を介入させられるのは大きな利点であり、ビジネスへの影響も最小限で済みます」。

Einrideは、トラック業界での経験があり、トラック運転免許を持っている最初のポッドオペレーターを採用した。詳細は、2021年後半のイベントで明らかにするという。

Einrideは米国に進出するだけでなく、ニューヨークに正式に米国本社を設立する予定で、一部の経営幹部がニューヨークを本拠に活動することになる。また、オースティン、サンフランシスコ、東南アジアにも支社を設置する予定だ。米国での工場建設予定は今のところはない。

画像クレジット:Einride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

ソフトバンクが支援するインドの物流企業Delhiveryが約1130億円のIPOを申請

インドの物流スタートアップ企業であるDelhivery(デリバリー)は、新規株式公開で約9億9800万ドル(約1133億円)の資金調達を目指していると、現地の規制当局とのやりとりの中で述べており、世界第2位のインターネット市場で、他の多くのテックスタートアップ企業とともに公開市場を模索している。

10年の歴史を持つこのスタートアップは、6億6900万ドル(約759億円)相当の新株式を発行する予定で、残りの資金は既存の株式を購入するために利用されると、同社は申請書(PDF)で述べている

インドの新聞Economic Timesが今週初めに報じたところによると、4カ月前に30億ドル(約3400億円)以上の評価を受けていたこのスタートアップは、公開市場で60億ドル(約6800億円)以上の評価額での上場を目指しているという。

関連記事:インド物流市場システムのデジタル化を進める最大手DelhiveryがIPOに向け約304億円調達

SoftBank(ソフトバンク)、Tiger Global Management(タイガー・グローバル・マネジメント)、Times Internet(タイムズ・インターネット)、The Carlyle Group(カーライル・グループ)、Steadview Capital(ステッドビュー・キャピタル)、Addition(アディション)に支援されたDelhiveryは、フードデリバリー企業としてスタートしたが、その後、インドの2300以上の都市と1万7500以上の郵便番号を対象とした物流サービス一式にシフトした。

データインテリジェンスプラットフォームであるTracxn(トラックスン)によると、グルガオンに本社を置く同社は、これまでに13億7000万ドル(約1556億円)の資金を調達している。2021年3月に終了した会計年度では、5億1400万ドル(約583億円)の売上に対して5600万ドル(約63億6100万円)の損失を計上した。

2021年度のDelhiveryの業績(DelhiveryがIPO申請時に共有したもの)

同社は、貨物交換プラットフォームを通じて物流市場の需要と供給のシステムをデジタル化しようとしている数少ないスタートアップの1つだ。

このプラットフォームは、道路輸送ソリューションを提供し、荷主、代理人、トラック運送者を結びつけるものだ。仲買人の役割を軽減し、Delhiveryにとって最も人気のある輸送手段であるトラック輸送などの資産をより効率的にし、24時間体制のオペレーションを保証するものだと同社は述べている。

このようなデジタル化は、国民経済を長年にわたって低迷させてきたインドの物流業界の非効率性に対処するために非常に重要だ。Bernstein(バーンスタイン)のアナリストは、インドの物流市場に関する先月のレポートで、需要と供給の計画と予測が不十分なため、輸送コスト、盗難、損害、遅延が増加すると報告している。

Delhiveryは、これまでに10億件以上の注文を配送しており、同社のウェブサイトによると「インド最大のeコマース企業や大手企業すべて」と取引しており、1万社以上の顧客と取引しているという。最終目的地までの配送に関して、同社の配送者は、2平方キロメートルを超えないエリアを割り当てられ、1日に数回の配送を行うことで時間を節約している。

インドの物流市場のTAM(獲得可能な最大市場規模)は2000億ドル(約22兆7200億円)を超えると、Bernsteinのアナリストは2021年初めに顧客向けのレポートで書いている。同スタートアップは2020年末、パンデミックの中でオンラインで買い物をする人が増え、増大する注文需要に対応するため、2年以内に4000万ドル(約45億4500万円)以上の投資を行い、運送車両規模をする計画であると述べた。

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

透明性が高く持続可能なサプライチェーンを作るためにPortcastが約3.5億円調達

Portcastの創業者であるシャ・リンシャオ博士とニディ・グプタ氏(画像クレジット:Portcast)

多くの製造業者や運送業者にとって、物流管理は未だに手作業ばかりのプロセスである。電話やオンライン照会での出荷追跡に、エクセルのスプレッドシートへのデータ入力。自社を「次世代の物流運営システム」と称するPortcast(ポートキャスト)は、無数の情報源からデータを集め、リアルタイムで出荷物を追跡するだけでなく大きな天候の変化、潮流やパンデック関連の問題など何がその進行に影響を与えるか予測することにより、プロセスを効率化する。

同社は2021年9月上旬、Imperial Venture Fund(インペリアル・ベンチャー・ファンド)を通じたNewtown Partners(ニュートン・パートナーズ)率いるプレシリーズA 資金調達で320万ドル(約3億5000万円)を集めたと発表した。参加したのはWavemaker Partners(ウェーブメーカー・パートナーズ)、TMV、Innoport(イノポート)、SGInnovate(SGイノベート)。シンガポールに拠点を置くPortcastは、アジアとヨーロッパの顧客にサービスを提供し、調達資金の一部はさらなる市場への拡大に充てる。

共同創設者のNidhi Gupta(ニディ・グプタ)とLingxiao Xia(シャ・リンシャオ)博士は、シンガポールのEntrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)で出会った。Portcastを立ち上げる前、最高経営責任者  のグプタ氏はDHLのアジア全域でリーダー職に就いてきた。その間に、彼女は物流部門の「非効率は実際にはこの分野において何かを作り出す機会である」ことに気づいた。機械学習の博士号を持ち、製品開発とクラウドコンピューティングの背景を有するシャ博士は「すばらしく補完的に合っていた」ことから、現在Portcastの最高技術責任者を務めている。

Portcastは、外洋貨物船を使用した世界の取引額の90%以上、航空貨物の35%を追跡し、3万本の通商路への需要を予測できるという。情報源は船の場所、進行速度と方向、向かっている港、風速、波高を示す衛星データなどの地理空間データなどがある。また、Portcastは経済様式(例えば、Brexit(ブレグジット)の英国中の港への影響、世界中のワクチン接種の開始により航空機や船の定員がどれくらい変わるか)、台風など気象事項、スエズ運河が航路をふさいだ時のような混乱にも目を向ける。

他には大規模な船会社や運送業者を含む顧客の独占的な取引データなどのデータ源がある。

「私達の挑戦は、いかにこのすべてのデータに同じ言語をしゃべらせるかです」。グプタ氏はTechCrunchに話した。「このデータはさまざまな頻度、詳細度で入ってくるため、いかにそれを組み合わせて機械がそれを理解、解釈し始めるようにするか」。

Portcastの主な解決策は、現在リアルタイムで輸送コンテナを追跡するIntelligent Container Visibility(インテリジェント・コンテナ・ビジビリティ)と、予約形態を追跡するForecasting and Demand Management(フォーキャスティング・アンド・デマンド・マネジメント)の2つである。Portcastはコンテナの追跡にIoTを利用しない。1つ1つに装置を取り付けると桁違いの費用がかかるからである。しかしハイブリッドな解決策のためにIoTプロバイダと連携している。例えば、追跡装置を1つのコンテナに設置し、その後そのデータを使用して残りの出荷物の管理に役立てているのである。

このスタートアップ企業の目標は、企業が運営効率を向上させるのに役立つ予測を行い、手作業のプロセスへの依存を減らすことである。「毎週何百個もの貨物が到着する物流業者がいます。そこでは毎日手作業でそれを確認しているのです。情報はエクセルシートに入力され、それに基づいて下流業務の計画を立てます」。と、グプタ氏はいう。

しかし新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは「緊急のデジタル化ニーズ」を生み出し「それはサプライチェーンを費用関数から時間通りに製品を入手することの中核へと形を変えました。そのため私達はいくつかの大規模な製造業者や運送業者と連携しています」。と、彼女は付け加えた。例えば、ヨーロッパのある食品および飲料会社は台北に輸送したが、通常は輸送に70日かかる。しかし到着まで3カ月以上もかかった。Portcastはさまざまな港や船を渡り歩く積荷を追跡し、顧客が遅延の原因を理解するのを助けた。

「中断が起きそうな時を予測するだけでなく、ピンポイントで、台風や積み替えが発生しそうだからX日遅れると伝えます。そうすればトラックや倉庫チームに何台のコンテナが到着するか知らせられるため力になれるのです」。と、グプタ氏はいう。「これにより港費、コンテナの延滞料金、手作業でさまざまな会社のウェブサイトを確認しサプライチェーンに何が起こったかを見つけ出そうとするのに要する時間を削減することができます」。

Portcastがサプライチェーンの可視性を正したい他の物流テックスタートアップ企業より勝る点は、船が通常複数の港を通り、熱帯暴風雨や台風などの気象事象を頻繁に回避しなければならないアジア太平洋地域で発売したことにある。シンガポールとマレーシア間(例えば)の航海を短くするためにPortcastが開発した技術は、アジアとヨーロッパ、またはアジアと米国などを結ぶ大陸間航路にも適用される。

「当社の技術は世界規模で、この市場の他のプレイヤーとの競争力を持ちます」。とグプタ氏は語った。「他に当社を差別化しているのは、製造業者とだけでなく、船会社、物流会社、貨物航空会社とも提携し、それによりネットワーク効果を作り出している点です。海上運送と航空運送で起きていることは非常に強い相乗効果があり、それを基に私達はその業界の型を理解することができ、当社のプラットフォームに移ってくる他社のためのレバレッジを生んでいる。

Portcastには予測型AIから処方型AIを含むよう移行する計画がある。現在、このプラットフォームは企業に遅延の原因を伝えることができているが、処方型AIは自動提案を行うこともできる。例えば、顧客にどの港が速いか、中断を回避するのに役立つ他の船や輸送方法、どうやって対応量を最適化するかを伝えることができる。

また、同社は年末までにOrder Visiblity(オーダー・ビジビリティ)を発売することも計画している。これは特定の品目を入れたコンテナを追跡する機能である。疲弊したサプライチェーンにより多くのさまざまな製品の消費者価格は上昇している。企業が特定のSKUをリアルタイムで追跡できるようにすることで、Portcastは物がもっと早く届くのを助けるだけでなく、各輸送で排出されるCO2量も可視化させることができる。

「カーボンオフセットやカーボントレードは、自分が実際にいくら支出しているか可視化できる場合にのみ生じます。そこに私達は関与することができます」とグプタ氏はいう。「例えば、早く到着すれば、船会社が船を減速させバンカー重油のような燃料費用を節約する機会となり、膨大な費用節約となるだけでなく、CO2排出量も削減することになります」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)

物流・輸送業向け「炭素測定・除去」APIを開発するPledgeが約5億円調達

気候変動の危機が迫る中、多くの企業が自らの役割を果たしたいと考えている。しかし、顧客に「今回の配送にともなうCO2排出量をオフセットしてください」とお願いするのは、たいていの場合、木の実を割るのにハンマーを使うようなものだ。カーボンオフセット関する透明性はほとんどない。さらに、中小企業は高品質のカーボンクレジットにアクセスしたいが、同時に製品、サービス、取引レベルでの影響も計算したい。そして、非常に不正確な「スキーム」ではなく、カーボンクレジットを小さい単位で購入できるといいと考えている。

Pledge(プレッジ)は、貨物輸送、配車サービス、旅行、ラストマイルデリバリーなどの業界を対象としたスタートアップで、顧客の取引に関わるカーボンオフセットを提示することができる。

Pledgeは、Visionaries Clubがリードするシードラウンドで450万ドル(約5億円1300万円)を調達した。Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon CapitalとGuillaume Pousaz(ギヨーム・プサ氏、Checkout.comの創業者でCEO)の投資ビークルであるZinal Growthも参加した。Pledgeは、これまでクローズドベータ版として運営されてきた。

同社は、Revolut(レボリュート)の草創期の従業員であるDavid de Picciotto(デビッド・デ・ピチョット)氏とThomas Lucas(トーマス・ルーカス)氏、Freetradeの共同創業者で元CTOのAndré Mohamed(アンドレ・モハメド)氏が創業した。まず物流業と輸送業を対象にスタートする。同社によると、企業はPledge APIを組み込めば、カーボンニュートラル達成に向け、出荷、乗車、配送、旅行にともなう排出量を測定・軽減することができるようになるという。このプラットフォームは、分析や洞察に加え、時間をかけて排出量を削減するために推奨する方法を顧客に提示することを目指す。

Pledgeによると、同社の排出量計算方法は、GHGプロトコル、GLECフレームワーク、ICAOの手法などのグローバルスタンダードだけでなく、ISO基準にも準拠しているという。

重要な点として、Pledgeのプラットフォームでは、個人投資家が株式の一部を購入するように、企業は炭素クレジットの一部を購入することができ、また、ETFのように異なる方法論や地域を含むバランスのとれたポートフォリオにアクセスできる、と同社は話す。

Pledgeの共同創業者でCEOのデビッド・デ・ピチョット氏は次のように説明する。「現在、どのような規模の企業も利用できる、自社の排出量を把握・削減するための簡単で拡張可能な方法は存在しません。従来のCO2測定やオフセットのソリューションは、コストが高く、導入が難しいため、限られた大企業だけが利用できます。私たちがPledgeを立ち上げたのは、どのような企業でも、高品質で検証済みの気候変動対策製品を、可能な限り簡単かつ迅速に導入できるようにするためです」。

Visionaries Clubの共同創業者でパートナーのRobert Lacherは次のように語る。「Pledgeは、あらゆる企業が環境への影響を測定・軽減するためのアプリケーションを立ち上げる際に必要とする導管を開発しています。金融インフラプロバイダーが続々と登場し、あらゆる企業がフィンテックになれるようになったのと同様、Pledgeは関連するツールとその基盤となるソフトウェアインフラを提供し、気候変動対策を実現する会社となります」。

Lowercarbon CapitalのパートナーであるClay Dumas(クレイ・デュマ)氏はこう付け加える。「炭素除去の規模を拡大する際の最大のボトルネックは、供給と需要を結びつけることです。Pledgeのチームは、世界のトップレベルの金融商品開発で学んだことを応用し、ユーロやドル、ポンドを使って、空から炭素を吸い取ることに取り組んでいます」。

ピチョット氏は、大手プライベートエクイティファームでESGチームに所属していたとき、LP(主に年金基金)から、投資先企業のESG、特に気候に関するKPIの透明性や報告を求める声が増えるのを目の当たりにした。同氏は、報告・計算を合理化し、高品質のカーボンクレジットにアクセスして、社内外のステークホルダーにさらなる透明性とツールを提供する方法があるはずだと考えた。

「炭素市場が構築されたメカニズムを調べれば調べるほど、金融サービス業界との類似性が見えてきました。我々は、FreetradeやRevolutのような業界をリードする企業を設立や、設立支援の経験により、気候変動の流れを変えるユニークな切り口を提供できるのではないかと考え、調査を開始しました」とピチョット氏は述べた。

画像クレジット:Pledge / Pledge founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクも支援するFlock Freightが運送・貨物業界で新たなユニコーンに

新型コロナウイルスの影響による混乱などが、サプライチェーンのボトルネック問題を浮き彫りにしたこともあり、国際的な運送・貨物業界はかつてないほどの注目を集めている。トラック輸送の物流企業であるFlock Freight(フロック・フレイト)は、世界的なサプライチェーンの危機を解決することはできないが、商品をより早く、より無駄を減らして目的地に届けることには貢献できるはずだ。

同社はシリーズC資金調達を終えてから1年も経たないうちに、SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が主導するシリーズD投資ラウンドで2億1500万ドル(約245億円)を調達し、10億ドル(約1140億円)を超える評価額を得て、業界で最も新しいユニコーンとなった。

Flock Freightは「FlockDirect(フロックダイレクト)」と呼ばれるソフトウェアを活用した「シェアード・トラックロード(共有トラック積荷)」サービスを開発している会社だ。これはつまり、同じ方向に向かう荷物を集めて運ぶ、荷主のための相乗りサービスと考えればいいだろう。これによって荷主は、配送の途中で荷物をターミナルやハブで移動させるロスが減らせる。同社は確率的な価格決定アルゴリズムを用いて、同じ方向に向かう複数の荷主から中型貨物をプールする。

Flock Freighによると、このサービスは顧客と運送業者の双方にメリットがあるという。顧客は、積み降ろしの繰り返しや実際には必要のないトレーラーのスペースのために支払うコストを回避でき、運送業者は、自社のトラックの積載を満杯にすることができる。Flock Freightは、40フィート(約12.2メートル)、3万6000ポンド(約1万6330キログラム)以下の貨物を対象とした「プリベート」プログラムという段階的な割引プログラムを用意しており、荷主はさらにコストを削減することができる。

削減できるのはお金だけではない。Flock Freightによると、従来のハブ&スポーク方式輸送に比べて、二酸化炭素の排出量を40%も削減することができるという。同社の試算では、これまでに1万5000トン以上の排出ガスを削減したとのこと。

カリフォルニア州サンディエゴで設立されてから6年が経過したこのスタートアップ企業は、今回調達した資金を事業の拡大と雇用に使うことを目指しており、特にシカゴでは2021年中に新オフィスを開設する予定だ。

ソフトバンクは、Flock Freightの初期から投資しており、2020年の1億1350万ドル(約129億3000万円)を調達したシリーズCラウンドを主導した。今回のシリーズDラウンドでは、この日本の企業に加えて、新たな少数株主としてSusquehanna Private Equity Investments(サスケハナ・プライベート・エクイティ・インベストメンツ)とEden Global Partners(エデン・グローバル・パートナーズ)が参加。また、既存投資家であるSignalFire(シグナルファイア)、GLP Capital Partners(GLPキャピタル・パートナーズ)、Alphabet(アルファベット)傘下のベンチャーファンドであるGVも参加した。

関連記事:運送業者の積荷共有を手配するFlock Freightが119億円調達、ソフトバンクやボルボらが出資

画像クレジット:Shutterstock under a Shutterstock license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

運送管理SaaS「アセンド・ロジ」を手がけるascendが1.4億円調達、開発体制強化とマーケティングに投資

運送管理SaaS「アセンド・ロジ」を手がけるascendが1.4億円調達、開発体制強化とマーケティングに投資

運送管理SaaS「アセンド・ロジ」の開発・運用を手がけるascend(アセンド)は10月20日、プレシリーズAラウンドにおいて総額1億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は既存投資家のサムライインキュベート、またALL STAR SAAS FUND、物流不動産会社1社。また、金融機関を対象としたエクステンションラウンドも予定している。

調達した資金は、アセンド・ロジの開発体制のさらなる強化とマーケティングへの投資にあてる。

アセンド・ロジは、運送事業者が手作業やアナログで行なっている運行管理業務をデジタル化することで一元集約し、運送業者の売り上げに直結する物流データ(荷物、車両、運転手、ルートなど)を可視化するという。また、受注側による物流データの可視化には、発注側である荷主のポートフォリオを運送事業者側が把握・分析できるという面もあり、双方が対等な交渉力を持つことにもつながると考えているとした。

現在、国内の物流を支える中小トラック運送業者の経営環境は、深刻な人手不足や業界全体の高齢化により、基幹業務のデジタル化やクラウドの活用といった技術による効率化が進まず、担当者は過大な業務量に忙殺されてしまっているという。

また、BtoBの現場では発注側である荷主サイドの交渉力が強く、運送事業者側の中小企業は運賃交渉力(価格交渉力)が弱いため、業務改善への必要な投資を行うことが難しいという悪循環に陥っている。

こうした状況に対しascendは、運送事業者の現場業務を効率化するアセンド・ロジ、経営改善につなげるコンサルティングサービスを提供し、その解決を目指すとしている。

スペクティ・日本気象協会・トランストロンがトラックの運行データから路面・周辺気象情報を抽出する実証実験

スペクティ・日本気象協会・トランストロンがトラックの運行データから凍結・積雪など路面情報や周辺気象情報を抽出する実証実験

AIリアルタイム危機管理情報ソリューション「Spectee」を提供するSpectee(スペクティ)は10月18日、日本気象協会、ネットワーク型デジタルタコグラフのメーカー「トランストロン」と共同で、AIなどの先端技術を活用したトラックの運行データの解析から、路面情報、周辺気象情報などの抽出を目的とする実証実験を行ったことを発表した。

2021年2月から6月にかけて行われたこの実証実験では、トランストロンのデジタルタコメーターを導入している札幌市の幸楽運輸、富山市の池田運輸の協力のもと、走行中に取得した路面の画像データ、日本気象協会の気象データをスペクティのAIで分析し、乾燥、湿潤、凍結、積雪などの路面状況を判定した。これにより実用化に向けた有効なデータが得られたことから、さらに精度を高め、スペクティ、日本気象協会、トランストロンの3者で実用化に向けた検討を進めてゆくという。

前人未到の自動操縦貨物飛行機運行を目指してReliable Roboticsが114億円を調達

世界のある地域から別の地域へ貨物を空輸する場合、普通は2カ所でパイロットが必要となる。離陸と着陸の部分だ。1980年に公開されたJim Abrahams(ジム・エイブラハムズ)監督の映画「Airplane! (フライングハイ)」でも、離着陸以外の時間は、ほとんど計器に頼っていることが見事に表現されている。Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)は、この「飛行機にはパイロットが必要だ」という厄介な問題を解決することを目指している。パイロットが搭乗する代わりに、必要なときだけ地上のパイロットを使い、あとは飛行機自身に自力で目的地を見つけさせるのだ。Coatue Ventures、Lightspeed Ventures、Eclipse Ventures、Teamworthy Ventures、Pathbreaker Venturesの各社は、いずれもこれこそが未来だと信じ、カリフォルニア州マウンテンビューを拠点とするReliable Roboticsに総額1億3000万ドル(約148億円)の資金を提供している。そのReliable Roboticsが本日、Coatue Managementの主導する1億ドル(約114億円)のシリーズC資金調達ラウンドを発表した。

この資金は、チームの規模を拡大し、最初の航空機認証プログラムをサポートするために使用されて、商業貨物運用を目指す。同社はまず、既存の航空機の自動化システムに取り組んでいる。数年前からはセスナ172を使って、無人飛行の実験・開発を始めている。

2019年9月には、Reliable Roboticsは、カリフォルニア州サンノゼのすぐ近くの空域で、誰も乗っていないセスナ172を飛ばした

同社は2017年に創業され、2020年まではステルス状態で運営されていた。その技術は、地上滑走、離陸、着陸、駐機など、飛行に関わるすべてのステップを処理するが、同時にライセンスを持ったパイロットがコントロールセンターから遠隔で飛行を監視している。Reliable Roboticsによれば、同社が開発したシステムは、空港に新たなインフラや技術を設置することなく、農村部や遠隔地の小規模な滑走路での自動着陸を行うことができるという。

ビジネスケースは単純だ。パイロットは、道路を利用するトラック運送事業と同様の制約を抱えた、貨物輸送事業を運営する上で最もコストのかかる場所なのだ。トラックの運転の大半は退屈で単調な仕事であり、ドライバーが最も多くの失敗を起こす場所になっている。空の上に目を向けると、資格を持ったパイロットを地上から操作できる自律型システムに置き換えることで、コストは下がり、航空機の利用率は急上昇する。

パイロットって本当に必要?画像クレジット:Reliable Robotics

Coatue Venturesのシニア・マネージング・ディレクターであるJaimin Rangwalla(ジャイミン・ラングワラ)氏は「Reliable Roboticsは、民間航空会社向けの航空機自動化のリーダーであると確信しています。私たちは、彼らのチームの明確なビジョン、定量化された認証の進捗状況、業界での達成実績に感銘を受けました。私たちは、FAA認証を取得した遠隔操縦システムを最初に市場に投入するというReliableの目標を支援できることを誇りに思い、とても期待しています」と述べている。

同社の最大のセールスポイントは、全国の地方空港や自治体空港同士を結ぶことだ。まず効率を高め、貨物を運ぶコストを下げることに注力している。また、Reliable Roboticsは、遠隔操縦された飛行機に乗客が搭乗する未来の可能性も示唆している。また、新しい電気とのハイブリッド航空機のプラットフォームも評価している。

もちろん、自動運転車の安全性については、多少不安を感じているひとは多い。そして飛行機はその不安に文字通り新しい次元を追加することになる。米連邦航空局(FAA)は、Reliableをはじめとするこの分野の民間企業の動向を注視しているが、実験用無人航空機の認可はすでに多数下している。

Reliable Roboticsの共同創業者でCEOのRobert Rose(ロバート・ローズ)氏は「FAAとNASAとの官民パートナーシップを得て、遠隔操作航空機システムの航空機への統合を進めています。私たちは、現在の商用航空機に、かつてない安全性と信頼性をもたらすつもりです」と語る。「公的機関との緊密な連携、先見性のある投資家からの力強い支援、そして貨物業界からの高い関心が、すべての人に航空輸送へのアクセスを拡大させるという私たちの使命をさらに加速させるでしょう」。

画像クレジット:Reliable Robotics

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

新型コロナワクチン輸送市場に参入するSkyCellがシリーズCで約39億円調達

医薬品やワクチンの輸送用スマートコンテナを開発するスイスのSkyCell(スカイセル)が、重要な資金調達ラウンドを発表した。2020年完了した6200万ドル(約69億円)のラウンドに続き、今回、新型コロナウイルスワクチンを含む、温度変化に敏感な医薬品輸送の改善に向け、3500万ドル(約39億円)をシリーズCで調達した。

このラウンドは、株式と負債を組み合わせた資金調達で、DisruptAD(アブダビを拠点とする政府系ファンドADQのVC部門)、SHUAA(UAEの大手アセットマネジメント会社・投資銀行)など、中東の投資家が名を連ねた。また、同社によれば「中国を拠点とする」および「チューリッヒを拠点とする」ファミリーオフィスや、スイスの大手民間保険会社であるMobiliarからの投資も含まれている。

今回のラウンドにより、同社の資金調達総額は1億3300万ドル(約149億円)に達した。

SkyCellは主に輸送用コンテナを開発している。同社のコンテナには温度維持と振動制御の機能があり、貨物の状態を継続的に報告するセンサーを備える。そのため、医薬品の劣化につながる温度変化や輸送中に発生するダメージを最小限に抑えることができる。

ワクチン物流の現場でよく言われるのが、2005年に世界保健機関(WHO)が発表した「ワクチンの50%が無駄になっている」という数字だ。これは、温度、物流、運送の問題が原因の一部だ。バイオ医薬品業界では、より楽観的な数字が使われている。SkyCellの共同創業者でCEOのRichard Ettl(リチャード・エトル)氏によると、この業界では通常、世界中に医薬品を出荷する際、先進国市場では約4%、新興市場では約12%の損失率を想定しているという。

外部の監査機関によると、SkyCellの温度逸脱率はこれまでのところ、0.1%未満だという。

TechCrunchが前回SkyCellを取り上げた2020年4月の時点では、同社は大手製薬会社8社と提携し、さらに7社と試験を行っていた。広報担当者によれば、同社は現在「上位20社の製薬会社の大半と提携している」とのことだが、それ以上の詳細は明かされていない。

同社は新型コロナ以前、合計で年間約2億5000万本の医薬品バイアル(容器)を輸送した。新型コロナ以降、この技術は1つの大きな進歩を遂げた。mRNAベースの新型コロナワクチンおよびその製造に必要な原材料を輸送できるよう再設計されたのだ。

新たに設計された容器はドライアイスを使う。ファイザー製ワクチンが求めるような摂氏マイナス80〜60度を実現するために必要となる(ただし、もはや常に必要なものではなくなった)。

ワクチンの超低温輸送には、基本的にドライアイスの使用が避けられない(UPS Healthcareは自社でドライアイスを製造しており、新型コロナワクチンの需要に応えるべく生産量を増やしている)。エトル氏によれば、SkyCellの技術は、他社に比べてドライアイスの使用量が圧倒的に少なくて済む。100キログラムのドライアイスで約120時間の使用が可能だが、到着時にドライアイスを追加すれば、ワクチンをさらに長く保管できる。

「競合他社は200キログラム以上のドライアイスを必要とします」と同氏はいう。「だからこそ、技術的にも偉業だったのです」。

同氏によると、同社は現在、新型コロナワクチンのトップメーカー3社の原料またはワクチンを輸送している(どのメーカーかは明らかにしていないが、極低温という条件から推測できるかもしれない)。

「3社のうち2社は、工場から出荷される原料のみを輸送しています」と同氏は話す。

もう1つの大きな前進は、飛行機輸送からトラック輸送への拡大だ。

ワクチンの多くは飛行機で各国に到着するが、医療用の集中倉庫にワクチンを運ぶのは多くの場合トラックだ。マッキンゼーの2021年のレポートによると、冷蔵トラックが理想的だが、常に利用できるとは限らないため、コールドボックスや大型の運搬用トラックも使われる。

トラック輸送への進出は、SkyCellのワクチン流通ネットワークの範囲を大きく広げることになる。同社は、ある大手ワクチンメーカーのヨーロッパでのワクチン流通に関与しているとエトル氏はいう。

「以前はトラック輸送を扱っていませんでした」とエトル氏は話す。「今では、私たちのコンテナは、マイナス80度と非常に低い温度の製品を輸送するためにトラックで使用されています。これは間違いなく大きな変化でした」。

同氏は、新型コロナワクチンの輸送は、同社の将来において重要な役割を果たすだろうと話す。しかし、それは彼らのビジネスの中核ではない。抗がん剤から他のワクチンまで、多くの医薬品がコールドチェーンの取り扱いを必要とするからだ。

国際航空運送協会(IATA)のCenter of Excellence for Independent Validators in Pharmaceutical Logisticsは、コールドチェーンを利用する医薬品および生物製剤の世界売上高が2024年までに4400億ドル(約49兆円)を超えると予想する。これには新型コロナワクチンの支出は含まれていない。

この業界では、3つのマクロトレンドがあるという。コンテナ再利用サービスの増加、リサイクル可能なコンテナの開発、そして電子機器を使ったリアルタイムでの貨物追跡だ。

SkyCellの動きは、こうしたトレンドと重なる部分がある。同社のコンテナが再利用可能であることは、製薬会社との提携を獲得する「大きな原動力」だとエトル氏はいう。また、箱の中にはセンサーが設置されており、出荷ごとにさまざまなデータを収集している。

エトル氏は、SkyCellが業界で起こる変化やコールドチェーン製品の需要増加に対応する態勢を整えていると考えている。これまでのところ、好ましい業績になっているようだ。

「当社の歴史上、製品の販売機会を失ったことは一度もありません」と同氏は話した。

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(文:Emma Betuel、翻訳:Nariko Mizoguchi

乗組員の変更管理、海賊などの潜在的なリスクの予測などを提供する海事情報プラットフォーム「Greywing」が資金調達

シンガポールを拠点とするGreywing(グレイウイング)は、船舶運航会社をはじめとする海事産業の人々が重要な意思決定を行う際の役に立つために、2019年に設立された。同社が提供する製品には、乗組員の変更管理、海賊などの潜在的なリスクの予測報告、新型コロナウイルスの影響による渡航制限の更新などのツールが含まれている。

米国時間10月7日、Greywingは250万ドル(約2億8000万円)のシード資金調達と併せて、船舶運航会社が乗組員の交代によって生じる二酸化炭素排出量を監視するための新しいソリューションを発表した。参加した投資家は、Flexport(フレックスポート)、Transmedia Capital(トランスメディア・キャピタル)、Signal Ventures(シグナル・ベンチャーズ)、Motion Ventures(モーション・ベンチャーズ)、Rebel Ventures(レベル・ベンチャーズ)、Entrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)そしてY Combinator(Yコンビネーター)など。GreywingはY Combinatorの2021年冬のバッチに参加していた。

今回よりGreywingの提供するプラットフォームは、船舶運航会社が乗組員の変更にともなう潜在的な二酸化炭素排出量を事前に見積もることができるようになった。

この炭素排出量計算ツールは、乗組員の現在地、母港、経路変更の可能性などのデータを取り込み、ウェイポイントが入力されると、乗組員が利用可能な定期航空便を調べ上げる。それらの航空便情報には、そのフライトで排出されるCO2の量が料金とともにリストアップされるので、船舶運航会社は運航コストに大きな影響を与えることなく、総排出量を削減できる航空便を手配することができる。

最高経営責任者(CEO)のNick Clarke(ニック・クラーク)氏は、世界のCO2排出量の3%が船舶によるものであり、そのうち約3分の1が「スコープ3」と呼ばれる、乗組員の交代など船舶の燃料消費以外の要因によるカーボンフットプリントであると、メールで説明している。多くの船舶運航会社は、道義上の理由から炭素排出量の削減に取り組んでいるが、国際海事機関が設定した2030年および2050年の脱炭素化目標に適応する必要にも迫られている。

Greywingは、この炭素排出量測定ツールを導入する3カ月前にも、船舶運航会社が乗組員の検査、検疫、その他の新型コロナウイルス関連規制を管理するための「Crew Change(クルー・チェンジ)」というツールを発表している。

Greywingは、クラーク氏と最高技術責任者のHrishi Olickel(ヒリシ・オリケル)氏が、シンガポールのEntrepreneurs Firstで出会い、2019年に設立した。オリケル氏がTechCrunchにメールで語った話によると、同氏のバックグラウンドはパラメトリック保険やロボット工学だったので、共同創業者候補をマッチングするこのプログラムに参加する前は「海事産業についてほとんど何も知らなかった」という。

Greywing創業者のNick Clarke氏とヒリシ・オリケル氏(画像クレジット:Greywing)

「私がGreywingのミッションに惹かれたのは、ニックと、海事産業がデジタル化の瀬戸際にある極めて重要な産業であり、私たちが変化をもたらすことができると気づいたからです」と、オリケル氏は語る。

Greywingは、船舶運航会社が航海の準備をする際に必要な作業量を減らすために構築された。このプラットフォームは、民間および公共のソースからデータを収集し、ユーザーフレンドリーで航行に適したレポートに変換する(このプラットフォームはモバイル向けに設計さている)。

「私たちのオペレーティングシステムが登場する以前は、これらの重要な詳細情報を別々のチャネルから入手し、電子メール、初歩的な船舶追跡システム、人事業務のERP(企業資源計画)、電話、あるいはExcelのスプレッドシートまで、多くの手段を利用して意思決定を行っていました」と、クラークは語る。「想像されるとおり、これらのデータポイントをすべて整理して、実用的なインテリジェンスに変えることは困難です」。特に、1つの間違った判断が、コストや環境への影響、乗組員の危険につながる場合はなおさら難しい。

Greywingの目的は「この業界で現在行われている無益な情報報告から、リアルタイムの意思決定、さらには予測的な警告へと移行させること」であり、そのために二酸化炭素排出量と乗組員交代を管理するツールを構築したと、オリケル氏は述べている。

Greywingは今回調達した資金によって、より多くの海事データソースを活用し、アルゴリズムの複雑さをさらに高めて、より自動化の進んだインテリジェントな船舶管理システムを開発することができる。

「今回の資金調達は、Greywingのソリューションを海運業界に普及させるために役立ち、それによって私たちは、他の方法では手がつけられない世界の二酸化炭素排出量の1%に取り組むことができます」と、クラークは語る。「私たちはすでに、世界の商業船隊の3.5%に相当する2000隻以上の船舶に当社のソリューションを導入することに取り組んでいます。これにより、23万トン以上の炭素を地球の大気から減らすことができます。これは、7隻の船舶を海から排除することに相当します」。

画像クレジット:Suriyapong Thongsawang / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【スタートアップバトル】過去の出場企業紹介 4:207

TechCrunch Tokyo 2021は、12月2、3日にオンラインで行うこととなった。そのメインとなる「スタートアップバトル」はもちろん2021年も開催する。

新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」には、例年数多くの企業が参加、熱戦が繰り広げられている。投資家や大企業の新規事業担当者も多く参加、スタートアップバトルをきっかけに出資が決まったり、優秀な人材の採用につながることも少なくなく、日本スタートアップ業界における登竜門ともいえる存在となっている。

ここでは、そんなスタートアップバトルにおいて、2020年にファイナルラウンドに進出、見事優勝した207(ニーマルナナ)を紹介したい。

物流業界におけるラストワンマイルのDXを目指す「207」。同社は配送状況の確認や配送員とのコミュニケーションが可能な荷物の受取人向けサービス「トドク」、自動生成の配達マップや受取人の在宅情報や荷物情報を管理できる配達員向けアプリ「トドク サポーター」、そして配送員や荷物を効率的に管理できる物流事業者(法人)向けサービス「トドク クラウド」、個人宅向けの宅配荷物の増加に合わせたギグエコノミーを活用した「働きたい人のスキマ時間で荷物をお届けする」配送ソリューション「スキマ便」を提供している。

スタートアップバトルに出場した207のその後の軌跡は、以下の記事から確認できる。また、スタートアップバトルへの本登録は記事末のリンクで行える。出場登録締め切りは2021年10月11日(月)。

2020年12月
スタートアップバトル優勝者、物流革命を目指す「207」が配送員や荷物の管理サービス「TODOCUクラウド」提供

2021年10月
物流ラストワンマイルのDX目指す207が5億円調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

応募条件(詳しくはバトル応募ページに記載)

  • 未ローンチまたは2020年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
  • 法人設立3年未満(2018年10月以降に設立)で上場企業の子会社でないこと。

スタートアップバトルの応募はこちらから

物流ラストワンマイルのDX目指す207が5億円調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

物流ラストワンマイルのDXを目指す207が5億円のシリーズA調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

物流業界のラストワンマイルのDXを目指す207(ニーマルナナ)は10月6日、第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、環境エネルギー投資、Logistics Innovation Fund、Headline Asia、DG Daiwa Venturesの計4社。調達した資金により、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発、さらなる事業拡大・サービス成長にむけた採用活動の強化を行う。シードラウンドを含めた累計調達額は約5億8000万円となった。

同社によると、調達した資金は具体的には以下にあてるという。

  • 物流・配送利用者向けに再配達問題を解決する「TODOCU」(トドク)において、配送状況のリアルタイム確認を実現する機能追加
  • 配達員向け配送効率化アプリ「TODOCUサポーター」では、集荷関連業務すべてを一元集約し業務効率化を実現する機能追加
  • 物流・配送事業者向けの配送管理システム「TODOCUクラウド」において、物流会社および荷主のシステムとのAPI連携機能を開発

今後は、配送事業者・配送員の配送効率化をより高めるサービスを提供し、物流のラストワンマイル市場ですべての配送員が利用するようなインフラサービスへの進化を目指すという。2022年には日本全体の配達員の50%、10万人が活用するサービスを目指し、物流業界の人材不足などの課題解決に寄与したいとしている。物流ラストワンマイルのDXを目指す207が5億円のシリーズA調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

現在、コロナ禍によって生活者の巣ごもり需要が高まり、特にEコマース分野において顕著な変化が出ており、2020年の宅配便の取扱個数は約48億個と、前年度と比較し約11.9%増加しているという(国土交通省「令和2年度宅配便取扱実績について」)。

その中で物流業界では、人材不足や新人教育コストの増加、再配達問題、属人的管理作業の慢性化などをはじめ、以下のような課題が顕在化しているそうだ。

・​ドライバーは配送中に電話を受けるため都度停車する必要がある
・ドライバーが配送中に電話を受けることで気が散り事故の原因につながる
・ドライバーの配送状況を逐一確認しなければならない

207は、これら課題を解決すべく「いつでもどこでもモノがトドク世界的な物流ネットワークを創る」をコーポレートミッションに掲げ、2019年9月よりTODOCU、2020年2月よりTODOCUサポーターの提供を開始した。2020年5月には、人々の空き時間を利用して荷物を配達するシェアリング型宅配サービス「スキマ便」、同年12月にはTODOCUクラウドも提供している。

これらにより「配送状況をリアルタイムで一元管理可能」「ドライバーに土地勘がなくても視覚的に届け先を把握でき業務を効率化できる」「ドライバーが効率のよいルートで配送網を回れる」などが可能なことから、サービスローンチから約2年の現在、物流・配送事業者の従業員も含め1万5000名以上の配送員が利用しているという。

名古屋大学発、物流AIスタートアップ「オプティマインド」のルート最適化システム「Loogia」を佐川急便が全国的に導入

名古屋大学発、物流AIスタートアップ「オプティマインド」のルート最適化システム「Loogia」を佐川急便が全国的に導入

「ラストワンマイル配送におけるルート最適化サービス」の開発と提供を行うオプティマインドは10月4日、ルート最適化サービス「Loogia」(ルージア)の佐川急便への導入を開始した。佐川急便が集配業務で仕様する情報端末と、リアルタイムで最適な集配手順の決定を行うLoogiaをAPI連携し、ドライバー業務の効率化を図る。

Loogiaは、オプティマインドが開発し運営しているラストワンマイルのルート最適化クラウドサービス。ラストワンマイルとは、物流においては、顧客の手に届けるまでの最後の配達段階のことを言う。このラストワンマイル固有の制約条件を加味したアルゴリズム、地図ネットワークの分析、加工、ビッグデータの学習モデル構築といった独自のノウハウを活かしたサービスとなっている。配送情報を入力すると、40以上の「現場制約」を考慮した最適ルートを計算する。GPSなどから実際の走行データを読み込むことで、精度の高いルートの算出が可能とのことだ。

佐川急便では、配送ドライバーは、出発前に集配先の位置から集配順序やルートを決めているが、今まではドライバーの勘と経験によるところが大きかった。そこをシステム化することで集配順とルートが自動計算される。また、再配送など集配状況が変化した際にも自動でルートが再計算されるため、新人ドライバーも熟練ドライバーも変わりなく、業務が効率化される。

オプティマインドと佐川急便は、2020年8月、14日間の実地検証を行った。時間指定のものも含めて80個の荷物を習熟度の異なるドライバーに配達させ、従来の方法と、Loogiaを使った方法とで比較したところ、Loogiaを使ったほうは、ベテラン、新人とも、ルート組み時間、配送業務時間、走行距離が短縮された。名古屋大学発、物流AIスタートアップ「オプティマインド」のルート最適化システム「Loogia」を佐川急便が全国的に導入

この結果を踏まえ、2020年11月から12月にかけて、全国500名のドライバーに試験導入を実施。すると、とくに新人や習熟度の低いドライバーに有効性が示され、そうした経験の浅いドライバーから継続利用の要望が強く寄せられたことから、全国導入が決まった。

さらにこの試験導入により、Loogiaをドライバー端末に搭載する際の操作性や、配送業務におけるドライバーノウハウのアルゴリズム化といった課題が顕在化した。今後も、課題解決に向けた検討を続けてゆくという。

花のような形状のMatternetのドローン自動発着ステーションがスイスの病院で初めて実用化

ドローンによる配送が物流の将来にどのように適合していくのか、誰にもはっきりとはわからない。しかし、1つ確かなことは、ドローンが大事な荷物を、注文主の家の芝生に直接落としてしまうわけにはいかないということだ。その解決策となりそうなのが、Matternet(マッターネット)の「Station(ステーション)」と呼ばれる、自動化されたドローンの着陸スペースと荷物の受け取り・送り出し機能を備えたタワーだ。この花のような形の構造物は、ついにレンダリング画像から現実の世界へ飛び出し、スイスの医療施設に設置された。

このStationは2020年初めに発表があったものだが、コンセプトのレンダリング画だけでは、最終的にアイデア通りのものになるかどうかはわからない。今回のケースでは、完全に60年代のSF映画の小道具のようなものができあがった。

しかし、この特異な形状は、荷物運び用ドローンが着陸してバッテリーを交換するための安全な場所を提供し、雨や風などの天候、そして罪のないロボットから医療用ペイロードを奪おうとする困り者から、ドローンと荷物を保護するという目的に適っている。

初めて実際に設置された今回のケースでは、ドローンが輸送するのは温度管理されたハードシェルケースで、中には通常は陸路で移送される多数のバイラル瓶が入れられる。これらは検査サンプル、血液、薬など、使用期限が短く、何らかの理由で施設間を移動する必要があるものが対象となるだろう。

ドローンで別の施設に運ぶために、スイスポストのキャリアに入れる小瓶を仕分けする女性(画像クレジット:Matternet)

Stationの内部で、ハードケースはドローンから取り外され、許可された人が取り出せるように保管される。支柱の部分には、病院の制限区域に入るときに使うようなIDバッジで開閉が保護された小さな収集用のドアが備わる。これは通常の認証システムと統合させることで、ドローンによって運ばれた荷物を、空気チューブやカート、マニラ封筒のように、しかし同じ建物内にいなくても、簡単に受け取ることができるようにするアイデアだ。

最初のStationはルガーノのEOC病院グループに設置されたが、最初の大規模な展開はアブダビで、市の保健局および同地のドローン配送会社SkyGo(スカイゴー)と協力し、市内の40カ所にStationのネットワークを構築する予定だ。これらも、比較的軽量で緊急性の高い医療品の搬送という基本的に同じ目的のために使用されるが、その規模はより大きなものになる。

アブダビで提案されているMatternet/SkyGoネットワークの地図(画像クレジット:Matternet/SkyGo)

2021年8月、Matternetはドローン企業として初めて、Pfizer(ファイザー)製ワクチンを拠点間で輸送した。これはどこの病院ネットワークや保健所も実現を望んでいる短期輸送だ。もし繁華街で大量の注射が必要になったら、多数の人々を避難させるのではなく、配給所や近くの診療所から数百人分のワクチンを空輸することができるようになる。

もちろん、このような貴重な荷物は、中庭や屋根の上に無造作に置き去りにするわけには行かない。だからこそ、Stationはこの種のネットワークに必須となるだろう。とはいえ、ネットで注文した食品を配達してもらうために、自宅の裏庭にStationを設置しようとは思わないほうがいい。

画像クレジット:Matternet

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Automagiがスマホで荷物サイズを自動計測できる「ロジメジャー」を法人向けに提供開始

Automagiがスマホで荷物サイズを自動計測できる「ロジメジャー」を法人向けに提供開始

社会や企業にAIソリューションを提供するAutomagi(オートマギ)は9月29日、バーコードで荷物情報を読み込みスマートフォンで撮影するだけで、荷物のサイズがわかり記録管理ができる、物流業界向けの荷物情報収集AIアプリ「Logi measure」(ロジメジャー。iOS版)の提供を開始した。利用料金は月額15万円(税込)から。スマートフォンは、iPhone 12 Proを推奨している。

物流業界では、ダンボール箱に入った荷物のサイズを測るために、1つあたり平均1分ほどの時間を割いているという。どの業者も毎日膨大な量を扱うため、累積すると相当な時間になる。また、荷物サイズの計測と管理の効率化が遅れていることからトラックに積み込める量が制限されてしまい、現在は平均積載量は40%を切るともいわれているそうだ。

Automagiは、創業から4年間、120社以上の企業のDX化を支援してきた知見を活かし、荷物情報収集技術の開発を進めてきたが、今回そのサービスの本格提供に至った。

Logi measureは、スマートフォンで荷物に貼られたバーコードで荷物情報を読み取り、箱を撮影すると自動的にサイズが計測される。対応する箱の大きさは1辺が10~70cm。計測の精度は、3辺合計の実物対比で95%以上。計測時間は最短で3秒で、通常1分かかるところが20分の1に短縮できるとのことだ。

企業が使用しているデータ管理システムとの連携も行えるため、トラックにどれだけ積み込めるかを事前に予測することが可能になるという。「倉庫管理の効率化やトラックの積載率向上につながるほか、配送料金の算出や適正な梱包による梱包コストの削減など、荷物データを基盤にしたDXの推進を支援します」とAutomagiは話している。今後は計測対象範囲を拡大してゆくとのこと。

GMの電動配送トラック部門「BrightDrop」が中型バンを発表、最初の顧客はVerizon

General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)の配送トラック事業部門であるBrightDrop(ブライトドロップ)は、同社が商業・配送分野のラストマイルに焦点を当てる中、猛烈な勢いで売り込みを続けている。米国時間9月28日、BrightDropは2番目となる運搬車両をラインアップに加えることを発表した。予定されている最初の顧客は通信の巨人Verizon(ベライゾン)だ。

さらにGMは、主力車種のEV600バンの最初の量産準備が完了したことを発表した。FedEx(フェデラルエクスプレス)は年内に車両の受け取りを開始する(注文数は500台)。会社の歴史上最速の車両販売プログラムだとGMは声明で言った。

同社はEV600の2番目の顧客としてMerchants Fleet(マーチャンツ・フリート)を獲得しており、同社は2月に1万2600台購入すると発表している。

そしてVerizonは、新しい中型車EV410を現場保守とサービス部隊の一部で使用する。Verizon、GMともに発注の規模は明らかにしていない。

新しいバンは、積載容量400立方フィート(11.3立法メートル)で車体の全長は20フィート(6メートル)弱。GMはこの車両について、都市部などの混み合った場所で、特にオンライン食料品配達や通信保守業務などを行うのに適しているという。

同社は、EV600を使うことで車両管理部門は内燃機関車と比べて年間7000ドル(約78万円)節約できるという。

2車種とも、同社のUltium(アルティウム)バッテリープラットフォームを使用しており、航行距離は250マイル(402km)、重量は1万ポンド(4.5トン)以下。EV410はEV600に続いてカナダ、オンタリオ州インガーソルにあるGMのCAMI組立工場で製造される。GMは初期の少数生産についてはミシガン州の米国サプライヤーと提携するという。CAMI工場が2022年11月からのEV600増産への転換を行うためだ。

画像クレジット:General Motors

2021年初めのBrightDropの発表は、商業・デリバリー分野のラストマイル確保を進めるGeneral Motorsの市場機会の多様化に対する関心の強さを表わすものだった。そのために同社は、CAMI工場をカナダ初の電動デリバリー・バン製造施設に転換するために、約10億カナダドル(約879億円)を投資すると語った。

貨物・デリバリー向け電動車分野がGMをはじめとする自動車メーカーにとって膨大な機会であることは間違いない。Verizonは、FedExやUPSなどと同様、事業による炭素排出量の削減さらには完全除去を目指す多くの企業の1社だ。

画像クレジット:General Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

東南アジア6カ国でロジスティックを展開するNinja Vanが約642億円調達

シンガポール拠点のロジスティックスタートアップNinja Van(ニンジャバン)が、事業のインフラとテクノロジーシステムの成長を支えるべく、5億7800万ドル(約642億円)のシリーズEラウンドをクローズした。

同社の発表によると、投資家には中国のAlibaba Group、そして既存投資家であるDPDgroupのGeoPostFacebook共同創業者Eduardo Savering(エドゥアルド・サベリン)氏のB Capital Group、MonkのHill Ventures、ブルネイ政府系ファンドZamrudが含まれる。

関連記事:Facebook共同創業者が設立したVCが新ファンドの一次募集で約448億円を確保

報道によると、早ければ2022年にも新規株式公開するNinja Vanのバリュエーションは、最新のラウンドにより10億ドル(約1111億円)を超えた。同社の広報担当はバリュエーションについてコメントしなかった。

シリーズEで、同社の累計調達額は9億7650万ドル(約1085億円)になったと広報担当はTechCrunchに語った。

今回のラウンドは、2020年4月に7億5000万ドル(約833億円)のバリュエーションで2億7900万ドル(約310億円)を調達したシリーズD、2018年1月に8700万ドル(約96億円)を調達したシリーズCに続くものだ。

関連記事:シンガポールの物流スタートアップNinja Vanが約300億円調達、B2B部門に注力

Ninja Vanは調達した資金を、東南アジアにおけるeコマースの機会を最適化するためのマイクロサプライチェーンソリューションを含む、オペレーションの強化に使う。

同社は1日あたり約200万個の小包を配達していて、150万もの荷主と受取人1億人を抱える、と主張する。

CEOのLai Chang Wen(ライ・チャン・ウェン)氏、CTOのShaun Chong(ショーン・チョン)氏、CPOのBoxian Tan(ボシアン・タン)氏が2014年に創業した同社はシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンで事業を展開している。現在スタッフ6万1000人超を雇用する。

「東南アジアのeコマースをの可能性、特にeコマースの成長を促進するテクノロジーがもたらしているロジスティックの力を強く信じています。この地域でのNinja Vanの広範なプレゼンスと極めてローカルな洞察でもって、Ninja Vanとの提携で東南アジア中のeコマースエコシステムの参加者にさらにサービスを提供できると確信しています」とAlibaba Groupの東南アジア投資責任者Kenny Ho(ケニー・ホー)氏は述べた。

画像クレジット:Ninja Van

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

「運ぶを最適化する」をミッションとして、企業間物流の最適化を目指すHacobu(ハコブ)は9
月21日、動態管理サービス「MOVO Fleet」(ムーボ・フリート)の配送計画機能に「荷物・荷量管理機能」を追加したと発表した。ドライバー向けオプション機能と併用することで、荷量と作業時間の実績データを取得でき、高度な配送業務の分析をサポートするという。

MOVO Fleetは、物流業界に特化したテレマティクスサービス(移動体に通信システムなどの機器を搭載し情報などを提供するサービス)。ロジスティクス・クラウド「MOVO」(ムーボ)のアプリケーションの1つにあたり、GPSを使った車両位置把握により、車両管理における業務負荷軽減や、配送の効率化を行える。

MOVO Fleetオプションの配送計画機能は、ダッシュボード上で配送計画を一覧表示し、計画に対する実績、遅れを把握することで運行管理の負荷を軽減するというもの。今回追加の「荷物・荷量管理機能」により、配送計画に配送の内容(荷物名、伝票番号、荷姿、数量など)も指示できるようになった。

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

配送計画機能画面

Hacobuが動態管理サービスMOVO Fleetの配送計画機能に新機能追加、荷物・荷量情報を組み込み高度な輸送分析が可能に

荷物・荷量管理機能により、配送計画に配送の内容(荷物名、伝票番号、荷姿、数量など)も指示できるようになった

運行管理者のメリットとしては、ドライバーに配送の内容を指示できる点がある。ドライバー向けオプション機能のドライバーサポートプランを併用すると、配送指示書の手渡しが不要になる上、配送改善のためのデータ取得が可能になる。具体的には、ドライバーがスマートフォンで登録する荷積み荷降ろしなどの実績データから、荷量と作業時間の分析ができるようになる。

ドライバーのメリットとしては、ドライバーサポートプラン併用により、配送計画、配送の内容をスマートフォンで確認可能になる点がある。荷物の検品管理、物品の破損が発生した場合の報告などに活用可能という。

 

FedExがAuroraの自動運転トラックを使った荷物運搬試験をダラス-ヒューストン間で開始

FedEx(フェデックス)は自動運転車両スタートアップAurora (オーロラ)、大型車両メーカーPaccar(パッカー)との試験プログラムの一環として、ダラス-ヒューストン間の荷物運搬に自動運転トラックを使い始めた。

州間高速道路45号線の約500マイル(約800km)のルートを完走させるのにAuroraのテクノロジーを搭載したPaccarのトラックが週に複数回使われる見込みだと米国時間9月22日に明らかにした。トラックにはバックアップのドライバーが乗り込むが、自動運転で走行する。

この提携は、セーフティドライバーが乗り込むことなくターミナル間で荷物を運搬する自動運転配送事業を2023年までに立ち上げるという目標を達成しようとしているAuroraの最新の動きとなる。これはまた、特別買収目的会社(SPAC)のReinvent Technology Partners Yとの逆さ合併を決める投票を控え、ここ数週間のAuroraによる一連の発表やアップデートの一環でもある。Reinvent Technology Partners YはLinkedInの共同創業者で投資家のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏、Zyngaの共同創業者Mark Pincus(マーク・ピンカス)氏とマネージングパートナーMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏によって設立された会社だ。

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ティッカーシンボル「AUR」でNASDAQに上場予定の合併会社の見込まれているバリュエーションは130億ドル(約1兆4270億円)だ。AuroraのバリュエーションはUberの自動運転部門買収後、100億ドル(約1兆980億円)だった。

「これは、トラック業界に起こる必要がある種の変化を模索し、理解しようとする試みです」とAuroraの共同創業者でCPOのSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏はTechCrunchに話し、自動運転システムとAuroraが提供するクラウドサービスがFedExの事業にどのようにフィットするかも確認する、と付け加えた。

試験には少数のトラックを使用するとアンダーソン氏はいう。「大規模な試験をすぐに立ち上げるというのは理に適っていません」。そして「ひと握りのトラックを定期的に動かすことで、プロダクトの微調整や改良に着手できます」とも語った。

試験終了日は設定されておらず、ドライバーレスの能力を搭載したプロダクトに近づくにつれ、ダラスーヒューストン間で走らせるトラックを進化させ、また増やしていくことを見込んでいる。

9月22日から始まった試験は、AuroraとPaccarが共同で自動運転のPeterbiltトラックとKenworthトラックを開発・試験・商業化するという2021年初めの戦略的提携の発表に続くものだ。

今回の3社提携はまた、FedExの自動運転とロボティクスのソリューションへの関心をも示している。同社は引き続き過去最多の配達量をこなしている。ロジスティック大手の同社は6月、Nuroの次世代自動運転配達車両をFedExのオペレーションの中でテストし、最終的には使用するための複数年にまたがる多面的な戦略的提携を発表した。

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画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi