評価が分かれる自動運転車初期のパイオニア、その最新ムーンショットは暗号資産を利用したピア・ツー・ピアの通信ネットワーク

ウェブサイト、Medium(ミディアム)の投稿、ホワイトペーパー、専用のsubreddit(サブレディット)、Discord(ディスコード)チャンネルという5つの要素を伴って、新しいモバイルデータネットワークが米国時間2月1日の夜遅くにサンフランシスコでひっそりとローンチされた。従来の通信事業者に頼らずに匿名で高速に、しかも安価にデータを交換する新しい方法が約束されている。Pollen Mobile(ポーレン・モバイル)と呼ばれるこのピアツーピアのオープンソース無線ネットワークは、サービスが最初に開始されるベイエリアで、ユーザーに暗号資産でインセンティブを与え、ミニ基地局の運営とネットワークカバレッジの構築を促していく。

Anthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドフスキ)氏の自動運転車テクノロジースタートアップ、Pronto AI(プロントAI)がこのプロジェクトを立ち上げた。評価が大きく分かれる人物で、自動運転車業界の初期のパイオニアであるレヴァンドフスキ氏は、企業秘密を盗んだという罪で18カ月の禁固刑を受けた後、Donald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領から2021年恩赦を受けた

なぜ自動運転車のスタートアップが、暗号資産によってインセンティブが与えられる分散型テレコムを作っているのであろうか?Pollen Mobileのきっかけは、Prontoの自動運転車に信頼性が高く手頃な価格のモバイル接続が必要だったことにある、とProntoのCEOであるレヴァンドフスキ氏はTechCrunchとのテキストメッセージで語った。Prontoは何カ月も前から自社のAVにPollenを採用している。

「理由はシンプルです。AVに信頼性が高く手頃な価格のモバイル接続を必要としていましたが、適切なものを見つけることができませんでした」と同氏は書いている。「そこで独自のものを構築し、それが他の人たちからも求められるものになるかもしれないと認識したのです」。その後に同氏は「必要は発明の母」と付け加えた。

数日中に最初のローンチを予定している分散型のPollen Mobileネットワークは、無線タワー、接続確認デバイス、携帯電話というデータ送信機のネットワークに依存している。それらは、やや奇妙に聞こえるが、flower(花)、bumblebee(マルハナバチ)、hummingbird(ハチドリ)といった呼称が付けられている。

Mediumへの投稿によると、2020年にFCC(米国連邦通信委員会)の規則が変更されたことで、自社の自動運転車が走行しているサイト向けに独自の基地局を建設し、小型モバイルネットワークを構築することが可能になったという。

「私たちは、人々が既存のモバイル企業に対して好ましく思っていない、他のすべてのことについて考えるようになりました。そして真に革命的な何か、つまり、私たちがモバイルネットワークの『黙示録の四騎士』と捉えている課題に立ち向かう何かを構築する機会を見出しました」とMediumのブログ投稿には記されている。ここでいう「黙示録の四騎士」とは「プライバシーと匿名性の欠如」「カバレッジの低さ」「コストの高さ」「ユーザーの声の欠落」である。

「flower」と呼ばれる小さな基地局は、ピザの箱ほどの大きさから高さ6フィート(約183cm)のものまであり、数ブロック(数百メートル)から1マイル(約1.6km)までの範囲をカバーしている。これらは「flowerのオーナー」が自宅やオフィスに設置し、インターネットに接続することで、他のPollenユーザーにカバレッジを提供する。同社がDiscordチャンネルに掲載した情報によると、flowerのオペレーターは、そのカバレッジ領域、サービス品質、送信データ量に応じて、ユーザーのコミュニティからPollenCoin(PCN、ポーレンコイン)を得る。

オペレーターは、この物理的なデータ送信ハードウェアの初期費用を負担する。最も安い(そして最も小さい)flowerで999ドル(約11万円)、最大かつ最もパワフルな送信機は1万ドル(約115万円)を超える。この高い初期費用を正当化するには、オペレーターがネットワークの成功を信じ、PCNの固定供給の価値が高まることを確信することが求められるだろう。

画像クレジット:スクリーンショット/Pollen Mobile

誕生したばかりのこの取り組みに対する多くの疑問点の1つは、ISPがどのように対応するか、あるいは対応するかどうかということだ。分散型ネットワークは、flowerのオペレーターの自宅のインターネットに乗って、それらのネットワークを通じてピアツーピアのデータを転送することになるのだろうか。

同社のネットワークトラッカーによると、同ネットワークは現在、ベイエリアで10を超える無線タワーを運用しているようだ。

Pollen Mobileは「bumblebee」と名付けられた小さなデバイスを提供しており、これによりネットワークカバレッジの強度に関するデータを収集する。これらのデバイスは「flower」のカバレッジを証明するもので、ユーザーが所有し、自身のクルマやドローン、自転車に搭載することもできる。Bumblebeeのオーナーは、毎日提供される独自のカバレッジ検証の数字に基づいて、PCNを獲得する。

最後に、Pollenネットワークを使用するモバイルデバイスである「hummingbird」が用意されている。同ネットワークに接続するにはeSIMをダウンロードする必要があり、ノートPCなどのデバイスは専用のアダプター(「Wing」と呼ばれる)を介して接続できると同社は述べている。ユーザーはPCNを使って接続料金を支払う。

最終的には、データネットワークの初期段階で料金を支払う意思のあるユーザーのネットワークを構築する上で、顧客データを販売したりログに記録したりしない、より匿名性の高いモバイルネットワークというビジョンを売り込む必要があるだろう。データ専用ネットワークでは通話もSMSメッセージもできないし、料金を支払っても電話番号はもらえない。

Pollenはこれまでのところ、Prontoの子会社として内部的に運用されている。レヴァンドフスキ氏によると、Pollenは自律分散型組織であるeDAOに移管される予定で、独立して運営されるようになるという。この組織が最終的に、ネットワークがどのように進化し、ユーザーがどのように、どこでカバレッジを構築するインセンティブを与えられるかを決定することになる。

「私たちはflowerの行き先を制御していません」とレヴァンドフスキ氏はTechCrunchに語った。「コミュニティと市場の力が報酬の流れる先を決定できるように、このネットワークを設計しました」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Kirsten Korosec、Lucas Matney、翻訳:Dragonfly)

Cruiseとウォルマート、自動運転車による配送の試験地域拡大を計画中

GM(ゼネラルモーターズ)の子会社で自動運転車の開発を手がけるCruise(クルーズ)は、アリゾナ州でWalmart(ウォルマート)と共同で行っている自動運転配送の実証実験を拡大する計画を持っていることを、同社の政府関係担当シニアマネージャーが最近行われた州議会議員との公開ミーティングで明らかにした。

Cruiseは現在、カリフォルニア州における商用ロボットタクシーの試験的運用と、最終的にはサービス開始に向けて、力を入れているところだ。しかし、一方で同社は、ウォルマートとの限定的な実証実験プログラムの一環として、アリゾナ州で電気自動車「Chevrolet Bolt(シボレー・ボルト)」の自動運転車を数台運用している。

現在、この自動運転配送の実証実験は、スコッツデール近郊のソルトリバー・ピマ・マリコパ・インディアン・コミュニティの敷地内にあるウォルマートの1店舗のみで行われており、これらの自動運転走行車には、すべて安全のために人間のオペレーターが乗車している。Cruiseのシニア・ガバメント・マネージャーを務めるCarter Stern(カーター・スターン)氏は、今月初めに開催されたアリゾナ州上院交通委員会で、同社が2022年内に最大で8カ所のウォルマート店舗に拡大することを計画していると語った。

画像クレジット:Walmart

「まずはアリゾナで引き続き成長を見届けた後、国内の他の地域にも拡大していきます」と、スターン氏は、プログラム拡大の意思を語った。Cruiseはアリゾナ州で100人以上の従業員を雇用しており、その中には同社の自動運転車をグローバルで監視するチームも含まれている。このグループが増員されることになる見込みだが、スターン氏は、いつ、どのくらい雇用を拡大するかという数字やスケジュールについては、明らかにしなかった。

スターン氏が提供したこのコメントからは、Cruiseのアリゾナ州における活動と、今のところ同社の唯一の収入源であるウォルマートとの試験運用契約について、貴重な洞察を得ることができる。

Cruiseはサンフランシスコで自動運転車の運用を展開しているものの、カリフォルニア州公益事業委員会から適切な許可を得られていないため、今のところ同州で送迎サービス(あるいは配送でも)の料金を請求することはできない。なお、Cruiseは現在、San Francisco Marin Food Bank(サンフランシスコ・マリン・フード・バンク)とSF New Deal(SFニューディール)と提携し、無料の配送サービスを提供している。同社はTechCrunchに、これまでに11万3000件の配達を完了したと述べている。

Cruiseは、人間のドライバーが運転しない車両の運行と課金に必要な許可のほぼすべてを取得している。同社はカリフォルニア州自動車局から「運転手付き」および「運転手なし」の自動運転車を試験・展開するために必要な3つの許可を取得しており、そのうちの1つは一般人を乗せることができるものだ。同社はカリフォルニア州公益事業委員会に、乗車料金を請求するための許可も申請しているのだが、まだその許可は受けていない。

今月初め、Cruiseはサンフランシスコで無人ロボットタクシーのサービスを一般公開した。今のところ、このサービスは無料で、一般からの予約申込みをCruiseのウェブサイトを通して受け付けている。同社は以前、一般の申込者がサービスを利用する前に秘密保持契約に署名する必要はないと述べている。

Cruiseの無人運転サービスは、当初は午後11時から午前5時まで利用可能となっている。Cruiseはシボレー・ボルトの自動運転車をサンフランシスコの至る所でテストしているが、無人運転の乗車サービスは、ヘイト・アシュベリー、リッチモンド地区、チャイナタウン、パシフィック・ハイツ地区内の特定の地域や道路に限定されている。

画像クレジット:Walmart

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォルクスワーゲンがファーウェイの自動運転部門を買収する方向で交渉中との報道

自動運転の分野で、2つの大企業の「結婚」が見られるかもしれない。Volkswagen(フォルクスワーゲン)がHuawei(ファーウェイ)の自動運転部門を数十億ユーロ(数千億円)で買収するためにHuaweiと交渉していると、ドイツの月刊ビジネス誌Manager Magazinが2月17日に報じた

HuaweiはTechCrunchの取材に対し、直ちにコメントすることはできないと述べた。VW Chinaもノーコメントとした。

合併の可能性は強力なものになる。Huaweiの自動運転部門は、通信機器とスマートフォンの巨人であるHuaweiが2019年に立ち上げたばかりの「スマート・ビークル・ソリューション」事業部門の下に位置する。smart car BUの設立は、Huaweiが自社で自動車を開発するのではないかとの多くの憶測を呼んだが、同社は製造計画を繰り返し否定し、代わりに「中国のBosch(ボッシュ)」に、つまり自動車ブランド向けの部品供給業者になりたいと述べた。

Huaweiは、少なくともこれまでのところ、この戦略を堅持しているようだ。深センに拠点を置く同社は2021年、中国の自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランドであるArcfoxの量産セダンにプリインストールされた自動運転ソリューションを展示した。Huaweiは、この電動セダンのチップセットと車載OSを供給した。

VWにとって、自動運転機能を持つテック企業は、明日の自動車を作るという野望を前進させるのに役立つかもしれない。実際、VWはFord(フォード)とVWが出資するピッツバーグ拠点のスタートアップArgo AI(アルゴAI)と提携している。2021年9月、この2社は共同開発の最初の製品である自動運転電動バンを発表した。

2020年時点で最大の市場である中国で、VWが同様の技術パートナーを探していたとしても、誰も驚かないだろう。中国の自動運転車企業の多くは、すでに自動車メーカーと深い関係を築いており、Baidu(バイドゥ)はGeely(ジーリー)とDidi(ディディ)はBYDとジョイントベンチャーを結成している。

今回の買収報道は、HuaweiのAVチームにとって微妙な時期でのものだ。同社の自動運転プロダクトの責任者だったSu Jing(スー・ジン)氏は、Tesla(テスラ)のAutopilotの致命的な事故が「人を殺す」と非難した後、1月にHuaweiを去った。この発言について、Huaweiは「不適切なコメント」とした。

退社後、スー氏の次の一手は多くの憶測を呼んだ。わかっているのは、スー氏がロボタクシーを嫌っていることだ。2021年のインタビューで、歯に衣を着せないこのエグゼクティブは「ロボタクシーを最終的な商業目標とする企業は絶望的です。ロボタクシーを提供できるのは、乗用車に取り組んでいる企業でしょう。そのマーケットは間違いなく私のものになります。まだそうなっていないだけです」。

Huaweiの自動運転事業の買収は、決して安くはないだろう。同社のスマートカー部門は、2021年に研究開発に総額10億ドル(約1150億円)を費やす計画だった。また、スタッフ5000人を誇る研究開発チームの構築を目指していて、そのうち2000人超が自動運転に専従している。ここで疑問がある。Huaweiはすでにスマート運転に多額の投資をしており、顧客も増えているなかで、なぜこの芽生えつつある事業を手放すのだろう。

画像クレジット:Arcfox Alpha S powered by Huawei

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

Ibex Inversterの最新のファンドはモビリティ革命に賭けている

Ibex Investors(アイベックス・インベスターズ)のファウンダー、CEOであるJustin Borus(ジャスティン・ボラス)氏が運輸業界とそこに迫りつつある技術変革に目を向けた時、彼は人生最大のチャンスを見つけた。そして今、アーリーステージモビリティ企業向けの1億1300万ドル(約130億円)のファンドでチャンスに賭けようとしている。

「次の5年から10年の間に、過去100年以上の変化が起きるでしょう」とボラス氏は、自動運転車へのシフトをはじめとする輸送業界における変化について語った。「私はこのファンドを1996年か1997年のインターネットファンドと同じように見ています」。

Ibex Investorsは、コロラド州デンバー拠点で、ニューヨークとテルアビブにオフィス構える会社で、2003年に「マルチステージ」と「マルチストラテジー」の投資戦略を掲げて設立された。これが意味するのは、シードステージからIPOまであらゆる段階で、企業に投資する会社だ。

この会社の構造は、伝統的ベンチャーキャピタルとは異なる。厳密には、Ibexは投資アドバイザーとして登記されているが、投資銀行ではない。Ibexはいくつかの特化したVCファンドを保有しており、イスラエル拠点のあらゆる分野のスタートアップを対象にした1億ドル(約115億円)のアーリーステージファンド、イスラエルに焦点を絞ったヘッジファンド、モビリティに特化した株取引を主とするヘッジファンドなどがある。他にもIbexは、Revel(レベル)のような後期ステージのモビリティスタートアップへの1回限りの投資も行っている。全体で同社は、約12億ドル(約1382億円)の資産を管理している。

今回の最新のファンドはアーリーステージのモビリティスタートアップに焦点を当てているが、イスラエルやその他の地域には限定していない。これによってIbexは、新たに膨大な数のモビリティスタートアップに門戸を開く。

Autotech Ventures(オートテック・ベンチャーズ)から最近Ibexに移ったJeff Peters(ジェフ・ピーターズ)氏は、ファンドはシェアリング、コネクティビティ、電動化、および自動運転のスタートアップを対象にしていると語った。

ずいぶん広いカバー範囲だ。Ibexはこのファンドの開始にあたって2件の投資を行った。その1つのAifleet(アイフリート)は、テキサス州オースチン拠点のスタートアップでトラック輸送の待ち時間をなくすためのソフトウェアを開発した。もう1つの投資先、Visionary AI(ビジョナリーAI)は、イスラエルのデジタル画像処理会社だ。ボラス氏は、トラック輸送は自動運転技術が最初に破壊的変化を起こす分野の1つだと信じているとTechCrunchに語った。

Aifleetの共同ファウンダー、CEOであるMarc El Khory(マーク・エル・コーリー)氏は、Ibexに惹かれた理由の1つは、この会社のリミテッドパートナーだと語った。

「彼らは、自動車業界のかつての幹部に私たちを紹介してくれました」と語り、その1人は大手トラック製造メーカーの元社長だったことを明かした。「私たちはテクノロジー企業ですが、トラック輸送事業も行っているので、あのようなつながりは会社にとって驚くほど価値があります」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

自律走行トラック輸送のWaymo Via、新たな提携で20万の荷主・輸送業者へのアクセスが可能に

Waymo(ウェイモ)の自律走行型トラック輸送・貨物部門であるWaymo Viaは、商業化に向け長期的な戦略パートナーをまた1つ確保した。

Waymo Viaは、荷主と輸送会社をつなぐ貨物物流技術サプライヤーであるC.H. Robinson(C.H. ロビンソン)と、今後数カ月以内にC.H. Robinsonの顧客の1社向けに、Waymoの試験車両がテキサス州で貨物を輸送する試験運用を開始すべく準備を進めている。

この試験運用は、あらゆる運送業者が利用できるWaymoのAV技術と、C.H. Robinsonの300万超のトラック運送レーンに関する物流データおよび約20万の荷主と運送業者のネットワーク(その多くはWaymoが関心を寄せる中・小の運送業者)へのアクセスを組み合わせることを目的とした、両社のより大きな提携の一部だ。

「この提携は、北米全域でAVがどのように、どこで発展し、どのように運送業者をサポートするかに影響を与える可能性を秘めています」とWaymoの広報担当者はTechCrunchに語った。「Waymo Viaは、安全性と効率性を最適化する自律型ソリューションを提供します。C.H.Robinsonは、物流業界特有のニーズのために技術を進化させ、荷主と運送業者にとって最も利益があるところに適用するのをサポートするために、十分な物流の専門知識とデータをもたらします」。

Waymo Viaは1月、運送会社のJ.B. Hunt(J.B.ハント)が、Waymoが今後数年以内に実現すると予想している完全自律型貨物輸送ルートの最初の顧客になると明らかにした。2021年末にWaymo ViaはPeterbiltの大型トラックでUPSの貨物を輸送するという延長されていた試験運用を終了した。

2月16日に発表されたこの最新の提携では、今後数年にわたってC.H.Robinsonの顧客と複数の試験運用を実施する予定だ。WaymoもC.H. Robinsonも、使用する車両台数、試験運用の開始時期、期間など、初期パイロットに関する具体的な情報は共有しなかった。ただし、試験運用はダラスからヒューストンへの輸送レーンに沿って行われると述べた。

C.H. Robinsonとの提携は、Waymoに新しいビジネスモデルであるDriver-as-a-Service(ドライバー・アズ・ア・サービス)を柔軟にする機会を与える。ここには、WaymoのAVシステムであるWaymo Driver向けに設計・装備されるトラックを製造する、Daimler Truck(ダイムラー・トラック)などOEMとの提携が含まれる。目標は、輸送業者やフリートがこれらのトラックを購入することだ。このトラックには、自動運転トラックに必要なすべてのハードウェアが搭載され、Waymo Viaはハードウェアとソフトウェアの継続的なサポートとサービスを提供する。

要するに、Waymoはフリートを組み立て、所有し、運用しようとしているのではない。Waymo Viaのトラック事業商業化責任者であるCharlie Jatt(チャーリー・ジャット)氏は2月15日の記者会見で「Waymo Driverを搭載したトラックを、業界のオプションとして提供したい」と述べた。「そして、C.H. Robinsonのような貨物・物流の専門企業が本当にその技術を活用してビジネスを改善し、荷主顧客へのサービス提供でそれらの資産を運用することができるようになります」。

Waymoは、フェニックスでのロボタクシーサービスを通じて、完全自律走行車を商業的に実行可能な規模にした経験があるが、Waymo Driverを貨物に適用するのに最も適した場所については、まだ学ぶべきことがたくさんある。そのためC.H. Robinsonとの提携は有益だ。両社は長距離トラック輸送は、特に人間のドライバーを確保するのが難しいため、自律走行ドライバーを最も必要としている分野だという仮説を立てており、C.H. Robinsonのデータはその仮説を確かめるのに役立つ。

C.H. Robinsonにとっては、Waymo Viaとの提携は単に技術のためのAV技術導入にとどまらない。C.H. Robinsonの最大の関心事は、運送会社がビジネスの効率性を見出すのを支援することであり、それはドライバー不足の影響で苦労している自社の顧客にさらなる効率をもたらす。

C.H. Robinsonの最高コマーシャル責任者であるChris O’Brien(クリス・オブライエン)氏は、記者会見で次のように述べた。「年末に運送会社と行う典型的な会話は、『C.H. Robinson、来年のキャパシティはどうなっているのか』というものです。そして、その約束に基づいて、運送会社は雇用、そしてトラクターやトレーラーのリースや購入を決定するのです。ですから、我々は自律走行を、他とは違う、効率的で省力化され、ドライバーを短距離輸送に充てることができるオプションを提供できる、もう1つの方法だと考えています」。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾン傘下Zooxのロボタクシーは一般の人や車両が通行するセミプライベートなコースでテスト中

Amazon(アマゾン)傘下であるZoox(ズークス)の共同創業者でCTOのJesse Levinson(ジェシー・レビンソン)氏によれば、同社は数十台のオリジナル電動ロボタクシーを製作し、カリフォルニアにある1カ所、または複数の「セミプライベートコース」でテストをしているという。

製作してテスト中のロボタクシーの台数について同氏は「数十台で、まだ数百台とはいきませんが、2桁はとうに超えています」と述べた。

これはメディアとのインタビューで明らかにされたもので、同社が電動ロボタクシーを公道でテストする準備を着々と整えていることを示唆している。同社は現在、サンフランシスコ、ラスベガス、そして本社に近いカリフォルニア州フォスターシティで、同社の自動運転システムを組み込んだトヨタのハイランダーをテストしている。最近ではシアトルにもテストを拡大した。このテスト車両には、安全のため人間のドライバーが乗車している。

Zooxは自律走行車両を商用化する計画だ。車両はセンサーが搭載され、両方向に走行でき、四輪ステアリングを備える。4人乗りで、最高時速は75マイル(約120km)だ。

同社は2020年12月にキューブ型の車両をお披露目したが、その後は広く姿を見せることはなかった。この車両が、キャンパスのような場所のオープンな道でテストされていることがわかった。レビンソン氏は正確な場所を明らかにしなかったが、Zooxの従業員しかいないクローズドなキャンパスではないと述べた。

「キャンパスや研究施設のようなところを想像してください。オープンな道とは、我々が関わるのは自転車や歩行者、(他の)車であり、Zooxの他の要因ではないという意味です。Zooxのクローズドなキャンパスとは異なる環境です」とレビンソン氏はいう。

同氏は、テストをしているキャンパスは完全な一般道ではないことを後から補足した。

レビンソン氏もZooxの広報も、ロボタクシーの公道テスト開始予定時期は明らかにしなかった。レビンソン氏は、公道テストは次のステップであり「それほど遠くないことは確かだ」と述べ「数年単位の話ではない」とした。

当面、同社はカリフォルニア州フリーモントにある15万平方フィート(約1万4000平方メートル、4200坪)の工場でロボタクシーを製作する。

画像クレジット:Zoox

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Kaori Koyama)

CruiseとWaymoを追う中国の自律走行車企業AutoXがサンフランシスコでテスト開始へ

米国とお膝元の中国の両方で事業展開する自律走行車企業AutoX(オートエックス)は、最大のライバル企業が商用化に向け忍び寄っているサンフランシスコに進出する。

2016年からサンノゼ広域圏で車両のテストを行ってきたAutoXは、ロボタクシー事業を開始し、サンフランシスコにオペレーションセンターを建設する計画を明らかにした。このセンターでは、車両のハウジング、メンテナンス、充電のほか、車両が現地で収集したデータの処理、センサーのキャリブレーションなどを行う予定だ。Professor Xとも呼ばれる、AutoXのCEOであるJianxiong Xiao(ジアンション・シャオ)博士によると、同社はサンフランシスコのローカルチームを構築するために採用を行っているとのことだ。

AutoXはまず、同社の最新の第5世代AVプラットフォームと冗長ドライブバイワイヤシステムを搭載したハイブリッド車のFiat Chrysler Pacifica(フィアット・クライスラー・パシフィカ)を用いて、人間の安全オペレーターが運転席に乗り込んでのテストを始める予定だ。同社はすでに、カリフォルニア州自動車局(DMV)から、人間の安全オペレーターが乗り込んでの試験が可能な「ドライバー付き試験許可証」と、人間の安全オペレーターなしで試験が可能な「ドライバーレス試験許可証」の両方を取得している。しかし、AutoXのドライバーレス試験許可は第3世代の車両に対するものであり、またエリアがサンノゼに厳しく限定されているため、同社はサンフランシスコの最新システムを使ったドライバーレス試験も行うために、DMVにその許可の拡大をリクエストする必要がある。

Dongfeng Motor(東風汽車)の支援を受けているAutoXは、サンフランシスコでのテストのためにいつドライバーなしにする予定かは明言しなかったが、サンノゼでのドライバーレステストは継続すると述べた。

AutoXは、Cruise(クルーズ)やWaymo(ウェイモ)といった企業が実際に商業運転を開始している中で、サンフランシスコに進出する。Cruise、WaymoどちらもDMVから車両配備の許可を得ており、自律走行車を使った運行で課金することができる。Cruiseはまだ、ロボットタクシーサービスの料金を請求する前に、カリフォルニア州公益事業委員会から最終的な許可を得る必要があるが、General Motors(ゼネラルモーターズ)傘下の同社は、ドライバーレスの配車サービスを一般向けに開始する際に、投資家のソフトバンクから13億5000万ドル(約1564億円)を追加で調達したばかりだ。

DMVが2日に発表した年次離脱報告書によると、Waymoは2021年にカリフォルニア州の公道で230万マイル(約370万キロメートル)の自律走行を行っており、これは競合他社を大きく上回っている。そして、Cruiseが人間のセーフティドライバーの有無にかかわらず、約90万マイル(約144万キロメートル)を走行して2位だった。

同データによると、安全オペレーター付きで約5万マイル(約8万キロメートル)しか走行していないAutoXは、自社車両のドライバーレステストを一切報告していない。とはいえ、AV開発企業は、プライベートコースやクローズドコースで行ったテストを報告する必要はない。

AutoXはカリフォルニア州に車両44台を保有しているとのことだ。DMVのデータによると、2021年にAutoXの自律走行テストに使用されたのは全車両のうちわずか6台だった。同社は、新型コロナウイルス感染症の影響でテストの規模を縮小したことが原因だとしているが、2022年は再び強化する。

また、AutoXは中国でも大規模な事業拡大を図っており、1000台のロボタクシーを広州、上海、北京、深センの各都市に配備しているという。同社はロボタクシーの乗車回数は公表していない。

AutoXは、計算プラットフォームや各種センサーを含むフルスタックハードウェアの自社開発能力を頻繁にアピールしている。このような技術の開発に加え、サンフランシスコでの事業拡大や中国でのロボタクシーの増車などを考えると、相当な額の資金が必要になる。

同社が最後に公に発表した資金調達は2019年のシリーズAで、この投資によりAutoXの総調達額は1億6000万ドル(約185億円)となった。参考までに、AutoXの中国における競合他社のほぼすべてが2021年に資金調達を行っている。Momenta(モメンタ)は12億ドル(約1390億円)、Pony.ai(ポニーエーアイ)は11億ドル(約1274億円)を調達し、WeRide(ウィーライド)は5カ月の間に6億ドル(695億円)超を、比較的若い企業のDeeproute.ai(ディープルートエーアイ)は2021年9月時点で3億5千万ドル(約405億円)を調達している。

AutoXがなぜ少ない資金でこれだけの事業を行えるのかという疑問に対して、シャオ氏はTechCrunchに、確かに今後数カ月のうちに資金を調達しようとしているが、これまでの投資家からの支援に加え、ロボタクシーサービスに対する中国の巨大市場に頼っていると語った。

画像クレジット:AutoX

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

無人運航船プロジェクトMEGURI2040が世界最長距離の無人運航成功、北海道苫小牧-茨城県大洗の約750キロ・約18時間航行

日本財団は2月7日、大型カーフェリー「さんふらわぁ しれとこ」による無人運航の実証実験が成功したと発表した。2月6~7日にかけて、北海道苫小牧から茨城県大洗まで航行した。

同財団推進の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」は、2020年2月より5つのコンソーシアムと共同で、無人運航船の開発に取り組んでいる。これまで開発を進めてきた様々な船種の無人運航船は、2022年1月から3月にかけて、5つすべてのコンソーシアムで実証実験を行ってきたという。

今回の実証実験はその一環となるもので、約750kmと約18時間という長距離・長時間での無人航行の運航実証は世界初となる。

実証実験に利用された「さんふらわあ しれとこ」(全長190m、総トン数1万1410トン)には、実験のため自律操船システムを搭載。従来のAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加え、可視光カメラと夜間対応の赤外線カメラで海上を航行する他船を検出している。これらのセンサーやカメラで得られた情報から、AI学習によって他船であることを認識しているという。

他船を避航する際には、衝突回避のために開発したアルゴリズムにより避航操船を実施。陸上からの監視には、AR技術を活用。船上からの映像へ各種情報を重畳表示するよう開発したARナビゲーションシステムを利用した。

これらMEGURI2040で開発した自動離着桟システムや陸上モニタリング用ARナビゲーションシステムは、船舶の安全航行や船員の労働負荷低減に寄与すると目されており、ICTやAI、画像解析技術を利用する「未来の産業」として研究・開発が続けられている。

さんふらわあのような大型カーフェリーは、モノと人を同時に運ぶことができるため、国内の物流において重要な役割を担っている。特に北海道と関東の物流では海運が8割以上を占めており、その重要度はより高い。しかし国土交通海事局によると、国内旅客船の船員は2000年以降は約1万人から約7000人へと20年間で3割減少しているうえ、1回の航行が長時間である大型カーフェリーでは船員の労務負担が課題になっている。長距離・長時間での無人運航船の実証実験が成功したことで、船員の労務・作業負担の低減や、安全性の向上、オペレーションコスト低減への貢献が期待されている。

歩行者・モビリティ・ロボットが共存する空間の実現に向け、東京都千代田区丸の内仲通りで自動運転バスの走行実証実験

歩行者・モビリティ・ロボットが共存する空間の実現に向け、東京都千代田区丸の内仲通りで自動運転バスの走行実証実験

一般社団法人「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」は、大丸有地区のスマートシティー化プロジェクトの一環として、丸の内仲通り(東京都千代田区)での自動運転バスの走行実証実験を行うと発表した。期間は2月18日から22日まで。歩行者専用通行時間帯となる「丸の内仲通りアーバンテラス」の実施時間中に、自動運転バスが運行される。

同協議会は、東京都千代田区にある大手町・丸の内・有楽町の3町域を合わせたエリア「大丸有地区」について、歩行者と「モビリティ・ロボット」が共存でき、「移動の選択肢を増やすことで、より便利で賑わいのある空間」にすることを目指している。そこで、自動運転バスの社会実装を目指すソフトバンクグループの企業BOLDLY(ボードリー)と共同で、低速の自動運転バスを走らせることにした。この実証実験は、2017年から続けられており、2021年3月には片道350mの走行実験を行ったが、今回はその規模を大きく上回る。

走行区間は、丸の内ビルディング前から国際ビルヂング前までの630m(歩行者専用となる全区間。往復約1260m)。この区間内には、信号のある交差点が1つ含まれる。そこを時速6キロ以下で、注意喚起のための音楽を鳴らしながら走行する。運行本数は、平日が13便、土日が20便となっている。

バスの運行状況は、大丸有地区の施設、イベント、交通機関などの情報を閲覧できるアプリ「Oh MY Map!」(Android版iOS版。大丸有地区まちづくり協議会が提供)でリアルタイムに見ることができる。

実証実験概要

  • 期間
    ・2月18日〜2月22日
    平日11:30〜14:30
    土日11:30〜16:30
  • 走行ルート
    ・丸の内仲通り(丸の内ビルディング前~国際ビルヂング前)
    Aルート(丸の内ビル発→国際ビル行)
    Bルート(国際ビル発→丸の内ビル行)
  • 乗降車位置
    ・丸の内ビルブロック(郵船ビル1階:ビル正面口付近)
    ・国際ビルブロック(国際ビル1階:ENOTECA 丸の内店付近)
  • 料金:無料
  • 走行便数
    ・合計64便
    平日13便、土日20便
  • 走行速度:時速6Km以下
  • 試乗人数
    ・約420人。1便(片道)あたり6名乗車
    ・試乗には「【丸の内仲通り】自動運転モビリティ実証実験 (2021年度)」で予約が必要(先着順)

自動車用シミュレーションプラットフォームのMoraiがグローバル展開のために24億円のシリーズBをクローズ

自動運転システムの安全性と信頼性を検証するための自動車用シミュレーションツールを自動運転車の開発者に提供するMorai(モライ)が、米国、ドイツ、日本、シンガポールを中心としたグローバルな展開を強化するために、シリーズB資金調達ラウンドで250億ウォン(約24億円)を調達したことを発表した。

この新たな調達は、Korea Investment Partnersが主導し、KB InvestmentとKorea Development Bankも加わっている。このラウンドには、既存の投資家であるNaver D2 Startup Factory、Hyundai Motor Group、Kakao Ventures、Atinum Investmentも参加した。これによりこれまでの資金調達額は300億ウォン(約28億9000万円)となった。

MoraiのCEOであるJiwon Jung(ジワン・ジョン)氏はTechCrunchに対して、韓国に本社を置き84名の従業員を抱える彼のスタートアップが、2022年末までに世界中の人員を倍増させるためにこの資金を使用すると語った。

共同創業者のジョン氏、Jun Hong(ジュン・ホン)氏、Sugwan Lee(スガン・イー)氏の3人は、2018年に同社を設立し、自動運転車メーカーが実際のテスト走行をシミュレートできる自動運転シミュレーションプラットフォームを構築した。

多くの自動運転車メーカーが、自身の自動運転車の検証のために、安全性と信頼性を証明するためのシミュレーションテストを繰り返し行っている。

Morai SIM(モライSIM)と呼ばれるMoraiのシミュレーターソリューションは、高精細(HD)マップベースの3Dシミュレーション環境により、ユーザーにさまざまな仮想テストシナリオを提供する。Moraiの共同創業者であるホン氏はTechCrunchに対して、Moraiの最もユニークな特徴の1つは、現実世界の物体のデジタルレプリカであるデジタルツイン技術によって実現された、大規模なシミュレーションプラットフォームだと語った。Morai SIMは、すでに世界の20都市以上で展開されている。

1月に開催されたCES 2022では「Morai SIM」のSaaSモデル、通称「Morai SIM Cloud」が発表された。このサービスを使えば、ユーザーがローカルコンピュータにソフトウェアをインストールすることなく、クラウド上でシミュレーションテストを行うことが可能になる。その結果、ユーザーは運用するハードウェアに関係なく、無数のシミュレーション環境で自動運転(AV)ドライバーをテストすることができる。

Morai SIMが開発したデジタルツイン環境、ラスベガス(画像クレジット:Morai)

Moraiは、Hyundai Mobis(現代モービス)、Hyundai AutoEver(現代オートエバー)、Naver Labs(ネイバーラボ)、42dot(42ドッツ)などの100社以上の企業顧客や、韓国科学技術院(KAIST)、韓国自動車技術研究所(KATECH)、韓国交通安全公団(KTSA)などの研究機関を顧客としている。またNVIDIA(エヌビディア)、Ansys(アンシス)、dSPACE(ディースペース)などのグローバル企業ともパートナーシップを結んでいる。

ジョン氏は、同社のシミュレーション・プラットフォームは、自動運転をはじめ、UAM(アーバン・エア・モビリティ)、物流、スマートシティなどの分野に応用できるため、大きな成長が期待できると述べている。

同スタートアップは、2021年に170万ドル(約2億円)の収益を計上し、2018年から2021年にかけては226%の年平均成長率(CAGR)を達成した。2021年には、Moraiはサンフランシスコに米国オフィスを開設している。

ジョン氏は「自動運転シミュレーションプラットフォームにおけるグローバルな競争力をさらに高めるために、技術的な優位性を高めることに全力を注ぎます」と述べていいる。

Korea Investment PartnersのエグゼクティブディレクターであるKunHo Kim(クンホ・キム)氏は「Moraiのシミュレーター技術は、自動運転車の安全性と機能性の向上に重要な役割を果たすことが期待されています」と述べている。続けて「韓国だけでなく、世界の自動運転市場をリードする可能性を秘めているので、今後も成長を期待しています」としている。

画像クレジット:Morai

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

自動車ソフトウェア制御のTTTech AutoにAptivが出資、先進運転支援システムを促進へ

自動車メーカーは、より多くの売上を生み出すために機能やソフトウェアサービスを満載した自動車を販売したがっているが、情報過多という課題を抱えている

これらの、ソフトウェアによって制御された自動車には、電動パワートレインから運転支援機能、インフォテインメントまで、あらゆるものを動かす無数のシステムオンチップ(SoC)が搭載されている。最も重要なのは、それらがすべて協調して動作しなければならないということだ。

カメラやレーダーなどの車両センサーがデータを取得し、それを変換してパワートレインに送り、急ブレーキなどの機能を可能にする。そのすべてがミリ秒単位のリアルタイムで行われ、同時にドライバーが車内でストリーミングしているSpotifyを妨げないようにしなければならない。

こうした重要な情報の流れを管理するために、ここ数年、スタートアップが次々と誕生している。ウィーンを拠点とする自動車安全ソフトウェアプロバイダー、TTTech Auto(TTテックオート)もそのうちの1社だ。同社の主力製品であるMotionWiseは、自動車のさまざまな制御システム間でデータの流れを可能にするソフトウェア安全プラットフォームだ。TTTech AutoのCEOで共同創業者のGeorg Kopetz(ゲオルグ・コーペッツ)氏によれば、互いに干渉することなく安全かつ確実に、そしてリアルタイムに機能するようにするものだという。

TTTech Autoはこのほど、大手自動車技術サプライヤーであるAptiv(アプティブ)の出資を獲得した。これはAptivが先進運転支援システム(ADAS)を促進する技術への関心を深めていることをうかがわせる。TTTech Autoは、自動車、航空宇宙、モバイル機器、オートメーション産業にわたる安全なネットワークコンピューティングプラットフォームを提供するTTTech Groupから生まれた会社で、米国時間2月3日にAptivがリードした2億8500万ドル(約328億円)のシリーズCラウンドを発表した。同ラウンドには既存投資家のAudi(アウディ)も参加した(シリーズCは今後2カ月以内の完了が見込まれている)。

Aptivは、高性能ハードウェア、クラウド接続、オープンかつスケーラブルでコンテナ化されたソフトウェアアーキテクチャを含む完全なスタックを自動車メーカーに提供し、ソフトウェアによって制御されたクルマへの移行を加速させることに取り組んでいる時期に、戦略的投資家としてTTTech Autoを支援する。

Aptivは1月、不可欠なインテリジェントシステムの開発、運用、管理を行うエッジ・ツー・クラウド技術を統合すべく、Wind River(ウインドリバー)を43億ドル(約4950億円)で買収した。TTTech Autoは売りに出ている会社ではない。コーペッツ氏は、業界の複数のプレイヤーと協力できるように独立して事業を継続したいと考えているが、MotionWiseがソフトウェア制御の分野で主要プレイヤーになるための道筋において、スマート車両アーキテクチャを提供するというAptivの戦略を補完できることは喜ばしいことだと話す。

Aptivの社長でCEOのKevin Clark(ケビン・クラーク)氏は、2月3日に行われた同社の2021年第4四半期および通年の決算説明会で「AptivとWind Riverの専門知識と補完的技術の組み合わせ、さらにアクティブセーフティソフトウェアアプリケーションを強化するTTTechの確定的フレームワークは、OEMがソフトウェア制御車両の開発と展開をコスト効率よく加速するのを支援するのにユニークな立場にあります」と述べた。

TTTechとAptivは、過去にAudiの自動運転向け中央運転支援コントローラーで協業しており、Aptivがハードウェア側のシステムサプライヤーとして協力し、TTTechはADAS全体の運用を確保するためのアーキテクチャ設計と安全ソフトウェアプラットフォームを支援した。

MotionWiseはこれまで主にADASやその他の自動運転機能に使われてきたが、レベル4およびレベル5の自律性に向けて、ソフトウェアをサポートすることを目標としている。レベル4とレベル5に関しては、SAE(自動車技術者協会)はそれぞれ限定された運転設計領域またはすべての条件下で自律システムがすべての運転を管理することと定義している

このことを考えると、Aptivには自律走行車のボンネットの下で機能するスケーラブルなシステムアーキテクチャに戦略的に投資する、より長期的な理由があるのかもしれない。Aptiv(旧Delphi)は2017年、自律走行車技術企業のnuTonomy(ニュートノミー)を買収し、その後、Motional(モーショナル)というHyundai(現代自動車)との合弁会社としてスピンオフした。Motionalは現在、Lyft(リフト)と提携して自動運転のHyundai Ioniqを使ったラスベガスでのロボットタクシー商業展開の2023年開始や、2022年サンタモニカでのUberとの自律配達の試験実施などに向けて準備を進めているところだ。

Aptivもコーペッツ氏も、MotionWiseが将来的にMotionalの車両に使用されるかどうかについては言及しなかった。もともと2017年に発売されたこの技術は、Hyundai車を含め、世界で200万台を超える乗用車にすでに搭載されている。MotionWiseは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Porsche(ポルシェ)、Audi(アウディ)、Kia(起亜自動車)、SAIC Motor Corporation(SAICモーターコーポレーション)の車両のソフトウェアスタックにも統合されていると、コーペッツ氏は話す。

TTTechは今回の資金をアジアに重点を置いた国際的なチームの育成に使う予定だ。同社はすでに、SAIC Motor Corporationとともに合弁会社(Technomous)を運営している。ソフトウェアと安全工学、戦略的製品管理、事業開発の分野で、アジア、欧州、北米で人材を採用する予定だとも述べた。

加えて、TTTechは買収・合併の可能性にも目を向けている。同社は、エコシステム内のさまざまなパートナーと協働できるよう、独立企業であり続けたいと考えているが、自動車メーカーの継続的な安全ニーズに対応し続けるために、補完的な製品、技術、サービスの獲得に関心を持っている。

「この分野では協力の余地が大きいと考えており、今回の資金調達は、独立路線で成長しつつ、共同融資や共同イノベーションを必要とし、単独では実現できない企業とも協力する機会を与えてくれます」とコーペッツ氏は述べた。

画像クレジット:TTTech Auto

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

自律走行車の知覚能力アップのためのソフトウェアを開発するAnnotellが約27億円調達

自動車業界が自動運転車への道をゆっくりと歩む中、現在の自律走行システムの技術的ギャップを埋めようとするスタートアップが出現している。最新の動きとしては、自律走行システムの知覚能力の性能とその改善方法を評価するソフトウェアを手がけるスウェーデンのスタートアップ、Annotell(アノテル)が現地時間2月3日、事業拡大のために2400万ドル(約27億円)を調達したと発表した。

Annotellの共同創業者でCEOのDaniel Langkilde(ダニエル・ランキルド)氏はインタビューで、同社が行っていることを「自動車が運転免許を取得するための視力検査、あなたが運転に適しているかどうかを判断するために試験を受けるようなもの」と例えた。「Annotellのプラットフォームは、システムの性能を理解し、それを上げることを支援します。どうすれば改善できるかを顧客に指導しています」。つまり、Annotellの製品は、企業のデータの品質をテストし、測定する分析、およびそれらのデータセットを改善するための「正解データ」の生産を含んでいる。

その目的は完璧さではなく、予測可能性であり、現在すでに存在する半自律プラットフォーム(先進運転支援システムなど)にとっても、多くの企業が将来の構築を目指している完全自律型自動車にとっても同様に重要だと、ランキルド氏は付け加えた。「システムが常に正しいとは限りませんが、システムを安全に使用するためには、何ができて、何ができないかを知る必要があります」。

シリーズAラウンドは、Skypeの共同創業者Jaan Tallinn(ジャン・タリン)氏が率いるエストニアのVC、Metaplanetと、日本企業などが出資しているディープテック投資家のNordicNinjaが共同でリードしている。Metaplanetは直近ではStarship Technologiesに投資し、 Googleが買収したDeepMindの初期投資家でもある。AnnotellのシリーズAラウンドには、以前の出資者であるErnström & CoとSessan ABも参加した。ヨーテボリを拠点とするAnnotellの累計調達額は3100万ドル(約35億円)で、評価額は公表していないが、同社の顧客には世界最大の自動車メーカーとその主要サプライヤー、そして自動運転に特化している大手自動車会社が含まれる。

Annotellが埋めようとしている市場のギャップは、かなり重要なものだ。自律走行システムは、膨大な量の走行データと、その情報を処理してプラットフォームに運転の基本を「教える」のに使われている機械学習で成り立っている。

コンピュータビジョンを使って、これらのシステムは赤信号や停止している車、曲がるべき時などを認識することができる。問題は、これらのシステムの反応が与えられたデータに基づいていることだ。自律走行システムは通常「推論」することができず、自動車が実世界で必然的に遭遇するような未知の変数にどう対応するかを決めることができない。

「機械学習は、稀だが重要なことを処理するのが苦手です」とランキルド氏はいう。

Oscar Petersson(オスカー・ペターソン)氏と共同でAnnotellを設立したランキルド氏は(2人とも深層学習を専門とする物理学者)、以前別の会社(脅威インテリジェンスのスタートアップRecorded Future)で働いたときにこの問題に遭遇したと述べた。Recorded Futureでは、脅威をより識別するためにプラットフォームに与える情報データを収集することを任務としていた。悪意のあるハッカーは、隙間を見つけて脆弱性を作り出すことに注力するため、ランキルド氏のチームが将来の攻撃を軽減するためのパターンを特定するために行っていた作業の多くが、事実上台無しになった。

「ミッションクリティカルな仕事をする上で、ブルートフォース(総当り)方式の機械学習には限界があることが浮き彫りになりました」と述べた。

自律走行システムも同じような問題に直面しているが、正しく動作させることがより重要だ。というのも、何か問題が発生した場合に人命が危険にさらされるからだ。また、正しい動作により、企業が製品を市場に投入し、消費者に信頼してもらい、購入・使用してもらうために通過しなければならない安全性と制御のレベルがより高くなる。

「人々が機械学習やAIを信頼するためには、安全性に非常に真剣に取り組まなければなりません」と同氏は述べた。「映画サービスで間違ったレコメンドをすることと、一時停止の標識を無視したり人にぶつかったりすることは、大きな違いがあります。私たちはそのことも真剣に受け止めています。だからこそ、この問題にフォーカスしたかったのです」。安全規制の強化は、Annotellにとって、特定の使用例や市場機会を示すものでもある。顧客のためにシステムを改善するだけでなく、特定の製品の使用許可を与えるために、機関や規制当局が信頼できるデータ群を作成する。

機械学習がシステムに教えることを補完するAnnotellのアプローチは、今日の自律走行システムと同様に進歩的で、その性質上、完全な自律走行に設計されていないシステム(ドライバーに代わるものではなく、アシストするためのシステム)の限界を試し、形式化するものだ。やがて完全自律走行は、因果推論アルゴリズムの構築に用いられるベイジアンネットワークのような、他の種類のAIアプローチも取り込むかもしれない、とランキルド氏はいう(先週TechCrunchが取り上げた因果AIスタートアップはもっとドラマチックで、因果AIこそが自動運転の実現に向けた唯一の希望であり、それは大きな飛躍ではあるが、実現にはかなりの時間がかかると主張していた)。

しかし、今のところAnnotellは、大きなチャンスである、ある程度の自律性がすでに組み込まれたシステムの安全性に技術を注いでいる。

Metaplanetのジャン・タリン氏は声明で「自律走行車の商業展開においては、安全性の確保が主な制約となりますが、Annotellは短期間で大きな進歩を遂げました。我々はAnnotellのソフトウェアだけでなく、それを構築したチームにも感銘を受けており、彼らとこの旅をともにすることに興奮しています」と述べた。

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開―非常時安全技術として開発中

トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開―非常時安全技術として開発中

Toyota

Toyota Research Institute (TRI)は、プロドライバーのようにFR駆動方式の自動車でドリフト走行するAI自動運転システムを開発しています。その理由は、このロボットカーでD1グランプリに出場するため…ではもちろんなく、車が不意にスピンモーションに入ってしまったときに、いち早く自動運転システムが車の制御を取り戻せるようにする危険回避行動を可能にするためです。

テスラは交差点で多くのドライバーが一時停止標識で完全に停止しないのを見て、FSDベータソフトウェアにそれをマネするように教え込みました。それは自動運転システムに人間と同じように運転させようという発想にとらわれて、安全とは何かを見誤ってしまった例と言えます。

一方トヨタは、人間のドライバーと同じように運転する自動運転システムという発想は同じながら、トヨタは安全の確保のためにドリフト走行という高等テクニックを自動運転システムに教え込んでいます。

ドリフト走行といえば某マンガ/アニメに影響された人たちが大好きな、わざと車を横滑りさせてカーブを曲がっていく走法。しかし、自動車ラリー競技での走り方を見ればわかるように、ドライバーに力量があれば、高い速度で急カーブに進入しても難なくその場をクリアでき、また危機回避にも使えるテクニックとなります。

公開された動画では、改造されたトヨタ・スープラを使ってテストコース上のパイロンやその他障害物を自動的にドリフト走行でかわしていく様子が収められています。運転席は無人ではなく、生身のドライバーが搭乗しています。ただこれはあくまで非常時のためであり、ドリフト走行中もドライバーはハンドルを握らないままドリフト走行をキメています。

TRIは1年程前からスタンフォード大学のダイナミック・デザイン・ラボと共同でこのプロジェクトを開始しました。

研究者は「濡れていたり何らかの理由で滑りやすい路面に直面したとき、プロのドライバーならドリフトという選択ができるかもしれませんが、私たちの多くはプロドライバーではない」とし「だからこそ、TRIはクローズドなテストコースで障害物を識別し、自動的にドリフト走行でそれを回避する車両をプログラミングしている」のだと述べました。

この技術によって、たとえば、雪道や橋梁の凍結した路面で車が勝手に横滑りを始めたときに、自動運転システムがドリフトによって車をコントロールし、衝突を回避するといったことが可能になると想定されます。

TRIのスープラには、コンピューター制御のステアリング、アクセル、クラッチ、トランスミッション、ホイール個別のブレーキなどが搭載されており、これらを駆使してシステムは自動的にドリフト状態を発生させ、それをコントロールします。またフォーミュラ・ドリフト仕様に近いサスペンション、エンジン、トランスミッション、安全装置を使用してデータ収集に役立てています。

もちろん、安全なテストコースでわざとドリフト状態を生み出して制御するのと、狭い上に周囲に何があるかわからない公道でスライドした車を建て直すのとでは様々な条件が異なり、たとえばトヨタの次の世代の車が自動運転とドリフト走行を披露するようになるかと言えばそんなことはありません。しかし、トヨタは、車の能力の限界を超えた極限状態で「道路上での人間の能力を増幅」自動運転技術の研究を続ける予定です。

ちなみに、トヨタ・TRIは2016年に「運転中に事故に至りそうになった瞬間にステアリングをドライバーから引き取り、回避行動をとる」Guardian Angelなる自動運転機能の開発を発表していました。今回の自動ドリフト機能は、そのDNAを受け継いで開発されている技術と言えそうです。

(Source:ToyotaEngadget日本版より転載)

【コラム】未来の交通でも、自律走行車ではなく人間が運転するべきだ

高度に自動化された航空機を指揮するパイロットのように、自動化のレベルにかかわらず、すべての旅客輸送車両には人間のオペレーターが搭乗しなければならない。議会は、ほとんど規制されていない自律走行車(AV)技術の急速かつ性急な出現に対する適切な連邦政府の対応について議論しており、この安全基準を確認する機会を得ている。

毎日、米国中の交通機関では、第一線の労働者がバス、電車、バンを安全に運行している。彼らは緊急事態に対応し、身体障害者や高齢者のためのアクセシビリティを確保し、致命的なパンデミック時に乗客の安全を可能な限り確保している。これらの労働者は、乗客を乗せた車両を運転しながら、これらの職務を同時にこなすよう訓練されている。

ハイテク業界の中には「完全な」自律走行車で人間のオペレーターをなくすことができると主張する人がいるが、どのレベルの自動化でも彼らに取って代わることはできない。これは、議会とバイデン政権がテーブルから取り除かなければならない危険な考えである。

運輸労働者は、進化する輸送技術の最前線に身を置き取り組んでいる。私たちにとってイノベーションは生き方であり、何十年にもわたって次世代車両やシステムの実装に貢献してきた。しかし、今日私たちが目にしているのは、単なるイノベーションではなく、実証されていない、規制も不十分な無人運転車を道路に普及させることなのだ。

このような自動車を地域社会に氾濫させている技術や企業の利害関係者は、単に最高の安全基準で管理されておらず、厳格な連邦政府の監督や執行にも直面していないだけなのだ。この状況を変えなければならない。

AV業界のビジネスは、連邦政府の適切な規制の精査や重要な安全データの透明性基準を満たすことなく、売上と利益を追求するという、たった1つの目的に沿って設計されている。これらの企業は、自社のAV技術が安全かどうか、交通利用者や公共の利益を損なうかどうか、重要な公平性の目標を達成するかどうか、労働組合の良い仕事をなくすかどうかについて、白日の下にさらされる対話から逃れているのだ。その価値を証明する責任は、彼らにあるのだ。

とはいえ、政府が道路や交通機関へのこれらの自動車の普及を承認する前に、私たちは話し合いを持ち、強力な政策を制定しなければならない

今日のAVパイロットプログラムでは、最終的に段階的に廃止する予定のドライバーを、オペレーターではなく「モニター」と呼ぶ企業さえある。これは労働者に対する侮辱であり、乗客に対する策略である。彼らはモニターではなく、旅の安全を確保するために存在するプロなのだ。高度に自動化された商業用車両が、有資格のオンボードオペレーターを排除することがあってはならない、それは、高度3万フィート上空の民間航空機に自動操縦機能を持たせ、コックピットのパイロットを排除しようとするのと同じことだ。議会で可決される新しいAV法は、すべての旅客輸送事業において、人間のオペレーターの搭乗を義務付ける必要がある。

また、AVをどのように、あるい導入するかどうかを規制するために、明確なタイムラインをもって連邦政府の行動を義務づける法案も必要だ。これらの指示は、無人運転車が最高の安全基準を満たすことを保証するための基盤を確立しなければならない。「完全な自動運転」機能についてのTesla(テスラ)の主張をめぐって国家運輸安全委員会とTeslaの間で大きな論争があったことを受けて、配備される車両には人間の介入と制御能力を備えることが要求されなければならない。また、基準を厳格化し、運輸省による連邦政府の自動車安全要件の免除や放棄の発行に厳しい制限を設ける必要がある。今日、私たちの道路で目にするAVの実験車が、厳格な安全規制の対象になっていないことを知ったら、ほとんどのアメリカ人は恐怖を感じるだろう。

Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)運輸長官は、発表されたばかりのイノベーション原則を通じて、議論をAV業界のニーズから労働者や乗客のニーズへとシフトさせる重要なステップを踏み出した。ブティジェッジ氏はスキル、トレーニング、および「組合の選択」へのアクセスを拡大することによって「労働者に力を与える」政策を約束し、労働者が「イノベーションを形成するテーブルに座る」ことを保証している。これは、誰かを裕福にするのではなく、労働者と広範な公的利益を中心に据えた、大きな変化を意味する。議会はAV法案にこのアプローチを採用するのが賢明であろう。

労働者の席を確保することは、賢明な政策改革によって達成することができる。労働組合の多い交通機関は、AVのテストや配備が計画されたとき、労働者に事前通知をするよう要求されるべきだ。早期に労働者の視点を得ることで、貴重な経験と専門知識をプロセスに呼び込み、AVアプリケーションが安全で、単に従業員を排除して、その技術を奪うための道具ではないことを保証することができる。

労働者の声を高めるこの新しいアプローチは、願望ではなく、むしろ連邦政府の明確な政策の問題であるべきだ。それは、この委員会のAV法案と運輸省の政策に固定されるべきであり、雇用への影響、訓練の必要性、安全性、そして新しい技術の導入を可能にしてきた労使交渉プロセスを通じて管理されるべきものなのだ。

議会とバイデン政権は、技術企業や大企業の利益動機ではなく、労働者と公共の利益が、我々の輸送システムと道路におけるAV技術の未来を推進することを保証し、断固として行動するチャンスを持っているのだ。

編集部注:執筆者のJohn Samuelsen(ジョン・サミュエルセン)氏は、全米運輸労働者組合の国際会長

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

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(文:John Samuelsen、翻訳:Yuta Kaminishi)

Cruise、サンフランシスコの公道で自動運転タクシーの一般乗車開始へ

GMの子会社で自動運転技術を手がけるCruise(クルーズ)は、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)から13億5000万ドル(約1546億円)の新たな投資を受け、商用化に向けてさらなる一歩を踏み出す。同社は米国時間2月1日、無人運転のロボタクシーサービスを、サンフランシスコの公道で一般向けに公開すると発表した。

ソフトバンクは以前、Cruiseが商業的に展開する準備を整えた時点で、当初の9億ドル(約103億円)に加えて13億5000万ドルを追加投資すると約束していた。

Cruiseは公式ウェブサイトを通じて一般からの乗車申し込みを受け付けている。今のところ、乗車料金は無料だ。同社は2月1日のブログ記事で、予約申し込みに参加した一般の人々は、サービスを利用する前に秘密保持契約に署名する必要はないと述べている。同社の広報担当者によると、1月27日に乗車を終えた友人や家族の少人数グループがいたが、彼らは今朝まで秘密保持契約の下にあったという。

Cruiseの広報担当者によると、無人運転サービスは当初、午後11時から午前5時までとなっているという。夜間の運転は、最もインパクトを与えられる場所から始めて、そこから計画的に拡大していくという戦略の一環であるとのことだ。Cruiseは「Chevy Bolt (シボレー・ボルト)」の自動運転車をサンフランシスコ市内で走らせてテストする。ただし、この無人運転サービスは、ヘイト・アシュベリー、リッチモンド地区、チャイナタウン、パシフィック・ハイツ地区内の特定の地域や道路に限定される。

Cruiseは、人間のドライバーが運転しない車両の運行および課金に必要な許可をほぼすべて取得している。カリフォルニア州自動車局からは、運転手付き車両と運転手なしの車両をテストおよび運用するために必要な3つの許可を取得しており、そのうちの1つは一般人の乗車を許可するものだ。同社はカリフォルニア州公益事業委員会に、乗車料金を請求するための許可証も申請しているが、こちらの許可はまだ取得できていない。

画像クレジット:Screenshot

この数週間、Cruiseの従業員が、安全のための人間の運転手が乗車していない無人運転車に乗っている様子を撮影した動画を投稿している。GMの会長兼CEOであるMary Barra(メアリー・バーラ)氏は、最近になって乗車した。

同社では、社員が一般の人を指名できるようにしており、すでに何人かの人が乗車しているという。Cruiseはこのプログラムを「Cruise Rider Community(クルーズ・ライダー・コミュニティ)」プログラムと名付けている。社員から指名された人や、乗車予約を申し込んだ人は、最初の一般乗客となるパイプラインに組み込まれるという。

Cruiseは、Dan Ammann(ダン・アマン)CEOの突然の退任を受けて、このサービスの一般公開に踏み切った。同社の共同設立者であるKyle Vogt(カイル・ヴォクト)氏が、現在はCTOと同時に暫定CEOを務めている。

画像クレジット:Cruise

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Waymo、一部の自動運転車技術データをさらに22日間秘匿可能に

米国時間1月31日、Waymoは自動運転車の運用に関する一部の詳細データを一般に公表しないでもよい件に関して、小さな勝訴を勝ち取った。

Alphabet傘下の同社は先に、カリフォルニア州自動車局に対して、その自動運転車の展開許可証からの情報の一部を非公開とし、また、自動車局と同社との間のメールも、名称など非公開のサードパーティーから公開リクエストがあった部分を非公開にできるよう、訴訟を起こしていた。1月31日に判事はWaymoに対して、同社は一時的制限命令を発行して、非公開とされた情報をさらにあと22日間、非公表にしてもよいことになった。

これを恒久的な差し止めとしてWaymo側を安心させるか否かに関しては、2月22日に別のヒアリングが行われる。そのヒアリングでは、一部の情報が公開記録から永久かつ継続的に取り除かれていても良いか否かを検討する。

Waymoなどの自動運転車の開発者は、カリフォルニアでテストし展開するかぎり、州自動車局から一連の許可証を獲得しなければならない。カリフォルニア州の許可証を申請するために企業は、その安全対策と技術と、自動車局が通常求めるその他の情報を提出する必要がある。

Waymoの許可証に向けて記録公開リクエストがあると、自動車局は同社を招いて、企業秘密の部分を尋ねる。Waymoが、自動車局が尋ねた質問までも含めて企業秘密部分を指定すると、自動車局はそれら重要部分がブロックされたパッケージをサードパーティに送る。情報要求者がその黒塗りに抗議すると、自動車局はWaymoに、Waymoが消去部分のない公表を禁じる差し止め命令を要求しない限り、情報をリリースしなければならないと告げる。Waymoによると、自動車局は同社にアドバイスして、一時的な禁止令(一時的制限命令)を申請するよう勧めた。

今回のヒアリングで自動車局は、一時的な禁止令の申請に反対しなかったという。この件における自動車局のやや受け身の役割は、同局がどちらか一方の側にはつかない、というサインであり、最終決定を法廷に委ねている。

Waymoが守りたい(一般公開したくない)詳細は、自動運転車が何らかの状況を見つけても走行を続ける場合のやり方であり、人間ドライバーに任せるべきと判断するのはどんなときか、いつAV車隊のサポートを提供するのか、制御不能や衝突のインシデントにどう対応するのか、といった情報だ。同社は、サクラメントの州最高裁にこれらの件の訴訟を提出している。

同社の主張では、情報の公開はWaymoやAV技術への投資者にとって有害であるだけでなく「業界全体に水をさす」という。

訴状によると「AVのカリフォルニア州における展開に利害を有する市場参加者は、企業秘密の開示履歴が明らかとなれば、この技術を開発する貴重な時間とリソースへの投資に向かう積極性を失うだろう」という。

また他社も、どれだけの情報を自動車局と共有すべきかに関して引っ込み思案になってしまい、民間部門と行政との間の透明な対話よりも、業界は規制の精神の理解ではなく、規制を表面的に遵守するだけの態度を選ぶだろう。これによって、もしも自動車局がAVの規制を作って実施するために必要な全面的な展望を持っていなければ、技術の安全性が脅かされるだろう。これが、訴状でのWaymoの主張だ。

さらに他方では、Aptivが買収したnuTonomyの前法務部長で、ニューヨークにあるイェシーバー大学のカードーゾ・ロースクールの法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズリー)氏は以前TechCrunchに、Waymoが隠したい情報のすべてが企業秘密といえるか、それは疑問だが、その隠された部分を実際に見ないかぎりは真相は分からないという。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラ、一時停止の標識を通過させる「完全自動運転」機能をリコール

Tesla(テスラ)は「Full Self-Driving(FSD、完全自動運転)」ベータ版に含まれていた、クルマが一時停止の標識を通過することが可能になる機能をリコールするため、無線でのアップデートを行っているとABCニュースが報じた。この機能は、FSDベータ10.3において、いわゆる「アサーティブ(積極的)」プロファイルの追加により初めて登場した。ABCによるとこの機能は、四差路交差点の一時停止標識を最大5.6MPH(約9.0 km/h)の速度で違法に通過することを許可するという。

Teslaは、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の関係者との2回の会合を経て、リコールに合意したと報じられている。これは16-22年型のModel S(モデルS)およびModel X(モデルX)のEV、17-22年型のModel 3(モデル3)、20-22年型のModel Y(モデルY)を含む約5万4千台のTesla車に影響する。NHTSAはリコールレポートで「一時停止の標識で止まらないと、事故のリスクが高まる可能性がある」と記している。だがTeslaは、この機能が原因で発生した怪我や事故は関知していないと述べている。

テスラは以前、左折時の後退、ファントム前方衝突警報、オートステアリングのバグなど「いくつかの問題」を理由に、FSD10.3ソフトウェアを撤回して前バージョンに戻した。また、中国ではAutopilot(オートパイロット)の問題で30万台のリコールを余儀なくされ、その他の地域でもカメラやトランクの不具合サスペンションの分離などでリコールを実施している。

以前にも指摘したように「Full Self-Driving」という名称は一般的にはレベル4の自動運転を意味するが、Teslaのシステムはレベル2の高度運転支援(Advanced Driver Assistance)を提供しているに過ぎないため、誤解を招く恐れがある。停止線で止まらず徐行する「ローリングストップ」を無効にするOTAアップデートは、2月上旬までに送信される予定だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:NurPhoto / Contributor

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

Baiduの電気自動車ブランドJiduが約460億円調達、4月の北京モーターショーで初のコンセプトカー「ロボカー」発表

かつては長い開発サイクルを要する産業だった自動車産業は、中国のハイテク企業によって大きく変貌しつつある。現在、中国から生まれる新しい電気自動車ブランドには、とてもついていけない。Baidu(バイドゥ、百度)と中国の自動車メーカーGeely(ジーリー、吉利)がわずか1年前に設立した電気自動車メーカーJiduは現地時間1月26日、シリーズAラウンドで4億ドル(約460億円)近くを調達したと発表した

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Baiduと、Volvo(ボルボ)を傘下に持つGeelyの出資によるこの新たな資金注入は、Jiduが2021年3月にクローズした3億ドル(約340億円)の創業資本を後押しするものだ。今回の資金により、Jiduは研究開発と量産を加速させ、4月の北京モーターショーで初のコンセプトカー「ロボカー」(同社は自動車ではなく、自動車用ロボットと分類)を発表できるようになる。ロボカーの量産モデルは2023年に発売される予定だ。

JiduのCEOである Xia Yiping(シャ・イーピン)氏は以前、APAC(アジア太平洋)地域におけるFiat Chryslerのコネクテッドカー部門を率い、2018年にMeituanが買収した中国の自転車シェアリングのパイオニアであるMobikeを共同創業した。

Jiduの前進速度は注目に値するが、その技術の実行可能性を疑問視する懐疑論者を容易に引きつける可能性がある。このスピーディーなサイクルは、量産車で個々のハードウェア部品をテストするのではなく、模擬プロトタイプを使ってスマートコックピットと自律走行システムを開発するという戦略のおかげだと、Jiduは説明している

同社は、わずか9カ月という短期間で、都市部や高速道路でのレベル4(ほとんどの状況で人間の手を介さない自律走行)機能の安全性と信頼性を「テストし、証明した」と述べた。

このEVスタートアップは、競合するNio(ニオ)が得意とするブランディングとファンコミュニティにもかなり注力している。12月には、オンラインやオフラインのイベントでクルマについてオタクになる「Jidu Union」への参加者を募集し始めた

今後、Jiduは自律走行、スマートコックピット、スマート製造などの関連技術に特化した人材を採用・育成していく予定だ。

画像クレジット:Teaser of Jidu’s concept robocar

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

Electric Sheepが、既製の芝刈り機をロボット化するシステムを発売

iRobot(アイロボット)がTerra(テラ)を発表したのは、3年前のちょうど今頃だった。2020年に発売を延期するという厳しい社内決定が下された後、このロボット芝刈り機は未だMIA(作戦行動中行方不明)だ。草がたくさん生えていて時間があまりない人のために、他にもロボット芝刈り機は業務用と消費者用の両方で、いくつか販売されている。

しかし、Electric Sheep Robotics(エレクトリック・シープ・ロボティクス)という、Philip K. Dick(フィリップ・K・ディック)の小説を思い出させる会社のこの分野に対するアプローチは、John Deer(ジョン・ディア)傘下のBear Flag Robotics(ベア・フラッグ・ロボティクス)がトラクターに対して行っているのと同様に、少々斬新だ。米国時間1月25日より一般販売が開始された「Dexter(デクスター)」は、既存の業務用芝刈り機に、自律走行機能を搭載することができる。

芝刈り機にこの機械を取り付けた後、ユーザーはシステムを訓練するために、通常の草刈りのルートを一度通る。その後はシステムがLiDARやカメラ、GPSなど、搭載されたさまざまなセンサーを使って、衝突を避けながらナビゲーションを行う。Dexterは現在、RaaS(サービスとしてのロボット)モデルとして造園業者に提供されている。つまり、これはシステムを購入するのではなく、実質的にレンタルするという形だ。

画像クレジット:Electric Sheep Robotics

CEOのNaganand Murty(ナガナンド・マーティー)氏は、この機会に「米国にはたくさんの芝生がある」ということを強調した。

芝生のために使われている土地と水は、小麦とトウモロコシの合計よりも多く、米国では4000万エーカー(約16万2000平方キロメートル)を超える土地に何らかの形で芝生が敷かれていて、芝生の刈り込みだけで年間200億ドル(約2兆3000億円)が費やされています。Electric Sheep社のDexterロボットのようなソリューションは、お客様の需要を満たし、すでに不足している労働力をより効率よく配分するのに役立ちます。

今回の一般販売開始に合わせて、同社は2150万ドル(約24億6000万円)という大規模なシリーズA資金調達を実施し、現在までに調達した資金の総額は2570万ドル(約29億4000万円)となったことを発表した。このラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導し(他に誰がいるだろうか?)、このベイエリアに拠点を置く会社が400万ドル(約4億6000万円)を調達したシードラウンドを主導したFoundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)も参加した。

画像クレジット:Electric Sheep Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Starship Technologiesが自律型配送ロボットの拡充に向けEUの投資部門から約64.3億円獲得

Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は、自律型配送ロボット(都市を自動運転する小さなカボチャのような箱型の配送車)の世界では大物の1社である。新型コロナウイルス(COVID-19)の間、消費者がウイルスの拡散を最小限に抑えるために自宅待機をしたり、あるいは外出が消極的だった時に、店舗やレストランと消費者の間で食品やその他の商品を配送するための(無人の)力を提供し、絶好調だった。現在、同社はさらなる成長のために、欧州の支持とともにいくつかの資金を手にしている。

このスタートアップは、欧州連合の資金調達部門である欧州投資銀行(EIB)から5000万ユーロ(約64億3900万円)の資金を受け取った。Starship Technologiesは、これを「準株式発行枠」と表現しており、ベンチャーローンが混じっていることを意味する。

今回の投資による評価額は公表していないが、Alastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、これで投資家からさらに資金を調達することを否定するものではないとしている。Starshipは2019年にMorpheus Ventures(モーフィアス・ベンチャー)主導で4000万ドル(約45億6500万円)のシリーズAを調達し、Pitchbook(ピッチブック)のデータによると2021年1月にも、戦略的支援者で日本の大手電機メーカーの投資部門であるTDK Ventures(TDKベンチャーズ)とGoodyear Ventures(グッドイヤー・ベンチャーズ)を出資者に迎え、さらに1700万ドル(約19億4000万円)を調達している。現在、250万台以上の商用配送を行い(2021年10月の200万台から増加)、世界で300万マイル(約482万km)以上を走行している。ウェストガース氏によると、同社の車両は平均して1日に1万件の配送を行っているという。

サンフランシスコを拠点とする同社は当初、2017年に米国の配送会社であるDoordash(ドアダッシュ)とPostmates(ポストメイツ、現在はUberの一部)とパイロット運用を行い、その後、大学キャンパス環境内での導入を行って、その名を轟かせた。同じロボット配送のスタートアップであるMarble(マーブル)は、その頃、市の規制当局と対立し、皮肉にもその影響から、Starshipはまだホームの都市でローンチしていない。(Marbleは現在、Caterpillarの傘下に入っている)。

Marbleはヨーロッパでも大きな存在感を示しており、エストニアのタリンに主要な研究開発拠点を置き(そのためEUから財政的な支持を受けている)、英国のミルトン・キーンズにて初の本格的な都市展開を開始した。サービスの価格は都市や場所によって異なるが、例えばミルトン・キーンズにある食料品チェーン店Coop(コープ)に提供するサービスは、一律99ペンス(約150円)で設定されている。

この2年間、 Starshipの名前は、配達員の数が減り、人々が移動を控え、人との接触が少なくなった時代に、企業が注文した食品を顧客に届けるための配達パートナーとして、よく耳にするようになった。ミルトン・キーンズのサービスだけでも数十万件の配達があり、Starshipは重要なパートナーと契約を開始するようになった。英国では、食料品チェーンのTesco(テスコ)、Coop、Budgens(バドジェンヌ)がそのリストに含まれている。同社は主に、メガ食料品店ではなく、中心部に位置する小型店舗の配送手段として提携しており、Starshipが狭い範囲に配送する商品をストックする「ダークストア」の役割を担っている。配達は、iOSAndroidのアプリで依頼する。

現在、同社のビジネスの大部分(約70%)はキャンパス内での展開によるものだが、変調の兆しが見えてきているとウェストガース氏は述べている。

「1年~1年半後には、食料品の規模は大きくなっているでしょう」と彼はいう。Starshipのサービスを利用する可能性のあるキャンパスの市場規模は400〜500程度だが「食料品は数十億ドル(数千億円)規模になります。我々は、世界中のデリバリーサービスを追いかけています。自転車やスクーター、クルマに乗っている人と同じように配達できますが、私たちの方が安く、ロボットは年々安くなっています」と同氏はいう。ロボットの平均的なバッテリー寿命は18時間で、典型的なロボットは1日に約40km走行することができる。

現在、同社はレベル4の自律型システムとして車両を運用している。つまり、人間がオペレーションセンターで問題を監視し、車両が予期せぬトラブルに見舞われた場合には、必要であれば引き継ぐことができるということだ。だが、それはデフォルトではない。

「私たちのロボットは99%、誰も関与していません。私たちは多くの配達を、誰も関与することなく行っています」とウェストガース氏はいう。

EIBからの資金提供は、EUにとって2つの異なる条件を満たすものである。第1に、EUはより持続可能な輸送手段を推進し、排出量の削減と道路交通の低減を図ろうとしている。第2に、デジタル経済におけるEUの地位をさらに高めるために、テック系スタートアップ企業を支援するという長期的な目標がある。

EIBの副総裁 Thomas Östros(トーマス・エストロス)氏は「あらゆる形やサイズの電気自動車が、私たちの未来の一部となり、持続可能な輸送手段というパズルにおいて重要な役割を果たすことができます」と、声明の中で述べている。「Starshipの配送ロボットはすでにその価値を証明しており、同社が技術開発を続け、生産規模を拡大できるよう支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)