「治験の情報格差なくす」Buzzreachが情報発信サービスを正式公開

新しい治療法や治療薬の情報を求める患者らが、病気や症状に合った治験や臨床試験の情報を検索できるプラットフォーム「Search My Trial(SMT)」。そして製薬企業や医療機関が直接、患者や一般ユーザーに治験実施の情報を発信できるプラットフォーム「Puzz(パズ)」。

新薬開発には欠かせない、“治験”にまつわる2つのサービスを患者・医療関係者の双方向に展開するBuzzreach(バズリーチ)は3月5日、これまでベータ版として提供してきたPuzzを正式にリリースしたと発表した。

Puzzの詳細に入る前に、一般向けに公開されているプラットフォームのSMTについて紹介したいと思う。SMTは、病気や症状に悩む患者など一般ユーザーと、日本全国で行われる治験・臨床試験情報をウェブ上でマッチングするサービスだ。SMTは2018年5月より、ベータ版として公開されている。

SMTでは患者自身や家族の環境や状況に合った治験情報を調べることができ、近隣で該当する治験を実施する医療機関があるかどうかも検索可能。かかりつけ医院での治療だけではなく、別の選択肢としての治験を検討することができる。

ユーザーが気になった治験・臨床試験には応募も可能。ウェブ上で簡易的なスクリーニングを行った結果、条件に合えば医療機関の治験コーディネーターと連絡が取れるようになる。

一般向けのSMTに対し、今日正式リリースされたPuzzは「製薬企業/医療機関向け」かつ治験情報を「発信」するためのプラットフォームだ。

Puzzでは企業/医療機関が治験情報を掲載して、一般ユーザーや治験情報を必要とする患者に向けて情報を発信し、参加申し込みまで受け付けることができる。

Puzzでは医療機関単位だけでなく、プロジェクト単位で治験情報を登録でき、それぞれに細かい設定や情報展開が可能となっている。Puzzに治験情報を掲載することで、治験の被験者募集を専門的に行う企業やヘルスケア系メディア、患者会などに対して、情報発信を一度で同時に行える。

また、Puzzに掲載された治験情報はSMTにも掲載されるため、新しい治療法を求める患者と治験情報とをマッチングすることもできる。

Puzzでは、これらのチャネル全体で約250万人の治験希望者データベースに向けて治験情報を拡散可能。さらに治験参加者のデータはクラウド上で一括管理することもできる。Puzzへの情報登録は無料プラン、有料プランが選択可能だ。

情報格差をなくし、薬の開発コスト・スピード改善を目指す

新薬開発では、長い開発期間と膨大な開発コストが製薬企業の負担となり、削減が各社の課題となっている。その要因の中でも、治験の被験者となる患者の数が絶対的に足りない、という問題が大きく影響しているとBuzzreachでは見ている。

この問題は、治験業界における情報の流通性の低さにあるという。治験は新薬を作るためには必須のプロセスだが、治験の認知度の低さにより、患者募集のためのコストが増大し、必要な症例数が足りない場合には試験期間の延長や実施医療機関の追加などにより、さらにコストが余分にかかるようになる。

一方で新たな治療方法を求める患者にとっては、治験情報に行き着くまでが困難で、簡単に最新の情報を得ることができない。

患者側と製薬企業/医療機関との情報格差をなくすこと、患者側に必要な情報が届けられること、アナログだった患者情報の管理を一括で行えるインフラを整えること。これらを実現することで、薬の開発コスト・スピード改善に貢献したい、というのが、同社がSMTとPuzzを開発した狙いだ。

2018年のベータ版ローンチから約6カ月間、複数の製薬企業でPuzzを導入した結果、あるプロジェクトではトータル開発期間を2カ月間短縮でき、これにより4500万円ほどのコスト削減ができたケースもあるという。

Buzzreach代表取締役 猪川崇輝氏

Buzzreach代表取締役の猪川崇輝氏は「現状、大半がブラックボックスとなっている治験の情報を患者につなぐことが開発スピードをあげ、開発コストの圧縮にもつながり、何より患者に新たな選択肢と希望を届けることを可能にする」とコメント。「日本で実施されている可能な限り多くの治験情報を、病気で悩む人に新たな選択肢としてつなぐため、PuzzおよびSMTを提供し、より一般向けにわかりやすく情報に触れてもらえるよう努める」としている。

同社はPuzz正式リリースと同時に、KLab Venture Partnersをリードインベスターとして、シードラウンドで資金調達を実施したことも明らかにしている。調達金額は総額約5000万円だ。

調達によりBuzzreachでは、PuzzやSMTのサービス拡充に加え、ITを活用して、より良い環境を求めている患者にフォーカスしたその他のサービスにも注力するという。

今後、治験の情報提供をきっかけに、患者ごとに最適な情報を届けるサービスを展開していく、というBuzzreach。2019年春には治験担当者と参加患者をつなぎ、さまざまな問題を解決する患者管理アプリをリリースし、治験を基点として製薬企業と患者がつながるコミュニティをスタートさせる予定だということだ。

Buzzreachは2017年6月の創業。代表取締役CEOの猪川崇輝氏と、COOの青柳清志氏はともに治験被験者募集専門会社のクリニカル・トライアルで立ち上げ時から参画していた経歴を持つ。

治験業務の効率化を図るプラットフォームとしては、昨年10月にOracleに買収された米国のスタートアップgoBaltoや、日本にも拠点を置くMedidataといった企業が、主に製薬企業やバイオテクノロジー企業、医療機関、研究機関などに向けたサービスを展開している。

ライバルは中国企業、“AIの社会実装”目指すニューラルポケットが6億円を調達

画像や映像を解析するAI技術を複数の領域で展開するニューラルポケット(旧ファッションポケット)は3月5日、未来創生ファンド、シニフィアン、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、Deep30、および複数の既存株主を引受先とする第三者割当増資により、6億円を調達したことを明らかにした。

もともと同社は2018年1月にファッションポケットとしてスタート。AIを活用したトレンド解析サービス「AI MD」の提供やファッションECモールの開発などを進めてきた。今後は総合AI企業としてファッション以外の領域でも事業を展開していく計画で、それに向けて本日付で社名をニューラルポケットへと変更している。

併せて調達先の1社であるシニフィアンとは業務提携も締結し、シニフィアンがニューラルポケットの顧問に就任したことも発表した。

今回の資金調達はニューラルポケットにとってシリーズBラウンドにあたるもの。同社では設立から2ヶ月後にシードラウンドで最初の資金調達を実施し、7ヶ月後となる2018年8月には東京大学エッジキャピタルや千葉功太郎氏らから2.6億円を調達。3度目となる今回の調達額を合わせると、創業1年2ヶ月で累計11億円を集めたことになるという。

AI MDを用いた企画商品が全国2000店舗以上に展開

現在ニューラルポケットでは独自開発したAIアルゴリズムによる画像・動画解析技術を軸に、ファッション、スマートシティ、デジタルサイネージの3領域で事業を開発している。

すでに複数の大手アパレル企業が導入するAI MDは、SNSを含む世界中のファッションメディアから500万枚以上のコーデの画像を解析し、カラーや着こなしといったトレンドを把握するサービス。

収集した画像に対してアイテム名や色、柄、丈、シルエットなど細かい情報をタグ付けし、AIに学習させる。これらを時系列に解析し「これからどんなアイテムが流行るのか」を予測するというわけだ。

「データ自体は他社でも集められるものだが、そこに『どういうタグをつけるのか』というノウハウと、実際にタグをつける際のオペレーションが強みだ。(特にファッション領域は変数が多いため)学習データが1万枚とかでは精度が出ないが、一方でいくら枚数を集めた所でゴミデータが入ってはだめ。自社では独自開発したソフトウェアとネットワークを用いて、効率的かつ大量のデータを収集できる仕組みを作った」(ニューラルポケット代表取締役CEOの重松路威氏)

導入企業ではAI MDを用いて基本的に6ヶ月先のファッショントレンドを予測し、商品作りに活かしているそう。以前重松氏は「業界ではヒット的中率が約50%などとも言われ、仮に100点出せば定価で売れるのは40〜50点ほど。残りは値引きで販売するか廃棄している」ような現状を課題にあげ、AI MDによって少しでもこの精度を上げていきたいと話していた。

今のところAIによる画像の検知精度は97%で、検知したファッション画像データを用いてトレンド予測を行うと「人間では50%だったものが、80%程度の的中率まで上がってきている」とのこと。もちろんAIだからといって100%正確に予測できるというわけにはいかないけれど、従来よりも予測精度を上げることで余剰在庫や廃棄問題を減らすことはできる。

重松氏の話では2019年シーズンにおいてAI MDを用いた企画商品が全国2000店舗以上に展開されているそう。直近では三陽商会と新たに業務提携を締結。2019年秋冬より婦人服の全ブランドでAI MDを活用した商品を展開する予定だ。

画像・映像解析技術をスマートシティやサイネージへ拡張

プロダクトの進捗ではファッション領域がもっとも進んでいるが、それに加えてスマートシティやデジタルサイネージ領域の事業も水面下で動き出しているそう。

スマートシティについては設置されたカメラの映像を解析することで、顧客の消費者属性やファッションセグメントを分析できるサービスをショッピングモールや鉄道事業者などに展開する方針。デジタルサイネージ領域では今までにない“コネクテッド”なプラットフォームを開発しているという。これらについてはその全貌が明らかになった際に改めて紹介したい。

それにしても、昨年8月に取材した際には「ファッション領域において独自の技術を活かしたプロダクトを複数展開していく」という話だったので、今回の社名変更や方針の変更には僕も驚いた。

背景にはグローバルでAIへの技術的な期待が高まっていく状況に加え、特に日本ではAIがなかなか実証実験の枠を出ていない状況を打破し、AIの社会実装を実現したいという思いがあるようだ。

「未だに自動運転を含む少数のアプリケーションを除き、事業に直結するようなAIが生まれていないと感じている。自分たちはディープラーニングのコアエンジニアリング企業として、ファッションだけでなく広告や街づくりなど、より大きなテーマでビジネスに直結したAIサービスを作ることが目標だ」(重松氏)

ベンチマークは中国企業、AIの社会実装目指す

この領域では国内よりも海外企業の方がかなり先を行っている印象だ。重松氏もベンチマークとして中国のsensetime(センスタイム/商湯科技)の名を挙げる。同社はディープラーニングを活用した画像認識技術が強みで、自撮りアプリ「SNOW」の顔認証技術を手がけていることでも知られるユニコーン企業だ。

センスタイムの特徴のひとつと言えば、大学で博士号を取得した技術者を筆頭に多くのエンジニアを抱えていること。ニューラルポケットでもスイスの研究所でデータ分析を学び、製造業等におけるAI開発などに携わったCTOの佐々木雄一氏を中心に開発チームを拡大。イギリスや中国出身のエンジニアなど、半数以上を海外出身のメンバーが占めるという。

開発陣だけでなく、ビジネスサイドのメンバーにも経験豊富な面々が集っているのはニューラルポケットのウリだ。CEOの重松氏やCSOの周涵氏を始め、シニフィアンの朝倉氏など社外取締役や顧問も加えるとマッキンゼー出身のメンバーが5人。そこにスタートアップのCFOや上場ベンチャーの社外役員、ベンチャーキャピタルでのパートナーなどを歴任した取締役CFOの染原友博氏らも名を連ねる。

「実社会で役に立ってこそのAI。ビジネスサイドの知見とエンジニアリングを融合することで、AIを社会課題の解決や事業インパクトの創出に繋げていきたい」(重松氏)

インハウス制作にこだわる映画関連情報サイト「ciatr」が資金調達、今後はデータマーケティング領域に注力

映画関連情報サイト「ciatr(シアター)」を運営するvivianeは3月4日、ファンコミュニケーションズ代表取締役の柳澤安慶氏、ReBoost代表取締役の河合聡一郎氏、その他個人投資家らを引受先とする、第三者割当増資を実施したことを発表した。調達した資金の額は非公開となっている。

ciatrは映画やドラマ、アニメなどの情報を発信するウェブメディアだ。月間最大利用者数は850万人、月間最大閲覧数は3500万PVを突破。同社いわく、上記のようなジャンルの情報を扱うメディアとしては国内最大級の規模へと成長しているという。

vivianeは2012年3月に設立。同社の代表取締役CEOの田辺大樹氏が大学在学中にciatrのプロトタイプを作ったのがきっかけとなった。創業当初は「観た映画をレビュー」できるスマホ向けの映画鑑賞記録サービスを展開。メディア事業を開始したのは2015年のことだった。

同社では企画、制作から配信まで自社内で完結し、インハウスで健全なサービス体制を構築しているという。

映画メディアでは著作権などが絡む非常にセンシティブなコンテンツを扱うため、かつ、ファクトチェックが非常に難しいため、専門知識の豊富なライターを少人数、インハウスで抱えるという選択肢を選んだ。

編集部は現在8名。編集業務は4名が担当し、その他はライターだ。もともとは40から50名ほどの外部ライターを抱えていたが、「記事のクオリティーを重視するため」、現在では1人、2人を除いてほとんどが内部でライティングを行なっている。田辺氏いわく、一記事当たりの質を高め、リスクを減らすために、「ライターの内部化」を基本戦略として考えているそうだ。

現在、vivianeでは主に映画会社などからの広告出稿によってマネタイズしている。加えて、VOD事業者に対する送客にも2018年末より注力、配給会社に対する展開も視野にあるという。

そんなvivianeは今回調達した資金をもとに、システム開発や人材の採用を加速させる。

開発面では、同社はトップページのリニューアルを予定しており、ciatrを訪れた読者が「気分」や「ジャンル」などから観たいと思う映画やドラマ、アニメ作品を発見できる設計にする。

また、映画の閲覧分析や、コンテンツを閲覧したユーザーにオススメの作品を届けるなど、データマーケティング領域にも力を入れていく。加えて、映画系メディアをゼロから立ち上げ運営してきたノウハウを活用し、他企業のメディア運営やマネタイズのサポートもするなど、包括的なサービス体制の構築を目指す。

テイクアウトの不便を解消する事前注文・決済アプリ「PICKS」が7000万円を調達

DIRIGIOの経営陣と投資家陣。写真右から4番目が代表取締役CEOの本多祐樹氏

商品を注文して受け取るためだけに何分、時には何十分も行列に並ぶ。人気のコーヒーチェーンやオフィス街におけるランチタイムの飲食店、フードトラックなどではよく見かける光景かもしれない。

この課題を解決するための仕組みとして注目を集めるのが「モバイルオーダー&ペイ」だ。簡単に言えばスマホアプリから事前にオーダーと決済を済ませておくだけで、行列に並ぶことなくパパッと商品を受け取れるというもの。特に海外ではスターバックスやマクドナルドを始め、様々なシーンで活用が進む。

今回紹介する「PICKS(ピックス)」はまさに飲食店がテイクアウト商品のモバイルオーダー&ペイを簡単に導入できるサービスであり、顧客を行列から解放する仕組みだ。

このPICKSを手がけるDIRIGIOは3月4日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と日本政策金融公庫からの資本制ローンにより、総額で7000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

DIRIGIOでは調達した資金を活用して組織体制やオペレーションの強化を進める計画。なお今回同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • iSGSインベストメントワークス
  • 赤坂優氏
  • 有安伸宏氏
  • Japan Angel Fund
  • 西川順氏(既存株主)
  • Klab Venture Partners(既存株主)

DIRIGIOは2016年7月創業。2018年5月に西川順氏とKLab Venture Partnersより数千万円の資金調達を実施している。

待ち時間を解消、店舗の販促や注文の手間も減らす

PICKSは顧客と店舗の双方が抱えるテイクアウト時の課題を解決するアプリだ。

顧客向けにはテイクアウトの事前注文・決済を数タップでできるiOSアプリを提供。アプリにはPICKSを導入する店舗と各店舗のテイクアウトメニューが並び、注文後は指定した時間に店頭にいけばサクッと商品を受け取ることができる。

店舗側のアプリでは、スマホから3タップで注文の管理が可能。注文があった際にはスマホに通知が届くので、オーダー確認後に受付をタップするだけ。ダッシュボードからはPICKS経由の売上管理のほか、メニューの微調整なども簡単にできる。iPad端末など専用の機器を導入する手間もなく、使い慣れたスマホとPCでテイクアウトを始められるのが特徴だ。

DIRIGIO代表取締役CEOの本多祐樹氏は飲食店でテイクアウトを活用する際の課題として「販促チャネル」「注文チャネル」「待ち時間」の3つをあげ、これらをPICKSで解決していきたいと話す。

「店舗としては売上に繋がるか、顧客体験の向上に繋がるかが大切。(コンシューマー向けの)アプリを通じて顧客との接点を作り、集客にしっかりコミットしていく。またアプリで注文から決済までが完結する仕組みを作ることで、電話やFAXに比べて注文時の双方の負担が減るし、行列によるストレスや機会損失なども解消される」(本多氏)

2018年5月のローンチ時にも紹介した通り、PICKSはかつて本多氏がアルバイトをしていた飲食店でテイクアウトの注文を受けた際に感じた“非効率な部分”を改善すべく、立ち上げたプロダクトだ。現在の契約店舗数は170店舗を超え、都内の人気店を中心に北海道や沖縄など地方での導入も進んでいるという。

導入店舗は「すでにテイクアウトをやっていて人気があるので、業務効率化が必須」「これから本格的にテイクアウトを始めるにあたり、なるべく効率よくやりたい」という大きく2タイプ。現在は初期費用や月額の利用料などは無料で展開しているが、ゆくゆくは「売上の数パーセント」のような形で手数料収入から収益をあげる計画だ。

本多氏によると、そもそもテイクアウトの人気店が導入しているケースが多いこともあってユーザーの継続率も高いそう。翌月の継続率はだいたい35〜40%で推移していて、1オーダー当たりの単価は1600円ほどだという。

中食の注目度が高まる中で、インフラとなる存在目指す

冒頭でも触れた通り、モバイルオーダー&ペイの文化は日本よりも海外の方が先行している。スタートアップ界隈でも昨年Ritualが7000万ドルを調達したり、フードデリバリー企業のGrubhubが1億5000万ドルでTapingoを買収したりと大型のニュースが続いた。

日本でも近年ようやくこの波が本格化しつつある。昨年11月にスターバックスコーヒージャパンがLINEとタッグを組んで国内でもモバイルオーダー&ペイのテストを開始する方針を発表しているほか、マクドナルドの一部店舗でもこの仕組みが取り入れられた。

スタートアップ界隈でも「O:der(オーダー)」を展開するShowcase Gigの取り組みは何度か紹介しているし、サブスク型という違いはあれど「POTLUCK」などもこの領域に関連するサービスと言えるだろう。

特に日本国内では2019年10月に消費税の増税が実施される際、中食は軽減税率の対象となり税率が8%となることが予定されている(外食は10%)。そんな背景もあり、近年ライフスタイルの変化や食に対するニーズの多様化によって注目されていた中食市場が、一層拡大するという見方もある。

実際のところ、本多氏の話ではローンチと現在で飲食店のテイクアウトへの考え方が変わったと感じているそう。「(大手企業などに対して)以前はこちらから提案してもあまり興味を持ってもらえなかったが、今ではオーガニックで先方から問い合わせをもらえるケースが増えた」という。

今後はプロダクトの拡充とともにオペレーションの強化に取り組み、導入店舗数を拡大していく方針。並行してPICKSのプラットフォームを用いた企業との共同事業も予定しているようで、飲食店のテイクアウトを軸にしつつ、別のシーンにもモバイルオーダー&ペイの仕組みを展開する考えだ。

「世の中のインフラとなるような、テイクアウトプラットフォームを作るのが目標。アプリからストレスなくテイクアウトを利用できる体験をもっと広げていきたい」(本多氏)

ニオイ“可視化”センサー開発のアロマビット、ソニーらから2.5億円を調達

ニオイを可視化するセンサーを開発、サービスを提供するアロマビットは3月4日、総額2億5000万円の資金調達を行ったことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は、ソニーのコーポレートベンチャーキャピタルSony Innovation Fundと、既存株主で名称非公開の事業会社だ。

アロマビットは2014年12月の創業。小型のニオイイメージングセンサー、つまりニオイを可視化できるセンサーを開発し、センサーを使った製品や、取得したデータをもとにしたサービスを提供するスタートアップだ。

アロマビット代表取締役の黒木俊一郎氏によれば、社名には「共通言語による情報共有が難しかったニオイ(アロマ)を、データというデジタル言語(ビット)を使うことで言語化し、ニオイに関するコミュニケーションを楽にしたい」という思いが込められているそうだ。

目には見えないニオイを可視化する、と言われてもイメージが湧かない人も多いかと思うので、少しそのセンサーの仕組みを説明してみたい。

従来のガスセンサーは、ニオイに含まれる特定の成分(分子)に反応する。アロマビットが開発するニオイ識別センサーは従来型センサーと異なり、生物の鼻のように、さまざまな成分を含むニオイをパターン認識することが可能だ。

ヒトの鼻なら約300〜400のセンサー(嗅覚受容体)があり、ニオイ分子に反応する。生物はその複数のセンサー反応の組み合わせパターンで、嗅いだニオイを判断する。アロマビットのニオイイメージングセンサーは、これを機械で模倣したものだ。

このセンサーは、クォーツ時計やコンピュータのクロック発振回路にも使われる水晶振動子をセンサー素子として、その上にニオイ分子を吸着する吸着膜が設置されている。ニオイ分子が膜の表面にくっついたり離れたりして質量が変わると、素子の共振周波数も変化するので、その変化を計測することでニオイ分子の様子をデータとして捉えることができる。

アロマビットでは3年半ほどの初期開発を経て、この1〜2年は企業向けにニオイセンサーやシステムなどの提供を行ってきたが、2018年12月にはデスクトップ型のニオイ測定装置「Aroma Coder – 35Q」を製品化した。Aroma Coderでは、35種類のニオイ吸着膜が35素子に搭載されている。35種のセンサー出力データを一度で1つのパターンとして取得でき、合計で約5京通り(5×10の16乗)以上の「ニオイ可視化パターン」出力が可能だ。

Aroma Coderでは35素子を1つの装置に搭載したことで、測定時間を数分に短縮。よりニオイの「解像度」が高く、複雑なニオイを可視化できるようになっているという。

またアロマビットではデスクトップ型製品と同時に、企業が自社製品にニオイセンサー機能を搭載できる組み込み型センサーモジュールを、システム開発キット(SDK)として提供開始している。これは顧客企業がターゲットとなるニオイを指定すれば、それに応答しやすいニオイ感応膜5種類の組み合わせをアロマビットで選定し、カスタム化したセンサーモジュールと測定ソフトウェアを提供してくれるというもの。製品開発が進んだあかつきには、月産数個〜数万個で標準センサーモジュールの量産化も可能だ。

黒木氏は「この精度のニオイイメージングセンサーを小型軽量・低コストで、量産型で提供できる企業は、グローバルでもまだ出ていないので引き合いも多い。理論や実験段階でなく、製品が出ている点が我々の強み」と話す。

水晶振動子を素子に採用したのは価格弾力性の高さと量産可能性の高さからだというが、黒木氏は「今後はMEMS(微小電子機器システム、マイクロマシン)や半導体などにも応用したい」とも話している。

これまでに累計400社での採用がある同社プロダクト。導入されている業種は食品、日用品、コスメなど想像が付きやすいものから、産業機械、ロボティクス、モビリティ、農業など、ニオイの情報をどう使うのか、にわかには想像が付かない分野にも広がっている。

用途としては品質管理、商品開発などがあり、「これまで人に頼ってきた製品の品質管理を、データとして客観的に判別する」「ある香りにAという成分が含まれていることは分かったので、作りたい香りから逆算して足りない成分Bを知るために分析する」といった使われ方をしているそうだ。

産業機械、ロボティクスの分野では、産業油の変化をニオイで感知することでクオリティコントロールを行うといった例も。またモビリティの分野では今、MaaS(Mobility as a Service)展開が盛んで、車内外の異常検知などを目的にさまざまな車載センサーが積まれるようになっている。その一環としてニオイセンサーも取り上げられているようだ、と黒木氏は述べている。

黒木氏は「ニオイの可視化、センサーによるニオイデータのデジタル化は、五感の中でも一番遅れていたが、今後、大手企業が参加し、AIや機械学習によるニオイのビックデータ分析も始まることで、市場ができ、ニーズも一層増える分野になる」と述べ、「このトレンドを捉え、ニオイの可視化分野で、グローバルでデファクトスタンダードとなることを目指す。ニオイ可視化で世の中の役に立ちたい」と話している。

アロマビットでは、2017年2月にみらい創造機構と個人投資家らから1億5000万円を調達。その後、今回のラウンドにも参加している匿名の事業会社から資金調達を行っており、今回の調達はそれに続くものとなる。

今回の調達により、アロマビットでは既存製品の高機能化や小型化、量産化など開発を進めるほか、「セールスマーケティングのグローバル化を図り、北米、ヨーロッパなどにも進出したい」と黒木氏は述べている。また、ニオイのデータベース拡充を自社で行うことで、「ニオイセンサリングと可視化の分野で、世界レベルの競争優位性を確立したい」ということだった。

ナイキやエクスペディアも顧客、好調のSEOサービスBotifyが2000万ドル調達

SEOをサービスとして企業化したBotifyは、ナイキやエクスペディアなどを顧客として抱えている。同社は米国時間2月26日、シリーズBで2000万ドルを調達したことを発表した。

共同ファウンダーでCEOのAdrien Menard氏によると、SEOというサービスの商機は「昔に比べるとむしろ今の方が大きい」。そしてSEOという問題は、多くの人が理解しているよりもずっと幅広い問題だそうだ。

彼曰く、「SEOというとキーワードの最適化ぐらいしか考えない人が多いけど、でも大きなWebサイトのページの50%以上はインデクスされていないのだ」。そこでBotifyは、Googleがどのページをクロールしているかを特定し、コンテンツのもっと良い構成の仕方を顧客に勧奨する。

最近Botifyは、JavaScriptで書いたクローラーやモバイルとデスクトップを比較するツールなどのほかに、キーワードプロダクトというものを立ち上げた。それにより同社は今や、“検索というプロセスのすべてのステージを最適化”できるプラットホームを提供している、という。

過去記事: BotifyはGoogleの検索クローラーGooglebotがあなたのページを訪れるようにしてくれる新種のSEOサービス

今回の投資はフランスのIdinvest Partnersがリードし、Ventechが参加した。これでBotifyの調達総額は2700万ドルになる。

フランス生まれの同社は、2016年のDisrupt NYに出たことを契機に米国でもローンチし、近くシアトルに第2のアメリカ本社を開く。それは、ウェストコーストの市場開拓と顧客サポートのためだ。第1本社はニューヨークである。

オフィスの拡張と並んで同社は、Christophe Frenet氏をプロダクト担当SVP、Rachel Meranus氏をCMO(Chief Marketing Officer)として招聘するなど、経営陣の充実にも努めている。最近ではNeolaneの共同ファウンダーStephane Dehoche氏とBuzzFeedの元社長Greg Coleman市を取締役会に迎えた。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

すべての靴をスマートなIoTシューズにするno new folk studioが2.5億円調達

スマートフットウェア「ORPHE」シリーズを開発するno new folk studioは2月26日、複数の投資家より総額で2億5000万円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先となったのはMTG Ventures、三菱UFJ信託銀行、Darma Tech Labs、Mistletoe。今回はシリーズAラウンドに当たり、累計の調達額は約3億5000万円になるという。

no new folk studioは靴型のウェアラブルデバイス(スマートフットウェア)を手がける日本のスタートアップだ。2016年には、動きに応じて音や色が変化するスマートフットウェア「Orphe」を発売。表現者をエンパワーする新たなツールとして、舞台演出やメディアアート業界で注目を集めた。

同社ではOrpheで培ったセンサリング技術を応用し、誰でも簡単に高度な行動解析を可能にするスマートフットウェアプラットフォーム「ORPHE TRACK」を今春を目処にリリースする計画。今回調達した資金もその開発に向けた人材採用などに用いる。

ORPHE TRACKは靴のソール部分にセンサーモジュール「ORPHE CORE」を埋め込むことで、どんな靴でもスマートにしてしまうというプロダクト。従来は専門の設備がなければ取得することが難しかった詳細な行動データを誰でも取得できるプラットフォームを目指すという。

一例として詳細なランニングデータを取得することで、ランニングフォームの改善に繋げられるランナー向けのプロダクトを今春一般発売する予定とのこと。その他このプラットフォームを活用して健康保険や情報銀行といった他サービスとの連携や、ヘルスケア向けのプロダクトの開発を進めていく方針だ。

数百万件の民泊物件を一括検索できる「StayList」が公開、4000万円の調達も

「わかりやすく言えば『trivago(トリバゴ)』の民泊版」。2月26日に正式公開された「StayList(ステイリスト)」の概要について、StayList代表取締役の本間陽介氏はそう説明する。

その例えだけでも十分にイメージは伝わりそうだけど、StayListは民泊物件を対象とした一括検索サイト(メタサーチ)だ。トリバゴが様々な宿泊予約サイトの情報を集約して横断検索できる仕組みを提供しているように、StayListを使えばAirbnbやHomeAwayなど、複数の民泊サイトの情報を一箇所で検索することができる。

同サービスで探せるのは日本やその他のアジア諸国を始め、ヨーロッパや北米、南米など幅広い地域にある民泊物件で、今の所はだいたい数百万件ほどが掲載されているそう。エリア軸のほかアパートメントやコテージといった「物件タイプ」、キッチンやプールなど「設備」を軸に、該当する物件を調べられるのが特徴だ。

現在は日本語、英語、韓国語、中国語(繁体字)の計4言語に対応。今後も対応言語を拡充していく計画で、特にアジア圏に住むユーザーを中心に利用を促進していきたいという。

4000万円の資金調達も実施、連携サイト数の拡大と機能拡充へ

StayListではサービスのローンチと合わせて、2018年10月にジェネシア・ベンチャーズとサイバーエージェント・キャピタルから4000万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

調達した資金を通じて組織基盤を強化し、連携サイト数の拡大や検索機能の拡充など使い勝手の向上に取り組む方針。また調達先となる2社はアジア市場における知見やネットワークを持っているので、資金面以外のサポートも見込んでいるそう。本間氏によると、すでにアジア圏で連携先を繋いでもらったりなど事例もあるようだ。

民泊物件を扱うサービスと言えばAirbnbのイメージが強いかもしれないが、近年グローバルでは数百もの民泊サイトが生まれている。加えて「Expedia」や「Booking.com」といった既存の宿泊施設予約サイトも民泊の取り扱いを始めていて、各サイトに散らばった情報を効率よく比較・検索できるサービスへのニーズが高まってきた。

すでに北米やヨーロッパでは「HomeToGo」や「Tripping.com」のような民泊の一括検索エンジンが台頭。急ピッチで成長を続けている(昨年12月にはHomeToGoがTripping.comを買収している)。日本発のものでも「Stayway」など、関連するサービスがいくつか出てきた。

本間氏もそのような状況を知っていたため、起業前から民泊の一括検索サービスに関心を持ち市場環境や国内外の規制などを調べていたそう。日本でも2018年6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されるなど、これから周辺環境の整備が進み市場が拡大していくタイミングだと捉え、10月に会社を創業。StayListの開発に着手した。

本間氏は前職のリクルートホールディングスに新卒で入社して以来、HR領域のデジタルマーケティングに一貫して取り組んできた人物。メタサーチの領域はSEOやデジタル広告など「自分が磨いてきたスキルと相性が良く、デジタルマーケティングドリブンで伸ばしていきやすい」ということも、このプロダクトに決めた理由のひとつだという。

まずはこれから数ヶ月間でStayListのキモとなる連携サイトを増やしつつ、プロダクトの機能拡充を進める方針。6月ごろまでを目処に一通りの機能を揃えた上で、プロモーションなどにも取り組む計画だ。

倉庫のバックヤード業務を効率化する「ロジレス」、500 Startups Japanから5000万円調達

受注管理システム(OMS)や倉庫管理システム(WMS)など、EC事業で必須の倉庫のバックヤード業務を効率化するロジレスは2月26日、500 Startups Japanより5000万円の調達を発表した。この資金を使って、機能強化や提携物流倉庫の拡大を進める。

同社が解決するのはEC事業者の経営課題。商品受注や発送、在庫管理などのバックヤード業務は煩雑でコストもかかる。非コア業務でもあるこれらの作業をロジレスにアウトソージングすることで、人件費や輸送費などを圧縮できるという。

ロジレスのシステムでは、受注管理、在庫管理、出荷作業などの一連の業務を1つのシステムで管理可能になるのが特徴。商品の自動出荷はもちろん、商材や配送先、配送方法に応じて最適な場所から出荷する「複数拠点出荷」も可能になる。同社では、物流業務アウトソーシングの受け皿として、ロジレスを倉庫管理システム(WMS)を導入可能な物流倉庫も事業者も募集している。

メンタルヘルステックのラフールがエン・ジャパン、DeNAらから7億円調達

企業向けにメンタルヘルステックサービスを提供するラフールは2月25日、シリーズAラウンドで7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は、エン・ジャパン、ディー・エヌ・エー、協和、セグエグループ、MS-Japan、Framgia Holdings、イメージワークス、リブ・コンサルティングといった人材やコンサルティング、IT関連企業をはじめとする事業会社と複数の個人投資家。増資にともないラフールでは、出資者と今後、業務提携を進めていくという。

ラフールは2011年創業。メンタルヘルステック、スリープテックを使ったサービスを提供しているスタートアップだ。現在は主にBtoBのメンタルヘルス領域で、AIを活用した解析を核として、企業の「健康経営」を支援するサービスを行っている。

資金調達発表と同時にリリースされた「ラフールサーベイ」は、これまでラフールが蓄積してきたメンタルヘルスデータを分析・研究して得られたデータをもとに、組織の生産性やストレス状況を見える化し、さらに改善のための対策を提案するサービス。2015年12月から従業員50人以上の事業場で義務化されているストレスチェックで、厚生労働省が推奨する57項目に独自の質問を追加した同社の既存システム「priskHR(プリスクエイチアール)」を強化したものだ。

ラフールサーベイ イメージ

ラフールサーベイ 分析画面

ラフールでは今回の調達資金により、このラフールサーベイとスリープテック事業の機能強化、人員強化を図る。また同社が中期目標とする、オープンプラットフォームの構築や海外展開、一般消費者向けサービス展開も加速。ほか研究開発や、メンタルに関するビッグデータ解析への投資にも充てるとしている。

誰でも安心してモノを売れる基盤へ、C2Bの買取モール「ウリドキ」が1.5億円調達

近年はC2Cのフリマアプリの台頭もあり、スポットライトを浴びることも増えてきたリユース市場。リサイクル通信の調査では2016年時点で約1.7兆円の規模があると推計されていて、7年連続で市場が拡大していることからも今後さらなる成長が期待できそうだ。

そんな背景もあってか、前述したフリマアプリを筆頭にITを活用してこの領域の課題解決を目指すスタートアップも多い。

今回紹介するウリドキネットもそのうちの1社。モノを売りたいユーザーと買取ショップをつなぐC2Bの買取プラットフォーム「ウリドキ」を通じて、誰でも安心してモノを売れる仕組み作りに取り組んでいる。

そのウリドキネットは2月25日、複数の事業会社から1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資を引受けたのはエルテス、ディップ、東急不動産ホールディングス(TFHD Open Innovation program)など。ウリドキネットでは事業面での連携も見据えながら、さらなる成長を目指す計画だ。

高単価の買取依頼が増加、単月の黒字化も達成

ウリドキネットが展開するウリドキは、様々なリユース企業が集まるオンライン買取モールだ。

モノを売りたいユーザーが複数のショップの買取価格を比較した上で、自分が気に入った店舗に買取を依頼することができるのが特徴。同社では買取価格やショップごとの口コミといった情報を可視化することで、ユーザーがネット上でも気軽にモノを売れる「売却インフラ」作りを進めてきた。

ウリドキネット代表取締役の木暮康雄氏によると、もともとはゲームや本、CD、DVDといったメディア系商材が中心となっていたが、ここ1〜2年ほどでお酒や宝石、家具、楽器、ブランド小物など高単価商材の買取依頼が増加したそう。月単位の売上ベースでは前回資金調達を実施した2017年6月に比べて9倍近くまで成長。昨年は単月の黒字化も複数回達成した。

冒頭でも触れた通り、近年はメルカリやラクマなどフリマアプリの認知度が一気に広がり、何かモノを売ろうと思った際にフリマアプリを選択する人も少なくないだろう。この点について木暮氏は「本やファストファッションなどはリユース企業が高い価格で買い取るのが難しいため、C2Cと相性が良い」と話す一方で、「高単価商材はプロが本領を発揮しやすい。きちんと査定した上で正当な価格を提示できる。(他の商材と比べて)C2Cの価格メリットがない領域でもある」という。

確かに買う側にとっても、安い商品であればフリマアプリで気軽に買えても、数百万円の商品となると同じようにはいかないだろう。本当にその値段で買うのが問題ないのか、プロのお墨付きがあったほうが安心できるという人もいるはずだ。

ブランドバックや時計、楽器からお酒までさまざまな商品を売ることができる

データを活用してリユース企業をサポート

そのような背景から高単価商材の買取が増えていることに加えて「(事業の成長という点では)買取先となるリユース企業のネットワークが拡大したことも大きい」(木暮氏)という。

ウリドキは自社でユーザーから商品を買い取るわけではなく、あくまでユーザーとリユース企業をつなぐプラットフォームという位置付け。ここに参加するリユース企業が増えるということは、ユーザーにとって売り先の選択肢が増えることに繋がる。各リユース企業ごとで得意な領域も異なるため、より高く買い取ってくれる相手が見つかる可能性も出てくるというわけだ。

今回木暮氏の話の中で興味深かったのが「同じ商品を、自社サイトよりもウリドキの方が高い価格で買い取っているショップが複数ある」ということ。ウリドキは成約率の高いショップやユーザーから評判の良い店舗のデータを持っているので、“コンサル”のような形でプライシングやコミュニケーションの取り方、アクションの仕方などをサポートすることもできる。

「それによって店舗の運用コスト(1ユーザーを獲得するのにかかるコスト)を抑えることができれば、(抑えられたコスト分を)買取価格にも反映できる」という構造で、そのサイクルが上手く回り始めているのだそうだ。

調達先の事業会社ともタッグ、純粋想起の向上目指す

「(前回の資金調達以降で)ある程度の仮説検証ができ、数字も伸びてきている」と木暮氏が話す中での新たな資金調達。今回は人材採用などに向けた資金を集めるだけでなく、事業をグロースさせる上でのパートナーを増やす意図もあるという。

出資先にはエルテス、ディップ、東急不動産と事業会社の名前が並ぶが、そのうち東急不動産とはすでに共同で新サービスを発表済み。グループ会社の学生情報センターと協業し、学生マンションの住民を対象とした家財売却サービス「URIDOKI買取Day」を始める。

これはマンションの住民が専用ページから売りたい商品を登録しておくと、ウリドキの提携先のリユース企業が事前査定を実施。指定日時にマンションまで商品を取りにきてもらえるので、商品を引き渡せば現金で買取金額を受け取れるというサービスだ。

この事業は木暮氏いわく「眠っているリユースのニーズを掘り起こす」アプローチのひとつ。過去1年間に不用となった製品の価値が7兆6254億円にも上るという経産省の調査もあるように、まだまだリユース市場には大きなチャンスがある。その受け皿を作るという意味では「オンラインだけでは限界があり、オフラインとの掛け合わせが必要」だというのが木暮氏の見解だ。

東急不動産以外の調達先とは現時点で具体的な取り組みについては決まっていないというが、連携を取りながら健全な買取プラットフォームの構築を進めていく計画だという。

「何かモノを売りたいと思った時、パッと想起してもらえるような存在を目指していく。昨年は1年の間に色々な取り組みができたが、純粋想起に関してだけはあまり踏み込めなかった。モノを売る際に『ウリドキなら安全』『とりあえずウリドキをチェックしてみよう』と思われるプラットフォームにしていきたい」(木暮氏)

クラウド受付システム「RECEPTIONIST」がSalesforceから資金調達、サービス連携へ

クラウド型受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」を提供するディライテッドは2月21日、セールスフォース・ドットコムの投資部門Salesforce Venturesを引受先とする第三者割当増資により、資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だが、1000万円を超えない規模とみられる。ディライテッドでは、Salesforceとの資本提携により、サービス連携も進めていく考えだ。

ディライテッドは何度か外部からの資金調達を行っており、今回の調達は2018年3月に発表された総額約1.2億円の調達に続くものとなる。

大手向けに進化したRECEPTIONIST、アポ調整機能も追加

RECEPTIONISTは、TechCrunch Tokyo 2015で開催されたハッカソンで生まれた「キヨタン」というiPad受付アプリをベースに、譲渡を受けたディライテッドが追加開発を行って、2017年1月からサービス提供を開始したという経緯を持つ。同社は2017年秋開催のTechCrunch Tokyo 2017スタートアップバトルにも参加し、東急電鉄賞を獲得している。

RECEPTIONISTでは、従来の内線による来客対応を、SlackやChatworkなどのビジネスチャットやSMSで直接担当者に通知することで置き換え、無人化している。来訪者がiPadアプリで担当者の名前を検索して受付できるほか、事前に来客予定を登録すれば、来客宛に受付コードをメールで送信でき、さらに受付を簡単にすることもできる。また来客者の履歴はデータで残すことができ、検索や来客動向の分析も可能だ(閲覧権限も設定できる)。

インターネットに接続できる環境とiPadがあれば、導入工事や初期費用が不要なため、スタートアップや中小規模の企業を中心に利用されていたが、ディライテッド代表取締役CEOの橋本真里子氏によると「大企業向け機能も充実させたことで、サービス開始から2年目以降は1000人以上の規模の会社にも利用が広がった」とのこと。現在は導入企業1300社を超えているという。

「例えば、アプリにはもともとカスタマイズ可能なボタンが4つ用意されていたが、これを階層化できるようにした。大手企業では一口に採用担当といっても新卒、中途で担当が異なる場合もある。配送受付にしても、宅配便なのかバイク便なのか、またはお弁当の配達なのか、というのでは受付する人が違う。お弁当配達では、これまで総務の方が『お弁当が来ました』と毎回告知していたのを、社内への一斉同報で『頼んだ方は取りに来て』と通知する形にしたことで、総務の負担が減り、重宝してもらっている」(橋本氏)

2018年12月には、ミーティングの日程調整が可能な新機能「調整アポ」も追加した。既存のカレンダーツールと連携・同期することで、関係者のスケジュールや会議室の空き状況をRECEPTIONISTの管理画面上へ表示。候補日時を選択し、会議室の仮押さえができる。来客には候補日時がみられるURLを発行し、メールを自動送信(チャット、メッセージツールでもURLは送れる)。URLを受け取った来客は画面上で候補の中から日時を確定し、社名・氏名を入力すると受付コードが発行される。この時、仮押さえした候補日時の予定は自動で解放されるので、出迎える側は当日、来客通知が来るまでは何もする必要はない。現在はGoogle カレンダーに連携可能で、近日Office365 Outlookへの対応も予定しているという。

確かにミーティングの日程調整は誰しも面倒なもの。つい先日も「以下の日程でご都合いかがでしょうかメーカー」が現れたときにはTwitterで大きな反響があった。

橋本氏は「事前の来客登録で受付コードを発行・お客さまに通知することで、RECEPTIONISTをまだ導入していない企業への認知・普及を図ったが、アポイントメントの事前登録には、必ず日程調整という作業をともなうし、そこが誰もが困っている点でもある。であれば、日程調整と受付機能が個別であるより、連携して使えた方がいい」と、日程調整から来客受付までをワンストップで行えるようにした理由について説明した。

また、受付システムとしてスタートしたRECEPTIONISTは、SaaSなど新しいサービスを使った業務改革に対して、総務担当者が感度の高い企業の導入が多かったということだが、日程調整機能が加わったことで「営業担当など別のルートからの引き合いの可能性も広がった」という橋本氏。「『日程調整ツールを入れるなら、受付システムも一緒に変えよう』と導入を検討してもらえる」と話している。

「現場のペインを分かっている方がよいサービスを提供できる」

今回のディライテッドへの出資について、セールスフォース・ドットコム常務執行役員でセールスフォース・ベンチャーズ日本代表の浅田慎二氏は、「Japan Trailblazer Fundからの出資のひとつ」と述べている。このファンドは、日本のエンタープライズ系スタートアップのためにSalesforce Ventureが設立したローカルファンドだ。2018年12月に1億ドル規模のファンド設立が発表されている。

浅田氏は「Salesforceではクラウド型の営業管理プロダクトを提供しており、広く捉えれば『データの蓄積をもとに、よい仕事の方法を提供する』ということをやっている。ここで来訪者を管理するという側面からみれば、まだデータ化されていない部分が多い」と話す。

「来客受付の手続きは、受付する人も、来訪する人も面倒なもの。システム化されていなければ、紙の受付票や人による取次などが必要で、しかも紙・人により制約されている。また大きな企業や、オフィスビルの入口でも、受付票や名刺で身分確認を行ってはいても、本当にセキュアとは言えないだろう」(浅田氏)

欧米の来客受付システムでは「Envoy」がマーケットをリード、多くの導入事例も持っている。またカナダのスタートアップが提供する「Traction Guest」は、セキュリティ監査への対応機能を備えるなど、ビジネスユースで求められる機能を特徴としていて、Salesforce Ventureも出資している。

日本で投資先としてディライテッドに白羽の矢が立てられたのは、代表の橋本氏が実務で受付業務を経験してきたことが大きい、と浅田氏は述べている。「SaaSプロダクトでは、現場のペイン(痛み)を分かっている人の方が、よりよいサービスを提供できる。橋本氏は受付の課題を解決したいという情熱も強く、ぜひ投資したいと考えた」(浅田氏)

今後、マーケティングやプロダクトのあり方など、Salesforceで培われた法人向け営業のノウハウをディライテッドにも投入し、クロスセルなどでも支援していく、と浅田氏はいう。また多くの投資先を抱えるCVCとしても「経営視点で情報をシェアしていく」と浅田氏は述べている。

ディライテッド代表取締役CEO 橋本真里子氏とセールスフォース・ベンチャーズ日本代表 浅田慎二氏

橋本氏は「サービス開始から1年目、2年目と思った以上にニーズを得て、スタートアップだけでなく、大手・非IT企業にも導入が進んだ。3年目を迎え、ニーズがあるはずという思いが確証へ変わっていくなか、SaaSであっても営業も大切だと感じるようになった」として、このタイミングで「Salesforceの持つリソースを借りて、よりさまざまな分野へ拡大を目指す」と話している。

現在も、通常のオフィス来客受付だけでなく、ユーザー会などセミナー開催の受付や、美容院・サロンなどのレセプションなどで引き合いがあるというRECEPTIONISTだが、これを機にさらに幅広く利用してもらうべく、サービス拡充を検討していくという。

「顧客からの声は聞くようにしているが、社内だけでディスカッションしているだけでは、なかなか(視点が)広がらない。Salesforceとのディスカッションにより、SaaSのプロとしての視点で、スピード感を持ってサービスの考え方・進め方が聞けるのは有益だ。経験や知識も投資のひとつとして、お金の部分だけではないところで支援を得ていきたい」(橋本氏)

製品でも両社は、Salesforceが提供するCRMソリューション「Sales Cloud」とRECEPTIONISTとの連携を計画している。RECEPTIONISTが持つ来訪者データをSales Cloudへ連携することで、来客データを蓄積。受付と同時に自動で新規リードを作成する、顧客データと来客者をひも付け、活動履歴を更新する、といった連携を予定しているということだ。

また来訪目的の分析や、面接での来訪者のトラッキングなどでもデータの蓄積は役に立つ、と両社は考えている。「例えば受付業務の8割が配送関係だと分かれば『別に専用窓口を用意しよう』といった判断もできる。データがあれば、業務効率化推進につながるだろう」(浅田氏)

サムライインキュベート6号ファンドは34.5億円、ペット用ジビエ肉、バーチャルアドレスに投資

サムライインキュベートは2月22日、同社運営のファンド「Samurai Incubate Fund 6号投資事業有限責任組合」で34.5億円の組成を完了したことを発表した。当初目標だった30億円を超える規模になったとのこと。

写真左から3番目が、サムライインキュベート代表取締役の榊原健太郎氏

同社は、創業時のスタートアップに特化したベンチャー・キャピタル(VC)。最近では大企業のオープンイノベーション戦略への参画も増えており、サッポロホールディングスと「スタートアップ共創型ビジネスコンテスト」、日本郵便と「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」、京浜急行電鉄と「京急アクセラレータープログラム第2期」などを開催している。

6号ファンドの投資テーマは、物流、ヘルスケア、リテールテック、フィンテック、建設、MaaSなどの領域で、日本、イスラエル、アフリカ大陸などでスタートアップを支援する。1社総額で5000万円程度の投資を実施予定とのこと。同ファンドはすでに始まっており、国内ではペット用国産ジビエ定期便サービス「Forema」(フォレマ)、アフリカ・ケニアでは住所がない人向けにバーチャルアドレス発行サービスを展開する「MPOST」に出資している。

Foremaは、犬や猫などのペット向けに鹿肉や猪肉などのジビエ食材を提供するサービス。国産かつ人間と同じ衛生基準で処理しているのが特徴。1カ月限定のお試し便は、税別月額980円+送料950円、内容量は500グラム。

定期便はジビエ肉1.8〜2キロのセットで税別月額4360円+送料950円。定期便の内容は月替わりだが、例えば鹿肉部位混合切り落とし500g、鹿肉部位混合切り落とし250g×2、猪肉混合切り落とし250g、猪ミンチ250g、鹿ハツ350gなどがそれぞれパック詰めされ冷凍状態で届く。なお送料については、北海道と沖縄のみ別途500円加算される。

ペットにとっては、高タンパクで低カロリーのジビエ肉によって健康維持に役立つ。一方、ジビエ肉の販売ルートを確立することで、残念ながら駆除されてしまった野生動物を商品として流通させることが可能になる。現在、農作物被害や森林被害を解決するために駆除される鹿や猪は1割未満しか食用として使われておらず、9割以上は破棄・埋蔵処分になっているとのこと。同社はこの問題を解決するために設立されたスタートアップだ。

MPOSTは、スマホなどを活用してバーチャルアドレス発行することで、ケニアの物流網構築を目指すスタートアップ。マサイ族で有名なケニアだが、郵便制度が発展途上のため正確な住所を持たない人が多い。そのため海外から荷物を発送する際は、これまでは私書箱が使われていた。MPOSTは「Mobile Post office」の意味で、スマホの位置情報を利用して確実に荷物を届ける仕組みを考案している。

6号ファンドに参加した企業や投資家は以下のとおり。

  • 京浜急行電鉄
  • 住友生命保険
  • セイノーホールディングス
  • セプテーニ・ホールディングス
  • ダイキン工業
  • 前田建設工業
  • マネックスグループ
  • 丸井グループ
  • モノフル
  • ロート製薬
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ(FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号)
  • 千葉 功太郎氏

「ベタックマ」などのキャラクター会社クオンが約4億円の資金調達、国際的な展開を加速させる

インターネット発のキャラクター会社のクオンは2月20日、ニッセイ・キャピタル、ABCドリームベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、CiP協議会を引受先とする第三者割当増資、および三井住友銀行とみずほ銀行からの融資で合計約4億円の資金調達を実施したと発表。同社の累計調達額は、約8億円となった。

「ベタックマ」や「ビジネスフィッシュ」などのキャラクターで知られるクオンは、“インターネット発”のキャラクター会社。2015年頃から全世界の有力チャットアプリと提携し、LINE、KakaoTalk、Facebook、WeChat、Zalo、Hike、Kik Messengerなどでスタンプを展開。累計ダウンロード数は、2018年12月末現在で26億件、累計送信回数は240億回を超えているという。

ベタックマ

また、有料スタンプでの販売に加え、スタンプで人気の出たキャラクターのライセンス展開をグローバルで本格的に開始している。

中国、タイには子会社を設立。韓国・台湾・香港では現地のキャラクターエージェンシーと契約、アジア地域でのグッズ、ポップアップストア、プロモーションコラボを行なっている。2018年9〜12月時点での当社のキャラクター事業の海外売上比率は65%程度に達しているそうだ。

インターネット以外へのコンテンツ展開施策としては、2017年7月に東宝株式会社と資本業務提携。同社のキャラクターを原作とした映像作品が検討されている。

CharaBiz DATA 2018によると、国内キャラクター市場規模は、約1.5兆円と推定されている。そのうち、市場規模上位100キャラクターのうち99%が本、テレビ、映画、ゲームなどインターネット以前のメディアから生まれたキャラクターだ。

クオンは、従来キャラクターが生まれてきた既存メディアからインターネットメディアに置き換わっていく中で、キャラクタービジネスは大きく変革されていくと考えている。

同社は調達した資金をもとに、以下についてさらに注力していく予定だ。

  • キャラクターのライセンス営業組織を構築し、国内外企業との当社キャラクターコラボレーション案件や、キャラクターやスタンプの共同開発案件に対応。
  • 海外子会社のマーケティング、営業組織の補強、および海外のキャラクターライセンスエージェントとの提携の強化。
  • 新規のキャラクター開発を行なう。特にVTuber、ブロックチェーンなどの新規ネットメディアやテクノロジー向けのキャラクター開発に注力。
  • 当社キャラクターのアニメ・映像作品化(協業、製作委員会など)を促進。

企業のエース人材と転職希望者を10分間限定ビデオチャットでつなぐOnepairが資金調達

企業で働くエース人材と転職希望者が10分間のビデオチャットを通じて面接できるアプリ「Onepair」を運営するOnepairは2月19日、NOWおよび複数の個人投資家から1000万円を調達したと発表した。また、これまでベータ版だった同サービスの正式版を本日よりリリースする。

Onepairの特徴は、転職希望者がマッチングする相手は企業の採用担当者ではなく、事業責任者などの現場で活躍するエース人材だということ。企業のエースは、Onepairのアプリに毎日表示される5人の候補者のなかから気になる人をピックアップする。すると、ピックアップされた候補者のアプリには彼らを選んだエースの情報が表示される。候補者がそのアプローチにOKと答えれば、まずはマッチングが成立する。ビデオチャットの日程調整などもアプリ上で完結できるため、エース人材は気軽に多くの候補者とビデオチャットすることが可能だ。

2018年9月のベータ版リリース時は上述のエースから転職希望者へのアプローチ機能しかなかったが、同社はその後アプリをリニューアルし、転職希望者からエースへのアプローチも可能になった。アプリ内にはエース人材の働きぶりが分かる記事コンテンツが用意されており、それを見た転職希望者がエース人材とのビデオチャットに応募できる。

10分間のビデオチャットは、時間が来たら強制的に修了する。通常の面接は30分から1時間ほどの時間が設定されていることが多いが、10分間話してみただけでもその人の印象は大体固まってしまうもの。つまり、Onepairは10分間あれば『この人とは一緒に働けない』などのネガティブなスクリーニングすることができるという仮説の上で作られたアプリなのだ。また、ビデオチャットなので移動も必要なく、効率的に採用候補者を探せる(転職者は働きたい企業を探せる)というわけだ。

今回、同社にとって初の資金調達を実施したOnepairは、10分間という限られた時間をより“濃いもの”にする施策を打っていく。具体的には、マッチングした時に表示されるプロフィールを充実させることでビデオチャットでよくある「自己紹介」を省くなどが考えられる。現在、Onepairを導入する企業は約20社。これをまずは100社にまで拡大することが当面の目標だという。

大日本印刷が出資、ブロックチェーン活用によるデジタル作品の売買技術を持つBlockPunk

大日本印刷は2月19日、シンガポールを拠点とするスタートアップ「BlockPunk」(ブロックパンク)と戦略パートナーとしての提携を発表した。シンガポール拠点のシードステージベンチャーである「SeedPlus」(シードプラス)が主体となり、BlockPunkに130万シンガポールドル(約1億円)を投資。大日本印刷は、SGInnovate, Hustle Fund、Entrepreneur Firstともに、このラウンドに加わる。

BlockPunkは、デジタル作品をオンラインで売買できるプラットフォームを開発。改ざんが事実上不可能なブロックチェーンを使用することで、作品の希少性、真贋性を保証し、二次販売を可能にするという。同社は、Netflixでアニメ部門を統括していたJulian Lai-Hung(ジュリアン・ライハン)氏と、イエール大学でコンピューターサイエンスの博士号を取得後、Linkedinでプロダクトマネージャーを勤めていたJatin Shah(ジャティン・シャー)氏の2人が創業した。

大日本印刷はプレスリリースで「日本政府はブロックチェーンをクリエイターの権利を保護するための重要な技術だと認識しており、日本のアニメやアート、エンターテイメント業界に適用するために、BlockPunkと協力していくことを楽しみにしています」とコメントしている。

容易にコピーできてしまうため、写真はもちろん、アニメやイラストなどデジタル作品の著作権保護は非常に難しい。自分が撮影した写真や描いたイラストが無断コピーされ、いつのまにか第三者が販売している、フリー素材として拡散しているという問題は後を絶たない。日本の最大手印刷会社である大日本印刷がBlockPunkの戦略パートナーとなることによって、電子書籍を含むデジタル作品の強固な著作権保護の仕組みが早急に構築されることを期待したい。

建設職人マッチングのユニオンテック、設立20年目にして米VCから約10億円調達、なぜ?

ユニオンテックは2月18日、シリーズAラウンドとしてDCMベンチャーズを引受先とする9.7億円の第三者割当増資を発表した。大規模な資金調達は、2016年10月のみずほキャピタルからの1億円に続き2回目、同社としては史上最大規模となる。DCMベンチャーズは、米国シリコンバレー発祥のベンチャー・キャピタル(VC)だ。

写真左から、ユニオンテック代表取締役社長の韓 英志氏、同会長の大川祐介氏、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏

設立20年の建設会社が初のシリーズAラウンド資金調達

ユニオンテックは、2000年にクロス職人だった現会長の大川祐介氏がユニオン企画として設立。当初はクロスや床など内装仕上げの工事業を手がけていたが、ショップやオフィスの内装・管理などの空間事業にも進出し、2004年に現社名に変更した。2005年には設計デザイン事業、2009年にはグラフィック・ウェブデザイン事業に進出するなど、さらに事業を拡大。そして2016年には、施工主(ハウスメーカー、設計事務所、工務店)と職人を結びつけるB to Bのマッチングサービス「TEAM SUSTINA」(現・SUSTINA)のサービスを開始。2018年には、個人と職人を結びつけるB to Cの工事マッチングアプリ「CraftBank」の提供を始めた。

ユニオンテックの沿革

同社は2018年9月3日に新体制を発表。代表取締役社長を務めてきた大川氏が代表取締役会長に、代表取締役社長には取締役副社長の韓 英志氏が就任した。韓氏は、リクルートホールディングスでエグゼクティブマネージャーを務め、投資ファンドの設立や海外でのM&Aを手がけていた人物。2018年4月に同社入社後、約9カ月での社長就任となった。

2000年設立で20年目を迎えた同社が、なぜいまごろシリーズAラウンドでの資金調達なのか?代表取締役会長の大川氏と、代表取締役社長韓氏に話を聞いた。

とにかく建設職人の働き方を変えたい

大川氏によると「DCMベンチャーズの人と人脈、そしてなによりもビジョンに共感した」という。今回の資金調達により、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏が社外取締役に就任し、SUSTINAやCraftBankなどのネット事業について協力していく体制が整った。

建設業界の問題点

創業者社長から会長になった大川氏は現在、建設職人の働き方やイメージの改革に取り組んでいる。「建設業界には職人をきちんと評価する仕組みが必要で、ユニオンテックで利用している人事評価システムを他社に開放します」という。同社の職人評価システムは、作業スキルはもちろん、コミュニケーション能力など多岐にわたり、評価ポイントは数十項目におよぶ。この職人評価システムにより「職人は自分の能力を客観的に判断できる。親方は職人の報酬を決める判断材料に使える。そして、第三者からは職人の与信情報にもなる」と大川氏。

大川氏は建設業界の現状について「40〜50代が主力で若手の職人人口が少ない。働き方改革によって若年層の職人を増やしたい」とも語る。建設業界では、施主(発注者)が決めた期間内で工事を終えなければならず、「納期が遅れると賠償問題になることもあり、期日厳守は当たり前。しかし、人手不足や天候不良などの不可抗力もある。そもそもの納期がギリギリだと、ネットなどを駆使して業務を最大限効率化したところで限界があり、結局は職人にしわ寄せが来る。その結果、残業や夜間作業、休日返上などが発生して労働環境がどんどん悪化していく」と大川氏。

このような建設業界の問題点を解決するため、大川氏は2018年に一般社団法人として「日本SHOKUNIN総研」を設立。同団体では、2019年4月に前述の職人評価システムをベースにした建検(建設キャリア検定)を開始、2019年12月に「ベスト職人賞」と呼ぶアワードを開催予定だ。

さらに同団体では、職人同士の定期的なミートアップも実施している。「建設業界ではこれまでも、例えば地域ごとに左官職人の集まりなどは開催されてきました。しかし、ほかの職種の職人と出会うことが少ないので、なかなか仕事が広がらないんです」と大川氏。こういった問題解決のためにミートアップを主催し、建設業界内の異業種人材交流を積極的に進めている。

ユニオンテックとしても、2018年12月にデニム地の新ユニフォームを発表するなど、3K(きつい、危険、汚い)という建設業界のイメージ払拭を目指す。

市場規模は51兆円超、いまアクセルを踏むとき

代表取締役社長の韓氏は「以前(みずほキャピタル)のように金融機関からの調達も考えたが、SUSTINAやCraftBankに先行投資していくうえで長期的なサポートが望めるDCMベンチャーズを選んだ」とコメント。続けて「ユニオンテックの空間事業は年間30数億円の売上があり、現在はそこから出た利益の数億円を毎年ネット事業に投入している。しかし、それではスピードが遅い。建設業界の現状を早急に打破することを目指し、目一杯アクセルを踏むことを決めた」とのこと。DCMベンチャーズは、シードステージ、アーリーステージの投資を中心とするVCで、創業20年を迎える企業に投資するのは異例だ。

「SUSTINAは現在、7000社ほどの大小の建設会社が登録していますが、2019年5月には1万社を目指したい」と韓氏。前述のようにユニオンテックの空間事業の売上は30億円超だが「実はそのうち40%程度が100万円未満の少額案件なんです。そして、資材の発注や職人の招集などは現在でも電話業務が中心なので効率がなかなか上がらない。こうした業務についてもクラウド化による効率化を図りたい」とのこと。

大川氏は「現在のSUSTINAは、急なスケジュール変更や職人不足など『困ったとき』に使われることが多いサービスですが、もっと使いやすいように改良して施工主や職人がいつでも使えるサービスにしたい」とコメント。前述の新ユニフォームの発表時には、建設業界に「カッコイイ」「稼げる」「けっこうモテる」という新しい3K定義への挑戦も宣言。「工事が設計図どおりに進むことはほとんどなく、AIといえども職人の仕事は奪えない」と、建設ラッシュが続く現在における建設職人の重要性を力強く語った。

市場規模51兆円超と自動車業界に次いで巨大な建設業界。仕事は山ほどあるのに、職人が全然足りていない。ユニオンテックは、職人の働き方改革と職人人口の増加を目指し、リアルとネットで事業を推進していく。

建設業界は51兆円超の市場規模

声のブログ「Voicy」がTBS、電通、中京テレビなどから7億円調達

声のブログ「Voicy」を提供するVoicyは2月18日、グローバル・ブレインをリードインベスターとする資金調達ラウンドで、約7億円を調達したと発表した。今回のラウンドに参加した投資家は以下の通りだ。

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2016年9月にリリースしたVoicyは、「声のブログ」として注目を集める音声メディアだ。インフルエンサーなどが「パーソナリティ」としてラジオのようにアプリに声を吹き込み、それをコンテンツとして公開する。内容としては、日々の生活を日記のように話すものから、他社のメディアコンテンツを声で読み上げるものまでさまざま。チャンネル数は現在約200ほどで、ユーザーはすべて無料でコンテンツを楽しめる。

同社はこれまでに2017年と2018年にそれぞれ2000万円と2800万円のエンジェル出資を受けていて、VCを含む本格的な資金調達ラウンドはこれが初めてだ。Voicyは今回調達した資金を利用して、新サービスの開発やそれに必要な人材の確保を進める。

TechCrunch JapanではVoicyに取材を実施し、今回の資金調達の背景やラウンドに参加した事業会社との連携により目指す世界観などを紹介する記事を近日中に公開する予定だ。

美容動画メディア「DINETTE」運営が資金調達、D2C事業に参入しコスメブランドをローンチ

ビューティー特化型の動画メディア「DINETTE(ディネット)」運営のDINETTEは2月15日、D2C事業に参入しコスメのプライベートブランド「PHOEBE BEAUTY UP」をローンチした。

同社は2月4日、アプリコット・ベンチャーズ、個人投資家のバルクオム代表取締役CEO野口卓也氏、元Candle代表取締役の金靖征氏を引受先とした3,000万円の第三者割当増資を実施し、調達した資金をもとにPHOEBE BEAUTY UPを立ち上げると発表していた。

DINETTEは2017年4月よりInstagramを中心にメイク方法や美容の悩み解決方法、新作コスメの紹介などの動画を展開してきた。運用開始後、ノンプロモーションで9万人のコスメ好きフォロワーを獲得。美容動画メディアの中で国内最大級規模の動画再生数を誇る実績を作ってきたという。公式メディアのDINETTEは2018年2月にローンチした。

本日ローンチしたコスメプライベートブランドPHOEBE BEAUTY UPはDINETTEユーザーの声をもとに立ち上がった。

第1弾として、本日、芸能人モデルのヘアメイクを担当するヘアメイクアップアーティストであり、インフルエンサーの小林加奈氏がディレクターを務めるまつげ美容液を発売開始。DINETTEユーザーから「目を大きく見せたい」「まつ毛が細い」「まつ毛が抜けやすい」「まつ毛のハリやコシがない」「まつ毛エクステンションでダメージが」などの悩みが多く寄せられ、発売に至った。製品のパッケージは「思わずSNSに投稿したくなる」をテーマにしている。

DINETTEでは今後、同社いわく“美容動画メディア初の女性向けD2Cブランド”として、まつ毛美容液の市場で国内シェア1位を目指し、ブランドとして商品の横展開をしていく予定だという。

企業の“位置情報”活用を支えるレイ・フロンティアが三井物産から3億円を調達、モビリティ分野強化へ

写真左からレイ・フロンティア代表取締役の田村建士氏、三井物産モビリティ第一本部 交通プロジェクト部 部長の野瀬道広氏

人工知能を活用した位置情報分析プラットフォーム「SilentLog Analytics/SDK」を展開するレイ・フロンティアは2月14日、三井物産を引受先とする第三者割当増資により3億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を活用して組織体制を強化するとともに、国内外の企業に対し行動データの収集・分析サービスの提供を進める。三井物産とは注力分野のひとつとなるモビリティ領域において連携し、新サービスの開発などにも取り組む計画だ。

レイ・フロンティアは2008年の設立。2015年にICJとアドウェイズから数千万円規模とみられる資金を調達しているほか、2016年にもみずほキャピタル、イード、環境エネルギー投資、いわぎん事業創造キャピタルなどを引受先とした第三者割当増資を実施している。

収集から分析・活用まで、企業の位置情報活用をトータルで支援

アプリケーションやIoTデバイスなどから収集された“ユーザーの行動データ”を活用して、個々に最適化なサービスを提供しようという動きが年々加速している。レイ・フロンティアはその中でもユーザーを知る上で重要な要素となる“位置情報”にフォーカスした事業を展開するスタートアップだ。

位置情報を収集するための「Silentlog SDK」と収集したデータを分析する「SilentLog Analytics」を軸に、企業の位置情報の活用をトータルでサポートする。

もともとレイ・フロンティアはARアプリの開発からスタート。そこから位置情報に特化する形にシフトし、受託開発事業などを手がけていた。2015年に紹介した「SilentLog」は受託開発で培ったナレッジも活用して作った個人向けのライフログ管理アプリだ。

現在も約4万人のユーザーがいるという同サービスに蓄積された情報から、人の行動パターンを分析する独自のアルゴリズムを開発。そのアルゴリズムを始めとした知見は企業向けのSilentlog SDKやSilentLog Analyticsのベースにもなっている。

企業はSilentLog SDKをスマホアプリに組み込むことで、高密度な位置情報を取得することが可能。スマホに搭載されているセンサーデータを用いた独自技術によって、バッテリーの消費を一日平均3%にまで抑えながら数秒単位での位置情報を取得できる点が特徴だ。

このSDKを通じて収集した行動データやその他のデバイスから収集された情報をリアルタイムに匿名で分析するのがSilentLog Analyticsの役割。導入企業は機械学習処理が行われた位置情報分析データを基に、ユーザーの嗜好や行動特性などを踏まえた細かいペルソナを作成したり、個々に最適化した情報の配信したりといったことができるようになる。

同社の特徴はSilentLogを通じて自分たちで生のデータを集め、独自のアルゴリズムを作れること。そこに開発会社としていろいろな位置情報サービスの裏側を作ってきた経験を合わせることで「リサーチに近い段階からサービスの企画、アプリケーションの設計まで一気通貫で支援できる」(レイ・フロンティア代表取締役社長CEOの田村建士氏)という。

一例をあげるとイードと共同開発する燃費管理サービス「e燃費Ver.4.0」や宇都宮市の「うつのみや健康ポイント」を始め、災害時における人流分析運転挙動システム情報信託プラットフォームなど幅広いジャンルでなどでSilentLog Analytics が活用されている。

モビリティ分野では新サービス展開も計画

田村氏によると特に引き合いが多いのはモビリティ、ヘルスケア、都市開発といった領域。今回の調達先である三井物産はもともとモビリティ分野でレイ・フロンティアの事業展開をサポートしていたそうで、そこでの反応が良かったために出資へと繋がったそうだ。

近頃は「MaaS」という言葉を目にする機会が増えてきたけれど、レイフロンティアでは三井物産のモビリティ第一本部とタッグを組みながら、今後モビリティ関連の事業を手がける企業の位置情報活用を積極的にサポートしていく。

利用者の行動特性に応じた各種モビリティサービスの提供、行動変容を通じた混雑緩和や新たな移動・行動の創出、複数交通手段のシームレスな連携など、新サービスの開発も視野に入れながら各種サービスの展開を推進。国内に留まらず、海外企業へのアプローチも強めていく計画だ。

「ただの分析屋で終わるつもりはなく、リサーチから実際に作り込む部分までをしっかりサポートしていく。立ち位置としてはミドルウェアに近く、企業の位置情報活用に欠かせない重要な“モジュール”としての役割を担いたい」(田村氏)