海外現地ツアー予約サイト「タビナカ」がエンジェル投資家らから資金調達——累計調達額は3億円

海外の現地ツアー予約サイト「タビナカ」は11月12日、エンジェル投資家らを中心とした第三者割当増資を実施したことを発表した。今回の調達金額は非公開だが、これまでの累計調達金額は3億円となる。

タビナカは、日本語ガイド付きの海外現地オプショナルツアーやアクティビティが予約できるサービス。ビーチアクティビティやナイトマーケットの探索といった、現地ならではの楽しみは、言葉が通じない地域だと、個人で動くにはちょっと不安なもの。タビナカでは、そうしたツアーやアクティビティも各地で提供している。

現在タビナカではバリ島、セブ島、台湾、カンクン、アメリカ・ネバダ州、バンコクの6カ所に子会社をもち、現地ツアーの商品開発・販売を行う。提携先のツアーも含めて、サイトでは、世界200都市、6000以上のツアーを紹介している。

タビナカは2014年1月の設立。タビナカでは当初、個人の旅行者と海外在住の日本人をつなぐ、CtoCの旅行ガイドサービスを提供していた。ところが、タビナカ取締役の今野珠優氏によれば、「利用が伸びるにつれ、質の担保ができなくなってきた」とのこと。そこで、2018年2月に現地ツアー会社の商品と個人客をつなぐBtoC、および自社開発商品を提供するDtoCのサービスへとシフトした。

現地法人を抱え、DtoC型でサービスを提供する理由について、今野氏はこう述べる。「ツアー商品の開発から提供まで一貫してサービスを行うことで、50〜70%というこの業界では高い粗利を確保できる。また、ツアーの備品である船や車両なども自社で保有することによって、取り回しがきき、顧客の満足度が非常に高くなる」

例えば「足が疲れたから、これからマッサージに行きたい」「お腹がすいたので(またはあまりすかないので)食事はこういうところに行きたい」といった、状況や人によって異なるニーズに即時対応できるのも、直営ツアーならではのメリットだと、今野氏は言う。

ほとんどプライベートツアーのようだが、実際の利用では「他の人が行っていて人気の場所に自分も行きたい、という人が8割。残りの2割が個人の趣向で行き先を決めたい、という人」だとのこと。利用者は「海外が初めてで日本語以外での会話は不安」という人と「道路や空調のコンディションなど、快適さにお金を使いたい」という旅の熟練者の2パターンに大きく分かれるという。

今野氏は、ニーズに合わせてツアーの内容が変えやすいように「ツアーの一部がカスタマイズできるような商品開発も考えている」と話している。

今回の資金調達はシリーズAラウンドとなるタビナカ。前回のシードラウンドと今ラウンドに参加した個人投資家、事業会社は以下の顔ぶれだ。

個人投資家
・佐藤裕介(ヘイ 代表取締役社長)
・菅下清廣(スガシタパートナーズ 代表取締役、国際金融コンサルタント)
・高山健(楽天 元最高財務責任者)
・千葉功太郎(Drone Fund General Partner)
・那珂通雅(シティグループ証券 元取締役副社長、ストームハーバー証券 元取締役社長)
・Paul Kuo(エジンバラ エンタープライズ CEO、クレディ・スイス証券 元最高経営責任者)
・藤野英人(レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長・最高投資責任者)
・吉田行宏(アイランドクレア 代表取締役、ガリバーインターナショナル(現IDOM)元専務取締役)

事業会社
ソースネクスト
ベクトル

調達資金により、タビナカでは新規法人設立や現地法人のM&Aにより、海外拠点設立をさらに進めるとしている。また、これまではユーザーの予約申し込み後に行っていたガイドや設備の確保を、ツアー在庫を適時管理できるシステムを開発することで、予約と同時に確保、購入確定できるようにするということだ。今野氏は「在庫適時管理システムを開発することで、他のツアー会社へ在庫を卸す、BtoBの在庫やり取りも可能になり、ユーザビリティの向上も期待できる」と述べている。

このところ旅行に関するサービスの動きが目立つ。LINEがベンチャーリパブリックと運営する「LINEトラベルjp」のほか、バンクが手がける「TRAVEL Now」や「ズボラ旅」など、スタートアップからも新サービスが登場。安さ以外に、新たな切り口でサービスが提供されるようになっている。

ロボアドバイザー「WealthNavi」が40億円を調達、預かり資産は1000億円を突破

資産運用を全自動で行うロボアドバイザー「WealthNavi」を運営するウェルスナビは11月9日、複数の株主を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資などにより、総額で40億円を調達したことを明らかにした。

内訳は第三者割当増資が25億円、融資などが15億円。なお今回同社に出資したのはいずれも既存株主だ。

  • グローバル・ブレイン
  • SBIグループ
  • 未来創生ファンド
  • Sony Innovation Fund
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • みずほキャピタル
  • 三菱UFJキャピタル
  • 千葉功太郎氏

ウェルスナビは2月にも第三者割当増資と融資により45億円を調達。2015年4月の創業からの調達額は総額で107億円になる。

WealthNaviは2016年7月に正式公開されたロボアドバイザーサービス。世界の富裕層や機関投資家が利用する資産運用アルゴリズムを軸とし、自動で国際分散投資を実施する。そのため専門的な知識や時間がないユーザーでも使えるのが特徴だ。

「リバランス機能付き自動積立」機能や「自動税金最適化(DeTAX)」機能では中核となる技術について特許を取得。独自の機能でユーザーの資産運用をサポートする。

預かり資産の1%(年率・税別)を手数料として受け取るビジネスモデル(3000万円を越える部分は0.5%)で、8月23日に申込件数13万口座、預かり資産1000億円を突破。SBI証券や住信SBIネット銀行、全日本空輸を始めとしたパートナー企業を通じた利用も拡大している。

今回の資金調達は開発体制のさらなる強化や経営基盤の拡充、マーケティングの推進を目的としたもの。ウェルスナビでは「今後も『長期・積立・分散』による資産運用の普及に努め、働く世代の資産形成をサポートしていきます」とコメントしている。

最近はロボアドバイザーを含め、資産運用関連のサービスを手がけるスタートアップの大きなニュースが多い。

同じくロボアドバイザーを提供するお金のデザインは6月に59億円10月に7億円を調達。累計調達額は109.6億円にのぼる。スマホ証券のOne Tap BUYも先月19.5億円の資金調達を発表しているほか、テーマ投資型の資産運用サービスを展開するFOLIOはLINEとタッグを組み「LINEスマート投資」をスタートした(なお、FOLIOもつい先日よりロボアドバイザーサービス(おまかせ投資)を始めている)。

医療・健康分野でITソリューションを提供するメンタルヘルステクノロジーズが2.5億円を調達

医学会や医師向けのITソリューション、企業の健康経営に関するサービスなどを提供するメンタルヘルステクノロジーズは11月5日、第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額約2.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先は、INTAGE Open Innovation Fund、ファストトラックイニシアティブが運営するファンド、マネックスベンチャーズエボラブルアジアの各社・各ファンド。借入を行ったのは、みずほ銀行、三井住友銀行、きらぼし銀行の各行だ。

なおメンタルヘルステクノロジーズは今回の発表と同時に、2018年2月から4月にかけ、既存株主であったサムライインキュベート2号ファンドの持分全株とユビキタスAIコーポレーションの持分一部が譲渡され、オーケストラインベストメントベクトルが株主となっていることも明らかにしている。

メンタルヘルステクノロジーズは2011年3月、株式会社Miewとして創業。当初はコミュニケーションサービスや電子ドキュメントのプラットフォームアプリなどを開発・提供していた。かつてはサンフランシスコで開催されるTechCrunch DISRUPT SFのハッカソンにエンジニアが参加していたこともあるが、その後、医療・健康分野のソリューションやサービスに注力するようになる。

これまでに複数回の資金調達を行っている同社だが、2017年7月には、今回も出資に参加したファストトラックイニシアティブが運営するファンドから1.6億円を調達。2018年8月には社名をメンタルヘルステクノロジーズへ変更し、メンタルヘルス分野に事業ドメインを集中させた。

2018年10月には、企業の健康経営を促進するためのメンタルヘルスサービスの新ブランドとして「ELPIS(エルピス)」をスタート。シリーズ第1弾サービスとして、職場におけるメンタルヘルス・ハラスメントを学ぶ研修動画サービスをリリースしている。

同社は資金調達により、メンタルヘルスに関するAI開発や事業基盤・体制をさらに強化し、サービス利用事業所数を2019年6月までに2000事業所と、現在の900事業所から約2倍強とすることを目指す。同社のグループ会社で産業医紹介などを事業とするAvenirとも協力しながら、AIによるアラート通知やメール・チャットによる相談サービスなど、従業員のメンタルヘルスケアに関わるシステムやサービスを提供していく。

AI活用で途上国医療に新しい仕組み提供へ、東大発医療AIスタートアップのmiupが約1億円を調達

医療AI技術の研究開発や検査センタービジネスを手がける東大発スタートアップのmiup。同社は11月5日、Beyond Next Venturesを引受先とした第三者割当増資により約1億円を調達したことを明らかにした。

調達した資金を活用し、現在同社が研究開発や事業を展開するバングラデシュで検査センターの拡大、医療機関向けデータ管理システムの開発を加速させる計画。まずは同国内でAIベースの効率的な医療の仕組みの確立を目指していく。

テクノロジーを用いた途上国医療の新しいエコシステム

miupは2015年9月の設立。学生時代から途上国開発の研究に携わっていた代表取締役CEOの酒匂真理氏、AIの研究者であり現在は東京大学医科学研究所で助教も務める長谷川嵩矩氏、CTOの山田智之氏が集まって立ち上げたスタートアップだ。

もともと酒匂氏と長谷川氏は大学時代の同級生。酒匂氏は外資系消費材メーカーを経てバングラデシュへ渡り、現地のコンサルティング会社に勤務するなど経験を積んだ。一方の長谷川氏も自身の研究を進め、博士課程卒業後には大学の助教に就任。お互いが各々の分野で腕を磨く中で、かつて話していた「途上国医療分野でテクノロジーを活用した新しい仕組みを作るアイデア」を実現すべく、miupを立ち上げることを決めた。

その後すぐにゲノム情報解析サービスや医療システムインテグレーションを手がけるGenomediaの創業者である山田氏がCTOとして参画。現在は医療現場を知る医師や、バングラデシュで事業経験のあるメンバーも加わっている。

そんなmiupが取り組んでいるのは、AIやICTを活用した医療技術の研究開発だ。酒匂氏がmiupを通じて実現したいと話すのが「健康に関するデータを用いた、効率のいい医療のエコシステム」を作ること。具体的な症状が出る前に利用できる検診サービスや、症状が出た後に用いる問診AIシステム、遠隔での医療を実現するビデオチャットなどの開発・研究に取り組んできた。

当初から基礎研究を進めている問診AIについては、バングラデシュの農村部エリアでJICAやコニカミノルタ、現地の病院などと共に実証実験を実施している。このシステムは「3日前から腹痛が続いている」などの症状を問診すると、可能性の高い疾患や適切な薬剤を示唆するというものだ。

特に同国の農村部では1万5000人の住民に対して医師が1人しかいないと言われるほど、その数にギャップがある。一方でジェネリック医薬品を多く生産していることもあり、薬自体は安価に手に入れられる環境。そのため多くの人が近くの薬店で処方箋なしに薬を購入しているのが実態で、結果的に間違った薬が販売されたり、抗生物質が過剰になるなどの課題を引き起こしてしまっているという。

この課題に対して専門知識を持った人材を育てるだけではコストもかかりカバーしきれない。そこでAIやICTを使ったシステムを活用し、個々人に合った医療をより効率的に提供できないか、というのがmiupのアイデアだ。ただしこれを実用化していくには「実証実験を重ねたり論文を執筆したりすることを通じて、ある程度オーソライズされた状態を作らないと難しい」そう。そのため現状では研究開発という形で実績を積んでいる。

農村部とは異なる、都市部における医療ニーズ

その反面、検診や遠隔医療については一部すでに事業化をしているものもある。こちらは農村部ではなく、都心部のミドル層以上の人々に対して「遠隔医療とデリバリー式の検診を組み合わせたようなサービス」をローンチ済みだ。

同サービスでは看護師のように注射をしたり、ラボでの業務を担当したりできる資格を持った技師をユーザーの自宅や会社に派遣。血液の採取やX線撮影などを実施する。その結果を別途医師がチェックし、後日メールなどで共有するほか、ユーザーが希望すればビデオチャットや電話を通じて遠隔で医師と話すことも可能だ。

酒匂氏によると都市部では渋滞がすごいため「フードデリバリーが1番人気のあるサービス」なのだそう。ミドル層以上にとっても医者という存在は遠く、自分の健康状態を気軽に知れる手段も確立されていないので、デリバリー式の検診サービスはニーズがあるのだという。

検査センターの立ち上げと医療機関向けシステムの開発を加速

もちろんmiupではこれらの事業や研究開発プロジェクトに引き続き力を入れていくのだけれど、今回調達した資金は主に検査センターの拡大と医療機関向けのデータ管理システムの開発に用いる計画。この2つは上述した「データを基にした医療のエコシステム」を実現する上では不可欠な要素だ。

「自社で検査用のラボを開設し仕組みを整えたところ、他の医療機関からもラボを作って欲しいという依頼が来るようになった。これは実データをしっかりと蓄積していくという観点でも重要。検査センターの検査手順がいい加減だと、有用なデータを集められない。(ラボを自分たちで拡大していくことで)AIに本質的なデータを学習させるための環境を作ることができる」(酒匂氏)

また現地の医療機関では電子カルテなどもまだほとんど普及していない状況で、患者のデータをしっかりと管理する仕組みにもニーズがあるそう。そのためのデータ管理システムを合わせて開発・提供していくことで、医療機関側の要望に応えながらデータを集めていくことができるというわけだ。

「症状が出る前の検査や、症状が出た後の問診についてはすでに取り組んできたが、実際に『病院でどんな診察や手術をされたのか』というデータは抑えられていない。ここを抑えることで日々の健康状態から病院での診断データまでを収集・解析し、より個人個人に最適化した医療の仕組みを実現していきたい」(酒匂氏)

蓄積したデータや、それを活用したシステムは他国へ展開できる可能性もあるだろう。それも見据えて、まずはバングラデシュにおいて「医療データおよび医療ネットワークリーチNo. 1の存在を目指す」という。

ウェブ制作経験者が人力で最適な紹介を——B2Bマッチング「Web幹事」シード資金5700万円を調達

ウェブ制作会社と制作依頼企業とのマッチングに特化した、BtoBのマッチングプラットフォーム「Web幹事」が今日11月5日、リリースされた。運営するのは2015年4月設立のユーティル。ユーティルは同日、シードラウンドでエンジェル投資家などからの投資や金融機関からの融資を合わせ、総額約5700万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

ユーティルを設立した代表の岩田真氏はジャフコ出身。新卒入社から3年間、投資部に所属し、数億円単位のベンチャー投資に携わっていた人物だ。ユーティル創業から3年間は、ウェブ制作会社として50社以上のウェブを制作してきた。

ビジネスマッチングの仕組み・サービスは既にいろいろ存在していて、アイミツ発注ナビ比較ビズといったマッチングサイトや比較サイト、個人のフリーランスを対象にしたクラウドソーシングサービスなどもある。そうした中で、岩田氏はWeb幹事の特徴を「ウェブ制作に特化しており、制作会社の経験を仲介に生かしている点」と話す。

Web幹事では「制作経験のないカスタマーサポートの担当者が右から左へつなぐ、というのではなく、ウェブ制作の背景や相場観を持った担当者が、適切なマッチングを人力で行っている」という。岩田氏は「一括請求などの仕組みの場合、制作会社のリストがダーッと送られてきて、電話もたくさんかかってくるが、結局ユーザーに制作に関する知識がなく、どこへ発注するか選べない、ということも多い。我々は、1社から2社の最適な制作会社を紹介するので、ユーザーは結果として手間が減ることになる」とWeb幹事の特性について説明する。

ユーザー企業の要件がはっきりせず、そのままでは制作依頼に結びつかないと思われる場合は、「制作会社へつなぐ前に、僕らのところで防いでいる」とのこと。これを完全に人力で行うのは大変ではないか、と聞いたところ、岩田氏は「1時間あれば、大体のクライアントからのヒアリングは完了する」という。ユーティルでは、ユーザー企業からは費用を取らないが、案件成約時に制作会社から10%の報酬を手数料として受け取れるため、十分ビジネスとして成り立つ、という仮説でスタートしたと岩田氏は述べている。

Web幹事は2018年5月より、ステルスでサイトを公開し、サービスインした現在、掲載されているウェブ制作会社は3600社。「ランディングページ制作に強い」「不動産業界に強い」など、さまざまな切り口で制作会社を検索できるようになっている。

利用のトラフィックが増えれば、将来的には制作会社を評価できるよう、口コミなどの機能も取り入れる予定だ、と岩田氏。今回の調達資金は、それらも含めた機能改善や新機能追加のための開発費に充てるという。また、同社が提供する、ウェブ発注に関するユーザー向けコンテンツの充実・強化にも使う、とのことだ。

QR決済・無料送金アプリの「pring」が12.8億円を調達——“お金のコミュニケーション”軸に独自路線で拡大へ

「自分たちとしてはそこまでQRコード決済アプリなどを意識しているわけではなく『お金コミュニケーションアプリ』として新しい市場を作る挑戦だと考えている。もちろん加盟店の開拓なども進めていくが、今後注力したいのはユーザーを増やし、お金のコミュニケーションを活発にしていくこと」

そう話すのは無料送金アプリ「pring(プリン)」を運営するpring代表取締役CEOの荻原充彦氏だ。

QRコード決済機能を備えるため、最近はモバイル決済サービスのひとつとして取り上げられることも多いpring。この領域はメガベンチャーや通信大手企業が続々と参入し、かなり競争が激しくなってきているけれど、あくまで「お金コミュニケーションアプリ」という独自のコンセプトに沿って拡大を目指す方針は変わらないという。

そんなpringは11月5日、プロダクトを拡大するための軍資金として、日本瓦斯、SBIインベストメント、ユニー・ファミリーマートホールディングス子会社のUFI FUTECH、伊藤忠商事、SMBCベンチャーキャピタルなどから12.8億円を調達したことを明らかにした。

今回の資金調達によりpringはメタップスの連結子会社から持分法適用会社へと変わり(設立の背景は後述)、単体でのIPOを視野に入れながら事業に取り組む。

お金の通りみちの摩擦をゼロにする

pringはユーザー間の送金や実店舗での決済に対応した、お金のやりとりをスムーズにするサービスだ。銀行口座と直接繋がっているのが特徴で、ユーザーは無料で送金・QR決済ができるほか、やりとりしたお金を銀行口座に戻して現金化することもできる。

クレジットカードではなく銀行口座と直接紐づけていることは、加盟店側にとっても手数料が低いというメリットがある。今はPayPayやLINE Payが、特定の条件を満たせば加盟店の決済手数料が一定期間無料になる取り組みをやっているので少し特殊な状況だけれど、pringの手数料は0.95%と業界の中でもかなり低い(QR決済は手数料3~4%が多い)。

pringの始まりは2016年の10月にメタップスとみずほFG、みずほ銀行、VCのWiLがスタートした、新たな決済サービスを作るプロジェクト。アイデアの検討を重ねた後、2017年5月に原型となる新会社を設立している。

この新会社を率いることになったのが、当時メタップスのグループ会社で、決済サービス「SPIKE」を運営するSPIKEの代表を務めていた荻原氏だ。萩原氏はメタップス入社前にDeNAで新規事業などを担当。それ以前には大和総研に在籍し、新規事業として大和ネクスト銀行の立ち上げにも携わった経験もある。

萩原氏いわく、2017年5月の時点から決めていたのが「(チャージ方法を)クレジットカードやコンビニなどではなく銀行口座でやる、そしてローンチ時から資金移動業者としてサービスを運営すること」だったそう。同年10月17日にpringのベータ版をリリースするまでの期間は、プロダクトの開発と並行して資金移動業を取得するために奮闘していたという(10月11日に資金移動業を取得)。

「根本にあるのは『お金の通りみちの摩擦をゼロにする』こと。たとえば家族にお金を送るのにいちいち手数料がかかったりするのをなくしたい、そんな思いから始まっている。SPIKEの経験でそれを実現するにはクレカでは難しいと思っていたので、銀行口座と直接繋がることにこだわった」(萩原氏)

ATMでお金を降ろす時の手数料、振込時の手数料、クレカで支払いが遅れた時の遅延料、カードの年会費。普段お金を送ったり、払ったりする際に発生する“摩擦”をなくし、その分を消費者が使えるようにする。萩原氏は「小銭を消費者に取り戻す」という表現もしていたけれど、pringの背景にはそんな思想があるという。

ローンチ時にはすでに決済や送金に関するアプリが複数ある状況だったけれど、普段のちょっとしたお金のやりとりを、よりなめらかに、よりスマートにするべく、いろんな層のユーザーが親しみやすいように使い勝手や画面設計にはこだわった。

一例をあげると“言葉を動詞にする”ことだ。pringでは「送金」「入金」「支払い」といった言葉の代わりに「お金をおくる」「お金をもらう」「お金をはらう」という表現が使われている。これはかつて金融業界を経験している萩原氏が、金融業界と消費者の間に感じたギャップを感じたことが理由。「金融業界では難しい言葉を使いがち」だからこそ、よりわかりやすい言葉に変えたという。

またお金のコミュニケーションを作るアプリということで、初期よりもさらに人をベースにしたUIにアップデートした。たとえばpringはトップ画面にユーザーのアイコンが表示されているけれど、これも「お金のコミュニケーションをしようと思った時に『いくら』とか『送金』ではなく、まず『誰に』が最初にくる」ためだ。

左が旧デザイン、右がアップデート後のデザイン。アップデート後は言葉が動詞になった他、画面上部のアイコンをタップすることで、すぐに他のユーザーに対してアクションを取れる仕様になっている

B2Cの送金サービスに活路

このような流れの中で、2018年3月に正式版のローンチを迎えたpring。現在は福島や北九州でキャッシュレス構想の実証実験に採用されるなど、少しずつ利用のシーンを広げている。

今回の資金調達もpringの成長をさらに加速させるためのもの。組織体制の強化や、さまざまなキャンペーンなどマーケティング面の強化を進める。現時点で明確な取り決めがあるわけではないが、ファミリーマートでの導入や伊藤忠商事のネットワーク・サービス内での利用など、調達先との事業連携も見据えているようだ。

ただ冒頭でも触れた通り「ユーザーを増やしてお金のコミュニケーションをより密にしていくことにフォーカスしたい」というのが萩原氏の考え。その具体的な施策のひとつが先日正式にスタートしたB2Cの送金サービスだ。

これは法人から個人ユーザーへ送金が簡単に行える仕組みで、従業員の経費精算や報酬支払い、もしくは顧客に対する返金やキャッシュバック時にpringを活用するというもの。ユーザーは受け取った報酬を他のユーザーに送ったり、店舗での決済に用いたり、銀行口座へ出金したりできる。

同サービスはすでに日本瓦斯(ニチガス)のグループ会社で導入済み。日本瓦斯運輸整備、日本瓦斯工事の委託業者約350名を対象に、pringの送金サービスを利用した報酬支払いの運用を開始しているほか、年明けを目処にニチガスの検針員への報酬支払いにも導入する予定だ。

実は以前ある新聞配達所の協力で、配達員30人の報酬の一部をpringで受け取れる仕組みを試してもらったそう。その際にpring決済に対応した簡易的なオフィスコンビニのような環境を作ってみたところ、1ヵ月で400件の決済が発生した。加えて全員がpringをインストールしている状態のため、個人間の送金も活発に行われたのだという。

「みんなが使えるようになった時に、ものすごい量の決済と送金が始まるということが見えた。もともと大和ネクスト銀行を作った際も、銀行員は自行の口座で給与を受け取っているので、飲み会の精算も銀行振込だった。これと同じことで、みんなが同じプラットフォームを使っていたら、そこでお金を送り合う。『pringの財布にお金が入っていて、知り合いと繋がっている状態』を作ることが重要で、その観点で相性がいいのはB(法人)の領域だ」(萩原氏)

このようにpringでは今後お金×コミュニケーションというコンセプトに合わせた形で拡大を目指していく計画だ。ただそうは言ってもスマホ決済サービス周りは多額の資金やマンパワー、強力なキャンペーンを踏まえて一気に市場を取ろうという大手の動きも目立つ。この状況を萩原氏はどう考えているのだろうか。

そんな質問をしてみたところ「現金を減らす、QRコードで支払うといった習慣を作っていく上では、マーケットが大きくなるのは大歓迎。ただ単なるQRコード決済サービスにおいては、スイッチングコスト自体は高くない」という萩原氏の見解が聞けた。

「(SNSなどと違い)決済は単体なので、クレジットカードと同じように今以上に自分に合ったものや気に入ったサービスを見つけた際に、新しいものを使うハードルが低い。スピード勝負とよく言われるが、自分自身は勝負を決めるのはクリエイティブだと思っている。まずは認知度をあげて実際に体験してもうらうところがスタートになるが、pringならではの使い勝手や面白さを軸に勝負をしていきたい」(萩原氏)

pring代表取締役CEOの荻原充彦氏

創業三年で急成長、インフルエンサーマーケティングのMavrckが$5.8Mを追加調達

Mavrckが、新たに580万ドルを調達して、総調達額が1380万ドルになった。

2015年にシリーズAを調達したときは、クライアントの製品をすでに使っている“マイクロインフルエンサー”たちにフォーカスしていた。しかし今は、同社は“オールインワン”のインフルエンサーマーケティングプラットホームを自称し、マーケティング活動を自動化し効果を測定するためのさまざまなツールを提供している。

同社はPinterestとマーケティングで公式にパートナーしているが、先月はPinterestのための新しい機能を発表した。同社によると、これまでは効果測定と詐欺の検出の改良に力を入れてきた。またInstagramのフォロワーに関しては“統計的に有意な標本分析”を掲げ、彼らのコンテンツにエンゲージしているアカウントがボットか否かを判定する。〔ボットは統計的に有意な標本ではない。〕

顧客にはP&G, Godiva, PepsiCoなどがいて、経常収益は年率400%で伸びている。

今回の資金調達の発表声明でCEOのLyle Stevensはこう語っている: “今年Mavrckがやってきたことにはどれも、インフルエンサー産業を前進させる意図が込められていた。導入した機能や、締結したパートナーシップ、追跡してきたインフルエンサーのビヘイビアなどなどはどれも、マーケターが人びとが信頼するコンテンツのパワーを装備して、彼らのブランドのための具体的な事業価値を育てるようにする、という、弊社のミッションの一環である”。

新たな資金の投資家は、GrandBanks CapitalとKepha Partnersだ。シリーズBではなくて、需要増に対応しチャネルとのパートナーシップをサポートするための追加資本だ、という。

画像クレジット: Mavrck

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

楽天トラベル元代表が創業したCocoliveが1億円を調達、不動産会社向けMAツールでデジタルマーケを支援

不動産会社向けのマーケティングオートメーション(MA)サービス「KASIKA」を開発するCocoliveは11月1日、XTech Ventures、みずほキャピタルおよび自社の役員や従業員を引受先とした第三者割当増資により総額1億円を調達したことを明らかにした。

Cocoliveの代表取締役である山本考伸氏は楽天トラベルの元代表取締役。それ以前にもエクスペディア在籍時にプロダクト責任者として、トリップアドバイザー在籍時に代表取締役としてそれぞれの会社で日本語サービスの立ち上げに携わるなど、IT業界での事業経験が豊富な人物だ。

そんな山本氏が2017年に創業したのがCocolive。同社では不動産会社に特化したMAツールという切り口から、工務店や不動産デベロッパーをサポートする。

KASIKAのひとつの特徴が、自社のサイトを閲覧している顧客の行動履歴を基に興味の度合いを“色”で判断できること。これによって営業経験が浅い担当者でも「どの顧客に営業をすればいいのか」の判断がスピーディーにできるようになり、確度の低い不要な営業電話を削減することにも繋がる。

同サービスでは顧客ごとに自動で「顧客カルテ」が作成。そこに各顧客がいつ、どんなメールを読んだ・クリックしたのか、サイト上のどんな情報に関心を持っているのかといったデータが蓄積される。

担当者はその情報を基に顧客にあった提案をすることで、アポ数や来場数のアップが見込めるという。同社によると導入企業の営業担当者1人あたりのアポ数平均増加率は、15~25%を記録しているそうだ。

その他KASIKAでは顧客育成のためのステップメール機能やポップアップを手軽に実装できる機能などを通じて、マーケティングや営業に関する業務をサポート。ツールの提供に加えて読まれやすいメルマガの内容やデザインに関するアドバイスなども提供している。

Cocoliveでは今回の資金調達を踏まえ、KASIKAの改良を図りつつ、工務店や戸建て分譲会社、不動産仲介会社、新築分譲マンション販売会社へのサービス提供を加速させる計画だ。

なお同社は2017年5月にもエボラブルアジア、ベンチャーリパブリック、その他個人投資家から総額5100万円を調達している。

中古計測器・測定器のマーケットプレイス「Ekuipp」が資金調達——工場に眠る機器の二次流通活性化を図る

中古計測器・測定器の売買ができるB2Bマーケットプレイス「Ekuipp(エクイップ)」を運営するAnybleは10月31日、中古家電リユース大手の浜屋および同じ浜屋グループのユーズドネットと資本業務提携を締結した。また同日、浜屋グループのほかにシンガポール法人のSOLTEC INVESTMENTSからも出資を受け、総額3000万円の資金調達を実施したことを明らかにしている。

Ekuippで取り扱うのは、測定器・オシロスコープやテスタなどの電子機器や、科学・環境分析機器、シーケンサやデジタルセンサ、ドローンなど、工場や現場で使用する法人向けの中古機器だ。

Anybleは2018年3月の設立。工場などで使われずに滞留している、または使用できるにもかかわらず廃棄されてしまう機器や部品の二次流通市場を活性化すべく、4月にマーケットプレイスEkuippを立ち上げた。

法人向け機器の中古市場は日本でもある程度成立しており、売買を行う中間業者は存在するが、B2Bで法人同士が直接、中古計測器・測定器の売買やレンタルをすることができるサービスはまだほとんどない。Ekuippでは、出品された機器が安心して使えるように、倉庫や工場に眠っていた機器を校正・修理するサービスもオプションで提供している。

Anybleでは、浜屋グループとの資本業務提携により、同グループのリユース事業、マテリアルリサイクル事業網を活用して、中古機器や部品をEkuipp上に登録。中古機器や部品の流動化を図ることで、マーケットプレイス事業の強化・拡大を目指す。

日本酒スタートアップのClearが7500万円を調達——D2CモデルのECサービス「SAKE100」運営

日本酒に特化した事業を展開するスタートアップのClearは10月31日、KLab Venture Partnersおよび複数の個人投資家から、総額7500万円を資金調達したことを明らかにした。

「日本酒は懐が深く、人生を豊かにする飲み物。世界中の人にその魅力を知ってもらいたい」と語るのは、Clear代表取締役の生駒龍史氏だ。Clearは2013年2月の設立で、日本酒のサブスクリプションコマース事業から始まった日本酒スタートアップ。現在は、2014年にローンチした日本酒メディア「SAKETIMES」、131カ国で読まれる英語版の「SAKETIMES International」を運営する。

また2018年7月からは、D2Cモデルの日本酒ECサービス「SAKE100(サケハンドレッド)」をスタート。高品質・高価格の“プレミアム日本酒”を酒蔵とともに開発し、ネット経由で販売している。

例えば、山形県の楯の川酒造と開発した日本酒「百光(びゃっこう)」は、山形県産の有機栽培で作った酒米を精米歩合18%まで磨いて作る。吟醸酒の精米歩合は60%以下、大吟醸でも50%以下、というのが決まりなので、この磨き度合いは相当なもの。もちろん精米にも醸造にも高い技術が要ることだろう。

SAKE100で扱う日本酒にはほかにも、単に「究極の高級酒を造る」というだけでなく、耕作放棄地となっていた田んぼを開墾し、その土地で育てた酒米を使って醸した、という純米酒「深豊(しんほう)」や、濃厚で甘い、デザートワインならぬ“デザートSAKE”などもある。

SAKE100では「日本酒の魅力をさまざまな価値軸で打ち出すことで、世界中で認知され、親しまれる」ことを目指している。画一化された評価軸を突き抜けた日本酒を提案することで、高価格市場の形成を狙う。

「Clearの強みは、SAKETIMESなどのメディア運営を通じて日本酒の世界にどっぷり漬かり、蔵元や酒販店の動向や、売れ筋の傾向など、業界のことがよく分かっている点だ」と生駒氏はいう。「もともと、めちゃくちゃ日本酒が好きでビジネスのことも分かる集団が、好きが高じてやっている。業界がよく分かる人間がスタートアップ的に戦うことで、勝算があると考えている」(生駒氏)

同社にとって今回の資金調達は、VCが参加する初めてのエクイティによる調達となる。調達資金により、国内D2Cコマース成長のためのマーケティング強化を行うとともに、アメリカ・中国・香港・シンガポールなど、海外市場への展開も進める構えだ。

「世界一の日本酒企業を目指す」と話す生駒氏。SAKE100リリースに当たり、2018年7月、Clearは既存の酒販店を子会社化しているが、これも「制限のない事業展開を行うため」とのことだ。

「酒類小売業免許を新規に取得すると、3000キロリットル以上製造する酒蔵のお酒を売ることができないなど、免許上、制限がある。事業をスケールさせるなら大きい蔵と組む必要があるが、それができないのは困る。そのため、制限のない、旧来の免許を持つ酒販店を子会社化することにした」(生駒氏)

日本酒の輸出は8年連続で拡大しており、2017年の輸出額は約187億円、2018年は200億円を超えるのではないかと見られている。ただ一方、フランスワインの輸出額は年間90億ユーロ(約1兆1800億円)にものぼり、桁違いだ。生駒氏は「日本人以外にも日本酒を飲む人を増やすために、早い段階で海外にもブランドを展開して、アプローチしたい」と話している。

生駒氏はまた「日本酒を“社会ごと化”するために、IPOも目指している」という。「これまでの日本酒業界は“家業”か“免許”で縛られた閉鎖的な世界。『家を継ぐ』『免許があるからやる』ということではなく、社会に絡ませることでその世界を広げたい。そのためには、IPOにより、投資の対象として日本酒が見られることも効果があるのではないかと考えている。今まで日本酒だけの製造・販売で上場した企業はないが、上場することで社会に日本酒の価値・意義をつなげたい」(生駒氏)

ブロックチェーンアプリとユーザー繋ぐ“ポータル”へ、ブラウザ連動型ウォレット開発のスマートアプリが資金調達

昨年頃から、TechCrunchの記事内でも「Dapps」というキーワードが登場する機会が増えてきた。

Dappsとはブロックチェーンを利用した分散型アプリケーションのことで、仔猫を育成・売買する「CryptoKitties」やモンスターを捕獲したり交換して楽しむ「Etheremon」といったゲームが有名どころ。もちろんゲームに限った話ではなく、たとえばLINEは自社のトークンエコノミー構想の中でQ&Aやグルメレビュー、未来予想など5つのDappsサービスを開発中であることを発表している。

今回紹介したいのは、そんなDappsとユーザーの距離を繋ぐ“ブラウザ連動型ウォレット”を開発するスマートアプリだ。同社は10月31日、セレスを引受先とした第三者割当増資により5000万円を調達したことを明らかにした。

なおセレスとは業務提携も締結。「くりぷ豚」(セレスとグラッドスリーが共同運営)においてメディアパートナーシップ連携を結んでいる。

スマホからDappsにアクセスできるブラウザ連動型ウォレット

スマートアプリが開発している「GO! WALLET」はイーサリアムに特化したブラウザ連動型ウォレット。従来はPCブラウザを通じて利用していたイーサリアム上で動くゲームやDappsアプリに、スマホからアクセスできるブラウザ機能を備える。

現時点ではCryptoKittiesやEtheremon、くりぷ豚を含むゲームのほか、複数の分散型取引所やDappsに関する情報を扱ったメディアなどが掲載。ユーザーはGO! WALLETアプリ内のブラウザ上から各種Dappsを楽しめる。

ウォレットとしては個人情報を登録せず匿名で利用できる点がひとつの特徴。利用のハードルを下げる一方でセキュリティ面を考慮して、ウォレットの秘密鍵はサーバーにも格納されず、スマホ端末アプリ内のみに保存される仕組みを採用した。

「GO! WALLET」のブラウザからアクセスできるDappsと、ブラウザから「くりぷ豚」を起動した際の画面

ブラウザ機能を持つウォレットアプリ自体はすでに出始めてはいるが、GO! WALLETでは多様なコンテンツを紹介する機能やブラウザの操作性を磨きつつも、それに留まらない仕組みを加えていく計画のようだ。

「コンテンツを紹介するブラウザ機能だけではなく、昔でいうiモードのようなプラットフォームをブロックチェーンベースのアプリケーションの世界で実現したいと思っている。その取っ掛かりとして最初に作ったのがウォレットアプリ。このアプリを引き続きブラッシュアップしながらも、連動したさまざまなサービスを作っていく」(スマートアプリ代表取締役社長CEOの佐藤崇氏)

Dappsの成功事例を作る

佐藤氏はモバイルサービスの黎明期だった2003年にビットレイティングス(その後アクセルマークに吸収合併)を創業。モバイル検索サービス「froute.jp」を含む複数のサービスに関わってきた人物だ。同社を離れた後にモブキャストに参画し、取締役としてプラットフォーム事業を推進。2015年にスマートアプリを立ち上げている。

同年6月にEast Ventures、山田進太郎氏、藪考樹氏などから3450万円を調達。最初の事業としてスマホ向けのアプリを紹介するメディア「AppCube」をリリースした。佐藤氏いわく「将来的にはサードパーティのアプリストアを目指したサービス」だったが、AppleやGoogleの公式ストアの機能強化が進み、デベロッパーやエンドユーザーからも強いニーズがなかったため2016年に撤退。そこから試行錯誤を続けていたという。

そんな佐藤氏がブロックチェーンに着目したのは2017年のこと。ブロックチェーンベースでアプリが作れることに関心を持ったことに加え、かつてモバイル業界で一緒にチャレンジしていた知人たちが相次いでこの領域に参戦したこともきっかけとなった。

「その中でWebとブロックチェーンを繋ぐ仕組みをベースとしたサービスを作るのがいいのではと考えた。PCでは『MetaMask』がすでに存在し、これと連動したサービスが出てきているけれど、当時スマホでやってるところはほとんどなくて。企画の整備を始めていた頃にCryptoKittiesが登場したこともあり、このマーケットはやっぱりくると感じてリソースを集中した」(佐藤氏)

ローンチを間近に控えた頃には同様の特徴を持つ「Trust Wallet」がBainanceに買収されるというニュースが話題になったりもしたが、まだまだプレイヤーは少なく、そもそもDappsの数自体が少ない状況。まずはDappsの市場を作りたいという思いで10月にGO! WALLETのiOS版をローンチした。

今回セレスとタッグを組むことに至ったのも、そのような背景の中で「自社単体でやっていてはなかなかスピード感が出ないと感じた」ため相談しにいったことがきっかけだ。

「サービス自体を洗練させて、GO! WALLET上でいろんなアプリケーションが展開できるようなデベロッパーを増やしていく必要がある。そのためにはどんどん送客していって、きちんとマネタイズできた成功事例を作っていかないと市場は大きくならない」(佐藤氏)

ユーザーとコンテンツを繋ぐポータルへ

今回佐藤氏に話を聞いていて興味深かったのが、現在のDapps市場がガラケーが主流だった初期のモバイルインターネット領域に似た状況だと表現していたことだ。

「当時は勝手サイト(非公式サイト)でサービスを作っていると、『砂漠に草を植えて何やっているの』と言われるような時代。多くの企業は着メロのコンテンツなどを作り、iMenuを通じて配信するのが主流だった。ただそこから少しずつ(勝手サイトを作る)コンテンツプロバイダーが登場することでマーケットが拡大していった」(佐藤氏)

これは黎明期のソーシャルゲーム業界にも似ていて、現在のDappsについてもまさに市場が拡大する大きなうねりの過程にあるのではないかと言う。

今後スマートアプリではパートナープログラムを通じて引き続きメディアやDappsデベロッパーとの連携を深めていくほか、ユーザーが今以上にカジュアルにDappsを使えるような取り組みや機能改善を行っていく方針。一例としてユーザーにトークンやアイテムを配布する仕組みも検討するという。

「(Dapps市場においては)まだまだユーザーとコンテンツが繋がる仕組みが足りない。ウォレットとしては安全性ももちろん大事ではあるが、いろいろなコンテンツを遊べるとか、操作性が優れているなどそちら側にフォーカスすることで、新たな市場が切り開けるのではないかと考えている」(佐藤氏)

創業2年半で売上28億円、日本人が東南アジアで創業したAnyMindがLINEなどから15億円調達

日本人起業家が創業し、シンガポールなど東南アジアを中心にデジタル広告事業などを行うAnyMind Groupは10月29日、LINE、スパークス・グループの未来創生ファンド、JAFCO Asia、ドリームインキュベータなどから約15億円(1340万米ドル)を調達したと発表した。

AnyMindは併せて、グループ子会社でデジタル広告事業を担うAdAsia HoldingとLINEとの戦略的協業を発表。具体的な内容はこれから詰めていく段階ではあるものの、デジタル広告領域での協業を今後進めるとしている。

AnyMindは2016年4月に日本人起業家の十河宏輔氏が創業したスタートアップ。本拠地はシンガポールで、創業当初は主に東南アジアにてデジタル広告事業を行っていた。現在、同社はデジタル広告事業のほかに、インフルエンサーマーケティング・プラットフォームの「CastingAsia」や採用管理ツールの「TelentMind」を展開している。先述したとおりAnyMindは創業から約2年半のスタートアップだが、すでにアジア11カ国に13のオフィスを構え、2017年度には28億円の売上を計上しているという。従業員数は330人だ。

AnyMindは2017年4月に約1200万米ドルの資金調達を実施。その資金を利用してデジタル広告のフォーエムやAcqua Media(香港)を買収している。

現在のところ、AnyMindグループ売上高の大半はデジタル広告のAdAsiaが担う。日本と海外の売上高比率はそれぞれ3対7の比率だという。AnyMindは今回の調達を期にタイのバンコクに構える開発拠点を強化。また、日本市場では採用ツールのTelentMindを中心にビジネスを拡大していきたいとしている。

AI画像診断で医療現場を変えるエルピクセルが30億円を調達、オリンパスや富士フイルムとタッグで事業加速へ

医療や製薬、農業といったライフサイエンス領域の画像解析ソリューションを開発する東大発ベンチャーのエルピクセル。同社は10月29日、オリンパス、CYBERDYNE、富士フイルムなどを引受とする第三者割当増資により、総額で約30億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を基に、AI活用の医療画像診断支援技術「EIRL(エイル)」を中心としたプロダクト開発を加速する計画。合わせて国内外での市場開拓ならびに販路構築、それらに伴う組織体制の強化などにも取り組むという。

同社は2014年3月の設立。過去には2016年10月にジャフコ、Mistletoe、東レエンジニアリング、個人投資家らから7億円の資金調達を実施している。

なお今回エルピクセルに出資したのは以下の企業だ。

  • オリンパス
  • CYBERDYNE
  • テクマトリックス
  • 富士フイルム
  • SBIインベストメント
  • CEJキャピタル(CYBERDYNE子会社)
  • ジャフコ

これまでも何度か紹介している通り、エルピクセルは東京大学の研究室のメンバー3名によって創業されたスタートアップ。研究室時代から培ってきたという画像解析技術を活用してライフサイエンス領域で画像解析システムの研究開発を行ってきた。

特に力を入れているのが医療分野における研究だ。東京大学や国立がん研究センターをはじめ複数の医療機関とタッグを組み、人工知能を活用した画像診断支援技術・ソフトウェアの開発に取り組んでいる。

それをプロダクト化したものが2017年11月に発表したEIRLだ。近年CTやMRI、内視鏡などの医療機器の高度化が進み、医療現場では取扱う医療画像のデータ量が急増している。EIRLは現場で膨大な画像に向き合う医師をサポートするためのプロダクト。画像診断支援技術を通じて見落としや誤診を防ぎ、効率的な医療の実現を目指している。

今回の調達はこれらの動きを一層加速させるためのものだ。法令ほか必要な手続きを経て、同社の技術が医療機器として使用できることを目指すほか、国内外の市場開拓と販路拡大に取り組む。また医療現場へのスムーズな導入とアフターケアの充実を見据え、いくつかの調達先とは業務提携も進める計画だ。

たとえばオリンパスとはこれまでも内視鏡・顕微鏡画像診断支援のAI技術開発に関する共同研究に取り組んできた。両社では今後の業務提携も視野に入れ、新たな協力体制についても協議していくとしている。

富士フイルムに関しても4月に提携し、同社の医用画像情報システム上でエルピクセルの診断支援AI技術を利用できるサービスの開発に着手済み。まずはエルピクセルのAIエンジンを富士フイルムの内視鏡システムで活用するためのシステムを開発し、AI技術の共同開発も検討する。

またCYBERDYNEとは本日付で業務提携を発表。双方の技術を複合融合し、疾患の早期発見・診断・治療に向けた医療ビッグデータ解析の開発強化を目指す。

TC Tokyo卒業生の予実管理SaaS「DIGGLE」が1.5億調達、あえてエクセルライクなUIを捨てた理由とは

予算管理SaaSの「DIGGLE」を提供するDIGGLEは、500 Startups Japan、Draper Nexus、Archetype Ventures、UB Ventures、HDEなどから1億5000万円を調達したと発表した。なお、今回の資金調達はJ-KISS型新株予約権方式により実施された。

DIGGLEは企業は従来エクセルなどを利用していた予算管理・実績管理のツールをSaaSとして提供するスタートアップ。DIGGLEを利用することで、属人化しがちな予実管理をチームで行ったり、予算が足りなくなったという“結果”だけでなく、なぜ足りなくなったのかという“分析”を簡単にすばやく行うことができる。

2016年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルにも登場したDIGGLEが、正式版をリリースしたのは2017年7月のこと。代表取締役の山本清貴氏によれば、正式リリースから現在まで同社が注力してきたのは継続的なプロダクトの改善だったという。「DIGGLEはまだPMF(プロダクト・マーケット・フィット)前のプロダクトだと思っているので、とにかくプロダクトの改善を続けてきた」(山本氏)。

その1つが、UIの大幅な変更だ。もともと、DIGGLEはこれまで予実管理にエクセルが使われることが多かったという背景を考慮して、新しいプロダクトに対するユーザーの心理的な負担を減らすためにあえてエクセルライクなUIを採用していた。

UI改変前

現行UI

しかし、DIGGLEはそのUIを刷新することを決断。その敬意について山本氏は、「難しい判断だった。たしかに、エクセルライクなUIはユーザーに受け入れられやすく、評価も頂いていた。しかし、以前のUIを採用していたときにユーザーから頂いていた対価は、エクセルとDIGGLEがもつ利便性の差分でしかなかったように思う。『DIGGLEを使えば予実管理を経営陣の意思決定にも利用できる』などの、DIGGLEの本来の価値を理解いただくためには、エクセルライクなUIからDIGGLEならではのUIを作る必要があると思った」と語る。

その一方で、UIを変えたことで多少心理的な障壁が生まれることになる入力作業を簡略化させるために、セールスフォース・ドットコムとfreeeとのAPI連携を開始。また、エクセル上でシートをコピーし、DIGGLEでインポートボタンを押したあとに表示されるモーダル上でペーストするだけで入力できる機能などを搭載した。

このようなプロダクト改善を継続して行うDIGGLE。しかし、山本氏はまだまだ道半ばだと話す。今回の資金調達ラウンドで1億5000万円を調達したDIGGLEは、さらなるプロダクト改善のためにエンジニアなど開発メンバーの拡充を図る。

インスタメディア「古着女子」のyutoriがNOWから資金調達、リアルコミュニティも開設へ

写真左から、NOW 家入一真氏、yutori CEO 片石貴展氏、NOW 梶谷亮介氏。

おしゃれに古着を着こなす女性をピックアップして紹介する、古着情報のインスタメディア「古着女子」を引っさげ、アカウント開設から5カ月で元エウレカの赤坂優氏らから資金調達を実施したyutori

今度は、家入一真氏らが率いるベンチャーキャピタルのNOWを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達金額は前回のエンジェルラウンドと同様に非公開だが、“前回よりは、やや大きめの金額”らしい。

古着女子は、2017年末のインスタグラムアカウント開設から5カ月でフォロワー10万人を突破。現在でもフォロワーが1日約1000人のペースで増え、10月の1投稿当たりの平均いいね数は約7500、最高1万5000いいねを獲得する、古着ファッションの一大メディアとなっている。

またyutoriでは、90年代をテーマにしたボーイッシュ古着の「9090」やミレニアル世代特化のスポーツブランド「dabbot.」を、古着ECショップ連動型のインスタグラムアカウントとして展開。dabbot.はアカウント開設後2ヶ月でフォロワー数が1万人近くに到達。第2回販売分のアイテムは、ほぼ全ての在庫が即日完売となる勢いだったという。

ほかにも、男性向けの古着メディア「古着男子」や、一点ものの古着のコンセプトショップと連動した「イチゴイチエ」を運営するyutori。全アカウントの累計フォロワー数は、現時点で26.8万人に達する。

こうして「古着×SNSを使ったメディア発信」で拡大してきたyutoriでは今後、インスタグラムマーケティングからECへ展開してきたノウハウをもとに、事業展開を加速させるとしている。具体的にはインスタグラムだけでなく、TikTokやYouTubeなど、動画も含めたメディア連動による、立体的なメディア価値の向上や、古着コンセプトショップの複数展開、海外展開によるアパレル事業拡大を目指す。

また、yutori CEOの片石貴展氏は、前回の資金調達時のインタビューで「ネット通販だけでなく、古着を通した人との出会いづくり、リアルなコミュニティ運営にも力を入れていく」と話していたが、いよいよ11月下旬に「直接インフルエンサーやユーザーと触れ合えるリアルな場所」をプロデュースするということだ。

片石氏は「インスタ起業からミレニアルコンテンツカンパニーへ」として、今後の構想について以下のとおり、コメントを発表している。

僕たちは“古着ビジネス”の会社なのだろうか…

『古着女子』は間違いなく自分たちの好きを体現したプロダクトであり、今後もこの領域を中心としたメディア・アパレル事業は展開していきます。しかし“インスタ起業”から数ヶ月が経過した今、自分たちがどのような価値貢献を社会にしていくべきかあらためて根本から見直し、この度皆さまに宣言することにいたしました。

実は、弊社にはアパレル出身のメンバーは1人もおりません。『古着女子』も“古着のファッション情報を伝えるメディア”ではなく、これまでクローズアップされていなかった切り口に光を当てた“コミュニティプラットフォーム”が本質だと思っています。

では、このプロセスを抽象化させ、再現性を持たせることができれば様々な領域で「臆病な秀才の最初のきっかけをプロデュース」し、「誰も恐れずに好きを体現できるゆとりのある社会」を実現できるのではないかと考えました。

そこで、心の奥底に大切にしまっているピュアな「好き」に繋がり、決して言語化できない自分自身の「感性」と、インスタグラムを筆頭にSNSで定量化される「トレンドデータ」の両方を掛け合わせ、ミレニアル世代に対してヒットコンテンツを継続的に生み出していく【ミレニアルコンテンツカンパニー】としてyutoriを定義することにいたしました。

子ども向けオンライン英会話のハグカムが旺文社らから資金調達、ジャンル広げ“ライブ学習基盤”目指す

ハグカム代表取締役の道村弥生氏と投資家陣。写真中央が道村氏。

子ども向けのオンライン英会話サービス「GLOBAL CROWN(グローバルクラウン)」を展開するハグカムは10月29日、旺文社ベンチャーズとポーラ・オルビスホールディングスを引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

具体的な調達額については非公表だが、関係者の話では数千万円規模とのこと。同社にとっては2015年10月にオプトベンチャーズ、ICJ、ディー・エヌ・エーから約6000万円を調達して以来の資金調達となった。

なお今回ハグカムでは旺文社と業務提携も締結。調達した資金や旺文社のノウハウ、コンテンツなども活用してGLOBAL CROWNのアップデートを進めるほか、英語以外のジャンル展開にも着手する計画だ。

先行するSkype英会話の課題点を解決

GLOBAL CROWNは主に3〜12歳の子どもを対象にしたオンライン英会話スクールだ。自宅から専用のアプリを使ってマンツーマンで英会話を学べる環境を構築。日本語も話せるバイリンガルの講師が生徒のレベルに合わせながらイラストやワードカードといった独自の教材を活用し、1回20分間の英会話レッスンを提供する。

サービスの正式リリースは2015年の11月。その頃にはいわゆる“Skype英会話”サービスが複数世に出ていたので、決して目新しい仕組みというわけではなかった。ただハグカム代表取締役の道村弥生氏は小さな子どもを持つお母さん世代にヒアリングを重ねた結果、既存のサービスでは満たせないニーズがあることに気づく。

「オンライン英会話サービスの存在は知っていても“フィリピン人の先生によるSkype英会話”をイメージしている人が多かった。話を聞いてみると『自分が英語を話せないのでフィリピン人の先生だとハードルが高い』という声や、『そもそもSkypeって何?』という質問が出てきて。ママたちでも使いやすい設計や、(日本語も話せる)バイリンガルの先生のレッスンにはニーズがあると考えた」(道村氏)

もともと道村氏はサイバーエージェントの出身。同社にてマネジメント職や人事職を経験してきた。仕事柄、学生を含む若い世代と接する機会が多かったという道村氏。若くしてやる気やチャレンジ精神が旺盛な人材の原体験を聞いてみると、幼少期にどのような体験をしているかが大きく影響しているとわかったそうだ。

自身の幼少期を振り返っても同じような経験があったため、子どもに良い学習の機会を与えられるような事業での起業を決意。当初はシーエー・モバイルの子会社としてスタートし、スピンアウトのような形で2015年9月にハグカムとして独立している。

最初に英語を選んだのは「ママさんたちに『何に時間とお金をかけているか』を尋ねたところ、習い事にお金をかけていて、特に10人いたら9人が英語という答えが返ってきた」(道村氏)から。既存の英会話教室などの場合は週に1回のグループレッスンなどが多く、頻度や内容を柔軟にカスタマイズすることも難しいため、スキルアップをあまり実感できないという課題があがったという。

一方でマンツーマンのオンライン英会話サービスは上述した「日本語が話せない講師、Skypeという不慣れなツール」というイメージが影響し、そこまで浸透してはいなかった。

そこに可能性を見出して開発したのがGLOBAL CROWNだったというわけだ。

高単価と高継続率を実現するための仕組みを作る

正式リリースから約3年、道村氏はユーザーの特徴として「平均単価が1.3万円と、他サービスに比べて高額であること」「利用開始から半年後の継続率が80~85%であること」をあげる。

「高単価と高継続率には当初から重要視していた。ただ安いから選ばれるというのではなく、品質が良いことを理由に使ってもらえるサービスにしたかったので、ママさんと子どもにとっての“品質”に徹底的にこだわった」(道村氏)

ヒアリングをした結果、ターゲット層の中にはSkypeを使いこなせない人が多いだけでなく、そもそも自宅ではPCを開くことすら珍しいこともわかった。そこでスタート時からSkypeを活用せず自社でビデオチャット機能も内包したアプリを開発。スマホやタブレットからアプリを開くだけでレッスンを受けられる仕組みにこだわった。

講師は日本語にも対応できるバイリンガルの人材を採用。6割以上が学生だというが、カリキュラムや事前のレクチャーの体制、講師用のシステムなどを細かく作り込むことでレッスンの質を担保してきたという。

実際に講師側の管理画面と生徒側のアプリをどちらも見せてもらったのだけど、講師側のシステムに関しては今までのレッスンで使ったカードや記録が蓄積され、生徒のレベルに応じて必要な教材をすぐに開ける仕様になっている。Skypeを立ち上げる必要もないし、「レッスン開始」ボタンを押すだけですぐに対象の生徒のレッスンが始まるのでわかりやすい。

講師側の画面

またレッスンの時間になっても先生がログインしてないと、運営側がすぐに気づける仕組みも実装。「子どもは10秒とか20秒でも先生が来ないと不安になる」(道村氏)ため、そういった場合は運営側がすぐに先生に連絡をとってサポートする体制を作っているそうだ。

レッスンは週1回コースが月額9800円、頻度によって料金が変わり毎日コースの場合は1万9800円(単発で試せるチケットの場合は1回2300円から)。オンライン英会話にしては高単価の部類に入るが、ユーザーの継続率は高い。

これについては、道村氏によるとレッスンスケジュールを固定制にしている点も大きいそう。GLOBAL CROWNでは「何曜日の何時から」と事前にレッスンの日時を決め、1ヶ月先まで講師の日程を確保する。決められた時間にアプリを開けば講師が待ってくれているため、ほとんどの生徒がレッスンを習慣化することにも繋がるという。

「チケット制で毎回自分たちで予約する設計にすると、やらないポイントができてしまう。初期のヒアリングやモニタリングの結果を見ても毎回固定の日時でレッスンを受ける人が多かったので、この仕組みを採用している」(道村氏)

現在GLOBAL CROWNを使っているユーザーの75%は、オフラインの英会話教室や英語教材など何かしらのサービスを使っていて、乗り換えてきた人達。共働きのお母さんが多く、ここまで紹介してきた特徴に加えて「オフラインの教室とは違い送り迎えの必要性がない」ことも価値になっているようだ。

教材やカリキュラムも、1回20分のオンラインレッスンに合わせて自社で開発している

ジャンルを広げ、子ども向けのライブ学習プラットフォームへ

道村氏いわく、これまではシステム面の構築にかなりのリソースを費やしてきたそう。生徒側のマーケティングなどには十分な資金をかけられない部分もあったが、3年間で基盤は整ってきたという。

そんな状況下で今回久々の資金調達を実施。調達した資金を用いて今後は「ライブ学習」と「レコメンドエンジン」という2つの軸でサービスの強化を進める。

ライブ学習に関してはこれまで培ってきたナレッジや講師のネットワークを活用。サービスの機能を拡張するとともに、新たなジャンルの開拓にも取り組む。まずは英語の領域で4技能(リーディング・リスニング・スピーキング・ライティング)全てに対応したレッスンを開発するほか、算数や国語といった基礎科目、さらには他のジャンルにも拡大していく構想があるようだ。

本格的な多ジャンル展開については来年以降になるようだけれど、一例としてプログラミングやダンスのほか、片付けのやり方やお金の使い方、マナーといった学校では習わない領域も検討しているという。

このあたりは今回業務提携を締結した旺文社とのシナジーが見込める分野。すでに英検の教材に関してコンテンツ提供を受けているそうだが、旺文社の書籍とGLOBAL CROWNをセットにしたレッスンなどが考えられるだろう(なおハグカムは旺文社ベンチャーズの投資案件第1号になる)。

また生徒と講師、生徒とレッスンのマッチングを最適化するためのレコメンドエンジンの開発にも力を入れる。

GLOBAL CROWNでは初期から自社アプリにこだわってきたからこそ、録画したレッスン動画を始め先生と生徒双方のレッスン記録や評価といったデータが蓄積されている。これらを解析すれば、各生徒に合った先生をマッチングしたり、本人に向いていそうなレッスンをレコメンドすることもできそうだ。

「(ジャンルの幅が広がりレコメンドの質も上がれば)今以上に子ども達が飽きることなく、かつ興味の幅が広がっていくような仕組みが作れる。オンラインで扉を開ければ自分が学びたいと思ったことが学べ、子どもの好奇心がずっと刺激されるようなプラットフォームを目指したい」(道村氏)

“高級輸入車も売れる”C2Cの中古車マーケット「Ancar」が4億円を調達、カギは整備工場とのネットワーク

中古車を個人間で売買できるマーケットプレイス「Ancar」。同サービスを展開するAncarは10月29日、ベクトル、AGキャピタル、クロスベンチャーズ、個人投資家らを引受先とした第三者割当増資により総額4億円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては2016年10月に日本ベンチャーキャピタルやニッセイ・キャピタルから約2億円を調達して以来、約2年ぶりの資金調達となる。今回調達した資金を基に新機能開発や人材採用、マーケティングを強化していく方針。具体的には購入ユーザー向けのローンやリース機能の追加、クレジット決済機能の導入などを進めるという。

近年メルカリを筆頭に、オンライン上にて個人間でモノや情報を売り買いできるC2Cマーケットプレイスが増えてきた。Ancarはその中古車特化版のサービスと言えるだろう。

一般的な中古車売買の構造では、売り手と買い手の間に買取業者やオークション業者、販売店など複数のプレイヤーが介在する。そのため中間コストが余分にかかり、売り手の売却額と買い手の購入額の間に大きな開きが出ていた。

Ancarの場合は買い手と売り手を直接マッチングするため、中間業者に支払う手数料を削減できるほか、消費税も非課税。結果的に従来の仕組みに比べると売り手は高く売りやすく、買い手は安く買いやすい。売買が成約した際にのみ双方から5%ずつ、合計10%のシステム利用料がAncarに支払われるモデルだ。(任意のオプション代のほか、輸送料や名義変更などの諸費用は別途買い手が負担)。

とはいえ、このような特徴は何もAncarに限った話ではなく、C2Cのサービス全般に言えること。それこそメルカリ上でも中古車の個人間売買はされているし、GMOカーズの「クルモ」や中古車の買取・販売大手のIDOM(ガリバー)が展開する「ガリバーフリマ」など特化型のフリマサービスも存在する。

中間コストや消費税をカットできるのはAncarの特徴のひとつではあるものの、それ以上に同サービスのウリと言えるのが購入前後のサポートだ。

「(扱っている商材が)車という特性上、高額であると同時に命に関わるものでもある。だからこそ売買のハードルを下げながらも、安全性や信頼性の担保も必要。ユーザーにとって安心できる場所じゃないと、高単価の車種を売買するのは難しい」(Ancar代表取締役の城一紘氏)

Ancarでは初期から売買のハードルとなる手続き面のサポートや、安全性を担保するための情報開示を行ってきた。

売り手ユーザーは車の写真を撮影し基本情報を入れればすぐに出品できる反面、買い手が購入前に整備工場へ無料で点検依頼できる機能も実装。気になった車の状態を第三者のプロに診断してもらえる仕組みを整えた。また車の輸送はもちろん、Ancarでは名義変更や車庫証明もサポートする。

中古車の売買に特化したC2Cサービスではいくつか近しいサポートを行っているものはあるが、事前点検から一連の工程をまるっとカバーしているのは珍しい。この仕組みを実現する上で不可欠な要素が、全国にある自動車整備工場とのネットワークだ。

Ancarでは2016年に整備工場の検索サービス「Repea(リペア)」をリリース。全国約1000店舗の整備工場と提携することで、ユーザーが車を取引する際のサポートはもちろん、アフターケアも充実させることができている。

結果的にAncarで売買される中古車の平均成約単価は約250万円と高く、城氏も「高級輸入車が多いのはひとつの特徴」と話す。

もちろん良い仕組みが整っていても肝心のユーザーが集まらなければビジネスとしては成立しないため、Ancarでは前回の調達以降、売り手ユーザーの集客や出品体験の改善に注力。1年前と比べて売却価格の査定件数や出品台数も約20倍に増え「暗闇の中で試行錯誤を続けてきた結果、出品量の確保については目処が立ち始めてきた」(城氏)という。

そんな状況下での今回の資金調達。集めた資金は出品者集めを加速させるためのマーケティング強化に加え、購入者側の体験改善に向けた新機能開発やそれに関わる人材採用に用いる計画だ。

たとえば購入者に対しては現在の現金振込のみの決済方法だけでなく、ローンの提供やクレジット決済の対応を早ければ2018年内に開始する予定。Repeaに登録されている整備工場とユーザーをAIでマッチングする機能などを導入していく計画もあり、サービス間の連携を強化して購入後のケアを受けやすい仕組みを整える。

また車を保有するにあたってのハードルと言える保管場所の問題や、保有コスト、次の買主が決まるまでの駐車場問題に関しても、それらを解決するサービスを新たに始める方針だ。

「Ancarというサービスだけではこの仕組みは成り立たない。Repeaと両方がうまく回ってこそ、ユーザーにとって安心でき、価値のあるサービスになる。そういった意味では単に中古車の売買を効率化したいわけではなく、買った後のメンテナンスや困りごとの解決など、ユーザーのカーライフをトータルでサポートしていきたい」(城氏)

ジョッシュ・クシュナーのThrive Capitalが10億ドル調達

ベンチャーキャピタリストJosh Kushnerにとってよい1週間だった。彼は、ユニコーンの医療保険会社Oscarの創業者であり、ドナルド・トランプ大統領の上級顧問Jared Kushnerの弟であり、そして不動産王Charles Kushnerの息子である。

スーパーモデルのKarlie Klossと結婚した数日後、彼のVC会社Thrive Capitalは新たな資本でもって6回目となるフラッグシップベンチャーファンドを10億ドルにてクローズした。レイトステージで6億ドルを、それより以前のステージで4億ドルを調達している。

ThriveはOscarやKushner兄弟によって共同設立された不動産ソフトウェア企業のCadre、Glossier、Warby Parker、Slack、Robinhood、そしてStripeと、ステージや業界に関係なく投資している。イグジットした案件としては、Spotify、Twitch、GitHubがあり、GitHubは今年初めにマイクロソフトが75億ドル相当の9%自社株で買収した。

Kushnerは、Instagramの前CEO、Kevin Systromの親友であり、FacebookがInstagramを買収する前にInstagramに投資し、わずか72時間で金を倍に増やしたのは有名な話だ。Kushnerは2009年にThriveを立ち上げ、創業者として、そして成功したベンチャーインベスターとして急速に存在感を高めた。

ニューヨーク拠点のThriveのファンドは順調に大きく成長してきた。5回目の資金調達は2016年に7億ドルでクローズしている。それ以前は、4回目として2014年10月に4億ドル、3回目として2012年に1億5000万ドル、2回目として2011年に4000万ドルで、デビューは2009年の1000万ドルだった。

10億ドルという規模は、これまでで最も大きい。

まだ33歳のKushnerは最も若い10億ドルファンドマネジャーの1人で、現在派手に資金調達している。Oscarは3月に1億6500万ドルの資金を確保した。これにより企業価値32億ドルとなり、累計の資金調達額は12億ドルだ。

最新の注入によりThriveが管理している総資産は25億ドルとなっている。

イメージクレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

スマホ証券One Tap BUYが東海東京FHらから19.5億円を調達、出資者との連携でサービス向上目指す

スマホ証券取引アプリ「One Tap BUY」を提供するOne Tap BUYは10月24日、第三者割当増資により総額19.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。新たに株主に加わったのは東海東京フィナンシャル・ホールディングス。既存株主のソフトバンク、みずほ証券も追加出資を行った。

同社が提供するOne Tap BUYはスマホから手軽に株式投資ができるアプリ。スマホを3タップするだけで、1000円から株式売買が可能だ。米国株、日本株のそれぞれ30銘柄を扱うほか、ETFにも投資できる。

One Tap BUYでは今回の資金調達を機に、提供するサービス群を東海東京フィナンシャル・グループの戦略的パートナーである地方銀行や証券会社向けに提供していく意向。またこれまでの出資者も含め、より緊密な連携を図り、顧客の利便性・付加価値向上を目指すとしている。

ちなみに東海東京FHは今年に入ってから、4月にはおつり投資の「トラノコ」を運営するTORANOTECに出資。8月にはロボアドバイザー「THEO」提供のお金のデザインにも出資している。各社のユーザーである若年層や新規投資家を取り込みつつ、サービス連携を図りたいものとみられる。

One Tap BUYは2013年10月の設立。2015年12月に第一種金融商品取引業者として登録され、2016年6月1日にサービス提供を開始した。“誰でも株式投資ができる”サービスを目指して、これまで投資をしたことがない投資家層へアプローチし、ユーザーを拡大。現在の口座開設数は13万口座を超える。

2016年7月にはソフトバンクから10億円、2017年2月にはみずほキャピタルやみずほ証券らから15億円を調達。2017年11月にはソフトバンクやヤフーらから25億円を調達している。

なお、One Tap BUYはサービス開始以前の2015年11月に開催されたTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルに出場し、審査員特別賞とAWS賞を受賞している。今年も間もなくTechCrunch Tokyo 2018が開催される。お得な前売りチケットの販売期間は10月31日まで。スタートアップ各社の熱いバトルを見たい方はぜひ、お見逃しなく。

百貨店のリプレイス狙うギフト特化型EC「TANP」が1.2億円を調達

ギフトEC「TANP」を運営するGraciaは10月22日、複数のVCや個人投資家らを引受先とする第三者割当増資により1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金を活用してロジスティクスやマーケティングの強化を進め、プロダクトのさらなる成長を目指す計画。なお今回のラウンドに参加している投資家陣は以下の通りだ。

  • ANRI
  • マネックスベンチャーズ
  • ベンチャーユナイテッド
  • ドリームインキュベータ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • 中川綾太郎氏
  • 有川鴻哉氏
  • 河原﨑大宗氏
  • 坂本達夫氏

Graciaは2017年6月の創業。その直後にANRIとCandle代表取締役の金靖征氏から約1300万円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドでの資金調達になるという。

特化型ECでオンライン上でも優れたギフト体験を

Graciaが手がけるTANPはギフトに特化したECサイトだ。

この領域に特化することで、誕生日や記念日、クリスマスなどの様々なシーンだけでなく、ギフトを渡したい相手の性別や年代に合わせてぴったりな商品を見つけやすい仕組みを設計。「何を贈ったらいいのかわからない」というユーザーの悩みをオンライン上で解決できる場所を目指している。

2017年9月のリリースから約1年が経った現在は約100社のメーカーとタッグを組み、取扱商品数は合計で860点を突破。Gracia代表取締役の斎藤拓泰氏の話では人気化粧品メーカーの「the body shop」や香水ブランド「JIMMY CHOO」など、知名度のあるメーカー・ブランドも徐々に増えてきているようだ。

特にクリスマスや母の日といったイベント時の利用が多いそうで、5月の母の日のピークには1日あたりの出荷数が800件を超えたという。

「特別なシーン用のギフトを買うとなると、多くの人が想起するのは百貨店。特に『何か特定なものを探している』というよりは『何かしら買いたい』というニーズに対して、オンライン上で応えられる場所がまだない。(ECというくくりでは)すでにビッグプレイヤーがいるが、自分たちはギフトに特化することで探すのが大変という悩みを解決しつつ、より優れたギフト体験を提供したいと考えている」(斎藤氏)

ギフト探しの悩みを解決するという点では、TANP上で細かい条件ごとに商品を探せるほか、LINE@を活用してチャットベースでの相談にも応じている。斎藤氏の話ではLINE@の登録者数は約6500人ほどだそう。記念日や特別なイベントに合わせて年に数回問い合わせをしてくるユーザーが多いようだ。

“良さそうな商品がオンライン上で見つかる”というのもTANPの特徴ではあるけれど、同サービスのウリはそれだけではない。斎藤氏によるとユーザーに評判がいい機能として「配送までのスピード」と「ラッピングなど独自のオプション」をあげる。

独自のロジスティクスを軸にギフトの商流を作る

TANPでは注文が入ってから最短で翌日届くような体制を構築している。シンプルながらこの点に関してはユーザーのニーズがかなりあるそうで「注文した商品が明日届くかどうか」といった問い合わせが多いという。

またラッピングなど独自のオプションも複数用意。ラッピングだけで約10種類ほどあり、それ以外にもブーケを同梱したり、段ボールの中を装飾したりといったことができる。7割くらいのユーザーが何かしらのオプションをつけていて、斎藤氏は「(ギフト探しの悩みを解決するだけでなく)配送期日やオプションといった要素を網羅していることがTANPの特徴」だと話す。

この点について課題意識を抱えているのは何もユーザー側だけではない。メーカー側もまた、同じようにギフトに関する悩みを持っているようだ。

「担当者の方と話していても、ギフトをやりたいという考えはある一方で、ギフト用のニーズに応えるためだけに自分たちでラッピングをしたり、(他の顧客よりも優先して)最短で届けるための仕組みを作ったりするのが難しいという声を聞く。双方の間に入って“ギフトの商流を作る”というのがTANPを通じてやりたいテーマだ」(斎藤氏)

このギフトの商流づくりのために、Graciaではロジスティクス周りの整備に力を入れてきた。自社で倉庫を保有し商品はそこから発送。その際に使う発送システムや在庫管理システムも独自で開発しているのだという。

特にギフトの場合は商品にさまざまなオプションがつくことが多いため「どの商品にどのオプションがつくか」を全部紐付ける必要がある。その作業に対応したシステムを自社で整えていることが、オペレーションを効率化しつつ、ユーザーのニーズに合わせたスピード感やオプションを実現できる要因にもなっているようだ。

ギフトを買う際に最初に想起してもらえるサービスへ

「ロジスティクスの強化」は今後のTANPの鍵を握るポイントであり、今回調達した資金もここに投資する計画。扱う商品の数を増やすべく倉庫を広げたり、ラッピングなどの質を改善することでサービスの拡大を目指していく。

また中長期的にはTANPに蓄積されるユーザーの購買データを活用することによって、ユーザーのギフト探しの悩みに対して適切な商品をレコメンドできるような仕組みも構築する予定だ。

Graciaのメンバー。写真前列中央が代表取締役の斎藤拓泰氏

Graciaは以前Candleで働いていた斎藤氏を含む3人の東大生によって設立されたスタートアップ。今後ECが伸びていく一方で、ギフトECの領域では「ファッションにおけるZOZOTOWN」のような巨大なプレイヤーがおらず、ユーザーの課題もあるためこの領域で事業を展開することを選んだ。

現在のユーザー層は20〜40代が中心。インターネットを普段そこまで利用していないようなユーザーも一定数いるが、そういった層のユーザーも含めて「オンライン上でギフトを買う体験」をさらに広げていくのが目標だ。

「(今回調達した資金も活用しながら)まずはギフトの領域をもっと掘り下げて、ギフト市場での第一想起の獲得を目指していきたい」(斎藤氏)