ロシアのバスチケット比較サイト「Busfor」が2000万ドルを調達、東欧やアジア諸国へのさらなる拡大を目指す。

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個人所有のクルマによる配車サービスという分野でUberなどの企業がしのぎを削る一方、人を運ぶという分野には運ぶ人数がはるかに多いのにも関わらず、まだ古いビジネスモデルがそのままの業界がある。長距離バス業界だ。

ここまで言っただけでは笑われそうだが、私は「バス版のUber」というビジネスを話しているのではない。この業界がもつ複雑さはバスが家までやって来たとしても無くならない。そうではなく、それぞれのバス会社が単体で提供するルートよりも遠くに行くとき、この業界の複雑さがのしかかる。バスを乗りつぐ中距離や長距離の旅行を計画することは、ユーザーにとって非常に骨の折れる作業だ。バスの時刻表は会社によって別々に提供されていて、チケットを購入するプラットフォームはもちろん、価格もバラバラなのだ。

ベルリンを拠点とするGoEuroが1億4600万ドルを調達し、ヨーロッパ地域の鉄道、飛行機、バス、車での移動手段の比較し、それぞれの移動手段を組み合わせることができる検索ツールを開発したのも、おそらくこれが理由だろう。

しかし、より大きなディスラプションが起こる土壌ができているのは開発途上国のマーケットのようだ。なぜなら、バスが最も利用されている地域はそのような開発途上国のマーケットだからだ。

ロシアのマーケットが抱える問題に世界が注目するなか、モスクワを拠点とするBusforは静かにその仕事に取りかかっていた。

同社はロシア、東欧、アジア諸国のバスチケットの検索と購入ができるプラットフォームを提供している。どのようなチケット販売サイトにも対応しているため、バスの運用会社と競合することはない。彼らは企業と消費者の両方が使いやすいプラットフォームを提供しているだけあり、そこから得る手数料が彼らの収益となるからだ。

今回、BusforはロシアのPEファンドであるBaring VostokとElbrus Capitalの2社から2000万ドルを調達したことを発表している。

それと同時に、おなじくロシアを拠点とする既存投資家のInVenture Partnersも出資金額を引き上げている。これにより、今回の合計調達金額は2500万ドルとなる。

Busforは今回の資金を利用して国内向けビジネスを強化するとともに、新しいマーケットへの進出も目指す。2019年までにロシアのバスチケット販売において20%のシェアを獲得することが今後の目標のようだ。

同社の創業は2012年で、創業者は元レーシングドライバーのIIya Ekushevskiyと元デベロッパーのArtem Altukhovの2人だ。彼らがBusforを起業したのは、旧ソ連諸国ではどの交通手段よりもバスが利用されていることに気づいたことがきかっけだった。しかも、それらの国々で利用されているオンラインのチケット販売サイトはどれも酷いクオリティのものばかりだった。

同社のプラットフォームを利用することで、バス会社やバス停は簡単にバスチケットのオンライン販売ができるようになる。同サービスはロシア、東欧諸国、独立国家共同体(CIS)に所属する12ヵ国、タイで利用可能だ。Busforはこれまでに5000社のバス運営会社と提携を結んでおり、月あたりの利用ユーザー数は200万人だという。

同社の競合にはドイツのFlixbusとインドのRedBusなどがある。しかし、Busforのビジネスモデルはこの2社を組み合わせたものであり、それによりバス運営会社はより広いマーケットにアプローチすることが可能となる。その結果、運営会社は他社と競争するためにサービスのクオリティを高めなければならず、乗り心地のよいバスの購入などにもっと資金を回すようになるかもしれない。便利なプラットフォームだ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

建築デザイン向けのVRツールを開発するIrisVRが800万ドルを調達

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ニューヨークを拠点とするIrisVRがシリーズAで800万ドルを調達したことを発表した。

同社は建築デザイン業界向けのVRツールを開発する企業だ。同社が開発するIris Prospectは、3Dの建築モデルや設計図を仮想現実化するツールだ。そして、Oculus RiftやHTC Vive、GearVR、CardboardなどのVRデバイスを使うことでその建築モデルに入り込むことができる。IrisVRはIris Scopeというツールも開発している。これはパノラマ写真を仮想現実化して、それをスマートフォンで楽しむことができるというツールだ。

同社のプロダクトは現在βテスト中であり、年末には正式版がリリースされる予定だ。IrisVRによれば、同社のプロダクトは正式リリース前にも関わらず、すでに108ヵ国でダウンロードされているという。

本ラウンドのリード投資家はEmergence Capitalで、そこでジェネラル・パートナーを務めるKevin SpainがIrisVRの取締役に就任している。今回のシリーズAにはこの他にも、Indicator Ventures、Pritzker Group Venture Capital、Valar Ventures、Azure Capital Partners、Locke Mountain Ventures、Morning Groupも参加している。今回のラウンドを含め、IrisVRはこれまでに合計で1000万ドルを調達している。

CEOのShane Scrantonは資金調達を伝えるプレスリリースのなかで、IrisVRは新しいテクノロジーによって建築デザイン業界を変えると語る。「この業界を変えるようなVRアプリケーションが誕生しており、IrisVRのプロダクトもその1つです」とScrantonは話す。「単純に言えば、この業界におけるコミュニケーションの全体像を作り変えようとしているのです。建築デザイン分野で働く人々にとって、プロジェクトの見た目はとても重要です。IrisVRはその見た目に命を吹き込むのです」。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

バイオメトリック・データのセキュリティを強化するHYPRが300万ドルを調達

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もし自分のアカウントがハッキングされたとしたら、真っ先に頭に浮かぶのはパスワードをリセットすることだろう。セキュリティ設定を強化するかもしれない。そして、そのアカウントやアプリをその後も使い続ける。だが、もしハッカーに指紋や虹彩などのバイオメトリック・データを盗まれたとしたら?指紋や眼球を交換することはできない。

そこで活躍するのがニューヨークを拠点とするHYPR Corpだ。同社が開発するサイバーセキュリティ・システムを利用すればアルファベットと数字が並んだパスワードの代わりに、システムによって保護されたバイオメトリック・データを安全に利用できるようになる。

CEOのGeorge Avetisovによれば、HYPRのシステムではバイオメトリック・データをいくつかの場所に分散して保存し、かつそのデータを暗号化する。これにより、そもそもハッカーがそのデータを解読することは困難なだけでなく、データを盗むためには複数のデータベースを1つずつ攻略していく必要がある。

HYPRでは、ユーザーの指紋や顔の特徴などのバイオメトリック・データはユーザーのモバイル端末に少なくとも一時的に保存される。データはHYPRによって暗号化され、その後はそのバイオメトリック・データを直接利用する必要がなくなる。

銀行アプリで送金手続きを完了するためにユーザーの虹彩データが必要だとしよう。その場合、HYPRは銀行に対してその手続きの間でのみ有効なユーザーの身元証明用のトークンを発行する。そのため、銀行が顧客の虹彩を直接スキャンする必要はない。

「トークン化」と呼ばれるこのプロセスは、マイクロチップを搭載したクレジットカードでも利用されている。これが磁気テープ型よりもマイクロチップ型のクレジットカードの方が安全性が高いとされる理由だ。

HYPRはシードラウンドにて300万ドルを調達したことを発表した。早い段階からHYPRの顧客となった金融分野の企業だけでなく、今後はそれ以外の業界にも進出していく。

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HYPRの共同創業者の2人。CEOのGeorge Avetisovと、CTOのBojan Simic。

 

金融業界だけでなく、自動車業界や家電業界からの需用もあると語るのはCEOのAvetisovだ。

「パンをトーストで焼くためにパスワードを入力する必要があるとしたら、誰もそれを使いたがりません。また、ハッキングされる恐れのあるPINを使って家や車のドアを開けるのは得策ではありません」と彼は話す。「私たちの生活にIoTが浸透していく今、私たちはメーカーと共同して銀行のアプリと同じような安全性をすべてのデバイスに持たせたいと思っています」。

今回のシードラウンドにはRTP VenturesBoldstart VenturesMesh Venturesなどが参加している。

RTP VenturesのManaging DirectorであるKirill Sheynkmanは、かつてPlumtree SoftwareのCEOを務めたこともある人物だ。彼によれば、HYPRは今回調達した資金を利用してチームの強化を図るだけでなく、金融、生命保険、そしてIoT分野の企業との提携を模索していく予定だ。

「今の時代では、マーケティング、セールス、事業開発へのフォーカスを業界横断的に行っていく必要があると思っています」とSheynkmanは語る。

RTP VenturesがHYPRへの出資を決断した理由の1つとして、HYPRのプロダクトが今の時代に求められているものだからだとSheykmanは話す。サイバーセキュリティという分野でバイオメトリック・データが主流になりつつあるなか、HYPRはすでにこの分野で顧客を獲得しているだけでなく、しっかりとしたプロダクトをマーケットに送り出していると彼は主張している。

私たちのオフィスのドアに顔認証システムが導入されるのはまだまだ先だと思うが、iPhoneやGoogle Pixelには指紋認証システムがすでに導入されている。また、無数の銀行アプリにはユーザー認証に音声認識の技術が使われている(声紋認証システムとも言われる)。

Juniper Researchの推測によれば、バイオメトリック認証を利用するアプリのダウンロード数は2019年までに7億7000万回を超えるという。これは昨年の600万回という数字に比べ、約130倍だ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

オンデマンドで医療用大麻を届けるEazeが1300万ドルを調達、マーケットの拡大を目指す

SAN FRANCISCO - APRIL 20:  A marijuana user smokes from a bong during a 420 Day celebration on "Hippie Hill" in Golden Gate Park April 20, 2010 in San Francisco, California. April 20th has become a de facto holiday for marijuana advocates, with large gatherings and 'smoke outs' in many parts of the United States. Voters in California will consider a measure on the November general election ballot that could make the State the first in the nation to legalize the growing of a limited amount of marijuana for private use.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

昨年から急激に成長しつつある「医療用大麻のUber」、Eazeがマーケットの拡大を目指している。その足掛かりをつくるため、同社はシリーズBにてFresh VC、Doll Capital Management(DCM)、Tusk Venturesから1300万ドルを調達した。

2014年7月創業のEazeを利用すれば、オンデマンドで医療用大麻を注文することができる。創業からまもなく、医療用大麻の購入に必要な医師からの診断書を電話で取得できるというサービスを展開している。それにかかる時間は約10分だ。

同社によれば、カリフォルニア州各地にある100の都市で同サービスを利用することが可能で(その100都市のうち20都市がBay Areaにある)、これまでに合計で20万人以上のユーザーに大麻を提供してきたという。

Eazeは今回調達した資金を利用してチームの強化を図るのとともに、将来的なマーケット拡大を目指している。また、ユーザーの好みやニーズに合わせて医療用大麻の種類をおすすめする機能などを今後導入していきたいと話す。

しかし、Eazeにとってより大きな目標になるのが、カリフォルニア州とその他の州において医療用大麻のデリバリー企業としての地位を確立することだ。いくつかの州ではすでに大麻が合法化され、さらに9つの州で大麻の合法化に関する投票が11月に控えているという状況のなか、Eazeのブランドを確立することはとても重要になってくる。

カリフォルニア州は最大の医療用大麻マーケットだ。州の医療用大麻ライセンスを持っていれば合法的に大麻を服用することができる。しかし、すべての人に大麻を合法化するのかという点については以前として議論が続いている。もしそうなれば、Eazeのような医療用大麻の配達サービスにはさらなる利益が舞い込んでくるだろう。また、他の州でも大麻の合法化が進むにつれて新しいマーケットにサービスを拡大することが可能になる。

「大麻業界にとって、今が一番重要な時なのです」とCEOのKeith McCartyは語る。「大麻へのアクセス、安全性、そして専門性に関する新たなスタンダードを築きつつあるEazeのようなプラットフォームは、将来のマーケットを構成していく適任者であると言えます」。

Eazeのデータを重視したプラットフォームでは、医療用大麻を提供する薬局とそれを受け取るユーザーの両方がストレスなくプロセスを完了することができ、今後もプラットフォームの利便性を改善していくと同社は語る。この業界には成長のポテンシャルがあり、急速に大麻合法化が進みつつあることを理由にVCもこの業界に目をつけるようになったようだ。

「今年の市場規模は70億ドル、そして2026年までには500億ドルになると言われる医療用大麻マーケットにおいて、Eazeは驚くような早さで業界のトップに立つ存在となりました」とDCMのDavid Chaoは語る。DCMはシードラウンドからEazeに投資するVCだ。

Eazeは医療用大麻のデリバリーという分野の先駆けとなった企業の1つだ。同社はこれまでに合計で2500万ドルを調達している。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

 

小規模ビジネス向け配送サービスのWeengsがLocalGlobeなどから270万ドルを調達

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小規模の小売店やオンラインショップ向けの配送サービスを展開するイギリスのWeengsが220万イギリスポンド(米ドル換算で約270万ドル)を調達した。同社のサービスを利用すれば手間のかかる商品の配送を一手に引き受けてくれる。ロンドンでサービスを展開する同社は、今回調達した資金を利用して他のヨーロッパ諸国への事業拡大を目指す。

今回のシードラウンドにはRobin KlevinとSaul Klevinが率いるLocalGlobe、Seedcamp、ドイツのCherry Ventureなどが参加している。その他にも、匿名のエンジェル投資家が数名と、ギリシャを拠点とするVCであるVentureFriendsも本ラウンドに参加した。2015年7月創業のWeengsは、これまでにエンジェル投資家などから1万7500イギリスポンド(約2万1300ドル)を調達している。

Eコマースの商品配送という点にフォーカスし、それにかかる手間と時間をできるだけ省くことを目指すWeengsは、スマートフォン・アプリを通じてパッケージングおよび配送サービスを提供している。アプリの利用はとてもシンプルで、商品の写真を撮り、配送先の住所を入力し、最後にピックアップを頼むだけでいい。

すると、1時間も経たないうちにWeengsの「エンジェル」たちが商品を受け取りにやってくる。「エンジェル投資家」と間違えそうな名前だが、投資家である彼らがこのように自分の手を汚すことなどないだろう。商品を受け取ったエンジェルは、Weengsが所有する商品管理用の倉庫にその商品を届け、そこで専門のスタッフが商品を梱包する。梱包に使われるのはカスタマイズされたパッケージだ。

パッケージ済みの商品は最終的にWeengsと提携するRoyal Mail、DHL、DPDなどの配送業者によって配送される。Weengsの利用料は1回のピックアップにつき5ポンド(約6ドル)で、それに配送料が加わる。

Weengsの共同創業者であるGreg Zontanosは、「小規模の小売店やオンラインショップが頭を抱える問題は商品のパッケージングと配送です。彼らには大企業のようにハイクオリティな配送サービスを展開できるだけのリソースや経験がなく、そのせいで商品の到着が遅れたり、梱包が不十分で商品が傷ついてしまったりといった問題が発生してしまいます。だからこそ、私たちは大規模な配送サービスを手ごろな料金で提供しているのです」と話す。

「まだ梱包されていない状態の商品をユーザーの店舗や自宅まで取りに行き、専門のスタッフが自社製のパッケージで商品を梱包し、信頼のおける配送業者が格安な料金で商品を配送します。これにより、当日配達が可能になるだけでなく、丁寧に梱包された商品を傷ひとつない状態で顧客に届けることができます。そしてユーザーは時間とお金を節約できるのです。また、Weengsは国際配送にも対応しており、カスタマイズされたパッケージングと配送サービスを低いコストで提供し、面倒な税関手続きを代行することで、ユーザーはより大きな市場にもアプローチができるようになるのです」。

Weengsの収益モデルは優れたものになる可能性がある。同社の収益となるのは配送する荷物の数に大きく左右される利用料金と配送料だけではない。大量発注によって価格が下がった配送コストと、実際にユーザーから受け取る配送料金との差額もWeengsが得るマージンとなるのだ。もちろん、このビジネスモデルを機能させるためには事業規模を拡大していくことが最も重要となるだろう。

そのため、Ebayで何度も商品を販売する人や、Trouvaに掲載されているようなブティック洋品店などがWeengsの典型的なユーザーだ。「このようなショップを運営しているのは1人か2人の個人であり、彼らが8時間以内などというように制限された時間のなかで、商品を梱包するパッケージを探したり、実際に梱包したり、パッケージに貼るラベルを購入したり、郵便局に並んだり、在庫を調整したりといった作業をこなすのは難しいのです。Weengsを使えば、彼に必要なのは写真を撮り、配送先の住所を入力し、ピックアップを要請するのに必要な時間だけなのです」とZontanosは語る。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

VCマネーの過剰接種:71社のIPOから学べること

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編集部注: 本稿はFounder Collectiveのマネージング・パートナーであるEric PaleyとJoseph Flahertyによって執筆された。

 

ベンチャー・キャピタルは劇薬だ。適切に利用すれば、過去50年間そうであったように、素晴らしい企業を元気づけるアドレナリンのような働きをしてくれる。不適切に利用すれば、有害な依存症を引き起こす。

スタートアップのコミュニティに浸透している社会通念とは、素晴らしい企業がより大きな資本を活用することで成長を加速させることができるというものだ。しかし、この「どでかくやるか、家で寝てるか」というアプローチは、緻密な調査にも耐えうることができるのだろうか?すべてが理想的に進んだ場合、VCマネーを豊富に蓄えた企業は限られた資本を効率的に使う企業よりも本当にパフォーマンスが優れているのだろうか?その答えを見つけるため、私たちは過去5年間に新規上場した71社のテック系スタートアップを対象に調査を実施した

「Efficient Entrepreneurship」

Founder Collectiveでは、「効率的アントレプレナーシップ(Efficient Entrepreneurship)」と呼ばれる美徳について話し合ってきた。最近、私たちはスタートアップが豊富な資本を抱えることのデメリットを伝えるレポートを発行している。そのデメリットには、エグジットの選択肢が制限されることや、不安定なバーンレートを引き起こす危険性などが含まれる。しかし、積極的な資金調達の良い面として考えられるのは何だろうか?VCの成功例を調べることで、多額の資金調達をすることの意義について私たちは何を学べるのだろうか?

調査結果は驚くべきものだった。過去5年間のテック系スアートアップのIPO事例を調べることで分かったのは、IPO以前のパフォーマンスを比べてみても「富める者(豊富な資本をもつ企業)」が「貧しき者(限られた資本しかもたない企業)」をアウトパフォームすることはなかった。それどころか、IPO後のパフォーマンスを見てみると実際には富める者のパフォーマンスの方が悪かったのだ。

巨額の資金調達は「ユニコーン企業」という称号を受け取るための必要条件だ。しかし、テクノロジー業界の成功例を調べてみると、豊富な軍資金が成功と正の相関を持つわけではないことが分かる。

公開株式市場で取引されているスタートアップの上位20社(現時点の時価総額が高い順に選出)を見てみると、合計で1億ドル前後の資金を調達した企業は14社だった。5000万ドル以下を調達したのは6社であり、そのうちの1社は資金調達を行ってすらいない。非上場のユニコーン企業が調達した金額の中央値が2億8400万ドルであることを考えれば、この数字は驚くべきものだ。

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調査手法

スタートアップのパフォーマンス計測は厄介な作業だ。当然のことながら、レーターステージの企業は情報をあまり開示していない。企業が買収されていた場合、より厄介なことに実際の買収金額が不明瞭になるように考慮されていることが多い。IPO市場のデータは他に入手可能な数字のなかでも最も透明性の高い価値尺度である。不完全なデータではあるが、そこから学べることは多い。例外はあるものの、ベンチャー・キャピタルが獲得する成果の大部分はIPOから生まれるリターンなのだ。過去5年間のIPOとベンチャー・キャピタルとの関係性を調べることで、優秀な企業に多額の出資をすることが良いリターンを生むのかどうか調べることができる。

データ10-14-efficient-entrepreneurship-master-stats-all-companies-founder-collective

  • 調査対象である71社の資金調達額の合計は102億ドル。
  • 71社合計の時価総額は5660億ドル。つまり、総投資金額の55倍。
  • 71社合計の調達金額の平均は1億4400万ドル、時価総額の平均は79億ドル。
  • 71社合計の調達金額の中央値は7900万ドル、時価総額の中央値は18億ドル。

Facebookを除外する

この世にFacebookという会社は1社しかなく、その1社がもつ数字が極端な異常値であることを理由に、私たちはFacebookを本調査から除外することにした。Facebookを除外した後も統計結果は以前として素晴らしいものであるが、たった1つの企業がこれほどまでに全体のデータを歪めていたことには驚かされるばかりだ。

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  • 調査対象の70社の資金調達額の合計は96億ドル。
  • 70社合計の時価総額は2020億ドル。つまり、総投資金額の21倍。
  • 71社合計の調達金額の平均は1億3700万ドル、時価総額の平均は28億ドル。
  • 71社合計の調達金額の中央値は7900万ドル、時価総額の中央値は18億ドル。

調査対象

本調査の対象となる企業は、2011年から2015年のあいだに新規上場をした企業とする。5年以上さかのぼった調査結果も興味深い物ではあるが、非公開企業が前代未聞の資金額を調達する「ユニコーン企業の時代」と呼ばれた時代に焦点をあてて調査することで、そこから私たちが学べることも多いだろう。また、本調査では2000年以前に創立された企業(GoDaddy、FirstDataなど)、通常とは違った資金調達方法をとってきた企業(Match Group、RetailMeNot)、欧米とはまったく異なる金融市場をもつアジア諸国、およびロシアの企業を除外している。71社を対象とした調査結果のデータセットはここで公開している。いくつかの例外を除き、データの大部分はCrunchbaseから取得している。

レーターステージのプライベート・エクイティ、セカンダリー・オファリング、借入金に関しては、スプレッドシート上には掲載しているが調査結果の計算からは除外している。また、私たちはIPOによって調達した資金にはあまり注目していない。その資金はベンチャー・キャピタルゲームの終点であり、企業の規模がその調達額の大小を決める最も大きなファクターであるからだ。できる限りの注意を払ってデータを集めてきたものの、データセットには以前として不完全な部分は残っている。データセットへのフィードバックは大歓迎であり、それがデータセットを公開している理由だ。

「Big VC」にとってのベスト・シナリオ

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データを見てみると、「どでかくやるか、家で寝てるか」というアプローチは特に投資家サイドにとっては機能しているように思われる。多額の資金を調達した企業群は、ドルベースで見れば確かに大きなリターンを生み出している。調達額の上位20社は合計で67億ドルをVCから調達し、時価総額は20社合計で620億ドルだ。つまり投資金額の約9倍のリターンを生み出したことになる。

下位20社のデータを見てみると、VCからの資金調達額は合計で6億2300万ドルだ。しかしながら、時価総額の合計は480億ドルであり、これは投資金額の77倍のリターンを生み出したことを意味する。

リターンの絶対額だけをみると、その違いは140億ドルだ。VCにとってこの差はささいな数字ではない。しかし、調達額が10億ドルに少し満たない程度だったTwitterを除外してみると、140億ドルの差のうち120億ドルがその1社によって生み出されていたことが分かる。つまり、FacebookとTwitterを除いて考えてみると、VCは20億ドルのリターンを得るために約50億ドルを費やしたことになるのだ。株式市場の変動は激しく、この記事の執筆中も、調達金額上位20社の時価総額は大きく変動していることは留意しなければならない。しかし、そうだとしてもその変動は1社か2社の異常値によって引き起こされることが多いのだ。

毎年多くの企業が誕生するなか、そのうちの数社によって多額のリターンが生まれることは確かだ。また、そのような異常値(FacebookやTwitter)が生まれた場合には、その企業に最も多く賭けていた投資家が勝つことも事実だ。しかし、VCが常にそのような企業を見つけられるとは限らず、たとえその企業が優秀であったとしても資金を必要以上に投入してしまっているということも考えられる。

これはVCモデルの根底を揺らがすものではない。VCはリスクを伴うものなのだ。ハイリスクな状況下であっても、本当に優秀なVCはいくつものファンドを成功させている。

しかし、起業家はこの結果から学ばなければならない。FacebookやTwitterといった企業はエコシステム全体にとって無くてはならない存在だが、すべてのスタートアップに彼らのモデルが当てはまるわけではない。次なるFacebookを生み出すことができると確信している場合は別として、起業家がフォーカスすべきなのはIPOによって生み出される金額の絶対値ではなく、収益率なのだ。

VCにはポートフォリオがある一方、起業家に与えられたチャンスは(一回の起業につき)一度きり

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VCは何度失敗したとしても、一度のホームランでその損害を取り返すことが可能だ。しかし、起業家に与えられたチャンスは一度きりである。起業家にとって、最良のケースでも24%しかないプレミアムを得るために4倍以上のリスクをとる価値があるだろうか?実際はどうだったのか調べてみると、資金調達上位の企業はそのプレミアムを得るためにリスクをとっていた:

  • 「富める者」が調達した金額の中央値は1億9300万ドル、時価総額の中央値は21億ドル
  • 「貧しき者」が調達した金額の中央値は3700万ドル、時価総額の中央値は17億ドル

しかも、起業家が実際に受け取るリターンはこの数字よりも悪い。数度にも及ぶ資金調達は起業家の持ち分比率を希薄化させるだろう。それに、スタートアップの快進撃が止まって結局IPOまで辿りつかなかった場合には、IPO以前に発行された優先株はVC側に有利に働くことになる。そのようなリスクがあるということ以上に、多額の資本をもつことはエグジット時の選択肢を狭めることになる。資本が少ないスタートアップの創業者たちは、満足のいくリターンを得られるのであれば、いつでも事業を売却することができる。その一方で、多額の資本を抱えるスタートアップの創業者たちは、エグジットすることで何十億ドルものお金を生み出さなければならず、しかも投下された資本が増えるごとに収益率は逓減していく。

これはVCにとって本当に最良のモデルなのだろうか?

VC業界に浸透する社会通念とは、投資家は勝ち組企業により多くの資金を投資するべきだというものだ。だが、リターンが逓減していく勝ち組への投資金額を抑える一方で、その分を10倍、20倍、30倍のリターンを得る可能性のある他のスタートアップへの投資にまわしたほうが良いのではないか?

ダビデ vs ゴリアテ

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極めて少ないサンプル数ではあるが、2億ドル以上を調達した企業(このサンプルでは9社)とリストの下位にいる同じ数の企業を比べてみよう。結果は驚くべきものだった:

  • 「富める者」は5億6700万ドルを調達し、その6倍となる35億ドルのリターンを生み出した。
  • 「貧しき者」は1290万ドルを調達し、その218倍となる28億ドルのリターンを生み出した。
  • 「富める者」は「貧しき者」の44倍の資金を調達したが、そこから得たリターンは「貧しき者」の1.25倍である。

少ない資本 = 良い企業?

新規上場時のスタートアップの市場価値は重要な指標である。その価値はベンチャー・キャピタルにとってリターンの源泉だからだ。しかし、上場して公開企業となった「富める者」と「貧しき者」を比較してみるのもおもしろい。「貧しき者」はVCから調達した資金によってではなく、徹底した顧客獲得戦略によって企業を成長させなければならない。企業をそのような状況下に置くことは、よりサステイナブルなビジネスを構築することにつながるのだろうか?

IPO以降の「貧しき者」と「富める者」を比べてみた結果、「貧しき者」のパフォーマンスの方がはるかに優れていた:

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極めて少ないサンプル数ではあるが、2億ドル以上を調達した企業(このサンプルでは9社)と、リストの下位にある同じ数の企業を比べてみよう。結果は驚くべきものだった:

  • IPO以降、「貧しき者」の株価は89%上昇した。
  • 同期間における「富める者」の株価は22%しか上昇していない。

この結果に対する私たちの仮説は、必要以上に資本をもつ企業では、クリエイティビティや経営上の規律よりもその豊富な資本に頼ってしまう企業カルチャーが生まれるのではないかというものだ。大きなバランシートをもつ企業はたとえ非効率であっても成長できてしまう。なにか問題が生じた場合、価値の創造というスタートアップのコア・エンジンによって問題を解決するのではなく、豊富な人員と資金によってその問題をカバーしてしまうのだ。一方で、資本をもたない企業は早い段階から難しい決断を迫られ、切らなければいつまでも残ってしまう経営のムダを省こうとする。「貧しき者」がもつ、効率性を追求する精神はやがて高いパフォーマンスを生み出す企業カルチャーとなる。効率的な経営の仕方を知らない「富める者」が同様の企業カルチャーを育てあげるのは困難だろう。

これに対する主な反論として、「富める者」はIPOの時点ですでに高いバリュエーションをもっており、しかもそのバリュエーションは公開市場の投資家によってではなく、非公開市場の投資家によって決められたものだというものがある。この反論は正しいかもしれないが、起業家やVCはこの反論自体が示唆していることを考慮しておかなければならない。つまり、IPO以前から多額の資本を抱えるユニコーン企業に対して、公開市場の投資家は相当な割引率を適応しているということだ。

正の相関があるべきではないのか?

この調査結果がどれだけ驚くべきものなのか、深呼吸してもう一度認識する必要がある。VC業界で広く信じられている仮説とは、最良のシナリオにおいては、より多くの資金を投入すれば企業の成長をより加速させることができるというものだ。真の勝ち組企業には「過剰な資本」という言葉など存在しないと主張する人もいるだろう。結局そのような企業は投下された資本を再投資して、彼らの企業エンジンをさらに加速することができるという主張だ。企業に資本が注入されることで、ビジネスの原動力である人材やR&Dなどへの投資が可能になる。直感に従えば「富める者」が「貧しき者」よりも有利な立場にあると考えるのは当然のことだ。

もしそれが本当だとすれば、資本量と成長との間にある正の相関をこのレポートで示し、その相関を引き起こす要因となっているのがVC業界なのだろうという推測を立てていてもおかしくはない。言い換えれば、成功する企業は多額の資金調達がしやすい企業であるということを考慮に入れながら(原因と結果の関係が不明瞭な相関関係)、多額の資本が果たして本当に成功を引き起こしているのかという因果関係について考察するのがこのレポートの目的だっただろう。

驚くべきことに、データはその正の相関が存在することを示してはいない。パフォーマンスが優れている企業ほど多額の資金を調達しやすいにもかかわらず、パフォーマンスと資金の調達額とのあいだに正の相関は見られなかったのだ。

数社の例外を除き、多額の資金を調達をしたからといって高いパフォーマンスを発揮するわけではなく、IPO以降の株価のパフォーマンスを比べてみると、実際には多額の資本をもつ企業のパフォーマンスの方が悪い事ことが分かった。確かに、VCは「異常値」を探しだすビジネスであり、ボラティリティを前提とする職業だ。しかし、「富める者」が「貧しき者」よりも高いパフォーマンスを出していないところ見ると、たとえ優秀な企業であってもどこかの時点で投下資本に対するリターンが逓減してしまうことが分かる。データが示すのは、VCがリターンが逓減していく分岐点を知るのは難しいということだ。VC業界に伝わる格言のなかに、毎年多くのスタートアップが誕生するなかで、本当に重要なのはそのうちの15社だけだという格言がある。資金を企業に投入することがVCの仕事だとしよう。そのうえでVCの格言が本当に正しいのか調べてみると、実際にはその「本当に重要な企業」は過去5年間においてたったの2社しか存在しなかったことが分かる。勝ち目のない戦いだ。

企業買収の場合はどうか?

データを見てみると、時価総額上位20社のなかで資金調達額が1億2500万ドル以下の企業は15社だった。(この計算にはWayfairのデータも含まれている。同社は創業後10年間は資金調達を実施しておらず、どちらかというとレーター・ステージにおけるプライベート・エクイティ投資に近い形で資金を調達している)。Four、Atlassian、shutterstock、Textura、SkullCandyにいたっては資金調達をまったく実施していない。SplunkとPalo Alto Networksの調達金額を合計すると約1億500万ドルであり、この2社の時価総額の合計は約200億ドルだ。GrouponとZyngaは1億ドル以上もの資金何度も調達しており、この2社の調達金額を合計すると約20億ドルにもなる一方で、時価総額の合計は50億ドル以下だ。

この分析が不完全なものであることは承知している。2015年に上場した企業のなかには上場後1年未満の企業もおり、1年分の決算資料がまだ出揃っていない企業もある。また、たとえVCマネーを豊富にもつ企業であったとしても、もっと長期的な目線で見れば高いパフォーマンスをあげるという可能性もある。それでも、このデータはVCと起業家に重要な示唆を与えるものだ。ユニコーンの時代には時代遅れのことを言うようだが、5000万ドルかそれ以下の投資で何十億ドル規模の公開企業を生み出せる可能性はとても高く、そして恐らくはそれが賢いVC投資のあり方なのだろう。

資金調達額は虚栄の指標

製品戦略、マーケティング戦略、人事戦略などと同じように、資金調達は企業の戦略的なオプションの一つである。それゆえ、資金調達を行うべきなのかどうか、事前に慎重な検討を重ねる必要がある。だが残念ながら、起業家は日和見的に資金調達を実施する傾向があり、さらに悪いことに、彼らのプライドや間違ったバリデーションを理由に資金調達が実施されることもある。

経営が順調であれば、資金は勝手に近づいてくる。資金調達ができるということは喜ばしいことであるし、大きなバランスシートを持つことは時として良いことだ。しかし、それがエグジット時の選択肢を狭めてしまうのも事実だ。企業とって資本とは、最大の制約でもなければ、最大のチャンスでもないのだ。彼らにとって何よりも悪いニュースなのは、バランスシートが企業の長期的なパフォーマンスを支えるのには限界があるとデータが証明していることだ。データをよく見てみると、多額の資金を調達してきた「富める者」のパフォーマンスが悪いことは確かだが、それでも現存するユニコーン企業は彼ら以上の資本を抱えていることが分かる。「富める者(データ中の時価総額上位20社)」の非公開市場での資金調達額の中央値は1億9300万ドルだった一方で、ユニコーン企業2億8400万ドルだ。しかも、ユニコーン企業は非公開企業であることから上場するまでにさらなる資金調達があってもおかしくはない。

私たちは企業に自給自足を勧めているわけでもなければ、のろのろとした成長を奨励しているわけではない。VCからの資金の申し出には「ただNOと言っておけ」と主張しているわけでもない。だって、私たちもVCなのだから。資金調達をまったく実施しなくても成功を収めた企業がいることは確かだが、それはとても珍しいケースだ。誰にも頼らずにスタートアップを創りあげたからといってボーナスポイントが貰えるわけではない。

起業家はみな同じように野心をもって企業を立ち上げ、みな同じように成功を渇望している。それは「貧しき者」も「富める者」も同じだ。「貧しき者」はただ効率的に事業を運営してきただけだ。何十億ドル規模のグローバル企業をつくりあげるために「貧しき者」がとったリスクは「富める者」よりも非常に少なく、かつ企業の持ち分も多い。この調査によって新たに分かったのは、資本の制約は企業に悪い影響を与えるわけでなく、逆に良い影響を与えるということなのだ。

これはVCに対する宣戦布告ではない。起業家への祝辞なのだ。

かつて、人々はゼロから何かを創り出すという起業家精神の神秘性に魅了されていた。しかし今では、まるで銀行のようにVCから多額の資金を調達する起業家が賞賛される時代となった。この状況は健全ではなく、変えていく必要があると私たちは思う。スタートアップ市場に大量の資金が流れ込んでいる一方、起業家が成功するために多額の資金を調達する必要はなく、少ない資本がより良いパフォーマンスにつながることが調査結果から明らかになった。それでも、今日の起業家の多くはそれとは逆のアプローチを取ろうとしているのだ。

私たちが批判しているのはVCマネーそのものではなく、VCマネーの非効率な使い方である。VCは多くのスタートアップにとって成功の原動力ではあるが、追加的に多額の資金を調達することを正当化できることはほとんどない。薬と同じように、VCマネーも服用すべき時と場合があり、それが持つ副作用には注意する必要がある。

私たちのポートフォリオには、大きな資本をもつ「富める者」も、ガソリンの匂いだけでエンジンを動かしているのかと思うほど効率的な「貧しき者」もいる。私たちが彼らに与えるアドバイスは同じだ。もし、追加の資金調達が不可能で、銀行口座に残っている資金が最後の資金だとしたら、あなたはどのように経営の仕方を変えるべきか?この答えまでたどり着くことができたとすれば、億万長者への入口はすぐそこかもしれない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

 

Furlencoが3000万ドルを調達、インドのミレニアル世代に広がる家具レンタルサービスの利用

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近年、アメリカ経済の所有に関する概念が大きく変わり、以前はモノを所有するということに重きが置かれていたのを忘れてしまうほどだ。振り返って考えてみると、ほとんどの人は、両親とAirbnbやUberについて話した後に、他人のモノを使うことの危険性に関して諭されたことが一回はあるだろう。

インドに本社を置くFurlencoでCEOを務めるAjith Mohan Karimpanaは、モノの所有に関するミレニアム世代の価値観や優先順位について、インドでも同じような考え方の変化が起きていると説明する。端的に言うと、彼らはモノを所有することに全く興味を持っていないのだ。インドのミレニアム世代は頻繁に旅行をしてチャンスを探し求め、無機質なモノを所有するよりも経験を重視している。

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アメリカと同様にインドでも若者の動きに反対する意見が出ているが、もともとゴールドマン・サックスに勤めていたKarimpanaは、将来有望な若者に”モノ”という重荷を負わせないために、そもそもモノを購入しなくてすむようなサービスを提供するFurlencoの設立にこぎつけた。Furlencoは手始めに家具のレンタルサービスに注力しているが、Karimpanaはこれが終着点とは考えていない。

そしてFurlencoはこの度、大型の資金調達を完了したと発表した。総額3000万ドルにおよぶ調達資金のうち、1500万ドルはLightbox VenturesとAxis Capitalをはじめとする投資家からエクイティで調達され、残りの1500万ドルが銀行やノンバンク、個人、ファミリーオフィスからの借入で調達された。アメリカでは調達金額がこのレベルに達するとプロダクトマーケットフィットを意味するが、インドではこの金額はもっと大きな意味を持っている。1500万ドルという金額の借入はインドでは珍しく、これはKarimpanaが消費者の行動を正しく理解しているというだけでなく、レンタルモデルが本当に儲かるビジネスだということを表している。

ここで誤解してほしくないのだが、Furlencoを家具のAirbnbと呼ぶのは間違っている。Furlencoは、インドの家具市場の上流でディスラプションを起こすに足りるAirbnbの精神を持った、Jonathan Ive(アップルのチーフ・デザイン・オフィサー)とIkeaの間の子ような存在だ。実際に同社は、より良い家具を作るべく多数のデザイナーを雇用している。そしてそれぞれの家具は、長い間使えるように、修繕がしやすい無垢材をたくさん使って作られている。

他の世代の人たちは、ミレニアル世代の何でも欲しがる性格をよくからかうが、Karimpanaはこの特徴を頭痛の種ではなく、チャンスとして捉えている。現在Furlencoのチームは、高品質なリクライニングチェアーを作っており、これは見た目に美しいだけではなく、携帯電話よりも簡単に別のものと交換することができる。部屋の雰囲気に飽きたら家具を交換すればいいし、給料の良いテック系の仕事をみつけ、バンガロールからプネーに引っ越すときも家具を交換すればいいのだ。この仕組みは、人生の節目で計画が変わる度に使っている家具を売って新たな家具を購入するよりも安く、そして簡単に家具が変えられるようにするために作られたものだ。

「必要だから借りるのではなく、借りたいと思えるものを借りるべきです」とKarimpanaは語る。

float-1これまでに1万5000世帯へ2000万ドル分の貸し出しを行っていることから、Furlencoの狙いは当っていると言っていいだろう。そしてこの急速な成長にも関わらず、家具の使用率は95%以上を保っている。つまり、利益を圧迫する原因となる使われていない家具をしまっておくための大きな倉庫は、Furlencoには必要ないのだ。

他の経営者の逸話のように、Karimpanaのアイディアは30〜40社のベンチャーキャピタルに断られ、最終的に1社だけが興味をもってくれたと彼は説明する。その証拠に、FurlencoのシリーズAのクローズには一年以上かかった。結局、Lightbox Venturesが、このコスト集中型のビジネスモデルに賭けることにしたのだ。

自社で家具のデザイン・製造を行うのにはお金がかかるが、借入には役立つ。というのも、Furlencoは実質的に物理的な担保のある金融商品なのだ。さらにKarimpanaは、サブスクリプションモデルのおかげで、Furlencoの売上予測は立てやすいと言う。一般的に家具の回転率は低く、Netflixユーザーなどに比べて、家具の購入を検討している人は、その家具を購入することで得られる価値をかなり現実的にみているのだ。 work-from-home-1

レンタルサービスから成り立つ生活スタイルを試してみようと思っているが、自分の好みにあった家の雰囲気を作りだすほど十分な選択肢がないのではと心配している人がいれば安心してほしい。Karimpanaは、クォーター毎に1、2種類の新しい家具を市場へ送り出すというアグレッシブな計画を立てている。さらにKarimpanaは家具と電子機器のつながりにも何か考えをもっているようで、今後Furlencoが他の革新的なレンタルサービスを提供していく中で、その考えが具現化していくのを見るのが楽しみだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Joyが250万ドルを調達、離れた家族とも写真が共有できるフォトフレームを販売開始予定

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ポジティブな気持ちで溢れたハードウェアスタートアップのJoyは、同社にとって初の製品となるJoy Albumを本日発表した。Joy Albumは、同社が一から開発したインタラクティブなデジタルフォトフレームだ。さらにJoyは、シードラウンドでObvious VenturesやThe Chernin Group、BoxGroupMaywic Select Investmentsなどから250万ドルを調達した。

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タブレットのような形をしたJoy Albumは、一見するとTargetやBest Buyなどの家電量販店で、私たちの親世代を対象に販売されている初期のデジタルフォトフレームのように感じる。しかし、この製品のターゲットは親ではなく、むしろJoyは親が私たちのような世代の人のために購入することを想定している。

CEOを務めるAlan Chanは、妻との彼自身の経験からJoyのアイディアが生まれたと説明する。ふたりは普段、さまざまなデバイスで家族写真を撮っていたが、それぞれが撮った写真を見るために互いをせかさなければならなかった。

13.3インチのディスプレイを備えたJoy Albumには、ワイヤレス充電器が同梱されており、比較的短い5時間という電池の持ちを補っている。Appleの商品からヒント得たJoy Albumには、外部接続用の端子は準備されていない。また、内蔵されたスピーカーを使ってビデオを再生できるほか、リアルタイムのストーリーテリング機能も備えている。この機能を使えば、離れた場所にいる人同士でも、Joy Album上で一緒に写真を見ながら語り合うことができるのだ。さらにJoyは、写真をアップロードするためのウェブ・モバイルアプリも準備している。ユーザーは10GBの無料ストレージを使って、Joy Albumに直接写真をアップロードできるほか、特別アカウントへ写真をメール送付すれば、出先からでもすぐに自動で写真を共有できる。

Joy Albumの欠点として、アーリーアダプターはこの素晴らしいデバイスを299ドルで購入できる一方、最終的な小売価格は499ドルまで上がる予定だ。iPadよりは安いものの、ひとつの機能しか備えていないデバイスとしては多少高く感じる。

スマートフォーンの機能の一部を取り出してユニークな製品つくり出した企業は、Joy以外にも存在する。ニール・ヤングの開発したPonoPlayerは、スタンドアローンの音楽プレイヤーとして、音楽の楽しみ方を変えようとしたが失敗に終わった。ランニングの際に大きなスマートフォンを携帯したくないというアスリートのために開発され、GPSと音楽再生機能を備えたランニング補助機器のPebble Coreについては、これから市場によって判断が下される。どちらのデバイスも、スマートフォンほど日常的に携帯されることはないが、そこだけを判断基準にする必要もない。

joy-ios-appAuraという別の会社も、デジタルフォトフレームのAura Frameを販売している。Aura Frameでは、一定の条件をもとに写真が自動でセレクトされ、高品質の写真だけが表示されるようになっている。399ドルの同製品には、無制限のストレージもついてくる。Chanは、Aura Frameと似たような機能をJoy Albumにそのうち取り入れる可能性を否定していないが、しばらくの間はユーザーの要望や複数の人が直接一緒に写真を楽しむために必要なポイントに沿ってデバイスを改良していくことに注力するつもりだ。

本質的にパーソナルなデバイスとしてのスマートフォンにはさまざまな利点がある。Joyはこの前提を良く理解しており、ある人が友人にスマートフォン上に保存された何かを見せる際に、わざわざプライベートメールや文書、写真、IoTデバイスへのアクセス権などが詰まったデバイスを手渡さないで済めば便利なのではないかと考えたのだ。そしてJoy Albumは、常に家の中にあるパブリックなデバイスのため、今まで起こり得なかったような新たな交流の形が誕生する可能性もある。

誰かがあなたの携帯電話を掴み取ってアルバムをスクロールしだしたら、プライバシーを侵害されたと感じるだろう。対照的に、自分で選び抜いた写真をJoy Albumにアップロードしておいて、写真を見た誰かの顔に笑みがこぼれていれば、イラつくよりも嬉しく感じる可能性の方がずっと高い。さらにJoy Albumを使ううちに、写真を携帯電話で送り合ったり、ソーシャルメディア上にアップロードしたりするだけでは得られない、親しいたちと一緒にアルバムを眺めるようなノスタルジックな気持ちを取り戻せるかもしれない。全てが予定通りにいけば、2017年の夏頃にはJoy Albumの出荷が開始される予定で、現在Joyのウェブサイトではプレオーダーを受付けている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

「VRでより豊かなストーリーテリングを」Baobab Studiosが2500万ドルを調達

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ユーザーを熱狂させるバーチャル・リアリティのコンテンツは沢山あるなか、結局のところ、素晴らしいコンテンツとはユーザーとの感情的なコネクションを持つコンテンツのことだ。

Baobab Studiosが目指すのは、単にVRで目新しいものを創るということではなく、VR独自の豊かなユーザー体験を利用して、ユーザーから愛される(そして嫌われる)キャラクターを生み出すことだ。

本日、Baobab StudiosはシリーズBにおいて2500万ドルを調達したことを発表した。リード投資家はHorizon Venturesで、他にもTwentieth Century Fox、Evolution Media Partners、中国のShanghai Media Group、Youku Global Media Fund、LDV Partnersも本ラウンドに参加している。同社はこれまでに合計で3100万ドルを調達している。

今回のシリーズBはVRスタジオが1回のラウンドで調達した金額としては最大級の調達金額だ。共同創業者兼CEOのMaureen Fanはこの規模の資金調達が可能になった理由として、生まれたばかりのVRプラットフォームという分野に人々の関心が集まり続けていること、そして、同社はVRのストーリーテリングという側面にフォーカスしており、VRの存在に危機感をもつハリウッドからの支持を得ることができたことが要因だと語っている。

先月Baobab Studiosに関するニュースが大きく取り上げられたことがあった。同社が開発する6分間のVRアニメ「Invasion!」が、ハリウッドの映画プロダクションRoth Kirschenbaumによって長編アニメ映画化されることが決定したためだ。

Baobab Studioは映画業界からだけでなく、VR業界からも注目を集める存在だ。

ユーザーから人気を集めるVRヘッドセットGear VRの開発元であるSamsung、そして同じく人気のあるViveを開発するHTCもBaobabに出資する企業の1つだ。先週発売されたソニーのPSVRでもBaobabは広告塔のような役割を果たしている。すべてのPSVRに付属するデモディスクで彼らのVRアニメ「Invasion!」を観ることができるようになっているのだ。また、今月開かれたデベロッパー・カンファレンスのOculus ConnectではFanが登壇し、Baobabの最新プロジェクト「Asteroids!」を発表した。

現在20名のチームを抱えるBaobao Studiosは事業の拡大にともない役員メンバーの強化を図っており、PixarとDreamworksで役員を務めたLarry Cutlerが同社のCTOに、そしてWithinのCEOであるChris Milkが顧問役に就任している。

これまで色々と言われてきたコンシューマー向けVRプラットフォームであるが、先週PlayStation VRがローンチを果たしたことで、そのほとんどがマーケットに出揃ったことになる。ハードウェアを消費者の元に届けていくことがこれから重要なのは言うまでもない。だがそれだけでなく、VR独自の強みが生きるようなコンテンツを提供し、なぜVRを買うべきなのかということを消費者に理解してもらうことが今後の最も大きな課題となるだろう。

Baobab Studiosも、それが同社をさらに成長させるための鍵になると考えている。

「ストーリーがまず重要であり、テクノロジーはそのストーリーを支える存在であると確信しています」とFanは語る。

ストーリーテリングにフォーカスするという考え方がメディア界の投資家の心を掴んだ一方で、従来のテック投資家が注目するのはBaobabが開発する「コア・テクノロジー」だ。Fanはその詳細について多くを語らなかったものの、そのテクノロジーによってVRクリエイターが「ストーリーテリングの新しい手法を試すことができるようになる」と話してくれた。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

VR特化の広告ネットワークを手がけるVRizeが資金調達、VR動画アプリ制作用CMSも提供へ

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8月にVRコンテンツ特化のアドネットワーク「VRize Ad」のクローズドベータテストを開始したVRize。同社が10月17日、B DASH VENTURES、Speeeを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額や出資比率は非公開。VRizeはこれまでにTLM、East Venturesから資金を調達しているが、累計での資金調達額は数千万円後半になるという。同社はこの資金を元に開発体制の強化を図るとしている。

VRizeでは、今回の発表にあわせてVR動画アプリ制作環境の「VRize Video」を発表している。このVRize Videoはマルチプラットフォーム対応のVR動画アプリ制作用CMSで、作成したアプリでは360度動画の閲覧、VR空間内に設置した大型スクリーンによる2D動画の閲覧、ライブストリーミングの配信などが可能。解析機能も提供するとしている。VRizeにとっては、CMSにアップロードされる共通のフォーマットの素材でVR動画アプリを制作できるというコスト上のメリットもあるようだ。料金は問い合わせ。

VR特化のアドネットワークを提供するVRizeがVR動画アプリの制作環境までを提供する背景には、広告ネットワークの配信先を拡大するという意図があるようだ。VRize代表取締役の正田英之氏に聞いたところによると、VRize Adの発表以降、同社には問い合わせは多く来ているのだそう。だが一方で広告の配信先——すなわちVRのコンテンツ自体——はまだまだ多くないという状況。同社としては創業時からアドネットワークの提供とあわせてVRコンテンツの制作環境までを展開することを検討していたのだという。

「『VRize』という会社名のとおり、VRを普及させていくというミッションがベースにある。その実現のためにはマネタイズの手法を確立することと、優れたVR体験を提供するアプリ作りを支援するという2つが必要だと考えている。VRize Adは前者、VRize Videoは後者のソリューションに当たる」(正田氏)

URL1つで簡単カレンダー共有、「TimeTree」のJUBILEE WORKSが2.1億円を調達

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カレンダー共有アプリ「TimeTree」を提供するJUBILEE WORKSは、韓国Kakao Corp.の子会社であるK CUBE VENTURES Co.,Ltd.、西武しんきんキャピタル株式会社、東映アニメーション株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社ほか、国内外の投資家から総額2.1億円を調達したと本日発表した。これが同社にとって初の外部調達となる。

家族、恋人、同僚とかんたんにカレンダーを共有

JUBILEE WORKSが提供するカレンダーアプリのTimeTreeでは、家族や恋人、サークルの仲間などと簡単にスケジュールを共有することができる。アカウントの登録は不要で、チャットやメールを通してURLを送るだけでスケジュールの共有ができるのが特徴だ。また、1つのアプリで複数のカレンダーを持つことができるため、家族と共有するプライベート用カレンダー、同僚と共有する仕事用のカレンダーという形で使い分けることができる。アプリにはコメントや写真の投稿機能もあり、チャットアプリやメールを使わずに「この日はどこに行こうか?」などの予定の相談をすることも可能だ。

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JUBILEE WORKSの代表取締役である深川 泰斗氏に、Googleカレンダーなど他の予定管理アプリと比べたTimeTreeの独自性は何かと聞いたところ、「TimeTreeは開発段階から「共有すること」を前提に考えており、共有メンバーが予定を作成するとPUSH通知が届いたり、誰がいつ、そしてどの予定を更新したのかという履歴が残るなど、共有することに適した機能が整っています。また、Googleカレンダーではブラウザで複雑な設定をしないと共有ができないが、TimeTreeではURLをLINEやメールで送るだけで共有ができるという点も違いの一つ」だと話している。

海外メディアからも注目を集める

TimeTreeは2015年3月24日にサービスを公開後、2016年2月に100万ユーザーを獲得、同年8月には200万ユーザーを獲得するなど順調に成長を続けている。また、日本語や英語だけではなく、韓国語やロシア語など計13ヵ国語に対応しており、海外でもユーザー数を順調に伸ばしている。深川氏によれば、各国のアクティブユーザー数の割合は、日本が65%、台湾が10%、アメリカと韓国がそれぞれ5%、ドイツが4%、残りが中国、カナダ、香港、イギリス、フランスなどの国々だ。(「日本では家族や同僚とスゲジュール共有が多く、台湾やドイツでは恋人と共有する例が多い」と深川氏は話す)。

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「Fred」こと、代表取締役の深川氏

TimeTreeは海外のメディアからも注目を集めている。アメリカのスタートアップ系メディア、Product Hunt、LifeHackerロシア版などで同サービスが取り上げられ、フロリダ州の州議会議員から「便利に使っている」とメッセージを受け取ることもあったようだ。このような海外からの高い評価により、国内だけでなく、韓国やアメリカなど海外の投資家からの資金調達が可能になった。「我々が選んだ「時間」というテーマは、ある程度文化を問わず普遍性のあるものだと思っています」と深川氏は語る。

国際豊かなメンバーとユニークな企業文化

2014年に創業のJUBILEE WORKSのチームは現在18名で、韓国やシンガポール出身のメンバーもいる国際性豊なメンバーだ。また、同社では「ニックネーム制」を採用しており、代表取締役の深川氏は「Fred」、共同創業メンバーも「Frod」、「Stud」などと呼ばれ、社内では「社長」や「Fredさん」のように役職や敬称つきで呼ばれることはないという。このような企業カルチャーもJUBILEE WORKSの特徴の1つだろう。

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深川氏には保育園に通う子どもがおり、家族のあいだで「お迎えの交代を聞いてない」などのトラブルがあった。また、家族で週末どこに出かけるか考えているうちに、結局無駄に時間を過ごしてしまうこともあった。「必要な相手とあいだで必要な予定情報が見えるようになれば、このようなトラブルを解決できるのではないか」というアイデアから生まれたのがTimeTreeだ。

「Fred」率いるJUBILEE WORKSでは、今回調達した資金によってサービス強化のための人材確保とサービス拡大のための組織的実験を続けていくとしている。

モバイル・マーケティングのmParticleが1750万ドルを調達

本日、モバイル・マーケティングのmParticleがシリーズBにて1750万ドルを調達したことを発表した。

ニューヨークを拠点とする同社が展開するのは、マーケッターが各種Webサービスからユーザー・データを集め、そのデータを他のマーケティング分析ツールに落しこむとができるというサービスだ。共同創業者兼CEOのMichael Katzは、複数のツールを統合するうえで生じる問題や技術的な問題をこのサービスによって解決できるだけでなく、より統一されたユーザーの全体像を把握することが可能になると話す。

既存のタグマネジメントやデータマネジメント・ツールとの違いについて、Katzは「今私たちが住んでいるのは、消費者が企業とマルチスクリーンに交流する時代です。そして、モバイル・ファーストかつアプリ中心の時代です。昨日私たちがマーケットに送り出したツールを利用すれば、その時代ならではの問題を解決することができ、このツールがなければマルチスクリーン・アプリの環境に適応するのが困難になるか、もしくは、まったく適応できないということになりかねないでしょう」。

今回のラウンドはBain Capitalによってリードされ、Social Capital(今年はじめにmParticleが1500万ドルを調達したシリーズAのリード投資家)も出資に参加している。

mParticleによれば、同社サービスでは毎月10億人のモバイルユーザーに関するデータを管理しており、Jet、Hulu、Foursquare、Postmates、Chick-Fil-Aなどの企業が新たに同サービスを利用し始めたという。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

返品代金の即日返還サービスReturnlyが320万ドルを調達

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オンラインで買った物を返品するという行為は、本質的に顧客の不満足を表すものだ。しかし一部の賢いショップオーナたちはある事を学んだ。それは、返品の要望に対して守りに入ってしまうのではなく、逆にその不満足さの表現を広い心で受け入れた方が良いのだということだ。なぜなら、スムーズに返品プロセスを完了させることができれば、その不幸な出来事のあとに顧客がリピーターになってくれる可能性が高いことが分かったからだ。

サンフランシスコ北部の街を拠点とするReturnlyは、返品にともなって顧客とショップとの間に張り詰める緊張の糸をほぐしてくれるスタートアップだ。創業者兼CEOのEduardo Vilarが目指すのは、データの力を駆使することで返品によって一度失った収入をもう一度ショップの元に戻すことなのだ。

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Returnly創業者のEduardo Vilar。サンフランシスコのミッション地区にて。

それを実現するため、Returnlyはショップと消費者との間に立ち、よりスムーズな返品プロセスを提供している。それは、商品を返品してから代金が返還されるまでの恐ろしい待ち時間を省略するというサービスだ。

先日、同社はシードラウンドにて320万ドルの調達に成功した。リード投資家はIndex Venturesが務め、他にもSV Angel、FJ Labs、Mundiventures、そしてエンジェル投資家のAriel Polerも出資に参加している。

Returnlyのサービスでは返品代金が同社から消費者へと前払いされ、その代金はまず、同じショップの商品の購入のみに利用できるオンライン・ウォレットに返還される。そして、ショップが返品された商品を受け取った後には、最終的に返品代金が消費者の銀行口座に振り込まれるという仕組みだ。このオンライン・ウォレットのことを、子犬のような目で「また当店でお買い物してください」と訴えるお金だと思っていただいても差し支えないだろう。

このようなシチュエーションでは様々な行動経済学の原理が働くことになる。だが、このサービスを利用すれば再購買の確率がぐんと上がることは言うまでもない。

また、VilarはGlassdoor出身のサイエンティストを数名雇い、ショップオーナーにA/Bテストを提供して前払いされた代金が再購入に使われる確率の違いを視覚化するということも行っている。

SV AngelのパートナーであるBrian Pokornyによれば、この有名なVCがReturnlyへの出資に踏み切ったのは、同社のサービスを利用するショップオーナーとの会話がきかっけだったと語っている。

ショップオーナーたちはReturnlyから実にざまざまな利点を得ている。Returnlyの収益は返金前の商品代金をもとに計算される手数料収入だ。この他にもサービスの導入時には初期料金も発生する。しかし、FanaticsCotopaxiなどの企業は、これらのコストを合わせたとしてもReturnlyは低いリスクかつ利点の多いサービスだと判断した。

Vilarは数学と保険数理学のバックグランドを持っており、この知識が同社の初期段階のビジネスを支えたという。将来的には、彼が創りあげた金融ビジネスは予測可能であるだけでなく、利益を生むものなのだと機関投資家に示したいとVilarは語る。

返還されたお金をすぐに他のショップで使うことができないことに苛立つ消費者もいることだろう。しかし、覚えておかねばならないのは、Returnlyのサービスがなければ最大で21日ものあいだ代金が返還されないこともあるということなのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

EC基盤「BASE」と決済サービス「PAY.JP」運営のBASEが15億円の資金調達、今後は金融領域強化へ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏

最近では金融×IT領域を指す「FinTech」というキーワードを見ない日はないが、そんなFinTech銘柄の大型調達が続いているようだ。昨日もウェルスナビが大型調達を発表していたが、今日はEコマースプラットフォーム「BASE」や決済サービス「PAY.JP」を手がけるBASEの大型調達のニュースが入ってきた。

BASEは10月13日、SBIインベストメントが運用するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合などのファンド、SMBCベンチャーキャピタル3号投資事業有限責任組合、サンエイトインベストメント(既存株主)を引受先とした総額15億円の資金調達を実施したことを明らかにした。BASEでは今回調達した資金をもとにBASEおよびPAY.JPの事業拡大のための開発体制とマーケティングの強化を図るとしている。

EコマースポータルのBASEは店舗数約30万件、年間での流通総額は「3桁億円」(BASE代表取締役の鶴岡裕太氏)にまで成長した。「メルカリはこれにゼロが1つ多くて(流通総額で数千億円)、楽天はゼロが2つ多い(数兆円)。100倍だったら(挑戦することは)あり得るんじゃないか。もっとBASEを使ってもらえるのではないかと思っている」——鶴岡氏は現状についてこう語る。

同社は2016年1月にメルカリからの資金調達を実施。その後はメルカリ代表取締役の山田進太郎氏や取締役の小泉文明氏などからのメンタリングで組織運営についての考え方が変わったという。

「今までずっと僕がコミュニケーションの真ん中にいたが、今はピラミッド型。良くも悪くもウォッチできないところはあるが、結果として大きいチャレンジができることが分かった。『人がモノを作れる体制』を作らないといけないし、その体制を作れると、今までとはできることが大きく違ってくる。組織はすでに70人近くに成長して、今では元Googleといった人材も入社している。BASE単体でもまだまだ攻めるというメッセージを出していきたい」(鶴岡氏)

マーケティングも強化する。具体的なプランこそ話さなかったが。テレビCMについても「できるできないで言えばできる金額を集めた」(鶴岡氏)としている。また最近ではスマートフォンアプリのECモール機能も強化。さらなるサービス拡大を進めるとしている。

同時に今後より力を入れていくのが決済サービスのPAY.JPだ。PAY.JPで提供するID決済サービス「PAY.ID」はリリース45日で10万IDを突破。現在では20万IDを超えているという。

最近、決済領域のスタートアップの動きが急激に加熱している。連続起業家の木村新司氏が「AnyPay」を立ち上げ、Squareライクなクレジットカード決済からスタートしたコイニーが「Coineyーペイジ」を発表。また楽天傘下となったフリマアプリ「フリル」運営のFablicも決済領域に興味を持っていたスタートトゥデイからのMBOを発表した「STORES.jp」運営のブラケットも決済を強化することを視野に入れている。メタップスの提供する決済サービス「SPIKE」なんかもある。さらには米オンライン決済の雄、Stripeも日本に上陸している。

AnyPayの木村氏は以前TechCrunchの取材で、AnyPayをショッピングモールやフリマといった「マーケット」と結び付けて活性化を狙うと語っていたが、その考えで言えば、BASEはすでに30万店舗のマーケットと20万IDの決済が結びついた状態だ。今後はBASE外のサイトも含めてPAY.IDの導入を進めて、その経済圏を大きくする狙いだ。

「PAY.JPは『決済』だけをやりたいではない。インターネット上の個人を証明するということをやりたい。それと相性いいのが、決済、そして送金や融資といったビジネスだと考えている。インターネットではアカウントだけで人となりを証明しないといけない。今はコマースからスタートして、ペイメントをやっているスタートアップだが、将来は『金融』の会社でありたい」——鶴岡氏はこのように語るが、そんな同氏の構想を元にした新サービスも2017年の早いうちにリリースされる予定だ。

1日1杯カクテルが飲める会員制アプリのHoochが150万ドルを調達

Couple receiving drinks from a barman in a hotel bar

以前にも紹介したカクテルが飲める会員制アプリのHoochが150万ドルを調達した。これにより同社の合計調達金額は270万ドルとなる。今回のラウンドに参加した投資家はHoochにとって戦略的意味をもつものばかりであり、他にもRussell Simmons、Shaun White、Chris Burchなどの著名人も出資に参加している。

気分のリフレッシュに最適なこのアプリでは、月額9.99ドルで提携するバーやクラブなどで1日1杯の「無料」カクテルを楽しむことができる。これはWin-Winの関係だ:バーにとっては新しい顧客の獲得につながり、ユーザーにとっては行ったことのないバーやレストランなどを試してみる良い機会になる(しかも無料カクテルつきで)。Hoochは現在、ニューヨーク、ロサンゼルス、マイアミ、ダラス、オースティン、サンディエゴ、ニュージャージー、フェニックス、香港にある400店舗で利用可能だ。

Hoochは各地の有名なバーやクラブとの提携も進めている。Dream HotelsやロサンゼルスのThe London Hotel、ニューヨークのLadureeなどだ。

サービス業界やレストラン業界に新しく参入するアプリにとって、有名店舗とパートナシップを結ぶことは常に難しい課題となる。この業界では実店舗のレストランよりもアプリの方が入れ替わりが早い。そのような業界においてHoochが有名ブランドとの提携に成功したことで、アプリの信頼性を高めることにつながった。

Hoochは今回調達した資金をもとに、飲食店とユーザーの両方に使いやすいと感じてもらえるようにアプリの改良を進めていくと話している。その一つとして、Hoochは「タッチレスの権利確認機能」をリリースする予定だ。これにより、バーテンダーが直接携帯を触らなくても、そのユーザーが無料カクテルを受け取る権利があるかどうかを確認することができる。

また、同社はモバイル・ペイメント機能の開発にも取り組んでいる。これを導入すれば、無料カクテルに追加して食べ物などを注文をした場合でも、アプリ内で支払いが完結するようになる。取引ごとに代金の一部をHoochが受け取ることができれば、同社にとって利益となる機能となるかもしれない。

これらに加え、今回調達した資金を利用して地理的にもビジネスを拡大していく。来年の後半までには、アプリが利用可能な範囲を35都市にまで広げることを目指しており、まずはサンフランシスコ、シアトル、ヒューストンに進出予定となっている。これを実現するため、2017年初めにシリーズAでの資金調達を予定しており、ターゲット金額は400万ドルから500万ドルだと話している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

「リモートワークと旅を同時に」Remote Yearが1200万ドルを調達

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旅への強い情熱をもつ人たちにとって、Remote Yearのアイデアはとても魅力的にうつることだろう。参加者は1年間、リモートで仕事をしながら毎月新しい街や国へと旅を続けるというアイデアだ。

しかし、Remote Yearは一時の楽しい体験を提供するだけのものなのか、それとも、大きく成長する可能性のあるビジネスの種なのだろうか。Highland Capital Partnersは後者のシナリオに賭け、Remote Yearが1200万ドルの調達に成功したシリーズAのリード投資家を務めることとなった。今回のラウンドにはHighland Capital Partnersの他にも、WeWork Labsの共同創業者であるJesse Middletonと、Airbnbの共同創業者兼CTOであるNate Blecharczykも参加している。

創業者兼CEOのGreg Caplanが最初にこのアイデアを思いついたのは2年前のことだという。そして彼が第一回目のプログラムへの参加者を募集すると、75人の枠に2万5000人の応募者が殺到したのだ。その75人は先日1年間のプログラムを終えたばかりだ。その後、同社はこれまでに6つのプログラムを実施し、合計で500人の旅するワーカーがRemote Yearに参加している。

今回の資金調達によってCaplanが目指すのはもちろん、プログラム参加者を劇的に増やすことだ。それを達成するうえで、二つの「巨大なトレンド」がRemote Yearの後押しをしているという。

「まず第一に、生産活動の場所がクラウドに移ったということです」と彼は言う。「今はどこにいても素晴らしい成果を上げることができます。周りの環境にインスパイアされることで人はよりクリエイティブに、そしてより生産的になるのです。(中略)2つ目のトレンドとは、人々は自分が所有するものではなく、周りの人とシェアできる体験を重んじるようになったことです」。

プログラムの拡大を目指し、現在85人いるチームの強化を続けていきたいとCaplanは話している。(ご推察の通り、Remote Yearの従業員たちは世界各地に散らばっている。チームの中心拠点など存在しないのだ)。

「例えば、クロアチアではエキサイティングなコワーキング体験ができる場所がありませんでした。そのため私たちは、(スプリトという町にある)ビーチのすぐそばにコワーキング・スペースをオープンすることにしたのです」とCaplanは話す。

Remote Yearの参加費は5000ドルの頭金と、最初の11カ月のあいだ月ごとに支払う2000ドルだ。これには交通費、住居費、ワーキングスペースの利用料、インターネットの利用料が含まれている。75人というグループのサイズは丁度良く、それによってプログラムを継続して運用していくことができているとCaplanは話す。しかし、旅行内容はプログラムごとに変わることもある。例えば参加者がアメリカのタイムゾーンで働く人ばかりであれば、アジアへの旅行を避けるなどの工夫がされているからだ。

仕事に悪影響を与える可能性を考えれば、時差の問題に関して参加者自身が解決策を考え、会社からの理解を得る必要がある。だが、Caplanによれば、従業員が教育や能力開発の一環としてRemote Yearに参加することに賛成する企業は多いという。それに加え、Remote Yearのチームが「参加者と一緒にもっとも良い解決策を考え、会社から理解を得るためのアドバイスをしている」という。

「グループがもつ多様性のなかでも私たちが最も嬉しく思うのは、職業の多様性です」と彼は加える。「参加者それぞれが実に様々なバックグラウンドを持っています。エンジニアやデザイナーも多いのですが、一番多いのはマーケティング分野で働く人々です。ジャーナリストやライターとして働く人もいて、なかには弁護士までいます。彼らがどこから来て、何をしている人なのかという点に関して、とても多様性が高いグループなのです」。

もちろん、リモートで働くというのは大変なことでもあり、全員がプログラムを最後までやり遂げられるわけではない。個人的な意見だが、ときには休憩して、また気が向けばまたプログラムに参加してみてもいいだろう。また、リモートワークという働き方に関してCaplanは、「問題のある社員を優秀なリモートワーカーに変えることができるとは考えていません。しかし、優秀な社員を優秀なリモートワーカーに変えることは可能だと信じています」と話している。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ロボット資産運用のウェルスナビが総額15億円を資金調達—SBI証券、住信SBIネット銀行と業務提携

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テクノロジーによる資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供するウェルスナビは、10月12日、SBIホールディングス、SBIインベストメント、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、インフィニティ・ベンチャー・パートナーズを引受先とする、総額約15億円のシリーズBラウンドの資金調達を発表した。同時に、SBIホールディングス傘下のSBI証券および住信SBIネット銀行との業務提携も発表。それぞれの顧客向けにWealthNaviのサービスを提供していく予定だ。今回の調達で、2015年4月の設立後の資金調達の総額は約21億円超となる。

WealthNaviは、国際分散投資をソフトウェアで自動化して、クラウド経由で個人投資家向けに提供する“ロボアドバイザー”サービスのひとつ。2016年7月13日に一般公開された注目のFintechスタートアップによる資産運用サービスだ。

ウェルスナビでは今回の資金調達及び業務提携により、次世代の金融インフラを構築するため、積極的に金融機関に対してWealthNaviのシステムをパッケージで提供していくという。

SBI証券との業務提携では、資産運用のロボアドバイザーサービス「WealthNavi for SBI証券(仮称)」を口座数約360万のSBI証券の顧客に向けて提供し、さらにアプリ間連携などを通じて機能や利便性を強化していく予定。また2016年9月から連携を強めてきた、独立系フィナンシャル・アドバイザー、SBI証券、ウェルスナビの3者間連携により、リアルとネットを融合させた総合的な資産運用サービスを、主に富裕層向けに提供していくという。

住信SBIネット銀行との業務提携では、口座数約260万の住信SBIネット銀行の顧客向けに、やはりロボアドバイザーサービスの「WealthNavi for 住信SBIネット銀行(仮称)」を提供していく。さらに、預金・カード・資産運用が自動連携した、日本初の少額からの資産運用サービスを2017年春より開始する予定だ。d14586-11-912088-3

こうした取り組みを通じてウェルスナビでは、「銀行・証券・ロボアドバイザー」の連携モデルを実現・普及し、地方金融機関のFinTech導入を支援するSBIグループとも連携して、次世代金融インフラの確立を目指すとしている。

日本人起業家率いる広告プラットフォーム「C1X」が850万ドルを調達

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C1XはシリーズBラウンドの一環として新たに850万ドルを調達した。

C1XはMukundu Kumaran(CEO)とDaisuke Nagayama(チーフ・オペレーティング・オフィサー兼チーフ・グローバル・ストラテジスト)が創業し、KumaranはYahooでエンジニアリング・デイレクターを務めた経験がある。彼らの目標は「広告トランザクションの基本的な仕組みをシンプルにすること」と話す

C1Xのプラットフォームには、広告主とパブリッシャー向けのプロダクトがあり、C1Xでは「買い手と売り手が現在直面している重要な課題を解決するフルスタックのプラットフォーム」を提供するとKumaranは話す。

フラグメンテーション、未熟なワークフロー、透明性の欠如などの問題があるとKumaranは考えている。買い手側には、例えば広告主が媒体を横断してターゲットとなるオーディエンスにリーチできる「C1X Audience Guarantee」を提供しているという。また、パブリッシャーには広告在庫をよりうまく管理できるよう、プログラマティックダイレクトやヘッダー入札といったツールを提供している。

今回の資金調達は、日本企業のベンチャーラボインベストメントがリード投資家を務め、既存投資家がラウンドに参加した。C1Xはシリコンバレーに本社を置いているが、日本とインドにもオフィスを構えている。電通、サイバー・コミュニケーションズとトレーディングデスクを開設し、さらなる事業拡大を目指すという。

C1Xは、他にも日本の投資家から出資を受けている。東京大学エッジキャピタルもその1社で、彼らはC1Xが510万ドルを調達したシリーズAラウンドを率いた。

「私たちはグローバル展開を積極的に進めています。私たちの所有する一連の多才なプロダクトは、各市場の主力プレイヤーが抱えている重要な問題に合わせ、それを的確に解決することができるからです」とNagayamaはメールの声明で伝えた。「私たちは、アメリカ、インド、東京で有力なパートナーシップを築くことができました。今年はドバイとシンガポールにもオフィスを開設し、アジア太平洋、中東、アフリカ市場にも進出する予定です」。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

バイオテック系スタートアップのZymergenがソフトバンクなどから1億3000万ドルを調達

photography by Albert Law : www.porkbellystudio.com

遺伝子組み換え微生物から新種の原料を開発するベイエリア出身のZymergenが、シリーズBでソフトバンクなどから1億3000万ドルを調達した。

この会社をご存知ない方のために説明すると、Zymergenは遺伝子を組み替えた微生物を活用して新種の原料を開発する企業だ。前回のラウンドで調達した資金では、微生物の大量生産を実現するためロボットの導入を大規模に進めていた。今回調達した資金では大規模な人員増強とビッグネーム企業との提携などを進め、さらなる規模の拡大を狙うとしている。

TechCrunchとのインタビューのなかでCEOのJohn Hoffmanは、「今回のラウンドによって人材の強化が可能になるだけでなく、さらなる顧客の獲得や長期的な視点に基づいた投資もできるようになります」と語っている。

提携予定の企業名こそ明らかにしなかったものの、それらの企業はすべてFortune 500にリストアップされているとHoffmanは話している。今後Zymergenが目指すのは、より質の高い酵母株の開発だ。これによって新種の食品やフレグランスを創りだすことが可能になるだけでなく、分子特性が限定された新しい原料を顧客企業に供給することで、製品をより安価でかつ素早く製造することが可能になる。

「私たちは実績のあるプラットフォームを構築してきました。大規模で歴史のあるFortune 500のビジネスを、大いに向上させるプラットフォームです。具体的には、売り上げが6億ドルのビジネスがあった場合、その利益率を3倍から5倍にまで伸ばすことが可能なのです」とHoffmanは語る。「Fortune 500の企業はその点にとても関心があります」。

この分野は、バイオロジーの最先端に存在する奇妙で新しい世界だ。科学者たちがマシーンや微生物を活用して次に何を生み出すのか誰にも予測できない。しかし、この分野に取り組むのはZymergenだけではない。Ginkgo BioworksやNovozymesもまた、微生物を活用することで素晴らしい原料を生み出している企業だ。ボストンを拠点とするGinkgoはより小規模のスタートアップでありながら、Zymergenが調達した金額と同規模の1億5400万ドルを調達している。Novozymesは収益10億ドルの巨大企業だ。

いずれにせよ、この新しい分野に目を輝かせるベンチャー企業や通信企業、金融機関が存在するのは事実だ。

今回のラウンドでリード投資家を務めたのはSofbankで、他にもDCVC、True Ventures、AME Cloud Ventures、DFJ、Innovation Endeavors、Obvious Venutures、Two Sigmaといった既存投資家たちが出資に参加している。また、Iconiq Capital、Prelude Ventures、Tao Capital Partnersも今回から新たに出資者の一員となった。

ソフトバンクは元LinkedInのDeep Nisharをチームに加えることをすでに決定している。彼に加え、合衆国エネルギー省とNobel laureateでキャリアを積んだDr. Steven Chuもソフトバングに加わる予定だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

縫製マッチングプラットフォーム「nutte」、総額1億円の資金調達

nutte

縫製に特化したクラウドソーシングサービス「nutte(ヌッテ)」を運営するステイト・オブ・マインドは、10月11日、総額1億円の第三者割当増資を完了したことを発表した。引受先はアクセルマーク、みずほキャピタル株式会社が運営するファンド、静岡キャピタルが運営するファンド、ガイアックスグループが運営するシェアリングエコノミーファンド、ほか個人投資家で、うち、みずほキャピタルとガイアックスは2015年11月に続き、2度目の第三者割当増資となる。

nutteは1点から縫製職人に依頼できる、日本初の縫製マッチングプラットフォーム。縫製を依頼したいユーザーと、登録した縫製職人をマッチングし、ファッションブランドの小ロット生産、アイドル衣装、着物リメイク、ペットアイテム作成など、企業から個人までさまざまな縫製の依頼を職人につないでいる。

元々縫製職人だったステイト・オブ・マインド代表取締役の伊藤悠平氏が、「小ロット注文と縫製職人を直接つなぐことで、職人が適切な所得を得られるように支援したい」という考えから、2015年2月にスタートしたnutteは、サービスリリースから約1年7カ月の2016年9月12日時点で会員登録数が1万人を突破。直近1年では約730%増加と大きく成長を遂げた。現在では、洋服など天然素材の染め替え、染め直しの「and Colors」や縫製資材のECサイト「糸柄市(いとがらいち)」といった、縫製に付随するサービスも展開を始めている。

2016年中には利用者数3万人、累計取引件数5000件、流通額2億円を目指すnutte。今回の資金調達で、開発体制やサポートなどの増強を図るとともに、資材ECや染めサービスなどの付随する事業についても開発体制を強化し、「縫製職人の活躍の場を増やす」という企業理念を実現すべく活動するという。