Toyotaと発明者Dean Kamenがパートナーして階段を上れる電動車いすiBOTを復活へ

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たしかにiBOTは、時代に先駆けていた。ホワイトハウスの大統領執務室で発明者のDean Kamenがその電動車いすに座り、横に当時のクリントン大統領が立ってる15年あまり前の写真を今見ると、奇異な感じすらする。

その、移動用デバイスの能力は、今見ても感銘を受ける。階段を上り下りできるし、ガラスや砂の上でも動ける。シートは上下するので、立っている大人と対面で会話できる。

その後Segwayを発明したりもしたKamen は、その電動車いすを復活させたいと思うようになったが、今日まで、それがなかなかできなかった。そして今度、発明者の企業DEKAとToyotaが合同で、プロジェクトを復活させることになった。

 

“iBotの良いところを生かしつつ、15年間の技術の進歩で改良できるところは改良したい”、とKamenは発表を告げるビデオで語っている。ToyotaがDEKAの技術をライセンスする形で、iBotのニューバージョンを市場に出す。顧客には、リハビリ治療などのサービスも提供する。

 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ドローンレースの人気が高まりつつある中、ドローン界のランボルギーニのようなVortex 250が登場

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DJIのInspire 1やPhantom 4などを飛ばしてきて、そろそろドローンについてはエキスパートの仲間入りだなと考えていた。Horizon Hobbyのレース用ドローンであるVortex 250 Proに「経験者向け」と書いてあっても、べつにそれが何を意味するのか考えてみることもなかった。ちょっと家の周りを飛ばしてみて、写真やビデオを撮ってみようくらいにしか考えていなかったのだ。

もちろん、今は反省している。

自己安定の仕組み(self-stabilizing)を搭載したドローンに慣れた自分にとって、このVortexドローンはプリウスで運転練習をしたあとにランボルギーニに乗るようなものだと感じられた。左スティックを少しだけ長く倒していると、あっという間に木に突っ込んでしまう。スロットルの調整を少し間違えれば、操縦不能な錐揉み状態になってしまう。

そうは言ってもドローンだろうとか、おまえの操縦が下手なだけだろうとか、そうした意見もあるに違いない。ぜひ下のビデオを見て欲しいと思う(操縦しているのは、私よりもはるかに上手な人だ)。

非常にセンシティブで、すばやく進行方向を変えることができるマシンなのだ。多目的型ドローンとはまったくことなる、まさにレースのために生まれてきたメカだ。

このドローンの重さは1ポンドをわずかに超える程度であり、4台の2300Kv無整流子モーターを積み、最高速度は時速60マイルに達する。

FatShark FPVを積み、5.8 GHzヘッドセットに対応している。加えてGoProなどのビデオレコーダーを追加搭載することもできる。

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いくつかのプリ設定が行われていて、状況に応じて選んだり、カスタマイズしていくこともできる。Phantomなどとは違い、状況に応じて設定を変更することに楽しみを見出す人向けのものだとも言える。細かな設定が行えるし、逆にいえば細かく設定しなければ最適な結果を出すことはできないようになっている。

マシンの細かいところまで知らなければ、すぐに破壊してしまうことにつながるだろう。その意味でも細かい設定を必要とすることは、むしろ良いことだとも言えるわけだ。前部と後部は2mm厚のカーボンファイバーで覆われ、モーターアームは4mm厚のカーボンファイバーでできている。

価格は499ドル(コントローラー、バッテリー、充電器、FPVゴーグルなどは別売り)だ。現在すでに発売中となっている。

障害物を自動的に避けたり、4Kビデオの撮影機能などはもっていない。気軽に飛ばして友だちを感心させるためのものではないのだ。しかし、いよいよ広がろうとしているドローンレーシングの世界に飛び込みたいのなら(あるいは既にドローンレーシングに参加しているのなら)、ぜひ検討したい一台だといえるだろう。

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(翻訳:Maeda, H

アメリカの子供が最初のスマートフォンを持つ平均年令は10.3 歳というレポート

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今週、Influence Centralから『子供たちとテクノロジー:現代のデジタル・ネイティブの進化』(Kids & Tech: The Evolution of Today’s Digital Natives)という新しい調査レポートのレビュー用コピーを受け取った。

このレポートは全米の母親500人を対象に実施中の詳細なレポートの一部だという。受け取ったレポートには現代のアメリカの子供たちとテクノロジーの関わりが詳しく調査されていた。中でも興味を惹かれたポイントは以下のようなものだ。

  • 平均的な子供たちが最初のスマートフォンを手にする年齢は10.3歳
  • 車に乗っている時間に子供たちの好むデバイスとしてタブレットは26%から55%にアップして1位。スマートフォンは39%から 45%にアップして2位(2012年との比較).
  • 64%の子供たちが自身のノートパソコンまたはタブレットを通じてインターネットにアクセスできる(2012年には42%)
  • 39%の子供たちがソーシャルメディアのアカウントを持ち、取得した平均年令は11.4歳。うち11%は10歳以下の年齢でアカウントを取得
  • 2012年には85%の子供たちが家族と共有のスペースからインターネットにアクセスしていたが、現在では76%に下がっている。24%の子供たちが寝室からプライベートにインターネットを利用できる(2012年には15%)

私はInfluence Centralについて知識がなかったので、レポートを読んだ後で同社のCEO、ファウンダーのStacy DeBroffに電話でコンタクトしいくつか質問してみた。

DeBroffは「他社のレポートについてはコメントできない」としながらも、Influence Centralの調査では「あなたが子供たちのためにスマートフォンないしフィーチャーフォンを購入したとき、子供たちは何歳でしたか?」という質問をしていることを明らかにした。つまりこのレポートで示されたのは子供たちが単にスマートフォンを利用し始めた年齢ではなく、自分のものとして所有し始めた年齢だとわかった。

【略】

ひとつ付け加えておくべき点は、Influence Centralはマーケティング代理店であり、この調査はブランドがビジネスを行う上での参考になることを狙ったものだという点だ。ビジネスはモバイル化に急速に馴染みつつある。

ノスタルジックな記憶によると、われわれは子供のころ泥まみれで地面に穴を掘ったり、自転車に乗ったり、サッカーをしたり、1人で町を探検したりしたものだ。しかし近頃の子供は(両親同様)いつもスマートフォンに顔を埋めているらしい。もっとも最近の子供のほうが物事がずっとよくできるし、手に入る便利なツールを使いこなそうとしているだけだというのも否定できない。こうしたツールを禁止したとしても意味はないだろう。

なにごともバランスが大切だと思う。私自身がスマートフォンに中毒気味で、スマートフォンと自分のデータ・アカウントを持つ10歳の子供を父親だ。そういうわけで、子育てに重要なのはあれだこれだと指導者ぶった口をきくつもりはない。しかし今回のレポートは無視してしまうには惜しい内容だったの一端を公開した。

原注:Influence Centralがレポートを一般公開したときはリンクを追加する。

画像: panco971/Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

PornHub、エクササイズ(セクササイズ)サービスを提供するBangFitをスタート

ポルノ系サービスからの登場ということで、意外に感じるかもしれない。PornHubがフィットネスサービス(ウェアラブル+ワークアウトビデオ)に参入するようなのだ。サービスの名前はBangFitという。

名前の通り、「バンバンする」ことでフィットネス効果を得ようとするものだ。

仕組みを記しておこう。

まずウェブサイトから登録を行う。登録後にスマートフォンと連携できるようになる。サイトではプレイヤーの数(1人、2人、あるいは3人)の設定も行える。

登録が終われば、行うエクササイズ(セクササイズ)を選択する。30分で消費できるカロリーがエクササイズ(セクササイズ)の種類ないし男女の別によって記述されている。

そしていよいよ実践となる。スマートフォンをBangFit Band(このベルトをプレイヤーが装着する)にとりつけ、「運動」中に消費したカロリーを計測するのだ。

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PornHubによるとBangFit Bandは間もなくリリースする予定であり、ソフトウェアプロダクトもいまのところはベータ段階であるとのこと。

こちらでも、2台のスマートフォンをウェブアプリケーションと連動させようと試みてみた。しかし片方のスマートフォンしか認識してもらえなかった。また、今のところはゲイやレズビアンへの対応は行われていない様子。

かように、現在のところは不備も目立つわけではあるが、ちょっと面白い試みであるとは言えると思う。

PornHubは、他に先駆けてVR対応を行ったり、またポルノサイトと絵文字を統合するマッチングサービス(?)も展開している。

BangFitの紹介ビデオを以下に掲載しておこう。

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(翻訳:Maeda, H

不法侵入ドローンを即座に探知するDedroneが1000万ドルの資金を調達

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一般ユーザー向けドローンはますます高性能化、低価格化中だ。こうした中、上空をモニターしてドローンの進入を即座に告げるシステムを開発しているスタートアップ、 Dedrone Inc.が1000万ドルのベンチャー資金を調達した。

シリーズAのラウンドをリードしたのはMenlo Venturesで、今回の資金調達によりDedroneの資本は総額1290万ドルとなった。

Dedroneの共同ファウンダー、CEOのJoerg Lamprechtによれば、同社のフラグシップモデル、DroneTrackerシステムには多様なセンサーが搭載され、監視対象地域の周囲の地上に設置される。招かれざる客であるか否かを問わず、上空に入ってきたドローンを探知する能力があるという。

ドイツで製造されたDroneTrackerにはカメラ及び音響、電波センサーが組み込まれ、ドローンの存在を探知するだけなく、種類も特定できるという。狭い地域の監視であれば、DroneTrackersは1、2基しか必要としない。スポーツやコンサートが開かれるスタジアムなどの大規模な施設になると10基以上が必要となる。

Dedroneはセンサーで収集したデータをいかなるサードパーティーにも販売しないが、上空周辺で記録されたドローンの活動を日報にまとめて利用者に知らせる。DedroneはこのシステムをBooz Allen HamiltonやBosch Security Systemsのような物理的警備を実施する能力のあるパートナーを通じて販売する計画だ。

Lamprechtは民間のドローンの多くは崇高な目的のために利用されているとして、 絶滅危惧種の保護遠隔地の病院への薬の配送、農業における水の節約支援などの例を挙げている。

しかしドローンの普及は同時にあやしげな目的での利用も増加させている。ドローンを使って麻薬を刑務所内に落とす、工場をスパイする、個人の家をのぞき見するなどの例が報告されている。またドローンの販売台数とともに事故件数も増えている。ホワイトハウスの芝生に墜落したり、カリフォルニア州で送電線に引っかかったドローンもある。

Lamprechtは「ドローンが有用であるためには、現在見られるような空の無政府状態を乗り越えねばならない」という

Dedroneはドローン・ユーザーのために上空でのドローンの稼働状況をモニターできる能力をDroneTrackerシステムに追加する計画だ。

Menlo Venturesのマネージング・ディレクターのVenky Ganesanは「われわれがDedroneを支援する理由は、ドローン関連の望ましくない問題が世界中で急増することは間違いないと考えるからだ」と述べた。

Dedrone cofounders and their DroneTracker hardware.

Dedroneの共同ファウンダー。左から右に、Ingo Seebach、Joerg Lamprecht、Rene Seber.

「ドローンの普及でセキュリティーに関する限り、地上に設置された塀は無意味になった。ドローンが侵入できないほど高いフェンスはありえない。 Dedroneはサイバーセキュリティーと物理的セキュリティーを同時に提供する」と共同ファウンダーのGanesanは述べた。

現在40人のフルタイム従業員をかかえるDedroneは、最近本社をドイツのKasselからサンフランシスコに移した。

DroneTrackerは現在すでにスタジアム、空港、データセンター、高級ホテル、セレブの自宅などの高価値施設の警備に用いられているという。しかしLamprecthは「セキュリティー上の理由からユーザーや利用箇所について具体的なことを明らかにすることはできない」と述べた。同社は例外としてメッツ球団の本拠であるニューヨークのシティ・フィールド・スタジアムの警備にDedroneシステムが利用されていることを挙げた。

民間ドローンの安全性を高めるためのスタートアップがベンチャーキャピタルの支援を受けた例としてDedroneは最新のものとなる。この種の他の例としてはPrecisionHawkAirMapDroneDeployなどがある。

Internet Security SystemsのCEO、Tom NoonanとTarget PartnersがDedroneのエンジェル投資家に含まれている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

HP Fusion 3D 4200はプロトイプと少量生産が可能な産業用3Dプリンター

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まだ正確な価格は不明だが(おそらく高価だろう)、BBCが紹介ビデオで適切に指摘したように、Jet Fusion 3D 4200は洗濯機のサイズしかない。しかしこのHPの3Dプリンターは産業用マシンだ。HDの発表によれば、「世界最初の製品生産現場対応の3Dプリンター・システム」だという。

この市場の有力ライバル、Stratasysや3D Systemsは「世界初」というところに異論があるかもしれないが、 HPの最新の3Dプリンター・シリーズは「プロトタイピングにはどうやら使える」以上の能力のコンパクトな産業用製造装置を求めている企業には魅力的だろう。

この分野の開発のカギは製品出力の精密度、スピード、それに装置の価格だ。HPによると、「このプラットフォームは毎秒3億4000万ボクセル〔おおむねピクセルを立体化した指標〕の能力があるため精密で高速な製造が可能」としている。

もちろん、さしあたりの注意点も加えておくべきだろう。4200はあくまで産業用装置だ。しかしHPではJet Fusionの3Dプリンティング能力は製品製造のプロセスを一変させる可能性があるとしている。

この3Dプリンターの出荷は今年中とされる。その後2017年にはエントリーモデルの3200シリーズが加わる。こちらは13万ドルからとなる予定だ。

〔日本版〕John Biggs記者がこの記事の直後にHP 3D 4200シリーズについて書き、製品を分析すると同時にHPエンタープライズの将来について肯定的に評価している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ふつうの自転車を簡単に電動アシストにするGeoOrbital

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TechCrunch Disrupt NY 2016にも、特別参加したGeoOrbitalは、ちょっと変わった仕組みの電動自転車を世の中に送り出そうとしている。自転車本体にモーターを搭載するのではなく、ホイールにモーターを積むのだ。このアイデアは、ファンダーのMichael Burtovが映画のTronを見ているときに思いついたのだそうだ。隙間だらけに見えるホイールの空間をうまく活用できないのかと考えたそうなのだ。そこからGeoOrbitalというホイールが生まれることとなった。

用意されているサイズは2つだ。サイズさえあえば、どのような自転車にも1分以内で装着できるのだとのこと。交換するのは前輪側だ。

バッテリーにはPanasonic 36Vリチウムイオンリサイクルバッテリーを用いており、26インチホイールで最大で50マイルの距離を走行できる。また500WのブラシレスDCモーターを搭載していて、6秒で時速20マイルに到達することがかのうなのだとのこと。もちろん、自力でペダリングすることにより、より速い速度で走行することもできる。

用意した2つのサイズで、世の中に存在する大人用自転車の95%をカバーすることになるとのこと。使っている自転車のホイールサイズが26インチないし700cであり、かつブレーキがリムブレーキなのであれば、GeoOrbitalに付け替えることができる。詳細についてはこちらのKickstarterキャンペーンページページをご覧頂きたい。28インチないし29インチを使っている自転車でも利用できるとのことだ。

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ホイールへの充電はUSBにて行う。バッテリーは搭載されているスピーカーでもつかうし、またスマートフォンの充電にも利用できるようになっている。バッテリーを取り外してモバイルバッテリーとして利用することも可能で、たとえば日がなビーチで過ごすようなときにも便利に使えることだろう。

Kickstarterキャンペーンも好調で、最初の目標であった7万5000ドルは、わずか78分で達成することができた。本稿執筆時点ですでに63万3000ドルを集めている。

装着するタイヤは充填剤を封入したフラットレス(パンク防止)タイヤだ。これは自転車レーサーなどには嫌われる要因となるだろうが、そういう人はそもそも対象とはなっていないのだ。

「特殊な目的でなく、自転車に乗る人を対象にプロダクト開発を行ったつもりです」と、Burtovは言っている。自分の力のみで頑張りつくそうとする人でなく、アシストがあれば便利なのにと考えるような人を対象としているわけだ。自転車は好きだが、汗はかきたくないというような人も念頭においている。

ちなみにこれはBurtovの最初のプロダクトというわけではない。SaaSベースのソフトウェアサービスを志したこともあった。しかしこの数年は、アシスト自転車の開発に注力している。

プロトタイプを製作して、パートナーを探しているときにSpaceXのエンジニアであるDakota Deckerdに出会った。

結局、1年半前にDeckerdはSpeceXを辞し、GeoOrbitalのCTOに就任することとなった。

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2人でGeoOrbitalに集中し、今ではホームタウンおよびケンブリッジで、20人以上がGeoOrbitalのテストを行うようにもなった。

Kickstarterキャンペーンは1週間ほど前に開始したが、なかなかの人気を集めて、すぐにも実際の開発に取り組める段階だ。プロダクトのパーツおよびアクセサリーを手がけるマニュファクチャラーと作業に入っているところであるらしい。

話がすすむにつれ、外部からの資金も得られるようになった。1ヶ月ほど前に、何人かのエンジェル投資家から15万ドルの資金を調達している。

秋にはホイールの出荷を開始する予定だ。価格は700ドル程度を予定しているが、Kickstarterキャンペーンで出資する場合には499ドルとなっている。

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(翻訳:Maeda, H

スマホで楽しめるゲームカセット「ピコカセット」販売へ、Makuakeでプロジェクトを公開

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「ゲームをプレイする」と聞くと、スマホの画面からゲームアプリのアイコンをタップする、という動作を思い浮かべるんじゃないだろうか。

コンシューマーゲーム機もまだまだ健在だが、カートリッジやディスクといった物理メディアと並行して、ウェブ上で購入する「ダウンロード版」のゲームが増えている。

そんな時代に、30年ほど前に流通していたゲーム機の「カセット」(カートリッジ)を再現。スマートフォンのイヤフォンジャックに差し込むことでゲームをプレイできるのが「ピコカセット」だ。同社は東京ゲームショウ2015でこのガジェットのコンセプトとモックを発表していたが、いよいよ製品化に向けて動き出したという。同社は5月11日より、クラウドファンディングサービスのMakuakeにプロジェクトを公開した

このプロジェクトを手がけるのは「ピコカセ倶楽部」。Beatroboとシロクによる共同プロジェクトだ。Beatroboは、イヤホンプラグに差し込み、専用アプリを立ち上げることでコンテンツのダウンロードや音楽試聴などを実現する「PlugAir」と開発している。PlugAirはこれまで、米国の人気バンド「Linkin Park」をはじめとしたアーティストなどのツアーグッズやライブチケットの特典などに利用されてきた。ピコカセットはこのPlugAirの仕組みを転用したガジェットとなる。

今回第1弾として提供されるのはジャレコ(現:ハムスター)が1985年に発売したファミリーコンピュータ向けタイトルの「忍者じゃじゃ丸くん」。Beatrobo CEOの浅枝大志氏に聞いたところだと、やはり今回のプロジェクトで一番苦労したのはライセンスまわりの調整だったのだそう。

「通常のIPものだと、『キャラクターライセンス』の提供などはよくある話。ライセンスを受けてゲームキャラのフィギュアを販売するようなモデルだ。次のステップとしては、キャラクターライセンスを使って新しいゲームを作るというのがある。例えばアニメのライセンスを押さえて、ゲームメーカーがゲームを作るというモデルだ」

「だが今回は過去のゲームの移植で、かつゲームそのものも昔のままという調整が必要だった。また当然だが、当時のゲームはスマートフォン対応でプログラミングされているわけでもないので、(開発面でも)ゼロベースでのスタート。ゲーム業界でも極めてユニークな座組みだと考えている」

ピコカセットの反響は海外でも大きいという。プロジェクトでは今後継続してレトロゲームの復刻を進めるだけでなく、新作の開発や一般流通での販売、世界でのヒット作を活用した海外展開などを検討していくとしている。

水道橋重工に挑戦中のMegaBots、シード資金を調達―人間搭乗巨大ロボット対戦のリーグ化を目指す

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カリフォルニア州オークランドのMegaBots Inc.が240万ドルのシード資金を調達することに成功した。このスタートアップは日本発のマンガやアニメでおなじみの人間が搭乗して操縦する巨大ロボット同士の戦いを実現するリーグの創立を目指している。

MegaBotsの共同ファウンダー、Gui Cavalcanti、Matt Oehrlein、Brinkley Warrenの野心は大きく、ロボット対戦リーグをフォーミュラ1国際サッカー連盟のような存在にしたいのだそうだ。

WarrenによればMegaBotsはシード資金を利用して、オリンピックが巨大競技化した道筋にならい、Latham Watkinsという法律事務所と提携してロボット対戦リーグの国際展開を図る。

Latham WatkinsでMegaBotsが特に協力を期待しているのはパートナーのChristopher D. Breartonで、同弁護士は国際オリンピック委員会(IOC)を始めとし、
NBA、MLB、NFLなどのプロスポーツ団体のリーグ化に助力した経験があるという。

内燃機関で駆動される巨大ロボットの対決となれば誰でも興奮するだろう。火に油を注ごうととMegaBotsは昨年、日本の水道橋重工に挑戦状を叩きつけている。

水道橋重工は日本のスタートアップで、MegaBotsより早く2014年に創立されているが、この挑戦を受けて立つとしている。報道によればファウンダーの倉田氏はKuratasロボットの対戦用に特化したスペシャルバージョンの開発にとりかかっているという。

Kuratasロボットは重量4トンの巨大ロボットだが、MegaBotsのMkIIは5.4トンにもなるロボットを試作している。Warrenは「対戦に用いられるマシンは6.8トンになるはず」だと述べた。MkIIの初期型は重量3ポンド(1.5kg)のペイントボールを発射する能力がある。これによって対戦相手のコンピューター・ビジョンにダメージを与えようという戦略だ。

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MegaBotsの社員一同―オークランドの本社前

チームUSAとチーム・ジャパンの対決の場所や日取りは未定だ。ただし水道橋重工の主張に基づき、対戦の組織化はMegaBotsが担当する。MegaBotsはこの対決をホストすることに関心のある政府や自治体を探している。

ただしこの種のリーグの組織化には、ロジスティクス上の難問が待ち受けている。Warrenも指摘するように、7トン近いマシンは簡単に国際輸送できない。

これまでMegaBotsはクラウドファンディングで55万ドルを調達し、さらにグッズ販売やライセンス料で資金を集めてきた。Megabotsはイベントなどにロボットを登場させたり、
グッズを販売したりすることで100万ドルの売上を記録している。

同社への投資家には、Azure Capital PartnersAME Cloud VenturesAutodeskMaveron、エンジェル投資家でNational Venture Capital Associationの前会長、Ray Rothrockなどが負汲まれる。

Azure Capitalのゼネラル・パートナー、Michael Kwatinetzは「(MegaBotsのような)巨大ロボットが登場するライブイベントは人々の想像力をかきたてるので非常に大きなビジネスチャンスがある。その点はプロレスのWWEや自動車レースのNascar〔の成功〕を見ても明らかだ」と述べた。

またKwatinetzは「Megabotsのような巨大ロボットを開発する能力のあるエンジニアや経験を持つ企業は他にほとんんどない」と指摘した。

現在のロボティクスの主流はバッテリー駆動で、強力なエンジンや油圧メカニズムを搭載していない。こうした電動ロボットでは人間を乗せたり数トンもの重量を動かしたりすることはできない。

MegaBotsの投資家は、シード資金によって日本のロボットとの対戦を実現させ、広く関心を呼び起こして大企業によるスポンサーシップやテレビ局による番組製作に結びつけたい考えだ。
こうした動きはMMAファイティングなど総合格闘技の成功をモデルにしている。

画像:: SN Jacobson/MegaBots Inc. (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

〔日本版〕こちらのYouTubeビデオではファウンダーがMegabotsのロボットについてTestedのインタビューを受け、操縦席も含めて詳しく説明している。Megabotsには操縦士と射手の2名が搭乗する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

GoProのビデオ編集が便利になる―モバイル・アプリ2種類を発表

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GoProはモバイルにますます力を入れている。今日(米国時間5/3)、GoProは新しいモバイル・アプリを2種類発表した。一つはGoPro風の動画を自動的に作成する。もうひとつはユーザーがGoProビデオを簡単に編集できるようにする。両方とも無料で、GoProのユーザーにとって非常に便利なアプリだ。これらのアプリはGoProばかりでなくスマートフォンのカメラで撮影したビデオも編集できる

ただしまったく新規に開発されたアプリというわけではない。今年の2月末にGoProはStupeflixとVemoryというビデオ編集アプリ開発のスタートアップを合計1億500万ドルで買収している。GoProはアプリにアップデートを加えて今回再リリースするが、機能は実質的に買収以前とほとんど同じだ。 QuikはAndroidとiOSの両方のバージョンがあるが、SpliceはiOS向けのみとなる。

Quik〔以前のReplay〕はデバイスをスキャンしてビデオ・クリップを自動的に作成し、その過程でビデオや写真を音楽と同期させる。Splice〔以前と同名〕はGoProビデオをきめ細かくコントロールできる。GoProはプレスリリースで「Spliceを使えば、字幕、ワイプなどシーンの切り替え、トリミング、スローモーションなどの特殊効果などを追加し、誰でもほんの数分でプロ級のビデオ・クリップを作れる。Spliceには自由に使える音楽ライブラリーも用意されている」と述べた。

GoProはずっと以前からモバイル向けの本格的なビデオ編集機能を必要としていた。今回リリースされるアプリはこの問題を解決することが狙いだが、いささか立ち遅れ気味かもしれない。GoProは編集アプリの存在をこれからプロモーションしなければならない。もちろんプロモーションが効果を上げれば、抽斗の奥で埃をかぶっていたGoProを取り出し新しいビデオを撮影しようと考えるGoProユーザーも出てくるだろう。

〔日本版〕GoProはSpliceの紹介ビデオを昨日YouTubeで公開した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Kindle Oasisは美しい。ただし紙の本と同じとはいかず、価格もかなり高いと思う

先週、Kindle Oasisが「紙の本を読むような感覚」を感じさせてくれるのかどうか、確かめる意味もあってずっと使ってみた。実際のところ、「紙の本のように」とはいかない感じだ。

個人的に、本が大好きで、そしてKindleも好きだ。Kindle Oasisがこの気持ちを「統合」させてくれるかとも期待したのだが、そういうわけにはいかなかったようだ。

もちろん、Oasisの開発にあたっては、紙の本の感覚を活かそうということが考慮されたのは間違いなかろう。左右非対称にしてグリップを用意したのも、本の背を意識したものと思われる。

しかしやはり紙の本を手に持って、ページを繰りながらちょっと端を折ってみたりしつつ、アンダーラインをひいたりメモを書き込んだりする感覚は、なかなか再現できるものではない様子。

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Kindle Oasisを横からみたところ。全体的に非常に薄く、それと同時に本の背を意識したグリップがある。

紙の本は、離れたページヘの移動もごく簡単に行える。あるいは上等な紙に印刷された文学作品などを味わっていると、気持ちもその作品の中にどんどん入り込んでいったりもする。一歩も動かないでいながら、時空を超えて精神を飛び回らせることができるのだ。

少なくともいまのところ、Kindleでそのような「感覚」を味わうことはできないと思う。もちろん進化していることは認める。

従来のものから大幅に変更されたデザインはなかなか美しく、おそらくはかなり魅力的な電子書籍リーダーであると言えるだろう。ただし、旧バージョンと同様にタッチに対するレスポンスには若干の遅れが感じられる。紙の本のようにパラパラとページをめくって行ったり、あるいは簡単にメモを書き加えたりということはできない(機能としてはできるが、紙の本に比べてインターフェース的に劣る)。そうしたことを多く繰り返す人にとっては、やや苛立ちを感じるデバイスとなるだろう。

また、Voyageと比べて「格好に見やすくなった」というわけでもない。4つのLEDライトが加えられたようではあるが、解像度も同じでさほどの違いは感じられないように思う。

価格に伴う魅力を感じるかどうかも微妙なところだ。価格は35,980円から(米ドルでは290ドルより)で、Kobo Aura H2Oの190ドルよりかなり高価だし、iPad Mini 2の270ドルよりも高い。たとえばiPad Mini 2には電子書籍リーダーにはない機能もいろいろと備わっていて、Kindle Oasisを高いと感じる人が多いのではないかと思う。

もちろんE-inkのディスプレイはiPadなどより目に優しく、物理ボタンを配したことでタッチ操作時に感じる遅れにも対処されてはいる。

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バッテリー内蔵カバーを外したところ。

個人的に、Oasisが最高に活躍するシーンは、旅行にいくときだと思う。

一般的にいっても電子書籍リーダーは、紙の本に比べて持ち運びに便利だ。そして軽く、薄く、それでいて非常に丈夫なOasisは旅先への携行にとても便利だ。ケースに用いられているポリマー樹脂フレームはかなりの強度をもつ。バッグのポケットにもいれておけるサイズながら、440万冊(2007年時点では9万冊だった)をいつでも読むことができるのだ。ちなみにデバイスは4GBの記憶容量を備えている。

バッテリー内蔵カバーを使えば、バッテリーは60日間ももち、長期間の旅行のお供としても最適なデバイスだと言えるのではなかろうか。

ただしOasisは、万人向けのデバイスというわけではなさそうだ。電子書籍を読む時間が長く、かつ最高の環境でそれを楽しみたいと考えている人向けのものだろう。言ってみればニッチ向けだ。しかしそうしたニッチが確かに存在するのは間違いなかろう。

私自身について言えば、「最新モデル」が好きだ。ただKindle Voyageが90ドルも安いことを考えれば、Voyageで満足する気持ちももっている。

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(翻訳:Maeda, H

Google、ハードウェア事業を単一組織に統合―トップはMotorola元CEOのRick Osterloh

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〔この記事の筆者はStefan Etienne〕

Re/codeによれば、Motorolaの元CEO、リック・オスターロー( Rick Osterloh)が Googleに復帰してハードウェア事業全般を統括することになった。われわれの取材に対し、Googleの広報担当者もこのことを確認した。Googleがすべてのハードウェア製品を一人の人間が指揮する単一組織にまとめたのはこれが初めてだ。

オスターローの新しい責務には、Nexus、Chromecast、 Pixe、OnHubルーター、ATAP(Project Araを担当する開発部局)に加えてGoogle Glassが含まれる。

これらの製品を担当するチームは今後はオスターローの指揮下に入る。オスターローはLenovo傘下のMotorolaのCEOを先月辞職していた。今後はGoogleのすべてのハードウェアのボスとなる。

テクノロジー産業としての見地からすると、Googleがすべてハードウェア・プロダクトを1人の経験豊富で注意深い人間の指揮下のまとめるのは理にかなっている。対OEM企業など外部とのコミュニケーションもスムーズになるし、Googleの組織も全般的に分かりやすくなるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Movidius、今度はFathomを発表―どんなデバイスもUSBスティックでニューラルネットワークが利用可能

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数週間前にFLIRと提携してBostonスマート・サーマルカメラを発表し、大きな注目を集めたMovidiusが再び重要な製品を発表した。 同社はサーマルカメラでも使われたMyriad 2プロセッサのメーカーだが、新たな応用分野を発見した。Fathom Neural Compute Stickと名付けられたスティックはUSBをサポートするあらゆるデバイスにニューラル・ネットワークによるコンピューティング能力を与える。

ユーザーはFathomを文字通りどんなデバイス(コンピューター、 GoPro、Raspberry Pi、Arduino etc)のUSBポートにも挿してそれらをスマート化できる。Fathomeに内蔵されたMyriad 2プロセッサが画像をニューラルネットワークに読み込む(結局このチップがカギとなる)。

簡単にいえば、Fathomをプラグインとしたデバイスは認識能力を備える。カメラないし他のデバイスからの画像を高度なコンピューター・ビジョンで処理し、プログラムに従って独自の知的判断を下せるようになるという。重要なのは、こうした処理がすべてUSBスティック内で自己完結的に実行可能だという点だ。いちいちクラウド上の資源を呼び出す必要はない。

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このUSBスティックに加えて、MovidiusはFathom Deep Learning Software Framework〔Fathom深層学習ソフトウェア・フレームワーク〕と呼ばれるアプリケーション開発プラットフォームも提供する。ユーザーはこのフレームワークを用いてアルゴリズムを最適化し、コンパイルすることができる。生成されたバイナリー・ファイルはきわめて低い消費電力でMyriad 2プロセッサ上で¥各種のコンピューター・ビジョンを実現できる。 Movidiusではフルパワー、ピーク・パフォーマンスは1ワットで、このとき画像16枚を処理できるとしている。Fathomeスティックの利用分野はもちろん画像処理だけにはとどまらない。

Movidiusではテスト用に1000個のスティックを用意しており、一部の企業、研究者、スモール・ビジネスに対しここ数週間のうちに無料で配布する。第4四半期には大量生産の開始が予定されている。価格は100ドル台になるもようだ。

ここまでが発表されたニュースだが、ではこのニューラルネットワークというのはいったいどんな仕組みで、どんな応用が考えられているのだろう?

Fathomは何ができるのか?

ニューラルネットワークの仕組みやFathomデバイスが現実にどのようなケースに応用できるのか理解するのはたいへん難しい。私は何時間も苦闘して(Movidiusには何回も電話した)やっとある程度のイメージをつかむことができた。以下は問題を大幅に簡単にした比喩的な理解だということを承知していただきたい。

コンピューターがある種のに画像をリアルタイムで認識し、プログラムされたとおりに反応することができれば非常に便利だ。たとえばドローンのコンピューターにどのような場所なら着陸に適しているか、広さや平坦さを覚えさせることができたらどうだろう? ドローンは適切な地点を自ら発見して着陸することができる。

こうしたことを実現するためには非常に複雑なコンピューター・システムを構築しなければならない。 GPUも大量に必要とするだろう。またユーザーはTensorFlowのようなオープンソースのライブラリーを用いて機械学習のためのニューラルネットワークを開発することになる。ソフトウェアが完成したら、次に何百、いや何万という画像をシステムに読み込ませ「着陸可能地点」の特徴を学ばせる。しかしドローンの着陸に適した場所としては裏庭、船の甲板、取り付け道路、山頂…あらゆるバリエーションが考えられる。

努力を重ねていけば、やがてシステムは自ら学習を進め、「着陸可能な地点を認識する」という目標に向けてアルゴリズムを改良していくだろう。だがこうしてシステムが完成したとしても、リモートのデバイスからシステムに接続しリアルタイムでの処理を実現するのは難事業だ。クライアント/サーバー・モデルではある程度の遅延は避けられず、情報の欠落も起きる。ドローンを着陸させようとしている場合、こうした遅延や脱落は致命的な問題を引き起こしかねない。

Fathom

Fathom Neural Computeスティックが解決しようとしているのはまさにこの種の問題だ。Fathomはニューラルネットワークに基づいたコンピューティング・パワーを自己完結的に内蔵し、リアルタイムで結果を返すことができる(どのように反応すべきかはFathomソフトウェア・フレームワークで アプリを開発する必要がある)。Fathomスティックを装着したデバイスはあたかも内蔵されたシステムであるかのようにコンピュータ・ビジョンを利用できる。

この例でいえば、ドローンは着陸可能地点を認識するためにクラウドと通信する必要はなく、デバイス内で判断を完結させることができるわけだ。しかも必要な電力は非常に少ない。

ひとことで言って、これはすごい。

さらなる応用

低消費電力で高度な画像認識機能を備えたハードウェアという点を理解すれば、あとは多少の想像力を働かせてFathomが利用できる応用分野をいくつも考えることができる。知的判断ができるドローンはその一例だが、コンテキストを認識するセキュリティー・カメラ、自動走行車、進化したレベルの自然言語認識等々だ。

またUSBスティックという小型軽量で接続にきわめて汎用性が高いフォームファクターはウェラブルデバイスが利用するにも適している。各種のヘッドセットへの応用がまず考えられるだろう(量産レベルとなればUSBスティックが外付けされることはなく、デバイスに内蔵されることになるだろうが)。仮想現実、拡張現実がメインストリームに参入しようとしていることを考えればFathomの影響は非常に大きくなりそうだ。

コンピューター・ビジョン (CV)のアルゴリズムは拡張現実、仮想現実、混合現実を実現するたの大きな柱の一つだ。したがってCVの機能を向上させ、フットプリントを小さくするような改良はどれも大きなインパクトを持つことになる。

ビジネス戦略的に考えても、MovidiusのUSBスティックは潜在的顧客獲得の手段として適切だろう。 拡張/仮想現実の実現を目指す大企業はすでにGoogleその他の大企業と提携している。しかしスタートアップや小規模メーカーは手軽に利用できるCVハードウェアを探している。モジュラー性が高く、安価であり手額に追加できるFathomモジュラーはそうしたメーカーにとって理想的なソリューションになる可能性がある。

画像: Movidius

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Appleの株価急落の原因を検討する

SAN FRANCISCO, CA - OCTOBER 22:  Apple CEO Tim Cook speaks during an Apple announcement at the Yerba Buena Center for the Arts on October 22, 2013 in San Francisco, California.  The tech giant announced its new iPad Air, a new iPad mini with Retina display, OS X Mavericks and highlighted its Mac Pro.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

昨日(米国時間4/26)、Appleが第2四半期の決算を発表した後、時価総額は400億ドル減少した。これは深刻な事態だ。時間外取引でAppleの株価は最大で8%もダウンした。

事態は考えられる限り最悪のコースをたどった。まずAppleは売上と利益で予想を達成できなかった。iPhoneの売上はとうとう対前年比で崖から転落したように減少した。Appleが発表した第3四半期のガイダンスはきわめて生温いものだっった。簡単にいえば、良い四半期だったとはいえない。Appleはこの点について比較の対象となる昨年の四半期の業績が好調過ぎたことと世界経済のマクロな問題を指摘している。

まずは発表された数値をまとめておこう。

  • 売上:506億ドル。 昨年同期は580億ドル。アナリストは520億ドルを予想していた。
  • 利益:一株あたり1.90ドル。アナリストの予測は2ドル。
  • ガイダンス:第3四半期の売上予測は410億ドル、利益は43億ドル。前年同期は496億ドルでアナリストの予想は474億ドル。
  • iPhone販売:5120万台はアナリストの予測、5070万台を上回ったが、昨年同期の6120万台を下回った。
  • iPad販売:1030万台。アナリスト予測は940万台。昨年同期の実績1260万台に届かなかった。
  • Mac販売: 400万台はアナリスト予測の440万台、前年同期の実績460万台をいずれも下回った。
  • 中国本土:これまできわめて強い成長を遂げてきた地域だが、売上は125億ドルで昨年同期の実績、168億ドルを大きく下回った。

アナリストの予測を上回った点が多少はあったが、売上実績とガイダンスは低調で、市場の反応はAppleに大きな打撃となった。一日で8%の株価急落というのは同社として初めてのことだ。なるほどAppleは昨年1年で20%の下落を経験しているが、これほどドラマティックな株価の変動は過去になかった。ドラマティックな演出はAppleの得意分野だが、これはそれとは異質だった。

さまざまな数字に株式市場は反応する。プラスに働くのはまず利益だ。アナリスト予測の達成は良いニュースで、予測を上回るならなおさら良い。しかしApple、Twitter、Facebook、Alphabet(Google)のような大企業となると、成長性が株価の動きに占める割合がおそろしく大きくなる。Appleは過去13年で初めて売上の前年同期割れを発表しただけでなく、次の四半期の見通しも同様に暗いことを認めた。

同日に決算を発表したTwitterと比較してみよう。Twitterは売上でアナリスト予測を上回ることに成功した。さらにユーザーベースも意味ある成長を達成していた。Twitterの今期の月間アクティブ・ユーザーは3億1000万で、前年同期の3億500万を上回った。しかしTwitterの発表によれば、ガイダンスの売上予測は5億9000万ドルから6億1000万ドルの間で、アナリストの第3四半期の売上予測、6億7800万ドルを大きく下回った。着実に売上を伸ばしているものの、ユーザーベースの拡大が歯がゆいほど遅い(ときおり減少する)企業としてはまことに不本意な決算となった。

では別の企業と比較してみる。Alphabetはアナリストの予想をドラマティックに上回り、一時、時価総額でAppleを上回った。 クリックあたり単価(要するに1クリックの価値)が連続的に低下しているにもかかわらず、売上が健全な成長を見せたからだ。ところがAlphabetはc売上でも利益でもまったく弱気」であることが発表されて株価はただちに5%も下落した。

そこで話はAppleに戻る。前四半期、Appleの成績は業界関係者の期待に届かなかった。関係者は皆これが一時のことなのか、将来も続くのかいぶかった。その結果はやはり下落傾向が続いた。Appleは2期連続でウォールストリートの予測を下回った。これまでAppleの株価は健全な成長をもっとも長く続けてきた。単にIT分野の話ではなく、世界を通じてそうだった。もしAppleの株価が期待どおりアップしないなら、テクノロジー業界全体に(為替変動など)何か問題があるはずだと考えられていた。しかし最近の四半期では、Appleの成長の核心であるiPhoneに陰りがみられることがはっきりしてきた。

公開企業であることは一般投資家の意思に株価が左右される可能性を意味する。一般投資家は独自の利害にもとづいて行動する。 つまりカール・アイカーンのような「もの言う株主」はApple株を大量に取得することによって、一般投資家の利害を背景にAppleに強い圧力をかけけて不本意な行動を取らせることが可能となる。 なるほどAppleは群を抜いて巨大な企業だが、独自の戦略のみで行動することはできない。〔株式を公開している以上〕Appleはウォールストリートをハッピーにしておく必要がある。

ウォールストリート側からいえば、AppleにはもっとiPhoneやiPadsを売り、さらに新しいビジネス分野を発見してもらいたい。これに対してAppleはiPhoneとiPadをアップデートし、iPad ProやiPhone SEといった新製品を投入してきた。またサービス面でもApple Musicをスタートさせた。これは期待どおりに成長すれば売上の新しい柱のひとつなり得る。同社の発表ではApple Musicにはすでに1300万の有料ユーザーがおり、今期の売上は60億ドルに達したという。全体の売上からすればまだごく一部だが、すくなくとも新しい成長の可能性は見せたことになる。

今回の株価の下落はもうひとつ、人材の獲得という面でも問題となる。Appleのような企業に就職した場合、報酬のかなりの部分がストック・オプションで支払われ、いわば半凍結状態となるのが普通だ。株価が下落すれば、報酬は当初の期待を下回る。現実に報酬の目減りを経験している社員はAppleよりもっと安定した成長した成長が見込める企業への転職を考えるようになる―たとえばFacebookだ。あるいは成功すれば巨額のリターンが期待できる起業という道を選びたくなるかもしれない。Appleが今後も成長していくためにはきわめてイノベーティブな人材が必要だ。そうした人材を獲得し、保持するためには十分な報酬を支払えなくてはならない(Appleは貯めこんだ巨額のキャッシュに当面手を付けるつもりはなさそうだが)。

Appleにはウォールストリートを満足させるために打つ手がいつくかある。利益を株主に還元する、あるいは自社株買いによって株価をアップするのがその一つだ。しかし株価を投資に見合うレベルに引き上げるためにはAppleは本業で成長を続けなければならない。一株当たり利益のアップや自社株買いはたしかに役立つが、それは投資家の利益を真剣に考えていることを市場に向けてアピールするという効果が大半を占める。問題はAppleの成長であり、成長が続くかぎりウォールストリートは満足し、Appleもフリーハンドを得る。

それが実現できない場合、Appleは戦略の練り直しを必要とするだろう。さもなければ、ここ数年、Appleの実績に不満の声を上げてきた株式市場との危険な対決に踏み込むことになる。

〔日本版〕Appleの株価はこのページなどに掲載されている。4月28日早朝(JST)のAppleの株価は97.82ドル、時価総額は5386億ドルなどとなっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MacBook新モデル発売、ローズゴールド追加、性能向上&駆動時間延長

mabook

eng-logo-2015アップルが「新しいMacBook」こと無印12インチMacBook をリフレッシュしました。変更はプロセッサの高速化、バッテリー駆動時間の延長など中身の更新と、本体色にローズゴールドが加わったこと。

新しい「新しいMacBook」の仕様は、

1.1GHz Core m3 (TB時最大2.2GHz)、8GB RAM、256GB PCIe SSD モデルが14万8800円。
1.2GHz Core m5 (TB時最大2.7GHz)、8GB RAM、512GB PCIe SSD モデルが18万4800円。

プロセッサはオプションで 1.3GHz Core m7(Turbo Boost時最大3.1GHz)も選択可。

Core mプロセッサが第六世代(Skylake)になったことで、グラフィックは従来のIntel HD Graphics 5300から、25%高速な Intel HD Graphics 515へ。またWiFiウェブブラウズ時のバッテリー駆動時間は従来の最大9時間から10時間へ、iTunes動画再生時は従来の10時間から最大11時間へと伸びています。

本体や画面のサイズ、解像度、重量、FaceTimeカメラの解像度480pなどは据え置き。USB-Cポートの機能も今回は据え置きです。

販売はApple.comで本日から、直営アップルストアや取扱店の店頭では明日から。

指板をボタン化してワンプッシュで好きなコードを鳴らすMIギター

ギターを学ぼうと思った人の90%が、1年以内に諦めてしまうのだそうだ。そんなことを聞いていたBrian Fanは、娘のためにギターで子守唄を弾こうと考えたときに、いっそのことギターという楽器を再発明してみようと考えた。そしていろんな弦をおさえてコードを弾く代わりに、ボタンを押すことでギターが引けるようにした。これにより弾きたい曲を数分でマスターできるようになった。

ギターを再発明して産みだした楽器とはMagic Instrumentsの「MIギター」だ。「ギターヒーロー」のコントローラーのようにも見える。しかし決まった曲を「鳴らす」のではなく、実際に「演奏」することができるのだ。楽器にはスピーカーも内蔵されている。連携アプリケーションを使って、ビートルズやボブ・マーリーなどの曲の弾き方などを学ぶこともできる。

このMIギターは、Indiegogoにて299ドルからのキャンペーン中で、2017年第一四半期からの出荷開始を予定しているのだとのこと。

magic instruments

「ギターのインタフェースは100年も前に開発されたものです。弦がどのように振動するかという物理法則に基づいて生まれたものです」とFanは語る。その100年前からは、技術の進化によりさまざまな物事がより「簡単に」行えるようになってきている。そうした流れをギターにも反映させて良いのではないかと考えたのだそうだ。そしてその考えを推し進めるうちに、Y Combinatorのアクセラレータークラスにおいても注目されるに至ったらしい。

ギターヒーローのようなスイッチ方式とはことなり、指の動きやピッキングの速さなどを検知する擬似弦を搭載している。それにより、従来のギターに近いテイストを導入することができたのだ。おまけに面倒なチューニングの必要はない。リバーブやトーン調整のためのノブも装備されていて、好みの音を鳴らすことができるようにもなっている。

MIギター用の譜面を読みこなすには多少の慣れも必要だ。ただ、連携アプリケーション側で弾いた箇所をタブ譜上で表示してくれるので、どこを演奏しているのかを見失うことはない。出力は通常のギターアンプ、MIDI、ヘッドフォンに対応している。すなわちコンサートで演奏することもできれば、ひとりで練習することもできるわけだ。

よくある(昔、ジャーミネーターなんてものもあった)決まった曲しか演奏できない玩具ではない。MIギターでは演奏できる曲に制限はなく、自分の好きな曲を弾くことができる。ミューズのボーカルであるマシュー・ベラミーも、このMIギターへの出資者のひとりだが、心に浮かんだ曲を、ギターの仕組みなどに意識を奪われることもなく音にすることが可能なので、作曲に用いることもあるのだと語っている。ちなみに直近30秒に演奏したフレーズはギター側で自動的に記録しているので、たまたま弾いてみたフレーズを、うっかり永遠に失ってしまうようなこともない。

HOTRS

MIギター本体およびアプリケーションにはいろいろな機能が備わっているが、ともかく比較的手軽なギターという楽器をさらに簡単にして、初心者にも簡単に自己表現が行えるようにしているのは素晴らしいアイデアに思える。

ギターを弾けるようになるまでの努力こそが楽しいのだという人は少数派だろう。好きな曲を自在に弾くことができた方が楽しいはずだ(普通の人にとっては)。ギターにある指盤をボタンに変え、自在に演奏し、自分の弾くギターにあわせて歌を楽しむことも容易になった。

個人的には趣味でギターを弾いてきた。それでも新しい曲をマスターしようとするたびに、見たこともないコードをマスターしなければならないことには苛立ちを感じたりもしていた。しかしMIギターを使えば、難しそうに聞こえる「朝日のあたる家」などもすぐに弾けるようになるのだ。

音質的にはまだ改善の余地はあると思う。よりギターらしくすれば、より広い層から支持を集めることができると思うのだ。ただ、自分の心に浮かんだ曲を仕上げてみたいとか、あるいはキャンプ場でのヒーローを目指したいということなら、このMIギターは相当に有望なデバイスだと思う。

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(翻訳:Maeda, H

波乱のGoPro、アクションカメラと自動車、玩具、アプリとの連携プログラムを発表

2016-04-16-baby-gopro

GoProは木曜日に新しい開発プログラムを静かに発表した。 これはGoProのアクションカメラを自動車その他のサードパーティー製品にできるだけ多く結びつけようという計画だ。このプログラムはサンフランシスコで開催されたプライベート・イベントで発表された。イベントではすでに実施されている提携の成果が多数発表された。

今年に入って発表されたPeriscopeとの連携などがGoProが目指す新たな戦略を示す典型だ。後付けアクセサリーとしてはSyncBac Proというビデオ同期のためのタイムコード生成ハードウェア(先月発表された最新アイテム)などが開発されている。

GoProではFisher-Priceの子供用おもちゃへのアクションカメラの組み込み、パラセールやスキーなどのプレイヤー向けの位置情報その他の重要データを記録するシステムなどを開発するという。BMWとトヨタとの提携は自動車関連のハード、ソフトにも力を入れるというサインだろう。

下のビデオではGoProが開発中のさまざまなアイテムが紹介されているが、私がいちばんクールだと思ったのは手袋をしたままGoProが操作できるジェスチャー・コントロールシステムだ。オートバイやエクストリーム・スポーツで必要とされるギアを装着した場合に非常に役立ちつはずだ。

このタイミングの計画の発表は、財務状況の悪化が公表され株価がジェットコースター状態になったことと関連があるだろう。GoProではユーザーと販路を拡大し、売上を増加させてGoProの輝き(と売上)を取り戻したいに違いない。アクションカメラは需要が一巡してしまえば後は買い替え需要しか見込めない。しかしGoProを毎年買い換えるユーザーはまずいない。新しいクールなアクセサリーとソフトウェアが新しいユーザーを呼び込み、さらに既存ユーザーには積極的にカメラを使ってもらい―できれば新機能を搭載した次世代モデルを買ってもらいたいということだろう。イベントではサードパーティーの製品のための“Works with GoPro”〔GoProと連携〕という規格とロゴも発表された。

works with gopro

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

2000ドルのホビースト向け精密CNCマシン、Carveyを解剖する〔ビデオ〕

Carveyはホーム・ユーザー向けのロボットCNC工作機械だ。高速で回転する工具が金属、プラスティック、木材の表面を精密に加工する。

外観は3Dプリンターに似ているが、3Dプリンターではない。平面加工マシンという意味でむしろその正反対だ。Carveyは金属ブロックなどの素材をデザインの通りに削っていくことができる。デザイナー、メーカーにとって理想的なツールといえるだろう。Carveyの設定や操作には特別な知識はほとんど必要ない。2000ドルという価格はGlowforgeにほぼ匹敵する。こちらはレーザー・テクノロジーを利用して物体の表面にエッチングなどの加工をする機能がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Appleで長年デザイナーを務めたDanny CosterがGoProの副社長に

2016-04-14-woodman

Appleで長年インダストリアルデザイン部門の幹部を務めてきたDanny CosterがGoProに転身する。Coster1990年代の初期からAppleにおり、スティーブ・ジョブズの復帰と共に頭角を現した。今度はその才能をGoProのために役立てることになる。このニュースにGoProの株価は急上昇した。

このニュースはThe Informationで最初報じられ、GoProのファウンダー、CEOのNick Woodmanの社内メールで確認された。

WoodmanはCosterについてのプレスリリースで次のように書いている。「Dannyに初めて会ったのは2001年の12月で、奇妙に聞こえるかもしれないが、場所はメキシコのSayulitaのビーチだった。私はその後5ヶ月メキシコでサーフィン漬けになるつもりだった。私がGoProのプロトタイプを開発し、テストしたのはこのサーフィン旅行の期間中だ。Costerのデザイン能力については経歴がすべてを語っている。われわれはCosterがGoProに加わることで大きく活気づくのを感じた」

GoProの株価は今年に入って波乱含みだった。Danny Costerがデザイン担当副社長に就任するというニュースが広がると株価は1月中旬以來の高値をつけた。この記事の執筆時点で株価は16%の値上がりだ。

CosterはNick Woodman直属となる。正式な就任は4月末が予定されている。〔プレスリリース全文は原文参照〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

すまない、Oculus。HoloLensを買うことにしたよ

今週、マイクロソフトのHoloLens Dev KitOculus Riftの両方が顧客への発送を開始したことで、頭に取り付けるヘッドセット同士の闘いは煮えたぎっている。

最新鋭のテクノロジーを愛するものであれば、その両方のテクノロジーを待ち焦がれているのではと思われるかもしれないが、実はそうではない。HoloLensは私に、Oculusが与えてくれなかったものを与えてくれた。それは、言いようもない歓喜とともに未来にむかって跳躍するような感覚だ。

AR vs VR

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HoloLensを装着すると、まるでヘッドバンドに取り付けられた重たいサングラスを着けているようだ。それだからこそ、着けている事を簡単に忘れてしまうという事実はとても興味深い。

この2つのデバイスは、フランケンシュタインの人造人間実験のように頭にスクリーンを取り付けるという点では似ている。だが似ているのはそこだけだ。これらのデバイスを比較するうえで最も重要なのは、この2つはまったく違った用途を持つという点だ。Oculusの仮想現実(VR)は、物語を観たり、ゲームをしたり、または鉄のような度胸を持っている人であればジェットコースターを1つか2つ楽しんだりするためのものだ。

その一方でHoloLensは拡張現実(AR)の典型だ。このデバイスは、本質的には大やけどの失敗をしたGoogle Glassのハイテク版のようなものだ。だが、Google Glassはコンピューターが馴染めないところにまで、それを無理取り入れようとした一方で(ゴホンゴホン)、HoloLensの使われ方は少しちがう。あの不運なメガネとは違って、HoloLensは「いつでもどこでも」装着するためのものではないのだ。

600ドルというOculus Riftの価格は、HoloLens Dev Kitの3000ドルと比べるとかなり安いが、後者のヘッドセットにはコンピューターが搭載されている。逆に言えば、グラフィック処理も難なくこなす高機能のゲーミングコンピューターとRiftを接続する必要がある。Riftを動かすために差額分の2400ドルを費やす必要はないが、費やそうと思えば簡単だ。そう考えると、この2つの実質的な価格の差はなくなる。

しかし、問題はお金の事ではない。単純に、私にはOculusの価値が理解できないのだ。映画はシェアする体験だが、顔の周りにマスクを取り付けた状態ではそれもできない。私にはゲームをする時間もない。それに、「Henry」のような物語は確かにVRでしか得られない体験ではあるものの、それは必ずしも私が探し求めているような体験でもない。しかも、それに2500ドルかそれ以上ものお金を費やさなければならないとしたら、なおさらだ。

HoloLensを顔に装着して異世界へとつなぎこまれる時も、私の頭にはそんな考えがあった。絶対に気に入らないと思っていたのだが、それは間違いだった。私は夢中になった。言葉にできないくらい夢中になったのだ。このテクノロジーは、自分を現実世界から隔離したいのではなく、このテクノロジーを使って自分の生活を高め、向上させ、そしてその名の通り拡張したいと考えている人には最適なものだ。

マイクロソフトはHoloLensのデモで、ARは現実世界の中で、社会的で協同的なものになり得ることを示した。もっと重要なのは、それを装着しているということさえも忘れてしまうということだ。

はるかに自然な体験

現実にデータが被さった世界に、あなたがどれだけ早く慣れることができるのかということを説明する方法はない。始めてそのデバイスを装着してから、ものの20分以内にはそれが普通なことのように感じる。「自然」と言ってもいいかもしれない。

hololens

写真の赤い部分はスピーカーになっていて、耳に向けられている。イヤホンなどを装着しないので、このデバイスは興味深いほど拡張世界の体験を阻害しない。

ある時、私たち6人は皆HoloLensesを装着して、同時に同じ3Dモデルを見ていた。マイクロソフトの専属担当者が歩いてきて、「それでは、エネルギー・ポータルはどこにあるでしょうか?」と尋ねてきた。私は彼の方を向いて顔をしかめ、こいつはいったい何を言っているんだと不思議に思った。

「ここにあるじゃないか」と私は鋭い口調でそう言って、指をさした。その時私は、彼はHoloLensを装着していないので、当然ながらどこにそのポータルがあるのか分かるはずがないことにはっと気がついた。私が、なぜARがVRよりはるかに理にかなった製品なのかという理由に気がついたのは丁度その時だ。たとえ視界に何だかよく分からないものが浮かんでいたとしても、現実世界にいることはとても自然なことだ。完全に人の手で作られた世界にいることは、そうではない。

HoloLensが常に直面するであろう問題は、それを装着している人が誰にも見えない物を見ているとき、その人がとても滑稽に見えてしまうことだ。BuildカンファレンスでのHoloLensのデモンストレーションがその例だ。

そう、このビデオの中でHoloLensesを装着している人はとても愚かな人に見える。それを避ける方法はない。だが一度装着したら、見た目など、どうでもよくなってしまう。

留意すべき重要な点は、このデバイスはGoogle Glassと違って、周りに人がいる時に装着されることを意図して製作されたものではないということだ。そのために存在するのではない。オフィスだとか、むしろデザインスタジオのようなコントロールされた空間のなかで現実世界と対話するときに装着するものなのだ。

私にとってこのテクノロジーの魔力とは、現実世界と拡張された世界が交差しているということだ。私はどこか遠いワンダーワールドに没頭することにはまったく興味がない。でも、自分の周囲の世界を変えられるキットが3000ドルだって?その話、のった。

Buildでは、まるで未来が突然に、予告もなく押し寄せてきたようだった。納得した。VRは確かにすてきなものだが、これまでのところ誰からも、それが何のためにあるのかという説得力のある説明を聞いたことがない。ARはそれとはまったく別の話しだし、その物語の次章では何が見られるのか、待っていられない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website / Twitter