対戦型脳トレアプリのBrainWarsが1000万ダウンロード達成――Supercell、Kingを目指す

トランスリミットの対戦型脳トレアプリ「BrainWars」が、全世界1000万ダウンロードを達成した。同社の設立は2014年1月14日。ちょうど創業1周年での達成となった。

日本はたった4.3%――高い海外ユーザー比率

BrainWarsはトランスリミットが2014年5月にリリースしたスマートフォンアプリだ。穴あきの計算式に、正しい式になるよう計算記号を入れる「四則演算」、指示された方向に画面をフリックしていく「フリックマスター」など、直感的な操作で楽しめる約20種類の脳トレゲームで世界各国のユーザーと対戦できる。対戦はリアルタイムだが、相手のユーザーが応じられない場合、そのユーザーの過去の実績をもとに非同期での対戦が行われる。

僕はリリースの1カ月ほど前にアプリのデモを見せてもらったのだが、その頃からトランスリミット代表取締役社長の高場大樹氏は「ノンバーバル、言語に依存しないサービス設計をしている」と語っていた。実際のところ、ユーザーが最も多いのは米国(25.4%)で、日本は4.3%と少ない。

2014年5月にiOS版をリリースしたBrainWarsだが、ノンプロモーションながらサービス開始から2カ月で2万ダウンロードを達成。そこから国内のIT系のメディアやブログなどで取り上げられ、さらに7月にApp Storeの「注目アプリ」として日米で紹介されるようになってから急激にダウンロード数を増やしたそうだ。9月にAndroid版をリリースするとダウンロードは更に増加。10月に300万、11月に700万を達成し、今回の1000万ダウンロードに至った。

高場氏は海外でのダウンロードについて、「特に米国ではApp Storeでの紹介がきっかけだが、それと同時に(対戦結果をシェアした)Twitter経由でのダウンロードが多い。ユーザーインターフェースもフラットデザインを意識したし、ノンバーバルでシンプルなゲーム性を追求している。そのあたりが海外でも受けたのではないか」と分析する。ダウンロード数だけでなくアクティブユーザーも気になるところだが、具体的な数字は非公開だという。ただし「一般のソーシャルゲームのアクティブ率は7日間で20%程度だと考えている。それよりかは大きい数字だ」(高場氏)とのこと。

ユーザーの「真剣さ」ゆえに読み違えたマネタイズ

BrainWarsは1プレイごとにハートを1つ消費していき、そのハートは時間経過によって回復するというソーシャルゲームなどでよくある仕組みを導入している。時間経過を待たずにプレイする場合は課金、もしくは成績上位で得られるコインを使ってハートを購入する必要がある。またコインは、対戦時に自分の得意なゲームを選択する際や過去の成績を閲覧する際にも使用できる。このコインの課金と広告によって、「すごく小さい額ではあるが黒字で運営している」(高場氏)というBrainWars。だが課金に関しては誤算もあったのだそうだ。

BrainWarsは「ガチャでレアキャラを引き当てればゲームを有利に進められる」というものではなく、地道にミニゲームに慣れていかなければいい結果を出せない。そんなこともあってか、前述の「得意なゲームを選択する」という機能を使わずにランダムに選ばれるゲームで正々堂々と戦いたいというユーザーが多いのだそうだ。高場氏もこれについては「鍛錬を積んで勝負をするという競技的な側面があり、ユーザーは(課金して自分に有利なゲームを選ぶことなく)真剣に勝負する。ここが課金のポイントだと思っていただけに誤算だった」と振り返る。また、具体的な数字は教えてもらえなかったが、課金率の低さも今後の課題なのだそうだ。そういった背景もあって、2月にも予定するメジャーアップデートでは、1人向けの新たなゲームモードを用意。ここでコイン消費を促すという。

LINEとの協業、2015年中にゲームを提供

トランスリミットは創業期にMOVIDA JAPANやSkyland Venturesなどから資金を調達。その後2014年10月にLINE傘下のベンチャー投資ファンドであるLINE Game Global Gatewayのほか、ユナイテッド、East Ventures、Skyland Ventures、Genuine Startupsから総額3億円の資金調達を実施している。同社はこの調達と合わせてLINEとの業務提携を発表。LINEのユーザー基盤を活用した新たなゲームコンテンツを開発するとしていた。

このLINE向けゲームの進捗については、「今はBrainWarsに注力しているところ。だが年内にはLINE向けの新規タイトルを1本リリースする予定だ」(高場氏)とした。またそのテーマについては、「『LINEに乗せて成果の出るもの』を考えているが、BrainWarsがベースになるか、まったくの新規タイトルになるか未定」(高場氏)なのだそうだ。

高場氏はこのほか、現状10人(インターン含む)の組織を年内に30人程度まで拡大する予定だとした。年内にはBrainWars、LINE向けタイトルに加えて、自社の新作タイトルも提供するという。「BrainWarsは1年で1000万ダウンロードを達成したので、2015年内に3000万を目指したい。また同時に年内に3ラインまで拡大して、1つ1つのアプリで売上を作って自走しつつ勝負をする。目標は世界で名前が通るデベロッパー。SupercellやKingと肩を並べたい」(高場氏)

トランスリミットのスタッフら。前列中央が代表取締役の高場大樹氏

 


nanapiの新サービスemosiは、テキストを使わずにコミュニケーションを実現する

ハウツーサイトの「nanapi」やコミュニケーションサービスの「Answer」、英語メディア「IGNITION」などを手掛けるnanapiが、実はひっそりと新サービスを公開している。その名称は「emosi(エモシ)」。App Storeにて無料でダウンロードできる。

emosiは、画像や動画、音声を投稿するコミュニケーションサービスだ。そう聞くとInstagramだってVineだってあるじゃないかと思うかもしれないけれど、このサービスがユニークなのは、テキストが投稿できないところにある。以前のバージョンでは画像にタイトル程度のテキストをつけることができたが、最新版ではそれすらできないようにしている。

アプリを立ち上げ、画面下部中央にある投稿ボタンをタップすると、「動画」「音声」「静止画」「アルバム」のアイコンが表示される。いずれかをタップして撮影、録画・録音(アルバムの場合は写真などを選択して)し、色みを変えるフィルターをかけて投稿できる。

投稿一覧画面。テキストがつくのは前バージョンまで

投稿一覧画面では、画像や動画はモザイクがかかった状態(音声の場合はアイコン)で表示されており、それぞれをタップしてはじめてその詳細が分かるようになっている。投稿を閲覧したユーザーは、一般的なコミュニケーションサービスでいうところの「コメント」のかわりに、画像や動画を投稿(リアクション)できる。リアクションで投稿された画像や音声には、Facebookの「いいね!」にあたる「Nice」というボタンが用意されている。投稿は匿名でも、ニックネームでも本名でも可能。デフォルトのアカウント名は「emosi」になっているが、そのまま利用することも、アカウント名を変更したり、自己紹介ページに自分の画像や音声、動画を登録することもできる。

nanapi代表取締役の古川健介氏に聞いたところ、サービス自体は2014年中にローンチしていたのだそうだ。だがプロモーションなどはしてこなかったこともあって投稿の数もまだまだこれからという状況。なので、コミュニケーションが成り立たずに画像1つあるだけ、という投稿も少なくない。だが中には、曇天のビーチの写真をアップしたユーザーに対して、他のユーザーが晴れたビーチの写真や青空の写真を投稿するとか、お弁当の写真をアップしたユーザーに対して、他のユーザーが別のお弁当や、カレー、焼肉、といったように次々に食事の写真を投稿する、「つらい」という音声に対して他のユーザーが爽やかな景色の写真を投稿する、といった不思議なコミュニーケーションが生まれている。

動画、または音声に特化して、特定のテーマに沿った投稿をしていくようなサービスも出てきているが、コミュニケーションをテーマにしながらもテキストがまったく使えないサービスなんて見たことがなかったので、その発想にはちょっとびっくりした。nanapiはなぜemosiを提供したのか。

古川氏はその理由についてこう語る。「チームラボの猪子さん(代表取締役の猪子寿之氏)が以前、『言語を介さないと怒りの感情はは長続きしない』と話していた。例えば格闘家が試合前に罵り合うのは、そうでもしないとそのあと殴れないからではないか。それはつまり、言語がない状態であればポジティブなやりとりしかできないということではないか」(古川氏)

そこで試験的にemosiをリリースしたところ、あるユーザーが落ち込んでいるような写真を投稿すると、それに対してまるで慰めるかのように、きれいな空の写真を投稿してくれるという画像だけのやりとりが起こったということもあり、サービスの作りこみを進めたそうだ。そういう経緯もあって、App Storeでのemosiの紹介には「ネガティブな感情をポジティブに変えてくれる、新感覚コミュニケーションアプリ」という説明がある。通報機能もあるので、公序良俗に反するような画像などは削除されるようだ。

nanapiがemosiに先行して手掛けるAnswerは、「即レス」をうたうテキストベースのコミュニーケーションサービス。2013年12月5日のサービス開始から約1年で総コメント数1億件(2014年12月22日時点)を突破している。emosiは当初、テキストではなくリッチメディアに対応した「次世代版Answer」という位置づけで考えていたそうだが、「さすがにサービスが尖りすぎていたので、別のサービスとしてリリースした」(古川氏)という。

また人をポジティブにすることをモットーとするこのサービス、ちょっと変わった機能が付いているそうだ。投稿をした人(Aとする)にリアクションした人(Bとする)がいたとして、そのBがまた新たに投稿し、それにリアクションした人(Cとする)がいたとする。そしてそんなCがまた新たに投稿をし、Aがリアクションするというような、A→B→C→Aという「リアクションの輪」ができたときに、その旨が通知されるのだそうだ。「お金を稼ぐのも大事だが、少しでも世界平和とか、世界を変えられるようなアプリを作ろうと思っていた時期があってサービスを企画した。人に親切にして、それがつながっていけば」(古川氏)


ミサイル着弾でも帰国しない、サムライ榊原氏が率いる新ファンドは「イスラエルと日本の架け橋になる」

創業間もないスタートアップを育成投資するインキュベーター。日本での草分け的存在として知られるサムライインキュベートが1月12日、5号ファンドを設立すると発表した。これまで国内約80社に投資してきた同社だが、新ファンドでは、シリコンバレーに次ぐ「スタートアップの聖地」と言われるイスラエルの企業に積極的に投資していく。

「聖地」から世界を狙うスタートアップを支援

TechCrunchでも報じたが、サムライインキュベート創業者の榊原健太郎氏は5月にイスラエルに移住し、7月に同国最大の商業都市であるテルアビブに支社を設立。起業家の卵が寝食を共にする住居兼シェアオフィスの「Samurai House in Israel」を構え、イスラエルから世界を狙うスタートアップを支援している。

イスラエルがどれくらい「スタートアップの聖地」なのかは、データが物語っている。人口わずか776万人のイスラエルにおけるベンチャーキャピタル(VC)の年間投資額は2000億円と、日本の約2倍。人口1あたりの投資金額では世界1位だ。SequoiaCapitalやKPCB、IntelCapitalといった世界の大手VCが現地のスタートアップに投資し、これらの企業をIT企業の巨人が買収するエコシステムができているようだ。

例えばFacebookは2012年6月、iPhoneで撮影した友達にその場でタグ付けできるアプリを手がけるFace.comを買収。このほかにも、Microsoftは検索技術のVideoSurfを、AppleはXboxのKinectに採用された3Dセンサー技術のPrimeSenseを、Googleは地図アプリのWazeを買収。日本でも、楽天がモバイルメッセージアプリ「Viber」を9億ドル(約900億円)で買収して話題になった。

ちなみに、TechCrunch編集者のMike Butcherは「テルアビブで石を投げればハイテク分野の起業家に当たる」と、スタートアップシーンの盛り上がりを表現している。実際のところを榊原氏に聞くと、「道端でも飲食店やクラブでも起業家だらけ」とのことで、本当らしい。

テルアビブの市役所には、TechCrunch編集者のコメントが掲げられている。左から2番目が榊原氏

ファンド規模は10倍に、要因は日本企業が注ぐ熱視線

新ファンドでは、イスラエルと日本のスタートアップ110社以上に投資する。イスラエルについてはファイナンスやセキュリティ、ヘルスケア、ロボティクス、ウェアラブル分野のスタートアップ40社が対象。この中には、ベネッセ出身の寺田彼日氏らが現地で創業した「Aniwo(エイニオ)」も含まれる。

日本人とイスラエル人の混合チームで構成されるエイニオが手がけるのは、起業数が年間3000社と言われるイスラエルのスタートアップの事業スライドを収集・公開するサービス「Million Times」。起業家や投資家、一般ユーザーが交流できるプラットフォームを作ろうとしている。榊原氏は「事業スライド版のGoogleを狙える」と評価していて、1000万円の投資が決まっている。

イスラエル企業の投資先としては、自分の足を動画撮影することで足の形をモデリングする、靴の通販サイトで使えそうな画像解析技術であったり、自分の周囲数十センチの空気だけを浄化するウェアラブル空気清浄機を手がけるスタートアップなどに投資する予定だという。

新ファンドの規模は約20億円になる見込み。サムライインキュベートの過去のファンドを見ると、1号が5150万円、2号が6200万円、3号が2億1000万円、4号が2億4000万円。創業間もないスタートアップを対象にしていることもあり規模が小さかったが、5号ファンドでは10倍となる。

ファンド規模拡大の要因の1つは、日本企業がイスラエルに注ぐ熱視線だ。前述の通り、イスラエルからはイケてるスタートアップが数多く輩出されていて、イノベーションを迫られる日本の大企業にとって、魅力に映ることだろう。かといって、イスラエルの現状はわからない。そんな大企業が、新ファンドへの出資を希望するケースが増えているのだという。

大企業マネーの背景には「過去のファンド実績がある」と榊原氏はアピールする。1号ファンドでは、スマートフォン向けの広告配信サービスのノボットが、創業2年目にKDDI子会社のmedibaに15億円で売却。3号、4号ファンドの実績は明かしていないが、1号ファンドは7倍、2号ファンドは10倍以上のリターンが確定しているという。

ノボット以外の投資先としては、個人が独自の旅行を企画して仲間を集うトリッピース、、個人がコンテンツを販売できるオンラインサロンプラットフォームを手がけるモバキッズ、スライド動画作成アプリ「SLIDE MOVIES」や日記アプリ「Livre」など他ジャンルのアプリを手がけるNagisaなどがある。

イスラエルの技術と日本企業の架け橋に

日本進出を狙うイスラエルのスタートアップにとっても、「渡りに船」の存在のようだ。日本の四国ほどの面積に人口がわずか776万人のイスラエルは国内市場がないに等しく、敵対するアラブ諸国からなる周辺国の市場も見込めない。だからこそ、「最初から欧米やアジアを視野に入れるスタートアップが多い」と榊原氏は話す。

「イスラエルの起業家は0から1を生み出すのが得意。イグジットの意識も高くて、『このプロダクトはキヤノンに使ってもらえる』とか『ドコモにピッタリ』とか言ってくる。新ファンドは、イスラエルの技術を日本企業と連携させる架け橋になれる。」

5号ファンドでは、イスラエルに登記するスタートアップについては、一律で1億円の評価をして、1000万円を上限に投資する。国内のスタートアップは引き続き、B2BおよびC2C分野に注目し、一律で3000万円の評価をして、450万円を上限に投資する。現時点でイスラエル企業15社、日本企業5社への投資が確定しているという。

ミサイルが飛んできても帰国しない「ラストサムライ」

3月の取材時に、「日本の住居を完全に引き払って、背水の陣でイスラエルに挑戦する」と語った榊原氏。移住後は支社設立のために、ヘブライ語を話す日本人に協力してもらって銀行口座を作ることや、イスラエル人の保証人探しに奔走することに始まり、現地でのプレゼンスを高めるために人と会いまくる日々だったと振り返る。

7月8日には、イスラエル軍がガザ地区への軍事作戦を開始。それ以降、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスとの争いで、イスラエルには1000発以上のミサイルが着弾している(ほとんどはミサイル防衛システム「アイアンドーム」が迎撃している)。7月末に実施したイスラエル支社のオープニングパーティーでは「ミサイルが飛んできても日本には帰らない」と宣言。現地では「榊原こそラストサムライ」と喝采を浴びた。

住居兼シェアオフィスのSamurai House in Israelでは、現地の起業家や投資家にアピールするために、毎週のようにイベントを開催。寿司を作ったり剣道を教えるなど、日本をテーマにしたミートアップを60回以上やってきた。「最初はどこにも投資できないんじゃないかと不安もよぎった」という榊原氏だが、今では「イスラエルは日本人にとってブルーオーシャンな市場。リターンを得るのは難しくない」と自信をのぞかせている。

Samurai House in Israelでは毎週ミートアップを開催している


リアル志向、フリマ、インスタントEC――激変するEC業界を振り返って2015年を展望する

編集部注:この原稿はイイヅカアキラ氏による寄稿である。イイヅカ氏はウェブ制作会社にデザイナー、ディレクターとして従事したのち、フリーランスのデザイナー兼ブロガーとして活動。現在はウェブ接客ツール「KARTE」を開発するプレイドに所属しており、同社にてEC特化型メディア「Shopping Tribe」の編集長兼ライターを務めている。

2013年はEC業界にとって激動の1年と言われたが、2014年はその変化が着実に浸透していった1年となった。リアルとネットを繋げる動きが進み、スマートフォンの台頭による、新しい購買行動を創出する動きが目立った。

そして2015年、筆者はトレンドとなるのが「カスタマイズEC」と「ウェブ接客サービス」という2点だと考えている。ここではまず3大モール、フリマアプリ、インスタントコマースという切り口で2014年のEC業界の動向を振り返りつつ、あらためて2015年のトレンドについて考えていきたい。

無料化やリアル進出――3大モールはどう動いたか

まずは国内の主要3大モールである、楽天Yahoo!ショッピングAmazonの動きを振り返ってみよう。

2014年に最も大きな変化があったのはYahoo!ショッピングだろう。2013年10月に「eコマース革命」と銘打って手数料・月額利用料・売上ロイヤルティを無料にしてから約1年が経過したが、2014年には2つの大きな変化があった。

1つめは店舗数だ。eコマース革命以前は約2万件だった店舗数は2014年9月末時点で19万3000件と大幅に増加。1年で約10倍の店舗数に拡大した。

2つめは商品数だ。店舗数の拡大もあって、商品点数はeコマース革命以前から約5割増加した1.2億点となった。現在国内で商品点数ナンバーワンを誇る楽天市場の商品数は1.5億点であり、その数字に迫るものとなっている。2015年早々にも商品数で逆転することが予測される。

Yahoo!ショッピングの施策は手数料などの無料化だけではない。出店の敷居を下げるために、5分ほどで簡単にショップを作れる「ストアクリエイター」を1月22日から導入し、2月からは個人の出店受付も開始した。全体の割合としては法人が上回るようだが、出展を法人に限定する楽天市場の店舗数は4万1000店(2014年12月時点)であることを考えると、出店対象者が大きく広がっていることがわかる。

このように大きな変化は見られたものの、第2四半期(7月〜9月分)のショッピング関連の流通総額の伸びは前年同期比で10%増にとどまった。2014年は売れるモールになるための下地を作った1年であったといえるだろう。

楽天に関しては、リアルでの消費行動に関連するサービスの拡充が目立った。

店舗でチェックインするだけでポイントが貯まる「楽天チェック」を4月に開始し、楽天市場で人気のお取寄せスイーツなどを提供するリアル店舗「楽天カフェ」を5月に東京・渋谷にオープン。そして、コンビニなどの全国約1万2,600以上の加盟店舗で楽天ポイントの貯蓄・利用ができる「Rポイントカード」の発行を10月に開始した。楽天はこれまでも「楽天経済圏」という構想を都度語っていたが、そのリアルへの拡張ともいえる動きは、2015年も強化されていくことになるはずだ。

もうひとつの気になる動きは、米国でサービスを展開する2社の買収だ。買収したのはECサイトの購入履歴を集約するサービス「Slice(スライス)」とキャッシュバックサイト「Ebates(イーベイツ)」。いずれも米国におけるデータ収集という狙いもありそうだが、米国展開強化の一端と言えるだろう。

Amazonは、有名店のプライベートブランド商品を集めた「プライベートブランドストア」を開設するなど、2014年も専門ストアの拡充が多く見られた。また同時に2013年10月からはメーカーとコラボしてAmazon限定の食品販売を開始するなどしている。この背景にはAmazonが持つビッグデータの存在がある。同社は自らが持つデータをもとに、ユーザーの望むテイスト、モデル、カラー、デザインの限定商品を開発したわけだ。

店頭受取サービスを開始したことも重要な動きの1つだ。これまでも行っていたコンビニ受取の取り組みを拡張するものだが、ヤマト運輸と提携しすることで、ヤマトの営業所で最短当日受取が可能になった。ちなみにコンビニについては、ローソンでは翌日、ファミリーマートでは2日後に受け取ることが可能だ。

実は、セブン&アイが自社グループのECで購入した商品を対象に、セブン-イレブンの店舗で当日受取を可能にしようとする動きがある。同社は2015年のサービス開始を目標にしているが、Amazonはこれに先んじて実現した形だ。コンビニとの連携という点ではほかにもローソンと共同で、店頭のLoppi端末の電話などを使用した店頭注文サービスも開始している。今後もECをリアルに拡張する動きとしてコンビニが重要な役割を占めていくことになりそうだ。

米国ではさらに、ニューヨークに拠点を設け自転車による1時間以内の配送を実現する「Amazon Prime Now」を開始している。ほかにもドローンでの配送やタクシーの配車アプリを活用した配送など、さまざまな試みも進められている。Amazonの物流の強化はとどまるところを知らないようだ。

フリマアプリが躍進——メルカリ・Frilが好調

2014年はフリマアプリが注目された1年でもあった。

フリマアプリ市場を牽引したのは、メルカリの「メルカリ」だ。5月にテレビCMを開始してから、半年で約400万ダウンロードを伸ばし、12月時点で700万ダウンロードを突破した。月間流通総額は数十億円規模となり、フリマアプリの中では頭ひとつ抜けた存在となった。3月には14.5億円、10月に23.6億円と大型の資金調達を立て続けに行い、9月には米国版を正式にリリースした。

もう1つ、市場を牽引する存在となっているのがフリマアプリブームのきっかけとなったFablicの「Fril」だ。女性特化型ながら250万ダウンロードを突破し、月間流通総額は5億円を超える。9月には10億円の資金調達を実施し、その翌月からテレビCMを開始した。8月にはFril内にブランドの公式ショップを立ち上げるBtoCサービスも開始しており、こちらも好調のようだ。

LINEの「LINE MALL」も2014年3月から本格的にスタートし注目を集めた。誰ともかぶらない、かつ最も安い購入価格を設定した人だけが商品を購入できる「チャンスプライス」や共同購入が可能な「LINEグループ購入」、さらにLINEでつながっている友人にギフト商品を送ることができる「LINE ギフト」など、LINEのプラットフォームを活かした独自サービス展開をしている。

好調なフリマアプリが注目される一方で撤退を選択した企業も相次いだ。サイバーエージェントの「マムズフリマ(元 毎日フリマ)」や、ブランド品に特化したWhyteboardの「LISTOR(元 Whytelist)」、男性向けに特化したドウゲンザッカーバーグの「bolo」などは、フリマアプリに早い段階で参入していたもののすでにサービスを終了させている。

事業者の明暗が分かれたようにもみえるフリマアプリだが、2014年後半も新規参入があった。もっとも話題を集めたのは、11月に登場した楽天のフリマアプリ「ラクマ」だ。

実はメルカリは開始以来無料で提供してきた販売手数料を10月から有料にし、販売価格の10%が発生するに形に変更している。これを好機とみたのか、ラクマは手数料無料でサービスを開始している。そのタイミング、そして楽天のブランド力もあって注目を集めることとなった。この他に、SHOPLIST.comを運営するCROOZの「Dealing(ディーリング)」や、プリクラ機のトップシェア持つフリューの「Bijoux de Marché(ビジュードマルシェ)」も10月からサービスを開始しており、2015年も引き続きフリマアプリは注目の分野となりそうだ。

勢いの止まらないインスタントコマース

2013年から店舗数が増加する勢いが止まらなかったのがインスタントコマースだ。ブラケットの「STORES.jp」は2013年12月時点で6万店舗だったが、2014年11月には17万店舗に拡大。競合であるBASEの「BASE」は2013年10月時点で5万店店舗だったが、10万店舗(2014年11月)まで拡大させた。

STORES.jpは、この1年で親会社であるスタートトゥデイが展開する「ZOZOMARKET」や ハンドメイド素材大手のユザワヤ商事が展開する「ユザワヤマーケット」など提携するマーケットプレイスを様々な企業と共同でオープン。商品の露出機会を増やす施策を進めた。そして、ZOZOTOWNに出店する店舗が瞬時に自社店舗を開設できる「STORES.jp PRO」も3月に開始。ZOZOTOWNと在庫連携し発送もZOZOTOWNが行うため、店舗は負担を増やすことなく自社店舗を運営することを可能にした。

STORES.jpは2014年後半に店舗数の伸びが加速したが、2つの理由が考えられる。1つは、無料プランでは5点までだったアイテム登録の制限を撤廃したこと。もう1つはフォロー機能を開始したことだ。フォロー機能は、好きな店舗をフォローし、新着情報を取得できるようにするショップ利用客向けのサービスだが、この機能を利用するには会員登録をする必要がある。その登録手続きによって店舗も同時に開設されるため、これが店舗数の伸びにつながったものとみられる。

また会員登録によって、利用客が住所やクレジットカード番号をSTORES.jpに保存できるようにもなったのもポイントだ。STORES.jpのサイトで都度クレジットカードの入力が必要でなくなるという利便性は、それこそ楽天やAmazonのようなショッピングモールを利用しているユーザーからすれば無くてはならないものだ。

BASEは、開発者向けAPIの提供を10月に開始したほか、三井住友カードと提携しクレジットカード決済が店舗開設と同時に利用できるようになった。5月にはグローバル・ブレインから約3億円の資金調達を実施し、2015年以降にマネタイズを進めることも明らかにしている。

フリマアプリ、インスタントコマースの台頭したことに関して、共通しているのは売り手の敷居を下げたということ。これが本格的に浸透していったのが2014年なのではないだろうか。Yahoo!ショッピングもビジネスモデルを大きく転換し、この流れを加速させた。まだまだ足場を固めたレベルなのかもしれないが、2015年に大きな変化を生むような気がしてならない。

2015年に注目する2つの分野

冒頭で書いたとおりだが、筆者が2015年に注目している分野は「カスタマイズEC」と「ウェブ接客サービス」だ。

カスタマイズECは、ウェブ上で自分好みにカスタマイズし、自分だけの商品を注文できるサービス。日本では、10億通りのオリジナルシャツを作成できる「Original Stitch」などがサービスを展開しているが、技術革新が進み、ファッション・家具・食品など様々なジャンルから新サービスが登場しそうだ。3Dプリンタを活用したサービスも今後展開するものと思われる。

ウェブ接客サービスは、97%が何も買わずにサイトを立ち去ってしまうというECサイトの現状を打破すべく、接客をすることで購入率を高めようとするサービスだ。筆者が所属するプレイドでもウェブ接客サービス「KARTE」を開発しており、2015年に一般公開する予定だ。KARTEは来訪者をリアルタイムでどのようなお客様なのかを解析し、グループに分類した上で、その来訪者にあった接客(レコメンドやクーポンの発行など)を自動で行うというものだ。

これまでは、インターネットの特性を活かして多くの商品を多くの人に届けるために「効率化」ばかりに目が向いていた店舗も少なくないだろう。ウェブ接客により、リアル店舗のようにひとりひとりの訪問者にしっかりと対応していくことが、これから注目されるのではないだろうか。

2014年はさまざまな形でECへの参入、ECの利用の敷居を下げるようなサービスが登場したと感じているが、2015年にはそれらがどのように進化するのだろうか。また、新しいニーズを創出するどのようなサービスが登場するのか注目していきたい。

photo by
Maria Elena


インキュベイトファンドが110億円の新ファンド――IoTに注力、FoFも

2014年にも様々なスタートアップと出会うことができたが、その中で2015年により注目が集まることが確信できたテーマの1つが「IoT」だ。そういえば11月に開催したイベント「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルで優勝したのもインクジェットプリンターや専用のペンで回路製作を実現するAgICだった。そして今回インキュベイトファンドが組成した新ファンドでも、IoT関連の投資積極的に進めていくという。

新ファンドは総額110億円、IoTに特化

インキュベイトファンドが1月5日に組成完了を発表した「インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合」は、総額110億円のベンチャーキャピタルファンドとなる。出資するのは産業革新機構、ヤフー、三井住友銀行、Tencent Holdings、セガサミーホールディングス、Mistletoe、東京放送ホールディングス、ミクシィ、日本政策
投資銀行のほか、個人投資家など。聞いたところによると、ヤフーや三井住友銀行が独立系VCに出資するのは今回が初になるそうだ。

インキュベイトファンドのゼネラルパートナーである村田祐介氏に聞いたところ、今回のファンドでは「Global Scale」「Legacy Market」「Enabling」をキーワードに、IoTを軸としたイノベーションを創出するスタートアップへの投資を進めるという。具体的には、次世代メディア、エンターテイメント、ゲーム、コマース、物流、 医療、金融、不動産、自動車、住宅などの領域に注力していくとのことだ。すでに米国で車載用アプリの開発を進めるDrivemodeに出資をしている。

1社あたりの投資金額は、3億〜5億円を想定しているという。ただ村田氏は「大きな金額をコミットするが、この金額でシード投資をやっていく」と強調する。これまでインキュベイトファンドは、起業家育成プログラムの「Incubate Camp」を開催するなどしてシード期の投資に注力してきたところがある。同プログラムの参加者はもともと3000万円のバリュエーションで300万円を出資というスキームだったし、プログラム以外の出資では数千万円前半の出資というケースが多かったが、同じステージに対して桁1つ大きな金額を出資する計画だという。

村田氏は2012年以降に新設されたファンドを取りまとめた金額が約2700億円と説明する(中でも金融系VCなどに比較すると、独立系VCがファンドの担い手として活躍しているそうだ)。しかし、増えたファンドはシリーズAを対象としたものばかりで、シリーズAの手前のシードファイナンスを手掛けるファンドは増えていないと語る。もちろん山田進太郎氏率いるメルカリのように、シリアルアントレプレナーがシードで大型調達をして勝負をするというケースはあるが、「結局大きな勝負をできるスタートアップはほとんどいなかった」(村田氏)と語る。

ではそんな大型調達した資金を使ってきっちり成長できる起業家をどうやって見つけるのか? 村田氏はその1つの取組みとして、インキュベイトファンドが手掛ける「Fellow Program」について教えてくれた。このプログラムはインキュベイトキャンプ ゼネラルパートナーの和田圭佑氏が中心となって立ち上げたもので、大企業の成績優秀者や外資系金融マン、何かしらのプロフェッショナルなど、本業を持ちつつスタートアップについて調査・研究し、毎月1回発表を行うというもの。これによって商社やメーカーから士業、官公庁まで、広く優秀な人材を集めているのだそうだ。「特にこの半年はIT・ネット業界以外でも人と会うようにしてきた。プログラムでも他業界の中堅、エースと出会えたと思っている。IoTはインターネットの人たちだけでは作れない。既存産業側のプレーヤーと一緒になって立ち上げていきたい」(村田氏)。

ファンドオブファンズでシード投資を更に活性化

村田氏は「シードファイナンスを増やす」という観点からインキュベイトファンドが取り組んでいる活動についてさらに教えてくれた。インキュベイトファンドでは、若手キャピタリストのファンドに対して出資(ファンドオブファンズ:FoF)も行っているという。

実はサムライインキュベートについては1号ファンドから出資をしているし、前述のIncubate Campで優勝したサムライト代表取締役の柴田泰成氏の「ソラシード・スタートアップス」、インキュベイトファンドのアソシエイトでもある佐々木浩史氏の「Primal Capital」のほか、スタートアップ支援を行うインクルージョンジャパンが立ち上げるファンドにも出資している。さらに海外でもFoFでファンドの立ち上げを準備中だそうだ。

「赤浦(インキュベイトファンドのゼネラルパートナーである赤浦徹氏)がいつも言っているが、日本でスタートアップが増えない理由の1つはキャピタリストが増えないことにある。そしてそれはサラリーマンVCではなく、腹をくくっているキャピタリストでないといけないと思っている」(村田氏)


ディズニーやナイキに見る、大企業がアクセラレータで成功するためのキーワード

編集部注:この原稿はScrum Venturesの宮田拓弥氏による寄稿である。宮田氏は日本と米国でソフトウェア、モバイルなどのスタートアップを複数起業。2009年ミクシィのアライアンス担当役員に就任し、その後 mixi America CEO を務める。2013年にScrum Venturesを設立。サンフランシスコをベースに、シリコンバレーのスタートアップへの投資、アジア市場への参入支援を行っている。

Disney Acceleratorのデモデー(筆者撮影)

 
「部長、そろそろうちの会社もアクセラレータを始めた方がいいんじゃないでしょうか?」

こうした会話が世界中で行われているのではないかと思うくらい、さまざまな大企業がアクセラレータを始めた、もしくは計画しているという話を耳にする。事実、企業が主体となって行うベンチャーキャピタル、いわゆるCVC (Corporate Venture Capital)の規模は近年拡大を続けており、米国では2014年の3Qに過去最大の投資額(9億9360万ドル)となり、スタートアップへの投資額全体の10%にも達している。スタートアップが生み出すイノベーションを取り込もうと多くの大企業が必死に取り組んでいる様子が伺える。

私は、アーリーステージのベンチャーキャピタルとして、そのソーシング(投資先企業の発掘)の一環として、毎月1つか2つのアクセラレータのデモデー(支援企業の発表会)に参加をしている。その経験から、本稿では大企業が運営するアクセラレータの「トレンド」、そしてその「成功のキーワード」をご紹介したい。

ディズニーからナイキまで

日本では、携帯キャリアのKDDIが2011年からいち早くアクセラレータに取り組んでいるが、近年でもNTTドコモや学研、オムロンなど、新たにアクセラレータをスタートするというニュースも多い。

一方、米国では昨年くらいから大企業によるアクセラレータの動きが加速している。ディズニー、マイクロソフト、スプリント、ナイキ、クアルコム、カプラン、RGAなど様々な業種、業態の大企業が争うようにアクセラレータの運営を開始している。

「総花型」から「特化型」へ

2005年に設立され、DropboxやAirbnbなどを生み出したY-Combinatorに代表される「アクセラレータ」という業種であるが、元々は「テクノロジースタートアップ全般」を対象にするアクセラレータが多かった。その後、雨後のタケノコのようにアクセラレータそのものの数が増えたことと、テクノロジースタートアップがカバーする領域が非常に多様化したことなどを背景として、ここ数年は「特化型」のアクセラレータが増加している。具体的にはヘルスケアに特化したRockHealth 、教育に特化したImagine K-12、エンタープライズに特化したAlchemist、IoTに特化したLemnos Labsなどがある。総花的なアクセラレータはすでに淘汰が急速に始まっており、今後この「特化型」のトレンドはさらに進行していくものと考えている。

「アクセラレータ支援企業」の存在

冒頭にも述べたように多くの大企業でアクセラレータの展開が検討されている状況であるが、そこで問題となるのが「どうやって運営するのか?」という点だ。ディズニーやクアルコムにそう言う人材が最初からいたのか? それとも、新たに採用したのか?

そういうした大企業の悩みに答えているのが、「アクセラレータ支援企業」の存在だ。

米国で代表的な「アクセラレータ支援企業」は、コロラド州ボルダーに本拠を置くTechStarsだ。ナイキやディズニーなど、近年成功を収めている大企業アクセラレータの多くはTechStarsが仕掛けたものだ。TechStarsは2006年に、Y-Combinatorなどと同様に専業アクセラレータとしてスタートしたが、近年支援事業に力を入れている。

TechStarsの支援内容は非常に幅広く、基本的にアクセラレータ運営に必要な業務のすべてを担ってくれる。必要となる予算はかなり大きいと聞いているが、ウェブサイトの構築・運用、支援先企業の募集、審査、メンタリング、デモデー運営など通常3カ月の運営期間に必要な作業のほとんどがマニュアル化されている。ウン億円を支払ってTechStarsとパートナーシップを組めば、どんな大企業でもすぐにアクセラレータをスタートできるというわけだ。日本では、私がアドバイザーを務めるアーキタイプ社などが同様のサービスを提供している。

成功のための「3つのキーワード」

最後に、数多くの大企業によるアクセラレータを見て来た立場から、成功のためのキーワードを3つご紹介したい。

①「アセットへのアクセス」

数多くのアクセラレータがある中で、成功した先輩起業家が運営するアクセラレータでなく、なぜ大企業を選ぶのか?そのシンプルな答えは、スタートアップにはない、数多くの既存アセット(資産)が大企業にあるからだ。それは、販売チャネル、コンテンツ、ブランド、キャラクター、技術、特許、人材、設備など、企業によって様々だ。

今年、ディズニーがスタートしたアクセラレータ、「Disney Accelerator」は、ディズニーが持つ様々なキャラクターやコンテンツを、採択企業が自由に使ってよいと謳ったことで話題となった。実際に、デモデーでは、多くのキャラクターやディズニーランドなど、スタートアップであれば誰もが実現したいと思えるパートナーシップがすでに実現していた。

「自分たちがもつどんなアセットがスタートアップにとって魅力的か?」そこからアクセラレータの検討を始めてもいいのかもしれない。

②「トップのコミットメント」

アクセラレータやCVCなどは、新規事業の一環として一部の部署が主導して行われることも多いと思う。しかしながら、それでは会社全体でその重要性が理解されず、うまくいかないことも多い。一方で、最近はCEOや経営陣が自らアクセラレータにコミットし、積極的にスタートアップのイノベーションを取り込もうとする例を見かける。

例えば、昨年スタートした広告代理店、RGAによるIoT特化型のアクセラレータ、RGA Acceleratorでは、CEO自らがデモデーのオープニングに登場し、趣旨や意気込みを説明していた。「スタートアップのイノベーションを本気で取り込む」という外側に向けての強いメッセージになると同時に、前述の「アセットへのアクセス」という大企業としてはなかなか難しいテーマも、トップもコミットして進めることで実現が可能になるという側面もあるのかもしれない。

RGA Acceleratorのデモデー(筆者撮影)

③「レイターステージ」

通常、アクセラレータというと「創業間もないスタートアップ」を対象にすることが多い。だが最近は、Y-CombinatorがQ&A大手のQuaraをバッチに加えたり、Disney Accleratorでもすでに大きな実績のあるロボットの企業、Spheroなどがバッチに加わっていた。

アクセラレータの意義の一つは、まだ形になっていない新しいアイディアを3カ月という短期間でものにするというものであるが、当然うまくいかないことも多い。一方で、すでに実績のあるレイターステージの企業であれば、そうしたリスクもなく、大企業側のアセットを提供することで大きな成果も期待できる。つまり、最初からパートナーシップとしての成果を狙いながらバッチに加えるという訳だ。こうしたパートナーシップドリブンのアクセラレータというのも、大企業が主導する形としては今後増えて行く形態のような気がしている。

大企業のイノベーションにスタートアップとの連携は不可避

私はサンフランシスコを中心に投資活動を行っているが、ニューヨークやロスアンゼルスにも多くの投資先企業がおり、非常に重要視している。それはサンフランシスコに限らず、かつて大企業に行っていたような優秀な人材がこぞってスタートアップをスタートしているからであり、その流れは加速することはあっても逆戻りすることはないと感じているからである。

「うちの社内の技術の方が優れている」
「そんなの社内で同じことできるじゃないか」
「うちの事業と競合するかもしれない」

大企業の中でスタートアップとの取り組みにはまだまだ反対意見も多いかもしれない。ただ、今後の大企業のイノベーションにはスタートアップとの連携は不可避だ。ぜひ、御社でも経営陣を巻き込み、スタートアップのイノベーションを取り込む活動をスタートしてはいかがだろうか? 本稿が少しでも参考になれば幸いである。


DeNAがキュレーション事業加速、MERYとiemoのノウハウ注入で「食」分野に進出

10月1日に女性向けファッションまとめサイト「MERY」と住まいに特化したまとめサイト「iemo」を運営する2社を約50億円で買収し、キュレーション事業に参入したディー・エヌ・エー(DeNA)。次なる展開は「食」をテーマとしたキュレーションサイトだ。

12月19日に正式公開した「CAFY(カフィー)」は自宅で手軽に作れるレシピなど、食に関するテーマの情報を紹介するサイト。レシピに加えて、「クリスマスの厳選スイーツ9選」や「ホームパーティーを華やかに演出するテーブルウェア7選」など、食卓に関するリスト記事が多い印象だ。

すでに掲載されているコンテンツの一部は、外部のライターが有償で執筆したもの。今後はMERYやiemoと同様に、一般ユーザーに無償で投稿してもらう。隙間時間にスマホで雑誌をめくるような感覚で見てもらうコンテンツを充実させていく方針だ。

「50億円効果」で買収から2カ月でローンチ

コンテンツ以外で特筆すべきは、サイト立ち上げの早さだろう。CAFYはMERYを運営するPeroli、iemo、DeNAの3社連携によるサービス。10月の買収直後からDeNAのメンバーを中心にチームを発足し、それからわずか2カ月あまりでサービス開始に至っている。

具体的な連携効果としては、CAFYのターゲットでもある主婦層向けの記事を手がけるiemoが、主婦に受けがいいコンテンツの編集方法を助言するとともに、人材面でもディレクターを派遣。Peroriはサイトの見せ方をアドバイスするなど、開発面で協力している。実際にCAFYはMERYのサイト構造を移植したかのようにも見える。

「iemoとMERYが1年かけて踏み固めてきたことを端的に注入している。iemoは1年で150万MAU(月間アクティブユーザー、9月時点)、MERYは1年半で1200万MAU(同)と急成長カーブを描いているが、両社のノウハウがあればさらに短期間で成長するのでは」(iemo代表取締役CEOの村田マリ)。ノウハウについては「企業秘密」とのことだが、これを獲得するためにDeNAは約50億円で両社を買収したと言えそうだ。

激戦区のグルメ分野キュレーション、勝算は?

DeNAはCAFYによって、読者層が大きい衣食住すべてのジャンルを網羅することになる。ただ、iemoとMERYの成長の背景には、圧倒的競合が不在たったことがあるのも事実だ。グルメ分野では食べログが「食べログまとめ」、ぐるなびが「メシこれ」、クックパッドが「クックパッドニュース」を展開するなど、すでにネット大手が参入済み。ほかにも堀江貴文プロデュースの「テリヤキ」「マカロニ」といったサービスもある。

食ジャンルのキュレーションは激戦区と言えそうだが、村田マリは勝算をこう語る。「食べログやぐるなび、クックパッドは自社サイトの集客のために事業をやっている。それに対してCAFYは、iemoとMERYが成長してきたように、メディアとして読者が求めるコンテンツを作る意識が強い。ユーザーの隙間時間を獲得できるメディアを目指している。」

左からPeroli中川綾太郎氏、DeNA牛尾正人氏、iemo村田マリ氏

外部コンテンツとの提携で著作権対策

ところで、キュレーションメディアで問題になりがちなのが著作権(パクリ)だ。実際、MERYは一部のコンテンツでは、外部サイトの画像や文章を無断転載した事例もあったりする。著作権的にグレーだとしても、上場企業であるDeNA傘下となると、これまで以上にコンプライアンスの風当たりが強くなってきそうだ。

この点について、DeNAでキュレーション事業を率いる牛尾正人は、「新しいサービスなので想定外のことが起きるかもしれないが、社会のコンセンサスを得ながら進めるしかない」と説明する。その一環として外部サービスと提携し、各社のコンテンツをMERYやiemo、CAFYの記事に「お墨付き」で利用できるようにする。第一弾としては「レシピブログ」「Snap dish」「ミイル」と提携する。

キュレーションサイトで国内最大級のアクセスを誇るNAVERまとめでも、サービスの成長に伴い、著作権侵害が指摘されるようになった。NAVERまとめは人的なチェックだけでなく、ゲッティイメージズやAmazon.co.jp、食べログなどと提携し、無許諾で各社が指定するコンテンツを記事に利用できるようにしてきたが、DeNAも同様にキュレーションの著作権対策を強化する動きを見せている。

「めちゃくちゃ美しいM&A」

DeNAが2社を買収した10月以降、各社の間では活発な交流が続いているという。買収当時、社員数が8人だったiemoは、DeNAからの出向で20人に拡大。Peroriも買収当時12人だった社員が倍増している。さらに、専属ではないが、広告営業や採用、マーケティング業務もDeNAが担当していることから、「一気に組織がスケールした」と村田マリは振り返る。

組織がスケールしたことで、iemoは「マネタイズの本丸」(村田マリ)でもある、建築家やリフォーム、インテリアメーカーなどの事業者とユーザーのマッチングを前倒しできると、DeNAとの相乗効果を語る。同様に、MERYも記事で紹介した商品を購入できるECによる収益化を早期に実現できるようになりそうだ。

「DeNAの出向社員は、配属の初日からスペシャリストとして働いてくれた。数億円を調達したスタートアップでも、こんな短期間でDeNAクオリティの人材はそうそう獲得できない。その恩返しとして、iemoとMERYのようなスタートアップからDeNAにノウハウを提供できたのは、めちゃくちゃ美しいこと。一般的に『M&Aはうまくいかない』と、うがった見方をされやすいが、うまくやってやろうって思う。」(村田マリ)


マネーフォワードが15億円調達、事業パートナー出資で着々と足場拡大へ

家計簿アプリとクラウド会計ソフトを手がけるマネーフォワードは19日、総額約15億円の資金調達を実施することを明らかにした。引受先は既存株主のジャフコに加えて、クレディセゾンやソースネクスト、三井住友海上キャピタル、電通デジタル・ホールディングスといった事業会社。マネーフォワードの辻庸介社長は、「各ジャンルのナンバーワンプレイヤーに出資してもらえたことで事業拡大を加速できる」とシナジー効果を期待している。

マネーフォワードは、約180万人が利用する個人向け家計簿アプリ「マネーフォワード」と、法人向けクラウド会計サービス「MFクラウド会計」を提供するスタートアップ。個人向けでは9月、家計・資産データの活用を可能にするAPI連携を開始。これまでにヤフーやグノシーと業務提携し、各サービス経由でユーザーを獲得している。法人向けの利用者数は明かしていないが、ウェブ経由では中小企業や個人事業主、全国各地で開催するセミナーを通じて大手の税理士法人を取り込んでいる。機能面では確定申告や請求書サービスも投入した。

引受先のクレディセゾンとは、個人および法人の顧客を相互送客してユーザー拡大を図る。両社は5月に業務提携しており、クレディセゾンが発行するセゾン・UCカードの利用明細データをマネーフォワード上に自動保存するサービスを提供している。今後はMFクラウド請求書とクレディセゾンのカード決済の連携や、MFクラウド会計利用者向けの金融商品も開発していく。

ソースネクストとの資本提携では販路の拡大を見込んでいる。両社は3月に業務提携し、ソースネクストを通して、NTTドコモが提供する「スゴ得コンテンツ」、KDDIが手がける「auスマートパス」、ソースネクストの「アプリ超放題」といった月額定額のアプリ使い放題サービスにマネーフォワードのコンテンツを提供している。ソースネクストの量販店チャネルも活用し、確定シーズンに向けてパッケージ版の販売も強化する。

三井住友海上キャピタルとは顧客や提携先の紹介、電通デジタル・ホールディングスとは広告事業の拡大やPR戦略の策定のサポートをしてもらう。同じく引受先であるGMO VenturePartnersは中小企業へのネットワークを持つベンチャーキャピタルで、マネーフォワードの事業拡大に向けて連携する。辻社長は「個人と中小向けサービスで国内ナンバーワンを取り、決済が盛り上がっている東南アジアに進出したい」と青写真を描いている。

今回調達した15億円では、プロダクト強化やサポート体制の充実に向けた人材を採用するほか、マーケティングも加速する。3月下旬には、給与計算業務を効率化する「MFクラウド給与」をリリースする。MFクラウド給与では、基本的な給与計算やウェブ給与明細の機能を搭載。その後は、経費精算を行う「MFクラウド経費」も投入する予定だ。

ところで、スマートニュースやグノシー、メルカリ、sansan、ラクスルなど、10億円以上調達したスタートアップの多くがテレビCMを展開しているが、マネーフォワードはどうなのか? 辻社長は「検討はしたが、当面はやらない結論に至った。現状でやっても砂に水を撒く感じになりそう」と否定し、事業会社と提携して着々とチャネルを拡大する考えを示した。

マネーフォワードは、2013年10月に調達した5億円を含めると、これまでに合計20億円以上を調達したことになる。ちなみに、クラウド会計分野で競合となるfreeeは、これまでに合計17億5000万円を調達している。


ウェアラブルデバイス「Telepathy Jumper」発表、だがそれは想像とちょっと違った

SXSW 2013にて「Telepathy One」が発表されてから1年半、2014年6月には創業者であり代表を務めていた井口尊仁氏の退任騒動も起こった(現在井口氏は同社のフェローという肩書で活動している)が、Telepathyがその製品の詳細を発表した。Telepathyの日本法人であるテレパシージャパンは12月18日、ウェアラブルデバイス「Telepathy Jumper」を発表した。同日よりデベロッパー向けの申し込みも受け付ける

Telepathy Jumperはこれまでのデモ機やモックアップにあったように、メガネ状(厳密には耳から後頭部、反対側の耳までをぐるっと回りこむデザインになっている)のウェアブルデバイスではない。カメラやディスプレイ、マイクを備える「ディスプレイユニット」と、バッテリーや操作ボタンを備えた「パワーユニット」をケーブルでつなげた形状で、ケーブル部を首にかけて使うのだという。医者が首からかけている聴診器をイメージすると分かりやすいかもしれない。

ちなみにモニタ部を目の前に固定する場合、専用のアタッチメントが必要となる。アタッチメントのデータはオープンソースとして公開。自身の頭部のサイズに合わせてデータを加工した上で、3Dプリンターで打ち出して利用する。

アタッチメントをつけてTelepathy Jumperを耳にかけたところ

ディスプレイユニットには、qHD(960×540)のディスプレイ、500万画素・オートフォーカスのカメラ、2つのノイズキャンセリング機能付きマイクなどを備える。パワーユニットには操作用のボタンのほか、1000mAhのバッテリー、8GBのメモリなどを備える。OSはAndroid 4.2で、ネットワークはBluetoothとWiFiを利用できる。実際にデモ機を使用させてもらったところ、ディスプレイは非常に明瞭。周辺の光が強い環境でもはっきり見ることができた。ただ、デモ機はモニターに映像を流しているだけだったので、聴診器型(便宜上こう呼んでおく)であるメリットがイマイチ分からなかった。2015年3月に法人向けに販売を開始し、来夏をめどに一般向けの販売を進める。なお価格は未定。

一般向けの販売に合わせて提供予定のアプリケーションも2つ紹介した。1つは、他のユーザーが見ている(カメラで撮影している)景色をあたかも目の前の景色のように閲覧できる「Eye Connect」、もう1つはユーザーが持っている特技などを、Telepathyを使って他のユーザーに教えたり共有したりできる「Talent Buzz」だ。Telepathy Jumperは「共創」をテーマにしているとのことで、そのテーマに沿ったアプリとなる。また仕様の詳細などは明らかにされなかったが、サードパーティーによるアプリケーション開発も検討する。

「以前から開発していた」という聴診器型デバイス

これまでのデモ機でメガネをイメージしていたこともあって、その形状には驚いたのだけれど、テレパシージャパン代表取締役の鈴木健一氏によると、「ユーザーテストで分かったのは、常にディスプレイが目の前に必要ではないこと」なのだそう。このような気付きから、これまでもメガネ型のデバイスと並行して聴診器型のデバイスも研究・開発していたそうだ。

実はTelepathy Jumperのバッテリーの容量は現在主流となっているスマートフォンの半分程度。そう考えると素人目にもメガネに仕込むにはちょっと大きいように感じる。実際以前にも複数の関係者から「メガネサイズでバッテリーの容量を確保するのは難しいのではないか」という話を聞いていた(が、今回の形は想像していなかったのでびっくりした)。なので、バッテリーの容量確保のためにメガネの形状を諦めたのではないかとも鈴木氏に聞いたが、あくまでメガネという形状での不便を解決するために現状の形になったという説明だった。たしかに普段使うメガネの上に、さらにメガネ型デバイスはつけていられない。

テレパシージャパン代表取締役の鈴木健一氏

すでに日立ソリューションズなど複数社での試験利用も始まっている。両手が自由に使えるウェアラブルデバイスは、工事や建築から製造、病院など、さまざまなビジネス現場でニーズがあるのではないかという話は各所で聞く。「聴診器型」である必要性はさておき、Telepathy Jumperのニーズもそこにあるはずだ。

また、鈴木氏は同日の会見でのプレゼンの中で「利用シーン」として東京ディズニーランドの写真を使用しており、質疑では同施設との関係について記者から質問が飛んだのだけれども、「数社とどのようにビジネスが構築できるか話をしている。ディズニーランドはまた後日ということでお願いしたい。(対応は)広報に任せます」(鈴木氏)とだけ回答していた。

ともかく、かつて代表だった井口氏が語った「2014年に届けたい」というスケジュールにはギリギリ間に合わなかったが、少なくとも2014年中にその姿が明らかにされた。この発表について井口氏がどう思っているかも鈴木氏に聞いたが、「海外にいて、ここ(会見)に来る前には話をしていないので心境は分からない」とのことだった(ただし、Telepathyのミーティングなどには参加しており、西海岸の情報などを共有してくれているそうだ)。


エージェントとのチャットで転職先のオファーを受けられる「ジョブクル」

自分の持っている物を売りたくなったらフリマアプリで、駅から遠い場所から移動したければタクシー配車アプリで、といったように、これまでリアルで行っていた行動はスマホアプリで日々簡単になっているように感じる。今度はエージェントを通じた転職活動もスマホアプリで実現できるようになったという。人材スタートアップのスマイループスは12月7日、転職相談アプリ「JOBKUL(ジョブクル)」の提供を開始した。利用は無料。現在はiOS版のみで、Android版は来春にも提供される予定。

JOBKULでは、ユーザーがアプリ上で性別や生年月日、直近の年収や職種などを登録すれば、その条件に合わせてスマイループスと提携する転職エージェントがマッチングされる。マッチングされたエージェントとはアプリ上のチャットで転職相談が可能で、条件が合えば転職先のオファーを受けることができる。コンシェルジュサービスのような感覚でエージェントとのやりとりができるわけだ。そのほか、自己アピールの動画もアップロード可能。スマイループスでは現在約20社のエージェントと提携している。

サービスを手掛けるスマイループスは2012年12月の設立。これまでには動画による採用選考ツールの「EntryMovie.com」を提供してきた。2013年にはインキュベイトファンドが主催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp 6th」に出場。その後ANRI、インキュベイトファンドから資金調達を実施している。金額は非公開だが、数千万円規模だという。

代表取締役の仲子拓也氏が語ったところによると、実は一般的な転職支援サービスでは、エージェントがユーザーに対してスカウトメールを送信した際の返信率はわずか1〜2%だという。またサービスの多くは、登録時の大量の項目に情報を入力する必要があって、そこでの離脱率も決して低くない。PCで登録するのですら大変なのに、それをスマホアプリやスマホ向けサイトにしてしまうと、「そんなに多くの項目を入力をしてられるか!」となりそうだ。

そんな既存サービスの課題もあって、JOBKULではメールではなくチャットによる気軽なやりとりとスマートフォンのプッシュ通知によって返信率を向上させるとしている(目標は返信率10%だそうだ)ほか、登録時の入力項目についても最低限にとどめた。そしてチャットを通じてエージェントがユーザーの情報を聞き、最適なオファーを提示するという仕組みをとったそうだ。「既存サービスをそのままアプリに持ってきても離脱する。僕らは出会う接点を作るだけ。浅いコンバージョンをモバイルに限定して作っていく」(仲子氏)

こう聞くと、多くの情報を入力して転職サイトに登録したユーザーに取ってはありがたい話に聞こえるかもしれないが、課題もある。それは、プッシュ通知自体が増えすぎてスパム化したりするのではないかということだ。仲子氏はその対策として、成果報酬(採用が決まればエージェントから採用人材の年収の数〜数十パーセントを報酬としてもらう)以外のビジネスモデルも検討しているという。同社では初年度1000人の転職を目標にしている。


欧米のスタートアップ起業家が語るアジアの現状

久々のThe Next Webから、欧米人の視点から見たアジアのスタートアップ環境について書かれた記事を。日本人が東南アジアで起業するケースも増えていますが、それと照らし合わせて読めるかも。東京発のGENGOのケースもあり、日米の文化比較について書かれている内容が興味深いです。 — SEO Japan

asia

スタートアップを立ち上げた2名の米国人のファウンダーが「サンフランシスコからセントルイスに移らなければ、会社は潰れていた」と指摘する記事を最近読み、私は衝撃を受けた。主な根拠として、セントルイスの方が物価が安いことが挙げられていたが、その他にも様々なメリットがある。

この2名のファウンダーの発言を機に、ある考えが浮かんだ。米国を飛び出し、ビジネスを立ち上げる起業家は多くはない。しかし、グローバルな事業をスタートさせ、コストの削減と優秀な人材への接触を優先する人達にとって、急激に魅力を増している地域がある — それはアジアだ。

この点を考慮し、アジアで実際にスタートアップを経営する西洋出身の設立者に連絡を取り、アジアで起業するメリットとデメリットを尋ねた。

意外な答えも中にはあり、それぞれの起業家が、独自のビジネス、そして、意見を持っていた。詳しく知りたい方は、読み進めていってもらいたい。

ヘッダーの画像: Thinkstock

ジャン・ジョーンズ: Oozouのファウンダー — タイ バンコク

Jan 730x1031 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asia

Oozou.com

The Next Web(TNW): まず、どのような会社を経営されているのか教えて下さい。また、会社の所在地はどこですか?いつから会社を経営されていますか?スタッフは何名ですか?

ジャン・ジョオーンズ: Oozouは、ウェブアプリおよびモバイルアプリの開発会社であり、バンコクを拠点に営業しています。多くの米国、そして、ヨーロッパのスタートアップに対して、デザインと開発(Rails/Node/iOS/Android)を最初から最後の工程まで提供しています。

今年、設立後5年を迎えました。現在、30名(タイ人と外国人)のデザイナーとディベロッパーがバンコクの会社で勤務しており、今後、支社を国外に展開していく予定です。

TNW: どのようなクライアントを抱えており、また、クライアントが多く存在する地域はどこですか?

ジャン・ジョーンズ: 西海岸の会社が多いですが、東南アジアの会社(とりわけシンガポール)もここ最近増えています。東南アジアでは、スタートアップの事業が活性化しています。基本的に、資金を獲得した初期のスタートアップが多いですが、Twitter、そして、500 Startupsをはじめとする有名な会社も幾つか抱えています。

投資を受けていないスタートアップの依頼は受けないようにしています。製品ではなく、利益に力を入れ過ぎる傾向があるためです。事実、この会社を立ち上げた頃、製品を構築することに資金を使い果たし、営業とマーケティングを実施するリソースを失ってしまったスタートアップに何度か遭遇したことがありました。

投資を受けたスタートアップには、通常、良いアドバイザーがついています。また、適切な取り組みを行うための資金も抱えています。

TNW: アメリカで事業を運営することが出来たと思いますか?可能であったなら、どのようなことに魅力を感じて、アジアで会社を経営しているのですか?

ジャン・ジョーンズ: 可能でしたが、地域の差が生む利益が、このビジネスモデルを可能にしています。米国/欧州のクライアントは、本土の会社と同じ質のサービスを遥かに安価な価格で受けられます。私達の会社にとって品質が生命線であり、妥協はしません。

TNW: 地元の人材を採用する際に問題に直面したことはありましたか?海外の人材も採用していますか?アジアに迎える上で、あるいは、本国を去る点を納得してもらう上で、苦労したことはありましたか?

ジャン・ジョーンズ: スタッフの大半はこちらで採用していますが、数名のスタッフは国外で採用しています(ロシア、オーストリア、ドイツ、アメリカ、イギリス)。タイのスタッフは、タイ人の中でも特に「西洋のスタイル」を理解している傾向があり、(デザインや開発のスキルを持っていることに加えて)英語が堪能であることが採用条件の一つになっています。コミュニケーションは、優れた技術力と同じぐらい重要なのです。

TNW: アジアで事業を運営する主な欠点を教えて下さい。

ジャン・ジョーンズ: 時差です。時差を気にせずに、クライアントとコミュニケーションを取る素晴らしい一連のツールと技術を導入してきましたが、今でも深夜や早朝の電話は避けることが出来ません。

Screenshot 2014 08 08 15.02.47 730x397 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asia

TNW: 事業を、アジア、アメリカ、または、別の地域に拡大する予定はりますか?

ジャン・ジョーンズ: シンガポールとアメリカ(サンフランシスコ)に展開する予定です。

TNW: アジアにビジネスを移すことを考えているファウンダーに、あるいは、アジアで事業を始めようとしているファウンダーに、どんなアドバイスを送りますか?

ジャン・ジョーンズ: アジアは、ビジネスを立ち上げる場所としての魅力に溢れていますが、リサーチは必要です。採用に際して考えなければならない文化的な事柄があり、また、事業の所有権、海外のスタッフのビザ、就労許可等の法律や規制も多いです。

現地の知識を豊富に持ち、ビジネスを立ち上げる上で信頼することが出来る優秀なコンサルティング会社を探すと良いでしょう。

ロバート・ラング Gengoの共同ファウンダー 東京/日本

Gengo.com

TNW: まず、どのような会社を経営されているのか教えて下さい。会社の所在地はどこですか?いつから会社を経営されていますか?スタッフは何名ですか?

ロバート・ラング: Gengoは、翻訳プラットフォームおよび翻訳APIサービスを提供しています。私達は、楽天、TripAdvisor、Alibabaを含む大企業や中小企業のクライアントによる海外展開を支援しています。現在、Gengoのプラットフォームを介して、35ヶ国の言語の翻訳が依頼され、1万1000名以上の翻訳家が対応しています。

2009年に東京でGengoを立ち上げました。「Gengo」は日本語で、言葉を意味します。私達はシリコンバレーと日本文化に親しんでいました。共同ファウンダーは、日本人とアメリカ人のハーフであり、私の親は英国人とオーストラリア人です。現在、50名以上の従業員を抱えていますが、その3分の2は東京のオフィスに、そして、残りの従業員はサンフランシスコのベイエリア地区で仕事をしています。

rob talking 02 730x434 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asia

TNW: どのようなクライアントを抱えていますか?また、クライアントが多く存在する地域はどこですか?

ロバート・ラング: 楽天、TripAdvisor、そして、Mozilla等の大企業、YouTube、Fliplingo等、翻訳をユーザーに販売するチャンネルパートナーをクライアントに抱えています。さらに、多くの中小企業にも利用してもらっています。クライアントは、API、または、ウェブサイトを通じてGengoのサービスを利用しています。クライアントの大半は日本と米国の会社ですが、世界各地にクライアントがいます。事実、Gengoは、世界のほとんどの国の言葉の翻訳に対応しています。

TNW: アメリカで事業を運営することが出来たと思いますか?可能であったなら、どのようなことに魅力を感じて、アジアで会社を経営しているのですか?

ロバート・ラング: アメリカでも営業は可能ですし、実際に米国に営業オフィスを設けています。ただし、私達の会社は日本生まれであり、従業員の3分の2も日本で仕事をしています。

しかし、どちらかと言うと、文化的な面が、こちらで事業を運営する判断に影響しています。日本では、日本人であれ外国人であれ、言語のバリアを乗り越えようとします。アメリカでは、そうはいきません。また、Gengoは優秀な技術者のチームを東京で編成していますが、シリコンバレーで同じチームを作るには高額なコストがかかり、維持することも難しいのです。Gengoは、シリコンバレーのスタートアップと日本の考え方をミックスした企業だと言えるでしょう。

また、非英語圏のインターネット、アメリカ以外のEコマースプラットフォームの発展が、Gengoの成功に大きく貢献しています。アジア圏のクライアントは今後の5年間で大幅に増えていくと思われます。

TNW: 地元の人材を採用する際に問題に直面したことはありましたか?海外の人材も採用していますか?アジアに迎える上で、あるいは、本国を去る点を納得してもらう上で、苦労したことはありましたか?

ロバート・ラング: 当初、現地での採用活動は難航しました。日本では、スタートアップの評判は芳しくありません(改善の兆しは見られます)。そのため、日本人の採用に苦戦しました。しかし、現在、会社の規模は拡大し、(全国的なメディアで取り上げられ、NTT Docomo等から資金調達を受けたことがプラスに働きました)社会的な地位も上がりました。その結果、日本人と外国人の従業員の比率も改善されました。この方法で、今後も成長を続けることが出来ると私は確信しています。

Gengoは、アメリカ、イギリス、さらには、南アフリカから人材を招いています。Gengo、そして、日本の双方を愛していることが条件であり、外国人の採用は容易ではありません。しかし、この2つの条件は最強のコンビだと言えます。海外での生活には不安が付きものであるため、やはり外国人の人材の採用は容易ではありません。そのため、外国人の採用には慎重に対応し、長期間にわたる移住を実施(& 支払い)する前に、内定者に移住する国を「試す」手段を考案するアプローチを薦めます。

TNW: アジアで事業を運営する主な欠点を教えて下さい。

rob close 520x520 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asiaロバート・ラング: 以前、日本で資金を調達するのは非常に大変でしたが、この状況は少しずつ改善されています。それは嬉しいのですが、実際に、日本で資金調達に成功したスタートアップはほんの僅かです。この状況が改善されるように、産業革新機構等の政府機関にはベンチャーファンドに資金調達してもらいたいと思っています。

また、スタートアップを理解する人材を見つけることが出来ずに苦労しています。Gengoに応募する人材は、自らこの会社を選んでいますが(スタートアップを好む傾向がある)、シリコンバレーの文化に精通している人がもっと増えてくれると嬉しいです。

日本の採用活動はアメリカとは異なります。シリコンバレーよりも採用にかかるコストは低く、他のスタートアップと人材の取り合いをするために、ヨガクラスや寿司の食べ放題や執事サービス等、余分に福利厚生を充実させなくても済むことに満足しています。ただし、シリコンバレーには、スタートアップを愛する超優秀な人材が集まっています。東京にも同じぐらい優秀な人材はいますが、非常に希少です。そのため、確実に採用しなければなりませんし、油断して優秀な人材を見逃すような失態は許されません。

TNW: 事業を、アジア、アメリカ、または、別の地域に拡大する予定はりますか?

ロバート・ラング: 予定はあります。アメリカと日本のチームの規模は拡大していますが、ヨーロッパにも多くのクライアントがいるため、ヨーロッパでも従業員を採用する予定です。恐らく、ロンドンで事務所を開くことになるでしょう。2年前に、アメリカでオフィスを問題なく立ち上げているため、今回も成功させる自信があります。長期的なプランでは、アジアでもさらにビジネスを拡大するでしょう。Gengoは、「世界がより自由にコミュニケーションを取ること」を目指しているため、世界全体が私達にとってフィールドなのです。

TNW: アジアにビジネスを移すことを考えているファウンダーに、あるいは、アジアで事業を始めようとしているファウンダーに、どんなアドバイスを 送りますか?

ロバート・ラング: シリコンバレーであれ、アジアであれ、アイスランドであれ、その場所にいる明確な理由が必要です。「コストが安く済む」だけでは不十分です。その場所を愛する必要があり、長期的に移転を価値のあるものにするための重要な根拠があることが大前提になります。この根拠があるなら、会社を設立する上でアジアは素晴らしい場所だと言えますし、それに見合う資金も存在します。

スティーブン・ジャガー PayrollHeroの共同ファウンダー ウィスラー/カナダ & マニラ/フィリピン

Payrollhero.ph

TNW: まず、どのような会社を経営されているのか教えて下さい。会社の所在地はどこですか?いつから会社を経営されていますか?スタッフは何名ですか?

スティーブン・ジャガー: PayrollHeroは、時間、出勤、スケジュール、人事管理、分析、給与管理プラットフォームであり、東南アジアの企業を対象としています。私達は、幸せを通して、作業の効率化を行うことに力を入れています。

Payrollheroは、2年前に設立したスタートアップであり、多国籍の17名の従業員が所属し、フィリピンのマニラとカナダのウィスラーにオフィスを構えています。

stephen jagger 730x421 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asia

TNW: どのようなクライアントを抱えており、また、クライアントが多く存在する地域はどこですか?

スティーブン・ジャガー: 東南アジアのレストラン、小売店、BPO/オフィス業界に的を絞っています。PF Changs、iHOP、The Coffee Bean and Tea Leaf、The Picture Company、Candy Corner、Tate Publishingを含む多くのクライアントを抱えています。

TNW: アメリカで事業を運営することが出来たと思いますか?可能であったなら、どのようなことに魅力を感じて、アジアで会社を経営しているのですか?

スティーブン・ジャガー: 可能だったと思います。アメリカのチームにプラットフォーム等を開発してもらうことも可能でした。事実、このためにカナダのウィスラーにもオフィスを構えています。当初はフィリピンで技術者を雇用する予定でしたが、難航したため別のアプローチを採用したのです。

私達は方針を切り替え、Adventure Engineeringプログラムを作る決断を下しました。このプログラムでは、ウィスラーでオフィスを開設し、現地の山々、フレキシブルなスケジュール、そして、冒険を餌に、現地の人材を魅了しました。バンクーバーを選ぶことも出来ましたが、給与額のみでの勝負を避けたかったため、バンクーバーの会社と差別化する道を選んだのです。

プラットフォームはアメリカでも利用可能であり、実際に北米にもクライアントはいますが、東南アジアをターゲットにしています。私達は、台頭するマーケット、そして、そのマーケットがもたらすチャンスに魅力を感じているのです。

東南アジアの会社の大半は、コンピューティング、スマートフォン、そして、クラウドソフトウェア革命を今まさに経験している最中です。そのため、私達は、クラウドが従来のソフトウェアよりも望ましい理由、または、システムの導入が金銭的な面で理にかなっている理由を説明しながら製品を販売しています。

TNW: 地元の人材を採用する際に問題に直面したことはありましたか?海外の人材も採用していますか?タイに迎える上で、あるいは、本国を去る点を納得してもらう上で、苦労したことはありましたか?

スティーブン・ジャガー: 先程も申し上げた通り、Adventure Engineeringプログラムで解決しました。

TNW: アジアで事業を運営する主な欠点を教えて下さい。

スティーブン・ジャガー: 東南アジアには、独特の要素があります。文化、言語、腐敗、通貨 — 全て一筋縄ではいきませんが、この課題は、素晴らしいチャンスを与えてくれます。

TNW: 事業を、アジア、アメリカ、または、別の地域に拡大する予定はりますか?

スティーブン・ジャガー: 現在、東南アジアに焦点を絞っており、今後もこの地域での存在感を高めていくつもりです。現時点で、10ヶ国以上の国々で製品を購入してもらっており、さらに拡大を続けていきます。

TNW: アジアにビジネスを移すことを考えているファウンダーに、あるいは、アジアで事業を始めようとしているファウンダーに、どんなアドバイスを送りますか?

スティーブン・ジャガー: 東南アジアには、巨大なチャンスがあちこちに転がっています。現地の企業は急速に成長し、マーケットは好調で、テクノロジーを導入することに意欲的です。まずは、現地に足を運び、自分の目で確かめると良いでしょう。以前、「フィリピンでビジネスを始めるべき理由」を説明した動画を作成したので、ご覧になって頂きたいと思います。

ロブ・ゼペダ Playbasisのファウンダー – バンコク/タイ

Playbasis.com

TNW: まず、どのような会社を経営されているのか教えて下さい。会社の所在地はどこですか?いつから会社を経営されていますか?スタッフは何名ですか?

 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asiaロブ・ゼペダ: Playbasisは、ゲーミフィケーションをサービスとして提供しています。開発者が、APIの能力を引き出し、ユーザーエンゲージメントを改善するために考案された様々な機能(ポイント、バッジ、スコアボード、通知、ミッション/チャレンジ、バーチャルクレジット、アイテムショップ、アプリ内分析、ソーシャルログイン)を使って、アプリを改善/強化することが出来るように支援しています。

また、簡単に統合可能なAPIを介して、その他にも数多くの機能を提供しています。

事業展開のしやすさ、そして、スタートアップに優しい環境のおかげで、Playbasisは、シンガポールで2012年12月に法人化しました。

シンガポールは、アジア全土に進出する上で大きな足掛かりになります。小さな国ですが、経済がとても安定し、発達しており、スタートアップを法人化させるメリットが多数あります。また、著作権法がしっかりと整備されており、さらに、英語が公用語になっているため、外国人にとっては好条件が揃っていると言えるでしょう。

Playbasisは、タイのバンコク以外の地域にも進出していますが、私にとっての故郷はバンコクであり、実りある生活を過ごすことが出来る場所だと感じています。比較的物価は安いです。この点は、Playbasisのようなリーンスタートアップにとっては重要です。12名のスタッフのうち11名がバンコクで仕事をしています。今後も、製品と事業の開発をバンコクで行う予定です。

TNW: どのようなクライアントを抱えており、また、クライアントが多く存在する地域はどこですか?

ロブ・ゼペダ: クライアントは全てタイの大企業です。現在、タイの複数の大手銀行、電話会社、小売業者をクライアントに抱えています。シンガポールとマレーシアでも、事業を展開しており、間もなく、この地域でも大きな企業に製品を購入してもらえそうです。

ターゲットのマーケットはアジアの企業であり、今後もアジアのクライアントを増やしていくつもりです。しかし、マーケットの需要が大きいため、アジア以外の地域にも製品の一部を売り込む計画を立てています。

TNW: アメリカで事業を運営することが出来たと思いますか?可能であったなら、どのようなことに魅力を感じて、アジアで会社を経営しているのですか?

ロブ・ゼペダ: 既に米国では、複数のゲーミフィケーションのプラットフォームが確固たる地位を確立していますが、アジアでビジネスを運営する最大の面白さは、消費者の特徴にあります。アジアの消費者は、ソーシャルメディアとモバイルデバイスを多用し、ゲームに熱中し、若者の層が多く、新しいことを積極的に試します。Playbasisのようなスタートアップにとって、これは素晴らしい環境だと言えます。事実、ゲーミフィケーションのコンセプトは、タイの消費者に幅広く受け入れられています。

スマートフォンの浸透率が順調に伸び、ローカライズされた製品とサービスが求められており、タイは、Playbasisにとって最高のマーケットなのです。

アジアで偶然大成功を収めたアメリカの企業もあれば、西洋では成功しているものの、アジアのマーケットでは苦戦している企業もあります。 どちらのケースにおいても、地元のオーディエンスに製品を合わせれば、成功する可能性は大幅に増えます。また、反対に、多くの典型的なアジア生まれの機能やイノベーション(ステッカー、バーチャル通貨等)が西洋社会に進出しています。このように、アジアでは興味深い現象が起き始めています。

Screenshot 2014 08 08 14.59.53 730x320 4 Western founders discuss what its like to run a startup in Asia

TNW: 地元の人材を採用する際に問題に直面したことはありましたか?海外の人材も採用していますか?タイに迎える上で、あるいは、本国を去る点を納得してもらう上で、苦労したことはありましたか?

ロブ・ゼペダ: かつて、有望な卒業生が、大きな、有名な企業にほぼ自動的に就職していた時代、あるいは、 家族が経営する会社を継いでいた時代がありました。しかし、時代は変わり、ある程度軌道に乗っていることが条件ですが、スタートアップが優秀な人物を引き寄せられるようになりました。最初の数名を採用するのは、今でも大変です。雇用される側は、企業の価値ではなく、報酬を重視します(リーンスタートアップの弱点)。しかし、一般的な意見ですが、誰もが格好良い仕事を求めています。また、スタートアップ業界で活躍する人達の大半は愛着の少ない、若い世代であり、年を重ねた落ち着いた人達よりも、リスクを取る余裕を持っています。

確実に、アジアに活躍の場を見出す海外の人材は増えており、エコシステム全体に大きな影響を与えています。経済が停滞し、機会が枯渇しているヨーロッパ等の地域から、アジアに機会を求めて若い人材が押し寄せているのです。私達の会社の従業員の多くはタイ人ですが、ヨーロッパ出身の社員も数名いますし、私自身もカリフォルニア出身です。

TNW: アジアで事業を運営する主な欠点を教えて下さい。

ロブ・ゼペダ: 当然、タイで営業をすることで発生する問題もあります。例えば、政情が安定していないことです。しかし、大方、西洋のメディアは事実を誇張して報道しています。言語も障害になり得ますが、ビジネス、そして、スタートアップの世界では英語が幅広く用いられています。もちろん、特定の業界には規制がかけられ、海外の起業家が立ち入ることが出来ない聖域もあります。

一部のマーケットでは、クレジットカードの浸透率が今でも低く、また、誰もがスマートフォンで3Gや4Gのデータプランを契約しているわけではありません。しかし、このような問題は全て対応可能であり、毎年状況は改善されています。

TNW: 事業を、アジア、アメリカ、または、別の地域に拡大する予定はりますか?

ロブ・ゼペダ: Playbasisはアジア太平洋地区に力を入れています。たとえ中国とインドを除外しても、大きな市場だと言えます。ヨーロッパと米国に大々的に進出するとは思いませんが、可能性はゼロではありません。Playbasisの企業の顧客は、多国籍のグローバルな大企業である点を考慮すると、東京、ソウル、香港、そして、シドニーへの進出は理にかなっていると言えます。事実、次回リリースする開発者プラットフォームに関しては、世界展開していきます。

TNW: アジアにビジネスを移すことを考えているファウンダーに、あるいは、アジアで事業を始めようとしているファウンダーに、どんなアドバイスを送りますか?

このアドバイスが全てのスタートアップに当てはまるとは思えませんが、消費者を対象とするスタートアップにとって、アジアは恐らく世界で一番重要な地域であり、消費者の行動と文化面のニュアンスを理解することは、成功する上で絶対に必要です。

まさにこの理由で私は4年前アジアにやって来ました。私にとって人生で最高の決断でした。アジアのマーケットは規模が大きく、ユーザー一人当たりの収益は低いですが、ユーザー獲得にかかるコストも低い傾向が見られます(発展した一部の国々を除く)。その結果、サービスを賢く収益化する方法を解明すれば、大きな利益を得られるのです。

スタートアップを運営し、初期のユーザーベースを獲得する取り組みに関して、タイのような場所はコスト効率の面で有利です。この地域のユーザーを収益化するためには、フリーミアムモデルを採用し、パートナーとスポンサーを探し、バーチャル通貨やバーチャルグッズの導入等を巧みに実施する必要があります。このような技術は、米国やヨーロッパ出身の起業家にとっては盲点ではありますが、アジアで成功を抑える上では欠かせません。

ビジネス戦略、そして、この地域で人気の高いソーシャルアプリを調査し、利用可能なシステムを確認して、アプリに導入しましょう。このようにしてPlaybasisは生まれました。皆さんの成功を心より祈っています。


この記事は、The Next Webに掲載された「4 Western founders discuss what it’s like to run a startup in Asia」を翻訳した内容です。

皆さん、それぞれ、様々な理由でアジアでスタートアップをしているようですが、誰もインタビューとはいえ夢と希望に満ちていて私が起業した頃を思わず思い出してしまいました。東京、地方、東南アジアの新興国、そして米国であっても何らかの障害は必ずあるわけで、それを乗り越えメリットを生かして頑張りたいですね。 — SEO Japan

その場でFacebook友達申請の「気まずい時間」をなくす連絡帳交換アプリ「ぴっ」

初対面の人とその場でFacebookの連絡先を交換するのって、意外と面倒じゃないですか? Facecbookに名前を入力して、検索結果一覧からアカウントを探すアレだ。実はFacebookの公式アプリには、QRコードを使って友達申請できる日本独自の機能「マイQRコード」がある。でも、実際に使おうとするとスマホのカメラを立ち上げるのに時間がかかったりして、結局は気まずい時間が流れることになる。Wantedlyが12月17日にリリースした連絡帳交換アプリ「ぴっ」は、こうした「誰のためにもならない時間」を軽減するものだ。

アプリをインストールしたユーザーはまず、プロフィールを送信したい相手に自分のスマホを渡して、電話番号を入力してもらう。(もしくは自分で電話番号を聞いて入力する)。その上で、相手に送りたい連絡先(氏名と電話番号、メールアドレス)またはFacebookアカウントを選び、SMS経由で送信できる。Facebookアカウントを送りたい場合は、Wantedlyに登録する必要がある。

メッセージはクラウド電話APIサービス「Twilio」を介して届くため、Facebookアカウントのみを送信する場合は、自分の電話番号が相手に伝わることはない。アプリに入力した相手の電話番号も保存されない仕組みになっている。

スマホで電話番号やSNSのアカウントを交換するアプリとしては、「iam(アイアム)」やリクルートが手がける「Profee(プロフィー)」などがある。これらのアプリはFacebook以外にもTwitterやLINEなどのSNSのアカウントを交換できるが、お互いが同じアプリをインストールすることが前提だった。これに対して「ぴっ」は、Wantedlyに登録する必要はあるものの、自分がアプリをインストールしていれば、誰とでも相手の端末を問わずに連絡先を送れるのが特徴だ。

実際に自分も、イベントや懇親会で会った人とその場でFacebookの連絡先を交換する時があるんだけど、名前を入力するのが面倒だし、意外と似た名前の人がいたりして、探すのに一苦労することがある。「あ、増田の『ます』は利益の『えき』じゃなくて増える方です」「出てこない? すみません、ローマ字で探してみてもらえますか……」みたいな感じだ。アプリで相手に電話番号を入力してもらうのは嫌がられそうだけど、それは自分が信頼してもらえるかどうかの問題なのかもしれない。

津田塾大初の未踏クリエーター、Wantedly新卒1年目が開発


アプリを手がけたのは、Wantedly新卒1年目の平田淳さん。彼女は幼少期から、父親の仕事の影響でMacが自宅にある環境で育ち、インターネットに興味を持ったことから津田塾大学の情報科学科へ進学。そこでプログラムを学び、中高生向けにIT教育を行う「Life is Tech」でメンターを務めるようになり、だんだんとプロダクトづくりに没頭していった。

在学中には、同大で初めて情報処理推進機構(IPA)の「未踏IT人材発掘・育成事業」に採択。企業から就職活動中の学生にオファーをする「逆求人就職支援システム」を開発した。大学生は就活中に興味のある会社説明会に参加するが、もしも企業の方からスカウトが来れば、自分を客観的に見たり、選択肢になかった業界に興味を持つきっかけになると考えたからだ。

彼女自身、リクルートから内定を得ていたが、Life is Techで講演したWantedly創業者の仲暁子さんと出会い、「大企業よりもスタートアップで何でも経験するほうが学べることが多い」と決意。リクルート内定を辞退し、未踏プロジェクトが終わる6月にWantedlyに入社した。

「ぴっ」には昨年まで就活生だった彼女ならではの思いが盛り込まれていると話す。「就活を始める大学生は、企業の人事から見られるという理由で、Facebookアカウントを作り始めたり、昔からやっている人は金髪時代の投稿を消したりします。そのうち、会社説明会で会った就活生同士がFacebookでつながるんですが、ほとんどの人は共通の友だちがいないので、なかなか相手を探せないんです。そんな場面で使ってもらえれば」。


スタートアップ起業家がするべき5つの過ち

スタートアップ起業が増えてきた日本のネット界隈。成功もあれば失敗もある、多分後者が限りなく多い、わけですが、失敗から学べることも数多くある、ということで、今回はイスラエルの投資会社の役員が語るスタートアップ起業にありがちな失敗とその対処法についてまとめた記事を。 — SEO Japan

「成功を祝うことに問題があるわけではないが、失敗から得た教訓に耳を貸すことの方が重要である」- ビル・ゲイツ

過ちを犯すことに対して、スタートアップのファウンダー達に忠告を試みる人達は多い。「過ち 起業家」とGoogleで検索すれば、ファウンダーとスタートアップの成功を阻むよくある落とし穴や過ちを厳しく警告する記事を多数見つけることが出来るはずだ。

ここで一呼吸置いて、考えてもらいたいことがある。誰もが「失敗から教訓を得た」と言うセリフを今まで何度も耳にしてきたはずだ。私自身、起業家として、そして、投資家として大きな過ちを何度か犯したことがある – また、私の経験上、成功よりも、遥かに過ちからの方が多くのことを学べる。wrong-decision

それなら、なぜ失敗を必死になって避けようとするのだろうか?矛盾しているかもしれないが、条件によっては、間違いは犯す価値があり、また、実際に積極的に犯すべきでもある。

そこで、スタートアップのファウンダーとして体験すべき失敗をリストアップしてみた。結局、過ちを犯すことになる。過ちからは多くの教訓を得られるため、起業の出来るだけ早い段階で失敗を味わうべきである。また、ミスを犯したにするべき行動についても、幾つかアドバイスを送る。

1. メチャクチャにされる

順風満帆に行くはずがない。誰か – パートナー、共同ファウンダー、従業員、投資家、あるいは、今後の構想に絡む関係者に、ビジネスをメチャクチャにされることになる。信頼を裏切る、口頭、または、書面の契約を破る、報酬をカットする、株を盗む、もしくは、会社全体を破壊する(あるいは、その全てを実施する)人物が現れる。誰かがとんでもないミスを犯し、計画を断念しなければならなくなる。

避けられない問題を受け入れ、やって来る打撃に備え、痛み、または、ダメージが回復可能な程度であることを祈るのみだ。 通常、スタートアップは、運命により、そして、遠くの動くターゲットを狙う状況により、様々なタイプの人間(アイデアを出す人間、技術を持つ人間、投資する人間等)がごっちゃ混ぜになって誕生する。このターゲット、そして、ターゲットへのルートと道のりが明確に見えたとしても、他の人物には別のルートが見ているかもしれないし、自分とは違う躊躇する理由、または、動機を持っているのかもしれない。その結果、摩擦が生まれ、関係者の力のバランスによって、誰かが – それは皆さん自身かもしれない – 苦労することになる。

ミスを犯した後の行動: 「メチャクチャにされることが、なぜ「過ち」なのだろうか?私は何も悪いことはしていない」と思う方もいることだろう。鏡を見てみよう。よく考えてみると、災難をもたらした原因が、自分がしたこと、または、しなかったことである点に気づくはずだ。 メチャクチャにした人 – メチャクチャにされた人の関係は、少なくとも2名の人物がいなければ成立しない。そして、すべてのストーリーに2つの側面が存在する。明らかに自分の「せい」ではなかったとしても — 酷い、ひねくれた人物に遭遇してしまった結果 — その人物と事業を共に行う決断を下した理由を問うべきである。その人物の行為は事前に予測出来なかっただろうか?パートナー/従業員/投資家を事前に調査しなかったのだろうか?何をした、あるいは、何をしなかったために、メチャクチャにされたのだろうか?ジョージ W. ブッシュの名言「私を騙したのが一度だけなら君が悪い。でも、二度騙したなら…それは私に問題がある。」を心の糧にしてもらいたい。そして、The Whoの歌にあるように「再び騙されてはならない」。一度ズタズタに引き裂かれれたら、理念を妥協することに関して、あるいは、後々自分を利用する可能性がある人物と仕事をすることに関して、今後は慎重に判断することが出来るようになるだろう。

2. リベンジを誓う

これは上の過ちに付随する過ちである。噛まれると、本能によって噛み返したくなる。何か(目に見えるもの、感情的なもの、未来のポテンシャル、あるいは、その全て)を失い、加害者がもたらした被害、あるいは、加害者が、損失をもたらすことで得た満足感を否定したくなる。誤った方向に導かれ、反射的に今度は相手を誤った方向に導こうとする。

一度やってみればよい。失敗するだけでなく、大方、何も起きないか、最悪の場合、反動が返ってくる。メチャクチャにされたと言うことは、同等のリベンジを実施する行動力、力量、あるいは、スキルを持っていない可能性が高い。通常は、自分の未熟さ、安っぽさ、汚らわしさを痛感し、そして、嫌な気分を何度も思い出し、二度とリベンジをしたくなくなる。

ミスを犯した後の行動: 後ろではなく、前を見よう。スタートアップを立ち上げる目的は、勝つためであり、2回負けを喫しても、勝利とは言えない。過去にこだわるのではなく、「未来でリベンジを果たす」べきだ。成功することが最高のリベンジになる。自分に起きた出来事を新たな推進力として活用し、メチャクチャにした人物、そして、世界に対して、自分がもっと優れた人材である点、そして、もっと優れた結果を出せる点を証明しよう。

3. 「ステルス」モード

手持ちのカードを見せたくない気持ちはよく分かる。アイデアを盗まれることを恐れているのかもしれないし、説得力をもって説明することが出来るほど、製品に対して自信がないのかもしれない。テクノロジー産業は、「ステルスモード」と言う聞こえの良い表現を生み出した。これは、不安に満ちた新人ではなく、スパイのように内密に動いている印象を与える。

「ステルスモード」は、大方、過ちに近い。まず、仰々しい、あるいは、不安を抱えていると解釈され、信頼に傷をつける可能性がある。また、その人物を信じていないことを暗に伝え、ネガティブな感情を与えてしまう。そして、この感情は、今後、詳しく伝える時期がやって来ても消えていない可能性が高い。しかし、何よりも大事なことは、自らのネットワークを用いて、製品やベンチャーを形作り、発展させ、そして、進化させる掛け替えのない機会を見逃してしまう点である。知り合いになる、出会う、あるいは、話をする人は全員、ベンチャーの成功のキーパーソンになる可能性がある。

ミスを犯した後の行動: 「堂々と伝える」モードに切り替える。今話をしている人物が、その新しい優れた製品を買ってくれるかもしれないし、投資してくれるかもしれない。それよりも、買ってくれる、もしくは、投資してくれる人を知っている方が可能性は高い。大袈裟に表現することなく、好奇心の種をまき、テリトリーを探し回り、そして、ターゲットにしているマーケットを示唆することは可能である。スティーブ・ブランクも提唱しているように、ファウンダーは出来るだけ早い段階で(実際の、または、バーチャルの)オフィスの外に出て、フィードバックを直接もらい、そのフィードバックを基に製品をアップデートしていくべきである。何もかも秘密にしておくと、製品/マーケットの適合、提携、または、ベンチャーへの投資を行う人物と関係を構築する機会を逸してしまう。取り組んでいるプロジェクトとターゲットにしているマーケットを率直に伝え、マーケットの問題点と弱点を確認し、関心を引き出し、大事なコネを作ることが可能な「ティザー」を考案すると良いだろう。

EverMinderを設立した際、開発が完了する前であっても、私は誰とでも製品に関する話を大っぴらにしていた。素晴らしいフィードバックをもらい、その結果、製品を立ち上げる前に、紹介を経由して、3名のエンジェル投資家に出会うことが出来た。

4. 都市伝説「作ったら、ユーザーはやって来る」を信じる

映画「フィールド・オブ・ドリームズ」によって、「(球場を)作れば、やって来る」と言うフレーズが一般的な表現として、とりわけ大勢の影響を受けやすいスタートアップのファウンダーの間で定着した。このフレーズは有名であり、(そして、ケビン・コスナーが球場を作ったところ、魔法のように、実際にこの世を去った野球選手が姿を現したため)、一部のファウンダーは、スタートアップの世界でも優れた製品を作れば、ユーザーは自然と集まり、その他の製品に圧勝することが出来ると信じている。

確かに、このハリウッド映画では、幽霊の野球選手が実際に球場に姿を現したものの、現実として、製品を作っただけでは、ユーザーはやって来ない。スタートアップのセオリーでは、「ユーザー」が「やって来る」ことを「マーケットプル」と呼ぶが、これはアーリーアダプターの間であっても自然に発生するわけではない。マーケットプルには、製品デザイン、製品/マーケットの適合、そして、ターゲットのマーケットへの実践的な「テクノロジープッシュ」を集中的に、そして、繰り返し実施するアプローチが求められる。このアプローチが成功して初めて、マーケットプルは功を奏する。マーケットに気づいてもらい、重要視してもらうために真剣に取り組み、そして、個人的に初期のユーザーと個別にやり取りを行わなければならなくなるだろう。それで良い。製品/マーケットの適合が実現したら、「ユーザー」は姿を現してくれる。しかし、その前に、まずは、アーリーアダプターの人達を積極的に勧誘し、魅了しなければならない。

ミスを犯した後の行動: この浅はかな映画が起きた現象が、スタートアップの世界でも起きるなどと妄想するのは止めよう。「作れば、やって来る」を信じているなら、テクノロジープッシュ、マーケティングプル、最低限の製品の作成を十分に理解しているとは言い難い。映画を見るのではなく、時間を割いて真剣に勉強するべきだ。スティーブ・ブランク、ショーン・エリス、アンドリュー・チェン、このブログ、そして、効果的な製品開発および顧客開拓を提唱するその他の優れた作品をじっくりと読み、出来るだけ早く目を覚ましてもらいたい。

(映画から刺激を受けるタイプなら、「幸せのちから」を見よう。トウモロコシ畑で意味のない声に耳を澄ますのではなく、困難に立ち向かい、奮闘し、製品と顧客を熱心に理解し、気遣い、そして、執拗に目標を達成しようとする気迫が、勝利につながる)。

5. 「私の好きな過ち」

この過ちは私のお気に入りだ。なぜなら、シェリル・クロウの歌の一節にあるように、複雑だからだ。そして、私自身頻繁にこの過ちを犯している。

好きな過ちは、自信と謙虚のバランスが取れていない状態で起きる。この2つは陰陽の関係であり、ロケットを飛ばそうとすると、時折、どちらかに傾いてしまうようなものだ。

スタートアップのファウンダーはほどほどに自信を持つべきである。いや、もっと、つまり、己惚れるぐらいの方がいいのかもしれない。提供するソリューションが、大ヒットすると心から信じる必要がある。しかし、自信過剰は極めて危険である。なぜなら、傲慢だと受け取られ、人間関係にダメージを与えてしまう可能性があるためだ。また、根拠ない自信となり、ビジョンや分析を曇らせてしまうこともある。優れたファウンダーは、ある程度謙虚な姿勢も持ち合わせている。自分よりも優れた人物がいることを理解している。ただし、謙遜し過ぎてしまうと、自分自身、そして、ベンチャーを引っ込めてしまう可能性がある…。

偉大なタルムード(ユダヤ教の教えを解析した文書)には、「誰もが2つのポケットを持ち、適切な状況において参照にすべきメモをそれぞれのポケットに入れておくべきだ」と書かれている。 片方のポケットには、「世界は自分のために作られた」と書かれたメモを、もう片方のポケットには、「私は大地の管ようなものだ」と書かれたメモを入れておこう。

(シェリル・クロウとタルムードを一緒に言及したのは、私が初めてだと思う)。

ミスを犯した後の行動: 残念ながら、このミスに対する明確な助言を送ることは出来ない。自信と謙遜のコントロールは、「押す」と「引く」の関係であり、毎日調整しなければならない。それぞれの状況を評価し、どちらのメモが該当しているのか特定しよう。

私は初期段階で投資を行うため、自分達(そして、そのベンチャーが)が素晴らしいことを私に認めさせようとする起業家に頻繁に出会う。この行為自体は問題ない。しかし、経歴を誤魔化す行為は受け入れられない。過ちと失敗について腹を割って話してもらいたい。何を学んだのか(そして、別の人の資金を使ってミスをしたこと)を聞きたいのだ。優秀な起業家は、成功と失敗の双方を伝える。そして、優秀な投資家は、ネガティブにとらえることなく、過ち、そして、得た教訓を知りたがっている。

ありふれた表現だが、完璧な人など存在しない。ミスは必ず起きる。皆さんもきっとミスをする。ミスを予測し、受け入れ、分析するべきだ。なぜなら、過ちから得た教訓は、自分自身、そして、会社が成長する上で、重要で、永遠に消えることのない基盤となるためだ。

…と言うことで、行動を起こし、少しミスを犯し、ミスから学ぼう。それが、勝利を導く。

ライター紹介: ベン・ウィーナー(@BeninJLM)はスタートアップのファウンダーであり、エルサレムを拠点に活動し、初期段階のスタートアップに資金を調達する小規模な投資会社のJumpspeed Venturesで役員を務めている。


この記事は、OnStartupsに掲載された「5 Mistakes Every Startup Founder SHOULD Make」を翻訳した内容です。

イスラエル出身の筆者のせいか?、良くあるこの種の記事と違う味わい深さがあった気がします。失敗の理由はともかく、そこから何かを学んで次に活かすことが大事なのは間違いありません。とはいえ、私も15年近くビジネスをしていますが、相変らず日々失敗を繰り返していますけど・・・たまに学習能力ないんじゃないか、と不安になる最近です 汗 — SEO Japan

必読! 最新シリコンバレー・スタートアップ用語解説

スタートアップの若者たちと話していると、ちがうよ、われわれはオンデマンド食品宅配スペースのSaaSプレイヤーだよ、などというので、この世界独特の用語があることに気づく。部外者にはちんぷんかんぷんだ。

そこでTechCrunchは起業家初心者や一般読者のためにこのピジン英語の主要な語彙を解説してみようと思う。

前置きはそのぐらいにして、さっそく本論に入ろう。

Acqui-hire〔アクイ・ハイヤー、買収採用〕 – 2000年代中頃にGoogleが発明した優秀な人材の獲得手法。大きな会社が小さなチームのメンバーは優秀だが、追求しているアイディアはバカバカしいと考えたときに実施されることが多い。signing bonus〔採用ボーナス、支度金〕と呼ばれることもある。

Cashflow Positive〔キャッシュフロー・ポジティブ〕 – 一定期間に出ていった金より入ってきた金の方が多いこと。

Pivot〔ピボット〕 – それまでの方針がうまくいかないことを発見したときに起きる現象。シカゴ大学の大学院で公共政策を学んでいたアンドルー・メイソンがスタートさせたThe Pointというオンライン政治フォーラムが、試しにピザの共同購入割引の広告を掲載したのがきっかけでGrouponが生まれたことなどが典型的な例。

SaaS — 金を損する方法の一つ

Pre-Money Valuation〔資金調達実施前評価額〕 – 適当にでっちあげた数字

Post-Money Valuation〔資金調達実施後評価額〕 – 資金調達後にベンチャーキャピタリストと話し合ってでっち上げた数字。バーンレイト〔利益が出る前に資本を消費する割合〕にご注意。

「広報分野に経験あり」 – 「何人かのジャーナリストのメアドを知っています」

Exit〔エグジット〕 – 起業家にとって良いエグジットと悪いエグジットがある。資金を使い果たさないうちに他の会社が買収してくれたら(アクイ・ハイヤー を含む)良いエグジット。ベンチャーキャピタリストの取り分を除いたら後は何も残らないのが悪いエグジット。

「私は連続起業家だ」 – アイディアを2つ実行に移したがどちらも失敗した。

Space〔スペース〕 – フィールドとか分野とかいう代わりに起業家たちはなぜかスペースとい言いたがる。そして自分たちのことをプレイヤーと呼ぶ。競争の激しい分野で特によく聞かれる言い方だ。理由は不明。

VC – 1) ベンチャーキャピタリスト。富裕な個人や機関投資家から資金を集め、手数料を取ってスタートアップに投資する人々。 2) 高純度Opium(阿片)の組織的流通業者。(次項参照)。

Opium〔阿片〕 – OPM 、Other People’s Money〔他人の金〕の略。きわめて中毒性の高い物質だが、無くなるまではまったく注意も敬意も払われない。〔この2項は阿片(オーピアム)とOPM(オーピーエム)のダジャレ〕

「われわれの状態はすばらしい」 – たいていの場合、すばらしくない。

SF / The Valley〔サンフランシスコ/シリコンバレー〕 – ベンチャー・キャピタリストやテクノロジー界の論客が起業家はすべからく引っ越してくるべきだと主張するテクノロジーの聖地。

「われわれは週500%のペースで成長している」 — 先週のユーザーは1人だったが、今日は5人だ。

「現在出資は求めていない」 — 現在出資を求めている。

UI/UX – UI(ユーザー・インタフェース)、UX(ユーザー・エクスペリエンス)の短縮語。多くの場合、デザイン能力に不自由な起業家が根本的に美しくない自分たちのプロダクトを描写する用語。「『ピザ映画専用VHSテープ復活』アプリにはわれわれのデザイン担当のものすごいUI/UXの才能がつぎ込まれている」などという。

「われわれはデザイン志向のチームだ」われわれはコードを書くのは苦手だ。

非GAAP基準で黒字 — たいして利益の出てない会社がよくこう主張する。株式報酬費用などを除外した利益の算定には往々にして問題が隠されている。

「私はビジネス担当だ」 – グロース・ハッキングの項参照

重力 — シリコンバレーに存在しない力

3200万ドルのシリーズA資金調達ラウンド – たいてい失敗する

グロース・ハッキング – セールスとマーケティング関係の活動。「ハッキング」と呼ばれるのはコードの書けない人々もシリコンバレーでは「ハッカー」と呼ばれたがるため。

「われわれの粗利益率は非常に高い。SaaS事業への大胆な投資も将来の成長の加速を約束する」 — われわれは赤字だ。

「われわれはSaaS事業の拡大を踏まえて目一杯アクセルを踏み込んでいる。わが社のこの分野で最高の成長をさらに加速するために追加投資を求めているところだ」 — すみません、前回の金は使い果たしてしまいました。もっとください。

「やったぜ!(We’re Crushing It!) – 何をやったのかは知らないが、まず確実にやられたのは夢と投資家の金。.

というわけで、お役にたてただろうか?.

画像:Bryce Durbin

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


スタートアップとは何ぞや?

ネット界隈では日本でも起業が普通によくあることになってきた最近、スタートアップという言葉も当たり前になってきましたね。かつては「ベンチャー企業」と呼ばれていたと思いますが、スタートアップというと妙にかっこよく感じるのは気のせいでしょうか。起業といっても、それには様々な形があるわけですが、あえて「スタートアップ」と呼ぶのであれば、そこには通常の起業とは違う何かがあるはず?改めてスタートアップの意味を考える記事を今回は。 — SEO Japan

注記: San Diego Startup Week_Alternate_logoこの記事はSan Diego Startup Week期間中にXconomyで既に配信された作品である。

オックスフォード英英辞典(最近では、Oxforddictionaries.comと呼ばれることが多いかもしれない)はスタートアップを「新たに開設されたビジネス」と定義している。

言葉のルールを変えることを拒む人達には、この定義は支持されるかもしれない。しかし、言葉は進化し、定義は変化する。微妙なニュアンスが生まれ、調整する必要性が生じる。そのため、言葉は進化する。言語は現実を具体化するため、言葉自体よりも、言葉が表現する対象の中に真実が見られる。そして、最近、スタートアップコミュニティは、辞書に掲載されている定義を変えようと試みている。

例えば、この業界の専門家は次のように語っている:

スティーブ・ブランク: スタートアップとは、繰り返し可能、そして、拡大可能なビジネスモデルを求めて形成された組織を指す。

エリック・ライズ: スタートアップは、極端に確実性が低い状態で、新たな製品やサービスを提供するために作られた団体である。

ポール・グラハム: スタートアップとは早く成長することを意図して作られた会社を意味する。新たに資金を調達したからと言って、スタートアップと呼べるわけではない。同様に、テクノロジー業界に限られるわけでもなければ、ベンチャーキャピタルを獲得する会社に限られるわけでも、「出口戦略」を持つ会社に限られるわけでもない。唯一欠かせないキーワードは「成長」である。

マーク・サスターは、成長を過剰に意識すると一部のスタートアップは失敗すると指摘し、さらに細かく定義している。ビジネスモデルによって成長するスピードが遅いものの、それでもスタートアップのカテゴリーに含まれる。「小さな世界に印象を残す」(私なら「小さな世界に小さな印象を残す」と表現する)ことを目指したスタートアップも存在する。マーク・サスターによる的確な見解においても、スタートアップが「従来の小さな事業」とは一線を画している点が反映されている。

スタートアップの資金調達が進化するにつれ、サスターの見解が正しいことが証明されるようになるはずだ。ベンチャー投資家は多額の資金提供に値するごく一部の会社にのみ資金を調達し、残りは希少な「幸運」に依存しない投資を通じて資金を獲得することになる。最終的に、スタートアップとその他の会社の違いは、成長のレベルではなく、どちらかと言うと、心の奥底から成長を本気で求めているかどうかになる。

例えば、現在、メインストリートに店舗を持ち、ウェストストリートにも店をオープンさせたいレストランは、同地区のPRエージェンシー、クリーニング店、あるいは、家族経営の電気機器修理会社よりも、グローバルな防衛業務の提携を通じてビジネスの拡大を望む新しい軍服メーカーに近い。

成長の早い会社と、従来型の零細企業では、資金調達、コンサルティング、法律に関するアドバイス、不動産のニーズ等が異なる。成功するために求められる要素も異なる。成長の早い会社は、意欲的な目標を達成するため、セールススタッフやマーケティングスタッフで構成されるチームを結成する、権限を委ねる、エキスパートを雇う、ビジネスの一部をアウトソースする、提携を求める等を行う。 利益(ある場合)はビジネスに還元される。 (非難するわけではないが)従来型の小さな会社の経営者は、雇用、そして、外部のインフルエンサーとのやり取りにおいて、厳しい監視下に置く傾向が見られる。出来るだけ早い段階で利益を求め、利益をビジネスに戻すことには執着しない。

本気で考えよう

「スタートアップは何か」を軽い気持ちで考える浮ついた議論は、この複雑な現実をに無視している。ここで、この問題の解決を試みる。先程紹介した4名のエキスパートは、スタートアップは最初は小さな規模でスタートするものの、スモールビジネス(個人経営の会社等)とは異なる点に関しては同意するはずだ。スタートアップの定義は、事業を運営してきた期間よりも、拡大を試みる規模との関連性が高い。

スタートアップがスタートアップではなくなる時期についても、様々な意見がある。この点に関しても、事業を運営する期間が定義を左右するわけではない。Dropboxは7年間事業を展開し、10億ドルの資金を調達(負債金融を含む)しているが、投資家に配当を行うため、さらに大きな利益を必要としている可能性が高い。それでも、スタートアップである。

判断が難しい部分も多数あるが、スタートアップがスタートアップを卒業する3つの方法がある 1. 買収やIPO等の株式のイベントを経て、スタートアップの段階を終了する。投資家は資金を取り戻す。 2. マーケットが答えを出し、同じペースでの成長が見込めなくなる。事実上、小規模/中規模の「生活するための」ビジネスに落ち着く。株式公開の話は持ちあがらない。 3) 撤退する。

スタートアップのファウンダーは、マーケットを破壊する、少なくとも、現状に大きな変化をもたらすことを望む。この望みが達成されると、マーケットの規模が限定されると、あるいは、様々な理由でファウンダーが望みに見切りをつけると、スタートアップはスタートアップではなくなる。

小さな事業の経営者はこの考え方に反論するかもしれないが、事実として、大半の小さな事業は規模の拡大を望んでいない。早く成長すると、小さな規模の事業の経営者が望まない問題をもたらす。ストレスを与える成長が存在しない状態でこそ、満足感を得られるライフスタイルを味わえる。通常の神経を持っているなら、それ以上は求めない。目標とライフスタイルが一致すれば、それで満足するためだ。

広範囲にわたる影響は計り知れない。連邦政府および州政府の役人が、大きな企業になることを望むスタートアップと家族を養うために創設された会社との違いを、つい最近まで把握していなかった。

決して、後者を軽視しているわけではない。アメリカの経済を支えているのは小規模な事業(スモールビジネス)である。これは個人的な意見だが、事業を始めて自分の生活を良くしたいと望む起業家には、出来るだけ手を差し伸べるべきだと思う。それだけでも、アメリカンドリームの半分には当たる。

事業を生み出す事業

しかし、小さな事業は、拡大可能な事業を生み出さない。一方、拡大可能な事業は小さな事業を生み出す。ある地方の拡大可能なスタートアップ、TakeLessonsが2年の間に従業員が10名から100名勤務するビジネスに成長するには、大きく、それでいて、良質なオフィスが必要になり、そして、オフィス機器、経理、法律顧問等に資金を投じなければならない。

規模を拡大することが出来るスタートアップは、その他の製品やサービスの需要を高めるため、重要度が高い。このタイプの会社の成長は、その他の事業の成長を誘発する。大企業であっても、このような仕組みで地域の事業に影響を与えることは出来ない。大企業は地域経済の需要を僅かなレベルでしか動かすことが出来ない。新しい成長を重視する会社は、法律、会計、オフィス機器、デザイン、建築、食べ物、飲み物等、新たな需要を作り出す。

「小規模な事業」を軽蔑しているつもりはさらさらない。「生活するための事業」にも同じことが言える。このタイプの事業は、事実、サンディエゴの経済にとって欠かせない存在だ。しかし、小規模な事業と拡大可能な事業に必要なリソースは、圧倒的に異なる。市民組織、メディア、サンディエゴ市等は、この違いをよく理解し、サンディエゴ市のスタートアップ文化を育むことで、私達がもたらそうとする変化を調整し、共に動く必要がある。

スアートアップは大企業の小さいバージョンでもなければ、小規模な事業の大きなバージョンでもない。そのため、求められる取り組みはそれぞれ異なる。

ダウンタウンサンディエゴパートナーシッププログラムとサンディエゴ地域経済発展公社を通して、サンディエゴ市政府は市内のスタートアップ産業を支援する上で大きな一歩を踏み出した。恐らく、様々な後援者に求められる基本的な政策の違いを公式に認めているわけではないのだろう。それでもサンディエゴ市は小さな事業とスタートアップの違いを意識的に認識するべきである。それでは、推奨事項を挙げていく:

- スタートアップの観点で既存のプログラムを評価する。スタートアップを対象としているのか、あるいは、小さな事業を対象としているのか?

- スタートアップのファウンダーと交流し、既存のプログラムを修正することでスタートアップがメリットを得られるのかどうか判断する。

- 支援する価値があると判断したなら、小さな事業ではなく、あくまでもスタートアップとしてアプローチする。小さな事業の運営者と呼んでいるようでは、スタートアップのファウンダーに相手にしてもらえないはずだ。

- スタートアップを魅了する可能性がある区割り、税の面での優遇、そして、不動産等の新しいプログラムを考案する。小売りやその他の小規模の事業に対する需要を生み出す可能性があるためだ。

このように、政府、とりわけ地方自治体は、経済の成長の底上げを図るつもりなら、従来型の小さな事業と拡大可能なスタートアップの違いを理解しなければならない。


この記事は、Market By Numbersに掲載された「Who Cares What a Startup is? You Should.」を翻訳した内容です。

スモールビジネスとスタートアップの違いは成長性にあり、スタートアップはスケールすることで、雇用も拡大し、地域にも大きく貢献する、と非常にわかりやすい説明でした。別にネット界隈の起業を全てスタートアップと呼ぶわけではなかったようですね。ネットでもどう考えてもスモールビジネスの可能性しかないのにスタートアップと意気込んでいるケースも多々あるように見受けられます。スモールビジネスでも全然良いと思うのですが、その場合はそれが大好きであることが持続させるには大事な気がします。

記事にあるような政府や自治体が起業支援していく過程で、スタートアップとスモールビジネスの違いというか、成長・スケールの可能性については、本来吟味が必要なのかもしれません。とはいえ、最初の時点でその可能性は起業家自身もわかっていない場合がごく一部の超優秀な人を除けば少ないと思いますし、その可能性を判断できる人も少ないでしょうし、何より日本の場合はまだまだ起業数自体が少ないですから、とりあえず当面は「スタートアップはかっこいい」路線で起業数を増やす努力をしていく形でも良い気はしますけどね。なんてことをいっていると、真面目じゃない、と怒られそうなんですけど。 — SEO Japan

3パラグラフの”ざっくり時事ニュース”で英語を学べる「StudyNow」

スマートフォンでニュースを見るとき、冗長な記事にはちょっと疲れてしまうことがある。もちろん「(仕事や趣味で)●●について知っておきたいからニュースをじっくり読む」という時は少しでも長くて詳細な記事を探して読むのだけれど、「移動中などに世の中の大きな流れをざっくり知りたい」という時は、短い記事で概要が分かればそれでよかったりする。

そんなスマートフォン時代のコンテンツ消費を意識して生まれた英語学習者向けのニュースアプリが、イオテックインターナショナルが12月15日に公開した「StudyNow」だ。

このStudyNowは、3パラグラフに集約した短かい英語ニュースを中心に、その対訳、解説(単語や熟語、常用の英語表現、さらには3パラグラフにおさまらないニュースの背景などの解説)をセットにして掲載している。なお、英語初心者向けに対訳が先に表示される「リバースモード」も用意する。

さらに課金アイテムの「魔法の鍵」を使用することで、ネイティブスピーカーによるニュースの読み上げ音声を聴くことができる。鍵は20個で200円、66個で600円、140個で1200円で購入できる。今後は「連続ログイン報酬」「記事の既読数による報酬」「ランキング」など、ゲームアプリのように利用度合いに合わせて鍵をユーザーに配布することも検討している。

掲載される記事は1日1本〜3本程度。現在は速報性より英語学習アプリとしての機能充実に重点を置いているということで、ちょっと古いニュースが届くこともあるのだそうだ。確かに音声の録音までするとなると、それなりの時間も手間もかかる気はする。ニュースのカテゴリはビジネスや政治といったカタいものもあるが、エンタメやゲーム、漫画・アニメといったユルいものの割合が多いようだ。英語記事はStudyNowの編集部で作成する独自コンテンツとなる。

アプリ誕生のきっかけは「英語教材がつまらないから」

イオテックインターナショナルの代表を務める増山雅実氏は、学生時代に麻雀の個人サイトを立ち上げて以来、オンライン麻雀に関する記事執筆や、サービス開発、英会話学校の運営などを手がけてきたそうだ。同氏のサイトである「初心者のための麻雀講座」は現在も月間200万PVほどあるという。

そんな増山氏だが、アプリ開発のきっかけについて、「昨今のブームである『ニュースアプリ』の文脈ではなく、『英語学習や英会話の教材がつまらない』という昔からの不満」があったからだと語る。「(これまでの英語)教材ではホテルや空港での他愛のないやり取りといった定番の会話から、時事ニュースといっても海の向こうで起こった政治経済など堅い話が中心。世の中では日本の漫画やアニメといったポップカルチャーが持ち上げられてはいるが、(教材として)教育の現場に持ち込まれることはまだまだ少ない」(増山氏)ということで、時事ニュースよりも取っ付き易いポップカルチャーなどの身近な話題で、継続して楽しめる学習題材を提供していくのだという。

鍵の課金による収益化のほか、今後は広告の導入も検討する。「いわゆるバナー広告的なものは排除している」(増山氏)とのことで、通常の記事と同様の英文、和訳、解説がつき、さらには音声も提供することで「クライアントの商品説明が英語学習コンテンツになる」というネイティブアドを導入したいとしている。さらには、ユーザーに魔法の鍵を提供する機能も準備しているそうだ。「勉強している人に『差し入れ』をするイメージ。告知によって露出が増え、記事が読まれやすくなる。また全体的なイメージアップを期待できる」(増山氏)。

確かにこれがうまくいけば、英語学習したいユーザーにも、広告クライアントにも幸せな仕組みができるのかも知れない。まずは広告を展開するためにもユーザー数の拡大が必須となる。


創業者の苦労から生まれた語学留学の口コミサイト「School With」、East Venturesから資金調達

ここ数年、「語学留学のためにフィリピンに3カ月行ってくる」なんてソーシャルメディアで投稿する友人を見かけることが増えた。実際その数は急増しているそうで、フィリピン政府観光省の発表によると、2010年時点での日本人の留学渡航者は4000人だったが、2013年には2万6000人まで拡大したそうだ。

その理由は日本との距離もさることながら、1日6時間の学習に三食寝室付きで月額15万円程度といった低価格であること。ちなみに日本での人気が高まる以前からフィリピンへの留学渡航者が多かったのは韓国なのだが、現在その数は年間10万人になっているそうだ。

だが留学渡航者が多くなっていく中で、問題も出てきた。いくらウェブサイトで講師や設備の質をうたっていても、いざお金を払って現地に行くとぜんぜん違う環境だった…ということが起こるようになったそうだ。僕が聞いた最悪のトラブルは、語学学校が運営の資格を持っておらずに閉鎖してしまい、渡航者は自身の授業を終える前に帰国せざるを得なくなるというものだった。

School With」は自身も語学留学で苦い経験をしたという起業家が立ち上げた語学留学の口コミサイトだ。運営会社のSchool Withは12月11日、East Venturesからの資金調達を発表した。金額は非公開だが、数千万円規模とみられる。

School Withの代表取締役社長である太田英基氏は、無料コピーサービス「タダコピ」を運営するオーシャナイズの創業メンバー。同社の取締役を退任したのち、フィリピンへの語学留学(ここで自身もネットワーク環境が説明と違ったり、「入学前に聞いていない」というようなトラブルに遭ったそうだ)の後に世界一周して帰国。2013年にSchool Withを立ち上げた。

School Withでは、日本人を受け入れる語学学校の情報、金額や英語使用のポリシー(中には日本語を使うと罰金というようなスパルタな学校もある)といった学校側から提供される情報が掲載され、それぞれの学校に紐付くかたちで実際に留学したユーザーの実名による口コミが投稿されている。「留学エージェントは数多いが、強みになるのは実名での口コミ。これがキラーコンテンツになっている」。同社では学校と提携し、資料請求や申し込みの代行などで収益を上げている。

その口コミの数は現在1000件。正直多いと言える数ではないが、「例えば食べログのように食事を投稿するなら、外食の機会によっては1日数回投稿するチャンスがある。でも留学は一生に一度あるかないかという人がほとんど。数より質を重視している」(太田氏)。また口コミの他に、留学体験のあるユーザーからのコラムも掲載する。現在はフィリピン留学に特化しているが、今後は欧米などカバーする地域を拡大する予定。

同社は今回の調達を元に人材獲得を進めるほか、サービスを展開する地域をフィリピン以外に拡大していく。また留学のエージェントだけでなく、留学後の学生を対象にした人材ビジネスを展開するそうだ。


米大手新聞にもディスラプションの波、Uberが反省? – 米国発Web業界ニュース12月初旬号

究極のリンク構築ガイドを翻訳し終えて年内のSEO関連記事は書ききった感があるのですが、SEO以外の記事も積極発信していこうと思います。今回はお馴染みの週刊ウェブ業界ニュース。日本でもニュースアプリの普及でニュースメディア再編が囁かれていますが、日本以上にネットの影響を受けている米国の状況はいかに?そしてとんでもPRから事件など話題のUber、その他多数のニュースでお届け。 — SEO Japan


Beat up car in LEGO bricks
今週のウェブマーケニュースでは、・New York Timesもディスラプションの波に飲まれる ・Apple Payの本当の狙い ・Facebookがプライバシーの設定を(再び)変更 ・Twitter、荒らし対策を強化 ・密かに成功するMedium ・オーディオのバイラル化 ・七転び八起きのUber ・絶好調のLyft ・見えないソーシャルのインパクト ・コンテンツのカルチャーを作る ・天才を見分ける難しさ ・PRをプロに任せるべき理由等の話題を伝える。

それでは、デジタルマーケティング業界に影響を与える重要なリンクをまとめて紹介していく。

毎週、経営者の方々が、最新の変化、レポートする価値のあるアイテム、そして、仕事で役に立つ可能性があるコンテンツを把握することが出来るように、テクノロジー、ソーシャルメディア、モバイル、デジタルコミュニケーション、そして、マーケティング業界の現在のイベントとトレンドに関するリンクを集めて、ニュースレターを提供している。ニュースレターを購読することも可能だ。

また、Flipboardを利用しているなら、This Week in Digital Magazineを購読すると、同じリンクを手に入れることが出来る。

注記:

  1. 先週は感謝祭のため休ませていただいた。そのため、今週のFlipboardにはこの記事で紹介する記事よりも多くの記事が掲載されている。
  2. 2、3週間前より、オーディオのセクションを追加した。ポッドキャストおよびオーディオのコンテンツに対する注目が高まっているためだ。

インダストリー

プラットフォーム

  • Facebook
  • Twitter
    • TwitterのCFOは交渉中に誤ってDMのメッセージを公開してしまった。しかも二度も。意図的なリークなのか、それとも、単純に使い方を間違えただけなのだろうか?(Business Insider)
    • Twitterは暴言を発するアカウントと嫌がらせをするアカウントをブロック & レポートする手段を改善した(The Verge)
  • Instagram
    • デジタル時代における重要性を高めるため、PolaroidがSocialmaticの販売を行う。299ドルで販売されるこのインスタントカメラは、Instagram、Facebook、そして、TwitterにWiFi経由で接続する。また、やはりカメラの裏側には自己撮り用のレンズが搭載されている(CNN Money)
    • National Geographic、GoPro、そして、Intelを含む6つの企業はInstagramを巧みに活用している(B2Bの会社もInstagramを有効に活動することが可能)。この記事を読み、まあまあレベルと一流レベルの違いを理解しておこう(Mashable)
    • IKEAはInstagramのアカウントを用いてオンラインカタログの作成に取り組んでいる(Mashable)
  • Tumblrはアクティブユーザーの増加においてFacebook、Twitter、Instagram、YouTube、Pinterestを上回っている(Inc.)
  • Mediumの存在を忘れないでもらいたい。ライターにとって重要なプラットフォームであり、ソーシャルチャンネルをスムーズに、そして、巧みに統合しており、また、インタラクティブな機能も多い。そして、着実に成長している[そのうち、ラージと呼ばなければならなくなるのだろうか?](Medium)
  • コラボレーティブエコノミー

    • Uber
  • Lyft 
  • Uberのドライバーとしての生活を綴ったジョエル・コムは、 シェアエコノミニーで大事なのはテクノロジーではなく、人だと指摘している(Huffington Post)
  • Airbnbは、先日、約1300名の住宅提供者を集めてカンファレンスを開催した。Uberが理解していない文化をAirbnbは理解している(HBR)
  • オーディオ

    計測基準/測定/ビッグデータ

    法律/人事

    コンテンツ

    • コンテンツ戦略を策定する際は、コンテンツのカルチャーを無視することは出来ない。良好な成果を得るためには、人、プロセス、そして、インスピレーションを基に、トーンを決める必要がある。The Altimeter Groupがこの件をレポートしている(Top Rank Blog)
    • 今からでもブログを始める価値はある。これからブログを始めるつもりなら、ブランド vs ニッチ、オーディエンスの獲得、SEOに対する考え方等、検討すべきポイントに注意してもらいたい({grow})

    重要な記事、動画 & オーディオ

    簡単に言うと

    「平凡な人は所詮平凡なことしか分からないが、才能のある人は一瞬にして天才を見極めることが出来る」
    - シャーロック・ホームズ

    画像ソース: Atin(Flickr)


    この記事は、Scott Montyに掲載された「This Week in Digital December 5th 2014」を翻訳した内容です。

    おなか一杯になった記事でした。。英語が苦にならない方は、気になった記事を後でチェックしたいですね。 — SEO Japan

    世界の誰かがモーニングコールをかけてくれるWakie、iOS版もついに登場

    「おはよう。お目覚めの時間だよ」と、少々ぎこちない感じで話しかける。
    「ありがとう。どこからかけてくれているの?」と応答がある。声にはアイルランドのアクセントだ。
    「こちらはイギリスだよ。そっちはアイルランドだね」。
    「なぜわかったのかしら」と不信感をあらわす声。
    「だって登録国を示す国旗アイコンが表示されているよ」。

    ここで紹介するのは、そんなやりとりをするアプリケーションだ。少々「ひっかかり」を感じる人も多いだろう。それがためだろうか、登録承認までに9ヶ月を要することとなった。しかしようやく、「ソーシャル目覚まし時計」のWakieがAppleのAppStoreに登録されることとなった。もともとは2011年にロシアでウェブサービスとしてリリースされたものだ。今年になってWindows PhoneおよびAndroid向けのアプリケーションがリリースされていた。目覚まし時計を、リアルな「モーニングコール」に置き換えるためのサービスだ。他のWakie利用者が、目覚まし代わりとして実際に電話をかけてきてくれるのだ。

    「ほとんどの人は目覚まし時計の音を嫌悪しています。従来の電子音やベルの音を嫌う人がとても多いのです」とWakieの共同ファウンダー兼CEOであるHrachik Adjamianは言う。「起きなければいけない人を、少しでも楽しい気分で起こしてあげようとする人を世界中から集めて、ハッピーな目覚めを提供しようとして、このサービスを立ち上げたのです。使っている人の多くは、おかげさまで気分よく目覚めることができたと言ってくれます。一日の始まりが良い感じであれば、その日一日もきっとハッピーに過ごすことができるはずです」。

    Wakieを使っている人の中で、起こしてもらいたい側の人を「Sleepyheads」と呼ぶ。このSleepyheadsの人がWakieを使う方法は、従来の目覚まし時計とさほど変わらない。起きたい時間をセットしておくだけだ。ただし、起きる時間になれば、世界中の利用者のうちの誰かから、匿名でウェイクアップコールがかかってくるというわけだ。かかってきた電話に応じれば、1分間の会話を楽しみつつ、その間にすっきり眼を覚ますことが可能となる。ちょうどその時間に起こしてくれる人がいなければ、アプリケーションが予め用意しておいたメッセージを流してくれる。

    「目覚ましがなればスヌーズして、結局起きられなかったという人が多いようです」とAdjamianは言う。「私たちの調査によれば、知らない人と1分の間にわたって話をすれば、脳もすっかり目覚めるようなのです。目覚め成功率は99%になるようです。誰かの問いかけに応じることで、起きなければという意識が強く働くのでしょう。知らない人に丁寧に、あるいは社会的に接しようとすることで、社会生活に入っていく準備もできるわけです。そのようにして心が目覚めてしまえば、多少時間に余裕があるにしても、再度眠ってしまうようなことはほとんどなくなります」。

    このサービスを通じて最初に起こしてもらったとき、電話してきたのはアメリカ人女性だった。彼女の対応はかなり事務的な感じで、本当に単に起こすためだけにかけてきたという感じだった。どうやら彼女の方も眠い中で電話をしてきてくれたようなのだ。ともかく私たちは1分間の会話をして、そしてシステムが自動的に回線を切断した。

    起こしてもらうのは受け身な立場だが、起こす側に回るのはなかなか勇気がいる。しかしともかくやってみることとした。そして繋がったのはアメリカ人男性だった。相手はともかく陽気な人だった。「起きる時間ですよ」と、丁寧に伝えてみた。返事は「どうもありがとう!」だったが、どうやら彼は既に目覚めてからしばらく経っているような様子だった。ともかくも、やり方だけはわかった。

    そうした経験を踏まえて、3度目に繋がったのがアイルランド人女性であったという次第だ。相手は22歳で、WakieおよびSleepheadの双方の役割でWakieを何度か使ってみているとのことだった。今回は、自らがジャーナリストであることを明かしていろいろと尋ねてみた。相手の女性曰く、このサービスを使うのは愉快で、目覚ましチャット以外にもボイスメールなども楽しいのだと話していた(Wakieのコールに応答しない場合、電話は留守番電話モードとなるようになっている)。また、匿名での繋がりをうたっていながらも、何か盲点をついて困らせられることはないかとも尋ねてみたが、どうやらそれもないとのことだった。Wakieのコミュニティは非常にフレンドリーであると話していた。

    そうした会話をした後、利用者同士で会話することのできるフォーラムに「Natalie」から投稿があった。曰く「イギリスのジャーナリストの人へ」とのこと。まさにそのように名乗った私(あるいはたまたま同様な名乗りをした人がいるのかもしれない)からの返信を求めるものであるのだろう。こうしたフォーラム機能は、このサービスの発展可能性を示すものだろうと思う。

    ちなみに有料の「プレミアム」オプションも用意されていて、これに登録すると会話時間を5分間に延長することができる。また、繋がる相手のジェンダーを指定したり、また会話の後に、相手が公開しているプロフィールをチェックすることができるようになっている。

    「インテリジェントな自動メッセージ機能の実装も考えています。たとえば必要な地域の天気予報や、業界ニュース、あるいは他に気になる情報を目覚ましメッセージとして利用することができるようになるのです」とAdjamianは話してくれた。「また、セレブ音声によるモーニングコールというのにも商業的可能性があるでしょう。好きなアイドルのメッセージをアラーム音声にセットすることができるわけです。事前に何通りかのメッセージを用意しておけば、毎日違ったメッセージで目覚めることもできるようになります。セレブの人が、SNSでWakieのサービスを紹介してくれるかもしれません。そこで生じる利益を折半していくというビジネスモデルも考えられると思うのです」とのことだった。

    Featured Image: Wakie

    原文へ

    (翻訳:Maeda, H


    ブランド委託販売「RECLO」が2.4億円調達、グノシーと提携効果は限定的かも

    高価格帯のブランド品を委託販売できる「RECLO(リクロ)」は、「フリマするほど暇じゃない人」をターゲットにしたアプリだ。フリマアプリはスマホで撮影した商品を気軽に出品できる気軽さが受けているが、リクロは宅配キットを取り寄せて商品を送るだけで、あとは勝手にブランド品の真贋判定や値付け、撮影、出品までを肩代わりしてくれる。リリースから約半年で17万ダウンロードに達したリクロだが、12月10日に第三者割当増資を実施して2億4500万円を調達した。引受先はB Dash Venturesやフューチャーインベストメントなど。

    リクロは在庫を持たないオンライン委託販売であるため、出店コストがかさみがちな既存の買取業者と比べて、2~3倍の出品者への高額還元が可能なのだという。平均落札金額は3万円台で、ユーザーは落札金額の50〜70%を受け取れる。サービス開始当初、出品アイテムの多くは業者から仕入れていたが、現在は半数以上が個人のクローゼットに眠るリユース品。7月には、これまで出品しなかったユーザーを獲得するために、アプリで商品を撮影するだけで無料で査定してもらえる機能を追加した。現在は1日あたり約50件を査定しているという。

    1カ月あたりの出品数は約2000〜3000アイテム。個人の出品数を押し上げているのは「セレブ」の存在だと、アクティブソナーの青木康時社長は語る。「セレブが参加するパーティーに紹介づてで足を運んで、交流かたがたリクロのことを知ってもらっている。セレブの方が出品するアイテムは総じて状態が良いものばかり。一度出品していただくと『また半年後に来て』と言われることも少なくない」。さらに、セレブからは高級インテリアや家電の出品を依頼されることも多く、今後は商品の横展開も視野に入れたいという。

    グノシー経由でブランド品は売れるか

    12月10日からは、ニュースアプリ「Gunosy(グノシー)」が手がける新サービス「Gunosy Platform」と提携。グノシー上でブランド品を最大90%で販売する「RECLO チャンネル」を12月中旬に、48時間限定のタイムセールで食品や雑貨を販売する「FLIP チャンネル」を10日に新設する。各チャンネルはグノシーの画面右下に追加されるチャンネルボタンや、グノシーのタイムライン上に掲載されるネイティブ広告を通じて誘導され、グノシー内でそのまま購入できる。

    グノシーは11月、ユーザー目標数にちなんだ「5000万人都市構想」を発表。5000万人都市の舞台となるのがGunosy Platformで、リクロのほかに、家計簿サービス「マネーフォワード」やIPサイマルラジオ「radiko.jp」、宅配クリーニング「Lenet(リネット)」など11社14サービスと提携し、それぞれグノシーから利用できるようになっている。

    Gunosy Platformは、あたかも1つの都市に各種店舗があるような状態にして利便性を高めようとするもの。とはいえ、タダでニュースを読みに来たユーザーが、どれだけブランド品に興味を持つかは未知数だ。その反面、ユーザーがファッションコーディネートを投稿できる「iQON(アイコン)」では、アプリ経由の売上が月間10億円近くに上るという。「もともと財布を持ってきていない」ユーザーが相手でも、アプローチの仕方次第ではECが成立する事例もあるわけだ。Gunosy Platformについて青木氏は「少なくとも、リクロがグノシーのアクティブユーザーの目にとまる機会が得られるのは大きい」と話している。