魚やフジツボにも負けず海に浮かんでデータ収集する自律制御式センサーの増加をSofar Oceanが計画

海は広大で謎めいている……が、数千個もの小さな自律制御式のブイが毎日興味深い情報を報告してくれたら、そんな謎はかなり減るだろう。それこそがSofar Ocean(ソーファー・オーシャン)という企業の目的であり、同社は7つの海をリアルタイムで理解するというビジョンを実現するために、3900万ドル(約44億円)を調達した。

Sofar Oceanでは「オーシャン・インテリジェンス・プラットフォーム」と称しているが、本質的には海流、水温、天候など、さまざまな重要な海洋指標のリアルタイムマップを同社は運営している。これらの情報の一部は、人工衛星や海上の大規模な船舶ネットワークからいつでも簡単に得ることができるが、数千もの熱心な観測者が波に乗ることで得られる粒度やグラウンド・トゥルースは非常に明確だ。

昨日の測定値や通過する衛星による推定値ではなく、15分前のデータを得ることができれば、航路や天気予報(陸地でも)などについて、より多くの情報に基づいた判断を下すことが可能になる。もちろん、このような大量のデータは無数の科学的応用にも役に立つ。

現時点で、数千個の同社が「スポッター」と呼ぶものが海に存在しているという。

「海の大きさを考えると、この数はまだ少ないと言えるでしょう」と、CEOのTim Janssen(ティム・ヤンセン)氏はいう。確かに、他の誰も実現したことがない数ではあるが、まだ十分ではない。「私たちはすでに5つの海すべてをカバーしていますが、これからさらにギアを上げて、この分散型プラットフォームの密度を高め、可能な限りパワフルなセンシング能力を発揮できるようにします。そのために、今後数年間で急速に多くのセンサーを追加し、収集するデータを拡大して、より正確な海洋の洞察を得られるようになると我々は予想しています」。

SofarとDARPA(米国防衛高等研究計画局)は先日、人々が独自の海洋データ収集装置を設計する際にリファレンスデザインとなるハードウェア規格「Bristlemouth(ブリストルマウス)」を発表した。これは、海中で増え続ける自律機器を可能な限り相互運用できるようにすることで、重複しながらも互換性のなかったネットワークの問題を回避することを目的とするものだ。

フジツボに覆われ、魚にかじられ、風雨にさらされた、何千ものロボットブイのネットワークを運営する難しさは想像に難くない。ヤンセン氏によると、同社の「スポッター」は外洋での長期間の活動に耐えるように設計されているため「最小限のメンテナンス」しか必要としないという。「最近では、過酷な天候のために氷に覆われてしまったスポッターがありましたが、数カ月後に氷が解けた途端、自動的にデータの共有が再開されました」と、同氏は振り返る。スポッターが海岸に打ち上げられてしまった場合は、同社が発見者を支援し、必要な場所に戻す。

このデバイスは、手動のデータオフロードやメッシュネットワークではなく(それもオプションの1つだが)、イリジウム衛星ネットワークを介して報告する仕組みになっているが、ヤンセン氏によれば、同社は「Swarm(スウォーム)のような、衛星通信分野に革命をもたらす最新技術にも取り組み始めている」という。TechCrunchでも初期の頃から取材しているSwarmは、低帯域の衛星通信ネットワークで、消費者向けインターネットではなく、IoTタイプのアプリケーションに焦点を当てたものだ。現在、SpaceX(スペースX)が同社の買収を進めている。

海流などの海の状態を表示するSofarのインターフェース(画像クレジット:Sofar Ocean)

今回の3900万ドルを調達した投資ラウンドは、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)とThe Foundry Group(ザ・ファウンドリー・グループ)が主導した。両社はプレスリリースの中で、海運業のような現在の事業においても、気候変動の研究のような将来に向けた仕事においても、より多くのデータが必要であることは明らかだと述べている。

「特にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催を受けて、気候変動に関する議論がようやく中心的なものになってきました。世界各国の政府が、ハリケーンや暴風雨の増加、海面上昇、サンゴ礁などの生態系の危機に備えて、調整や計画を進めています」と、ヤンセン氏は説明する。「気象パターンの変化、海流や気温の変化、繊細な海洋生態系の変化について、明確な情報を提供できるようにすることは、当社やそのパートナーにとってだけではなく、地球上の1人ひとりにとっても、刻々と迫る時間に間に合わせるために一丸となって取り組む上で、本当に有益なことなのです」。

政府が何かをすべきかと考えている一方で、もちろん、海運会社やサプライチェーン管理会社は、燃料使用量を最小限に抑えて物流全体を改善するためのより良い経路選択を期待し、Sofarのデータに喜んでお金を払う。

「リアルタイムのデータにアクセスできるようになることで、これらの業界全体の不確実性が低減し、より効率的で、より良いビジネス判断ができるようになり、さらに燃料を節約して炭素排出量を削減することができます。つまり、すべて持続可能性や将来に対する備えの向上につながるというわけです」と、ヤンセン氏は述べている。

画像クレジット:Sofar Ocean

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

イスラエルのスタートアップであるTactile Mobility(タクタイル・モビリティ)は、既存の車両センサーデータを利用して、自動車が道路を「感じる」ことを可能にし、クラウドプラットフォームを介して自動車と道路の両方に関する情報を提供している。同社は米国時間10月27日、2700万ドル(約30億円)のシリーズCを発表した。CEOのShahar Bin-Nun(シャハール・ビン-ナン)氏によると、同社はこの資金を、バーチャルセンサーのさらなる開発、製品ラインナップの拡大、クラウドプラットフォームの強化のために使う。目標を達成するために2021年、研究開発部門で最大20人の新規採用が必要になるという。


今回の資金調達により、Tactileの資金調達総額は4700万ドル(約53億円)になった。今回のラウンドはDelek Motorsが主導し、Goodyear Ventures(グッドイヤーベンチャーズ)とPorsche Venturesが戦略的投資を行い、Union Group、The Group Ventures、Zvi Neta(AEV)、Giora Ackerstein(ジョラ・アッカースタイン)氏、Doron Livnat(ドロン・リヴナト)氏も参加した。

ビン-ナン氏は「当社は基本的に、データの取得とデータの収益化の2つの部分に分かれています」とTechCrunchに語った。「データの取得は、シャシーのエンジンコントロールユニットに搭載されているTactile Processor(TP)と呼ばれる非常にユニークなソフトウェアで行います。TPを使用することで、安全性、パフォーマンス、運転の楽しさを向上させる、視覚に頼らない多数のバーチャルセンサーをOEMに提供することができます」と話す。

Tactileの2つめのビジネスモデルは、Tactile Cloud(TC)と呼ばれるクラウドプラットフォームを中心に展開されている。ここにバーチャルセンサーからのデータがアップロードされ、車両のDNAまたは路面のDNAを記述した触覚マップが作成される。これらのマップは、OEM、交通局、自治体、保険会社、タイヤ会社などに販売される。

ビン-ナン氏によると、Tactileが車両に搭載している23のバーチャルセンサーのうち、同社が取り組んだ主要なものはBMWとのタイヤグリップ推定で、これはクルマが走行している間に車両と道路の間のグリップを測定するというものだ。同氏によると、TactileのTPは年間250万台のBMW車に搭載されており、数百万台のクルマが受動的に路面をマッピングしていることになる。

タイヤのグリップ力を測定して道路をマッピングすることで、Tactileは道路の穴やひび割れ、滑りやすさ、降雪などをマッピングすることができる。これらの情報はリアルタイムに収集され、特定の地域を走行する他の車両にダウンロードされる。これにより、ドライバーは前もって劣悪な道路状況を知ることができ、安全性の向上につながる。また、分析結果は地図会社、道路管理者、車両管理者などの第三者が、道路のひどい場所を特定するためのレポートを介して共有することもできる。

Tactileは、クラウド上で収集したあらゆるデータで収益をあげるために、提携するOEM企業との売上高シェアモデルを採用している。ビン-ナン氏によると、Tactileはこれまでに自動車メーカー7社と30件以上の概念実証やパイロット試験を行ってきたが、量産レベルに達したのはBMWだけとのことだ。

「これまでは25人の会社でしたが、現在は40人になり、事業を拡大するには少し限界がありました」とビン-ナン氏は話す。「小さな会社がBMWのプロジェクトを進めていると、BMWへの実装や統合、要求を満たすためのテストなどで、すっかり忙しくなってしまうことが想像できるでしょう。これからは多くのOEMと並行して仕事ができるようにしたいのです」。

これは、より多くのサービスや知見を顧客に提供できるよう、他のセンサーも開発することを意味する。例えば、一部のOEMメーカーはタイヤの健康状態に関心を持っている。Tactileによれば、センサーは走行中のタイヤの溝の深さを極めて正確に測定することができ、タイヤの交換が必要かどうか、タイヤの種類や地形に応じてドライバーがどのような運転をすべきかをOEMに伝えることができるという。

「Goodyearがこの会社に投資した理由でもありますが、もう1つ重要なことはタイヤが硬すぎるかどうかを正確に測定できることです」とビン-ナン氏は話す。「彼らは今回のラウンドで投資した直後に、我々とテストを行いました。ですから、タイヤの健全度を測るバーチャルセンサーは、私たちが開発するバーチャル・センサーの中でも重要な種類のものであることは間違いありません。他のOEMは、重量推定や重心位置などを求めますが、これらは当社のバーチャルセンサーが感知し、機械学習や信号処理を使って多くのノイズを除去しています」。

その他のセンサーとしては、重量推定、アクアプレーニング、車両のヘルスセンサー、マイクロ衝突などがある。今回のシリーズCの資金調達により、Tactileはこれらのセンサーを構築し、OEMメーカーにアピールできるようにしたいと考えている。Tactileの目標は、すべての主要な自動車メーカーに入りこむことだ。そうすることで、大量のデータを収集、分析、収益化することができ、自律走行車など急成長中の技術との連携を図ることができる。

Goodyear VenturesのマネージングディレクターであるAbhijit Ganguly(アビジット・ガングリー)氏は声明文で「コネクテッドドライビングと自律走行は、ヒトとモノの移動の未来にとって重要な鍵となります。コネクテッドかつ自律走行の安全性と効率性を向上させるためには、タイヤデータが鍵となります」と述べた。

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画像クレジット:Tactile Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

新型コロナウイルスを検出するバイオセンサーを東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学・デンソーが共同開発

新型コロナウイルスを検出するバイオセンサーを東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学・デンソーが開発

東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学デンソーは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、新型コロナウイルス検査機器の開発に取り組んでおり、新しい仕組みのバイオセンサーを開発し、新型コロナウイルスの検出に成功したと発表した。今後は、感染症の早期診断に貢献することを目指し、実用化に向けた開発を加速する。

感染症の拡大および医療のひっ迫を防ぐには、感染症の早期診断、早期隔離によるウイルス拡散の未然防止が重要とされる。しかし現在、新型コロナウイルス感染症の診断には、PCR検査・抗原検査などが利用される一方、それら検査では検出したウイルスの感染力の有無を示す「ウイルスの感染性」が評価できないことが課題となっている。

また、PCR検査はウイルスの検出感度は高いものの前処理など医療従事者への負荷が大きく、抗原検査は簡便な検査であるが検出精度にバラツキがあるなどの課題があり、「ウイルスの感染性」を評価する高感度かつ簡便な検出方法の開発が求められている。

東海大学、豊橋技術科学大学、中部大学、デンソーが共同開発を進めているバイオセンサーは、「ウイルスの感染性」を高感度かつ迅速に定量検出する臨床検査機器としての活用を目指したもの。PCR検査や抗原検査とは異なり、感染のきっかけとなるウイルス表面のスパイクタンパク質を、半導体センサーとアプタマー(人工的に合成した核酸分子。特定の物質に結合する性質を備える)で検出することが可能という。

この技術は世界で初めてものとしており、今回同手法を用いて新型コロナウイルスを高感度で検出することに成功した。

新型コロナウイルスを検出するバイオセンサーを東海大学・豊橋技術科学大学・中部大学・デンソーが開発

新型コロナウイルス検出イメージ

半導体センサーは、ウイルス量を電気信号で定量的に計測できるため、高い精度での感染状況の把握や、治療の有効性の確認などへの活用が期待できるという。また、アプタマーはサイズが小さく、さまざまなタンパク質と選択的に結合する性質を持つとともに、設計が容易であり短期間での量産も可能であることから、未知のウイルスの検出に応用することも可能としている。

3大学とデンソーは、同バイオセンサーが、新型コロナウイルスの感染性が把握できることに加えて、PCR検査と同等レベルのウイルス検出感度を持ち、抗原検査と同等レベルの簡便な検査となることを目指し、さらに基礎技術を固めていくとともに、実用化に向けた開発を加速する。

各機関の役割およびコメント

  • 東海大学:感染制御と検査の専門医の立場から、感度・特異度に優れ、感染性の有無がわかる操作が簡便かつ迅速な検査機器の開発を切望している。世界に誇る技術力で開発された検査機器についてニーズに対応する仕様と性能、信頼性と精度の確保を目指す
  • 豊橋技術科学大学:ウイルス量を電気信号に変換できる半導体センサーを製作して、同プロジェクトに提供。半導体技術を使うと、米粒大のセンサーにより、1種類のウイルスだけではなく、症状が極めて似て区別がつきにくい場合でも1回の検査で区別できるようになる
  • 中部大学:半導体センサーの性能を評価するため、様々な種類のウイルスを準備し提供。同バイオセンサーは、従来のPCR検査だけでは把握できない「感染力を有するウイルス」を短時間で検出できる技術。体内に入ったウイルスが増殖の真っただ中なのか、終息に向かっているかなどの現状認識が可能になれば、隔離解除のタイミングが明確になり、安心した社会復帰の実現が期待できる
  • デンソー:快適な車室内空間を作るための先行研究の1つとして行っていた、様々なウイルスやバイオマーカー検出の研究開発の中で得た知見を生かし、より感度高く半導体センサーでウイルスを検出するためのバイオ技術を提供。これまで培ってきたバイオと半導体技術を生かし、実用化を目指した開発を加速する

ラズパイがレゴとコラボ、LEGO Technicモーターやセンサーを制御する拡張基板を発表・スイッチサイエンスで近日発売予定

ラズパイとレゴがコラボ、LEGO Technicモーターやセンサーを制御する拡張基板発表・スイッチサイエンスで近日発売予定
Raspberry Pi財団は10月19日、LEGO Educationとのコラボレーションによる新製品「Raspberry Pi Build HAT」を発表した。これは、LEGO Technicのモーターやセンサーを制御できるRaspberry Pi用の拡張基盤(HAT)。スイッチサイエンスでは、直販価格3718円(税込)で近日発売予定となっている。ラズパイとレゴがコラボ、LEGO Technicモーターやセンサーを制御する拡張基板発表・スイッチサイエンスで近日発売予定

ラズパイとレゴがコラボ、LEGO Technicモーターやセンサーを制御する拡張基板発表・スイッチサイエンスで近日発売予定

「Raspberry Pi Build HAT」の特徴

  • Raspberry Pi 4やPi Zeroから、LEGO Technicのモーターとセンサーを4つまで制御可能
  • LEGO Education SPIKEプライムセットおよびSPIKEプライム拡張セットに含まれるアンギュラーモーター、距離センサー、カラーセンサー、フォースセンサーなどが利用可能
  • LEGO Technicデバイスを制御するためのPythonライブラリーを用意
  • Raspberry Pi 4およびRaspberry Pi Zeroを含むすべての40ピンGPIO Raspberry Piボードで動作
  • RP2040(Raspberry Pi財団初のインハウスデザインマイコン)を搭載

また、モーターには外部電源が必要となる。電源入力用に、センタープラスの21mmバレルジャックを搭載(8ボルト)。リボンケーブルなどの延長デバイスを追加すると、Raspberry Pi 400でも使えるようになるとのこと(このボードからの電源供給は不可)。

Raspberry Pi Build HAT

型番:RPI-SC0622
価格:3718円(税込)

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の永富良一教授らの研究グループは、荷重センサーを装着したオフィスチェア(スマートチェア)と人工知能解析技術で、日々の腰痛悪化を高い精度で予測することを可能にした。

研究グループは、22人のオフィスワーカーの協力で、3カ月間にわたり4個の荷重センサーを座面下に装着したスマートチェアで仕事をしてもらい、データを収集した。また被験者には、1日3回、タブレットで主観的な腰痛の程度を記録してもらった。

その結果、同じ姿勢を保つこと(姿勢の固定化)を避けるために、人は細かく体を動かしており、それには共通する特定のパターンがあることが発見された。そして、そのパターンが見られなくなると、腰痛が高い確率で悪化することがわかった。このことから、腰痛の発生が予測でき、ストレッチやエクササイズを促すことが可能となる。

東北大学がスマートチェアとAIで「腰痛悪化予報」を可能に

これまでは、「実生活におけるさまざまな規則性に乏しい時系列信号の数理モデル化」が難しかった。つまり、座っているときの短時間の不規則な姿勢の変化などを数式化することが困難であったため、「主観的腰痛」の予測はできなかった。その点において、それを可能にした今回の研究は大変に重要だと、同グループは話している。

こうした姿勢の固定化を防ぐ細かい体の動きの発見により、腰痛の他にも、肩こり、頭痛、関節痛などの不定愁訴の要因の解明と対処法の開発が進むとのことだ。

人間の網膜を模倣し目の錯覚も再現した人工視覚イオニクス素子をNIMSが開発

人間の網膜を模倣し目の錯覚も再現する人工視覚イオニクス素子をNIMSが開発

国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)は、10月11日、固体中のイオンの移動とイオン間の相互作用を利用して動作する人工視覚イオニクス素子の開発を発表した。人間の網膜の神経細胞を模したもので、明暗、色、形の境界線を強調して感じることができる機能(側抑制)を、ハードウェアのアナログ信号処理だけで再現することに成功した。

近年、人間の知覚原理を応用したセンサーのやアナログ情報処理システムの研究が進められているが、これまではソフトウェアで高度な処理を行うものが多く、専用の処理モジュールや複雑な回路が必要となり、システムのサイズも消費電力も大きくなる傾向にある。

人間の目は、網膜で捉えた光の信号を脳内に伝え、さまざまな処理が行われることによって物を見ることができる。網膜には、外から入ってきた視覚情報の中の光のコントラスト、色、動きなどを、神経細胞間の高度な相互作用により認識、識別する細胞が埋め込まれている。NIMSは、この相互作用をハードウェアだけで再現できれば、ソフトウェア処理に伴う大規模なプログラミングや回路を必要とせず、小型で省電力な人工知覚システムができると考えた。そうして人工視覚イオニクス素子が生まれた。

この研究では、人工視覚イオニクス素子が明暗のコントラストによる輪郭の抽出、つまり「明暗の錯視」を模倣できることを実証したが、人の目には、傾き、大きさ、色、動きなどによる錯視もある。この素子には、これらの錯視も模倣できる可能性があり、NIMSでは、集積化や受光回路などと統合することにより、さらに人間の網膜に近い機能を持った資格センシングシステムの開発を目指すという。

人間の網膜を模倣し目の錯覚も再現する人工視覚イオニクス素子をNIMSが開発

人間の網膜を模倣し目の錯覚も再現する人工視覚イオニクス素子をNIMSが開発

NECらが歩行の質を測れるインソールを法人向け提供、歩行速度・歩幅・接地角度・離地角度・足上げ高さなど計測

NECらが歩行の質を測れるインソールを法人向け提供、歩行速度・歩幅・接地角度・離地角度・足上げ高さなど計測

センサ付きのインソールを、靴に入れるだけで「歩容(≒歩行の質)」を計測でき、さらにAIが足の健康状態を示す指標を推定する──。そんなことが可能な「歩行センシング・ウェルネスソリューション」を、NECとFiNC Technologiesが共同開発しました。病院や介護事業者などの法人向けに提供するとしています。

同ソリューションは、インソール(5000円)、センサ(月額3000円)、クラウド上のダッシュボード(5万円)と組み合わせたもの。

インソールには、NECが開発した小型の歩行分析センサが内蔵されており、歩行速度、歩幅、接地角度、離地角度、足上げ高さ、足の外回し距離のデータを測定できます。

センサは、歩行時のみ検知・起動する仕様で、消費電力を抑えることが可能です。

両者は、リアルタイム計測用のセンサーも開発し、特定の場面での歩行状態を計測することもできるとしています。

センサで収集したデータは、専用のアプリやダッシュボードから確認でき、同データを基に、足圧中心移動指数や拇趾関節の歪み(第一中足骨関節角度)といった、足の健康状態を示す指標を、独自の歩容分析AI技術が推定します。

両者は、「従来、人の歩行状態を把握するには、歩行の様子をカメラで撮影したり、ウェアラブルのセンサでデータを計測したりする必要があり、運用コストや利便性などに課題があった」としたうえで、「同ソリューションを使うことで、日常の歩行データや、開発途中の靴で測ったデータなどを、場所や時間を問わず、設備も不要になり、従来の課題を解決できる」と説明しています。

昨今のコロナ禍で在宅時間が増加し、健康に対する意識が高まっています。こうした社会情勢の変化を踏まえ、健康に関するデータをアプリで管理できるサービスが増えています。

ITスキルを持つユーザーにとっては、朝飯前な健康関連サービスですが、“デジタル弱者”とされる高齢者などをうまく取り込めていないように思います。今後は『テック好きでなくても、誰でもかんたんに使える』を意識した、Withコロナ時代の健康関連サービスの登場に期待したいところです。

(Source:NECEngadget日本版より転載)

LiDAR開発会社OusterがSense Photonicsを買収、狙いは自動車業界

2021年3月にSPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて上場したLiDAR企業のOuster(オースター)は、ソリッドステート型LiDARのスタートアップ企業であるSense Photonics(センス・フォトニクス)を、月曜日の市場終了時に約6800万ドル(約75億7000万円)と評価された全株式を取得して買収すると発表した。

この買収が完了したら、Ousterは新たな事業部門としてOuster Automotive(オースター・オートモーティブ)を起ち上げ、現在のSense社のCEOであるShauna McIntyre(シャウナ・マッキンタイア)氏が、同部門を率いることになるという。この新事業部門では、Senseの最長測定距離200mのソリッドステート型LiDARを、Ousterが自動運転車用として計画しているマルチセンサーLiDARスイートに統合する。サンフランシスコを拠点とするSenseが開発したLiDARの特長は、以前TechCrunchの記事でも説明しているように、視野角の広さである。

関連記事:28億円調達でLiDARシーンに登場した新しいアプローチ

ニュースリリースによると、Ouster Automotiveは5社の自動車メーカーとの交渉進展を目指すというが、そのような可能性のある提携についての詳細は明らかにされなかった。もしこれらが確実なものになれば、2025年か2026年に生産が始まる見込みだという。

LiDARは、ほとんどの自動運転システムで重要な役目を担うセンサーだ。LiDARとは「light detection and ranging(光による検知と測距)」の略で、レーザーを使って離れた位置にある物体までの距離を測定し、周囲の3Dマップを作成する。Waymo(ウェイモ)やArgo AI(アルゴAI)などの企業が開発している自動運転システムにとって、LiDARはレーダー、カメラ、ソフトウェアとともに欠かせないものとなっている。

2021年2月、OusterのCEOであるAngus Pacala(アンガス・パカラ)氏は、ポッドキャスト「Shift(シフト)」で、LiDAR業界の将来は統合が進むだろうと述べていた。「LiDAR企業は今後5年以内に3~5社になるだろう」と同氏は語ったが、今回の新たな買収は、Ousterが同氏の予測を現実のものとする動きの先頭に立つことを示している。

Ousterは2021年前半に19億ドル(約2120億円)規模の取引で白地小切手会社との合併を完了し、競合のLiDAR企業であるLuminar(ルミナー)、Innoviz(イノヴィズ)、Velodyne(ヴェロダイン)と同様に、SPACルートで株式市場に上場を果たした。Ousterの株価は、2月に15.39ドル(約1715円)の年初来高値を記録したが、現在は7.41ドル(約826円)で取引されている。

Ousterの広報担当者にTechCrunchが確認したところによると、同社はSenseで働く従業員80人の大半がマッキンタイア氏とともにOusterに加わることを期待しているとのこと。

広報担当者は、次のように続けた。「Ousterの視点は常に、自動車製造会社が求めているのは、大量生産が可能で、数百ドル(数万円)という低コストで車体に組み込むことができ、長距離から短距離までカバーする、ソリッドステート型LiDARのマルチセンサースイートであるということを見据えています。それこそが、当社が提供しようと考えているものです」。

画像クレジット:Ouster

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スイッチサイエンスがConta規格対応の2軸加速度センサーと3軸振動センサーを発売

スイッチサイエンスがConta規格対応の2軸加速度センサーと3軸振動センサーを発売

スイッチサイエンスは9月28日、Conta規格に対応する2つのセンサーボード、「Conta産業用2軸デジタル加速度センサ IIS2ICLX 搭載」と「Conta産業用3軸デジタル振動センサ IIS3DWB搭載」の発売を同社ウェブショップにて開始した。

Conta規格とは、ブレークアウト基板同士の接続性を確保するために、フォームファクターやピン配列などの規約をまとめたもの。スイッチサイエンスが規定した。今回発売されたセンサーボードは、STマイクロエレクトロニクスの2軸加速度センサー「IIS2ICLX」を搭載し高精度の傾きセンサーなどが作れる産業用2軸デジタル加速度センサーと、3軸デジタル振動センサー「IIS3DW」を搭載した産業用3軸デジタル振動センサー。

「Conta産業用2軸デジタル加速度センサ IIS2ICLX 搭載」の概要

  • 2軸加速度センサー「IIS2ICLX」搭載
  • 入出力はI2Cバスインターフェース
  • 割り込み出力端子あり
  • I2Cスレーブアドレスは「6Ah」(7ビット表記)。ジャンパSJ1をカットして3.3V側につなげば「6Bh」にもなる
  • 動作電圧:1.71V~3.6V
  • 基板外形:2cm×2cm
  • ピンヘッダー搭載
  • 価格:6380円(税込)

IIS2ICLXの特徴

  • 2軸リニア加速度センサー
  • 選択可能な最大測定範囲:±0.5 / ±1 / ±2 / ±3g
  • 超低ノイズ密度:15µg/√Hz
  • 温度に対する優れた安定性(<0.075mg/℃)と再現性
  • 内蔵の補正機能により温度に対する高い安定性を実現
  • I2C / SPIデジタル出力インターフェース
  • 低消費電力:0.42mA
  • 外部センサーからデータを効率的に収集するセンサー・ハブ機能
  • 最大3KBのスマート組込みFIFO
  • プログラム可能なハイパスおよびローパス・デジタル・フィルター
  • AIアルゴリズムを集積し、システム・レベルで消費電力を低減するプログラム可能な機械学習コア
  • 加速度センサーと1つの外部センサーから得たデータを処理するプログラム可能なステート・マシン
  • 幅広い動作温度範囲:-40℃~+105℃
  • 温度センサー内蔵
  • 電源電圧:1.71V~3.6V

「Conta産業用 3軸デジタル振動センサ IIS3DWB 搭載」の概要

  • 3軸デジタル振動センサー「IIS3DWB」搭載
  • 入出力はSPI
  • INT1とINT2の2つの割り込み端子を基板上に用意
  • 動作電圧:2.1V~3.6V
  • 基板外形:2cm×2cm
  • ピンヘッダー搭載
  • 価格:3960円(税込)

IIS3DWBの特徴

  • 3軸デジタル振動センサー
  • 選択可能な最大測定範囲:±2g / ±4g / ±8g / ±16g
  • 超広帯域 / フラットな周波数特性:DC~ 6kHz(±3dBポイント)
  • 超低ノイズ密度:3軸モードで最小75µg/√Hz / 1軸モードで60µg/√Hz
  • 温度および機械的衝撃に対する感度の高い安定性
  • 広い動作温度範囲:-40℃~+105℃
  • 低消費電力:1.1mA
  • SPIシリアル・インターフェース
  • 選択可能なカットオフ周波数を備えたローパス / ハイパス・フィルター
  • ウェイクアップの割込み / アクティブ – 非アクティブ / FIFOしきい値
  • 組込みFIFO:3KB
  • 温度センサー搭載
  • 電源電圧範囲:2.1V~3.6V
  • 小型パッケージ:LGA 2.5×3×0.83mm 14リード

ボールウェーブ・東北大学・豊田合成が空気中の新型コロナウイルスを1分以内に検出成功、高速ウイルスセンサー実現へ

ボールウェーブ・東北大学・豊田合成が空気中の新型コロナウイルスを1分以内に検出することに成功 、高速ウイルスセンサー実現へ

ボールSAWセンサー」の開発・製造を行う東北大学発スタートアップ「ボールウェーブ」は9月24日、東北大学東北大学大学院医学系研究科)、トヨタグループの電気機器メーカー豊田合成と共に、空気中のエアロゾルに含まれるウイルスを、抗体やアプタマー(特定の異物と結合してその機能を阻害する核酸分子)を使って捕捉し、「秒オーダー」でウイルス濃度を測定する新原理の確立を目指す「ボールSAWウイルスセンサの原理検証に関する研究」を進めている。その中で、エアロゾル中の新型コロナウイルス由来のタンパク質を、1分以内に捉えることに成功した。これにより、患者の呼気からウイルスが検出できる機器や、環境の空気中に浮遊するウイルスのモニターの開発の道筋が見えてきた。

将来的には、「情報通信機器に搭載して、ウイルスの拡散状況を実時間で可視化するシステム」の開発にもつなげたいとのこと。また豊田合成は、将来的には、新型コロナウイルスの除菌に有効な同社UV-C(深紫外線)LED技術との連携も視野に開発を進めるとしている。

2015年11月設立のボールウェーブは、その独自技術である「ボールSAWセンサー」の表面に抗体やアプタマーを固定しておくことで、水に覆われた状態のウイルスが付着すると、ウイルスのスパイク蛋白と反応してウイルスが補足されるというセンサーを考案した。この技術を核に、自動車部品の開発で培った表面処理技術を持つ豊田合成と、呼気中のウイルスや炎症蛋白を質量分析で検出する高精度診察法「呼気オミックス」の技術を持つ東北大学が協力して、このセンサーの開発を行っている。これを使えば、人からエアロゾルが放出されてから、1m以内であれば20秒以内(到達まで10秒、センサー応答時間が10秒以内)にウイルスを検出できるという。

ボールSAWセンサーとは、球の表面を繰り返し周回する弾性表面波(Surface Acoustic Wave)を利用したセンサーのこと。東北大学大学院工学科山中一司名誉教授らが開発した。現在、空気中のウイルス濃度をリアルタイムで検出できる方法は存在していない。また現在もっとも簡便な新規患者の検査方法であるイムノクロマト法抗原検査キットでも、検査に15分以上かかる。このボールSAWセンサーを使ったウイルス検出技術が確立されたなら、新型コロナウイルスの検査や予防が大きく進化するはずだ。

独自光超音波3Dイメージング技術を手がけるLuxonusが約4.3億円調達、2022年中に医療機器の開発・生産および薬事申請準備

独自の光超音波3Dイメージング技術を手がけるLuxonusが約4.3億円調達、2022年に医療機器の開発・生産および薬事申請準備

Luxonusは9月10日、シリーズBラウンドにおいて、約4億3000万円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタルなど。調達した資金により 2021年に研究機関向けの理化学機器の上市と、続く2022年中の医療機器の開発・生産および薬事申請の準備を行う予定。

Luxonusは、独自の光超音波3D/4Dイメージング技術(PAI-3D/4D。Photoacoustic 3D/4D Imaging)を用いて、疾患の早期発見および病勢診断が可能な汎用撮影装置の実用化を目指す大学発スタートアップ。科学技術振興機構(JST)による革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出」(2014年度~2018年度に実施、慶應義塾大学と京都大学が参加)などの研究成果を基盤とし、2018年に設立された。

PAI-3D/4Dとは、生体にパルス光を照射した際に発生する超音波を超音波センサーで補足し、受け取ったデータをコンピューター解析し画像化する技術。既存撮影技術であるX線コンピューター断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像(MRI)などと比較して、造影剤を使用せずに無被ばくで血管を超高解像度3D/4D撮影することが可能としている。Luxonusは2019年から製品開発に取り組み、光超音波3D/4Dイメージング装置の製品プロトタイプの開発に成功し、3D画像に加え、リアルタイム3D(4D)画像の取得を実現した。血液の酸素飽和度などの3D/4D撮影、さらに色素造影剤を用いることでリンパ管を高解像度で3D/4D撮影可能。

また、慶應義塾大学病院および京都大学医学部付属病院は、ImPACT(内閣府・革新的研究開発推進プログラム「イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出」)で得られた臨床研究成果さらに発展させ、日本医療研究開発機構(AMED)「医療機器等における先進的研究開発・開発体制強靭化事業」において、同装置を用いた疾患(末梢脈管疾患、リンパ浮腫、乳がんなど)と再建手術に関する臨床研究を進めており、今後研究成果を医学系学会などで発表予定としている。

・9月:第80回 日本癌学会
・10月:第17回 日本血管腫血管奇形学会
・12月:第5回 APFSRM2020 / 第48回 日本マイクロサージャリー学会

サムスンが業界初となる2億画素のイメージセンサー「ISOCELL HP1」を発表

サムスンが業界初となる2億画素のイメージセンサー「ISOCELL HP1」を発表

Samsung

Samsung Electronicsは9月2日、業界初となる2億画素(200MP)イメージセンサーであるISOCELL HP1を発表しました。あわせて、高速オートフォーカス(AF)が可能な50MPイメージセンサーのISOCELL GN5も発表しています。

最近はスマートフォンのカメラの画素数競走が過熱しており、同社のGalaxyやXiaomiの製品では、すでに1億800万画素(108MP)の製品も発売されています。

ただ、スマートフォン向けの小さなイメージセンサーでこれだけ高解像度化すると、1ピクセルのサイズが小さくなり、光量的には不利になります。実際、今回のISOCELL HP1も、1ピクセルは0.64μmと極小サイズです。そこで、ChameleonCellと呼ぶビニングテクノロジーを利用します。

これは隣接ピクセルを束ねて疑似的に1ピクセルとして扱うことで、解像度を落とす代わりに光量をアップしようというもの。ISOCELL HP1では、環境に応じて2 x 2もしくは4 x 4個のピクセルを束ねて、50MPまたは12.5MPのセンサーとして利用できます。

フルサイズでは画像サイズが大きくなりすぎるので、スマートフォンに搭載される場合は、このどちらかが標準撮影モードとなりそうです。

サムスンが業界初となる2億画素のイメージセンサー「ISOCELL HP1」を発表

Samsung

もう一つのISOCELL GN5は、オートフォーカス性能を向上するDual Pixel Proを搭載した1.0μmイメージセンサー。2月に発表されたISOCELL GN2の小型版のようです。

Dual Pixel Proとは、ピクセル内のフォトダイオードを水平・垂直に配置することで、上下左右すべての方向の光の変化を検知し、高速なオートフォーカスを実現するというものです。

サムスンが新センサー「ISOCELL GN2」発表 AF速度/精度共に向上

これに加えてISOCELL GN5では、あらたにFront Deep Trench Isolation (FDTI)という技術も適用されており、フルウェル容量(これが大きいほど高精細で忠実な画像を再現できる)を増やすことができるとのこと。

サムスンが業界初となる2億画素のイメージセンサー「ISOCELL HP1」を発表

Samsung

ISOCELL HP1とGN5はすでにサンプル出荷が開始されているとのことなので、2022年には2億画素カメラを持つスマートフォンが登場するかもしれません。

(Source:SamsungEngadget日本版より転載)

Waymoが自動運転用センサーLiDARの他社への販売を停止

CEOの交代からわずか1カ月、Waymo(ウェイモ)は正式にカスタムセンサーのサードパーティへの販売を停止する。これにより、Alphabet(アルファベット)傘下の自動運転企業Waymoは販売事業をわずか2年で終了することになる。Waymoはこの決定をロイターに認め、Waymo One配車サービスとWaymo Viaトラック配送部門でWaymo Driverテックを展開することに専念する、と付け加えた。

今回の動きは、長らくCEOを務めたJohn Krafcik(ジョン・クラフシック)氏の退社に続くものだ。クラフシック氏に代わって同社の役員、Tekedra Mawakana(テケドラ・マワカナ)氏とDmitri Dolgov(ディミトリ・ドルゴフ)氏が共同で舵取りを担うことになった。一部の人はクラフシック氏の意図的なアプローチは商業化を妨げていると考えていた。2021年8月初め、Waymo はシミュレーションで200億マイル(約322億キロメートル)、公道で2000万マイル(約3220万キロメートル)の走行というマイルストーンを達成した。数日前にはサンフランシスコで選ばれた客にロボタクシーの提供を開始した。

同社は2019年に、レーザー光のパルスで距離を測定する技術であるLiDARを自動運転車両ライバルを排除する企業への販売を開始した。当初は短距離センサー(Laser Bear Honeycombとして知られる)をロボティクス、セキュリティ、農業テクノロジー部門の企業に販売する計画だった。同社のウェブサイトにあるフォームにはドローンやマッピング、エンターテインメントといった産業も対象と記載されている。

Waymoの第5世代Driverテクノロジーは、車が日中問わず、そして雨や霧といった悪天候の中でも周囲360度を「見ることができる」よう、レーダー、ライダー、カメラなどのセンサーアレイを使っている。シミュレーションと実世界での運転テストは機械学習ベースのソフトウェアを使って分析される膨大なデータセットを集めるのに役立った。ロイターが引用した匿名の情報筋によると、Waymoは次世代LiDARで自社開発のテクノロジーと外部サプライヤーを使う意向だ。

編集部注:本記事の初出はEngadgetに。著者Saqib ShahはEngadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット:Waymo

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(文:Saqib Shah、翻訳:Nariko Mizoguchi

電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応

電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応

電気通信大学

電気通信大学の研究グループが8月10日、ECサイトで販売されている5000円以下の安価な二酸化炭素濃度測定器(CO2センサ)の多くが、CO2濃度を測定しておらず、消毒用アルコールに反応する疑似センサを使用しているとする調査結果を発表しました。

コロナ禍にあって自宅で作業を行う人が増えていますが、3密を防ぐ感染対策のため、換気の目安として二酸化炭素濃度を測る機器が市場に多く出回っています。しかしながら、二酸化炭素濃度を人が直接体感するのは難しく、センサが正しく動作しているのかは普通の人には確認が困難です。このため、研究チームがECサイトで感染対策用として販売されている2900円~4999円のCO2センサ、計12機種を購入し、実際に精度検証を行いました。

その結果、12機種のうち、1機種は異常値を示したことから故障と考えられ、8機種はCO2には反応しなかったとのこと。残りの3機種は精度は低いながらCO2に反応しており、校正(調整)すれば感染対策目的で使用可能と判断されています。また、CO2に反応しなかった8機種は、いずれも消毒用アルコールに強い反応を示しており、CO2センサをうたいながら、アルコールや総揮発性化合物などの雑ガスに反応する疑似センサを使用している可能性が高いとしています。

なお、コロナ対策関連では、UV除菌・殺菌グッズも数多く出回っていますが、こちらについても、エンガジェットライターの宮里氏により、安物はほぼ効果が期待できないとの調査結果が出ています。

UV除菌・殺菌をうたう激安機器は本当にUV-Cが出ているのか?:ウェブ情報実験室

こうした結果を見ると、自宅で使っているCO2センサが正しいかどうかが心配になるところですが、それを手軽に確認する方法も公開されています。

まず、1つ目として、屋外の新鮮な空気の中にセンサを置き、CO2濃度が400ppm前後(目安としては340~460ppm)を表示するか確認します。数値が大きくずれている場合には、換気モニタにはふさわしくないとのこと。ただし、機種によっては測定値を校正できるものがあるとのことで、取扱説明書を確認するのが良さそうです。

2つ目として、センサに息を吹きかけ、CO2濃度が測定限界値まで上昇することを確認します。呼気には二酸化炭素が含まれているので、これを直接吹きかければ反応するはずということです。このとき、センサがすぐに反応しない場合には、ビニール袋などにセンサを入れ、その袋を息で膨らませて様子を見ます。それでもセンサが反応しない場合には、換気モニタとして使わないことを推奨しています。

3つ目は、消毒用アルコールを吹きかけた手をセンサに近づけ、CO2濃度が上昇しないことを確認します。もし大幅に上昇する場合には、CO2ではなく、他のガスに反応する疑似センサが使われている可能性が高いということになります。

中には、安価でもきちんとした製品はあると考えられますが、残念ながら購入前の見極めは困難です。もし購入する際には、安さだけで選ばず、信用できるメーカーのものを選んだり、レビューを精査するなどの努力が必要になってきそうです。

電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応

電気通信大学「Accuracy verification of low-cost CO2 concentration measuring devices for general use as a countermeasure against COVID-19」より。参照用として、T&D社製の研究用センサ(センサA)とCHCシステム社製の産業用センサ(センサB)も同時に測定に利用している

(Source:電気通信大学Engadget日本版より転載)

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米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

icholakov via Getty Images

アメリカ合衆国統合軍のひとつ、アメリカ北方軍(NORTHCOM)は、Global Information Dominance Experiments(GIDE)と呼ばれるセンサー、AI、クラウドコンピューティングを組み合わせた「未来予測システム」を開発し情報面と意思決定面での優位性を獲得しようとしています。すでに3度目の実験を行っており、司令官いわく「11の戦闘司令部すべてが同じ情報空間で同じ能力を使って協力」して実施したとのこと。

NORTHCOM司令部および北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官グレン・ヴァンヘルク空軍大将によると、このシステムは膨大なデータセットパターン、異常状態、トレンドデータを評価分析して、国防総省に「数日先を見通す能力」を提供することを目指しています。

わかりやすくいえば、映画『マイノリティ・リポート』でピタピタスーツを着て水浸しになっている予知能力者の役割を、AI技術で実現しようとしているわけですが、GIDEは決して10年単位の未来の話ではなく、すぐに利用できるツールの組み合わせで、リアクティブ(反応的)な情報収集からプロアクティブ(積極的)な情報収集環境を構築しているとのこと。

しかも、このシステムは数分とか数時間単位ではなく、数日単位で情勢を把握できるようなるとされています。たとえば何らかの社会的軍事的異変が起こるとして、それが数分後や数時間後なら、軍として対処するにも時間が少なすぎます。しかしもしそれが数日前にわかるのならしっかりと意思決定や戦略を練る余裕もでき、作戦指揮官たるヴァンヘルク大将にとっても部隊配置や大統領を含め各機関のトップと意思統一をはかることができ、大きな”備え”となるはずです。

GIDEシステムは収集する情報として、たとえばある場所に駐車する自動車の数が突然増えただとか、基地に飛行機が集中しはじめたといった、平時とは異なる手がかり、を予測の材料とします。しかしこのシステムだけで「明日どこそこで事件が起こるから」といった具体的な情報がわかるわけではなく、依然として多くの人々が情報を元に頭を使って手立てを考え、実際に動いて備えを講じる必要があります。それでも、テロのような奇襲攻撃を事前に察知できるようになれば、交渉によって戦いを避ける道も探れるかもしれません。それは、非常に価値あるシステムであるはずです。

(Source:U.S.DoD。Via The DriveEngadget日本版より転載)

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排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

超音波センサー採用の排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

obniz(オブナイズ)は7月30日、トリプル・ダブリュー・ジャパンが企画・開発・販売している排尿予測デバイス「DFree」(ディー・フリー)の法人用タイプ「DFree Professional」において、「obniz BLEゲートウェイ」がゲートウェイ機器として採用(2021年2月)され、2021年6月より全国の介護施設などに導入されていることを発表した。

超音波センサー採用の排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

トリプル・ダブリュー・ジャパンの排尿予測ウェアラブルデバイス「DFree」

トリプル・ダブリュー・ジャパンのDFreeは、超音波センサーを用いて膀胱の変化をとらえることで排尿タイミングが分かる、世界初の「排泄予測デバイス」。軽量で持ち歩きやすく、ベッドや車いすの上、リハビリ中などでも動きを妨げないIoTウェアラブルデバイスで、介護施設や医療機関など法人向け「DFree Professional」と個人向けの「DFree Personal」が用意されている。従来の排泄ケアでは困難だった、被介護者それぞれの状態に合わせたケアをサポートし、被介護者本人のQOL(生活の質)向上と介護者の負担軽減を実現できるという。

超音波センサー採用の排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

様々な身体状態の被介護者が同じ空間にいる介護施設・医療機関の場合は、DFree Professionalであれば膀胱の膨張・収縮度合を超音波センサーで常時検知してデータを可視化し、被介護者それぞれの排尿タイミングや傾向を1台の携帯端末から確認できるようになる。obnizは、超音波データの高速で頻回な通信を安定化させる環境構築も実施し、「DFree Professional」の機能を裏側から支えているという。

超音波センサー採用の排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

また排尿の頃合いや傾向が分かれば、介護士はより円滑に介助できる上、失禁なくトイレで用を足す回数が増えるとオムツやパッドの費用を節約できるという。さらにこれは、被介護者本人の自立排泄の促しにもなり、DFreeの普及は、全国約684万人(厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要」令和3年4月暫定版)の要介護・要支援認定者の自尊心を支えるという価値を持っているとした。

2015年2月設立のトリプル・ダブリュー・ジャパンは、DFree以外にも、超音波技術を活用した「排泄ケア、排泄領域のソリューション」として排便予測デバイスもすでに開発中。「家庭や介護施設での体調管理用モニタリングプラットフォームの開発・構築」も視野に入れているという。

BLEデバイスとネットワークをつなぐ、obnizの「obniz BLEゲートウェイ」

obniz BLEゲートウェイは、BLE(Bluetooth Low Energy)デバイスとネットワークの接続や、情報取得・管理を容易にするというもの。ソフトバンク子会社エンコアードジャパンが開発した「コネクトハブ」を、obnizが独自のIoTテクノロジー「obniz」を活かしてカスタマイズしたゲートウェイ機器という。BLE通信が可能な様々なIoT機器に対応しており、センサーやビーコンなどの一元管理を低コストで実現できる。

超音波センサー採用の排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

電源とWi-FiまたはLTE環境があれば、コンセントに挿すだけでセットアップができるほか、専用クラウドにより各ゲートウェイとデバイスの死活監視や管理、台数増減、プログラムのアップデートなどまとめて完了できるそうだ。

超音波センサー採用の排泄予測デバイス「DFree」法人版とIoTゲートウェイ「obniz BLEゲートウェイ」がタッグ、介護施設などに導入開始

obnizは、IoT(モノのインターネット)時代を先見し2014年11月に設立したスタートアップ。複雑なプログラムや回路の開発を不要にし、インターネット上で対象物の管理や解析、遠隔操作を可能にする技術「obniz」を活用し、ホビーから教育、産業分野まで製品とサービスを提供している。

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人の動きや所在を体温で検知するButlrが介護など新市場の開拓を目指す

790万ドル(約8億7000万円)のシードラウンドで、Butlr Technologiesのリアルタイムで人を感知する技術の応用範囲が一層広がり、商用の不動産や小売業での利用以外に、現在元気に活動している高齢者の、転倒などの動きをモニターできるようになる。

Hyperplaneがこのラウンドをリードし、Founder CollectiveとUnion Labs、500 Startups、SOSV、E14 Fund、Tectonic Ventures、Scott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Chad Laurans(チャド・ローランズ)氏そしてSunny Vu(サニー・ヴ)氏らが参加した。

新たな財源確保の1年前には、このカリフォルニア州バーリンゲームの不動産テック企業は転換社債で120万ドル(約1億3000万円)を調達し、それも790万ドルに含まれている。同社は現在、別のプラットフォームを開発中であり、そのHeaticセンサーは人の体温を匿名で検知して、店舗や建物などの混雑度や入館人数、活動などを計測する(当初、不動産業界向けに販売してきたため不動産テック[proptech]と仮に呼んでいる)。

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共同創業者のHonghao Deng(ホンハオ・デン)氏とJiani Zeng(ジヤニ・ゼン)氏は、2019年にMITメディアラボからButlrをスピンアウトし、自分たちの技術を「空間のためのAlexa」と呼んだ。そのワイヤレスセンサーは毎秒5回体温由来の温度を測り、人の姿勢や睡眠の質そして体温を判定する。またそれらのデータがもたらす情報から、顧客はビル建築に関する意思決定や現在、建築中の建物に対して何かしらの判断をしたり、物理空間に何人収容できるかなどを計画したりする。

デン氏はTechCrunchに対し、同社は「ワイヤレスの測定と精度を両立させた」唯一の企業だ、と主張した。センサーがワイヤレスだとそれは手のひらに収まるし、設置場所を選ばず、バッテリーを入れてセットアップすると2年間は使える。Butlrはプライバシーの保護も完璧で、リプレイに際して顔は要らない。代わりに、その人の動き回る体温を追う。

「センサーはどんな環境でも使えます。それは見えてはいけないし、人が気にするようなものではいけません。そのため私たちの技術は、人間の尊厳を取り戻し、しかもユーザーのニーズを理解しています。これはこれまで誰にもできなかったことであり、スペースの使い方をリアルタイムで判断し、しかも展開も簡単です」とデン氏はいう。

最小限のキットは880ドル(約9万7000円)からで、同社ウェブサイトで購入できる。空間設計のソフトウェアが含まれているため、センサーの有効範囲を最大にするにはそれらをどこに置けばよいかも簡単に決めることができる。

Butlr Technologiesの動作とその検知のシミュレーション(画像クレジット:Butlr Technologies)

今回の資金は、APIの高度化や、空間インテリジェンスへの爆発的な需要への対応がといった同社の市場拡大と技術開発に充てられる。2020年の同社は数十万台のセンサーを販売し、売上高は10倍に伸びた。デン氏によると、新型コロナウイルスの終息にともない職場への回帰が増えれば、この成長はさらに続くだろうという。

Butlrは最初は不動産と小売業向けに販売してきたが、デン氏は、交通渋滞の検出や介護施設などのユースケースも予見している。どちらの場合も、問題の早期検出が事故の予防に役立つ。たとえば後者では、高齢者の転倒危険カ所の発見だ。

「介護方面の需要はとても大きい。今どこに誰がいるかを常時モニターして、知っていなければならないからです。また、体調が悪い人を早めに見つけることができます」とデン氏はいう。

Butlrは個体の熱信号を送信するので、動きがおかしい人などを見つけることができる。これまでの患者モニタリングシステムでは、映像がリアルタイムとは限らないので数分の遅れが生じていたとデン氏は主張する。

また既存の方法ではウェアラブルや健康バンドを利用するので、充電が必要であり、施設でも家庭でも高齢者には装着が難しい。またButlrは追跡にカメラを使わないため、個人の尊厳が保たれるとゼン氏は主張する。

Founder CollectiveのパートナーであるEric Paley(エリック・ペイリー)氏によると、彼がButlrを気に入っているのは「屋内検知技術の最終結論」であり、それが極めて単純だからだ。

彼は他の製品も見てきたが、設置に専門の電気技術者が必要など、一般人には使いづらいものが多かった。それに対してButlrは、センサーを1カ所に取り付けたら数年間何もしなくてよい「それが大きい」とペイリー氏はいう。

「彼らのアーリーステージの実績はすばらしいものです。またButlrの技術は、応用範囲が広い。だから、いろいろな業界から引き合いがあります。どこから売っていくべきか、いつも同社と議論しています。APIの公開で、市場はさらに広がるだろう」とペイリー氏は語る。

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画像クレジット:Butlr

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルのサプライヤー、英スタートアップRockley Photonicsが採血なしで血糖値を測定できる非侵襲センサーシステム発表

アップルのサプライヤー、英スタートアップRockley Photonicsが採血なしで血糖値を測定できる非侵襲センサーシステム

Rockley Photonics

将来のApple Watchに非侵襲性の血糖値モニター、つまり「注射器で採血することなく、手首に装着したデバイスで血糖値を測定できる」機能が搭載される噂が以前より繰り返されています。そんななか、アップルのサプライヤーがそのソリューションを正式に発表しました。

今回の声明は、イギリスのスタートアップであるRockley Photonics社が発表したものです。同社は今年5月、スマートウォッチの背面から赤外線を照射して血圧や血糖値、血中アルコール濃度などを読み取る次世代センサーを開発していることや、アップルと継続的な「供給・開発契約」を締結していることを明らかにしていました

現在のApple Watchに搭載されたセンサーは、赤外線と可視光を組み合わせて心拍数と酸素飽和度を測定しています。Rockleyの次世代センサーは、これより感度が高い上、より多くの数値が測定できる完全上位の技術というわけです。

さてRockleyの発表によると、完全なフルスタック(複数種類)の「clinic-on-the-wrist」デジタル健康センサーシステムを開発したとのこと。

公開されたリストバンド型デバイスは、ハードウェアとアプリケーションファームウェアを統合しており、コア体温(体内深部温度)や血圧、身体の水分補給、アルコール、乳酸(ラクテート)、血糖値の傾向など、複数のモニタリングができると謳われています。

このセンサーは、非侵襲的に皮膚の下を探り、血液、間質液(体液)や真皮のさまざまな層を分析して、重要な成分や物理現象を検出するとのこと。こうしたバイオマーカーは、これまではベンチトップ型(卓上に置いて使う)機器でしか測定できなかったとされています。

また本技術は今後数ヶ月のうちに社内でテストが行われてから、2022年前半には第1世代の製品が商業的に利用できるようになる見込みとのことです。つまり2021年秋に発売と見られるApple Watch Series 7(仮)には間に合わないとの噂が裏付けられたかっこうです。

Rockley社のテストが成功するのか、上手くいったとしてApple Watchに採用されるのかはまだ未知数というほかありませんが、少なくとも数年のスパンでは期待を持てる状態になったと見てよさそうです。

(Source:Businesswire。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

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IoT開発支援システムを展開するcynapsがきのこ栽培遠隔管理システムでスマート農業分野に進出

IoT開発支援システムのcynapsがきのこ栽培遠隔管理システムでスマート農業分野に進出

IoT対応のCO2モニタリングやIoT開発を支援するプラットフォーム「LIMZERO」(リムゼロ)を展開するcynaps(シナプス)は7月6日、構築と運用のコストが従来と比較して大幅に削減できる、きのこ栽培環境の遠隔管理システム「Mushview」(マッシュビュー)を開発したと発表。すでに一部顧客農家に導入され、稼働しているという。

「普及価格」のきのこ栽培環境のトータル管理システム「Mushview」は、ハウス内の温度、湿度、大気中成分、明るさ、換気状況、排水状況などをデータ化し、複数ハウスの状況を遠隔で一元管理できる。

cynapsによると、従来こうしたシステムは、導入費が数千万円から数億円、運営費が月に数十万円から数百万円かかり、小規模~中規模の生産者に重い負担となっていたという。cynapsは、センサーの配置を最適化して個数を削減、費用対効果の高いデバイスを選択的に使うことで単価を削減、同社のIoT二酸化炭素濃度計「Hazaview」(ハザビュー)のソフトウェアモジュールを転用してソフトウェアの開発コストを削減するという方法で、導入から運用のコストを通常の数分の1から数十分の1に抑えることに成功したとしている。

今後は、「全国のきのこ栽培事業者向けにMushview販売を強化していく一方、Mushviewの技術とノウハウをきのこ以外の農作物に展開するべく、スマート農業・アグリテック分野の研究開発を推進していく予定です」とcynapsは話している。

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着用者の新型コロナ感染を検出できるセンサー搭載マスクをMITとハーバード大の研究者らが発表

着用者の新型コロナ感染を検出できるマスクのプロトタイプをMITとハーバード大が発表

MIT

マサチューセッツ工科大(MIT)とハーバード大学の研究者らは6月28日(現地時間)、約90分以内に着用者の新型コロナウイルス感染有無を診断できるフェイスマスクのプロトタイプを発表しました。マスクには使い捨てのセンサーが取り付けられており、このセンサーは他のマスクにも装着が可能。また、新型コロナウイルス以外の検出にも応用可能です。

このセンサーは、もともとエボラ出血熱やジカ熱などのウイルスを検出するために研究されていたもの。ペーパー診断用に開発した、凍結乾燥させた細胞機構をベースにしています。ようするに、有機材料で作られたバイオセンサーです。タンパク質やRNAなどの生体分子が凍結乾燥(フリーズドライ)の状態で含まれており、これが水分によって活性化されると、標的となるウイルスの分子と相互作用を起こし、色の変化などでウイルスの有無を検出できる仕組みです。

当初はウイルスに晒される機会の多い医療従事者向けに開発していたもの。白衣に取り付けることでウイルス暴露を検出できるウェアラブルセンサーとして、2020年初頭にはすでに完成していたとのこと。その後すぐに新型コロナのパンデミックが発生し、これを検出するためのマスクの開発に着手したとしています。

マスクの内側に装着することで、呼気中の唾液に含まれるウイルスを検出可能。なお、プライバシーに配慮し、色の変化は内側でのみ確認できるようになっています。

ハーバード大学の研究員Peter Nguyen氏は、ゴールドスタンダード(精度が高く信頼性があり広く容認されている手法)である高感度PCR検査と同程度の感度で、COVID-19の迅速な分析に使われる抗原検査と同じくらいの速さで検出できるとしています。

また、新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザやエボラ出血熱、ジカ熱など、他の病原体を検出するセンサーも取り付けられるほか、もとの用途通り、衣服に装着しての利用もできるとのことです。

まだ試作品の段階ではありますが、承認プロセスなどを経て製品化を考えている外部グループからも関心を寄せられているとのことなので、意外と早く世に出てくるかもしれません。

(Source:MIT NewsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
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