プライバシーとパーソナライズを両立する検索エンジンXaynが日本のKDDIやGlobal Brainなどから約13億円調達

TechCrunchは2020年12月に新しいスマホアプリベースの検索エンジンXayn(ゼイン)を取り上げた。

「検索エンジン!?」。そういうのはわかる。個人に合わせて検索結果を調整する現代の検索エンジンの能力は便利なものだが、そうしたユーザー追跡はプライバシーを犠牲にしている。いくつか例を挙げると、この監視社会はGoogle(グーグル)の検索エンジンやFacebook(フェイスブック)のターゲティング広告を改善しているかもしれないが、我々のプライバシーにとってはあまり良くない。

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もちろんインターネットユーザーは米国拠点のDuckDuckGoや、フランスのQwantなどに切り替えることができるが、プライバシーで得られるものがある代わりに、検索結果の調整の欠如によりユーザーエクスペリエンスや検索結果の適切性が往々にして損なわれる。

ベルリン拠点のXaynが提案しているのは、パーソナライズされているもののプライバシーが守られているスマホでのウェブ検索だ。これはGoogleが展開するクラウドベースのAIや、現代のスマートフォンにビルトインされているAIに代わるものだ。結果として、あなたに関するデータはXaynのサーバーにアップロードされない。

このアプローチは「プライバシー熱烈支持者」のためだけではない。検索を要するがGoogleのマーケットにおける支配的地位は必要としないという事業者もこのモデルにますますひきつけられている。

その証拠が8月9日に明らかになった。Xaynは、日本のベンチャーキャピタルGlobal Brain(グローバル・ブレイン)と通信事業者KDDIがリードしたシリーズAラウンドで約1200万ドル(約13億円)を調達した。本ラウンドには既存投資家であるベルリンのEarlybird VCなども参加し、Xaynの累計調達額は2300万ドル(約25億円)を超えた。

Xaynの検索エンジン、ディスカバリーフィード、そしてモバイルブラウザの融合はこうしたアジアマーケットの企業にアピールしてきたようだ。というのも、特にXaynはOEMデバイスに組み込むことができるからだ。

今回の投資を受け、Xaynは日本を皮切りとするアジアマーケット、ならびに欧州マーケットに注力する。

Xaynの共同創業者でCEOのLeif-Nissen Lundbæk(リーフ−ニッセン・ルンドベック)氏は次のように述べた。「我々はXaynで、パーソナライゼーションを通じたすばらしい検索結果、高度なテクノロジーを使ったプライバシー重視デザイン、そしてクリーンなデザインを通じた便利なユーザーエクスペリエンスのすべてを手にすることができると証明しました」。

そして「データーを販売し、多くの広告を表示するのが常態となっている業界にあって、当社はプライバシーを優先し、ユーザーの満足を中心に据えることを選びました」と付け加えた。

今回の資金調達は、 EUのGDPR(一般データ保護規則)やカリフォルニア州のCCPA(消費者プライバシー法)といった法制化がオンライン上の個人データについて市民意識を高めてきた中でのものだ。

リリース以来、Xaynのアプリは世界で21万5000回ダウンロードされ、アプリのウェブバージョンも間もなく展開される、と同社は話す。

電話取材で、ルンドベック氏は資金調達にともなうKDDIの役割について詳しく話した。「KDDIとの提携は、我々がユーザーにXaynへのアクセスを無料で提供することを意味します。KDDIのような企業が実際の顧客でありながら、KDDIが当社の検索エンジンを無料で提供します」。

Xaynの基本的な特徴には、パーソナライズされた検索結果がある。個人データの収集や共有はせずに、Tinderのようなスワイプから学ぶインターネット全体のパーソナライズされたフィードだ。そして広告なしのエクスペリエンスも提供される。

グローバル・ブレインのパートナー、上前田直樹氏は次のように述べた。「プライベートオンライン検索のマーケットは成長していますが、Xaynはオンラインでの情報収集がどのようにあるべきか、その再考法において他社より抜きん出ています」。

KDDI Open Innovation Fundの責任者である中馬和彦氏は「この欧州のディスカバリーエンジンは効率的なAIにプライバシー保護重視とスムーズなユーザーエクスペリエンスを独自に組み合わせています。KDDIは、専門性とテクノロジーで未来を形作ることができる企業に目を光らせています。ですので、今回の取引は当社に完璧にマッチするものでした」。

共同創業者であるCEOのリーフ−ニッセン・ルンドベック氏、最高研究責任者のMichael Huth(マイケル・フート)教授、最高執行責任者のFelix Hahmann(フェリックス・ハーマン)氏に加え、Daniel von Heyl(ダニエル・フォン・ヘイル)博士が最高財務責任者として取締役会に加わり、Frank Pepermans(フランク・ペパーマンズ)氏が最高テクノロジー責任者に、Michael Briggs(マイケル・ブリグズ)氏が最高事業成長責任者に就く。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:プライバシー検索エンジンKDDI資金調達スマートフォンアプリパーソナライズXayn

画像クレジット:xayn team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

第2四半期の業績報告シーズンは順調に進んでいる。つまり、Exchangeのスタッフたちが、重要なトレンドやメモをお届けするために、多くの公開企業のCEOたちにせっせと電話をかけているということだ。ということで、今回はAppian(アピアン)、Paycom(ペイコム)、BigCommerce(ビッグコマース)を取り上げる。

その後、BNPL(後払い)の世界スタートアップの競争への最近の報告を強化してくれる、新鮮な素材を覗き見する。持ち帰りバッグの用意はよろしいだろうか?お土産をどっさりお渡しできますように!

まずAppianから始めよう。私がこの会社を知ったのは、多くの企業が同社のローコード技術を使用してアプリケーションを構築していた、パンデミックの最中だった。当時のAppianの評価額は現在の約半分ほどだった(同社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

それ以降、同社はクラウドへの注力を継続し、プロフェッショナルサービスの売上よりも利益率の高いSaaSによる売上を優先している。似たような変革を実行しているのは同社だけではない。しかし、今回の記事のために、2020年の多くを費やして掘り下げた基本的なローコードの後に何が起こるかについて話してみたい。

Appianは、第2四半期の業績報告に関連して、プロセスマイニング会社のLana Labs(ラナ・ラボ)を買収することを発表した。プロセスマイニングとは何かって?聞いてくれてありがとう。プロセスマイニングとは、自動化でき企業内のプロセスを見つけるためのソフトウェア技術だ。会社のためにRPAサービスを導入するのは結構なことだが、もし何を自動化できるかわかっていない場合には、完全な価値を得ることは難しいかもしれない。

これがAppianの場合とても重要なものになる。なぜなら同社はいまや、企業が同じ屋根の下でアプリケーションを作成するのに役立つ、プロセスマイニング、RPA、およびローコードツールを持つようになったからだ。実際には、これらのパーツは、自動化するものを特定するプロセスマイニングと連携して機能する。そこで特定されたワークフローは、RPAやその他の形式の自動化(AI、人間)の中に取り込まれ、企業が効率的な順序で業務を遂行できるようにする。

AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏に、ワークフローとアプリケーションの違いについて尋ねてみた。彼はそれらはほとんど同じものであるという。これにより、ローコードの世界をもう少し理解することができる。企業が本当に必要とするアプリケーションの数はいくつなのかと、私はいつも疑問に思ってきた。だが企業が自動化する必要のあるワークフローの数に関する同様の質問には、違う感覚を受ける。もっともっとたくさんの可能性があるように感じるのだ。つまり、より大きな市場の可能性があるということだ。

ローコードについての私の考えを改めたい。このダイナミクスが、単により多くのアプリケーションを作れるというだけではなく、企業が業務をデジタル化し、決まりきったタスクを自動化するのにより役立つというのなら、このソフトウェア手法を私はもっと自信をもって推せる。

次にBigCommerceの話題へ移ろう。このオープンSaaS方式のeコマースプラットフォームはここ数四半期好調で、Shopify(ショッピファイ)のグローバルな知名度が高まっているにもかかわらず、収益の伸びが順調に加速している。株式公開から1周年を迎えたばかりなので、CEOのBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏に数分間、この1年で学んだことについて話を聞き、公開には価値があったか否かを尋ねた(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

もちろん、と彼は答えた。彼は私が紹介したくなるような、企業上場における2つの効用を説明した。ベルム氏は、会社の最近の業績に貢献したさまざまな要素から主となる要因を分離することは不可能だとはいうものの、それら2つはBigCommerceのより速い成長に貢献している。

ともあれ、株式公開する理由は以下のとおりだ。

  • 信頼性:オープンファイナンスの公開企業であることは、市場での信頼を育むことができる。スタートアップにはやや頻繁に死にやすいという厄介な習性がある。公開企業はそれよりははるかに死ににくい。つまり、顧客が会社を信頼する可能性が高く、おそらく取引を確保する可能性が高まることを意味する。さらに、BigCommerceが公開されたことで、パートナーたちはBigCommerceに対する信頼を深めており、ベルム氏によれば、そのことがより多くのパートナーシップと成長を促しているという。
  • 注目度の向上:私は株式公開にまつわるこの側面を理解していたつもりだったが、ベルム氏が私の視野を広げてくれた。もちろん、株式公開はブランディングイベントの1つだ。しかし、私は話はそこで終わりだと思っていた。だがベルム氏は、公開したことによって、たとえば彼の会社が何かをしたときにアナリストコミュニティが注意を払うようになると説明した。そのために、BigCommerceは、スタートアップのときよりも、公開会社となったときのほうが世間の注目を集めるのが容易になる。良い意味で、自社を取り巻く市場ノイズが強調されるということだ。

ベルム氏はThe Exchangeに対して、株式公開は彼の会社にとって「圧倒的に良いこと」だったと語る。ユニコーン諸君、聞いたかね?

次はPaycom(ペイコム)の話だ。このインタビューで主に話題に出たのは、人材に関する2つの話題だ。まず最初の話題、Paycomは、他のすべての企業と同様に、競争力のある技術人材市場を扱っている。しかし同社は、従来のテクノロジーハブから遠く離れているにもかかわらず、特に必要とする人材の不足に直面している。Paycomはオクラホマ州を拠点としている(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

しかし、現在の人材市場とその全般的な逼迫は、別の意味でPaycomに影響を与えている。このHRテクノロジー企業は、一般企業が人材を確保してその後維持し続けるのに役立つソフトウェアを販売しているからだ。同社のCEOであるChad Richison(チャド・リチソン)氏によれば、企業は採用後の必要な手続きを終えたあと、人材を手放さないことに重点を置くことで恩恵を受けているという。

2つ目の話題は、労働市場はベンチャーキャピタル市場ととても似てきたことがわかったということだ。リチソン氏は、現在は誰かを面接したら2、3日で採用するか否かを決断しなければならないのだという。以前はもっと時間に余裕があったが、現在の状況は、VCが数週間や数カ月ではなく数日で小切手を切る決断をすることを余儀なくされているのに似ている。

暑い(熱い)夏になりそうだ。

BNPL(後払い)市場を狙うスタートアップ

Splitit(スプリティット)のCEOであるBrad Paterson(ブラッド・パターソン)氏によれば、BNPL市場を狙うスタートアップにとって希望はまだ残されているという。Splititを使えば、顧客は現在のクレジットカードを使用して分割払いを行うことができる。つまり、これは従来のクレジットとBNPLの組み合わせなのだ(SplitItのCrunchbaseページはこちら)。

パターソン氏はBNPLスタートアップの現在の市場についてのコメントを話してくれた。Square(スクエア)とAfterpay(アフターペイ)の取引について多くのことを話した後、私はなぜ中小企業が、彼らの市場に参入してくる巨大企業の猛攻を凌いで、生き残ることができるのかについて彼の意見を聞きたくなった。

パターソン氏は電子メールの中で「平均購入価格、分割払いプランの長さ、業界の統合サービスなど」と説明した豊富な要因が、この世界での生き延びる余地を守っているのだと説明した。そして、BNPLソリューションは「小規模な購入から始めて拡大できる」ため、この分野にはスタートアップが入り込める余地があるのだという。

おそらくより良い質問は、消費者の信用と習慣を構築するために、あとどれほどの手間が必要なのかということだろう。それは、BNPLツール自体よりもはるかに広い問題空間のように思える。

スタートアップの競争

スタートアップの競争に関する少し前の仕事に戻ろう。Hustle FundElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏が、共有したくなる一覧を送ってきた。スタートアップにとって市場で主導的役割を果たすことの重要性について話し合っていたときに、私たちは主に、若い企業がさまざまな関係者を結びつけようと試みているマーケットプレイス空間のことを話題にした。

たとえば配車の世界では、それは運転手と乗客だ。フードデリバリーではさらに複雑で、配達者、消費者、食品を生産する事業所が関わる。どのような話かは想像できるだろう。イン氏は、下位の市場シェアに満足していることは「一般的に非常に難しい」ことだという。彼女は続けた:

市場の価値は、通常需要と供給の両方が拡大するにつれて増加します。例えばAirbnbでは宿泊施設と顧客の数の増加が起きていますし、Uberでは運転手と乗客の両方が増えています。などなど。実際、多くの場合には、それが唯一の価値なのです。

したがって、市場で3位または4位である場合、顧客の維持は大きな潜在的課題です。なぜならより大きなネットワークを持っている1位または2位の競争相手に、現在の顧客が逃げていかないようにするにはどうすれば良いかを自問しなければならないからです。これが、マーケットプレイスが統合されていく傾向がある理由なのです。

初期からの投資家にとっては、1位または2位への売却によってうまく決着できる可能性があるものの、1位または2位に投資した場合に比べると、結果は1〜2桁低いものになってしまう可能性があります。このため、好調なスタートを切ったマーケットプレイスがすでにいくつかある場合には、アーリーステージの投資家たちは新しいプレイヤーに投資することを躊躇する傾向があるのです。

イン氏はまた、私たちの質問に答えて、スタートアップによるマーケットプレイスの競争は、一般的に少数の主要なプレイヤーがいる市場を生み出し、市場シェアが低いことで小規模な参入者が追い出されてしまうことで、他の競合他社は死に追いやられるという。彼女は資本の影響に関して興味深い視点を追加した:

一般的には、そう、投資家もこの現象に関与しているのです。いくつかの企業が立ち上がると、投資家はそれらの最初のリーダーにより注力する傾向があり、かつ他の人たちは競合他社への投資を敬遠する傾向があります。そして、お金がその分野に溢れたら、顧客獲得コストが問題になるのです。顧客獲得コスト(CAC)がトップ企業によって引き上げられてしまうのです(これは、フードデリバリー企業の台頭とともに見られた現象です)。これが、マーケットプレイス企業を簡単に立ち上げることができない理由なのです。顧客を獲得する余裕を持てないのです。

これは、ある意味で、スタートアップの世界におけるキングメイキングについての質問に対する答だ。ベンチャーキャピタルは、多くの場合誰が勝つかをあらかじめ決めてはいないものの、資本の影響は実際にマーケットプレイスの世界で結果を歪める可能性がある。さて、最初のVision Fund(ビジョンファンド)が、どのように資本を振り分けたかを話し始める前にこの話題はやめておくことにしよう!

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

ではまた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:The TechCrunch Exchangeローコード新規上場マーケットプレイスBNPL

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

アップルがメッセージアプリで送受信される性的な画像を検知し、子どもと親に警告する新技術を発表

Apple(アップル)は、子どもがMessages(メッセージ)アプリを通じて性的に露骨な写真を送受信した場合、子どもと親に警告する新しいツールを、今年後半に導入すると発表した。この機能は、アップルのプラットフォームやサービスにおける児童性的虐待素材(Child Sexual Abuse Material: CSAM)の拡散を制限することを目的に、同社が導入するいくつかの新技術の一部だ。

これらの開発の一環として、アップルは消費者のプライバシーを尊重しつつ、iPhoneやiPadなどのモバイルデバイスやiCloud(アイクラウド)にアップロードされた写真の中から、既知のCSAM画像を検出できる技術を導入する。

一方、メッセージアプリの新機能は、子どもたちが健全なオンライン・コミュニケーションを取れるように、親がより積極的に関わり、情報が得られるようにするためのものだ。今年後半に予定されているソフトウェアアップデートにより、アップルのメッセージアプリは機械学習を使って画像添付ファイルを分析し、メッセージアプリで送受信される画像が、性的に露骨なものでないかを判断できるようになる。この技術では、すべての処理がデバイス上で行われるため、アップルが子どものプライベートな通信にアクセスしたり、それを傍受する必要はない。クラウド上のアップルのサーバーには何も転送されることはない。

メッセージの中に、性的な問題がありそうな画像が検知された場合、その画像はブロックされ、写真の下に「これは問題があるかもしれない画像です」というラベルが表示される。タップすればその画像を見ることができるが、子どもが写真の閲覧を選択すると、さらに詳しい情報を伝える別の画面が表示される。そこには、問題のありそうな写真や動画について、「水着で隠すプライベートな体の部分が写っています」とか「あなたは悪くないけれど、刺激的な写真や動画はあなたを傷つけるために使われることがあります」というメッセージが表示される。

また、写真や動画に写っている人が、見られたくないと思っているのに本人が知らないうちに共有されている可能性があることも提言する。

これらの警告は、子どもがそのコンテンツを見ないという正しい判断をするように導くためのものだ。

しかし、それでも子どもがタップして画像を見ようとすると、さらに別の画面が現れ、写真を見ることを選択した場合、親に通知されることが伝えられる。また、この画面では、親たちが子どもの安全を願っていることを説明し、本当は見たくないのに見るようにと強制されているなら、信頼できる人に相談するように勧めている。助けを求めるためのリソースへのリンクも表示される。

画面の下には写真を見るための選択肢は残されているものの、デフォルトで選べるようにはなっていない。その代わり、「写真を表示しない」という選択肢の方が目立つように画面がデザインされている。

コミュニケーションを妨げてアドバイスやリソースを提供するだけでなく、システムが保護者に警告を発するこのような機能は、子どもを性犯罪者から守ることに役立つ可能性がある。子どもが性犯罪者から被害を受けた時、親は子どもが相手とネットや電話で会話を始めたことにさえ気づかなかったというケースが多いからだ。性犯罪者は子どもの心理を巧みに操って信頼を得ようとし、子どもを親から引き離して、コミュニケーションを親に内緒にさせようとする。あるいは犯罪者が親に近づいてくるケースもある。

アップルのテクノロジーは、性的に露骨な内容の画像や動画が共有されることに介入し、特定して、警告を発することで、どちらのケースにおいても役に立つだろう。

しかし、CSAMの中には、いわゆる自己作成型CSAM、つまり子ども自身が撮影した画像を、子どものパートナーや仲間と合意の上で共有するものが増えている。セクスティングとか、裸の写真の共有などだ。子どもの性的搾取に対抗する技術を開発している企業のThorn(ソーン)が2019年に行った調査によると、この行為は非常に一般的になっており、13歳から17歳の女子の5人に1人が、自分の裸の写真を共有したことがあると答え、男子の10人に1人が、同じことをしたことがあると答えている。しかし、その画像を共有することで、性的虐待や搾取の危険にさらされることを、子どもは十分に理解していないかもしれないのだ。

アップルの新しいメッセージアプリは、これに対しても同様の保護機能が働く。この場合、子どもが性的に露骨な写真を送ろうとすると、写真が送信される前に警告が表示される。それでも子どもが写真を送信しようとした場合には、保護者にメッセージが届く。

アップルによれば、この新機能は今年後半に行われるソフトウェアアップデートの一環として、まずは米国から、iOS 15、iPadOS 15、macOS Monterey(モントレー)のiCloudで、家族として設定されたアカウントで有効になるとのこと。

このアップデートはSiriと検索にも適用され、子どもや親がオンラインで安全に過ごせるように、安全でない状況で助けを得るためのガイダンスやリソースが拡充される。例えば、ユーザーはSiriに、CSAMや児童の性的搾取を報告する方法を尋ねることができるようになる。また、ユーザーがCSAMに関連する疑問を検索すると、Siriと検索が介入して、そのトピックが有害であることを説明し、助けを得るための情報や相談先を提供する。

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画像クレジット:Janis Engel / EyeEm / Getty Images
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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがiCloud上の児童虐待画像を検出する新技術「NeuralHash」導入へ

Apple(アップル)は、既知の児童性的虐待素材を検知し、ユーザープライバシーが守られる方法で警察機関に通報する技術を2021年中に展開する。

Appleは、児童性的虐待素材(CSAM)の検出は同社のサービスを使用する子どもたちをオンライン危害から守ることを目的とした新機能の一環であるとTechCrunchに語った。子どものiMessage(アイ・メッセージ)アカウントを通じて送受信される性的に露骨な画像をブロックするフィルターもその1つだ。他にもユーザーがSiri(シリ)や検索でCSAMに関連したことばを検索しようとした時にブロックする機能もある。

Dropbox(ドロップボックス)、Google(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)をはじめとするほとんどのクラウドサービスは、サービスの利用規約に違反したりCSAMなどの違法コンテンツを検出するためにユーザーのファイルを監視している。しかしAppleは長年、クラウド上のユーザー・ファイルの監視に抵抗しており、データがAppleのiCloud(アイクラウド)サーバーに到達する前に暗号化するオプションをユーザーに提供している。

Appleは自社の新しいCSAM検出技術であるNeuralHash(ニューラルハッシュ)について、クラウド上ではなくユーザーの端末上で動作し、ユーザーが既知の児童虐待画像をiCloudにアップロードしたことを検出できるが、一定のしきい値を超え一連のチェックでコンテンツが検証されるまで画像は復号化されないと説明した。

Appleの取り組みのニュースは、米国時間8月4日、ジョンズ・ホプキンス大学の暗号学専門のMatthew Green(マシュー・グリーン)教授が新技術の存在を一連のツイートで公開したことで明らかになった。このニュースには、一部のセキュリティ専門家とプライバシー擁護者だけでなく、ほとんどの他社にないAppleのセキュリティとプライバシーへのアプローチに馴染んでいるユーザーも抵抗を示した

Appleは不安を鎮めるべく、暗号化のさまざまな暗号化の複数レイヤーにプライバシー対策を施し、Appleによる最終的な手動レビュー審査に至るまでに複数の段階が必要になるような方法で実装している。

NeuralHashは、1、2カ月後に公開が予定されているiOS 15およびmacOS Montereyに搭載される予定で、ユーザーのiPhoneまたはMac上にある写真を文字と数字の独特な並び(ハッシュと呼ばれる)に変換する。画像がわずかに変更されるとハッシュが変更されてマッチングが阻止される。Appleによると、NeuralHashは同一あるいは外観の似た画像(たとえば切り抜きや編集を施された画像)から同じハッシュが作られるように動作する。

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画像がiCloud写真にアップロードされる前にハッシュは、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)などの児童保護組織から提供された児童虐待画像から得たの既知のハッシュのデータベースと端末上で比較される。NeuralHashはPrivate Set Intersection(プライベート・セット・インターセクション)と呼ばれる暗号化技術を用いて、画像の内容を明かすこともユーザーに警告することもなくハッシュの一致を検出する。

結果はAppleにアップロードされるが、そのままでは内容を見ることはできない。AppleはThreshold Secret Sharing(しきい値秘密分散法)と呼ばれる別の暗号化原理を用いることで、ユーザーのiCloud写真中の既知の児童虐待画像が一定のしきい値を越えた場合にのみコンテンツを解読できる。しきい値が何であるかについてAppleは明らかにしていないが、こんな例を示した。ある秘密が1000ピースに分割され、しきい値が児童虐待画像10枚だったとすると、その秘密は10枚の画像のどの1つからでも再構築できる。

これは、Appleが一致した画像を解読し、手動でコンテンツを検証することで、ユーザーのアカウントを停止し、画像をNCMECに報告し、その後その画像が警察機関に渡る可能性があるということを意味している。Appleはこのプロセスについて、クラウド上のファイルを監視するよりもプライバシーに配慮している、なぜならNeuralHashが検出するのは既知の児童虐待画像のみであり新しい画像ではないからだと述べている。Appleは、1兆分の1の確率で誤検出の可能性があるが、アカウントが誤って停止された場合に異議申し立てをする手続きがあるという。

AppleはNeuralHashの仕組みに関する技術情報を自社ウェブサイトで公開している。文書は暗号学専門家の査読を受けており、児童保護団体からも称賛されている。

しかし、児童性的虐待と戦うさまざまな取り組みが広い支持を得ている一方で、アルゴリズムに委ねることに多くの人々が違和感を示す監視の要素がそこにはある。また、セキュリティ専門家の間には、Appleがこのテクノロジーをユーザーに適用する前にもっと公開議論をすべきだと指摘する声もある。

大きな疑問は、なぜもっと早くではなく、今なのかだ。Appleは、同社のプライバシーが保護されたCSAM検出技術はこれまで存在しなかったと語った。一方でAppleのような会社は、ユーザーデータを保護している暗号化技術を弱体化するか裏口を提供することで警察機関の凶悪犯罪捜査を可能にすべし、という米国政府や同盟国からの大きな圧力にも直面している。

テック巨人らたちは自社システムの裏口を提供することを拒否し続けてきたが、政府によるアクセスをさらに遮断しようとする取り組みに対する抵抗を受けている。iCloudに保存されているデータはAppleがアクセスできない形で暗号化されているが、Reuters(ロイター)の2020年の記事によると、AppleはiPhoneのiCloudへのフルバックアップを暗号化する計画を、捜査を阻害するとFBIから抗議されて中止したという。

Appleの新しいCSAM検出ツールが公の場で議論されていない点についても、このテクノロジーが児童虐待画像を大量に送りつけて被害者のアカウントを停止に追い込むなど悪用の恐れがあるという懸念を呼んだ。しかしAppleは、手動レビューによって起こりうる悪用の証拠を検査するとして問題を軽視している。

Appleは、NeuralHashはまず米国で展開すると語ったが、世界的な展開の可能性や時期は明らかにしていない。最近まで、Facebook(フェイスブック)をはじめとする企業は、EU全体で児童虐待検出ツールが強制的に停止させられていた。当地でプライベートメッセージの自動監視が禁止されたためだった。Appleは新機能について、iCloud写真は使う義務がないので厳密には選択的であるが、使用するなら必須であると説明した。つまるところ、あなたの端末はあなたの所有物だが、Appleのクラウドはそうではない、ということだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiCloud子どもプライバシー個人情報児童ポルノ対策iOS 15macOS Monterey警察

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ByteDanceのライバルKuaishouが物議を醸した同社の米国向けアプリ「Zynn」を提供終了へ

ByteDance(バイトダンス)のライバルと目されている中国のKuaishou Technology(クアイショウ、北京快手科技有限公司)は、2021年8月末に物議を醸しているショートビデオアプリ「Zynn(ジン)の提供を終了すると中国時間8月4日に発表した。このアプリは米国内でのみ利用可能だった。

2021年7月、月間アクティブユーザー数が10億人に達したと発表した同社は、2020年5月にサービスを開始して以来、論争の的となっていた同アプリを停止する理由については説明していない。

2021年に行われた調査で、Zynnは米国iOS App Storeでのランキングを表面的に向上させるために、ユーザーに謝礼を支払って動画を視聴させていたことが判明した。また、TikTok(ティックトック)のクローンであるこのアプリは、他のアプリから盗用した動画が氾濫していることが報道され、Google Playストアからも削除された。その後、同様の苦情を受けてAppleのApp Storeからも削除されている。

Kuaishouの広報担当者は声明の中で、今回のZynnのサービス停止の決定が他の市場のユーザーに影響を与えることはないと述べている。Kuaishouは、南米(Kwaiアプリとして)や南アジア地域(Snack Videoとして)など、他の多くの市場で同様のアプリを運営している。

2021年初めに香港でのIPOで54億ドル(約5917億円)を調達した同社は「国際市場における当社の戦略に変更はありません」と述べている。

モバイルデータ分析会社App Annieによると、Zynnアプリは米国でユーザーを引きつけることができず、2020年8月には約300万人だった月間アクティブユーザー数(MAU)が、2021年6月にはわずか20万人にまで減少していた(データは業界幹部がTechCrunchと共有したもの)。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:KuaishouアプリByteDanceTikTokアメリカ

画像クレジット:Yan Cong / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

論議呼ぶ防犯アプリ「Vigilante(自警団員)」改め「Citizen」が月額約2180円のProtectサービスを開始

10万人以上のベータテスターによる数カ月間のテストを経て「Citizen(シチズン)」アプリは米国時間8月3日、プレミアム版「Protect(プロテクト)」の提供をすべてのユーザーに向けて開始する。このサブスクリプションサービスは月額20ドル(約2180円)で、アプリ上の多くの機能を利用することができる。

有料の新機能の中で最も重要なのは「Get Agent」ボタンで、これはさまざまなシナリオでCitizenのオペレーターへのアクセスを提供する。同社によると、このボタンは「911(日本の110番に相当する緊急番号)に電話するところを見られたくない」場合に利用できるという。それが身の安全の問題なのか、あるいは警察に電話することについての他の問題なのかは、間違いなくユーザーと状況の両方により異なるだろう。同社のエージェントは事実上、緊急通報のオペレーターとのパイプ役として機能する。

多くの人にとってCitizenアプリの機能は近年、さまざまな論争の影に隠れがちだった。当初は「Vigilante(自警団員)」という名称でスタートしたこのアプリは、2021年初めに「Personal Rapid Response Service(個人向け緊急対応サービス)」という私有のフリートを立ち上げたことや、ロサンゼルスの山火事を起こしたと濡れ衣を着せられた人物を捕らえる報奨金を提供したことでニュースになった。

「当社のProtectエージェントたちは、高度な訓練を受けた安全エキスパートであり、ストレスや不安を感じるさまざまな状況に対応できる能力を備えています」と同社は新サービスについて書いている。「彼らは、あなたの状況に合わせてエクスペリエンスをパーソナライズします。必要に応じて911コールにエスカレートしたり、ファーストレスポンダーにあなたの正確な位置を伝えたり、指定された緊急連絡先に通知したり、安全な場所に誘導したり、あるいはあなたが再び安全だと感じるまで、単に通話を続けてあなたをモニターすることもできます」。

もう1つの重要な機能は新しい「Protect Mode(プロテクトモード)」で、これもまた、前述のエージェントにすばやくアクセスできることを意味する。不審な状況で有効にすると、アプリはユーザーの音声フィードをライブモニターし、AIを使い叫び声などを検知し、エージェントへの接続を提供する。ユーザーが応答しない場合は、自動的に接続される。また、ユーザーは電話を2回振ることで、エージェントに直接アクセスすることができる。

最近の同社の求人情報には下記のように記されていた。

この役割では、危険となり得る状況下で支援を必要としているユーザーとのコミュニケーションを行います。難しい会話を導き、最善の判断に基づいてこれらの状況の重大性をリアルタイムで判断する責任があります。あなたは、周囲に危険を感じているユーザーを助ける最前線に立ち、直接支援や911へのエスカレーションを行います。

これは、Noonlightのようなパニックボタンアプリを探している人にとっては有用なサービスになる可能性がある。しかし、Citizenの歴史にある危険信号を考えると、同アプリがそのようなサービスを提供するのに最適な立場にあるかどうかは疑問が残る。

2016年にリリースされたこのアプリは当初、自警主義(vigilantism)への懸念からApp Storeから追放された(もともとの名前や位置づけからして、無理もないことかもしれない)。ニューヨーク以外にも拡大していく中でリブランディングされたこのアプリは、全米レベルで懸念を生み続けている。

2021年5月には、同社は犯罪発見のためのクラウドソーシングをブランディングされた車両にまで拡大し、ロサンゼルスをパトロールし始めた。当時、ある情報筋はViceのテックニュース部門であるMotherboardに「大規模なマスタープランは、民営化された補助的な緊急時対応ネットワークを作ることだった」と語っている。同社は後に、初期パイロットの後にサービスを拡大する予定はないと付け加えた。

それと同月、CitizenサービスのCEOは、ロサンゼルスの山火事を起こした疑いのある人物を捕らえるために3万ドル(約327万円)の報奨金を出した。その後、同サービスは誤った人物の写真を配信し、それが80万回以上の動画ビューを記録したことを謝罪した。「深く反省し、二度とこのようなことが起こらないよう、内部プロセスの改善に取り組んでいます」と同社は声明で述べた

Citizenは現在、米国の20都市でサービスを提供している。新しいProtect Modeサービスは、米国時間8月3日よりiOS向けに提供を開始する。Android版の開発も進行中だという。

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タグ:CitizenアプリサブスクリプションiOSApp Store防犯

画像クレジット:Citizen

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

iOS版Googleマップがアップデート、iMessageでの位置情報共有など純正マップのライバルに

Googleマップは米国8月3日、iOS版アプリの3つの新機能を発表した。iMessageアプリでの位置情報のライブ共有、ホームスクリーン用の交通ウィジェット、そしてダークモードを追加することになり、GoogleマップはiOSネイティブアプリであるAppleの「マップ」の強力なライバルとなる。

ライブの位置情報共有はGoogleマップではすでに利用可能だ。あなたの位置を示す青色の点をタップすると、あなたの居場所までの予測所要時間、そしてあなたのスマホのバッテリー残量すら特定の友人と共有できる。しかしGoogleマップのiMessageウィジェットでは、会話から離れることなくあなたの居場所を簡単に共有できる。デフォルトでGoogleマップはあなたの居場所を1時間共有するが、最長3時間に拡大することも可能だ。共有をやめたければ、サムネイルにあるストップボタンをタップする。

画像クレジット:Google Maps

Googleマップの既存のiMessageウィジェットでは、ユーザーはiMessageで自身の居場所のGPS座標を送ることができる。しかし友達と待ち合わせする場合、それはライブの位置情報共有ほどに使い勝手はよくない。Appleのマップはすでに似たような機能をiMessageに組み込んでおり、Googleも対抗しようとAppleを真似ている。Googleマップは長い間、優れたナビアプリだと広く考えられていたが、2018年にAppleがマップをゼロから完全に作り直し、より競争力あるものにした。加えて、iOS 15でAppleマップはAR機能、改善された交通機関乗り換え機能、より詳細になったマップなどを展開する

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Googleマップは2019年にWazeのような交通と事故レポートの機能をアプリに追加し、マイカー通勤者にアピールするものにした。Googleマップによると「最もパワフルな機能は周辺のライブの道路混雑状況をチェックできること」だ。いま、最新のGoogleマップアプリを使っているユーザーは、交通ウィジェットをホームスクリーンに加えることができる。このウィジェットでは周辺の交通状況をすばやく表示する。また、ユーザーは自宅、職場、ガソリンスタンドといった頻繁に利用する目的地をセットでき、タップ1回でそうした場所へのナビゲートが可能になる。GoogleマップアプリはAndroidではすでにダークモードを提供しているが、数週間内にiOSユーザーも利用できるようになる。

GoogleマップとAppleのマップは最も優れたナビゲーションアプリになろうと競合していて、Snap Mapでよりソーシャルなエクスペリエンスを構築したSnapchatとは競合しない。Snapchatは米国時間7月28日、Snap Mapに「私の場所」機能を加え、これによりユーザーは周辺の他のユーザーの行動に基づく訪れるべき新スポットを見つけることができる。Snapchatはまた、2021年第2四半期の売上高とデイリーアクティブユーザー数が、過去4年で最も高いレートで成長したと明らかにした。それでも2020年時点のGoogleマップのユーザーは世界中で10億人超だった。

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画像クレジット:Kanawa_Studio / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

企業の秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護する1Passwordが110億円調達、約2180億円の評価額に

左からDave Teare(デイブ・ティアー)氏、Jeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏、Sara Teare(サラ・ティアー)氏。

トロントを拠点とする1Password(ワンパスワード)は、高収益な上に財務状況を公開できるほど透明性が高いという稀有な企業の1つである。

そして2021年7月終わりに、同社はシリーズBラウンドで1億ドル(約110億円)の資金を調達し、同社の評価額を20億ドル(約2180億円)に倍増させたことを発表した。

かつては自力で運営していた1Passwordが2019年、初めて外部資本を調達したことはまだ記憶に新しい。Accel(アクセル)が主導した2億ドル(約220億円)のシリーズAは、同ベンチャー企業の35年の歴史の中で、単一の投資としては最大規模のものだった。2005年に設立された1Passwordは当時すでに、スタートアップとは言い難い存在だったのだが。

Accelが再度主導した今回のラウンドには、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏のSound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)、Kim Jackson(キム・ジャクソン)氏のSkip Capital(スキップ・キャピタル)の他、Shopify(ショッピファイ)のCEOであるTobias Lütke(トバイアス・トビ・ルーク)氏、Shopifyの社長であるHarley Finkelstein(ハーレー・フィンケルシュタイン)氏、Slack(スラック)の共同創業者兼CEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏、Squarespace(スクエアスペース)の創業者兼CEOであるAnthony Caselena(アンソニー・カセレナ)氏、Atlassian(アトラシアン)の共同CEOであるMike Cannon-Brookes(マイク・キャノン=ブルークス)氏とScott Farquhar(スコット・ファーカー)氏、Eventbrite(イベントブライト)の共同創業者兼会長のKevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏などが名を連ねる。

CEOのJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏によると、1Passwordは設立当初から利益を上げており、ARR(年間経常収益)は最近1億2000万ドル(約132億円)に達したという。Under Armour(アンダーアーマー)、Shopify、PGA、IBM、GitLab(ギットラブ)、Slack(スラック)、PagerDuty(ページャーデューティー)といった多数のビッグネームを含む9万以上の企業が、同社のSaaSプラットフォームを利用している。2019年11月の調達時の顧客5万社から、ここまでの増加である。

2組の創業者夫妻であるDave Teare(デイブ・ティアー)氏とSara Teare(サラ・ティアー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏とNatalia Karimov(ナタリア・カリモフ)氏は、ウェブサイト構築の別の会社を成長させていく中で、パスワード管理に関する苦労に着目したことから1Passwordのアイデアを思いついた。

当初は消費者のみを対象としていたものの、その後パスワード管理サービスを企業にも提供するようになる。すでに成功を手にしていた同社は、これによりさらにレベルアップすることになる。

そして同社に目をつけたのが、ブートストラップ・ビジネスや収益性の高い企業に投資してきた実績のあるAccelだ。シリーズAラウンド、BラウンドともにAccelから投資の打診がきたのである。

AccelのパートナーであるArun Mathew(アラン・マシュー)氏は両ラウンドで1Passwordへの投資を推進しており「1Passwordは非常にユニークな企業プロフィールを持っています。このようなファンダメンタルズと指標を持ちながら、市場の追い風に乗っている企業を見るというのは本当に珍しいことです。今回のラウンドによって会社全体がこの市場を勝ち抜くためにさらにアグレッシブになれることを期待しています」と話している。

前回の増資以来1Passwordは進化し続けている。決して栄光に甘んじないという同社の精神を体現しているのだとシャイナー氏はいう。同社は174人いた従業員数を475人にまで増やしているが、その中には以前はなかったGo-to-Marketチームの結成も含まれている。

ここ数カ月の間に1Passwordはビジネスサービスを拡大しており、4月にはSecrets Automationを、さらに最近では「重要な」ビジネス情報を保護することを目的としたエンタープライズ向けサービスである1Password Eventsを発表。また、Linux Desktop Applicationや、SlackやRipplingとの統合も始動している。

画像クレジット:1Password

シャイナー氏によると、Secrets Automationにより企業のインフラの秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護することができるという。

「パスワード管理は通常、人間と機械の間で行われます。そのためこれは私たちにとっては大きな勝利であり、今後はより広範なインフラに拡大することができます」と同氏。オランダのSecretHub(シークレットハブ)を買収したことで、Secrets Automationの立ち上げが実現したのである。

サイバーセキュリティ分野におけるスタートアップの数が、近年増え続けていることから、同社は新たな資本の一部をさらなる買収に充てようと計画している。

Accelのマシュー氏は「バランスシートが強化されたことで、想定内のリスクを取ることができるようになり、潜在的なM&Aや、機会があればさらに積極的な投資を行うことができるようになりました。この会社は約16年もの間、ビジネスにとっても消費者にとっても最高の秘宝の1つであり続けていると言えます」と話している。

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックとそれにともなう在宅勤務の増加により、1Passwordのサービスに対する需要は高まる一方である。実際、1Passwordはビジネスアカウントごとに、各従業員が自宅で使用するためのファミリーアカウントを無料で提供しているという。

「仕事と家庭が混合するようになったため、これはユーザーにとって大きなメリットになるでしょう」とシャイナー氏。

この境界線の曖昧さこそが、Accelが1Passwordにさらなる可能性を見出している理由の1つである。AccelのパートナーであるEthan Choi(イーサン・チョイ)氏によると、同社のポートフォリオには24件のアクティブなセキュリティ投資があるという。

「今回の(1Passwordに対する)強化は、これが今日のセキュリティの最も重要な分野の1つであるという我々の信念を体現するものです。CIOやCISOは、従業員が生産性を高め、必要なアプリケーションにアクセスできるよう望んでいますが、同時にそれらが安全であることが大前提です」とチョイ氏。

1Passwordは16年前に設立されたにもかかわらず、まだ「表面をなぞっているに過ぎない」とシャイナー氏は考えている。

「我々の目前に広がっている莫大なチャンスに胸を躍らせています。急いで前進していかなければなりません」と同氏は話す。

多くの経験豊富な技術者の知見を得られたことも、より多くの資金を調達できた要因だとシャイナー氏はいう。

「Accelとはすでにすばらしい関係性を築いていますが、さらに多くの人材を迎え入れ、それによってもたらされる経験はこの上なく貴重なものです」。

関連記事:1Passwordが企業秘密管理のSecretHubを買収、法人向け総合サービス展開へ

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タグ:1Password資金調達トロントAccel

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

Salesforceが熱いRPAに参入、Servicetraceを買収してMulesoftと提携

ここ数年、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の動きが熱くSAPやIBM、ServiceNowなど投資やM&Aが盛んだ。UIPathは2021年4月に大型のIPOを実施し、時価総額は300億ドル(約3兆3000億円)を超えている。Salesforceはいつこの動きに加わるのかと筆者は思っていたが、米国時間8月2日、同社はドイツのRPA企業であるServicetraceを買収する意向を発表し、RPAの世界に足を踏み入れることになった。

Salesforceは2018年に65億ドル(約7104億5000万円)でMulesoftを買収したが、SalesforceはServicetraceをこのMulesoftの一部にする意向だ。両社は買収額を明らかにしておらず、それほど大きな金額ではない模様だ。Servicetraceが加わればMulesoftのAPI統合とは良い組み合わせで、Mulesoftのツールキットにオートメーションのレイヤーを追加できるだろう。

MulesoftのCEOであるBrent Hayward(ブレント・ヘイワード)氏は買収に関するブログ投稿で「MuleSoftにServicetraceが加わることで、優れた統合、API管理、RPAプラットフォームを提供でき、どこからでもつながれるエクスペリエンスを実現するSalesforce Customer 360が大幅に強化されるでしょう。新しいRPA機能はSalesforceのEinstein Automateソリューションを拡張し、サービスや販売、製造などのあらゆるシステムでエンド・ツー・エンドのワークフローオートメーションを可能にします」と書いている。

SalesforceのAIレイヤーであるEinsteinを使うと企業はモダンなツールで特定のタスクを自動化できるが、RPAはもっと旧来型の業務に適している。この買収は、Salesforceが古いオンプレのツールとモダンなクラウドソフトウェアの切れ目を埋めるための新たなステップになるかもしれない。

CRM Essentialsの創業者で首席アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この買収によってSalesforceのDXツールが新たな局面を迎えるという。同氏は次のように説明する。「Salesforceがこれまでの最大規模であるSlackの買収をしてから次の買収までにそれほど時間はかかりませんでした。しかし増加する多様な情報源から得られるリアルタイムのデータによって有効性を発揮するプロセスやワークフローのオートメーションは、DXで成功するための鍵になりつつあります。今回の買収はSalesforceとMuleSoftにとって、このパズルに欠かせないピースです」。

Salesforceの市場参入は遅かったように思えるが、2021年5月にTechCrunchが掲載した投資家に対するアンケート記事の中でCapitalGのゼネラルパートナーであるLaela Sturdy(ラエラ・スターディ)氏は、我々はRPAの可能性について表面をすくっているにすぎないと語っていた。

スターディ氏はアンケートに次のように回答した。「この分野の成熟について考える段階にはまだまだ至っていません。実際、RPAの計り知れない可能性を考えると、採用は始まったばかりです。さまざまな業界に存在する膨大なユースケースを探り始めた企業がほとんどです。RPAを取り入れる企業が増えれば、多くのユースケースが見えてくるでしょう」。

ServicetraceはRPAの概念が生まれるよりもかなり前の2004年に創業した。資金調達についてはCrunchbaseにもPitchBookにも掲載されていないが、同社のウェブサイトからは充実した製品群を有する成熟した企業であることがうかがえる。同社の顧客には富士通、Siemens、Merck、Deutsche Telekomなどがある。

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タグ:SalesforceServicetrace買収RPAMuleSoft

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

アマゾンはデベロッパー向けツールと機能のリリースでAlexaの復活を狙う

Amazon(アマゾン)は、過去1年間にスキル数がさらに減少し、サードパーティの音声アプリデベロッパーが関心を失いつつあることを受けて、Alexa音声プラットフォームを活性化しようとしている。現地時間7月21日に開催されたデベロッパー向けイベント「Alexa Live」では、デベロッパーコミュニティに向けて多数の新機能とツールが発表され、新ツールのリリースとしては最大規模のものになった。新機能の中には、すでにAlexaデバイスを所有しているユーザーに向けてAlexaスキルの発見・利用を促すものや、デベロッパーがスキルを利用して収益を得られる新ツール、再びユーザーの日常生活にAlexaを取り入れてもらうことを後押しするアップデートなどがある。

当初小売業者が期待していた、音声ショッピングプラットフォームとしてのAlexaは、期待外れだったかもしれない実際にスマートスピーカーを使ってAmazon.comの商品を購入したAlexaのユーザーはほんのわずかだった。しかし、Amazonは当日「数千万台」のAlexaデバイスが毎週「数十億回」使用されていて、90万人以上の登録デベロッパーが13万以上のAlexaスキルを公開していると言及し、今でもAlexaの普及状況とデベロッパーコミュニティはかなりの規模を維持していると発表している。

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それでも、Amazonは、ユーザーが使いたいスキルを見つけやすいようにするという、音声のみのデバイスでは難しいとされる課題をまだ克服していない(Alexa Showのようなスクリーン付きのAlexaデバイスが発売されたことで、多少改善されたが)。

Alexaユーザーの大部分は、スマートホームのコントロール、音楽の再生、アラームやリマインダーの設定、リストの作成など、最も基本的な機能しか使っていない。つまり、Amazonはまだ大ヒットといえるような音声アプリを生み出していないのだ。

画像クレジット:Amazon

Amazonによると、同社はこの問題を解決するために、デベロッパーが自分が開発したスキルのウィジェットを作成する方法を導入する。ユーザーはこのウィジェットを使ってEcho Showなどのスクリーン付きAlexaデバイスにスキルを追加することができる。さらに、デベロッパーは「Featured Skill Cards(注目のスキルカード)」を構築できるようになる。Featured Skill Cardsはホーム画面上でスキルをローテーションで表示し、宣伝する機能だ。

Amazonのソリューションは、アプリを発見してもらうという点だけを見れば、Alexaをよりモバイルデバイスに近いものにするものだ。スクリーン付きのAlexaデバイスを持っているユーザーには便利かもしれないが、音声のみで操作できるプラットフォームであるはずのAlexaの将来にとっては良い兆候ではない。

スクリーンが付いていないAlexaデバイスでは「アレクサ、お話を聞かせて」「アレクサ、ゲームをしよう」「アレクサ、ワークアウトをしたい」などの一般的なリクエストにAlexaが応答する際、デベロッパーが開発したスキルを提案するようになる。また、スキルの利用履歴に基づくユーザーごとのおすすめスキルの提案の他にも、新たに導入される「コンテクスチュアル・ディスカバリー(コンテキストに基づく発見)」では、自然言語やフレーズを使って、スキルを探せるようになる。もちろん、Amazonはこれまでもスキルの提案方法の開発に取り組んでいたが、大きなスキルエコシステムに影響を及ぼせるものではなかった(中にはユーザーを困らせるような試みもあった)。

Amazonによると、デベロッパーが自分が開発したスキルで収益を上げる方法も拡大しているという。

すでにAmazonは、消耗品有料サブスクリプションスキル内購入などのツールを提供しているが、今回、新たにスキル内購入の一環として「Paid Skills(有料スキル)」に対応する。Paid Skillsでは、ユーザーはスキルが提供するコンテンツを利用するために1回のみ料金を支払う。さらに、スキル内購入の対象地域にインドとカナダが追加される。

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デベロッパーの収益源になるAlexaのスキル内購入機能が日本を含む国際展開へ

これまでのところ、スキル内購入はまだ大きな収益を上げるには至っていない。2019年のレポートによると、最初の10カ月間におけるAlexaスキルの収益は140万ドル(約1億5000万円)にとどまり、アマゾンの目標である550万ドル(約6億6000万円)には遠く及ばなかった。購入方法が1つ増えたからといって、どのぐらいの変化があるかは不透明だ。

Amazonは、デベロッパーの収益額については言及せず、デベロッパーのスキル内購入での収益が前年比で「2倍以上」になったと語るだけにとどめた。

Amazonは今後、デベロッパーコミュニティを活用して、小売サイトでの販売を促進しようとしている。

新しい「ショッピングアクション」機能では、デベロッパーは自分のスキルの中でAmazonの商品を販売することができる。例えばSFゲーム「Starfinder」では、ロールプレイングゲーム内でテーブルトップ版の購入をユーザーに提案している。デベロッパーは商品を紹介してアフィリエイト収入を得ることもできる。

音楽やメディアに関連するスキルのデベロッパーは、新しいツールを利用してユーザーにより楽しい体験を届けることができるようになる。iHeartRadioが開発した、DJがAlexa経由で曲のリクエストを受け付ける「Song Request Skill」はその一例だ。ラジオやポッドキャスト、音楽プロバイダー向けの、ユーザーにインタラクティブな体験を提供するスキルの開発期間を短縮できるツールもある。

スキルをより実用的で便利なものにするための新機能もある。

画像クレジット:Amazon

例えばレストランはFood Skill APIを利用して、ピックアップやデリバリーのスムーズな注文を実現することができる。新しい「Send to Phone(スマホに送信)」機能では、デベロッパーは自分のスキルをモバイルデバイスと連携させて、外出する際に家の鍵をかけるように促すスキルのような、イベントベースのトリガーやプロアクティブな提案を実現できるようになる。Amazon傘下のWhole Foods(ホールフーズ)は、2021年後半に登場する店頭受け取りサービスに、これらの機能を利用する予定だという。

また、洗剤や電池といった一般的な日用品を再注文できるAlexaの補充サービスが、交換部品にも拡大され、他の家庭用機器やスマートホーム機器との連携が強化される。サーモスタットメーカーのCarrier(キャリア)やResideo(レシデオ)はエアフィルターの補充に、Bissell(ビッセル)は掃除機にこの機能を利用する。

一方、煙探知機、一酸化炭素探知機、水漏れ探知機などの安全機器メーカーは、Alexaのセキュリティシステム「Alexa Guard」と連携して、モバイル機器に通知を送ることができるようになる。

デベロッパーのスキル開発をサポートするための新しいツールも導入される。また、デベロッパーはAlexa Entities(アマゾンが独自に開発した、ウィキペディアのような一般的な知識をまとめたもの)を利用できるようになる。独自の発音をサポートする新しいツールや、これまで米国のみで提供されていた「Alexa Conversations」の自然言語機能も利用できるようになった(現在、英語圏ではライブ版、ドイツではベータ版、日本ではデベロッパープレビュー版が利用可能)。さらに、既存のツールキット(Alexa Voice Service、Alexa Connect Kitなど)の地域的拡大に焦点を当てたツールや、ユーザーごとのウェイクワードを可能にしてスマートホーム機器との相互運用性を向上させるツールなど、大量のツールが導入されている。

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画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

Kubernetesベースの開発で面倒なDevOps部分をPaaSとして引き受けるPorter

Porter共同創業者アレクサンダー・ベレンジャー氏、トレバー・シム氏、およびジャスティン・リー氏(画像クレジット:Porter

Porterの共同創業者であるTrevor Shim(トレバー・シム)氏とAlexander Belanger(アレクサンダー・ベレンジャー)氏とJustin Rhee(ジャスティン・リー)氏がDevOpsに関する企業を作ろうと決心したとき、彼らはすでにKubernetesのリモート開発を良く知っていた。そして他のユーザーと同様に、彼らも頻繁にその技術で痛い思いをしていた。

リー氏によると、確かに技術というレベルではすばらしいが、ソリューションをホストするときの面倒さや大きなDevOpsチームを維持する費用の負担もユーザーの仕事になる。

そこで彼らは、ソリューションを外で作ることにしたが、2020年にY Combinatorの夏季に参加したとき、同じやり方をしているスタートアップがいくつもあることに気づいた。

米国時間7月30日、PorterはVenrockやTranslink Capital、Soma Capital、および数名のエンジェル投資家からの150万ドル(約1億6000万円)のシードラウンドを発表した。その目標は、どんなチームでもそれを使ってアプリケーションを自分のクラウドで管理でき、Herokuのような体験を通じてKubernetesの完全な柔軟性を提供できるような、PaaSを開発することだ。

なぜHerokuか? それはデベロッパーが使い慣れているホスティングプラットフォームであり、しかも小企業だけでなく、後期段階の企業も使っている。シム氏によると、Amazon Web ServicesやGoogle Cloud、DigitalOceanなどに移行したくなったら、Porterはそのための橋になるだろう。

しかし、Herokuは依然として広く使われてはいるものの、企業はそのプラットフォームがもう古い、昔から何も変わっていない、と感じている。リー氏によると、毎年のように、技術的限界と費用を理由としてこのプラットフォームから他へ移行する企業が絶えない。

彼によると、Porterで重要なのはホスティングに関しては課金しないことだ。その費用は純粋にSaaSプロダクトのそれだ。彼らはプラットフォームの再販を志向してはいないので、ユーザー企業は自分のクラウドを使えるが、しかしPorterはオートメーションを提供し、ユーザーはAWSやGCPのクレジットで払えるから、柔軟性がある。

最もよくあるパターンはKubernetesへ移行することだが、しかし「あえて皮肉を言えば」、もしもHerokuが2021年に作られていたら、Kubernetesを使っていただろう。シム氏はそう付け加えた。「自分たちはHerokuの後継者を自負している」。

シム氏はさらに、「そんな橋になるために今度の資金で技術の幅を広げて、『すべてのスタートアップのためのデファクトスタンダードになる』ことを目標にしたい」という。

VenrockのパートナーであるEthan Batraski(イーサン・バトラスキー)氏によると、Porterのプラットフォームが動き始めたのは2月で、それから6カ月後には6番目に速く成長しているオープンソースのプラットフォームとしてGitHubでダウンロードされている。彼はYCでPorterに会い、リー氏とシム氏のビジョンに感銘を受けたという。

バトラスキー氏はこ「Herokuには10万名のデベロッパーがいますが、今では停滞していると思います。Porterのプラットフォーム上にはすでに100社のスタートアップがいます。彼らが達成した4倍から5倍の成長は、現時点ではむしろ当然の現象です」という。

彼の会社は長年データのインフラストラクチャにフォーカスしてきたが、そのスタックは今や相当に複雑だ。そして「それなのに、1週間ほどでアプリを作ってそれを数百万人のユーザーにまでスケールしたい、と考えるデベロッパーがますます増えている。でもそのためには人がたくさん必要だ。しかしKubernetesを使えば、誰もが知らない間にエキスパートのデベロッパーになれる」。

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タグ:PorterDevOpsKubernetesPaaS資金調達

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Snapchatが地図上でおすすめのスポットを紹介する「My Places(私の場所)」機能を追加

この夏、多くの人たちが外の世界に飛び出そうとしている中で(どうぞご安全に!)、Snapchat(スナップチャット)が近所のレストラン、店舗、公園、その他の興味深いスポットを簡単に見つけられるようにしようとしている。米国時間7月28日、Snapchatは、ユーザーと3000万以上のビジネスを結びつけるSnap Map(スナップマップ)に「My Places(私の場所)」機能の展開を始めた。ユーザーはお気に入りのスポットを記録したり、友人に送ったり、おすすめのスポットを探したりすることができる。

「My Places」には「人気」「お気に入り」「訪問しました」という3つのメインタブがある。「訪問しました」には、Snapchatでチェックインした場所がリストアップされ「お気に入り」にはその名の通りお気に入りが保存される。特に興味深いのが「人気」タブだ。これはSnapchatにとっては初めての試みとなるが、アルゴリズムを使ってパーソナライズされたお勧めを提供し、ユーザーが周りの世界と関わりを持てるようにさせる機能だ。アルゴリズムが考慮するのは、ユーザーが今いる場所、すでにタグ付けしたりお気に入りに登録した場所、そして友達や他のSnapchatユーザーが訪れた場所などだ。

この点がSnap Mapが他の有力マップアプリ(Google MapsやApple Mapsなど)と一線を画す部分だ。そうした既存のマップアプリは友達が好きなレストランを探す役には立たないからだ。もちろんSnapchatは流行の寿司屋への行き方を教えてくれるわけではないが、それはSnapchatが目指しているものではない、Google Mapsが昨夜友達みんなが自分の知らないうちに行っていた店を教えてくれるわけではないのと同じだ。

画像クレジット:Snapchat

Snapchatのサーベイは、同アプリのユーザーが平均して「パンデミック後」活動を行う傾向にあることを発表し(これは良いことなのだろうか?)、そしてSnapchatユーザーの44%が身近な興味のある場所を探すのにSnap Mapを利用していることを付け加えた。

Snap Mapの月間アクティブユーザー数は2億5000万人を超えており、5月にはパートナー企業が同社の地図に直接データを追加できるLayers(レイヤース)というアップデートを発表した。これまでにSnapchatは、Ticketmaster(チケットマスター)やレストラン推薦サイトのThe Infatuation(ザ・インファーチュエイション)と提携している。こうした提携により、ユーザーは、ライブエンターテインメントが行われている場所や、素敵なレストランが隠れている場所などを知ることができる。Snapchatは2021年後半に、Snap Mapと「My Places」へのLayersの統合をさらに進める予定だ。

先週Snapは、2021年の第2四半期に、過去4年間で最高のペースで収益とデイリーアクティブユーザーの両方が増加したと発表した。前年比では、アプリは23%成長している。

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タグ:Snapchat地図アプリ

画像クレジット:Snapchat

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

パンデミック後のアフリカのモバイルアプリ市場と急上昇するモバイルゲームアプリ利用率を読み解く

パンデミックは世界のアプリ市場に大きな影響を与えている。モバイルアプリに対する消費者の支出は2021年第1四半期および上半期にそれぞれ320億ドル(約3兆5200億円)、649億ドル(約7兆1700億円)となり、新記録を樹立した。

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アフリカの状況は世界のアプリ市場に関するレポートでもあまり言及されないので、正確な消費者支出を求めるのは難しい。それでも、Google(グーグル)とAppsFlyer(アップスフライヤー)が共同で発表した最新のレポートでは、2020年のパンデミック発生以降のアフリカにおけるアプリ市場の状況について、いくつかの重要な情報を読み取ることができる。

このレポートは、アフリカの3大アプリ市場(ケニア、ナイジェリア、南アフリカ)における、2020年第1四半期~2021年第1四半期のモバイルアプリのアクティビティを追跡している。

この3大市場における6000のアプリと20億のインストール数を分析したところ、2020年上半期から2021年上半期にかけて、アフリカのモバイルアプリ業界(主にAndroid)全体でインストール数が41%増加した。ナイジェリアは最も多く43%増、南アフリカ、ケニアではそれぞれ37%増、29%増となった。

ロックダウン期間の数字

アフリカでは2020年3月22日にルワンダが初めてロックダウンを実施。続いて、ケニア(3月25日)、南アフリカ(3月27日)、ナイジェリア(3月30日)でロックダウンが開始された。

2020年第2四半期からは自宅で過ごす人が増え、アプリのインストール数は3か国で20%増加。南アフリカではロックダウンの影響が最も早く表れ、インストール数は2020年第1四半期と比較して17%増加した。

一方、ナイジェリアとケニアにおける同時期のインストール数の増加は、それぞれ2%と9%だった。レポートによると、このような差は、各国の規制レベルの違いにより生じたものだという。南アフリカは規制レベルが最も厳しく、ロックダウンの頻度も高かった。

2020年第1四半期~第2四半期ではゲームアプリが好調に推移し、非ゲーム系アプリの販売が8%増であったのに対し、ゲーム系アプリは50%増となっている。これは、全世界で2020年第2四半期にゲームアプリのダウンロード数が急増(140億ダウンロード)し、過去最高を記録したトレンドと一致する。

アプリ内課金による収益と前年同期と比較した増加率

AppsFlyerによると、最も大きなトレンドとして注目されるのはアプリ内課金による収益だ。2020年第3四半期におけるアプリ内課金による収益の数字は、2020年第2四半期と比較して136%という驚異的な伸びを示し、2020年の総収入の33%を占めた。レポートによれば「アフリカの消費者が小売店での購入からゲームのアップグレードまで、アプリ内でどれだけ消費しているかがはっきりした」という。

アプリ内課金による収益は南アフリカで213%増加、ナイジェリアとケニアではそれぞれ141%、74%増加した。

スマートフォンの利用時間が増えたことから、アプリ内広告収入も前年同期比で大幅に増加し、2020年第2四半期から2021年第1四半期にかけて167%増加した。

先ほど2020年第1四半期~第2四半期で比較したゲームアプリと非ゲームアプリについては、2020年第2四半期と2021年第1四半期との比較では、それぞれ44%、40%増加している。

フィンテックとスーパーアプリ

過去5年間、アフリカのスタートアップに対するベンチャーキャピタルの投資は、フィンテック分野が圧倒的に多いが、それも当然である。フィンテックは、主にモバイルを利用する、大多数の銀行口座を持たない消費者、銀行口座を使いにくい消費者のみならず、銀行口座を持つ消費者にも多くの価値をもたらす。アフリカにおける10億ドル(約1100億円)規模のスタートアップのうち、1社を除いてすべてがフィンテックであるのは、この価値を踏まえてのことだ。

Disrupt Africa(ディスラプトアフリカ)のレポートによると、アフリカのフィンテックは、2017年から2021年の間に89.4%の成長を遂げ、現在、大陸全体で570社以上のスタートアップ企業が存在する。多くのフィンテックはモバイルベースで、アフリカの消費者が毎日利用するフィンテックアプリの数が反映されている。南アフリカとナイジェリアの消費者によるフィンテックアプリのインストール数は、前年比でそれぞれ116%、60%増加した。

AppsFlyerは、フィンテックアプリと同様に、スーパーアプリも増加していると報告している。スーパーアプリ、すなわち「オールインワン」アプリは、銀行業務、メッセージング、ショッピング、ライドヘイリングなど、さまざまな機能をユーザーに提供する。このようなアプリの増加は、大陸ではデバイスが限られることにも起因するが、フィンテックアプリの急増と同様、システム的な銀行口座の使いにくさも一因である。

レポートは「スーパーアプリは、ユーザーが直面する課題を解消し、顧客情報の取得や従来の銀行では実現できないレベルの利便性の提供を可能とする」と報告している。

AppsFlyerのEMEA & Strategic Projects担当リージョナルバイスプレジデント、Daniel Junowicz(ダニエル・ジュノヴィッチ)氏は、本レポートで取り上げられているトレンドについて次のように話す。「2020年来の(パンデミックによる)混乱にもかかわらず、アフリカのモバイルアプリ市場は盛況で、インストール数は増加し、消費者は今まで以上に多くのお金を費やしています。企業が収益を上げる上で、モバイルがいかに重要であるかがわかります」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アフリカアプリケニアナイジェリア南アフリカフィンテックスーパーアプリ

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

有名企業も利用する検索APIスタートアップAlgoliaがユニコーンの仲間入り

Algoliaが資金調達後の評価額22億5000万ドル(約2479億5000万円)のシリーズDで1億5000万ドル(約165億3000万円)を調達した。2019年10月のシリーズCと比較すると、評価額は4倍以上だ。これで同社は評価額が10億ドル(約1100億円)を超えるユニコーンとなった。

AlgoliaはSearch-as-a-Service製品で知られている。この製品を使うと、開発者フレンドリーなAPIでアプリやウェブサイトにリアルタイム検索を統合できる。Algoliaを利用した検索機能は、MacでSpotlightを使っているような感覚だ。文字を入力するにつれて検索結果が読み込まれ、ほんの数ミリ秒で表示される。

同社の顧客は1万社を超え、その中にはSlack、Stripe、Medium、Zendesk、Lacosteなどの有名企業もある。現在Algoliaは年間1兆5000億件の検索クエリを処理している。ゼロの並びで見たい人のために書いておくと「1,500,000,000,000件」だ。

今回の資金調達ラウンドはLone Pine Capitalが主導し、Fidelity Management & Research Company LLC、STEADFAST Capital Ventures、Glynn Capital、Twilioも参加した。他に、これまでに投資していたAccel、Salesforce Ventures、DAG、Owl Rock、World Innovation Labも追加で支援した。

Algoliaは売上の数字を公表していないが、年間経常収益は前年比180%で成長しているという。

AlgoliaのCEOであるBernadette Nixon(バーナデット・ニクソン)氏は発表の中で次のように述べている。「これからはAPIファーストの時代です。このことはAPIエコノミーにおけるTwilio、Stripe、Algoliaなどの成長を見れば明らかです。我々のこれまでの、そして今後も続く成功は、PLG(Product-Led Growth)戦略で開発者にしっかりと集中していることが大きな要因です。これにより開発者はWebサイトやアプリに検索を組み込み、最も関連性が高くダイナミックなデジタルエクスペリエンスを創出できます。我々は今後もAlgolia Recommend and Predict(おすすめと予測)で検索を超えてさらに拡大し、熱意を持ってお客様の問題を解決していきます」。

Algoliaは検索APIだけでなく他にもリアルタイムのAPIを提供している。例えばeコマースサイトでAlgolia Recommendを利用するとリアルタイムでおすすめ製品を提示できる。これは同社が製品を多角化しようとする戦略の一環だ。

特に同社は、訪問者の意図を分析して何かを買おうとしているかどうか予測しようとしている。企業はその情報を利用してコンテンツを動的に更新し、プッシュ通知を送り、キャンペーンを表示できる。

フランスで創業したAlgoliaはここ数年で目覚ましく成長し、現在は大企業に特化して堅実に経営している。2020年には共同創業者のNicolas Dessaigne(ニコラ・デセーニュ)氏がCEOを退いて取締役になった

同社はここ1年半で多くの経営陣を迎え入れている。元Dropboxで最高収益責任者のMichelle Adams(ミシェル・アダムス)氏、元Alfrescoで最高財務責任者のCarlton Baab(カールトン・バーブ)氏、元Capgeminiで最高事業開発責任者のPiyush Patel(ピヤシュ・パテル)氏、元Alteryxで最高顧客責任者のJim Schattin(ジム・シャティン)氏、元SalesforceおよびAdobeで最高マーケティング責任者のJason McClelland(ジェイソン・マクレランド)氏、元Twilioで最高製品責任者のBharat Guruprakash(バーラット・グルプラカシュ)氏だ。

ご覧の通り才能あふれる人物揃いで、Algoliaはクールなテクノロジーを開発して買収を目指すのではなく息の長い企業になろうとしていることがうかがえる。この先IPOの話を聞いても驚きではないだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Algolia検索APIユニコーン企業資金調達

画像クレジット:Algolia

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

東京大学 大学院情報学環 渡邉英徳研究室は7月26日、ユーカリヤ(Eukarya)と共同で汎用的WebGISプラットフォーム「Re:Earth」(リアース)を開発し、オープンソースソフトウェア(OSS)としてGitHub上で公開したと発表した。ライセンスは「Apache License 2.0」。行動規範(Code of Conducts)も公開している

また成果報告イベントとして、「最新Web技術による拡張可能なWebGIS「Re:Earth」OSS化イベント」が開催予定となっている(オンラインのみ。Zoom利用)。開催期日は8月10日19時〜21時。Re:Earthの解説、エンジニア・非エンジニア向けハンズオンセッションが実施される。申し込みは、こちら

Re:Earthの特徴

  • 実用性「ノンコードによる情報のマッピング」:Re:Earthは、専門技術なしでも扱うことができ、独自のウェブアプリの公開が可能。情報の作成や更新・公開設定などをエンジニアに依頼したり、難しいプログラミングを行う必要はない。物語性のある「ストーリーテリング」タイプのビジュアライゼーションも、コーディングなしに実現できるという
  • 独自性・新規性「様々な分野に対応できるプラグインシステム」:、最先端のウェブ技術を用いたプラグインシステムを実装しており、様々な分析や可視化がプラグインにより柔軟に対応できる。また、プラグインシステムにより、クライアントがノンエンジニアであっても管理・運用可能なシステムを実現
  • 実用性・新規性「柔軟なウィジェット配置システム」:デジタルアースをベースとして、統計グラフや時系列などの表現を柔軟なウィジェット配置システムによって実現できる。ウィジェットは、ドラッグ&ドロップ操作で直感的に配置可能。スマートフォンでの表示もサポート
東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

統計グラフや時系列などの表現を柔軟なウィジェット配置システムによって実現できる。ウィジェットは、ドラッグ&ドロップ操作で直感的に配置可能

Re:Earthは、フィジカル空間の情報をバーチャル空間に再現する「デジタルツイン」の基盤となるWebGISプラットフォーム。WebGISは、ネット上で利用可能な地理情報システム(GIS)を指す。東大渡邉英徳研究室は、そのソースコードを様々な分野で自由に活用可能にするためにOSSとして公開した。

同研究室は、これまで「Google Earth」や「Cesium」などのデジタルアースを用いて平和活動・企業間取引・震災・文化財な様々な分野のデータをバーチャル空間に分析・可視化する研究を行っており、これまでの研究で得た知見を多くの人たちに提供するウェブプラットフォーム化を目指して、ユーカリヤと共同でRe:Earthを開発したという。

Re:Earthの目標としては、「複雑・大規模化する地理空間(フィジカル空間)データの手軽な活用環境の提供」「地理空間データの管理・分析・可視化のための汎用WebGISの実現」「多様な分野に向けたプラグイン開発による機能拡張」の3点が挙げられている。

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

南アルプス市ふるさと〇〇博物館(東京大学渡邉英徳研究室制作、ユーカリヤ技術協力)

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

経営危機自治体(ユーカリヤ制作、東京大学渡邉英徳監修)

Re:Earthは、最新のウェブ技術を用いて開発されており、これまでウェブブラウザーでは実現が困難だった本格的なGIS環境を、インストール不要でどこからでも手軽に利用可能。また今回OSS化したことにより、本体・プラグインの開発者を含む、世界各国のエンジニアとワールドワイドなOSSコミュニティを形成する計画を進めるという。

なおRe:Earthは、以下技術を用いているほか、今後AWSを含む、対応する外部サービスを拡張する予定。

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

  • フロントエンド:React・TypeScript・Cesium・Resium(生産性向上・高品質なUI開発)
  • バックエンド:Go(高生産性・高速実行・高ポータビリティ)
  • API:GraphQL(高効率・スキーマドリブンな通信)
  • クラウド関連:Docker・Google Cloud Storage(保守管理コスト削減・スケーラブル)
  • DBMS:MongoDB(高速で高い柔軟性を持つNoSQLデータベース)
  • 認証:Auth0(IDaaS)
  • フロントエンドのプラグイン実行環境:WebAssembly+QuickJS(安全高速なJavaScriptの実行)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:WebGIS(用語)Cesium(製品・サービス)デジタルツイン(用語)東京大学(用語)日本(国・地域)

誰でも緑の指に、植物の種類や日当たりなどに合わせた栽培のアドバイスをくれるアプリ「Greg」

パンデミックによる閉じこもり生活が始まる以前から、すでに勢いづいていた観葉植物業界。1年間の隔離生活を経た今、屋内ガーデンのように生い茂ったリビングルームがあちこちで見られるようになっている。

機械学習を用いて植物の世話の手助けをするアプリ「Greg」(グレッグ)は、5月下旬540万ドル(約6億円)のシード資金を獲得したことを発表した。今回のラウンドはIndex(インデックス)がリードし、First Round Capital(ファーストラウンド・キャピタル)が参加している他、Tinder(ティンダー)の前CEO であるElie Seidman(エリー・セイドマン)氏、植物配達サービスThe Sill(ザ・シル)の創業者Eliza Blank(エリザ・ブランク)氏、60万人のフォロワーを持つ「プラントスタグラマー」Darryl Cheng(ダリル・チェン)氏などの専門的なエンジェル投資家やアドバイザーによって支えられている。現在、Gregのリモートチームには11名のメンバーが在籍しており、今後はブランド責任者の他Androidのシニアエンジニアを含む少なくとも5名のエンジニアを採用する予定だ(今のところ同アプリはiOSでのみ提供されている)。

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Gregは主に植物に水をやるタイミングを教えてくれるというアプリである。植物によってこのタイミングはそれぞれ異なるため、毎週のリマインダー設定をすれば良いというわけにはいかない。Gregは植物の種類、地理的な位置、日当たり、窓からの距離など、それぞれの植物に合わせてアドバイスをしてくれる。これにより誰もが簡単にどんな状況下でも植物を繁殖させることができる。また、アプリにはディスカバーフィードが組み込まれており、ユーザーは「Keanu Leaves」や「Michelle Branch」(セレブと植物の名を掛け合わせたジョーク)などと名付けられた植物の写真を共有することもできる。

画像クレジット:Greg

 

CEOで共同設立者、エンジニアのAlex Ross(アレックス・ロス)氏にとって植物の手入れは単なるパンデミック中の趣味ではない。Greg の背後にある企業、Gregarious, Inc.(グレガリアス・インク)は公益法人として設立された会社である。法的拘束力のある公式声明の中で、同社は地球の生態系にプラスの効果をもたらすことを約束しており(「またはマイナスの効果の軽減」が気候変動における現状である)、設立趣意書には「植物への理解を深めるための独自の技術と研究の開発」「地球の健康を守る団体としての活動」「あらゆる生物の繁栄のための機会の創出」という3つの目標が掲げられている。

「植物は地球の仕組みを理解する上で非常に優れた手段です。これがGregを始めた大きな理由です。今後10年、20年の間に社会としてより正しい判断を下すためには、より多くの人が生態系の仕組み、植物の仕組み、そして食料システムの仕組みを理解する必要があると考えています」とロス氏は話す。

これはロス氏にとって初めてのミッション志向的起業ではない。ロス氏はTinderのエンジニアリング・ディレクターとしてTrust & Safetyチームを立ち上げ、出会い系アプリのユーザーを悪用から守る役割を担っていた。その際に同氏は、消費者向けのモバイルアプリがオーディエンスを獲得する可能性を見出していたのだ。

「実はTinderは、信頼性と安全性を備えた製品として最先端を走っていました」とロス氏は振り返る。「私はTinderの中でも公共のために確実に役に立てる部分に取り組みたかったのです。そして今(Gregでは)公共の利益こそが核心となっています」。

2020年10月にアプリストアで一般公開されて以来、Gregは5万人の月間アクティブユーザーを生み出してきた。こういった植物愛好家たちがこれまでに4000種類の植物35万点を登録し、200万回以上のやりとりが行われている。このアプリの手法は、国際連合食糧農業機関が作物の水使用量を推定するためのアルゴリズムに基づいている。写真を撮ったり、植物に水をやったり、さらには水やりのアドバイスを読み流したりするすべてのやりとりが同社のAIをスマートにする。より多くのデータを解釈すればするほど、GregのAIは植物を育てるための最も効果的で効率的な方法を学んでいくのである。

「数年以内に国際連合食糧農業機関のアルゴリズムにお返しとして貢献し、発展途上国の農家がそのアルゴリズムを利用してより高収量の農産物を栽培し、自国の食糧システムに役立てることができるようにしたいと考えています。こういったことこそが、私たちが公益法人としてスタートした理由です」とロス氏はいう。

ロス氏によると、同社が直面している最大の課題はまだ人々に知られていないことだという。そこでHouse Plant Shop(ハウスプラント・ショップ)やAmerican Plant Exchange(アメリカン・プラント・エクスチェンジ)などの植物販売店と提携し、定額制の「Super Greg」のプロモーションコードを提供することにした。購読者は月額6.50ドル(約715円)、年契約の月額2.50ドル(約275円)、または生涯アクセス権の49.99ドル(約5500円)を支払うことでGregに無制限に植物を登録することができる。無料版では5つの植物しか追加できないため、観葉植物に目覚めてしまった人には物足りないかもしれない。

「これはユーザー獲得の大きなきっかけにつながっています」とロス氏は話す。このアプリを使えば植物の変わりやすい生態系をより深く理解することができるようになる。「Coinbaseが人々を暗号の世界へと導くように、Gregは人々を植物の世界に導くための大切な役割を担うことができると考えています」。

画像クレジット:Greg

同氏はまた、 GregのモデルをWaze(ウェイズ)のようなアプリに例えている。より多くのユーザーが交通パターンを報告すればするほど、その地域の他のドライバーにますます利益をもたらすことができるというものだ。同様にGregが植物の健康状況をより深く把握することで、同社はそのデータを使って環境に優しいミッションを果たすことができるのだ。同社は最終的には、既存のどんなテクノロジーよりも植物の仕組みを理解することのできる「極めてスケールアウトしたプラットフォーム」を構築したいと考えている。

それまでの間、未だ続く世界のロックダウンにともない、Gregは小規模ながらもユーザーに恩恵を与え続けていくことだろう。

「客観的に見ても植物は精神衛生上とても良いものです。一度植物のある生活をした人が、植物のない生活に戻るという例は聞いたことがありません」とロス氏はいう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Greg植物資金調達園芸アプリ機械学習

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

分散型プロトコルMatrixを採用したメッセージングアプリElementが33億円を調達

Element(エレメント)は、自社の分散型Matrix(マトリックス)ベースのメッセージングアプリにより多くのユーザーと機能をとりこむために、2020年Gitterを買収した。そのElementが成長に投資するための資金調達を発表した。

ElementがシリーズBラウンドで調達した資金は3000万ドル(約33億円)だ。今回の資金の一部は、現在すでに利用中の大企業のユースケースに対応する技術拡張に使われる。同社によれば、そうした大組織には約550万人の公務員を抱えるフランス政府、ドイツの教育・行政システムに採用されているDataport(データポート)、ドイツ軍に通信システムを提供するBWIなど、約10の政府機関との契約が含まれるという。

ElementのCEOであり、かつオープンソースで非営利のMatrixプロトコルの共同開発者のMatthew Hodgson(マシュー・ホジソン)氏はまた、資金の他の一部は、サーバーをまったく必要としない同社のピア・ツー・ピア・アーキテクチャへの投資を継続するために使用されると述べている。そして3つ目の投資分野は、分散型の音声・ビデオ会議サービスの構築だという。

ホジソン氏はインタビューの中で「これはセキュリティの面で変革をもたらすでしょう」と答えている。

Elementは現在、オンプレミスもしくはクラウドベースのプラットフォームで提供されている。同社によれば、ほとんどの公共部門の顧客は前者を選択し、民間部門の顧客は後者を選択するという。クラウドの収益は過去12カ月間で300%増加していて、実際の金額は公表されていないものの、Elementが成長していることを示している(共同創業者のAmandine Le Pape[アマンディーヌ・ル・パプ]氏が指摘したように、同社が資金を必要とはしていなかったのにもかかわらず、今回の資金調達をしたのはその成長も理由だ)。

今回のラウンドには、Protocol Labs(libp2p、IPFS、Filecoinを開発したオープンソースの研究開発機関)とMetaplanet(Skypeの共同創業者であるJaan Tallinn[ジャン・ターリン]氏が設立したファンド)からの投資が含まれている。また過去に投資を行った、WordPressの親会社のAutomatticや、Notionも投資に参加している。評価額は公開されていない。Elementはこれで合計4800万ドル(約52億7000万円)を調達した。

Elementのベースとなっている非営利プロトコルであるMatrixは、インターネットの仕組みを変えるために開発されたもので、複数のサイロ化したコミュニケーション環境を統合し、まとまった単一のプラットフォームで利用できるようにした上で、それらのコミュニケーションを管理する団体が「所有」できるようにするものだ。すべてをまとめることで、こうした会話を管理することがセキュリティや実用性の観点から簡単になるだろう、というのがここでのアイデアだ。

Matrixは独自の成長を遂げており、過去12カ月間で利用率が190%増加し、現在は最大7万5000の導入数と3500万人以上の「アドレス可能な」ユーザーを抱えている。それらはRaspberry Piのような小さなものから、政府が運営する巨大なサーバーまで、さまざまなものの上に展開されている。とはいえ、はっきりさせておきたいのは「アクティブ」なユーザー数は「アドレス可能な」ユーザー数よりもかなり少ないということだ。Matrixは(もちろんElementも)他者がMatrixをどのくらい使っているかを「知る」ことはできないが(これは政府機関が好むセキュリティ上の利点の1つだ)、ホジソン氏は、自社のサーバーには120万人のアクティブユーザーがいると述べている。

当初はRiot(ライオット)という名だったElementは、Slack(スラック)やDiscord(ディスコード)のライバルとして、Matrixの上にネイティブなメッセージングプラットフォームを構築することを目的としていた。ほんのひと握りのプラットフォームたちが世界のメッセージングデータの大半を支配している時代に、クリーンで安全な代替手段を提供して、すでに他のプロトコルを使用しているユーザーを取り込むことが狙いだ。

「私たちは15年以上にわたってメッセージング技術を構築してきました」とル・パプ氏は語る。「わずか数人のプレイヤーが支配して、みんなのデータを人質にしているのは異常だと感じたのです。これは皆のコミュニケーションを解放するためのものなのです。私たちはデータ主権をあるべき姿に戻そうとしています」。

このメッセージング分野で最も聡明な頭脳を持つ人たちは、データの価値が高まり、通信チャネルがますます不可欠になる中で、標準的な働きを考えた時、代替手段、つまり中央集権的でないアプローチが大きな方程式の一部でなければならないと考えている。その意味で、Element(とMatrix)は、テクノロジーのより大きなトレンドの中心に立っているのだ。

Protocol LabsのCEOであるJuan Benet(ジュアン・ベネット)氏は次のように語る「インターネットの通信プロトコルは、人類にとって基本的なものとなっています。にもかかわらず現在、ほとんどのメッセージングは、恣意的なプロプライエタリの中央集権的なウォールドガーデン(囲い込み)の中で行われていて、それらは短期的なビジネス展望の人質となっているのです。Matrixは希望の光です。健全なインターネットインフラストラクチャの原則に基づいて構築された、安全な分散型通信のためのオープンネットワークだからです。Elementは、その製品と会社の両方によって、世の中の組織がすべての会話をコントロールし、所有し、優れたユーザーエクスペリエンスを提供できるようにするのです」。

市場にはすでに、大規模に使われている暗号化を行うメッセージングプラットフォームとして、Telegram(テレグラム)やSignal(シグナル)、さらにはFacebook(フェイスブック)のWhatsApp(ワッツアップ)などが多数あるが、Element(およびMatrix)のアーリーアダプターは大組織たちだ。しかし、Elementを支えるエンジンであるMatrixは、TwitterのBlue Sky分散型プラットフォームの取り組みなどにも利用され始めているため、Elementはアーリーアダプター以外にもユーザーを増やせる可能性がある。

しかし光あるところには影もある。TelegramやRocket.chat(ロケット・チャット)といった他の分散型通信プラットフォームと同様に、エンド・ツー・エンドの暗号化には善悪の両面がつきまとう。通信のハッキングを防げるという利点だけでなく、悪意のある計画を立てる際に当局の検知を逃れるために使用される可能性もあるのだ。Matrix(基本的にはElement)は、政府がこの問題を解決するために検討している、暗号化システムへのバックドアに代わる方法を模索してきたが、ある方法を義務付ければ、悪意ある行為者は別の場所に移るだけだという議論がある。

とはいえ、今回の投資とElementの利用状況は、そうした危惧や既存の問題にもかかわらず、分散化を維持する方向への支持が証明されたものだ。

Metaplanetのターリン氏は「コミュニケーションが中央集権化されると、プロパガンダ、監視、検閲など、悪用するには非常に魅力的なターゲットとなります」と語る。「消費者は監視資本主義からの救出を必要としていますし、組織は安全で中立的な通信手段を必要としています。Matrixは、その欠けているコミュニケーション・レイヤーを提供する、最も先進的なプラットフォームなのです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Element資金調達エンド・ツー・エンド暗号化

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文: Ingrid Lunden、翻訳:sako)

アップルが最新ベータでiOS 15のSafariの変更点を微調整

Apple(アップル)は、米国時間7月27日のiOS 15とiPadOS 15ベータ4リリースで、以前にSafariのモバイルブラウザーに対して行い、議論を呼んだ変更に対するユーザーからの苦情やフィードバックに対応している。問題となっているSafariの新デザインは、WWDCで発表され、タブバー(URLバー)を画面の下へ移動させている。iPhoneの人気アプリにしては思い切った変更だが、狙いはiPhoneを片手で使ってるときにコントロールに届きやすいようにするためだ。しかし批判する人たちは、リロードボタンやリーダーモードなどのよく使う機能が見つけにくく使いづらくなり、モバイルブラウザーの全体として使いやすさを損なうという。

Appleの名誉のために言えば、同社は寄せられたフィードバックに耳を傾けていた。

以前のデザインではタブバーは画面上部という従来からの位置にあり、左にあるリーダーモードボタン(Aが2つ)も右のリロードボタンもアクセスしやすかった。下の方には、前進 / 後退ボタンと、シェアボタン、リーディングリスト、そしてタブボタンがあった。

iOS 15のデザインでは、よく使われる機能への便利なアクセスポイントがすべてなくなり、何よりも、タブバーへのアクセスのしやすさが優先された。代わりに3つのドットを並べた「more」メニューに、ウェブを閲覧しているときよく使うもののすべてが隠された。ウェブサイトのリロードやリンクの共有、ページをリーダーモードで見る、記事を後で読むに保存するなどすべてだ。隠されたさまざまなアクションの合計数は20以上に及ぶ。

Apple評論家のJohn Gruber(ジョン・グルーバー)氏はポッドキャストThe Talk Showで、その新デザインは、WWDCにおけるSafari発表の数週間も前から、Appleの社内ですら不評だったと語っている。例えば新デザインはクールに見えるが、あまり便利でないという評価もあった。

TechCrunchの編集長であるMatthew Panzarino(マシュー・パンザリーノ)もそのポッドキャストに招かれていたが、一般的に画面上にモノが少ないのは良いことだが、今回は失敗だとグルーバー氏に同意していた。

その際、マシューは「実際に使ってみると、かえって画面が煩雑になりわかりにくくなる。スクロールといったアクションをしないかぎり、画面が広くなった感じはしない。だから、それもおかしい」と話している。

今回ベータ4のアップデートでAppleは、この変更から生じた問題の一部をフィックスしようとした。

まずタブバーに「共有」ボタンを再び追加し、メニューの下にその他のコントロールを入れた。リンクの共有はウェブユーザーで最も頻繁に行う作業であるため、それを元に戻してワンタップで済むようにしたのは合理的だ。

Refreshボタンは、これから常にiOS 15のSafariのアドレスバーにある。

リロードボタンは再びタブバーに登場し、ドメイン名の横に置かれた。以前よりも、ちょっと小さい。

一方「リーダーモード」ボタンは、リーダーが使えるようになればタブバーに現れる。そしてワンタップでアクセスできる。

タブバーは、ユーザーがウェブサイト上のボタンと対話しているときには最小化される。以前はそれが邪魔になり、ウェブサイトのボタンに届かないときには、使いやすさを損なった。

先日、iOS 15のSafariでチェックアウトボタンがタップできずテイクアウトのオーダーができなかった。ブルスケッタが食べられなくてありがとう、Safariさん。

iPadOS 15では、デフォルトではURL下のスタンドアローンのタブバーにタブが現れることに気づくだろう。1行でURLと開いてるタブを表示する、すっきりとしたコンパクトなタブバーはiPadOS 15でも導入され「Safari Settings」で有効にできる。

なお、モバイルブラウザーのデザインについてこのように再考したのは、Appleが最初ではない。

元Google ChromeのデザインマネージャーChris Lee(クリス・リー)氏回想によると、Chromeのモバイルブラウザーでも同様のデザイン変更が行われ、URLバーを下に置いたことがあるが、そのバージョンは結局、ローンチされないことになった。それはベータテストでの評価がさまざまだったからだ。その新デザインは、テクノロジーコミュニティで熱心なファンも獲得したが、メインストリームのユーザーはその変更に戸惑うばかりだった。

Safariのように頻繁にローンチされるアプリの使用については、マッスルメモリーの問題もある。私のようにバーの新しい配置を気に入るようになってからも、ウェブサイトを訪問したり、複数のタブをスワイプするといった複雑な操作を、デザイン変更はそれを難しく感じさせてしまう。

また、習慣でいろいろなアクションのショートカットを画面上部に探さないようになるためには、一定の学習期間が必要だ。

この度のベータでは、Safariのアップデートの他にもいろいろな修正が行われた。複数の連絡先とフォーカスのステータスを共有する方法や、新たにXLサイズのウィジェットもある(これはiPadのApple Podcastsが採用)。小さな変更や工夫は他にもある。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOSiOS 15Safariベータ版

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

「推し活」もはかどるソーシャルカレンダーアプリ「Skele」運営のpowが総額5100万円調達

「推し活」もはかどるソーシャルカレンダーアプリ「Skele」運営のpowが総額5100万円調達pow(パウ)は7月27日、第三者割当増資による総額5100万円の資金調達を発表した。引受先は、ANOBAKA、East Ventures、土屋尚史氏、柳澤安慶氏、他1名の非公開投資家。調達した資金により、開発体制の強化を行う。また、ソーシャルカレンダーアプリ「Skele」(スケル)のiOS版を正式公開した。Androidは2021年秋リリース予定。

Skeleは、利用者の時間と「好き」をつなげる、ソーシャルカレンダーアプリ。友人・家族・恋人など大切な人との予定共有が可能なほか、予定ごとの非公開設定などプライバシーも守れる設計を採用している。

「推し活」もはかどるソーシャルカレンダーアプリ「Skele」運営のpowが総額5100万円調達

「フレンド」を予定に招待する「予定リクエスト」機能では、リクエストを送る側は相手の空いている時間がわかるため予定に誘いやすく、受け取る側もリクエストの承認だけで自分のカレンダーに予定が入るという。メッセージでの予定調整のやりとりも、全員がそれぞれ予定を入力・管理する必要もはないとしている。

「推し活」もはかどるソーシャルカレンダーアプリ「Skele」運営のpowが総額5100万円調達

「推しカレ」機能で自分の推しをフォローすると、アイドルの出演情報やスポーツチームの試合情報など、カレンダーやタイムラインで推しのイベント情報をチェック可能。発見したイベントは、ワンタップで自分のカレンダーに追加でき、「公式サイトやSNSでイベントを調べて、1つずつカレンダーに追加して……」といった煩わしさを解消し、「推し活」がはかどるという。

「推し活」もはかどるソーシャルカレンダーアプリ「Skele」運営のpowが総額5100万円調達

またpowは、この推しカレ機能における公式アカウントとして、イベント・出演情報・発売情報などファンに向けて予定情報を配信したいスポーツ、音楽、ゲームなどのエンタメ関連事業者を募集している。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:カレンダー(用語)pow(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

Boxが電子署名プロダクトBox Signをリリース、コロナ需要に対応

Box(ボックス)は米国時間7月26日、法人向けプランの一環として追加コストと制限なしで電子署名ができるネイティブの電子署名プロダクト「Box Sign」をリリースした。

このプロダクトをリリースする5カ月前に、カリフォルニア州レッドウッドシティを拠点とするBoxは電子署名のスタートアップSignRequestを5500万ドル(約61億円)で買収することに合意していた

BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、同社がすでに企業10万社のコンテンツ管理を行っており、Box Signは同社が事業プロセスで顧客をサポートできる新たなカテゴリーで、「社にとって画期的な製品」であるとTechCrunchに語っている。

「顧客がコンテンツを保持・管理できるよう、当社はコンテンツのライフサイクルを強化するコンテンツクラウドを構築しています」とレヴィ氏は述べた。「顧客のオンボーディング、取引のクロージング、あるいは監査などに関する多くの処理が毎日行われていますが、これらはいまだに手作業で行わています。当社はそれをデジタルへと移行させ、コンテンツに関する署名のリクエストを可能にしています」。

機能は次の通りだ。ユーザーはBoxから直接、Boxのアカウントを持たない人にでも電子署名が必要な書類を送ることができる。署名リクエストと承認の場所は書類のどこにでも設けることができる。この作業はSalesforceのような人気のアプリに統合でき、電子メールによるリマインダーや締切の通知もある。Boxの他のプロダクト同様、署名も安全でしっかりとしたものだ。

Prescient & Strategic Intelligenceによると、2020年の世界の電子署名ソフトウェアマーケットは18億ドル(約1986億円)で、IDCは2023年までに38億ドル(約4193億円)に成長すると予想している

レヴィ氏は、従来のツールの制限とコストの障壁のために電子署名を使っている組織は3分の1以下とマーケットがまだ初期段階にあると考えていて、これは将来かなりのチャンスがあることを意味している。しかし、状況は変わりつつあるようだ。Boxはパンデミックの間、デジタル処理の取り込みをサポートしようと、まだ書類の郵送、スキャン、ファックスに頼っている銀行と協業した。同社はまた、自社プロダクトについて顧客に2020年調査を行い、最も多かった「要望」は電子署名だった、とレヴィ氏は話した。

この分野で展開されているプロダクトの中でもメジャーなサービスである​​DocuSignとAdobe Signは引き続き使える、と同氏は指摘した。Boxは他の同業サービスと競合するつもりはなく、顧客の需要があり、顧客に選択肢を提供したかった、と述べた。

電子署名サービスの提供は、新しい最高製品責任者として6月にDiego Dugatkin(ディエゴ・ドガトキン)氏を迎え入れたことを受けてのものでもある。同社に加わる前、ドガトキン氏はAdobe Document Cloudのプロダクト管理担当副社長で、Adobe Signを含めAdobeの一連のプロダクトの戦略と実行を率いていた。

「当社の戦略は何年間もポートフォリオを拡大するというもので、より高度なユースケース、そしてすべてを管理する1つのプラットフォームを持つというビジョンの原動力となってきました」とレヴィ氏は述べた。「ディエゴはこの分野で20年という途方もない経験を持ち、電子署名を機能させることにおいてかなりの進歩をもたらすでしょう」。

電子署名プロダクトに加えて同社は、主なアドオンすべてと2021年夏から利用できるようになる高度な電子署名機能を含むEnterprise Plusプランも導入した、と明らかにした。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Box電子署名クラウドストレージ

画像クレジット:Box

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi