Netflixが独立系モバイルゲーム開発会社Boss Fightを買収

Netflix(ネットフリックス)は、テキサス州の独立系ゲーム開発会社であるBoss Fight Entertainment(ボス・ファイト・エンターテインメント)を買収したことをブログ記事で発表した。買収の金銭的条件は明らかにされていない。Netflixにとってこれで3件目となるゲーム会社の買収は、このストリーミングサービス企業が推し進めているゲームへの取り組みの一環だ。

Boss Fightは、Zynga Dallas(ジンガ・ダラス)とEnsemble Studios(アンサンブル・スタジオ)の元従業員によって、2013年に設立された。Netflixは、同スタジオのジャンルを超えたゲーム構築の経験が、Netflixユーザーにますます多くのタイトルを提供していくために役立つと述べている。Boss Fightのチームはダラス、オースティン、シアトルにある現在のスタジオで活動を継続していく予定だ。

「Boss Fightの使命は、プレイヤーがプレイしたい場所で、シンプルで美しく、楽しいゲーム体験を提供することです」と、Boss Fight Entertainmentの創設者であるDavid Rippy(デヴィッド・リッピー)氏、Bill Jackson(ビル・ジャクソン)氏、Scott Winsett(スコット・ウィンセット)氏は、声明で述べている。「広告のないゲームを、定額サービスの一部として提供するというNetflixの取り組みは、我々のようなゲーム開発者が、収益化を気にすることなく、楽しいゲームプレイの創造に集中することを可能にします。このような早い段階でNetflixの一員となり、自分たちの好きなことを続けながら、Netflixにおけるゲームの未来を一緒に形作る手助けができることに、私たちはこれ以上ないほどワクワクしています」。

3月初め、Netflixはフィンランドのモバイルゲーム開発会社であるNext Games(ネクスト・ゲームス)を総額6500万ユーロ(約87億円)で買収すると発表した。この無料でプレイできるモバイルゲームのパブリッシャーは、すでに「Stranger Things(ストレンジャー・シングス)」や「The Walking Dead(ウォーキング・デッド)」など、Netflixの最大の人気作に関連するタイトルを開発している。この買収は、2022年第2四半期に完了する予定だ。

また、2021年9月には「Oxenfree(オクセンフリー)」のようなストーリー重視のタイトルで知られる独立系ゲーム開発会社のNight School Studio(ナイト・スクール・スタジオ)を、Netflixは買収している。この取引の金銭的条件は明らかにされていない。Night School社の幹部は、同スタジオが「Oxenfree II」をはじめとするNight Schoolのタイトルに、引き続き取り組んでいくと発言していた。

今回の買収は、Netflixの動画カタログを補完するためにゲームコンテンツを充実させるという大きな戦略の一環である。

「私たちはまだ、Netflixメンバーシップの一部としてすばらしいゲーム体験を構築している初期の段階にあります」と、Netflixのゲームスタジオ担当バイスプレジデントであるAmir Rahimi(アミール・ラヒミ)氏は、声明で述べている。「世界中の開発者とのパートナーシップや、優秀な人材の雇用、そして今回のような買収を通じて、私たちは楽しくて深い魅力のある多彩なオリジナルゲームを、広告なし、アプリ内課金なしで、世界中の数億人の会員に提供できる、世界クラスのゲームスタジオを構築したいと考えています」。

Netflixは、2021年末に「ストレンジャー・シングス」をテーマにしたタイトルやカジュアルゲームを含む初期ラインナップを発表して以来、ゲームサービスの拡充を図ってきた。

それ以降、Netflixは他にもいくつかのタイトルを展開してきた。「Arcanium:Rise of Akhan(アルカニアム:ライズ・オブ・アカン)」「Asphalt Xtreme(アスファルト・エクストリーム)」「Bowling Ballers(ボウリング・ボーラーズ)」「Card Blast(カード・ブラスト)」「Dominoes Café(ドミノ・カフェ)」「Dungeon Dwarves(ダンジョン・ドワーフ)」「Hextech Mayhem:A League of Legends Story(ヘクステック・メイヘム:リーグ・オブ・レジェンド ストーリー)」「Knittens(ニット&キャット)」「Krispee Street(クリスピー・ストリート)」「Shooting Hoops(シューティング・フープス)」「Teeter (Up)(ティーター)」「Wonderputt Forever(ワンダーパット・フォーエバー)」などだ。先週初めには「Shatter Remastered(シャッター・リマスター)」と「This Is A True Story(真実の物語)」という2つのゲームを追加し、ラインナップを拡充している。Netflixはまた「Into the Dead 2:Unleashed(イントゥ・ザ・デッド 2:アンリーシュド)」という初のFPS(ファーストパーソン・シューティング)タイトルも予告している

同社は第4四半期の決算説明会で投資家に対し、これら初期のゲームの提供開始は、消費者が新サービスに何を求めているかを、よりよく理解するための準備であると説明している。ゲームのパフォーマンスについては、まだ詳細を明らかにせず、各ゲームタイトルのデイリーアクティブユーザーとマンスリーアクティブユーザーの両方が「増加」していると述べるに留めた。また、Netflixは、将来的にさらに大規模なゲームIPのライセンスを取得することに前向きであることも示唆している。

画像クレジット:Krisztian Bocsi / Bloomberg / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Auroroa、トヨタ・シエナの自律走行型タクシーのテストを公開

自律走行車技術企業のAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、将来のライドヘイル事業に向けて、カスタム設計の自動運転Toyota Siennas(トヨタ・シエナ)の小規模なテストを始める。Auroraの広報担当者によると、同社はテキサス州ダラス・フォースワース地域の高速道路や郊外の道路で、高速ルートを中心に車両テストを行う予定だ。

ハイブリッド電気自動車のトヨタ車には、同社が物資運搬用にテストしているAuroraのクラス8トラックと同じソフトウェアとハードウェアが搭載される予定だ。Waymo(ウェイモ)と同様に、Auroraは、同社が「重要な競争優位性」、つまりトラック輸送と旅客モビリティという2つの重要な市場に共通するコア技術の「移植可能性」を持っていることを証明したいのだ。

このテストの公開は、Auroraがピッツバーグ、ダラス、ベイエリアでテストを行った同じ車の初期開発プロトタイプを発表した6カ月後、またAurora Driver(オーロラドライバー)をロボットタクシー業務用に設計したドライバーレス車両と統合するためにトヨタと提携する意図を最初に表明してから1年後に行われた。

Auroraは以前、2024年後半までに、既存のライドヘイリングアプリ、特にUber(ウーバー)を通じて利用できるドライバーサービス製品であるライドヘイリング「Aurora Connnect(オーロラ・コネクト)」を発売する目標を掲げた。

2020年、AuroraはUberの自動運転部門を買収し、それ以来、同社との関係を維持している。例えば、Auroraの自動運転トラックは、両社がより密接に統合される多段階商用パイロット版の一環として、テキサス州でUber Freight(ウーバー・フレイト)の顧客のために、商品を運搬している。

「私たちは現在、Uberの詳細な市場データを活用して、トヨタとUberと提携してAurora Connectを広く展開するための商業化計画を加速させています」と、Auroraの広報担当者はTechCrunchに語った。「ライドヘイリング市場に参入するために、私たちは、既存のライドヘイリングネットワーク向けにAurora Connectを設計しました。これは、自律走行車と人間のドライバーのハイブリッドモデルを作り、ネットワークが増大する需要に対応し、ライダーにシームレスな経験を提供するのに役立つでしょう」。

Aurora Connectが市場に出れば、ライダーがトリップをリクエストすると、ルートによってAurora駆動の車か人間のドライバーが迎えに来ることになる。

Auroraが商業化への道を切り開いているように見える一方、ロボタクシー業界では他の企業がすでに道路空間を開拓している。例えば、Motional(モーショナル)は、最近ラスベガスでオンデマンドおよびトランジット技術サービスのVia(ヴィア)と無料のロボタクシーサービスを開始し、2023年には同市でLyft(リフト)と商業サービスを開始する準備を進めている。そしてもちろん、Cruise(クルーズ)とWaymoもあり、それぞれサンフランシスコとフェニックスで、自社ブランドのロボタクシーサービスを開始している。

ここ数カ月、Auroraはテキサスの高速道路で、FedEx(フェデックス)などの大企業とともに自律走行型トラックのテストを行っている。最近SPACになったスタートアップは、テキサスはまた、AuroroaがAuroroa Connectを導入する最初の州になるとしている。

「テキサス州には、当社の顧客や将来の顧客の多くが操業している、全米に商品を移動させるために重要な米国の主要な州間道路や路線があります」と、広報担当者は述べた。「テキサスはまた、空港への移動のような、Aurora Connectを開始する際に優先されるルートを開発し、テストする能力を与えてくれます」。

「Sienna Autono-MaaS(S-AM)」プラットフォームで作られた自動運転トヨタ車は、時速70マイル(時速約113km)まで出すことができ、高速道路での安全運転のために同社独自のFirstLight LiDAR(ファーストライト・ライダー)に依存している。

Auroraのテスト車両には、2人の車両オペレーターがいる。1人は運転席でAurora Driverの行動を監督し、もう1人は助手席でエンジニアリングチームに送信するメモを取る。Auroraによると、AuroraのAVスタックを搭載したSiennasは、すでにテキサス州で、路肩での停車時や低速車を回避する場合も含む、Uターン、高速合流、車線変更などをこなしている。

Aurora Driverは、さまざまな形の工事、渋滞、悪天候にも対応している。

現時点では、車両は10台未満と思われる小規模なものだが、Auroraは、今後数カ月のうちに車両を追加し、より多くのシナリオとルートを扱い、密集した都市部に移動してテストを拡大する予定であるという。

画像クレジット:Aurora Innovation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)

テキサス州司法長官、フェイスブックの顔認識技術をめぐりMetaを提訴

テキサス州司法長官Ken Paxton(ケン・パクストン)氏は、Facebook(フェイスブック)の顔認識技術の使用をめぐってMeta(メタ)を提訴した。司法長官室が米国時間2月14日に発表した。このニュースはウォールストリート・ジャーナルが最初に報じたもので、この訴訟では数千億円規模の民事制裁金を求めていると指摘している。同訴訟では、現在は中止しているMetaによる顔認識技術の使用が、生体データに関する同州のプライバシー保護法に違反していると主張している。

訴訟を発表したプレスリリースでは、ユーザーがアップロードした写真や動画に含まれる数百万件の生体識別情報をFacebookが保存していたと主張している。パクストン氏は、Facebookがユーザーの個人情報を「自社の帝国を拡大し、棚ぼた的巨額利益を得るために」悪用したと述べている。

「Facebookはもはや、人々の安全と幸福を犠牲にして利益を上げる目的で、人々とその子どもたちを利用することはありません」とパクストン氏は声明で述べた。「これは、テック大企業の欺瞞に満ちた商習慣の新たな例であり、止めなければなりません。私はテキサス州民のプライバシーとセキュリティのために戦い続けます」。

Metaの広報担当者はTechCrunchに「これらの主張はメリットがなく、我々は強く異議を唱えます」と電子メールで述べた。

この訴訟では、Facebookがその商慣行を隠すことで人々を欺き、アプリを利用するテキサス州民はFacebookが写真や動画から生体情報を取得していることに気づかなかったと主張している。また、Facebookがユーザーの個人情報を他の事業者に開示し、その事業者がさらに情報を利用していることにユーザーは気づかなかったと、詳しい説明なしに主張している。

「Facebookは往々にして、収集した生体識別情報を適切な時間内に破棄しておらず、テキサス州民を幸福、安全、セキュリティに対する増大し続けるリスクにさらしています」と訴状には書かれている。「Facebookは自らの商業的利益のために、顔認識技術を訓練し改善すべく故意に生体情報を収集し、それによって、世界の隅々にまで届き、Facebookのサービスを意図的に避けている人さえも陥れる強力な人工知能装置を作っています」。

Metaは2021年11月、Facebook上の顔認識システムを停止し、今後は写真や動画でオプトインしたユーザーを自動的に識別しないようにすると発表した。また、このシステム停止の一環として、10億点超の個人の顔認識テンプレートを削除するとも明らかにした。しかし、テキサス州当局はMetaにこのデータを調査のために保存するよう要請し、これによりシステムの完全閉鎖は遅れる可能性が高い。

Metaが顔認識に関する慣行で訴訟に直面するのは今回が初めてではない。2021年3月にFacebookは、イリノイ州民を侵害的なプライバシー保護行為から守るために作られたイリノイ州法に違反したとして、6億5000万ドル(約750億円)を支払うよう命じられた。このバイオメトリクス情報プライバシー法(BIPA)は、近年テック企業の足元をすくう強力な州法だ。Facebookを相手取った裁判は2015年に初めて行われ、Facebookが本人の同意なしに顔認識を使って写真にタグ付けする行為は州法に違反すると主張した。

関連記事:フェイスブックがイリノイ州のプライバシー保護法をめぐる集団訴訟で約694億円支払う

判決を受け、カリフォルニア州にある連邦裁判所による最終和解判決のもと、160万人のイリノイ州民が少なくとも345ドル(約3万9000円)を受け取った。最終的な額は、裁判官が不十分と判断したため、Facebookが2020年に提案した5億5000万ドル(約635億円)を1億ドル(約115億円)上回った。Facebookは2019年に自動顔認識タグ付け機能を無効にし、代わりにオプトイン方式にし、イリノイ州の集団訴訟によって拡大したプライバシー批判のいくつかに対処した。

6億5000万ドルという和解金は、通常の企業であれば大きな影響を与えるのに十分な額だろう。しかしFacebookは、FTC(米連邦取引委員会)が2019年に同社のプライバシー問題を調査し、50億ドル(約5776億円)という記録的な罰金を課したときと同様に、これを受け流した。

今回のテキサス州の訴訟は、プライバシー法の普及がMetaの業務だけでなく、すべてのテック大企業の慣行に大きな影響を与える可能性があることを示している。過去数年、はっきりとした同意なしにユーザーの顔を顔認識システムの訓練に使用したのは法律違反としてMicrosoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)を訴える訴訟が相次いでいる。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグル、広告ビジネスをめぐるテキサス州の反トラスト法訴訟で棄却を要請

米国時間1月21日、Google(グーグル)はテキサス州が主導する反トラスト訴訟中の訴因の大半を却下するよう連邦裁判所に求める申し立てを行った。同社は訴状の中で、テキサス州の訴訟は「信用できない」し、州は同社の広告ビジネスが独占禁止法に違反していることを証明できなかった、と主張している。

Googleの経済政策担当ディレクターであるAdam Cohen(アダム・コーエン)氏は、ブログの中で「Paxton(パクストン)州司法長官の主張は、光よりも熱に満ちており、この事件を裁判にかける法的基準を満たすとは思えない。訴状は、私たちのビジネス、製品、および動機を不当に表現したものであり、私たちは、妥当な反トラスト法上の主張を提示しなかったことを理由に、これを却下する方針です」と述べている。

テキサス州のKen Paxton(ケン・パクストン)司法長官は、Googleがオンライン広告の独占を違法に維持したと主張する訴えを2020年末に発表した。テキサス州は11月に初めて提訴したものの当時は編集されていた訴状を先週、新たに更新し、裁判官から訴状の詳細を公開するよう命じられる前だった。

アラスカ、アーカンサス、フロリダ、アイダホ、インディアナ、ルイジアナ、ミシシッピ、ミズーリ、モンタナ、ネバダ、ノースダコタ、サウスカロライナ、サウスダコタ、ユタ、ケンタッキー、そしてプエルトリコがこの訴訟に加わり、Googleの責任を問う訴訟に加わっている。。

関連記事:複数州にまたがる最新グーグル反トラスト訴訟は広告ビジネスが標的

Googleは、パクストン氏は「明確な事実がたくさんあるのに、それらを看過または誤解」しており、その中には同社がオンライン広告の支配を維持するために、Facebookとの取引で、新たに登場してきた「ヘッダー入札」と呼ばれる広告購入プロセスを封殺したという主張している。

The New York Timesの記事によると、2018年にFacebookはその関係を発表したが、Googleが自分の競合他社に「他のパートナーには提供しなかった、オークションで成功するための特別な情報とスピードの利点を与えた(そこには『勝率』の保証も含まれていた)」ことは公表しなかった。

自らも反トラスト法で苦境に立たされているMetaも同様に、同社にInstagramとWhatsAppを売却させる可能性がある反トラスト法訴訟の却下を裁判所に求めたが、裁判官は2022年1月初め、FTCの再提訴を許可するとの判決を下した。

関連記事:グーグルがGoogle Playの課金をめぐり大規模な反トラスト訴訟に直面

画像クレジット:lex Tai/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サムスンが約2兆円でテキサス州テイラーに先端半導体工場建設を発表

Samsung Electronics(サムスン電子)は米国時間11月23日、先端ロジックデバイスを生産する半導体ウェハー製造工場をテキサス州テイラーに新設することを決定した、と発表した。

推定170億ドル(約1兆9580億円)の今回の投資は同社にとって米国における最大の投資となり、新工場がフル稼働すれば約2000人の新規直接雇用と数千人の関連雇用が創出される見込みだ。今回の投資により、Samsungが1978年に米国で事業を開始して以来、米国での投資総額は470億ドル(約5兆4140億円)超となる。

テイラー工場は、オースティンに現在あるSamsungの製造拠点から約16マイル(約25キロ)のところにあり、韓国・平沢の最新の新生産ラインとともに、Samsungのグローバルな半導体製造能力の重要な拠点になると期待されている。

テイラー新工場では、モバイル、5G、高パフォーマンス・コンピューティング(HPC)、人工知能(AI)などの高度なプロセス技術に基づく製品を製造する。

今回のSamsungの決定は、世界的な半導体不足が自動車や電子機器といった産業を弱らせているの中でのものだ。

同社は、先端半導体製造をよりアクセスしやすいものにし、急増する半導体製品需要に応えることで、世界中の顧客をサポートすることに引き続き注力すると述べた。

同社は、500万平方メートルを超えるテイラー工場の建設を2022年の第1四半期に開始し、2024年下半期の生産開始を目指す。

Samsung Electronicsのデバイスソリューション部門の副会長兼CEOであるKinam Kim(キナム・キム)氏は「テイラーに新しい施設を設けることで、Samsungは自社の未来における新たな重要な章のための基礎を築いています」と述べた。「製造能力の向上により、顧客のニーズにより良く応えることができ、世界の半導体サプライチェーンの安定に貢献することができます。当社はまた、米国で半導体製造を開始してから25周年を迎えるにあたり、より多くの雇用をもたらし、地域社会のトレーニングや人材育成を支援できることを誇りに思っています」。

製造工場の候補地として米国内の複数の場所を検討した結果、地元の半導体エコシステム、インフラの安定性、地元政府の支援、地域開発の機会など、複数の要素を考慮してテイラーへの投資を決定した。

報道によれば、アリゾナ州、ニューヨーク州、韓国などを候補地として検討したSamsungは、税制面で有利であることを理由にテキサス州ウィリアムソン郡を選んだ。7月にテキサス州当局に提出された書類によると、Samsungはテキサス州テイラーに半導体工場を建設するために(テイラー独立学校区からの)減税措置を申請した。

「Samsungは財政およびその他のインセンティブ(例:インフラやユーティリティーの支援)を通じてプロジェクトをサポートする強力な公的パートナーを求めています。このプロジェクトに関連して、Samsungはテキサス州企業基金からチャプター380およびチャプター381の支援に基づくリベートを求めています。加えて、提案されているプロジェクトの建設と運営を支援するために、特定のインフラやユーティリティーの改善、料金の引き下げ、その他の非現金給付に関連するインセンティブも追求しています」と文書にはある。

Samsungはまた、テイラー独立学校区(ISD)に、学生が将来のキャリア・スキルを身につけるためのサムスン・スキルズ・センターを設立し、インターンシップや採用の機会を提供するための資金援助を行う。

テキサス州のWayne Abbott(ウェイン・アボット)知事は「Samsungのような企業がテキサスへの投資を続けるのは、テキサスの世界クラスのビジネス環境と卓越した労働力のためです。Samsungがテイラーに新設する半導体製造施設は、勤勉なテキサス州中央部の人々とその家族に無数の機会をもたらし、半導体産業におけるテキサス州の継続的な卓越性に大きな役割を果たすでしょう」と述べた。

「テキサス州のパートナーに加えて、最先端の半導体製造を米国で拡大しようとしているSamsungのような企業を支援する環境を整えてくれたバイデン政権に感謝しています」とキム氏は述べた。「我々はまた、米国内の半導体生産とイノベーションに対する連邦政府のインセンティブを迅速に制定するために超党派でサポートした政権と議会にも感謝しています」とも語った。

世界最大の半導体メーカーの1社であるSamsungは8月に、グローバルプレゼンスを強化すべく、今後3年間で半導体、バイオ、IT、次世代通信ネットワークなどの分野に2050億ドル(約23兆6000億円)超の投資を行う計画を明らかにした。

先週、北米を訪れたSamsung Groupの事実上のリーダーであるJay Y. Lee(ジェイ・Y・リー)氏はワシントンD.C.で米政府関係者と面会し、第2の半導体工場と半導体のサプライチェーンについて協議した。リー氏はまた、ビジネス上の結びつきを強化するため、Microsoft(マイクロソフト)CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏、Moderna(モデルナ)やVerizon Wireless(ベライゾン・ワイヤレス)の幹部などハイテク企業のリーダーたちとも会談した。

Intel(インテル)は最近、アリゾナ州で2つの新しい半導体製造工場の建設に着手した。同時に、TSMCは120億ドル(約1兆3810億円)を投じるチップ工場の建設をアリゾナ州で開始し、10月には日本初の半導体工場の建設計画を発表した。また、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)は、テキサス州シャーマンに新たに4つの半導体製造工場を建設する投資計画を発表した。

画像クレジット:JUNG YEON-JE/AFP / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラ、「リアルタイムの運転行動」が価格を左右する自動車保険をテキサス州でスタート

Tesla(テスラ)は、カリフォルニア州での販売開始から数年を経て、新たな本拠地であるテキサス州で自動車保険提供をスタートした。Electrekによると、テキサス州で提供されている保険は、カリフォルニア州で提供されているものとはかなり異なっているという。この保険は、顧客のリアルタイムの運転行動をもとに保険料を算出する。他の保険会社が一般的に使用する、クレジット、年齢、性別などの情報は、Teslaにとってはどうでもいいことのようだ。Teslaによれば、顧客の保険金請求履歴や運転記録も考慮しないという。

その代わりにTeslaは、9月に同社がリリースした「フル セルフドライビング(FSD)」ベータ版で導入した機能である「セーフティスコア」を見ることにしている。そのため、ドライバーが道路上で遭遇する状況に応じて、支払う必要のある保険料が毎月変わる可能性があり、かなり複雑なことになるかもしれない。強いられた衝突警告やオートパイロット解除は、すべてスコアに影響する。また、危険な距離で他の車に追従したり、急ブレーキをかけたり、アグレッシブに角を曲がったりすると、スコアが下がる可能性がある。セーフティスコアは現時点ではまだベータ機能であり、Teslaは時間の経過とともに改善されるだろうと述べている。

現在、Teslaオーナーは見積もりを申し込むことができ、同社は90点のセーフティスコアを前提に保険契約を開始する。その後の価格は顧客のパフォーマンスに応じて決まり、従来のプロバイダーの料金よりも高くなることも低くなることもあり得る。Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、Teslaの株主総会で新たな本拠地が明らかにされた際に、カリフォルニア州で提供するサービスも、リアルタイムの運転行動に基づいてアップグレードする予定だと述べた。この変更を実装することはまだ許されていないが、現在、規制当局に許可を求めているという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Tesla

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

AuroraがSPAC合併を控えた戦略として自動運転トラック技術に光を当てる、テキサス州でテストを拡大中

テキサス州の州間高速道路45号線沿いに立つ、上部に「Aurora(オーロラ)」と白く巨大な文字で刻まれた広告看板は、謎めいたメッセージを投げかけている。「新しい運転方法の兆しが見えている」。

この道路を走る何千人ものドライバーの中でどれだけの人が、それが何を意味し、Auroraとは何かを知っているのかを見極めるのは難しい。自動運転車技術を手がける同社は(複数の競合企業と肩を並べ)AポイントからBポイントへの人や荷物の移動方法を恒久的に変えようとしているが、その知名度は低いといえよう。

しかし、ブランクチェックカンパニー(白紙小切手会社、SPAC)との合併により株式市場への参入を計画しているAuroraは、自社のプロダクトにスポットライトを当てた。報道陣、アナリスト、そしてPACCAR(パッカー)、Toyota(トヨタ自動車)、Volvo(ボルボ)などのパートナー企業に加え、既存投資家や潜在的な新規投資家を招き、自動運転トラックの乗車体験とともに同社の技術をより深く知る機会を提供した。同社はまた、テキサス州で新しいルートのマッピングとテストを開始することなど、同社のオペレーションに関する最新情報も共有している。

「Aurora Illuminated(オーロラ・イルミネイテッド)」と銘打ったこのイベントは、同社にとって幸先の良い時期に開催された。2017年にSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏、Drew Bagnell(ドリュー・バグネル)氏、Chris Urmson(クリス・アームソン)氏の3人によって設立されたAuroraは、Uber(ウーバー)の自動運転部門を買収したことで規模が倍増し、1年足らずで1600人を超える従業員を抱えるまでに成長している。

同社は、特別買収目的会社(SPAC)であるReinvent Technology Partners Y(リインベント・テクノロジー・パートナーズY)との合併を通じて130億ドル(約1兆4470億円)の評価額を持つ株式公開企業になろうとしている。この買収は7月に発表され、TechCrunchがそれより前の報道で確認していたものだが、2021年中に株主投票が行われる見込みだ。承認され次第、AuroraはNASDAQに上場する。同社はいずれの日程も公表していない。

関連記事:自律走行技術のAuroraがリード・ホフマン氏の最新SPACとの合併に向けて最終交渉中か

Auroraが本格的に「成功した」というのは、推定的で時期尚早である。しかし同社は、相当の資金調達、主要パートナーシップの確保、テストの拡充など、商業化に向けた多くのハードルを乗り越えている。また、Waymo(ウェイモ)や上場企業のTuSimple(トゥーシンプル)、さらにはGatik(ガティック)やKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)といった小規模スタートアップのような、豊富な資金と提携を持つ他企業が競合する自動運転トラックの勢力図でも、大きな進歩を遂げている。

進捗レポート

Auroraがテキサス州に初上陸したのは1年前のことだ。現在同社は、テキサス州のダラス、パーマー、ヒューストンのターミナル間のルートで、スパイシーなポテトチップスやスナックを製造するBarcel(バルセル)の荷物を運ぶための自動運転トラック(常にセーフティドライバー2名が同乗)を運用している。また、今月初めに発表されたパイロットプログラムの一環として、テキサス州ダラスとヒューストンの間でFedEx(フェデックス)の貨物輸送を開始した。FedExによると、Auroraの技術を搭載したPaccarのトラックは週に数回使用され、州間高速道路45号線沿いの500マイル(約804km)近くのルートを走行するという。

計画ではエルパソとサンアントニオにターミナルを追加し、西はフェニックスとロサンゼルスまで、南はラレドまで、東はニューオーリンズまで拡張する予定である。Auroraが構想しているネットワークは西部と東部の沿岸地域を網羅しており、最終的には米国全土を視野に入れている。

Auroraはテキサス州外への進出がいつになるかは明らかにしていない。同社は先頃、エルパソとダラスを結ぶ全長630マイル(約1014km)のルートの貨物輸送を含まない試験運行を開始したところだ。

共同創業者で最高プロダクト責任者のスターリング・アンダーソン氏によると、商品を輸送するルートにおいて、同社は常に割り当てられたタイムフレーム内に配送してきたという。

「これはすばらしい、エキサイティングなオペレーショナル・エクセレンスの事例です」と共同創業者で最高経営責任者のクリス・アームソン氏はイベントのインタビューで語っている。「長期的な展望として、ドライバーを乗せずに車両を運転できるようになったときにサービス時間の制限はなくなるでしょう。それは飛躍的な前進の瞬間です」。

画像クレジット:Aurora

乗車

TechCrunchが2回試した乗車は、テキサス州パーマーにある、Aurora所有のSouth Dallas Terminal(サウス・ダラス・ターミナル)の駐車場から始まった。

トラックはPeterbilt(ピータービルト)579で、Auroraの自動運転システムと統合され、Paccarの協力を得てカスタマイズされている。同社が「Aurora Driver(オーロラ・ドライバー)」と呼ぶこのシステムには、カメラとレーダーの他、LiDAR(ライダー)と称される、長距離および中距離の検知と測距を行う光学式レーダーセンサーが組み込まれている。長距離LiDARは、Blackmore(ブラックモア)を買収後に自社開発された。Auroraは同社にとって2つ目のLiDAR企業となるOURS Technology(アワーズ・テクノロジー)を買収済みだ。中距離LiDARセンサーは、非公開のサプライヤーから提供されている。

関連記事:自動運転のAuroraがLiDARスタートアップを買収、自動運転トラックの普及へ向け開発加速

冷却装置を備えた巨大なコンピューターがキャビン後部に配備されている。他にも、走行中の車両、目的経路、道中の画像分類などを表示するディスプレイがキャビン内に設置されている。車内にはセーフティオペレーター2名が待機。いわゆる操縦士は商用トラックの運転免許、すなわちCDL(商用運転免許証)を保有しており、目的経路の確認や呼び出しを行う副操縦士は、他の車両、歩行者、道路上の物体を監視するスポッターのような役割も果たす。

画像クレジット:Kirsten Korosec

「私たちは彼らを単なるテスターとは見ていません。技術に関すること、そして彼らがどのように感じるかということだけでなく、道路のルールについても、非常に優れたガイダンスやアドバイスを数多く提供してくれます」と、Auroraのパートナーおよびプログラム担当VPであるLia Theodosiou-Pisanelli(リア・テオドシユー・ピサネリ)氏はトラック乗車前のセーフティブリーフィングで語っている。「例えば、トラックのドライバーであればしないようなこととして、あなたは大きくターンすることを選んでいる、これはあなたのやり方である、これはあなたのオペレーション方式である、これは他のドライバーが想定するようなことである、といった指摘です。また、顧客が期待することを本当によく理解しています」。

すべてのオペレーターはAuroraの従業員であり、契約社員ではない。彼らは数週間にわたって、車両制御、防衛運転、そしてクローズドトラックでのシナリオ実践の訓練を受ける。12名の「操縦士」が6週間から8週間の訓練を終え、現在トラックに同乗している。他にも準備中の操縦士たちが控えている。

2回の試乗のいずれにおいても、トラックは始めから自動運転でターミナル区画から側道まで走行し、続いて州間高速道路45号線へのオンランプを通過した。45号線を13マイル(約21km)ほど走ってから、左に曲がって高速道路の下に入った。一時停止の標識の後、トラックはもう一度左に曲がり、州間高速道路に再び入ってターミナルに戻った。往復で約28マイル(約45km)の行程だった。

画像クレジット:Kirsten Korosec

この種のデモでAV技術の完全な評価を提供するのは難しいことだが、同社は実際にシステムの寸評を提供し、さらに重要なことに、企業がどのような「ドライバー」を開発しようとしているのかを伝えている。

Auroraの場合、会社は慎重なアプローチをとっている。同社のトラックは、高速道路で掲示制限速度が時速75マイル(120km)であっても、時速65マイル(約105km)を超えることはない。合流車両のスペースを確保するか、低速車両を追い越すため以外は、一番右の車線に留まる。また州の法律に基づき、車両が路肩に停車している場合は、常に他の車線に移動する。

Auroraはさらにセーフティオペレーターに対して、テオドシユー・ピサネリ氏が説明するように、作業員がいる稼働中の建設現場や、緊急車両がライトを点滅させて近づいてきたとき、そしてあらゆる「クレイジーな動作主体」に対応する場合に、手動制御に切り替えることを意味する「解除」を行うよう指示している。

「解除するときは常に、その体験から学習します」と同氏はいう。「私たちはオペレーターに、積極的に解除するよう伝えています。そのことが、体験から学ぶ能力にインパクトを及ぼすことはありません。シミュレーターを通して、システムが何をするかを見ることができるからです」。

同社によると、すでに路上走行距離は450万マイル(約724万km)を超え、仮想テストスイートでは数十億マイルを走行しているという。

筆者が乗車中、側道沿いの区間をセーフティオペレーターが一旦制御した。車道に停車していたピックアップトラックが前方に進入し、セミトレーラーの前を曲がろうとしているように見えたためだ。2回の走行の残りの部分では、トラックは自律的かつスムーズに走行し、減速した車両が前方に来たときには、やや積極的にブレーキをかけることができた。

彼らが示したもの

Tesla(テスラ)の発表イベントを彷彿とさせる、洗練された照明、カーペット、座席、装飾を備えた仮設構造の中で、同社はその戦略を明らかにするとともに、LiDARやシミュレーションを含む同社技術を説明する試作品や教育的資料を披露した。その目的は、2023年末までに自動運転トラック事業を展開し、2024年末には配車サービスを開始する計画の背景を示すことだった。

同社は2種類の試作車を公開した。最終的には世界中で物や人を自律的に移動させる車両を提供すると同社は説明する。Volvo VNL(ボルボVNL)トラックは、Volvo初の自動運転トラックの設計試作品で、商用生産を想定している。VNLの路上テストは2022年に開始される。

Auroraは量産向けのAV対応試作車 Toyota Sienna(トヨタ・シエナ)も紹介した。Auroraは自社のAVシステムをこの車両に統合しており、ピッツバーグ、サンフランシスコのベイエリア、そしてテキサスで、約10台の車両をテストおよび検証用に配備する予定だという。

この先にある道筋

Auroraは将来のパートナーについて話す準備はできていなかった。しかし戦略的に言えば、市場は巨大であるとアンダーソン氏は指摘し、次のように語った。「多くのプレイヤーが存在しており、その多くと話をしています」。

2人はテレアシスタンス技術についても詳しく触れた。これは、人間がオフサイトのロケーションモニターを使って、必要に応じて自動運転車に経路計画の指示を送るというもので、これまで詳細には語られていなかった。

「当初から、技術の一環としてテレアシストを考えていました」とアームソン氏。

「端末の内部や周辺で起きていることを、極めて微細な粒度でモデル化しました」とアンダーソン氏はこれまでの進捗について語り、すべてのステップをチャート化したことに言及した。「私たちは、エンド・ツー・エンドのサポート要件が何であるかを十分に理解しています。トラックにドライバーが乗っていないときに、どのくらいの頻度でテレアシスタンスイベントやロードサイドアシスタンスが必要になるかについて、これから明らかになっていくでしょう」。

アームソン氏とアンダーソン氏は、同社がクローズドトラックや公道でテレアシスト技術をテストしており、商業運転に最適なアプローチを決定するためにパートナーと協働していくことを明言した。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

イーロン・マスク氏がテスラ本社のテキサス州オースティン移転を発表

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、同社の本社をカリフォルニア州パロアルトから、最近テック企業やリモートワーカーが急激に増えているテキサス州オースティンに移転すると発表した。マスク氏はこのニュースを、2021年のTesla, Inc.年次株主総会でアナウンスした。この総会は、例年のようにベイエリアではなく、Teslaのオースティンにあるギガファクトリーで行われた。

また、マスク氏は、Teslaは今後もカリフォルニア州での活動を継続的に拡大し、フリーモントのギガファクトリーの生産量を50%増加させると述べたが、どのようにしてそれだけの生産量増加を実現するかについては詳しく説明しなかった。同工場では現在、年間約50万台のModel 3(モデル3)とModel Y(モデルY)、さらに年間約10万台のModel S(モデルS)とModel X(モデルX)を生産することが可能だ。

Teslaは2020年5月、新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するために、必要不可欠とみなされない事業を制限して、カリフォルニア州フリーモントにある同社の製造施設を閉鎖するよう命じられたことをめぐり、同州アラメダ郡を提訴し、自分の事業を州外に持ち出すと脅していた。同社はわずか2週間後に訴訟を取り下げたが、マスク氏は確かに気が立っており、こうツイートした。「率直に言って、堪忍袋の緒が切れた。Teslaは今後、本社と将来のプログラムを直ちにテキサス州かネバダ州に移すだろう。もしフリーモントの生産活動を維持するとしても、それはTeslaが今後どのように扱われるかにかかっている。Teslaはカリフォルニア州に残された最後の自動車メーカーだ」。

関連記事:テスラ工場の再稼働阻止を受け「本社と将来の事業基盤をカリフォルニアからテキサスかネバダに移す」とマスク氏

マスク氏は今回の株主総会では、アラメダ郡とのドラマについては触れなかった。むしろ、テキサス州への移転は、労働者にとってよりアクセスしやすい場所にあることが理由の1つだとしている。

「家を買うのも大変だし、遠くから通勤せねばならず大変です」とマスク氏は述べた。「ベイエリアでは、工場の規模を大きくするのには限界がある。オースティンでは、工場は空港からものの5分くらい、ダウンタウンからは15分のところにあります」とも。

同氏は、Teslaはコロラド川に近いオースティンの敷地に「エコロジカルパラダイス」を建設することを計画していると述べた。

イベントの中でマスク氏は、Cybertruck(サイバートラック)に関する最新情報も提供し、2022年末に生産を開始し、2023年には「量産」すると述べた。Tesla Semi(セミ)とRoadster(ロードスター)は2023年末までに生産が開始され、それに続くことになる。

マスク氏は遅延の理由として、継続的な半導体不足を含む複数のサプライチェーン問題を挙げている。

「特にSemiは多くのセルが必要で、たくさんのセル(と)チップを必要とします」と同氏は述べた。

Teslaは2017年にSemiのプロトタイプを、そして2019年にCybertruckを発表したが、両モデルともその後度重なる延期に直面しており、常にサプライチェーンの問題が挙げられている。

関連記事:テスラがセミトラックの発売を2022年に延期、Cybertruckの遅延も示唆

マスク氏が車両生産の状況を説明する前に、株主総会ではさまざまな議案が決議された
Institutional Shareholder Servicesが反対票を投じたにもかかわらず、マスク氏の弟であるKimbal Musk(キンバル・マスク)氏、21st Century Fox(21世紀フォックス)の元役員でメディア界の大物Rupert Murdoch(ルパート・マードック)氏の息子であるJames Murdoch(ジェームズ・マードック)氏が取締役に再選された。

株主会は、2021年12月31日に終了する会計年度におけるテスラの独立登録会計事務所としてのPricewaterhouseCoopers(プライスウォーターハウスクーパース)の任命を批准することを含め、ほぼすべての議題についてTeslaの取締役会の提案を承認した。しかし、投資家たちは3つの提案項目について取締役会の勧告に反した。通常、株主らはTeslaが設定したラインに沿って投票するが、2021年、投資家たちはTeslaの取締役を3年ごとではなく1年ごとに再選に立候補させることを決議した。

また、株主総会では、Teslaが従業員の多様化に向けた取り組みについて、より詳細な情報を公表することを求める決議がなされた。これは、Teslaが、フリーモントにあるEV工場での差別や人種的虐待を容認していたと告発した元黒人契約社員のOwen Diaz(オーウェン・ディアス)氏に、1億3700万ドル(約151億円)の損害賠償を支払うよう命じられた2日後のことだ。

関連記事:テスラに人種差別訴訟で151億円の支払い命令

Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)が出資する責任投資会社Calvert Research and Managementの副社長兼コーポレート・エンゲージメント・ストラテジストであるKimberly Stokes(キンバリー・ストークス)氏は「多様性に富んだインクルーシブなチームがより多くのイノベーションを支えることは、リサーチで明らかになっています」と述べた。「Teslaの2020年DEIレポートには、投資家が同社のパフォーマンスを長期的に同業他社と比較するのに、十分な量的・質的情報がありません。この報告書で1つ明らかになったのは、Teslaの顧客基盤が進化し、より多様化している中で、マイノリティの従業員が過半数を占めているにもかかわらず、テスラのリーダーシップは83%が男性、59%が白人であるということです」とも。

Calvertの提案では、Teslaに対し、人種と性別の包括的な内訳を含む、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに関する年次報告書の発行を求めている。

画像クレジット:Mason Trinca for The Washington Post / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

アップルは社内メモでテキサス州の妊娠中絶法に対する法的な異議申し立てを監視していると発表

米国時間9月16日、Apple(アップル)は社員専用のメッセージボードで、同社が最近テキサス州で成立した、同社のいう「特異な制限のある妊娠中絶法」に対する法的異議申し立てを監視していると述べた。AppleはTechCrunchに対して、そのメッセージは本物だと認めている。

「我々は、テキサス州独特の制限がある中絶法に異議を唱える法的手続きを積極的に監視しています。その間、Appleの福利厚生は包括的であり、従業員が自分の州で医療を受けられない場合は州外に出て医療を受けることができることを思い出してほしい」と、署名のないメモには書かれている。

この新法は、州内で行われる大部分の中絶を実質的に禁止するもので、現在、様々な方法で法的に争われている。ここ数日、テクノロジー業界内外の企業が相次いでこの法律に反対する姿勢を見せている。Salesforceは、テキサス州でのリプロダクティブケア(性と生殖に関するケア)へのアクセスに懸念を抱く従業員に対し、同法施行後の移動を提案している。また、テキサス州を拠点とするMatch GroupとBumbleは、州外でのケアを必要とする従業員の旅費を負担するという申し出を行っている。

このメッセージでは、法案に積極的に反対するためにAppleのさらなる行動については詳しく述べられていないが、Appleは「従業員がリプロダクティブヘルスに関して自分で決断する権利」を支持していると述べている。

Appleはテキサス州オースチンの数千人規模のキャンパスを持ち、その他にも州内にさまざまな製造工場やApple Storeを展開している。

メッセージの全文は以下のとおりだ。

女性のリプロダクティブヘルスケアについてのメッセージ

Appleでは、従業員がリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)について自ら決定する権利を支持しています。

私たちは、テキサス州の独特な制限のある人工妊娠中絶法に異議を唱える法的手続きを積極的に監視しています。一方で、Appleの福利厚生は包括的であり、従業員が自分の州で医療を受けられない場合は州外に出て医療を受けることができることをお伝えしたいと思います。あなた自身やあなたの扶養家族のケアについてサポートが必要な場合は、医療保険会社が秘密裏に支援してくれます。

みなさんの健康と幸福はAppleの最優先事項です。みなさんとみなさんの家族がAppleが提供する医療サービスを受けられるよう、今後もできる限りの努力を続けていきます。

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラはテキサス州の中絶禁止法に対して声を上げるべきだ

9月第1週目の週末、ある読者が編集部に宛てて、テキサス州が先週可決した中絶禁止法について、なぜテック企業が声を上げるべきなのかを礼儀正しく尋ねてきた。

この読者は「アメリカン航空が中絶と何の関係があるのか」と述べ、企業が中絶賛成派と中絶反対派の両方に対応することは不可能であり、自分たちのビジネスとは無関係な問題に立ち向かうことを求めれば、米国の政治化を助長するだけだとの見方を示した。

この見方は広く受け入れられている。米司法省は米国時間9月10日、この法律に異議を唱える決定を下し、Merrick Garland(メリック・ガーランド)司法長官が「明らかに違憲である」と表現したことは、その見方を補強するものだ。結局のところ、ローンスター・ステート(テキサス州)で起こったことに反発すべきなのは、企業ではなく議員なのではないか、ということだ。

だが、テック企業、特にTesla(テスラ)が陰から現れ、この法律を打破すべき理由は他にもある。

妊娠中絶の制限が雇用側の医療費増加につながることは事実だが、テキサス州の法律がテック企業に特に大きな影響を与えるとすれば、雇用へのインパクトだ。社会的企業であるRhia Venturesの調査によると、女性の60%が、中絶へのアクセス制限を試みる州で職につくことを躊躇すると答えている。男性は、かろうじて過半数が同じ回答だった。

テキサス州の中絶禁止法はまた、テック企業に警鐘を鳴らす超法規的な執行メカニズムを生み出す。新法は、中絶手術を行った人だけでなく、故意か否かを問わず、女性が中絶をするのを手助けした人を、その中絶と直接の関わりをもつかどうかにかかわらず、私人が訴えることができる。さらに、原告が勝訴した場合、多額の金銭的な見返りを得る。各被告は1万ドル(約1億1000万円)に加え、関連費用や原告の弁護士報酬を負担することになる。

この判例が、消費者のプライバシーなど、テック企業が関わる問題に適用された場合を想像して欲しい。ヒューストン大学法律センターのSeth Chandler(セス・チャンドラー)教授は、米ABCニュースで今週次のように話した。「SB8(中絶禁止法)が開発したレシピは、妊娠中絶に限られるものではありません。人々が好まないあらゆる憲法上の権利に利用することができるのです」。

テック企業は、テキサス州の妊娠中絶の議論に横槍を入れることは、政治的には電線に触れるのと同じことだと主張するかもしれないし、その見方に共感するのは簡単だ。Pew Research(ピューリサーチ)によると、米国の約10人に6人が「すべての場合、またはほとんどの場合、中絶は合法であるべきだ」と答えているそうだが、どちらの側も感情が高まっている。

それでも、企業はこれまでも物議を醸すような問題に対し、自社の価値観を守るために安全を確保しつつも立ち上がってきたし、企業の圧力が有効であることも示してきた。2016年には、Apple(アップル)やCisco(シスコ)、そしてアメリカン航空を含む約70社の大手企業が、トランスジェンダーの人々が自分の性自認に合った公共トイレの使用を禁止するノースカロライナ州の法律を阻止する法的活動に参加した。この法律は「不当な差別」を容認するものであり、企業の多様な労働力を確保する能力を損なうと主張したのだ。厳しい経済的影響に直面し、2017年までにこの禁止法案は撤回された

Lyft(リフト)、Uber(ウーバー)、Yelp、(イェルプ)Bumble(バンブル)などのひと握りのCEOらは、すでにテキサス州の新法に反対する、公的にはっきりとした立場をとっている。一方、Salesforce(セールスフォース)は9月10日、Slackメッセージで従業員に、もし自分自身やその家族が今、リプロダクティブ・ケア(妊娠・出産・避妊などに関するケア)にアクセスできるかどうかを心配しているのであれば、会社は引っ越しを支援すると伝えた。

Teslaのような企業は、同州の政治にさらに大きな影響を与える可能性がある。Elon Musk(イーロン・マスク)氏による同州への移転は、当地のテックシーンにおける関心に火をつけた。テキサス州のGreg Abbott(グレッグ・アボット)知事は、マスク氏の影響力を強く認識しており、新法が成立した翌日には、マスク氏が同州の「社会政策」を支持していると述べた。

スターベースと呼ばれる新都市を建設する計画や、Tesraが地域の電力会社になる計画など、テキサス州で多くの金銭的な利害関係があるマスク氏は、これまでのところ、この法律についての見解を明らかにしていない。この問題について聞かれ「一般的に、政府は国民に自分の意志を押し付けることはまずすべきではなく、そうする場合には国民の累積的な幸福を最大化することを目指すべきだと考えています」と答えた。また「政治には関わりたくない」とも述べた。

その考えは間違っている可能性がある。フロリダ州やサウスダコタ州など、少なくとも7州の議員や幹部が、テキサス州の新法をクローズアップして検討しており、同様の法令を検討していると述べているからだ。

2019年5月には、Twitter(ツイッター)のJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏やBloomberg(ブルームバーグ)のPeter Grauer(ピーター・グラウアー)氏を含む200人近くのCEOが、中絶禁止はビジネスに悪影響を及ぼすと宣言するニューヨーク・タイムズ紙の全面広告に署名した。広告には「中絶を含む包括的なリプロダクティブ・ケアへのアクセスを制限することは、従業員や顧客の健康、自立、経済的安定を脅かす」とある。

もしマスク氏が、政府は「国民に自分の意思を押し付けることはない」と本当に信じているのなら、連邦政府が長期にわたる苦しい戦いをしている間に、テキサス州でも公の場に立つべきだ。そうすることで同氏が失うものはほとんどなく、得るものは大きい。

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画像クレジット:emptyclouds / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

テキサス州「密告サイト」の運営元、中絶反対団体Texas Right to Lifeが求職者の履歴書を流出

妊娠中絶反対団体「Texas Right to Life」は、同団体ウェブサイトのバグにより、サイト上の保護されていないディレクトリに保存されていた履歴書に誰でもアクセスできるようになっていたことで、数百人の求職者の個人情報が流出した。

セキュリティ研究者がTechCrunchに語ったところによると、主にWordPressで構築されている同団体のメインウェブサイトでは、ウェブサイト上のファイルストレージが適切に保護されておらず、300人以上の就職希望者の履歴書や、ウェブサイトにアップロードされたその他のファイルの保存に使用されていたとのこと。それらの履歴書には氏名、電話番号、住所、各個人の職歴の詳細などが含まれていた。

このウェブサイトのバグは、流出の詳細がTwitter(ツイッター)に投稿されてからしばらく後の先週末に修正された。同団体のウェブサイトには、流出したファイルは現在掲載されていない。

Texas Right to Lifeの広報担当者であるKimberlyn Schwartz(キンバリー・シュワルツ)氏は、TechCrunchの取材に対し「情報を探し出して広めた」人々(行為者)について「関係者を保護するために行動を起こしている」と述べた。

シュワルツ氏は、セキュリティの不備によって個人情報が流出した人々に組織がその事実を通知する予定があるかどうかについては言及しなかった。

Texas Right to Lifeは先週、テキサス州の住民に、同州の新しい中絶禁止法に違反して中絶を求めている人がいたら報告するよう促す「内部告発」サイトを公開し、怒りを買っていた。この新法では、中絶を希望する人や、受胎後6週間以降の中絶を「ほう助」した人を誰でも訴えることができる。この条項は、中絶手術を行う医師だけでなく、中絶費用を支援する人、友人をクリニックに連れて行ったりするような関係者も対象になると広く解釈されている。

抗議の声が上がるのに長くはかからず、この「内部告発」サイトには、偽の情報やミーム、シュレックのポルノなどが殺到した。9月2日にサイトは一時的に停止したが、これはある活動家が同ウェブサイトのフォームに偽の情報を事前入力してあるiOSショートカットを公開したのと同じ日だった。

しかしその週末、ウェブサイトをホスティングしていたGoDaddyはTexas Right to Lifeに対して、このサイトが利用規約に違反していると指摘し、24時間以内に別のホストを探すようにと指示した。その結果、極右ソーシャルネットワーク「Gab」などの物議を醸したサイトを支援しているウェブホストEpikを介して、同団体は一時的にサイトを復旧させることができた。しかし、それも長くは続かなかった。

米国時間9月6日の時点で「内部告発者(whistleblower)」ウェブサイトは、Texas Right to Lifeのメインサイトに転送されるようになっている。

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画像クレジット:Sergio Flores / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

テスラがテキサス州での電力販売を計画

8月中旬にテキサス州の電気規制当局に提出された申込書によると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏のTesla(テスラ)は電気自動車、ソーラーパネル、蓄電バッテリー以外にも目を向けていて、いま顧客に直接給電したいと考えているようだ。この申し込みについてはEnergy Choice Mattersが最初に報じた。

2021年8月16日テキサス州の公共事業委員会に提出された申込書は、Teslaの子会社Tesla Energy Venturesのもとに、いわゆる「電力小売事業者」(REP)になるためのものだ。規制緩和されたテキサス州独自の電力マーケットでは、REPは通常、発電事業者から卸電力を購入し、顧客に販売する。現在、REP10社以上が公開市場で競合している。

Teslaはまた、同州でいくつかの実用規模バッテリーの申し込みも提出した。オースティン周辺に立地するギガファクトリー近くにある250メガワットバッテリーとヒューストン近くの100MWのプロジェクトだ。これらのプロジェクトは電力供給会社になるという取り組みとは関連がないが、全体として同社のエネルギー事業の野心的なロードマップを露わにしている。

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想像して欲しい。Teslaが顧客に電気を販売するだけではなく、ブローカー顧客がTeslaのPowerwallやソーラーパネル製品からの余剰エネルギーを電力網に販売できるかもしれないのだ。明らかに、あらゆる家庭を分散型発電所に変えるというマスク氏のビジョンを実現する1つの方法だ。

公共事業委員会へのこの最新の申し込みの6カ月前、前代未聞の大雪によってテキサス州の送電網の大半が何日間も停止し、何百万人という人が氷点下の数日間を電力なしで過ごすことを余儀なくされた。このウィンターストーム後にREP数社が事業をたたんだ。こうした企業は卸電力の価格をメガワットアワーあたり9000ドル(約99万円)にしていた(季節平均価格は約50ドル、約5500円だ)。

ボカチカにあるSpaceXの広大な施設を含め、多くの事業をカリフォルニアからテキサスに移したマスク氏は当時、Twitterでテキサス州の送電事業者を批判していた。

マスク氏は、テキサス電気信頼性評議会は「Rを獲得していない」と述べ、頭字語でR(Reliability、信頼性)に言及していた。

Tesla Energy Venturesは公共事業委員会に、同社のモバイルアプリやウェブサイトの活用を含め、販売促進するのにTeslaの既存のエネルギー部門を使うと伝えた。「具体的には、(Tesla Energy Venturesは)Tesla製品を所有している既存顧客をターゲットとし、モバイルアプリとTeslaウェブサイトを通じて顧客に小売を販促します」と申込書には書かれている。「TeslaモバイルアプリとTeslaウェブサイトに加えて、申込者の既存の『Tesla Energy Customer Support』組織は顧客獲得の取り組みにおいて顧客サポートとガイダンスを提供するよう訓練されます」。

Ana Stewart(アナ・スチュアート)氏がTesla Energy Venturesの社長となっている。スチュアート氏は2017年からTeslaで規制クレジット取引担当ディレクターを務めている。その前は同氏はTeslaが買収したSolarCity(ソーラーシティ)で働いていた。

申し込みの整理番号は52431だ。

画像クレジット:Darrell Etherington

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Waymo Viaがテキサス、アリゾナ、カリフォルニア州で自動運転トラックのオペレーションを拡大中

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門であるWaymo(ウェイモ)は、テキサス州、アリゾナ州、カリフォルニア州での自動運転トラック事業を本格的に拡大するために、ダラスにトラック専用のハブを建設し、車両マネジメントサービスでRyder(ライダー)と提携するという2つの動きを行っている。

このニュースは、Waymoが自動運転プラットフォームWaymo Driver(ウェイモ・ドライバー)とそのチームの継続的な成長のために、25億ドル(約2754億円)の資金調達を発表してからわずか2カ月後のことだ。同社の広報担当者によれば、Waymoは、クラス8のトラック(約15トン以上)に搭載した第5世代のDriverのテストを強化していて、テキサス州ヒューストンとフォートワースを結ぶ州間高速道路45号線に沿ってJ.B. Hunt(J.B.ハント)などの運送業者の貨物を運搬し、Daimler Trucks(ダイムラートラック)と協力して堅牢なレベル4車両プラットフォームを開発しているという。Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会)によると、レベル4の自動運転とは、あらかじめ設定されたエリア内限定なら人間がいなくても、車が自動運転可能であることを意味している。

関連記事:Waymoが米テキサスで自動運転トラックのテストを物流大手J.B. Huntと共同実施へ

Waymoは、国内で最も忙しい地域の1つにサービスを提供するために、ダラス・フォートワースに、同社の自動運転トラック事業であるWaymo Via(ウェイモ・ビア)専用の9エーカー(約3万6000平方メートル)の新しいトラック輸送ハブの建設をすでに開始している。このハブは商用利用のためにデザインされており、同社がこの地域で規模を拡大し、より大規模で複雑な自動運転テストを実施する際には、何百台ものトラックを収容することが期待されている。Waymoは、このハブはテキサス州での事業をI-45(高速45号線)に沿って、I-10とI-20の間に展開するのに役立つとしている。この場所は、州境を越えた長距離路線をサポートし、Waymoのフェニックスのオペレーションセンターと連携するのに適した場所だ。Waymoは、来年の前半にこの施設に入居する予定だという。

ここで、Ryderとのパートナーシップの出番だ。ダラスのハブは、Waymo Driverのテストを行うだけでなく、Waymo Driverが幹線道路を走って、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担当できるようにするための、自動運転と手動運転を組み合わせた高速道路の近くにあるトランスファーハブモデルをテストするための中心的な拠点となる。このモデルを拡大するには、高度な組織化が必要だが、Ryderの車両マネジメントサービスと、500以上の施設で標準化された車両メンテナンス技術が、その役目を果たしてくれるはずだ。

このパートナーシップには、新しいダラスの施設を含むWaymo Viaのすべてのハブとテストサイトにおける車両のメンテナンス、検査、ロードサイドアシスタンスが含まれている。Ryderの規模と影響力、そしてWeymoの自動運転車両データへのアクセスを使って、両社は自動運転トラックのメンテナンスと最適化されたパフォーマンスの青写真作りにも取り組んでいく。

Ryderのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)で新製品開発責任者でもあるKaren Jones(カレン・ジョーンズ)氏は「このパートナーシップは、当初は車両メンテナンスに焦点を当てていますが、自動運転トラックの大規模展開を成功させるために、自動運転トラックの運用面で協力する機会はたくさんあると考えています」と述べている。「すでに、トラックのサービス性や、近い将来に計画しているトランスファーハブモデルに最適化できるように、Waymoのダラスの新施設のレイアウトやデザインについて協力しています。クラス8トラックの自動運転技術は急速に展開していて、Ryderはトラックの整備だけでなく、自動運転にともなう独自の物流管理においてもリーダーとなる準備を進めています」。

関連記事:Waymoは「自動運転」という表現をもう使わないと宣言するが業界には賛否両論

画像クレジット:Waymo

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

Waymoが米テキサスで自動運転トラックのテストを物流大手J.B. Huntと共同実施へ

Waymo(ウェイモ)は、輸送・ロジティクスの主要顧客であるJ.B. Hunt Transport Servicesのために貨物を運搬する計画だ。2社がいう「テストラン」が米国で最も交通量が多い商業回廊で実施される。

Waymoのトラッキングと貨物輸送サービスWaymo Viaが州間高速道路45号線を使ってテキサス州のヒューストンとフォートワース間で荷物を輸送する。トラックはWaymo Driver自動走行プラットフォームで動くが、Waymoの「自動走行スペシャリスト」、ライセンスを持つトラックドライバー、そしてソフトウェア技術者がオペレーションをモニターするために各トラックに乗り込む。

J.B. Huntと、Alphabet傘下のWaymoが協業するのは今回が初めてではない。両社はここしばらく自動走行トラックの試験展開のために準備してきたようだ。

「我々はここしばらくオペレーションとマーケット調査でJ.B. Huntと緊密に連携を取っていて、自動走行テクノロジーを展開するために今後も協業を続けます」とWaymoはブログへの投稿で述べた。「長期の準備に備えて、通常のメンテナンスのための最善のプラクティス、今後の施設レイアウトがどのようなものか、どのレーンが自動走行テクノロジーに最適かなどを探ります」。

Waymoはこのテストランで何台のトラックを使用するのかTechCrunchと情報を共有するのは却下したが、広報担当は「どのように協業できるか、共同で長期計画を立てるという目標を持った」期間限定のパイロットとなる、と話した。

Waymo Driverはレベル4プラットフォームであり、理論的に人間のセーフティドライバーが運転席に乗り込まなくても走行できるが、それは(天候がいいなど)特定の条件下に限定される。

WaymoはDaimlerトラックにWaymo Driverを搭載するためにDaimler Trucksとも提携した。この他に電動ロボタクシーの開発でVolvoと、自動貨物バンの開発でFiat Chrysler Automobilesとも提携している。

関連記事:Waymoとボルボが電気ロボタクシー開発で「独占」提携

カテゴリー:モビリティ
タグ:Waymoロジスティクステキサス自動運転トラックJ.B. Hunt

画像クレジット:Waymo

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

スタートアップハブとして急成長中のオースティンの展望について地元VC6社に聞く

ここ数年、テキサス州オースティンに本社を移転したり、支社やキャンパスを開設したりするテック企業(大小含め)が増えている。こうした企業がオースティンに惹かれる要因はさまざまだが、主な要因として、のんびりしたライフスタイル、州税が課税されないこと、ビジネスにやさしい環境、(今のところは)低い生活費などが挙げられる。

この動向がオースティンのスタートアップエコシステムに与える影響は著しく、この都市を本拠地とする起業家(その多くはオースティンで著名なテック大手各社で働いた経験がある)や投資家が増え続けている。

全米で大きく報道されたように、Tesla(テスラ)がオースティンに巨大工場の建設を予定していることや、Oracle(オラクル)が本社をオースティンに移転すると発表したことは記憶に新しい。

また、急成長しながら成熟度を増しているスタートアップシーンや、加熱気味で競争の激しい住宅市場などベイエリアとの類似点も多い。

そのような中、ベンチャー投資家たちはいくつかの重要な投資分野を見出している。かつて、オースティンでは主に大手企業向けソフトウェアの開発が行われていた。ソフトウェア開発は今でも重要な分野だが、CGP(消費者向けパッケージ商品)や不動産テックなど、他にも多くの分野が成長している。

この記事では、オースティンでトップクラスのVCを対象に実施したアンケート調査の結果と、これらのVCが考えるオースティンのエコシステムの展望について紹介する。

以下のVC投資家たちが、TechCrunchのインタビューに応じてくれた。

  • Eric Engineer(エリック・エンジニア)氏、S3 Ventures(S3ベンチャーズ)
  • Morgan Flager(モーガン・フラジャー)氏、Silverton Partners(シルバートン・パートナーズ)
  • Joshua Baer(ジョシュア・ベーア)氏、Capital Factory(キャピタル・ファクトリー)
  • Carey Smith(キャリー・スミス)氏、Unorthodox Ventures(アンオーソドクス・ベンチャーズ)
  • Krishna Srinivasan(クリシュナ・スリニバサン)氏、LiveOak Venture Partners(ライブオーク・ベンチャー・パートナーズ)
  • Zaz Floreani(ザズ・フロレアーニ)氏、Next Coast Ventures(ネクスト・コースト・ベンチャーズ)

オースティンのスタートアップシーンは今後5年でどのように変わっていくと思いますか。オースティンはここ数年広範な分野の人材を惹きつけており、最近では、テック大手やスタートアップもこの町に移転してきています。これらの要素が組み合わさって、どのような相乗効果が生まれると思いますか。

S3ベンチャーズのエリック・エンジニア氏は、テキサス州のスタートアップエコシステムは、2030年までには全米第二位の規模になると確信している。

「テックエコシステムは好循環の恩恵を受けています。多くの優秀な人材がテキサス州に移ってくるにつれて、資本の流入量も多くなり、結果としてさらに人材が惹きつけられるという具合です」と同氏はいう。

創業16年目のシルバートン・パートナーズに在籍するモーガン・フラジャー氏によると、シルバーストーンは16年前の創業以来、テキサス州最大のVC企業として、オースティン、およびテキサス州全般に常に重点的に投資してきたという。

「当社はいつでも、オースティンが繁栄すれば当社も繁栄するという考えでビジネスを展開してきました」と同氏はいう。「しかし当社は一組織にすぎません。今では多くのVCがオースティンに移転して投資活動を行っており、それぞれが、この町のエコシステムを改善し発展させるために自身の役割を果たそうと考えています。成功のために不可欠な要素は、すでにオースティンを魅力的な場所にするための役割を担っている『コミュニティコラボレーション』という既存の理念を育み続けることです。オースティンの人たちは、人の成功はコミュニティの成功によってもたらされると考えています。コミュニティの成功のために人の成功を犠牲にすることは良しとしません。成長の過程でこの中核理念を維持し続けていれば、オースティンにはすばらしい未来が待ち受けているでしょう」。

キャピタル・ファクトリーのジョシュア・ベーア氏は、オースティンが今後5年の間に「前途有望な」都市ではなく実際に「成功した」都市となり、第2階層のトップの都市ではなく、競争の激しい第1階層の都市に昇格すると確信している。そう予測させる2つの予兆として、同氏は、Aceable(エーサブル)、Apptronik(アプトロニック)、Disco(ディスコ)、Eagle Eye(イーグルアイ)、Everlywell(エバリーウェル)、ICON(アイコン)、Zen Business(ゼンビジネス)といったオースティン本拠のユニコーン企業からなる新しいコホートと、大手VC企業といえばAustin Venturesしか存在しなかった時代以来、オースティンが経験したこともないような大規模なシリーズAラウンドが実施されていることを挙げる。

Unorthodox Ventures Founding Contrarian(アンオーソドクス・ベンチャーズ・ファウンディング・コントラリアン)のキャリー・スミス氏は、現在の状態を特徴付けるだけでも十分に難しいとして、5年後を予測することは控える。

「規模を問わず多数の企業がさまざまな事業を展開しており、成長とイノベーションという言葉以外に統一された特徴というものが見当たりません。どの方向へも発展する可能性があると思います」と同氏はいう。

ライブオーク・ベンチャーズのスリニバサン氏は、驚くほど多数のフォーチュン500社企業がテキサス州を本拠としているため、エネルギー、ヘルスケア、不動産、ホスピタリティ、小売などの主要産業に精通した人材が豊富に存在すると指摘する。

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「こうした分野の知識に加えて、テック大手やスタートアップのテック関連人材が急増しているため、すでに相乗効果が現れており、起業家活動がさらに加速しています」と同氏はいう。「テック大手の人材とすでに進行中のスタートアップエコシステムの継続的成熟に加えて、今後数年間で、さらに多くの信じられないカテゴリーのリーダーたちが登場してくるでしょう。そのため、オースティンのスタートアップシーンはかつてないほど高速な成長を遂げる態勢が整っています」。

ネクスト・コースト・ベンチャーズのフロリアーニ氏は、今後5年間で、オースティンは現在の市場が成熟期を迎え、6社のユニコーン企業が誕生し、6社のスタートアップが株式を公開する可能性があると予測する。

リモートワークによってグローバルな労働力が活用されるようになっています。その結果、一部のオフィスはオースティンから姿を消しています。オースティンに移転してくる企業が増える一方で、世界中の企業の社員としてリモートワークする地元の人材も増えています。こうした要因はオースティンのテック革命にどのような影響を与えるとお考えですか。

S3ベンチャーズのエリック・エンジニア氏は、有能な人材がオースティンを選ぶのは、仕事面だけでなく、ライフスタイル面でのメリットが関係しているという。リモートワークによって、従業員の週あたりの通勤日数が少なくなるため、いわば「オースティンの成長痛」となるものを一部和らげることができると同氏は確信している。これにより、継続的な成長に対処するために必要な交通インフラを整備するために必要な時間を稼ぐことができると同氏はいう。

シルバートン・パートナーズのフラジャー氏は、リモートワークによって、住みたい場所と仕事を得るために住む必要がある場所について、労働者の選択肢が広がるため、競争の場がいくらかシフトすると考えている。また、労働者の自由度が増し、特定の作業の効率は上がるものの、ほとんどの役割では、リモートワークを対面のやり取りで補うハイブリッドソリューションが必要になると同氏は考えている。「ありがたいことに、オースティンには両方の環境が揃っています。生活するには魅力的な場所ですし、テックコミュニティも急速に成長しています」と同氏はいう。「それはオースティンに大量の人材が流入している理由の1つでもあります」。

ジョシュア・ベーア氏は、人はどこでも働けるが、実際にどこでも働こうする人はいないと思っている。他の場所に比べてずっと多くの人材を惹きつける勝ち組となる都市がいくつか登場するだろうが、オースティンは、次の5年間でテック関連の人材の流入に関して、勝ち組の都市の1つになるだろう。「オースティンに本社を移転する企業が増えており、本社は別の都市にあるがオースティンのオフィスで働くことを選択する人が増えると思います」と同氏は予測する。

アンオーソドクス・ベンチャーズのキャリー・スミス氏は、リモートワークはうまくいかないと考えており、オースティンでも長期的には機能しないと思っている。パンデミックの初期に短期間だけ在宅勤務を経験した同氏は、同僚とのつながりが非常に弱くなったと感じたという。また、リモートワークでは、単純な作業でも随分と複雑になってしまうため、通常勤務よりも忙しくなったという。

「私はずっと顔を突き合わせた会議でやってきたし、オフィスの喧騒が好きなのです。オフィスで仕事をすることで皆、モチベーションが維持されます」とスミス氏はいう。「要するに、オフィスは車輪を回し続けるための潤滑油のようなものです。オースティンでイノベーションを推進し続けるためにはオフィスが必要不可欠だと思います」。

オースティンでは(もしくはオースティン以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、オースティンで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

S3ベンチャーズは過去15年間、主にB2Bソフトウェア企業に投資してきた(同社のポートフォリオ企業の3分の2はB2B業界の企業)が、消費者デジタルエクスペリエンスやヘルスケア業界でもイグジットを成功させている。

「テキサスの経済は信じられないくらい多様性に富んでおり、技術イノベーションも広範囲にわたります」とエンジニア氏はいう。「これまでデジタル化が遅々として進まなかった多数の業界(金融サービス、不動産、医療、教育、専門職、ホスピタリティ、工業、エネルギー、製造)で全組織にわたってクラウドベースのソリューションが受け入れられるようになっています」。

シルバートン・パートナーズはこれまで業界を選ばないファンドとしてやってきた。しかし、フラジャー氏によると、今、無視するのが難しいさまざまな混乱が生じているという。「とりわけ、デジタルヘルス、フィンテック、インシュアテック、教育の分野で急速なディスラプションが起こっている」と同氏はいう。「これらの巨大産業では今、戦略が書き換えられているため、当社としては将来の展望について確固とした視点を備えている起業家を探しています」。

キャピタル・ファクトリーのジョシュア・ベーア氏は、オースティンのスタートアップシーンは多様性に富んでおり、その多様性がこの都市の活気を維持していると考えている。「テック業界で起こっているホットなトレンドは、オースティンでも起こっている」と同氏はいう。最近、大きなトレンドとなった分野として、人工知能、機械学習、消費者向けパッケージ製品、ドローン、eコマース、ヘルスケア、マーケットプレイス、ロボティクス、SaaSなどがある。

アンオーソドクス・ベンチャーズのキャリー・スミス氏によると、同社は、実際の問題を解決する目に見える製品を作る会社に重点的に投資してきたという。ソフトウェアはオースティンの主要産業だが、オースティンを本拠とする他の多くのVCと違って、スミス氏はソフトウェアをそれほど重視していない。「消費者向け製品の製造に挑んでいるチームのほうが好きです」と同氏はいう。「それに、ソフトウェア企業は多様性に欠けており、ソフトウェア産業で就業できるのは社会のほんのわずかな人たちにすぎません。対照的に、製造業の仕事には、高卒資格者から博士号取得者まで、すべての人が就くことができる幅広い多様性があります」。

ライブオーク・ベンチャー・パートナーズは、ほぼすべての産業にくまなく投資している。2020年は、不動産テック、フィンテック、小売、サプライチェーン、ビジネスコンプライアンス、サイバーセキュリティ、EdTechの各分野の企業を支援してきた。

ライブオークはとりわけ不動産テックに期待を寄せており、オースティンでもOpcity(オプシティ)やOJO Labs(OJOラボ)といった企業が成功を収めている。もう1つ高い潜在力を持つ分野として、法務 / コンプライアンス関連のスタートアップがある。オースティンには、Disco(ディスコ)やMitratech(ミトラテック)といった大企業の本社があり、Osano(オサノ)、Eventus(イベンタス)、Litlingo(リトリンゴ)など、急成長中の新規参入組も今後が楽しみだ。

ネクスト・コーストのフロレアーニ氏にとって、オースティンで成功しているB2Cスタートアップの数が急増しているのは「半導体とSaaSの町として知られていたオースティンの初期の頃を上回る人材プールと秘密兵器が確保される」ため、良い兆候だ。

「今でもすばらしいソフトウェア企業家はいますが、オースティンには、Everlywell(エバリーウェル)、Literati(リテラティ)、FloSports、(フロスポーツ)、 Atmosphere(アトモスフィア)など、消費者向け製品を扱う企業やメディア企業も存在しています」と同氏はいう。

オースティンで貴社が直面している、または創業者たちが苦戦している課題は何ですか。一般に、オースティンで採用活動や投資を行ったり、オースティンに移住してくる人たちは、この都市でのビジネスのやり方についてどのように考えればよいでしょうか。

オースティンのテックコミュニティは、心地よく協力的で、この都市への移住を考えているすべての人たちのリソースとしての機能を果たしてきたというのが、オースティンを本拠とする投資家たちの共通の意見だ。S3ベンチャーズのエンジニア氏によると、東海岸と西海岸から最近移住してきた人たちが、彼らがそれまで慣れてきた文化と比べて、このオースティンの文化に良い意味で驚いたと言っているという。

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シルバートンのフラジャー氏は、通常でも移住には困難が付きものだが、パンデミック期間の移住となるとその困難さは通常の比ではない、と語る。

「パンデミックの最中にオースティンに移住してきて、コミュニティでの強いつながりを見つけるのに苦戦している創業者たちを見てきました」と同氏はいう。「ほとんどすべてのものがバーチャルであるために、新しいエコシステムとの統合がより困難になっているのです。投資家でありオースティンエコシステムの管理人としての私の役割は、創業者コミュニティ内でのつながりを促進することです。ワクチンの接種が続き、対面での接触が安全になってきている中、当社はオースティンに移住してくる創業者たちが容易に溶け込めるように一連のコミュニティ構築イベントを開催する予定です」。

キャピトル・ファクトリーのベーア氏は、テキサスの投資家はシリコンバレーの投資家よりも損失防止に対する意識が強いと考えている。テキサスでビジネスをする企業家へのアドバイスとしては、2つの異なるプレゼンを用意して、プレゼンする相手によって使い分けることを勧める。「テキサスの投資家相手にプレゼンするときは、ビジネスのリスクを軽減する方法について話し、シリコンバレーの投資家相手にプレゼンするときは、このアイデアが軌道に乗ればどれほど大きなビジネスになるかについて話すのがよいでしょう」。

アンオーソドクス・ベンチャーズのスミス氏は、創業者たちに、オースティンに限らず、起業家を支援すると見せかけて「株式を取得しておいて、相応の見返りも与えようとしない」組織には注意するように助言している。

「創業者は、支援を受ける投資家やアドバイザーを慎重に選び、資金以外のプラスアルファを提供してくれる投資家を選択する必要があります」。

ライブオーク・ベンチャーズのスリニバサン氏は、オースティンの人たちは取引を好まないため、取引的で、対人関係としてではなく取引関係として相手と厳格にやり取りするという印象を与えてしまうと「相手を不愉快な気持ちにさせてしまう」と警告する。

「オースティンに移住してくる起業家はこの点に注意する必要があります」と同氏はいう。「採用時には、文化的な適合度が高い人材を選ぶことが重要です。履歴書のみを見て判断してはなりません。投資家の視点からすると、オースティンでビジネスをするなら、魅力的な取引条件を提示するだけでなく、強い人間関係を構築することに注力することが重要です」。

ネクスト・コースト・ベンチャーズのフロリアーニ氏は、同社のポートフォリオ企業において成長を牽引できるリーダーを雇用することの難しさについて言及し「オースティンに有能なマーケティング販売のリーダーとなる豊富な人材があればすばらしいと思います」と述べる。

地元で成功を収めたスタートアップ業界の主要人物を挙げていただけますか。投資家や創業者だけでなく、弁護士、デザイナー、グロースエキスパートなど、スタートアップのエコシステムで別の役割を果たす人たちでも構いません。地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

S3:創業者 / CEOとしては、AtmosphereのLeo Resig(レオ・レッシグ)氏、FavorのJag Bath(ジャグ・バス)氏、AcessaのKim Rodriguez(キム・ロドリゲス)氏、 Interplay LearningのDoug Donovan(ダグ・ドノバン)氏、LeanDNAのRichard Lebovitz(リチャード・レボヴィッツ)氏、EternevaのAdelle Archer(アデレ・アーチャー)氏、LiveOak TechnologyのAndy Ambrose(アンディ・アンブローズ)氏、TVA MedicalのAdam Berman(アダム・バーマン)氏、LiquibaseのDion Cornett(ディオン・コーネット)氏。

投資家としては、Wild Basin(ワイルド・ベイスン)のRosa McCormick(ロザ・マコーミック)氏、Sputnik(スプートニク)のOksana Malysheva(オクサナ・マリシェバ)氏、Ecliptic CapitalのAdam Lipman(アダム・リップマン)氏、キャピタル・ファクトリーのJosh Baer(ジョッシュ・ベア)氏とBryan Chambers(ブライアン・チェンバース)氏。

サービスプロバイダーとしては、 E/NのMarc Nathan(マーク・ネイサン)氏、CBREのJohn Gump(ジョン・ガンプ)氏、MLRのLathrop Smith(ラスロップ・スミス)氏、SVBのAustin Willis(オースティン・ウィルズ)氏、Mediatech(メディアテック)のPaul O’Brien(ポール・オブライエン)氏。

シルバートン:WP EngineのHeather Brunner(ヘザー・ブルーナー)氏とJason Cohen(ジェソン・コーヘン)氏、SparefootのChuck Gordon(チャック・ゴードン)氏とMario Feghali(マリオ・フェガリ)氏、LiteratiのJess Ewing(ジェス・アーヴィング)氏、AceableのBlake Garrett(ブレイク・ガレット)氏、Self FinancialのJames Garvey(ジェイムス・ガーベイ)氏、Alert MediaのBrian Cruver(ブライアン・クルーバー)氏、TurnKeyのJohn Banczak(ジョン・バンクザック)氏とT.J. Clark(T.J.クラーク)氏、WheelのMichelle Davey (ミシェル・デイビー)氏、ConveyのRob Taylor(ロブ・テイラー)氏など。

キャピタル・ファクトリー:http://baer.ly/austinabc

アンオーソドクス・ベンチャーズ:オースティン中心のスナックボックスで地元の40を超える食品起業家を支援するスタートアップATX Kit(ATXキット)を創業したChrista Freeland(クリスタ・フリーランド)氏。

環境、健康、社会正義など、深刻な社会問題の解決を目指すスタートアップを支援するSouthwest Angel Network(SWAN)のBob Bridge(ボブ・ブリッジ)氏。

ライブオーク:「当社のネットワークには、幸運にも、人を動かす能力のある多くの人が登録されています。誰か1人を取り上げるのは難しいのですが、その上で選ぶとすれば、Dan Graham(ダン・グラハム)氏とJim Breyer(ジム・ブレイヤー)氏でしょうか。グラハム氏は、Notley Ventures(ノトレー・ベンチャーズ)を介して社会的影響のあるスタートアップ向けに資金を調達したり、BEAM Angel Networkを介して女性起業家に投資するファンドを立ち上げたり、CPG(消費者向けパッケージ製品)の登場にも積極的な役割を果たしています。また、ジム・ブレイヤー氏はオースティンに移住してまだ1年ですが、その間に、さまざまな論評、ブログへの投稿、インタビューでオースティン、地元のスタートアップ、この町の活力を称賛してきました。そのプラス効果には絶大なものがあります」。

ネクスト・コースト・ベンチャーズ:「Everlywell(エブリウェル)、Upequity(アップエクイティ)、Steadily(ステディリィ)、Eterneva(エターネヴァ)、Literati(リテラリ)、BOXT、Enboarder(円ボーダー)などのスタートアップの創業者たちは、オースティンで成長していくためのすばらしい計画を立てています。ただし、これらの多くは当社が支援している企業なので、多少は私見が入っている可能性があることを申し添えておきます」。

シリコンバレーとの比較についてどう思われますか。大小含めテック企業が流入していることがオースティンのスタートアップシーンにどのような影響を与えているとお考えですか。

S3のエンジニア氏は、シリコンバレーは唯一無二であり、西側世界でシリコンバレーに匹敵する地域が現れる可能性は極めて低いと考えている。

同時に、今はまだ小規模だが、今後10年間このトレンドが継続すれば、テキサスのエコシステムは、ニューヨークやボストンを超えないまでも、それらに匹敵する規模に成長する活力があると考えている。

シルバートンのフラジャー氏はシリコンバレーで生まれ育った。シリコンバレーの学校に通い、就職先もシリコンバレーだった。そのため、オースティンとシリコンバレーを比較することはあまり好まない。

「どちらの地域についても賛否両論があります」と同氏はいう。「規模と活発さという点で今後オースティンがシリコンバレーを上回ることがあるかどうかは、正直分かりません。いずれにしてもまだまだ先の話です。それに、それが重要なことかどうかも分かりません」。

同氏が大切だと思っているのは、オースティンがその活気を維持すること、そして現在の成長によって、この都市の活力が希薄化されることなく、さらに豊かになることだ。「オースティンの文化はテクノロジー中心ではなかったことを認識することが重要です。オースティンは、ライブ音楽、美味しい食べ物、芸術、アウトドアライフなども盛んで、他にはない風変わりな土地柄を形成しています」とフラジャー氏は語る。

「私がシリコンバレーを称賛する理由や、オースティンがそのレベルに達するために何を行う必要があるのかについて考えるとき、シリコンバレーとは違ったやり方で何ができるのか、という点を考えることに多くの時間を割きます」。

アンオーソドクス・ベンチャーズのスミス氏は、誰もがシリコンバレーを離れたいと思っても不思議はないと考えている。

「皆、シリコンバレーは最悪だということにようやく気づいたのです」と同氏はいう。「知的で勤勉で好奇心に溢れた人たちがどんどんオースティンに集まってきています。それはオースティンにとっても、もっと広い意味ではVCにとっても良いことです。シリコンバレーの問題の1つは、VC資金のかなりの部分が、シリコンバレー、ニューヨーク、ボストンに滞留しているという点です。オースティン、およびその他の中部の革新的な都市の起業家たちは、平凡な米国人が抱える本当の問題を解決しようとしており、もっと多くの資金を必要としています。オースティンはシリコンバレーからの影響を強く感じているため、テック指向ではないプロジェクトに資金を供給することが重要です。ベンチャー投資家は人間の基本的なニーズに目を向ける必要があります」。

ライブオークのスリニバサン氏は、シリコンバレーと比較されるのは避けられないと認識しており、そのような比較コメントの多くを歓迎している。そうして比較されることで、国内外で広くオースティンが注目されるようになり、スタートアップシーンが活況を呈している都市としての評判が高まると考えているからだ。

「オースティンのスタートアップシーンには活力と勢いが溢れており、初期のシリコンバレーを彷彿とさせます。起業数、資金を調達する企業、オースティンのテックコミュニティに溶け込もうとして流入してくる人材の量は増え続けています。しかし、オースティンには他のテックハブにはない特徴があります。それは、人々のコラボレーション精神です。コミュニティはエネルギーとワクワク感で溢れています。オースティンは、シリコンバレーが生み出した成功に大いに敬意を払っており、独自の道を歩みながらも、シリコンバレーの良い点は取り込んでいこうとしています」と同氏はいう。

ネクスト・コーストのフロリアーニ氏は、この10年間、シリコンバレーとの比較が過剰に行われていると思っている。「オースティンはシリコンバレーではないし、今後シリコンバレーのようになることもありません」と同氏はいう。「これは決してネガティブな意味で言っているのではありません。ただ、企業の育て方がシリコンバレーとは異なっていると思っているだけです。シリコンバレーの人材や投資家が多数オースティンに入ってきていますが、だからといって、成長企業に対して、急にブリッツスケール(極めて短期間での爆発的な規模拡大)のようなシリコンバレー的なアプローチを採るようになるとは思いません。むしろ、急成長と持続性の両方の妥協点を探っていくことになると思います」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:オースティンテキサスインタビュー

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

移住者が急増するテキサス州オースティンの住宅問題を解決するスタートアップ「Homebound」

莫大な数の人々が米国全土からテキサス州オースティンに移住している。中でもサンフランシスコ・ベイエリアからの移住が最近見出しを賑わしている。

続いている移住の結果、起きていることの1つが住宅費の急騰であり、需要の増加と2021年になってほぼゼロに近くなっている空き物件の少なさが原因だ。そこへやってきたのが、カリフォルニア州サンタローザ拠点のテック系住宅建設のスタートアップHomebound(ホームバウンド)だ。既存住宅購入の代替手段を提供して、この街の悩みを解決すべくオースティン市場に参入した。

Homeboundはここ数年に約7300万ドル(約79億5000万円)の資金を、Google Ventures、Fifth Wall、Khosla、Sound Ventures、Atomic、Thrive Capitalなどから調達している。2020年4月に3500万ドル(約38億1000万円)のシリーズBを完了し、2020年末には2000万ドル(約21億8000万円)の転換社債を発行した。CEOのNikki Pechet(ニッキ・ペシェ)氏とAtomicのマネージングパートナーであるJack Abraham(ジャック・アブラハム)氏が2017年に同社を設立した。アブラハム氏が山火事で自宅を失った後のことだった。

Homeboundは、実質的に仮想ゼネコンの役割を果たし、IT技術と「厳選された」資格のある建築「専門家」のネットワークを組み合わせて、新しいかたちの住宅建築を設計から完成まで管理する。同スタートアップは住宅建築に関わる数百にわたる作業項目を追跡・管理するツールを開発した。

これまでHomeboundは、カリフォルニアの山火事の後にホームオーナーが住宅を立て直す際の課題や複雑さを支援することに焦点を当ててきた。しかし2021年4月、Homeboundは自身初の非災害地市場であるオースティンに進出した。住宅再建で培ったカスタム住宅建築のための「テクノロジーを駆使した合理的なプロセス」を、選択肢の1つとして地域のホームオーナーに提供することを狙いとしている。

HomeboundのCEO・共同ファウンダーであるニッキ・ペシェ氏に詳しく話を聞いた。

Homeboundは「次世代」の住宅建築業者として「誰もがどこにでも家を建てられる」ようになるための会社だと、彼女はいう。

オースティンの住宅市場は間違いなく過熱しており、住宅価格は10~30%値上がりしている例もある(私にはわかる、ここに住んでいるから)。

「ホームオーナーは全米から私たちに連絡をしてきて、自分たちの地域に来てくれと頼みます」とペシェ氏は言った。「すでにオースティンは、かつての当社の市場よりも早く成長しています。当社にとって巨大な市場になりつつあります」。

これは、ペシェ氏がマイアミ、タンパ、レイリー、シャーロットなど同じような住宅供給問題を抱える他の都市でも再現しようと考えているモデルだ。

「これは始まりにすぎません」とペシェ氏は言った。「私たちはこのプラットフォームを全米の市場に広げて、この同じ問題を解決するお手伝いをします」。

同社はまず、住宅希望者が自分で家を建てる土地を選ぶのを助けたり、Homeboundがすでに準備した在庫から探すのを手伝う。そこから、建築計画から設計、実際の工事にいたるまですべてを同社のプラットフォームが支援する。Homeboundは、いくつかの用意したプランから客に選ばせ、さまざまなレベルのカスタマイズを行う。

オースティンの典型的一家族用住宅の建築費用は30万ドル(約3270万円)程度からで、大きさ、家の複雑さ、ロットサイズ、地域によって異なる。土地の価格は含まれていない。既存の持ち家の土地に2軒目を建てる人もいる。

「現状多くの場合、既存の住宅を買うよりも安く新しい家を建てることができます」とペシェ氏はいう。

カテゴリー:その他
タグ:Homebound住宅不動産テキサスオースティン

画像クレジット:Homebound

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テキサス大寒波から学ぶ3つのエネルギー革新

本稿の著者Micah Kotch(ミカ・コッチ)氏はURBAN-Xのマネージング・ディレクターだ。

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気候変動の総合的危機に対する個別なソリューションがいくつも登場している。非常用ディーゼル発電機、Tesla(テスラ)のPowerwall、地下シェルターの「Prepper」などがある。しかし、現代文明が依存しているインフラストラクチャーは相互につながり、相互に依存している。エネルギー、輸送、食料、水、ごみのシステムは、気候による緊急時に対していずれも脆弱だ。私たちのエネルギーインフラ危機を救う唯一の孤立したソリューションは存在しない。

2005年のHurricane Catarina(ハリケーン・カタリナ)、2012年の巨大暴風雨SANDY(サンディ)、2020年のカリフォルニアの山火事、そして最近のテキサス大寒波以来、大多数の米国市民はいかにインフラが脆弱であるかを認識しただけでなく、それを適切に規制しその復旧に投資することがいかに重要であるかを思い知らされた。

今必要なのは、インフラを考える際の発想の転換だ。具体的には、リスクをどう評価するか、維持をどう考えるか、気候の現実に沿った政策をどう作るかだ。テキサスの大寒波は、異例の寒波に備えていなかった電気・ガスインフラを壊滅状態にした。もし私たちがインフラへの緊急な(超党派?)投資を、特に異常気象が当たり前になりつつある今行わなければ、この惨劇は今後も続くばかりだ(そして最前線の人たちは特に重荷を背負う)。

テキサスの記録的暴風から1カ月が過ぎ、焦点は生活を取り戻そうとしている数百万の住民を助けることに正しく向けられている。しかし、短期的未来に目を向けには電気自動車への転換点の兆しが見える現在、この国のエネルギーインフラと公共事業の大転換というツケを払うことを優先しなくてはならない。

エネルギー貯蔵の重要性

テキサス州の電気の75%が化石燃料とウランから生まれており、州内で起きた停電の約80%がこれらのシステムに起因していた。同州と国は、時代遅れの発電、通信、および配送技術に依存しすぎている。2030年までにエネルギー貯蔵のコストが75ドル/kWhまで下がると期待されていることから「需要管理」およびグリッドを「(排除しようとするのではなく)支える」分散エネルギー源に今以上に重点を置くことが必要だ。小規模なクリーンエネルギー発電と家庭内貯蔵電力を蓄積、集約することで、2021年は「バーチャル発電所」が全潜在能力を発揮する年になるかもしれない。政策立案者は、家庭のメーターの内側に設置する新たな分散エネルギーリソースを普及させるための刺激策と報奨金制度を施行させるべきであり、カリフォルニア州の自家発電奨励プログラムはその一例となる。

労働力開発への投資

エネルギー大転換が成功するためには、労働力開発が中心的要素になる必要がある。石炭、石油、ガスからクリーンエネルギー源へと移行するためには、企業と政府(国から市レベルまで)は、労働者がソーラー、電気自動車、バッテリーストレージなどの新興分野の高賃金職に就くための再教育に投資すべきだ。エネルギー効率(エネルギー大転換で最も手をつけやすいところ)に関して、都市は株価に基づく労働力開発プログラムを建物エネルギーベンチマーキング条件と結びつける機会を利用するべきだ。

これらのポリシーは、この国のエネルギーシステムの効率と老朽化する建物の利用率を高めてより生産的な経済を作るだけでなく、 21世紀の成長産業における雇用の拡大と労働の専門化にもつながる。 Rewiring Americaの分析によると、国の野心的な脱炭素宣言によって、今後15年の間に2500万の高賃金職が生まれるという。

信頼性のためにマイクログリッドをつくる

マイクログリッド(小規模発電網)は、主要グリッドと繋ぐことも切り離すこともできる。非常時だけでなく、日常の「青空」運用の日々にも運用することで、マイクログリッドは主要グリッドが停止した際に途切れなく電力を供給できる。そして、主要グリッドにつなげた場合、グリッドの制約とエネルギーコストを減らす。かつては軍事基地と大学だけの領域だったマイクログリッドは年間15%成長し2022年の米国市場は180億ドルに達する

グリッドの回復力と信頼性の高い電力源を確保のためには、重要インフラ施設を近隣の住宅と商業負荷と結びつけるコミュニティ規模のマイクログリッドに勝るソリューションはない。実現性調査と高度な設計に資金提供し、コミュニティがゼロコストで高品質な建設プロジェクト実施できるようにすることは、ニューヨーク州が NYプライズ・イニシアティブでやったように、コミュニティをエネルギー計画に参加させ、民間セクターを低炭素の回復力あるエネルギーシステムの構築に携わらせる有効な方法であることが実証されている。

予測不能性と複雑さが急速に高まり、テクノロジーは居場所を見つけたが、それは単なる個別の安全策や偽りの安心感としてではない。テクノロジーは、リスクを高精度で計算し、システムの回復力を高め、インフラの耐久性を改善し、コミュニティの人々同士のつながりを深めるために使われるべきだ。緊急時もそうでない時も。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:コラムテキサス自然災害電力網エネルギー貯蔵エネルギー

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(文:Micah Kotch、翻訳:Nob Takahashi / facebook

テキサスの大寒波はテック企業の移転を阻むか

オースティンは穏やかな冬の気候で知られているが、米国時間2月12日、テキサス州に大寒波が襲来し、氷点下の気温が1週間以上続いた。同州の何百万人にもおよぶ住民が停電や断水、またはその両方の影響を受けるという州全体での災害となった。

死亡者や物的損害、経済活動の損失の正確な数字が出るには早過ぎるが、今回の災害は多方面で破滅的な影響を与え、その影響は長引くことだろう。オースティン地区では今週、病院でさえも断水となった。これは現状がいかに最悪かを示している。

私の家でも、断続的な停電になっている。2月17日には断水し、いつ回復するのか見当もつかなかった。私よりも困窮している人々は他にたくさんいると思う。ここでは同情を買うようなみじめな経験は割愛するが、トイレを流すために雪や氷を温めて使ったり、わずかに残っていたペットボトルの水を制限しながら飲んだり、配管の凍結や破裂を恐れながら生活した。少なくとも私の家ではこの数日間、暖をとれているが、未だに停電の家は多い。

その一方で過去数カ月(実際は何年間も)、オースティンは別のニュースで見出しを賑わせていた。非常に多くのテック企業や、あのElon Musk(イーロン・マスク)氏を含む創業者、投資家が本社を移動(Oracle)させている他、大きな工場(Tesla)やオフィス(Apple、Google、Facebook)を建築するか、完全な移転を考えているのだ。

州に所得税がないことと、住居 / 土地 / オフィスがベイエリアに比べると安価であることが多くの人を引き付けている理由だ。これは今に始まったことではないのだが、パンデミックによってリモートワークが奨励・強制される中でさらに加速したかたちだ。

このようなメリットによりテキサスは企業にとってかなり魅力的な州となったが、皮肉なことにこれは危機にも繋がってしまった。税金が少ないということは、まずインフラストラクチャに費やせる金額も少ないのだ。

だがそれだけではない。他の多くの州は、テキサス州で現在起こっている停電や断水を発生させることなく、氷点下の天候をしのいできている。The Washington Post(ワシントンポスト)で先に報道されたように、同州の電気料金の規制撤廃によって「電力会社が冬に備えることができるようなインセンティブを設けない発電の財政構造ができた。批評家によると、規制撤廃と自由市場によって、テキサスには信頼できるサービスよりも安い価格を強調した配電網ができてしまったとされている」。

マスク氏でさえTwitterで不満をあらわにしていた。

テキサスには、この新しい危機への対応、つまり準備不足と管理不行き届き(クルーズ上院議員、あなたのことです)の両方への批判が殺到したと言えるが、この1週間の事象により、テック企業と投資者の移転先の可能性としてのオースティンの魅力はなくなったのだろうか?これによって人々はここに引っ越したいと思わなくなるのだろうか?焼けつくような夏の熱さのためにここに引っ越したくなかった人々が、大寒波の影響を受けて、この街や州への扉をぴしゃりと閉めているのであれば、これもまた皮肉な話ではないだろうか?

この状況下、積極的なテック系レポーターなら誰でもするであろうことを、私もTwitterを使って行った。結果はほぼ予想どおりで、どちらサイドにもさまざまな熱い意見があった。

オースティン在住者からの、街を擁護し、危機的状況で住人がどのように一致団結したかを褒め称えるツイートが多く見られた。

そしてかつては住んでいたが状況にうんざりして失望した人からのツイートもあった。

また中には、テキサスへの引越しはもう決して検討しないとツイートした人や、準備不足に幻滅したとツイートした人もいた。

そしてここに住んではいないが、この災害は人々を遠ざけるには十分だったという考えを言い放った人や、自然災害はどこでも起こり得ると指摘した人もいた。

またこの災害は「カリフォルニアの人々を遠ざける」ための策略として計画されたとか、少なくともその効果はあったといったジョークも見られた。

私は東海岸、西海岸、湾岸で暮らしたことがある。それぞれにプラス面とマイナス面があり、またこの危機が人々のテキサスへの移住を止める抑止力になるとは思わない。しかしテキサスは電気料金の規制撤廃を決めた時点で、もっと十分に準備ができたはずだと私は思う。この街や州で暮らす人々が直面しているあらゆる苦労に心が痛み、今すぐにでも、新型コロナのパンデミックへの対応が唯一の危機であった「通常」に戻ることを願っている。こんなことを願う日がくるとは思ってもみなかったが。

コンピューター技術者の移住によって、将来、同様の災害を防げるかもしれない解決策ができることに期待したい。

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画像クレジット:Carlos Alfonso / Unsplash under a license.

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

イーロン・マスク氏がカリフォルニアに愛想を尽かしてテキサスへ転居

SpaceX(スペースX)とTesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国12月8日、テキサス州に転居したと述べ、ここ数カ月流れていたカリフォルニア州を去るだろうという憶測を認めた。カリフォルニア州に対してマスク氏はかなり批判的になっていた。同氏はウォールストリートジャーナル紙のCEOカウンシル年次サミットでのインタビューで転居したことに言及した。

マスク氏がテキサス州に引っ越すつもりだと友人に語ったというCNBCの報道を、同氏は肯定した。

転居は、テキサス州で進められているSpaceXとTesla関連の数多くのプロジェクト、マスク氏のロサンゼルスにあるいくつかの家の売却、そしてカリフォルニア州当局の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック対応への不満と一致する。マスク氏は5月に同州アラメダ郡を相手取って訴訟を起こし、本社や将来のプログラムをテキサス州かネバダ州にすぐさま移すと脅した。訴訟は、フリーモントにあるテスラの工場が新型コロナで発令された外出禁止令の最中に再開できるかどうかをめぐる衛生当局との応酬がエスカレートした結果だ。

インタビューの中でマスク氏は、カリフォルニア州は恵まれたな地位を当然のものだと考え、独りよがりになっていると語った。

マスク氏がテキサス州に引っ越すだろうという憶測はテスラがCybertruckとModel 3、Model Yを生産する工場の設置でオースティン近くを選び、建設を開始した後に流れ始めた。同氏の別企業であるSpaceXはテキサス州ボカチカにロケット打ち上げサイトを計画している。ブルームバーグは12月7日、マスク氏が自身の財団をオースティンに移し、これは同氏がテキサス州に引っ越したか引っ越そうとしているもう1つのサインだと報じた。

テキサス州は近年、オースティンやヒューストン、ダラスの急成長でホットスポットとなっている。パンデミックの間、カリフォルニアを拠点としていたテックワーカーがシリコンバレーやサンフランシスコといった高級エリアから脱出するにつれ、テキサス州の勢いは増した。

同州はまたマスク氏にとって別の大きなメリットがある。州所得税がないことだ。

カリフォルニアはまだSpaceXとテスラの運営においてメジャーハブだ。SpaceXの本社はホーソーンにあり、テスラの本社はシリコンバレーにある。Model 3やModel X、Model S、Model Yを組み立てるテスラのメイン工場はフリーモントに立地する。

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画像クレジット:Diego Donamaria / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi