ライブ配信アプリ「EVERY .LIVE」を運営するSTAGEが3億円調達、事業拡大に向け子会社設立

ライブ配信アプリ「EVERY .LIVE」(エブリィライブ。Android版iOS版)を提供するSTAGEは1月12日、3億円の資金調達を実施したと発表した。また、さらなる事業拡大に向けて2月1日に新規子会社としてEVERY .LIVEを設立することも明らかにした。

EVERY .LIVEは2021年1月にリリースされたライブ配信アプリ。2022年には「Community+」プロジェクトを立ち上げ、年間ミッションとしてコミュニティ強化を図る予定。ユーザー同士のチャット機能やライバー自身が創作するイベントなどにより、ライバー、リスナー、運営の3者の良い関係性を築きストレスフリーな環境を目指す。

新規子会社であるEVERY .LIVEは、「みんなにいいこと=Good for Everyone」をビジョンとし、ライブ配信を超えた新たなライブコミュニティーサービスの実現を目指す。2025年のIPOを目標としており、2022年はコミュニティ強化、2023年はAPAC事業を中心とした新たな価値創出、2024年は営業利益を最大値まで引き上げるといったロードマップを公開している。

すべてのプラットフォームを横断する顧客メッセージングプラットフォームSuperchatが約17.9億円調達

Superchatの創業者。ミカ・ハリー氏(左)とユルマズ・キョクナル氏(右)

2021年のWhatsAppの停止事故は、今でも20億のユーザーの背筋を凍らせているが、このアプリを使って顧客と繋がっている何百万もの企業も同様だ。ご存知のように、現在ではすべてのプラットフォームを横断する全方向的なメッセージングは、そこから多くのスタートアップが誕生している新たな分野だ。

Superchatはその中でも最新となるスタートアップで、現在、必要とされている中小企業が顧客とコンタクトするための、オールインワンのメッセージングプラットフォームを開発している。一部の調査によると、顧客の78%はネガティブな体験に懲りて、企業とのやり取りにギブアップしている。そんな劣悪な顧客サービスによってヨーロッパの企業は毎年、130億ユーロ(約1兆7046億円)の売上を失っているという

Superchatはこのほど、ロンドンのVCであるBlossom CapitalがリードするシリーズAのラウンドで1560万ドル(約17億9000万円)を調達し、これに468 Capitalも参加した。これでSuperchatの調達総額は1800万ドル(約20億6000万円)になる。

Blossom CapitalのマネージングパートナーAlex Lim(アレックス・リム)氏は次のように語る。「Superchatは、中小企業に力をつけて、彼らがデジタルのチャネルをうまく利用できるようにし、最も厳しい顧客にも最良のサービスを提供できるようにします。創業者とチームは、企業が抱える彼ら独特の難関をよく理解している。中小企業の多くは今でもメールや電話を使っているが、特にパンデミック以降はデジタルへの移行が増えています」。

同社は企業の顧客との会話をWhatsAppやFacebook、Instagram、Google Business、Telegram、ウェブ上のチャット、メール、それにSMSからも取り出して、それらを企業用の単一のボックスに入れる。それによって企業は顧客に関するインサイトを得ることができ、売上アップなどに結実させる。メッセージへの返信は、チームの全員が読むことができる。

Yilmaz Köknar(ユルマズ・キョクナル)氏とMika Hally(ミカ・ハリー)氏が創業した同社は、これまで主にドイツの企業を顧客にしてきた。

「現在の顧客は、どこのどのような企業が相手でも、時間を問わずに企業とコンタクトがとれると思っています。これが、企業にとって業務運用の悪夢になり、顧客にはお粗末な体験につながります。このような方法は誰にとっても良いものではありませんが、Superchatを利用すればみんながWinになります」とキョクナル氏はいう。

この分野には、Rake、Messagebird、Smoochといった資金豊富な競合他社が多く、Superchatは苦労している。今後どんな戦いになるか、興味深い。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

世界中のファクトチェック団体がYouTubeに誤報・偽情報対策を要求

世界中の80以上の著名なファクトチェック団体が、YouTube(ユーチューブ)に新型コロナウイルスに関する誤報への対策を求めている。この誤報は新型コロナウイルス感染拡大から2年が経過した現在でも、依然としてこの動画共有サイト上で広まっている。

「ファクトチェック機関の国際的なネットワークとして、私たちはオンラインでどのように嘘が広がるかを監視しています。そしてYouTubeがオンラインの偽情報や誤報を世界に広める主要な導線の1つとなっていることを、毎日私たちは目の当たりにしているのです」と、ファクトチェック機関の連合はPoynter(ポインター)に掲載された公開書簡で述べている。「これは、世界のファクトチェッキングコミュニティの重要な懸念事項です」。

この公開書簡に署名したファクトチェック機関は、PolitiFact(ポリティファクト)、The Washington Post Fact Checker(ワシントンポスト紙のファクトチェッカー)、PoynterのMediaWise(メディアワイズ)といった米国を拠点とする団体に加え、アフリカのDubawa(ドゥバワ)とAfrica Check(アフリカ・チェック)、インドのFact Crescendo(ファクト・クレッシェンド)とFactly(ファクトリー)、さらにはインドネシア、イスラエル、トルコといった国々の団体など、世界中に広がっている。

同グループは、YouTubeが長年にわたって健康に関する誤った情報の温床になっていると指摘。その中には、がん患者に非科学的な治療法で闘病を促す内容も含まれている。

「2021年は、いくつもの陰謀集団が繁栄し、国境を越えて協力し合うのを、我々は目にしてきました。その中には、ドイツで始まった活動がスペインに飛び火し、ラテンアメリカにまで広がった国際的な運動も含まれます。これらはすべてYouTubeで展開されているのです」と、書簡には書かれている。「その一方で、何百万人ものYouTubeユーザーが、予防接種を拒否するよう勧めたり、ウイルス感染症をインチキな治療法で治すことを奨励するギリシャ語やアラビア語の動画を見ています」。

この書簡では、英語以外の言語の動画で誤った情報が広がるという特殊な危険性も強調している。Facebook(フェイスブック)の内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏は、英語圏以外でのコンテンツモデレーションに十分な投資を行っていないFacebookでも、同様の懸念があることに注意を促していた。ファクトチェック団体グループは、YouTubeに対して「国や言語ごとのデータや、あらゆる言語に対応した字幕サービスを提供する」ことで、英語以外の言語から誤報の流出を防ぐよう働きかけている。これはYouTubeが注力しているモデレーションの方法だ。

ファクトチェッカー団体は、問題点を指摘するだけでなく解決策も提示しており、YouTubeは誤報や偽情報に関するポリシーの透明性を高め、それらの問題を専門とする独立した研究者を支援すべきだと指摘している。また、同グループはYouTubeに対し、誤報を否定して迅速にその件に関する事情や背後関係をプラットフォーム上で提供する取り組みを強化するようにも求めている。この2つの取り組みは、ファクトチェック機関との連携を深めることで実現可能だ。

FacebookやTwitter(ツイッター)は、プラットフォーム上での誤った情報の拡散について、長い間、世間の厳しい目にさらされてきたが、YouTubeはしばしばそれらの監視の目をかいくぐっている。YouTubeの推薦アルゴリズムは近年、危険な主張を広めることに能動的な役割を果たしているが、TikTok(ティックトック)と同様にテキストベースではなく動画であるため、一般的に研究者にとっては調査が困難で、テクノロジーの説明責任に関する公聴会を開いている議員たちにとっては理解することが難しい。

「YouTubeは、不謹慎な行為者が他人を操って利用したり、組織化して資金調達したりするために、自社のプラットフォームを武器にすることを許している」と、ファクトチェッカー団体はいう。「現在の対策では不十分です」。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ナイジェリアがツイッターの業務停止処分を解除、「条件満たした」

ナイジェリア政府は、ソーシャルメディア大手Twitter(ツイッター)の取り締まりを宣言してから半年以上を経て、Twitterの業務停止処分を解除した。

ナイジェリアのテック監督機関である国家情報技術開発庁(NITDA)のKashifu Inuwa Abdullahi(カシフ・イヌワ・アブドゥラヒ)長官が現地時間1月12日、声明で発表した。アブドゥラヒ氏は、禁止措置後のナイジェリアとTwitterの協議を監督するためにナイジェリア政府が設置した委員会(Technical Committee Nigeria-Twitter Engagement)の議長を担っていた。

関連記事:ナイジェリアが大統領の投稿削除を受けツイッターを無期限停止に

同氏によると、同国の通信・デジタル経済大臣がMuhammadu Buhari(ムハンマド・ブハリ)大統領に宛てて書いたメモを受け、業務停止処分の解除が承認されたという。声明ではまた、西アフリカ時間2022年1月13日午前0時までに直ちに業務停止を解除することが明らかにされた。

「ナイジェリア連邦政府(FGN)は、ムハンマド・ブハリ大統領(GCFR)が、ナイジェリアにおけるTwitterの業務停止を今夜2022年1月13日午前0時から解除することを承認したことを国民に知らせるよう私に指示しています」と声明にはある。「この承認は、通信・デジタル経済名誉大臣であるIsa Ali Ibrahim(イサ・アリ・イブラヒム)教授が大統領に宛てて書いたメモを受けてのものです。メモの中で大臣は、ナイジェリアとTwitterとの協議を監督する委員会の勧告に基づき、解除に対する大統領の承認を要請しています」。

アブドゥラヒ氏はまた、Twitterが「2022年第1四半期中にナイジェリアに法人を設立する」ことに同意したと声明で述べている。声明によると、Twitterの法人設立は、同社が「ナイジェリアへの長期的なコミットメントを示す最初のステップ」とのことだ。

法人設立は、2021年4月にガーナにアフリカ初の拠点を設立したTwitterが、業務停止処分から数カ月後にナイジェリアでの事業を再開するために求められた10の要求のうち満たせなかった3つのうちの1つだ。これは同年8月にナイジェリアのLai Mohammed(ライ・モハメド)情報相が発表した。

ナイジェリアでの現地事務所あるいは法人設立に加え、Twitterが満たせなかった要求は現地での納税、コンテンツや有害ツイート規制のためのナイジェリア政府への協力だった。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nariko Mizoguchi

手軽にインタラクティブなデモを体験できる動画作成ツールArcadeが約2.88億円調達

Arcadeのチーム。左から、Charlie McGeorge(チャーリー・マックジョージ)氏、キャロライン・クラーク氏、リッチ・マナラン氏(画像クレジット:Arcade)

試してみたいアプリやツールはたくさんある。大半の企業は試用したい人に対して標準的なフォームへの入力、その後にユーザー名とパスワードの作成を求める。手続きをすべてした後で、そのアプリは評判通りではないことがわかったりする。

Arcadeはこの状況を変えようとしている。米国時間1月11日に正式に発表されたこのインタラクティブデモの会社は、企業が「アーケード」と呼ばれるデモビデオを簡単に作成してツールの動作を紹介できるようにする。

以前にAtlassianの同僚だったCaroline Clark(キャロライン・クラーク)氏とRich Manalang(リッチ・マナラン)氏が創業した同社は、シードラウンドで250万ドル(約2億8800万円)を調達したことも発表した。このラウンドを主導したのはUpfront Venturesで、SequoiaとBondの他Mathilde Collin(マチルデ・コリン)氏、Laura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏、Jaren Glover(ジャレン・グラバー)氏、Eric Wittman(エリック・ウィットマン)氏、Jonathan Widawski(ジョナサン・ウィダウスキー)氏、Lenny Rachitsky(レニー・ラチツキー)氏などのエンジェル投資家も参加した。

クラーク氏とマナラン氏は2021年前半にArcadeを創業し、2021年7月にプライベートベータ版を公開した。これまでに約300社が順番待ちに登録した。そのうち90社は無料版の使用を開始し、125以上のアーケードが制作された。

Arcadeではクリックする場所を記録したデモを作り、それをプロダクトのスニペットとしてウェブサイトやブログ、ツイートに埋め込むことができる。このようにして、プロダクトを使ったことのない人が試用版を申し込む前に動作を見ることができる。

マーケティング畑のクラーク氏はTechCrunchに対し、プロダクト・レッド・グロースというコンセプトの先駆者であるAtlassianに同氏とマナラン氏が在籍していたときに、顧客の多くはウェブサイト以外のところでAtlassianのプロダクトを発見していることに気づいた。問題は、そうした発見をより良いものにするための解決策がわからないことだった。

クラーク氏は「プロダクトから何を得られるかを明確に示し、人々が簡単に楽しく発見できるようにしたいと考えました」と述べた。

顧客は購入するプロダクトやツールに常に期待を持っているが、クラーク氏によれば、やみくもにサインアップすることはもうしたくないというようにここ数年で考え方が変化しているという。

これまで販売はデモの背後に隠れて関与し、企業は誰かの情報を獲得すると「やった!」と喜んでいた。クラーク氏の説明によれば、Arcadeの顧客の1つであるClockworkは財務の専門家と関わる企業で、見込み客に対して請求書をClockworkのプロダクトと関連づければClockworkの動作を確認できると説明することが多かったが、これはハードルが高い。Arcadeを利用することでClockworkは見込み客に対して請求書のデータをアップロードすることなくプラットフォームの動作を見てもらえるようになった。CartaもArcadeを利用している企業の1つで、アーケードを自社のさまざまなソーシャルメディアで展開しているとクラーク氏は述べた。

Arcadeは新たに調達した資金でプロダクトとウェブサイトを構築し、エンジニアリングとプロダクトデザイナーも増員する。クラーク氏は、3人のチームで90社をサポートしてきたが2022年中にはスタッフを倍増したいと語る。

同社は今後、マーケティング、機能、展開に力を入れていく。

クラーク氏は「自社のデータを実際に使う前に動作がわかるようにしていきます。プロダクトのアップデート、他のプロパティとの統合、顧客がさらにパワフルなツールを作れる機能に投資する予定です」と述べた。

Upfront VenturesのパートナーであるAditi Maliwal(アディティ・マニワル)氏はメールで、クラーク氏とは数年来の友人で「5年から、長くて10年のジャーニーをともにすることを大変うれしく思っています」と記した。

マリワル氏はさらに次のように述べた。「クラーク氏はバリュードリブンで、知的で誠実な創業者です。私は力のある創業者に投資をします。ファウンダーマーケットフィットで本物のビジョンを作れる創業者です。私は極めて早い段階で、キャロライン(・クラーク氏)が何を作っているにしても投資したいと思っていました。PLG(プロダクト・レッド・グロース)の市場も成長が早く、また現在の私たちの世界はほとんどバーチャルになっています。ベンダーのプロダクトを試すために営業担当者とZoomや電話をするという考え方は、ユーザーのニーズやフローに混乱をもたらすと思います。ユーザーにとっては、ベンダーのランディングページで自分のデータの実例をシンプルに見ることができればもっとずっと手軽であるはずです。Arcadeによってクリエイターは魅力的なエクスペリエンスを作り、自分の仕事に誇りを感じられるようになります」。

Arcadeを創業した2人は顧客になる可能性のあるデザインパートナーを見つけようとしていたと、マリワル氏は最初から考えている。Atlassianで仕事をしていたころ、創業者の2人はプロダクトを見込み客や顧客に見せる効果を実際に体験していた。

マリワル氏は「2人はペインポイントを極めて早い段階で理解していました。2人は、差別化は結局デザインの楽しさであり、マーケッターとエンドユーザーにとってできるだけシンプルにすることであると認識しています。キャロラインとリッチ(・マナラン氏)は強力な会社を作ることに努めていて、まずデザインに優れたプロダクトと優秀なチームを作ることからスタートしました」と述べた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

Headspace HealthがAIを活用したメンタルヘルス・ウェルネス企業Sayanaを買収

Headspace Health(ヘッドスペース・ヘルス)は、AIを活用したメンタルヘルスとウェルネスの企業であるSayana(サヤナ)を非公開の金額で買収した。Headspace Healthは、サンフランシスコに拠点を置く同社を買収することで、ユーザーにパーソナライズされたセルフケアを提供する能力を拡大するとしている。今回の買収は、HeadspaceとGinger(ジンジャー)が2021年合併し、評価額30億ドル(約3440億円)のHeadspace Healthが設立されたことによるものだ。この合併により、Gingerのセラピーとコーチングサービス、Headspaceのマインドフルネスと瞑想のサービスが一緒になった。

2018年に設立され、2020年にY Combinator(Yコンビネーター)の支援を受けたSayanaは、ユーザーに自分の気分を追跡するよう促すAIによるチャットベースのセッションを活用している。このアプリは、気分の傾向に基づいてユーザーの体験をパーソナライズし、セルフケアや呼吸法を提案してくれる。同社の睡眠アプリは、ユーザーの気分と睡眠パターンに基づいて安眠セッションを支援する。

Headspace HealthのRussel Glass(ラッセル・グラス)CEOはTechCrunchの取材に対し、Headspace Healthがその中核機能をHeadspaceとGingerの体験に統合する間、Sayanaのアプリは一定期間稼働し続けることになると語った。統合が完了したら、同社はSayanaを別の体験として切り離し、ユーザーをHeadspace Healthに移行させる予定だ。

「Sayanaはユニークで、メンバー主導の体験を作り出しました。私たちがやろうとしていることの将来を考えると、それは、人がメンタルヘルスのどの状態にあるかにかかわらず、連続するケア全体を完全にサポートできる世界というHeadspace Healthのビジョンに最高にフィットします」と、グラス氏は述べた。「私たちがパンデミックの間に見たことの1つは、いかに多くの人々がサポートを必要とし続けているかということです。私たちは、メンタルヘルスの連続体の一部を自動化し、ニーズを持つ人々にパーソナライズされたセルフケアコンテンツを提供できるようにする必要があり、この買収は非常にエキサイティングです」。

Headspace Healthは、AIとデータサイエンスに裏打ちされた1つのプラットフォームから、予防から臨床ケアに至るまで、メンタルヘルスの手助けを提供する統合的な体験の創造に注力している。同社は、Sayanaを加えることで、ユーザーのチェックインベースのヘルプやサービスを提供し、体験をパーソナライズする機能を進化させる予定だ。

画像クレジット:Headspace Health

グラス氏は、HeadspaceとGingerはすでにAIを活用して、行動医学コーチ、セラピスト、精神科医のチームをサポートし、ユーザーとの質の高い対話、サービスの包括的な追跡、ケアプロバイダー間の緊密な連携を実現していると述べている。また、堅牢なチャットボット体験を通じて、完全に自動化された方法でユーザーのニーズを理解するSayanaの機能を追加することで、体験を進化させ、よりパーソナライズされた効果的なケアを提供できると説明している。

買収の一環として、Sayanaの創業者兼CEOのSergey Fayfer(セルゲイ・フェイファー)氏はHeadspace Healthに入社し、社内でプロダクトリーダーとしての役割を担っている。

フェイファー氏は「創業以来、Sayanaは、ポケットに入る、誰もが利用しやすいセルフケアを提供することを使命としてきました。私たちの技術、エンジニアリング、デザインの専門知識を結集し、高品質で安価なメンタルヘルスケアを世界中に普及させるというHeadspace Healthの取り組みを支援できることをうれしく思っています」と声明で語った。

将来について、グラス氏は、Headspace Healthは、メンタルヘルスのケアのニーズの高まりに対応するために、拡大を続ける計画であると述べている。同社の目標は、ケアにかかるコストを可能な限り削減することで、最もアクセスしやすく、包括的なプラットフォームにすることだ。Headspace Healthは、ケアの質をできるだけ高く保ちつつ、ケアにかかるコストを確実に削減できるよう、イノベーションを続けていくと説明した。同氏は、そのためには、非有機的な成長戦略と有機的な成長戦略の両方を考えるという点で、同社は積極的であることが必要だと指摘した。

「私たちは、今後も雇用者の動向を注視していくつもりです。新しい医療保険制度やプロバイダーとの提携を発表し続け、今後数カ月のうちにいくつも発表する予定です」とグラス氏は述べている。「私たちは、拡大する分野として、引き続き青少年に焦点を当てます。これからも革新的な取り組みを続けていきます。研究開発に多くの費用を費やしていますし、Sayanaのようなプラットフォームを追加する機会を見て、買収を続けていくつもりです」。

画像クレジット:Headspace Health

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

スマートフォンの整備品を販売する仏Back Market、評価額約6530億円に

フランスのスタートアップ企業であるBack Market(バック・マーケット)が、またしてもメガラウンドの資金調達を行った。5月に3億3500万ドル(約384億円)のシリーズDラウンドを実施した同社は、米国時間1月11日、シリーズEラウンドで5億1000万ドル(約584億円)を調達したこと発表。同社の企業価値は57億ドル(約6530億円)と評価されている。

Back Marketという会社に馴染みのない人のために説明すると、同社は電子機器(主にスマートフォン)のリファービッシュ品(整備品)専門のマーケットプレイスを運営している。つまり、スマートフォンの価格は高すぎると思う人が、新品の定価を払わずとも、良い状態のスマートフォンを手に入れることができるというわけだ。

消費者が、通信会社やスマートフォンメーカーから新品の携帯電話を購入する代わりに、Back Marketで電話機を購入する理由はさまざまだ。お金を節約するためだけでなく、同社の多くの顧客は、新機種が前世代のモデルと比べて機能が少ししか進化していないと考えている。

また、さらなる廃棄物を生み出したくないという理由で中古品を選ぶ顧客も多い。古いスマートフォンの多くは結局、引き出しの中に入れられたままになっている。バッテリーを交換したり、時にはディスプレイを交換したりすれば、古い機種も十分に魅力的なリファービッシュ品に生まれ変わることができるのだ。

Back Marketは、自ら直接デバイスを再生するわけではない。代わりにサードパーティ業者が、Back Marketの調達パートナーとなっている。Back Marketのマーケットプレイスに自社の在庫を掲載することで、これらの業者はより簡単に買い手を見つけることができる。

一方で買い手にとっては、Back Marketを通じてデバイスを購入すれば、30日間の返金保証が付くという安心が得られる。これまで合計600万人の顧客がBack Marketでデバイスを購入しているという。

Sprints Capital(スプリンツ・キャピタル)が主導した今回の資金調達ラウンドには、Eurazeo(ユーラゼオ)、Aglaé Ventures(アグラエ・ベンチャーズ)、General Atlantic(ジェネラル・アトランティック)、Generation Investment Management(ジェネレーション・インベストメント・マネジメント)などの既存投資家も参加した。最近、フランスのテックエコシステムは勢いづいており、PayFit(ペイフィット)、Qonto(クォント)、Ankorstore(アンコールストア)といった企業が、この数日間にそれぞれ数億ユーロ(数百億円)の資金調達を発表している。

「私たちの目標は、消費者がテック製品を購入する際に、リファービッシュ品の機器が最初の選択肢となるようにすることです。米国の自家用車市場では、消費者が中古車を信頼して購入するため、中古車は新車販売台数の2倍も売れています。それと同じような展開が、エレクトロニクス市場でも起こることを、我々は期待しています」と、共同創業者兼CEOのThibaud Hug de Larauze(ティボー・ユーグ・ド・ラローズ)氏は声明で述べている。「これらのファンドの支援と信頼は、当社の顧客基盤の拡大と併せ、Back Marketの歩みにおいて、さらには循環型経済全体にとって重要なステップとなります」。

Back Marketにとって特に重要な指標は平均故障率だ。現時点におけるその数字は、約4%と同社では見積もっている。これは、25台に1台の割合で、何らかの形で期待通りの動作をしない個体があるということだ。だからこそ、顧客満足度を高めるためには、カスタマーサービスが重要になる。同社によると、新型機種の故障率は3%と推定されるという。

Back Marketでは、米国市場に明確に注力することで、規模が倍増すると期待している。同社は現在、650人の従業員を抱え、欧州、米国、日本を含む16カ国で事業を展開している。

画像クレジット:Daniel Romero / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Instagram、2021年第4四半期に世界総ダウンロード数でTikTokを抑え再びトップに

Instagram(インスタグラム)は、インドでのTikTok(ティクトック)禁止の恩恵を受けており、2021年第4四半期時点の世界総ダウンロード数で首位に返り咲いた。アプリインテリジェンス会社Sensor Tower(センサータワー)が発表した新しいデータによると、Instagramにとって2021年第4四半期は少なくとも2014年以来最高のものとなり、インストール数は第3四半期から10%増えた。また、Instagramは、2019年第4四半期にWhatsAppがその座を占めて以来、ダウンロード数ランキングで1位を獲得した初のMeta傘下アプリとなった。

実際、過去2年でTikTokが世界ダウンロード数で1位でなかったのは2021年第4四半期が2回目だったとSensor Towerは指摘している。

その前にTikTokが首位から転落したのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まった頃で、2020年第2四半期にZoom(ズーム)がTikTokを破ってダウンロード数1位のアプリとなった。

画像クレジット:Sensor Tower

Instagramが世界の(ゲーム以外の)アプリ市場でトップに躍り出たのは、Androidユーザーによるインストールが増加したためだ。Google Playアプリの世界ダウンロード数トップチャートでは、2四半期連続でMeta傘下のアプリが1位と2位を獲得した。1位はInstagram、2位はFacebook。一方、TikTokは3位だった。

画像クレジット:Sensor Tower

Apple(アップル)のApp Storeで最もダウンロードされたアプリを示すチャートでは、状況はかなり違っているようだ。

TikTokとYouTubeがそれぞれ1位と2位をキープしており、2020年第2四半期以降、その座を守り続けている。第4四半期にTikTokは、8四半期連続でApp Storeでのインストール数が5000万回を突破したとSensor Towerは指摘している。

残りのトップ5は、3位WhatsApp、4位Instagram、5位FacebookとMetaのアプリで占められている。一方、6位には、国家キャンペーンで宣伝されたことを受け、中国の国家詐欺防止センターアプリが異例のランクインを果たした。その他は、ソーシャルアプリ、チャットアプリ、エンターテインメントアプリという典型的なセレクションで占められている。

画像クレジット:Sensor Tower

興味深い補足として、2021年第4四半期には、TwitterがApp Storeで最もダウンロードされたアプリのトップ20に2020年第1四半期以来初めて入った。2020年以降、4度目のランクインだ。ダウンロードは前四半期比34%増と急増し、その後も成長は続いている(製品開発活動の活発化がようやく実を結び始めたのかもしれない)。

TikTokは米国のApp StoreとGoogle Playの両方でダウンロード数第1位のアプリだが、世界第1位からの転落は、少なくとも部分的にはインドが2020年6月に「国家安全保障」の懸念から、中国企業の他のアプリとともにインド国内で禁止する決定を下したことに起因している。

Sensor TowerがTechCrunchに語ったところによると、禁止措置が取られて以降、Instagramのグローバルダウンロードにおけるインドの割合は着実に増えているという。

画像クレジット:Sensor Tower

例えば、2020年第2四半期には、Instagramのダウンロード数の約21%がインドからのものだったが、2021年第4四半期にはそのシェアは39%に拡大した。また、通年で見ると、2020年にはInstagramのダウンロード数の約25%がインドからで、2021年には約36%に増えた。

InstagramはTikTokの脅威に対処すべく動画に注力するようになり「Reels」というTikTokクローンの普及に努めてきた。Instagramは競争が激化する中で牽引力を回復しようと、2021年にReelsに投稿するクリエイターに巨額のボーナスを提供し始め、中には1万ドル(約115万円)という高額な支払いもあった。

直近の四半期はInstagramが勝利したものの、Sensor Towerのデータによると、通年(2021年)の両アプリストアのグローバルダウンロード数ではTikTokがトップで、次いでFacebook、Instagramの順となっている。

ちなみに、Sensor Towerのライバル会社App Annieは、少し異なるランキングを発表している。App Annieのデータでも世界的なダウンロード数ではTikTokがトップだが、次いでInstagram、Facebookの順となっている。このことから、FacebookとInstagramのダウンロード数は近いと考えられる。Sensor TowerとApp Annieのダウンロード数推定方法が異なるため、結果的に異なる数字になったものと思われる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

ベンチャーや成長企業特化の就職サイトCheerCareerを運営するCheerが5000万円調達

ベンチャーや成長企業のための就職サイト「CheerCareer」(チアキャリア)を運営するCheerは1月12日、第三者割当増資・株式譲渡による総額5000万円の資金調達を行ったことを発表した。引受先はWAKIプランニング。資金調達支援プラットフォーム「JPMergers」を通したものという。

調達した資金は、以下にあてる予定。

  • プロダクト開発体制の増強による、UI/UX改善や顧客体験の向上
  • 掲載企業のサポート体制を強化。これにより採用支援の強化や、提供サービスの高品質均一化を実施
  • マーケティング活動強化による認知度向上
  • パートナーの価値向上・サービス品質向上に向け、新たな革新的取り組みに投資

CheerCareerは、地方創生と教育をテーマに「働くにワクワクを。人生にもっと潤いを。」増やすため、働く選択肢を広げることを目的としたベンチャー・成長企業のための就職サイト。スポットライトが当たりにくい企業を就活生の選択肢に入れてもらい、お互いの機会損失をなくすことを目指しているという。さらに、採用だけでなく日本の社会的課題を見据えて経済の起爆剤になるような優秀な人材の育成と輩出、中小ベンチャー企業とのマッチングで日本経済の発展に貢献するとしている。

オフィス賃貸業向けデータプラットフォームestie proなど運営のエスティが10億円のシリーズA調達、採用・組織体制を強化

オフィス賃貸業向けデータプラットフォームestie proなど運営のエスティが10億円のシリーズA調達、採用・組織体制を強化

オフィス賃貸業向けデータプラットフォーム「estie pro」と賃貸オフィスマッチングサービス「estie」を運営するestie(エスティ)は1月12日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約10億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、新規投資家のグローバル・ブレイン。

調達した資金は、複数サービスを継続的に開発・提供するマルチプロダクト戦略を支える人材採用の強化に充当される。今後の採用活動を通じ、特にプロダクト、オペレーションの両部門を拡大し、トップマネジメント人材の採用を視野に入れ、物件からエンドユーザーに至るまでの一貫したデータフローを構築し、商業用不動産市場のDXの推進を目指したいという。

2018年12月設立のestieは「産業の真価を、さらに拓く。」を理念とし、不動産業界に関連する情報の流通・取引を円滑にすることを目指すスタートアップ。

同社が提供する不動産データ分析基盤のestie proでは、50以上の不動産デベロッパー、管理会社、仲介会社などから構築されたデータパイプラインの独自情報を日々集約し、オフィス賃貸業に必要なあらゆる情報を提供。全国8万棟・40万フロアの建物情報、500万坪の募集情報、24万件の賃料情報、都心20万件の入居企業情報などのデータを網羅すると同時に、独自開発したAIアルゴリズムによる推定賃料「e-賃料」を搭載し、データを活用した不動産関連業者の意思決定をサポートしている。サービスリニューアルを行った2020年7月から2021年12月まで、約14倍(月平均約+15%)ものMRR(月次経常収入)成長を続けているという。

Tumblr、App Storeルールに準拠するためiOS版にセンシティブコンテンツのトグルを追加

Tumblr(タンブラー)は数週間にわたり、Apple(アップル)App Storeのガイドラインに準拠するため、iOS上でさまざまなタグの検索結果を隠していた。米国時間1月11日、Tumblrはこの問題を解決するべく、iOS版アプリにセンシティブコンテンツのトグルボタンを導入し、ユーザーがセンシティブなコンテンツの表示をオプトインできるようにした(デフォルトでは、センシティブコンテンツは表示されない設定になっている)。

関連記事:Tumblrが「大人向け」コンテンツを巡って再びアップルと闘争中

アップデートされたTumblrのiOSアプリでは、センシティブなタグ(たとえば「マリファナ」など)を検索すると、検索結果が非表示になる。代わりにポップアップが表示され、検索結果を見たい場合はセンシティブコンテンツフィルターをオフにするよう促される。センシティブなコンテンツを見るために「設定を表示する」をクリックすると、アプリ内メニューではなく、モバイルブラウザ上のTumblrのウェブサイトにリダイレクトされる。設定を変更したら、その変更を有効にするためにiOSアプリを再起動する必要がある。そしてついに、ベビーヨーダがマリファナでハイになっているファンアートを含む検索結果を見られるようになる(本当の話だ)。

画像クレジット:Tumblr

Tumblrによると「センシティブコンテンツを非表示にする」トグルを有効にすると、センシティブなタグが付いたおすすめ投稿、露骨なコンテンツのブログ、センシティブなタグが付いた検索が非表示になるという(Tumblrの定義では、セックスや性器を描写したGIF、画像、動画、イラストなどのアダルトコンテンツまでいかなくても露骨と分類され得る。現在、アダルトコンテンツは禁止されている。TechCrunchは、アダルトコンテンツと露骨なコンテンツの区別についてTumblrに明確な説明を求めたが、まだ回答は得られていない)。

この新しいトグルを無効にすると、ユーザーは、コミュニティガイドラインに違反していないセンシティブな内容の検索結果を表示したり、オーバーレイをタップして露骨だと判断されたブログにアクセスできるが、iOSでは露骨なコンテンツは非表示のままだ。トグルを無効にしたユーザーは、センシティブな可能性のあるコンテンツのレコメンデーションを受けることもできる。

一方、トグルを有効にすると、一見大丈夫そうなタグでも警告ポップアップが表示される場合がある。例えば「submission(投稿、提出、または服従)」というタグは、性的なコンテキストになり得るため、センシティブコンテンツフィルターを無効にしない限り、禁止されることがテストしてわかった。このタグはTumblrのプラットフォーム上で、性的ではない別の意味で使用されることが多いため、問題となっている。他のユーザーが自分にあてて投稿したコンテンツを自分のブログに投稿すると、自動的に「submission」というタグが付けられるのだ。

以前、Tumblrは同様のトグルスイッチを提供しており、ユーザーがアダルトコンテンツを表示することを選択しない限り、iOSの設定でサイトのアダルトコンテンツを直接ブロックすることができた。しかし、このトグルは、2018年にTumblrがプラットフォームからすべてのポルノを公式に禁止することを決定する前は、Tumblrがホストするポルノコンテンツを禁止することに重点を置いていた。

Tumblrは、同社のブログ記事でこう述べている。「これらの最新のアップデートは、iOSアプリ上の我々のコミュニティで、自分に最適な体験を構築し、自分がおもしろいと思うコンテンツを探索するためのコントロールを提供するものです。コミュニティの体験を最優先する一方で、AppleのApp Storeガイドラインおよび当社のガイドラインも遵守しなければなりません」。

画像クレジット:MARTIN BUREAU/AFP / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

全国一律プランの葬儀を提供する「よりそうお葬式」など手がける葬儀ITベンチャー「よりそう」が35億円超のシリーズE調達

全国一律プランのお葬式を提供する「よりそうお葬式」など手がける葬儀ITベンチャー「よりそう」が35億円超のシリーズE調達

葬儀ITベンチャーの「よりそう」は1月12日、第三者割当増資および金融機関4社からの融資により、シリーズEラウンドとして、総額約35億1000万円の資金調達を実施したと発表した。内訳は、第三者割当増資が約30億9000万円、融資が4億3000万円。引受先は、フィデリティ・インターナショナル、農林中金キャピタル、Sumisei Innovation Fund、博報堂DYベンチャーズ、Sony Innovation Fund by IGV、HT Asia Technology Fund、ヤマシタ。第三者割当増資での累計調達額は約63億円となった。

調達した資金により、終活・葬式・供養・相続まで包括的に提供する「ライフエンディング・プラットフォーム」(LEPF)構想を強化するとともに、新規事業創出および認知拡大に努める。

日本は、少子・高齢・多死が進む「課題先進国」として年間死亡者数が増加傾向にあり、2040年には約168万人(内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)」)に達する見込み。また1人の方が亡くなる前後において、その家族は介護や葬式、供養、相続といった様々なライフイベントを経験することになり、そのたびにサービスの比較検討や申し込みを繰り返すことが大きな負担となっている。そこで「よりそう」は、各家族が各ライフイベントで感じる負担や不安を「一元化」「テクノロジー」「安心感」によって解消するため、葬式を起点として前後のタイミングまで一元的にサポートするLEPF構想を強化する。

また同社によると、その実現には、起点となる葬式の施行を担うパートナー葬儀社のDX支援も重要という。葬儀業界は業界構造的な背景から、数年前までIT化やDXの重要性が認識されていなかったことから、業務効率化まで手が回らず、本来遺族のケアに割くべき時間をアナログな事務作業や業務管理にあてざるをえない葬儀社も少なくないとしている。

「よりそう」は、パートナー葬儀社のDX支援によって葬儀社スタッフが遺族に向き合える時間を増やし、遺族がお別れに集中できる時間を提供したいと考えているという。今回の調達を通じ、遺族の不安に寄り添い、事業者課題も解決することで葬儀業界の負を解消するサービスを構築し、両面から業界構造の変革を促すプラットフォーマーとなることを目指すとしている。

重点投資領域

  • LEPF構想の推進:LEPF拡張にともなう事業シナジーを見越し、保険や介護といった葬儀周辺領域に強みを持つCVCによる出資を実現。また、さらなる領域拡大および強化のため、他業種との業務提携を本格的に検討する予定
  • 葬儀社向け事業の立ち上げ:今後はDXによる経営向上支援を目的とした葬儀社向け新規事業を本格化する予定。2022年度中に事業部を立ち上げ、2023年度中に主要事業とすることを目指す
  • 採用強化:LEPF構想の推進および新規事業立ち上げに際し、よりそうの事業成長を支える人材の採用強化を決定
  • マスプロモーションへの投資:主力サービス「よりそうお葬式」は、一般には比較的新しく、認知が低いカテゴリーに含まれるサービスであることから、認知を広めていく必要があると考えているという。葬式運営経験が少なくても絶対に失敗したくない方が、事前に「よりそうお葬式」を知ることで安心して利用いただけるよう、マスプロモーションを強化する

「よりそう」は、2009年3月に設立後、2013年に「よりそうお葬式」(旧「シンプルなお葬式」)、「よりそうお坊さん便」(旧「お坊さん便」)の提供を開始。高齢化や核家族化による葬儀・供養の価値観の変化などを取り入れたサービスを展開している。2018年3月には葬儀・法要・供養などの「ライフエンディング」サービスをワンストップで提供するブランド「よりそう」を発表している。

フードデリバリーDoorDashの共同創業者・CEOがMetaの取締役に就任

Doordash(ドアダッシュ)の共同創業者・CEOであるTony Xu(トニー・シュー)氏がFacebook(フェイスブック)の親会社Meta(メタ)の取締役に就任したことを米国時間1月11日に同社が発表した。シュー氏は2013年以来DoordashのCEOを務め、2020年11月には取締役会長に任命された。Metaは、シュー氏の就任は即時に発効されるという。シュー氏の就任によりMetaの取締役会は総勢10名となった。

「何百万もの地域商店がMetaのツールを使って成長し、日々の業務を遂行しています。会社が次のステージへと進む時に取締役として仕事ができることを楽しみにしています」と発表を伝えるプレスリリースでシュー氏が語った。

この日の発表は、ここ数年Metaが商取引に大きく力を入れ、Facebook、Instagram(インスタグラム)、WhatsApp(ワッツアップ)など同社の傘下アプリ全体でさまざまなショッピング機能を導入していることを受けたものだ。同社は、ショッピングやeコマース機能を自社プラットフォーム内で直接提供することによって、ユーザーがアプリを離れないようにすることに焦点を当てている。

声明の中でMetaのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、シュー氏が商取引における複雑な問題を解決した経験を持っていることを説明し、同社がメタバースを構築する上でシュー氏の体験を活用するつもりであることを話した。商取引はメタバースで重要な役割を演じることから、シュー氏はその方面で取締役会に助言する可能性が強い。

「トニー(シュー氏)は、何百万もの人たちに、何十万というレストランや商店の食品その他の商品を届けるすばらしいサービスを作り上げました」とザッカーバーグ氏が声明で語った。「私は優れたテック・リーダーを取締役会に迎えることが重要であると常々考えていましたが、トニーにはテック企業経営と商取引の複雑な問題解決の両方での直接体験があります。当社がメタバース構築へ向かう中で、彼の見識から学んでいくことを楽しみにしています」。

Metaの取締役には、ザッカーバーグ氏の他、PayPal(ペイパル)のグローバルセールス担当執行副社長Peggy Alford(ペギー・アルフォード)氏、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同ファウンダーMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏、Dropbox(ドロップボックス)の共同ファウンダー・CEOであるDrew Houston(ドリュー・ハウストン)氏、McKinsey and Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)の元シニアパートナーNancy Killefer(ナンシー・キレファー)氏、MetaのリードインディペンデントディレクターでWilmerHale LLP(ウィルマーヘイルLLP)のシニア国際法務顧問Robert Kimmitt(ロバート・キミット)氏、Metaの最高執行責任者Sheryl K. Sandberg(シェリル・K・サンドバーグ)氏、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)のマネージングディレクターPeter Thiel(ピーター・ティール)氏、およびThe Estée Lauder Companies(エスティ・ローダー・カンパニーズ)の執行副社長兼CFOであるTracey T. Travis(トレーシー・T・トラビス)氏がいる。

画像クレジット:Meta

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nob Takahashi / facebook

新資金で潤うFoxtrotの「未来のコンビニ」があなたの近くにやってくる

シカゴにあるFoxtrotの店舗の1つ(画像クレジット:Foxtrot)

Foxtrot(フォックストロット)は、コンビニエンスストアに対する考え方を変えようとしている。同社は、今後2年間で実店舗を50店舗まで拡大するために、新たに1億ドル(約115億5100万円)のシリーズC資金を調達した。

前回、シカゴを拠点とするFoxtrotに注目したのは2020年初頭、世界的なパンデミックに世界が震撼する直前のことだった。成長ラウンドで1700万ドル(約19億6300万円)を確保し、商品を店舗で購入するか、オンラインで注文して配送するかという選択肢を顧客に提供していた。そして当時、ダラスとシカゴに小売店舗を構えていた。

関連記事:窮地のコンビニを再構築するFoxtrotが19億円を調達

2014年にMike LaVitola(マイク・ラヴィトラ)氏とTaylor Bloom(テイラー・ブルーム)氏が創業した同社は、街角のコンビニエンスストアを再構築しようとしている。その起源は、デジタルファーストのコマースプラットフォームだが、彼らはそこに小売り店舗の体験を追加した。Foxtrotの主力商品であるコーヒー、すぐに食べられるカフェ料理、ワインに加え、同社は現在地元の職人による最高レベルの食品を探し求めている。

前回、FoxtrotはワシントンD.C.をマーケットリストに加え、その後、この3都市で16の小売店をオープンした。5分以内のピックアップ、迅速なオンデマンド配送「Foxtrot Anywhere」という全国配送ツールなどを提供している。

加えて、同社は1年前にプライベートブランド商品にも着手し、現在では同社の小売商品の約30%、小売とeコマースの売上のほぼ半分を占めるまでになったと、CEOのLaVitola(ラヴィトラ)氏はTechCrunchに語っている。同氏は、今後1年間に約200の新しいプライベートブランド商品が発売されると期待している。

米国時間1月11日の新たな資金調達は、D1 Capital Partners(D1キャピタル・パートナーズ)が主導し、既存の投資家であるMonogram Capital(モノグラム・キャピタル)、Imaginary(イマジナリー)、Almanac(アルマナック)、Wittington(ウィッティントン)、Fifth Wall(フィフス・ウォール)、Beliade(ベリアード)、Lerer Hippeau(レラー・ヒポー)、Revolution(レボリューション)が参加したものである。このシリーズCにより、Foxtrotの総資金額は1億6000万ドル(約184億円)に達した。

パンデミックでの現状で見られるように、ほとんどの販売はオンラインに移行した。しかし、ラヴィトラ氏はFoxtrotの小売店舗へのアクセスが増加したことに気がついた。小売店舗へ足を運ぶのは、新しいスナックを発見するのにはそれほど激しくなく、かつレストランや食料品店に行くよりも「人々の日常の中の20分の楽しみとなった」ことに言及した。

同社は2021年、事業を倍増させたが、小売店の導入は、新たな資金を使って2022年に25店舗を新たにオープンするための原動力の1つにもなっている。新店舗には、ボストンのバックベイ地区、オースティン初となる2店舗、シカゴのウィリスタワー、トリビューンタワー、リグレーフィールド付近への追加店舗が予定されている。2023年には、ニューヨーク、ナッシュビル、マイアミなどの新市場にも進出し、現在の都市でも店舗を拡大する予定だ。

「私たちが見た最大のトレンドは、顧客が小売体験に完全に傾倒し、それがオンラインビジネスの主要な顧客獲得ポイントになっているということです」と、ラヴィトラ氏は述べている。「配送は今後も続くでしょうが、お客様は最終的に私たちの商品の価値を理解するようになります。その結果、私たちは、誰が一番おいしいドーナツ、コーヒー、トルティーヤを持っているかという点にとことんこだわりながら、対面での体験に私たちの90%の時間を費やしています」。

Foxtrotは小売店舗に加え、新たな資本を商品化モデルの拡張に投資し、エンジニアリングの人材を追加採用し、2023年にはチームの規模を3倍にする計画だ。ラヴィトラ氏は物流、店舗決済、在庫管理、パーソナライゼーション、Foxtrotのロイヤルティプログラムである「Perks(特典)」の分野でも採用を予定している。

Perks自体は2021年に110%以上の成長を遂げ、同時期に、5分以内マーケットピックアップは250%、カフェオーダーは375%の成長を遂げたという。

Monogram Capitalの共同創業者でFoxtrotの取締役を務めるJared Stein(ジャレド・スタイン)氏は、Foxtrotがオムニチャネルブランドとローカルプロダクトキュレーターとして支配力を発揮している点を「カテゴリーキリングモデル」と称した。

「Foxtrotは、我々の中では、稀有な存在です。Foxtrotは、一から技術スタックを構築しました。それに、同じレベルのキュレーションとおもしろいブランドとのローカルなパートナーシップを持つ会社を見つけるのは難しいものです。それが、人々が物語に入ってくる理由なのです。他の企業もこれをやっていますが、複雑です。Foxtrotは、それをスケールアウトする前に取り組んだのです」。

編集部注:1月11日6:29 a.m. PT:Foxtrotは、投資家のリストにM3 VenturesのBeliadeへのブランド変更を含むように修正しました。

画像クレジット:Foxtrot/シカゴにあるFoxtrot社の店舗の1つ

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ネットフリックス「ハイプハウス」が見せるクリエイターエコノミーの闇

私たちはこれまでキム・カーダシアンやパリス・ヒルトンのような有名人を「有名であることで有名」と表現していた。しかし、Netflix(ネットフリックス)のドキュソープ(ドキュメンタリー形式のリアリティ番組)「Hype House(ハイプハウス 〜TikTokスターのリアルライフ〜)」に登場するTikTok(ティックトック)のメガスターたちは「普通であることで有名」だ。このクラスのスーパースターは、有名人の裕福な子弟とは違い、神秘的なアルゴリズムによって、一見すると恣意的な理由で実質的に一夜にしてスターダムにのし上がった。

「20歳で大富豪だよ、何を落ち込む必要があるんだと思うだろ?」と語るのは、1470万人のフォロワーを持つTikTokのスターAlex Warren(アレックス・ウォーレン)氏だ。「とても馬鹿げたことに聞こえるのはわかっているさ、でも、それが苦しいんだよ、落ち込むことが許されていないように感じるんだ」。

「ハイプハウス」では、平凡な10代の若者が、有名人になったチャンスの本質について苦悩し、その名声が登場したときと同様にすぐに消えてしまうのではないかと心配している。「ハイプハウス」は、TikTokで最も長く続いている同名のコンテンツハウスの1つで、ソーシャルメディアのスターたちが一緒に暮らし動画を撮影している。このコンセプトは新しいものではない。YouTube(ユーチューブ)やTwitch(トゥッチ)、Vine(バイン)のスターたちは、何年も前からこのような共同生活のプロジェクトを実験してきた。

Thomas Petrou(トーマス・ペトルー)氏(フォロワー数800万人)が事実上のマネージャーだが、彼は利益の分配は受けていないという。彼は自分のことを「この家のお父さん」と呼んでいるが、それに加えて全員がちゃんと皿洗いをするのを確認するだけでなく、「ハイプハウス」ブランドが維持できるように、毎月少なくとも8万ドル(約923万円)のネット収入を得られるようにしている。彼のインフルエンサーの友人であるVinnie Hacker(ビニー・ハッカー)氏(フォロワー数1290万人)、Jack Wright(ジャック・ライト)氏(フォロワー数880万人)、アレックス・ウォーレン氏(フォロワー数1470万人)といった面々が、500万ドル(約5億8000万円)の豪邸に家賃なしで住んでいる。彼らがすることは、月に一度、「ハイプハウス」の公式TikTokアカウントに投稿することだけで、継続的なブランドコンテンツ契約によって収益を生み出している。さらにTikTokは、クリエイターたちがプラットフォーム上で誘導したトラフィックに対して直接報酬を支払うようになった。

このNetflixのシリーズは、「ハイプハウス」の一時代の終わりを告げるもので、若きミリオネアたちのおどけた姿よりも、インフルエンサーたちが直面する課題に焦点を当てている。

考えてみれば、このTikToker(ティックトッカー)たちが投稿している動画は、平均的なティーンエイジャーが投稿するものとさほど違ってはいない(大邸宅から投稿していることを除いて)。約2000万人のフォロワーを持つ「ハイプハウス」の公式TikTokアカウントでは、スターたちが新しいフィルターを試したり、次々に最新のトレンドを取り入れたり、そしてもちろん踊ったりしている。

全8話のシリーズを通して、風光明媚なサンタローザバレーの家には不穏な空気が漂っている。「ハイプハウス」のメンバーの中には、刺激を得られず幻滅を感じているせいで、ペトルー氏が望んでいるほどには頻繁にグループのためのコンテンツを作らない人もいる。あるシーンでは、「ハイプハウス」のメンバーが巨大なビーンクッションに寝そべってコンテンツのアイデアを考えようとしていたのだが、結局思いついた最高のアイデアは「手の込んだ握手方法」を編みだすことだった。きれいな大邸宅に家賃なしで住んでいても、楽しそうには見えない。

一方、アレックス・ウォーレン氏は、ワラにもすがるように、ネット上で思うようには反響を得られていない演出をしている。問題のある家庭環境や足の怪我を抱えながらも、心の休息を取ることに恐怖を感じているのだ。

「この仕事では、投稿をやめるとエンゲージメントが失われるんだ」とウォーレン氏は告白するように説明する。「この仕事には病欠はないんだ。病欠したらフォロワーが減り、つまり収入が減り、それはつまり、自分の仕事を失うことなんだ」。

インフルエンサーのゴールドラッシュ

TikTokのスターダムは、インターネット上のキャリアとして理解されつつあり、突然有名になった子どもたちのブランドとの契約やパートナーシップを支援することを目的とした、何十ものスタートアップ企業が生まれている(もちろん彼らの収益の一部を手にするためだ)。YouTubeでは、初期のクリエイターのほとんどが広告収入で利益を得ていたが、少なくとも初期の頃は、現在のようにマネタイズに注目が集まっていなかった。他のプラットフォームも、TikTokとその最大のスターたちの成功に乗じようと躍起になっている。Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)、YouTube(ユーチューブ)は、クリエイターたちがTikTokではなく自分たちのプラットフォームに投稿するようにインセンティブを与えるために、数億ドル(約数百億円)を投じている。

Nikita Dragun(ニキータ・ドラガン)氏(フォロワー数1420万人)は「インフルエンサーとして、私たちの生活全体が、従来の有名人よりも奇妙な台座に置かれています」と番組で説明している。「スポークスマン、活動家、モデル、時事評論家、マネージャー……一度にたくさんのことをしなければなりません」。

クリエイターの収益化が進んでいることは、ほとんどの場合良いことだと思われる。クリエイティブな人びとが好きなことをして生計を立てるのに役立つツールがこれまでになく増えている。LinkedInでさえ、40人のスタッフがクリエイターとの仕事を専門に担当している。しかし一方で、生活のあらゆる面をマネタイズしなければならないというプレッシャーを感じるクリエイターもいる。ウォーレン氏の人気の一部は、同じくTikTokのスターで1360万人のフォロワーを持つガールフレンドのKouvr Annon(コーバー・アノン)氏との関係についての投稿から来ている。しかしウォーレン氏は、2人のプライベートな生活とコンテンツを切り離すのに苦労していて、カメラのないところ(滅多にないが)での2人の関係にも影響を与えている。

TikTokの成長によって加速されたインターネットの時代では、ただ動画を投稿していれば良いというわけではない。それは、自分のプラットフォームが明日死んでしまっても(以前にもあったことだが、Vine[バイン]がそうだった)、自分のキャリアを維持できるように、できるだけ多くの異なる収益源を組み合わせることなのだ。結局のところ、TikTokのスターたちは、TikTok自体から収入の大部分を得ているわけではない。ブランドとの契約、スポンサーシップ、商品の販売、ポッドキャスト、リアリティショー、音楽演技への思いがけない進出など、さまざまな形で幸運を手にしている。

「ハイプハウス」では、登場するクリエイターが自らの凡庸さを自覚していることが強調されている。彼らは、カリスマ性があり、おもしろく、大衆を楽しませるだけの魅力を持っているものの、自分の名声は才能よりも運に左右されていることを知っていて、いつその幸運が奪われるかわからないと心配している。彼らは、家族が離散した故郷に帰らなければならなくなったらどうしようとストレスを感じたり「キャンセルカルチャー」のターゲットになるのではと心配したりしている。

「ソーシャルメディアは数字のゲームだよ。お金はその数字にかかっているんだ」とウォーレン氏は説明する。「もし、僕が出しているものをみんなが見なくなったら、それは僕が何か間違ったことをしているということなんだ、だとしたら何が間違っているのか、どうすればその人たちを取り戻せるのか?」。

TikTokのアルゴリズムの変更のような恣意的な何かが、彼の成長を妨げる可能性があるのだから、ウォーレン氏の不安は杞憂ではない。ソーシャルメディアの爆発的な成長に慣れていたのに、その数字が停滞したり、最悪の場合は急落したりし始めたときには、どのように対処すればよいのだろう?

TikTokのアルゴリズムに対する心配に加えて、コンテンツハウスのビジネスモデルも同様に不安定だ。冒険を始めて以来、「ハイプハウス」は、インフルエンサー仲間で元メンバーだったDaisy Keech(デイジー・キーチ)氏との論争など、数々の訴訟に直面してきた。最近のYouTube動画で、ペトルー氏は訴訟に何十万ドル(何千万円)も費やしたと語っている。「ハイプハウス」では法的な問題には触れられていないが、ペトルー氏は共同体運営のストレスで目が覚めたり、嘔吐したりしたと語っている。このようなコンテンツハウスは、理論的には個々のクリエイターの負担を軽減してくれるはずだ。集団の一員となることで、アイデアのワークショップやビデオの共同制作を行うチームが周囲に生まれ、共有アカウントからの追加収入が得られる。しかしそうなる代わりに「ハイプハウス」では、明確な金銭的合意がないままお互いに頼り合うことが、ストレスをためてしまうことになったように見える。

「私もはしゃいでいるわけじゃないし」

「ハイプハウス」のソーシャルサークルの中には、TikTokで最も多くのフォロワー(1億3300万人)を持つCharli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)氏がいる。Forbes(フォーブス)の推計によると、彼女は同プラットフォームで最も高額の報酬を得ているクリエイターでもあり、2021年は1750万ドル(約20億2000万円)を稼いでいる。

Hulu(フールー)が制作した、突然有名になった彼女の家族についてのリアリティ番組で、ダミリオ氏は「私はただ、世界の他のティーンエイジャーと同じように投稿してるだけ」と語っている。「ただSNSに投稿していただけなので……何も」。かつてダミリオ氏がTikTokのバイオグラフィーに冗談で書いたように「大丈夫、私もはしゃいでいるわけじゃないし」というわけだ。

しかし、クリエイターエコノミーの最大のスターである彼女も、そのスター性が持続するかどうかについては疑問を持っている。「The D’Amelio Show」のパイロット版で、彼女は、もし自分が何百万ドル(何億円)も稼ぎ続けられなかったり、自分のライフスタイルのプレッシャーが大きくなりすぎたりしたら、どうしようかと考えていたことを明かしている。

「企業のCEOと電話で話すのは……ちょっと楽しいかな?という感じ」とダミリオ氏はいう。「だから、ソーシャルメディアで何が起こっても、その仕組みを知っているからこそ、マーケティングに進むことができるのです。私はすべてのバックエンドを知っているけど、それはクールなこと」。

1年でほとんどの人が一生かけて稼ぐ金額よりも多くのお金を稼いでいるのに(さらにその子どもが一生で、孫が一生で稼ぐよりも…少なくとも孫の1人がTikTokで大成功しない限り)ダミリオ氏がバックアッププランを持っているのは奇妙なことだ。しかし視聴者にとっては「ハイプハウス」や「The D’Amelio Show」のような番組の目的は、ソーシャルメディアのスターたちを人間として見ることにある。制作チームにとっては、NetflixやHuluを儲けさせることが目的であり、スター自身にとっては、余分な収入を得て、名声を維持・向上させることが目的である……と、ひどくメタ的な話になってしまった。彼らは、その半製品的な弱さを利用して、自分をより大きなスターにするのだ。

おそらくここでの最大の勝者はTikTokかもしれない。それが、このアプリの魅力なのだ。アレックス・ウォーレン氏のように、車の中で生活していた人が豪邸に住むようになれるかもしれない。すべては、あなたの短いビデオクリップが人々に好まれた結果だ。しかし、インターネット上で最も有名な10人の人たちと一緒に暮らしていても、トップは孤独なのだ。

画像クレジット:Netflix

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

企業のセキュアなデータ活用を促進するデータカタログSaaSを手がけるQuollio Technologiesが5000万円のシード調達

データカタログSaaSによりデータガバナンスの実現を目指すQuollio Technologies(クオリオ)は1月11日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による5000万円の資金調達の実施を発表した。引受先はインキュベイトファンド。調達した資金はプロダクトの開発と組織体制の強化にあてる。またα版を近日リリースする予定。

現在データは「21世紀の石油」とも呼ばれるほど大きな存在となっており、様々なデータを資産として活用することが企業に求められている。しかしデータは、活用可能性と同時に誤用や漏洩・損害・賠償のリスクも含んでおり、未然防止が大きな課題となっている。そのため、「詳細がわからないデータについてはリスクを恐れ利用禁止にする」といった、データ活用そのものを萎縮させるという課題も発生している。

そうした問題を解決するための施策がデータガバナンスだ。データの入手背景や禁止事項などの詳細情報(メタデータ)を正しく理解し、リスクをカバーした状態でデータを活用するために欠かせないものとなっている。データ資産1つ1つのメタデータを管理し、より細かい粒度で制限することで、従来「アクセス禁止」「利用しないでおこう」とひとくくりで利用を否定していたデータに対して、「特定の条件下なら、このデータを使用しても大丈夫だ」といった柔軟な判断を可能とし、セキュアで自由なデータ活用を促進する。

データガバナンスは最近登場した新たな概念ではなく、DMBoK (Data Management Body of Knowledge) を筆頭に、2000年代から議論が重ねられてきた領域という。昨今では、企業の扱うデータ量が膨張し、データ利活用に関わる人数も増加している潮流から、データガバナンスを再び重要視する企業が増えているそうだ。

ただ、データガバナンスの概念自体の移り変わりの速さや、企業ごとに必要なデータ基盤・体制が大きく異なるためにデファクトスタンダードが生まれにくいという状況にある。特に日本では、市場を牽引するプレイヤー不足や経営側がデータ基盤について理解が浸透していないことから、海外よりも遅れを取っているという。こうした状況を解決するためクオリオは、データガバナンスに対する専門的な知見とデータ活用における現場オペレーションへの深い理解によって国内市場を牽引する存在となり、企業のデータ活用にイノベーションを起こすことを目指しているという。

クオリオは、「世界中の情報と知を繋げ、人類の新たな価値創造を促進する」をミッションに掲げ、2021年8月に設立。創業メンバーは、データサイエンスやデータエンジニアリングといった各領域におけるプロフェッショナルを中心に構成しており、データガバナンスの実現に向けた最初のソリューションとして、データカタログサービスの開発を行っている。

フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

フランスのスタートアップ企業であるDoctolib(ドクトリブ)が、(仮想)記者会見を開き、いくつかの指標を発表して最近の製品ローンチを振り返り、今後の投資についてヒントを示した。Doctolibは、医師のための予約プラットフォームとして始まり、医師や医療従事者一般のための他のサービスにも拡大している。

医療従事者は、SaaSとして提供されるDoctolibのツールを月額利用料を支払って利用し、それを患者に使用する。その事業は順調で、現在、開業医、歯科医、薬局、心理士など、30万人の医療従事者が毎月Doctolibへの支払いを行っている。サブスクリプションは月額129ユーロ(約1万7000円)から開始するが、このことによりスタートアップは毎月数千万ユーロ(数十億円)の収益を上げている。

プラットフォームがフランス国内で臨界点に達したことによって、2021年は同社にとって極めて重要な年となった。例えばフランスで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防接種を受けようと思ったときには、多くの人がDoctolibのサイトを訪れて、最寄りの予防接種センターや薬局、空き枠のある医師を探している。ワクチン接種施設は他のプラットフォームを使って情報を提供することも可能だが、実際にはほとんどの施設がDoctolibを使って予約を処理している。

Doctolibは現在、フランス、ドイツ、イタリアで展開している。現在もフランスは同社の主要市場だ。これまでに6000万人がDoctolibを利用していて、その多くが予約のためにサービスを利用している。2022年には、さらに10万人の医療従事者と協働することになると、同社は予測している。

製品群の開発

非常に多くの医師と商業的な関係を築いたことで、Doctolibは新しい製品をリリースしたり、一連のサービスを構築することができる。多くの点で、DoctolibはSalesforce(セールスフォース)の戦略を踏襲している。他の商品の踏み台として機能する、非常に集客性の高いメイン商品を持っているという点だ。

数年前には、遠隔医療機能を付加したリモートアポイントメント機能をローンチした。もう少し利用料金を支払うことを選択した医師は、ビデオ通話を行ったり、Doctolibの支払いシステムをリモートアポイントメントに使ったりすることができるようになる。

2021年、DoctolibはDoctolib Médecin(ドクトリブ・メディサン)を発表した。これは管理業務を行うバックオフィスツールだ。例えば患者ごとに書類を一元管理したり、患者の履歴を見たり、メモを取ったり、請求書を発行したりすることが可能になる。

Doctolibのフランス担当責任者のArthur Thirion(アーサー・ティリオン)氏はこう語る「私たちはこれに3年前から取り組んでいます。既存のものと比較して、ゼロから始めようと考えました。現在は、2000人強の医師に使われています」。

もちろん、医師としての仕事を管理してくれる製品はこれが初めてではない。しかし、これはDoctolibの他のエコシステムとうまく統合されている。

同様に、Doctolibは、Doctolib Team(ドクトリブ・チーム)という新しいサービスで、プラットフォームのネットワーク効果を高めたいと考えている。今回同社は、新たな収益源を作るのではなく、Doctolibを必須のものにしたいと考えている。

Doctolib Teamは、専門家を見つけてチャットができるインスタントメッセージングサービスだ。また、患者に関する書類を安全に送ることもできる。

すでにDoctolibを使用している医療関係者にとって、ありがたい機能と言えるだろう。まだDoctolibを使用していない医療従事者の場合は、無料のDoctolib Teamアカウントを作成して使い始めることができる、おそらく将来的にはDoctolibの他の製品をサブスクライブすることもあるだろう。

画像クレジット:Doctolib

高レベル監視下での運用

Doctolibは、機密性の高い医療データを扱うため、一般的なスタートアップ企業とは異なる。これまで、同社のデータ管理やデザインの決定について多くの報道がなされてきた。

そして同社は、他のスタートアップ企業と同じようには行動できないことをよく理解している。例えばこのスタートアップはユニコーンの状態になったものの、それ以降は資金調達の詳細を公開しなくなった。みんなの健康を増進しようとするときには、あまりお金の話はしたくないものだ。

共同創業者でCEOのStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏はいう「過去数年間、資金調達に関する発信をやめていました。毎四半期、毎年度、投資家のみなさまは我々の長期プロジェクトに基づいて、投資したり、再投資したりなさいます」。

現在Doctolibは、ミッション駆動の会社になりたいと考えている。ミッション駆動とは、一定のルールを遵守した場合に得られる特別なステータスだ。そして、スタニスラス・ニオックス=シャトー氏は、自らの会社を社会を改善する会社として位置づけるために、複数の論点を見出している。

例えばDoctolibのビジネスモデルは非常に明確で、医療従事者からのサブスクリプションのみで成り立っているという。同社は患者データを収益化していない。

同氏によれば、このプラットフォームは広く利用されていて、デジタルデバイドも引き起こしていないという。例えば多くのユーザーは大都市に住んでいないし、高齢者でも簡単に使えるようになっているという。

しかし、だからといって、同社は立ち止まるつもりはない。2022年には野心的な拡張計画が控えている。Doctolibは、2300人の従業員から3000人の従業員へとチームを拡大する予定だ。そして、フランス時間1月10日以降、全従業員がDoctolibの株主になる。全員が少なくとも2万ユーロ(約261万3000円)相当の株式交付を受ける。

2022年には、フランス、ドイツ、イタリアにおける製品の改良とプラットフォームの拡大のために、3億ユーロ(約392億円)の投資を計画しているが、これは主に新規雇用と新オフィスに使われる。2022年には新しい市場の立ち上げは予定されていないが、それはもっと先になるのだろう。

画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

アップルは2021年、アプリ開発者に約7兆円支払う

数々の反トラスト訴訟や特定マーケットでの規制強化に直面しながらも、Apple(アップル)は米国時間1月10日、2021年のApp Storeの成長率が記録的なものであることを示す新たなデータを公表した。同社はプレスリリースの中で、App Storeが登場した2008年以来、アプリ開発者に支払った金額は現在2600億ドル(約29兆9710億円)を超えたと明らかにした。この数字は同社が2020年末に報告した2000億ドル(約23兆550億円)から増加している。つまり、2021年だけでも開発者に少なくとも総額600億ドル(約6兆9165億円)を支払ったことになる。

この数字は、過去に報告された支払い額よりもずっと大きい。

ちなみに、Appleは2019年末までに、App Storeのデビュー以来、開発者に計1550億ドル(約17兆8680億円)を支払った。その前年は、約1200億ドル(約13兆8335億円)だったと明らかにした。行間を読むと、開発者への支払いは2018年から2019年にかけて350億ドル(約4兆330億円)増え、その後2019年から2020年にかけてさらに450億ドル(約5兆1855億円)増加したことになる。

残念ながら、個々のアプリによって支払われる割合が異なるため、Appleが共有した支払額の数字は、もはやApp Store全体の経済状況を明らかにする助けにはならない。

App Storeのビジネス慣行に対する規制当局による監視の強化、独占禁止をめぐる苦情、訴訟(現在控訴中のEpic Gamesとの裁判を含む)が増すなかで、Appleは近年、開発者収益の自社の取り分を減らすために手数料体系を調整してきた。

2020年11月に発表されたAppleのSmall Business Programの開始にともない、同社は対象となるアプリ(年間売上高が100万ドル[約1億1520万円]以下)に対して、手数料を30%から15%に引き下げた。2021年にはまた、一部のメディアアプリを対象に、Apple News Partner Programに参加することを選択した場合に手数料を引き下げた。Appleは、実際にこうした機会を利用した開発者やメディアの数については明らかにしていないが「大多数」のアプリが零細事業割引の対象となると指摘している。

Appleは、App Storeの新たな記録を発表するにあたり、通常の自社宣伝と、膨大な利益に対する過剰な注目との間の微妙なラインを行き来しているようだ。同社は、2021年のクリスマスイブから大晦日にかけて、App Storeの顧客が「これまで以上に」お金を使い、前年から2桁の伸びを記録したと明らかにした。

しかし、Appleは2021年同様、このマイルストーンを記録する明確な数字を提示しなかった。2021年は2020年のクリスマスイブから大晦日までの1週間に消費者はデジタル商品とサービスに18億ドル(約2070億円)を費やし、これは主にゲーム支出によるものだと指摘していた。

1月10日に発表された数字は、App Storeにとって過渡期の1年だったことを示している。

App Storeは、米議会の公聴会で取り上げられたApp Store詐欺や、App Reviewプロセスに現在も伴っている難しさについて、開発者からの反発をこれまで以上に受けている。Appleは2022年、Epic訴訟の判決により、サードパーティの決済方法へのリンクを許可するようApp Storeの変更を命じられたが、その後、この訴訟が上訴されている間、裁判所から土壇場で猶予を与えられた。しかし、日本韓国など他のマーケットでは、規制当局がAppleに外部ウェブサイトへのリンクを許可するよう迫り、手数料を抑制するためのその他の措置を取ったため、同社はApp Storeに対する支配力を緩めざるを得なくなった。

App Storeの数字に加えてAppleはApple Arcade、Apple Fitness+、Apple Music、Apple TV+、Apple News+、Apple Podcasts、Apple Books、Apple PayとWallet、Apple Maps、iCloud+といった他のサービス事業に関する最新情報も提供した

特筆すべきは、Arcadeが今や200以上のゲームを扱い、Apple Musicには9000万曲超のロスレスオーディオがあり、Apple TV+は190の業界賞を獲得したことだ。また、Apple Fitness+には2000セッション近くのワークアウトコンテンツがあり、Apple Newsは提供されているすべてのマーケットで引き続きナンバーワンのニュースアプリとなっている。Apple Payは約60カ国・地域で提供されていて、ユーザーは2021年にApple Walletで3000万枚のNFCチケットを利用した。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

クリエイターの収益化を支援するPatreon、「2022年に規模倍増」と同社CPOは語る

テクノロジーの世界が急速に成長するクリエイターエコノミーを受け入れる中、クリエイターの収益化を支援するスタートアップがあちこち出現している。しかし、2013年に設立されたPatreon(パトレオン)は「インフルエンサー」という言葉が私たちのボキャブラリーに入る以前から存在していた。「Tik Tok(ティックトック)」が誰も真似ようしているソーシャルプラットフォームではなく、Kesha(ケシャ)の歌だった頃のことである。

Patreonは2021年初めに評価額を3倍増の40億ドル(約4400億円)とした後、岐路に立っている。クリエイターのための構築という点で、同社は今後も勝ち続けるのだろうか。同時にPatreonは、クリエイターたちに自社のプロダクトが彼らの最善の利益を追求していると感じさせながら、その競争に先んじることができるのだろうか?

「私たちは(クリエイターエコノミーの)最初の8年間を定義した企業の1つになるのではなく、次の8年間を定義する企業になるつもりです」とPatreonのチーフプロダクトオフィサーであるJulian Gutman(ジュリアン・ガットマン)氏はTechCrunchに語った。

2022年のプラットフォーム計画についてTechCrunchに語ってくれたガットマン氏によると、Patreonは特にプロダクトとエンジニアリングの分野で積極的な採用を行い、時代を先取りしたいと考えている。ガットマン氏自身は2021年1月にPatreonに加わったばかりで、以前はInstagram(インスタグラム)でホームフィードエクスペリエンス向けプロダクトの責任者を務めていた。Patreonは2021年8月に、Google(グーグル)やTwitter(ツイッター)のチームを率いていたUtkarsh Srivastava(ウトカルシュ・スリヴァスタヴァ)氏をエンジニアリング担当シニアVPに迎えている。

「2021年前四半期にプロダクト、エンジニアリング、デザイン部門で60名を採用しており、このペースは2022年も続く見込みです」とガットマン氏。「Instagram、Uber(ウーバー)、Square(スクエア)の出身者を仲間に迎えています。これらの企業はいずれもクリエイターエコノミーの第一世代と言えるでしょう」。

Patreonは新しい会社ではないが、創業当初からクリエイティブな人たちの収益化を助けることをミッションとしていたことから、ガットマン氏は、かつての雇い主であるInstagramのようなソーシャルメディアプラットフォームよりも、同社はこの「第二世代」をリードする準備ができていると考えている。いずれにせよ、ソーシャルプラットフォームはクリエイターへの直接支払い多額の投資をしている。しかしPatreonのモデルでは、クリエイターは一時的なサプライズボーナスではなく、持続性のある月ごとの支払いを受けることができる。

Patreonは現在400人の従業員を擁しているが、2022年末までに1000人近くになることを目指しているとガットマン氏は語っている。Patreonは、特にプロダクト、エンジニアリング、デザインの分野の従業員を、現在の150人(最近採用した60人を含む)から2022年内に400人まで増やしたいと考えている。

「それは私たちが構築したいもの、そして構築する上でのペースと品質を反映していると思います」とガットマン氏。「私たちは今、潜在的なクリエイターたちに大きな期待を寄せており、彼らを支援するためにできる限り多くのツールを、できる限り早く提供したいと考えています」。

Patreonはすでに2022年に向けて取り組んでいるプロジェクトのいくつかの精査を始めており、その中には、ネイティブのビデオプラットフォーム(独占的なビデオコンテンツを限定公開のYouTubeリンクではなくプラットフォーム上で配信できるようにする)、より多くのフォーマットオプションによる投稿エクスペリエンスの向上、Patreonのページ上でコンテンツを整理するさまざまな方法、より多くのデータとアナリティクス、よりクリーンなアプリ設計、よりシンプルなマルチメディア再生エクスペリエンスなどが含まれている。Patreonによると、多くのクリエイターにとって「混乱とフラストレーションの源」であった課金システムの刷新も計画しているという。

しかし、Patreonにとってもう1つの大きな問いは、同社が暗号資産技術をプラットフォームに持ち込むかどうかである。2021年の秋、ガットマン氏は創業者でCEOのJackConte(ジャック・コンテ)氏とともに、クリエイターたちが収益を上げる方法としてPatreonが暗号資産を検討していることを明らかにした。Patreonは同社の秋のCreator Policy Engagement Program(クリエイターポリシーエンゲージメントプログラム)のアップデートで暗号資産クリエイターコインのアイデアを提案したが、その後のライブストリームでクリエイターたちは、Patreonが暗号資産に手を出すことでパトロンとの関係にどのようなインパクトを及ぼすかについて懸念を表明した。

Patreonが企業として取る行動は、プラットフォームで生計を立てているクリエイターの生活にインパクトを与える。このライブストリームに参加したクリエイターの中には、Patreonがクリエイターコインをローンチすれば、自分たちがそのツールを使っていなくても、暗号資産を好まないパトロンが購読をやめるかもしれないと心配する人もいた。

「(暗号資産)技術の中には実に興味深い基本的な要素がいくつか存在します。私たちのミッション、そして誰もがクリエイターエコノミーのために長い間求めていたもの、つまり権利の所有権、独立性、コンテンツの所有、ビジネスの所有、オーディエンスの所有、分散化、これらすべてのテーマに実質的に整合する要素です」とガットマン氏はTechCrunchに語った。「ただし、私たちは特定のアプリケーションやバンドワゴンに飛び乗る準備ができていないと思います」。

Patreonには暗号資産に取り組む専任チームは置かれていないが、暗号資産に情熱を持ち、ガットマン氏がいうところの「空き時間を利用した社内ポッド」を形成した従業員たちがいる。Patreonは2022年の早い時期に、暗号資産を活用してクリエイターをサポートする方法の可能性を調査する目的で、少人数のチームを立ち上げることを検討するかもしれないと同氏は語っている。

「『さあ、今すぐNFTプラットフォームを構築しよう』というものではありませんが、何人かの従業員がこの課題に専任で取り組むことになります」とガットマン氏。「ところで、彼らはこう結論付けるかもしれません。『今すぐここで構築すべきものは何もない』。それも十分理に適った結論です」。

Patreonは、暗号資産に足を踏み入れるかどうかという問題を軽く扱っていない。この選択は、自らのコミュニティを分断し、クリエイターに会社の決定の代弁者として行動することを強制することにもなり、個々のクリエイターのパトロンを遠ざける可能性もある。

2021年12月初旬、Kickstarter(キックスターター)はクラウドファンディングプラットフォームをブロックチェーンに移行すると発表し、特に一部のブロックチェーン技術に環境上の懸念を持つユーザーからの反発を巻き起こした。また2021年11月には、Discord(ディスコード)のCEOであるJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏が、チャットプラットフォームのインターフェイスに組み込まれた暗号資産ウォレットMetaMask(メタマスク)の画像をツイートした。しかし、暗号資産に詳しいユーザーでさえ、暗号資産ウォレットをDiscordアカウントと連携させることで、プラットフォーム上で不正行為や詐欺を実行しやすくなるのではないかと懸念していた。ユーザーの間では、暗号化に向けた同社の動きに抗議して、有料のDiscord Nitro(ナイトロ)サブスクリプションを解約するよう互いに促す声も上がった。その後シトロン氏は、Discordは現時点でこの技術を追求する計画はないとする声明を発した。

「私たちにとってもう1つ重要なことは、今後数年間で、クリエイターたちが別々に大きなものを作り上げることのできるツールセットを提供したいということです」とガットマン氏。「クリエイターがそこで使うことを選ぶ可能性のあるものを考慮した場合、そのツールセットの中には暗号資産の要素が含まれるかもしれません」。

しかし、より即時的には、コミュニティがPatreonの2022年の焦点になることをガットマン氏は強調した。

「クリエイターというと、人々はコンテンツを考えます。ですが、クリエイターが大きく従事しているのは、今日のコミュニティです」とガットマン氏は語る。「彼らは実のところコミュニティのリーダーです。関心のある共通のトピックや共通の情熱を中心にコミュニティが集うことに貢献しています。このことは、クリエイターが世界に提供しているものの中で、特に今の時代において極めて過小評価されている部分だと思います」。

現在、クリエイターがファンに提供する一般的な特典は、利用者専用のプライベートなDiscordサーバーへのアクセスである。ガットマン氏によると、PatreonはDiscordのようなプラットフォームとの統合スイートに加えて、コミュニティを構築するためのプラットフォーム上のプロダクトを作りたいと考えているという。

「私たちはクリエイターファーストです。クリエイターが統合を利用したいと思い、統合の方を望むなら、私たちはそのことに大きな喜びを感じます」とガットマン氏。「プラットフォーム上対プラットフォーム外という種類の戦いほどにはなりませんが、より多くのファーストパーティコミュニティツールの構築を考察することに大きな期待を寄せています。私たちの期待の一端は、コンテンツとコミュニティが出会う接点にあります」。

Patreonのような会社における変革は、プラットフォームに依存して生計を立てているクリエイターに不安をもたらす可能性がある。2022年にPatreonは、同社のプロダクトプランの大きなシフトに最も影響を受ける人々との直接的なコミュニケーションを維持するために、クリエイター調査を実施する予定である。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

仏の卸売マーケットプレイスAnkorstoreが起業2年で評価額約2296億円に

フランスのスタートアップAnkorstore(アンコールストア)は、2億8300万ドル(約327億円)のシリーズC資金調達ラウンドを実施した。2019年11月に設立されたAnkorstoreは、資金調達後の評価額が20億ドル(約2296億円)に達するまでに約2年を要した。同社は、ヨーロッパ全域で独立系小売業者向けの卸売マーケットプレイスを運営している。

Ankorstoreは、独立系ブランドが独立系小売業者に製品を販売できるようにする。そして、小売業者は、それらの商品を自社の顧客に販売することができる。これは、チェーンの末端のオフラインでの販売に焦点を当てたB2B2Cモデルだ。

Ankorstoreでは、家庭用品からメープルシロップ、キャンドル、ヘッドバンド、入浴剤、文房具まで、ちょっとしたものが手に入る。特に、生鮮食料品、美容製品、自宅用アイテムなど、かなりうまくいっている分野もある。

そして、同社の軌跡を考えると、非常にうまくいっている。現在、20万人の小売業者が同マーケットプレイスを利用し、1万5千のブランドから商品を調達しているす。2021年5月、AnkorstoreがシリーズBを調達したとき、同社は5万店舗と5000ブランドと取引していると話していた。

これが今日の資金調達ラウンドにつながる。Bond(ボンド)とTiger Global(タイガー・グローバル)がシリーズCをリードし、Eurazeo(ユーラゼオ)とCoatue(コータツ)もこのラウンドに参加した。Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)、GFC、Alven(アルヴェン)、Aglae Ventures(アグライ・ベンチャーズ)など、既存の投資家の中には、さらに資金を投入する者もいた。

この分野で競争している企業はそれほど多くはない。卸売マーケットプレイスで最も有名なのは、10億ドル(約1157億円)以上を調達した米国を拠点とするFaire(フェア)だろう。最近、ヨーロッパへの展開を開始した。Creoate(クリオネ)Orderchamp(オーダーチャンプ)もヨーロッパで卸売マーケットプレイスを運営している。

在庫を持たないマーケットプレイス

Ankorstoreは、フランス、英国、ドイツ、オランダ、スウェーデンの5カ国にチームを持っている。ヨーロッパの23の市場で商品を販売している。小売業者は、注文から60日以内での支払いが可能であり、隠れた手数料はかからない。基本的に、Ankorstore は、小売業者がキュレーションやサービスに集中できるよう支援し、同社が調達の面倒を見る。

Ankorstoreに商品を掲載しているブランドは、Ankorstoreを通した最初の注文で20%カットされるのに続き、各取引ごとに10%のカットを受ける仕組みだ。

ブランドによっては、まだ百貨店などの巨大小売業者と直接取引をしているところもある。そして、Ankorstoreは、ブランドが販売スタッフを雇ったり、フェアに出たりすることを妨げるものではない。同マーケットプレイスは、単なる販売チャネルであり、顧客を見つけるための新たな機会なのだ。

そして、これこそが卸売マーケットプレイスというビジネスモデルのすばらしさでもある。Ankorstoreは倉庫を持たず、在庫も持たない。同社は、ブランドと小売業者間の取引を促進するだけで、資本投資は一切必要ない。

「私たちは、プロフェッショナルのネットワークであり、プロフェッショナル同士のつながりをサポートするという点で、LinkedInに近い存在だと考えています」。と、共同創業者で共同CEOのNicolas Cohen(ニコラス・コーエン)氏は私に語ってくれた。

他のソーシャルネットワークと同様、このプラットフォームが大きくなればなるほど、強力なネットワーク効果が期待できる。特に、Ankorstoreは、生鮮食品など新しいカテゴリーへの拡大を期待している。

同社は、すでにUPSと契約しており、ブランドの配送を支援している。しかし、小規模なブランド向けの倉庫のソリューションに関しては、まだあまり手をつけていない。これも、この先の新たなチャンスと言える。

400人の従業員と多額の資金を持つAnkorstoreは、この非常に断片化された業界を統合するレイヤーとして機能する可能性がある。

画像クレジット:Christelle Bourgeois / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)