テスラの大型バッテリーシステム「メガパック」がオーストラリアの蓄電施設で発火事故

現地時間7月30日、南東オーストラリアの蓄電施設で13トンのTesla(テスラ)Megapack(メガパック)が発火した。火災は現地時間午前10時から10時15分の間に起きたことを当事者であるVictorian Big Battery(ビクトリアン・ビッグ・バッテリー)は発表した。地元消防によるとビクトリア州ジーロングの現場には特殊消火班が出動した。消防士は危険化学物質流出に対応するために作られた装置を使用して消火にあたり、特殊ドローンが大気観測を行った、とFire Rescue Victoriaは伝えている。

現場から人々は避難し、けが人はなかったとVictorian Big Batteryは声明で語った。また、設備は電力網から遮断され、電力供給に影響はないことを同社は付け加えた。同施設を運営しているフランスのエネルギー会社Neoen(ネオエン)と請負業者であるTeslaは、救急救命サービスと協力して状況に対応している。

この火災を受け、有害ガス警報が近隣のベイツフォード、ベル・ボスと・ヒル、ラブリー・バンクス、およびムアアブール地区に発令されたとThe Sydney Morning Herald(シドニー・モーニング・ヘラルド)紙は伝えている。住民は屋内に避難して窓や換気口、暖炉の煙突を閉じ、ペットを家に入れるよう警告された。

Victorian Big Batteryの施設は、300MW / 450MWhのバッテリーストレージ設備で、ビクトリア州政府の立てた2030年までに再生可能エネルギー50%を目指す目標の鍵になると見られている。NeoenとTeslaが南オーストラリアのホーンズデールに建設した 100MW / 129MWhバッテリー設備が計画よりも早く完成し、市場関係者や消費者に数百万ドル(数億円)の節約をもたらした成功を受けたものだった。いずれの設備も再生可能エネルギーが得られない時に予備電力を提供するものであり、日が照っていないときや風が吹いていない時の隙間を埋める。

2021年2月にNeoenは、Victorian Big BatteryがTeslaのMegapack(同社のギガファクトリーで製造されている地域供給規模の大型バッテリー)とAutobidder(オートビダー)のソフトウェアを利用して電力網に電気を販売することを発表した。契約の一環として同施設は、さらに既存のビクトリアのピーク容量250MWをニュー・サウス・ウェールズ・インターコネクターに供給することで、向こう10年間オーストラリアの夏にエネルギーを安定供給する。

編集部注:本稿(原文)の初出はEngadgetに掲載されている。著者のSaqib Shah(サキーブ・シャー)氏はEngadgetの寄稿執筆者。

関連記事
ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円
テスラの大型蓄電システム「Megapack」が日本初上陸、茨城県・高砂熱学イノベーションセンターで稼働開始

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Teslaバッテリーオーストラリア火災Megapack

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Saqib Shah、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Liliumの電動ジェット機のバッテリーは同じくドイツのCustomcellsが供給

電動エアタクシーのLiliumは、ドイツのメーカーCustomcellsと提携、同社フラグシップ機Lilium Jetのバッテリーを提供してもらうことになった。

Liliumによると、そのバッテリーのIPは複数の企業などが保有するが、製造そのものはCustomcells一社の仕事になる。両社の協定の一部であるバッテリーシステムの数をLiliumは明かさなかったが、Customcellsは2026年までに保証容量を生産する契約だ。

Customcellsは、航空機や自動車、海運業などのために高性能のリチウムイオンバッテリーを開発している。同社は最近、高級スポーツカーのPorsche AGとCellforce Groupという合弁事業を興し、レーシングカーやパフォーマンスカー用バッテリーの少量生産を行なうことになった。

関連記事
ポルシェがスポーツカー用高性能バッテリーを製造へ、Customcellsとの合弁で
ドイツのeVTOLメーカーのLiliumにハネウェルが飛行制御システムとアビオニクスを供給

Liliumはこのところ、部品と機体のテストに向けて準備を進めているが、その中にはいくつかのパートナーシップもあり、Customcellsはその1つにすぎない。ミュンヘンのeVTOL企業であるLiliumは、パートナーシップの国際的なネットワークを築いており、その中には炭素繊維複合素材で日本の東レ、ジェット機の機体ではスペインの航空宇宙サプライヤーAciturri、ソフトウェアサービスでは同社の投資家でもあるPalantir Technologiesなどがいる。2021年6月にLiliumは、ジェット機の航行制御とアビオニクスのために、航空宇宙の大メーカーであるHoneywellをその名簿に加えた。

主要部品を既成のメーカーにアウトソースするLiliumの決定は、エンジニアリングと生産の大部分を内製することを選んでいるJoby Aviationといったその他の多くの主要eVTOL開発企業のやり方との訣別となる。Liliumのやり方には利点もある。何よりもまず、生産とテストのための設備機器に対して長期間、費用を使う必要がない。しかしLiliumの役員たちがほのめかすもっと重要な利点は、公的認可の過程かもしれない。

他のeVTOLメーカーと同じくLilium Jetも、商用運行のためには、EUの航空安全局と米国の連邦航空管理局からの認可が必要だ。Liliumも、その主要競合他社も、商用運用の開始を強気に2024年としている。既成の航空宇宙サプライヤーは、その最小限の性能規格に関して規制当局の認可をすでに得ている部品を使えるかもしれない。それによって、認可までの時間を節約できるだろう。

LiliumのチーフプログラムオフィサーであるYves Yemsi(イヴ・イェムシ)氏は、2021年初めにTechCrunchに対して次のように語っている。「エキスパートや航空宇宙のパートナーたちとのコラボレーションは、私たちの意図的な選択です。市場化までの時間を短縮できるだけでなく安全です」。

関連記事
街中での商業利用に求められる静かなエアタクシーを開発するWhisper Aeroが脱ステルス
2人乗りの自律型デモ航空機「Maker」をArcher Aviationが公開、商業運航への「足がかり」に
eVTOL企業Joby Aviationがアジアや欧州でも早期に事業開始を計画

カテゴリー:モビリティ
タグ:エアタクシーLiliumバッテリーCustomcellseVTOLドイツ

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テスラがセミトラックの発売を2022年に延期、Cybertruckの遅延も示唆

電気自動車メーカーのTesla(テスラ)は、サプライチェーンの問題とバッテリーセルの入手可能性が限られていることから、電動セミトラックの発売を2022年に延期すると、米国時間7月26日に行われた第2四半期の決算発表の中で述べた。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、以前からバッテリーの供給が限られていることについて警告しており、2017年11月にプロトタイプが初公開された電動セミトラック「Tesla Semi(テスラ・セミ)」にもその影響が及ぶ可能性があるとしていた。2021年1月、マスク氏はTesla Semiのエンジニアリング作業が完了し、2021年中に納車が開始できる見込みであると述べながらも、ただしバッテリーセルの入手状況によって生産能力が制限される可能性があるという警告を付け足した。

関連記事:イーロン・マスク氏が電動トラックTesla Semiの生産準備は整ったがバッテリー不足がネックと発言

この警告は、明らかに根拠のあるものだった。株式市場が閉まった後に掲載された株主への書簡には以下のように書かれている。

2021年にベルリンとオースティンで始まるModel Y(モデルY)の生産は計画通り順調に進んでいると、我々は考えています。しかし、それぞれの工場における生産量は、多くの新しい部品や製造技術の導入が成功するかどうか、サプライチェーン関連の問題が継続するかどうか、そして地域の許可を得られるかどうかによって左右されます。

これらの工場に集中するため、また、バッテリーセルの入手量が限られていることやグローバルなサプライチェーンの問題を考慮して、Semiトラックのプログラム開始時期を2022年に変更することにしました。なお、Model Yに続いてオースティンでの生産を予定しているCybertruck(サイバートラック)の製品化も進展しています。

業績発表や決算報告書の中では言及されていないものの、今回の延期は、同社の重要な幹部でTesla Semiの開発および最終的な量産に携わっていたJerome Guillen(ジェローム・ギレン)氏の退社にともなうものだ。ギレン氏が6月に退社したのは、同氏がSemiを含む自動車部門全体の社長職から、より責任の軽い大型トラック部門の責任者という職務に移されてからわずか3カ月後のことだった。ギレン氏は、2018年9月から2021年3月まで、テスラの自動車事業全体を率いていた。

一方、2021年後半に生産開始が予定されているCybertruckも、2022年にずれ込む可能性があるようだ。マスク氏は質問に答えなかったが、決算説明会ではマスク氏のコメントだけでなく、テスラのエンジニアリング担当VPであるLars Moravy(ラース・モラヴィ)氏のコメントからも、2022年にシフトする可能性が示唆されている。

電動ピックアップトラックであるCybertruckは、今のところ試作のアルファ段階にあり、車両の基本的なエンジニアリングとアーキテクチャが完成している。現時点ではModel Yが優先されるものの、2021年後半にはCybertruckをベータ段階に移行させる予定だと、モラヴィ氏は述べている。

「モデルYの生産が軌道に乗ったら、Cybertruckをテキサスで生産する準備に入ります」と、モラヴィ氏は付け加えた。

マスク氏は、おそらくCybertruckが2021年に発売されるという期待を緩和させるためか、Cybertruckを生産することの難易度について言及した。

「Cybertruckを完成させることは、新しいアーキテクチャーであるがゆえに困難が予想されます」と、マスク氏は語った。「すばらしい製品になるはずですし、もしかしたら当社のこれまでで最高の製品になるかもしれません。しかし、そこには根本的に新しい設計思想が多く含まれているのです」。

そして同氏は、これまでテスラの他の自動車が試作から量産に移る際に主張したことを繰り返した。すなわち「生産は難しい」ということだ。

「これまでの繰り返しになりますが、試作や少量生産は実際に簡単でも、大量生産されるものは、これは本当に重要なことなのですが、1万点にも及ぶそれぞれ異なる部品やプロセスの中で最も時間がかかることに合わせた速度で進みます」。

関連記事
ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円
テスラの第2四半期の純利益は過去最高の約1257億円、決算好感で株価も上昇
イーロン・マスク氏がテスラはビットコインが環境に優しくなれば受け入れを再開する「可能性が高い」と発言

カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaバッテリーCybertruckトラックイーロン・マスク

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円

Tesla(テスラ)は、電気自動車の販売を主な収益源としているが、最新の四半期業績報告書の中では、エネルギー貯蔵と太陽光発電事業の成長が確認できる。

テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏によると、エネルギー貯蔵製品のために十分なチップを入手できれば、同部門への需要はさらに明るくなるという。

テスラは米国時間7月26日、太陽光発電、家庭・企業向け蓄電装置Powerwall(パワーウォール)、大規模蓄電装置Megapack(メガパック)の3つの主要製品を含む、発電・蓄電事業から8億100万ドル(約882億6000万円)の売上を発表したが、これは120億ドル(約1兆3200億円)近くある総売上のほんの一部に過ぎない。小さいながらも、この部門は蓄電や太陽光発電の販売を強化している。この部門の売上は前四半期比で62%増え、2020年の同四半期比では116%以上の伸びを示している。テスラは太陽光発電とエネルギー貯蔵の売上を分けていない。

関連記事:テスラの第2四半期の純利益は過去最高の約1257億円、決算好感で株価も上昇

さらに重要なことは、太陽電池・エネルギー貯蔵事業の売上原価が7億8100万ドル(約860億5000万円)であったことだ。すなわちエネルギー貯蔵関連製品の生産・販売にかかる総コストが、初めて売上額を下回ったことを意味する。これは良いニュースだ。

当然のことながら、総設置量も増加している。テスラは、2021年第2四半期に、前年同期比205%増の1274メガワット時(MWh)のエネルギー貯蔵装置を設置した。また、2021年の第2四半期に設置された太陽光発電量の合計は85MWhで、2020年第2四半期から214%増加している。補足すると、テスラの太陽光発電とエネルギー貯蔵の総設置量は、2019年第2四半期と2020年第2四半期の数字を比較するとほぼ横ばいだった、これはパンデミックによってビジネスが全般的に停止したためと思われれる。

大事なのは売上の伸びだ。2019年、テスラは太陽光発電とエネルギー貯蔵事業からの売上を3億6900万ドル(約406億6000万円)と報告した。2020年第2四半期時点での売上は停滞し、同事業からの収益は3億7000万ドル(約407億7000万円)にとどまった。今回の四半期は、2019年と2020年の同じ四半期にテスラが達成した売上の倍以上の数字となった。

何が変わったのだろう?新型コロナウイルス以外にも、テスラはいくつかのMegapackプロジェクトが稼働し始めていることや、太陽光発電とPowerwall(パワーウォール)を組み合わせた製品の人気が高まっていることを指摘している(太陽光発電設備を設置せずにPowerwallを注文することはできなくなった)。またテスラのウェブサイトに掲載されている概算によると、Megapack1台の価格は税抜きで約120万ドル(約1億3000万円)だ。テスラによれば、いくつかの州では、最も早い納入が2023年になるという。

だが、テスラのエネルギー貯蔵事業は困難に直面している。マスク氏によると、Megapack、Powerwallともに需要が供給を上回っており、バックログが増えているのだ。世界的なチップ不足のため、その需要に応えることができないのだという。

テスラは、Powerwallに自動車と同じチップを使用しており、マスク氏は、供給が少ない間は自動車を優先すると表明している。

マスク氏は業績説明会で「この大幅な不足が解消されれば、Powerwallの生産を大幅に増やすことができます」と語っている。「来年には、Powerwallを年100万台のペースにできるチャンスがあると思います、おそらく週に2万台のペースということです。繰り返しますが、セルの供給や半導体に依存します【略】世界が持続可能なエネルギー生産に移行する中で、太陽光や風力が注目されていますが、その不安定さを考えると、安定した電気を供給するためにはバッテリーパックが必要なのです。そして、世界中の電力事業を見れば、膨大な量のバックアップバッテリーを必要としていることがわかります」。

マスク氏は、長期的には、テスラと他のサプライヤーが蓄電需要に対応するためには、合わせて年間1000〜2000GWhが必要になると述べている。マスク氏によると、同社はセルサプライヤーに2022年に供給量を2倍にするよう要請しているが、この目標はサプライチェーンの問題に左右されるとマスク氏は注意を促している。現在の同社の戦略は、セルの供給をオーバーシュートさせて、それをエネルギー貯蔵製品に振り向けるというものだが、チップが不足した場合と同様に、その場合でも自動車の生産が優先されるだろうとマスク氏は述べている。

バッテリー計画

バッテリーの話題は、開発中の4680バッテリーに集中していたが、マスク氏は、安価なLFP(リン酸鉄リチウムイオン)を一部の製品に利用したいというテスラの意図にも触れた。具体的には、すべての固定蓄電池を鉄系電池に移行し、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーやニッケル・コバルト・アルミニウムバッテリーから撤退する可能性が高いということだ。

「おそらく3分の2が鉄、3分の1がニッケルになるのではないかと思います」とマスク氏はテスラの計画について語った。「実際これは良いことなのです、なにしろ世界には膨大な量の鉄がありますから。一方、ニッケルとコバルトは非常に少ないのです」。

ニッケル系として残る3分の1のバッテリーは、より長距離巡航型の電気自動車に使用される。また、その他のEVもすべてLFPバッテリーに移行するが、これは中国で生産している車両ではすでに行われている。

関連記事
テスラの大型蓄電システム「Megapack」が日本初上陸、茨城県・高砂熱学イノベーションセンターで稼働開始
テスラが20万台目の家庭用蓄電池「Powerwall」設置完了を発表、この1年間で2倍に
テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Tesla太陽電池バッテリー決算発表MegapackPowerwallイーロン・マスクエネルギー貯蔵

画像クレジット:Bloomberg/Contributor/Getty Images

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

GMの電気自動車Bolt EVが2度目のリコール、LG化学製バッテリーに発火のおそれ

GMは、電気自動車「Bolt EV(ボルトEV)」の2017年から2019年モデルに、発火の可能性がある問題が見つかったとして、2回目のリコールを行っている。同社によれば、欠陥のあるバッテリーを交換する計画だというが、それを行うまでの間、充電を90%までに制限するとともに、バッテリー残量が航続可能距離70マイル(約113キロメートル)を下回らないようにするようにと顧客に注意を促している。また、屋内に駐車したり、夜間に充電状態のまま放置することは避けるようにと、先週から繰り返し呼びかけている。今回のリコールは、2020年11月にGMが行った6万8000台以上のBoltのリコールに続くものだ。

GMはまた、Boltの顧客に、最寄りのシボレーEV販売店で、近い将来に起こるバッテリー問題を事前に警告する高度診断ソフトウェアを利用することも提案している。GMと同じくLG Chem(LG化学)からバッテリーを調達しているHyundai(現代自動車)は、Kona EV(コナEV)に搭載していた7万5000個以上のバッテリーを交換することになった。

このリコールは、2017年から2019年モデルのBoltで、これまで5件の火災が起きていることがきっかけとなって届け出されたものだ。これは憂慮すべき問題のように聞こえるかもしれないが、FEMA(アメリカ米国連邦緊急事態管理庁)の報告書によると、ガソリン車では1日に平均約150件の火災が発生していることも記しておく価値があるだろう。それでもEVメーカーは、より多くの人を傷つけることになる前に(そして電気自動車に対する否定的な感情が増える前に)、潜在的な問題に責任をもって対処できることを証明する必要がある。

編集部注:この記事はEngadgetに掲載されている。本稿を執筆したDevindra Hardawarは、Engadgetのシニア・エディター。

関連記事
米幹線道路交通安全局が火災リスクのあるシボレー・ボルトを屋外に駐車するようオーナーに警告
【レビュー】GMの最先端技術を戦略的な価格で実現したシボレー・ボルトEUV、「スーパークルーズ」追加でテスラModel Yと互角に
GMがコルベットのエンジニアリングチームをEVと自動運転に配置換え、オール電化の未来にコミット

カテゴリー:モビリティ
タグ:GM電気自動車リコールシボレーLGバッテリー

画像クレジット:GM

原文へ

(文:Devindra Hardawar、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

テスラが高まるニッケル需要に備え鉱山大手BHPと供給契約を締結

Tesla(テスラ)は、鉱業資源の巨人BHPからのニッケル供給を確保した。今後10年で需要の急増が見込まれている原材料の直接提供元を確保しようとする同社の最新行動だ。

BHPのNickel Westディビジョンは、オーストラリア西部の同社鉱山から非公表の量のニッケルを提供する。両社はバッテリーサプライチェーンの持続可能性の向上、および再生可能エネルギーと組み合わせたエネルギーストレージを使ってそれぞれの事業運用における炭素排出量削減方法でも協力する。

ニッケルはリチウムイオン電池の主要な鉱物であり、Teslaの次世代バッテリー化学の主役だ。リチウムイオン電池の多くがニッケル、マンガン、コバルトから成るカソードを使っているのに対して、Teslaは異なる戦術を取っている。TeslaのBattery Day 2020カンファレンスでElon Musk(イーロン・マスク)氏は、一部のモデル向けに、ニッケルが多くコバルトを使わないカソードに投資すると語り、エネルギー密度を高くするためであることを理由に挙げた。

Teslaは、次の10年にバッテリー生産を増強する意向に迷いがない。2022年までに100ギガワット時、2030年までには年間3テラワット時相当のバッテリーを生産する計画だ。

関連記事:テスラは材料科学の革新でバッテリーコストのさらなる低下を目指す、シリコンやニッケルを再研究

それに向けて同社は、ニッケル生産最大手との購入契約締結にすばやく動いている。2021年Teslaは、フランス領ニューカレドニアのニッケル製造企業との提携を発表した。そのわずか数カ月後、TeslaのRobyn Denholm(ロビン・デンホルム)会長は、同社がオーストラリアからだけで年間約10億ドルのバッテリー用鉱物を購入するつもりであることを認めた。

マスク氏は、鉱山会社にもっとニッケルを生産するよう再三要請してきた。7月の投資家向け電話会見で同氏は生産者に対して「Teslaはニッケルを効率よく、かつ環境を重視した方法で採掘する会社と長期の大型契約を結びます」と語った。Battery Dayカンファレンスでも同氏は同じ立場を繰り返した。「スケーリングするためには当社のニッケル総入手量が制約を受けないようにする必要があります」と彼は言った。「実際私は世界最大の鉱山会社のCEOに『もっとたくさんニッケルを作ってください、非常に重要なのです』と言ったほどです」。

しかし、環境に優しいニッケル供給源を見つけるのは容易ではない。現在の回収、精錬技術特有の問題も関係しているし、採掘会社が直接管理可能な問題もある。例えば世界最大の金属生産国であるインドネシアのニッケル採鉱事業は、石炭への依存と廃棄物処理技術に関して非難の的になっている。

BHPは同社の活動は世界最大級に持続可能だと謳っており、Teslaがパートナーとしてこの会社を選んだことはその事実を裏付けるものと見ることができる。同社は2021年2月に、あるニッケル精錬所の使用電力の50%が太陽エネルギー由来であると述べている。

現在、世界のニッケル供給の大部分が鉄鋼産業によって消費されている。現在のEVとエネルギー貯蔵分野のニッケル需要は比較的少ないが、International Energy Agency(国際エネルギー機関)は2020年の81トンから2040年には3352トンへと、今後20年間に4000%以上増加すると予測している。

歴史的にNickel Westは、BHPの鉄鉱、銅、および石油事業と比べて全事業のごくわずかな部分でしかない。BHPは2015年前後にNickel Westを数度に渡って売却しようとしたが、EVとエネルギーストレージ分野の需要の高まりから方針転換したようだ。

業界アナリストのBenchmark Minerals(ベンチマーク・ミネラルズ)は、Teslaとの契約は年間1万8000トンのニッケルに相当する価値があると推測した。

関連記事
イーロン・マスク氏がテスラはビットコインが環境に優しくなれば受け入れを再開する「可能性が高い」と発言
テスラのスーパーチャージャー充電ネットワークを2021年後半に他社EVにも開放とマスクCEO
テスラがオーナーを使い安全ではない自動運転ソフトのテストを行っているとコンシューマーレポートが懸念

カテゴリー:モビリティ
タグ:TeslaニッケルBHPバッテリー再生可能エネルギー持続可能性リチウムイオン電池

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

メルセデス・ベンツが2030年までにEV専門メーカーに、8つのバッテリー工場を建設

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は現地時間7月22日、2030年までに電気自動車(EV)だけを生産する自動車メーカーになるための400億ユーロ(約5兆2000億円)の計画を明らかにした。この計画で同社は垂直統合し、従業員を訓練し、そしてプロダクトを動かすのに必要なバッテリーを確保する。

同社はすでに行動を起こしている。英国拠点の電動モーター会社YASAを買収し、200ギガワットアワー超の年間生産能力が必要と結論づけたことを発表した。そうした需要をまかなうためにメルセデスは電池セル生産でパートナーと8つのバッテリー工場を建設する計画だ。

米国に立地するものも含め、新しいプラントはすでに計画されているバッテリーシステム構築のための9つの工場で構成されるネットワークに追加される。未来のセルとモジュールを開発し、効率的に生産するために欧州の新規パートナーとチームを組む、とメルセデスは述べた。その「欧州のパートナー」の目的は戦略的なもので、欧州が車産業の中心であり続けることを確保するためのものだ。

メルセデスは、次世代バッテリーの改良をサポートするためにシリコンバレーのバッテリー材料スタートアップSila Nanoと提携したと述べた。Sila Nanoは2021年初めに5億9000万ドル(約650億円)を調達した。具体的には、Sila Nanoはアノードにシリコンとカーボンの複合物を使うことでメルセデスがエネルギー密度を高めるのをサポートする。エネルギー密度の向上は航続距離を伸ばし、充電時間の短縮に貢献する。

メルセデスはまた、全固体電池テクノロジーにも注目していて、さらにエネルギー密度が高く安全なバッテリーを開発するためにパートナーと協議中だと述べた。

7月22日に発表された計画は、これまでよりも多くのEVを生産して販売するという以前の目標に則ったものだ。同社は2017年に全ラインナップを2022年までに電動化すると述べた。これはガソリンハイブリッド、プラグインハイブリッド、バッテリー式EVを意味する。そして同社は、2022年までに展開しているすべての部門でバッテリー式EVを提供すると述べた。

EVのみを生産する計画はそこから加速する。2025年までにEV専用の車両アーキテクチャ3種類を新たに導入する。同社は全電動とハイブリッドの車両の全販売に占める割合が以前のガイダンスの25%よりもアップし、50%となると予想する。顧客は同社が生産するあらゆるモデルで全電動のオプションを選ぶことができるようになる。

Daimler AGとMercedes-Benz AGのCEOであるOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏は同社の目標が「完全な資本の再配分」となる、と述べた。多額の投資と内燃機関エンジンからのシフトにもかかわらず、ケレニウス氏は同社の収益性の目標が守られ、そして達成されると強調した。

目標を達成するために、メルセデスはすべての新車両の基礎を形成するEV専用のアーキテクチャ3種を立ち上げる。MB.EAと呼ばれるプラットフォームは中型〜大型の乗用車に使用され、AMG.EAはMercedes-AMG車両を支える。そしてVAN.EAは電動乗用ミニバンと小型商用車向けの​​アーキテクチャだ。同社はすでにMMAとして知られる「電動ファースト」のコンパクトカーのアーキテクチャが2024年までに車両に使われると発表している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Mercedes-Benz電気自動車バッテリー工場全固体電池

画像クレジット:Mercedes-Benz

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

LG化学がEV用バッテリー生産拡大へ向け2025年までに5770億円を投資

韓国のLG Chem(LG化学)は、バッテリー材料事業の構築に今後4年で6兆ウォン(約5770億円)を注ぐ。この投資は、クルマの発明以来、モビリティ産業において最も変革的なものになるであろうシフトの中で、自動車メーカーや米規制当局が内燃エンジン車両から移行する目標を設定したことを受けてのものだ。

投資はアノード材料、分離膜、カソードバインダー、その他の重要なバッテリー部品の生産強化に注がれる。この投資には、韓国・クミ市での巨大なカソードプラントの建設計画が含まれ、工場が完成すれば同社の現在4万トンのアノード生産能力が2026年までに26万トンへと7倍になる。2019年7月に発表したように、LG化学はすでにクミ市に建設するプラントに5000億ウォン(約480億円)投資するとことに同意している。

同社はまた、リチウムイオンバッテリーのパフォーマンスを高めるのに使われる高度な材料であるカーボンナノチューブ(CNT)の生産能力を2021年の1700トンから2025年までに3倍超に拡大する計画だ。それを達成するために、CNTプラント2での生産を拡大し、3つめのCNTプラントの建設を2021年開始する計画だ。

サプライチェーンの面では、バッテリー部品に必要なメタルや他の原材料の供給で鉱業会社と合弁会社を立ち上げるとLG化学は述べた。同社は声明文で「金属調達の競争力を強化するために鉱業、製錬、精製のテクノロジーを持つ企業との、さまざまな方法での協力を積極的に追求する」としている。

LG化学はすでにバッテリーとバッテリー部品製造における最大メーカーの1社であり、Volkswagen(フォルクスワーゲン)やGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)、Tesla(テスラ)などを顧客に抱える。しかも世界のバッテリー材料市場は拡大するばかりで、マーケット規模は2021年の39兆ウォン(約3兆7470億円)から2026年までに100兆ウォン(約9兆6060億円)へと成長することが見込まれている。

バッテリーへの投資とともに、LG化学は追加で3兆ウォン(約2880億円)を生分解性ポリマーや植物ベースの生体材料のような持続可能な石油化学製品に、1兆ウォン(約960億円)を医薬品開発事業のラインに注ぐ、と明らかにした。

CEOのHak Cheol Shin(シン・ハクチョル)氏は、同社が持続可能な事業ポートフォリオにシフトさせるさらなる機会を模索している、と話す。「これは、LG化学の価値と持続可能性をアップグレードする、会社創立以来、最大の革命的変化となります。目に見える変化は2021年下期から出てくるでしょう」と述べた。

関連記事
GMとLG化学のバッテリー合弁会社が製造廃棄物の処理でリサイクル会社と提携
GMとLG化学の2つめのEVバッテリー工場は2023年後半開所予定
GMがカリフォルニアでのリチウム抽出プロジェクトに投資、優先権を獲得

カテゴリー:モビリティ
タグ:LG化学電気自動車投資バッテリー

画像クレジット:LG Chem

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiPhone 12用MagSafeバッテリーパック発表、最大15Wでワイヤレス充電が可能で税込1万1800円

iPhone 12シリーズにMagSafeが追加されたことで、アクセサリーメーカーにはさまざまな充電方法を提供できるようになったが、中でもスナップオン式のバッテリーパックが最も便利だという声をよく聞く。AnkerやMophieをはじめとする多くのサードパーティーは独自のバッテリーパックを発売しているが、今度はAppleがその流れに乗る

  1. MJWY3_AV4

    画像クレジット:Apple
  2. MJWY3_AV3

    画像クレジット:Apple
  3. MJWY3_AV2

    画像クレジット:Apple
  4. MJWY3_AV1

    画像クレジット:Apple

「MagSafeバッテリーパック」と名づけられたこのバッテリーパックは、本日よりアップルのサイトで99ドル(日本では税込1万1800円)で予約受付が開始され、7月19日到着の予定となっている(日本では7月20日〜22日)。カラーはホワイト(背面にはファーストパーティー製品であることを示すグレーのAppleロゴを配置)で、最大15Wのワイヤレス充電が可能だ。

現時点では、このパックで何回分の充電ができるかなど、その他の詳細は不明。するどい人は、本体の背面に1460mAhの大きさを示す細かい文字があることに気づくだろう。バッテリーパックの充電にはLightningポートを使用しており、スマートフォンに装着したままパックを接続することで、バッテリーパックとスマホバッテリーの両方を一度に急速充電することができる。

5000mAhのバッテリーで45~50ドル(5000〜5500円)程度のAnkerやMophieの製品と比べると割高感がある。

関連記事
アップル共同創業者ウォズニアック氏が「修理する権利のおかげでアップルが創業できた」と明かす
アップルが最新iOS 15のベータ版をすべての人に公開、開発者アカウント不要
新型コロナ後遺症の検出にFitbitデバイスやApple Watchなどウェアラブル機器が役立つとの研究結果が公表

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleバッテリーiPhoneMagSafe

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

フォルクスワーゲンがソフトウェアと自律走行を前面に打ち出した新ビジネス戦略を公表

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、今後数十年にわたって競争力を維持するために、ソフトウェア、サービスとしてのモビリティ、バッテリー技術を強化していく。同社をはじめとする自動車メーカーは、自動車の発明以来最大のパーソナルモビリティーの変化に備えようとしている。

中央ヨーロッパ時間7月13日に同社の戦略を説明したHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)CEOは、製造から収益ストリームに至るまで、あらゆる面での変革を強調した。フォルクスワーゲンのCFOであるArno Antlitz(アルノ・アントリーツ)氏は、従来の収益が内燃エンジン車の販売によるものであったとすれば、2020年代の残りは、EV販売だけでなく、ソフトウェア、自律走行、さらにはライドシェアリングからも収益が得られるようになると述べている。

そのために、フォルクスワーゲンは欧州に6カ所のバッテリーギガファクトリーを建設し、西ベルリンに8億ユーロ(約1043億円)のハードウェアプラットフォーム研究開発施設を建設するなど、活発に動いている。また、VWは自社の車載ソフトウエア部門であるCariadを強化しており、同部門はサブスクリプションやその他の販売を通じて、2030年までに1兆2000億ユーロ(約156兆円)もの収益を上げる可能性があると述べている。

フォルクスワーゲンは、自律走行についても大きな計画を持っている。同社はライドシェアリングやレンタカーの市場シェアをつかみ取りたいと考えており、統合されたAV(自律走行車)プラットフォームでそれを達成しようとしている。幹部たちは、10年後までには顧客がフォルクスワーゲンの電動AVタクシーやシャトルバスをリクエストできるようになるという鮮明なイメージを語った。プレゼンテーションで示された画像を信じるのならば、その際にはハンドルや運転席はないかもしれない。

「想像してみてください。あなたのおばあさんや8歳の息子さんが、お父さんやお母さんが運転しなくても、好きなときにフォルクスワーゲンのタクシーに乗ってお互いに会いに行けることを」と、ディース氏は提案した。「当社のモビリティアプリの1つを使えば、ID.BUZZがあなたと友達を迎えに来てくれる(未来を)」。

パーソナルビークルにはCariadが搭載され、2025年までに「レベル4の準備」が整うという。シャトルやタクシーのようなシェアードモビリティは、VWが所有・運営し、AV企業のArgo AI(アルゴAI)が開発した技術を使用する。フォルクスワーゲンは2020年6月、このスタートアップへに26億ドル(約2876億円)を投資した。

欧州最大の自動車メーカーであるVWは、MaaS(Mobility as a Service)への投資が功を奏すると予想している。Volkswagen Commercial VehiclesのCTOであるChristian Senger(クリスチャン・センガー)氏は、2030年までに欧州の5大市場だけで700億ドル(約7兆7445億円)以上の年間収益を見込んでいると述べた。ミュンヘンでのパイロットプロジェクトでテストされている自律型ライドシェアのID.BUZZは、2025年にハンブルクで商用サービスとして展開され、その後まもなく米国でも展開される予定だ。

画像クレジット:Volkswagen

これらの推定に沿って、同社は2025年にはBEV(バッテリー式電動自動車)の販売台数が全体の25%、2030年には50%を占めるようになると予測している。ICE(内燃エンジン)のマージンは、需要の減少、排出ガス規制の強化、税制面での優遇措置などにより、ますます厳しくなると考えられ、フォルクスワーゲンは2030年までに欧州でICEモデルの数を60%削減する計画だ。スケールメリットと工場コストの削減により、ICEとBEVのコストパリティは2〜3年以内に達成できるだろうとアントリーツ氏はいう。

これは楽観的な未来だが、フォルクスワーゲンは十分な自信を持っている。同社は、2025年の利益目標を従来の7〜8%から8〜9%に引き上げた。

「2030年までにモビリティの世界は、20世紀初頭に馬から自動車へと移行して以来の大きな変革を迎えることになるでしょう」とディース氏は述べている。「クルマの未来、個人のモビリティの未来は、明るいものになるでしょう」。

関連記事
EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで
Argo AIの新型LiDARセンサーでフォードとVWによる自動運転車の大規模な実用化が加速する予感
エイプリルフール用をうっかり誤発表「Volkswagenが米国法人を『Voltswagen』に社名変更」

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenバッテリー電気自動車自律運転

画像クレジット:Volkswagen

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

GMがカリフォルニアでのリチウム抽出プロジェクトに投資、優先権を獲得

General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)は米国産のリチウムに投資する。同社は米国時間7月2日、ロサンゼルス近くのソルトン湖地熱地帯からリチウムを採取するオーストラリア企業のプロジェクトの初の投資家になったと明らかにした。リチウムは電気自動車(EV)のバッテリーの重要な要素だ。GMはControlled Thermal Resources(CTR)の「Hell’s Kitchen(ヘルズ・キッチン)」リチウム採取プロジェクトで生産されるリチウムの優先権を獲得する。

ヘルズ・キッチンプロジェクトでは2024年からリチウムを生産する見込みだ。生産されたものはGMのUltiumバッテリーセルに使用される。Ultiumバッテリーセルは現在行われている認証とテストを経てLG Energy Solutionとの合弁会社が生産する。GMの電動化戦略と電池エンジニアリング担当ゼネラルディレクターであるTim Grewe(ティム・グレーヴェ)氏は、どれくらいの量のリチウムをGMが獲得することになるのか具体的には示さなかったが「(GMの)北米のリチウムのかなりの量になる」ことを予想している、と述べた。

GMや他の自動車メーカーが、電動化の目標を達成するにはかなりのリチウムを必要とする。GMは2035年までに内燃エンジンから完全移行することを目指している。しかしそうした大規模な移行はかなりの競争に直面することを意味する。それは顧客の獲得だけでなく、バッテリーのような重要なパーツを構成する鉱物のソースについてもそうだ。

一般的に、リチウムは岩石を砕いて採掘するか、塩水から鉱物を抽出して生産される。どちらの手法も環境への負荷のために非難されている。CTRのプロジェクトが抜きん出ているのは、リチウムを生産するのにソルトン湖地熱地帯で生み出される再生可能な地熱エネルギーを使うという点だ。ソルトン湖地熱地帯は、すでに地熱発電所11カ所が稼働しているインペリアル・バレーの広い範囲を占める。

再生可能エネルギーによる給電に加え、プロジェクトは使用した塩水を地下に戻し、採掘の廃棄物など生産にかかる尾鉱を残さないクローズドループ直接抽出工程をとる、とCTRは話す。

世界のリチウムの大半はわずかな国で生産されていて、主にチリ、オーストラリア、中国、アルゼンチンだ。米国にはリチウム生産サイトが1カ所だけある。ネバダ州にある化学製造大手Albemarleが所有する塩水採取サイトだ。しかし近年、鉱物の国内生産を促進する動きが増している。これは主に2つのトレンドによるものだ。1つは、部分的にはバッテリーを搭載する電気自動車への移行により急増が見込まれる、鉱物に対する需要予想。もう1つは先端技術において米国の競争力を保ち続けるという超党派の意向だ。

カリフォルニア州エネルギー委員会によると、現在の世界のリチウム需要の3分の1をカリフォルニア州のリチウム鉱床で賄える可能性がある。CTRのプロジェクトは、ソルトン湖の広大な塩水田からリチウムを抽出することを目指している多くの取り組みの1つだ。

関連記事
デュポンとVCはリチウム採掘が電動化が進む未来に向けての超重要な投資先だと考える
次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」開発のAPBが追加調達、福井県での第一工場設立目指す
テスラが1万エーカーのリチウム粘土鉱床の権利を取得、リチウム採掘事業に自ら参入へ

カテゴリー:モビリティ
タグ:GMリチウム電気自動車バッテリー

画像クレジット:General Motors

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェがスポーツカー用高性能バッテリーを製造へ、Customcellsとの合弁で

ラグジュアリーなスポーツカーメーカーのPorsche AG(ポルシェAG)がバッテリー事業に参入する。同社は現地時間6月21日、リチウムイオンバッテリーメーカーのCustomcells(カスタムセルズ)との合弁事業を通じて高性能の電池を製造する工場を開所する計画だと明らかにした。

ポルシェはCellforce Group GmbHという新しい合弁企業に「(1億に近い)数千万ユーロ」規模を投資した、と取締役のMichael Steiner(マイケル・ステイナー)氏が発表に先立つ記者会見で述べた。工場はまた、ドイツ政府と、工場が立地するバーデン・ヴェルテンベルク州から6000万ユーロ(約79億円)の投資を受ける。陰極材料の供給会社として化学会社BASF SEを選んだ。

製造するバッテリーでは陽極材料としてシリコンを使う。これはエネルギー密度と高温に耐える能力を飛躍的に高めるとポルシェは話す。この2つの要素はいずれもレーシングカーにとって重要な変数だ。バッテリーはすばやく充電されなければならず、しかし製造となると難しい(バッテリーは高温になるのを好まない傾向にある)。

そうした理由から、他の自動車メーカーのものに比べると工場は小規模だ。例えば米国ネバダ州スパークスにあるTeslaとパナソニックの合弁工場は35ギガワットアワーの「ギガファクトリー」キャパシティがあり、ポルシェの親会社VWは2030年までに240ギガワットアワーの生産能力を欧州にもってくる計画だ。ポルシェとCustomcellsの目標は、車両1000台分を十分まかなうことができる年間キャパシティ100メガワットアワーを2024年から生産することだ。工場の従業員はまず13人から始め、2025年までに最大80人に増やす計画だ。

関連記事:フォルクスワーゲンが240GWhのバッテリー生産能力を2030年までに欧州で実現

ステイナー氏は、ポルシェがこのテクノロジーの使用を主流の車両ラインナップに拡大する計画はない、としたが、将来生産コストを下げられる可能性を見出した場合、大量生産する可能性はあると指摘した。「このマーケットで当社は、ハイエンドな車両とモータースポーツ向けの特殊目的セルを探しています。これは今日のマーケットには見当たりません」と同氏は述べた。

このテクノロジーを乗用車に拡大するのは難しいようだ。シリコンの陽極ベースのセル化学はかなり寒い環境で機能したり、充電サイクルを重ねても安定性を維持することが示されていない、とポルシェは声明文で述べた。しかしポルシェの車両がレース向けに開発されたテクノロジーの恩恵を受けるというのはこれが初めてではない。同社の旗艦電動モデルTaycanは、ポルシェ 919ハイブリッドレーシングカーからテクニカル面で多くを拝借している。

これらのバッテリーを使う初の車両はポルシェ製になるだろうが、テクノロジーはLamborghiniやBugattiなどVolkswagen Group傘下の他のブランドにも提供される、とステイナー氏は話した。

「バッテリーセルは未来の燃焼室です」とポルシェのCEOであるOliver Blume (オリバー・ブルーム)氏は声明で述べた。「合弁会社により当社は最もパワフルなバッテリーセル製造のグローバル競争で先頭をいくことになり、まぎれもない当社の運転エクスペリエンスと持続可能性を結びつけることができます。当社はこうやってスポーツカーの未来を形成します」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ポルシェCustomcellsバッテリードイツ工場

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】さらなる電化の普及にはまったく新しいバッテリー技術へのアプローチが必要だ

世界経済の広範な電化への移行により、輸送、家電、医療機器、家庭用エネルギー貯蔵などの業界にわたって、長寿命で高速充電のバッテリーに対する需要が高まっている。この移行のメリットは十分理解されているものの、実際には、バッテリーのイノベーションは社会の大望に追いついていない。

世界の気温が今後5年間で「パリ協定で示された1.5℃の制限を超えて上昇する」可能性は40%と予測する報告もあり、完全に商業化するまでにさらに10年かかることも考えられる次世代バッテリーの開発には、無駄な時間を費やす余裕がほとんどないことは明らかである。

電力供給への圧力の高まりに対応する上で、充電式バッテリーを迅速に拡張して温室効果ガスの排出を世界的に抑制し、気候危機の最悪のシナリオを回避する唯一の方法は、バッテリー構築に対するまったく新しいアプローチである。

バッテリーイノベーションへの挑戦

過去数十年にわたり、バッテリーの専門家、自動車メーカー、Tier 1サプライヤー、投資家などが、主にバッテリー化学に焦点を当てた次世代バッテリーの開発に世界中で数十億ドル(約数千億円)を費やしてきた。しかし、業界は依然として、バッテリーの普及を妨げている2つの大きな技術的課題に取り組んでいる。

  1. エネルギーと電力のトレードオフ:現在製造されているバッテリーはいずれも、電力とエネルギーとのトレードオフに直面している。バッテリーは、より多くのエネルギーを蓄えるか、さもなくばより高速で充電 / 放電を行うか、である。つまり、電気自動車に関して言えば、1つのバッテリーで航続距離の長さと高速充電を両立させることはできない。
  2. アノードとカソードのミスマッチ:今日最も有望とされるバッテリー技術は、リチウムイオンバッテリーセルを構成する一対の電極の負極であるアノードのエネルギー密度を最大にする。しかし、アノードはその正極であるカソードよりもすでに大きなエネルギー密度を有している。一定のバッテリーサイズから最大のエネルギー貯蔵容量を得るには、カソードのエネルギー密度が最終的にアノードのエネルギー密度と一致する必要がある。カソードのエネルギー密度を向上させる突破口がなければ、今日最も期待されているバッテリー技術の多くは、その潜在能力を十分に発揮することができないであろう。現在のところ、一般に使用されているリチウムイオンバッテリーは、オール電化の将来の幅広い用途のニーズを満たすことができない。多くの企業が新しいバッテリー化学を通じてこれらの要求に取り組み、高電力対エネルギー密度比をさまざまな成功の度合いに最適化しようと試みてきたが、大規模化と商業化に必要な性能指標の達成に近づいている企業はほとんどない。

固体バッテリーは究極の目標だろうか?

バッテリーの研究者たちは、高エネルギー密度と安全性の向上を実現する能力を持つ固体バッテリーを、バッテリー技術の究極の目標としてきた。しかし最近まで、この技術は実用性に欠けていた。

固体バッテリーは非常に高いエネルギー密度を有し、可燃性の液体電解質を使用しないため、潜在的により高い安全性が見込まれる。しかし、この技術はまだ初期段階にあり、実用化までの道のりは長い。固体バッテリーの製造プロセスは、特に今後数年間に50ドル(約5500円)/kWhという積極的な低コスト化の実現を目指す自動車業界にとって、コスト低減に向けて改善される必要がある。

固体状態技術の具現化における別の実質的な課題は、単位体積当たりのカソードに蓄積され得る総エネルギー密度の限界である。このジレンマに対する明白な解決策は、より厚いカソードを備えたバッテリーを得ることであろう。しかし、カソードが厚くなると、バッテリーの機械的および熱的安定性が低下する。この不安定性は、層間剥離(材料が層に破壊される破壊モード)、亀裂、および分離を引き起こし、これらすべてが早期のバッテリー故障の原因となる。さらに、カソードを厚くすると拡散が制限され、電力が減少する。その結果、カソードの厚さには実用的な限界があり、アノードの電力を制限している。

シリコンを使用した新しい素材の採用

ほとんどの場合、シリコンベースのバッテリーを開発している企業は、グラファイト(黒鉛)にシリコンを30%まで混ぜてエネルギー密度を高めている。Sila Nanotechnologies製のバッテリーは、シリコン混合物を使用して高エネルギー密度を実現している。別のアプローチは、Ampriusの製品のように、非常に薄い電極と高い製造コストという制約を受ける100%純粋シリコンのアノードを使用して、さらに高いエネルギー密度を生成することである。

シリコンはかなり大きなエネルギー密度を提供するが、これまでその採用を妨げてきた重大な欠点が存在する。この材料は、充放電時の収縮と膨張に起因するバッテリー寿命と性能の制限をともない、製造業者が商業的に採用する前に解決しなければならない劣化の問題につながっている。こうした課題にもかかわらず、一部のシリコンベースのバッテリーはすでに商業的に導入されており、自動車分野ではテスラがEVへのシリコン採用をリードしている。

電化の必須条件は、バッテリー設計に新たな重点を置くことである

バッテリーアーキテクチャとセル設計の進歩は、既存および新興のバッテリー化学による画期的な改善の可能性を大いに示している。

メインストリームの観点から最も注目すべきは、おそらくTeslaが2020年のバッテリーデーに発表した「ビスケット缶(円筒形)」バッテリーセルだろう。リチウムイオン化学を引き続き採用しているが、アノードおよびカソードとバッテリーケーシングの間の正極と負極の接続点として機能するタブを外し、代わりにセル上端すべてを電極にする設計を施している。この設計変更により、航続距離を向上させながら製造コストを削減し、DC電力で高速充電する際にセルが遭遇する可能性のある熱障壁の多くを取り除くことが可能になる。

従来の2D電極構造から3D構造への移行は、業界で注目を集めているもう1つのアプローチである。3D構造により、あらゆるバッテリー化学において、アノードとカソードの両方で高エネルギーおよび高出力性能が得られる。

3D電極はまだ研究開発と検証の段階にあるものの、市場競争力のある価格で高性能製品を製造することにより、2倍のアクセス可能容量、50%の充電時間短縮、150%の長寿命化を実現する。したがって、広範な用途のためのエネルギー貯蔵の可能性を最大限に引き出すべくバッテリー性能を向上させるためには、バッテリーの物理的構造を変更することに力点を置いた解決策を開発することが重要である。

バッテリー競争を勝ち抜く

性能の向上だけでなく、生産性とコスト削減も完璧に実現することが、バッテリー競争における優位性につながる。2027年までに2797億ドル(約30兆円)に達すると予測されている、急速に拡大するバッテリー市場で大きなシェアを獲得するには、世界各国が低コストのバッテリー製造を大規模に展開する方法を見つけていく必要がある。既存の組み立てラインや材料に組み込むことができる「ドロップイン」ソリューションと革新的な生産方法の優先順位づけが鍵となる。

バイデン政権による米国の雇用計画は、野心的な炭素削減目標を達成しつつ、電化のリーダーになるという米国の目標にとって、国内のバッテリー生産の重要性を強調している。こうした取り組みは、バッテリー市場で重要な競争力を維持し、1620億ドル(約18兆円)規模の世界EV市場で最大のシェアを獲得する能力を確立する上で重要な役割を果たすだろう。

突き詰めて言えば、完全な電化に向けた競争で勝利する技術は、性能に最大の影響度を有し、低コストで、既存の製造インフラとの互換性を備えたものとなる。総合的なアプローチを採用し、最先端の化学を微調整しながら、革新的なセル設計にさらに注力することで、世界が切望しているバッテリー性能と迅速な商業化における次のステップに到達することができるであろう。

関連記事
テスラがカナダ企業の特許を使い安価で環境に優しい新バッテリーを開発中
フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入
デュポンとVCはリチウム採掘が電動化が進む未来に向けての超重要な投資先だと考える
Fraunhoferがリチウムイオン充電池の10倍のエネルギー密度で水素を蓄えられる素材を開発
次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」開発のAPBが追加調達、福井県での第一工場設立目指す
テスラは材料科学の革新でバッテリーコストのさらなる低下を目指す、シリコンやニッケルを再研究
テスラが10テラワット時の生産を目指すタブレス構造バッテリーの概要を公開

カテゴリー:ハードウェア
タグ:バッテリーコラム電気自動車Tesla

画像クレジット:PlargueDoctor / Getty Images

原文へ

(文:Moshiel Biton、翻訳:Dragonfly)

GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は米国時間6月16日、2025年までに電気・自動運転車に350億ドル(約3兆8722億円)を投資すると述べ、これまでに明らかにしていた額を引き上げた。2020年11月に発表した計画の額に80億ドル(約8850億円)を上乗せする。

同社は2025年までにグローバルマーケットでEV30種を展開し、2035年までに全ゼロエミッションに移行する目標を打ち出している。新たな投資で、GMは新しい電動商用トラックを北米の計画に追加し、米国での電動SUV組立能力を拡大すると述べた。

新たなEVモデルの充実したポートフォリオを構築するのに加えて、同社はEV革命をリードしようと多面的なアプローチを取って来た。同社はまた、LG Chem(LG化学)とのジョイントベンチャーUltium Cells LLCのもとに2つの新規バッテリー工場にも投資している。そしてGMは2016年に過半数の株式を購入した自動運転部門Cruise(クルーズ)にも投資した。

今回のニュースの前日には、Cruiseが電気自動運転車両Originの商業化に向け、GMの金融部門から50億ドル(約5531億円)の融資を受けたと明らかにした。Originの商業生産は2023年の開始が見込まれている。

GMはまたホンダとのジョイントベンチャーHYDROTECで水素燃料電池も製造している。GMは6月16日、第3世代のHYDROTEC電池を2020年代半ばまでに展開することも明らかにした。GMは大型トラックデベロッパーNavistar、そして航空機向けの水素燃料電池システムを開発しているLiebherr-Aerospaceとパートナーシップを結んでいる。

GMは6月15日に、燃料電池とEVバッテリーをWabtec Corporationに供給するとも述べた。Wabtec Corporationはピッツバーグ拠点の会社で、世界初のバッテリーlocomotiveを手がけている。

「GMはグローバルでの年間EV販売台数を2025年までに100万台超にすることを目指しています。そして当社は展開を促進するために投資額を増やします。というのも、米国で電動化のモメンタムがあり、当社のプロダクトポートフォリオに対する顧客の需要を目にしているからです」とCEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は声明文で述べた。

Fordも同様にEV投資を増やすことを5月に発表した。それまで同社は2023年までに220億ドル(約2兆4337億円)としていたが、2025年までに300億ドル(約3兆3187億円)投資すると述べた。

関連記事
フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%に
GMは2030年までにCruiseの自動運転技術を用いた個人向け自動運転車を販売する意向
【レビュー】GMの最先端技術を戦略的な価格で実現したシボレー・ボルトEUV、「スーパークルーズ」追加でテスラModel Yと互角に

カテゴリー:モビリティ
タグ:General Motors電気自動車投資燃料電池バッテリー

画像クレジット:Cadillac

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

電気自動車のバッテリー交換を行うスタートアップのAmple(アンプル)は、何年にもわたって技術開発に取り組んできたが、2021年6月、日本とニューヨークへの拡大を促進するための2つのパートナーシップを締結した。2014年に設立され、先の3月にステルス状態を脱したこのスタートアップは、日本の石油 / エネルギー企業であるENEOS(エネオス)と提携し、日本国内でバッテリー交換インフラを共同で展開・運営することを米国時間6月15日に発表した。

両社は今後1年間、配車サービス、タクシー、自治体、レンタカー、ラストワンマイル配送などの企業を対象に、Ampleの全自動交換技術を試験的に導入する。また、AmpleとENEOSは、交換ステーションがエネルギーグリッドのバックアップ電源などの、他の用途にも使えるかどうかも評価する。まだパートナーシップは立ち上げの段階で、発表されていることは少ない。たとえばAmpleは、パイロットプログラムいつ日本のどこで始まるのかについては明らかにしていない。しかし、詳細には乏しいものの、ENEOSが関心を見せたことは、(少なくともAmpleの)バッテリー交換技術が信奉者を集めつつあることを示している。

今回のENEOSの発表は、Ampleが配車サービス、タクシー、ラストマイル配送用のEV(電気自動車)レンタル会社であるニューヨーク市のSally(サリー)との提携を行った数日後に行われた。Ampleの創業者でCEOのKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏によると、AmpleとSallyは、2021年の第4四半期までにニューヨークで5~10カ所のステーションを展開し、2021年には他の市場にも進出する予定だ。

関連記事:1000億円超を調達しながら失敗に終わったEVのバッテリー交換ビジネスを復活させるAmple

AmpleとSallyのパートナーシップは、数カ月後にはサンフランシスコにも拡大する。サービスを利用するコストにもよるが、少なくともカリフォルニア州では、配車サービスのドライバーにとっては有利な取引になるかもしれない。カリフォルニア州では2030年までにUber(ウーバー)とLyft(リフト)のドライバーの90%がEVに乗る必要があるとする法令が出されたばかりだ

「最終的には、交換ステーションをガソリンスタンドのようにどこにでもあるものにすることが目標です」とハッソウナ氏はTechCrunchに語った。

Ampleはこの3月に、ベイエリアで5カ所の交換ステーションの発表を行うと同時にステルス状態から抜け出した。また、Uberとの提携により、ドライバーはAmpleのバッテリー技術を搭載したクルマをAmpleから直接借りることができる。

Ampleのポリシー兼国際支援担当副社長のLevi Tillemann(レビ・ティルマン)氏は、TechCrunchの取材に対して「Ampleアーキテクチャは、あらゆる最新の電気自動車に統合できるよう設計されています」と答える。「一般的な電気自動車では、バッテリーパックをクルマから取り外すことは想定されていませんが、Ampleシステムを使えば、純正のバッテリーパックとまったく同じ寸法のアダプタープレートを備えたバッテリーパックと交換することができます。そのアダプタープレートこそが、バッテリー交換を可能にするためのアーキテクチャなのです」。

Ampleの標準化されたバッテリーモジュールは、Ampleプラットフォームで動作するように設定されたどの車両でも動作します、とティルマン氏はいう。今回のAmpleとSallyの提携により、Ampleはビジネスモデルを実証するために立ち上げた、自社による車両運行からの脱却を始めることができる。同社は、Sallyをはじめ、将来的にはおそらく他のフリート会社やレンタル会社とも協力して、Ample対応の車両を作っていく予定だ。

「Ampleのバッテリー交換技術は、どんな電気自動車にも対応していて、純正バッテリーとの置き換えが可能で、しかもクルマの改造(ハードウェア、ソフトウェアのいずれも)を必要としないので、EVインフラの導入にかかるコストと時間が劇的に削減されます」とハッソウナ氏はいう。

配車サービスのドライバーがEVへの乗り換えを躊躇する理由の1つに、バッテリーの充電時間がある。ハッソウナ氏によると、バッテリー交換には現在10分しかかからないが、年内には5分に短縮することを目指しているそうだ。より効率的でシームレスなプロセスを実現することで、配車サービスのドライバーや物流企業が切り替えを行う後押しをすることができるだろう。

「現在、ドライバーはエネルギーも含んでスワップサービスに対して1マイルあたり10セント(約11円)を支払っています。航続距離は車種やバッテリーサイズによって異なります」とハッソウナ氏は語る。「サービスの価格は電気料金によって変わりますが、ガソリンに比べて1~2割程度安くなることを目標にしています」。

ドライバーがバッテリーを交換したいときは、Ampleのアプリを使って近くのステーションを探し、自動交換を始める。各ステーションでは、1時間あたり5~6台程度のサービスが可能だが、年内にはその倍のサービスが可能になると見込まれている。とはいえ、これは各ステーションでの利用可能電力量にもよる。

ティルマン氏は、Ampleの拡大に伴い、既存のOEMパートナーと協力して、生産ラインで新車にAmpleの製造用プレートを取り付けるという選択肢を消費者に提供できる日を目指しているという。

彼は「私たちのユニットのコストは、バッテリースワップシステムにとって非常に有利なものです」という。「展開に大きなコストがかからないために、比較的少数の車両でも、バッテリー交換アーキテクチャーは経済的で収益性が高くすることができるのです」。

以前にAmpleに投資を行ったENEOSは、同社によれば、次世代のエネルギー供給に取り組んでいるとのことだ。同社はまた、水素についても検討しており、最近ではトヨタが日本で建設中の未来型試作都市「Woven City(ウーブン・シティ)」と提携した。同市は水素を使って電力を供給する予定だ。

関連記事:トヨタ自動車とENEOSが協力し実験都市「Woven City」における水素エネルギーの利活用ついて検討開始

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ample日本ニューヨークEVバッテリーENEOS

画像クレジット:Ample

原文へ

(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

BMWとフォードが出資する全固体電池デベロッパーSolid PowerがSPAC合併で上場へ

Ford(フォード)とBMWが出資する全固体電池デベロッパーのSolid Power(ソリッドパワー)が上場する。同社は米国時間6月15日、特別買収目的会社Decarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの合併を通じてNASDAQに上場し、取引後の時価総額は12億ドル(約1320億円)になると明らかにした。

取引では現金約6億ドル(約660億円)を獲得する見込みで、ここにはKoch Strategic Platforms、Riverstone Energy Limited、Neuberger Berman、Van Eck Associates Corporationなどの投資家からの1億6500万ドル(約181億円)のPIPE(上場企業の私募増資)が含まれる。Solid Powerは声明文の中で、調達した資金は成長とオペレーションにあてると述べた。

全固体電池はバッテリーテクノロジーにおける待望の次なるブレークスルーだと多くの人は考えている。この名称は、従来のリチウムイオン電池にある陰極と陽極の間をイオンが動くメカニズム、液体電解質を使用していないためだ。これについてはMark Harris氏が2021年初めにExtra Crunch記事で詳しく書いた。この液体の構成要素を取り除くことで、全固体電池はより安全で、エネルギー密度もはるかに優れているとSolid Powerは話す。同社は6月15日の投資家向け説明会で、同社のバッテリーが1回のフル充電で航続距離500マイル(約805km)を提供でき、寿命は従来のバッテリーの8年の2倍超となる見込みだと説明した。

Ford Motor CompanyとBMW AGはSolid Powerの出荷能力について強気の見通しを持っていることを明らかにしてきた。2社はSolid Powerの2021年5月の1億3000万ドル(約143億円)のシリーズBラウンドをリードし、試験的に生産される自動車規模のバッテリーを2022年初めに納品するという共同開発契約を結んだ。

関連記事:フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

SPACとの合併は2021年第4四半期に完了する見込みだとSolid Powerは述べた。ニューヨーク証券取引所ではティッカーシンボル「SLDP」で取引される。

Solid Powerは、SPAC経由で上場する最新のバッテリー会社だ。主要ライバルの1社はVolkswagenが出資するQuantumScapeで、同社は2020年9月にSPAC合併経由で上場し、企業価値33億ドル(約3631億円)とした。2021年初めには欧州のバッテリーメーカーFREYRとパワーシステムデベロッパーのMicrovastもいわゆる「白紙小切手」会社との合併を発表した

関連記事
VWが支援する全固体電池開発のQuantumScapeが特別買収目的会社経由で上場へ
EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

カテゴリー:モビリティ
タグ:BMWFord全固体電池バッテリーSolid PowerSPAC

画像クレジット:Solid Power

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

バッテリーリサイクルRedwood Materialsが拡大の一環としてテスラギガファクトリーの近くに拠点設置

Tesla(テスラ)の元CTOであるJB Straubel(JB・ストラウベル)氏が創業した、バッテリーリサイクルのスタートアップのRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)が、Panasonic(パナソニック)がテスラと共同で運営するネバダ州スパークスのギガファクトリーの近くに、100エーカー(約40万平方メートル)の土地を購入した。これは電気自動車の普及を促進し、国内のバッテリーリサイクルとサプライチェーンの取り組みを強化しようとするバイデン政権の方針に沿った拡大計画の一環だ。

米国時間6月15日、同社はネバダ州カーソンシティにある既存の15万平方フィート(約1万4000平方メートル)の施設もまた、約4倍の広さになると発表した。Redwoodは、カーソン市のリサイクル施設にさらに40万平方フィート(約3万7000平方メートル)を追加し、年末までに稼働させる予定だ。

また、成長計画の一環として、Redwoodは数百人の従業員を雇用する。Amazon(アマゾン)の支援を受けている同社では、現在130名の従業員が働いており、今後2年間で500名以上の雇用増を見込んでいる。

Redwoodは、米国サプライチェーンの強化に触れたバイデン政権の発足100日レビューと、リチウムベースのバッテリーの国内サプライチェーンを改善する計画を記した米国エネルギー省の文書の発表を受けて、今回の事業拡大を発表した。

米国エネルギー省のJennifer M. Granholm(ジェニファー・M・グランホルム)長官は米国時間6月15日に声明を発表し「米国は、23兆ドル(約2530兆円)規模の世界的なクリーンエネルギー経済の恩恵を最大限に享受するために、国内のサプライチェーンと製造業界を再建する明確なチャンスを前にしています」と述べている。そして「このような民間企業の投資は、私たちが減速してはいけないということを示すものです。このAmerican Jobs Plan(アメリカン・ジョブズ・プラン)は、自動車用バッテリーや蓄電設備のような技術の革新と需要を呼び起こし、すべての人にクリーンエネルギー関連の雇用を創出することで、米国企業に大きなチャンスをもたらすでしょう」と語る。

2017年に創業したRedwood Materialsは、循環型のサプライチェーンを作ろうとしている。同社はB2B戦略をとっていて、バッテリウーセルを製造する際に出るスクラップや、携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、 モバイルバッテリー、スクーター、電動バイクなどの家電製品をリサイクルしている。そのためにRedwoodは、家電メーカーやパナソニックなどの電池セルメーカーからスクラップを回収している。そして、これらの廃棄物を処理して、通常は自然から採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、パナソニックなどの顧客に再供給している。最終的には、バッテリーのコストを削減し、採掘の必要性を相対的に減らすクローズドループシステムの構築を目指しているのだ。

Redwood Materialsは多くの顧客を抱えているが、パナソニック、アマゾン、テネシー州のAESC Envision(AESEエンビジョン)と仕事をしていることだけを公にしている。

同社によるとニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を電池から約95〜98%回収しているという。現在、年間3ギガワット時相当のスクラップを受け取っているが、これは自動車約4万5000台分に相当するという。

関連記事:アマゾンとパナソニックが注目するバッテリーリサイクルスタートアップRedwood Materials

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Redwood Materialsバッテリー工場リサイクルTesla

画像クレジット:Redwood Materials

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

空気中の湿度変化で発電する「湿度変動電池」を産総研が開発

産総研が空気中の湿度変化で発電する「湿度変動電池」を開発

産業技術総合研究所(産総研)センシングシステム研究センターと、同センターが兼務する人間拡張研究センターは6月2日、空気中の湿度変化を利用して発電を行える「湿度変動電池」を開発したと発表した。「潮解性材料と塩分濃度差発電を組み合わせた新しい原理」により実用的な電流を連続的に取り出すことが可能となった。

原理はこうだ。

湿度変動電池は、大気に開放された開放槽と密閉された閉鎖槽からなり、2つの槽には水と潮解性を有するリチウム塩からなる電解液が封入されている。この電池が低湿度環境にさらされると、開放槽からは水分が蒸発して濃度が上昇する一方、閉鎖槽は密閉されているため濃度変化は生じない。これによって開放槽と閉鎖槽間で濃度差が生じ、電極間に電圧が発生する。高湿度環境にさらされた場合は、逆に開放槽内の水溶液が空気中の水分を吸収して濃度が減少する。これにより先程とは逆向きの濃度差が発生し、逆向きの電圧が発生する。

潮解性とは、化合物が空気中の水分を吸収して水溶液になる性質のこと。湿度の変化が繰り返される限り、理論的には半永久的に電気エネルギーを取り出せるという。

これまでも、熱電素子、太陽光発電、振動発電など環境中の微小なエネルギーを利用した「環境発電」の研究が進んでいるが、熱・光・振動が存在する場所は限られており、どこでも使えるものではなかった。それに対して空気中の水分の利用する発電方法なら、地球上のほぼすべての場所で使うことができる。ただし、これまで研究が行われてきた吸湿時に電圧を発生する酸化グラフェンなどを利用した発電素子では、取り出せる電流はナノアンペア(nA)からマイクロアンペア(μA)程度と小さく実用性に欠けていた。

一方、産総研が開発した湿度変動電池はmA(ミリアンペア)レベルの電流が得られるため、昼夜の湿度差にさらされるIoT機器などへの極低電力電源としての応用が期待される。

産総研では、実際に湿度変動電池を作り、湿度30%と90%の環境に2時間ごとに繰り返し置く実験を行ったところ、湿度30%時の電圧は22〜25mV(ミリボルト)程度、90%時には-17mV(マイナス17ミリボルト)程度が得られた。最大電圧時に負荷を接続して出力測定を行うと、最大で30μW(マイクロワット)が得られた。短絡電流は5mA。「1mA以上の電流を1時間以上継続して出力することもできた。湿度を用いたこれまでの発電技術では、これほど大きな電流を長時間継続して出力できるものは報告されておらず、同素子は非常に高い電流供給能力を有していると言える」と産総研は話している。

湿度を20〜30%に保った密閉容器に湿度変動電池を入れ、微小な電力で回転する特別なモーターを回す実験では、モーターを2時間半にわたり回転させることができた。

今後は、出力と長時間使用時の耐久性を向上させ、実用化に向けた研究を行ってゆくとのこと。この技術の詳細は、英国王立化学会の学術誌「Sustainable Energy & Fuels」に2021年6月2日付で掲載される予定。

関連記事
豊田中央研究所が36cm角実用サイズ人工光合成セルで世界最高の太陽光変換効率7.2%を実現

カテゴリー:EnviroTech
タグ:IoT(用語)環境発電 / エネルギーハーベスティング(用語)産総研 / AIST(組織)バッテリー(用語)日本(国・地域)

フォードが電動化への投資を3.3兆円に引き上げ自社バッテリー研究開発を加速、30年までにEV比率40%に

Ford(フォード)は、2023年までに220億ドル(約2兆4000億円)を予定していた車両電動化への投資額を、2025年までに300億ドル(約3兆3000億円)に引き上げた。同社は米国時間5月25日の投資家向け説明会で「Ford+」と呼ばれる電気自動車(EV)とEV用バッテリーの開発戦略に新たな資金を投入することを発表した。

フォードは、2030年までに世界での販売台数に占める完全電気自動車の比率が40%になると予想しているという。同社は第1四半期に米国で6614台のMustang Mach-E(マスタング・マッハE)を販売し、先週F-150 Lightning(F-150 ライトニング)を発表して以来、すでに7万件の購入予約を受け付けたとのこと。

Ford+の計画は、自動車メーカー各社がEVの未来に対応するために必要な新しい道筋を示している。歴史的には、中国、日本、韓国が世界の電池製造の大部分を担ってきたが、大手OEMメーカーがEVの製造を開始すると、需要が供給をはるかに上回り、自動車メーカーは自社のリソースを開発に投入せざるを得なくなる。General Motors(GM、ゼネラルモーターズ)はLGと共同でオハイオ州に電池工場を建設中であり、BMWはフォードと共同で固体電池スタートアップのSolid Power(ソリッドパワー)に出資した。

関連記事:GMとLG化学の2つめのEVバッテリー工場は2023年後半開所予定

フォードとBMWが全固体電池のSolid Powerに142.2億円を投入

今回の投資は「生産可能な固体電池がこの10年の終わりまでに実現する範囲にあるという当社の信念を裏づけるものです」と、フォードの最高製品プラットフォームおよびオペレーション責任者であるHau Thai-Tang(ハウ・タイ・タン)氏は投資家説明会で述べた。「Solid Powerの硫化物ベースの固体電解質とシリコンベースの負極化学は、航続距離の増加、コスト削減、車内スペースの拡大、そしてお客様にとっての価値と安全性の向上など、バッテリーのパフォーマンスを大きく向上させます」とも。

固体電池の製造プロセスは、既存のリチウムイオン電池の製造プロセスとあまり変わらないため、フォードは製造ラインや設備投資の約70%を再利用できるとタイ・タン氏は述べている。

フォードがミシガン州に建設中のバッテリー研究開発センター「Ion Park」では、150人の専門家が集まり、次世代のリチウムイオン化学物質と同社の新しいエネルギー密度の高いバッテリー技術「Ion Boost +」の研究、そして戦略的プランの作成を行っている。

「当社の最終的な目標は、サービスを含む総合的なエコシステムを提供し、BEV(バッテリー式電動自動車)でICE(内燃エンジン)車よりも高い収益性を実現することです」とタイ・タン氏は語った。

「Ion Boost +」のユニークなセルパウチ形式は、フォードの大型車に最適なだけでなく、2020年代半ばまでにバッテリーコストを40%削減することができるという。

「このセルのタイプと、高精度なセンシング技術を用いたフォード独自のバッテリー制御アルゴリズムの組み合わせにより、お客様により高い効率と航続距離を提供します」とタイ・タン氏は述べている。

また、フォードは商用車向けにリン酸リチウムイオンを用いたバッテリーセルを開発しており「Ion Boost Pro」と呼んでいる。そちらはより安価で、より少ない航続距離を必要とするデューティサイクルに適しているとのこと。

関連記事
フォードの新電動ピックアップトラックの名前は「F-150 Lightning」、停電した家に給電する機能を搭載
フォードが「実質的にすべて」の車載コンピューターのソフトを無線でアップデートできる機能を発表
フォードと韓国SK Innovationが米国でのEVバッテリー量産に向け合弁会社BlueOvalSKを発表
フォードの電気自動車F-150 Lightningは停電時には家庭に電力を供給

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ford電気自動車バッテリー

画像クレジット:Ford

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

テスラが20万台目の家庭用蓄電池「Powerwall」設置完了を発表、この1年間で2倍に

Tesla(テスラ)は、同社の家庭用蓄電池製品である「Powerwall(パワーウォール)」の20万台目の設置が完了したことを、米国時間5月26日のツイートで発表した。テスラのCFO(最高財務責任者)を務めるZachary Kirkhorn(ザッカリー・カークホーン)氏は、2021年4月の第1四半期決算説明会で投資家に、テスラは「Powerwallの数四半期分の受注」の処理に追われていると語り、今後数カ月の間に設置台数が急増することを示唆していた。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、この決算説明会で、今後はPowerwallなしで同社の「Solar Roof(ソーラールーフ)」パネル製品のみを販売することはしないと述べた。太陽光発電パネルと家庭用蓄電池(もちろん、テスラ製)の設置が広がれば、すべての家庭が分散型発電所になると、同氏はいう。

関連記事:テスラはすべての家庭を分散型発電所にしようとしている

「Powerwallが設置されている住宅やアパート、あるいはどんな建物でも、それ自体が電力会社になります。近所の照明がすべて消えてしまうような停電時でも、電力を確保できるのです。これは人々にエネルギーの安全性を提供します。また電力会社と協力し、Powerwallを使って地域全体の電力網を安定させることもできます」とマスク氏は語った。

2月にテキサス州で発生した未曾有の冬の嵐では、記録的な電力需要と相まって、何百万人もの人々が凍えるような寒さの中で電気を失ったことにマスク氏は言及。このような状況になった場合、電力会社はPowerwallを設置している顧客と協力して、蓄えた電力を送電網に戻し、需要を満たすことができると提案した。

関連記事:テキサス大寒波から学ぶ3つのエネルギー革新

「電力網がより多くの電力を必要とする場合、もちろん同意が必要ですが、住宅所有者と電力会社が連携して、Powerwallに蓄えられた電力を電力網に開放し、ピーク時の電力需要に対応することができるのです」と、マスク氏は語った。

テスラが初代Powerwallを発売してから5年後の2020年4月に、Powerwallの設置台数は10万台を超えた。これはつまり、同社が5年をかけて達成した販売数が、この1年間で2倍になったことを意味する。

関連記事
価格を大幅に抑えた家庭用スマート分電盤の新製品をSpanが発表
地球の電力需要を満たす大きな可能性を持つ地熱テクノロジーでリーダーを目指す「Fervo」
エネルギー事業で余った天然ガスを利用し暗号資産のマイニングに電力供給するCrusoe Energy

カテゴリー:EnviroTech
タグ:TeslaPowerwall電力バッテリースマートバッテリー

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)