EVバッテリー交換ビジネスのAmpleが34.2億円調達、ヨーロッパ進出を目指す

電気自動車のバッテリー交換技術を開発するスタートアップ、Ample(アンプル)は、The Blackstonre Groupとスペインの多国籍金融サービス会社、Banco Santanderから3000万ドル(約34億2000万円)の資金を追加調達した。

サンフランシスコ拠点の同社は、ユニコーンに近い地位にあるはずで、PitchBookによる8月の評価額は8億9000万ドル(約1016億7000万円)だった。ユニコーンとは、評価額10億ドル以上の会社を指す。

本ラウンドの大部分は2500万ドル(約28億6000万円)を出資したThe Blackstone Groupによるもので、残りをBancoが受け持った。Ampleはこれまでに総額2億6000万ドル(約297億円)を調達している。

Ampleのコンセプトは比較的シンプルだ。EVのパワーを蓄えるために充電ステーションに繋ぐ代わりに、AmpleのモジュラーバッテリーパックをEVに装着し、専用ステーションで交換する。

2021年、AmpleはUberと提携して、ベイエリアのいくつかの場所をバッテリー交換ステーションとして使えるようにした。両社はヨーロッパへの拡大にも合意しており、Uberはヨーロッパで7つの首都、ロンドン、アムステルダム、ブリュッセル、ベルリン、パリ、マドリッド、およびリスボンで、2025年までに乗車の半分を電動化する目標を掲げている。

Ampleの共同ファウンダーであるJohn de Souza(ジョン・デ・スーザ)氏はTechCrunch宛の声明で、新たな資金は事業の規模拡大に使うと語った。「近い将来数万台の車両を展開するために、生産、配置、サポートの機能を拡大する必要があります」と同氏は言った。「地理的には2022年、ヨーロッパに進出します。スケーリングの必要性は、市場の要求とCOP 26で明確に強調されたEVへの移行の緊急性の両方によるものです。

Ampleは、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴの各都市にバッテリー交換サービスを展開するために、ニューヨーク市拠点のEVレンタル会社、Sally(サリー)とも提携した。

UberとSallyという最初の2つの提携相手を見ると、EVバッテリーの充電に無駄な時間を費やしている輸送会社に対するAmpleの力の入れ方が反映されている。Ampleはバッテリー交換方式を、個人利用者にとっても優れたソリューションであり、アパート居住者のように信頼できる夜間充電方法をもたない人々には特に有効だと考えている、と以前TechCrunchに語っていた。

画像クレジット:Ample

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォックスコンがLordstownのオハイオ工場を約262億円で買収

電動小型トラックメーカーのLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は、オハイオ州ローズタウンにある広さ620万平方フィート(約57万平方メートル)の工場を、Apple(アップル)のiPhoneの製造で知られる台湾のハードウェアメーカーFoxconn(フォックスコン)に正式に売却した。Lordstownの発表によると、この2億3000万ドル(約262億円)の取引は、2022年4月末までに完了する予定だ。

取引の条件は、両社が9月30日に締結した基本合意に沿ったもので、締結後にFoxconnは早速5000万ドル(約57億円)分の普通株を1株あたり6.8983ドル(約787円)でLordstownから直接購入した。Foxconnは11月18日までに1億ドル(約114億円)の頭金を、その後2022年2月と4月に5000万ドル(約57億円)を支払い、4月30日の手続き完了を目指している。

Lordstownの発表文によると、Foxconnは苦境にあるLordstownのピックアップトラック「Endurance」の製造を支援することにも合意した。両社はまた、北米および海外市場向けの商用車プログラムを共同で設計・開発する合弁会社も設立する。最後に、この取引が完了すると、Foxconnは今後3年間、1株あたり10.50ドル(約1200円)でLordstownの普通株式を購入できる170万のワラントを得る。Lordstownは、電気モーターの生産ライン、バッテリーモジュールとバッテリーパックの組み立てラインを維持する。

Foxconnは2021年初め、電気自動車スタートアップのFisker(フィスカー)と、FiskerのPEARプログラムに基づく新型車を北米で共同開発・製造する契約を締結した。その後、Lordstownが2019年にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)から購入したオハイオ州の工場でも、Fiskerの車両を生産することをFoxconnは示唆していた。今回の工場購入により、Foxconnは初の自動車工場を手に入れ、スマホやノートPCの製造以外の分野へ躍進することになる。

調査会社がEVトラックの予約台数を偽装していると告発したことで、米証券取引委員会と米司法省の両方から調査を受けているLordstownは、財政難に加えて、11月10日朝に辞任した社長のRich Schmidt(リッチ・シュミット)氏をはじめとする多くの幹部の逸失に直面している。Foxconnとの取引により、Lordstownは原材料や部品のコストを削減することができそうだ。Foxconnは、生産コストの削減や不安定なサプライチェーンに対応するために必要な強力なサプライチェーンネットワーク、ロジスティック能力、購買力を持っている。また、同社は電気自動車にとって非常に重要な、ソフトウェアとハードウェアの統合のエキスパートでもある。

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがHummer EVをベースにした軍用車両を計画、しかし軍導入の保証なし

Hummer H1は軍用トラックをベースにしていたが、いまGM(ゼネラル・モーターズ)はその恩返しをする準備ができているようだ。GM Defenseの社長Steve duMont(スティーブ・デュモント)氏がCNBCに語ったところによると、同社は間もなく展開されるHummer EVをベースにした軍用車両のプロトタイプの製造を計画している。eLRV(電動軽装甲車)では、Hummerのフレーム、モーター、Ultiumバッテリーを米軍の要件に合わせて改造する。

プロトタイプは2022年中に完成する予定だ。しかし、米軍がこのeLRVを使用するという保証はない。陸軍はまだこのようなEVの可能性を模索しており、もしあればの話だが、GMは(ライバルメーカーとともに)正式な要求を待たなけれなならない。選択は2020年代半ばに行われる見込みだ。

軍用のEVは、少なくとも前線で活躍する車両には物流面での課題がある。まず、戦場で充電ステーションを見つけることはできず、電力網に依存しない輸送可能な充電システムが必要となる。デュモント氏は、GMが燃焼式の充電システムを提供できるかもしれないと述べた。また、気温がEVの航続距離に大きく影響することや、迅速な方向転換や修理のために重要な取り替え可能なバッテリーがまだ初期段階にあることも付け加えたい。

軍のEV導入にはメリットがあるかもしれない。燃焼式充電器の必要性がその利点を部分的に相殺するとしても、全体的な二酸化炭素排出量を改善できそうだ。EVは可動部品が少ないため、一般的にメンテナンスが少なくて済む。また、従来の車両では音が大きすぎるような偵察やステルス任務には、EVの静かな動作が非常に役立つはずだ。課題は、これらの利点を最大限に活用しながら、運用スピードを低下させるような欠点を最小限に抑えることだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Steve Fecht for GM Defense

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

JR東日本が鉄道ファンのための「撮り鉄コミュニティ」をスタート、JR東日本スタートアッププログラムの実証実験

JR東日本が鉄道ファンのための「撮り鉄コミュニティ」をスタート、JR東日本スタートアッププログラムの実証実験として実施

JR東日本は11月10日、鉄道写真の愛好家、いわゆる「撮り鉄」に向けた情報発信や限定企画の開催などを行うファンコミュニティー「撮り鉄コミュニティ」をスタートさせた。

JR東日本の子会社としてベンチャー投資や協業を推進するCVC「JR東日本スタートアップ」は、ファンコミュニティーが作れるプラットフォーム「Mechu」を運営するミーチューと共同で、撮り鉄のためのファンコミュニティーを11月10日から開始した。ここでは、ファンの要望を聞き、また社員を交えて企画を検討するなどして、「本当に望まれるイベント」を実施するという。

たとえば、コミュニティ限定撮影会、ファンが撮影した鉄道写真をJR東日本の公式ポスターに採用する、ママ鉄専用コミュニティー、普段は入れない私有地での撮影イベントといったアイデアの例がJR東日本によって示されている。ただしこれはあくまで例であって、実施に行われるかどうかはわからない。

参加方法には、無料の「フリー」プランと、月額税込1100円の「スターター」プランとがある。有料会員には、今のところ、限定チャンネルへの参加、イベントや企画に対する要望の投稿、実現したイベントへの参加、限定企画などが予定されている。

JR東日本が鉄道ファンのための「撮り鉄コミュニティ」をスタート、JR東日本スタートアッププログラムの実証実験として実施

車両基地撮影会(場所・車両はイメージ)

何かと問題が注目されがちな「撮り鉄」には、ちょっとネガティブなイメージが付きまとうが、JR東日本は、あえて「撮り鉄」という言葉をコミュニティーに使うことで、安全に撮影できる場所を提供するなど「鉄道写真を愛するファンのみなさまと、積極的にコミュニケーションを取る」としている。

この企画は、駅や鉄道、グループ事業の経営資源や情報資産を活用したビジネスやサービスの提案を募り実現させてゆく「JR東日本スタートアッププログラム」の実証実験として行われるもの。近日中に第2弾のファンコミュニティーも開始するとのことだ。

悪条件下でも使える短波長赤外線を利用するセンサーの商業化を目指すTriEye、インテル、サムスン、ポルシェが支援

イスラエルのスタートアップ企業TriEyeは、悪条件下での自律走行システムや運転支援システムの視認性向上に役立つセンシング技術を商業化するため、7400万ドル(約84億円)を調達した。

その技術は、波長の短い赤外線、すなわち短波長赤外線(Short-wavelength infrared、SWIR)を利用する。赤外線なので人間の可視波長域にはない。SWIRによるセンシング技術は以前から存在するが、コストが高くつくため航空宇宙や防衛産業に限られていた。TriEyeによれば、同社はそのコストを大幅に下げて、今日のスマートフォンや自動車で使われているカメラ程度の費用にし、また市場にある他のタイプのセンサーよりも高性能だという。

そのイノベーションはCTOのUriel Levy(ウリエル・レビー)氏がヘブライ大学に在籍していた10在職中の10年以上の間に研究、開発したもので、TriEyeはそのSWIR技術の商用化と市場化を目指している。

CEOのAvi Bakal(アヴィ・バカル)氏によると、SWIRはこれまでの視覚システムにさらにもう1つの情報のレイヤーを加える(tri-eyeは「3つの目」の意)ので、それにより人は「可視物以上のもの」を見ることができる。

「センシングは至るところにあります。どのような産業でも、それは工程を編成し分析するための必須の部分です。しかし現在では、全体的なパフォーマンスと意思決定の向上に役に立つような、必要不可欠なデータの提供能力が視覚システムの市場にはありません」とバカル氏はいう。

TriEyeの創業者ウリエル・レビー氏、アヴィ・バカル氏、Omer Kapach(オメル・カパック)氏(画像クレジット:TriEye)

TriEyeはSWIRと同社独自の光源技術を使って、sedar(spectrum enhanced detection and ranging、 スペクトル強化検出測距)と呼ぶセンサーを開発した。同社によるとsedarは、高度な運転者補助や自動運転のシステムが必要とする像と深さに関するすべてのデータを提供する。ゆえにそれは、今日の高度な運転者補助や自動運転システムが利用しているカメラやレーダーやLiDARなどを使う従来的なセンシング系をリプレースできる。

TriEyeの技術は、カメラやライダーに比べてコストが安いことも大きなアドバンテージだ。バカル氏によると「マスマーケットが採用するためにはその点が欠かせません。最もシンプルなクルマから高級車まで、すべてに対応することが目標です」。

TriEyeのSWIRセンサーはCMOS半導体を使っている。同社はすでに大手のCMOSファウンドリ数社と提携して、今後の年産数百万という市場のニーズに備えている。また大手OEM数社とも、sedarを共同で商用化し搭載する具体的な車種の話し合いに入っているが、詳細はまだ明かされない。

同社のメインのターゲットは自動車業界だが、狙っているのは自動車だけではない。SWIRによるセンシングの性能は食品の検品や素材の検出にも向いている。また、バイオメトリクスや監視システムにも適している。

TriEyeがSWIRの市場を非常に大きく捉えているので、大手の投資家たちも関心を持ち始めた。その中にはIntelやPorscheの投資部門もいる。どちらも、2019年のTriEyeのシリーズAに参加した。

今回の最新の投資ラウンドはM&G InvestmentsとVarana Capitalがリードし、Samsung VenturesとTawazun SDF、Deep Insight、Allied Group、Discount Capital、そしてこれまでの投資家であるIntel CapitalやPorsche Ventures、Marius Nacht、そしてGrove Venturesが参加した。これでTriEyeの調達総額は9600万ドル(約109億円)になった。

画像クレジット:TriEye

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

イーロン・マスク氏がテスラ株1240億円超分を売却

Tesla(テスラ)のCEO、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、先週末にTwitterでフォロワーに所有する自社株の10%を売却すべきかどうかを問う投票を行った結果、約10億9000万ドル(約1243億円)分のTesla株を売却した。投票では57.9%が売却に賛成し、42.1%が反対した。そして今に至る。

米国時間11月10日に米証券取引委員会(SEC)に提出された複数の書類によると、マスク氏は210万株を超えるストックオプションのうち93万株以上を、1株あたり6.24ドル(約710円)で売却した。11月8日にTeslaの株価が4.8%下落したため、マスク氏の株は1株あたり1200〜1100ドル(約13万6800〜12万5400円)で売られた。

マスク氏は提出書類の中で、ストックオプションの行使に関連する納税義務を満たすために持ち株の一部を売却したことを明らかにした。同氏は、2012年に1株あたり6.24ドルで付与されたストックゲインに対して所得税を課せられているが、11月10日に1067.95ドル(約12万1800円)で取引を終えた今日の株価を見ると笑ってしまう。マスク氏がこれらのストックオプションを行使する場合、150億ドル(約1兆7000億円)超の税金が課せられることになる。

このニュースはまったく驚くべきものではない。マスク氏は以前から、保有するテスラ株の大規模な売却を公言しており、SECへの提出書類によると、同氏はすでに9月14日に株の売却を計画していたことが明らかになっていて、ツイッターでの動きは単なるショーだった。さらに、9月に行われたテックジャーナリストKara Swisher(カーラ・スウィッシャー)氏との対談で、マスク氏はストックオプションの大部分が2022年8月に期限切れになると述べ、第4四半期に売却することを多かれ少なかれ約束していた。

マスク氏は現在も1億7000万株以上を保有しており、持分は約17%だ。

画像クレジット:Britta Pedersen-Pool / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

米議会、自動車に飲酒運転防止技術を義務化

米議会は、バイデン大統領の巨大なインフラ法案とともに、飲酒運転撲滅のために過去最大の後押しをしている。以前の報告にあったように、その条項の1つは新車への飲酒運転防止技術の搭載を義務付けることが含まれていた。現在、Autoblog(オートブログ)が報じたところによると、インフラ投資・雇用法はこの措置をそのまま残して議会を通過し、近日中に大統領の署名が行われる見込みだ。この法案の一環として、自動車メーカーは早ければ2026年までに、飲酒運転を検知して停止させる技術を搭載しなければならなくなる。

しかしまずは、運輸省は飲酒運転を抑制するための最善の解決策を決定しなければならない。具体的には、この法案は「運転者に影響があるかどうかを正確に識別するために自動車の運転者のパフォーマンスを受動的に監視する」ことが求められている。Guidehouse Insights(ガイドハウスインサイト)の主席モビリティアナリストであるSam Abuelsamid(サム・アブエルサミド)氏は、この法案は、GMや日産などがすでに採用している赤外線カメラソリューションに似ているとAP通信に語った。もちろん、飲酒運転の罰則として使用されている飲酒検知器よりも高度なものが必要であることはいうまでもない。

国家道路交通安全局によると、米国では毎年約1万人が飲酒運転による事故で亡くなっている。より高性能なセンサーと、ドライバーの行動を監視するための多くのカメラ技術を手に入れた今、この種の事故を防ぐためのソリューションを検討することは理に適っている。10年以内には、シートベルトのように当たり前のものになるはずだ。

このインフラ法案には、シートに子どもを残したままにしている親に通知するリアシートリマインダーなど、他の安全対策も含まれている。また、議会は自動緊急ブレーキや車線逸脱警報など、多くの新車がすでに搭載している機能も義務化する予定だ。真の自動運転車がいつ実現するかは不明だが、それまでは、少なくとも人間のドライバーは、事故を防ぐための方法が増えることを楽しみにできる。

編集部注:本稿の初出はEngadget。寄稿者のDevindra HardawarはEngadgetのシニアエディター。

画像クレジット:SoCalShooter / Getty Images

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(文:Devindra Hardwar、翻訳:Yuta Kaminishi)

電気自動車メーカーRivianが上場、2021年最大のIPOに

Rivian(リビアン)は米国時間11月10日、上場会社としてデビューした。106.75ドル(約1万2000円)の初値をつけ、同社を取り巻く高揚感は一気に高まった。

これが定着すれば、Rivianの評価額は900億ドル(約10兆2400億円)に達する。初値は、IPO価格の78ドル(約8870円)を37%近く上回った。この絶対的に目を見張る数字は、Rivianを米国史上最大のIPO企業の1つにし、同社の時価総額はGM(ゼネラル・モーターズ)や同社の出資者であるFord(フォード)を上回る。GMの時価総額は863億1000万ドル(約9兆8190億円)、Fordの時価総額は782億ドル(約8兆8990億円)だ。

Rivianの株価は10日午後1時の取引開始後も上昇を続け、119ドル(約1万3500円)の高値をつけた後、112ドル(約1万2700円)ほどまで下落した。

創業者兼CEOのRJ Scaringe(RJ・スカーリンジ)氏には、RivianのIPOが歴史的な規模であることの意味がわかる。しかし、予想されたことかもしれないが、スカーリンジ氏はEVの将来性について強気であり、最近のインタビューで、毎年販売されている9000万台から1億台の自動車は、今後10〜20年の間に電気自動車に移行するだろう、と話している。

「結局、投資家がこの分野に注目するのは、未来がどうなるかを評価するためです。とスカーリンジ氏は話す。「そう遠くない将来、100%が電気自動車になるでしょう」。

また、車両とその発売という点ではRivianは非常に初期段階にあるが、投資家は将来の可能性にも基づいて当社を評価している、と同氏は語る。

「彼らが純粋に今日のP&L(損益計算書)だけで当社を評価しているとしたら、会社のポイントを見逃していると思います。彼らはもちろん、Rivianが時間をかけて達成できると考えているものを見ているのです」と話した。

Rivianが何を達成できるのかは、まだ証明されていない。投資家、顧客、業界関係者はすぐにそれを知ることになる。しかし、同社の将来計画は確かに野心的であり、消費者向けの最初の2つのモデル(ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」)や、2024年までに10万台の電動商用配送バンを生産するというAmazon(アマゾン)との提携をはるかに超えるものだ。特許文書やスカーリンジ氏のTechCrunchへのコメントによると、Rivianは消費者用および商業用のさまざまな製品を発売する計画だ。

また、Rivianが垂直統合を推進し、長期的には独自のバッテリーセルを開発する計画であることから、投資家は同社が技術的なリーダーとなることに賭けているのかもしれない。

スカーリンジ氏は「我々が中核技術スタックと考えているもの、つまり車両のすべての電子機器、完全なソフトウェアスタック、車両の推進部分を制御し、垂直統合することが本当に重要です。これらの中で最も重要なのは、ソフトウェアと電子機器でしょう」と話した。

ワイルドなIPOの旅

Rivianが2021年10月にIPO申請書を公開して以来、ワイルドな旅が続いていた(IPO申請は8月に内密に行われた)。この申請書は、Rivianの財務状況、リスク、およびチャンスに関する詳細な全体像で、電気自動車の設計、開発、生産、および販売という資本集約的なタスクに取り組むために現金をつぎ込んで状況を示している。

同社は1億3500万株を57~62ドル(約6480〜7050円)で発行することを計画していた。引受人はまた、2025万株まで追加購入できるオプションを持っていた。

投資家の需要が熱狂的だったというのは、2021年の控えめな表現かもしれない。11月9日夜遅くに公開された当局への書類によると、Rivianは目標株価を2回引き上げ、最終的に1株78ドルで新規株式を売りに出しただけでなく、さらに追加で普通株式1億5300万株を加えた。また、Rivianは引受人にさらに2295万株を購入するオプションを与え、この数字は以前の想定よりも多い。

今回のIPOの規模は、大口出資者にもメリットがある。Amazon(アマゾン)は20%、Fordは12%のRivianの株式を保有している。

Rivianの株価が上昇したのには、いくつかの理由がある。例えば、同社はいま、毎年何百万台もの自動車を生産・販売している既存の自動車メーカーよりも評価が高い。

一方、Rivianは収益が少なく、費用が多い。

同社は、イリノイ州ノーマルにある工場をはじめ、複数の施設で数千人の従業員を雇用している。スカーリンジ氏は11月9日夜、現在9000人超の従業員を抱えているとTechCrunchとのインタビューで答えた。

スカーリンジ氏の垂直統合へのこだわりは、研究開発費を押し上げることにもなった(同社は2020年にR&Dに7億6600万ドル=約871億円=を投じた。2021年上半期には、R&Dに6億8300万ドル=約777億円=を費やしている)。

その結果、ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」の生産準備に伴い、純損失が拡大した。同社は2021年上半期だけで9億9400万ドル(約1130億円)の純損失を計上し、2020年同期に同社が計上した純損失3億7700万ドル(約428億円)の2倍をはるかに超える。

一方で、2021年10月から始まった顧客への「R1T」の納車が本格化するにつれ、売上は徐々に増加している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

NVIDIAの次世代自動運転ツールキット「Hyperion 8」が2024年の車両モデルに対応

自動運転機能、ロボタクシー、自動運転トラックの導入を目指す自動車メーカー、サプライヤー、スタートアップは、NVIDIA(エヌビディア)の最新のコンピュートおよびセンサーツールキットにあと少しでアクセスできるほど近づいている。

NVIDIAの創業者でCEOのJensen Huang(ジェン・スン・フアン)氏は米国時間11月9日に開催された同社の秋季GTCイベントにおいて、AV開発に必要なセンサー、コンピュート、ソフトウェアを含む量産可能なプラットフォーム「Hyperion 8」を、2024年の車両モデル向けに購入できるようになったことを発表した。

Hyperion 8は、エンド・ツー・エンドのNVIDIA Driveプラットフォームの最新版で、自動車メーカーが好みやニーズに合わせてカスタマイズして使用することが可能だ。Hyperion 8は4月に初めて明らかにされた。しかし、このプラットフォームを構成するカメラ12台、レーダー9台、LiDAR1台をどの企業が供給するかなど、詳細の一部は11月9日まで明らかにされていなかった。注目すべきは、Luminar(ルミナール)がLiDARを提供している点で、これは新規上場企業にとって大きな恩恵となる可能性がある。また、Continental(コンチネンタル)、Hella(ヘラ)、ソニー、Valeo(ヴァレオ)もHyperion 8用にセンサーを提供している。

Luminarの創業者でCEOのAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏は「NVIDIAのシステムが(量産車向けに)設計されるのに合わせて、我々も最終的に設計されることになります」と述べた。

Hyperionは、自動車メーカーなどの顧客が、車内の基幹コンピュートやミドルウェア、AI機能など、必要なものにアクセスして調整することができるリファレンスプラットフォームだ。

今回のHyperion 8の提供開始は、秋のGTCイベントでフアン氏が発表した一連の自動車関連の発表の1つだった。主な発表内容は多岐にわたる。6月のDeepMap買収によって強化されたマッピングの開発や、シミュレートされたカメラでリアルなシーンを再現し、データを自動的にラベル付けするツール、デジタルアシスタントの役割を果たして自動運転システムと乗客の間の重要なコミュニケーションを提供し、駐車もこなせるパーソナルコンシェルジュ製品などだ。各新製品の発表はいずれもHyperion 8に適合したり、補完したりするものだ。

結論:この分野には、乗用車用の運転支援システムを開発しているサプライヤーや自動車メーカー、自動運転トラックやロボタクシーのような完全自律走行車の展開に取り組んでいる企業が含まれ、NVIDIAはそうした自動運転マーケットの多くを取り込むことを目指している。

NVIDIAは、Cruise(クルーズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、TuSimple(トゥーシンプル)、Volvo(ボルボ)、Zoox(ズークス)など、自社のDrive Orinコンピュータ・システム・オン・チップを使って開発している多くの顧客を獲得している。NVIDIAは秋のGTCイベントで、Lotus(ロータス)、中国の自動運転スタートアップQcraft(キュークラフト)、中国のWM Motor Technology Co(WMモーターテクノロジーカンパニー)が所有するEVブランドのWeltmeister(ヴェルトマイスター)など、さらにいくつかのブランドの獲得を宣伝した。

NVIDIAの自動車担当副社長であるDanny Shapiro(ダニー・シャピロ)氏は、GTCに先立って行われた説明会で「100%のマーケットシェアを期待しているわけではありませんが、NVIDIA DRIVEで開発している市場のシェアは圧倒的です」と述べた。「その理由は、NVIDIAがエンド・ツー・エンドのソリューションを提供しているからに他なりません。車に搭載されるものだけでなく、データセンター、シミュレーション、車両に至るまで、同じアーキテクチャー上にあることは非常に大きな利点です」。

画像クレジット:NVIDIA

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界中どこでも10cm単位の精度で正確な位置情報を提供するPoint One Navigationの技術

現在販売されている新型車で通勤している人なら、いわゆる「ピンポン現象」というものを経験したことがあるかもしれない。これは先進運転支援システムを搭載したクルマが、車線の中央を維持することができず、その位置を見つけるまで何度も往復してしまう現象だ。

この問題は、クルマが本来いるはずの場所にいない場合に発生する。Point One Navigation(ポイント・ワン・ナビゲーション)は、2016年にこのような問題を解決する技術を発表して注目を浴びた。サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップ企業は、都市部のエアタクシーやドローンから、ADAS搭載車や自動運転車、さらにはスクーターや農機具まで、移動するあらゆる車両 / 機体に適用可能な、正確な位置情報を得るためのAPIを開発した。

「位置把握は、ロボット工学において解決しなければならない柱の1つです」と、CEO兼共同設立者のAaron Nathan(アーロン・ネイサン)氏は、最近のインタビューで語っている。「畑で雑草を刈り取るロボットを作ろうとしている企業でも、高速道路を走る自動運転車を作ろうとしている企業でも、エンジニアたちのチームは、それがどこにいるのかを把握するために苦心しています。ならば、我々がこの問題を解決し、すべてのユースケースに全般的に対応できるようにすれば、私たちの顧客はアプリケーションに集中できるようになるのではないか、と私たちは考えました」。

具体的には、Point Oneの技術は拡張された全地球航法衛星システム(GNSS)、コンピュータービジョン、センサーフュージョンをAPIに統合したものだ。これはつまり、ドローン製造会社やロボット工学スタートアップ企業、トラック運送会社などが、APIを通じて自社の車両や機体がどこにいるのかを、10cm単位で知ることができるということだ。Point Oneは10月に開催された自動運転車のイベントで、サンダーヒル・レースウェイ・パークのコースを逆走する自律走行車を使って、その技術を披露した。

2020年に出荷が始まった同社の製品は、交通機関だけでなく、家電製品などの他の産業にも、幅広く応用できると見た多くの投資家から注目を集めている。Point Oneは最近、UP.Partners(UPパートナーズ)が主導したシリーズAラウンドで、1000万ドル(約11億3000万円)の資金を調達した。このラウンドには、BOLT(ボルト)、IA Ventures(IAベンチャーズ)、Ludlow Ventures(ラドロー・ベンチャーズ)などの既存投資家も参加した。

既存のテクノロジーにも、ネイサン氏の表現によれば「部分的な位置情報サービス」を提供するものはある。それは広大な農地でロボットがいる場所を教えてくれるかもしれないが、ある地域では使えても他の地域では使えないかもしれない。Point Oneは、世界のどこでも、10cm単位の精度で顧客に位置情報を提供することができる。

約1年前に出荷が始まったPoint Oneの製品は現在、名前が明かされていない2つの自動車メーカーで量産されている。このような自動車向けアプリケーションでは、最近の新型車にはすでに必要なハードウェアが搭載されているため、Point Oneはこの技術をソフトウェア製品として展開することができる。他の顧客、例えばスクーター会社などでは、車両にチップセットを搭載する必要があるかもしれない。

Point Oneは当初、レベル2の先進運転支援システムに適用するなど、自動車分野に集中していた。20名の従業員を抱えるようになった現在、同社はマイクロモビリティをはじめとする新しい分野への拡大に力を入れている。農業分野の顧客とも生産契約を結んでおり「スマートな」トラクターや、ドローン配送の分野にも取り組んでいる。

同社はまた、ネイサン氏が「エマージングデベロッパー」と呼ぶ、まだ完全には開発されていない製品に携わる人々もターゲットにしている。

「問題は、これらの市場に迅速に拡大していくためには、どうすればよいかということです。Point Oneがこの問題を解決することができる、だから自分たちで無理なことをやらなくても済むのだと、皆に気づいてもらわなければなりません」と、ネイサン氏は語る。

画像クレジット:Point One Navigation

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rivianはアマゾンとの「独占契約」を超えて他社とのEVデリバリーバンのフリート事業に進出

電気自動車のスタートアップRivianは、Amazon(アマゾン)だけでなく一般に対してもフリート事業を始めることになった。同社はAmazonが20%の株式を保有しているが、その電動デリバリーバンの一般からの受注を2022年に開始し、納車は2023年以降になるとRivianのウェブサイトに登場したページで述べている。

デリバリーバンのAmazonへの10万台の納車とそのための生産は2024年までかかるとされ、2021年内には最初の10台を納車できるだけだ。RivianのIPO関連文書によるとその契約は一般販売契約ではなく独占契約とされているが、新たな情報によると、同社は2024年以前でも一般販売を行なうとなっているため、Amazonとの契約にはやや余裕があるということだろう。この件に関して、AmazonもRivianもコメントはない。

数名のRivian社員が、米国時間11月5日にアップされたウェブページをツイートしている。その中で、顧客は2021年初頭から、Rivianのネット上の構成計画書に記入してオーダーできる、納車はさらにその翌年からとある。

この量産・量販の対象になるのは電動ピックアップR1Tと電動SUV R1Sの量販車であり、これによりRivianが狙っていた一般消費者のドライブだけでなく、より広い層が顧客になり、RivianはFordの全電動ピックアップトラックなどとまともに競合するようになる。後者はすでに、商用車として一般的に発売されている。そのウェブサイトでは、今回のフリートビジネスと関連した他のプロダクトとして、FleetOSと呼ばれる管理プラットフォームや充電のインフラについても触れられている。

Rivian、そしてAmazonは販売網をより大きく広げることによる利益増を狙っている。「私たちの事業における成功は、大量の顧客を吸引し保持することにかかっている。それができなければ、収益を達成できない」とRivianのIPO文書では述べられている。しかしR1Tの生産を開始したばかりのRivianにとって、一般顧客の獲得に関して、リスクと未知数の両方がある。

イリノイ州ノーマルのRivianの工場は現在、年間最大15万台の生産能力がある。その内約6万5000台はR1ピックアップとSUV、8万5000台がRCVと呼ばれる商用のデリバリーバンだ。ただしそれは、Rivianがその生産能力をひと晩で達成できるという意味ではない。IPO文書の修正でRivianは、現在予想される生産能力では、2023年の終わりまでに消化できる受注残はおよそ5万5400台のR1だという。

Rivianのフリートビジネスへの参入は、同社の上場数日前に発表された。RivianはそのIPOで650億ドル(約7兆3360億円)の時価総額を予想されていたが、一部の投資家はそれほど楽観的ではない。フリートビジネスの発表数日前の投資調査ソフトウェア企業New Constructsの記事によると、Rivianの株は過大評価されているので、今週同社が上場しても投資家はそれを買うべきではないという。

「 Rivianはまだ有意な台数を生産していないので、資金状態の良い電気自動車のスタートアップや既存メーカーと競合する立場にない。特にGMやBMWのような競合他社には、EVの生産を拡大することができるだけの数十年におよぶ経験と数十〜数百億ドル(数千億〜数兆円)レベルの資本力がある」と記事にある

そうであるにもかかわらず、多くの投資家はこの新興企業とその将来性に強気だ。今回の最新情報は、これまで懐疑的だった投資家に、Rivianが以前考えられていたよりも柔軟性とパワーがあることを示唆する可能性がある。

画像クレジット:Jordan Stead / Amazon

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(文:Rebecca Bellan, Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Neuronがレンタル用電動スクーターに危険な乗り方を検知する機能を試験的に搭載

マイクロモビリティシェア大手Birdの日本展開に向け、国内プラットフォームパートナーのBRJが4億円調達

電動スクーター(電動キックスクーター)のシェアリング事業を展開するNeuron Mobility(ニューロン・モビリティ)は、同社のスクーター「N3」に新しいオペレーティングシステムと追加の車載センサーを搭載し、危険な乗り方や軽率な乗り方をすると検知して警告や修正を行うアップデートを施した。シンガポールに本拠を置く同社は、今後6カ月の間、オーストラリア、カナダ、英国で約1500台の改良を施したスクーターを試験的に運用する予定だ。

Neuronの新型スクーターは、高精度な位置情報技術と迅速なジオフェンス検知により、急激なハンドル操作、横滑り、縁石跳び、タンデム走行、歩道走行などの危険な行為を検知すると、過ちを正したり、警告したりする。新センサーとIoT(モノのインターネット)は、このスクーターがさまざまな言語で乗り手に話しかけ、自らの行動を正すように導くことを可能にした。走行後には乗り手の安全性を評価したり、安全に乗るための教育資料をメールで送信することもできる。極端な状況下では「サービスエリアを出ているので、戻らないと電源が切れます」というような音声メッセージを発したり、シンプルにスクーターを減速させて停止させることも可能になった。

長期的には、すべての運転者に個別の安全性評価が与えられるようになる予定だ。Neuronでは、この評価によって安全な乗り方を奨励し、危険な行為が多い特定の運転者は安全教育の対象とすることで、そのような行為の繰り返しが防げることを期待している。

「しかし、この技術レイヤーが現実の世界で、現実にユーザーの手に渡ることで、実際にどのような影響があるでしょうか?」と、 NeuronのCEOであるZachary Wang(ザカリー・ワン)氏は、TechCrunchに語った。「それが今回の試験の焦点です。何千台ものスクーターを調査し、多くの自治体と協力して、どこで線を引くべきかを、検討したいと考えています。都市のニーズに最も適した方法でこの技術を導入するためには、どのようにすればいいかを研究したいのです」。

このような種類の運転支援システムを導入している電動スクーター事業者は、Neuronだけではない。Bird(バード)は最近、位置情報を利用した歩道走行検知技術を、ミルウォーキーとサンディエゴで数百台のスクーターに搭載した。Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は、夏にNavmatic(ナヴマティック)を買収し、同社の高精度測位ソフトウェアを導入することで、危険な運転行為を検知し、スクーターをリアルタイムで停止させることができるようになった。

Spin(スピン)、Voi(ヴォイ)、Helbiz(ヘルビズ)などの企業も、スクーター用の先進運転支援システム(ADAS)を試験的に導入しているが、これらのシステムでは、車両に取り付けられたカメラとその他のセンサーを使用して、乗り手の行動や駐輪に関して同じ様な判定を行う仕組みだ。

これらの企業と比べると、Neuronは確かに少し遅れているものの、この種の技術を公開している企業の中で、純粋に自社で開発しているのはNeuronだけだろう。Birdの位置情報は、スイスの企業でワイヤレス半導体や高精度の測位モジュールを製造しているu-blox(ユーボックス)との提携により実現したものだ。また、SpinとHelbizはDrover AI(ドローバーAI)と、VoiはLuna(ルナ)と提携し、各々のコンピュータビジョンモジュールを開発している。

Neuronでは、正確な位置情報を得るために、多数の衛星コンステレーションからの電波を利用して高精度な地理空間測位を行うマルチバンドの全球測位衛星システム(GNSS)を実装している。また、新たに搭載された加速度センサーと6軸ジャイロセンサーは、車両の走行速度、加速度の大きさ、旋回角度、傾斜の有無などを検出し、乗り手が危険な運転をしているかどうかを判断する。同時に測位ソフトウェアと連動して、より正確な位置情報を取得する。

迅速なジオフェンス検出では、これらのデータをクラウドではなくエッジコンピューティングを用いてローカルかつ迅速に処理することで、10cmレベルの精度を実現していると、Neuronは述べている。

「私たちはこの12カ月間、これらの技術をすべて束ねる作業に取り組んできました。1つの機能を実現するためには、多くのセンサーを追加する必要があり、情報をローカルに処理するためには、その前に位置を知ることができなければならないからです」と、ワン氏は語る。

Neuronの新技術の機能は、すべてのスクーターに同時に搭載されるが、すべての機能が同時にテストされるわけではない。例えば、オタワのような都市では、電動スクーターは車道か自転車専用車線しか走ることができないため、そこで重視されるのは歩道を検知する技術だ。一方でオーストラリアでは、電動スクーターも歩道を走ることが義務付けられており、Neuronの高精度な位置情報技術は、指定された駐車場に関連して試用されることになるという。

Neuronは現在、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、韓国の23市場で事業を展開しているが、今回の試験的運用はカナダのオタワ、オーストラリアのブリスベンとダーウィン、英国のスラウで行われる予定だ。

画像クレジット:Neuron Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自動運転ユニコーンMomentaがシリーズCに約567億円を追加、中国AD分野では今年最大のラウンドに

MomentaのCEOであるCao Xudong(カオ・シュドン)氏とGM China社長のJulian Blissett(ジュリアン・ブリセット)氏(画像クレジット:Momenta)

9月にGeneral Motors(GM、ゼネラルモーターズ)から3億ドル(約340億円)の投資を受けた中国発の自動運転ソリューションプロバイダーであるMomentaは、中国時間11月7日、シリーズC追加ラウンドで5億ドル(約567億円)を調達したと発表した。

この新たな資金調達により、同スタートアップのシリーズCの総額は10億ドル(約1134億円)を超えた。Momentaは、GMなどの自動車メーカーやBosch(ボッシュ)などのTier1サプライヤーに先進運転支援システム(ADAS)を提供する一方で、真の無人運転、すなわちレベル4走行の研究開発を行うという、同社が言うところの二足のわらじ戦略をとっている。

このスタートアップには、中国の国有企業であるSAIC Motor(上海汽車集団)、GM、トヨタ、メルセデス・ベンツ、Boschなど、ヘビー級の戦略的投資家が集まっている。機関投資家としては、シンガポールの政府系ファンドであるTemasek(テマセク)や、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYunfeng Capital(云锋基金)などが名を連ねている。

Momentaは、自動車メーカーとの提携により、自社でロボタクシーを開発するという資金のかかるルートを選択した他社との差別化を図っている。その代わりに同社は、自社のソリューションを搭載した量産車のネットワークからデータを得ることを重要視している。Pony.ai(小馬智行)とWeRide(ウィーライド、文遠知行)は最も近いライバルだが、彼らも多額の資金を調達している。

GMとの提携の場合、Momentaのソリューションは、コンシューマーグレードのミリ波レーダーと高精細カメラを組み合わせたもので、米国ではなく中国で販売されるGMの車両に搭載される。Momentaは最近、ドイツのパートナー企業との関係強化のために初の海外オフィスをシュトゥットガルトに開設したが、これはMomentaの技術が自国の市場以外にも広がっていく可能性を示唆している。

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

電動キックボードのLimeが593億円を調達、来年のIPOを目指す

シェア電動スクーターの巨人、Lime(ライム)が転換社債とタームローン(中長期貸付)で5億2300万ドルを調達した。CEOのWayne Ting(ウェイン・ティン)氏はこれを来年のIPOに向けた次のステップだと語った。Limeはこの資金を、脱炭素への取り組み、運用車両の第4世代電動スクーターへの大規模な置き換え、新たな都市への進出、都市からRFP(提案依頼)を得るための新技術の開発などに使用する。

「今回は応募者が大幅に募集枠を超えたラウンドとなり、一分野としてのマイクロモビリティへの関心が見直されていることを反映してると強く感じました。さらに重要なのは、Limeがこの分野の誰もが認めるリーダーであるという認識です」とティン氏が本誌に語った。「企業はIPOに向けた最終ラウンドに転換社債を発行することが多く、投資家は会社が上場することに賭けてラウンドに参加します。なぜなら割引価格で手に入るからです。そして皆さん御存知の通り、4億ドルを超える資金が入ってくるという事実は、来年の上場を目指しているLimeにとって実に大きな節目です」

全調達額のうち、4.18億ドルは転換社債によるもので、Abu Dhabi Growth Fund、Fidelity Management & Research Company、Uber(ウーバー)およびHighbridge Capital Mangementが管理するいくつかのファンドが参加した。この社債はLimeが上場すると自動的に株式に転換される。残りの1.05億ドルは、民間証券グループ、UBS O’Connorのシニア担保付タームローンで調達する。Limeはローンの期間を明らかにしていない。

FidelityとUberは、Limeの既存大口出資者だ。2019年にFidelityはLimeの3.1億ドルのシリーズDでリード出資者であり、昨年Limeがパンデミックに苦闘する中、Uberは1.7億ドルのダウンラウンドをリードし、LimeがUber傘下のマイクロモビリティ・スタートアップ、Jump(ジャンプ)を買収することにつながった。

Limeが来年上場する計画も発表された今回の発表は、ライバルのBird(バード)がSwitchback II CorporationとのSPAC(特別買収目的会社)契約によって上場したことを受けたものだ。ティン氏は来年の〈いつ〉LimeがIPO申請するのか、通常の方法をとるのかSPAC合併を試みるのかについて明らかにしていないが、Limeに詳しい筋は、同社がSPACのルートをたどる可能性は低いと言っている。

「ゴールは私たちのミッションを達成するために必要な資金を確実に得ることにあります。そのミッションとは、シェアできる、手頃価格で、環境に優しい移動方法の選択肢をつくることです」とティン氏は言った。

今週Limeは、同社の炭素排出目標が、Science-Based Targets Initiative(SBTイニシアチブ/科学的根拠に基づく目標)の認証を受けた。SBTは気象科学に基づく排出量削減のベストプラクティスを推進する組織で、パリ協定に従い、2030年までの実質ゼロを目標に活動している。Limeは最新ラウンドで得た資金から2000万ドルを脱炭素への取り組みに投入し、よりクリーンなハードウェアへの投資などによってサプライチェーンの80%が排出量目標を改善することを目指している。車両そのものやそこに使われる材料や生産を含めた資本財は、Lime全体の排出量の44.3%を占めている、と同社の炭素目標レポートにかかれている。スクーター部品や倉庫費用などの事前購入物資とサービスが25.8%を占めている。

「資本投資を通じて会社の運用を変えサプライヤーを後押しすることで目に見える結果を示したいのです」とティン氏は言う。さらに、Limeは自らの脱炭素目標をもたないサプライヤーとは仕事を続けるつもりがないと言い、他の会社も製造パートナーに同じような圧力をかけることを期待している。「脱炭素と輸送について語る時、それはビジネスを意味しています。当社が公開企業になった時、それがこの会社の拠り所であることを投資家に知ってほしいと思っています」

Limeは調達した資金を主に、既存の都市による認証を強化し、今いる市場との関係をさらに深めるために使用する。たとえば、新しい車両モードの開発や、「事業を拡張、拡大するにつれ、当社を都市にとって良きパートナーにする」ようなテクノロジーへの投資などだとティン氏は言ったが、Limeがどんな新モードやテクノロジーに取り組んでいるのか具体的には示さなかった。

しかし、先月ティン氏は、Limeが歩道検出テクノロジー・クラブへの参加に関心を持っていることを、WSJのテック・イベントで言及した。当時同氏は、Limeが第3四半期に2度目のEBITDA黒字を達成したことを宣言した。そこに至った大きな理由は最終利益の成長であり、同社が統制の取れた会社であることを意味している。しかし、COVID(新型コロナウイルス感染症)は、新規利用者と売上成長に影響を与え続けており、これは同社が今年80件の契約を得たにも関わらずである。

Limeの主要な使用事例である通勤と旅行は、徐々に立ち直っている。つい最近米国政府は、ワクチン2回接種済みの欧州人旅行者の入国禁止を解除すると発表した。 新たな都市への拡大もLimeのIPO前ロードマップに載っている。ティン氏は、Limeは北米・欧州の拡大を目標にしているが、中東にも関心があると語った。中東は本ラウンドのリード・インベスターが拠点をおいている場所だ。

「実際、都市間の移動は大幅に増加しており、2021年の収益は2019年のパンデミック前レベルに戻る見込みです」とティン氏は言った。「人々は安全で手頃な一人乗り移動の手段を求めています。そして、多くの人々が移動手段をLimeのようなマイクロモビリティー・プラットフォームに変えています。2022年には、そんな利用者との関係を深める機会があることを期待しています」

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画像クレジット:Lime

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

EVトラック開発Nikolaが米証券取引委への制裁金支払いに142億円を準備

EVトラック開発のNikola(ニコラ)は、米証券取引委員会(SEC)と、1億2500万ドル(約142億円)の民事制裁金支払いに関して協議中だと第3四半期決算発表で明らかにした。SECは、同社が投資家をミスリードしたかどうかを調査中で、制裁金はその一環だ。

同社は第3四半期決算発表で、支払いは分割して行う予定であり、解決を見越して資金を確保していたと述べた。

2021年10月にSECとの協議が進んだことを踏まえ、同社は「2021年9月30日において発生済みの偶発債務の最善の見積もりとして、1億2500万ドルの損失を計上した」と決算発表で明らかにした。

一方、苦境に立たされている創業者のTrevor Milton(トレバー・ミルトン)氏は、自身の刑事訴訟の防戦に忙しい。同氏は異なる2件の告発に直面している。1つは証券取引法違反の疑いでSECから、もう1つは証券詐欺2件、通信詐欺1件の刑事訴訟で米連邦検事局からだ。

Nikolaは引き続きミルトン氏の弁護士費用を負担しており、2021年9カ月間で約1260万ドル(約14億円)に上る。同社は同氏に対し「政府および規制当局の調査に関連した費用および損害」の弁済を求めると述べた。9月末時点で、同氏は同社の株式を約16%保有している。

当会計年度は、同社にとって苦難の連続だったと言っても過言ではない。2020年9月にGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)と20億ドル(約2240億円)の戦略的提携を発表したときには、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。提携の内容には、当時スタートアップだったNikolaにGMが11%を出資することと、Nikolaの燃料電池トラックの生産条件が含まれていた(この燃料電池トラックはその後つぶれた)。しかし、そのわずか1カ月後、空売り投資家であるHindenburg Research(ヒンデンブルク・リサーチ)の報告を受け、SECが調査を開始した。その後、GMは契約を解消した

SECに1億2500万ドルを支払う決定は、まず規制当局の承認を得なければならない、とNikolaは投資家に述べた。

画像クレジット:Nikola Motor Company

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Uberの第3四半期は純損失2722億円ながら、わずかながら調整後利益を確保

米国時間11月4日の取引終了後、米国ライドシェアリングの巨人、Uber(ウーバー)が第3四半期の決算を報告した。注目すべきは、長年利益を上げていなかった同社が、純損失は未だに20億ドル(約2268億円)を超えているにも関わらず、調整後EBITDA(大きく修正された利益指標)800万ドル(約9億円)の利益をひねり出したことだ。

調整後利益のニュースは、Uberの国内ライバルであるLyft(リフト)が、最近やはりなんとか利益を上げたことを報告した数日後のことだった。

第3四半期、Uberの総取扱高(同社プラットフォーム上を流れたすべての商品、サービスの総額)は231億ドル(約2兆6199億円)で対前年比57%増だった。そこから生まれた売上48億ドル(約5444億円)は対前年比72%増だった。そしてその売上はUberに純損失24億ドル(約2722億円)をもたらした。この数字は、同社が保有する他社株式の再評価による「20億ドルの純損失」を含んでいる。

同社の1株当たり調整前純損失1.28ドルは、前年同期の0.62ドルの2倍強だった。

アナリストらは、1株あたり損失0.33ドル、売上442億ドル(約5兆129億円)と予測していた。同社の株価は時間外取引で5%前後下落した。

部門ごとの実績に入る前にいっておくと、Uberは次の第4四半期の総取扱高を250億~260億ドル(約2兆8353億〜2兆9488億円)、その結果の調整後EBITDA利益を2500万~7500万ドル(約28億〜85億円)と予測している。Uberほどの規模と歴史をもつ会社が、GAAP純利益のような成熟企業の数値ではなく、いまだに調整後EBITDAのような子どもだましの指標を使っていることは、普通なら嘲笑の対象だ。しかし、Uberは投資家に対し、2021年修正後利益の境界値を越えるべく必死に努力すると長年言ってきただけに、このガイダンスは注目に値する。

部門別実績

全体を見渡すと、ここ数年Uberのフードデリバリー事業の総取引高は、同社のライドシェアリング事業よりもはるかに大きい。実際、そろそろUberをタクシーアプリよりもフードデリバリー会社と考えるべき時かもしれない。

それはともかく、同社の部門別成績を総取扱高から見てみよう。

画像クレジット:Uber

最近同社のライドシェアリング事業がフードデリバリー事業よりも早く成長していることは注目すべきだが、これにはわけがある。Uber Eats(ウーバーイーツ)がパンデミックの最中に雑草のように伸びたのに対し、人間の移動は人々がステイホーム期間中激減した。COVID(新型コロナウイルス感染症)の勢いが一部の地域で弱まり始めている今、状態は戻りつつある。

Uberが乗車よりも食べ物で多く収益を上げていることを踏まえ、上記の総取扱高から下記の売上が生まれていることに注目して欲しい。

画像クレジット:Uber

タクシーサービスとオンデマンド食品配達の収益がほぼ同じであること、貨物輸送事業が同社の事業全体の中で意味のある位置を占めるだけの収益を上げていることはいずれも注目に値する。

次に、各グループの利益を、実際には調整後EBITDAだが、見てみよう。

画像クレジット:Uber

表からわかるように、Uberはフード事業をほぼ採算水準に持ち込むことに成功した。これは、1年前の同サービスの位置づけと比べて大きな前進だ。そしてUberのライドシェアリング事業の利益は、同社の調整後事業経費をほぼ相殺している。全体では、Uberは調整後の黒字につま先を届かせ、上述のように調整後EIBTDA、800万ドルを達成した。

しかし、正直なところ「本当に」印象的なのは、Uberが調整後EBITDAの数値をわずか1年でここまで改善したことだ。

しかし、すべての費用、諸経費を含めると、UberのGAAP経常損益はマイナス5億7200万ドル(約649億円)になる。そこに利息費用その他の経費を算入すると、四半期の損失は24億4000万ドル(約2767億円)、毎月8億ドル(約907億円)に上る。Uberの経常損失とGAAP損失の相違を生んでいるのはなにか? 投資の価値下落だ。会社は次のように述べている。

2021年9月30日までの3カ月および9カ月の債券および株式の未実現損失については、Didi(ディディ)への投資によるそれぞれ32億ドル(約3629億円)および17億ドル(約1928億円)の主な未実現純損失を、2021年第3四半期中に実現したZomato(ゾマト)への投資の未実現利益9億4000万ドル(約1066億円)、Aurora(オーロラ)への投資によるそれぞれ1億200万ドル(約116億円)および5億7300万ドル(約650億円)の未実現利益、および公正価値オプションの下で計上されたその他の証券投資によるそれぞれ7300万ドル(約83億円)および5600万ドル(約64億円)の未実現純利益が一部相殺しています。

まあ簡単に言えば、中国政府のDidiへの介入によって、Uberの純利益は悪い方へ行き着いたということだ。

要約すると、Uberは今も不採算だが、パンデミックから立ち直りつつあり、少なくとも調整後利益はなんとか達成した。次は真の損益分岐点に達するかどうかに注目だ。

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

産業が求めるレベルまで自動運転技術を前進させる「レーダー」技術を開発するSpartan Radarが総額約28億円調達

大量の機械学習とわずかなレーダーセンサー、そして歩行者の大群をひき殺すことのない自律走行車を求めている市場を見てみよう。8月に1000万ドル(約11億4000万円)を調達したばかりのSpartan Radarが米国時間11月3日、Prime Movers Labが率いる投資家たちからさらに1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。このラウンドには8VCとMac VCが参加している

2020年に創業された同社は、2年前には存在しなかった企業だがそれにしては立派だ。同社の同社自身による位置づけは、クルマのレーダーと、同じくクルマの自動運転技術が交差するところにいる企業群の仲間だ。同社によると、現在および次世代の自動運転車(autonomous vehicles、AV)のレーダー技術はかなり進歩しているが、まだ車両自身が、レーダーに「見えて」いるものに対して何をすべきかわからない場合が多く、そのために間違いを起こしてしまうという。

Spartan Radarの創業者でCEOのNathan Mintz(ネイサン・ミンツ)氏は次のように主張する。「自動車産業は低レベルのオートメーションへ移行しているが、それにより、レーダーがLiDARよりも魅力的なものになっています。LiDARは初期にはたくさんの約束を披露してくれましたが、その誇大宣伝の実現には失敗しています。しかし、高解像度システムに対するニーズは消えていません。処理能力も、リアルタイムの超解像度などの高度なアルゴリズムが使えるほど大きくなっているため、今やレーダーは自動車メーカーにとってはるかに優れた選択肢なのです」。

同社はその製品をBiomimetic Radar(生体模倣型レーダー)と呼び、人間の感覚処理を模倣してフォーカス(焦点)とコンテキスト(状況理解)を強化している。同社によると、そのアルゴリズムは処理速度をめざましく高速化し、低い解像度や検出過誤など従来のレーダーの欠陥を減らしている。それにより、自動運転車の安全性と商用展開の規格であるADAS level 2(レベル2)以上をクリアしている。

Spartan Radarのソフトウェアは、現存するほとんどすべてのレーダーシステム上で展開できる。同社は顧客について明言しなかったが、矢継ぎ早の2度の資金調達ラウンドが示すのは、顧客たちが行列を作っているということだ。

「残念ながら私たちが実際に目にしているエビデンスによると、LiDARを使用するシステムは、それが追放するはずだった注意力散漫な人間ドライバーのように振る舞うことがあります。Spartanのレーダーシステムは自動運転技術の前進であり、AVとADASのシステムを今日の産業が必要とするレベルに持ち上げます」と同社の取締役会に加わったPrime Movers LabのゼネラルパートナーDavid Siminoff(デビッド・シミノフ)氏はいう。

「AV企業にはこれまで数十億ドル(約数千億円)が投資され、一部は上場もしました。この業界は今やっと、R&Dの段階を脱して、ラストマイルのデリバリーやトラック、ロボタクシーなど実用ユースケースで大規模に商用化されようとしています。OEMやAV開発企業各社は、2022年の市場化に備えて安全で堅牢なセンサーソリューションを必要とし、そして私たちには、そのニーズに呼応する準備ができています」とミンツ氏は語る。

画像クレジット:Spartan Radar

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Fiskerがデビューモデルとなる電動SUV「Ocean」の2022年11月発売を目指す

Fisker(フィスカー)は、米国時間11月3日に行われた第3四半期決算説明会で、電気自動車製造事業の立ち上げについて明るい見通しを示し、Foxconn(フォックスコン)との製造パートナーシップ、中国のバッテリー大手CATLとのバッテリー供給契約の確保、そしてデビューモデルであるSUV「Ocean」の生産準備が順調に進んでいることを強調した。

CEOのHenrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)氏は、2022年11月に自動車製造受託メーカーのMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)と提携してOceanの生産を開始し、同年第1四半期までに1日2台の生産を行うと投資家向け説明会で述べた。また、2022年後半には米国および欧州で納車が始まる見込みだ。

これらの期限を守るために、Fiskerは支出のペースを上げている。直近の四半期では、一般管理費が数百万ドル増の1030万ドル(約11億7000万円)と控えめに増加した一方で(2021年6月30日までの3カ月間では790万ドル=約9億円=だった)、その他の費用は急激に増加した。Fiskerの重要な研究開発項目(同社はまだ自動車を製造・販売する準備をしているため、現在は研究開発モードであることを思い出して欲しい)は、2021年第2四半期の4530万ドル(約51億円)から第3四半期では9930万ドル(約112億円)へと100%以上増加した。この増加は、従業員を増やし、プロトタイプの開発に費用をかけた結果であると幹部は話した。

R&D費の驚くべき増加は、Fiskerがここ数週間で大量の現金を銀行口座に追加した理由を物語っている。車両をマーケットに投入し、最終的にドライバーに届けるには多額の資金が必要だ。

FiskerとCATL

FiskerとCATLのバッテリー契約は大きなニュースだ。中国企業CATLは、2025年まで年間5ギガワット時以上の初期容量を供給し、量を増やすオプションが付いている。Fisker Oceanには2種類のバッテリーパックが用意され、2022年にプロトタイプができる。基本のバッテリーパックには、低コストだがエネルギー密度の低いリン酸鉄リチウム(LFP)を使用する。もう1つのバッテリーには、エネルギー密度が高く航続距離も長いニッケルマンガンコバルト(NMC)を使用するが、それに伴いコストも上昇する。

「これにより、同じような価格帯のSUVでは世界最長の航続距離を実現することができます」とフィスカー氏は話す。2つのバッテリーパックの航続距離に関する詳細は、来週開催されるLAオートショーで明らかにされるという。LFP電池は、Tesla(テスラ)をはじめ、企業の間で低コストの選択肢として普及している。Teslaは、全世界の標準Model 3にLFP電池を採用すると発表した。

「なぜ我々が競合他社に先んじるのでしょうか? 我々は2021年、この技術を採用しました。ですから、12カ月後にFisker Oceanを手に入れたとき、あなたの技術は最新中の最新です。来年、他の車を買うとしたら、その技術はおそらく3年前に選択されたものでしょう」とフィスカー氏は述べた。

また、Fiskerは中国の顧客からの予約を受け付けるために、中国法人を設立している最中だが、来年の初めまでに手続きは完了しない可能性が高いとフィスカー氏は話した。現在、Fiskerに入っている予約の約80〜85%は米国からのものだ。

業績

さて、次は決算を取り上げる。明らかに、収益を上げる前の会社であるFiskerの決算で重要なことは通常の財務情報とは少し異なる。Fiskerが第3四半期の業績を発表した後、同社の株価は時間外取引で1%強上昇している。予想通り、同社の収益はつつましく、赤字だった。

市場では、同社が1株当たり0.35ドル(約39円)の損失を計上すると予想されていた。1株当たり0.37ドル(約42円)の損失は、換算すると約1億980万ドル(約125億円)の純損失に相当する。売上高は1万5000ドル(約170万円)にとどまり、これにより1000ドル(約11万3000円)の赤字となった。

Fiskerは最近、社債を発行して現金を14億ドル(約1591億円)に増やしたが、これは2021年6月30日の四半期末に発表した9億6200万ドル(約1093億円)から大幅に増加している。同社は、利回り2.5%の6億7750万ドル(約770億円)相当の転換社債を発行し、最終的な自動車生産に先立って資金を確保した。

現在、Fiskerはまだ収益を上げていないが、投資家はこうした状態が急速に変わることを期待している。Yahoo Financeのデータによると、2021年にはわずかだった売上高が、2022年には2億6420万ドル(約300億円)になると、アナリストは予想している。Fiskerが調達した現金は、一般市場の投資家からの無限に厳しい収益要求に応える際に役立つものとなりそうだ。

画像クレジット:Fisker Inc.

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(文:Aria Alamalhodaei、Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードがクラシックカーを電気自動車化するためのモーターキットを約44万円で発売

ヴィンテージカーを電動化するためにアフターマーケットのEVモーターを販売しているのはChevy(シボレー)だけではない。Ford(フォード)が米国時間11月2日に発表した「F-100 Eluminator(F-100イルミネーター)」と呼ばれるコンセプトトラックは、1978年型の古いピックアップトラックに、同社が新たに「Eluminator」の名前で発売するクレート(単体売り)モーターを車体の前後に搭載してアップグレードした車両だ。

このパワープラントは、2021年型の電気自動車「Mustang Mach-E GT Performance Edition(マスタング・マックE GTパフォーマンス・エディション)」に搭載されているものと共通で、最高出力480馬力と最大トルク860Nmを、旧いF-100ピックアップ・トラックに与えることになる。フォードはその加速性能や航続距離などの詳細な数値を明らかにしていないものの、これだけのパワーがあれば、いくつものスポーツカーを置き去りにできると考えていいだろう。

Ford Performance(フォード・パフォーマンス)がショーケースとして製作したこのトラックには、モーター以外にも、Mach-Eの縦型センタースタックタッチスクリーンを取り付けるなどの改造が施されている。足元にはForgeline(フォージライン)社製のカスタムアルミホイール、インテリアにはJJR Fabrication(JJRファブリケーション)社製のビレットアルミダッシュ、MDM Upholstery(MDMアップホールスタリー)社製のアボカドタンニングレザーなどのカスタマイズも見られる。外観はクラシックなトラックでも、中身もそうであるとは限らない。

ご想像どおり、このコンセプトトラックを購入することはできない。代わりにフォードは、このEluminatorモーターを3900ドル(約44万円)で販売し、自分のクルマを改造する人に利用してもらいたいと考えている。最終的にはバッテリーやコントローラー、トラクションインバーターなど、EV化の改造に必要なものをすべて提供することを計画しているというが、現時点でモーターを購入したいと思う人は、残りのパズルを自分で完成させるだけのリソースが用意できる場合のみだろう。しかしこれは、我々の愛する多くの内燃機関の自動車が、EV化によって第二の人生を得るという未来を垣間見せてくれる。

画像クレジット:Ford

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Cruiseがサンフランシスコで無人運転ロボットタクシーサービスを開始

ゼネラルモーターズの自動運転子会社であるCruise(クルーズ)の従業員は、これからサンフランシスコで運行される人間の運転手が同乗しない自動運転車の初めての乗客になる。一部の一般客も乗ることができるが、運賃はかからない。

Cruiseの共同創業者であり、CTOかつ社長のKyle Vogt(カイル・ボークト)氏は、ドライバーレス自動運転車(AV)に初めて乗車した様子をTwitterで紹介している。

ボークト氏は「月曜日の夜11時頃、私たちは初めて中に誰も同乗していない状態でAVを発車させました」とツイートしている。「これまでは、人間が運転席や助手席に座って実験していたので、これは初めての試みでした。街中を巡航しながら、乗車リクエストを待つようになります。午後11時20分、私はCruiseのアプリを使って、最初の乗車を行うタクシーを呼び出しました。数分後、(「サワードウ」という名前がついている)Cruise AVの1台が私の目の前にきて停車した。車内には誰もいなかった。”start ride”(走り出す)ボタンを押すと、AVはスムーズに車線に入っていきました」。

ボークト氏はその夜、さらに5回乗車リクエストを行ったという。Cruiseがカリフォルニア州自動車局から取得した「ドライバーレス運行許可証」の規定によれば、午後10時から午前6時までの間、最高時速30マイルでしかドライバーレス運行ができないため、乗車は夜間にならざるを得なかったのだ。クルーズは10月初旬にこの許可を取得したが、これにより、人間が乗っていない車両の運行が可能となり、配達サービスに対して料金を請求することができるようになったが、乗客を乗せるタクシーサービスには課金することができない。

Cruiseが人間を同乗させない今回の最初の運行を始めたのは、GMのCEOであるMary Barra(メアリー・バーラ)氏が、Cruiseが2022年までにドライバーレスのタクシーサービスや商用配送運転を開始することをGMは確信していると述べてから約1週間後のことだった。Cruiseは、ロボットタクシーサービスに課金するために必要な、カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)からの最終的な許可への申請をまだ行っていない。それまでは、サワードウをはじめとする人間の同乗しないAVに乗ることができるのは、Cruiseの社員と無料乗車の一般市民だけだ。

Cruiseは、特定の一般人も乗れることを認めているが、誰が乗れる資格があるのかは明らかにしていない。またCruiseは、このドライバーレスサービスをまだ一般人には公開していない。

画像クレジット:Cruise

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)