ANAとJoby Aviationが提携、日本でもエアタクシーサービスを開始へ

Joby Aviationは、日本の航空会社ANAと提携し、航空ライドシェアサービスを日本に提供する。トヨタ自動車も両社と提携し、エアタクシーと地上の交通機関を接続する方法を模索する予定だ。

Joby Aviationが日本で事業を開始する意向を明らかにしたのは、同社が韓国のSK Telecomと提携し同国で航空タクシーサービスを開始する計画を発表した1週間後のこととなる。JobyはSK Telecomのスピンオフ企業であるT Map Mobilityプラットフォームと協力して、エアタクシーをT Mapのサブスクリプションベースのmobility-as-a-serviceプラットフォームに統合する予定だ。

関連記事:韓国でJoby Aviationがエアタクシーサービス開始へ

両社は、Jobyの航空機の操縦開始時期、日本での商用サービス開始予定時期、ANAとJobyのどちらが運営するのか、顧客がどのように利用するのかなど、サービスの具体的な内容は明らかにしなかった。Joby Aviationの広報担当者は、Joby、ANA、トヨタの3社は現在、インフラ整備、パイロット養成、飛行運用、規制要件、一般の受け入れ、航空輸送をより大きな交通エコシステムに接続する方法などを検討しており、計画段階にあるという。

トヨタは、この未来のサービスにおけるパートナーであるだけでなく、JOBYの戦略的投資家でもある。トヨタは2020年にJobyの5億9000万ドル(約681億円)のシリーズCラウンドを主導し、同社と電動化技術や製造、品質、コスト管理に関する専門知識を共有しているとJoby Aviationの広報担当者は述べている。

「本日の発表は、日本における未来のエアタクシーサービスのあり方を定義するための第一歩です」と、広報担当者は語る。「両社は今後、ルートの候補も含めて、この画期的な新しい交通手段を確立するためのあらゆる側面で協力することになります」。

Jobyの航空機は、最大航続距離150マイル(約270km)、最高速度時速200マイル(約320km/h)だ。クルマで1時間かかる関西国際空港から大阪駅までの移動は、同社のサービスを使えば15分以内で行けると試算している。

電動垂直離着陸機(eVTOL)は4人乗りであり、少なくとも最初の用途では、商業サービスは限定的なものになるだろう。Jobyが現在のモデルを大量生産するか、より大きなeVTOLを作るまでは、エアタクシーが一般的になるのは数年先だろう。さらにeVTOLの製造に時間と費用が必要であるだけでなく、規制上の障害がある可能性のためだ。しかし、先に米運輸省の連邦航空局とG-1(第4段階)の認証基準を締結し、一歩前進した。これにより、同社は米国での適合性試験を開始し「実施段階」に入ることができるようになった。これは基本的にJobyは、航空機の複合材部品の設計と製造に承認を得たことを意味する。

日本における空のライドシェアの採用を加速させたい学者、研究者、航空会社、スタートアップ、公的機関が集まった「空の移動革命に向けた官民協議会」では、日本でのeVTOLの認証が検討されている(Joby Aviation、トヨタ、ANAはすべてこのグループのメンバーだ)。最終的な認定は、国土交通省航空局が行う予定だ。

画像クレジット:Joby Aviation

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アマゾン傘下Zooxのロボタクシーは一般の人や車両が通行するセミプライベートなコースでテスト中

Amazon(アマゾン)傘下であるZoox(ズークス)の共同創業者でCTOのJesse Levinson(ジェシー・レビンソン)氏によれば、同社は数十台のオリジナル電動ロボタクシーを製作し、カリフォルニアにある1カ所、または複数の「セミプライベートコース」でテストをしているという。

製作してテスト中のロボタクシーの台数について同氏は「数十台で、まだ数百台とはいきませんが、2桁はとうに超えています」と述べた。

これはメディアとのインタビューで明らかにされたもので、同社が電動ロボタクシーを公道でテストする準備を着々と整えていることを示唆している。同社は現在、サンフランシスコ、ラスベガス、そして本社に近いカリフォルニア州フォスターシティで、同社の自動運転システムを組み込んだトヨタのハイランダーをテストしている。最近ではシアトルにもテストを拡大した。このテスト車両には、安全のため人間のドライバーが乗車している。

Zooxは自律走行車両を商用化する計画だ。車両はセンサーが搭載され、両方向に走行でき、四輪ステアリングを備える。4人乗りで、最高時速は75マイル(約120km)だ。

同社は2020年12月にキューブ型の車両をお披露目したが、その後は広く姿を見せることはなかった。この車両が、キャンパスのような場所のオープンな道でテストされていることがわかった。レビンソン氏は正確な場所を明らかにしなかったが、Zooxの従業員しかいないクローズドなキャンパスではないと述べた。

「キャンパスや研究施設のようなところを想像してください。オープンな道とは、我々が関わるのは自転車や歩行者、(他の)車であり、Zooxの他の要因ではないという意味です。Zooxのクローズドなキャンパスとは異なる環境です」とレビンソン氏はいう。

同氏は、テストをしているキャンパスは完全な一般道ではないことを後から補足した。

レビンソン氏もZooxの広報も、ロボタクシーの公道テスト開始予定時期は明らかにしなかった。レビンソン氏は、公道テストは次のステップであり「それほど遠くないことは確かだ」と述べ「数年単位の話ではない」とした。

当面、同社はカリフォルニア州フリーモントにある15万平方フィート(約1万4000平方メートル、4200坪)の工場でロボタクシーを製作する。

画像クレジット:Zoox

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Kaori Koyama)

Odys Aviation(旧Craft Aerospace)が「吹き出し翼」を採用するユニークなVTOL旅客機で14.3億円調達

地方の空の旅を一風変わった垂直離着陸航空機で改革しようとしているスタートアップが、社名を変えて1240万ドル(約14億3000万円)の資金を調達した。Craft Aerospaceは今後「Odys Aviation」という名称となり、資金は主に2022年に予定している1人乗りプロトタイプ機のデモ飛行に投じられる。

VTOL機に「吹き出し翼」を採用したその興味深い方式は、この記事に詳しい説明がある。簡単にいうと翼を曲げることで、ローターの推力を下方や後方に細かく調節することができる。過去に試されたことのある方法だが、これほど大規模ではなかった。Odysは、ボックスウィングとハイフラップの組み合わせは、可能であるだけでなく、地方で回数の多い離着陸を繰り返す短距離の航程に他に類似技術のない姿で適していると考えている。

関連記事:Craft Aerospaceの新型旅客輸送用VTOL航空機が持つ可能性

その機体は理論的に乗客9人と操縦士2人を高度9000m、時速555km、最大航続距離1600kmで運ぶ。そのフライトはLA-SF間や東京-大阪間、NY-DC間といった頻繁な行き来に適しているが、もちろん離着陸の場所が必要だ。現在、同社はMojave AirとSpace Portと協働しているが、他からの引き合いもある。

共同創業者でCEOのJames Dorris(ジェームズ・ドリス)氏は「小さな空港との統合は実用性が高い。これまですでに2つのVTOL空港の開発企業と協力して、私たちの機体が離着陸できるように努めており、また米国最大の空港の1つとも話をしています」という。

規制とインフラ次第では、同社の機体は、大規模な空港よりも近くて混雑のない地方空港を利用したり、あるいは都心に近い専用施設を利用するだろう。これもまだ仮説にすぎないが、新しい形の航空事業を志向しているスタートアップはすべて、その構想にVTOLの実用化を織り込み済みのようだ。

現状、Odysはまだサブスケールのプロトタイプをテストしている段階だ。しかし、私が見た動画を同社はまだ公開していない。しかし、テスト飛行は今後の予定に入っている。ドリス氏は「次のサブスケールのプロトタイプも1人用だが、年内にフライトさせる予定だ。本格的なプロトタイプのテスト飛行は2023年の後半になるだろう」という。

もちろん今回の1240万ドルは、これらの実現を後押しするだろう。ただしシードラウンドの性格として、2021年の350万ドル(約4億円)は130万ドル(約1億5000万円)のプレシードと、現在のラウンドの一部へと分割された。という細かなな話はともかくとして、今回の投資家はGiant Ventures、Soma Capital、Countdown Capital、Nikhil Goel(ニヒル・ゴール)氏、そしてKyle Vogt(
カイル・フォークト)氏だ。

画像クレジット:Odys Aviation

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

CruiseとWaymoを追う中国の自律走行車企業AutoXがサンフランシスコでテスト開始へ

米国とお膝元の中国の両方で事業展開する自律走行車企業AutoX(オートエックス)は、最大のライバル企業が商用化に向け忍び寄っているサンフランシスコに進出する。

2016年からサンノゼ広域圏で車両のテストを行ってきたAutoXは、ロボタクシー事業を開始し、サンフランシスコにオペレーションセンターを建設する計画を明らかにした。このセンターでは、車両のハウジング、メンテナンス、充電のほか、車両が現地で収集したデータの処理、センサーのキャリブレーションなどを行う予定だ。Professor Xとも呼ばれる、AutoXのCEOであるJianxiong Xiao(ジアンション・シャオ)博士によると、同社はサンフランシスコのローカルチームを構築するために採用を行っているとのことだ。

AutoXはまず、同社の最新の第5世代AVプラットフォームと冗長ドライブバイワイヤシステムを搭載したハイブリッド車のFiat Chrysler Pacifica(フィアット・クライスラー・パシフィカ)を用いて、人間の安全オペレーターが運転席に乗り込んでのテストを始める予定だ。同社はすでに、カリフォルニア州自動車局(DMV)から、人間の安全オペレーターが乗り込んでの試験が可能な「ドライバー付き試験許可証」と、人間の安全オペレーターなしで試験が可能な「ドライバーレス試験許可証」の両方を取得している。しかし、AutoXのドライバーレス試験許可は第3世代の車両に対するものであり、またエリアがサンノゼに厳しく限定されているため、同社はサンフランシスコの最新システムを使ったドライバーレス試験も行うために、DMVにその許可の拡大をリクエストする必要がある。

Dongfeng Motor(東風汽車)の支援を受けているAutoXは、サンフランシスコでのテストのためにいつドライバーなしにする予定かは明言しなかったが、サンノゼでのドライバーレステストは継続すると述べた。

AutoXは、Cruise(クルーズ)やWaymo(ウェイモ)といった企業が実際に商業運転を開始している中で、サンフランシスコに進出する。Cruise、WaymoどちらもDMVから車両配備の許可を得ており、自律走行車を使った運行で課金することができる。Cruiseはまだ、ロボットタクシーサービスの料金を請求する前に、カリフォルニア州公益事業委員会から最終的な許可を得る必要があるが、General Motors(ゼネラルモーターズ)傘下の同社は、ドライバーレスの配車サービスを一般向けに開始する際に、投資家のソフトバンクから13億5000万ドル(約1564億円)を追加で調達したばかりだ。

DMVが2日に発表した年次離脱報告書によると、Waymoは2021年にカリフォルニア州の公道で230万マイル(約370万キロメートル)の自律走行を行っており、これは競合他社を大きく上回っている。そして、Cruiseが人間のセーフティドライバーの有無にかかわらず、約90万マイル(約144万キロメートル)を走行して2位だった。

同データによると、安全オペレーター付きで約5万マイル(約8万キロメートル)しか走行していないAutoXは、自社車両のドライバーレステストを一切報告していない。とはいえ、AV開発企業は、プライベートコースやクローズドコースで行ったテストを報告する必要はない。

AutoXはカリフォルニア州に車両44台を保有しているとのことだ。DMVのデータによると、2021年にAutoXの自律走行テストに使用されたのは全車両のうちわずか6台だった。同社は、新型コロナウイルス感染症の影響でテストの規模を縮小したことが原因だとしているが、2022年は再び強化する。

また、AutoXは中国でも大規模な事業拡大を図っており、1000台のロボタクシーを広州、上海、北京、深センの各都市に配備しているという。同社はロボタクシーの乗車回数は公表していない。

AutoXは、計算プラットフォームや各種センサーを含むフルスタックハードウェアの自社開発能力を頻繁にアピールしている。このような技術の開発に加え、サンフランシスコでの事業拡大や中国でのロボタクシーの増車などを考えると、相当な額の資金が必要になる。

同社が最後に公に発表した資金調達は2019年のシリーズAで、この投資によりAutoXの総調達額は1億6000万ドル(約185億円)となった。参考までに、AutoXの中国における競合他社のほぼすべてが2021年に資金調達を行っている。Momenta(モメンタ)は12億ドル(約1390億円)、Pony.ai(ポニーエーアイ)は11億ドル(約1274億円)を調達し、WeRide(ウィーライド)は5カ月の間に6億ドル(695億円)超を、比較的若い企業のDeeproute.ai(ディープルートエーアイ)は2021年9月時点で3億5千万ドル(約405億円)を調達している。

AutoXがなぜ少ない資金でこれだけの事業を行えるのかという疑問に対して、シャオ氏はTechCrunchに、確かに今後数カ月のうちに資金を調達しようとしているが、これまでの投資家からの支援に加え、ロボタクシーサービスに対する中国の巨大市場に頼っていると語った。

画像クレジット:AutoX

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

シェアードモビリティのGoTo Globalがシェルカンパニーとの合併により株式公開へ

スペイン、イスラエル、マルタ、ドイツでシェアドマイクロモビリティやカーシェアリングの共有サービスを提供しているイスラエルのモビリティ企業GoTo Global(ゴートゥー・グローバル)が、シェルカンパニーNera Tech Media(ネラ・テック・メディア)との合併により、テルアビブ証券取引所(TASE)に上場する。GoToのCEOであるGil Laser(ジル・レイザー)氏によれば、この合併は4月上旬に完了する予定で、まずGoToは、Nera Techが保有する1200万ドル(約13億8000万円)の現金資産にアクセスできるようになり、GoToはこの資金を使って、ドイツでの事業拡大を目指すという。

13年前に設立されたGoToは、2021年秋にドイツのシェアード電動モペット事業者のEmmy(エミー)を買収し、ドイツ市場、特にハンブルグ、ベルリン、ミュンヘンへの参入を果たした。今回のIPOで得た資金は、GoToがドイツで提供している自動車や電動キックスクーター、電動バイクなどの乗り物の充実はもちろん、製品開発にも使われる予定だ。

スタートアップの世界には、未公開企業を合併し公開への道を加速させるための、特別買収目的会社(SPAC)という大きな流れがあるが、今回のNera Techとの取引はそれとは少し違うものだ。シェルカンパニーとの合併は、しばしば「リバースマージャー」と呼ばれ、アクティブな非公開企業が、休眠状態の公開企業(別名シェルカンパニー)の経営権を手に入れて、合併することを意味する。シェルカンパニーとは、通常、IPOプロセスを経たものの、その後事業を売却し、会社の構造(シェル=殻)だけを残した会社だ。

Nera Tech自体は、もともと上場企業であるSomoto(ソモト)が2つに分割された際に設立された。その際Somotoの株式の75%はエネルギーの貯蔵と管理を扱うNostromo(ノストロモ)にという会社に譲渡されている。その一方で、Somotoは映像と音声の広告事業を、Nera Tech Mediaに譲渡し、Nera Tech MediaはTASEに上場した。

いまでもNera Techは、Trinity Audio(トリニティ・オーディオ)というAIを利用したオーディオプラットフォームのスタートアップを所有しているが、レイザー氏は、このTrinity Audioを売却することで、GoToのIPOに向けてより多くの現金を得ることができるという。またTrinityが今後18カ月の間に約3000万ドル(約34億6000万円)で売却できると予想している。GoToが現在保有している1800万ドル(約20億8000万円)の現金資産、Nera Techからの1200万ドル(約13億8000万円)、そしてTrinity社の売却による3000万ドル(約34億6000万円)の見込みを考慮しても、GoToはプレIPOのためにさらに1800万ドル(約20億8000万円)から2000万ドル(約23億1000万円)をVC、エンジェル、ファミリーオフィスから調達する必要があるとレイザー氏は考えている。

新たに生まれる会社の時価総額は1億6300万ドル(約188億円)で、現在のGoToの株主は合併後の会社の株式の74%を取得し、残りの26%はNera Techの株主が手にすることになる。

レイザー氏はTechCrunchに「VCは主にSaaSやテクノロジーに特化したアーリーステージの企業や巨大企業を探しているので、結局現在はVCで資金を調達するよりも、株式公開することが最適だと考えたのです」と語った。「私たちは技術を持っていますが、オペレーションも持っているので、板挟みの状況でした。それでも公開企業になるという決断をしたのは、私たちには強力な製品があり、2年後には市場をリードしているという確信があり、優位性を保つためには速く走る必要があったからです」。

伝統的なIPOではなく、シェルカンパニーとの合併によって株式を公開することにしたのは、いわば良い取引だったからだ、とレイザー氏はいう。彼はGoToが今後2年間の目標をすべて達成し、ビジネスを利益の出るものにするための十分な資金を持っていることを指摘した。合併は、ただIPOへの近道でしかないと彼はいう。

GoToはグローバルではまだ利益を出していないが、イスラエルでは利益を出し、プラスのキャッシュフローを生み出しているとレイザー氏はいう。通常、シェアードビークルの企業が、利益につながる良好なユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算性)を実現するためには、より多くの資金を調達する必要があるが、GoToはそれとは少し異なるやり方をとっている。

5800台の車両を保有し、45万人以上の契約者がアクセスしている同社は、自社用の車両を購入するのではなく、Renault(ルノー)、Toyota(トヨタ)、Nio(ニオ)、Segway(セグウェイ)などの企業と、自動車やモペッドをリースするための覚書を交わしている。現在GoToはマイクロモビリティの車両の大半を所有しているものの、将来的にはそれらのリースも視野に入れている。期間と利用に伴って減価する資産を購入するのではなく、リースを行うことで会社は「さや取り」を行うことができる。つまり、2年間という期間で借り出した資産を、たとえば10分間だけユーザーにまた貸しした際の価格差を利用して利益を得るのだ。

GoToは、このビジネスモデルが収益化への道を加速させると考えており、年末までに3500万ドル(約40億4000万円)の収益を見込んでいる。これは、2021年の収益報告である2200万ドル(約25億4000万円)と比べて58%の増加となる。GoToは、来年末までに1億1600万ドル(約133億8000万円)を上回る年間収益を達成したいとTechCrunchに語ったが 、これは迅速なスケールアップを必要とする高い目標だ。

GoToが今後も拡大していきたいと考えている方向の1つがB2Bだ。現在の顧客のほとんどは、GoToのエコシステムに登録している日々の個人客だが、プラットフォームのユーザー数を倍増させるという目標を達成するために、同社はビジネスを呼び込みたいと考えている。多くの企業が従業員に、毎月旅費や通勤手当を支給しているが、GoToはそれを利用して、それらの企業や従業員のために専用車両を提供し、最終的にはあらゆる車両の長期レンタルを提供したいと考えている。

レイザー氏は「目標は、ターゲット層を増やし、商品の種類を増やすことです」と語る。

長期的には、GoToはエコシステム内のあらゆる種類の輸送を促進したいと考えている。同社は現在、ライドシェア企業とパイロットプロジェクトを行っており、統合のためのアプリを準備している。また、公共交通機関と協力して総合的なエコシステムを構築する方法を模索している。

画像クレジット:GoTo Global

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

無人運航船プロジェクトMEGURI2040が世界最長距離の無人運航成功、北海道苫小牧-茨城県大洗の約750キロ・約18時間航行

日本財団は2月7日、大型カーフェリー「さんふらわぁ しれとこ」による無人運航の実証実験が成功したと発表した。2月6~7日にかけて、北海道苫小牧から茨城県大洗まで航行した。

同財団推進の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」は、2020年2月より5つのコンソーシアムと共同で、無人運航船の開発に取り組んでいる。これまで開発を進めてきた様々な船種の無人運航船は、2022年1月から3月にかけて、5つすべてのコンソーシアムで実証実験を行ってきたという。

今回の実証実験はその一環となるもので、約750kmと約18時間という長距離・長時間での無人航行の運航実証は世界初となる。

実証実験に利用された「さんふらわあ しれとこ」(全長190m、総トン数1万1410トン)には、実験のため自律操船システムを搭載。従来のAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加え、可視光カメラと夜間対応の赤外線カメラで海上を航行する他船を検出している。これらのセンサーやカメラで得られた情報から、AI学習によって他船であることを認識しているという。

他船を避航する際には、衝突回避のために開発したアルゴリズムにより避航操船を実施。陸上からの監視には、AR技術を活用。船上からの映像へ各種情報を重畳表示するよう開発したARナビゲーションシステムを利用した。

これらMEGURI2040で開発した自動離着桟システムや陸上モニタリング用ARナビゲーションシステムは、船舶の安全航行や船員の労働負荷低減に寄与すると目されており、ICTやAI、画像解析技術を利用する「未来の産業」として研究・開発が続けられている。

さんふらわあのような大型カーフェリーは、モノと人を同時に運ぶことができるため、国内の物流において重要な役割を担っている。特に北海道と関東の物流では海運が8割以上を占めており、その重要度はより高い。しかし国土交通海事局によると、国内旅客船の船員は2000年以降は約1万人から約7000人へと20年間で3割減少しているうえ、1回の航行が長時間である大型カーフェリーでは船員の労務負担が課題になっている。長距離・長時間での無人運航船の実証実験が成功したことで、船員の労務・作業負担の低減や、安全性の向上、オペレーションコスト低減への貢献が期待されている。

歩行者・モビリティ・ロボットが共存する空間の実現に向け、東京都千代田区丸の内仲通りで自動運転バスの走行実証実験

歩行者・モビリティ・ロボットが共存する空間の実現に向け、東京都千代田区丸の内仲通りで自動運転バスの走行実証実験

一般社団法人「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」は、大丸有地区のスマートシティー化プロジェクトの一環として、丸の内仲通り(東京都千代田区)での自動運転バスの走行実証実験を行うと発表した。期間は2月18日から22日まで。歩行者専用通行時間帯となる「丸の内仲通りアーバンテラス」の実施時間中に、自動運転バスが運行される。

同協議会は、東京都千代田区にある大手町・丸の内・有楽町の3町域を合わせたエリア「大丸有地区」について、歩行者と「モビリティ・ロボット」が共存でき、「移動の選択肢を増やすことで、より便利で賑わいのある空間」にすることを目指している。そこで、自動運転バスの社会実装を目指すソフトバンクグループの企業BOLDLY(ボードリー)と共同で、低速の自動運転バスを走らせることにした。この実証実験は、2017年から続けられており、2021年3月には片道350mの走行実験を行ったが、今回はその規模を大きく上回る。

走行区間は、丸の内ビルディング前から国際ビルヂング前までの630m(歩行者専用となる全区間。往復約1260m)。この区間内には、信号のある交差点が1つ含まれる。そこを時速6キロ以下で、注意喚起のための音楽を鳴らしながら走行する。運行本数は、平日が13便、土日が20便となっている。

バスの運行状況は、大丸有地区の施設、イベント、交通機関などの情報を閲覧できるアプリ「Oh MY Map!」(Android版iOS版。大丸有地区まちづくり協議会が提供)でリアルタイムに見ることができる。

実証実験概要

  • 期間
    ・2月18日〜2月22日
    平日11:30〜14:30
    土日11:30〜16:30
  • 走行ルート
    ・丸の内仲通り(丸の内ビルディング前~国際ビルヂング前)
    Aルート(丸の内ビル発→国際ビル行)
    Bルート(国際ビル発→丸の内ビル行)
  • 乗降車位置
    ・丸の内ビルブロック(郵船ビル1階:ビル正面口付近)
    ・国際ビルブロック(国際ビル1階:ENOTECA 丸の内店付近)
  • 料金:無料
  • 走行便数
    ・合計64便
    平日13便、土日20便
  • 走行速度:時速6Km以下
  • 試乗人数
    ・約420人。1便(片道)あたり6名乗車
    ・試乗には「【丸の内仲通り】自動運転モビリティ実証実験 (2021年度)」で予約が必要(先着順)

自動車用シミュレーションプラットフォームのMoraiがグローバル展開のために24億円のシリーズBをクローズ

自動運転システムの安全性と信頼性を検証するための自動車用シミュレーションツールを自動運転車の開発者に提供するMorai(モライ)が、米国、ドイツ、日本、シンガポールを中心としたグローバルな展開を強化するために、シリーズB資金調達ラウンドで250億ウォン(約24億円)を調達したことを発表した。

この新たな調達は、Korea Investment Partnersが主導し、KB InvestmentとKorea Development Bankも加わっている。このラウンドには、既存の投資家であるNaver D2 Startup Factory、Hyundai Motor Group、Kakao Ventures、Atinum Investmentも参加した。これによりこれまでの資金調達額は300億ウォン(約28億9000万円)となった。

MoraiのCEOであるJiwon Jung(ジワン・ジョン)氏はTechCrunchに対して、韓国に本社を置き84名の従業員を抱える彼のスタートアップが、2022年末までに世界中の人員を倍増させるためにこの資金を使用すると語った。

共同創業者のジョン氏、Jun Hong(ジュン・ホン)氏、Sugwan Lee(スガン・イー)氏の3人は、2018年に同社を設立し、自動運転車メーカーが実際のテスト走行をシミュレートできる自動運転シミュレーションプラットフォームを構築した。

多くの自動運転車メーカーが、自身の自動運転車の検証のために、安全性と信頼性を証明するためのシミュレーションテストを繰り返し行っている。

Morai SIM(モライSIM)と呼ばれるMoraiのシミュレーターソリューションは、高精細(HD)マップベースの3Dシミュレーション環境により、ユーザーにさまざまな仮想テストシナリオを提供する。Moraiの共同創業者であるホン氏はTechCrunchに対して、Moraiの最もユニークな特徴の1つは、現実世界の物体のデジタルレプリカであるデジタルツイン技術によって実現された、大規模なシミュレーションプラットフォームだと語った。Morai SIMは、すでに世界の20都市以上で展開されている。

1月に開催されたCES 2022では「Morai SIM」のSaaSモデル、通称「Morai SIM Cloud」が発表された。このサービスを使えば、ユーザーがローカルコンピュータにソフトウェアをインストールすることなく、クラウド上でシミュレーションテストを行うことが可能になる。その結果、ユーザーは運用するハードウェアに関係なく、無数のシミュレーション環境で自動運転(AV)ドライバーをテストすることができる。

Morai SIMが開発したデジタルツイン環境、ラスベガス(画像クレジット:Morai)

Moraiは、Hyundai Mobis(現代モービス)、Hyundai AutoEver(現代オートエバー)、Naver Labs(ネイバーラボ)、42dot(42ドッツ)などの100社以上の企業顧客や、韓国科学技術院(KAIST)、韓国自動車技術研究所(KATECH)、韓国交通安全公団(KTSA)などの研究機関を顧客としている。またNVIDIA(エヌビディア)、Ansys(アンシス)、dSPACE(ディースペース)などのグローバル企業ともパートナーシップを結んでいる。

ジョン氏は、同社のシミュレーション・プラットフォームは、自動運転をはじめ、UAM(アーバン・エア・モビリティ)、物流、スマートシティなどの分野に応用できるため、大きな成長が期待できると述べている。

同スタートアップは、2021年に170万ドル(約2億円)の収益を計上し、2018年から2021年にかけては226%の年平均成長率(CAGR)を達成した。2021年には、Moraiはサンフランシスコに米国オフィスを開設している。

ジョン氏は「自動運転シミュレーションプラットフォームにおけるグローバルな競争力をさらに高めるために、技術的な優位性を高めることに全力を注ぎます」と述べていいる。

Korea Investment PartnersのエグゼクティブディレクターであるKunHo Kim(クンホ・キム)氏は「Moraiのシミュレーター技術は、自動運転車の安全性と機能性の向上に重要な役割を果たすことが期待されています」と述べている。続けて「韓国だけでなく、世界の自動運転市場をリードする可能性を秘めているので、今後も成長を期待しています」としている。

画像クレジット:Morai

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:sako)

日産「日欧中向けガソリンエンジンの新規開発を終了する方針、電気自動車の開発に集中」と報じられる

日産「日欧中向けガソリンエンジンの新規開発を終了する方針、電気自動車の開発に集中」と報じられる

Nissan

日産自動車が、米国以外のほぼすべての市場で新型ガソリンエンジンの開発を終了し、電気自動車の開発に集中する計画だと日本経済新聞が報じています。

日経は12月に、日産が米欧に2025年までに新しいバッテリーリサイクル工場を建設する計画を立てていると伝えていました。今回の報道でも、欧州で2025年にも新しい排ガス規制が導入されるとして新規のエンジン開発はコスト面で見合わないと判断、欧州規制に準じる日本および中国向けの開発も終了する方針だとし「日本車大手でエンジン開発の終了方針が明らかになるのは初」と述べています。

とはいえ、もしこれが本当ならば、いよいよ国内メーカーもこれまで自動車の心臓部として技術ノウハウを蓄積してきた内燃エンジンから、電気へシフトする姿勢を鮮明にしてきたと言えるかもしれません。

なお、日産自動車は米国市場向けに、主にピックアップトラック用のガソリンエンジンの限定的な開発を継続すると記事では伝えています。ただ、これも情報の出所は示されておらず、Reutersなどは日経の記事に対するコメントを日産に求めています。

ちなみに、日本車大手としてはホンダが現社長の三部敏宏社長の就任の会見で、全製品および企業活動を通じたカーボンニュートラル化の一環として2040年までにEVおよびFCVの販売比率100%を目指すと宣言しており、これが”VTEC”技術でならしてきたホンダの事実上のエンジン開発終了を意味するとして話題になっていましたが、三部社長はwebCGのインタビュー記事で「エンジン開発はゼロにはしない」と、縮小はしつつも今後十数年のあいだは継続する考えを述べています。

一方、韓国Hyundai(ヒョンデ:現代自動車)は昨年12月に内燃式エンジン(ICE)の開発部門を解散したと報じられました。欧州連合(EU)は、2035年までにハイブリッド、プラグインハイブリッド車を含むガソリンエンジン搭載の新車販売を禁止する方針を打ち出しており、欧州自動車各社はこれに対応すべくEVシフトを鮮明化しています。

(Source:Nikkei(1)(2)。Via ReutersEngadget日本版より転載)

韓国のマイクロモビリティスタートアップSwingが成長と日本への進出を目指し約27.6億円を獲得

韓国のeスクーターおよびマイクロモビリティのスタートアップ企業であるSwing(スイング)は、現地時間2月7日、同社の成長と日本への進出に拍車をかけるため、シリーズBラウンドで2400万ドル(約27億6600万円)を調達したことを発表した。

今回の資金調達は、ベルリンのTier Mobility(ティア・モビリティ)にも出資しているWhite Star Capital(ホワイト・スター・キャピタル)が主導し、既存の出資者であるHashed(ハッシュド)なども参加した。今回の新たな資金により、Swingは2019年の創業以来、合計約3300万ドル(約400億ウォン/約38億円)を調達したことになる。

Swingの創業者兼最高経営責任者(CEO)のSan Kim(サン・キム)氏はTechCrunchに対し、同社はこの資金をマイクロモビリティの車両を増やし、日本市場にさらに浸透させるために使う予定だと語った。Swingは2022年に、互いに交換可能なバッテリーを搭載した10万台のeスクーター、eバイク、eモペットを配備し、自社使用とオプションとして他社用の充電ステーションを200基設置する予定だ。Swingは現在、eスクーターやeモペットを含む3万5000台の電気車両を運営している。

Swingのアプリとは別に、このシェアマイクロモビリティスタートアップは最近、配達ライダーが充電の手間なく1日か2日だけeモペッドやeスクーターをレンタルできる「Dayrider」という新しいアプリを発表した。

ソウル市は9月、温室効果ガス削減のため、2025年までにeモペットを含むeバイクを6万2000台増やし、電動充電スタンドを20万台追加設置すると発表した。ソウル市はまた、配送業務に使用する3万5000台のオートバイを100%電気モーターに置き換えるとも発表した。

Swingが目指すのは、市場の奪取だ。同社によると、韓国には必要な需要を満たす適切なeモペットのモデルがなく、販売、修理、再販ができるサプライチェーンもなく、eモペットの潜在的ユーザーにサービスを提供するための充電ステーションもないとのことだ。

そこで、同社はフランチャイズ方式を採用したのだ。Swingの最高執行責任者であるJason Shin(ジェイソン・シン)氏は、同社がフランチャイズモデルを採用することで、同業他社よりも小資本で迅速に車両を拡大することができると述べている。Swingは、ブランド化した車両をフランチャイズ加盟事業者に販売する。そして、そのフランチャイズ加盟事業者はSwing独自のソフトウェアを使って、eスクーターの充電とメンテナンスを行う。現在、同社のフランチャイズ・パートナーは50社以上にのぼるという。

「市場の可能性を疑う者はいませんでした。問題は、誰が競争に勝つかということです。投資家の資金をつぎ込むよりも、社内に強力な運営チームを作って、スクーター1台1台を確実に収益につなげるという戦略をとり、それが功を奏しました」とシン氏は語る。

Swingは創業2年目から純利益を出しているが、狙った数字を期待通りに達成することはできなかったと、同氏はいう。さらに、2021年のeスクーター規制強化の影響で、新規ユーザーの利用が減少していることも付け加えた。

韓国では、eスクーターに関する規制が改正され、国内のeスクーター会社が打撃を受けているのだ。2021年5月に施行された改正道路交通法では、eスクーターのライダーは16歳以上で、有効な運転免許証を持ち、ヘルメットを着用することが義務づけられている。利用者がこの新しい規制に従わない場合、罰金が課されることになる。また、eスクーター利用者は自転車専用道路を使用し、人や車から離れた場所に駐車しなければならない。ソウル市は7月、違法駐車されたeスクーターをレッカー移動し、罰金を課すと発表している。

韓国では現在、20社以上のeスクーターレンタル会社が営業をしており、この分野では運行台数や会社数に制限はない。業界関係者はTechCrunchに対し、eスクーター業界では2021年から統合が始まったと語っている。2年前に韓国市場に参入したベルリンのeスクーター・プラットフォームWind Mobility(ウィンド・モビリティ)は、2021年10月にソウルでの事業を停止している。

日本への進出

2021年、同社は日本に子会社を設立し、現在2022年前半に東京でサービスを開始することを目指している。

キム氏は、日本の顧客と都市は、スマートフォンの普及率が高く、eバイクの利用も多く、駅間距離があるためラストマイルの移動に大きな需要があり、eスクーターに最適だと述べた。

「2021年、日本政府は概念実証を通じて、合法的にeスクーターのシェアリングを開始する扉を開きました。ソウルのスタートアップであるSwingは、非常によく似た環境での優れたオペレーションと蓄積されたデータにより、日本でのマイクロモビリティ導入をリードすることができます」とキム氏は語る。

「日本市場では、政府がガイドラインや規制の微調整を行うために実証実験を行っており、eスクーターの普及に向けたエキサイティングな時期に来ていると思います。White Star CapitalとSwingのパートナーシップは、Swingの技術力と韓国で長年培ってきたオペレーションノウハウを利用できる日本のステークホルダーにとって非常に有益なものとなるでしょう。日本ではラストワンマイルのロジスティクスが依然として課題となっていますが、Swingがこうした問題に対処し、ユーザー、ライダー、企業、公共部門に優れたモビリティ体験を提供できるよう支援できることを楽しみにしています」とWhite Star Capitalのベンチャー・パートナーである長尾俊介氏は述べている。

White Star Capitalのベンチャーパートナーである同氏は「欧州のTier Mobility(ティア・モビリティ)やFinn Auto(フィン・オート)といったリーディングカンパニーと提携する幸運にも恵まれ、モビリティは私たちにとって大きなフォーカスとなっています。大手企業との緊密なパートナーシップにより開発された強固なガイドラインと規制は、欧州が技術革新的なモビリティとその環境に対するプラスの影響を受け入れるための舞台を提供します。我々は、韓国と日本がこのトレンドに密接に追随し、マイクロモビリティが今後数年で重要な変曲点に達すると予想しています」とWhite Star CapitalのパートナーであるEddie Lee(エディ・リー)氏は述べている。「White Star Capitalは、サンと彼のチームと密接に協力し、日本への進出と新しいDayrider事業による物流能力の拡大を通じて、Swingのグローバル企業への野心的なビジョンを支援していきます」。

Swingは、韓国で100人以上、日本で4人の従業員を抱えてる。

画像クレジット:Swing

原文へ

(文:Kate Park、翻訳:Akihito Mizukoshi)

韓国でJoby Aviationがエアタクシーサービス開始へ

米国カリフォルニア州を拠点とする電動垂直離着陸機のスタートアップ企業であるJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)が、韓国最大の通信会社であるSK Telecom(SKT、SKテレコム)と提携し、韓国でエアタクシーサービスを提供することを計画している。両者は米国時間2月6日に、カリフォルニア州マリーナにあるJobyの製造工場で、戦略的提携契約を締結した。

地上と空の旅のより良い統合を提供するために、このエアタクシーサービスは、T Map Mobility platform (レンタカー、駐車場、配車サービス、その他の交通関連サービスからなるサブスクリプションベースのモビリティ・アズ・ア・サービスを提供するSKテレコムのスピンオフ企業) と、TマップとUber(ウーバー)が2021年共同で創業したジョイントベンチャーの配車サービスUTを活用する。シリコンバレー発のUberにとっては創業後8年目にして韓国市場への初めての進出だ

JobyとUberの歴史は、両社が2019年に、Uberの都市部での航空タクシーサービス立ち上げの計画を後押しするために始まった。2020年、UberはJobyのシリーズCに5000万ドル(約57億7000万円)を投資し、さらに7500万ドル(約86億5000万円)を投じて、JobyによるUberの空中ライドシェア部門であるUber Elevate(ウーバー・エレベート)の買収を支え、両社のパートナーシップを拡大した。これらの提携により、米国市場でのサービス開始時には、Jobyのライドシェアサービスは、JobyまたはUberのいずれかのアプリを通じて乗客に提供されることになる。よって、韓国のユーザーにもUTとの同様のアプリ統合が行われる可能性がある。

SKテレコムもJobyも、いつ、どこでエアタクシーサービスを開始するかについては明らかにしていないが、両社が発表した声明の中では、主要都市の交通渋滞を解消するために、韓国国土交通省が提唱する、2025年までに限定的なUAM(都市空中移動)サービスを商業化することを目標とするK-UAM(Korean Urban Air Mobility)ロードマップへの支持が表明されている。この計画では、まずソウル首都圏に1〜2路線を設置し、10年後までに10カ所のエアタクシーターミナルを設置して、すべてのターミナルが路線バスや地下鉄、その他の移動手段に接続されるようにする予定だ。

SKテレコムは、韓国国内UAMの早期安定化を推進する政府主導のコンソーシアムの「UAM Team Korea」(UAMチームコリア)のメンバーである。同コンソーシアムのメンバーは民間業者で構成されており、他に現代自動車、大韓航空、仁川国際空港公団などが参加している。

JobyのJoeBen Bevirt(ジョーベン・ベバート)CEOは「4200万人以上の人々が都市部で生活している韓国は、Jobyにとって、空中移動を日常生活の一部にし、人々が時間を節約しながら二酸化炭素排出量を削減するためのすばらしい機会を提供するでしょう」と述べている。

韓国での活動の一方で、Jobyは米国内での活動にも力を入れている。先週もTechCrunchが、Jobyが最大航続距離150マイル(約241km)、最高速度時速200マイル(約320km)の第2世代の試作機「S4」をテストするために、サンフランシスコ湾上でのエアタクシーの連続飛行の許可を求めていると報じたばかりだ。また、低騒音であることから、市街地へのアクセスが可能だとも主張している。

関連記事:サンフランシスコ湾上での「空飛ぶタクシー」飛行テストをJoby Aviationが計画

画像クレジット:Joby Aviation

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

自動車ソフトウェア制御のTTTech AutoにAptivが出資、先進運転支援システムを促進へ

自動車メーカーは、より多くの売上を生み出すために機能やソフトウェアサービスを満載した自動車を販売したがっているが、情報過多という課題を抱えている

これらの、ソフトウェアによって制御された自動車には、電動パワートレインから運転支援機能、インフォテインメントまで、あらゆるものを動かす無数のシステムオンチップ(SoC)が搭載されている。最も重要なのは、それらがすべて協調して動作しなければならないということだ。

カメラやレーダーなどの車両センサーがデータを取得し、それを変換してパワートレインに送り、急ブレーキなどの機能を可能にする。そのすべてがミリ秒単位のリアルタイムで行われ、同時にドライバーが車内でストリーミングしているSpotifyを妨げないようにしなければならない。

こうした重要な情報の流れを管理するために、ここ数年、スタートアップが次々と誕生している。ウィーンを拠点とする自動車安全ソフトウェアプロバイダー、TTTech Auto(TTテックオート)もそのうちの1社だ。同社の主力製品であるMotionWiseは、自動車のさまざまな制御システム間でデータの流れを可能にするソフトウェア安全プラットフォームだ。TTTech AutoのCEOで共同創業者のGeorg Kopetz(ゲオルグ・コーペッツ)氏によれば、互いに干渉することなく安全かつ確実に、そしてリアルタイムに機能するようにするものだという。

TTTech Autoはこのほど、大手自動車技術サプライヤーであるAptiv(アプティブ)の出資を獲得した。これはAptivが先進運転支援システム(ADAS)を促進する技術への関心を深めていることをうかがわせる。TTTech Autoは、自動車、航空宇宙、モバイル機器、オートメーション産業にわたる安全なネットワークコンピューティングプラットフォームを提供するTTTech Groupから生まれた会社で、米国時間2月3日にAptivがリードした2億8500万ドル(約328億円)のシリーズCラウンドを発表した。同ラウンドには既存投資家のAudi(アウディ)も参加した(シリーズCは今後2カ月以内の完了が見込まれている)。

Aptivは、高性能ハードウェア、クラウド接続、オープンかつスケーラブルでコンテナ化されたソフトウェアアーキテクチャを含む完全なスタックを自動車メーカーに提供し、ソフトウェアによって制御されたクルマへの移行を加速させることに取り組んでいる時期に、戦略的投資家としてTTTech Autoを支援する。

Aptivは1月、不可欠なインテリジェントシステムの開発、運用、管理を行うエッジ・ツー・クラウド技術を統合すべく、Wind River(ウインドリバー)を43億ドル(約4950億円)で買収した。TTTech Autoは売りに出ている会社ではない。コーペッツ氏は、業界の複数のプレイヤーと協力できるように独立して事業を継続したいと考えているが、MotionWiseがソフトウェア制御の分野で主要プレイヤーになるための道筋において、スマート車両アーキテクチャを提供するというAptivの戦略を補完できることは喜ばしいことだと話す。

Aptivの社長でCEOのKevin Clark(ケビン・クラーク)氏は、2月3日に行われた同社の2021年第4四半期および通年の決算説明会で「AptivとWind Riverの専門知識と補完的技術の組み合わせ、さらにアクティブセーフティソフトウェアアプリケーションを強化するTTTechの確定的フレームワークは、OEMがソフトウェア制御車両の開発と展開をコスト効率よく加速するのを支援するのにユニークな立場にあります」と述べた。

TTTechとAptivは、過去にAudiの自動運転向け中央運転支援コントローラーで協業しており、Aptivがハードウェア側のシステムサプライヤーとして協力し、TTTechはADAS全体の運用を確保するためのアーキテクチャ設計と安全ソフトウェアプラットフォームを支援した。

MotionWiseはこれまで主にADASやその他の自動運転機能に使われてきたが、レベル4およびレベル5の自律性に向けて、ソフトウェアをサポートすることを目標としている。レベル4とレベル5に関しては、SAE(自動車技術者協会)はそれぞれ限定された運転設計領域またはすべての条件下で自律システムがすべての運転を管理することと定義している

このことを考えると、Aptivには自律走行車のボンネットの下で機能するスケーラブルなシステムアーキテクチャに戦略的に投資する、より長期的な理由があるのかもしれない。Aptiv(旧Delphi)は2017年、自律走行車技術企業のnuTonomy(ニュートノミー)を買収し、その後、Motional(モーショナル)というHyundai(現代自動車)との合弁会社としてスピンオフした。Motionalは現在、Lyft(リフト)と提携して自動運転のHyundai Ioniqを使ったラスベガスでのロボットタクシー商業展開の2023年開始や、2022年サンタモニカでのUberとの自律配達の試験実施などに向けて準備を進めているところだ。

Aptivもコーペッツ氏も、MotionWiseが将来的にMotionalの車両に使用されるかどうかについては言及しなかった。もともと2017年に発売されたこの技術は、Hyundai車を含め、世界で200万台を超える乗用車にすでに搭載されている。MotionWiseは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Porsche(ポルシェ)、Audi(アウディ)、Kia(起亜自動車)、SAIC Motor Corporation(SAICモーターコーポレーション)の車両のソフトウェアスタックにも統合されていると、コーペッツ氏は話す。

TTTechは今回の資金をアジアに重点を置いた国際的なチームの育成に使う予定だ。同社はすでに、SAIC Motor Corporationとともに合弁会社(Technomous)を運営している。ソフトウェアと安全工学、戦略的製品管理、事業開発の分野で、アジア、欧州、北米で人材を採用する予定だとも述べた。

加えて、TTTechは買収・合併の可能性にも目を向けている。同社は、エコシステム内のさまざまなパートナーと協働できるよう、独立企業であり続けたいと考えているが、自動車メーカーの継続的な安全ニーズに対応し続けるために、補完的な製品、技術、サービスの獲得に関心を持っている。

「この分野では協力の余地が大きいと考えており、今回の資金調達は、独立路線で成長しつつ、共同融資や共同イノベーションを必要とし、単独では実現できない企業とも協力する機会を与えてくれます」とコーペッツ氏は述べた。

画像クレジット:TTTech Auto

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

フォードの電気自動車への移行はコスト削減が中心となる

フォードの新しい電気自動車(EV)モデルは、最高経営責任者のJim Farley (ジム・ファーリー)氏が 「信じられないほどの需要」と呼ぶほど好調だが、同社はその需要を満たしつつ利益率の改善を図る中で、コスト削減をEV戦略の重要な要素に位置づけた。

米国時間2月3日に行われた第4四半期および通期の決算説明会で、ファーリー氏は、フォードがバッテリー電気自動車(BEV)の部品表を「通常の部品コスト削減を超えて大きく」削減するためのタスクフォースを設置したことを明らかにした。

「例えばMustang Mach-E(マスタング・マッハE)では、私たちのチームは先月だけで、1台あたり1000ドル(約11万5000円)のコスト減の機会を見つけました。これは、設計の簡素化、垂直統合、生産の拡大にともなうサプライチェーンでの規模の活用によって意図的に実現してきたものです」とファーレイ氏は述べている。「そしてチームはまだ始まったばかりなのです」。

注目すべきは、フォードがコスト削減や効率向上につながる変更を行うために、第2世代のクルマまで待ってはいないという点だ。

ファーレイ氏は、Mach-Eの製造過程で、エンジニアリング、サプライチェーン、製造の各部門をよりよく統合することで、フォードは利益を拡大できる方法を学んだのだという。例えばMach-Eの冷却システムは、モーターが2個で済むところを4個使用していたり、ホースが60本もしくは70本もあるが、実際にはその3分の1で十分に機能するとファーレイ氏は指摘する。

「それらは今まさに追い求めているチャンスなのです。2023年を待つつもりはありません」と彼はいう。「マイナーチェンジ を待つのではなく、この車両を今リエンジニアリングして、そのノウハウをLightning(ライトニング)やE-Transit(イー・トランジット)、そしてもちろんすべての電動プラットフォームへ活用していきます」。

フォードのCFOであるJohn Lawler(ジョン・ロウラー)氏は、同社のBEVのマージンを改善する必要があると述べている。

「私たちにはチャンスがありますが、それを大規模にやらなければならないのです」とロウラー氏はいう。「現在のMustang Mach-EやLightning、そして商用車のE-Transitのような、大量生産されるセグメントの主要な車両で、頼りになる強力なラインナップを持ちたいと考えています。複雑さを削減していくのです」。

フォードF-150LightningトラックとE-Transitバンはまだ市場に出ていないが、バンは2022年1月末から納車が開始される予定だ。現在のフォードのBEVポートフォリオは、Mustang Mach-Eだけだが、2021年発売されて以来、このクロスオーバーEVの販売は加速している。2022年の1月だけでMach-Eは2370台を販売した(前年同月は238台)。

コストを下げるためには、明らかにオペレーションを拡大することが有効だが、そのためには多くの先行投資が必要となる。

フォードとバッテリーメーカーのSK Innovation(SKイノベーション)は、114億ドル(約1兆3000億円)を投じてテネシー州とケンタッキー州に2つの工場を建設し、バッテリーや次世代電動Fシリーズトラックを生産する計画で、1万1000人の新規雇用を創出するとしている。フォードはこのプロジェクトに70億ドル(約8047億2000万円)を拠出するが、これは118年の製造の歴史の中で単一としては最大規模の投資となる。この投資は、先に発表した2025年までに電気自動車に300億ドル(約3兆4488億円)を投入する計画の一環である。

ファーレイ氏は内燃機関(ICE)車事業を、成長著しいEV事業とは別の事業と位置づけているもの、フォードは内燃機関車事業のコスト削減にも力を入れている(Transitバンのように両セグメントにまたがるモデルもあるが)。フォードの利益は依然としてICEモデルが中心であるため、この点は重要なポイントだ。

ロウラー氏は「ICEビジネスでは、車両に対する計算を活用して、製造コストを大幅に削減し、業務を簡素化し、それを車両のボトムラインに還元していきます」と語り、パートナーと協力して流通コストを削減する方法も検討していると述べている。

健全なICEビジネスへの投資を継続することの目的は、健全なBEVビジネスの成長を促進することだとファーリー氏は述べ、ICE車の将来の製造は、フォードの電動化に注入できるキャッシュリターンを最適化することに主眼を置いていると語る。

フォードは、2020年の第4四半期に計上した28億ドル(約3222億6000万円)の損失から一転し、2021年第4四半期には123億ドル(約1兆4140億円)の純利益を計上した。このフォードの利益には、2021年11月に上場したEVスタートアップ企業Rivian(リビアン)への投資による82億ドル(約9427億5000万円)の利益が含まれている。Rivian社からの利益を除いた調整後の第4四半期の利益は20億ドル(約2299億4000万円)となる。第4四半期の売上高は、5%増の377億ドル(約4兆3344億円)だった。

通年でみたときにはフォード純利益は179億ドル(約2兆581億円)で、これは2020年の12億7000万ドル(約1460億2000万円)の赤字から改善している。

フォードの業績がアナリストの予想に届かなかったため、時間外取引でフォードの株価は4.37%下落している。

画像クレジット:Roberto Baldwin

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

GM Venturesが急速充電対応バッテリー技術のスタートアップSoelectに投資

ノースカロライナ州に本社を置くバッテリー技術のスタートアップSoelect(ソエレクト)は、1100万ドル(約12億円)のシリーズAラウンドをクローズした。同社は、新たに調達した資金を、電気自動車の次世代バッテリーを可能にするかもしれない、急速充電が可能な電極技術の拡張に使う予定だ。

リードインベスターのLotte Chemicalと投資会社KTB Networkに加え、General Motorsのコーポレートベンチャーキャピタル部門であるGM Venturesも戦略的投資家として参加した。GM Venturesは、輸送の安全性や持続可能性に関するソリューションを提供する企業に投資する傾向があり、そうしたソリューションは将来のGM車や製造施設、事業運営に導入することができる、とGMの広報担当Mark Lubin(マーク・ルービン)氏は述べている。

「SoelectをGM Venturesのポートフォリオに加えることの競争上の優位性の1つは、急速充電が可能な電極技術であり、これは将来のリチウム金属電池と固体EVバッテリーの電極設計の両方を可能にするものです」と、ルービン氏はTechCrunchに語った。「今回の投資、そしてこの分野における他の投資は、将来のGM製品の航続距離の増加、効率向上、コスト削減を可能にするバッテリー技術の進歩を加速させるGM Venturesの取り組みをさらに拡大します」。

VCが最近投資したバッテリー会社はSoelectだけではない。バッテリー寿命を向上させ、バッテリーを2倍のエネルギー密度にする「電極なし」のリチウム金属電池を持つ、MITのスピンアウトスタートアップSolidEnergy Systems(SES)にも投資し、提携した。SESとGMは、マサチューセッツ州にプロトタイプ製造施設を建設し、2023年までに大容量の量産前バッテリーを作ることを目指している。

関連記事:GMがバッテリーのエネルギー密度向上でSolidEnergy Systemsと提携

GMは、パートナーのLG ChemとUltiumバッテリーのための2つのバッテリー製造施設を建設中だが、GMは他の実りあるバッテリー提携の可能性にもオープンだ。同社は2021年10月、長寿命で急速充電でき、そして持続可能なバッテリーを実現するためのバッテリー技術を開発する新しいバッテリー研究施設をミシガン州に建設する計画を発表した。GMは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持つバッテリーを製造し、コストを少なくとも60%削減したいと考えている。

関連記事:GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ランボルギーニは同社初のEVについて未だ思案中、4人乗りクーペになる可能性が有力

Lamborghini(ランボルギーニ)の会長兼CEOであるStephan Winkelmann(ステファン・ヴィンケルマン)氏は、超高級SUV「Urus(ウルス)」の需要に支えられて2021年の販売台数が過去最高を記録した自動車メーカーの指揮を執っているにもかかわらず、祝杯を挙げる暇もない。

このイタリアのスーパーカーメーカーを率いるヴィンケルマン氏は、販売台数が前年比13%以上増加したことや、1月が終わる前に2022年の生産台数をほぼ完売させた成功の余韻に浸るよりも、もっと差し迫った問題を抱えている。

それ以上にヴィンケルマン氏は、同ブランドを電動化の世界に導くことに集中しているのだ。これは、効率性よりも大げさなエンジンで知られるランボルギーニとは、相反する動きのように思える。

ランボルギーニは、2023年にハイブリッド車を投入するなど、いくつかの目標を設定している。しかし、そこから先のEV計画は不明瞭だ。

ガソリンの代わりに電気を使ってどのように車を走らせるのか、また、顧客にどのような体験を提供するのか、ランボルギーニは未だ決定できていない。

「私たちは、ランボルギーニのためのクルマを作るだけでなく、10年後にも対応するために、バッテリー技術やどのようなタイプのエンジンを搭載する必要があるのかということについて、よく検討しているところです」と、ヴィンケルマン氏はTechCrunchに語った。

「私たちには、EVを真っ先に採用する必要はないという利得があります」と、ヴィンケルマン氏はいう。それは、世の中の動きに目を光らせ、未来を見極めるようとしているという意味だ。EVの技術は急速に進化し続けているため、それは簡単なことではない。「もしかしたら、5年後には誰も気にしていないようなことを話しているのかもしれません」とCEOは認めている。

先行しようとする中で、自動車メーカーとしては、いくつかの点で間違っているかもしれないことを認めなければならないと、CEOは語った。それはつまり、適切なタイミングで適切な判断を下すことであり、あまり先を見過ぎてはいけないということだ。

「良いアイデアを持っていても、それが5年後、6年後、7年後、8年後には正しくないとわかるかもしれません」と、ヴィンケルマン氏は付け加えた。

ランボルギーニは、少なくとも全体的なデザインプランは持っている。

ヴィンケルマン氏によると、ランボルギーニ初のEVは2020年代の後半に登場する予定だという。それは現行モデルの「Aventador(アヴェンタドール)」や「Huracan(ウラカン)」のような純粋なスーパーカーではなく、(ウルスを除く)ランボルギーニに人々が期待する以上の地上高を持つ、より実用性が高い2+2シーターの4人乗り2ドアクーペになるとのこと。

もちろん、それはランボルギーニらしいルック&フィールを備えた車になるだろう。スーパーカーではないランボルギーニというものが冒涜のように感じる人は、同社が1968年から1978年まで、4人乗り2ドアクーペの「Espada GT(エスパーダGT)」を販売していたことを思い出していただきたい。

Lamborghini Espada GT(画像クレジット:Lamborghini)

そのクルマのデザインは、電気自動車であるがゆえに未来的になると同時に、ランボルギーニのDNAに沿ったものになると、ヴィンケルマン氏はいう。パワートレインも、EVならではの強大なトルクで、ランボルギーニ車のオーナーがこのブランドから思い描くパフォーマンスを実現するだろう。しかし、1つだけ決定的に失う要素がある。エンジンの咆哮だ。

「その代わりとなり得るスーパーカーとは何かという新しい見解を、どうやって示すことができるか、我々は見極めなければなりません」と、ヴィンケルマン氏は語った。ランボルギーニの魅力の1つは、そのエキゾーストノート(排気音)だ。これは、ランボルギーニの車を所有することで得られる「俺を見ろ!」という威勢の誇示に欠かせない。ランボルギーニには、ブランドに相応しい何かを考え出すための時間がある。それが車内にだけ聞こえる音なのか、それとも車外にも聞こえる音になるのかは、まだわからない。

今後のハイブリッド車については、まずアヴェンタドールのV12プラグインハイブリッドが登場する予定だ。PHEVパワートレインの採用は、特定の都市において排ガスを出さない電気駆動を求める規制の拡大に対応するためだ。

2021年発表された限定生産モデル「Lamborghini Countach LPI 800-4(ランボルギーニ・カウンタックLPI 800-4)」。2019年に発表された限定モデル「Sián(シアン)」のために開発されたスーパーキャパシタ技術とV12エンジンを組み合わせたハイブリッド・パワートレインを搭載する(画像クレジット:Lamborghini)

内燃機関については、2022年がランボルギーニにとって新型の非電動車を導入する最後の年となる。パワートレインの進化の始まりが、2023年に迎える同自動車メーカーの創立60周年と重なるのは、ある意味で相応しいとも言える。

ランボルギーニは、規制と筋金入りのファンの両方を満足させる方法として、今度のプラグインハイブリッド車をできるだけ長く製造したいと考えている。もし、合成燃料を使った低排出ガス化が実現すれば、2030年代に入ってもスーパーカーの導入と生産を続けることができるだろう。

しかし、最終的にランボルギーニとそのCEOは、同社初のEVとその後に続くモデルについて、決断を迫られることになるだろう。「この変化の一端を担えることを誇りに思いますし、光栄に思います」とヴィンケルマン氏は語る。

しかし、同氏はこれから起こることの重さを理解していると主張する。

「その一方で、私には当社で働く人々やその家族の将来に対する責任だけでなく、ブランドとその新製品という船を安全な場所に導き、対岸で待っているお客様の情熱的な手に引き渡すという、大きな責任があります」。

将来のランボルギーニの電気自動車に搭載されるバッテリーやパワートレインの技術について語るのは、少し時期尚早かもしれない。だが、ヴィンケルマン氏は、やや胸を張って次のように語った。「本当に信じられないほどパワフルで、ランボルギーニの精神に非常に忠実な車になると期待してください。まだ我々には時間が十分にあります。この車が発表されるときには本物のランボルギーニになっていると、私は強く確信しています」。

画像クレジット:Lamborghini

原文へ

(文:Roberto Baldwin、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポールスター、スタッド付タイヤや4灯補助ライトを装備した雪上ラリーカー風の「ポールスター2」公開

雪の多いスウェーデンに本拠を置くPolestar(ポールスター)は、現地時間2月2日、電気自動車「Polestar 2(ポールスター2)」に極寒環境向けの装備と性能向上を施した特別仕様車を発表した。

このPolestar 2 Arctic Circle(北極圏)は、前後にモーターを搭載する(4輪駆動)Polestar 2 Long range Dual motor(ポールスター2 ロングレンジ・デュアルモーター)にPerformance Pack(パフォーマンスパック)を追加した仕様をベースに、さらにエンジニアは車高を30mm引き上げ、特別に製作されたスタッド付き冬用タイヤを装着した。専用にチューンされたÖhlins(オーリンズ)製ダンパーは、30%ソフトなスプリングと組み合わされ、車体のフロントとリアには、ねじり剛性とステアリングの反応を高めるストラットブレースを追加。2基のモーターの合計出力は300kWから350kWに、合計トルクは660Nmから680Nmに向上している。

そしてもちろん、Arctic Circleは本物のラリーカーのように、4つの巨大なStedi Quad Pro(ステディ・クアド・プロ)LEDライトと、カーボン製スキッドプレートが装備されている。

昔から自動車メーカーは、性能を誇示したり、人々の興奮を高めたりするために、ワンオフのコンセプトカーを使ってきた。これは、顧客の興味を判断するための効果的なツールであると同時に、自社のエンジニアに何か楽しいものを作らせる機会を与える。Tesla(テスラ)からGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)まで、すべての自動車メーカーは、最終的な市販仕様に先駆けて車両を公開し、量産が近づくにつれて、評判(および道路法規や生産上の制約)に基づいて調整を施していく。

このArctic Circleは市販される予定はないものの、将来的にポールスターがこのクルマのパーツを販売することは考えられる。4輪駆動のデュアルモーターはすでにラインアップにある。向上したパワーは、ポールスターによると、2022年中に無線アップデートで顧客に提供される予定だという。調整可能なダンパーもすでに購入可能だ。スタッド付きタイヤやバケットシート、スキッドプレート、ライトなども、サードパーティのベンダーから販売されている。

このクルマの開発を主導したのは、ポールスターのチーフシャシーエンジニアであるJoakim Rydholm(ヨアキム・ライドホルム)氏で、同氏は余暇にはラリーに参戦し、数々のトロフィーを獲得しているという。それを聞くと疑問が頭に浮かんでくる。かつてラリーで活躍したPorsche 911 Safari(ポルシェ911サファリ)のように、次は車高を引き上げたポールスター2のラリー仕様車が登場するのではないだろうか?

画像クレジット:Polestar

原文へ

(文:Matt Burns、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自律走行車の知覚能力アップのためのソフトウェアを開発するAnnotellが約27億円調達

自動車業界が自動運転車への道をゆっくりと歩む中、現在の自律走行システムの技術的ギャップを埋めようとするスタートアップが出現している。最新の動きとしては、自律走行システムの知覚能力の性能とその改善方法を評価するソフトウェアを手がけるスウェーデンのスタートアップ、Annotell(アノテル)が現地時間2月3日、事業拡大のために2400万ドル(約27億円)を調達したと発表した。

Annotellの共同創業者でCEOのDaniel Langkilde(ダニエル・ランキルド)氏はインタビューで、同社が行っていることを「自動車が運転免許を取得するための視力検査、あなたが運転に適しているかどうかを判断するために試験を受けるようなもの」と例えた。「Annotellのプラットフォームは、システムの性能を理解し、それを上げることを支援します。どうすれば改善できるかを顧客に指導しています」。つまり、Annotellの製品は、企業のデータの品質をテストし、測定する分析、およびそれらのデータセットを改善するための「正解データ」の生産を含んでいる。

その目的は完璧さではなく、予測可能性であり、現在すでに存在する半自律プラットフォーム(先進運転支援システムなど)にとっても、多くの企業が将来の構築を目指している完全自律型自動車にとっても同様に重要だと、ランキルド氏は付け加えた。「システムが常に正しいとは限りませんが、システムを安全に使用するためには、何ができて、何ができないかを知る必要があります」。

シリーズAラウンドは、Skypeの共同創業者Jaan Tallinn(ジャン・タリン)氏が率いるエストニアのVC、Metaplanetと、日本企業などが出資しているディープテック投資家のNordicNinjaが共同でリードしている。Metaplanetは直近ではStarship Technologiesに投資し、 Googleが買収したDeepMindの初期投資家でもある。AnnotellのシリーズAラウンドには、以前の出資者であるErnström & CoとSessan ABも参加した。ヨーテボリを拠点とするAnnotellの累計調達額は3100万ドル(約35億円)で、評価額は公表していないが、同社の顧客には世界最大の自動車メーカーとその主要サプライヤー、そして自動運転に特化している大手自動車会社が含まれる。

Annotellが埋めようとしている市場のギャップは、かなり重要なものだ。自律走行システムは、膨大な量の走行データと、その情報を処理してプラットフォームに運転の基本を「教える」のに使われている機械学習で成り立っている。

コンピュータビジョンを使って、これらのシステムは赤信号や停止している車、曲がるべき時などを認識することができる。問題は、これらのシステムの反応が与えられたデータに基づいていることだ。自律走行システムは通常「推論」することができず、自動車が実世界で必然的に遭遇するような未知の変数にどう対応するかを決めることができない。

「機械学習は、稀だが重要なことを処理するのが苦手です」とランキルド氏はいう。

Oscar Petersson(オスカー・ペターソン)氏と共同でAnnotellを設立したランキルド氏は(2人とも深層学習を専門とする物理学者)、以前別の会社(脅威インテリジェンスのスタートアップRecorded Future)で働いたときにこの問題に遭遇したと述べた。Recorded Futureでは、脅威をより識別するためにプラットフォームに与える情報データを収集することを任務としていた。悪意のあるハッカーは、隙間を見つけて脆弱性を作り出すことに注力するため、ランキルド氏のチームが将来の攻撃を軽減するためのパターンを特定するために行っていた作業の多くが、事実上台無しになった。

「ミッションクリティカルな仕事をする上で、ブルートフォース(総当り)方式の機械学習には限界があることが浮き彫りになりました」と述べた。

自律走行システムも同じような問題に直面しているが、正しく動作させることがより重要だ。というのも、何か問題が発生した場合に人命が危険にさらされるからだ。また、正しい動作により、企業が製品を市場に投入し、消費者に信頼してもらい、購入・使用してもらうために通過しなければならない安全性と制御のレベルがより高くなる。

「人々が機械学習やAIを信頼するためには、安全性に非常に真剣に取り組まなければなりません」と同氏は述べた。「映画サービスで間違ったレコメンドをすることと、一時停止の標識を無視したり人にぶつかったりすることは、大きな違いがあります。私たちはそのことも真剣に受け止めています。だからこそ、この問題にフォーカスしたかったのです」。安全規制の強化は、Annotellにとって、特定の使用例や市場機会を示すものでもある。顧客のためにシステムを改善するだけでなく、特定の製品の使用許可を与えるために、機関や規制当局が信頼できるデータ群を作成する。

機械学習がシステムに教えることを補完するAnnotellのアプローチは、今日の自律走行システムと同様に進歩的で、その性質上、完全な自律走行に設計されていないシステム(ドライバーに代わるものではなく、アシストするためのシステム)の限界を試し、形式化するものだ。やがて完全自律走行は、因果推論アルゴリズムの構築に用いられるベイジアンネットワークのような、他の種類のAIアプローチも取り込むかもしれない、とランキルド氏はいう(先週TechCrunchが取り上げた因果AIスタートアップはもっとドラマチックで、因果AIこそが自動運転の実現に向けた唯一の希望であり、それは大きな飛躍ではあるが、実現にはかなりの時間がかかると主張していた)。

しかし、今のところAnnotellは、大きなチャンスである、ある程度の自律性がすでに組み込まれたシステムの安全性に技術を注いでいる。

Metaplanetのジャン・タリン氏は声明で「自律走行車の商業展開においては、安全性の確保が主な制約となりますが、Annotellは短期間で大きな進歩を遂げました。我々はAnnotellのソフトウェアだけでなく、それを構築したチームにも感銘を受けており、彼らとこの旅をともにすることに興奮しています」と述べた。

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開―非常時安全技術として開発中

トヨタ、自動運転スープラがコースをドリフト滑走する動画を公開―非常時安全技術として開発中

Toyota

Toyota Research Institute (TRI)は、プロドライバーのようにFR駆動方式の自動車でドリフト走行するAI自動運転システムを開発しています。その理由は、このロボットカーでD1グランプリに出場するため…ではもちろんなく、車が不意にスピンモーションに入ってしまったときに、いち早く自動運転システムが車の制御を取り戻せるようにする危険回避行動を可能にするためです。

テスラは交差点で多くのドライバーが一時停止標識で完全に停止しないのを見て、FSDベータソフトウェアにそれをマネするように教え込みました。それは自動運転システムに人間と同じように運転させようという発想にとらわれて、安全とは何かを見誤ってしまった例と言えます。

一方トヨタは、人間のドライバーと同じように運転する自動運転システムという発想は同じながら、トヨタは安全の確保のためにドリフト走行という高等テクニックを自動運転システムに教え込んでいます。

ドリフト走行といえば某マンガ/アニメに影響された人たちが大好きな、わざと車を横滑りさせてカーブを曲がっていく走法。しかし、自動車ラリー競技での走り方を見ればわかるように、ドライバーに力量があれば、高い速度で急カーブに進入しても難なくその場をクリアでき、また危機回避にも使えるテクニックとなります。

公開された動画では、改造されたトヨタ・スープラを使ってテストコース上のパイロンやその他障害物を自動的にドリフト走行でかわしていく様子が収められています。運転席は無人ではなく、生身のドライバーが搭乗しています。ただこれはあくまで非常時のためであり、ドリフト走行中もドライバーはハンドルを握らないままドリフト走行をキメています。

TRIは1年程前からスタンフォード大学のダイナミック・デザイン・ラボと共同でこのプロジェクトを開始しました。

研究者は「濡れていたり何らかの理由で滑りやすい路面に直面したとき、プロのドライバーならドリフトという選択ができるかもしれませんが、私たちの多くはプロドライバーではない」とし「だからこそ、TRIはクローズドなテストコースで障害物を識別し、自動的にドリフト走行でそれを回避する車両をプログラミングしている」のだと述べました。

この技術によって、たとえば、雪道や橋梁の凍結した路面で車が勝手に横滑りを始めたときに、自動運転システムがドリフトによって車をコントロールし、衝突を回避するといったことが可能になると想定されます。

TRIのスープラには、コンピューター制御のステアリング、アクセル、クラッチ、トランスミッション、ホイール個別のブレーキなどが搭載されており、これらを駆使してシステムは自動的にドリフト状態を発生させ、それをコントロールします。またフォーミュラ・ドリフト仕様に近いサスペンション、エンジン、トランスミッション、安全装置を使用してデータ収集に役立てています。

もちろん、安全なテストコースでわざとドリフト状態を生み出して制御するのと、狭い上に周囲に何があるかわからない公道でスライドした車を建て直すのとでは様々な条件が異なり、たとえばトヨタの次の世代の車が自動運転とドリフト走行を披露するようになるかと言えばそんなことはありません。しかし、トヨタは、車の能力の限界を超えた極限状態で「道路上での人間の能力を増幅」自動運転技術の研究を続ける予定です。

ちなみに、トヨタ・TRIは2016年に「運転中に事故に至りそうになった瞬間にステアリングをドライバーから引き取り、回避行動をとる」Guardian Angelなる自動運転機能の開発を発表していました。今回の自動ドリフト機能は、そのDNAを受け継いで開発されている技術と言えそうです。

(Source:ToyotaEngadget日本版より転載)

テスラ、シートベルトチャイム不具合で81万7000台超をリコール

Tesla(テスラ)が再び大規模なソフトウェア品質問題に取り組んでいる。AP通信によると、Teslaはシートベルトチャイム機能の不具合で81万7143台のリコールを実施する。Model 3、Model Yの全車と、2021年以降のModel S、Model Xに、シートベルトが締められないまま発進する時にチャイムが鳴らない「ソフトウェアエラー」があるという。リコール通知によると、車両を離れた直後にドアを閉めただけで問題に遭遇する可能性があるという。

Teslaは、2月上旬にワイヤレスアップデートでシートベルトチャイムの不具合を修正する予定だ。なお、けがなどの被害は報告されておらず、シートベルト警告は正常に表示される。この問題は1月6日に韓国のテスターが発見し、Teslaが調査を行った結果、1月25日にリコールが必要と判断した。

今回のリコールは比較的軽微なものだが、Teslaにとってはこれ以上ないほど悪いタイミングだ。完全自動運転の不具合によるリコールのわずか数日後のことであり、Autopilot(オートパイロット)を使用した車が緊急車両に衝突する一連の事件をNHTSA(米運輸省道路交通安全局)が調査している最中でもある。Autopilotに関連した事故で、運転手が重罪に問われる事態も起きている。これらは、カメラやトランクサスペンションの不具合など物理的な問題によるリコールに加えて起きている。Teslaの品質に対する評価は今のところ高くはなく、シートベルトチャイムの不具合はそのイメージをさらに強めるだけだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】未来の交通でも、自律走行車ではなく人間が運転するべきだ

高度に自動化された航空機を指揮するパイロットのように、自動化のレベルにかかわらず、すべての旅客輸送車両には人間のオペレーターが搭乗しなければならない。議会は、ほとんど規制されていない自律走行車(AV)技術の急速かつ性急な出現に対する適切な連邦政府の対応について議論しており、この安全基準を確認する機会を得ている。

毎日、米国中の交通機関では、第一線の労働者がバス、電車、バンを安全に運行している。彼らは緊急事態に対応し、身体障害者や高齢者のためのアクセシビリティを確保し、致命的なパンデミック時に乗客の安全を可能な限り確保している。これらの労働者は、乗客を乗せた車両を運転しながら、これらの職務を同時にこなすよう訓練されている。

ハイテク業界の中には「完全な」自律走行車で人間のオペレーターをなくすことができると主張する人がいるが、どのレベルの自動化でも彼らに取って代わることはできない。これは、議会とバイデン政権がテーブルから取り除かなければならない危険な考えである。

運輸労働者は、進化する輸送技術の最前線に身を置き取り組んでいる。私たちにとってイノベーションは生き方であり、何十年にもわたって次世代車両やシステムの実装に貢献してきた。しかし、今日私たちが目にしているのは、単なるイノベーションではなく、実証されていない、規制も不十分な無人運転車を道路に普及させることなのだ。

このような自動車を地域社会に氾濫させている技術や企業の利害関係者は、単に最高の安全基準で管理されておらず、厳格な連邦政府の監督や執行にも直面していないだけなのだ。この状況を変えなければならない。

AV業界のビジネスは、連邦政府の適切な規制の精査や重要な安全データの透明性基準を満たすことなく、売上と利益を追求するという、たった1つの目的に沿って設計されている。これらの企業は、自社のAV技術が安全かどうか、交通利用者や公共の利益を損なうかどうか、重要な公平性の目標を達成するかどうか、労働組合の良い仕事をなくすかどうかについて、白日の下にさらされる対話から逃れているのだ。その価値を証明する責任は、彼らにあるのだ。

とはいえ、政府が道路や交通機関へのこれらの自動車の普及を承認する前に、私たちは話し合いを持ち、強力な政策を制定しなければならない

今日のAVパイロットプログラムでは、最終的に段階的に廃止する予定のドライバーを、オペレーターではなく「モニター」と呼ぶ企業さえある。これは労働者に対する侮辱であり、乗客に対する策略である。彼らはモニターではなく、旅の安全を確保するために存在するプロなのだ。高度に自動化された商業用車両が、有資格のオンボードオペレーターを排除することがあってはならない、それは、高度3万フィート上空の民間航空機に自動操縦機能を持たせ、コックピットのパイロットを排除しようとするのと同じことだ。議会で可決される新しいAV法は、すべての旅客輸送事業において、人間のオペレーターの搭乗を義務付ける必要がある。

また、AVをどのように、あるい導入するかどうかを規制するために、明確なタイムラインをもって連邦政府の行動を義務づける法案も必要だ。これらの指示は、無人運転車が最高の安全基準を満たすことを保証するための基盤を確立しなければならない。「完全な自動運転」機能についてのTesla(テスラ)の主張をめぐって国家運輸安全委員会とTeslaの間で大きな論争があったことを受けて、配備される車両には人間の介入と制御能力を備えることが要求されなければならない。また、基準を厳格化し、運輸省による連邦政府の自動車安全要件の免除や放棄の発行に厳しい制限を設ける必要がある。今日、私たちの道路で目にするAVの実験車が、厳格な安全規制の対象になっていないことを知ったら、ほとんどのアメリカ人は恐怖を感じるだろう。

Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)運輸長官は、発表されたばかりのイノベーション原則を通じて、議論をAV業界のニーズから労働者や乗客のニーズへとシフトさせる重要なステップを踏み出した。ブティジェッジ氏はスキル、トレーニング、および「組合の選択」へのアクセスを拡大することによって「労働者に力を与える」政策を約束し、労働者が「イノベーションを形成するテーブルに座る」ことを保証している。これは、誰かを裕福にするのではなく、労働者と広範な公的利益を中心に据えた、大きな変化を意味する。議会はAV法案にこのアプローチを採用するのが賢明であろう。

労働者の席を確保することは、賢明な政策改革によって達成することができる。労働組合の多い交通機関は、AVのテストや配備が計画されたとき、労働者に事前通知をするよう要求されるべきだ。早期に労働者の視点を得ることで、貴重な経験と専門知識をプロセスに呼び込み、AVアプリケーションが安全で、単に従業員を排除して、その技術を奪うための道具ではないことを保証することができる。

労働者の声を高めるこの新しいアプローチは、願望ではなく、むしろ連邦政府の明確な政策の問題であるべきだ。それは、この委員会のAV法案と運輸省の政策に固定されるべきであり、雇用への影響、訓練の必要性、安全性、そして新しい技術の導入を可能にしてきた労使交渉プロセスを通じて管理されるべきものなのだ。

議会とバイデン政権は、技術企業や大企業の利益動機ではなく、労働者と公共の利益が、我々の輸送システムと道路におけるAV技術の未来を推進することを保証し、断固として行動するチャンスを持っているのだ。

編集部注:執筆者のJohn Samuelsen(ジョン・サミュエルセン)氏は、全米運輸労働者組合の国際会長

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

原文へ

(文:John Samuelsen、翻訳:Yuta Kaminishi)