Sense PhotonicsのフラッシュLiDARが量産体制に移行

自動運転車やドローンやロボットの界隈では、まだ理論の段階のものも含めてLiDAR(ライダー、自動運転用センサー)によるさまざまなソリューションがある。しかし、理論から大量生産への移行は、まず最初に理論を生むことよりも困難だろう。Sense Photonicsは、どうやらその部分を終えて、今ではその高度なフラッシュLiDARの予約販売を開始している。

LiDARはさまざまなタイプがあるが、これまで多く見られた回転式のタイプはその時代を終え、もっとコンパクトで信頼性も高い平面型タイプが主流になりつつある。LiDAR大手のLuminarもこちらへ乗り換えつつあるが、しかしSense Photonicsも静観はしてはいない。ただし、両社は長所がそれぞれ異なる。

Luminarや一部の企業は、狭い視界で数百フィート先の形状を検出する前向きタイプのLiDARを作っているが、Senseはもっと短い距離で物を広角で捉える。そしてそれは通常のカメラと相性がいいので、RGBの画像に奥行きデータをマップするのも朝飯前レベルに容易だ。

Sense Photonicsは従来のカメラの視野と奥行きデータを容易にマッチできるようにした

車の後部や側部に搭載したいLiDARはこういうタイプだ。そして、環境を広い視野で捉えて動物や子どもや自転車などを迅速にそして正確に検知する。でもこういう技術的な話は、同社がステルスを脱したときに記事にした

関連記事:28億円調達でライダーシーンに登場した新しいアプローチ

本日のニュースは、製品がプロトタイプを脱して生産のための設計になったこと。頑丈になったので埃や雨の環境でも外部に取り付けられる。性能もアップして状況によっては最大距離が40mを超えた。前より相当大きい。

2900ドルの基本製品は視野角が80×30度、もっと広い95×75度のもある。LiDARの標準より相当大きく、しかも他社のフラッシュLiDARよりも精度が高い。ただしワイドにするために犠牲にした部分もある。同社の特許技術により、LiDARの検出器はレーザーのエミッター以外ならどこにでも取り付けられる。車全体の設計も多少やりやすくなるだろう。

当然ながらこれは、ネットで気軽に買うというものではなく、自動運転車の本格的な研究開発やテストをしている企業がバルクで買う。

自動運転車の大量生産時代になったとき、LiDARはSense Photonicsとなるのか、それとも幸運な他社製品になるのか、今から予見することはできない。でも同社の強みは、製品が今すでに現存していることだ。同社のLiDARについてもっと知りたい人は、こちらへどうぞ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

イーロン・マスクがテスラのフル自動運転機能を「アーリーアクセス」として年内公開すると発表

Tesla(テスラ)のCEOを務めるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間10月23日の決算電話会見で、同社のフル自動運転モードを早ければ今年末に完全実装リリースする可能性があると語った。提供形態は「アーリーアクセス」、事実上の限定ベータとなる見込みでマスク氏はだ確定ではないと念を押した。

「厳しい日程だが、年内にフル自動運転の少なくとも限定リリースはできそうだ」と同氏が会見で語った。そして、年内の限定プライベートベータについて「確実ではない」が「順調に進んでいるようだ」と付け加えた。

これに先立ち、テスラの自動無人運転パーキングロット「Smart Summon」が先月提供された。これは、テスラオーナーが駐車場内で車を呼び出すと歩道まで迎えにきてくれる仕組みだ。初期のテスト利用での成否はさまざまだったが、改善されたソフトウェアアップデートを「来週頃」に公開すると語った。

このSmart Summonのアップデートは、9月末にリリースされて以来「100万回以上」利用された結果のデータに基づいて改善されている。

テスラが公開を予定しているフル自動運転(FSD)モードを利用するには、オーナーはFSDアップグレード・パッケージを所有している必要がある。このパッケージは、8月に価格が6000ドルから7000ドルに価格改定された。

Teslaは今年4月から新しい自動運転コンピューターを全新車に搭載し、独自のカスタムチップへと移行した。これはSD機能をソフトウェアのみのアップデートで実現するためで、かつて同社は前の世代の自動運転コンピューターでも可能だと言っていたが、そのチャレンジが予想以上に困難だったことは明らかだ。同機能の公開時期も複数回延期されている。

マスク氏はその後の質問に対して、「アーリーアクセス」の公開は今年遅くになるかもしれないが、「ドライバーが注意を払わなくてもいいほど信頼性の高い」フル自動運転は「来年末」までかかるだろうと答えた。

ここでの「全機能実装済みFSD」の意味を明確にするために、同氏は後にテスラの自動運転技術の評価基準を紹介し、「無人運転は可能だがときおり監視と介入が必要」であると説明した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

テスラのQ3決算は予想に反して黒字、株価は時間外で急伸

米国時間10月23日の米株式市場引け後に発表された決算によると、Tesla(テスラ)の第3四半期は2期の赤字を経て再び黒字となった。これはウォール・ストリートを驚かせ、時間外取引で同社の株価は急伸した。

同社の第3四半期の純利益は1億4300万ドル(約155億円)、1株あたり80セントで、前年同期は3億1100万ドル(約337億円)、1株あたり1.82ドルだった。

売上高は63億ドル(約6840億円)で、前期の63億5000万ドル(約6890億円)よりわずかに減り、昨年同期に比べると7.5%ほど少なかった。しかしこれはアナリストの予想の範囲内だった。この第3四半期決算の発表を受けて、テスラ株は時間外取引で17%上昇した。

テスラはまた自動車事業の売上高総利益率も改善させた。これは財政状態を示す重要な指標で、前期の18.9%から今期は22.8%に上昇した。ただし、25.8%だった昨年同期ほどには改善していない。その一方で、同社はフリーキャッシュフローが3億7100万ドル(約400億円)だったことも明らかにした。現金および現金同等物は53億ドル(約5750億円)に増えた。

今回の第3四半期決算にはテスラにとって前向きな要素が多く含まれ、このところ続いていた赤字から脱却した。上海工場の建設は予定よりも早く進み、試験生産が始まったとも述べた。また、Model Yも計画が前倒しとなるようだ。2020年夏までに生産が始まることが見込まれている。

前期は過去最高の納車台数を記録し、63億ドル(約6800億円)の売上高だったにもかかわらず、予想を上回る4億800万ドル(約440億円)の赤字だった。

画像クレジット:Tesla

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(翻訳:Mizoguchi)

Bird傘下のScootが新しい電動モペッドを展開

Bird傘下のScootが、Scoot Mopedを発表した。一見すると、6月に発表されたBirdの2人乗り自転車、Cruiser(クルーザー)に似ている。Cruiserは市場によって電動アシストかペグのみの2種類がある。

Scoot Mopedは1人乗りだが、ScootによればScoot MopedのデザインとエンジニアリングはBirdのクルーザーをベースにしているという。

Birdのクルーザー

Scoot Mopedはまずパイロットプログラムとしてロサンゼルスで提供を開始する。今年中にはほかの都市にも展開する計画だ。利用者は18歳以上で、ヘルメットを着用する必要がある。ヘルメットはレンタルのモペッドに付属する。

Scootは、2012年から米国サンフランシスコで、2018年5月からはスペイン・バルセロナで一般的な電動モペッドのサービスを運営している。サンフランシスコでは最大時速30マイル(約48km)、バルセロナでは最大時速60マイル(約96km)で運転できる。一方、新しいモペッドは最高時速20マイル(約32km)に制限される。

Birdは6月にScootをおよそ2500万ドル(約27億円)で買収した。それ以降、Birdの評価額は25億ドル(約2700億円)となり、さらに2億7500万ドル(約298億円)を調達した。

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(翻訳:Kaori Koyama)

電気自動車充電インフラの世界標準化を目指すEV Connectに三井物産らが戦略的投資

電気自動車の充電を管理するソフトウェアを販売している米国ロサンゼルス拠点のEV Connectが、三井物産株式会社とEcosystem Integrity FundがリードするシリーズBのラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した。同社のこれまでの調達総額は、2500万ドル(約27億円)になる。

EV ConnectのCEOで創業者のJordan Ramer(ジョーダン・レーマー)氏は「EV Connectのクラウドプラットホームはオープンスタンダードのアーキテクチャにより、ハードウェアを特定しない。すなわちEV Connectはさまざまなハードウェアベンダーに、充電ステーションをモニタ、管理、メンテナンスする方法を提供する。その究極の目標は、業界を各社バラバラの閉じたシステムから解放してオープンなシステムに統一することだ」と語る。

EV Connectのアプローチは二段構えだ。同社はそのネットワーク上で、現状で1000の電気自動車充電サイトを提供し管理している。一方で同社はスマートフォンのアプリにより、電気自動車のドライバーに充電ステーションの状態へのリアルタイムのアクセスを与える。

スマートフォンアプリのほかに、企業がカスタマイズして利用するクラウドベースのソフトウェアもあり、その現在の顧客には Yahoo!、Marriott(マリオットホテル)、Hilton(ヒルトン)、Western Digital(ウエスタンデジタル)、ロサンゼルス都市圏交通局、ニューヨーク電力公社などが名を連ねる。

この投資ラウンドの一環として三井物産とEV Connectは、電気自動車の充電インフラストラクチャの新しいビジネスモデルの共同開発で協定を結んだ。EV Connectは三井物産との協働により電気自動車の充電に関わるさまざまなアプリケーションを開発して、充電のコストを下げ、利用の最大化を目指す。その研究開発の主な対象は、企業や団体の全車両管理やエネルギー管理などだ。

三井物産のインフラストラクチャプロジェクト事業部最高執行責任者である中井一雅氏は「EV Connectのインフラストラクチャ管理技術は、三井物産の従来から強い分野でありパートナーも多いエネルギーと電力業界における電気自動車革命を加速すると確信している。弊社のユニークなエンジニアリング能力とEV ConnectのクラウドベースのEVインフラストラクチャが合わされば、EVのインフラストラクチャが現在エネルギー管理企業に課している課題を解決する新しいビジネスモデルの開発が可能になる」と声明でコメントしている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ハーレーダビッドソンが電動バイクのLiveWireの製造を再開

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は、充電に関する問題が1台の車両に限定されたものだと判断した後に、同社の電動バイクことLiveWireの生産と配送を再開した。

Harley-Davidsonは、1台の車両が「非標準状態」になったことを発見し、同社初の電動バイクの生産と配送を今週停止した。Harley-Davidsonは、出荷済みのLiveWireのリコールはおこなわなかったが、車両の生産と配送を停止し、追加のテストと分析を開始した。

当時、Harley-Davidsonはこの問題を説明しなかったが、TechCrunchはこれが充電に関連する問題であるとの情報を掴んでいる。

「厳密な分析を終了し、今週からLiveWireの製造と配送を再開した」と、Harley-DavidsonはTechCrunchにメールでコメントした。「ライダーはLiveWireのバイクに乗車し、あらゆる方法でバイクを充電できる。LiveWireの製造を一時的に停止したことにより、1台のオートバイで確認された非標準状態が、特異な事象であることを確認した」

Harley-Davidsonは、今回の事象は同社の品質保証対策が設計どおりに機能していることを示しているとつけくわえた。

LiveWireの出荷台数が増加し始めたわずか数週間後に起きた今回の生産停止は、Harley-Davidsonによる電動バイクへの進出に水を差した。この2万9799ドル(約320万円)で105馬力の電気バイクは、同社が開発したバイク、自転車、スクーターに広がる将来のEVモビリティのラインアップの第1号となる。

LiveWireは、Harley-Davidsonのないガソリン式バイクを補完する製品であり、代替製品ではない。2019年に生産が開始され、9月27日からディーラーへの納入が開始された。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ボルボが輸送車に特化した自動運転車の事業部を立ち上げ

Volvo Group(ボルボグループ)が、鉱業や港湾業など、あらゆる種類のロジスティクスのハブ間で物を移動する、業務用専用の自動運転輸送にフォーカスした専門的な事業部を設立した。同社はこれまで、すでに個々のプロジェクトで採石や鉱山、スウェーデンのイェーテボリにある取扱量の多い港などで自動運転技術を導入してきた。

同社は自動運転技術のこの種の利用への需要が増えているのを見て、それに特化した事業部門を作ろうと決めたようだ。新たに作ったグループはVolvo Autonomous Solutionsと名付けられ、その公式ミッションを「自動運転による輸送の開発、商用化、および売り上げを加速すること」とした。そのフォーカスする輸送形式は「大量の品物や素材を一定のルートで一定の受け入れ先へ移動するニーズに対応すること」だ。

「このセクターに期待される成長は顧客からの直接的なフィードバックにも由来している」と同社は言う。Volvo Groupの社長でCEOのMartin Lundstedt(マーティン・ルンシュテット)氏は声明中で、「顧客からの問い合わせが非常に増えている」と述べている。

公式には、Volvo Autonomous Solutionsは2020年の1月まで親会社の傘下というかたちになる。しかし、その後の新しいトップはすでに探しており、同社がこの新興市場のポテンシャルを大きいと見ていることは明らかだ。

消費者向け自動車の自動運転とは違って一定ルートで製品や商品を運ぶ自動運転輸送は、現代のテクノロジーの能力の大きさや多様さによくマッチしている。自動運転をこのように業務用に利用すれば、例えば人間が運転する車の多い都市部における運転の混沌と複雑さを解消でき、また一定のルートを維持することによる輸送効率の向上も期待できる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

テスラの中国でのEV生産に当局がゴーサイン

中国の産業を管轄する大臣は、政府の自動車製造メーカー承認リストにTesla(テスラ)を加えた。このリスト入りは、同社の中国での電気自動車(EV)生産が認可されたことを意味する。

ロイターが、中国工業情報化部(MIIT)の大臣が出したリストにTeslaが含まれたと報じた。中国のテックサイトもまたこのニュースを報じ、MIITの承認のスクリーンショットを掲載した。Teslaはリストの一番上に載っている。TechCrunchはこの件についてTeslaに問い合わせており、反応があれば記事をアップデートする。

Teslaは上海に20億ドル(約2200億円)かけて工場を建設中で、これは米国外に構える初の製造施設となる。7月にTeslaは四半期決算に伴う株主への手紙の中で「Model 3の生産は予定どおり上海工場で年末までに開始する」と記載されている。売上の増加と輸送や関税のコスト回避を望むなら、11月までの生産開始が至上命題だ。

当時「Teslaは生産第一段階に備えて第2四半期中に機械類を工場に搬入する」としていた。

同社はまた「上海ギガファクトリーのタイミングにもよるが、2020年6月30日までの12カ月間で、グローバルで50万台超の生産を目標とする」と話していた。

中国の工場の生産能力は年間15万台で、カリフォルニア州フリーモントの第2世代Model 3のラインをよりシンプルに、そして費用対効果を高くしたものになるとのこと。同社はまた、第2世代Model 3のラインは、フリーモントとネバダ州スパークスのギガファクトリーのModel 3関連のラインより、ユニットあたりの費用は少なくとも50%安くなる、と述べていた。

画像クレジット:Tesla

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(翻訳:Mizoguchi)

完全自動航行する「メイフラワー号」が2020年にIBMのAI技術で大西洋を横断

完全自動航行船 「メイフラワー号」が来年9月に大西洋を航海する。自動とは程遠かった最初のメイフラワー号の航海から400周年を記念する。過去4世紀の技術進歩を振り返る素朴な方法だが、自動航海技術の重要なデモンストレーションでもある。海洋研究開発組織であるPromare(プロメア)がIBMから技術面の支援を受けて取り組む。

自動航行するメイフラワー号は表面を覆うソーラーパネルのほか、ディーゼルおよび風力タービンによる推進力で、英国のプリマスから米国マサチューセッツ州のプリマスまでの3220マイル(約5200km)の航海に挑む。成功すれば大西洋を自動運航する初めてのフルサイズの船舶になる。Promareは、この試みによってさまざまな自動航行船の研究開発への扉が開かれることを望んでいる。

船にはプリマス大学の研究者が開発した研究用ポッドを搭載する。具体的には3つあり、海上でのサイバーセキュリティ、海洋哺乳類の観察、海上マイクロプラスチック問題の分野で実験を行う。

IBMがこのミッションでリサーチとナビゲーションの技術面をサポートした。Power Systemサーバーが支えるPowerAIビジョンテクノロジーを提供したのはその一例。Promareと開発した深層学習ベースのテクノロジーが、レーダー、ライダー(レーザーを使った距離測定機器)、光学カメラを駆使して、海上の障害物やさまざまな危険を回避する。

システムはローカル処理とリモート処理の両方を想定した設計になっている。船上のデバイスは通信接続せずに動作可能だ。条件が整って両岸どちらかのノードを介して通信できる場合、本部から定期的に船上のデバイスにアクセスできる。

これは非常にクールなプロジェクトだ。海、深い湖、その他の水生環境の研究方法を変えるかもしれない。自動運航するメイフラワーへの乗船を仮想体験できるVRやARツールを開発する計画もある。来年の航海に向けてプロジェクトの進行から目が離せない。

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(翻訳:Mizoguchi)

電動キックボードのLuupとmobby ride、規制緩和に向け“規制官庁の認定を受けた”シェアリング実証へ

日本で電動キックボードのシェアリング事業の社会実装を目指すLuupmobby rideの2社は10月17日、規制の見直しに向け、規制官庁の認定を受けた実証を行うことを発表した。Luupは12月までを実証期間とし、横浜国立大学の常盤台キャンパス内の一部区域で電動キックボードのシェアリング実証を。mobby rideは10月24日に九州大学の伊都キャンパス内で同社の「mobby」の実証を開始する。

この両社の実証計画は17日、「規制のサンドボックス制度」に認定された。規制のサンドボックス制度は、事業者が規制官庁の認定を受けた実証を行い、得られた情報やデータをもとに規制の見直しに繋げていく制度だ。

日本の現行規制上では、電動キックボードは原付自転車として扱われる。そのため、公道で走行するには国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動付自転車登録をし、免許証を携帯する必要がある。だが、国や地域によってルールに差があるものの、電動キックボード事業が普及し人気を集めている理由は「アプリで機体を探し解錠して乗るだけという」という手軽さだ。免許証の携帯が必要性の場合、ユーザーを限定してしまう。加えて、原付自転車としての扱いの場合、車道のみ走行可であり路側帯には入れないため、また、車と比較し速度が遅いため、安全面が懸念される。単に公道を走れる状態にした電動キックボードも販売されているが、前述の理由などから、これではいつ事故が起きてもおかしくない、との指摘もある。

一方、Luupがメインの事業として目指しているのは販売ではなく、自治体と連携し「街の機能の1つ」としての役割を果たすシェアリング事業だ。同社はテクノロジーにより「歩道か車道、どちらを走行しているか」などは検知できるが、「どのような道がどれくらい危ないか」の知見はない、と代表取締役兼CEOの岡井大輝氏は話す。だが、自治体や地元の警察はどこでどれくらいの事故が起きているかや、混雑しやすいエリアや時間帯を理解している。そのため、「望ましくない特定の状況下ではサービスを提供しない」などとし、街、そして利用者にとって安心で安全なサービスを展開するには、自治体との連携が不可欠だと岡井氏は言う。

Luup、そして同じくシェアリング事業の社会実装を目指すmobby rideの2社のテックカンパニーは、「日本における電動キックボード事業のあり方」を模索している最中だ。そのような2社にとって、これまでに行なってきた実証実験や体験会とは違った、大学構内で行う自動車や歩行者が通るなど実際の公道に近い形で電動キックボードのシェアリング事業の実証は、大きな意味を持つだろう。

Luupは「電動キックボードのシェアリング事業の安全な社会実装」にはどのような走行条件が必要なのか、走行データを取得し、主務省庁に提出する。そうした上で、関係省庁と継続的な協議を行いながら、「サービス内容や機体、走行状況のあり方」の検討を進める。mobby rideは「検証結果および関係官庁からの見解をもって、福岡市内での公道走行に向けて国をはじめとする関係各所と協議してまいります」としている。

規制のサンドボックス制度は2018年6月に施行された「生産性向上特別措置法」に基づき、「新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進するため」創設された。実証後、「当該実証計画に規定された新技術等関係規定を所管」する大臣は、規制の特例措置の整備および適用の状況、諸外国における同様の規制の状況、技術の進歩の状況を踏まえ検討を加え、規制の撤廃や緩和に必要な法制上の措置やその他の措置を講ずるものとされている。

Uberがパリで電動スクーターシェアのCityscootと連携、アプリにサービス統合

Uberは、複数のサービスを1つのサービスを提供するアプリから提供してスーパーアプリになりたいらしい。そのため同社は、フランスのスタートアップCityscoot(シティスクート)との統合を発表した。

Cityscootは、置き場所などが決まっていない電動スクーター、いわゆるモペットのサービスだ。浮遊型だからアプリをオープンして最寄りの車を見つけたら、それをアンロックして乗れる。

それにCityscootは目下好調で、パリに4000台のスクーターがある。資金は4000万ユーロ(約48億円)を調達して、ニースやミラノ、ローマにも進出した。

数日後にはUberのCityscootとの統合がアプリにも現れて、Uberアプリからスクーターを見つけてアンロックし、そのまま決済もできるようになる。Cityscootの乗車賃は1分0.29ユーロ(約35円)だ。

Cityscoot Uber

これでCityscootの利用者は増え、Uberの売上も増える。もちろん両社の間には、利益折半などの契約があるだろう。

Uberはパリでは今や、単なるライドシェアのアプリではない。すでに自転車とスクーターサービスのJumpをローンチしている。しかも今後は、パリの公共交通機関に進出する計画がある。

UberxCityscoot 2

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

シェアリング事業でない電動キックボードに存在意義はあるのか

Makuakeで先行発売中の「Kintone α GO」

日本ではLuupやmobby ride、mymerit、加えて海外のキープレイヤーであるLimeやBirdなどのスタートアップが、実証実験などを通じて電動キックボードのシェアリング事業の本格的な社会実装を目指している。

だが、この国には「所有」から「共有」へのシフトという国際的なトレンドを逆行するプレイヤーも存在する。Makuakeで「Kintone α GO」の先行販売を開始したKintoneだ。

Kintone α GOは電動キックボードに国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動付自転車登録を可能に。そうすることで、日本の公道を走行できるようにした。

一方でシェアリング事業の展開を目指す各社は現在、サービス提供の開始を目指し、超保守的とも言えるほど街や自治体との連携体制を重要視している。電動キックボードは海外では事故に関する報道なども目立つため、慎重に話を進めなければ満たすべきニーズも満たせなくなってしまうからだ。

Luupは4月、浜松市、奈良市、四日市市、多摩市、横瀬町との連携協定を締結した際に、「まずは電動キックボードの安全性や利便性の検証のために実証実験を行って参ります」とプレスリリースに綴った。LimeとBirdは「国家戦略区特区制度」を活用し電動キックボードの普及を加速できないかと考える福岡市で実証実験を行い、同市でのサービスインを目指し奮闘中だ。

KintoneのMakuakeのプロジェクトは、同社いわく開始から約30分で目標金額の50万円に到達。10月15日現在、「集まっている金額」は1200万円を超えているなど、注目を集めているのは確かだ。マイクロモビリティ推進協議会の会長も務めるLuup代表の岡井大輝氏は9月10日のプレスリリースで「電動キックボードは、世界で普及が進む一方で、日本の社会においてどういった形での実装が最も安全で望ましいのかが分かっていない状況です」と述べているが、単に公道での走行を可能にしたKintoneの電動キックボードは、果たして社会からの理解や市民権は得られるのだろうか。

そして、以前にTechCrunch Japanの取材に応じたLimeCEOBrad Baoは、同社の電動キックボード事業はシェアリングモデルである点がキモであり、所有せずに必要な時にいつでもアプリから機体を探すことができるという利便性がユーザーに愛されており、事業の急成長に繋がっていると説明した。Kintoneは「世界のスタンダードになっている『新しい移動の体験』を提供したいと考え、道路交通法に適合したモデルの開発に至りました」としている。電動であるがゆえにエコであり短距離移動を便利にするマイクロモビリティのソリューションであるという点は他社と変わりないが、もし重さ10kgだというKintone α GOを常備するユーザーが増えたとしても、「世界のスタンダードになっている」電動キックボードのシェアリング事業の本格的な展開は日本ではまだ先の話だ。

ハーレーダビッドソンの電動バイク「LiveWire」が発売直後に製造停止へ

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は、同社初の電動モーターサイクル「LiveWire」に仕様とは異なる点を発見されたとして製造を停止した。

同社は、すでに出荷されたLiveWireをリコールすることはないとTechCrunchに語った。同社が製造と出荷を中止したことはReuters(ロイター)が最初に報じた。

「最近の最終品質検査で仕様とは異なる点が発見されたため、製造と販売を保留し、追加のテストと分析を開始して順調に進めている」とハーレーダビッドソンが声明で語った。

「当社のLiveWireディーラーおよび顧客とは密な連絡を取っており、今後もモーターサイクルに乗り続けられることを伝えた。高品質を維持することは常にわれわれの最優先事項だ」。いつ製造、販売を再開できるのか、あるいは異常状態に関する詳細情報についてハーレーダビッドソンは発信していない。

製造中止は同社の電動化推進を脅かすものだ。2万9799ドル(325万円)、105馬力の電動モーターサイクルは、将来モーターサイクルから自転車、スクーターへと広がる同社のEVラインアップの先陣を切る。

LiveWireは数年前からの情報やコンセプト車両のデモンストレーションのあと、2019年に製造開始された。ディーラーへの配車は9月27日から始まった。

LiveWireとそれに続くEV製品群は、ハーレーダビッドソン伝統の内燃式クルーザー・モータ位サイクルを補完するものであり、置き換えるものではない。

関連記事:LiveWireで考えるハーレー・ダビッドソンの電動シフト

景気後退以来、米国でのモーターサイクルの新車販売は40歳以下の顧客では特に不調が続いている。 同社の売上は過去10年間下降している。同社の電動モーターサイクルへのシフトは、忠実なガソリンモーターサイクル顧客を維持しつつミレニアルやオンデマンドモビリティー市場にアピールする製品を作ろうというハーレーダビッドソンの賭けだ。

これで米国を象徴するモーターサイクル会社は、Zeroを始めとする数多い電動バイクスタートアップとの戦いに遅れを取ることなく、既存モーターサイクル会社の中でEVのリーダーとして前進することができる。しかし、今回の製造中止はその戦略を阻むことになるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ポルシェが完全電動車の低価格モデル「Tycan 4S」を発表

Porsche(ポルシェ)が同社で3番目の完全電動自動車「Taycan 4S」(タイカン4S)を米国時間10月14日に発表した。

Taycan 4Sには「パフォーマンス・バッテリー・プラス」(performance-battery-plus)オプションがあり、外観は9月に発表されたTaycan Turbo 2とよく似ている。実際、Taycan 4Sを含め同シリーズはいずれも同じシャシーとサスペンション、永久磁石同期モータなどを使用している。しかし今回の車種は、やや軽量かつ低価格で、わずか7週間前に発表されたTaycanのハイエンドモデルより少し遅い。

ポルシェは以前からTaycanには複数のバージョンを作ると言ってきた。今年9月、同社は10億ドルの初期投資の成果として、全電動4ドアスポーツカーの上位車種であるTaycan Turbo SおよびTaycan Turboをそれぞれ18万5000ドル(約2000万円)と15万900ドル(約1630万円)で発表した。それに対して、Taycan 4Sのベースモデルは最上位モデルより8万ドル安い。

Taycan 4Sのバッテリーサイズは2種類ある。標準モデルは10万3800ドル(約1120万円)からで、79.2 kWhバッテリーパックと429馬力(320kW)を生み出す電動モーター2台を備える。ランチコントロールを有効にすると522馬力(384kW)に上がる。

Taycan 4Sのパフォーマンス・バッテリー・プラスのオプションを装備した場合は価格が11万380ドル(約1200万円)となり、93.4 kWhのバッテリーとデュアル電動モーターが最大563馬力(420kW)を生み出す。いずれの4Sモデルも最高速度は155mph(250km/h)で、0~60mph(96km/h)を3.8秒で走る。Taycan 4Sは2020年春に米国ディーラーに届く予定だ。

4Sの性能は、最も強力なTaycanで616馬力(ランチコントロール有効時は751馬力)のTurbl Sとは比較にならない。Turbo Sの最大トルクは774ポンド・フィート(107.01kgf·m)、0~60mph加速は2.6秒。当然価格もTurbo Sのほうが高く18万5000ドル(約2000万円)からだ。

ポルシェはいずれのTycan Turbo車についてもまだEPA予測航続距離を発表していない。欧州WLTP基準の1回充電当たりの予測航続距離は、Turbo Sで256マイル(約412km)、Turboで280マイル(約450km)となっている。

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関連記事:ポルシェのEVTycan」とテスラ「Model S」をスペックで比較

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トヨタのコンセプトカーLQは車載AIによって人間と友達になる


トヨタは、人を引きつけるような未来の車を開発するためのカギは、車と運転者の間に真の関係を築くことだという予想に対する自信をますます深めている。この「運転者」の部分は、自動運転モードを使う場合には「乗客」と読み替える必要がある。トヨタの新しいLQコンセプトは、2017年にCESで発表されたConcept-iをさらに進化させた車で、「Yui」という仮想車載アシスタントも搭載している。

LQは、Concept-iと共通するデザインの系統とテーマを継承している。その研究開発を担当するTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)と連携することで、LQはさらに高度な自動運転機能を獲得した。また、アップデートされたYuiは、運転者に対してより緊密に応答し、運転者の習性や好みを学習して適応する。

Yuiは、音声インターフェイスはもちろん、照明、空調、さらには香りを発散させて運転者と対話し、運転者の気分を整え、車と人間の絆を強くする。また、LQに搭載された自動運転機能から、運転者が操作を引き継がなければならないような場合には、運転者に注意力を維持するよう促すこともできる。

自動運転の能力についてLQは、SAEレベル4の自動運転機能を発揮できるように設計されている。つまり、運転席に座った人が、まったく何もしなくても完全に自動運転できるだけの能力を備えているのだ。パナソニックと共同開発した「Automated Valet」(自動従者)技術も自慢の種だ。これは、駐車場と駐車場、あるいは送迎場所の間を自動的に運行するもの。トヨタによれば、アクセシビリティに関する援助が必要な運転者を手助けすることができるという。

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トヨタとしては、そうすることが理にかなう場合には、運転者がシートに座っている必要があると認識している。そこでLQには、新たに設計されたシートシステムを採用している。座席の中に埋め込まれた空気袋を膨らませて、運転者が正面を向くよう姿勢を正すことができる。また、特に注意力を必要とする局面では、運転者に冷たい空気を吹きかけたりもする。普段は、空気袋はゆっくりとした呼吸リズムを模倣し、穏やかに膨らんだり縮んだりして、運転者にもリラックスした呼吸パターンを促す。

また、色分けされた内装の照明によって、Yuiは運転者や乗客に何かを伝えることができる。たとえば、床に埋め込まれた照明の色を変えることで、車に内蔵されたAIアシスタントが、誰に対応しているのかを指し示す。さらに外部にも、プログラム可能なパターンのプロジェクターを組み込んだヘッドライトなどがあり、車の外にいる人にも視覚的に「語りかける」ことが可能となっている。LQのダッシュボードに内蔵されたディスプレイは、すべてOLEDなので、視認性は高く、消費電力は少ない。また排気ガスの浄化システムも備え、この車の室内の空気の清浄度を新たなレベルにまで高めることに貢献している。

もちろんこれはコンセプトカーなので、こうした技術の多くはこの段階ではまだ理論と現実が混在している。しかしトヨタは、未来の車を機能的なだけでなく親しみやすいものにするというビジョンに熱中しているように見える。私もそれには大いに興味がある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Waymoとルノーがパリで2024オリンピックに向けて自動運転交通ルートを探究

自動運転者を開発しているWaymo(ウェイモ)とフランス大手の自動車メーカーであるルノーが共同で、シャルルドゴール空港とパリに隣接する高層ビルの多い巨大業務地区ラデファンスを結ぶ、自動運転車による交通機関を作ろうとしている。ラデファンスには、大きなショッピングセンターもある。これはルノーと日産がこの前Waymoと交わした契約の一環であり、それにより3社は、日本とフランスにおける自動運転車による交通サービスの可能性を探ろうとしている。

とくにこのルートは、2024年夏にパリで開催されるオリンピックに備える準備的プロジェクトとして研究されている。目標は、パリのあるイルドフランス地域の住民に交通の便を提供し、さらに観光客や外国からの訪問者には交通手段の選択肢を増やすことだ。地元は、さまざまなプロジェクトから成る自動運転インフラストラクチャの開発に1億ユーロ(約120億円)を投ずる。

Waymoの自動車事業のチーフでパートナーシップ担当のAdam Frost(アダム・フロスト)氏は声明で「誰もが認めるとおり、フランスは世界のモビリティのリーダーだ。そして弊社はイルドフランス地域圏およびパートナーのルノーグループと協働して、Waymo Driver事業をパリシャルルドゴール空港とパリのラデファンスを結ぶルートに展開することを探究したい」とコメントしている。

特定のニーズを満たすルートを、しかもオリンピックのようなビッグイベントにタイミングを合わせて事業化することは、Waymoをはじめ自動運転サービスの展開にフォーカスしている人びとにとって、パイロット事業の好機だ。なぜならそれは、需要と規制免除とモチベーションと自治体やパートナーからのサポートの完全なブレンドだから。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Uberが食料雑貨宅配サービスのコーナーショップを買収へ

Uber(ウーバー)はCornershop(コーナーショップ)を買収する。Cornershopは食料雑貨配達のスタートアップで、ラテンアメリカ市場にてサービスを提供し、最近は北米初となる都市トロントでのサービスへおシフトした。Uberは米国時間10月11日、必要な規制認可を受けた後に2020年初頭にCornershopの株式の過半数を買収すると発表した。

Cornershopは2015年にOskar Hjertonsson(オスカー・ヘルトンソン)氏、Daniel Undurraga(ダニエル・ウンドゥラガ)氏、Juan Pablo Cuevas(フアン・パブロ・クエバス)氏によって設立された。なお、本社はチリにある。Uberによると、Cornershopは現在の形態でUberのもとで運営され、取締役会の大半はUber出身者が構成するという。

4ラウンドの資金調達でCornershopは、Accel、Jackson Square Venturesなどから3170万ドル(約34億円)を調達している。同社はWalmart(ウォルマート)によって2億2500万ドル(約240億円)で買収されると2018年9月に発表されていたが、メキシコの独禁法当局がそれを阻止したため、今年6月に決裂した。

しかし、WalmartはCornershopとの関係を保っており、つい昨日までトロントで同スタートアップと共にサービスを提供していた。Uberは以前、Walmartとの提携を含め食料雑貨の配達を実験しており、UberでCEOを務めるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏はUber Eatsの成功を考えると、食料雑貨の配達は同社が事業を拡大するのに適した分野であると述べた。Cornershopの競合企業にはInstacartやPostmatesなどの強豪がいるが、Uber Eatsも当初はずっと有名な企業との競争に直面していた。

この買収はまだ規制当局の承認が必要で、Walmartの買収が失敗したのもそれが理由であり、今後を見守る必要がある。これまで、Uberは食料雑貨の分野ではなんの目的も隠しておらず、なんらかの形でビジネスは成功しそうだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ポルシェとボーイングは高級電動飛行車を共同開発へ

電動の垂直離着陸機(eVTOL)の業界は競争が激化している。多くの企業が、業界に旋風を巻き起こすことができそうなパートナーを探している。そのためには、一般向けの商用の空の旅の実現に向けて、技術的、および規制に関するハードルを克服しなければならない。そして今、自動車メーカーのポルシェ(Porsche)は、ボーイング(Boeing)との新たなパートナーシップを確立して、この分野に殴り込みをかけようとしている。両社は、「高級」eVTOLのコンセプトを共同で開発するための新たな覚書を締結した。

この新しいパートナーシップでは、都市の空中モビリティの時代において、「高級」であることが、どのような形の製品として実を結ぶのかを探求する。まずは、航空機の設計から、実際に飛行可能なプロトタイプの開発とテストまでを協力して遂行する。さらに、高級な航空サービスの潜在的な市場が、どんなものになるのかを研究する。

皮肉なことに、近い将来においては、空中モビリティのサービスは、コスト、アクセス性、利用方法、どれをとっても「高級」なものにならざるを得ないと思われる。すでにUberや、他の会社は、短距離用のコミューターヘリのサービスを導入して、混雑した空港のハブ間を接続している。こうしたサービスのコストを見れば、それが都市間や空港間を結ぶ大量輸送手段の代わりになるものではないことは明白だ。

それでも、今回のポルシェとボーイングの提携は、空中モビリティが、価格、サービスのレベル、アクセス性などの点で、将来広がりを見せることに期待したものだろう。特にポルシェは、都市の航空輸送が2025年ごろから急激に増加する、という自社のコンサルティンググループによる調査結果を拠り所としている。それが、今回の提携を後押ししたのは間違いない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ダイソンが電気自動車の開発を断念、全固体バッテリー製造に方向転換

Dyson(ダイソン)は電気自動車の開発を中止したことを発表した。商業的に実現可能な車を作ることができないと判断し、プロジェクトの買い手も見つからなかったためだ。

先進技術の掃除機と扇風機で知られる同社は、現地時間10月10日に発表した声明で「自動車チームは素晴らしい車を開発したがプロジェクトは中止することを決定した」と語った。ダイソンは同プロジェクトの引き取り手も探したがまだ見つかっていないとも書いている。

2017年9月、同社はバッテリー式完全電動駆動自動車を開発中で2020年までに発売すると発表した。2018年10月に同社の取締役会は、最新技術による自動車製造設備をシンガポールに建設することを承認した。2階建ての工場は2020年に完成する予定だった。

ダイソンは電気自動車関連技術から完全に手を引いたわけではなく、今もシンガポールに対して将来を約束している。同社は「全固体電池の製造およびセンシング技術、視覚システム、ロボティクス、機械学習/AIの開発に向けた25億ポンド(3356億円)の投資プログラムを継続する」と創業者のJames Dyson(ジェームズ・ダイソン)氏が声明で語った。

「我々のバッテリーは、ダイソンが新しい刺激的な方向へと向かう上で必ず役に立つものだ」と語り、同社の投資意欲は衰えることがなく、英国、シンガポールの両国で引き続き基盤を固めていくことを言い添えた。

ダイソン氏は、開発中止は製品の失敗でもチームの失敗でもないと語った。同社はプロジェクトに関わっていた社員には新たな役割を与えるつもりであり、ほとんどの社員を社内で受け入れるだけの職があるという。

「我々は設立当初からリスクを取り、新しい製品とテクノロジーで現状に挑戦する道を選んできた」とダイソン氏が声明で語った。「こうしたやり方は進歩を促すが決して楽な旅ではなく、成功への道はまっすぐではなかった。方向転換したプロジェクトはこれが初めてではなく、おそらく最後でもない。私は今まで通りダイソンの未来を大いに楽しみにしている。我々の熱意はかつてないほど強く、投資能力はかつてないほど高く、チームはかつてないほど協力だ」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Waymoが顧客にメールで完全自動運転車サービスの到来を告げる

Google(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)傘下で自動運転車を研究・開発しているWaymo(ウェイモ)が、そのライドシェアアプリの顧客に送ったメールで「今度乗車されるときは人間のセーフティードライバーがいないかもしれない」と告げた。そのメールは、コピーがRedditにポストされて広まった。

メールのタイトルは「Completely driverless Waymo cars are on the way」(運転手がまったくいないWaymoカーがもうすぐやってくる)で、米国南西部にあるアリゾナ州フェニックス郊外で同社のライドシェアアプリを使っている顧客に送られた。

初期の体験乗車事業(Early Rider Program)とWaymo Oneサービスはどちらも、自動運転のChrysler Pacifica(クライスラー・パシフィカ)のミニバンを使って、チャンドラーやテンペなどのフェニックス郊外地区をカバーするジオフェンス領域のフェニックス住民にシャトルサービスを提供した。これらの自動運転乗車体験はすべて、人間のセーフティードライバーがハンドルを握った。

今度からのドライバーレス(Driverless)はその名のとおりセーフティードライバーがいないが、最初はWaymoの社員が同乗するようだ。

Waymoはコメントをくれなかったが、本誌が確認したところによると、メールはWaymoの体験乗車事業early rider programのメンバーに送られた。下図は、そのメールのコピーだ。

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Googleの自動運転プロジェクトから生まれたWaymoは、その技術の最初のテストを2009年にGoogle本社のあるカリフォルニア州マウンテンビュー周辺で行った。その後の歩みは、堅実でゆっくりしていた。やがてテスト領域を他の都市にも広げ、独立してWaymoになり、車の設計やセンサー類の改良を積み重ねた。

2016年にWaymoは、アリゾナ州チャンドラーにテストと実事業のためのセンターをオープンし、そことそのほかのフェニックス郊外地区でテストを重ね、一般民間人のための体験乗車事業を開始した。そして、徐々に本格的な商用化へと進んでいった。2017年4月にローンチした体験乗車事業では応募者を厳格に選別し、参加にあたっては秘密保持契約を結んだ。

12月には商用の自動運転車サービスWaymo Oneとそのためのアプリを立ち上げた。体験乗車事業のメンバーはWaymo Oneに移され、ゲストの同乗や、体験をおおやけに話すことが許された。さらに最近ではフェニックスにもうひとつの技術サービスセンターをオープンして容量を倍増し、商用車両を増車した。

人間運転手のいないWaymo車はときどき見かけるが、一般人のためのシャトルサービスには使われていない。このメールの内容が実現すれば、同社の自動運転車事業にとって重要な節目になるだろう。

しかし、まだまだ疑問も多い。完全な自動運転車は最初何台配置されるのか。Waymoはそれらにどんな制限を導入するのか。おそらく最初の数か月は特定のシンプルな環境で運用し、その後もっと複雑な状況へと拡張されるのだろう。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa