BMWとジャガーランドローバーが次世代の電気駆動技術開発で提携

BMWグループとジャガーランドローバー(JLRが、未来の電気自動車開発で協力することに合意したことを発表した。この自動車メーカー同士の一連の協業は、先進的でしばしば高価なテクノロジーを、大衆マーケットに向けてリリースすることが狙いだ。

両社が協業を認めたのは米国時間の6月5日。彼らは、これは従来の内燃機関の乗用車やトラックから、自律的、コネクテッド、電気駆動、そして共有される車両へと移行する業界の流れの中心となるものだと述べている。

BMWとジャガーは、サプライチェーン全体にわたる共同調達による経済的スケールメリットを得ることはもちろん、共同の研究開発および生産計画による、効率性とコスト削減を達成する計画を立てていると語る。

JLRのスポークスマンは、同社最初の完全電気自動車であるI-Paceのために作成したアーキテクチャは継続するのか、という特定の質問にはコメントを行わなかった。JLRが語ったのは、この協力は将来のジャガーとランドローバーを支えるだろうという事だけである。

このBMWとジャガーの協力は、リソースや、技術的洞察、そしてコストの共有を期待して行われている他の数多くの自動車メーカー同士の提携、開発パートナーシップ、あるいは協力提案に続くものだ。たとえば、フォルクスワーゲンとフォードモーターは共同で商用バンを製造している。フィアット・クライスラー(FCA)は最新の例だ。FCA は5月に、ルノーに対して事業統合を提案した。もしこれが実現した場合には、世界で3番目に大きい自動車メーカーが誕生し、年間870万台の自動車販売が達成される。だがウォールストリートジャーナル(WSJ)のレポートによれば、FCAはそのオファーを撤回した模様だ

BMWとジャガーは、最近公平なパートナーシップを締結している。特に20183に、ダイムラーの都市モビリティサービスを買収して1つの持株会社に吸収したときには、それぞれの会社が50%の株式を保有した。両社は、この都市モビリティサービスを育成するために、これからの数年で11億ドル(約1200億円。10億ユーロ)を投資する計画だ。彼らはサービスを5社のジョイントベンチャー(Reach Now、Charge Now、Park Now、Free Now、そしてShare Now)を設立して、5つのカテゴリーに統合すると発表している。

BMWとジャガーの合意に基き、両社のエンジニアチームが次世代の電気駆動装置(EDU)の開発に取り組む。これらのEDUは、その後各自動車メーカーのそれぞれの工場で製造されることになる。ジャガーは、同社が世界規模の電気駆動プログラムに割り当てたウルバーハンプトンに拠点を置くエンジン製造センター(EMC)を使用する。

ジャガーには、パートナーシップの歴史もある。同社は自動運転車企業のWaymoと提携し、それを自社のI-Pace車両に供給している。また同社は、I-Paceを製造しているMagnaとも提携している。

画像クレジット: Andrew Ferraro – Handout/Jaguar Racing via Getty Images

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(翻訳:sako)

主翼にも乗客を載せて燃費を20%向上するジェット機をKLMオランダ航空などが開発中

空の旅は温室効果ガスなど汚染物質総排出量の相当大きな部分を占め、しかも旅客数はここ数十年着実に増えている。航空機からの排出量は2020年以降も大きく増える、と予想されている。電動旅客機が開発途上だが、今の主役であるジェット旅客機を近日中に置換することはありそうもない。そこで、従来型燃料を使う航空機の新しいタイプが今、KLMオランダ航空の支援で研究開発されている。

CNNの報道によると、その新しい航空機の設計はデザイナーのJustus Benadが着想し、オランダのデルフト工科大学の研究者たちが実現のために取り組んでいる。その航空機は、外観がまず独特で(上図)、これまでの筒型の胴体スタイルを捨てて、1/4サイズにカットしたピザのような形、胴体が飛行機の主翼にまで延びたような形をしている。

この、すごく膨らんだ中心部分に旅客と燃料と荷物が乗る。そしてこの荷重分散により、航空機の全体的な空気力学が改善され、構成次第ではほぼ同数の旅客を乗せることのできるAirbus A350に比べて燃費は20%以上良くなる。

20%の燃料節約は大したことない、と思われるかもしれないが、年月とともに数が増えれば、相当な節約量になる。電動航空機など、そのほかの代替航空機への移行が遅れれば、なおさらだ。ただし、今のスケジュールでは実用展開の開始は2040年から2050年にかけて、と言われている。残念ながらそれは、明日ではない。

今主流のジェット旅客機でも、その昔、実用導入までのテストは年月を要するたいへんな仕事だっただろう。でも今回の良いニュースは、スケールモデルによる屋外テスト飛行は年内にも行われる、ということだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルのCarPlayがアップデート、新しいホーム画面やSiriからの提案を搭載

アップルはWWDCで、CarPlayの登場以来最大のアップデートを発表した。CarPlayは劇的に改善され、これまでのiPhoneを模した画面レイアウトではなく、車内で使うのにずっと適したものになっている。

CarPlay2014年の登場以来、あまり変わっていなかった。CarPlay互換の車は増えたが、ほかの車載システムはアップルが開発したものよりもずっと進化してきた。CarPlayの今回のアップデートは、正しい方向への大きな一歩といえるだろう。

最大の変更点は、CarPlayで表示できる情報量だ。これまでのバージョンのホーム画面にはアプリのアイコンが並んでいるだけで、あまり役に立たなかった。新バージョンでは、ホーム画面にマップ、メディアの再生、車庫のドアやライトといったHomeKitデバイスが表示される。

先月、グーグルはAndroid Autoプラットフォームの大規模アップデートを発表し、CarPlayを大きくリードした。Android Autoは車に適した方法でタスクを処理したりアプリを表示したりすることができる点で、CarPlayとは大きな差があった。しかし新バージョンのCarPlayは、グーグルのシステムが備えている機能の多くに対応したようだ。

新しいCarPlayは、古い車や古いハードウェアで動作するのか。iPhoneのどのモデルで動作するのか。車によって画面の解像度が異なるがどう調整されるのか。このように、今回の発表ではまだ不明点が多い。

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(翻訳:Kaori Koyama)

中国生産のTesla Model 3が13%値引きで予約開始

Tesla(テスラ)の中国での生産という大きな賭けは、廉価な価格で中国消費者を引き込むための新たな取り組みの鍵となる。米国時間5月30日、同社は中国にて生産されるModel 3が32万8000元(約520万円)で販売されると明かした。これは、以前は輸入されていた同エントリーモデルよりも約13%安い価格だ。

テスラは本日より車両の予約を開始した。なお、今年1月には上海の工場が着工を開始したばかりだ。仮予約のために今週中に2万元(約31万円)のデポジットを支払った顧客は、車両を6〜10カ月後に受け取る予定だ。

ロイターによると、競争力のある価格にもかかわらず、高スペックなModel 3は米国から出荷されるという。また中国生産される車両が、政府のEV補助金の対象になるかどうかは不明だ。

なおテスラによれば、中国以外のオーストラリア、香港、日本、ニュージーランド、アイルランド、マカオでも、予約が始まったという。

上海の工場ではフル稼働時に、年間50万台の車両が生産される予定だ。また求人情報をオンラインで公開した後に、5月からは従業員の雇用が始まっており、撮影された動画や写真によれば工場の完成も近いようだ。

中国生産される車両がどれだけの利益をテスラにもたらすのかはわからないが、現地生産は米中貿易戦争の悪化で懸念される、出荷や価格面の問題で有利に働くことだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

UberのQ1は1100億円の赤字、Uber Eatsは好調

公開企業として初の決算となったUberの2019年第1四半期の売上高は31億ドルで、最終損益は10億ドルの赤字だった。全サービスの取扱高(グロスブッキング)は前年同期比34%増の146億ドルとなり、中でもUber Eatsが引き続き目覚ましい成長を見せた。

思惑が交錯する中でUberの株価は決算発表前に上下し、最終的には0.25%安の39.90ドルで引けた。

FactSetによると、アナリストの予測では売上は約31億ドル、1株あたりの純損失は76セントだった。IPO書類に、Uberは第1四半期の損失は10〜11億ドルとなると予想している、と記していた。

「今月初め、我々は公開企業になるという重要な一歩を踏み出した。そして今我々はローカル交通とコマースのワンストップショップになるという戦略を実行することに注力している」とUberのCEOであるDara Khosrowshahi氏は声明文で述べた。「第1四半期では、プラットフォーム全体の利用はかつてなく多く、平均して1日あたり1700万件もの乗車があり、年間取扱高が590億ドルになるペースだ」。

ニューヨーク証券取引所に不安定なデビューを果たしてからの3週間、Uber株はIPO価格を下回る額で取引されている。Uberは5月初め、IPO価格を45ドルとし、時価総額は810億ドルとなった。そして翌日、42ドルに落ち込み、少なくともLyftのIPOのように勢いのある滑り出しを予想していたテック業界にとって衝撃となった。

Uberの株価はスランプ状態に陥っている。投資家、そして金融専門家すらも新規株式公開時の時価総額を1000億ドルと予測していた。だが、Uberの直近の時価総額は670億ドルで、最後のプライベートファイナンス時の企業価値720億ドルより50億ドル少ない。

Uberの主要事業である配車サービスの成長率は巨大な同社の事業の中の他部門に比べて鈍い。全体の売上高が前年同期比20%増となった一方で配車サービス部門の売上高は9%の成長にとどまった。Uber Eatsの取扱高は108%成長し、売上高は89%もアップした。

Uberの競合相手に関してはというと、Lyft株はIPO価格72ドルをかなり下回る額で取引されていて、木曜日は2.5%安の56ドルでひけた。今日の株価での時価総額は約160億ドルで、シリーズI時の企業価値151億ドルを少し上回っている。Lyftは、Uberが今月初めに歴史に残るIPOを果たす数日前に、公開企業として初の決算を発表していた。

Lyftの第1四半期の売上高は7億7600万ドルで、IPO関連の費用8億9400万ドルを含めた損失は11億4000万ドルだった。Lyftの売上高は市場の予測7億4000万ドルを上回ったが、損失は予測よりずいぶん大きかった。

「公開企業としての1年目という大事な年の第1四半期は力強いものになった」とLyftの共同創業者でCEOのLogan Green氏は発表文で述べた。「業績は我々のネットワークとマルチモダルのプラットフォームに対する需要に支えられていて、アクティブ乗客数は対前年同期比で46%増え、売上高は95%増えた。交通分野は経済における最大部門の一つであり、個人による車所有からサービスとしての輸送へのシフトはまだ初期段階にある」。

Lyftは修正後の純損失は2018年の第1四半期が2億2840万ドルだったが、今期は2億1150万ドルだったと述べた。また同社は今年の第2四半期の売上高は8億ドル超、修正後のEBITDA損失は2億7000万〜2億8000万ドルと予想している。通年では総売上高はおおよそ33億ドル、修正後のEBITDA損失は12億ドルを見込んでいる。

最近IPOを行った別の有名なユニコーンPinterestも、公開企業として初の決算となった冴えない財務諸表を公表した。このビジュアル検索エンジンは、2019年3月31日までの3カ月間で2億200万ドルの売上高、4140万ドルの損失を計上した。この数字は市場が予測した売上高約2億ドルを上回り、昨年同期の1億3100万ドルから大幅に伸びた。しかし損失は1株あたり32セントという予測の3倍超となった。

Pinterestは4月にNYSEに上場し、初日に株価は25%も上昇した。ただ、現在はIPO価格45ドルを下回る額で取引されていて、木曜日の終値は25.5ドル、時価総額は約140億ドルとなった。

UberとLyftの冴えないIPOは、大型ユニコーンに市場の不確実性という影を落としている。未来のベンチャー支援企業、特に配車サービスや自動運転車両といった実績のない産業の企業がいかに公開企業としてうまくやっていくか、多くの人が懐疑的になっている。

イメージクレジット: Spencer Platt / Staff / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

本命ライドシェアが伸び悩むUber、Eatsやマイクロモビリティは大成長

Uberのライドシェア事業は、同社の新しい事業よりも成長が遅い。Uberの2019年第1四半期の決算報告では、そのほかの事業の前年同期比総予約売上成長率230%に対して、ライドシェアはわずか22%の成長率だった。総予約売上は収益(売上)から税や経費、賃金などを引いた額だ。

2019年第1四半期のその他事業の総予約売上は1億3200万ドルで、貨物輸送と自転車やスクーターなどを使う新しい移動サービス(マイクロモビリティ)を含む。Uberは新しい移動サービスの内訳を公表していないが、CEOのDara Khosrowshahi氏が株主会議で言ったところによると、その新しい移動サービスは「全四半期比でも強力に成長した」そうだ。

一方、Uber Eatsは今なおUberの稼ぎ頭で、総予約売上は108%伸びて30億7000万ドルだった。

Uberのコアビジネスの成長鈍化は、前から予想されていた。昨年のTC DisruptでKhosrowshahi氏は、ライドシェアはUberの総取引額の50%を切るだろうと述べた。

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Uber lost another $1B last quarter(Uberの前四半期損失は10億ドル、未訳)

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(翻訳:iwatan、(a.k.a. hiwa

Waymoがアリゾナにて自動運転トラックのテストを復活へ

Alphabet傘下で自動運転技術を開発しているWaymoは、自動運転トラックのテストをアリゾナにて復活させる。

Waymoの自動運転車両であるハイブリッド仕様のクライスラー・パシフィカは、Waymo Oneの配車サービスにて利用されており、チャンドラーやフェニックス郊外にて日常的な光景となった。しかし、自動運転されるクラス8の大型トラックは、アリゾナでは1年以上運用されていない。

Waymoは自動運転システムをクラス8トラックに統合し、2017年8月にアリゾナにてテストを開始した。しかし同社は2017年中に、アリゾナの公道でのテストを中断していた。

Waymoによれば、アリゾナでの初期テストは地域でトラックを運転する際の初期情報の収集を目的としたものだった。そして新たなテストは、プログラムの開発においてさらに進んだ段階にある。

テストはフェニックス地域の高速道路にて実施され、その後に拡大される。Waymoは実際にどれだけのトラックが使用されるか、アリゾナ州に何台あるのか、いつフェニックス郊外にテスト地域を拡大するのかについての詳細を明かしていない。

また、Waymoは空のトラックと荷物を積んだトラックの両方をテストする。荷物を積んだトラックは試験目的のみで、商業目的ではない。

自動運転車両には2人の訓練されたセーフティードライバーが乗車し、もし必要なら運転を替わる。

Waymoは自動運転トラックを米国のいくつかの地域で実施しており、その中にはアリゾナやサンフランシスコ、、アトランタも含まれる。2018年、同社はアトランタにてGoogle(グーグル)のデータセンターに向かう荷物を配送する計画を発表した。

Waymoの自動運転トラックは、アリゾナ州の高速道路にてTuSimpleを含む最低でも1社と共有される。同社は高速道路10号線に沿って、トゥーソンとフェニックスの間にて自動運転車両(セーフティードライバーが乗車)を運行している。

自動運転トラックはWaymoの幅広いビジネス戦略の一部で、そのビジネスにはライドシェアリングサービスの提供や、いずれは自動運転技術の自動車メーカーへの提供も含まれている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Lyftのアプリで車に乗ると自分の性に合った人称代名詞を使ってもらえる

6月に行われるLGBTQ Pride Monthに先駆けて、ライドシェアサービスのLyftが、そのユーザーアプリに性的に中立な人称代名詞を加えた。乗客は、以下から選んで設定できる。

  • They/them/theirs
  • She/her/hers
  • He/him/his
  • My pronoun isn’t listed(該当する代名詞がない)
  • Prefer not to say(言いたくない)

ドライバーには乗客の好みの代名詞が見えるが、ドライバーの代名詞は共有されない。一度指定するとその後はずっと、その人の好みの代名詞が常に使われる。

これによって、自分に合った代名詞をシェアするスペースが作られ、その習慣が日常化する。LyftはNational Center for Transgender Equality(全米トランスジェンダー平等センター)とパートナーして、自分の名前を変えたいと願っているドライバーの支援も行っている。

画像クレジット: Carl Juste/Miami Herald/TNS via Getty Images/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

あなたの自律走行車はスポーティーなサリーか?血に飢えたクリスティーンか?

馬車が走る道に初めて自動車が登場したとき、馬はその技術の最初の犠牲者となった。ゆっくり走る自動車に襲われたわけではなく、驚いて逃げてしまったわけでもない。むしろ馬は、怪我に悩まされた。また、怯えた馬が通り道にあるものすべてを踏み荒らし、物や歩行者に損害や傷害を与えることもあった。

自動車がもっと速く走れるようになり台数も増えると、歩行者が走る自動車の直接の犠牲者になった。間もなく、交通規則、および製造物責任法と不法行為責任法が作られ、大虐殺を避けるための秩序がもたらされた。それでも、いまだに注意散漫で運転技術が未熟なドライバーは増加する一方であり、彼らが混雑した高速道路を、現実版のまったく笑えない「フロッガー」の舞台に変えている。

自律走行車に乗れば、ドライブのあらゆる恩恵がドライブせずに得られるようになる。自動運転を支持する人たちは、自律走行技術によって自動車はより安全になり、2050年までに事故発生頻度を90パーセント以上削減できると信じている。自動車事故の90パーセント以上が、ドライバーの運転ミスによるものだからだ。

たしかに、飲酒運転や不注意、その他のドライバーの行動に起因する死傷事故のニュースは後を絶たない。自律走行車なら、友だちにメッセージを送ったり、『ブラック・ミラー』を一気見したりしていてもオーケーだ。でも、本当にそうだろうか?それは、目の前に立っている歩行者は実際にはそこにいないと自律走行車が誤認しない限りにおいてのことだ。または、ゴミ収集トラックが引きずっているゴミを車線のラインと見間違えて、車ごとコンクリートブロックに突っ込まない限りにおいてだ。

他社に先んじて、完全な自動運転の実現を目の前にしている企業もあるが、運転環境での極限状況は改善されないままだ。つい最近も、アリゾナの暗い国道を自転車を押して渡ろうとしていた女性が自律走行車に跳ねられるという悲惨な事故があったばかりだ。車にはドライバーが乗っていて、事故にならないよう対処できたはずなのに、それをしなかった。積極的に奨励しないまでも、ドライバーが運転を手放せるようにすることが自律運転技術の本来の意義であるため、その車に乗っていた人の不注意を責めることはできない。

ほとんど必要とされないためドライバーが運転できなくなってしまうから「自律走行車のパラドックス」は危険だ。少なくとも当面の間、自律走行システムの信頼度が人間のドライバーとほぼ同じ98パーセントの安全率を上回るようになるまでは、緊急時や予想外の状況での人間のドライバーの補完を必要とするだろう。

この移行時期の間、そしてこの時期を過ぎてからも、事故の際に何が起きるのか、また誰がその責任を取るのか?自律運転技術が現れる前は、自動車事故は、ドライバーの過失とメーカーの製造者責任という2つ法理論のうちのいずれかが適用された。過失の法理論は、ドライバーの行動に責任を負わせ、ドライバーから、一般的には保険会社からだが、ハンドルを握っていた本人の行動に対する金銭的賠償を引き出そうとするものだ。製造者責任の法理論はその反対で、怪我の原因になったエアーバッグやイグニションスイッチやタイヤや、さらには自動車そのものなど、欠陥のある製品を製造し販売した企業に向けられるものだ。自律走行車の事故に現在の法理論を適用しようとすれば、数多くの問題が発生する。

人工知能(AI)、あるいは自動車を自律走行させるものなら何でも構わないのだが、それがカーブの路面が滑りやすくなっていることを検知または、それに応じて運転を補正できなかったとする。前を走る車から漏れた不凍液が路面を濡らしたようで、ハンドルを握る人間には認知できたものの、AIシステムにはほとんど見えなかった。もし、自律走行車に手動運転が優先される機能があり、それで事故が起きたなら、衝突を防ぐ操作をしなかったドライバーの責任が問われるのか?道路状況を検知したり、それに対処しなかった自動車のメーカーが責任を問われるのか?両方だとしたら、責任の割合はどうすべきか?

もし、通常の自動車だった場合、ドライバーに対する訴訟は、その人の行動が適切な注意義務基準に達していなかったことを証明できるかどうかにかかってくる。ハンドルから手を放していたなら、通常の自動車では過失行動とされることが多い。スマートフォンでメッセージを送っていて注意散漫になっていた場合もおそらく同じだ。しかし、自律走行車の自動運転機能は、本来の性質上、ドライバーが運転に注意を払わなくても、また運転に関わる必要性をなくすためのものだ。となれば、上記のような状況で、私たちは運転を引き継がなかったドライバーの責任を追及できるのだろうか?

従来型の自動車のメーカーも、法的責任はシステムや部品に欠陥がなかったかにかかってくる。状態のいい従来型の自動車で、サスペンションにもブレーキにもハンドルにも欠陥がなければ、上記のシナリオでも、メーカーが責任を問われることはまずないだろう。一方、人間の運転が優先される自律走行車のメーカーは、少なくとも責任の一部をドライバーに負わせようと試みる知れないが、そんなことを社会が許すだろうか?許すべきだろうか?ドライバーは、合理的な範囲で自律走行者に依存していたと主張するだろう。しかし、ドライバーの目には危険が目に見えていて、事故を防ぐための介入ができにも関わらず、メーカーが責任を負うべきなのだろうか?

その車が完全に自動化されていて、人間の介入が不可能であった場合は、結果は違ってくる。しかし、そんな車が現れるのは何年も先のことだ。

そうした自律走行者が市場に登場したとき、予期せず遭遇した滑りやすい路面を検知またはそれに対する補正に失敗したときは「欠陥車」とされるのか?または「欠陥車」と見なすべきなのか?もしそうなら、単に故障が発生したから欠陥車とされるのか、それとも、AIソフトウエアにエラーがあることを誰かが証明して見せなければならないのか?AIアルゴリズムは自身で進化することができ、膨大な距離と時間を費やして得たトレーニングデータに依存していることを考えると、どうしたらソフトウエアの中の「欠陥」を証明できるのだろうか?事故を起こした時点のアルゴリズムがオリジナルから大きくかけ離れていた場合、そしてその変化がAIアルゴリズムが自分で「教育」した結果であった場合、そのプログラマーやソフトウエアの提供業者に責任を負わせることが公正なのだろうか?

もうひとつの問題は「集団意識」だ。AIが学習する方法のひとつに、接続された他の複数のAIの集団的な体験を利用するものがある。これは、一時期Teslaが使用していた方法だ。もし、他のAIの誤ったデータがアップロードされ、それが事故に大きく関わっていたとしたら、どうだろう?

こうした問題の観点からすると、そして技術がますます人間の関与を減らす方向で発達すれば製造者責任の法理論を強化するよう法律も変化することになるだろう。おそらく、製造者責任は過失よりも厳しくなる。将来の自律走行車の価格が、研究開発と部品のコストだけでなく、事故のコストをカバーする「保険」を含めて決められるようになるとしても、突飛な話ではない。こうした進化は、人間のドライバーの役割が減るのに合わせて起こっていくだろう。しかし、自動車メーカーのAIシステムの学習プロセスを完全にコントロールする能力や、ましてや運転環境が同時に進化することはないだろう。

少なくとも、ある程度の人間の介在を必要とする移行期においては、責任に関する自動車メーカーの意見は分かれる。ボルボなどの一部のメーカーは、自動運転モードの最中に発生した事故に関しては全責任を負うと宣言している。しかし、テスラを始めとする他のメーカーは、ドライバーが若干の関与を要求される状況で発生した事故においては、たとえ自動運転モードであっても、ドライバーに責任を負わせようとしている。

例えば、かつてテスラでは、自律走行モードで他の車を追い越す機能を有効にするには、方向指示器を点灯させなければならなかった(テスラの新型車ではこの操作が不要になった)。ドライバーにこの操作を行わせる仕組みは、一見、大したことではないように感じられるが、そこには自動車メーカーが法的責任をドライバーに転嫁する意図がある。簡単な操作だが、車に追い越しを指示するだけでなく、その追い越しは安全に行えるという自らの判断によるものであり、その結果の如何に関わらず責任を負う、または負わなければいけないと、ドライバーに示唆するものでもある。

その基礎となる技術は、責任の所在を追求しようとすれば、さらなる複雑性を突きつけてくる。これまで暗に示してきたように、「機械学習」として特徴付けられるAIの側面は、無数の多様な入力データをもとに開発されていて、その振る舞いは多かれ少なかれ「ブラックボックス」化されている。厳格な数学的アルゴリズムと思われるため、本当に理解することは難しい。

言い換えるなら、私たちには、機械がどのように判断をしてその行動をとったのかを正確に知る手立てがないのかも知れないということだ。その場合、AIボックスが間違ったトレーニングを受けた、または現実の運転ではなくシミュレーター上で「訓練」されていたとしたら、AIボックスが極限的状況での対処を誤って事故につながった責任は、シミュレーターの開発者に負わされることにならないか?

AIのプログラミングやトレーニングの倫理の問題はどうだろう。最近の研究で、歩行者が有色人種だった場合、現在のAIシステムが彼らを認識できる能力は20パーセント低下することがわかった。これは、AIのトレーニングが多様性を踏まえていなかったためだ。他に説明があるだろうか?MITによる最近の調査では、衝突が避けられない極限状況において人の命を犠牲にするかどうかではなく、どの人の命を犠牲にするかの選択を迫られたとき、人は救うべき命をその上下関係で決めていることがわかった。この調査に参加した人たちは、動物よりも人の命を優先させるべきだと話している。少数の命よりも、大勢の命を救うべきであり、老人を犠牲にして若者を救うべきだと考えている。

興味深いことに、ベビーカーを押して交通法規を守って歩いている人を尊重するべきだとも考えられている。結論として、こうした倫理感に基づいて自律走行車がプログラムされた場合、交通の激しい道路をひとりで乱横断している人は自律走行者に跳ねられる確率が格段に高くなるということだ。この調査の道徳的序列では、猫、犬、犯罪者が保護対象としての最下層に位置する。だが、その人が犯罪者かそうでないかを車が判断できるのだろうか?刑務所の情報をリアルタイムで入手するのか?また、動物愛護活動家のハッカーが車のプログラムを、人より動物を尊重するように書き換えてしまったらどうなるのだろう?

MITのこの調査が信頼できるとすれば、こうした序列の意識や変動性が現に存在していることになる。それは、人間の潜在意識にしまい込まれているだけだ。機械の中ではない。次に道路を渡るとき、このことを考えてみてほしい。

【編集部注】
著者のLucas Dahlinは、Goodwin知的財産グループのアソシエート。複雑な知的財産問題を専門に取り扱い、特許と企業秘密に関する訴訟に豊富な経験を持つ。

Julius Jeffersonは、Goodwin知的財産訴訟グループのアソシエート。Goodwinに加わる以前は、デラウェア地区とテキサス西地区で判事の書記を務めていた。ロースクールに入学する以前は、Wyeth Pharmaceuticals(現Pfizer)の研究フェローとしてアルツハイマー病の治療法を研究していた。

Darryl M. Wooは、Goodwin知的財産訴訟グループの共同経営者。以前は法廷弁護士として特許訴訟やその他の複雑な技術関係の訴訟を専門に扱っていた。

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(翻訳:金井哲夫)

5月31日からニューヨークの地下鉄の一部がApple Payに対応

ニューヨークの地下鉄の4、5、6ラインを利用している人たちはここのところ、ユニオンスクエアやグランドセントラルなどあちこちの駅で新しい改札機を目にしていた。改札機の画面には「Test Phase/Coming Soon」(テスト中/近日利用開始)と表示されていた。この画面が、今週ついに変わる。

グーグルは新しいモバイルペイソリューションをすでに発表していた。そして今度はグーグルの最大のライバルが参戦する。5月31日(金)から一部の駅でApple Payが使えるようになるのだ。サービスが始まれば、iPhoneかApple Watchをかざして地下鉄に乗れるようになる。

この機能を利用するには、iOS 12.3とwatchOS 5.2.1が必要だ。そしてWalletでFace IDかTouch IDを使ってデビットカードかクレジットカードをExpress Transitに設定する必要がある。このように準備しておけば、iPhone 6sとiPhone SE以降と、Apple Watch Series 1以降で、NFCを使って地下鉄に乗れる。

システムの動作は想像通りだ。iPhoneかApple Watchをディスプレイにかざすと音が鳴る。ディスプレイには大きく「Go」と表示され、デバイスは「Done」(完了)となる。クレジットカードが有効であれば、これでOKだ。大勢のニューヨーカーがみんなこのシステムを使ったとしたらどの程度の速度になるか、というのは、もちろんまったくの別問題だ。この種のことには学習曲線がある。この改札機に慣れるまでは多少の混乱が生じるだろうと思われる。

このシステムはまだ実験中だ。現時点で導入されるのは、4、5、6ラインで、マンハッタンのGrand Central-42 Street駅とブルックリンのAtlantic Avenue-Barclays Center駅の間の計16駅、それとスタテン島のバスだけだ。4、5、6ラインという最も利用者の多い路線の最も利用者の多い駅であることはほぼ間違いないので、興味深い実験となるだろう。

なお、このシステムは今のところシングルライド(1回乗車券)に限られる。つまり、1日、1週間、1カ月のパスを使いたい人(私も含めてニューヨーカーの多くがそうだろう)はこのシステムを利用できない。2020年末までにはさらに多くの料金オプションを利用できるようになり、それまでにMTA(ニューヨーク州都市交通局)ではすべての地下鉄の路線とバスでApple Payに対応する予定だ。メトロカードの紛失を心配することはなくなるだろう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

全電動車Honda eはサイドミラーが室内に

ホンダ(本田技研工業)が2020年春に発売予定のコンパクト電動自動車 Honda eは、サイドミラーを室内に設置した。米国時間5月28日に同社は、現在プロトタイプ版の「サイドカメラミラー」システムを生産モデルに標準搭載することを明らかにした。

このシステムは、6インチのスクリーン2台をダッシュボードの両端に配置して、道路状況のライブ画像を表示する。ホンダによると、この技術によって空気抵抗が通常のドアミラーに比べて90%減少し、車両全体では3.8%改善されるという。これは結果的にバッテリー効率と走行距離にも影響を与える。

視認性も改善される。カメラユニットの筐体はレンズが濡れにくい形状で、レンズには撥水コーティングも施され水滴の付着を防いでいる。

下のコンセプトビデオで仕組みを見ることができる。

ドライバーはノーマルとワイド2種類のビューを選べる。どちらも通常のドアミラーより視界が広く、死角はノーマルで10%、ワイドで50%減っている。

ギアをバックに入れると、サイドビュー画面にガイドラインが表示される。周囲の明るさに応じて画面の輝度も変化する。

ホンダは、生産モデルではポップアウト・ドアハンドルも採用することを正式に認めた。

Honda e Prototype

同社はこの都市型EVであるHonda eを含む電気自動車全体の壮大な計画を持っている。Honda eの航続距離は200kmと言われており、「高速充電」機能によって30分で80%の充電が可能だ。

2年前の2017年、Honda Motor Co.の八郷隆弘社長兼CEOは、同社の都市型EVは単なる「遠い未来のビジョン」ではないと強調していた。

Hondaは、ヨーロッパで発売する新車種すべての電動化(ハイブリッド、プラグイン、全電動車)を目指している。2025年までにヨーロッパで販売する車の3分の2を電動化したいと同社は考えている。

Honda eの生産モデルは今年中に発表される予定。英国、ドイツ、フランスおよびノルウェーではネット予約を受け付けている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フィアット・クライスラーがルノーに50対50の事業統合を提案

フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)は、ルノーとの事業統合を提案した。もしこれが受け入れられたなら、年間自動車販売台数870万台の世界第三位の自動車メーカーとなる。

FCAは、月曜、法的拘束力のない書簡をルノーの役員会に渡し、50対50の対等な事業統合を提案した。FCAの提案からは、規制強化の圧力、売り上げの減少、自律走行車両技術などの次世代技術にかかるコストの上昇といった環境の中で、経営の強化や提携関係を望む自動車メーカーの事情が伺える。

この提案では、事業はFCAとルノーとの間で株式が当分される。役員会は双方からの11名が参加することになるとFCAは話している。大多数は無所属の役員となる。FCAとルノーは、それぞれ4名ずつ同数の役員を参加させ、日産からも1名が推薦される。その親会社は、ミラノのBorsa Italiana、パリのEuronext、ニューヨーク証券取引所で上場する予定だ。

フランスの自動車メーカー、ルノーは、日産自動車と提携している。この2社は、ルノー日産アライアンスの元CEOカルロス・ゴーン逮捕とそれに続く主導権争いで関係がぎくしゃくしているが、自動車部品の共有や技術協力などを行っている。ルノーは日産の株式の43.4パーセントを、日産はルノーの株式の15パーセントを保有する。

フィアット・クライスラーは、ジープや、トラックのラムといったブランドを通じて米国で最もよく知られている自動車メーカーだ。しかし、その事業規模はずっと大きい。市場価値が200億ドル(約2兆2000億円)というフィアットは、イタリアでもっとも古い自動車メーカーのひとつであり、アルファロメオ、フィアット、ランチア、マセラティといったブランドを有する。

2009年、フィアットはクライスラーの株式を取得。現在一般に知られている、20万人近い従業員数を誇るFCAは、双方の企業が合併した2014年に誕生した。

提案された事業統合は、コストの削減につながる。しかし、工場を閉鎖して節約するのではないとFCAは主張している。今回の統合によって閉鎖される工場はひとつもないと、FCAは提案の中で明言した。提案について説明した広報資料で、FCAは次のように述べている。

提案の取り引きによる利益は、工場の閉鎖を前提としたものではなく、共通のグローバルな車両プラットフォーム、アーキテクチャ、パワートレーン、技術に、効率的に資本を投資することで得られます。

統合が実現すれば、製品の生産や、とくに新技術の開発や商品展開といった特定の分野で協力することにより、年間ランレートで50億ユーロ(約6140億円)の節約が達成できると見込まれている。FCAによると、この分野には、通信ネットワークへの接続性、電動化、自律運転が含まれる。

FCAは、「必死に努力する文化でもってOEMを統合し、ひとつの目的に専念する強力なリーダーと組織を築き上げることに成功した」歴史があると訴えている。

こうしたコスト削減策は、売り上げが低迷したとき、双方にとっての命綱になる。だがこれは、もしもの話ではない。GMやフォードなど他の自動車メーカーは、すでに売り上げ低迷に備え始めている。またコスト削減は、運転支援システムや自律運転車両といった高度な技術の研究も可能にしてくれる。

46箇所の研究開発センターを運営するFCAは、高度な運転支援システムに投資をしている。マセラティに搭載されている高速道路での支援機能はそのひとつだ。また、同社は自律運転技術を持つウェイモなどの企業との提携にも依存している。

昨年、同社はウェイモとの提携を拡大すると発表した。これにより、6万2000台のクライスラのミニバン、パシフィカが、ウェイモの自律運転車両軍団に追加される。両社はさらに、ウェイモの自律運転車両技術を一般消費者の車にも展開できるよう、ライセンス化に取り組んでいる。

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(翻訳:金井哲夫)

自動車メーカーはデータ会社になる決心を迫られている

Amazon(アマゾン)のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏が数十億ドルを蓄え、Apple(アップル)が私たちの文化を変え、Google(グーグル)は広く行き渡り、そしてソフトウェアが世界を食べている一方で、自動車業界は救済措置を必要としていた。その後、業界は多かれ少なかれ回復して来たものの、もはや彼らは米国の産業を代表する巨人たちではなくなっている。その巨人の称号は現在、データをやり取りする会社たちのものであり、私たちを動かしている脈拍の上に、世界の大規模テック企業たちがそのデジタルの指を置いて脈を測っているのだ。

しかし、古い自動車の巨人たちの希望が、全て失われてしまったわけではない。運転手が乗っていようがいまいが、自動車は目の前に存在している。自動車メーカーたちは、デジタル時代により適した戦略を実行し、データを将来のビジネスの中核部分とすることで、確実にテーブルに着席する権利を得ることができる。

大きなチャンス

「ビッグデータ」は聞き飽きたフレーズだが、データブームは本格化している。LyftやUberのような新しいモビリティの巨人たちは、データの上に成り立っている。サムスン(Harmanを買収)、インテル(Mobileyeを買収)、Google(MapsおよびWaymoを所有)、そしてApple(MapsおよびTitanを所有)といった、既存のデータならびに技術中心の企業が、モビリティ製品を開発している。輸送ならびに移動分野の規模を考えれば、こうした動きは完全に理にかなっている。

世界中で、12億台もの車両が運行しており、人びとは毎年のべ23兆マイル(37兆km)の移動を行っている。2020年までには、地球上の各人が1秒間に推定1.7MBのデータを生み出すと予想されている。またAAA(米国自動車協会)の2016年の報告によれば、米国人は毎年平均1万7600分(約12.2日)を運転に費やしている。こうした見積もりによれば、米国人は自身の車から、毎年1.8TBのデータを生成するとされている。自動車にカメラ、レーダー、ライダー(LIDAR)などのセンサーを追加し、こうした自動車をクラウドに接続したみたらどうだろう。インテルによる、自動運転車は1時間半の走行で4TBのデータを生成するという主張も、馬鹿げたものとは思えなくなってくる。マッキンゼーは、車が生成するデータの価値は、2030年までには7500億ドルにも達すると考えている。どちらの数字も大雑把すぎるものではあるが、メッセージは明白だ。そこには大きなチャンスが横たわっているということである。

データを必要とするのは誰か?

すべてのデータが同じように生成されているわけではなく、さまざまなデータ顧客が、自身のサービスを強化し拡張するために、さまざまなデータポイントを求めている。自動車メーカー自身と販売店は、顧客が自社製品をどのように使用しているかをよりよく理解するために、生産後も車両を追跡したいと考えている。彼らはこのデータを使って自社製品を改善し、保守と修理のために顧客を販売店へ向かわせ、究極的には顧客にとっての長期的な価値を高めることができる。

電気通信会社は、車載Wi-Fiとデータサービスを提供し、最終的には自動車をインターネットに接続するために5Gネットワークを拡張しようとしている。修理工場は、車の診断だけでなく、メンテナンスや修理の予測さえも可能にするために、車両のセンサーやシステムに遠隔的にアクセスしたいと考えている。都市計画担当者、広告主、そしてヘッジファンドは、個人の嗜好の全体像を把握するために、個々人がなぜ、どのように移動しているのかをの情報を提供する、ロケーションベースの分析にアクセスしたいと思っている。

保険会社は、個々のユーザーに対するより正確な保険料の見積もりや、使用量ベースの保険を提供するために、スピード、加速、そしてナビゲーションデータへのアクセスを望んでいる。開発者は、私たちがまだ想像していない新製品やサービスを開発するために、車両データへのアクセスを望んでいる。このリストは果てしなく続いていく。

こうしたデータ顧客たちは、自動車メーカー自身よりも、車両データに関する高度な戦略を持っており、車両データを収集して集計しようとしている多くのスタートアップと提携している。たとえば、多くのスタートアップが、保険会社や修理工場と提携して、自動車の車載診断(OBD)ポートに差し込むハードウェアを提供している。とはいえ、OBDが提供するのは全車両データのごく一部に過ぎない。

データを持っているのは誰か?

こうした「外部からの工夫」にもかかわらず、車両固有の最も豊富なデータセットはCANBUS上に記録されており、そのデータに最も簡単にアクセスできるのは自動車メーカー自身なのである。つまり自動車メーカーは、誰がどのようにデータを利用できるのかを決定する際に、最も有利な位置にいるのだ。

BMWのような大手自動車メーカーが、大手テクノロジー企業にコントロールを握られたくないと考えていることは既にわかっている。では、他の選択肢は何だろうか?データの管理と収益化は、これまで自動車産業の中核能力ではなかった。製造業者と供給業者は、現在7年の製品サイクルで活動を行っている。このことは安定したバリューチェーンに対する完全な制御を得ることを可能にするものの、引き換えに、エンドユーザーとのやりとりや、最先端のデジタル能力は犠牲にされている。特に1世紀を超える伝統を誇る高級ブランドでは、プライバシーとセキュリティの問題が浮上している。自動車メーカーたちにとって鍵となるのは、市場での独占的な地位を譲ることなく、データの専門知識にアクセスする方法を見つけることだ。

小規模の自動車メーカーは、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems、先進運転支援システム)、すなわち自律性およびデータ管理ソリューションを提供するテクノロジー企業(Aurora、Waymoなど)に、ある程度のポジションを譲っても構わないだろう。なぜならそうしたものを自社で開発することは困難だからだ。このポジションを譲渡することで、そうした自動車メーカーは業界内での自身の地位を下げることになるが、将来的には大きなものとして返ってくることになるだろう。たとえば、Waymoはクライスラーとジャガーの車両のために、技術一揃いを開発している。

この見通しに困惑している自動車メーカーは、自動運転技術のためにArgo AIやCruiseに対して行ったように、買収を検討したいと思うかもしれない。たとえばFordは、社内開発能力を獲得するためにTransLocとAutonomicを買収した。ゼネラルモーターズは、サードパーティデータプラットフォームであるWejoに、大きな投資を行った。もちろん自動車メーカーは、こうした機能を自分自身で開発しようと試みることもできる。トヨタは10億ドルのデータセンターを構築中だ。

次は何か?

私たちAutotech Venturesの中では、車両データから取り込むべき多くの価値があることが、十分かつ明白に認識されている。その価値は、多くのセンサーが車両に追加されるにつれてますます増加する一方だ。自動車メーカーはこの価値の莫大なシェアを獲得できる最高の立場にいるが、迅速に動いて、おそらくその途上で優先順位を再編成する必要があるだろう。だが私たちは、彼らが自分自身でそれを成し遂げられるかどうかには懐疑的だ。

自動車メーカーがハイテク企業組むにせよ、専門知識を得るためにスタートアップを買収するにせよ、またはデータ管理のニーズを満たすためにスタートアップに頼るにせよ、私たちは程なくこの分野で多くの動きを見ることになるだろう。

【編集部注】著者のジェフ・ピータース(Jeff Peters)博士は、 Autotech Venturesのプリンシパルであり、交通関連スタートアップに投資している。彼は交通産業、最適化、自動運転、そしてAIに関する、学術ならびにメディア記事を発表している。

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画像クレジット: Catherine MacBride

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(翻訳:sako)

Cruiseの自動運転車は対向車を避けて1400回の左折に成功

対向車がある状況での左折(右側通行の場合)は、ロボットにとっても人間にとっても難しい。対向車の進路を横切る際の判断の基準が複雑なだけに、運転の中でも最も難度の高い行動と言える。もちろん自動運転車にとっても最大の課題の1つだ。人間は、対向車の運転者のしぐさなどを観察して、安全な左折のタイミングを計っているのだから、なおさらだ。

ゼネラルモーターズの自動運転車部門であるCruiseは、米国時間の5月23日、24時間で1400回の左折を成功させたというビデオを公開した。そのテストは、サンフランシスコの起伏に富んだ混雑した道路で実施された。ビデオを見ると、自動運転車が注意深く交差点に入り、対向車が通過するの待って左折する様子が捉えられている。場合によっては、車は強気の動きを見せ、間髪を入れずに左折することもある。公開されたビデオに写っているのは4つの例だけだが、Cruiseによれば1400すべての場面を撮影しているという。ビデオには、横断中の歩行者がいる場合の走行場面は写っていない。

「サンフランシスコのように、予測が非常に難しい交通環境では、左折の際の状況は毎回異なっています」と、Cruiseの社長兼CTO、Kyle Vogt氏は発表の文書で述べている。「普通に1400回も安全に左折できたので、エンジニアが分析して学習するための十分なデータを集めることができました。その結果は、他の難しい状況にも対応できるプログラムの開発に役立ちます」。

自動運転車を開発する会社は、実際の走行から収集されたデータを重視することが多い。成功例であっても、失敗例であっても、実際のデータの分析結果が既存のモデルに加味されて、その後の自動運転を改善するのに役立てられる。この場合も、短時間で1400の成功例が得られたことで、Cruiseのエンジニアの仕事は忙しくなるはずだ。

Cruiseは、180台のGeneration 3の車両をカリフォルニア州の公道でテストする認可を得ている。今回のテストを完了するのに、何台の車が必要だったのかは明らかにされていない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

イーロン・マスク氏のトンネル会社がLA地下交通事業を受注

Elon Musk(イーロン・マスク)氏のトンネル掘削・交通スタートアップThe Boring Company(ボーリング)が、ラスベガスコンベンションセンター周辺で地下Loopシステムを使って人々を輸送するという4870万ドルのプロジェクトを獲得した。同社にとってこれが初の商業契約となる。

Campus Wide People MoverまたはCWPMの名称が付けられたこのプロジェクトの初期デザインは、CES 2021のころまでには完了する見込みの拡張工事の最中にあるラスベガスコンベンションセンターにフォーカスしていた。新たに拡張されるラスベガスコンベンションセンターは工事が完了すれば広さは約200エーカーとなる。LVCVA(ラスベガス観光局)は施設内を歩き回る人は端から端まで2マイルを移動することになると試算し、これにより移動手段を確保する必要があるとの結論に至った。

3月、LVCVAはボーリングを推薦した。そしてLVCVAの取締役会は5月23日に事業契約を承認した。

この承認はかなりの条件が付随し、ボーリングに特定の目標を達成するよう求めている。その目標については、今月初めのThe Guardianに詳細が記されている。契約では、建設が完了するまで支払いの3分の2は保留され、ボーリングは利用者輸送に関する特定のゴールを達成しなければならない。

LVCVAはボーリングへの支払いとして、2019年に初めの120万ドル、そして翌2020年に1500万ドル、そして最終年の2021年には3247万ドルを見積もっている。

プロジェクトは現在のところ限定的だが、いつの日かダウンタウンとコンベンションセンター、ラスベガス・ブールバードのリゾート街道、マッカラン国際空港を結ぶことができるかもしれない、とボーリングは過去に述べている。

契約書類によると、この地下乗客輸送には車両用のトンネルと歩行者用のトンネルの計2本の建設が含まれている。2つのトンネルの長さは1マイル以下になることが想定されている。乗客が乗り降りする3つの駅、そして乗客が各駅へアクセスするためのエレベーターもしくはエスカレーターが設置される。

客を乗せるムーバーが完成すれば、部分的に変更が加えられたTesla(テスラ)の電動車で人々を高速で運ぶようになる。契約書にはこれらは自動運転車両と記されている(現在のところテスラの車両は自動運転ではなく、その代わり高度なドライバーアシスト機能を搭載している)。また、供用が開始される前に、ボーリングがシステムを3カ月間テストする、とも契約書にある。

マスク氏のボーリングが1つの契約を獲得した一方で、ワシントンD.C.とボルティモアを結ぶ、より野心的なLoopシステムのデザインについては安全面で懸念が出ている。

長さ35.3マイルのシステムの詳細は、505ページに及ぶ環境影響評価のドラフトで最近明らかにり、そこではデザインがいくつかの主要安全基準を満たしていないことがわかっている。この地下システムには非常用出口が十分になく、また最新のエンジニアリングプラクティスを無視していて、とある教授が「狂気の沙汰そのもの」と呼ぶ避難はしごを客に使わせようとしているようだ。

イメージクレジット: Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

メルセデス・ベンツが、自動運転車エンジニアのための新技術講座をオンラインに開講

Udacityとメルセデス・ベンツの北米研究開発ラボはセンサーフュージョンナノディグリーのためのカリキュラムを開発した。センサーフュージョンとは、複数のセンサーの値を統合して検知を行う技術、ナノディグリーとはオンライン教材のマーケットプレイスであるUdacityの専門課程制度だ。

これはオンライン教育スタートアップのUdacityが、自動運転に関連するスキルへの高い需要に応えたもので、かつて自身が提供して好評だった自動運転車エンジニアプログラムの成功を再び目指すものだ。

センサーフュージョンディグリーへの登録は米国時間5月21日に始まった。

Udacityは、AI、ディープラーニング、デジタルマーケティング、VR、コンピュータビジョンなど、さまざまな技術分野の専門課程を「ナノディグリー」として提供している。

この新しいセンサーフュージョンナノディグリーは、成長を犠牲にすることなくコストを売上に見合うものにすることを目的に、Udacityの共同創業者セバスチャン・スラン(Sebastian Thrun)氏によって最近加えられた変化の1つだ。

センサーフュージョンプログラムは4つのコースで構成されており、修了までに約4カ月かかることが想定されている。受講生が学習するのは、ライダー(Lidar)障害物検出、レーダー障害物検出、カメラとライダーデータの融合、そしてカルマンフィルターだ。ディグリー(課程修了証)を取得した受講生は、ライダー、レーダー、カメラといった、大多数の自動運転車で使用されているセンサーを扱えるようになる筈だ。

企業トレーニング向けパイロットの一環として、MBRDNA(Mercedes-Benz Research&Development North America、メルセデス・ベンツ北米R&D)の従業員のグループが、この自動運転車プログラムに参加している。

「自動運転車のジェネラリストなどというものは存在していません」と、スラン氏はTechCrunchに語った。「企業が探しているのは、何らかの専門家です。そして、現在最も注目されているのはセンサーフュージョンなのです」。

そして、自動運転業界は「幻滅期」に陥っているものの、スラン氏は、熟練労働者への需要がまだまだたくさんあると語った。

「投資家から資金を集めるよりも、今すぐに就職する方が簡単です」とスラン氏は言う。「ZooxとAurora、Waymo、CruiseそしてTeslaといった企業はみな、狂ったように採用を行っています」。

例えばこの3月に、GMの自動運転車ユニットのCruiseは、年末までに何百人もの従業員を雇って、そのエンジニアリングスタッフを倍増させることを発表している。

Udacityと、カリフォルニア州サニーベールに本拠を置くMBRDNAは、以前にもいくつかのナノディグリープログラムで提携している。2016年には、両社は自動運転技術者ナノディグリーで協力している。このときのプログラムは、多数の受講生を引き寄せ、一部の受講生たちによる自動運転スタートアップVoyageのスピンアウトにもつながった。120カ国から2万1000人以上の受講生が、このプログラムに参加したのだ。

Udacityは個々のプログラムの修了率を発表していないため、何人が自動運転エンジニアディグリーを終了したのか、そしてその関連職種を得たのかを判断するのは困難だ。

Udacityは、その30以上のナノディグリープログラムで、34%の修了率が達成されていることを発表している。同社はまた、ナノディグリープログラムの修了生たちが、アウディ、BMW、Bosh、ジャガー・ランドローバー、Lyft、NVIDIA、そしてメルセデス・ベンツで新たな職を見つけたとも述べている。Udacityによれば、メルセデスは世界で40人以上のナノディグリープログラム終了生を雇用しているという。

Udacityは、自動運転車やフライングカー入門講座などの、業界に関連する他のナノディグリーも提供している。

Udacityは、4月に従業員の約20%を解雇し、事業を再編している最中である。現在Udacityは、300人のフルタイム従業員を雇用し、約60人の請負業者と契約している。同社はまた、受講生の定着を目的として、技術指導プログラムなどの、新しいサービスも追加した。5月1日以降、すべてのUdacity学生は、テクニカルメンター、エキスパートレビューア、キャリアコーチ、そしてパーソナライズした学習プランにアクセスすることができるようになった。

同社は、自動運転車やディープラーニングナノディグリーなどの人気プログラムのおかげで、2017年には、対前年比で売上が100%増加する成長をみることができた。だが、2018年には新しい講座が追加されたにもかかわらず、受講者数は伸び悩み、以前の講座のような注目と登録者数を引きつけることはできなかった。一方、コストは膨れ上がった。CEOのビシャール・マッカンジー(Vishal Makhijani氏が10月に辞任したあと、スラン氏が着任した。Googleのムーンショットファクトリー(未来技術研究開発所)であるXを設立したスラン氏は、フライングカーのスタートアップであるKitty Hawk CorpのCEOでもある。

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(翻訳:sako)

Lyft、乗客が身の危険を知らせる緊急通報ボタン導入へ

配車サービスは便利な移動手段として、アメリカを含む多くの国では、もはや市民の生活の一部となっている。だが、3月には手配したUberと勘違いし他の車に乗車した女子大生が誘拐され殺害される事件が起きるなどし、安全面での懸念は残る。ドライバーによる乗客への性的暴行や、乗客によるドライバーへの攻撃などに関する報道も多い。

そのような中、配車サービス大手のLyftは米国時間5月21日、乗客向けLyftアプリ内に911通報する機能が追加されると発表した。乗客はこの機能を数週間以内に使用することができるようになる。ドライバー用の緊急通報ボタンは既に導入済みだ。なお、競合のUberは2018年より同様の機能をドライバーおよび乗客に提供している。

Lyftは同日、緊急通報ボタン以外にも、乗客が車両のナンバープレートを確認しやすくするため、アプリのデザインを更新すると併せて発表している。従来よりもナンバープレートが大きく表示され、下にはナンバープレートの確認を促す警告文が現れるようになる。

Lyftはドライバーへの継続的なバックグラウンドチェックを実施するなどし、安全面を強化すると4月に発表していた。だが、これに関しても、2018年より同様の取り組みを実施しているUberに先を越されている。

自動運転トラックのTuSimpleが米郵便公社のパイロット事業を受託

今年初めに企業価値10億ドルを達成してユニコーン入りを果たした自動運転トラックスタートアップのTuSimpleは、米郵便公社(USPS)に技術を証明する2週間のテストを行う。

TuSimpleは米国時間5月21日、USPSパイロット事業の契約を受託したと発表した。2週間行われるこのパイロット事業では、1000マイル超離れているフェニックスとダラスの流通センター間をUSPSのトレイラーを引っ張って5往復する。試験期間中、安全のためにエンジニアとドライバーがトラックに乗り込む。

TuSimpleは各回22時間の自動運転走行を実施することになっていて、ここにはアリゾナ、ニューメキシコ、テキサスの各州をまたぐ高速道路10、20、30号線での夜通し運転も含まれる。

TuSimpleにとってこのパイロット事業は重要なマイルストーンだ。というのも、同社がテキサス州で自社トラックを走らせるのは初めてだからだ。また、システムを米政府に認めてもらうチャンスでもある。

多くのロジスティックやAmazonなどの配送事業の企業がコスト抑制や安全・運用の改善のために自動運転テクノロジーの活用に関心を示している中で、USPSはそのうちの1社にすぎない。

2015年に設立され、カリフォルニア州サンディエゴとアリゾナ州ツーソンに事業拠点を構えるTuSimpleはアリゾナ州で毎日トラックを走らせている。同社はこのほどSina Corpが主導したシリーズDで9500万ドルを調達した。そしていま、展開する商業自動運転トラックを6月までに50台超に拡大しようと準備を進めている。

TuSimpleはNvidiaやZP Capitalが出資したラウンドも含めて、これまでに1億7800万ドルを調達している。中国最大のミニブログサイトWeiboを運営するSinaはTuSimpleの初期投資家の1社だ。

イメージクレジット: TuSimple

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(翻訳:Mizoguchi)

Rivianが電動ピックアップトラック搭載用のキッチンを発表

時にはスクランブルエッグが食べたくなる。そんな発想のもと、新興EVメーカーであるRivian(リヴィアン)は米国時間5月17日、アリゾナ州フラッグスタッフで開催されたオーバーランド・エクスポで、電動ピックアップトラック用のアクセサリーを発表した。キャンパーキッチンだ。このユニットは、Rivian R1Tの荷台部分と運転席の間にあるギアトンネルと呼ばれているところから引き出せるようになっている。キッチンには、ストレージとR1Tの180kWhバッテリーパックから電源をとるコンロが備わっている。

このキッチンは、Rivianが変わったギアトンネルのために発表した記念すべき初のコンセプトだ。このスペースは鍵のかけられる収納場所も提供する。しかし、ギアトンネルが発表されたとき、多くの人が「なぜこんなものを?」と疑問に思った。そしていま、このキッチンユニットでRivianは疑問に答えている。Rivianはこのピックアップトラックをアドオンエコシステムの中心に据えたいようだ。Rivianはすでにラックや車両に載せるタイプのテント、そして運転席ドアのサイドに隠された懐中電灯なども発表している。今後、Rivianがアドベンチャーというブランドイメージを確固たるものにしようと、さらにキャンピングやアウトドアのギアを発表することが予想される。

Rivianはこのトラックを特別なライフスタイルのためのものと位置付けている。Patagonia(パタゴニア)の衣服やRange Rover(レンジ・ローバー)の車両などを考えればわかるように、アウトドア好きの人、少なくともそうしたイメージを欲している人はいる。これは賢明なアプローチで、これまでのところRivianはそうしたイメージそのものだ。広告やソーシャルメディア投稿、そして外観から、Rivianが注意深くブランドイメージを統一しようとしているのは明らかだ。

トラックとSUVは通常、労働者やファミリーをターゲットにしている。テレビコマーシャルでは、埃まみれの男性が干し草の山を運搬したり、女性が食品や日用品を車から降ろし、後尾扉を足で閉めたりしている。しかしRivianはそうではない。

これまでのところRivianはプロダクトを、トレイル走行やキャンプファイヤーの横といったシーンに持ってくるなど、奥地で披露してきた。コマーシャルの登場人物はThe North Faceのジャケットを着て、REIのテントで眠るなどアドベンチャーの最中、という感じだった。今日発表のキッチンがあれば、ピックアップからキッチンを引き出してコーヒーを入れることができる。

Rivianは、コンセプトにすぎない、とTechCrunchに対し語ったものの、本格生産する意向だ。そしてギアトンネル用のユニットは他にも出てきそうだ。私はその一つとして、スライド式の犬を洗って乾かすステーションがあればいいと思う。泥だらけの犬をトラックの中に入れることほど最悪なことはないからだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

ダイムラーとBMWが支援する配車サービスKapten、ロンドン進出に伴いUberを批判

ダイムラーとBMWが支援するフランスの配車アプリKaptenが今日、Uberの納税方式を攻撃する広告キャンペーンとともにロンドンでサービスを立ち上げた。

サービス開始に先立ち、Kapten(以前は「Chauffeur Prive」と呼ばれていた)はロンドンの交通規制当局TfLから、英国の首都ロンドンでプライベートハイヤー車両を運営するライセンスを取得していた。2012年にフランスで事業を開始したKaptenはパリで急成長し、その後リスボンとジュネーブに事業を拡大した。

Kaptenの新しいビルボード広告キャンペーンはUberが地元に払う税を回避していると非難している。「英国でVAT支払いを回避するサービスもある。それはUberクールじゃない」。それとは対照的に、Kaptenは事業を展開するマーケットごとに地元に税金を払っているとしている。そして広告は、ロンドンっ子たちにKaptenの利用は「ベストな選択かもしれない」と呼びかけている。

プレスリリースでKaptenは、Uberの納税地がオランダであるためにUberが英国政府にほとんど税金を払っていないことや、サービス料金にのせるVAT(付加価値税)を回避していることでUberは批判を受けてきたことを指摘した。

「推定でUberは2018年に英国で10億ポンドの乗車予約があった。25%のコミッションに20%のVATが課されていたら、英国の大蔵省は追加で年間5000万ポンドの税収があったことになる」とKaptenは話した。

一方、Kaptenの新しいロンドンでのサービスは今日現在、ゾーン1〜5で利用できる。配車アプリでは、立ち上げに伴い乗車料金の50%オフを提供する。Kaptenは今後も乗車料金は競合相手より平均20%ほど安いとしている。

Kaptenは、車で市中心部に入るときに発生する混雑税を年内は運転手に代わって負担することを約束し、「混雑税のかかるゾーンでの乗車の料金は、Uberより少なくとも2ポンドは安い」とKaptenは語っている。

Kaptenロンドンのゼネラル・マネジャーを務めるMariusz Zabrocki氏は発表文で以下のように述べている。「ロンドンでは、自信過剰な独占企業1社が配車サービスを展開してきた。しかしこの状況を変えるときがきた。ロンドンのプライベートハイヤーのドライバー、通勤客、住人たちはより良いサービスを受ける権利があると確信している。ロンドンっ子たちがUberを利用するたびに、健康保険や学校、そのほかの英国経済の一部の財源となるはずの60ペンスが失われる」。

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(翻訳:Mizoguchi)