iRocketとデブリ除去・衛星サービスのTurion Spaceが地球低軌道へ10回の打ち上げ契約を締結

ニューヨークに拠点を置く再利用可能ロケットのスタートアップiRocket(アイロケット)は、最初の商用顧客を獲得した。同社は米国時間11月4日、Y Combinator(YC)の卒業生であり、軌道上デブリの除去や衛星サービスのための宇宙機を開発しているTurion Spaceと複数回の打ち上げ契約を締結したと発表した。

契約条件によると、iRocketは10回の打ち上げで、Turionが開発中のDroid衛星20基を軌道に乗せる予定だ。

iRocketは、完全に再利用可能なロケットの開発を進めており、まずShockwave(ショックウェーブ)打ち上げロケットを開発し、2年後には軌道に乗せることができるようになるとしている。自律的に3DプリントされたShockwaveは、最大で約300kg(661ポンド)および1500kg(約3300ポンド)のペイロードに対応することができる。同社は、NASAのマーシャル宇宙飛行センターで、インジェクターテストやロケットエンジンテストなどのハードウェアテストを開始した。次は完全な組み立てテストだと、CEOのAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchに語っている。

「開発は順調に進んでおり、Turionとのパートナーシップはそれを強化するものです」と同氏は語った。iRocketは、米国宇宙軍、M&J Engineering Group、VCのVillage Globalから資金提供を受けている。

再利用可能な上段を持つiRocketと、Droid宇宙機を持つTurionは、両社とも宇宙ゴミの除去に目を向けている。Droidは軌道上のゴミをロボットアームを使いドッキングして除去し、最終的には大気圏再突入で燃え尽きるよう、十分に低い軌道に引きずり込ことで、デブリを除去する。

Y Combinatorの2021年夏期コホートに参加していたTurionは、2022年10月にDroidのプロトタイプ1号機の打ち上げを目指している。同社はそのミッションのためにすでに別の打ち上げ契約を結んでいるが、どのプロバイダーを選択したかは明らかにしていない。

この最初の打ち上げでは、軌道上デブリを除去したり、衛星にサービスを提供することはできない。TurionのRyan Westerdahl(ライアン・ウェスターダール)CEOは「領域認識活動のみを行う予定です」と説明する。「私たちはこの衛星を『Just Get It Up There』と呼んでいますが、これはできるだけ早く軌道に乗せたいからです。なぜなら、当社がすべきことの大部分は、地上オペレーションを本当に強化することだからです」とも。

Turionは、YCに加えて、Soma Capital、Forward VC、Pi Campus、FoundersX Ventures、Harvard Management Company、Imagination VCからも資金提供を受けている。

ウェスターダール氏は「当社の最優先事項は、地球低軌道における持続可能な未来を築くことであり、積極的なデブリ除去はそのための大きな要素です」と述べている。

両社はまた、軌道上でのサービスに関する将来のコラボレーションの可能性についても示唆している。ウェスターダール氏は、TurionがiRocketと協力して、ロケット会社のペイロードの何分の一かで軌道上の最終デリバリーを行い、宇宙ゴミの除去と組み合わせる可能性を示唆した。

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

アマゾンの衛星インターネット事業「Project Kuiper」、2022年までに2基の衛星プロトタイプ打ち上げを目指す

Amazon(アマゾン)の衛星インターネットプログラムである「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」は、農村部や僻地にグローバルなブロードバンド・アクセスを提供するために、2022年末までに2つのプロトタイプ衛星の打ち上げを目指している。

プロトタイプ衛星の打ち上げ・運用にはまず、Federal Communications Commission(米連邦通信委員会)の承認が必要になる。Amazonの子会社でProject Kuiperを運営するKuiper Systems(カイパー・システムズ)は、米国時間11月1日、連邦通信委員会に、いわゆる「実験用ライセンスの要請」を提出した。

その目的は、衛星の推進力、電力、姿勢制御システム、熱設計、無線によるソフトウェア更新機能をテストし、検証することだ。2年間のライセンスを要請したKuiper Systemsは、長期にわたる性能とテレメトリのデータ収集を行う他、打ち上げオペレーションとミッション管理に関するデータも収集する。

この2基の衛星は、2020年FCCがKuiper社に使用ライセンスを与えた3つの軌道高度のうちの1つである、地表から590キロメートルの位置で運用される。このライセンスの下で、Amazonは今後6年以内に、計画しているコンステレーション全体(3236個)の約半分の衛星を打ち上げなければならない。

同社の実験用ライセンス申請書によると、衛星は軌道に打ち上げられた後、南米、アジア、テキサスの地上局と4つの顧客端末装置に接続されるとのこと。これについて同社は「Amazonが開発した革新的で低コストの顧客端末」のプロトタイプと記しているだけで、カスタマーユニットについての詳細は明らかにしていない。

Kuiper社では、ミッション終了時に衛星が「推進型軌道離脱」を行うと述べている。このプロセスが失敗した場合、衛星は打ち上げから3年半後に軌道減衰によって受動的に軌道を離脱するという。

ライセンスが承認されれば「KuiperSat-1(カイパーサット1)」と「KuiperSat-2(カイパーサット2)」と名付けられた2つのプロトタイプ衛星は、2022年の第4四半期までに2回のミッションに分けてケープカナベラルから打ち上げられることになる。

Amazonは、この2つのミッションの打ち上げ業者として、ABL Space Systems(ABLスペース・システムズ)を選択した。ABL社の「RS1」ロケットはまだ軌道に到達したことはないものの、同社は2021年中にアラスカで、この高さ88フィート(約26.8メートル)のロケットの最初の打ち上げを計画していると述べている。ABL社は先日、2億ドル(約228億円)の資金調達を完了したことを発表しており、これにより同社の評価額は24億ドル(約2735億円)にまで上昇したと報じられている。

両社は「数カ月前から」協業しており、すでに2回の統合設計レビューが完了していると、Amazonは述べている。

「これは長期的な協力関係の始まりであり、今後もABL社の事業拡大をサポートしていきたいと私たちは考えています」と、Amazonは声明の中で述べている。

現在はSpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)が独占している急成長中の衛星ブロードバンド市場に参入しようとしているAmazonにとって、この2基のプロトタイプは商業化への重要な足がかりとなる。Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、この市場は2030年までに最大186億ドル(約2兆1200億円)を生み出す可能性があるという。

Amazonは、Project Kuiperに少なくとも100億ドル(約1兆1400億円)の投資を計画している。このeコマース界の巨大企業は2020年4月、United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)との間で9回の打ち上げに関する契約を結んだと発表した。Amazonデバイス&サービス担当SVPのDavid Limp(デヴィッド・リンプ)氏は、2020年のTC Sessions:Space(TCセッションズ:宇宙)で、このプロジェクトでは複数の打上げ業者を探すことになると語っていた。

「3200個以上の物体を宇宙に打ち上げなければならないとなると、多くの打ち上げ能力が必要になります」と、語った同氏は「我々の希望としては、1社だけではなく、複数の業者にお願いしたいと考えています」と続けた。

画像クレジット:Amazon

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

人工衛星メーカーTerran OrbitalがSPAC合併で株式公開へ、企業価値は約1793億円

さくらインターネットの衛星データプラットフォーム「Tellus」Ver.3.0で衛星データの売買が可能に

小型衛星大手メーカーのTerran Orbital(テラン・オービタル)は、特別買収目的会社(SPAC)のTailwind Two Acquisition Corp.との合併により上場する。取引後の企業価値は15億8000万ドル(約1793億円)で、Terran Orbitalは約4億7000万ドル(約533億円)の資金を獲得する。

このうち、3億4500万ドル(約391億円)はTailwind Twoの出資によるもので、これに加えてAE Industrial Partners、Beach Point Capital、Daniel Staton、Lockheed Martin、Fuel Venture Capitalから5000万ドル(約56億円)のPIPE資金が提供される。さらに、Francisco PartnersとBeach Point Capitalが7500万ドル(約85億円)を追加で拠出しており、取引終了時にはFrancisco PartnersとLockheed Martinから最大1億2500万ドル(約141億円)の債務コミットメントを得られる可能性がある。

今回の発表は、宇宙関連の新興企業が現金を調達して株式を公開する方法として、SPAC合併に依然として注目していることを示している。これまでにVirgin OrbitPlanetRedwire、BlackSky、Spire GlobalSatellogicRocket Lab、Momentus、Astraなどの宇宙関連企業が、この手法で数十億ドル(数千億円)の資金を調達した。

Terran Orbitalは、主に米政府向けに人工衛星の設計、製造、エンジニアリングを行う受託製造会社だ。Terranの業務の約95%はNASAと国防総省に関連していると、CEOのMarc Bell(マーク・ベル)氏は2021年初めのTechCrunchとのインタビューで語った。

Terran Orbitalは3億ドル(約340億円)を投じてフロリダ州スペースコーストに世界最大の人工衛星製造施設を開設することを9月に発表した。この66万平方フィート(約6万1316平方メートル)の施設では、年間1000個の人工衛星の完成品と100万個以上の人工衛星部品を製造することができる。これは宇宙産業では前例のない規模だ。

人工衛星の製造に加えて、Terran Orbitalは独自の地球観測コンステレーションを運用して衛星画像をサービスとして提供することも目指している。ベル氏は声明の中でこれを新しいSaaS「サービスとしての衛星」と呼んだ。

合併取引は、Terran OrbitalとTailwind Twoの両取締役会から全会一致で承認されており、2022年の第1四半期中に完了する見込みだ。

画像クレジット:NicoElNino / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

水を推進剤とする衛星用エンジンを開発する東京大学発のPale Blueが4.7億円調達、量産体制を構築

水を推進剤とする衛星用超小型推進機の実用化を手がけるPale Blueが7000万円を調達

環境にやさしい水を推進剤とする超小型衛星用エンジン(超小型推進機)の開発などを行う、東京大学発のスタートアップPale Blue(ペールブルー)は10月28日、シリーズAラウンドにおいて4億7000万円の資金調達の実施を発表した。

引受先は、既存投資家であるインキュベイトファンド、三井住友海上キャピタルに、今回新たに加わったスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー、ヤマトホールディングスとグローバル・ブレインが共同で運営するCVCファンド「KURONEKO Innovation Fund」の4社。

同時に、商工組合中央金庫からの2000万円の融資契約を締結し、さらに経済産業省の令和2年度補正宇宙開発利用推進研究開発を受託(初年度予算最大3億円)。これにより、累計調達額は約10億円となった。

水イオンスラスター(水プラズマ式推進機)の作動の様子

水イオンスラスタ(水プラズマ式推進機)の作動の様子

Pale Blueの製品には、現在水蒸気で推進する高推力多軸の「水レジストジェットスラスタ」、水プラズマで推進する低燃費の「水イオンスラスタ」、水蒸気と水プラズマで推進する高推力、多軸、低燃費の「水統合スラスタ(ハイブリッドスラスタ)」という3種類の超小型推進機がある。これまでに同社は、大学や研究機関などと連携して、これらのエンジンの宇宙実証プロジェクトを進めてきている。すでにフライトモデルの開発が完了し、企業や政府からの受注も増えているとのことだ。

水レジストジェットスラスタ(水蒸気式推進機)

水レジストジェットスラスタ(水蒸気式推進機)

水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機)。大きさは9cm×9cm×12cm

水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機)。大きさは9cm×9cm×12cm

近年では、超小型衛星によるコンステレーション構築の機運が高まっているが、打ち上げの際に、大型衛星との相乗りの場合希望する軌道が選べないことがある。また、重力や空気抵抗で高度が下がり衛星の寿命が短くなってしまう問題もある。そこで、高性能な推進機が求められている。経済産業省が令和2年度補正宇宙開発利用推進研究開発で、モジュール型の推進機の開発と実証を行う企業を公募したのもそんな背景からだ。Pale Blueはその審査に通り、予算を獲得できた。

今回調達した資金は、グローバルも含めたチーム強化、量産体制の構築や新たな研究開発に使われる。「圧倒的な安全性・価格競争力・持続可能性を持つ、水を推進剤とした超小型推進機の社会実装を加速させ、宇宙空間における新たなモビリティインフラを構築することで、地球周辺及び地球以遠における持続可能な宇宙開発に貢献します」とPale Blueでは話している。

さくらインターネットの衛星データプラットフォーム「Tellus」Ver.3.0で衛星データの売買が可能に

さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トンを削減

クラウドコンピューティングサービスを展開するさくらインターネットは10月26日、衛星データプラットフォーム「Tellus」(テルース)のバージョン3.0の提供を開始した。このバージョンから、新機能として衛星データの売買が可能な「Tellus Satellite Data Traveler」が追加された。

Tellus Satellite Data Travelerでは、ユーザーは衛星のセンサーの種類、時刻、関心領域(AOI。Area of Interest)などを指定して衛星データを検索し、購入できる。購入したデータは、任意の場所に保存が可能。

また今回、Tellusで衛星データを販売する企業(衛星データプロバイダー)は、日本スペースイメージング(JSI)、日本地球観測衛星サービス(JEOSS)、パスコの3社となる。今後、JSIが提供する米Maxarの衛星からのデータ(現時点では個別問い合わせ対応)、JEOSSの衛星「ASNARO-2」のデータも加わる。さらに、パスコが運用する衛星「ASNARO-1」と、2020年度中の打ち上げが予定されているJAXAの先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)のデータも順次販売が開始されるとのこと。

Tellusは、経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」として開発と運用が行われている衛星データプラットフォーム。2019年2月21日のサービス提供開始以来、アカウント登録者数は2021年10月26日時点で2万4000人を超えている。Tellusにおいて「宇宙アセットを民主化する」というミッションを掲げるさくらインターネットでは、「衛星データと地上データの産業利用を促進し、衛星データを利用して新たな価値を創造する」と話している。

英国宇宙庁が不要な衛星2機の除去プログラムに日本の宇宙スタートアップ「アストロスケール」を選定

スペースデブリ(宇宙ごみ)除去などの軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスは10月26日、英国の宇宙庁UKSAの低軌道上の非協力物体(運動制御が不能になったドッキング機能を持たない衛星)2基の除去を検討するプログラム「COSMIC」(コズミック)に選定されたことを発表した。これは、ドバイで開催されている国際宇宙会議においてUKSAが行った発表を受けてのこと。

アストロスケールは2020年8月25日、軌道上での模擬デブリ(クライアント)の捕獲に成功している。この際使用された、民間企業としては世界初のデブリ除去技術実験衛星「ELSA-d」(エルサディー)のミッションで培われた技術がCOSMICで活かされる。ELSA-dは、本体である捕獲機(サービサー)と模擬デブリとをともに宇宙に打ち上げ、捕獲実験を行った。デブリは磁石でサービサーとドッキングする仕組みになっている。現在、ELSA-dは、サービサーの自律制御機能による「非回転状態のクライアントの捕獲」や「回転状態のクライアントの捕獲」の実証実験の準備が進められている。

これと並行して、欧州宇宙機関(ESA)の通信システム先端研究「Sunrise」(サンライズ)プログラムにおいて、複数のクライアントを捕獲し除去できるELSA-M(エルサ・エム)の開発を、ロンドンの通信衛星コンステレーション企業OneWebと進めている。

COSMICでは、このELSA-Mのサービサーを仕様変更して使われる。いったん低軌道に打ち上げられたELSA-Mは、クライアントの軌道へ移動してクライアントを捕獲し、廃棄用軌道まで降下してクライアントを大気圏に放出する(最終的に大気圏に再突入させることで燃え尽きさせる)。そして次のクライアントの軌道まで移動して、捕獲、放出を繰り返す。このミッションでは、軌道上での修復作業も想定されていて、宇宙空間での宇宙状況把握の実証実験も行われるとのことだ。

日本を本社と研究開発拠点を構えるアストロスケールは、イギリス、アメリカ、シンガポール、イスラエルに事業展開をしている。

ウォズニアック氏の宇宙企業「Privateer」は混雑化して危険な宇宙のGoogleマップを目指す

現在、地球低軌道上(LEO)には、壊れた衛星やロケットの破片、多段式ロケットや宇宙ミッションの残骸など、何百万個もの宇宙ゴミが散乱しているが、これを一掃することを目的としたベンチャー企業が次々と誕生している。Steve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏と共同で宇宙ベンチャーを設立したAlex Fielding(アレックス・フィールディング)氏によると、LEOの清掃は重要な課題だが、1つ問題があるという。宇宙ゴミ(スペースデブリ)の多くは、実際にどこにあるのかわからないということだ。

「軌道清掃企業は、地球低軌道上にあるほとんどの物体がどこにあるのか一致した意見がなく、それぞれの瞬間に3~400km程度の精度以上で把握することができません」とフィールディング氏はTechCrunchに語った。

フィールディング氏とウォズニアック氏は、新会社「Privateer」を設立して、この知識のギャップを解消しようとしている。これまでステルス状態にあったこの会社は、9月にウォズニアック氏がYouTubeにアップした1分間のプロモビデオへのリンクをツイートしたことで注目を集め、Privateerは宇宙空間の物体の清掃に力を入れるのではないかとの噂が広まった。

しかし、それは微妙に違っていた。「Privateerは実際には、宇宙をきれいにするという目標でスタートしたわけではありません」とフィールディング氏は説明する。「私たちは、宇宙のGoogleマップを作ることを目指してスタートしたのです」。

フィールディング氏とApple(アップル)の共同創業者ウォズニアック氏のコラボレーションは、今回が初めてではない。2人は2000年代初頭に、物体の物理的な位置を追跡する技術を開発する無線ハードウェア企業Wheels of Zeus(WoZ)を設立している。

「20年前、私たちがそれ(WoZ)を始めたとき、宇宙にあったものの半分はゴミでした」とフィールディング氏は語る。その後、状況はさらに悪化していった。「今の世界では、(軌道上には)もっともっと多くのものがあり、その中でも特に危険なものはほぼすべてが低軌道にあり、非常に高速で移動していて、ほとんどの場合よく追跡されておらず、理解されていません」。

宇宙ゴミの危険性は依然として存在する。5月、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が、モジュールの1つに取り付けられたロボットアームに幅5mmの穴が開いているのを発見した。アームは機能していたが、ISSが衝突を避けるための操作をしなかったことから、当たった物体は、米国宇宙軍の宇宙監視ネットワークが追跡できないほど小さい軌道上の数百万個の物体の1つであると考えられる。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)やSpaceX(スペースX)のような打ち上げ企業が、かつてNASAのような公的機関が独占的に行っていたサービスを今は提供しているのと同じように、Privateerはこうした膨大なデータギャップを埋められるかもしれない。

Privateerは、最初から早いペースで取り組みを進めている。同社は、2022年2月11日に「Pono 1」と名づけられた最初の小型衛星を打ち上げる予定だ。Pono 1の大きさは約3U(約30cm)で、非光学式センサー30個と光学式カメラ12個の合計42個のセンサーを搭載する。非光学式センサーは、4ミクロンの精度を実現する。衛星本体は炭素繊維を用いて3Dプリントで作られ、そうすることによりチタンと同等の剛性を持つ単一の固体部品になるとフィールディング氏はいう。推進剤の代わりに、磁気トルカという衛星姿勢制御用の電流を発生させる小型装置を使って方向を制御する予定だ。

Pono 1衛星は4カ月間だけ運用され、そのあと軌道離脱して地球の大気圏に戻り焼失する。2番目の衛星であるPono 2は、4月末に打ち上げられる。Privateerは、両機の打ち上げのためにすでに打ち上げ業者を決定し、必要な承認を得ている。

これらの打ち上げに加えて、Privateerは、軌道上のロジスティックスとサービスを提供するスタートアップであるAstroscaleとすでに協力関係にあり、現在、宇宙ゴミ除去衛星のデモを行っているとフィールディング氏は述べている。また、Privateerは、米国宇宙軍とのパートナーシップも締結した。

フィールディング氏は、宇宙の完全なGoogleマップを追求しないことは、単なる怠慢ではなく、命取りになるかもしれないという。「私は普段は楽観主義者ですが、今でも非常に恐れているのは、遅すぎたのではないか、2年以内に軌道上で最初の有人宇宙飛行士の犠牲者が出るのではないかということです。そう考える理由は、地球低軌道での(物体や活動の)急増にあります」。

関連記事:日本の宇宙スタートアップAstroscaleが宇宙で軌道上デブリをつかまえて放すデモに成功

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

JAXA認定スタートアップ「天地人」が宇宙ビッグデータを活用した土地評価エンジン「天地人コンパス」体験版を提供開始

JAXA認定スタートアップ「天地人」が宇宙ビッグデータを活用した土地評価エンジン「天地人コンパス」の無料体験版を提供開始

JAXA認定の宇宙領域スタートアップ天地人は10月11日、宇宙ビッグデータを活用した土地評価エンジン「天地人コンパス」の無料体験版「天地人コンパス Demo」の提供開始を発表した。宇宙ビッグデータを実際の事業に応用する体験ができる。

天地人コンパスは、宇宙から土地を評価するサービス。衛星写真だけでなく、降水量などの気象情報、3D地形情報、地表面温度などの地球観測衛星からのデータを活用して、土地の解析、可視化、データ提供を総合的に行うというものだ。世界中あらゆる場所のデータを取得でき、利用者が持っているデータを組み合わせた複合的な分析も可能。農業や都市開発など様々な用途に対応でき、宇宙から稲の栽培環境をモニタリングする「宇宙ビッグデータ米」プロジェクトや、キャンプ場の候補地探し、複数の土地の類似性を気象の観点から評価するプロジェクトなどに使われている。

「天地人コンパス Demo」では以下の機能が体験できる。

  • ピンポイント評価機能:地上データでは観測が難しい場所について、土地の状況・環境を過去からさかのぼり評価し、適地の探索や、未来のリスクを可視化する。サンプルエリア内と特定の期間に限り、任意の場所の気象の遷移や土地の情報を閲覧できる

  • 広域土地評価機能:ビジネスや農業に最適な場所探しや、災害や自然環境変化を分析できる。分析の元となる地図情報を重ね合わせることも可能。分析例として、農作物の高温障害リスクの分析、仮想の米の品種(天地人米)を栽培条件を仮設定し地表面温度と土壌から生産適性度をスコア化するといったものがある

「天地人コンパス Demo」サービス詳細

  • 料金:無料
  • 提供開始日:2021年10月11日
  • 対応ブラウザー:Google Chromeを推奨、PCのみ対応

評価が行えるサンプルエリアは、日本の都市部、山間部、平野部に限定される。特設サイトからアクセスすれば無料で利用できる。

Terran Orbitalが世界最大の衛星製造、部品工場をフロリダ州スペースコーストに建設

人工衛星製造会社のTerran Orbital(テラン・オービタル)は米国時間9月27日、3億ドル(約334億円)を投じてフロリダ州スペースコーストに世界最大の宇宙機製造施設を開設すると発表した。

この約6万1000平方メートルの工場では、年間1000基の人工衛星と100万個以上の衛星部品を含む「年間数千種類の宇宙機」を製造することができると、同社は声明で述べている。

2013年に設立されたTerran Orbitalは、同年に超小型衛星開発企業のTyvak(タイヴァック)を買収したものの、その後は目立たない存在だった。2017年には、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)が同社に少額出資している。Terranは現在、カリフォルニア州アーバインで約1万2000平方メートルの施設を運営しているが、CEOで共同創業者のMarc Bell(マーク・ベル)氏は、現在の製造能力やこれまで製造した衛星の数については公表していないと、最近のインタビューでTechCrunchに語っていた。

Terran Orbitalは、主に米国政府向けに人工衛星の設計、製造、エンジニアリングを行う受託製造会社である。ベル氏によると、Terranの仕事の約95%はNASAと米国防総省に関連するとのことだが、同社の商業顧客については明言を避けた。

同社は独自の衛星コンステレーションも開発する予定だと、ベル氏は付け加えた。これらの衛星は、合成開口レーダーの一種を使用し、雲や雷雨などの視界に影響を与える気象現象があっても、画像を撮影することができるようになる。Terranによると、これらの衛星の打ち上げは2022年末に開始する予定だという。

新たな施設は2025年に完成する予定で、約2100人の雇用を生み出すことが期待され、平均賃金は8万4000ドル(約935万円)になる見込みだという。この施設は、同州の航空宇宙開発局であるSpace Florida(スペース・フロリダ)とのパートナーシップのもとで建造され、同局がコンジットファイナンスを提供する。

フロリダ州のスペースコーストには、すでにSpaceX(スペースX)、Blue Origin(ブルー・オリジン)、Redwire(レッドワイア)などが施設を構えている。今回の発表によって、同地の発展はさらに進みそうだ。2020年は1200個以上の衛星が宇宙に打ち上げられ、前年の2倍以上の数が軌道に乗った。

画像クレジット:Terran Orbital

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

衛星データ+機械学習+スマート調節弁で作物の灌漑を細分制御、コストを最大80%削減するVerdi

米国時間9月21日、TechCrunch DisruptのStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)コンペで発表されたVerdi(ヴェルディ)は、スマートバルブ(調節弁)のクラスターを「swarms(スウォーム、群れ)」と呼んでいる。この言葉は、同社が北米の農場で展開しようとしている高密度の導入を意味している。同社のシステムは、既存の灌漑技術に後付けすることで、農家が作物に供給する灌漑をよりコントロールできるようにすることを目的としている。

同社のシステムは、人工衛星(将来的にはドローンも)によって収集された第三者データを利用して、特定の作物のどの部分に十分な水が供給されていないかを判断する。このシステムでは、作物を小さなゾーンに分け、機械学習(ML)を活用して、必要な場所に適切な量の水が届くようにする。

  1. HW-IMG_3

    画像クレジット:Verdi
  2. HW-IMG_4

    画像クレジット:Verdi
  3. SW-IMG_1-Vineyard

    画像クレジット:Verdi
  4. SW-IMG_2-Vineyard

    画像クレジット:Verdi
  5. HW-IMG_2

    画像クレジット:Verdi

共同創業者兼CEOのArthur Chen(アーサー・チェン)氏は、TechCrunchにこう語った。「植物の生育にはさまざまなバリエーションがありますが、それは土壌や気候の違いによるもので、畑の中のわずか数メートルの範囲で起こることもあります」。

「既存のインフラでは、植物の生育条件がそれぞれ異なるにもかかわらず、すべての植物を同じように取り扱うという、画一的な処理しかできませんでした。私たちがここでやろうとしているのは、農家の方々に、個々の植物のグループ、あるいは畑の中の単一の植物に対して、水や、例えば肥料の散布をカスタマイズする能力を提供することです」。

同社は2019年、ブリティッシュコロンビア大学のスピンアウトとしてスタートした。コロナ禍の影響で渡航が制限されていることもあり、これまで彼らのオリジナル技術のほとんどはブリティッシュコロンビア州で展開されている。

今のところシステムの導入には担当者の立ち会いが必要なため、Verdiは1月初旬のロールアウト以来、多くの試験を同州内で行ってきた。ただし、カリフォルニア州やワシントン州でも試験的に導入されている。

このシステムは、従来の方法に比べて、灌漑コストを最大80%削減し、最大10倍の精度を実現することができるという。同社の農家への主なアピールポイントはより正確な灌漑を行うことだが、潜在的な投資家にアピールする際には、水の使用量削減の可能性を強調した方がいいだろう。投資家たちは、より多くのグリーン企業をポートフォリオに加えたいと考え探しているはずだ。特に干ばつに悩まされているカリフォルニア州では、より多くの節水ソリューションが検討されるべきだ。

現在までに、4人のフルタイム社員からなるチームは、Startup Haven、Rarebreed Ventures、Alchemist Acceleratorから、108万ドル(約1億2000万円)のプレシード資金を調達している。

画像クレジット:Verdi

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

宇宙船や人工衛星の制御と離脱技術を開発するAurora Propulsion Technologies、惑星間移動手段としても期待

2021年は、人類史上かつてないほど多くの宇宙船が軌道に投入され、今後10年間はさらに衛星の打ち上げ数が増加すると予想されている。これほど混雑した状況では、衛星を宇宙空間で制御し、寿命が尽きたときに軌道から外すことができるかどうかが鍵となる。

Aurora Propulsion Technologies(オーロラ・プロパルジョン・テクノロジーズ)という企業がある。宇宙船の推進力の問題を単純化することを目指す、ここ数年で登場したスタートアップの1つだ。2018年の創業以来、フィンランド企業の同社は、小型のスラスターエンジンとプラズマブレーキシステムという2つの製品を開発し、2021年の第4四半期には軌道上での実証実験を行う予定だ。同社の活動は投資家の目にも留まり、同社の技術を市場に投入するため、170万ユーロ(約2億2100万円)のシードラウンドを完了したばかりだ。

このラウンドは、リトアニアのベンチャーキャピタルであるPractica Capitalがリードし、国有のプライベートエクイティ企業であるTESI(Finnish Industry Investment Ltd.)と、Kluz VenturesのファンドであるThe Flying Objectが参加した。個人投資家も参加した。

Auroraの最初の軌道上での実証実験となる「Aurora Sat-1」は、Rocket Lab(ロケットラボ)のライドシェアミッションで宇宙に向かうことが先月発表された。この衛星には2つのモジュールが搭載される。1つ目のモジュールには、6つのオーロラ「レジストジェット」エンジンが搭載される。このエンジンは、小型宇宙船の姿勢(衛星の態度ではなく方向)を調整したり、回転を停止したりするのに役立つ。また、同社は、人工衛星の軌道離脱や深宇宙でのミッションに利用できる「プラズマブレーキ」技術のテストも行う。

関連記事:Aurora Propulsion Technologiesの宇宙ゴミ除去技術が2021年第4四半期に宇宙へ

レジストジェットスラスターの長さはわずか1センチメートルほどで、数マイクロリットル(1マイクロリットルは1立方ミリメートル)の水と推進剤を使って宇宙船を動す。6つのスラスターは、ほぼすべての方向に移動できるよう衛星の周囲に配置されており、水温と、移動のために放出する蒸気の強さを調整することもできる。

画像クレジット:Aurora Propulsion Technologies

AuroraのRoope Takala(ルーペ・タカラ)CEOは、Nokia(ノキア)に勤務していたこともあり、レジストジェットに見られるような宇宙産業における重量やサイズの革新を20年前に携帯電話やコンピューターに起こったことに例えている。「この業界の動きは非常にゆっくりとしています」と同氏はTechCrunchに話した。「旧宇宙時代には、ロケットエンジンの開発に4分の1、1世紀の4分の1の時間がかかっていました。今はそれが、1年の4分の1が2つ分になりました。それが私たちが実現したことです」。

プラズマブレーキは、電荷を帯びたマイクロテザーを使ってプロトンの塊を発生させ、抗力を発生させる。これは宇宙船の軌道離脱には理想的だが、おもしろいことに(そして直感に反して)、プラズマブレーキは地球から離れた場所への移動にも使えるとタカラ氏はいう。地球の磁気圏外に出ると、プラズマブレーキは不安定になり、太陽風(プラズマでもある)と一緒に移動するからだ。「同じ製品が、太陽からのプラズマの流れに飛び乗り、そこからエネルギーを取り出すことができるのです」とタカラ氏は説明する。「その意味では、惑星間の移動手段としても使えます」。

理論的には、宇宙船から異なる方向に伸びる複数のテザーを装備すれば、ヨットのように宇宙船を回転させたり誘導したりできるという。だが、この技術はある程度までしか拡張できないため、すぐに人間を乗せた宇宙船を深宇宙に送り出すことはできない。プラズマブレーキテザーの材料強度に限界があることが主な理由だ。この技術は約1000キログラムまでの衛星に使用できる。

「それが私たちの未来です。それが私たちが目指しているところです」とタカラ氏はいう。「今は短期的に、プラズマブレーキと姿勢制御(レジストジェット)を利用して、地球低軌道に注力していますが、将来的に月面ビジネスが徐々に軌道に乗り始めたら、そちらにも目を向けることになると思います」。

プラズマブレーキとレジストジェットは、軌道上に打ち上げられる前に宇宙船に搭載する必要がある。だが、Auroraは、すでに存在する宇宙のゴミに、軌道上でプラズマブレーキを載せる可能性について、他社と検討している。短期的には、地球低軌道用の技術を製品化し、その製造を重ね、CubeSat(キューブサット)より大きいサイズの衛星に対応する機能を製品に追加していく予定だ。

さらに長期的には、深宇宙でのミッションも視野に入れている。「私たちは、非常に小さな宇宙船に適合する技術を作りたいという考えからスタートしました。宇宙船を早く移動させることができれば、ボイジャー探査機に追いつけます」とタカラ氏はいう。

「最初は月、次に火星、金星、そしていつの日かボイジャーに追いつき、大旅行ができるかもしれません」。

画像クレジット:Aurora Propulsion Technologies

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

月軌道へのペイロード輸送を2022年第4四半期に行うとSpaceflightが発表

衛星ライドシェアサービスを提供するSpaceflight Inc.(スペースフライト)は、企業が月軌道やそれ以上の軌道に簡単にアクセスできるようにするという長期的なビジョンの一環として、2022年に月フライバイ・ミッションで顧客の荷物を送り届ける。

シアトルに本社を置くSpaceflightは、過去数年間にわたってテストを行ってきた軌道遷移機(OTV)「Sherpa(シェルパ)」の最新版である推進型OTV「Sherpa EScape(シェルパ・エスケープ、略称Sherpa ES)」を使用してペイロードを輸送する予定だ。このSherpaは、ロケットで宇宙空間に到達した後、顧客の希望する軌道にペイロードを展開するための、宇宙におけるラストマイル輸送を担当する役割を果たす。

Spaceflightの電気推進型OTV「Sherpa-LTE」は、2021年6月にSpaceX(スペースX)のTransporter-2(トランスポーター2)ミッションで打ち上げられ、その電気推進器の稼働に成功している。さらに2021年12月には、化学推進型の「Sherpa-LTC」が、SpaceXのTransporter-3で打ち上げられる予定だ。同社はこれまでにSherpa OTVで50基の顧客の宇宙機を展開することに成功している。

関連記事:SpaceXが88機の衛星を軌道に乗せ、2021年初めて1段目の地上着陸に成功

Sherpa-ESは、2つの主要な航空宇宙プライムから1000万ドル(約11億円)の資金調達を終えたばかりの軌道上給油会社Orbit Fabと(オービット・ファブ)と、新会社GeoJump(ジオジャンプ)のペイロードを運ぶ予定だ。GeoJumpもライドシェアリング事業に参入しようとしている会社らしく、同社のウェブサイトでは、小型衛星に「静止軌道への新しいルート」を提供すると謳っている。このミッションでは、SpaceXの「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットによる打ち上げが予定されている。

画像クレジット:Spaceflight

このライドシェアは、NASAのCommercial Lunar Payload Services(商業月面輸送サービス)プログラムに選ばれた数少ない企業の1つであるIntuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)が実施するロボットによる月面着陸ミッションの一部だ。Intuitive Machinesは、まずは2022年前半に予定されている14日間のミッションで、重量約2000キログラムの「Nova-C(ノヴァC)」着陸機を月面に送ることになっている。この着陸機は約130kgのペイロードを輸送する。

Intuitive Machinesは、2022年第4四半期に予定されているこの着陸機の2回目のミッションもSpaceXに依頼した。この着陸機は月の南極に着陸する最初の物体で、月の氷を掘削する最初の物体になると、同社は述べている。

関連記事・軌道上の燃料補給サービスを目指すOrbit Fabの資金調達に航空宇宙分野大手ノースロップとロッキード参加

画像クレジット:Spaceflight

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東京大学と日本気象協会が人工衛星から観測した「重い水蒸気」が天気予報の精度向上に寄与することを実証

東京大学と日本気象協会が人工衛星からのリモートセンシングで観測した「重い水蒸気」が天気予報の精度向上に寄与することを実証

東京大学生産技術研究所芳村研究室(芳村圭教授)は9月14日、日本気象協会と共同で、人工衛星から観測された大気中の水蒸気同位体の比率から気温や風速の予測精度を改善できることを、世界で初めて実証したと発表した。天気予報の精度向上に直接貢献できる可能性がある。

原子には、原子核を構成する陽子と中性子の数によって、軽いものと重いものとがあるのだが、同じ原子番号のもので、軽いの重いのをくるめたのが「同位体」だ。たとえば水素には、原子核に陽子が1つの軽水素、陽子と中性子とが1つずつの重水素、陽子1つと中性子2つの三重水素という3つの安定同位体(放射性のない同位体)がある。また酸素には一般的な質量数16のものに対してと0.2%ほどしか存在しない質量数18という「重い」ものがある。これらの重い同位体で構成される水分子の水蒸気が、「重い水蒸気」ということだ。

重い水蒸気同位体は、気体よりも液体、液体よりも固体に多く含まれる性質があることから、古くから地球上の水の循環の指標に使われてきた。東京大学生産研究所では、重い水蒸気同位体と軽いものとの比率の実測値と、大気大循環(地球規模の大気の循環)モデルを使ったシミュレーションによる推定とを組み合わせること(データ同化)で、気象予測の精度が向上するという理論を2014年に発表していた。

さらに2021年、人工衛星からの水蒸気同位体比の観測情報を得たと仮定して、それを同研究所が開発した全球水同位体大気循環モデル「IsoGSM」によるシミュレーション結果とデータ同化し確認したところ、実測データではないものの、10%以上改善できることがわかった。

そして今回、同研究所は、欧州の人工衛星MetOp(Meteorological Operational Satellite Program of Europe)に搭載された分光センサーIASI(赤外線大気探測干渉計)の実測データを入手しデータ同化を行った。すると、実際に気象に関連する数値の解析精度が向上していることが実証された。4月1日から4月30日までのIASIのデータを使い、データ同化した場合としなかった場合の予測を比較したところ、結果はデータ同化したものが、していないものの成績を上回った。

今後は、観測データを増やし、モデルの性能を高め、「どのような状況でどのような効果が得られるのか」を詳細に調べてゆくという。そうすることで、例えば、台風や線状降水帯など、極端現象の予測性能の向上に繋がる可能性もあると考えているとしている。

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版公開しグローバル展開も開始

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版リリースしグローバル展開も開始

衛星データ解析コンテストプラットフォームを運営するSolafune(ソラフネ)は9月14日、日本マイクロソフトと共同で衛星データの実用化に向けた「超解像技術」を開発するデータ解析コンテストの開催を発表した。

これは、「市街地の高解像度画像を活用した超解像度画像の生成」を競うもの。衛星などから撮影された地理空間データは解像度が低いために実用化が遅れている。また、高解像度の衛星写真は高額で、なかなか利用が難しい。そこで、Solafuneと日本マイクロソフトは今回のコンテストを実施して超解像技術を募り、そうした課題に取り組むという。

参加者は、Solafuneから提供される1m程度の評価用データを25cm解像度の超解像度画像に向上させ、所定のサイトから投稿する。すると画像評価指標SSIMによって評価され、スコアが比較される。コンテスト開催中は、その暫定スコアがリーダーボードで公開される。上位入賞者は、後に超解像度化に使われたソースコードを提出することになっている(実装の環境や言語に制限はない)。

解像度化の例。左が解像度1m、右が25cm

このコンテストを通して、「衛星データや航空写真などの地理空間データの社会実装が加速することを期待しています」とSolafuneは話している。

コンテスト概要

  • 開催期間:2021年9月14日午前9時〜12月23日午前9時(日本時間)
  • データの提出期限:2021年12月23日午前8時59分(日本時間)
  • 賞金:1位は3000米ドル(約33万円。総額は5000米ドル以上)と日本マイクロソフトからの特典
  • 開催場所および詳細https://solafune.com/competitions/3c7a473f-61f4-472f-a812-92eb07cc4541
  • ハッシュタグ:#MScup

Solafuneは、2020年10月のサービスリリース以降、衛星データや地理空間データの活用をテーマにしたデータ解析コンテストの運営を通して、アルゴリズムライセンス事業を展開。2021年8月には日本マイクロソフトと衛星データのビジネス利用の促進を目的とした協業を発表した。また同社は、今回のコンテスト開催に合わせて英語版をリリース。早期のグローバル展開を見据え、世界中のエンジニアが利用する体制を整えるとしている。

軌道上の燃料補給サービスを目指すOrbit Fabの資金調達に航空宇宙分野大手ノースロップとロッキード参加

サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業のOrbit Fab(オービット・ファブ)は、軌道上における燃料補給サービスの第1人者になることを目指しており、その実現に向けて1000万ドル(約11億円)以上の資金を調達した。この資金は、早ければ2022年末に開始を予定している燃料補給実験に使われる。同社はこの実験で、2機の燃料補給シャトルを宇宙に送り、ドッキング、燃料の移送、ドッキング解除の3つのステップを繰り返し行う予定だ。

今回の投資ラウンドは、Asymmetry Ventures(アシンメトリー・ベンチャーズ)が主導し、既存投資家のSpaceFund(スペースファンド)と、新たな投資家として丸紅ベンチャーズおよびAudacious Venture Partners(オーデイシャス・ベンチャー・パートナーズ)が参加した。中でも注目すべきは、Northrop Grumman Corporation(ノースロップ・グラマン・コーポレーション)とLockheed Martin Ventures(ロッキード・マーチン・ベンチャーズ)の両社も出資に参加したことである。請負業者として競合する2社が一緒に投資を行うのは初めてのことだと、Orbit Fabの共同設立者であるJeremy Schiel(ジェレミー・シエル)氏はTechCrunchに語った。

「私たちはすべての船を引き上げる潮目のようなものです」と、シエル氏はいう。「どちらかの企業に競争力を与えるのではなく、宇宙における持続可能性のために、全体としてより良い選択肢を採ることができるのです」。

同氏のいう「2つの大手企業を仲良くさせること」は、宇宙空間での燃料補給という事業を有利に進めたい同社にとって、重要な鍵となる。2019年のTechCrunch Disrupt Battlefield(テッククランチ・ディスラプト・バトルフィールド)で最終選考に残ったOrbit Fabは、RAFTI(Rapid Attachable Fluid Transfer Interface、高速取付可能流体移送インターフェース)と呼ばれる給油バルブを開発しているが、この部品は宇宙機が地球を離れる前に設置する必要がある。つまり航空宇宙関連業者など大手顧客から、購買契約は衛星が軌道に乗る前に獲得しなけれはならないのだ。

関連記事:軌道上の人工衛星に燃料補給するスタートアップOrbit Fabが約3億2000万円を調達

RAFTIを搭載した宇宙機は、地球低軌道や静止軌道、そして最終的にはシスルナ空間(地球と月の間)に配置されたOrbit Fabの燃料補給シャトルとドッキングできるようになる。2025年までには、すべての宇宙機にRAFTIが搭載されるようになることを期待していると、シエル氏は語っている。さらに長期的には、小惑星から採掘した材料を使って宇宙空間で燃料を製造するという、より大きな目標を同社は掲げている。

「私たちは宇宙のDow Chemical(ダウ・ケミカル)になりたいのです」と、シエル氏はいう。「月面採掘業者や小惑星採掘業者の最初の顧客となって、彼らが採掘した材料を買い取り、それを使って実用的な推進剤を軌道上で製造できるようにしたいと考えています」。

Orbit Fabによると、軌道上での燃料補給は急成長する新しい宇宙経済の基盤となるもので、物品や宇宙機をある軌道から別の軌道に移動させる必要が生じたり(これには非常に多くの燃料が必要だ)、資源を地球に戻すためのサプライチェーンを構築する際に不可欠となる。

「私たちは、宇宙で製造する推進剤のサプライチェーンになりたいのです」と、シエル氏は付け加えた。

画像クレジット:NicoElNino / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「エンド・トゥ・エンドの宇宙企業」を目指すRocket Labが大規模な部品製造施設の新設を発表

Peter Beck(ピーター・ベック)氏は、Rocket Lab(ロケットラボ)を単なる打ち上げ業者ではなく、宇宙船を製造してそれを軌道に乗せるまで自社で行う完全な垂直統合型の宇宙企業に成長させたいという意思を隠そうとしない。ベック氏が2006年に設立したこの会社は、米国時間9月1日、これまで以上に大規模な人工衛星の部品を製造するための新しい製造施設を開設すると発表し、その目標に向けてさらに大きく前進した。

この新施設では、人工衛星の重要な姿勢・安定性制御システムであるリアクションホイールを製造することになる。Rocket Labによると、この施設は2021年の第4四半期に操業を開始し、年間最大2000個のリアクションホイールを生産できる能力を備えるという。宇宙機には一般的に3個から4個のリアクションホイールが搭載されていることを考えると、ロケットラボの顧客はこれらの部品を受け入れる約500基の衛星を計画していると見ていいだろう。Rocket LabのCEOであるベック氏は「これらは複数のコンステレーションに大量に供給するためのものです」と、TechCrunchによるインタビューで語った。

Rocket Labの宇宙システム事業は、自社開発の宇宙機「Photon(フォトン)」ですでに多忙を極めており、2020年には大手衛星ハードウェア製造会社のSinclair Interplanetary(シンクレア・インタープラネタリー)を買収したことで、さらに勢いづいている。Rocket Labは、個々の用途に合わせてカスタムメイドしたPhotonを提供しており、宇宙製造業のスタートアップ企業であるVarda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)と共同で、近々打ち上げ予定の機体を設計したり、2024年に予定されている科学ミッションでは2基のPhotonを火星に送ることになっている。

関連記事
微小重力の宇宙での製造業スタートアップVardaがRocket Labと宇宙船3機の購入契約締結
Rocket Labの火星ミッションにNASAがゴーサイン

これまで宇宙機の部品は、数十から数百という規模で生産されるのが普通だった。軌道に乗るまでのハードルが高かったからだ。しかし、Rocket Labのような企業の技術革新によって、打ち上げコストが下がり、より多くの企業が宇宙にプロジェクトを送れるようになった。つまり、より多くの衛星と、より多くのリアクションホイールが製造されるということだ。現在でも、Rocket Labが製造したリアクションホイールは約200個が軌道上にあるが、1年で2000個というのは大幅な規模拡大となる。

これはすべて、Rocket Labが目指す「総合的な宇宙サービス企業」を実現するための取り組みだ。顧客にとって垂直統合型の大きなメリットは、同社によると、製造リードタイムを短縮できることだという。Photonの製造を開始した当初は、リアクションホイールの納入に数カ月を要したため、軌道に打ち上げるまでのタイムラインが大幅に遅れてしまったと、ベック氏は語っている。

「宇宙経済が予測通りに成長するためには、これを解決しなければなりません」と、ベック氏はいう。「これは解決しなければならない根本的な問題です。宇宙のサプライチェーン全体は、小規模な事業を特徴としており、どんな規模であれ大量生産する能力には本当に欠けています」。

Rocket Labは、宇宙システム部門と新しい生産施設をサポートするため、16人以上の人材を採用する予定だ。高度に自動化が進んだこの施設では、生産ツールと環境試験用ワークステーションはすべて自動化され、金属加工は無人で行えるように最適化されていると、Rocket Labは声明で述べている。これらの技術は、Rocket Labの他の製造プロセスと非常によく似ていると、ベック氏はいう。自動化を利用して製品を迅速にスケールアップする能力の礎として、同氏はRosie(ロージー)と呼ばれる製造ロボットのことを挙げた。

関連記事:Rocket Labの新しいRosie the Robotはロケット製造を大幅にスピードアップさせる

Rocket Labが製造しているスタートラッカーのナビゲーションツールのような、他の宇宙機部品も生産を拡大する予定があるかと尋ねると、ベック氏は口を閉ざした。しかし、ベック氏によれば、同社では新製品の投入を計画しているという。それがどんな物になるかは、明言しなかったものの、ベック氏が宇宙システム部門を起ち上げた当時、掲げていたその目的は「宇宙に行くものにはすべてRocket Labのロゴがついていなければならない」というものだった。

この目標は、Rocket Labのさらに大きなビジョンである、打ち上げサービスと宇宙機製造を組み合わせ、軌道上のインフラを構築できるエンド・ツー・エンドの宇宙企業になることにもつながる。

「これらを組み合わせれば、軌道上でインフラを整備し、最終的にサービスを提供するための非常に強力なプラットフォームになります」と、ベック氏は語っている。

しかし、どのようなサービスを考えているのかという質問に対して、ベックは胸の内を明かさず、代わりに競合他社の有名な例を挙げた。それは、SpaceX(スペースX)が自社で製造・打ち上げを行うインターネット衛星プロジェクト「Starlink(スターリンク)」だ。ベック氏は、Rocket Labがどのような事業展開を目指しているのかについては口を閉ざしたまま、垂直統合によって新しいビジネスモデルを試すことができるとだけ語った。

「私たちが実験するための限界費用は、非常に低く抑えられます」。
画像クレジット:Rocket Lab

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket Labの火星ミッションにNASAがゴーサイン

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、同社の宇宙機、Photon(フォトン)が次の科学ミッションに向けてNASAの承認を受けるための一歩を進めた。すべてが計画通りに進めば、2基の人工衛星は2024年に打ち上げられ、11カ月後に火星に到着し、赤い惑星の磁気圏を探査する。

このミッションはEscape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers(ESCAPADE、大気流出・プラズマ加速・力学探査機)と呼ばれ、去る2019年に小型衛星科学プログラムとして提案され、最終的にファイナリストに選ばれた。UC Berkeley(カリフォルニ大学バークレー校)の研究者らが科学部門を支える主要メンバーだ。

これらの人工衛星は質量180kg以下で単体で科学ミッションを遂行しなければならない。強力な商業産業連携のもとで遂行されるより軽量で期間の短いミッションを目指す新たなプログラムの一環だ。プログラムの発表以来いくつかのコンセプトが練られ、ESCAPADEはKey Decision Point C(重要決定ポイントC)を最近通過したところで、これはコンセプトを実現する準備ができたことを意味する。

このミッションは2基1組の衛星からなり、選抜されるのに貢献した特徴であることは間違いない。Rocket LabのPhotonプラットフォームの本来の目的は、軌道上の作業から今回のような惑星間科学ミッションまでさまざまな宇宙事業のために何らかのターンキーデザインを提供することだ。

Rocket Labがこのミッションの打ち上げに同社のロケットであるElectron(エレクトロン)を使わないのは興味深い。2基の衛星は「NASAが提供する商業ロケット」(選択はNASAに任せられている)に搭載される。おそらくそのときまでには同社も契約に名乗りを上げているだろうが、現時点でRocket Labは宇宙船だけを製造しており、ナビゲーション、方位、推進など、大部分の非科学機材部分を担当している。

関連記事:Rocket Labが再利用可能な衛星打ち上げ用大型ロケットを発表、最大積載量8トン

「ESCAPADEは、従来の何分の1かのコストで先進惑星間科学に手が届くことを示す革新的ミッションであり、当社のPhotonでこれを可能にしたことを誇りに思っています。NASAから飛行へのゴーサインをもらったことを大変喜んでいます」とRocket Labのファウンダー・CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏は節目の発表文で語った。

Rocket Labはすでに、Artemis(アルテミス)計画のためにCubeSat(キューブサット)をシスルナ(地球と月の間の)軌道に載せる契約を結んでおり、Varda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)とは同社が2023年と2024年に打ち上げる宇宙船を製造する契約を確定している。

関連記事
Rocket LabがNASAゲートウェイ計画の試験衛星を月軌道に打ち上げる
微小重力の宇宙での製造業スタートアップVardaがRocket Labと宇宙船3機の購入契約締結画像クレジット:Rocket Lab

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブランソン氏のヴァージン・オービットが約3513億円の評価額でSPAC上場へ、合併後はNASDAQで取引

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、特別目的買収会社(SPAC)との合併により株式を公開する予定であることを発表した。この取引により合併後の企業価値は32億ドル(約3513億円)となり、Virgin Orbitは1億ドル(約110億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含む4億8300万ドル(約530億円)の現金残高を得ることになる。この取引が完了した場合、合併後の会社はNASDAQで「VORB」のティッカーシンボルで取引される。

このような取引が計画されていることは、CNBCが2021年6月に報じていた。最近では、SPACは民間宇宙ベンチャー企業のイグジットオプションとしてポピュラーな選択肢となっている。例えば、Rocket LabのSPAC合併は承認されたばかりで、8月25日に取引が開始される。Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏のもう1つの宇宙企業であるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、ブームの先駆けとなった最初の大きなSPAC取引だった。

Virgin Galacticは人を軌道下飛行で宇宙に連れて行くことにフォーカスし、Virgin Orbitは同様の技術で小型衛星のペイロードを地球低軌道に運ぶことに重点を置いている。かつてこれら2社は1つの会社だったが、それぞれの市場により焦点を当てるために2つに分かれた。Virgin GalacticとVirgin Orbitは2021年、両社とも大きな進展を遂げ、Galacticでは初のフルクルー宇宙飛行、Orbitでは初の商業衛星ペイロード輸送ミッションなど、画期的なフライトを達成した。

関連記事:ヴァージン・オービットが初の商業ペイロード輸送の打ち上げに成功

Virgin Orbitは、特別仕様に改造したボーイング747旅客機の主翼からLauncherOneロケットを打ち上げており、このロケットは打ち上げシステム全体の第1段として完全に再利用可能だ。また、VOX Spaceという子会社を持っており、そちらは国家安全保障関連の打上げサービスを提供している。

Virgin Orbitが合併するブランクチェックカンパニーNextGen Acquisition Corp. IIはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元パートナーが率いており、合併が成立した際には、信託財産から最大3億8300万ドル(約420億円)の現金を提供する予定だ。

画像クレジット:Virgin Orbit

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ブランソン氏のヴァージン・オービットが約3513億円の評価額でSPAC上場へ、合併後はNASDAQで取引

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、特別目的買収会社(SPAC)との合併により株式を公開する予定であることを発表した。この取引により合併後の企業価値は32億ドル(約3513億円)となり、Virgin Orbitは1億ドル(約110億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含む4億8300万ドル(約530億円)の現金残高を得ることになる。この取引が完了した場合、合併後の会社はNASDAQで「VORB」のティッカーシンボルで取引される。

このような取引が計画されていることは、CNBCが2021年6月に報じていた。最近では、SPACは民間宇宙ベンチャー企業のイグジットオプションとしてポピュラーな選択肢となっている。例えば、Rocket LabのSPAC合併は承認されたばかりで、8月25日に取引が開始される。Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏のもう1つの宇宙企業であるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、ブームの先駆けとなった最初の大きなSPAC取引だった。

Virgin Galacticは人を軌道下飛行で宇宙に連れて行くことにフォーカスし、Virgin Orbitは同様の技術で小型衛星のペイロードを地球低軌道に運ぶことに重点を置いている。かつてこれら2社は1つの会社だったが、それぞれの市場により焦点を当てるために2つに分かれた。Virgin GalacticとVirgin Orbitは2021年、両社とも大きな進展を遂げ、Galacticでは初のフルクルー宇宙飛行、Orbitでは初の商業衛星ペイロード輸送ミッションなど、画期的なフライトを達成した。

関連記事:ヴァージン・オービットが初の商業ペイロード輸送の打ち上げに成功

Virgin Orbitは、特別仕様に改造したボーイング747旅客機の主翼からLauncherOneロケットを打ち上げており、このロケットは打ち上げシステム全体の第1段として完全に再利用可能だ。また、VOX Spaceという子会社を持っており、そちらは国家安全保障関連の打上げサービスを提供している。

Virgin Orbitが合併するブランクチェックカンパニーNextGen Acquisition Corp. IIはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元パートナーが率いており、合併が成立した際には、信託財産から最大3億8300万ドル(約420億円)の現金を提供する予定だ。

画像クレジット:Virgin Orbit

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ブランソン氏のヴァージン・オービットが約3513億円の評価額でSPAC上場へ、合併後はNASDAQで取引

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、特別目的買収会社(SPAC)との合併により株式を公開する予定であることを発表した。この取引により合併後の企業価値は32億ドル(約3513億円)となり、Virgin Orbitは1億ドル(約110億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含む4億8300万ドル(約530億円)の現金残高を得ることになる。この取引が完了した場合、合併後の会社はNASDAQで「VORB」のティッカーシンボルで取引される。

このような取引が計画されていることは、CNBCが2021年6月に報じていた。最近では、SPACは民間宇宙ベンチャー企業のイグジットオプションとしてポピュラーな選択肢となっている。例えば、Rocket LabのSPAC合併は承認されたばかりで、8月25日に取引が開始される。Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏のもう1つの宇宙企業であるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、ブームの先駆けとなった最初の大きなSPAC取引だった。

Virgin Galacticは人を軌道下飛行で宇宙に連れて行くことにフォーカスし、Virgin Orbitは同様の技術で小型衛星のペイロードを地球低軌道に運ぶことに重点を置いている。かつてこれら2社は1つの会社だったが、それぞれの市場により焦点を当てるために2つに分かれた。Virgin GalacticとVirgin Orbitは2021年、両社とも大きな進展を遂げ、Galacticでは初のフルクルー宇宙飛行、Orbitでは初の商業衛星ペイロード輸送ミッションなど、画期的なフライトを達成した。

関連記事:ヴァージン・オービットが初の商業ペイロード輸送の打ち上げに成功

Virgin Orbitは、特別仕様に改造したボーイング747旅客機の主翼からLauncherOneロケットを打ち上げており、このロケットは打ち上げシステム全体の第1段として完全に再利用可能だ。また、VOX Spaceという子会社を持っており、そちらは国家安全保障関連の打上げサービスを提供している。

Virgin Orbitが合併するブランクチェックカンパニーNextGen Acquisition Corp. IIはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元パートナーが率いており、合併が成立した際には、信託財産から最大3億8300万ドル(約420億円)の現金を提供する予定だ。

画像クレジット:Virgin Orbit

原文へ

(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)