NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星も組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTT・NTTドコモ・スカパーJSAT・エアバスがHAPS早期実用化の覚書締結、衛星とHAPSを組み合わせた大規模ネットワーク構想

NTTは1月17日、HAPS早期実用化に向けた研究開発、実証実験などの推進を検討する覚書を、NTTドコモスカパーJSATエアバスとの4社で締結したことを発表した。HAPSの接続性、HAPSを利用した通信システムの有用性の発見、技術やユースケースの開発を4社で進めるという。

HAPSとは、地上約2万mの成層圏を飛行する高高度プラットフォーム(中継基地局)のこと。昨年、NTTとエアバスは、エアバスが所有する高高度無人機「Zepher S」(ゼファーエス)を用いた実証実験を行い、通信サービスの実現可能性をすでに実証している。今回の覚書により4社は、5Gのさらなる高度化と6Gに向けた取り組みとして、空、海、宇宙を含むあらゆる場所への「カバレッジ拡大」を目指す。

さらにこの覚書には、静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)も含めた非地上ネットワーク技術を用いたアクセスサービス「宇宙RAN(Radio Access Network)」事業の促進も含まれている。「宇宙RAN」が実現すれば、災害対応、離島やへき地へのサービス、飛行機や船舶などの通信環境の飛躍的改善が期待できるという。

宇宙RANシステム構成

宇宙RANシステム構成

今後は通信技術の開発のみならず、HAPSの機体開発や、HAPSの運用に向けた標準化と制度化への働きかけも行い、HAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行う。さらに、HAPS、衛星、地上局の連携による「宇宙RAN」事業を促進し、NTTの技術を活用したネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築してゆくとしている。

宇宙のガソリンスタンドOrbit Fabが地球静止軌道にあるAstroscaleのサービス衛星に燃料供給する契約を締結

軌道上における持続可能な運用のための新境地を開くようなパートナーシップが誕生した。「宇宙のガソリンスタンド」を標榜するスタートアップ企業のOrbit Fab(オービット・ファブ)は、稼働衛星の寿命延長サービスに取り組むAstroscale(アストロスケール)と提携し、同社が保有する寿命延長衛星「LEXI(Life Extension In-Orbit、レキシー)に地球静止軌道(GEO)上で燃料補給を行うサービスを提供する。

AstroscaleとOrbit Fabは、どちらも人工衛星の活動期間を延ばすことを目的とした技術を中心に提供する企業だ。Orbit Fabは、衛星が宇宙で燃料を容易に補給できるようにするための技術をてがけており、そのために軌道上で他の宇宙船が簡単に着脱可能な燃料移送インターフェイスを設計した。Astroscaleは、LEXI衛星を使って、静止軌道(GEO)上にある既存の衛星に接続し、コースを修正したり、新たな目標傾斜にリロケーションすることで、ミッションを拡張するサービスを提供する。

AstroscaleはLEXIを「燃料補給できるように設計された最初の衛星」と謳っている。これによってLEXIは、Orbit Fabの燃料移送インターフェース(Rapidly Attachable Fluid Transfer Interface、略してRAFTI)と軌道上燃料タンカーにとって完璧なターゲットカスタマーとなる。計画通りに進めば、2026年にはAstroscaleのLEXIの1号機が宇宙で活躍することになり、Orbit FabはLEXIに最大1000kgのキセノン推進剤を補給する契約を結んでいる。

Orbit Fabによると、同社では今後5年から10年以内に数十の燃料タンカーと燃料運搬船を打ち上げ、地球低軌道(LEO)とGEO、そしてNASAのアルテミス計画に伴って活発化するはずの地球と月の間のシスルナ空間に、これらの宇宙機を戦略的に配備する予定だという。計画通りに進めば、2023年にはOrbit Fabの最初の燃料運搬船2隻が、LEOで試運転を行うことになる。

画像クレジット:Astroscale / Orbit Fab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

高専生による自主的な超小型人工衛星開発を目指す「第1回全国高専宇宙コンテスト」開催

高専生による自主的な超小型人工衛星開発を目指す「第1回全国高専宇宙コンテスト」を開催

国立高等専門学校機構は1月10日、高専生が人工衛星を使った宇宙ミッションのアイデアを競う「第1回全国高専宇宙コンテスト」を開催した(新居浜工業高等専門学校が主管校。一般参加は不可)。高専の「ものづくり教育」の一環として、学生が主体的に開発に参画する仕組み作りを目指すものだ。優れたアイデアは、今後打ち上げが予定されている高専開発による超小型衛星「KOSEN衛星」のミッションテーマとして検討されることになる。

KOSEN-1

高専では、「KOSEN-1」という超小型衛星を2021年11月にイプシロン5号機で打ち上げている。これは、高知高専、群馬高専、徳山高専、岐阜高専、香川高専、米子高専、明石高専、新居浜高専、鹿児島高専、苫小牧高専の10高専が共同開発した木星電波観測技術実証衛星。JAXA革新的衛星技術実証2号機に搭載される実証テーマに採択され、高専生が中心となり2年半かけて開発した。現在は、米子高専、群馬高専、高知高専、徳山高専、新居浜高専、岐阜高専の6校が、今年打ち上げ予定の「KOSEN-2」の開発を進めている。こちらは、JAXA革新的技術実証3号機に搭載される実証テーマに選定されたものだ。

KOSEN-Xシミュレーター

このコンテストでは、参加者に「KOSEN-1」と同等のコンピューター、センサー、カメラを備えた「KOSEN-Xシミュレーター」が渡され、考案したアイデアの実証実験が行えるようになっている。自由に使えるミッション用のスペースも確保されているため、実際に軌道を巡る衛星を想定した実験が行える。審査には、JAXAの研究者は技術者も加わり、アイデアと検証実験の双方から勝者が選出されている。

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

「低価格で便利な、選ばれるロケット」をミッションに、観測ロケット「MOMO」と超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を独自開発・製造しているロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジズ」は12月17日、シリーズDラウンドとして、第三者割当増資による総額17億7000万円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、藤田誠氏(INCLUSIVE代表取締役社長)、INCLUSIVE、サイバーエージェント、シリアルインキュベート、セブンスターズキャピタル1号投資事業有限責任組合、サンコーインダストリー、中島瑞木氏(coly 代表取締役社長)、中島杏奈氏(coly 代表取締役副社長)、山本博士氏(スマレジ 代表取締役)

同社「ねじのロケット(MOMO7号機)」「TENGAロケット(MOMO6号機)」は2021年7月に2機連続で宇宙空間に到達。2019年5月の「宇宙品質にシフト MOMO3号機」を含め、3度の宇宙空間到達を達成した。国内民間単独での宇宙空間到達は唯一となっている。MOMOは実証から事業化の段階に入り、並行して2023年度の打上げを目指すZEROの開発を本格化させている。

今回調達した資金は、ZEROの開発をさらに加速させるための研究開発・設備投資・人材採用・材料費などにあてる。「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンの実現に向け、今後も低価格、高頻度な宇宙輸送の観点から日本の宇宙産業をリードするとしている。

同社ZEROについては、一般的には複雑で高額となるエンジンシステムを独自設計するなどコア技術を自社で開発。設計から製造、試験・評価、打上げ運用までを自社で一気通貫させた国内唯一の開発体制、アビオニクス(電子装置)への民生品活用などにより、低価格で競争力のあるロケットを実現するという。

ZEROの燃料には低価格で性能が高く、環境にも優しい液化メタンを選定。エア・ウォーターと協力し、牧場から買い取ったメタンガスで製造した液化バイオメタンをロケットに使うことを計画している。インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

また東と南が海に開かれた世界有数の好立地、かつ本社から7.5kmの近距離に射場を有することも、世界的に見て大きなアドバンテージとしている。2021年1月には人工衛星開発の100%子会社「Our Stars」を設立しており、日本初の「ロケット×人工衛星」の垂直統合による、革新的な衛星サービスの開発を目指す。

 

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、EC・欧州宇宙機関主催の衛星データ国際コンテストにおいて農業関連部門で優勝

JAXAが認定する宇宙ベンチャー天地人は、EC(欧州委員会)とESA(欧州宇宙機関)が主催するビジネスアイデアのコンテスト「Copernicus Masters」のうち、ドイツの農業団体BayWa(バイバ)とともに実施した「BayWa Smart Farming Challenge 2021」において、アジアのスタートアップで初めて優勝を飾った。

Copernicus Mastersの主催者であるCopernicus(コペルニクス)は、ESAが中心となって実施されている地球観測プログラム。Copernicus Mastersには9つの部門があり、BayWa Smart Farming Challenge 2021はそのひとつ。それぞれの優勝者の中から総合賞「コペルニクス・マスターズ」が選出される。

BayWaの課題は、牧草管理、農業および園芸における初期の作物病害の推定、園芸における収量予測の3つ。これに対して天地人は、「衛星データとAIを使って土地の利用を最適化するソリューション」を提案した。審査では、革新性、衛星データ活用サービスを実際に使用するエンドユーザーにとっての付加価値の有無、技術的な実現可能性、市場での実行可能性が評価された。

優勝した天地人には、特典としてBayWaとの協働の機会が与えられたほか、Copernicus Masters総合賞のファイナリストとしての権利が与えられた。総合賞の特典は、ESAのビジネス育成センターからの支援や、協賛企業からのビジネスサポート。さらに賞金と衛星データが贈られることになっている。

天地人は、今回の機会を活用してソリューション開発とグローバルでの販売の強化を目指し、気候変動に対応した農業や土地の特徴にあった農業の実践、CO2排出量削減に向けての取り組みなどを後押しするという。

宇宙で発生した電磁波が地上に伝わる5万キロにおよぶ「通り道」が世界で初めて解明される

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

「電磁波の通り道」を同時多地点観測する様子 ©ERGサイエンスチーム

金沢大学理工研究域電子情報通信学系松田昇也准教授らからなる国際研究チームは12月10日、複数の科学衛星と地上観測拠点で同時観測された電磁波とプラズマ粒子データなどから、電磁波の通り道の存在を世界で初めて突き止め、電磁波が地上へ伝わる仕組みを解明したと発表した

地球周辺の宇宙空間では、自然発生した電磁波が地球を取り巻く放射線帯を形成したりオーロラを光らせるなどの物理現象を引き起こしているが、1つの衛星や観測地点からの観測では、電磁波の伝搬経路全体を三次元的に捉えることができなかった。そこで研究グループは、日本のジオスペース探査衛星「あらせ」、アメリカの科学衛星「Van Allen Probes」、そして日本が世界に展開する地上観測拠点「PWING 誘導磁力計ネットワーク」とカナダが北米に展開する「CARISMA 誘導磁力計ネットワーク」を連携させて、同時に観測を行った。

それにより、宇宙空間の特定の場所で電磁波(イオン波)が生まれ、その一部だけが宇宙の遠く離れた場所や地上に届いていることがわかり、そのおよそ5万キロの旅の途中で宇宙のプラズマ環境変動を引き起こし、やがて地上に到達していることを解明した。

宇宙空間には冷たいプラズマが存在し、それが電磁波によって温められると、地上の大気の寒暖の変化のように、宇宙の環境が変化する。特に大規模な太陽フレアによる宇宙嵐が起きると大量の電磁波が発生し、人工衛星の故障、宇宙飛行士の放射線被曝、地上の送電網の障害など、多くの影響をもたらす。電磁波の通り道がわかれば、プラズマ環境変化が様々な場所で同時に発生する仕組みもわかる。

イオン波を4つの拠点で同時に捉えた観測結果

だがそれを解明するには、イオン波が発生している時間帯の、2つの科学衛星と2つの地上観測拠点の位置関係が大変に重要になる。研究グループは、そのタイミングを予測しつつイオン波の観測を続けたところ、2019年4月18日に4つの拠点でのイオン波の同時観測が達成され、同一のイオン波が地磁気赤道から地上に伝搬する「電磁波の通り道」が同定された。それによると、イオン波は5万キロの距離を移動するが、経路の断面はその1/1000ほどと小さい、細長いストロー状であり、広い宇宙空間で、きわめて局所的に伝搬経路が形成されていることもわかった。

あらせ、Van Allen Probesの衛星軌道と地上観測拠点の位置関係

「電磁波の通り道」が解明され、電磁波がどこで発生し、どう伝わるかがわかったことで、安全な宇宙利用に向けた「宇宙天気予報」の精度向上が期待されるという。同研究グループは「地球以外の惑星でも電磁波が発生し伝わっていく仕組みを解明し、宇宙環境変動の網羅的な理解と普遍性の解明へと歩みを進めていきたい」と話している。

この研究には、金沢大学の他、名古屋大学、東北大学、コロラド大学、ミネソタ大学、JAXA宇宙科学研究所、京都大学、九州工業大学、ロスアラモス国立研究所、ニューハンプシャー大学、情報通信研究機構、国立極地研究所、アルバータ大学などが参加している。

SpaceX、ブラックホールを観測するNASAのX線偏光望遠鏡を打ち上げ

SpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットが、NASAのX線偏光観測衛星「Imaging X-ray Polarimetry Explorer(IXPE)」を搭載して飛び立った。2017年に最初に発表されたIXPEは、ブラックホールや中性子星などの宇宙線源から飛来するX線偏光を測定できる初めての衛星だ。

冷蔵庫サイズのこの衛星には、光の方向、到達時間、エネルギー、偏光を追跡・測定できる3つのX線偏光望遠鏡が搭載されている。それらすべての望遠鏡からのデータを組み合わせることで、NASAはX線を放出する謎の天体がどのように機能しているのかをより深く知ることができる画像を形成することが可能になる。例えば、超新星残骸の中心で中性子星が高速回転している「Crab Nebula(かに星雲)」の構造をより詳しく知ることができるのではないかと期待されている。

ブラックホールを観測することで、人類がまだほとんど知らない宇宙の領域について、IXPEは科学者の知見を深めることができる。ブラックホールがなぜ回転しているのか、どのように宇宙の物質を飲み込んでいるのかなどの手がかりを得られるかもしれないとともに、新たな発見につながる可能性もある。今回のミッションの主任研究員であるMartin Weisskopf(マーティン・ワイスコフ)博士は、ブリーフィングで次のように述べている。「IXPEは、宇宙がどのように機能しているかについての現在の理論を検証し、磨きをかけるのに役立ちます。また、これらのエキゾチックな天体について、これまでの仮説よりもエキサイティングな理論を発見できるかもしれません」。

SpaceXは今回の打ち上げに、前回のミッションで使用したFalcon 9ロケットを使用した。順調にいけば、ロケットの第1段はIXPEを宇宙に運んだ後、同社のドローン船「Just Read the Instructions(つべこべ言わず説明書を読め)」に着陸する。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:NASA

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所ら日本の研究グループが参加するX線偏光観測衛星IXPE打ち上げ、ブラックホールの詳細な観測が可能に

理化学研究所(理研)は12月9日、X線偏光観測衛星「IXPE」(Imaging X-ray Polarimetry Explorer)がケネディー宇宙センターから打ち上げられることを発表した(日本時間9日午後3時に打ち上げられた)。ブラックホールに落ち込む物質の形、ブラックホール周辺の空間の歪み具合、中性子星の強い磁場で歪められた特異な真空などの「これまでの観測とはまったく質の異なるデータが得られる」と期待されている。

これは、理化学研究所開拓研究本部玉川高エネルギー宇宙物理研究室の玉川徹主任研究員、山形大学学術研究院の郡司修一教授、名古屋大学大学院理学研究科の三石郁之講師、広島大学宇宙科学センターの水野恒史准教授らからなる共同研究。アメリカとイタリアとの国際プロジェクトである「IXPE」衛星に、理研がX線偏光計の心臓部である「ガス電子増幅フォイル」を、名古屋大学が X線望遠鏡の「受動型熱制御薄膜フィルター」を提供している。またプロジェクトには日本から20名を超える研究者が参加している。これによりIPXEは、観測例が極めて少ないX線偏光を捉え「誰も見たことがない新しい宇宙の姿」を明らかにするという。

偏光とは、電磁波の偏りのこと。偏光サングラスは、この光の性質を利用して眩しい光をカットし、風景がはっきり見えるようにしている。同じように、X線偏光を利用することで、X線を放射する天体の詳細な観測が可能となる。X線は大気に遮られてしまうため、宇宙で観測するしかない。そのためX線天文学が始まったのは、人工衛星での観測が可能になった1960年代からのこと。日本ではJAXAの宇宙化学研究所を中心に研究が進められていて、X線天文学は「日本のお家芸」ともいわれている。

試験中の「IXPE」衛星

そんな中で、X線偏光観測の手段として本命視されているのが、NASAマーシャル宇宙飛行センターが中心となって提案されたIXPEだ。この衛星のX線偏光観測能力によって観測できるものには、たとえば、恒星とブラックホールが互いの周りを回っている連星系で、恒星から流れ出した物質がブラックホールが吸い込まれる際に形成されるプラズマの円盤「降着円盤」がある。降着円盤はブラックホールに近づくほど高温になり、ブラックホールの近くではX線を放出する。そのX線の偏光を観測できれば、どんなに高性能な望遠鏡でも観測できない遠くにある円盤の構造が「まるでその場にいるように」観測できるという。

IXPEは、SpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられ、赤道上空高度600kmの軌道を周回する。最初の1カ月で機能や性能の評価を行った後に観測が開始される。運用期間は2年間となっているが、衛星の機能が維持されているかぎり延長されるとのことだ。

IXPEを載せたFalcon 9は、日本時間9日午後3時、ケネディー宇宙センターから打ち上げら、3時34分ごろに衛星を無事、切り離した。

画像クレジット:NASA / BallAerospace

小型SAR衛星の開発・運用を手がける九州大学発QPS研究所がシリーズBファーストクローズとして38.5億円調達

小型SAR衛星の開発・運用を手がける九州大学発QPS研究所がシリーズBファーストクローズとして38.5億円調達

小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所は12月9日、シリーズBラウンドのファーストクローズにおいて、総額38億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのスカパーJSAT、またスパークス・グループ運営の未来創生ファンド、日本工営、リアルテックファンド、三井住友海上キャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルの計8社。累計調達額は約72億円となった。

QPS研究所、自社開発した小型衛星用の収納式大型軽量アンテナにより、従来のSAR衛星の1/20の質量、1/100のコストで100kg 級高精細小型SAR衛星の開発に成功。現在は2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星を打ち上げてコンステレーションを構築し、約10分ごとの準リアルタイム地上観測データサービスの提供を目指している。

このプロジェクトの実現に向け、2017年10月・2018年2月のシリーズA調達にて総額24億5000万円の資金調達を行い、2020年11月に総額8億6500万円の追加資金調達を実施した。これにより、当初のプラン通り衛星「イザナギ」「イザナミ」の2機の開発・製造・打ち上げに取り組んだ結果、2021年5月にはイザナミによる70cm分解能という民間の小型SAR衛星として日本で最高精細の画像取得に成功。衛星データビジネスの構築に向けた活動を本格化させた。

シリーズBで調達した資金は、2022年打ち上げ予定の衛星3号機~6号機の開発・運用の資金として使用する予定。同社が目指す小型SAR衛星36機のコンステレーションの実現に向け、着実に取り組むとしている。

SynspectiveとRocket Labが小型SAR衛星2号機「StriX-β」の打ち上げで契約締結、2022年初旬に打ち上げ予定

SynspectiveとRocket Labが小型SAR衛星2号機StriX-βの打ち上げで契約締結、2022年初旬に打ち上げ予定

小型SAR衛星による観測データを活⽤したワンストップソリューション事業を展開するSynspective(シンスペクティブ)は12月8日、SAR(合成開口レーダー)衛星の実証2号機「StriX-β」の打ち上げ契約を、再利用型ロケットの開発と打ち上げを行うアメリカ企業Rocket Lab(ロケットラボ)と締結したことを発表した。2022年初旬の打ち上げを予定している。また、StriX-βに続くStriXシリーズ2機の打ち上げ契約も同時に締結している。

Synspectiveは、2020年12月にRocket LabのElectron(エレクトロン)ロケットにより「StriX-α」を打ち上げ、民間小型SAR衛星としては日本で初めて、衛星画像の取得に成功している。StriX-βは、地表のミリ単位の変動を観測する技術「干渉SAR」(InSAR)のための軌道制御機能を搭載した小型衛星で、今回は軌道上でその実証実験を行う。Synspectiveでは、2023年までに6機の衛星を打ち上げ、2020年代後半までには30機を打ち上げコンステレーションを構築する計画を立てている。

StriX-βはもともとドイツの衛星打ち上げサービスを行う企業Exolaunch(エクソローンチ)を通じてSoyuz-2(ソユーズ2)ロケットで2021年内に打ち上げられるはずだったが、打ち上げスケジュールが変更されたことにより、Electronロケットに切り替えられた。

衛星データで世界中の森林伐採の状況を可視化できるアプリGRASP EARTH ForestをRidge-iが開発

衛星データで世界中の森林伐採の状況を可視化できるアプリ「GRASP EARTH Forest」をRidge-iが開発、違法な伐採を自動検出

AI・ディープラーニング領域のコンサルティング・開発を手がけるテックイノベーションファーム、Ridge-i(リッジアイ)は12月6日、衛星データを利用した森林伐採の進行状況を可視化できるアプリケーション「GRASP EARTH Forest」を開発したことを発表した。ヨーロッパの光学衛星Sentinel-2の観測データを利用し、約1週間の周期で全地球の変化を捉えることができる。

衛星データで世界中の森林伐採の状況を可視化できるアプリ「GRASP EARTH Forest」をRidge-iが開発、違法な伐採を自動検出

Ridge-iでは、GRASP EARTH Forest利用の実例として、千葉県南部の大規模開発を検出した様子を写真で示している。下の写真では、Google Map上で赤く塗られた箇所が森林伐採された地区を示している。2018年1月から2021年1月にかけて伐採が行われたと思われる場所だ。

GRASP EARTH Forestでは、伐採状況の時間的変化もグラフで示してくれる。下の写真は、指定した伐採箇所のグラフが表示されている。グラフの縦軸が植生指数(植物の量)、横軸が時間。これを見ると、2019年の一時期に急激に植生が減少している。そのことから、この時期に森林が伐採されたものと推測できる。

このアプリケーションで、違法な森林伐採や、許可量を超えた伐採などの自動検出が可能になるとRidge-iは話している。また、関心のある地域の状況のレポートを、ウェブアプリやPDFで定期的に提供することも可能とのことだ。下記リンクからトライアル版の申し込みができる。

https://deep-space.ridge-i.com/contact

小型宇宙機メーカーPhase Fourが次世代プラズマスラスターを発表、約85%の性能向上を実現

宇宙スタートアップ企業のPhase Four(フェーズ・フォー)は、次世代の高周波プラズマ推進システム「Maxwell(マックスウェル)」を、2022年の上半期に発売する予定だ。同社によれば、このシステムは軌道上における宇宙船の操縦性をより広範囲に向上させるための重要な性能改善が施されているという。

一般的に、真空の宇宙空間で衛星を動かす場合、推力と「比推力(ISP)」という2つの重要な性能指標が重視される。比推力とは、単位重量の推進剤あたりどれだけの推力を得られるかというシステムの効率を示す指標だ。

これらのトレードオフは、小型宇宙機メーカーにとって特に重要だ。推力が大きいシステムでは、大量の燃料を搭載する必要があり、ミニ冷蔵庫程度の大きさの衛星ではコストがかかり過ぎる。しかし、特に衛星がライドシェアミッションで宇宙に向かい、自力で最終軌道に到達しなければならない場合には、ISPの高い推進技術が理想的というわけでもない。従来の電気式スラスターは、比推力を最大化すると推力が犠牲になることが多く、スラスタの効率は高くても、移動に数カ月かかることさえある。

Phase FourのMaxwellスラスターは、このトレードオフを解消し、顧客が比較的高い推力モードまたは高いISPで運用できるようにしたと、CTOのUmair Siddiqui(ウマイール・スィディキ)氏は説明する。つまり、必要に応じて高速な移動を行うことも、推進剤を節約するために高ISPモードにすることもできるということだ。

同社はこれらの革新技術を最初の製品である「Maxwell Block 1(マックスウェル・ブロックワン)」スラスターに導入した。Maxwellスラスターの新型となる「Maxwell Block 2(マックスウェル・ブロックツー)」は、これらの指標において約85%の性能向上を実現している。「これは重要なことです」と、スィディキ氏はいう。「ISPや推力が85%向上するということは、推進剤の使用量や軌道上での移動時間が大幅に減ることを意味します」。

Phase FourのMaxwellスラスターには、他にもいくつかの革新的な技術が見られる。ホール効果型と呼ばれる従来のプラズマスラスターは、製造が困難な陰極材料を用いて推力を発生させる。また、システムが大きく重くなるため、多くの顧客にとって理想的とはいえなかった。これらの問題を解決するために、Phase Fourのスラスターは、陰極と陽極ではなく、高周波のプラズマ源を使って推力を発生させる。そのため、より小型で製造が容易であり、キセノンやクリプトンなどの高価なホール効果型スラスターの推進剤だけでなく、あらゆる気体の推進剤に対応できる。

Block 2では、Block 1で初めて達成した4カ月以内の生産を維持することを目指している。このような短納期が可能になるのは、製品のモジュラーデザインに一因がある。Maxwellエンジンでは、(少なくとも考え方としては)自動車産業を参考にした「シャシー」という方式を採用している。「同じ生産ラインを使ったままで、次世代の開発に対応できることが、この製品には求められています」と、スィディキ氏は述べている。「これは最初から生産性を考えたプラズマスラスターです」。

2015年に設立されたPhase Fourは、これまでに10台のMaxwell Block 1システムを顧客に納入している。2021年の夏、同社はNew Science Ventures LLC(ニュー・サイエンス・ベンチャーズ)が主導するシリーズBで2600万ドル(約29億円)の資金を調達した。

画像クレジット:Phase Four

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ワンチップ顕微観察技術MID活用、人工衛星に搭載可能な小型バイオ実験環境開発でIDDKとElevationSpaceが協業


顕微観察装置の研究開発・製造・販売を行うIDDKは11月30日、同社のワンチップ顕微観察技術「MID」を活用した人工衛星に搭載可能なバイオ実験環境の開発を発表した。これは、小型宇宙船を開発するElevationSpaceが2023年に打ち上げを予定している人工衛星への搭載を目指しており、両社はそのための協業を開始した。

IDDKの小型バイオ実験環境「Micro Bio Space LAB」は、微生物や細胞の培養観察を人工衛星内で行うためのもの。MIDを利用することで、培養と観察のための装置を最小化できるという。

搭載する衛星は、「国際宇宙ステーションに代わるプラットフォーム」としてElevationSpaceが開発している100kg級の小型人工衛星「ELS-R100」。東北大学発の宇宙スタートアップであるElevationSpaceは、東北大学で数多くの小型人工衛星を作ってきた知見にもとづき、開発を進めている。

 

スペースデブリ・宇宙ごみ問題に取り組むアストロスケールが約124億円のシリーズF調達、累計調達額約334億円を達成

スペースデブリ問題に取り組むアストロスケールが約124億円のシリーズF調達、累計調達額約334億円を達成

持続可能な宇宙環境を目指し、スペースデブリ(宇宙ごみ。デブリ)除去サービスを含む軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングス(アストロスケール)は11月25日、シリーズFラウンドにおいて、第三者割当増資による約124億円の資金調達を発表した。過去最大額の調達額という。また6回目となる今回の資金調達により、累計調達額は約334億円となった。

調達した資金により、グローバルに開発するミッションとサービスを躍進させる。安全で費用対効果の高い軌道上サービスに関わる技術開発、日本、英国、米国における量産に向けた自社施設の拡張など、グローバルでの成長が可能になるとしている。

引受先は、日本のTHE FUND投資事業有限責任組合(THE FUND)、日本グロースキャピタル投資法人などをはじめ、英国のセラフィム・スペースインベストメント・トラスト(Seraphim)、フランスDNCAファイナンス傘下の DNCAインベストメント・ビヨンド・グローバル・リーダーズを含む海外投資家グループなど。詳細は以下の通り(50音順)。

  • DNCAインベストメント・ビヨンド・グローバル・リーダーズ(DNCA Invest Beyound Global Leaders)
  • EEI4号イノベーション&インパクト投資事業有限責任組合
  • THE FUND投資事業有限責任組合
  • アクサ生命保険
  • イノベーション・エンジンが運営する3ファンド(IEファスト&エクセレント投資事業有限責任組合、イノベーション・エンジンNew Space投資事業有限責任組合、イノベーション・エンジンPOC第2号投資事業有限責任組合)
  • オプス
  • セラフィム・スペースインベストメント・トラスト(Seraphim Space Investment Trust plc)
  • ソラリス ESG マスターファンド(Solaris ESG Master Fund LP)
  • 千葉道場2号投資事業有限責任組合
  • 日本グロースキャピタル投資法人
  • プレリュード・ストラクチャード・オルタナティブズ・マスターファンド(Prelude Structured Alternatives Master Fund, LP)
  • ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(Yamauchi-No.10 Family Office)
  • ワイズ・インベストメント(Y’s Investment Pte. Ltd.)

アストロスケールは、宇宙機の安全航行の確保を目指し、次世代へ持続可能な軌道を継承するため、デブリ除去サービスの開発に取り組む世界初の民間企業。2013年の創業以来、軌道上で増加し続けるデブリの低減・除去策として、今後打ち上がる人工衛星が寿命を迎えた際や恒久故障の際に除去を行うEOL(End of Life)サービスや、既存デブリを除去するためのADR(Active Debris Removal)サービス、稼働衛星の寿命延命措置(LEX。Life EXtension)、宇宙空間上での宇宙状況把握(ISSA。In Situ Space Situational Awareness)、軌道上サービスの実現を目指し技術開発を進めてきた。

また、長期に渡り安全で持続可能な宇宙環境を目指すため、技術開発に加え、ビジネスモデルの確立、複数の民間企業や団体、行政機関と協働し、規範やベストプラクティスの策定に努めている。

同社は2021年8月、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」(エルサディー。End-of-Life Services by Astroscale – demonstration)の実証において、模擬デブリの再捕獲に成功。現在は、2021年内実施予定となっている次のフェーズとして、捕獲機(サービサー)の自律制御機能を用いた「自動捕獲」に向けて準備を進めている。

日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証プロジェクト(CRD2プロジェクト。CRD2はCommercial Removal of Debris Demonstrationの略称)フェーズⅠの契約相手方として選定されている、商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」(アドラスジェー。Active Debris Removal by Astroscale-Japan)の組立作業を2022年前半に開始予定。英国においては、英国宇宙庁による軌道上衛星2機の除去研究プログラムにアストロスケールが選定され、2024年の商用化に向けてEOLサービスの機能充足に努めているそうだ。また、米国・イスラエルのチームはLEXIの開発マイルストーンを順調に達成し、主要な試験を実施している。

人工衛星で地表温度データを収集・解析するHydrosatがさらに11.4億円の資金調達

地理空間データのスタートアップであるHydrosat(ハイドロサット)は、地表温度分析製品の商業化を加速するため、シードラウンドで1000万ドル(約11億4000万円)を確保した。

Hydrosatは、赤外線センサーを搭載した人工衛星を使って地表の温度データを収集することを目指している。同社がサブスクデータ分析プロダクトとして販売する予定の温度データでは、水ストレス、山火事の脅威、干ばつに関する理解を深めることができる。カリフォルニア州での記録的な干ばつの年、米国西部で歴史的な火災シーズンが終わる今、その3つが将来も起こると予想することは極めてやさしい。

Hydrosatは、継続的な情報収集を計画している。各衛星が地球上のあらゆる範囲を継続的に監視するため、それぞれの衛星に特定の地域を監視させる必要がないという意味だ。

「環境モニタリングや農林業における多くの利用例で、そのことが非常に有益になっています。我々はデータを、将来のためにライブラリに保存しているため、その日、翌週、翌々年など、いつでも使えるのです」と同社のCEOであるPieter Fossel(ピーター・フォッセル)氏は最近のインタビューで語っている。

6月に500万ドル(約5億7000万円)の資金調達を完了後、またすぐに資金調達を行うことにしたのは「チャンスがあった」からだとフォッセル氏はいう。「我々は、ヨーロッパに拠点を置くすばらしいグループであるOTB Venturesと繋がりをもちました。同社はレーダー衛星のICEYEをはじめ、この分野の先進的な企業に出資してきました」。

「これまで既存の投資家シンジケートから得たサポートもありましたが、それに加え、この新しい投資家と一緒に仕事をする機会に恵まれたのです」とフォッセル氏は付け加えた。

今回の追加資金は、商用のサブスクリプション向けアナリティクス製品の2022年初頭の発売や、同年後半に宇宙サービスプロバイダーのLoft Orbitalと共同で実施する最初の衛星ミッションを十分に検討するために使用される。また、同社は、市場投入までの時間短縮のために従業員を大幅に増やすことできる。

画像クレジット:Hydrosat

同社は、資金調達のニュースと同時に、スイスの多国籍テクノロジー企業であるABBと協力し、宇宙で使う熱赤外機器を製造することを明らかにした。ABBは、これまでにNASA(米航空宇宙局)、カナダ宇宙庁、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、および民間企業向けにイメージャーやセンサーを製造してきた。ABBが製造した赤外線イメージャーは現在、同名の会社が運営する温室効果ガスの排出量を検出・測定する宇宙機「GHGSat」に搭載されている。

また、Hydrosatは、NASAのランドサットプログラムの熱赤外データの調整を行っているロチェスター工科大学と提携している。同社が政府機関との取引を成功させるには、すでに政府機関と取引実績がある企業や機関との契約の確保が鍵となりそうだ。

Hydrosatは、すでに欧州宇宙機関との契約と、米空軍および国防総省との3つのSBIR(Small Business Innovation Research)契約を獲得した。空軍との契約の一環として、同社はニューメキシコ州の高高度気球に第1世代のイメージャーを搭載し、宇宙との境界まで飛行させた。同社にとって重要な技術的マイルストーンとなった。熱赤外画像を収集し、その処理と調整が正確に行えるようになったからだ。

また、同社は商業分野にも目を向ける。フォッセル氏は、農業や環境分野の企業とすでに契約を結んでいると付け加えたが、詳細は明らかにしなかった。

中期的な目標として、同社は16機の衛星を打ち上げたいと考えている。フォッセル氏によると、衛星群の数は、同社が提供できるデータの頻度ほど重要ではないという。中期目標を理解するには、データ収集の頻度が鍵となる。同社は、地球上のあらゆる場所で毎日熱赤外画像を撮影できるようにしたいと考えている。「それが中期的な目標であり、衛星群の規模は単にそれを実現する手段にすぎません」。

今回の資金調達ラウンドはOTB Venturesがリードし、Freeflow Ventures、Cultivation Capital、Santa Barbara Venture Partners、Expon Capitalも参加した。

画像クレジット:Hydrosat

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシアの対衛星兵器実験により追跡可能なだけでも1500個以上のデブリが発生、ロシア人飛行士も滞在のISSに襲来

ロシアの対衛星兵器実験により追跡可能なだけでも1500個以上のデブリが発生、ロシア人飛行士も滞在のISSに襲来

NASA

11月15日、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士はスペースデブリの接近のためステーションにドッキング中の帰還用カプセルに避難しなければなりませんでした。ISSは90分周期でこのデブリ空域を通過したため、飛行士は何度も退避を余儀なくされたとのこと。

このようなデブリが発生したことに関して、米国国務省はロシアがミサイル実験によって同国の人工衛星を破壊し、ISSが通過する低軌道上に追跡可能なだけで1500個以上のデブリを撒き散らしたことだとしています。国務省のネッド・プライス報道官は「ロシアの行為はISSに滞在する宇宙飛行士やその他の有人宇宙飛行へのリスクを著しく高めるものだ」と述べ「ロシアの危険で無責任な行動は宇宙空間における長期的持続可能性を危機にさらし、宇宙の平和利用を掲げるロシアの声が弱々しくしかも偽善であることを明確にしている」と非難しました

一方、NASAのビル・ネルソン長官は、ロシアの対衛星兵器事件で発生したデブリのために、ISS滞在中の飛行士は安全確保の緊急手順の実施を強いられた。アントニー・ブリンケン国務省長官とともに「私もこの無責任かつ危険な動きに憤慨している。有人飛行の長い歴史を持つロシアがISSに滞在中の米国やパートナー国、さらに自国の飛行士までもを危険に晒すことは考えられない。彼らの行動は無謀でなおかつ危険であり、中国の宇宙ステーションやそこに滞在する飛行士までも脅かしている」と強く批判。さらに「あらゆる国は対衛星兵器によるデブリの意図的な発生を防止し、安全で持続可能な宇宙環境を育成する責任がある」としました。

米国はこの事態に対応するため、同盟国と協力していくと述べています。一方ロシアはこの件について沈黙したままです。

NASAとRoscosmosは、2007年にも中国がミサイルの実験のために破壊した人工衛星の破片を避けるために、ISSの位置をずらすなどの対応をさせられてきました。普段我々はその存在を忘れてはいるものの、当時に発生した破片はいまも継続して追跡されており、先週にはそのうちのひとつがISSに衝突する可能性があることがわかり、やはりISSを移動させる措置を強いられています。現在追跡されているデブリの数は約2万個に及んでいます。

今回のロシアの行為もこうした継続監視しなければならないデブリを大量に発生させる行為であり、ISSに自国の飛行士を滞在させている国として理解に苦しむ行動と言うほかありません。

(Source:ReutersAPNASAEngadget日本版より転載)

【コラム】持続的な宇宙開発のために、宇宙ゴミ問題に今すぐ取り組まなければならない

英国宇宙庁が不要な衛星2機の除去プログラムに軌道上サービスに取り組むアストロスケールを選定

億万長者を宇宙に送り込む競争は、ブランソン対ベゾス、ロケット対ロケットだった。

Blue Origin(ブルーオリジン)は6月7日に、7月20日に予定されている同社初の有人飛行に、創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)が搭乗することを発表した。同日、Parabolic Arcは、Virgin Galacticが7月11日にRichard Branson(リチャード・ブランソン)を弾道飛行に送る予定であると報じた。そしてどちらも、宇宙飛行を行う3人目の億万長者であるElon Musk(イーロン・マスク)を打ち負かすことを目指していた。

アポロ11号の月面着陸から半世紀以上が経過し、宇宙開発は明らかに再び盛り上がりを見せている。しかし、今日のミッションには、億万長者の野望以上のものが反映されている。たとえ、マスク、ベゾス、ブランソンが個人的な宇宙計画で最も大きな見出しを躍らせていたとしてもだ。

真の宇宙経済が出現している。この新しい分野は指数関数的な成長段階にあり、現在の商業プロジェクトに共通しているのは、新しい技術とインフラへの投資の到来だ。

今日の探検家たちは、他の惑星への旅行や火星の植民地化といった私たちの想像力の限界を超えた拡張計画に始まり、何千もの通信衛星、全地球航法衛星システム、地球観測衛星の打ち上げに至るまで、巨額の投資を行っている。

衛星サービスと地上設備、政府の宇宙予算、全球測位衛星システムの設備を合わせた世界の宇宙経済の規模は、約3450億ドル(約39兆4250億4700万円)と推定されている。2019年のスタートアップの宇宙ベンチャー企業の収益は57億ドル(約6513億5600万円)で、2018年の35億ドル(約4000億3075万円)の記録を簡単に更新した。2040年までに、世界の宇宙産業は1兆ドル(約114兆3575億円)以上の収益を上げることができるとモルガン・スタンレーは推定する。

つまり、宇宙でのゴールド・ラッシュが始まっているのだが、ゴールドラッシュにおける環境の持続的な発展という点では、これまであまり目立った実績は見受けられない。

宇宙空間での壊滅的な衝突の脅威が高まっている

私たちは、宇宙における新たなビジネスチャンスを安全かつ持続的に発展させるための重要な転換点に立っている。これらの活動の多くは、地球の軌道と同じ領域を利用しており、これは無限の空間ではない。NASAによれば、約1mm以上の宇宙ゴミ(デブリ)が1億個以上、国防総省のグローバルな宇宙監視ネットワーク(SSN)のセンサーによって追跡されている。地球近傍の宇宙環境には、小さすぎて追跡できないものの、有人宇宙飛行やロボットミッションを脅かすほどの大きさの宇宙ゴミがもっとたくさん存在している。

地球低軌道上では、宇宙ゴミと宇宙船の両方が時速約25,266kmを超える速度で移動しているため、たとえ5mmのナッツでも太陽電池パネルを紙のように切り刻むことができる。実際、NASAの報告によると、地球低軌道で運用されているほとんどの宇宙ロボットにとって、ミリサイズの宇宙ゴミはミッション終了に対する最も高いリスクとなっている。宇宙空間がますます混雑していく中で、誰か1人でも安全でない、あるいは無責任な行動をとれば、壊滅的な結果を招く可能性がある。

再利用可能なロケットの開発により、1kgの衛星を軌道に乗せるためのコストが下がったことや、人工衛星の小型化が進んだことで、地球の軌道上に渋滞が発生する恐れが出てきた。現在、地球上の軌道上には約3000個の能動衛星があるが、この数は今後数年間で急増すると考えられている。MarketWatchによると、2025年までに年間の衛星打ち上げ数は230%増加すると予想されており、現在2万4000機の衛星打ち上げが計画されている。しかもこの数字には、SpaceXやOneWeb、Kuiperによる打ち上げは含まれていない。SpaceXのStarlinkだけでも4万個の衛星の打ち上げを申請している。

再使用型ロケットのおかげで、地球低軌道に22トンの衛星を打ち上げるコストは、2億ドル(約228億7200万円)から約6千万ドル(約68億6100万円)に下がった。かつては数億ドル(数百億円)のコストがかかる巨大な高性能衛星を1機必要とした衛星アプリケーションも、今では100万ドル(約1億1400万円)の安価・小型の低性能衛星コンステレーションが登場し、グローバルなサービスを提供できるようになった。

小型の衛星1基では、大型の衛星1基に比べると性能が劣るが、複数の衛星のデータを利用することで同等の結果が得られることが多い。さらに、衛星コンステレーションのアーキテクチャは拡張性が高いため、新しい世代の衛星が打ち上げられるようになれば、インフラ全体のパフォーマンスが飛躍的に向上する。

持続可能な開発には、新しい技術とより良いガバナンスが必要

持続的な経済発展のためには、ミッションの要件を慎重に分析するところから寿命が尽きるまでの宇宙ミッションのライフサイクルの間中、従来の顧客と新しい顧客をサポートできる革新的なソリューションが必要となる。

これらのソリューションの中には、打ち上げ、運用、廃棄を効率化できるようなまったく新しい宇宙ベースのインフラが必要になるものもある。例えば、D-OrbitのION Satellite Carrierは、複数の衛星を搭載して軌道上まで輸送し、それぞれの衛星を別々の軌道に投入することができる宇宙輸送機だ。この展開サービスは、最も戦略的な軌道のみを対象とする打上げ業者が提供するサービスを補完するもので、衛星運用事業者はラストマイルを大幅に短縮し、宇宙船のあらゆるリソースを活用してミッション自体の期間を延長することができる。

これは、宇宙船をある軌道から別の軌道に移動させたり、古い機体の寿命を延ばしたり、修理を行ったり、難破した衛星や残骸などを回収したりできる恒久的な宇宙物流インフラの構築に向けた第一歩だ。

宇宙経済の持続的な成長をめぐる問題は、一企業や一国に任せておくにはあまりにも重要・重大なものだ。

国際協力を強化し、基本的なルールを確立するためには、各国の合意に基づき、共通の基準を持つ新しい宇宙統治モデルが必要だ。例えば、デブリを捕獲する宇宙船の技術はすでに実現しているが、ある国に拠点を置く事業者が、他の国が打ち上げた宇宙物体に接近・捕獲して除去することを認めるには法的な課題がある。このような運用に対応するためのグローバルな規制の策定は、新しい市場とビジネスチャンスを開くために不可欠なステップだ。

D-Orbitを含む48の団体およびその他の政府や業界の関係者は、2019年にSpace Safety Coalition(宇宙安全連合、SSC)を結成し、宇宙事業の長期的な持続可能性のためのベストプラクティスを積極的に推進している。SSCは、宇宙事業全体の長期的な持続可能性のためのベストプラクティスとして、打ち上げ時や軌道上での衝突の回避、宇宙船やデブリの再突入による人的被害の最小化、無線周波数妨害(RFI)イベントの影響の最小化などのガイドラインを策定した。

この業界主導の持続可能性への取り組みは、すべての宇宙関係者が採用する必要がある。宇宙経済の発展や規制の方法は、長期的な影響を及ぼすことになり、失敗を避けるためのタイムリミットは急速に迫っている。

人類の宇宙での活動能力を向上させ、私たち全員にまだ想像もつかない機会をもたらすためには、インフラ、ベストプラクティス、ガバナンスの整備を早急に進める必要がある。

編集部注:本稿の執筆者Luca Rossettini(ルカ・ロッセッティーニ)氏は、D-Orbitの創業者兼CEO。

画像クレジット:Bernt Ove Moss / EyeEm / Getty Images

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(文:Luca Rossettini、翻訳:Dragonfly)

より安価で優れた太陽電池パネルを開発するRegher Solar、激増する宇宙産業からの需要に応えられるか?

質問自体には簡単に答えられる。今後10年間で打ち上げられる人工衛星は何機か?人工衛星に必要な太陽電池パネルの枚数は?現状人工衛星に使える太陽電池パネルは何枚あるのか?その答えは「たくさん」「ものすごくたくさん」「まったく足りない」である。Regher Solar(レガーソーラー)は、製造コストを90%削減しつつ、桁違いに多くの人工衛星用太陽電池パネルを製造して名を成そうとしている。

「控えめな目標」とはいえないが、幸い同社は科学的にも市場的にも有利な状況にあり、追い風に乗っている。問題は、コストと性能のバランスを取りながら、なるべく簡単にこれを実現することである。もちろん、簡単に答えが出る問題であれば、すでに誰かがそれをやっているはずだ。

宇宙で使用される太陽電池と地上の太陽電池は大きく異なる。地上では大きさや質量の制約があまりないので、より大きく、より重く、そして安価な太陽電池を作ることができる。効率が悪くても問題はない。一方、宇宙で使用する太陽電池は、効率が良く、非常に軽く、放射線や温度変化などのさまざまな危険に耐えるものでなければならない。小さな規模で高価な材料を使用して製造するトップクラスの製品で、地上用の太陽電池と比較して5~10倍のコストがかかる。

Regher Solarが開発した太陽電池パネルは、宇宙用としての最高品質ではないものの「まあまあ良い」レベルは満たしている。しかも、コストは(高品質の製品の)数分の一で、一般的なプロセスで大規模に製造することができる。20億円の静止衛星に最高品質の太陽電池パネルを利用できるのは、全体のコスト(200億円)に占める太陽電池のコストの割合が少ないからである。しかし、寿命の短い小型衛星を1万機展開する場合はどうだろうか。総コストに占める太陽電池パネルのコストの割合を抑えるためなら、性能が20%低下しても許容できるはずだ。

Regher Solarの共同設立者かつCEOのStanislau Herasimenka(スタニスラウ・ヘラシメンカ)氏は、同社の製品は簡単に開発できたものではなく、新しい宇宙経済にとって何が重要かを理解し、繰り返し改良を重ねてきたものだと説明する。

「(宇宙用太陽電池パネルの)技術は、小規模かつ高コストを前提に進化してきました」「宇宙用のパネルは、ゲルマニウムやガリウムヒ素などの非常に高価な基板上で、高額な加工が数多く行われます。そして宇宙での使用に耐える接合、高価なガラスや炭素繊維、アルミニウムの基盤、手作業による組み立て……最高の性能と低劣化性は実現されますが、まったく拡張性がありません。10倍の量を生産したいと思っても不可能なのです」。

それでも、今後打ち上げられる衛星の数は確実に2倍、3倍、そして10倍になるだろう。地上用のパネルをそのまま宇宙に持って行くわけにはいかないし(すぐに壊れる)、ガリウムヒ素などの化合物でセル(太陽電池の素子)を製造しているメーカーの在庫ではまったく足りない。そこでRegher Solarが開発したのが、宇宙用、地上用の両方の長所を取り入れた、宇宙用でありながら安価で簡単に製造できるセルである。

20ミクロンのシリコン基板を使用し、柔軟性のあるRegher Solarのシリコン太陽電池パネル(画像クレジット:Regher Solar)

ヘラシメンカ氏は次のように話す。「現在、私たちは研究開発用のパイロットラインを運用して、少量のパネルを製造しています。50kW、つまり宇宙用太陽電池パネルの約5%のサイズです」「私たちはシリコン基板で自動生産可能な製品を設計しました。1年後にはパイロットラインを離れ、現在のパネルの10倍に相当する10メガワットまで規模を拡大できるはずです」。

新しい製品とはいえ、特別な技術や新開発の技術を使用しているわけではないので、ヘラシメンカ氏がいうような増産も可能かもしれない。同氏は、宇宙用レベルの性能を地上用並みの価格で実現するために行った改良をいくつか紹介してくれた。

まず、シリコン基板の厚さを大幅に薄くしたことで、逆説的に放射線の吸収が少なくなり、耐放射線性が向上した。また、添加する不純物を変え、低温で硬化するようにして、ダメージを受けても80℃に加熱するだけで修復できるようにした。コーティング、接合、ボンディングを空間的に安定させた。ベゼルを細くして、太陽光に反応するセルが占める面積を増やした。さらに同社は、(この画像のように)パネルに柔軟性を持たせることで、一般的ではない形状にも対応可能で、物理的な耐久性が向上した製品も計画している。

Regher Solarの「solar blanket(太陽の毛布の意味)」の柔らかさを示す研究室の技術者(画像クレジット:Regher Solar)

どこまで開発を進めるべきかは、衛星コンステレーション(衛星を複数機協調させることで機能するシステム)に属する衛星のコストと計画寿命という動く目標に依存する。意外かもしれないが、Starlink(スターリンク)のようなコンステレーション企業にとっては、衛星の性能が良すぎるのは有害である。何千機もの衛星で構成される衛星コンステレーションでは経済性が問われる。打ち上げから5年後に交換する予定であれば、必要以上に性能を上げたり、コストをかけたりするべきではない。もし、5年後にまだ100%の性能を有しているのであれば、どこかでかなりの費用を節約することができたはずだ。

「コンステレーションの設計者は、指定された軌道で一定期間衛星が機能することを想定して設計しています」とヘラシメンカ氏。「衛星の寿命は2週間でも15年でも不適切です。ほとんどの衛星は徐々に軌道を下げて地球に近づき、5~7年で寿命を終えます。だから、私たちはこの条件を満たすようにパネルを設計したのです。5~7年以上経ってパネルが劣化するとしても、クライアントにとって問題ではありません。つまり、私たちも気にかける必要はないのです」。

Regher Solarはこの新しい市場に挑戦し、2019年にTechstars(テックスターズ)のプログラムに参加。その後、メーカーとの対話を開始し、取引の計画を立てた。さらに、米国国家航空宇宙局(NASA)の中小企業技術革新制度(SBIR)フェーズIと米国国立科学財団(NSF)のSBIRフェーズIIで、総額110万ドル(約1億3000万円)を獲得している。ヘラシメンカ氏によれば、プロトタイプと検証資金を獲得したRegher Solarは、夏の間に3300万ドル(約38億円)分の基本合意書を取り交わし、さらに5000万ドル(約58億円)分の合意に向けて調整中だという。

有望な市場が故に、迅速に行動しないと他の企業が参入してパイを奪われてしまうかもしれない。「たった数年ですべてが変わってしまい、業界がそれに気づいたときには市場のチャンスはなくなっていることすらあるのです」とヘラシメンカ氏はいう。Regher Solarがこの機会を逃したくないのは当然のことだが、彼らは現在、まずは試験的な製造ラインを立ち上げ、次にフルスケールの製造ラインを立ち上げるために多額の投資を必要としている。具体的な内容はまだ明かされていないが、ヘラシメンカ氏によると、機関投資家による500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドが年内に完了する予定で、個人投資家からも90万ドル(約1億円)の投資を受けるという。

既存の航空宇宙企業が関心を示し、NASAやNSFにも(SBIRで)認められたRegher Solarの活躍の場は広がりそうだ。しかし、難しいのは新しいパネルの設計なのか?それとも実際に製造することなのか?それは今後明らかになるだろう。

画像クレジット:Regher Solar

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

打ち上げプロバイダーSpaceflightが顧客のペイロードを初めて2つの異なる軌道に投入へ

打ち上げサービスプロバイダーのSpaceflight Inc(スペースフライト)は現地時間11月9日、顧客の宇宙機を初めて2つの異なる軌道に展開すると発表した。同社の軌道変換機Sherpaシリーズの能力を拡大する。

軌道変換機(OTV)は、衛星が軌道上の最終目的地に到達するための一般的な手段となっており、小さな宇宙開発企業は、独自の推進システムを持つためのコストや煩わしさを回避しつつ、OTVの費用を割って負担し合うことができる。これは、SpaceX(スペースX)がライドシェア・ミッション・プログラムで打ち上げ費用を企業が割り勘にできるようにしているのと同じだ。

シアトルに本社を置くSpaceflightは、化学推進システムを搭載した新型のSherpaスペースタグを使用して、この演習の実行を目指している。同社は新型機をSherpa-LTC1と呼んでおり、過去12カ月で3種類目のSherpa OTVを発表したことになる。Spaceflightは、6月にSpaceXのTransporter-2ミッションで飛行した、Sherpa-LTEという電気推進システムを搭載したSherpaタグと、2020年にデビューさせたSherpa-LTも開発した。

Sherpa-LTC1は、2022年1月にフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられる予定のSpaceX Transporter-3に乗って宇宙へ向かう。このスペースタグは、顧客の宇宙機13機を2つの軌道に乗せる予定だ。Sherpa OTVはまず9つの小型衛星を展開し、その後、低高度に移動して残りの4つのCubeSat(小型人工衛星)を展開する。

ミッションの顧客は、Capella Space、Umbra Space、Lynk Global, Inc.、Kleos Space、NASA(米航空宇宙局)、Spacemanicと提携しているチェコ航空宇宙研究センター、Space Products and Innovation (SPiN)、Portland State Aerospace Societyなどだ。

この新しいスペースタグは、Benchmark Space Systemsが開発した「環境に優しい」推進システムを使用しており、同社によれば、さまざまなサイズの宇宙機の迅速な軌道移動を可能にするという。Spaceflightの事業開発担当SVPであるGrant Bonin(グラント・ボニン)氏は「LEO(地球低軌道)での実施はほんの始まりにすぎません。これらの機能やサービスは、LEOを超えて他の軌道へのアクセス、宇宙輸送やさまざまなミッションサービスの開発において重要な役割を果たすでしょう」と話した。

Spaceflightは9月、2022年の月低空飛行ミッションで別のSherpaであるSherpa-ESをデビューさせることを発表した。

画像クレジット:Spaceflight Inc.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

リッジアイが衛星画像により軽石の漂着状況がわかるウェブアプリ公開、被害の把握や本土への漂着予測に活用

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を手がけるリッジアイが7.8億円を調達
「軽石ビューア」を使って確認した軽石の漂流状況(Sentinel-2 ©ESA)

「軽石ビューア」を使って確認した軽石の漂流状況(Sentinel-2 ©ESA)

衛星データとAIを駆使した開発・コンサルティングなどを行うRidge-i(リッジアイ)は11月5日、小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で発生した軽石の漂着状況が衛星画像でわかるウェブアプリ「軽石ビューア」を公開した。

このアプリでは、中央のバーを左右にドラッグすることで、異なる日付の衛星写真を比較できる。比較したい画像の2つの観測日はそれぞれ指定が可能(観測データのない日もある)。地図はドラッグによる移動やズームが行える。海岸沿いの海上に薄茶色に見えるのが軽石だ。衛星画像は、欧州宇宙機関(ESA)のSentinel-2のものを利用している。

今後は、関東への漂着にも備え、関東地方に特化した「軽石ビューア」も公開予定のとのこと。