277億ドルのSlack買収をめぐる世間の意見とは

先日、Salesforce(セールスフォース)とSlack(スラック)の取引が正式に発表されたが、その数字はにわか信じがたいものだった。Salesforceは270億ドル(約2兆8000億円)以上を投じてSlackを買収し、Salesforceのファミリー製品へと取り込んだ。Salesforceに欠如している重要な鍵をSlackが握っていると同社は見ており、Slackを手に入れるために驚くほどの金額を費やした理由はそこにあるという。

Slackの獲得によってSalesforceは、CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が「すべてへのインターフェース」と呼び、長年熟考を重ねてきたものを手に入れることができた。同社は2010年に自社で解決しようとソーシャルツールChatterの構築を試みたものの、それが大々的に日の目を見ることはなかった。しかし、Slackでそれがついに実現することになる。

「私たちは10年以上前から常に、ソーシャルエンタープライズに対するビジョンを持っていました。弊社のCustomer 360と統合された、アプリケーションとエコシステムを備えた協同的で生産的なインターフェイスとはどのようなものなのか、という課題に特化したDreamforcesを開催したこともあったほどです」とベニオフ氏は振り返る。

皮肉にもSalesforce Parkのすぐ隣のビルにSlackの本社があるという。コラボレーションにはもってこいのロケーションである(あるいは、単にSlackを使うという手もあるが)。

Chatter から Slackへ

Battery Ventures(バッテリーベンチャーズ)のジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏によると、ベニオフ氏は何年も前からエンタープライズソーシャルに関心を持っており、今回の方法はそれに対する同氏なりの答えだという。「Chatterを覚えていますか?ベニオフ氏はこのトレンドに非常に的確でした。彼は約7~8年前にYammerをMicrosoftに奪われ(Microsoftが12億ドル/約1250億円で買収)、その後Chatterを立ち上げました。これは大きな賭けだったもののうまくいかなかった。SlackはChatter 2.0と呼んでも良いでしょう」とアグラワル氏は言う。

Tact.aiのCEO兼共同創業者であるChuck Ganapathi(チャック・ガナパティ)氏は、2009年にSalesforceでChatter製品のプロダクトリーダーを務めていた。同氏はTechCrunchに共有してくれた近日公開予定のブログ記事で、Chatterの失敗要因には様々な理由がるものの、大きな要因はやはりSalesforceがしょせんデータベース専門家の集まり以外の何者でもなく、エンタープライズソーシャルは大きく異なる分野だったからだと書いている。

「問題の多くは技術的なものでした。SalesforceはOracle(オラクル)出身者がリレーショナルデータベースを基盤に設立したデータベース中心の会社です。DBアプリケーションとChatterやSlackのような構造化されていないコミュニケーションアプリケーションは、コンピュータサイエンスの全く異なる分野であり、重複している部分がほとんどありません」と同氏は書いている。そのため、アプリケーションを正しく構築するための専門知識が欠落していた上に、当時市場には多くの類似製品が出回っていたため、Chatterが日の目を見ることはなかったのだと同氏は感じている。

しかし、Salesforceプラットフォームにソーシャルを組み込むというベニオフ氏の野心が失われることはなかった。ただ、それを実現するためにはさらに10年ほどの歳月と莫大な資金が必要だったわけだが。

相性の良し悪し

以前SalesforceでAppExchangeを運営していたOperator Capital(オペレーターキャピタル)のパートナーLeyla Seka(レイラ・セカ)氏は、SlackとSalesforceの統合には将来性があると見込んでいる。「SalesforceとSlackが一つになることで、世の中の企業がより効果的に連携して仕事をするために役立つ強力なアプリケーションを提供することができるでしょう。COVID-19によって、従業員が仕事をするためにはデータがいかに重要かが露わになっただけでなく、仕事を成功させるためにはコミュニティと繋がれることが非常に重要であるということが明確になったと思います。この2社の融合によってまさにそれが実現するのではないでしょうか」とセカ氏は言う。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)のプリンシパルアナリストBrent Leary(ブレント・リアリー)氏もその買収価格には驚きを隠せないようだが、今回の買収には、たとえそれを手に入れるために多額の金額を払わなければならないとしても、欲しいものを追い求めることを決して恐れないSalesforceの姿勢が表れていると述べている。「Salesforceはこの取引きに関して微塵の恐れもないということが分かります。彼らのプラットフォームにこの製品を追加することで大きな見返りがあると確信しているからこそ、この買収にこれだけの大金を投じるのでしょう」。

Slack側にとっては、企業のビッグリーグへの近道だろうとリアリー氏は考える。「Slackについては、AMOSS(Adobe、Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce)と競合していた立場からそのうちの1社となったわけで、またチームを組む上で最も理にかなっていたのがSalesforceだったのだと思います」。

SMB Group(SMBグループ)のアナリスト兼創設者のLaurie McCabe(ローリー・マッケイブ)氏もリアリー氏の見解に同意しており、Salesforceは価値を見出したら躊躇しないのだと話している。「今回のケースでは、Slackが非常に強力な力を発揮することになります。Salesforceは、CRMやTeamsなど成長を続けているMicrosoftのクラウドポートフォリオに対抗し、より効果的に競争することが可能になるでしょう」と同氏は言う。

今後のお金の流れ

Battery Venturesのアグラワル氏は、収益の創出がこのディールにおける全目的であり、だからこそ大きな変化をもたらすために10億ドル単位の非常に高額なプライスを支払うことも厭わなかったのだろう言う。最終的にはMicrosoftに追いつくか、少なくとも時価総額で1兆ドル(約104兆円)に到達することが目標だと同氏は予測する。

ちなみに今のところ投資家らがこの取引きを好意的に受け止めている様子はなく、株価は記事執筆時の12月3日だけで8%以上下落しており、先週の感謝祭休暇前にSalesforceがSlackに興味を持っているという噂が浮上して以来16.5%下落している。これは180億ドル(約1兆876億円)以上の時価総額の損失を意味しており、おそらく同社が期待していたような反応ではないだろう。しかしSalesforceの規模は十分に大きく、長期戦を闘う余裕があるため、Slackの助けを借りて財務目標を達成することができるだろう。

「時価総額1兆ドルに到達するためにSalesforceは今、MSFTに正面から挑まなければなりません。これまで同社は製品面ではほとんどの場合、独自のコースに留まることができました。[…]市場規模1兆ドルを達成するためにSalesforceは、2つの巨大市場での成長を試みる必要があります」とアグラワル氏は述べている。この2つとは、ナレッジワーカー/デスクトップ(2016年のQuip買収を参照)かクラウド(Hyperforceの発表を参照)のことである。同社の最善の策は前者であり、それを手に入れるために並外れた額を支払うことも厭わないだろうとアグラワル氏は言う。

「今回の買収により、Salesforceは今後数年間において20%以上の成長率を維持できるようになるでしょう」と同氏。最終的にはそれが収益の針を動かし、時価総額を上昇させ、目標達成に貢献すると同氏は見込んでいる。

注目すべきは、Salesforceの社長兼CEOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が、SlackをSalesforceの製品ファミリーにしっかりと統合する計画がある一方で、スタンドアロン製品としてのSlackの底力と有用性を認識しており、それを妨げるようなことは何もするつもりはないと述べたことだ。

「基本的には、Slackがテクノロジーにとらわれないプラットフォームであり続けられるようにしたいと考えています。Slackは毎日何百万人もの人々に利用されており、地球上のあらゆるツールをつなげてくれていることを理解しています。非常に多くの顧客が独自のカスタムツールを統合しており、これを使用するチームの中枢神経系にもなっています。私たちは決してそれを変えたくはありません」とテイラー氏は述べている。

ここまで大規模な取引きの良し悪しを現時点で判断するのは難しい。テイラー氏が言うようなSlackの独立性を確保しつつ、両社がどのように調和をとっていくのか、またSlackをSalesforceのエコシステムに上手く組み込むことができるのかなどを見極める必要がある。もし両社が呼吸を合わせることができ、SlackがSalesforceのエコシステムを完成させることができるのなら、この取引が成功に終わる可能性は十分にある。しかしもしSlackがイノベーションを止め、企業の重鎮の重圧に耐えられなくなってしまったら、今回の金額は無駄使いに終わってしまうかもしれない。

どちらに向かうかは、乞うご期待である。

関連記事:SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Slack Salesforce 買収

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(翻訳:Dragonfly)

RedditがTikTokのライバル、ショート動画プラットフォームのDubsmashを買収

Reddit(レディット)は、ショート動画プラットフォームのDubsmash(ダブスマッシュ)を買収したと発表した(Redditリリース)。取引条件は明らかにされなかった。Dubsmashはプラットフォームとブランドをそのまま維持し、RedditはDubsmashの動画制作ツールを導入する。Dubsmashの共同創業者であるSuchit Dash(スチッチ・ダッシュ)氏、Jonas Drüppel(ジョナス・ドルッペル)氏、Tim Specht(ティム・シュペヒト)氏はRedditに加わる。

Crunchbaseデータによると、DubsmashはこれまでにLowercase Capital、Index Ventures、Eniac Ventures、Heartcore Capital、Sunstone Lifeといった投資家から2020万ドル(約21億円)を調達した。

Dubsmashはいま、TikTok(ティクトック)の最大のライバルの1つだが、リップシンク動画アプリとして登場した2015年に束の間人気を博した後、苦戦が続いた。2017年にソーシャルプラットフォームへと変化を遂げ、本社もベルリンからブルックリンに移した。2020年初めまでに、米国のショート動画マーケットにおけるDubsmashのシェアは、アプリインストール数でTikTokに次ぐ第2位となり、Facebook(フェイスブック)やSnap(スナップ)と買収の話し合いを持っていると報じられた。

Dubsmashの成功は黒人やラテン系のユーザーによるところが大きい。TikTokの最も有名なスターが白人であるのに対し、Dubsmashは黒人とラテン系のクリエイターが大きなコミュニティを形成していることで知られている。2つのアプリの分極は、2020年初めに黒人のDubsmashスターによるダンスの動きが往々にしてクレジットなしにTikTokインフルエンサーにいかに「拝借」されているかをThe New York Times紙が報じてから関心を集め始めた。こうしたケースでは、クリエイターは多数のフォロワーやブランドディール、業界コネクションを得る機会を逸することになる。

Redditは人種差別問題を抱え、ヘイトスピーチ阻止や、人種差別主義のネット荒らし者に標的にされたサブレディット(特定の領域向けに焦点を当てたRedditのコミュニティ)のモデレーターのサポートに十分に取り組んでいないと批判されてきた。

2019年、創業者で元CEOのAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏は自身の後任に黒人を据えることをRedditの役員会に要求した。これを受け、同社のCEOであるSteve Huffman(スティーブ・ハフマン)氏はプラットフォーム上のヘイトスピーチをなくす取り組みの一環としてオハニアン氏の考えを尊重すると述べた。当時は警察官によるGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏殺害を発端とした反差別のデモが展開されていた。オハニアン氏の後任にはY CombinatorのCEOであるMichael Seibel(マイケル・セイベル)氏が就いた。

米国時間12月13日の発表の中で、RedditはDubsmash買収をインクルージョンの取り組みに関連づけた。「Dubsmashは過小評価されているクリエイターの存在を高め、その一方でRedditはコミュニティの価値、そして何千もの異なる話題や情熱に属するものを有しています。我々のミッションはかなり近いものであり、互いに学び合いながら両社のコミュニティにフォーカスしたプラットフォームを共存・成長させられるのは明らかです」とハフマン氏は述べた。

また声明文は、Dubsmashのコミュニティに若く多様なクリエイターが多いことにも言及した。Dubsmashの米国クリエイターの約25%が黒人の10代で、ユーザーの70%は女性だ。また、Dubsmashのビデオ制作ツールのインテグレーションによってRedditのユーザーは「コミュニティ独特のオリジナルかつ真正の方法で自身を表現することができるようになる」とも述べた。

Redditは、2017年に動画プラットフォームを立ち上げて(未訳記事)以来、使用は急速に増えていて、2020年だけでも2倍の成長となっていると述べた。だがRedditのコンテンツの大半はまだテキストベースで、多くの場合他のソースから引っ張ってきている動画、GIF、画像が添付されている。Dubsmashのインテグレーションは、Redditの動画プラットフォーム構築に役立つはずだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:RedditDubsmash買収

画像クレジット:Dubsmash

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(翻訳:Mizoguchi

中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分

中国政府は、国内で最も影響力のあるインターネット企業のパワーを抑えにかかっている。市場監督管理総局は米国時間12月14日、過去の買収案件で当局に申請して承認を得なかったとしてAlibaba(アリババ)とTencent(テンセント)のスピンオフのeブック(未訳記事)会社China Literature(チャイナ・リタラチャー)に罰金を科すと発表した。

Alibabaの中国大手モール運営会社Intownへの株式投資(未訳記事)、China LiteratureのフィルムスタジオNew Classics Media買収(未訳記事)が対象だ。公告によると、Alibaba、China Literatureともに50万元(約800万円)の罰金が科される。何十億ドル(何千億円)という買収規模に比べて罰金の額は取るに足りないものだが、今回の罰金は業界にとって警告となるはずだ、と当局の広報担当は記者会見で述べた。

Alibabaは近年、積極的な買収を通じてオフライン小売に事業を拡大してきた。デジタルエンターテイメント帝国を築いたTencentも同様に事業を拡大するために外部パートナーに投資してきた。

AlibabaとChina Literatureは当局に買収を申請しなかった。しかし買収はいずれも「マーケットの競争を阻害するもの」とみなされなかった。そのため、市場管理当局は中国の独禁法に則って買収を破棄するのではなく罰金を科した、と述べた。

China Literatureはコンプライアンスと申請の要件に取り組むために当局の命令に厳密に従っていると話した。Alibabaにもコメントを求めたが連絡がなかった。

一方、Tencentが出資しているゲームストリーミング大手HuyaとDouyuの合併もまた当局の調査を受けている。

AlibabaとChina Literatureは、市場集中違反で「持分変動事業体(VIE)である企業に中国が罰金を科した初のケースとなる。VIEの企業構造は、外資企業がコントロールしつつ国内企業として運営することができるため、中国のインターネット企業では人気だ。しかしこれは規制の抜け穴となるとして議論を呼んでいる。

2019年1月にパブリックコメントの募集を開始した中国の独禁法は現在、見直しが進んでいる、と当局は記者会見で述べた。先月、中国政府はインターネット企業の独占的な行動に照準を合わせた規制の草案を公開した(未訳記事)が、業界専門家はこの規制は複雑なものになると指摘した。

カテゴリー:その他
タグ:AlibabaTencent買収中国

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

MTGが「レベル・レーシング」などの人気モバイルレースゲーム開発元Hutch Gamesを約390億円で買収

スウェーデンのMTGが、モバイルゲーム業界で重要な買収を行う。同社は「Rebel Racing(レベル・レーシング)」「F1 Manager」「Top Drives」などの人気モバイルレースゲームを開発しているロンドンに拠点を置くゲームスタジオであるHutch Gamesを買収すると発表したのだ。

MTGはすぐに2億7500万ドル(約286億円)を支払い、さらに業績に応じて1億ドル(約104億円)を支払うことで合意したというから、この買収はMTGにとって重要なものとなるはずだ。

MTGをよく知らなくても、その投資先企業を知っている人は多いだろう。ここ数年、MTGはESLとDreamHack(ドリームハック)を買収してeSportsのリーダーになった。

MTGはまた、人気の高いウェブベースのゲームやモバイルゲームの開発で知られるInnoGamesとKongregate(コングリゲート)も買収した。近い将来、さらに企業を買収する計画があるというため、これで終わりではないようだ。

MTGは発表の中で、この買収が理に適っている理由を説明している。Hutch Gamesは単一のゲームに集中しているわけではなく、成功を収めた多くのゲームを擁しているため、将来的にさらなる成長が見込めるという。

また、Hutch GamesはF1などの有名ブランドのライセンスも取得している。そしてMTGは「Rebel Racing」「F1 Manager」「Top Drives」にはまだ大きく成長する可能性があると考えている。基本無料のモバイルゲームは、いわゆるGames as a Service(サービスとしてのゲーム)、つまり継続的にアップデートを行うサービスとして提供されるようになっているため、長期的な人気を維持したいと考えるのは当然だ。

長期的な可能性に関していえば、Hutch Gamesは2021年と2022年に向けて、さらに多くのゲームを準備しているという。おまけに従業員のほとんどが開発者であるため、費用対効果の高いスタジオといえる。

2020年1月から9月までの間に、Hutch Gamesは5630万ドル(約58億5000億円)の収益と1330万ドル(約13億8000万円)の利息および税金控除前利益(EBIT)を生み出した。Hutch Gamesの投資家にはBacked VC、Index Ventures、Initial Capital、エンジェル投資家のChris Lee(クリス・リー)氏が含まれている。

基本無料で遊べるゲームが儲かることは、ご存じの通りだ。だからこそ、将来的には何らかの統合が行われることになるだろう。一部の企業は、豊富な資金力や借入金を利用して、多数のタイトルを取り揃えたり、あなたのスマートフォンの画面を長時間占領するゲームを、次から次へと作り出そうとするだろう。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:MTG買収アプリモバイルゲーム

画像クレジット:Hutch Games

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(翻訳:TechCrunch Japan)

現代自動車がBoston Dynamicsを買収、ソフトバンクから80%の株式取得へ

正式に発表された。Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は現代自動車グループの一員になる(当然のことながら当局の承認次第ではある)。マサチューセッツ州ウォルサムに拠点を置くロボットメーカーの Boston Dynamicsは12月11日付けのプレスリリースで、韓国のテック企業が経営支配権を獲得すると明らかにした。Boston Dynamicsの企業価値を11億ドル(約1140億円)としたこのディールでは、現代自動車グループがBoston Dynamicsの株式の80%取得し、残り20%はソフトバンクが保有する。

この買収は、Boston Dynamicsにとってわずか7年の間に3回目の親会社変更となる。研究会社として四半世紀近く前に設立され(米国防高等研究計画局のような組織から資金援助を受けた)、2013年のGoogleによる買収で時のAndy Rubin(アンディ・ルービン)氏が率いる新しいロボティック部門の一部になった。

Google X Roboticsの大部分が解体された後、Boston Dynamicsは2017年に親会社が変わり、ソフトバンク傘下に入った。奇妙な組み合わせであり、ソフトバンクにとって厳しい年だったこともあって状況は改善しなかった。最も知られているロボットは人型ロボットPepper(ペッパー)であるソフトバンクに所有された後では、少なくとも現代自動車はBoston Dynamicsにとってより論理的な「ホーム」だ。

今回の買収についての初期の噂を報じる記事で指摘したように、現代自動車はロボット分野に大きな投資をしてきた。ここには、自動運転システム商業化のためのAptivとの合弁会社設立が含まれる。またUMV(ultimate mobility vehicles、脚を持つサイエンスフィクションのような乗り物)も発表した。

「繰り返しの作業や危険な作業を人間レベルのモビリティで自動で行うことができる最初のロボットをマーケットに投入し、Boston Dynamicsの商業事業は急速に成長してきました」とCEOのRob Playter(ロブ・プレイター)氏は買収に関するリリースで述べた。「当社と現代自動車はモビリティの変革力という視点を共有していて、最先端のオートメーションで世界を変え、引き続き顧客のために世界で最も困難なロボティクスの問題を解決する計画を加速させるために協業することを楽しみにしています」。

もちろんBoston Dynamicsはこの数十年、サイエンスフィクションと現実の境界線を曖昧にしてきた。しかし直近では、同社の高度な技術を商業化することに注力してきた。ソフトバンクのもとで、Boston Dynamicsはアイコン的存在のBig Dogを含め、何年もかけてロボティックのイノベーションに取り組み、四つ足ロボットSpotを立ち上げた。

Spotは昨年数量限定で発売された。現在は米国内で7万4500ドル(約770万円)という価格で販売されている。同社は、倉庫や仕分け作業関連目的のための車輪付きハンドルロボットの商業化も進めている。こちらは来年発売される見込みだ。ロボットの高度化と最終的な価格はかなりの懐疑論を巻き起こしたが、新型コロナウイルスによって企業が一時閉鎖を余儀なくされたことを受けて、投資家たちのロボットやオートメーションの企業に対する関心は高まった。

「現代自動車グループは、Boston Dynamicsがグループの製造能力やスケールメリットによる費用対効果にアクセスできるようにする戦略的パートナーとなります」とリリースにはある。「Boston Dynamicsは新たな資本、テクノロジー、関連顧客、そしてBoston Dynamicsのロボット製品の商業化機会を促進する現代自動車グループのグローバルマーケットへのアクセスの恩恵を受けるでしょう」

買収は来年6月までにクローズする見込みだ。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Boston Dynamics

画像クレジット: Boston Dynamics

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(翻訳:Mizoguchi)

グーグルが英国のデータウェアハウス管理スタートアップDataformをひそかに買収

データウェアハウスの「オペレーティングシステム」を開発する英国のスタートアップであるDataform(データフォーム)は、Google(グーグル)のGoogle Cloud部門にひそかに買収されたていた(Dataformリリース)。

取引条件は明らかにされていない。だが、筆者はほぼアクハイヤー(人材獲得を目的とした買収)だと理解している。とはいえ創業者ら(Dataformを創業する前はいずれもグーグルにいた)はうまくやった。ただ、人材がすべてだったというわけではない。グーグルは同社の製品にも非常に興味を持っていたといわれている。実際、「Dataform web」は将来にわたり無料で提供されようとしている。

取引について知る情報筋は、Dataformの創業者であるLewis Hemens(ルイス・ヒメンズ)氏とGuillaume-Henri Huon(ギヨーム・アンリ・ユーオン)氏にとって非常に良い結果となったと説明した。また筆者は、DataformがシリーズAの資金調達に向け順調に進んでいたと理解しており、他の選択肢も確かにあったとも考えている。

シリコンバレーのアクセラレーターであるY Combinatorの卒業生であり、Local Globeから投資を受けているDataformは、データを豊富に持つ企業がデータウェアハウスに保存するデータからインサイトを引き出す支援に着手した。インサイトとビジネスインテリジェンスのためにデータをマイニングするには、通常、データエンジニアとアナリストのチームが必要だ。Dataformはこのタスクを簡素化し、企業がデータ資産を最大限に活用できることを望んでいた。

Google Cloudに参加することによりDataformのチームはそのミッションを継続できる。もっと広くいえば、Snowflakeが成功させたIPO(未訳記事)を含め、このスペースはいままさにホットだ。

「Google Cloudチームと何度か話し合った結果、我々は適切なツールとテクノロジーをアナリストに提供する重要性について、方向性がかなり一致していることがわかりました。目的は、我々全員が認識している既存のソリューションが逃している機会を埋めることです」とギヨーム・アンリ・ユーオン氏はDataformのウェブサイトで述べている

「同時に、複雑で競争が激しく、急速に変化する市場で、わずか7人のチームとして我々がすでに抱える人材や他の経営資源より、達成すべきアイデアの方が多かったのです。四半期ごとに、達成できる以上のことをやりたいと思っていました。BigQueryチームとCloud Analyticsチームのサポート、そして先進的な解決策や取り組みとを組み合わせることで、別々に成し遂げるよりも大きな何かを一緒に達成できると感じました」。

関連記事:データウェアハウスOSを提供するDataformが2億円超を調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:DataformGoogleGoogle Cloud買収

画像クレジット:Dataform

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(翻訳:Mizoguchi

Facebookが過去最大1000億円でKustomerを買収、カスタマーサービス事業の強化を目指す

米国時間12月7日、Facebook(フェイスブック)は、ビジネス向けサービス構築のためとして過去最大の買収を行った。新たにフェイスブックの傘下に入ったKustomer(Facebookリリース)は、カスタマーサービスに根本的な変化をもたらすことを目指すスタートアップだ。同社は顧客のソーシャルメディアその他のチャネルでの活動及び顧客とユーザー企業との間の関係を総合し、顧客の全体像を得て企業に優れたデータを提供するアプローチを採用している。

詳細は明らかにされていないが、事情に通じた情報源はTechCrunchの取材に対して、買収価格が10億ドル(約1040億円)程度だったことを確認した。この取引の記事(と10億ドルという価格)は12月7日のWSJに掲載されている。

Kustomerの共同ファウンダーはCEOのBrad Birnbaum(ブラッド・バーンバウム)とJeremy Suriel(ジェレミー・スリエル)の2人で、これまでにAirtime、AOLなどで一緒に仕事をしてきた。Kustomer以前のスタートアップはSalesforceへの売却に成功している。Kustomerへの投資家はCoatue、Tiger Global Management、Battery Ventures、Redpoint Ventures、Cisco Investments、Canaan Partners、Boldstart Ventures、Social Leverageの各社で総額1億7400万ドル(約181億円)を調達している(未訳記事)。PitchBookのデータによれば、最新の会社評価額は7億1000万ドル(739億円)だった。

フェイスブックの買収の動機はわかりやすいが、同時に、戦略的な方向性を示す非常に重要なサインでもある。

フェイスブックは、プラットフォーム上の企業にカスタマーサービスを提供するビジネスを着実に構築してきた。Kustomerの買収はこのサービスの一層の強化を目指していることを示すものだが、将来はこれを有料化して収入の柱の1つとなるサービスとしていきたいのだろう。

現在、フェイスブックのビジネス利用者は約1億7500万人だ。これには独自のホームページやアプリではなくフェイスブックを主要なオンラインのアイデンティティ(身元)としている企業へのアクセスとフェイスブックグループのアプリ(Instagram、Messenger、WhatsAppなど)を顧客との会話のチャンネルの1つ(唯一という場合もある)としている企業へのアクセスの双方を含む数字だ。

20億人以上というフェイスブックの全ユーザー数と比べれば、1億7500万人はさほど大きな数字に感じられないかもしれない。

しかしSnapchat、TikTok、その他のサービスとの競争が次第に激しさを増すにつれて、優れたビジネス向けプロダクトを持つことは企業とそこにアクセスするユーザーをフェイスブックのエコシステムに囲い込んでおくために重要となる。また同社では現在も広告収入が他を大きく引き離して同社の収入のメインだが、企業向けサービスは広告を補完する新しい収入分野となる道を開くだろう。

実際、カスタマーサービスはフェイスブックにとって非常に興味深い方向だ。これまでもメッセージングアプリ上に企業向けの機能を追加(未訳記事)するために多大の投資をしてきた。たとえば最近では、企業がWhatsAppアプリ内に簡単にショッピングその他の機能を追加できるようにしている。カスタマーサービスは、これまでのフェイスブックの閉鎖的なエコシステムの外に広がる広大な分野だ。

実際、Kustomerを始めCRM(顧客関係管理)企業が最近何をしているかを説明するために多用されている用語は「オムニチャンネル」だ。つまりアプリ、ソーシャルメディア、ウェブサイト、チャットボット、電子メールなど顧客との会話が発生するさまざまなチャンネルを総合し、ユーザー企業が顧客の全体像を把握できるようにする。これによりカスタマーサービス要員の仕事が効率化され、ある顧客はどのチャネルから企業に連絡する可能性が高いかなどが的確に示せるはずだという論理だ。コンテキストに基づいた顧客の全体像が把握できれば、企業のカスタマーサポートにとって極めて有益だ。

フェイスブックの場合、これまでCRMプロファイルは、サービスの登録ユーザーに関するものに限られていた。しかしカスタマーサポートの強化はプラットフォームを超えて広く顧客関係を把握し、コントロールすることを目的としている。

偶然だが、ライバルのSnapがカスタマーサポートのための音声チャットのボットを作るVoca.aiの買収(未訳記事)を発表したのが2020年12月初めだった。

SnapがVocca.aiのテクノロジーをどのように利用するのかはまだわからない(Spectaclesに、音声コマンドなど音声ベースのテクノロジーを導入するのかもしれないという推測も出ている)が、我々はこの買収は理に適っていると評価した。私自身「Snapchatをセールスツールに利用している企業にさらに多くのサービスを提供し、プロダクトのポートフォリオを拡大することは適切な方針だ」と書いている。

今回のフェイスブックのKustomer買収は、いろいろな意味で極めてタイムリーな動きだと感じる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookKustomerCRMカスタマーサービス買収

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

セキュリティソフトのNortonLifeLockが同業Aviraを約374億円で買収

1億8000万ドル(約187億円)で買収されてからまだ8カ月のAvira(アヴィラ)は、今度は倍の価格でまたも買収される。NortonLifeLock(ノートンライフロック)は米国時間12月7日、ドイツのセキュリティ企業Aviraを全額キャッシュの3億6000万ドル(約374億円)で買収すると発表した(Business Wire記事)。

このM&Aは、両社をめぐる一連の所有の統合や変更における最新の動きだ。NortonLifeLockは、Symantecの企業セキュリティ事業がBroadcomに110億ドル(約1兆1440億円)近くで買収された(Broadcomリリース)ことにともなって2019年に独立した企業となったばかりだ。NortonLifeLockは公開企業であり、時価総額はおおよそ115億ドル(約1兆1960億円)だ

一方のAviraは2020年4月まで、主に消費者向けのセキュリティソフトウェアにフォーカスしていた新進のテック企業だった。同社のプロダクトにはNortonのようなウイルス対策ソフトウェアが含まれる。Aviraの場合、ソフトウェアはFacebook(フェイスブック)などによって再販されてきた(いまは休止中のウイルス対策マーケットプレイスの一部として)。近年、Aviraは有名企業とのホワイトレーベル取引で顧客を獲得してきた。戦略的パートナーにはNTT、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、IBM、Canonical(カノニカル)などが含まれる。Aviraは何百万という顧客ベースを抱え、デバイス3000万台をカバーし、有料顧客150万人を抱える(さらに多くが無料のサービスを利用している)。ホワイトレーベルのパートナー企業とあわせ、同社のソフトウェアは今日、世界のデバイス5億台で使用されている。

中でもAviraはフリーミアムモデルのビジネスを構築したのが特徴で、このモデルは維持するつもりだとNortonは語った。

Investcorp Bankのプライベートエクイティ部門であるInvestcorp Technology Partnersは2020年4月、Aviraの過半数の株式を買収し、これにより同社のバリュエーションは1億8000万ドル(約187億円)になった。この株式取得はAvira自身が買収できるようにするための資金注入だった。当時、この買収はAviraを統合企業と位置付けることになったのに加えて、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界経済に影響を及ぼし始めた初期に休眠状態になったのち、M&Aマーケットが再び動き始めたことを示す案件として注目された。

最終的にAviraは統合企業となる代わりに合併整理されることを選んだようだ。NortonLifeLockは、Aviraが強固な顧客基盤を持つ欧州で特に成長できるよう資産を活用するはずだ。

「AviraをNortonファミリーに迎えることをうれしく思います」とNortonLifeLockのCEOであるVincent Pilette(ヴィンセント・ピレッテ)氏は声明文で述べた。「当社はサイバーセーフティをみなさんにもたらすべく努めています。Aviraの買収により成長事業がポートフォリオに加わり、当社の国際成長を加速させ、フリーミアムソリューションで市場開拓モデルを拡大できます。文化的に我々は完璧な組み合わせです。当社はイノベーティブなプロダクトを消費者に届けることに絶えずフォーカスしていて、常に顧客を第一に考えています。Aviraとともに取り組むのが楽しみです」。

所有が変わる時期にAviraのCEOだったTravis Witteveen(トラビス・ウィッテヴェーン)氏は、このディールに「ワクワクしている」と声明文で述べた。買収によりAviraのバリュエーションは倍になった。

「NortonLifeLockとAviraは、消費者のデジタル生活を守ることを専門としています。サイバーセーフティにおいて信頼とリーダーシップを持つNortonLifeLockの一部になることを楽しみにしていて、さらに多くの世界中の消費者を守ることができます」とウィッテフェーン氏は声明文で述べた。

NortonLifeLockによると、買収は2021年第4四半期にクローズする見込みで、その後ウィッテヴェーン氏とCTOのMatthias Ollig(マティアス・オリグ)氏がNortonLifeLockの経営陣に加わる。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:NortonLifeLockAvira買収

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Image

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(翻訳:Mizoguchi

SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

Salesforce(セールスフォース)今週、Slack277億ドル(約2兆8850億円)で買収したとき、それはある意味でスタートアップのおとぎ話の終わりだった。Slackはシリコンバレーのスタートアップが思い描く成功のファンタジーを生きたまま体現していた。Slackはゲーム会社からスタートした(未訳記事)。同社は14億ドル(約1460億円)を調達し、評価額は0ドルから70億ドル(約7300億円)の評価額IPOを果たし、スタートアップ創業者が持つ希望リストのすべての項目をチェックした。

そして今週、突然SlackはSalesforceの一部となり、莫大な金額を市場から引き抜いた。

この取引を実現させるために裏にあった作戦を知ることはできないかもしれないが、興味深いのは、SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、今週のインタビューで、Salesforceの社長兼COOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏に接触した際、Slackを売却するつもりはないと語ったことだ。むしろ彼らはSalesforceから何かを買いたいと思っていた。

「実際、パンデミック初期の頃にブレットと話して、私たちにQuipを売る気があるかどうか聞いてみたことがある。それは私たちのためになると思っていたし、彼らの計画がどうなっているのかも知らなかったから。彼は私に連絡すると告げ、それから6カ月後に返事をくれたんだ」とバターフィールド氏はいう。

その時点で話は反転し、両社は一連の話し合いを始め、最終的にはSalesforceがSlackを買収することにつながった。

大金、大きな期待

Salesforceの観点から見ると、テイラー氏はSlackとの契約により、純粋なCRMからマーケティング、カスタマーサービス、データビジュアライゼーション、ワークフローを含む、何年もの間、拡大してきた同社プラットフォームのすべての要素を統合することができるためお金を払う価値があったとテイラー氏はいう。また、SlackがあればSalesforceは他の製品で欠けていたコミュニケーションレイヤーを得ることができる。顧客やパートナー、同僚とのやり取りがほとんどデジタルになったときに、このコミュニケーションレイヤーは特に重要になると述べている。

「私たちが本当にSlackをCustomer 360の次世代インターフェースにしたいといっているのは、これらすべてのシステムを統合するということだからです。チームが分散し、これまでなかったほどコラボレーションが重要になっている現在、どこにいても仕事ができるデジタルな世界で、これらのシステムを使ってどのようにチームをまとめていけばいいのでしょうか」とテイラー氏はいう。

バターフィールド氏は、人々が仕事の過程で何をしているのか、これらの記録とエンゲージメントのシステムの中でマシンが裏で何をしているのか、そしてSlackがどのようにして人とマシンの間のギャップを埋めるのに役立つのか、ということに自然なつながりがあると考えている。

Slackをビジネスプロセスの中心に置くことで、Salesforceのような複雑なエンタープライズソフトウェアで生じる摩擦を解消することができるとバターフィールド氏はいう。メールやリンクをクリックしてブラウザを開き、サインインして、最終的に必要なツールにアクセスするのではなく、1つのSlackメッセージに承認を組み込むことができる。

「1日に何百ものアクションがあるということは、スピードを上げる絶好のチャンスもあるということです。それがインパクトをもたらします。承認を行う担当者が時間を節約できるだけでなく、ビジネス全体の運営のスピードにも影響があります」とバターフィールド氏はいう。

Microsoftとの競合

両社とも、今回の契約はMicrosoft(マイクロソフト)との競合を目的としたものだとは述べていないが、SlackとSalesforceが力を合わせることを決めた根本的な理由はおそらくそこにある。両社は別々であるよりも、一緒にいたほうがうまくいくかもしれないが、いずれにもマイクロソフトとの複雑な過去がある。

Slackは何年にもわたってマイクロソフトと同社のTeamsと継続的な戦いを続けてきた。バターフィールド氏は2019年夏、同社がOffice 365で無料のTeamsを不当にバンドルしているとして、EUで提訴していた(未訳記事)が、同年のThe Wall Street Journalにおけるインタビューの中で、マイクロソフトはSlackにとって脅威だと考えていると語っている。誇張はさておき、2つのエンタープライズソフトウェア会社の間には緊張と競争がある。

Salesforceとマイクロソフトの間にも長い歴史がある。初期の頃は訴訟を起こしたり(Reuters記事)、2014年にSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏が就任してからは、史上で激しい競争を繰り広げたり、時には仲良く一緒に仕事をしたりしていた。今回の取引では、この文脈を無視することはできない。

Battery VenturesのジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏は最近のTechCrunchからのインタビュー(未訳記事)で、今回の契約は少なくとも部分的にはMicrosoftを捕らえるためのものだと語っている。

「1兆ドル(約104兆1600億円)という時価総額を達成するためには、SalesforceはMSFTに真っ向から立ち向かう必要があります。これまで同社は製品の点ではほぼ独自のスイムレーンに留まることができています」とアグラワルはTechCrunchに語った。

バターフィールド氏は、明らかな競争相手を目にしながらも、今回の契約はライバルと競争する上で自社を有利な立場に置くためのものではないと否定した。

「少なくとも私にとって、それが理論的根拠の重要な部分だとは思いません」とバターフィールド氏は述べ、「マイクロソフトとの競争は大げさに考えられています。私たちにとっての課題は物語でした」と付け加えた。

バターフィールド氏は、企業向けIT、保険、銀行業界の大手顧客のリストを挙げているが、Slackが当初注目を集めていた開発者チームに支持されていたという物語は以前から存在していた。Salesforceの現実がどうであれ、Slackは間違いなくエンタープライズコミュニケーション分野のあらゆる企業と競争する上で有利な立場にあり、Salesforceの一部となるが、両社はまた、ある程度の分離を維持する方法を見つける必要がある。

Slackを独立性をもたせる

テイラー氏は、現在のSlackの顧客が今回の買収をどのように考えるかについて注意深く見守っていることを認識しており、Salesforceはブランドと製品の独立性を尊重する一方で、既存の同社へのフックを作成し構築する方法を見つけ、CRMの巨人がその多額の投資を最大限に活用できるようにしなければならないだろう。

それは簡単なことではないだろうが、2018年に65億ドル(約6770億円)で買収したMuleSoft(未訳記事)や2019年に150億ドル(約1兆5620億円)以上で買収したTableauといったSalesforceが最近、行った大型買収にも同じような独立性が見られる。バターフィールド氏が指摘しているように、これら2つの企業はブランドアイデンティティと独立性を明確に維持しており、Slackのロールモデルになっているとテイラー氏は考えている。

「チャットクラウドなどと呼ばれても誰も助けてくれないので、(MulesoftとTableauには)そういう独立性のレイヤーがあるということです。彼らはSalesforceのために多くのお金を払ってくれたので、私たちがすでに行ったことをもっとしてほしいと思っています」という。

テイラー氏の意見はここでは非常に重要だが、彼は確かに似たような言葉でそれを見ている。

「私たちは、開発者のための真に統合された価値の提案、真に統合されたプラットフォームを実現したいと考えていますが、同時にSlackの技術的独立性、テクノロジーにとらわれないプラットフォームとそのブランドも維持したいと考えています」と、テイラー氏は述べた。

一緒にいたほうがいい

両社は協力することで、SlackのコミュニケーションをSalesforceのエンタープライズソフトウェアの優れた能力と統合してより良いものにする可能性があると考えており、テイラー氏はSlackがワークフローと自動化で両社を結びつけるのに役立つと考えている。

「自動化について考えるとき、イベントドリブンであり、これらの長期的なプロセスについて考えます。人々がSlackプラットフォームで何をしているかを見ると、基本的にはワークフローやボットなどを組み込んでいます。SalesforceプラットフォームとSlackプラットフォームの組み合わせは、最高の自動化インテリジェンス機能を持っていると思います」とテイラー氏は述べている。

この2人が買収を進める上で直面している課題は、このような大規模買収にともなうすべての期待に応えることであり、それを成功させることだ。

Salesforceは大規模な買収を数多く経験しており、うまくいったケースもあればそうでないケースもある。両社にとって、この買収の成功は不可欠なものだ。それを確実なものにできるかどうかは、テイラー氏とバターフィールド氏にかかっている。

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画像クレジット:Justin Sullivan, Stephen Lam/Getty Images; Slack/Salesforce

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(翻訳:TechCrunch Japan)

プライベートエクイティThoma BravoがITアセット管理のFlexeraを2960億円で2度目の買収

Thoma Bravo(トーマ・ブラボー)はシカゴ発のITアセット管理会社Flexera(フレクセラ)が本当に好きに違いない。プライベートエクイティのThoma Bravoは米国時間12月3日、2度目となるFlexera買収を実施した。買収価格は28億5000万ドル(約2960億円)だったと情報筋がTechCrunchに明らかにした。

厳密には、Thoma BravoはFlexera株をTA Associatesとオンタリオ州教職員年金基金から購入し、過半数の株式を取得する。Thoma Bravoは元々2008年にFlexeraをMacrovisionから2億ドル(約208億円)で買収した。そしてわずか3年後の2011年にその買収を10億ドル(約1040億円)の利益に変えた。

Flexeraの投資家たちは30億ドル(約3115億円)を模索したとの報道が2019年にあったが、実際にはその目標には到達しなかった。それでもFlexeraは大きな利益を上げ、各オーナーにかなりの額のリターンをもたらした。

28億5000万ドルという価格で、Thoma Bravoは同じようなリターンを得るために大きなチャレンジに立ち向かうことになる。しかし同社は以前Flexeraが好きで、いまでも好きなようだ。特に、少なくともある程度無傷のマネジメントチームを気に入っている。

「Jim Ryan(ジム・ライアン)と彼のチームは、企業が複雑なITインフラでもって直面する戦略的課題にフォーカスすることでFlexeraが持続的に成長できるようにしました」とThoma BravoのマネジングパートナーSeth Boro(セス・ボロ)氏は声明文で述べた。

ライアン氏はFlexeraの企業価値が成長し続け、再びThoma Bravoとつながることを喜んだ。「これはFlexeraが示した成長と、組織が今日直面している急増中の困難を解決するために当社が引き受けてきた戦略的イニシアチブへの圧倒的な支持です」と同氏は声明で述べた。

Flexeraは2008年の創業で、Crunchbaseのデータによると過去数年で獲得した5社を含め、これまでに12社を買収した。当局の承認次第ではあるが、今回のディールは2021年第1四半期のクローズが見込まれている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Thoma BravoFlexera買収

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(翻訳:Mizoguchi

GoogleがActifioを買収しデータ管理とビジネス継続性の分野に参入

Amazon(アマゾン)がAWSのビッグな大会を催しているその同じ週に、Google(グーグル)もGoogle Cloudで同社独自のエンタープライズ戦略を発表した。それは米国時間12月2日に同社が発表した(Googleブログ)データ管理の企業であるActifioの買収だ。Actifioは企業のデータ継続性を担保し、セキュリティ侵犯など、災害からの復旧のニーズが生じたときに備える。この買収でグーグルは、データ継続性のもう一1の大手Rubrikなどと対抗することになる。

買収の条件は公表されていないが、情報が得られ次第この記事をアップデートする。注目すべきは、Actifioは2014年に評価額が10億ドル(約1040億円)以上もあり(未訳記事)、当時すでにIPOの準備をしていたことだ(実現はしなかった)。PitchBookのデータによると2018年の評価額は13億ドル(約1360億円)だが、2020年初めには最近の評価額の約60%のディスカウントで資金を調達していたようだ。Prime Unicorn Indexが本誌に提供してくれたデータでは、そうなっている。

同社はまた、特許侵害でRubrikと係争しており、訴状は2020年6月に提出されている(Cision記事)。同社のこれまでの資金調達額はおよそ4億6100万ドル(約480億円)で、投資家はAndreessen HorowitzとTCV、Tiger、83 Northなどとなっている。

Actifioの買収でグーグルは、セキュリティ侵犯の技術の高度化と、データ保護に関する規制の強化にともなって、企業データのより責任のある保持および利用のプライオリティが高くなっているという最近のエンタープライズ投資において重要な部分に手を出すことになる。その要となるのが、データの継続性だ。

グーグルはActifioのことを「バックアップと災害復旧におけるリーダー」と呼んでいる。同社はデータの仮想コピーを提供し、企業はそれを管理し、アップデートしてストレージに保存したり、テストしたりできる。現在の企業データはSAP HANA、Oracle、Microsoft SQL Server、PostgreSQL、MySQL、VMwareの仮想マシン(VMs)、Hyper-V、物理サーバーそれにもちろんGoogle Compute Engineなど、多様かつ複数の環境にあるため、同社もオールGoogleのショップだけではなくハイブリッドでマルチベンダーの環境の中にいる企業との協働に強くなることが必要だ。

「顧客がクラウドのソリューションに関して選べるオプションは、現在とても多い。バックアップと災害復旧においてもそれは同様だ。Actifioの買収で、私たちは企業が重要なワークロードを、ハイブリッドというシナリオも含めてデプロイし管理するときに、以前よりもずっと良いサービスを提供できる。これから私たちは自社のバックアップと災害復旧技術のサポートに専念でき、顧客のエコシステムに力を注ぎ、その際に多様なオプションを提供できる。顧客は自分たちのニーズにぴったり合ったソリューションを選ぶことができる」とGoogle Cloudのエンジニアリング担当副社長Brad Calder(ブラッド・カルダー)氏はブログで述べている。

Actifioは、Google Cloudに加わる。

「Google Cloudに加わって、過去4年間にパートナーとして達成してきた成功を生かした仕事ができることは、本当に素晴らしい。バックアップとリカバリーは、エンタープライズのクラウド採用において必須の課題であり、Google Cloudと一緒であれば、すべての業界の顧客におけるデータドリブンのニーズに最良のサービスを提供できる」とActifioのCEOのAsh Ashutosh(アッシュア・シュトーシュ)氏は声明で述べている。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:GoogleActifio買収

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ServiceNowが法人向けAIサービス開発のカナダのスタートアップElement AIを買収

クラウドベースのITサービス企業であるServiceNow(サービスナウ)は、自動化と人工知能の法人向け分野でビッグプレーヤーとなるための長期戦略遂行に向け、11月30日に重要な買収を行った。ServiceNowはカナダのスタートアップであるElement AI(エレメントAI)を買収する。

Element AIはAIのパイオニアが創業し、世界最大級のAI企業が複数投資している。これまでにMicrosoft、Intel、Nvidia、Tencentなどから数億ドル(数百億円)を調達した。Element AIの狙いはAIベースのITサービスの構築と提供だった。企業は多くの場合、そもそもがテクノロジー企業ではない。

契約条件は公表していない、と広報担当者はTechCrunchに語った。だが、価格は約5億ドル(約520億円)だったとの情報が複数ある。参考情報として、Element AIは最後の資金調達で6~7億ドル(約620~730億円)、2019年9月には1億5100万ドル(約160億円)という評価だった。

5億ドル(約520億円)でも、この取引はServiceNowにとって最大の買収になると思われる。ただ最後の資金調達時の価格と比べるとかなりの切り下げだといえるだろう。

広報担当者は、ServiceNowがElement AIを完全に買収し、AIのサイエンティストや実務担当者を含むのテック人材のほとんどの雇用を維持するが、必要な部分を統合した後は既存のビジネスを縮小すると認めた。

「今回の買収における当社の重点は、テック人材とAIの能力です」と広報担当者は述べた。これには、Element AIの共同創業者でCEOでもあるJF Gagné(JF ガネー)氏がServiceNowに加わり、同じく共同創業者のYoshua Bengio(ヨシュア・ベンジオ)博士がテクニカルアドバイザーの役割を担うことも含まれる。

彼らのチームに属していない人は、ServiceNow内で他の仕事を探す支援を受けるか、退職金の対象となる。ある情報筋によると、Element AIの約半数が影響を受ける可能性がある。

Element AIはモントリオールに本社を置く。ServiceNowの計画は「Now Platform(自動化サービスのブランド名)で顧客中心のAIイノベーションを加速」し、AIイノベーションハブを創造することだ。

最後だが重要なこととして、ServiceNowはElement AIの機能の一部の再プラットフォーム化を始めると広報担当者は述べた。「取引成立後、Element AIのほとんどの顧客との契約を順次終了する予定です」

この買収取引は、我々の時代に合った最新のプラットフォーム構築を目指す企業としての最新の動きとなる。

ServiceNowは、2019年10月にSAPから加わったCEOのBill McDermott(ビル・マクダーモット)氏の下で、SaaS企業へAIと自動化の恩恵をもたらすべく大規模な投資を行ってきた。これには、SweaglePassage AILoomそれぞれ、2500万ドル=約26億円、3300万ドル=約34億円、5800万ドル=約60億円)を含む多くの買収に加えて、より大規模なワークフロー自動化プラットフォームの定期的な更新が含まれている。

ServiceNowは2004年から始まったため、厳密にはレガシービジネスとはいえない。同社の現在の時価総額は約1030億ドル(約11兆円)だ。全ての上場企業同様、同社は「デジタルトランスフォーメーション」といえばこの会社に頼め、といわれるようなポジションを競っている。デジタルトランスフォーメーションは今年の法人向けITサービスのバズワード(流行語)だ。健康に関わる世界的なパンデミックやそれに伴って起こる何があってもオペレーションを継続するために、誰もがオンライン、クラウド、リモートでより多くのことを実行しようと急いでいる。

「テクノロジーはもはやビジネスをサポートするものではありません。テクノロジーそのものがビジネスなのです」とマクダーモット氏は今年初めに語った。SalesforceがSlackをさらって行く可能性が十分にありそうな(編集部注:米国時間12月1日にSalesforceはSlackの買収を発表した)タイトな市場で、ServiceNowは自社の領域におけるピースを埋めるためにより多くのツールを求めている。

「企業が20世紀のプロセスとビジネスモデルをデジタルに変換するための競争が進むにつれ、AIテクノロジーは急速に進化しています」とServiceNowの最高AI責任者であるVijay Narayanan(ビジェイ・ナラヤナン)氏は11月30日の声明で述べた。「ServiceNowは人々の仕事を改善するために、世代でたった一度ともいえる機会を主導しています。Element AIの強力な能力とワールドクラスの人材により、ServiceNowは従業員と顧客が創造的な思考、顧客とのやり取り、予測不能な仕事など、人間だけが得意とする分野に集中できるようにします。よりスマートなワークフローの方法です」

Element AIは、世のスタートアップにとっていつも非常に野心的なコンセプトだった。2018年にチューリング賞を受賞したベンジオ博士は、AIの専門家であるNicolas Chapados(ニコラス・シャパド)氏、Jean-François Gagné(ジャン・フランソワ・ガネー氏、Element AIのCEO)、Anne Martel(アンネ・マルテル)氏、Jean-Sebastien Cournoyer(ジャン・セバスチャン・クルノイエ)氏、Philippe Beaudoin(フィリップ・ボードワン)氏とともに会社を共同で創業した。

彼らのアイデアは、「DNAからテック企業」というわけではない企業向けにAIサービスを構築することだった。それでもテック企業との競争力を維持するためには、テック業界のイノベーションを活用する必要がある。テック企業は幅広い業界により深く参入しつつあり、企業自身も経営と成長のために高度化する必要が高まっている。つまり企業は、他社によって不意に破壊される前に、自らを破壊する必要があるというわけだ。

さらにElement AIは、同社に戦略的投資を行っているテック企業のために、または彼らと協力して仕事を進めてきた。投資家らは、自身の専門知識の一部を活用したりElement AIと協力したりして、より多くのサービスを提供し、より多くの取引を法人顧客から獲得したいと考えていた。Element AIの(時には同社と激しい競合関係にあった)投資家4社に加えて、マッキンゼーのような投資家もいた。

しかし、その姿がどのような形をとるのかが完全に明らかになったことはなかった。

昨年、Element AIの最新の資金調達について取り上げたとき、同社の顧客が実際はどこにいるのかがよくわからないと述べた。同社のウェブサイトには対象とする業種がいくつか提示されているものの、結局顧客についてはよくわからない。業種には、保険、製薬、物流、小売、サプライチェーン、製造、政府部門、資本市場が含まれている。

他にもいくつか良い点はあった。Element AIは、2018年にはAmnesty、最近ではMozillaとの共同作業から始めたAI For Good(善きことのためのAI)の取り組みで倫理的に強力な役割を果たした。実際、2018年(Element AIの創業1年後)は、AIがメインストリームの意識に影響を与えたようにみえた年でもあった。またAIは、アルゴリズムの不発、広範な顔認識、より「自動化された」アプリケーションがうまく機能しないことなどにより、やや不気味に見え始めた。倫理的な目標を設定することは間違いなく理にかなっていた。

だが、そのすべてのために独立したビジネスとしてより大きな布を必要とするような十分な針の持ち合わせがなかったようだ。Glassdoorのレビューでは、同社内の混乱についても説明されている。それは避けられなかったのかもしれないが、おそらくより大きな問題の兆候だった。

「Element AIのビジョンは常に、企業がAIを使用して人々がよりスマートに働けるようにする方法を再定義することでした」と、Element AIの創業者でCEOのガネー氏は声明で述べた。「ServiceNowはワークフロー革命をリードしており、我々は仕事の世界を人々にとってより良くするという目的に触発されました。ServiceNowは、我々の人材とテクノロジーにより今日の企業が直面している最も重要な課題に立ち向かう適切なパートナーです」

買収は2021年初めまでに完了する予定だ。

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(翻訳:Mizoguchi

SalesforceがSlackを2.9兆円で大型買収

年間収益が最近200億ドル(約2兆880億円)を突破したCRMの強豪であるSalesforce(セールスフォース)は米国時間12月1日、Slackを277億ドル(約2兆8740億円)で大型買収し、エンタープライズソーシャルに深く踏み込んでいくと発表した。先週には保留中の買収の噂が浮上し、Slackの株価が急騰していた

Salesforceの共同創業者であり最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏は、今回の買収について言葉を濁さなかった。「これは相性抜群の縁組みです。SalesforceとSlackはともにエンタープライズソフトウェアの未来を形作り、あるゆる人々がオールデジタルで世界中のどこでも仕事ができるように、働き方を変えていくでしょう」とベニオフ氏は声明で述べた。

SlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏も、将来の上司に劣らず喜びを表現している。「ソフトウェアがあらゆる組織のパフォーマンスにおいてますます重要な役割を果たすようになるにつれ、私たちは複雑さを減らし、パワーと柔軟性を高め、最終的にはより高度な調整と組織の俊敏性を実現するというビジョンを共有しています。個人的には、これはソフトウェアの歴史の中で最も戦略的な組み合わせだと思っています。一緒に始めるのが待ち遠しくて仕方ありません」と、バターフィールド氏は声明で述べている。

すべての企業の、すべての従業員はコミュニケーションをとる必要があるが、Slackはそれを巧みに強化させることができる。さらに、Slackは顧客やパートナー企業との外部コミュニケーションも円滑にする。Salesforceのような企業とその製品群にとって、それは非常に有益なものになるはずだ。

最終的に、Slackは買収の機が熟していたのだ。Slackは株式公開後、2020年に入る頃にはその価値の約40%を失っていた。直近の決算報告(未訳記事)後には、同社の価値は16%下がり、Salesforceの買収がリークされる前は、1株あたりの価値が直接上場の基準価格よりも数ドル高いだけだった。2020年7月31日までの2つの四半期の間に1億4760万ドル(約154億1600万円)の純損失を計上し、Slackの魅力的でない公開評価と収益性への曲がりくねった道は、今回のような買収の標的となっていた。ここでの唯一の驚きはその価格だ。

YahooとGoogleファイナンスの両方によると、Slackの現在の評価額は250億ドル(約2兆6100億円)強で、時間外の価格変化が非常に小さいことを考えると、市場が同社にある程度効果的な価格を付けたことを意味する。Slackは、買収が明らかになる前の評価額から約48%上昇した。

また、今回の新たな買収により、Salesforceはかつてのライバルであり、時には友人でもあったMicrosoft(マイクロソフト)と肩を並べ、そして競い合う(未訳記事)ことになる。同社のMicrosoft Teamsは市場でSlackと直接競合する製品だからだ。マイクロソフトは、過去にSalesforceが今回支払う金額の数分の1でSlackの買収を断念した(未訳記事)が、ここ数四半期はTeamsを重要な優先事項としており、エンタープライズソフトウェア市場の一片たりとも他社に譲ることを嫌っている。

Slackが他の企業とは一線を画していたのは、少なくとも当初は、他の企業向けソフトウェアとの統合が可能だったからだ。これにボットやインテリジェントなデジタルヘルパーを組み合わせれば、同社はSalesforceの顧客に集中的に仕事ができる中心的な環境を提供できる可能性がある。必要なことはすべてSlackでできるからだ。

今回の買収はSalesforceにとって、2016年に7億5000万ドル(約783億円)で買収したQuipに続くものだ。QuipはSaaSの巨人にドキュメントをソーシャルに共有する方法をもたらした。Slackの買収と組み合わせれば、Salesforceは自社内のオプションであるChatter(エンタープライズソーシャルの初期の試みで現実にはまったく普及しなかった)よりも、はるかに堅牢なソーシャルストーリーを伝えることができる。

注目すべきは、マイクロソフトがSlackに興味を持っていると報じられたのと同じ2016年に、SalesforceがTwitter(ツイッター)に興味を持っていたことだ。最終的には、株主の反対を受け、ソーシャルプラットフォームの物議を醸している側面を扱いたくないということで買収から手を引いた。

Slackは2013年に設立されたが、その起源(未訳記事)は2009年に設立されたGlitchというオンラインマルチプレイヤーゲーム会社にまで遡る。このゲームは最終的には失敗に終わったが、このスタートアップは会社を作る過程で社内メッセージングシステムを開発し、それが後にSlackへと発展した。

その歴史的な成長によってSlackは非公開の間に10億ドル(約1044億円)以上を調達し、2019年の株式公開前に70億ドル(約7310億円)もの評価額を獲得した。「Glitchがユニコーンになった」ストーリーは単純に見えるものの、Slackはマイクロソフトだけでなく、Cisco(シスコシステムズ)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、さらにはAsanaやMonday.comといった企業との競争に常に直面している。

Slackにとって、公開市場への道のりは誇大広告と予想外の期待に満ちていた。同社はすでにSalesforceと同じくらい有名だった。当時、そのデビューはインディーズ会社としての長い期間の始まりだと感じられた。しかしそうはならず、その期間は巨額の小切手によって切り詰められてしまった。これが「食うか食われるか」のテック業界だ。

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タグ:SalesforceSlack買収

画像クレジット:Thomas Trutschel / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

UberがフードデリバリーPostmatesの買収を完了

Uber(ウーバー)は米国時間12月1日、Postmates(ポストメイツ)買収の完了を発表した。このディールは7月に明らかにされていた。情報開示時に26億5000万ドル(約2765億円)だった全株式による買収だ。Postmatesは自前のブランドやフロントエンドを維持しながらUberとは別のサービスとして業務を続ける一方で、ドライバーの共有などバックエンド業務の一部は統合される。

Uberは合体後の組織について、また2社にとって買収が何を意味するのか、ブログへの投稿で詳しい考えを明らかにした。同社はともに働く加盟店のメリットになると考えている。そして正式なディールクローズとともに、加盟店サイドで顧客フィードバックを収集を促進する新たな取り組みも発表した。

Uberはそれを「地域的なリスニングエクササイズ」と呼んでおり、2021年初めから展開することにしている。この取り組みでは、地方のレストラン協会や商工会議所の協力を得てその地域の経営者の懸念を聞き取る。Uberの双方向マーケットプレイスの片方の側との協業を改善するために数年前に同社がドライバーのフィードバックを集めた取り組みと同じようなもののようだ。

加盟店のニーズにフォーカスすることは、現在のグローバルパンデミックを考えるとかなり重要だ。パンデミックでは外出制限や安全のための勧告に従おうと人々は配達を選ぶようになり、Uber Eatsはフードサービスやグローサリー業界において重要なインフラ構成要素となっている。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:UberPostmates買収

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

EveryActionが米民主党系支持者管理プラットフォームMobilizを買収

非営利の寄付者管理プラットフォームEveryAction(エブリアクション)は、米民主党の選挙キャンペーンとボランティアを結び付け、進歩的な理念を掲げる活動家の組織作りを支援するMobilize(モビライズ)を買収した。かつてMobilizeAmerica(モビライズアメリカ)という名称で知られていたMobilizeは、左派の政治的目標のためのテクノロジーや選挙の支援に特化したインキュベーターHigher Ground Labs(ハイヤーグラウンドラボズ)から世に出た企業だ。

この買収により、EveryActionは自然保護団体Sierra Club(シエラクラブ)や人権擁護団体Human Rights Campaign(ヒューマンライツキャンペーン)をはじめとする1万5000件以上のクライアントを擁する現在の基盤を、Mobilizeの組織化ツール(未訳記事)を使って拡張できるようになる。EverActionは、民主党のためのデジタル基盤作りに大きく貢献した企業NGP VAN(エヌジーピーバン)の非営利団体を専門に扱う部門だ。Mobilizeとの契約条件は公表されていない。

2017年の初めに設立されたMobilizeは、Donald Trump(ドナルド・トランプ)政権時代の左派の積極的な行動主義の波に乗り、インターネット上の興味やエネルギーを行動に変換する進歩的なキャンペーンの支援者の間でごく一般的なツールに成長した。このプラットフォームは、2020年の民主党予備選挙では、多くの候補者のアウトリーチを手助けした。大統領に選出されたJoe Biden(ジョー・バイデン)氏のキャンペーンでも利用され、総選挙でも引き続きMobilizeが使われていた。

2016年、思いがけなくトランプ大統領が当選した後、またその思いがけない戦略(The Guardian記事)を選挙戦で展開した後、民主党は新たな手腕を磨くためにスタートアップシーンに注目した。この4年間は、民主党系政治スタートアップの実験場として役に立てくれた。そして2020年、それらスタートアップはともに新しい時代の幕を開けることとなった。

2020年の初め、Mobilizeは進歩的な技術系インキュベーターHigher Ground Labsが主導するシリーズAラウンドで375万ドル(約3億9000万円)の投資を獲得した。

Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercase CapitalとLinkedIn(リンクトイン)の共同創設者であり民主党の著名な資金提供者でもあるReid Hoffman(レイド・ホフマン)氏もこのシリーズAに参加した。Mobilizeの買収は、Higher Ground Labsが関係する別のエグジットに続くものだ。8月、億万長者でFacebook(フェイスブック)の元幹部Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が創設したSocial Capital(ソーシャル・キャピタル)は、テキストバンキングプラットフォームHustle(ハッスル)を買い取った(未訳記事)。

EveryActionの中でMobilizeは、MobilizeのCEOであり共同創設者のAlfred Johnson(アルフレッド・ジョンソン)氏が率いる独自ユニットになる。同社にすでにいた人材は、EveryAction傘下の別部門に異動する。Mobilizeの共同創設者で社長のAllen Kramer(アレン・クレイマー)氏もEveryActoinに移り、組織作り担当副ジェネラル・マネージャーとなる。

「EveryActionは、National Audubon Society(全米オーデュボン協会)、Planned Parenthood Federation of America(米プランドペアレントフッド財団)、国連基金といった非営利のクライアントへの主要なソフトウェア供給企業となっています」とジョンソン氏はTechCrunchに話した。「彼らは、イベントやボランティアの管理のための最上級のサービスを、それを受けるに相応しいこれらの価値ある団体に提供できる唯一の態勢を整えています」。

買収前から、EveryActionはすでにMobilizeとプラットフォームの統合でつながっていた。ジョンソン氏は今回のニュースを、そうした関係性の「自然の進化」と称している。「この2つの企業は、企業使命においてぴったりと重なっています。それは、理念を原動力とする団体の、支援者の関わり合いをより強く深くして、運動の拡大を手助けすることです」とジョンソン氏。「私たちが力を合わせることで、より多くの人たちが、より善い行いができるよう支援できます」。

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(翻訳:金井哲夫)

Slack買収の噂が渦巻く中、セールスフォースの大型買収6件をチェックしてみた

先週SalesforceがSlack買収を考えているという噂が流れた。米国時間11月30日、CNBCは「買収はほとんど完了しており、明日にも発表される可能性がある」と報じている(CNBC記事)。実現すれば超大型買収になるはずだが、SlackはSalesforceにとって最初の大規模な買収ではない。我々はこの機会にSalesforceの大型買収を確認しておくことが必要だろうと考えた。

Salesforceはすでに年間収入が200億ドル(2.1兆円)を超えている。同社は過去に多数の買収を行って収入を拡大し、さらに大きな市場を獲得してきた。

過去最大の買収は、昨年、2019年のTableau買収で価格は157億ドル(約1兆6000億円)だった。 これによりSalesforceは、同社に欠けていたデータ視覚化テクノロジーを獲得した。巨大な既存市場を持つSalesforceはデータ視覚化のニーズに不足することはなく、この買収は売上拡大に大きく貢献した。さる8月にTechCrunchとのインタビューでSalesforceのCEO、プレジデントを務めるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏はTableau買収が同社の成長を実現する重要な要素だと語っている。ちなみに同氏自身、2016年の7億5000万ドル(約780億円)のQuip買収を機にSalesforceに加わった。テイラー氏はこう述べている。

Tableauはビジネス面でもテクノロジー面でも戦略的に重要な要素です。企業がデジタル化するに従って、顧客ニーズを的確に理解するためにデータを視覚化して理解することが必須になってきました。これは今後ますます重要になります。

Salesforceの大型買収案件の2位には2018年の65億ドル(約6800億円)のMuleSoft買収(未訳記事)だ。Salesforceはこの買収でエンタープライズ向けSaaS企業としてそれまで持っていなかったデータへのアクセスが可能になったMuleSoftを活用して、事業部ごとのオンプレミスや複数のクラウドに分散して存在するデータを統合することが可能になった。TableauとMuleSoftという2つのメガディールを組み合わせることによって、エンタープライズデータを視覚化し、スマートCRMアシスタントのSalesforce Einsteinサービスにさらにデータを供給できるようになった。

2016年には28億ドル(約2900億円)でeコマースのDemandwareを買収した。同社はSalesforceに組み込まれてCommerceCloudになった。すると2020年のパンデミックで大小の企業がビジネスをオンラインに移行することを余儀なくされた。このためeコマースプラットフォームは飛躍的に重要性を増すこととなった。

2013年には25億ドル(約2600億ドル)でExactTargetを買収(未着)したが、これはSalesforceとして初のビリオンダラー(10億ドル級)買収となった。これが後にMarketingCloudに発展する。この買収により電子メールを利用したマーケティング事業に参入した。パンデミックで顧客と非対面でコミュニケーションを維持することが重要になった2020年にデジタルマーケティングの重要性は再度増大している。

2019年にはMuleSoftの買収完了の数日にSalesforceはまた財布を開き、ClickSoftware買収(未訳記事)に13億5000万ドル(約1400億円)を支払った。これはカスタマーサービスとフィールドサービスを含むサービスクラウドを重視することを意味した。 この買収自体はフィールドサービスに関するもので、同社は出張メンテナンスなどのフィールドサービスを重用な事業とする顧客多数にアクセスできるようになった。

最新のビリオンダラー級買収は(Slack買収の噂を別にすれば)、2020年初頭に13億3000万ドル(約1400億円)のVlocity買収だ。Vlocity買収は、SalesforceのコアビジネスであるCRM(顧客関係管理)分野に対する強化策だった。 このプラットフォーム上に構築された通信、メディア、エネルギーなどのバーティカル市場をSalesforceに統合することができた。適合性は極めて高かったといえる。 Vlocityのプラットフォームを使用することでSalesforceはこれらのバーティカルの構築、強化を継続することができ、専門市場における地位の強化につながった。

現時点ではまだ断定はできないが、Slackの買収が実現する可能性は高い。Salesforceの買収攻勢が続く中、Slack買収が実現すればTableau買収よりさらに巨大なものとなることが予想される。

【TechCrunch Japan編集部】円表示は2020年12月1日現在の104.3円による概算

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ワークフローソフトのOnitがAI機能導入のため完全リモート交渉でNZのMcCarthyFinchを買収

ヒューストンのワークフローソフトウェア企業Onitが11月第3週に、2018年のTechCrunch Disrupt Battlefield(未訳記事)に出場したMcCarthyFinchを買収したことを発表した。OnitはMcCarthyFinchのAIスキルを利用して同社のワークフローソフトウェアをパワーアップすることを狙っているという。

買収の価額は、公表されていない。

Onitは複数のAI企業を評価検討してからMcCarthyFinchに決めた。後者は前者の法務ワークフローソフトウェアに欠けていた人工知能を提供する。OnitのCEOで共同創業者のEric M. Elfman(エリック・M・エルフマン)氏は、「10社以上のAI企業を評価して、さらに6社を詳しく調べた。群を抜いていたのがMcCarthyFinchだ。彼らは、技術とチームの両方で最強だった」と語っている。

Onitは、同社のワークフロープラットフォームであるAptitudeをAI化するつもりだ。「McCarthyFinchがすごいと思ったのは、最初にCEOのNick Whitehouse(ニック・ホワイトハウス)氏と会話したときからだ。彼らは自分たちをAIプラットフォームと見なしていた。それこそがまさに、私たちの仕事とワークフローオートメーションプラットフォームのAptitudeを補完するものだった」とエルフマン氏はいう。

McCarthyFinchのCEOで共同創業者のホワイトハウス氏によると、同社は2020年初め頃から、資金を調達すべきか、それともどこかに買収された方が良いか迷っていたが、ちょうどそのときに、Onitから話があった。当初彼はその買収話に興味がなく、提携で行った方が良いと思っていたが、その後気が変わった。

「提携路線にずっと固執していたため、買収の話に対してはまったく乗り気ではなかったと思う。しかし会話を重ねるにつれて、誰にもエゴはあるけれども、買収の方が理に適っていると思うようになった」とホワイトハウス氏はいう。

両者は5月に結論に達し、先週、取引は公式に完了した。Onitはヒューストンに本社があり、McCarthyFinchはニュージーランドの企業であるため、交渉と会議はすべてZoomで行った。両社のトップが実際に会ったことは一度もない。計画では、パンデミックが終わってもMcCarthyFinchは現在の場所に留まる。ホワイトハウス氏は、安全になったらヒューストンに旅行してみたいという。

ホワイトハウス氏によると、TechCrunch Battlefieldの経験が彼に大きな影響を与えたという。「Battlefieldで得た知見と、あそこで得られた指導や助言などが、今の私に滲みついているし、今後も一生を通じてそうだろう」と彼は述べた。

買収の時点でMcCarthyFinchは顧客が45社、社員は17名だった。これまで同社は米ドルで500万ドル(約5億2000万円)を調達した。これからは、Onitの一部になってその旅路を続ける。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:OnitMcCarthyFinch買収

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

教育用ゲームプラットフォームのKahoot!が言語学習のDropsを約52億円で買収

教育用ゲームを作って共有できる人気スタートアップのKahoot!は、ソフトバンクから2億1500万ドル(約223億8000万円)を調達(未訳記事)してオンライン学習に対する関心を一気に集めた。その同社が、今度は対象とする教科を広げるために買収を実施する。Kahoot!は、絵と単語をベースとした短いゲームで言語を学ぶスタートアップのDropsを選んだ。Kahoot!の機能をDropsのアプリに統合し、Dropsのコンテンツの一部をメインのKahoot!のプラットフォームに組み込む計画だ。

Kahoot!はノルウェーのオルタナティブ投資市場であるメルクール市場で株式の一部を取引し、現在の時価総額は30億ドル(約3123億円)を超える(Yahoo! Finance)。同社は発表の中で、Dropsに3100万ドル(約32億3000万円)を現金で支払い、2020年から2022年までの間にDropsが一定の成果をあげたかどうかに基づいてさらに最大1900万ドル(約19億8000万円)を現金と株式で支払うと述べている。取引は2020年11月中に完了する予定で、同社にとってはこれまでで最大の買収だという。

Dropsにはメインのアプリが3つある。1つ目は企業名をそのまま名前にした、無料の機能と有料の機能があるフリーミアムのアプリだ。成人が新しい言語を学べるアプリで、現在42言語に対応している。ボキャブラリーを5分間ほどの「つまみ食い」セッションで身につけることができる。2つ目のアプリは読み書きと手話を学ぶ「Scripts」で、米国手話を含め7言語に対応している。3つ目は「Droplets」で、8〜17歳の学習者が言語を学ぶことに特化したものだ。全部で2500万人のユーザーを獲得している。

DropsがTechCrunchの(そしてスタートアップ界の)レーダーに入ってこなかった理由の1つは、資金調達をせず自己資本でブートストラップしてきたからかもしれない(アクセラレーターのGameFoundersが関わっていた)。しかし2018年にはGoogle(グーグル)のベストアプリに選ばれるなど、高い評価を得てきた。

Dropsはエストニアで創業し、21人の従業員がいる。「本社」はなく、チームはエストニア、米国、英国、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、スウェーデン、オランダ、ハンガリー、ウクライナ、ロシアに散らばっている。このことが低コストで運営できる理由の1つだろう。2019年の売上高は630万ユーロ(約7億8300万円)で、キャッシュコンバージョンは40%だという。

もう少し背景を説明すると、Microsoft(マイクロソフト)やDisney、Northzoneなどから支援を受けているKahoot!によれば、直近の12カ月で200カ国以上の10億人を超えるプレイヤーが、Kahoot!のセッションに2億回以上参加したという。この数字には、無料サービスを利用する学習者と、このプラットフォーム上でゲームを作って利用するために費用を支払っている企業(例えば専門の開発者やビジネスコンプライアンス関連など)の両方が含まれる。

Kahoot!のCEOであるEilert Hanoa(アイレート・ハノア)氏は発表の中で次のように述べている。「我々は世界をリードする学習プラットフォームになるというビジョンに向かって前進しており、成長を続けるKahoot!ファミリーにDropsを迎えることをたいへんうれしく思っています。Dropsのサービスと革新的な学習モデルは、シンプルなゲームベースのアプローチで学習を素晴らしいものにするというKahoot!のミッションと完璧に一致します。Dropsと言語学習は、あらゆる年代や能力の学習者向けアプリとして成長を続ける我々にとって最新のサービスとなります。我々はこれからも新しい領域に進出し、Kahoot!を家でも学校でも職場でも学べる究極の場とし、学習を素晴らしいものにしていきます!」。

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、教育用アプリは急成長し、全体として利用が大幅に増えている。

新型コロナの感染拡大を防ぐために学校が閉鎖されたり、できることが極端に減ったりする中で、学生、教員、保護者にとって教育用アプリは連絡を取り合い教えるための手段となっている。

一方、企業などの組織はスタッフの多くが在宅勤務をしている中で、スタッフとのつながりを維持し、エンゲージし、トレーニングをするために、eラーニングを利用している。

私たちの多くにとって、完全に禁止されているわけではないにしても移動が大幅に制限されているこの時期に言語学習が大ブームになっているのは皮肉なことのようにも思える。

おそらく、やれるときにやっておこうということなのだろう。つまり、新たに習得した外国語のスキルを本当に使えるようになるときに備えて、いまの時間を使って準備しようということだ。あるいは、建設的に気を紛らわしたり何かに没頭したりしようということかもしれない。動機や理由はともかく、結果として言語学習は活発になっている。

同様にゲームベースのコンセプトで学習と毎日のセッションを続けてリーダーボードを目指すDuolingoも最近、24億ドル(約2500億円)の評価額で3500万ドル(約36億円)を調達し、大きく飛躍した。

Kahoot!は、デジタル言語学習が2025年までに80億ドル(約8300億円)を超える市場になるという予測(Statistaレポート)を引き合いに出し、Dropsは「世界で最も成長の早い言語プラットフォームの1つ」だと説明した。

Dropsの共同創業者でCEOのDaniel Farkas(ダニエル・ファーカス)氏は発表の中で「Dropsの全員がこの5年間、言語学習の新しい方法を作ってきました。まだ始まったばかりです。我々は世界中の多くのユーザーに、楽しくてダイナミックな言語学習のアプローチを紹介してきました。Kahoot!も同じタイプの学習を提供しています。ミッションを同じくする企業と連携してDropsのプラットフォームを世界中にいるゲーム好きの学習者に提供できることを楽しみにしています」と述べている。

これはKahoot!にとって4社目で、これまでで最大規模の買収だ。Kahoot!はDropsのケースと同様に、これまでにも学生向けの数学学習(未訳記事)や企業ユーザーの管理ツール(未訳記事)など自社プラットフォームに新たな専門分野を取り入れるためにM&Aを実施してきた。

関連記事:コロナ需要に沸くEdTech、言語学習アプリDuolingoが約36億円調達

カテゴリー:EdTech
タグ:Kahoot!Drops買収

画像クレジット:Drops under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:Kaori Koyama)

SalesforceによるSlack買収検討との報道を受けてSlack株価が急騰中

Salesforce(セールスフォース)が人気の職場チャットSlack(スラック)の買収に関心を持っている(The Wall Street Journal記事)というニュースを受けて、Slackの株価は米国時間11月25日に急騰した。

Yahoo Financeのデータによると、Slackの株価は25%近く上昇している。この記事執筆時点でSlackの株価は36.95ドル(約3860円)で、企業価値は約208億ドル(約2兆2000億円)だ。有名な元ユニコーン企業である同社の2019年の株価は最低が15.10ドル(約1580円)、最高が40.07ドル(約4200円)だった。

逆に、Salesforceの株はニュースを受けて低調で、記事執筆時点で3.5%下げている。サンフランシスコ拠点のSaaSパイオニアであるSalesforceは買収のアイデアで印象付けることができなかったか、あるいは2019年のIPOレベルの株価に戻すことになるかもしれない買収の価格について心配されているのだろう。

CRM(顧客情報管理)マーケットにおいて確固たる地位を築き、さらに大きなプラットフォームプレイヤーになることを熱望している巨大ソフトウェア企業のSalesforceがなぜSlackを買収したいのか。メリットはあるかもしれないが、すぐにははっきりしない。メリットとしては、2社のプロダクトを互いの顧客に売り込んでさらなる成長に結びつけるというのが考えられる。Slackは急成長のスタートアップの中で幅広いマーケットシェアを持っているが、その一方でSalesforceのプロダクトは多くの大企業に利用されている。

TechCrunchは買収の可能性についてSalesforce、Slack、そしてSlackのCEOにコメントを求めている。返事があればアップデートする。

Salesforceは2016年にQuip(クイップ)を7億5000万ドル(約783億円)で買収し、これにより書類共有やコラボの機能を手に入れたが、Salesforce Chatterが唯一のソーシャルツールだ。Slack買収でSalesforceは確固たる企業向けのチャットサービスを、そして顧客とツーリングの間で多くの相乗効果を手に入れる。

しかしSlackは常に、ただのチャットクライアント以上のものだった。企業がワークフローを埋め込めるようにしているが、これはSalesforceのセールス、サービス、マーケティングなど一連のプロダクトにぴったり合うだろう。2社がともにSalesforceエコシステムの内外で協業して、スムーズで統合されたワークフローを構築できるようになる。理論上はSalesforceもできるが、2社が合体すればインテグレーションはより強固なものになるのは間違いない。

さらには、買収によりSalesforceは収入のエンジンを動かし続けるために常に求めていた確実な収入源を得ることになる、とConstellation ResearchのアナリストHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は話す。「SlackはSalesforceのプラットフォームを強化するのに良い候補かもしません。しかしさらに重要なことに、使用増とSalesforceプロダクトの『頻繁な使用』を意味しています。コラボはCRMにとってだけでなくベンダーの成長中のwork.comプラットフォームにとって大事なのです」とミューラー氏は述べた。元友達から敵になったMicrosoft(マイクロソフト)に報復する方法となるだろう、とも話した。

これはSlackがこの数四半期、マイクロソフトからかなりの砲火を浴びているからだ。レッドモントに本社を置くソフトウェア大企業のマイクロソフトはTeamsサービスの競争にリソースを注いだ。TeamsはSlackのチャットツールと、Zoomのビデオ機能に挑んおり、この数四半期でかなり顧客数を伸ばしてきた。

Slackを大規模テック企業のコーポレートホームとすれば、マイクロソフトが企業向けソフトウェア売上高のリバイアサンの下でSlackを砕くことはないかもしれない。そして時にMicrosoftの味方であるSalesforceは急成長中のSlackを拡大しつつある自社のソフトウェア収入に加えることを気にしないはずだ。

この買収の実現は、価格にかかっている。Slackの投資家は情報が漏れる前の1株あたりの価格にかなりのプレミアムを上乗せしなければ売却したがらないだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SlackSalesforce買収

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Splunkがネットワーク可観測性サービスFlowmillを買収

データプラットフォームのSplunkはこのところ買収を続けている。それは、同社が最近立ち上げた可観測性プラットフォームの機能を充実したいためだ。2020年10月にPlumbrとRigorを買収した同社は、米国時間11月25日にパロアルトの可観測性スタートアップFlowmillの買収を発表した(Splunkリリース)。Flowmillは、ユーザーを支援してクラウドインフラストラクチャ上にネットワークのパフォーマンスの問題を見つけられるようにし、トラフィックをサービスごとに計測してコストの管理ができるようにする。

現在、この分野の企業はとても多いが、それらの企業と同じくFlowmillもeBPFを利用する。それはLinuxのカーネルの比較的新しい機能で、カーネルを書き換えたりカーネルモジュールをロードしなくても、サンドボックスに入れたコードをカーネル内で動かせる。この機能は、モニタリングのアプリケーションにとって理想的だ。

「可観測性の技術は最近では高度化が進んでおり、企業のインフラストラクチャやアプリケーションをモニターする方法に革命をもたらしている。Flowmillの革新的なNPM(Network Performance Monitoring)ソリューションは、拡張バークリーパケットフィルター(extended Berkeley Packet Filter、eBPF)の技術を利用して、分散クラウドアプリケーションのネットワークのビヘイビアとパフォーマンスにリアルタイムの可観測性を提供する。Splunkがいま、最高品質の可観測性能力を顧客に届けようとしているとき、Flowmillの先見性に富んだNPM技術を弊社のObservability Suiteに導入できることは本当に素晴らしい」とSplunkのCTOであるTim Tully(ティム・タリー)氏は述べている。

Spunkは10億5000万ドル(約1097億円)でSignalFxを買収など、大型の買収もあるが、同社の可観測性プラットフォームは、それぞれ極めて特別な技術を持っている小さなスタートアップを拾い集めて構築しようとしている。そういう機能をすべて自社で作ることもできたかもしれないが、成長市場にしっかりとした足場を誰よりも速く築くにはスピードが重要と、同社は明確に信じている。いまエンタープライズは、自分たちのテクノロジースタックを現代化するために新しい可観測性ツールを求めているからだ。

FlowmillのCEOであるJonathan Perry(ジョナサン・ペリー)氏は、Splunkによる買収について「忠実度が完全で、リアルタイムで、取り込みと分析の濃度が高いシステムを作るFlowmillのアプローチは、可観測性のSplunkのビジョンに良く合っている。Splunkに加わることは楽しみであり、特に次世代のNPM、eBPFをSplunkのObservability Suiteに導入できることは素晴らしい」と述べている。

買収の価額は明かされていないがFlowmillは先に、AmplifyやFelicis Ventures、WestWave Capital、およびUpWestから資金を調達している

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Splunk買収

画像クレジット:Fernando Trabanco Fotografía / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa