ML可観測性プラットフォームのAporiaが約28.8億円のシリーズA資金を調達

テルアビブに拠点を置くAporia(アポリア)は、企業がAIベースのサービスを監視・説明できるように支援するスタートアップ企業だ。同社は米国時間2月23日、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導する2500万ドル(約28億8000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを実施したことを発表した。このラウンドには、新たに投資に加わったSamsung Next(サムスン・ネクスト)の他、以前の投資家であるTLV Partners(TLVパートナーズ)とVertex Ventures(ヴァーテックス・ベンチャーズ)も参加、同社の調達資金総額は3000万ドル(約34億6000万円)に達した。

2021年サービスを開始した当初は、オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームであることに正面から取り組んでいた同社だが、それからチームはその網を少し広げ、フルスタックのML(機械学習)モニタリング・プラットフォームとなっていった。

「今のところ、私たちのソリューションには4つの柱があります」と、Aporiaの共同創業者兼CEOであるLiran Hason(リラン・ハソン)氏は説明する。「1つ目の柱は可視性、つまりダッシュボード機能のようなもので、予測値などを見ることができます。2つ目は、かなり新しいものですが、説明可能性です。すでに何人かのユーザーには使っていただいています。3つ目がモニタリング、そして4つ目が自動化ですが、これも新しいものです」。

自動化は、もちろん、どのような監視サービスにとっても、明白な次のステップである。ユーザーは普通、受け取ったアラートに対して、何らかのアクションを起こしたいと思うからだ。Aporiaは、すでにその監視サービスにドラッグアンドドロップツールを取り入れていたので、この機能もすぐに追加できた。この自動化機能を拡張して、より複雑なユーザーケースに対応できるようにしたいと、ハソン氏は言及している。

また、説明可能性も、顧客からのフィードバックを基に追加した機能だ。企業には規制当局から、自社のAIモデルが何を行っているかを説明できるように求める圧力が増している。Aporiaは、モデルがなぜそのような予測をするのか、また、さまざまな入力パラメータがどのように予測に寄与しているのかを、ユーザーが理解できるように支援する。

フルスタックなML可観測性プラットフォームになるというミッションは、顧客の心に響いているようだ。Aporiaによると、同社のサービスを利用する顧客の数は、直近の半年間だけで600%増加したという。現在はその顧客に、Lemonade(レモネード)やArmis(アーミス)などの企業が含まれている。

「Aporiaは起ち上げ以来、信じられないような成長を見せ、驚くべき勢いで、急速にMLの可観測性の分野におけるリーダーとなっています」と、Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は述べている。「グローバル企業の経営幹部は、人工知能のメリットと、それが事実上すべての産業にどれほど影響を与えているかを理解していますが、リスクによって夜も眠れない状態になっています。Aporiaは、すべての組織が、AIの責任ある利用を保証するために求めるソリューションになると位置付けられます」。

画像クレジット:Aporia

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1日に必要な栄養素の3分の1を1食で摂れるBASE FOOD提供のベースフードが20億円調達、新商品開発を加速

1日に必要な栄養素の1/3を1食で摂取できる「BASE FOOD」を提供するベースフードは2月23日、第三者割当増資10億円と融資契約10億円による総額20億円の資金調達を実施をしたと発表した。引受先は、シニフィアンとみずほキャピタルが共同運営するTHE FUND。借入先は三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫、りそな銀行、三井住友銀行。調達した資金は、既存商品のアップデートと新商品開発の加速、人材採用の強化にあてる。

BASE FOODは、1食で1日に必要な栄養素の1/3を摂取できる「完全栄養食」(栄養素等表示基準値に基づき、脂質・飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・炭水化物・ナトリウム・熱量を除いて、すべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む)。全粒粉や大豆、チアシードなど10種類以上の原材料を使用しつつ、栄養バランスとおいしさを独自の配合と製法により実現。たんぱく質や食物繊維、26種類のビタミン・ミネラルなど1日に必要な33種類の栄養素を1食で摂れるという。

2016年4月設立のベースフードは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションに掲げるフードテック領域のスタートアップ。2017年に完全栄養パスタ「BASE PASTA」をサブスクリプションサービスとして販売開始し、現在では完全栄養パン「BASE BREAD」、完全栄養クッキー「BASE Cookies」とラインナップを蓋している。2021年11月末にはシリーズ累計販売食数1500万食を突破し、2022年2月の月額定期購入者数は10万人を超えている。

ネット接続されたローイングマシンでホームフィットネスのゲーム化を目指すAviron

エクササイズ分野のゲーミフィケーション(ゲーム化)はもちろん新しいことではない。フィットネスブランド(さらにはスマートウォッチでも)にとっては事実上初めから不可欠な基本的要素だ。これにはもっともな理由がある。モチベーションと持続のために最適だからであり、Fitbit(フィットビット)であれゲームのBeat Saber(ビートセイバー)であれ同じことだ。

最大手のPeloton(ペロトン)がLanebreak(レーンブレーク)でゲーミング面を積極的に推している今、こうしたプログラムがホームフィットネスコンテンツの鍵となり、苦境に立つ同社が開拓にひと役買った標準的トレーナーコースを今後超えていくと考えることに無理はないだろう。

一方、Aviron(アビロン)は、話題になる前からゲームに取り組んできた。YC出身の同社は、ジム用トレーニングマシンからホームフィットネスへと、パンデミックの中で転換し、ゲーミングを体験の中心に据えた。実際、同社はトレーナーモデルを避け、ボート漕ぎゲームの競争を優先した。

画像クレジット:Aviron

このカナダ、トロント拠点のスタートアップをTechCrunchが最初に取り上げたのは2021年1月だった。その年の8月に同社は450万ドル(約5億円)のシードラウンドを発表、そして米国時間2月23日に1850万ドル(約21億円)のシリーズAを完了し、米国における地盤を拡大するとともにカナダでの小売展開を目指している。ラウンドをリードしたのはStripes(ストライプス)で、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)とFormic Ventures(フォーニック・ベンチャーズ)が参加した。

今、ホームフィットネスのゲーム化への関心が高まっており、ローイングマシンも同様だが、後者についてはPelotonが取り組んでいるという噂がある。もちろん、同社の最近の苦闘ぶりを踏まえると、トレッドミルと自転車に加えてホームローイングマシンを商品ラインナップに加えるのが果たしていつなのか、そもそも実現するのか見当がつかない。

Avironには好調を裏付ける数字があり、有料サブスクライバー数は対前年比2700%となる。これ(と上記の資金調達)によって、従業員数を2名から36名へと増やすことができた。まだ小さい会社だが、新たに堅実な資金注入を得たことで、人員拡大も加速するだろう。雇用といえば、Avironはこの日の発表で、Nike(ナイキ) / Lululemon(ルルレモン) / Burton(バートン)出身のAmy Curry-Staschke(エイミー・カリー・スタシュケ)氏をCOOとして招き入れたことを発表した。

画像クレジット:Aviron

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

与信サービス構築基盤Credit as a Serviceを展開するCrezitが6.5億円調達、開発・経営チームの採用強化

与信サービス構築基盤Credit as a Serviceを展開するCrezitが6.5億円調達、開発・経営チームの採用強化

与信プラットフォーム「Credit as a Service」(CaaS)を手がけるCrezit Holdingsは2月24日、第三者割当増資による総額6億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、デライト・ベンチャーズ、Spiral Capital、千葉道場ファンド。シードラウンドを含めた累計調達額は約9億2000万円となった。調達した資金は、採用・組織体制の強化、CaaSの開発にあてる予定。

Crezit Holdingsは「Optimize Credit, Unleash Potential. / 信用を最適化して、人の可能性を解き放つ。」をミッションに掲げ、2020年7月に設立したスタートアップ。消費者信用事業(貸金・割賦販売など)に参入したいあらゆる企業に対して、金融サービス構築に必要なシステム基盤やオペレーションを提供していくCaaSを開発・提供している。

一般に、与信サービスの立ち上げには膨大なリソースを必要とし、金銭的にも時間的にも多大なコストがかかかる。このため結果として、従来一部の大資本を持つ事業者以外による参入は、限定的な状況にあった。

テクノロジー企業が自社の顧客基盤に対して、ユーザーデータを活用した金融サービスを展開する流れが起こりつつある中で、同社は与信サービスに必要な様々な要素をソフトウェアとして提供することで、利用企業の早期の消費者信用事業の立ち上げを可能とするという。

サービスの利用企業と共に新しい金融サービスを共創していくことで、より多くの個人に対して適切な金融サービスが届く世界を実現するとしている。

Backboneモバイルゲーミングコントローラーをセレブが約46億円のシリーズAで支援

パンデミックが起こる前、私は仕事でよく出張していた。私のスーツケースの持ち物リストは、長年かけて磨き抜かれ、ほぼ不変だった。Backbone(バックボーン)のiPhone用ゲームコントローラーは、近年そのリストに仲間入りを果たした数少ない新製品の1つだ。出先でも極めて優れたゲーム体験を提供してくれるこの製品は、スーツケースの中のスペースを少しそのために確保する価値がある。

この製品を気に入っているのは私だけではないようだ。同社は、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)、Post Malone(ポスト・マローン)氏、Diddy(ディディ)といったビッグネームからの支援を受けて、4000万ドル(約46億円)のラウンドをクローズしたと発表した。

2018年当時、創業者のManeet Khaira(マニート・カイラ)氏はYouTubeでインターンとして働いていた。毎日、仕事から帰ってくると、友人たちと「Fortnite(フォートナイト)」をプレイしていたという。ほとんどの場合、彼らにとって唯一の共通デバイスだったスマホ上でのことだった。タッチスクリーンの操作感は荒いものだったが、そのおかげで一緒に遊ぶことができた。クラウドゲーミングがモバイル機器にもたらす可能性を示すデモを見た後、彼は「ゲーミングは、今後10年間でGoogle(グーグル)にとって唯一最大の機会になる」という内容のプレゼンテーションを書いた。カイラ氏は誰かに実際に読んでもらえることを祈りつつ、月曜日の朝それが、会社のVPたちに自動的に一斉送信されるスクリプトを書いた。彼が目を覚ました頃には、何千人もの人々がその文書を見ていたという。

そのうちの1人の副社長が、カイラ氏に自分の考えを直接チームにプレゼンして欲しいと持ちかけた。同氏は「その会話の中で、何かすごいものを作るチャンスがあるかもしれないと実感したのです」と語る。インターンシップは予定通り終了し、彼は真っ先にBackboneの構築に飛び込んでいった。

Backboneの目標は、これまでに発売した1つの(かなり優れた!)ペリフェラルに加えて、外出先でのゲーミングのためのオールインワンハブになることだ。Roku(ロク)がすべてのビデオサービスを1つの場所に集めることでビジネスを確立し、Sonos(ソノス)が音楽で同じことをしたように、Backboneはモバイルゲームでそうすることを目指している。デバイス上で実行されるゲーム、クラウド上で実行されるゲーム、自宅のゲーム機で実行され、リモートでストリーミングされるゲームなど、彼らにとってはすべてが同じで、ただハブになりたいだけなのだ。

この点を考慮して、Backboneのより高度な機能の多くは、オプションのプレミアムサブスクリプションサービスであるBackbone+に結び付けられている。これにより、より豊富な機能、高品質なゲームプレイの録画、Twitchストリーミングのサポートなどが追加される。Backbone+は、このプラットフォームの初期導入者には無料で提供されるが、新規ユーザーの場合、年間約50ドル(約5750円)となる。

画像クレジット:Backbone

人々は実際に、Backboneのハードウェアをどのような場面で使っているのだろうか?カイラ氏によると、リモートプレイ、つまり、仕事の合間やリビングルームのテレビを占有したくないときなどに、次世代ゲーム機からストリーミングされたものを携帯電話やタブレットでプレイするという用途でかなりのユーザーが利用しているとのこと。

また、よりカジュアルなプレイヤーにも支持され始めていると彼はいう。「人によっては、これが初めての専用ゲーム機かもしれません。自分のことを『コアゲーマー』とは思っていない、あるいはゲーマーだとも思っていないような人たちが、この製品を使ってくれています」。

今回のラウンドは、4000万ドル(約46億円)のシリーズAで、Index Venturesがリードした。また、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏(彼のファンドであるSound Ventures経由)、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)、俳優のKevin Hart(ケヴィン・ハート)氏、Post Malone(ポスト・マローン)氏、Diddy(ディディ)、コメディエンヌのAmy Schumer(エイミー・シューマー)氏、Marshmello(マシュメロ)など、かなりワイルドな顔ぶれのセレブリティが支援している。テック業界では、Discord(ディスコード)の共同創業者であるJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏、Rec Room(レックルーム)の共同創業者であるNick Fajt(ニック・ファジット)氏、SonosのCEOであるPatrick Spence(パトリック・スペンス)氏も出資しているとのこと。

画像クレジット:Backbone

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Den Nakano)

Wildtypeは115億円の資金で細胞培養の「寿司用」サーモンを世に送り出せるか

サンフランシスコを拠点とし、創業6年になるWildtype(ワイルドタイプ)は、動物以外の細胞から培養したサーモンを開発している。その製品を一流レストランから食料品店まで広く普及させるため、シリーズBで1億ドル(約115億円)を調達した。

この計画が成功するかどうかはわからないが、L Catterton、Cargill、Leonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)氏、Bezos Expeditions、Temasek、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalitionといった新しい出資者が、何に期待を膨らませているのかは容易に察しがつく。

細胞培養シーフードの一般的な主張は、野生種の保護と乱獲対策になるというものだ。表向きは、天然魚や養殖魚に含まれていることがある水銀やマイクロプラスチックなどの汚染物質がないのに、天然魚と同じ栄養を摂取できるということになっている。

利点はまだある、とWildtypeの共同創業者であるJustin Kolbeck(ジャスティン・コルベック)氏とAryé Elfenbein(アーイエ・エルフェンバイン)氏は語る。同社は、ビール工場にあるような鉄製タンクでサケの細胞を培養し、植物由来の成分でできた足場と呼ばれる構造体に細胞を入れ、細胞が魚の切り身を形成するように誘導することで「寿司グレード」のサーモンを作る方法を見出した(同社はヒレや頭を育てているわけではなく、寿司屋で目にするようなサーモンの切り身を育てているだけだと創業者らはいう)。

それぞれビジネスコンサルタントと心臓専門医だった2人は、このサーモンの仕上がりに自信を持っている。2021年、タンクのすぐそばに試食室をオープンし、シェフらがサーモンを試食し、その生産について詳しく知ることができるようにした。

計画通りに進めば、試食したシェフは、やがてWildtypeのサーモンを他のメニューと一緒に扱うようになるだろう。食料品店も同様だ。

それは目前に迫っている。Wildtypeは2021年12月、全国1230の食料品店で寿司屋を経営するSnowfox(スノーフォックス)、65軒のファストカジュアルレストランを経営するPokéworks(ポケワークス)との販売契約を発表した。この契約は「同社の製造能力が必要な規模に達した時点で、消費者がWildtypeの養殖サーモンを体験する道を開く」と発表した。

同社はA地点からB地点へ移動しようとしているが、これが今のところ難しい。

まず、Wildtypeのサーモンを従来の寿司用サーモンと同じ価格、あるいはそれ以下の価格にする試みは依然進行中だとコルベック氏とエルフェンバイン氏はいう。

また、消費者が植物性の肉と同じような熱意をもって細胞培養のシーフードを受け入れるかどうかも未知数だ。赤身の肉を食べるとがんのリスクが高まることは広く知られているが、一方で、摂取した餌が原因で一部のサケにPCB(ポリ塩化ビフェニル)やダイオキシン、水銀が含まれていることを知る人は少ない。さらに、飼料に含まれる汚染物質に関する厳しいルールが設けられたため、魚の汚染物質濃度は下がっており、米連邦政府の基準では食べても安全な水準になっている。

おそらく最も注目すべきは、同社が2019年にFDA(米食品医薬品局)との協議プロセスに入った後、現在も承認を待っているということだ。承認が下りるまでは提携予定のレストランを通じて販売することができない(賠償責任保険については、肉や魚介類の生産者の間で一般的なものに加入しているという)。

それでも、同社が興味深い理由の1つは、最大の脅威となりうるImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)が、細胞から育てたものではなく、植物由来のシーフードに取り組んでいるとしたものの、まだ何も発表していないことだ。

一方、同じ業界のより小規模なベンチャー企業は、他のシーフードに注力しているようだ。例えば、BlueNalu(ブルーナル)は、最初の培養シーフードアイテムとして培養マヒマヒを作ろうとしている。Gathered Foods(ギャザード・フーズ)は、植物由来のマグロを、シングルサーブですぐに食べられるレトルトパウチにしようと取り組んでいる。

Wildtypeの製品も迅速かつ効率的に使えると証明できるかもしれない。サーモンの可食部のみを培養するからだ(理論的には、従来シェフが魚をさばくのにかかっていた時間や無駄を省くことができる)。

さらに、同社のもう1つの主張はトレーサビリティだ。「あるものを注文したら、別のものが送られてくるということがよくあるシーフードの世界では、特に重要なことです」とエルフェンバイン氏はいう。

確かに、従業員35人のこの会社が規模を拡大し、同社のサーモンを適正価格で販売できるようになれば、その存在意義を理解するのはたやすい。

時が経てばわかる。同社は、規模を拡大するためにサーモンの成長を早めることはできないとしている。しかし、新しい拠点を開拓し、完全な自動生産システムを開発することは可能だ。

一方、細胞に与える栄養について、エルフェンバイン氏は「高級ゲータレード(スポーツドリンク)のようなもの」と表現し「食品製造用にカスタマイズされていないため、現在は高価」だと話す。同社は「細胞が生きるために必要な基本栄養素を供給するためだけに多額の投資を行っている」という。

将来それが安価になるかはわからないが、チームはいずれにしても、この挑戦に臆する様子はない。

「最終的には」とコルベック氏はいう。「とても手頃な価格で手に入れられる製品になります。最も栄養価の高い食品が最も高価であるという現状を覆したいのです」。最終目標は「鶏のもも肉よりも安い」寿司用サーモンで、それは「可能性という領域の中にある」と考えていると、同氏は付け加えた。

Wildtypeが最後に資金調達を行ったのは2019年末で、CRV、Maven Ventures、Spark Capital、Root Venturesから1250万ドル(約14億円)を調達するシリーズAラウンドを完了した。今回の資金調達により、累計調達額は1億2000万ドル(138億円)強に達した。

画像クレジット:Wildtype

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

学生向けジョブマッチングマーケットプレイスのZenjobが約57.5億円を獲得

欧州のカジュアルなジョブマッチングにさらなる資金を。小売、物流、接客などの分野で副業を探す学生を対象とし、一時的な労働力を必要とする雇用者と結びつけることを約束するマーケットプレイス・プラットフォームのZenjob(ゼンジョブ)は、5000万ドル(約57億5100万円)のシリーズDラウンドの資金調達を完了した。

ベルリンを拠点とするこのスタートアップは、3000万ドル(約34億5100万円)のシリーズCを調達して以来、わずか2年弱の間に、このような資金調達を行った。

他の多くの「現代的人材派遣会社」と同様、Zenjobは派遣社員を直接雇用し、給与や事務処理など関連する管理業務を請け負い、派遣社員の経験をさらに簡易化する。また、シフト終了後72時間以内に給与の半額を支払うという約束もあり、従来の派遣会社に比べて送金が早くなる可能性がある。

一方、雇用主はZenjobと契約を結び、必要に応じて短期・長期の仕事を含む派遣社員を予約することができる。

Zenjobは配送、小売、物流、eコマース、接客、サービス業などの「大手」企業と取引をしているというが、顧客名は明らかにしていない。

現在、欧州の2つの市場で1万カ所以上の場所にある2500社以上が、オンデマンドで派遣社員を確保するために同社のプラットフォームに登録しており、毎月4万人以上の労働者が副業を予約するためにこのプラットフォームを使っているという。

2015年に設立されたこのスタートアップによると、これまでにドイツとオランダで100万件以上の仕事をマッチングしているとのことだ。

今回のシリーズD調達はAragon(アラゴン)が主導し、Acton Capital(アクトン・キャピタル)、Atlantic Labs(アトランティック・ラボ)、Forestay(フォーステイ)、Axa Venture Partners(アクサ・ベンチャー・パートナーズ)などZenjobの既存の全投資家が参加している。

この新しい資金調達は、2022年夏に立ち上げを予定している英国市場を含む欧州内での事業拡大と、新しく「ホワイトカラー」タイプの職種のサポートなど、拡大する顧客基盤のニーズに対応するための、データに基づく新たな自動化機能を含む製品開発に当てられるという。

「当社は2022年、英国でZenjobの販売を開始し、欧州の新規市場に対する投資を継続します。また、ドイツとオランダでも事業を拡大しています」と、同社は説明している。「技術チームを増強し、プラットフォームのスケーリングと新しい自動化機能に多大な投資を行う予定です」とも付け加えた。

「需要が多いので、ナレッジワークとオフィスワークのオファーを拡大する予定です」と語る。

Zenjobは、スペインのJobandtalent(ジョブアンドタレント)CornerJob(コーナージョブ)、ルクセンブルグのJob Today(ジョブ・トゥディ)など、増加する、技術者を対象とした派遣社員のジョブマッチングを行うプラットフォームと競合している。

ギグプラットフォームのUber(ウーバー)もこの分野に注目しており、パンデミック時のロックダウンで乗り合いタクシーが需要の打撃を受けたため、2020年に英国のドライバー向けにWork Hubを立ち上げ、2019年には米国でUber Worksという、シフトを見つけるためのアプリを発表している。

欧州連合(EU)では、ギグプラットフォームにおける偽りの自己雇用に対処することを目的とした規制が導入され、プラットフォームワーカーに関する最低基準を定めた汎EU的な法的枠組みが設けられる予定だが、これにより、オンデマンド労働の需要が直接雇用する人材仲介業者に流れ、エージェント型の人材派遣プラットフォームの需要が加速される可能性がある。これにより、ギグプラットフォームは、何千人もの配達員やその他の非正規労働者を雇用する必要がなくなる。

競合状況について話すと、Zenjobは、人材派遣市場、ジョブマッチング、プラットフォームに関しては、テクノロジーが最大の差別化要因になると主張している。

「この市場に目を向けると、人材派遣と仕事探しを面倒で時間のかかるものにしているタスクを処理するためのテクノロジーを利用することに関して、私たちは表面を削ったにすぎません」と指摘する。「そのため、私たちは、プラットフォームと必要なすべてのプロセスの内部技術開発に多くの重点を置いています。現在、約75%のプロセスが完全に自動化されていますが、近い将来、95%以上にすることを目指しています」と語っている。

「私たちのモデルがうまく機能しているのは、技術に重点を置くことで、(高度な自動化により)高品質の人材を使った非常に迅速なサービスを、取引先の企業に提供することができるからです。私たちのビジネスの残りの半分は、人材に最高の経験と利益を提供することだけに集中しているので、高い成就率と信頼できる人材を提供することができるのです。提供する仕事には相場以上の報酬を支払い、現在アプリを使っていつでも仕事を予約できる4万人以上の人たちの体験と満足度をとても大切にしています」。と語る。

また、Zenjobは、まだ開拓されていない大きな成長があると主張している。例として、ドイツを挙げ、人材派遣の95%以上はまだほとんどオフラインで行われているという。

「そのため、私たちは、非常に伝統的な方法でジョブマッチングや人材派遣に取り組んでいる大企業と競合しています」と同社は述べている。「私たちのアプローチは100%デジタルで、私たちを通して仕事を予約してくれる人たちに提供できる利点を常に改善するよう努力しています。迅速な支払い、24時間365日いつでも仕事の予約が可能です」と語った。

画像クレジット:Zenjob

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

製造業の研究開発・生産技術領域での課題解決をAI・機械学習で支援するSUPWATが1.5億円調達

製造業の研究開発・生産技術領域においてAI・機械学習などを活用し研究開発現場の課題解決に向けた事業を展開するSUPWAT(スプワット)は、2月24日、シードラウンドで総額約1億5000万円の資金調達を行った。引受先はScrum Ventures、DEEPCOREとなる。

現在、SUPWATは製造業への深い知見を活用しながら、製造領域に対して機械学習などの技術を適用する「メカニカル・インフォマティクス技術」で研究開発現場の課題解決に向けた事業を展開。製造業の研究開発領域において誰でも簡単に定量的な判断ができるようになるサービスであるAIや機械学習を活用したSaaS型プラットフォーム「WALL」などを提供している。さらに同社は、受託研究開発としてNEDO/東京大学生産技術研究所と共同で「水素タンク」最適設計の研究にも採択され、、機械学習・AI技術を用いた最適設計技術を提供している。

調達した資金で、既存のサプライチェーンマネジメントの概念を変え、SUPWATが掲げるビジョンである「知的製造業の時代を創る」のために、エンジニアを中心とした採用を強化していくとのこと。

また、今回の発表に合わせてコンピュータービジョン・機械学習の応用研究やプロダクト開発、組織マネジメント、技術ブランディングなどを行うABEJAの共同創業者でCTOを務めた緒方貴紀氏が、SUPWATの技術顧問に就任する。

スクラムベンチャーズのプリンシパル黒田健介氏はリリースで「研究開発の現場では日々、担当者の勘と経験をもとにした仮説構築、それに基づいたマニュアルでの実験作業、実験データのCSVでのローカル管理・分析が行われており、クラウドや機械学習等 を用いた高度化・効率化の余地がいまだに大きく残されています。【略】高い技術力と現場への深い理解を併せ持つSUPWAT創業チームに、緒方さんという心強い味方も加わり、日本が誇る製造業という巨大産業のアップデートに挑みます」と述べている。

SeMI TechnologiesのAI検索エンジンはデータを照会する新しい方法を提供する

ベルリンで開催されたGraphQLミーティングでデモをを行うSeMi Technologies CEOのボブ・ファン・ラウト氏(画像クレジット:SeMi Technologies)

企業は大量の非構造化データを保有しているが、そのデータから多くのことを得ることはできていない。

例えば、保有しているデータに対して「ABC社が当社と初めて契約したのはいつ?」とか「青い空が映っているビデオを探して」といった質問を、実際にできるようになることを想像してみて欲しい。

それこそが、SeMI Technologies(セミ・テクノロジーズ)が開発しているベクター検索エンジンWeaviate(ウィビエイト)だ。SeMIの共同創業者でCEOのBob van Luijt(ボブ・ファン・ラウト)氏によれば、それはエンベッディングとも呼ばれる、ベクトルを出力する機械学習モデルを用いたユニークなタイプのAIファーストデータベースであり、それゆえにベクトル検索エンジンと名付けられたのだという。

彼によれば、ベクトル検索エンジンは新しいものではなく、ベクトル検索エンジンの上に構築されたソリューションの例としてGoogle Search(グーグルサーチ)があることを説明した。しかし、SeMIはこの技術のコモディティ化を目標としており、誰でも使えるようにオープンソースのビジネスモデルを採用している。

ファン・ラウト氏は2021年、私の同僚であるAlex Wilhelm(アレックス・ビルヘルム)記者に、2021年のTechcrunchの記事に対して質問応答を行えるセマンティック検索エンジンを示しながら、その技術の詳細を紹介している。

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「誰もがこの技術を使うことができますし、それを必要とする企業のためのツールやサービスも用意しています」とファン・ラウト氏は付け加えた。「私たちは実際のモデルを作成したり配布したりはしません。それはHuggingface(ハギングフェイス)やOpenAI(オープンAI)のような企業が行っていることですし、企業自身がモデルを作成していることもあります。しかし、モデルを持っていることと、検索やレコメンデーションシステムを実際に稼働させるためにそれらを使うことは別のことです。Weaviateが解決するのはまさにその部分なのです」。

2019年にCTOのEtienne Dilocker(エティエンヌ・ディロッカー)氏ならびにCOOのMicha Verhagen(マイカ・バーハゲン)氏とともに会社を創業して以来、ファン・ラウト氏は、SeMIの技術がKeenious(キーニアス)やZencastr(ゼンキャスター)のようなスタートアップを含む100以上のユースケースに影響を与え、ベクトル検索エンジンが与える新しい可能性に基づいて新しいビジネスを創造し、Weaviateによって提供された結果がたとえば医療分野で人々を直接助ける場面で利用されているのを眺めてきた。

ファン・ラウト氏が個人的に気に入っているのは、より「難解」なものだ。例えばヒトゲノムをベクトル化して検索したり、全世界をベクトルでマッピングしたり、Weaviateを使って簡単に検索できるいわゆるグラフエンベディングと呼ばれるものだ。Meta Researches(メタ・リサーチ)のグラフエンベディング上にSeMIが作成したデモがその例だ。

SeMIは、2020年8月にZetta Venture PartnersとING Venturesから120万ドル(約1億4000万円)のシード資金を調達し、それ以降VCの目に留まるようになった。以来、同社のソフトウェアは75万回近くダウンロードされており、その数は毎月約30%増加している。ファン・ラウト氏は、同社の成長指標の具体的な内容については言及しなかったが、ダウンロード数は企業向けライセンスやマネージドサービスの売上と相関関係があると述べている。また、Weaviateの利用者が急増し、付加価値が理解されたことで、すべての成長指標が上昇し、シード資金を使い果たすことになった。

だがシード資金はなくなったものの、会社は新たな資金調達には積極的ではなかった。しかし、SeMIの共同創業者たちが、元Datarobotの創業者たちが設立したCortical Venturesや、New Enterprise Associates(NEA)と会談をした際に、両社が自分たちの事業をどのように支援できるかを示してくれたのだとファン・ラウト氏はいう。

「まさに『ふいを突いてびっくりさせる』ような凄さでした」と彼は付け加えた。「過去に彼らが行ってきたこと、そして私たちをサポートしてくれているチームは、まさに私たちが求めていたもので、私にとっては初めての経験ではありますが、すべての驚くべき話が真実であると言えます」。

そうした会談の結果、NEAとCorticalがともに主導したシリーズAにつながり、このたび1600万ドル(約18億4000万円)の新規資金が調達された。

SeMIは今回の資金をアメリカとヨーロッパの人材採用に投入し、Weaviateとベクトル検索全般のためにオープンソースのコミュニティを強化しようとしている。また、オープンソースのコアを中心とした市場進出戦略や製品への取り組みを強化するとともに、機械学習がコンピュータサイエンスと重なる部分の研究にも第一歩を踏み出す。

一方、ファン・ラウト氏は、データベース技術の次の波を見ている。彼はデータベース技術はOracle(オラクル)やMicrosoft(マイクロソフト)のような大成功をもたらしたSQLの波から始まり、MongoDB(モンゴDB)やRedis(レディス)のような成功を収めた非SQLデータベースが第2の波だったと考えている。

「私たちは今、新世代のデータベース、つまりAIファーストのデータベースの入り口に立っています。Weaviateはその一例です」と付け加えた。「Weaviateだけでなく、ベクトル検索データベース、あるいはAIファーストのデータベースを市場を啓蒙していく必要があります。機械学習が新たにもたらすすばらしい可能性に、興奮を押さえられません。例えば何百万、いや何十億ものドキュメントに対して自然言語で質問してデータベースに答えさせたり、何百万もの写真やビデオに含まれている内容を『理解』させたりするのです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

さまざまなeコマースツールを接続、自動化するAlloy Automationが約23億円調達

Y Combinator(Yコンビネーター)の卒業生で、異なるさまざまなeコマースツールの接続に力を入れるAlloy Automation(アロイ・オートメーション)は米国時間2月22日朝、a16zが主導する2000万ドル(約23億円)のシリーズAをクローズしたことを発表した。同社にとってこの資金調達イベントは、資金確保が困難だった2021年とは対照的に、活発なものとなった。

TechCrunchは、ちょうど1年前にAlloyのシードラウンドを取り上げたが、このスタートアップは当時、事前評価1600万ドル(約18億4000万円)で400万ドル(約4億6000万円)を調達し、調達後企業評価額が2000万ドルだった。つまり、Alloyは1年前の企業価値と同じだけの資本を調達したことになる。

TechCrunchは、Alloyの共同創業者兼CEOのSara Du(サラ・ドゥ)氏とCTOのGregg Mojica(グレッグ・モジカ)氏に、今回のラウンドと、この1年間で自社のピッチがどのように洗練されたかについて話を聞いた。

Alloy AutomationのシリーズA

資金調達を行った際に、Alloyは同規模の他の企業よりも、キャッシュバーン(資金燃焼率)の面でやや保守的であったことに気づいたと、共同創業者は語っている。ベンチャー市場が価格、つまり支出の自制を見直し始めている中で、この事実は同スタートアップの資金調達の見通しにとってマイナスではなかった。また、Alloyの第4四半期は好調であり、これも悪くなかったと、ドゥ氏とモジカ氏はTechCrunchに語った。

なぜ、同社はより多くの資金を調達したのだろうか? いくつかの理由があるが、創業者たちは次のように述べている。もちろん、成長中の事業において、現金は多くあるに越したことはない。しかし、Alloyにとって同じくらい重要だったのは、多くの出資を集めたことと、その資本政策にa16zの名前が入ったというシグナルだった。この2つの要素が、会社の地位を築くために役立ち、パートナーシップの確保につながると、共同創業者たちは説明する。また、人材コストが高騰している現在、総資金額が多ければ、目先の資金繰りに悩まされることなく、必要な人材を確保することができる。

Alloyは、自社の自動化技術(企業が多くのアプリケーションをリンクさせ、自動化されたワークフローの構築を可能にする方法)をeコマース市場に応用しているが、この分野に注力しているのは、初期の顧客からの要望によるものだ。現在、Alloyは複数のアプリケーション間のコントロールパネル、つまりeコマースを同調するためのオペレーティング・システムとしての役割を担うと、自らを謳っている。

自動化の市場は決して小さくない。ワークフローとオートメーションの分野に属する別の企業であるAppian(アピアン)は、最近の上場ソフトウェア企業の傾向に反して、投資家が実際に好むような成長を報告している。つまり、長期間にわたって成長を加速させているということだ。Alloyにとって、Appianの最近の成功は、創業者や投資家が切望するTAM(獲得できる可能性のある最大の市場規模)の増加を意味する。

ドゥ氏とモジカ氏はインタビューの中で、かつてeコマース企業は独自の技術スタックを構築する傾向があったと語る。しかし現在では、それとは対照的に、サードパーティのソフトウェアが主流になっている。このような変化が、Alloyの構築しているものに対する需要を生み出したのだろう。eコマース企業が利用するソフトウェアサービスが増えれば増えるほど、それらを統合し、相互に補完することが求められるようになるからだ。

Alloyの従業員数は現在20人を超えるほどだが、当然のことながら同社は積極的な雇用計画を立てている。2022年中にはスタッフを倍増することを漠然と予期しているという。

Alloyは、eコマースソフトウェアの世界では中立的な立場に近く、eコマースサイトのすべての構成要素を自ら作り出すのではなく、その中心に位置することを望んでいる。そう考えると、TechCrunchが創業チームを取材したとき、モジカ氏がテキサス州で開催されたBigCommerce(ビッグコマース)のイベントに参加していたことにも驚きはなかった。BigCommerceは、ヘッドレスのeコマースソフトウェアをてがける企業で、顧客の選択に大きく依存しないという点でAlloyと精神的に共通している。

このようなオープンなモデルは、決済のようなファーストパーティのソリューションで収益を上げている他の企業とはやや対照的だ。eコマースの世界では、Shopify(ショッピファイ)がその典型例である。

Alloyが今後、パートナーと顧客それぞれの観点から中心性を高める努力をしながら、その中立性をどのように管理していくのか、興味深いところだ。確かにこのスタートアップ企業は、次の4〜6四半期を運営するだけの資金をすでに確保している。次のベンチャー資金調達に戻る前に、同社がどこまで行けるか、見守ることにしよう。

画像クレジット:Visual Generation / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

BTS所属のHYBEも注目、AI使った合成アバターをクリエイター向けに提供する韓国Neosapience

人工知能(AI)を活用した音声・映像技術は、近年、着実に人気を集めている。韓国のスタートアップ、Neosapience(ネオサピエンス)は、ユーザーがスタジオで録音や編集をすることなく、テキストを動画に変換できる合成音声・動画プラットフォーム「Typecast」を開発した。

Neosapienceは米国時間2月22日、成長を加速させ、新たな地域(特に米国)での事業を拡大するために、シリーズBラウンドで2150万ドル(約24億7400万円)を調達したと発表した。BRV Capital Managementが主導した今回の資金調達により、同社の累計調達額は約2670万ドル(約30億7200万円)に達した。本ラウンドには他にも、Stic Ventures、Quantum Venturesが参加した。既存投資家であるCompany K Partners、Albatross Investment Capital、Daekyo Investment、TimeWorks investmentsも参加した。

Neosapienceの共同創業者兼CEOであるTaesu Kim(キム・テス)氏はこう述べている。「今回の資金調達により、リーチを拡大し、限界をさらに押し広げることができます。より少ない労力でコンテンツを作ることを可能にするだけでなく、AIを使ったバーチャルアクターを誰もが利用できるようになるという我々のビジョンを実行することが可能になります」。

元Qualcomm(クアルコム)のエンジニアが集まって2017年に設立した同社は、韓国語と英語の170人のバーチャル声優を提供するAIボイスサービスプロバイダーとしてスタートした。2022年1月には、実在の人物のように見えるAIを活用した合成動画(アバター)機能を追加した。日本語やスペイン語など、他の言語も追加していく予定だという。

画像クレジット:Neosapience

同社のユーザーの大多数は主にクリエイターや企業のクライアントで、ビジネスやVlog、ゲームなどの個人的なチャンネルのためにビデオやオーディオコンテンツを作成するためにこのツールを使用していると、キム氏はTechCrunchに語った。企業クライアントには、韓国のボーイズグループBTSの声を作りたいと考えている、同グループが所属するHYBE Entertainmentの子会社HYBE EDUのようなメディアやエンターテインメント企業の他、オーバーザトップ(OTT)プラットフォームも含まれている。また、複数の電子書籍プラットフォームがTypecastを利用して、同社のAI声優が作成したさまざまなオーディオブックを提供していると、同氏は説明してくれた。ユーザーは、実際の俳優を雇う代わりにTypecastのアバターを使用することで、音声品質を維持しながらコストと時間を削減できるという。

「クリエイターが当社のサービスを使って、より多くの、より良いコンテンツを作ることを支援したいと考えています。クリエイターエコノミー全体が我々にとっては対応可能な市場であり、その規模は1040億ドル(約11兆9700億円)と推定されています」とキム氏はいう。

画像クレジット:Neosapience

競合他社との違いの1つは、人間のような感情の表現、話し方、韻律制御、ボーカル、ラップボイス技術など、Typecastの高度な技術にあるとキム氏は語る。

BRV Capital ManagementのマネージングディレクターであるYeemin Chung(チョン・イェミン)氏は、声明で次のように述べている。「人間の感情をテクノロジーによって表現することは、これまで非常に難しいことでした。「Neosapienceは、音声・映像合成の分野で先頭を走り続け、個人のクリエイターやエンターテインメントのための商業インフラの構築に成功しました。世界中のメディア企業は、デジタルコンテンツやバーチャルコンテンツの制作に感情を組み込む方法を革新するために、(この技術に)簡単にアクセスすることができます」。

Neosapienceのユーザーは現在、100万人以上いるという。過去2年間、2019年11月のローンチ以来、その収益は毎月約18%の成長を遂げている。同社の従業員は1月時点で41人。

「この1年で急速に成長しましたが、AIを活用したバーチャルヒューマンと、その合成メディアやインタラクティブコンテンツへの応用において、誰もが認めるグローバルリーダーになるために、さらに邁進する機会があると考えています」とキム氏は語った。

関連記事:実在しているような合成アバターがしゃべるプレゼン動画を簡単に作れるSynthesiaの技術

画像クレジット:Neosapience

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(文:Mike Butcher、翻訳:Den Nakano)

環境再生型農業のトレンドを食肉市場に取り込む99 Counties

Christian Ebersol(クリスチャン・エバーソル)氏は、健康保険会社に勤務していたとき、炭素の回収貯蔵と植物由来の食品に関心を持つようになった。

これらの分野で何ができるかを考えるためにOMERS Venturesのアントレプレナー・イン・レジデンス(客員起業家)プログラムに参加した後、Mark Bittman(マーク・ビットマン)氏の著書「Animal, Vegetable, Junk:A History of Food, from Sustainable to Suicidal」を読み始めた。この本でエバーソル氏は環境再生型農業に出会った。環境再生型農業とは土壌や水、空気の状態を悪化させることなく、植物と動物が同じ農場で共存する方法だ。

近年、この農法は大きな投資分野として脚光を浴びていて、2019年時点で3200億ドル(約36兆8000億円)がこの分野に注がれたという報道もあり、Whole Foodsなどの大手ブランドは2020年の食のトレンドとして環境再生型農業がナンバーワンになると指摘している。

環境再生型農業は、アイオワ州の農家Nick Wallace(ニック・ウォレス)氏が、エバーソル氏がウォレス氏に出会った時に行っていたことだ。アイオワ州の99の郡の環境再生型農家と、牛肉、豚肉、鶏肉を箱買いする消費者をつなぐマーケットプレイスで、1000億ドル(約11兆4900億円)の米国食肉市場をディスラプトしようと、エバーソル氏はMike Adkins(マイク・アドキンス)氏とともに99 Counties(99カウンティーズ)を立ち上げた。

99 Countiesは、農家が家畜の飼育に専念でき、また消費者が クルマで1日で行ける地元の農家に肉を注文できるよう、加工、輸送、販売のすべてをコーディネートする。99 Countiesはまた、農家の環境再生手法の実践を認証し、農家への報酬を保証している。

画像クレジット:99 Counties

「今日、人々はほとんどの食品についてそれがどこから来たのか知りません」とエバーソル氏はTechCrunchに語った。「私たちの技術は、トレーサビリティに関するものです。我々があなたの家族に食品を届けるとき、あなたはそれがどの農場のものかを知り、バーコードをスキャンして農場についてのビデオを見ることができ、それが加工されるためにどのようにう移動したかや農場の人道的な動物の扱いを見ることができます」。

同社は現在、シカゴとアイオワ州以外でサービスを提供する予定はない。というのは、顧客に届くまでの食品の移動距離を減らすことを目的としているからだ。しかし、より多様な選択肢を提供できるよう、農家の開拓には取り組んでいる。

99 Countiesは、OMERS Venturesがリードし、Union Labs、GV、Supply Change Capitalが参加した直近のラウンドで380万ドル(約4億4000万円)のプレシード資金を獲得し、この資金をもとに9月に15の農場で正式にスタートする予定だ。

OMERS VenturesのマネージングパートナーMichael Yang(マイケル・ヤン)氏は「クリスチャンと99 Countiesのチームが構築しているのは、持続可能な食肉の単なるマーケットプレイスをはるかに超えるものです」と文書で述べた。「消費者の間で高まっている、地元産の高品質な食品を手に入れたいという欲求を満たすためのインフラを構築しているのです。これまで農家は、こうした市場に参入したいという願望はあっても現実には実現不可能で、価格も手ごろではありませんでした。このモデルがアイオワで成功すれば、全米で再現できないはずはありません」。

調達した資金は、ウォレス氏の既存の環境再生型農業事業を99 Countiesの傘下に置くなど、事業の拡大に充てられる。また、雇用やトレーサビリティ技術の確立、提携農場に関するコンテンツを消費者に提供するマーケティングにも使う予定だ。

99 CountiesはButcher BoxやCrowd Cowのような企業と競合している。Crunchbaseによると、Crowd Cowは過去4年間で2500万ドル(約28億7000万円)を調達した。しかし、何千マイルも離れた場所から肉を調達している競合他社に対し、99 Countiesはより地元に根ざしたフードシステムを奨励している点で他社と異なるとエバーソル氏は述べた。

一方でPepsiCoGeneral Millsなどの大企業が数千万エーカーの土地を環境再生型農業にする意向を表明するなど、環境再生型農業の人気が高まる中、環境再生型コミュニティは土を耕すことが少なくなり、動物を農場に戻すことで有機が再生される、というのがエバーソル氏の意見だ。

同氏は、99 Countiesを最終的にはサブスクリプション事業にしたいと考えており、開始後2022年末までに1400世帯との契約を獲得することを目標としている。平均的な購買価格は140ドル(約1万6000円)を見込んでいる。当面、正式な立ち上げ前にやるべきことがある。

「来月には、農家や加工業者と契約し、農家のストーリーを伝えるためのコンテンツ、ソーシャルメディア、マーケティングに携わる人材を投入する予定です」と、エバーソル氏は付け加えた。「また、トレーサビリティを確立し、人々が購入するための店舗も設置します」。

画像クレジット:99 Counties / 99 Counties co-founders, from left, Mike Adkins, Nick Wallace and Christian Ebersol

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

アプリに音声と動画によるコミュニケーション機能を組み込むVoximplantがベータ版をリリース

ここ数年、音声やビデオのコミュニケーション機能をアプリやサービスに統合するためのサービスが急増している。Twilioや、Googleが開発する自然言語処理(NLP)プラットフォームのDialogflowなどだ。

サンフランシスコを拠点とするVoximplantも同様のサービスを開発し、Avatarプロダクトのベータ版を公開した。同社はこれまでにBaring Vostok Capital Partners、RTP Ventures、Google Launchpad Acceleratorから1010万ドル(約11億6200万円)を調達した。

同社はすぐに使える自然言語処理サービスを提供しており、開発者はこれを利用してアプリに自然言語処理機能を組み込んでスマートIVR(自動音声応答システム)や音声ボット、チャットボットの機能を追加し、インバウンド通話の自動化、FAQ、インタラクティブなアンケート、NPS(ネットプロモータースコア)、コンタクトセンターの自動化などに活用できる。

Voximplantによれば、同社のサービスでは開発者が複雑なバックエンドのロジックを構築する必要はなく、ノーコードのエディターと会話型AIにより、AI搭載ボットを開発してチャットや電話と簡単に統合できるという。

同社はさらに、機械学習に関する部分はすべてプラットフォームが処理するため、開発者は基本的なJavaScriptの知識があれば十分だと説明している。

Voximplantの共同創業者でCEOのAlexey Aylarov(アレクセイ・アイラロフ)氏は発表の中で「次世代のCPaaS(Communications Platform as a Service)はインテリジェントなサービスとプログラミングが簡単なオムニチャネルのコミュニケーション機能を融合したものであり、これを実現することで現在と将来の当社顧客に最大の価値をもたらすと確信しています」と述べている。

画像クレジット:Flashpop / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

引っ越しを簡単にして「大量辞職時代の従業員」にアピールするPerchPeekが12.6億円調達

従業員の引っ越しには、20〜30種類にもおよぶ複雑な手続きが必要となる。また、市場に出回っているサポートパッケージの多くは、柔軟性に欠け、コストもかかる。また、こうした引っ越しサービスを利用できるのは、通常は企業のトップだけで、社員は対象外となっている。しかし、さらに大きな問題が企業に立ちはだかっている。それは、パンデミックによって引き起こされた「大量辞職」(グレート・レジグネーション)だ。従業員は海外に新しいチャンスを求めている。引っ越ししやすい仕組みを提供すれば、彼らを引き留めることができるだろうか?

PerchPeek(パーチピーク)は、このような従業員の引っ越し問題を解決し、企業が従業員の引っ越し要求を受け入れやすくするためのリロケーション(引っ越し)プラットフォームだ。同社がこのたびシリーズAで800万ポンド(約12億5000万円)の資金を調達した。この調達ラウンドは、Stage 2 CapitalとAlbionVCが主導した。

PerchPeekの共同創業者であるPaul Bennett(ポール・ベネット)氏、Ace Vinayak(エース・ビナヤック)博士、Oliver Markham(オリバー・マーカム)氏は、共同声明の中で次のように述べている。「すべてのプロセスを1つのプラットフォームに集約し、利用しやすい価格帯で優れたサポートを提供することで、転勤する従業員の引っ越しを支援するだけでなく、雇用主が高価値の福利厚生を従業員に提供することができます」。

SaaSベースの調達分析プロバイダーであるBeroe(ベロー)によると、世界の従業員引っ越し市場は、引っ越しを行えるようにするためのコストや複雑さが原因で、現在335億ドル(約3兆9000億円)の規模に達している。

PerchPeekによると、同社には世界47カ国(さらなる遠隔地を含む)への従業員の引っ越しをサポートするステップバイステップのアプリがあり、企業の転勤コストを最大70%削減できるとしている。

また、インスタントメッセージで専門家が物件や周辺施設を案内してくれる。

競合他社には、Relocity(リロシティ)やDwellworks(デュエルワークス)(いずれも米国)などがある。しかし、PerchPeekは、顧客体験と広域に置かれた拠点で勝負するつもりだという。同社は2020年1月以降、5000人以上の人の移動を助けたと主張している。クライアントには、Thoughtworks(ソートワークス)、Liberty Global(リバティ・グローバル)、Impala Travel(インパラ・トラベル)、INEOS(イネオス)などがある。

AlbionVCの投資マネージャーであるNadine Torbey(ナディーン・トービー)はいう。「パンデミックは、人々が仕事や生活を選択する方法の変化を加速させました。PerchPeekは、市場を完全に解放し、ますます流動化が進み、グローバル化する人材プールを可能にする、待望のディスラプションなのです」。

画像クレジット:Perchpeek app

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)

メンタルヘルスの服薬管理に特化したテレヘルス管理プラットフォーム「Minded」が約28.7億円を調達

消費者のメンタルヘルスの服薬管理に特化した精神医学専門のテレヘルス企業であるMinded(マインデッド)は、シード資金として2500万ドル(約28億7400万円)を調達した。2021年にニューヨークで立ち上げられたMindedは、消費者がオンラインで精神医療にアクセスできるようにする。Mindedは現在、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア、フロリダ、テキサス、イリノイ、カリフォルニアで利用可能だ。同社によると、今回の新たな資金調達は、全国展開と革新的な精神科医療の導入に充てられるという。

以前はフィンテックのユニコーン企業Stash(スタッシュ)を共同創業した、Mindedの共同創業者兼CEOのDavid Ronick(デイビッド・ロニック)氏は、消費者直結のデジタル分野の起業家として、解決すべき顧客がフラストレーションを感じている問題を探していると、TechCrunchに語った。彼は、10年間不安と不眠のために薬を服用しており、精神医学の専門家からケアを受けるにはお金がかかると指摘した。彼は、遠隔医療企業Pager(ページャー)の共同設立でこの分野の専門知識を持つGaspard de Dreuzy(ガスパール・ド・ドゥルージー)氏と、複数州のライセンスを持つ精神科医Chris Dennis(クリス・デニス)博士とチームを組んだ。

「私たちは、メンタルヘルスの薬物治療の第1人者になり、薬物治療にまつわる偏見と戦い、そしてすべての人に簡単で手頃な価格で薬を提供することを使命としてMindedを設立しました」と、ロニック氏は述べた。

Mindedは、不安症、うつ病、不眠症の患者、またはその可能性があり、治療の一環としての薬物療法に関心のある18歳以上の人々が利用できる。Mindedの利用を開始するには、オンラインアセスメントを行い、Mindedの利用が自分に適しているかどうかを確認する。その後、精神科医またはナースプラクティショナーとビデオチャットで会話し、どの薬が適切かを決定する。

Mindedのサービスを利用するために、患者は事前の診断や処方箋を必要としない。このスタートアップのメンタルヘルスの専門家は、うつ病、不安、不眠症の症状を評価し、状態を診断し、患者が初めて薬を服用する場合でも、すでに服用している場合でも、適切な治療計画を策定することができる。薬が処方されると、Mindedは処方箋を患者に届けるか、オンライン薬局や患者の近くの薬局に送る。患者は、薬について質問があったり、治療法を変更したい場合、オンラインで精神科医とチャットすることができる。

同社は、患者がMindedに登録するのに保険は必要ないと述べている。Mindedの会員になるには、月々65ドル(約7400円)、それに薬代がかかる。処方箋は患者の保険プランで払い戻しが可能な場合もあるが、それはプロバイダーによる。

今回の資金調達について、ロニック氏は、Mindedをあらゆる精神状態の治療に拡大し、30州以上に拡大する予定だと述べている。また、医療チームの規模を倍増し、医療従事者が管理業務よりも患者への対応に時間を割けるようにするための技術開発も継続する予定だそうだ。

Mindedのシードラウンドには、Streamlined Ventures(ストリームラインド・ベンチャーズ)、Link Ventures(リンク・ベンチャーズ)、The Tiger Fund(タイガー・ファンド)、Unicorn Ventures(ユニコーン・ベンチャーズ)、Trousdale Ventures(トラスデール・ベンチャーズ)、Gaingels(ゲインゲル)、SALT Fund、TheFund、Care.com、Bolt(ボルト)、Gravity Blanket(グラヴィティ・ブランケット)、RXBAR、Gilt.comの創業者、およびWTIからのベンチャー債権が参加した。

将来的には、革新的な治療法が利用可能になり、安全で効果的であることが証明されれば、Mindedはそれを導入するとロニック氏は述べている。

「より精度の高い診断と治療のためのDNA検査や、治療抵抗性の不安やうつ病のためのサイケデリックを提供する予定です」と、ロニック氏は語った。「精神医学の分野は、この20年間、あまり変わっていません。需要と供給の間の大きな格差と、技術や治療法の新たな発展の間で、精神医学の未来を構築する時が来ており、我々はその先頭に立つつもりです」。

Mindedはシードラウンドに先立ち、Streamlined Ventures、Link Ventures、その他CityMDの創業者Richard Park(リチャード・パーク)氏やCare.comの創業者Sheila Marcelo(シーラ・マルセロ)氏などの投資家から500万ドル(約5億7500万円)を調達している

画像クレジット:Minded

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

自動接客ツールanybotを開発・運営するエボラニが3.4億円調達、ノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤化を加速

自動接客ツールanybotを開発・運営するエボラニが3.4億円調達、ノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤化を加速

接客用のチャットボットやミニアプリなどを構築できる「anybot」(エニーボット)を開発・運営するエボラニ(Evolany)は2月21日、合計3億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のネットスターズ、またAMD1号ファンド(プレミアグループ)、D4V1号投資事業有限責任組合、個人投資家や銀行。

ネットスターズ、プレミアグループ、既存株主LINE社などとともに、小売やサービス業を中心に、anybotのノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤を進化させ、従来より「早く・安く・ストレスのない」ソリューションを企業に届けることで、LINEミニアプリの普及および日本のDX化推進に貢献するとしている。また、世界に受け入れられるようなサービス提供へのチャレンジをスタートさせたいという。

anybotは、チャットボットやミニアプリ、電話自動応答のIVRといった接客ツールを、ノーコード・ローコードで実現できる構築基盤。すべてのデータを自動的にCRM(顧客関係管理)に保存しセグメント化を行うため、導入企業は、ユーザーとの間でLINE・メール・Messenger・Instagramなどにまたがったやり取りを実現できる。また、様々なステップ配信やセグメント配信も自動で行える。接客に必要な各種予約機能、会員証・ECや決済、クーポンといったキャンペーン機能も備えており、企業の集客からリピート率・ロイヤリティ向上、業務効率化などの課題解決を支援する。

エボラニは「最も役に立つ・感動する接客体験を。」をミッションに掲げ、2018年3月に設立。「町の店長に届けられる自動化社会へ。」をモットーとし、流通・サービス業の現場における集客および活性化の課題を解決するためプロダクトの改善を行ってきた。多様な業種の約3500社にサービスを提供しているという。

マニュアル&ナレッジ管理アプリtoaster teamを運営するnacoが1.3億円のプレシリーズA調達、新ブランド「n」推進

社内や現場でのマニュアルや各種情報を管理するアプリ「toaster team」(トースターチーム)を運営する「naco」は2月21日、プレシリーズAラウンドとして、J-KISS型新株予約権の発行による総額1億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はCoral Capital、Headline Asia(旧インフィニティ・ベンチャーズ)、アプリコット・ベンチャーズ。調達した資金はtoaster teamの新機能開発や、新たに展開するデジタルワークプレイスツール「n」ブランドの立ち上げ、中核人材の積極採用、マーケティング活動にあてる予定。

2017年5月設立のnacoは、「働く人たちが、いきいきと活躍できる社会を創る」をミッションに掲げ、働く人と組織をエンパワーメントするデジタルワークプレイスツールを開発・提供している。

その第1弾にあたるtoaster teamは、社内や現場における「知らない」「わからない」「できない」を解決するアプリおよびクラウドサービスとなっている。業務マニュアル、動画マニュアル、社内用語、日報、議事録、ニュースのクリッピングなど業務に関する様々な手順やノウハウを見える化し、社員・スタッフの即戦力化や業務効率化の向上を実現できるとしている。2020年7月のサービス提供開始以降、累計導入企業は2000社を突破した。

その企業にとって価値の高いユーザーフローをノーコードで作れる豪Upflowyが約4.6億円調達

新型コロナウイスルによるパンデミックが消費者の行動と購入パターンに影響を与え、この不確実性の時代にはデータドリブンな意思決定が、プロダクトやサービスがユーザーにとって本当に利益になるために重要になってきた。UpflowのCEOであるGuillaume Ang(ギヨーム・アン)氏によると、その上でオンラインのトランザクションを行えるSaaSプロダクトの需要が激増しているという。

Upflowyには、企業が価値の高いユーザーフローを作り出すためのツールがある、と同社は考えている。このオーストラリアのスタートアップは、最近400万ドル(約4億6000万円)を調達したばかりで、ドラッグ&ドロップでA/Bテストができるツールや、企業は利用に際してコーディングを一切行わなくていいウェブやモバイル上の個人化ツールを提供ししている。上記最新の投資はCounterpart Venturesがリードし、これまでの投資家であるTidalやGlobal Founders Capital、Black Nova、およびAntlerが参加した。

ウェブサイトやアプリ上で売上に結びつくサインアップを獲得するためには相当な時間と費用を要し、そのために多くの企業が苦労している、とアン氏は語る。起業家やマーケター、そして特にスタートアップがコンバージョン率とユーザーフローを上げるために、アン氏と2人の共同創業者Matthew Browne(マシュー・ブラウン)氏とAlexandre Girard(アレクサンドル・ジラール)氏は2020年にUpflowyを創業した。同社によると、これまでの企業は、開発チームや技術者チームに頼んでプロダクトを改良することに追われ、マーケティングに力を入れることがお留守になっていたという。

Upflowyの創業者。左からCTOのアレクサンドル・ジラール氏、CIOのマシュー・ブラウン氏、CEOのギヨーム・アン氏。

新たな資金の大部分は、予測的個人化など、主にデータサイエンス方面の能力拡大や新機能の開発に充てたいとのこと。さらにまた、人員を増やし、フルタイムの社員を30人以上にしたいという。

「エンゲージメントの貧しいフォームがコンバージョン率を60%も下げ、広告費の大きな無駄遣いになってることに気がつけば、そこから上昇が始まる。それが、最初のステップです。ユーザーの見込み客としての選別をもっと効果的に行っていけば、勧める製品や個人化もより適切になり、見込み客が購入客になります(コンバージョンする)。Upflowのデータ視覚化とA/Bテストを利用すれば、客離れのような行動がどこで起こるのか明確に把握することができ、その後の実験や最適化もより効果的になります」とアン氏は語る。

アン氏によると、現在のUpflowのユーザーは数百社で、ファッションのブランドやスポーツチームなど消費者対象だけでなくB2BやSaaS、ヘルスケア方面の企業もいる。過去数週間で毎週、ユーザー数が増え、アクティベーション率が40%増加し、月間ユーザー数は倍増している。

「オーストラリアのテクノロジー業界は世界のイノベーションを動かしている」とアン氏は声明で語っている。「私たちもすでに、活動もテストも世界レベルで行いプラットフォームの有効性を確信しています。見込み客が企業で最初に行うことはサインアップのフオーですが、私たちは初めて、そのフローを作りやすく、そしてライブにすることができました。そのためには情報の流れを改善し、見込み客があらゆるルートをスマートに動き回れるようにしています」。

パンデミックのおかげでUpflowは、最初からリモート企業としてスタートすることができた。初期の2020年には、リモートファーストの企業はまだ珍しいコンセプトだったが、それでも世界中から人材が集まった。2022年は米国に進出して、そこでのプレゼンスを大きくしたいとアン氏はいう。

Upflowyに投資しているAPAC OptimizelyのsoマネージングディレクターであるDan Ross(ダン・ロス)氏は次のように語る。「Upflowは、ほとんどすべての企業が直面している問題を解決しました。完全なサインアップフローを迅速に作って、何回もテストしながら改良していけるツールは他にはありません。しかも、他のプラットフォームへデータを供給して、ビジターを顧客にコンバートする過程を見ることもできます」。

また、Counterpart VenturesのゼネラルパートナーPatrick Eggen(パトリック・エゲン)氏は、声明で次のように述べている。「現代の企業は、データ収集と顧客体験の間にある摩擦を取り除くシンプルなノーコードのソリューションを必要としています。技術者がウェブ体験を作り出す、テストも改良もできない雑なソリューションが市場に多い中で、Upflowyはこの市場の見方を変えて、消費者が求めるウェブ体験をチームが作れるようにしています」。

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(文:Kate Park、翻訳:Hiroshi Iwatani)

異色の投資家アーラン・ハミルトン氏はスタートアップの雇用ルートを変えようとしている

ベンチャーキャピタルのBackstage Capital(バックステージ・キャンピタル)を2015年に設立して以来、Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏は、自動車保険に挑戦する2人組からバーチャル学習のやり方を見直しているチームまで、数百万ドル(数億円)の資金を過小評価されたファウンダー率いる195の会社に投資してきた。業種の多様さにもかかわらず、ハミルトン氏は常に2つの質問を投資先企業から受けてきた。

「資金調達を手伝ってくれますか?」「雇用を手伝ってくれますか?」。

ハミルトン氏のファンドは、最初の質問への答えだが、彼女が今賭けているのは、後者を探求する(ハミルトン氏自身が作った)スタートアップだ。Runner(ランナー)は、スタートアップをパートタイムで働く人を探している人たちとをつなぐ労働マーケットプレイスだ。目的はアーリーステージスタートアップ構築における最大の不安のいくつかと戦うこと、最初の人事責任者をいつ雇うか、何を外注して何を内製すべきかといった人材配置などだ。Runnerは事業運営の職種に明確に特化してスタートする。

「コードの書き方を習いたかったり、技術色の強い職を探したければ、いくらでも行く場所はあります」とハミルトン氏はいう。「しかし、誰かの右腕、たとえばCOOになりたい人は今どこへ行けばいいでしょう。これは多くの会社が見落としてきた部分です」。

概念上、Runnerは逆張り投資家ではない。Upwork(アップワーク)とFiverr(ファイバー)はフリーランス経済の上で堅調なビジネスを構築した。この会社の違うところは、そのターゲットがテック業界の事業運営者であり、彼らをどう雇うかである点だ。”runner”、すなわちギグワークを求めているパートタイムプロフェッショナルは、W-2雇用者としてRunnerに雇われる。現在、同プラットフォームには200人前後の runnerがおり、その中には幹部経験者や、新たな収入源を求める元企業家もいる。

同社の現在の幹部の多くは、かつてrunnerとして入った人たちだ。例えばカスタマーサクセス(顧客を成功に導く)を率いるMelanie Jones(メラニー・ジョーンズ)氏は、歯科医ネットワークのプロダクトマネージャーを経て同プラットフォームに加わった。1カ月以内に彼女は幹部として雇用され、runnerから企業の意思決定者へと転じた人々に仲間入りした。それとは別に、Boeing(ボーイング)の幹部、Diana Moore(ダイアナ・ムーア)氏が4カ月前にCOOとして加わった。

runnerを請負人ではなく従業員に分類することによって、彼らは基本的な保護とより安定した雇用を得ることができる。Y Combinator(ワイ・コンビネーター)出身のBluecrew(ブルークルー)もオンデマンドワーカーを派遣する類似の組織をつくり、バーテンダー、イベントスタッフ、警備員、データ入力、カスタマーサポートなどの職種でも福利厚生のある従業員として労働者を雇用した。

ハミルトン氏にとって、Runnerは彼女がベンチャー業界に入る前から温めていたアイデアに立ち返るものだ。Backstage Capitalを始める前、ハミルトン氏は4人のミュージシャンの制作コーディネーターとツアーマネージャーだった(今も彼女は投資家としての仕事の中で音楽を引き合いに出す)。その仕事をする中で、彼女は多くのrunnerたち、すなわち遠征先で右腕として役に立ってくれる地元のエキスパートたちと仕事をした。Backstageを立ち上げる中で、彼女は自身の生活でrunnerを使い始め、国を横断してファウンダーらと合う際に1日だけ手伝ってくれる人を雇った。

音楽制作の世界におけるこの役割と、テック業界の柔軟性への愛との間にシナジーを見出した彼女は、Runnerを、ロゴを含め1から立ち上げた。

「Backstageを作っている時、私たちにリソースはありませんでした。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生して以来、人々はこのアイデアに困惑しました」と彼女はいう。「だから当時は机上のアイデアの1つにすぎませんでした」。そして2年近くパンデミックが続く今、機は熟した。

同社のビジネスモデルでは、runnerの時給の25%を受け取る。また、runnerが顧客にフルタイムとして採用された場合、顧客企業はrunnerの初年報酬の10%を斡旋料として支払う。

Backstage Ventureがベンチャーキャピタルの配り方と行き先を一変させようとしているのに対して、Runnerは企業が過小評価された人材を採用する手助けをする、という立場では作られていない。それはハミルトン氏がこの会社を固定概念化したくなかったからだという。

「私たちをDEI(多様性、公平性、インクルーシブ)な採用会社として位置づけるのは実に簡単なことでしたが、その責任を私たちがとることはしたくありませんでした。これは全員の責任であるべきことです」と彼女はいう。そういいながらも、現在Runnerの幹部は全員が、歴史的に見過ごされてきた経歴の持ち主だ。

需要にうまく応えるためにウェイティングリストモデルを採用する前、Runnerは約120社のパイロット顧客を確保し、年間50万ドル(約5700万円)の収益を見込んでいる。アプリは2022年3月15日の公開を予定している。

資金調達に関して、ハミルトン氏は同社を自己資金で立ち上げ、設立100日以内に50万ドル(約5700万円)のエンジェルラウンドを完了した。直近では、RunnerはSAFE(将来株式取得略式契約スキーム)によるプレシード・ラウンドで150万ドル(約1億7000万ドル)を評価額非公開で調達した。

ラウンドの出資者は、Precursor、Lunar Startups、Kabor CapitalのFreada Klein(フリーダ・クライン)氏、360 Venture Collective、およびGaingels。Backstage Capitalのクラウド・シンジケートであるBackstage Flex Fund IIおよびBackstage Opportunity Fund IもRunnerに投資した。

投資家が自身のファンドの資金を、自分が立ち上げた企業に投入することは稀だが、ハミルトン氏がいうように皆無ではなく、Guy Oseary(ガイ・オゼアリー)氏のSound Venturesが自身の会社のBrightに投資したり、David Sacks(デビッド・サックス)氏のCraft Ventuesが彼のオーディオ会社に投資した例はある。それでも、GP(ゼネラルパートナー)の会社に投資する時、意思決定者たちがプレッシャーを感じることがあれば利益の衝突が起きかねない。なんといってもGPなのだから。

ハミルトン氏は、Runnerへの出資を決定した投資委員会の一員だったが、各委員には自主決定する権限を与えたと彼女はいう。さらに、8ページにわたる契約概要(課題、機会、ギャップなどが書かれている)をまとめたのはBackstageのパートナーであるBrittany Davis(ブリタニー・デービス)氏とアソシエートのKelly Lei(ケリー・リー)氏であり、彼女は手を加えていないことを付け加えた。Runnerチームはプレゼン資料を提供してくれた。

「会社が利益をもたらすことは私の信託義務であり、RunnerのCEOとしての私の義務は、最良の投資パートナーを連れてくることです。私は両方をやりました」とハミルトン氏はTwitterのDMで付け加えた。Backstageの投資先でRunnerを利用している企業は25%のサービス手数料や収益の一部を支払わなくてよいこともバランスを保つ一因だ。

「私たちのゴールは2022年中に1000人以上の参加者を集め、平均4万ドル(約458万円)を達成することです」とハミルトン氏は言った。「そうすれば、私たちは5億ドル(約573億4000万円)企業になります」。

画像クレジット:Blake Little / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

複数デリバリーサービスからの注文を一元管理できる飲食店向けSaaS「Camel」を提供するtacomsが3億円のシリーズA調達

デリバリー注文一元管理サービスCamelを提供するtacomsが3億円のシリーズA調達、採用・マーケ・プロダクト開発強化

デリバリー注文一元管理サービス「Camel」(キャメル)を提供するtacoms(タコムス)は2月22日、シリーズAラウンドとして総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はXTech Ventures、ANRI。

調達した資金は、エンジニア・セールス・カスタマーサクセスなどの採用強化、マーケティングやプロダクト開発などの事業投資にあてる。「デリバリー・テイクアウトサービス、POSシステム等など外部サービスとの連携強化」「全国の飲食店舗への認知・導入拡大のための組織拡大」「導入店舗へのサポート体制の強化」を実現する。

昨今多くの飲食店では、コロナ禍などにより数々のデリバリーサービスの導入を進めているものの、すでに飲食店の現場・厨房内では各サービスごとの注文受注用端末があふれている状況にあるという。サービスごとの管理画面にログインし、注文対応状況やメニュー更新作業が必要などその管理が非常に煩雑となっているそうだ。

これに対してtacoms提供のCamelでは、連携する全デリバリー・テイクアウトサービスからの注文を1台のタブレット端末で一括で受注可能となっており、デリバリー業務に必要な店舗側の一連のオペレーションを簡潔化できる。新しくデリバリーサービスに出店する際もオペレーションが煩雑化することなく、管理コストの削減・売り上げの最大化を狙えるとしている。2021年5月の正式リリース以降、累計導入店舗は全国5500店舗を突破したという。デリバリー注文一元管理サービスCamelを提供するtacomsが3億円のシリーズA調達、採用・マーケ・プロダクト開発強化

また、店舗のPOSおよびOESとの連携により、デリバリーの注文が入ると自動的に注文のPOSプリンターから調理伝票が出力され、ハンディ端末への注文情報の再入力コストのカットも実現できる。デリバリー注文一元管理サービスCamelを提供するtacomsが3億円のシリーズA調達、採用・マーケ・プロダクト開発強化