ラグジュアリーな空の旅を提供するAeroが需要回復を見越して22億円調達

Garrett Camp(ギャレット・キャンプ)氏のスタートアップスタジオExpaの支援を受けているAero(エアロ)はシリーズAラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。CEOのUma Subramanian(ウマ・スブラマニアン)氏は空の旅の需要が「すさまじい勢いで」戻りつつある、と述べた。

筆者はAeroがCEOにスブラマニアン氏を指名した2019年にその事実とともに同社が累計1600万ドル(約17億円)を調達したと書いた。その発表の後に同氏は(すでにミコノス島とイビザ島の間でテストフライトを行っていた)Aeroが後の数カ月で飛行機を購入・改造し、2020年夏に事業を開始すると筆者に語った。

明らかに、パンデミックが計画を妨げたが、そうした妨害は思ったほど大きなものではなかったようだ。スブラマニアン氏は国境が再び開かれ、制限付きで旅行が再開するにつれ、Aeroがフライトの提供を開始したと語った。

「すばらしい夏でした」と同氏は話した。「多くの座席を販売し、7月と8月の売上総利益は黒字でした」。

同社は自社製品を「半プライベート」な飛行機の旅と表現する。プライベートのターミナルから出発し、空間にゆとりのある小型飛行機に乗り(37座席の飛行機を16座席に改造したとスブラマニアン氏は話した)、コシュエルジュチームによるパーソナライズされたファーストクラスの体験が提供される。Aeroは現在、ロサンゼルスとアスペンを結ぶルートのみを飛んでおり、航空代金は片道1250ドル(約13万5000円)だ。

スブラマニアン氏は以前、Airbus(エアバス)のヘリコプターサービスVoomのCEOを務めており、Aeroには「かなり懐疑的に」アプローチしたと語った。というのも、航空産業における社会通念は「有限の面積に可能な限りたくさんの人を押し込む」ことがすべて、というものだったからだ。しかし初期の需要は「その定説は本物」であることを示した、と同氏は語った。

「それを求める人もいます。空の旅はかつて、人々がそのためにドレスアップするような憧れのものでした。当社は旅行エクスペリエンスの魔法の部分を取り戻したいのです」と話した。

結局、あなたがユタ州のアマンギリでの休暇で「一晩に何千ドル(何十万円)」も使ったことがある「プレミアムな旅行者」であれば「ソルトレイクシティを発つ低価格のフライトを探すのに何時間も費やす」のは少し馬鹿げているだろう。

画像クレジット:Aero

スブラマニアン氏は、出張の需要が戻ってくるのは緩やかかもしれない一方で、レジャー旅行に対する需要はすでに戻っており、パンデミックが収束するにつれ増大するばかりだと主張した。加えて、Aeroがラグジュアリーな体験をつくるために取っているアプローチは、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の維持)にうまく合っている。

資金調達に関していうと、シリーズAはKeyframe Capitalがリードし、同社の最高投資責任者John Rapapor(ジョン・ラパポール)氏がAeroの役員会に加わった。Cyrus Capital PartnersとExpaも本ラウンドに参加した。

新たに調達した資金でAeroはチームを増強し、フライトを増やすとスブラマニアン氏は話した。次は、ロサンゼルスとカボ・サン・ルカス間のフライトを2021年4月に立ち上げる予定で、年内には欧州でも再びフライトを飛ばすと同氏は付け加えた。

「ルフトハンザ航空にとっては恐ろしい時間ですが、しかし直感に反し、何かをゼロから始めるのにはうってつけの時間です」と述べた。主にこれは飛行機や他の資産を購入するにあたって手頃な値段となっているからだ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Aero資金調達

画像クレジット:Aero

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nariko Mizoguchi

プライバシーに配慮した不正防止を行うイスラエルのIdentiqが50億円調達、ソニーイノベーションファンドも出資

イスラエルの不正防止スタートアップのIdentiq(アイデンティック)は、パンデミックの間のオンライン支出の急増に勢いを得て、国際的な成長に向けシリーズAで4700万ドル(約50億円)を調達した。

このラウンドはInsight PartnersとEntrée Capitalがリードした。Amdocs、Sony Innovation Fund by IGVの他、既存の投資家からVertex Ventures Israel、Oryzn Capital、Slow Venturesが参加した。

不正防止は大きなビジネスだ。2026年までに1450億ドル(約15兆円)規模になり、2018年の8倍の規模に膨れ上がると見込まれる。しかし、セキュリティとプライバシーのリスクに満ち、データを大量に消費する業界だ。詐欺師を排除するために合法な消費者が誰であるかを知る必要がある。それには膨大な量の消費者データを誰かと共有しなければならない。

Identiqはそれとは異なる、よりプライバシーに配慮した不正防止のアプローチを採る。同社は第三者と顧客データを共有しない。

「これまで、企業がこの問題を解決できる唯一の方法は、ユーザーから提供されたデータを検証のためにサードパーティーのデータプロバイダーに渡すことでした。しかし、プライバシーに関する大きな問題を引き起こします」とIdentiqの最高経営責任者であるItay Levy(イテイ・レビー)氏はTechCrunchに語った。「私たちがこれを解決しました。そうした企業が、機密情報をまったく共有することなく、提供されたデータが、あるユーザーに関して知見があり信頼もしている他の企業のデータと一致することを検証できるようにします」。

オンラインストアなどのIdentiqの顧客が新しい顧客を初めて見たとき、Identiqのネットワーク内の他のストアに、その顧客を知っているか、あるいは信頼しているかを尋ねることができる。このピア・ツー・ピアネットワークは暗号化を使い、オンラインストアが新規顧客を匿名で精査し、個人ユーザーデータを収集することなく詐欺師のような悪意のある人物を排除することを可能にする。

これまでのところ、同社はすでにフォーチュン500企業を顧客として抱えていると述べた。

Identiqは4700万ドルの資金を使用して従業員を採用および増員する計画であり、海外顧客のサポート拡大を目指していると話した。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Identiq資金調達

画像クレジット:Damien Meyer / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

ラズパイやArduinoより簡単なIoT開発ボード「obniz」が約2.1億円のシリーズA調達

ラズパイやArduinoより簡単なIoT開発ボード「obniz」が約2.1億円のシリーズA調達

IoT用小型ボードおよびクラウド上のAPI経由で制御する仕組み「obniz」(オブナイズ)を展開するobniz(旧CambrianRobotics)は3月3日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約2億1000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は東京大学エッジキャピタルパートナーズ、三菱UFJキャピタル、西武しんきんキャピタル。シードラウンドからの累計調達額は約3億円となった。

調達した資金は、obnizの技術開発やプラットフォーム機能強化を加速するための先行投資にあてることで、産業用途を中心に急増するIoT需要に十分対応できる体制を構築する。また、obnizブランドで展開する製品やサービスの認知向上のマーケティングなど、事業を成長させるための投資もあわせて行う予定。

IoT開発の過程では、ハードウェアやファームウェア、ネットワーク、クラウドの各設計、および環境構築においてそれぞれに異なる専門的知見とプログラミング言語が必要となる。加えて、開発効率化の観点から高性能CPUが用いられるため、IoT開発の難易度とコストはさらに高くなってしまう。このため、知識や技術を持つ開発者の絶対数が不足している昨今の状況では、IoT開発に求められる条件の多さや複雑さはIoT普及のボトルネックとなっているという。

同社はこれらの課題を解決するために、独自のファームウェアレス技術obnizを開発。他社技術との大きな違いは、マイコンでありながら高性能CPUに類似する開発を可能にした点にあるという。

同社は、obniz技術を基に、2018年4月にIoT用のコントロールボード「obniz Board」の発売を開始して以来、各種製品やサービスを展開し、公式製品の契約数は2020年11月に1万件を突破した。2019年12月には、BLE(Bluetooth Low Energy)デバイスとネットワークの接続や、情報取得と管理を容易にする「obnizBLEゲートウェイ」を商品化した。

ラズパイやArduinoより簡単なIoT開発ボード「obniz」が約2.1億円のシリーズA調達

「obniz Board」(写真上)と「obniz Board 1Y」(写真下)

ラズパイやArduinoより簡単なIoT開発ボード「obniz」が約2.1億円のシリーズA調達

「obniz BLE/Wi-Fiゲートウェイ」

ラズパイやArduinoより簡単なIoT開発ボード「obniz」が約2.1億円のシリーズA調達

M5StickC

M5StickC

obnizOS

2014年11月創業のobnizは、複雑なプログラムや回路の開発を不要にし、インターネット上で対象物の管理や解析、遠隔操作を可能にするobnizシリーズを展開。obnizシリーズの製品サービスは、DIYと呼ばれる個人での自由なモノづくりをはじめ、建設・医療・介護・教育・観光などの産業分野でのIoT化推進、モニタリング領域の業務に利用されているという。

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カテゴリー:IoT
タグ:Arduino(製品・サービス)obniz(企業・サービス)資金調達(用語)電子工作(用語)Raspberry Pi(組織・製品)日本(国・地域)

入退院調整をリアルタイムで可視化する医療機関・介護施設向け業務支援SaaSの3Sunnyが3.2億円調達

入退院調整をリアルタイムに可視化する医療機関・介護施設向け業務支援SaaSの3Sunnyが3.2億円調達

医療機関・介護施設向け業務支援SaaSを開発・提供する3Sunny(スリーサニー)は3月4日、第三者割当増資による総額約3億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、メディカルノート、メディアスホールディングス、帝人、ANRI、ANOBAKA、個人投資家。これにより累積資金調達額は約4億円となった。

今後はプロダクト開発や人材採用を強化することで医療介護業界のデジタル推進に取り組む。また医療介護業界の業務のDXに貢献するべく、親和性の高い周辺領域で事業展開しているサービスとの連携を進める。

入退院調整をリアルタイムに可視化する医療機関・介護施設向け業務支援SaaSの3Sunnyが3.2億円調達

2016年7月操業の3Sunnyが手がける医療機関向け業務支援SaaS「Carebook」(ケアブック)は、リリースから約2年で都内を中心に大学病院や大規模医療グループなど全国で230超の医療機関に導入されているという。病院に所属する医療ソーシャルワーカー・退院調整看護師が日々行っている事務作業を効率化し、患者に向き合うことにフォーカスできる仕組みを提供している。

医療機関では治療後、高齢者など病院から退院しても継続的ケアが必要な患者に対して、病院所属の医療ソーシャルワーカー・退院調整看護師が次の退院先・転院先のサポートや調整業務を行っているという。

年間の入退院患者数がのべ約1500万人発生し今後も増加が見込まれる中、限られた病床数を有効活用するために、患者・家族の納得度を高度に保ちつつスムーズな入退院調整を行うことが求められている。

しかし病院や施設間で利用するシステムが異なるなどの理由で、コミュニケーション手法が電話やFAXに依存することが多く、常に受電に追われる・調整状況がリアルタイムに可視化されないなどの課題が起きているそうだ。

これらの課題の解決を目指すべく同社はCAREBOOKを開発・提供し、医療介護従事者が本来の専門領域に集中できる環境作りをサポートするとしている。

3Sunnyは、「医療介護のあらゆるシーンを、技術と仕組みで支え続ける」をミッションに掲げ、医療介護業界における「三方晴れやかな未来」を目指す。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)介護(用語)資金調達(用語)3Sunny(企業)日本(国・地域)

インドの中古スマートフォンビジネスのCashifyが16.6億円を調達

インドでは毎年何千万という人々が中古スマートフォンを買っている。そこは世界で2番目に大きい市場だ。携帯電話メーカーやAmazon(アマゾン)、Flipkart(フリップカート)などの巨大オンライン販売業者はその事に気づいているが、中古スマホを検査、修理して再販売することは彼らにとってあまりにも面倒だ。しかし、同時に彼らは、顧客が今持っている端末を下取りに出せれば、もっとスマートフォンを買うであろうことも知っている。

現地時間3月4日、その課題に挑戦する企業を助けるためのスタートアップが、新たな調達ラウンドで1500万ドル(約16億1000万円)調達した。ニューヨーク拠点のOlympus Capital Asiaが、環境セクターに特化したファンドであるAsia Environmental Partnersを通じて出資した。初期の出資者としてBlume Venturesを迎えた創業5年のスタートアップは、これまでに4200万ドル(約45億円)調達している。

Cashify(キャシファイ)は、オンライン、実店舗、および無人端末で名前が示すどおりのプラットフォームを運用しているスタートアップで、ユーザーはそこでスマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、ノートパソコン、デスクトップ、ゲーム機などを売買できる。ただし現在プラットフォーム上の取引の90%はスマートフォン関係だと、CashifyのファウンダーでCEOのMandeep Manocha(マンディープ・マノチャ)氏がTechCrunchのインタビューで語った。

「消費者に対する私たちの提案は、今持っているいるデバイスを簡単に売れるようにすることです。当社のサイトかアプリで質問に答えてデバイスの状態を客観的に評価すれば、どれだけの価値になるか見積もりを出します」と彼は言った。「価格が気に入れば、店頭で引き取って即金で払います」。

数年前に私は、世界的に返品に悩まされているeコマース企業について書いた。そこには法的責任に係る課題がたくさんあり、返品されたスマートフォンが内部に手を加えられていないことを保証するのもその1つだ。さらには注文取り消しにかかる間接コストもある。

マノチャ氏は、ここ数年電話機メーカーとeコマース会社は返却された商品を扱う良い方法を見つけたが、それでも相当量の費用がかかっていると語った。こうした問題がCashifyのようなスタートアップに大きなチャンスを生み出した。

Cashifyはインドでこの業界で最大手だと言っている。スタートアップの提携先はApple(アップル)、Samsung(サムスン)、OnePlus(ワンプラス)、Oppo(オポ)、Xiaomi(シャオミ)、HPなど「ほぼすべてのOEM」だ。「あなたが今、Appleストアに行くと、そこで使われているのは私たちのプラットフォームです」。インドの消費者が下取りプログラムを利用する場合、Apple.comもCashiftyの下取りプラッフォームを使っている、と彼は言った。

会社はインド最大級のeコマース企業とも提携している。Amazon、Flipcart、Paytm Mall(ペイティーエム・モール)などだ。これらの企業はCashiftyの下取り・交換ソフトウェアを使っているだけでなく、同社によるデバイスの現金化も利用している。Cashiftyは受け取ったデバイスを修理し、再生された商品を顧客に販売する。

「実際、直接当社を訪れても、有名eコマース会社や携帯電話OEMに行っても、取引きのほとんどは当社が処理しています」と彼は言った。客がデバイスをOEM会社やeコマース会社に持ち込んだ場合でも、デバイスはそこからCashiftyのような業社に売られる。同スタートアップには1500以上の都市で200万人以上の顧客がいる。

Cashifyは新たな資金の一部を、オフライン市場でのプレゼンス拡大に使う計画だ。マノチャ氏によると、Cashifyはインドのショッピングモールでオフライン店舗と無人店舗を数十カ所運営しており、顧客へのブランド認知が非常に効果的であることをすでに証明している。

同社はインド以外にも拡大し、人材を増やすとともに自社サービスの情報を広めるために投資を増やす計画だ。「Cashiftyの経営チームは、強力な消費者向けフランチャイズをつくり、OEM、eコマース企業や電子機器小売業者と関係を築いて消費者とのあらゆる接点で存在を示すことに関して理想的な経験を持っています」と、Asia Environment Partnersのマネージング・ディクターであるPankaj Ghai(パンカイ・ガイ)氏は声明で語った。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Cashifyインドスマートフォン資金調達

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

子ども向けSTEM教材開発のワンダーラボが資金調達、累計調達額3.1億円に到達

子ども向けSTEM教材開発のワンダーラボが資金調達、累計調達額3.1億円に到達

子ども向けアプリ・タブレット教材開発・運営などを行うワンダーラボは3月3日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は旺文社ベンチャーズ、EduLabのグループファンドEduLab Capital Partnersがそれぞれ運営するファンド。2020年7月実施の小学館からの資金調達を経て、3社からの合計調達額は3億1000万円となった。

調達した資金は、主にプロダクトの開発体制の整備や人材採用、プロモーションに投資し、成長を加速させる。また、海外展開に向けた調査・体制整備も積極的に行う。

2014年創業のワンダーラボは、STEM教育領域の子ども向けデジタル教材の開発・運営を手がけるEdTech(教育テック)分野のスタートアップ。

2017年にリリースした思考力育成アプリ「シンクシンク」(Android版iOS版)は、抽象思考の基礎となる思考センスを育てる問題を多数収録し、150カ国のべ150万人に利用されているという。また学力・非認知能力の両面に効果があることが実証実験で明らかになっている(慶應義塾大学 伊藤寛武氏、慶應義塾大学SFC研究所 葛西慧子氏、慶應義塾大学 中室牧子氏による「CAI(Computer-aided instruction)は生徒の認知能力を上昇させるのか?」)。

またSTEM教育領域の通信教育「ワンダーボックス」も、これまでにないデジタルとリアルを組み合わせた教材として2020年4月にリリースした。

EdTech分野では、マシンラーニングなどを用いた学習の効率化・最適化にスポットライトがあてられがちだが、同社は、「子どもの『知的なわくわく』を引き出す」ことにこそ、その時代の最高の技術や知見を活用していくとしている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:資金調達(用語)STEM教育(用語)ワンダーラボ(企業)日本(国・地域)

急成長中のトラックシェアFluid Truckが67億円調達、住友商事も出資

Fluid Truck(フルイッドトラック)は商用車を所有したりリースしたりする手間とコストをなくすことを目的とするアプリベースのプラットフォームを構築した。この分野はすでにPenske、Ryder、U-Haulのような企業がマーケットシェアを独占している。

そして現在、Fluid Truckはそこに参戦するための資金を持っている。デンバー拠点の同社は米国時間3月2日、トラックシェアリングプラットフォームを拡大するためにシリーズAラウンドで6300万ドル(約67億円)を調達したと発表した。同プラットフォームはウェブやモバイルのアプリを介して中間・ラストマイルの配達企業がオンデマンドレンタル車両を遠隔から管理するのをサポートする。プライベートエクイティファームのBison Capitalが本ラウンドをリードし、Ingka Investments(Ikeaの親会社Ingka Groupの投資部門)、米州住友商事、Fluid Vehicle Ownersが参加した。

外部から資金調達するのは初となる今回の投資は、創業4年のFluid Truckが急成長している中でのものだ。創業者でCEOのJames Eberhard(ジェームス・エバハルド)氏は、売上高が過去2年で100倍になったとTechCrunchに語った。そうしたタイプの成長は有望のように聞こえるが、同氏はベースラインを明らかにしなかったのでその規模を判断するのは難しい。

2020年から2025年にかけてeコマースはグローバルで年平均成長率9.5%で引き続き拡大する見込みで、アクセスしやすいレンタルトラックの需要は相関的に成長するとみられる。eコマースがFluid Truckのターゲット産業の1つであることは驚きではない。

米国の25マーケットで事業を展開しているFluid TruckはカーシェアリングZipcarの商用版だ。引越し業者やeコマース配達企業はFluid Truckのプラットフォームを使ってトラックをレンタルできる。Fluid Truckの事業所に対するアピールは「購入したりリースしたりする必要はありません」以上のものだ。同プラットフォームでは、配達を行う企業は車両を管理・維持して最終的に売却するためのスタッフを管理するマネジャーを置く必要がなくなる。

トラックの購入や管理を外注したい事業者は、Fluidのサービスネットワーク内の工業団地や小売エリアでレンタル可能な車両を見つけることができる。

「プラットフォームに行き、トラックを借り、わずか数分でトラックに乗ることができます。これは事業者がトラックを増やしたり減らしたりするのを可能にします」とエバハルド氏は話した。「当社のユーザー行動が、必要とする全車両を所有するというものから、Fluidで予備の車両を手に入れる、というものに変わっているのを目の当たりにしています」。

エバハルド氏はそうした種の補充使用が、企業が各トラックを所有せずにFluid Truckのプラットフォームを使う状態に変わることを願っている。

Fluid Truckは予約やレンタルプロセスがスムーズなものになるようにデザインされた同プラットフォームのテクノロジーにより、U-HaulやRyder、その他の小規模事業者が独占しているマーケットで競争力を持つことができると主張する。レンタル店に行って順番を待つというプロセスは遅くて雑だが、Fluid TruckのアプリはバンのレンタルをUber車両を呼ぶのと同じくらい簡単なものにするとエバハルド氏は話す。

「複雑さをすべて取り払い、バーチャル車両を持てるようにしています」とエバハルド氏はTechCrunchに語った。

Fluid Truckの車両は貨物バン、ピックアップトラック、大型ボックストラック、その他さまざまな車両などで構成され、現在数千台があり、間もなく何万台という規模になる。同社はまた、米国で最も多く中型EVレンタル車両を所有していると主張する。同社は車両台数を拡大するために複数のOEMと協業し、台数を増やし続けている。それでも、商用サイドのEVの浸透は緩やかなため、同社が所有する全車両におけるEVの割合はまだ1%にも満たない。

Fluidがトラック分野で圧倒的な存在になることをエバハルド氏は願っている。しかしトラックシェアアプリを展開しているのは同社だけではない。競合相手のGoShareとBungiiも似たようなサービスを提供している。

今回の巨額のラウンドは、デジタルトラックシェアリングにおいてFluidがよく知られた存在になるのに有利に働くかもしれない。そしておそらくさらに重要なことに、同社はIkeaの注意と投資を引きつけている。

「これはIkea小売がラストマイルの配達サービスを顧客に提供できるようにする新たな取り組みであり、環境への負荷を減らしながら顧客との約束を改善し続けます」とIngka InvestmentsのマネジングディレクターKrister Mattsson(クリスター・マットソン)氏は声明で述べた。このコメントから将来Fluidと提携することが予想される。

今回調達した資金でFluidは事業拡大を目指す。チームを増強し、米国で更に数十のマーケットでサービスを展開し、欧州とカナダへの進出も準備する。

Fluid Truckはまた自社のテクノロジー部分にも投資する。ここには車両のサービスやメンテナンスを予測して自動化するための社内テレマティクスプラットフォームが含まれる。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Fluid Truckトラック資金調達

画像クレジット:Fluid Truck

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ノンデスクワーカーの現場から紙をなくす「カミナシ」が約11億円を調達

「これからの5年間は、ノンデスクワーカー(ブルーカラー)向けの『デスクレスSaaS』の時代が来ると思っています」と意気込むのは、カミナシCEOの諸岡裕人氏だ。同社は2020年12月、インフィニティ・ベンチャーズ主催の「ローンチパッドSaaS」にて優勝している。

2021年3月4日、カミナシはシリーズAラウンドでALL STAR SAAS FUNDCoral Capitalなどを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約11億円の資金調達を行ったと発表した。

点検作業をiPadアプリで完結させる

「現場から紙をなくす」ためのプラットフォームであるカミナシは、ブルーカラー(現場で働く従業員)を対象とした業務効率化ツールだ。従来、紙やExcelで行われていた点検記録や作業記録などをiPadのアプリで完結できるようにする。

約300台の機械がある食品工場を例にしてみよう。現場の担当スタッフは、毎日すべての機械を1台ずつ点検しながら、手書きで用紙に記録していく。その後、管理者は提出された書類を1枚ずつ確認して押印する。驚くことに、スタッフが行う点検回数は1日1000回以上、管理者が承認する書類は1日100枚以上に及ぶこともあるという。

カミナシCEOの諸岡氏は「このような書類での点検作業は、非効率なだけなく、ケアレスミスや形骸化にもつながっています。年間数百万円から数千万円の膨大な費用をかけているにもかかわらず、そのデータが必ずしも信用できないというのは、あまりにもったいないと感じていました」と話す。

これを解決するのが、カミナシの役割だ。上記のような現場の「点検リスト」などをクラウド上でノーコードで作成でき、スタッフは作業中にiPadのアプリを通じて記録することが可能になる。管理サイドはリアルタイムに報告内容を確認でき、これまで数時間かけていた承認作業も数クリックで完結できる。カミナシを導入すれば、現場から「紙」は瞬く間に姿を消すというわけだ。

画像クレジット:カミナシ

エンジニアが現場に足を運ぶ

しかし、実際にブルーカラーの現場をデジタル化することは、言うほど簡単ではない。従業員のなかには高齢者や、ITリテラシーが低い人も当然いる。現場で多忙な実務をこなすスタッフにとって、ツールは本当に使いやすいものでなければならない。

「ひと言でいうと大変です」と諸岡氏。とにかく現場に足を運ばなければ話が始まらない。同社はセールスだけでなく、エンジニアやデザイナーまでもが実際にクライアントの現場まで足を運び、従業員と対話を重ね、「現場の痛みを知る」ことに重きを置いている。

そんな「現場ドリブン」を徹底するカミナシのアプローチは功を奏した。プロダクトローンチからわずか8カ月で導入社数は70社を超え、食品から航空、ホテルまで14の業界に導入されるまでに成長。現在アウトバウンドセールスは行っていないものの、ウェブ経由からの流入で月間問い合わせ件数は150を超えるという。

「負け続けた3年間」があった

ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。 父親が経営する食品工場などで働きながら、地道に経験を積んできた諸岡氏。2016年に起業し、食品工場向けのソフトウェアを開発したものの、3年間は鳴かず飛ばずの状態が続いたという。

この苦しい期間を経て、2019年12月にピボットを決断しカミナシが誕生する。「これまで僕は、ずっと自信がなかったんです。『まだ結果が出ていないから、前に出るべきじゃない』と思っていた。でも、2019年にピボットを決意した時『もう、恥も外聞もなくやってやろう』と思ったんです」と当時の心境を語る。 これが大きな転機となった。

諸岡氏は自身のnoteにて、過去の赤裸々な失敗談を含めたカミナシの理念や、メリットを積極的に発信。すると、自然に「熱い想い」を持った仲間達がカミナシに集まったという。

悪戦苦闘した3年間も決して無駄ではなく、カミナシ誕生の糧となった。諸岡氏は「僕自身、3年間で300以上の現場を見てきた。1000人以上の話を聞いた。もう二度とごめんだ、と思えるくらいにはやってきた。その時に蓄積したデータや知見があるからこそ、当時より10倍も20倍も良いプロダクトを完成させられた」という。

2020年6月のリリース以降、ローンチパッドSaaSでの優勝、シリーズAの資金調達と、順調に階段を駆け上がってきたカミナシだが、「現場から紙をなくした」先にある将来も見据える。今回の調達資金の一部は、工場などが最先端のIoTやAIを導入するためのシステム作りに投入する予定だという。「現在人間が行っている点検作業を、IoTセンサーが自動的に行い、データをカミナシに送信。それをAIが分析して報告書を作成する」などの活用を想定する。

「ノンデスクワーカーのDX」。誰もが理屈ではわかるものの、本当の意味で現場の課題を理解し、ユーザーに寄り添ったプロダクトを作ることができる企業はそう多くないだろう。父親の会社で働く時代から、「現場」をその目に焼き付けてきた諸岡氏が率いるカミナシは、数少ないその内の1社かもしれない。

関連記事:現場作業員の業務効率化アプリ「カミナシ」が9言語で利用できる「多言語翻訳機能」提供、WOVN.appと連携

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:カミナシiPadアプリDX資金調達日本

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

農業用自動収穫ロボットの開発を行う、宮崎県拠点のAGRISTは3月3日、第三者割当増資による資金調達を発表した。調達額は非公開。引受先は、ドーガン・ベータおよび宮崎太陽キャピタルがそれぞれ運営する投資事業組合、ENEOSイノベーションパートナーズ、宮銀ベンチャーキャピタル、ジャフコ グループおよびインキュベイトファンドがそれぞれ運営する投資事業組合。

同社は今後、ピーマンの生産地として知られる茨城県神栖市でピーマン自動収穫ロボットの実証実験を開始する。また埼玉県深谷市主催の「DEEP VALLEY Agritech Award」(ディープバレーアグリテックアワード)で最優秀賞を受賞しており、深谷市できゅうり自動収穫ロボット導入を予定。2021年春には関東にオフィスを開設し、2021年末までに合計25名のエンジニアを宮崎県と首都圏で採用予定としている。

代表取締役兼最高経営責任者の齋藤潤一氏によると、この人材募集について、外資系含め大手企業出身の方からの問い合わせもあるという。最大年収を2000万円としており、スタートアップだから給与が安い、地方企業だから安いということはなく、本気で世界を目指す人を採用したいと明かした。

テクノロジーこそが、地域・地方という壁を越えて勝負できる強みに

AGRISTは、「テクノロジーで農業課題を解決する」をミッションに掲げるスタートアップ。齋藤氏は、2017年から宮崎県新富町の農家と勉強会を開催し、その中で現場の農家からロボットの必要性、DXの必要性に関する声を聞き続けてきたという。取締役・最高技術責任者の秦裕貴氏との出会いの後2019年に試作機を開発し、地域金融機関やベンチャーキャピタルなどから資金調達を実施した。

2020年には、国のスマート農業実証実験で6台のロボットを農研機構に販売したそうだ。また、国内のビジネスプランコンテストで8つの賞を受賞。2021年からは、宮崎県から全国に販路を拡大し、地方から世界の農業課題を解決するグローバルベンチャーへと成長し、同社ビジョンである「100年先も続く持続可能な農業」を実現するという。

齋藤氏は、「人口1万7000人の町から上場企業を生み出したい」「地方を元気にしたい」と考えており、また「テクノロジーこそが地域・地方という壁を越えてオールフラットで勝負できる強みになると証明したい」と明かした。

農家の声を徹底的に聞く「アジャイル型のロボット開発」でシンプルさを追及した自動収穫ロボット

同社の農業用自動収穫ロボット「L」は、ビニールハウス内で自分の位置を把握しつつ、ワイヤーから吊り下がった状態で移動する方式を採用している(露地栽培は不可)。有線で電力を供給し、モーターにより駆動する。

地面にはレールなどを敷設する必要はなく、ワイヤーも一般的な農業資材の鋼線を利用しているという。この吊り下げ式については、世界展開を想定し国際特許(PCT国際特許)を出願しているそうだ。

また、カメラ画像からピーマンとサイズを認識し、画像データを蓄積しながら深層学習を行うようにしており、利用頻度と並行しロボットの能力が向上するという。ハウス内の現在位置を基にハウス各所の収量分布データ化も実施している。

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達収穫時には、アームにより野菜(ピーマン)を収穫。アームは上下・奥行き方向に伸縮、ピーマンの茎を巻き取りながら切断する。切り取ったピーマンは、本体のリザーブタンクで一時保管し、ある程度溜まったらコンテナに放出する。収穫を行うアームのハンド部分は2段切りという手法を採用しており、こちらも国際特許を出願している。

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

農業用自動収穫ロボットは、ハウス内の20%を8時間で収穫可能で、年間累計で一般的なパート以上の収穫を実現できるという。一般的なパートと比較した場合、時間あたりの収量は落ちるものの、夜間・休日も作業可能なため、年間累計収穫量はパート水準を上回るそうだ。またこの点については、24時間対応を目指しているという。

齋藤氏によると、他にも収穫ロボットはあるものの、同社ロボットは機能性や究極のシンプルさを追求しているという。

同社は、農家のハウスを実証実験の場として借り、その隣に開発拠点を設けて、農家の声を徹底的に聞くことにこだわり続けている。顧客である農家の課題解決を目指す「顧客ドリブン」により、道具のようなシンプルさにたどり着いたそうだ。

人口1万7000人の町からテクノロジーで世界展開を狙う、農業用収穫ロボット開発のAGRISTが資金調達

軽トラ奥が開発ラボという

最初から完璧さを目指すのではなく、プロトタイプを出して農家の反応を確認し改良を繰り返すという、いわば「アジャイル型のロボット開発」を行った。

またロボットのソフトウェア面も、オープンソースソフトウェアのROS(Robot Operating System)を採用することでソフトウェア構成のシンプルさを追及しているという。

さらに「agris」(アグリス)というOSの開発も進めており、将来的には、ロボットが収集した野菜のデータを集積・活用し、病害虫の早期発見サービスなどのビジネスも手がけ、データドリブンの企業として世界展開することを考えているとした。セールスフォースなどのCRMソリューションのアグリ版といったイメージだ。

そういったテクノロジーをフル活用することで、小さな町からでもアフリカやアジアなどへの進出も狙えると考え、事業を展開しているとしていた。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:農業 / アグリテック(用語)資金調達(用語)食品(用語)日本(国・地域)

オープンソースのデータ統合プラットフォームのAirbyteが5.6億円を調達

オープンソースのデータ統合プラットフォームを提供するAirbyte(エアバイト)は、米国時間3月2日、Accelが主導するシードラウンドで520万ドル(約5億6000万円)を調達したことを発表した。他に投資家として参加したのはY Combinator、8VC、Segmentの共同創業者のCalvin French-Owen(カルビン・フレンチ=オウエン)氏、Clouderaの元GMであるCharles Zedlewski(チャールズ・ゼドレウスキー)氏、LiveRamp(ライブランプ)とSafegraph(セイフグラフ)CEOのAuren Hoffman(オーレン・ホフマン)氏、Datavant(データバント)CEOのTravis May(トラビス・メイ)氏、Machinify(マシニファイ)社長のAlain Rossmann(アラン・ロスマン)氏などだ。

Airbyteは、LiverRampやRideOSの元エンジニアリングディレクターで統合責任者だったMichel Tricot(マイケル・トリコット)氏と、開発者ツールやB2Bサービスを中心とした連続起業家John Lafleur(ジョン・ラフラー)氏が共同で創業した会社だ。ラフラー氏が最後に共同創業したスタートアップはAnaxi(アナクシー)だ。

画像クレジット:Airbyte

実は創業当初は、チームは今とは多少違う、マーケティング企業向けのデータ接続に焦点を当てたプロジェクトに取り組んでいた。創業者たちはY Combinatorに採用され、アプリケーションを開発したが、新型コロナウイルスのパンデミックが発生したために、Airbyteのオリジナルプロジェクトの初期顧客だった多くの企業が、予算凍結やレイオフに直面してしまった。

「その時点で、私たちはより深いデータ統合領域に踏み込もうと決めました、それが現在のAirbyteプロジェクトと製品の始まりなのです」とトリコット氏は説明する。

現在のAirbyte は、初期のような特定の業界に焦点を当てたものではなく、データエンジニアリングそのものに向けられているが、コネクタを構築するためのグラフィカルな UI と、開発者が取り込むためのAPIの両方を提供している。

トリコット氏が指摘するように、多くの企業が独自のデータコネクタを開発し始めており、最初はなんとなく上手くいくことが多い。しかし、本当の複雑さは、それらを保守し続ける際に現れる。「それがどのように振る舞うかが、手に負えなくなるのです」と彼はいう。「その結果、失敗するか、何かを変えるかのどちらかになるわけです。データ統合のコストはメンテナンス部分にかかっているのです」。

コネクタの構築を専門とする企業であっても、その複雑さはすぐに手にあまるようになるため、チームはAirbyteをオープンソース企業として構築することにした。またAirbyteによれば、Fivetran(ファイブトラン)のようにデータ統合に力を入れている企業はあるものの、多くの顧客は、クローズドソースの競合他社がサポートしていないユースケースが必要になることが多く、その場合は結局顧客自らがゼロから開発しなければならなかったと主張している。

「Airbyteにおける私たちの使命は、データを複製するための標準になることです」とラフラー氏は語る。「そのために、個々のコントリビューターの方々のニーズに対応したすべての機能をオープンソース化するのです、つまりすべてのコネクタをそうします」。彼はまた、Airbyteは2022年早々に行う予定のシリーズAラウンドを完結するまでは、オープンソースのツールに注力すると述べている。

Airbyteは、そのサービスを収益化するために、企業のニーズに対応した機能(データ品質、プライバシー、ユーザー管理などのエンタープライズ機能などを想像して欲しい)をすべてライセンスする、オープンコアモデルを採用する予定だ。また、コンテナ化されたコネクタのホワイトラベル化(OEM提供)も検討している。

現在、約600社の企業がAirbyteのコネクタを使用しているが、わずか1カ月前には250社だった。そのユーザーにはSafegraph、Dribbble(ドリブル)、Mercato(メルカート)、GraniteRock(グラナイトロック)、Agridigital(アグリデジタル)、Cart.com(カート・ドットコム)などが含まれている。

同社は新たな資金を使い、2021年末までにチームを約12人から25人に倍増させる計画だ。現在、同社はユーザーベースの確立に注力しており、2022年にはマネタイズを開始し、より多くの資金調達を行う予定だ。

関連記事:オープンソースのデータパイプラインプラットフォーム「Airbyte」

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Airbyteオープンソース資金調達

画像クレジット:Bruce Leighty / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

顧客エンゲージメントのOutplayがセコイア・インディアのスタートアッププログラムから2.1億円調達

Outpleyのチームメンバーがビデオ会議に参加中

セールス・エンゲージメント・プラットフォーム(SEP)は、営業チームが潜在顧客と開拓し商談に結びつけるために必要な数々の日常業務を自動化する。中小規模の企業をターゲットにするSEPのスタートアップOutplayは現地時間3月2日、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)のアーリーステージスタートアップ向けプログラム、Surge(サージ)から200万ドル(約2億1000万円)調達したことを発表した。

Outplayは2020年1月にRam Papineni(ラム・パピネーニ)氏とLaxman Papineni(ラックスマン・パピネーニ)氏の兄弟が設立し、現在300社以上の顧客がいる。Outplayを設立する前に、パピネーニ兄弟はアプリ開発者のための口コミマーケティングツールであるAppViralityを作った。

ラックスマン氏はTechCrunchに、Outplayの顧客はIT、ソフトウェア、マーケティング、広告、リクルーティングなどさまざまな分野にわたり、大半が北米とヨーロッパ拠点だと語った。

Outplayは、潜在顧客とのリーチに複数のチャンネルを使うチーム向けに作られている。電話、テキストメッセージ、メール、ウェブサイトやLinkedIn(リンクトイン)、Twitter(ツイッター)でのチャットなどだ。Salesforce(セールスフォース)やPipedrive(パイプドライブ)などの顧客関係管理プラットフォームと統合し、営業担当者に生産性・自動化ツールなどの新しいインターフェースを提供することで管理業務に必要な時間を短縮する。

Outplayのプラットフォーム

たとえばOutplayは複数のプラットフォームを通じて初回のメッセージを送る手順を作り、決められた時間内に返信がない時には新しいメッセージで自動的にフォローアップするという使い方ができる。さらに、セールス担当者がキャンペーンの成果を追跡するための分析ツールも提供する。

Outplayの2大ライバルがOutreachとSalesLoftで、いずれも最近の調達ラウンドでユニコーンの地位に到達した。ラックスマン氏は、Outplayは使いやすさに焦点を当てている他、CRMやその他ソフトウェアとの統合、強力なカスタマーサポートが差別化要因だと言っている。

関連記事:顧客エンゲージメントのSalesLoftが103億円調達、評価額は1100億円超

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Outplayセールス資金調達

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nob Takahashi / facebook

医療費が節約できる筋骨格のカリキュラムを提示する最新ヘルステックSpineZoneが12.8億円調達

SpineZone(スパインゾーン)は、個人に合わせた運動療法プログラムの制作と首と背中の痛みの治療法を提供するスタートアップだ。オンラインプラットフォームを通して面談による診療を行い、処方薬や注射や外科手術を必要としない治療を目指し、医療費が節約できるカリキュラムを提示する。Kian Raiszadeh(キアン・ライザデー)氏とKamshad Raiszadeh(カムシャド・ライザデー)氏の兄弟が共同創設したSpineZoneは、シリーズA投資金1200万ドル(約12億8000万円)の調達をTechCrunchに話してくれた。このラウンドはPolaris PartnersとProvidence Venturesが主導し、Martin Venturesが参加している。

基本的にSpineZoneは、対面診療で補強された仮想理学療法プラットフォームだ。同社では健康転帰を盛り込んだ動画リポジトリーを使用し、その患者の実生活面を支えている。そのため、対面診療は特に重要となる。

患者はスマートフォンかパソコンでサイトにログオンし、痛みや危険因子に関する質問に答える。すると、一連の運動療法を開始できるようになる。この運動は、筋骨格の健康状態に関する審査を通ったエビデンスに基づく論文をベースに、専門家の協力の下で作られる。

動画のデジタルアーカイブの他に、その運動を行うにあたって実際に専門家から指導が受けられるオプションもある。この戦略で同スタートアップは「100万人の生活を管理している」と主張する。

SpineZoneの価値提案は人を雇っている企業、クリニック、Cigna(シグナ)やAetna(エトナ)といった健康保険の利用者とサービス提供者の両方を支援し、患者が高価な外科手術を受けずに済むようにするというものだ。

痛みが深刻化する前に対処することで、現在のところ患者が手術を受ける比率は50パーセント低下しているとSpineZoneは話している(新型コロナで病院に行くリスクが高まった影響も加味すべきだが)。

非手術的処置を外注するほうが、実際に非手術的処置を行うよりもずっと安価であるため、パートナーたちは満足している。

病院では数百万ドル(数億円)単位の経費削減となる。例えばサンディエゴのシャープ・コミュニティ・メディカルグループは、SpineZoneと契約した2年間で340万ドル(約3億6000万円)の経費を節約した。

SpineZoneのビジネスモデルでは、典型的なSaaSの料金体系よりも、ほんの少しだけ複雑になっている。例えば1カ月に診療を利用する人数によって料金は異なる。また、損失の分担もある。SpineZoneが契約医院に経費を1500万ドル(約16億円)から1200万ドル(約12億8000万円)に低減できると約束した場合で、実際には1700万ドル(約18億2000万円)となってしまったときは、クリニックに対してその差額の一部をSpineZoneが負担する。反対に、クリニックの経費が1000万ドル(約10億7000万円)に抑えられたときは、節約分を双方で分配する。

SpineZoneの他にも、同類の筋骨格疾患系スタートアップはいくつかある。ベンチャー投資家の支援を受ける企業には、Peerwell(ピアウェル)、Force Therapeutics(フォース・セラピュティクス)、そしてこのほど企業価値30億ドル(約3200億円)の評価を受け、株式公開を計画しているHinge Health(ヒンジ・ヘルス)がある。

SpineZoneばかりでなく、多くのスタートアップが競争に勝ち残るには、診療ごとに料金を取る医療ではなく、価値に基づいた医療が必要となる。価値に基づく医療とは、患者を何度も医院に通わせる代わりに、結果に対して医師が報酬を受け取るという考え方だ。最終的な目標は、いち早い治療結果を金銭的インセンティブにつなげることだ。膝の治療で医師が3万ドル(約320万円)を得られるとするならば、診療予約が2回だろうが20回だろうが、治療を長引かせても、1回の診療を徹底的に行っても結果は同じことだ。もちろん、医師が報酬にこだわるあまり、質よりもスピードを重視してしまうという危惧もある。

当面、SpineZoneの人気は確かなようだが、医療エコシステムで価値に基づくモデルが主流になるまでには、まだ道のりは長い。キアン・ライザデー氏の見積もりでは、現在、病院の報酬のうち価値に基づく医療によるものは、全体の10〜20パーセントだ。SpineZoneでは、近い将来、それが50パーセントになると予測している。

「それが最大の改革であり、私たちが目指す最高の到達点です」と彼は話していた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:SpineZone資金調達

画像クレジット:Ian Forsyth / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:金井哲夫)

Uberが配達ロボット事業を独立会社Serve Roboticsとしてスピンアウト

Uber(ウーバー)が2020年に26億5000万ドル(約2830億円)で買収したオンデマンド配達スタートアップのロボティクス部門Postmates Xが正式にServe Robotics(サーブロボティクス)という会社としてスピンアウトした。

TechCrunchはディールが投資家に密かに示されたと2021年1月に報じている。

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Postmates Xが開発し、パイロット運用した歩道を自動走行するロボットにちなんだ社名のServe RoboticsはベンチャーキャピタルファームNeoがリードしたラウンドでシード資金を調達した。本ラウンドに参加した投資家はUber、Lee Jacobs(リー・ジェイコブス)氏とCyan Banister(シアン・バニスター)氏のLong Journey Ventures、Western Technology Investment、Scott Banister(スコット・バニスター)氏、Farhad Mohit(ファルハド・モヒット)氏、そしてPostmatesの共同創業者Bastian Lehmann(バスティアン・レーマン)氏とSean Plaice(ショーン・プレイス)氏だ。

Serve Roboticsは、まだクローズしていないシリーズAとなる本ラウンドを認めただけで具体的な内容は明らかにしなかった。スピンアウトの資金調達は最初のトランシェは立ち上げ時に、残りはIPが移行したときに、と段階を踏んで行わることがある。

新会社はPostmates Xを率いていたAli Kashani(アリ・カシャニ)氏が運営する。他の共同創業者にはPostmates時にServeのチームに加わった最初のエンジニアであるDmitry Demeshchuk(ドミトリー・デメシュチュク)氏、元Ankiプロダクト責任者でServeでプロダクト戦略を率いてきたMJ Chun(MJ・チュン)氏がいる。Serve Roboticsの従業員は60人で、本社をサンフランシスコに置き、ロサンゼルスとカナダ・バンクーバーにもオフィスを構える。

画像クレジット:Serve Robotics

「自動運転車がドライバーを不要にした一方で、ロボット配達はクルマそのものを不要にし、配達を持続可能なものに、そしてすべての人がアクセスしやすいものにします」と共同創業者でCEOのカシャニ氏は話した。「次の20年で新しいモビリティロボットはまずは食品の配達、それからその他のものへと我々の暮らしのあらゆるところに入ってきます」。

Postmatesの歩道配達ロボットへの参入は、カシャニ氏のスタートアップLox Incをひっそりと買収した後の2017年に本格的に始まった。Postmates Xのトップとしてカシャニ氏は「なぜ重さ2ポンド(907グラム)のブリトーを重量2トンもあるクルマで運ぶのか」という疑問に答えようと試みた。Postmatesは初のServe自動走行配達ロボを2018年12月に発表した。デザインはほぼ同じだが異なるLiDARセンサーを搭載し、他にもいくつかアップグレードされている第2世代は、ロサンゼルスでの商業立ち上げ前の2019年夏に登場した。

事業拡大に目を向けているとはいえ、歩道の自動走行を専門とする配達ロボットをデザイン・開発・運用するという同社のミッションは続いている。Serveはロサンゼルスでの配達事業を継続する。そしてサンフランシスコ・ベイエリアでのR&Dを強化し、新たな提携を通じてマーケットリーチを拡大する。

スピンアウトは、採算性に向け配車と配達の事業に焦点を絞るというUberの目的に適うものだ。この戦略はUberが2019年5月に上場した後に具体化し、新型コロナウイルスパンデミックが同社にプレッシャーをかけた2020年加速した。2年前、Uberは配車からマイクロモビリティ、ロジスティック、公共交通機関、フードデリバリー、そして自動運転車やエアタクシーといった未来的なものに至るまで、交通全般に会社を持っていた。CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は会社の収益化を追求していて、何でもかんでも解体するというアプローチを取っている。

2020年にUberはLimeとの複雑な取引でスクーター・自転車シェアリング部門のJumpを切り離し、ロジスティックスピンオフUber Freightの5億ドル(約534億円)分の株式を売却した。そして自動運転車部門Uber ATGとエアタクシー部門Uber Elevateを切り離した。Auroraが、JumpとLime間の取引と同じような構造のディールでUber ATGを買収した。AuroraはUber ATG買収を現金で行わなかった。代わりにUberがATGの株式を引き渡し、そしてAuroraに4億ドル(約427億円)投資し、これによって合併会社の持分26%を得た。同様に細工されたディールでUber Elevateは2020年12月にJoby Aviationに売却されている。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Serve RoboticsUber資金調達

画像クレジット:Serve Robotics

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

プロの翻訳者に匹敵するAI翻訳サービスを提供するLengoo、新ラウンドで約21億円を獲得

AIベースの翻訳ツールを使用する人のほとんどは、1つのフレーズや引用文を理解するなど、一般的で比較的重要ではないタスクに利用している。技術文書を15の言語で提供しているような企業にはそのような基本的なサービスは適さないが、Lengoo(レングー)のカスタム機械翻訳モデルなら役に立つかもしれない。Bラウンドで新たに2000万ドル(約21億円)を調達した同社は、多数の見込み顧客を獲得できる可能性がある。

翻訳ビジネスは数十億ドルの規模を誇り、今後も存続が見込まれる。ごく一般的なものとしては、ドキュメント、ソフトウェア、または稼働中のウェブサイトを複数の言語(場合によっては数十言語)でリリースする作業が挙げられる。

このような作業は現在翻訳会社が行っており、専門家によるオンデマンドで質の高い翻訳を提供している。日常的なツールとしての機械翻訳の台頭は、世間が思っているほどには翻訳者の仕事に影響を与えていない。韓国のウェブサイトでポルトガル人ユーザーがGoogle(グーグル)のビルトインウェブページ翻訳を使うのはニッチなケースで、ソーシャルメディアの投稿や個人的な文章の翻訳などは専門家に外注するほどのものではないと言えるだろう。

こうした場合、最低限の意味がわかれば人々の望みやニーズは満たされるため、「まあまあのレベル」で満足するというのが法則となっている。しかし、10の異なる市場で10種類の言語を使用する製品をリリースする場合はそれでは不十分だ。説明書、警告文、契約書、技術文書などを、1つの言語では完璧に仕上げて、ほかの9言語はまあまあのレベルで提供するわけにはいかない。

レングーは、企業と翻訳者間のワークフローの自動化に取り組むチームからスタートした。

CEO兼創設者のChristopher Kränzler(クリストファー・クランツラー)氏は、「次のステップは明らかに翻訳そのものを自動化することでした。今後も当分の間、人間が行う作業は必要なままでしょう。目標は、人間による翻訳作業を減らすことができるよう、真に実用的なレベルにまでモデルの性能を引き上げることです」と語っている。

機械学習の機能は継続的に向上しているため、その目標は決して非現実的ではない。 DeepL(ディープエル)やLilt(リルト)などの他社も同じ目標に向かっている。こうした企業はグーグルやMicrosoft(マイクロソフト)のフレームワークを上回る品質向上を実現したが、翻訳プロセスから人間による作業を無くすとは決して主張していない。

レングーは、スピードと特定性、つまり、特定のクライアントのすべての専門用語、スタイル、書式設定、必要なフォーマットを統合することにフォーカスしている。そのため言語モデルのトレーニングに、顧客独自のドキュメントやウェブサイトだけでなく翻訳プロセスからのフィードバックを継続的に取り入れてカスタマイズしている。

モデルの自己改善プロセスのイメージ。画像:レングー

「当社には、モデル用の自動化されたトレーニングパイプラインがあります。人間がプロセスに修正を加えるほど、プロセスは速くなっていきます。最終的にはグーグルやディープエルの約3倍の速さになるでしょう」とクランツラー氏は言う。

新しいクライアントは、過去数年間の数千に及ぶドキュメントでカスタマイズされたモデルから開始できる。しかし、モデルが生成したテキストに修正が必要になるたびに、その修正を記憶し、他のトレーニングと一緒に統合していく。

30回のイテレーションの後、修正を必要としない文節は倍増しており、修正を少ししか必要としない文節も大幅に増加していることを示す、非常に興味深いグラフ。画像:レングー

 翻訳の「品質」を客観的に定量化することは難しい。しかしこの場合は問題なく定量化できる。人間の翻訳者が使用するツールとして機能していることは、品質チェック機能が組み込まれていることを意味する。翻訳の質の高さは、基本的にモデルが提示したテキストに対して人間がどれだけ変更を加えなければならないかを示す「補正距離」によって測定できる。修正が少ないということは、より質の高い翻訳であるだけでなく、より速いということでもあり、品質とスピードの両方に客観的な基準があることを意味する。

これらの改善は、これまで行き過ぎた自動化を懸念していた顧客にも受け入れられた。

クランツラー氏は「「最初は抵抗が見られました」と認めながらも、次のように語っている。「人々は普段の翻訳をグーグル翻訳に頼り、その品質が向上していくのを目にしています。グーグル翻訳やディープエルが市場を啓蒙し続けてきたのは事実です。今や人々は、正しく使えば専門的な用途でも機械翻訳が機能することを理解しています。大手顧客は30人、40人、50人もの翻訳者を抱えていて、それぞれ独自のスタイルを持っています。しかし私たちは、翻訳の速度とコスト効率を上げることができ、一貫性という点で品質の向上にも貢献できます。」

クライアントのデータを使ってモデルをカスタマイズすることは独自のアプローチとは言えないが、レングーは競合他社や、製品開発に遅れをとっている大企業に先んじているようだ。そして同社は、技術スタックを刷新することで、業界をけん引する立場に留まることを目指している。

課題としては、事実上、伝統的な機械学習技術に依存しているため、肝心な翻訳者とAI間のフィードバックループが制限されていることだ。モデルがどれだけ早くアップデートされるかはそのモデルの使用回数に依存するが、数百語相当のコンテンツを統合するためだけに大規模なモデルを再トレーニングすることは求められないだろう。再トレーニングにはコストがかかるため、頻繁に実行することはできない。

しかしレングーは、さまざまなパイプラインやプロセスを統合した、より応答性の高い独自のニューラルマシン翻訳フレームワークの構築を計画している。結果がリアルタイムで改善されるわけでないが、最新の情報をより迅速かつ手間の少ない方法で取り込むことができる。

応用研究責任者のAhmad Taie(アーマッド・タイエ)氏は、「文節ごとの改善と考えてください」と説明する。文節のサイズはさまざまだが、一般的にはテキストの論理的なまとまりである。「1つの文節を翻訳すると、次の文節に取り掛かるまでにモデルが改善されます。」

もちろん、顧客ごとに主力製品の機能を改善し、速度を上げ、実装しやすくしていくことが顧客をつなぎとめる重要なポイントである。業界内の競争は激しくなると見込まれるが、クランツラー氏は、グーグルやその他の既存の大企業が競争に参入する見込みはないと考えている。そうした企業は、アジャイル開発のアプローチよりも、買収によって統合するアプローチを好むためだ。

人間の翻訳専門家について言えば、機械翻訳は翻訳者に取って代わるものではなく、その効率を、最終的にはけた違いに高めるものとなる。効率化が進むことによって労働需要が縮小する可能性は考えられる。しかし、国際市場が拡大を続け、それに伴って専門的な翻訳へのニーズも増えれば、需要を維持できるかもしれない。

Inkef Capital(インケフキャピタル)のリードによる2000万ドル(約21億円)のラウンドで、レングーは北米市場だけでなくヨーロッパ内の新しい市場にも進出し、より多くのエンタープライズスタックと統合できるようになる。既存の投資家であるRedalpine(レッドアルパイン)、Creathor Ventures(クリエソー ベンチャーズ)、Techstars(テックスターズ、同社の設立したプログラムから参加)、エンジェル投資家のMatthias Hilpert(マティアス・ヒルパート)氏とMichael Schmitt(マイケル・シュミット)氏、そして新たにPolipo Ventures(ポリポ ベンチャーズ)とVolker Pyrtek(フォルカー・ピルテック)氏もこのラウンドに参加している。

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カテゴリー:人工知能 / AI
タグ:機械翻訳 資金調達

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

軌道走行と自律走行のハイブリッドであらゆる現場に対応、自動搬送ロボットを開発するLexxPlussが資金調達

新型コロナの影響もあり、EC需要が高まりを受け、物流倉庫での人手不足が問題になっている。物流倉庫での作業の効率化を図るのに注目を集めているのが、人の代わりに荷物を運搬する自動搬送ロボットだ。

3月3日、倉庫や製造工場向けに自動搬送ロボットを開発するLexxPlussは、インキュベイトファンド、SOSV Investments LLC、住友商事を引受先とする第三者割当増資を実施したことを発表した。具体的な調達額は非公開なものの、億単位であるそうだ。

自動搬送ロボットと言えばAmazonを思い浮かべる人も多いかもしれない。Amazonの物流倉庫では、作業員がわざわざ商品を取りに行かなくて済むよう、棚ごとロボットが動かせる仕組みを導入している。

ただ、日本の物流会社がどこもAmazonと同じように倉庫の自動化に投資ができるかというと、そうではないだろう。それにAmazonの場合、ロボットの作業場は基本的に人が作業していない無人の空間を想定しているが、日本の物流倉庫では敷地面積などの関係から、人が作業している空間も多い。LexxPlussは作業する人がいても柔軟に走行できる自動運搬ロボットを提供することで、今ある現場の動きを妨げずに、ロボットに任せられる作業は自動化できるようにしたい考えだ。

LexxPlussの自動搬送ロボット

自動搬送ロボットには大きく分けると、床に敷いた誘導線上に沿って軌道走行するAGV(Automatic Guided Vehicle)と、誘導線を必要とせず自動運転技術を搭載し、自律的に走行するAMR(Autonomous Mobile Robot)とがある。LexxPlussのロボットは、この2つを組み合わせた「ハイブリッド制御技術」を実装しているのが特徴だ。これにより、狭い通路や決まった位置を走って欲しい時は軌道走行に、人や物を迂回する必要がある場所を走行するときは自律走行に設定することで、その現場に合った使い方ができるというわけだ。

LexxPlussの提供する自動搬送ロボットのサイズは60cm×60cmで、これは他社製品と比べると小型と同社は説明している。積載の場合は300kgまで、牽引は500kgまで可能だ。

ビジネスモデルとしては、自動搬送ロボットを原価に近い価格で提供し、運用管理を月額のサブスクリプションで提供するRaaS(Robot as a Service)だ。通常、自動搬送ロボットは買うと1台500万円ほどするそうなので、サブスクリプションモデルにすることにより、中規模の物流倉庫でも導入しやすくしたい考えだ。

LexxPluss代表取締役の阿蘓将也氏

国内外で自動搬送ロボットに取り組んでいる会社はそれなりにある。競合は多そうだが、まだ現場のニーズを汲み取れているプロダクトはないように感じているとLexxPlussの代表取締役を務める阿蘓将也氏は話す。

「お客さんと話をすると『ロボットはいっぱいあるけれど、全然導入できない』という話を聞きます。プロダクトはあっても、ロボットがこうなので現場がそれに合わせてくださいと言われてしまう。現場の課題に合ったプロダクトがなくて、プロダクト・マーケット・フィットしているものはまだありません。競合は多くあるように見えますが、ブルーオーシャンい近い領域だと思っています」。

LexxPlussの自動搬送ロボットは2021年秋頃から一般販売する予定だ。現在は、複数の大手事業者と導入に向けた実証実験を行っている。今回調達した資金はプロダクト開発と人材採用に充てる予定という。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:LexxPluss資金調達物流日本

画像クレジット:LexxPluss

買い物代行サービスのInstacartが283億円を調達、評価額は5ヶ月で2倍以上の4兆円超に

オンデマンド食料品配達プラットフォームのInstacart(インスタカート)は、Andreessen Horowitz、Sequoia Capital、D1 Capital Partnersなどを含む既存の投資家から2億6500万ドル(約283億円)の資金を調達地を調達した。過去数回のラウンドと同様、今回の新しい資金調達はアルファベットのシリーズ指定はされていない。同社の評価額は、これにより390億ドル(約4兆1600億円)に押し上げられた。それは、2020年10月に行われた最後の資金調達で同社が2億ドル(約213億円)を調達したときの、177億ドル(約1兆9000億円)の評価額の2倍以上になる。

投資家が同社の事業価値をこれだけ大幅に引き上げようと考えた背景には何があるのか?簡単に言えば、パンデミックだ。昨年、Instacartは6月に2億2500万ドル(約240億円)を獲得した後、続いて7月には1億ドル(約107億円)のラウンドを行い、それらを含む3回の資金調達を発表した。この矢継ぎ早なベンチャー資本の注入は、人々が隔離しようとしたり、一般的にスーパーのような人間の交通量の多い環境で費やす時間を減らそうと努力した中で、食料品の宅配サービスの需要が急増したため、成長を促そうとしたものと思われる。

このニュースを発表したブログ記事では、Instacartは2020年の間の利用率の成長率について具体的なことは書いていないが、2021年には人員を50%増やし、広告、マーケティング、企業努力を具体的にスケールアップして投資を続けていくという意思を表明している。

製品面では、Instacartは食料品から、処方薬、電子機器、ホームデコレーション、スポーツや運動器具などを含む幅広い製品の当日配達も含むようにその提供を拡大した。同社は、現在進行中の危機が雇用に与えた影響を考えると、当初多くの人々が予想していたのとは逆に、パンデミックの間に消費者支出が増加したという現象を利用しているわけだ。

InstacartのCEOであるNick Giovanni(ニック・ジョバンニ)氏は、同社はこれが買い物習慣の「ニューノーマル」になると予想していると述べている。同社の最近の資金調達の規模とペース、さらにはその膨らんだ評価額は、投資家たちも、この買い物トレンドがパンデミック後に元に戻るとは考えていないことを示唆している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Instacart 資金調達

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nakazato)

顔交換も簡単にできる中国のマシン動画生成スタートアップSurrealが創業3カ月で資金調達

もし動画を作るためのカメラが不要になり、数行のコーディングで動画を生成できるようになったとしたらどうだろう?

機械学習の進歩が、そのアイデアを現実のものにしつつある。私たちも、ディープフェイク技術が家族写真で顔を入れ替えたり、自撮りを有名なビデオクリップに変えたりする例を見てきた。現在、AI研究のバックグラウンドを持つ起業家たちが、アルゴリズムを使って超リアルな写真や音声、動画を生成するためのツールを考案している最中だ。

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こうした技術を開発しているスタートアップの1つが、中国に拠点を置くSurreal(サーリアル)だ。同社は設立からわずか3カ月しか経っていないが、Sequoia ChinaとZhenFundという2つの著名な投資家からすでに、シードラウンドで200万~300万ドル(約2億1000万〜3億2000万円)の資金を調達している。創業者でCEOのXu Zhuo(シュウ・チョウ)氏はTechCrunchに対して、Surrealは今回のラウンドで10件近くの投資オファーを受けたと語っている。

Surrealを創業する前、シュウ氏はSnap(スナップ)に6年間在籍していて、同アプリの広告レコメンデーションシステム、機械学習プラットフォーム、AIカメラ技術の開発に携わっていた。この経験はシュウ氏に、合成メディアが主流になると確信させた。なぜならそのツールは「コンテンツ制作のコストを大幅に下げることができる」からだと、シュウ氏は、深圳(シンセン)にある Surreal社の十数人規模のオフィスで行われたインタビューで語っている。

とはいえ、Surrealには、人間のクリエイターやアーティストを置き換えようという意図はない。実際、シュウ氏は、今後数十年の間に機械が人間の創造性を超えることはないと考えているのだ。この信念を体現しているのが、同社の中国名である「诗云」(シーユン、詩雲)だ。これは、SF作家の劉慈欣(リュウ・ジキン)氏の小説のタイトルから取られたもので、その小説は技術が古代中国の詩人李白に勝てないという物語だ。

「私たちの方程式は『視覚的なストーリーテリングは、創造性プラス制作力に等しい』というものです」とシュウ氏は目を輝かせながら語る。「私たちはその『制作力』の部分に注力しているのです」。

ある意味、マシン動画生成とは、Douyin(抖音、ドウイン、中国版TikTok)やKuaishou(快手、カイショウ)を人気の高いものにしたビデオフィルターを、ステップアップしたような強化版ビデオツールなのだ。既存のショートビデオアプリはプロ並みの動画を作るための障壁を大幅に下げてくれるものの、それでもカメラは必要だ。

「ショートビデオのキモは、決してショートビデオの形式そのものではありません。肝心な点はより良いカメラ技術を手に入れることができるかどうかです。これによってビデオ制作コストが下がります」とシュウ氏は語る。彼はSurrealを、TikTokの親会社ByteDance(バイトダンス)のベテランであるWang Liang(ワン・リエン)氏とともに設立した。

ディープフェイクの商品化

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Tencent(テンセント)、ByteDanceなどの世界最大のテック企業の中にも、GAN(敵対的生成ネットワーク)に取り組んでいる研究チームがある。シュウ氏の戦略は、大型契約へと向かっている重量級のアプリとは直接対決しないことだ。むしろ、Surrealは中小の顧客を狙っている。

eコマース販売者向けのSurrealの顔交換ソフト

Surrealのソフトウェアは現在のところ企業顧客にのみ提供されていて、顧客はアップロードされたコンテンツの顔を変更したり、まったく新しい画像や動画を生成したりするために使用することができる。シュウ氏はSurrealを「動画用Google翻訳」と呼んでいる、なぜならそのソフトウェアは人間の顔を交換するだけでなく、登場人物が話す言語を同時に翻訳し、声と唇を一致させることができるからだ。

ユーザーは動画や画像ごとに課金される。今後、Surrealは顔だけでなく、人の服や動きをアニメーション化することも目指している。Surrealは財務状況の公表を拒んだが、シュウ氏によれば、同社は約1000万件の写真と動画の注文を受け付けたという。

現在、多くの需要があるのは、中国のeコマース輸出企業だ。彼らはマーケティング素材に西洋人のモデルを登場させるためにSurrealを使っている。本物の外国人モデルを雇うのはコストがかかるが、アジア人モデルを採用しても効果があるかどうかはわからない。Surrealの「モデル」を使用することで、一部の顧客は2倍の投資収益率(ROI)を達成することができたとシュウ氏はいう。数百万ドル(数億円)のシード資金を手にした Surreal は、アルゴリズムの改善のために大量のデータを収集できるように、オンライン教育などのより多くのユースケースを模索することを計画している。

未知の領域

Surrealを支えている技術は、敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる比較的新しい技術だ。機械学習研究者の Ian Goodfellow(イアン・グッドフェロー)氏が2014年に発表したGANは、画像を生成する「ジェネレーター」と、画像が偽物(フェイク)か本物(リアル)かを判別する「ディスクリミネーター」のペアで構成されている。このペアは、ジェネレーターが満足のいく結果を出せるようになるまで、敵対的な役割として訓練を行う。

GANが悪意ある者の手に渡った場合には、詐欺やポルノなどの違法行為に利用される可能性がある。Surrealが個人ユーザーの利用ではなく、エンタープライズでの利用から始めている理由の一部はその点にある。

Surrealのような企業はまた、新たな法的課題を提起している。機械が生成した画像や動画の所有者は誰なのだろう?著作権を侵害しないようにするために、Surrealでは顧客に対して、アップロードするコンテンツに対して権利を持つことを求めている。誤用を追跡し防止するために、Surrealは生成したコンテンツの各部に暗号化された目に見えない透かしを追加し、所有権を主張する。Surreal が作成した「人物」がたまたま実在の人物と一致する可能性もあるため、同社は生成したすべての顔とオンラインで見つけた写真を照合するためのアルゴリズムを実行している。

「倫理問題に対してはSurreal自身が解決することはできないと思っていますが、私たちはこの問題を探求していきたいと思っています」とシュウ氏は語っている。「根本的に、(合成メディアは)ディスラプティブなインフラを提供すると思っています。それは生産性を高めます。生産性がこのような応用にとっての重要な決定要因となっているのですから、マクロレベルでは避けて通ることはできません」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:SurrealGAN中国機械学習資金調達ディープフェイク

画像クレジット:Surreal

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

「シリコンバレー以外」の場所にあるシードステージ企業を支援するChicago Venturesが67.2億円を調達

ニュースのヘッドラインは、ともすると話題性のあるメガラウンドや知名度の高いIPOに独占されがちだ。しかし、それらの企業の多くは、かつてはアーリーステージでシードラウンドの資金調達に奔走していた。

シードステージのラウンドをリードすることが多いVCのChicago Venturesは米国時間3月1日、3つ目のファンドをクローズしたと発表した。この6300万ドル(約67億2000万円)の新ファンドは、同社によってすでに活用されている。

Chicago Ventures(無論、シカゴが本拠地)は、企業を支援する際に非常に特殊な基準を持っている。その一つは、前述の通り、シードステージのスタートアップ企業を支援するだけでなく、通常はそのラウンドをリードするということだ。同社は新しいファンドから25件の投資を目標としており、平均的な投資額は150万ドルから200万ドル(約1億6000万円から約2億1000万円)となるという。

その証拠に、同社はこの3つ目のファンドから11社にこれまで投資しており、そのうち10社のラウンドをリードしている。これらのスタートアップには、CognitOps、CoPilot、Forager、Interior Define、NOCD、OneRail、PreFix、Ureekaが含まれる。

同社はまた特に、シリコンバレーやニューヨークというような、伝統的な人気エリアから離れた場所にある企業への投資に注力している。最近の投資先は、シカゴを拠点とするスタートアップが6社、(最近オフィスを開設した)オースティンに2社、フロリダ州オーランドに1社、ロサンゼルスに1社となっている。

Chicago Venturesは、「見過ごされていた」企業を見いだして支援することに誇りを持っている。同社は、持続し得る企業は「いくつかのエリート市外局番」に限定されることなく、「どこでも」設立できるという根拠のもとに2012年に設立された。

同社は声明の中で次のように述べている。「シードラウンドを一貫してリードしているファンドはほんの一握りしかありません。今もなお、イノベーションの歴史が豊富な業界や地域に業界の注目は集中しがちです。当社はこのギャップを埋めます。我々は、(価値が)明らかになる前にシードラウンドをリードし、会社の創成期に、積極的に運営に関与するパートナーとしての役割を果たしています。当社は東西海岸を避けて投資を行っています」。

設立以来、同社の投資先企業は15億ドル(約1601億円)以上のフォローオン出資を受けてきた。うち17社は現在1億ドル(約107億円)以上の評価を受けており、その中にはCameo、ビジネスソフトウェア・マーケットプレイスのG2、ロジスティクスソフトウェア企業のproject44などが含まれている。

Chicago Venturesは2016年に、6000万ドル(約64億円)のメインファンドと600万ドル(約6億4000万円)のサイドカーファンドを含む、2つ目のファンドをクローズした。同社は今回のファンドでは、サイドカー手法を選択しなかった。

新しいファンドの設立と同時に、Chicago Venturesは、Peter Christman(ピーター・クリスマン)氏Lindsay Knight(リンジー・ナイト)氏をパートナーに昇格させたことも発表した。クリスマン氏は、旧式の企業ワークフローを再構築する企業や、介護や財政的健全性へのアクセスを拡大する消費者向け製品への投資をリードする。ナイト氏は、人材管理、ビジネス開発、機能的なベストプラクティスの共有など、投資後のオペレーションを指揮していく。

Chicago Venturesはさらに、新しいパートナーとしてJackie DiMonte(ジャッキー・ディモンテ)氏をチームに迎えた。ディモンテ氏は以前はHyde Park Venture Partnersで、アーリーステージの企業投資を率いていた。エンジニアとしての教育も受けているディモンテ氏は、Chicago Venturesが2015年から10件の投資を行っている、オースティンに拠点を置く。

2020年、シードステージの米国スタートアップ企業に投資された金額は、TechCrunchが以前の記事で検証したように、かなり浮き沈みがあった。また、激動のビジネス環境にもかかわらず、例年に見られたシード投資の規模が上昇するパターンは継続していた

関連記事:Foresite Capitalがヘルスケアスタートアップを対象とする約1033億円の投資ファンドを組成

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:資金調達

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Aya Nakazato)

宇宙で活躍するロボット労働力の供給を目指す日本のGITAIが18億円の資金調達を完了

日本の宇宙ロボットスタートアップ企業GITAI(ギタイ)はシリーズBラウンドとして総額18億円の資金調達を完了したと発表した。今回の調達で得た資金は雇用に充てられる他、同社のロボット技術が宇宙空間における衛星サービス業務で有効であることを示すための、軌道上実証ミッションに向けた開発と実験に使われる。このミッションは2023年に実施される予定だ。

GITAIは特に米国で人員を増強し、米国市場進出によるビジネス拡大も目指している。

「日本市場では順調に進んでおり、我々はすでにいくつかの日本企業からミッションを請け負っていますが、米国市場にはまだ進出していません」と、GITAIの創業者でCEOを務める中ノ瀬翔氏は、インタビューで説明している。「そのため、まずは下請けとして、米国の民間宇宙企業からミッションを受注したいと考えています。私たちは特に軌道上でのサービスに関心があり、米国の軌道サービスプロバイダーに汎用ロボットのソリューションを提供したいと考えています」。

中ノ瀬氏によると、GITAIは軌道上の人工衛星にハードウェアを取り付けることができるロボットを開発した経験が豊富で、既存の人工衛星や衛星コンステレーションに新たな機能を付加するアップグレードを施したり、電池を交換して人工衛星の寿命を延ばしたり、人工衛星が故障したときに修理したりするのに役立つ可能性があるとのこと。

しかし、GITAIが注目しているのは、宇宙という真空における船外活動だけではない。同社は国際宇宙ステーションに初めて常設された商業用商業エアロックモジュール「Bishop(ビショップ)」を使って、NanoRacks(ナノラック)社と共同でロボットによる汎用作業遂行技術実証も行っている。

GITAIが開発した「S1」は、地球上の産業用ロボットのようなアーム型ロボットで、制御盤の操作やケーブルの交換など、さまざまな能力を披露している。

長期的には、軌道上だけでなく月や火星にも基地やコロニーを建設することを支援できるロボット労働力を作ることが、GITAIの目標だ。NASAは月の地表や月の軌道上にも恒久的な研究拠点を構築する計画を立てており、最終的には火星に到達することを目指している。SpaceX(スペースエックス)やBlue Origin(ブルーオリジン)のような民間企業は、商業活動を視野に入れ、火星に恒久的なコロニーを建設したり、人間を収容する大規模な宇宙空間のハビタットを作り上げることにも目を向けている。ゆえに、低コストで効率的なロボット労働力の必要性は、特に人間の生命が危険な環境において、大いに高まる可能性があると、中ノ瀬氏は考えているという。

中ノ瀬氏は母親を亡くした後、実際にGITAIを起ち上げたと筆者に話してくれた。この不幸な死は、ロボットの介入があれば回避できたと彼は確信しているという。中ノ瀬氏は人間の能力を拡張・増強できるロボットの開発に着手し、この技術が商業的な観点から最も有用で必要とされているアプリケーションは何かを研究した。その結果、宇宙こそが新しいロボット工学スタートアップにとって最良の長期的な好機になると中ノ瀬氏は結論づけ、GITAIが誕生した。

今回の資金調達は、SPARX Innovation for the Future Co. Ltd(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー株式会社)が主導し、DCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合、第一生命保険株式会社、EP-GB投資事業有限責任組合(エプソンのベンチャー投資部門)からも出資を受けている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:GITAI資金調達宇宙

画像クレジット:GITAI

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Apple卒業生によるインドの雇用支援アプリが13.4億円を調達

インドの未熟練労働者の拠り所となっている元Apple(アップル)従業員が立ち上げたスタートアップが、現地時間3月2日、1250万ドル(約13億4000万円)の追加投資の調達を発表した。これは、複数の有名投資企業から800万ドル(約8億5500万円)を調達してからわずか5カ月後のことだ。

関連記事:AppleのOBが運営するインドの雇用支援スタートアップが約8.5億円を調達

創設1年目のApna(アプナ)は、Sequoia Capital IndiaとGreenoaks Capitalが主導する約13億4000万円のシリーズB投資を獲得したと話した。今回のラウンドには、以前からの投資者であるLightspeed IndiaとRocketship VCも参加している。ヒンディー語で「私たちの」を意味する社名のこのスタートアップは、現在までに2000万ドル(約21億4000万円)を調達したことになる。

これまでに運転手、配達員、電気工、美容師など、600万人を超える未熟練労働者がApnaに登録し、求職活動や職業訓練に利用している。しかし、それだけではない。

このプラットフォームの分析結果から、労働者たちが問題の解決に協力し合っていることがわかった。例えば美容師が別の美容師に、客が喜んでチップを弾んでくれる特別な整髪技術を披露したり、雇用主に給与の引き上げを認めさせた交渉術を公開する人もいる。

「そうした労働者のためのネットワークを創造することが、唯一の目的です」と、Apnaの創設者であり最高責任者のNirmit Parikh(ニルミット・パリーク)氏はTechCrunchのインタビューで述べる。「ネットワークの隔たりが最重要の難題でした。これを解決することで、人々のチャンスがどんどん開放されます」と彼はいう。Sequoia India代表のHarshjit Sethi(ハルシジット・セティ)氏は、Apnaは「インドのための職業ソーシャルネットワークの構築」で食い込んできたと話している。

同スタートアップは、いくつもの大手企業にとっても魅力的な存在になっている。Amazon(アマゾン)、Flipkart(フリップカート)、Unacademy(アナカミー)、Byju’s(バイジューズ)、Swiggy(スウィギー)、BigBasket(ビッグバスケット)、Dunzo(ダンゾ)、BlueStar(ブルースター)、Grofers(グロファーズ)などがこれに登録し、求人を行っている。さまざまな現地語に対応しているおかげで、Apnaへの参加方法は実に簡単だ。利用者はバーチャル名刺を作り、就職希望先に見せることができる。

Apnaにとってこの6カ月間は、とにかく成長の期間だったとパリーク氏はいう。Androidで利用できるこのアプリには、たとえば2020年8月の段階で120万人の利用者があった。それから今日までに、就職希望者と求人企業との間で6000万件のやりとりがあったという。8万件以上の雇用主を擁する同プラットフォームの定着率は95パーセントを超えるとパリーク氏は述べている。

「Apnaは、スキルアップのための職業中心のアプローチを採用しています。そこが私たちが最も自慢すべき点です。グレーカラーおよびブルーカラーのための技能または職業訓練教室で、一番問題になるのが結果に責任を負わないことです。Apnaは、このプラットフォームを使うすべての人が、差し引きでプラスになる仕事の結果を出せるようにすることで、この問題を根本から変えました」とLightspeed IndiaのパートナーVaibhav Agrawal(バイバブ・アグラウォル)氏は声明の中で述べている。

画像クレジット:Nirmit Parikh

パリーク氏は、インドで人を雇うことの難しさを家族や友人から聞かされ続けた挙げ句に、このアイデアを思いついた。インドでは何億人もの労働者が懸命に職探しをしているのに、どうしてその職場で人手不足が発生するのか。それがパリーク氏を混乱させた。問題は、労働者と雇用主とを結びつけるスケーラブルなネットワーク基盤がないことだと、パリーク氏は気がついた。

スタートアップを立ち上げる前に、パリーク氏は労働者たちに会い、彼らの協力を得て、彼らが本当に困っている根本の問題点を探り出した。その努力は今もまだ続いている。同社では毎日1万5000人の利用者と語り合い、他にApnaが力になれることは何かを学んでいる。

「私たちが聞いた中に、面接で苦労するという話がありました。そこで、面接の練習ができるグループを立ち上げました。また利用者の技能訓練も開始し、そのために私たちはEdTech企業ともなりました。今後数カ月で、この取り組みを強化する予定です」と彼は話していた。

パリーク氏は、顧客や産業界から膨大な量の反応があると話す。利用者は毎日、どうやって仕事に就いたか、どうやって収入を増やしたかなどをシェア合っているとのこと。この数カ月内に、Uber(ウーバー)やBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)などの著名な企業幹部がApnaに参加したことで、彼らのビジョンはスケールアップしたという。Apnaがインドで取り組んでいる問題はいたる所に存在するものであるため、いずれは世界中の人々に奉仕したいとも彼は考えている。

このアプリには広告は入らない。パリーク氏は、今後も入れる予定はないと話す。「一度、広告ビジネスに足を踏み入れたら、やってはいけないことをやり始めることになります」と彼はいう。広告を入れる代わりに、求人側から料金を徴収し、技能訓練コースを提供することでプラットフォームを収益化することにしている。だが、Apnaでは常に無料のコースも提供しているとパリーク氏は主張する。プレミアム版は、さらに高度な支援を求める人が対象になると彼は話す。

他の地域と同様、インドでも2020年は新型コロナの影響で数多くの事業が閉鎖され、労働者は家に閉じ込められることとなった。インドには、ブルーワーカーとグレーワーカーが2億5000万人以上いる。彼らに確かな就職機会を与えることが、かの国の最大の課題だとセティ氏はいう。

これが開発物語だ。今後も追い続けたい。

カテゴリー:HRテック
タグ:Apna資金調達インド

画像クレジット:Debajyoti Chakraborty / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:金井哲夫)