Frame.ioがシリーズAで1000万ドルを調達、Jared LetoやKevin Spaceyも出資に参加

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クラウドベースのコラボレーション・ツールであるFrame.ioがシリーズAで1000万ドルを調達した。Accelがリード投資家を務め、SignalFire、FristMark Capital、Shasta Venturesなども本ラウンドに参加している。Frame.ioのシード投資家である俳優のJared Letoと、同じく俳優のKevin Spacyも今回のシリーズAに参加している。

Frame.ioはビデオ製作者向けのコラボレーション・ツールで、同社はみずからをビデオ版のGithubやInVisionのような存在だと話す。Frame.ioでは、撮影したビデオをアップロードし、その編集履歴を管理することができる。もちろん、コメントの追加や、チームメンバーからのフィードバックの共有も可能だ。Frame.ioが登場する以前は、DropboxやVimeo、そしてEmailなどのツールをバラバラに使ってワークフローを完成するしかなかったのだ。

Frame.ioではアノテーション機能、スレッド型のコメント、タイムスタンプ付きのコメントなどをサポートしている。また、Frame.ioは150のフォーマットに対応しているため、大小様々なビデオ製作チームがこのサービスを利用できる。

TechCrunchでは昨年Frame.ioのサービスをカバーしている。そして、同社のMRR(Monthly Recurring Revenue、月次更新収入)がローンチ後3ヶ月で3万ドルを超えたころ、シードラウンドでAccelなどから220万ドルを調達、さらに直近のWWDCでは同社のアプリがApple Design Awardを受賞している。

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Jared LetoやKevin Spaceyが出資に参加したことで、同社はハリウッドに進出する糸口をつかんだことだろう。それに加えて、同社は企業分野への進出も実現している。

InVisionが協同デザインスペースとしての地位を短い期間で確立したのと同じように、Frame.ioは多くのビックネーム企業たちをクライアントとして獲得している。Facebook、Snapchat、Paypal、そしてTechCrunchのビデオチームなどがその例だ。

Frame.ioがこのように素早く顧客を獲得することができたのは、企業がビデオを製作する例が増えているからだと同社は考えている。同社によれば、顧客の40%にあたる企業が5年前にはビデオを製作してはいなかったと話しているという。

しかし、今ではモバイル・ビデオが消費者に情報を伝達する有効な手段として認められるようになったという事実を考えれば、Frame.ioは適切なサービスを適切な時に生み出したと言えるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

サッカー本田の投資1号は教育―、中高生向けプログラミング教育のライフイズテックが7億円を調達

中高生向けのプログラミング教育事業に取り組むライフイズテックが創業した2011年といえば「プログラミング」に対する世間の見方は今とは全然ちがうものだった。今でこそ小学校でのプログラミング必修化の流れがでてきているが、5年前は違った。「創業当時はIT業界にはプログラミング教育への理解はありましたが、教育業界ではプログラミングと言っても『オタクになっちゃうでしょ、やめなさい』という声が聞こえたりするくらいでした」。共同ファウンダーでCEOの水野雄介氏は、そう振り返る。

5年前といえばiPhoneが日本で売りだされて2年目。その後、スマホが広く普及して一般の人がアプリやネットサービスに触れる機会が増え、諸外国での教育改革が進んだことなどもあって、近年プログラミング教育への関心は高まっている。

そんな時代背景のなかライフイズテックは今日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズジャフコ電通デジタル・ホールディングスベクトルMisletoeKSK Angel Fundなどから総額約7億円の資金調達をしたこと明らかにした。2012年にサイバーエージェントからシード投資として1000万円、その後2014年8月にシリーズAとして3.1億円を調達していて、累計調達額は約10億円となる。今回のラウンドに参加しているKSK Angel Fundはプロサッカー選手本田圭佑氏のファンドで、これが第1号の投資案件となる。

lifeistechtopスクール、キャンプ、オンラインの3つの形態

ライフイズテックには3つの形態がある。年間通して教室に通う「スクール」、春休みや夏休みに3~8日間の合宿スタイルでプログラミングを学ぶ「キャンプ」、それからブラウザでゲームを通してサイト作りやコーディングの基礎を学ぶ「オンライン」だ。

オンライン教育といえば大学がカリキュラムを広く公開する、いわゆる「MOOCs」(ムークス)がかつて話題になったが、当初期待されたほど世の中にインパクトを出せていない。ライフイズテック共同創業者の小森勇太COOは、次のように言う。「MOOCsはうまく続きません。もともとモチベーションの高い大人はできますが、中高生は無理。だからこそゲームなんです」。

ライフイズテックが6月に開始した「Mozer」(マザー)は、キャラクターがブラウザ上を動きまわってWebサイトの仕組みを教えつつ、実際にユーザーにHTMLを書き換えさせるゲーム仕立てのオンライン教材だ。ライフイズテックでMozerを作ったのは、元スクエア・エニックスCTOだった橋本善久CTO。秋には「進撃の巨人」とのコラボで、さらにゲーム色を高める。

スクールからオンラインへ重点をシフト

スクール、キャンプ、オンラインと3形態あるうち、今回の資金調達で加速させるのはオンライン教育だ。これには次のような背景がある。

ライフイズテックのスクールの月謝は1万8000円で、現在受講生は約500人。東京、横浜、名古屋、大阪、福岡で開講している。秋には秋葉原にもスクールを開講するなど拡大はしているものの、スケールさせるのは難しい。2014年夏に校舎の7割を閉鎖した代々木ゼミナールの生き残りの戦略転換が象徴的だが、塾ビジネスで不動産価格に見合う収益性で継続運営するのは簡単ではない。ライフイズテックの東京白金校は、本社オフィスの半分と兼用とすることで純粋な塾ビジネスとは違う不動産活用をしている。

現在の売上比率でいうと、スクールとキャンプがそれぞれ4割と6割。ひと夏だけで3500人程度が参加して、5日間のキャンプで1人当たり6万7000円のキャンプのほうが収益を上げやすいのだという。キャンプには延べ2万人が参加していて、リピーターも多い。ちなみにキャンプは全国15大学のキャンパスで開催していて、近隣の宿に泊まるケースと、近所から通うケースがある。成果発表には保護者も参加する。

水野CEOは「スクールはアップルストアのような位置付けにしていく」という。アップル全体の売上から言えば、アップルストアの売上が占める比率は微々たるものだ。しかし、ショーケースやユーザー接点として極めて重要な役割を果たしている。ライフイズテック東京白金校は交通量も人通りも比較的多い明治通りの古川橋交差点にあって、カラフルな彩りの窓を通して外から中の様子が見える。

スクールやキャンプよりもオンラインに力を入れていく背景には、地域格差・教育格差を埋めていきたいという水野CEOの考えもある。「キャンプでは地域格差を埋めづらい」ことからキャンプの楽しさをオンラインへ適用していくのだという。

女子比率4割、「楽しい」雰囲気作りのノウハウをネットに

ライフイズテックのキャンプは参加者の4割が女子だ。「女子中高生が来やすい雰囲気作り、コンテンツ、ブランディングには気を付けています」。最初にカラフルなTシャツを参加者に着せるようにして帰属意識を感じさせ、周囲の参加者の興味や人柄が分かってチームで制作物に取り込むときの心理的障壁を取り除かせるなど、「5年かけて作ってきたワークショップのノウハウには自信がある」(水野CEO)という。

ライフイズテックにやってくる子どもたちは、放っておいても一人でプログラミングを学ぶような子どもと限らない。むしろ、親に言われて最初は何となくやってくる子どもが多いそうだ。「ふらっと来ている子たちの熱量を上げていくノウハウというのがあります。パソコンを教えているというより、場所を用意して、創作したくなるような環境を提供しているんですね。地べたに座ったり、教室の後ろのほうで作業している子どもたちがいて、参加者全員が好きな時間を過ごしている。そんな理想の教室というのがあります。雰囲気が良いと作品のクオリティーが上がるんです。学びはモチベーション。それがすべてです。また参加したくなる楽しい体験であるかどうかが大切です」(小森COO)。

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オンライン教材のMozerは今のところ無償で学べるHTML講座という感じだが、作って学び合うSNSのようなものへ進化させていくという。プロジェクト管理ができて、進捗が互いに見えたりするようなものだそうだ。学び合うプログラミングのSNSといえば、MITメディアラボ発のビジュアルプログラミング言語Scratchが想起される。Scratchのサイトは「子どもたちのGitHub」といえるほどの発展と活況を見せている。そのまま適用できるとは考えづらいが、今後ライフイズテックがキャンプ運営の経験とノウハウを活かして、Mozerをどう発展させていくのか注目だ。

「デジタルなものづくりでもイチローみたいな世界で活躍するヒーローを産みたいんです。物が作れるってかっこいいよね、という文化。デジタルものづくりのヒーローが生まれてくると文化が変わってくると考えています」(水野CEO)

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ライフイズテック共同創業者でCEOの水野雄介氏(右)と、同COOの小森勇太氏(左)

ペットシッター・サービスを展開するRover、3億ドルの企業評価にて4000万ドルの資金を調達

シアトルに拠点をおくRoverが、4000万ドルのラウンドを行なっているところなのだとのこと。

このシリーズEのラウンドでは、Roverの企業価値は3億ドルとなっているのだそうだ。出資するのは、これまでにも出資しているMenlo Ventures、Madrona Venture Group、およびFoundry Groupなどだ。ちなみにRoverは前回にも5000万ドル以上の資金を調達している。

Roverのスポークスパーソンに質問してみたところでは「噂や想像に基づく質問には回答できません」とのことだった。

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Roverのサービスインは2011年で、1泊のペットシッターサービスとしてスタートした。昨年には散歩サービスなどを追加してサービスメニューを拡充している。また、飼い主に散歩状況をわかりやすく伝えるRover Cardなる機能も実装している。

Roverによると年間の収益は合計で1億ドルにも達しているそうで、シッター数も50%増加して6万5000名となっているのだとのこと(ライバルとなるDogVacayは、今年初めの段階でシッター数を2万5000名と発表している)。

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(翻訳:Maeda, H

乾電池で動く家電製品をIoT化、「MaBeee」開発のノバルスが1.2億円を調達

乾電池に新しい価値を与える

最近多くのIoT端末が発売されているが、すでに家にあるスマートではない家電製品をIoT化できるのなら、わざわざ買い替えなくてすむし便利だと思う。ノバルスが開発する乾電池の形をした「MaBeee(マビー)」は、乾電池で動く電化製品にセットするだけで、正にそれを実現するIoT機器だ。ノバルスは本日、ニッセイ・キャピタル、みずほキャピタルから1.2億円を調達したことを発表した。今回の資金調達で、セールスマーケティングや開発のための人員強化を進めるとノバルス代表取締役、岡部顕宏氏はTechCrunch Japanの取材に答えた。

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MaBeeeは単3電池の形状のIoT機器で、使い方はとても簡単だ。Mabeeeに単4電池を装着して、単3電池に対応する機器にセットする。これだけで、MaBeeeを搭載した機器は、専用のスマホアプリから操作することが可能になる。例えば、おもちゃのプラレールの場合、普通はスイッチを入れたら電車は一定のスピードでレール上を走り続ける。けれど、その電池をMaBeeeにした場合、プラレールを走る電車のオンオフをスマホから操作したり、スマホ端末を傾けることで電車の走行スピードを変えたりすることができるようになる。

ホビーやエンターテイメント以外でも展開を目指す

MaBeeeは今のところ、ホビー製品やエンターテイメント領域を軸に展開しているが、乾電池で動く製品なら基本的に何にでも活用することができる。今後は他の分野への展開も考えていると岡部氏は話す。例えば、ホームセンターなどで販売されているホームセキュリテイー用のアラームには、通常スマホへの通信機能はない。そういったものにMaBeeeを入れると、アラームが起動した時にMaBeeeからスマホに通知を飛ばすことができるようになる。他にも、例えば子供達が制作した工作にMaBeeeを搭載し、IoT機器のプログラミングを学ぶ機会を提供するなど、教育分野での活用もできると岡部氏は話す。「乾電池は幅広い用途で使われています。将来的には家の中で使うおもちゃ、教育、セキュリティーなど、いわゆるスマートホームのようにMaBeeeのアプリやプラットフォーム上で、乾電池製品やそれ以外の製品がつながっている状態になることを目指しています」と岡部氏は話す。

ノバルスはシードファイナンスでICJ(インクルージョン・ジャパン)から資金調達を実施している(金額は非公開)。今回の資金調達ではニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルが参加し、1.2億円を調達した。その資金でノバルスは、MaBeeeのソフトウェアとハードウェア開発、マーケティング、人材強化を進める予定だ。また、MaBeeeを他の分野で展開していくに辺り、他の製造メーカーとアライアンスを組んでMaBeeeの裾野を広げていきたいと岡部氏は言う。

岡部氏は前職はセイコーインスツルでハードウェア製品の開発に関わり、2015年4月にノバルスに立ち上げた。2015年11月にクラウドファンディングサイト「Makuake」で50万円を目標にキャンペーンを開始し、最終的には大幅に目標額を超える約640万円を集めることに成功した。そして2016年8月から、約140の家電量販店、玩具店、ホビー製品を扱う店舗などで販売するに至った。「大手企業にいると、新規カテゴリーの製品は出しずらいと感じることも多いと思います。けれど私自身もレールがない中で、1年前の自分には想像しえなかったところまで来ることができました。アイデアを引き出しにしまっておくのではなく、一歩踏み出せる人が増えれば、日本全国でもっと面白いものが増えると思います」と岡部氏は話す。

ちなみに、ノバルスは昨年11月にTechCrunch Japanが渋谷ヒカリエで開催したTechCrunch Tokyoのイベントに出展してくれている。「多くの方々にMaBeeeを知ってもらう良い機会となりました。テレビを含め、メディア露出やVCと知り合うきっかけにもなりました」と岡部氏から嬉しいコメントをいただいた。その時の様子がこちら。

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私たちがあなたの会社に投資しない11の理由

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【編集部注】著者のPhil Nadel氏はBarbara Corcoran Venture Partnersの共同創業者でディレクター。

ほとんどのVCと同じように、私たちは毎週しばしば数十件に及ぶ案件をレビューする。私たちは、私たちの一般的な投資基準(例えば業界、ステージ、モデル)に適合しないものを、素早く排除することができるフィルターを開発した。

この初期選考プロセスを生き残った案件は、更なる精査と適性評価の対象となる。このプロセスは様々な観点を含んでいる。財務諸表と収益予測;創業者、顧客、他の投資家との議論;その会社、製品、そして業界に関連するサードパーティ情報のレビューなどだ。このプロセスの様々な段階で、企業は更なる考慮から除外されていき、最後に、残されたレビュー対象の少ない割合の案件に対して、最終的な投資を行うのである。

ある会社に投資しないことを決定するとき、私たちは常に創業者たちに、不採用の決定の理由を説明するための時間を設けている。この記事の目的は、私たちが企業に投資しない決定をした主要な11の理由についてのレビューを提供し、これからの創業者の方々の資金の調達のチャンスを向上させることである。

透明性/率直さの欠如。 私たちは創業者が率直ではない場合には、直ちに興味を失う。ベンチャー投資は信頼関係に基づいているのだ;不透明であることは関係に対する不吉の始まりである。

占有性/防御性の欠如。 もし企業が、潜在的な競合相手に対抗するための独自性を占有していない場合、その成功はやがて没落に繋がる。

これが何を意味するのか?堀がなければ、会社の成功は簡単に模倣されてしまう。成功すればするほど、より多くの競合を引き寄せてしまうのだ。しかしもし、その会社が秘密のソースを持っていたなら ば ‐ 技術、プロセス、知識、関係、その他などが含まれる – 持続的な成長のオッズは遥かに高くなる。先発であることの利点は、初期の段階では有用だが、それは長期的には通常あまり助けにはならない(例えばMySpace)。

実績がありスケーラブルな有償マーケティングチャネルの欠如。 私たちは、当社の資本を収益成長の燃料として使うことができる企業に投資することを好む。もし対象企業がまだ、スケーラブルでコスト効率の高いマーケティングチャネルを見つけていない場合には、それらを見つけるための実験とテストに私たちの資金を燃料として使うことになりがちだ。

私たちは、実績あるチャネルを拡大するために私たちの投資を使用できるように、少なくとも既にそうした初期テストを十分に行っている企業に投資することを好む。有償顧客の獲得を心の底から理解していて、私たちの成長に関する質問に「グロースハッカーを雇いますから」と答えない創業者たちに、私たちは強く惹かれる。

自身の主要業績評価指標(KPI)を知らない。 私たちは創業者によるその企業自身のKPIに対する知識の深さと、会社の成功との間には、直接的な相関関係があることを発見した。

私たちは、創業者がその会社に全てを捧げていることを確認したい。

まず、創業者たちは彼らのビジネスに、どの指標が重要であるかの理解を示さなければならない。次に、彼らはそれらのメトリックスを適切に測定し、計算していることを示さなければならない。最後に、彼らは各KPIに影響を与えるにはどのレバーを引くべきか、ビジネスを成功させるためには、どのKPIを微調整する必要があるのかについて熟知していなければならない。

短い予算計画。 私たちが企業に投資する場合、少なくとも12ヶ月分の月次予算計画を持っていることを望んでいる。資金の調達には多くの時間と労力が費やされ、ビジネスの成長から創業者たちを遠ざけてしまう。私たちは、会社がすぐに別の資金調達ラウンドにとりかかる心配なしに、チームが成長に注力することを可能にする十分なリソースを持っていることを望んでいる。そしてまた、もし会社が12ヶ月分のKPIの改善と成長を示すことができれば、次の調達ラウンドは、はるかに容易になるだろう。

月次予算計画を計算するには、創業者は、現在の出金速度を知っている必要があり、そしてどのように調達した資金を利用していくのか、毎月末毎にどのくらいの現金を使っていくのかに関する、詳細な予測を立てなければならない。この計算は以下の仮定で行うことができる:(1)ゼロ収益、(2)ゼロ成長で、現在の収益が続く、または(3)これまでの傾向に基づく合理的な収益の成長が望める。

TAM(総市場規模)が小さすぎる。 私たちはしばしば、比較的小さなグループが直面している問題への、革新的で時に独創的な解決策を持っている企業をみかける。買収されることを目指す起業は、その収益可能性を買収者にとって意味のあるものにするために、十分に大きな市場にアプローチする必要がある。もしある企業が、同社のソリューションが対象としている市場の大きさが妥当であることを示すことができない場合(私たちの場合、それは通常年間10億ドルの市場である)、私たちは通常は見送ることにしている。

未発売または未出荷。 私たちは企業が製品を売り始めたときに、その評価の高まりに伴ってはるかに投資リスクが低くなることを知っている。言い換えれば、企業が売上のない状態を卒業して、顧客が喜んでお金を払う製品の製造と出荷に移行したら、その評価の高まり以上にリスクが減少するということだ。したがって私たちは、対象企業が最初の販売を行い製品が市場に受け容れられる初期の証拠を示した後に投資をすることは賢明だと考えている。

ビジョンがない。 私たちは、現在の会社を100倍のサイズにするための、明確な成長のビジョンを持っている創業者の企業に投資するのが好きだ。実際にその成長を成し遂げるためには、そのビジョンからの逸脱も必ず必要になるのだが、一方ビジョンを欠いていてはその達成ははるかに遠ざかってしまう。激しい嵐の中でも、北極星が創業者たちに道を示してくれるのだ。

競合相手をきちんと理解していない。 多くの企業は、しばしば私に「私たちには競合がありません」と言ってくる。一般にそれは信じがたいことなので、こう返答するようにしている「あなたが対象とする市場では、あなたが対応しようと考えている課題を現在はどのように解決しているのですか?それがあなたの競合相手ですよ」。

この初歩的な知識を超えて、創業者は競合他社がどの市場セグメントに取り組んでいるのか、そしてどのように売り込んでいるのかを睨みつつ、競合他社によって提供されているソリューションを徹底的に理解しておく必要がある。企業の潜在的な顧客は、その製品を他の利用可能なソリューションと比較する。そして頭の良い創業者たちはその製品を正しく位置付けるのだ。

こうした他のオプションについて精通していないこと、そして自らの製品を差別化できないことは、すなわち失敗のレシピである。

偏った創業者チーム。 製品は作られる必要があるし、また製品は売られる必要がある。これらのタスクは1人ではほとんど賄うことのできない、非常に異なるスキルを必要とする。私たちは、エンジニアリングと開発から販売とマーケティングまでの、様々な専門性をもつ創業者チームに会うのが好きだ。

会社の創立時からあらゆる専門性をしっかりと持つことは、偉大な製品を作ること、売れる製品を作ることを確実にする。もちろん、企業は欠けている部分の人材を雇用することができるが、その補った部分は企業のDNAの一部にはならない。加えて、雇用した働き手を管理する側の人間が、関連領域での経験を積んでいることが常に好ましい。

リスクを負っていない。 私たちは、創業者たちがその会社に全てを捧げていることを確認したい。最低でも、彼らはフルタイムでそのビジネスでに従事する必要がある。理想的には、彼らには同時に、自分のお金の比較的大きな部分を会社に投資していて欲しい。ポール・グレアムはかつて、創業者たちがそうすることによって「失敗を死ぬほど恥ずかしいと考えるようになり」、すぐに「倒れるまで戦うことを誓う」ようになるのだと書いた。全く同意する。

このリストは網羅的ではないが、なぜ私たちが(そして恐らく他の初期ステージ投資家たちが)案件を採用しなかったのかに関わる、ありがちな理由を示して、これからの創業者たちがそうした問題に確実にアプローチするための役立つチェックリストになることを期待している。ところで、もしあなたがこうしたことをもう全て正しくやっているというなら、是非話を聞かせて欲しい。

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(翻訳:Sako)

友人知人の転職を支援して報酬がもらえる「SCOUTER」約6100万円を調達—開発やマーケティングを強化

左からクルーズ代表取締役社長の小渕宏二氏、SCOUTER代表取締役社長の中嶋汰朗氏

左からクルーズ代表取締役社長の小渕宏二氏、SCOUTER代表取締役社長の中嶋汰朗氏

ソーシャルヘッドハンティング「SCOUTER」を運営するRENOは9月6日、プレシリーズAラウンドでクルーズ、イーストベンチャーズ、三菱UFJキャピタルを引受先とした総額約6100万円の第三者割当増資を実施。同時に社名をサービス名のSCOUTERに変更することを明らかにした。

2016年4月からサービスを開始したSCOUTERは、紹介者としてユーザー登録し審査を通過した「スカウター」が、知人・友人など身の回りの転職希望者を企業に紹介することを支援。無事採用が決まれば、紹介者が転職者の年収の5%(最低15万円から)を報酬として受け取れる、という人材紹介業界では異色のシステムを採用している。企業側は求人情報を無料で登録することができ、広告費をかけずに採用活動を行うことが可能だ。採用が成功した場合、SCOUTER社は転職者の年収の30%を上限とした手数料を受け取り、転職者にも紹介者と同額の祝い金が支払われる。

SCOUTER代表取締役の中嶋汰朗氏によれば、スカウターによる紹介の特徴は「転職を考えてはいるがまだ活動を始めておらず、人材紹介サイトにも未登録の潜在層」や「ヘッドハンターから声がかかり、口コミだけでも次の就職先を決められるような優秀な人材」が集まりやすいことだという。「役員クラスの転職者紹介で、1社目で双方合意して転職が決まった例もある。紹介された転職者が転職後にスカウター登録して知人を紹介するという連鎖反応も起きている」(中嶋氏)

サービス開始から4カ月が経過し、スカウターの数は400人を数え、サービス内に掲載されている求人数も累計1500件を超えた。

中嶋氏はサービス成長の要因について「職種や年収などの条件だけでなく、転職者の人柄を知るスカウターが本当に合う企業を選んで紹介できることだ。スカウターのレポートを見ると『子どもが生まれたので働き方を変えたい』『今の会社のここが合わないので転職を考えている』といった転職者のリアルなニーズが浮かび上がる。他のエージェントではなかなか言えないようなことも本音で話せるのでミスマッチも起こりにくく、人間的な魅力が伝えやすいのだろう」と話す。

SCOUTERでは、今回の調達により開発体制とマーケティング施策を強化。SCOUTERサービスを事業展開の主軸に据えるべく社名を変更し、一層の事業拡大を図る。

「世界最大級の人材紹介エージェントとして、紹介者数で5000名を超える規模のサービスを目指す」と中嶋氏。「そのためスカウターの手間を軽減すべく、簡単な紹介でも登録ができるようにしたい。また現在は職業紹介事業者としてサービスを提供する上で、スカウターには当社と雇用契約を結んでもらっているが、2016年内には雇用契約なしで人材紹介には当たらない活動ができるコースも用意する予定で、副業を禁止されているビジネスマンでも参加できる形にする。さらに新卒者向けのサービス展開も準備している」(中嶋氏)

UI解析でWebサイト改善、USERDIVEがDraper Nexusらから4億円調達

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WebサイトのUI/UX解析ツール「USERDIVE」を提供するUNCOVER TRUTHは今日、Draper Nexus Venturesをリードインベスターとして、日本ベンチャーキャピタルサイバーエージェントアコード・ベンチャーズみずほキャピタルニッセイ・キャピタルを引受先とする総額4億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。UNCOVER TRUTHは2013年4月の設立。もともと市場調査会社のクロス・マーケティングの子会社としてスタートしていたが、今回シリーズA資金調達で連結対象から外れたかたち。UNCOVER TRUTHの石川敬三CEOはTechCrunch Japanの取材に対し、デロイトや博報堂、電通、NRIなどのコンサル・広告代理店の大手がこぞってデジタルマーケティングの領域へ進出してきているなど「ここに来て日本でもマーケットがすごく動き始めている」と、資金調達の背景を説明する。

USERDIVEはGoogle アナリティクスやAdobe Analyticsなど「Web解析市場」を主戦場としている。これら巨人のツールとの違いは、ページの改善点が分かることだという。石川CEOは「Google アナリティクスでも、どのページが悪いのかは分かります。でも、ECサイトでページ内のカートのどこをどう改善すれば良くなるかは分かりません」と説明する。USERDIVEではユーザーのマウスの動きやタップした場所、スクロールした速さや止まった位置などを元にサイト内でのユーザー行動を可視化するツールを提供している。具体的には実際のユーザー行動を可視化する動画分析、マウスの動きを可視化するマウスヒートマップ、スクロール到達率を可視化するスクロールヒートマップ、ユーザー離脱の原因解析に役立つフォーム分析などがある。

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このヒートマップのデータをECサイトが持つ利用者属性や購買データと突き合わせることで、ページ改善のヒントが得られるという。例えば購入者と非購入者というフィルターでヒートマップを見比べるような使い方。「購入者だけに絞ってみてみると、その多くが商品スペックを見ていたと分かります。ところが商品スペックが現れるページ全体の75%に至る前に来訪者の半分が離脱していたりする。つまり商品スペックをページ全体の75%より上に持ってくるべきだと分かります」。これはUNCOVER TRUTH自身の例というが、導入企業事例を見るか見ないかで法人向けプロダクトの問い合わせ率は全然違ってくる、という気付きもあるそうだ。

多くの場合こうした解析ツールは「さあどうぞ」と世に出してもユーザー側が使いこなせず、具体的改善に繋がりにくい。結局のところツールを使いこなしてPDCAサイクルを回せる担当者がいるかどうかがカギだ。大手代理店はナショナルクライアントに対して、単に解析ツールのライセンス販売を行うだけでなく、アナリスト人員を組織化してビジネスとしている。これに対してUNCOVER TRUTHの石川CEOは「ツールのみで販売していく世界を作っていかないと、グローバル展開も含めてスピードがでない。機械学習を入れてオートメーション化していく」と今後の狙いを語る。ちょうどアドテク興隆によって広告表示がデータドリブンな自動化の世界になってきているのと同様に、UNCOVER TRUTHではWebサイト解析と改善でも自動化を進めていくという。

Web解析市場でGoogle アナリティクス プレミアムやAdobe Analyticsの国内利用企業数をUNCOVER TRUTHでは700社から1000社と推計している。その市場規模はネット広告1兆円の10%、年間1000億円のポテンシャルと見込む。これまで2013年の創業から3年間で、富士フイルムやベネッセコーポレーション、ニフティなど約300社にサービスを提供。ちなみに、UNCOVER TRUTHではネイティブアプリ向けの「USERDIVE for Apps」も提供しているが、ビジネスの主体はウェブ。モバイルでもWebView(アプリ埋め込みのブラウザ)を使ったサービスが断然多いのだそうだ。

Rapyuta Roboticsが10億円を調達、警備や点検に使えるドローンを手始めにRobot-as-a-Serviceを目指す

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クラウドロボティクスの事業化を推進するRapyuta Roboticsが10億円のシリーズA資金調達を行った。リードインベスターはSBIインベストメントであり、社名は明らかにしていないが事業会社1社も参加する。同社は2015年1月に3.51億円のシードラウンド資金調達を実施しており(発表資料、調達先はCYBERDYNE、フジクリエイティブコーポレーション、ブイキューブ、それにSBIインベストメント)、今回と合わせ総額約13億円を集めたことになる。加えて、同社とチューリッヒ応用科学大学の応用情報技術研究所クラウド・コンピュータ研との共同事業に関して、スイス連邦政府が50万米ドルを支援する。

同社は2014年7月に設立。スイスのチューリッヒ工科大学からのスピンオフ企業である。東京に本社を置き、スイスのチューリッヒ、インドのバンガロールに開発拠点を持つ。27人の社員がいる。CEOのGajan Mohanarajah氏は日本の東京工業大学(東工大)で修士号、チューリッヒ工科大学で博士号を取得した。Rapyutaとは、チューリッヒ工科大学時代にCEOのGajan Mohanarajah氏が始めたクラウドロボティクスのプロジェクト名でもある(このサイトに当時の記録が残っている)。

また同社ではfreeeの財務本部長を務めていた松田海氏が最高財務責任者(CFO)として、また産業革新機構バイスプレジデントを務めていた山脇真波氏が事業開発部長として、ビジネス開拓と内部統制の強化にあたっている。

屋内警備に使えるドローンと独自の位置測定技術を開発

数々のロボットベンチャーが登場している中で、同社の事業の位置づけは独特だ。同社は自らの事業をフェーズ1とフェーズ2に分けて説明しているが、フェーズ1では、自社開発の自律型ドローン(「モーター以外は自社開発した」と説明する)とクラウド上のソフトウェアを組み合わせ、夜間のビル内警備や、共同溝内の調査のためにドローンを活用するビジネスを考えている。実際に、不動産会社や警備会社と商談が進んでいるという。

同社の独自技術として、照明条件が悪い夜間のビル警備や共同溝などでドローンを飛ばすための測距技術がある。屋内の要所に電波の発信器を設置し、ドローンとの間の電波の到達時間を測定することにより、15cm程度の精度で距離を測定する。ロボット研究では画像認識により位置を把握する試みが多いが、「画像処理だと環境、ライティング、壁の模様などが影響する。それに夜間の警備では使えない。電波はよりロバストな手法だ」と同社CEOのGajan Mohanarajah氏は説明する。

信頼できる位置測定の仕組みはロボティクスに欠かせないが、同社は独自にこの技術を開発したことになる。同社のデモビデオを見せてもらったのだが、倒立振り子を倒さないよう浮遊するドローンを高精度で制御するデモや、狭い屋内でドローンを自律的に飛行させるデモが繰り広げられていた。自律性、高精度、高耐久性、障害回避、これらを実用レベルまで高めたドローンを提供する。

クラウドロボティクスの考え方では、計算量が多い部分はクラウド上で処理し、ロボット本体はより安価、軽量になるようにする。特にドローンのようにペイロードの制約が厳しい機体では、処理能力が大きなコンピュータをペイロードとして搭載するよりもクラウドに処理を投げる方法のメリットが出てくる。

気になるのは、ロボット制御でリアルタイム性が必要となる領域と、クラウドとの通信による遅延(レイテンシ)の両立だ。目安として「1秒遅れても大丈夫な処理はクラウド。そうではないものはロボット本体に搭載する」(同氏)としている。「例えば障害回避は、万一ネットワークが切断されていたとしても機能する必要がある」(同氏)。

さらに進んだフェーズ2で同社が狙うのは、ロボットのためのPaaS、「Robot-as-a-Service」だ。同社のプラットフォーム上で手軽にロボット向けアプリケーションを開発できるようにし、複数のロボットベンダーと共同で事業を進める構想だ。いわば、ロボット業界のAmazon Web Servicesの地位を狙っているのだ。さらに同社のプラットフォームの中核部分はオープンソースソフトウェアとして公開する方針である。

「ロボットで難しいのは、いろいろな種類の専門家が必要になること。例えば顔認識が得意な人はロボットに貢献できるのに、現状ではそのためにロボットのハードウェアまで自分でやらないといけない」(Gajan Mohanarajah氏)。プラットフォームの整備により、いろいろな分野の専門家の知識を持ち寄って、ロボットをより賢くすることができるようになるというビジョンである。

ロボットは、お金が必要な分野だ。同社は工場を自分たちで持つ訳ではないが、資金の使い道は多い。今回調達した10億円の資金は、開発費、テスト、エンジニアチームに投資するとしている。例えばドローンなどハードウェアのテストの外注化を進めて「時間を買う」(同社CFOの松田海氏)ために使う。

ロボット産業が立ち上がるかどうか、大きな部分はロボットの「賢さ」にかかっている。そのためのプラットフォームを提供するのが同社のビジョンだ。ただし、同社はまずドローンのハードウェアから自社開発する必要があった。ロボット産業の難しさを改めて感じる。同社のビジョンがロボット産業の立ち上がりに寄与し、世界を変える日が来るかどうか──それは今回調達した10億円をどれだけ有効に使うのか、そして初期の顧客のニーズが同社のビジョンとうまく噛み合うかどうかにかかっているだろう。同社の今後に期待したい。

オンライン翻訳の八楽、コニカミノルタなど大手3社と資本業務提携

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オンライン翻訳ツール「ヤラクゼン」を提供している八楽は9月5日、コニカミノルタ、ソニーネットワークコミュニケーションズ(旧ソネット)、アドバンスト・メディアの3社と資本業務提携を行ったと発表した。八楽は2013年5月、ニッセイ・キャピタルや日本ベンチャーキャピタルなどから1億800万円の資金調達を実施している。今回の調達金額は非公表。

3年ほど前にTechCrunchが取材を行った際、同社のサービスは「ワールドジャンパー」という名称でウェブサイトの多言語化に特化していた。昨年10月のヤラクゼンのローンチ以降、HTML以外にもワード、エクセル、パワーポイント、CSV、PDFとビジネスシーンで広く使われているファイル形式に対応。日本語を含む翻訳可能言語数は、21言語まで増加した。

メールやプレゼン資料といったビジネス文書のほか、ウェブサイトやマニュアルなどを翻訳する際の利用を想定しており、メールにいたっては280種類もの英文テンプレートまで準備されている。

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ヤラクゼンのトップ画面

ヤラクゼンの使い方は極めてシンプルで、まずボックス内に翻訳したいテキストを直接入力するか、翻訳したいファイルをドラッグ&ドロップすると、テキストの解析・機械翻訳がスタートする。その後、原文と機械翻訳文が隣り合わせに並べられた画面に移動し、ユーザーは好みに合わせて訳文の修正をできる。

翻訳の精度を高めたい場合は、クラウドソーシングサービスを利用したクラウド翻訳(言語や内容に応じて文字/ワード当たり6円〜18円)や、プロの翻訳家にお願いするプロ翻訳(言語に応じて文字/ワード当たり15円〜20円)を1文単位から利用可能だ。

機械翻訳時には数百万件におよぶフレーズ集(翻訳メモリ)が参照されるため、メールなど簡単な内容のテキストであれば、機械翻訳だけでも実用に耐えうるレベルの訳文が生成される。さらに自分で修正を加えた訳文の情報もデータベースに保存されるため、以後の翻訳時には修正が加えられたフレーズが参照され、翻訳の精度がさらに高まる仕組みになっている。ブランド名や商品名、社内用語など、異なる文書間で統一したい訳語についても単語集に追加できる。

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翻訳作業画面

翻訳メモリや原文・訳文のパラレル表示、文章のセグメンテーションなどは、翻訳業界標準のTradosやWordfastといった翻訳支援ツールに採用されている機能にも関わらず、基本機能だけのフリープランであれば、ヤラクゼンを無料で利用することができる。その他にも、自動翻訳の文字数や、フレーズ集の最大保存可能数、ユーザー間のファイル共有などの条件に応じて月額980円(月ごとの契約の場合は1280円)のプレミアムプランや、月額3980円(同4800円)のカンパニープランが用意されている。

八楽で取締役COOを務める湊幹氏によれば、現状のユーザーは外国語でのコミュニケーションが必要になる機会の多い、ITやインバウンド(宿泊施設・飲食店)、メーカーといった業界で働く人がメインだ。具体的な数値は公表されていないものの、現時点ではフリープランを利用しているユーザーの数が圧倒的に多く、プレミアム・カンパニープランの利用者はそれぞれ数%程だ。そのため、今回発表された業務提携を通じて、プレミアム・カンパニープランのユーザー数を増やしていきたいと同社代表取締役の坂西優氏は語っていた。

さらに、提携先のひとつであるアドバンストメディアは音声認識技術で知られていることから、今後モバイル分野へも注力して行き、会話の内容を認識して翻訳まで行う”翻訳機”アプリや、複数言語対応の議事録自動作成ツールなどの開発を検討していると湊氏は語る。

外国語に対応したPOPを作成するなどのインバウンドサービスに取り組むコニカミノルタとは、共同で法人向け多言語コンテンツ制作サービスを新たに公開する予定だ。

もうひとつの提携先であるソニーネットワークコミュニケーションズとは、ヤラクゼンの法人向け販売で協力していく。

WordPressのオフィシャルプラグインが公開されているように、八楽はAPIの導入にも力を入れており、今後提携先のネットワークや調達資金を利用して、法人向けサービスのマーケティングや営業力の向上に努める予定だ。

HTCがVRゲームのSteel Wool Studiosに500万ドルを投資

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HTCは、引き続きVRエコシステムの構築に向けて重点的な投資を行いつつ、いつかはVR市場の覇権を握ろうとしている。

オークランドを拠点とするゲームスタジオのSteel Wool Studiosは、アニメ界での数十年におよぶ経験を持つ元Pixar社員によって設立され、本日(米国時間8月31日)HTCが単独で参加したシリーズAで500万ドルを調達した。なお、HTCはVRヘッドセットViveの製造も行っている。

過去6ヶ月の間に、HTCはVR界への投資を促すべく数々の取り組みを行ってきた。4月には、1億ドルを同社のVive Xアクセラレータープログラムに投じ、エコシステム全体の健全な成長に貢献するようなVRハードウェア・コンテンツを生み出しているアーリーステージの企業に対して小規模投資を行っている。

さらにHTCは、VR Venture Capital Alliance設立に向けた動きでも最前線に立っていた。この同盟は、36の投資家から構成されており、VR企業の成長を加速させるため、およそ120億ドルの資金を準備している。メンバーには、Sequoia CapitalやRedpoint Ventures、Lightspeed Venture PartnersなどVC界の大物が名を連ねる。

持続可能なVR業界の台頭は、HTCにとっては死活問題だ。というのも、彼らのモバイル端末事業はここ数年の間に崩壊の道を辿っており、現在HTCは、次世代のプラットフォームと彼らが信じる、VRを先導する存在となるべく方向転換を図っているのだ。

今回の投資は、HTCがこれまでVR企業に対して行ってきた単独投資の中で最高額にあたり、Steel Wool Studiosの制作物に対する同社の熱狂具合が表れている。

「Steel Wool Studiosには、クリエイティブなメンバーで構成された素晴らしいチームがいます。彼らは、誕生から間もないVRカテゴリーにおいて、最先端のコンテンツを制作できる力を既に証明しています」とHTC Corporation CEOのCher Wangは語った。「Mars Odysseyや現在彼らが取り組んでいるその他のプロジェクトを見てみると、グラフィックの驚くべき再現力と強力なストーリーテリングを併せ持ったコンテンツを利用して、Steel Wool StudiosがこれからVRの利用を加速させていくというのがすぐに分かります」

Steel Wool Studiosは、HTCおよびViveプラットフォームと長期間に渡って特別な関係を構築してきた。当初、Steel Wool Studiosはモバイルゲームの開発に注力していたが、同社のファウンダーが2014年にValve Corporation本社を訪れ、Viveヘッドセットのディベロッパー向け初期プロトタイプに触れて以降、すぐにVRコンテンツの制作へと事業内容を方向転換した。結果的に同社は、今年4月のViveヘッドセットのローンチに合わせて、戦略アクションゲーム「Quar: Battle for Gate 18」を発表した。

「Quarである程度実績を作った後、私たちが生まれてからずっと待ち焦がれていたメディアである、VR向けのコンテンツ制作に全てを賭けることにしました」とSteel Wool Studiosの共同ファウンダーであるAndrew Daytonは話す。

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先日、私は9月9日からSteamストアで販売が予定されている、Mars Odysseyの初期のデモ版で火星の表面を歩きまわったほか、まだタイトルの決まっていない別のゲームに触れることができた。そのときも、Steel Wool Studiosが、制作するコンテンツ全てにプレイヤーが夢中になれるようなストーリーを盛り込むことにこだわっているのは明らかだった。

Steel Wool Studiosのファウンダーたちは、今回HTCから資金を調達したからといって、今後全てのコンテンツをHTCのプラットフォーム専用に開発するつもりはなく、Oculus Riftや、もうすぐ発売予定のPlayStation VRといったほかのVRプラットフォーム向けのコンテンツもつくり続けていくと断言していた。

さらに、今回の調達資金によって、Steel Wool Studiosはこれまでのようなゲームのほか、もっと物語に軸を置いたものを含む、異分野のコンテンツ制作が行えるようになった。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

「電子透かし×超流通」でコンテンツ流通の新ルートを開拓するPulitが5000万円を調達

Pulitは、2016年8月29日に総額5000万円を調達した。同社は、独自の「電子透かし」技術をデジタルコンテンツの「超流通(Wikipedia)」の実現のために活用する取り組みを進めている。今回の資金調達に参加したのは、BonAngels Venture Partners Inc.(本社:韓国)が運用するファンドおよび、成松淳氏(ミューゼオ代表取締役CEO)、佐藤裕介氏(フリークアウト 取締役COO、M.T.Burn代表取締役)、松田良成氏(漆間総合法律事務所 所長弁護士)、加藤寛之氏(イロドリ代表取締役CEO)、山口豪志氏(54 代表取締役社長、デフタ・キャピタル アクセラレーター 兼 横浜ジェネラルマネージャ)の各氏である。Pulitは今後、人員を現在の4名から6人程度までに増やし、各分野のパートナー企業と手を組んで今後1年以内をメドに同社サービスを事業化する考えだ。

サンプル0_SD画像

SD画像の例(一部ボカシあり)。コンテンツのキービジュアルであると同時に、画像そのものにコンテンツ配信システムへのアクセスするための情報が埋め込まれている。

同社が考え出したコンテンツ流通の仕組みは、大筋で次のようになる。コンテンツホルダーは、まずPulitのシステムにコンテンツを登録する。扱うコンテンツとして、当初の段階では日本発のコンテンツが国際競争力を持つ分野であるアニメーション作品やコミック作品を想定している。Pulitのシステムではこれらのコンテンツに対して、Direct Access Link(URL)および「SD画像」(SD=超流通。「SD画像」は現段階では仮称)と呼ぶ画像ファイルを紐付ける。

ここでSD画像はコンテンツの「看板」(キービジュアル)としての役割があると同時に、画像そのものに「電子透かし」としてコンテンツのメタデータ(コンテンツ利用条件やDirect Access Link)が埋め込まれている。このような、キービジュアルとコンテンツ配信システムへのアクセスのための情報が一体化した「SD画像」がPulitのシステムを特徴付けている。TwitterなどSNSに「SD画像」を貼り付けて情報を拡散することも可能だ。

もちろんDirect Access Link(URL)そのものをSNSに貼って拡散することもできるが、「(単なる)URLにはない特徴がSD画像にはある」と同社CEOのKunwoo Lee氏は説明する。「(単なる)URLは有料コンテンツ発信には向いていない。URLだけをたくさん保存すると埋もれてしまう。SD画像はローカルに保存でき、いつでも閲覧して素早くコンテンツを探し出せる」(Lee氏)。

ユーザーが最小の手間でコンテンツに到達できることを狙う

ここでユーザーの視点で、スマートフォンなどのデバイスの上でPulitのコンテンツを発見してから再生するまでの流れを追うと、次のようになる。

(1) コンテンツの発見。SD画像がWebサイト、SNSなどに置かれているのを見て、デバイス内のギャラリーに保存する。あるいは、Direct Access Link(URL)がSNSなどに貼られているのを発見し、クリックする。

サンプル2_SD画像の閲覧

ギャラリーに保存したSD画像から、ワンクリックでコンテンツ閲覧アプリへ遷移できる。

(2)SD画像もしくはDirect Access Link(URL)をクリックするとコンテンツ閲覧機能を備えたViewerアプリ(PulitのViewer APIを組み込んだアプリ)が立ち上がる。もしViewerアプリがない場合はViewerアプリの入手の画面に誘導する。

(3)コンテンツが広告モデルの場合はそのまま再生し、課金モデルの場合はその場で購入できる。なお、コンテンツホルダーは広告モデルにするか課金モデルにするかを管理画面から自由に指定できる。

(4) 後で見たいコンテンツ、繰り返し見たいコンテンツの場合、SD画像をギャラリーにダウンロードする(URLをブックマークするのと違いキービジュアルを見ることができる)。

以上の流れの中で重要なのは、コンテンツ再生までをシームレスにカバーしてくれるViewerアプリだ。このViewerアプリについては、Pulitが独自アプリを配布するというよりも、ニュースアプリやSNSのようなすでに多数のユーザーを抱えている有力アプリがViewer APIによりSD画像再生の機能を組み込む方向で普及させていく考えとのことだ。

コンテンツ配信元としては、アニメーション制作会社2社、コミックのエージェント会社2社と交渉中としている。他の分野のパートナーとも交渉中だ。

ユーザー、コンテンツホルダー、広告主にメリットがある「もう一つの配信ルート」を目指す

Pulitのシステムが狙うのは、ユーザー、コンテンツ提供者、広告主のそれぞれにとって、手軽で有利な「もう一つの手軽なコンテンツ配信チャネル」となることだ。

例えばユーザーから見れば、従来のコンテンツ配信では、配信チャネル(コンテンツ配信サービス)ごとにそれぞれ独自アプリをインストールし、入会手続き、課金のためのクレジットカード登録などを個別に行う必要があった。Pulitによる配信の場合、個別アプリのインストールや入会手続きは必要なく、課金もスマートフォンアプリのアプリ内課金のような標準的な方法を使う。コンテンツを発見してから閲覧するまでの手間を最小限に抑えられるとPulitでは考えている。

一方、コンテンツホルダーから見た場合、PulitのViewer APIを組み込んだアプリが増えてくれば、新たな配信チャンネルをコストをかけずに開拓できることになる。Pulitシステムへの登録、SD画像の作成は、独自Webサイトやアプリの構築、課金システム構築に比べてずっと敷居が低いからだ。コンテンツの価格設定なども、自分たちで決められる部分が大きくなる。再生や広告収入に関する情報がコンテンツ提供者にも詳しく開示されることも特色だ。

広告分野の企業も同社の取り組みに魅力を感じているそうだ。コンテンツホルダー側に有利な仕組みにより注目度や満足度が高いコンテンツを獲得できる可能性が高く、コンテンツの閲覧状況を一貫性を持って追跡して効果測定できる仕組みを備えているからだ。

Pulitの独自技術についても少し触れておきたい。同社のコア技術は画像にメタデータを埋め込む一種の「電子透かし」の技術だ。前述のSD画像に情報を埋め込むにあたり、空間周波数が高い領域ではなく中間の領域を使う。SNSなどに画像をアップロードすると大幅な画像圧縮がかかって画像の情報量が減ってしまうが、同社の電子透かしの情報はそのような劣化した画像からでも取り出せる特色がある。なお、画像の隅にある丸い模様の領域には、情報を取り出すさいの「ヒント」としての意味がある。同社の電子透かし技術は信号処理/マルチメディアアプリケーション分野の学会SIGMAPで最優秀論文の候補になった実績があり、特許も申請中とのことだ。

ひとつ疑問が残るのは、コンテンツ配信の入り口はPulitのシステムがカバーできるとして、コミックやアニメーション、つまりサイズが大きな画像や動画を含むコンテンツの配信という「力仕事」をどうするのかだ。同社に聞いたところ、詳細を話せる段階ではないものの次の一手を進めているとのことだ。

コンテンツビジネスは難しい分野だが、同社は独自技術と超流通を組み合わせたアイデアで挑む。コンテンツ流通の分野に風穴を開けてもらうことを期待したい。

ファウンダーがVCの資金源を気にすべき理由

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【編集部注】Elizabeth “Beezer” ClarksonはSapphire Venturesの常務取締役。

スタートアップの資金調達は、ストレスのたまるプロセスとして有名だ。莫大な量のインクが、VCにプレゼンを行う際の注意点ひとつひとつについて書くことに費やされ、巷には起業家が契約を結ぶのに役立つとされている”コツ”が溢れている。

しかし、VCへの気遣いや、いかに彼らに印象を与えるかということばかりに労力が使われている一方、リミテッドパトナー(LP)という、ベンチャー界を動かすお金の裏に存在する資金源ついて触れられることはあまりない。

言いかえれば、LPはVCの資金の出元なのだ。LPには様々な形態や規模のものがあり、数万ドルの小切手を切る個人投資家や、1億ドル以上もの投資を行うソブリン・ウェルス・ファンド以外にも、ファミリーオフィスや”機関投資家”(基金、財団法人、年金機構や信託サービスを提供する銀行、ファンド・オブ・ファンズ、保険会社や事業会社)などが存在する。

適切な投資家を選ぶことは、スタートアップの成功において極めて重要な役割を果たす可能性がある。現実問題として、VCの資金無しでは、ほとんどのスタートアップの成長が停滞したままになるだろうし、LPなしではVCがスタートアップに投資できなくなってしまうだろう。したがって、テックエコシステムの中でめったに語られることのないLPが、実はイノベーションの原動力の一端を担っていると言えるのだ。また、ファウンダーは外部からの資金調達にそこまで依存するのであれば、ベンチャー資金についてあらゆるレベルで理解しておかなければならず、LPもその対象に含まれる。というのも、実はLPがスタートアップの役に立つかもしれないからだ。

LPは付加価値を提供していくのか?

現代のVCシステムは、Arthur RockやLaurance Rockefellerなどの大物実業家の努力の結果、20世紀中に誕生した。彼らは、科学やテクノロジーの分野に根ざした、誕生間もない企業へのハイリスクな投資を行っていたのだ。それ以来、VCは成長と共に新たな役割を担っていった。

直近の十年間で”付加価値型投資”が流行し、VCは資金を提供するたけでなく、自分たちのネットワークを通じて投資先のスタートアップに様々な利益をもたらすことが期待されるようになった。このトレンドは今後も続くのだろうか?もしもそうならば、彼らはどのようなユニークな価値を提供していくのだろうか?私は今後も付加価値型のトレンドは続くと考えており、実際にVCも既にその道を進みはじめている。

LPの付加価値とは?

最近多くのLPが、”リミテッドパートナー”という名称の中の、”パートナー”という単語を強調している。彼らは、スタートアップにとっての単なる資金供給者ではなく、信頼の置けるアドバイザーになろうとしているのだ。多くの場合、起業家は資金調達に加え、LPからテック業界や投資家の大きな動向を理解するための視点について学ぶことができる。

関係者の紹介

非常に重要なこととして、いくつかのLPは、パートナーや顧客候補となる人や企業を紹介することで事業価値を提供することができる。これによってスタートアップは、Sand Hill Roadや最近で言えばSouth ParkといったVCが密集するエリアとは全く違うコミュニティやネットワークに入り込むことができるのだ。最近の例を挙げると、Alan Feldが設立し、さまざまなファンドのLPになっているVintage Investment Partnersは、今年だけで200回も顧客をスタートアップに紹介してきた。

LPは市場のはるか上流に位置するため、さまざまな人や企業を紹介できるくらいの広範なネットワークを構築していることが多いのだ。彼らの人脈には、スタートアップのビジネスに直接関連する人や企業のほか、将来の投資ラウンドを率いることになるかもしれないVCや、ジェネラルパートナー(GP)として今後投資を行うかもしれないLPなどが含まれている。

ユニークな視点

前述のような人脈を超え、LPはより広い意味での業界の洞察や独自の視点、さらにはベスト・プラクティスを提供してくれるかもしれない。様々なファンドに参加している投資家として、LPはテック業界にいる他者よりも鋭い視点を持っているのだ。そのため、彼らは業界を観察することでトレンドをみつけだすことがき、さらには何十年もの間に培ってきた情報と経験から長期的な視点に立つことができる。

企業が低迷期を避けることはできないため、起業家は自分のVCやLPがどのくらい力を持っているか、というのを知っておく必要がある。

さまざまなVCやLPが投資に参加することで、広範囲に及ぶアドバイスが期待でき、スタートアップは十分な情報を得た上で物事を判断できるようになる。例えば、ヨーロッパまたは中国で広く投資活動を行っているLPであれば、それらの市場の変動がシリコン・バレーにどのような影響を与えうるかという情報を共有することができるかもしれない。さらには、必要応じて、ヨーロッパ市場へ拡大する際の助けとなるような人たちを紹介してくれる可能性もある。

LPのリードインベスター化

LPの多くは、GPと共に直接投資を行うことで、より積極的にスタートアップとの関わりを深めている。PitchBookのデータによれば、LPの直接投資および共同投資の額は、世界的に見て2009年以来伸び続けており、そこにはもっともな理由がある。彼らが信頼するスタートアップに対して、直接投資を行って”倍賭け”したり、VCと共同投資を行ったりすることで、LPは運用益を増やすことができる上、その分野に特化した経験を積むことができるのだ。

さらに良いことに、このトレンドの結果、LPとGP、LPとスタートアップは、より親密な関係を築いていった。直接投資を行うLPの存在によって、VCとLPの間の境界線がぼやけはじめているのかもしれない。これはつまり、特にレーターステージにあるスタートアップにとって、LPが次のラウンドのリードインベスターになる可能性があることを意味する。これだけでも、ファウンダーがLP界へ目を向ける良い理由になる。

低迷期を乗り切る強力なLP

ちょうど起業家が条件規定書を受け入れる前に、VCの沿革や強みについて細かな評価をするように、彼らは、VCの影に隠れたLPについて知ることで恩恵を受けることができるかもしれない。企業が低迷期を避けることはできないため、起業家は自分のVCやLPの力を知っておく必要があるのだ。さらに彼らは自分たちの投資家が低迷期を生き抜いていけると信じなければならない。1回投資したからといって、LPが将来的にも全てのファンドに参加するとは限らない。そのため、長期的にコミットしたLPのいない企業は、熱心で力を持ったLPのいる企業ほどは成功しない可能性が高いのだ。

透明性の向上とこれから

この新時代の到来の告げる主な要因は、VC界の透明性向上に向けた動きだ。スタートアップにとって、資金の供給源に関して議論することは一般的である。同様に、私たちは、VCが段々と資金源に関してオープンになってきていると感じる。というのも、彼らは、起業家からLPへのテックエコシステムへの理解が、ひいてはエコシステム全体の強化につながると認識しているのだ。虫のいい話だが、この話に関する私たちのお気に入りの例が、Point Nine Capitalの共同設立者兼マネージングパートナーであるChristoph Janzがツイートしていた「私たちの秘密武器は何だと思います?それは最高のLPです」という言葉だ。

さらに、起業家の中には、自分たちの利益で最終的に誰が得をして、その目的は金銭的なものか、道徳的なものかということを気にする人もいる。モラルに基づいた強い使命を持つ企業は、全くお金と関係がない理由でLPを選ぶかもしれないし、VCやファウンダーの中には、どのLPが投資成績を公表しなければならず、どのLPが公表しなくてもよいのかを知りたがる人もいるだろう。もしも、企業の売却で巨額の収益を得たのであれば、VCだけでなくLPも儲けたこととなり、起業家にはそのお金が誰の手に渡るのかを知る権利がある。

つまり、スタートアップが新たな投資家を受け入れるとき、彼らは単にVCを受け入れるだけではなく、そのVCを構成しているLPをも見据えているのだ。LPがさらに積極的な役割を担うようになってきたということは、LPとの協業について理解している起業家にとって大きなチャンスを意味する。恐らく未だ解明されていない洞察や付加価値がそこにはたくさん存在するのだ。

注:Sapphire VenturesはPoint Nine CapitalのLP。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

CozyがシリーズBで850万ドルを調達、借主と不動産管理会社のやりとりを簡素化

Lazy woman and dog watching TV in messy living room

不動産管理会社と借主のやりとりを効率化するプラットフォームを提供しているCozyは、本日(米国時間8月30日)850万ドルのシリーズBをクローズした。American Family Venturesがリードインベスターとなった今回のラウンドには、Social CapitalGeneral Catalystのほか、2012年に行われた同社の150万ドルにおよぶシリーズAに参加した全ての投資家が再度参加していた。

私たちの家が日に日に”スマート化”していく中、住宅の賃貸手法はスマートと呼ぶには程遠い。多くの不動産管理会社は未だに私用のメールアドレスを利用して借主と連絡をとっているばかりか、物件広告はさまざまなウェブサイトに散乱しており、両者のやりとりは良くて毎回異なるプラットフォーム、悪ければ特定のプラットフォームを全く利用せずに行われている。

Cozyは、家主の賃貸物件管理を簡素化するほか、借主が物件を探すときや、家主と連絡をとる際の手間を省くようなソリューションを提供している。同社のサービスは、毎月発生する賃貸料の支払プロセスを効率化し、借主のバックグラウンドチェック用のツールも備えている。

Cozy Series B

「Cozyのユーザーが、セットアップを済ませてサービスを利用し始めた後、1年間ほどサインインしない場合があります」とCozyのCEO兼共同設立者のGino Zahndは語った。

このようなユーザーの動きは、ほとんどのスタートアップにとって恐るべき事態だが、Cozyにとっては、賃貸契約の締結こそ同社のサービスが解決するために存在する問題なのだ。

Zahndによれば、不動産管理ソフトウェアは大きく2つの市場に分けて考えることができる。全体の25%の企業が、たくさんの不動産からなるポートフォリオを管理している一方、残りの75%は20件以下の数の不動産しか管理していない。ZahndがローンチしたCozyは、後者のグループをターゲットとしているのだ。

マーケティング予算無しに、Cozyは7万5000の家主と10万の物件をプラットフォーム上に登録させることができた。広告枠を購入する代わりに、CozyはLandlordologyというスタートアップを買収していたのだ。彼らのサービス内容は、端的に言うと不動産管理をしたい人用のKhan Academy(無料オンラインスクール)のようなものだ。Cozyの無料プラットフォームにとって、家主こそがユーザー数を増やす上で重要な存在であったことから、同社の成長の初期段階で買収という選択をとったのは納得がいく。家主がCozyを利用しない限り、借主もCozyを利用することはなかったということだ。サービス利用料は無料のままだが、特定の機能をマネタイズするための計画によって、元々の顧客獲得戦略には変更が発生している。

Cozyは、現在4つある収入源のひとつである賃貸料で、年に5億ドルもの金額を決済している。さらに同社は家主向けの新たな早期支払サービスのほか、信用情報レポートやバックグラウンドチェック結果の販売を行っている。物件ごとに月額2.99ドルを支払えば、家主は自動で通常5日以内のところ、2日以内に賃貸料を受け取ることができる。さらに家主は、決済情報を簡単に直接QuickBooksかExcelへエクスポートすることができる。これらの追加機能を利用して、Cozyは借主と家主どちらにもアプローチすることができるのだ。

前述の戦略のほかにも、本日発表されたAmerican Family Insuranceの戦略的ベンチャー投資部門であるAmerican Family Ventruesからの投資は、借主や不動産管理会社の持つ保険関連ニーズを満たすためのサービスを、Cozyが将来的に開発していくことをハッキリと示すサインだと考えられる。

既に価値のあるデータの集合体を保有しているCozyに保険機能が備われば、ゆくゆくは借主と物件を直接マッチさせるような新たな機能を生み出すことができるだろう。Zahndも、同社がプラットフォーム上で集めたデータを利用することで、最終的に借主と家主、両者のための新たなサービスを創出することができると考えているものの、同時に彼は、直近のロードマップにはまだそのようなデータを利用したサービスは描かれていないと述べた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

農産流通基盤「SEND」運営のプラネット・テーブルが4億円の資金調達、“農業×FinTech”の挑戦も

プラネット・テーブルのメンバーら。中央が代表取締役の菊池紳氏

プラネット・テーブルのメンバーら。中央が代表取締役の菊池紳氏

農産流通プラットフォーム「SEND(センド)」などを運営するプラネット・テーブルは8月31日、SBIインベストメント、Genuine Startups、Mistletoeを引受先とした第三者割当増資により総額4億円の資金調達を実施したことをあきらかにした。評価額、出資比率等は非公開。同社はこれまでに2015年3月にGenuine Startupsと個人投資家から3500万円のシードマネーを調達。同年12月にサイバーエージェント・ベンチャーズ、セゾン・ベンチャーズなどから総額約1億円のシリーズAの調達を実施している。

プラネット・テーブルは2014年5月の設立。代表取締役の菊池紳氏は外資系金融機関、コンサル、投資ファンドなどを経験したのちに起業した。農林水産省のファンド「農林漁業成長産業化支援機構」の立ち上げにも携わった。

SENDの登録飲食店は1000件、生産者は3000件以上に

同社は2015年8月から農産流通プラットフォームのSENDの提供を開始した。SENDは農作物、肉類の生産者と飲食店の間での直接取引を実現するプラットフォームだ。飲食店はプラットフォームに登録した生産者が生産する食材などをオンラインで取引できる。特長となるのは、取引のためのオンラインでのプラットフォームだけでなく、食材保管用の拠点を自ら持ち検品から配送までも自前で行っている点だ。

サービス開始から1年で登録飲食店は1000件、登録生産者数は3000件を突破した。また8月には東京都・目黒区にこれまでの10倍(約200平方メートル)の物流拠点「GATE Meguro(ゲート メグロ)」を新設している。この拠点と後述の物流機能の強化により、これまでの東京都心部(渋谷、広尾、恵比寿、六本木など)から、西東京、川崎、横浜北まで配送エリアを拡大するとしている。

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シェアリングやIoTを導入

今回の調達を受けて同社が進めているのは、いわゆる「シェアリング」モデルやIoTの導入による物流機能の強化、そして農業×FinTech領域への参入だ。

シェアリングに関しては、地域の生産者をネットワーク化し、トラックを共有して地域の集荷を行うモデルを導入するほか、中小配送業者の有休資産を活用したサービスの試験運用を行う。通常生鮮食品の配送は夜中が中心。それ以外の有休時間での配送を依頼できる配送業者をネットワーク化していく。

また、IoTスタートアップなどと組み、物流過程の滞留時間や温湿度変化といった物流ロス要因の可視化を進めるとしている。「物流ロスを減らし、物流によるモノの劣化を防ぐ。品質劣化の原因を追うと製造者の責任になりがちだが、物流の責任になることもある。それを可視化していく。売り手と買い手、どちらとも組んだプラットフォームでないとできない話だ」(菊池氏)。具体的な取り組みについては間もなく発表があるとしう。

今後は「Square Capital」ライクな生産者向け金融サービスも

先ほど「農業×FinTech」と書いたが、プラネットテーブルでは今後、生産者向けの決済やファイナンス支援サービスを手がける。菊池氏は、マーケットを改革するためには商流や物流だけでなく、お金の流れが変わらないといけないと語る。では農産取引においてのお金の流れを変えるというのはどういうことなのか。

生産者には、収穫期や出荷期においては人件費をはじめとした早期支払があったり、作付や生産拡大向けた資金需要があったりと、業界独自の資金ニーズがある。そこにたいしてプラネット・テーブルは金融機関と組み(実際、プラネット・テーブルでは複数の金融機関系VCからの支援を受けている)、独自の決済サービスを提供していくほか、、ファイナンスの支援をしていくのだという。

この話を聞いて思い出すのは、決済サービスのSquareが米国で提供している「Square Capital」というサービスだ。このサービスは、Squareを導入する小売店が事業拡大のための資金をSquareから借り受け、売上の一部から返済していくというプログラムだ。このプログラムをSquareが提供できるのは、小売店の売上や財務状況をビッグデータとして持ち、それを活用して独自の与信機能を持っているからに他ならない。

SENDは生産者と購入者、両方の情報を持っている。これを利用することでSquareと同じように生産者の財務状況を把握し、最適なファイナンス(の支援。自ら出資するのではなく、金融機関を繋ぐ予定)を行えると考えているようだ。「流通が見えるということは、お金の流れも見えるということ。(SENDも売買データから需給予測をしているので)売れることが分かっているのであれば、現物(生産物そのもの)で資金回収するというのでもいい」(菊池氏)

同社では今期中(2017年3月末まで)にもこれらの取り組みを進め、将来的にはプラットフォーム丸ごとをアジア地域にも展開したいと語る。また6月に発表していた生産者向けバックオフィスツールの「SEASONS!」については、当初7月頃の正式リリースを予定していたが、「ユーザーからのヒアリングを行って機能やUI/UXを改善しており、10月にもリリース予定」(菊池氏)としている。

オンデマンドで造園業者を探せるPlows & Mowzが、Scienceなどから150万ドルを調達

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オンデマンドで造園業者や住宅修理業者を探せるサービスを運営するPlows&Mowzが、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ支援のScienceと匿名のエンジェル投資家から150万ドルを調達したと発表した。

Dollar Shave Clubのエグジットに成功したScienceが、次の投資先として選んだのはマーケットプレイス業界だ。

Plows&Mowzのビジネスのアイデアが生まれたきっかけは、共同創業者Wills Mahoneyの故郷であるニューヨーク州シラキュースを襲った約4年前の大吹雪だ。

Mahoneyの母親は自宅に閉じ込められ、道路に出るためには雪をかき分けて出るしかなかった。近所の人々は予備の除雪機を使って仕事に向かっていた。

故郷のシラキュースとミネアポリスでサービスを開始したPlows & Mowzは、その後ボストン、ニューヨーク、インディアナポリス、カリフォルニア州ローリーにもビジネスを拡大した。

「住宅オーナーの65%がプロの造園業者を利用したことがありません。その主な理由は、シーズンごとの契約にかかるコストが高いことが原因です」と共同創業者のAndrew Englanderは話す。「私たちのサービスでは、雪かきや芝刈りなどのサービスを提供する業者をスマートフォンを通して探すことができます。いま存在する造園業界の構造を変えることなく、シームレスに業者と住宅オーナーをマッチングさせているのです」。

シーズンごとの契約ではなくオンデマンドでサービスを提供することで、業者はこれまで獲得が難しかった顧客にもアプローチすることが可能になると共同創業者の2人は語る。

同社の料金体系は、月額料金と1回ごとの料金の2つのタイプに分けられる。

アプリでは事前にそのサービスにかかる料金を確認することが可能で、住宅オーナーと業者の両方が事前にコストを確認することができるようになっている。

「従来では業者が現場に行き、住宅の広さなどを確認したうえで見積もりを出すのが通例でした」とMahoneyは話す。「私たちのサービスでは、その見積もりプロセスは一瞬で完了します。そして業者も素早く仕事に取り掛かることができるのです」。

Plows & Mowzに業者として参加するためには、商用規模の設備、人員、そして100万ドルまで保証する賠償責任保険に加入しなければならない。

Plows & Mowzのプラットフォームでは、これまでに5万6000件のマッチングが成立している。その多くが芝刈りサービスだ。

「私たちのビジネスでは、雪かきサービスを利用した顧客が次第に芝刈りサービスも利用するようになり、そして次には落ち葉の除去サービスも利用するようになるだろうと考えてきました」とEnglanderは話している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook

低消費電力の深層学習で新分野開拓、日本のLeapMindがシリーズAで3.4億円の資金調達

unspecified2012年設立の日本のスタートアップ企業、LeapMindは今日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、米Visionnaire Ventures Fundアーキタイプベンチャーズを引受先とした第三者割当増資で総額約3億4000万円の資金調達を完了したことを発表した。創業者でCEOの松田総一氏によれば、LeapMindはGPUを含む高い処理能力や大容量メモリーを前提としたこれまでの深層学習と違い、精度を落とさずに必要となる計算リソースを減らすことに取り組むスタートアップだ。

特に画像認識や音声認識といった応用分野で、深層学習が大きな前進を見せているのは皆さんご存知の通り。ただ、これまでの深層学習の応用はクラウドだったりGPUをふんだんに投入する「力技」の競争という面があった。ニューラルネットワークは人間の中枢神経系と同じく多数のノードを層状にして積み重ねるもので、最近この層数が深くなっている。現在の深層学習ブームの背景の1つに計算テクニックの発展があったのは間違いないが、それでも計算量は多い。精度を上げるために計算リソースをぶち込むのが「最先端」の研究だ。ボードゲームへの深層学習の適用で圧倒的な成果を見せつけたAlphaGoは、1000個以上のCPU、100個以上のGPUを組み合わせるような取り組みだった。

一方、LeapMindの松田CEOによれば、もっと劇的に計算量を減らすことができる研究が、この1年ほどで出てきているのだという。層と層の間の計算の受けた渡し方の計算順序を工夫したり、受け渡しの数値を実数ではなく2値にしてしまうような研究があるという。例えば、この論文によれば「バイナリCNN」を使った画像分類ベンチマークでは、メモリー効率32倍と58倍の速度向上を達成。精度は2.9%劣るだけだったという。

松田CEOによれば、LeapMindはこうした最新の研究を参照してプロダクトを実装している。深層学習の人気ライブラリの1つ、Caffeに含まれるモデルをLeapMindで実装したところ、Caffeで450MBの容量となったニューラルネットのモデルが、LeapMindでは45KBで保存できた例もあるという。このときの精度はオリジナルのCaffeが58%であるのに対して、52%と十分なものだったという。

すでにできていることを少し精度を落として低コスト、低リソースでやるというインセンティブはアカデミックな世界にはあまりないのか、この方面への研究は注目度が低い。世界的にみると競合としては、VicariousMovidiusといったところがあるが数は少ないのだそう。「この分野を徹底して研究しているLeapMindのほうが大学の研究者より詳しいこともある」(松田CEO)という。

低商品電力になると何ができるのか?

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Droneに高度な画像認識モジュールを搭載するイメージ図

低商品電力で深層学習が利用できるとなると、例えば冷蔵庫に搭載もできるだろうという。冷蔵庫の中身の残りものを画像認識してレシピを提案するといった応用があったとき、最新GPUを搭載してガンガン熱を出してしまっては冷蔵庫という自らの存在を否定するような製品になってしまうが、低商品電力で非力なチップで処理できれば応用可能性が開ける。松田CEOは「今後、名刺入れにさえ深層学習が入ってくるような世界を目指す」としていて、現在はNTTデータ、KDDI、DNP、小糸製作所などと共同研究を進めているほか、実験的プロダクトをいくつか出している

今後は企業と組んで消費者へ届けるアプリケーションを発掘・開発していくほか、自社でモデルを作成してモジュール化した「Juiz System」をSaaSモデルで売っていくモデルの2通りでマネタイズを考えているそうだ。より広く生活者に深層学習の恩恵を届けるためには、それぞれの応用分野を詳しく知っている各企業に任せる、ということだそうだ。

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ところで深層学習を省電力対応していく方向性が今後ひとつのトレンドになるのだとしたら、その技術的アドバンテージのコモディティー化は早そうだ。LeapMindは企業として何の差別化ができるのだろうか? 「確かに2年後ぐらいには技術は平準化していくと思います。ただ、その間にユーザーや共同開発の企業を増やします。そこから入って来るトレーニングデータが大事」(松田CEO)。たとえアルゴリズムでGoogleに勝てなくても、例えば日本人がどんな食事をしていて何が好きなのかといったことの予測精度ではGoogleに勝てるだろうという。「だからバラマキ戦略をやっているのです。深層学習を商用まで持っていけてる企業は少ないですし、より広い企業と繋がる努力をしているAI企業も少ないのです」(松田CEO)

草野球やフットサル対応のチーム管理アプリ「TeamHub」が正式ローンチ、運営元は6000万円調達

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スポーツコミュニティ向けサービスを展開するLink Sportsが、2015年12月にβ版を公開したチームマネジメントアプリ「TeamHub」を正式リリースした。iOS、Androidで利用可能だ。また、ベンチャーユナイテッド株式会社を引受先とした合計6000万円の第三者割り当てを実施したことも同時に発表した。同社は2014年2月にサムライインキュベートおよび個人投資家から合計650万円のシード資金を調達している。Link Sportsは今回調達した資金をもとにエンジニアの拡充を目指すと話している。

アマチュアチームならではの問題点

Link Sportsが正式リリースしたアプリ「TeamHub」は、草野球チームやフットサルクラブなど、アマチュア・スポーツチームの管理者の負担を劇的に減らしてくれるアプリだ。スコアの入力、練習試合などの日程調整や出欠確認、試合結果の共有などをすることができる。

アマチュアチームの運営は、まだアナログの部分が多い。世代がバラバラの人々で構成されるアマチュアチームでは、LineやFacebookなど一つのコミュニケーション・ツールで連絡を完結させるのは難しく、日程や出欠の連絡などはメールや電話で行い、スコアの入力はオリジナルのエクセルシートに入力していくというチームがほとんどなのだ。この問題点を解決するのが「TeamHub」だ。

「TeamHub」を利用するにあたって、チームの管理者以外のメンバーは必ずしもアプリをダウンロードする必要はない。アプリを通して管理者から送られる出欠確認などは、Eメールやフィーチャーフォン、いわゆる「ガラケー」のメールでも受け取ることができ、メールに記載されたリンクから参加表明ができる仕組みだ。

直感的に利用できるスコアの入力機能

また、スコア入力機能は幅広い世代でも簡単に利用できるように工夫されている。サッカーや野球など、スポーツの種目ごとに入力画面が用意されており、シンプルなデザインで直感的にスコアを入力することができるようになっている。現在スコア入力に対応しているのは「フットサル」と「サッカー」のみだが、年内に「ラクロス」、「ビーチサッカー」、「野球」を追加し、2017年には20種目に対応させることを目指す。

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さらに同社は、入力されたスコア情報を元にチームや選手の強さを数値化する機能も開発中だ。Link Sports CEOの小泉氏は、「例えば野球チームであれば野球ゲームのように、チームや個人の能力を可視化できるようにしたいと考えています。そうすることで、その数値と位置情報を利用して練習試合相手のマッチングをすることも可能になります」と話す。アマチュアチームにとって、実力がある程度拮抗した試合相手を探すのは骨の折れる作業であり、この機能が実現すればチーム管理者の負担をさらに減らすことができる。この機能は来年度中にも導入する予定となっている。この他にも、チーム内のお金のやり取りをアプリ上で完結できる送金機能なども開発中だ。

アマチュアチームのマネジメントという市場の可能性

小泉氏によれば、アメリカでは2012年頃からアマチュアチームのマネジメントという分野が盛んになりつつある一方で、まだ日本では発展途上だという。「以前から、日本にもチームのマネジメントができるWEBサービスは存在していました。しかし、スマホファーストで、かつ多種目に対応したマネジメント・ツールを開発したのは当社が初めてです」と小泉氏は話す。市場規模については、「チームのマネジメント分野だけに絞ると、国内では約300億の市場規模。しかし、備品やスポーツ保険の購入費などを含めた”チームスポーツを楽しむ”という市場は約1.17兆円の市場になる。そこを狙っていきたい。また、アマチュアチームのマネジメントがまだ盛んではないアジア諸国への海外展開も今後目指していく」と話す。

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小泉氏はかつて、甲子園を目指す野球少年だった。ところが、肩の故障により選手からチームの運営者へと転向することになる。そこで感じた問題点を解決するために生まれたのが「TeamHub」だ。昨年12月のβ版リリース以降、これまでに500チームが当アプリを利用している。同社はアプリ内の機能解放による課金などのマネタイズにより、月1.5億円の売上高を目指す。

オンライン印刷のラクスル、フィデリティ投信などから20.5億円を調達——既存事業のほか海外展開も強化

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏(写真は2015年3月撮影)

ラクスル代表取締役の松本恭攝氏(写真は2015年3月撮影)

オンライン印刷サービス「ラクスル」などを手がけるラクスル。2015年2月に40億円の大型調達を実施した同社が8月4日、新たにFidelity Investments(フィデリティ投信)、日本政策投資銀行(いずれも新規株主)のほか、オプト、グローバル・ブレイン、GMOベンチャーパートナーズ、Global Catalyst Partners(いずれも既存株主)から第三者割当増資により20億5000万円の資金調達を実施したことを発表した。

ラクスルでは今回調達した資金をもとに、主力である印刷事業に加えて、2015年12月にスタートしたCtoC型配送サービスの「ハコベル」事業(詳細はこちら)の2つの事業領域の成長に向け、マーケティング投資、人員拡充、システム投資を進める。加えて、海外投資と新規事業への投資も進めるとしている。

またラクスルは2015年11月にインドネシアで同様のサービスを手がけるPrinzioに出資しているが、これに続いて、インドのInkmonkへの投資も実施しているという。両社に対しては日本のナレッジを共有するほか、ベトナムや中国に持つオペレーション部隊のシェア、システムAPIの提供などを行い、事業面でのバックアップを行っているという。

ラクスルの創業は2009年。印刷所の非稼働時間を利用して、安価な印刷サービスを展開。これに加えて中小企業向けにチラシポスティングなどのマーケティング支援、前述のハコベルによる配送サービスなどを手がけている。7月末時点での中小企業ユーザーは30万アカウント、売上高は非公開だが3年間で50倍に成長した。またハコベルは現在2000台のトラックを登録しており、マーケティング支援事業と合わせて急成長しているという。

以前の資金調達時、ラクスル代表取締役の松本恭攝(やすかね)氏は「『投資をすれば拡大する』ということが見えてきたので、小さく上場するより赤字を掘ってでもより成長しようと考えた」といった話をしていた。今回の調達について尋ねたところ、「掘った後の大きな利益成長、Jカーブ(事業開始からしばらくの間は投資フェーズで赤字になるが、その後は投資した分大きく成長していくというスタートアップの成長モデル)を実現する。むやみに掘ってるわけではなく、資本効率の良い範囲で、最大の投資をしてる」という回答を得た。また今後の上場に関しては「ノーコメント」とのこと。

なおフィデリティ投信は年金基金や機関投資家の資金をもとに、上場株や債権などに投資を実施している。また傘下のベンチャーキャピタルであるEight Roads Venturesの日本チームがUI/UX改善ソリューションを手がけるKAIZEN Platformやグルメサイト運営のRettyなど国内スタートアップに投資を行ってきているが(厳密にはKAIZENは米国登記)、フィデリティ投信本体での国内スタートアップへの投資は公表されている限りこれが初めて。CrunchBaseにもあるが、フィデリティではこれまでSpotifyやUber、Airbnb、SnapChatなどへの出資を行っている。

海外投資続ける電通ベンチャーズ、今度は子ども向け学習プラットフォーム「Tynker」に出資

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電通が運用するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「電通ベンチャーズ1号グローバルファンド(電通ベンチャーズ)」は8月2日、子ども向けプログラミング学習プラットフォーム「Tynker(ティンカー)」を開発する米Neuron Fuelへ出資したことを明らかにした。出資額は非公開だが、関係者によると数億円規模の出資のようだ。

Neuron Fuelは2012年3月の設立。彼らが提供するTynkerは8〜14歳の子どもをメインターゲットにしたプログラミング学習のプラットフォームで、ゲーム感覚で各種プログラミング言語の基本を学ぶことができる。最近だとドローンやロボットといったデバイスのコントロールまでを学習できる教材も展開している。プログラミング経験のない保護者などでも習熟度が分かるようなダッシュボードも提供し、学習を支援している。累計ユーザー(無料含む)は世界で3000万人以上だという。

海外投資進める電通ベンチャーズ

電通ベンチャーズと言えば、これまでコミュニケーションロボットを手がけるJiboやクラウド対応のスマートフォンを手がけるNextbit、コオロギから抽出したタンパク質を使用した健康食品を開発するExoなど海外のかなりエッジの効いたスタートアップに投資を行っている。少し前に彼らの成り立ちについても聞いたのでここで紹介したい。

2015年4月に50億円規模の1号ファンドを組成した電通ベンチャーズは公開しているだけで8社(Neuron Fuelを含む)の海外スタートアップに投資している。投資ステージはシード、アーリーからレイターステージまで(シードで数千万円から数億円前半程度)、領域は前述の通りだがネット企業から食品やヘルスケアまで多岐にわたっており、どちらかというと電通の本業から少し離れた、数年後に市場が活性化するであろう領域への投資のイメージが強い。

「ファンド組成の理由は2つ。1つは広告業界が変わる中で新しいビジネスをどう作るかということ。またもう1つは電通の成り立ちとして、クライアントをサポートするビジネスを手がけてきたということ。スタートアップについても同じようにサポートしていける」(電通ベンチャーズ マネージングパートナーの笹本康太郎氏)

ファンドを共同で運用するのはフィールドマネジメント・キャピタル。KDDIがグローバル・ブレインと組んで「KDDI Open Innoavtion Fund(KOIF)」を立ち上げたように、共同でディールソーシング(投資先探し)や投資検討を行っている(ちなみにフィールドマネジメント・キャピタル共同創業者でマネージング・パートナーの堀部大司氏と長谷川勝之氏はグローバル・ブレインの出身。KOIFの立ち上げにも関わった)。

彼らが強みにうたうのは、ビジネス開発を支援する「バリュークリエーションチーム」を組織していること。電通本体のリソースを使って、PRやメディアリレーションから、ローカライズなども行っているという。電通ベンチャーズの投資先は基本的に欧米やアジアのスタートアップ。彼らの日本参入に関しての具体的な支援ができるのが強みだそう。たとえばJiboであれば、電通内に「ロボット推進センター」があるため、ここでローカライズやサポートなどができると説明する。「VC業は本業との相性がいい。スタートアップのエコシステム発展のためにも大企業のリソースをうまくスタートアップに運んでいきたい。電通はクライアントのサポートをビジネスにしてきた会社だ」(笹本氏)

本業より“ちょっと先”の領域への投資が多い電通ベンチャーズだが、もちろんCVCとしてファイナンシャルリターンも求めていく。「ファイナンシャルとストラテジーの割合は50対50。投資先とのシナジー重視かと言われるが、やはりファイナンシャルリターンはVCの基本。外部の評価をしっかり取り入れていく」(笹本氏)。ファンドの運用期間は7年。引き続き欧米・アジア圏での投資を進めつつ2号のファンドの立ち上げも計画するとしている。

電通ベンチャーズのメンバー

電通ベンチャーズのメンバー。中央がマネージングパートナーの笹本康太郎氏

Peek.comが1000万ドルを調達、Yelpとのパートナーシップを通じて販路を拡大

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Peek.comは「1000億ドル規模のアクティビティ市場におけるOpenTable」になるため、エクイティファイナンスで1000万ドルを調達したと、同社の共同設立者兼CEOのRuzwana Bashirが発表した。

サンフランシスコを拠点とし、ユタ州のソルトレイクシティにも複数のオフィスを構えるPeek.comは、旅行者や地元の人に向けて、ツアーやテイスティング、レッスンといったアクティビティの検索・ブッキングサービスをオンラインとモバイル経由で提供している。

Peek.comのウェブサイトには、認証済みのカスタマーレビューが掲載されているほか、当日予約の可否もチェックできる各アクティビティの空き状況が表示されている。

現在80人のフルタイム従業員が勤務しているPeekは、Peek Proと呼ばれるオンラインツールも提供しており、ツアーオペレーターがオンラインやモバイル端末でツアーの運営を行うのに利用されている。

Bashirによれば、ツアーオペレーターはウォーキングやカヤックのほか、ボートやヘリコプターに乗ったり、工場見学やSegwayに乗ったりと屋外での活動が多いため、Peek Proはまずモバイル向けに開発が行われた。

さらに彼女は、ツアーオペレーターが気に入っているPeek Proの人気機能が、デジタル免責同意書だと語った。

「水辺に立って今からアリゲーター鑑賞ツアーに行こうとしている中、クリップボードと紙と鉛筆をツアー客に配るのは不便ですからね」

Peek.comはツアーオペレーターからの手数料が主な収入源で、Peek.comか、Peek Proを利用しているオペレーターのウェブサイトを通じて予約されたアクティビティが手数料の対象となる。

Peek.comは「トラベルテック」として、Viator.com (現在はTripAdvisor傘下)、Zozi.comIfOnly.comなどのアクティビティブッキングサイトの競合と認識されているが、Bashirは、彼女のビジネスが旅行と「垂直統合型SaaS」という2つの同じくらい重要な要素から成り立っていると語った。

同社のシリーズAに参加した投資家は、全て富裕層の個人で、機関投資家や企業は含まれていなかった。

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ツアーやアクティビティを紹介するPeekのオンラインマーケットプレイス。

投資家には、Trulia設立者で現在はPeek.comの取締役も務めるPete Flint、TPG設立者のDavid Bonderman、元Oracle社長で長年のベンチャーキャピタリストでもあるRay Lane、Hyatt HotelsのGigi PritzkerとMichael Pucker、そして以前から支援を行っているEric Schmidt、Jack DorseyさらにはTravelocity元CEOのCarl Sparksらが名を連ねる。

Sparksは、Peek.comのマーケットプレイス上の選びぬかれたツアーや、各ツアーに関する高品質なコンテンツ・レビューを賞賛していた。

彼はさらに「消費者は、宿泊施設から移動手段やアクティビティまで、どの製品カテゴリーにもすぐに欲求を満たしてくれるのを期待していますが、(これまでは)アクティビティに関しては、ほとんどが紙のカレンダーで管理されていたこともあり、それが不可能でした。しかし今では、彼らは朝目覚めた後に携帯電話を何回かタップすれば、その日の午後の楽しいアクティビティを予約することができます」と話していた。

Peekの取締役で、Truliaの設立者でもあるPete Flintは、Peekが既に市場の中で良いポジションにあり、各取引でしっかり利益を生み出すことができていると述べた。彼はさらに、新たな従業員の雇用がPeekの次の成長フェーズを支えるカギになると考えている。

ふたりとも、調達した資金が、引き続き優良ツアーオペレーターをPeekのプラットフォームへ誘導するのに利用されるだろうと話した。また、Sparksは、Yelpとのパートナーシップのように、旅行業界の中でパートナー企業を増やすことで、Peekの提供する素晴らしい旅行体験を一般消費者が知るようになり、さらに同社の成長を加速させると語った。

Yelpとのパートナーシップのほか、PeekはHawaiian AirlinesとVirgin Americaにアクティビティ情報を供給している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter