市場成長を受け電気自動車メーカーPolestarが初の外部資金調達ラウンドで約597億円調達

Volvo Car Group(ボルボカーグループ)の独立した電気自動車ブランドPolestar(ポールスター)は、Chongqing Chengxing Equity Investment Fund Partnership、Zibo Financial Holding、Zibo Hightech Industrial Investmentがリードする初の外部資金調達ラウンドで5億5000万ドル(約597億円)を調達した。

韓国のグローバルコングロマリットSK Inc.や数多くの投資家も本ラウンドに参加している。

Polestarにとって初の外部資金調達ラウンドである一方で、これが今回限りではないことを同社のコメントはうかがわせている。同社は米国時間4月15日、電気自動車(EV)をより経済的なものにするテクノロジーの進化、そして成長しているEVマーケットが投資家を引きつけた、と述べた。同社は潜在的な追加の資金調達について世界の投資家と協議中だとも付け加えた。

「当社の新たな投資家は、世界の自動車産業が電動化へと向かう中での最高の成長ポテンシャル、そしてPolestarが確立された産業能力と技術力という魅力的な組み合わせを提供していることを認識しました」と同社CEOのThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏は声明で述べた。

新たな資金はPolestarの資金調達構造を多様化し「今後数年内に画期的な車を発売するのに先立ち、製品開発と技術力を加速させるのに使えるリソースを強化します」と同社は発表文で述べた。

PolestarはかつてVolvo Car傘下の高パフォーマンスのブランドだった。2017年に同社は、刺激的で乗るのが楽しい電気自動車の生産を目的とする電動パフォーマンスブランドに生まれ変わった。このニッチな部門は最初にTesla(テスラ)が切り開き、以降独占してきた。PolestarはVolvo Car Groupと中国のZhejiang Geely Holding(浙江吉利控股集団)が共同で所有している。Volvoは2010年にGeelyに買収された。

立ち上げ後、Polestarは中国に製造施設を開所し、グローバルの販売・流通オペレーションを構築し、Polestar 1と全電動のPolestar 2の2種を発表した。

同社はラインナップを増やしており、今週、Polestar 2のベース価格が安い2つのバージョンを製造すると発表している。

1つのバージョンはモーターが1つのタイプで、デュアルモーターモデルの78kWhバッテリーを搭載し、推定航続距離は260マイル(約418km)だ。そしてレンジが10%アップするPlus Packも提供する。シングルモーターのPolestar 2は2021年末に北米デビューする。

そしてデュアルモーターのバージョンもより簡素化する。デュアルモーターのPolestar 2の推定航続距離は240マイル(約386km)で、新しいPlus Packを加えればレンジはさらに伸びる。

同社はまた、2030年までに初のクライメート・ニュートラル(温室効果ガスの正味排出量がゼロ)のクルマを生産するという、さらに大きな野心も発表した。クライメート・ニュートラルとするのにカーボンオフセットを使うのではなく、新しいEVの製造方法を根本的に変更することで達成する、と同社は話した。ここには、材料の調達から製造に至るまでサプライチェーンの再考、そしてよりエネルギー効率のいい車両製造が含まれる。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動トラックRivianga全米40州で自社保険プログラムを立ち上げ

電動トラックのスタートアップRivianは、米国時間4月15日木曜日にRivian Insuranceプログラムの詳細を発表した。この保険は、同社のデジタル注文プロセスに統合される予定だ。

この保険は当初、40の州で提供される予定だ。「アドベンチャー・ビークル」企業としてのRivianのマーケティングに沿って、顧客は自宅やボート、ダート・バイク、キャンピングカーなどのレクリエーション設備をカバーするオプションもある。同社が保険プログラムを開始するという計画は、1年以上前に求人広告が発見されて初めてリークされた。

この保険サービスが際立っているのは、Rivian車両プラットフォームとDriver+セーフティスイートの統合だ。同社はブログ記事の中で、この統合により「カスタマイズされたデータベースの補償」を提供できると述べている。Rivian Insuranceを選択した顧客には、Driver+の割引料金が適用される。ドライバーはさらに、RivianのActive Driver Assistanceソフトウェアを使用することで割引を受けることができる、別のプログラムも選択できる。

これは、2021年後半に初の電動ピックアップを市場に投入することを計画しているRivianにとって、賢明な動きだ。Tesla(テスラ)と同様に、RivianはRivian Collision CenterとService Centerですべての作業を自社で行うことで、顧客がシームレスな保険プログラムに魅力を感じるようになると考えているようだ。Rivian Insuranceはベテランに続く新規参入者の一例だが、実は大きな利点がある。なぜなら、Tesla Insuranceが利用できるのはカリフォルニア州のオーナーだけだからだ。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

バッテリーのリサイクルと製造を商業化するBattery Resourcersが約22億円調達

輸送市場の電動化が進むにつれ、メーカーは今後10年間に道路から湧き出てくる何万トンもの使用済みバッテリーの処分方法に頭を悩ませ始めている。

Battery Resourcers(バッテリー・リソーサーズ)は、一見簡単そうなソリューションを提唱している。リサイクルだ。しかしこの会社はそこで終わらない。リサイクルした材料をニッケルマンガンコバルト・カソード(陰極)にしてバッテリー製造メーカーに売り戻す「閉じたループ」を開発した。さらに、アノード(陽極)に使われているグラファイトを回収・精製してバッテリーグレードにするプロセスも開発している。

Battery Resourcersのビジネスモデルは新たなラウンドへの投資家の注目を集め、2000万ドル(約22億円)のシリーズBラウンドをOrbia Venturesのリードで完了し、At One Ventures、TDK Ventures、TRUMPF Venture、Doral Energy-Tech Venturtes、およびInMotion Venturesも出資した。Battery Resourcers CEOのMike O’Kronley(マイク・オクロンリー)氏は今回の企業評価額を明らかにしていない。

カソード、アノードと電解槽はバッテリー構造の主要構成品であり、オクロンリー氏はTechCrunchに、このリサイクル・製造プロセスが他のリサイクル業者との差別化要因だと語った。

「私たちがこの業界で革命を起こそうとしているいうとき、それは私たちがやっているのはカソード活物質を作ることだという意味であり、他の多くのリサイクル業者がやっているようなバッテリーの金属を回収するだけではありません」と彼はいう。「私たちはこれらの材料を回収し、まったく新しいカソード活物質を作るとともに、グラファイト活物質の回収と精製も行っています。2種類の活物質はバッテリー製造メーカーに売られて新しいバッテリーに使われます」。

「他のリサイクル業者は金属の回収だけに集中しています。それは銅であり、アルミニウムであり、ニッケルであり、コバルトです。彼らはこれらの金属を汎用品としてそれを必要としているどんな業界にでも売っています」と同氏は付け加えた。「だからバッテリーに戻ることも戻らないこともあります」。

このアプローチによって、バッテリー業界は発掘金属への依存を減らせる可能性がある。今後高まるだけだと予想されている依存性だ。2020年12月に発表された研究によると、EV普及の速さとバッテリー科学の進歩の程度によっては、コバルトの需要は17倍、ニッケルは28倍になるかもしれない。

これまで同社は、マサチューセッツ州ウースターのデモンストレーション規模の施設で運営してきたが、ミシガン州ノバイの施設へと拡大し、分析試験と材料特性解析を行っている。2か所合わせて同社は年間15トンのカソード材料を製造する能力を持つ。今回の資金調達は、商業規模施設の開発に役立てられ、Battery Resourcersは声明で、年間1万トンのバッテリーを処理できるように能力を強化すると言った。これはEV約2万台分に相当する。

この独自のリサイクルプロセスのもう1つの特徴は、旧型新型両方のEVのバッテリーを処理して、現在のバッテリーで使われている最新タイプのカソードを作れることだ。「つまり、Chevy Voltの10年前のバッテリーから取り出した金属を再構成して、現在使われているハイニッケル・カソード活物質を作ることができます」と広報担当者がTechCrunchに説明した。

Battery Resourcersはすでに自動車メーカーや家電メーカーから問い合わせを受けている、とオクロンリー氏は語ったが、それ以上の詳細は明かさなかった。しかし、Jaguar Land Roverのベンチャーキャピタル部門であるInMotion Venturesは声明で、今回のラウンドへの参加は「重要な意味のある投資」であると語った。

「Battery Resourcers独自のエンド・ツー・エンド・リサイクリング・プロセスは、Jaguar Land Roverの2039年までにネットゼロカーボン企業になる旅を手助けするものです」とInMotionのマネージングディレクターであるSebastian Peck(セバスチャン・ペック)氏は語った。

Battery Resourcersは2015年にマサチューセッツ州のウースター工科大学からスピンアウトした後に設立された。同社は以前、全米科学財団、およびGeneral Motors、Ford Motor Company、Fiat Chrysler Automobilesのジョイントベンチャーである米国先進バッテリー協会の支援を受けていた。

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画像クレジット:Battery Resourcers

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Intel子会社MobileyeがUdelvと提携し2028年までに3.5万台の自動走行配達車両3.5万台を展開

Intel(インテル)の子会社Mobileye(モービルアイ)が自動走行車両で野心を膨らませ、配達分野に参入しようとしている。

Mobileyeは4月12日、自動走行する多数の配達専用車両に同社の自動走行システムを提供すべく、Udelvと契約を結んだと発表した。両社は2028年までにTransportersという名称の車両3万5000台超を走らせる計画だと述べた。商業展開は2023年に開始する見込みだ。

まずは米国の商用車リース管理会社DonlenがTransporters1000台をプレオーダーした。

今回の発表は両社にとって大きな意味を持つ。自動走行車両配達スタートアップとして創業されたUdelvはMobileyeの自動走行システムを受け入れ「自動走行デリバリーを可能にするハードウェアとソフトウェアの構築」に注力することを選んだ、とCEOのDaniel Laury(ダニエル・ラウリー)氏はTechCrunchへの電子メールで述べた。

「配達する商品の多様性、配達方法のバラエティ、配達のラストマイルと中間マイルの自動化に関連する込み入った複雑な問題を考えるとき、これは解決すべきエンジニアリングの中心的な問題です」とラウリー氏は述べた。「Mobileyeと提携することで、Udelvはリソースと取り組みのすべてをビジネス応用の最適化に注ぐことができ、その一方でMobileyeはすばやく展開するツールを提供します。ウィンウィンの関係です」。

カメラベースのセンサーのデベロッパーとして始まったMobileyeにとって、この提携は新たな事業拡大となる。同社の技術は高度なドライバーアシスタンスシステムをサポートするものとして大半の車両メーカーに採用されている。偏在、車両5400万台超がMobileyeのテクノロジーを搭載している。

「2社の提携はすばらしい組み合わせで、大規模展開ができます」とIntelのシニアエンジアニア主任で、MobileyeのAutomated Vehicle Standards担当副社長を務めるJack Weast(ジャック・ウィースト)氏は直近のインタビューで述べた。「そしてこれはMobileyeのテクノロジーが、すでに発表した分野に加えて商品配達の分野でも活用されるという公式な初実証ポイントとなります」。

2017年に153億ドル(約1兆6742億円)でIntelに買収されたMobileyeは近年、高度なドライバーアシスタンス技術から自動運転車両システムの開発へとスコープを広げてきた。2年以上前に同社は視覚、センサフュージョン、REM マッピングシステム、ソフトウェアアルゴリズムを含むキットを立ち上げる計画を発表した。そして2018年には、サプライヤーとしてだけでなくロボタクシーオペレーターになるという予想外の計画を明らかにした。同社はまた、自動走行のシャトルをTransdev ATS、Lohr Groupとともに欧州で展開することも計画している。Mobileyeは自動走行車両を使った配車サービスを2022年初めにイスラエルで立ち上げる計画も持っている。

最新の契約は、自動運転システムをロボタクシー以外に応用するというMobileyeの野心を示している。

Mobilieye Driveというブランド名の自動運転システムは、SoC(システムオンチップ)ベースの計算、カメラベースの冗長センシングシステム、レーダーとライダーのテクノロジー、REMマッピングシステム、責任感知型安全論(RSS)ドライビングポリシーで構成される。MobileyeのREMマッピングシステムは本質的には、ADASと自動走行運転システムのサポートに使われる高解像度のマップを作成するために、同社のテックを搭載した100万台超の車両を利用することでデータをクラウドソースする。

Udelvは自動運転テクノロジーを自社の配達管理システムに統合するのにMobileyeと協業する。Mobileyeは車両が使用される間はずっと無線のソフトウェアサポートも提供する。

こうした専用車は人間が運転するトラックや配達バンにあるような典型的な機械的特徴を持たない。いわゆるレベル4の自動運転に対応するようデザインされている。SAE(自動車技術者協会)の定義では、レベル4だと特定の状況で人間の操作なしに車両が運転を制御できる。車両はまた四輪駆動で、配達を行う人にとって有用なLEDスクリーンや商品のための特別コンパートメントを備えている。

Udelvによると、駐車場や荷物積み下ろし場所、集合住宅、私道での車両操縦ができる遠隔操作システムも搭載する見込みだという。

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タグ:MobileyeUdelv自動運転電気自動車Intelロボット配達

画像クレジット:Mobileye/Udelv

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

電気自動車RivianがSamsung SDIとバッテリーセル供給で提携

Amazon(アマゾン)が支援し2021年後半の市場投入を目指している電気自動車メーカーのRivianは、バッテリーセルのサプライヤーとしてSamsung SDIと提携したことを米国時間4月12日に発表した。

両社は買収金額や期間を明らかにしていないが、Rivianが同日に発表した声明の中で、Samsung SDIとは「車両開発プロセス全体を通じて」協力してきたと述べている。

Rivianは同社が「アドベンチャー・ビークル」と呼ぶ「R1T」ピックアップと「R1S」SUVは、極端な温度や耐久性の必要なユースケースに対応できるバッテリーモジュールとバッテリーパックが必要だと指摘した。

Samsung SDIはすでに他の自動車メーカーにバッテリーセルを供給している。2019年、同社はBMWグループと32億ドル(約3500億円)で10年間の供給契約を結んだ。

RivianのRj Scaringe(R・J・スカーリンジ)CEOは声明の中で「Samsung SDIのバッテリーセルの性能と信頼性を、私達のエネルギー密度の高いモジュールとパックの設計と組み合わせることに興奮しています。Samsung SDIのイノベーションとバッテリー材料の責任ある調達能力は、私達のビジョンとよく一致しています」と述べている。

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タグ:RivianバッテリーSamsung SDI電気自動車

画像クレジット:Rivian

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Polestarが2030年までに温暖化ガスの排出量をすべて見直して初の「クライメートニュートラル」なEV開発を目指す

Volvo(ボルボ)からスピンアウトしたスウェーデンのEVブランドPolestar(ポールスター)は中央ヨーロッパ時間4月7日、2030年までに初のクライメートニュートラルな自動車を開発するという「ムーンショット・ゴール」を発表した(moonshot=困難だが実現する価値のある壮大な取り組み)。そのためには、植林などの一般的に行われているオフセット手段ではなく、新型EVの製造方法を根本的に変えていくという。

それは、材料の調達から製造、さらには車両のエネルギー効率の向上まで、サプライチェーンのあらゆる要素を見直すことを意味する。

Polestarのサステナビリティ部門の責任者であるFredrika Klarén(フレデリカ・クラレン)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ次のように述べた。「当社は、今日多くの人が頼りにしているようなオフセットではなく、排ガスを削減し、除去することでこれを実現しようとしています。オフセットは憂慮すべき戦略だと考えています。製品を生産する際の排出量をオフセットできるかどうか、科学的な裏付けは実際ありません」。

直接的な成果となるのは「Polestar 0(ポールスター0)」と呼ばれる新型車だが、製造工程を全面的に見直す必要があり、最終的にはPolestarの他のモデルにもプロセスが適用される可能性がある。Polestarの全車両が2030年までにクライメートニュートラルになることはないが、同社と親会社のVolvoは、2040年までにPolestarを含む全事業でクライメートニュートラルになるという目標をすでに設定している、とクラレン氏は語った。

Polestarの現行モデルであるPolestar 1(ポールスター1)とPolestar 2(ポールスター2)は、いずれも中国で生産されている。Polestar 0の詳細はまだ決まっていないが、同様に中国製となることを希望しているとクラレン氏は述べた。中国はいまだに石炭への依存度が高いものの、持続可能な技術や製造業は大きく発展していると同氏は指摘した。

「もし私に投票権があるのなら中国での生産を継続しますが、そうは言ってもPolestar 0はどういったソリューションを用いるのかまだ特定されておらず、どこで生産するのか、どんな材料を取り入れるのかなど、以前は考えられなかった新しい方法で考える必要があります」とクラレン氏は述べている。

また、内部システムも定まっていない。Volvo CarsとPolestarの親会社であるGeely AG(ジーリー、吉利汽車)は独自の内部コンピューター・バッテリプラットフォームを開発しているが、Polestarの新モデルにこのシステムを採用するかどうかは決まっていない。

EVの製造工程の中で、クライメートニュートラルに移行するために最も困難な部分は素材であり、具体的にはアルミ、鉄、バッテリー部品がそれにあたると同氏は語った。

「我々は、生産にともなう排出物に取り組む必要があります」と彼女は説明している。鉄やアルミ、そしてリチウムバッテリーに使われる基本的な材料を生産する際の環境負荷は依然として大きい。

Polestarはこの新型車の発表と同時に、Polestar 2および今後発売されるすべてのモデルのカーボンフットプリントを明示するという製品サステナビリティ宣言も発表した。

PolestarのCEOであるThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏は声明の中でこう述べた。「オフセットは言い逃れでしかありません。完全にクライメートニュートラルなクルマを作るために自分たちを奮い立たせることで、当社は今日の可能性を超えることを余儀なくされます。ゼロに向かってデザインするためには、すべてを疑ってかかり、革新し、急成長技術に目を向けなければなりません」。

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タグ:Polestar電気自動車二酸化炭素Volvoカーボンオフセット

画像クレジット:Polestar

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:TechCrunch Japan)

GMが航続距離640km超の電動ピックアップ「シボレー・シルバラード」を生産へ

2025年までに世界で電気自動車(EV)100万台超を販売する計画を進めているGM(ゼネラルモーターズ)は、ラインナップに電動のChevrolet Silverado(シボレー・シルバラード)ピックアップトラックを加える。

GM社長のMark Reuss(マーク・ルース)氏は米国時間4月6日、電動でフルサイズのシボレー・シルバラードピックアップは同社のUltiumバッテリープラットフォームをベースとし、フル充電時の航続距離は400マイル(約643キロメートル)超だと明らかにした。これはGMの推定距離であり、正式なEPAの数字ではないことは留意しておくべきだろう。

GMはフルサイズのピックアップを消費者と商用の両マーケット向けのものと位置づけている。シルバラードEVピックアップはさまざまなオプションやコンフィギュレーションで提供される、とルース氏は話した。

「特に初期においてEVマーケットの重要な部分であるフリートと商業分野の潜在可能性にかなり興奮しています」とルース氏はデトロイトのハムトラックにある同社の組立工場Factory ZEROでのプレゼンテーションで述べた。

電動のシルバラードはFord(フォード)が将来販売する電動F-150と競合する。そして新規参入のRivian(リビアン)は商用マーケットをターゲットとしないが、同社の電動R1Tピックアップでこの分野に参戦する。RivianはR1Tを2021年夏発売する予定だ。

今回のニュースは、GMのUltiumバッテリープラットフォーム、商用客を専門とする(まずFedExで開始)の新たな部門BrightDropの立ち上げ、電動・コネクテッドプロダクトのエコシステムなど、過去18カ月にあった一連の発表に続くものでもある。BrightDropは、EV600という推定航続距離250マイル(約402km)の電動バンと、EP1と命名されたポッドのような電動パレットの2つのメーンプロダクトで事業を開始する。

GMは2020年、EVとAVのプロダクト開発に270億ドル(約2兆9640億円)を投資すると約束した。ここには2021年に注入する70億ドル(約7684億円)が含まれ、2025年までに世界で30種のEVを発売し、うち3分の2を北米で展開する計画だ。

電動ピックアップトラックのシルバラードはミシガン州デトロイト・ハムトラックにあるFactory ZERO組立工場で生産される、とルース氏は話した。週末に発表されたGMC Hummer EV SUVも同じ工場で生産されることも明らかにした。GMは2020年10月にデトロイト・ハムトラック組立工場の名称を「Factory ZERO」に変え、その後さまざまなタイプの電動トラックやSUVを生産するために同工場に22億ドル(約2415億円)投資すると発表した。

450万平方フィート(41万8000平方メートル)に拡大し、全面的改修と設備一新が行われている同工場ではGMC Hummer EVピックアップと、シェアリング自動運転専用の電動車両Cruise Originも生産される。GMC Hummer EVピックアップの生産は2021年後半に始まる予定だ。

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タグ:GM電気自動車トラックデトロイト

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ティム・クック氏が自動運転技術とApple Carについてヒントを出す

Apple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、米国時間4月5日に公開されたインタビューで、大きな期待を集めるApple Carと、その重要な機能となるであろう自動運転技術の方向性について遠回しに語った。

「自動運転そのものがコア技術だと私は考えます」とクック氏はポッドキャスト「Sway」(スウェイ)でKara Swisher(カラ・スウィッシャー)氏のインタビューに応えて話した。「一歩下がって見れば、このクルマ、いろいろな意味でロボットです。自動運転車はロボットなのです。そのため自動運転では、いろいろなことができます。そこに、Appleがするべきことが見えてきます」。

多くを語らないよう言葉を控えるクック氏は、Appleが自動車を生産するのか、あるいはその車載技術を開発するのかというスウィッシャー氏の質問には正面から答えなかった。ただ同氏は、Project Titan(プロジェクト・タイタン)は中間地点に達していることをほのめかした。

「私たちは、ハードウェアとソフトウェアとサービスを統合して、その交差点を探し出すことを身上としています。そこに魔法が起きるからです」とクック氏。「そして私たちは、そこに関わる主要技術をぜひとも手にしたいのです」。

これに対してスウィッシャー氏はこう尋ねた。「よろしければ、自動車に関してその点をお聞かせ願えませんか。自動車のことが知りたいのです」。

私も知りたい。

マイクロモビリティー業界では、電動スクーターは車輪がついたiPhoneみたいなものだと考える人間が多い。だが、Apple Carは、もっと実質的に車輪つきiPhoneになるはずだ。Appleは、ハードウェアとソフトウェアのすべてを所有することでよく知られている。そのため、Apple Carの開発のためにAppleのエンジニアが自動車メーカーと密接に作業を進め、いつかその中間業者を排除して自分たちが自動車メーカーになったとしても、別段驚きはしない。

いわゆるProject Titanは、2019年の大量一時解雇のために、一般の目に触れる前に頓挫する危機に瀕しているかに見えた。しかし、最近の報告によれば、プロジェクトは現在も健在で、2024年までに自動運転電気乗用車を生産する予定に変わりはないという。

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2021年の初め、AppleとHyundai(現代自動車)傘下のKia(起亜自動車)は、ジョージア州ウェストポイントにあるKiaの工場でAppleブランドの自動運転車を生産するための契約を間もなく締結するとCNBCが伝えた。AppleがHyndaiに興味を示している件に詳しい情報筋は、Appleは、クルマに搭載されるソフトウェアとハードウェアの主導権を握らせてくれる自動車メーカーと提携したいのだと聞かせてくれた。

この契約は合意に達することなく、2021年2月に交渉が打ち切られたとを複数メディアが伝えている。しかし、Appleは日産などの自動車メーカーや、さらにはスタートアップも含むサプライイヤーと、以前から繋がりを作っているなど、Appleとその計画に関する大量の噂や報道が、それで止まることはなかった。

Apple Carがどのようなかたちになるかはまだ不透明だが、ロボタクシーや配送トラックではなく乗用車ということで、Tesla(テスラ)などと競合することになるのだろう。

「彼が作り上げた企業には大きな賞賛と尊敬の念を抱いていますが、イーロンに話を持ちかけたことはありません」とクック氏。「Teslaは、EV分野の主導権を確立しただけでなく、実に長い期間それを維持するという快挙を成し遂げました。なので私は、彼らを大変に評価しています」。

Project TitanはDoug Field(ダグ・フィールド)氏が率いている。彼はTeslaでエンジニアリング上級副社長を務め、Model 3発売の立役者となった人物だ。

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画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

自動運転技術のオーロラがボルボと提携、高速道路を自律走行するトラックの製造を目指す

自動運転車のスタートアップ企業であるAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、Volvo(ボルボ)と自動運転セミトラックを北米向けに共同開発することで合意したと発表した。

両社によると、この数年に渡る予定の提携は、ボルボの自動運転ソリューション部門を通じて行われ、同社の顧客が利用するハブ間の高速道路を自動運転で走行できるトラックの製造に焦点を当てたものになるという。オーロラが開発した、自動運転ソフトウェア、コンピュータ、センサー類を含む「Aurora Driver(オーロラ・ドライバー)」と呼ばれる技術スタックが、ボルボのトラックに搭載されることになる。

今回の発表は、オーロラがUber(ウーバー)の自動運転子会社を買収したことや、トヨタ自動車と自動運転ミニバンの開発で提携を結んだことに続くものだ。米国で販売されているクラス8トラックは、半数近くが3社のトラックメーカーによって占められているが、オーロラは現在、そのうちのPaccar(パッカー)とボルボの2社と提携している。

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「パッカーなど以前発表したパートナーとの提携は、ボルボとの協業と並行して継続します」と、オーロラの広報担当者はTechCrunchに語った。「パッカー初の自動運転技術パートナーとして、我々の提携の独自性は、安全のために運転手を乗せることなく運用できるパッカー初の大型トラックを製造して、それを市場に初めて投入し、広範囲に展開することを可能にします」。

オーロラによると、同社が買収したBlackmore(ブラックモア)とOURS Technology(アワーズ・テクノロジー)による周波数変調連続波LiDARは、長距離トラックの自動運転を解決する鍵になるという。LiDAR(ライダー)とは、light detection and ranging(光による検知と測距)レーダーのことで、自動運転システムに必要なコンポーネントと考えられている。オーロラの技術は、従来のTime of Flight(光の飛行時間から計測する)方式とは異なり、危険を察知してから停止または減速するのに十分な時間を確保できる長距離の認識が可能であることを売りにしている。

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今回の発表は、ボルボの自動運転車部門であるVolvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)にとっても、大きな加速を示すものだ。同事業部にとって、これが自動運転トラックを公道に導入する初の案件となる。

2017年の創設以来、オーロラは急速に自動運転技術をリードする企業の1つとなり、Amazon(アマゾン)、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)、Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)からの支援を集めている。同社は、Uber、Tesl(テスラ)、Google(グーグル)の元幹部らによって設立された。

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タグ:自動運転Aurora InnovationVolvoトラック電気自動車

画像クレジット:Aurora

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Optimus Rideがパワースポーツ車両メーカーPolarisと提携、キャンパスから自律走行EVの商業化を目指す

自律型電動モビリティサービスを提供するOptimus Rideは、パワースポーツ車両メーカーのPolaris(ポラリス)と提携し、完全自律走行型のGEM電気自動車(EV)を市場に投入すると発表した。両社は、Optimus Rideの自律走行ソフトウェアとハードウェアを完全に統合した、Polaris GEM低速車両の新しいラインアップを販売していくという。

このマイクロトランジット車両は2023年後半に発売される予定で、企業や大学のキャンパス、複合施設など、ジオフェンスで囲まれた限定地域の環境で展開されることになる。

道路を走る電動の自律式車両は、Polaris GEMだけではない。Alphabet(アルファベット)傘下のWaymo(ウェイモ)、Uber(ウーバー)、Ford(フォード)、Motional、GMの子会社であるCruise(GMクルーズ)などの大企業が、都市部での配送やライドシェアサービスに使用する自律走行車に投資している。しかし、Optimus RideのCEOであるSean Harrington(ショーン・ハリントン)氏は、まず限定地域のジオフェンス環境でスタートし、技術が安全に開発されたら、それを外に拡大していくことにより市場の優位性を得られると考えている。

ハリントン氏はTechCrunchの取材に対し「マイクロトランジットは自律走行の出発点として最適であり、AV(自律走行車)が浸透し始める場所になるでしょう」と語った。「低速で局地的な環境の中で短距離の移動に集中することにより、自律型モビリティソリューションを最も迅速に展開し、優れた体験を提供できるようになります。一方ロボタクシーの場合は、技術的な課題が無限にあります」。

Optimus Rideは同社の自律走行技術を搭載したPolaris GEMを、ブルックリン、ボストン、カリフォルニア、ワシントンD.C.、北バージニアでのライドシェア事業、またはテストの一環として、すでに30台ほど導入している。ボストンのシーポートにある本社の近くにテストサイトがあり、マサチューセッツ州のSouth WeymouthにはUnion Pointと呼ばれる無人トラック環境がある。

近い将来、不動産大手であるBrookfield PropertiesのワシントンD.C.オフィスなど、現在のパートナーシップを継続的に拡大するとともに、新しい市場にも進出していく予定だという。またハリントン氏は、次のステップとして大学キャンパスを示唆した。

ブルックリン海軍工廠では、固定ルート上のマイクロトランジットで従業員が移動するためにPolaris GEMが配備されている(画像クレジット:Optimus Ride)

GEMは、来校者やキャンパス内の居住者、そして職員に、施設周辺の固定ルートとオンデマンドの移動手段を提供し、場合によっては地域の交通機関のハブや近隣地域への移動も可能にする。

「ワシントンD.C.のBrookfieldキャンパスでは、Opti Rideアプリを利用して、ユーザーが配車の予約をしたり、シャトルの座席を確保したりすることができます」とハリントン氏は語る。「そしてブルックリン海軍工廠では、固定スケジュールと固定ルートを運行しています」。

時速25マイル以下で走行するマイクロトランジット車両は現在4人乗りで、最前列には安全のためにオペレーターがいる。同氏によると、次世代のGEMでステアリングホイールとブレーキペダルを取り外せば、車両は6人乗りになるという。

現在のGEMも次世代のモデルもレベル4の自動運転が可能で、人間の操作を必要とせずに走行できる。ジオフェンスに囲まれた環境という制約はあるが、ハリントン氏によれば、これらの車両は環境を完全に認識して対応できるとのこと。

「この車両は、LiDARとコンピュータビジョンを活用した完全な知覚スタックを備えており、状況認識、物体の分類と追跡、フルプランニングとモーションコントロールのアルゴリズムにより、与えられた環境内で安全に動作することができます」とハリントン氏は述べている。「ジオフェンスの利点は、その場所のHDマップを開発し、トラフィックの観点から予想されるすべてのことを決定づけられることです。特定の環境で制約を受けるということは、いかなる状況でも動作することを期待された制約のない車両ではなく、高い安全性と性能レベルを迅速に実現することを意味します」。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

EV充電ステーションの稼働を支援するChargerHelp!が約3億円を調達

今後、電気自動車が普及すれば、何千台もの充電ステーションが必要になる。それらは単に設置されるだけではなく、機能していることが求められる。しかし、現在のところそれは実現されていない。

何か問題が起きて機能が果たせなくなった時、充電ステーションがエラーを発信したり、ドライバーが報告しないと、ステーションの運営会社は気がつかない可能性もある。電気自動車用充電ステーションのオンデマンド修理アプリ「ChargerHelp!(チャージヘルプ!)」を共同設立したKameale C. Terry(カミール・C・テリー)氏は、こうした問題を目の当たりにしてきた。

ある顧客の充電ステーション運営会社は、その充電ステーションの利用率が低いのは、そこの地域に電気自動車が少ないからだと思い込んでいたと、テリー氏は最近のインタビューで振り返っている。しかし、問題はそこではなかった。

Evette Ellis(エベット・エリス)氏と共同で設立した会社でCEOを務めるテリー氏は「そこには誰も乗っていないクルマが停まっていて、ステーションの周りは泥だらけでした」と語る。

ChargerHelp!のサービスに対する需要は、顧客や投資家を惹きつけている。同社はTracks VC(トラックスVC)、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)、JFF、Energy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ)、The Fund(ザ・ファンド)などの投資家から、275万ドル(約3億300万円)を調達したと発表した。今回のラウンドで、2020年1月に設立されたこのスタートアップは、ポストマネー(資金調達後)で1100万ドル(約12億1300万円)と評価されている。

この資金は、同社のプラットフォームの構築や、現在の27人を超える新たな従業員の雇用、サービスエリアの拡大に使用される予定だという。ChargerHelp!は、充電器メーカーや充電ネットワークプロバイダーと直接連携している。

「今のところ、ステーションが故障しても、トラブルシューティングのガイダンスは実際ありません」と、テリー氏はいう。具体的な問題を把握するためには、誰かが現場に出向いてステーションの診断を行う必要があると、同氏は指摘する。現場に着いたら、技術者はデータを事業者と共有し、適切な補修部品を注文する、という手順を踏むのが一般的だが、現状ではこれがしばしば行われていないという。

ChargerHelp!は、オンデマンドの修理アプリであると同時に、顧客のための予防保守サービスとしても機能する。

パワーアップ

ChargerHelp!のアイデアは、テリー氏がEV Connect(イーブイ・コネクト)でカスタマーエクスペリエンスの責任者やプログラムのディレクターなどを務めた経験から生まれた。この期間に彼女は12社の充電器メーカーと仕事をしたことで、充電器の内部構造やよくある問題点などの知識を得ることができた。

関連記事:電気自動車充電インフラの世界標準化を目指すEV Connectに三井物産などが戦略的投資

ここで彼女は、EV充電器市場のあるギャップに気づく。

「充電ステーションが故障しても、なかなか現場に人を向かわせることができないのです。というのも、問題のほとんどは通信の問題、破壊行為、ファームウェアの更新、部品交換など、電気的なものではないからです」とテリー氏は語る。

だが、充電ステーションの問題を解決するには、電気工事業者を使うのが一般的だった。テリー氏によると、これらの電気的でない問題を修理するため、電気工事業者を現場に呼ぶまでに30日もかかることがあったという。

テリー氏は、彼女が働くロサンゼルスにある充電ステーションで問題が発生した場合、自分の手で解決することもあった。

ソフトウェアや修理に関する知識はなかったが「交換しなければならない部品があれば、自分で交換していました」と、テリー氏はいう。そして次のように続けた。「私にできることなら、誰にでもできると思ったのです」。

2020年1月、テリー氏は会社を辞め、ChargerHelp!を起ち上げた。初めて起業家となった同氏は、Los Angeles Cleantech Incubator(LACI、ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)に参加し、EV充電器の修理方法を教えるカリキュラムを開発した。そこでLACIのキャリアコーチであり、ロングビーチのジョブコープセンターにも勤務していたエリス氏と出会う。エリス氏は現在、ChargerHelp!のチーフ・ワークフォース・オフィサーを務めている。

その後、テリー氏とエリス氏はElemental Excelerator(エレメンタル・エクセレレーター)のスタートアップインキュベーターに受け入れられ、約40万ドル(約4400万円)の助成金を調達。Tellus Power(テラス・パワー)と予防保守に重点を置いたパイロットプログラムを開始し、EV Connect、ABB、SparkCharge(シャークチャージ)などのEV充電ネットワークやメーカーと契約を結んだ。テリー氏によると、現在は7人の従業員からなるコアチームを雇用し、最初の技術者を育成しているという。

採用方針

画像クレジット:ChargerHelp

ChargerHelp!では、従業員を見つけるために人材育成のアプローチをとっている。同社では、コホート(グループ)単位での採用しか行っていない。

テリー氏によると、電気自動車サービス技術者の最初の募集では、1600人以上の応募があったという。そのうち20人がトレーニングを受け、18人が最終的にカリフォルニア、オレゴン、ワシントン、ニューヨーク、テキサスなど6つの州でサービス契約を結ぶために採用された。トレーニングを受けた人には奨学金が支払われ、2つの安全ライセンスを取得できる。

このスタートアップ企業は、4月に第2回目の募集を開始する予定だ。すべての従業員はフルタイムで、時給30ドル(約3300円)が保証されており、会社の株式も与えられる。ChargerHelp!は、同社が技術者を必要とする地域の労働力開発センターと直接連携している。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ChargerHelp!電気自動車充電ステーション資金調達

画像クレジット:ChargerHelp

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

エイプリルフール用をうっかり誤発信「Volkswagenが米国法人を『Voltswagen』に社名変更」

【更新】Wall Street Journalによると、これは事実ではなくエイプリルフールのジョークが誤って流出したものだった。VW USAはコメント要求に応じていないが、VW Europeは報道に対してこれがジョークだったことを認めた。この発表を伝えるリリースは現在も米国のVW公式メディアサイトにあり、事実ではないことを示唆する記載はない。Reutersも同じことを報じており、匿名の情報源を3つ挙げている

自動車メーカーのVolkswagen(フォルクスワーゲン)は、電気自動車への取り組みが本気であることをみんなに知って欲しいと思っている。そのために米国ではダジャレのような再ブランドを正式に行う。同社は「Volkswagen of America”」から「Voltswagen of America(ボルツワーゲン・オブ・アメリカ) 」へと社名変更することを 3月30日にプレスリリースで発表した[日本時間3月31日8時現在削除済み]。

Voltswagen(旧名Volkswagen)は変更の理由について「Eモビリティーの新しい未来への投資」への意気込みを明確にするものであり、つまり電気駆動計画に極めて真剣であることを示していると語った。元々「Volkswagen」はドイツ語で「国民のクルマ」という意味であることから、Voltswagenは……「ボルトのクルマ」?

そのようなことだが、ちょっと違う、とVWはいう(これだっていいじゃないか!)

「当社は、電化の未来への転換を始めた時から、作るのはミリオンズ(数百数千万人)のためのEVでありミリオネアだけのためではないと述べてきました」とVWのCEOであるScott Keogh(スコット・キーオ)氏は社名変更の発表文で語った。「この変更は、国民のクルマという過去の私たちへの挨拶とともに、当社の未来は国民の電気自動車になることだという固い決意を表しています」。

この発表は、Volkswagenが全電動SUV、ID.4を米国で出荷し始めた直後のことだった。価格は国の奨励金・税制優遇前で3万3995ドル(約375万円)と、現在の米国電気自動車市場では手頃な価格に位置している。将来は価格に敏感な消費者のための新たな選択肢も計画されており、同社は二酸化炭素排出量削減のために、2025年までに全世界でEV100万台を達成し、2029年にはVWおよびサブブランド全体で70以上のモデルをラインアップすると宣言している。

関連記事:2021年フォルクスワーゲンID.4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

Voltswagenブランドでは、すべての電気自動車にブルーのトーンを明るくしたVWロゴを使用するが、ガソリン車は従来のダークブルーを維持する。「Voltswagen」の単語そのものはイニシャルロゴに加えてEVで使用され、今後米国では従来ロゴはガソリン車のみのブランドとなる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagen電気自動車エイプリルフール

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

シャオミがEV事業に参入、10年で1.1兆円の投資目標

数週間にわたる噂の後、Xiaomi(シャオミ、小米科技)がEV(電気自動車)事業への参入を正式に認めた。中国のスマートフォンおよびIoT企業である同社は、スマートEV事業を運営するための完全子会社を設立すると、投資家に宛てた告知で中国時間3月30日に発表した。

シャオミはこの子会社に当初100億元(約1700億円)を投入する。今後10年間の投資目標は総額100億ドル(約1.1兆円)だという。シャオミの創業者兼CEOであるLei Jun(レイ・ジュン、雷軍)氏が、この新しいEV事業のCEOを兼務する。

シャオミがこれまでの多くのハードウェアデバイスと同様に、自社ブランドで自動車を販売し、生産はメーカーに委託するのかどうかは、告知からは不明だ。シャオミは以前から、ライトアセットのビジネスモデルを持つ「インターネット企業」を自称してきた。同社のゴールは、価格の安い無数のハードウェア製品を動かすサービスを販売することにより、利益の大部分を得ることだ。

シャオミの担当者によると、今回の告知以上の詳細な情報はないとのこと。

シャオミは、過熱しているEV業界に参入する最新の中国ハイテク企業だ。中国の検索エンジン大手Baidu(百度)は、2021年1月に自動車メーカーのGeely(吉利汽車集団)の協力を得てEVを製造すると発表したばかり。2020年11月には、Alibaba(アリババ)と中国の国有自動車メーカーSAIC Motor(上海汽車集団 )が手を組んでEVを生産すると発表した。配車サービス大手のDidi(ディーディー)とEVメーカーのBYD(比亜迪)も、ライドシェア用のモデルを共同設計している。

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これらのテック巨人たちは、XPeng(小鵬汽車)、Nio(上海蔚来汽車)、Li Auto(理想汽車)など、すでに複数のモデルを発表し、しばしばTeslaと比較される、より専門的なEV新興企業の数々と競合している。EVメーカーは車内エンターテインメントから自律走行まで、さまざまな機能に投資して差別化を図ろうとしている。

シャオミにとって自動車メーカーとしての明らかな強みは、広大な小売ネットワークと国際的なブランド認知度だろう。また、スマートスピーカーや空気清浄機など、同社のスマートデバイスの一部は、セールスポイントとして車に簡単に組み込める。もちろん、真のチャレンジは製造にある。携帯電話の製造に比べ、自動車産業は資本集約的で、長く複雑なサプライチェーンを必要とする。シャオミがそれを成し遂げることができるかどうか、見守っていきたい。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Xiaomi電気自動車中国

画像クレジット:Zhe Ji / Contributor / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

リサイクルのRedwood MaterialsがProterraと提携しEV用バッテリーの原材料を持続可能なかたちで供給

この数年間で、電気自動車(EV)用バッテリー市場の廃棄物削減を目的とした企業が数多く現れた。なかでもその代表格がRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)だ。2017年にTesla(テスラ)の共同創設者J.B.Straubel(J・B・ストラウベルストラウベル)氏によって北米最大のリチウムイオンバッテリーのリサイクル企業を目指して創設されて以来、急速な拡大を遂げてきた。このほど同社は、商用EVのメーカーProterra(プロテラ)と手を組み、米国内のバッテリーのサプライチェーンを強化することで協力し合うことになった。

Redwoodと他の自動車メーカーとの提携が公表されたのは、これが初めてだ。

契約に従いProterraは、すべてのバッテリーをネバダ州カーソンシティーにあるRedwoodのリサイクル施設に送ることになる。両社は2021年1月にこの提携に合意したが、協議はそのリサイクル工程を詳しく知りたいとProterraがRedwoodに話を持ちかけた2020年夏から続いていた。その中でProterraは、Redwoodのネバダのリサイクル施設に足を運び、Proterraのバッテリーパックの処理が可能かどうかを確かめた。

「実に順調にいきました」とProterraのCTOであるDustin Grace(ダスティン・グレース)氏はTechCrunchに話した。グレース氏は、Teslaのストラウベル氏のもとで9年間働いていた人物だ。「その作業を見て最高に興奮しました。そこから、供給の本契約に向けて作業を開始したのです」。

提携関係を結んでからProterraは、およそ11.8トンのリサイクル用バッテリー素材をネバダに送り込んでいるが、これは将来の供給ペースを示すものではない。全体としてRedwoodは、1日60トン、年間2万トンのバッテリーを受け入れることができる。

Proterraの車両を動かすバッテリーは、車両の寿命が尽きるまで使えるように設計されているのだが、同社では6年後のバッテリーを交換を約束するリースプログラムも提供している。その時点でバッテリーには80〜90パーセントの充電容量が残されており、まだまだ十分に使える状態にある。この容量を活用するためProterraは、ネバダに送る前に、バッテリーに第二の人生を送らせる計画を立てている。例えばProterraの充電設備のための固定型蓄電システムでの利用だ。

「まずは、Proterraの再製造エンジニアリングチームがバッテリーの評価を行います。第二の人生が送れる状態だと認められると、そのための施設で利用されます。評価が低ければ、リサイクルに回されます」とグレース氏は話す。

耐用寿命を迎えたとき初めて、バッテリーはRedwoodに送られ、廃棄物処理によって価値ある原材料に再生される。商用EVの市場は2025年までに、年間の全売上げの50パーセントに達するとの予測もあり、膨大な数のバッテリーの再処理が必要となる。

このニュースは、Redwoodが電動バイクのメーカーSpecialized(スペシャライズド)とバッテリーのリサイクル契約を交わしたことを発表してから、わずか数週間後に届いた。Redwoodはすでに、Nevada Tesla Gigafactory(ネバダ・テスラ・ギガファクトリー)でパナソニックが行っているバッテリー生産による廃棄物の処理に加え、Amazon(アマゾン)ともEV用バッテリーやその他の廃棄物の処理でも合意している。こうした企業間提携を通じて、Redwoodは、原材料をメーカーに戻す循環型のバッテリー・サプライチェーンを構築しようとしている。同社はまた、一般消費者向け製品の電子部品やバッテリーの処理も受け入れており、利用者はRedwoodのウェブサイトにある住所に郵送できることになっている。

関連記事:リチウムイオン電池のリサイクルに挑戦するRedwood Materialsが古いスマホなどの受け入れ開始

今回の提携は、両社とも大規模で長期的な事業を考えている証拠だ。Redwoodの広報担当者はTechCrunch宛の声明で「EVバッテリーの完全閉ループのリサイクリングのためのソリューション開発」に注力すると話していた。つまり、コバルト、リチウム、銅などの原材料の供給源を、採鉱から、本当の意味での持続可能な、長期的に利用できるリサイクルに移行させるということだ。またストラウベル氏はかつて、Redwoodを世界最大のバッテリー原料メーカーにするという野望を公言していたこもある。

関連記事:アマゾンとパナソニックが注目するバッテリーリサイクルスタートアップRedwood Materials

米国内で調達できる、バッテリーに使用可能なグレードの原材料が増えれば、Proterraは、やがてはバッテリーセル製造の分野に拡大する機会を得るだろう。

「まだ始まったばかりですが、私たちはこの市場の大きくなった未来の姿に目標を定めていきます。それこそが、今このパートナーシップが存在する最大の意義だからです」とグレース氏。「我々の観点では、Proterra向けのセルの国内生産は、今後数年にわたる私たちのロードマップにおいて、実に重要な部分を担います。北米でバッテリーに使えるグレードの原材料を生成するというアイデアは、米国内でバッテリーを生産するというコンセプトの拡大に直接寄与します。そのため、今これを始めることが、近い将来のセルの国内生産計画を間違いなく支えることになると思っています」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Redwood Materialsバッテリーリサイクル電気自動車

画像クレジット:PRNewsFoto/Proterra

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:金井哲夫)

2021年フォルクスワーゲンID. 4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

かつては電気自動車の分野において素人だったVolkswagen(フォルクスワーゲン)が今、その未来をテクノロジーに賭けている。3万3995ドル(約370万2700円、連邦政府または州による補助金の適用前の価格)から入手可能な5人乗りフル電動クロスオーバーである新しいフォルクスワーゲンID.4は、EVを主力製品にしようとするフォルクスワーゲンが初めてグローバル市場を目指して取り組んだ成果であり、2050年までにカーボンニュートラルを実現するというさらに大きな目標への一歩でもある。

結論から言えば、VW ID.4は、バランスよく融合されたテクノロジー・快適性・デザインをより手頃な価格で提供しており、Tesla Model Y(テスラ・モデルY)のような手頃な価格帯のモデルが少ないために空白地帯が残っている市場の一部を攻略しようと狙っている。VW ID.4のテクノロジーは堅実なもので、現実離れしすぎてクロスオーバーの平均的な購入者がしり込みするということはないが、1つ問題がある。充電拠点が不足しているために、他社の充電ステーションを見つけてそこに行かなければならないのだが、それがかなり面倒で、手間がかかるのだ。

VWの製品担当シニアマネージャーであるMark Gillies(マーク・ギリース)氏はTechCrunchのインタビューに対し「当社は、富裕層だけでなく、他の何百万人もの人々にも乗ってもらえる大衆向けの電気自動車メーカーになりたいと思っています」と述べた。

その言葉に偽りはないだろうが、ちょっとした問題がいくつかある。例えば、インフォテインメントシステムの反応が少し遅い。これは近日中に予定されているアップデートで改善されるだろう。また、前述のように充電拠点が不足している。もしフォルクスワーゲンがこれらの問題に取り組むことができれば、VW ID.4は活況を呈するクロスオーバー市場にしっかりと食い込む可能性がある。しかし、大衆がガソリン車に近いドライビング体験を提供する完全電動自動車を望み、VW ID.4が「大衆向けのクルマ」になる未来は実現するだろうか。

画像クレジット:Volkswagen

2021年のフォルクスワーゲンID.4クロスオーバーは、VWブランド初のグローバル市場向け全電動自動車だが、VWグループ全体としては以前にも消費者向け電気自動車を発売したことがある。VWグループは、2013年にすでにカリフォルニア州限定のフォルクスワーゲンe-Golf(e-ゴルフ)を発売しており(2020年販売中止)、同社のラグジュアリーパフォーマンスブランドPorsche(ポルシェ)では、2019年に全電動Taycan(タイカン)の販売を開始した。

発売当時のe-Golfは、同社にとってはどちらかというと二次的な位置付けで、カリフォルニア州限定で販売された。カリフォルニア州では電気自動車や充電インフラのインセンティブ、環境規制が比較的しっかりしている。対照的にID.4は「Beetle(ビートル)以来最も重要なフォルクスワーゲンの市場デビュー」の1つであり、全米で販売される予定だ。

際立つテクノロジー

画像クレジット:Volkswagen

ID.4のダッシュボードレイアウトや車内の雰囲気を見ると、フォルクスワーゲンは、ガソリン車のデザインをベースにしたのではなく、テスラを参考にしたようだ。

ID.4のインテリアデザインは、自動運転の未来を感じさせる。ステアリングコラムもインフォテインメントシステムも、完全に無くなる日を思い浮かべることができる。モジュール式カップホルダー、収納スペース、ワイヤレス充電パッドを備えたセンターコンソールも、いずれは改造して乗客スペースを増やし、ID.4のインテリアのフィーリングを今よりもっとオープンで広々としたものにできるかもしれない。

ID.4にはPro(プロ)、Pro S(プロS)、1st Edition(ファーストエディション)の3つのトリムがある。Proには10インチのタッチスクリーンが付属しており、Pro Sと1st Editionでは、12インチのインフォテインメント用タッチスクリーンがダッシュボードの中央にマウントされている。

画像クレジット:Abigail Basset

センタースクリーンの方に手を伸ばすと、システムに近づく手の動きを室内カメラが感知して、スクリーン内のアイコンが反応する。ID.4の車内にある数少ないハードタッチ式ボタンはどれも、どちらかというと医療機器グレードの触覚感知ボタンで、空調やオーディオから、オプションの固定式パノラマガラスルーフの遮光スクリーンの開閉や、ドライビングモード、ドライバーアシスト機能まで、あらゆるものをコントロールできる。コツをつかむまでに少し時間がかかるが、慣れてしまえば、スライダー式ボタンのように機能し、押す強さを少し変えたり、左から右に少しスライドしたりして、音量や温度を調整できる。

「ハロー、I.D.」

フォルクスワーゲンはこの新しいID.4で、ボタンの代わりにハンズフリーの音声コントロールを採用したが、我々が試乗したときは、このシステムはまだベータ版のように感じた。

ドライバーも同乗者も、タッチスクリーンまたは特定の音声コマンドを使って、ID.4の一般的な機能やインフォテインメントの多くを利用できる。「Hello I.D.(ハロー、I.D.)」というと、車内のどの方向から声が発せられたのか(同乗者なのかドライバーなのか)をシステムが感知して、フロントガラス下部の細長いライトが点灯し、その話者が次に発するコマンドに対応する準備ができたことが示される。

画像クレジット:Abigail Basset

今のところ、使えるコマンドはかなり限られており、キーフレーズ(「ハロー、I.D.」)を言うか、ハンドルにある音声コントロールボタンを押して起動する必要がある。ナビゲーションコマンドなどの基本的なことに加えて「寒い」とか「ジョークを聞かせて」といったこともいうことができ、ID.4のシステムは、声が発せられた側の温度を上げたり、シートベルトにまつわるジョークを言ったりして反応する。

試乗したのはロサンゼルスやロングビーチの界隈のみだったのだが、システムの反応は他の市販の音声システムと比べてとても遅く、Sirius XM(シリウスXM)のチャンネル変更などの操作で、接続の確保がスムーズにできなかった(特定のチャンネルの数字や名前が見つからない、という音声が繰り返し流れた)。システムが機能しなくなることもよくあり、コマンドを認識できない場合や接続できない場合に最終的に音声コントロールシステムをキャンセルするのにも、約10秒かそれ以上かかった。

反応の遅いナビ

また、ID.4のナビゲーションシステムも少し反応が遅く、精度も良くなかった。それで、元に戻ってGoogle(グーグル)マップやワイヤレスAndroid Auto(アンドロイドオート)システムをナビとして使った。ちなみに、GoogleマップとワイヤレスAndroid Autoは、Apple CarPlay(アップルカープレイ)とともにID.4の全ラインアップに搭載されている。しかし、ID.4に搭載されたナビゲーションシステムには、曲がり角に近づくとフロントガラスに沿った細長いライトの右側または左側が光って、進むべき方向を示してくれるという便利な機能がある。

インフォテインメントの画面は、ちょうど携帯電話かタブレットの画面のようだ。アプリのページやウィンドウをスワイプしていくと、目的のページにたどり着く。残念ながら、反応の遅いネットワーク接続(インフォテインメントシステムでは4G接続のバーが3~5本表示されているのにも関わらず)と、時間のかかる読み込みが相まって、ページをスワイプしているときに時々画面がフリーズし、次のページを読み込んでいるときにページの半分のみが表示されることがあった。

ここで補足説明をしておく。筆者は幸運にも、ロサンゼルスの記者のために用意された試乗用車両のうち複数台について、十分な時間をかけて試乗する機会が3回あったのだが、遅延やフリーズを経験した車両は1台だけであった。フォルクスワーゲンの広報担当者の話では、試乗車のソフトウェアは顧客が受け取る最終バージョンではなく、オーナーに届く前にアップデートされるので、筆者が経験した奇妙なもたつきや音声コマンドの問題は解決されるはずだという。

画像クレジット:Abigail Basset

ID.4には、Car-Net(カーネット)サービスを通じて2021年中にAlexa(アレクサ)の機能も搭載される予定だ。これには、離れた場所からクルマをモニタリングするのに役立つ、シンプルで使いやすいアプリが含まれる。オーナーはこのアプリにログインして、自分のID.4の位置、バッテリー残量、充電状態を確認できる。

VWは、メイン計器パネルや変速レバーの配置を含め、ID.4車内のデザインについて数多くの興味深い選択をしている。通常のクルマのようにこれらのアイテムをダッシュボードやセンターコンソールに取り付けるのではなく、直接ステアリングコラムに取り付けた。ハンドルを動かすと、計器パネルとトランスミッションつまみも一緒に動く。ハンドルに取り付けられた5.3インチの画面上で、スピードや移動方向から、航続距離、走行距離、基本的なナビゲーション情報まで、あらゆる情報が提供される。運転モードの切り替えには、標準的なボタンやシフトレバーではなく、ハンドルの右側にあるひし形のつまみを使う。

ID.4の始動・停止ボタンはコラムの右側のあまり目立たない所にあるが、そのことはあまり問題ではない。クルマを開錠して運転席に座ると、ID.4の電源が入り、運転の準備ができる。シートベルトを外して車から出ると、ID.4の電源が切れる。クルマに友人や家族がいるときにちょっとした用事で外に出る場合などは少し面倒だが、ID.4の乗客は、ドライバーが車内にいなくても、インフォテインメント画面に表示されるコントロール項目を使って、少しの間エアコンや暖房などを続けて使うことができる。

画像クレジット:Abigail Basset

EVへの乗り換え

フォルクスワーゲンは、自社の調査でクロスオーバーオーナーの約30パーセントが電動クロスオーバーを検討することがわかった、と述べている。ID.4が参入するのは、トヨタRAV4やホンダCR-Vなど、ガソリン車やハイブリッド車の超人気モデルがひしめく競争の激しいクロスオーバー市場だ。フォルクスワーゲンは、自社の調査に基づいて、消費者はまったく航続距離の心配をしないはずだと述べている。ほとんどのクロスオーバーオーナーの走行距離は1日あたり約60マイル(約97キロメートル)で、バッテリーシステムの航続距離はEPA推定で約250マイル(約402キロメートル)だからだ。ID.4は、125キロワットで、5パーセントから80パーセントまで38分で充電できる。

家でのフル充電には約7.5時間かかると推定されているが、外出時の場合、フォルクスワーゲンはID.4のオーナーに、最初の3年間はElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ)のDC急速充電器を無料・無制限で使える特典を提供している。良い話だが、少し補足説明が必要だ。フォルクスワーゲンは、ほとんどの人が通常の住宅電源で一晩充電すると予測していると述べており、オーナーが外出先で公共の充電ステーションを使う頻度はそれほど高くないと同社が予測していることは明らかである。なぜなら、少なくともID.4の発売時点では、利用可能な充電ステーションをスムーズに見つけることは難しいからだ。

画像クレジット:Volkswagen

エレクトリファイ・アメリカはVWの子会社だが、その営業体制はフォルクスワーゲンとは完全に切り離されている。エレクトリファイ・アメリカは、全国で550の充電ステーションと2400を超えるDC急速充電器を運営しており、ID.4の車載ナビでも「充電ステーション」を検索できるが、ナビには近くの充電ステーションがすべて表示され、どれがオンラインで利用可能かはわからない。オンラインで利用可能なエレクトリファイ・アメリカの特定の充電器を見つけるために、オーナーは携帯電話を取り出して、エレクトリファイ・アメリカのアプリを開く必要がある。それから、特定の充電器の位置情報をAndroid AutoやApple CarPlayに送ってナビゲートできる。残念ながら、現時点では、エレクトリファイ・アメリカのアプリはAndroid Autoに表示されない。

このプロセスはかなり面倒で、充電ステーションに向かう前に安全に終わらせるには、オーナーはクルマを路肩に止める必要がある。少なくとも現時点ではそうだ。フォルクスワーゲンは、2021年中に実現する無線アップデートによって、エレクトリファイ・アメリカのステーションと車載ナビがもっとシームレスに統合されると述べている。

朗報がある。Pro Sモデルと1st EditionモデルのEPA推定換算燃費は、市街地走行で104 MPGe(ガソリン換算でリッターあたり約44キロメートル)、幹線道路走行で89 MPGe(同約38キロメートル)、市街地走行と幹線道路走行の組み合わせで97 MPGe(同約41キロメートル)である。

ID.4の際立った特徴の1つは、運転方法だ。ID.4のトランスミッションモードには、Bモードつまりブレーキモードが含まれている。これはどの電気自動車にもある、ことの他便利な設定で、1つのペダルで運転ができる。ブレーキから足を放すと、ID.4は少しスピードダウンし、電気を再生してバッテリーに送り返す。これは、交通渋滞にはまったときに真価を発揮する優れた機能で、フォルクスワーゲンは意図的に、ワンペダル運転を他の電気自動車ほど挑戦的なチューニングにはしていない。初めて電気自動車のオーナーになる人が馴染みやすいようにするためだ。

路上では、ID.4は安定感があり、見かけほど大きくは感じない。俊敏だが、出足が速すぎるわけではなく(VWは0~97キロメートル毎時のタイムを公表していない)、手に汗握るということはない。確かに、タイヤから煙を出して走ったり、ロケットのように駆け抜けるクルマではない。

かなり丸みを帯びた形をしているので、路上でスピードを出すとわずかに風切り音がするが、乗り心地は快適で安定感がある。時速32キロメートルを下回るスピードでは(バックにしたときも)、あの特徴的な電気自動車の音を出して歩行者に注意を促す。ウィンドウが閉まっていると車内では気づきにくいが、ガレージで車の手入れをしている隣人のそばを通ると、きっと家に着いたときに「宇宙船のような音がするクルマを運転していたのはあなたですか」と尋ねるメッセージが届くかもしれない。

ADAS(先進運転支援システム)の形式と機能

画像クレジット:Abigail Basset

VWのTravel Assist(トラベル・アシスト)は、同社のレベル2自動運転システムのブランド名である。このシステムは時速0~153キロメートルの範囲で機能する。Travel Assistは、適応可能なクルーズコントロールと車線維持システムの両方を使って、前方の道路と他車に追従する。オートバイが突然車線に入ってくれば、計器画面上でオートバイの画像が車の直前に表示される。そのオートバイがランダムに急ブレーキをかける場合、ID.4はそれに対応して自動的にブレーキをかける。前方の交通が停止した場合、ID.4のTravel Assistは流れが再開するまで待機する。Travel Assistは、交通の動きに対する人間の反応に非常に近い反応を示す。異常に長く待って車間距離が開きすぎる(車列が間延びする原因になる)ことも、加速しすぎることもない。

このシステムは、ひどい交通状況での長時間運転を耐えやすいものにしてくれる。筆者は、ラッシュの時間にロサンゼルスの405号線で激しい渋滞にはまり、通勤に1時間かかったが、その間も、システムを稼働させ続けるために静電容量方式のハンドルに軽く手を置いておくだけでよかった。

スケートボード型パワートレイン

VW ID.4には、MEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブマトリックス)と呼ばれる新しいスケートボード型プラットフォームが採用されており、201馬力、310ニュートンメートルのトルクを発生するAC永久磁石同期モーターがクルマの後部、後軸の上に搭載されている。これは旧型ビートルによく似ている。発売時点では後輪駆動モデルしかないが、2021年の終わりまでには302馬力の四輪駆動モデルが発売される予定だ。

フォルクスワーゲンは、ID.4のバッテリーをパナソニックから購入し、82キロワット時、12モジュール、288パウチセルのバッテリーパックを中国とドイツの自社工場で組み立てる。間もなく米国の工場で生産が始まる予定で、電気モーターもフォルクスワーゲンが自前で作る。

画像クレジット:Volkswagen

すべてが詰まったVW ID.4によって、電気自動車は、Jaguar I-Pace(ジャガー・Iペース)、Tesla Model Y、Polestar(ポールスター)、Audi e-tron(アウディ・eトロン)など、高価でラグジュアリーな全電動クロスオーバーを買う余裕のないクロスオーバー購入希望者層にも手の届きやすいものになる。

さらに、VW ID.4には7500ドル(約81万6000円)もの割戻金が支払われる可能性を考えると、ホンダCR-VやトヨタRAV4をはじめとする人気の高いガソリン車クロスオーバーにも十分対抗できる。VW ID.4が真に際立っているのは、先進のテクノロジーと手頃な価格が、航続距離を心配する必要のない魅力的なEVの中で融合している点である。VW ID.4は「大衆向けのクルマ」になるだろうか。その答えが出るまで、今しばらく見守ることにしよう。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenレビュー電気自動車

画像クレジット:Volkswagen

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

次世代のEV充電ネットワーク構築を目指すSparkCharge

米国時間2月23日、モバイル充電バッテリー会社のSparkChargeは、AllStateとのパートナーシップ契約を発表した。これにより、同社が提供するサービスは車両サービスにまで拡大され、電気自動車の充電を次世代ギグエコノミーにおける同社の中核ビジネスにするという目標に向けてさらに前進する。

モバイル車両充電器を開発、設計、商品化した同社は、Shark Tank(シャーク・タンク、米国のテレビ番組)で、投資家のMark Cuban(マーク・キューバン)氏らが率いる500万ドル(約5億5000万円)の資金調達ラウンドで新しいモバイル充電デバイス、Roadie(ローディー)を商品化する。

SparkChargeが開発した120kWの急速充電器は、AllStateとノースカロライナ州ダーラムの車両サービススタートアップであるSpiffyを含むパートナーのネットワークを通じて、オンデマンドで提供される。顧客はローディーを使って、50~100マイル(約80〜160km)ごとに車両を充電することができる。ローディーは、SparkChargeの創設者であるJoshua Aviv(ジョシュア・アビブ)氏が構想中のより広範な充電ネットワークの中軸となる。

「アプリだけで、いつ、どこで、どれだけの充電が必要かを連絡し、料金を支払い、充電サービスを受けることができます」とアビブ氏は話す。

現在のところ、AllStateとSparkChargeの間の契約は、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴの4つの都市を対象としており、AllState(保険サービスおよびロードサイドアシスタンスサービスを提供)は約20台のポータブル充電器を発注している。

SpiffyやAllStateなどの企業を介したビジネスは、市場に参入する1つの方法ではあるものの、アビブ氏は個人事業主が顧客にオンデマンド充電サービスを提供できるようにしたいと考えている。

アビブ氏によると、オンデマンドの充電料金は1マイル(約1.6km)あたり約50セント(約54円)で、10ドル(約1080円)あれば十分に充電できる。

「私たちは根本的にまったく新しい充電ネットワークを構築しようとしています」とアビブ氏は話す。「急場をしのぐだけのネットワークではなく、常時利用可能で、従来の充電器よりも優れた高速なネットワークの構築です。許可や建設は必要ありません。顧客は充電ユニットを箱から取り出し、車に接続し、ボタンを押して充電を開始します。SparkChargeのサービスでは、すべての駐車場、すべての場所が充電ステーションになります。これは、従来のサービスよりもはるかに優れたネットワークです」。

この充電サービスを顧客に提供したい事業主は、機器代として月額約450ドル(約5万円)を支払う。するとバッテリーと必要な機器が提供され、SparkChargeのオンデマンドEV充電ビジネスを開始することができる。

「このビジネスは、誰もがEV所有者にサービスを提供できるように設計されています」とアビブ氏はいう。

マサチューセッツ州サマービルを拠点とするSparkChargeは、電気自動車の充電インフラストラクチャの現状に対するアビブ氏自身の情熱と欲求不満から生まれた。

充電インフラの欠如が、電気自動車の普及に向けて克服しなければならない主要な障害の1つだということは、ウォールストリートジャーナルの記事の通りである。

2020年9月と10月にアドボカシー団体Plug In America(プラグイン・アメリカ)が実施した調査によると、3500人の電気自動車ドライバーの半数以上が公共充電に問題があると回答している。テスラオーナー以外のドライバーにとってはさらに深刻な問題である。

Elon Musk(イーロン・マスク)氏が(何千人もの従業員と数多くのイノベーターや会社創立者とともに)作り上げたEVについて、何が真実であれ、テスラが、ほぼ適切な量の充電インフラストラクチャを備えて顧客をサポートすることに重点を置いて、多大な利益を得ていることは事実である。他の自動車メーカー、小売業者、独立充電サービスプロバイダーはやっと追いつき始めたに過ぎない。

Shellのような石油メジャーから、ディーゼル排気ガス不正問題の解決の一環として電気自動車の充電ネットワークを構築するために20億ドルを費やしたフォルクスワーゲンのような自動車メーカーに至るまで、さまざまな企業がネットワークを構築したり、準備を進めたりしている。

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2013年にシボレーボルトを購入して以来、電気自動車に乗り続けているアビブ氏にとって、問題は明らかだった。同氏はシラキュース大学の学生だった2014年にSparkChargeを立ち上げるが、大学の指導教官は、過去に環境保護庁の理事を務めており、電気自動車の熱烈な支持者であった。

アビブ氏は大学卒業後もポータブル充電ステーションの開発に取り組み続け、さらに流通および販売のプラットフォームとサービスプロバイダーのネットワークを構築した。これがSparkChargeのルーツである。

当初、同社はロサンゼルスのクリーンテック・インキュベーターなどのグループや、Techstars Boston、Techstars、Steve Case(スティーブ・ケース)氏のRise of the Restファンド、ケース氏の投資会社であるRevolution、PEAK6 Investments、Buffalo、ニューヨークを拠点とするアクセラレーターである43North、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏のような投資家の支援を受けていた。

「現在利用できる充電インフラには多くの欠陥があることがわかりました」とアビブ氏は話す。この欠陥には、充電インフラを維持するためのダウンタイム、充電ネットワークの拡大にかかる時間、充電器のメンテナンスやサポートの不足などが含まれる。

「これらの充電サービスを進展させようという大きな動きがあります」と同氏。「電気自動車がインフラストラクチャのバックアップなしに街中を走るのは望ましくありません。これから競争が始まるとは思いますが、充電スタンドではなく、オンデマンドで充電を受けることができるのであれば、SparkChargeを使用してEVを運転したいという消費者はもっと増えるだろうと考えています」。

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

1000億円超を調達しながら失敗に終わったEVのバッテリー交換ビジネスを復活させるAmple

今をさかのぼること13年とわずか、当時世界で最も力のあるソフトウェア企業の1つだったSAPでCEOへの道を歩んでいたShai Agassi(シャイ・アガシ)氏は、それまで専門的なキャリアを積み重ねてきた会社を離れ、Better Place(ベター・プレイス)というビジネスを始めた。

そのスタートアップは、勃興期の電気自動車市場に革命を起こし、電気自動車のバッテリー切れという恐怖を過去のものにするはずだった。消耗したバッテリーを充電されたばかりのものに交換する、自動化された電池交換ステーションのネットワークというのが同社のうたい文句だった。

アガシ氏の会社は、世界でもトップレベルのベンチャーキャピタルやグロースエクイティファームから約10億ドル(現在約1080億円。当時としては相当な額)を調達することになっていた。だが、2013年に会社は清算され、クリーンテック投資が受けた最初の波による多数の犠牲者の1つとなった。

今になって、シリアルアントレプレナーであるJohn de Souza(ジョン・デ・ソウザ)氏とKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏が、Ample(アンプル)というスタートアップによってバッテリー交換のビジネスモデルを復活させようとしている。彼らの提唱するアプローチは、電気自動車の定着によってはるかに大きな市場が出現しつつある今、Better Placeでは決して対応できなかった問題のいくつかを解決するものだ。

Statista(スタティスタ)のデータによれば、2013年に22万台しかなかった電気自動車が、2019年には480万台を数えるまでに増加した。

Ampleはすでに、投資家から約7000万ドル(約76億1366万円)を実際に調達している。投資家には、Shell Ventures(シェル・ベンチャーズ)、スペインのエネルギー企業Repsol(レプソル)に加えて、Moore Strategic Ventures(ムーア・ストラテジック・ベンチャーズ)も名を連ねている。ムーア・ストラテジック・ベンチャーズは数十億ドル(数千億円)規模のヘッジファンドであるMoore Capital Management(ムーア・キャピタル・マネジメント)の創設者であるLouis M. Bacon(ルイ・M・ベーコン)が個人で所有するベンチャーファームだ。調達した額には、2018年に報告された3400万ドル(約36億5670万)の投資、および日本のエネルギー・金属企業であるENEOSホールディングスから最近調達した資金を含め、その後のラウンドでの投資も含まれる。

Better Placeのビジネスとの類似について、ソウザ氏は「Better Placeへの投資案件に関わったためトラウマになってしまった、という人がたくさんいましたよ」と話した。「関わっていなかった人も、その件について調べた後は決して近寄らないようにしていました」。

AmpleとBetter Placeの違いは、バッテリーパックのモジュール化と、Ampleの技術を利用する自動車メーカーとの関係がバッテリーパックのモジュール化によって変化することにある。

Ampleの共同創設者兼CEOであるハッソウナ氏は「私たちのアプローチは、バッテリーをモジュール化してからバッテリーの構造部品であるアダプタープレートを用意し、アダプタープレートとバッテリーの形状、ボルト仕様、ソフトウェアインターフェースを共通にすることです。Ampleが提供するのは、これまでと同様のバッテリーシステムですが、タイヤ交換と同じようにAmpleのバッテリーシステムは交換可能なのです」と述べた。「実質的に、私たちが提供するのはプレートであって、クルマなどには変更を加えません。今や、固定式のバッテリーシステムを搭載するか、Ampleの交換可能なバッテリープレートを搭載するかという選択肢があるのです。当社はOEMと提携し、重要なユースケースを実現するために交換可能なバッテリーな開発しています。車の側はまったく変更しなくてもAmpleのバッテリープレートは搭載できます」。

Ampleは現在、5社のOEMと共同開発を進めており、すでに9モデルの車を使ってバッテリー交換のアプローチを検証した。それらのOEM企業の1社には、Better Placeとのつながりもある。

AmpleがUber(ウーバー)とのパートナーシップについて発表したことから、同社が日産のリーフにも関わっていることは明白になっている。ただし、Ampleの創設者たちは、OEMとの関係についてコメントを控えている。

Ampleが日産とつながっていることは明らかだ。日産は2021年初めにUberとのゼロエミッション・モビリティに関する提携成立について発表している一方、AmpleによればUberはAmpleがベイエリアの数カ所に設けるロボット充電ステーションを利用する最初の企業でもある。日産との協力関係は、同社のもう1つの部門であるルノーとBetter Placeとのパートナーシップを彷彿とさせる。失敗に終わった以前のバッテリー交換スタートアップにとって、それは最大の取引になったのである。

Ampleによれば、ある施設に充電設備を設けるのに、わずか数週間しかかからないという。また、料金システムは1マイルあたりに供給されたエネルギーに対して料金を徴収するというものだ。「ガソリンより10~20%安くなる経済性を達成しています。営業初日から利益が上がります」とハッソウナ氏は述べた。

Ampleにとって、Uberが最初のステップになる。Ampleはまとまった数の車両を持つ組織を重視し、名前は非公表ながら複数の公共団体とも、車両群をAmpleのシステムに加入させるよう交渉中だ。ハッソウナ氏によれば、まだUberのドライバーだけだとはいえ、Ampleは現在までにすでに何千回ものバッテリー交換を実施しているという。

ハッソウナ氏によると、車両には従来の充電施設でも充電が可能だ。同社の請求システムでは、同社が提供したエネルギーと、他の充電口から供給されたエネルギーを区別できるのだという。

「これまでのユースケースの場合、ライドシェアでは個人ドライバーが料金を支払っていました」とソウザ氏はいう。Ampleでは、2021年これから配置される5つの車両群について、車両群の管理者や所有者が充電料金を払うようになることを期待している。

Ampleのインスピレーションの源の1つとなっているのが、ハッソウナ氏が以前One Laptop per Child(ワン・ラップトップ・パー・チャイルド)というNPOで働いていた頃の経験だ。そこでは、子どもたちの間でノートパソコンがどのように使われているのか思い込みを考え直さざるをえなかったという。

「最初はキーボードとディスプレイの問題に取り組んでいましたが、すぐに課題は子どもたちが置かれている環境にあるということを実感するようになり、インフラ構築の枠組みを開発するようになりました」とハッソウナ氏は述べた。

問題だったのは、当初ノートパソコンを供給する仕組みを設計した時点で、子どもたちの家にはノートパソコン用の電源がないことを考慮に入れていなかったことだった。そこで、バッテリー交換用の充電ユニットを開発したのだ。子どもたちはその日の授業でノートパソコンを使い、家に持ち帰り、充電が必要になればバッテリーを交換できるようになった。

「企業が所有する車両群にはこれと同じソリューションが必要です」とソウザ氏は述べた。とはいえ、個人でクルマを所有している人にもメリットがあるという。「自動車のバッテリーは徐々に劣化していくため、所有者はこのようなサービスがあれば、クルマにフレッシュなバッテリーを搭載できます。また、時がたつにつれて、バッテリーで走行可能な距離も伸びるでしょう」。

ハッソウナ氏によれば、現時点ではOEMからAmpleにバッテリー未搭載の自動車が届き、Ampleが自社の充電システムをそこに取り付けるかたちになっている。それでも、Ampleのシステムを利用する車両の数が1000台を超える中で同社が期待しているのは、Ampleから自動車メーカーにバッテリープレートを送り、メーカーサイドでAmpleが独自のバッテリーパックを取り付けるようになることだ。

Ampleが現時点で対応しているのはレベル1とレベル2の充電だけであり、同社と提携する自動車メーカーにも急速充電オプションを提供していない。おそらく、そうしたオプションを提供することは自社のビジネスの首を絞めることになり、Ampleのバッテリー交換技術の必要性を排除してしまう可能性すらあるからだろう。

現在問題となっているのは、車両への充電にかかる時間だ。高速充電でも満タンまで20~30分かかるが、この数字は技術の進歩とともに下がっていくだろう。Ampleの創設者たちは、たとえ自社のバッテリー交換技術よりも高速充電の方が優れた選択肢として進化することがあるとしても、自分たちのビジネスを電気自動車の普及を早めるための補足的な段階だとみなしている。

「10億台のクルマを動かそうとすれば、あらゆるものが必要になります。それだけたくさんのクルマを走らせる必要があるのです」とハッソウナ氏は述べた。「問題を解決するために、あらゆるソリューションが必要だと思います。バッテリー交換技術を車両群に応用する場合、必要なのは充電スピードではなく、料金面でガソリンに対抗することです。今のところ、高速充電を誰にでも利用できるようにすることは現実的ではありません。5分間でバッテリーに充電できるかどうかは問題ではないのです。それだけの電力を供給できる充電システムの構築コストが、割に合わないのです」。

Ampleの創設者2人は、充電にとどまらず、グリッド電力市場にもチャンスを見いだしている。

「電力のピークシフトは経済に組み込まれています。この点でも私たちが役に立てると思います」とソウザ氏は述べた。「これをグリッド蓄電池として使うのです。私たちは需要に応じた電気料金システムに対応できますし、グリッドに電力を供給するようにという連邦指令もありますから、エネルギーを戻すことでグリッド電力の安定に貢献できます。Ampleの充電ステーションの数はまだ大きな効果を上げられるほど多くはありませんが、2021年事業を拡大すれば、貢献できるようになるでしょう」。

ハッソウナ氏によると、同社の蓄電容量は1時間あたり数十メガワットで運用されている。

「このちょっとした蓄電池を使って、交換ステーションの発展を促進できるでしょう」とソウザ氏は述べた。「ステーションの設置に驚くほど巨額の投資は必要ありません。これまでとは別の資金調達方法も活用しながら、複数の方法でバッテリーの資金を調達できると思います」。

Ampleの共同創設者、ジョン・ソウザ氏とハレド・ハッソウナ氏(画像クレジット:Ample)

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タグ:Ample電気自動車バッテリー資金調達日産Uber

画像クレジット:Ample

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

燃費規制の罰金引き上げを延期する米国の決定にEVメーカーが反発

燃費基準を達成できなかった自動車メーカーに課せられる罰金の引き上げを延期する決定に、電気自動車メーカーが反発している。

従来の自動車メーカー(その多くは、現在ゼロエミッション車に多額の投資を行っている)を代表するロビー団体は、新型コロナウイルスによる大規模な混乱に業界が直面している時期に、罰金を引き上げ れば経済的に著しい影響があると主張。しかし、自動車産業に新規参入したEVメーカーは、罰金の仕組みが自動車の排出ガスを減らし、さらに低排出ガスまたはゼロエミッション(排出ガスをまったく出さない)技術への投資を促す強力で効果的な誘引になると述べている。

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2021年1月に発表したこの決定は、罰金の引き上げを、2019年モデルイヤーの初めから、2022年モデルイヤーまで延期するとしている。Tesla(テスラ)は、この延期が同社に「継続的かつ回復不能な損害を与え」、非遵守の重要性を軽減し「不公平な競争条件」を生み出しているとして、この判決の見直しを米国第2巡回区控訴裁判所に申し立てている。

CAFE(Corporate Average Fuel Economy:企業平均燃費)の罰金は、1975年に導入されて以来、一度だけ引き上げられた。自動車メーカーの平均燃費値が基準に満たない場合、1ガロンあたりの走行可能な距離が0.1マイル (約0.04km/L)増えるごとに生じる罰金が、5ドル(約546円)から5.50ドル(約601円)に上げられたのだ。米国議会はインフレの影響を是正するため、2015年に罰金の額を14ドル(約1530円)に引き上げることに決めたが、NHTSAと裁判所はそれをいつから適用するかについて議論を重ねてきた。2020年8月の第2巡回区の判決では、2019年モデルから罰金を引き上げることで決着がついたように思われたが、自動車メーカー各社は2020年10月、罰金引き上げの延期を求める申し立てを行っていた。

CAFE規制の罰金は、ゼロエミッションの自動車メーカーにとって大きな利益となる。排ガスを出さないクルマ(つまり電気自動車)を製造している自動車メーカーはクレジットを受け取り、燃費基準を達成できなかった他の自動車メーカーにそれを売ることができるからだ。テスラは規制当局に提出した最近の報告書の中で、他の自動車メーカーにクレジットを販売することで得られる金額は、2019年の5億9400万ドル(約649億円)から2020年には15億8000万ドル(約1726億円)に増えたと述べている。罰金の引き上げを遅らせることは、クレジットの増額を見込んで経済的意思決定を行った企業に害を与えると、テスラは主張している。

新規EVメーカーのRivian(リビアン)とLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)も、CAFE罰金の引き上げ延期に反対すると、TechCrunchに語った。

Lucid Motorsの法務顧問を務めるKevin Vincent(ケビン・ビンセント)氏は、TechCrunchに次のように述べている。「クレジット市場はEV産業全体にとって非常に有益なものです。EVの製造を始めようとしているすべての企業は、新興企業であれ既存のメーカーであれ、EVを製造する際に確かなクレジットを得られることが恩恵となるからです。多くの既存メーカーは、結局自分自身でクレジットを売買することになるので、燃費を向上させている先見性のある企業には恩恵があります」。

Rivianのパブリックポリシー担当VPで規制法務責任者のJames Chen(ジェームズ・チェン)氏は、TechCrunchに送られてきた声明の中で、CAFEやその他の排出基準を後退させることは、排出削減(温室効果ガスおよび基準汚染物質)、燃料効率の向上、外国産石油への依存度の低減、技術面のリーダーシップ、およびEVの普及において、米国を後退させるだけだと述べている。また、同社は「より厳しい排出ガス基準と、基準を満たせなかった場合の罰則強化を含む、EVの普及を促進する取り組みを強く支持する」と続けている。

NHTSAは、すでに製造されたモデルイヤーに遡って罰金を適用すべきではないという理由で、引き上げを延期した。自動車メーカーはすでに製造済みの車両の燃費を向上させる手段を持たないため「抑止効果がなく、法律の遵守を促進することがないモデルイヤーにまで、修正された規則を適用するのは不適切である」とNHTSAは述べている。

自動車メーカー各社もまた、ロビー団体「Alliance for Automotive Innovation(自動車イノベーション協会)」が提出した嘆願書および補足コメントの中で、新型コロナウイルス感染流行による経済的苦難を引き合いに出している。Mercedes-Benz (メルセデス・ベンツ)は、パンデミックによりサプライチェーン、労働力、生産に混乱が生じたと、NHTSAに述べている。

「このような厳しい経済状況の中で、遡って罰金率の引き上げを適用することは非良心的であり、新型コロナウイルスの経済的影響を考慮して規制緩和を促進しようとする政権の取り組みとは相反すると我々は考えます」と同自動車メーカーは述べている。

テスラは、新型コロナウイルスの感染流行を根拠とすることは、遅延の理由を示す具体的な証拠がない限り「通用しない」と、裁判所に提出した訴状の中で主張している。

また、カリフォルニア州やニューヨーク州など16の州の司法長官や、環境保護団体のSierra Club(シエラ・クラブ)、Natural Resources Defense Council(天然資源防護協議会)も、この延期に異議を唱えている。

NHTSAの決定は訴訟番号NHTSA-2021-0001として公開されている。テスラは第2巡回区に案件番号21-593で申請している。

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タグ:電気自動車NHTSA地球温暖化環境問題アメリカ

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポルシェが電気自動車Taycanをサブスクプログラムに追加

Porsche(ポルシェ)は、米国の新規顧客ベース構築を目的とする広範な拡張の一環として、同社初の電気自動車Taycanスポーツセダンをサブスクリプションと短期レンタルプログラムに加えた。

さらにPorscheは米国時間3月25日、Porsche Driveサブスクリプションとレンタルプログラムの展開を従来の4都市から9都市へと拡大したことも明らかにした。現在、アトランタ、ヒューストン、フェニックス、カリフォルニア・アーバイン、ロサンゼルス、モントレー、サンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼに住む顧客に提供されている。2021年、そして2022年にかけて引き続き米国内でサービス都市を拡大する計画だと同社は話した。

同社のプログラムはフレキシビリティがすべてだ。それには価格がともなう。まずは車両1台のサブスクまたはレンタルプランで提供されるTaycan 4Sモデルの場合、同程度の2年間のリースの月間料金よりも20%ほど高い。Taycan 4Sは月3250ドル(約35万円)、Taycan後輪駆動は月2500ドル(約27万円)だ。

短期プランでのTaycan 4Sレンタルは、1〜3日間であれば1日あたり335ドル(約3万6000円)、4日以上だと1日あたり295ドル(約3万2000円)だ。価格には税金と手数料は含まれず、サブスク利用者はアクティベーション料金595ドル(約6万5000円)を払わなければならない。Taycan後輪駆動モデルは2021年春に加わる。

目が飛び出るほどのプログラム価格にもかかわらず、拡大を約束できるほど十分人気だ。Porsche Driveサブスクは大半のマーケットで1〜2カ月先まで予約で埋まっている、と同社の広報担当はTechCrunchに語った。

関連記事:ポルシェが月額27.7万円で911に乗れるサブスクリプションプランを追加、ロサンゼルスにも進出

Porsche Cars北米の会長兼CEOであるKjell Gruner(クジェル・グリューナー)氏によると、同社はこれらのプログラムを販売やリースの代替ではなく補足するものととらえている。Porsche Driveの顧客の約80%がPorscheは初めてという人だと同氏は話した。

Porscheは2017年に初めてサブスクプログラムをテストし、以来、試行錯誤してきた。現在、3つのプランがあり、すべてPorsche Drive車両サブスクプログラムの下で提供されている。サブスクは2020年にブランド変更された。最も充実しているプランは複数車両サブスクで、顧客は月単位でさまざまな車両を取っ替え引っ替えできる。シングル車両サブスクでは延長オプション付きで1カ月、あるいは3カ月間、1つの車両にアクセスできる。そしてレンタルでは、名称が示す通り短期レンタルを提供している。これはラグジュアリーなスポーツカーやSUVに1週間ほど乗りたい、あるいは週末に使いたいという人向けだ。

これらのプランにはPorsche Driveアプリからアクセスできる。ユーザーは車両を選び、車両配達やピックアップのコンシアージュサービスをアプリを通じて設定できる。サブスクプランは車両メンテナンスや保険をカバーする一律月額料金となっている。

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タグ:ポルシェ電気自動車サブスクリプション

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ベルリンの高級車配車サービスBlacklaneが約28億円調達、持続可能な移動手段として事業拡大を目指す

世界的にUber(ウーバー)の規模が拡大し続ける一方で、ドイツではより小規模なオンデマンド交通機関のスタートアップ企業が資金を調達し、特定のサービス分野をターゲットとするスタートアップにチャンスが残されていることを証明した。Blacklane(ブラックレーン)は、ベルリン、ロンドン、ドバイ、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、シンガポールをはじめとする16都市で、オンデマンドの黒塗りの高級車による運転手サービスを提供しているベルリンのスタートアップで、この度2200万ユーロ(約28億円)の資金調達ラウンドを終了した。

Jaguar(ジャガー)が起ち上げてロンドンで運営している電気自動車を使った配車サービス「Havn」の株式の過半数を2月に取得したBlacklaneは、今回の資金調達を利用して、持続可能な移動への取り組みを継続的に拡大するとともに、より柔軟な乗車オプションを提供し、既存のビジネスを継続的に拡大していくという。

新型コロナウイルスとそれにともなう旅行の減少、特に狭い空間を他人と共有したいと思う人々が減ったことで、Blacklaneの2020年の月次収益は99%減少した。だが、アップラウンドの評価額で行われた今回の資金調達は、そんな1年を経て、同社がいかに成長の兆しを見せているかを示すものだ。

「世界の旅行業界とモビリティ業界は苦境に立たされており、いくつかのプレイヤーは大幅な削減、休眠、事業停止の間で苦闘しています。Blacklaneはこれを、旅行者の新たなニーズに応える機会と捉えています」と、Blacklaneの共同設立者でCEOを務めるDr. Jens Wohltorf(イェンス・ウォルトーフ博士)は声明の中で述べている。「今回の資金調達のおかげで、レイオフをすることなく、イノベーションを迅速に進めていくことができます」。

同社によると、今回の資金は、既存の投資家であるドイツの大手自動車会社Daimler(ダイムラー)、アラブ首長国連邦のALFAHIM Group(アルファヒム・グループ)、btov Partners(ビートゥブイ・パートナーズ)からのものだという。アップラウンドによるとのことだが、Blacklaneはいかなる数字も開示しておらず、評価額も明らかにしていない。これまでの支援者には、日本の大手人材派遣企業であるRecruit Holdings(リクルートホールディングス)の戦略的投資部門も含まれており、2018年には約4500万ドル(約49億円)のラウンドを行うなど、同社はこれまでに約1億ドル(約109億円)を調達している。

今回の資金調達は、新型コロナウイルスの影響から旅行・交通系スタートアップにとって非常に厳しい1年となった後に行われたものだが、Blacklane自身も2020年のパンデミック発生後に月次収益が99%減少したと述べている。

同業他社の中には、フードデリバリーや他の交通手段(自転車やスクーターなど)など、他の分野に多角化することで、より中核的な配車サービス事業を補うことができた企業もある。その一方で、配車サービスは公共交通機関よりも安全な移動手段とも捉えられている。しかし、Blacklaneは、自分たちを「すべての人々が利用する乗り物」とは位置づけておらず、その中心的なユースケースは、高級ハイヤーや空港への送迎(これも死に絶えていた)であった。そのため、人々の移動が止まると、Blacklaneのビジネスは急落した。

パンデミックの前には、集中的なビジネスモデルで利益を上げることができそうだったことを考えると、Blacklaneにとっては特に悪いタイミングだった(2020年の財務状況が明らかになるにはもうしばらく時間がかかるが、同社から発表された直近の決算では、2018年に約1800万ドルつまり20億円近い純損失を計上している)。

しかし、Blacklaneがアップラウンドで資金を調達できた理由は、別の側面にある。

2020年の夏、交通機関や旅行会社が少しずつ回復の兆しを見せ始めたとき、同様に回復の兆しを見せたBlacklaneは、それと同時に多様化に向けて一歩を踏み出した。

2021年3月初めには、22都市で、注文までのリードタイムを30分に短縮した「ショーファー・ハイヤリング」というオンデマンドサービスを追加した(従来のサービスはもっと事前に予約が必要だった)。また、収益の基盤となっていた空港送迎がまだほとんど戻ってきていないことから、短距離サービスの料金体系を競争力を高めるように変更した。

さらに、Blacklaneは、ジャガーが設立した電気自動車サービス「Havn」の株式の過半数を非公開で取得。すでに同社が運用していたTesla(テスラ)の車両と合わせて、より持続可能な移動手段への移行を先導している。「世界的な旅行規制は、我々にとって、安全で持続可能な旅行に対する可能性をリセットするための一度きりのチャンスです」と、ウォルトーフ博士は声明の中で述べている。「Blacklaneは責任を持って回復し、人と地球の両方に配慮しながら成長を続けていきます」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Blacklaneドイツ資金調達電気自動車配車サービス

画像クレジット:Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)