労働者が「フレキシブルな仕事」に何を求めているのか、WorkWhileは新たな見解を示す

WorkWhile(ワークワイル)の共同設立者であるJarah Euston(ジャラ・ユーストン)氏は、労働者を柔軟で信頼できる仕事に結びつけるという使命感を持っており、そう考えるのは彼女1人だけではない。しかし、彼女が際立っているのは、彼女が今日の労働市場の多くは誤った考え方の上に成り立っていると考えていることだ。

「私は、労働者が求めるのは無限の柔軟性だという考えには賛成できません」と、彼女はTechCrunchのインタビューで語っている。「それはおそらく、時給制の仕事で家賃を払おうとしたことがない人たちによるもので、請求書を支払うだけの十分な収入がある見通しや保証をするものではありません」と語る。

彼女はさらに「労働者は柔軟なスケジュールを必要としていますが、無限の柔軟性を求めているわけではありません【略】誰かがUberのドライバーになり、30分運転して、3時間ビーチに座って、さらに10分運転したいといった考えは、市場が自ら語った偽りなのです」と述べた。

労働者が何を得て、どのくらいの頻度でそれを得ることができるのかを理解するのに役立つプラットフォームがないことが、ユーストン氏が共同創業者のAmol Jain(アモル・ジャイン)氏とともにWorkWhileを立ち上げることに興味を持たせるきっかけとなった。2019年に設立されたWorkWhileは、時間給労働者を空いているシフトにつなげるだけでなく、翌日払い、遠隔地からのヘルスサービスへのアクセス、給与の透明性といった特典を提供する。

WorkWhileは、本拠地であるサンフランシスコ・ベイエリアをはじめ、ロサンゼルス、アトランタ、マイアミ、北ニュージャージー、アトランタ、シアトル、ヒューストン、ニューヨーク・メトロなど13の市場でサービスを運営している。ユーストン氏のビジョンに沿ったこの成長は、投資家の大きな関心を集めている。

このスタートアップは本日(米国時間2月23日)、Reach Capital(リーチ・キャピタル)が主導し、Khosla Ventures(コスラ・ベンチャーズ)、F7 Ventures(F7ベンチャーズ)などの既存投資家、Chamaeleon(カメレオン)、Position Ventures(ポジション・ベンチャーズ)、Gaingels(ガインガル)などの新規投資家が参加して、1300万ドル(約14億8900万円)のシリーズAを最近調達したと発表している。

最終的にWorkWhileが目指すのは、シフトだけでなく、常駐サポートやサービスも含めて(週の働き方にかかわらず)、より離れづらい労働者を持つマーケットプレイスを構築することだ。Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏が設立したRunner(ランナー)は、最近、同じようなアプローチで立ち上がった。パートタイムのオンデマンド労働者をW-2社員として雇用し、より安定した仕事を提供し、その後、テック関連のオペレーションでの仕事へとつなげるという方法だ。Bluecrew(ブルークルー)も同様のサービスを提供しているが、バーテンダー、イベント管理、警備、データ入力、カスタマーサポートなどの仕事を紹介する前に人材を雇用している。

安定した柔軟な仕事への関心が高まっているのは、大型辞職の反動もあるだろうが、フリーランス経済が成熟し、非定型の仕事を求める労働者でもサポートを求めるようになったことを示す、さらなるサインでもある。WorkWhileによると、Advance Auto Parts(アドバンス・オート・パーツ)、Ollie’s Bargain Outlet(オーリーズ・バーゲン・アウトレット)、Good Eggs(グッド・エッグズ)、Thistle(シスル)、Edible Arrangements(エディブル・アレンジメンツ)、Dandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)、Bassett Furniture(バセット・ファニチャー)といった企業でシフトが埋まっているとのことだ。

画像クレジット:WorkWhile

ユーストン氏によると、WorkWhileのプラットフォームで働く人の80%が週に30時間以上働きたいと考えており、60%が週に40時間以上働きたいと考えているという。「WorkWhileでは、『ギグ』という言葉は使わないようにしています。ギグプラットフォームと見られたくありません」とユーストン氏はいう。「安定した給料を得るための最高の場所として見てもらいたいのです」と語る。

労働者に優しいという売り文句に加え、WorkWhileは労働者にサービスの利用料を一切課さない。その代わり、WorkWhileを利用する企業には、労働者に支払われる料金に応じたパーセント型の手数料を請求することで利益を得ている。もちろん、雇用主にとっては、より信頼性が高く、離職率の低い労働力が期待できる。

ユーストン氏によると、同社は「人々が仕事についてどう感じるか」を示すデータポイントを見つけ、それを基にプロフィールを作成することが重要であるという。例えば、WorkWhileに入社した社員は、まずオリエンテーションを受け、その後、行動テストを受けることになる。

「難しくはありませんが、まさに指示に従っていくテストです」と彼女はいう。「1年に何回病欠の電話をしたかや、他の人は1年に何回病欠の電話をすると思うかといった、職場を取り巻く意識について確認しているのです」と語る。WorkWhileの現在の欠勤率はわずか5%で、予定されている労働者がシフトに参加するかどうかを予測する精度は76%だ。

このような方法でデータポイントを追跡することの課題は、歴史的に見過ごされてきた人々や社会経済的に低いバックグランドを持つ人々に不釣り合いに重くのしかかることである。結局のところ、このスタートアップは、主にパートタイムでフレキシブルな仕事を探している人向けではない。それは市場のすべての層を取り除いてしまいかねない。もう1つ興味深いデータがある。WorkWhileのプラットフォームで働く時間給労働者の約28%が暗号資産を所有しているということだ。

ユーストン氏によると、アプリでは「あえて意図的に」人口統計学的な質問をせず、前述の理由から予測モデリングの要因に年齢を含めないようにしているとのことだ。WorkWhileは、任意の労働者調査に基づいて、ユーザーの80%がPOC(有色な肌を持つ人々)であると認識しているという。

「私たちのモデルの哲学は、人々が働くことを妨げるのではなく、むしろリスクを管理することです。例えば、誰かがシフトに現れる可能性が50%未満であると予測した場合、顧客の要求が満たされるように予備の労働者を送ったほうがよいでしょう」と彼女は付け加えた。「我々のモデルが間違っていて、労働者がシフトに現れた場合は、そのバックアップの労働者には支払いは行われますが、顧客には請求されません」と語る。

同社は、誰もが働こうとすることを制限していないと主張しているが、より高い評価を受けた人に新しいシフトの最初の機会を優先して提供している。「将来的に、現場への移動が困難かもしれないと私たちが予測する人たちへのサポートを充実させることも視野に入れています。[…]もし私たちが、あなたが車を持っていないとわかった場合、相乗りオプションを提示することを検討することができます」と彼女は言った。

画像クレジット:WorkWhile

画像クレジット:SunnyGraph / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

学生向けジョブマッチングマーケットプレイスのZenjobが約57.5億円を獲得

欧州のカジュアルなジョブマッチングにさらなる資金を。小売、物流、接客などの分野で副業を探す学生を対象とし、一時的な労働力を必要とする雇用者と結びつけることを約束するマーケットプレイス・プラットフォームのZenjob(ゼンジョブ)は、5000万ドル(約57億5100万円)のシリーズDラウンドの資金調達を完了した。

ベルリンを拠点とするこのスタートアップは、3000万ドル(約34億5100万円)のシリーズCを調達して以来、わずか2年弱の間に、このような資金調達を行った。

他の多くの「現代的人材派遣会社」と同様、Zenjobは派遣社員を直接雇用し、給与や事務処理など関連する管理業務を請け負い、派遣社員の経験をさらに簡易化する。また、シフト終了後72時間以内に給与の半額を支払うという約束もあり、従来の派遣会社に比べて送金が早くなる可能性がある。

一方、雇用主はZenjobと契約を結び、必要に応じて短期・長期の仕事を含む派遣社員を予約することができる。

Zenjobは配送、小売、物流、eコマース、接客、サービス業などの「大手」企業と取引をしているというが、顧客名は明らかにしていない。

現在、欧州の2つの市場で1万カ所以上の場所にある2500社以上が、オンデマンドで派遣社員を確保するために同社のプラットフォームに登録しており、毎月4万人以上の労働者が副業を予約するためにこのプラットフォームを使っているという。

2015年に設立されたこのスタートアップによると、これまでにドイツとオランダで100万件以上の仕事をマッチングしているとのことだ。

今回のシリーズD調達はAragon(アラゴン)が主導し、Acton Capital(アクトン・キャピタル)、Atlantic Labs(アトランティック・ラボ)、Forestay(フォーステイ)、Axa Venture Partners(アクサ・ベンチャー・パートナーズ)などZenjobの既存の全投資家が参加している。

この新しい資金調達は、2022年夏に立ち上げを予定している英国市場を含む欧州内での事業拡大と、新しく「ホワイトカラー」タイプの職種のサポートなど、拡大する顧客基盤のニーズに対応するための、データに基づく新たな自動化機能を含む製品開発に当てられるという。

「当社は2022年、英国でZenjobの販売を開始し、欧州の新規市場に対する投資を継続します。また、ドイツとオランダでも事業を拡大しています」と、同社は説明している。「技術チームを増強し、プラットフォームのスケーリングと新しい自動化機能に多大な投資を行う予定です」とも付け加えた。

「需要が多いので、ナレッジワークとオフィスワークのオファーを拡大する予定です」と語る。

Zenjobは、スペインのJobandtalent(ジョブアンドタレント)CornerJob(コーナージョブ)、ルクセンブルグのJob Today(ジョブ・トゥディ)など、増加する、技術者を対象とした派遣社員のジョブマッチングを行うプラットフォームと競合している。

ギグプラットフォームのUber(ウーバー)もこの分野に注目しており、パンデミック時のロックダウンで乗り合いタクシーが需要の打撃を受けたため、2020年に英国のドライバー向けにWork Hubを立ち上げ、2019年には米国でUber Worksという、シフトを見つけるためのアプリを発表している。

欧州連合(EU)では、ギグプラットフォームにおける偽りの自己雇用に対処することを目的とした規制が導入され、プラットフォームワーカーに関する最低基準を定めた汎EU的な法的枠組みが設けられる予定だが、これにより、オンデマンド労働の需要が直接雇用する人材仲介業者に流れ、エージェント型の人材派遣プラットフォームの需要が加速される可能性がある。これにより、ギグプラットフォームは、何千人もの配達員やその他の非正規労働者を雇用する必要がなくなる。

競合状況について話すと、Zenjobは、人材派遣市場、ジョブマッチング、プラットフォームに関しては、テクノロジーが最大の差別化要因になると主張している。

「この市場に目を向けると、人材派遣と仕事探しを面倒で時間のかかるものにしているタスクを処理するためのテクノロジーを利用することに関して、私たちは表面を削ったにすぎません」と指摘する。「そのため、私たちは、プラットフォームと必要なすべてのプロセスの内部技術開発に多くの重点を置いています。現在、約75%のプロセスが完全に自動化されていますが、近い将来、95%以上にすることを目指しています」と語っている。

「私たちのモデルがうまく機能しているのは、技術に重点を置くことで、(高度な自動化により)高品質の人材を使った非常に迅速なサービスを、取引先の企業に提供することができるからです。私たちのビジネスの残りの半分は、人材に最高の経験と利益を提供することだけに集中しているので、高い成就率と信頼できる人材を提供することができるのです。提供する仕事には相場以上の報酬を支払い、現在アプリを使っていつでも仕事を予約できる4万人以上の人たちの体験と満足度をとても大切にしています」。と語る。

また、Zenjobは、まだ開拓されていない大きな成長があると主張している。例として、ドイツを挙げ、人材派遣の95%以上はまだほとんどオフラインで行われているという。

「そのため、私たちは、非常に伝統的な方法でジョブマッチングや人材派遣に取り組んでいる大企業と競合しています」と同社は述べている。「私たちのアプローチは100%デジタルで、私たちを通して仕事を予約してくれる人たちに提供できる利点を常に改善するよう努力しています。迅速な支払い、24時間365日いつでも仕事の予約が可能です」と語った。

画像クレジット:Zenjob

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アマゾン倉庫従業員に組合参加の是非を問う再投票は、2月に郵便投票で実施

全米労働関係委員会(National Labor Relations Board)は米国時間1月11日、Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマー倉庫の従業員に労働組合参加の是非を問う2回目の投票について、詳細を発表した。今回の再投票は、USPSの郵便投票によって行われる計画で、2月4日に郵送され、3月28日に集計される予定だ。

2021年、NLRBの第10地域の責任者は、組合結成に反対するAmazonが圧倒的な勝利を収めたことを受け、2回目の投票を行うと発表した。NLRBが発行した通知の中で、同組織は次のように記している。

2021年2月8日に始まった選挙は、雇用主が職場の正面玄関のすぐ外に投票用郵便箱を設置させたり、義務的な会議中に従業員の支持を不適切に調査するなど、選挙手続きに不正な行為が見られたことから、雇用主が従業員の自由で合理的な選択の行使を妨害したと全国労働関係委員会が判断したため、無効となりました。それゆえに、この「第2回選挙の通知」の条件に従って、新たな選挙が行われます。すべての投票資格者は、改正された全国労働関係法(National Labor Relations Act)が、いかなる関係者による干渉からも自由に、自分の思うとおりに投票する権利を彼らに与え、この権利の行使を保護するものであることを理解するべきです。

2回目の投票を行うという判決は、Amazonが敷地内に投票用郵便箱を設置したり、現場周辺に「vote no(反対に投票しよう)」という看板を設置したりしたことが投票を妨害したという小売・卸売・百貨店労働組合(RWDSU)からの苦情を受けて出されたものだ。Amazonはかねてより、組合結成の失敗は同社のフルフィルメントセンターで働く従業員の意思を反映したものだと主張している。

同社の広報担当者は当時「当社の従業員は常に組合に加入するかどうかの選択権を持っており、2022年初めには圧倒的多数がRWDSUに加入しないことを選択しました。今回、NLRBがこれらの票を数えるべきではないと判断したことは残念です」と、TechCrunchに述べていた。

RWDSUは最初の投票の際に、新型コロナウイルス感染の懸念や投票者に対する強制力の可能性などから、直接投票を行うことに疑問を呈していた。今回の投票は無記名投票で行われる。

RWDSUは、1月11日朝に報じられたニュースを受けて、TechCrunchに以下の声明を提供した。

最初の組合選挙ではAmazonの不正行為が結果を大きく汚したため、NLRBはその結果を覆し、アラバマ州ベッセマー倉庫の労働者のために2回目の選挙を指示しました。私たちは、今回の決定が、新たな選挙でAmazonが不愉快な行為を続けることを十分に防止できないのではないかと深く懸念しています。私たちはNLRBに、今回の選挙手続きを労働者にとってより公平なものにすることができるいくつかの改善策を提案しましたが、本日発表された選挙通知では取り上げられていませんでした。労働者の声は、公正かつ自由であるべき選挙をコントロールしようとするAmazonの無制限な力に邪魔されることなく、公正に聞かれるべきであり、私たちは引き続きAmazonの行動に対する責任を追及していきます。

Amazonはこのニュースに対しても「当社の従業員は常に組合に加入するかどうかの選択肢を持っており、2021年は圧倒的多数がRWDSUに加入しないことを選択しました。我々のBHM1(アラバマ州ベッセマー倉庫)で働くチームが再び声を上げてくれることを楽しみにしています」と、TechCrunchに語った。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

DoorDashがニューヨークでの「超速」配達開始でギグワーカーではなく正社員に頼る雇用モデルもテスト

DoorDash(ドアダッシュ)は米国時間12月6日、10〜15分で配達する「超速」配達をニューヨーク市のDashMart1店舗で始めることを発表した。まずはチェルシー地区の新店舗からスタートし、今後数カ月内にニューヨークや他の地域でも店舗や提携を増やしていく予定だ。そして、これらの新しい配達サービスを提供するために、同社はギグワーカーではなく正社員に依存する新しい雇用モデルのテストも開始する。

同社は、2020年4月にデジタルコンビニエンスストアチャネルDashMartを立ち上げた

DashMartでは、日用品やコンビニエンスストアにあるような商品を販売している。DashMartは商品約2000点を取り扱うマイクロフルフィルメントセンターで、DashMartの倉庫担当者が注文品をピックアップして梱包し、Dasherと呼ばれる配達員が注文品を集荷して顧客に届けるという仕組みになっている。本日から、デリバリーゾーン内のDoorDashの顧客は、DoorDashのアプリまたはウェブサイトにアクセスし、DashMartに注文して配達してもらうことができる。なお、DashMartチェルシー店の営業時間は毎日午前7時から午前2時までだ。

15分という配達時間を実現するために、超速配達ではDashMartからの配達範囲を狭くすることで配達員の配達移動時間を減らし、慣れ親しんだルートを通るようにしている。また、DoorDashによると、配達に使用する電動自転車の速度は時速20マイル(時速約32km)までとなっている。

そしてDoorDashは、超速配達では一定量の仕事とより多くの収入を求める配達員に新たな機会を提供すると発表した。DoorDashが新たに設立したDashCorpsは、定期スケジュールで働き、マネージャーに報告する配達従業員を雇用する。従業員には、時給15ドル(約1700円)〜の賃金に加えてチップが支払われ、医療・歯科・眼科保険、従業員支援プログラム、フレキシブルスペンディングアカウント、通勤手当など正社員の福利厚生が提供される。

DashCorpsの従業員は、特別にデザインされた新しいアプリを使用し、品出し、顧客サポート、管理業務など、配達以外の仕事も担当する。制服を着用し、平均週20時間の勤務となる。多くはフルタイムで働くとのことだ。

DoorDashは現在、ニューヨーク市内の400以上の地元のコンビニエンスストアや食料品店と提携していて、DashCorpsとのパートナーシップを通じて、より多くのローカル店舗に拡大していく予定だと話す。

この新しい雇用機会は、DoorDashが厳しいギグワーカーモデルから脱却し、戦略を転換していることを示している。同社はギグワーカーの雇用権を実現しようとする規制と戦ってきたいくつかのギグ企業の1つだ。今回の発表は、DoorDashが死守してきた既存のギグワーカーモデルからの脱却を意味している。

関連記事:ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

「当社は、多くの人々の生活に適した経済的機会を提供するリーダーであることを誇りに思っています。そして今、DashCorpsが提供する、これまでとは異なるタイプの新しい雇用機会に期待しています」とDoorDash社長Christopher Payne(クリストファー・ペイン)氏は声明で述べた。

配達従業員に安全トレーニングと装備を提供するのに加え、正社員向けの新しい配達アプリにはDoorDashのアプリ内安全ツールキットSafeDashも統合される。最近導入されたこのツールキットは、同社の配達員が安心して仕事ができるようサポートするためのものだ。SafeDashは現在、ニューヨーク、シカゴ、フィラデルフィア、デトロイト、サンフランシスコ、ロサンゼルスで利用でき、年内に全米の配達員がSafeDashを利用できるようになる予定だ。

同社はまた、ニューヨークの中小企業との今後のパートナーシップに反映させるため、新たに中小企業諮問委員会を設置したことを発表した。そしてニューヨークの中小企業擁護・社会支援団体であるYemeni American Merchant Association(YAMA)とも提携した。

画像クレジット:DoorDash

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

MovesはギグワーカーにUber、Lyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供しようと取り組む

トロントを拠点とするギグエコノミーフィンテックのスタートアップMovesは、ギグワーカーらが所属する企業の株式を、ギグワーカーへの報酬として提供できるようにしたいと考えている。Moves Collectiveと名付けられた同サービス。第一弾として木曜日にはUberの株式を提供し、その後すぐにLyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供する予定だとMovesのCEOであるMatt Spoke(マット・スポーク)氏は話している。

ギグワーカーたちが株主になれば、彼らが働くプラットフォームと彼ら自身の経済的なつながりをより強く感じてもらうことができるかもしれない、というのがMovesの考えである。さらにMoves Collectiveを通じて十分な数の労働者がこれら企業の株式を保有すれば、将来的には議決権を持つ集団を形成して企業の意思決定に実際に影響を与えることができるかもしれないと考えているのである。Movesによると、Moves Collectiveはすでにこれらの企業の「かなりの株式」を保有しており、そのすべてが議決権付きの普通株式だという。

この1年間、ギグエコノミーワーカーの劣悪な労働条件が労働者の抗議行動を引き起こし、カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州ではギグワーカーを従業員として見直し、ヘルスケアや休暇手当、有給病気休暇などの基本的な権利を与えようとする試みが行われてきた。Uber、Lyft、DoorDash、Instacartなどの企業は、カリフォルニア州で進行中の「Proposition(プロポジション) 22」をめぐる騒動に反撃し、マサチューセッツ州ではギグワーカーを独立した契約者として分類する提案を2022年11月の投票にかけるための連合体を結成している。

「ギグワーカーはギグエコノミーに膨大な価値をもたらしていますが、貢献した結果としての経済的リターンはまったく得られていません。私たちが解決しようとしているのは、ギグワーカーのみなさんが働いている企業の成功には、彼らが経済的に関与しているのだと感じられるようにすることです」とスポーク氏はTechCrunchに話している。

すでに同社のプラットフォームを利用しているギグワーカーは、Collectiveに登録して株式という形で報酬を受け取ることが可能だ(ギグワーカーはさまざまな企業からの金を追跡および管理し、毎月の支出口座や最大1000ドル(約11万4000円)までの即時ビジネスキャッシングを利用できる)。「3人の友人を紹介する」や「ユーザーアンケートに参加する」など一連のタスクをこなすことで、ギグワーカーは無料の株式や株式の一部を受け取ることができ、その株式はMovesが開設したユーザー自身の証券口座に入るという仕組みになっている。

「Moves Collective」という名の通り、長期的には莫大な数のギグワーカーを結集させて企業のガバナンス決定に反映させられるだけの声を生み出すことを目的としている同社。ギグワーカーの利益を確実に反映させるために、これら大手プラットフォームの年次株主総会で委任状資料の提出を提案する予定だとスポーク氏は話している。

ギグワーカーがMovesカードを使って買い物をするたびに蓄積されるインターチェンジレートがMovesの主な収益源となっており、またその収益がMovesからワーカーに還元される株式の原資となっている。

「新規顧客を獲得し、その顧客を維持するために、収益を効率的にトレードしていると言えるでしょう。ギグワーカーの当座預金の利用で我々が得た収益を商品に還元し、株式建ての報酬の資金を調達しているのです」とスポーク氏は説明する。

現時点では同プログラムは招待制になっており、株式報酬プログラムであるBumped Financialとの提携により株が蓄積されている。スポーク氏によるとMovesはInstacartの株購入を見据えて同社のIPOにも注目しているという。またFlexの配達員にはAmazonの株を、Shiptの作業員にはTargetの株をサポートすることも検討しているという。

アプリを使ったギグエコノミー企業はどこも「同じ問題」を抱えているとスポーク氏はいう。「ドライバーや作業員の離職率が非常に高く、作業をしてくれる人が定着しないのです。彼らは他のギグアプリに移るか、ギグエコノミーから完全に離れてしまうため、これらの企業は何千万ドル、何億ドルもの費用をかけて常に労働者を入れ替えているのです」。

参考:Uberがドライバーを取り戻すためにインセンティブとして2億5千万ドル(約285億円)を費やした結果、第2四半期に大規模な損失が発生

UberとLyftは株式公開前、ドライバーの定着率を高めて、労働者のロイヤルティを生み出す仕組みとしてドライバーに株式を発行することを検討したものの、規制上の問題が両社の真摯な取り組みを阻んだ。最終的に両社は一部のより活動的なドライバーに対して一度限りの現金を支給し、株式を購入するオプションを与えることにした。Uberはドライバーに向けて全体の3%にあたる普通株540万株を用意したが、ドライバーによって買い占められなかった場合は一般に提供すると伝えている。

参考までに書くが、株式公開時に8.6%の株式を保有していたUberの創業者兼CEOのTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏は、その持ち株で約50億ドル(約5691億円)を得ている。また5.2%の株式を保有していたAlphabetは約32億ドル(約3643億円)を獲得。当時、米国を拠点とするドライバーは、最大1万ドル(約114万円)相当の自社株を購入できる現金ボーナスを利用することができたのである。

ギグエコノミーに依存している企業が労働者にストックオプションを提供する際の規制は、非常に厳しいものとなっている。SEC Rule 701は、企業が従業員、コンサルタント、アドバイザーに報酬としての株式を発行する際に、詳細な財務記録を提出する必要がないことを認めているが、ギグカンパニーにはこの適用除外がうまく当てはまらない。2018年、SECは働き方の変化に適応するためにルールを拡張するとした場合の、可能な方法についてコメントを要求した。Uberは締め切り日を過ぎたものの回答を提出し「パートナーに会社の成長を共有することで、パートナーとその先の世代の収入と貯蓄の機会を強化」できようにするためにSECがルールを改定するよう要求している。

現在の法律では、UberやLyftがドライバーに株式でインセンティブを与えようとすれば、雇用者のテリトリーを侵害することになりかねない。しかし、UberやLyftのこれまでの姿勢を見ると、このようなサービスは将来的に外部に委託することになるのではないだろうか。

「Uber、Lyft、DoorDash、Instacartの4社がProp 22のような課題で一致団結し、新たな規制に反対するロビー活動を行っていることもあり、彼らはこれが業界にとって全般的にプラスになるとは考えていないでしょう」とスポーク氏。「最終的に我々は彼らと経済効果を共有する方法を模索することになると思います。1年後、2年後には、弊社が提供できる具体的な利益についてUberと話し合い、『Uber株を発行されたドライバーは、より長く働く可能性がX%高いためこの資金調達に一部参加すべきだ』などと提案することになるでしょう」。

Movesによると、現在全米50州で約1万人のユーザーが同社のプラットフォームを利用しているという。ライドヘイリング業界がパンデミックで大打撃を受ける直前の2020年2月に設立され、2021年4月から市場に進出した同社。来年前半には再び資金調達を開始する予定だが、スポーク氏によるとMovesは事業のシナリオにおけるユニットエコノミクスを洗練させ、Moves Collectiveのユースケースが出来上がるまでは、資金調達を行いたくないと考えている。

「Uberがドライバーを大切にしていないわけではないのですが、ドライバーは彼らの主要なステークホルダーではありません」とスポーク氏。「Uberの主なステークホルダーは消費者です。彼らは消費者側の市場価値を革新するために全力を尽くしており、労働者は後回しにされていることが多いのです」。

画像クレジット:Moves

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

ライドシェアサービスは運転手や地域社会にコストを負担させていることが調査結果から明らかに

Uber(ウーバー)やLyft(リフト)をはじめとする「ライドシェア」サービスの平均乗車料金は年々上昇しているが、これらの企業のビジネスモデルは、完全に明らかになっているわけではないことがわかった。今回発表された2つの調査結果は、投資家の出資額だけがすべてを物語っているわけではなく、ドライバーや地域社会もコストを負担させられていることを示している。

1つはカーネギーメロン大学の研究で、交通ネットワーク企業(TNC、公的・学術的文書で使われる用語)のあまり目立たないコストと利益を分析したものだ。

例えば、TNCの車両と利用者の活動に関するさまざまなデータを収集した結果、ライドシェア車両は1回の乗車で大気汚染に与える影響が少ない傾向にあることがわかった。これは、筆頭著者のJeremy Michalek(ジェレミー・ミシャレック)氏が大学のニュースリリースで説明しているように「自動車は最初にエンジンを始動させた時、排出ガス浄化システムが効果を発揮する温度に十分温まるまで、高レベルの有害な大気汚染を発生させる」からだ。

ライドシェア車両は通常、1回の乗車ごとにコールドスタートを行う必要がない。また、もともと排出ガス量の少ない新型車が使われていることが多いため、TNCによる移動で発生する汚染物質は、平均すると、自家用車で同じ移動をする場合の約半分と推定される。研究者の試算によれば、それによって地域社会が削減できる大気汚染関連の健康コストは、移動1回につき平均約11セント(約12.3円)の価値があるという。

これは確かに良いニュースだろう。しかし問題は、ライドシェア車両には「デッドヒーディング」(仕事の合間に無目的に運転したり、アイドリングしたりすること)の習慣や、乗客をヒックアップする場所まで移動する必要があるために、せっかくの利益が帳消しになってしまうことだ。さらに、厳密に言えば「使われていない」車が道路を走っていることによる交通量の増加や、それに伴い発生する事故の確率、騒音などを考慮すると、1回の移動につき45セント(約50.5円)のコストが地域社会全体にかかることになる。つまり、1回の乗車につき約34セント(約38.2円)のコスト増となり、そのコストは税金や福祉の低下によって賄われることになるのだ。

画像クレジット:カーネギーメロン大学

研究者たちが提案しているのは、可能な限り乗り合いタクシーや公共交通機関を利用することだが、新型コロナウイルス感染流行時には、それはそれで短所がある。ライドシェア車両の電動化は有効だが、それには多大な費用と時間がかかる。

ライドシェアの運転手たち自身も、この「分散型」業界の重みを背負っている。ワシントン大学のMarissa Baker(マリッサ・ベーカー)氏が、シアトルで組合に加入している運転手を対象に行った調査では、多くの人が勤務先の会社からほとんど何のサポートも受けていないと感じていることが明らかになった。

調査に応じた運転手は、ほぼ全員が新型コロナウイルスの感染を心配しており、約30%が自分はすでに感染していると思っていた。予想通り、ほとんどの運転手が収入は減っているのに、自費でPPE(個人防護具)を購入していた。会社からマスクや除菌剤が支給されたと答えた人は3分の1以下だった。また、ウイルス感染流行中の時期に運転手を辞めた人は、失業手当の受給に苦労したと報告している。特にシアトルでは、運転手は圧倒的に黒人男性が多く、また移民も少なくないため、それぞれが複合的な問題を抱えている。

「ウイルス感染流行時にこのような仕事をしている労働者は、運転手として所属している会社からほとんどサポートを受けられず、自分たちが直面しうる潜在的な危険性について多くのことを認識していました」と、ベーカー氏はこの調査報告に付随したリリースで述べている。シアトルの運転手は、他の多くの都市にはない追加的な保護対策に恵まれているが、他の地域の人々はもっとひどい状況に置かれているかもしれない(2020年、宅配便のドライバーも同じような問題に直面していることが判明した)。

これらの調査は「ギグエコノミー」の隠されたコストやソフトエコノミクスの一端を表すものにすぎない。消費者が企業から耳にする言葉は、このような仕事をバラ色の眼鏡で見たバージョンであることがほとんどなので、独立機関による調査は、たとえそれが単なる聞き取り調査や、立証されていないコストや行動の概算であっても、非常に価値があると言えるだろう。

画像クレジット:Al Seib / Los Angeles Times / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ニューヨーク市でデリバリーアプリワーカーの待遇改善法案が可決、トイレに行ってもいいよ!

ニューヨーク市議会で米国時間9月23日成立した条例により、GrubhubやDoorDash、Uber Eatsなどのアプリで配達をしているギグワーカーの最低賃金が決まり、労働条件が改善される。具体的には、デリバリーワーカーはレストランのトイレを使用でき、配達の最長距離を指定でき、1回の配達における最低賃金を設定でき、チップは確実にワーカーが入手できるようになる。米国の大都市がこのような法制を敷くのはこれが初めてであり、フードデリバリー企業とその何千名にものぼる契約労働者との関係に対する、行政の介入の前例となる。

一連の条例は、ニューヨーク市のNPO法人Workers Justice Projectから生まれた、主に移民のデリバリーワーカー団体であるLos Deliveristas Unidos(LDU)からの要望や陳情に基づいて起草された。同団体はパンデミックの間に労働条件の改善を求めて抗議活動を行い、4月にはニューヨーク市の最大のサービス労働者の組合であるSEIU Local 32BJに正式に加入している

Workers Justice ProjectのLigia Guallpaが、デリバリーワーカーを支援する市議会の票決に先駆けてスピーチしている。

LDUのウェブサイトには「実際にはフードデリバリーワーカーの多くが、複数のフードサービスアプリのために、1日に12時間以上、寒さと雨の中でも働き、それでも家族を養える収入を得ていない」とある。

LDUの幹部の1人は、VICEで次のように語っている。「ギグワーカーを金で釣って雨や雪でも仕事をさせているため、危険な天候が高収入を得る機会になる。今月、ニューヨーク市で13名が死んだハリケーンIDAのときも、デリバリーワーカーは食べ物を運び、洪水の最中でも注文に応えていた。DoorDashはマンハッタンでサービスを中止し、Grubhubもニューヨーク市内の一部でサービスを中断したが、それでも多くのギグワーカーがボーナスやインセンティブを求めて、身を危険にさらしながら仕事を続けました」。

こんな天候の中で、Grubhubのデリバリーはまだあなたのディナーの配達をしている。

ハリケーンIDAのこのような状況は、何年間も自明だった真実を照らし出している。デリバリーアプリの契約労働者は生活費を得るために苦労しているため、高額な賃金に釣られて自らを危険にさらす。それと同時にDoorDashやUber EatsやGrubhubのような企業は、パンデミックの間でありながら仕事が増えても、お金は儲からない

LDUはニューヨーク市の500名あまりの、アプリを利用する配達人を調査し、12.21ドル(約1349円)という時給をはじき出した。それは、市が定めている15ドル(約1657円)の最低賃金より少ない。それだけでなく、デリバリーワーカーは、交通費を自分で負担しなければならない。ニューヨーク市の場合その交通手段は主に電動自転車だ。また、デリバリーワーカーは窃盗に遭いやすい。さらに、今回の調査の回答者の49%が配達時に事件や事故に遭い、75%が医療費を自前で払ったと回答している。しかしDoorDashはTechCrunchに対して、マンハッタンでは1時間に33ドル(約3645円)稼いでいると述べている。

DoorDashはTechCrunch宛の声明で次のように述べている。「ニューヨーク市のデリバリーワーカーが特殊であることは私たちも十分理解しており、彼らのためになるポリシーの発見に労使協調して努めています。そのため2020年は、ワーカーの安全を守り収入を上げ、トイレへのアクセスを広げる業界初の取り組みを発表した。市議会も含め、すべてのステークホルダーとの協調は今後も継続すべきであり、予期せざる結果にならないよう十分注意しながら、ニューヨーク市のすべてのデリバリーワーカーを支援する方法を見つけなければなりません」。

DoorDashは今回の条例への懸念として、トイレの利用に際していちいちレストランの許可を必要なのはおかしい、と述べている。DoorDashでは最初の契約時に、デリバリーワーカーによるトイレの利用を契約条項に含めている。

画期的だ!おめでとう。LDUの@workersjusticepは歴史的な市条例を勝ち取り、デリバリーワーカーにトイレの利用と賃上げとチップの透明性と、さらにそれ以上のものを与えた。エッセンシャルワーカーのための闘争を、ともに続けよう!

Grubhubも条例の支持を表明している。同社はTechCrunch宛の声明で「これらの条例は、ニューヨークのレストランと住民のために毎日厳しい労働をしているデリバリーワーカーを支援する常識的なステップである。彼らが確実に生活給を付与されトイレにアクセスできることは、単なる名案ではなく、当然やるべきことだ」。

その他のアプリのギグワーカーもデリバリーと同様の問題を抱えている。今週初めにInstacartの契約労働者1万3000名を擁する団体Gig Workers Collectiveは、賃上げや労働条件の改善など5つの要求にInstacartが応じるまではアプリを削除するよう顧客に求めた。これらのアプリのワーカーは従業員(正社員)ではなく契約労働者となっているため、最低時給をはじめ保護が少ない。Instacartは過去に、ワーカーのチップを賞与額に含めていた。

ニューヨーク市の約8万名のデリバリーワーカーにとっては、今日の条例が前向きな変化となる。しかしテクノロジー企業が実際にその最低賃金を支払い、労働者のニーズの充足を保証するかは、まだわからない。

画像クレジット:撮影Tomohiro Ohsumi/Getty Images/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オランダ裁判所がUberドライバーは従業員と判断、Uberは控訴の意向

Uber(ウーバー)がドライバーの雇用ステータスをめぐる欧州での裁判でまたも敗訴した。オランダのアムステルダム裁判所は、Uberドライバーは自営の請負業者ではなく従業員であるとの判断を示した。

アムステルダム裁判所はまた、ドライバーにはオランダの既存の労働協約が適用されるとの見解も示した。この労働協約はタクシードライバーに関係するもので、賃金要件を定め、傷病手当などの福利厚生をカバーしていて、この協約を満たすためにUberがコストの増大に直面することを意味している(一部のケースでは過去にさかのぼってドライバーに給与を払う責任が生じるかもしれない)。

裁判所はUberに費用の5万ユーロ(約650万円)の支払いも命じた。

配車サービス大手のUberは、アムステルダムで4000人のドライバーを同社プラットフォームに抱える。

乗客とタクシーサービス提供者を結びつけるテクノロジープラットフォームにすぎず、ドライバーは「書面上」自営業者だというUberの慣習的な主張をアムステルダム裁判所は却下した。

裁判官は、ドライバーによって提供されるサービスの性質と、ドライバーがどのように働き、稼ぐのかについてUberがアプリとアルゴリズムを通じてコントロールしている点を強調した。

欧州の最高裁判所は2017年に、Uberは輸送サービス事業者であり、地域の運送法を遵守しなければならない、と裁定した。なので、あなたが今回デジャブ感に陥るのはもっともだろう。

関連記事:ヨーロッパのUberに打撃、EUの最上級審が交通サービスだと裁定

オランダでの訴訟は2020年に全国労働組合センターFNVがおこし、6月末に審問が始まった。

9月13日の声明文で、FNVのバイスプレジデント、Zakaria Boufangacha(ザカリア・ボウファンガチャ)氏は次のように述べた。「判決には我々が何年もの間主張してきたことが書かれています。Uberは雇用主であり、ドライバーは従業員です。ですので、Uberはタクシー業界の労働協約に従わなければなりません。また、こうした種の事業運営は不法であり、ゆえに法律が強制されなければならないという国際司法裁判所へのメッセージでもあります」。

Uberには今回の判決に対するコメントを求めている。記事執筆時点で返事はなかったが、ロイターによると、Uberは控訴する意向であり「オランダでドライバーを雇用する計画はない」と述べた。

【更新】Uberは控訴することを認め、広報担当は「控訴によってアプリを使うドライバーへの影響はありません」としている。

Uberの欧州北部事業を担当するゼネラルマネジャーであるMaurits Schönfeld(マウリッツ・ショーンフェルド)氏は次のように述べた。「ドライバーの圧倒的多数が独立事業者であることを望んでいて、今回の判決に失望しています。ドライバーは、働くかどうか、いつ、どこで働くかを選ぶ自由を手放したくはありません。ドライバーの利益のために当社は控訴し、その間、引き続きオランダでのプラットフォーム労働を改善させます」。

Uberは英国で、何年にもわたる雇用分類をめぐる一連の裁判で敗訴してきた。そして2021年2月、最高裁判所で同社の敗訴が確定した。

判決を受け、英国ではドライバーを労働者として待遇するとUberは述べたが、論争は続いている(労働時間の定義などをめぐって)。5月に同社は、英国の労働組合を認めると初めて述べた。

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しかしながら欧州のあちこちでUberは雇用訴訟を続けていて、プラットフォーム労働の規制緩和を求めて欧州連合の議員らにロビー活動を行っている

プラットフォーム労働を改善する方法を見つけたい、とEUは述べている。ただ、汎EU「改革」がどのようなものになるかはまだ判然としていない。

欧州委員会はプラットフォーム労働の代表者に質問してきた。

「ロビー活動に巨額を投じていること、EUレベルでさらに多くのリソースを投入していることは明白で、デジタル労働プラットフォームは明らかに懸念されるものです。Uberももちろん含まれますが、こうした企業はプラットフォーム労働に関する政策への影響を及ぼすためにロビー活動しているグループへの新たな基金の設置で協力しています」とアムステルダム大学でデータ権を研究しているJill Toh(ジル・トー)氏は判決後にTechCrunchに語った。

「Uberはカリフォルニア州でのProp 22キャンペーンで巧みに法律を修正し、欧州では他の企業とともに同じことをしようと企てています。プラットフォーム労働者規則に関係する2つの協議で委員会はテック企業とだけ話していて、労働組合や他のプラットフォーム労働の代表者と会合を持っていません」。

「こうしたことは非常に問題があり、ECの協議がプラットフォーム労働について方向を示す結果になれば特に懸念されるものです。全体としては、勝訴は労働者にとって重要ですが、欧州委員会に及ぼす企業パワーや影響力、こうした判決への公的執行の欠如の問題は残っています」とトー氏は付け加えた。

【更新】欧州委員会の広報担当はTechCrunchに対し、デジタル労働プラットフォームを通じて働いている人のための労働条件をどのように改善するかについての第2ステージの協議はまだ継続中(9月15日まで)だと述べた。

「協議の結果次第で委員会は2021年末までに提案を進める意向です」と広報担当は付け加えた。

「協議第2ステージの目的は、欧州でのデジタル労働プラットフォームの持続可能な成長をサポートしつつ、プラットフォームを通じて働いている人々がどのようにしてまともな労働条件を確保するか、ソーシャルパートナーの意見を集めることです。こうした意味で、ソーシャルパートナーは、雇用ステータス分類の促進や、労働と社会保護の権利へのアクセスといった分野で、EUレベルのイニシアチブとなる可能性のある内容について意見を求められます」。

広報担当者はまた、欧州委員会が加盟国での動きを注視しており、加盟国の分析作業を考慮している、とも付け加えた。画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Mintの元社長がギグワーカーに金融商品を提供するLeanに約5億円を出資

ギグワーカーや個人事業主は、金融商品に対するニーズがサラリーマンの人たちとは異なる。

Lean(リーン)」の創業者であるTilak Joshi(ティラック・ジョシ)氏は、Mint(ミント)の代表を務めた後、American Express(アメリカン・エクスプレス)やPayPal(ペイパル)でプロダクトの責任者を務めた経験から、この課題を痛感していた。

近年、米国では個人の労働者が増えてきているが、従来の金融機関はそれに「対応できていない」とジョシ氏はいう。

「個人労働者の70%はその日暮らしのような生活をしており、30%は十分な保険に加入していません。個人労働者は、まもなく米国の労働力の大半を占めるようになり、既存のやりとり、プラットフォーム、機関は、彼らをサポートするために急速に進化する必要があります」と彼はいう。

2020年にMintを退社したジョシ氏は、Eden Kfir(エデン・クフィール)氏、Ramki Venkatachalam(ラムキ・ヴェンカタチャラム)氏と共同でLeanを立ち上げ、ギグワーカーのニーズに合わせて「カスタムビルド」された金融商品へのアクセスを提供するプラットフォームで彼らをサポートしようとしている。そして米国時間9月8日、Inspired Capital(インスパイアード・キャピタル)が主導し、Atelier Ventures(アトリエ・ベンチャーズ)、Oceans Ventures(オーシャンズ・ベンチャーズ)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)が参加したシードラウンドで450万ドル(約4億9400万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、DoorDash(ドアダッシュ)の幹部であるGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Instacart(インスタカート)の共同創業者であるMax Mullen(マックス・ミューレン)氏、Uber(ウーバー)の元CPOであるManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Postmates(ポストメイツ)の元COOであるVivek Patel(ヴィヴェク・パテル)氏、Bird(バード)のCPOであるRyan Fujiu(ライアン・フジウ)氏など、マーケットプレイス業界の多くの企業が資金を提供している。今回の資金調達により、Leanのこれまでの調達額は約600万ドル(約6億5900万円)となった。他にも、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)(Stripeの元幹部)のパートナーであるJustin Overdorff(ジャスティン・オーバードルフ)氏、Coinbase(コインベース)のMarc Bhargava(マーク・バルガヴァ)氏、ANGI Homeservices(ANGIホームサービス)、Coinbase、Plaid(プレイド)の幹部など、注目を集めているエンジェル投資家が同社を支援している。

「個人労働者は、米国のどこよりも厳しい経済状況に置かれています。彼らが経済的な問題を解決するためにすることは、さまざまなギグマーケットプレイスで働くことです。そして、マーケットプレイスが労働者を引き留めてインセンティブを支払おうとすると、労働者はこれをうまく利用する方法を見つけ出します。すると、マーケットプレイスは頼りになる強力な労働力を持つという安定性がなくなり、労働者側も窮地に立たされるという、双方にとって非効率な結果となってしまいます」とジョシ氏はTechCrunchに語った。

画像クレジット:Lean

Leanは、マーケットプレイスと直接提携して金融商品や福利厚生を提供することで、個人労働者を支援することに狙いをつけている。その目的は、ギグワーカーに「コストのかからない資金」「即時支払い」、そして住宅ローンや「低コストから無コストの借り入れ」、HSA(米国の医療用貯蓄口座)や保険などの金融商品の選択肢を提供することで、各マーケットプレイスが労働者の獲得と維持ができるよう貢献することにある。

Leanは、ライドハイリング(ライドシェア)、宅配、医療、建設などの業界で働く1099(個人事業主)またはW2の労働者(会社で働く従業員)を雇用するあらゆる規模のマーケットプレイスと連携している。ジョシ氏は、Leanが労働者の獲得と定着を促進するだけでなく、マーケットプレイスが労働者の手数料からではなく、金融商品やインフラを通じて収益を得る扉を「開く」ポテンシャルをもっていると述べている。

Leanのプラットフォームは、どのマーケットプレイスにも2週間以内で統合できるように設計されているとジョシ氏はいう。同氏によると、Leanはマーケットプレイスとのパートナーシップを通じて、今後数カ月の間に国内の「数十万人」のギグ・ワーカーにサービスを提供する予定だそうだ。

マーケットプレイスにはコストはかからず、労働者側にもコストはかからない。Leanは、プラットフォームを介した金銭の移動にともなう手数料によって収益を得ることができると、ジョシ氏は述べている。現在、同社は6つのマーケットプレイスと取引をしており、さらにもう6つのマーケットプレイスとも取引の話が進行中だ。

同社は、今回の資金調達により、提供サービスを拡大し、マーケットプレイス間の取引拡大を進めていく予定だ。

Inspired CapitalのパートナーであるMark Batsiyan(マーク・バトシヤン)氏は、Leanに惹かれた理由として、Leanのチーム、市場のタイミング、アプローチを挙げている。

「ギグワーカーへのサービス向上には市場で大きな追い風が吹いており、マーケットプレイスは労働者を惹きつけ、維持するための方法を模索しています。また、ティラック(ジョシ)氏はもInspiredの私たちと同じような結論にいたりました。それは、マーケットプレイスがこれらのソリューションを自分たちで構築することはないだろうということです。利益をすぐに使えるソリューションにするためには、Leanのような仲介者が必要です」。と彼はメールで語っている。

バトシヤン氏は、LeanのB2B2Cアプローチがユニークであると考えている。

「プラットフォームとしてのLeanは、そのパートナーシップを活用して、末端労働者へのより効率的な流通を実現することができます」と述べている。

2021年初め、Mintの初代プロダクトマネージャーは、消費者の金融生活の「計画と管理」を支援することを目的としたサブスクリプション型プラットフォーム「Monarch(モナーク)」のために、480万ドル(約5億2700万円)のシード資金を調達した。

関連記事:消費者が家計の「管理と計画」を行うためのサブスク式の財務プラットフォーム「Monarch」が5.3億円調達

画像クレジット:Nattanitphoto / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Uber Eats、Grubhub、DoorDashが配達手数料制限を法制化したNY市を提訴

アプリがレストランのサービス利用に対して請求できる手数料の金額を恒久的に制限する法律をめぐり、フード注文・デリバリープラットフォームのDoorDash(ドアダッシュ)、Caviar(キャビア)、Grubhub(グラブハブ)、Seamless(シームレス)、Postmates(ポストメイツ)、Uber Eats(ウーバーイーツ)がニューヨーク市提訴で結束した。

これらの企業が米国9月9日夜に連邦裁判所に訴訟を起こし、NY市の法律の施行、不特定の金銭的損害、陪審員による裁判を回避する差止命令を模索している、とウォールストリートジャーナル紙が最初に報じた。

ニューヨーク市議会は2020年、パンデミックによるロックダウンで苦境に陥ったレストラン業界の負担を軽減しようと、サードパーティのフードデリバリーサービスがレストランにデリバリー注文1回につき15%超を、マーケティングと他のデリバリー以外のサービスに対して5%超を課金するのを禁じる時限立法を導入した。NY市を提訴した企業は、クイーンズ区選出の市議会議員Francisco Moya(フランシスコ・モヤ)氏が6月に提出した法案のもとで8月に恒久化された手数料の制限が、すでに数億ドルの損害を生じさせた、と主張している。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、原告のようなサードパーティのプラットフォームはレストランの経営や食産業労働者の雇用の継続の助けになりました。ここには地域のレストラン向けのコロナ救済活動への何百万ドルという資金提供も含まれます」と訴状にはある。「にもかかわらずニューヨーク市は、民間の極めて競争が激しい産業、つまりサードパーティのラットフォームを通じたフード注文・デリバリーの促進に恒久的な価格統制を課すという異常な手段を取りました。そうした恒久的な価格統制は原告に対してだけでなく、市が奉仕を約束している地域密着のレストランの活性化にもに害を及ぼします」。

他の自治体もまたパンデミックの間に似たような手数料上限を設けたが、パンデミックが落ち着き、レストランが店内営業を始められるようになったのにともない、大半はそうした措置をなくした。サンフランシスコ市は、恒久的な15%上限を導入することを決めたひと握りの自治体の1つで、アプリベースの企業はサンフランシスコでも訴訟を起こしている。高ければ注文1件あたり30%にもなる手数料の制限の延長は「公衆衛生の非常事態とまったく関係がなく」、随意契約に干渉し、また「ダイナミックな産業の運営に経済的条件」を指示しているため、違憲だと主張している。

暫定法では、上限を破った場合、レストラン1軒につき1日あたり最大1000ドル(約11万円)の罰金が科される。新しい法律によりレストランと契約を結び直す必要に迫られるばかりか、消費者への価格をあげて配達員の稼ぐ力を損なうことになる、と原告企業は述べた。

また、NY市が地域のレストランの収益性を改善したければ、配達サービスの手数料を抑制する代わりに、減税したり市の懐から助成金を出したりすることができるはずだ、とも主張している。

「しかしそうした合法的なオプションの1つを取るのではなく、NY市はサードパーティプラットフォームに対して敵意丸出しの不合理な法律を導入しました」と原告企業は述べた。その際、マヨ氏が配達料金にかかる手数料を10%を上限とする法案を提出した後の同氏のツイート「NYCの地域のレストランは新型コロナが直撃するずっと前から、GrubHubのようなサードパーティサービスの配達料金に10%の上限を必要としていました。レストランは今そうした上限を心底求めています」を引用した。

今回の法制化は、消費者のためにコストを安く抑えようとしてレストランとギグワーカーの両方に負担を強いていると批判されているアプリベースの配達企業に対してますます厳しい目が向けられている中でのものでもる。直近では、カリフォリニアの上位裁判所が、そうした企業が引き続き労働者を従業員ではなく独立請負人として分類できるようにするProposition 22は違憲とする判決を下した。この判決を受けて、DoorDashの労働者は先に、賃金アップとチップに関するさらなる透明性を求めてDoorDashのCEO、Tony Xu(トニー・シュー)氏の自宅の外で抗議活動を行った。一方、マサチューセッツ州ではProp 22同様の法律について、2022年11月に投票が行われることになった。

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マサチューセッツ州司法長官がUber、Lyftらが支持するギグワーカー法案にゴーサイン

「レストランは手数料を通じて配達などさまざまなサービスの代金をアプリベースの配達会社に払っています」とNY市を相手取った訴訟で匿名の配達員は述べた。「こうした手数料に上限を設けることは私のような人の収入が少なくなることを意味します。手数料の上限はまた、私が届ける顧客にとって配達サービスがより高価なものになり、ひいては私への配達依頼が少なくなることにつながるかもしれません」。

画像クレジット:Tomohiro Ohsumi/Getty Images / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

マサチューセッツ州司法長官がUber、Lyftらが支持するギグワーカー法案にゴーサイン

マサチューセッツ州のMaura Healey(マウラ・ヒーリー)司法長官は、Uber(ウーバー)、Lyft(リフト)らが率いるアプリ利用サービス提供者の連合が、ドライバーを従業員ではなく個人事業主として分類する投票法案を提出するために必要な署名活動を開始することを了承した。

マサチューセッツ州版Proposition 22ともいうべき法案の支持者らは、2022年11月の投票に法案を提出するために万単位の署名を集める必要がある。ヒーリー氏は2020年、ドライバーは個人事業主であり、病気休暇や時間外手当、最低賃金などの対象にならないとするUberとLyftの主張に異を唱える訴訟を提起したにもかかわらず、米国時間9月1日、司法長官として同法案が憲法の要求を満たしていることを認定した。

このニュースの2週間ほど前、最高裁判所は2020年に採択されたカリフォルニア州のProposion 22を違憲とする裁定を下した。労働組合が支持しているCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は、同じ理由で同法案に反対する訴訟を検討しているとReuters(ロイター)に伝えた。

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Uber、Lyft,DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)らが所属する団体、Massachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)は、2021年8月この住民投票を申請した。Uber CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏はこれを「正しい行動」であると主張している。この提案では、2023年にドライバーの最低時給を18ドル(チップを含まない)とし、週15時間以上働いた人には健康保険を提供する。さらにドライバーは車両の維持と燃料のために1マイル当たり26セント(約29円)以上の経費が保証される。

連合は12月1日までに有権者から8万239名分の署名を集める必要がある。期日に間に合わなかった場合は、2022年7月6日までにさらに1万3374名の署名を集めることができる。

関連記事:ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策
画像クレジット:Al Seib / Los Angeles Times / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ギグワーカーを非従業員とするカリフォルニアの条例Prop 22を高裁が憲法違反と判決

UberやLyftなどギグワーカーを軸とする企業に米国時間8月20日の夜遅くショックが訪れた。高等裁判所の判事が、2020年に成立してギグワーカーの雇用ステータスに対する論争の多かったAB-5法を、否定する目的で成立させたカリフォルニア州第22条令(Prop 22)は州の憲法に違反していると裁定した。

関連記事:ギグワーカーの権利を護る法案がカリフォルニア州上院を通過

オークランドやバークリーなどイーストベイの多くをカバーするアラミダ郡の高裁判事Frank Roesch(フランク・ローシュ)氏は「その法(Prop 22)が、将来の議会がギグワーカーの雇用ステータスを定義する力を制限する」と裁定した。この訴訟は2021年1月にService Employees International Union(SEIU)(サービス業被雇用者国際組合)が起こし、同様の訴訟がフォルニア州最高裁で却下されてから下級審へ回されたものだ。

この法廷の決定はほぼ確実に控訴されるであろうし、今後の法的議論が当然あるだろう。

しかしSEIUのカリフォルニア州評議会の議長Bob Schoonover(ボブ・スクーノーバー)氏は、声明で次のように述べている。「ローシュ判事によるProp 22を無効とする本日の裁定は極めて明確である。ギグ業界が金で買った住民投票は憲法違反であり、したがって施行不可能である。2年にわたりドライバーたちは、民主主義は金で買えないと言い続けてきた。そして本日の判決は、彼らが正しかったことを示している」。

高裁の判決は、UberやDoorDashのようにギグワーカーに大きく依存している企業と、労働者を代表する組合や活動家との間の戦いの、勝ちと敗けの長い々々列の最新のひとコマにすぎない。その議論の中心にあるのは、フリーランサーと従業員との法的な区別であり、それぞれのワーカーに対して企業はどの程度の福利厚生の責任を負うか、という点だ。

その区別がビッグビジネスになっている。UberやLyftなどの企業は2020年Prop 22を勝ち取るために、総額で2億ドル(約220億円)あまりを費消した。カリフォルニアの有権者はその条例を、ほぼ59%対41%で通過させたが、それはギグワーカープラットフォームの大勝利と多くの人びとが受け止めている。

しかしこのような戦いはシリコンバレーの本拠地である州だけの現象ではない。2021年初めに英国では、Uberが従業員の位置づけをめぐる法廷闘争で負けて、その数万人のドライバーが労働者と見なされた。そしてその判決により彼らには、それまで保証されなかった多様な福利厚生が提供された。

画像クレジット:ejs9 / Getty Images / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ギグカンパニーが労働者の身分をめぐりマサチューセッツ州でも住民投票を画策

LyftやUber、Doordash、Instacartなど、アプリによるライドシェアやデリバリーのサービスを提供している企業の連合が、住民投票でギグエコノミーの労働者を独立の契約業者と認めるよう、マサチューセッツ州に請願を提出した。これまで同業界は、カリフォルニア州で同様の住民投票を主導して、勝った経験がある。

その連合の正式名であるMassachusetts Coalition for Independent Work(マサチューセッツ州独立労働連合)が今回住民投票を提案したその約1年前には、労働者の権利を擁護する団体とギグエコノミーの企業が対立し、業界側が数百万ドル(数億円)を投じた高価な宣伝活動により、カリフォルニアの有権者は、Proposition 22と呼ばれる同様の住民投票により、業界の主張を認めた

関連記事:カリフォルニア州でのギガワーカー法案通過を見込んでUberとLyftの株価が高騰

LyftやUberなどからなるこの連合のメンバーには、地元各地の商工会議所も含まれ、彼らは米国時間8月3日に、2022年11月に行われる州政府選挙に住民投票の可否が含まれることを要求した。投票にかけられる質問は司法の審査を要し、また住民投票が政府選挙に含めること自体も、有権者の十分な数の賛成票を要する。

8月3日に行われたLyftの決算報告で、共同創業者のJohn Zimmer(ジョン・ジマー)氏は次のように述べている。「私たちの第1目標は、マサチューセッツ州で合法的な解決を見出すことです。私たちが一貫して主張してきたことは、圧倒的多数のドライバーが求めていることでもあり、それは私たちのプラットフォームが提供してきた柔軟性のある所得機会、それ加えて福利厚生です。また私たちは住民投票という方法を求めるだけでなく、マサチューセッツ州議会と緊密に協力して、法律に基づく解決も求めていきたい」。

同連合によると、提案されている住民投票の質問は、アプリを用いるライドシェアやデリバリーのワーカーを独立の契約労働者としながらも、健康保険料の給付など、新たな福利厚生を提供するものになっている。

連合の提案の中には、ドライバーやデリバリー労働者の最低賃金をマサチューセッツ州の最低賃金(同種のアプリベースの労働に対し2023年に、チップを除き時給18ドル、約1960円)の120%であったり、週の労働時間が15時間以上のドライバーへの健康保険料給付などがある。これらの計算にチップは含まれず、チップは全額ドライバーのものになる。また車の維持費や燃料費として走行距離1マイルにつき0.26ドル(約28.35円)以上が保証される。

労働運動家たちは、早くも反発している。NAACPニューイングランド支部やマイノリティ近隣社会組合、マサチューセッツ州移民難民連合など、さまざまな団体からなるCoalition to Protect Workers’ Rights(労働者の権利保護連盟)は8月3日に、住民投票方式には労働者を傷つける問題の文言があると反論した。

同団体によると、それらの文言には抜け穴が多いため実質賃金が最低賃金を下回ることが可能であり、また健康保険の内容が極めて貧弱である。さらにまた、反差別主義者に対する保護が取り去られたり、労働者の補償規則が排除されたり、また企業が何億項にものぼる州の失業対策をごまかすこともありうるという。

UberやLyftを軸とするこの幅広い連合は、労働者の独立契約業者化に関して、住民投票や法制化をロビー活動しているが、同時にまた、2020年提出された訴訟にも直面している。その原告であるマサチューセッツ州司法長官Maura Healey(マウラ・ヒーリー)氏は、賃金と労働時間に関する複数の州法に基づき、UberとLyftのドライバーは会社の従業員(被雇用者)である、と主張した。

州の司法長官事務所によると、UberとLyftは、ドライバーを独立の契約業者と認めるために必要な、州法が定める3つの要件を満たしていない。1つは、独立の契約事業者であるためには労働者は会社の指示やコントロールから自由でなければならない。ビジネスの通常のコースから外れたサービスでも実行できる。そして、同様の仕事を自分自身でやっていてもよい。

Uberは2020年以来、カリフォルニア州のProposition 22に似た州法をマサチューセッツ州でも成立させたい、と匂わせていた。UberのCEO、Dara Khosrowshahi氏は2020年の11月の決算報告で、アナリストたちとともに、同社は「Prop22のような法律を強力に推していく」と言明した。その後彼は「米国と世界のすべての政府と協力してこれを実現したい」と付言した。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ギグワーカーやクリエイターに金融サービスとしての福利厚生を提供するCatch

Catch共同創業者アンドリュー・アンブロジーノ氏とクリステン・アンダーソン氏(画像クレジット:Catch)

Catchは、すべてのギグワーカーが、彼らが必要とする保健医療や退職手当などの福利厚生を得られるよう努力している。

現在、本社をニューヨークへ移転中の同社は、フリーランサーや契約社員など企業からの福利厚生のない人たちに直接、健康保険や退職貯蓄、源泉徴収などの福利プランを売っている。

同社は現在、シリーズAで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達中で、そのリード投資家はCrosslinkで、初期からの投資家であるKhosla VenturesやNYCA Partners、Kindred VenturesおよびUrban Innovation Fundが参加した。資金は、代理店パートナー網の拡大とボストンからの移転費用に充てられる。

共同創業者のKristen Anderson(クリステン・アンダーソン)氏とAndrew Ambrosino(アンドリュー・アンブロジーノ)氏はCatchを2019年に創業し、これまでに610万ドル(約6億7000万円)を調達しているので、総調達額は1810万ドル(約19億9000万円)になる。

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Catchの15名のチームがそのプラットフォームを連邦市場の38の州で売る承認を得るのに、2年近くを要した。アンダーソン氏によると、このような承認を得ているのは同社も含めてわずか8社だが、福利の受益者個人に直販しているのはCatchも含めて3社だけだという。

「現在、クリエイターやギグワーカーとして食べてる人たち、つまり個人労働者がどんどん増えているのに、肝心の健康保険を提供していない金融サービスが多い。多くの人に、企業の社員のような福利厚生がない」とアンダーソン氏はいう。

Catchの顧客の平均年齢は32歳だが、現在の提供物に加えて、収入源のセットアップを求める者が多い。つまり彼らは、税や退職後や病気休職などへの備えを、実際に貯蓄する余力がなくても求めている。

パンデミックにより、Catchの顧客の多くが全業種平均で40%の収入を失った。美容師や調理師などには、収入がゼロになった人たちもいる。

そこでアンダーソン氏とアンブロジーノ氏は、同業のプラットフォームやビジネスツールのメーカー、ギグのマーケットプレイス、給与事務代行企業などから成る代理店パートナーシップのネットワークを作り始めた。アンダーソン氏によると、今度の資金で社員数を増やして、さらにこのパートナーシップの拡大努力を続けたいという。

Catchのプロダクトは一種の保険業務だが、競合他社の多くは、たとえばStarshipのように、健康保険のための貯蓄口座といった一品目だけのところが多い。しかしアンダーソン氏によると、Catchはプラットフォームを提供し、個々のケースにより深入りしている。クラウドベースで企業のために給与計算や福利厚生、人事管理などのサービスを提供しているGustoというスタートアップがあるが、彼女はCatchをそのGustoに喩える。Catchも同じくエンド・ツー・エンドのサービスだが、対象は企業ではなく個人だ。

これまでの1年間で同社のユーザーベースは3倍増した。副業をする人が増えたことと、DoorDashとのパートナーシップが大きい。またアンダーソン氏によると、同プラットフォームの現在のユーザーは、得られる福利の目標が大きく、多くの貯蓄をする必要があるので、通常の5倍の残高を抱えている。退職投資と健康保険も、同じく増えている。

今後についてアンダーソン氏は、シリーズBはすでに考えているが、それは2年後だという。同社は、独自のHSAプロダクト(医療費貯蓄口座)と傷害保険なども検討しており、プロダクトの多様さで他と差別化したい意向だ。たとえばSpotSuper.mxEvenなどはみな、2021年7月にベンチャーキャピタルを調達して福利を賄っている。

Catchはまた、連邦市場以外のオーディエンスにもサービスを提供していきたい。今すでにその取り組みを開始しており、アンダーソン氏によると、米国籍を持たない者への金融保険サービスは悪質なものが多く、一見おいしそうなキャッチコピーの陰で、粗悪で内容の薄いサービスが提供されているそうだ。

アンダーソン氏は「非常に混乱した市場であるため、それを正していくのは大変なことです。若者は安いサービスしか買うことはできませんが、その場合は最初に条件をよく理解してもらうことが、とても重要です」という。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】21世紀型の搾取となっている「ギグエコノミー」

編集部注:本稿の著者Rebecca Dixon(レベッカ・ディクソン)氏はNational Employment Law Projectのエグゼクティブディレクター。

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昨今のアプリベースのギグエコノミー、すなわちインターネットやスマートフォンを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態は、しばしば「現代のイノベーション」や「21世紀型のワークスタイル」という美辞麗句で語られるが、これは羊の皮をかぶった狼のようなものだ。

低賃金で不安定な仕事は今に始まったものではない。安い賃金かつ危険で「スキルがない」として解雇される仕事は昔からあった。有色人種の労働者は常に(そしてこれからも)、組織的な人種差別と歴史的に搾取的な経済が故に、最もブラックな産業に集中している。

従来と異なるのは、現在ではUber(ウーバー)、DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)などの企業が、デジタルアプリを使って労働力を管理(アプリベース)しているので規制に従う必要がないと主張している点にある。

いわゆる「ギグエコノミー」における労働者の権利は、現代的課題として位置づけられることが多い。しかし、ギグエコノミーやアプリベースの労働者(主に有色人種)が直面している問題を考えると、私たちは過去から学んで公正な経済に向けて前進する必要がある。

連邦政府は長期にわたり、労働者の大規模な搾取への対処に失敗している。全国労働関係法(米国)が成立してからも、有色人種の労働者が従事していた農業や家事などの仕事は、労働権や保護の対象から除外されてきた。今日の「独立請負人」も、その多くが有色人種の労働者で、同じカテゴリー、すなわち労働法で保護されない労働者である。黒人とラテン系の労働者の合計は、全米の総労働力の29%以下だが、アプリベースの企業の労働者に絞れば約42%を占めている。

ギグカンパニーは、自分たちのビジネスを構成し、指示を受け、自分たちが設定する賃金を受け取るドライバーや配達員、独立請負人などの労働者は、極小ビジネスの何百万もの集合体であり、基本的な手当や保護は必要ないと主張する。これにより、これらの企業は現場の労働者に対する責任を負わず、最低賃金、医療保険、有給休暇、損害賠償保険など、従業員にとって必要不可欠な基本的コストの支払いから逃げている。このような状況は、全国的な不平等を助長し、最終的には労働者の搾取と犠牲の上に成り立つ大きな欠陥のある経済につながっている。

アプリベースの企業は、ますます不穏な傾向を示している。過去40年間、連邦政府の政策により、労働者の交渉力は大幅に低下し、企業やすでに大きな富と力を持つ者に権力が集中するようになった。これにより、人種間の賃金や貧富の格差は悪化の一途をたどり、あまりにも多くの人たちの労働条件が劣悪になっている。

すべての人にとって働きやすい経済を構築するためには、ギグカンパニーやアプリベースの企業が「イノベーション」を口実に労働者を搾取することが許容されないことは明らかだ。これらの企業は、労働者自身が独立した契約者であり続けることを望んでいると主張するが、労働者が望んでいるのは、適切な賃金、雇用の安定、柔軟性、そして連邦法に基づく完全な権利である。これは合理的で正当な要求であり、世代間のジェンダーや人種による貧富の差を解消するためにも必要なことだ。

アプリベースの企業は、労働者を搾取するモデルを後押しする政府の政策を続けさせるために、多大な資金を投入している。Uber、Lyft(リフト)、DoorDash、Instacartなどのアプリベースの企業は、州議会、市議会、連邦政府でロビー活動を行い、誤った情報を大々的に売り込んでいる。選挙で選ばれたリーダーたちはあらゆるレベルで、これらの政策が自分たちに有利なように法律を書き換えようとする企業の企みであることを認識し、労働者を普遍的な保護から切り離す政策の庇護にある企業の利益を拒否する必要がある。

議会も、有色人種を基本的な雇用保護から締め出す除外規定を拒否し、アプリベースの労働者を含むすべての労働者に保護を拡大する法案を通過させねばならない。PRO法(Protecting the Right to Organize Act:団結権保護法)は、雇用主によって悪意を持って「独立請負人」と分類された労働者に交渉権の保護を拡大する、すばらしい第一歩だ。

アプリベースの労働者は、全米で健康と安全を保護するための組織を立ち上げ、労働者としての権利が認められ、保護されることを要求している。選挙で選ばれたリーダーたちは「21世紀型」のモデルを主張する企業のプロパガンダに騙され続けてはいけない。21世紀であろうとなかろうと仕事は仕事であり、アプリベースであろうとなかろうと、仕事は仕事なのだ。

私たちは議会に対し、すべての労働者の労働権と保護を認め、アプリベースの企業が「柔軟性」や「イノベーション」の名のもとに労働者の平等な権利を阻むことがないよう、大胆に行動することを求める。

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画像クレジット:SpiffyJ / Getty Images

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(文:Rebecca Dixon、翻訳:Dragonfly)

バイデン政権の労働長官はギグワーカーを従業員待遇にすべきと考えている

米国時間4月29日、バイデン政権の労働長官Marty Walsh(マーティ・ウォルシュ)氏は、ギグエコノミーという白熱している問題に言及して、福利厚生を欠いて働く多くの人びとは企業の従業員扱いになるべきだ、と主張した。

ロイターのインタビューでウォルシュ氏は、労働省はギグエコノミーに注目しており、その労働者の位置づけを変えることがバイデン政権の優先課題になりうると暗示した。

「ギグワーカーを従業員として待遇すべきと思われるケースが多い。現状では、労働者の待遇は場所や項目などによってまちまちであり、一貫性がない。全面的に一貫性があるべきだと私は考える」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏によると、労働省はギグワーカーから利益を得ている企業に対して、それらの企業の非従業員に米国の平均的従業員並の福利厚生を確保するよう促すかもしれない、という。

「企業が売上と利益を得ることは、米国では普通のことであり、何も問題ではない。従業員に平均的な福利厚生を与えてなおかつ利益を得ている企業なら、何もいう必要はない。しかし私たちが一般的に求めるのは、企業の成功が確実に労働者の待遇にも反映することだ」とウォルシュ氏はいう。

ウォルシュ氏のコメントは現在のところ、国の施策によって認められてはいない。しかしそれらは、非従業員の労力を利用しているテクノロジー企業で、今だに大きな波風を惹き起こしている。4月29日のこのニュースで、UberとLyftそれにDoordashの株価は下がった。

そのインタビューでウォルシュ氏は、雇用主からの失業保険や健康保険がないギグワーカーのパンデミック関連の心配についても触れた。連邦政府はパンデミックの間に、ギグワーカーに対する福利厚生を認める2つの大型法案を成立させて、施策の緩みを修復した。しかしそれ以外では、彼らにはほとんどセーフティーネットがない。

労働法の改正はバイデン氏の選挙公約でもあり、大統領になってからは労働者保護の強化と労働者の組織化の支援を強調してきた。バイデン氏の政権移転サイトには、労働者保護の拡張に捧げられた部分があり、従業員を契約労働者扱いする誤りを「伝染病」と呼んでいる。

バイデン氏は米国時間4月28日夜の下院との合同会議で、以前からの労働組合の支持を繰り返し、労働者の組合結成や組合への参加を保護する法律であり組織化する権利の保護法(Protecting the Right to Organize Act)を賞揚した。その法律も拡張され、国の悪政を暴露する者にも適用されるようになる。

「ミドルクラスがこの国を作った。そして、組合がミドルクラスを作った」とバイデン大統領は語っている。

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画像クレジット:Jeenah Moon/Bloomberg/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

「街の電動化」を目指すRevelが50台のテスラ車で全電動配車サービスを開始予定

Revel(レベル)は2018年、ニューヨーク市ブルックリン区でドックレス方式による電動モペットのシェアサービスを開始した。後にそれは、クイーンズ区、マンハッタン区、ブロンクス区、さらに米国内の他の都市にも拡大された。2021年になり、同社はニューヨーク市内で電動自転車の月間サブスクリプションサービスを立ち上げ、同時にブルックリン区のベッドフォード・スタイベサント地区に電動車両用充電ハブを建設する計画を発表した。そして今、Revelは全電動、全Tesla(テスラ)の配車サービスをマンハッタン区に展開しようとしている。

かつては、方向性が定まらず、いろいろな形態の交通手段に場当たり的に手を出しているように思えたRevelだが、ニューヨーク市を手始めに、各都市に独自の電動化インフラを展開するという、計算された戦略がようやく見えてきた。これは、創設者でCEOのFrank Reig(フランク・レイグ)氏が当初から力強く宣言していたことだった。

「創設初日から、我々のミッションは街の電動化でした」とレイグ氏はTechCrunchに語った。「そのために私たちは、都市で必要とされる電動交通手段を提供し、その実現に必要となる電動車両インフラの構築を行ってきました」。

50台のRevelブランドのTesla Model Yを使って2021年5月末に開始を予定している新配車サービスは「都市内の移動をことごとく電動化する」という目標への次なるステップとしては、ごく自然な流れだとレイグ氏は話す。利用者は、電動モペットの予約に使うアプリで、そのまま配車サービスも受けられる。同社によれば、開始当初はマンハッタン42番街より南の地区で展開され、第1フェーズの需要とデータを見ながら、次第に対象地区を広げていくという。

Revelの配車サービスの立ち上げは、3年前に電動モペットのシェアサービスを開始したときと似たアプローチをとっている。共同創設者のPaul Suhey(ポール・スーイ)氏の話によれば、それはまずは小さい地域から始めて、街全体をカバーするという最終目標に向けて徐々に広げてゆくというものだ。

同社はまだ、ニューヨーク市タクシー・リムジン委員会に認可事業者の申請を出しているところだ。Revelは第一の認可は得たものの、正式な許可証を取得するまでには、まだいくつかの手続きが残されている。

「正式な許可証が交付されて準備万端整うのを待たずに、この段階で計画を公表した理由に、ドライバーの募集があります」とスーイ氏はTechCrunchに話した。「ドライバーを雇い入れるには、まず情報を広めなければなりません。私たちは今の時点で、ドライバーを雇って確保しておきたいのです」。

Revelの対顧客相場は、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)と同等になる予定だとレイグ氏は話すが、ドライバーはギグワーカーに頼ることはせず、全員を雇用するという。

「同じ料金で、私たちは完全な電動化を実現し、同時にニューヨーカーを雇用することで、ぎりぎりの生活費でやっているニューヨーク市民に保険リスクと資産減価償却のすべてを押し付けるようなことはしません」とレイグ氏。

給料で支払うかたちは、Revelの利他主義によるものだけではない。ドライバーを雇用することが、TeslaにRevel向け仕様の車両を製造させる大きな条件になるため、理に適っているのだ。Revel向けModel Yは「Revelブルー」で塗装され、室内の温度や音楽をコントロールできる客席用のタッチスクリーンが装備される。助手席は新型コロナの社会的距離ガイドラインに従うためと、後席の乗客が脚を伸ばせるように取り外される。

だが、もっと重要なこととして、カリフォルニア州のProposition 22(住民立法案22号)の問題がある。Uber、Lyft、Postmates(ポストメイツ)といった企業は2億ドル(約217億円)のキャンペーンを展開してカリフォルニア市民に賛成の投票を呼びかけた。この法案とは、アプリベースの企業は労働者を福利厚生が受けられる従業員として扱わなくてよいとするものだ。法案は通過した。しかしレイグ氏には、その金があれば、幻滅したドライバーが抜けた欠員を埋めるために常に人材募集し続ける必要はなくなり、堅実な働き手を惹きつけ確保できたはずだとの持論を掲げている。

「車両に関して言えば、それが安全対策にもなります」とレイグ氏。「私たちが車両を保有しているため、加速、速度、ブレーキングなど、車の詳細な情報を常に把握できるのです。私たちが雇用し訓練したドライバーには、各シフトの終わりに安全スコアが示されるので、運転技術を磨くことができます。さらに、保険費用と保険責任を減らすことにもつながります」。

Revelは、街の電動化を進めつつ、そのビジネスモデルをその先の展開の足場にしようと考えている。配車サービスの提供は、新しい事業の構築という意味に留まらない。これは同社の充電事業の創設を加速する意味も持つ。Revelは、電気自動車のニワトリとタマゴの問題を解決して、独占的な電動化事業を確立を目指している。ニワトリとタマゴとはつまり、電気自動車の潜在的購入者は充電スタンドが拡充されたなら買いたいと考えている一方で、充電スタンドの展開を計画する企業は、電気自動車がもっと売れたなら建設できると考えているという問題だ。

「私たちが企業として行っているのは、都市における電気自動車の導入推進と、利用できる電動交通手段の拡大に尽きます」とスーイ氏。「それが電気自動車、電動自転車、電動モペットであれ、いろいろな形での利用を人々は願っています。私たちは、都市の電動化を、もっと幅広いものとして考えているのです」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:RevelTesla配車サービスProposition 22電気自動車ギグワーカー

画像クレジット:Revel

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:金井哲夫)

Uberがコロナ収束後のドライバー不足対策で総額約274億円の報奨金を用意

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた頃、配車サービスのドライバーは「不可欠な労働者」とされていたにもかかわらず、2020年4月にUber(ウーバー)のビジネスは80%も落ち込んだ。運転手たちは、1日数回の乗車で得られるわずかな収入のために、新型コロナウイルスに感染したり、それを広めたりするリスクを負いたくないと考えた。米連邦政府のCARES法(コロナウイルス支援・救済・経済保証法)が失業支援をギグワーカーにも拡大したため、多くのUber運転手はクルマのキーを置くことにしたのだ。

米国では人口の4分の1以上がすでにワクチンを接種しているため、Uberは現在、ドライバーの数よりも送迎を希望する乗客の数の方が多いという、困った状況におかれている。そこでこの配車サービス大手企業は、ドライバーに再び仕事があることを知ってもらうだけでなく、インセンティブ(報奨金)を用意して契約に誘い込みたいと考えている。

Uberは米国時間4月7日、パンデミックが収束に向かいつつある中、ドライバーの復帰を歓迎し、新しいドライバーを募集するために、総額2億5000万ドル(約274億円)のドライバー刺激策を開始すると発表した。同社の広報担当者によると、復帰したドライバーと新たに就業したドライバーの両方とも、今後数カ月にわたってボーナスを受け取ることができるという。

「2020年には、多くのドライバーが、自分の就労時間に見合うだけの乗客が期待できないため、運転業務を止めてしまいました」と、この刺激策を発表したブログ記事には書かれている。「2021年には、送迎を希望する乗客数が、移動を提供できるドライバーの数を上回っています。ドライバーになるには絶好の時期です」。

乗客の需要が高く、ドライバーの供給が少ないことで、フィラデルフィア、オースティン、シカゴ、マイアミ、フェニックスなどの都市における現在のドライバーの時給は、2020年3月と比べると25%から75%も高く、中央値は26.66ドル(約2930円)となっている。Uberは「これは一時的な状況である可能性が高い」として、ドライバーに今の高収入を利用して欲しいと考えている。つまり、国全体が新型コロナウイルスから回復し、より多くのギグワーカーがハンドルを握るようになれば、収益は現在のレベルよりも低下する可能性が高いということだ。

この現在の高い時給に、さらにドライバー刺激策のボーナスが上乗せされると、同社の広報担当者はTechCrunchに語った。このインセンティブの仕組みは、各人の活動状況と場所に基づいて決定される。例えば、オースティンでは、現在のドライバーが115回の乗客移送を完了すると、1100ドル(約12万円)の出来高ボーナスが保証される。フェニックスでは、200回の運転業務で1775ドル(約19万5000円)の追加報酬を得ることができる。

「これらの都市だけでなく、我々が米国で対象としている他のすべての市場で、より多くの保証金を提供する予定です。金額や送迎回数は、地域的な要因によって若干変わる可能性があります」と、広報担当者は述べている。

この資金は、最低賃金の保証や、新規ドライバーの導入にも充てられる予定で、2億5000万ドル全額がUberの金庫から直接支払われる。この発表を受け、同社の株価は水曜日の取引中に3.6%も下落した。

Uberはまた、米国の薬局チェーンであるWalgreens(ウォルグリーン)と提携し、アプリ内の予約ポータルで、ドライバーがワクチンを接種するプロセスを能率化するための支援も行っている。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uber配車サービス新型コロナウイルスギグワーカー

画像クレジット:Uber

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

UberがEUで「Prop 22」スタイルのギグワーク基準を求めロビー活動を展開

Uber(ウーバー)は、ギグワーカーの労働条件を改善する新しい規則が必要かどうか判断するためにギグプラットフォームの労働条件の精査に乗り出したEUの議員に接触している。

配車サービスとオンデマンドのフードデリバリーの巨人は現地時間2月15日、白書を発表し、プラットフォーム業務の「新しい基準」と称するものに関して、欧州の政策立案者に対しロビー活動を展開している。

白書の中でUberは、ギグワーカーが得るメリットの一部を拡大する必要性を説き、ドライバーとライダーが労働者・従業員として再分類された場合、労働者としての権利のフルスイートに資金を供給しなければならないという (Uberにとっての)悪夢のシナリオを回避しようとしている。

Uberはまた、団体交渉の問題を切り離して、政策の議論の方向性を誘導しようとしている。白書では、アプリベースの労働者がより「意味のある」代表権を必要としているという考え方を提案し、その代表は、Uberのいう多様な(つまり個別化された)ニーズを反映するために必要であり、プラットフォームと労働者の間の継続的なエンゲージメントのさまざまなチャンネルを介して実現できることを示唆している。

Uberの白書は、タイトルの「A Better Deal(より良い取引)」を基軸に構成されている。アプリベースの労働者にとってより公平な取引を確保するために新しい法律が必要かどうかを議員が検討しているため、配車サービスの巨人は紛れもなく、自社のビジネスにとって可能な限り最善の取引を引き出そうとしている。

EUの議員が今後数カ月の間に注意を払う必要があるのは、プラットフォームで働く労働者がどのような取引をしているのか、そして大手テクノロジー企業の詳細かつ基調的なPR文書を掘り下げていく中で、欧州お得意の社会契約を損なうことなく、大勢の「契約社員」の条件を改善するための法的枠組みを作る必要があるのか、作るならどのように作るのかという点だ。

Uberは2020年、同社の専門領域に属するギグワーカーを再分類しようとする法案の打破に成功した後、カリフォルニア州の「Prop 22(プロポジション22)」がもたらした成果を世界的に推し進めていくと述べている。

しかし、欧州の法的、社会的な状況は米国とは大きく異なっている。欧州では、多くのプラットフォーム企業が雇用分類の問題で訴訟に直面しており、裁判所は労働者に有利な判決を下すことが多い。

金曜日(2月19日)には、英国最高裁判所が、元Uberドライバーらのグループによる、Uberの自営業者としての分類に関わる長期の係争に対して判決を下すと予想されている。つまりUberは、欧州の裁判所における、これまでで最大の試練に直面しているということだ(英国は現在EU圏外にあるが、この訴訟の結果は欧州全体の裁判に影響を与える可能性が高い)。

既存の雇用法をより明確にし、施行することは、社会を犠牲にし(税収の損失)、安定した雇用(とそれに付随する権利)を奪われた個々の労働者の労働力から利益を得るために、アルゴリズムによるマイクロマネジメントという利己的な分類を利用して法制度の隙間をハイテクハッキングしてきた大手プラットフォームを、欧州の政策立案者が取り締まるための方法になり得る、と批判的な人々はいう。

同時に、オンデマンド空間での統合化が進むことにより、大手ギグ企業の力がさらに強くなっている。では、ひと握りのメガプラットフォームが競争相手との統合を急ぎ、改善の可能性が閉ざされていく中で、労働者を守るための法の介入がなければ、プラットフォームの労働者は「意味のある」代表権や「改善された」条件をどのように期待できるのだろうか。

2月15日、Uberの白書に付随するブログ記事の中で、CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は、ギグワーカーの権利に関する大手テクノロジー企業の好ましい「新しい基準」は「ドライバーや宅配業者が最も重要だという原則に基づいていることであり、その原則とは、働きたいときに、働きたい場所で働ける柔軟性とコントロール、適正な賃金を得ること、適切な福利厚生と保護を受けること、そして意味のある代表権を得ること」であると繰り返し述べている。

「実質的な変化をもたらすためには、改革は業界全体を対象としたものでなければならず、すべてのプラットフォーム企業は、どのアプリを使っていても労働者が保護されるように、業界全体で標準化された福利厚生と保護を提供することが求められる」とコスロシャヒ氏は続ける。

プラットフォームの福利厚生に関する普遍的な基準は進歩的に聞こえるかもしれないが、ギグワーカーのための「妥当な」福利厚生という概念は、合意された雇用基準をはるかに下回る水準にこの労働力を固定してしまい、アルゴリズムによって永続的な管理の対象となる労働者にとって、より良い取引の可能性を閉ざす危険性がある。

このような業界全体の基準は、ギグプラットフォームが労働者へのより良い取引の提供をめぐってお互いに競争する必要性を損なうことにもなりかねない。そのため、政策立案者は、支援されるべき労働者にとって不利な取引が固定化されることのないように、慎重に事を進める必要がある。

Uberの白書は、労働者のための詳細な「取引」モデルを定義するのではなく、現時点ではいくつかの主要な原則を提唱し、利害関係者と協議して推し進める必要があると同社は述べている。

また同社は、プラットフォームが依然としてEU各国の寄せ集め規則の影響下に置かれる可能性が高いことも認識しているという。また、欧州委員会が法制化を決定したとしても、そのような法律が施行されるまでには何年もかかるため、判例が非常に重要であることに変わりはない。しかし、加盟国がギグワークの分野に関して取るアプローチや適用する政策に対してトップダウンの圧力となり得る包括的なEUガイダンスを、Uberが自社に有利になるように誘導しようとしていることは明らかだ。

大手プラットフォームは長い間、雇用の分類を「柔軟性と利益」の問題に落とし込もうとしてきた。労働者は何よりも柔軟性(プラットフォーム各社は「いつ働くかを選択できる能力」を意味すると定義している)を重視していると主張しているものの、同時にデータフィケーションやトラッキングを駆使して非雇用労働力のハイテクなマイクロマネジメントによる個人のサービス提供を管理している。

実際には、確かにそのようなプラットフォームにログオンして「好きな時に」働くことはできるが、強制最低賃金のような法的保護がなければ、ギグワークの「柔軟性」が個人の生活を支えるだけの収入になる保証はない。見方を変えれば、頼れる他の収入源がない限り、プラットフォームの労働者には、いつ、どのように働くかを選択する柔軟性や自由は、事実上ないかもしれないことを意味する。

そのため、プラットフォーム各社はしばしば「故意に搾取するように設計されている」と非難されているビジネスモデルの逆説的な防衛を推進している。批判的な労働組合はそれを人間の労働力の搾取や抽出だと指摘し従来型の雇用によってもたらされる社会契約と安定性を蔑ろにするプラットフォームを非難している。

Uberの白書の中で「雇用はプラットフォームの労働者が求める答えではない」と主張を展開するセクションでは、このテクノロジー界の巨人は「柔軟性」がそのてがかりだと述べている。つまり、そのモデルは「ドライバーには、需要に応えるためアプリに接続する自由や、望めばより静かな時間を過ごす選択権がある」ことを意味するという。しかし、ギグワークで収入を得て生計を立てる必要がある人たちは、より静かな時間を過ごす「選択」はできないかもしれない。そんなことをすれば収入が減ってしまう。ではUberは、実際にどの程度の柔軟性(つまり良識的な賃金)を提供しているのだろうか。

(関連する点として、これらの大手ギグ企業の多くは、自動化技術の開発推進のために多額の資金を投入してきた。雇用にともなう税金を払わないことで節約したお金が、完全に人間の労働者に取って代わろうとすることに注ぎ込まれているということだ。そのような所に尊厳はあるのだろうか)

関連記事:Uberの自動運転車部門は月に22億円超を費やしていた

決断を迫られるギグエコノミー

2019年12月の雇用委員会委員へのミッションレターで、欧州委員会のUrsula Von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、Nicolas Schmit(ニコラス・シュミット)氏に、現行法の執行が機能していることを確認することを含め、プラットフォーム労働者の労働条件を改善する方法を検討するように依頼した。またレターには「尊厳があり、透明性があり予測可能な労働条件は、EUの経済モデルにとって不可欠である」とも書かれている。

シュミット氏は指示を受けてすぐに、プラットフォーム(利益)VS労働者(権利)という構図の論争について、Euractiv(ユーラクティブ)に「プラットフォームに反対しているわけではない」と、バランスのとれた見方を語り、プラットフォームを「EUの新しい経済の一部」とみなし「ギグエコノミーでの優位性を失わないことが欧州にとって重要である」とも主張した。

しかし同氏はまた、ハイテクツールが、新たな「恵まれない」下級労働者を固定化するために使用されることをEUは許してはならないと警告し「19世紀に存在していたような労働条件で21世紀の経済を実現するわけにはいかない」と述べている。

欧州委員会が、不明確なプラットフォーム業務の「改善」のループをどのように政策の中に組み入れていくのかは、まだまったく分からない。しかし、フォン・デア・ライエン委員長が指示を出してからは、ここで良い仕事をしなければならないという責務が増しただけだ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、プラットフォーム労働者のための適切な社会的セーフティーネットの欠如がもたらす個人的および社会的なリスクに容赦なくスポットライトを当てているが、同時にその副作用として、オンデマンドのプラットフォーム業務(特に食品や食料雑貨の配達のような分野)は、活況を呈している。

Uberの白書では「独立請負人が最も必要としているときに、福利厚生と保護を確実に受けられるようにする」と記しているように、パンデミックの問題とプラットフォーム事業者が労働者を支援するために「さらに進んで」いく必要性について繰り返し述べている。しかしその一方、同社は、雇用のすべての権利と利益を提供することに反対するロビー活動を行っている。

国際的な法律事務所Taylor Wessing(テイラー・ウェッシング)の雇用グループのシニアアソシエイトであるJoe Aiston(ジョー・エイストン)氏は、Uberが白書の中で、ギグワークの「新しい基準」を求めてロビー活動を行っていることについて「同社が最低基準の福利厚生を求めるのは理に適っている」と話す。そして「適当かつ最低限の保護であれば、ビジネスモデルに大きな影響を与えずに容易に提供できる」と続ける。

「全員を従業員や労働者として再分類することを強いられれば、ビジネスモデルは大きく混乱することになり、ビジネスの面では当然、相当のコストアップにつながるだろう。最低賃金や休日出勤手当のような直接的な影響だけでなく、税金の観点でも、間接的に波及的影響を受けるはずだ」。

そして、労働者の状況分析によってギグワーカーが自動的に税務上の目的で従業員として分類されるわけではないが、エイストン氏は、判断基準は「かなり類似している」という。したがって、雇用の分類をめぐる訴訟は、Uberの税務上の立場、ひいてはその(潜在的な)収益性に明らかなリスクをもたらす。

ギグワークをどのように改善するかという問題について、欧州委員会は2020年9月にプラットフォーム業務に関する会議を開催するなど、最善の進め方を模索しながら情報を集めてきた。しかし2021年、EUの議員には大きな決断の時が迫りつつある。

今月末、欧州委員会は労働者と雇用主の代表者による正式な協議を開始する予定だ。そして、Uberの白書は、明らかにそのプロセスを対象としているため、プラットフォームの労働条件の「改善」に影響を与えようと、いくつもの私利的な画策が本格的に始まることになるだろう。

政策的に何が行われるのか、確かなことはまだ明らかになっていない。しかし、2020年3月、欧州委員会は285ページに及ぶ調査結果を発表し、プラットフォーム労働者の労働条件に関して特定された「主な」課題として以下のようなものを挙げた。雇用の状況、労働条件について労働者が利用できる情報、紛争解決、集団的権利および差別禁止などだ(つまり、考えられるほぼすべての課題が挙げられたということだ)。

実際に研究結果を掘り下げてみると、低報酬と不安定な収入についても、非常に詳細に議論され、それらはプラットフォーム労働者にとっての「重要なストレス要因」とされている。

賃金は、確かに議論の重要な争点として提起されているようだ。特に、フォン・デア・ライエン委員長はシュミット氏への指示の中で「EUのすべての労働者が公正な最低賃金を確保できるよう」法的手段の提案を求めていた。

収入が労働者の法定最低賃金を下回る可能性があるというのは、プラットフォーム業務に対するよくある批判である(ギグワークによる賃金は、通常、ギグの注文や商品の受け取りを待つために費やしたダウンタイムすべてが対象となるのではなく、仕事をしている間や配達の完了時にのみ収益が上がるためだ)。したがって、EUの公正な最低賃金の対象となる「すべての労働者」が「プラットフォーム労働者を除く」という意味に終われば、欧州委員会はテクノロジーを利用した「恵まれない」労働者層を固定化してしまうことになる(シュミット氏が、そうなってはいけないと言ったことに反して)。

白書での賃金問題に対するUberのアプローチは、プラットフォーム労働者の「公正で透明性のある収益」(または「適正な」賃金)についてのみ語ることで、最低賃金の問題を回避している。

このテクノロジー界の巨人はまた「プラットフォーム労働者の報酬のあり方における変革を提言し業界をリードする準備がある」と述べている。しかし、業界全体で利用できる(「すべてのプラットフォーム企業が独立請負人に提供しなければならない業界全体の福利厚生と保護を備えた柔軟な収入の機会のための」)枠組みが求められていない限り、報酬については譲歩しないことを明らかにしている。

「これには、最近カリフォルニア州で導入されたProposition 22法のような普遍的な基準が含まれるかもしれない。または、プラットフォーム労働者、政策立案者、業界の代表者が協力し合い、業界のために報酬の原則を設定するという、社会的対話の欧州モデルに基づいたものかもしれない」とUberは示唆している。

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Uberは次のように述べている。「例えば、イタリアでは、フードデリバリー業界と一般労働組合が、配送の自営業者の地位を確認する合意に署名する一方、業界に対して、収入、傷害、第三者保険、訓練に関する規定を含む配送業者の労働基準を提供することを要求している」。

Uberはさらにこう付け加えている。「重要なことは、どのような報酬モデルであっても、どのプラットフォームで働くことを選択したとしても、すべての独立請負人に一貫した収益のベースラインを保証するために、業界全体に渡る公平な競争の場に基づいていなければならない」。

そして、この問題があらゆる面で大きな賭けであることは明らかだ。ギグワーカーの権利、大手プラットフォームの利益、そして社会的に進歩的なアジェンダを主張するEUの議員の信頼性がかかっている。

しかし、現時点でEUが法案を提出するかどうかについても100%確証があるわけではない。欧州委員会の広報担当者は、プラットフォームと労働者がこの不明確な労働における「より良い」労働形態のあり方について合意に達することができれば、政策決定は見送られる可能性があると示唆した(しかし、まあ、本当にそうなるのかどうかは運次第だ)。

2021年2月後半の開始が予定されている「社会的パートナー」の正式な協議は、欧州委員会の広報担当者によると、2つの段階で構成されている。

「第1段階では、プラットフォームを介して働く人々の労働条件を改善するためのEUイニシアチブの必要性について意見を求める。第二段階では、そのようなイニシアチブの内容について協議される」と同報道官は述べ、欧州委員会は「社会的パートナーの回答を慎重に評価する」と指摘した。

「社会的パートナーが、協定の交渉を行うことを決定しなければ、欧州委員会は2021年末までに立法的なイニシアチブを打ち出す予定だ」と同報道官は付け加えた。

報道官は、課題が特定され「改善が必要かもしれない」政策分野には「不明確な労働条件、契約の約定の透明性と予測可能性、安全衛生上の課題、社会保護への適切な利用機会」が含まれていることを確認した。

「不明確な労働条件」に低く不安定な報酬が含まれるかどうか尋ねられた同報道官は「申し訳ないが、このイニシアチブに関して、現段階で私たちが言えることは[前述のリスト]だけだ」と言って、明確な回答を避けた。

雇用形態

欧州委員会が主導したギグワーカーの状況に関する調査の最後にまとめられた、いくつかの政策的考察の中には、雇用形態が依然として中核的な課題であるとの記述がある。

「一部のプラットフォームは、自営業者と従業員の狭間で運営され、明確に雇用主の責任を負わず、プラットフォームの労働者を最大限にコントロールすべく業務形態を調整しているようだ」と報告書は所見を述べ、雇用分類の境界がどこにあるのかを明確にする判例の(緩慢な)ペースと「プラットフォーム業務を特徴づける急速に変化するビジネス慣行」との間にギャップがあることを指摘している。

「加盟国が[法律や判例を通じて]従業員の概念を拡大するか、プラットフォーム労働者の雇用形態に関する反証を許す推定を導入しない限り、プラットフォームは、自営業者の労働力への依存を継続または拡大する可能性が高い」と続けている。

「個々のケースでの再分類は、EU法や国内法に基づいて行われる可能性があるが、それが主要な動向を劇的に変える可能性は低い」。

また「プラットフォームに経済的に依存している自営業のプラットフォーム労働者の保護を目的とした措置は、『労働条件』に関する最低基準を確保することが望ましいと思われる」と報告書は付け加えている。さらに、関連する「政策的含意」は、EUと加盟国が「どのプラットフォームの業務形態が自営業のプラットフォーム労働者に適合しないか明確にすることを検討すべきである」と示唆している。

自営業審査の明確化、あるいは審査で不合格とすべき業務形態の明確化は、EU全体の政策立案者が取り掛かるべき法案の1つだ。とはいえ、この件についても、ギグエコノミーに関するフィードバックを受けて欧州委員会がどのアイデアを支持するかは、今後の動向を見守る必要がある。

雇用分類の判例の面では、まもなく英国で、Uberの配車サービス事業に関連する大きな判決が下される。Uberのドライバーを自営業者として分類することに関して2016年に始まった雇用法廷での係争が2月19日に最終判決を迎えるのだ。英国最高裁は、Uberが過去5年間に何度も控訴しては敗訴してきたこの種の訴訟に対して判決を下す。

最高裁の判決は、ロンドンのプラットフォーム上で営業しているとUberがいう約4万5000人のドライバーのみならず、英国全体にも影響を及ぼす可能性が高い。

また、EUの政策立案者がギグワーカーの労働条件の改善に積極的に取り組んでいることを考えると、この判決の影響はそれ以上に波及する可能性もある。

2020年、フランスの終審裁判所は、元Uberの運転手を自営業のパートナーではなく従業員とみなすべきだとの判決を下した。この判決では、会社とドライバーの間に従属関係があることを認め、ドライバーは、価格設定、顧客基盤の構築、業務の遂行方法に関する選択の権限がないなどの問題が指摘された。そして「ドライバーは管理された輸送サービスに参加しており、Uberは一方的に運営条件を定義している」と書かれている。

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しかし、Uberは、2017年に提訴されて以来、ドライバーがUberの利用方法をコントロールできる範囲が広がり、今では「より強力な社会的保護」(無料の傷害保険など)を受けることができるようになったことを挙げて、自社の業務形態に多くの変更を加えてきたと主張し、この事例が前例となることを否定した。

この事例は、苦情ベースの判例に頼るだけでは複数のプラットフォーム労働者に対応する首尾一貫した成果を得ることは難しいことを浮き彫りにしている。

このような係争において、最終的な判決が下されるまでに時間がかかることは、プラットフォームにとっては、少なくとも対象となる争点はもはや適用されないと主張できるよう、業務形態を再構成するのに十分な時間を得ることにもなる。

そのため、ギグワーカーの労働条件の改善を確定するための法整備が確かに必要かもしれない。

エイストン氏は、そのような状況において、結局のところ要求される変更はUberにとって「受け入れられる」ものではないかもしれないとしつつも「状況が変わる可能性があるのは事実だ。もしUberが『最高裁の判決』を受けてビジネスモデルを機能させる方法を大幅に変更した場合、同社はドライバーの定義を再び都合の良いように変えてくる可能性がある」と語る。

「我々は、最高裁がどの争点についてどのような措置を命じる判決を下すか見守る必要があるが、Uberはビジネスモデルにおいて、業務の機能に重大な影響を与える恐れがある変更を加えることが有効かどうかの判断をしなければならないだろう」と同氏は続け「私は、Uberが、おそらく判決に備えて、ビジネスモデルが機能する変更をすでに整備しているのではないかと見ている」と付け加えた。

「つまり、判例は背景に特化しているので、非常に特殊な判例に頼るのではなく、実際の法律と具体的な定義が鍵を握っていると言えるのではないだろうか」と同氏は語った。

委員会の調査では、この分野での政策立案を阻むいくつかの課題にも言及されている。そこには、プラットフォーム業務の明確な定義や、エビデンスに基づいた政策立案のための十分かつ包括的なデータ収集など、基本的なことも含まれている。

エイストン氏は「一旦、誰かが独立請負人ではなく労働者として分類されると、労働者の能力と団体交渉の権利を強化させる可能性が生じる。そのため、最高裁の判決がUberに不利なものとなった場合、それは別の潜在的波及効果をもたらす」と述べ「ドライバーやライダーの団体交渉能力の向上につながる可能性があるため、関連する組合が強い関心を示していることでもある」と続ける。

一方、欧州では、国レベルでの規制や法制化の試みが始まっている。例えばスペインでは、政府が数年前から「falsos autonomos(不当な自営業者扱い)」を受けている労働者を利用するプラットフォームの厳重な取り締まりを目指しており、プラットフォーム業務に適用し摘発するための労働法の改革を進めているところだ。

最近の報道によると、そうした国家的な労働改革プロセスは、配送労働者の雇用をプラットフォームに対して義務化する結果となる可能性がある。そのような動きがあるため、大手プラットフォームは、EU全体に適用される「もっと柔軟な」規制を求めて、欧州委員会へのロビー活動をさらに熱心に行うようになっている。少なくとも国内法が別のEU加盟国の規制に及ぼす影響の範囲を制限し、プラットフォームのビジネスモデルへの潜在的なダメージを限定することを狙っているのだ。

英国政府もまた、法制化が近づいていることを示唆している。政府は2017年まで遡り、ギグワークの調査を含め、近年の労働慣行に関する大規模な調査を実施した。Taylor Review(テイラー・レビュー)と呼ばれるこの調査は、ギグワークをより適切に反映させるために、現在の(英国の)「労働者」の法的分類を更新すべきだと提言している。また、同調査の報告書は「従属契約者」がより適切な枠組みであることを示唆しており、プラットフォームが労働者に対して行使するコントロールに、より大きな焦点を当てるべきとしている。

テイラー・レビューは華々しく公開され、労働者の権利を強化するための政府の計画につながった。しかし、2018年末に発表された改革パッケージ「Good Work Plan(良質な労働計画)」は、貧弱で実体を欠いていると労働組合によって即座に却下された(対して政府はこの計画を労働者の権利の大規模な拡大として宣伝している)。今のところ、ギグワークの問題について具体的に取り組むために多くを成し遂げたようには見えない。

英国政府が2018年に計画の一環として発表した「現代の雇用関係の現実を反映させる」ために雇用形態審査の明確性の向上を目的とした法整備を進めるという公約は、まだ何も実現していない

計画されていた立法がパンデミックの影響で遅れている可能性はある。エイストン氏はまた、Uberの裁判で最高裁が判決を下すまで、政府が方針の公表を控えている可能性もあると示唆している。したがって、政策決定に影響を与えようとUberがEUに対して行っている巧妙なPRにもかかわらず、欧州の判例や世論が下す判断に比べれば、Uberはこの問題について大した口出しはできないかもしれない。

「最高裁が、ドライバーは労働者だとする『Uber』に不利な判決を下した場合、同社にとっては、少なくとも今より少し困難な状況になるだろう。なぜなら、同社は、少なくとも英国では、すべてのドライバーが労働者であることを受け入れるか、判決の根拠を精査し、その根拠から逃れられるようにビジネスモデルを調整するかのどちらかを決定しなければならないからだ」とエイストン氏は話す。

「Uberは明らかにドライバーを労働者ではなく自営業者として扱い続けたいと考えているので、後者を検討しているかもしれないが、PRの観点から考えると、それは同社にとって良いことではないと思う。ドライバーが労働者であると判断されたら、今はそれを受け入れ、ドライバーがその権利を持っていることを認めて先に進む必要があるというのも1つの考え方だ」。

同氏は、ギグエコノミー企業の典型例として、Uberは欧州でドライバーやライダー向けの無料または低価格の保険などの福利厚生パッケージを整備し「良い」会社であり、人を大切にする姿勢を示すことで「自営業」の請負業者が労働者として再分類されるリスクの「芽を事前に摘み取ろうとしている」と指摘している。

このような取り組みでは、再分類されたプラットフォーム労働者が得るであろう権利を網羅することはできず、配車サービスの利用者を味方につける必要もあるため、ここでさらに動きがあるかもしれない。

「ギグエコノミー企業は極端なことは避け、ドライバーが労働者であることは認める、だから最低賃金や休憩時間などの権利があることも認める、という傾向がある。ギグエコノミーのビジネスにも気を配る必要がある。そういった観点から見ると、競争は激化するなるだろう」とエイストン氏は示唆する。

「人々が労働者であることを認めるかどうかは別として、ギグエコノミービジネスは、人々を大切にする義務があることを認識し始めているのだろう。明らかにそれは、人々がいくらかの利益を得ることにもつながるが、同時に、PRの面や会社の企業イメージの観点でもプラスに働く」。

また、注目すべき点は、英国の雇用法がいくつかの国の雇用法よりもニュアンスに富むものということだ。それは、英国ではすでに「労働者」(すなわち、従業員でも自営業者でもない)の概念を持っているからだ。一方、エイストン氏は、他の欧州諸国(そして米国も)での分類は、より限定されている(つまり、被雇用者または自営業者の分類のみ)と指摘する。

「欧州の裁判所は、英国の最高裁判決などに注目するだろう。その判決に縛られるわけではないが、その行方は欧州全域で同様の判決の方向性に少なくとも何らかの波及効果を及ぼすことは想像に難くない」と同氏は示唆する。「留意すべき興味深い点は、英国には労働者の中間的な分類があるということだ。一方、ほとんどの欧州諸国では、自営の請負業者か従業員のいずれかしかない。つまり、欧州の他の国ではもっと大きな二分法になる」。

「英国には、この中間的な定義があるため、ある意味ではより良い状況にある。そのため、英国の裁判所は再分類を命じやすい立場にあるという意見もあるかもしれない。最高裁が[Uberの雇用裁判の係争に関して]ドライバーは事実上労働者であるという控訴裁判所と同様な判決を下した場合、最高裁による判決と控訴裁判所による件の判決との間に相違があるかどうかを見きわめることが重要だ」と同氏は付け加える。

「英国の場合は、上記のような背景があるため、裁判所がドライバーを、一部の保護が適用されるこの中間のカテゴリーに当てはめるべきだという判断を下すのが、他国よりも容易だった」と同氏は説明する。

EUの政策立案者が「労働者」に似たEU全体の基準を策定することを決定した場合、そのような決定はUberなどに大きなチャンスとリスクをもたらすことになるだろう。雇用訴訟が業界の中核的なビジネスモデルに与える脅威を軽減する手段として、利益に関する主要なパラメータに効果を及ぼす(そして、税負担の増加を回避する)チャンスがある。

ギグワーカーに提供される保護レベルの拡大には明らかにコストがかかるだろう。しかし、大手テクノロジー企業にとっての問題は、これらのコストをどれだけ削減できるか、つまり欧州全域で営業を行う際に「問題に直結する」最低限の基準は何か、ということになる。

あるいは、EUの議員は、適切に「公正な」運用上の雇用の制限を確立する方法として、プラットフォームの労働者に対する「やるべきこと」と「やってはいけないこと」のリストを規定し施行することを試みることもできるだろう。これは逆に、その利益(多くの場合、この時点ではまだ理論的なものである)が、従業員ではないとされる多くの人々から提供される豊富で低コストの労働力に依存している大手オンデマンド企業のビジネスモデルを破壊する可能性がある。

プラットフォームに対する具体的な運用要件のリストを設定することは、欧州委員会が12月にEUの議員らによって策定された包括的なプラットフォーム規制(デジタル市場法)の中で提案していることとまったく同じであり、他のビジネスとの公正な取引(およびデジタル競争の促進)を推進するために最も市場力のあるプラットフォームに介入することを目的としている。

ギグプラットフォームについても、労働者のために公正な取引の確保を目的とした同様の介入が考えられる。

Uberなどにとっては、何十万人ものオンデマンド労働者を従業員名簿に載せることを法的に要求されることに比べれば、確かに望ましいことだろう。しかし、それは、これらの大手企業が規模拡大のために利用してきた、ドライバー労働力のタダ乗りともいうべき手法に終止符を打つことにもなるだろう。

今回の件で欧州におけるプラットフォーム経済が終わりを迎えることはないだろうが、調整にかなりの時間がかかることは避けられないように見える。ビジネスモデルは雇用法の変化(および、またはより良い施行)に適応する必要があるだろう。

価格など、コントロール可能な条件を減らしつつ従業員や労働者とは別の業務形態を維持しようとするのか、あるいは人々が労働者であることを受け入れ、それに応じてビジネスモデルと価格構造を適応させるのか(例えば、ライバルのプラットフォームで働く権利を制限するなど)、ギグエコノミー企業はビジネスモデルを調整することの長所と短所を秤にかけなければならないだろう、とエイストン氏は語った。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

EUがギグワークを「より良質」なものにする方法を探し始める

欧州連合(EU)は、ギグプラットフォームとギグワーカーを含めた協議プロセスの第1段階を開始した。

EUの議員らはプラットフォームで働く人々の労働条件を改善したいと述べているが、EUのデジタル政策責任者であるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は現地時間2月25日のスピーチで、そうした人々が「貧しく」「不安定」である可能性を認めた。しかし、ベステアー氏はまた、ギグワークの問題に関する欧州委員会のアジェンダは、(貧弱な)プラットフォーム業務と、良質で安定した(権利が保護された)雇用との間に、ある種の「バランス」を見つけることだと明確に述べた

過酷なサービス提供に従事していながら従業員名簿に載らない多くの人々は、労働者としての権利の一部しか与えられていない。彼らに支払う大金を削ることが、企業としての(多くの場合、理論上ではあるが利益がともなう)持続可能性に連鎖的に結びついている。そうしたことを踏まえると、ギグプラットフォームの仕事がいつまでも良質かつ安定したものにならない悪循環をEUの議員らがどう正していくのか、まだ詳細は不明だ。

しかし、おそらくそれこそが、欧州委員会の協議プロセスで把握しようとしていることだ。このプロセスの第1段階では「より良質」なプラットフォーム業務がどうあるべきか、ギガプラットフォームとギガワーカーの代表者らとともに徹底的に議論することが計画されている。

「プラットフォーム経済はEUとともにあり、新しいテクノロジー、新しい知識源、新しい仕事の形態が今後数年で世界をかたち作っていくでしょう」とベステアー氏は述べ、続けてプラットフォーム労働者の権利や社会的セーフティーネットが疎かにされてはならないというデリケートな問題に躊躇なく切り込んだ。「そして、デジタル経済に関わるあらゆる仕事を守るため、新しいチャンスだからといって権利が制限されることがあってはなりません。オンラインでも実社会と同様に、すべての人々が保護され、安全に尊厳を持って働けるようにするべきです」(ここでは「べき」という言葉に非常に力強い決意が込められている)。

「この協議における重要な課題は、プラットフォーム経済の機会を最大限に活用することと、プラットフォーム経済で働く人々の社会的権利を従来型の経済と同じように保証すること、この2つを両立させることです」とも述べ、次のように続けている。「また、プラットフォームと、現行の労働法の適用を受け人件費がかさんでいる従来型の企業との間で、公正な競争が公平な条件で行われるようにすることも重要です」。

ギグワークに関する欧州委員会の2段階の協議プロセスは、委員会のいう「プラットフォーム業務における労働条件を改善するために、EUが取りうる施策の必要性と方向性」について「社会的パートナー」による協議から始まる。

この協議は少なくとも6週間にわたって行われる。これには、プラットフォームが労働者(および・または、労働者の代表者)と話し合い、プラットフォームの労働条件の観点で「より良質」とはどのようなものかについて合意を見い出すことが含まれており、欧州委員会のイニシアチブの方向性を決定するためのものである。あるいは、両者が現実的な方策の同意に至った場合には、そのイニシアチブについて法整備を進めることになる。

協議の第2段階は「社会的パートナー」が合意に至らない場合を想定しており、夏前に行われる予定で「イニシアチブの内容」に焦点を当てるとベステアー氏はいう(つまり、正すべき悪循環を正すために、EUが最終的に何かを提案するということだ)。

ギグワークにおける難問である競争要素、つまり「雇用主の公平性」というダイナミクスも考慮しなければならない。プラットフォームが従来の雇用主と同じルールを適用していないために、良質で安定した仕事を提供しているライバル企業の競争力を低下させる可能性があることを考えると、欧州委員会がなぜ「社会的パートナー」の協議と並行して競争に焦点を当てた協議を始めているのか説明がつく。

「社会政策ではなく競争法に関するものであるため、別の法的基盤を持つこのイニシアチブについて、まもなく公聴会を開始する予定です。2つのイニシアチブについて別々に協議を行うのは、このためです」とベステアー氏は指摘する。

同氏は、これによってEUの競争規則が「必要とされている団体交渉の邪魔にならないよう」にすると述べた。また、(この意味はまだ不明確だが)「より良質な」プラットフォーム業務のバランスを実現するうえでの解決策が、団体交渉によって形成されることを委員会は期待しているという。

とはいえ、シニカルな人は、この意見公募が、最終的にはおそらくある種の見せ掛けに終わるだろうと予測するかもしれない。つまり、ベステアー氏がEUとともにあるべきと主張したプラットフォーム経済を実際に崩壊させることなく、プラットフォームにおける権利のギャップを埋めるための詰め物という見方もできるということだ。

Uber(ウーバー)の場合、プラットフォームの「法的な明確さ」を向上させるという欧州委員会の話を機会と捉えている。

巨大な配車サービス企業であるウーバーは先週、ホワイトペーパーを発表し、プラットフォーム業務への規制強化の動きを阻止すべく議員に働きかけた。カリフォルニア州では雇用法の強化からの切り離しに成功し、欧州でも同様の成果を求めProp 22スタイルを推し進めている。

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他のプラットフォームも同様に、欧州の社会契約の中で自社のビジネスモデルに不都合な部分の再調整を促す利己的な提案をしてくることを予想している(例えば先週、ウーバーは規制緩和のロビー活動に有利になるよう、労働者の条件改善を意図的に引き延ばしたと非難された)。

欧州委員会のギグワーク協議の開始は、長期にわたる雇用法廷に対するウーバーの上告を棄却した英国の最高裁による画期的な判決(英国時間2月19日)に続くものだ。

最高裁判事は、ウーバーを訴えたドライバーのグループは確かに誤って「自営業者」に分類されていたとの見解を確定させ、ウーバーはずっと支払っていたはずの(労働者の)権利に対する補償金を支払う義務があるとした。

EUが(ブレグジット後の)英国と比較してプラットフォーム労働者に低いレベルの権利しか提供できずに終われば、ブリュッセル(EU本部)は確かに面目が立たないだろう。

プラットフォームが既存の雇用規制を回避し、社会通念を破壊してでも利益を追求することに基づいていることを考えると、本質的にアンバランスなビジネスモデルの観点で「バランス」を取ることについて話すのは非現実的かもしれない。しかし、欧州委員会は協議プロセスや重なり合うEU全体の規制のネットワークが、ギグエコノミーや大手テクノロジー企業の極めて悪質な行き過ぎた行為をより一般的に抑制するための方法であると考えているようだ。

協議についてのプレスリリースでは、プラットフォーム業務はEUのさまざまなビジネスセクターで「急速に展開されている」と述べられている。そのため「ハイテクを駆使した『発展』を邪魔することはできない」という冴えない記述がある。

委員会は「従来の労働市場の職に就くことが難しいと感じている人も含めて、柔軟性の向上、雇用機会の増加、副次的収入を提供することができる」と、おそらく「バランスのとれた」結果を求める向きに合せていると思われる、認識されたいくつかのポジティブな面から書き始めている。

「しかし、ある種のプラットフォーム業務は不安定な労働条件を伴い、契約の透明性や予測可能性の欠如、安全衛生上の課題、社会的保護の利用機会が不十分であることとして表面化している。プラットフォーム業務に関するその他の課題には、国境を越えた範囲とアルゴリズムによる管理の問題が含まれる」。

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また、プラットフォーム業務の普及を加速させていることと、ギグワーカーの「脆弱な状況」に対する社会的な懸念が高まっていることの両方において、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが果たす役割についても言及している。「脆弱な状況」のギグワーカーは感染しても、(病欠手当が全額支給されないと)仕事をやめるわけにはいかないので、収入を得るために、自分自身の健康(だけでなく他人の健康)を危険にさらすという選択を迫られるかもしれない。

欧州委員会の報告によると、EUの労働者の約11%(約2400万人)が、すでにプラットフォームを通じてサービスを提供したことがあると答えている。

ベステアー氏は、これらの人々のほとんどは「プラットフォーム業務を単に副次的、あるいはあまり重要でない収入源としているだけ」と言われていることに対して、300万人ほどは本業としてやっていると付け加えた。

そして、欧州でこれらの300万人に給料を払わなければならなかった場合のギグプラットフォームのコストを想像してみて欲しい。

プラットフォーム業務はEUとともにあるべきだとの見解を表明したスピーチの中で、ベステアー氏は、消費者の35%から55%が「今後も宅配を利用するつもりだ」と回答したという最近の調査結果を引用した。

「プラットフォーム経済は急速に成長しています」と同氏は付け加えた。「世界的に見ても、オンライン労働プラットフォーム市場は2年間で30%成長しています。この成長は今後も続くと予想され、プラットフォームを介して働く人の数は、今後数年の間に著しく増加すると考えられています」。

「我々は欧州の価値観を中心に据え、欧州のデジタルの未来をかたち作るために取り組んでいます」と同氏は続け、EUの施策リストにある幾多ものデジタル規制に触れた。幾重もの規制網を使い、欧州委員会が社会的に許容される公正な運用の枠組みにプラットフォームの巨大企業を縛りつけようとしている様子を暗黙のうちに示したのである(ただ、実際にはまだこうしたEU規制は行われていない)。

「12月に提出されたデジタルサービス法案とデジタル市場法案は、テクノロジーが基本的な権利を侵害するリスクがある場合に、消費者としての私たちを保護することを目的としています」と同氏は述べる。「4月には2020年発表した人工知能に関する白書のフォローアップを行い、今後の提案では同様に、市民としての私たちを保護することを目的としています。公平性と欧州の価値観の統合は、夏までに予定しているデジタル税に関する次期提案の推進力となるでしょう」。

「私たちは、デジタルトランスフォーメーションが持つ大きな可能性を社会や経済と調和させようとしています。これらの取り組みはすべて、こうした意欲の現れです」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)