迫るiOS 15リリースでマーケティング担当者が失うデータ、計画すべきDIYメトリクス戦略

Apple(アップル)は、米国時間9月20日(日本時間9月21日)に同社がリリースするiOS 15の一部として、重要なユーザーデータへの開発者のアクセスを排除することを計画しており、メールマーケティング担当者は、これからメトリクスをどのように把握していくかジレンマに陥っている。この問題に業界がどのようにアプローチしているのか、マーケティング担当者が収集したデータに基づいて行動することを支援するソフトウェア企業Movable InkのVivek Sharma(ヴィヴェック・シャルマ)CEOに話を聞いた。

このインタビューでは、8月に掲載されたExtra Crunch記事をベースに、メールマーケティング担当者がAppleのメールプライバシー保護の変更に備える方法を探っていく

今回のアップデートでメールマーケティング担当者にとってゲームチェンジャーなのは、AppleのMailのユーザーが自分のIPアドレスを隠すことができるようになった点だ。

マーケターたちはどのようにして戦術をピボットし、メトリクスを管理し続けられるのだろうか。シャルマ氏は、開封率ではなく、クリック数、コンバージョン数、収益といったダウンストリームメトリクスがより重視されるようになるだろうと考えている。「それはいいことのように聞こえますが、その分データは少なくなります。そして定義上、ファネルは狭くなり、その時点では人数が少ないので、何かがうまくいっているのか、うまくいっていないのかを知るのに時間がかかるかもしれません」。

シャルマ氏は、企業はゼロパーティデータに注目していると語る。「これには2つの要素があります。1つは指標としての『オープン』で、もう1つはオープン時に得られるIPアドレスや時間帯、推測される天候などの情報です。IPアドレスや日時などのような情報は、データ漏洩として認識されます。これらは、マーケターがアクセスできなくなるデータポイントのほんの一部です。そのため、彼らはすでに投資しているファーストパーティデータやゼロパーティデータを利用しています」。

シャルマ氏によると、課題は次のようなことになる。マーケターはどうすれば、ゼロパーティデータをおもしろく、視覚的に魅力的な方法で収集し、そのコンテンツをすべての顧客に対して大規模にパーソナライズできるのか?

以下に示したのは、Movable Inkがゼロパーティデータを収集した方法の1つだ。

「ゼロパーティデータ戦略」
世界的なアパレル小売企業が、ロイヤルティプログラムの導入時にゼロパーティデータを巧みに取り込みました。Movable Inkを利用したEメールでは、Movable Ink ExchangeのパートナーであるOracle CrowdTwistのデータを活用して、パーソナライズされたチェックリストのヒーロー画像を作成し、受信者のロイヤルティアカウントから主要なプロフィール質問を引き出し、完了までの進捗を表示し、回答ごとにポイントを提供しました。この合成画像は、Movable Inkが受信者の受信箱で消費したロイヤルティデータに基づいて自動的に生成され、1to1ユーザー体験を実現し、手動の制作プロセスを完全に回避しました。
​​レスポンス率149%アップ、ユニークCTR340%アップ(コントロール比)
画像クレジット:Movable Ink

シャルマ氏は次のように述べている。「ここにあるものはすべてアンケート調査の質問です。『ふだん何を買いますか』『靴のサイズは?』そして、そのお返しにポイントを付与するという、価値の交換が行われているのです。彼らは明確な方法であなたのことを知り、あなたが興味を持っているブランドと簡単に関わり合える方法を提供しているのです」。

データを手に入れたら、次の問題はそれをどのように利用するかだ。JetBlue(ジェットブルー)航空の例を見てみよう。

JetBlue パーソナライズド「イヤー・イン・レビュー」データ視覚化
2020年は旅行が困難な1年だったのを受けて、JetBlueはTrueBlueマイレージ会員を認識し、個々の乗客の旅行マイルストーンを紹介するために、一人ひとりパーソナライズされた、1年を振り返るデータビジュアライゼーションを提供したいと考えました。
Movable Inkは、JetBlueの記録システムからデータを抽出し、何十万通りもの組み合わせのクリエイティブアセットを各受信者の受信箱に直接自動生成することで、高価で時間のかかる手作業による制作を不要にしました。
画像クレジット:Movable Ink

シャルマ氏は、メールマーケティング担当者向けに、iOS 15での3つの重要なポイントを説明してくれた。

  1. クリック数やコンバージョン数などのファネル下部のメトリクスを重視すること。これこそが本当の意味でのエンゲージメントの指標となります。
  2. ゼロ・ファーストパーティデータ資産に投資する。真のパーソナライゼーションとは、人々が何を体験し、何を見るかということ。そのためには、ゼロパーティデータとファーストパーティデータを活用する必要があります。
  3. Eメールは、すでに投資されている成熟したチャネルであるため、顧客のエンゲージメントを高めるのに非常に有効です。Eメールは、顧客と一対一の関係を築くのにはすばらしいチャネルであり、それ以上の効果があります。この10年、15年の間に、Eメールはさまざまな変化を遂げてきました。この業界は進化し、プライバシーとパーソナライゼーションのバランスが取れたものになっていくでしょう。

画像クレジット:FeelPic

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(文:Miranda Halpern、翻訳:Aya Nakazato)

NFTマーケットプレイスのOpenSeaが「閲覧のみで売買はできない」アプリを発表

「分散型インターネットのAmazon(アマゾン)」といわれるOpenSea(オープンシー)にとって、米国時間9月17日は大きな意味のある日になった。同社がiOSAndroid用のアプリを発表したのだ。ほとんどの企業にとって、モバイルアプリを用意することは、15億ドル(約1650億円)の評価額を達成する前に到達するマイルストーンである。しかしNFT(非代替性トークン)アートであってもなくても、実際の店舗で販売するときと同様に、アプリストアでの取引には、AndroidでもiOSでも、高額な手数料を取られる。おそらくそのためだろう、OpenSeaから華々しく登場したこの新しいアプリは、NFTを閲覧するためだけのものであり、売買するためのものではない。ちなみにOpenSeaは、8月に200万件の売買を記録しており、その取引総額は34億ドル(3738億円)に上る。Apple(アップル)とGoogle(グーグル)はアプリ内取引の30%を徴収するため、もしこれらの取引がアプリ内で行われたとしたら……34億ドルの30%、つまり10億2000万ドル(約1122億円)が両社の懐に入っていたことになる。

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もっとも、より大きな障害となっているのは、おそらくアプリ内での支払いを暗号資産で行う方法がまだないことだろう。OpenSeaが売買に対応するためには、米ドルで支払うためのインフラを構築し、より多くのユーザーをそちらに誘導する必要がある。しかし、OpenSeaの魅力の1つは、主としてEthereum(イーサリアム)ブロックチェーンに依存した暗号資産ネイティブなプラットフォームであり、NFTがいつ鋳造されたか、誰が鋳造したか、どのように取引されたかなどの情報に人々が容易にアクセスできることだ。同社がそのプラットフォームを、よりドル寄りの方向に推し進めれば、既存のユーザーのエコシステムを混乱させる可能性がある。

このOpenSeaのアプリでは、ユーザーは自分のプロフィールに接続し、NFTの閲覧、NFTのお気に入り登録、NFTの検索とフィルタリング、コレクションとアイテムの統計情報の閲覧ができる。アプリ内でNFTを閲覧すると、そのNFTをアプリ外で共有するためのボタンが表示される。同じくNFTのマーケットプレイスであるRarible(ラリブル)は、1カ月ほど前にモバイルアプリをリリースしている。OpenSeaのアプリと同様、RaribleのアプリもNFTの閲覧のみが可能で、売買やトレードはできない。

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画像クレジット:OpenSea

そのうちアプリでNFTを売買できるようになるのかなど、OpenSeaのアプリに関する同社の計画についてTechCrunchは質問したが、回答は得られていない。もっとも、アプリで暗号資産の取引を行うものが、今までなかったというわけではない。PayPal(ペイパル)でも今や暗号資産による支払いが可能になっている。むしろ、OpenSeaのアプリは、ウォレットやブロックチェーンなどについて何も知らない人でも、簡単にNFTアートを閲覧できるユーザーフレンドリーな方法を提供することで、新しいユーザーをNFTの世界に呼び込かもしれない。

なお、このアプリが発表されたのは、OpenSeaの幹部がインサイダー情報に基づいてNFTを取引したとして告発されてから数日後のことだった。同社は米国時間9月15日にブログで、この従業員がその後、辞職したことを明らかにしている。

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画像クレジット:Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【まとめ】アップルが発表した4つiPhone 13、2つのiPad、Apple Watch Series 7のポイントをチェック!

2021年もこの時期がきた。

9月になると、2つのことが起こる。Earth, Wind, &Fireを繰り返し聴くことと、Appleが新しいiPhone(4台)を発表することだ。

予定どおり、Appleは本日、バーチャルイベントを開催し、クパチーノのキャンパスからちょっとしたライブストリーミングを行った。1時間のストリーミングを全部見る時間がなかった人も、ハイライトだけを知りたい人も、いつものようにそのすべてをそれぞれポイントにまとめてご紹介しよう。

新しい2台のiPad

エントリーモデルのiPadとiPad miniの両方がアップデートされた。それぞれの新機能は次のとおりだ。

画像クレジット:Apple

新しいiPad

  • Appleが2019年に「iPhone 11」で初めて導入した「A13 Bionic」チップを搭載。同社によると、前世代と比べて全体的に20%高速化しているとのこと
  • フロントカメラは800万画素から1200万画素の超広角レンズにアップグレード
  • また、iPad Proにも搭載されたセンターフレーム機能により、部屋の中を移動するときに顔が中央に来るように映像を自動的にリフレーミングすることができる
  • 価格は329ドル(日本では税込3万9800円)から。9月24日発売で、すでに予約可能

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画像クレジット:Apple

新しいiPad mini

  • スリムなベゼルと丸みを帯びたエッジでデザインを一新
  • ディスプレイは7.9インチから8.3インチへと大型化したが、本体サイズは変わらない
  • CPUは40%、GPUは80%高速化
  • USB-Cを採用
  • 5Gモデルも登場
  • 背面カメラには、大幅に改良された12MPカメラとTrue Toneフラッシュが搭載。また標準的なiPadと同様に、フロントカメラにも12MP超広角レンズとセンターフレームを採用
  • 第2世代のApple Pencilにも対応
  • 価格は499ドル(日本では税込5万9800円)。9月24日発売で、すでに予約可能

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Apple Watch

画像クレジット:Apple

AppleはWatch紹介の最初に、iOS 8に搭載されるいくつかの新機能(自転車での転倒検知や、電気自転車での消費カロリー検知のアルゴリズム改善など)を紹介した後、新しいWatch Series 7を発表した。

Apple Watch Series 7

  • ベゼルを狭くしたことで20%の大きさのディスプレイを搭載
  • その大きなディスプレイを活かすために、UI全体でボタンが大きくなる
  • スワイプ式の予測キーボードを搭載し、外出先での文字入力が簡単に
  • Appleによれば、今回のモデルは、史上最強(最も割れにくい)のディスプレイを搭載しており、Apple Watchとして初めて防塵性能のIP6X認証を取得
  • また「最新の充電アーキテクチャ」と「新しいUSB-C充電器」で充電速度が33%向上
  • Series 7の価格は399ドル(日本での価格は未発表)で「2021年の秋の終わり」に出荷を開始する予定

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新しいiPhone

画像クレジット:Apple

iPhone 13、iPhone 13 mini、iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Maxと、1台でも2台でもなく、4台の新しいiPhoneが登場した。より高速なチップ、より優れたカメラ、より優れたバッテリー駆動時間を搭載、実現している。

画像クレジット:Apple

iPhone 13とiPhone 13 mini

  • どちらもAppleの新しいA15 Bionicチップを搭載。6コアのCPU(2つの高性能コアと4つの高効率コア)と4コアのGPUを搭載し、Appleがデバイス上の機械学習に採用しているニューラルエンジンも大きく進化している
  • 「Ceramic Shield」は他のどのスマートフォンのガラスよりも頑丈だと、Appleはいう
  • IP68の防水性能
  • 28%明るくなったディスプレイ
  • iPhone 13は6.1インチ、iPhone 13 miniは5.4インチ
  • スクリーン上のスピーカーが後ろの人を見たときにカメラのフォーカスを自動的に移動させるなど、機械学習を利用したワイルドな新モード「シネマティック」。
  • 64GBモデルはついに引退。ベースモデルのストレージは128GB
  • Appleによると、iPhone 13 miniのバッテリー駆動時間は1時間半改善され、ほとんどのiPhone 13ユーザーは1回の充電で2時間半長く使えるようになるという
  • iPhone 13は799ドル(日本では税込9万8800円)から、iPhone 13 miniは699ドル(日本では税込8万6800円)から

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iPhone 13 Pro and Pro Max

画像クレジット:Apple

  • 「Ceramic Shield」の採用に加え、A15にアップグレードし、5コアのGPUを搭載
  • ウワサどおり、リフレッシュレートを最大120Hzまで調整できるディスプレイを搭載。動きやスクロールが非常に滑らかになる
  • 背面には光学3倍ズームの望遠レンズ、超広角レンズ、広角レンズの3つのカメラを搭載。ナイトモードは、3つのカメラ(従来は対応していなかった望遠レンズを含む)に対応している
  • サイズは2種類。Proは6.1インチ、Pro Maxは6.7インチ
  • ストレージ容量が足りないという人のために、1TBモデルも登場
  • Proは999ドル(日本では税込12万2800円)から、Pro Maxは1099ドル(日本では税込13万4800円)から。9月17日に予約開始、9月24日出荷予定。

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その他の情報

  • iOS 15は9月20日に配信される
  • AppleのFitness+サービスが、オーストリア、ブラジル、コロンビア、フランス、ドイツ、メキシコ、ロシアを含む15の新しい国で展開される。ワークアウトは英語で行われ、6カ国語で字幕が表示される。また、iMessageやFaceTimeから起動できるグループワークアウトも開始され、ハングアウトとワークアウトをマルチタスクで行うことができるようになる
  • AppleのMagSafeウォレットは、ウォレットが携帯電話から外れてしまった場合、「探す」アプリを通じて最後に確認した位置を表示できるようになる

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画像クレジット:Apple

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Katsuyuki Yasui)

次期iOS 15のアップデートは9月21日から

米国時間9月14日の発表イベントの直後、Apple(アップル)はiOSの次期メジャーバージョンがまもなく登場することを明らかにした。iPhoneユーザーは日本時間9月21日にiOS 15にアップデートできるようになる。同社は2021年6月のWWDCでiOS 15を初めて紹介した

iOS 15の最大の変更点は新機能の「集中モード」だ。「おやすみモード」以外にもさまざまなモードを設定できる。アプリや、通知を許可する連絡先を選び、何に集中するかを設定する。例えば「作業」「睡眠」「ワークアウト」などのモードを自分で作成できる。

新しくなった「天気」や地図が更新された「マップ」、機能が充実した「FaceTime」など、全般にわたって新機能がたくさんある。「Safari」も外観が新しくなる。発表直後はやや物議を醸していたが、その後Appleはフィードバックに耳を傾けて調整した。

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iOS 15では写真に写っている文字が認識される。テキスト認識表示と呼ばれているこの機能により、写真の中のテキストを選択し、コピー&ペーストできる(訳注:テキスト認識表示は英語、中国語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語に対応)。アクセシビリティの機能としても有効だろう。iOSはこの情報をSpotlightで利用する。写真の中のテキストをSpotlightで直接検索し、関連する写真を探せる。これらの機能はデバイス上で処理される。

iPhone 6s以降、iPhone SEの第1世代と第2世代、iPod touch(第7世代)はiOS 15にアップデートできる。アップデートは無料だ。

iOS 15のベータ版が動作しているデバイスには、9月21日の正式リリースを前にRC版が公開されている。

現状のままiPhoneを使いたい場合は、iOS 15にアップデートしない選択肢もあるとAppleは公表している。当面はiOS 14向けのセキュリティアップデートが引き続き提供される。

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

新iPhone?Apple Watch?AirPods?アップルの9月15日午前2時からのバーチャル新製品発表をチェックしよう

Appleは今晩、iPhoneの新モデルを発表する予定だ。同社は、米国太平洋標準時9月14日午前10時(日本時間9月15日午前2時)から(バーチャル)基調講演を開催する。イベントはのライブ配信はここで見ることができる。

では、iPhoneの新世代モデルが登場するといわれている。報道によれば、同社はこれを「iPhone 13」と呼び、2020年と同様、4モデルを用意する予定だという。今回は「iPhone 13」「iPhone 13 Mini」「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」についての情報が期待される。

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新機能といえば、カメラの大きなアップグレードがあるだろう。2021年は、特に動画のアップグレードに力を入れているようだ。また、新iPhoneには、より優れたディスプレイとより高速なチップが搭載されるはずだ。

しかし、それだけではない。Appleは、この機会にApple Watchのニューモデルを発表すると考えられている。シャープなエッジを持つApple Watch Series 7では、より大きなデザイン変更が行われるだろう。

また、AppleはAirPods 3の開発に取り組んでいるため、さらに多くのプロダクトが発表される可能性もある。オーディオのラインナップでは、エントリーモデルの「AirPods 2」に代わる製品、または補完する製品となるだろう。「AirPods Pro」と「AirPods Max」は今のところ変更はありません。

最後に、カスタムデザインのApple製チップを搭載した新しいMacや、iPadの新モデルについての情報が得られる可能性もわずからながらある……。

AppleはYouTubeでカンファレンスの様子を配信しているので、このページで直接ライブストリームを見ることができる。

Apple TVを持っている人は、TVアプリを起動して「Apple Special Event」の項目を探して欲しい。これで今回のイベントをストリーミングしたり、昔のイベントを再視聴したりすることができる。

また、Apple TVを持っていない人やYouTubeを利用したくない人は、同社ウェブサイトの「Apple Event」ページからイベントをライブストリーミングすることもできる。この動画配信はSafari、Mozilla Firefox、Microsoft Edge、Google Chromeの主要ブラウザで動作するようになった。

画像クレジット:Qi Heng / VCG / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Katsuyuki Yasui)

アップルがiPhone、Macなど全端末でセキュリティアップデート、政府機関も利用するというNSOのゼロデイ脆弱性を修正

Apple(アップル)は、すべてのiPhone、iPad、Mac、Apple Watchに影響を及ぼす、新たに発見されたゼロデイ脆弱性のセキュリティアップデートを公開した。この脆弱性を発見したとされるCitizen Labは、ユーザーに対して直ちにデバイスをアップデートするよう呼びかけている。

テクノロジーの巨人Appleは、iPhoneおよびiPad向けのiOS 14.8、ならびにApple WatchおよびmacOSの新アップデートにより「積極的に悪用された可能性がある」とされる少なくとも1つの脆弱性が修正されるという。

Citizen Labは、ForcedEntryの脆弱性の新たな痕跡を発見したとしている。この脆弱性は、バーレーンの活動家の少なくとも1人が所有する「iPhone」をひそかにハッキングするために使用されていたゼロデイ脆弱性の利用に関する調査の一環として2021年8月に初めて明らかにされた。

関連記事:iPhoneのセキュリティ対策もすり抜けるスパイウェア「Pegasus」のNSOによる新たなゼロクリック攻撃

8月、Citizen Labは、ゼロデイ脆弱性(企業が修正プログラムを提供するまでの期間が0日であることから、このように名づけられた)は、AppleのiMessageの欠陥を利用しており、イスラエルの企業であるNSOグループが開発したスパイウェア「Pegasus」を活動家の携帯電話に送り込むために悪用されたと発表された。

Pegasusは、政府機関の顧客に対してターゲットの個人データ、写真、メッセージ、位置情報など、そのデバイスにほぼ完全にアクセスできるようにする。

この脆弱性は、当時最新のiPhoneソフトウェアであるiOS 14.4および5月にリリースされたiOS 14.6を悪用していたため、大きな問題となった。また、この脆弱性は、AppleがiOS 14に搭載した「BlastDoor」と呼ばれる、潜在的な悪意のあるコードをフィルタリングすることでサイレントアタックを防ぐはずの新しいiPhone防御機能を突破していた。Citizen Labでは、AppleのBlastDoor保護機能を回避できることから、この特別な脆弱性を「ForcedEntry」と呼んでいる。

Citizen Labによる最新の調査結果によると、サウジアラビアの活動家のiPhoneに、当時最新バージョンのiOSを実行していたForcedEntryエクスプロイトの証拠を発見した。研究者によると、このエクスプロイトは、Appleのデバイスがディスプレイに画像を表示する際の弱点を利用しているという。

Citizen Labによると、このForcedEntryエクスプロイトは、これまで最新のソフトウェアを実行していたすべてのAppleデバイスで動作するという。

Citizen Labは、米国時間9月7日に発見した内容をAppleに報告したとのこと。Appleは、この脆弱性(CVE-2021-30860)のためのアップデートを公開した。Citizen Labは、ForcedEntryの攻撃はNSO Groupが行ったものだと確信しており、これまでに公表したことのない証拠を挙げている。

Citizen Labの研究者であるJohn Scott-Railton(ジョン・スコット-レイルトン)氏は、TechCrunchに対し、iMessageのようなメッセージングアプリは、ますます国家によるハッキング活動の標的となっており、今回の発見は、メッセージングアプリのセキュリティを確保する上での課題を明確に示していると述べている。

Appleはコメントを控えている。NSOグループは、我々の具体的な質問への回答を拒否した。

関連記事:自分のスマホがNSOのPegasusスパイウェアにやられたか知りたい人はこのツールを使おう

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Katsuyuki Yasui)

マーベルの定額コミック読み放題アプリ「Marvel Unlimited」がアップデート

Marvel(マーベル)が定額制コミックアプリ「Marvel Unlimited(マーベル・アンリミテッド)」の新バージョンをリリースした。今回のアップデートでは、スマートフォンやタブレット端末の画面に合わせてデザインされた高解像度の縦型コミック「Infinity Comics(インフィニティ・コミックス)」の配信が始まている。当初は27作品のInfinity Comicsが提供されているが、年内には100作品以上が読めるようになる予定だ。その中には「X-Men Unlimited(エックスメン・アンリミテッド)」「Captain America(キャプテン・アメリカ)」「Black Widow(ブラック・ウィドウ)」「Deadpool(デッドプール)」「Shang-Chi(シャン・チー)」「Venom / Carnage(ヴェノム / カーネイジ)」などのシリーズが含まれる。

すべてが新しく、すべてが違うMarvelUnlimitedを体験せよ。

マーベルコミックを読むために必要なものがすべて揃ったアプリ! マーベル・ユニバースに飛び込むためのアップデートされた機能をご紹介します。

マーベル・エンターテインメント

Disney Media & Entertainment Distribution(ディズニー・メディア&エンターテインメント・ディストリビューション)の協力を得て一から作り直されたこのアプリでは、コミックをオフラインで読むための無制限のダウンロードが可能になり、コンテンツを別の場所で共有することができるようになった。他にもマーベルは、合理化されたデザイン、安定性の向上「クラス最高のスピードと検索ツール」、自分の好みに基づいてカスタマイズされる読書ガイドなどの改良を約束している。また、Marvel Insider(マーベル・インサイダー)のメンバーは、このアプリを利用することでポイントを貯めることもできる。

月額プランは10ドル(約1100円) / 月、標準年間プランは69ドル(約7600円) / 年。年間99ドル(約1万900円)の「アニュアル・プラス」プランは、月額プランや標準年間プランの特典に加え、メンバーシップキット、イベントへの招待、shopDisney(ショップディズニー)での割引などが含まれる。

Marvel Unlimitedには現在、2万9000冊以上のコミックが登録されており、毎週追加されていく。しかし、紙のコミックが店頭に並んでから作品がアプリに反映させるまでには、少なくとも3カ月のギャップがある。

今回のアップデートは、とっくに更新されるべき時期が過ぎたと思われていたアプリにとって、歓迎すべきものだ。Disney+(ディズニープラス)でマーベルの「What If…?(ホワット・イフ…?)」シリーズを観ていて、あるいはMarvel Cinematic Universe(マーベル・シネマティック・ユニバース)で他の作品を観ていて、コミックも読んでみたいと思っていた人は、この機会にMarvel Unlimitedを試してみてはいかがだろうか。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Marvel

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがApp Store外での決済方法への誘導ブロック禁止に、Epic Gamesとの裁判で

カリフォルニア州で行われているEpic Games対Appleの訴訟において、米国時間9月10日朝、判事がサードパーティによる支払いに関して「Fortnite」のメーカーに味方する判決を下した。事実上、判事はAppleが開発者に対して、AppleはApp Storeベースの収益化以外の代替決済のリンクを追加することを禁止することはできないという判決を下している。

Epic Gamesは、ゲーム購入が現金収入源であるiOSの料金をAppleが管理していることに長年悩まされてきた。

今回の判決では、以下のように述べられています。

Apple Inc.およびその役員、代理人、使用人、従業員ならびにこれらの者と積極的に協力または参加している者(以下「Apple」)は、開発者が(i)アプリ内での購入に加えて、購入メカニズムに顧客を誘導するボタン、外部リンク、その他の行動喚起をアプリとそのメタデータに含めること、および(ii)アプリ内でのアカウント登録を通じて顧客から自発的に取得した連絡先を通じて顧客と連絡を取ることを禁止するよう、永久的に拘束および差し止められるものとする。

この判決は、Appleと大規模開発者、特にApp Storeにおいてその収益の70%を占めるゲームカテゴリーの開発者との間で何年にもわたって繰り広げられてきた争いの結果だ。

2020年8月、Epic Gamesの「Fortnite」アプリが、Appleのアプリ内課金の枠組みを回避できる新しい決済方法を導入したことを理由にAppleから禁止された。その後、Epic GamesはAppleは決済システムの使用を企業に強制することで市場で力を乱用していると主張してAppleを提訴している。また、Epic GamesはGoogleも提訴し、他のアプリ開発者と共同でCoalification for App Fairnessを結成し、米国の州レベルでの法案作成のための個別の取り組みに関与するなど、アプリストア改革のための積極的な働きかけを行ってきている。

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その中には、日本の規制当局との和解により「リーダーアプリ」(購入したコンテンツへのアクセスを提供するアプリ)のポリシーを変更し、ユーザーがサインアップしたりアカウントを管理したりできる自社のウェブサイトを紹介できるようにしたことも含まれている。また、別の和解案には、アプリ内で収集した顧客の連絡先情報を使い、他の支払い方法を顧客に伝えることを許可するというものもある。韓国では、新しい法律によりAppleとGoogleは開発者が独自のサードパーティ製決済システムを使用することを認めざるを得なくなった。法律成立後、Epic Gamesは同市場のApp Storeに「Fortnite」を復活させることを求めたが、Appleはその要求を拒んでいる。

Appleは、App Storeのルールを環境の変化に適応させることを拒否し続けているのは、消費者保護のためだと歴史的に主張してきた。以前の声明では、アプリ内課金の代替手段を認めることは、ユーザーを詐欺のリスクにさらし、プライバシーを損なう可能性があるとしていた。

今回の判決により、Appleは開発者に対して、支払いができる他の場所へのボタンやリンクを含めるという選択肢を認めることで対応せざるを得なくなった。しかし「独占」とみなされなかったという意味では、Appleの勝利だ。Yvonne Gonzalez Rogers(イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース)連邦地裁判事は、AppleとEpic Gamesの両社が関連市場をどのように定義しているかについて同意しておらず、モバイルゲームのデジタル取引において、Appleは独占していないと述べている。

「法廷は、Appleが55%以上というかなりの市場シェアと非常に高い利益率を享受していることを認めているが、これらの要素だけでは反トラスト行為であると示すことはできない。成功は違法ではない」とロジャース氏は述べている。

Appleの広報担当者は「本日、裁判所はApp Storeが独占禁止法に違反していないという、我々がずっと知っていたことを確認した」と述べている。「裁判所が認めたように『成功は違法ではない』のです。Appleは、事業を展開するすべての分野で厳しい競争に直面していますが、お客様や開発者がAppleを選ぶのは、Appleの製品とサービスが世界で最も優れているからだと信じています。私たちは引き続き、App Storeが安全で信頼できる市場であり、繁栄する開発者コミュニティと210万人以上の米国内の雇用を支え、ルールが誰にでも平等に適用されるよう尽力していきます」という。

この度の判決は、開発者コミュニティには長期的な影響を与える可能性がある。というのも、Appleは他の支払い方法を示すアプリに対応するために、規則を調整しなければならないためだ。例えば、アプリにApple独自のアプリ内決済オプションを選択肢として含めることを要求するようになるかもしれない。また「リーダーアプリ」を別のカテゴリーとして認定することは、今回の新しい要件を考慮すると、もはや意味がないと判断することもできる。これらに関する動きや決定は、今後数日のうちに展開されるだろう。

Epic Gamesが勝利できなかったのは、Appleを「独占企業」と呼んでしまったからだ。これは最終的には米国政府の規制につながる可能性のある、はるかに大きな問題だ。また、Appleはサードパーティのアプリストアやサイドロードを許可する必要はないが、App Storeビジネス全体の長期的な見通しに大きな影響を与える可能性がある。消費者にとっては、購入や価格設定のためにアプリを終了しなければならないためApp Storeがより複雑になる可能性がある。消費者が外部の決済システムを利用する場合、すべての購読契約を一括して管理することができなくなり、解約がより困難になる可能性もある。

訴訟の結果、ロジャース氏は、Epic Gamesが「Fortnite」に代替決済システムを導入した際に得た1200万ドル(約13億2000万円)のうち30%をAppleに支払わなければならないという判決を下したが、これは当時、Appleとの法的契約に違反していたためだ。

判決を受けて、Epic GamesのCEOであるTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏は「Fortnite」は「Appleのアプリ内課金との公正な競争」のもと、アプリ内課金を提供できる時と場所でApp Storeに復帰し、その節約分を消費者に還元するとツイートしている。

「また、非常に複雑な訴訟を迅速に対応してくれた裁判所にも感謝しています。私たちは、これからも戦い続けます」。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Brian Heater、Sarah Perez、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Epicがアプリ決済の強制禁止法成立後の韓国で「フォートナイト」復活を要請、アップルは拒否

人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」の開発元Epic Games(エピックゲームズ)は、米国のゲームメーカーである同社が韓国でiOS版Fortniteを再リリースし、EpicとApple(アップル)両方の決済手段を選択肢として提供することを計画しているため、Appleに韓国でのFortnite開発者アカウントの復活を要請したとツイートで発表した。

今回の要請は韓国が8月下旬に、開発者がサードパーティ決済システムを利用できるようにすることをAppleや他のテック大手に義務付ける電気通信事業法改正案を可決したことを受けたものだ。

Fortniteの公式Twitter(ツイッター)アカウントでEpicは「Epicは韓国の新しい法律に準拠して、Epicの決済とAppleの決済の両方を並行して提供し、韓国でiOS版Fortniteを再リリースする予定です」と述べている。

「当社がこれまでも言ってきたように、Epicが他の会社と同じルールでプレイすることに同意するのであれば、EpicのApp Storeへの復帰を歓迎します。Epicは契約違反を認めており、現在のところ、開発者アカウントを復活させる正当な根拠はありません」とAppleは表明して申請を拒否した。

Epicはすべてのアプリに関して適用されるAppleのApp Storeレビューガイドライン順守に同意する必要があるが、一貫してガイドラインを遵守しておらず、今回のAppleへの申請はEpicの立場を変えるものではない、とAppleは声明で付け加えた。

まだ発効していない関連法が仮に韓国国内で法制化されたとしても、Appleに開発者プログラムのアカウント申請を承認する義務は課せられないと同社は指摘している。

2020年8月、EpicがFortniteにAppleのアプリ内課金要件に違反する直接決済システムを導入したため、AppleはFortniteをApp Storeから追放した。以来両社は、App Storeの決済システムを巡って法廷で争ってきた。

Appleは、開発者が外部のウェブサイトにリンクできるようにアプリポリシーを変更しており、今月、2021年9月2日には「リーダー」アプリの開発者が自社サイトへのリンクを設置できるようにしたことで、日本の公正取引委員会と和解している。

Epic Gamesの広報担当者にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。

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画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)

ミュージシャンが自分たちのために作ったiPhone用音楽録音アプリ「Tape It」登場

2021年3月にAppleは、ミュージシャンがすぐに音を録り新曲のアイデアを育てることのできるiPhoneアプリ「Music Memos」の新規ダウンロードを正式に停止した。そして現在、「Tape It」という新しいスタートアップがオーディオの録音を便利にするアプリの空白地帯を埋めようと参入している。このアプリは優れた音質と楽器の自動検出、そしてマーカーやメモ、画像のサポートなどの機能を備えている。

Tape Itのアイデアはミュージシャンである友人同士の2人、Thomas Walther(トーマス・ワルサー)氏とJan Nash(ジャン・ナッシュ)氏から生まれた。

ワルサー氏は自身が共同で創業したオーディオ検出スタートアップのSonalyticが2017年にSpotifyに買収された後、3年半Spotifyに在籍した。もう1人のナッシュ氏はクラシックの教育を受けたオペラ歌手で、ベースを演奏しエンジニアでもある。

この2人に、デザイナーでミュージシャンのChristian Crusius(クリスチャン・クルシウス)氏が加わった。クルシウス氏はAccentureに買収されたデザインコンサルティング会社のFjordに在籍していた。

長年ともにバンド活動をしていた創業者チームが自分たちの欲しいものからTape Itの開発を思いついたとワルサー氏はいう。同氏はSpotifyの新しい部署であるSoundtrap(これも2017年にSpotifyが買収したオンラインミュージックスタートアップ)での勤務を終えた後、音楽制作に関わる仕事にもっと取り組みたいと考えるようになった。Soundtrapは一部の人には役に立ったが、同氏やバンド仲間が求めるようなものではなかった。同氏らが求めていたのは、スマートフォンで音楽を録音できるシンプルなツールだった。ミュージシャンが現在Appleのボイスメモアプリでよくやっているように、そしてダウンロード停止となるまでの短い間はMusic Memosアプリでやっていたように。

画像クレジット:Tape It

ワルター氏は「アマチュアであってもプロのツアーミュージシャンであっても、自分のスマートフォンでアイデアを録音するでしょう。スマートフォンはいつも持ち歩いているからです。カメラとまったく同じです。最高のカメラはいつも持っているカメラです。そして最高のオーディオ録音ツールはいつも持っているツールです」と説明する。

つまり録音をしたいときの最も簡単な方法は、ノートPCを開いて何本もケーブルを接続し、それからスタジオソフトウェアを起動することではない。iPhoneで録音ボタンをタップすることだ。

Tape Itアプリはまさにその通りに使えるが、iPhone標準のボイスメモアプリより優位な機能も備えている。

録音する際に、Tape ItはAIを活用して自動で楽器を検出し、カラフルなアイコンを付けて録音データを見つけやすくする。録音のファイルに自分でマーカーを付けたり、詳細を忘れないようにメモや写真を追加したりすることもできる。これは後で録音を確認する際に便利でしょう、とワルサー氏はいう。

画像クレジット:Tape It

同氏は「かっこいいギターのサウンドが録れたら、アンプのセッティングを写真に撮って追加できます。これはミュージシャンがよくやっていることです。サウンドを再現する最も簡単な方法です」と説明する。

シンプルでありながら斬新な機能としては、文章の段落を区切るかのように長い録音データを複数の行に分割できる。同社はこれを「タイム・パラグラフ」と呼んでいる。デフォルトでは水平方向にスクロールする1つの録音データになっているのが一般的だが、分割することで長いセッションを聴きやすくなると同社は考えている。

画像クレジット:Tape It

スマートな波形とオプションのマーカーや写真のおかげで、録音の目的の箇所に戻りやすい。録音をお気に入りに追加すれば、最高のアイデアやサウンドの一覧をすぐに表示できる。iOSのメディアセンターと統合されているので、いつでも時間があるときに音楽を再生できる。

Tape Itの際立った特徴は「Stereo HD」の音質をサポートしていることだ。iPhone XSやiPhone XRといった新しめのモデルに内蔵されている2つのマイクを利用し、社内で開発したAIテクノロジーやノイズ低減技術などを使って音質を向上している。この機能は年額2200円のサブスクで利用できる。

今後Tape ItはAIなどのテクノロジーを開発してさらに幅広く活用し、音質を向上させる予定だ。コラボレーション機能、録音データの読み込みやプロ用スタジオソフトウェアへの書き出しのサポートも計画している。こうなっていくと最終的にTape Itは、SoundCloudがコンシューマ向けサービスにシフトする前に目指していたのと同じ市場に参入していくことになるだろう。

しかし共有機能を追加する前に、まずはシングルユーザーのワークフローを確立したいとTape Itは考えている。

ワルサー氏は「自分専用の便利なものを作るのが重要であると判断しました。コラボレーション機能があったとしても、使うのが好きでないものは使われなくなるでしょう」という。

Tape Itの3人はストックホルムとベルリンに拠点を置いている。現在はブートストラップの段階だ。

iOS版アプリは無料でダウンロードできる。MacとWindowsで使えるデスクトップ版は後日リリースされる。Android版は計画されていない。

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画像クレジット:Tape It

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

誰でも簡単にゲームを制作・共有できるPlaybyteの新アプリは「ゲームのTikTok」を目指す

Playbyte(プレイバイト)というスタートアップ企業は、ゲームのTikTok(ティックトック)になりたいと考えている。同社が新たに配信開始したiOSアプリは、ユーザーが携帯電話で簡単なゲームを作って公開できるツールを提供しており、縦にスクロールできるフルスクリーンのフィードでは、他の人が作ったゲームをプレイすることができる。TikTokのように、フィードは時間の経過とともにパーソナライズされ、自分の好きな種類のゲームがより多く提供されるようになる。

通常、ゲームの作成には何らかのコーディングが必要だ。だが、Playbyteのゲームは、シンプルなブロックや絵文字、さらにはiPhone内に保存されているカメラロールの画像も使って作成する。このアイデアは、ユーザーにコーディングの基礎を教えるようとする入門教育的なものではなく、ゲームを作ることを自己表現の1つの形にすることを目的としている。

Playbyteのゲーム制作は、ウェブフレームワークをベースにした軽量な2Dゲームエンジンを活用するものであり、低速回線や古いデバイスでもすばやく読み込んでプレイできるゲームを作ることができる。ゲームをプレイした後は、画面右側のボタンで「いいね」やコメントすることができるが、これもTikTokのルック&フィールによく似ている。しばらく使っていると、Playbyteのフィードには次々とおすすめゲームが表示される。これはゲーム内の画像、タグや説明文、その他のエンゲージメント分析を活用して、ユーザーが魅力を感じると思われるゲームを提供するためだ。

配信開始当初より、ユーザーはすでにPlaybyteのツールを使って、シミュレーター、タワーディフェンス(防衛)ゲーム、戦闘ゲーム、Obby(障害物レース)、殺人推理ゲームなど、さまざまなゲームを制作している。

私たちは「Playbyte」というアプリを作りました。携帯電話でゲームを作ったり、他のユーザーが作ったゲームを発見したり、友達と競い合ったりできるアプリです。https://playbyte.io

Playbyte

Playbyteの創業者でCEOであるKyle Russell(カイル・ラッセル)氏は、ドローンメーカーのSkydio(スカイディオ)、ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)、そして(実は)TechCrunchで勤務していた人物だ。同氏によると、Playbyteは単なるゲームアプリではなく、ソーシャルメディアアプリを目指しているという。

「私たちの頭の中には、新しいソーシャルメディアのプラットフォームを構築するために必要なもののモデルがあります」と、同氏はいう。

Twitter(ツイッター)がテキストで、Instagram(インスタグラム)が写真で、TikTokが動画でやったことは、制限とパーソナライズされたフィードを組み合わせることだったと、ラッセル氏は説明する。「典型的な例です。彼らはこれらの体験を非常に短く制限することから始めました。つまり、短くて制限のあるフォーマットと、その制限の中でうまくやるためのツールを組み合わせたのです」。

同様に、Playbyteのゲームにも制限がある。根本的にシンプルであることに加え、ゲームは5つのシーンに制限される。この制約のために「プレイ」ボタンを押したときのイントロ画面、ストーリーの導入部、難易度の高いゲーム部分、そしてストーリーのエンディング部分という形式のゲームが作られるようになった。

Playbyteは、簡単に使えるゲーム制作ツールが用意されているだけでなく、ゲームアセットを他のクリエイターが再利用することもできる。つまり、より専門的な知識を持った人が、独自のロジックや複数のコンポーネントを組み合わせてゲームアセットを作ったら、他のユーザーもそれを利用することができるというわけだ。

「基本的には、それほど野心的でない人でも、生産的で創造的なゲームメーカーの気分が味わえるようにしたいと思っています」とラッセル氏はいう。「そのための鍵は、頭の中にゲームのイメージなどのアイデアを持っている人が、すばやく新しいアセットを検索したり、以前に保存した別のアセットを組み合わせたりできるようにすること。そして、それらをレゴのように組み立てたり付け加えたりするだけで、それ以外の設定を自分でしなくても、イメージしたものの90%を構成することができます」と、ラッセル氏は述べている。

近いうちにiOSでは、フィードを広告で収益化することを計画している。例えば、クリエイターが自分のゲームにスポンサー付きのアセットを実装することができるようになるなどだ。さらに将来的には、ある種の支援モデルを確立したいとも考えている。これには定額制の導入やゲームのNFT(非代替性トークン)などが考えられるが、しかしこれはもっと先の話だ。

今まで見た中で一番かわいいスプライトブロブ

Playbyte

このスタートアップは、もともと2019年にウェブアプリとしてスタートしたが、チームは2020年末にその計画を破棄し、独自のゲームエンジンを搭載したネイティブiOSアプリとしてすべてを書き直した。TestFlight(テストフライト)でユーザー数が上限の1万人を超えたこのアプリは、先週よりApp Storeで配信が始まっている。

現在は、TikTokやRoblox(ロブロックス)、Minecraft(マインクラフト)、Fortnite(フォートナイト)などのコラボレーションゲームに参加している若いティーンエイジャーに支持されている。

「これらの若者は、自分でゲームを作ってみたいと思っていても、コードやその他の高度なツールを学ぶ必要があることに抵抗を感じていたり、それらのツールにアクセスできるコンピューターを自宅に持っていなかったりするのです」と、ラッセル氏は指摘する。

Playbyteは、FirstMark(ファーストマーク)のRick Heitzmann(リック・ハイツマン)氏)、Ludlow Ventures(ラドロー・ベンチャーズ)のJonathon Triest(ジョナサン・トリエスト)氏とBlake Robbins(ブレイク・ロビンス氏)、元TechCrunch編集長でDream Machine(ドリーム・マシン)のAlexia Bonatsos(アレクシア・ボナトソス)氏などの投資家や、Coinbase(コインベース)の共同創業者であるFred Ehrsam(フレッド・エールサム)氏、Oculus(オキュラス)の共同創業者であるNate Mitchell(ネイト・ミッチェル)氏、元TwitterるAshita Achuthan(アシタ・アクサン)氏などのエンジェルから、プレシードおよびシード資金として400万ドル(約4億4000万円)を調達している。

このアプリは、App Storeから無料でダウンロードできる。

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画像クレジット:Playbyte

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

純粋に「写真を楽しむ」だけの写真共有アプリGlassは有料だが公開前から人気、iOS版リリース

Instagram(インスタグラム)はそのフォーカスを買い物、ビデオへと変えてきており、同社の製品責任者Adam Mosseri(アダム・モセリ)氏は6月に「もはやInstagramは単なる写真共有アプリではない」と発言したときはニュースになった。しかしソーシャル写真共有エクスペリエンスを求めているフォトグラファーはどうすればいいのか。

Facebook(フェイスブック)とPinterest(ピンタレスト)でプロダクトデザイナーを務めたTom Watson(トム・ワトソン)氏によると、フォトグラファーはしばらくの間、ソーシャルネットワークに欠いていた。だからこそワトソン氏は、共同創業者のStefan Borsje(ステファン・ボルシュ)氏とともに、フォトグラファーのためのサブスクリプションベースiOSアプリ「Glass(グラス)」を開発した。

「私は常に写真を愛してきました。Flickr(フリッカー)がYahoo(ヤフー)に買収されたのは、私にとっては悲しい出来事でした。私はオタクのような写真コミュニティが大好きなのです」とワトソン氏はTechCrunchに語った。「そして写真コミュニティはモバイル分野に入り込むためにInstagramを手に入れました。しかしFacebookがInstagramを買収したときに私はFacebookにいたのですが、必然的に今日のような事態になるだろうということは目に見えていたはずです」。

広告が入る無料のソーシャルメディアに慣れている人にとって、アプリに月額料金を払うというのは馴染みがないかもしれない。Glassは月4.99ドル(約550円)あるいは年29.99ドル(約3300円)かかるが、14日間の無料トライアルができる。それでも、Glassはお試しする人のApp Store決済情報をすぐに確認するので、トライアル期間が終わる前にGlassを削除することを忘れるかもと懸念する人は利用をためらうかもしれない。しかしこのモデルは意図的だ。ワトソン氏とボルシュ氏は、メンバー5人だけのチームで、ベンチャー資金や広告収入なしにアプリを構築しようとしている。チームはフォトグラファーのコミュニティに応えたいだけなのだ。

「ソーシャルサブスクモデルで何か違うことを始め、ベンチャー資金なしに自力で展開したかったのです」とワトソン氏は話した。「ベンチャー資金を受け入れて、はるか遠くに行くと何が起きるかという例を過去に目にしてきました。大規模展開するためにフォトグラファーコミュニティからどんどん離れていきます」。

画像クレジット:Glass

アプリを開いた瞬間から、Glassが写真そのものに注力しているのがわかる。フォトグラファーをフォローすると、気を散らすものを最小限に抑えるよう投稿が画像のフィードに表示される。写真がスクリーンいっぱいに表示され、写真を右にドラッグすると誰が投稿したのかを確認できる。画像をクリックすると、キャプションやその写真がどのように撮影されたのかについての情報が表示される。コメントを通じてソーシャル活動ができるが、写真に対する「ライク(好き)」はない。これは意図的なデザインだが、一部のユーザーはたとえ後のブラウジングのために画像をブックマークするのに役立つだけだとしても「ライク」ボタンを求めている、とワトソン氏は話す。今後数週間以内に、Glassは写真のカテゴリーなどのディスカバリー機能を立ち上げる。また、ユーザーが機能をリクエストしたり、他のユーザーのアイデアに意思表示したりできるフィードバックフィードバックボードも設ける。もしGlassが提案を追求することを選択すれば「進行中」と表示される。

まだ開始段階にすぎないが、GlassはEXIFデータ提供によってすでに自らをInstagramやVSCOから切り離している。EXIFデータは、Glassが惹きつけたい「写真オタク」にとってキャンディのようなものだ。EXIFデータはフォトグラファーがどのカメラを使ったのか、写真のISO、絞り値、シャッタースピード、焦点距離を示す。こうしたデータとコミュニティ感覚は、Flickrが初期に人々を惹きつけた要素だったが、Yahooが最大1テラバイトのデータを無料ユーザーに提供したとき、コミュニティというより個人的なアーカイブになった。そしてSmugMugが2018年にYahooからFlickrを買収したとき、無料ユーザー向けの写真は最大1000枚のみとし、有料プランにアップグレードしなければ無料ユーザーの写真を削除するかもしれないと警告してサービスを限定的にしようとした。

Glassはまた、アプリでさまざまな画像サイズを扱えるようにすることでフォトグラファーにアピールしている。最大アスペクト比は16:9で、これは標準のカメラ写真のサイズに対応する。しかしInstagramでは、四角の画像モチーフから移行した後ですら、大半のカメラからトリミングなしに縦写真を投稿することはできない。VSCO同様、Glassも各ユーザーのフォロワー数を表示しないが、コメントを見ることはできる。何人のフォロワーを抱えているかを見ることはできなくても、自分のアカウントを誰がフォローしているかはわかる。

「これは安全のために重要だと考えました。もし誰かがあなたをフォローすると、あなたはそのフォロワーが誰なのかを知る必要があり、ブロックできなければなりません」とワトソン氏は話した。「我々は最初からブロックしたり報告したりする機能を構築したかったのです」。

同氏は、これまでのGlassアプリのダウンロード数を共有するのは却下したが「反応に極めて満足している」とのことだ。同アプリは8月にウェイトリストを設け、9月1日からすべてのiOSユーザーへ提供を開始した。ウェイトリストの目的は熱狂を生み出すためではなく、むしろユーザーエクスペリエンスをスムーズなものにし続け、負荷がかかりすぎないようにするためだった。8月にウェイトリストが始まったとき、ワトソン氏はGlassが毎日数百もの招待状を送っているとTechCrunchに語った。

「私は長い間インターネットを利用してきました。そしてかつては心地よくて安全な場所があるという風に感じていました。このサブスクモデルをとることで、写真サービスが再びそういう風に感じられる場所になることを願っています」と話した。

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画像クレジット:Glass

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルが次期iOS15での児童性的虐待コンテンツ検出技術導入を延期

Apple(アップル)は、顧客や政策グループからのフィードバックを考慮して、2021年8月に突然発表した児童性的虐待コンテンツ(CSAM)検出技術の展開計画を延期した。

振り返ってみれば、そのフィードバックは大部分が否定的なものだった。Electronic Frontier Foundation(EFF、電子フロンティア財団)は今週、消費者から2万5000を超える署名を集めたと語っている。またそれに加えて100に迫る政策ならびに権利団体(「アメリカ自由人権協会」も含まれている)も、Appleに技術を展開する計画を放棄するように呼びかけていた。

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米国時間8月3日朝の声明で、AppleはTechCrunchに次のように語った。

「先月私たちは、コミュニケーションツールを使用して子どもを引き込んだり悪用したりするする捕食者たちから子どもたちを保護し、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の拡散を制限することを目的とした機能の計画を発表しました。しかし顧客の皆さま、プライバシー擁護団体、研究者の方々などからのフィードバックに基づいて、これらの非常に重要な子どものための安全機能をリリースする前に、今後数カ月にわたってさらに意見や情報を収集し、機能を改善するために時間をかけることに致しました」。

このAppleの計画しているNeuralHash(ニューラルハッシュ)テクノロジーは、ユーザーのデバイス上の既知のCSAMを、画像を取得しなくても、また画像の内容がわからなくても識別できるように設計されている。iCloudに保存されているユーザーの写真はエンド・ツー・エンドで暗号化されているために、Appleでもデータにアクセスできない、よってNeuralHashは代わりにユーザーのデバイス上で既知のCSAMをスキャンする。このことからAppleは、現在多くのクラウドプロバイダーが行っている一括スキャンよりもプライバシーに配慮していると主張している

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しかし、セキュリティの専門家やプライバシー擁護派は、政府などの豊富な資源を持つ者がシステムを悪用して、罪のない犠牲者を巻き込んだり、権威主義的な国民国家が、好ましくないと判断する任意のデータを検出するためにシステムを操作したりする可能性があると懸念を表明している。

技術が発表されてからわずか数週間で、研究者たちは、NeuralHashを使用して「ハッシュ衝突」を作成し、事実上システムをだまして2つのまったく異なる画像が同じであると思わせることができたと発表している。

iOS 15は、今後数週間以内にリリースされる予定だ。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:sako)

アップルが日本の公正取引委員会と和解、アプリ内の外部リンクを承認

Apple(アップル)は、日本の規制当局と和解し、「リーダー」アプリの開発者がユーザーアカウントを管理するための独自のウェブサイトにリンクできるようにすることを決定した。この変更は2022年初頭に有効になる。

これまで、日本の公正取引委員会はAppleに対して、「リーダー」アプリに対する同社のポリシーを変えるよう迫っていた。リーダーアプリとは、NetflixやSpotify、Audible、Dropboxなどのように、ユーザーが購入したコンテンツやコンテンツのサブスクリプションを提供するアプリで、そのコンテンツはデジタル雑誌や新聞、本、オーディオ、音楽、ビデオなどさまざまだ。

AppleでApp Storeを統轄しているPhill Schiller(フィル・シラー)氏は、「私たちは日本の公正取引委員会をとても尊敬しており、これまでともに成し遂げたことも高く評価しています。今後、『リーダー』アプリの開発者は、ユーザーのために自分のアプリやサービスをセットアップし管理することが、より容易になり、また同時に、ユーザーのプライバシーの保護と信頼の維持が可能になるでしょう」と述べている。

声明によると、この変更が有効になる2022年まで、Appleは「リーダー」アプリのユーザーのためにガイドラインとレビュープロセスのアップデートを続け、ユーザーと開発者の両方にとってより良いマーケットプレイスでありたいという。

Apple Storesは先週、いくつかのアップデートを発表を行い、開発者が顧客にもっと柔軟に接することができるようにし、また地元のジャーナリストをサポートするためのNew Partner Programをローンチしている。

なお、「リーダー」アプリに関するこの変更はグローバルに適用される。

Appleやその他のテクノロジー巨大企業に対しては、世界中の政府や議会がその市場支配をますます厳しく監視しようとしている。オーストラリアの競走・消費者委員会も、AppleとGoogle、WeChatのデジタル決済システムに対する規制を検討しており、また韓国ではAppleとGoogleがアプリ内での購入に独自の決済システムを課すことを制限する最初の国となった

Appleの登録開発者は3000万人を超えている。

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画像クレジット:Kiichiro Sato/AP

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(文:Kate Park、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フェイスブックがスポーツやリアリティ番組の結果を予想するファンタジーゲーム市場に参入

Facebook(フェイスブック)が、ファンタジースポーツなどのファンタジーゲーム市場に参入する。同社は米国時間9月1日朝、米国およびカナダにおいて、iOSおよびAndroid用のFacebookアプリで「Facebook Fantasy Games(フェイスブック・ファンタジーゲーム)」を開始したことを発表した。ゲームの中には、すでに市場に出回っている従来のファンタジースポーツゲームを「よりシンプルにした」と説明されているものや、「Survivor(サバイバー)」や「The Bachelorette(バチェロレッテ)」などの人気テレビシリーズに関連した予想をすることができるものもある。

最初にリリースされるゲームは、Whistle Sportsとの提携による「Pick & Play Sports」で、ファンは、大試合の勝敗やトップ選手の獲得ポイントなど、試合中に展開されるイベントを正しく予想するとポイントを獲得できる。また、プレイヤーは数日間にわたって連続して正しい予想をすることで、ボーナスポイントを獲得することもできる。このゲームは本日提供開始される。

画像クレジット:Facebook

今後数カ月の間に、CBSの人気テレビ番組に登場する参加者たち(サバイバー)を選んで自分のファンタジーチームに参加させる「Fantasy Survivor」や、独身女性のハートを争う求婚者たちの中から男性グループを選び、彼らの行動や番組中に起こった出来事に応じてポイントを獲得する「Fantasy “The Bachelorette”」など、スポーツやテレビ、ポップカルチャーに関連したゲームが続々リリースされていく予定だ。その他にも、最も多くのホームランを打つと思われる野球チームを選ぶ「MLB Home Run Picks」や、その日に勝利するサッカーチームをファンが予想する「LaLiga Winning Streak」など、スポーツに特化したゲームを予定している。

トッププレイヤーがリーダーボードに表示されるだけでなく、これらのゲームは、友達と一緒にプレイしたい人のためのソーシャル機能も備えている。

画像クレジット:Facebook

プレイヤーは、友人と一緒に自分たちのファンタジーリーグを作り、公開または非公開でファン同士の対戦を楽しむことができる。リーグのメンバーはお互いのスコアを比較でき、ピックやリアクション、コメントを共有できる場所が用意されている。このリーグエリアは、メンバーのみが投稿できる専用の投稿作成ボックスやフィードが用意されており、Facebookのプライベートグループに似ている。しかし、このページは「プレイ」や「リーダーボード」を見るための特別ボタンなど、リーググループをサポートする機能を含めて設計されている。

ファンタジーゲームの追加は、FacebookがソーシャルでTikTok(ティックトック)との厳しい競争にさらされている今、ユーザーが同社のアプリに費やす時間を増やすのに役立つかもしれない。App Annieによると、TikTokのユーザー1人当たりの月間平均利用時間は、2020年に他のトップソーシャルアプリよりも速く成長しており、米国では70%もの伸びを示し、Facebookを上回っている。

Facebookはこれまでにもライブイベントのセカンドスクリーン向けコンパニオンアプリというアイデアを検討してきたが、ファンタジースポーツやゲームとは異なる方法だった。Facebookの研究開発部門がテストしたVenueは、著名人がアプリ内でホストを務めるライブイベントにファンがコメントするというものだった。

同社は他にも、デスクトップウェブやAndroid上のクラウドゲーミングサービスストリーマー向けの「Games」タブ、VR企業であるOculus(オキュラス)などを通じ、ゲーム分野でいくつかの投資を行っている。

新しいリーグゲームは、モバイルアプリのブックマークメニューや、ニュースフィードの通知から利用できる。

関連記事:Facebookもクラウドゲームへ参入、Appleと同社の新たな確執が生まれる
画像クレジット:Facebook

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが「デジタル免許証」をサポートする最初の2州を確保するも、プライバシーに関する疑問は残る

人々のお財布をデジタル化するというApple(アップル)の計画は、徐々に形になってきている。最初は飛行機の搭乗券や会場のチケットだったものが、後にクレジットカード地下鉄の乗車券学生証などに広がった。同社が次にデジタル化することを目指しているのは運転免許証や州発行の身分証明書で、年内に予定されているiOS 15のアップデートでサポートする予定だ。

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しかし、そのためには州政府の協力が必要だ。というのも、米国で運転免許証やその他の身分証明書を発行しているのは州政府であり、州ごとに身分証明書の発行方法は異なるからだ。Appleは米国時間9月1日、デジタル運転免許証や州発行の身分証明書を導入するために、これまでにアリゾナ州とジョージア州の2つの州との提携を確保したと発表した。

コネチカット州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州がこれに続く見込みだが、展開のスケジュールは明かされていない。

Appleは2021年6月に、デジタル免許証とデジタルIDのサポートを開始すると発表した。また、米国内を飛行機で移動する際に必要なのは州発行のIDのみであることから、運輸保安局(TSA)はいくつかの空港でiPhoneからのデジタル免許証の受付を開始する最初の機関となる、とも述べた。TSAのチェックポイントでは、デジタルウォレットをIDリーダーにタップして提示することができるようになる。Appleによれば、この機能は安全で、携帯電話を係員に渡したりロックを解除する必要はないという。

デジタル免許証とIDのデータはiPhoneに保存されるが、運転免許証は参加州による照合が必要だ。何百万人ものドライバーや旅行者をサポートしつつ、偽IDの混入を防ぐためには、それが大規模かつ迅速に行われなければならない。

免許証や身分証明書のデジタル化の目的は、特定の問題を解決することではなく、利便性だ。しかし、この動きはプライバシー専門家からは信頼を得られていない。彼らは、Appleがこの技術をどのように構築し、それにより最終的に何を得るのかについて、透明性に欠けていると嘆いている。

Appleは、デジタルID技術がどのように機能するのか、また、iPhoneにデジタル免許証を登録するプロセスの一環として州政府がどのようなデータを取得するのかについて、まだ多くを語っていない。また、同社は自撮り写真を撮影してユーザーを認証するという、未発表の新しいセキュリティ認証機能にも取り組んでいるが、これは他人が勝手に免許証を使用するのを防ぐためらしい。これらのシステムに本質的な問題や欠陥があるというわけではないが、Appleが今後答えるべき、プライバシーに関する疑問が多くある。

しかし、米国内のデジタル免許証やIDの断片的な状況は、Appleの参入をもってしても、一夜にして見通しが良くなるということはないだろう。MuckRockによる最近の公文書開示請求では、Appleは2019年の時点で、カリフォルニア州やイリノイ州を含むいくつかの州とiPhoneにデジタル免許証やIDを導入することについて接触していたことがわかったが、現在はどちらの州もAppleから発表されていない。

ウィスコンシン州サウスカロライナ州ロードアイランド州は、WWDCで発表されたまさにその日にAppleのデジタル免許証計画を知ったため、導入はさらに遅れると思われる。

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画像クレジット:Apple / supplied

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato

iPhoneのセキュリティ対策もすり抜けるスパイウェア「Pegasus」のNSOによる新たなゼロクリック攻撃

2021年初め、バーレーンの人権活動家のiPhoneが、国家に販売されている強力なスパイウェアによってハッキングされ、Apple(アップル)が不正アクセス対策のために設計した新セキュリティ保護機能が破られたとCitizen Lab(シチズン・ラボ)の研究者らが発表した。

関連記事:自分のスマホがNSOのPegasusスパイウェアにやられたか知りたい人はこのツールを使おう

匿名希望の同活動家は、湾岸諸国の人権を促進する非営利団体として受賞歴のあるBahrain Center for Human Rights(バーレーン人権センター)に所属しており、現在もバーレーンを拠点としている。同センターは2004年に当時の首相を批判したディレクターが逮捕された後、バーレーン王国から禁止令が出されたものの、現在も活動を継続している。

トロント大学のインターネット監視機関であるCitizen Labは、同活動家のiPhone 12 Proを分析。ユーザーの操作を一切必要としない、いわゆる「ゼロクリック攻撃」を用いて2月からハッキングされていたという証拠を発見した。ゼロクリック攻撃は、AppleのiMessageに存在する未知のセキュリティ脆弱性を利用したもので、これがイスラエルのNSO Groupが開発したスパイウェア「Pegasus」を同活動家のiPhoneに送り込むために利用されたとみられている。

Citizen Labの研究者によると、攻撃者は当時最新のiPhoneソフトウェアであるiOS 14.4とAppleがその後5月にリリースしたiOS 14.6を悪用してゼロクリック攻撃を成功させているため、今回のハッキングはなおさら重要な意味を持つという。今回のハッキングでは、iOS 14のすべてのバージョンに組み込まれ、iMessageで送信された悪意のあるデータをフィルタリングすることでこの種のデバイスのハッキングを防ぐことを目的とする新しいソフトウェアセキュリティ機能(BlastDoorと呼ばれる)が回避されているのだ。

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BlastDoorを回避できることから、研究者らはこの最新のエクスプロイトを「ForcedEntry」と呼んでいる。

Citizen LabのBill Marczak(ビル・マーザック)氏がTechCrunchに話してくれたところによると、最新のiPhoneをターゲットにして悪用しようとする試みが起きているという事実を研究者らはAppleに伝えてあるという。TechCrunchの取材に対してAppleは、NSOが悪用している脆弱性を発見して修正したかどうかについて明確に言及していない。

Appleのセキュリティ・エンジニアリング・アーキテクチャ部門の責任者であるIvan Krstic(イヴァン・クルスティッチ)氏は、米国時間8月24日に再度発表された定型的なステートメントの中で次のように述べている。「Appleはジャーナリストや人権活動家、その他の世界をより良い場所にしようとしている人々に対するサイバー攻撃を強く非難します【略】今回のような攻撃は、開発に莫大な費用がかかる非常に高度なもので、有効性が短いことが多く、また特定の個人を標的にしています。そのため圧倒的多数のユーザーにとってこれは脅威ではないといえますが、私たちはすべてのお客様を守るためにたゆまぬ努力を続けており、お客様のデバイスやデータを守るための新しいセキュリティ機能を常に追加して参ります」。

Appleの広報担当者は、iMessageの安全性を確保するため、同社はBlastDoor以外の対策にも取り組んでおり、2021年9月以降にリリースされる予定のiOS 15では防御をさらに強化していると伝えている。

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2020年6月から2021年2月の間にバーレーンの人権活動家をはじめとする8名のバーレーン人活動家が標的にされた背景には、バーレーン政府が存在する可能性が高いとCitizen Labは話している。

バーレーンは、サウジアラビア、ルワンダ、アラブ首長国連邦、メキシコなどと並び、Pegasusの政府顧客として知られている権威主義国家の1つである。ただし、NSOは機密保持契約を理由に、数十社にのぼる顧客名の公開を繰り返し拒否し続けている。

対象となったバーレーン人のうち5名の電話番号が、スパイウェアPegasusの監視対象となりうるとしたPegasus Project の5万件の電話番号リストに掲載されていた。つまり政府顧客は対象者のデバイスにほぼ完全にアクセスでき、個人データ、写真、メッセージ、位置情報などを取得できるということである。

これらの電話番号のうちの1つは、バーレーン人権センターの別のメンバーのもので、Citizen Labによると、同センターはForcedEntryよりも前から存在する、Kismetと呼ばれる別のゼロクリック・エクスプロイトの標的に数カ月前からなっていたという。Citizen Labによると、BlastDoorが導入されて以来KismetはiOS 14以降では動作しなくなっているものの、iPhoneの古いバージョンを使用しているデバイスにはまだリスクがあるとのことだ。

現在ロンドンに亡命している他の2人のバーレーン人も、iPhoneをハッキングされている。

以前、バーレーン政府に販売されたスパイウェア「FinFisher」の標的となったフォトジャーナリストのMoosa Abd-Ali(ムーサ・アブドアリ)氏は、ロンドン在住中にiPhoneをハッキングされている。Citizen Labは、バーレーン政府のスパイはバーレーン国内と隣国のカタールでしか確認されていないとし、Pegasusにアクセスできる別の外国政府がハッキングを行ったのではないかと伝えている。最近の報告では、バーレーンの友好同盟国であるアラブ首長国連邦が、英国内の電話番号を選択している「主要な政府」であることが判明している。アブドアリ氏の電話番号もまた、5万件の電話番号リストに含まれていた。

バーレーン人活動家であるYusuf Al-Jamri(ユスフ・アルジャミリ)氏も2019年9月より前に、バーレーン政府によるものと思われるiPhoneのハッキングを受けているが、同氏のiPhoneがバーレーンにいるときにハッキングされたのか、ロンドンにいるときにハッキングされたのかはわかっていない。アルジャミリ氏は2017年に英国への亡命が認められている。

人権侵害、インターネット検閲、広範な抑圧が長年にわたって行われてきたにもかかわらず、この7名のバーレーン人は同王国で活動を続けている。国境なき記者団は、バーレーンの人権問題を、イラン、中国、北朝鮮に次ぐ世界で最も制限の厳しい国の1つとして位置づけている。米国務省が2020年に発表したバーレーンの人権に関する報告書では、同国がかなりの違反や乱用を行なっており、同政府が「コンピュータープログラムを使って国内外の政治活動家や反対派のメンバーを監視している」と指摘している。

NSO Groupに問い合わせたところ、彼らは具体的な質問に答えることはなく、またバーレーン政府が顧客であるかどうかについても言及することはなかった。NSOの広報担当者とされる人物が外部の広報会社であるMercury(マーキュリー)を通じて発表した声明の中で、同社はCitizen Labの調査結果を見ていないとし「システムの悪用に関連する信頼できる情報」を受け取った場合には調査を行うと述べている。

NSOは最近、人権侵害を理由に5つの政府顧客のPegasusへのアクセスを遮断したと主張している

バーレーン政府の広報担当者であるZainab Al-Nasheet(ザイナブ・アルナシート)氏は、TechCrunchに対して「これらの主張は、根拠のない主張と見当違いの結論に基づいています。バーレーン政府は個人の権利と自由を守ることを約束します」と伝えている。

バーレーンで逮捕され、拷問を受けたというアブドアリ氏。英国に来ればこれで安全だと思っていたが、スパイウェアの被害者の多くがそうであるのと同様に、同氏も未だデジタル監視だけでなく物理的な攻撃にも見舞われているという。

「英国政府は私を守るどころか、イスラエル、バーレーン、アラブ首長国連邦という3つの同盟国が共謀して私や他の数十人の活動家のプライバシーを侵害している間、ただ沈黙を貫いているのです」と同氏はいう。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

江戸時代のくずし字をAIにより文字認識し現代の書体に変換(翻刻)するアプリ「みを」をCODHが無料公開

江戸時代のくずし字をAIにより文字認識し現代の書体に変換(翻刻)するアプリ「みを」をCODHが無料公開

データサイエンス共同利用基盤施設(ROIS-DS)人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)は8月30日、江戸時代の版本に書かれているくずし字を現代の書体に変換(翻刻)するアプリ「みを」(miwo)を無料公開した(Android版iOS版)。開発者は、カラーヌワット・タリン氏。共同開発者は北本朝展氏とMikel Bober-Irizar氏。共同研究者はAlex Lamb氏、Siyu Han氏。

AIくずし字認識については、CODH開発の「KKuroNetくずし字認識サービス(AI OCR)」および「Kaggleくずし字認識コンペ」1位のtascj氏が開発したくずし字認識モデルを用いている。また両AIモデルの学習には、同センターが開発し国文学研究資料館が公開している「日本古典籍くずし字データセット」を利用。Flutterを活用したクロスプラットフォーム開発により、Android・iOS対応アプリを作成した。

みをでは、カメラでくずし字を撮影し、画面下中央の「認識ボタン」をタップすると、ほぼ瞬時にして画像の個々のくずし字の上に、対応する現代の書体が緑色で示される。画面下のスライダーを動かすと、翻刻されたレイヤーを部分的に隠せるので、原文との比較がしやすくなる。まだ完ぺきではないとCODHも言っているように、実際に使ってみると、たまに文字が抜けたり違っていたりもするが、まったくくずし字が読めない人間にすれば、かなりの助けになる。

原文または翻刻された文字をタップすると両方の対応する文字にマーカーが付く。また画面右上の四角形のアイコンをタップすると、認識したすべての文字が四角形で囲まれる。四角形は色分けされ、どの文字がどれに対応しているのかがわかるようになる。

またCODHのくずし字データセットと連携し、認識結果に疑問を抱いた際には、くずし字の用例を確認できる。

江戸時代のくずし字をAIにより文字認識し現代の書体に変換(翻刻)するアプリ「みを」をCODHが無料公開

CODHによれば、くずし字が読める人は、日本の人口のわずか0.01%程度(数千人程度)だという。歴史的資料は大量にあるものの、くずし字を読める人が少ないために翻刻には大変な時間がかかるのが現状だ。そこで、AIを使った翻刻システムを開発しようと考えたとのこと。アプリ名の「みを」は、「源氏物語」の第14帖「みをつくし」に由来する。航路を示す標識「澪標」を意味するが、「人々の水先案内となるように、「みを」アプリがくずし字資料の海を旅する案内となることを目指しています」とCODHは話している。

テスラのiPhone用アプリが久々の大規模アップデート、機能やデザイン面に多くの改良

Tesla(テスラ)が、iOS向けスマートフォン用アプリのメジャーアップデートを配信開始した。これによって新たな操作が可能になった他、管理機能の改善や、クールなビジュアル面の更新などが行われている。また、このバージョン4.0では、iPhoneのホーム画面に表示するウィジェットのサイズを2種類から選択できるようになった。「Tesla Software Updates(テスラ・ソフトウェア・アップデート)」の説明によると、どちらを選んでも、車名、バッテリー残量、位置情報(または充電施設情報)、ロック状態、車両の画像、情報の最終更新時刻という同じ情報が表示されるようだ。テスラは以前「Today」という機能拡張をiOS向けに提供していたが、今回新たに導入されたウィジェットほど総合的な機能はなかった。

操作面では、車両の起動を待たずに、アプリを開いたらすぐにコマンドを送信できるようになった。また、スマートフォンがクルマのキーになる「Phone Key(フォンキー)」の機能も拡張され、基本的に複数のテスラ車のロック解除に対応した。

ビジュアル面の更新ですぐに気づくのは、車両の3Dレンダリングが新しくなったことだ。充電時の状態を示す画面や、車両各部のコントロールパネル、空調設定の表示にも、新しいアニメーションが追加されている。デザイン的な改善としては「充電」セクションが廃止され、車両が充電プラグにつながれている時に、その情報を表示するようになった。また、アプリ内でスーパーチャージャーの充電履歴を確認できるようにもなっている。速度制限、車両を駐車場の係員に預ける際に制限を加える「バレーモード」、周辺の不審な行為を監視する「セントリーモード」などの設定は、新たに設けられた「セキュリティ」というカテゴリーに移されており、そこではBluetooth、フォンキー、位置情報サービスの使い方のヒントも見ることができる。

要するに今回のアップデートは、テスラのiOSアプリでは久しぶりに大がかりなものとなっている。最近のテスラは、7月にVirtual Power Plant(バーチャルパワープラント)を導入した以外では、主にバグフィックスや改善に注力してきた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Saqib Shahは、Engadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット:Tesla

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(文:Saqib Shah、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ツイッターが有料の「チケット制スペース」展開をiOSで開始

Twitter(ツイッター)は米国時間8月26日、同社のライブオーディオ機能「スペース」の一部のホストが「チケット制スペース」へのアクセスを販売できるようになったことを発表した。チケット制スペースは、18歳以上で、過去30日間に3つのスペースをホストし、1000人以上のフォロワーを持つユーザーを対象に、6月に募集を開始している。

Twitterの担当者はTechCrunchに対し「すでにチケット制スペースのためにスペースをホストしている人たちと緊密に連携していきます」と述べている。Twitterは、これまでに何人のユーザーに本機能を提供したか、またいつユーザーが一般的に利用できるようになるかについては明らかにしなかった。現在のところ、iOSユーザーは誰でも、本機能にアクセスできるユーザーが主催するスペースのチケットを購入できる。

Twitterは以前、チケット制スペースから得られるクリエイターの収益の3%を受け取ると発表していた。しかし、この機能は現在iOSでしか利用できないため、Twitterは30%のAppleのアプリ内課金の対象となるため、クリエイターにはチケット販売の67%しか還元されないことになる。ただし、チケット制スペースとSuper Followsを含むクリエイターのTwitterでの生涯収益の合計が5万ドル(約550万円)を超えた場合、同社は3%の手数料を20%に引き上げる。

チケット制スペースにより、Twitterはライブオーディオの競合他社と一線を画すことになる。ClubhouseやInstagramでは、リスナーがスピーカーにチップを渡したり、ライブオーディオスペースでバッジを授与したりすることができるが、これらのアプリはチケットの事前販売はできない。

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画像クレジット:Twitter

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Katsuyuki Yasui)