AWSのGreengrassはLambdaをIoTデバイスに持ち込む…ローカルなデプロイをサポート

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Amazonが今日、AWS Greengrassと名付けた新しいサービスをローンチした。それは、IoTデバイスに組み込むことによってその計算能力をアップし、よりスマートにする、というものだ。

AWSのCEO Andy JassyがAmazonのデベロッパーカンファレンスre:Inventのキーノートで述べていたように、企業が自分たちのサーバーをますますクラウドへ移行していくに伴い、オンプレミスのハードウェアの大多数はIoTデバイスになる。しかし通常は、これらのIoTデバイスは、それ自身ではCPUでもメモリサイズでも比較的非力なデバイスに終始するだろう。もちろん、だからこそ、それらのデバイスはクラウドに依存するのだ。しかしそれでも、コンピューティングをまさにそのデバイスの上で(ローカルに)やりたい場合もあるし、ときには、ネット接続がダウンすることもある。

Jassyは語る: “これらのデバイスがクラウドに頼って能力を補うのは容易だが、ときには、クラウドへ、クラウドから、という往復の旅をしたくないこともある。これまで、AWSのIoT提供物やデバイス管理サービスを使ってこられた顧客から何度も何度も聞かされるのは、これらのデバイス自身が、AWS上にあるときと同じような柔軟性とプログラムモデルをもって、コンピューティングをやれてほしい、ということだ”。つまり、何かの事情でクラウドにつながってなくても、同じ能力を持ってほしい、という要望だ。

GreengrassはAWS IoTとAWS Lambda(Amazonの“サーバーレス”コンピュートサービス)をベースに構築されている。デベロッパーがPythonでLambdaのコードを書くと、それをIoTデバイス上で即、動かせる。Greengrass Coreというものが、これらのLambdaファンクションをローカルに動かすが、AWSのクラウドも使えるし、ITのアドミンがデバイスとその上で走るコードを管理できる。

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AWSの発表声明は、こう説明している: “小さなデバイスのための組み込みシステムを開発している場合でも、今では現代的でクラウド対応の開発ツールとワークフローを利用できる。コードをクラウド上で書き、テストして、それをローカルにデプロイできる”。

以上をすべてやるには、Amazonはパートナーを必要とする、もちろん。自分でエンタープライズ向けIoTデバイスを作るわけではないのだから。今パートナーとしては、Intel、Qualcomm、Canonical、そしてAmazon自身のAnnapurna Labsがいる。デバイスは128MB以上のメモリと、1GHz以上のx86またはARMのCPUを必要とする。

このサービスは今はプレビューだが、互換デバイスをどこで手に入れるか、という問題がある。一般供用開始後は、三つのデバイス1年間にかぎり無料だ。その後は、Greengrass Core一つにつき(1デバイスあたり)月額0.16ドルで、デバイスの最大数は10000までだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日本のSoracomがSIMカードとサービスを世界にローンチ―IoTサービスの展開が簡単になる

One of Soracom's case studies is Farmnote, "a solution that involves attaching a sensor to heads of cattle and polling data on their activity."

Soracomnのケーススタディーの一つ、FarmnoteはIoTセンサーを家畜の頭部に取り付けて活動データを収集する。

来るべきIoT(Internet of Things)時代の課題の一つは、少なくともアメリカでの困難はモバイルデータの量が少なく、収集コストも高くつきがちな点だ。Twilioは今年に入って、これを改良していくと発表している。一方、日本のスタートアップ、SoracomはIoTの採用を簡単にするすべての産業分野で利用できるソリューションをリリースした。

Soracomの課金体系〔 英語版日本語版〕はやや複雑だが、帯域幅を最小に、アプリケーションの効率を最大にすべく最適化されたいくつかのプランが用意されている。同社のSIMカードは1枚5ドル、プラス1.8ドル/月(正確には0.06ドル/日だ)の利用料金となっている。注文ロットは1枚から1000枚だ。またSoracomhがIoTアプリ向けプランも数多く提供している。

SIMカードはグローバルでの使用を前提としているため、地域によって料金はメガバイトあたり0.08ドルから2.0ドルと幅がある。アメリカ、ヨーロッパ、中国の大部分の地域は最安区分だ。

Soracom's global data SIM cards are perfect for roaming Internet of Things applications.

Soracomのグローバル・データSIMカードはIoTアプリのろーミングに最適。

「アメリカでセキュリティーを確保しながらスケーラブルなIoTサービスを実施したい場合、われわれのクラウド・ファーストというアプローチはエンタープライズ、スタートアップのどちらにも適切な体験を提供できする」と
SoracomのCEO、共同ファウンダーの玉川憲氏は言う。

同社がローンチしたプロダクトにはSoracom Air(スタートアップ、エンタープライズ双方のIoTが対象)、Soracom Beam(コンピューティング処理をクラウドに移すことによってIoTデバイスの電力消費を押さえるサービス)、Soracom
Canal(ネットに接続されたデバイスとAWSプライベート・クラウド・サービスの間を接続しセキュリティの高いコミュニケーションを提供するVPNサービス)などがある。

訂正 – この記事の最初のバージョンではSIMカードの価格をもっと高く書いていた。 上の記事内の金額は訂正済み。

〔日本版〕SoracomについてはTechCrunch Japanでこの7月に詳しく紹介している

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Vivaldiブラウザーがv.1.5にアップデート、IoTとの統合を目指してまずスマート電球の色とWebを同期

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言い過ぎかもしれないが、いまどき、一般大衆に新しいブラウザーの登場に気づいてもらうのは、おそらくすごく難しい。今ではインターネットユーザーの多くが、自分のやり方というものを持っている。ほかに良いものがいろいろあっても、自分好みのやり方にはまっている人たちにとっては、いまさら別のものに変えるのはしんどい。

昨年、元OperaのCEOだった人が立ち上げたVivaldiは、今あるブラウザーよりもっと強力なコントロールとカスタム化ができるブラウザーを求めているパワーユーザーが、ターゲットだ。たしかに、この生まれたての赤ちゃんのようなブラウザーには、楽しい技(わざ)がいろいろある。訪ねたサイトに関するノート(注記)を書いて保存できること、検索欄をカスタマイズできること、タブの閲覧をいろいろコントロールできること、などなど。

しかし、何がどうであれ、これまで無関心だった一般大衆ユーザーにとって気になるのは、今度の新しい機能ではないだろうか、どこかの店内で、横目でちらっと見ただけも。そう、バージョン1.5のVivaldiは、ホームオートメーションとの連携を望んでいる。Philips Hueの明かりを、ブラウザーと同期できるのだ。

今回新たにPhilips Hue Theme Integration機能(Philips Hueのテーマを統合)により、Philipsのスマートライトの色とユーザーが訪れたサイトの色を同じにする。しかもこれは、同社が今後導入する機能の実験でもあるらしい。現時点では、ちょっと風変わりな機能に過ぎないようだが、今後はもっと有意義な機能に変身するらしい。たぶん、ね。

上述の、元Opera CEO、Jon von Tetzchnerはこう言ってる:

これはまだ第一歩にすぎないが、たとえばメールやWebの通知が明かりの変化で来ることを想像してみてほしい。Vivaldiはあらゆるもののカスタム化と柔軟性(自由性)を目指す。Philips HueのようなIoTデバイスの統合で、Vivaldiがあなたとあなたの毎日の生活に適応していけるのだ。

そう、まさに、想像、イマジンです。ボスが近くにやってきたら、ストロボやサイレンで通知するように、できるのかな?

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日本のDendamaが「けん玉」をIoT化、ネット上で対戦プレーができる、技(わざ)もアプリが教えてくれる

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日本の伝統的なゲームKendama(けん玉、拳玉)では、まさにKen(眼界、視界)が重要な要素だ。それはカップとボールを空中で操(あやつ)る玩具で、17世紀頃から今日(こんにち)までずっと変わっていない。でも、変わらないのも今日(きょう)までだ。物のインターネット(Internet of Things, IoT)を指向している企業のDendamaが、Kendamaの21世紀版を作った。

この玩具は最近の15年間で、日本でも世界でも人気が上昇してきた。さまざまな国内/国際競技大会も行われている。たとえば2016年のワールドカップのビデオがこれだ。すごいね!

TechCrunch Tokyoに出場したDendamaのCEO Yoshihiro Ohtaniはこう言う: “この古いゲームのすべての接触面にセンサーを付けたんだ”。「皿」と「けん先」にセンサーがあるだけでなく、加速度計を内蔵して、プレーヤーがやろうとしている技(わざ)とその成功を判断する。

そしてDendamaはワイヤレスでスマートフォンに接続し、アプリがユーザーに新しい技を教える。アプリには、この年代物のゲームをマルチプレーヤーでやる機能もある。技には難度があり、その得点で勝敗が決まる。

I hope that clears things up.

同社のWebサイトにあるこの絵から、何をどうするのかが分かるだろう。

同社は、日本のクラウドファンディングサイトMakuakeで、約11300ドルの資金を集めた。Ohtaniによると、2017年の3月にはKickstarterでクラウドファンディングをやり、生産のための資金を獲得するとともに、製品に対する国際的な関心や嗜好を試したい、という。

数百年の歴史を持つゲームがデジタル化されるとどうなるか、下のビデオでご覧いただこう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

セキュリティカメラがWi-Fiネットワークに接続してから98秒後にマルウェアに感染した

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これは、物のインターネット(Internet of Things, IoT)と呼ばれているものの、お粗末な現状を示す好例だ: Robert Stephensが、Wi-Fiで接続されるセキュリティカメラを彼のネットワークにつないだら、それは、それから98秒後に侵された

経験豊富な技術者であるStephensは、当然、最初からセキュリティ対策を講じていた。ネットワークのそのほかのメンバーとカメラは壁で隔てられ、レート制限によりDDoS攻撃にやられないようにしていた。

彼はそのトラフィックを注意深くモニタし、ほかの人たちもよくするように、デバイスを乗っ取ろうとするやつがいないか、見守った。しかし、セキュリティの専門家ですら予想しなかったと思うが、2分弱でそれは起きた。

[据え付けを終わったカメラは自分のバイナリを動かし、そして今では明白に侵入されている。]
[実は、最初の侵入は据え付けから98秒後に起きている。]

そのカメラはWi-Fiに接続されてから98秒後に、デフォルトのログインとパスワードを知っていたMiraiのようなワームにやられた。そのワーム(の先発エージェント)は、自分の新しい家のスペックを調べ、本隊をデバイス上にダウンロードし、そして、Stephensが事前にロックしていなかったら、ありとあらゆる悪行を働いただろう。

そのカメラは、12ドルのスマートウォッチを売ってる会社の、安物のノーブランド品だ。そういうものは、ファームウェアのアップデート、あるいは単純にパスワードの変更だけで問題が解決するが、やり方を知らない人もいるし、技術の分かる人でも2分でやるのは無理だ。

良質な製品なら、最初から完全に保護され、別のデバイスに接続されて、手作業で正しくセットアップされるまで、すべての入力トラフィックをブロックするはずだ。でもここはジャングル、どんな野獣がいても不思議ではない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

犬泥棒が横行する今の都市、犬用のスマートハウスDog Parkerを利用しよう

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犬は大きな責任だ、と誰もが言うけど、その責任の重さは、実際に飼ってみて初めて分かる。

ERA出身のニューヨークのスタートアップDog Parkerは、犬を飼うことに伴うストレスを、ある程度軽減したい、と考えた。

Dog Parker、‘犬を駐車させる’という名前は、犬を食料品店やコーヒーショップの外に置いておいて、自分はそのお店の中に入る、という意味だ。

犬の窃盗がニューヨークでも大きな問題になっている。だから犬をお店の外につないでおくのは、わずか数分でもとても不安だ。犬を散歩させることと、バーガーを買ったり、朝のコーヒーショップを利用することは、マルチタスクが難しい。

そこで、Dog Parkerだ。

Dog Parkerは犬一頭用のハウスで(上図)、ネットにつながっている。犬のオーナーはDog Parkerの会員になり、近くのベーグル店のDog Parkerをアプリから予約する。するとあなたが日曜の朝、ベーグルをあれこれ選んで買ってるとき、ワンちゃんはParkerの中で安全に休んでいる。

店内でアプリを起動すると、犬の様子がWebカメラで分かる。Parkerのドアの開閉ができるのは、今それを使っているオーナー(Dog Parker会員)だけだ。犬泥棒にやられる心配がない。

Dog Parkerの中には短波長紫外線(UVC)消毒灯があるので、次の人も安心してParkerを使える。そして一日の終わりには巡回のメンテナーが来て、完全な掃除をする。

今同社は、ブルックリン界隈で7箇所5基のDog Parkersを使ってベータテストをやっている。今日(米国時間11/17)は、Dog Parkerの新型機が投入された。その新型Dog Parkerはニューヨークで製造されていて、今週はブルックリン地区に100基設置される。

Dog Parkerの会費は、年額25ドル、プラス、使用時間1分につき20セントだ。

Dog Parkerについて詳しく知りたい人は、同社のWebサイトへ行ってみよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

いろんなDIYプロジェクトを容易にIoT化するR.Pi IoTの接続性シールドファミリー

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世界をグリーンな世界にしていくためには、いろんなものが必要だけど、いちばん重要なのはネットワークとそれへの接続だ。だから、R.Pi IoTのファミリー(製品群)はいかしてる。あの便利なTinyLabを作ったチームが、今度は、ハードウェア・マニアやメイカーたちが、自分のプロジェクトにワイヤレスの接続性を持たせるためのいろんなシールド(GPRS, GPS, XBee, LTEなど…上図)を、揃えたのだ。

Raspberry Piの世界ではアドオンカードのことをシールド(shield(s))と呼ぶけど、R.Pi IoTのIoT用シールドは、19ドルから、LTE/4Gの99ドルまでのお値段だ。これらすべてを扱える統一的なIDE(開発環境)と、共通のユーザーインタフェイスを提供しているから、どれかをRaspberry Piに接続したらすぐに、プログラミングを開始できる。たとえば19ドルのGPRSシールドは、Kindle的なシンプルな接続性を、あなたのプロジェクトに加える。

同社のファウンダーは、Todd LydigとTaha ArvasとCTOのSait Borlakだ。トルコでTinyLabを作ったあと、ニューヨークへ移って、このプロジェクトを始めた。

Arvasはこう説明する: “われわれが設計したRaspberry Pi用IoTシールド・ファミリーは、ほかのLTEシールドに比べて相当安いし、もっと重要なのは、すごく使いやすいことだ。コンピューターとのインタフェイスやサンプルアプリケーション、全プロジェクトのオープンソースコードを最初から提供しているから、まったくの無経験者でもIoTの世界へ入れる。だからとにかく、うちのシールドは超使いやすいと言える。箱から出したらすぐに接続性を実現できるように、ベストを尽くしたんだ”。

もちろん、若干の配線とかプログラミングとか要るけど、これでドローンの部品を作ったり、ロケットや、自転車の盗難防止装置なんか、簡単に作れそうだ。ぼくなら、宇宙からインターネットへ通信できるコーヒーメーカーを、作ってみたいね。そんな夢のようなことも、十分に可能だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Samsungが自動車部品大手のHarmanを80億ドルで買収:コネクテッドカー分野の強化を狙う

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Samsungが自動車部品、オーディオ機器のHarmanを80億ドルで買収すると発表した。Samsungが今後コネクテッドカー(IT化されたクルマ)に注力していくという意志の表れだろう。

Harmanという名前を聞くと、オーディオ機器を浮かべるという読者も多いとは思うが、同社は自動車部品の大手でもある。今回買収は、Samsungの買収案件としては過去最大級のものであり、同社がもつ自動車分野への野望がうかがえる。Harmanの昨年の売上高は70億ドルで、その65%は自動車関連部品からの売上だ。今回の買収により、コネクテッドカー向けのデバイスやオーディオ・システムといったHarmanの製品が、世界中で3000万台とも言われるサムスン製のクルマに搭載されることになる。

Samsungはクルマ向けのエンターテイメントやソフトウェア・システム分野でGoogleやAppleに遅れをとってきた(GoogleにはAndroid Autoが、AppleにはApple CarPlayがある)。そのため、今回の買収はSamsungがライバル企業に追いつくための手段だと言えるだろう。

Samsung Electronicsの副会長兼CEOであるOh-Hyun Kwonは、「テクノロジー、プロダクト、ソリューションという点において、Harmanは当社を完全に補完する存在です。私たちがこれまで注力してきた自動運転車という分野を拡大するためには、今回の買収は自然の流れだったと言えるでしょう」と買収を伝えるプレスリリースの中で話している。

買収金額は1株につき112ドルで、総額は80億ドルとなる。記事執筆時点でのHarmanの株価が87.65ドルだということを考えれば、健全なプレミアムが付与された買収価格だと言える。買収が完了するのは2017年中旬を予定しており、それ以降HarmanはSamsungの子会社となる。しかし、Harmanの運営はこれまで通り現経営陣が行う。HarmanとSamsungの両社によれば、Harmanの会長、プレジデント、CEOを務めるDinesh Paliwalは今後も続投する予定だ。

今回の買収についてPaliwalは、「SamsungはHarmanにとって理想的なパートナーであり、私たちの顧客である自動車メーカーや消費者は、今回の買収によって大きな恩恵を受けることになるでしょう」とコメントしている。

Googleが自動車関連のテクノロジー開発を急速に進め、Appleも電気自動車を開発しているのではないかと報じられるなか(そうではないとも報じられているが)、Samsungが今年2016年に自動車向け事業の基盤構築に動いたことは当然の流れだと言えるかもしれない。

今年の夏、SamsungはWarren BuffettのBerkshire Hathaway Inc.も投資する中国の電気自動車企業、BYDに4億5000万ドルを出資している。また、同社がFiat Chryslerの製造子会社であるMagneti Marelliにも目をつけていると報じられたこともあった。

しかし、今回の買収から受ける恩恵は自動車分野だけに限られたものではないとSamsungは話している。同社はSamsungの電子機器事業とHarmanがもつオーディオ分野の専門知識を組み合わせようとしているのだ。両社ともに消費者向け、ビジネス向けのオーディオ事業を抱えているだけでなく、HarmanはIoTデバイスに関する知識も持ち合わせているからだ。

IoTという言葉は今でもバズワードとなっているが、SamsungはHarmanが抱える8000人のディベロッパーを活用して「消費者、そして企業に次世代のクラウドベースの顧客体験を提供し、デザイン、データ、デバイスを組み合わせたエンドツーエンドの自動車向けサービスを提供する」と話している。

他のSamsungによる買収の中で特出すべきものとしては、AppleのSiriを生み出したメンバーが経営するバーチャル・アシスタントのViv、そしてクラウド・コンピューティングのJoyentなどが挙げられる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

GE Digitalがフィールドサービス支援のServiceMaxを9億1500万ドルで買収

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GE Digitalは本日、クラウドベースのフィールドサービス支援事業を行うServiceMaxを9億1500万ドルで買収したことを発表した。ServiceMaxが2015年に8200万ドルを調達したシリーズFでは、同じGEグループのGE Venturesが出資に加わっていた。

おそらく、読者が思っている以上にこの2つの企業の共通点は多いだろう。GEはPredix Platformと呼ばれるプラットフォームを運営し、IoTデバイスに搭載されたセンサーから受け取った情報を活用して、顧客となる企業が各種のアプリケーションを構築できるというサービスを提供している。GEはこれまでにもIoT業界に大きく力をいれており、MRIや風力タービン、航空機エンジンなどの巨大な機械から得たデータを顧客に提供することで、顧客による機械のメンテナンスに役立てている。

実際、先日私がServiceMaxの共同創業者兼バイスプレジデントであるAnthani Krishnaprasadに取材したとき、彼はIoTデバイスに搭載されたセンサーから得た情報を企業に提供することで、企業がまったく新しいビジネスモデルを構築することができるという未来について話をしていた。その時に彼が話していたServiceMaxのビジョンによれば、病院などの医療機関は今後、MRIなどの医療機器を「購入する」代わりに、稼働時間に基づいて発生する料金を支払うようになるという。

そして、ベンダーが医療機器の稼働状況をモニターし、メンテナンスをするようになる。センサーから得たデータによって、どのパーツが故障寸前なのか、それとも定期的なメンテナンスが必要なのかということを知ることができるのだ。彼はこのサービスを「結果ベースのサービス」と呼んでいる。

「データを分析してビジネスのプロセスを変え、それによって効率的なビジネスとより良い顧客サービスを実現することで、企業は大きな成功を掴むことができるのです」とKrishnaprasadは説明する。

GEがこれまでの単に機械を販売するというビジネスモデルから、SeviceMaxのビジョンに似たビジネスモデルへと転換しつつあるということを考えれば、この2社が手を組んだことは当然の成り行きだと言えるだろう。

「この買収は、Predix Platformにまつわる一連の技術のクオリティを高め、”Industrial Internet”という私たちのビジョンを推進することを目的に実現したものです」と話すのはGE DigitalのCEOを務めるBill Ruhだ。「生産性の向上はIndustrial Internetには欠かせない要素です。そして、デジタル産業戦略を成功させるために重要となるのが、フィールドサービス支援事業のデジタル化なのです」と彼は加える。

2007年に創業のServieMaxはこれまでに2億ドルを調達している。買収金額の9億1500万ドルという数字は、同社の投資家にとっては悪くないリターンだと言えるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

TechCrunch Beijing 2016の優勝者が決定:IoT開発プラットフォームのRuff

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TechCrunch Beijing 2016の勝者に輝いたのは、IoTの開発プラットフォームを展開するRuffだ。同社のプラットフォームを利用すれば、さまざまなデバイスで機能するJavaScriptのコードを簡単に開発することができる。Webデベロッパーがすでに持つ知識や、彼らが学習しやすい開発ツールを利用することで、簡単にIoTの開発ができるプラットフォームを提供するというアイデアだ。

Ruffがステージで発表したプレゼンテーションによれば、同社のプラットフォームはすでに大勢のディベロッパーに利用されており、IoTのハードウェアでよく利用されるセンサー、カメラ、LEDなどのデバイスに対応したライブラリやレポジトリも豊富に用意されているという。

また、同社のプラットフォームではクロスコンパイルをしたり、カーネルの開発をしたりする必要がないため、開発プロセスをシンプルにまとめることができる。IoTアプリケーションに使われるコードの開発をシンプルにすることで、ディペロッパーはコンセプトの現実化や、コードを素早く開発して作動可能な状態まで持っていくことに集中することが可能だとRuffは話している。

第2位に輝いたのは全方位カメラのStaroだ。Staroのカメラには数多くのセンサーが組み込まれているため、画像をキャプチャするために魚眼カメラを利用する必要がない。これにより、消費者向けの全方位カメラがこれまで抱えていた、画像の歪みや変色などといった問題を解決することができる。Staroのカメラはすでに出荷が始まっている。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

IoT専用のネットワークが必要とされる3つの理由

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編集部注:本稿はBeep Networksの共同創業者であるDaniel Conradによって執筆された。彼はGoogleのAndroidとAccessのチームでプロジェクト・マネージャーを務めた経験をもつ。

 

世界中の通信キャリアがまったく新しいIoT向けのセルラーネットワークを構築しつつある。携帯電話でこのネットワークを利用することはできない。このネットワークはまだこの世の中に存在しないIoTデバイスのために構築されたものなのだ。しかも、これに取り組んでいるのは小規模のキャリアたちではない。ComcastSoftbankOrangeSKTKPNSwisscomなどのキャリアが全国規模の新しいIoTネットワークを構築している。VerizonVodafoneは彼らがもつネットワークをアップグレードし、IoTのためだけに周波数スペクトラムを用意している。CiscoSamsung、Nokia、Ericssonなどの企業は、それに必要な設備を販売している。

新しいネットワークが必要とされている理由は、携帯電話用のネットワークがIoTデバイスに必要とされる3つの条件を満たしていないからだ。その条件とは、バッテリー寿命、コスト、そしてネットワークのカバレッジだ。

新しいネットワークを構築することを正当化するためには、この条件のなかの1つをクリアするだけでも十分だ。だが、もしこの3つの条件をすべてクリアすることができるとすれば、それはIoT業界に大きな変革をもたらすことになる。そして、この変革こそ通信キャリアたちが目指しているものなのだ。

その3つの条件をこれから1つずつ見ていくことにしよう。

バッテリー寿命:月単位ではなく、年単位のバッテリー寿命が必要

携帯電話用ネットワークのエネルギー効率は高くない。そして、今後それが改善されることもない。

携帯電話用のネットワークは元々、車載電話向けに開発されたものだった。クルマが時速100キロで走行していても、通話を途切らせることなく基地局間で電波を「手渡し」するという技術は革新的なものであり、その技術によってセルラー方式のネットワークが誕生することとなった。電波を「手渡し」するためには洗練されたアルゴリズムが必要であり、電話とネットワークが継続的に通信をする必要がある。

そのため、携帯電話用のネットワークを利用するデバイスは基地局と1秒間に何度も通信をおこなう必要がある。それがバッテリーの寿命を縮める原因だ。

IoTデバイスのバッテリー寿命を年単位で伸ばすためには、大半の時間は電波を受信しない「スリープモード」にしておく必要がある。それは携帯電話用のネットワークでは不可能だ。電源を入れたり消したりすればよいのでは、と思われるかもしれないが、ネットワークに再接続するまでの数分間はかなりの電力を消費する。飛行機を降りたとき、電波をつなげるために何度も電源を入れたり消したりすれば、私がいま言ったことを実感することができるだろう。

その点において、IoT向けのネットワークでは新しいアプローチが採用されている。

まず第一に、このネットワークには低消費電力の無線通信チップが使われている。データの送受信にかかる消費電力量を極力抑えるために最適化されたチップだ。これにより、携帯電話用のネットワークよりも桁違いに低い消費電力で通信することが可能となる。

次に、このネットワークを利用すれば、デバイスを何時間ものあいだ通信を必要としない「スリープモード」にしておくことができる。ほとんどの時間を省電力モードで過ごし、データを送受信したり、センサーからの情報の取得する間のミリ秒単位の時間だけ起動させるだけでいい。

こうすることによってバッテリーの寿命を何百倍も伸ばすことができるのだ。

数年間も充電が不要なバッテリーは、IoTデバイスにとって非常に大きなメリットとなる。なぜなら、バッテリー寿命を伸ばすことにより、IoTデバイスの導入コストを大幅に抑えることができるからだ。デバイスを電源につなげる必要もなければ、バッテリーを充電する必要もない。長いバッテリー寿命のおかげで、いったんデバイスを設置してしまえば後は放っておくだけでよくなる。何千何万ものデバイスを設置しなければならないとすれば、これは特に大きなメリットだ。

これだけでも新しいネットワークを構築するための理由づけとしては十分だ。

だが、理由はこれだけではない。

コスト:できるだけ安いデバイスが必要

IoTデバイスで携帯電話用のネットワークを利用するのには高いコストがかかる。

第一に、通信キャリアがIoTデバイスに対応するためには大きなコストがかかる。割り当てする周波数を増やすのには何十億ドルもの費用がかかり、周波数はいくらあっても足りることはない。月に1ドル程度の収入にしかならないIoTデバイスのために、月に100ドルのデータ通信料を得ることができる携帯電話を犠牲にすることもできない。IoTデバイスに対応するためにかかる機会コストは高すぎるのだ。

この問題を解決するため、新しいIoTネットワークはアンライセンスバンドを利用しているか、もしくは周波数帯の間に設けられた「ガードバンド」と呼ばれる未使用の周波数帯を利用して構築されている。いずれにせよ、周波数帯の利用には事実上コストがかからない。

また、携帯電話用のネットワークを利用するのはデバイスの開発者側にとっても高いコストがかかる。複雑なLTE受信機を利用するためにはデバイスに複数のアンテナを搭載する必要があり、高価なIPライセンスを取得する必要もある。携帯電話用のネットワークに対応させるためにはデバイス1つあたり数十ドルのコストがかかる一方で、新しいネットワークに対応させるためにかかるコストは1ドルか2ドル程度で済む。

長いバッテリー寿命、低いコスト、広いカバレッジ。これらがすべて1つのパッケージとして実現される。

最後に、キャリアからネットワークの利用に関する認可を受けるのにもコストがかかる。例えば、Verizonからネットワーク使用の認可を受けるためには5万ドルから10万ドルの費用がかかり、そのプロセスには数カ月もの時間がかかる。Verizonのネットワークを利用する他のデバイスへの干渉を防ぐためにも、この認可制度は必要なものだ。彼らが慎重なのも当然なことだろう。

また、新しいIoTネットワークは干渉に強い設計となっている。共有された周波数帯を利用するこのネットワークでは、他の電波から干渉されることが当たり前だからだ。そしてほとんどの場合、Wi-Fiのアクセスポイントのように、エンドユーザーが自分自身のゲートウェイを設定することもできる。それも無料で。

このことは次に説明するテーマにも関わってくる。

カバレッジ:どんな場所でもつながる電波が必要

LTEがつながらない場所は多い。また、IoTデバイスは携帯電話用の電波がつながらない場所に設置されることがほとんどだ:地下室に設置する浸水監視センサー、地下駐車場に設置されるパーキングセンサー、地方のトウモロコシ農場に設置される土壌センサーなどだ。

新しいIoTネットワークでは、このカバレッジの問題を2つの方法で解決しようとしている。

まず第一に、IoTネットワークでは帯域幅ではなく室内でのつながりやすさを最大化するように設計されている。高周波の変調の基本ルールとして、1ビットを表すために沢山のビットを送信することで、通信速度を抑える代わりに電波の受信範囲を広げることができるというものがある。LTEがデータを大量に送受信するスマートフォン向けに最適化されている一方で、新しいIoTネットワークはより少ないデータの送受信向けに最適化されている。例えば、センサーからの情報を読み込んだり、サーモスタットで温度を設定したりというような短いメッセージだ。大抵の場合ビットレートが1Kbps以下という遅い通信速度ではあるものの、新しいネットワークでは同じ電力でも広い受信範囲を実現することができるのだ。

次に、新しいネットワークではWi-Fiのルーターのように独自のゲートウェイを設置することもできる。そのため、通信キャリアの電波が自宅の地下室まで届かないのであれば、その近くに自分でゲートウェイを設置することでIoTデバイスまで電波を届けることができる。自分でネットワークを設置することができることは、このテクノロジーを普及させるうえで重要な要素だ。とりわけ、通信キャリアによるネットワークが普及する前の初期段階ではそれが特に重要となる。

 

これこそが、これからのIoTの姿だ。長いバッテリー寿命、低いコスト、広いカバレッジ。これらがすべて1つのパッケージとして実現される。

IoTという分野に何年もの時間を費やしてきた私にとって、この新しいネットワークは見果てぬ夢のようなものだ。デバイスを設置して後は放っておくだけで、そのデバイスが至るところで働いてくれる世の中になる。

楽しみで仕方がない。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

 

Dyn DNSに対するDDoS攻撃はスクリプトキディによる犯行か

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経営リスクを分析するFlashPointは、先週発生したDynのDNSへのサイバー攻撃に関する予備調査結果を公表した。ロシア政府などに支援されたプロのハッカーによる攻撃ではないかとも噂されていたなかで、彼らが下した結論とは、今回の攻撃はアマチュアのハッカーによるものだった可能が高いというものだった。

先週の金曜日に起きたDynのドメインネームシステムに対するDDoS攻撃は、様々なWebサービスに大きな影響を与える結果となった。PayPal、Twitter、Reddit、GitHub、Amazon、Netflix、Spotify、RuneScapeなどのWebサービスでアクセス障害が発生したのだ。

ロシア政府の関与が噂されたのに加え、ハッカー集団のNew World Hackersをはじめとする様々な組織が、自分たちがこのサイバー攻撃の首謀者であると主張した。おかしなことに、あのWikiLeaksも同組織のサポーターが関与した可能性があるとツイートしている(おそらくジョークだろう)。

FlashPointはこれらの主張について「疑わしい」、「嘘である可能性が高い」とコメントし、その代わりにスクリプトキディ(他人が製作したスクリプトを悪用して興味本位で第三者に被害を与えるハッカー)たちによる犯行だったという説を主張しているのだ。

彼らがこの結果にたどり着く根拠となったのは、今回の調査で新たに分かった証拠の数々だ。今回の攻撃に使われたインフラストラクチャーは、Dynだけでなく有名なビデオゲーム企業にも攻撃を加えていたのだ。

「同社のサービスにはなんら影響がなかったとは言え、ビデオゲーム企業が標的にされたという事実はプロのハクティビスト、政府主導のハッカー、または社会的正義を掲げるコミュニティが関与していたという可能性を低め、オンラインのハッキング・フォーラムに現れるようなアマチュアによる犯行だった可能性を高めています」とFlashPointのAllison Nixon、John Costello、Zach Wikholmは分析資料のなかで語る。

Dyn DNSへの攻撃は、Miraiと呼ばれるマルウェアに感染したデジタルビデオレコーダーとWebカメラによって構成されたボットネットが引き起こしたものだ。このボットネットをコントロールするマルウェアのソースコードは今月初めにGitHubで公開されている。また、Miraiをリリースしたのはhackforums[.]netというハッキング・フォーラムに頻繁に現れるハッカーだったとFlashPointは主張している。

このような状況証拠は、英語で書かれたハッカー・フォーラムの読者と今回のサイバー攻撃とのつながりを示している。また、このhackforums[.]netはビデオゲーム会社を標的にしていることで有名なフォーラムであることをFlashPointは指摘している。

同社は「ある程度の自信をもって」この結論にたどり着いたと話す。

このコミュニティは「booters」や「stressers」と呼ばれる商業用DDoSツールの開発方法及びその使用方法を掲載していることで知られています。ハッカーたちはその「貸しDDoSサービス」とも言える有料サービスをオンラインで提供しており、マルウェアのMiraiやボットネットに関与しているハッカーの1人はこのフォーラムに頻繁に出入りしていることが知られています。「Anna-Senpai」というハンドルネームで活動するハッカーが10月初旬にMiraiのソースコードを公開しており、この人物こそが今月初めに「Krebs on Security 」とホスティングサービスプロバイダーのOVHを攻撃した人物だと考えられています。このフォーラムに頻繁に現れるハッカーたちはこれまでにも同様のサイバー攻撃を仕掛けていたことが知られていますが、それらの攻撃は今回よりもはるかに規模の小さなものでした。

FlashPointはさらに、ターゲットとなった企業が広範囲に及んでいること、そして金銭的な要求がなかったことから、今回の攻撃に金銭的または政治的なモチベーションがあったとは思えないと主張している。つまり、自分の能力を誇示したり何かを破壊することをモチベーションとするハッカーによる犯行だった可能性が高いということだ。そのようなハッカーたちは俗にスクリプトキディと呼ばれている。

セキュリティ企業のF-SecureでCHief Research Officerを務めるMikko Hypponenは、このFlashPointの分析に賛同している。「彼らは正しいと思います」と彼はTechCrunchとのインタビューで語る。「金曜日に起きたサイバー攻撃に、金銭的あるいは政治的なモチベーションがあったとは思いません。あの攻撃にはハッキリとした標的がなく、明確なモチベーションを見つけるのは難しい。なので、愉快犯による犯行だったのでしょう」。

サイバー攻撃に利用されたWebカメラがリコールされる一方で、IoTの安全性に関する問題は企業が単体で解決できる問題ではない。また、高いスキルを持つプロのハッカーでなくても、簡単に入手できるソフトウェアでボットネットをコントロールすれば、社会に大きな影響を与えるようなサイバー攻撃を仕掛けることができるかもしれないのだ。プロのサイバー攻撃の標的はもっとハッキリしており、公衆からの注目を得ることを避けようとしている。彼らのモチベーションは世界が焼け落ちるところを見ることではなく、もっと経済的なものだ。

今年の夏にIoTセキュリティのDojo-Labsを買収したセキュリティ企業のBullGuradは、ユーザーの個人ネットワークに接続されたIoTデバイスがShodanのサーチエンジンに掲載されているかどうかチェックできる無料のIoTスキャナー・ツールを提供している。Shodanのサーチエンジンは外部からアクセス可能なIoTデバイスをリストアップしており、そこに掲載されているデバイスはハッキングの対象になる可能性がある。

同社によれば、これまでに同社のツールによってスキャンされたユニークIPアドレスの数は10万以上にもおよび、そのうち4.6%のデバイスに脆弱性があることを発見したという。世界中に約40億台ものIoTデバイスが存在することから推定すれば、脆弱性のあるIoTデバイスは世界全体で1億8500万台も存在することになるとBullGuardは話す。

「IoTの脆弱性に対する本当の解決策はまだありません」とF-SecureのHypponenは話す。「IoTリスクに対応できる新しいセキュリティが必要ですが、消費者からデバイスの安全性を求める声はありません」。

IoTのセキュリティ強化を求める消費者は少ないものの、F-SecureはF-Secure Senseと呼ばれるセキュリティ製品の開発に取り組んでいる。だが、現状はまだそのツールに対する需要をテストしている段階だとHypponenは話す。彼によれば、IoTデバイスのセキュリティを強化するという動きは消費者からではなく、ネットワークからデータが流出することを恐れる企業から生まれるだろうと考えている。

「この状況に変化が起きるのは、IoTデバイスを標的としたサイバー攻撃ではなく、その背後にあるネットワークを標的とする大規模なサーバー攻撃が起きたときでしょう。人々のホームネットワークがランサムウェアに感染し、休暇中の写真が人質に取られ、しかもその攻撃がIoT洗濯機から侵入してきた時です。すると彼らは”対策するべきかも”ということに気付くのです」と話し、「これは今にも起きつつあることだ」と付け加えた。

「なので、ハッカーの攻撃対象はIoTデバイスではありません。IoTデバイスはベクトルです。彼らはそれをネットワークに侵入するための入口として利用しているのです。そして大半の場合、ネットワークをつなぐ鎖の弱点となるのが、IoTデバイスなのです」。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

バイオメトリック・データのセキュリティを強化するHYPRが300万ドルを調達

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もし自分のアカウントがハッキングされたとしたら、真っ先に頭に浮かぶのはパスワードをリセットすることだろう。セキュリティ設定を強化するかもしれない。そして、そのアカウントやアプリをその後も使い続ける。だが、もしハッカーに指紋や虹彩などのバイオメトリック・データを盗まれたとしたら?指紋や眼球を交換することはできない。

そこで活躍するのがニューヨークを拠点とするHYPR Corpだ。同社が開発するサイバーセキュリティ・システムを利用すればアルファベットと数字が並んだパスワードの代わりに、システムによって保護されたバイオメトリック・データを安全に利用できるようになる。

CEOのGeorge Avetisovによれば、HYPRのシステムではバイオメトリック・データをいくつかの場所に分散して保存し、かつそのデータを暗号化する。これにより、そもそもハッカーがそのデータを解読することは困難なだけでなく、データを盗むためには複数のデータベースを1つずつ攻略していく必要がある。

HYPRでは、ユーザーの指紋や顔の特徴などのバイオメトリック・データはユーザーのモバイル端末に少なくとも一時的に保存される。データはHYPRによって暗号化され、その後はそのバイオメトリック・データを直接利用する必要がなくなる。

銀行アプリで送金手続きを完了するためにユーザーの虹彩データが必要だとしよう。その場合、HYPRは銀行に対してその手続きの間でのみ有効なユーザーの身元証明用のトークンを発行する。そのため、銀行が顧客の虹彩を直接スキャンする必要はない。

「トークン化」と呼ばれるこのプロセスは、マイクロチップを搭載したクレジットカードでも利用されている。これが磁気テープ型よりもマイクロチップ型のクレジットカードの方が安全性が高いとされる理由だ。

HYPRはシードラウンドにて300万ドルを調達したことを発表した。早い段階からHYPRの顧客となった金融分野の企業だけでなく、今後はそれ以外の業界にも進出していく。

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HYPRの共同創業者の2人。CEOのGeorge Avetisovと、CTOのBojan Simic。

 

金融業界だけでなく、自動車業界や家電業界からの需用もあると語るのはCEOのAvetisovだ。

「パンをトーストで焼くためにパスワードを入力する必要があるとしたら、誰もそれを使いたがりません。また、ハッキングされる恐れのあるPINを使って家や車のドアを開けるのは得策ではありません」と彼は話す。「私たちの生活にIoTが浸透していく今、私たちはメーカーと共同して銀行のアプリと同じような安全性をすべてのデバイスに持たせたいと思っています」。

今回のシードラウンドにはRTP VenturesBoldstart VenturesMesh Venturesなどが参加している。

RTP VenturesのManaging DirectorであるKirill Sheynkmanは、かつてPlumtree SoftwareのCEOを務めたこともある人物だ。彼によれば、HYPRは今回調達した資金を利用してチームの強化を図るだけでなく、金融、生命保険、そしてIoT分野の企業との提携を模索していく予定だ。

「今の時代では、マーケティング、セールス、事業開発へのフォーカスを業界横断的に行っていく必要があると思っています」とSheynkmanは語る。

RTP VenturesがHYPRへの出資を決断した理由の1つとして、HYPRのプロダクトが今の時代に求められているものだからだとSheykmanは話す。サイバーセキュリティという分野でバイオメトリック・データが主流になりつつあるなか、HYPRはすでにこの分野で顧客を獲得しているだけでなく、しっかりとしたプロダクトをマーケットに送り出していると彼は主張している。

私たちのオフィスのドアに顔認証システムが導入されるのはまだまだ先だと思うが、iPhoneやGoogle Pixelには指紋認証システムがすでに導入されている。また、無数の銀行アプリにはユーザー認証に音声認識の技術が使われている(声紋認証システムとも言われる)。

Juniper Researchの推測によれば、バイオメトリック認証を利用するアプリのダウンロード数は2019年までに7億7000万回を超えるという。これは昨年の600万回という数字に比べ、約130倍だ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

インターネットを蝕む大規模DDoS攻撃

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編集部注: 本稿はForeScoutのCEOであるMichael DeCesareによって執筆された。

 

金曜日の朝に目が覚めると、私たちの会社で全社的に利用しているシングル・サインオンとクラウドストレージが機能しなくなっていることに気がついた。ドメインホストであるDynに対する分散型サービス妨害(DDos)攻撃が原因だ。

この攻撃はとても大規模だった。SpotifyやNetflixなどの消費者向けサービスだけでなく、HerokuやZendeskなどの企業向けプロバイダーが提供するサービスも機能しなくなっていた。騒動はひとまず一段落したが、こうしたサイバー攻撃はこれからもっと大勢の人々に、そしてこれまでにない程の影響を与える可能性がある。

DoS攻撃とは、ネットワーク上のサービスを機能停止の状態に追い込むことを目的としたサイバー攻撃だ。そのような攻撃が複数のIPアドレスやマシンによって行われることを分散型サービス妨害(DDoS)と呼ぶ。標的となったコンピューターは大量の処理負荷に耐え切れずに機能が停止してしまうのだ。

ここ数週間のあいだ、ハッカーたちはこのDDoS攻撃を大規模に行ってきた。KrebsonSecurity.comへの攻撃から始まった一連の騒動はその深刻さを増していき、何千ものデバイスによってDDoS攻撃が行われるようになった。サイバー攻撃の規模は回を重ねるごとに大きくなっていったのだ。

これはまだ確実ではないが、私が金曜日の朝に経験したサイバー攻撃もこの一連のDDoS攻撃の一部であった可能性が高く、しかもその攻撃に利用されたのはコンピューターやサーバーではなく、IoTデバイスだったのだ。

実際、Dynへの攻撃には多数の監視カメラが利用された可能性が高い。なぜ監視カメラなのか?なぜなら、世界中の家庭や企業で使われている監視カメラの多くは、数社の企業によって開発された同じファームウェア、またはそれによく似たファームウェアが組み込まれているからだ。

Courtesy of Getty Images/Frank Graessel / EyeEm

Courtesy of Getty Images/Frank Graessel / EyeEm

今ではこのファームウェアに深刻な脆弱性が存在することが知られており、その脆弱性を利用することで監視カメラのようなデバイスがDynのような標的に銃口を向けることになる。さらに、そのような監視カメラの多くではデフォルトの認証設定がそのまま使用されており、ハッカーたちにとっては恰好の餌食となる。

なぜこれが重大な問題なのだろうか?今回のサイバー攻撃のように、ビデオカメラを利用すればこれまでとは比較にならないほど簡単に、そして安価に大規模なボットネットを構築することができる。もはや、DDoS攻撃を開始するためにボットネットを調達する必要すらない。数週間前にインターネット上にアップされたプログラムを使えば、ハッカーたちはボットネットを自分たちで構築することができてしまうのだ。

また、IoTデバイスの脆弱性が引き起こす問題はDDoS攻撃だけではない。ハッカーがIoTデバイスを利用すれば、企業のファイアーウォールを攻略することも可能になってしまう。

これが重大な問題だと言われる理由はもう1つある。大方の推測によれば、現存するIoTデバイスでは今回のようなサイバー攻撃から身を守る体制がまったくとれていない。政府や企業がIoTデバイスのセキュリティー強化に取り組んではいるものの、それにはいくつかの課題がある。その中でも特に大きな課題なのが、従来のサイバーセキュリティソフトをIoTデバイスに搭載することができないという問題だ。

結果として、IoTデバイスを保護するセキュリティソフトの数は従来のOSを搭載するコンピューター向けのものと比べても少ない。パッチをあててプログラムを修正できるIoTデバイスもあるが、それができないものもある。パッチをあてることができないデバイスの場合には手動でセキュリティ対策をする必要があるが、通常それが行われることはない。

この問題に対する解決策とはなにか?この問題もサイバーセキュリティに関する問題である以上、それに対する単純な解決策など存在しない。たとえIoTデバイスであっても、サイバーセキュリティに関する基本的な教えを適応する必要がある。つまり、多重防護だ。IoTデバイスにもパッチをあてられるようにするなど、現時点で認識されている課題を解決するだけでは不十分だ。それだけでなく、はたしてそのデバイスは厳重なセキュリティソフトによって守られているのか、そして不穏な動きを常にモニタリングする体制は整っているのかということを常に問い続けていかなければならない。

それぞれのアプローチがもつメリットやデメリットについて議論をすることはできる。しかし、本当に重要なのは、ある1つのアプローチだけを考えて視野を狭めるのではなく、考え得るかぎりのアプローチやセキュリティ方法を検討するということなのだ。

IoTのネットワークを保護するために、わざわざ一から技術を開発し直す必要はない。しかし、IoTデバイスを利用した大規模なDDoS攻撃がインターネットの信頼性とそれがもつ機能を少しずつ傷つけていることは認識しなければならない。経済全体がインターネットに依存している今、ハッカーに対する防衛策について真剣に話し合うべき時が来ている。そのためには、IoTデバイスがハッカーたちの銃弾として利用されることを防ぐ方法をまず考えなければならないのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

シャープがさくらインターネット、ABBALabと手を組んで「モノづくり研修」開催へ

左からABBALabの小笠原治氏、シャープの村上善照氏、さくらインターネットの川畑裕行氏、tsumugの牧田恵里氏、ABBALabの亀井聡彦氏

左からABBALabの小笠原治氏、シャープの村上善照氏、さくらインターネットの川畑裕行氏、tsumugの牧田恵里氏、ABBALabの亀井聡彦氏

シャープ、さくらインターネット、ABBALabの3社は10月12日、IoTベンチャー企業を対象とする合宿形式のモノづくり研修「SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネット」を開催することを明らかにした。第1回の開催は11月の予定で、現在参加企業を募集中だ。

この研修はIoTベンチャー企業の早期かつ確実な事業化を支援するもの。3社それぞれの立場から、モノづくりに必要な知識、ノウハウを提供していく。

シャープからは100年以上に渡ってメーカーとして培ってきた量産設計や品質、信頼性確保などのモノづくりの技術やノウハウを提供。さくらインターネットは通信環境とデータの保存や処理システムを一体型で提供するIoTのプラットフォーム「さくらのIoT Platform β」を元にした、ソフト/サーバー技術およびプラットフォームの知識を提供。そして投資ファンドのABBALabは事業化にあたって必要な資金調達のコツを提供する。10日間のプログラムとなっており、参加費用は1社2人の参加で85万円。

SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットのスケジュール(仮)

SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットのスケジュール(仮)

この研修を通じて、ベンチャー企業のモノづくりに起こりがちな設計ミスや品質不良、納期遅れといった課題に対する基礎知識を身につけることができるとしている。

モノづくりのノウハウをスタートアップにも

今回のプログラムが発表された背景には「新たな経営体制になったことで、生まれ変わっていきたい」というシャープの強い思いがあった。

「シャープが生まれ変わっていくために、まずはスタートアップを支援して小さなビジネスの立ち上げをサポートできれば、必ず社会の役に立つだろうという思いはありました。またスタートアップを支援することで彼らが持つ熱意を社内に取り込み、技術者を刺激できればいいなと思っていました」(シャープの村上善照氏)

その思いに賛同した、ABBALabの小笠原治氏はこう語る。

「意外に思うかもしれませんが、ハードウェアのスタートアップには、基本的にモノづくりの知識がないんです。最近は課題を解決するためにハードウェアのスタートアップを立ち上げる人が増えてきているので尚更です。そういった人たちに、シャープさんが長い年月をかけて蓄積されたノウハウを伝えて、モノづくりの基本的な知識を身につけてもらおう、と。これまで、大手企業のノウハウが外に伝わる機会はなかったので、今回一緒にできて、すごく嬉しいですね」(小笠原氏)

スカラシップ制度も用意

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シャープはこれまでにこういったスタートアップに特化したプログラムを提供してきたことはなく、の技術ノウハウが知れる機会は、滅多にない。プログラムを見てもわかるが、この研修に参加することによって、シャープが培ってきた技術ノウハウを余すことなく知ることができるだろう。

しかし、スタートアップにとって気になるのが参加費用だ。スタートアップ支援プログラムの多くは参加費用が無料だが、この研修には1社2人の参加で85万円の費用がかかる。これについて、小笠原氏は次のように説明する。

「『スタートアップの支援でお金をとるの?』と思われるかもしれませんが、この研修ではシャープさんのブートキャンプに参加したからシャープさんとモノを作らなければいけないといった縛りが発生することは一切ありません。何の紐付きもない支援は難しいと思いますので、きちんとそこは線引きをして、『費用を払ってノウハウを買う』というスタンスにしています。また、プログラム中の成長度合いによって、ABBALabが費用を負担するスカラシップ制度も用意しているので、スタートアップによっては費用負担はなくなると思います」(小笠原氏)

7月に試験的に合宿を開催

こうした大企業がスタートアップを支援する取り組みの多くは、開催から数カ月も経過すると、「結局どうなったんだっけ?」となってしまいがちだ。しかし、このモノづくり研修はシャープ、さくらインターネット、ABBALabの3社が「本気でスタートアップの支援をしたい」という思いもと立ち上がったこともあり、すでに実績も出ているという。

今回発表した研修を、7月に試験的に開催。その研修から次のステップに進むスタートアップが幾つか誕生したため、正式な形で進めることになったそうだ。

7月の合宿に参加した、不動産向けIoTデバイスを開発する「tsumug(ツムグ)」の牧田恵里氏は研修に参加した感想を、こう口にした。

「私たちはいま、鍵のデバイスを作っているのですが、スタートアップで鍵のデバイスと聞くと多くの人が難しいと感じると思います。実際、私たちもそうでした。ただ7月のトライアルに参加して、安全基準や品質管理などシャープが量産する上で大事にしてきたノウハウを提供してもらえて、改めて鍵のデバイスが作れるかもしれないと思えました」(牧田氏)

実際、tsumugはABBALabからの投資を受け、シャープから量産サポートも受けるフェーズに入っているという。このような形の支援が、この合宿を通して一社でも多く増えていけばいいと考えているそうだ。

11月に開催される1回目のSHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットでは4社の参加企業を募集。最初は年間で16社の支援を目指していき、今後、その母数を増やしていくことも狙っていくという。

ソフトウェアにバグがあるのは仕方のないことなのか?

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何もかもがひどいものだ。ほとんどのソフトウェアは、たとえそれがクリティカルなシステムソフトウェアだとしても、まるでダクトテープとプチプチとヘアピンで梱包されたスイスチーズの如く安全性の低いものだ。例えば先週の怖ろしくも興味深い投稿記事「How to Crash Systemd in One Tweet」(Systemdを簡単にクラッシュさせる方法)を見てみると良い。しかしそれはsystemdだけの問題ではなく、Linuxだけの問題でもなく、ソフトウェアだけの問題でもない;業界全体に問題があるのだ。私たちが自分自身に間違って教え込んできたきたのだ。他にやりようはない、と。

それでは、そのAndrew Ayerによる面白い投稿をもう少し詳しく見てみよう、なぜならこれはより大きな問題の見事な例となっているからだ。まったく「Yay non-determinism!(非決定性バンザイ!)」だ。

もしあなたが筋金入りのギーク(技術オタク)なら、自分で投稿全体を読んだほうがいいだろう;もしそうではない場合には…簡単に説明すれば以下のようなことだ、systemdはほとんどのLinuxディストリビューションの不可欠なコンポーネントであり、その大切な役目の1つとして、システムを起動するために使用されている。Ayerはそれをクラッシュさせるためのとても簡単な方法をみつけて、それに哲学的な考察を行った。ということである。

このバグによってすぐに喚起される疑問は、一体どういった品質保証プロセスが、このような単純なバグを2年以上に渡って見逃していたのだろうかというものである。[…]systemdの問題はこの1つのバグよりも遥かに深いものだ。systemdは、設計に欠陥があるのだ。バグのないソフトウェアを書くことは非常に困難なことだ[…]良いプログラマはバグのないソフトウェアを書くことの難しさを知っているし、バグの可能性を最小にするか、少なくともその影響を低減させる方向へソフトウェアを設計することの重要性を理解している。systemdの開発者たちは、こうしたことを理解していない。不必要な複雑性を膨大に詰め込むことを決定し[…]メモリ安全ではない言語で記述した。

私が思うに、最後の点がキーとなる大きなポイントである。何もかもがひどいものだ、なぜなら私たちが今でも使っている基本的なツールは、使われる際に、必然的にひどいものを作り出してしまうような欠陥を抱えているのだ。こうした適用は、systemdのような低レベルのコンポーネントから、最近大規模なDDoS攻撃の奴隷として使われたカメラや他のIoTデバイスの事例 ‐

– そして1億5000万ドルが失われたイーサリアム上のDAOの大惨事(実際にはその後の対応で経済的損失は防がれたが技術的、倫理的に大きな禍根が残された)のような高レベルのSF的抽象世界に至るまで、広く行われている。あまりにも長い間、ほとんどすべてのソフトウェアがバグを持ち安全ではないことに慣らされてきて、私たちはこれがソフトウェアの自然な姿だと思うようになっているのだ。しかし、この学習性無力感(長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれたために、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなること)は正しくない。すべてがひどいものである必要はないのだ。

原理的には、コードは形式検証(formal verification)を用いて正しいことを証明することができる 。これはとても困難で、時間もかかり、常に実践するには現実的ではないものである;しかし、長期間に渡って何百万という機械を制御するクリティカルなソフトウェアの話をしているときには、または数百万ドルもの投資を行おうとしている際には、少なくとも考慮すべきものである。

これよりは苦労と厳密さが少なめで、ひいてはより有望なものの1つはlangsec構想だ:

言語-理論的アプローチ(LANGSEC)が関心を寄せているのは、ネットワークスタックや、その他のソフトウェアスタックの全ての階層における、入力の取扱いに対するアドホックなプログラミングが引き起こす、インターネットの非安全性の広がりである。LANGSECは、信頼できない入力を取り扱うソフトウェアを、信頼できるものにするための唯一の道は、すべての正しい或いは期待される入力を形式言語として取扱い、それぞれの入力処理ルーチンを、その形式言語への認識装置であるように取り扱うことだ、と想定している。

…このようなやりかたは着実に現実世界に近付いている。そしてフランスのセキュリティ会社Prevotyのような仲介者に依頼すれば時期尚早ということもない。

前述したように、プログラミング言語自身が大きな問題だ。膨大な経験が明らかにしたのは、プログラマたちにメモリ安全でない言語を使って安全なコードを書くことを期待するのは、現実的ではないということだ(私の昨年の記事「 Death to C(Cに死を)」が書かれたのはそれが理由だ)。しかし希望はある!破滅の予言をしたあと、Andrew Ayerはこのように注意を促している「しかし、私には改善の兆しが見えている。GoとRustはこれまでCで書かれていたようなシステムソフトウェアを書くための注目すべき安全な言語だ」。

最善は善の敵である(最初から最善であることに拘ると、次善にすらたどり着けない)。私たちは現在の不名誉な状態から一足跳びに名誉ある状態に行くことはできない。しかし産業としては、少なくとも進むべき道を設定しよう。まず最初に、より良い言語でシステムコードを書くことへ向かおう ‐ これはセキュリティスピードを改善する筈だ。 そして、ミッションクリティカルなコードの形式仕様記述と検証に向かおう。

そしてレガシーコードとレガシーシステムに捕らわれているときには、もちろん今でもそれが大部分の時間を占めているのだが、それを徐々にでも良くして行くことを学ぶために、プログラミングの原則と基礎に注目し、最大限の努力をしよう。(例えば、JavaやC#のプログラマたちは、私の昔の同級生によって書かれた素晴らしい書籍であるPractice your JavaPractice Your C#を読むことを検討した方が良い)。「ひどい状態」を避けられない事態だと受け入れてはならない。たとえそれが「現在の」状態だとしても。よりよい状態を目指して努力しよう。

もちろん、業界の多くが伝統的なプログラミングから離れて、様々なフレーバーのAIに向かって移行しようとしているのを見ながら、私はこれを書いている。私たちはどのように「畳み込みニューラルネットワーク」をきちんと定義すれば良いのだろうか?そこへ流し込む現実世界のデータに対して、どのようLANGSECを適用すれば良いのだろうか?これらのことを、どのように量子コンピューティングに適用するのだろうか?(もしそんな疑問を抱くのは時期尚早だと思うなら、私の友人のChristineによる、極めてクールな5ビット量子コンピューターシミュレーターをチェックしてみると良い。 Github上でオープンソースとして公開中だ)。

ああ、いや、私は最後のいくつかの疑問に対する答を持っているわけではない。しかし少なくとも問いかけることから始めよう!そしてその間に、従来のプログラミングの修正を最終的に始めることができるように、できることは何でも試みよう。それは非現実的な夢ではない。それは実際に可能なのだ。そして、もしそれを受け入れたなら、すべてが良なって行くことが可能だろう(私はそうなると信じている)。

訳注:本記事の原タイトルは「Learned helplessness and the languages of DAO」というものである。「学習性無力感とDAOの言語」という直訳になるが、「学習性無力感」の方は文中に説明がある。「DAOの言語」の方は古いSFである「The languages of Pao」(アイキャッチ画像の書籍)のタイトルをもじって、最近のソフトウェアバグに起因する有名な事案の「イーサリアムのDAO」と関連付けている。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

Arduinoが本格的IoTキットを発表、Kickstarterで募集中

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かつてのハードウェアメーカーは、ただのハードウェアハッカーでは彼らの発明品を再現できないだろうという認識のもとで安心していた。ソニーからフィリップス、そしてLGからサムスンに至るまで、家電業界は固く閉ざされていて、そのケースにだれもヒビをいれることができなかった。あの厄介なArduinoキッズがやってくるまでは…。

今では、Arduinoのおかげで誰もがクールなハードウェアを作成できて、あなたのデバイスををインターネットに接続して外界からデータを取り込むことも、これまでになく簡単になっている。ESLOV IoT Invention Kitは、あなたのハードウェア製品にIoTの能力を加えてくれる、Arduinoの公式製品だ。サムスンを出し抜くようなネットワーク接続冷蔵庫を作ろうとしている?ESLOVを使おう。ソニーをその地位から追い落としたい?Arduinoボードの上にESLOVの1つを装着して、有名家電メーカーとの競争をリビングから始めよう。

ESLOVシステムのことは、筋肉強化剤を処方されたMindstormだと考えてみよう。この自称「プラグアンドプレイツールキット」は複数のセンサーと出力を接続し、様々なシステムの構築をさせてくれるのだ。以下の図は可能な組み合わせの一部を示したものだ。すべてはArduinoのオンラインIDEを介して制御されている。

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システムは様々なセンサと、1つのWi-Fiハブで構成されている。興味深いことに、各センサはArduino UNOにも搭載されているATmega328Pプロセッサで動作している。エントリーレベルの99ドルのキットには、WiFiとモーションハブ、ボタン、ブザー、そしてLEDが含まれている。499ドルのProモデルには、ホールセンサ、OLEDディスプレイ、そしてGPSなどの合計22モジュールが含まれている。とはいえ、中間の249ドルのキットには、始めるために必要なものは全て含まれているように見える。

同社は、Kickstarterで資金調達を試みているが、その予定額は50万ドルに及ぶ。これまでに集まったのは1万5000ドルだが、メイカーコミュニティからのささやかな愛に支えられて、予定は達成できると私は思っている。キットの出荷予定は来年の7月だ。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

開発・デバッグ、数百デバイスへの反映も一発、HerokuのようなIoT PaaS「Isaax」が登場

PaaSやBaaSの便利さは、Web開発者なら誰でも知っているだろう。特にプロトタイピングのとき、自分でサーバーを立てたりデータベースの設定など準備が不要というのは開発のハードルを大いに下げてくれる。コードをクラウドに投げれば即プロダクトが動き出す。おっと表示が崩れてるのはバグだ、修正、修正っと、またコードを手元で修正してプッシュすれば、これまた即サービスに反映される。Salesforceに巨額買収されたHerokuのようなPaaSは実に素晴らしいものだ。

ではIoTのサービス開発はどうか。

PaaSやIaaSがあるさ、オッケー、オッケー。バックエンドはNode.jsでもRailsでもいいね? でも、デバイスの管理とか認証、ハートビートとかどうするんだっけ? ていうか、数十台とか数百台単位でデバイスが広まったときのソフトウェアのアップデートって、何を使えばいいんだっけ?

そんな課題を解決する日本のスタートアップ企業、XSHELLが今日、IoT向けのプラットフォームサービス「Isaax」(アイザックス)をベータ版として公開した。同時に、グローバル・ブレインISID(電通国際情報サービス)に対して第三者割当増資を実施したことを発表した。実際の投資タイミングは2015年末と2016年8月の2度に分かれているが、2社合わせて総額8000万円のシード投資ということになる。

ISIDは最近Fintech関連のイベントのFIBCや、大手町のFintech拠点であるFino Labなどスタートアップ企業への投資や協業で知っている読者も多いと思うが、純粋なエンジニアリング方面での投資はめずらしい。金融システムや電通グループ向けシステムのほか、自動車産業向けのシステムなども手がけていることから、ISIDとしてはIoT時代への布石という意味合いもあるようだ。

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左からグローバル・ブレインの熊倉次郎氏(パートナー)、XSHELL共同創業者でCEOの瀬戸山七海氏、同COOのベセディン・ドミトリ氏

開封から15分以内でSlack温度計を実装、その場で投資決定

XSHELLを創業したのは慶應SFCに通っていた現在25歳の瀬戸山七海氏だ。情報系の学部在学中に起業して、複数デバイスの協調動作を取り入れたパワードスーツの開発をしていた。3体のパワードスーツが協調動作すれば、非常に重たい物体を持ち上げるときに多地点測量して重心を推定するなど、これまでにない価値が生み出せるのでは、と考えたそうだ。実際には安定した低遅延無線ネットワークを前提にすることができないためにリアルタイム処理は難しく、このアイデアはうまくプロダクトに結びつかなかった。このときの経験からIsaaxのアイデアにたどり着いたという。

Isaaxの説明の前に面白いエピソードを1つ。今回の投資を担当するグローバル・ブレインのパートナーでベンチャーキャピタリストの熊倉次郎氏がTechCrunch Japanの取材に対して語った投資の意思決定に関してだ。

デジタル温度計で室温を測り、それをSlackでつぶやく―、そんな良くあるIoTの習作のような成果物を投資家たちの前でピッチする15分間で実装できたら投資しようじゃないか、となった。瀬戸山氏は未開封のIntel Edisonのパッケージを開けるところから始めて、実際にSlackへ温度を投げるコードを15分足らずで完成。IoT開発の速度を上げるというバリュープロポジションに対して、実践デモで説得したそうだ。「誰も投資に反対とは言えませんでしたね(笑)」(グローバル・ブレイン熊倉氏)と投資の意思決定が行われたという。

さすがに自分が慣れた開発環境なら、たいていのものは15分でプロトタイプを完成させるライブコーディングくらいできるだろうとも思うが、興味深い話ではある。

CLIのコマンド一発で複数デバイスにコードを反映

Isaxx(アイザックスと読む、もう1度念のため。この記事中4度めの登場だけど)は、Herokuに似ている。Go言語で書かれたコマンドラインツールがあって、そのサブコマンドを使うことで、まずベースとなるコードの雛形を生成し、その後デバイスとクラウドに対して必要なコードを一発で転送できる。

「フルスタックエンジニア」という、それが何を指していて実際に生存が確認されているのかも良く分からない謎の言葉が生まれて久しい。ハードウェアやシステムに近いプログラミングから、モバイル、フロントエンドなど、あらゆるプログラミング言語や技術トレンドに精通していて、サービス全体を1人で実装できるエンジニアのことだ。

XSHELL瀬戸山氏は、IoT分野でそんなスーパーハッカーはほぼ存在しないという。

「IoT実証実験のコストは60%がソフトウェア開発だと言われています。IoTの開発にはデータ処理や認証技術、センサー、WAN、セキュリティー、製造管理などの知識が必要です。IoT検定というのがあるのですが、全部で19項目の知識が必要です。Wantedlyの全てのスキルセットを持つ人を検索すると60万人の登録中19項目全てのスキルセットを持つ人はゼロです。IsaxxではJavaScript、Python、Ruby、PHP、Golang、C++のいずれかの言語の1つが使えれば、デバイスのアプリも含めて開発、デバッグ、ローンチ後のアップデートなどが可能です」

リリース直前のMac版IsaxxのCLIツールをTechCrunch Japan編集部でダウンロードしてみたところ、サブコマンドとして「app show/create/delete」、「device show/init/config」、「cloud cluster/project/device/login/logout/quick」などが利用可能となっていた。例えばデバイス初期化コマンドを発行すると、デバイスの種類を聞かれ、デバイス側に常駐させるデーモンのバイナリイメージをネットからダウンロードし、これがデバイスに転送されるという流れ。クラウド操作のサブコマンドとしては、さらに「cluster create/register/deregister/list/status/delete」などがある。

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IsaxxはMIPS系も含めてLinuxが稼働するモジュール、RaspberryPi、Intel Edison、Onion Omega、Pocket CHIPなどが使える。Arduinoに対応しないのかという質問に対して瀬戸山氏は「今は1980年代に似ています。当時オープンシステム、専用機、汎用機が戦っていました。IoTも同じで、5〜8ドルのLinuxが主流になっていくと見ています」と説明する。

ハードの世界にウェブアプリの世界を持ち込む

Isaxxでは1デバイスでの開発とデバッグという「開発フェーズ」から、複数台での「検証フェーズ」、数十台、数百台をセルラーネットワークで繋ぐ「事業フェーズ」まで対応する。コードの反映にかかる所要時間は開発や検証段階で1、2秒。数百台のデバイスにセルラー経由でアップデートをかけるとなると、さすがに3分程度かかるそうだが、それでもこれは従来の組み込み開発やM2Mの世界からしたら、大きな進歩かもしれない。例えば、従来カラオケボックスのリモコンのソフトウェアアップデートとなると、個体管理やアップデートの仕組みがシステム化されてこなかったため、数百人がかりによる属人的な職人芸となっていた現場もあるそうだ。

XSHELL瀬戸山CEOは「ハードウェアの世界にウェブアプリの世界観を持ち込む」のがIsaxxの狙いと話していて、「例えば既存サービスに対して変更を加えて、後から登場したデバイスと連携するようなことが可能になります」という。これまでIoTの実証実験で7人の開発者で6カ月(2400万円)ほどかかっていたものを、1人の開発者、2週間の開発期間(50万円)に短縮できるとしている。何より、ウェブ開発で使われるプログラミング言語であれば使える開発者は非常に多い、というわけだ。

JavaScriptだけできればIoTサービスのプロトタイピングが可能になる、という世界観は興味深い。ただ一方で、実際の製品レベルのサービスにしていくときに、各分野の知識なり専門家なりがなくていいのかと言えば、そんなわけにはいかないのではないか。北米市場の話だが、現在販売されているスマートロック16種のうち12種でセキュリティーが破られた、という話がある。「セキュリティーについてはプラットフォームが保証してくれています」と開発者が言うようなプロダクトは、ぼくなら使いたくはない。IoTで広く使われるプロトコル、MQTTのベストプラクティスを知らずに消費電力やトラフィックといったリソースの最適化ができるとも思えない。

もう1つ、すでにIoTと呼ぶべきデバイスやプロダクトを開発している人であれば、「Linuxモジュールが対象」という点に違和感を覚えるかもしれない。多くのIoT製品は、そもそもOSを搭載していないからだ。カラオケのリモコンのようにリッチなUIを扱う組み込みデバイスと呼ぶべきものが対象であればいいが、Linuxのフットプリントはそこまで小さくない。特にスマホを経由して使うタイプのIoTであれば、複雑な処理はiOS上で行うというのも現時点では現実的なアプローチだろう。そう考えると、Isaxxは、今後1年とか2年かけて実用性を検証するユースケースで、ある程度ノード側に処理をオフロードするタイプのアプリケーションから立ち上がる市場がターゲットになるのかもしれない。

XSHELLでは今回のIsaxxのプラットフォームサービスのほかにも「Rapid」と名付けた受託開発サービスも提供していく。これはPoC案件(Proof of Concept)を中心として、自分たちのサービスのドッグフーディングをする意味が強いのだとか。「顧客を巻き込むという意味もありますが、PaaSとしてやっていくためにはベストプラクティスを知ってないといけない」(瀬戸山CEO)。

IoT市場の予測として2020年に全世界で530億台のデバイスが稼働するという数字を総務省が発表している。XSHELLでは、このうち国内シェア0.8%(770万台)を獲得して1デバイスあたり月100円の課金となれば、年商100億円となるとソロバンを弾いている。「IoT、IoTと言われ始めて2、3年して、なぜ誰もIoTでブレークスルーできていないか? それはPoCの数が少ないから。開発コストが高くて稟議が通らないという事情もあるのではないか」と瀬戸山CEOは話す。ちょうどHerokuがそうだったように、「プロの事業会社から、趣味のホビィストまで、誰もが使えるIoTプラットフォームサービスを作りたい。そういうミッションもあります」という。

スマート素材はどのように世界を作り変えるのか

Plasticine planet earth on a white background

【編集部注】著者のMax Moruzzi氏はAutodeskのシニア主任リサーチサイエンティスト。

過去数年にわたり、モノのインターネット(IoT)は、激しい活動の白熱した中心になっている。物理的なもののための組み込みセンサーを製造するスタートアップは、より大きな企業に急速なペースで買収され、過去4年でIoTスタートアップをめぐる取引は合計300億ドルを越えている。

確かに、IoTは「次に来る凄いもの」かもしれないが、おそらくセンサー周辺への注目は見当違いかもしれない…

もし私たちが物体にその周辺の環境からデータを収集させるのに、センサーを埋め込む必要がないとしたらどうだろう?もし素材がセンサーを内蔵し、そのものがセンサーであったならば?

知覚素材は、まるでサイエンスフィクションのように聞こえるかもしれないが、それは急速に現実のものとなってきている。温度、圧力、衝撃、その他の変動値を感知することができる、新世代の素材が開発されていて、センサーの必要性が完全になくなる。

これらの材料はデータを取り込み、クラウドにデータを送り込むだけでなく、環境条件の変化に対応して、動的に自分自身を再構成することができる。それはまるで材料がただスマートになるというだけではなく、「生きて」いるかのようなものになることであり、物のデザインと使われ方を驚くような方向へ変化させる

等方性の時代を抜け出して

私たちはどうやってここに至ったのか?これまでのデザインとエンジニアリングは素材の「等方性(isotropic)」に注目してきた、すなわち均一的かつ予測可能であるということだ。等方性の時代には、まずデザインを行い、そのデザインの中で特定の役割を果すように素材を割り当てた。

しかし、その反対に、もし素材が設計を決定するために使えるとしたらどうだろうか?私たちはこれを常に自然の中で見ている。例えば種子は、特定の環境と連動して木を生み出す。

それはまるで材料がただスマートになるというだけではなく、「生きて」いるかのようなものになることだ。

これは、異方性(anisotropic)素材の働きを示す一例だ。等方性材料とは異なり、それらの振舞は事前には決まっていない、そのためその性能を環境に合わせて調整することができる。

異方性デザインの時代へようこそ。

輸送のための変革

以下のような飛行機の外壁を想像して欲しい、自己治癒で傷やへこみを取り除き、それによって最適なエアロダイナミクスを維持しすることができるといった外壁を。等方性の時代には、こうしたデザインは実質的に不可能だった、しかし異方性の時代には、これが可能になるのだ。

それがうまくいくのは以下のような理由だ:飛行機の部品(例えば翼)が薄いナノセンサーの層でコーティングされた複合材料から作られているとする。このコーティングは「神経系」のように働き、部品がその周囲で起きることを「感知する」ことを可能にする。圧力、温度、といったものが対象だ。

翼の神経系が損傷を感知すると、それは、ナノ結晶のコーティング中の未硬化材料の高分子微粒子に信号を送る。この信号は、高分子微粒子に素材を損傷エリアに放出するように伝え、修復が始まる。ちょうど亀裂に接着剤を埋めてそれを硬化させるようなものだ。

エアバスはすでに、ブリストル大学のNational Composites Centreでこの分野における重要な研究を行い、スマート素材によって形作られる航空業界に私たちを向かわせている。

一方、自動車業界は、損傷の感知や自己治癒だけではなく、デザインとエンジニアリング工程へフィードバックできるパフォーマンスデータを収集できるスマート素材の利用を進めている。

Hack Rodプロジェクト – 南カリフォルニアの自動車愛好家のチームと組んだ技術パートナーたち ‐ は、スマート素材を使い、人工知能でエンジニアリングを行った、史上初めての車をデザインした。

これらの材料は、私たちの周囲の世界を形作る上で、ますます重要な役割を担っている。

別の例では、EUが資金提供を行うHARKENプロジェクトのコーディネーターであり、ポルトガルの自動車テキスタイルサプライヤーBorgstenaのR&DマネージャーでもあるPaulo Gameiroが、センサーが埋められたスマートテキスタイルを使ってドライバーの呼吸ならびに心拍を計測し、ドライバーに眠気の兆候があることを警告できる、シートとシートベルトのプロトタイプを開発している。

インフラストラクチャのメンテナンスが容易になる

輸送に関するもの以外でも、多くの機会が建築や土木エンジニアリングの領域にも待ち構えている。そこではスマート素材が、構造のヘルスモニタリングを大いに助けることになる。

今日、 世界には要素の消耗や、断裂、そして経年劣化によって徐々に崩落の進んでいる道路や橋、その他のインフラが沢山存在している。多くの場合、 最も緊急に注意を必要とする項目がどれであるかが、私たちにはわからない

しかし、もしこうしたことがわかる構造を「 スマートコンクリート」で作ることができるなら?コンクリート内の「神経系」は、インフラストラクチャの状態を絶えず監視して評価し、何らかの損傷が発生した場合には即座に自己修復を発動させることができる。

マサチューセッツ工科大学(MIT)で現在進行中の、ZERO +という名のプロジェクトは、まさにこのタイプの先進複合素材を用いて、建築業界を再構成することを狙っている。

機能性織物

MITの研究者たちはまた、新たに設置されたAdvanced Functional Fabrics of America (AFFOA:米国先進機能性織物) 研究所で、日夜研究に励んでいる。彼らの目標は、新世代の機能性織物と繊維の開発である。周囲を見て、聴いて、感じる能力を持ち;コミュニケーションを行い;エネルギーを蓄積して変換し;健康をモニターし;温度を制御し;そしてその色を変化させるようなものだ。

これはハリウッド映画ではない ‐ 現実のことだ。

機能性織物は、衣服がもはや単なる衣服である必要がないことを意味している。健康と良い生活のためのエージェントであり、非侵襲的な方法で体温を測定し、さまざまな要素を対象にして汗を分析することができる。またそれらをポータブルなパワー源として使うことも可能だ、例えば太陽のような外部のソースからエネルギーを取り込み、それを保持し続けるなど。また、より迅速的かつ効率的に異なる環境に適応するために、兵士たちによって使用されることも可能だ。

そして、もし誤って衣服に穴をあけてしまったら?当然のことながら、織物内のナノセンサーはツギをあてるために、自己修復プロセスを起動する – 航空機の翼やスマートコンクリートが自身を修復したように。

素材の世界で生きる

これはハリウッド映画ではない ‐ 現実のことだ。そして如何にスマート素材が迅速に近付いて来ているかを明確に示すものだ。

これらの材料は、私たちの周囲の世界を形作る上で、ますます重要な役割を担っている。それが飛行機であろうと、建築インフラストラクチャであろうと、私たちの着る服であろうと。自分の環境に関するデータを取り込むだけでなく、そのデータに基づいて、それらのパフォーマンスを調整することができるものを作ることにより、素材はデザインの中で能動的な役割を果たし始めるようになる。

これが スマート素材の持つ可能性だ、そして私たちの周囲により良いデザインの世界を生み出すため鍵の一つなのだ。

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(翻訳:Sako)

元NESTのトニー・ファデルのActev Motorsが子供向けスマート電動ゴーカート出荷へ(ビデオあり)

Googleが本社を置くマウンテンビューの新しいスタートアップ、Actev Motorsは多くの期待を集めていた子供向け電動ゴーカートをこの秋に出荷する準備が整ったようだ。

このゴーカートは5歳から9歳向けで、価格は1000ドル前後だ。これにはフォーミュラ1を思わせるスマートなボディー(シルバーか赤)が組み立てキット方式で含まれる。テクノロジーに詳しい両親を感心させるような安全性と面白さを高いレベルで両立させる機能満載だ。たとえば両親は子供の年齢と能力に合わせて最高速度を設定できる(最高で時速12マイル=20km/h)。またジオフェンス機能を使って走れる場所を指定できる。また衝突防止機能があるあるので障害物の手前で自動的に減速、停止する。お隣のガレージに体当たりしてしまうような事故が避けられるわけだ(各種設定にはスマートフォンを利用する)。

actev

最近、私はActev Motorsを訪問して詳しく取材する機会があった。マウンテンビューの本社で製品の組み立てやテストに加えて多数の新製品を開発中だった。

現在までActevの事業は予想どおりに展開している。現在シリーズAのラウンドを展開しているところだが、次に用意されるのは町乗りができるゴーカートだという。

CEOのDave BellはあのTony Fadell(元AppleのエンジニアでGoogleに買収されたNestを作ったことでも有名)ともにActevの共同ファウンダーだ。Bellは予約注文台数や正確な発売開始日付のような営業上の詳細は明かすことを避けた。しかし1、2ヶ月後には注文者の家に届くことは間違いなさそうだ。

〔日本版〕ビデオには登場しないがNestの共同ファウンダーのトニー・ファデルはTechCrunchでも何回か取り上げられている。ファデルは今年6月にGoogleを離れた。ビデオを見たかぎりではこの製品はIoTセンサーとスマートフォンをシームレスに連携させているところが差別化の焦点のようだ。ジオフェンス機能はスマートフォン上で区画を描くだけでカート側に設定されるようだ。ジオフェンスを出るとカートの速度は2マイル(約3.6km)に制限される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+