鉢植えの植物を死なせることのない自動コントロール植木鉢Parrot Pot

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多くの人が、Parrotドローンのメーカーだと思っているようだが、実はヘッドフォーンや社内の情報娯楽装置など、いろんなものを作っている。昨年のCESで同社は、植木鉢ロボットParrot Potを披露した。そのときはまだプロトタイプだったが、今年は第一四半期にいよいよ、この新製品を発売する。

小売価格99ドルのこの植木鉢は、潅水用の水を2リットルキープできる。それは多くの植物にとって、ほぼ1週間ぶんの量だが、“節水モード”に設定すれば、植物は3〜4週間生き延びることができる。

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植木鉢のコントロールはモバイルアプリから行う(アプリの名前はそのものずばり、’Flower Power’だ)。このアプリからおよそ8000種の植物のデータベースにアクセスして自分の植物を選び、植木鉢とBluetoothで接続する。アプリはいわば、あなたの植物のためのダッシュボードだ。

植木鉢が装備しているいろんなセンサーにより、土壌水分や温度、肥料残量、室温、明るさなどを測定する。これらのデータは15分おきに記録され、Parrotのサーバーに送られて分析される(もちろん事前にインターネットに接続のこと)。人間が長期間世話をしなくて土壌水分が涸渇気味になると、自動的に潅水する(上図)。

昨年のプロトタイプのときは、売価200ドルになっていたから、それに比べると100ドル弱は安い。鉢植えの植物をよく死なせてしまうタイプの人は、Potを買ってみる価値があるかもしれない。あるいは自作してもいいけど。

CES 2016

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

SamsungのスマートテレビがSmartThingsを統合化、テレビがホームオートメーションのハブになる

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SamsungとSmartThingsの提携で、テレビから家の中のいろんなものをコントロールできるようになる。

今やインターネットに接続されたデバイスが世の中に氾濫している。標準的なセキュリティシステムもあれば、“電脳照明”があり、やかんまでネットに接続されている。でも現状ではまだ、これらの“電脳XXX”を一箇所でコントロールできる共通の統一言語がない。製品ごとに、機種ごとに、それぞれ専用の制御インタフェイスを使わざるをえない。そんな現状の中でSmartThingsは、ホームオートメーションないしホームインテリジェンスのインタフェイスの統一化・共通化を目指している。最初はまずAmazon Echoとパートナーし、そして次はSamsungのスマートテレビ(Smart TV)が、そのSmartThingsをサポートする。

今回のパートナーシップにより、2016年製以降のSamsung SUHD TVから、今およそ200あまりあるSmartThings対応デバイスをコントロールできる。

この統合により、SmartThingsのアプリケーションには両社が共同開発したテレビ用のインタフェイスが存在することになり、テレビ画面上のそのインタフェイスから、部屋の明かりのon/off、ホームシアターのコントロール、屋外に設置したセキュリティカメラからの信号の受信や表示、などなどができるようになる。

IoTの今の最大の問題は、完成度の高い製品種類が少ないことではない。インタフェイス言語が統一されていないから、いろんなIoT製品〜ホームオートメーション製品を買うたびに、別々のコントロールアプリを使うことだ。一つ二つなら我慢できるが、五つ十となると、もう人間の手にも頭にも負えない。またSmartThingsのような統一言語でも、家の中の対応機種のコントロールは一箇所から簡単にできることが望ましい。たとえばAmazon Echoから、あるいはスマートテレビから…。

Amazon EchoがSmartThingsを統合したことによって、さまざまなデバイスを音声でコントロールできるようになったが、でもテレビは依然としてアメリカの家庭の中心的な存在だから、スマートテレビとの統合によってホームオートメーション/ホームインテリジェンスのコントロールはなお一層便利になるだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

寒い冬の日は、暖房の効いた自分の部屋でルーマニアの山奥の湖の釣りを体験しよう

吹け、汝、冬の風よ、強風で漁のできぬ人の子はさらに過酷なり。極寒の地では魚がその場で凍ってしまい、帰路では溶けて魚肉が崩れ栄養価を失う。でも、そんなところでどうしても魚を獲りたかったらどうしたらいいか? 答はRobofisherだ。

このサービスは、中欧の凍結しない湖に設置してある魚釣器具を時間貸しする。中欧のライブビデオサービスはどれもそうだが、人間ユーザは、ロボットが生き物と対話するところをライブで見て、擬似的なスリルを味わい、それに対してお金を払う。このRobofisherでは、ロボットが釣り糸を垂れ、魚を捕獲し、その小さな魚を後日のために湖に戻す。すべては画面上でライブで起き、抵抗する魚が釣り糸を引くスリルを楽しむ(上のビデオではユーザは、湖から300マイル離れた場所の家の中でインターネットにアクセスしている)。

ルーマニアのAlexei Popusoiが作ったこのサービスは、障害者には20%割引、そして釣り竿とリールを10分間10ドルで使わせる。少々お高いようだが、半分以上のユーザが10分以内に1匹釣り上げるそうだ。ビールと自慢話パーティーは含まれていない。

まじめなサービスのようでいて、実際には笑えてしまうところが、おもしろい。自分の家のパソコンから、遠くの湖で釣りができる、というアイデアも巧妙だ。ちょっと、頭がおかしくなりそうだけど。でも、水と魚を見るだけのために、10分間10ドル払う人が、どれぐらいいるだろうか。ま、人の好みは人さまざまだけどね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

IoTの世界観実現のためモバイル回線をクラウドでディスラプト、ソラコム創業者大いに語る

2015年に登場した日本国内スタートアップの中で、ソラコムは初期段階から注目されていた企業だった。AWS(Amazon Web Services)エバンジェリストとして知名度が高い玉川憲氏が創業し、その直後に7億円の資金を調達した。9月には、それまでステルスモードで開発を進めていたサービス内容を明らかにした。IoT向けのSIMを提供するSORACOM Airと、暗号化サービスのSORACOM Beamである。しかも発表と同時にサービスを開始し、さらに多数のパートナー企業の名前も公表した。まさに「垂直立ち上げ」と呼ぶにふさわしい鮮やかな手際を見せてくれた。

そのソラコム創業者で代表取締役社長の玉川憲氏に、TechCrunch Japanの西村編集長がざっくりと切り込んでいくセッションがTechCrunch Tokyo 2015の2日目、2015年11月18日に行われたファイア・サイド・チャット「創業者に聞く、SORACOMが開くクラウド型モバイル通信とIoTの世界」である。

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どのような問題を解こうとしているのか

ソラコムは、会社名でもあり、IoT向けプラットフォームの名前でもある。

同社は何の問題を解こうとしているのか。「IoTの世界観はすばらしい」と玉川氏は言う。実は玉川氏は約15年前、IBM東京基礎研究所の所員だった時代に「WatchPad」と呼ぶLinux搭載の腕時計型コンピュータを開発していた。「今でいうスマートウォッチですよね」と西村編集長。WatchPadのプロジェクトは途中で解散してしまい、これは玉川氏のキャリアの初期に遭遇した挫折となった。

だが、ここにきて、いよいよコンピューティング能力を持った小さなデバイスが世界を変え始めている。クラウドの普及、そしてRaspberry Piのようにプロトタイピングに活用できる安価で小型なコンピューティングデバイスの登場で、今ではモノとクラウドの組み合わせをごく手軽に試せるようになった。

「その一方で、通信回線がボトルネックになっている」と玉川氏。そこに目を付けたのがソラコムだ。IoT向け通信回線にモバイル通信を使うアイデアは有望だが、多数のデバイスにそれぞれSIMカードを挿すことになる。多数のSIMカードの調達や管理は、現状では非常に人手もかかるし高コストになる。「この問題を解くのがソラコムのサービス」と玉川氏は説明する。

携帯電話事業者は、基地局やパケット交換機などの設備に1兆円規模の巨額の投資が必要だ。基地局を借りてビジネスをするMVNO(最近は「格安SIM」といった呼び名の方が通りがいいかもしれない)の場合は基地局への投資の負担はないが、それでも携帯電話事業者とレイヤー2で相互接続する「L2卸し」のMVNOを立ち上げるにはパケット交換機などに数十億円規模の投資が必要だった。通信事業者には巨額投資が必要との常識をクラウドでディスラプト(破壊的革新)してしまったのが、ソラコムだ。

ソラコムは、NTTドコモの基地局を借り、さらにパケット交換設備に替えてパブリッククラウドを活用することで、設備投資の費用がかからずスケーラビリティがあるサービスを構築した。玉川氏は「NTTドコモの基地局とAWSのクラウド、両巨人の肩に上に乗ってバーチャルキャリア(仮想通信事業者)を作っている形です」と表現する。

クラウドで低レイヤーの通信設備を実現するというアイデアは、世界的に見ておそらく初めてだ。「パケット交換機能まですべてパブリッククラウドで実装した例は、他には聞いたことがない」と玉川氏は言う。顧客管理システム、課金システム、APIをパブリッククラウドで実現している例はいくつかあるが、低レイヤーのパケット交換システムまで含めてクラウドで実現した例は見たことがないそうだ。

さらに、ソラコムのサービスを使うさいの流儀も、いかにもクラウド的だ。Webブラウザから管理コンソールを操作でき、SIMごとに契約内容の変更、速度の変更、さらには解約まで手軽に行える。AWSのクラウドを使う場合と同等の手軽さで、多数のSIMとモバイル回線の管理ができてしまう。

Amazon流に「事業アイデアのリリースを書いた」

ソラコムの事業アイデアが誕生した瞬間のことが話題に上った。玉川氏と、現ソラコムCTOの安川健太氏が飲んでいたときのことだ。「パブリッククラウドはサーバーを使いやすくする。何でも動かせるよね」という話をしていくうちに、通信設備のようなレイヤーもクラウドで作れるのでは、という話が出た。

Amazonには、製品開発を始める時点で、完成イメージを発表文(プレスリリース)の形式にまとめる「Working Backward」と呼ぶ文化がある。玉川氏は当時勤めていたAmazonの流儀に従って、アイデアをリリース文に書き起こしてみた。翌朝になって、前の晩に書いたリリース文を見ると「なかなかいいじゃない」と思った──これがソラコムの事業アイデア誕生の瞬間だ。

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ソラコム創業者で代表取締役社長の玉川憲氏

AWSは、初期の設備投資なしにサービスを開始して、巨大サービスまでスケールできるメリットがある。DropboxやInstagramのようにAWS上でサービスを構築して成功したスタートアップも数多い。「AWSのエバンジェリストだった時代に、『AWSを使ったら日本のみんなもすごいスタートアップを作れる』と1万回以上は言った。そのうち、自分でもやってみたくなっちゃったというか」。

資金調達で良い待遇、そしてスケールできるビジネスを目指す

ソラコムのメンバーは13人。そのうち8人がエンジニア。ほとんどが15年以上の経験を持っている。

2015年春の時点で7億円の資金調達を行った理由の1つは一流のメンバーに「ちゃんとした給料を出したかった」ことがある、と玉川氏は打ち明ける。同社のエンジニアは低レイヤーのプロトコルの実装からプラットフォームサービスとしての実装、運用に至る高度な仕事をしている。その上、スタートアップ企業としてのリスクも背負っている。「給料を下げて、リスクも取ってやってもらうのは、アンフェアなゲームだ」と玉川氏は話す。

「シリコンバレーのスタートアップのように、うまくいけばスケールするビジネスモデルで、きちっとお金を集めて、きちっとした待遇でやっていきたい」。

ところで、ソラコムのサービスは、SORACOM Airが”A”、SORACOM Beamが”B”とアルファベット順に並んでいる。「次のサービスは”C”始まり。大分先までサービスができている」そうだ。西村編集長はここで「Androidみたいですね」と突っ込む。Androidのバージョンには、1.5の”Cupcake”から6.0の”Marshmallow”までアルファベット順に並ぶ愛称が付いているからだ。

今後出していくソラコムのサービスも、バーティカルな特定用途向けというよりも、プラットフォーム的に広めていく性格のものを考えている。「皆さんにとって共通に大変で重たいところはどこか。そこをサービス化していきたい」。

ソラコムのパートナー企業に関する説明もあった。フォトシンスのAkerunは、スマートフォンを「鍵」として使えるようにするサービスでソラコムのオフィスでも便利に活用しているとのことだ。キヤノンは複合機など事務機器と組み合わせる実証実験を進めている。車載機器の分野では動態管理のフレームワークスやカーシェアサービス向け応用を狙うGlobal Mobility Service(GMS)がいる。

小売業分野での活用例も要注目だ。リクルートライフスタイルのスマートフォン/タブレット向け無料POSレジアプリ「Airレジ」もソラコムと組む。AWSユーザーとして著名な東急ハンズも、店舗システムのバックアップ回線にソラコムのサービスを導入する。利用料金が格安で従量制のソラコムのサービスは、バックアップ回線としても合理性があるといえるだろう。

ソラコムは、その事業アイデアに基づく人材獲得、資金調達、サービス構築、パートナー獲得を、ごく短期間にやってのけた。利用者コミュニティの形成、エコシステム形成にも成功しつつあるように見える。TechCrunch Tokyoのセッションからは、ソラコムの活躍が日本のスタートアップ界隈への良い刺激になってほしいという願いが伝わってきたように思えた。

Moffが知育領域に進出、米国教育メディア大手の「PBS KIDS」と共同で新アプリ

Moff Band – wearable smart toy from Moff on Vimeo.

9月にバンダイナムコエンターテインメント、ORSO、TomyKなどから1億6000万円の資金を調達したことを発表していたMoff。その際に米国展開の強化についても発表していたのだけれども、詳細が明らかになった。同社は11月20日、米PBS KIDSと共同開発した知育アプリ「PBS KIDS Party」(iOS版Android版)の提供を発表した。アプリは無料。

Moffはウェアラブル製品「Moff Band」を提供するスタートアップ。Moff Bandは端末を腕に巻き付け、内蔵する加速度センサーとジャイロセンサーで人の動きを感知し、その動きをBluetoothで各種デバイスと連携するデバイス。これまではスマートフォンと連携して、疑似的に楽器を演奏したりするような「スマートトイ」という触れ込みで製品を提供してきた同社だが、今後はこれを知育領域にも生かしていくという。

PBS KIDSは日本でもおなじみの「セサミストリート」などを擁する米国の大手教育メディアブランド。彼らと組んで提供するPBS KIDS Partyは、Moffいわく「PBS KIDSが持つ卓越した知育コンテンツのノウハウおよび経験と、子供達に身体を使った活き活きとしたゲーム体験を提供するMoff Bandを組み合わせた、全く新しい知育コンテンツ」なのだそう。

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ターゲットとするのは5〜8歳の子ども。Moff Bandを付けた腕を動かすことで、フリーズダンスやピニャータ、風船、ロケット発射カウントダウンといったゲームを楽しむことができる。また、スマートフォンだけで遊べるモードも備える。もちろんアプリは米国だけでなく、日本でも利用可能だ。表示は英語だが、子ども向けの簡単な単語が中心になるため、日本の子どもにとっては英語教材としても最適だとしている。

Moff代表取締役の髙萩昭範氏に聞いたところでは、2014年10月に同氏が米国のイベント「Digital Kids Summit」に登壇した際にPBS側がMoff Bandの存在を知ったのだそう。そして2015年2月に開催された「New York Toy Fair」で実際に両者が出会うことになり、今回の共同開発が始まったという。

TechCrunch Tokyoにメッシュセンサーでビルの省エネを実現する「Enlighted」が来る

Christian-Rodatus1約2週間後の11月17日、18日に迫ったTechCrunch Tokyo 2015の海外ゲストスピーカーについて、またもう1人紹介したい。日本ではほとんど知られていないだろうけど、広い意味でIoT系スタートアップ企業といえる「Enlighted」から、グローバル・ビジネス部門を統括するChristian Rodatus氏にご登壇いただけることとなった。

フロアのヒトの位置、流れを把握してオフィスの電力消費を最適化

IoTというと最近出てきたバズワードだけど、Enlightedが生まれたのは2009年と、もう少し歴史は古い。Enlightedは過去5回の投資ラウンドで5560万ドル(67億円)の資金を調達している。何をしているかをヒトコトで言うと、センサーネットワークを使ったオフィスビルの省エネだ。以下のようなセンサーデバイスを主に天井に取り付け、オフィス内の光と温度、動きの分布を検知して、電灯や空調をコントロールする。

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Enlightedのセンサー。天井に貼り付けるもの、屋外利用できるもの、小型タイプなどがある

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ヒートマップでヒトの動きを把握

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実際にヒトがいるところだけ電気をオンに

Englightedの1つのポイントは、光を検知するといっても光の強度のことであり、映像を撮影するというわけではないということ。

Enlightedのセンサーデバイスのもう1つのポイントは、ZigBeeを使った無線ネットワークを独自に構築していること。つまり既存のWiFiに依存することはない。Enlightedは、もともと無線技術のプロが集まって「メッシュネットワークが何に使えるか?」という議論から始まった会社なのだそうだ。メッシュネットワークなので、WiFiのアクセスポイントのように複雑なネットワーク設計が不要でインストールが容易というメリットがある。ゲートウェイを介してクラウド側に送った各種メトリックスは、ブラウザ経由で見ることができて、各種設定も利用者がブラウザから直接行える。

オフィスといっても全フロアに常に人がいるわけではない。例えば、夜になって一部の残業組のためにオフィスの電灯が煌々と全フロアを照らしているという光景は、多くの人が見覚えがあるだろう。最近だと「こまめに電気を消しましょう (総務部)」と書いてあるのかもしれないが、もう人間が電気のオン・オフをやる時代は終わるのだ。「まだ人間が消灯してるの?」ということだよね。

オフィス環境の空調も同じだ。ヒトの分布を調べ、空調を最適化することができれば、エネルギー効率は高まる。曜日や時間帯でパターンを学習していくことができれば、人間がやるよりも、はるかにきめ細かなコントロールができて、しかも快適ということになる。

将来的には家賃や人件費の最適化にも

Enlightedは、すでにOracleやGoogle、AT&Tのコールセンターといった大企業など約60社でも採用されていて、6万5000平米のオフィスをカバーしているという。もしこれが日本の話で島型レイアウトオフィスで執務室25平米あたり8人の席があるとすると、だいたい2万人分だ。

Englighted導入による省エネ効果は、学校やオフィスで50%程度の照明用電気代の削減、ビルの通路だと78%の電力カットという事例があるそうだ。エアコンのほうは20〜30%程度の電力削減効果という。

電気代は固定費だから定常的に削ることができれば大きなメリットになるが、実は多くの企業は初期導入コストが大きくなると簡単にEnlightedのようなシステムを導入できない。特にEnlighted立ち上げの初期には、コスト削減効果を証明しづらいために企業は導入をためらった。この問題に直面したEnlightedは「GEO」(Global Energy Optimization)というファイナンス面でのスキームも考案。導入企業に代わって借入を行い、効果を保証した上で初期導入費用の問題を解決しているという。Enlightedはスタートアップ企業だが、テックのイノベーションだけでなく、こうしたビジネス面で工夫も注目だと思う。TechCrunch Tokyoに登壇してくれるChristianはSAPから引き抜かれてCEOの右腕となっている人物だから、この辺の苦労話も聞かせてくれることと思う。

さて、EnlightedをIoT企業と紹介したが、それはセンサーネットワークとして電灯のオン・オフ以上の価値を生み出す可能性が高いからだ。例えば、会議室が10個ぐらいあって、その稼働率を正確に把握できれば、8個に減らして最適化することができるかもしれない。ヒートマップでヒトの流れが分かれば、コピー機をわざとフロアに1つだけに限定して人的交流を生み出すという施策が効果を発揮しているかといった洞察に繋がるかもしれない。小売業者なら、ヒートマップによって売場レイアウト見直しの重要な気付きが得られるだろうから、これは電気代じゃなくて家賃や人件費の話になってくる。

リストバンドのようなヘルスケアアイテムで認知が広がった感のあるIoTだが、企業活動にインパクトのあるプロダクトを生み出しているエンタープライズ系IoTの最先端の話を、ぜひTechCrunch Tokyoに聞きに来てもらえればと思う。あ、ちなみにEnlightedは日本でのビジネス展開を、今まさに始めたところだそうで、パートナー企業になりたいような関係者も注目だ。

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Cerevoがネットとリアルを繋ぐ鍵型スイッチ「Hackey」発売、メディアアートでの利用も想定

Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏

ネット家電スタートアップのCerevoが4月、米国オースティンで開催されたイベント「South By Southwest(SxSW)」で発表していたシンプルなIoT製品「Hackey(ハッキー)」の販売を開始した。

既報の通りだが、Hackeyは無線でインターネット接続する手のひらサイズの鍵型スイッチ。直径56mm、高さ51mm、重量は60g。無線LANを搭載するほか5色に転倒するLEDを備える。給電はMicro USBケーブルから行うが電源は内蔵しない。鍵は2つ同梱される。基本的にすべての端末には異なる鍵がつくが、鍵穴のパターンは一定数であるため、「数千個のHackeyがあれば他の鍵で使える可能性のある、緩いセキュリティ」(Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏)なのだそう。

価格は同社ECサイトで9980円。クラウドファンディングサイトの「indiegogo」を通じて海外販売も行う。21日間の期間内目標額の購入が集まれば同サイト上での販売が可能になり、早期購入者には割引価格が適用される。

高いセキュリティを求めるビジネスユースについては個別対応を検討するほか、分解する必要があるため補償対象外にはなるものの、直径16mmのパネルマウント型スイッチ(ポチッと押し込むようなボタンなどさまざまなスイッチがある)であればユーザーが自由に交換できる。

キーを回すとIFTTT経由でiPhoneに通知がされるデモの様子

キーを回すとIFTTT経由でiPhoneに通知がされるデモの様子

各種のウェブサービスを連携するハブサービスである「IFTTT」や「Zapier」のほか、ヤフーのIoT事業第1弾としてリリースされているアプリ「myThings」とも連携。

Hackeyのキーを回すだけで(厳密にはボタンを交換しようが鍵穴のままであろうが、ONかOFFかという状態のみを連携するサービスに通知する)、Twitterにメッセージを送ったり、スマート電球の店頭をコントロールしたりできる。ヤフー スマートデバイス推進本部アプリ開発室室長の椎野孝弘氏いわく、将来的には「キーをひねればYahoo!ショッピングで商品を購入できる」なんていう世界観の実現を目指すのだという。米国ではAmazonが「Amazon Dash」を発表しているが、まさにあのプロダクトそのものだ。APIも公開しており、Hackey対応のサービスやハードウェアを自由に開発することもできる。

「キャンペーン×メディアアート」での利用を期待

発表会は10月28日に行われており、ここでは僕がCerevo代表の岩佐氏に個別に聞いた話をちょっと紹介する。

さっきAmazon Dashの話を挙げたところではあるのだけれど、岩佐氏は「ボタンを押して日用品が届く」というような利用が“当たり前”になるにはまだ数年はかかるだろうと考えているという。それよりもまず広く使われるだろうと考えているのは「広告代理店のキャンペーンでメディアアート作品を利用する」というようなシーンだそう。

岩佐氏は発表会でも利用例として「渋谷の街中に100個のHackeyをおいて、鍵をばらまくようなイベントをやることもできる」と話していたのだが、例えば商業施設なんかの壁にHackeyのスイッチが並んでたって面白いだろう。実際にそういった企画がどこまで進んでいるのかについては詳細を聞けなかったのだけれど、HackeyはいわゆるMakers的なモノづくりの人たちのためだけのプロダクトではないと同社は考えているようだ。

ありそうでなかったウェアラブル・トランシーバー「BONX」 スノボ好きの元東大生が開発

“ウェアラブル・トランシーバー”というと既存ジャンルに思えるが、そうではない。日本のスタートアップ企業から面白いガジェットが登場した。2014年11月創業のチケイは今日、「BONX」を発表してクラウドファンディングを通じた予約販売を開始した。予約販売の価格は、1個1万5800円、2個だと1つあたり1万4800円などとなっている。色は4色。出荷は11月末から12月中旬。

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BONXは片耳にぶら下げる小型デバイスで、スノーボードや釣り、自転車、ランニングなど屋外で複数人で遊ぶようなときに仲間同士でリアルタイムで会話ができるというコミュニケーションツールだ。耳に装着したBONXは専用アプリを使ってBluetoothで利用者のスマホと接続する。アプリは3G/LTEのネット通信を介して、ほかの利用者と接続しているので、デバイス(利用者)同士の接続距離は、Bluetoothの制限を受けない。

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ここまで聞くと、Blutoothヘッドセットのような感じと思うかもしれないが、以下の点がBONXではユニークだ。

まず、しゃべっているときだけ利用者の音声を拾って接続中の仲間全員に届ける「ハンズフリーモード」を実装しているのが特徴だ。ハンズフリーモードでは、東大発ベンチャーのフェアリーデバイセズが開発した音声認識技術を使うことで、人間の発話だけを検知している。スノボや自転車だと速いと時速30〜50km程度で動くことになるが、このときの風切音や、周囲を行き交うトラックのエンジン音など、外部ノイズを拾いづらい設計になっている。マイクも2つ搭載してマルチレイヤーによる騒音、風切り対策をしているという。こうした対策がない一般的Bluetoothヘッドセットは、スポーツなどでは風切音で使い物にならなくなる。

従来のBluetoothによる音声通話と、BLEによるスマホとのペアリングという新旧のBluetoothを同時に使う「デュアルモード」を使っているのも実装上の特徴で、これによって高音質と低消費電力を実現している。チケイ創業者でCEOの宮坂貴大氏によれば、バッテリー駆動時間は現在バッテリーモジュールの調達中のために不確定であるものの最低5時間以上は確保できるだろうとしている。

BONXはハンズフリーモード以外にも、「ノーマルモード」を用意している。これは、いわゆるPTT(プッシュ・トゥ・トーク)で、トランシーバーのようにしゃべりたいときに明示的にボタンを押す形だ。ノーマルモードで利用するとバッテリーがより長時間持つほか、音声の遅延が少ないという。ハンズフリーモードでは音声検知をしている分、遅延が入るが、ぼくが量産試作機を実際に少し使ってみた感じでは実用上問題ないレベルのものに感じられたことを付け加えておこう。サーバ側の実装としても、遅延の蓄積が検知された段階で遅延分を無視して、リアルタイム性を優先するような処理を入れるなどBONXでは「スポーツなどでのリアルタイムコミュニケーション」というユースケースに特化した最適化をしているそうだ。この利用シーンについてチケイは「アウトドアで激しい運動をしている最中でも、まるでちゃぶ台を囲んでいるかのような自然な会話ができるというのは、実際に体験として画期的」で、「BONXを使うことで逆に、今までがどれだけ孤独だったのか気づきます」と説明している。

GoProにインスピレーション、スノボ好きの元東大生が起業

チケイを2014年11月に創業した宮坂貴大CEOは、東京大学で修士課程を終えるまで合計8年間大学にいたが、「大学時代は、半分くらいはスノボをやっていて、4年間は北半球と南半球を往復していた」というほどのスノボ好き。2011年4月の大学卒業後はボストン・コンサルティングで戦略コンサルタントとしての道を歩んでいたが、BONXのアイデアを思い付いて2014年8月に退社。もともと「いつかは自分で事業をやりたいとは思っていた」という宮坂CEOは、肥料や農薬を使わない「代替農業」での起業も考えていたが、GoProの華々しい成功にインスピレーションを受けたそう。

チケイ創業者でCEOの宮坂貴大氏

「BONXを思い付いたのは、GoProの事業を見たことがきっかけです。サーファーだった人(GoPro創業者のニック・ウッドマンのこと)が自分自身の姿を撮りたいということでカメラを作ったのがGoProの始まり。個人的なニーズを事業化したわけですよね。これは自分でもできるんじゃないかと思ったんです」。もともとスノボの経験から潜在的ニーズは感じていた。ただ、ニーズがあるならすでに製品があって良さそうなもの。「なぜ今までBONXのようなものがなかったのか?」という問いに対して、宮坂CEOはデュアルモード対応Bluetoothチップが出てきたことや、野外でも電波が入るようになった外的環境の変化を指摘する。

ウィンタースポーツの文脈で言えば、実は日本がウィンタースポーツ大国であるということもある。1992年のピーク時に2000万人いたウィンタースポーツ人口が800万人に激減しているとはいえ、まだまだ多いし回復の兆しもある。規模の違いはあれど、世界にある2000箇所のスキー場の3分の1は日本国内にあるそうだ。宮坂CEOは、すでに電波状況を調べるべく各地のスキー場へ足を運んでいるそうだが、シリコンバレーの人たちが必ずいくスキー場のタホ湖ではケータイの電波が入らないという。つまり、シリコンバレーのギークたちは「雪山なんて電波入らないじゃん」と思っているかもしれず、BONXは日本で生まれるべくして生まれたようなところがあるのだ。ちなみに全世界だとウィンタースポーツ人口は5000万〜1億人程度と言われているそうだ。もう1つのBONXのターゲット層であるサイクリストは数千万人規模。

宮坂CEO自身は文系だが、プログラミングやArduino工作を自分で勉強したりハッカソンに参加する中で、ハードウェア関連スタートアップ企業のユカイ工学創業者で代表の青木俊介氏に出会い、そこからiOSハッカーで知られる堤修一氏などをプロジェクトに巻き込んだ。現在は早稲田大学系VCのウエルインベストメントなどから総額1億円ほどの資金を集め、フルタイム4、5人、フリーランスも入れると14、5人というチームでプロジェクトが動き始めているという。

アイデアの検証は2014年末に開始して、今は量産試作段階。この11月にも深センでの量産を開始する。ハードウェアスタートアップが深センで量産するというと、予期せぬトラブル発生という事態も脳裏をよぎるが、実はプロジェクトチームには元エレコムのデザイナーが立ち上げたデザイン事務所が入っていて、深センでの発注経験があるエレコム時代のチームでやってるのだとか。国内GreenFundingでのキャンペーンを終えたら、第2弾として来春にはKickstarterでのキャンペーンも予定している。第2弾では、よりスポーツに適した性能を発揮するモジュールを組み込むアイデアもあるそうだ。

さて、BONXを発表したチケイだが、実は11月17日、18日に渋谷ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルのファイナリストとして登壇が決定している。書類審査による予選を勝ち残った12社のうちの1社だ。まだチケットを販売中なので、ぜひチケイのようなスタートアップの勇姿を会場に見に来てほしい。

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Amazonが多様なIoTシステムを構築/稼働/管理できる総合IoTプラットホームAWS IoTを立ち上げ

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物のインターネット(Internet of Things, IoT)に、また大物がやってくる。今日(米国時間10/8)はAmazonが、ラスベガスで行われたデベロッパカンファレンスre:Inventで、誰かが首を長くして待っていたAWSのIoTプラットホームを発表した。

Amazonによるとそれは、いわゆるマネージドクラウドプラットホーム(管理サービスを伴うクラウドプラットホーム)で、その上で“インターネットに接続したデバイスが容易にかつセキュアに、クラウドアプリケーションやそのほかのデバイス”と対話をする。まだベータだが、最終的には何十億のデバイスと何兆ものメッセージをサポートし、“それらのメッセージを処理してAWSのエンドポイントやそのほかのデバイスに高い信頼性とセキュリティを伴って送ることができる”、という。

AWS IoTはAWS LambdaやAmazon Kinesis、Amazon S3、Amazon Machine Learning、Amazon DynamoDBなどを統合してIoTアプリケーションを作り、インフラストラクチャを管理し、データを分析する。

“インターネットに接続しただけで便利になるわけではない”、とAmazonのCTO Werner Vogelsは今日のキーノートで語る。そしてその言葉のとおりAmazonは、さまざまなオブジェクトのためのさまざまなサービスが複合した、総合的なプラットホームを目指している。そこに複数のオブジェクトが集まって協調的に動き、企業にトラフィックと売上をもたらすだけでなく、もちろんまとめ役のAmazonにも利益をもたらす。

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Vogelsによるとこのプラットホームには、デバイスゲートウェイ、ルールベースのエンジン、デバイスに関するデータを保存するレジストリ、そしてAmazonがDevice Shadowsと呼ぶ機能が含まれる。それは、デバイスのオフライン時のデータを記録しておき、再びオンラインになったときにシステムに送り返す、という機能だ。扱うデバイスは特定されない。Vogelsはジョーク混じりに、“この会場にあるすべてのデバイスがうちのプラットホームに乗ってもよい”、と言った。

同社はIoTプラットホーム2lemteryを今年の前半に買収したから、今日の発表はそれほど意外ではない。しかも、クラウドサービスで競合するMicrosoftが、やはりIoTをクラウドコンピューティングの要(かなめ)のひとつにする、と発表したばかりだ。

デベロッパがこのプラットホームを利用すると、デバイスからのデータを、標準性のあるゲートウェイと、MQTTやHTTPSなどのプロトコルを使って取り込むことが、容易にできるようになる。

AWSのそのほかのサービスと同じく、IoTプラットホームの料金も完全従量制で、基本料金というものはない。この場合何の量かというと、デバイスとAWS IoT間を行き来するメッセージの量だ。ユーザの、AWSエコシステム内での居心地を良くするために、メッセージをほかのAWSサービスに送るのは無料だ(Amazon S3, Amazon DynamoDB, AWS Lambda, Amazon Kinesis,Amazon SNS, Amazon SQS)。

AWS IoTには無料プランもあり、1か月のメッセージ(往+来)が25万までは無料だ。その後の料金は、下表のようになる:

[リージョン] [百万メッセージあたりの料金(ドル)]

Region Price
US East (N. Virginia) $5 per million messages
US West (Oregon) $5 per million messages
EU (Ireland) $5 per million messages
Asia Pacific (Tokyo) $8 per million messages

ところで、上の料金体系が想定している一つのメッセージのサイズは、512バイトである。

このIoTサービスにはすでに多数のパートナーがおり、それらは、Beaglebone Green and Grove IoT Starter Kit, Dragonboard IoT Starter Kit, Intel Edison and Grove IoT Starter Kit, Marvel EZ-Connect MW300 IoT Starter Kit, MediaTek Linkit One IoT Starter Kit, Microchip IoT Starter Kit, Renasas IoT Starter Kit, Seeeduino Cloud and Grove IoT Starter Kit, TI LaunchPad IoT Starter Kit, そしてWICED B4343W IoT Starter Kitだ。

この記事の制作に協力した人: Frederic Lardinois

AWS re:Invent 2015

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

AWSが外部に一般供用するKinesis FirehoseはIoTなどのセンサデータをクラウドへ直接送る

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今日(米国時間10/8)のAmazon AWS re:inventで、センサなどからのデータストリームをクラウドに直接送るサービスKinesis Firehoseが紹介された。

AWSのSVP Andy Jassyによると、Amazonがこの種のストリーミングデータをゲットするためにKinesisをローンチしたのは数年前で、すでにこれを使ってデータを処理するカスタムアプリケーションをいくつか作ってきた。そしてAmazonは顧客を待たせすぎであることに気付き、そしてまた、一部の顧客はそんなデータストリームユーティリティを自分で作るためのリソースを欠いていた。

このFirehose as a service(FaaS)を使えば、ユーザ企業はデータストリーミングのためのアプリケーションを自分で作る必要がなくなる。Jassyによると、APIを一回呼び出すだけで顧客はデータをAmazon RedshiftやS3に置くことができ、ただちにそのデータを使って仕事を開始できる。

このシステムはもちろんエラスティックで、データの量が多ければそのぶん、多くのストレージを使える。データはKinesis上で圧縮および暗号化され、ユーザはデータアップロードの時間間隔や、一回のデータ送付量のリミットを指定できる。

そしてデータがシステムに入ってしまえば、顧客はその暗号を解いてデータをHdoopのクラスタなどにロードし、処理や分析を開始できる。

これには、AWS側に二つのアドバンテージがある。ひとつは、AWSがそのビッグデータ関連サービスをIoT分野にも拡大できること。そしてそれにより、S3などストレージサービスの利用量が大幅に増えることだ。

顧客は自分のアプリケーションのあるAWSにデータを送って利用できるし、Amazonは客単価を増大できる。まさにwin-winの関係だ。

AWS re:Invent 2015

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

Philipsがスマート電球のラインアップにHomeKitに対応したHue Bridge 2.0を追加

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Philipsはスマート電球Hueの製品ラインアップにAppleのHomeKitフレームワークの対応版を加えた。これまでのブリッジはHomeKitに対応していないため、既存のHueユーザーは、HomeKitに対応している新しいブリッジを購入しなければならない。注意点を伝えたところで、新しいブリッジは何ができるかを見ていこう。

iOSユーザーなら、HomeKitで自宅のインターネットに接続できるモノの使い方が変わることになるだろう。まず、HomeKitに対応する端末はSiriで操作することができる。さらに、端末のグループを作ることができる。例えば、ガレージの扉と電球をグループにすると、ガレージの扉を開けたり閉めたりするのと同時に電球が自動で点灯するように設定できる。

現状、PhilipsのHueアプリはSiriからの操作する機能にしか対応していない。Hueの電球を他のプロダクトと組み合わせて操作することはできない。ただ、今後のソフトウェアアップデートでそれも更新されるかもしれない。他の製品にHomeKitのペアリングに対応しているモノがあれば、その製品のアプリからHueの電球をグループに加えることはできる。

HomeKitに対応するデバイスのメーカーには、ecobee3、Elgato、iHome、Insteon、Lutron、iDevices、Schlageなどが含まれている。他のメーカーもソフトウェアのアップデートとハードウェア製品の開発に取り組んでいるところだ。

新しいHueブリッジをインストールし、アプリをアップデートしたら、明かりをカスタマイズするいくつかの指示をSiriに伝えることができる。例えば「Hey Siri、全ての電球を黄色にして」とか「Hey Siri、リビングの灯りを20%に設定して」といった具合だ。

Hueブリッジ 2.0 の価格は60ドルで、既にHueを利用しているユーザーは20ドル安い価格で購入できる。10月6日からスタンドアローンの製品、あるいはHueの電球が一緒に入ったセットを発売する。

既存のブリッジがHomeKitと連動しないのは、ハードウェアの制限によるものだ。新しいブリッジに追加された機能はないが、アプリのアイコンを模した形で、白い外観は以前と変わらない。

アップデートしたカラー電球はこれまでの600ルーメンから多少明るい800ルーメンになった。白い電球も750ルーメンから800ルーメンと明るくなっている。LightStrip(テープ状の電灯)もアップデートしている。また、これらの全ての電球の内部容量も増加しているそうだ。何故電球の内部容量を増やす必要があるのかは分からないが。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

【詳報】ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?

ソラコムがステルスで取り組んでいた新規プラットフォーム事業の詳細を明らかにした。ソラコムは、元AWSのエバンジェリスト玉川憲氏が2015年3月にAWSを退職して設立したスタートアップ企業で、創業直後に7億円というシードラウンドとしては大型の資金調達が注目を集めた。TechCrunch Japanは発表直前にソラコムに話を聞いてきたので詳しくお伝えしたい。

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提供を開始したSIMカードを手にするソラコム創業者で代表の玉川憲氏

ソラコムが取り組むのは、IoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」だ。これだけ書くと、何だまたもう1つ別のSIMカード提供会社か登場したのかと思うかもしれないが、2つの点で注目だ。

1つは、利用用途によっては月額利用料が300円で済むという衝撃的な安さ。これだけでもIoTや業務用スマホ・タブレットの全く新しい市場を切り開く可能性がある。

さらにもう1点、ソラコムの新プラットフォームが注目すべき理由は、基地局だけ既存キャリアのシステムを流用していて、残りをソフトウェアで実装している点だ。通信キャリアはもちろん、従来のMVNO事業者は、パケット交換、帯域制御、顧客管理、課金など、キャリア向けの専用機器を利用していた。ソラコムでは、この部分をAWSのクラウド上に展開したソフトウェアで置き換えてしまった。

これは単に運用コストの削減に繋がるだけでなく、高い柔軟性とスケーラビリティーを確保できるということだ。例えば、SIMカードを搭載したデバイス、もしくはそのデバイスを管理するサービス側からソラコムのAPIを叩いて通信速度をダイナミックに変更できたりする。これは、ちょうどAmazon EC2でインスタンスをソフトウェア的に切り替えるような話だ。暗号化通信もクラウドの豊富なコンピューティングリソースを使うことでソフトウェア的に簡単に実現できてしまう。AWSでサーバーがプログラマブルになったように、ソラコムは通信サービスをプログラマブルにしてしまうということだ。

IoTで未解決だった「通信とセキュリティー」問題を解決する

ソラコムの狙いと、今後のビジネスモデルの話は、創業者である玉川憲氏の経歴に重ねて説明すると分かりやすいかもしれない。

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WatchPad

玉川氏は東京大学大学院機械情報工学科修士卒で、日本IBMの基礎研究所でキャリアをスタートしている。2000年ごろ、IBMで「WatchPad」と名付けられた今で言うスマートウォッチを作っていたそうだ。製品化には至らなかったものの、Linux搭載で腕に巻きつけられる超小型コンピューターとして当事非常に大きな注目を集めた。

「2000年にIBMの基礎研でWatchPadを作っていたのですが、その頃からIoTの課題って変わってないなと思っています。1つはバッテリーが持たないこと。10年かかって2倍にもなっていませんよね。10年で100倍速くなっているコンピューターとは違います。もう1つはネット接続。近距離無線は進化しているものの、まだまだネット接続が難しいのが現状です」

「もう1つ未解決なのはセキュリティーです。デバイスで暗号化をすると小型化や低コスト化ができません」

ソラコムでは、通信とセキュリティーについての回答を用意したという。

近距離通信としてはBluetoothが普及しているし、家庭内のWPANとしてZ-WaveやThread、Weave、ZigBeeなどの規格もある。しかし、これらはスマホやハブといったアップストリームにぶら下がった端末までの接続のためのもので、ネット接続ではない。一方、Wi-Fiは小型デバイスにとっては難しい。玉川氏によれば、これまでモバイル通信は、おもにヒト向け。「IoT向けのモバイル通信を作りたい」と考えて立ち上げたのがソラコムだという。

従来のMVNOと違って専用機材ではなく、クラウド上に各機能を実装

モバイル向け通信に参入するといっても、「全国に設置した基地局だけで1兆円ぐらいのアセット。パケット交換や帯域制御、顧客管理、課金といった部分で数千億円規模の投資。さらにISPも入れて、この3つをやって初めて通信キャリアなわけですが、われわれは、そうはなれません」という。

「一方、MVNOといえば、楽天やイオン、DMMが参入しています。これは(1契約あたり)2000円で仕入れて2500円で売るというビジネスで、ブランドや販売網があればできますが、これもわれわれにはできないし、テクノロジーのビジネスでもありません。われわれがやるのは基地局だけをレイヤー2接続の契約で利用して、残りはクラウドネイティブで提供するというモデルです」

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従来のMVNOの接続では、キャリアが持つ基地局からパケットが飛んでくるゲートウェイに続けて、MVNO事業者が利用者認証や課金管理、利用者ごとのポリシー適用のための機材などをそれぞれ用意する必要があった。ここはエリクソンなど専用ベンダーが提供するハードウェアの世界。ここの機能群をAWSのクラウド上にソフトウェアで実装したのがSORACOM Airで、クラウドの特徴であるスケーラビリティーの高さがメリットだ。玉川氏は「人口の10倍とか100倍のデバイスが繋がってきても対応できるような、IoTに特化したバーチャルキャリア」と、そのポテンシャルを説明する。

スケーラビリティーは上限のほうだけなく、小さい単位から即利用できるという点にも当てはまる。例えばデバイスとサービスを統合したソリューションを展開する企業が通信部分が足りていないようなケース。

「従来のMVNOだとSIMカード2000枚以上、500万円以上からと言われたような話が、SORACOM Airなら1枚から利用できる。誰でも通信キャリアになれるというモデルで、自在に値付けしてビジネスができます」

クラウド上に実装された通信管理機能には、AWSクラウドと同様にWebコンソールからでも、APIからでも操作可能で、複数SIMを一括操作するようなことができる。各端末からでもサービス側からでもAPIを通して、各SIMの通信状態の監視や休止・再開、速度変更といったことができる。

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SORACOM AirのSIMカードは20枚で1万1600円(1枚580円)など。月額基本料金は300円で、32kpbsだと1MBあたり上り0.2円、512kbpsで1MBが0.24円。上り・下りで料金が違ったり、夜間割引も適用されるなど明朗会計だ。料金設定はAmazon EC2のインスタンスサイズを選ぶようなイメージだ。将来的にはニーズに応じて料金を変動させる「スポットインスタンス」のようなことも、アイデアとしては検討しているそうだ。以下がSORACOM Airの価格表。s1.minimumとかs1.fastとか、何だか見慣れた命名規則だ。

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SORACOM Beamで暗号化やルーティングなど高度な処理をクラウドにオフロード

IoTで未解決だった問題として、玉川氏はセキュリティーを挙げていた。これについてはクラウドで潤沢なリソースを使った「SORACOM Beam」というサービスで解決可能だという。SORACOM Beamはデバイスとサービスを繋ぐ通信経路を暗号化したり、ルーティングするサービスだ。

セキュアな通信を行うには暗号化が必要だが、小型デバイスに暗号化処理をやらせるのは重たい。ただ、もともとキャリアのパケット網はゲートウェイ部分まではセキュアなので、ソラコムにパケットが入ってきてインターネット側のシステム(サーバー)へと繋ぐ部分を暗号化すれば良いだけだ。そこで、

・HTTP→HTTPS
・MQTT→MQTTS
・TCP→SSL

という変換をソラコムのクラウド上で行うことで、重たく面倒な処理はデバイスではなくクラウドで済ませることができる。実際、車いす開発のWHILLは、バッテリーをできるだけ使わずにセキュアに見守りシステムを作ることを検討していて、こういうケースだと「TCP→SORACOM Beam→HTTP」とすることで、デバイス側の負荷をオフロードできるのだという。タイムスタンプやSIMのIDもソラコム側で分かるし、カスタムヘッダを付けてHTTPSで送ることもできる。そして、これがまた重要だと思うのだけど、こうした設定はすべて、デバイスの設定に触れることなくAPIで変更ができる。出荷したIoTデバイスに触れることなく、サービス改善や新規サービス開発が可能ということだ。

ソラコムでは今回、デバイスやソリューション、インテグレーションのサービスを提供するパートナープログラム(Soracom Partner Space)を発表している。現時点では、以下のような企業がテストしているそうだ。

・内田洋行:IoT百葉箱
・リクルートライフスタイル:無料POSレジアプリ「Airレジ」にSORACOM Air搭載、イベント会場で1カ月だけ臨時店舗運営
・フォトシンス:スマートロックのAkerunで応用、カギを開けるときには低速、ファームウェアのアップロード時には転送速度をアップ
・フレームワークス:物流システムにおける動態管理システム。トラックにスマホを搭載してGPSデータだけを利用。業務時間のみの小容量の通信
・キヤノン:事務機器でSORACOM Airの実証実験
・東急ハンズ:業務システムのバックアップ回線として利用
・Global Mobility Service:フィリピンでクルマにSORACOM Airを搭載。割賦未払いの利用者のクルマを遠隔地から停止

いろいろな実験的取り組みがベータ期間中にも出てきているが、ソラコムの新サービスは、Amazon S3が出てきたときと似ているかもしれない。S3のリリース初期には開発者だけではなく、個人利用で使ってしまうパワーユーザー層にもアピールしたものだ。SORACOM Airも1枚880円からAmazonで購入できるので、何かのアプリが出てきて個人ユーザーが使うような事例も出てきそうだ。

Amazon同様に継続的な値下げ努力とイノベーションで競合に勝つ

ステルス期間は別として、ローンチしてしまえばアイデアは自明だし、ソフトウェアの話なので誰でも実装できるのではないだろうか。競合が出てきたときに、ソラコムではどうやって戦っていくのだろうか。

「ソラコムは、モバイルとクラウドが融合した初めての形と思っています。単純な通信ではなく、暗号化したり、認証したりという付加価値があます。新機能や新サービスも開発していきます。まだ2つ3つは温めているアイデアがありますし、実際にお客さんと話している中でニーズが見えてくる面もあります」

「これはAWSが出てきたときと似てるなと思っています。AWSはクラウドです。当事は、うちもクラウドですといってプライベートクラウドみたいなのが、たくさん出てきましたよね。でも、その多くはあくまでもサーバー仮想化の話であって、AWSがやっているようなクラウドネイティブではありませんでした。ハードウェアを仮想化して、物理サーバー上に仮想マシンを複数設置しましたという程度にすぎなくて。もちろん仮想化は仮想化で価値はあるんですけど、瞬時に使えて、いつでもやめられて、いくらでもスケールできるというクラウドとは違いますよね」

「もしソラコムが取り組む市場が良い市場だとしたら、今後は競合がたくさん入ってくるはずです。でも正しいアプローチでやれる企業は少ないと思うんです。いつでも始められて、いつでも利用をやめられて、APIが備わっていて、自動化ができてという。そういうことを質実剛健にやっていけるような企業は少ない」

「われわれも運用コストに少しだけ利益をのせて回していくのですが、Amazonみたいな薄利多売モデルで、どんどん価格を下げていきます。Amazonにいた私からすると当たり前のことですけど、ふつうはそうじゃありません。多くの企業は大きな利益を取っていくので、同じアプローチを取る会社が多いとは思っていません」

「かつてAWSがでてきて、その結果、InstagramやDropbox、Pinterest、Airbnb、Uberといったサービスが出てきたみたいに、ソラコムのようなプラットフォームによって、きっと面白いIoTが出てくるんじゃないかなと思います」

TechCrunch Disruptでお披露目された「UnlimitedHand」は日本発のVRコントローラー

記事がいくつも出ているのでご存じかも知れないが、米TechCrunchは米国時間の9月21日〜23日にかけてイベント「TechCrunch Disrupt 2015」を開催中だ。

秋にサンフランシスコ、春にニューヨークと半年ごとに開催されるDisruptは、スタートアップが集まる世界最大級のイベントの1つ。チケットは早期割引もあるが1995ドル〜2995ドル程度と非常に高額。にもかかわらず、毎回数千人が参加するイベントとなっている。僕もこのイベントに参加しているが、速報値として聞いたところ、なんと今回5000人もの参加者がサンフランシスコのPier 70という港湾エリアの会場に集まっている。

ちなみにTechCrunchではDisruptのほかにも「International City Events」と呼ぶ地域ごとのイベントも開催している。11月17〜18日に僕らが開催する「TechCrunch Tokyo 2015」もその1つだ。

Disrupt会場内、展示ブースの様子

Disrupt会場内、展示ブースの様子

このDisruptでは、米国を中心に著名ベンチャーキャピタリストや気鋭スタートアップの代表たちとTechCrunchの記者たちがおもに「Fireside Chat(暖炉のそばでのおしゃべりという意味)」——近い距離で、1対1の公開インタビューをするような形式で、1セッション20分程度だが非常に濃い内容のセッションを繰り広げている。

今年は著名投資家のロン・コンウェイ氏とTechCrunch創業者のマイケル・アーリントン氏のセッションから始まり、ソフトバンク副社長のニケシュ・アローラ氏やDropbox、houzz、GoProといったスタートアップ・メガベンチャーの代表、さらにはKPCB、Y Combinator、Sequoia Capitalといった日本でも名前を聞くVCらが登壇。またラッパーのスヌープ・ドッグ(大麻をテーマにしたライフスタイルメディア「Merry Jane」を立ち上げると発表した)なんかも登壇。米国スタートアップコミュニティの多様性を感じる内容となっている。

Disruptのステージの様子

Disruptのステージの様子

「Startup Battlefield」に日本発のVRコントローラーが登場

Disruptの目玉となるセッションの1つが、スタートアップのプレゼンコンテストである「Startup Battlefield」だ。世界中から集まったスタートアップが、イベントの初日、2日目と、自らのプロダクト(基本的には未発表のもの)のプレゼンを行う。これが予選となっており、通過すると3日目の決勝戦に参加できる。昨年は日本から視線追跡機能を備えたHMD「FOVE」が挑戦して話題になった。

今年もまた日本のスタートアップがこのBattlefieldにチャレンジしている。それがH2Lの手がける「UnlimitedHand」だ。予選プレゼンの様子はすでに翻訳記事でも紹介されているが、代表取締役の岩崎健一郎氏と主任研究員の玉城絵美氏にあらためて話を聞いた。

H2Lは2012年の設立。設立当初は玉城氏が代表を務めており、またAccess共同創業者で投資家の鎌田富久氏も創業を支援している。同社ではもともと「PossessedHand」というプロダクトを開発していた。これはPCとUSB接続腕に電極を仕込んだベルトを巻き、専用のアプリケーションを通じて筋肉に電気刺激を与えることで、手を自由に操作するというものだった。

PossessedHandは2013年に製品化されているが、UnlimitedHandはこのPossessedHandをよりコンシューマー向けの製品として仕上げたもの。まずはゲームなどのコントローラーとしての利用を想定している。H2LではDisruptへの登壇と合わせてKickstarterにプロジェクトを掲載している。価格は188ドルから248ドル。ちなみに開始から約20時間で目標額の2万ドルを集めることに成功している。

「UnlimitedHand」

「UnlimitedHand」

UnlimitedHandもPossessedHand同様、デバイスを腕に巻いて使用する。このデバイスの中にはモーションセンサーと筋変位センサー、Bluetooth、電極などが内蔵されている。以下は電気刺激により指をコントロールしているデモだ。

UnlimitedHandとスマートフォンやHMDなどをBluetoothで接続。ユーザーの手の動きをそのままゲームの入力に利用する。例えばFPS(一人称視点シューティング)であれば、腕で銃を握った様なポーズを取り、人差し指で引き金を引くような動きをすることで銃を撃つという具合だ。銃を撃った際の振動は電気刺激によって再現される。そのほかにも、電気刺激を用いてまるで何かモノをつかんでいるような感覚を届けたりする。ARやVRとの相性を考慮しているとのこと。

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Disruptでデモを披露していた両氏に話を聞いたが、すでにゲームメーカーなどとも話し合いが進んでいるそうで、Kickstarterでオーダーした人たちの手元に製品が届く2016年3月にはUnlimitedHandに対応したゲームタイトルなども登場する予定だという。

ゲームメーカーがこの新しい入力デバイスに対応できるのかということも聞いたのだけれど、プラットフォームにUnityを採用しており、開発のハードルは比較的低いのだとか。Startup Battlefieldの決勝戦は現地時間で本日15時から開催される予定。H2Lは残念ながら選考から漏れてしまったが、日本でまた岩崎氏、玉城氏に話を聞いてみたい。

右から代表取締役の岩崎健一郎氏と主任研究員の玉城絵美氏

右から代表取締役の岩崎健一郎氏と主任研究員の玉城絵美氏

元アップル社員が手がける「まごチャンネル」は、テレビを使って実家と写真や動画を共有する

「まごチャンネル」のセットトップボックス

「まごチャンネル」のセットトップボックス

チカクは9月14日、テレビと接続して利用するIoTデバイス「まごチャンネル」を発表。あわせて、サイバーエージェント・クラウドファンディングの運営するクラウドファンディングサービス「Makuake」で販売の先行受付を開始した。2016年春にも製品を出荷。サービスを開始する予定。

まごチャンネルは、テレビを利用した動画・写真の共有サービス。その名の通りシニア世代とその孫の世代を結び付けることが主な目的。スマートフォンが利用できなかったり機械に苦手意識があるような、ITリテラシーの低い人であってもサービスを利用できるよう、テレビに「孫の写真・動画専用」のチャンネルができるような体験を提供するという。

サービスはテレビのHDMI端子に接続する「家」をデザインしたセットトップボックスと、専用のスマートフォンアプリ、写真などを保存するクラウドストレージで構成される。利用の準備は、ユーザーがアプリを通じて写真や動画を撮影し、クラウドにアップロードするだけ。写真などはセットトップボックスに自動的にダウンロードされ、そのタイミングで本体が光る(家型の筐体の窓の部分が光る)ので、テレビのリモコンでHDMI入力にチャンネルを合わせれば、最新の写真を閲覧できる。

まごチャンネルの利用イメージ

まごチャンネルの利用イメージ

セットトップボックスのサイズは幅140mm×奥行き140mm×高さ40mm、OSはAndroid。HDMI CECに対応し、テレビのリモコンですべての操作が可能。ストレージは当初8GBを想定すると聞いている。通信にはWi-Fiを利用。スマートフォンアプリはiOSとAndroid向けに用意している。Makuakeでは、30台限定で初期費用(セットトップボックス)と月額使用料3カ月無料(通常月額980円)をセットにして1万2800円から提供する。

チカクは2014年の設立。金額は非公開だが、著名経営者などがエンジェルとして投資を実施している。代表取締役社長の梶原健司氏は、新卒でアップルコンピューター(現:Apple Japan合同会社)に入社。コンシューマー製品のマーケティングなどを担当した人物だ。「アップルでの経験は12年。『ヘタしたら潰れるかもしれない』と言われている中で入社した。そこからiMacやiPodがでて再びアップルは成長を始めたが、その中でマーケティングやセールス、新規事業開発まで、日本で経験できることはすべてやった」(梶原氏)

Steve Jobsが亡くなった2011年に同社を退職した梶原氏。その後友人の会社を手伝うなどしたものの、自分のプロダクトを作りたいという思いが次第に強くなっていったという。

「最初は『アップルにいた人間が作るのだから……』とイノベーティブで格好いいプロダクトを作りたいと考えていた」——そう振り返る梶原氏だが、解決したい課題を考えたとき、真っ先に浮かんだのは、「実家と自分の子どもの写真や動画を共有できていない」ということだった。

勤めていたこともあってありとあらゆるアップル製品も実家に置いたが、リテラシーの高くないシニア世代には、MacやiPadですら操作が難しかった。せっかくDropboxで画像を共有しても、親は操作が分からず見ることができなかったという。周囲の知人に話を聞いてみると、専用機であるデジタルフォトフレームですら操作が難しく、使わなくなっていくシニア世代もいたのだという。

そんなところから、「普段利用する『テレビ』で、しかもリモコンで操作可能」「写真が送られてくると通知があり、自然なコミュニケーションができる」といったコンセプトを持つまごチャンネルの企画を進めていった。「親が孫の写真を見たいと思ったとき、(タブレットなどで)『アプリを立ち上げる』というのは実は大きな課題。それを乗り越えたい」(梶原氏)

チカクの創業メンバー。左から桑田健太氏(ソフト担当)、梶原健司氏、佐藤未知氏(ハード担当)

チカクの創業メンバー。左から桑田健太氏(ソフト担当)、梶原健司氏、佐藤未知氏(ハード担当)

IBMがStrongLoopを買収してNode.jsによるAPI開発を同社クラウドプラットホームに導入

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IBMが今日(米国時間9/10)また、同社のクラウドサービ事業を拡大するための買収を行った。今回は、エンタプライズアプリケーションの開発の分野だ。同社が買収したカリフォルニア州San MateoのStrongLoopは、オープンソースのサーバサイドJavaScript環境〜ライブラリNode.jsによるエンタプライズソフトウェアのための、アプリケーション開発ソフトウェアを作っている。企業はそれらのツールを使って、APIを装備したモバイルアプリやクラウドベースのアプリケーションを作り、またそれらを統合して、モバイルやWeb、IoTなどのアプリケーション間を行き交う大量のデータを取り扱う。

価額など買収の条件は公表されていない。StrongLoopはこれまで、ShastaとIgnition Partnersから900万ドルの資金を獲得しており、それには2013年の800万ドルのラウンドも含まれる。

IBMによると、同社はStrongLoopのNode.js機能を、MobileFirstやWebSphereと並ぶものとして、同社の幅広いソフトウェアポートフォリオの一員に加える。Node.jsの開発フレームワークが加わることの主な利点は、各種APIを利用して大量のデータを取り扱うアプリケーションを作り、またバックエンドではそのほかのエンタプライズアプリケーションとコネクトしたい、という企業からの需要に応えることだ。しかもさらに、2013年からすでにNode.jsの開発プラットホームを提供しているAmazonなどとの競合条件も良くなる。

IBMはNode.jsが成長著しい開発フレームワークであると認識しており、それはまた顧客からの要望にも応えうるソリューションである。IBM Systemsのミドルウェア担当ゼネラルマネージャMarie Wieckは、“エンタプライズはIT全体の形を変えて、新しいチャネルに手を出し、新しいビジネスモデルを導入し、またクライアントとのエンゲージメントを個人化したいと願っている”、と述べている。“それを実現するための重要な原材料がAPIであり、StrongLoopのNode.js機能を利用して迅速にAPIを作る能力と、IBMの、クラウドプラットホーム上のJavaとAPI管理におけるリーダーシップが合わさることにより、この二つの強力な開発コミュニティの、イノベーションのポテンシャルが解き放たれるだろう”。

IBMによると、今日からNode.jsデベロッパは、IBMのPaaS Bluemixを利用できる。“StrongLoopのツールおよびサービスと、IBMのWebSphereおよびJavaの能力を組み合わせてIBMは、クライアントにJavaとNode.jsのブリッジを提供でき、それによりクライアントは、自分たちのアプリケーションへの投資からより大きな価値を取り出すことができる”、と同社は言っている。ユーザはさらに、IBMのビッグデータ分析能力や、同社のAIプラットホームWatsonにもアクセスできる。

StrongLoopにとっては、これによって同社の技術とNode.jsそのものの窓口がぐんと大きくなる。“この買収によってNode.jsがエンタプライズ世界におけるメインストリームになり、そのことが業界全体の利益にもなる”、とStrongLoopのCEO Juan Carlos Sotoが言っている。“Node.jsのオープンコミュニティのリーダーとしてわれわれは、コミュニティが引っ張るオープンなイノベーションをさらに前進させ、またグローバルでエンタプライズ級のソフトウェアおよびサービスとも帯同することにより、API経済におけるクライアントヴァリューを増大させたい”。

Node.jsはオープンソースの技術なのでIBMは、この買収を契機にオープンソースコミュニティとの結びつきをさらに強めたい意向だ。同社は、Node.js Foundationのプラチナ会員である。

このサービスの一部は直ちに可利用になるが、そのほかの部分がオンラインで提供されるのはしばらく後になる。とりわけ同社は、“StrongLoopの買収によって得られる一部のクラウド機能は、IBM IoT FoundationにIBMのPaaSであるBluemixと共に組み込まれ、セキュリティと分析機能を強化し、センサのデータからインサイトを生み出す強力なIoTプラットホームへの、エンタプライズアクセスを提供する”、ということだ。

また2016年半ばまでには中国語(繁体と簡体)や日本語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ブラジルポルトガル語へのローカライゼーションを完成して、グローバルなサポートを提供する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

GoogleのOnHubルータを数日使ってみた…もう前のルータに戻る気しない

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日常誰も空気のことは考えないように、インターネットを使っていてもルータのことは考えないのが理想だ。それはどこかに座っていて、あなたが見たいYouTubeビデオをあなたのラップトップに持ってきてくれるだけだ。

でも実際には、インターネット接続の調子が悪くなったらルータをリセットする人が多いだろうし、ルータの設定を変えなければならなくなったら、すごく面倒と思うだろう。今では至るところにある装置なのに、今だにそのユーザインタフェイスは劣悪だ。そこでまた、Googleさんの登場となる。Googleがこのほど発売した200ドルのOnHubルータは、今日のルータの欠点をすべて直した、と言われる。そして確かに、それはほぼ当たっている。

このルータを数日試してみたが、もうVerizonが提供してくれたActiontecルータに戻る気はしない。OnHubのWiFi対応の広さとユーザ体験の簡便さは、これまで使ったどのルータよりも明らかに優れている。

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何がOnHubをそうしているのか? GoogleはTP-Linkとパートナーして、現代的なルータはこうあるべきだ、というものの参照モデルを作り、それをかわいい円筒形のケースに収めた。だからまず形状からして、これまでの無愛想なNetgearのボックスとは違うぞ、と主張している。その中では小さなコンピュータが、ルータの仕事をすると同時に、通常のルータよりも多いアンテナをはじめ、その全能力によって、どんな通信チャネルの上でもベストのデータフローを確実に実現する。

ベストのWiFi接続はOnHubが見つけるから、自分でWiFiを指定する標準のルータよりもずっと良い接続が得られる可能性もある。あたりにアクティブなWiFiがとても多い地域なら、とくにそう言えるだろう。

家庭内のWiFiネットワークがほしいだけの人に対しても、OnHubはいろんなおまけをくれる。

 

ぼくのMacbook Airは現在、約25のネットワークを拾うが、その数が増えるに伴ってネットワークのトラブルも増えた。とくに夜は、誰もが自分のラップトップやタブレットでネットに接続しているから、たとえばNetflixのビデオを見ていると、ひんぱんにバッファリングをするし、完全にホールトすることもある。

でもOnHubに換えてからは、ネットワークのスループットは上がり、ビデオは始動がはやくなっただけでなく、バッファリングという問題はまったくなくなった。もちろんユーザの住んでる場所などで違いは大きいと思うが、すくなくともぼくの場合は、自宅のWiFi接続が驚異的に性能アップした。

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しかしOnHubは、ハードウェアだけの製品ではない。ルータのセットアップと管理は、AndroidまたはiOSにインストールしたアプリから行う。スマートフォンとルータはなんとオーディオで接続し、ネットワークの名前とパスワードを指定すれば、それだけでセットアップは終わりだ。

OnHubにはあの失敗作Nexus Qを思い出させるようなLEDのリングがあって、その色でルータのステータスを知らせる。ブリンクはしない。

モバイルのアプリを使ってWiFiのパスワードをほかの人と共有したり、特定のデバイスにネットワークアクセスの優先権を与えたり(たとえば今遊び中のXboxとか)、どれぐらい帯域を使ってるか調べたり、またルータの基本機能をすべて管理したりできる。

OnHub

標準のルータに比べるとオプションは単純化されているが、簡単であることもOnHubのねらいのひとつだ。それでもWANやDNSの設定にはアクセスできるし、ポート転送(port forwarding)やUniversal Plug-and-Playのセッティングもできる。ルータだから当然だが。

家庭のWiFiネットワークの管理は誰もがやりたがらないが、でもOnHubはそれを、できるかぎり簡単にしている。柔軟性はすこし犠牲になっているが、それはほとんどの人にとって無縁な部分だ。しかし家庭内のWiFiネットワークがほしいだけの人に対しても、OnHubはいろんなおまけをくれる。

家のWiFiに問題がある人は、ぜひOnHubを試してみるべきだ。

ただし構成オプションは、かなり端折(はしょ)られている。Ethernetポートは一つしかない。ほとんど完全に、WiFi専用機だ。デスクトップがリビング以外の部屋に一台だけなら、あまり問題ないが、WiFi非対応機が複数あるなら、OnHubはあきらめよう*。Googleは今、ほかのパートナーと、これと同じようなルータを開発しているから、その機なら、複数のポートがあるだろう。〔*: WiFi対応Ethernet分配器(switch)は使えないのか?〕

OnHubは、弁解の余地なく未来を向いている。その点では、初期のChromebookなどと同じだ。たとえば、接続はWiFiのみ。物理ラインはない。しかもWiFiルータ以外の機能もいろいろあるから、それは家庭に送り込まれたトロイの木馬でもある。

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たとえばOnHubは近く、GoogleのIoTプロトコルWeaveをサポートする。IoT対応になればもはや、単なる優れたルータではない。それは家庭において、Googleのスマートホームシステムの、中心的なハブになる。そのためにはルータが、家中の機器と通信しなければならない。ルータのネットワークリーチを長くするだけでなく、リビングにふさわしいインテリアデザインも必要だ。ネットワークケーブルのリーチは別の問題だが、それは今ここでの話題ではない*。〔*: ルータを家の中心に置く、というイメージか。〕

未来の”Google On”の姿は、実際に見るまで分からないし、本当に”Google On”と呼ばれるのかも不明だ。現時点での現実的な問いは、この200ドルのルータは買う価値があるのか?だ。今OnHubは、まさにルータだから(まだスマートホームのハブではない)。

電波が混んでいたり、ルータのリーチが短かすぎて、家のWiFiに問題がある人は、ぜひOnHubを試してみるべきだ。何も問題がなくて接続が安定している人には、いますぐOnHubを買うべき理由はない…次の製品を、楽しみに待とう。ぼくの場合は、もう、昔のルータには戻れないけど。

〔訳注: Reddit上のOnHub批判: (1)(2)。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

スマートトイのMoffがバンダイナムコなどから1.6億円の資金調達——新領域と米国展開を強化

ウェアラブルデバイス「Moff Band」を2014年にリリースしたMoff。同社は9月7日、バンダイナムコエンターテインメント、ORSO、TomyK(既存株主でACCESS共同創業者である鎌田富久氏の会社だ)、個人投資家を引受先として、総額1億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

Moffは2013年10月の設立。大阪市主催のハッカソン「ものアプリハッカソン」をきっかけに、ウェアラブルデバイスの開発を目指すことになった(当時の話はこちらをご参考頂きたい)。2014年秋に日米で一般発売を開始したMoff Bandは、Amazon電子玩具カテゴリーで国内最高1位、米国最高2位を記録。販売台数に関しては明らかにしていないが、Moff代表取締役の高萩昭範氏いわく手応えは好調だという。

「Moff Band」

「Moff Band」

Moff Bandは内蔵する加速度センサーとジャイロセンサーによって人の動きを感知。Bluetoothで各種デバイスと連携する。例えば手を上下に振ることで、その動作に合わせて疑似的に楽器を演奏したりできる。

プロダクトは当初“スマートトイ”という触れ込みで製品を提供してきた。その先の構想はあったが、「いきなり(機能を)てんこ盛りにしても売れない。まずはベーシックなモノをと考えた」という。そしてトイというアプローチを通じて、「『体を動かす』ということはゲーム体験として通用するということが分かった」(高萩氏)という。そのため今後は低年齢層向けのトイにとどまらないプロダクトの展開を進める。

Moff Bandで取得した動作や姿勢の情報や独自のデータ解析技術を活用し、フィットネスやヘルスケアの分野でのゲーミフィケーション化を可能にするプラットフォーム「アクティブ・ゲーミフィケーション・プラットフォーム」を構築する。またパートナーとの事業開発も強化する。株主となったバンダイナムコエンターテイメントやORSOとのサービスの共同開発をすすめるほか、米国では10月以降大手玩具チェーン店と組んでの商品展開も予定している。

なおMoffは、米国展開の強化に向けて100%子会社の米国法人である「Moff USA」を設立したことも発表している。CEOには、米AppleやAT&T、ACCESS等で事業開発・アライアンス分野のVice Presidentを歴任したAlbert B. Chu氏が就任する。

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

左からMoff USA CEOのAlbert B. Chu氏、Moff代表取締役の高萩昭範氏

MicrosoftがRaspberry Pi用のWindows 10を無償提供

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Windowsの丸裸バージョンをRaspberry Piで動かしてみたい人いる? 実は、それができるんだよ。組み込みデバイス用のWindows、Windows 10 IoT Coreを、今日からMicrosoftが提供しているが、それには、RaspbianなどLinuxベースのポータブルなOSにはない魅力が、あるかもしれない。

まず第一に最近のMicrosoftは、IoTの名に見られるように、ボードコンピュータを無視できないことを、よーく知っている。こいつはUIのないWindowsだから、エアホッケーを対戦するロボットチームでも、あるいは超小型の気象台でも、何でも作れる。言語はC++とC#、JS、VB、それにPythonを使えるし、Node.jsもサポートしている。

おなじみのスタートメニューなどはないが、余計なものをすべて取り去ったWindowsだから、プロジェクトを即座に動かしてみることができる。

サンプルコードがGithubにあり、OSのダウンロードはここからだ。WindowsをRaspberry Pi向けに提供することは、既存の大量のユーザベースに訴求できるという点で、Microsoftにとって、きわめて重要なことなのだ。大量のWindowsを無料配布する危険を冒すのも、Raspberry PiがWindows 10への、とっつきやすい入り口になってほしいからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

“スポーツのためのIoTデバイス”を開発するLemonade Lab、foxconnグループから580万ドルの資金調達

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スマートウォッチがあなたの運動記録を計測しますなんていう話はよくあるけれども、ではその取得したログデータを解析し、実用的なデータとしてリアルタイムに利用できるというサービスはまだまだ少ないような気がする。特にスポーツになるとなおさらだ。スマートウォッチの小さい画面では表示できるデータに限りがあるし、大画面化しつつあるスマートフォンをスポーツ中に持ち歩くのもちょっと面倒だ。

そんな課題を解決すべく、独自にスポーツ特化のIoTデバイスを開発しているのがLemonade Labだ。同社は8月4日、台湾・Foxconn(鴻海科技集団/富士康科技集団)の子会社であるFIH Mobileのほか、複数の個人投資家から総額580万ドルの資金調達を実施したことを明らかにした・。

Lemonade Labは2012年の設立。CEOを務める加地邦彦氏と孫泰蔵氏の2人が立ち上げた会社だ。加地氏はJ.P.モルガンでの勤務後に独立し、モバイル向けの株式情報配信・取引サービスを手がける会社を立ち上げたのち、Lemonade Labを設立することになる。

2000年代から泰蔵氏と親交があったそうで、同氏を通じて孫正義氏とも出会い、ソフトバンクモバイル向けにサービスを開発していた時期もあったそうだ。一方でロードレースに出場。現在はサイクルロードチーム「湘南ベルマーレスポーツクラブ」のゼネラルマネージャー兼選手という肩書きも持っている。

そんなすポース選手としての加地氏のキャリアも生きているというLemonade Labのプロダクト。同社では現在、自転車やランニング向けのウェアラブル製品を開発中だという。

「スマートウオッチ」から「スポーツのためのプロダクト」へ

詳細については現時点では非公開だったが(ティザーサイトはこちら)、体の各所にセンサーを付けてデータをリアルタイムに収集。その結果や、フォームなどの最適なアドバイスをスクリーン(腕時計にしたり、自転車に備え付けたりできる)に表示するものになるという。年内には国内外のアスリートなどをターゲットに、1000台程度の出荷を検討。端末の価格は500〜800ドルを予定。今後は反響を見て2016年以降、米国、欧州、日本のスポーツ愛好者向けに製品の展開を目指す。

「当初は『スマートスポーツウォッチ』を作ろうと考えていた。だが僕らはスポーツのためのプロダクトを作っている。スポーツの本質的な欲求は『上達すること』。そのためには自分のイメージしている動きと、その実態が合っていることが重要で、それを実現する『コーチ』が必要になる。時計と言う機能ではなく、データを分析して、ユーザーにフードバックしてあげることが重要」——加地氏はプロダクトについてこう語る。

今回資金を調達したFIH Mobileの親会社であるFoxconnは、AppleのiPhoneも製造する電子機器受託生産(EMS)だ。同社とはプロトタイプを制作する段階から、孫泰蔵氏を経由してコミュニケーションを取っていたのだという。

「(当初検討していたスマートウォッチの)デザイナーは見つけたが、さすがに向上までは持てない。ファブレスでやっていくしかない。そこで彼らにプレゼンをして、『一緒にやってみよう』となった。現場ではフィジビリティスタディから、ピボットの時も一緒にやってもらい、いざ本腰になって開発するとなったときに投資担当部門に繋いでもらった。」(加地氏)。今回調達した資金の大半はFIH Mobileからのものだ。

なおLemonade Labは2013年にスポーツの運動量を計測し、友人とコミュニケーションできるアプリ「Lemonade」を提供している。

Lemonade Lab CEOの加地邦彦氏

Lemonade Lab CEOの加地邦彦氏

Stroboはセンサー、クラウド、SDKでメーカーの“IoT化”を支援する

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ネットの情報はGoogleが押さえている。それならばハードウェア、IoTの領域でのGoogleを目指そう——そんな決意をして東京大学工学部在席時に1度目の起業を経験したと語るのは、現在Stroboの代表取締役を務める業天亮人氏だ。

同士は2010年にネット家電向けスタートアップのPlutoを設立。2013年には同社を離れることになるが、2014年11月に2度目の起業でStroboを立ち上げた。2015年2月には、East Venturesからシードマネーを調達している。金額は非公開だが数千万円程度。

Strobo代表取締役の業天亮人氏

Strobo代表取締役の業天亮人氏

“IoT化”のための製品群を提供

Stroboが手がけるのは、さまざまなメーカーのプロダクトを“IoT化”できるという製品群「Strobo IoT Suite」だ。Strobo IoT Suiteは、(1)インターネット連動のセンサーやアクチュエーター群、(2)IoTに最適化されたクラウドストレージやメッセージングサービス、(3)IoT製品とアプリを連動するSDK——の3点で構成されている。

メーカーがStrobo IoT Suiteを使って自社のプロダクトをIoT化する手順としては、まずプロダクトにセンサーを組み込み、連携するアプリに開発SDKを導入すればいい。センサーから送られてくるデータはストレージに蓄積され、アプリでそのデータを受け取ることができる。逆にアプリからアクチュエーターに何かしらのアクションを与えるということもできる。

と、仕組みを延々読んでもらうよりも、具体的にどういうことができるのかを知ってもらった方が早いだろう。今回Stroboが発表した試作プロダクトであるスマートクッションの「cuxino(クッシーノ)」とスマートフォン連動型ベッドの「mikazuki」を紹介しよう。

IoT化された「クッション」と「ベッド」を開発中

cuxinoはスマートフォンと連動する、センサー内蔵のスマートクッション。この製品をイスの上に置いて座れば、その姿勢をリアルタイムで評価。重心が偏ったりして悪い姿勢が続くと、アプリを通じてスマートフォンに通知が届く。この姿勢は日・週・月での振り返りが可能。また、離席も検知できるため、仕事中など、席から立つ自動的にパソコンにスクリーンロックをかけるといった使い方ができるのだそう。

その他にも、その日最初にクッションに座った際、Slackと連携して出勤を通知するなど、様々なウェブサービスとの連携も可能となっている。

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mikazukiはスマートフォン連動のベッド。目覚めに合わせて照明やエアコンなどのIoT製品の設定をオンにして、目覚めに最適な環境を用意するほか、睡眠時には眠りの深さや眠りに落ちた時間などを計測。データはアプリにて閲覧できる。さらにこのデータを元にして、「眠りの習慣」を分析。最適な睡眠について提案してくれるという。

業天氏にcuxinoの試作品を見せてもらったのだけれど、センサー類はシート状になっており、既存のクッションのカバーを開き、中にそのシートを入れるだけで利用できるという手軽なものだった。ちなみに写真を撮らせてもらおうと思ったのだが、「試作品のためNG」とのことだった。

メーカーとIoTの橋渡し

ではどうしてそんな既存のプロダクト(クッション)に入れるだけでIoT化できるような製品を作ったのか。その背景にはPlutoでの経験がある。Plutoが提供するのは、エアコンやテレビなど各種家電をスマートフォンで操作するためのデバイスとアプリだ。業天氏は「メーカーとしてやっていくというコンセプト自体を否定するわけではない」とは語るが、いざスタートアップが企画・設計から製造し、販路の確保までを行うということの大変さを痛感してたという。

しかし一方では、既存(かつ非IoT)のメーカーは自らのプロダクトを製造し、その販路も持っている。それであればそのメーカーの製品とIoTを橋渡しするような存在こそが必要ではないのかと考えてStroboの製品群を開発したのだそう。「ターゲットにするのはメーカー。初期導入がしやすいIoTのパッケージを作っている。もちろん製品の評価にはエンジニアが関わる必要があるだろうが、マーケティングや商品設計の担当者だけでも仕組みが理解頂けるようなものを提供していきたい」(業天氏)

同社では今秋をめどにcuxinoとmikazukiの製品モニターのプログラムを実施する予定。プログラムでは、両製品の試作版を実際に利用できるという。希望者は各プロダクトのページから応募可能だ。またStroboでは、プログラムと並行して、パートナーとなるメーカーとの提携などを進めるとしている。