クラウドネイティブアプリ構築を支援するマイクロソフトのオープンソースプロジェクト「Dapr」が1.0に

Microsoft(マイクロソフト)が進めるオープンソースプロジェクトのDaprは、開発者がイベントドリブンのクラウドネイティブな分散アプリケーションを簡単に構築できるようにすることを目的としている。Daprは米国時間2月17日に、本番のユースケースに使用できることを意味する1.0のマイルストーンとなった。Microsoftは2019年10月にDistributed Application Runtimeをローンチした(Daprはこの頭文字を取ったものだ)。それ以降14のアップデートがあり、AzureのほかAWS、Alibaba、Google Cloudなどほぼすべての大手クラウドプロバイダとの統合がローンチされた。

Microsoft AzureのCTOであるMark Russinovich(マーク・ルシノビッチ)氏は筆者に対し、Daprの目標は企業の開発者に対してクラウドネイティブの開発を民主化することだと語った。

同氏はこう説明する。「企業の開発者に求められているのは、これまではクライアント、サーバー、ウェブ、そしてデータベースタイプのアプリケーションでした。しかし現在ではコンテナ化して、スケールアウトしダウンタイムなしでアップデートできるマイクロサービスを作ることが求められています。しかもクラウドサービスと統合する必要があります。その上、多くの企業はオンプレミス環境やクラウド環境で移植でき、さらにクラウド間でも移行できるアプリの作成を求めています。このように、解決に取り組んでいるビジネス上の問題に固有のものではない、あるいは関連していない複雑な問題が山ほど開発者に投げかけられています」。

開発の多くの部分が、アプリケーションが他のさまざまなサービスと信頼性の高い通信をするための仕組みの刷新に関わっている。Daprの背景となっている考え方は、イベントドリブンのマイクロサービスを構築するために必要なツールとなる、これまでになかった単一のランタイムを開発者に提供することだ。とりわけDaprはサービス間通信、状態管理、pub/sub、シークレット管理などに関する多様なビルディングブロックを提供している。

画像クレジット:Dapr

ルシノビッチ氏は「Daprが目指しているのは、クラウドネイティブの分散型で、可用性が高く、スケーラブルで、セキュアなクラウドサービスを日常的に書く作業はすべてDaprが面倒を見て、開発者が自分のコードに集中できるようにしようということです。我々はサーバーレスや、たとえばAzure FunctionsのようなイベントドリブンなFunctions-as-a-Serviceから学びました。開発者はビジネスロジックに集中し、その後はAzure Functionsのバインディングのようなものが他のサービスとの接続を処理します」と述べた。

同氏は、Daprのもう1つの目標は言語固有のモデルから離れてどの言語からでも利用できるプログラミングモデルをつくることだとも述べた。企業の既存のコードには複数の言語が使われている傾向があり、多くの企業が現在のコードを残して既存のアプリケーションをモダナイズする最適な方法を探っている。

ルシノビッチ氏によれば、現在このプロジェクトにはMicrosoft社外に700人以上のコントリビューターがいて(ただし中心メンバーの多くはMicrosoft社員)、1.0のリリースよりも前に本番環境で使い始めた企業も多いという。Daprをすでに利用している大手クラウドプロバイダの1つがAlibabaだ。ルシノビッチ氏は「Alibaba CloudはDaprを本当に気に入って、大いに活用しています」という。他にはHashiCorpや、初期ユーザーであるZEISS、Ignition Group、New RelicなどがDaprにコントリビュートしている。

クラウドプロバイダであるMicrosoftが自社のイノベーションを競合他社がすでに使っていることを喜んでいるとはちょっと奇妙に思えるが、ルシノビッチ氏はこれはまさに計画どおりでDaprを近々ファンデーションの一部にすることを望んでいると述べた。

「我々は数カ月前からオープンガバナンスに向けた取り組みをしており、Daprをファンデーションの一部にすることを目指しています。【略】ゴールはオープンにすることです。これはMicrosoftのものではありません。業界のものです」と同氏はいう。しかしどのファンデーションを指しているかはまだ公表できる段階ではないようだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftDaprオープンソース

画像クレジット:Lynne Gilbert / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

MSが永続ライセンス版次期「Office」発表、本音はクラウド対応Microsoft 365に乗り換えて欲しい

「Office」を使うのであれば、クラウド対応サブスクリプション制の「Microsoft 365」(旧Office 365)を購入してほしいというのが、Microsoft(マイクロソフト)の本音だろう。しかし、同社が約束しているように、当面の間、スタンドアローンで使える永続ライセンス版のOfficeは、引き続き提供されるようだ。しばらく前に発表された「Office 2019」には、標準的なOfficeツール一式が含まれているが、サポート期限が設定されており、定期的な機能アップデートやサブスクリプション版に付属するクラウドベースのツールの恩恵は受けることができない。

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Microsoftは米国時間2月18日、いわゆる買い切り版Officeの新バージョンとして「Microsoft Office LTSC(Long Term Servicing Channel)」と呼ばれる製品を発表した。2021年4月には商用プレビューとして提供が開始される予定で、Mac版とWindows版、32ビット版と64ビット版がリリースされるという。

以前のバージョンが発売された時と同様、Microsoftが本当に望んでいるのは、ユーザーがすでにクラウド版に移行していることであるのは明らかだ。しかし、誰もがクラウドに接続できる環境で使えるわけではないこともわかっているため、このバージョンは一度支払えば、その後は(または互換性のあるハードウェアを持っている限り)使いたい限り使い続けられる永続ライセンスを備えた「特殊なシナリオのための特殊な製品」と同社では呼んでいる。その「シナリオ」には、Microsoftが同意しているように、何年も機能アップデートを受けることができない規制対象のデバイスや、製造現場のプロセス制御デバイス、あるいは単にインターネットに接続できないデバイスなどが含まれる。

「私たちは、Office LTSCを使用するほとんどのお客様が、組織全体ではなく、特定のシナリオでのみ使われることを想定しています」と、Microsoft 365担当執行役員であるJared Spataro(ジャレド・スパタロ)氏は、同日の発表で書いている。

特殊な製品であるためMicrosoftはOffice Professional Plus、Office Standard、および個別のOfficeアプリの価格も最大10%値上げする予定だ。

「将来的に仕事を促進するためには、クラウドの力が必要です」とスパタロ氏は述べている。「クラウドは私たちが投資を行い、イノベーションを起こし、お客様が組織内のすべての人に力を与えることを支援するソリューションを我々が発見する場所であり、私たち全員が順応していく仕事をするための新しい世界でもあります。しかし、時間が止まったシナリオの中にあるお客様に対応する必要があることも我々は認識しています。今回のアップデートは、お客様がこの必要性に対応することを支援するという当社のコミットメントを反映しています」。

このような特殊なユースケースにある人は、価格の上昇を気にすることもないだろうし、Microsoftが将来的に、この長期チャネル版で他の製品のリリースも約束していると聞けばうれしく思うだろう。

今回の新バージョンの目玉としては、ダークモードのサポート、ExcelにDynamic ArraysやXLOOKUPなどの新機能が導入されることが含まれると、スパタロ氏は述べている。もう1つの変更点は、Skype for Businessではなく、Microsoft Teamsのアプリが出荷時に同梱されるということだ(とはいえ、必要ならSkype for Businessをダウンロードすることも依然として可能だ)。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftOffice

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マイクロソフトがXboxやPC用ゲームのアクセシビリティをテストする開発者向けサービスを開始

過去数十年の間に、ゲームがマニアのためのものから一般の人が広く楽しむものに成長してきたことで、障がいを持つ人々はより多くのゲームをプレイすることが可能になったのと同時に、プレイできないゲームも増えてきた。Microsoft(マイクロソフト)は、PCとXboxのゲームをさらに多くの人が楽しめるものにするために、新たに拡張されたXbox Accessibility Guidelines(エックスボックス・アクセシビリティ・ガイドライン)に沿っているか、ゲームを照らし合わせて確認する新しい社内テストサービスを開始した。

このMicrosoft Game Accessibility Testing Service(マイクロソフト・ゲーム・アクセシビリティ・テスティング・サービス)は現在稼働中で、WindowsまたはXboxプラットフォーム向けにゲームを開発している人は誰でも利用することができる。

「このサービスでは、専門家と障害を持つゲーマーで構成されるチームが、Xboxアクセシビリティガイドラインに照らしてゲームをテストします。当社の目標は、7営業日以内に正確でタイムリーなフィードバックを提供することです」と、同社のシニアゲーミングアクセシビリティプログラムマネージャーであるBrannon Zahand(ブラノン・ザハンド)氏は述べている。

これは無料ではないので(Microsoftはコストを明示していないが、おそらくプロジェクトによって異なるだろう)、資金を投じる前にどんなレポートになるのか知りたい場合は、アカウント担当者に相談すればサンプルを見せてくれるだろう。

しかし、このサービスでは、最終的に完成したコードを送る必要はない。「ゲームのアクセシビリティは、ゲーム開発の初期段階で実装する方がはるかに簡単です。ゲーム開発者には、コアUIとゲーム体験を組み込んだ代表的なビルドができたら。すぐに提出することをお勧めします」と、ザハンド氏は述べている。「また、すでに製品をリリースしていて、新しいアップデートやコンテンツ追加で新鮮味を維持しようと考えている開発者にとっても、このテストは価値があるでしょう。多くの場合、コンテンツをアップデートする際に、その一部として比較的小規模な調整や機能追加を行うことができますから、障害を持つゲーマーやアクセシビリティ機能を利用するゲーマーのための改良も施すことができるでしょう」。

このガイドライン自体は2020年1月に導入されたもので、ゲームを開発する際に考慮すべきヒントやチェック項目が何百も含まれている。今回公開された「2.0」バージョンでは、多くの改善点が盛り込まれており、このXboxブログの記事にまとめられている。

全般的にいうと、今回の変更では明快さと適用しやすさが改善され、開発者により直接的でシンプルなアドバイスを提供している。しかし、現在販売されているゲームの中には、このようなことが単に理論的に可能というだけではないことを示す多くの例がある。

今はこれが当たり前のようだ(画像クレジット:Microsoft)

このガイドラインには、UIから操作方法、難易度設定に至るまで、あらゆることが書かれており、興味のあるゲーマーにとっては説得力のある読みものとなっている。いくつかのゲームが、ゲームのコアに影響を与えずにアクセスを向上させるために、どれほどきめ細かな難易度や機能やモードの設定を導入しているのかを知ると、なぜ他のゲームはそうしないのかと不思議に思うようになる。

また、画面読み上げ機能ができるだけ多くの情報にアクセスできるようにするためには、メニュー画面やゲーム内のUIをどのように構成するのがベストなのかなど、より多くの重要なヒントも掲載されている。

いくつかの機能を追加したり減らしたりすることで、ゲームの「意図」した遊び方に支障をきたすのではないかという意見もある。実際、「DARK SOULS(ダークソウル)」シリーズのように難しくて融通が利かないことで有名なゲームが、どうやってそんな変更を優雅に統合することができるのか、想像するのに苦労する。

しかし、そんなことは頭が良い開発者たちに任せておけばよい。一方で、我々が話題にしているこれらのオプションは、実際、最もハードコアなゲームでさえ、ほとんどすべてが切り替えや調整が可能だ。異なる状況にある他人への配慮が欠けていることを口に出したり、感情を露わにする必要はない。

Microsoftは近年、ゲームのアクセシビリティに向けていくつかの取り組みを行ってきたが、その中でも最も顕著なものは、Xbox Adaptive Controller(エックスボックス・アダプティブ・コントローラー)だろう。これはジョイスティック、ボタン、トリガーとして機能するさまざまな補助デバイスを、同社のプラットフォームに接続できるようにするもので、これによってより多くの人々が、ゲームをプレイしやすい環境を整えることができる。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:MicrosoftXboxアクセシビリティ

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

iOS版Microsoft OfficeアプリがiPadに対応、ワード・エクセル・パワポが1アプリで利用可能に

iOS版Microsoft OfficeアプリにiPad対応、ワード・エクセル・パワポが1アプリで利用可能に

Microsoftは2月16日(現地時間)、iOS版のMicrosoft Officeアプリをアップデートし、iPadに対応させました。Microsoft OfficeはWord、Excel、PowerPointを1つのアプリで利用できるようにするもので、iPhoneとAndroid向けには2019年11月からプレビューを開始、2020年2月に正式リリースしていました。

スマートフォン向け「Office」アプリのプレビュー版公開。iOS版は登録終了、Android版は利用可能

これまでもiPadにインストールは可能でしたが、iPad向けに最適化されておらず、iPhone向けの小さな画面で表示される状態でした。しかしアップデート後は、iPadに最適化されたフルスクリーンで利用できます。また、新しい機能として、日付、図形、画像、メモを PDF に簡単に挿入できるようになりました。

なお、これまで通り、WordやExcel、PowerPointを個別にインストールもできます。こちらでは、マウスやトラックパッドのサポートも追加されています。

注意点として、10.1インチ以上のiPadでMicrosoft Officeを利用する場合、ドキュメントの新規作成や編集にはMicrosoft 365サブスクリプションが必要です。9.7インチのiPad / iPad Proと7.9インチのiPad miniは無料で新規作成・編集が可能ですが、全機能を利用するにはやはりサブスクリプションが必要となります。

(Source:App StoreEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Microsoft / マイクロソフト(企業)日本(国・地域)

マイクロソフトの政治活動委員会が選挙結果に反対した政治家への献金を止め進歩的な団体を支援

2020年の米国大統領選挙の結果を覆すために投票した政治家への政治献金を「一時停止」しているMicrosoft(マイクロソフト)は、従業員が出資するPAC(政治活動委員会)のロビー活動方針の変更を発表した。当初の意図を倍増させ、影響力のある組織への資金提供を視野に入れ、ギアを入れ替えることを明らかにした。

Microsoftは2020年1月、米議会議事堂で起きた暴動とそれに続く選挙の正当性をめぐる党派間の衝突という混乱を受け、他のテック業界の主要企業やその他多くの企業と並び、政治献金の停止を発表していた。

当時Microsoftは、通常は新政権への移行中に寄付を一時停止することが多いが、今回は「先週の出来事の影響を評価した後」、そして「従業員と協議した後」にのみ再開すると述べていた。

政治に現金を配分するという問題においては、評価と相談に長い時間を要するが、Microsoftは比較的短期間で目標を達成したようだ。それから2週間、PACに寄付する300人以上の従業員が参加した一連のセッションで、同社は自社の優先事項を反映した新しい戦略にたどり着いた。

ひと言で言えば、選挙結果を覆そうとする企てを支持したり、選挙結果の認定に反対票を投じた上院議員、下院議員、政府関係者、組織をすべてブラックリストに登録するということだ。幸いなことに、グレーゾーンが多くないようで、プロセスは単純化されている。この制限は2022年の選挙(恐ろしいことに、来年に行われる)まで有効となる。

実際には、個々の候補者や政治家に寄付をする代わりに、PACは新たな基金を設立し、「公共の透明性、選挙資金改革、投票権を促進する団体を支援する」としている。

その詳細はまだ明らかになっていないが、これは候補者への直接支援から、独立した組織への支援へと、大きく変わることになる。候補者の資金が何に使われているのかはほとんど知られていないが(この時期ならスーパーボウルの広告などだ)、争いの熾烈な選挙区で、ボーター・サプレッション(ライバル側の支持者が投票に行かないよう誘導すること)やゲリーマンダリング(特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りすること)を企む団体に50万ドル(約5270万円)を与えれば、大きな違いを生むことができる(たとえばジョージア州が共和党の赤から民主党の青に傾くことを助けるように、このような作業を大規模に行おうとすれば、一朝一夕では不可能だし、費用も不要というわけにはいかない)。

Microsoftの国政担当コーポレートVPであるFred Humphries(フレッド・ハンフリーズ)氏が、ブログ記事の中で、志を同じくする企業やPACと「ともに学び、活動する機会があると信じています」と示唆しているように、大きな変化の兆しさえ見られる。もしこれが、同志による連合を作るための狡猾な誘いでないとしたら、それが何なのか、私にはわからない。

同社はまた、PACの名称をMicrosoft Corporation Voluntary PACに変更し、従業員や利害関係者からの自発的な寄付によって資金を調達しており、単なる大企業のロビー活動の裏金ではないことを、より良く知ってもらおうとしている。

最初の「一時停止」時に見られたように、そして実際に2020年に、テック業界において他の多くの企業の行動でも見られたように、1つの大企業(この場合はMicrosoft)が政治的な動きを具体的にしたことで、先手を打たれたくないと思っていた企業がさらに増える可能性がある。これらの変化の長期的な影響を正確に予測することは難しいが(まだかなり全体的かつ暫定的なものなので)、次の選挙期間の政治資金に関する状況は、前回の選挙とは大きく異なることになりそうだ。

カテゴリー:その他
タグ:Microsoft米国大統領選挙選挙

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クラウドインフラ市場は2020年に13.6兆円に成長、リッチな企業はますますリッチに

2020年のクラウドインフラ市場は社会を反映した。世界で最もリッチな企業はますますリッチになり、マーケット最下層の企業はますます落ち込んだ。Synergy Research Groupのデータによると、クラウドインフラ市場は2019年の970億ドル(約10兆2400億円)から2020年は1290億ドル(約13兆6100億円)に成長した。

Synergyはまた、クラウドインフラ市場が第4四半期に370億ドル(約3兆9000円)に達し、第3四半期の330億ドル(約3兆4800億円)からアップし、前年同期比でも35%増だったと指摘した。

過去9カ月、筆者はあらゆる創業者たちからパンデミックがデジタルトランスフォーメーションを加速させており、その大部分はクラウドへのシフト促進だと耳にした。こうした数字は創業者たちの言葉を裏づけているようだ。

いつものように、ビッグ3はAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)だ。Alibaba(アリババ)が第4位に定着し、IBMは5位に後退した。しかしMicrosoftはライバルのAmazonよりも急成長していて、2020年末に初めてマーケットシェアが20%に達した。レドモンド拠点のソフトウェア大企業Microsoftのマーケットシェアは2017年から倍になったことを心に留めておいてほしい。これは驚くべき成長スピードだ。一方でGoogleとAlibabaのシェアはそれぞれ9%と6%だった。

画像クレジット:Synergy Research

Amazonはその点で興味深く、Synergyのデータでは4年連続でマーケットシェア33%前後で横ばいを維持しているが、急速に成長しているマーケットにおける3分の1であり、これはこの部門の拡大にともなって同社もパブリッククラウドの売上高を成長させ続けていることを意味する。

AmazonはAWSの第4四半期売上高127億4000万ドル(約1兆3400億円)で2020年を締めくくった。これは前期の116億ドル(約1兆2200億円)から増え、ランレートは初めて500億ドル(約5兆2700億円)を超えた。一方でMicrosoftの数字は決算から解析するのはいつも難しく、370億ドル(約3兆9000億円)の20%を計算すると74億ドル(約7800億円)で、これは前期の59億ドル(約6200億円)から増えている。

Googleは第3四半期の29億8000万ドル(約3200億円)から第4四半期は33億ドル(約3500億円)に増え、Alibabaは同時期16億5000万ドル(約1700億円)から22億2000万ドル(約2300億円)に増えた。

SynergyのプリンシパルアナリストJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、トップ企業は巨大で絶対的なマーケットシェア、それからクラウドプロバイダー間の大きなギャップで自社の周りをしっかりと固めていると話す。「AWSは過去10年大きなサクセスストーリーで、広範囲のIT部門企業との競争激化にかかわらずマーケットでかなり強固な地位をキープしています。これはAmazonとAWSの経営チームにとって、新体制になっても状況は変わらないと思わせるすばらしい証拠です」と同氏は筆者に語った。

ディンスデール氏は、Microsoftが相手としてAWSは相応しいライバルだが、いつかの時点で同社は成長の壁にぶつかる運命にあるとみている。「MicrosoftがAmazonとの差を縮め続けるのはもちろん可能ですが、MicrosoftのAzureが大きくなるにつれ、かなり高い成長率を維持するのは難しくなります。これは大数の法則です」。

一方、クラウドインフラ業界の下位のマーケットシェアは減少し続けている。「マーケットシェアで敗れた企業は小規模クラウドプロバイダーの集まりで、過去16四半期で13ポイントのマーケットシェアを失いました」とSynergyは声明で述べている。

しかし、こうしたプレイヤーにとってすべて負けではないとディンスデール氏は話す。「比較的小規模のプレイヤー(あるいは小さなマーケットシェアを持つ大企業)はニッチな特定マーケット(地理、サービスタイプ、顧客の部門に基づくもの)にフォーカスしたり、あるいは幅広い顧客に広範なクラウドサービスを提供しようと試みることができます。前者の企業は極めてうまく振る舞うことができ、後者の場合はかなり厳しいでしょう」と述べた。

Canalysの数字は少し異なり、クラウドインフラ市場が1420億ドル(約14兆9800億円)で、第4四半期は400億ドル(約4兆2200億円)としたが、各社のマーケットシェアはSynergyのものと同じだったことは記すに値する。

画像クレジット:Canalys

パブリッククラウドの売上高はある時点で意味を失うほどに大きくなったが、それでも世界中のIT支出に占める割合としては比較的小さいままだ。Gartnerの推計によると、世界の2020年のIT支出は3兆6000億ドル(約379兆8300億円)だった。つまり、そこでクラウドインフラマーケットが占める割合は3.85%にすぎないことを意味する。

次のことを少し考えてほしい。IT支出の4%以下が現在、クラウドインフラに向けられ、かなりの成長余地を残していて、数年のうちに何十億ドル(約何千億円)も成長する。

もちろん他のプレイヤーが参入してトップ企業を慌てさせればもっと興味深いものになるが、我々がコンピューティングについて想定している道中に予期せぬ何かやドラマティックなことが起こらない限り、差し当たってこのままトップ企業は猛烈な勢いで我が道を突き進んでいくだろう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:クラウドコンピューティングAmazonAWSMicrosoftMicrosoft AzureGoogleGoogle CloudAlibabaAlibaba CloudIBM

画像クレジット:ViewStock / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

Microsoftがリモートワークが当然になった時代の新しい社内イントラネット「Viva」を発表

米国時間2月4日、Microsoft(マイクロソフト)は新しい「従業員エクスペリエンスプラットフォーム」、マーケティング用語を使わずにいうなら多くの大企業が従業員に提供しているイントラネットサイトの後継となるVivaを発表した。VivaはSharePointやYammerといったMicrosoftのツールの統合をベースに設計され、社内コミュニケーションへのアクセスなど標準的な機能を備えている。Vivaでチームの分析をしたり、LinkedInラーニングなどのトレーニングコンテンツプロバイダ(SAP SuccessFactorsのようなもの)と統合することもできる。MicrosoftがViva Topicsと名づけた、社内でナレッジを共有する機能もある。

企業が社内コミュニケーションやそのためのイントラネットの提供に多額の費用をかけていることをご存じだろう。そして従業員は実務をこなすためにそれをすぐに無視してしまう。しかしMicrosoftは時代が変わりつつあると主張する。多くの企業でリモートワークが継続され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が終息しても(そう願いたい)それは続くからだ。一部の従業員だけがリモートワークを続けたり出社とリモートのハイブリッドを選んだりするとしても、このような従業員が適切なツールにアクセスでき、自分が会社の一員であると感じられるようにする必要はある。

画像クレジット:Microsoft

MicrosoftのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は事前に収録されたビデオの中で「我々は世界がこれまで見てきた中で最大規模のリモートワークの実験に参加し、従業員のエクスペリエンスに劇的な影響がありました。世界が元に戻っても、後戻りすることはありません。働く時間、場所、方法が柔軟であることが重要です」と語った。

ナデラ氏は、どんな組織にも社内のオンボーディングのプロセスから同僚との共同作業、教育の継続を通じて従業員をサポートする、統一された従業員エクスペリエンスプラットフォームが必要になると説明する。従業員がリモートで仕事をしているため、企業は社内文化を維持し従業員間のコミュニティを育むのに苦戦している。Vivaはこうした状況を改善することを目指している。

当然のことながら、VivaはMicrosoft 365やそれに付随するツールと連携し、主力コラボレーションサービスのMicrosoft Teamsや、2012年に買収しサポートが継続されている従業員コミュニケーションツールのYammerとも統合されている。

Vivaは複数のサービスから構成されている。Viva Connectionsは社内のお知らせやポリシー、福利厚生、社内コミュニティにアクセスするためのサービスで、Yammerを利用する。Viva Learningはその名のとおり学習リソースを利用するためのサービス、Viva Topicsは社内全体でナレッジを共有するサービスだ。いずれもモダンなイントラネットであれば、スタートアップが提供するものであってもJiveのような定評のある企業が提供するものであっても、標準で備えているサービスだ。

Viva Insightsは異質なもののように感じられる。少し前にMicrosoft Productivity Scoreが議論になったことを考えればなおさらだ。Viva Insightsはたとえば管理職が、チームが(個々のチームメンバーではなく)燃え尽き症候群の危機に瀕していないかといったことに関する洞察を得て、通知をオフにしたり日々の優先順位を設定したりするように促そうとするものだ(良いマネージャーなら分析がなくてもそのようにしてほしいが、2021年はこれが必要だ)。Viva Insightsは企業のリーダーが「組織の仕事のパターンと傾向に目を向けて、複雑な課題を解決し変化に対応する」のにも役立つように作られている。なるほど。

2021年のMicrosoftだけあって、今回の発表には従業員の健康に関する話も多い。大半の従業員にとって健康とは、会議が少なく、集中する時間が長く、仕事が終わったら通知をオフにすることだ。こうしたことを支援するテクニカルなツールはもちろんあり、これはまさに企業文化とマネジメントの問題だ。そのためにLinkedInのソリューションであるGlintと統合して分析する必要があるのかどうか筆者にはわからないが、こうしたこともできるようになった。

Microsoft 365のコーポレートバイスプレジデントであるJared Spataro(ジャレッド・スパタロウ)氏は次のように語った。「仕事を取り巻く世界が変化する中で、創造性とエンゲージメント、健康を重視することでイノベーションの次の展望が得られます。その結果、組織はレジリエンスと創意工夫の文化を築くことができます。我々のビジョンは、組織が積極的な従業員と成長を促すリーダーの協力で繁栄する文化を創造できるよう支援するための従業員エクスペリエンスプラットフォームを提供することです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MicrosoftMicrosoft VIvaリモートワーク

画像クレジット:Microsoft

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

マイクロソフトの量子計算機プラットフォーム「Azure Quantum」がパブリックプレビューに

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間2月1日、Honeywell Quantum Solutions、IonQ、1QBitといったパートナーが提供する量子ハードウェアとソフトウェアツールを利用するためのクラウドベースプラットフォーム「Azure Quantum」がパブリックプレビューに入ったと発表した。Azure Quantumは2020年5月から限定プレビューが始まっていた。当時はMicrosoftの一部パートナーや顧客にしか公開されていなかったが、2月1日からは量子コンピューティングに興味のある人は誰でもサービスの試してみることができる。

このサービスは現在、わずかな料金で提供されている。しかし、今後はすぐに値段が高くなる可能性がある。完全な料金表はこちらから確認できるが、基本的なシステムの利用方法では計算時間あたり約10ドル(約1000円)が必要になる。

画像クレジット:Microsoft

量子コンピューティングはまだ黎明期にあるため、MicrosoftやIBM、Rigettiのような競合企業の特定のプラットフォームで構築することは、特定のツールセットを購入することを意味する。Microsoftの場合、それはオープンソースのQuantum Development KitとそのQ#言語、そして最近発表されたLLVMベースのハードウェアに依存しないQuantum Intermediate Representation(QIR)中間言語だ。

「Azure Quantumのパブリックプレビューへの移行は、量子コンピューティングと私たちのエコシステムにとって重要なマイルストーンです」と、Microsoft QuantumのGMであるKrysta Svore(クリスタ・スヴォー)氏は伝える。「これはNational Quantum Initiative Quantum Research Centersへの選定、新しいAzure Quantumパートナーの追加、量子ビットのスケーリング制御回路におけるハードウェアの進歩など、2020年の勢いを引き継いでいます」。

量子コンピュータを構築するためのMicrosoftの取り組みは、まだ実用的な量子ビットには至っていないが、同社は他の分野でも前進している。しかし当分の間、Microsoftはこのプラットフォームを動かすために、同分野の他のプレイヤーとの提携に賭けている。これにより同社は「世界初の量子ソリューション向けフルスタック型パブリッククラウドエコシステム」を提供していると主張することも可能になる。

画像クレジット:Microsoft

関連記事:マイクロソフトが量子計算機プラットフォームを限定プレビュー
カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftAzure Quantum量子コンピュータ

画像クレジット:David Ryder/Bloomberg / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Google検索のオーストラリア撤退警告に対し、マイクロソフトがBingで穴埋めと政府に申し出

Google検索によるオーストラリア撤退警告に対し、マイクロソフトがBingで穴埋めと政府に申し出

現在(2月1日時点)Googleはオーストラリア議会に提出された法案に反発し、現地から検索エンジンサービスを撤退すると警告しています。この事態に対して、マイクロソフトが自社の検索エンジンBingを提供して穴埋めするとオーストラリア政府に申し出た、と報じられています。

この問題の発端は、オーストラリア政府がGoogleやFacebookなど大手テクノロジー各社に対し、ニュースコンテンツを提供する企業にロイヤリティーを支払うよう義務づける法案を提出したことです。要はGoogleの検索結果やFacebookのニュースフィードに国内の出版社や放送局のコンテンツが含まれている場合は、広告収入を分かち合えというわけです。

これに対してGoogleのオーストラリア・ニュージーランド担当マネジングディレクターのメル・シルバ氏は議会公聴会で「実行不可能だ」と語り、法案が成立した場合は「オーストラリアでGoogle検索の提供を止めるしかない」と述べています。つまりGoogleが検索サービス撤退の可能性によりオーストラリア政府を脅している、との見方もあります。

しかし現地メディアのオーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(主にビジネスと金融を扱う全国紙/Ausdroid経由)によれば、MSのサティア・ナデラCEOはオーストラリアのスコット・モリソン首相と直接会談したとのこと。そこで自社のBingによりGoogle検索が撤退した空白を埋められると助言したとの観測が伝えられています。

さらにReutersはモリソン首相がナデラCEOとの会談を認めた上で「Googleが検索エンジンを撤退した場合、Bingでギャップを埋めることができると確信している」との発言を報じており、事実である裏付けが取れています。

その可能性がどれほどかはさておき、モリソン首相はGoogleが撤退をちらつかせても譲歩するつもりはない模様です。「ハッキリさせておきましょう。オーストラリアでは、オーストラリアで可能なことのルールを決めています。それは議会で行われ、政府によって行われます。それがここオーストラリアでの仕事の作法です。オーストラリアで仕事をしたい人は大歓迎ですが、我々は脅しには応じません」と決意の程を語っています。

が、Googleも孤立しているわけではありません。1月15日には米国通商代表部が公式文書で「我々はオーストラリアに対し、指定されたプラットフォームに課せられる潜在的な義務の程度がAUSFTA(米・豪自由貿易協定)と一致しているかどうか検討するよう強く求める」と表明しており、米国政府の後押しを受けている状態です。

標準検索サービスがGoogleがBingに置き換えられた未来には興味深いものがありますが、依然として事態は流動的であり、もしかするとGoogleとオーストラリア政府が電撃的に和解することもありうるのかもしれません。

ともあれ、ライバル企業が大きな市場を手放す可能性があると見るや、すかさず動き出すIT巨人のフットワークの軽さは、日本の企業にとっても学べるところがありそうです。

Engadget日本版より転載)

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企業向けID管理のOktaがSaaSへのログイン統計発表、Office 365が(一応)トップ

企業向けにID管理とクラウドアクセスのインテグレーションを提供しているOktaは毎年、同社の認証システムを通じて何百万件ものSaaSアクセスを処理している。ありがたいことに同社はそのデータをベースにした年次報告書を発表してくれる。最新のレポートによれば、この1年でダントツの人気だったツールはMicrosoft 365(旧Office 365)だった。

アプリの人気は地域によって大きく違っていることに注意すべきだが、Office 365はグローバルでも国、地域別でも、要するにどの項目でもナンバーワンだった。レポート中の他のプロダクトではこういう結果が出ていない。つまりOffice 365は世界中で(少なくともOktaを使用している企業の間で)最も広く使用されていることが判明した。

クラウド関連の問題では常にそうだが、サインインした人数が多いというだけではOffice 365とMicrosoft(マイクロソフト)が全面的な勝者だと断定はできない。現実のクラウドは複雑な市場であり、ユーザーがあるツールを利用していて、直接ライバル関係にある別のツールを利用することを妨げるものではない。

たとえばMicrosoft 365のユーザーの36%が、よく似たオフィス生産性ツールであるGoogle Workspace(旧G Suite)を併用していることがレポートで述べられている。OktaはOffice 365のユーザーの42%がZoomを使用し、32%がSlackを使用していることも発見している。

Office 365のTeamsにもZoomに似たリモートワーク機能が無料でバンドルされていることを考えると、これは大いに注目すべき点だ。またGoogleハングアウトも利用者が多い。ユーザーは好みに合わせてツールを選び、ときにはほぼ同機能のライバルツールを併用することもあるわけだ。レポートによればOffice 365ユーザーのうち44%がSalesforce、41%がAWS、15%がSmartsheet、14%がTableau(Salesforceが所有)を利用している。ところがMicrosoftはこれらすべてのカテゴリーで競合プロダクトを持っている。

Microsoftはもちろん巨大企業であり、膨大な製品群を有している。しかしこのレポートはユーザーには「ブランド選考」はほとんどないことを示している。Office 365のファンだからといって、同社の他プロダクトのファンになるということはない。同種、同機能の製品カテゴリ内でさえブランドへの忠誠心はなく、ライバル製品の併用が普通に行われている。

レポートを読み進めると他のデータもとても興味深いことがわかってくる。もちろんこのレポートではSaaS全般の状況を知る決定的な窓ではない。あくまでOktaインテグレーションネットワーク(OIN)上でのSaaSの利用状況についての統計だという点は念頭に置くべきだろう(同社自身、調査手法の章でこの点を明確に認めている)。そうであっても非常に重要なレポートだ。

Oktaは「本レポートのデータは、あくまでOktaのユーザーを対象としたものであることに注意してください。この統計はOINを介してアクセスされたアプリケーションやサービス、またユーザーがそれらのサービスを介してアクセスしたツールに関するものです」と述べている。

そうであってもこの統計は9400社のOktaユーザーと6500種類のSaaSツールへアクセス状況を集計したものであり、当然同社はSaaSの現状について見解を得る非常に都合がいい立場にある。このレポートは貴重な資料だ。クラウドは複雑であり、決してゼロサムゲームではないという結論が引き出せそうだ。また多数の分野で勝者になっても全面的な勝者であることを保証するものではないことも判明した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SaaSMicrosoft 365Okta

画像クレジット:Ron Miller/TechCrunch

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(文:Ron Miller、翻訳:滑川海彦@Facebook

Xbox Live Goldの値上げがユーザーの怒りを買い米マイクロソフトは瞬く間に撤回

【更新(米国時間1月22日)】Microsoft(マイクロソフト)は発表から24時間も経たないうちに、不満が爆発したファンとの関係をなんとか修復しようと、Xbox Live Goldの値上げ計画を撤回した。

「我々は本日、ミスを犯してしまいました。みなさんからいただいた提言はもっともで、おっしゃるとおりです。友達とつながって遊ぶことはゲームの重要な部分であり、毎日それを利用しているプレイヤーのみなさんのご期待に応えることができませんでした。結果、Xbox Live Goldの価格設定を変更しないことを決定しました」と同社はブログ記事に書いている。

マイクロソフトは、Xboxユーザーと和解するために、さらに一歩踏み込むと述べている。同社は、Xbox上の無料ゲームについて、オンラインプレイのためにXbox Live Goldのサブスクリプションを必要としなくなると述べた。「今後数カ月の間に、できるだけ早くこの変更を実施できるよう努力しています」と同社は書いている。

米国時間1月22日金曜日の早い時点での元記事は以下のとおりだ。

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金曜に誰も見ていない時間、悪いニュースをうやむやにしようとするかのように、マイクロソフトは米国時間1月22日朝、Xbox Live Goldの価格を値上げすると発表した。

価格変更の内訳は以下のようになっている。

1カ月プランは月10ドル(約1038円)から11ドル(約1141円)に変更。
3カ月プランは25ドル(約2594円)から30ドル(約3113円)に変更。
6カ月プランは40ドル(約4151円)から60ドル(約6226円)に変更(ただしマイクロソフトによると、適用されるのは新規メンバーのみ)。

「あれ、12カ月プランはどこに?以前、そのオプションがなかったっけ?」

確かにあった!以前それは60ドル(約6226円)だった。つまり、新しい6カ月間のサブスクリプションの価格である。同社は2020年7月に12カ月プランの販売を中止していたが、おそらくこの変更が目前に迫っていたため、(販売を続ければ)12カ月間のLive Goldの料金が120ドル(約1万2452円)になることを値札上で認めなければならなかったのが理由だろう。

良い知らせもある。6カ月プランの値上げは、新規メンバーにのみ適用されるという部分だ。すでに6カ月のサブスクリプションを利用している場合(または自動更新の12カ月サブスクリプションで適用免除される場合)Xboxサポートは、価格が上がらないことをツイートで確認している。

「既存の12カ月または6カ月のオンラインXbox Live Goldメンバーであれば、価格の変更はありません。メンバーシップの更新を選択した場合は、現在の価格で更新されます」。

1カ月プランや3カ月プランの場合は、新しい料金を支払うことになりそうだ。

では、なぜ料金を引き上げるのか?マイクロソフトは公式には理由を説明していない(何年も、一部の地域では10年も、値上げしていないことを指摘する以外は)。少なくともその一部分は、月15ドル(約1556円)の(Xbox Live Goldにオンデマンドタイトル食べ放題をバンドルしている)Xbox Game Passをより魅力的に見せるためだと推測できるだろう。

【Japan編集部】1月24日現在、日本では1カ月プランは税込824円、3カ月プランは税込2138円となっている。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:MicrosoftXbox

画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:Nakazato)

GM傘下の自動運転車Cruiseが約2000億円を調達したラウンドにマイクロソフトも参加

Cruiseは新たなエクイティラウンドで20億ドル(約2080億円)を調達し、評価額は300億ドル(約3兆1200億円)に上昇した。また、投資家およびパートナーとしてMicrosoft(マイクロソフト)が加わった。

GMやホンダなどの機関投資家も、Cruiseの自動運転技術が商用化に近づいているとして追加で投資した。

Microsoftの資本も重要だが、少なくとも両社の見方によればこのパートナーシップはCruiseにとって対等で長期的な価値がある。長期にわたる戦略的パートナーシップの下で、CruiseはMicrosoftのクラウドおよびエッジコンピューティングプラットフォームであるAzureを利用して自動運転ソリューションを大規模に商用化する予定だ。

自動運転車を手がける企業が商用化、つまり自社の技術を広く提供することを目指すとなると、堅牢なクラウドコンピューティングプラットフォームが必要だ。人や荷物を運ぶ多くの自動運転車を運用すると膨大な量のデータが生成され、自動運転車企業にとってはクラウドサービスにかかるコストが増大する。

CruiseとMicrosoftのパートナーシップは、両社にメリットをもたらすことを狙っている。Cruiseはクラウドサービスを低コストで利用でき、Microsoftは(まさに自動運転車のような)機械学習とロボティクスを実用化し大規模に展開するために必要なワークロードを扱うエッジシステムのテストを実施できる。

MicrosoftのCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は発表の中で「デジタルテクノロジーの進化は私たちの仕事や生活のあらゆる面を再定義しています。人やモノの動きについても同様です。CruiseとGMが選んだクラウドとして、私たちはAzureのパワーを活かして両社が成長し自律輸送の主流となるよう支援していきます」と述べている。

米国時間1月19日の発表によれば、パートナーシップはGMにもおよぶ。Microsoftは今後GMのパブリッククラウドプロバイダーとして、GMがデジタル化の取り組みを加速しデジタルサプライチェーン全般にわたって業務を効率化するよう支援する。

パートナーシップによってCruiseは電動自動運転車の商用化を加速できる。また、GMの会長兼CEOであるMary Barra(メアリー・バーラ)氏は「GMは2025年までに全世界で30車種の電気自動車を投入し、新たなビジネスやサービスを創造して成長するにあたって、クラウドコンピューティングの果たす役割はますます大きくなると認識しています」と述べた。

関連記事:GMの自動運転車技術子会社Cruiseが商業化に向けデルタ航空元幹部を採用

カテゴリー:モビリティ
タグ:CruiseGM資金調達MicrosoftAzure

画像クレジット:Cruise

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(翻訳:Kaori Koyama)

2021年最も働きがいのある米国のテック企業、スタートアップベスト10(Glassdoor調べ)

Glassdoor(グラスドア)が2021年に「最も働きがいのある米国企業」の年間ランキングを発表した。その中から大企業(従業員数1000人以上)と中小企業で、上位10社のテック企業を抜き出してみた。

大企業のリストは、従業員数1000人以上の企業の中から、そこで働く従業員のフィードバックに基づいてランキングが作成されている。Glassdoorでは、従業員がその会社のCEO、出世の機会、報酬と福利厚生、文化と価値観、ワークライフバランスといった項目で企業を評価している。大企業でランクインするためには、各属性ごとにそれぞれ75件以上の評価を得る必要がある。中小企業ランキングでは、会社が75件以上の評価を必要とする。

それでは、Glassdoorによる米国で働きたいハイテク企業トップ10をご紹介しよう。カッコ内には、ベスト100企業における各社の総合順位と平均従業員評価が記載されている。

2021年テック系企業ベスト10

1位 NVIDIA(エヌビディア)[総合2位、4.5点]
2位 HubSpot(ハブスポット)[総合4位、4.5点]
3位 Google(グーグル)[総合6位、4.5点]
4位 Microsoft(マイクロソフト)[総合9位、4.5点]
5位 Facebook(フェイスブック)[総合11位、4.4点]
6位 LinkedIn(リンクトイン)[総合13位、4.4点]
7位 DocuSign(ドキュサイン)[総合15位、4.4点]
8位 KnowBe4(ノウビフォー)[総合16位、4.4点]
9位 Salesforce(セールスフォース)[総合17位、4.4点]
10位 RingCentral(リングセントラル)[総合18位、4.4点]

そしてGlassdoorの中小企業ランキングよると、2021年に就職すべきテック系スタートアップのトップ10は以下のとおりだ。

2021年テック系スタートアップベスト10

1位 Ike(アイク)[総合3位、4.9点]
2位 Harness(ハーネス)[総合6位、4.9点]
3位 Lendio(レンディオ)[総合8位、4.9点]
4位 Jobot(ジョボット)[総合9位、4.9点]
5位 Lower(ローワー)[総合10位、4.9点]
6位 Orchard(オーチャード)[総合16位、4.8点]
7位 SimplrFlex(シンプラフレックス)[総合17位、 4.8点]
8位 Flockjay(フロックジェイ)[総合21位、4.8点]
9位 Wonolo(ウォノロ)[総合24位、4.8点]
10位 Thrasio(スラシオ)[総合27位、4.8点]

【注記】総合14位にランクインしたAsana(アサナ)は公開企業であるため、このリストから除外した。また、Ping Identity(ピン・アイデンティティ)も、従業員数が1000人近くに達しており、まず間違いなくスタートアップの段階を超えているため、このリストから除外している。

カテゴリー:その他
タグ:ランキング

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

マイクロソフトのビジネス向け最新Surface7+はリモートワークにフォーカス、米では本日より予約開始

米国時間1月11日から本格的に始まるCESでは、リモートワークに特化した製品が数多く登場するだろう。2020年はスマートフォンの売上が低迷していたにもかかわらず、PCの売上が大幅に伸びた。オフィスからバーチャルワークへの移行など多くの変化があったが、今ではハードウェアメーカーの努力が実を結び始めている。

新しいSurface Pro 7+は、間違いなくその要件を満たしているようだ。キーボードケース付きの2in1製品を主要なプロダクティビティデバイスとして推奨することにはまだ躊躇があるが、人々はその方向へさらに進もうとしているようだ。

画像クレジット:Microsoft

主な特長としては、オプションのLTE通信および第11世代インテルCoreプロセッサによる高速処理(Microsoftによれば最大2.1倍のパフォーマンス)を実現している。これに、最大32GBのRAMと1TBのストレージが組み合わされる。ビデオ会議用の1080pウェブカメラとクアッドマイクも搭載されている。

外部ポートは1個のフルサイズのUSB-Aと、厄介なSurfaceコネクタが用意されている。残念ながら、USB-Cポートは1個しかない。フル充電での駆動時間は最大15時間だが、これは特筆するほどではない。

Wi-Fiバージョンは899ドル(約9万4000円)で、LTEバージョンは1149ドル(約12万円)からとなる。予約は本日から開始され、出荷は来週を予定している。また、すでに発表されているホワイトボード型PCであるSurface Hub 2S 85が、ついに2021年2月から「一部の市場」で発売される。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftSurfaceCES 2021リモートワーク

画像クレジット:Microsoft

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

マイクロソフトのARゲームMinecraft Earthが2021年6月末にサービス終了、新型コロナの影響

2019年を通してMicrosoft(マイクロソフト)のMinecraftはゲームにおける拡張現実(AR)構築を実験してきた。このゲームはPokémon GOと似ており、現実世界上にMinecraft Earth呼ばれる仮想世界を重ね合わせようとするものだった。そしてMinecraft Earthは2019年11月にようやく一般公開された。

ところが、あと数か月後にMinecraft Earthは閉鎖され、プレイヤーデータもすべて削除されることが発表された。

一体何が起きたのか?Minecraft Earthの開発チームはこう述べている。

Minecraft Earthは、プレイヤーがどこにでも自由に移動でき協力してプレイを楽しめるようデザインされました。ところが現在の世界の状況が、これをほぼ不可能にしてしまいました。私たちは、Minecraftコミュニティにいっそう大きな価値を与える別の領域にリソースをシフトすることを決定しました。これにともない2021年6月にMinecraft Earthのサポートを終了をするという難しい決断を下さざるを得ませんでした。

簡単にいえば、このゲームはパンデミックに撃墜された。Pokémon GOはすでに熱狂的かつ膨大な数のプレイヤーによって強力な基盤を築いている。しかも好奇心に駆られた新たなユーザーも、安定して流入している。しかし静止状態からいきなり時速100kmに加速することはできない。

では次にどうなるかというと、以下のとおりだ。

  • チームは最終アップデートを配信し、すべてのアプリ内課金メカニズムを削除する。同時にこのアップデートで、残る時間を最大限利用できるようゲームを簡単かつ高速にする。
  • 2021年6月30日にゲームはシャットダウンされる。インストール済みのアプリも動作しなくなる。翌7月1日にプレイヤーのデータがすべて削除される。
  • Minecraft Earth内で課金を行ったユーザーは金額に関わらずMinecraft Bedrockのコピーを無料で入手できる。またMinecraft Earthの仮想通貨ルビーの使い残しがあるプレイヤーは、Minecraftコミュニティのマーケットプレイスで利用できるMinecoinに交換できる(交換率は未発表)。

クールなコンセプトだっただけに、発表からわずか1年でシャットダウンが発表されたことは非常に残念だ。しかし他に方法はなかったのだろうか。

関連記事:Minecraft Earthが北米その他の地域で正式開始

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:MicrosoftMinecraft Earth拡張現実

画像クレジット:Mojang

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

インドでソニーのPlayStation 5が2月2日に発売、パンデミックで被害を受けたサプライチェーン復活

Sony(ソニー)は米国時間1月1日に、インドでPlayStation 5を2月2日に発売すると発表、2020年、新型コロナウイルスのパンデミックで深刻な被害を受けたサプライチェーンのネットワークが、改善されたことを匂わせた。

同社によると、世界で2番目に大きなインターネット市場であるインドでは、予約販売を1月12日に始める。予約を受け付ける店舗はAmazon India、Flipkart、Croma、Reliance Digital、Games the Shop、Sony Center、そしてVijay Salesとなる。

PlayStation 5のインドでの価格は4万9990ルピー(約7万200円)で、ディスクドライブのないデジタル・エディションは3万9990ルピー(約5万6500円)ドルだ。一方、XboxはSeries Xがインドで685ドル(約7万800円)、Series Sが480ドル(約4万9600円)だ。この2つはインドで2020年11月に発売された。

それでも世界各地と同じく、Microsoft(マイクロソフト)はインドでも新しいXboxの需要に対応できないでいる。特にXbox Series Xは激しく品薄で、Amazon Indiaでそのページを見つけることすら難しい。

本日の発表は、PlayStationの熱心なファンの不安を和らげるだろう。一部のファン(私もその1人だが)は、インドがPS5の最初にマーケットに含まれないとわかってからは、グレーマーケットで高価な品物を入手していた。ファンはソニーとその代理店などに対して、インドでの発売に関して明確な発表がないことや、店によって離していることが違うことに不満を抱いていた。

ソニーは11月に、PS5のインドでの発売の遅れを、輸入に関する規制の所為にした。ゲームのニュースサイトであるThe Mako Reactorは今週初めに、SonyはインドでPlayStation 5のアクセサリーに関して保証や販売後のサポートを提供しないと報じている(The Mako Reactor記事)。それは、前世代機種でもあったことだ。

インドはまだ、本格的なゲーム専用機の大市場ではない。業界の推計によると、ソニーとマイクロソフトはインドで前世代のゲーム機を数十万台しか販売していない。インドは安価なAndroidスマートフォンが急増している(未訳記事)し、データ料金は世界一安いたため、最近では何千万人ものインド人がモバイルゲームを楽しんでいる。

関連記事:グーグルがインドの通信大手Reliance Jio Platformsに約4800億円出資

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:SonyPlayStationMicrosoftXBoxインド

画像クレジット:Phil Barker/Future Publishing/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

マイクロソフトとEYがブロックチェーン基盤のXboxゲーム用著作権・ロイヤリティ管理システムを本稼働

マイクロソフトとEYがブロックチェーン基盤のXboxゲーム用著作権・ロイヤリティ管理システムを本稼働

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年12月20日~12月26日の情報から。

会計・税務関連サービスを提供するEY(アーンスト・アンド・ヤング)Microsoft(マイクロソフト)は、「Quorum」(クォーラム)ブロックチェーンを基盤とする、マイクロソフトのゲームに関する著作権・ロイヤリティ管理プラットフォームを機能拡張した。日本法人EY Japanが12月25日に報じた

同ブロックチェーンプラットフォームに関しマイクロソフトは、ゲームブランド「Xbox」のパートナー、アーティスト、ミュージシャン、ライター、その他コンテンツクリエーターのネットワーク向けに、ロイヤリティ契約の締結から支払・照合までを網羅する財務記録システムとして活用していく。EYは、契約関連の計算や取引処理を自動化できるようサポートする。

両社は共同で、2018年6月よりデジタルコンテンツの著作権とロイヤリティを管理するためのブロックチェーンプラットフォームを開発し、マイクロソフトおよび、マイクロソフトとパートナーシップを組むゲームパブリッシャー向けに、試験提供を続けてきた。

著作権やロイヤリティを多数扱うゲーム業界では、著者、作詞・作曲家、プロダクション関係者、ソフトウェアデベロッパーなど支払先が複数存在する。毎月、何万件・数十億ドルにのぼるロイヤリティが支払われている中、従来のロイヤリティ計算は、一般的にオフラインのデータソースを使用し、手作業で行われていたという。

両社が開発を進めてきたブロックチェーンプラットフォームは、他社に知的財産や知的資産をライセンス供与する企業や、ロイヤリティ契約に基づきクリエイターに対価を支払う業態の企業など、広範囲に適用できるよう設計。支払処理に時間を要するゲーム業界の著作権やロイヤリティの管理システムを合理化し、コストの削減を目指してきた。プラットフォームには、スマートコントラクトが組み込まれており、リアルタイムにロイヤリティを計算できるよう設計している。

ネットワーク基盤は、コンセンシス(ConsenSys)がオープンソースソフトウェアとして公開しているEthereum(イーサリアム)基盤のコンソーシアム型ブロックチェーンQuorum、Microsoft Azureのクラウドインフラ、ブロックチェーン技術を組み合わせ、合意内容の機密性が関係者全体で確保できるよう構築。

さらに拡張された今回のブロックチェーンプラットフォームでは、Microsoft Azureをベースにした人工知能(AI)を活用し、契約書のデジタル化を加速し、より迅速な契約書作成が可能になった。また、明細書と請求書をシームレスに生成し、それらをERP(総合基幹業務システム)に統合することで、ロイヤリティ決済の処理スピード、可視性、透明性を向上させている。拡張されたプラットフォームにより、ゲーム開発パートナーとの契約をすべてデジタル化し、ほぼリアルタイムでロイヤリティ計算を行うことで、処理時間を99%短縮する。

このブロックチェーンプラットフォームは、ソフトウェア業界で「ソークテスト」と呼ばれる、膨大なトランザクション下でのパフォーマンスをサポートするためのテストが行われ、1日あたり200万件の取引を処理できることが実証されているという。

今回の機能拡張により、マイクロソフトのグローバル・ファイナンス・オペレーションのゼネラルマネージャー Luke Fewel氏は「今回の拡張ソリューションの本稼働は、ブロックチェーンとスマートコントラクトのテクノロジーを活用したロイヤリティ決済の明るい第1歩となりました。これによって、拡張性を備えた財務およびオペレーションプロセスの合理化と、膨大な手作業によるスタッフの負担軽減、ゲームパートナーのエクスペリエンス向上が可能になります。引き続き、ロイヤリティ・エコシステム全体に本ソリューションを浸透させてプロセスの改善を図り、現代に即したファイナンスジャーニーを積極的に進めていきたいと思います」と語っている。

また、EYのグローバル・ブロックチェーン・リーダー Paul Brody氏は「ブロックチェーンは今後、企業間のやり取りのデジタル化になくてはならない重要な要素となるでしょう。今回、私たちは契約のデジタル化から財務上の未収金の計上に至るすべてのアクティビティの自動化とサイクルタイム短縮を進めました。この拡張バージョンの本稼働は、ブロックチェーンを活用したデジタル化の道のりにおいて大きな1歩となりました。このようなブロックチェーンソリューションは、ポイントツーポイントの統合からエコシステムレベルの自動化へとレベルアップする一助となります」と述べている。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Ethereum(製品・サービス)EY / アーンスト・アンド・ヤングXbox / エックスボックス(製品・サービス)オープンソース / Open Source(用語)Quorumブロックチェーン(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Azure(製品・サービス)

MicrosoftとGoogle、Ciscoらが連名でWhatsAppスパイウェア訴訟でイスラエルのNSOに抗議

複数の企業がイスラエルのテック企業NSO Groupに対するWhatsAppの訴訟を支持する意見書を裁判所に提出した。それによるとNSOは、メッセージングアプリWhatsAppの未公表の脆弱性(未訳記事)を利用して少なくとも1400台のデバイスをハックし、その一部は所有者がジャーナリストや人権活動家だった。

NSOはスパイウェアPegasusを開発し、そのアクセスを各国政府に販売している。それにより顧客である国民国家はターゲットのデバイスを秘かにハックできる。Pegasusのようなスパイウェアは被害者の位置を調べ、彼らのメッセージを読み、通話を盗聴し、写真やファイルを盗み、デバイスからプライベートな情報を吸い取る。スパイウェアはターゲットに悪質なリンクを開かせてインストールさせたり、アプリやデバイスのまだ知られていない脆弱性を悪用して感染するものが多い。同社は、サウジアラビアやエチオピア、アラブ首長国連邦など、権威主義的な政権に販売し、怒りを買った。

2019年、WhatsAppはある脆弱性を見つけてパッチしたが、同社によるとその脆弱性が悪用されて(未訳記事)政府のスパイウェアが送り込まれ、一部の被害者はそのことを知らなかった。それから数カ月後にWhatsAppはNSOを訴えて(未訳記事)、攻撃の背後にいた政府顧客など、事件の詳細を知ろうとした。

NSOは原告の申し立てに何度も反論したが、2020年の初めには、裁判所を説得して訴訟を棄却させる(The Guardian記事)ことができなかった。NSOの言い分は、政府に代わってやったことだから自分は免責である、というものだ。

しかしテクノロジー企業の今回の連合はWhatsAppを支持し、裁判所がNSOに免責特権を認めないことを求めている。

Microsoft(マイクロソフト)とその子会社LinkedInとGitHub、Google(グーグル)、Cisco、VMware、そしてその他数十社のテクノロジー大手企業(Amazon、Facebook、Twitterなど)を代表するInternet Associationは、その意見書で、スパイウェアや諜報ツールの開発は、脆弱性を利用してそれらを配布するものも含めて、人びとの安全性を損ない、また犯罪者など良からぬ人びとの手に渡ることもありえると警告している。

マイクロソフトの顧客セキュリティ担当チーフであるTom Burt(トム・バート)氏はブログで、NSOは同社が作っているツールと、それらが悪用する脆弱性について説明責任があると述べている。

「民間企業が作っているサイバー監視ツールは、彼らがそれを使って法を犯した場合と、その目的を知っていてそれを他に使わせた場合の、両方に関して彼らに法的責任がある。その際、顧客が誰か、彼らが何を達成しようとしているのかは無関係だ。本日、私たちが競合他社とともに立ち上がってこの意見書を起草したことは、私たちの顧客全員を助け、グローバルなデジタルのエコシステムを今後の無差別攻撃から守るものである」とバート氏は述べている。

NSOの広報担当者からは、まだコメントがない。

関連記事:ジャーナリスト36人以上のiPhoneが「ゼロクリック」スパイウェアにハックされていたことが発覚

カテゴリー:セキュリティ
タグ:WhatsAppスパイウェアNSO Group

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アマゾンがマイクロソフトが獲得した1兆円超の米国防総省JEDI契約の差し止めを裁判所に要請

米国防総省が米軍に技術近代化の道筋を提供するとされていた100億ドル(約1兆300億円)、10年におよぶJEDIクラウドの契約を発表してから2年以上が経過した。Microsoft(マイクロソフト)が2019年10月に契約を獲得した一方で、Amazon(アマゾン)はその決定に抗議するために裁判所に訴え、それ以来、法的には中途半端な状態が続いている。

米国時間12月15日にはアマゾンが、マイクロソフトを選ぶという決定を差し止めるように、裁判官に求める最新の一手を法廷闘争で打ったとき、この政府調達を巡る長い物語に新たな変化が生じた。アマゾンの主張は以前にも行ったものと似ているが、今回は国防総省の再評価プロセスを狙ったものだ。この再評価時に、国防総省は契約と選定プロセスを見直した結果、マイクロソフトという決定に変わりはないと2020年9月に発表していた。

アマゾンは、この再評価に大きな欠陥があり、大統領からの不当な影響や偏見、圧力を受けていたと考えている。これを踏まえてアマゾンは、マイクロソフトが選ばれた契約の決定を差し止めるよう裁判所に求めている。

JEDIの再評価と再決定は、政治的な理由で官僚の誠実な分析と論理的思考を抑圧する政権の犠牲となり、最終的には国家安全保障と効率的で合法的な税金の使用を損なうことになる。国防総省はこの調達を客観的かつ誠実に実施していないことを改めて露わにしている。再決定は差し止められるべきである。

想像の通り、マイクロソフトのコミュニケーション担当本社副社長であるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏は、このアマゾンの主張に同意せず、自分の会社がベストプライスで落札したと信じている。

「入札で負けたアマゾンは、当社の価格設定を知らされ、当初の価格が高すぎたことに気づきました。その後、彼らは価格を下げるために入札を修正しました。しかし、すべての基準を同時に見渡したとき、国防総省のキャリア調達担当者は、優れた技術的優位性と全体的な価値を考えると、当社が最良のソリューションを提供し続けると判断したのです」と、ショー氏はTechCrunchに共有した声明の中で述べている。

アマゾンの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、「我々は単に、この契約先決定に露骨に影響を与えた技術的な誤り、偏見、政治的な干渉に関して、裁判所による公正で客観的な見直しを求めているだけです」とのことだ。

両者の立場からすれば、いい分はそうなるだろう。

国防総省は2018年に、JEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)と名付けられた100億ドル、10年に渡る契約のために入札を行うと発表した。一般的な政府の契約に比べて、はるかに大規模なその金額と領域は広く注目を集め、その調達プロセスは最初から議論の的となっていた。この入札プロセスがアマゾンに有利になるように構成されていると不公正を主張する声が、特にオラクルから上がっていたからだ。

最初の発表から2年以上が経過し、マイクロソフトが当初の契約を勝ち取ってから1年以上が経過した。しかし、いまだに大手テック企業2社が互いに批判し合う法廷闘争では膠着状態が続いている(未訳記事)。どちらも譲歩しそうにないため、最終的な判断は裁判所に委ねられることになる。おそらくこれで長い戦いの物語に終止符が打たれることだろう。

【注記】国防総省はコメントを求める我々の要求に答えていない。状況に変化があればこの記事を更新する予定だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:米国防総省AmazonAWSMicrosoftJEDI裁判

画像クレジット:The Washington Post / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

AdobeのドキュメントサービスでデベロッパーはPDFが扱いやすくなる

この1年、Adobe(アドビ)はデベロッパーが自分のアプリでPDFを使うためのツールを、静かに拡張してきた。2020年4月には、現在PDF Embed APIおよびPDF Tools APIと呼ばれている(Adobeブログ)ものを発表し、それと共にAdobe Document Servicesプラットフォームも公開した。狙いは、アプリケーションとワークフローにPDFを組み入れるための使いやすいツールをデベロッパーに提供することにある。米国時間12月16日、同社はMicrosoft(マイクロソフト)と新たな提携を結び、Document Serviceをマイクロソフトのローコードワークフロー自動化プラットフォームであるPower Automateと統合することを発表した。

「このビジョンは1年半ほど前、『自分たちのアプリを便利にしているものをサードパーティーアプリにも提供するというのはどうだろうか』と話したときに始まりました」とアドビのDocument Service担当上級マーケティングディレクターであるVibhor Kapoor(ビブホル・カプール)氏はいう。「Acrobatの機能をマイクロサービスに分解し、APIとしてデベロッパーやパブリッシャーに提供しようというごく単純な発想で、なぜなら、正直なところデベロッパーやパブリッシャーにとってPDFは、よくいっても苦痛だったからです。それでこうしたサービスを公開することになりました」。

開発チームは、PDFをウェブ体験に埋め込む方法を改善することなどに取り組んだ(そしてカプール氏は、これまでのデベロッパー体験は「あくまでも次善の策」であり、ユーザーにとっても直感的な体験とはいえなかった、と率直に語った)。これからはDocument ServiceとEmbed APIを使えば、JavaScriptを数行書くだけでPDFを埋め込める。

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カプール氏は、一連の機能をSDKやAPIで公開することはちょっとした挑戦だったことを認めた。理由は単純で、もともとチームはこうした利用場面を考えたことがなかったからだ。しかし、技術的課題に加えて、これは発想自体を変える問題でもあった。「私たちはこれまでデベロッパー指向の製品を提供したことがなく、それはデベロッパーを理解し、これらのAPIをどうやってパッケージにして公開するかを考えるチームを作らなければならないことを意味していました」。

新たなPower Automateとの統合によって、PDFを中心とした20以上の操作がPDF Tools APIからマイクロソフトのプラットフォームで利用できるようになる。その結果ユーザーは、たとえばOneDriveフォルダーにある文書からPDFを作ったり、画像をPDFに変換したり、PDFにOCRを適用したりできる。

アドビがこのプラットフォームを公開して以来、約6000のデベロッパーが利用していて、カプール氏によると、使われているAPIコールの回数は「著しく増加」している。ビジネス面では、Power Automateの追加が、新たなデベロッパーを呼び込む新たな経路になることは間違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook