ミレニアル世代が熱狂?NFTを使ったコレクターズアイテムへの投資が今アツいワケ

コレクターズアイテム投資が熱い。Michael Jordan(マイケル・ジョーダン)がルーキーシーズンに着用した「NIKE AIR JORDAN 1(ナイキエアジョーダン1ハイ)」が競売大手サザビーズのオークションで15万2500ドル(約1670万円)で落札され、Kanye West(カニエ・ウエスト)着用の「NIKE AIR YEEZY 1(ナイキエアイージー1)」が180万ドル(約1億9400万円)で落札された。

ドイツでコレクターズアイテムを使ったNFT投資のためのプラットフォームを提供するスタートアップ Timeless InvestmentのCEOであるJan Karnath(ヤン・カルナート)氏は、「今後3年でコレクターズアイテムはミレニアル世代にとって、株、暗号資産に次ぐ妥当な資産になるでしょう」と予測する。それはなぜか。同氏が詳しく説明する。

Timeless InvestmentのCEOであるヤン・カルナート氏

ミレニアル世代はコレクターズアイテムに夢中

カルナート氏は「ミレニアル世代の42%がコレクター品と何らかの関係を持っており、23.2%がNFTを何らかの形で使用している」と指摘する。23%というのはZ世代の3倍、ベビーブーム世代の10倍に当たるという。冒頭で挙げたスニーカーブームも、こうしたミレニアル世代のトレンドを反映しているという。

スニーカーだけではない。ミレニアル世代が親しんだポケモンカードも注目されている。初版の未開封デッキが高値で落札された例もある。

カルナート氏は、世界でたった1つのコレクターズアイテムの投資額を分割して、より多くの人が投資できるようにすることで市場を活性化することを目指している。これにはNFTの技術が不可欠だ。

「NFTはミレニアル世代によって動かされる次の山です。これによって根本からの変化が起きるでしょう」とカルナート氏は語る。

同氏によると、2021年の第1四半期におけるNFTのセールスボリュームは、その前の四半期よりも20倍に成長しているという。

カルナート氏は「これは何を意味するのか?コレクターズアイテム市場の急激な成長が起きているということです」と述べる。

NFTならお金がないミレニアル世代でも投資しやすい?

カルナート氏は「こうした成長の影響を最も受けるのは、歴史あるブランドとIPホルダーです」と断言する。「アイコン的製品の可能性を解放することで、コレクターズアイテム市場が良い方に変わっていくでしょう」。

しかし、こうした流行にも問題がある、というのが同氏の見解だ。ミレニアル世代がコレクターズアイテムに注目しているといっても、その多くは成長するコレクターズアイテム市場に参加することができていない。なぜなら、この世代はコレクターズアイテムへのアクセスと、コレクターズアイテム市場に参加するための資本が乏しく、また、この世代は市場の理解と資産の流動性を十分保持していないからだ。

「当社はミレニアル世代向けのコレクターズアイテム投資をもっとやりやすくしたいのです。そしてこの成長は今後数世代は続くものだと思います。当社はコレクターズアイテム投資をより便利に、アクセシブルに、インデペンデントにしたいのです」とカルナート氏。

そのため、同社では投資案件を集め、保証している。また、投資案件を小さく「シェア」という形で分割することで、1回の投資を手頃な値段にし、1口50ユーロ(約6660円)で投資することも可能だという。さらに、同社のプラットフォーム上でコレクターズアイテムの取引も可能にし、ユーザーが売りたいときに売りに出せるようにしているという。

カルナート氏「当社のプラットフォームを使ってもらえれば、資産を再度売りに出すまでに2年、4年、と待っていただく必要もないです」という。

カルナート氏がイメージするコレクターズアイテム投資は、アクセサリーや服などのファッションをプラットフォーム上で売買するものに近い。ユーザーがコレクターズアイテムをプラットフォーム上で探し、投資し、必要に応じて他のユーザーと取引するからだ。

21分で決まったロレックス投資

Timelessが100日間コレクターズアイテム投資のプラットフォームを運用してみたところ、さまざまなことが見えてきたという。「まず、どのコレクターズアイテムも1時間以内に買い手がつきました。取引のスピードが早いため、決済などの処理が追いつかない場面もありました」。

この100日間でプラットフォームを使用した投資家は1125人。そのうち複数回取引した投資家は24%だった。

カルナート氏は、取引が行われたコレクターズアイテムから、3つの例を紹介した。

例えば、写真の一番左のスニーカー。シェア売り切れまでにかかった時間は16分。これに関わる通知設定を行なったユーザー(つまり、投資に興味を持ったユーザー)は2900人。発売されたシェアは360だった。

Timelessが実際に扱ったコレクターズアイテム

写真中央はロレックスの腕時計だ。こちらはシェア売り切れまでにかかった時間は21分。通知設定を行なったユーザーは2500人。発売されたシェアは1900だった。

「このロレックスはシェアを持ちたいユーザーが非常に多かったので、2〜3倍の値段でも売れたかもしれないですね」とカルナート氏。

一番右はナイキのスニーカーだ。このシェアは140売り出され、5分間で売り切れてしまった。通知設定を行なったユーザーは1825人だった。「当社では毎週木曜にコレクターズアイテムを出品するのですが、それを見るために通知設定していたユーザーが一定数いたことがわかります」。

ミレニアル世代を惹きつけるためにすべきこと

カルナート氏は「ミレニアル世代を惹きつけるためにすべきことは3つあります」と語る。

1つめはコレクターズアイテムも分割することだ。これをすることで、暗号資産ファンだけでなく、より広い層がコレクターズアイテムに投資しやすくなる。

2つめは、既存のアイコン的なコレクターズアイテムを再度世に出していくことだ。世の中には多くのおもしろいコレクターズアイテムがある。それをデジタルな方法で紹介することが重要だという。

3つめは、新しいアイコン的なコレクターズアイテムを創造していくことだ。歴史あるブランドと若い投資家やミレニアル世代を繋ぐには、新しいコレクターズアイテムが肝要だ。

TImelessが考えるブランドとユーザーの関係

「コレクターズアイテムブームはブランドのチャンスです。この投資の流行をうまく活用できれば、低コストで新しい購買層とつながり、高い収益を狙うことができます。私たちは今、高級ブランドのNFT版を創ろうとしています。当社はブランドとユーザーをつなげ、歴史あるブランドをNFTの世界に呼び込もうとしています」とカルナート氏は語る。

【Japan編集部注】本記事はCrypt Asetts Conference 2021中のセッションを再構成したものとなる。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFT投資コレクションミレニアル世代

NFTゲーム開発のdouble jump.tokyoと日本発のブロックチェーン「Plasm Network」のStakeが提携発表

NFTゲーム開発のdouble jump.tokyoと日本発のブロックチェーン「Plasm Network」のStakeが提携発表

日本発のパブリックブロックチェーン「Plasm Network」(プラズムネットワーク)を手がけるStake Technoloiges(ステイク・テクノロジーズ)と、ブロックチェーン技術を用いたアプリ開発を行うdouble jump.tokyo(ダブルジャンプ・トウキョウ)は6月14日、パートナーシップを締結し、双方のエコシステム拡大に向けた協業を行うと発表した。

マルチチェーン設計のブロックチェーン「Polkadot」(ポルカドット)のR&Dチェーン「Kusama」(クサマ)において、「Shiden Network」(紫電ネットワーク)が(パラチェーンスロットを獲得し)接続した後、doublejump.tokyoがNFTコンテンツなど自社関連プロダクトのShiden Networkへの対応を開始する予定。Plasm Networkにも対応する。

doublejump.tokyoによると、ブロックチェーンゲーム開発支援サービス「MCH+」のブロックチェーンゲームのマルチチェーン対応を支援する「Asset Mirroring System」(AMS)を通じて、MCH+参画タイトルのShiden Network対応を行うという。すでにテストネットにおける実装は完了しているそうだ。

またdouble jump.tokyoは、Plasm NetworkおよびShiden Networkのバリデーターの運用を行い、ネットワークの地理的な分散性に貢献する予定。

「Polkadot」と「Plasm Network」、研究開発が主目的の姉妹チェーン「Kusama」と「Shiden Network」

PolkadotとPlasm Network、またKusamaとShiden Networkがそれぞれどのような存在で、どう関係しているのかは、Stake TechnoloigesのShunP氏による「中学生でもわかるPlasmとShiden」がわかりやすい。

Polkadotは、Web3 Foundation(Web3財団)による、複数の異なるブロックチェーンを相互接続・相互運用するためのオープンソースプロジェクトで、ブロックチェーンの課題である運用性とスケーラビリティーが解決されるものと期待されている。Kusamaは、研究開発が主目的とするPolkadotの姉妹チェーンにあたる。Kusamaでは、より挑戦的でイノベーティブなユースケースがKusama上で展開されるという。

PolkadotおよびKusamaは、本体にあたるブロックチェーン「リレーチェーン」(RelayChain)、またこれにつながる複数のブロックチェーン「パラチェーン‌」(Parachain)で構成されており、ポイントとなるのは、スマートコントラクトの動作環境やDefiなどはパラチェーン側が担当するという点にある。PolkadotおよびKusamaは、あくまで相互につなげる役割のみというわけだ。

Plasm NetworkとShiden Networkは、このPolkadotおよびKusama上でスマートコントラクトを扱うことに特化したパラチェーン(候補)およびパブリックチェーンとなっている。パラチェーンの接続数には限りがあるため、パラチェーンはオークションによって決定されることになっており、6月15日から始まるKusamaの第1回パラチェーンオークションでは、Shiden Networkが参加する。さらにその後Polkadotのオークションが行われ、Plasm Networkが参加する予定だ(日本発パブリックブロックチェーン開発のStake Technoloigesが約11億円調達、「世界で勝つ事例つくる」)。

スマートコントラクト実行環境EVMやWASAMを含む複数VMに対応、アプリ開発者への報酬還元メカニズムも採用

アプリ開発者にとっての注目点は、Plasm NetworkとShiden Networkは、Ethereumのスマートコントラクト実行環境EVMやWASAMを含む複数VMに対応していることだ。Ethereumをベースに開発を行ってきたプロジェクトであれば、既存コードベースを流用して開発できるという。

またDapps報酬と呼ばれる、アプリ開発者にブロック生成報酬の約半分を還元する独自のメカニズムも備えている。アプリのユーザーも、スマートコントラクトにPlasmのトークンをステーキングすることで、報酬の一部を獲得できるという。

Stake Technologiesは、「他国に大きな遅れを取ってしまっているクリプト領域において、日本発のプラットフォームとコンテンツが相互に連携し、日本の地位を向上させていきたいと考えております」と話している。

世界的な評価を得た2018年の「My Crypto Heroes」以来、NFTをめぐる環境の整備を着実に進めるdouble jump.tokyo

double jump.tokyoは、NFT(非代替性トークン。ノン・ファンジブル・トークン)コンテンツのプロデュースや発行と、ブロックチェーンゲームを開発する企業。1日のアクティブユーザー数や取引高で世界一を記録したこともある。今回のパートナーシップにより、Plasm Networkのエコシステムに、質の高いNFTコンテンツとそのコミュニティーを呼び込むことが期待されている。

またdouble jump.tokyoとPlasm Networkは、環境問題にも重点を置いているという。Bitcoin(ビットコイン)やEthereumは、認証に大量の計算を要し、消費電力が大きいPoW(プルーフ・オブ・ワーク)方式を使っているが、PolkadotではPoS方式の一種「NPoS」(ノミネーテッド・プルーフ・オブ・ステイク)という「直接的な経済的インセンティブによってネットワークを維持する」方式が採られているため、消費電力は格段に小さいという。なお、Plasm NetworkとShiden Networkでは、「水力と太陽光により発電された電力のみを用いるデータセンターとの提携」を進めているそうだ。

今後double jump.tokyoは、同社関連NFTコンテンツがPlasm NetworkおよびShiden Networで展開され、Plasmのスケーリングソリューションとさまざまなブロックチェーンとのブリッジを通じた「マルチチェーン化、UXの向上、グローバル展開」を目指すとしている。

2018年4月3日設立のdouble jump.tokyoは、「My Crypto Heroes」「BRAVE FRONTIER HEROES」「MyCryptoSaga」などのブロックチェーンゲームの開発、MCH+およびNFT事業支援サービス「NFTPLUS」、複数人で秘密鍵管理できるビジネス向けNFT管理SaaS「N Suite」の提供・開発を行っている。

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タグ:Ethereum / イーサリアム(製品・サービス)WebAssembly / Wasm(用語)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)オープンソース / Open Source(用語)Kusama(製品・サービス)Shiden Network(製品・サービス)Stake Technoloiges(企業)スマートコントラクト(用語)double jump.tokyo(企業)DeFi / 分散型金融(用語)パラチェーン(用語)Bitcoin / ビットコイン(用語)Plasm Network(製品・サービス)ブロックチェーン(用語)Polkadot / ポルカドット(製品・サービス)リレーチェーン(用語)日本(国・地域)

アバターフィギュアなどのマーケットプレイスが付随するNFTゲームエンジンをMythical Gamesが開発中

NFT(非代替性トークン)の売上高が最も投機的な高値から下がってしまった現在も、その可能性を利用しようとしているスタートアップ企業には、暗号化された収集品には過去数カ月の間に誇大広告されたよりも、はるかに多くの可能性があると信じている投資家から、依然として多額の資金が集まっている。

ロサンゼルスを拠点とするNFTゲームのスタートアップ企業であるMythical Games(ミシカル・ゲームズ)は、新規および既存の投資家から7500万ドル(約82億円)の資金を調達した。同社は最初のタイトルにおける野心を拡大し、開発者がブロックチェーンベースのゲーム体験を構築できる実質的なプラットフォームを作り上げようとしている。

今回のシリーズBラウンドは、WestCap(ウエストキャップ)が主導し、01 Advisors(01アドバイザーズ)と、Gary Vaynerchuk(ギャリー・ヴァイナーチュック)氏のVaynerFund(ヴァイナーファンド)が、既存の投資家に加わって参加した。このスタートアップ企業は、これまでに1億2000万ドル(131億円)という莫大な資金を調達している。

Mythical Gamesは現在「Fall Guys(フォールガイズ)」と「Roblox(ロブロックス)」と「Funko Pop(ファンコポップ)」を組み合わせたような「Blankos Block Party(ブランコスブロックパーティー)」というタイトルを開発中だ。このPCゲームは、ユーザーがコンテンツを作成するというソーシャルゲームの大きなトレンドに便乗しており、さまざまなアーティストやデザイナーが作成したアバターフィギュアやアクセサリーを購入できるマーケットプレイスが付随している。ユーザーは、このマーケットプレイスを通じて、限定版もしくは通常版のアイテムを購入したり販売したりすることができる。ただし他のNFTプラットフォームとは異なり、これらのアイテムはプライベートブロックチェーン上に存在するため、OpenSea(オープンシー)のようなパブリックなマーケットプラットフォームで転売することはできない。

Mythical Gamesは、ブロックチェーンベースのゲームの仕組みを普及させようと盛り上がっている動きに加担しながらも、まだ全盛期を迎える準備が整っていないと見られている暗号プラットフォームの要素は放置している。ユーザーはBitPay(​ビットペイ)を通じて暗号資産でプラットフォーム上のアバターを購入することができるが、クレジットカードで支払うこともできるので、ウォレットを設定したり、シードフレーズを書き込んだりする手間が必ずしも要るわけではない。

Mythical Gamesはユーザー数の増加にともないBlankosに大きな期待を寄せているが、大きな投資の好機はおそらく同社のチームが構築しているゲームエンジンの方にある。その「Mythical Economic Engine(ミシカル・エコノミック・エンジン)」は、新進気鋭のゲーム開発者が、規制上の問題に巻き込まれることなく、NFTベースのマーケットプレイスを構築できるように設計されており、クリエイターがアンチマネーロンダリング法を遵守し、顧客確認を行うためのツールを備え、地域を超えたコンプライアンスに対応する。

「(NFTのような)新しい市場にはさまざまなサイクルがあります」と、Mythical GamesのJohn Linden(ジョン・リンデン)CEOは、TechCrunchに語った。「私たちは、実際にこれが長期的にはゲームを変えると考えています。ゲームスタジオと話をすればするほど、潜在的な使用例が次から次へと見つかっています」。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Mythical GamesNFT資金調達

画像クレジット:Mythical Games

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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スクウェア・エニックスは6月9日、2021年夏発売予定のNFTデジタルシール「資産性ミリオンアーサー」のティザーサイトを公開した。発売日・価格・購入方法、購入済みデジタルアセット管理用の「シールホルダー」(仮称)などの詳細な仕様は、決定次第発表する。NFTデジタルシールのトレードに関してはLINEのNFTマーケットプレイスで実施する。またLINEは同日、デジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」内のサービスとして同マーケットプレイスを提供予定と発表している(提供開始時期は、後日公開)。

資産性ミリオンアーサーで提供するNFTデジタルシールは、NFTが持つ特性に加え、絵柄が1枚1枚異なるという。そのため、ユーザーはデザイン面においても唯一無二のNFTデジタルシールを所有することが可能。NFTデジタルシールをコレクションする際には、購入済みデジタルアセットをブラウザー上で管理する専用の「シールホルダー」(仮称)で提供予定。

同NFTデジタルシールは、スクウェア・エニックスとdouble jump.tokyoが共同開発したもの。ブロックチェーンには、LINEがLINE TECH PLUSを通じ提供する「LINE Blockchain」を採用している。

LINEが提供予定のNFTマーケットプレイスは、LINE BITMAX Wallet内のサービスとして提供予定。LINE Blockchain上で発行されたNFTの二次流通市場を構築することで、ユーザー間での取引の中でNFTの付加価値が高まっていく場を提供し、エコシステム内で流通する価値の最大化を目指すという。

「ミリオンアーサー」シリーズは、シナリオに「とある魔術の禁書目録」の鎌池和馬氏、音楽制作に前山田健一氏を起用するなど、豪華スタッフ陣が集結。人気声優が演じるキャラクター、多数の著名イラストレーターが描くキャラクターイラストの競演でヒットを記録したスマートフォン向けゲーム「拡散性ミリオンアーサー」から始まった作品群を指す。

LINE Blockchain採用の理由

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double jump.tokyoによると、LINE Blockchain採用の背景には、NFTを活用したサービスのUX改善があるという。

多くのブロックチェーン関連アプリの場合、暗号資産ウォレットのインストールがユーザーにとって非常に大きなハードルとなっているという課題がある。昨今、NFTが盛り上がりを見せる一方で、マスをターゲットとした日本のコンテンツホルダーにとってはウォレットなどに精通していない人がメインのターゲットユーザーとなっており、UXの改善がNFT市場拡大の大きな足掛かりになると考えているという。

これに対しLINE Blockchainでは、以下特徴によりNFTサービスの様々な改善が期待されるとしている。

LINE Blockchainの特徴

  • ユーザー認証(鍵管理):NFTの取り扱いは多くの場合、カストディの規制などもあり、ユーザー自身が秘密鍵を管理することが求められる。LINE Blockchainでは、ユーザーは秘密鍵を自身で管理することなく、LINEのログインとLINE BITMAX Walletを連携させることで、普段利用しているウェブサービスの認証に近いUXを提供可能
  • ユーザーのGas(トランザクション手数料)負担が不要:通常イーサリアムブロックチェーンなどでは、NFTの転送にはGas代金の負担がユーザーに発生する。LINE Blockchainの場合、サービス運営側が負担する形となり、よりシンプルなUXとなる
  • NFTマーケットプレイス:LINE Blockchainを用いたNFTマーケットプレイスの構築が進められており、今後NFTの出品・購入が可能になる予定。また、LINEのトーク機能を活用したNFTの授受も容易になっていくとみられ、約8800万人が利用するアプリケーションを用いたNFTの二次流通も活発になっていくと考えているという

またdouble jump.tokyoは、「LINE Blockchain Developers」のAPIのGo言語向けライブラリーをオープンソースとしてGitHub上で公開した。同ライブラリーを利用することで、LINE Blockchain DevelopersのAPIへアクセスするためのHTTP設定や署名処理を簡略化し、迅速な開発を可能にするという。


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カテゴリー:ブロックチェーン
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double jump.tokyoが複数人による秘密鍵管理を含めNFTコンテンツ発行・管理を行えるエンタメ・ビジネス向けSaaS「N Suite」提供

ブロックチェーン技術を用いたアプリケーション開発を行うdouble jump.tokyoは6月7日、エンターテイメントDX向けのSaaS「N Suite」の提供を発表した。

N Suiteは、NFT発行やNFTコンテンツ管理など、NFTコンテンツ・ビジネスをスムーズかつ効果的に行うために必要な製品を揃えたビジネスツールだ。NFTコンテンツを軸にファンとのリレーションを醸成し、エンターテイメントDXを戦略的に行うためのツールセットとして、新たな製品や機能を順次追加する予定。

同社によると、2021年からブロックチェーン技術の一部であるNFTを活用したコンテンツがブームとなっているものの、企業がNFTコンテンツ・ビジネスへ参入する際に、ブロックチェーンの秘密鍵の管理方法が課題となっており、参入の障壁や足枷となっているという。

特に、日本企業には世界で勝負できるコンテンツを抱えている、または創造する力のある企業が多く存在するにもかかわらず、このような課題により、NFTコンテンツ・ビジネスの参入が遅れ、ビジネスチャンスを逃してしまう懸念もあるとしている。

そこで、秘密鍵管理の課題を解決するウォレットをはじめ、企業がNFTコンテンツ・ビジネスをスピーディーに、また効果的に行うために必要な仕組みをSaaSとして提供する。N Suiteのリリース時には、下記製品を公開予定としている。

「N Board」:マネジメント・ボード

N Boardは、NFTコントラクトのデプロイやNFT発行など、秘密鍵を使った各種操作の実行やNFTコンテンツの一元管理を行えるダッシュボードだ。将来的に、NFTコンテンツの販売や企画、活用をサポートする機能も拡充予定。

「N Wallet」:キーレス・ウォレット

N Walletは、秘密鍵を保管しないウォレットとなる。NFTコントラクトのデプロイやNFT発行の際に、ブロックチェーンのトランザクションに署名する際の認証で使用する。また、暗号資産(EthereumやERC-20トークンなど)の送付など、一般的なウォレットの機能にも対応予定だ。リリース時には、Chrome拡張機能(Chrome Extension)として提供予定。

「N Cloud Key」:クラウド・キー・システム

N Cloud Keyは、秘密鍵をクラウドでセキュアに保管するシステム。N Walletの認証機能とN Boardの管理機能を組み合わせることで、本来は個人で管理が必要な秘密鍵を複数人で共有管理可能となる。リリース時にはAWS Key Management Service(AWS KMS)に対応予定だ。

double jump.tokyoが複数人による秘密鍵管理を含めNFTコンテンツ発行・管理を行えるエンタメ・ビジネス向けSaaS「N Suite」提供

今後double jump.tokyoは、複数人ワークフロー、マルチチェーン対応(Flowブロックチェーンなどに順次対応予定)、N Cloud Keyの対応クラウドサービス追加(Microsoft Azureなど)、SDK提供、販売管理システム、版権管理システムとの連携機能、NFTコンテンツ分析機能(N Insight)といった機能を追加する予定だ。そしてNFTコンテンツを軸に、新しいエンターテイメント体験を醸成する強力な基盤となるよう、N Suiteを発展させるとしている。

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暗号資産取引所コインチェックが国内初となるIEOを2021夏実施予定と発表

暗号資産取引所コインチェックが国内初となるIEOを2021夏実施予定と発表

コインチェックは5月31日、ブロックチェーン分野のコンサルティングとシステム開発を行うのNFT関連子会社HashpaletteによるIEO(Initial Exchange Offering)を2021年夏実施予定と発表した。Hashpaletteが2021年3月にテストネットをローンチした、NFT特化ブロックチェーン「パレット」(Palette)のユーティリティトークン「PLT」を販売する予定。

またコインチェックは、IEOに関する情報を掲載する公式サイトを公開した。今後、HashpaletteのIEOに関する情報を告知するためのプロジェクト詳細ページの公開を2021年6月頃に予定。今夏のIEO実施に向け準備を進めるとしている。

IEOは、トークン発行によるコミュニティの形成・強化や資金調達を暗号資産取引所が支援するという仕組み。企業・プロジェクトなどの発行体がユーティリティ・トークンを電子的に発行することで資金調達を行う仕組み「ICO」(Initial Coin Offering)の中でも、暗号資産取引所が主体となって発行体のトークンの販売を行うモデルとしている。

企業やプロジェクトによるトークンの発行は、世界中のユーザー・開発者・投資家・サービスプロバイダーなどのネットワーク参加者とオープンな分散型ネットワークを構築することを可能にし、さらにすべてのネットワーク参加者に対しインセンティブを与えることができる手法という。

コインチェックでは、これまで企業やプロジェクトによるトークン発行を支援することで、暗号資産市場の更なる発展に貢献すべくIEO事業への参入を検討し、2020年8月よりHashpaletteとともに日本初のIEO実現に向け取り組んできたそうだ。

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Hashpaletteによると、パレットは、エンターテイメント領域におけるデジタルコンテンツの発行・管理・流通に特化。マンガ・アニメ・スポーツ・音楽といったコンテンツのNFT形式での流通に最適化されたブロックチェーンネットワークという。

また、クロスチェーン技術を実装しており、発行したNFTはPalette以外のブロックチェーンネットワークでも利用可能。現在、イーサリアム(Ethereum)、ネオ(NEO)、オントロジー(Ontology)mp3つのブロックチェーンネットワークとのクロスチェーンに対応しており、NFTの発行および流通のハブとして対応先を今後順次拡大予定としている。

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Clubhouseのアイコンにもなった芸術家ドゥルー・カタオカ氏が初のNFTをオークション、収益すべてをアジア系米国人のために寄付

Drue Kataoka(ドゥルー・カタオカ)氏の作品は、世界30カ国のみならず、国際宇宙ステーションでも展示された経歴がある。最近ではClubhouseアプリの新しい顔に選ばれたアーティスト兼活動家の同氏は、アジア系米国人の活動を支援するため、同氏にとって初となるNFT作品をリリースすることとなった。このオークションはデジタルアートマーケットプレイスNifty Gatewayにて米国東部時間5月13日午後1時30分に開始され、Clubhouseでのローンチパーティとともに24時間にわたって開催された。Nifty Gatewayはオークション手数料を免除し、すべての収益はAsian Pacific Fundと提携しているビジネスリーダーや活動家の連合体Stand with Asian Americansの助成部門であるCatalyst Fund for Justice(CFJ)に寄付される予定だ。

鏡面仕上げの鋼製の彫刻や、バーチャルリアリティ、脳波、モバイル技術を用いたアートなどの依頼作品で知られているカタオカ氏。同氏の作品の1つでわら紙に墨で描かれた「Up!」は、国際宇宙ステーションで行われた初の無重力アート展示の一部にもなっている。また、活動家やオーガナイザーとしても活躍している同氏は、1968年にCoretta Scott King(コレッタ・スコット・キング)氏が始めた非営利団体The Martin Luther King Jr. Center for Nonviolent Social Changeのため、Clubhouseを通じて#StopAsianHate#Clubhouse4India#24HoursofLoveなどで合計で約30万ドル(約3300万円)の寄付を行っている。

「In the Club:#StopAsianHate」と名づけられたカタオカ氏のNFT作品は、Clubhouse内の活動家コミュニティにインスピレーションを得たものである。同氏は10万2000人のフォロワーを持つClubhouse最大のアートグループ「Art Club」を率いている。

「Clubhouseを社会変革のための媒体として活用することに情熱を注いできました」とカタオカ氏は話す。今回のプロジェクトでは「慈善活動かアートかのどちらかだけでなく、両方に総力を挙げ、目標を達成してアジア系米国人コミュニティにできる限りのインパクトを与えたいと思っています」。

同氏はDrue Kataoka Studiosの創設者兼最高経営責任者を務めており、禅宗、墨絵の修行、そしてシリコンバレーからの影響を結集した作品を制作している。バーチャルリアリティやARなどの技術、コードの書き方、ビジネスの基礎などを学びたかった同氏は、美術大学ではなくスタンフォード大学を卒業している。

「ここ20年間の私の信条は、アートはテクノロジーであり、テクノロジーはアートであるということです」と同氏はTechCrunchに話してくれた。

カタオカ氏にとって初となるNFT作品のリリースについて、同氏は「最初のプロジェクトについてはとても慎重に考えていたので、この作品となってうれしく思っています。私はこれまでもこの分野を注意深く見てきましたし、暗号資産やNFTに対してとても強気です。変動性が高く、衰退するものや時の試練に耐えられないものも多くあることは承知していますが、最終的には創造性や多くの重要なことのためのメカニズムとして未来をかたち作っていくことでしょう」と話している。

Stand with Asian AmericansのCatalyst Fund for Justiceの共同議長を務めるEric Kim(エリック・キム)氏は「彼女が今回の収益の100%をAAPI(アジア・太平洋諸国系米国人)コミュニティに向けて寄付してくれるということに、非常に大きな意味があります。また、ブロックチェーン技術の美しい表現でもあると感じています」と述べている。

キム氏はベンチャー企業Goodwater Capitalの共同創設者兼マネージングパートナーでもある。「私はブロックチェーンの最適なプロダクトマーケットフィットをずっと探してきました。デジタルアートがコード化されて非代替性トークンで証券化され、さらにコミュニティのために活用されてClubhouseなどでもローンチされ、Nifty Gatewayのようなプラットフォームを通じてオークションにまでかけられるというこのプロジェクトは、私がこれまでに見たブロックチェーンの中でも最高の方法の1つであり、複数のコンシューマーテックのプラットフォームが見事に連携した結果の賜物です」。

約1分間の「In the Club:#StopAsianHate」では、Clubhouseの部屋のイメージが金色の背景に重ねられている。ユーザーの写真は取り除かれ、残された空間にはカタオカ氏がバーチャルリアリティで造形した一連のモチーフが流れ動いている。同時に、最近行われた街頭デモの声がカタオカ氏自身の心臓の鼓動の録音に重ねて流されている。最終的にその声が風の音に変わり消えていくのだが、これは多くのアジア文化において生命力の源とされている空気、すなわち「気」「氣」「プラーナ」を象徴している。

「この作品はこの活動に信念と信頼を寄せ、当初からこの問題について声を上げ続けてきた活動家やコミュニティメンバーへの敬意を表したものです。主要メディアが、アジア系米国人コミュニティに起きている多くのヘイトクライムや大きな問題を見て見ぬふりをしたり、包み隠したりしていることがとても気になっていました。Clubhouseでは編集もセンサーシップもなく、2020年の早い段階から私はこのような会話をホストして聞いていました。私たちは真剣にこの会話に取り組み、Twitterとの相乗効果によって広がりが勢いを増していきましたが、当時主要メディアはまったく気にもしていませんでした」とカタオカ氏は振り返る。

キム氏によると、Catalyst Fund for Justiceはデータに基づいたアプローチで助成先を決定するという。初めはヘイトクライムの減少や被害者の支援、職場での差別、政治におけるアジア系米国人の欠如、資金不足の非営利団体の支援などに重点を置く予定だ。また、教育カリキュラムにアジア系米国人の歴史をもっと取り入れることや、職場での偏見によってアジア系米国人が昇進を妨げられているという状況を理解すること、また市民団体にアジア系米国人を増やすことなどを目標としている。

アトランタの銃乱射事件の後、キム氏はGoodwaterの共同設立者であるChi-Hua Chien(チ・ファ・チェン)氏、GGVのマネージングパートナーであるHans Tung(ハンス・タン)氏、Lightspeed VentureのパートナーであるJeremy Liew(ジェレミー・リュー)氏などのベンチャーキャピタリストと協力して有力なベンチャーキャピタルから500万ドル(約5億5000万円)を調達し、AAPIの組織に寄付をしている。

「このような意識の高まりと活性化から、ビジネスリーダー、起業家、投資家はどうすればもっと体系的にこの活動を行うことができるか、自分たちの専門的なスキルセットをこの活動にどう適用することができるかを考え始めました」とキム氏。

こういった議論の結果、Stand with Asian Americansが誕生。2021年3月末にはZoomの創業者兼CEOのEric Yuan(エリック・ユアン)氏、YouTubeの共同創業者であるSteve Chen(スティーブ・チェン)氏、Yahooの共同創業者であるJerry Wang(ジェリー・ワン)氏、Stitch Fixの共同創業者兼CEOのKatrina Lake(カトリーナ・レイク)氏、元ワシントン州知事で米国商務長官のGary Locke(ゲイリー・ロック)氏など、ビジネス界や政治界のリーダーたちが共同で署名したWall Street Journalの全面広告でそのミッションを紹介している。Stand with Asian Americansは、ベイエリアで最も長く活動しているAAPI 非営利団体であるAsian Pacific Fundと提携し、助成金を提供する部門としてCatalyst Fund for Justiceを立ち上げた。同部門には現在8000人近くの署名者と100人以上の献身的なボランティアの力が存在する。

Asian Pacific Fundの会長兼エグゼクティブディレクターのAudrey Yamamoto(オードリー・ヤマモト)氏は声明中で次のように述べている。「家の外に出る度に暴力への恐怖に怯えなければならい今、カタオカ氏によるGenesis NFTドロップの惜しげもない寄付はAAPIコミュニティにとってかけがえのないものです。Catalyst Fund for Justiceは新たな資金源を開拓し、データに基づいたアプローチを用いてAAPIコミュニティが直面する最大の不正に立ち向かうための助成を今後も行っていきます」。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTオークション寄付アートClubhouse

画像クレジット:Drue Kataoka

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)

たしかに暗号資産には多くの大量の通貨が必要だ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

こんにちは、米国では5月最終月曜日はメモリアルデーという祝日だ。今回のExchangeはメモリアルデーを記念して、新しい試みとして簡潔にまとめてみよう。

暗号資産(仮想通貨)の話は聞き飽きたという読者には、悪いお知らせだ。彼らは消えて行かないどころか、彼らの進撃のために戦場を整える役割を果たした金融砲が、さらに多くの金融弾を装填しているのだ。

少なくとも、Eric Newcomer(エリック・ニューカマー)氏は「a16z Crypto Fund Balloons to $2 Billion」(a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の暗号資産ファンドが20億ドル(約2178億6000万円)に膨張)と題した先週の投稿で、そのように書いている。

ここにはいくつかのポイントがある。第1に!20億ドル(約2178億6000万円)規模の暗号資産ファンドに出資できるだけのLP(リミテッドパートナー)需要があること。第2に!20億ドルを投じる価値のある、ホットな暗号資産のアイデアが十分に存在すること。

前者の存在は確信できるが、後者はちょっと考えてしまう。ブロックチェーンの分野に優れた企業が存在しないわけではない。Coinbase(コインベース)の第1四半期の収益を見れば、暗号資産を使ってお金を稼ぐことは可能だ。しかし、これまでに最も成功を収めている企業は、従来の銀行の世界と暗号資産の世界を融合させた企業たちであり、後者に完全に属している企業ではないようだ。

関連記事:上場間近のCoinbase、絶好調の2021年第1四半期決算を読み解く

しかし、そのようなアイデアが次々に掘り起こされていく中で、より実験的な暗号資産のアイデアを追いかける資金が出てくることは予想できる。先のDaily Crunchでも述べたように、こうした市場にはすでに多くの資金が投入されている。

ノン・ファンジブル・トークン(NFT)という言葉を聞いたことがあるだろう。すでにNBA TopShot(NBAトップショット)の誇大広告をなんとかしのげたとしても、さらに気を引き締めて欲しい。NFTの世界ではさらに多くの企業が構築を進めているのだ。その中には、NFTにAR(拡張現実)を導入し、Coinbaseから新たな資金を調達したばかりのAnima(アニマ)や、NFTを実生活に取り込むために600万ドル(約6億6000万円)を調達したばかりのInfinite Objects(インフィニット・オブジェクツ)などがある。

ここが、暗号資産へのベンチャー投資、そしてあの巨大なa16zファンドが興味を持つ点だ。

確かに、暗号資産の取引でも儲けることができる。しかし、さらに未来の暗号資産経済はどうなるのだろうか?彼らは現実世界が理解できる実質的な収益を生み出し、公開企業となることができるのだろうか?(いや、そもそも彼らは公開したいと思っているのだろうか?)。

他人が、失敗するかもしれないアイデアに他人のお金を賭けるのを眺めているのは楽しいものだ。表なら彼らの負け、裏なら私たちの勝ちだ。悪くない!

関連記事:ただ1つのNFT動画を表示するディスプレイでデジタルアートの再構築を目指すInfinite Objects

Twitterのサブスクリプション(とメディア?)の盛り上がり

Twitter(ツイッター)のサブスクリプション製品「Blue」(ブルー)が、徐々に市場に迫っている。それがどのようなものだろうと使うつもりだ。

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しかし、私の頭から離れないのは、Twitterがクリエイターにとっての涅槃(理想の地)のようなものを生み出すのに絶好の位置にいるということだ。なにしろ作家やジャーナリスト、アーティストの多くがすでに集まっているのがTwitterという場所なのだ。すでにファンがいる場所だ。私たちのような変人たちがプラットフォームに費やす時間を、活用できるようにしない理由はない。

これがどのような規模になるかは想像できるだろう。TwitterがスタートアップのRevue(レベニュー)とScroll(スクロール)を買収したことで、Blueのサブスクライバーの収益を、プラットフォーム上のライターたちに分配するニュースレタープラットフォームを構築できるようになった。あるいは、先日友人が私に提案したように、TwitterがMedium(メディウム)を買収することも考えられる。Mediumは膨大なサブスクライバーを抱えており、TwitterはそれをBlueに統合することで、作家やその他のクリエイターたちに一種の追加SNSネットワークを提供することができる。だよね?

もし私が数十億ドル(数千億円)の資金と数千人のエンジニアを自由にできる立場で、株主たちから成長しろと命令されたら、私は猪突猛進で思い切ったことをやるだろう。Twitterが何を考え出すかが見ものだが、それが小手先の計画ではないことを期待しよう。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange暗号資産NFTTwitterサブスクリプション

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

ただ1つのNFT動画を表示するディスプレイでデジタルアートの再構築を目指すInfinite Objects

NFT(Non-fungible token、代替不可能なトークン)とは、デジタル所有権の概念の再構築を目指すものだ。アートハードウェアのスタートアップのInfinite Objects(インフィニット・オブジェクツ)が、デジタルアートやコレクターズアイテムの再構築を目指すことで、そうした資産の物理的なコピーの制作に大きなチャンスを見出そうとしている。

このスタートアップが作るのは、ただ1人のアーティストによるただ1つの動画を表示するだけで、他には何もしないディスプレイだ。このディスプレイには、追加のアプリをダウンロードしたり、自分の写真をアップロードしたり、時間や天気を確認したりすることはできない。たとえInfinite Objectsの別のアート作品が欲しい場合でも、ダウンロードをすることはできず、そのサイトに行って、欲しいアート作品が入った別のディスプレイを購入しなければならない。それぞれのディスプレイの裏面には、作品に関する情報やエディション番号、シリアル番号が刻まれていて、物理的なディスプレイと表示されている作品が密接に結びついている。

Infinite ObjectsのCEOであるJoe Saavedra(ジョー・サアベドラ)氏はTechCrunchに対して、今回の600万ドル(約6億6000万円)のシード調達には、主導したCourtside VCや、NBA Top Shot(NBAトップショット)を開発運営しているDapper Labs(ダッパーラボ)をはじめとする多くの投資家が参加しているという。

長い間Infinite Objectsは、NFTなしで運営されるNFTプラットフォームだった。同社は2018年からアーティストたちと協力して、1人のアーティストのデジタル作品を連続して表示し続ける物理的なディスプレイ(ほとんどの場合数量限定)を制作してきた。もちろん、ユーザーたちはそうしたデジタル作品をInfinite Objectsのウェブサイト上で好きな時に見ることができる。だがその価値はアーティストの作品の公式コピーを所有できる点にある。どこかで聞いたような話では?

2021年初めにNFTが投機的資産として広く認知されたとき、インターネットユーザーがデジタルアートの将来やデジタル希少性について議論し始めたことから、サアベドラ氏はそれを大きなチャンスだと考えた。彼のチームはその時点ですでにNFTに取り組んでいて、2020年の12月にはアーティストのBeeple(ビープル)氏と提携し、彼がNifty Gateway(ニフティゲートウェイ)というプラットフォームで販売していたNFTの「物理的なトークン」をリリースした。これは、ビープル氏がクリスティーズのオークションで6900万ドル(約75億円)の落札価格を達成して、美術界では知らないものがいなくなる数カ月前の出来事だ。

今夜7時(東部標準時間)

サアベドラ氏は、彼の会社が制作するものによって、NFTの世界で活躍する企業やクリエイターが自分たちの資産をより親しみやすく、一般の人たちに理解してもらえるようにできる大きなチャンスがあると考えている。また同時に、購入したデジタルアートを、NFTを単なる盲目的な所有から実際に鑑賞できることに焦点を当てたものに変えるチャンスでもあると考えている。

「所有権がともなうことを考えると、500ドル(約5万5000円)とか5000ドル(約55万円)でNFTを購入すことはエキサイティングですが、それを見せるためにスマートフォンのSafariを開かなければならないという行為はエキサイティングではありません」とサアベドラ氏はTechCrunchに対して語る。「私たちがデザインしたこの物理的な器は、ブロックチェーンをまったく理解していない人でも、限定版の物理的商品を理解している人ならば、とても理解しやすいものです」。

サアベドラ氏は、アート作品をただ循環表示させる他のデジタルディスプレイには否定的だ。彼は、アートの所有者が望めば、そのNFTの画像をテレビに表示させることもできるが、それは単にアートを「豪華なスクリーンセーバー」として使っているだけだという。

Infinite Objectsのチームは、NFTの世界にはもっと大きなチャンスがあると考えているが、具体的にどのような取り組みになるのかについては堅く口を閉ざしている。今回の支援者リストに、興味深いことにNBA Top Shotの生みの親であるDapper Labsが含まれていることは、ヒントになりそうだ。Dapper Labsは、Flow(フロー)と呼ばれる独自のブロックチェーンを構築していて、サアベドラ氏は会話の中で、それがEthereum(イーサリアム)ネットワークよりもスケーラブルで持続可能であると称賛を惜しまなかった。先ごろDapper Labsは、初のサードパーティ向けNFTプラットフォームを発表した。この発表は、今回のラウンドのまた別の投資家でもあるアバタースタートアップのGenies(ジニー)との提携と同時に行われた。Dapper Labsはデジタルアクセサリーのストアを2021年夏に立ち上げる予定である。

今回のラウンドには、erena Ventures、Betaworks、Brooklyn Bridge Ventures、GFR Fund、Kevin Durant & Rich Kleiman、Genie、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏のSound Venturesも参加している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Infinite Objects資金調達NFTアートDapper LabsGenies

画像クレジット: Infinite Objects(フレーム内の作品はNatasha Tomchin)

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(文:Lucas Matneyk、翻訳:sako)

NFTマーケットプレイス「nanakusa」が第2期公認クリプトアーティストの審査受付開始

NFT発行・販売・二次流通などを備えた統合型NFT(ノン・ファンジブル・トークン)マーケットプレイス「nanakusa」を運営するスマートアプリは5月27日、第2期nanakusa公認クリプトアーティストの審査受付を開始したと発表した。募集期間は2021年6月9日まで。

nanakusaは、同マーケットプレイス公認コンテンツホルダーやNFT販売事業者、個人活動を行うクリプトアーティストが、制作した作品をNFTとして発行・販売(一次販売)を行えるマーケットプレイス(利用者が保持しているNFTの二次販売も可能)。現在、約80名のクリプトアーティストが公認アーティストとして活動しているという。

第2期nanakusa公認クリプトアーティスト募集では、アーティスト(アナログ・デジタル)、フォトグラファー、イラストレーター、作家、ミュージシャン、声優、動画クリエイターなど、幅広いジャンルでアーティスト活動を行っている方を公認クリプトアーティストとして募集する。今後クリプトアーティストとしての活動を目指している方も対象だ。

応募は、「第2期nanakusa公認アーティスト審査受付フォーム」より行える。審査結果は、6月10日からメールで順次通知する。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)スマートアプリ(企業)日本(国・地域)

二次創作作品を提供すると公式公認でNFT化、販売・収益還元まで行う個人クリエイター支援プログラムが開始

二次創作作品を提供すると公式公認でNFT化、販売・収益還元まで行う個人クリエイター支援プログラムが開始

オタクコイン協会SSSNOKIDCryptoGamesは5月27日、個人クリエイターの二次創作活動を支援するため、二次創作作品を提供するだけでNFT化・販売・収益還元まで行う公式公認の個人クリエイター支援プログラムを開始すると発表した。参加料は無料。

またその第1弾として、東北支援キャラクター「東北ずん子」「東北イタコ」「東北きりたん」の3姉妹をモチーフにした二次創作作品の公募受付を開始した。応募期限は2021年6月6日23時59分まで。二次創作イラスト・動画は新規作品(未公開作品)、過去に制作したものも対象としている。応募要項などの詳細を掲載している「東北ずん子NFT二次創作還元プロジェクト」より応募できる。

今回4者は、NFT販売所「Rarible」上の東北ずん子の認証アカウントにおいて、公式自ら二次創作作品を販売することで、個人クリエイターの二次創作活動の支援を行うという。

個人クリエイター視点では、好きなキャラクターの二次創作作品を創作し、作品を公式に提供するだけで自身の二次創作作品を販売&収益化できるため、より創作活動に専念できるとしている。また、NFT化にまつわる専門的な知識や、販売時のマーケティング・プロモーション、収益管理のための経理業務など煩雑な手続きは不要。

一次流通の販売はオークション形式を想定しており、最低入札価格は0.05WETH(約1.5万円)からの販売になる。一次流通&二次流通時のクリエイターへの売上還元率は50%を想定しており、日本円での受け取りが可能(仕様上、二次流通時はOpenSeaなど特定のプラットフォームでの取引のみ売上が還元される)。

また今回NFT作品で販売する権利は、その作品の(デジタル)所有権となり、キャラクターの著作権・商標は引き続き、東北ずん子の運営元であるSSSが保持する。なお、二次創作権・商品化権は、東北ずん子のガイドラインに基づき引き続きすべての人が所定のルールのもと活用できる。

東北ずん子は、東北地方一帯で食されているずんだ餅をモチーフとしたキャラクター。青森県のイタコを元にした姉の「東北イタコ」、秋田県のきりたんぽを元にした妹の「東北きりたん」で、東北3姉妹として人気を博している。

SSSは、東北ずん子の運営元。東北ずん子の世界に登場するキャラクターの音声合成ソフト、アニメ、3D CGなどの制作を行っている。

NOKIDは、「クリエイターが居心地のいい世の中へ」を理念に掲げ、VRやアニメーションの制作、YouTube運用事業などのクリエイティブ事業を運営。

オタクコイン協会は、日本のアニメ文化を世界に広げるため、アニメ業界におけるブロックチェーン技術の浸透・導入・活用を目指しており、前身のオタクコイン準備委員会を含め、2017年12月よりアニメ文化発展のため活動。

また、アニメ・マンガ・ゲームなどの日本のカルチャーを愛する世界中の人をつなぐコミュニティ通貨「オタクコイン」を運営。オタクコインが世界中で流通されることで、自分が好きなアニメ・マンガ・ゲームなどの業界の発展に寄与できる「コミュニティ通貨」の実現を目指している。

NFTサービスの開発を⾏うCryptoGamesは、ブロックチェーンゲーム「クリプトスペルズ」を2019年6月25日に正式リリース。2021年3月にクレジットカード決済対応の、クリエイターのNFT販売プラットフォーム「NFTStudio」をリリースし、2021年4月に「NFTStudio OEM」の提供を開始した。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:SSS(企業)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)オタクコイン協会(組織)CryptoGames(企業)東北ずん子NOKID(企業)Rarible(企業・サービス)日本(国・地域)

拡張現実でのNFTの閲覧・共有方法を模索する「Anima」がCoinbaseの支援を受ける

AR(拡張現実)とNFT(非代替性トークン)。これ以上いう必要があるだろうか?イエス?まあ、NFTが2021年にホットな瞬間を迎えたのは確かだ。しかし、投機的なゴールドラッシュがクールダウンし始め、人々がデジタル商品が将来どのように進化していくかを考え始めると、NFTが何の役に立つのか、NFTで何ができるのかという疑問がより頻繁に聞かれるようになってきた。

Animaは、Flipboardが2014年に買収した写真 / 動画アプリ「Ultravisual」の創業者たちによって設立された小規模なクリエイティブ系暗号スタートアップで、ARを利用してNFTアートやコレクターズアイテムの閲覧・共有方法を変えようとしている。同社の最新の取り組みは、アーティストがデジタル作品をより大きなデジタルステージに持っていくことを支援し、ARにおけるNFTの未来がどのようなものになるのかを見出そうとするものだ。

このスタートアップは、Coinbase Ventures、Divergence Ventures、Flamingo DAO、映画作家・写真家のLyle Owerko(ライル・オワーコ)氏、そして著作家Andrew Unger(アンドリュー・アンガー)氏から支援を得て50万ドル(約5500万円)の小規模なプレシードラウンドを実施した。

共同創業者のAlex Herrity(アレックス・ヘリティ)氏はこう語った。「NFTが、購入した商品のリターンを目的とした投機的な市場から離れていくのは健全なことだと思いますし、より親しみやすいものを作りたいと考えている私たちにとっても良いことだと思います」。

同社のより幅広いビジョンは、デジタルオブジェクトが現実世界と相互作用する方法を模索することだ。これはここ数年、ARの世界では最重要課題となっていたが、最近ではApple(アップル)やFacebook(フェイスブック)の新製品に対するクリエイターの様子見の姿勢により、開発が停滞していた。Animaの共同創業者たちは、ARとNFTの分野はどちらも非常に初期の段階にあることを認めているが、どちらの分野もギミックが明るみに出るくらいには成熟したと考えている。

共同創業者のNeil Voss(ニール・ヴォス)氏は、TechCrunchの取材に対しこう語った。「今は体験型のギミックが主流になっていますが、そうではなくARを、自分が集めたものまたはライフスタイルを彩るアクセサリーと触覚的な関係を築くための手段ととらえることで、コンテキストの変化が起こります」。

同社のチームはデジタルアートのオブジェクトをARに導入する初期の実験を行っており、すでに数名のアーティストと協力している。来月末には、ConsenSysのPalmプラットフォームをベースにしたマーケットプレイスを立ち上げ、今後のパートナーシップをより多く紹介していきたいとのこと。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:拡張現実NFTAnima資金調達アートマーケットプレイスCoinbase

画像クレジット:Anima

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

車内VRエンタメのHolorideが市場投入に向けブロックチェーンとNFTを導入

Audi(アウディ)のスピンオフ企業で、車内で体験するXRエンターテインメントを手がけるHoloride(ホロライド)は、2022年の市場投入に向けた準備の次の段階として、ブロックチェーン技術とNFTを導入するという。

2021年4月のシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した同社は、自動車メーカーとコンテンツ制作者によるエコシステムに透明性をもたらすため、Elrond(エルロンド)のブロックチェーンを自社の技術スタックに統合すると発表した。HolorideはNFT(非代替性トークン)を使用することで、トークンの購入によって開発者がより多く稼げることを約束し、同社のプラットフォーム上でより多くの魅力的なコンテンツを作成するように奨励して、車内の体験をパーソナライズしたいと思う乗員を惹き付けたいと考えている。

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ブロックチェーン、NFT……。Holorideはインターネットの流行に乗ろうとしているだけなのだろうか?そうかもしれないが、少なくともブロックチェーンの統合には、1年前から取り組んでいたと、Holorideの創業者でCEOを務めるNils Wollny(ニルス・ウォルニー)氏は言っている。

Holorideの没入型車内メディアプラットフォームは、それが機能するためにブロックチェーンを必要とするわけではない。乗員が体験するコンテンツは、車両のリアルタイムの動きと位置情報に基づいたデータに同期して調整される(つまり、乗り物酔しない!)。ブロックチェーンが果たす役割は、Holorideがコンテンツを公正かつ透明に配信し、ユーザーのエンゲージメント時間と評価に基づいて、開発者に報酬を与えられるようにすることだ。

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「私たちは最初から、このエコシステムにおけるすべてのパートナーを、極めて公正かつ透明な方法で結びつけたいと考えていました」と、ウォルニー氏はTechCrunchに語った。「すべての取引とエンゲージメントは、ブロックチェーンに保存できます。自動車メーカー側は、車内のHoloride体験にどれだけの時間が費やされたかを把握することができますし、コンテンツクリエイター側にとっては、私たちのプラットフォームのために制作したタイトルに、どれだけユーザーが時間を費やしたかということが透明になります」。

NFTはブロックチェーン上に記録された、他のものとは代替ができない唯一無二のデジタルトークンだ。ほとんどのNFTはEthereum(イーサリアム)のブロックチェーンに属しているが、HolorideのNFTはElrondのブロックチェーンでサポートされることになる。

Holorideの体験に没入しながら、NFTを買ったり集めたりするという魅力が、より多くのエンゲージメントにつながると、ウォルニー氏は期待している。同氏はまた、未来学者や技術オタクたちが「メタバース」と呼ぶような、デジタルでバーチャルの世界と物理的な現実や拡張された現実が結びつくという概念が、加速していくことも予見している。

ヘッドセットを装着して次の目的地へ移動する間に、この仕組がどのように機能するのだろうか? それをイメージするには、ウォルニー氏に具体的な例を上げてもらったほうがわかりやすいだろう。Holorideの場合、NFTは仮想世界の要素を現実世界の場所や出来事に結びつけることから始まる。

「人々が仮想の乗り物、例えば宇宙船や潜水艦なんかに乗って移動しているところを思い浮かべてください。同時にその人たちの物理的な身体は、現実の世界で自動車に乗っているのです」と、ウォルニー氏は説明する。「彼らがある場所を通り過ぎるとき、コンテンツ制作者はそこに、乗員が集められるような何かを置いておくことができます」。

つまり「Pokémon GO(ポケモンゴー)」のようなものだ。だが、スマートフォンを手に持って、拡張現実のアニメ・ペットを狂ったように追いかけて外を歩くのではなく、VRヘッドセットを装着して車内に座っていればいい。そして捕まえるのは、レアなポケモンどころか、唯一無二の自分だけが持つことができるアイテムであり、交換しない限り、他の誰もそれを手に入れることはできないのだ。

「あるいは、ユーザーがあるゲームをとても上手にプレイしたら、賞品としてアイテムを得ることができるというものも考えられるでしょう」と、ウォルニー氏は続ける。「将来的には、それを他のユーザーに見せたり、交換したりできるようになり、現実世界と仮想世界の距離が縮まります」。

HolorideのNFTの将来性は、乗員が車内で体験するコンテンツに没頭し、デジタルトークンという形で得られるものに、愛着や所有欲を感じるようになるかどうかにかかっている。ウォルニー氏がバーチャルリアリティに熱中し過ぎているのかもしれないし、我々が拡張現実に依存せずにいられなくなるような、我々が知らないことを彼は何か知っているのかもしれない。しかし、彼がTechCrunchに語ったように、これは同社のエコシステムの始まりであり、Holorideを「メタバースの輸送企業」にするためのステップに過ぎない。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:HolorideNFT自動車

画像クレジット:Holoride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

埼玉県川越市からJリーグ目指すCOEDO KAWAGOE F.Cがブロックチェーン基盤のFiNANCiEでクラブトークン発行

埼玉県川越市からJリーグ目指すCOEDO KAWAGOE F.Cがブロックチェーン基盤のFiNANCiEでクラブトークン発行

埼玉県川越市からJリーグを目指すCOEDO KAWAGOE F.Cは5月18日、ブロックチェーンを利用したトークン発行型クラウドファンディング「FiNANCiE」で5月20日よりクラブトークンの発行・売り出しを開始すると発表した。ファンディング実施期間は5月20日11時から6月18日14時59分までの予定。クラブトークンの販売売上は、主にクラブ運営費用に利用する。

COEDO KAWAGOE F.Cは2020年9月に埼玉県川越市をホームとし、20代の起業家2名によって設立された社会人サッカーチームだ。さらに、2030年のJリーグ加入も目指している。

COEDO KAWAGOE F.Cのクラブトークンはブロックチェーンで発行・管理され、ポイントのように数量を持ち、サポーター(トークン保有者)の売買に応じて価格が変動する。

そして販売売上は、主にCOEDO KAWAGOE F.Cのクラブ運営費用に利用される。購入者はクラブの投票企画への参加や、参加型イベントへの招待、特典抽選などへ応募が可能となる。

支援コースでは1万ポイント/3万ポイント/5万ポイント/10万ポイントの販売額が設定されており、それぞれで獲得できるクラブトークンが異なる。

COEDO KAWAGOE F.Cによると、欧州を中心とした海外ではブロックチェーン技術を利用したプロスポーツチームの「クラブトークン」が発行され、オンライン上でのファンサービス・クラブ応援ツールとして注目されているという。バルセロナFCやユベントスなど、主要なサッカープロチームなどがすでに展開しているそうだ。COEDO KAWAGOE F.Cによるクラブトークンの発行が、どのように地域リーグの発展に貢献するのかに注目したい。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:スポーツ(用語)ブロックチェーン(用語)日本(国・地域)

NFTアート:何が価値の源泉なのか? 新たな投資スタイルへの道を歩むNFT

NFTアート:何が価値の源泉なのか? 新たな投資スタイルへの道を歩むNFT

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、ビットコインを対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

現在、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)がここまで注目される理由のひとつは、投資手段としてのアートの可能性を拡大させたことにあるでしょう。ネアンデルタール人によって6万5000年以上前に描かれた洞窟壁画が世界最古のアートといわれていますが、その後、歴史の中で様々な手法、技術そして媒体が生み出されてきました。アートをコンピューターファイルとして簡単にシェアできるデジタルアートは、最新の媒体のひとつです。

歴史的にアートは、鑑賞目的だけではなく投資家から代替的な価値保存手段として人気を集めてきました。インターネットが登場し、アートの形がデジタルに変わってもすぐにはフィジカルなアートと同様に投資対象とみなされませんでした。なぜならインターネットにはコピペ文化という問題が存在したからです。このデジタルアートの問題をデジタル領域における所有権の確立によって解消したのがNFTでした。

本稿では、NFTの意義をデジタル領域における所有権の確立という観点から解説し、投資対象としてのNFTを考察します。

クラーケンとNFTの関係は?

その前にまず、クラーケンとNFTの関係について少しお話をしたいと思います。NFTは2021年2月ころから一大ブームを巻き起こしていますが、実はクラーケンはブームの前からNFT関連事業を拡大してきました。

例えば、2020年12月23日、Ethereum(イーサリアム)基盤の3D仮想空間プラットフォーム「Decentraland」(ディセントラランド)で著名DJの3LAU(ブラウ)を招いてクリスマスパーティーを開催。参加者に限定盤のNFTウェアラブル(アバターが着る服など)を配りました。また、2021年1月には、NFTブームの中でもNo.1ヒットといえる「NBA Top Shot」(NBAトップショット)が基盤にするブロックチェーン「Flow」(フロー)を世界の取引所に先駆けて上場させました。

また創業者のJesse Powell(ジェシー・パウエル)は、創業前の2008年にカリフォルニア州のサクラメントでVergeという美術館を設立し、新進気鋭のアーティストをサポートしていました。ブロックチェーン技術の結晶であるNFTとデジタルアートは相性抜群です。こうした事情もあり、クラーケンではNFTの未来について高い関心を持ち日夜研究を続けています。

デジタル領域における所有権

NFTとは、暗号資産と同じように仲介業者を使わずにインターネット上で売買・交換が可能な暗号技術を基盤にしたトークンを指します。他の暗号資産と同じように偽造不可能で取引履歴の追跡が容易であるなどブロックチェーンならではの特徴がある一方、固有の価値を持つ点が異なります。NFTの場合、世の中に同じ価値をもたらすものはふたつとありません。

インターネットが誕生してもデジタルアートが普及しなかった背景にあるのは、いわゆる「コピペ」文化の存在です。

30年前にインターネットが誕生して以来、アーティストやコンテンツ制作者は、画廊やレコード会社を経由することなく、作品を直接公共の場で共有できるようになりました。2009年の暗号資産誕生前から、SNSや動画投稿サイトなどを使って仲介業者なしでアートを共有することは可能だったのです。

しかし、インターネットは諸刃の剣でもありました。インターネットを使える人なら誰でも簡単にアート作品のファイルをダウンロードしてコピーし拡散することが可能だったからです。所有権の帰属先は曖昧になり、最も成功するアーティストでさえ収益化に苦戦するのが現状でした。解決策は、仲介業者を元に戻し、サブスクリプションなどの仕組みを導入することでしたが、結局、仲介業者に多くの手数料を取られる構造は変えられませんでした。

この状況を変えたのがNFTです。NFTの登場後も、インターネット時代と同じように、誰でもアートをオンラインで見ることができ、自分のスクリーンセイバーに使うこともできます。しかし、インターネット時代と異なり、NFTによって、アートが希少なものとしてブロックチェーン上に記録され、それを「所有」できる人は限られた人になりました。

例えばモナリザの絵のコピーを家の壁に掛けても、それはモナリザの絵を持っているということになりません。多くの人はモナリザの絵のコピーを家やネットで見るだけで満足するかもしれませんが、一部の人は数億円払ってでも保有することに価値を感じます。私たちはモナリザのような有名な絵はだいたい知っていますし、オンラインで画像をいくらでも見ることができます。しかし、「本物」は確かに存在し、所有者は公式の文書で公式のライセンスを持っている人だけになります。NFTは、ブロックチェーン技術を使って限られた所有権のライセンスをデジタル上で確立したものなのです。

そして、NFTがデジタル所有権を確立したからこそ、これまでフィジカルのアートだけが対象だった投資の世界にデジタルも加わることになりました。誰もが参加できるブロックチェーン技術によって、アート作品の所有権が証明可能なものになったからこそ、「本物」と偽る詐欺の可能性がなくなり、投資対象としてデジタルアートが価値を持つようになりました。

数字で振り返るNFTの熱狂

NFTの売り買いを行うマーケットプレースにおける取引高は、2月26日に過去最高の2600万ドル(約28億円)に到達した後も勢いを持続し、3月11日には3400万ドル(約37億円)と過去最高記録を塗り替えました。その後、熱狂度合いがやや落ち着き、2021年第1四半期は結局1300万ドル(約14億円)で終えました。

NFTマーケットプレイスの取引高

出典:Kraken Intelligence「NFTマーケットプレイスの取引高」

主なNFT作品の販売実績としては、デジタルアーティストBeepleの「The First 5000 Days」が米老舗オークションハウスのクリスティーズで6900万ドル(約76億円)で落札された他、米国出身バンドのKings of Leon(キングス・オブ・レオン)が初めてNFTとしてアルバムをリリース、ツイッター創業者Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)の最初のツイートが50万ドル(約5500万円)で落札、NFTスターRob Gronkowski(ロブ・グロンコウスキー)が自身のプレイシーンをNFTで販売するなど、音楽界とスポーツ界を中心に複数あります。

これらNFT作品の購入者は、初期投資以上に作品の価値が上昇すると見込んでいるから投資をしたわけです。NBAトップショットでは、LeBron James(レブロン・ジェームズ)のハイライトシーンを20万8000ドル(約2300万円)で購入したバスケットボールファンもいました。このファンは、将来的にさらに値上がりすると見込んでいるから投資をしたのかもしれません。

NFTアート:何が価値の源泉になるのか?

前述のように、NFTによってアートへの新たな投資手法が生み出されたということは確かでしょう。所有権の売買だけではなく、例えばblueboxのように、NFT投資家が音楽のストリーミングストアから印税を毎月得られる仕組みも構築されています。

ただ、NFTは誰にでも作りやすく、投機の対象になる可能性があることにも注意が必要です。

重要なのは「何が価値の源泉なのか?」という点です。例えば作品を作るのに費やした労働コストなど普遍の物差しがあるわけではなく、「投資家が価値があると思うから価値がある」というのがNFT作品の価値を決める軸になっています。「個人的にアーティストが好きだから」という一点でアートの購入を決める富裕層もいます。NFTのアート作品に「本源的な価値」(Intrinsic Value)があるのか、疑問視されています。

実はBitcoin(ビットコイン)も「本源的な価値がない」と批判されます。Bitcoinは一時6万ドル(約653万円)まで上昇しましたが、「その根拠は何か」「適正価格はどうやって出すのか」という視点です。

ただ「自分が価値があると思うから価値がある」という主観価値説が間違っていないという立場を取ることもできます。そうなると、物事の価値というのはマーケットにおいて需給の結果決まるという立場につながります。

フィジカル版アートへの投資が歴史的に成立してきたように、NFTによって可能となったデジタル版のアートへの投資も存続し続けるでしょう。ただ、「現在のNFTがバブルなのか?」という問いに関しては慎重に答える必要がありそうです。自分が価値があると思うものに価値が生まれるといっても、先述のBeepleが指摘するように「とんでもない価格をガラクタに付けてしまうこと」もあり得るかもしれません。

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アバターを作るスタートアップGeniesがNFT人気に乗って65億円相当を調達

これまで数年間、全員が同じ夢を追っている新進のアバター企業を私も人並みに取り上げてきた。その夢とは、ゲームやデジタル空間で広く採用される架空の登場人物(ペルソナ)になるための、カスタマイズ可能なプラットホームを作ることだ。これまで私が取り上げたものの中で、生き残っているのは少ない。でもロサンゼルのGeniesは、有名ミュージシャンたちとのパートナーシップを成功させて、とても広い範囲のアバタープラットホームという大きなビジョンの実現に、初めて近づいている。

同社は今日(米国時間5/3)、Mary Meeker氏のBondがリードする6500万ドルのシリーズBを完了したことを発表した。それにはNEAやBreyer Capital、Tull Investment Group、NetEase、Dapper Labs、Coinbase Venturesなどが参加した。Mary Meeker氏はGeniesの取締役会に加わる。同社の最新の評価額は、公表されていない。

この財源は、創業4年目を迎えた同社のちょうど転換期に投じられた。そのことを、NFTデジタルカードNBA Top ShotのメーカーであるDapper Labsや、暗号通貨大手Coinbaseの参加が証明している。先週発表されたように、同社はDapper LabsのFlowブロックチェーン上のNFTプラットホームを展開して同スタートアップと密接に提携している。それによりDapper Labsは、Genesisのアバターアクセサリーのオンラインストアの、バックエンドを構築することになる。Dapper Labsがプロスポーツのリーグと独占契約してNFTとそれらの公式サポートを提供しているように、Genesisもその名簿に載っているJustin Bieber、Shawn Mendes、Cardi Bなどのセレブたちとのパートナーシップを活用して、アバターアクセサリーを大衆的に売買するためのプラットホームを作っていきたい心算だ。

同社は10月にGucciとのパートナーシップを発表して、自分の目の前に大きな新しい市場機会を切り開いた。

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Geniesのビジネスの大半は、まず有名チームや有名タレントなどとパートナーして、それらが提供するエンターテインメントの顧客にアバターというデジタルの存在を与えることが主体だ。顧客はソーシャルメディアなどの上で、アバターによって自分を目立たせることができる。同社はモバイルアプリのベータで全ユーザーにアバターの創造を展開したから、Genesisは彼らよりも前のアバター企業が明確に持っていた夢の一つにフォーカスしてきたことになる。それは、同社のSDKで、アバターのユーザーの大きなネットワークと、同社の形式と互換性のある多くのプラットホームのネットワークを作っていく、という夢だ。


画像クレジット: Genies

GeniesのCEO、Akash Nigam氏は本誌の取材に次のように語った: 「アバターは本来の自分をもっと積極的に見せていくためのメディアだ。それは別の自己の表現だから、現実世界の制約にとらわれる必要はない」。

NFTというトレンドがGenesisに新たな探究の分野を与えているが、同じくパンデミックというもっと大きなトレンドが、ユーザーを何もかもがデジタルという世界に追いやり、そこでお互いが社交し結びつくようになっている。そこでNigam氏は曰く、「パンデミックはあらゆるものを加速した」。

Nigamが念を押すのは、近い将来、NFTという大きな機会があるとしても、Genesiはあくまでもアバター企業でありNFTのスタートアップではないことだ。ただし、暗号技術に支えられたデジタルグッズとその市場は今後長年存在するだろう、と。デジタルグッズをめぐる現在の環境がGenesisの資金調達を助けた、という説には、彼は納得していない。彼によるとそれは、投資家にとって倍率6〜8倍の投資機会であり、スタートアップへの日和見主義的な投資にすぎなかった。「うちは何年も資金調達をせずにやってきた企業だから」、と冷静な言い方をする。

同社によると暗号化製品のマーケットプレースは、早ければ今年の夏ごろにローンチするそうだ。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Genies

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ブロックチェーンを利用して美術品の独特な所有権管理を行うLobusが6億円相当を調達

ブロックチェーンの実際のユースケースの中でも、美術市場における所有権証明の再編はもっとも明白なもののひとつだった。しかし最近の数か月は、高名なオークションハウスがNFTを採用し、人気アーチストたちがこの暗号媒体を試みるようになるに伴い、その未来がかつてなく現実味を帯びてきたようだ。

クリスティーズとサザビーズの出身者たちが作ったスタートアップLobusは、SuperRareのようなNFTマーケットプレースのクリエイターフレンドリーな仕組みを実物アートの世界に導入した資産管理プラットホームで、ブロックチェーンの技術を日常化しようとしている。彼らはそれによって、美術品のオーナーが彼らが売る作品の部分的な所有権を持ち、今後の取引からも利益を得られる仕組みを実現するつもりだ。実物アートの売り手は、自分の作品を100%売ることと、その価値が今後の取引で増えていくことを、今では当たり前と思うようになっている。しかしLobusの目標は、それらの売買の全過程においてアーチストも所有権の一部を保持し、毎回手数料を得られるようにすることだ。それは、ブロックチェーンを用いる所有権方式によって可能になるラジカルなアイデアであり、悪夢でもある。

LobusのCEO、Sarah Wendell Sherrill氏は本誌の取材に対し次のように語った: 「私たちがやろうとしているのは、NFTが所有権というものに関してもたらした最良のものを利用して、どうやったら所有権の形や構造を多様化してこの資産クラスに介入し制御できるのか、という問に答えることだ」。

彼らのスタートアップはこれらの新しい仕組みをカプセルに収めた対象範囲の広い資産管理プラットホームにより、今日使われている古いレガシーソフトウェアのユーザーを誘い出すことを狙っている。堅固な所有権証明にCRMとアナリティクスのプラットホームと動的プライシングのようなツールを組み合わせてLobusは、美術市場にエクイティ管理のCartaのような独自のソフトウェアプラットホームを導入して、もっと広い市場にアプローチできるようにしたいのだ。

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Lobusによると同社は、Upside Capitalと8VC、Franklin Templeton、Dream Machine、Weekend Fund、およびBoostVCらから600万ドルを調達している。そのラウンドに参加したエンジェルは、Rob Hayes氏、Troy Carter氏、Suzy Ryoo氏、Rebecca/Cal Henderson氏、Henry Ward氏、そしてLex Sokolin氏だ。

チームの大きな目標は、ブロックチェーンの理解をもっと容易にして、それが美術品のオーナーのネットワークにもたらすものに、目を向けさせることだ。過去数か月のNFTブームで巨額の売り上げがが計上されたが、Lobusのような努力が挑戦しているのは、すべての権利者や利害関係者を同じ土俵に乗せて、暗号化アートのさまざまな仕組み(めしべ)をグローバルな美術市場(おしべ、花粉)で他花受粉していくことだ。すでにおよそ300の熱心なアーチストのパートナーがいるLobusは、そのプラットホームを蒐集家やアーチスト共同体、資産マネージャーなどにも売り込んでいる。

今現在、Lobusのデータベースにはおよそ45000点の美術作品物件があり、そのフィジカルとデジタルの物件の全体の価値は約54億ドルに達している。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)
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double jump. tokyoとセガがNFTのグローバル展開で提携、ゲーム発売当時のビジュアルアートやBGMなどデジタル資産化

doublejump.tokyoとセガがNFTのグローバル展開で提携、発売当時のビジュアルアートやBGMなどクラシックIPをデジタル資産化

double jump.tokyoセガは4月27日、ブロックチェーンの技術を活用したNFTデジタルコンテンツのグローバルでの展開について提携したと発表した。

まずは、セガが過去に発売し現在も高い人気を誇るクラシックIPに関するNFTコンテンツの販売を、2021年夏頃をめどに開始する。セガが過去に発売したハードにおいて展開し、現在も全世界で高い人気を誇る数多くのクラシックIPについて、発売当時のビジュアルアートやゲーム内で使用された映像やBGMといった豊富なデジタル資産をNFTコンテンツとして順次販売する。

さらにこれを皮切りに、現在展開中のIP、さらには今後発売される新規IPなど様々なコンテンツに順次展開する。将来的には、ユーザーが所有するNFTコンテンツの活用方法なども模索するとしている。

また、今回の取り組みを機にセガサミーホールディングスが、double jump.tokyoに対する出資を決定した。NFT市場は急成長とともに今後も大きな拡大が見込まれており、同資本提携により、さらに両社の関係を強化し、今後ブロックチェーン技術を用いたNFTに留まらない積極的なビジネス展開を共同推進するという。

NFT(Non-fungible token。ノン・ファンジブル・トークン)とは、代替不可能なトークンを表す言葉であり、ブロックチェーン上でIDやシリアルナンバー、取引記録などの識別情報を管理することで、デジタル資産の所有や真贋を明確にし、唯一性を持たせるもの。

セガは、家庭用ゲーム機、PC、スマートフォン向けゲームの企画・開発・販売・運営、アーケード機器の企画・開発・販売を軸に事業を展開。ゲーム事業で培ったノウハウを生かしたデジタルサービスやプライズをはじめとしたキャラクター商品の企画・開発・販売なども行っている。

ゲーム事業においては、日本国内・海外のスタジオにて開発したゲームコンテンツを、日本をはじめ世界各地に置く拠点を通して全世界に提供。また、アーケードゲーム事業においてはプライズマシン、メダルゲームなど革新的な発想力とそれを具現化する高い開発力により製品を生み出している。

double jump.tokyoは、NFT・ブロックチェーンゲーム専業開発会社として、2018年4月3日に設立。「My Crypto Heroes」「BRAVE FRONTIER HEROES」などの人気ブロックチェーンゲームの開発、ブロックチェーンゲーム開発支援サービス「MCH+」および、NFT事業支援サービス「NFTPLUS」を提供している。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)セガ(企業)セガサミーホールディングス(企業)double jump.tokyo(企業)ブロックチェーン(用語)日本(国・地域)

NFTを利用してクリエイターが自分の知的財産を守るブロックチェーンのプラットフォーム「S!NG」

数年続いた暗号資産(仮想通貨)の冬の後に、NFTの春がきたが、爆発的な売れ行きの後に価格が落ち着くにつれて、、ブロックチェーンの創設者たちは、NFTへの投機的な関心が変化しても、時間をかけて成長できるような、より安定した機会を探している。

特に関心を集めているのが、NFTを利用してクリエイターをめぐる経済を変革し、作品をホストするプラットフォーム以上にアーティストの方が利益を得るようにすることだ。このような新しい取り組みの1つが最近立ち上げられたS!NG(「sing」と発音する)だ。S!NGは、ユーザーが自分のサーバーにファイルをアップロードし、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンの上でそれらのアップロードにタイムスタンプするというプラットフォームだ。非常にシンプルな仕組みで、野心的な枠組みを備えているため、アーティストは作品を制作する際に作品に対するクレジットを維持できるようにする。

このアプリを作ったチームは、アーティストが彼らの創作過程で自分の知財を自動保存できるプラットフォームを構想している。たとえば制作途上のメモや注記、簡単なデモなども保存できるため、それらの明確にタイムスタンプされたパンくず(ブレッドクラム)の足跡を見れば、権利をめぐる論争は起きないし、起きても簡単に片づく。アプリの名前からもわかるように、特にソングライターやミュージシャンをターゲットにしているが、同社の案内を見ると、写真家やライター、プログラマーなどさまざまなタイプのクリエイターを対象にしていることがわかる。

「非常に広範な目撃者と非常にプライベートなイベントの両方を対象にできる。コンテンツがそこらに漏れ広がることはないが、それが特定の時点に存在するという証明はとても広範なものになりうる」と同社CEOのGeoff Osler(ジェフ・オスラー)氏はいう。

iOSアプリそのものも、かなり単純明快だ。写真や動画、オーディオ、テキストファイルといったメディアをアップロードし、協力者などに関する注記も付けてそれらを提出し、ブロックチェーン上に登録する。ブロックチェーンがホストするハッシュによりファイルはプライベートであり、暗号化されたファイルはAWS上のS!NGのサーバーに保存されるため、初期の草稿であってもそれらが一般公開される恐れはない。アーリーアダプターはブロックチェーンのスタートアップがサーバーごと夜逃げしてしまったらどうなるのか、と心配するかもしれないが、それはNFTのメディアファイルを中央的なサーバーにバックアップしている多くのスタートアップの、すべてに対していえることだ。

画像クレジット:S!NG

クリエイティブの世界に人生の時間の大半を投じてきた人びとは、ぽっと出のアーティストのように作品がタダで見られたり聴かれたりすることではなく、著作権といった権利の問題を重視するだろう。作品が完成して一般公開されたら、公開されているリンクを辿ってオリジナルに行き着くことはできるが、S!NGが狙っているのは、公開が創作のもっと初期の段階で行われ、コラボレーション的な創作過程をサポートできることだ。以前は、アイデアの権利をめぐって法的な争いが起こりがちだった。

ミュージシャンでアドバイザーのRaine Maida(レイン・メイダ)氏が、次のように説明する。「何かを盗まれても、私を守ってくれるチームがあれば、どんな紛争でも解決し勝訴できるでしょう。でも16歳の子どもにはそれは無理なことであり、S!NGはそれに代わるものを提供します。争いに勝つということよりも、そもそも盗まれないようにするという点が大きい。コンテンツにはS!NGの透かしが入っているため、どこに保存し共有してもわかります。その子どもはブロックチェーンが何かを理解できなくても、S!NGが自分を守ってくれる会社であることはわかるでしょう」。

現状では、NFT(非代替性トークン)に基づく法的保護はまだ珍しいかもしれないが、S!NGのチームは、今後DocuSignなどの技術が受け入れられるのにともなって、ブロックチェーン由来の所有権証明は自然に判例の中に含まれてくるだろうと信じている。

同社がクリエイターたちの説得に成功して、S!NGのプラットフォームが彼らのツールに含まれるようになれば、今後、同社はさまざまな機会を通じて、ブロックチェーン上で信じられないほど多くの若いクリエイターたちをユーザーにできるだろう。現在のところ、NFTを金のための投機の一種と見ているアーティストが多いため、当面の間、同社の創業者たちは誇大な宣伝を避けることに注力していくようだ。

「率直にいって、何かが何兆億ドル(何百兆円)で売れたとか騒いでいるクレイジーな今のNFTブームにはまったく関心がありません。私に関心があるのは、ファンが1000人いる小さなアーティストたちが、自分のビジネスを維持するために15ドル(約1620円)の会費を払ってくれることだけです」とオスラー氏はいう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTS!NGクリエイターイーサリアム

画像クレジット:WIN-Initiative

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

イーサリアムの「最古のNFTプロジェクト」CryptoPunksをめぐる驚くべき熱狂

2021年3月、小さな帽子をかぶった宇宙人の24×24ピクセルの1組のポートレートがそれぞれ約750万ドル(約8億2000万円)で販売されたのは、Beeple(ビープル)がNFTを6900万ドル(約75億7000万円)で売却したというニュースが全米の新聞の一面を飾る数時間前のことだった。

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この宇宙人のポートレートは片方が売れてからもう片方が売れるまで20時間ほどしかかからなかったのだが、Beepleのオークションのようにメディアをにぎわせることはなかったが、片方がデザインソフトウェアのスタートアップFigma(フィグマ)のCEOであるDylan Field(ディラン・フィールド)氏によって販売されたため、テックメディアで少し取り上げられた。販売後のクラブハウスでの会話で、フィールド氏は、ブロックノイズのように角ばった輪郭で描かれているこの作品が、今から1世紀後には「デジタルアートのモナリザ」になることを願っていると述べた。

Punk #7804、最近4200イーサ(販売時点で約8億2000万円)で販売された

ピクセルで作成された宇宙人のポートレートは、CryptoPunks(クリプトパンク)と呼ばれるNFTプラットフォームで所有されていた。NFTの世界では、このプラットフォームはかなり古い時代のもの、つまりほぼ4年以上前のものだ。登録されている1万体のパンクはすべて手順通りに作成され、プロジェクトが開始された2017年には無料で配布されていた。

それ以来、これらの画像の取引を中心に築かれた経済は、少なくとも数カ月前までは、小さいながらも情熱的なコミュニティとともに成長してきた。それが突然、ピリピリしたシリコンバレーのCEOや著名なベンチャー投資家、有名なYouTuber、ポーカーの有名なプロなど、主要な実業家を巻き込んで急成長した。NFTの追跡サイトCryptoSlam(クリプトスラム)によると、同プラットフォームでは、ローンチ以来、正式な取引で2億ドル(約217億9000万円)相当の取引が行われているという。これは過去数カ月で、NFTの取引の98%が同プラットフォームを経由して行われたということだ。

「パンク」(クリプトパンクで取引される画像)の価格が急上昇したのは、暗号資産の価格上昇、Dapper Labs(ダッパーラボ)のNBA Top Shot(NBAトップショット)の人気上昇、物理的な収集品市場の復活などをきっかけとしてNFTに対する関心が急に高まったことが主な原因だが、こうした状況により、デジタル商品への投資に対する心理的なハードルが低くなった投資家が増えた。

現在、最も安価なパンクはEthereum(イーサリアム)暗号資産で約3万ドル(約329万円)、希少価値が最も高いものになると1000万ドル(約11億円)弱の値が付くようだ。

クリプトパンクは大いに注目を集めている。しかし、あらゆる目がプロジェクトに注がれているにもかかわらず、人々は自分が何に注目しているのか、まだはっきりとわかっていない。

Sotheby(サザビー)のCEOであるCharles Stewart(チャールズ・スチュワート)氏はTechCrunchとのインタビューで「NFTの世界では、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏のツイートの販売、トップショット、Beepleが同じ文脈の中で語られています」と話している。「境界線が曖昧になっている可能性があります。クリプトパンクは芸術なのでしょうか。収集品なのでしょうか。正確には何でしょう」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:Lucas Matney

「より公正な」株式市場

2017年の初め、John Watkinson(ジョン・ワトキンソン)氏とMatt Hall(マット・ホール)氏は、自分たちが作ったピクセルキャラクター作成ツールで遊び、自分たちが考え出したおもしろい小さなポップアートのポートレートにかなり夢中になっていた。6月までに、新興のイーサリアムブロックチェーンでホストされるクリプトパンクと呼ばれるプロジェクトのために、さまざまなヘアスタイル、帽子、メガネを持つ1万体のキャラクターを作成した。パンクの中にはいくつかの属性を持つものもいれば、属性を持たないものあり、類人猿や宇宙人のパンクもあった。クリエイターはいくつかの要素をキュレートしていたが、どんなパンクになるかはツール次第だった。

クリプトパンクは、ブロックチェーン愛好家の小さなコミュニティからささやかな関心を集めた。イーサリアムの「ガス代」(取引手数料)を数セント(数円)だけ払えば自分のパンクを所有できるからだ。クリプトパンクは、NFTプラットフォームCryptoKitties(クリプトキティ)が誕生する数カ月前、またNBAトップショットが誕生する数年前から存在する斬新なアイデアだったが、イニシャル・コイン・オファリングの初期段階に、2017年の暗号資産の波がやってきた。この頃は詐欺が多く、なかなか注目を集められなかった。ホール氏によると、ローンチの数日後に購入されたパンクは20〜30体だった。

それから1週間後、発足したばかりの暗号アートプロジェクトに関する記事がMashable(マッシャブル)に掲載されると、数時間後にはパンクは売り切れた。

中にはすぐにうまくいかなくなったユーザーもいた。hembaというユーザー名を使い、クリプトパンクコミュニティの要注意人物だったあるユーザーは、ローンチ時に1000体以上のパンクを購入し、この年、市場が上昇する前に1つ残らず売却したため、現在の価格で数千万ドル(数十億ドル)の利益を逃すことになった。mr703という別のユーザーは、ローンチ時に合計で703体ものパンクを購入し、そのうち数百体を数千万ドル(数十億ドル)相当のコレクションとして数年後も保有している。

ペンネームmr703とのディスコードチャットで「もう十分だと感じているか、あるいは、今後もパンクを買う予定か」と尋ねたところ「本当に欲しいパンクはすべて所有している」という答えが返ってきた。彼らが公開しているウォレットを見ると、私たちの質問に答えるまでの数分間で1体のパンクを3万7000ドル(約404万円)以上で購入し、その数時間後には、別のパンクを3万5000ドル(約383万円)で購入していた。

リスクの高い暗号資産を全面的に支援している一部の投資家は、NFTは暗号資産の保有手段を多様化する方法だと考えている。またクリプトパンクをどちらかというとゲームだと捉える投資家もいる。

クリプトパンクのクリエイターであるマット・ホール氏とジョン・ワトキンソン氏

「年々、ギャンブルと投資の違いが曖昧になってきているように思います」と、最近初めてパンクを購入したプロのポーカープレイヤーMike McDonald(マイク・マクドナルド)氏(31歳)は話す。

数万ドル(数百万円)の値が付くパンクもあれば、数百万ドル(数億円)の値が付くパンクもある。それはなぜだろう。盛り上がりを見せるクリプトパンクのディスコードコミュニティのユーザーは、デザイン属性の希少性に対する客観的分析とパンクの「美学」に対する主観的な印象に基づいて、パンクの価格を自分たちで決定する必要があった。

物事は常に予測できるとは限らない。パンクの属性として最も一般的な、イヤリングを付けたパンクは、最もレアな属性であるビーニー帽をかぶったパンクよりもはるかに低い価格で取引されている。しかし3Dメガネをかけた何百ものパンクは、数が少ない緑色のピエロの髪をしたパンクよりも高額のプレミアムを獲得する傾向にある。市場での勢いが不規則に増す属性もある。例えばここ数週間、パーカーを着たパンクの市場が特に過熱している。

「言うまでもなく、これは非常に投機的な市場です。しかし株式市場よりは公正だと思います」とユーザーのMax Orgeldinger(マックス・オゲルディンガー)氏はTechCrunchに語っている。「Elon Musk(イーロン・マスク)氏は称賛に値しますし、私はTesla(テスラ)の大ファンですが、株式市場には株価を支える原理はありません。GameStop(ゲームストップ)を見ても同じです。株式市場には誰も理解できない非常に複雑な数学が存在すると多くの人が考えていますが、NFTコミュニティにはそういう考えに騙される人はいないため、より公正な取引が行われています。つまりNFTコミュニティで人々が行うことは価格の決定だけであり、支払いたければそれが価格になり、支払いたくなければ価格になりません」。

価格が高騰したため、クリプトパンクの限定品を所有していること自体が「デジタル財産」になる。ソーシャルメディアサイトでアバターとして使う場合は特にそうだ、と数人のパンク所有者はTechCrunchに語った。ブロックチェーンの世界以外でも多くの富裕層がパンクを購入している。YouTuberのLogan Paul(ローガン・ポール)氏のようなインフルエンサーは、2021年3月、複数のパンクを17万ドル(約1860万円)で購入したときの動画をアップロードしている。

「パンクを持っていなければ、エコシステムは、このようなアバターを購入する余裕のある1万人のジェントルメンズ・クラブのようなものです」とマクドナルド氏はいう。

コミュニティの間では、このような外部からの注目は価格の暴落が起きる兆候でないかという懸念があるが、多くの投資家はNFTにおけるクリプトパンクの歴史的な価値に安心感を持っている。とはいえ、一部の投資家は、自分たちがやっていることは決して無謀ではないと周囲の人々を説得するのに苦労している。

「ガールフレンドが自分の家よりも高い金額をパンクにつぎこんだことに憤慨していた」というのは、最近6桁の金額のパンクを購入したユーザーであるChris Minter(クリス・ミンテン)氏だ。「彼女によると、パンクを購入する人々はお金の価値を正しく理解していないインターネットオタクの集まりだそうです。そうした人々にとってお金はただのゲームであり、画面上の数字にすぎないのです」と彼はTechCrunchに語った。

クリプトパンクを取り巻くコミュニティは、主にチャットアプリのディスコードの専用グループで活動している。このグループでは、パンク所有者であると確認されたユーザーが会話を盛り上げる傾向にあり、彼らが投資している有望なNFTプロジェクトへの注目を集めることができる。

「これはちょっとしたカルト集団です」とユーザーのthebeautyandthepunkはインタビューの中で述べている。

多くの初期のユーザーと同様に、thebeautyandthepunkは、ローンチ時に数十のパンクを購入してから偽名を使い続けており、数百万ドル(数億円)の価値があると思われるNFTコレクションを所有していることは、自分の会計士以外は誰も気づかないだろう、とTechCrunchに語っている。彼女は最近、圧倒的に男性が多いクリプトパンクコミュニティに、ローンチ当初から参加していた数少ない女性トレーダーの1人であることを公表することを決めた。

「私は現実の生活と暗号資産の生活を完全に分けようとしています」と彼女はいう。「しかし、女性はしばらくこの分野で活躍してきたこと、そして女性がこの分野から去ることはないということを、人々は知る必要があります」。

暗号資産トラッカーのEtherscan(イーサスキャン)によると、現在、1万体のパンクが1889個のウォレットに分散している。これらのアカウントの中には使用されていないものや、失効したと見られているものがあり、その中のパンクはブロックチェーン上で永遠に消えてしまうことになる。現在、パンク用の最大のウォレットを所有しているのは、NFTプラットフォームのクリエイターであり、488ものパンクを持っている。ほとんどの仕組みがすでにでき上がっているブロックチェーンベースのマーケットプレイスにおいて、クリエイターが唯一「所有」できるものがパンクなのだ。

「今は私たちもユーザーにすぎません。私たちのウェブサイトでは、私たちがこのプロジェクトを作ったということに言及していません」とワトキンソン氏はTechCrunchに話す。「所有しているパンクから取得しているものが、私たちの唯一の持ち分です。市場から分け前を取ることはありません」。

画像クレジット:Lucas Matney

巨額の金が動くNFTの世界

現在、クリプトパンクのクリエイターたちはNFTに専念している。クリプトパンクの契約に根本的な変更を加えることはできないが、Discordのグループに参加し、増え続けるユーザーのコミュニティを見守りながら、ウェブサイトのマーケットプレイスを改善しようとしている。

「これを私たちの仕事にしようと思ったことは一度もありませんでした」とワトキンソン氏はいう。

2019年に、ホール氏とワトキンソン氏は、ブロックチェーンにジェネレーティブアートをもたらす「Autoglyphs(オートグリフ)」という後続プロジェクトを発表した。オートグリフは、クリプトパンクのようなポップな美的感覚を備えていないが、ブロックチェーンアートの探求をさらに深めた。ホール氏とワトキンソン氏は、さまざまなプロジェクトを中心としたLarva Labs(ラルバ・ラボ)という会社を発足した。現在、彼らは新しいNFTプロジェクトを立ち上げているが、そのプロジェクトはクリプトパンクやオートグリフよりも参入障壁が低くなると期待されている。

「クリプトパンクはますます高価になり、参入が難しくなっています」とホール氏はいう。

公式マーケットプレイスでのクリプトパンクの販売総額は約2億ドル(約218億円)で、その生涯総売上数は、Dapper Labs(ダッパーラボ)のNBAトップショットが過去数カ月で達成した売上数の約40%に相当する。ただしクリプトスラムによると、クリプトパンクはトップショットの総取引数の0.35%、つまりトップショットの330万件以上の取引に対し1万2000件以下の取引でこの売上を実現したことになる。多数の取引が数百万ものNFTに分散しているため、トップショットの取引当たり価格ははるかに低いが、アクティブユーザーの数ははるかに多いということだ。

3月、ダッパーラボは26億ドル(約2829億円)の評価額で3億500万ドル(約332億円)を調達したと発表した。注目を集めるパートナーシップを通じて、プライベートなフローブロックチェーンを他のブロックチェーンの「ゲーム」に拡大しようとしているためだ。ホール氏とワトキンソン氏は、ダッパーラボの成功の行方を見守っているが、NFTの次のステージを今後も模索するために、ラルバ・ラボにベンチャー資金が必要になるとは考えていない。

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「大企業になってNBAと契約するといったことよりも、技術的な可能性を探求し続けることを楽しみにしています」とワトキンソン氏はいう。「クリプトパンクで気に入っているのは行動です。私たちはそうしたレベルの行動を取り戻す方法を見つけたいと思っています。私たちの次のプロジェクトでは、取引の流れを持続させる方法を見つけます」。

彼らは、2021年「比較的早い時期」に公開すると言っている新しいプロジェクトについて、ほとんど詳細を明らかにしていない。

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種の起源

クリプトパンク伝説は、クリプトパンクはイーサリアムブロックチェーンで最古のNFTプロジェクトであるという主張に深く根差している。これは、私が話をしたパンク所有者のほぼ全員が、このプラットフォームに数十万ドル(数千万円)を投資した最大の理由として口にした言葉である。ポール氏は、最近のYouTube動画で、懐疑的な友人たちに「クリプトパンクは初のNFTプロジェクトである。だからクリプトパンクは特別なのだ」と言って価格を正当化した。

しかしここ数週間で、この伝説に穴が開き始めた。「暗号の考古学者」が、イーサリアムの創成期に作成され、後に放棄されたNFTプロジェクトを発掘し始めている。そのうち少なくとも1つはクリプトパンクより前のものだ。私たちは最近「Etheria(イーサリア)」というプロジェクトのクリエイターであるCyrus Adkisson(サイラス・アドキソン)氏に話を聞いた。同氏は、イーサリアムのメインネットが稼働してからわずか3カ月後の2015年にEtheriaを公開した。このプロジェクトでは、ユーザーは大きな地図上で六角形のデジタルの土地を購入、販売し、その上に建築することができた。ローンチ当初はファンがあまり増えず、イーサリアムのブロックチェーンに何年も放置されていたが、アドキソン氏は、NFT周辺での「異様な盛り上がり」を見て、古いアカウントのパスコードを探し始めた。

「私は2月の終わり頃に両親に電話して、金鉱の上に座っているかもしれない、と言ったのを覚えています」とアドキソン氏はTechCrunchに語った。

アドキソン氏は、最終的に自分のEtheriaアカウントにアクセスし、長い間停止していたEtheriaのTwitterアカウントからいくつかのツイートを発信し、外部で取引可能な2つのバージョンの914タイルの大半が入手可能であり、1タイル1エーテルで購入できることを説明した。アドキソン氏によると、その週末の終わりには、空っぽだったウォレットが140万ドル(約1億5000万円)相当のイーサリアムで満たされたという。

古いというだけでEtheriaはヒットしない。ここからの大きな課題は、多くのユーザーを取り込み土地タイルの価格を押し上げる、プロジェクトを中心としたコミュニティを構築することだ。最近では、1枚のタイルが約2万5000ドル(約272万円)相当のイーサーで売り出されたが、早期にEtheriaに参入していた人たちは、市場の発展を待ちながら、新しいユーザーが参入でき、プロジェクトの注目度が上がるようにタイルを調整することに苦労している。

「これらのプロジェクトには、確かに歴史的な流れがありますが、今はコミュニティとの強固な基盤を構築する必要があります。実際の指標は現在にあるのではなく、1年後のコミュニティの状況、規模、エンゲージメントにあるからです」と、NFTの熱心な支持者であるAllen Hena(アレン・ヘナ)氏は語る。同氏は3月、一連のブログ記事を投稿して、Etheriaのコミュニティに注目を集めるのに貢献した。

このプロジェクトが復活してから数日のうちに、若いコミュニティには意見の相違や内輪もめが数多く見られた。アドキソン氏が、すでに多くの人が手を引くことを決めているプラットフォームに対し、ある程度のコントロールを維持しようとしているためだ。オーナーが主に不満を抱いているのは、アドキソン氏が旧バージョンのEtheriaの外部取引を可能にしようとしていることだ。これにより、既存契約の土地タイルの価格が大幅に下落する可能性がある。TechCrunchのインタビューの後、アドキソン氏はEtheria 1.0の方向性を決定するために、Etheriaのディスコードサーバーから退出し、グループの管理者たちは彼抜きで活動を続けることを明言した。

私たちが話を聞いたパンクオーナーたちは、新たに再浮上したプロジェクトに注目しているが、Etheriaの「古さ」がNFTの歴史におけるクリプトパンクの価値に大きな影響を与えるという考えには懐疑的だ。

「理論上はクールに見えますが、実際にはコミュニティのためになることはありませんでした」と、ユーザーのDaniel Maegaard(ダニエル・マエガード)氏はいう。「難しい作業すべてを実行したのはクリプトパンクなのです」。

Punk #6487、最近、ダニエル・マエガード氏が550イーサーで販売(販売時点で約1億1442万円相当)

30歳の暗号投資家であるマエガード氏はオーストラリアのブリスベンを拠点とし、クリプトパンクの価値に誰よりも投資している。彼は最近、特に珍しい「属性のない」女性のパンクを100万ドル(約1億1000万円)以上で販売した。彼は、最も希少なパンクの1つ(最も希少という人もいる)のオーナーでもある。このパンクは、7つのユニークな属性を持つことから「7-atty」という異名を取り、パンク伝説の聖地になっている。2020年、彼がイーサリアムでこのパンクを買った時の値段は、過去最高額の約1万8000ドル(約196万円)だった。彼はすぐには手放す気はないようで、最近、NFTをトークン化し、その一部を他のユーザーに販売したいという投資家グループからの420万ドル(約4億5700万円)のプライベートオファーを断ったと言っている。そのパンクを持っているとさらなる利益が得られる可能性があるというのも理由の1つであるが、本当の理由は、デジタルファイルのコレクションとの感情的な結びつきを感じ始めているからだ。

「この小さなピクセルでできた顔は、簡単に手放せます。私はいくつかのパンクを売ったことがありますが、いつも後悔します。属性のないパンクを売ったときも後悔しました」とマエガード氏はいう。「100万ドル(1億1000万円)はすごい額ですが、私は彼女のことが本当に好きだったみたいです」。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTCryptoPunksEthereumCryptoKitties暗号資産

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(文:Lucas Matney、翻訳:Dragonfly)