ソフトウェアの配布過程を自動化するJFrogが$50Mの巨額を調達して飛躍を目指す

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オープンソースのソフトウェア配布ツールを作っているJFrogが今日(米国時間1/20)、5000万ドルの資金調達を発表した。これまで同社は二回のラウンドで1050万ドルを調達していたが、それに比べると5000万は大きな跳躍だ。

投資家はScale Venture Partners, Sapphire Ventures, Battery Ventures, Vintage Investment Partners, Qumra Capital, 参加した既存の投資家はGemini Israel VenturesとVMwareだ。

JFrogは、二つのメインプロダクトの商用バージョンとエンタプライズバージョンを提供している。そのうちJFrog Bintrayはデベロッパによるソフトウェアの配布を自動化し、他のJFrog Artifactoryは配布前のソフトウェアのパッケージ管理を助ける。

CEOのShlomi Ben Haimは類似製品との差別化要因について、同社製品がプラットホームを特定しないことを挙げる。つまり、いろんなデベロッパツールと統合できる。2008年の創業以来、1050万ドルという控えめな額を調達してきたが、今回の大金は、急増している需要に対応するためだ。とくに、さまざまな統合化のリクエストが多くなっている。

JFrogの顧客リストには、Google, LinkedIn, Twitter, Cisco, VMware(同社の投資家), Netflix, MasterCardなど、そうそうたる名前が並んでいる。

たとえばGoogleは、Androidの配布にBintrayを利用している。

これらはどこも、ソフトウェアのアップデートをコンスタントにリリースしている企業で、JFrogはそのプロセスをバイナリのレベルである程度自動化する。GitHubのようにコードのレベルではない、とHaimは説明する。

8年経った今、社員は110名で、年内には200近くに膨らむだろう、という。企業を無理なく自然に成長させることは難しい場合もあるから、この新たに得られた資金で、プロダクトを改良するための戦略的買収も考えたい、とHaimは語る。

買収は、二つの問題を解決するだろう。同社に、これまでなかった能力を与えるとともに、人材も確保できる。

Haimが挙げる最大の競合相手は、専門的なサポートをを提供するMaven(Javaデベロッパ向け)や、DockerのRegistryツール(Dockerユーザ向け)だ。JFrogは、デベロッパが使用しているツールが何であれ、ソフトウェアの配布という目的に利用できる。

しかも今では、Haimも指摘するように、単一のデベロッパ環境でソフトウェアを開発している企業は、規模を問わず、どこにもない。複数の環境を横断するツールセットを提供することによってJFrogは、ソフトウェアの配布と管理の全プロセスをすっきり単純化しようとしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ストリーミングSQLデータベースのPipelineDBが初めてのエンタプライズバージョンをリリース

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PipelineDBが今日(米国時間1/14)、PipelineDB Enterpriseのリリースを発表した。このプロダクトは、同社が昨年の夏にリリースしたオープンソース製品の、初めての商用バージョンだ。

協同ファウンダのDerek Nelsonの説明によると、PipelineDBはSQLデータベースの新しい見方に立って構築されており、データを大きなサイロに眠っているものではなく、データのストリームと見なす。

彼によると同社は、このようなタイプのデータベースに大きく賭けているが、今のところ業績は順調なようだ。彼が挙げるおおまかな数字では、インストール数が数千、終日稼働数が数百といったところだ。

商用製品はかねてから構想していたが、今やっとリリースするのは、大企業顧客からの需要が高まってきたからだ。高可用性を求める彼らは、レプリケーションやハードウェアノードのフェイルオーバーなど、オープンソースバージョンにない機能を要求する。このプロダクトをミッションクリティカルな目的に利用するためには、それらの機能が欠かせない。あるノードがダウンしたら、ほかのノードが自動的に取って代わらなければならない、とNelsonは説明する。

もうひとつ要望が多い機能は、リアルタイムのアラートだ。PipelineDBを詐欺の検出やセキュリティ侵犯の検出に利用している企業では、とくにそれが重要だ。リアルタイムアラートは、見逃してはならない異状を発生とほぼ同時に知らせる。さらに、今回のエンタプライズバージョンには、水平的スケーリングの能力と、24/7の技術サポートなど、大企業がつねに求める機能がある。何かがおかしくなったら、‘喉の痛み’でそれを即座に知る必要があるのだ。

エンタプライズバージョンを求めるのはユーザの数パーセントにすぎない、とNelsonは見ているが、でも今後同社が収益を上げていくための入り口としては、それが欠かせない。オープンソース企業の多くが、サポートを収益源にしているが、Nelsonによれば、同社はあえてその道を選ばなかった。

“商用ライセンスを売っていく方が効率的だし、投資の間隔も短くなり、本体(オープンソース製品)と商用製品と、今企画中のそのほかの製品の改良も迅速にできる”、とNelsonは述べる。

同社はすでにシード資金は獲得している(額は非公開)が、今でも最初の4名のファウンダたちだけがメンバーだ。意図的にリーンな形を維持しつつ、製品を商用化する有効な方法を模索していたのだ。

今でも、同社を独立企業として維持できるだけの収益があれば、外部資金は要らない、と考えている。Nelsonによると、ユーザも大半はオープンソース企業だが、その中の大企業は金を払うことを厭わない。それで十分だ、と。

PipelineDBは、Y Combinatorの2014年冬季クラスの卒業生だ。

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Open Compute Projectのスイッチハードウェアの自由で多様な構成を支える共通プラットホームOpen Network Linux

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Big Switch NetworksFacebookとNTTが今日(米国時間10/7)、Open Compute Project(OCP)のスイッチハードウェアのために、Open Network Linuxと呼ばれる統一的なオペレーティングシステムを共同開発することを発表した。

舌を噛みそうな名前だけどこのプロジェクトは、FacebookのようなWebスケールの企業でも、あるいはそのほかの企業でも、とにかくOpen Compute Projectのオープンソーススイッチを利用する企業を助けることが目的であり、技術者たちはこのプラットホームをベースとして、スイッチの転送(forwarding)アルゴリズムを、自分の用途や考え方に合わせて構成していく。

これまで、このOCPプロジェクトはいろんな部位のばらばらな集まりで、エンジニアがそれらを縫い合わせる必要があった。Open Network Linuxはこれらの部位をひとつにまとめ、自由な組み合わせと構成で使えるようにする。また無用に複雑な部分を簡素化する。

このプロジェクトの始まりは18か月前にさかのぼり、そのときはBig Switch Networksがスイッチ用OSの最初の部分をOCPに提供した。Big Switchの協同ファウンダKyle Forsterは、“スイッチOSは複雑怪奇な野獣だ”、と言っている。それには二つの大きな部位があり、それらはプラットホームのコードと、転送エージェント(forwarding agent)だ。OCPのスイッチのハードウェアの設計は、Facebookが提供している。

なるべく簡単に言うと、プラットホームは、Linuxという名前が示すようにベースとなるオペレーティングシステムのコードで、その上でスイッチを作り上げているさまざまな部位を構成する…フロントパネルのLED、環境センサ、ファンのドライバ、などなど。そしてBig SwitchのCTO Rob Sherwoodによると、エンジニアはこのベースコードの上で転送エージェント部位を作っていくが、スイッチがネットワークと対話するときの方式はエージェントが独自に定義する。

そしてそこに、企業による違いや差別化要因ができる。プラットホームのコードが安定すれば、エンジニアはそれが無事に使えることを単純に期待するが、転送エージェントは別だ。“パケット転送エージェントに関しては、誰もが独自の考え方を持っている”、とSherwoodは述べる。

今日の発表によって、これからは誰もが自分好みのエージェント部位を作り、それをスイッチソフトウェア全体のスタックにプラグインできる。三社のパートナー…Big Switch Networks、Facebook、NTT…は今週後半に、この能力をデモする。そのとき見せるのは、転送エージェントの三種類の参考実装だ: FacebookのFacebook Open Switch System(FBOSS)、NTTのL3 Routing、そしてBig Switch NetworksのOpenFlow

これらの参考部位は、エンジニアが自分のエージェントを作り始めるときのたたき台になる。将来的には、オープンソースのプロジェクトとして寄贈されるものもあれば、プロプライエタリにキープされるものもあるだろう、とSherwoodは語る。

Open Compute Projectとは?

Facebookがハードウェアの内製を志向したときにOpen Compute Project(OCP)という第三者機関を作り、そこに設計やソフトウェアをコントリビュートする、という方式を選んだ。その最初のものが、Facebookのトップオブラック(top of rack)スイッチ、別名The Wedgeだ。

OCPには二つのねらいがある。ひとつは、大企業がその公共性を意識して、Webスケールのハードウェアの創造から学んだことを、広く共有すること。もうひとつは、Facebookの外部のエンジニアたちからの貢献を期待することだ。

Big Switch Networksは、OCPのハードウェアに関心があるが、それらをインストールしたり実装するスキルや人材のいない企業を、助ける役目だ。

たしかに特殊で複雑なプロジェクトだが、しかし基本はあくまでもオープンソースのプロジェクトであることだ。オープンソースという基盤の上で企業がソリューションを構築していく。OCPはその過程を助ける。オープンソースのコードが基盤にあれば、エンジニアたちは各自が勝手に車輪を再発明する必要がなく、しかしその上に咲く花の部分では、自由な創造と差別化を追究できる。

このプロジェクトも、まさにそうだ。

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メインフレームのLinux化を目指してOpen Mainframe ProjectをLinux Foundationが立ち上げ

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2015年の今、誰もが、メインフレームはコンピューティングの初期の遺物だ、と思うだろう。しかしその巨大マシンは今でも、大企業や大きな組織で大規模な計算作業をこなしている。

そして、メインフレームの不死鳥ぶりを証明するかのように、Linux Foundationが今日(米国時間8/16)、メインフレームコンピュータを使っている企業を助けるオープンソースの取り組みとして、Open Mainframe Projectを立ち上げた。

この事業は、今でもメインフレームマシンの最大のメーカーであるIBMが音頭取りだ。今日の同じ日に同社が、Canonicalとのパートナーシップによるメインフレーム上のUbuntu Linuxを発表したことは、決して偶然ではない。

Linuxがすでに15年間、メインフレーム上で動き、メインフレーム上のLinuxの使われ方も多様化し、ユーザのコミュニティも育っていることを知ったあなたは、驚くかもしれない。Linux Foundationの事務局長Jim Zemlinが今日の発表声明で述べているように、今回のプロジェクトは、今でも成長を続けている需要への対応でもあるのだ。

このOpen Mainframe Projectにより、参加企業は一連のオープンソースツールの開発を共同して行い、メインフレーム上のLinux技術についても交流を深めていく。また各社が抱える問題についても、そのほかのオープンソースプロジェクトと同じように、共同で解決に取り組む。

“Open Mainframe Projectは、顧客とベンダとサービスプロバイダが一堂に会する場所を与える”、とIBM SystemsのゼネラルマネージャRoss Mauriは語っている。

IBMはすでに、25万行ノードコードをLinuxコミュニティに寄贈している。

Pund-ITの主席アナリストCharles Kingによると、初期のメンバーは、すでにメインフレームコンピューティングに深く関わっている企業、すなわちIBM、BMC、CA Technologies、そしてMarist Collegeだ。

IBMを筆頭とするメインフレーム企業は、メインフレームの導入費用と運用費用の両方を下げることによって、メインフレームのユーザを増やしていきたい意向だ。“今後の共同活動によってどれだけ新規のメインフレームユーザが増えるか、そこが焦点だ”、とKingは語る。

メインフレーム勢力がとくに望んでいるのは、新しい世代のデベロッパたちが関心を持ってくれることだ。そのためIBMは、クラウドサービスLinuxOneへのアクセスを無料にし、同社が開発したメインフレームシミュレーションツールを提供して、メインフレーム上のアプリケーションの開発を支援していく。またデベロッパが作ったメインフレームアプリケーションの、モバイルアプリケーションやハイブリッドクラウドアプリケーションとの接続性〜相互運用性についても、試験や調整を支援する。

結果について今から云々することはできないが、Kingが思い描くベストケースのシナリオは、このオールドスタイルのコンピューティングプラットホームを、一部のLinuxデベロッパが、おもしろい、と思うようになることだ。

この努力が、メインフレームへの新しい、若い、関心を育てるか、それはまだ未知数だが、プロジェクトの創始メンバたちは、そうなることを心から祈っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

IBM、Canonicalと提携してUbuntu Linuxの動作するメインフレームを提供

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「Linux」と「メインフレーム」を「相反するもの」と捉えている人も多いのではなかろうか。しかしこの15年、IBMはメインフレームにLinuxの要素を取り入れてきているのだ。そしてついにIBMCanonicalは、メインフレーム上でUbuntsu Linuxを動かすことにした旨のアナウンスを行った。このプロダクトはLinuxOneと命名されている。

このLinuxOneではメインフレームの利用シーンを拡大したいという狙いに満ちてもいる。たとえば価格にはサブスクリプションモデルを採用し、またさまざまなオープンソースプロジェクトと連携し、さらには自らのメインフレーム上のコードもオープンソース化するという動きもみられる。

Canonicalとの連携にあたり、IBMが用意するメインフレームは2種類だ(もちろんペンギンにちなむものだ)。ひとつは「Emperor」(皇帝)という名前で、1月に記事にしたIBM z13を利用するものだ。もうひとつは少々コンパクトで「Rockhopper」(イワトビ)の名前を持つ。こちらはメインフレームユーザーの中では、エントリーレベルの層をターゲットとしている。

もしかすると、「メインフレーム」というのは恐竜のように絶滅したのだと思っていた人もいるかもしれない。実のところはまだまだ現役で、それどころか、世界中の大組織の中で積極的に活用されているものだ。こうした中でクラウドサービス、データ分析やセキュリティ面などでもメインフレームの活用の場を広げるため、Ubuntu LinuxおよびApache Spark、Node.js、MongoDB、MariaDB、PostgreSQLおよびChefなどメジャーなオープンソースのエンタープライズソフトウェアを動作させようとしているわけだ。

IBM SystemsのRoss Mauriによれば、IBMは四半期毎に10社ないし20社程度のメインフレームユーザーを獲得しているのだとのこと。IBMとしてはクラウドサービス並に柔軟な価格体系を用意して、メインフレームの導入コストに躊躇していた利用者をも獲得していきたい考えだ。

Mauri曰く、こうした価格体系にあってメインフレームはオンプレミスで提供されるものの、しかし課金についてはクラウド風に使用量に応じた形で請求されるのだそうだ。

これまでの歴史からみれば、CanonicalとIBMに接点はなさそうにも見える。しかしPund-ITのプリンシパルアナリストであるCharles Kingによれば、これは企業内でUbuntu Linuxの採用事例が増えていることに対するIBMの成長戦略のひとつなのであるとのこと。

Ubuntuを支援するCanonicalのJohn Zannosの話によれば、顧客層の中でのUbuntu利用が増える様子をみて、IBMの方からCanonicalにアプローチしてきたらしい。ちなみに、今回が両社がタッグを組む最初の事案というわけでもなくOpenPOWERプロジェクトでも協力した経験を持っている。

Zannosは曰く、IBMはZシステムやメインフレーム上でオープンソースの活用を積極的にすすめるなど、従来のパラダイムを転換する方向に動いているとのこと。

Charles Kingは、今回の連携は双方にとってもメリットのあるものだ(もちろんほぼすべての業務提携が双方にとってのメリットを強調してはいる)と述べている。「IBMはLinuxの強い市場でのプレゼンスを高めることになるでしょう。そしてCanonicalの方も、IBMのメインフレームを使っていたような大企業におけるシステム導入を増やすことに繋がることになります」と、明るい未来を描いている。

IBMとしては、セールス拡大に向けた新たなチャネルを獲得したい狙いがある。「主要ビジネスでの全面的な売上低下」に対応していきたいという考えているはずだと、Wall Street Journalは伝えている。

IBMにとっては、ともかくメインフレームの販売拡大が企業にとっての大きなメリットとなる。Canonicalとの提携や、各種オープンソースツールの採用により、小規模な、しかし成長著しいマーケットへの進出を狙いたいと考えているわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

Kubernetesがv.1.0に到達、Googleは新組織Cloud Native Computing Foundationに技術を寄贈

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Googleが昨年の2月にローンチしたオープンソースのコンテナ管理ツールKubernetesが今日(米国時間7/21)、バージョン1.0を迎えた。このアップデートによりGoogleは、Kubernetesの一般公開を検討している。また、さらに重要なこととして、GoogleはKubernetesを、Linux Foundationの傘下に新たに作られた組織Cloud Native Computing Foundation(CNCF)に寄贈し、Kubernetesのコントロールをそちらへ委譲する。この機関のパートナーはGoogleのほかに、AT&T、Box、Cisco、Cloud Foundry Foundation、CoreOS、Cycle Computing、Docker、eBay、Goldman Sachs、Huawei、IBM、Intel、Joyent、Kismatic、Mesosphere、Red Hat、Switch SUPERNAP、Twitter、Univa、VMware、そしてWeaveworksなどだ。

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この新しい組織のミッションは、“クラウドネイティブなアプリケーションとサービスをデプロイするための共通技術に関して、デベロッパとオペレーターのコラボレーションの便宜を図ること”だ。Linux Foundationの事務局長Jim Zemlinが、今日の発表声明の中でこう書いている。

なんだか前にも聞いたような話だ、とお思いの方も多いと思われるが、それは実は数週間前に、やはり同じような企業、DockerやGoogle、IBM、Intel、Mesosphere、VMwareなどコンテナのエコシステムを支える面々が共同で、Open Container Projectをローンチしたからだ。こちらもLinux Foundationが管理するプロジェクトだが、コンテナ技術のスタンダードを作っていくことが目的だ。CNCFと違ってこのグループにはGoogleのライバルであるMicrosoftやAmazonもおり、逆にCNCFはこの二社がいないことが、顕著に目立つ。

GoogleのシニアプロダクトマネージャCraig McLuckieによると、Kubernetesは一般公開にこぎつけたことを契機に、Googleという一私企業の手を離れて新しい家を見つけることになった。Kubernetesの開発のコントロールを手放すGoogleの基本的な動機は、McLuckieによると、“それをできるかぎり偏在的な(ユビキタス)なものにするためだ。うちとしては、誰もがクラウドを使えるようになってほしい。今うちの顧客の大半がハイブリッドクラウドのユーザだが、そういう方々にも、クラウドネイティブのコンピューティングパラダイムの利点を享受していただきたい”。

彼によると、Googleが今後もKubernetesに関してアクティブであることは変わらない。そして、Googleも新しい組織の成功を期待している。しかもGoogleは、KubernetesがコンテナのためにGoogleが作った、そのほかの社内的なツールの欠陥を克服したものに育ってほしい、と期待している。

McLuckieがとくに指摘するのは、今日のKubernetesが、ノード数が数百ぐらいの小さなクラスタで有効に利用できること。しかし今では、多くの顧客が何千というオーダーのノードを管理したいと願っていることだ。またGoogleのチームは、バッチ処理のような別の種類のワークロードをさらに効果的に統合できることを、期待している。

なお、CNCFの管理下に置かれるのは、初めてのプロダクトであるKubernetesだけではない。同団体の視野はもっと大きくて、Kubernetesの管理だけが目的ではない。むしろ、JoyentのCTO Bryan Cantrillが今日述べているように、CNCFの真のミッションは、“現代的なエラスティックなコンピューティングを構成する重要なオープンソース技術の数々を前進させること”なのだ。

CNCFの統治方式は、まだ細部の煮詰めが必要なようだ。Linux Foundationの理事長Jim Zemlinによると、この組織はサービスを有料で提供することはせず、誰もが参加できる(Linux Foundation傘下のプロジェクトのほとんどが、そうであるように)。基本的な考え方としては、重要な技術を寄与貢献したところが、今後の意思決定にも参加できるようにする。“その席に座る者が、個人の優れたデベロッパであってもかまわない”、とZemlinは述べる。“重要なのは、コアデベロッパの存在だ”。

コンテナエコシステムの一部の大型選手(Microsoft、Amazon、Pivotalなど)がまだ参加していないが、Zemlinは、はぐれ鳥たちもその多くがいずれは参加する、と信じている。“この組織をベースにして作られていく標準クラウド技術は、誰にも拒否できないものになるだろう。今参加していない人たちも、後日、考えが変わるはずだ”、と彼は語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookがモバイルコード用のデバッガInferをオープンソース化

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Facebookが今日(米国時間6/11)、Inferをオープンソースにする、と発表した。Inferは、同社が発表前のモバイルコードのバグを見つけるために使っているスタティックな(==非実動時)プログラムアナライザで、これまで同社はこのツールを使ってAndroidやiOS、Facebook Messenger、Instagramなど用のFacebookアプリを分析していた。

Facebookによると同社は、Inferのおかげで毎月何百ものバグを見つけることができている。このツールはコードをスキャンして、NULLポインタへのアクセスや、メモリなどのリソースのリーク、等々の問題点を指摘する。いずれも、アプリが確実にクラッシュしてしまうほどの、プログラムの深刻な欠陥だ。

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Facebookは自社製アプリの開発がはやいことで知られているが、バグの修復もWebアプリケーションならはやくて簡単だが、モバイルではそうは行かない。デバッグしたアプリを、ユーザがダウンロードしてアップデートしなければならないからだ。

FacebookはInferを主に、AndroidのJavaコードとiOSのObjective-Cをチェックするために使ってきたが、CやJavaのコードならiOS/Androidに限らずなんでも調べられる。実際にFacebookは今、Inferを使える環境と対応言語を広げようとしている。

FacebookではInferの起動は自動化されていて、デベロッパがソースコードをちょっとでも書き変えると動き出し、見つけた問題をコード中にコメントとして書き込む。

このツールの技術的な詳細はFacebookのブログ記事を読めば分かるが、ここではInferが“分離論理(separation logic)”と呼ばれる概念を利用していることを、挙げておこう。分離と言ってもそれは、conscious uncouplingとは無関係だ。それは分析者が、アプリケーションの全体ではなく小さな部分を見ていくための理論だ。Inferはこれを使うことによって、コードの変更の分析を多くの場合10分以内で完了する。さらにInferは、コードの、前回とは変わった部分だけを見ることによって、デバッグをスピードアップする。このようなテクニックを駆使しなければ、大きなコードのスタティックな分析はほぼ不可能だ。

Inferは、ここで入手できる。

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MongoDBが既存のデータ視覚化ツールやBIアプリケーションと接続するためのコネクタを発表

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オープンソースのデータベースプラットホームMongoDBが今日(米国時間6/2)、ニューヨークで行われた同社のMongoDB Worldカンファレンスで、いくつかのアップデートを発表した。その中には、Tableauなどのデータ視覚化ツールの統合も含まれる。

MongoDBは従来のRDBと違って非定型データを扱える自由性があるため、今では多くの企業のアプリケーションで利用されている。それが、MongoDBを使う主な理由の一つだが、でもデータを視覚化することが必要になると、これまで使ってきたデータ視覚化ツールで非定型データを扱うのは難しい。MongoDBのストラテジー担当VP Kelly Stirmanは、そう説明する。

彼曰く、“それらのアプリケーションが現代的と言われるのは、従来の行(row)と列(column)のデータベースでは扱えない豊富なデータ構造を使うからだ”。

その便利で現代的なMongoDBがもたらした予期せざる結果に対応するため同社は、BI(ビジネスインテリジェンス)やデータ視覚化ツールと接続するためのコネクタを発表し、後者の一つの例として同社のパートナーTableauを紹介するとともに、そのほかのツールでもコネクタが同様に使えることを明言した。

“Tableauは弊社のパートナーだが、しかしコネクタは、IBMのCognosやSAPのBusinessObjects、Microsoft Excelなど、そのほかのツールとの互換性もある。そのコネクタはSQLベースのODBCツールとの互換性もあるから、ほとんど何にでも対応できる”。

Stirmanはさらに加えて、“何百万ものユーザがこれらのアプリケーションを毎日のように使っているが、これまでそれらは、MongoDBとは断絶した世界だった”、と語る。そこで新たなコネクタが、両世界を橋渡しすることになる。

これまで、既存のデータ視覚化ツールでMongoDBとそのデータを扱うためには、大量のプログラミング努力を要し、そのために費やす時間と費用は膨大だった。しかし、“コネクタを使えば、既存の視覚化ツールが、あいだにレイヤを必要とせず、MongoDBのデータにアクセスできるようになる”、と彼は説明する。

同様の発表を先週、Salesforce.comも行ったが、それは今回のMongoDBのケースとは逆で、外部データをSalesforceの視覚化ツールWaveで、Salesforceのデータと共に視覚化するためのコネクタだ。

MongoDBの場合と同じく、それまでは、プログラミングで苦労すれば外部データをWaveで見ることは可能だった。そしてSalesforceも今回のMongoDBと同じく、外部との円滑な接続性を実現することはベンダ自身の責任だ、と悟ったのだ。両社が作ったコネクタにより、データソースと視覚化ツールとのあいだのデータ移動やデータアクセスが、簡易化された。

MongoDB 3.2には、コネクタのほかに、REST対応の暗号化や、データベースアドミンのためのGUIなども導入される。その一般公開は、今年の第四四半期の予定だ。

MongoDBはこれまで、投資家たちの関心を大いに集め、総額で3億ドルあまりを調達している。最近のラウンドは、なんと、今年の1月のシリーズGで、8000万ドルを獲得している。

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ビッグデータに関する2つの神話を解体する―オープンソース・データサイエンスのもたらすチャンス

2015-05-08-bigdata

編集部: この記事の寄稿者、David SmithはMicrosoftの子会社でオープンソース・ソリューションを提供するRevolution Analyticsの責任者。Revolutionsブログに、R言語のアプリケーションと予測的アナリティクスについて毎日記事を書いている。またAn Introduction to R(PDF)の共著者。

神話というのは文化の研究には役立つが、テクノロジーの理解には障害になる。今回はビッグデータ革命に関連して、「ビッグデータは一夜にして生まれた突発的現象だ」と「ビッグデータは現実的なビジネス価値のない流行語だ」という2つの神話を取り上げて検討する。

神話1: 一夜にして生まれた突発的現象だ

最初に取り上げるのは「ビッグデータ革命はある日、何の前触れもなしに魔法のように突如起きた」という神話だ。実際にはビッグデータ革命は10年以上前から始まっていた。スタートはGoogleやYahooのような検索企業が巨大なデータを高速に処理するために新たなフレームワークとテクノロジーを必要としたことだった。

ウェブ検索という新たなニーズに対して既存のデータベース・テクノロジーは十分に対応できなかった。しかも、当時の伝統的IT部門が採用していたソリューションではハードウェアとソフトウェアに莫大な投資を必要とした。

そこで新興検索企業は社内で独自にコストパフォーマンスの高い新たなソリューションを開発した。安価なコモディティー・ハードウェアを大量に導入してオープンソースのソフトウェアを走らせるという手法だ。このときに、巨大データを高い信頼性で処理できるフレームワークのパイオニアとなるHadoop、MapReduceなどのテクノロジーが開発された。

「ある日突然生まれた」どころではない。ビッグデータ革命はごく単純なビジネス経済上の必要性から始まったのだ。伝統的なITの手法ではハードウェアに膨大な費用がかかり、検索企業はビジネスとして成立し得なかった。日々急速に増殖する大量のマシンにベンダーがライセンスする商用ソフトウェアを導入することもコストの面から不可能だった。検索企業はそこで大学、スタートアップ、小規模なベンダーの力を借りつつシステムを内製することにした。そこで重要な要素となったのがオープンソースの世界的なコミュニティーだった。これによって世界でトップクラスの優秀なプログラマーの協力を得る道が開かられた。

Hadoopのようなフレームワークが登場する前は、データを処理する企業はどのデータを保持し、どのデータを捨てるかという困難な決断を日々強いられていた。当時、データのストレージは今よりはるかにコストがかかったし、伝統的なソフトウェア・ベンダーが提供するデータ処理ソフトウェアはカスタマイズするにもアップデートを待つにも数ヶ月かかるのが普通だった。

ビッグデータ革命はこうした状況を変えようとする努力の中から生まれた。オープンソースのソフト、安価なハード、信頼性の高い高速インターネット接続の組み合わせが大量データの処理に付随していた困難を取り除いた。オープンソースのアナリティクス・ツールはベンダーの商用ソフトに比べてはるかに頻繁にアップデートされた。

こうしてビッグデータの処理は次第に進化していった。たしかに進化はかなり急速だったが、「一夜にして生まれた」わけではない。この間、ビッグデータ処理の進歩の多くの部分はR言語によって支えられた。Rは高度な統計的分析を処理するために、1990年代に2人のニュージーランドの大学の研究者によって開発されたプログラミング言語だ。一貫してデータ・サイエンスでもっとも人気のある言語であり、現在何千という企業や組織がデータサイエンス・アプリケーションの開発R言語を利用している。たとえば、

  • Googleは広告キャンペーンのROI分析に
  • フォードは自動車デザインの改良に
  • Twitterはユーザー体験の分析に
  • アメリカ国立測候所は危険な洪水の予測に
  • ロックフェラー政治学研究所は公的年金基金の財務状態のシミュレーションに
  • 人権データ分析グループは戦争の人権に与える影響の計測に
  • ニューヨーク・タイムズは記事のインフォグラフィックスや対話的グラフの作成に

それぞれRを利用している。

神話2:現実的なビジネス価値のない流行語だ

「ビッグデータなるものはある種の流行語で現実的経済価値のないものである」という神話もやはり完全な誤りだと用意に実証できる。現在もっとも急速な成長を続けている産業分野はビッグデータ・テクノロジーの発達によってもたらされたものだ。モバイルとソーシャル・サービスはオープンソースのビッグデータ処理システムがなければまったく不可能だった。前述したようにGoogleの検索と広告ビジネスもオープンソースのビッグデータ処理アプリケーションの上に築かれている。

出現しつつある新しい産業分野がそれぞれに新しいビジネスモデルを生み出している。製造業における3Dプリンティング、ソフトウェア開発におけるラピッド・プロトタイピング、地理的情報システム、モノのインターネット、予測的メンテナンス、無人走行車などがそれだが、すべてビッグデータ処理と低コストのストレージなくしては実現できなかったものだ。オープンソース・ソフトウェアがなければ存在しえなかったもっとも典型的な例はクラウド・サービスだろう。RedMonkのアナリスト、Stephen O’Gradyは次のように書いている

以前の産業界では、社内に存在しないソフトウェア・テクノロジーについては外部のサードパーティーの企業にアウトソースするのが普通だった。しかしAmazon、Facebook、Googleは自分たちの必要とするソフトウェアは外部にも存在しない、あるいは存在しても伝統的なライセンス契約では、処理の規模の拡大と共にコストが禁止的になることをいち早く悟った。

2016年には上に挙げた新しい産業分野の売上が年間1000億ドルにも達すると予想されている。同時にビッグデータの利用の進展は処理すべきビッグデータそのものをさらに巨大化しつつある。

ビッグデータは一時のブームでもないし、ぱっと燃え上がってはそのまま消えてしまうバズワードでもない。Microsoft、GE、IBM、Intel、Goldman Sachs、Greylock Partners、Sequoia Capital、Accel Partnersを始めとして多数のトップ企業がビッグデータ・テクノロジーに巨大なリソースを投入している。こうしたプレイヤーはビッグデータ革命がまだごく初期の段階にあり、ビッグデータはビッグビジネスチャンスと同義語だと確信しているのだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FacebookがAndroidデベロッパ向けに便利なオープンソースツール3種をローンチ

今週行われたFacebookのデベロッパカンファレンスF8で発表されたものの多くがiOS関連だったが、今日(米国時間3/26)はAndroidデベロッパ向けに三つのオープンソースのツールがリリースされた。

最初のYear Classと名付けられたライブラリは、ユーザが使っているデバイスの古さ新しさに合わせてデベロッパがアプリの機能を自動的に変えられる。たとえば古いデバイス向けにはアニメーションの方式を変えたり、最新のスマホ向けには美麗な表示機能を有効にしたりする。Year Classは生物個体の出生年別分類を表す“年級”という意味で、CPUのスピードやコアの数、RAMのサイズなどから、ユーザデバイスがどんだけ古いか新しいかを判断する。下図は、各年の代表的な機種だ(もちろんAndroidに限定)。

第二のツールNetwork Connection Classは、同じくClassでも出生年ではなくネットワーク接続のクォリティを表す。たとえばHSPAという言葉は、実際の接続速度を表していない。Facebookによると、HSPAの実効速度には最大で5倍の開き(差)がある。

そこでデベロッパは、このツールを使ってユーザごとの実効速度を知り、アプリの機能を調整できる。Year Classに比べるとセットアップのためのコードが多くなり、また実効速度を知るためには最初にかなりの量のデータを集めなければならない。

第三のツールFrescoは、Androidアプリ用の画像ライブラリだ。とくに、アプリが複数の画像をロードしようとしたときに、巧妙なメモリ管理と画像のストリーミングにより、メモリ不足に陥らないようにする(GIFアニメなんかは、サイズが大きくなりがちだ)。

そのほかこのライブラリには、プレースホルダを表示する機能や、画像をキャッシングする機能がある。技術的な詳細は、ここで読める。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa


Dockerコンテナを非専門家でも使えるようにした学生プロジェクトKitematicをDockerが買収

Dockerのインストールを大幅にスピードアップするツールKitematicのファウンダたちにとってそれは、目の回るようなあわただしい旅路だった。それまで無名の学生だった彼らは、ウォータルー大学の近くのアパートで二年近く前に、そのツールを発想した。

ところがその三人…Jeff MorganとMichael ChiangとSean Li…が今日(米国時間3/12)は、急に、その小さな会社をDockerに売ることになったのだ(価額は非公開)。彼らは急遽旅支度をしてサンフランシスコに向かった。

Dockerは彼らに、Docker社内の独立の部門として仕事をしてもらうつもりだ。DockerのプロマネJusten Stepkaによると、プロダクトの強化のため、必要ならその部門が新たに社員を雇用してもよい。

現在Kitematicは、Mac専用のツールとしてDockerコンテナのインストールや管理を単純化してくれる。ふつうに手作業でやると30分から1時間ぐらいかかる仕事が、ほんの数分で済む。そしてインストールしたDockerコンテナは、ワンクリックでローンチできる。

Stepkaの考えでは、これまで高度な専門知識と技術を要すると思われて、多くの人たちが敬遠していたDockerを、彼らのツールにより、誰もが気軽に使えるようになる。一般的に、難しいソフトウェアでも良質なGUIがあれば使える、という人が多くいるが、Kitematicはまさに、そういう人たち向けのツールだ、と彼は述べる。

もちろんDockerは、KitematicをMacオンリーのツールで終わらせたくはない。彼らのDocker入社後の初仕事が、Windowsバージョンの開発になるだろう。

三人のファウンダは学生時代に、アプリケーションの展開や管理を大幅に単純化する仕組みとして、Dockerのようなコンテナ技術に強い関心を抱いていた。そして、その単純化路線をさらに一歩も二歩も前進させる方法はないか、と考えた。それが、Kitematicの発想の起源だ。

彼らはまず、クラウドとデスクトップを同期化するツールのプロトタイプを作り、そのデモビデオをHacker Newsにポストした。ところが、まだ完成していないそのツールに、700名のデベロッパがサインアップしようとした。

その後、数社でのインターンを経験しながら彼らは自分たちのプロダクトを磨き、Docker専用のオープンソースのツールとしてKitematicを完成させた。それはGitHubでスターを2600稼ぎ、デベロッパたちの関心の多さを示した。

Dockerもこれに目をつけて、彼らに接触してきた。

“彼らとはうまくやれそうだったから、Docker丸抱えにした方が良い、と判断した”、とStepkaは語る。

GitHub上でオープンソースで提供される形態は、前と変わらない。本質的にはほとんど何も変わっていないのだが、Stepkaによると三人は、瓢箪から駒で急にDockerの社員になってしまったことに、欣喜雀躍しているそうだ。

こないだまで学部の学生だった20代前半の三人の若者が、自分たちの作品で大きな市場を開き、見事なイグジットにこぎつけたんだから、偉い!としか言いようがないね。

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IBM、InterConnectカンファレンスで野心的なハイブリッド・クラウド戦略を発表

IBMは、ラスベガスで今日(米国時間2/23)開幕したInterConnectカンファレンスで、ハイブリッド・クラウド推進のための新たなイニシアチブを発表した。これによりユーザーは多様なリソースをあたかも単一のクラウドであるかのように扱えるようになるという。

ハイブリッド・クラウドとは、サードパーティーの公開クラウドサービス、プライベートクラウド、オンプレミスのデータセンターを組み合わせたコンピューティング資源のことだ。

クラウド・アーキテクチャーとテクノロジー担当副社長、Angel Diazは「このイニシアチブの目的は、あらゆるプラットフォームとタイプのクラウド資源をユーザーができるかぎり容易に管理できるようにすることだ。これにより、パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、自社データセンター、さらにはクラウドのクラウドさえもその設置場所を問わず、単一のインフラであるかのように運営できるようになる」と語った。

IBMは企業がIT部門のクラウド化を試みる際に直面する典型的な問題の解決を図っている。現在クラウドにシフト中の多くの企業は、さまざまなタイプのコンピューティング資源を抱え込み、結果としてハイブリッド・クラウドの状態になっている。これらの多様なインフラからデータを引き出し、処理、共有することには多くの困難が伴う。

DiazによればIBMはこの問題を3つの課題に分けて解決を図るという。第一の分野は、企業固有のシステムにデータを統合すること。次にさまざまなシステム、プラットフォームのデータへのアクセスを容易にし、必要なときに必要なデータが容易に得られるようにすること。最後に、クラウドとオン・プレミスの資源にまたがって存在するアプリケーションとデータをそれらが世界中どこにあろうと、必要なときに結合すること。

いずれも非常に複雑な課題だが、IBMはいくつかの新しいアプローチを提案した。

まずIBMはコンテナー・テクノロジーを重視する。IBMはDockerと提携し、IBM向けにカスタマイズされたDockerコンテナをエンタープライズに提供する。これらのコンテナーはアプリケーションがオン・プレミスに存在しようとクラウドに存在しようと関係なく、セキュリティー、運営プロセス、データ・フォーマットなど企業固有の既存のプロセスを適用できるようにする。

次のアプローチはIBM DataWorksと呼ばれる。これはデベロッパーが多様なデータのソースをマッピング・テクノロジーを用いて、どこに所在しようと安全かつ自動的に処理うることを可能にする。

IBMはこうして統合されたデータをWatson人口知能へAPIによって処理し、きわめて高度な分析を実現しようとしている。この点に関しては、先週、MicrosoftもAzure機械学習プラットフォームを正式に公開している。DiazはMicrosoftのプロダクトに対するWatsonの優位性を強調したが、アプローチの方向としては類似点が多い。Diazは「Watsonは単にデータを解析し、意味づけを行うだけでなく、複雑な現象から相関関係を見出し、さまざまな仮説のどれがどれほど正しそうであるかをユーザーに知らせることができる」と述べた。

これらに加えて重要な要素はBlueMixの設定を容易にするBlueMix Localだ。Bleumixは IBM独自のPaaSで、アプリケーションを構築、管理、実行するためのオープン・スタンダードとクラウドをベースとしたプラットフォームだ。通常のパブリック・クラウドとは異なり、ユーザーはアプリケーションをオン・プレミスの資源と各種のクラウドに分散して配置し、必要に応じて作動させることができる。

Diazによれば、BlueMix Localは「アプリケーションの可視性と制御をシームレスに提供する」という。

最近のIBMのツールの例に漏れず、これらは広汎かつ多様なパートナーによって強化される。以前IBMはすべてを自前で用意していたが、この態度は様変わりした。現在では普通ならIBMのライバルと考えられる企業やプロダクトとも積極的な連携が図られている。

Diazは「現在顧客が直面している困難かつ複雑な課題は多くのパートナーとの連携なしには解決できないと語った。「こうした複雑きわまる問題を単独で解決できるようなベンダーは存在しない。そんなベンダーが存在する考えるのは幻想だ」とDiazは言う。

IBMはできるかぎり多様なパートナーと連携し、重層的なツール群を提供していくという。このアプローチがどのような成果を収めるか注目だ。

画像: Erik Drost/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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フリーソフトウェア原理主義者が作った厳格にフリーなラップトップPurism Librem 15、クラウドファンディングで好調

Purism Librem 15はフリーなラップトップで、そのフリー(free)は無料という意味ではなくて、自由の意味、“完全に自由でオープンで外部からコントロールされずあらゆるときにハードウェアのすべての側面を完全にコントロールできることが確実である”、という意味だ。いいことだよね。

Todd Weaverという人が作ったこのラップトップはCrowdSupplyでクラウドファンディングして、目標額25万ドルをすでに突破、27万ドルに達している。初期の支援者には1849ドルで提供、メモリは4GB、ハードディスクは500GBだ。がっしりしたラップトップで、 Weaverによると、“完全に自由で、ソフトウェアも完全にオープンなTrisquel GNU/Linuxオペレーティングシステムだ”。〔参考日本語ページ。〕

“Librem 15を構成する成分はどれも完全にフリーでオープンソースのソフトウェアだ。オペレーティングシステムのカーネルも、アプリケーションソフトも。ノンオープンでプロプライエタリな成分を完全に排除するのに、相当苦労した”、と彼は書いている。

なぜWeaverはこれを作ったのか?

“第一に、これまでのフリーソフトウェアラップトップに不満だった。第二に、ハードウェアとソフトウェアの暗号技術による結合が(とくにモバイルコンピューティングでは)ますます強くなっている。どんなハードウェアでも、買ってきてフリーソフトウェアをロードすればすぐ動く、という状況が崩れつつある。だから、ハードウェアの製造という最上流まで行かなければフリーソフトウェアが本当にフリーにならない。また、そんなハードウェアへのニーズは確実にあると信じている”。

Weaverと彼のチームは、組み立てとソフトウェアのロードをサンフランシスコで行い、マザーボードなどの部品はアジアで作っている。すでに小さなロットを契約し、システムの仕様や改良点などについて理解してもらっている。

“高品質でユーザの権利を尊重するハードウェアを10年前から探しているが、ひとつも見つからない。でも、ぼくと同じ気持ちの人はそんなに少なくはない。Richard Stallmanにも会って、Free Software Foundationのハードウェアバージョンを作りたい、という話もした。それからチームを作り、ハードウェアの仕様をまとめ、製造を始めた。プロトタイプが出来上がった時点で、クラウドファンディングで行こうと決めた。信念を外部資本に汚されないためにもね”。

資金募集キャンペーンはあと8日で終わるが、すでに目標額を達成している。Weaverがこれまで売ったラップトップは500台だが、フリーソフトウェアを完全にフリーに使うためにハードウェアまで作る、という考え方は面白いし、しかも確実なやり方だ。魅力的なプロダクトだから、ビジネスとして軌道に乗ればすごくクールだよね。

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時系列データベースInfluxDBのErrplaneが$8.1Mを調達

ErrplaneのファウンダPaul DixとTodd Persenは昨年、データセンタの異状検出サービスをビジネスにしようと考えたが、すぐに、それは競争が激しい分野だし、そのためのインフラを一から作るのはたいへんだ、と気づいた。しかしそのとき同時に、そのサービスを使いたいというユーザよりは、そういうサービスがその上で動いているインフラに関心があるユーザが多いことにも気づいた。そこで二人は、データセンタモニタリングサービスで既存企業と競争するよりも、そういう連中みんなに使ってもらえるようなオープンソースのプロダクトを作ろう、という方向へハンドルを切った。

その方向転換は、ほとんど初日から成功した。今日(米国時間12/8)同社はMayfieldとTrinity Venturesから、そのプロダクトと、それを軸とする商用サービスの開発を続けるための資金として810万ドルを調達した。

DixとPersenの今度のアイデアは当たったようだ。それは、オープンソースの時系列データベースだ。ふつうのデータベースと違って、時間とともに変化するデータを集めて処理する。“時系列データベースは、大量のデータを生成する。ふつうのデータベースを、そこまでスケールして使うのは困難”、とDixは説明する。

二人はY Combinator出身で、当時はErrplaneをデータセンターの異状検出のためのSaaSとして作った。昨年ベルリンで行われたカンファレンスに行ったDixは、自分たちと同じことをやっている競合他社が多いことに気付き、これはたいへんだ、と悟った。そのとき彼は、これら競合他社の全員にサービスを提供できるプロダクトを作ろう、とひらめいた。モニタリングソフトが時々刻々捉えていく時系列のデータを集めて分析することは、まだどこもやってない。Errplaneは、そこに機会を見い出した。

そこで彼らは元のSaaSを5週間停止し、その間に、のちにInfluxDBとなるものを作った。その最初のバージョンができたとき、Dixの計画では彼らが住むニューヨークで製品紹介のための講演会を二度やるつもりだった。ところがそれよりも前に、プロジェクトはO’Reilly Radarのブログで取り上げられ、それがHacker Newsに拾われて、まる一日フロントページを飾った。その後いろんな紹介記事にプロジェクトのホームページのリンクが載り、彼ら自身が何か書いたり語ったりするよりも前から、人気が盛り上がってきた。

1月になるとDixは、あちこちでInfluxDBの話をすることで忙しくなった。元のSaaSをこれ以上続けるのは無理、と悟った彼は、3月の末に、顧客たちに、サービスの閉鎖を告げた。

Dixは、彼の会社とプロジェクトの歩みが普通じゃない、と言う。通常なら、デベロッパはプロジェクトを作り、それのための会社を作る。でも今回は、逆だった。会社が先にあって、それのためのプロジェクトとプロダクトを作ったのだ。彼が知っている唯一の同類が、Dockerだ。最初はdotCloudを作っていた会社があり、そこからDocker, Inc.がスピンアウトしたのだ。

Dockerの場合と同じく、コミュニティは重要だ。Dixによると、コアライブラリは自分たちで作ったが、プログラミング用のその他のライブラリはコミュニティの手で作られた。

今のErrplane社はほとんどInfluxDBにのみ集中しているが、今後は商用サービスも始める予定だ。しかし当面は、コミュニティの育成を優先し、“デベロッパの幸福を最適化する”路線を進みたい、とDixは言う。コミュニティに軸足を置く、というそのやり方は、効果を上げているようだ。

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Dockerが初の商用製品と三つのオーケストレーションツールを発表

【抄訳】

今日(米国時間12/4)はDockerが、アムステルダムで行われたDockerCon Europeで大量の発表を行った。それらは、デベロッパの仕事を楽にする一連のオーケストレーションツールと、“ターンキー”タイプのエンタプライズプロダクト(同社初の商用製品)、そしてIBMとの新たな合意事項だ。

まず、オーケストレーションツールは、Docker Machine、Docker Swarm、そしてDocker Composerの三つだ。いずれも、これまで手作業が必要だった工程を自動化して、ユーザ(とくにデベロッパ)の時間と労力を節約する。

Docker Machineは、サードパーティのインフラストラクチャベンダのユーザにコンテナを使いたいデベロッパが増えてきたときに、彼らにレディメイドのマシン環境を提供し、ベンダやデベロッパがとくに大仕事をしなくても簡単にコンテナを使えるようにする。Dockerのマーケティング担当VP David Messinaは、これはデベロッパが使用するDocker Engineを、インフラのベンダ側が迅速に用意するための方法だ、と説明した。

彼は曰く、“新たに使用するインフラストラクチャの上でDocker Engineを使えるようにするためのセットアップ時間が、デベロッパにとってかなりの負担だった。Docker MachineをVMwareやDigitalOceanなどのインフラプロバイダが利用すると、ラップトップからの単純なコマンドでデベロッパやオペレータのためにエンジンを可利用にできる”。つまりこのツールは、インフラをDocker対応にするために要する時間を短縮し、とくにデベロッパ側ではそれがほぼゼロになるのだ。

Docker Swarm(Docker群団)は、これを使うと、複数のコンテナを複数のインフラ上に配備していくとき、そのもっとも効率的なやり方をデベロッパが定義できる。このツールからデベロッパは一連のAPI集合にアクセスしてMesosphere日本語過去記事〕などのツールにリンクし、リソースのプールをもっとも効率的なやり方で管理できる。Messinaは、“クラスタリングに際し、複数のホストにまたがるリソースプールの使い方を定義して、リソースの要件に応じてコンテナをいつどこで動かすかを最適にスケジューリングする”、と説明する。

3つ目のオーケストレーションツールDocker Composerは、アプリケーションがコンテナの集合から成り立っているときに、そのコンテナ構成(コンフィギュレーション)ファイルをデベロッパが作るためのツールだ。いったん作った構成ファイルへのコンテナの加除も、容易にできる。Messinaは、このツールにより、一つのアプリケーションに所属するコンテナの集合を簡単に定義できる、と説明する。“コンテナの集合があり、それぞれの担当サービスが決まっているとき、デベロッパはこのツールを使ってそれらを編成し、離散的な分散アプリケーションを作れる”、と。

次にご紹介するDockerのエンタプライズプロダクトDocker Hub Enterpriseは、企業がファイアウォールの背後にインストールできるターンキーソリューションだ。それはDockerの初の商用製品で、とくに金融業などセキュリティに厳しい企業のニーズに対応し、それらの企業が自社内でDockerの利用を開始できるようにする。この製品に関しては、すでにAmazon Web ServicesとIBMとMicrosoftがパートナーだが、製品のリリースは2月を予定している。

最後に、IBMとの契約。Dockerの発表によると、IBMが各種Dockerプロダクトのリセラー(再販業者)になってくれる。Messinaは、IBMのような企業がパートナーになってくれたことは、Dockerのような若い企業にとって強力なお墨付きになるから大歓迎だ、と述べた。

このように今回のDockerの発表は、一連のデベロッパツール、エンタプライズプロダクト、既存大企業とのパートナーシップなど、盛りだくさんだった。同社にとっても、コンテナ技術の王者の地位にもはや安住できない厳しい競合環境が育ち始めているから、カンファレンスのステージでこれぐらい頑張るのも当然なのだ。

〔訳注: Dockerの発表内容の紹介以外の、雑談的な部分は訳を省略しました。〕

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Microsoft、.NETをMac、Linuxに移植、サーバ・サイドをオープンソース化すると発表

Microsoftの.NETフレームワークはこの12年にわたっってWindowsでアプリケーションを開発するデベロッパーのプログラミング・モデルとなってきた。今日(米国時間11/12)、Microsoftはデベロッパー・ツールのクロスプラットフォーム化の努力を一歩押し進め、近く.NETをMacとLinuxに移植することを発表した。同時に、.NETのサーバ・サイド(クライアントの.NETではない)のコア・スタックを次のバージョンからオープンソース化するという。

Microsoftはすでに今年に入って.NETコンパイラをオープンソース化しているから、今回の決断もまったくの不意打ちというわけではない。それでも多くの専門家は“Microsoft”という言葉と“オープンソース”という言葉が同一の文章の中で使われることに驚きを隠せないかもしれない。

Microsoftのデベロッパー事業部を担当するコーポレート・バイスプレジデントのS. “Soma” Somasegarは私の取材に対して、「.NETフレームワークを利用してプログラミングを行っているデベロッパーは600万人程度だ。普及の点でわれわれは大成功を収めている」と述べた。問題はこの成功をベースにさらに前進するにはどうしたらよいかだ。

しかし、サティヤ・ナデラがCEOに就任した後のMicrosoftの動きをよく観察すれば、今日の決定も納得できるだろう。たとえば、今年のBuildデベロッパー・カンファレンスでMicrosoftは.NET Foundation の設立を発表しているが、この組織が今回のオープンソース化の受け皿となった。

適切な判断といえるだろうが、MicrosoftはXamarin社と同社が後援するMonoコミュニティと協力していくという。XamarinはすでにC#を用いたオープンソースでクロスプラットフォームの.NETフレームワークを開発し多くのデベロッパーの支持を得ている。Somasegarは私に「今回の発表の後、オープンソース化の作業については、数ヶ月かけてMonoコミュニティーと協力していく。われわれはXamarinと非常に密接な協力関係にある」と語った。

Somasegarは「クロスプラットフォーム化とオープンソース化は.NETにとって将来へ向けての大きな一歩だ。Microsoftは.NETをさらに普及させたい。そのための最善の方法は新たなプラットフォームへと拡張することだ」と述べた。

数日前、私はMicrosoftのクラウドおよびエンタープライズ担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのScott Guthrieを電話で取材したが、彼も同じ趣旨のことを述べ、「われわれはデベロッパーからしばしばく『.NETはすばらしいプロダクトだと思うが、クローズドでWindowsしかサポートしていないから使わない』という声を聞いていた。水曜日の発表を聞けば.NETを使わない理由がすべて消滅したと知るだろう」と語った。

SomasegarはこれによってMicrosoftのパートナーには多くのチャンスが訪れることを強調した。たとえばDockerの事業開発とテクニカル・アライアンスの責任者、Nick Stinematesは「われわれのDockerオープン・プラットフォームの最大の価値は、 Dockerコンテナを利用してさまざまなインフラにDockerアプリケーションを移植できるポータビリティーの高さにある。オープンソースの.NETランイタイムをすべての主要なOSプラットフォームに提供するということは、Microsofがポータビリティーの概念をアプリケーション・プラットフォームそのものにまで拡大したことを意味する」というコメントを発表してている。

Microsoftはオープンソース・コミュニティーとの会話を開始する手始めとして.NETのコードのGitHubレポジトリを開設する計画だ。最終プロダクトがどのようなものになるかまだ分からないが、Somasegarは「近く.NETアプリをMicrosoft AzureのLinuxのDockerコンテナで動かせるようになる」と述べた。

これにともなって、デベロッパーを法的紛争から保護するため、MicrosoftはMonoプロジェクトとそのユーザーすべてを対象とした新たな特許特約を公表した。

企業が主要プロジェクトをオープンソース化すると、ユーザーは「企業がそのプロジェクトのサポートを止める前触れではないか?」と不安になるのが常だが、SomasegarもGuthrieも「そういう考えは毛頭ない」と強く保証した。

これほど大きな発表であれば、読者には質問したいことも山のようにあるだろう。Somasegarは直接質問に答えると約束してくれた。〔元記事の〕コメント欄に質問を書き込んでいただきたい。太平洋時間11:30amから受け付ける。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Facebookが同社のHTTPフレームワーク/サーバProxygenをオープンソース化

Facebookが今日(米国時間11/5)、Proxygenをオープンソースにする、と発表した。それはC++で書かれたHTTPライブラリで、同社が使っているHTTPサーバも含まれている。Facebookは最近いろんなものをオープンソースにしてきたが、その多くはモバイルデベロッパ向けだった。しかし今日の発表は、もっと広い範囲のデベロッパが関心を持つだろう。

Facebookによると、Proxygenはそもそも最初から、ApacheやnginxのようなHTTP/プロキシサーバに置き換わるものを志向していない。“彼らのプロジェクトはCで書かれたきわめて自由度の高いHTTPサーバを作って高いパフォーマンスを提供することが目的だが、構成(〜設定)の項目や値が途方に暮れるほど多い”、Facebookの技術者Daniel SommermannとAlan Frindellが今日の発表声明の中でこう書いている。“逆にわれわれは、C++によるパフォーマンスの良いHTTPフレームワークを目標とし、サーバもクライアントのコードも妥当なデフォルトで間に合うよう努めた。そして、既存のアプリケーションへの統合が容易であることも”。

それでも、このフレームワークを使うとイベントドリブンのサーバを手早くセットアップでき、HTTPとSPDYのリクエストを処理できる。特殊な機能を持ったWebサーバを作りたいデベロッパが、そのベースとしてProxygenのコードベースを利用することもあるだろう。

SommermannとFrindellによると、Proxygenは2011年に始まったプロジェクトから進化したもので、当初は自由なカスタマイズのできるリバースプロキシロードバランサだった。

FacebookはそのHTTPスタックとしてApacheやnginx、Varnishなどを使うこともできたはずだが、技術者たちは、独自のフレームワークを作った方がFacebookの既存のインフラストラクチャやツールとのより深い統合が可能だ、と主張した。たとえば、Facebook自身が作ったApache Thriftなどがその典型的な例だ(今ではGitHubで入手できる)。

チームは今、このフレームワークをFacebookの今の大きさに合わせてスケールアップする方法を模索しており、また、ほかのツールでの再利用にも努めている。たとえばHaystackやHHVM、Facebookのロードバランサ、同社のモバイルインフラストラクチャなども、何らかの形でProxygenを利用している。

これまでにProxygenは、“何兆という天文学的な数のHTTP(S)/SPDYリクエストを処理してきた”から、相当現場で鍛えられたコードであることは確かだ。そのソースコードはここにあり、Proxygenの詳細な説明がここにある。

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OpenStackは成熟期に特有の諸課題に直面

今急速に成長しているオープンソースのクラウドコンピューティングプラットホームOpenStackは、今や200あまりの企業が支えていて、その、ほぼ各年行われるカンファレンスが今年はパリで開催された。今回の来場者は4500名を超えて、これまでで最大のイベントになった。それは、このプラットホームへの関心が大きいことを示しているが、しかし同時にこのプロジェクトは、人気の拡大とともに新しい課題も抱えるようになった。

今日のキーノートでは、何人かのスピーカーが、今の6か月のリリースサイクルは、大企業にとっては追随するのがたいへんすぎる、と述べた。たとえばBMWのデータセンターのStefan Lenzは、“しかも、どのリリースでも重要な変更が多すぎる”、という。彼曰く、“今後はもっと安定してほしいが、現状で使えないということではない”。BMWはOpenStackのクラスタを100ぐらいしか動かしていないが、Lenzによればそれは、半分ぐらいが業務向けで、多くはOpenStackまわりの開発専用に使われている。

今朝のキーノートでは、そのほか数名のスピーカーが同様の不満を述べた。またOpenStackのCOO Mark Collierと常務取締役のJonathan Bryceはキーノート後の記者会見で、その問題には自分たちも気づいている、と述べた。しかし、このプロジェクトを構成するモジュールの多くが成熟期に達している今では、毎回のアップグレードを律儀にインストールしなくてもよい、というユーザがほとんどだ。Collierは、あらゆるオプションをユーザにとってオープンにしておきたいが、次回のリリースは既存ユーザがアップデートをもっと容易にできるための仕組みを導入している、と述べた。

もうひとつの問題はOpenStackのセットアップと日常の運用が、当初の難しさを引きずっていることだ。だから企業ユーザの多くが、OpenStackクラウドの立ち上げを、専門知識技能のあるサードパーティのベンダにお願いしている。しかし、今後のユーザ増加策として重要なのは、それを誰でもできるようにすることだ。

メインイベントと並行して、OpenStackのコントリビュータたちは、”Design Summit”と名づけた会を開いて、今後のリリースの優先事項を検討した。それはOpenStackの各モジュールの担当者が自分たちのロードマップを設定するだけでなく、今年はとくに、モジュール間の調整にも力が注がれた。各モジュールに導入する新機能だけではなく、プロジェクトが成熟期に来ている今では、モジュール間の調整の重要性が増しているのだ。

成熟の兆候として挙げられるのが、OpenStackのエコシステムにおけるベンダ数の増加だ。UbuntuSUSERedHatなどのLinuxディストリビューションがあり、OpenStackクラウドのための仮想ネットワークインフラストラクチャ専門のPLUMgridもいる。だから、投資家たちの視線もベンダたちに集中する。たとえばSwiftStackは先月、シリーズBで1600万ドルのラウンドを発表しMirantisは1億ドルを獲得など、資金調達の発表が最近はとても多い。それに今では、OpenStack関連の買収もある…たとえばCiscoは9月に、Metacloudに飛びついた

以上のように、今ではいろんなことがOpenStackプロジェクトの成熟を示している。最初にRackSpaceとNASAがこのプロジェクトを産んでからその後長年、比較的目立たない存在だったが、最近の2年間で技術の改良と、外部への積極的な情報提供が行われた。参加企業が増えて成熟した今でもしかし、現段階で求められている安定性の実現のために、イノベーションの歩みを鈍らせることは許されないのだ。

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OpenStackのストレージプラットホームSwiftによるオブジェクトストレージサービスSwiftStackが$16Mを調達

オープンソースのOpenStackプラットホームの採用がこのところ増加するに伴って、このプラットホームを軸とするエコシステムも成長している。たとえばストレージの分野では、OpenStackのオブジェクトストレージプラットホームSwiftをベースとするオブジェクトストレージサービスを、SwiftStackが提供している。

今日(米国時間10/27)SwiftStackは、B2B専門のVC OpenView Venture Partnersが率いるラウンドにより、シリーズBで1600万ドルを調達した、と発表した。このラウンドには同社のこれまでの投資家Mayfield FundとStorm VenturesとUMC Capitalも参加した。昨年のシリーズAによる610万ドルおよびその前のシード資金を合わせると、同社の総資金額は2360万ドルになる。同社によると、マーケティングや営業のスタッフがほとんどいないにも関わらず、同社の売上は過去1年で4倍に増加した。

OpenStackのSwiftプロジェクトに最大の貢献をしているのが、SwiftStackだ。同社は今回の資金を“企業向けのストレージサービスのスケールアップを手頃なお値段で簡単に提供できるために”使いたい、と言っている。またマーケティングや顧客のエンゲージメント事業にも力を入れたい、と。

Swiftを使うと既存のストレージの再利用ができるし、それだけでなく、安価なコモディティハードウェアを使った社内ストレージシステムとクラウド(パブリックとプライベート)ストレージ併用してデータを保存できる。そのためにSwiftおよびSwiftStackのControllerは、巨大なストレージクラスタの運用を支えるプロビジョニングとレプリケーションとフェイルオーバーとモニタリングなどなどのタスクを、総合的に面倒見る。

SwiftStackもオープンソースなので、顧客に付加的サービスや、Swiftをより使いやすくするためのプロダクトを容易に提供できる。その例が、SwiftStack Management ServiceSwiftStack Controllerだ。SwiftStackは、HPやDisney、Time Warner Cableなども利用している。

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エンタプライズOpenStackのリーダーの座をねらうMirantisが$100Mの巨額を獲得

Mirantisは数年前に、当時まだ無名だったOpenStackに乗り、その後は、各年ごとに高くなるその人気の波に乗ってきた。そして今日(米国時間10/20)同社はシリーズBで1億ドルの資金を調達し、エンタプライズOpenStackのリーダーの地位を目指す旅を、これからも続けて行くことになった。それは、同社の今後の前進のための、十分な額と言えるだろう。

1億ドルはどんな企業にとっても大きいが、同社はしかもオープンソースの企業であり、それまでの二回のラウンドで計2000万ドルしか調達していない。今回のラウンドを仕切ったのはInsight Venture Partners、これにAugust Capitalおよび既存の投資家Intel Capital、WestSummit Capital、Ericsson、SAPが参加した。Insight Venture Partnersの専務Alex Crissesが、Mirantisの取締役会に加わる。

OpenStackは、IaaSを展開するためのオープンソースのプラットホームだ。4年前にRackspaceとNASAの合同プロジェクトとして始まり、IaaSのプロプライエタリな商用プロバイダAmazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Google Cloudなどに対するチェック役のオープンソースプロジェクトとしてスタートした。その後順調に成長して、コミュニティとリッチなエコシステムと活気あるサプライヤーネットワークが形成された。後者にはエンタプライズソフトウェアにおける超大手たちも加わっている。

Mirantis自身は言わないが、同社はEnterprise LinuxにおけるRed Hatと同じようなリーダー的な位置を、OpenStackの世界でねらっているようだ。言い換えるとそれは、OpenStackの企業向けの顔だ。しかしエンタプライズOpenStackはHP、IBM、Cisco、それに、そう、Red Hatなどが大きなパイの分け前をねらっている市場だから、それらに伍していくためには大きな資金が必要だ。たとえば2週間前にRed Hatは、クライアント/サーバから、OpenStackをベースとするクラウドコンピューティングに軸足を移す、と発表した

しかしCEOのAdrian Ionelは競争にひるんでいない。むしろ彼は、OpenStackの世界における自社の優位性を固く信じているように見える。彼によると、OpenStackのルーツを継承して真のオープンソースを提供しているのはMirantisだけである、と。しかも彼によると同社は、OpenStackの実装と運用に関してHPやRed HatやCiscoのチームを指導している立場である。“彼らが好打者だとは思わないが、体がでかいことは確かだね”、と彼は皮肉っぽく言っている。

Ionelは、Mirantisが唯一の本物のOpenStackベンダだ、と自負している。同社よりもさらに本物があるとすれば、オープンソースのソースコード本体、それだけだ、と彼は言う。そして彼によると、多くの顧客は特定のベンダの特定のアーキテクチャに閉じ込められることよりも、ピュアな実装を望んでいる。大手ベンダを選べば、必ずプロプライエタリなものがくっついてくる、と彼は警告する。

Ionelによると、同社は大きな展開で実際にテストされた唯一のOpenStack実装系であり、136社の顧客の中にはWells FargoやOrange、DirectTV、Ericssonなどの有名企業もいる。EficssonはMirantisに投資もしている。彼によると、今回の大きな資金が得られたのは、投資家たちも同社の今後の長寿を信じているからだ。“うちもいずれ、VMwareぐらいのサイズの会社になるだろうね”、と彼は言っている。昨年の月商は100万ドルだったが、今では週の売上が100万だ。つまり、文字通りの急成長である。投資家たちが飛びつくのも、当然かもしれない。2016年にはIPOを検討したい、とも言っている。

そもそもMirantisは、やったことのすべてをオープンソースとしてOpenStackプロジェクトへ還元しているし、またOpenStack本体のアップデート等に100名あまりの技術者を提供している。今社員数が600名で、420名が技術者だから、その中の100名提供は、すごい。

そしてもちろん、今回得た1億ドルは人員増にも使われる。Ionelは、もし資金が得られなかったとしても、エンタプライズOpenStackのリーダーを目指す道を進むことは変わらない、と言っている。お金は、あるにこしたことはないが。

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