ポルシェが、独自のEV充電ステーション網を構築すると発表

Porsche(ポルシェ)は、2023年より独自に世界的な専用充電ステーションのネットワークの構築を開始すると発表した。これは他社との提携に依存するとしていた当初の戦略から逸れることを意味する。

同社の年次総会で明らかにされたこの計画は、ポルシェが電気自動車のラインナップ拡大に向けて準備を進めていることを受けたものだ。同社は2025年までに、現在の「Taycan(タイカン)」以外に少なくとも2モデル「Macan(マカン)」と「718」の電気自動車を市場に投入する予定だ。

ポルシェブランド初の充電拠点は、来年よりまずはドイツ、スイス、オーストリアの需要の高い地域に建設される予定だと、同社幹部は述べている。

しかし、ポルシェのビジョンは単なる充電ポートに留まらない。プレスブリーフィングで詳細を語ったOliver Blume(オリバー・ブルーメ)CEOとLutz Meschke(ルッツ・メシュケ)取締役会副会長によると、充電ステーションにはラウンジのような施設が備わり、バッテリーを充電しながらコーヒーを飲んだり、仕事をしたりできるようになるという。

「充電だけでなく、お客様の利便性を高める方向に持っていきます」と、メシュケ氏はいう。「クルマの電動化に集中するだけではなく、クルマに留まらないカスタマージャーニーにも力を入れることが、私達にとって非常に重要なのです」。

ポルシェはまず欧州市場に注力する予定だが「特別なサービスを提供し、公共の充電インフラをサポートできる」中国や米国への拡大も検討していると、ブルーメ氏は述べている。

ポルシェは、欧州最大の急速充電ネットワークを擁する複数の自動車メーカーによる合弁事業、IONITY(アイオニティ)との提携も継続する。IONITYは、現在400カ所の充電ステーションを、2025年までに1000カ所まで拡大することを計画している。

「私たちは、パートナーと共同でプレミアム充電ステーションに、そして私たち自身の充電インフラに投資しています」と、ブルーメ氏は述べている。

ブルーメ氏は、ポルシェが建設を計画しているステーションの数、開設までのタイムライン、コストに関する数字を示すのは、時期尚早であるとした。しかし、同氏のコメントは、同社がこのプロジェクトへの投資に熱心であることを示唆している。

世界のEV市場が軌道に乗る準備を進める中「今後数年間は、このための迅速な増強が非常に重要であり、ゆえにポルシェは多額の投資を行っています」と、同氏は付け加えた。

ポルシェの取り組みは、この分野で先行するTesla(テスラ)に倣ったものだ。テスラは2500以上の拠点に約3万台のSupercharger(スーパーチャージャー)と呼ばれる急速充電器を備えた独自のグローバルネットワークを構築している。最近では、オランダをはじめとする欧州数カ国で、このネットワークを他メーカーの電気自動車にも開放し始めた。Rivian(リヴィアン)も独自の「アドベンチャー」ネットワークを構築しているが、同社はその充電システムに、近年欧州や米国で普及しているオープンな国際規格であるCCS(Combined Charging System、通称コンボ方式)直流コネクタを採用している。このため、CCS規格を持つ他の電気自動車も、ソフトウェアでブロックされる可能性はあるものの、理論上はRivianのネットワークを利用することができる。Rivianは2023年末までに、米国とカナダの600カ所以上に3500基の急速充電器を増設することを計画している。

ポルシェは今後もIONITYとの提携を支援しながら、米国では46州とワシントンD.C.に670基の充電ステーションを持つElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ)ネットワークの利点をアピールしていく。しかし、ポルシェ独自のネットワークを持つことによって、顧客体験と充電ステーションの品質を、自社で直接コントロールすることが可能になる。同社の広報担当者によると、この戦略は既存の急速充電インフラの欠落部分を埋めるためのものであるという。

ポルシェと同じくVolkswagen(フォルクスワーゲン)グループ傘下のAudi(アウディ)もまた、2階建てのラウンジのようなコンセプトの試験運用を欧州で開始している。この充電ステーションでは、顧客は下でクルマを充電しながら、上階で寛ぐことができるようになっている。

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Jaclyn Trop、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポルシェがミドエンジンスポーツカー「718」を2025年までに電気自動車にすると発表

Porsche(ポルシェ)のモータースポーツの歴史を現代に伝えるミッドエンジン・ロードスター「Porsche 718(ポルシェ718)」は、2025年までに完全な電気自動車として生まれ変わる予定だ。

ドイツ時間3月18日に、ポルシェの年次総会で予告されたこの718 EVは、同社の野心的で最近拡大されたラインナップ電動化計画の一部だ。同社はこの日、2030年までに新車販売の80%を電気自動車にしたいと述べている。

「世界の各地域によって変革のスピードは異なるため、我々は非常に柔軟なエンジン戦略を持っています」と、ポルシェのOliver Blume(オリバー・ブルーメ)CEOは語った。「我々が目指すのは、エモーショナルな内燃エンジン、パワフルなプラグインハイブリッド、スポーティなハイブリッド、そして完全な電気自動車です」。一部のモデルはさまざまなパワートレインを並行して提供すると、同氏は付け加え「911」には今後も内燃機関を搭載していくことを強調した。

ポルシェ718EVは、2019年にデビューした「Taycan(タイカン)」、近々登場が予定されている次期型「Macan(マカン)」に続く、ポルシェのラインナップで3台目の完全電気自動車となる。

この新たに掲げられた販売目標は、タイカンとその多数の派生車種の人気を上昇させるだけでは達成できない。完全電気自動車のマカンと718 EVがその隙間を埋めることになると、同社の幹部は年次総会前のブリーフィングで述べた。同社はこの日、独自のEV充電ステーション網の構築が計画に含まれていることも明らかにした。このポルシェ専用の充電ステーションは、バッテリーの充電を待つ間、顧客は仕事をしたりコーヒーを飲んだりできるラウンジのような場所を備えるという。

次期型マカンのEVは、これまでの計画通り、まずは2023年に欧州で発売され、続いて2024年に米国へ導入される予定だ。ブルーメCEOによると、718 EVは2025年にデビューする予定だという。マカンEVは、ポルシェとAudi(アウディ)が2018年に共同で開発に着手した電気自動車用アーキテクチャ「PPE(Premium Platform Electric)」プラットフォームがベースとなる。

ポルシェは718EVのために特別な構成を開発しており、タイカンのような800ボルトのシステム電圧も採用し、業界屈指の高速充電を可能にするとブルーメ氏は付け加えた。

ポルシェは、象徴的スポーツカーである911のハイブリッドモデルも製造する予定だと述べている。これはプラグインハイブリッドではなく、ル・マン24時間レースで優勝した「Porsche 919 hybrid(ポルシェ919ハイブリッド)」のテクノロジーを受け継ぐスポーティなハイブリッドになるという。

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】ポルシェ2022年型Taycan GTS Sport Turismo、ワゴンでパワーとパフォーマンスを実現、ユーザーエクスペリエンスも悪くない

待てば海路の日和あり、Porsche(ポルシェ)はその完全電気自動車Taycan(タイカン)の最も強力なバージョンを最後に残しておいた。2022年型Porsche Taycan GTS(タイカンGTS)とそのワゴンスタイルTaycan GTS Sport Turismo(タイカンGTSスポーツツーリスモ)だ。

パワー、洗練されたスポーティなドライビング、そしてガソリンを使わない完全電動パワートレインを求める人たちのために、Taycan GTSとTaycan GTS Sport Turismoはどちらも、ハイテクとパワフルな性能を見事に融合させたものを用意している。そしてTechCrunchは最近、それを試乗する機会を得た。GTSは現在、Porscheが提供するすべてのモデルラインで提供されており、2022年型Porsche Taycan GTSとGTS Sport Turismoは、合計10種類のPorsche Taycanオファリングを締めくくるものとなる。

結論として、Sport Turismo GTSとそのセダンの姉妹車は、内燃機関から完全電動への移行を可能な限りスムーズに、シームレスに、そして信頼できるものにしたい顧客を惹きつけようとしている高級自動車メーカーにとって、ベンチマークとなるべきものである。もちろん、高級車であることの弊害もあり、Taycanとその数あるバリアントは、ほとんどの人にとって手の届かないところに位置している。

Porsche純粋主義者たちは、Taycanやそのバリアントがいかに「本物のPorsche」ではないかについて自らのナイフを研ぎ澄ます前に、EVが消費者の心にどう響いたかを考慮するかもしれない。2019年に初めて発表されたこの電気自動車は、同社にとって驚異的な販売成功を収めている。Porscheは2021年1月から9月の間にTaycanを2万8640台販売し、フラッグシップの911スポーツカーとPanamera(パナメーラ)をはじめ、718 Boxster(ボクスター)や718 Cayman(ケイマン)を上回った。なお、Porscheの最も人気のある2車種、Cayenne(カイエン)とMacan(マカン)は依然として販売台数でTaycanを凌いでいる。

関連記事:ポルシェのEV「タイカン」の販売台数がフラッグシップスポーツカー「911」を超える

Taycanは2021年報告されたTesla(テスラ)のModel(モデル)3とYの販売台数には及ばないものの、今のところModel SとXの販売台数を上回っている。Teslaの報告によると、第3四半期末までのModel SとXの出荷台数は1万3214台であった。

この販売台数は、PorscheのTaycan開発への10億ドル(約1137億円)の投資が実を結んだことを示唆している。最新かつ究極の2つのバリアントに筆者が費やした時間は、この開発資金が適切に使われたことを実証している。2022年型Porsche Taycan GTSとTaycan GTS Sport Turismoは、特筆すべきスポーツセダンとワゴンだ。

Porsche Taycan GTS Sport Turismoで路上へ

Porscheは数週間前、LAオートショーの前のイベントで新しいTaycan GTSとSport Turismo GTSを発表した。そしてこのロサンゼルスとその周辺地域での発表のすぐ後に、私たちは両方のクルマの試乗時間を確保した。

関連記事:ポルシェが電気自動車Taycanにセダンとスポーティワゴンの2種類のGTSを投入

Taycan GTSとGTS Sport Turismoは、ライントップである670馬力のTurbo(ターボ)バリアントの下に位置する。Porscheによると、Taycan GTSは、590馬力と前後2つの永久磁石同期モーターからの626ポンドフィート(約849ニュートンメートル)のトルクにより、0-60マイル/時(約97キロメートル/時)をわずか3.5秒以内で加速することができるという。どちらのGTSも全輪駆動であるが、通常の駆動ではパワーバランスは後輪から推し進められる。

このリアモーターはPorsche Taycan Turboからのもので、これにより路上におけるGTSの俊敏性と応答性が向上するとPorscheは述べている。

両モデルとも、モーターは93.4キロワット時のバッテリーパックを搭載した800ボルトのアーキテクチャーを採用している。私たちがWalmart(ウォルマート)の駐車場にあるDC高速充電器で試したところ、5%のバッテリー電力をわずか22分で80%まで高速充電できた。

筆者は鮮やかな赤のTaycan GTS Sport Turismoで、ロサンゼルスのダウンタウンからウィロースプリングスまで片道約90マイル(約149キロメートル)をドライブし、曲がりくねったエンゼルクレスト・ハイウェイとヒューズ湖道路を通ってダウンタウンに戻った。

より重量のあるワゴンスタイルのGTS Sport Turismoは、その大きな旧式の背面があることについて想定を裏切らなかった。低い電子消費のRange(レンジ)設定からNormal(ノーマル)、Sport(スポーツ)、Sport +(スポーツプラス)、Individual(インディビジュアル)設定まで用意された多様なモードにより、機敏性、応答性、快適性がもたらされる。GTS Sport Turismoは、ラグジュアリーながら並外れたパワーを備えた電動ワゴンだ。

画像クレジット:Porsche

GTS Sport Turismoは、ウィロースプリングス近郊の2車線の幹線道路を走るときも、クレストで陽に灼けたコンクリートを超えて進むときも、PorscheがライントップのTurboと下位の4Sとの間に位置づけ「スイートスポット」と謳う呼び名を忠実に体現している。完全電動を牽引する人々の中でスポーツカーの気分を味わいたいという人に向けて、特別に仕立てられている。

Porscheは、Porsche Active Suspension Management System(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)の再基準化を行い、シャシーを再調整し、オプションのリアステアリングシステムとアダプティブアアンチロールバーを追加した。これに加えて、Taycan GTSとそのワゴンタイプの兄弟車には、ボタンタッチ操作により不透明から交互配列された層の多様な段階、透明へとパネルが変化する、巧妙なサンルーフがオプションで用意されている。このルーフは液晶をはさんだ2枚のガラスでできており、フル作動、つまり閉じられるとUVカットのグレーのパネルができあがる。

Porsche Taycan GTSのトラック体験

画像クレジット:Abigail Bassett

おそらくTaycan GTSの購入者の大半はそのセダンでトラックを走行することはないと思うが、それを実行するごく少数の人々にとっては、多くの感動があるだろう。Taycan GTSセダンは、ハッチバックスタイルではない4人乗りの十分なスペースと、Taycan GTS Sport Turismoのすべての機能を兼ね備えている。ビッグウィローのトラックをワゴンで走り回るのも正直楽しそうだが、その代わりに筆者は、Taycan GTSのセダンに30分間のリードフォロースティントで乗り込んだ。

Taycan GTSにはPorscheのTrack Precision app(トラックプレシジョンアプリ)が付属しており、同車両に装備されている新しいPCM 6.0システムと統合されている。スマートフォンのアプリをクルマに接続すると、スピードやブレーキ制動力、アクセルとブレーキのインプット情報など、トラックをどのように運転しているかに関する詳細なデータをリアルタイムで取得できる。スマートフォンをフロントガラスに装着すれば、スロットルインプットからステアリングアングル、ブレーキ圧までのすべてにアプリがマッピングする、トラックの1人称視点ビデオという付加的な特典が得られる。

ウィロースプリングスは、その古さと、ランドマークのないオフキャンバーのターンから、険しいトラックとして知られている。このトラックのフロントストレートで時速120マイル(約193キロメートル)まで加速したとき、Taycan GTSは一貫して高い接地性を維持した。Taycan GTSのより大きくなったフロントブレーキ(Sport Turismoも同様)は、勾配を登っていく一連のターンから見通しの悪いブラインドの左ターンまで、この電動セダンを扱いやすい速度にすばやく落とす際に力を発揮し、車両に接続感と正確さが感じられた。

Taycan GTSは速いというのは控えめな表現である。筆者は2021年9月にLamborghini Huracán STO(ランボルギーニ・ウラカンSTO)で初めてビッグウィローをドライブした。レーシングカーのドライバーであると自称するつもりはまったくないが、Porscheのアプリで記録したTaycan GTSセダンのラップタイムは、STOでのベストタイムからわずか4秒しかずれていなかった。しかもSTOはレーストラック用に特別に作られている。Taycan GTSがクローズドコースで走っている、と言えば十分だろう。

関連記事:【レビュー】ランボルギーニ Huracán STO、強力なエンジンの代名詞的企業がハイブリッド化に向かうとき何が起こるのだろうか

Porsche Taycan GTS Sport Turismoの充電

画像クレジット:Abigail Bassett

トラックタイムを終えて、GTS Sport Turismoに再び乗り込み、ロサンゼルスのダウンタウンにもう一度向かった。その霧のかかった土曜日の朝、筆者はフル充電のバッテリーと235マイル(約378キロメートル)の航続距離でホテルを出発していた。

ウィロースプリングスに着いたとき、高速道路と峡谷の活気あるドライビングの後で車両は約130マイル(約209キロメートル)の航続距離を残していた。Race-Texが施されたステアリングホイール上でハンドルを切り替えながら、Range、Sport +、Individualの設定の間で片道90マイルのドライブのほとんどを過ごした。これらの設定はサスペンション、パワー、ステアリングの感触、そしてTaycan GTSで聞こえる合成音の「エンジン音」さえも調整してくれる。ステアリングの感触と乗り心地を別々に設定できるIndividual設定を筆者は好んで使っていた。

ロサンゼルスの交通量は絶え間なく、これは一部の電気自動車とその航続距離に課題を投げかけるものとなろう。筆者は約70マイル(約113キロメートル)の航続距離を残してバーバンクに入り、Electrify America(エレクトリファイ・アメリカ)の公共充電器でTaycan GTSに充電しようとPorscheが指定した経由地に立ち寄った。

土曜日の夜、店内は買い物客で埋め尽くされ、EV充電を求める人の数も多いようだった。DC高速充電器は1つしかなく、ジャーナリストの充電を補助するためにそこに配備されていたPorscheの担当者によると、充電器はほぼ終日使えなかったという。筆者が到着したときにはFord Mustang Mach-E(フォード・マスタングMach-E)がその場所で充電していたため、空いていた別の充電器にクルマを寄せた。EVオーナーにとっては驚くことではないのだが、その充電器は筆者のGTS Sport Turismoで起動しなかった。他にも3つの充電器を試した後、DC高速充電器に戻ってみると、奇跡のようにGTS Sport Turismoが接続され、わずか20分で25%から80%まで急速充電することができた。

これはPorscheではなくElectrify Americaの充電器に特有の問題であったが、Teslaとその専有のSupercharger(スーパーチャージャー)ネットワークに対抗する上でElectrify AmericaのDC高速充電器ネットワークを頼りにしている自動車メーカーにとって、間接的に問題となるものだ。その場所にあったElectrify Americaの複数の充電器で、筆者の運転していたクルマが認識されない状態が続いた。他のジャーナリストが充電に来た際も同様の問題を抱え、私たち全員が、機能する充電器を求めて、一連の電動バイクや電気自動車を交互に試していくことになった。

ユーザーエクスペリエンス

充電インフラの構築にはまだ多くの作業を要するが、Porscheのナビゲーションシステムにおける充電器の位置特定が、他の電気自動車メーカー(Teslaを除く)よりはるかに容易になったことは朗報と言えよう。

このシステムでは、利用可能な充電器を見つける方法が3つ用意されている。音声認識機能を使って充電器をリクエストすると、選択した充電器がナビゲーションシステムにポップアップ表示される。また、タッチスクリーンを使用して検索パラメーター(EV充電器のブランドや充電速度など)を設定し、近くにある充電器を検索することもできる。

最後の1つは、Porscheのアプリやインフォテインメントシステムのナビゲーションを使用して経路を設定すると、目的地に到着したときに残しておきたい充電量に基づいて、経路に沿って自動的に充電器が検出されるというものだ。筆者が運転したクルマは欧州仕様だったため、この設定を自分で試すことはできなかったが、トラックを走っていたセダンの1台に米国仕様の限定的な機能が搭載されており、Porscheの広報担当者がその手順を説明してくれた。

Porscheの新しいインフォテインメントスクリーンは、中央のスクリーンからこれらの機能にアクセスできることに加えて、助手席側にまで広がっており、同乗者は走行中に充電器を探したり、ステレオのインプットやステーションの変更、ナビゲーションなど、他にもさまざまなことを行える。ほとんどの自動車メーカーは、移動中に運転席と助手席の両方からこれらの機能にアクセスすることを制限しているが、そうした「機能」は、移動中に積極的なナビゲーションや場所の検索をしようとするときに実に腹立たしく思える。Taycan GTSとTaycan GTS Sport Turismoについてはそのようなことはない。クルマが走行中でも、運転者と同乗者の両方が、インフォテインメントシステム上の多くの機能とのインタラクションを続けられる。

2022年型Porsche Taycan GTSとTaycan GTS Sport Turismoは、2022年第2四半期までに11万ドル(約1252万円)強の価格で提供される。セダンは13万1400ドル(約1494万円)から、Sport Turismoは13万3300ドル(約1516万円)からという価格設定(納車費用は別途1350ドル[約15万3500円])となっている。まさにPorscheらしいスタイルで、ほぼすべてのものを好みに合わせてカスタマイズ可能である。どちらも洗練されたスリーパーパッケージで優れたパフォーマンスとスタイルを豊富に有しており、熱心なファンや搭乗者たちに技術と洗練さの絶妙なバランスを届ける。

2022年型Porsche Taycan GTSは、どのような形であっても、真に一目置かれるべき電気自動車である。

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

レベルラリーでポルシェ・カイエンSの耐久テスト実施、オフロード競技で見せるオートモーティブグレードの真髄

優秀なアプリというのは、私たちの生活をより便利に、より快適にしてくれるものである。クルマに搭載されたGPSは渋滞の際にレストランへの最適ルートを見つけてくれるし、クルーズコントロールがあれば高速道路で切符を切られないよう速度を設定することができる。こういった車両機能は現代生活の必需品となっているが、あまりにも当たり前の存在のためそれがなくなってみない限りそのありがたみを感じることはない。Rebelle Rally(レベルラリー)の場合なら「その機能が禁止されない限り」と言ったところか。

Rebelle Rallyとは、年に一度開催される女性のためのオフロードナビゲーション競技だ。参加者は8日間にわたってテストエンジニア体験を行い、オートモーティブグレードというものへの理解を深めながら、砂漠に隠されたチェックポイントを見つけてポイントを獲得するというものである。

ハイテク製品を技術的に不利な環境下で限界に近い状態で走らせるというのは、自動車メーカーが生産前に行うテストの1つである。自動車メーカーは気候や気温の厳しい世界各地でテストを行い、氷点下、雪、泥、雨、猛暑、砂、風など、あらゆる環境下で車が極限に近い状態でも走ることができるかを試すのである。

こんなプロセスを意識する人などほとんどいないだろう。しかし2020年、Porsche Cayenne S(ポルシェ カイエン S)のハンドルを握り、砂嵐や砂漠の中を走り抜けた筆者はそれを肌で感じることになる。この経験は、オートモーティブグレードがいかに堅牢であるかを示すと同時に、消費者の手にクルマが渡るまでにどのようなテストが行われているかをほんの少しだけ教えてくれたのだった。

極限状態での競争

Rebelle Rallyはジオキャッシングとオフロード競技を組み合わせたイベントで、毎年10月に米国西部の砂漠地帯のさまざまな場所で開催される。ベテランのラリードライバー兼ナビゲーターであるEmily Miller(エミリー・ミラー)氏が考案したもので、2021年で6年目を迎える。女性が自分の家にあるクルマの限界を試すため、特に普通乗用車(険しいオフロードに挑むために改造されていないクルマ)を対象にこのラリーを始めたとミラー氏は語っている。

大会では52チームが毎日、紙の地図とコンパス、地図定規だけを使い、風景の中に点在するジオフェンスで囲まれた隠れたチェックポイントを探しに出る。チェックポイントには旗が立っているところもあれば、目印がまったくないところもあり、それぞれのチェックポイントには開始時間と終了時間が設定されている。

競技者は携帯型GPSロケーター(Iridium Yellowbrickトラッキングデバイス)を使って各チェックポイントでチェックインし、場所、オフロード走行の難易度、ジオフェンスで囲まれた正しいポイントにどれだけ近づいたかなど、さまざまな要素に基づいてポイントを獲得する。競技終了時に最も多くのポイントを獲得したチームが表彰台に上がることになる。

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州の1500マイル(約2400km)を超えるオフロードコースで開催された2021年のレース。Porsche(ポルシェ)、Rivian(リビアン)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Jeep(ジープ)、Nissan(日産)、Toyota(トヨタ)などのメーカーが自社のクロスオーバー、SUV、トラックの性能を誇示するために、女性チームをOEM車に乗せて送り出す。2021年は各メーカーがスポンサーとなった11のチームが参加した。

この大会は、筆者にとってもPorsche North America(ポルシェ・ノースアメリカ)にとっても初めての試みだ。

このラリーは「実験場として設計されています。エンジニアが自分の設計したクルマで実際に走って競争するために参加している企業もあれば、ジャーナリスト、社員教育、顧客開拓、インセンティブのための本格的でハードコアなテストドライブと考えている企業もあります。そして、どこよりも美しい風景の中で競技が行われるのです」とミラー氏は話している。

砂と現代のクルマが出会うとき

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

2021年のイベントは、天候の影響で例年よりもさらに厳しいものとなった。

最低気温が一桁となり、雨や雪、みぞれが降ったり、ネバダ州ビーティ近郊のビッグデューンで24時間続いたすさまじい砂嵐があったりと過酷な状況にさらされた。一晩中突風が60mphを超えて完全なホワイトアウト状態となり、筆者とチームメイトのBeth Bowman(ベス・ボウマン)を含むほとんどの選手が安全対策のために車中泊を余儀なくされた。

風と砂嵐がテントを破壊し、50人以上の競技者に毎晩燃料を供給している燃料トラックが非常に危険な状態になっていた。

これこそが、PorscheでCayenneのテストを担当するRalf Bosch(ラルフ・ボッシュ)氏のような人たちが、車両テストの際に望む気象条件なのである。「現代の自動車にとって、砂はとてつもない拷問です。砂丘で故障しないように、冷却装置やクラッチ、ドライブシャフトなどを特別に設計しなければなりません」とボッシュ氏は話している。

ボッシュ氏と同氏のチームは、フィンランドからアフリカまで世界各地を訪れ、燃焼エンジンとハイブリッドエンジンの両方を搭載したCayenneの試作車を過酷な天候の中でテストしている。

「極端な寒さ、極端な雨や霧雨、塩分や泥、雪を含んだ厳しい気温などでテストし、これらの条件がクルマにさほど影響を与えないことを確認しています。砂嵐の中で何日もクルマを走らせた後、雪と氷と寒さの中ですべてが凍るまで追い込み、その上で故障の兆候が出ないことを目指しています」。

冬季の過酷なテスト地として自動車メーカーにとって人気の高い、カナダのイエローナイフの荒野に、クルマの持ち主がCayenneを連れて行くことはまずないだろうが、このような厳しいテストは業界では日常茶飯事だ。こういったテストにより、自動車メーカーは車内外のテクノロジーがオートモーティブグレードであることを確認しているのだ。つまり、クルマに搭載されているGPS、オートストップ&スタートシステム、エンジンやモーターなどのすべてのものが、あらゆる条件のもとで故障したり完全に壊れたりすることなく動作するのである。

テック:諸刃の剣

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

Rebelle Rallyは特にハイテク化が進む現代の自動車にユニークな課題を突きつける。同レースではGPSやデジタルコンパスの使用が禁止されているため、その緋色の内装からルビーという愛称が付けられた筆者達のCayenne Sには、Porscheの指導のもと、大会の規則や規定を満たすため、ナビゲーションシステムが完全に混乱して不正確なデータを表示するようにするための大掛かりな作業が施された。

「Cayenne SのGPS機能を無効にするために、すべてのアンテナ(GPS、GSM、WiFi)を取り外し、さらにPCMが米国以外の衛星を検索するようにプログラムして、米国の衛星ネットワークに接続しないようにしました」と、システムを担当したPorscheのプレスフリートテクニシャンのKyle Milliken(カイル・ミリケン)氏は伝えている。

つまり、我々が砂漠の奥地を運転している間ずっと、車両のシステムは自分たちが太平洋上にいると勘違いしており、デジタルコンパスもまったく役に立たないのである。

最新のクルマの多くがそうであるように、Cayenne Sにも気候から最低地上高、トラクションまですべてをコントロールする単一のスクリーンが配置されている。後者2つの機能は、全輪駆動車で困難なオフロードに挑戦する際に車高とパワー配分を積極的に管理、制御する必要があるため絶対に欠かせないものだ。もしPorscheがGPSを適切に無効化しなかった場合は、レース主催者側がCayenne Sのスクリーンを物理的にブロックし、車をドライブ、リバース、パーク、ニュートラルに入れる以上のことができない状態に設定する。

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

堅牢な車体を持ち、デフロックやトランスファーケースを物理的なボタンで操作できるなど、オフロードの名に恥じない性能を持つ初代Cayenneとは異なり、最新のCayenneのオフロード機能やプログラムは、センターコンソールのメインスクリーンからしかアクセスできないようになっている。

それに加えて、ルビーも同様だったのだが、エアサスペンションを装備した最新のCayenne Sのタイヤ交換をするためには、スクリーン(およびそのメニュー)にアクセスできなければならない。また、クルマのオンロードとオフロードを快適にするオートレベリング機能をオフにしないと、ジャッキアップできないのである。もしGPSのために画面が遮られていたら、かなり苦戦していただろう。

Cayenne Sのエアサスペンションに装備されている優れたオフロード設定(筆者のお気に入りの設定は「Sand 」と「Rocks」で車体の高さが「Terrain」)のいくつかは、我々が行った耐久テストでは少々スマートすぎたようだ。

8月下旬にオセアノ砂丘でトレーニングをしていたとき、ベスと筆者はラリーで必要となるであろうセルフレスキューのスキルを練習するため、柔らかい砂にわざとはまってみることにした。エンジンをふかして抜け出そうとすると、Cayenneのトラクションコントロールシステムがホイールスピンをオーバーライドして止めてくれた。幸いにもラリー中にスタックすることはなく、タイヤがパンクしたり、クルマのどこかが破損したりすることもなかった。その頑丈さを証明したCayenneは、グラミス砂丘でスタックした他のクルマを救出したことさえある。

画像クレジット:Nicole Dreon / Rebelle Rally

これらはすべて、オートモーティブグレードの技術や部品、特に新Cayenneに搭載されているそれの開発過程における、過酷なテストに耐えた頑健性の証だ。大規模な砂嵐(さらに8日間の滞在中に小さな砂嵐が2回)、厳しい環境、そしてトリッキーな運転にもかかわらず、Cayenne Sは毎日期待通りのパフォーマンスを発揮してくれた。

毎朝、ルビーは快適なエンジン音とともに目覚め、私たちを快適に暖かく(あるいは涼しく)保ってくれた。不調だって一度もない。エアフィルターやブレーキが壊れることもなく、20インチのタイヤに空気を入れる以外何もすることなく、不気味なグラミス砂丘からハイウェイに入り、混沌としたロサンゼルスへと直行することができたのである。

これぞまさに、いかなる天候や環境下でも道路を走り続けることができるようにするための「オートモーティブグレード」テストの真髄だ。

「路上であれだけ優れていても、砂だらけのぐちゃぐちゃな状態ではそれほど優れているはずがないと考えるのが普通でしょう」とボッシュ氏。「Cayenneではオンロード性能を向上させることでオフロード性能も維持しようと努めており、その結果非常に高性能なクルマに仕上がっているのです」。

画像クレジット:Regine Trias / Rebelle Rally

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

ポルシェがカーボンニュートラルな家庭のためのワンストップショップを目指す独スタートアップに出資

Porsche(ポルシェ)のベンチャー部門は、エネルギー貯蔵、電気自動車の充電インフラ、太陽光発電など、カーボンニュートラルな家庭を実現するために家庭に必要なものをすべて提供することを目指しているドイツのスタートアップ1Komma5(ワンコンマファイブ)に少数株主として出資した。

投資額は公表されていないが、Porsche Venturesは過去2年間に、イスラエルのセンシング技術のスタートアップTriEye電動マイクロモビリティのオンラインディーラーRidePandaバーチャルセンシングのスタートアップTactile Mobilityなどに出資してきた。

関連記事
悪条件下でも使える短波長赤外線を利用するセンサーの商業化を目指すTriEye、インテル、サムスン、ポルシェが支援
ポルシェ、ヤマハが電動モビリティのオンライン販売を行うRidepandaに出資
グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

今回の投資は、Porsche Venturesの典型的なモビリティ技術に関するものとは少し異なる。

Porsche Ventures Europe and Israelの責任者であるPatrick Huke(パトリック・ヒューケ)氏は「今回の投資で、スマートシティとサステナビリティの分野における我々の野心を強調したいと思っています」とTechCrunchに語った。

ドイツ・ハンブルグ拠点のこのスタートアップは、CFOを務めるMicha Grueber(ミーヒャ・グルーベル)氏、そしてTeslaとエネルギー貯蔵システム会社Sonnenで働いた経験を持つPhilipp Schröder(フィリップ・シュローダー)氏によって設立された。

パリ協定の目標である「気温上昇を1.5度以内に抑える」ことにちなんで名付けられた1Komma5は、ワンストップショップという目標に向けて興味深い方法をとっている。

シュローダー氏は最近のインタビューで「今日、どの企業も太陽光発電やエネルギー貯蔵などのコンポーネントの販売に集中しています。その一方で、ヨーロッパでは、これらの分散型資産をまとめることに注力している企業はありません。これでは問題が発生するのは必至です」と話した。

「分散型エネルギーの世界では、各家庭にヒートポンプや充電ポイント、蓄電システムがあっても、それらがグリッドレベルで(あるいは相互に)通信しなければ問題が発生します」と同氏は話す。

1Komma5は、買収だけでなくソフトウェアを通じてすべてを統合することを目指している。具体的には、1Komma5はドイツ国内で、太陽光、ヒートポンプ、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギーに特化した大手電気設備会社の買収を目指しており、最終的にはオーストリアやスイスなどの他の国にも拡大する予だ。1Komma5は、これらの企業に対して、管理業務や顧客関係管理を行うための法人向けソフトウェアや、充電、太陽光、エネルギー貯蔵を結びつけるエネルギー管理ソフトウェアを提供する。

1Komma5のビジネスが興味深いのは、ソーラーやエネルギーストレージなどのコンポーネントを、家庭レベルとグリッドレベルで相互に接続する計画があるからだとシュローダー氏は話す。

1Komma5は、これまでに現金および株式による5件の買収を行っている。

この若いスタートアップは、今後2年間で1億ユーロ(約127億円)の現金と株式を使って、再生可能エネルギーに特化した設置会社をさらに買収するという壮大な野望を抱いている。ターゲットとしているのは、500万〜2000万ユーロ(約6億〜25億円)の売上と、熟練した労働力を持つ設置会社で、単に他の業者に委託しているような販売会社ではない。

Porscheからの資金は、1Komma5の事業拡大のために使用される。その計画には、プレミアムなAppleデザインのような雰囲気の小売店舗を開設し、潜在的な顧客がカーボンニュートラルな住宅に不可欠な構成要素について学べるようにすることが含まれる。このような店舗では、例えば、家庭用充電器、エネルギー貯蔵、太陽光発電などの隣にPorscheのTaycanが展示されるかもしれない。

最初のショールームは、ハンブルクのビネナルスターとリンゲン・アン・デア・エムスに計画されており、2022年第1四半期にオープンする予定だ。

Porscheは、1Komma5の製品を自社の顧客層に提供することをすぐには考えていない。しかし、ヒューケ氏が指摘したように、Porsche Venturesは戦略的な投資を行っており、中長期的にはさまざまな可能性を検討していくことになる。

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

LAオートショー2021の高揚感としらけムード

LAオートショーは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下で初めて戻ってきた室内自動車ショーだ。ニュースに乏しく、いつも以上にベーパーウェアが多い中、それでも、いくつかのクルマやテクノロジーや企業が、イベントに先立って行われた2日間のプレスデーで目立っていた。

以下に、2021年のロサンゼルスで良くも悪くもTechCrunchの目に止まったクルマとテーマを紹介する。

グリーン&クリーンへと変わるストーリー

画像クレジット:Kirsten Korosec

米国時間11月17日正午前に行われた少数の主要なニュースカンファレンスでは、持続可能性と気候変動が中心テーマだった。そこには企業の偽善的環境配慮と実際の行動が入り混じっていた。

Hyundai(ヒョンデ)とKia(キア)は、環境の認識がいかに大切かを訴える短編動画を流したあと、全電動コンセプトカーとプラグインハイブリッド車を披露した。Fisker(フィスカー)は海洋保護について話した。長年グリーン化に取り組み、国立公園から動物保護まであらゆる活動の支援に多額の資金を投入してきたSubaru(スバル)も、環境保護の支援を継続していくことを強調した。

これは過去においても珍しくなかったことだが、自動車業界全体が二酸化炭素排出量低下に重い腰を上げ、持続可能な生産と調達に革新を起こし、有効な寿命を終えた部品や車両リサイクルと再利用の方法を探求していることは銘記しておくべきだろう。人類の気候変動への影響を減せる時間はあと10年しかないという恐怖の警告は、ショーで行われた複数のプレス会見で言及されていた。

ハリウッドモード

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年特に目立った発表の1つが、Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)の量産間近なバージョンだ。全電動SUVが備える17.1インチ巨大スクリーンは、180度回転可能で、同社が「ハリウッドモード」と呼ぶ横位置のランドスケープモードから縦位置のポートレートモードへ回転できる。

横位置モードでは、Oceanが駐車あるいは充電中に、ゲームをプレイしたりビデオを見たりできる。Fiskerは、このスクリーン回転技術の特許を取得していると述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

電化、電化、電化

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショー全体のテーマは、(驚くに当たらないが)あらゆるものの電化だ。展示場にはICE(内燃エンジン)駆動の車両が数多く見られたものの、バッテリー電力の世界にいくつもビッグニュースがやってきた。

Nissan(日産)の全電動SUV、Ariya(アリヤ)、Toyota(トヨタ)bz4xと双子車Subaru Solterra(ソルテラ)から、TechCrunchのお気に入りである全電動Porsche(ポルシェ)Sport Turismo(スポーツ・ツーリズモ)セダンの最新モデルとマジックルーフ付きワゴンまで話題は尽きない。

健康被害からあなたを守るテクノロジー

画像クレジット:Kirsten Korosec

現行パンデミックが3年目を迎える中、自動車メーカーは利用者を病気から守る方法を考え始めている。HyundaiがLAオートショーで披露した SUVコンセプトカーSEVEN は、垂直空気循環、抗菌性の銅、紫外線殺菌装置などの機能を提供している。

電動化レストモッドがやってくる

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショーで目についたトレンドの1つが、何台かの古い車体に電動パワートレインを積んだレストモッド(レジストレーション&モディフィケーション)モデルだ。内燃エンジンのような直感的体験を与えることはないかもしれないが、クラシックカーの新しい楽しみ方を提供するものだ。

自動車製造のスタートアップ、Cobera(コベラ)が展示していたC300は、懐かしいShelby Cobraとよく似た外観だ。しかし、ボンネットの中にはV8エンジンに代わってC300を時速0〜62マイル(0〜約99.8km)まで2.7秒で加速すると同社がいう全電動パワートレインが入っている。Cobera C300は、ハンガリーの乗用車とキャンピングカーの製造に特化した会社Composite-Projects(コンポジット・プロジェクト)が設計・製造した。車両のスイッチを入れると、合成されたサウンドが出て、昔のV8に少しだけ似た音が聞こえる。

Electra Meccanica(エレクトラ・メカニカ)は、LAオートショーで三輪自動車Solo(ソロ)(詳しくは下で解説)も発表している会社だが、もう1台、Porsche 356 Speedsterに似た電動車、eRoadsterを披露した。エアコンディショニング、パワーウィンドウ&ロック、最新インフォテイメントシステムなどを備える。

画像クレジット:Kirsten Korosec

新たなパワートレインを搭載したレストモッドを披露したのは比較的無名で小さなメーカーだけではない。Ford(フォード)は11月初旬のSEMAショーに登場した電動化したF-100を持ちこんだ。1978 F-100 Ford Eluminator(フォード・エルミネーター)はFordの電動モーター、E-crate(イークレート)を備えたレストモッド機能で、ユーザーはこれを購入して自分の車両に取りつけられる。

F-100は前輪と後輪に1台ずつモーターを備え、最高出力480馬力、最大トルク634lb-ft(860Nm)を誇る。室内には新型インフォテイメントシステムのスクリーンとデジタル・ダッシュボードがある。

画像クレジット:Kirsten Korosec

三輪車

画像クレジット:Kirsten Korosec

例年、会場には少なくとも数台の三輪自動車が登場するが、2021年はいつもより多かった。Biliti Electric(ビリティ・エレクトリック)が持ってきた電動&ソーラー駆動トゥクトゥクは、Amazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)が世界の人口密集都市のラストワンマイル配達に使える、と同社は言っている。

同社のGMW Taskmanは、すでにヨーロッパ、アジアの各所で使われていて、これまでに1200万個の荷物を配達し、延べ2000万マイル(3200万km)を走ったとファンダーが言っていた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Electra Meccanica のもう1台、Soloは同社が2016年のこのショーでも披露したsharyou

で、プレスデーにテスト乗車を提供していた。同社によるとSoloは1回の充電で最長100マイル(約161 km)走行可能で、最大出力82馬力、最大トルク140lb-ft(約190N-m)、最高速度は80mph(約128 km/h)。定員1名で荷物スペースを備え、近距離の移動や都市圏での通勤のために作られている。Soloの価格は1万8500ドル(約211万円)で、アリゾナ州メサで製造されている。

Sondors(ソンダーズ)の三輪電気自動車は、3人乗りで航行可能距離は約100マイル(約160km)と同社はいう。このクルマは、100万ドル(約1億1400万円)以上を集めて成功したクラウドファンディングの後に開発されたもので、33 kWhのバッテリーパックを備え、最大出力170馬力、最大トルク323 lb-ft(約438N-m)を発揮する。

Imperium (インペリウム)も三輪電気自動車、Sagitta(サギッタ)を披露した。ショーに登場した三輪乗用車の中では最大で、4人まで乗ることができるスペースをもつ。Sagittaは車両のスペックを発表していないが、2022年中頃から予約を開始すると同社は述べた。

バービー

画像クレジット:Abigail Bassett

ことしのLAオートはには、バービーまで登場した。Mattel(マテル)はBarbie Exra(バービー・エクストラ)カーの実物大バージョンを公開した。2021年式Fiat(フィアット)500のシャシーに載せたファイバーグラスのボディーはキラキラの白い塗装で飾られ、ウィング式ドアと後部にはペット用プールもある。

ソーラーパワー

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のショーには、興味深いソーラー充電オプションを備えたクルマがいくつかあった。中国のエネルギー会社、SPI参加のPhoenix Motor Inc.(フェニックス・モーター)が発表したピックアップトラック、EF1-Tの収納可能なソーラーピックアップベッカバーは、最大25〜35マイル(約40〜56km)の走行距離を追加できると同社はいう。EF1-TおよびバンバージョンのEF1-Vは、いずれも巨大な車両で、明らかにまだプロトタイプであり、機能や利用形態について顧客の意見を聞いているところだと会社は述べた。

大きな虫のような外観のEF1-Tは、1回の充電で380〜450マイル(約612〜724 km)走行可能で、2025年の発売に向けて予約を受け付けているという。ずいぶんと遠い話だ。

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ポルシェが電気自動車Taycanにセダンとスポーティワゴンの2種類のGTSを投入

Porsche(ポルシェ)は、汎用性が高くパフォーマンスに特化したGTSの名を、電気自動車Taycan(タイカン)最後の2車種に与えた。

ロサンゼルスオートショーに先立つ米国時間11月16日夜のイベントで、ポルシェはTaycan GTSセダンと、新しい第3のボディスタイルを持つTaycan GTS Sport Turismo(タイカンGTSスポーツツーリスモ)を発表した。この2種類のTaycanの発表は、ポルシェにとっては1世代以上にわたる最大の賭けを締めくくるものになる。ポルシェは2019年秋に発表された4ドアのTaycanの開発に、10億ドル(約1148億円)以上を投じた。それ以降、ポルシェはTaycanを、Cross Turismo(クロスツーリスモ)とともに完全電気式ワゴンへと進めてきた。

今回の新車種の投入によって、後輪駆動のTaycanの4、4S、Turbo、Turbo SそれぞれのセダンとCross Turismoバリエーションと合わせて計10種類となる。しかし、2022年の第2四半期に米国での販売が開始される際に、顧客から最も大きな反響を呼ぶのは、カスタムキャリブレーションとチューニングによって、より激しく、より速い反応のパフォーマンスを実現した今回のTaycan GTSのバリエーションとなるだろう。

画像クレジット:Kirsten Korosec

Taycanの10種類のバリエーションは多い。だが、北米ポルシェのCEOであるKjell Gruner(キエル・グルーナー)氏は、これは個々の顧客の要求を満たすという会社のミッションに合致しているのだと語っている。

グルーナー氏は米国時間11月16日のインタビューで「私たちは決して1つのもので押し切ろうとはしません」と語った。「そしてそれは、単なるバリエーションではなく、それぞれのバリエーションの中にも考えられるのです」。

Tycanのマルチバリエーション戦略は終わったが、ポルシェは次の「エレクトリックベイビー」にも同じような白紙状態からのアプローチを採用するだろう、とグルーナー氏はいう。その次期EVとは、Premium Platform Electric(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)プラットフォームを採用した、ポルシェ初のモデルとなるMacan(マカン)だ。電気自動車のMacanの出荷は2023年に予定されている。

Taycan GTSの話に戻そう

GTSバージョンのTaycanでは、フロントノーズカバー、サイドスカート、サイドウィンドウトリムがハイグロスブラックに変更されている他、ヘッドライトがブラックに着色されている。このTaycanには、リアやサイドスカートなどにGTSのロゴがふんだんに使われている。

車内では、他のモデルと同じインフォテイメントシステムが採用されており、マルチスクリーンのダッシュボードには、1963年のポルシェ911からインスピレーションを得たディテールが盛り込まれている。Apple CarPlayとAndroid Autoは、スマートフォンの表示と機能を車の中央画面に表示するための車載プラットフォームだが、他のバージョンと同様にGTSにも搭載されている。また、フルオートエアコンや充電プランナーなどの機能も備えている。

Taycan Cross TurismoとTaycanセダンをマッシュアップしたようなTaycan GTS Sport Turismoは、リアスポイラーをボディカラーに合わせて塗装し、ホイールアーチにクラッディング(被覆加工)をしていない点が特徴的だ。このSport Turismoは、Cross Turismoワゴンと同じシルエットと収納スペースを持っている。だが、セダンのTaycanよりも低い車高を持つことで、よりレース指向でパフォーマンスを秘めた外観と雰囲気を醸し出している。

画像クレジット:Kirsten Korosec

特に注目したいのは、今回のGTSには、ドライバーや同乗者が光の入り具合を調整できる新しいパノラミックルーフを採用している点だ。ルーフはデジタル時計のような9つの液晶フィルムセグメントで構成されている。各セグメントは電気的に独立している。充電されると、それらのセグメントは不透明になる。ユーザーはクリア(透明)、マット(不透明)、40%、60%の4種類のプリセットパターンから選ぶことができる。車両の電源がオフになると、ルーフは自動的にマットに切り替わる。システムは前回の設定を記憶しており、車両の電源を入れると、ドライバーが前回選択した設定へと戻る。

画像クレジット:Porsche

Taycan GTSセダンとGTS Sport Turismoの間には、片方は低床ワゴンという明確な違いがあるものの、共通する部分も少なくない。両車とも同じ永久磁石式の1速フロントモーター、大型の永久磁石式リアモーター、2速リアトランスミッションを搭載し、0〜60マイル/h(0〜97km/h)を3.5秒で加速することができる。

93.4kWhのバッテリーと、最大270kWの速さで充電可能な800Vのアーキテクチャを標準装備している。つまり5%から80%までの充電を22.5分で行うことができるということだ。

GTSは、価格とパワーの点でTaycan 4SとTaycan Turboの中間に位置する(ブランドのローンチコントロール機能により、総出力は590馬力となる)。Taycan GTSセダンは13万1400ドル(約1509万円)から、Taycan GTS Sport Turismoは13万3300ドル(約1531万円)からとなっている。どちらの価格にも、配送料、処理費、手数料の1350ドル(約15万5000円)は含まれていない。

また、ポルシェはまだ推定航続距離を発表していないが、GTSの航続距離も4SとTurboの中間になると思われる、つまり227マイル(約365km)から212マイル(約341km)の間になるだろう。

画像クレジット:Kirsten Korosec

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

悪条件下でも使える短波長赤外線を利用するセンサーの商業化を目指すTriEye、インテル、サムスン、ポルシェが支援

イスラエルのスタートアップ企業TriEyeは、悪条件下での自律走行システムや運転支援システムの視認性向上に役立つセンシング技術を商業化するため、7400万ドル(約84億円)を調達した。

その技術は、波長の短い赤外線、すなわち短波長赤外線(Short-wavelength infrared、SWIR)を利用する。赤外線なので人間の可視波長域にはない。SWIRによるセンシング技術は以前から存在するが、コストが高くつくため航空宇宙や防衛産業に限られていた。TriEyeによれば、同社はそのコストを大幅に下げて、今日のスマートフォンや自動車で使われているカメラ程度の費用にし、また市場にある他のタイプのセンサーよりも高性能だという。

そのイノベーションはCTOのUriel Levy(ウリエル・レビー)氏がヘブライ大学に在籍していた10在職中の10年以上の間に研究、開発したもので、TriEyeはそのSWIR技術の商用化と市場化を目指している。

CEOのAvi Bakal(アヴィ・バカル)氏によると、SWIRはこれまでの視覚システムにさらにもう1つの情報のレイヤーを加える(tri-eyeは「3つの目」の意)ので、それにより人は「可視物以上のもの」を見ることができる。

「センシングは至るところにあります。どのような産業でも、それは工程を編成し分析するための必須の部分です。しかし現在では、全体的なパフォーマンスと意思決定の向上に役に立つような、必要不可欠なデータの提供能力が視覚システムの市場にはありません」とバカル氏はいう。

TriEyeの創業者ウリエル・レビー氏、アヴィ・バカル氏、Omer Kapach(オメル・カパック)氏(画像クレジット:TriEye)

TriEyeはSWIRと同社独自の光源技術を使って、sedar(spectrum enhanced detection and ranging、 スペクトル強化検出測距)と呼ぶセンサーを開発した。同社によるとsedarは、高度な運転者補助や自動運転のシステムが必要とする像と深さに関するすべてのデータを提供する。ゆえにそれは、今日の高度な運転者補助や自動運転システムが利用しているカメラやレーダーやLiDARなどを使う従来的なセンシング系をリプレースできる。

TriEyeの技術は、カメラやライダーに比べてコストが安いことも大きなアドバンテージだ。バカル氏によると「マスマーケットが採用するためにはその点が欠かせません。最もシンプルなクルマから高級車まで、すべてに対応することが目標です」。

TriEyeのSWIRセンサーはCMOS半導体を使っている。同社はすでに大手のCMOSファウンドリ数社と提携して、今後の年産数百万という市場のニーズに備えている。また大手OEM数社とも、sedarを共同で商用化し搭載する具体的な車種の話し合いに入っているが、詳細はまだ明かされない。

同社のメインのターゲットは自動車業界だが、狙っているのは自動車だけではない。SWIRによるセンシングの性能は食品の検品や素材の検出にも向いている。また、バイオメトリクスや監視システムにも適している。

TriEyeがSWIRの市場を非常に大きく捉えているので、大手の投資家たちも関心を持ち始めた。その中にはIntelやPorscheの投資部門もいる。どちらも、2019年のTriEyeのシリーズAに参加した。

今回の最新の投資ラウンドはM&G InvestmentsとVarana Capitalがリードし、Samsung VenturesとTawazun SDF、Deep Insight、Allied Group、Discount Capital、そしてこれまでの投資家であるIntel CapitalやPorsche Ventures、Marius Nacht、そしてGrove Venturesが参加した。これでTriEyeの調達総額は9600万ドル(約109億円)になった。

画像クレジット:TriEye

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グッドイヤーとポルシェ投資部門が自動車が道路を「感じる」ようにするバーチャルセンシングTactile Mobilityに戦略的投資

イスラエルのスタートアップであるTactile Mobility(タクタイル・モビリティ)は、既存の車両センサーデータを利用して、自動車が道路を「感じる」ことを可能にし、クラウドプラットフォームを介して自動車と道路の両方に関する情報を提供している。同社は米国時間10月27日、2700万ドル(約30億円)のシリーズCを発表した。CEOのShahar Bin-Nun(シャハール・ビン-ナン)氏によると、同社はこの資金を、バーチャルセンサーのさらなる開発、製品ラインナップの拡大、クラウドプラットフォームの強化のために使う。目標を達成するために2021年、研究開発部門で最大20人の新規採用が必要になるという。


今回の資金調達により、Tactileの資金調達総額は4700万ドル(約53億円)になった。今回のラウンドはDelek Motorsが主導し、Goodyear Ventures(グッドイヤーベンチャーズ)とPorsche Venturesが戦略的投資を行い、Union Group、The Group Ventures、Zvi Neta(AEV)、Giora Ackerstein(ジョラ・アッカースタイン)氏、Doron Livnat(ドロン・リヴナト)氏も参加した。

ビン-ナン氏は「当社は基本的に、データの取得とデータの収益化の2つの部分に分かれています」とTechCrunchに語った。「データの取得は、シャシーのエンジンコントロールユニットに搭載されているTactile Processor(TP)と呼ばれる非常にユニークなソフトウェアで行います。TPを使用することで、安全性、パフォーマンス、運転の楽しさを向上させる、視覚に頼らない多数のバーチャルセンサーをOEMに提供することができます」と話す。

Tactileの2つめのビジネスモデルは、Tactile Cloud(TC)と呼ばれるクラウドプラットフォームを中心に展開されている。ここにバーチャルセンサーからのデータがアップロードされ、車両のDNAまたは路面のDNAを記述した触覚マップが作成される。これらのマップは、OEM、交通局、自治体、保険会社、タイヤ会社などに販売される。

ビン-ナン氏によると、Tactileが車両に搭載している23のバーチャルセンサーのうち、同社が取り組んだ主要なものはBMWとのタイヤグリップ推定で、これはクルマが走行している間に車両と道路の間のグリップを測定するというものだ。同氏によると、TactileのTPは年間250万台のBMW車に搭載されており、数百万台のクルマが受動的に路面をマッピングしていることになる。

タイヤのグリップ力を測定して道路をマッピングすることで、Tactileは道路の穴やひび割れ、滑りやすさ、降雪などをマッピングすることができる。これらの情報はリアルタイムに収集され、特定の地域を走行する他の車両にダウンロードされる。これにより、ドライバーは前もって劣悪な道路状況を知ることができ、安全性の向上につながる。また、分析結果は地図会社、道路管理者、車両管理者などの第三者が、道路のひどい場所を特定するためのレポートを介して共有することもできる。

Tactileは、クラウド上で収集したあらゆるデータで収益をあげるために、提携するOEM企業との売上高シェアモデルを採用している。ビン-ナン氏によると、Tactileはこれまでに自動車メーカー7社と30件以上の概念実証やパイロット試験を行ってきたが、量産レベルに達したのはBMWだけとのことだ。

「これまでは25人の会社でしたが、現在は40人になり、事業を拡大するには少し限界がありました」とビン-ナン氏は話す。「小さな会社がBMWのプロジェクトを進めていると、BMWへの実装や統合、要求を満たすためのテストなどで、すっかり忙しくなってしまうことが想像できるでしょう。これからは多くのOEMと並行して仕事ができるようにしたいのです」。

これは、より多くのサービスや知見を顧客に提供できるよう、他のセンサーも開発することを意味する。例えば、一部のOEMメーカーはタイヤの健康状態に関心を持っている。Tactileによれば、センサーは走行中のタイヤの溝の深さを極めて正確に測定することができ、タイヤの交換が必要かどうか、タイヤの種類や地形に応じてドライバーがどのような運転をすべきかをOEMに伝えることができるという。

「Goodyearがこの会社に投資した理由でもありますが、もう1つ重要なことはタイヤが硬すぎるかどうかを正確に測定できることです」とビン-ナン氏は話す。「彼らは今回のラウンドで投資した直後に、我々とテストを行いました。ですから、タイヤの健全度を測るバーチャルセンサーは、私たちが開発するバーチャル・センサーの中でも重要な種類のものであることは間違いありません。他のOEMは、重量推定や重心位置などを求めますが、これらは当社のバーチャルセンサーが感知し、機械学習や信号処理を使って多くのノイズを除去しています」。

その他のセンサーとしては、重量推定、アクアプレーニング、車両のヘルスセンサー、マイクロ衝突などがある。今回のシリーズCの資金調達により、Tactileはこれらのセンサーを構築し、OEMメーカーにアピールできるようにしたいと考えている。Tactileの目標は、すべての主要な自動車メーカーに入りこむことだ。そうすることで、大量のデータを収集、分析、収益化することができ、自律走行車など急成長中の技術との連携を図ることができる。

Goodyear VenturesのマネージングディレクターであるAbhijit Ganguly(アビジット・ガングリー)氏は声明文で「コネクテッドドライビングと自律走行は、ヒトとモノの移動の未来にとって重要な鍵となります。コネクテッドかつ自律走行の安全性と効率性を向上させるためには、タイヤデータが鍵となります」と述べた。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Tactile Mobility

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェのEV「タイカン」の販売台数がフラッグシップスポーツカー「911」を超える

Porsche(ポルシェ)の電気自動車Taycan(タイカン)の2021年1月〜9月の販売台数が、内燃機関を搭載した同ブランドを代表するスポーツカーであるポルシェ911の販売台数を上回った。2019年末に発売されたTaycanにとってマイルストーンとなる。

10月15日に発表された販売台数をみると、ポルシェは第1〜3四半期に全世界で21万7198台を販売し、前年同期比で13%増となった。タイカンの販売台数が約3倍に増加したことに加え、人気の高いガソリン車Macan(マカン)の販売増も貢献した。こうした数字は、ポルシェが2019年から2020年にかけての9カ月間に経験した販売台数5%減から回復したことを示している。

ガソリン車であるPorsche Cayenne(カイエン)の2021年1〜9月の販売台数は6万2451台で、ポートフォリオの中で最も多いが、実際には前年同期比2.8%減となっている。カイエンより小型のマカン SUVに対する需要は強く、販売台数は12%増の6万1944台となった他、タイカンや911も全体的な販売台数増加に貢献した。

ポルシェは1月〜9月に2万8640台のタイカンを販売し、この数字は同社の長年のフラッグシップスポーツカーポルシェ911を上回った。911の販売台数は2万7972台で、前年同期比10%増だった。

その他Panamera(パナメーラ)を2万275台、718Boxster(ボクスター)と718Cayman(ケイマン)を1万5916台販売し、いずれも前年比で約1%の増加となった。

ポルシェの販売台数の大部分は内燃機関搭載の車両で占められているが、タイカンの成功により同社はEVへの取り組みを強化する可能性がある。同社は2023年にマカンの全電動バージョンを導入する計画だ。

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェがオンラインマーケットプレイスに米国内の新車在庫を登録

Porsche Cars North America(PCNA、北米ポルシェ)は、米国内の全商品をオンラインマーケットプレイスに追加した。消費者の要望と業界のデジタルコマースへのシフトに対応する動きだ。

2020年5月に同社のオンラインマーケットプレイスであるPorsche Finder(ポルシェ・ファインダー)が公開された時、顧客はこのツールを使って中古車と認定中古車しか検索できなかった。同プラットフォームでは消費者が、車両モデル、年式、価格、パッケージ、カラーなどで検索できるが、このほど米国内193のディーラーの新車在庫がすべて登録された。

システムを開発したのは子会社のPorsche Digital(ポルシェ・デジタル)とPCNAで、ユーザーが下取り価格の見積りをとったり、Porsche Financial Services(ポルシャ・フィナンシャル・サービス)が提供するリースとローンを比較する支払い計算機などの機能もある。

顧客が製品を検索できるオンラインプラットフォームは新しいものではない。顧客の買い物志向がオンラインにシフト(新型コロナウイルス感染症パンデミック中に加速したトレンド)するにつれ、デジタルプラットフォームは企業にとって不可欠なツールになった。

しかしポルシェのような伝統的自動車メーカーは、顧客からの要望とディーラーネットワークとのバランスを取る必要があった。Porscheには、Tesla(テスラ)や新規参入のLucid Group(ルシッド・グループ)、Rivian(リビアン)のような直販モデルがない。

「ディーラーネットワークは今も当社が行うことすべての中心にあります」とPCNAのプレジデント兼CEOであるKjell Gruner(クジェル・グリューナー)氏は最近のインタビューで語った。「ディーラーでは非常に人間的な対応を心がけています。相手の目を見て、ボディランゲージを読み取ります。そして、もちろん、私たちの製品は非常に物理的です」。

Porsche Finder Toolには、全193ディーラーが参加しているが、大勢の中にはデジタルコマースへのシフトに警戒的な人たちもいることをグリューナー氏は認めている。

「いつの世にも、人より革新的な人たちもいれば、慎重な人たちもいます」と彼は言った。「新型コロナは、人々がデジタルを受け入れ、これらのツールを自身のために役立てる意識を喚起しました」。

関連記事
ポルシェのアプローチの正しさを納得させるフルEVワゴン、パワーと実用性を備えた新型Taycan Cross Turismo
ポルシェが電気自動車Taycanをサブスクプログラムに追加
ポルシェがスポーツカー用高性能バッテリーを製造へ、Customcellsとの合弁で
画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook

EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで

環境問題が本格化した1990年代、ドイツの一部の自動車メーカーは、自社の自動車が温室効果ガス排出の点で確実に貢献し続けられるよう、秘密裏に会合を持っていた。欧州連合(EU)によると、Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)、Audi(アウディ)、Porsche(ポルシェ)、BMW(ビー・エム・ダブリュー)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の親会社であるDaimler(ダイムラー)の5社が、違法に結託し、新型ディーゼル乗用車の排ガス浄化に関する競争を制限し、よりクリーンな排ガス技術の導入を実質的に遅らせていた。EUは現地時間7月8日、排出ガスカルテルに関与したVWとBMWに対し、10億ドル(約1110億円)の制裁金を科した

「Daimler、BMW、VW、Audi、Porscheの自動車メーカー5社は、EUの排出ガス規制が法的に要求する水準以上の有害排出ガスの削減技術を有していました」と、欧州委員会のMargrethe Vestager(マルグレーテ・べステアー)上級副委員長は声明で述べた。「しかし、彼らは、この技術の可能性を最大限に活用せず、法が要求する水準を超えてクリーンであろうと競うことを避けました。つまり、本日の決定は、合法に行われた技術協力というものが、いかに間違っていたかということに関係しています。私たちは、企業が結託することを容認しません。これはEUの反トラスト規則で違法とされています。欧州が野心的なグリーンディール目標を達成するためには、自動車の汚染管理に関する競争とイノベーションが不可欠です。今回の決定は、この目標を危うくするあらゆる形態のカルテル行為に対して、私たちが躊躇なく行動を起こすことを示しています」と述べた。

すべての当事者が自社の関与を認め、和解に合意した。AudiとPorscheを所有するVWは約5億9500万ドル(約655億円)、BMWは4億4200万ドル(約484億円)を支払わなければならない。Daimlerは約8億6100万ドル(約947億円)を支払うが、同社は内部告発者であるため、罰金を免れた。つまり、Daimlerは無罪放免となる。

BMWの2020年の純利益は46億2000万ドル(約5080億円)、VWの2019年の純利益は約230億ドル(2兆5300億円)、2020年は約122億ドル(1兆3420億円)であり、今回の罰金はある意味、手首を平手打ちされる程度にすぎない。忘れてはならないのは、VWが排ガススキャンダルに巻き込まれたのは今回が初めてではないということだ。

米環境保護庁は2015年、VWがディーゼルエンジンにソフトウェアを意図的に追加して排ガス規制に従っているように見せかけていたが実際には法定量をはるかに超える排ガスを出していたとして、VWに大気浄化法違反の通告を行った。

今回の訴訟でEUが特に注目したのは、ディーゼル車の排気ガスに混ぜて有害汚染物質を中和する溶液「AdBlue(アドブルー)」のタンクの大きさについて、関係企業が合意したことだ。自動車をよりクリーンにする技術を持っているにもかかわらず、競争しないことで合意したのだ。

シュピーゲルがこのカルテルのニュースを最初に報じたのは2017年。各社はグリーンウォッシング(偽善的な環境への配慮)に着手した。同年、関係者全員とFord Motor(フォード・モーター)が手を組み「Ionity(イオニティ)」というEV用の高出力充電ネットワークを構築した。計画では、2020年までに欧州全域で約400カ所の充電ステーションを建設・運営することになっていたが、イオニティは欧州全域で300カ所しか設置できず、さらに2020年は充電料金を500%と大幅に値上げしていたようだ。

今週初めには、VWの大型トラック事業、Traton Group(トレイトン・グループ)、Daimler Truck(ダイムラートラック)、Volvo(ボルボ)グループが、約5億9300万ドル(約652億円)を投資し、欧州各地に電動大型長距離トラック・バス用の公共充電ステーションのネットワークを構築に向け協業することが決まった。

関連記事:ボルボ、ダイムラー、トレイトンが約660億円を投じて全欧的な電気トラックの充電ネットワーク構築

カテゴリー:モビリティ
タグ:制裁金EUVolkswagenAudiPorscheBMWMercedes-BenzDaimler

画像クレジット:European Union

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェがスポーツカー用高性能バッテリーを製造へ、Customcellsとの合弁で

ラグジュアリーなスポーツカーメーカーのPorsche AG(ポルシェAG)がバッテリー事業に参入する。同社は現地時間6月21日、リチウムイオンバッテリーメーカーのCustomcells(カスタムセルズ)との合弁事業を通じて高性能の電池を製造する工場を開所する計画だと明らかにした。

ポルシェはCellforce Group GmbHという新しい合弁企業に「(1億に近い)数千万ユーロ」規模を投資した、と取締役のMichael Steiner(マイケル・ステイナー)氏が発表に先立つ記者会見で述べた。工場はまた、ドイツ政府と、工場が立地するバーデン・ヴェルテンベルク州から6000万ユーロ(約79億円)の投資を受ける。陰極材料の供給会社として化学会社BASF SEを選んだ。

製造するバッテリーでは陽極材料としてシリコンを使う。これはエネルギー密度と高温に耐える能力を飛躍的に高めるとポルシェは話す。この2つの要素はいずれもレーシングカーにとって重要な変数だ。バッテリーはすばやく充電されなければならず、しかし製造となると難しい(バッテリーは高温になるのを好まない傾向にある)。

そうした理由から、他の自動車メーカーのものに比べると工場は小規模だ。例えば米国ネバダ州スパークスにあるTeslaとパナソニックの合弁工場は35ギガワットアワーの「ギガファクトリー」キャパシティがあり、ポルシェの親会社VWは2030年までに240ギガワットアワーの生産能力を欧州にもってくる計画だ。ポルシェとCustomcellsの目標は、車両1000台分を十分まかなうことができる年間キャパシティ100メガワットアワーを2024年から生産することだ。工場の従業員はまず13人から始め、2025年までに最大80人に増やす計画だ。

関連記事:フォルクスワーゲンが240GWhのバッテリー生産能力を2030年までに欧州で実現

ステイナー氏は、ポルシェがこのテクノロジーの使用を主流の車両ラインナップに拡大する計画はない、としたが、将来生産コストを下げられる可能性を見出した場合、大量生産する可能性はあると指摘した。「このマーケットで当社は、ハイエンドな車両とモータースポーツ向けの特殊目的セルを探しています。これは今日のマーケットには見当たりません」と同氏は述べた。

このテクノロジーを乗用車に拡大するのは難しいようだ。シリコンの陽極ベースのセル化学はかなり寒い環境で機能したり、充電サイクルを重ねても安定性を維持することが示されていない、とポルシェは声明文で述べた。しかしポルシェの車両がレース向けに開発されたテクノロジーの恩恵を受けるというのはこれが初めてではない。同社の旗艦電動モデルTaycanは、ポルシェ 919ハイブリッドレーシングカーからテクニカル面で多くを拝借している。

これらのバッテリーを使う初の車両はポルシェ製になるだろうが、テクノロジーはLamborghiniやBugattiなどVolkswagen Group傘下の他のブランドにも提供される、とステイナー氏は話した。

「バッテリーセルは未来の燃焼室です」とポルシェのCEOであるOliver Blume (オリバー・ブルーム)氏は声明で述べた。「合弁会社により当社は最もパワフルなバッテリーセル製造のグローバル競争で先頭をいくことになり、まぎれもない当社の運転エクスペリエンスと持続可能性を結びつけることができます。当社はこうやってスポーツカーの未来を形成します」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ポルシェCustomcellsバッテリードイツ工場

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェが電気自動車Taycanをサブスクプログラムに追加

Porsche(ポルシェ)は、米国の新規顧客ベース構築を目的とする広範な拡張の一環として、同社初の電気自動車Taycanスポーツセダンをサブスクリプションと短期レンタルプログラムに加えた。

さらにPorscheは米国時間3月25日、Porsche Driveサブスクリプションとレンタルプログラムの展開を従来の4都市から9都市へと拡大したことも明らかにした。現在、アトランタ、ヒューストン、フェニックス、カリフォルニア・アーバイン、ロサンゼルス、モントレー、サンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼに住む顧客に提供されている。2021年、そして2022年にかけて引き続き米国内でサービス都市を拡大する計画だと同社は話した。

同社のプログラムはフレキシビリティがすべてだ。それには価格がともなう。まずは車両1台のサブスクまたはレンタルプランで提供されるTaycan 4Sモデルの場合、同程度の2年間のリースの月間料金よりも20%ほど高い。Taycan 4Sは月3250ドル(約35万円)、Taycan後輪駆動は月2500ドル(約27万円)だ。

短期プランでのTaycan 4Sレンタルは、1〜3日間であれば1日あたり335ドル(約3万6000円)、4日以上だと1日あたり295ドル(約3万2000円)だ。価格には税金と手数料は含まれず、サブスク利用者はアクティベーション料金595ドル(約6万5000円)を払わなければならない。Taycan後輪駆動モデルは2021年春に加わる。

目が飛び出るほどのプログラム価格にもかかわらず、拡大を約束できるほど十分人気だ。Porsche Driveサブスクは大半のマーケットで1〜2カ月先まで予約で埋まっている、と同社の広報担当はTechCrunchに語った。

関連記事:ポルシェが月額27.7万円で911に乗れるサブスクリプションプランを追加、ロサンゼルスにも進出

Porsche Cars北米の会長兼CEOであるKjell Gruner(クジェル・グリューナー)氏によると、同社はこれらのプログラムを販売やリースの代替ではなく補足するものととらえている。Porsche Driveの顧客の約80%がPorscheは初めてという人だと同氏は話した。

Porscheは2017年に初めてサブスクプログラムをテストし、以来、試行錯誤してきた。現在、3つのプランがあり、すべてPorsche Drive車両サブスクプログラムの下で提供されている。サブスクは2020年にブランド変更された。最も充実しているプランは複数車両サブスクで、顧客は月単位でさまざまな車両を取っ替え引っ替えできる。シングル車両サブスクでは延長オプション付きで1カ月、あるいは3カ月間、1つの車両にアクセスできる。そしてレンタルでは、名称が示す通り短期レンタルを提供している。これはラグジュアリーなスポーツカーやSUVに1週間ほど乗りたい、あるいは週末に使いたいという人向けだ。

これらのプランにはPorsche Driveアプリからアクセスできる。ユーザーは車両を選び、車両配達やピックアップのコンシアージュサービスをアプリを通じて設定できる。サブスクプランは車両メンテナンスや保険をカバーする一律月額料金となっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:ポルシェ電気自動車サブスクリプション

画像クレジット:Porsche

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポルシェがEVハイパーカー・部品メーカーRimac Automobiliの持分を24%に増やす

電動ハイパーカーやバッテリー、パワートレインの開発で知られるクロアチアのEVメーカー、Rimac Automobili(リマック・アウトモビリ)は、Porsche AG(ポルシェ)ポルシェAGからまたしても投資を受けた。

ポルシェは中央ヨーロッパ時間3月8日、リマックに7000万ユーロ(8330万ドル、約90億円)を投資し、リマック株の持分を以前の15%から24%に増やしたと発表した。

ポルシェがリマックに投資するのはこれで3回目となる。ドイツの自動車メーカーである同社は2018年に初めてリマックへの投資を行った。ポルシェはその後2019年9月に、リマックへの出資比率を引き上げた。その数カ月前には、Hyundai Motor Company(現代自動車)とKia Motors(起亜自動車)が共同で8000万ユーロ(当時は9000万ドル、約98億円)をリマックに投資していた

リマックは2009年にMate Rimac(メイト・リマック)氏によって設立され、2018年のジュネーブ国際モーターショーでデビューした2シーターの「C Two」のような電動ハイパーカーで最もよく知られている。この車はなんと1914馬力、最高速度は時速256マイル、0-60マイル加速1.85秒という代物だ。リマックは2021年に最終形態のC Twoを発表する予定だ。

しかし、リマックはハイパーカーを生産するだけではない。1000人の従業員を擁する同社は、高電圧セグメント内のバッテリー技術にも力を入れており、電気パワートレインの設計と製造、人間と機械の間のデジタルインターフェースの開発も行っている。

ポルシェ執行委員会の副会長であるLutz Meschke(ルッツ・メッサー)氏のコメントによると、同社はリマックの部品開発に最も興味を持っているという。メシュケ氏は、リマックが「プロトタイプソリューションと小型シリーズにおいて優れたポジションにある」とし、「ポルシェやハイテクセグメントの他のメーカーにとって、Tier1(ティア1)サプライヤーになるための道のりを着実に歩んでいる」と述べている。

メシュケ氏によると、ポルシェは、非常に革新的なシリーズ部品の開発のために、すでにリマック社に最初の発注を行っているという。

ポルシェは継続的な投資を行っているが、リマックの支配権は持っていないと述べている。

関連記事:ポルシェが2台の電動アシスト自転車を発表、価格は約92万〜115万円

カテゴリー:モビリティ
タグ:ポルシェ

[原文へ]

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)