米国証券取引委員会が中小企業のクラウドファンディングによる資金調達の規制を一時緩和

米国の労働者たちが自らの命を守る医療の支払いにクラウドファンディングを使い始めたのと同じように、証券取引委員会(SEC)は中小企業に対して、米国政府の代わりに一般市民が彼らの命をつないでくれるかもしれないと語りかけている。

2度にわたる数十億ドル(数千億円)規模の経済刺激策が、表向きは支援の対象だったはずの中小企業にほとんど渡っていないことを受け、SECは報告義務に関する制限を撤廃し、クラウドファンディング登録の承認を加速すると発表した。これで大企業にも中小企業にも、キャッシュを手持ちにしている投機的投資家から資金を集める機会が生まれる。

クラウドファンディングを行うために、企業は投資家に対して、集まった資金を自社の存続と新型コロナウイルス(COVID-19)関連の支払いに使うことを明確に告知する義務があるとSECの発表文に書かれている。

「現在の環境下で、多くの歴史ある中小企業が必要な資金を必要な時に効率よく入手できない困難に直面している」とSECのJay Clayton(ジェイ・クレイトン)委員長が声明で語った。「今日の決定は、当委員会の中小企業資本形成諮問委員会などから受けたフィードバックに答えるものであり、差し迫った必要資金を時間内に提供しつつ、投資家にも適切な保護を与えることができる」。

声明によると、この暫定規則によって資金調達希望者は、クウラドァンディングを実施して10万7000ドル(約1140万円)から25万ドル(約2670万円)の資金を調達する際、財務諸表の監査が免除されるなどの特典を受けることができる。規約の一時緩和措置は2020年8月末に終了する。

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新型コロナウイルス 関連アップデート

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非上場スタートアップへの投資機会を増やす米証券取引委員会の提案

このところ非上場企業の数が増え続けており、しかも彼らはこれまでよりも長く非上場を続けている。以前ならGoogleやAmazonのような企業の成長から利益を得たであろう公開市場の株主は、今や仲間はずれだ。米国証券取引委員会(Securities & Exchange Commission、SEC)は、この現状を危惧している。そこで、なんとかしなくてはいけないとSECは考えた。

SECは米国時間12月18日、富裕投資家などの「認定投資家」(Accredited Investor)の定義と、投資企業などの「適格機関購入者」(Qualified Institutional Buyer)の定義を変えて、非公開資本市場で投資できる人や機関の種類を増やそうという提案を行った。非公開資本市場とは、非上場のスタートアップやヘッジファンド、ベンチャーファンド、プライベート・エクイティ(非上場株)ファンドなどのことだ。それで何がどう変わるのか?現状のSECの定義では、認定投資家は100万ドル以上の流動資産を持ち、年収が20万ドル以上の人を対象とする。

今回のSECの提案では、エントリーレベルの株式ブローカーのライセンスや、認定教育機関が発行した信用証明書を持つ投資家が非公開株に投資できるようにする。また現在のSECの富裕基準を満たさなくても十分な知識のあるファンドの社員や、管理している資産が500万ドル以上のファミリーオフィスとそのファミリークライアント、そして自分の資産を認定投資家になるためにプールしている「配偶者格の者」も非公開株に投資できるようにする。

この改善提案では、1億ドル以上の証券を有し旧定義の投資基準を満たす有限会社とRBICs(FactSet Revere Business Industry Classification System)が適格機関購入者と見なされる。またSECの案では、投資企業法の定義を満たす500万ドル以上の投資の実績があり、特殊目的に限定される投資を行っていない法人などを新しいカテゴリーとして設けようとしている。

提案は現在、60日間のコメント受け付け期間にある。しかしこの、非公開(非上場)投資プールを拡大しようとするSECの主張に対しては、さまざまな賛否が巻き起こると考えられる。

投資家保護を重視する勢力は、すでに十分な資本を有しているスタートアップが弱い投資家たちを食い物にすると主張するだろう。もう一方では、経験の浅い資家家が米国のイノベーション経済から閉め出され、所得格差が一層悪化するるという声も高まるかもしれない。

SECの提案文書はここで見られる。また、コメントの提出方法もわかる。

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イーロン・マスク弁護団「テスラの生産速度に関するツイートは法廷侮辱ではない」

Elon Musk(イーロン・マスク)氏の弁護団は、マスク氏がTesla(テスラ)の生産速度を公表したツイートは法廷侮辱であるとする証券取引委員会(SEC)の要求に対して、締切直前の米国時間3月11日の夜遅くに回答した。ニューヨーク市マンハッタンの連邦裁判所に提出された書類でマスク氏の弁護団は、先月投稿したツイートはマスク氏がSECと結んだ契約条項に違反していないと言った。

「マスク氏が発信した取るに足らない1回のツイートは、裁判所命令にもTeslaの『上級幹部情報管理ポリシー』にも沿っており、これについて民事的裁判所侮辱罪を要求する証券取引委員会の主張は、事実に照らしても法的にも正しくない」と提出書類にかかれている。同ポリシーは、マスク氏がTeslaの重要情報を含む可能性のある会話に関する事前承認されたポリシーに従うことを要求する裁判所命令に言及している。

問題のツイートは2月20日にマスク氏が投稿し、Teslaが今年中に約50万台の車を生産すると書かかれていた。その後マスク氏は同じスレッドの第2のツイートで、2019年末時点の年間出荷台数は推定約50万台、週に1万台だが、納車できるのは約40万台であることをはっきりさせた。

同氏の弁護団は、マスク氏はポリシーを守っており、彼が「事前承認が必要な情報が含まれているかどうかを決定する最初の事例であり、彼が自身で妥当な判断を下す」ことは許されていたと書いた。しかしその後Teslaの情報開示法律顧問と相談した結果、内容を明確にしたツイートを発信した。弁護団はこれを、SECとの和解条項を守ろうとする「彼の努力を示すもの」であると主張し、Teslaの2019年の生産予想と生産速度は、すでに「複数の文書で公に議論され、決算会見でも詳しく説明された」話題であることを付け加えた。

マスク氏は昨年8月、自社を非公開企業にするための資金を確保したとツイートしてSECの規則に抵触した。SECは、同氏とTesla取締役会が当初の和解案を拒否したあと、証券取引法違反の疑いを申し立てた。 10月に成立した和解の結果、マスク氏はTeslaのCEOに留まることは許されたが、取締役会会長の職は降りなくてはならなかった。さらにSECは、同氏とTeslaにそれぞれ2000万ドルの罰金を課し、Teslaがマスク氏のツイートに関する情報公開の管理と手続きを実行するよう要求した。

今日の裁判所への申立でマスク氏の弁護団は、10月の和解直前にツイートでSECを“the Shortseller Enrichment Commission”[空売り強化委員会]と呼んだ同氏は、それ以来和解条項を注意深く守り、「ツイート全般、特にTeslaに関するツイートの数を劇的に減らした」と書いた。

弁護団は「この自主規制は、裁判所命令に従いSECとの無用な争いを避けようという彼の決意の現れである」とも書いた。

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米証券取引委員会(SEC)、どの企業もIPOの事前伺いを可能に

現委員長Jay Claytonの下、SEC(証券取引委員会)はもっと多くの会社に上場して欲しいことをこの2年間明言してきた。

本日(米国時間2/19)公開された提案によって、その目標達成が近づいたかもしれない。具体的には、同委員会はIPOの可能性を検討しているどの企業も、公式発表する前に、投資家候補(機関投資家、認定投資家いずれも)と非公開に相談する機会を与えられる。

これは、IPOを行うかどうかを決断する前に、どの会社も「事前伺い」できるようにすることで、上場のハードルを下げようとするものだ。現在こうしたテストができるのは、「新興企業(emerging growth company)」に限られている。

SECの定義によると、新興企業とは、直近の会計年度の年間総売上10億ドル以下の会社を指す。

本提案に対して一般市民は60日間以内にコメントを出すことができる。SECはそれを受けて手続きを進めるかどうかを決定する。

提案が通過する可能性は非常に高い。これは、現在非公開市場にばらまかれている流動資産を公開市場に移動しようという最近SECが進めている動きの一環だ。2017年7月、SECはIPOで売られる株式に関する書類をどの会社も非公開で登録できるようにした。それまでは、小規模企業のみに与えられていた恩恵だった。

企業が非上場でい続けることは今後も可能であることを認めつつも、Clayton委員長は昨年8月に、委員会としてはもっと多くの個人投資家が退職後の生活などの目的に、もっと多くの非上場企業に投資できる機会を与えたいと述べていた。Claytonはその方向の変化は「かなり早く」起きると言っていたが、SECとして関連する提案を正式に公開することはなかった。

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Amazonの2018年の買収は総額16.5億ドル、そのトップはPillPackとRing

このほどAmazonがSECに提出した10-Kファイル(年次報告書)は、同社が昨年行った昨年で最大の二つのM&Aのお値段を明かしている。それによると同社は、Ringにキャッシュで約8億3900万ドルを払い、PillPackに7億5300万ドル、そのほかの買収の合計で5700万ドルを払っている。

GeekWireが、そのファイルを最初に見つけて記事にした。

Amazonは昨年の早い時期に、同社のスマートホーム事業を支えるためにRingを買っている。それは2017年のBlinkの買収の直後だ。当時Ringの買収価額は、10億ドル以上とも報じられている。一方PillPackの買収は昨年の夏に行われ、“10億ドル弱”と報じられた。

今回のSEC提出書類では、買収価額は“取得された正味のキャッシュ”、とされている。つまりその取引の時点において買収された企業が帳簿に記載していた現金と負債を勘案した金額だ。報じられた額(10億前後)より低いのは、そのためである。

Amazonは2018年に行ったそのほかの買収の個別の価額を明かしていないが、買収の目的について次のように言っている: “Amazonが顧客により効果的に奉仕できるための技術とノウハウの入手”。でもそれらの一部はばれており、たとえばインドのTapzoの買収や、サイバーセキュリティ企業Sqrrlの買収は、いずれも4000万ドルと報じられている。

2018年の総額16億5000万ドルは、Amazonでは二番目に買収額が大きかった年だ。最大はその前の2017年、Whole Foodsを130億ドルあまりで買った年だ。

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米政府機関の一部閉鎖でIPO予定の企業が混乱するかもーー証取委職員が業務停止中

米政府機関の一部閉鎖が19日目に突入した。これは米国史上2番目に長い閉鎖になる。ドナルド・トランプ大統領は今朝早くにあったナンシー・ペロシ下院議長ならびにチャック・シューマー上院議員との交渉で怒って途中退席したため、早期の事態打開は望めなさそうだ。

米国のリーダーたちが連邦政府予算についての妥協点を探るためにバトルを繰り広げている間、米国証券取引委員会(SEC)の職員を含む何十万もの政府機関の職員が業務を停止している。投資家保護や公正管理、秩序ある効率的運営を業務とするSECは12月27日に閉鎖され、職員4436人のうち285人しか働いていない。

「連邦政府の閉鎖が継続中のため、SECは現在、当局の閉鎖時のための行動計画に基づいて運営されています」「SECは、市場の健全性や投資家保護がかかわる緊急事態には、法の適用も含め、職員が対応できるようにしています」とSECはウェブサイトに掲示している。

IPOのために必要な書類を含む重要な文書を企業がネット上で提出できるEDGAR(Electronic Data Gathering, Analysis=電子情報開示システム)と検索システムは稼働している。そのため、溜まっている書類はかなりの量になり、まだ増えつつある、とCNBCは報道している。こうした事態はいくつかのIPOの遅延を招きかねず、ひいては2019年のIPOマーケットに長らく影響を残すかもしれない。

いくつかの大きなテック企業は2019年早期のIPOに向けて準備を進めているが、そうしたIPOは遅れるリスクにさらされている。多くの人が、注目を集める株式公開を通じて歴史に残る額の流動資産が投資家にもたらされると予想しているが、さえない株式市場は火に油を注いでいる。たとえば、Uber、Lyft、 Slack、そしてPinterestはIPOの準備を始めていて、UberのCEO、Dara Khosrowshahiは最近、動きの激しい相場で社のフロートが遅れることがあってはならない、と主張した。

「いいニュースもある。我々は良い財政状態にあるので今年株式を公開する必要がないということだ」とThe Wall Street Journalに対し述べた。「これは願望だが、[しかし]もし公開できないのであれば、公開しないまでのことだ。私は残念に思うだろうし、我々の株主も失望するだろうが、会社としては大丈夫だ」。

彼は、The WSJに対し政府の閉鎖が及ぼしうる影響についてコメントはしなかった。Uberと、Uberの米国での最大のライバルLyftはともに12月、SECにIPOの書類を提出したが、それは閉鎖が始まるほんの数週間前のことだった。閉鎖の間も、企業は内々に書類を提出することは許されている。この手法では、エグジット前に鍵となるIPOの詳細や財政状況などを一般の目に触れないようにすることができ、多くの企業がこのやり方を好む。

究極的には、最も注目に値するテックユニコーンはトランプ政権の不和の影響をほとんど被らないだろう。Khosrowshahiが指摘したように、よい財政状況で十分に資金を調達した会社は、IPO計画が不首尾に終わってもセーフティーネットを用意している。小規模の企業、特に事業を続けるために資金の注入が必要な会社はIPO遅れの影響に耐えることを余儀無くされる。

イメージクレジット: Jeff Hutchens / Contributor / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

イーロン・マスクがSECに目をつけられるのは仕方がない

イーロン・マスクの4つのツイート。1つは、米証券取引委員会(SEC)による提訴。そして2つの和解案。さらにはSECを揶揄するツイート。

Teslaの車とエネルギーの事業に疑いの眼差しを向けた人たちは間違いだったとTeslaは証明し続けている一方で、現在展開されているソーシャルメディア劇場では財務面での動きを伴っている。マスクが先週末にSECと和解したことを受け、株価は月曜日に一株あたり310.70ドルに上昇した。しかし結局は金曜日に1週間前とほぼ同じ261.95ドルとなった。これはおそらく投資家がイーロン・マスクの現在進行形のツイッター問題を恐れてのことだ。

SECはマスクのようなクリエイティブながら衝動的な起業家をソーシャルメディアから引き摺り下ろし、社を築くのに専念させるのを手伝う必要があるー会社運営はフェアで、しっかりとしたやり方でなさなけらばならない。

これまでのところ、それはたやすいことだった。それゆえに今回は悪い前例となった。Teslaが公開企業となったとき、彼らは株主の利益を最優先することに合意していた。衝動的なツイートはこの約束を破った。

マスクがこの株主の利益最優先の約束を反故にすれば、SECは提訴して事を進め、前例を示すことができた。マスクのツイートは裁判所に持ち込めば簡単に勝訴できる類のものだった。SECは騙し取りに興味があるかどうかなどマスクによって証明される必要はなかった。マスクが実質的に虚偽発言をしたこと、あるいは脈絡なくミスリードしたことを証明しさえすればよかったーマスクのツイートが確固たる根拠を伴わないものであることを考えたとき、それは決して難しいことではない。

これをどうとらえるべきか?

そもそも、一つのツイートから始まった。8月7日、イーロン・マスクは2200万人超もいるフォロワーに向けてツイートした:“1株あたり420ドルでTeslaを非上場化することを検討している。資金は確保した”。その後に起こった混乱はマスクのさらなる3つのツイートによって拡大した。

この4つのツイートが、SECがマスクに対して9月27日にニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提出した訴状のベースとなっている。この訴状では、SECはマスクがTeslaの取締役会会長ならびにCEOの職から退くことを求めている。そしてマスクに罰金を支払うよう求め、一定期間マスクがいかなる公開企業をも率いる事を禁じた。

SECによると、マスクのツイートは7月31日にサウジアラビア政府投資基金の代表者との間で行われたおおよそ30分のミーティングに基づいている。このミーティングで、基金側はマスクに公開市場でTesla株のおおよそ5%を買う意向を伝え、そしてTeslaを非上場にすることに興味があることも伝えた。しかしマスクは正式なオファーを受けておらず、非公開企業になるためにはどうしたらいいか法的なアドバイスも受けていなかった。さらには、8月7日のツイートまでに基金側と再び話すこともなかった。

そして株価420ドルだ。マスクがツイートする前の市場がひけるときの株価を20%増して419ドル、四捨五入して420ドルとした。それは彼のガールフレンドが420という数字を面白がるだろうと考えたからだ、というのがSECの主張だ。(編集部注:420という数字には「マリファナを吸おう」というスラング的意味がある)

SECの訴状が提出された直後、マスクが制裁金1000万ドルを払うこと、CEOとしては留まり2年間は会長職を離れる、との和解案が明らかになった。SECが何を提訴しようとしていたかを考えたとき、その和解は寛大といえるものだった。しかしTeslaの取締役会はこの和解案を拒んだ。報道されているところによると、それはマスクがこの和解案を受け入れなければやめる、と脅したからとのことだ。

和解を拒否したあと、Teslaの弁護士はSECとの協議に戻った。マスクは合意しなかったことで社の株式を14%近くも急降下させたことをしぶしぶ認めた。

2つめの和解案では、マスクが会長職を離れる期間が2年から3年になり、マスクへの制裁金は2000万ドルへと2倍に増えた。Teslaはまた制裁金2000万ドルを払うこと、取締役会に2人の独立した役員を加え、マスクの代わりに独立した取締役会会長を選出することに同意した。この和解案にはまた、Teslaがマスクのソーシャルメディアを含めた発信を監視することも含まれている。

この件を担当する判事がマスクとSECに“社会の話題”となった和解案を示すよう要請した数時間後に、マスクはまたもやツイッターを使って、合意でCEO職に留まる事を認めてくれた相手を挑発した:“Shortseller Enrichment Commission(空売り推進委員会、SEC)はまったく素晴らしい仕事をしている。名称変更も的を得ている! そして、Teslaの株価は、その後のマスクのツイートで下がった。

SECはまだこの件に関して完全に矛を収めてはおらず、ーもしこれまでがプロローグであればー矛をそのまま収めるというのは考えにくい。

マスクのツイートの何がいけなかったのか?

ここで重要なのは、マスクのツイートが虚偽だったのか、あるいは少なくともミスリードだったのかということだ。SECのルールに照らせば、虚偽発言をしてはいけないし、ミスリードではないと確信させる発表を十分な根拠なしにすることは許されない。マスクのツイートが虚偽、あるいは少なくともミスリードにあたるというのは明らかだろうー会話が予備的なものであったことを考慮してもだ。

「資金は確保した」というのは、この会社を非上場にするために必要なおおよそ700億ドル超をTeslaが持っているということを意味する。実際にはそのような資金は確保されていなかった。サウジ基金と契約合意の期日などの交渉も行われていなかった。もしマスクが資金を調達していたとしても、承認はまた別問題だったはずだ。サウジ基金側はマスクに、投資はTeslaが中東に工場を設立することが条件となるだろう、と話していた。この条件については、少なくともTesla役員の1人は“まったく話にならない”と評している。

何がマスクをそのようなツイートに駆り立てたのか、想像するのはそう難しいことではない。公開企業であることに伴う無数の必要条件が動きの妨げになっていることを彼は歯に衣着せず語っていた。Teslaが5月に行なった収支報告で、マスクはアナリストの質問を“間抜け”“つまらない”呼ばわりした。何年もの間、マスクは空売りに強い不満を示していた。マスクはサウジのTeslaを非上場化するという構想を聞いて、これ以上空売りに悩まされることがなくなると喜んだに違いない。

情報公開がやっかいなのは事実だ。SECに提出する書類一つにしても高給取りの弁護士に作業してもらわなければならない。そうした作業が四半期ごとだったり、材料開発に伴うものだったりと、次から次にあるのだ。SECの対応はゆっくりしたものだ。ツイートを情報公開の形式として認めたのは2013年だ。また、それまでは文字数制限があるツイッターの中でも免責条項はフルに記載しなければならなかったが、2014年にようやくツイートにリンクをはるだけでもよい、となった。

しかしSECのルールにはちゃんとした理由がある。ルールには、企業と株主の間にある情報格差をなくそうという意図がある。そして、公開企業に関わる投資家を保護するという目的もある。マスクはツイートで自分の意図をよく伝えてきたかもしれない。しかしそれで法律をクリアということにはならず、ましてやそれによりTeslaの株式をローラーコースターのように上昇させることがオーケーとなるわけがない。マスクはSECのルールについて要望を述べることはできる。しかしTeslaが株式を公開するずっと前からこれらのルールは公開企業に必須のものだった。流動資産を手にするために株式公開を選んだというのは、マスクとTeslaはルールを承知の上でこれらの取引にサインしたことになる。

わかりやすい先例にする機会を逃した

究極的に、今回のSECの動きで重要なのは、先例をつくるということだ。

SECには、マスクの実にひどい言動を一つの例とするという貴重な機会があった。そのかわり、今回の和解に関するSEC委員長Jay Claytonの声明は、マスクがあまりにもTeslaの中心人物であるがゆえにマスクを異例扱いするというものになってしまった。Claytonは、証券取引法違反の罰則は“企業の将来の繁栄”にとって重要な“特定の個人のスキルとサポート”を考慮する必要があると述べている。

別の言葉で言うと、重要人物であれば見境ない言動をしてもいい、ということのようだ。

マスクは間違いなくTeslaの中心人物だ。しかしそれは、彼がTeslaの全て負う人物でなければならない、ということではない。企業情報を開示する前に承認をとらなければならない法律部門、ポリシー部門を会社が抱えているのはそれなりの理由がある。ツイートする前にそうした部門にいる弁護士に電話をするようマスクに言うのは、大した手間ではなかったはずだ。

企業にとって中心的な役割を担っている役員かどうかに基づくダブルスタンダードを設ける代わりに、SECはマスクを法廷に呼び出し、中心的な役割を担っていない役員と同様のスタンダードを適用することができた。その方法をとっていれば、公平な仲裁人を前に、なぜSECがマスクを告訴するのが“不当”なのかをマスクに語らせることになっていたはずだ。

たとえSECが、Teslaの株主を蚊帳の外に起きながらこの件を長引かせる、ということを避けたかったにしても、少なくとも2つのめ和解案に合意する前にもう少し時間をかけることはできたはずだ。訴訟を続けていれば、告訴から和解までにかかった2日間よりも、強い抑止効果があったかもしれない。和解に至った後のマスクのSECを揶揄するツイートを見る限り、マスクが今回何かを学んだとはとても思えない。

Teslaが抱える大なり小なりの問題へのマスクの絶対的な影響力は、今後も続くだろう。これは究極的には、1人の人物の神聖な言葉による誤った安心感でTesla社内の人をなだめすかせて無力化させる。SECによると、投資銀行のアナリストは、マスクのツイートを受け、Teslaの投資家関係の責任者Martin Viechaに資金について明らかにするよう求めるメールを8月7日に送っている。Viechaは10分もしないうちに返事を送った。「言えるのは、最初のツイートは‘資金は確保した’と言明しているということ。事実、確かなオファーがあった」。

Viechaは実際にはマスク以上に資金が確保されたことを知り得なかった。いや、確かなオファーがあったかどうかも実際には知らなかった。しかしTeslaの社風からして、マスクの発言が社や投資家に損害を引き起こすかもしれない、とViechaに再考を促すことはなかった。

最近ヘッドラインを賑わせているのはマスクだが、他の公開企業のCEOもソーシャルメディアにアカウントを持っている。彼らが何を発言するのかーあるいは発言しないのかーは投資家、そして企業そのものにも同じようにダメージを与えることができる。もしマスクがルールを曲げてもそのまま無傷でいられるのなら、他のCEOが同じような手法をとったときにどうやってそれを阻止できるだろう。マスクとの和解が、マスクのTeslaでの中心的役割によって正当化されるというSECの間接的な容認が、まさしく他のシリコンバレーリーダーたちによるソーシャルメディアでの不適切な言動を正当化する前例となる。

権力を持つ人たちのツイートが刑罰を受けないというのはピンとこないかもしれないが、少なくとも証券取引法に違反するツイートについて公開企業の役員は責任を負うようにしなければならない。ツイートやソーシャルメディアへの投稿は現実世界で社会的重要性を持つ。Teslaの株主は、ソーシャルメディアを使った流し釣りではなく、聡明な科学技術者に金をつぎこんでいる。

今回のマスクのツイートへのSECの対応は、これまでのところ、その点をクリアにする機会を逸している。

イメージクレジット: Joshua Lott / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

イーロン・マスク、TwitterでSECを挑発

木曜日(米国時間10/4)の午後、Tesla CEO Elon Muskは米国証券取引委員会(SEC)を挑発するツイートを発信し、わずか数日前この億万長者起業家に対する証券取引詐欺告発の和解に合意したばかりの相手を怒らせた。

木曜日の午後1時16分(西海岸時刻)に発信されたツイートにはこう書かれていた:

「あのShortseller Enrichment Commission[空売り推進委員会/SEC]は素晴らしい仕事した。名称変更もキマっている」

elon musk trolls sec twitter

SECはコメントを拒んだ。Teslaはコメント要求にまだ応じていない。

Tesla株は4.4%安で引けた後、時間外取引で2.5%下落し、その後わずかに戻した。

その後Muskは謝罪した。ただしそれは嘲りのツイートについてではなかった。それどころか彼は挑発に輪をかけるようにタイプミスについて謝った。、

elon musk twitter sec typo tweet

Muskの支持者たちでさえ一連のツイートを喜ぶ人ばかりではなく、CEOは株価を台無しにしたと責めた。Muskのアドバイスはこうだった:「いまは我慢の時。本物の長期投資家なら心配はいらない」

ほんの数日前、MuskはSECに訴えられた証券詐欺の和解に合意した。それはTeslaとその株主を壊滅させかねない告発だった。9月29日に成立した和解の結果、MuskはTeslaの会長職を辞すとともに罰金2000万ドルを支払うことに合意した。

罰は課されたものの、MuskはCEOの地位を守り、取締役会の席も維持できたことで、これはこれはおいしい取引だったと見られている。MuskはSECの主張を承認も否定もしていない。

Muskは合意形成から45日以内にTeslaの取締役会会長の役職を退かなくてはならない。今後3年間彼は再度選任されることも指名を受けることもできない。社外の会長が指名されることが和解契約で決まっている。

SECによると、Teslaは別途2000万ドルの罰金を支払うことに同意している。Teslaに対する告発と罰金は、情報開示義務の不履行およびMuskのツイートに関連する手続きによるものであるとSECは言った。

訴状の中でSECは、Muskが8月7日に同社を1株あたり420ドルで非上場化するための「資金を確保」したとツイートした際、嘘を言ったと告発している。同委員会はツイートの一週間後に、Teslaに召喚状を送った。その6週間後に訴状が提出された。

告発されたのはMuskおよびTesla取締役会が、SECとの合意を突然撤回した後だった。取締役会は合意を破棄しただけでなく、訴追後もMuskを擁護する大胆な声明を発行した。New York Timesの報道によると、Muskは取締役会に対して最後通告を出し、もし取締役会が合意を強要するなら辞任すると脅したという。

結局和解は成立したが、罰は当初の合意案よりも重くなった。

それでもウォール街はこの合意を好意的ニュースとして扱い、その結果Tesla株は上昇しSECの主張によって生じたそれまでの損失を帳消しにした。

木曜日の一連のコメント後、連邦判事はSECおよびTeslaに対して、裁判所がこの同意判決を承認すべき理由を説明する共同文書を提出するよう求めた。

連邦地方裁判所のAlison Nathan判事は、同意判決が「公正かつ妥当」であるかどうかは地方裁判所が決定すべきであると言い、10月11までに説明文書を提出するよう両者に指示した。

Muskのツイートが、裁判官の命令に対する反応であったかどうかは不明だ。

画像クレジット:Mark Brake / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Teslaの納車台数が前四半期から2倍にーModel 3が牽引

Elon Musk率いるTeslaは、最新のセダンModel 3を顧客に届けることに全力を注いだ結果、第三四半期のトータル納車台数は8万3500台と前四半期の2倍になった。

うちModel 3の納車は5万5840台で、前四半期の1万8440台から大幅に伸び、ひとまず目標をクリアした。この数字はFactSetが調査したアナリスト見通しの5万6000台にはわずかに及ばなかった。

Teslaは火曜日に発表したレポートで、何千台もの車ー8048台のModel 3、3776台のModel SとModel Xーが今四半期の終わりまでに顧客に引き渡されることを強調した。Model SとModel Xを2018年に10万台納車するという目標に近づきつつある。

第三四半期には、顧客からの納車遅れの指摘と新しいModel 3のピックアップ方法をめぐって混乱があり、納車物流が大きなピンチとなった。Teslaが目標を達成するのを手伝うために、結局、何百人ものTesla車オーナーがModel 3が引き渡されるショールームに足を運ぶことになった。

何人かのアナリストが指摘する疑問点は、Teslaの型にはまらない生産と納車の方法が持続可能かどうか、ということだ。Edmundsの業界分析マネジャーJeremy Acevedoは、「Teslaの生産についての発表が救いとなった。第三四半期にModel 3を5万台生産したのはかなり画期的だ」と述べた。

「同社が、議論を呼ぶことではなく車を生産していることでニュースになるのを見るのは気持ちのいいものだ」とも発表文に記している。「ここで疑問となるのは、Teslaが本当にこのペースを維持できかどうか。特に、最近直面している納車が問題だ。Teslaのスーパーファンやオーナーが寛大にもTeslaをアシストするために時間をさいてボランティアしたが、これは必ずしもElonが前に進めるのに頼れる持続可能モデルではない」。

Teslaも納車に問題を抱えていることを認識していて、第四四半期で改善を図る計画だと述べている。第三四半期で始まった購入者の自宅またはオフィスへのデリバリーを拡大させる。

Teslaは第三四半期に8万台超の電気自動車を生産し、これは前四半期から50%も増えた。

今日発表された生産と納車の台数は、議論を呼んだMuskの“資金は確保した”ツイートで騒がしかったこの四半期の最後を飾るものとなった。このツイートによりMuskはSEC(連邦証券取引委員会)の捜査を受けることとなり、結局、証券詐欺で提訴された。MuskとTeslaは先週土曜日、SECと和解した。

第三四半期の生産詳細

・TeslaはModel 3を5万3239台生産した

・TeslaはModel SとModel Xを2万6903台生産した

・合計:8万142台

第三四半期の納車詳細

・Model 3は5万5840台

・Model Sは1万4470台

・Model Xは1万3190台

・トータル:8万3500台

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(翻訳:Mizoguchi)

速報:イーロン・マスク、Tesla会長を辞任――SECと和解、CEOには留まる

TeslaのCEO、Elon Muskは2000万ドルの制裁金支払いと同社取締役会会長からの辞任という条件でSEC(連邦証券取引委員会)と和解した。マスクはTeslaのCEOには留まる。

Muskは土曜日から45日以内にTeslaの取締役会から退くことになる。 SECはマスクを連邦証券取引法違反容疑でマンハッタンのニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提訴していた。土曜日に地裁に提出された和解の条件には、マスクが向こう3年間会長職に就任ないし就任の試みを行わないこと、この間、独立の人物が選定され会長職に任命されることが含まれる。

SECによれば、これと別個にTesla社も2000万ドルの制裁金を支払う。この和解にはMuskがSECの告訴内容に関して認否を明らかにしないことが含まれる。

またTeslaは独立の取締役2名を新たに任命し、新しい取締役を含む独立委員会がマスクによるコミュニケーションを監督することになるという。.

SECの法執行部門の共同ディレクター、Steven Peikinは声明で「この(和解)条項は、株式市場を混乱させTeslaの株主にさらなる損害を与えることを防止することを意図したものだ」と述べている。

和解条件はTeslaの企業統治に新しい時代を開くものだ。株主の間にはTeslaはマスクとマスクに親しい取締役によって支配され過ぎているという不満が出ていた。

SECが木曜日に連邦地裁に提訴した内容は、マスクが8月7日にTeslaの非公開化に関して1株あたり420ドルで買い戻すための「資金は確保された」というツイートについて詐欺の疑いがあるとするものだった。SECはツイートの1週間後にTeslaに召喚状を送付して捜査を開始していたという。捜査は提訴などの処分が決定されるまえに長期間続くことがある。

SECは連邦地裁への提訴の中で、 マスクは詐欺行為を禁止した連邦証券法規に違反した疑いがあるとして、制裁金の支払いと上場企業に取締役、経営陣として加わることを禁ずることを命ずるよう求めていた。

マスクは詐欺容疑に対してまったく不当な提訴であり、「深く悲しむと同時に失望」を感じると述べていた。Tesla社および同社取締役会はその後マスクを擁護する共同声明を発表した。

SECの提訴にはマスクの行動に関する驚くべき詳細が含まれていた。マスクが8月2日に早くも非公開化に関して取締役、最高財務責任者、最高法務責任者に秘密に「Teslaの非公開化のために1株あたり420ドルを提示する」.という内容のメールを送っていたという(和解条件全文を下にエンベッドした)。

画像:Joshua Lott / Getty Images

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Tesla株、10%下落――SEC、イーロン・マスクを詐欺容疑で告訴

SECがイーロン・マスクを詐欺容疑で訴えているというCNBCの木曜の報道を受けて、時間外取引のTeslaの株価が10%近く下落している。

マンハッタン連邦地裁の訴訟一覧表によればSECはマスクに対して訴えを起こしている。Tesla社の非公開化に関連して1株420ドルで買い取るための「資金は確保した」と述べた8月7日のマスクのツイートが虚偽だったとSECは主張している。

われわれはTeslaにコメントを求めたがまだ回答がない。コメントないし新たな情報が入りしだいアップデートしたい。

8月にマスクはTeslaの非公開化を検討しており、その資金の手当もできているとTwitterに投稿していた。このツイートをTeslaの取締役会や多くの株主は歓迎しなかった。数週間後、Teslaはブログ記事を公開し、Teslaは公開企業として留まると述べた。

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Airbnb、ホストに株式付与を計画――SECに規則701改正のパブコメ提出

評価額310億ドルの巨大企業、Airbnbは宿泊施設を提供している契約ホストに会社のビジネスに参加する道を開こうとしている。Axiosの報道によれば、AirbnbはSEC(証券取引委員会)に株式の所有に関する規則の変更を求める要望書を提出した。

Airbnbが変更を求めているのは、SECが企業の株式保有に関する条件を定めた規則701だ。Airbnbでは共有経済に対応する新たな株式保有者の分類を設ける必要があるとしている。Uberは同様の措置を求めてSECと会談しているが、Airbnbの場合は要望を文書として明確化して提出した点が異なる。こちらから全文が読める(Axiosが発見した)。要望書には次のように書かれている。

共有経済市場におけるAirbnbの成功はホストの成功にかかっている。 われわれは ホストその他 早い段階から非公開企業の共有経済に参加している関係者がその企業の株式を得られるよう規則を改正することは共有経済における企業と参加者に成功へのインセンティブをもたらし、双方の利益になるものと信じる。 

Airbnbは早ければ来年にも株式を上場するもの.と見られている。

ホストやUberやLyftのドライバーに対する株式付与の仕組みの詳細はまだ明らかでないが、実現のためにはSEC規則の改正が必要だ。現在のSECの規則では非公開企業の株主が2000人を超えるか、非適格投資家株主が500人を超える場合、所有の登録や審査などの手続きが必要となる。

2008年の創立以来急拡大を続けてきたAirbnbは現在500万件以上の宿泊先をリストするようになっている。SECの株式保有に関する規則が同社にとって大きな障害となっていることははっきりしている。ただ規則が改正されたとしも、ホストのうちどれくらいの部分が株式を得られるようになるかはまだ分からない。またSECの規則に抵触するような人数の契約者に対して株式による報酬を与えようと考える共有経済のスタートアップがどれほどあるのかも不明だ。

いま一つの問題はAirbinbのビジネスの国際化が進んでいる点。Airbnbの宿泊先の大部分はアメリカ国外に所在している。Airbnbでは世界190カ国の8万1000都市でビジネスを展開していると主張している。このような状態の場合、ホストがアメリカ企業の株式を受け取ることからは複雑な問題が生じる可能性がある。

そうであっても、Airbnbが同社の成功にホストの役割が決定的であると公式に文書で認めたことは積極的な方向への一歩だ。共有経済企業がこのような形で参加者との関係をポジティブな文脈で論じるのは珍しい。

現在メディアで取り上げられる議論はほとんどが共有経済の運営企業と参加者との対立だ。たとえばUberの場合が典型だが、契約ドライバーは社員ではないという連邦地裁の決定が出ている。これにより、契約ドライバーは公正労働基準法を受けないとされた。

共有経済の参加者は柔軟な働き方ができる一方で、同様の仕事をしている常勤社員が受けるような、有給休暇、超過勤務手当、健康保険など、各種の福利厚生から取り残されるという問題を生じている。こうした問題をカバーしようとするスタートアップも多数生れていいる。しかし多くの場合、福利厚生のコストは労働者が負担することになる。共有経済に参加する労働者は当初から経済的に余裕がない場合が多く、問題を複雑化させている。

〔日本版〕SECは規則701の改正を検討しており、これに関してパブリックコメントを求めていた。Airbnbの文書はこれに応えたもの。連邦証券法によれば未公開企業の株式の売買、保有には各種の制限が課せられるが、SEC規則701はその例外を定めている。未公開企業がストックオプションなどにより報酬の一部として社員に株式を付与する場合はこの条項によっている。Airbnbは契約ホストのような共有経済参加者にも適用されるよう規則の改正を求めている。

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SEC、マスクのTesla非公開化ツイートについて調査開始

昨日(米国時間8/7)、Teslaのファウンダーのビリオネア、イーロン・マスクが1株あたり420ドルでTesla株を買い戻し、同社の非公開化を検討しているとツイートしたことが大きな注目を集めた。ジョークだろうとか悪いもので食ったのだろうと聞き流す向きもあったが、ともあれ市場は反応した。Telsaの株価は11%アップし、一時市場での売買が停止された。

これについてSEC(連邦証券取引委員会)が調査に乗り出したという。

Wall Street Journalの記事によれば、SECはTesla非公開化に関連して、イーロン・マスクが本当に非公開化を実行する意図があったのか、また規則に定められた方式による書類提出でなく、この特定のタイミングでツイートによってその意図を公開した理由について調査を始めているという。ツイートによって意図的に株価の操縦が試みられたとSECが認定すれば、マスクは法的責任を問われる可能性がある。

マスクはその後で全社員向けにメールを送り、非公開化は「株価の乱高下によって受ける悪影響を最小限にできる」ので「前進するための最良の道」」だと述べた。四半期決算の成績を維持しなければならないという圧力にさらされることは長期的視野に立った経営にとって必ずしも有益でないという。われわれはSECとTesla双方にさらなる情報を求めている。

マスクはツイートで「資金は確保した」と述べたが、その資金の出し手が誰であるか依然として説明されていないサウジアラビアの国営ファンドがTesla株式に20億ドルを投じたというニュースが報道され直後にこのたツイートが行われた。Wall Street Journalによれば、マスクは先週、Teslaの取締役グループに対し非公開化の意向を説明したという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

米国証券取引委員会、公開企業が社名に「ブロックチェーン」を付加する行為に警告

誰もが知っているように、仮想通貨とブロックチェーン関連技術の騒動に乗じようと個人投資家も機関投資家も群がっている。

しかし困ったことがある。投資先をSEC認可のETFやNASDAQかNYSEに上場されている企業に限定すると、仮想通貨や仮想通貨企業に直接投資することはほぼ不可能だ。そのためこの需要供給の不均衡を活用しようと、小型株の公開企業は、「ピボット」と呼ばれる事業転換や、単に社名をcryptoに関連のあるものに変えるだけ、といった行動にでている。そして、事情をよく知らずに仮想通貨騒動のおこぼれを頂戴したいだけの個人投資家の中には、この手の企業の株を本物だと思って買う人もいる。

そこで数日前SEC(証券取引委員会)のジェイ・クレイトン委員長は、証券規制協会のスピーチで、この手の会社に警告を与えた

次の話題に移る前に、もうひとつ分散型台帳、あるいは「ブロックチェーン」関連の細かい法律問題をある仮説にもとづいて取り上げたい。みなさんの中に次のような行為が許されると思っている人はいないだろう。分散型台帳あるいはブロックチェーン技術に関するまともな実績のない公開企業が、(1)ブロックチェーン事業のまねごとを始める、(2)社名を”Blockchin-R-Us”などに変える、あるいは(3)伴うリスクや変更について個人投資家向けに適切な情報開示をすることなく証券を発行する、などだ。SECはビジネスモデルを転換して有望と目される分散型台帳技術を利用しようとする公開企業の情報開示が証券法に則っているかどうかを、特に証券発行について注意深く監視している。

クレイトン委員長はどのようなことを言っているのだろうか?

たとえば、Long Islan Iced Teaという飲料品会社が社名をLong Blockchain Inc.に変えたところ1日で株価が500%上がったというのはどうだろう。あるいは KodakがICO(新規仮想通貨公開)すると発表したら株価が3倍になった話。さらには仮想通貨少額融資スタートアップ(実際に仮想通貨ベースの融資をしたことはない)を買収したら小型株が2000%高になり、しかもそのスタートアップの95%を買収会社のCEOが保有していたという例。

公開企業が急に社名を変えたり、仮想通貨やブロックチェーンの騒動に乗じようと事業戦略そのものを変えることに対して、今後SECが強硬なスタンスを取ることが予想される。これは大変良いことだ。多くの個人投資家は、仮想通貨の何が正当な技術なのか、なぜ社名を変えただけの会社の株価が急騰するのかについて十分な知識を持っていない。そして、こうした詐欺行為がなくなるのが早ければ早いほど、仮想通貨や他の有望なブロックチェーン技術に個人投資家が直接投資できる場を、SECを始めとする規制当局が認める時期も早まるだろう。

情報開示:筆者は少額の仮想通貨を複数種類保有している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SECがユニコーン、Zenefitsに厳しい措置――「投資家の判断を誤らせた」として元CEOらに罰金100万ドル

アメリカ証券取引委員会(SEC)はシリコンバレーのスタートアップの悪行の取締に乗り出した。まずターゲットとなったのはユニコーン〔10億ドル企業〕のZenefitsと元取締役のParker Conradだ。

BuzzFeedが最初に報じたが、このヒューマン・リソースのスタートアップとConradは総額で100万ドル近い罰金を支払うことでSECと和解し、訴追を受けないこととなった。SECは同社が「州の保険に関する法規に反し、判断を誤らせるような文言および省略により、投資家に実質的な損害を与えた」としていた。

昨年、当時のCEO、Conradが解雇された後、Zenfitsのトップは目まぐるしく入れ替わった。元COOのDavid SacksがConradの空席を埋めたが、その後Jay FulcherにCEOの席を譲った。

これより先、Conradのコンプライアンスに問題が発覚してZenfitsのトラブルが始まった。また保険チームの社員が州の法規で定められた保険販売員の資格を持っていなかったことも判明した。

SECが発表したプレスリリースによると、こういうことだ。

Zenefitsは〔保険業という〕高度に規制された業種にあったにもかかわらず、同社の成長にともなって急増した保険販売員に保険販売のための適切な資格を取得させることを怠った。投資家にその事実を知らせないまま同社はConradが作成したコンピューター・スクリプトを用いて保険の販売を行い、これによりカリフォルニア州法で定められた資格取得を省略し、資格取得準備のための研修時間の節約を図った。【略】 

Zenefitsは多数の中小企業にヒューマン・リソース・サービスを提供しているものの、売上の90%は保険販売からきていた。無資格販売の発見から生じた法律的問題を整理するために2年もかかることとなった。Conradは自分に割り当てられた罰金を支払うことに同意したが、連邦証券取引法に違反したとのSECの見解に同意したわけではない。

SECによれば、Zenefitsは45万ドルを、Conradは35万ドルを不当利得分として返還する。またConradはこれに加えて利子分2万3692.39ドル、罰金16万ドル、あわせて53万3692ドルを支払うという。【略】

SECがシリコンバレーのユニコーン企業にメスを入れたのはこれが最初だが、最後になるわけではなさそうだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

米SEC、仮想通貨資金調達(ICO)2件を詐欺で告発

今日(米国時間10/01)証券取引委員会(SEC)は、ダイアモンドおよび不動産の仮想通貨資金調達(ICO)を、投資家を欺いたとして告発した。

初の仮想通貨に基づく不動産会社であるREcoin、およびダイアモンド会社のDRC Worldは、いずれもMaksim Zaslavskiyという実業家が所有している。SECは声明文で、これらの会社が未登録証券および、実在しないコインを無防備な投資家に販売したとして、Zaslavskiyを告発した。

SECによると、Zaslavskiyは投資家らに、この取引で「膨大なリターン」が期待できると話し、集めた資金が投資される方法やすでに投資された金額を偽って伝えた疑いがある。

その後米国政府は緊急裁判命令を発行し、Zaslavskiyと所有する会社の資産を凍結させた。

これは、仮想通貨に基づく資金調達(ICO: Initial Coin Offering)が詐欺で告発された最初の事例ではなく、間違いなく最後でもない。

New York Timesのコラムニスト、Kevin RoseがICOの本質についていみじくもこう書いている。「友だちがカジノを作ろうとしていてあなたに出資を頼んだところを想像していほしい。対価としてあなたはチップをもらい、完成した暁にはカジノテーブルで使うことができる。さて、そのチップの価値は固定ではなく、カジノの人気やほかのギャンブラーの人数、カジノの規制状況などによって変動すると思って欲しい。そうそう、その相手は友達ではなく、インターネットの見知らぬ人で偽名を使っているかもしれず、実際にはカジノの作り方を知らないかもしれず、もしあなたのお金を盗んでポルシェを買ったとしても訴訟できないかもしれない。それが、I.C.O.だ」

当然まだSECは詐欺で起訴することができる。同委員会は以前からICOに対して懸念をいだいており、7月には投資家への注意喚起を発行し、未承認の売り込みや異常に高い利回りに気を付けるよう警告した。

「投資家は、ICOを並外れた利益を生む方法であると謳う会社を警戒すべきだ」とSEC広報担当者のAndrew M. Calamariが今日の声明で付け加えた。「当委員会が訴状で主張しているように、Aaslavskiyは新規技術が巨大な利益を生むという虚偽の約束で投資家を誘引した」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Bitcoin、ウィンクルボスETFの申請をSECが却下して15%安

SEC(証券取引委員会)はWinkelevossのbitcon ETF申請に関する裁定を発行し、その内容はbitcoin支持者にとって良いニュースではなかった。規制当局が申請を却下した主な理由は、bitcoinを取り巻く規制が整備されていないためだ。

承認されていれば、一般大衆が米国の株式市場で取引されている株式をETFで買うだけでbitcoinに投資できるはずだった。

ETFが承認されれば、デジタル通貨には投資したいが自分で購入することには抵抗のあるウォール街や一般投資家の人々に門戸を開くことになる。そうやって新たな投資家が参入することでbitcoinの価格は上がる。

しかし、ニュースが出回るや否やBitcoinの価格は1295.00ドルから約22%安の1000ドルに急落した。その後1120ドル前後で安定しているが、これでも14%下がっている。

裁定に関するSECの説明によると、Bitcoin ETFは、商品の扱われる市場を証券取引所が規制、監視するとしている現行規則に沿っていない。要するに、現在bitcoinが取引されている市場は、そこを利用して現金化を行うETFに十分対応できるだけの規制が存在していないということだ。

Tyler WinklevossはForbes宛てにメールで声明を発表した。「われわれは今も楽観的でありCOIN[ETFが提案するティッカー・シンボル]を市場に登場させることに全力を注ぐ。今後もSEC担当者と調整を進めるつもりだ。われわれがこの旅をスタートさせたのは4年近く前であり、目標を達成させることを強く決意している。規制と監視はあやゆる市場の健全を保ち投資家全員の安全を取るために重要であるというSECの考えに同意している。

現在これ以外にも2件、bitcoin ETFの申請が審査中だが見通しは芳しくない。なぜなら当局が問題にしているのはWinkevossのETFそのものではなく、bitcoin全般を取り巻く規制が整っていないことだからだ。この問題は、bitcoin市場が十分に成熟して既存の株式、商品相場、デリバティブ等の市場と相容れる規則が作られるか、証券取引法がbitcoinを例外とするよう改訂されるまで続くだろう。

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ジェイ・クレイトンSEC委員長候補がシリコンバレーに歓迎される理由

2017-01-27-high-five

ウォールストリートの有力な弁護士、ジェイ・クレイトン( Walter “Jay” Clayton)はまだSEC〔証券取引委員会〕委員長への就任を正式に承認されていない。しかし共和党が多数を占めるアメリカ議会の勢力バランスを考えれば、クレイトンが承認されることはほぼ間違いない。

これはスタートアップのファウンダー、その投資家にとって歓迎されるニュースだ。最近のSECの動向に関心を強めていた人々はクレイトンの任命で証券市場においてかなりのフリーハンドを得られることになりそうだ。

クレイトンについて念のためにおさらいしておくと、彼は「インサイダー中のインサイダー」だ。今月初め、ドナルド・トランプ次期大統領(当時)がクレイトンをSEC委員長候補に選んだときのDealbookの記事によれば、「取引をまとめる達人」だという。 ワシントンの有力法律事務所、 Sullivan & Cromwellでクレイトンは長年にわたり公開、非公開企業のM&Aを担当してきた(ゴールドマン・サックスに対する助言を含む)。 また新規上場の専門家でもある(Alibabaの2014年の上場を担当)。2008年の危機〔リーマン・ショック〕の際には、サブプライム抵当に関連してクライアントと司法当局の和解を処理した。

企業の政治戦略と投資の専門家、ブラッドリーー・タスクは「こうした背景がシリコンバレーに対して持つ意味は大きく分けて2つある」と言う。タスクはUberを含め多数のスタートアップが当局の規制と戦うのを助けてきた。タスクによれば「クレイトンはテクノロジー企業についてある程度の経験がある。これはシリコンバレーで歓迎される資産だ」という。

タスクは「AlibabaのIPOを担当したというのはもちろんウィルソン・ソンシーニで日頃から取引をまとめていたのとは違う」と言う。ウィルソン・ソンシーニはスタートアップを担当する法律事務所としてシリコンバレーで長年トップの地位を占めてきた。「しかしそれでも〔Alibabaの上場は〕このビジネスに経験があることを意味する。経済全体に与える影響にも理解があるだろう」。

タスクによればさらに重要な点は「クレイトンは特定の政治信条を追求する活動家ではないという点だ。つまり証券取引の規制は強化されるべきだという信念の持ち主ではない」。

この点は退任したメアリー・ジョー・ホワイト前委員長と鋭い対照となる。ホワイトは1年近く前にシリコンバレーを訪問し、ファウンダー、投資家に対して、非公開企業の評価金額が急騰していることにSECは「懸念を抱いている」と警告した

昨年10月にわれわれも書いたとおり、SECは血液検査のスタートアップ、Theranosの不正を機にシリコンバレーのエコシステムにに介入を強めようとしていた。クレイトンはこれに対し、SECを効果的に運営することに専念し、アクティビストとしてSECの権限拡大を追求することには消極的とみられる。投資家とファウンダーの関係は相互の信頼に任されることになるだろう。

市場外取引のマーケットプレイス、EquityZenのファウンダー、シュリラム・バシャムは「クレイトンのSECは『シリコンバレーのことはシリコンバレーに任せる』という立場を取るだろう。ただし現在進行中の事件にどう影響するかはわからない」と述べた。昨年SECが調査を開始したと報道されたケースには、菜食主義者向け食料品のHampton Creek、オンライン小口金融のLendingClub、マイクロ・ベンチャーファンドのRothenberg Venturesなどがある(SECは進行中の調査に関してはコメントしないのが常だ)。「しかし将来を考えると、投資家は自分自身でリスクを判断せよ、という方向になりそうだ」とバシャムは見ている。

最近のSECは問題あるスタートアップの調査に力を入れ過ぎているという批判があった。クレイトンはこうした権限拡張の方向を是正するだけでなく、同時に、資本の調達、形成をバックアップするような規則を作ることも期待されている。最近のSECでは資本形成を助ける適切なルールづくりがなおざりにされているというのが共和党の主張だった。

バシャムはクレイトンのSEC委員長就任でクラウドファンディング・プラットフォームも含めてM&Aのペースは加速する可能性が高いと考えている。クラウドファンディングでは現在、企業が調達できる金額の上限は1年あたり100万ドルとされているが、SECは500万ドルにアップすることを準備している。

バシャムはさらに適格投資家(accredited investor)の定義もさほど遠くない将来、変更されると予想する。現在の定義は「純資産100万ドル以上(自宅不動産を除く)あるいは年間収入20万ドル以上」となっているが、バシャムは「適格投資家の範囲を拡大する方向で改正が行われるだろう」という。

結局問題になるのは誰が何のためにどういった改正を望むのかだ。

この点に関してタスクは「クラウドファンディング・プラットフォームは『さらに規制緩和を』と要求するだろう。しかし彼らには政治力が欠けている。テクノロジー業界も全体としてあまり関心がない。本格的なベンチャーキャピタリストや起業家はクラウドファンディングには興味を示さない。小口投資家はまだしばらく待つことになるだろう」と考えている。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

秘密主義のビッグデータ企業Palantirが11月にひっそりと2000万ドルを調達

palantir

Palantir — 政府、金融、ヘルスケア、その他の組織に、分析、セキュリティ、その他のデータ管理ソリューションを提供する、秘密主義の200億ドル規模の企業 — が、新しいSECのファイリング によれば、再び2000万ドルの資金調達を行った。

それは同社にとってはどちらかと言えば控えめな金額だ。2015年12月に行われた最後の資金調達では、Palantirはラウンドを8億8000万ドルで締めくくった、この過程で企業の評価額はうなぎ登りに上がった。

11月23日付けのフォームDのファイリングによれば、この最新のラウンドの最初のセールは11月8日だった — 偶然(?)にも、ドナルド・トランプが大統領選に勝った米国選挙と同日である。Palantirの議長ならびに主要株主でもある共同創業者のPeter Thielは、トランプの熱心な支持者だ。

ラウンドは単一の支援者で行われたが、その他の詳細は明かされていない。私たちはPalantirに質問をしている最中だ、何か詳細が分かった際には報告を行う。

現在までに、Palantirは20億ドル以上を調達している。現在同社に投資を行っているのは、137 Ventures、Artis Ventures、Ben Ling、Founders Fund、Glynn Capital Management、GSV Ventures、CIAが支援するIn-Q-Telファンド、Jeremy Stoppelman、Keith Rabois、Khazanah Nasional、Kortschak Investments、Mithril Capital、REV、Sozo Ventures、そしてUlu Venturesだ。

2000万ドルの資金調達が、昨年多くの浮き沈みを見たPlantirの今年を締めくくった。同社は、ビジネスや一般的な活動についての情報開示にはあまり協力的ではない(そして、残念ながら、それはおそらくPalantirは私たちの質問には答えないということを意味している、とりわけ感謝祭にぶつかってしまったので尚更だ)。しかし、これまでに漏れ聞く情報は沢山あった。

その顧客リストと、Palantirが顧客のために何をしているのかが判明している;そしてスタッフ間の動揺や、Palantirへの支払いを拒む主要顧客への対応といった内部問題もあるようだ。そして、Thielは 明らかに、同社の株式を評価している者たちの中で、今年の彼らの評価額を少なくとも40%下回る評価を下している。

しかし、それはPalantirの悪い運命と暗い先行きを示すものではない。Thielは大統領に選出されたドナルド・トランプの移行チームで指導的な役割を果すことになる、このためPalantirの取引にも弾みがつくだろうと考える者もいる。しかし、例えそうでなくても、Palantirはすでにワシントンと深い関係を結んでいる。既に10月には、裁判所がPalantirに有利な判決を下して、米陸軍に貴重なデータシステムの契約に対してPalantirが参加できるように再入札を命じたことにより、弾みがついていたのだ。

最近では、私たちは同社が2017年半ばにIPOを計画しているという話を複数の情報源から聞いている(これはFTも報告しているタイムフレームだ)。10月には同社の共同創業者兼CEOのAlex Karpが、同社が来年に向けての収益性も計画している最中だと述べている。

追加報告はKatie Roofから。

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(翻訳:Sako)

急成長中の企業向けソフトのAtlassianがSECに上場申請―売上3億2000万ドル、純利益6800万ドル

2015-11-10-atlassian

上場を目指すソフトウェア企業がまた一つ現れた。Hipchatなどのソーシャル機能のあるエンタープライズ・ソフトを提供するAtlassianがNASDAQへの上場を目指して昨日(米国時間11/9)、アメリカの証券取引委員会(SEC)にF-1申請書を提出した〔F-1はアメリカ企業のS-1に相当する外国企業向け上場申請書〕。

Atlassianの主力製品はSlackのライバルHipChat、それにJIRA、Confluenceなどが知られている。ティッカー・シンボルはTEAMが選択されている。今回の新規上場では2億5000万ドルを調達する予定とされる。

公表されたF-1申請書によれば、その下書きは去る8月21日に秘密にSECに提出されていた。なお、われわれが得た情報によると、2億5000万ドルという株式売り出し総額は現在のところダミーであり実際の目標額は今後決定されるという。

現在、市場はテクノロジー企業の上場に不向きな環境となっており、Squareのような優良とされる企業も黒字化の達成に苦しんでいる。これに対してAtlassianの申請書はずっと明るいトーンだ。

F-1申請書には、同社過去3年利益を上げていると書かれている。ただし昨年の利幅は大きく縮小したが、これはR&D費用が急増したためだとしている。F-1申請書によれば、6月30日を会計年度末とする過去3年の利益は、2013年が1080億ドル、2014年が1900億ドル、2015年が680億ドルとなっている。

同じ会計年度の売上は2013年が1億ドル4850万ドル、 2014年が2億ドル1500万ドル、2015年が3億ドル1950万ドルだった。ここから2013年度から
2015年度までのCAGR(年平均成長率)を求めると、46.7%という高い値となる。.

Atlassianのソフトウェアには 500万以上の月間アクティブ・ユーザー(MAU)があり、顧客は4万8000社に上っている(同社は少なくと1人以上の有料ユーザーを含む組織、または月額10ドル以上を支払う組織を1社と計算している)。同社によれば顧客は「事実上、あらゆる業種の世界160ヵ国に横断的に存在する」ということだ。

同社の有力顧客としてはFitbit、PayPal、Visa、NASA、MIT、Nordstrom、Tesla、Cisco、Adobeなどがある。Atlassianの主なプロダクトは5種類だが、売上の3分を2を稼ぎだしているのはチームのためのスケジュール管理のJira(Asanaのライバル)とコンテンツの制作と管理のConfluence(Quipのライバル)の2種類だ。

Atlassianはビジネス戦略を下の図表にまとめている。

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オーストラリアのシドニーを本拠とするAtlassianはこれまでに2億ドル1000万ドルを調達している。これらのベンチャー投資はすべて二次的ラウンドとして実施された。最終ラウンドにはT. Rowe PriceとDragoneerが参加し、企業価値は30億ドルと評価された。

同社は資金の大半を自己調達して創業されたが、F-1によれば、アメリカのAccelが12.7%を、共同ファウンダー、共同CEOである,Michael Cannon-BrookesとScott Farquharがそれぞれ 37.7%%を所有している。また Accelの Rich Wongも7.3%を所有している。.Atlassianの上場は声明によると、Goldman, Sachs & Co.とMorgan Stanley & Co. LLCが共同で取り扱う。投資銀行のAllen & Companyらも二次的役割で参加する。

〔冒頭部分でAtlassianの主力製品の紹介の訳にミスあったので訂正してあります。ご迷惑をおかけしました。〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+