Amazonの2018年の買収は総額16.5億ドル、そのトップはPillPackとRing

このほどAmazonがSECに提出した10-Kファイル(年次報告書)は、同社が昨年行った昨年で最大の二つのM&Aのお値段を明かしている。それによると同社は、Ringにキャッシュで約8億3900万ドルを払い、PillPackに7億5300万ドル、そのほかの買収の合計で5700万ドルを払っている。

GeekWireが、そのファイルを最初に見つけて記事にした。

Amazonは昨年の早い時期に、同社のスマートホーム事業を支えるためにRingを買っている。それは2017年のBlinkの買収の直後だ。当時Ringの買収価額は、10億ドル以上とも報じられている。一方PillPackの買収は昨年の夏に行われ、“10億ドル弱”と報じられた。

今回のSEC提出書類では、買収価額は“取得された正味のキャッシュ”、とされている。つまりその取引の時点において買収された企業が帳簿に記載していた現金と負債を勘案した金額だ。報じられた額(10億前後)より低いのは、そのためである。

Amazonは2018年に行ったそのほかの買収の個別の価額を明かしていないが、買収の目的について次のように言っている: “Amazonが顧客により効果的に奉仕できるための技術とノウハウの入手”。でもそれらの一部はばれており、たとえばインドのTapzoの買収や、サイバーセキュリティ企業Sqrrlの買収は、いずれも4000万ドルと報じられている。

2018年の総額16億5000万ドルは、Amazonでは二番目に買収額が大きかった年だ。最大はその前の2017年、Whole Foodsを130億ドルあまりで買った年だ。

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自然言語によるコンピューターとの会話を実現するAPI集のAPI.AIをGoogleが買収

api

Googleが今日(米国時間9/1)、API.AIのチームをスカウトしたことを公表した。API.AIは、Siriのような自然言語で会話できるボットをデベロッパーが作るためのツールを提供している。

コンピューターと違って人間には、まあまあのコミュニケーション能力がある。だれかが、“the girl saw a man with the binoculars”と言ったら、われわれは文脈的知識を動員して、「女の子が双眼鏡で男を見た」のか、それとも「女の子が双眼鏡を持ってる男を見た」のか、どちらであるかを正しく判断できる。

ロボットに同じことをやらせるのは、とても難しい。誰かが“get me a lift”と言ったらそれは、「同乗(相乗り)させてくれ」と言ってるのか、それとも「(Uberのライバル)Lyftを呼んでくれ」と言ってるのか? こういう曖昧さが加わると、同じひとつのことを言うのに、無限に多くの言い方がある。コンピューターにとっては、超難題だ。

API.AIは、デベロッパーたちが限りなく車輪を再発明するのを防ぐために、この難問を解決するボットを作るためのツール、というかAPIを提供する。それらは、音声認識や意図認識、文脈(コンテキスト)管理などのAPIで、デベロッパーはそこに、ユーザーの業種業界に特有の知識を付加することもできる。たとえば“deep dish”(深皿)とか“Chicago-style”(シカゴふう)などは、ピザ配達ロボットが必ず理解すべき言葉だ。

API.AIは現在、英語、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語など15の言語/方言を扱える。

同社のホームページ上のカウンターの数字によると、API.AIはこれまで、30億件のAPIリクエストを処理している。またGoogleによると、自分の仕事にAPI.AIを使ったことのあるデベロッパーは6万を超えている。

今回の買収は、価額などが公表されていない。Crunchbaseによれば、API.AIはこれまで、約860万ドルの資金を調達している

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LinkedIn、プロフェッショナル向け教育に参入―オンライン学習大手のLynda.comを15億ドルで買収

プロフェッショナル向けSNSのLinkedInはLynda.comを買収してプロフェッショナル向けオンライン教育分野に本格的に参入する。

Lynda.comは1995年にBruce Heavinとテクノロジー分野の学習書の著者、Lynda Weinmanによって共同創業された。Lynda.comは長年、Photoshop、HTML、CSSなどの入門、マネージメントの基礎知識などをオンラインで得ようとする場合の定番サイトとなってきた。

Lyndaにはエキスパートによって制作されたチュートリアル・ビデオやコースが多数用意されている。eラーニングという言葉が今日のように普及するはるか以前からそれを実践してきたこの分野のパイオニアだ。

買収価格は15億ドルで、52%がキャッシュ、48%が株式によって支払われる。買収手続きの完了は今年の第2四半期が予定されている。LinkedInのプレスリリースによればLynda.comの社員の「大部分」はLinkedInに加わる。

買収を発表した公式ブログ記事で、LinkedInのCEO、Jeff Weinerは「われわれの目的は職を探している人々が実際に職に就けるよう手助けすることだ。LinkedInはこの買収によって職探しに役立つ技能や知識へのアクセスを提供していく」と述べたLynda.comのCEO、Lynda Weinmanは「両社の企業文化は完璧にフィットする」とし、 有用なスキルの教育により、求職市場における需要と供給のギャップを埋めるために大きな貢献が期待できると述べた。 LinkedInのコンテンツ事業の責任者、Ryan Rolanksyは、「LinkedInのユーザーは希望している職に就くために必要な技能が欠けていると気づいた場合、われわれのオンライン・コースによって即刻その技能身に付けることができるようになる」と述べた。.

LinkedInはLyda.comとの統合の具体的な計画を明らかにしていないが、Rolanskyは「当面、Lynda.comは従来どおり運営される」と述べた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Microsof、Minecraftを25億ドルで買収―ファウンダーのNotchは「小さなプロジェクト」に戻る

今日(米国時間915)、MicrosoftはMinecraftの開発会社、Mojangを買収したことを発表した。Microsoftによれば、MinecraftはXboxとPC版だけでなく、今後ともiOS、Android、PlayStation版の提供が続けられるという。Microsoftによれば、「当初、このゲームをXboxに導入するためにMojangと交渉を始めたが、あまりに素晴らしいプロダクトであることに気づき、Microsoftのゲーム資産を多様化するため買収に踏み切った」ということだ。

ファウンダーのNotchこと Markus Persson、 Carl Manneh、Jakbok Porserは買収手続きの完了と共に会社を去ることを発表した。またMojangの公式サイトはこれまでに報道されてきた25億ドルという買収価格を確認している。Mojangによれば、NotchはMinecraftのような世界的大ビジネスを運営するのを好まず、今後は自分の気に入った小さなプロジェクトをきままに手がけていくつもりだという。Minecraftを売却するという決断は、Mincraftの今後の成長を保証すると同時に共同ファウンダーたちにそれぞれの気に入りの生き方をする自由を与えるために行われたという。

MojangはMinecraftの将来について具体的な発表はしていない。ただし当面は「いつもどおり」だという。Microsoftは「Minecraftのブランドと独立性を尊重する」と述べている。2010年以来、Mojangが毎年開催してきたカンファレンス、MINECONも継続される。

当初からのハードコアなMinecraftファンの中にはMicrosoftによる買収を喜ばないものも多いようだが、全体としてみればこの売却は健全だ。さらにNotchがまったく別の新しい「レゴ世界」をもう一度作るチャンスを与えるものでもある。

Notchは今回のMinecraft売却についてこう書いている。

私はMojangを離れる。

私は自分をゲーム開発者だと思ったことはない。私がゲームを作ったのは単に面白かったからだ。私はゲームが好きだし、プログラミングも好きだ。しかし私がMinecraftを作ったのは大ヒットを狙ったわけでもないし、まして世界を変えようなどと考えたわけでもない。Minecraftはたしかに大成功を収め、私は世界を変えたと人によく言われるようになった。それは確かに嬉しいことだったが、同時に、それは私をある種のスポットライトを浴びる公的な立場に置くことになった。

私はかなり以前からMinecraftから離れると決めていた。Jens (Bergensten)は後継者として理想的な人物だ。私は新しいことがやりたくなっていた。私はもう一度何か大きなことをやろうと考えたがうまく行かなかった。私はなにか小さな面白いプロトタイプづくりにこだわっていこうと決めている。

数週間前、たちの悪い風邪で家で寝込んでいるとき、私にはまったく関係ないEULA(エンドユーザーライセンス契約)の問題で、私はインターネットで憎悪の的になって炎上しているのに気づいた。わけがわからず、落ち込んだ。そのことをツイートした。その後YouTubeでThis is Phil Fish を見た〔ゲームデザイナーのフィル・フィッシュを例に、インターネットでの悪評が形作られるプロセスを解説したビデオ〕。そこで自分がインターネットのゲームファンの間で、ある種のシンボルになっているのに気づいた。しかし私はシンボルなどはごめんだ。そういうわけでMojangにとどまる限り、私が好きでもなく、理解もできない巨大な責任を繰り返し押し付けられることになると分かった。私は本質的に起業家でもCEOでもない。私はTwitterで遠慮なく発信するオタクのプログラマーにすぎない。

Microsoftによる買収手続きが完了しだい、私はMojangを離れ、Ludum Dare〔ゲーム開発コンペ〕やウェブでの小さな実験的プロジェクトに戻るつもりだ。

私の一般的なイメージはすでにかなり歪められたものになっているので、Mojangを離れたからといってネガティブ・コメントの洪水を止めることはできないだろう。しかし少なくとも、それをいちいち読む責任からは解放される。【中略】

この決断は金のためではない。私の正気を維持するためだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Amazon、Googleを退けてゲーム・ストリーミングのTwitchを買収―金額は10億ドル以上


Twitchの共同ファウンダー、Emmett Shear(左)とKevin Lin(右)

アップデート: TwitchはAmazonによる買収を確認した。ただし金額を明らかにすることは避けた。

アップデート2:AmazonもTwitch買収の報道を確認し、買収金額は9億7000万ドルのキャッシュと発表した。Amazonの最近の四半期決算では現金及び現金等価物は50億6000万ドルだったから、今回の買収でその約2割を使ったことになる。

さる5月にGoogleはTwitchを10億ドルで買収することが確実視されていた。それを土壇場でAmazonがひっくり返すことに成功したとは驚きだ。

Googleが まだ非常に若いメディア企業を欲しがった理由は明白だ。Twitchは若い男性層への浸透で他の追随を許さない急成長を続けているからだ。 GoogleがYouTubeに加えて、このユーザー層も広告主に提供したがることは理解しやすい。

それに対してAmazonがTwitchを狙ったことはやや意外だった。Amazonも有料のプライム・サービス向けにコンテンツの充実を急いでいる。しかしTwitchは広告を収入源とする完全無料のサービスで、Googleの方がビジネスモデル上の相性がよいはずだった。むろんAmazonもコンテンツの充実によって大いに益するところはあるだろうが、相乗効果としては疑問が残るところだ。

Twitchはライフログビデオのパイオニア、Justin.tvからのスピンオフだったが、ファウンダーたちはTwitchに専念するために最近Justin.tvを閉鎖した

これまでTwitchはBessemer Venture Partners、Alsop Louie Partners、WestSummit Capital、Take-Two Interactive Software、Draper Associates、Thrive Capitalから3500万ドルを調達している。

Twitchの共同ファウンダー、Emmett Shearは来月サンフランシスコで開催されるTechCrunch Disrupt参加予定だ。そのときにさらに詳しい話が聞けるものと期待している。

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Google、音楽ストリーミングのSongzaを買収―Google Play MusicやYouTubeも強化へ

Googleは音楽ストリーミング・サービスのSongzaを買収した。GoogleがSongzaと交渉y中だという噂は数週間前から流れていた。

Songzaは個々のユーザーに対してもっとも適切と考えられるプレイリストを作成するために、人間(DJ、ローリングストーン誌のライターなどの音楽専門家)によるキュレーションを利用している。

音楽体験を改善するために人手を借りるサービスはほとんどない。Pandora、Spotifyその他、有力サービスはみなアルゴリズムを多用している―そしてそのことを主なセールスポイントとしている。

一方、Songzaはユーザーがどんな活動、時間帯、天候等々のコンテキストの下でどんな音楽を聞くかについて膨大なデータを持っている。Googleのように人間の生活のあらゆる部分にテクノロジーを浸透させたいGoogleのような企業にとってこのデータは垂涎ものだろう。

当初Googleは1500万ドル程度を提示しているという情報が流れた。しかし、われわれの情報源によると、Google以外にもSongzaの買収を望むライバルが現れたため、買収額は相当にアップしたという。

Googleの発表によれば、当面Songzaの運営は従来と一切変わりなく行われるが、SongzaのノウハウはGoogle Play MusicやYouTubeなど他のプロダクトに応用されるという。ただしGoogleは現在のSongza社員が今後どような処遇を受けるかについては明らかにしていない。

Songzaはここ数週間のうちに、ロングアイランド・シティーの現在のオフィスからGoogleのニューヨーク本部ビルに引っ越す。

Songzaが設立されたのは2007年で、音楽専門家によるプレイリストを提供するストリーミング・サービスとして出発した。その後、Songzaはユーザーの好み、活動、時間帯などの情報をベースに最適のプレイリストを選び出すコンシェルジュ機能を追加した。

SongzaはこれまでにAmazon、Gary Vaynerchuk、Scooter Braun、Deep Fork Capital、LererVentures、Metamorphic VenturesのDavid Hirschらの投資家から670万ドルの資金を調達している。Metamorphicにとってはこれが1週間で2度目のエグジットとなった。

Songzaのアクティブ・ユーザーは550人程度とみられる。無料版には広告が入るが、週0.99ドルの広告なしの有料版も提供されている。有料版のユーザーがどれほどの割合になるかは明らかにされていない。

Googleは次のようなコメントを発表した。

[Songzaは] 専門家のキュレーションによるユーザーのコンテキストに応じた音楽体験を提供する素晴らしいサービスを作り上げることに成功している。ユーザーはその時々に応じてもっとも適切な音楽を聞くことができる。われわれは当面Songzaの運営に変更を加える計画はない。

AppleがBeats Musicを30億ドルで買収したのも、同じような動機はによるものだろう。実はBeats Musicのプレイリスト作成のアプローチも、Pandoraその他と異なり、Songza似た人手によるキュレーションだった。

またAmazonも最近Prime会員向けの無料音楽サービスを開始し、“数百万のユーザー”が利用しているという。

音楽ストリーミングサービスのプラットフォーム戦争が激化する中でGoogleもGoogle Play Musicを強化するようなサービスが必要だったはずだ。Songzaはこの点理想的なターゲットだったといえそうだ。

〔日本版〕 Google Play Musicのストリーミング機能を日本から使う方法がネットに公開されている。登録に成功すればiTunesからの移行も比較的簡単なようだ。正式にサポートされているわけではないので利用する場合はあくまで自己責任ということになる。

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Appleは過去18か月で24社を買収, Googleを上回る

Appleはこのところ、買収のペースがせわしくなっているようだ。AppleのCEO Tim Cookは、同社が最近買収した企業の数を公表した。それによると、同社はこれまでの1年半で24社を買収しており、観測筋によるとそのペースは同時期のGoogleよりも上だ。

通常Appleは、小さな企業の買収を自ら公式に発表することはせず、メディアが見つけることや、何らかの機会に露呈すること、などにまかせていた。そうやって発見されると、同社は型どおりの声明文を発表するが、直接的には何も具体的なことを確認しない。だからこれらの24社についても、メディアの記事にならなかったものについては、いまだに誰も気づいていないかもしれない。しかしWikipediaの記事に、完全なリストがある。

Appleの買収のペースは、同社が社内の研究開発と製品開発努力を外部企業の買収によって早めようとしていることを、物語っている。

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FacebookはTwitter買収に失敗していた―『Twitterの誕生―金、権力、友情、裏切りの物語』近刊

ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、ニック・ビルトンの近刊、Hatching Twitter: A True Story of Money, Power, Friendship, and Betrayal(Twitterの誕生―金、権力、友情、裏切りの物語)によれば、Facebookのマーク・ザッカーバーグは公式の交渉と共同ファウンダーのジャック・ドーシーを通じた働きかけで、2度にわたってTwitterの買収を試みたという。

私が特に興味を引かれたのは次の箇所だ。それは2008年10月末、ジャック・ドーシーがCEOから追われ、株式の議決権行使をウィリアムズに委任し、経営の実権もないまま会長に祭り上げられた直後のことだった。共同ファウンダーのエヴァン・ウィリアムズとビズ・ストーンはFacebookに招かれ、CEOのマーク・ザッカーバーグと話し合った。テーマはTwitterの買収だった。

ビルトンによれば、ザッカーバーグは何ヶ月も前からドーシーを通じて買収の下ごしらえを進めていたという。ところがドーシーが突如CEOの職を失ったために交渉は一からやり直しになった。その前にザッカーバーグからドーシーに送られたメールには、買収が合理的である理由が箇条書きされていた。その理由のひとつに、このような場合の典型だが、FacebookはTwitterの得意分野に自ら進出するつもりだとあった。つまり買収が成立しないなら、われわれはお前を潰してやるという脅しだ。

ウィリアムズとストーンは5億ドルという価格を提示した。ザッカーバーグはその程度の金額になるはずだとドーシーから聞いていたので驚かなかった。

しかしこの買収交渉は不成立に終わった。ビルトンは買収に応じなかった理由を取締役会に説明するウィリアムズのメールの一部を引用している。

会社を売却するのは3つの理由がある。

1. 買収価格がその会社の将来の価値に対して適正であること(われわれはこれまでTwitterは10億ドルの価値があると言ってきたが、私はその何倍もの価値があると思っている

2. ライバル企業からの深刻な脅威がある((Twitterの価値をゼロにするような脅威はどこにもない

3. 買収する企業が偉大であり、そこに参加することに意義があること(私はFacebookのユーザーではない。私はFacebookの人間にもビジネスのやり方にも数多くの疑念を抱いている)

興味があるのは、Twitterの取締役会が2008年の時点でTwitterは10億ドル企業だと判断していたこと、そしてウィリアムズは「その何倍もの価値がある」と考えていたことだ。当時、Twitterのユーザーは1100万弱で、爆発的なユーザー増加が始まるのは2009年始めになってからで、アシュトン・クッチャーがCNNとフォロワー100万人獲得競争をするなどのPR戦術が効果を挙げた後だった。現在提出されているTwitterの上場申請書によれば会社評価額はおよそ19億ドルだ。2008年当時、始終ダウンする脆弱なインフラを抱えたTwitterだったが、経営陣はその価値に絶大な自信を持っていたことがわかる。

またウィリアムズが企業文化の違いに懸念を抱いていたことも面白い。ビルトンの本は登場人物の人間的な弱点についても深く掘り下げているが、Twitterの創立者たちはそろって「人間のつながりを民主化するツールを創り上げる」という理念を強く信じていたことを明らかにしている。それは前身のOdeoの頃からTwitterへのピボットを通じて維持された。ウィリアムズはTwiterはFacebookの企業文化によって悪影響を受けると考え、何億ドルもの提案を蹴ったのだった。

シリコンバレーでは買収されることを主要なビジネスプランにしている会社が珍しくない。しかし中にはウィリアムズたちのように金のためではなしに決断を下す人々も存在する。

一方、Facebookが「買収に応じなければお前たちを潰してやる」と脅したのは賢明ではなかった。Facebookはそういう脅しを口にしたために何件かの買収をしくじっている。FacebookがTwitterのコア機能をコピーするには3年かかった。2011年にSubscribeという名前で発表された機能はやがて正式にフォローと命名された。

取締役会はウィリアムズに同意し、買収の提案には応じないことが決まった。ザッカーバーグは引き続きドーシーをリクルートしようとアプローチしたが、プロダクト責任者の地位を与えることは拒絶した。ドーシーがFacebookに参加することはなかった。Twitterが上場すればドーシーは議決権のある株式を取り戻すことになる。

実はウィリアムズは過去に買収の提案があったことと、それを断った3つの理由について今年に入ってブログ記事を書いている。ただしその相手がFacebookだったことは伏せていた。

その買収提案は巨額だった―投資家始めTwitterの関係者全員にとって大成功を意味した。しかし私には魅力がなかった。当時われわれはまだちっぽけで、将来性を疑う声も依然として多かったが、私はTwitterの可能性は無限だと考えていた。

Twitterの場合、われわれは誰も売る気がなかった。私はCEOになったばかりで、Twitterの成長のために全力で働こうと張り切っていた。われわれのチームは全員そうだった。それに買収を提案してきた会社はわれわれと特に相性が良さそうに思えなかった―もし相性のいい会社だったら皆大喜びしたはずだ。

こうした話を聞くと、もしFacebookがTwitterの買収に成功していたらという想像が膨らむ。おそらくFacebookが世界のソーシャルネットワークを事実上独占することになっていただろう。そしてビジネスと倫理をいかに調和させることができるかという疑問の典型的な例になっていただろう。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


50億ドルの自社株買い戻しを抱えるYahooにはキャッシュの山, これからも大型買収の続行可能

Yahooの2103Q2の決算報告は微妙な評価になると思われるが、その中の一部の記述は、誰もが知りたがっていたあることに、答えている。あれほど大量に買収をして、お金は大丈夫? そう、Yahooにはまだまだお金がだぶついていて、これからだって、なんぼでも買収ができちゃうのだ。その証拠が、同社の株式買い戻し事業だ。報告書はこう述べている: “2013年の第二四半期においてYahooは2500万株を6億5300万ドルで購入した”。これの総事業費は50億ドルとされている。しかもこれらの株は、いつでも売って現ナマと交換できる。

2012年の9月にMarissa Mayerは、Yahooが保有するAlibabaの株の40%を76億ドルで売ると決定した。そのうちの36億5000万ドルは、Yahooの株に再投資するために取り置かれ、同社が自分の未来に自信を持っていることが証明された。

今日の決算報告でCFOのKen Goldmanは、こう述べている: “Alibabaグループからの36億5000万ドルを株主にお返しし、合計1億9000万株を再購入する措置が基本的に完了したことを、ここにお伝えできることは、欣快である”。

しかし、それだけではない。SECから認められた株買い戻し計画の総額は50億ドルだが、同社はその完了を目指している。つまり、11億ドルでTumblrを買ったりしたから、もうお金がないだろう、という噂は、文字通り根も葉もない噂だった。

企業が自社株を買い戻した場合、その株は後日、廃棄または再発行できる。再発行した場合には、既存の株が希釈されずに新株の番号は前と同じ番号だから、まるで何事もなかった様相になり、会社にとっては大きな勝利だ。

そのほかのアドバンテージもある。たとえばそれはYahooの強い自信を示し、自社の株を最良の投資機会として訴求できる。下図のように、既発行株の減少により株価はやや上がっている。

過去12か月、Yahooの株はきわめて好調だ。2012年7月16日に15ドル65セントだった株価が今日(米国時間7/16)は26ドル88セント、わずか1年で71.8%という驚異的な伸びだ。伸び率ではGoogleやAppleやeBayを凌いでいる。

というわけで、今のところ、Yahooの株式買い戻し事業は奏効し、同社は買収に36億5000万ドルあまりを投ずることができた。同社のポートフォリオの価値は、今ではさらに上がっているからだ。株価がこのように上がり続けるかぎり、それは良い戦略だ。

そこで本日の決算報告は起業家やVCたちに、あることを教えている: Yahooは買収三昧を今後も続けることができる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))