ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

ソフトバンクG孫社長が中国への投資は「しばらく様子見」、IT大手締め付けに「いずれバランスを取り戻すと信じている」

AI革命を掲げ、多くの中国ハイテク企業に投資しているソフトバンクグループの孫正義社長は8月10日の決算会見で、中国当局のIT大手締め付けについて『長い目でみれば、どこかでもう一度バランスを取り直すと私は信じている』とコメントしました。

孫社長は『6月末を過ぎたあたりで、中国の問題が出てきました。DiDiが上場した直後や、フルトラックアライアンスも上場直後でしたね。その後、アリババもテンセントもバイドゥもメイトゥアンも、中国のハイテク株は今受難のときであります。しかし、長い目で見ればですね、業績は伸び続けているわけですから、もう一度バランスを取り直して、株価も持ち直すと私は信じております』とコメント。

また『世界のAI技術の革新の中心は2つあって、米国と中国であると思っています。ですから、今後とも中国におけるAI技術そしてビジネスモデルの革新はどんどんと続いていくんだろうと強く信じております』と述べました。

一方で投資活動については『新たなさまざまな規制等がはじまっておりますので、どのような規制がどのような範囲で行われるのか、そしてそれが株式市場にどのような影響を与えるのかを、もう少し様子を見てみたい』とし、中国企業への投資は当面見合わせる方針を示しました。

加えて『我々が中国政府の動きに反対しているとか、そういうことは全く考えてませんし、中国の将来性について疑念を抱いているかというと、それも全く違います。ただ、新たな規制、新たなルールが今はじまろうとしているばかりですから、もう少し様子が固まるまで、我々としては様子を見てみたいと。おそらく1年2年すれば、新たなルールのもと、新たな秩序がもう一度しっかり構築されると私は信じておりますので、その状況がはっきりしてくれば、中国での投資活動を活発に行うということは十分に可能性としてはありますが、ここしばらくは様子を見てみたいということです』とも付け加えました。

また、ソフトバンクグループの時価純資産(NAV)の多くを占めるアリババについては『依然として売上1.3倍増くらいが続いていますし、直近もそれが衰えずに伸びておりますので、アリババの株価もいずれ回復すると私は信じております』と述べた一方、「直近ではNAVに占めるアリババ株の割合はソフトバンク・ビジョンファンドを下回っている」とも述べ、アリババ一本足打法とみなされる状況を脱却しつつあるとも強調しました。

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

時価純資産におけるアリババの割合はビジョンファンドの伸長で低下していると説明

また、ビジョンファンドにおける中国企業への依存度については、ビジョンファンド1・2のトータルでは『2021年7月末の時価ベースで23%』としたものの、2021年4月以降の新規投資では11%に留まっていることも明かしました。

Engadget日本版より転載)

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中国政府がテンセント「WeChat」を「未成年者保護の法律に違反」として提訴、ゲーム業界への締め付け強化か

Nikolas Joao Kokovlis/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

中国の検察当局が、現地の人気メッセージングアプリ「WeChat」の青少年モード(Youth Mode)が未成年者を保護する法律を遵守していないとして提訴したと報じられています。

米Reuters報道によると、この訴訟は北京市海淀区人民検察院が深圳市のテンセント・コンピュータ・システムズ社に対して起こしたもの。訴状にはWeChatの青少年モードがどのように中国の法律に抵触したかは書かれておらず、テンセント社もコメントを求められてもすぐに答えなかったとのことです。

この問題視された青少年モードは、オンにすると若いユーザーが決済したり、近くの友人を検索したり、特定のゲームをプレイできなくなるという機能です。つまり事実上、WeChatのようなスーパーアプリ(中国内で、日常生活のあらゆる場面で活用できる統合的なアプリ)につき、親が子供の使用を制限するペアレンタルコントロールというわけです。

こうした青少年モードは中国の規制当局による指導のもとで各社のアプリに導入された経緯があり、今回なぜ問題視されたのかは不明です。もっともReutersは今回の訴訟が、中国政府による広範な取締りの一環ではないかと推測しています。

つい先日、中国の国営メディアが多くの10代の若者らがオンラインゲーム中毒となっており、「精神的アヘンが数十億ドル規模の産業に成長した」と報じたばかりです。

この記事はすぐに削除されましたが、直後にテンセント・ホールディングス(上記テンセント・コンピュータ・システムズの親会社)は人気モバイルゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」につき、18才未満のプレイ時間を平日は1日1時間、週末は2時間までに短縮することを発表しています

今年4月、Reutersは中国政府がインターネット大手に対する独占禁止措置の一環として、テンセントに対して巨額の罰金を準備しているとの噂話を報じていました。また国営メディアの証券時報も、今月はじめにゲーム業界に対する税制上の優遇措置を撤廃すべきとの論説を掲載。国営メディアの主張は中国政府の意向に他ならないため、より締め付けは厳しくなることが予想されます。

中国のゲーム産業は巨大なプレイヤー人口や豊富な資金力、それに政府の発展促進政策といった恩恵により、急速な成長を遂げてきました。しかし2018年、習近平主席が子供の近視率が高いことを憂える談話を述べたあと、オンラインゲームの新作やゲーム全体の本数を規制し、子供がプレイする時間を制限するなど風向きが変わっています。

テンセントは任天堂が中国にてNintendo Switchを販売する窓口ともなっているだけに、日本のゲーム業界に対する影響も少なくないはず。今後の展開を見守りたいところです。

(Source:ReutersEngadget日本版より転載)

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TencentのWeChatが「法律・規制違反」で新規ユーザー受け付けを一時停止

Tencent(テンセント)のWeChat(ウィーチャット)は7月27日、「関連する法律と規制」を遵守するために中国での新規ユーザー受け付けを一時停止していると明らかにした。同社は、世界最大のインターネットマーケットである中国で当局の調査に直面した最新の中国企業となる。

ソーシャルメディアへの投稿の中で、Tencentは関連する全ての法律と規制に沿うようセキュリティのテクノロジーを「アップグレードしている」と述べ、このプロセスを進める間、「Weixin(WeChatの中国アプリ)の個人と公式の新規アカウント登録は一時的に停止される」と明らかにした。

「登録サービスはアップグレード終了後に元に戻ります。8月上旬が見込まれています」とWeChatは説明した。WeChatの年初時点の月間アクティブユーザー数は12億人超だった。

WeChatが発表でどの法律を指しているのか、にわかには明らかではないが、今回の動きは中国の規制当局がテック企業を幅広く取り締まっている中でのものだ。取り締まりにより、ここ数週間で中国企業の何十億ドルという時価総額が吹き飛び、ソフトバンクなど多くの著名グローバル投資家が影響を受けている。

中国でスーパーアプリとして展開されているWeChatがこの種の措置を取らなければならなくなったのはここ10年ほどで初めてのことだ。メッセージサービスの提供に加えて、ユーザーはWeixinでオンライン決済をしたり、幅広い金融サービスにアクセスしたりできる。

(他のマーケットでは様子は異なる。ドナルド・トランプ氏は2020年に米国内でのTikTok、WeChatを使った決済を禁止する大統領令に署名した。ジョー・バイデン大統領は6月、そうした措置を取り消して置き換えた

一部のアナリストは、中国政府が国内におけるテック企業の増大しつつある影響力と市民のデータのプライバシーを懸念している、と考えている。

7月上旬、中国のサイバーセキュリティ当局は配車サービス大手アプリのDidiに新規ユーザーの受付停止を命じた。この措置は同社のニューヨーク証券取引所での44億ドル(約4838億円)の新規株式公開から数日後のことだった。当局はDidiが顧客の個人データを不正に収集していたと非難し、Didiアプリは中国のアプリストアから削除された。

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画像クレジット: Drew Angerer / Getty Images

[原文へ]

(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポケモンとテンセント傘下TiMi共同開発の基本無料ゲーム「ポケモンユナイト」が配信時期決定、Switch版7月・スマホ版9月

ポケモンとテンセント傘下TiMi共同開発の基本無料ゲーム「ポケモンユナイト」が配信時期決定

Pokemon UNITE

株式会社ポケモンが、Nintendo Switch / スマートフォン向け基本無料ゲーム『ポケモンユナイト』の配信時期を発表しました。

スイッチ版は先行して7月、スマートフォン版は9月より配信予定。6月24日から26日には、誰でも参加できるスイッチ版ネットワークテストも実施します。

ポケモンとテンセント傘下TiMi共同開発の基本無料ゲーム「ポケモンユナイト」が配信時期決定

Pokemon UNITE

『ポケモンユナイト』(Pokemon UNITE)は、株式会社ポケモンと中国のTiMiが共同開発する基本無料の「チーム戦略バトルゲーム」。

プレーヤー5人対5人でそれぞれ自分の操作するポケモンを選び、マップ上の拠点を巡ってアクションで戦う、いわゆるMOBA (マルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ)ジャンルのポケモン版です。

ポケモンとテンセント傘下TiMi共同開発の基本無料ゲーム「ポケモンユナイト」が配信時期決定

Pokemon UNITE

発表されたのは2020年6月。約一年を経て、配信日ではないものの月が分かりました。

新作『ポケモンUnite』発表、テンセント発の5on5戦略チームバトル

6月24日から26日のNintendo Switch版ネットワークテストは、eショップから『Pokémon UNITE ネットワークテスト』をダウンロードすれば誰でも参加できます。

データは製品版に引き継がれないため、参加しなければ正式サービス開始時に差がつくといったこともなし。参加には Nintendo Switch Online 加入も不要です。

Pokemon UNITE

テンセントTiMiがXbox Gameスタジオと戦略提携。CoDモバイルやポケモンUNITE開発元
最新情報 | 『Pokémon UNITE』公式サイト


©2021 Pokémon. ©1995-2021 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
©2021 Tencent.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémonは任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。
Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。

Engadget日本版より転載)

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Tencentが中国本土から海外の教育サイトローディングをスピードアップするサービスを展開中

新型コロナウイルスパンデミックが引き続き世界中の暮らしと航空網を一変させている中、海外の学校に入学した数十万もの中国人学生が行き詰まっている。中国の自宅で学習しながら、彼らはみな、ある1つの問題に直面している。学校のウェブサイトや他の教育リソースのローディングが耐え難いほどゆっくりなのだ。これは、すべてのウェブトラフィックが通称「グレート・ファイアウォール」という中国の検閲システムを通過しなければならないためだ。

そこに好機を見いだしたAlibaba(アリババ)のクラウド部門は、米国のサイバーセキュリティソリューションプロバイダーFortinetとのバーチャルプライベートネットワーク(VPN)手配を通じて、中国の学生を海外の大学のポータルへと結びつけたとロイターは2020年7月に報じたが、Tencent(テンセント)も似たようなプロダクトを展開しているとも指摘していた。

Tencentのサービスの詳細が明らかになった。「Chang’e Education Acceleration」というアプリはAppleのApp Storeに2021年3月に登場した。選ばれた海外の教育サービスのローディング時間をスピードアップするというものだ。Tencentはアプリについて「在宅でそして海外で学ぶ学生や研究者にインターネットアクセラレーションと教育リソースの検索サービスを提供することを目的とした、Tencentからのオンライン学習無料アクセラレーター」と簡潔に説明している。

教育使用のためのAlibabaのVPNと異なり、Chang’eはVPNではない、とTencentはTechCrunchに語った。VPNをどのように定義づけているか、あるいはChang’eがテクニカル的にどのように機能しているかTencentは説明しなかった。同社は2020年10月にアプリのオフィシャルウェブサイトでChang’eの提供が始まったと述べた。

「VPN」という言葉は中国では隠れた意味を持つ。往々にして「グレート・ファイアウォール」を不法にバイパスすることを意味する。人々は婉曲表現「アクセラレーター」あるいは「サイエンティフィックインターネットサーフィングツール」と言及する。TechCrunchが行ったテストでは、Chang’eがスイッチオンになると、iPhoneのVPNステータスは「オン」と表示される。

TencentのChang’eウェブサイト「アクセラレーター」はリモート学習を余儀なくされている中国人学生が学校のウェブサイトを早く取り込めるようにするのを手伝っている(スクリーンショット:TechCrunch)

ウェルカム画面では、Chang’eはユーザーに「アクセラレーション」のための国を米国やカナダ、英国を含む8カ国から選ぶよう尋ねる。また、各地域のレーテンシータイムとどれくらいスピードアップするかの予想も表示する。

国を選ぶと、Chang’eはユーザーがアプリのビルトインブラウザーで訪ねることができる教育リソースのリストを表示する。そこにはトップの大学79校(大半が米国と英国)のウェブサイト、Microsoft Teams、Trello、Slackのようなチームコラボツール、UDemy、Coursera、Lynda、Khan Academyといったリモート学習プラットフォーム、SSRNやJSTORなどの研究ネットワーク、Stack Overflow、Codeacademy、IEEEなどのプログラミングとエンジニアリングのコミュニティ、世界銀行とOECDが出している経済データベース、PubMed、Lancetといった医学生のためのリソースが含まれる。

これらのサービスの多くは中国でブロックされていないが「グレート・ファイアウォール」下にある中国本土でのローディングはゆっくりとしたものだ。ユーザーはリストに含まれていないサイトをリクエストすることもできる。

Chang’eを通じてスタンフォード大学のウェブサイトにアクセス(スクリーンショット:TechCrunch)

Chang’eはユーザーのスマートフォンの全トラフィックではなく、選んだサイトだけを自由にアクセスできるようにしているようだ。中国で禁止されているGoogle、Facebook、YouTube、その他のサイトはChang’eを通じても利用不可だ。AndroidとiOSの両方で無料で利用できるChang’eは現在のところユーザーに登録は求めていない。オンラインでの行動が厳しく規制されている中国では珍しい方針であり、ほとんどのウェブサイトはユーザーに実名での登録を求めている。

Chang’eを通じて利用できるサービス(スクリーンショット:TechCrunch)

AlibabaとTencentによるサービスは、違法あるいは中国の国益を損なうと思われる情報をブロックするための中国政府の検閲システムによって引き起こされた迂闊な結果だ。大学、研究機関、多国籍企業、輸出業者は往々にして、当局が無害だと考えるもののために検閲回避アプリを探すことを余儀なくされる。

VPNプロバイダーは中国で合法的に運営するために政府の承認を得る必要があり、ライセンスを取得したVPNサービスは中国の国家セキュリティを危険にさらすウェブサイトのブラウジングが禁止されている。2017年にAppleは中国政府の命令を受けて何百もの無認可VPNアプリを中国のApp Storeから削除した。

2020年10月にTechCrunchは、VPNアプリとブラウザーのTuberは中国のユーザーがFacebook、YouTube、Googleといった世界のインターネットエコシステムを垣間見れるようにしていると報じたが、記事の掲載からほどなくしてアプリは削除された。

関連記事:グレート・ファイアウォールを乗り越える中国製ブラウザTuber

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tencent中国オンライン学習留学グレート・ファイアウォールVPN

画像クレジット:GREG BAKER/AFP / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

Tencent Musicがワーナーと提携、これで3大レコードレーベルとジョイントレーベルを運営

Tencentの音楽ストリーミング事業が、主要ライセンスパートナーである「3大」レコードレーベル企業との結びつきを強めている。現地時間3月23日、Tencent Music Entertainment(TME)はWarner Music Group(WMG)と新たなジョイントレーベルを設立したと発表した。これは2018年1月にSony Music Entertainmentと、2020年8月にUniversal Music Group(UMG)と開始したのと同様の取り組みだ。

TMEは発表の中で、この提携は「Warner Musicのグローバルなリソースとアーティストのキャリアをサポートしてきた経験、そして中国の音楽とエンターテインメント市場におけるTMEの巨大な影響力」のメリットを活かすものになるだろうと述べている。

UMGとのジョイントレーベルも同様に、国際的なアーティストを急速に成長する中国の音楽市場で展開し、中国のミュージシャンを海外に広めることを狙っている。

TMEとWMGはジョイントレーベルに加えて複数年のライセンス契約にも合意し、10年間にわたる両社の提携をさらに延長した。

TMEは3大レコードレーベルと継続的なライセンス契約を結んでおり、一部では資本関係を構築している。2021年1月にTencentが主導するコンソーシアムはUMGの持株比率を20%に増やした。

TMEは中国で人気のオンライン音楽サービスも運営している。系列の音楽ストリーミングアプリにはQQ Music、Kugou Music、Kuwo Musicがあり、TMEは2020年第4四半期に合計6億2200万人の月間モバイルアクティブユーザーを獲得している。

ただし有料ユーザーの割合は依然として低く、2020年第4四半期では9%が有料ユーザーだ。しかし前年同四半期の6.2%からは増加している。

しかしTMEにはSpotifyなど欧米のストリーミングサービスとは異なる主要な収入源がある。それはソーシャルエンターテインメントだ。このジャンルにはカラオケアプリのWeSingがあり、バーチャルギフトの販売で収益化している。バーチャルギフトとはユーザーが購入して気に入ったパフォーマーに贈るもので、現実世界のファンとアイドルの関係性を再現している。

2020年第4四半期に、サブスクリプションとデジタル音楽販売の売上が4億2300万ドル(約460億円)だったのに対し、ソーシャルエンターテインメントは8億5400万ドル(約930億円)と売上に貢献した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tencentワーナーミュージック音楽ストリーミング中国

画像クレジット:TME

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

三人三様、中国のテック巨人CEOが国会の年次総会で提案すること

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代、NPC)とその国政助言機関、人民政治協商会議(政協、CPPCC)の年次総会が今週、北京で開催されている。数千人の代表が出席し意見を述べる中には、中国のビッグテックの経営トップも含まれている。ここでは、中国のデジタル経済のためにテック大手のボスたちが何を提案しているか、垣間見ることができる。

Tencent、Pony Ma(ポニー・マー、馬化騰)

中国国営の人民郵電報の報道によると、Tencent(テンセント)の創業者兼CEOである馬氏は、軌道に乗り始めた同国のインターネット経済の発展のためには、規制当局による精査がさらに必要であると述べ、ガバナンス強化を訴えた。全人代の代表として、馬氏は9年連続で出席した国会の会議中に合わせて50以上の提案を提出している、と同ニュースは報じた。

具体的には、P2P金融、バイクシェア、長期賃貸アパート、オンライン食料品のグループ購入など、資金流出の激しい競争の中でビジネスが破綻している新興分野の厳格なガバナンスを求めている。

馬氏の意見は、規制当局が国内の巨大テック企業への監視を強めている中でのことだ。ここ数カ月の間に、中国政府は反競争的な慣行をめぐってAlibaba(アリババ)や他のテック企業への調査を開始し、プラットフォームがユーザー情報を収集する方法を制限する包括的なデータ法を策定している。

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中国のインターネット規制当局は強制的なユーザーデータの収集を標的に

Xiaomi、Lei Jun(レイ・ジュン、雷軍)

製造業のバリューチェーンで地位向上を目指す中国の壮大な計画の中で、スマートフォンや他のハードウェアデバイスを多数製造しているXiaomi(シャオミ、小米科技)は、工場のアップグレードを支援することに熱心に取り組んでいる。

XiaomiのCEOである雷氏は、全人代の代表の1人だ。同氏は中国はスマートマニュファクチャリングで遅れをとっており、自国のイノベーションに欠け、外国の技術に過度に依存していると認識している、と提案書の中で述べている。研究開発の努力は、最先端のセンサーや産業用ロボット用の精密減速機などの重要部品に向けられるべきだ、とも。

また、中国には工場のイノベーションを推進する人材が不足しており、政府の政策は企業が外国人の技術者を誘致し、産学連携を促進することを支援すべきであると雷氏は指摘している。

Baidu、Robin Li(ロビン・リー、李彦宏)

中国最大の検索エンジンを提供するBaidu(百度)は、AIへのピボットの一環として、スマートドライビング技術に多額の投資を行っている。アルゴリズムを訓練するために大量のデータを必要とするBaiduのような自律運転企業にとって、規制は大きなハードルとなっており、試験許可証の発行率は地域によって大きく異なる。

BaiduのCEOで政協のメンバーでもある李氏は、規制当局に対し、より革新的になり、自律走行の合法的かつ大規模な商用化への道を切り開くよう促している。自律走行の商用化を一丸となって推進するために、さまざまな政府機関、業界関係者、学界が連携した仕組みを作るべきであると同氏は述べた。

さらに李氏は、中国では、よりシニアに優しい技術、政府のデータへの一般アクセスの拡大、未成年ユーザーのオンライン保護の改善も呼びかけた。

関連記事:従業員の3割が女性の中国ゲーム大手NetEaseのトップが男女共同育児休暇の拡大を呼びかける

カテゴリー:その他
タグ:中国TencentXiaomiBaidu

画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

カナダのコーヒーチェーンTim Hortonsが中国事業拡大でTencentなどから資金調達

カナダのコーヒーとドーナツのチェーンTim Hortons(ティムホートンズ)は中国事業向けに新たな資金を調達した。この投資ラウンドはSequoia Chinaがリードし、中国におけるTim HortonsのデジタルパートナーであるTencentとEastern Bell Capitalが参加した。Tim Hortonsは2年前にブームを迎えていた中国のコーヒー産業に進出した。

Tim Hortonsは最新の調達額を明らかにしなかったが、ソーシャルメディアへの投稿で資金はさらなる店舗展開、デジタルインフラの構築、ブランドプレゼンスなどに使うとした。

中国のソーシャルメディアエンターテイメント大企業Tencentは2020年5月に創業57年のTim Hortonsに初めて出資した。当時、両社のタイアップは  Tencentの最大のライバルであるAlibabaへの対抗措置だとみられていた。Alibabaは米国のコーヒー大手Starbucksが中国で事業を展開し、デジタル化を進めるのをサポートするために提携していた。

Tim HortonsのWeChat親会社とのコラボレーションは同じようなものだ。同社はこれまでのところ、インスタントメッセンジャーの中で動く軽量アプリの一種であるWeChatミニプログラムを通じて会員300万人を集めている。中国の若い消費者にアピールするために、Tim Hortonsは中国最大のゲーム会社であるTencentとeスポーツがテーマのカフェを開いた。

中国で事業を展開して2年が経つTim Hortonsは主要10都市150店舗を開き、店頭レベルでは黒字になっていると話す。2021年はさらに200店舗超を追加し、今後5年で中国で1500店舗を展開する計画だ。

コーヒーデリバリースタートアップのLuckinのドラマティックな躍進凋落は中国のコーヒーマーケットの見通しを前面に押し出した。Luckinや他のコーヒー会社をめぐる投資の熱狂にもかかわらず、米国やドイツのような国に比べると中国ではコーヒーを飲む習慣はあまり浸透していない。一方で、中国のコーヒー消費量は世界平均2%を優に上回る15%という割合で急増していて、Dongxing Securitiesの2020年レポートによると、2025年には1兆人民元(約16億円)のマーケットに達すると予想されている。

カテゴリー:その他
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画像クレジット:Tim Hortons via Weibo

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

TikTokの親会社ByteDanceが市場独占疑惑をめぐりTencentを提訴、中国の裁判所が受理

中国政府が同国のインターネット大手による独占的な動きを阻止しようとしている中、ByteDance(バイトダンス)がライバルのTencent(テンセント)との戦いを裁判所に持ち込んだ。

TechCrunchがByteDanceの広報担当者に確認したところ、北京の知的財産裁判所(知識産権法院)は、Tencentに対して提起されたByteDanceの訴訟の進行を許可したという。新興のメディア企業ByteDanceは、TikTok(ティックトック)の中国版であるDouyin(抖音)に対するTencentの制限が中国の独占禁止草案に違反していると主張している。Douyinは北京に本社があるのに対し、Tencentの拠点は深圳にある。

Tencentは3年前から、Douyinを同社の主力SNSアプリであるWeChatとQQからブロックしており、ユーザーがDouyinアプリのコンテンツを閲覧したり共有したりすることを禁止している。Tencentの行動は「間違いなく」独禁法草案で禁止されている「市場支配を悪用して競争を排除し、制限することで達成される独占的行動」に該当すると、Douyinは述べている

「当社は、競争は消費者にとってより良いものであり、イノベーションを促進すると信じています。我々の権利とユーザーの権利を守るために、この訴訟を提起しました」。

Tencentはこれに対し、今回の告発は虚偽で悪質な名誉毀損であると述べている。さらに、毎日6億人のユーザーが利用しているDouyinは、WeChatのユーザーデータにアクセスするために違法で反競争的な方法を使っており、同社のプラットフォームエコシステムとユーザーの権利を侵害したとして、ByteDanceを提訴する予定であると主張している。

ByteDanceとTencentは、それぞれがお互いの縄張りを狙っている。ByteDanceは、ソーシャルネットワーキングにおけるTencentの支配に対抗するためにチャットアプリをデビューさせ、Tencentは多数のショートビデオアプリを導入してDouyinの人気に対抗しようとした。どちらも、それぞれの分野で他方の優位性を脅かすことはできていない。

関連記事:中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

20年間の比較的緩い規制に続いて、中国政府は中国のインターネット大手の独占的行為を抑制しようとする姿勢を強めていることが、早期の兆候として示されている。

2020年11月には、中国のトップ市場規制当局が初の独占禁止法の草案を発表し、訴訟や調査への門戸が開かれた。12月には、規制当局がAlibaba(アリババ)のプラットフォーム上での独占販売をベンダーに強要したとして、Alibabaに対する独占禁止法の調査を開始した。そして2021年2月になって、北京の裁判所は、反競争的な行為を行ったとして、ファッションeコマースサイトのVipshopに300万元(約4900万円)の罰金を課した。今後数カ月の間に、中国のインターネット大手がさらに独禁法違反で打撃を受けても不思議ではないだろう。

関連記事:中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ByteDanceTencent裁判中国独占禁止法

画像クレジット:Greg Baker / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国政府が決済事業の規制案を発表、AntとTencentによる寡占を抑制

中国の決済業界における最近の一連の出来事は、Ant Group(アントグループ)とTencent(テンセント)による複占が揺らいでいる可能性を示唆している。

Ant Groupの急な新規株式公開の中止と、中国政府が同社の事業に修正を指示したことに続き、中国当局は先週、繁栄を続けるデジタル決済業界の寡占を抑制する計画を示す新たなメッセージを送った。

ノンバンク決済を規制するために、中国人民銀行(PBOC)が先週発表した一連の草案によると、1社でノンバンク決済市場の3分の1を占める場合、または2社の合計で半分を占める場合、国務院に属する反独占委員会から規制上の警告を受けるという。

一方、ノンバンク決済事業者1社でデジタル決済市場の半分以上を占める場合または2社で3分の2を超える場合は、独占状態にあるかどうか調査される。

2つの規則の違いは微妙であり、前者はノンバンク決済、後者はデジタル決済に焦点を当てている。

さらに当局が企業の市場シェアをどのように測定するのか、たとえば総取引額なのか、総取引量なのか、それともそれ以外の基準で判断するのかについては、規則では特定されていない。

市場調査会社のiResearch(アイリサーチ)によると、Ant GroupのAlipay(アリペイ)は2020年第1四半期に中国の第三者決済取引の半分以上を処理しており、Tencentは同期間に40%近くを処理していたという。

中国は決済大手への監視を強めており、一方で金融市場を国際的なプレイヤーに開放してもいる。2020年12月には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が中国の合弁事業の完全所有権を取得した。そして2020年1月、PayPal(ペイパル)は現地の決済パートナーであるGoPay(国付宝)の残りの株式を買い取り、中国で1つの決済事業を100%支配する初の外資系企業となった

業界の専門家は、PayPalが中国内の決済大手を追うことはないだろうが、代わりにクロスボーダー決済の機会を探る可能性があると、TechCrunchに語った。つまり、Antのベテランチームによって設立されたXTransferなどの地元企業がいる市場だ。

AntとTencentは、他の中国インターネット企業との競争にも直面している。食品配達プラットフォームのMeituan(美団)や電子商取引プラットフォームのPinduoduo(拼多多)やJD.com(京東商城)、TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)まで、様々な企業が独自の電子ウォレットを導入しているが、いずれもAntのAlipay(アリペイ)やTencent傘下のWeChat Pay(ウィーチャットペイ)に差し迫った脅威を与えるものではない。

PBOCの包括的な提案では、決済処理業者が顧客データをどのように扱うかについても定義している。ノンバンク決済サービスは、一定のユーザー情報や取引履歴を保存し、データチェックについて関係当局と協力することになっている。また、企業はユーザーの同意を得て、顧客のデータがどのように収集され、どのように使用されるかを明確にすることも求められている。これは不正なデータ収集を取り締まる中国の広範な取り組みを反映した規則だ。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:モバイル決済AlibabaAnt GroupTencentWeChat Pay中国独占禁止法

画像クレジット:Alipay via Weibo

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(翻訳:TechCrunch Japan)

積極的なTencentの投資は2020年最も活発に

Tencent Holdings社長のMartin Lau(マーティン・ラウ、写真左)とTencent Holdings CEOのMa Huateng(マー・ワウタン、写真右)氏(画像クレジット:Brent Lewin/Bloomberg via Getty Images)

中国のテック大手Tencent(テンセント)が、WeChat(ウィーチャット、微信)やいくつかの大ヒットビデオゲームの背後にいるだけでなく、積極的な投資家でもあることは周知の事実だ。パンデミックが世界の多くの地域で経済活動を減速させた2020年の間でさえも、Tencentはその投資的野心で突き進んでいた。

中国のスタートアップデータベースITJuzi(IT桔子)によると、Tencentは1年の間に170以上の資金調達ラウンドに参加し、その投資総額は2億4950万元(約40億円)に達したという。この結果、過去10年間に優れた成果を上げてきたTencentの投資チームにとって、2020年はこれまでで最も活発な年となった。

2020年1月までに、Tencentの投資先800社のうち70社以上が株式を公開し、160社以上が評価額1億ドル(約104億円)を突破したと、TencentのMartin Lau(マーティン・ラウ)社長は、投資先企業たちを前にして語った。これにより、Tencentは世界のトップベンチャーファンドたちと肩を並べることになるかもしれない。

Tencentは2008年に投資・M&A部門を設立し、2012年頃から本格的にファイナンス活動を開始した。2015年以降、毎年100社以上の企業に資金を提供していることが、ITJuziのデータから明らかになっている。

このソーシャルならびにエンターテイメントの巨人は、長い間その投資活動を秘密裏に進めていたため、ITJuziのような第三者機関が収集したデータは網羅的ではないことが多い。同社は2020年への投資についてのTechCrunchからの質問には、回答していない、そのためこの記事は、主に公開された情報や情報を知りえる立場の人たちへのインタビューから導き出されている。

B2Bへの関心

テンセントの全体的な投資戦略は一貫しており、デジタルエンターテインメントを中心とした多様なポートフォリオを構成しているものの、他方では主力であるゲーム以外の分野への取り組みも静かに強化している。たとえば同社は2018年にB2Bへ(未訳記事)の転換を発表して以来、企業向けサービスへの注目を強化し、クラウドコンピューティングやフィンテックなどにより力を入れている。ITJuziによれば、エンタープライズソフトウェアへの投資額は2015年の5件から2020年には28件になったという。

企業向け投資への注力に足並みを揃えるように、Tencentはフィンテック分野にも力を入れている。2015年にはわずか4社だったフィンテック系スタートアップの支援は、2019年と2020年にはそれぞれ18社と15社に増えたことをITJuziのデータは示している。徐々にではあるものの、このような増加が示しているものは、大きな利益を生む一方で多くの制約もともなうこの分野へのTencentの関心の高まりを反映している。

中国では、Tencentは長期に渡って、Alibaba(アリババ)のフィンテック関連会社であるAnt Group(アントグループ)と競合しており(未訳記事)、支払い、融資、資産管理、さらには保険の分野でユーザーにアプローチしている。現在Antが直面している規制上の問題は、(Alibaba創業者の)Jack Ma(ジャック・マー)帝国だけに当てはまるものではなく、Tencentのフィンテックセグメントも含む、小さな競合他社たちを苦しめることになる可能性が高い。

このため、Tencentは中国の金融市場での地位を強化することに関しては、Antほど「積極的ではない」と、Tencentの海外フィンテック事業と提携している人物がTechCrunchに語っている

海外でのフィンテック

またこの地政学的緊張の時代に、同社はフィンテックの海外展開にも慎重になっている。これまでのところ、海外で現地の人々に直接サービスを提供するのではなく、中国から出かけていく観光客に、国境を越えた決済サービスを提供するという範囲に留まっている場合が多い。

「TencentとAlibabaが米国内で行っていることに対しては、多くの精査が行われていて、それが課題となっています」と、Tencentの支援を受けた米国に拠点を置くとあるスタートアップのCEOが、匿名を条件に述べている。

とはいえ、Tencentは投資を通じて海外の金融市場に広がっている。2015年にはTencentは中国国外で1件のフィンテック投資を行った。それが、Crunchbaseが収集した公開データによれば、2020年には8件の投資を行っている。

Tencentの外部投資のかなりの部分は、戦略的な重要性を担っていない。同社はそのポートフォリオのスタートアップが自律的な経営を行うのに任せる傾向がある。そうしたこともあって、2018年には、「Tencent Has No Dream(テンセントにはビジョンがない)」と題されたバイラル記事で、Tencentは製品開発やイノベーションよりも投資や金銭的リターンを優先していると非難された。これはAlibabaが好む事業の支配権を買取り、Lazadaに対して行った(未訳記事)ような、経営陣を揺さぶる強権的なやり方とは、まったく対照的な放任主義だ。

しかし、Tencentの投資の多くは、プレス発表では潜在的な戦略的相乗効果が除外されているとしても、その投資対象事業に付加価値を与えるものなのだ。ここ数年、Tencentは米国をはじめとする欧米諸国への小口投資を相次いで行っている。こうした企業の中には、近いうちにTencentとの協業の機会をもたらすと思われるものはほとんどないが、それでもTencentはこれらの企業の幹部を中国に招待し、お互いに学び合う機会を設けるだろう。

「Tencentがこうした投資を行ったのは、米国は何が行われているのか、またそれを中国ではどのように応用できるのかを学ぶためでした」と語るのは先に挙げたテンセントが支援するスタートアップの幹部だ。

「私たちは、近い将来中国で何か行う計画は持っていません。しかしTencentは中国でも米国でも、とても評判の良い企業です。それにこの先、Tencentと戦略的なパートナーシップを結ぶことができるオプションがあるというのは良いことですよね」。

香港に拠点を置くあるファンドマネージャーによれば、Tencentの中国国外でのフィンテック投資は、同社のゲーム事業の海外展開にも役立つ可能性があるという。2019年にはTencentが、同社のゲーマーの半数を海外ユーザーにすることを目標にすると公約している(South China Morning Post記事)。

「ラテンアメリカと東南アジアのゲーム業界にとって、最大のボトルネックはハードウェアではなく、意外なことに決済なのです」とそのファンドマネージャーはTechCrunchに語った。「もちろんローカライズや互換性も重要です」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Tencent投資

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(翻訳:sako)

Tencentが518億円のラウンドで中国のヘルスケアポータルDXYを支援

中国の消費者のためのオンラインヘルスケアコミュニティで、Pfizer(ファイザー)のようなヘルスケア企業でもある創業20年のDXYが今週、プライベートエクイティ企業Trustbridge Partnersが率いるシリーズEのラウンドで5億ドル(約517億9000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドには、これまでの投資家であるTencent(未訳記事)と、Hillhouse Capitalのアーリーステージ部門であるGL Venturesが参加し、DXYの総調達額はこれで6億8000万ドル(約704億4000万)あまりになる。DXYの初期の投資家にはXiaomiの創業者Lei Jun(レイ・ジュン)氏のShunwei CapitalやLegend Capital、DCMがいる。

同社は医師同士が知識を共有するプラットフォームとしてスタートし、徐々に健康に関する一般向けのアドバイスや医療相談、病院へ行く前の自宅療養のやり方などを加えて、消費者向けのプラットフォームにもなったた。

パンデミックの長期化にともない、世界中の病院や人びとが大急ぎで活動をオンラインにシフトし、ヘルスケアアプリの需要が急増した。DXYもすばやく反応し、感染拡大の初期には中国でリアルタイムの新型コロナウイルス(COVID-19)検査を導入した初の企業になった。

今日では、ヘルスケア企業がDXYを広告のチャネルや学習のプラットフォーム、また求人サイトとして利用しており、それらが同社の売上に寄与している。

創業以来現在まで、同社のサイトはおよそ1億3000万人の消費者を惹きつけ、またオンラインのコンサルテーションを提供する医療機関や医師は累計で9000機関5万人に達している。同プラットフォームの現在のユーザーベースは2000万で、主要クライアントにはEli LillyやPfizer、AstraZenecaなどが含まれている。

DXYは今回新たに得られた資金を、ヘルスケアプロフェッショナルのサポートと消費者サービスという同社事業の2つの柱の補強に費やす計画だ。そのために、病院と消費者製品の企業、そして製薬企業との協力関係を強化し、プロダクトや新しい消費者アプリケーションの開発に共同出資していく。

消費者部門では、SoftBankが支えるPing An Good Doctor(Reuters記事)やAlibaba Health、JD Health、そして同じくTencentが支援するWeDoctorといった強力なライバルがいる。

【更新】この記事は米国時間2020年12月29日に、投資に関する詳報によりアップデートしている。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:DXY資金調達Tencent中国

画像クレジット:DXYウェブサイト

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

テンセント主導のコンソーシアムがユニバーサル・ミュージックの出資比率を20%に引き上げ

テンセント(Tencent)は、中国の音楽ストリーミング市場を支配し続ける音楽大手、ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)との関係をさらに強化した。

インターネット大手のテンセントと、音楽事業のスピンオフであるテンセント・ミュージック・エンターテイメント(TME)が主導して構成されるコンソーシアムは、フランスのメディアコングロマリットVivendi SAから、UMGの株式10%を追加購入することになったとTMEが発表した。

今回の取引時点で、UMGの評価は300億ユーロ(約368億ドル/3.8兆円)とされ、コンソーシアムの出資比率は20%に拡大することになる。TMEは引き続きコンソーシアムの10%の持分を保有しており、他のメンバーは明らかにされていない。

TMEは「今回の取引は、UMGとの戦略的パートナーシップを強化するというTMEのコミットメントを強く示すものです。中国の音楽エンターテイメント市場において、アーティストやファンに比類のないサービスや商品を提供するために両社が協力し、UMGとより深いレベルのコラボレーションを続けていけるよう期待しています」と述べている。

この取引は2021年前半に完了する見込みで、規制当局の承認を条件としているとTMEは言及している。

TMEとUMGは8月、中国のアーティストを発掘、開拓し、国内および世界に向けてプロモーションするための共同レーベルを立ち上げると発表していた

テンセントは、同社の音楽に特化したアプリにコンテンツをライセンスしている音楽レーベル大手3社全てと近しくしている。ワーナー・ミュージックとソニー・ミュージックエンタテインメントの両社は、TMEが香港で株式を公開した際、株を購入した。

ワーナー・ミュージックの今年初めのSEC提出書類には、同社がテンセントに少量の株式を売却したことが記載されていた。またテンセントは、2017年にSpotifyと株式を交換する取引をしていたことも留意しておくべきだろう

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:音楽ストリーミング テンセント

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(翻訳:Dragonfly)

中国のドローン大手DJIが支援するアグリテック企業FJ DynamicsにTencentが投資

2018年にTencentは、中国の伝統的な産業が最近ますますテクノロジーを利用して生産性を上げているため、自分たちもエンタープライズへの注力を増やすと宣言した(未訳記事)。同社の産業プロジェクトは、AIを利用して医療画像を選別したり、同社のメッセージサービスWeChatを利用して小売企業のための顧客管理ツールを作るなどさまざまだ。

最も新しいところでは、TencentはFJ Dynamicsに投資した。この中国のスタートアップは、スマートトラクターや田植え機など農業を自動化するソリューションを販売しているほか、港や工場用の無人車を世界中の顧客に販売している。Tencentとそのほかの匿名投資家からの投資は数億元(数十億円)に達している、とTencentは12月15日に発表している

2017年に創業されたFJ Dynamicsは、中国の複数の有名企業とつながりがある。たとえば同社の株主の中には、ドローンのメーカーであるDJIや中国の国有自動車製造企業であるDongfeng Asset Managementがいる。FJ Dynamicsは、その名前にも同社を知る手がかりがある。すなわちFJは「Feng」と「Jiang」の省略形であり、さらにそれらはDongfengとDJIの中国語綴から取られている。創業者でCEOのWu Di(ウー・ディー)氏もDJI出身で、氏はそこでチーフサイエンティスト(搜狐)としてチップの研究開発を率いた。

 

おもしろいことに、DJI自体も最近では農業用ドローンを強力にプッシュしている。

Tencentの投資部門のマネージングディレクターであるJeffrey Li(ジェフリー・リー)氏は、2020年4月のスピーチで次のように述べている。「中国社会はいま、生産性の向上に向けて舵を切りつつあり、そこにエンタープライズサービスの成長機会がある。米国では大量のベンチャー資本とプライベートエクイティ投資がエンタープライズにフォーカスした企業に投じられているが、中国では消費者を対象とする企業に比べるとエンタープライズにフォーカスしたビジネスは投資全体のごく一部でしかない。この傾向が変わって、投資が産業分野にも向かっていくためには時間がかかるだろう」。

中国で登記している企業であるFJ Dynamicsによると、同社はR&Dセンターが中国とスウェーデンとオランダにある。

カテゴリー:その他
タグ:FJ DynamicsDJITencent投資農業中国

画像クレジット:FJ Dynamics

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分

中国政府は、国内で最も影響力のあるインターネット企業のパワーを抑えにかかっている。市場監督管理総局は米国時間12月14日、過去の買収案件で当局に申請して承認を得なかったとしてAlibaba(アリババ)とTencent(テンセント)のスピンオフのeブック(未訳記事)会社China Literature(チャイナ・リタラチャー)に罰金を科すと発表した。

Alibabaの中国大手モール運営会社Intownへの株式投資(未訳記事)、China LiteratureのフィルムスタジオNew Classics Media買収(未訳記事)が対象だ。公告によると、Alibaba、China Literatureともに50万元(約800万円)の罰金が科される。何十億ドル(何千億円)という買収規模に比べて罰金の額は取るに足りないものだが、今回の罰金は業界にとって警告となるはずだ、と当局の広報担当は記者会見で述べた。

Alibabaは近年、積極的な買収を通じてオフライン小売に事業を拡大してきた。デジタルエンターテイメント帝国を築いたTencentも同様に事業を拡大するために外部パートナーに投資してきた。

AlibabaとChina Literatureは当局に買収を申請しなかった。しかし買収はいずれも「マーケットの競争を阻害するもの」とみなされなかった。そのため、市場管理当局は中国の独禁法に則って買収を破棄するのではなく罰金を科した、と述べた。

China Literatureはコンプライアンスと申請の要件に取り組むために当局の命令に厳密に従っていると話した。Alibabaにもコメントを求めたが連絡がなかった。

一方、Tencentが出資しているゲームストリーミング大手HuyaとDouyuの合併もまた当局の調査を受けている。

AlibabaとChina Literatureは、市場集中違反で「持分変動事業体(VIE)である企業に中国が罰金を科した初のケースとなる。VIEの企業構造は、外資企業がコントロールしつつ国内企業として運営することができるため、中国のインターネット企業では人気だ。しかしこれは規制の抜け穴となるとして議論を呼んでいる。

2019年1月にパブリックコメントの募集を開始した中国の独禁法は現在、見直しが進んでいる、と当局は記者会見で述べた。先月、中国政府はインターネット企業の独占的な行動に照準を合わせた規制の草案を公開した(未訳記事)が、業界専門家はこの規制は複雑なものになると指摘した。

カテゴリー:その他
タグ:AlibabaTencent買収中国

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

テンセントのモバイルゲーム「王者栄耀」の1日のアクセスユーザー数は1億人、アニメ、TVシリーズも展開か

Tencent(テンセント)は、有名人、eスポーツのスター、オーケストラによって祝われたその5周年記念式典で、モバイルゲーム「Honor of Kings(王者栄耀)」の1日あたりのアクティブユーザーが、1億人を超えたことを発表した。同タイトルはユーザー数の記録を破っただけではなく、これまで前例のない記録も達成してきた。

このゲームは一貫して世界中のモバイルゲームの中でトップの売上を記録しており(SensorTower記事)、Tencentの別スタジオであるLightspeed & Quantum(ライトスピード&クアンタム)によって作られた「PUBG Mobile」と争い続け、長い間、TencentのWeChatメッセンジャーの稼ぎ頭となっている。「王者栄耀」を開発するTiMi Studio(ティミ・スタジオ、天美工作室群)で、2020年は米国での雇用を拡大し(未訳記事)、さらなるグローバル展開を目指している。

ゲームアナリストのDaniel Ahmad(ダニエル・アフマド)氏が指摘したように (Twitter投稿)、このゲームは、短いセッション、フレンドリーなコントロール、eスポーツの統合、ソーシャルネットワーキングの活用などの巧妙なデザインを使用して、中国にマルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)カテゴリを普及させたことで知られている。このタイトルは、男性プレイヤーが多いゲームジャンルの中で、女性プレーヤーの占める割合が約50% (TechNode記事)と異常に高い。

常にオリジナルゲームのクリエイターとして見られているわけではないが、Tencentはモバイルゲームの収益化モデルを開拓し、西洋のスタジオからひっぱりだこのパートナーとしてみなされている。例を挙げるなら、同社はActivisionのCall of Duty(コール・オブ・デューティ)のモバイル版の開発に協力した。同ゲームは2020年6月に2億5000万回以上(SensorTower記事)ダウンロードされている。

「王者栄耀」にもまた、論争が持ち上がっている。人民日報は、若いユーザーを引き込み、歴史的な出来事を歪曲しているとゲームを批判した。それを受けてTencentは、プレーヤーの年齢チェックを厳格化している(未訳記事)。これは現在中国のゲーム業界では標準的なものになっている。

TiMiは、Riot Games(ライオット・ゲームズ)がLeague of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)のモバイル版テスト(South China Morning Post記事)しているときにそのマイルストーンを発表した。なおこのゲームは、何よりも「王者栄耀」開発のインスピレーションを与えたデスクトップヒット作とみなされている。「王者栄耀」の海外版であるArena of Valor(アリーナ・オブ・ヴァラー)の、アジア以外での成功は限定的だ。2015年にTencentが完全買収した(未訳記事)Riotにとっては、独自の解釈であるWild Rift(ワイルド・リフト)を試すときが来ている。

また発表の一環として、TiMi Studioは知的財産の派生作品(WeChatサイト記事)として「王者栄耀」を活用していることも明らかにした。その中には、詳細が明かされていない新ジャンルの2つの新しいゲーム、アニメ、TVシリーズが含まれている。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Tencent

画像クレジット:Esports stars grace the stage at Honor of Kings five-year anniversary

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(翻訳:sako)

テンセントが中国のeスポーツプロバイダーVSPNの約105億円のラウンドBをリード

新型コロナウイルスパンデミックの最中にeスポーツマーケットがブームとなったいることを裏付けるニュースが発表された。eスポーツの「全ソリューションプロバイダー」であるVSPN(Versus Programming Network)は、Tencent Holdings(テンセント・ホールディングス)がリードしたシリーズBで1億ドル(約105億円)「近く」を調達した。Tiantu CapitalやSIG、Kuaishouも本ラウンドに参加した。調達した資金は、eスポーツプロダクトや中国・アジアにおけるエコシステムの改良にあてられる。

2016年に創業され、上海に拠点を置くVSPNはeスポーツトーナメント組織の初期開拓者の1社だ。創業以来、オフラインの会場運営などにも事業を拡大してきた。

声明文の中で、VSPNのCEOであるDino Ying(ディノ・イン)氏は「直近の資金調達を発表できることを嬉しく思います。上海をeスポーツの世界の中心にするという方針、そして北京、成都、西安がeスポーツの開発に自信を表しているおかげで、VSPNは近年急成長してきました。今後は、eスポーツ研究所の設立やeスポーツカルチャーパークの設置、海外展開を楽しみにしています。VSPNは長期的なビジョンを持っていて、グローバルeスポーツエコシステムの持続可能な開発に注力します」。

VSPNのCEOであるディノ・イン氏

Tencent EsportsのゼネラルマネジャーであるMars Hou(マーズ・ホウ)氏は「VSPNの長期的なビジョンやeスポーツプロダクションをリードしているという事実は、Tencentがeスポーツ業界の開発のレイアウトを最適化するのに欠かせないものです」とコメントした。

TechCrunchは2020年3月に、TencentがVSPNに投資するかもしれないというヒントを得ていた。Tencent HoldingsのCOOであるMark Ren(マーク・レン)氏は、VSPNのようなトーナメント主催者とともにTencentがより高品質のeスポーツコンペを開催するかもしれない、と話していた。

8月に明らかになったように、Tencentはすでに世界最大のゲーム販売会社であり、ビデオゲームにフォーカスしていたライブストリーミングサイトDouyuとHuyaを統合する。

いい換えれば、TencentのVSPNへの投資は、同社がeスポーツマーケットに再び賭けていることを示している。

今回のシリーズBラウンドの前にVSPNは2016年にシリーズAで資金調達した。その際はFocus Media Networkがリードし、China Jianteng Sports Industry Fund、Guangdian Capital、Averest Capitalが参加した。

VSPNはいまやPUBG MOBILE国際大会、中国のHonor of Kingsの大会、PUBG、Peacekeeper Elite、CrossFire、FIFA、QQ Speed、Clash Royaleの主要トーナメント主催者かつブロードキャスターだ。オリジナルコンテンツは1万2000時間にもなる。VSPNは中国のeスポーツトーナメントの70%超と提携している。

別のeスポーツ大手ESLは3月、2020年のPUBG Mobile eスポーツサーキットに加わるためにTencentと組んだ。

eスポーツトーナメントとコンテンツ制作事業に加え、VSPNは成都、西安、上海にeスポーツ開催施設を構えた。5月には中国外では初なるeスポーツ開催施設V. SPACEを韓国・ソウルに置いた。

さらには、オフラインのイベントも戻りつつある。VSPNは初の大規模なeスポーツイベントを2020年8月に会場で実際に開催した。そしてLOL S10イベントはチケット6000枚を準備する予定だ。しかし、トーナメントはすべて厳しい新型コロナ規制の下、中国政府の許可を得て開催されることになる。主要で、かなりレベルが高いなものだけが承認される。

VSPNは、eスポーツの短編ビデオエコシステムを構築し、eスポーツコンテンツ制作の質を上げ、さまざまなチャンネルを通じてより多くのユーザーにアクセスするのに引き続き注力する、と話した。同社は現在5つの事業部門で1000人超を雇用している。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:VSPNTencent資金調達

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(翻訳:Mizoguchi

米国政府によるテンセント関連企業排除の次期ターゲットはゲーム会社

米国オンラインゲーム業界の大手企業数社が、中国のマルチビリオンダラー企業であるTencent(テンセント)との関係に関する情報提供を求める書簡を米国政府から受け取った。

米国商務省は、同じ中国企業の人気メッセージング・支払いアプリであるWeChatの新規ダウンロードを禁止する動きを見せている一方で、Epic Games(エピックゲームズ)、Riot Games(ライオットゲームズ)をはじめとする米国のゲーム会社に対して、会社のデータセキュリティー方針およびTencentとの関係を尋ねる書簡を送った(Bloomberg記事)。

Bloombergは本件に詳しい筋の情報として「財務省が代表を務める対米外国投資委員会が、これらの企業が米国顧客の個人情報をどのように扱っているかに関する情報を求めている」と報じた。

Tencentは世界最大のゲーム会社であり、ロサンゼルス拠点のRiot Gamesを傘下にもつほか、米国で最も人気のあるバトルロワイヤルゲームであるFortnite(フォートナイト)の開発元のEpic Gamesの株式の40%を保有するなど、複数の米国ゲーム会社に出資している。

この要求は米国政府がTencentに対して米国ゲーム会社の株式を売却させようとする圧力の前兆とも考えられ、中国製ソーシャルメディア・ネットワークTikTokを排除する同様の動きに続くものだ。

TikTok(テックトック)騒動の中心にあるのは、大人気のソーシャルメディア会社がユーザーデータをどのように扱い、そのデータがTikTokの親会社である中国のBytedance(バイトダンス)にどう悪用されれるのかという点だ。そして米国時間9月18日の発表でWilbur Ross(ウィルバー・ロス)商務長官は「TikTokのソーシャルメディアサービスと同じことがTencentのゲーム会社にも当然あてはまる」と強く主張した。

「本日の行動は、我々の国家安全保障を万全に保ち『中国共産党から米国国民を守るためにはどんなことでもする』というトランプ大統領の姿勢を改めて証明するものだ」とロス氏は声明で語った。そして「大統領の指示に従い、中国による米国市民の個人データの不正な収集と戦うと同時に、国家の価値と民主的ルールに基づく規範を推進し、米国の法律と規制を積極的に施行するべく重要な行動を起こした」と続けた。

テクノロジー企業が世界経済産出量におけるシェアを拡大する中、Facebook(フェイスブック)を始めとするソーシャルメディア企業は中国市場への参入を拒否されている。一部には、米国政府によるTikTokの米国資産売却の強要は、米国企業が中国国内市場で経験したのと同じ制約を中国企業に課そうとするものだと見る向きもある。

セキュリティーの懸念は、ネットワーキング・通信テクノロジー開発のHuawei(ファーウェイ)など、中国のさまざまなテクノロジー企業に対する米国の貿易制限の中心になってきた。

同じ議論をゲーム業界に広げることは、トランプ大統領の在任期間中に続いている米中貿易戦争の新たな火種になりかねない。しかしこれは、兵器システムなどを除き、歴史的にテクノロジー分野の大部分で海外競合他社の参入に門戸を開いてきた市場に壁を築こうとする前例のない試みだ。

Tencentの投資先は300社を超えており、前述のようにRiot Gamesは2011年に株式の93%を買収したあと2015年に完全子会社化した。さらに、企業価値170億ドルのゲームテクノロジーデベロッパーであるEpic Games(CNBC記事)や、Call of Dutyなどの開発元、Activision Blizzard(
アクティビジョン・ブリザード)の大株主でもある。

米国内で事業を展開する海外企業の経済活動を制約するトランプ政権によるあらゆる行動が、この国のテクノロジー産業に意図しない影響を与えかねない。

競争の激しいソーシャルメディア分野からTikTokが消えることで、表面上利益を得ると思われる企業の経営トップでさえ米国政府のアプローチを非難している。

米国時間9月18日、Instagram(インスタグラム)CEOのAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は政府の発表をTwitterで非難(未訳記事)した。米自由人権協会(ACLU)も直ちに発表を非難した。同協会の国家安全保障プロジェクトのディレクターであるHina Shamsi(ヒナ・シャムシ)氏は声明で、「この命令は米国で2つのソーシャルメディアプラットフォーム上で重要な取引を行う人々の米国憲法修正第1条で保証された権利を侵害している」と語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

トランプ政権指示のWeChat配布禁止を米連邦地裁が拒否、現在もダウンロード・利用可能

数日前、米国商務省は8月にトランプ大統領が署名した執行命令を受けて、米国のユーザーによるTikTokとWeChatのダウンロードを中止することを目的とした、一連の規則を発表した。TikTokは米国時間8月19日、Oracle(オラクル)やWallmart(ウォルマート)との投資・クラウドサービス契約に署名したことで、ダウンロード禁止の実施を少なくとも1週間遅らせたことで、ギリギリのところで猶予を得た。しかし、WeChatは事実上、本日(米国時間8月20日)に、ダウンロードといくつかのサービスの禁止が実行されることになっていた。

いま、中国語圏のコミュニティで広く使われ、中国に拠点を置くTencent(テンセント)が所有するソーシャルアプリの将来をめぐる戦いに新たなしわ寄せが来ている。サンフランシスコの連邦地裁判事は、禁止が米市民の自由な言論権を損なっていると主張するWeChatユーザーの訴訟を受け、全国的な禁止を一時的に停止した。その裁判である「U.S. WeChat Users Alliance v. Trump」は進行を許可されることになる。

米国時間9月19日に発表された短い意見書の中で、米国のLaurel Beeler(ローレル・ビーラー)判事は、政府の訴えは修正第1条の根拠に弱点があること、政府が産業をコントロールするために既存の法律の中で行動する権限があること、禁止が米国の中国語圏コミュニティに与えるであろう損害と比較して全体的にあいまいであることを主張した。

ビーラー判事の見解は以下のとおり。

確かに政府の包括的な国家安全保障上の利益は重要である。しかし、この記録では、政府は中国の活動が国家安全保障上の重大な懸念を引き起こしていることを立証しているが、米国のすべてのユーザーに対するWeChatの効果的な禁止がこれらの懸念に対応しているという証拠はほとんど示されていない。また、原告が指摘しているように、オーストラリアが行ったように政府のデバイスからWeChatを禁止したり、データセキュリティに対処するために他の手段を講じたりするなど、完全な禁止に代わる明白な選択肢がある。

訴訟手続きの可能性と禁止が実施された場合の即時の損害を考慮して、裁判官は商務省のアプリ禁止命令の実施に対する全国的な差止命令を開始した。

商務省はこの展開に対応する機会を得ることになるが、命令を編集するか、裁判所を通じて他の手段を追求するか、あるいは命令を完全に取り消すことを選択するかどうかは、近日中に判明することになるでしょう。

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

WeChatとTikTokのダウンロードが9月20日から不可に、米商務省が発表

米商務省は、TikTok(ティクトック)とWeChat(ウィチャット)の利用禁止に関する詳細を発表した(米商務省プレスリリース)。国家安全保障上の懸念によるこの措置については9月20日までに実施するとの方針を8月に示していた。今回の詳細では、9月20日と11月12日がカギとなる。両アプリ、そしてそのアップデートも9月20日から米国のアプリストアで利用できなくなる。しかしTikTokは11月12日までオペレーションを展開できる。これは11月3日の米大統領選挙以降も利用できるようにするだけでなく、サービス提供を中断することなくOracle(オラクル)やその他のパートナーがTikTokの米国事業を引き継ぐという複雑な交渉を完了させるのに時間を与えることにもなる。

そうしたタイミング、加えて商務省長官Wilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏の声明は、この件に関する政治的な意図を如実に表している。

「今回の措置は、トランプ大統領が国家の安全を保障し、米国民を中国共産党の脅威から守るためにあらゆる手段を尽くすことを示している」とロス氏は声明で述べた。「大統領の指示のもと、我々の価値、民主的なルールに基づく規範、米国の法律や規則による積極的な取り締まりを推進する一方で、中国の悪意ある米国市民の個人情報データ収集と戦うために重要な行動を取った」

最初の行動として、Tencent(テンセント)が所有するWeChatと、ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokは9月20日からアプリの配布を停止しなければならない。言い換えると、同日から両アプリはダウンロード全面禁止で、アップデートも不可となる。また「米国内での資金の移動や決済処理を目的とするWeChatモバイルアプリを通じたサービスのいかなる提供」、つまり決済も禁止する。

9月20日以降、WeChatはまた「機能や最適化を可能にするインターネットで展開するサービスの提供」、コンテンツ配信やインターネットトランジット、ピアリングの提供、構成コード、ファンクション、アプリのサービスの提供も禁止され、つまり全面禁止となるようだ。

注意を引くのが、TikTokはオペレーション面で同じような禁止措置を受けないことだ。つまり9月20日までにダウンロードされたTikTokはまだ当分使える。

日付はいくつかの理由で重要だ。まず、大統領選後もしばらくTikTokを利用できる状態にしている。トランプ大統領はこの人気アプリを禁止すると多くの人が言っていた。しかしそうすることで若い有権者の票を失うことになるかもしれない。実際そうなるかはわからないが、再選へ向けた問題となっていたようだ。

2つめに、TikTokのオペレーションを引き継ぐために交渉しているOracleやWalmart(ウォルマート)、その他の企業によるコンソーシアムがサービス提供を中断することなく交渉を完了させられるよう、猶予を与えた。TikTokは米国にユーザー約1億人を抱え、欧州にも同規模のユーザーがいる。

交渉を巡るニュースは日々変化している。完全買収と報じられたかと思えば、OracleはTikTokのデータを管理するがソースコードは含まれないという話になり、はたまた中国と米国の承認を得るためにソースコードもライセンス提供するという話になったりしている。最新のニュースには、上場して新CEOにInstagram(インスタグラム)共同創業者Kevin Systrom(ケビン・シストロム)氏を据えるというアイデアもあった。

皮肉なことに、この最新の動きについて率直に意見を言うテック業界リーダーの1人が、現在のInstagramの責任者Adam Mosseri(アダム・モセリ)氏だ。同氏は他のテック企業にも影響を与える含意について自身の考えをツイートしていた。

アダム・モセリ:この見出しには注意してください、禁止はTikTokの「新規ダウンロード」だけです。

前にも言いましたが、米国のTikTok禁止は、Instagram、Facebook、そしてより広くインターネットにとってかなり悪いことになります。

(もちろん我々はこのところ、アプリと国境を越えて事業展開するための自由をめぐるしっぺ返し戦争の最中にいる。ファイアウォールを備えた多くの国は、国家安全を脅かしていると感じた場合に他国のアプリを禁止することはまったく誤ったことではないとしてきた)。

米商務省の決定はトランプ大統領が8月6日に署名した大統領令に沿ったものだ。大統領令では、国家安全に関する懸念を理由にTikTokとWeChatへのアクセスを阻止する政府の意向をByteDanceとTencentに通達した。

大統領令は、署名されるまでの数週間にわたってTikTok禁止を回避するために展開されていた交渉を促した。協議はまだ続いていて結論は出ていない。米国9月18日現在、Oracle、そしておそらくWalmartもホワイトハウス、財務省、そしてByteDanceと大統領に受け入れられる取引となるよう協議を続けている。中国にもまたTikTok売却を承認する部門がある。

ここ数週間、トランプ政権はアプリや米国のテクノロジーを支えるクラウドインフラにおける海外干渉を排除するための「クリーンネットワーク」という政策を推進してきた。この政策には、特定のアプリの排除、米国ユーザーデータ主権の米国への移管、「クリーン」な設備で構築されたモバイルネットワークインフラ、米国民にとって「クリーン」なコンピューティング環境を整備するためのその他の方策が含まれている。そうした政策は一般的に書かれているが、政権高官の発言からするに明らかに中国をターゲットとしている。

TikTokとWeChatだけが突然排除されることになったアプリではない。インドでは同国で最も人気の決済アプリの1つPaytm(ペイティーエム)が「度重なるポリシー違反」を理由にGoogle Play Storeから排除された。Paytmは何千万もの月間ユーザーを抱える。そして6月下旬にインドは、TikTokを含む中国企業が開発した59のアプリを禁止すると発表した。

テックがグローバル経済の大きな部分を占めるようになり、また国家利益の競合と相まって、テクノロジーの未来をめぐるそうした国家間の戦いは抜き差しならない状態になりつつある。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi